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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】低い誘電損失を有するポリイミド
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20240208BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20240208BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C08G73/10
G03F7/023
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548647
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2022053319
(87)【国際公開番号】W WO2022175168
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】202121006450
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】21165039.5
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】202121041899
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バサック, ディパンカール
(72)【発明者】
【氏名】ナーデール, チンメイ
(72)【発明者】
【氏名】シングテ, ラフル
(72)【発明者】
【氏名】バッシ, マッティア
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J043
【Fターム(参考)】
2H197CA02
2H197CA03
2H197CA07
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197CE10
2H197HA03
2H225AF03P
2H225AM73P
2H225AM99P
2H225AN54P
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC03
2H225CC21
2H225CD05
4J043PA01
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA47
4J043TA22
4J043TA71
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA142
4J043UB022
4J043UB052
4J043UB061
4J043UB062
4J043UB071
4J043UB122
4J043UB152
4J043UB282
4J043UB302
4J043UB402
4J043VA022
4J043VA062
4J043ZB22
4J043ZB50
(57)【要約】
本発明は、特定のフッ素化ジアミン部位を含有する新規なポリイミドポリマーであって、優れた誘電性能によって特徴付けられる新規なポリイミドポリマーに関する。本発明は、マイクロエレクトロニクス用途におけるポリマー組成物での前記ポリイミド系ポリマーの使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸ポリマー[ポリマー(PAA)]であって、
- 芳香族カルボン酸成分[成分(AC)]と;
- ジアミン成分[ジアミン(D)]であって、式(I):
【化1】
(ここで、nは、2~10の整数である)
の有機フッ素化ジアミンであるジアミン成分[ジアミン(D)]と;
- 任意選択的に、ジアミン(D)と異なるジアミン成分[ジアミン(D1)]と、
を重合することによって得られるポリアミック酸ポリマー[ポリマー(PAA)]。
【請求項2】
成分(AC)は、好ましくは、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、異性体ジフェニルスルフィド二無水物(TDPA)、トリフェニルジエーテル二無水物(HQDPA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’-ビスフェノールA二無水物(BPADA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6-FDA)、9,9-ビス(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物(6FCDA)、1,4-ビス(トリフルオロメチル)-2,3,5,6ピロメリット酸二無水物(P6FDA)、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシ-トリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物(10-FEDA)、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物(BFDA)又は1,4-ジフルオロピロメリット酸二無水物(PF2DA)からなる群から選択される芳香族テトラカルボン酸無水物である、請求項1に記載のポリマー(PAA)。
【請求項3】
成分(AC)は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6-FDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群から選択される、請求項1又は2に記載のポリマー(PAA)。
【請求項4】
成分(AC)は、式(V):
【化2】
(式中、Rは、任意選択的に一緒に縮合され得る1つ以上の芳香環を含み得る芳香族の四価の基であり、Rは、任意選択的に少なくとも1つの重合性基を含むC~C20アルキル基であり、及びXは、OH、Cl、Br、I、好ましくはOH又はClである)
の化合物から選択される、請求項1に記載のポリマー(PAA)。
【請求項5】
- 前記ポリマー中のジアミン単位の総モル量の5.0~95.0モル%、15.0~85.0モル%、更に20.0~80.0モル%のジアミン(D)と、
- 前記ポリマー中のジアミン単位の総モル量の5.0~95.0モル%、15.0~85.0モル%、更に20.0~80.0モル%のジアミン(D1)と
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー(PAA)。
【請求項6】
- 4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び式(V)の化合物から選択される成分(AC)と、
- 前記ポリマー中のジアミン単位の総モル量の5.0~95.0モル%、15.0~85.0モル%、更に20.0~80.0モル%の式(II)のジアミン(D)と、
- 前記ポリマー中のジアミン単位の総モル量の5.0~95.0モル%、15.0~85.0モル%、更に20.0~80.0モル%の、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、p-フェニレンジアミン(PDA)から選択されるジアミン(D1)と
を重合することによって得られる、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー(PAA)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー(PAA)から得ることができるポリイミドポリマー[ポリマー(PI)]。
【請求項8】
- 4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から選択される成分(AC)と、
- 20.0~80.0モル%、更に25~80モル%の式(II)のジアミン(D)と、
- 20.0~80.0モル%、更に20~75モル%のp-フェニレンジアミン(PDA)と
の重合に由来する単位を含むポリイミドポリマー(PI)。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー(PAA)又は請求項7若しくは8に記載のポリマー(PI)からなる群から選択されるポリマーと、極性有機溶媒とを含む組成物。
【請求項10】
