(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】前立腺がんの処置のためのレシニフェラトキシンの投与
(51)【国際特許分類】
A61K 31/357 20060101AFI20240208BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240208BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240208BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240208BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61K31/357
A61P35/00
A61P15/00
A61K47/26
A61K47/02
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548255
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 US2022015934
(87)【国際公開番号】W WO2022173916
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514291864
【氏名又は名称】ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sorrento Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジ, ヘンリー ホンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ナハマ, アレクシス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン, アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB40
4C076CC17
4C076CC27
4C076DD26Z
4C076EE23A
4C086AA01
4C086AA02
4C086CA01
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086MA70
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
(57)【要約】
前立腺がんの処置のためにレシニフェラトキシン(RTX)を投与する方法が、本明細書において開示されている。本開示は、RTXが前立腺がん細胞に対して有効であり得、その際に、TRPV-1が見出され得、TRPV-1がこの必要性を満たしかつ/または他の利益を提供するのを目指すことを、示す。実施形態は、レシニフェラトキシン(RTX)を含む、前立腺がんを処置する方法における使用のための組成物であり、前立腺がんの処置を必要とする対象にRTXを投与する工程をその方法は含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺がんの処置を必要とする対象にレシニフェラトキシン(RTX)を投与する工程を含む、前立腺がんを処置する方法。
【請求項2】
レシニフェラトキシン(RTX)を含む、前立腺がんを処置する方法における使用のための組成物であって、前立腺がんの処置を必要とする対象にRTXを投与する工程を該方法は含む、組成物。
【請求項3】
前記RTXが局所投与される、請求項1~2のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項4】
前記RTXが腫瘍周囲に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項5】
前記対象が前立腺手術を以前に経験した、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項6】
前記方法が濃度0.005mcg/ml~0.01mcg/ml、0.01mcg/ml~0.05mcg/ml、0.05mcg/ml~0.1mcg/ml、0.1mcg/ml~0.15mcg/ml、0.15mcg/ml~0.2mcg/ml、0.2mcg/ml~0.25mcg/ml、0.25mcg/ml~0.3mcg/ml、0.30mcg/ml~0.35mcg/ml、0.35mcg/ml~0.4mcg/ml、0.4mcg/ml~0.45mcg/ml、0.45mcg/ml~0.5mcg/ml、0.5mcg/ml~0.55mcg/ml、0.55mcg/ml~0.6mcg/ml、0.6mcg/ml~0.65mcg/ml、0.65mcg/ml~0.7mcg/ml、0.7mcg/ml~0.75mcg/ml、0.75mcg/ml~0.8mcg/ml、0.8mcg/ml~0.85mcg/ml、0.85mcg/ml~0.9mcg/ml、0.9mcg/ml~0.95mcg/ml、0.95mcg/ml~1.0mcg/ml、1.0mcg/ml~1.1mcg/ml、または1.1mcg/ml~1.2mcg/mlでRTXを投与する工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項7】
用量0.05mcg~0.10mcg、または0.10mcg~0.15mcg、または0.15mcg~0.25mcg、または0.25mcg~0.50mcg、または0.50mcg~0.75mcg、または0.75mcg~1.0mcg、または1.0mcg~1.1mcg、または1.1mcg~1.5mcgのRTXが投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項8】
前記RTXが用量約0.1mcgで投与される、請求項7に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項9】
前記RTXが用量約0.5mcgで投与される、請求項7に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項10】
前記RTXが用量約1.0mcgで投与される、請求項7に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項11】
前記RTXが1回投与で投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項12】
前記RTXが反復用量で投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項13】
前記RTXが毎日投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項14】
