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特表2024-507193くしの位置のポリエーテル残基を有するアミノ官能性ポリブタジエンおよびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】くしの位置のポリエーテル残基を有するアミノ官能性ポリブタジエンおよびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/26 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
C08G65/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549683
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022053059
(87)【国際公開番号】W WO2022175140
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】21157588.1
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランク シューベアト
(72)【発明者】
【氏名】ザラ オットー
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ヴォイタジーク
(72)【発明者】
【氏名】フラウケ ヘニング
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA04
4J005AA14
4J005BB01
(57)【要約】
本発明の対象は、ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエンの製造方法ならびにこの方法により製造できるポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエンであり、この方法は以下の工程を含む:a)少なくとも1種のポリブタジエン(A)を、少なくとも1種のエポキシ化試薬(B)と反応させて、少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を得る工程、b)前記の少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を、少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)と反応させて、少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)を得る工程、c)前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)を、少なくとも1種のエポキシ官能性化合物(F)と反応させて、少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)を得る工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエンを製造する方法であって、以下の工程:
a)少なくとも1種のポリブタジエン(A)を、少なくとも1種のエポキシ化試薬(B)と反応させて、少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を得る工程、
b)前記の少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を、少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)と反応させて、少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)を得る工程、
c)前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)を、少なくとも1種のエポキシ官能性化合物(F)と反応させて、少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
さらに、以下の工程のうち少なくとも1つ:
d)前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)を、少なくとも1種の末端キャップ試薬(H)と反応させて、末端キャップされたポリエーテル残基を含有する少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(K)を得る工程、
e)前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)の色を明るくする工程、
f)前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)のアミノ基の少なくとも一部分を反応させて、酸および/または四級化試薬により第四級アンモニウム基を得る工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用される全てのポリブタジエン(A)の二重結合のうち、1,2-ビニル二重結合0%~80%および1,4-二重結合20%~100%、好ましくは1,2-ビニル二重結合0%~30%および1,4-二重結合70%~100%、より好ましくは1,2-ビニル二重結合0%~10%および1,4-二重結合90%~100%、最も好ましくは1,2-ビニル二重結合0%~5%および1,4-二重結合95%~100%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の少なくとも1種のポリブタジエン(A)の数平均分子量Mが、200g/mol~20000g/mol、好ましくは500g/mol~10000g/mol、最も好ましくは700g/mol~5000g/molであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記の少なくとも1種のポリブタジエン(A)の二重結合の0%超~100%未満、好ましくは0%超~70%、より好ましくは1%~50%、よりいっそう好ましくは2%~40%、よりいっそう好ましくは3%~30%および最も好ましくは4%~20%がエポキシ化されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記の少なくとも1種のエポキシ化試薬(B)が、過ギ酸を含有し、過ギ酸は好ましくはギ酸および過酸化水素からその場で形成されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)が、少なくとも1個の第一級アミノ基および/または少なくとも1個の第二級アミノ基を有する化合物から、好ましくは少なくとも1個の第一級アミノ基および/または少なくとも1個の第二級アミノ基を有する有機化合物から、より好ましくは炭素原子1~22個ならびに少なくとも1個の第一級アミノ基および/または少なくとも1個の第二級アミノ基を有する有機化合物から、よりいっそう好ましくは炭素原子1~12個ならびに少なくとも1個の第一級アミノ基および/または少なくとも1個の第二級アミノ基を有する有機化合物から、最も好ましくはブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)、モルホリン、ピペリジン、シクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)およびベンジルアミンからなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)において、全てのアミノ官能性化合物(D)のNH基の総数対全てのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基の総数が、0.8:1~20:1、より好ましくは0.9:1~10:1、よりいっそう好ましくは1:1~5:1、最も好ましくは1:1~3:1であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)において、触媒が使用され、好ましくはルイス酸およびブレンステッド酸からなる群から、より好ましくは水、フェノール類、アルコール、カルボン酸、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物および臭化リチウムからなる群から、よりいっそう好ましくはカルボン酸、フェノール類、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物および臭化リチウムからなる群から、よりいっそう好ましくはカルボン酸、フェノールおよび臭化リチウムからなる群から選択される触媒、最も好ましくは臭化リチウムが使用されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記の工程c)において使用される少なくとも1つのエポキシ官能性化合物が、
a.炭素原子2~18個を有するアルキレンオキシドの群から、
好ましくは炭素原子2~8個を有するアルキレンオキシドの群から、
最も好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1-ブチレンオキシド、cis-2-ブチレンオキシド、trans-2-ブチレンオキシド、イソブチレンオキシドおよびスチレンオキシドからなる群から選択されており、
および/または
b.グリシジル化合物の群から、
好ましくは一官能性グリシジル化合物の群から、
最も好ましくはフェニルグリシジルエーテル、o-クレジルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、C12/C14-脂肪アルコールグリシジルエーテルおよびC13/C15-脂肪アルコールグリシジルエーテルからなる群から、
選択されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程c)において、アルコキシル化触媒が使用され、好ましくは水酸化アルカリ、アルカリ金属アルコラート、アミン、グアニジン類、アミジン、ホスフィン類、SnCl、SnCl、SnF、BF、BF錯体および複合金属シアン化物(DMC)触媒からなる群から選択され、より好ましくはZn/Co-複合金属シアン化物触媒、アミン、グアニジン類、アミジン、水酸化アルカリおよびアルカリ金属アルコラートからなる群から選択され、最も好ましくはアルカリ金属アルコラートからなる群から選択されるアルコキシル化触媒が使用されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法により得られる、ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)。
【請求項13】
ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)であって、前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)が、2価の残基
【化1】
からなる群から選択される繰返し単位を含み、
ここで、
およびAは、それぞれ互いに独立して、有機残基、好ましくは炭素原子1~22個を有する、最も好ましくは炭素原子1~12個を有する有機残基であり、ここで、前記残基AおよびAは、互いに共有結合されていてよく、
Bは、それぞれ互いに独立して、式(4a)の残基であり、
【化2】
好ましくは、それぞれ互いに独立して、式(4b)の残基であり、
【化3】
最も好ましくは、それぞれ互いに独立して、式(4c)の残基であり、
【化4】
は、それぞれ互いに独立して、炭素原子1~16個を有する1価の炭化水素残基であり、
好ましくは、それぞれ互いに独立して、炭素原子1~16個を有するアルキル残基またはフェニル残基であり、
最も好ましくは、それぞれ互いに独立して、メチル残基、エチル残基またはフェニル残基であり、
は、式-CH-O-Rの残基であり、
は、それぞれ互いに独立して、炭素原子3~18個を有する1価の炭化水素残基であり、
好ましくはそれぞれ互いに独立して、アリル残基、ブチル残基、炭素原子8~15個を有するアルキル残基であるか、または炭素原子1~4個を有する炭化水素残基から選択される1価の残基で置換されていてよいフェニル残基であり、
最も好ましくはtert-ブチルフェニル残基またはo-クレジル残基であり、
は、それぞれ互いに独立して、炭素原子1~18個を有する1価の有機残基または水素、好ましくは水素であり、
かつ
k1およびk2は、それぞれ互いに独立して、0~8、好ましくは0~6、最も好ましくは0~4の整数であり、
l1およびl2は、整数であり、かつそれぞれ互いに独立して、0または1のいずれかであり、
m、n、o、pおよびqは、それぞれ互いに独立して、0~300、好ましくは0~200、最も好ましくは0~100の有理数であるが、ただし、m、n、o、pおよびqの合計は、1より大きく、好ましくは5より大きく、最も好ましくは10より大きく、
全ての繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の合計で割った全ての繰返し単位(U)、(V)および(W)の合計は、0%超であり、
かつ前記繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)ならびに前記残基B中の繰返し単位のあらゆる並べ替えが併せて含まれていることを特徴とする、好ましくは請求項12に記載の、ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)。
【請求項14】
全ての繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の合計で割った全ての繰返し単位(U)、(V)および(W)の合計が、0%超~100%未満、好ましくは0%超~70%、より好ましくは1%~50%、よりいっそう好ましくは2%~40%、よりいっそう好ましくは3%~30%、最も好ましくは4%~20%であることを特徴とする、請求項12または13に記載のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)。
【請求項15】
式(5)
【化5】
のポリブタジエンであり、
