(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】流通型電気化学反応器を備える廃水処理システム及び方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20240208BHJP
【FI】
C02F1/461 101A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548765
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 US2022016169
(87)【国際公開番号】W WO2022174069
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523084994
【氏名又は名称】アクラリティー、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ACLARITY, INC
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】オレン、デイビッド、シュナイダー
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA02
4D061DA08
4D061DB19
4D061DC14
4D061DC15
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB16
4D061EB20
4D061EB28
4D061EB29
4D061EB30
4D061EB31
4D061EB35
4D061EB37
4D061FA13
4D061GA02
4D061GA05
4D061GA07
(57)【要約】
排水処理システムは、分配チャンバー及び処理チャンバーを備える廃水タンクを備える。前記分配チャンバーは、処理済廃水出口及び再循環回路入口を備える。前記処理チャンバーは、未処理廃水入口及び再循環回路出口を備える。再循環回路配管が、前記再循環入口を前記再循環出口に接続する。ポンプが、前記再循環回路入口に流体的に接続され、前記ポンプが前記再循環回路を通じて、前記分配チャンバーから前記処理チャンバーに廃水の一部をポンプすることに適合される。流通型電気化学反応器が、前記再循環回路に配置される。前記流通型電気化学反応器は、前記再循環回路を流通する廃水において望ましくない化合物を電気化学的に浄化し、それによりシステム内の廃水を浄化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分配チャンバー及び処理チャンバーを備える廃水タンクであって、前記分配チャンバーが処理済廃水出口及び再循環回路入口を備え、前記処理チャンバーが未処理廃水入口及び再循環回路出口を備える、廃水タンクと、
前記再循環回路入口を前記再循環回路出口に接続する再循環回路配管と、
前記再循環回路入口に流体的に接続されるポンプであって、前記ポンプが前記再循環回路を通じて、前記分配チャンバーから前記処理チャンバーに廃水の一部をポンプすることに適合される、ポンプと、
前記再循環回路に配置される流通型電気化学反応器であって、前記流通型電気化学反応器が前記再循環回路を流通する廃水における望ましくない化合物を電気化学的に浄化することに適合される、流通型電気化学反応器と、
を備える、廃水処理システム。
【請求項2】
前記ポンプが、前記分配チャンバー内に配置されるポンプである、請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記廃水タンクが浄化槽である、請求項1又は2に記載の廃水処理システム。
【請求項4】
前記分配チャンバーが、デバイダーによって前記処理チャンバーから分離される、請求項1-3のいずれか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項5】
前記廃水入口又は前記廃水出口のいずれか1つに、バッフルが接続される、請求項1-4のいずれか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項6】
前記処理チャンバーが既存の汚水溜めを備え、前記分配チャンバーが別途の地下タンクを備える、請求項1又は2に記載の廃水処理システム。
【請求項7】
前記流通型電気化学反応器が、電極及びカソードを備える、請求項1-6のいずれか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項8】
前記流通型電気化学反応器が、溶液流路を備えるハウジングを備え、流通型又はソリッド型の第1電極が、前記溶液流路内に配置され、第2電極が、前記流通型又はソリッド型の第1電極から離間し、前記流通型又はソリッド型の第1電極と前記第2電極との間に電気活性ギャップを作る、請求項1-7のいずれか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項9】
前記電気活性ギャップが、5mm未満かつ2mmを超過する、請求項8に記載の廃水処理システム。
【請求項10】
前記第1電極が、中空円筒形状を有するアノードである、請求項8又は9に記載の廃水処理システム。
【請求項11】
前記第2電極が、中空円筒形状を有するカソードである、請求項8-10のいずれか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項12】
前記第1電極が環状形状を有し、前記第2電極が環状形状を有し、前記第1電極及び前記第2電極が同心円状に配置され、前記第1電極が前記第2電極の壁内に位置する、請求項8-11のいずれか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項13】
前記溶液流路が、前記第1電極の壁を通じて放射状に、前記電気活性ギャップを横切って放射状に、そして前記第2電極の壁を通じて放射状に広がる、請求項8-12のいずれか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項14】
前記第1電極及び前記第2電極に接続され、それにより電気回路を作る電源をさらに備える、請求項8-13のいずれか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項15】
前記第2電極が、ステンレス鋼(stainless steel)、グラファイト(graphite)、又はその他の炭素質材料(other carbonaceous materials)、寸法安定性アノード(dimensionally stable anode:DSA)、マグネリ相酸化チタン(Magneli-phase titanium oxide)、混合金属酸化物(mixed metal oxide)、又はホウ素ドープダイヤモンド(boron doped diamond:BDD)のうち1つを含む、請求項8-14のいずれか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項16】
前記第1電極が、寸法安定性アノード(DSA)、マグネリ相酸化チタン、混合金属酸化物、又はホウ素ドープダイヤモンド(BDD)のうち1つを含む、請求項8-15のいずれか一項に記載の廃水処理システム。
【請求項17】
廃水処理システムにおいて廃水から望ましくない化合物を除去する方法であって、
処理チャンバーと分配チャンバーを備える廃水タンクに廃水を導入すること、
前記分配チャンバーから、そして再循環回路を通じて前記廃水の一部をポンプすること、及び
前記廃水の前記一部を流通型電気化学反応器に通らせることにより、前記再循環回路内で前記廃水の前記一部における望ましくない化合物を電気化学的に浄化すること、
を備える、方法。
【請求項18】
