(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】6-ウンデカノールエステルを含む水性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20240208BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240208BHJP
C07C 69/24 20060101ALI20240208BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20240208BHJP
C07C 69/675 20060101ALI20240208BHJP
C07C 69/58 20060101ALI20240208BHJP
C07C 69/40 20060101ALI20240208BHJP
C07C 69/50 20060101ALI20240208BHJP
C12P 7/40 20060101ALN20240208BHJP
C12P 7/62 20220101ALN20240208BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q19/00
C07C69/24
C07C67/08
C07C69/675
C07C69/58
C07C69/40
C07C69/50
C12P7/40
C12P7/62
C12N1/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549684
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022053067
(87)【国際公開番号】W WO2022175141
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アーヒム フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ハートゥング
(72)【発明者】
【氏名】ヤン マリアン フォン ホーフ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン クラーレ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C083
4H006
【Fターム(参考)】
4B064AD02
4B064AD63
4B064CA02
4B064CD06
4B064CD07
4B064DA16
4B065AA23X
4B065BD27
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4B065CA10
4B065CA12
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4H006AA02
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4H006BD70
4H006BN10
4H006KA06
4H006KC12
4H006KC14
(57)【要約】
本発明は、6-ウンデカノールエステルを含む水性組成物および6-ウンデカノールエステルの製造方法、ならびに化粧品用途での6-ウンデカノールエステルの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウンデカン-6-オールと、以下:
A)6~32個、好ましくは6~22個、より好ましくは8~22個の炭素原子を有するモノカルボン酸、および
B)2~44個、好ましくは3~38個、より好ましくは4~18個の炭素原子を有する多官能性カルボン酸、好ましくはトリカルボン酸およびジカルボン酸、より好ましくは2~18個、好ましくは3~13個、より好ましくは4~11個の炭素原子を有するジカルボン酸
から選択される1つと、のエステル化により得られる6-ウンデカノールエステルから選択される少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む、水性組成物。
【請求項2】
前記モノカルボン酸が、脂肪酸から選択される、請求項1記載の水性組成物。
【請求項3】
前記多官能性カルボン酸が、脂肪族直鎖状ジカルボン酸から、特にシュウ酸、マロン酸、タルトロン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、ソルビン酸、α-ケトグルタル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸およびブラシル酸から選択される、請求項1または2記載の水性組成物。
【請求項4】
前記水性組成物が、配合物であり、好ましくは化粧品配合物であり、より好ましくは湿潤剤、紫外線保護フィルターおよび顔料の群から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含む化粧品配合物である、請求項1から3までのいずれか1項記載の水性組成物。
【請求項5】
前記水性組成物が、少なくとも1つの湿潤剤、好ましくはグリセリンを含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の水性組成物。
【請求項6】
6-ウンデカノールエステルの製造方法であって、
(a)エタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩を提供し、前記エタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩を、2炭素分の鎖延長が可能な少なくとも1つの微生物と接触させて、ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを生成するステップと、