前記RTXが一日おきに投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項15】
前記対象が哺乳動物である、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトである、請求項15に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項17】
前記前立腺がんが前立腺腺癌である、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項18】
前記RTXと薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的製剤を投与する工程を前記方法が含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項19】
前記薬学的に受容可能なキャリアが水を含む、請求項18に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項20】
前記薬学的に受容可能なキャリアがポリソルベート80を含む、請求項18もしくは19に記載の使用のための方法または組成物。
【請求項21】
前記薬学的に受容可能なキャリアが緩衝液を含み、必要に応じて、該緩衝液はリン酸緩衝液でありかつ/または前記製剤のpHが約7.0~約7.5であるかもしくは約7.2である、請求項18~20のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2021年2月11日出願された米国仮特許出願第63/148,343号に基づく優先権を主張し、その米国仮特許出願の内容および開示は、すべての目的のためにその全体が参照によって援用される。
【0002】
本開示は、レシニフェラトキシン(RTX)を投与する工程を含む前立腺がんを処置する方法、およびそのような方法における使用のためのレシニフェラトキシンを提供する。
【背景技術】
【0003】
(導入および概要)
TRPV-1レセプターは、ヒトの身体の全体にわたって普遍的に発現される(Velascoら、Handb Exp Pharmacol.、2015;231:449~72)。患者の生検の正常組織と悪性組織とを比較すると、TRPV-1発現が腫瘍組織において高まっていることを示す。腫瘍関連TRPV-1過剰発現は、生検免疫組織化学(図lA)およびウェスタンブロット解析(
図1B)において観察され得る。
【0004】
レシニフェラトキシン(本明細書においてRTXと呼ばれる)は、疼痛管理のために現在使用されているTRPV-1レセプターアゴニストである。RTXを使用する最近の研究は、齧歯類異種移植片腫瘍モデルにおけるヒト膀胱がんに対する、RTXおよびRTX誘導体を含むTRPV-1アゴニストの抗腫瘍活性を示した(Rossiら、Int J Mol Sci.、2019年4月18日;20(8))。
【0005】
さらに、RTXの細胞障害活性が、膵がん細胞、肺がん細胞および前立腺がん細胞についてインビトロで記載されている(Ziglioliら、Acta Biomed.、80(2009)13~20;Hartelら、Gut、55(2006)519~528;Hailら、Apoptosis、8(2003)251~262;Athanasiouら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、354(2007)50~55)。
【0006】
レシニフェラトキシン(RTX)は、カプサイシン(トウガラシの刺激性主要成分)の超強力なアナログとして作用する。RTXは、Eurphorbiaの特定の種から単離された三環系ジテルペンである。ホモバニリル基が、カプサイシンの重要な構造特徴であり、レシニフェラトキシンを典型的なホルボール関連化合物から区別する最も顕著な特徴である。天然RTXは、以下の構造:
【化1】
を有する。
RTXならびにアナログ化合物、例えば、チニアトキシンおよび他の化合物(ジテルペンの20-ホモバニリルエステル(例えば、12-デオキシホルボール13-フェニルアセタート20-ホモバニラートおよびメゼレイン20-ホモバニラート))が、米国特許第4,939,194号;同第5,021,450号;および同第5,232,684号に記載されている。他のレシニフェラトキシン型ホルボイドバニロイド(phorboid vanilloid)もまた、同定されている(Szallasiら(1999)Brit.J.Pharmacol.、128:428~434)。
RTXは、TRPV-1アゴニストとして知られている。TRPV-1(一過性レセプター電位カチオンチャネルスーパーファミリーVメンバー1(バニロイドレセプター1(VR1)としても知られている))は、侵害受容一次求心性ニューロンにおいて顕著に発現される多量体カチオンチャネルである(Caterinaら(1997)Nature 389:816~824;Tominagaら(1998)Neuron、21:531~543)。TRPV-1の活性化は、代表的には、痛みを生じる熱印加によって神経末端で生じ、特定の型の炎症性刺激中にアップレギュレートされる。化学物質アゴニストによる末梢組織におけるTRPV-1の活性化は、カルシウムチャネルの開口および痛覚の伝達を生じる(Szalllasiら(1999)Mol.Pharmacol.、56:581~587)。しかし、TRPV-1を発現するニューロンの細胞体(ガングリオン)への特定のTRPV-1アゴニストの直接付与は、カルシウムチャネルを開き、プログラム細胞死(「アポトーシス」)をもたらす事象のカスケードを誘発する(Karaiら(2004)J.of Clin.Invest.、113:1344~1352)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,939,194号明細書
【特許文献2】米国特許第5,021,450号明細書
【特許文献3】米国特許第5,232,684号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Velascoら、Handb Exp Pharmacol.、2015;231:449~72
【非特許文献2】Rossiら、Int J Mol Sci.、2019年4月18日;20(8)
【非特許文献3】Ziglioliら、Acta Biomed.、80(2009)13~20
【非特許文献4】Hartelら、Gut、55(2006)519~528
【非特許文献5】Hailら、Apoptosis、8(2003)251~262
【非特許文献6】Athanasiouら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、354(2007)50~55
【非特許文献7】Szallasiら(1999)Brit.J.Pharmacol.、128:428~434
