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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】地面効果翼機
(51)【国際特許分類】
   B63B 1/30 20060101AFI20240208BHJP
   B64D 27/31 20240101ALI20240208BHJP
   B64C 13/00 20060101ALI20240208BHJP
   B64C 3/10 20060101ALI20240208BHJP
   B63H 7/02 20060101ALI20240208BHJP
   B64C 35/00 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
B63B1/30
B64D27/31
B64C13/00 Z
B64C3/10
B63H7/02
B64C35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548757
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 US2022015979
(87)【国際公開番号】W WO2022173948
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/148,565
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/281,594
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/570,090
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】523304032
【氏名又は名称】リージェント クラフト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タールハイマー、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】クリンカー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー、ウィリアム ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】レスター、エドワード
(72)【発明者】
【氏名】コットレル、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー、クリスチャン
(57)【要約】
地面効果翼機は、(i)主翼制御面を有する主翼と、(ii)尾翼制御面を有する尾翼と、(iii)主翼又は尾翼に沿って配列された電動モータを含む送流翼推進システムと、(iv)格納可能なハイドロフォイルが水面の下に水没するために翼機の機体の下に伸長するように構成された伸長構成と、(b)格納可能なハイドロフォイルが少なくとも部分的に翼機の機体に引き込ませる格納構成と、(i)格納可能なハイドロフォイルが伸長構成で動作しているときに、格納可能なハイドロフォイルの方向を変化させ、(ii)格納可能なハイドロフォイルが格納構成で動作しているときに、主翼制御面及び尾翼制御面の方向を変化させることにより、(v)翼機を操縦するように構成された制御システムと、を含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面効果翼機であって、
1つ以上の主翼制御面を含む主翼と、
1つ以上の尾翼制御面を含む尾翼と、
前記主翼または前記尾翼の少なくとも1つに沿って配置された電気モータのアレイを含む送流翼推進システムと、
格納可能なハイドロフォイルを備える格納可能なハイドロフォイルシステムであって、(i)前記格納可能なハイドロフォイルが、水面の下に水没するために、前記地面効果翼機の機体の下に伸長する伸長構成と、(ii)前記格納可能なハイドロフォイルが、前記地面効果翼機の前記機体に少なくとも部分的に格納される格納構成と、に動作するよう構成された、格納可能なハイドロフォイルシステムと、
制御システムであって、(i)前記地面効果翼機の位置、方位、速度を決定し、(ii)決定された前記位置、前記方位、前記速度に基づいて、前記地面効果翼機を操縦するように構成され、(i)前記格納可能なハイドロフォイルシステムが伸長構成で動作している場合に、前記格納可能なハイドロフォイルシステムの1つ以上のアクチュエータに、前記格納可能なハイドロフォイルの方向を変えるようにさせ、伸長(ii)前記格納可能なハイドロフォイルシステムが格納構成で動作している場合に、前記主翼及び前記尾翼の1つ以上のアクチュエータに、前記主翼制御面及び前記尾翼制御面の方向を変えるようにさせ、(iii)前記送流翼推進システムの1つ以上の前記電気モータに速度を変えさせる、ように前記地面効果翼機を操縦する制御システムと、を備える地面効果翼機。
【請求項2】
前記地面効果翼機は、
前記地面効果翼機の前記機体が前記水面に接触する機体航行モードと、
前記格納可能なハイドロフォイルが、少なくとも部分的に前記水面の下に沈められ、前記地面効果翼機の前記機体が、完全に前記水面の上にあるハイドロフォイル航行モードと、
前記地面効果翼機が、完全に前記水面の上にある翼航行モードと、
のそれぞれにおいて持続的な動作が可能である、請求項1に記載の地面効果翼機。
【請求項3】
前記制御システムは、
前記地面効果翼機が前記機体航行モードで動作している間に、(i)前記格納可能なハイドロフォイルに、前記格納構成での動作から前記伸長構成での動作へ移行させ、(ii)前記地面効果翼機が前記機体航行モードでの動作から前記ハイドロフォイル航行モードでの動作に移行するまで、前記送流翼推進システムが前記地面効果翼機を加速させる、ようにさらに構成される、請求項2に記載の地面効果翼機。
【請求項4】
前記制御システムは、
前記地面効果翼機が、前記ハイドロフォイル航行モードでの動作から前記翼航行モードでの動作へと移行したことを判定し、
前記地面効果翼機が、前記ハイドロフォイル航行モードでの動作から前記翼航行モードでの動作へと移行したことを判定したことに基づいて、前記格納可能なハイドロフォイルシステムを、前記伸長構成での動作から前記格納構成での動作へと移行させる、ようにさらに構成される、請求項2に記載の地面効果翼機。
【請求項5】
前記制御システムは、
前記地面効果翼機が、前記翼航行モードでの動作から前記機体航行モードでの動作へと移行したことを判定し、
前記地面効果翼機が、前記翼航行モードでの動作から前記機体航行モードでの動作へと移行したことを判定したことに基づいて、前記格納可能なハイドロフォイルシステムを、前記格納構成での動作から前記伸長構成での動作へと移行させる、ようにさらに構成される、請求項2に記載の地面効果翼機。
【請求項6】
前記格納可能なハイドロフォイルシステムは、第1の格納可能なハイドロフォイルシステムであり、前記格納可能なハイドロフォイルは、第1の格納可能なハイドロフォイルであり、前記伸長構成は、第1の伸長構成であり、前記格納構成は、第1の格納構成であり、
前記地面効果翼機は、
第2の格納可能なハイドロフォイルを備える第2の格納可能なハイドロフォイルシステムをさらに備え、前記第2の格納可能なハイドロフォイルシステムは、(i)前記第2の格納可能なハイドロフォイルが前記水面の下に水没するために、前記地面効果翼機の前記機体の下に伸びる第2の伸長構成と、(ii)前記第2の格納可能なハイドロフォイルが前記地面効果翼機の前記機体の中に、または、前記機体に向かって、少なくとも部分的に格納される第2の格納構成と、において動作するように構成される、請求項2に記載の地面効果翼機。
【請求項7】
前記制御システムは、
前記地面効果翼機が前記機体航行モードで動作している間に、(i)前記第1の格納可能なハイドロフォイルシステムを、前記第1の格納構成での動作から前記第1の伸長構成での動作に移行させ、(ii)前記第2の格納可能なハイドロフォイルシステムを、前記第2の格納構成での動作から前記第2の伸長構成での動作に移行させ、(iii)前記地面効果翼機が前記機体航行モードでの動作から前記ハイドロフォイル航行モードでの動作に移行するまで、前記送流翼推進システムが前記地面効果翼機を加速させる、ようにさらに構成される、請求項6に記載の地面効果翼機。
【請求項8】
前記制御システムは、
前記地面効果翼機が、前記ハイドロフォイル航行モードでの動作から前記翼航行モードでの動作へと移行したことを判定し、
前記地面効果翼機が、前記ハイドロフォイル航行モードでの動作から前記翼航行モードでの動作へと移行したことを判定したことに基づいて、(i)前記第1の格納可能なハイドロフォイルシステムを、前記第1の伸長構成での動作から前記第1の格納構成での動作へと移行させ、(ii)前記第2の格納可能なハイドロフォイルシステムを、前記第2の伸長構成での動作から前記第2の格納構成での動作へと移行させる、ようにさらに構成される、請求項6に記載の地面効果翼機。
【請求項9】
前記制御システムは、
前記地面効果翼機が、前記翼航行モードでの動作から前記機体航行モードでの動作へと移行したことを判定し、
前記地面効果翼機が、前記翼航行モードでの動作から前記機体航行モードでの動作へと移行したことを判定したことに基づいて、(i)前記第1の格納可能なハイドロフォイルシステムを、前記第1の伸長構成での動作から前記第1の伸長構成での動作へと移行させ、(ii)前記第2の格納可能なハイドロフォイルシステムを、前記第2の格納構成での動作から前記第2の伸長構成での動作へと移行させる、ようにさらに構成される、請求項6に記載の地面効果翼機。
【請求項10】
前記第1の格納可能なハイドロフォイルシステムは、(i)前記地面効果翼機の機首と、(ii)前記地面効果翼機の前記機首と機尾との間の中間点と、の間に配置され、
第2の格納可能なハイドロフォイルシステムは、前記地面効果翼機の前記尾翼の下に配置される、請求項6記載の地面効果翼機。
【請求項11】
前記尾翼は、舵をさらに備え、前記第2の格納可能なハイドロフォイルシステムが前記第2の格納構成で動作しているとき、前記第2の格納可能なハイドロフォイルは、前記舵に少なくとも部分的に格納される、請求項10に記載の地面効果翼機。
【請求項12】
前記主翼のアスペクト比は、5以上である、請求項1に記載の地面効果翼機。
【請求項13】
前記格納可能なハイドロフォイルシステムが前記伸長構成で動作しているときに、前記格納可能なハイドロフォイルシステムの1つ以上のアクチュエータに前記格納可能なハイドロフォイルシステムの方位を変えるようにさせることは、前記格納可能なハイドロフォイルシステムが前記伸長構成で動作しているときに、前記格納可能なハイドロフォイルシステムの1つ以上のアクチュエータに前記格納可能なハイドロフォイルの迎角を変えさせることを含む、請求項1に記載の地面効果翼機。
【請求項14】
前記格納可能なハイドロフォイルは、1つ以上のハイドロフォイル制御面を含み、前記制御システムは、前記格納可能なハイドロフォイルシステムが前記伸長構成で動作しているときに、前記格納可能なハイドロフォイルシステムの1つ以上のアクチュエータに、前記1つ以上の前記ハイドロフォイル制御面の方向を変更させる、ようにさらに構成される、請求項1に記載の地面効果翼機。
【請求項15】
1つ以上の前記ハイドロフォイル制御面は、流体力学エレベータと、流体力学フラップと、流体力学舵と、のうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載の地面効果翼機。
【請求項16】
前記格納可能なハイドロフォイルは、フォイルと、前記フォイルを前記地面効果翼機の前記機体に結合する少なくとも1つの支柱と、を備え、
前記格納可能なハイドロフォイルシステムが前記格納構成で動作しているとき、前記少なくとも1つの前記支柱は、前記地面効果翼機の前記機体に少なくとも部分的に格納される、請求項1に記載の地面効果翼機。
【請求項17】
前記フォイルは、
水平方向の中央部と、
前記水平方向の中央部のそれぞれの端から斜め上方に延びる2つの端部と、を備える、請求項16に記載の地面効果翼機。
【請求項18】
前記制御システムは、
前記地面効果翼機の少なくとも1つのセンサから受信したデータに基づいて、障害物の位置を決定する、ようにさらに構成され、
