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特表2024-507124CD112Rに対する抗体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】CD112Rに対する抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240208BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240208BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240208BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240208BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240208BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240208BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240208BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 15/14 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240208BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P37/02
A61P35/00
A61P31/12
A61P43/00 121
A61P35/02
A61P11/00
A61P15/14
A61P1/04
A61P35/04
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K45/00
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548211
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 IL2022050162
(87)【国際公開番号】W WO2022172267
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/148,149
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520423585
【氏名又は名称】ネクチン セラピューティクス リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】518064053
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ リエカ ファカルティー オブ メディシン
(71)【出願人】
【識別番号】504389234
【氏名又は名称】イッサム リサーチ デベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ツッカーマン,ピンチャス
(72)【発明者】
【氏名】アティエ,アナス
(72)【発明者】
【氏名】オビエダット,アクラム
(72)【発明者】
【氏名】シナモン,ガイ
(72)【発明者】
【氏名】ヨニッチ,スティパン
(72)【発明者】
【氏名】レナック ロビス,ティハナ
(72)【発明者】
【氏名】クカン ブルリック,パオラ
(72)【発明者】
【氏名】マンデルボイム,オファー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、ヒトCD112Rを高親和性および特異性で認識しかつネクチン-2へのその結合を抑制する、モノクローナル抗体を提供する。本発明は、抗体を含む医薬組成物および癌免疫療法および診断でのそれらの使用のための方法をさらに提供する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD112Rに結合する抗体、または少なくとも抗原結合部分を含む、その抗体フラグメントであって、
(i)配列番号17を含む重鎖(HC)可変領域の3つの相補性決定領域(CDR)および配列番号19を含む軽鎖(LC)可変領域の3つのCDR、または前記抗体またはフラグメント配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体;または
(ii)配列番号21を含む重鎖可変領域の3つのCDRおよび配列番号23を含む軽鎖可変領域の3つのCDR、または前記抗体またはフラグメント配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体、
を含む、抗体または抗体フラグメント。
【請求項2】
重鎖CDR1が配列GYXFXSY(配列番号1、式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)、または配列SYWIN(配列番号7)を含み、重鎖CDR2が配列YPGSYIP(配列番号2)を含み、重鎖CDR3が配列GYFDV(配列番号3)を含み、軽鎖CDR1が配列KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4、式中、Xは、NまたはSを意味する)を含み、軽鎖CDR2が配列GASTRES(配列番号5)を含み、および軽鎖CDR3が配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む6つのCDRのセットを含む、請求項1に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項3】
配列番号28および配列番号21から選択される重鎖可変領域、または前記重鎖可変領域配列と少なくとも95%の配列類似性を有する類似体を含む、請求項1または請求項2に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項4】
配列番号26および配列番号23から選択される軽鎖可変配列、または前記軽鎖可変領域配列と少なくとも95%の配列類似性を有する類似体を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項5】
重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖が、配列番号28を含みかつ前記軽鎖が、配列番号26を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項6】
重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号21を含みかつ前記軽鎖が、配列番号23を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項7】
前記抗体軽鎖または重鎖と少なくとも95%の同一性を有する、請求項5または請求項6に記載の抗体または抗体フラグメントのバリアント。
【請求項8】
前記抗体フラグメントが、単鎖Fv(scFv)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体フラグメント。
【請求項9】
前記ポリペプチド配列が、配列番号43~54からなる群より選択される配列、または前記抗体と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体を含む、請求項8に記載のscFvおよびヒトIgG1 Fc領域を含むポリペプチド。
【請求項10】
前記抗体が、0.5x10-9M~10-11Mの親和性でヒトCD112Rに結合する、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体フラグメント。
【請求項11】
前記抗体が、hIgG1のFcを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項12】
前記抗体が、ヒト化された抗体である、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項13】
重鎖CDR1が、GYTFTSY(配列番号13);またはSYWIN(配列番号7)である、請求項12に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項14】
軽鎖CDR1が、KSSQSLLSSGNQKNYLA(配列番号15)である、請求項12または13に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項15】
重鎖CDR1配列が配列GYTFTSY(配列番号13)を含み、重鎖CDR2が配列YPGSYIP(配列番号2)を含み、重鎖CDR3が配列GYFDV(配列番号3)を含み、軽鎖CDR1が配列KSSQSLLSSGNQKNYLA(配列番号15)を含み、軽鎖CDR2が配列GASTRES(配列番号5)を含み、および軽鎖CDR3が配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む6つのCDRのセットを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項16】
前記ヒト化された抗体が、配列番号29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、および39からなる群より選択される配列を含む重鎖、または前記重鎖可変領域配列と少なくとも95%の配列類似性を有する類似体を含む、請求項12~15のいずれか1項に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項17】
前記ヒト化された抗体が、配列番号40、41、および42からなる群より選択される配列を含む軽鎖、または前記重鎖可変領域配列と少なくとも95%の配列類似性を有する類似体を含む、請求項12~16のいずれか1項に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項18】
前記ヒト化された抗体が、
(i)配列番号39を含む重鎖および配列番号40を含む軽鎖;
(ii)配列番号39を含む重鎖および配列番号41を含む軽鎖;および
(iii)配列番号39を含む重鎖および配列番号42を含む軽鎖
からなる群より選択される重鎖および軽鎖を含む、請求項12~17のいずれか1項に記載の抗体または抗体フラグメント。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の抗体または抗体フラグメントの重鎖または軽鎖領域の少なくとも1つの配列をコードするポリヌクレオチド配列。
【請求項20】
配列番号16、配列番号20、および配列番号24からなる群より選択される配列または前記配列と少なくとも85%の同一性を有するそれらのバリアントを含む、抗体重鎖可変領域をコードする、請求項18に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項21】
配列番号18、配列番号22、および配列番号25からなる群より選択される、または前記配列と少なくとも85%の同一性を有するそれらのバリアントである、抗体軽鎖可変領域をコードする、請求項19に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項22】
請求項19~21のいずれか1項に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含むプラスミド。
【請求項23】
請求項19~21のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド配列を含む細胞。
【請求項24】
請求項1~18のいずれか1項に記載の抗体を産生できる細胞。
【請求項25】
有効成分として請求項1~18のいずれか1項に記載の、少なくとも1種の抗体またはそのフラグメント、および薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、塩または担体を含む医薬組成物。
【請求項26】
ネクチン-2へのCD112Rの結合を抑制することにより免疫系を調節することにおける使用のための請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
対象において癌を治療することにおける使用のための請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
対象においてウィルス感染症を予防するまたは治療することにおける使用のための請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項25に記載の医薬組成物の治療的有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む癌を治療する方法。
【請求項30】
手術、化学療法、放射線療法、および免疫療法から選択される追加の抗癌療法をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
追加の免疫調節剤、活性化リンパ球細胞、キナーゼ阻害剤、化学療法剤、または任意の他の抗癌剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記追加の免疫調節剤が、免疫チェックポイント分子に対する抗体である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記追加の免疫調節剤が、抗PD-1、抗TIGIT、抗PVRおよびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される抗体である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記癌が、固形癌である、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記癌が、血液癌である、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記癌が、肺腺癌、乳腺癌、および結腸直腸癌からなる群より選択される、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
治療することが、対象中で転移の形成、増殖または拡張を防止することまたは低減することをもたらす、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
試料中のCD112Rを測定するまたは定量化する方法であって、生体試料を抗体または抗体フラグメントと接触させること、および複合体形成のレベルを測定することを含み、前記抗体または抗体フラグメントが、請求項1~18のいずれか1項に記載のものである、方法。
【請求項39】
対象において癌を診断するまたは予知する方法であって、請求項1~18のいずれか1項に記載の少なくとも1種の抗体または抗体フラグメントを用いて前記対象の生体試料中のCD112Rの発現レベルを測定することを含む、方法。
【請求項40】
請求項1~18のいずれか1項に記載の少なくとも1種の抗体または抗体フラグメントを含む生体試料中のCD112Rの発現または存在を測定するためのキットもまた提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、免疫療法の分野に属し、ヒトタンパク質CD112R(PVRIG)に結合する抗体およびそのフラグメント、これらの抗体をコードするポリヌクレオチド配列およびそれらを産生する細胞に関する。これらの抗体を含む医薬組成物およびそれらの使用も包含される。
【背景技術】
【0002】
癌免疫療法は、例えば、腫瘍細胞上の抗原に特異的な抗体での治療により、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)により、または抗腫瘍細胞の特異的活性化により、抗腫瘍免疫応答を生成および強化するために利用される。患者中の腫瘍細胞に対して免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)を動員する能力は、さもなければ不治と見なされる腫瘍およびそれらの転移に対抗する治療的手法を提供する。
【0003】
T細胞媒介免疫応答は、免疫応答の大きさおよびその結果を制御する正味の効果をもたらす共刺激および共抑制シグナルにより調節される複数の逐次段階を含む。抑制シグナルは、免疫チェックポイントと呼ばれ、自己免疫寛容の維持のためおよび免疫介在性の付随的組織損傷の制限のために重要である。
【0004】
免疫チェックポイントタンパク質の発現は、腫瘍により変えられる。例えば、癌細胞の表面上のプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現上昇は、それらが、T細胞上で発現されるチェックポイント分子PD-1に結合することを可能にする。これは、さもなければ腫瘍細胞を攻撃したはずのT細胞の阻害をもたらし、従って癌細胞がホスト免疫系を逃れることを可能にする。従って、免疫チェックポイントは、癌に対する機能的細胞免疫の活性化に対する大きな障壁である。従って、T細胞上の阻害性リガンドに特異的なアンタゴニスト活性抗体(例えば、PD-1)は、癌療法に使われている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ)に対する標的薬の例である。免疫チェックポイント分子の別の例は、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)である。TIGITは、T細胞およびナチュラルキラー細胞(NK細胞)を含む種々の免疫細胞上で発現される共抑制分子である。TIGITは、高親和性でポリオウィルス受容体(PVR、CD155)に結合し、および低親和性でネクチン-2(CD112)に結合し、これらの両方は種々の癌細胞により発現される。
【0005】
PVRIGとも呼ばれるCD112Rは、高親和性でネクチン-2に結合する。CD112Rおよび/またはTIGITとの相互作用時に、ネクチン-2は、T細胞増殖を抑制する。重要なことに、ネクチン-2はまた、CD226(DNAM-1)への結合時に、T細胞機能の補助刺激分子としても機能できる。この相互作用は、T細胞増殖およびIL-2およびIFNγなどのサイトカイン産生を刺激する。これらの相反する相互作用は、競合的であり、それらの正味の効果は、生じる抗癌免疫応答に影響を与える。
【0006】
国際公開第2019232484号は、抗PVRIG、抗TIGIT、および抗PVRIG/抗TIGIT二重特異的抗体、ならびに組成物、および癌の治療のためにこれらの抗体を使用する方法を開示する。
国際公開第2018017864号は、PVRIGに特異的に結合する抗体を含む薬剤および二重特異的薬剤を開示する。国際公開第2018017864号はまた、免疫応答を強化するためにおよび/または癌などの疾患の治療のために薬剤を使用する方法を開示する。
国際公開第2016134333号は、抗PVRIG抗体およびそれを使用する方法を開示する。
【0007】
単独でまたは他の薬剤と組み合わせて、腫瘍またはウィルス感染細胞を攻撃するために免疫系の細胞を増強し得る、追加のおよびより効果的で、特異的で、安全でかつ安定な薬剤に対する満たされていない要求が存在する。ネクチン-2へのCD112Rの結合を阻害するモノクローナル抗体(mAb)は、このような薬剤であり得る。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、CD112R(PVRIG)を認識し、それを結合し、ネクチン-2(CD112)へのその結合を妨げ、ナチュラルキラー(NK)細胞およびT細胞などのリンパ球に対し生ずる抑制活性を抑える抗体およびそのフラグメントを提供する。これらの抗体およびそのフラグメントは、ヒトCD112Rに対するユニークなCDR配列セット、高親和性、および高い特異性を有することにより特徴づけられ、かつ独立型療法として、または他の抗癌剤と組み合わせて、腫瘍免疫回避に対抗するための癌免疫療法において有用である。本明細書で開示の抗体はまた、ウィルス感染症の治療において有用であり、検出アッセイおよび癌診断のために使用され得る。
【0009】
本明細書で記載の高親和性の抗CD112Rモノクローナル抗体(mAb)がCD112R-ネクチン-2相互作用を遮断し、続いてTおよびNK細胞活性を回復することが、ここで開示される。これらの性質は、本発明のmAbを、より少ない副作用を伴うより低い用量の投与を可能にする、抗癌免疫療法での使用のための有用な候補にする。
【0010】
本明細書で記載の抗CD112R mAbは、抗PD-1、抗TIGIT、および抗PVR mAbにより誘導されるものに類似のT細胞活性化を誘導すると見出された。さらに、本明細書で記載のいくつかの抗CD112Rと、抗PD-1、抗TIGITまたは抗PVR mAbを含む他の免疫調節剤の組み合わせは、それぞれ個別のmAbにより誘導される作用レベルを超えた、抗癌活性の顕著な増大をもたらした。本明細書で開示のCD112R mAbは、標的癌細胞の存在下でNK細胞活性化を誘導でき、かつNK細胞の活性化のために抗TIGITおよび抗PVR mAbと相乗作用できた。本明細書で記載の抗体は、ヒトおよびカニクイザルCD112Rに対し高度に特異的であるが、げっ歯類CD112Rに対しては特異的でないことが明らかになったことも、更に開示される。いくつかの実施形態により、抗CD112R mAbは、そのリガンドであるネクチン-2とのCD112Rの相互作用を遮断し、かつ免疫細胞の活性化を増大させることが、更に開示される。
【0011】