(b)(a)で得られた前記ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを、適切な反応条件下で少なくとも1つのケトン化触媒と接触させて、前記ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを6-ウンデカノンに化学的にケトン化させるステップと、
(c)前記6-ウンデカノンを少なくとも1つの水素化金属触媒と接触させて、前記6-ウンデカノンを6-ウンデカノールに接触水素化させるステップと、
(d)前記6-ウンデカノールを、以下:
A)6~32個、好ましくは6~22個、より好ましくは8~22個の炭素原子を有するモノカルボン酸から選択される酸のアシル基を提供するアシル基供与体、および
B)2~44個、好ましくは3~38個、より好ましくは4~18個の炭素原子を有する多官能性カルボン酸、好ましくはトリカルボン酸およびジカルボン酸、より好ましくは2~18個、好ましくは3~13個、より好ましくは4~11個の炭素原子を有するジカルボン酸から選択される酸のアシル基を提供するアシル基供与体
から選択される少なくとも1つによりエステル化させるステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記(a)における微生物が、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)およびクロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)からなる群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記(b)のケトン化触媒が、金属酸化物触媒またはその混合物、好ましくは、ヘテロポリ酸(H
3PW
12O
40)触媒、酸化ニオブ(Nb
2O
5)触媒、酸化チタン(TiO
2)触媒、酸化セリウム(CeO
2)触媒、亜鉛-クロム(Zn-Cr)混合酸化物触媒、酸化マンガン(MnO
x)触媒、酸化ランタン(La
2O
3)触媒、酸化マグネシウム(MgO)触媒、酸化鉄(FeO、FeO
2、Fe
2O
3、Fe
3O
4、Fe
4O
5、Fe
5O
6、Fe
5O
7)、ケイ素-アルミニウム(Si
yAl
zO)混合酸化物触媒、酸化アルミニウム(Al
2O
3)触媒およびジルコニア(ZrO
2)触媒からなる群から選択される金属酸化物触媒またはその混合物である、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(b)を、150℃~350℃の温度で実施する、請求項6から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(c)の水素化金属触媒を、ルテニウム(Ru)触媒、レニウム(Re)触媒、ニッケル(Ni)触媒、鉄(Fe)触媒、コバルト(Co)触媒、パラジウム(Pd)触媒および白金(Pt)触媒からなる群から選択する、請求項6から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(a)における低級アルカン酸を、酢酸およびブタン酸からなる群から選択する、請求項6から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(a)におけるエタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩の提供が、合成ガスからの、好ましくは少なくとも1つのアセトジェン微生物による、前記エタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩の合成を含む、請求項6から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
化粧品配合物を製造するための、請求項1から5までのいずれか1項記載の水性組成物中に含まれる、または請求項6から12までのいずれか1項記載の方法によって得られる、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルの使用。
【請求項14】
皮膚の乾燥を回避するための、請求項1から5までのいずれか1項記載の水性組成物中に含まれる、または請求項6から12までのいずれか1項記載の方法によって得られる、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6-ウンデカノールエステルを含む水性組成物および6-ウンデカノールエステルの製造方法、ならびに化粧品用途での6-ウンデカノールエステルの使用に関する。
【0002】
先行技術
日焼け止め配合物などの化粧品用リーブオン配合物は、主に水相と油相とを有するエマルションからなる。油相には、多種多様な化粧用油が使用される。これらは、従来、例えば石油化学ベースの鉱油や、鉱油をベースとする他の低コスト製品であり得る。しかし、最新の配合物では、持続可能性の観点から、配合物成分を石油化学起源とすることを可能な限り避ける試みがなされている。そのため、脂肪酸-脂肪アルコールエステルまたは植物性および動物性油脂、ならびにワックスがよく使用される。好適な油は、室温で10~50mPasの範囲の粘度、および26~32mN/mの範囲の表面張力などのどちらかといえば平均的な適用特性を持ち、中程度ないし良好な展延挙動および中程度ないし低い極性を伴う中質油ないし重質油の範囲に包含される。使用目的を決定するこのような化粧品配合物のクレンジング効果および栄養補給効果とは別に、皮膚科学的に可能な限り高い適合性、良好な再脂肪化特性、エレガントな外観、展延容易性、最適な官能印象および保存安定性といった多様なパラメータが重視される。
