(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】希土類III族窒化物N極性HEMT
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
H01L29/80 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548611
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 US2022015575
(87)【国際公開番号】W WO2022173718
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ローガン,ジョン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,ブライン ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】タッハン,マハー ビシャラ
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GL07
5F102GM04
5F102GM08
5F102GQ02
5F102GR01
(57)【要約】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)ヘテロ構造は、基板(210)と、N極性チャネル層(220)と、基板とチャネル層との間に配置されたN極性障壁層(218)であって、障壁層は希土類III族窒化物材料を含む、N極性障壁層と、を含む。希土類III族窒化物材料はScAlNとすることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電子移動度トランジスタヘテロ構造であって、
基板と、
N極性チャネル層と、
前記基板と前記チャネル層との間に配置されたN極性障壁層であって、希土類III族窒化物材料を含む、N極性障壁層と、
を有する、前記高電子移動度トランジスタヘテロ構造。
【請求項2】
前記希土類III族窒化物材料は、ScAlN、YAlN、LaAlN、PrAlN、GdAlN、ErAlN、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のヘテロ構造。
【請求項3】
前記希土類III族窒化物材料は、ScAlN、YAlN、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のヘテロ構造。
【請求項4】
さらに、前記基板と前記障壁層との間に、核生成層、バッファ層、及び電荷緩和遷移層のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載のヘテロ構造。
【請求項5】
さらに、前記基板と前記障壁層との間に核生成層を有する、請求項1に記載のヘテロ構造。
【請求項6】
前記核生成層はAlN核生成層を含む、請求項5に記載のヘテロ構造。
【請求項7】
さらに、前記核生成層と前記障壁層との間にバッファ層を有する、請求項5に記載のヘテロ構造。
【請求項8】
前記バッファ層はGaNバッファ層を含む、請求項7に記載のヘテロ構造。
【請求項9】
さらに、前記バッファ層と前記障壁層との間に電荷緩和遷移層を有する、請求項7に記載のヘテロ構造。
【請求項10】
前記電荷緩和遷移層は傾斜希土類III族窒化物合金層を含む、請求項9に記載のヘテロ構造。
【請求項11】
前記電荷緩和遷移層はドープされたGaN層を含む、請求項9に記載のヘテロ構造。
【請求項12】
さらに、前記障壁層に対して前記チャネル層の反対側に配置された少なくとも1つのキャッピング層を有する、請求項1に記載のヘテロ構造。
【請求項13】
前記少なくとも1つのキャッピング層は、エッチング停止層、中間層、上部障壁、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載のヘテロ構造。
【請求項14】
前記チャネル層はGaNチャネル層を含む、請求項1に記載のヘテロ構造。
【請求項15】
前記障壁層の前記希土類III族窒化物材料はN極性配向である、請求項1に記載のヘテロ構造。
【請求項16】
前記バッファ層はN極性配向である、請求項1に記載のヘテロ構造。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は全般的に、高電子移動度トランジスタ(HEMT)に関し、より詳細には、希土類III族窒化物障壁層を含むHEMTの窒素極性(N極性)構成に関する。
【0002】
HEMTデバイスは、多くの用途、特に高周波または高速用途がある半導体デバイスである。
【0003】
多くの既知のIII族窒化物HEMTデバイスは、ヘテロ構造における半導体結晶の方向を指す金属極性配向を利用する。金属極性は、RF用途にとって、より標準的なアプローチである。金属極性ヘテロ構造では、III族窒化物材料中の金属様原子面(ガリウム、アルミニウム、及び/またはインジウムなど)が上面で終端する。