意外にも、本発明の抗CD112R mAbのヒト化型は、親マウスmAbに比べて、改善された結合および生産性を有すと見出された。さらに、ヒト化mAbバリアントは、カニクイザルCD112Rと交差反応性を有し、これは、サルでのさらなる試験を可能にする。本明細書で記載の抗体は、既知の抗CD112R抗体に比べて、特有の性質および改善された効力を有する。
【0012】
驚くべきことに、かつ好都合にも、脱アミド化およびN-グリコシル化のモチーフを取り除くためにそれぞれ導入された、軽鎖の相補性決定領域1(CDR1)ならびに重鎖のCDR1における特定の変異は、ヒトCD112Rに対する親和性を保存した。
【0013】
一態様により、本発明は、ヒトCD112Rに特異的に結合する少なくとも抗原結合部分を含む抗体、またはその抗体フラグメントを提供し、上記抗体またはそのフラグメントは、少なくとも0.5x10-9MのヒトCD112Rに対する親和性を有する。
【0014】
いくつかの実施形態により、抗体は、ヒトCD112Rに特異的に結合し、そのリガンド、ヒトネクチン-2(CD112)へのその結合を阻害する。
【0015】
いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、下記からなる群から選択される6つのCDR配列のセットを含む:
i.配列番号17を含む重鎖(HC)可変領域の3つのCDRおよび配列番号19を含む軽鎖(LC)可変領域の3つのCDR、または上記抗体またはフラグメント配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体;および
ii.配列番号21を含む重鎖可変領域の3つのCDRおよび配列番号23を含む軽鎖可変領域の3つのCDR、または上記抗体またはフラグメント配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体。
【0016】
所与の抗体分子のCDR配列を決定するための当該技術分野において既知のいくつかの方法が存在するが、標準的な明解な方法はない。抗体重鎖および軽鎖可変領域からのCDR配列の決定は、限定されないが、KABAT、Chothia、およびIMGTとして既知の方法を含む、当該技術分野において既知のいずれかの方法により実施できる。選択されたCDRのセットは、2種以上の方法により特定される配列を含み得、即ち、例えば、いくつかのCDR配列は、KABATを用いて、およびいくつかは、IMGTを用いて、決定され得る。いくつかの実施形態により、mAbの
可変領域のCDR配列は、KABATおよび/またはChothia法を用いて決定される。
【0017】
いくつかの実施形態により、抗体またはそのフラグメントは、クローン13で表記されるモノクローナル抗体のCDR配列、即ち、配列番号17で示される重鎖可変領域に含まれる3つのCDR配列および配列番号19で示される軽鎖可変領域に含まれる3つのCDR配列、またはクローン15で表記されるモノクローナル抗体のCDR配列、即ち、配列番号21で示される重鎖可変領域に含まれる3つのCDR配列および配列番号23で示される軽鎖可変領域に含まれる3つのCDR配列を含む。
【0018】
本発明は、クローン13で表記される抗体のバリアントおよび類似体を含む。いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列番号28を含む重鎖可変領域の3つのCDR配列セットおよび配列番号26を含む軽鎖可変領域の3つのCDR、または上記抗体またはフラグメント配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体を含む。
【0019】
いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)、または配列SYWIN(配列番号7)を含む重鎖CDR1を含む。いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列YPGSYIP(配列番号2)を含む重鎖CDR2を含む。いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列GYFDV(配列番号3)を含む重鎖CDR3を含む。
【0020】
特定の実施形態により、抗体または抗体フラグメントは:(i)配列GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)、または配列SYWIN(配列番号7)を含む重鎖CDR1;(ii)配列YPGSYIP(配列番号2)を含む重鎖CDR2;および(iii)配列GYFDV(配列番号3)を含む重鎖CDR3、を含む。
【0021】
いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、Xは、NまたはSを意味する)を含む軽鎖CDR1を含む。いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列GASTRES(配列番号5)を含む軽鎖CDR2を含む。いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む軽鎖CDR3を含む。
【0022】
特定の実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、(i)配列KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、Xは、NまたはSを意味する)を含む軽鎖CDR1;(ii)配列GASTRES(配列番号5)を含む軽鎖CDR2;(iii)配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む軽鎖CDR3、を含む。
【0023】
いくつかの特定の実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)、または配列SYWIN(配列番号7)を含む重鎖CDR1、配列YPGSYIP(配列番号2)を含む重鎖CDR2、配列GYFDV(配列番号3)を含む重鎖CDR3、配列KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、Xは、NまたはSを意味する)を含む軽鎖CDR1、配列GASTRES(配列番号5)を含む軽鎖CDR2、および配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む軽鎖CDR3、または6つのCDRを含む高頻度可変領域(HVR)配列中に5%以下のアミノ酸置換、欠失および/または挿入を含むそれらの類似体を含む。
【0024】
いくつかの特定の実施形態により、抗体またはフラグメントは、下記からなる6つのCDR配列のセットを含む:
i.配列番号1または7で示される配列を有する重鎖CDR1;
ii.配列番号2で示される配列を有する重鎖CDR2;
iii.配列番号3で示される配列を有する重鎖CDR3;
iv.配列番号4で示される配列を有する軽鎖CDR1;
v.配列番号5で示される配列を有する軽鎖CDR2;および
vi.配列番号6で示される配列を有する軽鎖CDR3。
【0025】
いくつかの実施形態により、重鎖CDR1配列は、配列GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)を含む。いくつかの実施形態により、重鎖CDR1配列は、配列GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、Tを意味する)を含む。いくつかの実施形態により、重鎖CDR1配列は、配列GYTFTSY(配列番号13)を含む。追加の実施形態により、重鎖CDR1配列は、配列GYNFASY(配列番号14)を含む。追加の実施形態により、重鎖CDR1配列は、配列GYWIN(配列番号7)を含む。
【0026】
いくつかの実施形態により、重鎖CDR2配列は、配列YPGSYIP(配列番号2)またはDIYPGSYIPNYNEKFKN(配列番号8)を含む。特定の実施形態により、重鎖CDR2配列は、配列DIYPGSYIPNYNEKFKN(配列番号8)を含む。
いくつかの実施形態により、軽鎖CDR1配列は、配列KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、XはNである)を含む。特定の実施形態により、軽鎖CDR1配列は、配列KSSQSLLSSGNQKNYLA(配列番号15)を含む。
【0027】
いくつかの実施形態により、抗体またはそのフラグメントは、配列番号28で示される重鎖可変領域、またはその重鎖可変領域配列と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体または誘導体を含む。
いくつかの実施形態により、抗体またはそのフラグメントは、配列番号26で示される軽鎖可変領域、またはその軽鎖可変領域配列と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体を含む。
特定の実施形態により、抗体またはそのフラグメントは、配列番号28で示される配列を有する重鎖可変領域、および配列番号26で示される配列を有する軽鎖可変領域、またはその軽鎖および/または重鎖配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体を含む。
特定の実施形態により、抗体またはそのフラグメントは、配列番号17で示される配列を有する重鎖可変領域、および配列番号19で示される配列を有する軽鎖可変領域、またはその軽鎖および/または重鎖配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体を含む。
【0028】
いくつかの実施形態により、抗体またはフラグメントは、クローン13で表記されるモノクローナル抗体のCDR配列、即ち、配列番号17で示される重鎖可変領域に含まれる3つのCDR配列および配列番号19で示される軽鎖可変領域に含まれる3つのCDR配列を含む。
【0029】
追加の実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列GYNFTSY(配列番号9)またはSYWIN(配列番号7)を含む重鎖CDR1を含む。いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列FPGSYS(配列番号10)を含む重鎖CDR2を含む。いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列GYFDV(配列番号3)を含む重鎖CDR3を含む。
特定の実施形態により、抗体または抗体フラグメントは:(i)配列GYNFTSY(配列番号9)または配列SYWIN(配列番号7)を含む重鎖CDR1;(ii)配列FPGSYS(配列番号10)を含む重鎖CDR2;および(iii)配列GYFDV(配列番号3)を含む重鎖CDR3、を含む。
【0030】
いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列KSSQSLLNSGSQKNYLA(配列番号11)を含む軽鎖CDR1を含む。いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列GASTRES(配列番号5)を含む軽鎖CDR2を含む。いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む軽鎖CDR3を含む。
特定の実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、(i)配列KSSQSLLNSGSQKNYLA(配列番号11)を含む軽鎖CDR1;(ii)配列GASTRES(配列番号5)を含む軽鎖CDR2;および(iii)配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む軽鎖CDR3、を含む。
【0031】
いくつかの特定の実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列GYNFTSY(配列番号9)または配列SYWIN(配列番号7)を含む重鎖CDR1、配列FPGSYS(配列番号10)を含む重鎖CDR2、配列GYFDV(配列番号3)を含む重鎖CDR3、配列KSSQSLLNSGSQKNYLA(配列番号11)を含む軽鎖CDR1、配列GASTRES(配列番号5)を含む軽鎖CDR2、および配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む軽鎖CDR3、または高頻度可変領域(HVR)配列中に5%以下のアミノ酸置換、欠失および/または挿入を含むそれらの類似体を含む。
【0032】
いくつかの特定の実施形態により、抗体またはフラグメントは、下記からなる6つのCDR配列のセットを含む:
i.配列番号9または7で示される配列を有する重鎖CDR1;
ii.配列番号10で示される配列を有する重鎖CDR2;
iii.配列番号3で示される配列を有する重鎖CDR3;
iv.配列番号11で示される配列を有する軽鎖CDR1;
v.配列番号5で示される配列を有する軽鎖CDR2;および
vi.配列番号6で示される配列を有する軽鎖CDR3。
【0033】
いくつかの実施形態により、軽鎖CDR1配列は、配列GYNFTSY(配列番号9)を含む。いくつかの実施形態により、軽鎖CDR1配列は、配列SYWIN(配列番号7)を含む。
いくつかの実施形態により、重鎖CDR2配列は、配列DIFPGSYSPNYNKKFKR(配列番号12)を含む。
【0034】
いくつかの実施形態により、CDRは、KABATにより決定され、配列番号7、8、3、4、5、および6で示される。いくつかの実施形態により、CDRは、
KABATにより決定され、配列番号7、12、3、11、5、および6で示される。
【0035】
いくつかの実施形態により、CDRは、Chothiaにより決定され、配列番号1、2、3、4、5、および6で示される。いくつかの実施形態により、CDRは、Chothiaにより決定され、配列番号9、10、3、11、5、および6で示される。
【0036】
いくつかの実施形態により、抗体またはそのフラグメントは、配列番号21で示される重鎖可変領域、またはその重鎖可変領域配列と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体または誘導体を含む。
いくつかの実施形態により、抗体またはそのフラグメントは、配列番号23で示される軽鎖可変領域、またはその軽鎖可変領域配列と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体を含む。
特定の実施形態により、抗体またはそのフラグメントは、配列番号21で示される配列を有する重鎖可変領域、および配列番号23で示される配列を有する軽鎖可変領域、またはその軽鎖および/または重鎖配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体を含む。
特定の実施形態により、抗体またはそのフラグメントは、配列番号21で示される配列を有する重鎖可変領域、および配列番号23で示される配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0037】
いくつかの実施形態により、抗体またはそのフラグメントは、少なくとも10-10Mの親和性でヒトCD112Rを認識する。他の実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、5x10-11M、あるいは更に高い親和性でヒトCD112Rに結合する。いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、5x10-9M~10-11Mの範囲の親和性でヒトCD112Rに結合する。いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、5x10-10M~10-11Mの範囲の親和性でヒトCD112Rに結合する。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
上記の抗体およびフラグメントの類似体および誘導体もまた、本発明の範囲内にある。
【0038】
いくつかの実施形態により、抗体またはフラグメント類似体は、参照抗体配列の高頻度可変領域と少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0039】
特定の実施形態により、単離された抗体またはそのフラグメントの類似体または誘導体は、参照抗体配列の可変領域と少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98または99%%の配列同一性を有する。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
いくつかの実施形態により、本発明による抗体またはフラグメントは、配列番号28または配列番号21で示される重鎖可変領域、または上記配列と少なくとも95%の配列類似性を有する類似体を含む。
いくつかの実施形態により、抗体またはフラグメントは、配列番号26または配列番号23で示される軽鎖可変領域、または上記配列と少なくとも95%の配列類似性を有する類似体を含む。
【0040】
いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、重鎖および軽鎖を含み、(i)重鎖は、配列番号28を含み、軽鎖は、配列番号26を含む;または(ii)重鎖は、配列番号21を含み、軽鎖は配列番号23を含む。上記の重鎖または軽鎖と少なくとも95%の配列類似性を有する抗体またはフラグメントの類似体もまた包含される。
【0041】
いくつかの実施形態により、類似体は、上記の軽鎖または重鎖可変領域と、少なくとも96、97、98または99%の配列類似性または同一性を有する。いくつかの実施形態により、類似体は、高頻度可変領域の1つまたは複数のCDR配列、即ち、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14および15で示されるCDR配列のいずれか1つに対する、ただ1つのアミノ酸置換、欠失または付加を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態により、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。
【0042】
いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、上で定義される軽鎖および重鎖領域を有する高頻度可変領域(HVR)を含み、そこで1、2、3、4、または5つのアミノ酸が置換、欠失および/または付加された。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、上で定義される軽鎖および重鎖領域を有する高頻度可変領域(HVR)を含み、そこで1つのアミノ酸が置換された。特定の実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、上で定義されるCDRを含み、そこで1つのアミノ酸が置換された。
【0043】
いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、下記からなる群から選択されるCDRセットを含む:
i.重鎖CDR1は、GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)であり;重鎖CDR2は、YPGSYIP(配列番号2)であり;重鎖CDR3は、GYFDV(配列番号3)であり;軽鎖CDR1は、KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、XはNまたはSを意味する)であり;軽鎖CDR2は、GASTRES(配列番号5)であり;および軽鎖CDR3は、QNDHSYPYT(配列番号6)である、6つのCDRのセット;
ii.重鎖CDR1は、SYWIN(配列番号7)であり;重鎖CDR2は、YPGSYIP(配列番号2)であり;重鎖CDR3は、GYFDV(配列番号3)であり;軽鎖CDR1は、KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、XはNまたはSを意味する)であり;軽鎖CDR2は、GASTRES(配列番号5)であり;および軽鎖CDR3は、QNDHSYPYT(配列番号6)である、6つのCDRのセット;および
iii.重鎖CDR1は、GYNFTSY(配列番号9)またはSYWIN(配列番号7)であり;重鎖CDR2は、FPGSYS(配列番号10)であり;重鎖CDR3は、GYFDV(配列番号3)であり;軽鎖CDR1は、KSSQSLLNSGSQKNYLA(配列番号11)であり;軽鎖CDR2は、GASTRES(配列番号5)であり;および軽鎖CDR3は、QNDHSYPYT(配列番号6)である、6つのCDRのセット。
【0044】
本発明はまた、重鎖および軽鎖を含む抗体およびその結合フラグメントを提供し、上記鎖は、重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列セット含み、上記セットは、下記からなる群から選択される:
i.配列番号17および19;および
ii.配列番号21および23。
【0045】
本発明はまた、重鎖および軽鎖を含む抗体およびその結合フラグメントを提供し、上記鎖は、配列番号28で示される重鎖可変領域配列および配列番号26で示される軽鎖可変領域配列のセットを含む。
【0046】
いくつかの実施形態により、抗体は、単離されたモノクローナル抗体である。
特定の実施形態により、mAbは、キメラmAbである。
いくつかの実施形態により、mAbまたはキメラmAbは、マウスIgG1、マウスIgG2a、マウスIgG2b、マウスIgG3、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3およびヒトIgG4からなる群より選択される定常領域を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