【0003】
CO2フットプリントをさらに改善し、非熱帯原産の成分を使用した解決策を提供するため、新たな解決策が探求されている。有望な選択肢の1つとして、出発材料としてのCO2から化粧品原料を直接創出することが挙げられる。これは、真の持続可能な化粧品という消費者のニーズに合致した、化粧品用の新しいレベルの持続可能な成分への扉を開くものである。
【0004】
本発明の目的は、優れた化粧品用エモリエント(皮膚軟化剤)を提供することであった。
【0005】
発明の詳細な説明
驚くべきことに、6-ウンデカノールエステルが化粧品用途に優れた特性を有することが見出された。
【0006】
少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、皮膚や毛髪のような表面上で優れた官能特性を有することは、本発明の利点の1つである。
【0007】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、ほぼ無色であることである。
【0008】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、ほぼ無臭であることである。
【0009】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、活性物質に対して非常に良好な溶解性を示すことである。
【0010】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、皮膚上で非常に良好な展延性を示すことである。
【0011】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、高い加水分解安定性を、特に低pHならびに高温および低温で有することである。
【0012】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、良好な保湿効果を示すことである。
【0013】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、良好な湿潤特性を示すことである。
【0014】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、高度に再生可能であるかまたは完全に再生可能でさえある原料ベースとすることである。
【0015】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、カーボン(CO2)ニュートラルであり得ることである。
【0016】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、有機UVフィルターに対して良好な可溶化性能を示すことである。
【0017】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、良好な毒物学的プロファイルを示すことである。
【0018】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、同等の軽質エモリエント剤よりも低い展延性を示すことである。
【0019】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、良好な顔料安定化を示すことである。
【0020】
本発明の別の利点は、少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む組成物が、良好な凍結安定性を示すことである。
【0021】
本発明は、ウンデカン-6-オールと以下から選択される1つとのエステル化により得られる6-ウンデカノールエステルから選択される少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルを含む水性組成物を提供する:
A)6~32個、好ましくは6~22個、より好ましくは8~22個の炭素原子を有するモノカルボン酸、および
B)2~44個、好ましくは3~38個、より好ましくは4~18個の炭素原子を有する多官能性カルボン酸、好ましくはトリカルボン酸およびジカルボン酸、より好ましくは2~18個、好ましくは3~13個、より好ましくは4~11個の炭素原子を有するジカルボン酸。
【0022】
「6-ウンデカノールエステル」という用語は、本発明の文脈において「ウンデカ-6-イルエステル」の同義語として使用される。
【0023】
本発明の文脈における「水性」という用語は、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも30重量%の量の水を含む組成物を意味し、ここで、重量パーセンテージは、組成物全体に対するものである。
【0024】
本発明の文脈において、「多官能性カルボン酸」という用語は、1つを上回るカルボキシル基を有するカルボン酸を意味すると理解されるべきである。
【0025】
本発明に関連する「pH」とは、対応する物質について、5分間の撹拌後に、ISO 4319(1977)に準拠して校正されたpH電極を用いて25℃で測定される値として定義される。
【0026】
特に断りのない限り、パーセンテージ(%)は、いずれも質量パーセンテージで示される。
【0027】