図1A及び1Bに、金属極性構成及びN極性構成をそれぞれ例示する。金属極性構成にはいくつかの利点があるが、いくつかの制限もある。
【0004】
HEMTヘテロ構造内の種々の層に対する材料は、デバイスの性能に大きく影響を与える可能性があり、HEMT高出力トランジスタ内の電荷生成層または障壁層として使用するための最近開発された注目のIII族窒化物材料の1つは、ScAlNである。ScAlNには、AlGaNなどの従来の材料と比べていくつかの利点がある。たとえば、著しくより高い固有分極及び{0001}面においてGaNの格子定数と一致する能力などである。しかし、金属極性HEMTデバイス内でこの材料を使用することに関しては、特に障壁を通るリーク及びチャネルの裏側からバッファ内へのリークに対して、課題が残っている。本開示はこれらの問題を対象とする。
【発明の概要】
【0005】
1つの非限定的な構成では、高電子移動度トランジスタヘテロ構造は、基板と、N極性チャネル層と、基板とチャネル層との間に配置されたN極性障壁層であって、障壁層は希土類III族窒化物材料を含む、障壁層と、を含む。
【0006】
非限定的な構成では、希土類III族窒化物材料は、ScAlN、YAlN、LaAlN、PrAlN、GdAlN、ErAlN、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0007】
さらに非限定的な構成では、希土類III族窒化物材料は、ScAlN、YAlN、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
さらにまた非限定的な構成では、ヘテロ構造は、基板と障壁層との間に、核生成層、バッファ層、及び電荷緩和遷移層のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0009】
他の非限定的な構成、ヘテロ構造は、基板と障壁層との間に核生成層をさらに含む。
【0010】
さらに他の非限定的な構成では、核生成層はAlN核生成層を含む。
【0011】
さらなる非限定的な構成では、ヘテロ構造は、核生成層と障壁層との間にバッファ層をさらに含む。
【0012】
さらにまた非限定的な構成では、バッファ層はGaNバッファ層を含む。
【0013】
他の非限定的な構成では、ヘテロ構造は、バッファ層と障壁層との間に電荷緩和遷移層をさらに含む。
【0014】
さらなる非限定的な構成では、電荷緩和遷移層は、傾斜希土類III族窒化物合金層を含む。
【0015】
さらに他の非限定的な構成では、電荷緩和遷移層は、ドープされたGaN層を含む。
【0016】
さらなる非限定的な構成では、ヘテロ構造は、障壁層に対してチャネル層の反対側に配置された少なくとも1つのキャッピング層をさらに含む。
【0017】
さらにまた非限定的な構成では、少なくとも1つのキャッピング層は、エッチング停止層、中間層、上部障壁、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
他の非限定的な構成では、チャネル層はGaNチャネル層を含む。
【0019】
さらに他の非限定的な構成では、障壁層の希土類III族窒化物材料はN極性配向である。
【0020】
他の非限定的な構成では、チャネル層はN極性配向である。
【0021】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細な説明を、添付図面を参照して以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】A及びBは、III族窒化物の金属極性及びN極性の結晶方位図である。
【
図2】従来技術の金属極性HEMTヘテロ構造構成を例示する図である。
【
図2A】従来技術の金属極性HEMTヘテロ構造構成を例示する図である。
【
図3】さらなるAlGaN背面障壁層を備えた従来技術の金属極性HEMTヘテロ構造構成を例示する図である。
【
図3A】さらなるAlGaN背面障壁層を備えた従来技術の金属極性HEMTヘテロ構造構成を例示する図である。
【
図4】本開示によるN極性HEMTヘテロ構造構成を例示する図である。
【
図4A】本開示によるN極性HEMTヘテロ構造構成を例示する図である。
【
図5】本明細書で開示したヘテロ構造構成の異なる非限定的な実施形態を例示する図である。
【
図6】本明細書で開示したヘテロ構造構成の異なる非限定的な実施形態を例示する図である。
【
図7】本明細書で開示したヘテロ構造構成の異なる非限定的な実施形態を例示する図である。
【
図8】本明細書で開示したヘテロ構造構成の異なる非限定的な実施形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