前記廃水の前記一部を、前記流通型電気化学反応器に通らせた後、前記処理チャンバーに戻すことをさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記廃水の前記一部が、前記電気化学反応器に通らせた後、前記廃水タンク内の前記廃水の表面の上で放すこと、前記廃水タンク内の前記廃水の表面の下で放すこと、前記廃水タンクの底のスラッジ層で放すこと、又は前記廃水タンク内の前記廃水の上のスカム層で放すことのうちいずれかにより、前記分配チャンバー及び前記処理チャンバーのいずれかに再導入される、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記望ましくない化合物が、硝酸塩(nitrate)、過塩素酸塩(perchlorate)、ホウ酸塩(borate)、医薬品及びパーソナルケア製品 (pharmaceutical and personal care products:PPCPs)、金属オキシアニオン(metal oxyanions)、金属イオン(metal ions)、及びそれらの組み合わせのうち1つを含む、請求項17-19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記望ましくない化合物の濃度が、他の化学物質を添加せずに低下される、請求項17-20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
分配チャンバー及び処理チャンバーを備える廃水タンクであって、前記分配チャンバーが処理済廃水出口及び流通型出口を備え、前記処理チャンバーが未処理廃水入口及び流通型入口を備える、廃水タンクと、
前記流通型入口を前記流通型出口に接続する流通型配管と、
前記流通型配管に流体的に接続されるポンプであって、前記ポンプが前記流通型配管を通じて、前記処理チャンバーから前記分配チャンバーに廃水の一部をポンプすることに適合される、ポンプと、
前記流通型配管に流体的に接続される流通型電気化学反応器であって、前記流通型電気化学反応器が前記流通型配管を流通する廃水における望ましくない化合物を電気化学的に浄化することに適合される、流通型電気化学反応器と、
を備える、廃水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体浄化装置及び方法、そしてより詳しくは、流通型電気化学反応器を備える廃水処理システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の居住により排出される生物廃棄物は、長い間健康上の問題の原因となっている。一般的に、例えば都市や街において、多くの住居領域と労働領域が互いに近い場合、下水は収集され、都市の水処理施設におけるさらなる処理のために離れた場所まで輸送される。これらの大きな施設は、排出された下水の問題点の多くを浄化することができるが、一般的に高人口密度地域のみで経済的に存続可能である。
【0003】
人口密度が低い地域に住む人々、又はそのような地域に存在する施設は、多くの場合、下水を地元、通常は自分の敷地内で処理(treat)又は処理(process)することを要求される。この処理は、多くの場合、浄化槽(septic tank)又は汚水溜め(cesspool)等の処理システムを使うことによってなされる。浄化槽及び汚水溜めは、一般的に下水における固形廃棄物を分解する生物活性(バクテリア等)に依存し、液体部分は地中に放され、放された部分は地域の地下水面に向かって下降するときに土に濾過される。時間の経過と共に、水は、地中に沈むにつれて自然処理によってさらに濾過及び浄化され、最終的に地元の地下水面に到達するときは比較的安全になる。しかし、浄化槽や汚水溜めは、放された水中に大量のアンモニアや有機窒素化合物(及びその他の溶解化合物)を残す可能性があり、これらは地中に放されると硝酸塩に変換される。この窒素は、硝酸塩(nitrate)、亜硝酸塩(nitrite)、NOxを生成する藻類やシアノバクテリアに過剰な栄養素を提供し得、それによって、地下水面でこれらの微生物の望ましくない増殖が促進され、農業、産業、又は個人需要の目的で地下水面から水を汲む場合、化合物及び/又は微生物が潜在的に有害な濃度で存在することになる。したがって、これらの望ましくない増殖自体が、地元地域の人間、動物、植物、特に井戸から汲む等して地元の地下水面からの水を使用する地域住民に健康上の問題を引き起こす可能性がある。
【0004】
地下水の硝酸塩、亜硝酸塩、NOx汚染はますます危険な問題となっており、地方自治体は硝酸塩、亜硝酸塩、NOx汚染の軽減を補助するための政策を確立し始めている。浄化槽で処理される代わりに下水を収集し、有機窒素とアンモニアを処理できる(したがって硝酸塩、亜硝酸塩、及びNOx汚染を軽減できる)集中型都市廃水処理施設で処理するコストは酷く高価であり、ニューヨークのロングアイランド地域だけでも50億ドルから100億ドルの間の費用がかかると推定された。その結果、議員らは住宅用及び工業用の有機窒素及びアンモニア軽減システムの導入を増やすための奨励金を提供し始めており、将来的には住宅システムからの有機窒素及びアンモニア放出に対する規制の監視が強化される可能性が高い。ガルフコーストやチェサピーク湾等、米国の他の場所も窒素汚染の影響を受けている。
【発明の開示】
【0005】
第1の態様によれば、廃水処理システムは分配チャンバー及び処理チャンバーを備える廃水タンクを備える。分配チャンバーは処理済廃水出口及び再循環回路入口を備える。処理チャンバーは未処理廃水入口及び再循環回路出口を備える。再循環回路配管が、再循環回路入口を再循環回路出口に接続する。ポンプが再循環回路入口に流体的に接続され、ポンプは再循環回路を通じて分配チャンバーから処理チャンバーに廃水の一部をポンプすることに適合される。流通型電気化学反応器が再循環回路に配置される。流通型電気化学反応器は、再循環回路を流通する廃水内の望ましくない化合物を電気化学的に浄化することで、システム内の廃水を浄化する。
【0006】
第2の態様によれば、廃水処理システムは分配チャンバー及び処理チャンバーを備える廃水タンクを備える。分配チャンバーは処理済廃水出口及び流通型出口を備える。処理チャンバーは未処理廃水入口及び流通型入口を備える。流通型配管が流通型入口を流通型出口に接続する。ポンプが流通型配管を流体的に接続させる。ポンプは、流通型配管を通じて処理チャンバーから分配チャンバーに廃水の一部をポンプする。流通型電気化学反応器が、流通型配管に流体的に接続されている。流通型電気化学反応器は、流通型配管を流通する廃水内の望ましくない化合物を電気化学的に浄化する。
【0007】
第3の態様によれば、廃水処理システムにおいて廃水から望ましくない化合物を除去する方法は、処理チャンバー及び分配チャンバーを備える廃水タンクに廃水を導入することを備える。分配チャンバーからの廃水の一部が再循環回路を通じてポンプされる。再循環回路内の廃水の一部における望ましくない化合物は、廃水の一部を流通型電気化学反応器に通すことで電気化学的に浄化される。
【0008】
流通型電気化学反応器で廃水を処理するシステム及び方法の前述の態様は、以下の選択的な特徴、構造、及び/又は形態のうち1つ又は複数をさらに備えることができる。
【0009】
1つの選択的な形態において、ポンプは水中ポンプである。
【0010】
他の選択的な形態において、ポンプは分配チャンバー内に配置されるポンプである。
【0011】
さらに他の選択的な形態において、廃水タンクは、浄化槽、汚水溜め、工業用水処理タンク、又は都市水処理タンクのうちの1つである。
【0012】
さらに他の実施形態において、処理チャンバーは既存の汚水溜めを備え、分配チャンバーは別途の地下タンクを備える。
【0013】
さらに他の選択的な形態において、分配チャンバーが、デバイダーによって処理チャンバーから分離される。
【0014】
さらに他の選択的な形態において、廃水入口又は廃水出口のいずれか1つに、バッフルが接続される。
【0015】
さらに他の選択的な形態において、流通型電気化学反応器は少なくとも1つの電極及び少なくとも1つのカソードを備える。
【0016】
さらに他の選択的な形態において、流通型電気化学反応器は、溶液流路を備えるハウジングを備え、第1電極が、溶液流路内に配置され、第2電極が、第1電極から離間し、第1電極と第2電極との間に電気活性ギャップを作る。