例えば、飽和または不飽和、直鎖状または分岐状、置換または非置換のモノカルボン酸、例えばカプロン酸、シクロペンタンカルボン酸、2-メチルペンタン酸、ヘプタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ソルビン酸、イソノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、2-プロピルヘプタン酸、イソデカン酸、ウンデカン酸、11-ウンデシレン酸、2-ブチルオクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、リシノール酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸またはベヘン酸といった任意の種類のモノカルボン酸を本発明の文脈において使用することができる。
【0028】
本発明による好ましい水性組成物は、モノカルボン酸が脂肪酸、好ましくは天然脂肪酸から選択されることを特徴とする。天然脂肪酸は、天然由来の植物油または動物油をベースとして製造することができ、好ましくは6~30個の炭素原子、特に8~22個の炭素原子を有する。天然脂肪酸は、一般に分岐しておらず、偶数個の炭素原子からなる。二重結合は、シス配置を有する。例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ガドレイン酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸が挙げられる。本発明によるより好ましい水性組成物は、モノカルボン酸が、ヘキサン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、11-ウンデシレン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、リシノール酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸およびベヘン酸から選択されることを特徴とする。
【0029】
例えば、ジおよびトリカルボン酸、欧州特許出願公開第1683781号明細書で規定されているダイマー脂肪酸、シュウ酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸、マレイン酸、クエン酸、またさらには芳香族酸、例えばフタル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸のような任意の種類の多官能性酸を本発明の文脈において使用することができる。
【0030】
本発明による好ましい水性組成物は、多官能性カルボン酸が、脂肪族直鎖状ジカルボン酸、特にシュウ酸、マロン酸、タルトロン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、ソルビン酸、α-ケトグルタル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸およびブラシル酸から選択されることを特徴とする。
【0031】
本発明による水性組成物は、好ましくは配合物である。本発明の文脈において、「配合物」という用語は、その用途に従って、配合物がその用途を果たすことを可能にするために当業者にとって明らかな(水およびエステル以外の)少なくとも1つのさらなる成分を含む組成物を意味すると理解されるべきである。例えば、医薬配合物が「医薬」とみなされるためには、少なくとも1つの治療有効成分を含む必要があることは明らかであるが、化粧品配合物は通常、化粧品として許容される担体を含む。本発明による配合物は、例えば、医薬配合物、外皮用配合物、パーソナルケア配合物、化粧品配合物、家庭用ケア配合物、プロフェッショナルスキンケア配合物およびペットケア配合物であり得る。
【0032】
本発明による水性組成物は、好ましくは化粧品配合物である。
【0033】
本発明による好ましい配合物は、水およびエステルに加えて、以下の群:
エモリエント、
乳化剤、
増粘剤/粘度調整剤/安定剤/コンシステンシー向上剤、
紫外線保護フィルター、
酸化防止剤、
湿潤剤、
固形物およびフィラー、
顔料、
皮膜形成剤、
真珠光沢/不透明化添加剤、
消臭および制汗有効成分、
昆虫忌避剤、
セルフタンニング剤、
香料、
防腐剤、
推進剤、
コンディショナー、
染料、
化粧品有効成分、
ケア添加剤、
過脂肪剤、
溶媒、
から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含み、ここで、好ましくは、湿潤剤、エモリエント、乳化剤、安定剤/コンシステンシー向上剤、香料、防腐剤、紫外線保護フィルター、顔料および化粧品有効成分が含まれ、湿潤剤、紫外線保護フィルターおよび顔料が最も好ましい。個々の群の例示的な代表として使用できる物質は、当業者に知られており、例えばドイツ出願DE102008001788.4に記載されている。該特許出願は、本明細書において参照として援用され、したがって本開示の一部を構成する。さらなる任意成分およびこれらの成分の使用量に関しては、当業者に知られている関連のハンドブック、例えばK. Schrader, “Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika [Fundamentals and principles of cosmetics]”, 2nd edition, pages 329 to 341, Huethig Buch Verlag Heidelbergが明示的に参照される。特定の添加剤の量は、用途によって決まる。それぞれの適用のための典型的なガイド配合物は、公知の先行技術であり、例えば特定の基礎原料および有効成分の製造業者のパンフレットに記載されている。これらの既存の配合は、通常、そのまま採用することができる。しかし、必要であれば、適合および最適化のための簡単な実験により、複雑化することなく所望の変更を加えることができる。