ここで、式(5)に記載されたポリエーテル変性された繰返し単位の割合が、式(5)に記載された全ての繰返し単位の合計を基準として、0%超、好ましくは0%超~100%未満、より好ましくは0%超~70%、よりいっそう好ましくは1%~50%、よりいっそう好ましくは2%~40%、よりいっそう好ましくは3%~30%、最も好ましくは4%~20%であり、ここで、前記割合は、[(d+e+f)/(a+b+c+d+e+f)]×100%により計算されることを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項に記載のポリエーテル変性ポリブタジエン(G)もしくは(K)。
【請求項16】
含まれる二重結合の0%~80%、好ましくは0%~30%、より好ましくは0%~10%、最も好ましくは0%~5%が1,2-ビニル二重結合であり、かつ含まれる二重結合の20%~100%、好ましくは70%~100%、より好ましくは90%~100%、最も好ましくは95%~100%が1,4-二重結合であることを特徴とする、請求項12から15までのいずれかに記載のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)。
【請求項17】
- ポリブタジエン部分の数平均分子量(M)が、200g/mol~20000g/mol、好ましくは500g/mol~10000g/mol、最も好ましくは700g/mol~5000g/molであり、および/または
- 前記残基Bの平均分子量が、30g/mol~20000g/mol、好ましくは50g/mol~10000g/mol、より好ましくは100g/mol~5000g/mol、最も好ましくは150g/mol~1000g/molであり、
および/または
- 前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)の数平均分子量(M)が、好ましくは1000g/mol~50000g/mol、より好ましくは1500g/mol~40000g/mol、よりいっそう好ましくは2000g/mol~30000g/mol、最も好ましくは3000g/mol~10000g/molである
ことを特徴とする、請求項12から16までのいずれか1項に記載のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエンの製造方法ならびにこの方法により製造できるポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエンに関する。
【0002】
ペンダントポリエーテル残基を有するポリブタジエンは公知であり、かつ従来技術によれば、例えば反応性官能化ポリブタジエンとポリエーテルとの反応により製造される。例えば、Q. Gao et. al.は、Macromolecular Chemistry and Physics (2013), 214(15), 1677-1687には、ポリエチレングリコールの、ポリブタジエン主鎖へのグラフト化(Pfropfen)により製造される、両親媒性ポリマーくし型構造が記載されている。特開2011-038003号公報(JP 2011038003)によれば、無水マレイン酸単位で官能化されたポリブタジエンは、アミノを末端基とするポリエーテルと反応される。くしの位置のポリエーテル残基を有するマレイン化ポリブタジエンが生じ、前記残基は、アミド基またはイミド基を介して結合されている。類似の方法において、J. Wang, Journal of Applied Polymer Science (2013), 128(4), 2408-2413によれば、ポリエチレングリコールは、エステル結合を形成しながら、高い割合の1,2-ブタジエンモノマー単位を有するポリブタジエンに付加される。くし型構造を有する高分子量グラフトポリマーは、特開2002-105209号公報(JP 2002105209)に開示された方法に従い、エポキシ化ポリブタジエンをOH官能性ポリエーテルで付加することにより得られる。H. Decher et. al.は、Polymer International (1995), 38(3), 219-225によれば、イソシアネートを末端基とするポリエチレングリコールの、ヒドロキシ官能性ポリブタジエンへの付加を利用する。
【0003】
さらに、ヒドロキシ官能性ポリブタジエンをエポキシ化合物と反応させることによる、ポリエーテル変性ポリブタジエンの製造方法は公知である。そして、従来技術からは、例えば、OHを末端基とするポリブタジエンのアルコキシル化が公知である。
【0004】
米国特許第4994621号明細書(US 4994621 A)には、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの存在下でのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドでの、ヒドロキシを末端基とするポリブタジエンのアルコキシル化が記載されている。前記アルコキシル化におけるヒドロキシを末端基とするポリブタジエンの使用は、もっぱら、ポリエーテル-ポリブタジエン-ポリエーテルトリブロック構造をもたらす。このブロック構造は、欧州特許出願公開第2003156号明細書(EP 2003156 A1)によれば、ポリウレタンを製造する際の他の反応成分との劣悪な混和性の原因となる。
【0005】
ヒドロキシを末端基とするポリブタジエンのアルコキシル化に加え、ペンダントヒドロキシ官能性ポリブタジエンのアルコキシル化も公知である。例えば、Q. Gao et. al.は、Macromolecular Chemistry and Physics (2013), 214(15), 1677-1687に、エチレンオキシドでのペンダントヒドロキシ官能性ポリブタジエンのアルコキシル化によるペンダントポリエーテル変性ポリブタジエンの製造を記載している。その際に使用されるペンダントヒドロキシ官能性ポリブタジエンの製造は、最初にポリブタジエンのエポキシ化、引き続きエポキシ化ポリブタジエンとリチウム-ポリブタジエン化合物との反応および最後にメタノール性HClでの反応生成物のプロトン化により行われる。この方法は、ペンダントポリエーテル残基だけではなくペンダントポリブタジエン残基も有するポリブタジエンをもたらす。まだ未公開の文献PCT/EP2020/083013に開示された方法によれば、くしの位置でポリエーテル残基で変性されたポリブタジエンは、好ましくはアルコールでの、エポキシ官能性ポリブタジエンの開環により前もって得られた、ペンダントヒドロキシ官能性ポリブタジエンのアルコキシル化により製造される。
【0006】
エポキシ化し、引き続きアミンとの反応によりエポキシド開環することによるポリブタジエンの化学的改質は公知である。特開昭63-288295号公報(JP 63288295)には、エポキシ官能性ポリブタジエンとジメチルアミンとの反応ならびに引き続き酢酸でのアミン官能基のプロトン化が開示されている。特開昭57-205596号公報(JP 57205596)に記載の方法は、ジメチルアミンでのエポキシド開環に加えて、エピクロロヒドリンでのアミン官能基のさらなる四級化を含む。水素化ポリブタジエンをアミンでエポキシド開環する方法は、西独国特許出願公開第2554093号明細書(DE 2554093)に開示されている。西独国特許出願公開第2943879号明細書(DE 2943879)、西独国特許出願公開第2732736号明細書(DE 2732736)および特開昭49-055733号公報(JP 49055733)には、ジエタノールアミンの添加が記載されている。特開昭48-051989号公報(JP 48051989)には、同様に、ジエタノールアミンの添加、引き続きジベンゾイルペルオキシドの存在下での架橋反応が記載されている。
特開昭53-117030号公報(JP 53117030)、西独国特許出願公開第2734413号明細書(DE 2734413)および西独国特許出願公開第2943879号明細書(DE 2943879)には、エタノールアミンの添加が、特開平05-117556号公報(JP 05117556)には、ジイソプロパノールアミンとの反応が、欧州特許出願公開第0351135号明細書(EP 0351135)、欧州特許出願公開第0274389号明細書(EP 0274389)ならびに西独国特許出願公開第3305964号明細書(DE 3305964)には、エポキシ基とジメチルアミンとの反応が記載されている。旧東ドイツ国特許第296286号明細書(DD 296286)には、極性溶剤中でのエポキシ化ポリブタジエンへの炭素原子4~20個を有する第一級および第二級アミンの付加が開示されている。前記アミノ官能性ポリブタジエンのさらなるアルコキシル化は、これらの文献のいずれにも開示されていない。
【0007】
したがって、従来技術からは、アルキレンオキシドでのペンダントアミノ官能性ポリブタジエンの単純な直接アルコキシル化反応により、ペンダントポリエーテル鎖を有する好ましくは線状のアミノ官能性ポリブタジエンを製造する方法であって、前記ペンダントアミノ官能性ポリブタジエンが、エポキシ官能性ポリブタジエンからアミンでの開環反応により製造される方法は、これまで知られていない。
【0008】
ポリブタジエンおよび変性ポリブタジエンは、例えばポリマーに疎水性を備えさせるためまたは柔軟にするためおよび機械的性質を改善するために、多くの場合に反応性成分または配合成分として使用される。しかしながら現在、ポリエーテル変性ポリブタジエンの使用可能性は、わずかに入手できるトリブロック構造に限定されることにより、しばしば制限されている。前記ポリエーテル変性ポリブタジエンの化学的構造を広い範囲で変える可能性はこれまでなかった。そのうえ、そのようなポリマーのための単純な製造方法はない。
【0009】
本発明の課題は、従来技術の少なくとも1つの欠点を克服することであった。
【0010】
殊に、前記課題は、くしの位置(ペンダント、側方)でアミノ基を介してポリエーテル残基で変性されている、好ましくは線状のポリブタジエンの改良された製造方法を提供することにあった。前記方法は、さらに、ペンダントポリエーテル残基を有する、好ましくは線状のポリブタジエンへのプロセス工学的に極めて単純な経路を可能にすべきである。前記ポリエーテル変性ポリブタジエンは、その際に、さらに、ペンダントアミノ官能性ポリブタジエンの直接アルコキシル化により得ることができるべきである。その際に、そのうえ、前記課題は、前記方法において適したペンダントアミノ官能性ポリブタジエンを前記アルコキシル化用の前駆物質および連鎖開始剤として提供することにあった。
【0011】
驚くべきことに、以下の工程を含む、ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエンを製造する方法がこの課題を解決することが目下見出された:
a)少なくとも1種のポリブタジエン(A)を、少なくとも1種のエポキシ化試薬(B)と反応させて、少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を得る工程、
b)前記の少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を、少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)と反応させて、少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)を得る工程、
c)前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)を、少なくとも1種のエポキシ官能性化合物(F)と反応させて、少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)を得る工程。
【0012】
驚くべきことに、殊に、高い割合の1,4-単位および低い割合のビニル1,2-単位を有するポリブタジエンを、過酸化水素でのエポキシ化後に、第一級または第二級アミンで開環させて、ペンダントヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエンへ変換でき、引き続き、アルキレンオキシドでアルコキシル化できることがさらに見出された。
【0013】
したがって、本発明の課題は、独立請求項の対象によって解決される。本発明の有利な実施態様は、従属請求項、実施例および詳細な説明に記載されている。
【0014】
本発明による対象は、以下に例として記載されるが、本発明はこれらの例としての実施態様に限定されるものではない。以下に範囲、一般式または化合物の区分が記載されている場合には、これらは、明示的に挙げられている化合物の対応する範囲または群だけではなく、個々の値(範囲)または化合物を取り除くことにより得ることができるあらゆる部分範囲および化合物の部分群も含むものとする。本明細書の範囲内で文献が引用される場合には、それらの内容は完全に本発明の開示内容の一部をなすものとする。
【0015】
以下に平均値が記載される場合には、別に記載されない限り、数平均である。以下に測定により決定される測定値、パラメーターまたは材料特性が記載される場合には、別に記載されない限り、25℃でならびに好ましくは101325Paの圧力(標準圧力)で測定された測定値、パラメーターまたは材料特性である。
【0016】
数平均分子量M、重量平均分子量Mおよび多分散度(M/M)は、本発明の範囲内で、別にはっきりと記載されない限り、実施例に記載されるように、好ましくはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される。
【0017】
以下に数値範囲が「X~Y」の形で記載され、ここで、XおよびYが、前記数値範囲の限界を表す場合には、別に記載されない限り、これは、記載「少なくともXからYまで(Yを含む)」と同義である。したがって、範囲の記載は、別に記載されない限り、範囲の限界XおよびYを含める。
【0018】
ペンダント、側方(seitenstaendig)およびくしの位置(kammstaendig)の用語は、同義に使用される。
【0019】
分子もしくは分子フラグメントが、1個以上の立体中心を有するかまたは対称性に基づき異性体に区別されうるかまたは他の効果、例えば制限された回転に基づき異性体に区別されうる場合には常に、考えられる全ての異性体は、本発明により併せて包含される。
【0020】