【0017】
さらに他の選択的な形態において、電気活性ギャップは、好ましくは5mm未満かつ2mmを超過し、より好ましくは約4mm未満かつ約2.5mmを超過し、さらにより好ましくは約3mmの平均サイズを有する。
【0018】
さらに他の選択的な形態において、第1電極は、中空円筒形状を有するアノードである。
【0019】
さらに他の選択的な形態において、第2電極は、中空円筒形状を有するカソードである。
【0020】
さらに他の選択的な形態において、第1電極は環状形状を有し、第2電極は環状形状を有し、第1電極及び第2電極が同心円状に配置され、第1電極が第2電極の壁内に位置する。
【0021】
さらに他の選択的な形態において、第1電極はソリッド型の管状要素を備えるアノードであって、第2電極はアノードを少なくとも部分的に囲む中空円筒形状を有するカソードである。幾つかの選択的な形態において、廃水はカソードの外側からアノードに向かって内側に、それからアノードの外面と平行に流れる。
【0022】
さらに他の選択的な形態において、溶液流路は、第1電極の壁を通じて放射状に、電気活性ギャップを横切って放射状に、そして第2電極の壁を通じて放射状に広がる。
【0023】
さらに他の選択的な形態において、カソードは複数の開口部を有する円筒壁を備えてよく、及び/又はアノードは複数の開口部を有する円筒壁を備えてよい。
【0024】
他の選択的な形態において、溶液流路は、アノード内に少なくとも部分的に、アノード長手軸に沿って長手方向に伸び、そしてアノードの壁を通じて、実質的にアノード長手軸と垂直に、少なくとも部分的に放射状に外側に広がる。
【0025】
他の選択的な形態において、溶液流路は、アノードの壁を通じて放射状に、電気活性ギャップを横切って放射状に、そしてカソード壁の複数の開口部を通じて放射状に広がる。
【0026】
さらに他の選択的な形態において、電源が第1電極及び第2電極に接続され、それにより電気回路を作る。他の実施形態において、電気回路は2つを超過する数の電極を備えてもよい。
【0027】
さらに他の選択的な形態において、第2電極は、ステンレス鋼(stainless steel)、グラファイト(graphite)又はその他の炭素質材料(carbonaceous materials)、寸法安定性アノード(dimensionally stable anode:DSA)、マグネリ相酸化チタン(Magneli-phase titanium oxide)、混合金属酸化物(mixed metal oxide)、又はホウ素ドープダイヤモンド(boron doped diamond:BDD)のうち1つを含む。
【0028】
さらに他の選択的な形態において、第1電極は、寸法安定性アノード(DSA)、マグネリ相酸化チタン、混合金属酸化物、又はホウ素ドープダイヤモンド(BDD)のうち1つを含む。
【0029】
さらに他の選択的な形態において、廃水の一部又は全てが、流通型電気化学反応器を通った後に処理チャンバーに戻されてもよい。
【0030】
さらに他の選択的な形態において、廃水の一部又は全てが、電気化学反応器に通った後、廃水タンク内の廃水の表面の上で放すこと、廃水タンク内の廃水の表面の下で放すこと、廃水タンクの底のスラッジ層(sludge layer)で放すこと、又は廃水タンク内の廃水の上のスカム層(scum layer)で放すことのうちいずれかにより、分配チャンバー及び処理チャンバーのいずれかに再導入される。
【0031】
さらに他の選択的な形態において、望ましくない化合物は、アンモニア(ammonia)、全ケルダール窒素(Total Kjeldahl Nitrogen:TKN)、生物学的酸素要求量(biological oxygen demand:BOD)、化学的酸素要求量(chemical oxygen demand:COD)、医薬品及びパーソナルケア製品(pharmaceutical and personal care products:PPCPs)、人為起源の有機化合物(anthropogenic organic compounds)、金属オキシアニオン(metal oxyanions)、金属イオン(metal ions)、又はそれらの組み合わせのうち1つを含む。
【0032】
さらに他の選択的な形態において、望ましくない化合物の濃度は、他の化学物質を添加せずに低下される。
【0033】
さらに他の選択的な形態において、電解質塩(electrolyte salt)等の追加の化学物質は、流通型電気化学反応器の上流で添加されるか、流通型電気化学反応器に直接添加される。
【0034】
さらに他の選択的な形態において、流通型電気化学反応器は、ハウジングの第1端に入口キャップを備えてよく、入口キャップはカソードに対するアノードの相対的な間隔と整列を維持する。
【0035】
さらに他の選択的な形態において、流通型電気化学反応器は、ハウジングの第2端に配置される出口誘導流キャップを備えてよく、出口誘導流キャップはハウジングの第2端を密閉してカソードの外側からの出口流を受け、出口誘導流キャップは中空アノードの一端も密閉する。
【0036】
さらに他の選択的な形態において、流通型電気化学反応器は、ハウジングの第1端に配置されたアダプタベース入口を備えてよく、アダプタベースは圧力密閉を維持しながら配管及び電気接続を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
明細書は、本発明を形成するとみなされる主題を特に指摘し、明確に請求する特許請求の範囲で終わるが、本発明は、添付の図面と併せて以下の説明からよりよく理解されるであろう。
【
図1】
図1は、流通型電気化学反応器を備える廃水処理システムの概略図である。
【
図2】
図2は、流通型電気化学反応器を備える廃水処理システムの他の実施形態の概略図である。
【
図3】
図3は、流通型電気化学反応器を備える廃水処理システムのさらに他の実施形態の概略図である。
【
図4】
図4は、
図1-3の廃水処理システムのいずれかに使用可能な流通型電気化学反応器の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の流通型電気化学反応器の側面断面図である。
【
図7】
図7は、
図4の流通型電気化学反応器の入口キャップの至近距離から観た側面断面図である。
【
図8】
図8は、
図4の流通型電気化学反応器の出口キャップの至近距離から観た側面断面図である。
【発明の詳細な説明】
【0038】
本明細書で説明する廃水処理システム及び方法は、流通型電気化学反応器を備え、都市廃水や家庭廃水の処理、及び/又は産業廃水の処理を含むが、これらに限定はされない水の処理に有利に使われる。本明細書で説明する特定の実施形態において、廃水処理システム及び方法は、住居又は商業ビル、例えば浄化槽システムや汚水溜めで生成された「灰」又は「黒」水を処理することに向けられている。より詳しくは、住居又は商業ビルから生成され、地域処理施設又は都市処理施設へのアクセスを有しない灰又は黒水は、環境、一般的には地下に放される前、処理のために浄化槽又は汚水溜めに導入される。本明細書で使用される灰水とは、人間又は動物の固形屎尿と接触していない任意の廃水を意味する。本明細書で使用される黒水とは、人間又は動物の固形屎尿と接触した任意の廃水を意味する。灰水及び黒水のどちらも、浄化槽及び汚水溜めによって、多くの場合同時に処理される。
【0039】
本明細書で説明する廃水処理システム及び方法は、有利には既存の廃水処理システムに後付け可能であり、それにより既存のシステムを部分的に利用することで時間と費用を節約する。本明細書で説明する廃水システム及び方法は、有利には、比較的小さな個人的又は家庭の需要、及び、比較的大きな消費者、商業、都市、又は工業需要を満たすほど耐久性と拡張性のある流通型電気化学反応器を備える。有利には、流通型電気化学反応器は、少ない数の可動部品を有し、可動部品は循環ポンプに本質的に限定されるため、長い有用な寿命を有し、生産が比較的安くて簡単である。さらに、本明細書でより詳細に説明するように、流通型電気化学反応器は、驚くべきことに、そして予想外に、従来の装置と比べて詰まりや短絡が大幅に少なく、処理すべき水/溶液中に存在する汚染物質をより効率的に処理することができる。