さらに他の実施形態により、キメラmAbは、ヒト由来定常領域からなる。
【0047】
いくつかの実施形態により、キメラmAbのヒト定常領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、およびヒトIgG4からなる群より選択される。
いくつかの実施形態により、キメラmAbのヒト定常領域は、ヒトIgG1である。
【0048】
いくつかの実施形態により、抗体は、抗体フラグメントである。特定の実施形態により、抗体フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fd’、Fv、dAb、単離CDR領域、単鎖可変フラグメント(scFv)、単鎖抗体(scab)、「ディアボディ」、および「直鎖抗体」からなる群より選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0049】
本発明はまた、本明細書で記載のいずれかのmAbの6つのCDRのセットを含むヒト化抗体を提供する。
いくつかの実施形態により、ヒト化された抗体または抗体フラグメントは、6つのCDRのセットを含み、ここで、重鎖CDR1は、GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)またはSYWIN(配列番号7)であり;重鎖CDR2は、YPGSYIP(配列番号2)であり;重鎖CDR3は、GYFDV(配列番号3)であり;軽鎖CDR1は、KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、XはNまたはSを意味する)であり;軽鎖CDR2は、GASTRES(配列番号5)であり;および軽鎖CDR3は、QNDHSYPYT(配列番号6)である。
【0050】
いくつかの実施形態により、ヒト化された抗体は、重鎖CDR1 GYTFTSY(配列番号13)を含む。
特定の実施形態により、ヒト化された抗体は、軽鎖CDR1 KSSQSLLSSGNQKNYLA(配列番号15)を含む。
【0051】
特定の実施形態により、ヒト化された抗体または抗体フラグメントは、6つのCDRのセットを含み、ここで、重鎖CDR1は、GYTFTSY(配列番号13)であり;重鎖CDR2は、YPGSYIP(配列番号2)であり;重鎖CDR3は、GYFDV(配列番号3)であり;軽鎖CDR1は、KSSQSLLSSGNQKNYLA(配列番号15)であり;軽鎖CDR2は、GASTRES(配列番号5)であり;および軽鎖CDR3は、QNDHSYPYT(配列番号6)である。
いくつかの実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39からなる群より選択される重鎖可変領域、または重鎖可変領域配列と、少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0052】
いくつかの実施形態により、ヒト化された抗体は、配列番号40、配列番号41、および配列番号42からなる群より選択される軽鎖可変領域配列、または重鎖可変領域と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
いくつかの実施形態により、ヒト化された抗体は、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、および配列番号39からなる群より選択される重鎖可変領域配列、ならびに配列番号40、配列番号41、および配列番号42からなる群より選択される軽鎖可変領域配列、または可変領域配列と少なくとも95%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体を含む。
【0053】
いくつかの実施形態により、ヒト化された抗体は、重鎖および軽鎖を含み、上記鎖は、重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列のセットを含み、上記セットは、下記からなる群から選択される:
i.配列番号39および40(抗体H11K1と表記される);
ii.配列番号39および41(抗体H11K2と表記される);および
iii.配列番号39および42(抗体H11K3と表記される)。
【0054】
いくつかの実施形態により、本明細書で記載の抗体またはそのフラグメントを含むコンジュゲートが、提供される。
本発明のいくつかの実施形態によるコンジュゲートは、限定されないが、放射性部分、標識タグおよび細胞傷害性部分を含む部分に、直接またはスペーサーもしくはリンカーを介して付着された、上で定義される抗体またはそのフラグメントを含む。
【0055】
ヒトCD112Rに対し高い親和性および特異性を有する抗体をコードするポリヌクレオチド配列、ならびにこれらのポリヌクレオチド配列を有するベクターおよび宿主細胞が、本発明の別の態様により提供される。
いくつかの実施形態では、上記の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列が提供される。
いくつかの実施形態により、ポリヌクレオチド配列は、(i)配列番号16および配列番号18;(ii)配列番号20および配列番号22;および(iii)配列番号24および配列番号25からなる群から選択される配列で示される配列を含む抗体または抗体フラグメント、または可変領域配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体をコードする。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
さらにいくつかの実施形態により、本発明によるポリヌクレオチド配列は、6つのCDRのセットを含む抗体または抗体フラグメントまたは鎖をコードし、ここで、重鎖CDR1は、GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)またはSYWIN(配列番号7)であり;重鎖CDR2は、YPGSYIP(配列番号2)であり;重鎖CDR3は、GYFDV(配列番号3)であり;軽鎖CDR1は、KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、XはNまたはSを意味する)であり;軽鎖CDR2は、GASTRES(配列番号5)であり;および軽鎖CDR3は、QNDHSYPYT(配列番号6)である。
さらにいくつかの特定の実施形態により、本発明によるポリヌクレオチド配列は、6つのCDRのセットを含む抗体または抗体フラグメントをコードし、このCDRセットでは、重鎖CDR1配列は、配列GYTFTSY(配列番号13)を含み、重鎖CDR2は、配列YPGSYIP(配列番号2)を含み、重鎖CDR3は、配列GYFDV(配列番号3)を含み、軽鎖CDR1は、配列KSSQSLLSSGNQKNYLA(配列番号15)を含み、軽鎖CDR2は、配列GASTRES(配列番号5)を含み、および軽鎖CDR3は、配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む。
いくつかの実施形態により、上で定義されるポリヌクレオチド配列は、抗体、少なくとも抗原結合部分を含む抗体フラグメント、抗体鎖、および上記抗体または抗体フラグメントを含む抗体コンジュゲートからなる群より選択される分子をコードする。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0056】
いくつかの実施形態により、ポリヌクレオチド配列は、配列番号16で示される配列、または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含むモノクローナル抗体重鎖可変領域をコードする。
いくつかの実施形態により、ポリヌクレオチド配列は、配列番号20で示される配列、または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含むモノクローナル抗体重鎖可変領域をコードする。
いくつかの実施形態により、ポリヌクレオチド配列は、配列番号24で示される配列、または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含むモノクローナル抗体重鎖可変領域をコードする。
いくつかの実施形態により、ポリヌクレオチド配列は、配列番号18で示される配列、または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含むモノクローナル抗体軽鎖可変領域をコードする。
いくつかの実施形態により、ポリヌクレオチド配列は、配列番号22で示される配列、または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含むモノクローナル抗体軽鎖可変領域をコードする。
いくつかの実施形態により、ポリヌクレオチド配列は、配列番号25で示される配列、または少なくとも90%の配列同一性を有するそのバリアントを含むモノクローナル抗体軽鎖可変領域をコードする。
【0057】
本発明は、いくつかの実施形態により、上で開示される少なくとも1種のポリヌクレオチド配列によりコードされる少なくとも1つの配列を含むポリペプチドを提供する。
【0058】
さらなる態様では、本発明は、本明細書で記載の少なくとも1つの抗体鎖またはそのフラグメントをコードする核酸分子を含む核酸構築物を提供する。いくつかの実施形態により、核酸構築物は、プラスミドである。
いくつかの実施形態により、プラスミドは、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24および配列番号25からなる群より選択される配列において示される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0059】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書で記載の特定のCDR配列および/または特定の重鎖および軽鎖可変領域を含む抗体または抗体フラグメントを産生できる細胞を提供する。
いくつかの実施形態により、上で開示される少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む細胞、または細胞集団が、提供される。
【0060】
いくつかの実施形態により、モノクローナル抗体を産生する細胞は、ハイブリドーマ細胞である。
【0061】
本発明は、別の態様により、本明細書に記載の少なくとも1種の抗体、抗体フラグメントまたはそのコンジュゲートを有効成分として、および必要に応じ少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、塩、または担体を含む医薬組成物を提供する。
いくつかの実施形態により、医薬組成物は、6つのCDRのセットを含む少なくとも1種の抗体を含み、ここで、重鎖CDR1は、GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)またはSYWIN(配列番号7)であり;重鎖CDR2は、YPGSYIP(配列番号2)であり;重鎖CDR3は、GYFDV(配列番号3)であり;軽鎖CDR1は、KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、XはNまたはSを意味する)であり;軽鎖CDR2は、GASTRES(配列番号5)であり;および軽鎖CDR3は、QNDHSYPYT(配列番号6)である。
いくつかの実施形態により、医薬組成物は、重鎖CDR1配列GYXFXSY(配列番号1)(式中、XはTである)を含む抗体またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態により、医薬組成物は、重鎖CDR1配列GYTFTSY(配列番号13)を含む抗体またはそのフラグメントを含む。その他の実施形態では、医薬組成物は、重鎖CDR1配列GYNFASY(配列番号14)を含む抗体またはそのフラグメントを含む。特定の実施形態により、医薬組成物は、重鎖CDR1配列SYWIN(配列番号7)を含む抗体またはそのフラグメントを含む。
いくつかの実施形態により、医薬組成物は、軽鎖CDR1配列KSSQSLLSSGNQKNYLA(配列番号15)を含む抗体またはそのフラグメントを含む。
いくつかの特定の実施形態により、医薬組成物は、6つのCDRのセットを含む抗体または抗体フラグメントを含み、ここで、重鎖CDR1配列は、配列GYTFTSY(配列番号13)を含み、重鎖CDR2は、配列YPGSYIP(配列番号2)を含み、重鎖CDR3は、配列GYFDV(配列番号3)を含み、軽鎖CDR1は、配列KSSQSLLSSGNQKNYLA(配列番号15)を含み、軽鎖CDR2は、配列GASTRES(配列番号5)を含み、および軽鎖CDR3は、配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む。
【0062】
いくつかの実施形態により、医薬組成物は、配列番号39で示される重鎖を含む抗体またはそのフラグメントを含む。
いくつかの実施形態により、医薬組成物は、配列番号40、配列番号41、および配列番号42からなる群より選択される配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体またはそのフラグメントを含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
特定の実施形態により、医薬組成物は、配列番号39で示される配列を有する重鎖可変領域および配列番号40、配列番号41、および配列番号42からなる群より選択される配列を有する軽鎖可変領域を含む抗体またはそのフラグメントを含む。
【0063】
本発明の抗体の単鎖可変フラグメント(scFv)分子もまた、提供される。scFv分子は、1つのポリペプチド鎖で発現される抗体の抗原結合部位を含む。いくつかの実施形態により、本発明は、抗CD112R抗体の重鎖および軽鎖可変領域を含むscFv分子を提供する。特定の実施形態により、scFvは、2つの可変領域の間にヒンジ領域を含む。特定の実施形態により、scFvは、本明細書で記載のヒト化された抗体の重鎖および軽鎖を含む。
【0064】
いくつかの実施形態により、scFvは、下記からなる群から選択される6つのCDR配列を含むCD112R結合部位を含む:
i.配列番号28を含む重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR)および配列番号26を含む軽鎖可変領域の3つのCDR、または上記抗体またはフラグメント配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体;および
ii.配列番号17を含む重鎖可変領域の3つのCDRおよび配列番号19を含む軽鎖可変領域の3つのCDR、または上記抗体またはフラグメント配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体。
【0065】
いくつかの実施形態により、scFvは、6つのCDRのセットを含むCD112R結合部位を含み、ここで、重鎖CDR1は、GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)またはSYWIN(配列番号7)であり;重鎖CDR2は、YPGSYIP(配列番号2)であり;重鎖CDR3は、GYFDV(配列番号3)であり;軽鎖CDR1は、KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、XはNまたはSを意味する)であり;軽鎖CDR2は、GASTRES(配列番号5)であり;および軽鎖CDR3は、QNDHSYPYT(配列番号6)である。
いくつかの実施形態により、scFvは、重鎖CDR1配列GYXFXSY(配列番号1)(式中、XはTである)を含む。いくつかの実施形態により、scFvは、重鎖CDR1配列GYTFTSY(配列番号13)を含む。他の実施形態により、scFvは、重鎖CDR1配列GYNFASY(配列番号14)を含む。特定の実施形態により、scFvは、重鎖CDR1配列SYWIN(配列番号7)を含む。
いくつかの実施形態により、scFvは、軽鎖CDR1配列KSSQSLLSSGNQKNYLA(配列番号15)を含む。
いくつかの特定の実施形態により、scFvは、6つのCDRのセットを含み、ここで、重鎖CDR1配列は、配列GYTFTSY(配列番号13)を含み、重鎖CDR2は、配列YPGSYIP(配列番号2)を含み、重鎖CDR3は、配列GYFDV(配列番号3)を含み、軽鎖CDR1は、配列KSSQSLLSSGNQKNYLA(配列番号15)を含み、軽鎖CDR2は、配列GASTRES(配列番号5)を含み、および軽鎖CDR3は、配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む。
いくつかの実施形態により、scFvは、配列番号29~39からなる群より選択される重鎖可変領域配列を含む。
いくつかの実施形態により、scFvは、配列番号40~42からなる群より選択される軽鎖可変領域配列を含む。
【0066】
いくつかの実施形態により、scFvは、重鎖と軽鎖可変領域を連結するリンカーを含む。いくつかの実施形態により、リンカーは、グリシン-セリン(glySer)リンカーである。いくつかの実施形態により、リンカーは、(GS)、(GSGGS)、(GGGS)または(GGGGS)を含み、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10から選択される整数である。いくつかの実施形態により、リンカーは、配列GGGSの2~6回反復を含む。特定の代表的実施形態により、配列GGGSの3または4回の反復を含むリンカーは、scFv内の2つの可変領域を連結する。いくつかの実施形態により、重鎖可変領域は、scFvのN末端側にあり、リンカー(GGGS)により軽鎖可変領域に連結される。いくつかの実施形態により、軽鎖可変領域は、scFvのN末端側にあり、リンカー(GGGS)により重鎖可変領域に連結される。
【0067】
いくつかの実施形態により、scFvは、配列番号43~54からなる群より選択される配列、または上記抗体と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
いくつかの実施形態により、scFvは、配列番号43~54からなる群より選択される配列を含む。特定の実施形態により、scFvは、配列番号43~54からなる群より選択される配列からなる。
いくつかの実施形態により、scFvは、ヒトFc領域に連結されてscFv-Fcを形成する。いくつかの実施形態により、Fcは、ヒトIgG1由来である。
【0068】
また提供されるのは、ネクチン-2(CD112)への、NK細胞上で発現されるCD112Rの結合を阻害することによりNK細胞傷害性を回復することにおける使用のための、本発明による抗体、抗体フラグメント、または抗体コンジュゲートの少なくとも1種を含む、医薬組成物である。
他の実施形態により、抗体または抗体フラグメントは、ネクチン-2への、T細胞上で発現されるヒトCD112Rの結合を阻害できる。
【0069】
いくつかの実施形態により、医薬組成物は、本発明による抗体、抗体フラグメント、または抗体コンジュゲートの少なくとも1種およびPD-1に対する抗体を含む。いくつかの実施形態により、医薬組成物は、本発明による抗体、抗体フラグメント、または抗体コンジュゲートの少なくとも1種およびTIGITに対する抗体を含む。いくつかの実施形態により、医薬組成物は、本発明による抗体、抗体フラグメント、または抗体コンジュゲートの少なくとも1種およびPVRに対する抗体を含む。いくつかの実施形態により、医薬組成物は、本発明による抗体、抗体フラグメント、または抗体コンジュゲートの少なくとも1種およびCTLA-4に対する抗体を含む。
【0070】
いくつかの実施形態により、本発明による医薬組成物は、癌免疫療法におけるまたは免疫応答を強化することにおける使用のためである。
本発明のいくつかの実施形態により、癌は、肺癌、結腸直腸癌、メラノーマ、卵巣癌、膵臓癌、結腸癌、子宮頸癌、腎臓癌、甲状腺癌、前立腺癌、脳癌、腎癌、咽喉癌、喉頭癌、膀胱癌、肝癌、線維肉腫、子宮内膜細胞癌、神経膠芽腫、肉腫、骨髄腫、白血病およびリンパ腫からなる群より選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0071】
いくつかの実施形態により、癌は、固形癌である。いくつかの特定の実施形態により、固形癌は、乳癌、肺癌、膀胱癌、膵臓癌および卵巣癌からなる群より選択される。
いくつかの実施形態により、癌は、肺腺癌である。いくつかの実施形態により、癌は、乳腺癌である。いくつかの実施形態により、癌は、結腸直腸癌である。
【0072】
いくつかの特定の実施形態により、癌は、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓癌、メラノーマ、前立腺癌、および脳癌からなる群より選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0073】
いくつかの実施形態により、癌は、血液癌である。いくつかの実施形態により、血液癌は、白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0074】
いくつかの実施形態により、医薬組成物は、ヒトリンパ球と一緒に、癌を治療する使用のためである。
【0075】
いくつかの実施形態により、ヒトリンパ球は、T細胞、NK細胞およびNKT細胞からなる群より選択されるキラー細胞である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
いくつかの実施形態により、キラー細胞は、自家または同種である。
【0076】
いくつかの実施形態により、医薬組成物は、ウィルス感染症を治療することにおける使用のためである。