以下の式(1)~(5)は、繰返し単位、例えば繰返しフラグメント、ブロックまたはモノマー単位から構成されており、かつ分子量分布を有することができる、化合物または残基を記載する。前記繰返し単位の頻度は、添え字により記載される。前記式中で使用される添え字は、別にはっきりと記載されない限り、統計平均値(数平均)とみなすべきである。使用される添え字の値ならびに記載される添え字の値の範囲は、別にはっきりと記載されない限り、実際の存在している構造および/またはそれらの混合物の考えられる統計分布の平均値と理解される。以下の式(1)~(5)に記載される化合物の多様なフラグメントもしくは繰返し単位は、統計的に分布されていてよい。統計分布は、任意の数のブロックおよび任意の配列でブロック状に構成されているか、またはランダムに分布されており、交互に構成されていてもよいか、さもなければ、分子鎖が存在している場合には、分子鎖について勾配を形成してよく、殊に、場合により異なる分布の群が次々と続いていてよい、あらゆる混合型を形成してもよい。以下の式において、繰返し単位のあらゆる並べ替えが併せて含まれている。したがって、本発明の範囲内で、異なる単位を複数有することができる化合物、例えばポリブタジエン(A)、エポキシ官能性ポリブタジエン(C)、ヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)、ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)または末端キャップされたポリエーテル残基を含有するポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(K)が記載される場合には、これらの単位は、無秩序に、例えば統計的に分布して、または規則正しく、これらの化合物中に生じていてよい。そのような化合物中の単位の数もしくは相対頻度についての記載は、対応する全ての化合物を平均した平均値(数平均)であると理解すべきである。特別な実施態様は、前記統計分布が前記実施態様により限定されることをもたらしうる。前記限定により影響を受けていない全ての範囲については、前記統計分布は変更されない。
【0021】
したがって、本発明の第1の対象は、以下の工程を含む、1種以上のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエンを製造する方法である:
a)少なくとも1種のポリブタジエン(A)を、少なくとも1種のエポキシ化試薬(B)と反応させて、少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を得る工程、
b)前記の少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を、少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)と反応させて、少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)を得る工程、
c)前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)を、少なくとも1種のエポキシ官能性化合物(F)と反応させて、少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)を得る工程。
【0022】
本発明による方法は、さらに、以下の工程のうち少なくとも1つを含むことが好ましい:
d)前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)を、少なくとも1種の末端キャップ試薬(H)と反応させて、末端キャップされたポリエーテル残基を含有する少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(K)を得る工程、
e)前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)の色を明るくする工程、
f)前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)のアミノ基の少なくとも一部を反応させて、酸および/または四級化試薬により第四級アンモニウム基を得る工程。
【0023】
前記工程a)、b)、c)、d)、e)およびf)は、記載された順序で行われ、ここで、前記工程d)、e)およびf)のうち1つ以上を省くことができる。前記工程は、直接、次々と続いていてよい。しかし、前記方法は、さらなる上流工程、中間工程、または下流工程、例えば、出発物質、中間生成物および/または最終生成物の精製を有していてもよい。
【0024】
前記エポキシ官能性ポリブタジエン(C)からアミンでのエポキシド開環により製造されるポリブタジエン(E)は、ペンダントアミノ基とペンダントヒドロキシ基の双方を有することによって特徴付けられている。工程c)における反応条件に応じて、前記アミノ基、前記ヒドロキシ基または好ましくは双方の反応性基への前記エポキシ官能性化合物(F)の付加が行われる。
【0025】
その際に、本発明による方法中に前記の出発物質、中間体および生成物を安定化するために、安定剤もしくは酸化防止剤を使用して、二重結合の望ましくない重合反応を回避することが好ましい。このためには、例えば、当業者に公知の立体障害フェノールが適しており、例えば、Anox(登録商標) 20、Irganox(登録商標) 1010(BASF)、Irganox(登録商標) 1076(BASF)およびIrganox(登録商標) 1135(BASF)として商業的に入手可能である。
【0026】
1つ以上または全ての方法工程を、不活性雰囲気下、例えば窒素下で、実施することがさらに好ましい。また、好ましくは、未変性の出発物質、すなわち前記の少なくとも1種のポリブタジエン(A)、ならびに本発明によるポリエーテル変性された最終生成物、すなわち前記の少なくとも1種のポリエーテル変性ポリブタジエン(G)もしくは(K)は、可能な限り空気の排除下に保管されるべきである。
【0027】
本発明による方法により、線状ポリブタジエンを、前記のペンダントアミノ基およびペンダントヒドロキシ基への単純な直接アルコキシル化により、くしの位置のポリエーテル残基で変性することがはじめて可能になる。前記ポリエーテル残基における鎖長およびモノマー順序は、広い範囲内で変えることができる。前記ポリブタジエンに結合されるポリエーテル残基の平均数は、そのエポキシ化度およびアミノ基およびヒドロキシ基での官能化を通じて意図的に調整でき、かつ前記ヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)での大きな構造上の多様性が開かれる。
【0028】
本発明により得ることができる、くしの位置のポリエーテル残基を有するアミノ官能性ポリブタジエンは、好ましくは本質的に残留エポキシ基不含である。本発明による方法の生成物は、好ましくは、遊離ポリエーテル分を本質的に含有しない。好ましくは、本質的に前記ポリエーテルは、窒素原子を介しておよび/または酸素原子を介して前記ポリブタジエンへ化学的に結合されている。
【0029】
工程a)
本発明による方法の工程a)において、少なくとも1種のポリブタジエン(A)を、少なくとも1種のエポキシ化試薬(B)と反応させて、少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を得る。
【0030】
この反応の際に、前記ポリブタジエン(A)の二重結合は、エポキシ基へ変換される。ポリブタジエンを、例えばペルカルボン酸および過酸化水素でエポキシ化する多様な方法は、当業者に公知であり、かつ例えば、中国特許出願公開第101538338号明細書(CN 101538338)、特開2004-346310号公報(JP 2004346310)、旧東ドイツ国特許第253627号明細書(DD 253627)および国際公開第2016/142249号(WO 2016/142249 A1)に開示されている。高い割合の1,4-単位を有するエポキシ官能性ポリブタジエン(C)の製造に特に適しているのは、過ギ酸であり、過酸化水素の存在下でギ酸からその場で形成することもできる。前記エポキシ化は、好ましくは、溶剤、例えばトルエンまたはクロロホルム中で行われ、前記溶剤は、前記反応後および存在しうる過酸化物残留物を洗い流した後に、蒸留により除去される。
【0031】
前記ポリブタジエン(A)は、ブタ-1,3-ジエンのポリマーである。前記ブタ-1,3-ジエンモノマーの重合は、その際に本質的に1,4-および/または1,2-結合しながら行われる。1,4-結合は、いわゆる1,4-trans-単位および/または1,4-cis-単位をもたらし、これらはまとめて1,4-単位とも呼ばれる。1,2-結合は、いわゆる1,2-単位をもたらす。前記1,2-単位は、ビニル基を持ち、かつビニル1,2-単位とも呼ばれる。前記1,2-単位は、本発明の範囲内で、「(X)」とも呼ばれ、前記1,4-trans-単位は、「(Y)」とも呼ばれ、かつ前記1,4-cis-単位は、「(Z)」とも呼ばれる:
【化1】
【0032】
前記単位中に含まれる二重結合は、同様に、1,4-trans-二重結合、1,4-cis-二重結合もしくは1,2-二重結合または1,2-ビニル二重結合と呼ばれる。前記1,4-trans-二重結合および1,4-cis-二重結合は、まとめて1,4-二重結合とも呼ばれる。
【0033】
そのため、前記ポリブタジエン(A)は、未変性ポリブタジエンである。前記ポリブタジエン(A)およびそれらの製造方法は、当業者に公知である。前記製造は、好ましくは、ラジカル連鎖重合、アニオン連鎖重合または配位連鎖重合によって、行われる。
【0034】
前記ラジカル連鎖重合は、好ましくは乳化重合として実施される。これは、前記の単位3個の統計的発生をもたらす。低い反応温度(約5℃)では、ビニル基の割合は低下する。その開始は、好ましくは、ペルオキソ二硫酸カリウムおよび鉄塩を用いて、さもなければ過酸化水素を用いて行われる。
【0035】
前記アニオン連鎖重合の場合に、前記連鎖重合の開始は、好ましくは、ブチルリチウムを用いて行われる。こうして得られたポリブタジエン(A)は、1,4-cis-単位 約40%および1,4-trans-単位50%を含有する。
【0036】
前記配位連鎖重合の場合に、好ましくはチーグラー-ナッタ触媒、殊に立体特異性チーグラー-ナッタ触媒が使用され、前記触媒は、高い割合の1,4-cis-単位を有するポリブタジエン(A)をもたらす。
【0037】
1,3-ブタジエンの重合の際に、副反応または後続反応、例えば、前記ポリブタジエンの生じた1,2-および1,4-単位の二重結合の後続反応により、分岐状ポリブタジエン(A)も生じることがある。しかし、好ましくは、本発明により使用されるポリブタジエン(A)は、線状の、すなわち非分岐状のポリブタジエンである。前記ポリブタジエンが、少ない割合で1,2-単位、1,4-trans-単位または1,4-cis-単位以外の単位を有することも可能である。しかし、1,2-単位、1,4-trans-単位および1,4-cis-単位の合計の質量割合が、前記の少なくとも1種のポリブタジエン(A)の全質量を基準として、すなわち使用される全てのポリブタジエン(A)の全質量を基準として、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、殊に少なくとも99%であることが好ましい。
【0038】
本発明による方法のためには、1,2-単位および1,4-単位の合計を基準として、1,2-単位0%~80%および1,4-単位20%~100%、より好ましくは1,2-単位0%~30%および1,4-単位70%~100%、よりいっそう好ましくは1,2-単位0%~10%および1,4-単位90%~100%、および最も好ましくは1,2-単位0%~5%および1,4-単位95%~100%を有するポリブタジエン(A)が好ましくは使用される。
【0039】
したがって、使用される全てのポリブタジエン(A)の二重結合のうち、0%~80%が1,2-ビニル二重結合であり、かつ20%~100%が1,4-二重結合であり、より好ましくは0%~30%が1,2-ビニル二重結合であり、かつ70%~100%が1,4-二重結合であり、よりいっそう好ましくは0%~10%が1,2-ビニル二重結合であり、かつ90%~100%が1,4-二重結合であり、最も好ましくは0%~5%が1,2-ビニル二重結合であり、かつ95%~100%が1,4-二重結合であることが好ましい。
【0040】
それに応じて、前記生成物の本発明による製造のためには、好ましくは、式(1)
【化2】
のポリブタジエン(A)が、1,2-ビニル二重結合(添え字x)0%~80%および1,4-二重結合20%~100%、より好ましくは1,2-ビニル二重結合0%~30%および1,4-二重結合70%~100%の含有率で、よりいっそう好ましくは1,2-ビニル二重結合0%~10%および1,4-二重結合90%~100%で、最も好ましくは1,2-ビニル二重結合0%~5%および1,4-二重結合95%~100%で、使用される。1,4-trans-二重結合(添え字y)および1,4-cis-二重結合(添え字z)の比は任意である。
【0041】
添え字x、yおよびzは、その際に、前記ポリブタジエン(A)中の前記のそれぞれのブタジエン単位の数を表す。それらは、前記の少なくとも1種のポリブタジエン(A)の全てのポリブタジエンポリマーの全体の数値的な平均値(数平均)である。
【0042】
使用される式(1)によるポリブタジエン(A)の平均分子量および多分散度は、任意である。
【0043】
前記の少なくとも1種のポリブタジエン(A)の数平均分子量Mが、200g/mol~20000g/mol、より好ましくは500g/mol~10000g/mol、最も好ましくは700g/mol~5000g/molであることが好ましい。
【0044】
選択的に、前記の少なくとも1種のポリブタジエン(A)の数平均分子量Mが、2100g/mol~20000g/mol、より好ましくは2200g/mol~10000g/mol、最も好ましくは2300g/mol~5000g/molであることが好ましい。
【0045】
前記の少なくとも1種のポリブタジエン(A)が、1,2-単位、1,4-cis-単位および1,4-trans-単位からなる群から選択される単位を数平均で5~360個、より好ましくは10~180個、最も好ましくは15~90個有することがさらに好ましい。
【0046】
選択的に、前記の少なくとも1種のポリブタジエン(A)が、1,2-単位、1,4-cis-単位および1,4-trans-単位からなる群から選択される単位を数平均で35~360個、より好ましくは40~180個、最も好ましくは45~90個有することが好ましい。
【0047】
使用されるポリブタジエン(A)の粘度が、50~50000mPas、より好ましくは100~10000mPas、最も好ましくは500~5000mPasである(DIN EN ISO 3219:1994-10に従い決定)ことがさらに好ましい。
【0048】
最も好ましくは使用されるポリブタジエンは、次の典型的な特性データを有する、Evonik Industries AG/Evonik Operations GmbHから商業的に入手可能な製品Polyvest(登録商標) 110およびPolyvest(登録商標) 130である:
Polyvest(登録商標) 110:1,2-ビニル二重結合 約1%、1,4-trans-二重結合 約24%、1,4-cis-二重結合 約75%、数平均分子量M 約2600g/mol、粘度(20℃) 700~860mPas(DIN EN ISO 3219:1994-10による)、
Polyvest(登録商標) 130:1,2-ビニル二重結合 約1%、1,4-trans-二重結合 約22%、1,4-cis-二重結合 約77%、数平均分子量M 約4600g/mol、粘度(20℃) 2700~3300mPas(DIN EN ISO 3219:1994-10による)。
【0049】
最も好ましくは使用されるポリブタジエンは、さらに、以下の典型的な特性データを有する、Synthomer PLCから入手可能な製品Lithene ultra ALおよびLithene ActiV 50である:
Lithene ultra AL:1,2-ビニル二重結合 約40%、1,4-二重結合 約60%
Lithene ActiV 50:1,2-ビニル二重結合 約70%、1,4-二重結合 約30%。
【0050】
エポキシ化度は、例えば、13C-NMR分光法またはエポキシ価滴定(DIN EN ISO 3001:1999に従うエポキシ当量の決定)を用いて定量的に決定され、かつそのプロセス条件を通じて、殊に装入量のポリブタジエン中の二重結合に対する過酸化水素の使用量を通じて、意図的かつ再現可能に調整することができる。
【0051】
本発明による方法の工程a)において、前記の少なくとも1種のポリブタジエン(A)の全ての二重結合の0%超(すなわち0%超~100%)がエポキシ化される。
【0052】
本発明による方法の工程a)において、前記の少なくとも1種のポリブタジエン(A)の全ての二重結合の0%超~100%未満、より好ましくは0%超~70%、よりいっそう好ましくは1%~50%、よりいっそう好ましくは2%~40%、よりいっそう好ましくは3%~30%および最も好ましくは4%~20%がエポキシ化されることが好ましい。
【0053】
エポキシ化試薬(B)として、当業者に公知の原則的にあらゆるエポキシ化剤が使用できる。前記エポキシ化試薬(B)が、ペルオキシカルボン酸(ペルカルボン酸、過酸)の群から、好ましくはmeta-クロロ過安息香酸、ペルオキシ酢酸(過酢酸)およびペルオキシギ酸(過ギ酸)からなる群から選択されており、殊にペルオキシギ酸(過ギ酸)であることが好ましい。前記ペルオキシカルボン酸は、その際に、好ましくは、対応するカルボン酸および過酸化水素からその場で形成される。
【0054】
前記の少なくとも1種のエポキシ化試薬(B)が、過ギ酸を含有し、前記過ギ酸は好ましくは、ギ酸および過酸化水素からその場で形成されることが最も好ましい。
【0055】
前記の少なくとも1種のポリブタジエン(A)のエポキシ化は、前記ポリブタジエン鎖全体に統計的に分布して、好ましくは前記1,4-二重結合で行われる。前記1,2-二重結合のエポキシ化は、同様に行うことができ、かつこれらの二重結合で同様に前記ポリブタジエン鎖全体に統計的に分布して行われる。しかし、前記1,2-二重結合のエポキシ化は、前記1,4-二重結合のエポキシ化に比べて不利である。そのため、この反応生成物は、エポキシ化度が互いに相違するエポキシ官能性ポリブタジエンポリマーを含有する。したがって、記載される全てのエポキシ化度は、平均値として理解すべきである。
【0056】
工程b)
本発明による方法の工程b)において、前記の少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を、少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)と反応させて、少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)を得る。
【0057】
この反応の際に、前記の少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)への前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)の付加(付加反応)が行われる。したがって、前記反応は、前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)と、前記の少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)との間に1個以上の共有結合を形成しながら行われる。前記反応は、好ましくは、前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)の少なくとも1個のアミノ基の、前記の少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)の少なくとも1個のエポキシ基への求核攻撃が、この少なくとも1個のエポキシ基を開環しながら行われる反応工程を(少なくとも理想化して)含む。
【0058】
前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)が、少なくとも1個の第一級アミノ基および/または少なくとも1個の第二級アミノ基を有する化合物から選択されていることが好ましい。なぜなら、第一級および第二級アミノ基は特に容易に、前記ポリブタジエンのエポキシ基に付加されるからである。これらのアミノ官能性化合物(D)には、本発明の範囲内で、アンモニアも含まれる。しかしながら、前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)が、少なくとも1個の第一級アミノ基および/または少なくとも1個の第二級アミノ基を有する有機化合物から選択されていることがより好ましい。前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)が、炭素原子1~22個ならびに少なくとも1個の第一級アミノ基および/または少なくとも1個の第二級アミノ基を有する有機化合物から選択されていることがよりいっそう好ましい。前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)が、炭素原子1~12個ならびに少なくとも1個の第一級アミノ基および/または少なくとも1個の第二級アミノ基を有する有機化合物から選択されていることがよりいっそう好ましい。前記アミノ官能性化合物(D)が、正確に1個の第一級アミノ基または第二級アミノ基を有することがさらに好ましい。それにより、望ましくない架橋反応を低下または防止することができる。前記アミノ官能性化合物(D)が、芳香族アミンではない、殊に第一級芳香族アミンではないことがさらに好ましい。なぜなら、一部の第一級芳香族アミンは、ヒト発がん物質として公知だからである。芳香族アミンは、本発明の範囲内で、少なくとも1個のアミノ基の窒素原子が炭素原子に結合されており、前記炭素原子がまた芳香族環系の一部であるアミンであると理解される。
【0059】
前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)が、アンモニア、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、ジアルキルアミン、モノアルカノールアミンおよびジアルカノールアミンからなる群から選択されることがさらに好ましい。窒素に結合された脂肪族残基は、芳香族残基またはヘテロ原子、例えば窒素または酸素を持つこともできる。したがって、前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)が、ジアミン、ポリアミン、ポリエーテルアミンおよびヒドロキシ官能性脂肪族アミンからなる群から選択されていることがさらに同様に好ましい。より好ましくは、前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)は、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、ジアルキルアミン、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンからなる群から選択され、これらはそれぞれ、炭素原子1~22個と、正確に1個の第一級アミノ基または第二級アミノ基とを有する。よりいっそう好ましくは、前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)は、アルキルアミン、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンからなる群から選択され、これらはそれぞれ、炭素原子1~12個と、正確に1個の第一級アミノ基または第二級アミノ基とを有する。最も好ましくは、前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)は、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)、モルホリン、ピペリジン、シクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)およびベンジルアミンからなる群から選択される。その際に、これらのアミンの任意の混合物を使用することもできる。用語「トリアルカノールアミン」は、本発明の範囲内で、第一級および/または第二級アミノ基を持つトリアルカノールアミンのみ、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンであると理解される。
【0060】
前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)のNH基対前記の少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基のモル比は、広い範囲内で変えることができる。しかし、前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)および前記の少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)を、全てのエポキシ基の可能な限り定量的な転化が達成されるようなNH基対エポキシ基のモル比で使用することが好ましい。したがって、工程b)において、全てのアミノ官能性化合物(D)のNH基の総数対全てのエポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基の総数が、0.8:1~20:1、より好ましくは0.9:1~10:1、よりいっそう好ましくは1:1~5:1、最も好ましくは1:1~3:1であることが好ましい。過剰の化合物(D)は、前記反応後に、例えば蒸留により除去することができ、かつ必要に応じて再使用することができる。これに関連して、アンモニア分子が、正確に3個、1個の第一級アミノ基、正確に2個および1個の第二級アミノ基、正確に1個のNH基を有することに注意すべきである。
【0061】
アミンでのエポキシド開環は、任意に、溶剤、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノールまたはTHF中で行うことができる。好ましくは、溶剤は省かれる。
【0062】
好ましくは、前記反応は、少なくとも1種の触媒の存在下で行われる。前記触媒は選択的に、反応混合物中に均質に可溶であるか、水溶液として添加することができるか、または固体としてその中に不均質に分布されている。
【0063】
前記触媒が、ルイス酸およびブレンステッド酸からなる群から、より好ましくは水、フェノール類、アルコール、カルボン酸、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物および臭化リチウムからなる群から、よりいっそう好ましくはカルボン酸、フェノール類、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物および臭化リチウムからなる群から、よりいっそう好ましくはカルボン酸、フェノールおよび臭化リチウムからなる群から選択されており、最も好ましくは臭化リチウムであることが好ましい。前記触媒は選択的に、反応混合物中に均質に可溶であるか、水溶液として添加することができるか、または固体としてその中に不均質に分布されている。
【0064】
前記触媒の種類および使用量は、前記の少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基への前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)の可能な限り迅速で定量的な付加が行われるように選択される。好ましくは、臭化リチウムは、固体としてまたは水中に溶解させて、前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)の質量を基準として、0.05%~15.0%、好ましくは0.2%~10.0%、最も好ましくは0.5%~7.0%の質量割合で使用される。
【0065】
任意に触媒の存在下での、前記の少なくとも1種のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)と前記の少なくとも1種のアミノ官能性化合物(D)との反応は、好ましくは50℃~250℃で、より好ましくは80℃~200℃で実施される。
【0066】
前記成分は、前記エポキシ基が可能な限り完全に転化されるまで、数時間撹拌される。エポキシ基の分析は選択的に、NMR分光分析によるかまたはエポキシ価滴定の公知の方法により行うことができる(実施例に記載されるとおり)。
【0067】
工程b)における反応条件は、好ましくは、工程a)において生成したエポキシ基の90%超が、開環しながら転化されるように選択される。工程b)の生成物中、すなわち前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)中に、エポキシ基がもはや検出できないことが最も好ましい。
【0068】
前記反応後に、任意の過剰のアミノ官能性化合物(D)ならびに任意に溶剤、水および前記触媒は、好ましくは蒸留により除去され、かつ沈殿した塩は必要に応じてろ別される。
【0069】
エポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基それぞれ1個から、式A-NH-Aのアミノ官能性化合物(D)による開環後に、式(2a)、(2b)または(2c):
【化3】
の繰返し単位が生じる。
【0070】