【0040】
本明細書において、流通型電気化学反応器は、それを通過する溶液流路を有する反応器を意味する。入口、出口、アノード、及びカソードを備えるハウジングを備える流通型反応器の基本的な構造的要素は、米国特許出願公開2019/0284066号明細書に説明及び記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。流通型電気化学反応器は、電気活性ギャップにおいて固体が凝集するため、汚れや短絡に脆弱であることが知られている。その結果、殆どの電気化学システムは、汚れのリスクを減らすため、比較的大きな電極ギャップ(少なくとも5mm以上)を利用し、及び/又は静的(流れない)システムとして構築及び配置されている。本明細書で説明する流通型電気化学反応器は、5mm未満かつ2mmを超過する電極ギャップを有する。他の実施形態において、流通型電気化学反応器は、約4mm未満かつ約2.5mmを超過する、好ましくは約3mmの電気活性ギャップを備えてよい。前述した電極ギャップの範囲は、本明細書で説明するように、驚くべきことにそして予想外に、汚れることや潜在的に短絡することなく、非常に高いレベルの電気化学的効率を実現することを証明した。したがって、本明細書で説明する電気活性ギャップは、驚くことに流通型電気化学反応器がより効率的に汚染物質を処理することを可能とし、大した汚れなく向上した電気的効率を有利に示す。さらに、5mm未満の電気活性ギャップは、有利に、反応性酸化剤の好ましい混合物を生成する。例えば、本明細書に係る電気化学的反応は、有利に、より高濃度のヒドロキシルラジカル(hydroxyl radicals)を生成し、これはより効率的な水の処理に繋がる。
【0041】
流通型電気化学反応器を備える、開示される廃水処理システム及び方法は、有利には灰又は黒の廃水を含む様々な種類の水(例えば、家庭廃水、商業廃水、都市廃水、工業廃水)を処理することに使用することができる。これらシステム及び方法は、複数の最終用途のために、雨水、湖水、河川水、又は地下水を有利に処理するために使用することもできる。
【0042】
開示される廃水処理システム及び方法は、水を浄化する効果を発揮するため電気を利用する。具体的には、ヒドロキシルラジカル、遊離塩素(free chlorine)、オゾン(ozone)を含むがこれらに限定されない酸化剤及び消毒剤が、流通型電気化学反応器のアノード表面上又はその近くで生成され、病原体やその他の望ましくない有機及び無機物等の汚染物質(本明細書では総称して「汚染物質」と呼ぶ)を破壊することができる。硝酸塩や金属イオン等の汚染物質も、流通型電気化学反応器のカソード表面で化学的に還元することができるため、化学薬品の追加無しで、これらの不要な汚染物質をより害の少ない化合物に変換できる。したがって、開示される廃水処理システム及び方法は、例えば、酸性及び塩基性汚染物質を中和し、他の汚染物質を酸化し、さらに他の汚染物質を還元により除去することによって、複雑な水化学で水を処理するために使用されることができる。さらに、廃水システムで使用される電極は反応によって消耗されないため、メンテナンスの必要性と交換コストが大幅に削減される。その結果、有機物の凝集や金属の析出による電極の汚れや肥大化(scaling)は、電極の極性を逆転させたり、水で逆洗したり、供給水に塩化ナトリウムを添加したり、電圧を上げたりすることによって、又は弱酸又は弱塩基で洗浄することによって、有利に逆転させることができる。
【0043】
開示される廃水処理システム及び方法による水処理中に、水は酸化されて、ヒドロキシルラジカル及びオゾン等の二次活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)を形成する。生成された酸化剤は、処理すべき水/溶液中に存在する有機物の殆どと迅速に反応し、それによって二酸化炭素とより有害性の低い副生成物とを形成する。さらに、電子が汚染物質からアノードに移動するときに、汚染物質の直接的な破壊が起きる。パーフルオロオクタン酸(perfluorooctanoic acid:PFOA)及びパーフルオロオクタンスルホン酸(perfluorooctanesulfonic acid:PFOS)等の過フッ素化合物は、本開示に係る流通型電気化学反応器を使用して酸化され得る代表的な汚染物質である。遊離塩素が、処理される溶液中に存在する任意の周囲の塩化物イオン、又は塩化ナトリウム(NaCl)等の添加金属塩化物からその場で形成され、これにより別の消毒剤が提供されることもある。強力な酸化能力と消毒能力に加えて、カソードは望ましくない汚染物質を還元できる還元剤を生成し、それによって汚染物質を分解し、及び/又はより有害性の低い化合物を形成する。酸化剤の生成、間接的な二次酸化、直接的な電子移動及び還元プロセスを組み合わせることで、アンモニア、総ケルダール窒素(TKN、有機化合物からの窒素(有機窒素)とアンモニア/アンモニウムからの窒素の合計の測定値を提供するが、硝酸塩やシアン化物等の他の無機化合物からの窒素は含まれない)、生物学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、医薬品及びパーソナルケア製品(PPCPs)、他の人為起源の化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、金属オキシアニオン、金属イオン、過フッ素化合物、天然及び合成有機化合物、病原体、及びそれらの組み合わせを含むが、それに限定されない様々な種類の汚染物質を含む水を浄化することができる。遊離塩素は強力な消毒剤であるが、浄化槽又は汚水溜めに放されると、塩素が急速に希釈されて消費され、それにより、浄化槽や汚水溜めにおける通常の生物活性への干渉を防ぐほど、開示されるシステムによって生成される塩素の量は十分に少量であり、限られた空間に限定される。さらに、塩素は、通常の生物活性に対する悪影響を最小限に抑えるために、浄化槽又は汚水溜めの廃水表面のスカム層又は底のスラッジ層に放されてよい。
【0044】
水の電気分解によって電極表面で生じるpHの変化は、流入水のpHの変化を引き起こすことができる。通常、H+がカソードで、OH-がアノードで、どちらも比較的大量に生成される。アノードで起きる酸化は、多くの有機化合物の完全又は部分的な無機化を引き起こすことができ、その結果CO2が生成される。生成されたCO2は流入水に溶解し、それによって炭酸(H2CO3)が生成され、pHが低下する。pHはアンモニアの破壊によって低下することもできる。したがって、pHの変化は、少なくとも部分的に流入水の化学的性質に依存する。さらに、ヒドロニウム(hydronium)及び水酸化物種(hydroxide species)の生成は、上記の様々な酸化還元プロセスと相まって、バクテリア、ウイルス、原生動物等の病原体が生存できないほど、十分に高くてよい。
【0045】
必須ではないが、処理される廃水は、電気化学的プロセスを促進するために添加された金属塩を含んでもよい。例えば、廃水は、酸化されてその場で強力な酸化剤である塩素ガスを形成することができる塩化物イオン源を提供できる金属塩が含まれてよい。塩素ガスは水に非常に溶けやすく、加水分解を受けて次亜塩素酸(HOCl)を形成する。場合によっては、二酸化塩素(ClO2)が生成されることもある。NaCl等の塩、又は他の塩は、電気化学反応器の上流に導入されてよい、及び/又は廃水自体の中に存在してよい。
【0046】
本明細書で使用される「約」、「おおよそ」、又は「実質的に」には、記載された値が含まれ、問題の測定値と、特定の量の測定に関連する誤差(つまり、測定システムの限界)を考慮して、当業者によって決定される特定の値の偏差の許容範囲内を意味する。例えば、「約」、「およそ」、又は「実質的に」は、1標準偏差以内、又は記載された値の±10%、5%、3%、若しくは1%以内を意味し得る。
【0047】