請請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー(PAA)又は請求項7若しくは8に記載のポリマー(PI)からなる群から選択されるポリマーと、感光剤とを含む感光性ポリマー組成物。
【請求項11】
パターン形成方法であって、
a)請求項10に記載の感光性ポリマー組成物のコーティングを基材上に塗布する工程;
b)パターンを有するフォトマスクを用いて、前記塗布されたコーティングをマスキングする工程;
c)工程b)で得られた前記マスクされた基材を化学線源に露光し、且つ前記基材を現像する工程;及び
d)工程c)で得られた前記現像された基材を熱硬化して、ポリイミドのパターンを形成する工程
を含むパターン形成方法。
【請求項12】
前記感光剤は、o-キノンジアジド化合物、アジド化合物及びジアゾ化合物の群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記感光性組成物は、式(V)(式中、Rは、少なくとも1つの重合性基を含むC~C20アルキル基である)の成分(AC)を重合することによって得られる、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー(PAA)及び請求項7又は8に記載のポリマー(PI)からなる群から選択されるポリマーを含み、前記感光剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン及びその誘導体、1-フェニルプロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシ-プロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシムなどのオキシム及びオキシムエステル;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2,2’-ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン誘導体からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー(PAA)及び請求項7又は8に記載のポリマー(PI)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む物品。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー(PAA)及び/又は請求項7若しくは8に記載のポリマー(PI)を含む少なくとも1つの層を含む、半導体デバイス又はマイクロチップのプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年2月16日に出願されたインド特許出願公開第202121006450号、2021年3月25日に出願された欧州特許出願公開第21165039.5号及び2021年9月16日に出願されたインド特許出願公開第202121041899号からの優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、特定のフッ素化ジアミン部位を含有するポリイミドポリマーであって、優れた誘電性能、特に低い誘電損失(Df)によって特徴付けられるポリイミドポリマーに関する。本発明は、マイクロエレクトロニクス用途における前記ポリイミドポリマーの使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
ポリイミドは、その優れた耐熱性、機械的特性並びに優れた耐溶媒性及び耐放射性のため、マイクロエレクトロニクスで広く使用されている。しかしながら、その誘電特性は、比較的高く、誘電率は、約3.4であり、誘電損失率は、0.005~0.010である。これらの値により、様々な分野におけるそれらの利用がある程度制限される。
【0004】
したがって、耐熱性が非常に優れており、誘電率が低く、且つ誘電損失が低いポリイミド系材料の開発は、非常に重要である。
【0005】
ポリイミド材料の誘電率を低下させるためのいくつかのアプローチは、文献中に見ることができる。それらの中でも、材料へのフッ素及び自由体積の導入は、電子特性を高めるための当技術分野で公知の方法である。特に、フッ素は、それが双極子の強度を下げることができるため、材料の誘電率を低下させるために広く利用されている。
【0006】
例えば、中国特許出願公開第10669336号明細書は、フッ素含有二無水物(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、以下では「6-FDA」)と、フッ素含有ジアミン(2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、以下では「BPAFDA」)とをマトリックスとして重合することによって形成されるフッ素含有ポリイミド樹脂組成物を開示しており、低誘電率の低分子量ポリフェニルエーテル及び充填改質剤としてのポリテトラフルオロエチレンを使用している。
【0007】
ポリイミドの誘電特性を低下させる別の方法は、熱分解、光分解、溶媒法又は微孔性材料の導入により空気含有量を増加させ、それにより誘電率を低下させることである。
【0008】
中国特許出願公開第109535713号明細書は、6-FDAと2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(以下では「TFMB」)との反応によって形成されるポリイミド材料でコーティングされたガラス中空微小球を含む複合材料を開示している。
【0009】
ポリイミドは、ほとんどの一般的な溶媒に不溶性であるため、通常、前駆体であるポリ(アミック酸)の形態で加工され、その後、熱イミド化によってイミド構造に熱的に変換される。
【0010】
ポリイミドは、半導体産業において、パッシベーション膜、応力緩衝膜、粒子遮蔽膜、ドライエッチングマスク、微小電気機械システム、層間絶縁膜などに広く使用されている。ポリイミドは、集積回路デバイスの信頼性試験に合格することができるため、ポリイミド系材料は、集積回路デバイスの保護コーティングとして使用されることが多い。更に、ポリイミドは、電子パッケージング、エナメル線、プリント回路基板、センシング素子、分離膜及び構造材料において重要な役割を果たしている。
【0011】
適切な溶解性及び低い吸水性を有する一方、改善された誘電性能を有するポリイミドポリマーを得ることが有利であろう。
【0012】
ここで、特定のフッ素化ジアミンに由来する繰り返し単位を含むポリイミドポリマーは、マイクロエレクトロニクス産業のニーズに合わせて都合よく調整することができる誘電特性、機械特性及び吸水特性を有することが見出された。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、ポリアミック酸ポリマー[ポリマー(PAA)]であって、
- 芳香族カルボン酸成分[成分(AC)]と;
- ジアミン成分[ジアミン(D)]であって、式(I):
【化1】
(ここで、nは、2~10の整数である)
の有機フッ素化ジアミンであるジアミン成分[ジアミン(D)]と、
- 任意選択的に、ジアミン(D)と異なるジアミン成分[ジアミン(D1)]と、
を重合することによって得られるポリアミック酸ポリマー[ポリマー(PAA)]である。
【0014】
成分(AC)は、好ましくは、芳香族テトラカルボン酸無水物を含む。
【0015】
ポリアミック酸ポリマーであるポリマー(PAA)中のアミック酸基の一部又は全部は、エステルの形態であり得る。したがって、「ポリマー(PAA)」という表現は、本明細書の残りの部分では、アミック酸基の一部又は全部がエステルの形態であるポリアミック酸ポリマーを指すために使用される。
【0016】
更なる目的において、本発明は、ポリマー(PAA)から得ることができるポリイミドポリマー[ポリマー(PI)]を提供する。
【0017】
「ポリイミドポリマー(PI/PAA)」という表現は、本明細書の残りの部分では、ポリイミドポリマー[ポリマー(PI)]及びポリアミック酸ポリマー[ポリマー(PAA)]からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を指すために使用される。
【0018】
本発明のポリイミドポリマー(PI/PAA)は、プリント回路基板、フレキシブルプリント回路基板及び銅張積層板などの製造のための材料として有用である。
【0019】
ポリイミドポリマー(PI/PAA)は、様々な溶媒に非常によく溶解するため、ポジ又はネガ現像を伴う光パターニング手順に適切に使用することができる。
【0020】
したがって、本発明の別の目的は、
- 上で定義したポリイミドポリマー(PI/PAA)と;