前記地面効果翼機を操縦することは、(i)決定された前記位置と、方位と、前記地面効果翼機の速度と、(ii)決定された前記障害物の前記位置と、の両方に基づいて、前記地面効果翼機を操縦することと、を含む、請求項1に記載の地面効果翼機。
【請求項19】
(i)1つ以上の主翼制御面を含む主翼と、(ii)1つ以上の尾翼制御面を含む尾翼と、(iii)前記主翼又は前記尾翼の少なくとも1つに沿って配置された電気モータのアレイを含む送流翼推進システムと、(iv)格納可能なハイドロフォイルを含む格納可能なハイドロフォイルシステムと、を備える地面効果翼機を制御するための制御システムであって、前記制御システムは、
少なくとも1つのプロセッサと、
非一時的コンピュータ可読媒体と、
前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な前記非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されたプログラム指示と、を備え、
前記制御システムは、
前記格納可能なハイドロフォイルシステムを、前記格納可能なハイドロフォイルが水面の下に水没するために前記地面効果翼機の機体の下に伸びる伸長構成で動作させ、
前記格納可能なハイドロフォイルシステムが前記伸長構成にある間、(i)前記地面効果翼機の第1の位置と、方位と、速度とを決定し、(ii)決定された前記第1の位置と、前記方位と、前記速度とに基づいて、前記格納可能なハイドロフォイルシステムの1つまたは複数のアクチュエータが格納可能なハイドロフォイルの方向を変更することにより、地面効果翼機を操縦し、
前記格納可能なハイドロフォイルシステムを、前記格納可能なハイドロフォイルが少なくとも部分的に前記地面効果翼機の機体に格納されている格納構成で動作させ、
前記格納可能なハイドロフォイルシステムが前記格納構成にある間、(i)前記地面効果翼機の第2の位置と、方位と、速度とを決定し、(ii)決定された前記第2の位置と、前記方位と、前記速度とに基づいて、前記主翼及び前記尾翼の1つ以上のアクチュエータが前記主翼制御面及び前記尾翼制御面の方位を変化することにより、前記地面効果翼機を操縦する、ように構成される制御システム。
【請求項20】
(i)1つ以上の主翼制御面を含む主翼と、(ii)1つ以上の尾翼制御面を含む尾翼と、(iii)前記主翼又は前記尾翼の少なくとも1つに沿って配置された電気モータのアレイを含む送流翼推進システムと、(iv)格納可能なハイドロフォイルを含む格納可能なハイドロフォイルシステムと、を備える地面効果翼機を制御するための方法であって、
前記方法は、
前記格納可能なハイドロフォイルシステムを、前記格納可能なハイドロフォイルが水面の下に水没するために前記地面効果翼機の機体の下に伸びる伸長構成で動作させ、
前記格納可能なハイドロフォイルシステムが前記伸長構成にある間、(i)前記地面効果翼機の第1の位置と、方位と、速度とを決定し、(ii)決定された前記第1の位置と、前記方位と、前記速度とに基づいて、前記格納可能なハイドロフォイルシステムの1つまたは複数のアクチュエータが格納可能なハイドロフォイルの方向を変更することにより、地面効果翼機を操縦し、
前記格納可能なハイドロフォイルシステムを、前記格納可能なハイドロフォイルが少なくとも部分的に前記地面効果翼機の機体に格納されている格納構成で動作させ、
前記格納可能なハイドロフォイルシステムが前記格納構成にある間、(i)前記地面効果翼機の第2の位置と、方位と、速度とを決定し、(ii)決定された前記第2の位置と、前記方位と、前記速度とに基づいて、前記主翼及び前記尾翼の1つ以上のアクチュエータが前記主翼制御面及び前記尾翼制御面の方位を変化することにより、前記地面効果翼機を操縦する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第63/148,565号(2021年2月11日出願)、米国仮特許出願第63/281,594号(2021年11月19日出願)、および米国特許出願第17/570,090号(2022年1月6日出願)に対する優先権の利益を主張し、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、地面効果翼機(WIG)に関連し、より詳細には、離水前および着水後に、水中のかなりの距離に対して動作するように設計されたWIGに注力したシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
WIGは、空気力学地面効果において地面または水面の近くで作動するように設計された推進源および空気力学表面を含むことができる。空力的地面効果における動作の主な理由は、翼の誘導抗力の減少から生じる航行効率の増加である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
現在開示されている技術の特徴、局面、および利点は、以下の説明、特許請求範囲、および添付の図面に関してより良く理解され得る。
【0005】
図1A図1Aは、例示的実施形態に従った、実施例のWIGの斜視図を示す。
【0006】
図1B図1Bは、実施例のWIGの上面図を示す。
【0007】
図1C図1Cは、実施例のWIGの側面図を示す。
【0008】
図1D図1Dは、実施例のWIGの正面図を示す。
【0009】
図2図2は、実施例のWIGのバッテリシステムを示す。
【0010】
図3図3は、実施例のWIGの主ハイドロフォイル展開システムを示す。
【0011】
図4A図4Aは、実施例のWIGの後ハイドロフォイル展開システムを示す。
【0012】
図4B図4Bは、実施例のWIGの後ハイドロフォイル展開システムを示す。
【0013】
図5図5は、実施例のWIGの制御システムを示す。
【0014】
図6図6は、実施例のWIGの様々な動作モードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面は、例示的実施形態を図示する目的のためのものであり、本開示は、図面に示される配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【0016】
I. 概要
本明細書に記載する例のWIGは、既存のWIGと比較して、より快適な乗客の体験およびより広い環境動作範囲を作り出すように設計された特徴を含む。利点には、一層快適な離着水操縦、一層小さな旋回半径、一層高い巡航効率、航行安定性及び安全性の向上、運航コストの低下、混雑した港での低速及び公海で快適に操縦できる能力が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載するWIGは、水域の上空を航行するように設計されており、したがって、沿岸目的地間、または沿岸と沖合のインフラストラクチャ間で人および/または貨物を輸送するために使用することができる。WIGは、バッテリまたは水素燃料電池システムからエネルギーを供給する全電気駆動システムを利用することによって、動作中にゼロエミッションを実現することができる。
【0017】
本明細書に記載するWIGは、WIGの機体が少なくとも部分的に水中に沈められる第1の水行モードと、WIGの1つ又は複数のハイドロフォイルが少なくとも部分的に水中に沈められる間にWIGの機体が水上に上昇する第2の水行モードと、WIG全体が地面効果航行において水上に上昇する飛行モードとを含む、少なくとも3つの異なる運用モードで動作するように構成される。既存の翼機とは異なり、本明細書に記載するWIGは、これらの3つのモードのそれぞれにおいて、拡張された距離および時間にわたって動作し得る。
【0018】
既存の翼機に対してこのような改善を提供するために、本明細書に記載するWIGは、(i)分散された送流翼形態での電動パワートレイン、(ii)格納可能なハイドロフォイルシステム、(iii)WIGを安定させ水面近くでWIGの高度を制御するためのデジタル航行制御システム、および(iv)海上交通と障害物を検出して回避するための制御システムを含む複数の異なる技術を組み合わせることができる。これらの技術については、以下でさらに詳しく説明する。
【0019】
II. 地面効果翼機の実施例
図1A~1Dは、図1Aの斜視図、図IBの上面図、図1Cの側面図、および図IDの正面図を含む、実施例のWIG100の異なる図を描く。これらの種々の図に示すように、WIG100は、機体102と、主翼104と、尾翼106と、主ハイドロフォイルアセンブリ108と、後ハイドロフォイルアセンブリ110とを含む。
【0020】
A. 機体
上述の説明に沿って、また以下でさらに説明するように、WIG100は、第1の水行モードで長時間動作することができ、その間、機体102は、少なくとも部分的に水中に沈められる。そのように、機体102は、特に、この第1の水行運航モード中に水と接触する機体の表面に対して水密性を有するように設計されてもよい。さらに、機体102は、WIG100の全体と同様に、水中に浮遊する場合に全ての軸が受動的に安定するように構成される。これを達成するのを助けるために、機体102は、改良された安定性及び後述する他の利益を提供し得るキール(又は中心線)112を含むことができる。そして、いくつかの例では、WIG100は、質量中心がWIG100の浮力中心と整列するように、WIG100の質量中心を調整するための種々の機構を含んでもよい。これを達成する1つの方法は、WIG100のバッテリシステム(図2に関連して以下でさらに詳細に説明する)を、1つまたは複数のサーボモータなどによって移動させることができる1つまたは複数の可動マウントに結合することである。WIG100の制御システムは、例えば、オンボードジャイロスコープを介して回転変化を検出することによって、その浮力中心の変化を検出することができ、制御システムは、それに応答して、WIG100が安定したことをジャイロスコープが示すまで、サーボモータを作動させてバッテリシステムを動かすことができる。質量中心がWIG100の浮力中心と揃うようにWIG100の質量中心を調整する別の方法は、WIG100の機体102全体に分布する様々なタンクに水または空気を圧送するためのバラストシステムを含むことであり、これは、バッテリシステムを移動させるのと同様の方法で、WIG100の質量中心を調整することを可能にし得る。WIG100の質量中心を制御するために、他の実施形態のシステムを使用してもよい。
【0021】
加えて、機体102は、水行および飛行の両方における抗力を低減するように設計されてもよい。例えば、機体102は、高い長さ対ビーム比(例えば、8以上)を有してもよく、これは、WIG100が前方の水行運動を受けている場合に、静水圧抗力を低減するのに役立ち得る。いくつかの例では、キール112は、水行の際に操縦性を改善するために湾曲又はロッカ化することができる。さらに、機体102は、機体102の狭い低浮力の機首を含むことによって、波の表面を突き刺す(例えば、乗客および乗組員の快適性を高める)ように設計されてもよい。
【0022】
B. 翼及び分散された推進システム
主翼104はまた、水行運航中にWIG100の安定性を改善する特徴を含んでもよい。例えば、図に示すようである。図1A~1Dに示すように、主翼104は、主翼104の各端部にアウトリガ114を含むことができる。アウトリガ114(「ウィングチップポンツーン」と呼ばれることもある)は、水中に沈んだり、さもなければ水と接触した場合に、浮力を主翼104に与えるように構成される。図1DのWIG100の正面図に描かれているように、主翼104は、主翼104の端部のアウトリガ114が主翼104の最下点にあり、機体102が水行にあるとき、機体102の水線とほぼ水平に(または、少し上に)位置するようにガルウイング形状を有するように設計されてもよい。
【0023】
図1BのWIG100の上面図に最もよく示されるように、主翼104は、主翼104のスパンと主翼104の平均翼弦との比を表す高アスペクト比を有するように設計される。いくつかの例では、主翼104のアスペクト比は、5以上または6以上であるが、他の例のアスペクト比も同様に可能である。
【0024】
高アスペクト比の翼は、より短い平均翼弦によるピッチ安定性の減少を含む、低アスペクト比の翼と比較した場合、ある種の欠点を提供し得る。従来のWIGは、これらの不安定性問題に対処するために、低アスペクト比翼用に採用されてきた。例えば、WIGが地面効果で航行しているとき、翼の下の静圧の増加があり、これはWIGの空力中心を後方にシフトさせ、WIGのピッチ軸に空力不安定を引き起こす。低アスペクト比の翼は、翼の前縁に揚力を集中させ、WIGピッチが上向きになると前縁もピッチが上向きになり、WIGは地面効果を残し、揚力を失い、落ち着いて戻る。しかしながら、この低アスペクト比の翼設計は不安定性の問題に取り組んだが、これら従来のWIG設計の空力効率を著しく低下させた。