いくつかの実施形態により、医薬組成物は、慢性感染症を治療することにおける使用のためである。例示的実施形態により、医薬組成物は、C型肝炎ウィルス感染症(HCV)、ポリオーマウィルス(JCV)感染症およびBK-ウィルス(BKV)感染症からなる群より選択されるウィルス感染症を治療することにおける使用のためである。
【0077】
さらに別の態様により、本発明は、本明細書で定義されるモノクローナル抗体または抗体フラグメントを用いることによりネクチン-2へのヒトCD112Rの結合を阻害する方法を提供する。
【0078】
追加の態様により、本発明は、それをを必要としている対象において免疫応答を強化するための方法を提供し、方法は、本明細書で記載の抗体または抗体フラグメントの治療的有効量を上記対象に投与することを含む。
【0079】
さらに別の態様により、本発明は、癌を治療する方法を提供し、方法は、本明細書で記載の抗体またはその抗体フラグメントを含む医薬組成物の治療的有効量をそれを必要としている対象に投与することを含む。
【0080】
さらに別の態様により、本発明は、癌を治療する方法を提供し、方法は、本明細書で記載のCD112Rに対する抗体またはその抗体フラグメントの治療的有効量;およびPD-1、TIGIT、またはPVRに対する抗体の治療的有効量をそれを必要としている対象に投与することを含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。抗CD112R抗体および抗PD-1、TIGITまたはPVR抗体の投与は、組み合わされた投与または任意の投与順序での逐次投与であってよい。
本発明のいくつかの実施形態により、治療的有効量は、対象における腫瘍サイズまたは転移の数の減少をもたらす。
【0081】
いくつかの実施形態により、癌を治療する方法は、少なくとも1種の追加の抗癌療法を投与または実施することを含む。特定の実施形態により、追加の抗癌療法は、手術、化学療法、放射線療法、または免疫療法である。
【0082】
いくつかの実施形態により、癌を治療する方法は、抗体および追加の抗癌剤の投与を含む。いくつかの実施形態により、追加の抗癌剤は、免疫調節剤、免疫共抑制受容体を阻害する薬剤、活性化リンパ球細胞、キナーゼ阻害剤、および化学療法剤からなる群より選択される。
他の実施形態により、追加の免疫調節剤は、ヒトネクチン-2に結合する抗体、抗体フラグメントまたは抗体コンジュゲートである。
いくつかの実施形態により、追加の免疫調節剤は、免疫チェックポイント分子に対する抗体である。いくつかの実施形態により、追加の免疫調節剤は、ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、PD-L1およびPD-L2、癌胎児抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、CD137、OX40(CD134とも呼ばれる)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、TIGIT、PVR、CTLA-4、NKG2A、GITR、および任意の他のチェックポイント分子またはこれらの組み合わせからなる群より選択される免疫チェックポイント分子に対する抗体である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
特定の実施形態により、追加の免疫調節剤は、PD-1に対する抗体である。特定の実施形態により、追加の免疫調節剤は、TIGITに対する抗体である。特定の実施形態により、追加の免疫調節剤は、PVRに対する抗体である。いくつかの実施形態により、追加の免疫調節剤は、CTLA-4に対する抗体である。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態により、免疫共抑制受容体は、PD-1、TIGIT、PVR、CTLA-4、LAG3、TIM3、BTLA、VISTA、B7H4、CD96、BY55(CD160)、LAIR1、SIGLEC10、および2B4からなる群より選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0084】
いくつかの実施形態により、抗癌剤は、アービタックス、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、メルカプトプリン、メトトレキサート、チオグアニン、ゲムシタビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、カルムスチン、ロムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、チオテパ、ダカルバジン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、エトポシド、テニポシドおよびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0085】
いくつかの実施形態により、抗癌剤は、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤である。いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は、セツキシマブ(アービタックス(登録商標))、パニツムマブ(ベクティビックス(登録商標))、およびネシツムマブ(ポートラーザ(登録商標))からなる群より選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態により、対象は、ヒト対象である。
本発明のいくつかの実施形態により、免疫細胞は、T細胞である。
【0087】
ある態様により、本発明は、免疫系の機能および/または活性を調節するための方法を提供し、方法は、本発明による抗体を用いてネクチン-2へのCD112Rの結合を調節することを含む。
【0088】
いくつかの実施形態により、癌を治療する方法は、対象における転移の形成、増殖または拡散を防止することまたは低減することを含む。
いくつかの実施形態により、癌を治療する方法は、ヒトネクチン-2へのヒトCD112Rの結合を阻害できる、抗体またはその抗体フラグメントを含む医薬組成物をそれを必要としている対象に投与すること、およびヒトリンパ球を上記対象にさらに投与することを含む。
【0089】
いくつかの実施形態により、ヒトリンパ球は、T細胞、NK細胞およびNKT細胞からなる群より選択されるキラー細胞である。
いくつかの実施形態により、キラー細胞は、自家または同種である。
【0090】
本発明はまた、ウィルス感染症を予防するまたは治療する方法を提供し、方法は、少なくとも本明細書で記載の抗原結合ドメインを含む抗体またはそのフラグメントを対象に投与することを含み、上記mAbまたはそのフラグメントは、ネクチン-2へのCD112Rの結合を阻害できる。
【0091】
本発明は、別の態様により、試料中のCD112Rを測定するまたは定量化する方法を含み、方法は、生体試料を抗体または抗体フラグメントと接触させること、および複合体形成のレベルを測定することを含み、抗体または抗体フラグメントは、次記を含む:
i.重鎖CDR1は、GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)またはSYWIN(配列番号7)であり;重鎖CDR2は、YPGSYIP(配列番号2)であり;重鎖CDR3は、GYFDV(配列番号3)であり;軽鎖CDR1は、KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、XはNまたはSを意味する)であり;軽鎖CDR2は、GASTRES(配列番号5)であり;および軽鎖CDR3は、QNDHSYPYT(配列番号6)である6つのCDRのセット;または
ii.重鎖CDR1は、GYNFTSY(配列番号9)またはSYWIN(配列番号7)であり;重鎖CDR2は、FPGSYS(配列番号10)であり;重鎖CDR3は、GYFDV(配列番号3)であり;軽鎖CDR1は、KSSQSLLNSGSQKNYLA(配列番号11)であり;軽鎖CDR2は、GASTRES(配列番号5)であり;および軽鎖CDR3は、QNDHSYPYT(配列番号6)である、6つのCDRのセット。
【0092】
いくつかの実施形態により、方法は、生体試料を6つのCDRのセットを含む抗体または抗体フラグメントと接触させることを含み、ここで、重鎖CDR1配列は、配列GYTFTSY(配列番号13)を含み、重鎖CDR2は、配列YPGSYIP(配列番号2)を含み、重鎖CDR3は、配列GYFDV(配列番号3)を含み、軽鎖CDR1は、配列KSSQSLLSSGNQKNYLA(配列番号15)を含み、軽鎖CDR2は、配列GASTRES(配列番号5)を含み、および軽鎖CDR3は、配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む。
【0093】
いくつかの実施形態により、CD112Rの発現を検出するまたは定量化するための方法は、下記を含む:
i.試料をCD112Rに特異的な抗体または少なくとも抗原結合部分を含むその抗体フラグメントとインキュベーションするステップ;および
ii.検出可能なプローブを用いて結合したCD112Rを検出するステップ。
【0094】
いくつかの実施形態により、方法は、下記ステップを更に含む:
iii.(ii)の量を、既知の量のCD112Rを含む基準試料から得られた検量線と比較するステップ;
iv.検量線から試料中のCD112Rの量を計算するステップ。
【0095】
本発明による抗体はまた、スクリーニング法を構成するように使用されてよい。例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、またはラジオイムノアッセイ(RIA)、ならびに、免疫組織化学的検査(IHC)または蛍光活性化セルソーター(FACS)などの方法は、当該技術分野において既知の抗体および方法を用いて、生体試料中の分泌または細胞結合CD112Rのレベルを測定するために構成されてよい。
いくつかの実施形態により、生体試料は、体液または組織である。追加の実施形態により、試料は、体組織試料である。
【0096】
いくつかの実施形態により、方法は、インビトロまたはエクスビボで実施される。
ある態様により、本発明は、対象の癌を診断または予知する方法を提供し、方法は、本明細書で記載の少なくとも1種の抗体を用いて、上記対象の生体試料中のCD112Rの発現レベルを測定することを含む。
【0097】
生体試料中のCD112Rの発現または存在を測定するためのキットもまた提供され、キットは、本発明による少なくとも1種の抗体または抗体フラグメントを含む。いくつかの実施形態により、キットは、下記を含む抗体または抗体フラグメントを含む:
i.重鎖CDR1は、GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)またはSYWIN(配列番号7)であり;重鎖CDR2は、YPGSYIP(配列番号2)であり;重鎖CDR3は、GYFDV(配列番号3)であり;軽鎖CDR1は、KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、XはNまたはSを意味する)であり;軽鎖CDR2は、GASTRES(配列番号5)であり;および軽鎖CDR3は、QNDHSYPYT(配列番号6)である6つのCDRのセット;または
ii.重鎖CDR1は、GYNFTSY(配列番号9)またはSYWIN(配列番号7)であり;重鎖CDR2は、FPGSYS(配列番号10)であり;重鎖CDR3は、GYFDV(配列番号3)であり;軽鎖CDR1は、KSSQSLLNSGSQKNYLA(配列番号11)であり;軽鎖CDR2は、GASTRES(配列番号5)であり;および軽鎖CDR3は、QNDHSYPYT(配列番号6)である、6つのCDRのセット。
【0098】
いくつかの特定の実施形態により、キットは、6つのCDRのセットを含む抗体または抗体フラグメントを含み、ここで、重鎖CDR1配列は、配列GYTFTSY(配列番号13)を含み、重鎖CDR2は、配列YPGSYIP(配列番号2)を含み、重鎖CDR3は、配列GYFDV(配列番号3)を含み、軽鎖CDR1は、配列KSSQSLLSSGNQKNYLA(配列番号15)を含み、軽鎖CDR2は、配列GASTRES(配列番号5)を含み、および軽鎖CDR3は、配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む。
【0099】
本明細書で開示されるいずれの実施形態も、必要に応じ、本明細書で開示される別の実施形態の1つまたは任意の組み合わせの主題と組み合わされてよい。本発明のさらなる実施形態および適用性の全範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨および範囲内で様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および具体的例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、例示としてのみ与えられると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】種々の免疫細胞上のCD112Rの発現レベルを示す。図1Aは、免疫細胞発現のデータベース(DICE)からのPVRIG転写レベルである。図1B~1Dは、本発明の抗CD112R mAb(ハイブリドーマ上清)による種々の免疫細胞の染色のFACS分析を示す。図1B-休止PBMCは検出可能レベルのCD112Rを有しなかった;図1C-CD112Rの強い発現が、PBMCの96時間の活性化後にT細胞上で認められた;図1D-活性化NK細胞によるCD112Rの強い発現。塗りつぶしたヒストグラムは、バックグラウンド染色を示す。各グラフの2つの塗りつぶされていないヒストグラムは、2種の抗CD112R mAbクローン(#13および#15)による染色を示す。示されるのは、2人の独立した健康なドナーについて得られた結果である。
図2】NK/CD8 T細胞上で発現される受容体(TIGIT、DNAM-1、CD112R)の模式図および、腫瘍によりまたは抗原提示細胞(APC)により発現されたネクチン-2に対するそれらのそれぞれの親和性を示す。
図3】本発明のいくつかの抗CD112R mAbの結合および遮断の分析を提供する。図3Aは、FACS分析により測定した、CD112Rを過剰発現する293T細胞に対する抗CD112R mAbクローンの特異的結合を、および親細胞に対する特異的結合のないことを示す。図3B-計算されたEC-50値:CD112RキメラmAbを、3倍希釈系列にて99~0.4nMの濃度で使用し、かつCD112Rを過剰発現するHEK293T細胞(ヒト胎児腎臓293細胞)とインキュベートした。検出のために、抗ヒトAPC抗体(Ab)を、1:200希釈で使用し、細胞結合を、FACSにより分析した。図3C-ヒトネクチン-2を過剰発現する8866細胞(慢性骨髄性白血病細胞)を、アイソタイプ対照Abの存在下で10μg/mlのCD112R-Fcと、または4μg/mlで示されるクローンと、インキュベートした。結合したCD112R-Fcを、抗マウスDy-647 1:250希釈により検出し、FACSで分析した。CD112R結合の遮断は、全てのバリアントにより95%を超えた。
図4】抗CD112R mAbによるCD112Rの遮断およびNK細胞活性化に対するその効果を示す。NK活性化を、CD107aの表面発現の誘導により測定し、これを対照IgGに対する倍率変化として表す(Y軸)。結果を、ヒト癌細胞株A549(肺腺癌;図4Aおよび4B)およびMDA-MB-231(乳腺癌;図4C)についし示す。図4A-マウスIgG1 Fc(mIgG1、ヒトCD16への検出可能な結合のない不活性Fc)を有する抗CD112Rの活性を、同じFabを有するキメラクローンと、およびN31S(Kabatナンバリングに従って、本明細書ではN27dSとも表記される)を含むキメラクローンVH0K0と比較した。両方とも、ヒトIgG1 Fc(hIgG1、ヒトCD16を活性化できるエフェクターFc)を有する。図4B~4C-抗CD112R mAbの活性を、示されるように、抗体と免疫チェックポイント阻害剤(ICI)抗体、即ち、抗TIGIT(VSIG#9、国際公開第2017037707号に記載)および抗PVR(NTX-1088と命名)mAbの組み合わせの活性と比較した。*p<0.03、**p<0.001、***p<0.0001(両側スチューデントt検定による)。5人のドナーからの2人についての代表的データを示す。
図5】T細胞媒介標的細胞殺傷に対する抗CD112R mAb(クローン13 N31S)によるCD112Rの遮断の効果を示す。CD112Rの遮断の効果を、TIGITおよびPD-1などの、追加のICIの存在下で更に調査した。標的細胞殺傷を、Abが添加されなかった場合に観察された値に正規化した(Y軸)。結果を、ヒト癌細胞株A549(肺腺癌;図5A)およびRKO(結腸直腸癌;図5B)について示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0005(両側スチューデントt検定による)。
図6】NK細胞に対するヒト化抗CD112R抗体の活性化効果を示す。NK細胞活性化を、FACS分析により測定されるように、CD107aの表面発現の誘導により評価し、対照IgGに対する倍率変化として表した(Y軸)。結果を、健康なヒトボランティアから単離され、ヒト癌細胞株A549(肺腺癌)と共インキュベートされたNK細胞に対して示す。インキュベーションを、追加の抗TIGIT mAbのある場合とない場合について、X軸に示されるように、種々の抗CD112Rヒト化クローンの存在下で、またはアイソタイプIgG対照と共に、実施した。全てのAbを、3μg/mlで添加した。
図7】NK細胞活性化に対する、単独でのおよび抗PVRと組み合わせた、選択されたヒト化抗CD112Rの効果を示す。NK細胞活性化を、表面CD107aの誘導により測定し、Abなしに対する倍率変化として表した(Y軸)。図7A-選択されたヒト化抗CD112R抗体によるMDA-MB-231(乳腺癌)細胞と共に培養したNK細胞の処理。図7B-単独でまたは組み合わせて種々のヒト化抗CD112R mAbおよび抗PVR mAb(NTX-1088)による上記細胞培養物の処置の比較(p<0.03;黒色バー)。
図8】T細胞活性化(IL-2分泌)に対する選択されたヒト化抗CD112R抗体の効果を示す。ヒトCD112Rを過剰発現するジャーカット細胞を、示される抗CD112R mAbを含みまたは含まずに、抗CD3の存在下でA549細胞とインキュベートした。24時間後に上清を、収集し、IL-2含量を、BioLegendのヒトIL-2 ELISA MAX(商標)Deluxeを用いて定量化した。図8A-4~0.0625μg/mlの全てのヒト化バリアントおよび参照抗CD112R Ab(Ref)の用量応答アッセイ。図8B-選択されたヒト化バリアントを、26.4~0.1nMの範囲の濃度で試験し、および参照抗CD112R Abを、最高濃度24.6nMでのみ添加した。比較を、hIgG1の最高濃度まで実施した。
図9】T細胞活性化に対するヒト化抗CD112R mAbバリアントH11K2(配列番号39で示されるHC可変領域配列、および配列番号41で示されるLC可変領域配列を有する)の効果を示す。CD112R効果の遮断を、示されるように、PVR(NTX-1088)およびPD-1(キイトルーダ)などの、追加のICIの遮断により測定した。CD69(図9A)またはCD137(4-1BB)(図9B)の表面発現(MFI)を、Abが添加されなかった場合に観察された値に正規化した(Y軸)。結果を、ヒト癌細胞株A549(肺腺癌)について示す。全ての変化は、統計的に有意である(p<0.05)。
図10】標的細胞がネクチン-2を発現するが、PVRを発現しない場合の、NK細胞活性化に対するCD112R遮断の効果、および標的細胞がネクチン-2とPVRを共発現する場合の、NK活性化に対する抗CD112Rと抗PVR(NTX-1088)の組み合わせの効果を示す。NK細胞活性化を、CD137の表面発現により測定し、これを抗体治療がない場合(抗体なし、Y軸)に比べた倍率誘導として表す。 結果を、ヒト癌細胞株JEG-3(絨毛癌)(図10A)(これは、PVR陰性である)について、およびJEG-3-hPVR(図10B)(これは、ヒトPVRを発現する)について示す。hIgG1 Fcを有する抗CD112R Abを、抗PVR Ab NTX-1088と、または抗TIGIT Ab -チラゴルマブ(KEGG DRUG entry D11482)と、比較した。さらに、CD112Rおよび2つのmAbの組み合わせを、試験した。*p<0.005、**p<0.001、***p<0.0001(両側スチューデントt検定による)。5人のNK細胞ドナーからの2人の代表的データを示す。Tira=チラゴルマブ(Tiragolumab)。
図11】標的細胞がネクチン-2とPVRの両方を発現する場合の、NK細胞活性化に対するCD112Rおよび他のICI遮断の組み合わせの効果を示す。結果を、ヒト非小細胞肺癌細胞株H1299(図11A)、肺腺癌A549細胞株(図11B)、および乳腺癌細胞株MDA-MB-231(図11C)について示す。抗CD112R mAb活性を、示されるように、単独でまたは他のICI抗体と組み合わせて評価した。*p<0.005、**p<0.001、***p<0.0001(両側スチューデントt検定による)。4人のNK細胞ドナーからの2人の代表的データを示す。Tira=チラゴルマブ。
図12】マウスモデルにおける腫瘍増殖に対するインビボ抗CD112R mAb治療の効果を示す。A549細胞を、NSG-HLA-A2/HHDマウスに1:5 E:T比率で新鮮なヒトPBMCと皮下注射で共移植した。治療を、移植後3日目に開始した。マウスを、全て10mg/kgで合計5回、対照IgG1、または抗CD112R mAb、または抗PD-1 mAb(ペムブロリズマブ)のいずれかで週1回治療した。2元配置分散分析によりp=0.001.