- 感光剤と
を含む感光性ポリマー組成物である。
【0021】
本発明の感光性ポリマー組成物は、パターンを有するフォトマスクを介して組成物の層を選択的に化学線に露光する工程と、層の露光された部分又は未露光の部分を現像する工程とを含む方法により、プリント回路基板を製造するための材料として有用である。
【0022】
したがって、本発明の別の目的は、基材上に塗布された層にパターンを形成する方法であって、
a)感光性ポリマー組成物のコーティングを基材上に塗布する工程;
b)パターンを有するフォトマスクを用いて、塗布されたコーティングをマスキングする工程;
c)マスクされた基材を化学線源に露光し、且つ感光性膜を現像する工程;及び
d)現像された基材を熱硬化して、ポリイミドのパターンを形成する工程
を含む方法に関する。
【0023】
本発明は、ポリイミドポリマー(PI)及びポリアミック酸ポリマー(PAA)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む溶液を更に提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に関連して、式又は式の一部を特定する記号又は数値の前後での丸括弧「(・・・)」の使用は、単に記号又は数値を文の残部に対してより良好に識別する意図のみを有し;したがって、上記の丸括弧は、省略され得る。
【0025】
本明細書で使用される「膜」という用語は、自己保持膜又は自立性若しくは非自立性のコーティングを意味することが意図される。
【0026】
本明細書で使用される「ポリイミド前駆体」という用語は、特定のカルボン酸化合物とジアミンとの組み合わせから誘導され、且つポリイミドに変換することができる任意のポリイミド前駆体材料を含むことが意図される。
【0027】
本発明の第1の目的は、ポリアミック酸ポリマー[ポリマー(PAA)]であって、
- 芳香族カルボン酸成分[成分(AC)]と、
- ジアミン成分[ジアミン(D)]であって、式(I):
【化2】
(ここで、nは、2~10の整数である)
の有機フッ素化ジアミンであるジアミン成分[ジアミン(D)]と、
- 任意選択的に、ジアミン(D)と異なるジアミン成分[ジアミン(D1)]と、
を重合することによって得られるポリアミック酸ポリマー[ポリマー(PAA)]である。
【0028】
ポリマー(PAA)は、ポリイミドポリマーへのポリアミック酸前駆体である。
【0029】
成分(AC)は、芳香族テトラカルボン酸無水物を含み得る。ポリマー(PAA)の調製のために、任意の芳香族テトラカルボン酸無水物を使用することができる。
【0030】
ポリマー(PAA)を調製するための芳香族テトラカルボン酸無水物は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、異性体ジフェニルスルフィド二無水物(TDPA)、トリフェニルジエーテル二無水物(HQDPA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’-ビスフェノールA二無水物(BPADA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6-FDA)、9,9-ビス(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物(6FCDA)、1,4-ビス(トリフルオロメチル)-2,3,5,6ピロメリット酸二無水物(P6FDA)、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシ-トリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物(10-FEDA)、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物(BFDA)又は1,4-ジフルオロピロメリット酸二無水物(PF2DA)からなる群から選択することができる。
【0031】
芳香族テトラカルボン酸無水物は、有利には、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6-FDA)及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群から選択することができる。
【0032】
本発明の一実施形態では、成分(AC)は、アミンとの反応時にイミドを形成するのに適したカルボン酸基を更に含む芳香族カルボン酸のC~C20エステルである。前記実施形態の好ましい態様では、カルボン酸エステル基は、重合性側鎖を含む。
【0033】
ポリマー(PAA)は、式(V):
【化3】
(式中、Rは、任意選択的に一緒に縮合され得る1つ以上の芳香環を含み得る芳香族の四価の基であり、Rは、任意選択的に少なくとも1つの重合性基を含むC~C20アルキル基であり、及びXは、OH、Cl、Br、I、好ましくはOH又はClである)
のものから選択される芳香族テトラカルボン酸化合物である成分(AC)の重合によって得ることができる。
【0034】
成分(AC)は、式(V)の芳香族テトラカルボン酸化合物から構成され得る。そのような場合、ポリマー(PAA)は、エステルの形態のアミック酸基を含むか、本質的にそれからなるか又はそれからなる。代わりに、成分(AC)は、式(V)のものから選択される芳香族テトラカルボン酸無水物及び芳香族テトラカルボン酸化合物を含み得る。そのような場合、ポリマー(PAA)中のアミック酸基の一部がエステル形態になる。
【0035】
式(V)において、Rは、
【化4】
(式中、Aは、-O-、-C(O)-、-S-、-SO-、-SO-、-(CH-(ここで、lは、1~6の整数である)、-C(CH-、C(CF-、-(CF-(ここで、mは、1~6の整数である)、4~8個の炭素原子を有するシクロアルキレン;1~6個の炭素原子を有するアルキリデン;4~8個の炭素原子を有するシクロアルキリデンからなる群から選択され;Bは、Aと同じであるか又は異なり、-O-、-C(O)-、-S-、-SO-、-SO-、-(CH-(ここで、lは、1~6の整数である)、-C(CH-、-C(CF-、-(CF-(ここで、mは、1~6の整数である)からなる群から選択される)
からなる群から選択することができる。
【0036】
式(V)において、Rは、C~C20アルキル基である。本発明の一実施形態では、Rは、C~C、好ましくはC~Cアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル基である。本発明の別の実施形態では、Rは、少なくとも1つの重合性基を含むC~C20アルキル基から選択される。重合性基は、以下から選択することができる。
【化5】
式(P-1)~(P-3)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、独立して、水素、メチル又はエチルであり;式(P-2)において、R4及びR5の少なくとも1つは、メチル又はエチルである。好ましくは、Rは、少なくとも1つの式(P-1)の重合性基を含むC~C20アルキル基から選択される。有利には、Rは、-(CH-O-C(O)C(R*)=CHであり得、R*は、H又はC~Cアルキルであり、pは、1~5の整数であり;好ましくは、Rは、-(CH-O-C(O)C(CH)=CHであり、pは、1又は2である。
【0037】
ポリマー(PAA)の調製における使用に適した式(V)の化合物の非限定的な例は、
【化6】
であり、以下ではHEMA2-BPDAと呼ぶ。
【0038】
1種以上の芳香族テトラカルボン酸無水物及び/又は式(V)の化合物は、ジアミン(D)及び任意選択的にアミン(D1)と組み合わせて、ポリマー(PAA)の調製において使用することができる。
【0039】
ジアミン(D)は、式(I)の有機フッ素化ジアミンである。式(I)において、nは、2~8、2~6、より好ましくは4~6の任意の整数であり得る。
【0040】
ジアミン(D)は、好ましくは、式(II)、(III)又は(IV)のジアミンから選択される。
【化7】
【0041】
ポリマー(PAA)中のジアミン(D)の量は、ポリマー中のジアミン単位の総モル量に対して100.0モル%~0.1モル%の範囲であり得る。
【0042】
第1の実施形態では、ジアミン(D)は、ポリアミック酸ポリマー(PAA)中の唯一のジアミンである。すなわち、ジアミン(D)は、ポリマー中のジアミン単位の総モル量の100.0モル%を占める。
【0043】
そのような実施形態では、ポリマー(PAA)は、典型的には、ジアミン(D)と、上で詳述した少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸無水物とに由来する繰り返し単位からなる。