【0025】
高アスペクト比翼の別の欠点は、一般に、より低いロール角加速度によるそれらの低減された操縦性である。そして、高アスペクト比翼の操縦性は、WIGのためにさらに減少する可能性がある。例えば、水面上の地面効果航行モードで動作する場合、高アスペクト比の翼を有するWIGは水面に十分に近く、あまりにも大きくロールすると、翼が水面に衝突する可能性がある。これら及び他の問題に対処するために、本明細書に開示するWIG100は、以下でさらに詳細に説明するように、主翼104の高アスペクト比から生じる運動性能の低下を補償するために、その運動性能を改善するための様々な追加の機構を含むことができる。
【0026】
高アスペクト比の翼は、上記で識別されたような種々の欠点を提供し得るが、高アスペクト比の翼は、ロール安定性の増加及び揚抗比の増加から生じる効率の増加を含む、低アスペクト比の翼に優る多数の改善を提供し得る。さらに、高アスペクト比の翼の別の利点は、翼に沿って分散された推進システムを取り付けるためのより長い前縁を提供することである。翼に沿ってこのように分布された推進システム配置は、推進システムが翼上を移動する空気の速度を上昇させることができ、主翼の上昇した空気速度が主翼によって生成される揚力を増加させる「送流翼」推進システムを提供する。この揚力の増加は、WIGが離水することを可能にし、より遅い速度で航行することが可能であり、これは、航行WIGの離水に特に有利である。例えば、水行WIGは、以下にさらに詳細に説明するように、1つまたは複数のハイドロフォイルで動作しているときにキャビテーションによって生じる耐水性や揚力の減少など、離水速度を制限する様々な力を受けることがある。
【0027】
従来のWIG設計は、通常、逆デルタ翼設計のような低アスペクト比翼設計を組み込んでいた。このような低アスペクト比の翼は、地面効果で航行するときに、WIGのピッチ安定性を増加させるために使用されてきた。低アスペクト比の翼に関連して、従来のWIG設計はまた、追加の揚力を人工的に作り出すために、翼と水面との間のWIGの下に空気を押すために、一次推進システムを使用することを伴う、様々なラムエア法を取り入れてきた。
【0028】
離水を支援するためにラムエア法を用いてきた従来の設計とは異なり、本明細書に開示するWIG100は、離水速度をより遅くすることを可能にすることによって離水を支援する分散された送流翼推進システムを組み込んでいる。図1A図1Dに示すように、主翼104は、主翼104の前縁にわたって分布した多数の電気モータプロペラアセンブリ116を含む。プロペラアセンブリ116をこのように配置することによって、主翼104上を移動する空気の速度を上昇させることができ、主翼104上の上昇した空気の速度は、主翼104によって生成される揚力を増加させる。この揚力の増加は、WIG100が離水し、より遅い速度で空中に浮遊することを可能にし得る。
【0029】
電気モータプロペラアセンブリ116の分散された送流翼配置は、作動中の主推進源として1つ以上の液体燃料エンジンに依存していた既存のWIGにおける配置を改良する。液体燃料エンジンは、通常、電気モータよりはるかに重く、より複雑で、より大きく、従って、液体燃料エンジンの分散された送流翼配置によって提供される付加的な揚力のいかなる利益も、複数のエンジンの付加的な質量及び複雑さによって勝るかもしれない。さらに、プロペラのアレイを液体燃料エンジンに結合するには、複数の回転軸およびギアボックスを必要とする場合があり、それによって、機械的な複雑さおよび結果として生じる維持コストを実現不可能な点まで増加させる。しかしながら、電気モータプロペラアセンブリ116を使用することで、このような問題が緩和される。個々の電気モータプロペラアセンブリ116は、電子速度コントローラによって制御することができ、また、例えば、リチウムイオン、マグネシウムイオン、又はリチウム硫黄システムのようなオンボードバッテリシステムによって、又は燃料電池もしくは集中型液体燃料式発電機のような何らかの他のオンボード電気供給システムによって、電力を供給することができる。いくつかの例では、オンボード電気供給システムは、離水時に大量の電力を送達するように構成された第1のバッテリシステム、および巡航動作中(例えば、ハイドロフォイル航行中または翼航行中)に持続的に低い電力を送達するためのより高いエネルギー密度であるがより低いピーク電力能力を有する第2のシステム等、異なる動作モード中に電力を供給するための複数のシステムを含んでもよい。
【0030】
図2には、一例のオンボードバッテリシステム200が示されている。図示するように、バッテリシステム200は、乗客座席領域204の下の機体102の保護領域202に配置されてもよい。バッテリシステム200は、熱暴走が発生した場合に乗客を危害から保護するために、ファイアウォール206によって乗客座席領域204から分離されてもよい。いくつかの例では、追加的または代替的な防護手段も同様に講じることができる。例えば、WIG100は、保護領域202での熱暴走または火災を検出すると、バッテリシステム200に浸水する1つまたは複数の機構を備えることができる。バッテリシステム200を浸水させるために、WIG100は、保護領域202の火災を検出するための熱暴走または何らかの他の火災検出システムを検出するための電圧および/または熱センサを備えるバッテリ管理システムを含むことができる。さらに、機体102は、機体102に1つ以上の弁または他の制御可能な開口を含むことができる。保護領域202の火災、またはバッテリシステム200の熱暴走の検出に応答して、WIG100の制御システムは、保護領域202およびバッテリシステム200をWIGが浮遊している水にさらすために、機体102の弁または他の制御可能な開口を開くことができる。
【0031】
上記のような水ベースの浸水システムは、WIG100が水上にある間のみ作動するので、空中での作動中の火災や熱暴走を考慮して、他の手段を講じることができる。一例として、機体102の任意の制御可能な開口は、開口を通じて機体102からバッテリシステム200を投下するのに十分な大きさに構成されてもよい。バッテリシステム200は、バッテリシステム200の質量が、機体102が開放されたときにバッテリシステム200を機体102から投下させるのに十分な力を提供するように構成されてもよく、またはWIG100が、バッテリシステム200を機体102から投下させるためにアクチュエータまたは何らかの他の機構を含んでもよい。別の例として、WIG100は、保護領域202の酸素量を減らし、保護領域202の火災またはバッテリシステム200の熱暴走の検出に応答してあらゆる火災を抑制するための不活性ガス火災抑制システムを含むことができる。他の例も同様に可能である。
【0032】
他の例では、WIG100は、保護領域202の火災、またはバッテリシステム200の熱暴走の検出に応答して、水行になるように対策を講じることができる。例えば、そのような検出を行うことに応答して、WIG100の制御システムは、WIG100が機体航行モードで動作しているか、ハイドロフォイル航行モードで動作しているか、または翼航行モードで動作しているか(それぞれについて、以下でさらに詳細に説明する)を含めて、WIG100の動作状態を決定することができる。WIG100が機体航行モードで動作していると判断することに応答して、制御システムは、上述したように、保護領域202で熱暴走または火災を検出すると、バッテリシステム200を浸水させることができる。一方、制御システムが、WIG100がハイドロフォイル航行モードまたは翼航行モードで動作していると判断した場合、制御システムは、保護領域202で熱暴走または火災を検出すると、WIG100を機体航行モードに移行させ、その後、バッテリシステム200に浸水させることができる。動作モード間の移行のための技術は、図6に関連して以下にさらに詳細に説明される。
【0033】
主翼104の前縁に沿った電気モータプロペラアセンブリ116の配置は、(i)WIG100の全ての作動モードのための必要とされる全推力、(ii)各個々のプロペラアセンブリ116によって生成される推力、(iii)各プロペラアセンブリ116の各プロペラの半径、(iv)各プロペラと水面との間の必要とされるチップクリアランス、及び(v)作動のために必要とされる主翼104上の追加の自由流速度を含むがこれらに限定されない様々な要因に基づいて決定することができる。図1A~1Dに示すように、プロペラアセンブリ116の数は、機体102の両側にわたって対称である。プロペラアセンブリ116は、すべて同一であってもよく、またはそれらは、構成が機体102にわたって対称である限り、スパンに沿って異なるプロペラ半径またはブレード構成を有してもよい。異なるプロペラアセンブリ116半径を有するための1つの利点は、水又は機体構造からの適切なプロペラ先端クリアランスを可能にすることである。プロペラアセンブリ116に異なるブレード構成を有することの利点は、ある種のプロペラを空中航行などの異なる運用条件に対して最適化することを可能にすることである。プロペラの配置及び構成は、制御性又は安定性を向上させるために、主翼104又は尾翼106システムの空気流を増加させるように変化させることができる。図1A~1Dは、8つの合計プロペラアセンブリ116を有する実施例のWIG100を描いているが、プロペラアセンブリ116の実際の数は、WIG100の要件に基づいて変わり得る。
【0034】
いくつかの例では、それぞれのプロペラアセンブリ116は、主翼104の位置に基づいて、異なるピッチ設定又は可変ピッチ能力を有してもよい。例えば、プロペラアセンブリ116のサブセットは巡航速度のためのサイズの固定ピッチプロペラを有するが、プロペラアセンブリ116の残りは離水のために構成された固定ピッチプロペラを有するか、またはプロペラのピッチを変えることができる。加えて、異なるプロペラアセンブリ116は、異なる動作モードの間、オフにされるか、または減少した回転速度を有してもよい。例えば、水上での作動中に、プロペラアセンブリ116のうちの1つ又は複数は、非対称の推力を発生する態様で、オフにするか、又は回転速度を低下させることができる。これは、WIG100にヨーモーメントを作り出し、大きなバンク角なしにWIG100が旋回することを可能にし、WIG100の旋回操縦性を増加させることができる。例えば、右にヨーイングするために、WIG100は、プロペラアセンブリ116adのうちの1つ以上のプロペラの回転速度を下げながら、1つ以上のプロペラアセンブリ116e~hのプロペラの回転速度を上げることができる。同様に、ヨーイングを左にするために、WIG100は、プロペラアセンブリ116e~hのうちの1つ以上のプロペラの回転速度を下げながら、プロペラアセンブリ116a~dのうちの1つ以上のプロペラの回転速度を上げることができる。
【0035】
主翼104は、主翼104の空気力学形状を変更するために主翼104の後縁又は前縁に可動ヒンジ表面を備えることができるフラップ118及びエルロン120のような1つ又は複数の空気力学制御表面を更に含むことができる。フラップ118は、失速速度を低減し、低対気速度で追加の揚力を生成するために、主翼104の下に下方に延びるよう構成されてもよいが、エルロン120は、主翼104の片側での揚力を低減し、WIG100にロールモーメントを誘導するために、主翼104の上に上方に延びるよう構成されてもよい。いくつかの例では、エルロン120は、フラップ118が主翼104に追加の揚力を生成するのを助けるためにフラッペロン構成で主翼104の下方に延びるように追加構成されてもよく、両エルロンの協調運動に応じてローリングモーメントを生成するか、または追加のバランスの取れた揚力を生成するのに使用されてもよい。フラップ118およびエルロン120はそれぞれ、フラップ118およびエルロン120を上昇および下降させるための1つ以上のアクチュエータを備え得る。フラップ118は、例えば、平面フラップ、分割フラップ、スロットフラップ、フーラフラップ、スロットフーラフラップ、ガウジングフラップ、ジャンカフラップ、またはザップフラップのうちの1つ以上を含むことができる。さらに、フラップ118(および、フラッペロンとして構成されている場合、エルロン120)は、プロペラアセンブリ116のうちの1つまたは複数の後流にあるように配置されるべきである。エルロン120は、低前進速度でのエルロンの有効性を高めるために、それらがプロペラアセンブリ116のうちの1つ又は複数の後流にあるように配置することができる。プロペラアセンブリ116の一部は、逆ヨーを誘発することなく、旋回中に外側翼の推力を増大させるために、エルロン120が後流にないように配置することができる。例えば、左旋回では、通常の航行機は、右のエルロンが下に偏向されるにつれて右に逆ヨーイングを起こし、抗力を増加させるであろう。しかし、本開示では、右側エルロンの外側の右側プロペラアセンブリは、その推力を、それぞれの左側プロペラアセンブリに対して増加させ、逆ヨーイングを伴わずに旋回を開始させることができる。