種々の図面における同様の参照番号及び名称は、同様の構成要素を示す。
【0024】
本開示は、電荷生成層用に希土類III族窒化物材料を利用するHEMTヘテロ構造のN極性構成に関する。特に好適な非限定的な構成の1つでは、電荷生成層としてScAlNを利用する。これは、N極性配向において、電荷生成層用の材料としてScAlNを使用するすべての利点を得るのに役立ち、同時に、前述したリークの問題を解決する。
【0025】
図2及び2Aに、金属極性HEMTヘテロ構造の典型的な配列を示す。
図2に、GaNバッファ層12が堆積された基板10を示す。非意図的にドープされた(UID)GaNチャネル層などのチャネル層16を、バッファ層12上に堆積させることができる。最後に、
図2に概略的に例示するように、障壁層18をチャネル層16上に堆積させることができる。障壁層18は、種々のIII族窒化物材料(IIIA及びIIIB、たとえば、AlGaN、InAlN、ScAlN)から製造することができる。この構成では、前述したように、障壁層が非常に高い2次元電子ガス(2DEG)電荷密度(約~1E13cm
-2超え)をもたらす場合、キャリア閉じ込めが不十分であるために、2DEGからバッファ内への意図しないリーク経路がますます問題になり得る。加えて、2DEGと表面との間に高電界が誘起されるため、破壊が早めに生じ得る。
【0026】
図3及び3Aに、金属極性HEMTヘテロ構造の代替的な配列を示す。
図3に、GaNバッファ層12が堆積された基板10を示す。AlGaN背面障壁層14を通常、バッファ層12上に堆積させることができる。UID GaNチャネル層などのチャネル層16を、背面障壁14上に堆積させることができる。最後に、
図3に概略的に例示するように、障壁層18をチャネル層16上に堆積させることができる。障壁層18は、種々のIII族窒化物材料(IIIA及びIIIB、たとえば、AlGaN、InAlN、ScAlN)から製造することができる。この構成では、
図3Aに示すように、バッファ層12と背面障壁層14との間の界面付近に確立され得る意図しないさらなる2DEGに起因して、前述したように、リークが生じ得る。
【0027】
図4及び4Aに、N極性ヘテロ構造100の1つの非限定的な構成を例示する。この構成では、基板110と、GaNバッファ層112と、電荷緩和遷移層114と、希土類III族窒化物(IIIA、IIIB、ランタニド、たとえば、ScAlN、YAlNなど)障壁層116と、それに続いてチャネル層118とを有する。この構成(N極性構成と言われる)では、ヘテロ構造プロファイル層の結晶方位は、たとえば
図1Bに例示するように、窒素原子面が材料ヘテロ構造の上面で終端するようなものである。
【0028】
1つの構成では、電荷緩和遷移層114は、たとえば、傾斜希土類III族窒化物合金及び/または高濃度にドープされたGaNであってもよい。この遷移層の目的は、結果として得られるヘテロ構造の電子構造を操作して、意図しない2D電子ガスまたは2D正孔ガスが障壁層116の下側界面付近に形成されることを防止することである。したがって、高濃度にドープされたGaN例の場合、好適なドーパントとしては、特定のバッファ構造に応じて、シリコン、炭素、鉄、ベリリウム、マグネシウムなど(GaN内でバンド曲がり及び/またはフェルミ準位ピンニングを引き起こすことが当該技術分野で知られている)が挙げられる。障壁116及びチャネル118がN極性の結晶方位であるため、金属極性構成の場合とは異なり、意図した2DEGが障壁層の反対側に位置するという事実に起因して意図しない2Dガスが形成されることを防止するために、遷移層を用いたさらに積極的なアプローチを利用してもよい。
【0029】
この配向及び構成により、
図2及び3の構成によって生じるリークが著しく減り、その結果、対処できることが分かっている。N極性配向及び金属極性配向の両方において、一対の層、より具体的には、GaNチャネル層及び電荷生成層を使用して2DEGを形成する。金属極性HEMTの場合、電荷生成層の方が表面に近いが、N極性HEMTでは、GaNチャネル層の方が表面に近い。そのより大きい電子親和力のため、GaNチャネル層によって障壁が低くなり、電子リークが防止される。
図2、2Aの金属極性構成では、GaNチャネル層が障壁のバッファ層と同じ側に存在し、チャネルとバッファとの間に背面障壁が追加されない限り、バッファ内へのリークが可能である。さらに、
図3、3Aの金属極性構成では、広く用いられる背面障壁材料は電荷生成層材料と同じである。その結果、背面障壁層の導入によって、背面障壁及びバッファの界面付近に、さらなる意図しない2DEG(
図3Aに示すような)が簡単に誘起される可能性がある。存在する場合、この意図しない2DEGがリーク経路として機能し、金属極性構成におけるデバイス性能を低下させる。逆に、N極性配向(
図4、4A)では、電荷生成層が、意図した2DEGとバッファとの間に存在するため、バッファに対する強化されたリーク障壁として機能する。
【0030】