【0044】
前記実施形態の一態様では、ポリマー(PAA)は、
a)ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6-FDA)及び式(V)の化合物からなる群から選択される成分(AC)と、
b)式(I)
【化8】
(ここで、nは、2~10、2~6、好ましくは4~6の整数である)
のジアミン(D)と
を重合することによって得られる。
【0045】
前記実施形態の好ましい態様では、ポリマー(PAA)は、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6-FDA)及び式(V)(式中、Rは、-(CH-O-C(O)C(R*)=CHである)の化合物からなる群から選択される成分(AC)を、式(II)、(III)及び(IV):
【化9】
のものから選択されるジアミン(D)と重合することによって得られる。
【0046】
ポリマー(PAA)は、任意選択的に、式(I)のジアミン(D)と異なる追加のジアミン(D1)を含み得る。そのような実施形態では、ポリマー(PAA)は、ジアミン(D)及び少なくとも1種のジアミン(D1)を含む。ジアミン(D)の量は、ポリマー中のジアミン単位の総モル量の99.9~0.1モル%の範囲であり得る。
【0047】
有利には、ジアミン(D)の量は、ポリマー(PAA)中のジアミン単位の総モル量の95.0~5.0モル%、90.0~10.0モル%、75.0~10.0モル%、75.0~12.0モル%であり得る。
【0048】
ポリマー(PAA)の調製において使用可能な適切なジアミン(D1)は、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、p-フェニレンジアミン(PDA)、3,3’-ジアミノ-5,5’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、m-フェニレンジアミン、ジフェニルジメチルメタンジアミン(DMMDA)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(BAPB)、4,4’-ビスフェノールAエーテルジアミン(BAPP)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(BAPS)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル(BAPE)、ジアミノジフェニル(メチル)ケトン(DABP)、4,4’-ジアミノトリフェニルアミン(DATPA)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDI)、4,4’-ジアミノジフェノキシ-1”,4”-ベンゼン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-1”,3”-ベンゼン、3,3’-ジアミノ-ジフェノキシ-1”,3”-ベンゼン、4,4’-ジアミノ-ジフェニル-4”,4-フェニル-イソプロピルプロパン、ペルフルオロイソプロピリデンジアミン(4-BDAF)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FDAM)、1,4-ビス-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(6FAPB)、2,5-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)-tertベンゼン(DNTBHQ-2TF)、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)-ビフェニル(DNBP-2TF)、5-トリフルオロメチル-1,3-ジアミノベンゼン(TFMB)、5-トリフルオロメトキシ-1,3-ジアミノベンゼン(TFMOB)、1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼン(4FPPD)、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル(8FZB)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルオクタフルオロ(8FODB)、ビス(3-アミノフェニル)-4-(トリフルオロメチル)フェニルホスフィンオキシド(m-DA6FPPO)又は2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BPAFDA)、ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサフルオロシクロブタン(以下ではDPFCB-N)からなる群から選択される。
【0049】
有利には、ポリマー(PAA)は、
a)成分(AC)と、
b)5.0~95.0モル%、15.0~85.0モル%、更に20.0~80.0モル%のジアミン(D)と、
c)5.0~95.0モル%、15.0~85.0モル%、更に20.0~80.0モル%のジアミン(D1)と
を重合することによって得ることができる。
【0050】
ジアミン(D)及びジアミン(D1)のモルパーセント割合は、ポリマー中のジアミン単位(ジアミン(D)+ジアミン(D1))の総モル量に対して表される。
【0051】
ポリマー(PAA)は、
a)ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6-FDA)及び式(IV)の化合物からなる群から選択される成分(AC)と、
b)ポリマー中のジアミン単位の総モル量の5.0~95.0モル%、15.0~85.0モル%、更に20.0~80.0モル%の、上で詳述した式(II)及び(III)のものから選択されるジアミン(D)と、
c)5.0~95.0モル%、15.0~85.0モル%、更に20.0~80.0モル%の、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、p-フェニレンジアミン(PDA)、ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサフルオロシクロブタン(DPFCB-N)から選択されるジアミン(D1)と
を重合することによって簡便に得ることができる。
【0052】
有利な特性を有するポリイミドポリマー(PI)の前駆体であるポリマー(PAA)は、
a)4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及びHEMA2-BPDAから選択される成分(AC)と、
b)5.0~95.0モル%、15.0~85.0モル%、更に20.0~80.0モル%の式(II)のジアミン(D)(DAC6)と、
c)5.0~95.0モル%、15.0~85.0モル%、更に20.0~80.0モル%の、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及びp-フェニレンジアミン(PDA)から選択されるジアミン(D1)と
を重合することによって得ることができる。
【0053】
本発明のポリマー(PAA)は、任意の公知の方法により得ることができ、特定の製造方法に限定されない。
【0054】
無水物成分と、ジアミン(D)及び任意選択的にジアミン(D1)との重合は、-20~150℃、好ましくは-5~100℃の温度で適切に行われる。重合は、典型的には、極性溶媒中で行われる。適切な溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン及びそれらの混合物である。その結果、前記溶媒中の溶液の形態において、ポリイミドポリマーの前駆体であるポリアミック酸ポリマーが得られる。
【0055】
本明細書では、ポリアミック酸と有機溶媒とを含む溶液を「ポリアミック酸溶液」とする。上記方法によりポリアミック酸を得る場合、重合プロセスの終了時に得られる反応溶液を「ポリアミック酸溶液」ということがある。
【0056】
ポリアミック酸の重合反応の実施では、溶液粘度は、使用目的(コーティング、キャスティングなど)又は製造目的に応じて適切に選択することができる。作業性の観点から、ポリアミック酸溶液(ポリイミド前駆体溶液)は、約0.01~900Pa・s、好ましくは0.01~400Pa・s、より好ましくは0.02~400Pa・sの、30℃で測定される回転粘度を有することが望ましい。したがって、形成されるポリアミック酸が上記粘度を示す程度に重合反応を行うことが好ましい。