【非特許文献8】Caterinaら(1997)Nature 389:816~824
【非特許文献9】Tominagaら(1998)Neuron、21:531~543
【非特許文献10】Szalllasiら(1999)Mol.Pharmacol.、56:581~587
【非特許文献11】Karaiら(2004)J.ofClin.Invest.、113:1344~1352
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
前立腺がんは、一般的な形態のがんであり、いくつかの処置が利用可能ではあるが、the Prostate Cancer Foundationによると米国において1日あたり91件の死亡の原因であり、このことは、9人のうち1人の米国人男性がその人生のある時点で前立腺がんと診断されるだろうと推定する(www.pcf.org/about-prostate-cancer/what-is-prostate-cancer/prostate-cancer-survival-rates/を参照のこと)。したがって、前立腺がんの処置のための改善された組成物、方法および使用の必要性が、存在する。本開示は、RTXが前立腺がん細胞に対して有効であり得、その際に、TRPV-1が見出され得、TRPV-1がこの必要性を満たしかつ/または他の利益を提供するのを目指すことを、示す。
【0010】
したがって、以下の例示的実施形態が提供される。
【0011】
実施形態1は、前立腺がんの処置を必要とする対象にレシニフェラトキシン(RTX)を投与する工程を含む、前立腺がんを処置する方法である。
【0012】
実施形態2は、レシニフェラトキシン(RTX)を含む、前立腺がんを処置する方法における使用のための組成物であり、前立腺がんの処置を必要とする対象にRTXを投与する工程をその方法は含む。
【0013】
実施形態3は、先行する実施形態のうちのいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、そのRTXは局所投与される。
【0014】
実施形態4は、先行する実施形態のうちのいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、そのRTXは腫瘍周囲に投与される。
【0015】
実施形態5は、先行する実施形態のうちのいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、その対象は前立腺手術を以前に経験した。
【0016】
実施形態6は、先行する実施形態のうちのいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、その方法は濃度0.005mcg/ml~0.01mcg/ml、0.01mcg/ml~0.05mcg/ml、0.05mcg/ml~0.1mcg/ml、0.1mcg/ml~0.15mcg/ml、0.15mcg/ml~0.2mcg/ml、0.2mcg/ml~0.25mcg/ml、0.25mcg/ml~0.3mcg/ml、0.30mcg/ml~0.35mcg/ml、0.35mcg/ml~0.4mcg/ml、0.4mcg/ml~0.45mcg/ml、0.45mcg/ml~0.5mcg/ml、0.5mcg/ml~0.55mcg/ml、0.55mcg/ml~0.6mcg/ml、0.6mcg/ml~0.65mcg/ml、0.65mcg/ml~0.7mcg/ml、0.7mcg/ml~0.75mcg/ml、0.75mcg/ml~0.8mcg/ml、0.8mcg/ml~0.85mcg/ml、0.85mcg/ml~0.9mcg/ml、0.9mcg/ml~0.95mcg/ml、0.95mcg/ml~1.0mcg/ml、1.0mcg/ml~1.1mcg/ml、または1.1mcg/ml~1.2mcg/mlでRTXを投与する工程を含む。
【0017】
実施形態7は、先行する実施形態のうちのいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、用量0.05mcg~0.10mcg、または0.10mcg~0.15mcg、または0.15mcg~0.25mcg、または0.25mcg~0.50mcg、または0.50mcg~0.75mcg、または0.75mcg~1.0mcg、または1.0mcg~1.1mcg、または1.1mcg~1.5mcgのRTXが投与される。
【0018】
実施形態8は、実施形態7に記載の使用のための方法または組成物であり、そのRTXは用量少なくとも約0.1mcgで投与される。
【0019】
実施形態9は、実施形態7に記載の使用のための方法または組成物であり、そのRTXは用量少なくとも約0.5mcgで投与される。
【0020】
実施形態10は、実施形態7に記載の使用のための方法または組成物であり、そのRTXは用量少なくとも約1.0mcgで投与される。
【0021】
実施形態11は、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、そのRTXは1回投与で投与される。
【0022】
実施形態12は、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、そのRTXは反復用量で投与される。
【0023】
実施形態13は、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、そのRTXは毎日投与される。
【0024】
実施形態14は、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、そのRTXは一日おきに投与される。
【0025】
実施形態15は、先行する実施形態のいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、その対象は哺乳動物である。
【0026】
実施形態16は、実施形態15に記載の使用のための方法または組成物であり、その哺乳動物はヒトである。
【0027】
実施形態17は、先行する実施形態のうちのいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、その前立腺がん(prostate cancer)は前立腺腺癌(prostate adenocarcinoma)である。
【0028】
実施形態18は、先行する実施形態のうちのいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、そのRTXと薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的製剤を投与する工程をその方法は含む。
【0029】
実施形態19は、実施形態18に記載の使用のための方法または組成物であり、その薬学的に受容可能なキャリアは水を含む。