【発明を実施するための形態】
【0101】
本発明は、ヒトタンパク質CD112Rに特異的な、キメラのおよびヒト化されたmAbおよびそれらのフラグメントを含む、効果的な抗体を提供する。本発明は、治療薬としての抗体の製造および使用も提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、ネクチン-2を過剰発現する癌細胞に対する免疫活性の効率的回復のために、および単独治療として、または他の治療法、例えば、追加の免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて癌の治療のために、CD112Rに特異的な抗体を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書で記載の抗体は、ウィルス感染症を治療することにおける使用のためである。
【0102】
本発明は、ヒトCD112Rに特異的なヒト化された抗体をさらに提供する。好都合にも、本発明の抗体はヒト化され、従って抗体に対する有害免疫応答のリスクを回避し、それによりヒトのインビボ使用に安全である。
【0103】
次の説明では、特定の具体的詳細が、種々の実施形態の完全な理解を与えるために記述される。しかしながら、当業者は、提供される実施形態がこれらの詳細事項なしに実施され得ることを理解するであろう。文脈上異なる解釈を要する場合を除き、明細書およびそれに続く特許請求の範囲の全体を通じて、「~を含む(comprise)」およびその変形である「~を含む(comprises)」や「~を含む(comprising)」などの用語は、開かれた包括的な意味、即ち、「~を含むが、それに限定されない」の意味に解釈されるべきである。本明細書および添付された特許請求の範囲において用いられるとき、単数形(「a」、「an」、および「the」)は、内容が特に要求しない限り複数の指示物を含む。用語「または」は、別段の明確な指示がない限り、通常、「および/または」を包含する意味で用いられることにも留意されたい。さらに、本明細書で提供される見出しは、便宜上のものに過ぎず、請求された実施形態の範囲または意味を説明するものではない。本明細書で使用される場合、「約(about)」という用語は、示した量に10%またはそれ未満の差異で近似である量を意味する。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「CD112R」または「PVRIG」は、C7orf15としても知られる、ネクチン-2に対するヒト細胞表面受容体を指す。PVRIGは、ポリオウィルス受容体関連免疫グロブリンドメイン含有タンパク質を意味する。このタンパク質は、ネクチン-2との相互作用の後、T細胞増殖を抑制する。本発明による例示的CD112Rタンパク質またはタンパク質をコードする遺伝子は、SwissPort、UniPortおよびジェンバンク記号または受入番号:遺伝子ID:79037、Q6DKI7、D6W5U9、Q9BVK3に示されている。
【0105】
本発明による抗体またはそのフラグメントは、CD112Rのエピトープに結合する。具体的に、抗体は、CD112Rタンパク質の外部ドメイン(細胞外の部分)内のエピトープに結合する。
【0106】
本発明の親mAbを生成するために、ヒトCD112Rの細胞外の部分および担体としてIgGタンパク質のマウスFc領域を含む組換え型の融合タンパク質が、産生され精製された。得られた融合タンパク質hCD112R-Fcを、免疫原として使用した。BALB/cマウスに、フロイント完全アジュバント中の50μgの免疫原を注入し、2週後に、追加免疫注入を、フロイント不完全アジュバントを用いて行った。2週後に、マウス血清を、ELISAを用いて抗体価についてスクリーニングした。最良の奏効マウスを、PBS中の免疫原でさらに追加免疫した。3日後に、脾臓細胞を、収集し、赤血球の溶解後、SP2/0骨髄腫細胞と融合した。細胞を、ハイブリドーマ選択のためのヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む20%RPMI 1640培地中に播種し、ELISAを用いてmAb分泌についてスクリーニングした。陽性細胞株、すなわち、hCD112R-Fcを認識するmAbを分泌する細胞を、更に選択して、次の差別化される特徴を有し得る生成物を作製した:a)関連免疫細胞免疫細胞受容体(例えば、DNAM1およびTIGIT)の他のリガンドとの交差反応性がない;生細胞の表面上で発現される、天然の、成熟ヒトCD112R分子に強力に結合する。
【0107】
選択されたAbクローンのヒト化のために、IGHV1-69*10生殖系列フレームワークを、重鎖のために選択し、IGKV4-1*01を、軽鎖フレームワークのために選択した。両方は、ヒト生殖系列で極めてうまく発現し、これは、得られるヒト化されたバリアントの高い発現力価により更に裏付けられる。
【0108】
CD112Rは、本明細書で記載の抗体に対し抗原として機能する。本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、抗体形成を誘発でき、かつ抗体により特異的に結合され得る分子または分子の一部を指す。抗原は、1つまたは2つ以上のエピトープを有し得る。上で言及した特異的結合は、抗原が、その対応する抗体と、高度に選択的に反応し、他の抗原により誘発され得る数多くの他の抗体とは反応しないであろうことを示すと意図される。本発明のいくつかの実施形態による抗原は、CD112Rタンパク質またはその免疫原性部分である。
【0109】
結合親和性は、表面プラズモン共鳴法(SPR)(Scarano S,Mascini M,Turner AP,Minunni M.Surface plasmon resonance imaging for affinity-based biosensors.Biosens Bioelectron.2010,25:957-66、に記載されている)などの既知の方法を使用して定量化でき、および、例えば、解離定数、Kdを用いて計算でき、より低いKdは、より高い親和性を反映する。
【0110】
抗体、または免疫グロブリンは、「Y」形状配置において、ジスルフィド結合により一緒に連結される2つの重鎖および2つの軽鎖を含み、それぞれの軽鎖は、ジスルフィド結合によりそれぞれの重鎖に連結される。抗体のタンパク質消化は、Fv(可変フラグメント)およびFc(結晶性フラグメント)ドメインを生じる。抗原結合ドメイン、Fabは、ポリペプチド配列が変化する領域を含む。用語のF(ab’)は、ジスルフィド結合により一緒に連結される2つのFabアームを表す。それぞれの重鎖は、可変ドメイン(V)を一端に有し、これに多数の定常ドメイン(C)が続く。それぞれの軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、もう一方の端に定常ドメイン(C)を有する。軽鎖の軽鎖可変ドメインは、重鎖の最初の可変ドメインと整列され、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の最初の定常ドメイン(CH1)と整列される。軽鎖および重鎖のそれぞれの可変ドメイン対は、抗原結合部位を形成する。軽鎖および重鎖上のドメインは、同じ一般的構造を有し、各ドメインは、4つのドメインを含み、その配列は、比較的保存され、相補性決定領域として知られる3つの高頻度可変ドメイン(CDR1~3)により連結される。これらのドメインは、抗原結合部位の特異性および親和性に寄与する。
【0111】
重鎖のアイソタイプ(γ、α、δ、εまたはμ)は、免疫グロブリンクラス(それぞれ、IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgM)を決定する。軽鎖は、2つのアイソタイプ(カッパ、κまたはラムダ、λ)のいずれかである。両方の同位体は、全ての抗体クラスで認められる。
【0112】
用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体またはインタクトモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多価抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、および目的の生物活性、即ちヒトCD112Rへの結合、を示すのに十分な長さの抗体フラグメントを包含する。
【0113】
本発明による抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(mAb)などのインタクト抗体、ならびにFabまたはF(ab’)フラグメントなどのそれらのタンパク質分解フラグメントを含む。単鎖抗体(例えば、scFv)もまた、本発明の範囲内に入る。
【0114】
抗体フラグメント
「抗体フラグメント」は、インタクト抗体の一部のみを含み、通常、インタクト抗体の抗原結合部位を含み、それにより抗原に結合する能力を保持する。本発明の定義により包含される抗体フラグメントの例は:(i)V、C、V、およびCH1を有する、Fabフラグメント;(ii)CH1ドメインのC末端に1個または複数のシステイン残基を有するFabフラグメントである、Fab’フラグメント;(iii)VおよびCH1ドメインを有するFdフラグメント;(iv)VおよびCH1ドメインおよびCH1ドメインのC末端に1個または複数のシステイン残基を有するFd’フラグメント;(v)抗体の単一アームのVおよびVドメインを有するFvフラグメント;(vi)VドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,Nature(1989)341:544-546);(vii)単離CDR領域;(viii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2個のFab’フラグメントを含む二価のフラグメントである、F(ab’)フラグメント;(ix)単鎖抗体分子(例えば、単鎖Fv;scFv)(Bird et al.,Science(1988)242:423-426;およびHuston et al.,米国科学アカデミー紀要(USA)(1988)85:5879-5883);(x)同じポリペプチド鎖中の軽鎖可変ドメイン(V)に連結された重鎖可変ドメイン(V)を含む、2個の抗原結合部位を有する「ディアボディ」(例えば、EP 404,097;国際公開第93/11161号;Hollinger et al.,米国科学アカデミー紀要(1993)90:6444-6448を参照)、(xi)相補的軽鎖ポリペプチドと一緒に1対の抗原結合領域を形成するタンデム型Fdセグメント(V-CH1-V-CH1)を含む「直鎖抗体」(Zapata et al.,Protein Eng.(1995)8,1057-1062;および米国特許第5,641,870号)を含む。
【0115】
様々な技術が、抗体フラグメントの産生のために開発されてきた。従来、これらのフラグメントは、インタクト抗体のタンパク質消化を介して導出された(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992)、およびBrennan,et al.,Science 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらのフラグメントは今日では、組換え宿主細胞により直接的に産生できる。例えば、抗体フラグメントは、抗体ファージライブラリーから単離できる。あるいは、Fab’-SHフラグメントは、大腸菌から直接回収され、化学的に結合されてF(ab’)フラグメントを形成できる(Carter,et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))。別の手法により、F(ab’)フラグメントは、組換え宿主細胞培養物から直接に単離できる。抗体フラグメントの産生のための他の技術は、熟練した専門家には明らかであろう。他の実施形態では、選択抗体は、単鎖Fvフラグメント(scFv)である。
【0116】
単鎖抗体は、抗原結合能力を有し、免疫グロブリン軽鎖および重鎖の可変領域に相同または類似のアミノ酸配列、即ち、連結V-Vまたは単鎖Fv(scFv)を含む、単鎖コンポジットポリペプチドであってよい。単鎖抗体の産生のための技術(米国特許第4,946,778号)は、CD112Rに対する単鎖抗体を産生するために適合され得る。
【0117】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在するかもしれない天然に生じる変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、特異性が高く、単一の抗原に対し向けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられる。「モノクローナル」という修飾語句は、特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。mAbは、当業者に既知の方法により得られる。例えば、本発明に従い使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al,Nature 1975,256,495により最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてよく、または組換えDNA法によって作製されてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。モノクローナル抗体は、例えば、Clackson et al,Nature 1991,352,624-628またはMarks et al,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)に記載の技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0118】
本発明のmAbは、IgG、IgM、IgE、IgA、およびIgDを含む任意の免疫グロブリンクラスのものであってよい。
本発明の抗体の高頻度可変領域と特に免疫反応性である抗イディオタイプ抗体もまた、包含される。
【0119】
ある態様により、本発明は、下記からなる群より選択される6つのCDRの配列セットを含む抗体またはその抗体フラグメントを提供する:
i.配列番号28を含む重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR)および配列番号26を含む軽鎖可変領域の3つのCDR、または上記抗体またはフラグメント配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体;および
ii.配列番号21を含む重鎖可変領域の3つのCDRおよび配列番号23を含む軽鎖可変領域の3つのCDR、または上記抗体またはフラグメント配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体。
【0120】
配列同一性は、2つの異なる配列間で正確に一致するアミノ酸またはヌクレオチドの割合である。配列類似性は、同一アミノ酸として特定され得るアミノ酸の保存的置換を可能にする。本明細書で記載のポリヌクレオチド配列は、ヒト細胞などの特定細胞中での発現のためにコドン最適化され得る。コドン最適化は、抗体鎖のコードされるアミノ酸配列を変更しないが、例えば、細胞中での発現を増大させ得る。
【0121】
本発明は、本発明による抗体分子の保存的アミノ酸バリアントも提供する。本発明によるコード化タンパク質の全体の分子構造を保存する本発明によるバリアントも、作製され得る。開示されたタンパク質産物を構成する個々のアミノ酸の特性を考慮して、いくつかの合理的な置換が、当業者により認識されるであろう。アミノ酸置換、すなわち「保存的置換」は、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいて行われてよい。本明細書で使用される場合、用語「抗体類似体」は、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換による別の抗体由来の抗体を指す。
【0122】
本明細書で使用される場合、用語「抗体バリアント」は、本発明の抗体を含む任意の分子を指す。例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントが別の化学物質に連結される融合タンパク質は、抗体バリアントと見なされる。
【0123】
上記抗体配列の類似体およびバリアントもまた、本発明の範囲内にある。これらは、限定されないが、配列内のアミノ酸の保存的および非保存的置換、挿入および欠失を含む。このような改変および得られた抗体類似体またはバリアントは、それらが抗体のヒトCD112Rに対する結合を付与する、あるいはさらに改善する限りにおいて、本発明の範囲内にある。
【0124】
当業者に既知のアミノ酸の保存的置換は、本発明の範囲内にある。保存的アミノ酸置換は、1つのアミノ酸の、例えば、脂肪族、芳香族、正に帯電した、負に帯電した、同じタイプの官能基または側鎖を有する別のアミノ酸での置換を含む。これらの置換は、特定の細胞集団に対する経口バイオアベイラビリティ、侵入、および標的化を高め得る。当業者は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する、コード配列中の単一アミノ酸または小さい割合のアミノ酸の変化、付加または欠失をもたらす個別の置換、欠失または付加は「保存的改変バリアント」であり、変化は化学的に類似のアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらすことを理解するであろう。機能的に類似のアミノ酸をもたらす保存的置換表は、当該技術分野において周知である。例えば、当該技術分野において既知の1つの表により、次の6つのグループはそれぞれ、相互に保存的置換であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0125】
バリアント鎖配列は、特異的プライマーを用いる塩基配列決定法により決定されることが、強調されなければならない。同じ配列に対し採用される異なる塩基配列決定方法は、技術的問題および異なるプライマーに起因して、特に配列の末端で、わずかに異なる配列を生じる場合がある。
【0126】
所与の重鎖または軽鎖可変配列からのCDRの特定または測定は通常、当該技術分野において既知の少数の方法の1つを使用して実施される。例えば、このような決定は、Kabat(Wu T.T and Kabat E.A.,J Exp Med,1970;132:211-50)、ChothiaおよびIMGT(Lefranc M-P,et al.,Dev Comp Immunol,2003,27:55-77)に従って実行される。
【0127】
用語「ある配列を有するCDR」、または類似の用語が使用される場合、それは、CDRが指定配列を含むというオプションを含み、およびCDRが指定配列からなるというオプションも含む。
【0128】
ある抗体の抗原特異性は、高頻度可変領域(HVR)、即ち、一緒に抗原結合部位を形成する軽鎖および重鎖の両方のユニークなCDR配列に基づく。
【0129】
「高頻度可変領域」または「HVR」と同義である、用語「相補性決定領域」および「CDR」は、当技術分野において既知であり、抗原特異性および/または結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の非コンティグ配列を指す。一般に、各重鎖可変領域中に3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)および各軽鎖可変領域中に3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)が存在する。「フレームワーク領域」および「FR」は、当技術分野において既知であり、重鎖および軽鎖の可変領域の非CDR部分を指す。一般に、各完全長重鎖可変領域中に4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、およびFR-H4)、および各完全長軽鎖可変領域中に4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、およびFR-L4)が存在する。所与のCDRまたはFRの正確アミノ酸配列境界は、Kabat et al.(1991),“Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(“Kabat”ナンバリングスキーム),Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948(“Chothia”ナンバリングスキーム);MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996),“Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding site topography,” J.Mol.Biol.262,732-745.”(“Contact”ナンバリングスキーム);Lefranc MP et al.,“IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,” Dev Comp Immunol,2003 Jan;27(1):55-77(“IMGT”ナンバリングスキーム);Honegger A and Pluckthun A,“Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool,” J Mol Biol,2001 Jun 8;309(3):657-70,(“Aho”ナンバリングスキーム);およびWhitelegg NR and Rees AR,“WAM:an improved algorithm for modelling antibodies on the WEB,” Protein Eng.,2000 Dec;13(12):819-24(“AbM”ナンバリングスキーム)、により記載されるものを含む、多数のよく知られたスキームのいずれかを用いて容易に決定できる。特定の実施形態では、本明細書で記載の抗体のCDRは、Kabat、Chothia、IMGT、Aho、AbM、またはこれらの組み合わせから選択される方法により規定され得る。