【0057】
ポリアミック酸ポリマー(PAA)は、上で定義したポリアミック酸溶液から水を用いて析出させ、乾燥させることによって粉末形態で単離することができる。
【0058】
上で定義したポリアミック酸ポリマー溶液は、物品の製造にそのまま使用することもできるか、又はポリイミドポリマー[ポリマー(PI)]に変換することができる。
【0059】
したがって、更なる目的において、本発明は、ポリマー(PAA)から得ることができるポリイミドポリマー(PI)を提供する。
【0060】
本発明のポリマー(PI)は、ポリマー(PAA)を任意の公知の方法により脱水して閉環することにより得ることができ、特定の製造方法に限定されない。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、ポリアミック酸ポリマー(PAA)は、ポリアミック酸の脱水環化によりポリイミドポリマー(PI)を得るためにイミド化される。脱水環化は、共沸溶媒を用いた共沸法、熱的方法又は化学的方法を用いて行うことができる。ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化は、1%~100%の任意の比率で行うことができる。すなわち、部分的にイミド化されたポリアミック酸を合成することができる。
【0062】
脱水環化は、熱的方法により、したがってポリマー(PAA)を加熱することにより行うことができる。ポリマー(PAA)を加熱する方法は、特に限定されないが、例えば、ガラス板、金属板又はPET(ポリエチレンテレフタレート)などの支持体上にポリアミック酸溶液をキャスト又は塗布した後、それを80℃~500℃の範囲の温度で熱処理する方法であり得る。したがって、この方法により、ポリイミドポリマー(PI)の膜を得ることができる。
【0063】
代わりに、ポリマー(PAA)の脱水環化は、共沸溶媒を添加し、ポリアミック酸溶液を減圧下で加熱しながら乾燥することを含む共沸法によって行うことができる。通常、加熱は、1分~5時間の範囲内の時間行われることが好ましい。
【0064】
代わりに、加熱時間を短縮し、特定の改良された特徴を有するポリイミドを得るために、ポリアミック酸溶液を、イミド化剤及び/又は脱水触媒の添加、それに続く上記共沸法での加熱を含む化学的方法によってイミド化することができる。
【0065】
イミド化剤は、特定のものに限定されず、三級アミンであり得る。三級アミンは、更に好ましくは、複素環式三級アミンである。複素環式三級アミンの適切な例には、好ましくは、ピリジン、ピコリン、キノリン及びイソキノリンが含まれる。脱水触媒の適切な例には、好ましくは、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水n-酪酸、無水安息香酸及び無水トリフルオロ酢酸が含まれる。
【0066】
ポリアミック酸溶液にイミド化剤及び/又は脱水触媒を添加する際、イミド化剤及び/又は脱水触媒は、有機溶媒に溶解せずに直接添加することができるか、又は有機溶媒に溶解してから添加することができる。
【0067】
上で規定した方法のいずれかによるポリマー(PAA)のイミド化によって得られるポリマー(PI)は、改善された誘電特性、特に低誘電率及び低誘電損失によって特徴付けられる。
【0068】
驚くべきことに、ポリマー(PI)のいくつかの特性は、ポリマー中のジアミン(D)及び(D1)の相対的な量を制御することによって微調整できることが見出された。
【0069】
ポリマー(PI)の誘電率(Dk)は、20GHzにおいて、典型的には4.0未満であり、更に3.5未満であり、更に3.0未満である。
【0070】
ポリマー(PI)の誘電損失(Df)は、通常、20GHzで0.0050未満である。驚くべきことに、ポリマー中のジアミン(D)とジアミン(D1)の比率を制御することにより、20GHzでの誘電損失値が0.0030未満、更に0.0020未満のポリマー(PI)を得ることができることが見出された。
【0071】
本発明のポリマー(PI)の水の取り込みは、室温で24時間水に浸漬した後、1%未満である。
【0072】
ポリマー(PI)は、特有のモノマー組成のため、様々な有機溶媒、特にN-メチルピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン(GBL)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)又はシクロペンタノン(CP)などのマイクロエレクトロニクス産業で使用される有機極性溶媒に可溶性であることも特徴とする。
【0073】
本明細書で使用される「可溶性」は、ポリマー(PI)の少なくとも99重量%が前記溶媒に溶解して均一な溶液を形成することを意味する。
【0074】
優れた電気特性を有するポリイミドポリマー(PI)の注目すべき非限定的な例は、例えば、
a)4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から選択される芳香族テトラカルボン酸無水物と、
b)20.0~80.0モル%、更に25~80モル%のDAC6と、
c)20.0~80.0モル%、更に20~75モル%のp-フェニレンジアミン(PDA)と
の重合に由来する単位を含むポリマーである。
【0075】
本発明の更なる目的は、ポリイミドポリマー(PI/PAA)及び極性有機溶媒を含む組成物である。ポリイミドポリマー(PI/PAA)は、溶媒に溶解することが好ましく、したがって、組成物は、溶液である。
【0076】
溶媒は、ポリイミドポリマーを溶解可能な任意のものであり得る。例えば、溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、溶媒は、N-メチルピロリドン及びγ-ブチロラクトンからなる群から選択される。
【0077】
溶媒は、好ましくは、ポリイミドポリマー100重量部を基準として30~90重量部の量で存在する。
【0078】
本発明のポリイミドポリマー(PI/PAA)は、膜又はコーティングの製造に使用することができる。膜又はコーティングは、
a)ポリマー(PI/PAA)組成物を用いて膜を形成する工程と、
b)膜を熱硬化させる工程と
を含む方法で得ることができる。
【0079】
方法の工程a)では、ポリイミドポリマー(PI/PAA)と極性有機溶媒とを含むポリマー組成物は、典型的には、コーティングによって基材に塗布される。基材は、ガラス又はシリコンウェハであり得る。スピンコーティング、スリットスピンコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング又はカーテンコーティングなどの任意の公知のコーティングプロセスを使用することができる。ポリイミドポリマー(PI/PAA)を含む組成物をコーティングすることにより、基材の表面上に膜が形成され、その後、得られた膜を、50~120℃に含まれる温度でプリベークして溶媒を揮発させることにより、塗布された組成物が熱硬化される。
【0080】
工程a)で得られる膜の厚さは、意図される目的に応じて変化させることができる。膜の厚さは、好ましくは、0.1~100ミクロン、好ましくは1~50ミクロン、より好ましくは5~20ミクロン、更に好ましくは10~15ミクロンの範囲である。
【0081】
工程b)では、膜は、典型的には、「ポストベーク処理」と呼ばれる追加の熱処理工程によって耐熱性ポリイミド膜に変換される。ポストベークは、通常、ホットプレート上において150℃~300℃で1~120分間、オーブン内において同じ温度範囲で10~120分間行われる。ポストベーク後、完全に硬化したポリイミド膜が得られる。
【0082】
本発明のポリイミドポリマー(PI/PAA)は、その優れた誘電特性のため、電子産業及び半導体産業で利用できる可能性がある。
【0083】
従来の非感光性ポリイミドは、様々なレベルの半導体プロセスを生成するのに必要なパターンを製造するために、半導体プロセスで使用されるフォトリソグラフィー及びエッチングプロセス(まとめてマスキングプロセスと呼ばれる)において使用することができる。
【0084】
感光性ポリイミドは、フォトレジストの必要性をなくすことによってポリイミド層パターンの生成を単純にし、生産性の改善とコスト削減をもたらすため、マイクロエレクトロニクスデバイスの開発を大幅に前進させた。
【0085】
本発明のポリイミドポリマー(PI/PAA)は、様々な極性有機溶媒中への溶解性が優れているため、ポジ型又はネガ型のパターン形成を含むパターニング処理において適切に使用することができる。
【0086】
したがって、本発明の更なる目的は、
- 少なくとも1種のポリイミドポリマー(PI/PAA)と、