【0030】
実施形態20は、実施形態18もしくは19に記載の使用のための方法または組成物であり、その薬学的に受容可能なキャリアはポリソルベート80を含む。
【0031】
実施形態21は、実施形態18~20のいずれか一実施形態に記載の使用のための方法または組成物であり、その薬学的に受容可能なキャリアは緩衝液を含み、必要に応じて、その緩衝液はリン酸緩衝液でありかつ/またはその製剤のpHは約7.0~約7.5であるかもしくは約7.2である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】
図1Aおよび
図1Bは、RTXレセプターTRPV-1が前立腺癌(prostate carcinoma)で過剰発現されることを示す。
図1Aは、ヒトの身体全体にわたるTRPV-1の広範な発現を示す。縦軸の単位は、mRNA発現の倍数増加である。
図1Bは、患者生検から評価された、隣接正常組織と比較した前立腺癌におけるTRPV-1過剰発現を示す。目盛り、50μm。
【
図1B】
図1Aおよび
図1Bは、RTXレセプターTRPV-1が前立腺癌(prostate carcinoma)で過剰発現されることを示す。
図1Aは、ヒトの身体全体にわたるTRPV-1の広範な発現を示す。縦軸の単位は、mRNA発現の倍数増加である。
図1Bは、患者生検から評価された、隣接正常組織と比較した前立腺癌におけるTRPV-1過剰発現を示す。目盛り、50μm。
【0033】
【
図2】
図2A、
図2B、および
図2Cは、RTXがTRPV-1
+前立腺癌細胞株の増殖を阻害することを示す。
図2A~
図2Bにおいて、ヒト前立腺癌細胞株DU145およびLNCaPがTRPV-1を発現することがフローサイトメトリーによって示されている。
図2A~
図2Bにおける横軸の単位は、任意蛍光単位である。
図2Cは、RTX処置が前立腺癌細胞株増殖を用量依存的様式で減少することを示す。
【0034】
【
図3A】
図3A、
図3Bおよび
図3Cは、RTXが前立腺癌進行を細胞増殖抑制様式で阻害することを示す。
図3Aは、RTXによる抗腫瘍細胞増殖抑制活性を評価するために、マウスに皮下移植されたヒト前立腺がんDU145細胞についての経時的腫瘍体積を示す。RTXは、移植後28日目に開始して、示された用量で一日おきに局所に(腫瘍周囲に)投与された。その細胞増殖抑制活性は、0.1μg/投与~1μg/投与という試験した範囲で用量非依存的であるようであった。
図3Bは、腫瘍組織切片の共焦点顕微鏡検査によって分析した場合に、RTX投与が、腫瘍組織完全性の喪失(一番上の列)、顕著に減少したCD31
+腫瘍血管構造(中央の列)、および顕著に増加した切断型カスパーセ3
+腫瘍細胞アポトーシス(一番下の列)を生じたことを示す。目盛り、100μm。CD31+血管長および切断型カスパーセ3レベル(蛍光強度の中央値(MFI)として表される)が
図3Cで定量化されている。
【
図3B】
図3A、
図3Bおよび
図3Cは、RTXが前立腺癌進行を細胞増殖抑制様式で阻害することを示す。
図3Aは、RTXによる抗腫瘍細胞増殖抑制活性を評価するために、マウスに皮下移植されたヒト前立腺がんDU145細胞についての経時的腫瘍体積を示す。RTXは、移植後28日目に開始して、示された用量で一日おきに局所に(腫瘍周囲に)投与された。その細胞増殖抑制活性は、0.1μg/投与~1μg/投与という試験した範囲で用量非依存的であるようであった。
図3Bは、腫瘍組織切片の共焦点顕微鏡検査によって分析した場合に、RTX投与が、腫瘍組織完全性の喪失(一番上の列)、顕著に減少したCD31
+腫瘍血管構造(中央の列)、および顕著に増加した切断型カスパーセ3
+腫瘍細胞アポトーシス(一番下の列)を生じたことを示す。目盛り、100μm。CD31+血管長および切断型カスパーセ3レベル(蛍光強度の中央値(MFI)として表される)が
図3Cで定量化されている。
【
図3C】
図3A、
図3Bおよび
図3Cは、RTXが前立腺癌進行を細胞増殖抑制様式で阻害することを示す。
図3Aは、RTXによる抗腫瘍細胞増殖抑制活性を評価するために、マウスに皮下移植されたヒト前立腺がんDU145細胞についての経時的腫瘍体積を示す。RTXは、移植後28日目に開始して、示された用量で一日おきに局所に(腫瘍周囲に)投与された。その細胞増殖抑制活性は、0.1μg/投与~1μg/投与という試験した範囲で用量非依存的であるようであった。
図3Bは、腫瘍組織切片の共焦点顕微鏡検査によって分析した場合に、RTX投与が、腫瘍組織完全性の喪失(一番上の列)、顕著に減少したCD31
+腫瘍血管構造(中央の列)、および顕著に増加した切断型カスパーセ3
+腫瘍細胞アポトーシス(一番下の列)を生じたことを示す。目盛り、100μm。CD31+血管長および切断型カスパーセ3レベル(蛍光強度の中央値(MFI)として表される)が
図3Cで定量化されている。
【0035】
【
図4-1】
図4A、
図4Bおよび
図4Cは、RTX処置がサイトカイン放出症候群を誘導せずIL-6発現を低減することを示す。
図4Aは、炎症性サイトカインの評価のために作製されたサイトカインアレイによってサイトカイン発現を評価するために使用された、示されるとおりに処置された腫瘍から単離された腫瘍(TM)ホモジネート(WCL:全細胞溶解物)を示す。用量依存的様式で減少したIL-6発現が拡大して示されている(
図4A)。
図4Cは、
図4Aのアレイの各位置の内容を示す。
【
図4-2】
図4A、
図4Bおよび
図4Cは、RTX処置がサイトカイン放出症候群を誘導せずIL-6発現を低減することを示す。
図4Aは、炎症性サイトカインの評価のために作製されたサイトカインアレイによってサイトカイン発現を評価するために使用された、示されるとおりに処置された腫瘍から単離された腫瘍(TM)ホモジネート(WCL:全細胞溶解物)を示す。用量依存的様式で減少したIL-6発現が拡大して示されている(
図4A)。
図4Cは、
図4Aのアレイの各位置の内容を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(特定の実施形態の詳細な説明)
本発明の特定の実施形態に対する言及が、ここで詳細になされ、それらの本発明の特定の実施形態の例が添付の図面に示される。本発明は示されている実施形態と組み合わせて記載されるが、それらの示されている実施形態は本発明をそれらの実施形態へと限定することは意図されないことが、理解される。対照的に、本発明はすべての代替物、改変物、および等価物を網羅することが意図され、それらは、添付の特許請求の範囲によって定義される発明の範囲内に含まれ得る。
【0037】