式(2a)、(2b)および(2c)において、前記残基AおよびAは、好ましくはそれぞれ互いに独立して、さらなるアミン基またはヒドロキシル基を持つことができる有機残基、または水素ラジカルである。そのため、前記残基AおよびAは、ヘテロ原子、例えば窒素および酸素を有することができ、かつ例えばモルホリンまたはピペリジンの場合のように、有機残基を介して互いに架橋されていてもよい。式A-NH-Aのアミノ官能性化合物(D)は、アンモニアであってもよい。アンモニアの場合に、AとAの双方が水素ラジカルである。例えばエタノールアミンがアミノ官能性化合物(D)として使用される場合には、式(2a)、(2b)および(2c)において、前記残基Aは、例えば、ヒドロキシエチル残基であり、かつ前記残基Aはそうすると水素ラジカル、すなわちA=Hである。反応される各エポキシ基から少なくとも1個のペンダントOH基が生じる。
【0071】
化合物(D)として第一級アミンが、エポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基と反応される場合には、窒素原子上に反応性水素を有する第二級アミノ基が常に生じる。この第二級アミノ基は、前記NH基を介して、後続反応において別のエポキシ基へ付加することができ、ひいては2個のエポキシ官能性ポリブタジエン(C)が互いに結合することができる。工程b)における反応条件は、好ましくは、この結合反応が、大幅に抑制されるように選択される。
【0072】
本発明によれば好ましい1,4-単位を主な割合で有するポリブタジエン(A)の場合に、式(2a)、(2b)および(2c)の繰返し単位のうち、式(2a)の繰返し単位が主である。
【0073】
前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)が、式(2a)、(2b)および(2c)の全ての繰返し単位の総数を基準として、式(2a)の繰返し単位20%~100%、より好ましくは70%~100%、よりいっそう好ましくは90%~100%、最も好ましくは95%~100%を有することが好ましい。
【0074】
式(2a)、(2b)および(2c)の繰返し単位をまとめた割合は、前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)の全ての繰返し単位の総数を基準として、0%超(すなわち0%超~100%)である。
【0075】
それに応じて、そのアミノ化度は、0%超(すなわち0%超~100%)である。
【0076】
式(2a)、(2b)および(2c)の繰返し単位をまとめた割合が、前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)の全ての繰返し単位の総数を基準として、0%超~100%未満、より好ましくは0%超~70%、よりいっそう好ましくは1%~50%、よりいっそう好ましくは2%~40%、よりいっそう好ましくは3%~30%および最も好ましくは4%~20%であることが好ましい。
【0077】
それに応じて、前記アミノ化度が、0%超~100%未満、より好ましくは0%超~70%、よりいっそう好ましくは1%~50%、よりいっそう好ましくは2%~40%、よりいっそう好ましくは3%~30%および最も好ましくは4%~20%であることが好ましい。
【0078】
工程b)において完全に転化された場合、前記ヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)のアミノ化度は、対応するエポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ化度に相当する。
【0079】
工程c)
本発明による方法の工程c)において、前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)を、少なくとも1種のエポキシ官能性化合物(F)と反応させて、少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)を得る。
【0080】
工程b)からの少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)は、工程c)において、出発化合物(開始剤)として、前記の少なくとも1種のエポキシ官能性化合物(F)との反応に利用される。開環しながらかつ好ましくは適した触媒の存在下で、前記の少なくとも1種のエポキシ官能性化合物(F)(以下に、単に「モノマー」または「エポキシモノマー」または「エポキシド」とも呼ぶ)は、重付加反応において、前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)のNH基および/またはOH基へ付加される。これは、くしの位置の(ペンダント)ポリエーテル鎖を有するアミノ官能性ポリブタジエンの形成、すなわち前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)の形成をもたらす。好ましくは、前記モノマーは、(少なくとも本質的に)全てのOH基および(少なくとも本質的に)全てのNH基に付加される。好ましくは、前記のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)は、くしの位置(ペンダント)でポリエーテル残基で変性されている線状ポリブタジエンである。そのため、前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)が、線状ポリブタジエン主鎖およびペンダントポリエーテル残基を有することが好ましい。
【0081】
工程c)における反応は、好ましくは、アルコキシル化反応、すなわち、前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)へのアルキレンオキシドの重付加である。しかし、工程c)における反応は、前記アルキレンオキシドに代えてまたは前記アルキレンオキシドに加えて、グリシジル化合物を用いて実施することもできる。
【0082】
したがって、前記の工程c)において使用される少なくとも1種のエポキシ官能性化合物が、アルキレンオキシドの群から、より好ましくは炭素原子2~18個を有するアルキレンオキシドの群から、よりいっそう好ましくは炭素原子2~8個を有するアルキレンオキシドの群から、最も好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1-ブチレンオキシド、cis-2-ブチレンオキシド、trans-2-ブチレンオキシド、イソブチレンオキシドおよびスチレンオキシドからなる群から選択されている、および/または、前記の工程c)において使用される少なくとも1種のエポキシ官能性化合物が、グリシジル化合物の群から、より好ましくは一官能性グリシジル化合物の群から、最も好ましくはフェニルグリシジルエーテル、o-クレジルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、C12/C14-脂肪アルコールグリシジルエーテルおよびC13/C15-脂肪アルコールグリシジルエーテルからなる群から選択されていることが好ましい。
【0083】
前記モノマーは選択的に、純品で個々に、任意の配量順序で交互に次々と、さもなければ混合して同時に、添加することができる。そのため、生じるポリエーテル鎖中の前記モノマー単位の配列は、最終生成物中のブロック状分布または統計分布または勾配分布に従う。
【0084】
本発明による方法により、構造および分子量に関して意図的かつ再現可能に製造することができる点で優れている、ペンダントポリエーテル鎖が前記ポリブタジエン上に構成される。
【0085】
前記モノマー単位の順序は、前記添加の順序により広い範囲内で変えることができる。
【0086】
前記ペンダントポリエーテル残基の分子量は、本発明による方法により広い範囲で変えることができ、かつ前記の工程b)からの装入された少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)のNH基およびOH基に関して、添加されるモノマーのモル比を通じて、意図的かつ再現可能に制御することができる。
【0087】
本発明により製造されるポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)は、好ましくは、式(3a)、(3b)および(3c)
【化4】
に従い、アミノ基および/またはエーテル基を介して前記ポリブタジエン主鎖に結合された残基Bを含有することにより特徴付けられている。
【0088】
残基AおよびAは、それぞれ互いに独立して、有機残基、好ましくは炭素原子1~22個を有する、最も好ましくは炭素原子1~12個を有する有機残基であり、ここで、前記残基AおよびAは、互いに共有結合されていてよい。前記残基AおよびAは、その際にヘテロ原子、好ましくは窒素および酸素を含有していてよい。
【0089】
式(3a)、(3b)もしくは(3c)中の添え字k1およびk2は、それぞれ互いに独立して、0~8、好ましくは0~6、最も好ましくは0~4の整数である。さらに、式(3a)、(3b)もしくは(3c)中の添え字l1およびl2は、整数であり、かつそれぞれ互いに独立して、0または1のいずれかである。そのため、アルコキシル化により生じた残基Bは、k1回もしくはk2回、前記残基AもしくはAに結合されて存在していてよく、ここで、この化学結合は、窒素原子を介してまたはAおよびAの一部である酸素原子を介して行われる。しかし、アルコキシル化により生じた残基Bは、示された窒素原子に直接結合されて存在していてもよい。式(2a)、(2b)または(2c)において前記残基AまたはAが、水素ラジカルである場合には、式(3a)、(3b)もしくは(3c)において添え字l1もしくはl2は0に等しく、かつk1もしくはk2は1に等しく、すなわち対応する残基AまたはAは、式(3a)、(3b)および(3c)において存在せず、そのためにポリエーテル残基Bは、示された窒素原子に直接結合されている。したがって、式(2a)、(2b)または(2c)中のN-H基は、N-B基により置換される。式(2a)、(2b)または(2c)において前記残基AまたはAが、有機残基である場合には、式(3a)、(3b)もしくは(3c)において添え字l1もしくはl2は1に等しい。式(2a)、(2b)または(2c)においてAとAの双方が水素ラジカルである場合には、式(3a)、(3b)もしくは(3c)において添え字l1およびl2は0に等しく、ならびにk1およびk2は1に等しい、すなわち式(3a)、(3b)および(3c)中の前記残基AおよびAは存在せず、かつ前記ポリエーテル残基Bは、示された窒素原子に直接結合されている。したがって、式(2a)、(2b)または(2c)中の双方のN-H基は、N-B基によりそれぞれ置換される。
【0090】
例えば、工程b)においてアミノ官能性化合物(D)として第一級アルキルアミンが使用され、かつ前記アルキル残基が、エポキシドに対して反応性のさらなる基、例えばOH基またはNH基を有していない場合には、例えばl1=1、k1=0、l2=0およびk2=1である。
【0091】
例えば、工程b)においてアミノ官能性化合物(D)として前記第一級アミンであるエタノールアミンが使用される場合には、例えば、Aは、式-CHCHO-の2価の残基であり、この図式において左側で前記炭素原子を介して前記アミノ基の窒素原子に、かつ右側で前記酸素原子を介して残基Bに結合されており、すなわち例えばl1=1、k1=1、l2=0およびk2=1である。
【0092】
例えば、工程b)においてアミノ官能性化合物(D)として前記第一級アミンであるトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)が使用される場合には、例えば、Aは、式-C(CHO-)の4価の残基であり、この図式において左側で前記炭素原子を介して前記アミノ基の窒素原子に、かつ右側で前記の3個の酸素原子を介して、それぞれ1個の残基B(ひいては全部で3個の残基B)に結合されており、すなわち例えばl1=1、k1=3、l2=0およびk2=1である。
【0093】
例えば、工程b)においてアミノ官能性化合物(D)として前記第二級アミンであるジエタノールアミンが使用される場合には、例えば、AおよびAは、式-CHCHO-の2価の残基であり、この図式において左側で前記炭素原子を介して前記アミノ基の窒素原子に、かつ右側で前記酸素原子を介して残基Bに結合されており、すなわちl1=1、k1=1、l2=1およびk2=1である。
【0094】
例えば、工程b)においてアミノ官能性化合物(D)として前記第二級アミンであるN-メチルエタノールアミンが使用される場合には、例えば、Aはメチル基であり、かつAは、式-CHCHO-の2価の残基であり、この図式において左側で前記炭素原子を介して前記アミノ基の窒素原子に、かつ右側で前記酸素原子を介して前記残基Bに結合されており、すなわちl1=1、k1=0、l2=1およびk2=1である。
【0095】
例えば、工程b)においてアミノ官能性化合物(D)として前記第二級アミンであるピペリジンが使用される場合には、AおよびAは、互いに共有結合されており、かつ一緒になって2価の残基-CHCHCHCHCH-を形成し、この図式において左側および右側の双方とも前記アミノ基の窒素原子に結合されており、すなわちl1=1、k1=0、l2=1およびk2=0である。
【0096】
したがって、好ましくは、前記アルコキシル化反応の際に、前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)の(少なくともほぼ)各ペンダントOH基およびNH基から、それぞれ正確に1個のペンダント残基Bが生じる。前記残基Bはまた、使用される少なくとも1種のエポキシ官能性化合物(F)の1種以上のモノマーから、好ましくは複数のモノマーから、構成されている。前記アルコキシル化反応の際に、前記ヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)の各OH基またはNH基から、ペンダント残基Bが生じるのではなく、前記OH基およびNH基の一部のみ、しかし好ましくは大部分が工程c)において反応されることは可能であるが、しかしあまり好ましくない。
【0097】
本発明の意味で、当業者に公知のあらゆるアルコキシル化触媒、例えば塩基性触媒、例えば水酸化アルカリ、アルカリ金属アルコラート、アミン、グアニジン類、アミジン、リン化合物、例えばトリフェニルホスフィン、さらにまたブレンステッド酸性およびルイス酸性の触媒、例えばSnCl、SnCl、SnF、BFおよびBF錯体、ならびに複合金属シアン化物(DMC)触媒を原則的に使用することができる。触媒の添加は、任意に省くことができる。
【0098】