本明細書で使用される「炭素質(carbonaceous)」とは、炭素を含む材料を意味する。本明細書で使用される「炭素質」とみなされるためには、材料は、+4酸化状態以外の炭素原子を有する炭素を含有すべき(炭素原子が酸化可能であるように)である。例えば、炭素質材料は、グラファイト(graphite)、グラフェン(graphene)、フラーレン(fullerene)、導電性プラスチック(electrically conductive plastic)、及びダイヤモンド(diamond)を含むが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書で使用される「流通型(flow-through)」アノード又はカソードは、液体が通って流れることができるアノード又はカソードを指す。流通型電極の幾つかの非限定的な例には、内部流通経路を有する、及び/又は液体が流れることができる穿孔(perforations)、孔(pores)、又は穴(holes)を備えるアノード又はカソードが含まれる。穴は、例えば打ち抜きによって電極に作製されてよい。一例では、ソリッド型(solid)であるが中空の円筒形電極は、液体が中空円筒形電極の長さに沿って軸方向に流れることができる内部流通経路を有することができる。他の非限定的な例としては、多孔質材料を備える材料壁を有するアノード、例えば、液体がアノード又はカソードの長さに沿って軸方向に流れ、併せて円筒形のアノード又はカソード壁を横方向に通って流れることができる、多孔質材料を備える材料壁を有する中空円筒形のアノード又はカソードを含む。多孔質電極、例えば、多孔質マグネリ相(porous Magneli-phase)、例えばTi4O7アノードは、表面積が大きく、電気化学的に処理すべき水/溶液(一般的に水)との接触が増大するという点で一般に好ましく、処理すべき水/溶液内の汚染物質と反応できる、比較的増加した量のヒドロキシルラジカルやオゾン等の酸化剤を生成することと、汚染物質の酸化を比較的増加させることに有利である。ソリッドプレート型アノード(中空ではなく、かつ内部に貫流路を持たない)も使用可能である。したがって、アノードとカソードの両方は流通型であってもソリッド型であってもよい。
【0049】
電気化学プロセスが動作するためには、アノード及びカソードとして機能する2つ(又はそれ以上)の電極が必要である。本明細書で使用される「電気活性ギャップ」は、アノードとカソードとして機能する電極間のギャップ又は空間を意味する。開示される廃水処理システムにおいて、流通型電気化学反応器の電気活性ギャップは、一般的に水相で処理される廃水が流れる流路に含まれ、電気化学反応器の電極に電力が供給されたときに電子が移動することができる。電流の流れは、電気活性ギャップ内で起こる、処理される廃水中の汚染物質が分解及び/又は不活性化される様々な化学反応を発生させ、それによって廃水を浄化し、下水流が環境に放されることを可能とする。
【0050】
本明細書で使用される「寸法安定性アノード」とは、比較的高い導電性と耐食性を示すアノードを言及する。一般的に、寸法安定性アノードは、RuO2(ruthenium oxide:酸化ルテニウム)、IrO2(iridium oxide:酸化イリジウム)、SnO(tin oxide:酸化スズ)、又はPtO2(platinum oxide:酸化白金) 等の1つ又は複数の金属酸化物から製造される。
【0051】
「混合金属酸化物電極」(アノード又はカソードとして使用できる)は、チタンプレート又は拡張メッシュ等の基板を幾つかの金属酸化物でコーティングすることによって作られる。酸化物の1つは通常、RuO2(酸化ルテニウム)、IrO2(酸化イリジウム)、SnO(酸化スズ)、又はPtO2(酸化白金) であって、電気を伝導し、現場での塩素ガスの生成等の所望の反応を触媒する。金属酸化物の他の外部コーティングは、通常は二酸化チタンであり、大きな伝導性や触媒作用を持たないが、内部の腐食を防ぐ。
【0052】
幾つかの実施形態では、任意のプリーフィルタ(pre-filter)を電極の上流に設置してよく、及び/又はポストフィルタ(post-filter)を電極の下流に追加してよく、プリーフィルタ又はポストフィルタは粒子又は様々な無機もしくは有機材料を捕捉し、それによって粒子が電極間に短絡ブリッジを形成することを防止し、及び/又は、電気化学反応によって形成された粒子を除去する。
【0053】
図1には、第1実施形態の廃水処理システム100が示される。廃水処理システム100は、分配チャンバー112及び処理チャンバー114を備える廃水タンク110を備える。
図1に示される廃水タンク110は、浄化システムタンクを備える。他の実施形態において、廃水タンク110は都市廃水タンクを備えてもよい。分配チャンバー112及び処理チャンバー114は、液体が処理チャンバー114から分配チャンバー112に流れるように、輸送バッフル117を備えるパーティション又はデバイダー115によって流体的に分離されてよい。本開示の目的において、バッフルとは、リーチフィールドライン(leach field lines)における詰まりの原因となる浮遊粒子が、浄化槽や汚水溜めのリーチフィールドに到達するのを防ぐ障壁である。
【0054】
分配チャンバー112は、処理済廃水出口120及び再循環回路入口122を備える。処理済廃水出口120は、分配バッフル121に接続されてよい。
【0055】
処理チャンバー114は、未処理廃水入口124及び再循環回路出口126を備えてよい。未処理廃水入口124は、処理バッフル125に接続されてよい。
【0056】
再循環回路配管130(再循環回路を形成する)は、再循環回路入口122を再循環回路出口126に接続する。ポンプ132は再循環回路入口122に流体的に接続され、ポンプ132は、再循環回路配管130を通じて、分配チャンバー112から処理チャンバー114に廃水の一部をポンプするように適合される。
図1の実施形態において、ポンプ132は、分配チャンバー112内の液体の表面133の下に位置する水中ポンプである。ポンプ132は、時間の経過とともに廃水から沈殿する固体によって形成されるスラッジの層135の上に位置する。他の実施形態において、ポンプ132は違う種類のポンプ(例えば、ウィズバンポンプ(wiz-bang pump)、容積式(非水中)ポンプ、吸引ポンプ等)であってよく、及び/又はポンプ132はシステムにおける他の場所(例えば、処理チャンバー114又は分配チャンバー112のうちいずれかにおける廃水の表面133の上、又は再循環配管130内)に位置してもよい。
【0057】
他の実施形態において、ポンプ132は、分配チャンバー112の脱水を防ぐために、流体水位が低くなるとポンプを切る、レベル若しくはフロートスイッチ及びコントロール、又は、タイマー及びレベルスイッチを備えてよい。さらに他の実施形態において、ポンプ132は、ポンプ132又は再循環回路配管130における液体を凍らせるおそれがある凍結条件の場合にポンプ132をオフにする、ポンプ132又は再循環回路配管130における凍結温度を感知する温度センサを備えてもよい。さらに他の実施形態において、ポンプは、駆動時間を記録し、駆動時間をあらかじめ設定された制限、又はあらかじめ設定されたスケジュールに制御する駆動時間モニタ(図示せず)に接続されてよい。
【0058】
流通型電気化学反応器140が、再循環回路配管130内に配置されるか、再循環回路配管130に接続される。流通型電気化学反応器140は、再循環回路配管130を流通する廃水内の望ましくない化合物を電気化学的に浄化し、それにより廃水処理システム100における廃水を処理する。流通型電気化学反応器140の一実施形態は、
図4-8を参照して以下に説明される。
【0059】
幾つかの実施形態において、選択的なプリーフィルタ142及び/又はポストフィルタ144が含まれてよい。選択的なプリーフィルタ142は、電気化学反応器140を詰まらせるかもしれない大きな微粒子を濾過することができる。選択的なポストフィルタ144は、電気化学反応器140における化学反応によって形成される微粒子をフィルタ及び/又は浄化することができる。