本教示を詳細に記載する前に、特定の組成物またはプロセスの工程は変化し得るので、本開示はそのような特定の組成物にもプロセスの工程にも限定されないことが、理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「ある(1つの)(a)」、「ある(1つの)(an)」および「その(the)」は、文脈が明示的にそうではないと示さない限りは複数の言及を含むことが、留意されるべきである。したがって、例えば、「結合体」の言及は複数の結合体を含み、「細胞」の言及は複数の細胞を含む、などである。
【0038】
数値範囲は、その範囲を規定する数を含める。測定値および測定可能な値は、有効数字およびその測定に関連する誤差を考慮に入れて、概数であることが理解される。また、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」、「含む(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」の使用は、限定的であることは意図しない。上記の全体的説明および詳細な説明は両方とも例示的で説明的であるに過ぎず、本教示を限定しないことが、理解されるべきである
【0039】
上記の説明で具体的に記載されない限り、種々の構成要件「を含む(comprising)」ことを記載する本明細書中の実施形態はまた、記載された構成要件「からなる(consisting of)」かまたは記載された構成要件「から本質的になる(consisting essentially of)」としても企図され、種々の構成要件「からなる(consisting of)」ことを記載する本明細書中の実施形態はまた、記載された構成要件「を含む(comprising)」かまたは記載された構成要件「から本質的になる(consisting essentially of)」としても企図され、種々の構成要件「から本質的になる(consisting essentially of)」ことを記載する本明細書中の実施形態はまた、記載された構成要件「からなる(consisting of)」かまたは記載された構成要件「を含む(comprising)」としても企図される(この互換性は、特許請求の範囲におけるこれらの用語の使用には当てはまらない)。
【0040】
本明細書において使用される節の見出しは、構成上の目的のために過ぎず、望ましい主題を限定するものとしては決して解釈されるべきはない。参照によって援用される何らかの文献が本明細書中で定義される何らかの用語と矛盾する場合には、本明細書が支配する。本教示は種々の実施形態と組み合わせて記載されているが、本教示がそのような実施形態へと限定されることは意図されない。対照的に、本教示は、当業者によって認識されるとおり、種々の代替物、改変物、および等価物を包含する。
【0041】
(A.定義)
「前立腺がん(prostate cancer)」とは、悪性細胞が前立腺に存在するあらゆる状態を指す。
【0042】
本明細書において使用される用語「またはそれらの組合せ」および「またはそれらの組合せ(複数)」とは、その用語の前にある列挙された項のありとあらゆる順列および組合せを指す。例えば、「A、B、C、またはそれらの組合せ(複数)」とは、A、B、C、AB、AC、BC、またはABC、特定の文脈で順序が重要である場合にはさらにBA、CA、CB、ACB、CBA、BCA、BAC、またはCABのうちの、少なくとも1つを含むことが意図される。この例で続けると、1つまたは複数の項目または項の反復を含む組合せ、例えば、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB、以下同様が、明示的に含まれる。特に文脈から明らかではない限り、典型的には、あらゆる組合わせの項目または項の数に対して何の制限も存在しないことを、当業者は理解する。
【0043】
「または」は、文脈が他の様式を必要としない限りは、包括的な意味で使用され、つまり「および/または」と等価である。
【0044】
(B.使用のための例示的な方法および組成物)
前立腺がんを処置するための方法が本明細書において提供され、その方法は、前立腺がんの処置を必要とする対象にレシニフェラトキシン(RTX)を投与する工程を含む。RTXを含む、前立腺がんを処置する方法における使用のための組成物もまた提供され、前立腺がんの処置を必要とする対象にRTXを投与する工程をその方法は含む。一部の実施形態において、その対象は前立腺手術を以前に経験した。
【0045】
一部の実施形態において、そのRTXは局所投与される。一部の実施形態において、そのRTXは腫瘍周囲に投与される。
【0046】
本明細書において記載される組成物および方法は、RTXが有効(例えば、TRPV-1またはそのホモログに結合してそれを活性化することが可能)であり、前立腺がんの処置を必要とする、あらゆる対象で使用するためのものである。一部の実施形態において、その対象は哺乳動物である。一部の実施形態において、その哺乳動物はヒトである。一部の実施形態において、その哺乳動物はネコである。一部の実施形態において、その哺乳動物はイヌである。
【0047】
(1.投薬量)
一部の実施形態において、そのRTXは、用量0.05mcg~0.10mcg、または0.10mcg~0.15mcg、または0.15mcg~0.25mcg、または0.25mcg~0.50mcg、または0.50mcg~0.75mcg、または0.75mcg~1.0mcg、または1.0mcg~1.1mcg、または1.1mcg~1.5mcgで(例えば、腫瘍周囲に)投与される。一部の実施形態において、そのRTXは用量少なくとも約0.1mcg/kg、例えば、0.1mcg/kg~0.2mcg/kg、0.2mcg/kg~0.3mcg/kg、0.3mcg/kg~0.4mcg/kg、0.4mcg/kg~0.5mcg/kg、0.5mcg/kg~0.6mcg/kg、0.6mcg/kg~0.7mcg/kg、0.7mcg/kg~0.8mcg/kg、0.8mcg/kg~0.9mcg/kg、0.9mcg/kg~1mcg/kg、1mcg/kg~1.2mcg/kg、1.2mcg/kg~1.4mcg/kg、1.4mcg/kg~1.6mcg/kg、1.6mcg/kg~1.8mcg/kg、1.8mcg/kg~2.0mcg/kg、2.0mcg/kg~2.2mcg/kg、2.2mcg/kg~2.4mcg/kg、2.4mcg/kg~2.6mcg/kg、2.6mcg/kg~2.8mcg/kg、2.8mcg/kg~3.0mcg/kg、3.0mcg/kg~3.2mcg/kg、3.2mcg/kg~3.4mcg/kg、3.4mcg/kg~3.6mcg/kg、3.6mcg/kg~3.8mcg/kg、4.0mcg/kg~4.2mcg/kg、4.2mcg/kg~4.4mcg/kg、4.4mcg/kg~4.6mcg/kg、4.6mcg/kg~4.8mcg/kg、4.8mcg/kg~5.0mcg/kg、5.0mcg/kg~5.2mcg/kg、5.2mcg/kg~5.4mcg/kg、5.4mcg/kg~5.6mcg/kg、5.6mcg/kg~5.8mcg/kg、または5.8mcg/kg~6.0mcg/kgで(例えば、全身に)投与される。