【0036】
C. 尾翼システム
尾翼106は、垂直スタビライザ122と、水平スタビライザ124と、エレベータ126などの1つ以上の制御面とを含む。フラップ118及びエルロン120と同様に、エレベータ126は、水平スタビライザ124の空力形状を変更してWIG100のピッチを制御するために、水平スタビライザ124の後縁または前縁に可動ヒンジ面を備えてもよい。水平スタビライザ124は、エレベータ126と組み合わされて、完全に連接した水平スタビライザを作ることができる。エレベータ126をヒンジ点より高くすることにより、尾翼システムに正味の下向きの力が生じ、WIG100が上向きにピッチ移動する。エレベータ126をヒンジ点より下に下げることにより、水平スタビライザ124に正味の上向きの力が生じ、WIG100が下向きにピッチ移動する。エレベータ126は、アクチュエータを含むことができ、このアクチュエータは、エレベータ126を昇降させるために、WIG100の制御システムによって作動させることができる。
【0037】
尾翼106は、舵128を更に有していてもよい。舵128は、垂直スタビライザ122の後縁に可動ヒンジ表面を備えてもよく、飛行モードで動作する場合、WIG100のヨーを制御するために垂直スタビライザ122の空力形状を変更する。一部の例では、舵128は、機体102の流体力学形状を追加的に変更して、水行モードで動作しているときに、WIG100のヨーを制御することができる。このような流体力学制御を容易にするために、舵128は、尾翼106で、機体102が水中に浮いているときに舵128が部分的に又は全体的に水没する程度に十分低く配置することができる。すなわち、舵128は、部分的に又は全体として機体102の喫水線の下に配置することができる。舵128は、1つ以上のアクチュエータを含むことができ、これは、舵128のヒンジ表面を垂直スタビライザ122の左側または右側に回転させるために、WIG100の制御システムによって作動させることができる。(進行方向に対して)舵128を左に作動させると、WIG100は左にヨーイングする。(進行方向に対して)右に舵128を作動させると、WIG100は右にヨーイングする。そのように、舵128は、空中動作中のエルロン120との組み合わせを含む、WIG100のヨーを制御するための本明細書に開示されている他の機構のいずれかと組み合わせて使用することができ、また、水行動作中のWIG100の操縦性の改善を助けるために、プロペラアセンブリ116の異なるものの回転速度を変化させることと組み合わせて使用することができる。
【0038】
図1A~1Dには示されていないが、WIG100は尾翼106に分散された推進システムを含むこともでき、これは主翼104のプロペラアセンブリ116の分散された推進システムと同様であることができる。そのような分散された推進システムは、制御面(例えば、エレベータ126及び/又は舵128)の自由流速度を上昇させる同様の利益をもたらし、より低い移動速度でのWIG100のピッチ及びヨー制御を可能にする。尾翼106に含めるプロペラアセンブリの数及びサイズを決定するとき、主翼104に含めるプロペラアセンブリの数及びサイズを決定するとき、上述したのと同じ要因を適用することができる。
【0039】
D. ハイドロフォイルシステム
図1A図1Dにさらに示すように、WIG100は、WIG100の中央または機首寄りに配置された主ハイドロフォイルアセンブリ108などの1つまたは複数のハイドロフォイルアセンブリと、WIG100のステム寄りに配置された後ハイドロフォイルアセンブリ110とを含むことができる。例えば、主ハイドロフォイルアセンブリ108は、WIG100の機首と中間点(機首と機尾の間)との間に配置することができ、後ハイドロフォイルアセンブリ110は、WIG100の尾翼106の下に配置することができる。主ハイドロフォイルアッセンブリ108及び後ハイドロフォイルアッセンブリ110は、水行のWIGが直面する共通の課題に対処するのに役立つ可能性があり、これは、離水時にWIGの機体と水面との接触を妨げるプロセスである。飛行する前に、WIGは「ハンプ抗力」とも呼ばれるピーク流体抗力を経験する。これは、WIGでは問題となる可能性がある。このハンプ抗力に打ち勝つためには、このハンプ抗力に打ち勝つために大量のパワーが必要となる可能性がある。これは、前進速度をさらに高め、翼航行に移行することが求められるためである。
【0040】
ハンプ抗力を低減するための従来設計の試みには、空気力学および流体力学設計の両方のアプローチが含まれる。低アスペクト比の翼を有する従来のWIG設計の議論に関連して上述したように、空力設計アプローチの1つの例は、前方装着推進器を使用して、翼の下に空気を送り、それによって、WIGの下に高圧ゾーンを作り出し、WIGを水の外に持ち上げる動力増強ラム(PAR)の使用によるものである。これらのPAR設計は、高アスペクト比の翼を有するWIGにはあまり適していないが、代わりに、高圧空気がWIGの下でより良く集中できる水に非常に近い低アスペクト比の翼を有するより効果的である。しかしながら、上述したように、低アスペクト比の翼は、空力効率が著しく悪く、分散された送流翼推進システムを許容しない。
【0041】
ハンプ抗力を減少させる他の例の空力的アプローチは、双機体の機首と機尾に織物のスカートを有する双機体の使用であり、双機体の機体間に取り込まれた空気の体積を形成する。この量の空気は、翼機の後プロペラを用いて高圧空気で膨張させることができ、離水時に翼機が準ホバークラフトとして作用することが可能になる。しかしながら、この解決策は、空中トンネルでの損失のためにPAR設計より効率が低く、水面に波が存在する場合に追加の課題を提示する。
【0042】
ハンプ抗力を低減するための流体力学設計アプローチの例には、スキーギヤおよび固定ハイドロフォイルが含まれる。WIGの中には、水の吸引を克服し、離水時にWIGを水から持ち上げるために、スキーギヤ、または偏向する計画タブが含まれているものがある。しかしながら、これらの設計は、非常に高い流体抵抗を有し、これは、航行中の空気力学効率の低下につながる可能性がある。他のWIGは、離水前の中間速度での翼機の機体の濡れた表面積を減らすために、WIGが水中にある間、追加の揚力を作る固定ハイドロフォイルを含んでいた。しかし、WIGは航行中に非常に低い高度で航行する必要があるため、航行中の水との衝突を避けるために、固定ハイドロフォイルは非常に短い必要があった。その結果、これらのWIGにおける固定ハイドロフォイル機は、水行運航中に水波より上に翼機の機体を持ち上げることができない。これは、翼機が(a)公海状態で動作できないこと、または(b)混雑した港湾において中速(例えば、機体航行モードの低速と翼航行モードの高速との間)で動作できないことを意味する。
【0043】
上述の従来のWIG設計の問題点を改善し、かつ対処することを助けるために、本明細書で開示されるWIG100の主ハイドロフォイル108および後ハイドロフォイルアセンブリ110は、格納可能で、WIG全体を水から持ち上げるのに十分な大きさであり、水面に衝撃を与えず、さらに(翼機の全質量がハイドロフォイルによって支持される)ハイドロフォイル航行モードでの持続的な動作を可能にするように構成される。主ハイドロアセンブリ108は、主フォイル130、主フォイル130を機体102に結合する1つ又は複数の主フォイル支柱132、及び1つ又は複数の主フォイル制御面134を含むことができる。同様に、後ハイドロフォイルアセンブリ110は、後フォイル136、後フォイル136を機体102に結合する1つ又は複数の後フォイル支柱138、及び1つ又は複数の後フォイル制御面140を含むことができる。
【0044】
主フォイル130と後フォイル136とは、それぞれ、WIG100の機体102が水面の上にあり、それから離れている間、水中で動作されるように設計される1つまたは複数の流体力学揚力面(「フォイル」とも呼ばれる)の形態をとってもよい。動作中、WIG100が主フォイル130および後フォイル136が水没した状態で水中を移動すると、フォイルは揚力を発生し、それが機体102を水面より上に上昇させる。機体102を水面より上まで上昇させるために、フォイルによって生成される揚力は、少なくともWIG100の質量に等しくなければならない。フォイルの持ち上げ力は、アスペクト比、表面積、スパン、およびフォイルの弦を含むその様々な物理的寸法と同様に、フォイルが水中を移動する速度および迎角に依存する。
【0045】
ハイドロフォイル航行の動作中に機体102が水面より上に持ち上げられる高さは、主フォイル130を機体102に連結する1つ以上の主フォイル支柱132の長さと、後フォイル136を機体102に連結する1つ以上の後フォイル支柱138の長さとによって制限される。いくつかの例では、主フォイル支柱132および後フォイル支柱138は、ハイドロフォイル航行の動作中、機体102を水面から少なくとも5フィート上方に持ち上げるのに十分な長さであってよく、これは実質的に波立つ水での動作を可能にし得る。しかしながら、他の長さの支柱も、より長い支柱が、機体102のより良好な波分離を可能にするという理解と共に使用され得る(しかし、WIG100の安定性を犠牲にし、格納システムの複雑さを増加させる)。
【0046】
実際には、ハイドロフォイルはキャビテーションが発生する前に制限されたトップスピードを有し、これはハイドロフォイルの表面に蒸気泡が形成され破裂する結果となる。キャビテーションは、ハイドロフォイルの損傷を引き起こすだけでなく、ハイドロフォイルによって発生する揚力の量を著しく減少させ、抗力を増加させる。したがって、キャビテーションが発生する前に、フォイルが(例えば、20~45mphまでの)より高速で、必要なハイドロフォイル航行速度エンベロープ全体にわたって動作することを可能にする方法で、主フォイル130および後フォイル136を設計することによって、キャビテーションの発生を低減することが望ましい。例えば、キャビテーションの発生は、主フォイル130及び後フォイル136の幾何学的設計に基づいて制御することができる。さらに、主フォイル130および後フォイル136の構造設計によって、フォイルの表面がより高速で撓み、ねじれることができ、これによってフォイルへの負荷が軽減され、キャビテーションの発生が遅れる可能性がある。
【0047】
更に、分散された送流翼推進システムは、主フォイル130及び後フォイル136のキャビテーションの発生を更に遅らせるのを助けることができる。キャビテーションは、(i)水中を移動する際にハイドロフォイルによって発生する揚力の量、(ii)ハイドロフォイルのプロフィル(ハイドロフォイルの迎角とその垂直厚さの両方によって影響される)の両方によって生じる。ハイドロフォイルにより発生する揚力の量を減らすとキャビテーションの発生が遅れる。送流翼推進システムは、主翼104に追加の揚力を生じさせるので、機体102を水から持ち上げるために主フォイル130と後フォイル136に働く揚力の量は減少する。さらに、主フォイル130および後フォイル136は、機体102を水から上げるのにそれほど多くの揚力を発生させる必要がないため、それらの迎角を同様に減少させることができ、キャビテーションの発生をさらに減少させる。送流推進システムを本明細書に記載するハイドロフォイル設計と組み合わせることによって、WIG100は、キャビテーションが発生する前に、35ノットを超える速度でハイドロフォイル航行モードで動作することができる。
【0048】