エポキシド供給前に、すなわち使用される少なくとも1種のエポキシ官能性化合物(F)の添加前に、前記開始剤および任意に前記触媒で部分的に充填された反応器が、例えば窒素で不活性にされる。これは、例えば、繰り返しの交互の真空排気および窒素の供給により行われる。前記反応器を、窒素の最後の注入後に200mbar未満に真空排気することが有利である。そのため、第1の量のエポキシモノマーの添加は、好ましくは、真空排気された反応器中で行われる。前記モノマーの配量は、撹拌しながらかつ任意に冷却しながら行われて、放出された反応熱を除去し、かつ予め選択された反応温度を維持する。開始剤として、前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)を利用するか、またはさらに以下に記載されるように、本発明による方法に相応してすでに製造されたポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)を開始剤として使用することもできる。
【0099】
特別な実施態様において、前記モノマー添加の開始の際に、触媒の添加を省くことができる。これは、例えば、前記ポリブタジエンに結合されたアミノ基が十分に反応性である場合である。前記ポリブタジエン上に例えば十分に多数の求核性NH官能基が存在している場合には、前記開始剤自体が前記アルコキシル化反応を触媒する。その反応速度は通例、前記ポリエーテル鎖長と共に低下する。より高分子量のポリエーテル残基Bを達成するには、前記の触媒のうち1種を、より後の時点で前記アルコキシル化反応に添加することが必要または有益でありうる。
【0100】
DMC触媒作用
好ましくは、亜鉛/コバルトDMC触媒、殊にヘキサシアノコバルト酸(III)亜鉛を含有するものが使用される。好ましくは、米国特許第5158922号明細書(US 5,158,922)、米国特許出願公開第2003/0119663号明細書(US 20030119663)、国際公開第01/80994号(WO 01/80994)に記載されたDMC触媒が使用される。前記触媒は、非晶質または結晶質であってよい。
【0101】
前記触媒濃度は、生じる生成物の全質量を基準として、0質量ppm超~1000質量ppm、より好ましくは0質量ppm超~700質量ppm、最も好ましくは10質量ppm超~500質量ppmであることが好ましい。
【0102】
好ましくは、前記触媒は、前記反応器中へ一度のみ配量される。この反応器は、好ましくは清浄であり、乾燥しており、かつ前記DMC触媒を阻害するかもしれない塩基性不純物不含であるべきである。前記触媒量は、好ましくは、前記方法に十分な触媒活性が与えられているように調整すべきである。前記触媒は、固体としてまたは触媒懸濁液の形で配量することができる。懸濁液が使用される場合には、殊に、前記開始剤は懸濁化剤として適している。
【0103】
DMC触媒反応を開始するために、前記触媒を最初に、好ましくは前記アルキレンオキシドの群から選択される、前記の少なくとも1種のエポキシ官能性化合物(F)の一部で、殊にプロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドで活性化することが有利でありうる。前記アルコキシル化反応が開始した後に、連続的なモノマー添加を開始することができる。
【0104】
工程c)におけるDMC触媒反応の場合の反応温度は、好ましくは60℃~200℃、より好ましくは90℃~160℃および最も好ましくは100℃~140℃である。
【0105】
工程c)におけるDMC触媒反応の場合の反応器の内圧は、好ましくは0.02bar~100bar、より好ましくは0.05bar~20bar、最も好ましくは0.1bar~10bar(絶対)である。
【0106】
最も好ましくは、工程c)におけるDMC触媒反応は、100℃~140℃の温度および0.1bar~10barの圧力で実施される。
【0107】
前記反応は、例えば粘度低下のために、適した溶剤中で実施することができる。前記エポキシド添加の終了後に、好ましくは、前記反応を完了させるための後反応が続く。前記後反応は、例えば、出発物質を添加せずに反応条件(すなわち例えば前記温度の保持)でのさらなる反応により実施することができる。前記DMC触媒は、通常は反応混合物中に残留する。
【0108】
未反応のエポキシドおよび場合によりさらなる揮発性成分は、反応が行われた後に、真空蒸留、水蒸気ストリッピングまたはガスストリッピングまたは他の脱臭方法により除去することができる。完成した生成物は、最後に100℃未満でろ過されて、場合により存在している濁った物質を除去する。
【0109】
塩基性触媒作用
前記DMC触媒の代わりに、工程c)において塩基性触媒を使用することもできる。適しているのは、殊に、アルカリ金属アルコラート、例えばナトリウムメタノラートおよびカリウムメタノラートであり、これらは固体としてまたはそれらのメタノール性溶液の形で添加される。さらにまた、あらゆる水酸化アルカリ、殊に水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを、しかも固体としてだけでなく、例えば水溶液またはアルコール性溶液としても、使用することができる。さらにまた、本発明によれば、塩基性窒素化合物、好ましくはアミン、グアニジン類およびアミジン、最も好ましくは第三級アミン、例えばトリメチルアミンおよびトリエチルアミンを使用することもできる。
【0110】
前記塩基性触媒を、前記開始剤のOH基およびNH基の合計を基準として、0mol%超~100mol%、より好ましくは0mol%超~50mol%、最も好ましくは3mol%~40mol%の濃度で使用することが好ましい。
【0111】
工程c)における塩基性触媒反応の場合の反応温度は、好ましくは80℃~200℃、より好ましくは90℃~160℃および最も好ましくは100℃~160℃である。
【0112】
工程c)における塩基性触媒反応の場合の反応器の内圧は、好ましくは0.2bar~100bar、より好ましくは0.5bar~20bar、最も好ましくは1bar~10bar(絶対)である。
【0113】
最も好ましくは、工程c)における塩基性触媒反応は、100℃~160℃の温度および1bar~10barの圧力で実施される。
【0114】
前記反応は、任意に、適した溶剤中で実施することができる。前記エポキシド添加の終了後に、好ましくは、前記反応を完了させるための後反応が続く。前記後反応は、例えば、出発物質を添加せずに反応条件でのさらなる反応により実施することができる。未反応のエポキシドおよび場合によりさらなる揮発性成分は、反応が行われた後に、真空蒸留、水蒸気ストリッピングまたはガスストリッピングまたは他の脱臭方法により除去することができる。揮発性触媒、例えば揮発性アミンは、その際に除去される。
【0115】
前記の塩基性粗生成物の中和のためには、酸、例えばリン酸または硫酸またはカルボン酸、例えば酢酸および乳酸が添加される。好ましいのは、リン酸水および乳酸水の使用である。前記のそれぞれの酸の使用量は、予め使用された量の塩基性触媒に従う。前記のペンダントポリエーテル残基を有する塩基性ポリブタジエンは、前記酸の存在下で、好ましくは40℃~95℃で撹拌され、引き続き真空蒸留において、100mbar未満および80℃~130℃で乾燥するまで蒸留される。中和された生成物は最後に、好ましくは100℃未満でろ過されて、沈殿した塩を除去する。
【0116】
本発明による最終生成物が、0.2%未満の含水率(前記最終生成物の全質量を基準とした質量割合として記載)および0.5mgKOH/g未満の酸価を有し、かつ事実上ホスフェート不含であることが好ましい。
【0117】
開始剤としての生成物
前記最終生成物の所望の分子量を、唯一の反応工程だけにおいて、殊にアルコキシル化工程において、達成することが可能であるとは限らない。特に、長いポリエーテル側鎖を目的とする場合および/または工程b)からの開始剤、すなわち前記の少なくとも1種のヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)が、OH基およびNH基の高い官能価を有する場合には、大量のエポキシモノマーを付加しなければならない。これは、反応器形状により時には許容されない。本発明により製造される工程c)からのポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)は、それらのペンダントポリエーテル残基の末端にそれぞれ1個のOH基を持ち、したがって、より高分子量の後続生成物の合成用の開始剤としてまた適している。これらは、本発明の意味で、より長いポリエーテル残基を有するポリブタジエンの合成用の前駆物質および出発化合物である。前記の少なくとも1種のエポキシ官能性化合物(F)の反応は、工程c)において、すなわち複数の部分工程において行うことができる。
【0118】
工程c)によるDMC触媒作用を用いて製造された生成物は、本発明によれば選択的に、DMC触媒作用によるかまたは前記の塩基性触媒または酸性触媒のうち1種を使用して、エポキシモノマーの新たな付加によりさらにアルコキシル化することができる。任意に、例えば連鎖延長の際の反応速度を増加させるために、さらなるDMC触媒を添加することができる。
【0119】
同じように、工程c)からの塩基触媒作用下に製造された生成物は選択的に、塩基性で、酸性でまたはDMC触媒作用によって、より高い分子量へとアルコキシル化することができる。工程c)において、前記塩基性前駆物質をさらに塩基触媒作用下にモノマーと反応させようとする場合には、前記中和は有利に省かれる。任意に、例えばその連鎖延長の際の反応速度を増加させるために、さらなる塩基性触媒を添加することができる。
【0120】
任意の工程d)
任意のさらなる工程d)において、前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)を、少なくとも1種の末端キャップ試薬(H)と反応させて、末端キャップされたポリエーテル残基を含有する少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(K)を得る。その際に、前記ポリエーテル変性ポリブタジエン(G)の、末端にヒドロキシ基を有する残基Bは、末端で、エステル基、エーテル基、ウレタン基および/またはカーボネート基にさらに転化される。前記のポリエーテルの末端キャップは、当業者に公知であり、例えば、カルボン酸またはカルボン酸無水物でのエステル化、殊に無水酢酸を用いるアセチル化、ハロゲン化炭化水素でのエーテル化、殊にウィリアムソンエーテル合成の原理による塩化メチルでのメチル化、前記OH基とイソシアネート、殊にモノイソシアネート、例えばステアリルイソシアネートとの反応によるウレタン化、およびジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートとの反応によるカーボネート化である。
【0121】
任意の工程e)
任意の工程e)において、前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)は、色に関して明るくされる。前記の任意の工程e)が、前記の任意の工程d)に続く場合には、その際に、前記の末端キャップされたポリエーテル残基を含有する少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(K)が、色に関して明るくされる。それに対して前記の任意の工程d)が省かれる場合には、前記の任意の工程e)は、本発明による方法の工程c)に続き、かつ前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)が、色に関して明るくされる。前記の明るくすることは、例えば、好ましくは適した溶剤中での、活性炭の添加によるか、または過酸化水素での処理により、行うことができる。
【0122】
任意の工程f)
任意の工程f)において、前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)のアミノ基の少なくとも一部を、酸または四級化試薬、例えばアルキルハロゲン化物およびベンジルハロゲン化物、ジメチルスルフェートまたはクロロ酢酸もしくはクロロ酢酸ナトリウムと反応させて、第四級アンモニウム基を得る。工程f)は選択的に、工程c)後または前記の任意の工程d)後または前記の任意の工程e)後に実施することができる。前記四級化後に、生成物を、例えば水または有機溶剤中に溶解または分散させることができる。
【0123】
反応器
本発明による方法のための反応器として、前記反応およびそれらの場合により存在する熱量を制御することができる、適したあらゆるタイプの反応器を原則的に使用することができる。その反応操作は、プロセス工学的に公知の方法で連続的に、半連続的に、さもなければバッチ式に行うことができ、かつ既存の生産技術用装置にフレキシブルに合わせることができる。従来の撹拌槽反応器に加えて、国際公開第01/062826号(WO 01/062826)に記載されたような、気相および内部熱交換管を有するジェットループ型反応器を使用することもできる。さらにまた、気相不含のループ型反応器を使用することができる。
【0124】
ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン
本発明の対象は、さらに、本発明による方法により製造することができるような、くしの位置(ペンダント、側方)でポリエーテル残基で変性されたアミノ官能性ポリブタジエンである。
したがって、本発明のさらなる対象は、本発明による方法により得ることができる、ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)である。
【0125】
好ましくは、前記のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)は、くしの位置(ペンダント、側方)でポリエーテル残基で変性されている線状ポリブタジエンである。そのため、前記のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)が、線状ポリブタジエン主鎖およびペンダントポリエーテル残基を有することが好ましい。
【0126】
本発明のさらなる対象は、同じように、好ましくは本発明による方法により得ることができる、ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)であり、前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)が、2価の残基
【化5】
からなる群から選択される繰返し単位を含むことにより特徴付けられており、
ここで、