【0048】
一部の実施形態において、そのRTXは用量0.1mcg、または約0.5mcg、または約1.0mcgで投与される。
【0049】
一部の実施形態において、そのRTXは体積0.2ml~0.5ml、0.5ml~1.0ml、1ml~10ml、20ml~30ml、30ml~40ml、40ml~50ml、50ml~60ml、60ml~70ml、70ml~80ml、80ml~90ml、または90ml~100mlを有する組成物で送達される。
【0050】
一部の実施形態において、そのRTXは1回投与で投与される。一部の実施形態において、そのRTXは反復用量で投与される。一部の実施形態において、そのRTXは1回投与、2回投与、3回投与、4回投与、または5回投与で投与される。
【0051】
一部の実施形態において、そのRTXは毎日投与される。一部の実施形態において、そのRTXは一日おきに投与される。一部の実施形態において、そのRTXは毎週投与される。
【0052】
(2.製剤)
RTX製剤の複数の例が、文献で利用可能である。例えば、Uedaら(2008)J.of Cardiovasc.Pharmacol.、51:513~520、およびUS2015/0190509A1を参照のこと。投与のために適切な任意のRTX製剤が使用され得る。一部の実施形態において、RTXは生理食塩水中での希釈によって投与のために調製される。
【0053】
一部の実施形態において、そのRTX(上記で議論された投薬量であり得る)は薬学的に受容可能なキャリアとともに投与される。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアは水を含む。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアは生理食塩水を含む。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアはポリソルベート80を含む。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアはポリエチレングリコールを含む。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアは糖または糖アルコールを含む。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアはマンニトールを含む。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアはデキストロースを含む。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアは薬学的に受容可能な緩衝液を含む。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアはリン酸緩衝液を含む。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアは薬学的に受容可能な塩を含む。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアはNaClを含む。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアは、有機溶媒(例えば、エタノールまたはDMSO)を、例えば、主に水性組成物中での希釈前にRTXを溶解する際の補助として使用される微量成分または残留成分として含む。
【0054】
一部の実施形態において、その製剤におけるRTXの濃度は、意図される用量の送達のために適切な任意の値であり得る。一部の実施形態において、その製剤におけるRTXの濃度は、保存のために適切な任意の値であり得、意図される用量の送達のために適切な濃度を得るために希釈され得る。
【0055】
一部の実施形態において、その薬学的製剤におけるRTXの濃度は0.1mcg/ml~300mcg/mlの範囲である。
【0056】
一部の実施形態において、その薬学的製剤におけるRTXの濃度は、0.1mcg/ml~1mcg/ml、1mcg/ml~5mcg/ml、5mcg/ml~10mcg/ml、10mcg/ml~20mcg/ml、10mcg/ml~30mcg/ml、20mcg/ml~30mcg/ml、20mcg/ml~50mcg/ml、50mcg/ml~100mcg/ml、100mcg/ml~150mcg/ml、150mcg/ml~200mcg/ml、200mcg/ml~250mcg/ml、または250mcg/ml~300mcg/mlの範囲である。一部の実施形態において、その薬学的製剤におけるRTXの濃度は、0.005mcg/ml~0.01mcg/ml、0.01mcg/ml~0.05mcg/ml、0.05mcg/ml~0.1mcg/ml、0.1mcg/ml~0.15mcg/ml、0.15mcg/ml~0.2mcg/ml、0.2mcg/ml~0.25mcg/ml、0.25mcg/ml~0.3mcg/ml、0.30mcg/ml~0.35mcg/ml、0.35mcg/ml~0.4mcg/ml、0.4mcg/ml~0.45mcg/ml、0.45mcg/ml~0.5mcg/ml、0.5mcg/ml~0.55mcg/ml、0.55mcg/ml~0.6mcg/ml、0.6mcg/ml~0.65mcg/ml、0.65mcg/ml~0.7mcg/ml、0.7mcg/ml~0.75mcg/ml、0.75mcg/ml~0.8mcg/ml、0.8mcg/ml~0.85mcg/ml、0.85mcg/ml~0.9mcg/ml、0.9mcg/ml~0.95mcg/ml、0.95mcg/ml~1.0mcg/ml、1.0mcg/ml~1.1mcg/ml、または1.1mcg/ml~1.2mcg/mlである。
【0057】
その製剤は投与のために適切な任意のpHを有し得る。一部の実施形態において、そのRTXと薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的製剤は、6~7.6の範囲のpHを有する。一部の実施形態において、そのRTXと薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的製剤は6~6.4、6.3~6.7、6.4~6.8、6.8~7.2、7~7.4、または7.2~7.6の範囲のpHを有する。一部の実施形態において、そのRTXと薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的製剤は、pH6.5またはpH7.2を有する。
【0058】