【0034】
本発明による配合物に含まれる好ましい湿潤剤は、グリセリン、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンチレングリコール、1,2-ヘキシレングリコール、乳酸、クレアチンおよび尿素の群から選択される。
【0035】
本発明による組成物に含まれる6-ウンデカノールエステルは、当該技術分野で知られている方法により製造することができる。有利には、したがって本発明によれば好ましくは、本発明による組成物中に含まれる6-ウンデカノールエステルは、以下:
(a)エタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩を提供し、これらのエタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩を、2炭素分の鎖延長が可能な少なくとも1つの微生物と接触させて、ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを生成するステップと、
(b)(a)で得られたヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを、適切な反応条件下で少なくとも1つのケトン化触媒と接触させて、ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを6-ウンデカノンに化学的にケトン化させるステップと、
(c)6-ウンデカノンを少なくとも1つの水素化金属触媒と接触させて、6-ウンデカノンを6-ウンデカノールに接触水素化させるステップと、
(d)6-ウンデカノールを、以下:
A)6~32個、好ましくは6~22個、より好ましくは8~22個の炭素原子を有するモノカルボン酸から選択される酸のアシル基を提供するアシル基供与体、および
B)2~44個、好ましくは3~38個、より好ましくは4~18個の炭素原子を有する多官能性カルボン酸、好ましくはトリカルボン酸およびジカルボン酸、より好ましくは2~18個、好ましくは3~13個、より好ましくは4~11個の炭素原子を有するジカルボン酸から選択される酸のアシル基を提供するアシル基供与体
から選択される少なくとも1つによりエステル化させるステップと
を含む6-ウンデカノールエステルの製造方法によって製造される。
【0036】
本明細書で使用される「低級アルカン酸」という用語は、6個未満の炭素原子を含むアルカン酸を指す。低級アルカン酸の例は、酢酸(アセテート)、プロパン酸(プロパノエート)、ブタン酸(ブタノエート)またはペンタン酸(ペンタノエート)である。本明細書で使用される「接触」という用語は、微生物とエタノールおよび/または低級アルカン酸、例えばアセテートとの直接的な接触をもたらすことを意味する。一例では、エタノールは炭素供給源であり、ステップ(a)における接触は、ステップ(a)のエタノールと微生物との接触を含む。接触は、直接的な接触であってもよいし、間接的な接触であってもよく、間接的な接触は、細胞をエタノールから分離する膜などを含むことができ、また細胞およびエタノールが2つの異なる区画などに保管されてもよい。
【0037】
本発明による方法のステップ(a)において提供されるエタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩の供給源は、入手可能性に応じて変化し得る。例えば、エタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩は、合成ガス(シンガス、syngas)または当該技術分野で知られている任意の炭水化物の発酵生成物である。特に、エタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩の微生物による製造のための炭素供給源は、アルコール、アルデヒド、グルコース、スクロース、フルクトース、デキストロース、ラクトース、キシロース、ペントース、ポリオール、ヘキソース、エタノールおよび合成ガスからなる群から選択することができる。炭素供給源として、供給源の混合物を使用することもできる。
【0038】
好ましくは、炭素供給源は、合成ガス(シンガス)である。合成ガスは、好ましくは、少なくとも1つのアセトジェン微生物によってエタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩に転化される。
【0039】
二酸化炭素および/または一酸化炭素を含むシンガスの供給源に関して、当業者には、炭素供給源としてCOおよび/またはCO2を含むシンガスを供給するための多くの可能な供給源が存在することがわかるであろう。シンガスまたはシンガスの供給源は、例えば、水またはCO2からの水蒸気改質、部分酸化または電気化学合成に由来し得る。実際には、本発明のエタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩の微生物による製造のための炭素供給源として、COおよび/またはCO2の供給源からエタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩が形成されるように微生物に十分な量の炭素を供給することができる任意のガスまたは任意のガス混合物を使用することができることがわかる。
【0040】
総じて、本発明のアセトジェン微生物について、炭素供給源は、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、特に少なくとも90重量%のCO2および/またはCOを含み、ここで、重量%によるパーセンテージは、本発明の任意の態様による細胞に利用可能なすべての炭素供給源に関する。