図1A~1Dに示すように、主フォイル130は、主フォイル130の中央部が実質的に平坦であり、主フォイル130の端部がWIG100の機体102に向かって上方に延びる平坦なV字形状デザインを有してもよい。この平坦化されたV字形状の設計は、機体102と水面との間の距離の受動的調節を可能にし得る(「ライドハイト」とも呼ばれる)。一方、受動的なロールモーメント制御も可能にする。ライドハイトの受動的な規制は、V字型ハイドロフォイルの先端が水面を破り、水中である揚力面を減少させることによって達成される。もしライド高さハイトが低すぎると、水の表面下の増加したハイドロフォイル表面積は、WIG100の質量よりも大きな正味の力を作り出し、それがより高く上昇することになる。ライドハイトが高すぎると、水面下に十分なハイドロフォイル揚力がなくなり、WIG100が水中に下降してしまう。受動的なロール安定性は、V字型ハイドロフォイルの一方の側が他方の側よりも水からさらに突き破られることによる。これは、WIG100が(例えば)左にロールされるとき、安定化ロールモーメントを生成する。V字型ハイドロフォイルの左側は水面下により多くの表面を持ち、右側よりもより多くの揚力を生成することを可能にするからである。
【0049】
上述のように、主ハイドロフォイルアセンブリ108は、1つ以上の主フォイル制御面134を含むことができ、後ハイドロフォイルアセンブリ110は、1つ以上の後フォイル制御面140を含むことができる。主フォイル制御面134は、主フォイル130の後縁または前縁に1つ以上のヒンジ面、ならびに1つ以上のアクチュエータを含むことができ、これらのアクチュエータは、ヒンジ面が主フォイル130の上または下に延びるように回転させるために、WIG100の制御システムによって作動させることができる。主フォイル130の主フォイル制御面134は、WIG100の主翼104のフラップ118およびエルロン120と同様の方法で動作してもよい。一例として、主フォイル制御面134を下げて主フォイル130の下方に伸長すると、フラップ118を下げることによる空力効果と同様に、主フォイル130に追加の揚力を発生させる形で主フォイル130の流体力学形状を変更することができる。別の例として、主フォイル制御面134の1つ又は複数を非対称に上昇させる(例えば、主フォイル130の片側のみで主フォイル制御面134を上昇させる)ことで、エルロン120の1つを上昇させる空気力学効果と同様に、主フォイル130にロール力を発生させる形で主フォイル130の流体力学形状を変化させることができる。
【0050】
同様に、後フォイル制御面140は、後フォイル136の後縁または前縁に1つまたは複数のヒンジ面と、1つまたは複数のアクチュエータとを含むことができ、これらアクチュエータは、該ヒンジ面が後フォイル136の上方または下方に延びるように回転させるために、WIG100の制御システムによって作動させることができる。後フォイル136の後フォイル制御面140は、WIG100の尾翼106のエレベータ126と同様の方法で動作させることができる。一例として、後フォイル制御面140を下げて後フォイル136の下方に伸長させると、エレベータ126を下降させる空気力学効果と同様に、WIG100を下方にピッチさせるように後フォイル136の流体力学形状を変更することができる。別の例として、後フォイル制御面140を上昇させて後フォイル136の上方に延出させることにより、エレベータ126を上昇させる空力効果と同様に、WIG100を上方にピッチさせるように後フォイル136の流体力学形状を変化させてもよい。
【0051】
いくつかの例では、主フォイル制御面134又は後フォイル制御面140の一方又は両方は、WIG100の尾翼106の舵128と同様の舵状の制御面を含むことができる。例えば、主フォイル制御面134は、主フォイル支柱132の後縁に1つ又は複数のヒンジ面、並びに1つ又は複数のアクチュエータを含むことができ、これは、主フォイル支柱132の左側又は右側に延びるようにヒンジ面を回転させるために、WIG100の制御システムによって作動することができる。同様に、後フォイル制御面140は、1つ以上のアクチュエータと同様に後フォイル支柱138の後縁に1つ以上のヒンジ面を含むことができ、これは、後フォイル支柱138の左側または右側に延びるようにヒンジ面を回転させるために、WIG100の制御システムによって作動させることができる。主フォイル制御面134または後フォイル制御面140をこのように作動させることにより、それぞれ、主フォイル支柱132または後フォイル支柱138の流体力学形状を変化させることができ、これは、上述のようにWIG100の舵128を作動させる効果と同様に、水行またはハイドロフォイル航行モードで作動させる場合にWIG100のヨーを制御することを可能にする。
【0052】
いくつかの例では、主フォイル130および/または後フォイル136のヒンジ止めされた制御面を作動させる代わりに(またはそれに加えて)、WIG100の制御システムが主フォイル130全体および/または後フォイル136全体自体を作動させることができる。一例として、WIG100は、ヨー軸を中心として主フォイル130および/または後フォイル136を回転させるための1つまたは複数のアクチュエータを備えてもよい。別の例として、WIG100は、主フォイル130および/または後フォイル136の迎角を制御する(すなわち、主フォイル130および/または後フォイル136をピッチ軸の周りで回転させる)ための1つまたは複数のアクチュエータを含みうる。別の例として、WIG100は、主フォイル130および/または後フォイル136をロール軸の周りに回転させるための1つまたは複数のアクチュエータを備えることができる。別の例として、WIG100は、主フォイル130および/または後フォイル136のキャンバまたは形状を変更するための1つまたは複数のアクチュエータを備えることができる。さらに別の例として、WIG100は、主フォイル130および/または後フォイル136をフラッピングするための1つまたは複数のアクチュエータを備え、WIG100を前方または後方に推進するのを助けることができる。他の例も同様に可能である。
【0053】
さらに、いくつかの例では、WIG100は、WIG100の動作モード(例えば、機体航行モード、ハイドロフォイル航行モード、または翼航行モード)に基づいて、主フォイル130および/または後フォイル136が展開される程度を動的に制御してもよい。例えば、機体航行モード中に、後ハイドロフォイルアセンブリ110を部分的に展開または格納して、方向指示力を増大させることができる。部分的な展開又は格納の量は、浅水環境で動作する場合に、所望の全体的な翼機喫水の関数とすることができる。ハイドロフォイル航行モードの間、主ハイドロフォイルアセンブリ108は、翼機の機体と水面との間の距離を減少させるために部分的に後退させることができる。これは、主翼104によって発生される揚力の量を、翼を水面に一層近づけて作動させることによって増加させ、空力的地面効果の効果を増加させ得る。
【0054】
上述のように、主ハイドロフォイルアセンブリ108または後ハイドロフォイルアセンブリ110の一方または両方は、主ハイドロフォイルアセンブリ108および/または後ハイドロフォイルアセンブリ110を機体航行または翼航行動作のために機体102またはそれに向かって格納させ、ハイドロフォイル航行動作のために主ハイドロフォイルアセンブリ108および/または後ハイドロフォイルアセンブリ110を機体102の下に伸長させることを可能にする展開システムとインタフェースすることができる。
【0055】
図3は、主ハイドロフォイルアセンブリ108を格納して伸長させることを可能にする主ハイドロフォイル展開システム300の例を示す。図示のように、主ハイドロフォイル展開システム300は、主ハイドロフォイルアセンブリ108を(主フォイル支柱132を経由して)1つ以上の垂直の軌道304に結合する1つ以上のブラケット302を含む線形アクチュエータの形成をとることができる。ブラケット302は、ブラケット302が軌道304に沿って垂直に動くときに、主ハイドロフォイルアセンブリ108も同様に垂直に動くように、軌道304に沿って垂直に動くように構成することができる。ブラケット302は、回転すると、ブラケット302の垂直方向の動きを引き起こすリードスクリュ306に結合されてもよい。リードスクリュ306は、ギアボックス308によってリードスクリュ306に連結される電気モータなど、種々のトルク源のいずれかによって回転されてもよい。
【0056】
主ハイドロフォイル展開システム300は、主ハイドロフォイルアセンブリ108の垂直位置を検出するように構成された1つ又は複数のセンサ310を更に含むことができる。図示のように、センサ310は、主ハイドロフォイルアセンブリ108が完全格納位置に達したときに感知する第1のセンサ310aと、主ハイドロフォイルアセンブリ108が完全伸長位置に達したときに感知する第2のセンサ310bとを含む。しかし、主ハイドロフォイル展開システム300は、主ハイドロフォイルアセンブリ108の追加の個別位置又は連続位置を検出する追加センサを含むことができる。センサ310は、主ハイドロフォイルアセンブリ108の位置を示すデータを制御システムに提供するために、WIG100の制御システムの一部として含まれるか、または他の方法で通信するように構成されてもよい。次に、制御システムは、センサ310からのデータを使用して、主ハイドロフォイルアセンブリ108を格納させるか、または伸長させるために電気モータを作動させるかどうかを判断することができる。
【0057】
リニアアクチュエータが自己係止リニアアクチュエータではない例のようないくつかの例では、主ハイドロフォイル展開システム300は、主フォイル支柱132を固定位置(例えば、完全格納または完全伸長位置)に保持するための係止または制動機構を含むことができる。ロック機構は、例えば、電気モータ、リードスクリュ306、またはギアボックス308に連結されたデュアルアクション機械的ブレーキであってよい。
【0058】
上記の説明は、例示的な主フォイル展開システム300の様々な詳細を提供するが、図3に描かれた主フォイル展開システム300は、例示的な目的のためであり、限定を意味しないことを理解されたい。例えば、主ハイドロフォイル展開システム300は、主ハイドロフォイルアセンブリ108を格納させ、伸長させることができる、現在知られている、または将来的に開発される様々な線形アクチュエータのいずれかを含むことができる。
【0059】
図4Aおよび図4Bは、後フォイル136を格納させ、伸長させることを可能にする後ハイドロフォイル展開システム400の例を示す。図示のように、後ハイドロフォイル展開システム400は、アクチュエータ405を後フォイル支柱138に結合するプーリシステム403を含んでもよい。作動されると、アクチュエータ405は、プーリシステム403に、後フォイル支柱138をシャフト407に沿って垂直に滑らせることによって後フォイル支柱138を上昇または下降させる。図4A及び4Bには図示されていないが、アクチュエータ405が後フォイル支柱138を上昇させると後フォイル支柱138が少なくとも部分的に舵128に引っ込むように、舵128がシャフト407に取り付けられてもよい。さらに、後ハイドロフォイル展開システム400は、後フォイル支柱138をシャフトの周囲で回転させるための1つまたは複数のサーボモータを備えることができる。この点に関し、後フォイル支柱138は、水中に沈められたときにハイドロラダーとして作用するように、又は水中から外れたときにエアロラダーとして作用するようにシャフトの回りに回転させることができる。さらに、舵128が後フォイル支柱138と同じシャフト407に取り付けられ、後フォイル支柱138が舵128に格納させることができるので、同じサーボモータを舵128の回転を制御するために使用することもできる。
【0060】
後ハイドロフォイル展開システム400のアクチュエータ405は、様々な形態を取り得、例えば、後ハイドロフォイルアセンブリ110を格納させ、伸長させることができる、現在知られている、または将来的に開発される様々な線形アクチュエータのいずれを含んでもよい。さらに、いくつかの例では、アクチュエータ405は、アクチュエータ405の所与の運動が後ハイドロフォイルアセンブリ110のより大きな対応する誘発された運動を引き起こすように非一体的作動比を有しうる。これは、後ハイドロフォイルアセンブリ110のより速い格納を可能にする助けとなり得、これは、以下でさらに詳細に説明するように、離水時に有益であり得る。
【0061】