【0060】
一般的に、廃水の一部は分配チャンバー112からポンプされ、流通型電気化学反応器140で処理されるように再循環配管130を通り、処理チャンバー114に戻されてよい。廃水の一部は、
図1に示されるように、廃水表面133の上で放されることによって処理チャンバーに再導入されてよい。他の実施形態において、廃水の一部は廃水表面133の下に放されてもよく、又は廃水の一部は廃水タンク110の底のスラッジ層135に放されてもよい。さらに他の実施形態において、廃水の一部は廃水表面133の近くのスカム層で放されてもよい。さらに他の実施形態において、廃水の一部は分配チャンバー又は処理チャンバーのいずれかに再導入されてもよい。
【0061】
一般的に、流通型電気化学反応器は、廃水内の望ましくない化合物を軽減する化学反応を促進するために電気を使う。幾つかの実施形態において、望ましくない化合物は、アンモニア、全ケルダール窒素(TKN)、生物学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、医薬品及びパーソナルケア製品(PPCPs)、人為起源の化合物、金属オキシアニオン、金属イオン、又はそれらの組み合わせのうち1つ又はそれ以上を含む。
【0062】
廃棄物を分解するとき、生物活性に依存する現在の廃水処理システム(浄化槽及び汚水溜め等)は、窒素を除去しない。その後、この窒素は、土壌バクテリアが有機窒素とアンモニアを消費する土壌に浸出し、NOx(硝酸塩、亜硝酸塩、亜酸化窒素の合計) を生成する。硝酸塩、亜硝酸塩、及び亜酸化窒素は地下水に浸透し、地下水面が空になる外水域 (湖、川、又は海洋) で藻類の発生を引き起こすことがある。これら藻類の発生は人間や他の野生動物にとって危険であり、海岸や漁業の閉鎖により経済的混乱を引き起こすこともある。NOx汚染に起因する藻類の発生のよく知られた一例は「赤潮」と呼ばれるが、このような藻類の発生は一般に有害な藻類の発生(Harmful Algal Blooms:HAB) として分類される。
【0063】
図示される実施形態において、望ましくない化合物の濃度は、他の化学薬品を追加することなく、そして大量の硝酸塩、亜硝酸塩、NOXを生成せずに軽減されることができる。より詳しくは、システムは、地下水と近くの地表水の汚染を防ぐためにアンモニア及び有機窒素を除去する。電気化学反応器は、廃水内に存在する塩素を次亜塩素酸(HOCl)に変換する。その後、次亜塩素酸はアンモニア及び/又はTKNと急速に反応して、モノクロラミン(NH2Cl)、ジクロラミン(NHCl2)、トリクロラミン(NCl3)、そして最後に窒素ガス(N2)を順に生成する。その後、窒素ガスは泡を形成して大気中に放される。さらに、システムは炭素質廃棄物 (BOD/CODによって測定される)を有利に分解し、それによって浄化槽及び/又は汚水溜めの主な目的を向上させる。他の実施形態において、電解質塩等の追加の化学物質を、流通型電気化学反応器の上流に、又は流通型電気化学反応器に直接添加して、流通型電気化学反応器における所望の化学反応を促進することができる。
【0064】
現在の浄化槽システム及び汚水溜めは、廃水を処理するために生物活性に依存する。より詳しくは、廃水の望ましくない一部を消化するようにバクテリアが使用される。したがって、現在のシステムは温度変化、詳しくは寒い変化に敏感である。温度が下がると、生物活性は遅くなる。本明細書で説明される廃水処理システム及び方法は、電気的に促進される化学反応で生物活性を増強して補助する。電気的に促進される化学反応は、生物活性と違って温度変化に敏感でない。その結果、開示される廃水処理システム及び方法は、既存の浄化槽システム及び汚水溜めより広い温度範囲に渡って、高い水準の処理を有利に維持する。
【0065】
図2には、第2実施形態の廃水処理システム200が示される。
図2の実施形態における要素は
図1における同要素に対応するが、
図2における要素は
図1の要素より100大きく番号付けられている。例えば、
図1における第1実施形態の廃水処理システムは参照番号100で番号付けられているが、
図2における第2実施形態の廃水処理システムは参照番号200で番号付けられている。
【0066】
図2の廃水処理システム200は、分配チャンバー212及び処理チャンバー214を備える廃水タンク210を備える。分配チャンバー212は、分配バッフル221に流体的に接続されている処理済廃水出口220を備える。処理チャンバー214は、処理バッフル225に流体的に接続されている未処理廃水入口224を備える。分配チャンバー212及び処理チャンバー214は、処理チャンバー214から分配チャンバー212に液体が流れることができるように、輸送バッフル227を持つパーティション又はデバイダー215によって流体的に分離されてよい。
図2の実施形態において、ポンプ232は輸送バッフル217に流体的に接続され、流通型電気化学反応器240は、処理チャンバー214からの廃水の一部が輸送バッフル217を通ってまた流通型電気化学反応器を通ってポンプされ、分配チャンバー212に入る前に電気化学的に処理されるように、輸送バッフル217内に配置されている、又は輸送バッフル217に接続されている。
図1の実施形態と同様に、流通型電気化学反応器240は、廃水内の望ましくない化合物を電気化学的に浄化する。
図1の実施形態と
図2の実施形態との違いは、流通型電気化学反応器とポンプの位置である。
【0067】
図1に対して上述した任意の選択的な特徴は、
図2の実施形態の特徴と組み合わせられることができ、その逆も同じである。
【0068】
図3には、第3実施形態の廃水処理システム300が示される。
図3の実施形態における要素は
図1又は
図2の同要素に対応するが、
図3の要素は
図1又は
図2における要素よりそれぞれ100又は200大きく番号付けられている。例えば、
図1における第1実施形態の廃水処理システムは参照番号100で番号付けられ、
図2における第2実施形態の廃水処理システムは参照番号200で番号付けられているが、
図3における第3実施形態の廃水処理システムは参照番号300で番号付けられている。
【0069】
第3実施形態の廃水処理システム300は、上述した電気化学的処理を提供するように変形された既存の汚水溜めシステムを対象としている。より詳しくは、廃水処理システム300は、処理チャンバー314を備える既存の汚水溜めタンク310を備える。汚水溜め310の隣に、新しい地下保持タンクが設置されている。新しい地下保持タンクは、保持チャンバー312を備える。処理チャンバー314及び保持チャンバー312は、土等の物理的障壁によって流体的に分離されてよい。処理チャンバー314から保持チャンバー312に液体が流れるように、処理チャンバー314を保持チャンバー312に流体的に接続させる輸送配管317が設置されてよい。
【0070】
再循環回路配管330(再循環回路を形成する)が、保持チャンバー312を処理チャンバー314に接続させる。ポンプ332が再循環回路配管330に流体的に接続されており、ポンプ332は、再循環回路配管330を通じて保持チャンバー312から処理チャンバー314に廃水の一部をポンプするように適合される。
図3の実施形態において、ポンプ332は、保持チャンバー312内の液体表面の下に位置する水中ポンプである。ポンプ332は、時間の経過とともに廃水から沈殿する固体によって形成されるスラッジの層の上に位置する。他の実施形態において、ポンプ332は他の種類のポンプ(例えば、ウィズバンポンプ、容積式(非水中)ポンプ、吸引ポンプ等)であってよく、及び/又はポンプ332はシステムにおける他の場所(例えば、処理チャンバー314又は保持チャンバー312のうちいずれかにおける廃水の表面の上、又は再循環配管330内)に位置してもよい。
【0071】
流通型電気化学反応器340は、再循環回路配管330内に位置する、又は再循環回路配管330に接続される。流通型電気化学反応器340は、再循環回路配管330を流通する廃水内の望ましくない化合物を電気化学的に浄化し、それにより廃水処理システム300内の廃水を浄化する。