【0130】
所与のCDRまたはFRの境界は、同定のために使用されるスキームに応じて変化し得る。例えば、Kabatスキームは、構造的整列に基づき、一方、Chothiaスキームは、構造的情報に基づく。KabatおよびChothiaスキームの両方のためのナンバリングは、最も一般的な抗体領域配列長さに基づき、挿入は、挿入文字、例えば、「30a」により提供され、および欠失は、いくつかの抗体で出現する。2つのスキームは、異なる位置に特定の挿入および欠失(「インデル(indel)」)を配置し、ナンバリングの差異を生じる。Contactスキームは、複雑な結晶構造の解析に基づき、多くの点でChothiaナンバリングスキームに類似している。
【0131】
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、CDR中で行われ得る。このような改変は、体細胞成熟中に高い変異率を有するコドンをコードするCDR中で行われ(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照)、得られたバリアントは、結合親和性に関し試験され得る。親和性成熟(例えば、エラーが発生しやすいPCR、チェーンシャッフリング、CDRのランダム化、またはオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発を用いて)を用いて、抗体親和性を改善できる(例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(2001)を参照)。抗原結合に関与するCDR残基は、例えば、アラニン系統的変異導入法またはモデル化(例えば、Cunningham and Wells Science,244:1081-1085(1989)を参照)を用いて、明確に特定され得る。CDR-H3およびCDR-L3は特に、しばしば標的にされる。代わりにまたは追加して、抗体と抗原の間の接触点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。このような接触残基および隣接残基は、置換の候補として標的化されるか、または取り除かれ得る。バリアントは、それらが目的の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされ得る。
【0132】
本明細書で使用される場合、用語「抗体の抗原結合部分を有する分子」および「抗原結合フラグメント」は、任意のアイソタイプの、任意の動物細胞株または微生物により生成されたインタクト免疫グロブリン分子のみでなく、限定されないが、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、その重鎖および/または軽鎖可変部分、Fabミニ抗体(例えば、国際公開第93/15210号、米国特許出願第08/256,790号、国際公開第96/13583号、米国特許出願第08/817,788号、国際公開第96/37621号、米国特許出願第08/999,554号、を参照)、およびこのような反応性部分を組み込んだ単鎖抗体、ならびにこのような抗体反応性部分が物理的に挿入された任意の他のタイプの分子を含む、その抗原結合反応性部分も包含すると意図される。このような分子は、限定されないが、酵素切断、ペプチド合成または組換え技術を含む、任意の周知の技術により得られる。
【0133】
抗体は、本明細書では、特に、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種由来の抗体中の対応する配列と同一または相同である、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属するが鎖の残部が別の種由来の抗体中の対応する配列と同一または相同であるまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する「キメラ」抗体、ならびに、それらが目的の生物活性を示す限り、このような抗体のフラグメントを含む(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。加えて、相補性決定領域(CDR)移植が、親和性または特異性を含む抗体分子の特定の特性を変えるために実施され得る。ヒト抗体(アクセプター抗体と呼ばれる)に実質的に由来する可変領域フレームワーク残基およびマウス抗体(ドナー抗体と呼ばれる)に実質的に由来するCDRを有する抗体は、ヒト化抗体とも呼ばれる。キメラ抗体は、適用時に免疫原性を低減するために、および産生時の収率を高めるために主に使用され、例えば、マウスmAbはハイブリドーマからのより高い収率を有するがヒトにおいてより高い免疫原性を有するために、ヒト/マウスキメラmAbが使用される。キメラ抗体およびそれらの産生方法は、当技術分野において既知である(例えば、PCT特許出願WO86/01533号、同WO90/07861号、同WO92/22653号および米国特許第5,693、762号、同第5,693,761号、同第5,585,089号、同第5,530,101号、および同第5,225,539号)。
【0134】
いくつかの実施形態により、抗体は、モノクローナル抗体である。
いくつかの特定の実施形態により、モノクローナル抗体は、キメラモノクローナル抗体である。
いくつかの実施形態により、キメラ抗体は、ヒト由来定常領域を含む。
いくつかの実施形態により、キメラ抗体のヒト定常領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、およびヒトIgG4からなる群より選択される。
いくつかの実施形態により、キメラ抗体のヒト定常領域は、ヒトIgG1からなる群より選択される。
【0135】
特定の実施形態により、下記を含む、ヒトCD112Rを認識するキメラモノクローナル抗体が、提供される:
i.重鎖CDR1配列は、配列番号1または配列番号7であり;重鎖CDR2配列は、配列番号2または配列番号8であり;重鎖CDR3配列は、配列番号3であり;軽鎖CDR1配列は、配列番号4であり;軽鎖CDR2配列は、配列番号5であり;および軽鎖CDR3配列は、配列番号6である、6つのCDRのセット;または
ii.重鎖CDR1配列は、配列番号9または配列番号7であり;重鎖CDR2配列は、配列番号10または配列番号12であり;重鎖CDR3配列は、配列番号3であり;軽鎖CDR1配列は、配列番号11であり;軽鎖CDR2配列は、配列番号5であり;および軽鎖CDR3配列は、配列番号6である、6つのCDRのセット。
【0136】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、既知で入手可能な追加の非タンパク性部分を含むようにさらに修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分は、限定されないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)、およびデキストランまたはポリ(n ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のために、製造において利点を有する可能性がある。ポリマーは、任意の分子量のものであってよく、かつ分枝または非分枝であってよい。抗体に付着される高分子の数は多様であってよく、2つ以上のポリマーが付着される場合、それらは、同じ分子であっても、または異なる分子であってもよい。
【0137】
本明細書で記載の抗体は、核酸によりコードされ得る。核酸は、2つ以上のヌクレオチド塩基を含むポリヌクレオチドの1種である。特定の実施形態では、核酸は、ポリヌクレオチドをコードするポリペプチドを細胞中に移すために用いられ得るベクターの成分である。本明細書で使用される場合、用語の「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を輸送できる核酸分子を指す。ベクターの1つのタイプは、ゲノム統合ベクター、または「統合ベクター」であり、これは、宿主細胞の染色体のDNA中へ組み込まれる。ベクターの別のタイプは、「エピソーム」ベクターであり、例えば、染色体外複製ができる核酸である。動作可能に連結された遺伝子の発現を指示できるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。好適なベクターは、プラスミド、バクテリア人工染色体、酵母人工染色体、ウィルスベクターなどを含む。発現ベクターにおける、転写の制御に使用するためのプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどの調節エレメントは、哺乳動物、微生物、ウィルスまたは昆虫遺伝子から誘導できる。複製起点により通常付与される、ホスト中で複製する能力、および形質転換体の識別を容易にする選択遺伝子が、さらに組み込まれ得る。レンチウィルス、レトロウィルス、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルスなどの、ウィルス由来のベクターを採用し得る。プラスミドベクターは、染色体部位に組み込むために直線化できる。ベクターは、ゲノム中の所定位置または制限部位セットへの部位特異的組み込み(例えば、AttP-AttB組換え)を指示する配列を含み得る。さらに、ベクターは、転位因子由来の配列を含み得る。
【0138】
本明細書で記載の抗体をコードする核酸を用いて、感染、遺伝子導入、形質転換でき、あるいは、好適な細胞を核酸に対しトランスジェニックにすることができ、従って、市販のまたは治療的使用のための抗体の産生を可能にする。大規模細胞培養物からの抗体の産生のための標準細胞株および方法は、当技術分野において既知である。特定の実施形態では、細胞は、真核細胞である。特定の実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、抗体の産生に有用な哺乳動物細胞の細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、NS0マウス骨髄腫細胞、またはPER.C6(登録商標)細胞である。特定の実施形態では、抗体をコードする核酸は、抗体の産生に有用な細胞のゲノム座位中に組み込まれる。特定の実施形態では、本明細書で記載されるのは、抗体をコードする核酸を含む細胞を、上記抗体の産生および分泌を可能にするのに十分なインビトロ条件下で培養することを含む、抗体を作製する方法である。
【0139】
また本明細書で記載されるのは、本発明のCD112Rに特異的なmAbおよびフラグメントを作製する方法である。このような方法は、抗体の発現および分泌を可能とするのに十分な条件下で細胞培地中で抗体をコードする核酸を含む細胞または細胞株をインキュベートすること、および細胞培地から抗体をさらに回収することを含む。回収することは、生細胞、壊死細胞片、非抗体タンパク質またはポリペプチド、望ましくない塩、緩衝液、および培地成分を除去するための1種または複数の精製ステップを更に含み得る。特定の実施形態では、追加の精製ステップは、遠心分離、超遠心分離、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、またはプロテインL精製、および/またはイオン交換クロマトグラフィーを含む。
【0140】
一態様により、本発明は、ヒトCD112Rに特異的に結合する、少なくとも抗原結合部分を含むmAb、またはそのフラグメントを提供し、上記抗体またはそのフラグメントは、少なくとも0.5x10-9MのヒトCD112Rに対する親和性を有する。
【0141】
特定の実施形態では、ヒトCD112Rを結合するためのヒト化mAbまたはその抗原結合フラグメントのEC50は、約0.5nM、0.1nM、0.05nM、または0.01nM未満である。
【0142】
50%効果濃度(EC50)は、指定された暴露時間後に、ベースラインと最大の間で半分の応答を誘導する抗体の濃度を指す。
いくつかの実施形態により、mAbまたはmAbフラグメントは、下記からなる群から選択される6つのCDR配列のセットを含む:
i.配列番号28を含む重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR)および配列番号26を含む軽鎖可変領域の3つのCDR、または上記抗体またはフラグメント配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体;および
ii.配列番号21を含む重鎖可変領域の3つのCDRおよび配列番号23を含む軽鎖可変領域の3つのCDR、または上記抗体またはフラグメント配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの類似体または誘導体。
【0143】
いくつかの特定の実施形態により、mAbまたはフラグメントは、アミノ酸配列SYを含む重鎖CDR1配列、配列YPGSYIP(配列番号2)を含む重鎖CDR2、配列GYFDV(配列番号3)を含む重鎖CDR3、配列KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、Xは、NまたはSを意味する)を含む軽鎖CDR1、配列GASTRES(配列番号5)を含む軽鎖CDR2、および配列QNDHSYPYT(配列番号6)を含む軽鎖CDR3、または高頻度可変領域(HVR)配列中に5%以下のアミノ酸置換、欠失および/または挿入を含むそれらの類似体を含む。
【0144】
いくつかの特定の実施形態により、mAbまたはフラグメントは、配列GYXFXSY(配列番号1)(式中、Xは、N、D、A、Q、S、またはTを意味し、およびXは、TまたはAを意味する)、または配列SYWIN(配列番号7)からなる重鎖CDR1配列、配列YPGSYIP(配列番号2)からなる重鎖CDR2、配列GYFDV(配列番号3)からなる重鎖CDR3、配列KSSQSLLXSGNQKNYLA(配列番号4)(式中、Xは、NまたはSを意味する)からなる軽鎖CDR1、配列GASTRES(配列番号5)からなる軽鎖CDR2、および配列QNDHSYPYT(配列番号6)からなる軽鎖CDR3を含む。
【0145】
いくつかの実施形態により、抗体は、ヒト化された抗体である。
【0146】
「ヒト化された」抗体は、全てのまたは実質的に全てのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、全てのまたは実質的に全てのFRアミノ酸残基がヒトFRに由来する抗体である。ヒト化された抗体は必要に応じ、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。非ヒト抗体の「ヒト化された型」は、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、典型的にはヒトに対する免疫原性を低減するために、ヒト化を受けた、非ヒト抗体のバリアントを指す。いくつかの実施形態により、ヒト化された抗体中のいくつかのFR残基は、抗体特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0147】
「ヒト抗体」は、ヒトまたはヒト細胞により、またはヒト抗体ライブラリーを含むヒト抗体レパートリーまたは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源により産生される抗体のものに対応するアミノ酸配列を有する抗体である。この用語は、全てのまたは実質的に全てのCDRが非ヒトであるものなどの、非ヒト抗原結合領域を含む非ヒト抗体のヒト化された型を除外する。
【0148】
薬理学および治療の方法
医薬品および医薬剤形において、活性剤は好ましくは、1種または複数種の薬学的に許容可能な担体および必要に応じて他の治療成分と一緒に利用される。担体は、製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに対して過度に有害でないという意味で薬学的に許容されなくてはならない。活性剤は、上述の目的の薬理効果を達成するための有効量で、および目的の曝露を達成するために適切な量で提供される。
【0149】
典型的には、抗体の抗原結合部分または別のポリペプチド模倣体を含む本発明の抗体およびフラグメントならびにそれらのコンジュゲートは、治療的使用のために無菌生理食塩水中に懸濁される。あるいは、医薬組成物は、有効成分(抗体の抗原結合部分を含む分子)の放出を制御するように、または患者の系中でその存在を延長するように、処方され得る。多数の好適な薬物送達システムが、既知であり、それらは、例えば、埋め込み型薬物放出系、ヒドロゲル、ヒドロキシメチルセルロース、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロエマルジョン、マイクロスフェア、などを含む。制御放出製剤は、本発明による分子を複合化または吸着するポリマーの使用により調製できる。例えば、生体適合性ポリマーは、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)のマトリックスおよびステアリン酸二量体と、セバリン酸のポリ酸無水物のコポリマーのマトリックスを含む。このようなマトリックスからの、本発明による分子、即ち、抗体または抗体フラグメントの放出速度は、分子の分子量、マトリックス内の分子の量、および分散粒子のサイズに依存する。
【0150】
本発明の医薬組成物は、静脈内、経口、局所、鼻腔内、皮下、筋肉内、動脈内、関節腔内、病巣内、腫瘍内または非経口などの、任意の好適な手段により投与され得る。通常、静脈内(i.v)投与が、抗体を送達するために使用される。
【0151】
ある態様により、本発明は、癌を治療する方法を提供し、方法は、本明細書で記載の抗体またはその抗体フラグメントを含む医薬組成物の治療的有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む。
【0152】
本明細書で使用される、「対象」、「個体」、または「患者」という用語は、少なくとも1種の疾患を有すると診断された、その疾患に罹患していると疑われる、またはその疾患を発症している危険がある個体を指す。いくつかの実施形態により、個体は、哺乳動物である。いくつかの実施形態により、哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラマ、アルパカ、またはヤクである。いくつかの実施形態により、個体は、ヒトである。
【0153】
本発明による分子の治療的有効量は、特に、投与スケジュール、投与される分子の単位用量、分子が他の治療薬と組み合わせて投与されるかどうか、患者の免疫状態および健康、投与される分子の治療活性、血液循環中のその残留性、および治療医師の判断に依存することは、当業者には明らかであろう。
【0154】
本明細書で使用される、「治療的有効量」という用語は、哺乳動物中の疾患または障害を治療するために効果的な薬物の量を指す。癌の場合、治療的有効量の薬剤は、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさを減少させ;癌細胞の周辺器官への浸潤を抑制し(すなわち、ある程度に遅くし、好ましくは止める);腫瘍の転移を抑制し(すなわち、ある程度に遅くし、好ましくは止める);腫瘍増殖をある程度抑制し;および/または癌に関連する症状の1つまたは複数の症状をある程度緩和し得る。薬物が既存の癌細胞の増殖を防止するおよび/または死滅させ得る程度に、薬物は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性であり得る。癌療法について、インビボ有効性は、例えば、生存期間、無増悪期間(TTP)、応答率(RR)、奏功期間、および/または生活の質を評価することにより測定できる。
【0155】
本発明の治療により改善可能な癌は、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍を含む。このような癌のより詳細な例としては、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、および肺の肺扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃のまたは胃癌(gastric or stomach cancer)(胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌腫、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、および様々なタイプの頭頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ性白血病(ALL);毛様細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連するもの)、およびメグズ症候群に関連する異常血管増殖が挙げられる。好ましくは、癌は、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、軟組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌腫、頭頸部癌、メラノーマ、卵巣癌、中皮腫、および多発性骨髄腫からなる群より選択される。本発明の治療により改善可能な癌性の状態は、転移性癌を含む。
【0156】
有効成分としての本発明の分子は、よく知られているように、薬学的に許容可能なおよび有効成分と適合する賦形剤中に溶解、分散、または混合される。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、デキストロース、グリセロール、エタノールなどおよびこれらの組み合わせである。他の好適な担体は、当業者に周知である。加えて、必要に応じ、組成物は、湿潤または乳化剤、pH緩衝剤などの少量の補助的な物質を含み得る。
本発明による医薬組成物は、抗悪性腫瘍薬組成物と一緒にまたは組み合わせて投与され得る。
【0157】