およびAはそれぞれ互いに独立して、有機残基、好ましくは炭素原子1~22個を有する、最も好ましくは炭素原子1~12個を有する有機残基であり、ここで、前記残基AおよびAは、互いに共有結合されていてよく、
Bは、それぞれ互いに独立して、式(4a)の残基であり、
【化6】
好ましくは、それぞれ互いに独立して、式(4b)の残基であり、
【化7】
最も好ましくは、それぞれ互いに独立して、式(4c)の残基であり、
【化8】
は、それぞれ互いに独立して、炭素原子1~16個を有する1価の炭化水素残基であり、
好ましくは、それぞれ互いに独立して、炭素原子1~16個を有するアルキル残基またはフェニル残基であり、
最も好ましくは、それぞれ互いに独立して、メチル残基、エチル残基またはフェニル残基であり、
は、式-CH-O-Rの残基であり、
は、それぞれ互いに独立して、炭素原子3~18個を有する1価の炭化水素残基であり、
好ましくは、それぞれ互いに独立して、アリル残基、ブチル残基、炭素原子8~15個を有するアルキル残基であるか、または炭素原子1~4個を有する炭化水素残基から選択される1価の残基で置換されていてよいフェニル残基であり、
最も好ましくはtert-ブチルフェニル残基またはo-クレジル残基であり、
は、それぞれ互いに独立して、炭素原子1~18個を有する1価の有機残基または水素、好ましくは水素であり、
かつ
k1およびk2は、それぞれ互いに独立して、0~8、好ましくは0~6、最も好ましくは0~4の整数であり、
l1およびl2は、整数であり、かつそれぞれ互いに独立して、0または1のいずれかであり、
m、n、o、pおよびqは、それぞれ互いに独立して、0~300、好ましくは0~200、最も好ましくは0~100の有理数であるが、ただし、m、n、o、pおよびqの合計は、1より大きく、好ましくは5より大きく、最も好ましくは10より大きく、
全ての繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の合計で割った全ての繰返し単位(U)、(V)および(W)の合計は、0%超であり、
かつ、前記繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)ならびに前記残基B中の前記繰返し単位のあらゆる並べ替えが併せて含まれている。
【0127】
残基R、R、RおよびRは、その際に、それぞれ互いに独立して、線状または分岐状、飽和または不飽和、脂肪族または芳香族、置換または非置換であってよい。
【0128】
一般表記
【化9】
[ここで、式(4a)中でR=RまたはRであるか、もしくは式(4b)および(4c)中でR=CHである]は、その際に、式
【化10】
の単位ならびに式
【化11】
の単位を表し、しかし好ましくは、式
【化12】
の単位を表す。式(4a)中の一般表記
【化13】
は、その際に、式
【化14】
の単位ならびに式
【化15】
の単位を表し、しかし好ましくは、式
【化16】
の単位を表す。
【0129】
前記残基Rが、それぞれ互いに独立して、炭素原子1~18個を有する1価の炭化水素残基、アシル残基-C(=O)R、ウレタン残基-C(=O)NH-R、カーボネート残基-C(=O)O-Rおよび水素からなる群から選択されていることがさらに好ましく、より好ましくは、Rは、それぞれ互いに独立して、炭素原子1~18個を有するアルキル残基、炭素原子1~18個を有するアルキレン残基、アシル残基-C(=O)R、ウレタン残基-C(=O)NH-R、カーボネート残基-C(=O)O-Rおよび水素からなる群から選択されており、最も好ましくは、Rは水素であり、ここで、名称「水素」は、水素残基/水素ラジカルを表すものとする。
【0130】
は、それぞれ互いに独立して、炭素原子1~18個を有する、好ましくは炭素原子1~10個を有する、アルキル残基またはアルケニル残基、最も好ましくはメチル残基である。
【0131】
は、それぞれ互いに独立して、炭素原子1~18個を有する、好ましくは炭素原子6~18個を有する、アルキル残基またはアリール残基である。
【0132】
は、それぞれ互いに独立して、炭素原子1~18個を有する、好ましくは炭素原子1~2個を有する、アルキル残基である。
【0133】
本発明によれば、前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)の全ての繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の合計(総数)で割った全ての繰返し単位(U)、(V)および(W)の合計(総数)は、0%超、すなわち0%超~100%である。
【0134】
これは、反対に、前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)の全ての繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の合計(総数)で割った全ての繰返し単位(X)、(Y)および(Z)の合計(総数)が、100%未満(すなわち100%未満~0%)であることを意味する。
【0135】
これは、前記繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の全体の0%超(すなわち0%超~100%)がポリエーテル変性されていることを意味する。
【0136】
これはさらに、前記繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の全体の100%未満(すなわち100%未満~0%)が、ポリエーテル変性されていないことを意味する。
【0137】
これはさらに、前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)が、(U)、(V)および(W)からなる群から選択される、少なくとも1個の繰返し単位を含むことを意味する。
【0138】
その際に、前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)の全ての繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の合計(総数)で割った全ての繰返し単位(U)、(V)および(W)の合計(総数)が、好ましくは0%超~100%未満、よりいっそう好ましくは0%超~70%、よりいっそう好ましくは1%~50%、よりいっそう好ましくは2%~40%、よりいっそう好ましくは3%~30%、最も好ましくは4%~20%であることが好ましい。
【0139】
これは、前記繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の全体の好ましくは0%超~100%未満、よりいっそう好ましくは0%超~70%、よりいっそう好ましくは1%~50%、よりいっそう好ましくは2%~40%、よりいっそう好ましくは3%~30%、最も好ましくは4%~20%が、ポリエーテル変性されていることを意味する。
【0140】
その際に、前記の少なくとも1種のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)の全ての繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の合計(総数)で割った全ての繰返し単位(X)、(Y)および(Z)の合計(総数)が、100%未満~0%超、より好ましくは100%未満~30%、よりいっそう好ましくは99%~50%、よりいっそう好ましくは98%~60%、よりいっそう好ましくは97%~70%、最も好ましくは96%~80%であることがさらに好ましい。
【0141】
これは、前記繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)の全体の好ましくは100%未満~0%超、より好ましくは100%未満~30%、よりいっそう好ましくは99%~50%、よりいっそう好ましくは98%~60%、よりいっそう好ましくは97%~70%、最も好ましくは96%~80%が、ポリエーテル変性されていないことを意味する。
【0142】
全ての繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)をまとめた質量割合が、前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)の全質量を基準として、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、よりいっそう好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%であることが好ましい。
【0143】
前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)が、本質的にまたは完全に前記繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)からなることが好ましい。
【0144】
前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)が、式(5)のペンダントポリエーテル残基を備えたポリブタジエンであることが好ましく、
【化17】
ここで、式(5)に記載されたポリエーテル変性された繰返し単位の割合が、式(5)に記載された全ての繰返し単位の合計を基準として、0%超(すなわち0%超~100%)、より好ましくは0%超~100%未満、よりいっそう好ましくは0%超~70%、よりいっそう好ましくは1%~50%、よりいっそう好ましくは2%~40%、よりいっそう好ましくは3%~30%、最も好ましくは4%~20%であり、ここで、前記割合は、[(d+e+f)/(a+b+c+d+e+f)]×100%により計算される。
【0145】
これは、式(5)に記載されたポリエーテル変性されていない繰返し単位の割合が、式(5)に記載された全ての繰返し単位の合計を基準として、100%未満(すなわち100%未満~0%)、好ましくは100%未満~0%超、より好ましくは100%未満~30%、よりいっそう好ましくは99%~50%、よりいっそう好ましくは98%~60%、よりいっそう好ましくは97%~70%、最も好ましくは96%~80%であり、ここで、前記割合は、[(a+b+c)/(a+b+c+d+e+f)]×100%により計算されることを意味する。
【0146】
添え字a、b、c、d、eおよびfを有する繰返し単位は、任意であり、前記ポリブタジエン鎖全体に統計的に分布されている。したがって、記載される全ての添え字の値は、平均値として理解すべきである。
【0147】
添え字a、b、c、d、eおよびfを有する全ての繰返し単位をまとめた質量割合が、前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)の全質量を基準として、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、よりいっそう好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%であることが好ましい。
【0148】
前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)が、本質的にまたは完全に、添え字a、b、c、d、eおよびfを有する繰返し単位からなることが好ましい。
【0149】
前記のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)が、含まれる二重結合の0%~80%、より好ましくは0%~30%、よりいっそう好ましくは0%~10%および最も好ましくは0%~5%が、1,2-ビニル二重結合であり、かつ含まれる二重結合の20%~100%、より好ましくは70%~100%、よりいっそう好ましくは90%~100%および最も好ましくは95%~100%が、1,4-二重結合であることにより特徴付けられていることがさらに好ましい。
【0150】
したがって、好ましくは、本発明の意味で、式(5)の化合物は、前記の二重結合を含有する繰返し単位の総数(a+b+cの合計)を基準として、1,2-ビニル二重結合(添え字a)0%~80%および1,4-二重結合(添え字bおよびcの合計)20%~100%の含有率、より好ましくは1,2-ビニル二重結合0%~30%および1,4-二重結合70%~100%、よりいっそう好ましくは1,2-ビニル二重結合0%~10%および1,4-二重結合90%~100%および最も好ましくは1,2-ビニル二重結合0%~5%および1,4-二重結合95%~100%を有する。1,4-trans-二重結合(添え字b)および1,4-cis-二重結合(添え字c)の比は任意である。
【0151】
最も好ましくは、式(5)の化合物は、前記繰返し単位d+e+fの合計を基準として、添え字dを有する繰返し単位95%超の含有率を有する。前記繰返し単位eおよびf相互の比は任意である。
【0152】
前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)のポリブタジエン部分の数平均分子量M、重量平均分子量Mおよび多分散度は、任意である。前記ポリブタジエン部分は、その際に、本方法により使用されるポリブタジエン(A)に由来する、ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)の部分であると理解される。式(5)において、前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)のポリブタジエン部分は、前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)から残基[B]k1(Al1-N-(A2)l2-[B]k2およびB-Oを除いて得られる、前記ポリマーの部分であると理解すべきである。それに応じて、このことは、前記の2価の繰返し単位(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)からなる群から選択される繰返し単位を含む、上記のポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)にも当てはまる。
【0153】
前記ポリエーテル変性ポリブタジエン(G)もしくは(K)のポリブタジエン部分の数平均分子量Mは、200g/mol~20000g/mol、より好ましくは500g/mol~10000g/mol、最も好ましくは700g/mol~5000g/molであることが好ましい。
【0154】
選択的に、前記ポリエーテル変性ポリブタジエン(G)もしくは(K)のポリブタジエン部分の数平均分子量Mは、2100g/mol~20000g/mol、より好ましくは2200g/mol~10000g/mol、最も好ましくは2300g/mol~5000g/molであることが好ましい。