【0072】
図1の実施形態と同様に、幾つかの実施形態において、選択的なプリーフィルタ342及び/又は選択的なポストフィルタ344が含まれてよい。選択的なプリーフィルタ342は、電気化学反応器340を詰まらせるかもしれない大きな微粒子をフィルタすることができる。選択的なポストフィルタ344は、電気化学反応器340における化学反応によって形成される微粒子をフィルタ及び/又は浄化することができる。
【0073】
図1の実施形態と同様に、廃水の一部は保持チャンバー312からポンプされ、流通型電気化学反応器340で処理されるように再循環配管330を通り、処理チャンバー314に戻されてよい。廃水の一部は、廃水表面の上、廃水表面の下、又は廃水タンク310の底のスラッジ層で放されることによって、処理チャンバーに再導入されてよい。さらに他の実施形態において、廃水の一部は廃水表面133の近くのスカム層で放されてもよい。さらに他の実施形態において、廃水の一部は保持チャンバー312又は処理チャンバー314のいずれかに再導入されてもよい。
【0074】
上記の実施形態のいずれにおいても、廃水処理システム内の廃水から望ましくない化合物を除去する方法は、処理チャンバー及び分配チャンバーを備える廃水タンクに廃水を導入することを備える。分配チャンバーからの廃水の一部は、再循環回路を通ってポンプされる。再循環回路内の廃水の一部における望ましくない化合物は、廃水の一部を流通型電気化学反応器に通らせることによって電気化学的に浄化される。
【0075】
一般的に、廃水は、汚水溜めにおいて、処理チャンバーから分配チャンバーに直接流れることによって処理される。廃棄物は処理チャンバー内で消化され、混入固体は処理チャンバーの底に沈殿する。その結果、処理チャンバーから分配チャンバーに移動する流体は、殆ど液体であって、幾つかの溶解した固体を有し、浮遊固体粒子を殆ど含まない。分配チャンバーからの廃水は、処理チャンバーに戻される前に、ポンプによって除去され、流通型電気化学反応器を通る。流通型電気化学反応器及び再循環回路は、幾つかの実施形態(例えば
図1及び
図3の実施形態)において既存の浄化槽(又は汚水溜め)構造の外部にある。他の実施形態において、流通型電気化学反応器は処理チャンバーと分配チャンバーとの間の既存の流路において配置されてよい(例えば、
図2の実施形態)。いずれにせよ、本明細書で説明される廃水処理システムは、既存の廃水処理構造に有利に後付け可能である。その結果、変形される廃水処理システム(電気化学反応器を含む)は、既存の先進的な栄養分除去システムより安価で、より効果的に廃水を処理できる。
【0076】
上記の実施形態のいずれにおいても、処理チャンバーと分配チャンバーとの間の流路において複数の電気化学反応器が配置されてよい。1つを超過する電気化学反応器がシステムに配置される場合、電気化学反応器は同じ(即ち、同じ(又は同様の)望ましくない化合物を目的とする)でよいし、又は電気化学反応器は異なってよい(即ち、異なる望ましくない化合物を目的とする)。反応器は、並列及び/又は直列に配置されてよい。
【0077】
さらに他の実施形態において、都市排水システムが、本明細書で説明される特徴及び/又は機能とともに変形されてよい。一般的に、従来の都市排水システムは曝気(aeration)によってBODを除去する。曝気中に、窒素含有廃棄物(主にアンモニア及び/又はTKN)が部分的に除去される。処理された廃水が環境に戻されると、これらの窒素化合物は、バクテリアや藻類の増殖の栄養素として機能する硝酸塩に変換され得る。本明細書に記載のシステム及び方法、より具体的には流通型電気化学反応器の追加は、処理された廃水が環境に放される前にこれらの窒素化合物をより有害性の低い化合物に変換する。
【0078】
図4-8を参照すると、流通型電気化学反応器10は、溶液流路14を備えるハウジング12を備える。アノード16等の流通型又はソリッド型の第1電極が、溶液流路14において配置される。図示される実施形態において、アノード16は環状、場合によっては中空円筒であり、多孔質材料を含む。
【0079】
カソード18等の第2電極がアノード16から離間され、それによりアノード16とカソード18との間に電気活性ギャップ20を作る。電気活性ギャップ20は、5mm未満かつ2mmを超過する。図示される実施形態において、電気活性ギャップは約3mmである。上述したように、アノード16及びカソード18の同心円状構成は逆転されてよい。
【0080】
図示される実施形態において、アノード16及びカソード18の両方は中空円筒形状を有する。アノード16及びカソード18は同心円状に配置され、アノード16はカソード18の円筒壁22内に位置する。
図1-5に図示される構成は酸化反応器として使用されることができる。他の実施形態において、例えば還元反応器として使用される場合、アノード16及びカソード18は、カソード18がアノード16の円筒壁内に位置するように、逆転(電気接続を逆転する等)されることもできる。いずれにせよ、アノード16及びカソード18は共通の長手軸xを共有してよい。アノード16の内部24は、入口26を通ってハウジング12に入る、処理すべき水/溶液の初期流路を形成する。処理すべき水/溶液は内部24を満たすと共に、長手軸xと平行な長手方向に流れ、最終的に、液体がプラグ27によって止められる内部24の底に辿り着く。一度止められると、内部24に圧力が高まり、液体が、アノード16の壁を通って、長手軸xと垂直に、放射状に外側に流れるように強制する。
【0081】
液体は、アノードにおける多孔性開口部(porous opening)を通じて、又はアノード16における穿孔(perforation)を通じてアノード16の壁を通ることができる。いずれにせよ、液体が一度アノード16の壁を通じて流れると、液体は電気活性ギャップ20に入る。電気活性ギャップ20において、充電されたアノードとカソードによって供給される電子流によって促進される化学反応が液体内で起きる。液体はカソード壁22を通って、例えばカソード壁22における複数の開口部28を通って放射状に外側に流れ続ける。一度カソード壁22を通ると、液体はカソード18とハウジング12との間に形成される環状空間において、出口30を向いて流れる。
【0082】
代替の実施形態において、アノード16及びカソード18の1つ又は両方がソリッド型の円筒壁を備えてよい。そのような実施形態において、流路は、アノード16の中空内部に入り、プラグ27に接触するまで下に、それからアノード16の下端の周りに、アノード16の下端の壁とプラグ27との間のギャップを通って、それから電気活性ギャップ20を通って入口キャップ36に接触するまで上に、そして入口キャップ36とカソード18の上端との間のギャップを通って、それからカソード18の外側において出口まで下に流れる。
【0083】
電源34が、電気接続32を介して、アノード16とカソード18に接続される。通常、電源はDC電源である。しかしながら、代替的にAC電源が使用されてもよい。電源34はアノード16とカソード18を充電し、処理すべき水/溶液が電気活性ギャップ20を満たし、アノード16とカソード18との間に電子が流れ、供給される電気は、汚染物質の酸化又は還元、及び、病原体の不活性化を引き起こす特定の望ましい化学反応を促進する。
【0084】
入口キャップ36がハウジング12の第1端38に配置され、入口キャップ36はカソード18に対するアノード16の適切な間隔及び方向を維持する。出口誘導流キャップ40がハウジング12の第2端42に配置される。出口誘導流キャップ40は、ハウジング12の第2端42を密閉し、カソード18の外側からの出口流を受け付ける。出口誘導流キャップ40は、プラグ27と共に、アノード16の内部24の一端も密閉する。
【0085】
アダプタベース入口44がハウジング12の第1端38に配置され、アダプタベース入口44は、圧力密閉を維持しながら配管及び電気接続を提供する。
【0086】