これらの異なる構成における層と結晶方位の組み合わせにより、電子を2Dシート内にトラップするエネルギー井戸が形成される。この2DEGは、金属極性及びN極性構成の両方に存在する。前述したように、エネルギー井戸のGaNチャネル側の方が、エネルギー障壁が短く、一部の電子がその方向における隣接層内に脱出することができ得る。
【0031】
金属極性構成の場合、エネルギー井戸のGaNチャネル側はバッファ及び基板に向かっている。このリークを減らすために、背面障壁を加えることができるが、残念ながら、加えるのに最も便利な障壁は、エネルギー井戸を作成するのと同じ材料である。これは、電子をトラップする第2のエネルギー井戸を作成する可能性があり、望ましくない。
【0032】
N極性の場合、逆に、エネルギー井戸のGaNチャネル側は表面に向かっている。結果として、GaNチャネルの上に電子障壁を加えても、その新しい障壁の上に任意のさらなるGaN層は必要ではない。したがって、GaNが障壁の上方にあるさらなる材料対は存在しない。したがって、電子リークに対する障壁を加えることによってリークを減らそうとするときに、さらなるチャネルは形成されない。さらにGaN層内の電界は、特定の厚さ未満に留まる限り、電子を井戸内に保持できるため、特定の障壁層を加える必要性が減る。
【0033】
図4に例示するようなヘテロ構造は、N極性であるチャネル層118と障壁層116とを少なくとも有する。最もシンプルな状況では、ヘテロ構造全体がN極性構造を有する。なぜならば、これはヘテロ構造の種々の層の生成中に引き継がれるためである。しかし、すべての層がN極性である必要はなく、いくつかの状況の下では、基板110と障壁層116との間に、N極性でなくてもよい1つ以上の層を有することが望ましいことが想定される。
【0034】
図2、3、及び4と位置合わせされた
図2A、3A、及び4Aに、位置合わせされたヘテロ構造のそれぞれに対する1Dシュレーディンガーポアソンバンド構造シミュレーションとともに、計算された自由キャリア電荷密度分配を示す。これらの図では、本明細書で開示したヘテロ構造によって生成される有利なバンド構造を強調している(
図4A)。
【0035】
図5~8に、本開示によるN極性ヘテロ構造の異なる非限定的な構成を例示する。
【0036】
これらの異なる構成のそれぞれに異なる層があることが明らかになる。当該分野で良く知られているように、これらの層は全般的に、所望の材料ヘテロ構造を生成するために結晶基板上に種々の半導体層を堆積または成長させるエピタキシャル製造プロセスを用いて、基板から成長される。このヘテロ構造は次に、リソグラフィ及び/またはエッチングなどの後続の処理ステップを経て、デバイスになる。このようなデバイスは通常、ゲート及びオーミックコンタクト、ならびに他の層またはコンポーネントを含んでおり、これらはすべて当業者には良く知られている。
【0037】
図5の構成を参照して、ヘテロ構造200は基板210を有すると概略的に例示している。AlN核生成層などの核生成層212を、基板210上に形成することができる。核生成層212に続いて、GaNバッファ214などのバッファ層を核生成層212上に成長させることができる。次に、随意の電荷緩和遷移層216を、バッファ層214上に成長させることができる。
【0038】
この層に続いて、N極性障壁(電荷生成)層218を遷移層216上に堆積させることができ、続いてN極性UID GaNチャネル層220を堆積させることができる。
【0039】
特に、N極性構成は、希土類III族窒化物障壁層218(ScAlN、YAlNなど)と組み合わせて利用できるため、有利である。このような構成によって、ScAlN材料の所望の利点がすべて得られると同時に、
図2及び3で遭遇したリークの問題が著しく低減される。
【0040】
希土類III族窒化物材料用の好適な材料としては、ScAlN、YAlN、LaAlN、PrAlN、GdAlN、ErAlN、及びそれらの組み合わせが挙げられる。特に有用な希土類III族窒化物材料は、ScAlN、YAlN、及びそれらの組み合わせである。
【0041】
図4~8に示す構成では、ヘテロ構造内にさらなる埋め込み層を追加すること(
図2または3などの金属極性構成では必要となる)がもはや必要ではないため、強化された電荷閉じ込めをヘテロ構造内に組み込むことがかなり簡単になる。その代わりに、随意のキャッピング層を表面に追加することができる(
図8など)。したがって、非常に高い2DEG電荷密度を有するHEMTヘテロ構造に対して、N極性配向は金属極性構成と比べてかなりの利点をもたらす。
【0042】
図4~8に示す構成のさらなる利点は、ScAlN(または他の希土類III族窒化物材料)障壁層がもはや空気にさらされず、代わりにヘテロ構造内に位置することである。これは、ScAlN電荷生成層の偶発的処理または表面劣化を防止するのに役立つ。
【0043】