一部の実施形態において、その製剤はポリソルベート80を含む。一部の実施形態において、ポリソルベート80の濃度は0.03%w/v~7%w/vである。一部の実施形態において、ポリソルベート80の濃度は2%w/v~4%w/vである。一部の実施形態において、ポリソルベート80の濃度は3%w/vである。その製剤は緩衝液、例えば、リン酸緩衝液(例えば、リン酸ナトリウム緩衝液)をさらに含み得る。一部の実施形態において、リン酸緩衝液の濃度は10mM~50mMである。一部の実施形態において、リン酸緩衝液の濃度は10mM~30mMである。一部の実施形態において、リン酸緩衝液の濃度は10mMである。一部の実施形態において、リン酸緩衝液の濃度は30mMである。その製剤は7~7.5の範囲のpH(例えば、pH約7.2)を有し得る。一部の実施形態において、上記製剤のうちのいずれかにおいて、RTXの濃度は、10mcg/ml~30mcg/ml、例えば、10mcg/mlまたは25mcg/mlであり得る。一部の実施形態において、その製剤は、例えば、表1においてリン酸緩衝液について示される濃度およびpHで、リン酸緩衝液をさらに含む。一部の実施形態において、その製剤は、例えば、表1においてNaClについて示される濃度で、NaClをさらに含む。両方が存在する場合は、そのリン酸緩衝液およびNaClは、個別の製剤について示される濃度とリン酸緩衝液のpHとの組合せで存在し得る(が、必ずしもそうであるわけではない)。
【0059】
RTXの例示的製剤が以下の表において示される。
【0060】
【0061】
一部の実施形態において、表1における製剤はデキストロースを含む。実施形態において、デキストロースの濃度は0.05%w/v~5%w/vである。一部の実施形態において、デキストロースの濃度は0.8%w/v~5%w/vである。一部の実施形態において、デキストロースの濃度は0.05%w/vである。一部の実施形態において、デキストロースの濃度は0.8%w/vである。一部の実施形態において、デキストロースの濃度は3.0%w/vである。一部の実施形態において、デキストロースの濃度は5.0%w/vである。
【0062】
一部の実施形態において、表1における製剤はマンニトールを含む。一部の実施形態において、マンニトールの濃度は0.8%w/v~3.0%w/vである。一部の実施形態において、マンニトールの濃度は0.8%w/vである。一部の実施形態において、マンニトールの濃度は3.0%w/vである。
【0063】
一部の実施形態において、そのデキストロースまたはマンニトールは、表1において示される製剤から省略される。
【0064】
一部の実施形態において、表1において示される製剤におけるRTXの濃度は、本明細書において開示されるRTXの濃度または濃度範囲のうちのいずれかに調整される。例えば、一部の実施形態において、表1において示される製剤におけるRTXの濃度は0.3mcg/ml~200mcg/mlに調整される。一部の実施形態において、表1において示される製剤におけるRTXの濃度は200mcg/mlである。一部の実施形態において、表1において示される製剤におけるRTXの濃度は0.3mcg/ml~100mcg/mlである。一部の実施形態において、表1において示される製剤におけるRTXの濃度は100mcg/mlである。一部の実施形態において、表1において示される製剤におけるRTXの濃度は、0.3mcg/ml~50mcg/mlに調整される。一部の実施形態において、表1において示される製剤におけるRTXの濃度は25mcg/mlである。別の例として、一部の実施形態において、表1において示される製剤におけるRTXの濃度は、0.3mcg/ml~15mcg/mlに調整される。別の例として、一部の実施形態において、表1において示される製剤におけるRTXの濃度は、0.5mcg/ml~10mcg/mlに調整される。別の例として、一部の実施形態において、表1において示される製剤におけるRTXの濃度は、0.6mcg/ml~1.5mcg/mlに調整される。そのデキストロースまたはマンニトールは、調整されたRTX濃度を有するそのような任意の製剤から省略される。
【0065】
表1における製剤は以下の例示的な方法にしたがって調製され得、それらの例示的な方法は製剤3および製剤5のために提供されるが、当業者によって他の製剤に適合され得る。製剤3は、46mgのリン酸二水素ナトリウム一水和物と94.7mgの無水リン酸水素二ナトリウムと860mgのNaClとを100mlメスフラスコに添加することによって、作製され得る。50mlの注射用水(WFI)が、そのフラスコ中の成分を溶解するために添加され、その後、1.0gのポリソルベート80が添加されて、その成分水溶液が形成される。20mgのRTXがそのメスフラスコ中の成分水溶液に添加され、pHが塩酸/水酸化ナトリウムで7.2に調整される。その後、30mLのPEG 300が添加され、その溶液は超音波処理されて固体が溶解される。RTXは時には水溶液とPEGとの境界面で最初は沈殿するが、超音波処理によって溶液に戻ることが、留意されるべきである。そのフラスコ中の全混合物は水(WFI)で体積(100.00ml)に希釈され、これは反転プロセスによって混合される。その全製剤は、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターに通して濾過される。
【0066】
製剤5は、138mgのリン酸二水素ナトリウム一水和物と284.1mgの無水リン酸水素二ナトリウムと540mgのNaClとを100mlメスフラスコに添加することによって、作製され得る。50mlの注射用水(WFI)が、そのフラスコ中の成分を溶解するために添加され、その後、3.0gのポリソルベート80および800mgのデキストロースが添加されて、その成分水溶液が形成される。20mgのRTXがそのメスフラスコ中の成分水溶液に添加され、pHが塩酸/水酸化ナトリウムで7.2に調整される。その後、その溶液は超音波処理されてその固体すべてが溶解される。(あるいは、そのRTXは小容量のエタノールまたはDMSOにまず溶解され得、その後、この溶液は成分水溶液に添加され得る)。そのフラスコ中の全混合物は水(WFI)で体積(100.00ml)に希釈され、これは反転プロセスによって混合される。その全製剤は、0.2μmのPTFEフィルターに通して濾過される。
【0067】
製剤11にしたがう製剤は、200mcgのRTXと300mcgのポリソルベート80(市販のポリソルベート80を使用する)と5.4mgの塩化ナトリウムと500mcgのデキストロースと1.38mgのリン酸二水素ナトリウム一水和物と2.84mgの無水リン酸水素二ナトリウムと水(WFI)とを使用して1mLに調製され、その後、pHが塩酸/水酸化ナトリウムで7.2に調整される。上記のとおり、そのデキストロースは省略され得る。
【0068】
製剤13にしたがう製剤は、25mcgのRTXと30mgのポリソルベート80(市販のポリソルベート80を使用する)と5.4mgの塩化ナトリウムと50mgのデキストロースと1.38mgのリン酸二水素ナトリウム一水和物と2.84mgの無水リン酸水素二ナトリウムと水(WFI)とを使用して1mLに調製され、その後、pHが塩酸/水酸化ナトリウムで7.2に調整される。上記のとおり、そのデキストロースは省略され得る。