- 感光剤と
を含む感光性組成物である。
【0087】
感光剤は、好ましくは、ポリイミドポリマー(PI/PAA)100重量部を基準として1~50重量部の量で感光性ポリマー組成物中に存在する。
【0088】
本発明の感光性ポリマー組成物は、溶解速度調整剤、増感剤、接着促進剤及び界面活性剤から選択される1種以上の添加剤を更に含み得る。ポリイミドポリマー(PI/PAA)100重量部ごとに0.1~20重量部の各添加剤を使用することができる。適切な増感剤は、ペリレン、アントラセン、チオキサントン、ミヒラーケトン、ベンゾフェノン及びフルオレンから選択することができる。適切な接着促進剤は、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、N-[3-(トリメトキシ-si)プロピル]アニリン、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シランから選択することができる。
【0089】
好ましい実施形態では、本発明の感光性ポリマー組成物は、感光性ポリマー組成物の合計100重量部に対して、
- 1~70重量部のポリイミドポリマー(PI/PAA)と、
- 1~30重量部の感光剤と、
- 0~20重量部の、上で定義した1種以上の添加剤と
を含む。
【0090】
本発明によれば、化学線への露光後にポリイミドポリマー(PI/PAA)の溶解度を減少又は増加させる任意の感光剤を使用することができる。そのような場合、化学線に露光されたポリマーの溶解性は、未露光のポリマーの溶解性と区別され、適切なパターンを得ることができる。
【0091】
本発明の感光性ポリマー組成物は、パターン形成方法に使用することができ、前記方法は、
a)感光性ポリマー組成物のコーティングを基材上に塗布すること;
b)パターンを有するフォトマスクを用いて塗布されたコーティングをマスキングすること;
c)マスクされた基材を化学線源に露光し、且つ基材を現像すること;及び
d)現像された基材を熱硬化して、ポリイミドパターンを形成すること
を含む。
【0092】
方法の工程a)は、上で詳述したポリイミドポリマー(PI/PAA)の膜を製造する方法の工程a)に本質的に対応する。
【0093】
方法の工程b)では、工程a)で得られた感光性ポリマー組成物のコーティングは、所定のパターンを有するフォトマスクによってマスクされ、フォトマスクと共に化学線に露光される。露光は、必要とされるポリイミドポリマー(PI/PAA)の溶解度の望ましい変化を促進するために、適切な波長の放射を用いて十分な時間行われる。
【0094】
露光プロセスに使用される活性化放射は、特に限定されない。例えば、感光性膜に照射するために、電磁放射、可視光、UV光、電子ビーム、X線又はレーザーを使用することができる。
【0095】
その後、露光された感光性膜を現像液で現像することで露光領域又は非露光領域が除去され、所望のパターンが残される。
【0096】
現像液は、特に限定されず、ポジ型パターン形成又はネガ型パターン形成のいずれが行われるかに依存する。
【0097】
現像後、現像された基材は、通常、150℃~300℃で1~120分間のポストベーク処理により、耐熱性ポリイミド膜に変換される。ポストベーク後、完全に硬化したポリイミドパターンが得られる。
【0098】
ポジ型パターン形成の場合、露光された膜の溶解性は、一般的に、改善され、その結果、適切な現像液で処理すると、化学線に露光された基材の領域が除去される。
【0099】
本発明の第1の実施形態では、ポジ型パターン形成方法における使用に適した感光性組成物が提供される。
【0100】
前記ポジ型パターン形成方法のための感光剤としての使用に適した化合物としては、例えば、o-キノンジアジド化合物、アジド化合物及びジアゾ化合物が挙げられる。感度又は解像度の点でO-キノンジアジド化合物が好ましい。
【0101】
o-キノンジアジド化合物は、少なくとも1つのo-キノンジアジド基を有する様々な構造の多数の化合物から選択することができ、その溶解性は、照射により変化する。
【0102】
特に、様々なo-キノンジアジドスルホン酸エステル又はスルホンアミドが好ましい。
【0103】
以下のo-キノンジアジドスルホン酸エステルを本発明における感光剤として適切に使用することができる。
【化10】
上の各式において、Dは、以下の化合物:
【化11】
から選択される。
【0104】
o-キノンジアジドスルホン酸エステルの典型的な例は、2,2’-ジヒドロキシ-ジフェニル-ビス-(ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸エステル)、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンビス-(ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸エステル)、2,7-ジヒドロキシナフタレン-ビス-(ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸エステル)及びフェノールホルムアルデヒド樹脂とナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸とのエステルである。
【0105】
ポジ型パターン形成組成物及び方法に適した現像液は、水、有機溶媒、アルカリ性水溶液又はそれらの混合物である。適切なアルカリ水溶液としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニア水又は四級アンモニウム塩の水溶液が挙げられる。
【0106】
現像液は、界面活性剤、消泡剤、有機塩基(例えばベンジルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、モルホリン又はトリエタノールアミン)、現像促進剤としての有機溶媒(例えばアルコール、ケトン、エステル、エーテル、アミド又はラクトン)などを含み得る。
【0107】
本発明の別の実施形態では、ネガ型パターン形成方法における使用に特に適した感光性組成物が提供される。そのような実施形態では、ポリイミドポリマー(PI/PAA)は、好ましくは、式(V)(式中、Rは、少なくとも1つの重合性基を含むC~C20アルキル基から選択される)のものから選択される成分(AC)と、ジアミン(D)と、任意選択的にジアミン(D1)とを重合することによって得られる。
【0108】
特に有利なものは、
- 式(V)(式中、Rは、式(P-1)の少なくとも1つの重合性基を含むC~C20アルキル基から選択され;好ましくは、Rは、-(CH-O-C(O)C(R*)=CHであり、R*は、H又はC~Cアルキル基であり、pは1~5の整数であり;より好ましくは、Rは、-(CH-O-C(O)C(CH)=CHであり、pは1又は2である)のものから選択される成分(AC)と、
- 5.0~100.0モル%、10.0~85.0モル%、更に15.0~80.0モル%の式(II)、(III)又は(IV)のジアミン(D)、好ましくはDAC6と、
- 0.0~95.0モル%、15.0~90.0モル%、更に20.0~85.0モル%の、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及びp-フェニレンジアミン(PDA)から選択されるジアミン(D1)と
を重合することによって得られるポリイミドポリマー(PI/PAA)を含む組成物である。
【0109】
前記組成物中の感光剤は、化学線下で、式(V)の成分(AC)中に存在する重合性基の重合を促進することができる化合物の中から選択される。
【0110】
適切な感光剤は、公知のラジカル重合開始剤の中から選択することができる。非限定的な例は、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン及びその誘導体、1-フェニルプロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシ-プロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシムなどのオキシム及びオキシムエステル;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2,2’-ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン誘導体である。
【0111】