本明細書で使用される、「組み合わせ」または「併用療法」という用語は、組み合わされる物質の同時投与または組み合わされる物質の逐次投与を指し得る。本明細書で記載されるように、組み合わせが物質の逐次投与を指す場合、物質は、任意の時間的順序で投与されてよい。
【0158】
本明細書で使用される、用語「治療」は、治療的処置および予防のまたは防止の処置の両方を指す。治療を必要とするヒトは、障害を既に有するヒト、ならびに障害が予防されるべきヒトを含む。
【0159】
用語「癌」は、制御されない細胞増殖により通常特徴付けられる、哺乳動物の生理的状態を指す、または言い表す。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌の更に詳細な例は、メラノーマ、肺、甲状腺、乳房、結腸、前立腺、肝臓、膀胱、腎臓、頸部、膵臓、白血病、リンパ腫、骨髄、卵巣、子宮、肉腫、胆管、または子宮内膜癌を含む。
【0160】
いくつかの実施形態により、癌を治療する方法は、少なくとも1種の追加の抗癌剤の投与を含む治療レジメンの一部として医薬組成物を投与することを含む。
いくつかの実施形態により、抗癌剤は、代謝拮抗薬、有糸分裂阻害剤、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、アスパラギナーゼ、アルキル化剤、抗腫瘍抗生物質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0161】
いくつかの実施形態により、代謝拮抗薬は、シタラビン、フルダラビン、フルオロウラシル、メルカプトプリン、メトトレキサート、チオグアニン、ゲムシタビン、およびヒドロキシ尿素からなる群より選択される。いくつかの実施形態により、有糸分裂阻害剤は、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビノレルビンからなる群より選択される。いくつかの実施形態により、トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカンおよびイリノテカンからなる群より選択される。いくつかの実施形態により、アルキル化剤は、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、チオテパ、ダカルバジン、およびプロカルバジンからなる群より選択される。いくつかの実施形態により、抗腫瘍抗生物質は、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、およびプリカマイシンからなる群より選択される。いくつかの実施形態により、トポイソメラーゼII阻害剤は、エトポシドおよびテニポシドからなる群より選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0162】
いくつかの実施形態により、追加の抗癌剤は、ベバシズマブ、カルボプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン塩酸塩、ゲムシタビン塩酸塩、トポテカン塩酸塩、チオテパ、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0163】
本発明によるモノクローナル抗体は、少なくとも1種の抗癌剤と共に併用療法の一部として使用され得る。いくつかの実施形態により、追加の抗癌剤は、免疫調節剤、活性化リンパ球細胞、キナーゼ阻害剤または化学療法剤からなる群より選択される。
【0164】
いくつかの実施形態により、抗癌剤は、免疫チェックポイント分子に対する抗体などの、アゴニストまたはアンタゴニストに関わらず、免疫調節剤である。
チェックポイント免疫療法の遮断は、癌治療の刺激的な場であることが明らかになった。免疫チェックポイント経路は、様々な共刺激および抑制分子からなり、これらは、生理的条件下で自己免疫寛容を維持しかつ免疫系による損傷から組織を保護するために呼応して機能する。腫瘍は、免疫系を回避するために、特定のチェックポイント経路を利用する。従って、このような経路の阻害は、有望な抗癌治療戦略として出現した。
【0165】
細胞傷害性Tリンパ球4(CTLA-4)抗体イピリムマブ(2011年に承認された)は、癌患者の治療に対する恩恵を示した最初の免疫療法薬であった。この抗体は、T細胞に対する抗原提示中に阻害シグナルを妨害する。抗プログラム細胞死1(PD-1)抗体ペムブロリズマブ(2014年承認)は、T細胞により発現されるPD-1受容体の陰性免疫調節シグナル伝達を遮断する。さらなる抗PD-1薬剤が、非小細胞肺癌(NSCLC)の治療のために、2014年に規制当局の認可について申請された。多くの他の免疫チェックポイントを探索する活発な研究が現在行われており、それらは、CEACAM1、NKG2A、B7-H3、B7-H4、VISTA、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、CD137、OX40(CD134とも呼ばれる)、およびキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)である。
【0166】
いくつかの特定の実施形態により、免疫調節剤は、抗体阻害CTLA-4、抗ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、PD-L1およびPD-L2抗体、活性化細胞傷害性リンパ球細胞、リンパ球活性化剤、CEACAMに対する抗体、TIGITに対する抗体、およびRAF/MEK経路阻害剤からなる群より選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの特定の実施形態により、追加の免疫調節剤は、PD-1に対するmAb、PD-L1に対するmAb、PD-L2に対するmAb、CEACAM1に対するmAb、CTLA-4に対するmAb、TIGITに対するmAb、PVRに対するmAb、インターロイキン2(IL-2)またはイリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞から選択される。
【0167】
特定の実施形態では、PD-1シグナル伝達の阻害剤は、PD-1に結合する抗体またはそのフラグメントである。特定の実施形態では、PD-1に結合する抗体またはそのフラグメントは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、AMP-514、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、またはそれらのPD-1結合フラグメントである。特定の実施形態では、PD-1シグナル伝達の阻害剤は、PD-L-1またはPD-L-2に特異的に結合する抗体である。特定の実施形態では、PD-L1またはPD-L2を特異的に結合する抗体は、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、BMS-936559、またはFAZ053、またはそれらのPD-L1もしくはPD-L2結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、PD-1シグナル伝達の阻害剤は、PD-1、PD-L1、またはPD-L2に結合するFc-融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、Fc-融合タンパク質は、AMP-224またはそのPD-1結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、PD-1シグナル伝達の阻害剤は、PD-1、PD-L1、またはPD-L2の小分子阻害剤を含む。特定の実施形態では、PD-1、PD-L1、またはPD-L2シグナル伝達の小分子阻害剤は、下記の1種または複数を含む:N-{2-[({2-メトキシ-6-[(2-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)アミノ]エチル}アセトアミド(BMS 202);(2-((3-シアノベンジル)オキシ)-4-((3-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-2-メチルベンジル)オキシ)-5-メチルベンジル)-D-セリン・塩酸塩;(2R,4R)-1-(5-クロロ-2-((3-シアノベンジル)オキシ)-4-((3-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-2-メチルベンジル)オキシ)ベンジル)-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボン酸;3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-フェニルインドール;3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-フェニル-1h-インドール;L-α-グルタミン、N2,N6-ビス(L-セリル-L-アスパラギニル-L-トレオニル-L-セリル-L-α-グルタミル-L-セリル-L-フェニルアラニル)-L-リシル-L-フェニルアラニル-L-アルギニル-L-バリル-L-トレオニル-L-グルタミニル-L-ロイシル-L-アラニル-L-プロリル-L-リシル-L-アラニル-L-グルタミニル-L-イソロイシル-L-リシル;(2S)-1-[[2,6-ジメトキシ-4-[(2-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メトキシ]フェニル]メチル]-2-ピペリジンカルボン酸;グリシンアミド、N-(2-メルカプトアセチル)-L-フェニルアラニル-N-メチル-L-アラニル-L-アスパラギニル-L-プロリル-L-ヒスチジル-L-ロイシル-N-メチルグリシル-L-トリプトフィル-L-セリル-L-トリプトフィル-N-メチル-L-ノルロイシル-N-メチル-L-ノルロイシル-L-アルギニル-L-システイニル-,環状(1→14)-チオエーテル;またはこれらの誘導体または類似体。
【0168】
その他の実施形態により、追加の薬剤は、化学療法剤である。本発明による抗体と一緒に、または別々に、投与され得る化学療法剤は、限定されないが、ミトキサントロン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカ由来の紡錘体毒:ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン(タキソール)、パクリタキセル、ドセタキセル;アルキル化剤:メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド;メトトレキサート:6-メルカプトプリン、5-フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン;ポドフィロトキシン:エトポシド、イリノテカン、トポテカン、ダカルバジン;抗生物質:ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ブレオマイシン、マイトマイシン;ニトロソウレア:カルムスチン(BCNU)、ロムスチン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン;無機イオン:シスプラチン、カルボプラチン;インターフェロン、アスパラギナーゼ;ホルモン:タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、および酢酸メゲストロールを含む、当該技術分野において既知の抗癌活性を示すこのような薬剤を含み得る。
【0169】
いくつかの実施形態により、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体および関連阻害剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、L-アスパラギナーゼ、トポイソメラーゼ阻害剤、インターフェロン、白金配位化合物、アントラセンジオン置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、およびゴナドトロピン放出ホルモン類似体から選択される。別の実施形態により、化学療法剤は、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン(LV)、イリノテカン、オキサリプラチン、カペシタビン、パクリタキセルおよびドセタキセルからなる群より選択される。1種または複数の化学療法剤を、使用できる。
【0170】
いくつかの実施形態では、本発明による医薬組成物は、癌を治療することにおける使用のため、または免疫応答を強化することにおける使用のためである。
【0171】
用語「免疫応答を強化すること」は、免疫系の応答性を増大すること、およびその記憶を誘導するまたは延ばすことを指す。本発明による医薬組成物は、ワクチン接種時に免疫系を刺激するために使用されてよい。従って、一実施形態では、医薬組成物は、ワクチン接種を改善するために使用できる。
【0172】
特定の実施形態では、癌は、肺、甲状腺、乳房、結腸、メラノーマ、前立腺、肝臓、膀胱、腎臓、頸部、膵臓、白血病、リンパ腫、骨髄、卵巣、子宮、肉腫、胆管、または子宮内膜細胞癌から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
いくつかの実施形態により、本発明による少なくとも1種の抗体またはそのフラグメントを含む医薬組成物および免疫調節剤またはキナーゼ阻害剤を含む医薬組成物は、別々の投与により、癌の治療で使用される。
【0173】
さらに別の態様により、本発明は、それを必要としている対象において癌を治療する方法を提供し、方法は、本発明による抗体または抗体フラグメントの治療的有効量を上記対象に投与することを含む。
【0174】
本明細書で記載の組成物の毒性および治療効力は、例えば、本発明の化合物のIC50(50%阻害を与える濃度)および最大耐容量を測定することにより、細胞培養または実験動物における標準的医薬手順により決定できる。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトでの使用のための様々な投与量の処方に使用できる。投与量は、関連する他の因子の中でも特に、用いられる剤形、選択された投与計画、治療のために使用される薬剤の組成および利用される投与経路に依存して変化してよい。正確な処方、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して、個々の医師により選択できる。治療される状態の重篤度および応答性に応じて、投与はまた、徐放性組成物の単剤投与であってよく、治療過程は、数日~数週間、または治癒が得られるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。投与される組成物の量は、当然のことではあるが、治療される対象、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断、および他の全ての関連因子に依存するであろう。
【0175】
対象に物質、化合物または薬剤を「投与すること」またはそれら「の投与」という用語は、当業者に既知の種々の方法の1つを用いて実施できる。例えば、化合物または薬剤は、経腸的にまたは非経口的に投与されてよい。経腸的は、経口、舌下または直腸内を含む胃腸管を介する投与を指す。非経口的投与は、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、経眼、舌下、鼻腔内、吸入、脊髄内、大脳内、および経皮(例えば、皮膚管を介する、吸収による)投与を含む。化合物または薬剤はまた、再充填可能なまたは生分解性のポリマー装置または、化合物または薬剤の徐放、緩効性放出または制御放出をもたらす他の装置、例えば、貼付剤およびポンプ、または製剤により適切に導入できる。投与することはまた、例えば、1回、複数回、および/または1回または複数回の延長された期間にわたり、実施できる。いくつかの実施形態では、投与は、自己投与を含む直接投与、および薬物処方の行為を含む間接投与の両方を含む。例えば、本明細書で使用されるように、患者に薬物を自己投与するように、または薬物を別の人に投与してもらうように指示するおよび/または患者に薬物の処方箋を与える医師が、患者にその薬物を投与する。
【0176】
抗体は通常、患者の体重1kg当り約0.1~約20mg、一般的には、約0.5~約10mg、および多くの場合、約1~約5mgの範囲で投与される。この関連で、少なくとも12時間、好ましくは少なくとも4日、より好ましくは最大21日の循環半減期を有する抗体を使用することが好ましい。キメラ抗体は、最大14~21日の循環半減期を有すると予測される。場合によっては、大きな初回負荷量に続いて、治療期間にわたり、定期的に(例えば、毎週)維持用量を投与することが有利であるかもしれない。抗体はまた、持続注入のために、徐放送達系、ポンプ、および他の既知の送達系により送達されてもよい。
【0177】
用語「約(about)」は、許容可能な誤差範囲、例えば、特定の値に対して、最大で5%または10%が、想定されるべきであることを意味する。
【0178】
本発明は、別の態様により、試料中のCD112Rを測定するまたは定量化する方法をさらに含み、方法は、生体試料を本発明による抗体または抗体フラグメントと接触させること、および複合体形成のレベルを測定することを含む。
【0179】
本発明は、癌を診断するおよび予知するための方法を更に開示する。
【0180】
ある態様により、本発明は、対象において癌または感染性疾患の診断または予知の方法を提供し、方法は、本明細書で記載の少なくとも1種の抗体を用いて上記対象の生体試料中のCD112Rの発現レベルを測定するステップを含む。
【0181】
用語「生体試料」は、診断またはモニタリングアッセイで使用され得る、生物から得られる種々の試料タイプを包含する。この用語は、血液および生物学的起源の他の液体試料、生検検体、または組織培養物もしくはそれに由来する細胞およびその子孫などの固体組織試料を包含する。さらに、この用語は、循環する腫瘍または他の細胞を含み得る。この用語は特に、臨床試料を包含し、細胞培養物中の細胞、細胞上清、細胞ライセート、血清、血漿、尿、羊水、眼試料用の房水および硝子体を含む生体液、および組織試料を含む。この用語はまた、試薬による処理、可溶化、または特定の成分の濃縮などの、調達後に多少なりとも操作されている試料も包含する。
【0182】
CD112Rの発現レベルの測定は、本明細書で記載のように、標識された抗CD112R抗体により実施できる。発現を測定することは、例えば、ELISAにより、実施できる。
本発明の方法は、上記発現レベルを対照レベルと比較するステップをさらに含み得る。
以下の実施例を、本発明のいくつかの実施形態をより完全に説明するために提供する。それらは、いかなる観点からも、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0183】
実施例
下記の実施例がここで、参照され、それらは上の説明と併せて、非限定的に本発明を説明する。
一般に、本明細書で使用される命名法および本発明で利用される実験手順は、分子、生化学、微生物学、免疫学および組換えDNA技術を含む。このような技術は、当該技術分野で公知である。他の一般的なよく知られた手順に言及する参考文献が、読者の便宜のために、本明細書全体を通して提供される。
【0184】
実施例1.CD112Rの発現は、免疫細胞活性化後に増大される。
Immune Cell Expressionデータベース(DICE、https://dice-database.org/)で見出されるヒト免疫細胞中のCD112R mRNA発現を、図1Aに示す。CD112Rは、NK細胞、B細胞およびT細胞上で主に発現されることが示される。ヒト免疫細胞上のCD112R検出(図1B~1D)のために、50K個の細胞を、クローン13および15のハイブリドーマ由来の30μl/ウェルの上清を用いて染色した。検出のために、ヤギ抗マウス-647Ab(Jackson ImmunoResearch カタログ番号315-605-006)を、1:250希釈で使用した。健康な2人のドナー由来の末梢血単核球(PBMC)を、使用した。検出可能な染色は休止PBMCの表面上で示されなかった(図1B)が、2μg/mlのPHA-L活性化を付与したNK培地(400μg/mlのhIL-2)中で96時間後に、顕著で均一なCD112Rの発現が、観察された(図1C)。試験した両方のNK細胞集団は、活性化状態に関わらずCD112Rを発現した(図1D)。
【0185】
実施例2.CD112Rは、ネクチン-2結合により主に関与する抑制性受容体である。
免疫細胞上で発現される受容体の模式図およびそれらのそれぞれの、腫瘍によりまたは抗原提示細胞(APC)上で発現される、免疫細胞に対する阻害性リガンドであるネクチン-2(CD112)、に対する親和性を、図2に示す。TIGITは、TおよびNK細胞などの免疫細胞上の共抑制受容体であり;DNAM-1(CD226とも呼ばれる)は、免疫細胞(例えば、T細胞)上の活性化受容体であり、およびCD112R(PVRIGとも呼ばれる)は、細胞傷害性免疫細胞(例えば、CD8+TおよびNK細胞)上の共抑制受容体である;本発明のいくつかの実施形態により、抗CD112R mAbは、DNAM-1シグナル伝達を妨げることなく、そのリガンドのネクチン-2とのCD112Rの相互作用を遮断しかつ免疫細胞の活性を増大させる。
【0186】
実施例3.抗CD112R mAbの結合特性および遮断特性の分析