カソード18は、ステンレス鋼(stainless steel)、グラファイト(graphite)、又は他の炭素質材料(other carbonaceous materials)、寸法安定アノード(dimensionally stable anode:DSA)、マグネリ相酸化チタン(Magneli-phase titanium oxide)(一般式TinO2n-1、例えばTi4O7)、混合金属酸化物(mixed metal oxide)(RuO2(酸化ルテニウム)IrO2(酸化イリジウム)、SnO(酸化スズ)、又はPtO2(酸化白金)等)、ホウ素ドープダイヤモンド(boron doped diamond:BDD)、又はそれらの組み合わせを備えてよい。本明細書で使用される「マグネリ相酸化チタン」という用語は、一般式TinO2n-1を有する酸化チタン、例えば、Ti4O7、Ti5O9、Ti6O11、又はそれらの混合物であってもよい。一実施形態において、マグネリ相酸化チタンはTi4O7であってもよい。他の実施形態では、マグネリ相酸化チタンは、マグネリ相酸化チタンの混合物であってもよい。
【0087】
アノード16は、寸法安定性アノード(DSA)、マグネリ相酸化チタン(一般式TinO2n-1、例えばTi4O7)、混合金属酸化物(RuO2(酸化ルテニウム)、IrO2(酸化イリジウム)、SnO(酸化スズ)、又はPtO2(酸化白金)等)、ホウ素ドープダイヤモンド(BDD)等、又はそれらの組み合わせを備えてよい。
【0088】
一度適切な流通型反応器が構築されて配置されると、カソード及びアノードに電力が供給され、処理すべき水/溶液が電極を通る結果、それの電気化学的浄化が起きる。浄化された水/溶液は、その後、反応器から取り出される。供給される電力は、電極の不動態化を防ぎ、汚れを除去するように、周期的に逆転されてよい。本実施形態において、カソードは、準化学量論的酸化チタン(sub-stoichiometric titanium oxide)又はその他の電極材料を含んでよい。反応器は、電極の孔又は開口部に蓄積される可能性がある蓄積固体を除去するために定期的に逆洗されてよい。
【0089】
図示される実施形態において、使用中に、カソード及びアノードに電力が供給され、流入水が、反応器の入口キャップ端と、反応器の中央に縦方向に配置される管状経路内に輸送される。流入水は管の出口から出る。一般的に、入口が下に、出口が上に配置されるように、反応器の方向が配置される(よって、図示される図に対して180度回転される)。このような構成において、流入水は下から上に流れる。他の実施形態において、アノード及びカソードは、上述したように逆転されてよい。
【0090】
任意の実施形態に係る流通型反応器は、さらに選択的に、酸化還元電位センサ(oxidation-reduction potential sensor)、pHセンサ、塩素センサ、導電率センサ、流量センサ、圧力センサ、温度センサ、1つ以上の汚染物質センサ (窒素、TOC、UV-Vis等)、又はそれらの組み合わせを備えてよい。
【0091】
電気化学的水処理のために、開示される流通型電気化学反応器を使う幾つかの利点は、酸性及び塩基性溶液に対する高い耐腐食性、高い電気伝導性、増加された物質移動、及び電気化学的安定性である。
【0092】
溶液は、脱イオン水、水道水、又は原水中の塩化ナトリウム等の金属塩化物の溶液を含んでよい。金属塩化物は、アルカリ金属塩化物(alkali metal chloride)、アルカリ土類金属塩化物(alkaline earth metal chloride)、又はこれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されるものではない。処理すべき水/溶液には、様々な、生きている微生物、人為起源の有機化合物、天然化合物、又はそれらの任意の組み合わせを備え得る。微生物は、バクテリア、ウイルス、原生動物、又はその他であり得る。異なる種類の微生物が同時に存在する場合もある。
【0093】
開示された流通型電気化学反応器によって生成される塩素及び他の酸化剤(オゾン及びヒドロキシルラジカルを含むが、これらに限定されない)は、互いに相乗的に作用して、処理される溶液を浄化する。
【0094】
流入液は、様々な人為起源の有機化合物を備え得る。これら化合物の多くは発癌性物質であり、人間や動物の健康にとって非常に危険である。これら化合物は効率的に酸化されて、より有害性の低い酸化生成物になり得る。
【0095】
図1-3の実施形態において示される廃水処理システムの任意の特徴は、
図1-3の任意の他の実施形態の要素と組み合わせられ又は代替されてよい。同様に、
図4-8に示される流通型電気化学反応器の実施形態も、
図1-3の任意の廃水処理システムに採用されてよい。
図1-3の廃水処理システムの任意の実施形態に組み込まれる場合、流通型電気化学反応器は
図4-8で説明された1つ又は複数の選択的な特徴又は形態を備えてよい。
【0096】
例示
【0097】
例1:
図4-8に示される実施形態に従って構築された流通型電気化学反応器は、一般的に浄化槽で見つかる廃水を浄化することにおいて試験された。試験用廃水は、流通型電気化学反応器に電力が供給される前に57.5mg/LのTKN、3.09mg/Lのアンモニア、及び0.0454mg/LのNO
xを有していた。また、試験用廃水は7.53の初期pH及び3.35ms/cmの初期導電率を有していた。流通型電気化学反応器に7.5Vの電圧と25Aの電流での電力が供給され、試験用廃水は3---5gpmで循環された。試験の始まりに、汚染物質の酸化を促進するために26gのNaClが添加された。例1の試験結果は以下の表1に要約されている。
【表1】
【0098】
例2:上記例1の流通型電気化学反応器と試験用廃水の初期試験条件は、例2でも同一である。しかし、例2において流通型電気化学反応器に供給される電力は、11Vの電圧と50Aの電流であって、試験用廃水はまた3-5gpmで循環された。試験の始まりに、汚染物質の酸化を促進するために40gのNaClが添加された。例2の試験結果は以下の表2に要約されている。
【表2】
【0099】
上記表1及び表2の試験結果は、流通型電気化学反応器が比較的安定的なpHを維持しながら80%を超過する有機窒素を有利に破壊したことを示しており、これは浄化槽システム内に他に存在する生物学的因子が他の廃棄物に作用する安定した環境を維持する。予想外に、硝酸塩、亜硝酸塩、亜酸化窒素は殆ど生成されず、これは破壊された有機窒素の大部分が無害な窒素ガスであるN2に変換されたことを示している。システムからのN2の発生(及び損失)は、試験時間0と終了時の総窒素(TKNとNOxの合計に相当)の差によって確認された。
【0100】
上記表中のORPは、システムの酸化電位(正の数)又は還元電位(負の数)の量の尺度である酸化/還元電位(Oxidation/Reduction Potential)を表す。値が高くなるほど、酸化電位 (又は還元電位) が高くなり、化学部分(chemical moieties)を酸化又は還元する能力も高くなる。上記表では、この測定が電気化学反応器による塩素等の酸化剤の生成を確認しており、試験が進んだ時のORPの増加は、この環境における電気化学反応器の有効性を裏付けている。
【0101】
相互参照された又は関連する特許又は出願、及び本出願が優先権又はその利益を主張する特許出願又は特許を含む、本明細書に引用されたすべての文献は、明示的に除外されるか、又は別の方法で制限されない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書に開示又は請求された、いかなる発明に関する先行技術であること、又は、それ単独で、若しくは任意の他の1つ若しくは複数の参考文献との組み合わせで、そのような発明を教示、示唆、若しくは開示することを認めるものではない。さらに、この文献内の用語の意味又は定義が、参照により組み込まれた文献内の同じ用語の意味又は定義と矛盾する場合には、この文献内でその用語に割り当てられた意味又は定義が優先されるものとする。
【0102】
本発明の特定の実施形態を図示及び説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【国際調査報告】