【0069】
製剤化および投与のための技術に関するさらなる詳細は、Gennaro,A.編、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(1990)(Mack Publishing Co.、Easton、Pa.)において見出され得る。
【実施例】
【0070】
(実施例)
(A.前立腺がん細胞株におけるレシニフェラトキシンの抗前立腺癌効果)
TRPV-1はヒトの身体の全体にわたって普遍的に発現される(
図1A)が、TRPV-1が前立腺癌(PCa)において過剰発現された(
図1B)ことが、観察された。詳細には、共焦点レーザー走査顕微鏡検査によって分析した前立腺腺癌の免疫組織化学染色した患者生検は、前立腺がんにおけるTRPV-1過剰発現を示した。
【0071】
RTX抗PCa活性を評価するために、ヒト前立腺がん細胞株DU145およびLNCaPによるTRPV-1発現をフローサイトメトリーによって検証し(
図2A~
図2B)、両方がRTX処置に反応し、増殖の用量依存的減少を示した(
図2C)。詳細には、ヒト前立腺がん細胞株DU145およびLNCaPによるTRPV-1過剰発現がフローサイトメトリーによって実証され(
図2A、
図2B)、両方の細胞株は、増殖アッセイによって示されたとおり、減少した細胞分裂および/またはがん細胞死によって用量依存的様式でRTX処置に反応した(
図2C)。細胞を、
図2Cに示した種々の量のRTXの存在下で培地で培養した。増殖測定値を未処置対照に対して正規化した。
【0072】
前立腺腺癌は潜在的にRTXに対してそのレセプターであるTRPV-1の過剰発現によって増加した感受性を有することが、観察された。さらに、低用量処置の際に減少した前立腺がん細胞増殖は、RTXが強い抗腫瘍能力を発揮することを示唆した。
【0073】
(B.マウス異種移植片腫瘍モデルにおけるレシニフェラトキシンの抗前立腺癌効果)
ヒトDU145前立腺癌細胞を皮下移植するマウス異種移植片腫瘍モデルにおいて、RTXの局所投与による細胞増殖抑制効果が実証された。とりわけ、一日おきに局所投与されるほんの0.1μg/投与程度の低いRTX投与量が、投薬量0.1μg、0.5μg、および1μgにわたって用量非依存的様式で強い細胞増殖抑制効果を発揮する。(
図3A)。
【0074】
解剖した腫瘍組織を、ヘマトキシリン・エオシン染色によって、ならびにCD31(腫瘍血管マーカー)、DRAQ7(核マーカー)、および切断型カスパーセ3(アポトーシス細胞マーカー)についての免疫蛍光によって、評価した。1.0μg/投与、0.5μg/投与、および0.1μg/投与でのRTX投与は、腫瘍組織完全性の喪失を生じ、それは腫瘍細胞アポトーシスおよび壊死を示し、細胞死と一致する組織の特徴的形態変化(対照と比較して大きな実質的に染色されていない領域の出現を含む)によって証明された。(
図3B、一番上の列)。さらに、RTXでのヒト前立腺腫瘍の処置は、その腫瘍組織における連続するCD31+染色構造の減少によって示されるとおり抗腫瘍血管構造効果を発揮し、長経路の血管形態の喪失を示す。(
図3B、中央の列)。さらに、腫瘍細胞アポトーシスが、切断型カスパーセ3レポーター染色の増加によって証明されたとおりRTX投与の際に増加した。(
図3B、一番の下の列;
図3Cにおいて示される定量化)。
【0075】
(C.レシニフェラトキシンでの処置の際に減少したIL-6生成)
RTXに関する一部の研究は、神経学的炎症応答を誘導する能力を報告した。しかし、この研究において、RTX処置の際にサイトカイン放出症候群(CRS)の兆候が何も存在しなかったという点で、サイトカイン発現は著しくは上昇されなかった。実施例Bにおいて記載されたマウス異種移植片腫瘍モデル由来の腫瘍組織ホモジネートサンプルを、壊死エンドポイントで採取し、サイトカインアレイを使用して腫瘍関連炎症性サイトカインレベルについて分析した(
図4A)。
【0076】
インターロイキン6(IL-6)(腫瘍炎症の主要メディエーターのうちの1つと考えられる)は、高用量でのRTXでの処置の際に減少した発現を示す(
図4A~
図4C)。RTX処置の際の減少したIL-6生成は、減少した腫瘍炎症応答を示す。
【0077】
(D.結果の考察および概要)
RTX投与は、進行性腫瘍と闘病する患者の疼痛管理において有望な効果を示した。RTXはヒト前立腺癌異種移植片腫瘍モデルにおいて直接的抗腫瘍活性を発揮することが、ここに示された。RTX処置は、用量非依存的様式で、腫瘍の増殖進行および増殖を顕著に減少した。さらに、RTX処置は、インビボで細胞増殖抑制効果を示した。
【0078】
RTXは細胞表面においてその同族レセプターであるTRPV-1と会合し、それによってCa2+カチオン流入を誘導することが、公知である。がん細胞によるCa2+カチオン取込みは、アポトーシス細胞死を促進することが公知である。しかし、Ca2+カチオン流入は、適応免疫応答の最初期活性化の証明である。したがって、RTX誘導性Ca2+カチオン流入は、IFNg+グランザイムB+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)へとさらに成熟したCD8 T細胞によって発揮される、望ましい抗腫瘍T細胞応答に寄与し得る。
【0079】
RTX投与はCRS関連サイトカイン発現を誘導せず、対照的に、RTX処置はIL-6発現を劇的に減少した。IL-6は、予後不良に関連する腫瘍炎症の主要メディエーターのうちの1つである。
【0080】
IL-6発現は、広範囲の細胞外リガンドによって(しばしば、病原体またはストレスに関連するシグナル、例えば、LPS、TNFα、IL-1βおよび多数のToll様レセプター(TLR)シグナル伝達経路によって)誘発されるNFκBシグナル伝達によって転写制御され、NFκB活性化と統合する。しかし、減少したIL-6生成は、減少した腫瘍組織炎症を示す弱まったNFκBシグナル伝達を示す。さらに、腫瘍組織において見出される減少したIL-6レベルはIL-6誘導性JAK/STAT3活性を低下すると予想され、これは炎症の分子調節における重要な結節点(key node)を示す。
【0081】
IL-6/IFNγおよびそれらのメディエーターであるSTAT3/STAT1はそれぞれ均衡することが示されている(Costa-Pereiraら、PNAS、2002年6月11日、99(12)8043-8047)が、RTX処置は、IFNγの発現上昇を誘導せず、これは抗腫瘍適応免疫応答を示す結果であった。したがって、本明細書において実証されたRTXによって発揮された直接的抗腫瘍活性に加えて、RTXは、強力な抗腫瘍効果を開始する適応免疫応答を誘発し得る。
【国際調査報告】