主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110は、完全に格納させた時に、ハイドロフォイルアセンブリが機体102と面一であるか、共形であるか、又は接線であるように設計することができる。例えば、いくつかの例では、機体102は、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110を受け取るように構成された1つ以上の凹部を含み、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110が、機体102の1つ以上の凹部に完全に格納されるとき、機体102の外側の輪郭が、機体102と主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110の交点で実質的に滑らかな移行を形成するように、後方ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110を成形する。
【0062】
他の例では、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110は、完全に格納させたときには機体102の形状に適合しなくてもよく、その代わりに機体102より少し下に突出してもよい。これらの例では、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110は、WIG100の空気力学に無視できない影響を及ぼすことができ、WIG100は、これらの影響を利用してWIG100のさらなる制御を提供するように構成することができる。例えば、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110が格納させられているが依然として露出しているとき、露出しているハイドロフォイルを航行中に操作して、空力制御面と同様にWIG100に力及びモーメントを与えることができる。従来のハイドロフォイルは、水を変位させる大きさの制御面(後に取り付けられたフラップなど)を有しており、水よりもはるかに軽い空気では効果がないであろう。しかし、本明細書に開示するWIG100の主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110の一方又は両方は、水中でロックされるが、水中でハイドロフォイルが旋回軸の周りを移動できるようにロック解除することができる旋回軸に取り付けることができる。その時点で、制御面はトリムタブのように機能し、ロックされていない旋回するハイドロフォイル全体の動きをもたらすことができ、そうでなければ実用的でない大型で重いサーボモータとなる。この設計の更なる利点は、水中での前方移動と組み合わさった、遅いサーボ及び/又は制御面の動きの組み合わせを介してハイドロフォイルをロック解除及び移動させることができ、その後、ハイドロフォイルが選択された迎角になるように再ロックすることができることである。
【0063】
主ハイドロフォイルアセンブリ108は格納させるように構成されるので、機体102は、主ハイドロフォイルアセンブリ108の主フォイル支柱132を格納させて伸長させることができる開口を含むことができる。しかし、機体102が水面に接触すると、水はこれらの開口を通って機体102の中に浸出することがある。これを考慮するために、機体102は、機体102に入るあらゆる水を隔離し、機体102が水から持ち上げられるときに、水が機体102から排水することを可能にするように設計されてもよい。例えば、機体102は、主フォイル支柱132に整列した機体102の各側にポケット142を含むことができる。ポケット142は、機体102の内部の残りの部分から隔離されてもよく、その結果、水がポケット142に蓄積されるときに、コックピット、乗客の座席領域、またはバッテリシステム200またはWIG100の制御システムの構成要素を収納する任意の領域のような、いかなる望ましくない領域にも、水が到達しない。さらに、ポケット142は、ポケット142の底部またはその近傍に位置するベント孔または他の開口を含むことができる。そのようなベント開口は、水がポケット142に入ることを可能にし得るが、同様に、機体102が水から持ち上げられるとき、蓄積された水がポケット142の外に排出されることができる。
【0064】
図には示されていないが、水中に沈められている場合、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110は、更なる推進のための1つ又は複数のプロペラを更に含むことができる。例えば、1つまたは複数のプロペラを、主フォイル130および/または後フォイル136に取り付けることができる。そのようなプロペラは、ハイドロフォイル航行または機体航行の動作中に、WIG100に追加推進力を提供してもよい。いくつかの例では、1つまたは複数のプロペラは、プロペラが機体航行の動作中に水没するように機体102に追加的または代替的に取り付けられてもよく、機体航行の動作中にWIG100に追加の推進力を提供するために使用されてもよい。
【0065】
主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110は、機能不全の場合に、様々なフェールセーフ機構を更に含むことができる。例えば、主ハイドロフォイル展開システム300または後ハイドロフォイル展開システム400が誤作動し、主ハイドロフォイルアセンブリ108および/または後ハイドロフォイルアセンブリ110を格納させることができない場合、WIG100は、格納させることができないアセンブリを投棄するように構成することができる。主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110は、解除可能なラッチによって機体102に連結することができる。WIG100の制御システムは、例えば位置センサ310から受信したデータに基づいて格納誤作動を識別することができ、制御システムはそれに応答してラッチを開き、機体102と誤作動しているハイドロフォイルアセンブリとの間の接続を解除することができる。いくつかの例では、作動不良のハイドロフォイルアセンブリの質量は、ラッチが開かれると、作動不良のハイドロフォイルアセンブリを機体102から投下させるのに十分な力を与えることができ、またはWIG100は、作動不良のハイドロフォイルアセンブリを機体102から投下させるためのアクチュエータまたはその他の何らかの機構を含むことができる。他の例では、作動不良のハイドロフォイルアセンブリを投棄する代わりに、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110が水面に衝突したときに制御された方法で破断するように設計することができる。例えば、主フォイル支柱132と機体102との間のジョイント、および/または、後フォイル支柱138と機体102との間のジョイントは、ジョイントにおいて標準的な動作トルクを大幅に上回るトルクを受けた場合に、切り離すように構成されてもよい。制御された破壊を提供するための他の設計も同様に可能である。
【0066】
E.制御システム
図5は、WIG100の例示的な制御システム500に含まれ得る種々の構成要素を示す、簡略化されたブロック図を示す。制御システム500の構成要素は、1つまたは複数のプロセッサ502、データストレージ504、通信インタフェース506、推進システム508、アクチュエータ510、全地球衛星測位システム(GNSS)512、慣性航法システム(INS)514、レーダシステム516、ライダシステム518、撮像システム520、種々のセンサ522、航行計器システム524、および制御エフェクタ526を含むことができ、これらのうちの一部または全部は、システムバス、公共、私的、またはハイブリッドクラウドなどの通信ネットワーク、または他の何らかの接続機構などの形態をとることができる1つまたは複数の通信リンク528によって通信可能にリンクすることができる。
【0067】
1つ以上のプロセッサ502は、汎用プロセッサ(例えば、シングルコアまたはマルチコアマイクロプロセッサ)、特殊用途プロセッサ(例えば、特定用途向け集積回路またはデジタル信号プロセッサ)、プログラマブル論理デバイス(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ)、コントローラ(例えば、マイクロコントローラ)、および/または現在知られているまたは将来的に開発される任意の他のプロセッサ構成要素等の、1つ以上の処理構成要素を含んでもよい。さらに、1つまたは複数のプロセッサ502は、制御システム500の別個の独立した構成要素として描かれているが、1つまたは複数のプロセッサ502は、制御システム500の他の構成要素のうちの1つまたは複数に分散される処理構成要素を備えてもよいことも理解されるべきである。
【0068】
データストレージ504は、(i)制御システム500が、本明細書に開示される機能の一部または全部を実行するように構成されるように、1つ以上のプロセッサ502によって実行可能なプログラム指示を記憶するように集合的に構成された1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体、および(ii)本明細書に開示される機能に関連して、例えば1つ以上のデータベース、ファイルシステムなどに受信、導出、またはその他の方法で記憶され得るデータを制御システム500によって含むことができる。この点で、データストレージ504の1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、種々の形態をとることができ、その例としては、ランダムアクセスメモリ、レジスタ、キャッシュなどの揮発性記憶媒体と、可読専用メモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリ、光記憶装置などの不揮発性記憶媒体が挙げられる。さらに、データストレージ504は、制御システム500の別個の独立した構成要素として描かれているが、データストレージ504は、制御システム500の他の構成要素のうちの1つまたは複数に分散されたコンピュータ可読記憶媒体を備えてもよいことも理解されるべきである。
【0069】
通信インタフェース506は、制御システム500が1つ以上のネットワークを介して通信することを可能にする、1つ以上の無線インタフェースおよび/または1つ以上の有線インタフェースを含むことができる。例えば、無線インタフェースは、Bluetooth、WiFi (例えば、IEEE 802.11プロトコル)、Long-Term Evolution(LTE)、WiMAX(例えば、IEEE 802.16標準)、無線周波数ID (RFID)プロトコル、近距離無線通信(NFC)、及び/又は他の無線通信プロトコルのような、1つ又は複数の無線通信プロトコルの下での通信を提供することができる。ワイヤラインインタフェースの例としては、イーサネットインタフェース、ユニバーサルシリアルバス(USB)インタフェース、CANバス、RS-485などのインタフェースが挙げられ、ワイヤ、ツイストペアのワイヤ、同軸ケーブル、光リンク、光ファイバリンク、または他のワイヤラインネットワークへの物理的接続を介して通信することができる。
【0070】
推進システム508は、主翼104にわたって、および一部の例では水平スタビライザ124にわたって分布する電気モータプロペラアセンブリ116を制御するために、1つ以上の電子速度コントローラ(ESC)を含むことができる。いくつかの例では、推進システム508は、それぞれのプロペラアセンブリ116ごとに個別のESCを含むことができ、その結果、制御システム500は、電気モータプロペラアセンブリ116の回転速度を個別に制御することができる。
【0071】
アクチュエータ510は、(i)フラップ118、エルロン120、エレベータ126、主フォイル制御面134、および後フォイル制御面140を上昇および下降させるためのアクチュエータ、(ii)舵128を回転させるためのアクチュエータ、主フォイル支柱132に配置された主フォイル制御面134、および後フォイル支柱138に配置された後フォイル制御面140、(ii)主ハイドロフォイルアセンブリ108および後ハイドロフォイルアセンブリ110を格納および伸長させるためのアクチュエータ、および/または(iv)主ハイドロフォイルアセンブリ108および後ハイドロフォイルアセンブリ110の様々な他の開示された作動を行うためのアクチュエータを含む。本明細書に記載されるアクチュエータのそれぞれは、開示される作動を行うことが可能な、現在知られている、または将来的に開発される任意のアクチュエータを含んでもよい。異なるタイプのアクチュエータの例は、リニアアクチュエータ、ロータリアクチュエータ、油圧アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、電気アクチュエータ、電気油圧アクチュエータ、および機械アクチュエータを含むことができる。さらに、アクチュエータのより具体的な例は、電動モータ、ステッパモータ、および油圧シリンダを含むことができる。ここでも他の例が考えられる。