感光性組成物は、架橋剤を更に含み得る。適切な架橋剤の非限定的な例は、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ビスフェノールAジメタクリレート及びその誘導体、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンメタクリレート(TMPTMA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールメタクリレートである。
【0112】
本発明の感光性ポリマー組成物が方法の工程c)においてネガ型パターン形成方法で使用される場合、露光された基材を現像液で現像することで基材の非露光領域のポリイミドポリマー(PI/PAA)が除去され、所望のパターンが残される。
【0113】
現像液は、特に限定されない。現像液としては、シクロペンタノン、ガンマ-ブチロラクトン、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、Rhodiasolv(登録商標)Polar clean、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのポリイミドポリマー(PI/PAA)が溶解可能な任意の溶媒を例示することができる。
【0114】
感光性ポリマー組成物中のポリマー(PI/PAA)としてポリイミドポリマー(PI)が使用される場合、ポリアミック酸前駆体のポリイミドへの変換が関与しないため、より低い温度でレリーフパターンを形成することができる。したがって、この場合のパターン形成方法は、工程d)において、低いポストベーク温度、典型的には180~200℃の範囲の温度を必要とする。
【0115】
感光性ポリマー組成物中のポリマー(PI/PAA)としてポリアミック酸ポリマー(PAA)を使用する別の場合、ポリアミック酸前駆体を含む現像された膜は、工程d)で熱プロセスを受け、膜は、完全にイミド化され、ポストベークされる。したがって、ポリイミド前駆体を含む現像された膜は、少なくとも300℃、好ましくは300~350℃の範囲の温度で加熱されてポリアミック酸がポリイミドに変換され、得られた膜が硬化されることで最終的なポリイミドパターンが得られる。
【0116】
本発明のポリイミドポリマー(PI/PAA)及びポリイミドポリマー(PI/PAA)を含む感光性組成物は、層間絶縁膜、パッシベーション膜、緩衝コーティング膜の形成のために、又は半導体デバイスの多層プリント基板のための絶縁膜として適している。本発明のポリマー組成物は、マイクロチップにおける再配線層の形成に適している。
【0117】
したがって、本発明の更なる目的は、本発明のポリイミドポリマー(PI/PAA)を含む物品である。特に、物品は、本発明のポリイミドポリマー(PI/PAA)を含む少なくとも1つの層を含む。
【0118】
ポリアミック酸ポリマー(PAA)、ポリイミドポリマー(PI)及びポリイミドポリマー(PI/PAA)に関して上で詳述した全ての好ましい事項は、前記ポリマーの少なくとも1つを含む組成物、並びにそれから得られる膜又は物品、並びに膜又はパターンの製造方法に等しく当てはまる。
【0119】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、ある用語が不明確になり得る程度にまで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0120】
本発明は、ここで、以下の実施例に関連して説明されるが、その目的は、単に例示的であり、本発明を限定するものではない。
【実施例
【0121】
原材料
4,4’-(ペルフルオロへキサン-1,6-ジイル)ジアニリン(DAC6)は、P.V.Herrera,H.Ishida,Journal of Fluorine Chemistry 130(2009)573-580に記載の方法に従って調製した。
【0122】
4,4’-(ペルフルオロヘキサン-1,4-ジイル)ジアニリン(DAC4)は、P.V.Herrera,K.Doyama,H.Abe,H.Ishida,Macromolecules 2008,41,9704-9714に記載の方法に従って調製した。
【0123】
HEMA2-BPDA、BPDAのメチルエステル/酸塩化物誘導体(Me-BDPA)及びODPAのメチルエステル/酸塩化物誘導体(Me-ODPA)は、米国特許第4040831号明細書に開示の方法に従って調製した。
【0124】
Sigma Adrichから市販されている3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)。
【0125】
Chem-Impex Int’l Inc.から市販されている4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6-FDA)。
【0126】
TCI Chemicals(India)Pvt.Ltd.から市販されている4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)。
【0127】
TCI Chemicals(India)Pvt.Ltd.から市販されているp-フェニレンジアミン(PDA)。
【0128】
TCI Chemicals(India)Pvt.Ltd.から市販されている2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BPAFDA)。
【0129】
ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサフルオロシクロブタン(DPFCB-N)は、国際公開第2020/229227号パンフレットに記載の方法に従って調製した。
【0130】
感光剤:Miwon Commercial Co.,Ltd.から市販されている、GBL中の2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンビス-(ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸エステル(総固形分濃度:30重量%;GBL:65重量%)。
【0131】
Sigma Aldrichから市販されている水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)。
【0132】
ポリイミド合成については、反応前に二無水物である6-FDA、ODPA及びBPDAを真空昇華によって精製した。アミンであるPDA、DAC4及びDAC6は、使用前に新たに蒸留/結晶化し、不活性雰囲気下において暗所で保管した。全ての溶媒は、新たに蒸留し、反応の前に標準的な乾燥手順に従って乾燥した。
【0133】
機械的特性の測定
機械的特性は、ASTM D638タイプV試験片を使用して1Nのロードセルを有するZWICK Z030で10mm/分の速度において測定した。
【0134】
動的機械分析装置(DMA)は、TA instrumentのRSA-G2を使用し、窒素下で3℃/分の昇温速度において25℃から350℃までポリイミド膜上で実施した。
【0135】
熱分析:
TGA測定は、N雰囲気中、TA instrumentsのQ500上で実施した。
【0136】
DSC測定は、N雰囲気中、TA instrumentsのQ2000上で実施した。
【0137】
誘電率測定:誘電率(Dk)及び誘電損失(Df)は、IPC-TM-650 2.5.5.13標準法に従って、分割シリンダ誘電体共振器を使用して20GHzで測定した。
【0138】
粘度測定:
ポリアミック酸溶液の粘度は、30℃(200rpm、スピンドル34)でブルックフィールド粘度計により測定した。
【0139】
ポリイミド樹脂の粘度は、NMP中、30℃、固形分濃度0.75重量%で希薄溶液粘度計により測定した(SI Analytics、キャピラリー番号:1068421)。
【0140】
実施例1.ポリアミック酸A1の調製
典型的な重合では、磁気撹拌子と、窒素入口/出口とを備えた三口丸底フラスコに、4,4’-(ペルフルオロヘキサン-1,6-ジイル)ジアニリン(DAC6)(38.7mmol)及びジメチルアセトアミド(以下ではDMAc)(固形分15重量%)を入れた。この撹拌されている溶液に、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)(38.7mmol)を少しずつ添加し、得られた溶液を室温で8時間撹拌することで、粘稠なポリ(アミック酸)溶液を得た。これはその後の使用のために冷蔵庫で保管した。A1の組成及びいくつかの溶媒への溶解性を表1に示す。
【0141】
実施例2~15及び比較例CA1~CA4