さらに、オーミックコンタクトを、本来はチャネル層と障壁層との間の接触によって形成される2DEGを乱す可能性がある障壁層を通すことなく形成することができる。
【0044】
図6に、デバイス300が、基板310と、核生成層312と、ScAlN障壁層314と、チャネル層316とを有する簡略化された非限定的な構成を示す。この構成では、
図5のバッファ及び遷移層は回避されている。それにもかかわらず、
図6に示すデバイス300は、本明細書で開示したScAlN障壁層を利用することによる望ましい影響をやはりもたらす。
【0045】
図7に、
図6の構成よりもさらに基本的なさらに非限定的な構成を例示する。この構成では、デバイス400は、基板410上に障壁層412が直接堆積されており、障壁層412上にチャネル層414が直接堆積されている。
【0046】
最後に、
図8にさらにまた非限定的な構成を例示する。この構成では、デバイス500が基板510を有し、基板510は、核生成層512、GaNバッファ層514、電荷緩和遷移層516、ScAlN障壁層518、UID GaNチャネル層520、及び任意選択で1つ以上のキャッピング層522を伴う。
【0047】
この構成では、キャッピング層は、エッチング停止層、中間層、上部障壁層、またはこれらの層のうちの1つ以上を組み合わせたものとすることができる。これらのキャッピング層は、非限定的な例として、
図6及び7に例示するような他の構成のいずれにおいても使用することができる。
【0048】
本明細書で開示した種々の構成の基板は、SiC、サファイア、GaN、AlN、Siなど、本明細書で説明した目的に適した任意の基板とすることができる。本明細書で開示した種々のヘテロ構造はN極性配向されているため、電荷生成層及びUIDチャネル層が、N極性配向を有する上面を伴って形成されるように、基板の配向は、核生成層及び/またはバッファ層(存在する場合)を形成するために使用される後続の成長アプローチと一致しなければならない。
【0049】
また当然のことながら、障壁層及びチャネル層のみがN極性である必要がある。他の層は、異なる構成を有することができる。ヘテロ構造全体がN極性配向されることが最も典型的であるが、III族窒化物結晶分極を制御または反転する代替的な戦略が当該技術分野で知られている。最も典型的なアプローチでは、最初の成長層(核生成層など)を、表面が確実にN極性を有するように成長させ、そして、その極性がヘテロ構造の残りの部分に対して維持される。しかし、第1に、障壁層の下方のバッファ及び/または核生成層が、意図しないリーク経路を形成させず、第2に、バッファ及び/または核生成層を用いて、後続のN極性障壁及びチャネル層をうまく成長させ得る限り、バッファ及び/または核生成層は、結晶方位の任意の組み合わせであってもよい。
【0050】
各層が次の層の適切なエピタキシャル成長のためのベース層となるように、個々の層を成長させることが特に効果的である。場合によっては、核生成層は、ある材料から次の材料へ、たとえば基板からバッファ層または障壁層へ移行するのに有用である場合がある。加えて、電荷緩和遷移層及び/または電荷緩和バッファ層は、特定の層の間に配置されたときも有用となる可能性がある。さらに、当該技術分野で知られるように、単一の薄いN極性中間層(AlNなど)または複数の薄いN極性中間層(GaN及びAlNなど)を、障壁層とチャネル層との間に組み込んでもよいことを理解されたい。
【0051】
障壁材料としてScAlNを使用することによって、標準的なAlGaN HEMTと比べて電荷密度が2~3倍増加するため、電荷閉じ込めが強化されて、はるかに大きい利点が得られることを理解されたい。さらに、本明細書で開示したように材料分極をN極性に反転させると、前述したように強化された電荷閉じ込めをもたらす材料構造を、本開示を検討すると当業者には明らかな多くの異なる構成にデザインするためのかなりより多くの自由がもたらされる。
【0052】
また、本開示はヘテロ構造に関して行っているが、このヘテロ構造それ自体は、トランジスタとして機能するためにゲート及び/またはオーミックコンタクトなどの良く知られたコンポーネントを有するデバイスのコンポーネントである可能性があることも理解されたい。
【0053】
1つの図または実施形態に図示及び記載された種々の特徴を、他の図及び実施形態に図示及び記載された他の特徴と、限定することなく組み合わせることができ、このような組み合わせはすべて、本明細書で開示しているものとみなされる。
【0054】
本開示の1つ以上の実施形態について説明してきた。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変更を施してもよいことが理解される。たとえば、異なる材料及び構成を利用することができ、異なる形状または構成を有するトランジスタ構造が本開示から利点を受け得る。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲内である。
【国際調査報告】