【0072】
GNSSシステム512は、WIG100の位置、速度、高度、および機首方向の測定を提供するように構成されてもよい。GNSSシステム512は、信号処理装置と対をなす1つまたは複数の無線アンテナを含む。GNSSシステム512からのデータは、制御システム500がグローバル基準フレームのWIG100の位置および速度を推定することを可能にし得、このデータは、WIG100が位置する場所の理解および既知のトラフィックとの位置の比較の両方により、ルート計画、運用包絡線保護、および翼機トラフィックの解放のために使用され得る。
【0073】
INS 514は、周知のINSシステムの典型であるデータを提供するように構成された様々なセンサを含むことができる。例えば、INS 514は、角度および/または直線加速度計などの運動センサと、ジャイロスコープなどの回転センサとを含み、推測航法技法を使用してWIG100の位置、方位、および速度を計算することができる。制御システムによって1つ以上のINSシステムを使用して、アクチュエータ出力を計算し、全ての動作モード中に翼機を安定させるか、または他の方法で制御することができる。
【0074】
レーダシステム516は、周知のレーダシステムの典型であるデータを提供するように構成することができる。例えば、レーダシステム516は送信機及び受信機を含むことができる。送信機は、送信アンテナを介して電波を送信することができる。電波は物体で反射し、受信機に戻る。受信機は、送信アンテナと同じアンテナであってもよい受信アンテナを介して反射電波を受信し、レーダシステム516は、受信電波を処理して、WIG100に対する物体の位置および速度に関する情報を判断する。このレーダシステム516は、例えば、水面、海上または航空機の交通、野生生物、または気象を検出するために利用することができる。
【0075】
ライダシステム518は、周知のライダシステムの典型であるデータを提供するように構成することができる。例えば、ライダシステム518は、光源及び光受信器を含むことができる。光源は、物体で反射して光受信器に戻るレーザを放射する。ライダシステム518は、WIG100と物体との間の距離を決定するために、反射光が受信機に戻る時間を測定する。このライダシステム518は、航行制御システムによって利用されて、WIG100から様々な空間測定で水面までの距離を測定してもよい。
【0076】
撮像システム520は、WIG100の環境から画像データを捕捉するように構成された1つ以上の静止および/またはビデオカメラを含んでもよい。一部の例では、カメラは、電荷結合素子(CCD)カメラ、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)カメラ、短波赤外線(SWIR)カメラ、中波赤外線(MWIR)カメラ、または長波赤外線(LWIR)カメラを含んでもよい。撮像システム520は、とりわけ、障害物回避、位置確認技術、より正確なナビゲーションのための水面追跡(例えば、画像にオプティカルフロー技術を適用することによる)、ビデオフィードバック、および/または画像認識および処理等、可能性のある種々の用途のうちの任意のものを提供してもよい。
【0077】
上述のように、制御システム500は、WIG100を制御する際に使用するための種々の他のセンサ522をさらに含んでもよい。上述の議論に沿って、そのようなセンサ522の例は、機体102の火災を検出するため、またはバッテリシステム200の熱暴走を検出するための熱センサまたは他の火災検出センサを含むことができる。さらに上述したように、センサ522は、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110の位置を感知する(例えば、アセンブリが格納位置にあるか、伸長した位置にあるかを感知する)位置センサを含むことができる。位置センサの例は、フォトダイオードセンサ、容量性変位センサ、渦電流センサ、ホール効果センサ、誘導センサ、又は現在知られているか又は将来的に開発される任意の他の位置センサを含むことができる。
【0078】
いくつかの例では、センサ522は、様々な高度計センサのいずれを含んでもよい。一例として、センサ522は、超音波を発信し、受信するように構成された超音波高度計を含んでもよい。放射された超音波はWIG100の下の水面で反射し、高度計に戻る。超音波高度計は、WIG100と水面との間の距離を決定するために、反射された超音波が高度計に戻る時間を測定する。別の例として、センサ522は、圧力高度計として使用するための気圧計を含むことができる。気圧計はWIG100の環境の気圧を測定し、測定された気圧に基づいてWIG100の高度を決定する。別の例として、センサ522は、電波を放出し、受信するために、レーダ高度計を含んでもよい。レーダ高度計は、WIG100と水面との間の距離を決定するために、WIG100の下の水面で電波が反射する時間を測定する。これらの種々のセンサは、センサのデッドバンドまたは水のはねに対する感度などのセンサの制約の影響を低減するために、WIG100の異なる位置に配置されてもよい。
【0079】
さらに、制御システム500は、センサ522の種々の個々、または制御システム500の他の構成要素を使用して、海上交通のWIG100のナビゲーションを支援するか、または任意の他の種類の障害物を回避するように構成されてもよい。例えば、制御システム500は、INS 514および/またはGNSS 512からのデータに基づいてWIG100の位置、方位、および速度を決定することができ、制御システム500は、レーダシステム516、ライダシステム518、および/または撮像システム520からのデータに基づいて、翼機、ドック、または種々の他の障害物などの障害物の位置を決定することができる。いくつかの例では、制御システム500は、自動識別システム(AIS)を使用して、障害物の位置を判断してもよい。いずれの場合においても、WIG100の決定された位置、方位、および速度、ならびに障害物の決定された位置に基づいて、制御システム500は、WIG100の種々の制御面を本明細書に記載する方法のいずれかで作動させることによって、障害物との衝突を回避するようにWIG100を操縦することができる。
【0080】
航行計器システム524は、WIG100のパイロットに、WIG100の航行状況に関するデータを提供するための様々な計器を含んでもよい。例示的な計測器は、高度、速度、機首方向、方位(例えば、ヨー、ピッチ、およびロール)、バッテリレベル、または制御システム500の種々の他の構成要素によって提供される任意の他の情報に関するデータを提供するための計測器を含んでもよい。
【0081】
制御エフェクタ526は、オペレータが制御システム500と相互作用して信号を入力することを可能にする様々な入力装置を含むことができる。例示的な制御エフェクタ526は、いくつかの例を挙げると、1つまたは複数のジョイスティック、推力制御レバー、ボタン、スイッチ、ダイヤル、レバー、またはタッチスクリーンディスプレイを含むことができる。動作中、パイロットは、制御エフェクタ526を使用して、WIG100の1つまたは複数の制御面を動作させることができる。例えば、一例として、パイロットがジョイスティックを特定の方向に動かすと、制御システム500は、WIG100の1つまたは複数の制御面を作動させて、WIG100をジョイスティックの動きに対応する方向に移動させることができる。別の例として、パイロットがスロットルを作動(または作動を増加)させると、制御システム500は、WIG100(例えば、プロペラアセンブリ116)の推進制御面にWIG100に掛かる推進力を増加させることができ、パイロットがスロットルの作動を減少させると、制御システム500は、WIG100の推進制御面にWIG100に掛かる推進力を減少させることができる。制御エフェクタ526の他の例は、WIG100のさまざまな制御面を作動させるためにも実装されてもよい。
【0082】
WIG100の制御面は、異なる動作モードにおいて制御システム500によって利用されてもよい。各操縦翼面のたわみ量は、限定されるものではないが、機体位置、率、姿勢、加率、回転率、及び/又は水上高度を含む多数の入力変数に基づいて、制御システム500によって計算することができる。以下の表1は、WIG100の各制御面に対して、制御面がWIG100の動きを制御するために使用され得る動作モードを示す。以下の表1では、推進制御面は、プロペラアセンブリ116ならびに機体102、主ハイドロフォイルアセンブリ108または後ハイドロフォイルアセンブリ110に取り付けられた任意のプロペラを含むことができる。空力エレベータ舵面はエレベータ126を含むことができ、空力エルロンはエルロン120を含むことができ、空力舵は舵128を含むことができ(水没していない場合)、空力フラップはフラップ118を含むことができ、流体力学エレベータは後フォイル制御面140を含むことができ、流体力学フラップは主フォイル制御面134を含むことができ、流体力学舵は舵128を含むことができる(水没している場合)。表1は、WIG100の操縦翼面で支持される動作モードの例(機体航行、ハイドロフォイル航行、翼航行)である。
【表1】
【0083】
上記の表1で特定された様々な例示的な動作モードで制御面を作動させる場合、制御システム500は、異なる動作モード中に様々な翼機軸に沿って異なるレベルの安定化を実行することができる。以下の表2は、WIG100の各軸に対する種々の動作モードの間に制御システム500が適用し得る安定化制御の例を特定する。閉ループ制御は、フィードバック及び/又はフィードフォワード制御を含むことができる。表2は、各動作モードでWIG100の異なる軸に適用される安定化制御テクニックの例である。
【表2】
【0084】
さらに、制御システム500は、異なる制御面を作動させて、その異なる軸を中心とするWIG100の動きを制御するように構成されてもよい。以下の表3は、WIG100のさまざまな制御面の影響を受ける軸方向運動の例を示している。表3は、WIG100の様々な制御面の影響を受ける軸方向運動の例である。
【表3】
【0085】
III. 動作モード例
図6は、6つの番号付きステージに分離された、WIG100のさまざまな動作モード例を示し、これらのステージのそれぞれについて、以下でさらに詳細に説明する。
【0086】
A. 機体航行動作
ステージ1では、WIG100は、ドッキングされてWIG100のロール安定化を提供するアウトリガ114の浮力により機体102で浮遊する(すなわち、機体航行モードで)。ドッキングされている間に、WIG100のバッテリシステム200を充電することができる。急速充電は、開ループ系又は閉ループ系であってもよい水を用いた冷却系を補助することができる。周囲の水の本体は、ループまたはヒートシンクとして使用することができる。いくつかの例では、WIG100は、バッテリシステム200から周囲の水域に熱を交換するために、機体102に一体化されたヒートシンクを含んでもよい。他の例では、ヒートシンクは、WIG100の質量を低減するために、翼機の外に配置されてもよい。
【0087】
加えて、WIG100がドッキングされている間、プロペラアセンブリ116は、近くの構造物または人との衝突を回避するのを助けるために、ドックから離れる方向に折り畳まれてもよい。この折りたたみは、金属ばね力、油圧、電気機械的作動、またはプロペラ回転による遠心力など、様々な方法で作動させることができる。他の例も同様に可能である。さらに、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び後ハイドロフォイルアセンブリ110は、近くの水中構造物との衝突を避けるために、格納させてもよい(または部分的に格納させてもよい)。
【0088】