図3Aは、CD112Rを過剰発現するように改変された293T細胞(ヒト胎児腎臓293細胞の極めて遺伝子導入性の高い誘導体)に対する抗CD112Rクローンの特異的結合を示す。CD112R mAbを、親293T細胞またはCD112Rを過剰発現する293T細胞に対し、飽和投与量(66nM)で使用した。過剰発現する細胞のみが、陽性染色シグナルを示し(試験したクローン間の有意な差異はない)、CD112Rに対するmAbの高い特異性を示す。EC-50値を、図3Bにまとめる。N31Sを有するまたは有しないヒトIgG1を含むCD112RキメラmAbを、3倍希釈系列で0.4~99nMの濃度で用い、CD112Rを過剰発現する293T細胞とインキュベートした。検出のために、アロフィコシアニン(APC)(Jackson ImmunoResearch 109-136-170)で標識したヤギ抗ヒト抗体を、1:200希釈で使用した。結合を、FACSにより分析し、EC-50値の計算に使用した。これらの結果は、全ての試験したmAbが、nM未満の、またはnMの親和性で細胞表面発現CD112Rを結合することを示唆する。重鎖のCDR1でのN結合型グリコシル化モチーフを除去するように改変されたN31Sバリアントは、この細胞ベースアッセイで、ヒトCD112Rへの改善された結合(nM以下)を有した。加えて、ヒトネクチン-2を過剰発現する8866細胞(慢性骨髄性白血病細胞)を、アイソタイプ対照の存在下で10μg/ml(156nM)のCD112R-Fcと、または4μg/ml(26.4nM、6倍過剰のCD112R-Fcを意味する)で示されるmAbと、インキュベートした。図3Cで見出されるように、CD112R-Fc結合の遮断は、全ての試験バリアントにより95%を超えた。
【0187】
実施例4.hIgG1 抗CD112R mAbによるCD112Rの遮断は、NK細胞活性化を強化する
健康なドナー由来のNK細胞を、37℃で2時間2:1のE:T比率で種々のmAbと標的細胞株の存在下にてインキュベートした。NK細胞活性化を、CD107aの表面発現の誘導により測定し、対照IgGに対する倍率変化(Y軸)として図4に示す。FcタイプがCD112R mAbの機能に影響するかどうかを評価するために、マウスIgG1(hCD16に対する検出可能な結合のない不活性Fc)を含む抗CD112R mAb(クローン13)の活性を、2種の他の抗CD112R mAb:両方ともhIgG1(hCD16を活性化できるエフェクターFc)を有する、キメラクローン-13-hIgG1、およびキメラクローン-13(N31S)-hIgG1(VH0K0)と比較した。全てのAbバリアントを、2nM(0.3μg/ml)で試験した。図4Aで見出されるように、両方のhIgG-Fc mAbは、不活性なFcAbに対し有意な優位性を示した。従って、さらなる開発を、ヒトIgG1を含む抗CD112R mAbを用いて実施した。添加物および相乗的効果の評価のために、CD112R遮断を、追加のICIと組み合わせ、結果を、図4Bおよび図4Cに示す。試験した2つのmAbクローンによるCD112Rの遮断は、NK活性化(CD107a細胞表面発現)を誘導し、またTIGITおよびPVR(NTX-1088)を含む他の免疫チェックポイント遮断と相乗作用した。全ては、対照IgGに対し統計的に有意であった(p<0.05)。このデータは、特異的mAbによるCD112Rの遮断は、癌標的に対するNK細胞活性を増大し、かつ他の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)mAbと組み合わされるとNK活性化に対する相乗的効果を有し得ることを示唆する。全てのmAbを、3μg/mlで使用した(組み合わせの場合は、3+3μg/ml)。結果を、ヒト癌細胞株A549(図4A、4B 肺腺癌)およびMDA-MB-231(図4C 乳腺癌)について示す。
【0188】
実施例5.抗CD112R mAbによるCD112Rの遮断は、T細胞媒介腫瘍細胞死滅を強化する
健康なドナー由来のPBMCを、ヒト癌細胞株A549(肺腺癌、図5A)およびRKO(結腸直腸癌、図5B)を用いる細胞殺傷アッセイに使用した。全てのmAbを、3μg/mlで使用した(2種の組み合わせの場合は、3+3μg/ml、3種の組み合わせの場合は、3+3+3μg/ml)。抗CD112Rクローン13を、アッセイで使用した。標的細胞殺傷を、エフェクター細胞のみに正規化した(Y軸)。標的細胞殺傷を、製造業者のプロトコールに従いPromega(カタログ番号G9242)によるCellTiter-Glo(登録商標)2.0 Cell Viability Assayキットにより評価した。結果は、CD112R mAbが、有意な標的細胞殺傷、抗TIGITおよび抗PD-1 mAbとの相乗作用をもたらしたことを示す。さらに、全ての3つの受容体の遮断は、個別のmAbおよび2種のmAbの組み合わせの効果に比べて、標的細胞殺傷を有意に増大させた。
【0189】
実施例6.CD112R抗体のヒト化は、mAbの結合および開発可能特性を改善した
抗CD112Rクローン13の重鎖可変領域配列は、ヒト化工程中で対処された、いくつかの制約を含んだ。
軽鎖のCDR1中の脱アミド化モチーフは、Asn(N)のSer(S)による置換(N31Sと命名)により対処された。
クローン-13-hIgG1およびN31S(脱アミド化部位抑止)キメラバリアント(hIgG1)の両方は、極めて高親和性を示し、同じ抗原(国際公開第2016134333号で開示のAb)に結合する参照(対照)Abに比べて、CD112R(PVRIG)を結合することにおいて有意により高い効力(3~30倍)を示した(表1)。
【表1】
【0190】
次に、バリアントを、重鎖のCDR1(Chothia CDR定義)で見つかったN結合型グリコシル化モチーフを除去するように作成した。バリアントは、位置28でアミノ酸残基アスパラギン(N)の、アスパラギン酸(D)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、セリン(S)、およびトレオニン(T)から選択される残基による置換、および位置30でアミノ酸残基トレオニン(T)のアラニン(A)による置換を含んだ。全てのバリアントを、表2にまとめたように、生産性(タイター濃度に基づく)および親和性について試験した。
【表2】
【0191】
相対的親和性の結果に基づき、バリアントN28Tを、選択した。N結合型グリコシル化の除去は、親和性に影響を与えなかったが、生産性を顕著に低下させた。これに対処するために、N結合型グリコシル化モチーフを欠失する、ヒト化重鎖の11種のバリアントを、ヒトIgG1 Fcに対しscFv分子として設計し、生産性について試験した(表3)。上位3つの生産的ヒト化scFvバリアント(#9~11)を、ヒトCD112Rへの結合について試験した(表4)。大部分のヒト化scFvバリアントは、VH0K0(クローン13 N31S)に比べて、顕著に改善された結合を有した。
【表3】
scFv分子を、迅速産生およびバリアントスクリーニングのための技術的解決策としてFcに連結した。
【表4】
【0192】
ヒト生殖系列Abへの近似度および潜在的MHC-2結合モチーフの欠如(iTope(商標)により予測)に基づき、5種のバリアントを、さらなる分析のために選択した。選択されたバリアントの親和性を、表5に示す。全てのバリアントは、キメラ(クローンN31S)Abに比べて、ヒトCD112Rに対し改善された結合を有した。
【表5】
【0193】
実施例7.ヒトおよびカニクイザルのCD112Rへの抗CD112R mAbの類似の結合
ヒト化されたmAbを、内因性のおよび過剰発現されるヒトおよびカニクイザルCD112Rの結合に関し試験した。結果は、ヒトおよびサルCD112Rに対するヒト化されたmAbの親和性が類似していることを示す。表6は、選択されたヒト化(Hu)mAbの結合曲線に基づき計算されたEC50値を要約する。これらのヒト化されたmAbを、ヒトの(タンパク質id:NP_076975.2)またはカニクイザルの(Cyno)(オナガザル科)CD112R(タンパク質id:XP_005549281.1)のいずれかを発現する293T細胞に対し3倍希釈系列で99~0.05nMの濃度で使用した。検出のために、ロバ抗ヒト-647(Jackson ImmunoResearch カタログ番号-109-605-006)Abを、1:250希釈で使用した。
【0194】
表7は、カニクイザルCD8 T細胞およびヒトNK細胞に対する選択されたヒト化mAbの結合曲線に基づき計算されたEC50値を要約する。両細胞は、当該種の内因性CD112Rを発現する。アッセイを、表6に記載のように実施した。国際公開第2016134333号で開示される抗CD112R mAbを、比較のために使用した。相対EC-50もまた、表6および7にまとめる。最大結合も評価し(ヒト最大結合-バックグラウンド)/(カニクイザル最大結合-バックグラウンド)、表8にまとめる。全てのヒト化バリアントは、ヒトとカニクイザル標的の間で完全な交差反応性を有する。さらに、対照Abに比べて、抗原に対する全てのヒト化バリアントの優れた結合が、認められ、5種のヒト化バリアントの3種は、参照Abに比べて2倍を越える結合の改善を有し、残りの2種のバリアントは、約50%の改善を示す。
【表6】
【0195】
【表7】
【表8】
【0196】
実施例8.ヒト化CD112R mAbは、CD112へのCD112Rの結合を効果的に遮断する
ヒト化された抗CD112R抗体は、CD112R-ネクチン-2相互作用の強力な遮断剤である。CD112Rを過剰発現する293T細胞を、氷上で30分間、ヒト化CD112R mAbの存在または非存在下にて、設定投投与量(125nM)で融合タンパク質hNectin-2-mIgG2aとインキュベートした(75k個/ウェル)。抗体を、3つの倍希釈系列で40~0.018nMの範囲の濃度にて加えた。結合したhNectin-2-mIgG2aの量を、Dy-light 647(115-606-071、Jackson ImmunoResearch)で蛍光標識した抗マウス抗体により検出し、FACSにより分析した。EC-50およびEC-90値を、得られた滴定曲線から計算し、下表9にまとめる。結果は、ヒト化されたCD112R抗体が、nM未満の濃度でCD112R-CD112相互作用を遮断できることを示す。
【表9】
【0197】
実施例9.ヒト化抗CD112R mAbによるCD112Rの遮断は、親mAbに比べてNK細胞活性化を強化し、TIGITの遮断と相乗作用する
ヒト化された抗CD112R mAbの遮断効果を試験するために、健康なドナー由来のNK細胞を、37℃で2時間2:1のE:T比率にてA549細胞(肺腺癌)と種々のmAbの存在下でインキュベートした。NK細胞活性化を、CD107aの表面発現の誘導により測定し、対照IgGに対する倍率変化(Y軸)として図6に示す。全てのmAbを、3μg/mlで使用した(組み合わせの場合は、3+3μg/ml)。全ての抗CD112R mAb(灰色バー)は、NK細胞活性化を有意に増大させた(p<0.0005)。さらに、ヒト化された抗CD112R抗体は、親の、ヒト化されない(H0K0)キメラバリアントより優れていた(p<0.05)。さらに、全てのヒト化されたバリアントは、抗TIGIT mAb(黒色バー)と相乗作用し、各個別の治療より活性の有意な増大をもたらした(p<0.015)。
【0198】
全体的に、データは、ヒト化された抗CD112R mAbが、親の抗CD112Rより優れた、NK細胞活性化の強力な誘発剤であり、かつ抗TIGIT mAbと組み合わせた場合、相乗的効果を維持することを示唆する。
【0199】
実施例10.ヒト化抗CD112R mAbによるCD112Rの遮断は、用量依存的様式でNK細胞活性化を強化し、PVRの遮断と相乗作用する
健康なドナー由来のNK細胞を、37℃で1.5時間2:1のE:T比率にてMDA-MB-231細胞(乳腺癌)と種々のmAbの存在下でインキュベートした。NK細胞活性化を、FACSにより分析されるように、CD107aの表面発現の誘導により測定し、対照IgGに対する倍率変化(Y軸)として示す。ヒト化されたmAb(配列番号39で示されるHC可変領域配列および、それぞれ、配列番号40、配列番号41、配列番号42で示されるLC可変領域配列を有する、H11K1、H11K2、およびH11K3)を、4倍希釈系列で53~0.05nMの濃度の範囲にて使用した(図7A)。さらに(図7B)、13nMの設定投与量の各mAbを、13nMの抗PVR Ab(NTX-1088)と組み合わせて試験した。図7Aは、リードヒト化抗CD112R mAbがNK活性化の強力な誘発剤であることを示す。試験した全ての抗CD112R mAbは、EC-50よりほぼ10倍低い0.05nMの濃度まで、NK細胞活性化を有意に(p<0.0172)増大させた。全ての主要なヒト化バリアント(灰色バ-)は、抗PVR NTX-1088 Ab(黒色バー)と相乗作用し、各個別の治療より有意な活性の増大をもたらした(p<0.03)。全体的に、データは、ヒト化された抗CD112R mAbがNK細胞の強力な活性化剤であること、および選択されたバリアントがNK細胞活性化において抗PVR mAbと相乗作用することを示唆する。
【0200】
実施例11.ヒト化抗CD112R mAbは、T細胞の活性化において、非ヒト化対応物および参照CD112R mAbより優れている
T細胞の活性化に対するヒト化抗hCD112R抗体の効果を試験するために、ヒトCD112Rを過剰発現するジャーカット細胞(ジャーカットhCD112R)を、示される抗CD112R mAbを含んでまたは含まずに、抗CD3の存在下でA549細胞(高ネクチン-2発現)とインキュベートした。24時間後に、プレートを、遠心分離し、上清を、収集した。IL-2の定量化を、製造業者のプロトコルに従い、ヒトIL-2 ELISA(BiolegendによるMAX(商標)Deluxe)を用いて実施した。図8Aは、4~0.0625μg/mlの濃度範囲での、全てのヒト化バリアントおよび参照抗CD112R抗体(国際公開第2016134333号で開示)の用量応答アッセイを示す。ほとんどのヒト化クローンは、IL-2分泌の誘導において試験した全ての濃度で、親の、ヒト化されないクローン(H0K0)より優れ、全ての抗CD112Rバリアントは、参照Abより優れていた。図8Bは、26.4~0.1nMの範囲の濃度で、図7Aでのように試験された選択されたヒト化バリアントを示す。参照Abは、24.6nMの最大濃度でのみ添加された。全ての選択されたバリアントは、IL-2分泌の有意な誘導をもたらした(p<0.0003)。比較を、hIgG1の最高濃度まで実施した。さらに、抗体H11K2およびH11K3は、試験した最低濃度でさえも、参照Abより有意に(p<0.004)より強力であり、H11K1は、0.41nMから始まり、参照Abより有意に優れていた(p<0.02)。
これらの結果は、抗CD112R mAbが強力なT細胞活性化の強力な誘発剤であり、既存の参照Abに対して顕著な利点を有することを示す。
【0201】
実施例12.抗CD112R mAbによるCD112Rの遮断は、T細胞活性化を強化する
健康なドナー由来のPBMCを、ヒト癌細胞株A549(肺腺癌)を用いるT細胞活性化アッセイのために使用した。PBMCを、1μg/mlの抗CD3 mAb(OKT3)の存在下で2:1のE:T比率で標的細胞と48時間インキュベートした。
エフェクター細胞を、回収し、CD69(BLG-310906)(図9A)およびCD137(BLG-309804、いずれもBioLegendから)(図9B)の表面発現について染色した。マーカーの表面発現(MFI)を、mAbなし群に正規化した。
【0202】
図9に示すように、ヒト化された抗CD112R mAbによるCD112Rの遮断は、T細胞活性化を強化する。CD112R遮断は、PVR(NTX-1088)およびPD-1(キイトルーダ)などの、追加のICIの遮断を伴う相加的効果を有した。全ての変化は、統計的に有意である(p<0.05)。
【0203】
実施例13.ネクチン-2を発現し、PVRを欠く標的細胞の存在下におけるNK細胞活性化に対する抗CD112Rの効果、および活性に対するPVR発現の影響
健康なドナー由来のNK細胞を、37℃で20時間1:1のE:T比率で種々のmAbおよび標的細胞株の存在下でインキュベートした。NK細胞活性化を、CD137の表面発現の誘導により測定し、抗体なしに対する倍率誘導(Y軸)として図10に示す。ヒト化された抗CD112R mAb(hIgG1 Fcを含むH11K3)を、単独でおよび組み合わせてNTX-1088(抗PVR)または抗TIGIT mAb チラゴルマブ(KEGG DRUG entry D11482)に対し比較した。リードヒト化バリアントによるCD112R遮断は、標的細胞が膜のPVRを発現しなかった場合に全ての治療中で最も強力であった(図10A)。PVRが発現されると、CD112Rは、TIGITの遮断およびPVRの遮断を含む、他の免疫チェックポイント遮断と相乗作用した。NTX-1088および抗CD112Rの組み合わせは、全ての他の介入に比べて、有意に優れていた。全てのmAbを、3μg/mlで使用した(組み合わせの場合は、3+3μg/ml)。結果を、内因性PVRを欠く、ヒト癌細胞株JEG3絨毛癌(図10A)、およびJEG3-hPVR(ヒトPVR過剰発現、図10B)について示す。*p<0.005、**p<0.001、***p<0.0001(両側スチューデントt検定による)。5人のドナーからの2人の代表的データを示す。
【0204】
実施例14.癌標的細胞の存在下でNK細胞活性化に対する抗CD112Rの効果
健康なドナー由来のNK細胞を、37℃で48時間1:1のE:T比率で種々のmAbおよび標的細胞株:H1299(NSCLC、図11A)、A549(肺腺癌、図11B)、またはMDA-MB-231(三種陰性乳癌、図11C)の存在下でインキュベートした。 NK細胞活性化を、CD137の表面発現の誘導により測定し、抗体なしに対する倍率誘導(Y軸)として図11に示す。hIgG1 Fcを有するヒト化抗CD112R mAb(H11K3)を、実施例1でのように、単独でまたは組み合わせて評価した。全ての設定で、単独としてのCD112R遮断は、NK細胞の活性化に対し有意な影響を有した。さらに、CD112Rは、TIGIT(チラゴルマブ KEGG DRUG entry D11482)の遮断およびPVR(NTX-1088)の遮断を含む、他の免疫チェックポイント遮断と相乗作用した。留意すべきことに、NTX-1088および抗CD112R mAbの組み合わせは、試験した全ての細胞株にわたり、全ての他の介入に比べ有意に優れていた。全てのmAbを、2μg/ml(組み合わせの場合、3+3μg/ml)で使用した。*p<0.005、**p<0.001、***p<0.0001(両側スチューデントt検定による)。4人のNK細胞ドナーからの2人の代表的データを示す。
【0205】
実施例15.CD112R mAbは、インビボで腫瘍増殖を抑制する。
mAbの有効性を、動物モデルを用いてインビボで実証する。免疫機能が低下したマウス(NSG、NOGまたは等価物)を、モデルとして使用する。天然にネクチン-2を発現する標的細胞株(例えば、A549、MDA-MB-231、RKO)を、強力な腫瘍増殖(例えば、5x10細胞/マウス)を可能にするのに十分な量で、マウス中に皮下的に(sc)注射した。免疫細胞を得るために、腫瘍細胞を、当該ヒト免疫細胞(例えば、全PBMC、精製したT細胞、精製したCD8+T細胞またはNK細胞)と混合し注射した。
【0206】
マウスを次に、触知できる腫瘍が形成されるまで腫瘍増殖についてモニターした。この時点で、マウスを、対照IgG、抗CD112R mAb、抗PD-1 mAb、またはそれらの組み合わせを受ける、異なる治療群にランダム化する。腫瘍成長抑制に対する個別のおよび組み合わされたICI治療の効果を、対照IgG群に対して経時的に評価する。
【0207】
追加の手法は、腫瘍が樹立された後の免疫細胞の再構成に基づく。ここでは、同じマウスおよび腫瘍細胞を、上記のように使用する。しかし、上述のヒト免疫細胞は、静脈内(iv)に、かつ触知できる腫瘍が樹立された後でのみ、注射される。1日後、マウスを、異なる治療群にランダム化し、腫瘍成長抑制を、上記のように評価する。
【0208】
第3の戦略が、成熟白血球ではなくヒト造血幹細胞を用いて欠損マウスで失われた免疫細胞を再構築する場合に、採用される。造血細胞が末梢で成熟ヒト免疫細胞を生じると、得られた「ヒト化された」マウスは、腫瘍移植およびiv-再構成手法について前述されるように異なるICI mAbの効果の試験のために使用される。
【0209】
実施例16.マウスにおける腫瘍増殖に対する抗CD112Rの効果
抗CD112R mAb治療のインビボ有効性を、マウスで評価した。A549細胞を、健康なオスドナー由来PBMCと1:5のE:T比率(1x10個のPBMCを5x10個のA549細胞と混合)で共移植した。細胞混合物を、100μl/動物の最終体積で、1:1のPBS中細胞:マトリゲル(マトリゲル(登録商標)Matrix,Corning REF 356234)の体積比で、NSG-HLA-A2/HHDオスマウスのひ腹に皮下移植した。移植の3日後に、治療を、週1回10mg/kgで合計5回、対照IgG1 mAb(InVivoMAbヒトIgG1アイソタイプ対照BE0297 BioXCell)もしくは抗CD112R mAb、または抗PD-1 mAb(ペムブロリズマブ)を用いて行った。腫瘍体積を、ノギスにより週一回測定した。35日目に、対照IgG治療群の平均腫瘍体積は、641mmであり、および抗PD-1治療群の腫瘍体積は、840mmであった(図12)。これらの結果は、2元配置分散分析により、有意に異ならなかった。他方で、抗CD112Rで治療した腫瘍の平均体積は、200mmであり、68%の腫瘍増殖抑制を示し、IgGで治療した動物に比べて、有意な腫瘍退縮を示した(***p=0.001、2元配置分散分析)。
【0210】
実施例17.抗体配列
【表10】
【0211】
前述の特定の実施形態の記載は、現在の知識を適用することにより、他者が過度の実験を行わず、また一般的概念から逸脱せずに、様々な適用例に向けてそのような特定の実施形態を容易に改良および/または適合させることができるという本発明の一般的性質を完全に明かにしており、それゆえそのような適合および改良は、開示された実施形態の均等物の意味および範囲に入るものと解釈すべきであり、また、そう解釈されることを意図する。本明細書で用いられた表現または用語は、説明を目的とし、限定を目的とするものではないことを理解されたい。

図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-10-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024507124000001.app
【国際調査報告】