実施例1の手順に従って、A2~A15及び比較例CA1~CA4として表される本発明による更なるポリアミック酸を、異なるジアミン化合物及びジアミン化合物と異なる二無水物化合物との混合物から出発して調製した。得られたポリアミック酸の組成及び一部の溶媒への溶解性が表1に示されており、ポリアミック酸ポリマー中の異なる成分のモル比が表2に示されている。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
実施例16:ポリイミドポリマーの調製
乾燥窒素の流れ下において、ジアミン化合物DAC6(4g、8.3mmol)をNMP(30mL)に溶解した。この撹拌されている溶液に、二無水物化合物6-FDA(3.74g、8.43mmol)を少しずつ添加し、溶液を25℃で8時間撹拌した。続いて、トルエン(12mL)、GBL(0.145g、1.65mmol)及びピリジン(0.26g、3.3mmol)を添加し、温度を180℃に上げた。水を共沸蒸留により除去しながら、溶液をこの温度で4時間撹拌した。溶液を室温まで冷却し、ポリイミド樹脂を水から析出させ、濾過した。ポリマー粉末を熱水で洗浄し、続いてMeOHで洗浄し、真空オーブン中90℃で8時間乾燥させた。このようにしてポリイミドB1を得た。
【0145】
同じ手順に従って、ただしDAC6の代わりにDAC4を使用して、ポリイミドB2を得た。
【0146】
粘度及びいくつかの溶媒中への溶解性を表3に示す。
【0147】
【表3】
【0148】
データは、本発明のポリイミドポリマーB1及びB2が多くの異なる溶媒に可溶性であることを示している。
【0149】
当業者は、モノマーの化学量論に基づいてポリマーの固有粘度を調整することができる。
【0150】
実施例17:誘電測定のためのポリイミド膜の作製:
実施例1~15並びに比較例CA1、CA2及びCA4で得られた粘稠なポリアミック酸溶液を、PTFEシリンジ(0.45μ)を通して濾過し、バーコーティングによってガラス基材上にキャストした。各キャスト膜をフラットオーブンに移し、50℃から300℃までの温度でゆっくりと硬化させ、最後に300℃で1.0時間硬化させることで、透明な膜(厚さ:30~40ミクロン)を得た。
【0151】
得られた膜F1~F15及び比較の膜CF1~CF4の誘電特性、熱分析及び機械的特性を表4及び表5に示す。
【0152】
【表4】
【0153】
表4のデータは、本発明のポリイミドが、異なるジアミンモノマーを重合することによって調製されたポリイミドと比較して、改善された誘電特性によって特徴付けられることを示している。特に、出願人は、驚くべきことに、本発明のポリイミドを調製するためのモノマーとしていくつかの特定の有機フッ素化ジアミンを選択することで、これまで達成できなかったポリイミドの誘電損失値Dfを得ることが可能になることを見出した。
【0154】
【表5】
【0155】
表5のデータは、本発明のポリイミドポリマーが、他のポリイミドと通常関連付けられる良好な機械的特性のみならず、優れた耐熱性(TGA分析によって示される)も有することを示している。
【0156】
実施例18:ポリアミックエステルA16~A20の調製
典型的なジエステルの調製では、磁気撹拌子と、還流冷却器と、窒素入口/出口とを備えた三口丸底フラスコに、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)(0.102mol)及び乾燥メタノール(固形分20重量%)を入れ;続いて、溶液を6時間還流して、透明な溶液を得た。次に、溶液を室温まで冷却し、真空蒸発させて粘着性の塊を得た。これにトルエン(50mL)を添加し、真空蒸発させることで、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸のジメチルエステルの白色固体粉末を得た。
【0157】
次に、フラスコを0℃に冷却し、これに塩化チオニル(0.5mol)を触媒量のジメチルホルムアミドと共に滴下した。続いて、溶液を50℃で2時間撹拌して透明な溶液を得た。次に、減圧下でトルエンを用いて過剰の塩化チオニルを除去することで、ジメチル3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボキシレートジクロリドを得た。
【0158】
典型的なポリアミックエステルの調製では、磁気撹拌子と、窒素入口/出口とを備えた三口丸底フラスコに、ジ-メチル3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボキシレートジクロリド(0.02mol)を入れ、ジメチルアセトアミド中のピリジン(0.04mol)を、4,4’-(ペルフルオロヘキサン-1,6-ジイル)ジアニリン(DAC6)(0.005mol)とp-フェニレンジアミン(0.015mol)との混合物に0℃で滴下した(固形分濃度15重量%)。続いて、反応混合物を室温で16時間撹拌することで、粘稠なポリアミックエステル溶液を得た。これはその後の使用のために冷蔵庫で保管した。
【0159】
同じ手順に従って、A16~A20として表される本発明によるポリアミックエステルを、異なるジアミン化合物及びジアミン化合物の混合物から出発して調製した。得られたポリアミック酸の組成及び固有粘度を表6に示す。表6には、ポリアミックエステルポリマー中の異なる成分のモル比が示されている。
【0160】
【表6】
【0161】
実施例19:ポリアミック酸の光パターニング
実施例1で得られたポリアミック酸粉末及び感光剤を溶解して、ポリアミック酸70重量%、感光剤30重量%、GBL:65重量%を含む組成物を得ることにより、厚さ10μmの感光性膜を作製した。この感光性組成物をシリコンウェハ上にスピンコートし、得られた膜を60℃/5分及び90℃/5分でプリベークした。その後、薄膜をマスクと共にUV光(400~600mJ/cm)に露光し、2.38重量%のTMAH水溶液で現像し、続いて水又は水/イソプロパノール混合物ですすぎ洗いすることで、ポジ型光パターニングを得た。続いて、窒素を流しながらオーブン内でウェハをポストベークし、温度を約300℃までゆっくりと上げ、最後にサンプルを300℃で1時間硬化させることで最終的なパターンを得た。
【0162】
実施例20:ポリイミドポリマーの光パターニング
ポリイミド樹脂及び感光剤を溶解して、ポリイミド70重量%、感光剤30重量%、GBL:65重量%を含む組成物を得ることにより、厚さ10μmの感光性膜を作製した。この感光性組成物をシリコンウェハ上にスピンコートし、得られた膜を60℃/10分及び90℃/10分でプリベークした。その後、薄膜をマスクと共にUV光(400~600mJ/cm)に露光し、エタノールアミン/GBL/水の溶媒混合物中において25℃で2~5分間現像し、続いて水ですすぎ洗いすることで、ポジ型光パターニングを得た。続いて、窒素を流しながら190℃/30分のオーブン内でサンプルを硬化させることで最終的なパターンを得た。
【0163】
実施例21:ポリアミックエステルの光パターニング(ポジ型)
実施例A19で得られたポリアミックエステル粉末及び感光剤を溶解して、NMP:65重量%及び固形分:35重量%(そのうち、ポリアミックエステル70重量%、感光剤30重量%)を含む組成物を得ることにより、厚さ10μmの感光性膜を作製した。この感光性組成物をシリコンウェハ上にスピンコートし、得られた膜を60℃/5分及び90℃/5分でプリベークした。その後、薄膜をマスクと共にUV光(400~600mJ/cm)に露光し、2.38重量%のTMAH水溶液で現像し、続いて水又は水/イソプロパノール混合物ですすぎ洗いすることで、ポジ型光パターニングを得た。続いて、窒素を流しながらオーブン内でウェハをポストベークし、温度を約300℃までゆっくりと上げ、最後にサンプルを300℃で1時間硬化させることで最終的なパターンを得た。
【0164】
実施例21:ポリアミックエステルの光パターニング(ネガ型)
実施例A18で得られたポリアミックエステル粉末及び必須の添加剤を溶解して、DMAc 65重量%及び固形分35重量%(そのうち、ポリアミックエステル(85部)、架橋剤(10部)、光開始剤(3部)及び接着促進剤(2部))を含む組成物を得ることにより、感光性膜を作製した。この感光性組成物をシリコンウェハ上にスピンコートし、得られた膜を80℃/5分でプリベークした。その後、薄膜をマスクと共にUV光(400~600mJ/cm)に露光し、NMP溶媒で現像し、続いて水ですすぎ洗いすることで、ネガ型光パターニングを得た。続いて、窒素を流しながらオーブン内でウェハをポストベークし、温度を約300℃までゆっくりと上げ、最後にサンプルを300℃で1時間硬化させることで最終的なパターンを得た。
【国際調査報告】