乗客または貨物がWIG100に積まれ、WIG100が出発準備完了となると、WIG100は、プロペラアセンブリ116および/または水中推進システム(例えば、機体102、主フォイル130、および/または後フォイル136に搭載される1つ以上のプロペラ)を含むその推進システムを使用して、機体航行のままドックから離れるように操縦することができる。いくつかの例では、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び後ハイドロフォイルアセンブリ110は、ドック付近の水中障害物に当たる危険性または浅い水路に当たる危険性を低減するために、この操縦中、格納させたまま(または部分的に格納させたまま)にすることができる。しかし、水中の障害物に当たる危険性が限られている場合、WIG100は、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110を部分的に又は完全に伸長させることができる。主ハイドロフォイルアセンブリ108及び/又は後ハイドロフォイルアセンブリ110が伸長した状態で、前述したように、WIG100は、主フォイル制御面134及び/又は後フォイル制御面140を作動させて、操縦性を改善することができる。
【0089】
機体航行動作中の低速度において、制御システム500は、すべてのプロペラアセンブリ116を同じアイドル速度で回転させるが、第1のサブセットが順方向に回転し、第2のサブセットが逆方向に回転することによって、WIG100の位置および/または回転を制御することができる。例えば、制御システム500は、プロペラアセンブリ116a、116c、116f、および116hを逆方向にアイドリングさせ、プロペラアセンブリ116b、116d、116e、および116gを順方向にアイドリングさせることができる。この構成では、制御システム500は、WIGを生じさせ得る100は、プロペラアセンブリ116のいずれかの回転方向を変更する必要なく、種々の動作を行う。例えば、WIG100にヨーを誘発するために、制御システム500は、主翼104の一方の側で逆方向プロペラアセンブリのスピードを上げる一方、主翼104の他方の側で順方向プロペラアセンブリのスピードを上げて、プロペラアセンブリのいずれかを、前進から後進へ、または後進から前進へと移行させることなく、可能である。例えば、公称RPMでプロペラをアイドリングさせることは、WIG100にヨーモーメントを発生させる際のより速い応答を可能にするかもしれない。ヨーモーメントを発生させるために必要とされるプロペラは、ゼロRPMから所望のRPM値まで増加させる必要がないから、それらはアイドリングRPMから所望のRPM値まで回転することができる。
【0090】
B. ハイドロフォイル航行動作
ステージ2に移行するために、WIG100は、主ハイドロフォイルアセンブリ108および後ハイドロフォイルアセンブリ110を完全に伸長し(まだ伸長されていない場合)、前述した推進システムを使用して加速することができる。WIG100は、主ハイドロフォイルアセンブリ108および後ハイドロフォイルアセンブリ110が単独でWIG100の質量を支える速度まで加速し、機体102は水の表面より上に持ち上げられ、任意の表面波を取り除く(例えば、実施形態例は3~5フィートまでの最大波高を支えることができる)。
【0091】
このハイドロフォイル航行モードに移行する間、制御システム500は、水面からの所望の高さ、翼機の機首方向、および翼機の前進速度を維持するために、WIG100の姿勢を安定させるべく、主フォイル制御面134および/または後フォイル制御面140および/または推進システムを作動させることができる。例えば、制御システム500は、INS 514によって提供されたデータに基づいて、WIG100のヨー、ピッチ、またはロールの様々な変化を検出することができ、制御システム500は、検出された変化に抗うために、主フォイル制御面134および/または後フォイル制御面140の計算された作動を行うことができる。
【0092】
WIG100が完全にハイドロフォイル航行動作に移行し、機体102が水面を離れると、機体102が水行抗力にもはや寄与しなくなるため、WIG100にかかる抗力は大きく落ちる。そのように、制御システム500は、プロペラアセンブリ116の速度を低下させて、WIG100の推力を低下させることができる。制御システム500は、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び後ハイドロフォイルアセンブリ110がWIG100の質量を完全に支持し続けるようにWIG100のピッチ及び速度を積極的に制御することによってこの作動モードを維持することができる。
【0093】
C. 翼航行動作
ステージ3での翼航行動作に移行するために、制御システム500は、プロペラアセンブリ116の速度を上げることによってWIG100を加速してもよい。制御システム500は、WIG100を所望の離水速度まで加速することができる。WIG100は、この時点でハイドロフォイル航行モードで動作しているため、所望の離水速度は、ハイドロフォイルキャビテーション速度以下でなければならず、したがって著しく制限される。いくつかの例では、所望の離水速度は、約40ノットである。しかし、上述したように、プロペラアセンブリ116を送流翼構成で配置することによって、WIG100は、そのような低速での離水を可能にする追加の揚力を生成することができる。
【0094】
制御システム500がWIG100が所望の離水速度に達したと判断すると、制御システム500は、フラップ118(およびフラッペロンとして構成されている場合はエルロン120)を展開し、主翼104にさらなる揚力を発生させてもよい。制御システム500は、さらに、WIG100を上方にピッチさせ、主翼104およびハイドロフォイルアセンブリ108、110の迎角を増加させるために、後フォイル制御面140および/またはエレベータ126を作動させる。この構成では、主翼104とハイドロフォイルアセンブリ108、110は、ハイドロフォイルアセンブリ108、110が水面を破り、WIG100の全質量が主翼104の揚力によって支持されるまで、WIG100を上方へ加速させるのに十分な揚力を作り出す。
【0095】
いくつかの例では、ハイドロフォイル航行動作から翼航行動作へのこの移行を実行する場合、制御システム500は、非常に短い時間(例えば、1秒未満、0.5秒未満、または0.1秒未満)にわたって、フラップ118(およびフラッペロンとして構成されている場合はエルロン120)を迅速に展開することができる。フラップ118(およびエルロン120)をこのようにすばやく展開させることにより、主翼104にさらに追加の揚力が生じ、この揚力が、WIG100を水から「ポップ」して翼航行動作に役立ち得る。
【0096】
加えて、ハイドロフォイル航行動作から翼航行動作への移行中に、制御システム500は、ピッチ軸に沿ったモーメントの均衡を保つために、WIG100の様々な制御面を作動させることができる。例えば、プロペラアセンブリ116、フラップ118、及びハイドロフォイルアセンブリ108、110からの抗力は全て、移行中にピッチ軸周りの重心周りにノーズダウンモーメントを発生させる。これらの力に抗うために、制御システム500は、エレベータ126および後フォイル制御面140を展開して、ノーズアップモーメントを発生させ、WIG100を安定させることができる。
【0097】
ハイドロフォイルでの動作から翼での動作への移行がステージ3で完了すると、制御システム500は、主ハイドロフォイル展開システム300及び後ハイドロフォイル展開システム400に、主ハイドロフォイルアセンブリ108及び後ハイドロフォイルアセンブリ110をそれぞれ格納させることができる。実際には、制御システム500は、ハイドロフォイルアセンブリ108、110が水に再突入する機会を減らすために、ハイドロフォイルアセンブリ108、110が水から離れるとすぐにこの格納を開始することができる。制御システム500は、ハイドロフォイルアセンブリ108、110が様々な方法で水を除去していると判断してもよい。一例として、制御システム500は、WIG100の測定高度に基づいて(例えば、WIG100の高度を測定するためにレーダシステム516、ライダシステム518、または上述した他のセンサ522によって提供されたデータに基づいて)、そのような決定を行ってもよい。別の例として、センサ522は、1つまたは複数の導電率センサ、温度センサ、圧力センサ、ひずみゲージセンサ、またはハイドロフォイルアセンブリ108、110に配置されたロードセルセンサをさらに含むことができ、制御システム500は、ハイドロフォイルアセンブリ108、110がこれらのセンサからのデータに基づいて水を除去していると判定することができる。
【0098】
WIG100が水から離れると、制御システム500は、プロペラシステム116の速度を制御することによって、WIG100を所望の巡航速度まで加速し続けることができる。制御システム500は、WIG100が、高度を維持するのに十分な揚力を生成するのに十分な対気速度を達成したときに、フラップシステムを格納させることができる。さらに、制御システム500は、WIG100の様々な制御面を作動させることができ、および/またはプロペラシステム116に差動スラストを加えて、方向転換、上昇、または下降など、任意の所望の動作を行い、効率的な揚力配分を提供することができる。翼航行モードでは、WIG100は運用条件と考慮により、地面効果では水面上を低速で航行することができ、地面効果では地面上を航行することができる。
【0099】
D.機体航行動作への復帰
ステージ4に移行するために、制御システム500は、WIG100がその機体102に安全に着水できるように、ハイドロフォイルアセンブリ108、110が完全に格納させられたと判断する。制御システム500は、さらに、観測、推定、または予測される水面状況(例えば、レーダシステム516、ライダシステム518、撮像システム520、または他のセンサ522からのデータに基づく)に基づいて、所望の着水方向および/または位置を決定し、示唆することができる。
【0100】
制御システム500は、WIG100が所望の着水対気速度に達するまで、例えばプロペラシステム116の速度を低下させることによってWIG100の減速を開始する。減速中に、制御システム500はフラップ118を展開して、低い対気速度での揚力を増加させ、及び/又は失速速度を減少させることができる。WIG100が所望の着水対気速度(例えば、約50ノット)に達すると、制御システム500は、降下率を減少させる(例えば、約200フィート/分未満)。WIG100が水面に近づくと(例えば、WIG100が水面から5フィート以内にあると制御システム500が決定すると)、制御システム500は、降下率をさらに遅らせて着水を緩和する(例えば、約50フィート/分未満になるように)。WIG100の機体102が水面に衝撃を与えると、制御システム500は推力を低減し、WIG100は、流体力学抗力の存在、前方推力の減少、および揚力を著しく減少させる翼の送流空気の減少または排除のため、急激に減速し、地面効果翼機を水中に沈降させる。機体102は、WIG100が静止するまで速度がさらに低下するにつれて水中に落ち着く。
【0101】
WIG100が水中に沈降すると、WIG100は、上述と同じ方法で機体航行動作からハイドロフォイル航行動作に移行するために、ハイドロフォイルアセンブリ108、110を伸長することによってステージ5に移行することができる。次に、制御システム500は、ハイドロフォイル式モードをステージ5で維持し、機体102を表面波から隔離したまま、WIG100を左舷に操縦することができる。次に、WIG100は、制御システム500がプロペラアセンブリ116によって生成される推力を減少させて、機体102が水中に落ち着くまでWIG100の速度を下げる場合、ステージ6で機体航行動作に戻るように移行することができる。次に、制御システム500は、ハイドロフォイルアセンブリ108、110を格納させ、乗客または商品を降ろし、バッテリシステム200を再充電するために、上述のように機体航行動作に維持して、WIG100をドックに操縦することができる。
【0102】
IV. 結論
上記の詳細な説明は、添付の図を参照して、開示されたWIGの様々な特徴および機能、ならびに動作方法を説明する。本明細書では様々な態様および実施形態が開示されてきたが、他の態様および実施形態は当業者には明らかであろう。本明細書に開示される種々の態様および実施形態は、説明の目的であり、限定的であることは意図されず、真の範囲は以下の請求の範囲によって示される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
【国際調査報告】