【0155】
前記ポリブタジエン部分の数平均分子量Mは、その際に、母体であるポリブタジエン(A)の数平均分子量Mとして定義されている。
【0156】
前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)が、数平均で5~360個、好ましくは10~180個、最も好ましくは15~90個の繰返し単位を有し、ここで、前記繰返し単位は、(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)からなる群から選択されていることがさらに好ましい。
【0157】
選択的に、前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)が、数平均で35~360個、好ましくは40~180個、最も好ましくは45~90個の繰返し単位を有し、ここで、前記繰返し単位は、(U)、(V)、(W)、(X)、(Y)および(Z)からなる群から選択されていることが好ましい。
【0158】
最も好ましくは、上記のポリブタジエン(A)であるEvonik Industries AG/Evonik Operations GmbHのPolyvest(登録商標) 110およびPolyvest(登録商標) 130ならびにSynthomer PLCのLithene ultra ALおよびLithene ActiV 50から誘導される、ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)である。
【0159】
前記残基Bの分子量および多分散度は、任意である。しかし、前記残基Bの平均分子量は、30g/mol~20000g/mol、より好ましくは50g/mol~10000g/mol、よりいっそう好ましくは100g/mol~5000g/mol、最も好ましくは150g/mol~1000g/molであることが好ましい。前記残基Bの平均分子量は、使用されるモノマーの秤量分から、使用されるヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)のOH基およびNH基の数を基準として、計算することができる。したがって、例えばエチレンオキシド40gが使用され、かつ使用されるヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン(E)の全てのOH基およびNH基の全量が合わせて0.05molである場合には、前記残基Bの平均分子量は、800g/molである。
【0160】
前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)は、組成および分子量に応じて、液体、ペースト状または固体である。
【0161】
前記ポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)もしくは(K)の数平均分子量(M)は、好ましくは1000g/mol~50000g/mol、より好ましくは1500g/mol~40000g/mol、よりいっそう好ましくは2000g/mol~30000g/mol、最も好ましくは3000g/mol~10000g/molである。
【0162】
それらの多分散度(M/M)は、広い範囲内で変えることができる。前記の少なくとも1種のポリエーテル変性ポリブタジエン(G)もしくは(K)の多分散度は、好ましくは1.5~10、より好ましくは2~8、最も好ましくは3~5である。
【0163】
以下に記載される実施例において、本発明は例として記載されるが、本発明を、実施例に挙げられた実施態様に限定するものではなく、本発明の適用範囲は、明細書全体および請求の範囲から得られるものである。
【実施例
【0164】
一般的な方法:
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):
前記エポキシ官能性ポリブタジエン(C)の多分散度(M/M)、重量平均分子量(M)および数平均分子量(M)を決定するためのGPC測定を、以下の測定条件下で実施した:カラム組合せSDV 1000/10000Å(長さ65cm)、温度30℃、移動相としてTHF、流量1ml/min、試料濃度10g/l、RI検出器、ポリプロピレングリコール標準に対する評価。前記ポリブタジエン(A)の多分散度(M/M)、重量平均分子量(M)および数平均分子量(M)を決定するためのGPC測定を、同じように実施することができる。
【0165】
本発明によるポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(G)の多分散度(M/M)、重量平均分子量(M)および数平均分子量(M)を決定するためのGPC測定を、以下の測定条件下で実施した:カラム組合せJordi DVB 500Å(長さ30cm)、Jordi DVB Mixed Bed(長さ30cm)、温度30℃、移動相としてTHF/トリエチルアミン、流量0.4ml/min、試料濃度3g/l、RI検出器、ポリスチレン標準に対する評価。前記の末端キャップされたポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン(K)の多分散度(M/M)、重量平均分子量(M)および数平均分子量(M)を決定するためのGPC測定を、同じように実施することができる。
【0166】
ポリブタジエン中の1,4-cis-、1,4-trans-および1,2-単位の含有率の決定:
1,4-cis-、1,4-trans-および1,2-単位の含有率の決定は、H-NMR分光法を用いて行うことができる。この方法は、当業者によく知られている。
【0167】
前記エポキシ官能性ポリブタジエン(C)中のエポキシ基の含有率の決定(エポキシ含有率、エポキシ化度):
エポキシ基の含有率の決定を、13C-NMR分光法を用いて行った。使用したのは、型式Bruker Avance 400ののNMR分光計である。試料を、そのために重クロロホルム中に溶解させた。エポキシ含有率は、前記試料中に含まれる全ての繰返し単位の全体を基準としたmol%でのエポキシ化ブタジエン単位の割合として定義されている。これは、使用されたポリブタジエン(A)の二重結合の数で割った前記エポキシ官能性ポリブタジエン(C)のエポキシ基の数に相当する。
【0168】
酸価の決定:
酸価決定を、DIN EN ISO 2114に準拠した滴定法により実施した。
【0169】
合成例:
工程a)、エポキシ化ポリブタジエンの製造
例A1:
エポキシ化ポリブタジエンを製造するために、構造x=1%、y=24%およびz=75%を有する式(1)のポリブタジエンを使用した(Polyvest(登録商標) 110)。従来技術に従い、5L反応器中に窒素雰囲気下で、クロロホルム1500g中のPolyvest(登録商標) 110 1500gおよび濃ギ酸146.3gを室温で装入した。引き続き、30%H溶液540g(水溶液の全質量を基準としてH 30質量%)をゆっくりと滴加し、ついでこの溶液を7時間、50℃に加熱した。前記反応の終了後に、室温に冷却し、有機相を分離し、かつこれをさらに4回、蒸留したHOで洗浄した。過剰のクロロホルムおよび残留水を留去した。生成物1481gが得られ、これをIrganox(登録商標) 1135 1000ppmと混合し、窒素下に貯蔵した。13C-NMRによる評価は、二重結合の約15.8%のエポキシ化度となった。GPCによる評価は次のとおりであった:M=4690g/mol、M=1982g/mol、M/M=2.4。
【0170】
工程b)、アミノ官能性ポリブタジエンの製造
例B1:
約15.8%のアミノ化度を有するアミノ官能性ポリブタジエンを製造するために、例A1において製造されたエポキシ化ポリブタジエンを使用した。前記アミノ化度は、その際に、工程a)において使用されたポリブタジエンの二重結合の数で割った前記アミノ官能性ポリブタジエンのアミノ基の数である。その製造のために、1L四つ口フラスコ中に窒素雰囲気下で前記エポキシ化ポリブタジエン800gをエタノールアミン136.3gおよび臭化リチウム6.8gと共に装入し、撹拌しながら180℃に加熱した。この混合物を、15時間、この温度で撹拌した。前記反応中にその粘度は上昇した。反応が終了した後に、揮発性成分を180℃および20mbarで蒸留により除去した。この生成物を60℃に冷却した。帯黄色生成物908gが得られ、かつ窒素下で貯蔵した。13C-NMRによる評価は、全てのエポキシ基の完全転化であり、それから、約15.8%のアミノ化度が得られた。
【0171】
工程c)、アミノ官能性ポリブタジエンのアルコキシル化
例C1:
1.5Lオートクレーブ中に、例B1において製造されたヒドロキシ官能性およびアミノ官能性ポリブタジエン151gを窒素下で装入し、撹拌しながら115℃に加熱した。この反応器を30mbarの内圧まで真空排気して、場合により存在している揮発性成分を蒸留により除去した。エチレンオキシド15.9gを、5分以内に115℃で供給した。反応器内圧は、3.4bar(絶対)の最大値に上昇し、前記反応の過程で連続的に低下した。5.5h後に、0.6bar(絶対)での定圧に達していた。115℃および20mbarで揮発性成分を除去し、前記反応器をNで標準圧力に放圧し、反応混合物を40℃に冷却した。引き続き、30%ナトリウムメタノラート溶液26.9g(溶液の全質量を基準としてメタノール中ナトリウムメタノラート30質量%)を添加し、反応器内容物を窒素で不活性し、撹拌しながら115℃に加熱した。反応器内圧を、その際に、20mbarに低下させ、メタノールを蒸留により除去した。エチレンオキシド164.7gを、115℃で撹拌および冷却しながら1.5h以内に最大3.4barの内圧で添加した。115℃で3hの後反応中に、前記内圧は連続的に、0.5bar(絶対)での定圧まで低下した。揮発分、例えば残留エチレンオキシドを真空中で留去した。生成物を80℃未満に冷却し、90%乳酸14.9g(溶液の全質量を基準として水中乳酸90質量%)で0.1mgKOH/gの酸価に中和し、Irganox(登録商標) 1135 1000ppmと混合し、かつ排出した。粘稠な橙赤色のわずかに濁ったポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン317gを排出し、窒素下で貯蔵した。エチレンオキシドの全量は、反応性NH/OH基あたり平均して3.8個のエチレンオキシド単位に相当していた。GPCによる評価は次のとおりであった:M=19484g/mol、M=4474g/mol、M/M=3.45。
【0172】
例C2:
1.5Lオートクレーブ中に、例B1において製造されたアミノ化ポリブタジエン181gを窒素下で装入し、撹拌しながら115℃に加熱した。この反応器を、30mbarの内圧まで真空排気して、場合により存在している揮発性成分を蒸留により除去した。プロピレンオキシド25.2gを、5分以内に115℃で供給した。反応器内圧は、2.4bar(絶対)の最大値に上昇し、かつ前記反応の過程で連続的に低下した。4.5h後に、0.7bar(絶対)での定圧に達していた。115℃および20mbarで揮発性成分を除去し、前記反応器をNで標準圧力に放圧し、反応混合物を40℃に冷却した。引き続き、30%ナトリウムメタノラート溶液32.2g(溶液の全質量を基準としてメタノール中ナトリウムメタノラート30質量%)を添加し、反応器内容物を窒素で不活性にし、撹拌しながら115℃に加熱した。反応器内圧は、その際に、20mbarに低下し、かつメタノールを蒸留により除去した。プロピレンオキシド260gを、115℃で撹拌および冷却しながら1.5h以内に最大2.9barの内圧で添加した。115℃で2hの後反応中に、前記内圧は連続的に、0.3bar(絶対)での定圧まで低下した。揮発分、例えば残留プロピレンオキシドを真空中で留去した。生成物を80℃未満に冷却し、90%乳酸17.9g(溶液の全質量を基準として水中乳酸90質量%)で0.1mgKOH/gの酸価に中和し、Irganox(登録商標)1135 1000ppmと混合し、かつ排出した。粘稠な橙色のわずかに濁ったポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン421gを排出し、窒素下で貯蔵した。プロピレンオキシドの全量は、反応性NH/OH基あたり平均して3.8個のプロピレンオキシド単位に相当していた。GPCによる評価は次のとおりであった:M=25386g/mol、M=5226g/mol、M/M=4.86。
【0173】
例C3:
(化学量論的組成:反応性NH/OH基あたり5EO/5PO)
1.5Lオートクレーブ中に、例B1において製造されたアミノ化ポリブタジエン197gを窒素下で装入し、撹拌しながら115℃に加熱した。この反応器を、30mbarの内圧まで真空排気して、場合により存在している揮発性成分を蒸留により除去した。プロピレンオキシド27.4gを、5分以内に115℃で供給した。反応器内圧は、2.3bar(絶対)の最大値に上昇し、かつ前記反応の過程で連続的に低下した。4h後に、0.7bar(絶対)での定圧に達していた。115℃および20mbarで、揮発性成分を除去し、前記反応器をNで標準圧力に放圧し、反応混合物を40℃に冷却した。引き続き、30%ナトリウムメタノラート溶液17.6g(溶液の全質量を基準としてメタノール中ナトリウムメタノラート30質量%)を添加し、反応器内容物を窒素で不活性にし、撹拌しながら115℃に加熱した。反応器内圧は、その際に、20mbarに低下し、かつメタノールを蒸留により除去した。プロピレンオキシド382gおよびエチレンオキシド310gの混合物を、115℃で撹拌および冷却しながら6h以内に最大3.2barの内圧で添加した。115℃で2.5hの後反応中に、前記内圧は連続的に、0.4bar(絶対)での定圧まで低下した。揮発分、例えば残留プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドを真空中で留去した。生成物を、80℃未満に冷却し、30%リン酸(溶液の全質量を基準として水中リン酸30質量%)で0.1mgKOH/gの酸価に中和し、Irganox(登録商標)1135 500ppmと混合し、かつフィルターを通して排出した。粘稠な橙色の澄明なポリエーテル変性アミノ官能性ポリブタジエン881gを排出し、窒素下で貯蔵した。エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの全量は、反応性NH/OH基あたり平均して5個のエチレンオキシド単位および5個のプロピレンオキシド単位に相当していた。GPCによる評価は次のとおりであった:M=32145g/mol、M=8349g/mol、M/M=3.85。
【国際調査報告】