【0041】
ガス状の炭素供給源の例としては、酵母発酵またはクロストリジウム属発酵によって生成される合成ガス、煙道ガスおよび石油精製ガスなどの排ガスが挙げられる。これらの排気ガスは、セルロース含有材料のガス化または石炭のガス化から形成される。一例では、これらの排ガスは、必ずしも他のプロセスの副産物として製造されるとは限らず、本発明の混合培養に使用するために特別に製造することができる。
【0042】
本発明の任意の態様によれば、本発明による方法のステップ(a)において提供されるエタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩の製造のための炭素供給源は、合成ガスであってよい。合成ガスは、例えば石炭のガス化の副産物として製造することができる。したがって、本発明の任意の態様による微生物は、廃棄物である物質を価値ある資源に転化させることができる。
【0043】
別の例では、合成ガスは、広く入手可能で低コストの農業原料のガス化の副産物であってよい。
【0044】
ほぼすべての植生がこの目的に使用できるため、合成ガスに転化できる原料の例は数多くある。特に、原料は、ミスカンサスなどの多年生草、トウモロコシ残渣、おがくずなどの加工廃棄物などからなる群から選択される。
【0045】
総じて、合成ガスは、乾燥バイオマスのガス化装置において、主に熱分解、部分酸化および水蒸気改質によって得ることができ、合成ガスの主要生成物は、CO、H2およびCO2である。シンガスは、CO2の電気分解の生成物であってもよい。当業者には、CO2を電気分解して所望量のCOを含むシンガスを製造するのに適した条件がわかるであろう。
【0046】
通常、ガス化プロセスから得られた合成ガスの一部は、生成物収率を最適化し、タールの形成を避けるために、最初に処理される。合成ガス中の望ましくないタールおよびCOのクラッキングは、石灰および/またはドロマイトを用いて行うことができる。
【0047】
本発明の方法の全体的な効率、エタノールおよび/もしくはアセテートの生産性ならびに/または全体的な炭素捕捉は、連続ガス流中のCO2、COおよびH2の化学量論に依存する場合がある。適用される連続ガス流は、CO2およびH2の組成であってよい。特に、連続ガス流において、CO2の濃度範囲は、約10~50重量%、特に3重量%であってよく、H2は、44重量%~84重量%、特に64重量%~66.04重量%であろう。別の例では、連続ガス流は、N2のような不活性ガスをも含むことができ、N2濃度は、最大で50重量%である。
【0048】
より詳細には、COおよび/またはCO2を含む炭素供給源は、連続ガス流中でアセトジェン微生物と接触する。さらにより詳細には、連続ガス流は、合成ガスを含む。これらのガスは、例えば、水性培地中に開口するノズル、フリット、水性培地中にガスを供給するパイプ内の膜などを使用して供給することができる。
【0049】
当業者には、当該間隔で流れの組成および流量を監視する必要がある場合があることがわかるであろう。流れの組成の制御は、目的のまたは望ましい組成を達成すべく成分流の割合を変化させることによって達成することができる。混合流れの組成および流量は、当該技術分野で知られている任意の手段によって監視することができる。一例では、系は、少なくとも2つの流れの流量および組成を連続的に監視し、それらを組み合わせて、最適な組成の連続ガス流で単一の混合基質流が生成されるように適合され、最適化された基質流を発酵槽に通過させる手段を有する。
【0050】
本発明の任意の態様によれば、還元剤、例えば水素を炭素供給源とともに供給することができる。特に、この水素は、COおよび/またはCO2が供給および/または使用される際に供給することができる。一例では、水素ガスは、本発明の任意の態様により存在する合成ガスの一部である。別の例では、合成ガス中の水素ガスが本発明の方法にとって不十分である場合、追加の水素ガスを供給することができる。
【0051】
本明細書で使用される「アセトジェン微生物」という用語は、ウッドリュンガル経路(Wood-Ljungdahl pathway)を実施することができ、したがってCO、CO2および/または水素を低級アルカン酸、例えばアセテートに転化することができる微生物を指す。このような微生物には、野生型ではウッドリュンガル経路を持たないが、遺伝子組換えの結果この形質を獲得した微生物も含まれる。このような微生物としては、大腸菌細胞が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの微生物は、カルボキシド栄養細菌としても知られ得る。現在、21の異なる属のアセトジェン細菌が当該技術分野で知られており(Drake et al., 2006)、これらにはクロストリジウムも含まれ得る(Drake & Kusel, 2005)。これらの細菌は、水素をエネルギー源として、二酸化炭素や一酸化炭素を炭素供給源として使用することができる(Wood, 1991)。さらに、アルコール、アルデヒド、カルボン酸および多数のヘキソースも炭素供給源として利用することができる(Drake et al., 2004)。アセテートの生成につながる還元経路は、アセチル-CoAまたはウッドリュンガル経路と呼ばれる。
【0052】
特に、アセトジェン微生物は、アセトアナエロビウム・ノテラ(Acetoanaerobium notera)(ATCC 35199)、アセトネマ・ロンガム(Acetonema longum)(DSM 6540)、アセトバクテリウム・カルビノリクム(Acetobacterium carbinolicum)(DSM 2925)、アセトバクテリウム・マリクム(Acetobacterium malicum)(DSM 4132)、アセトバクテリウム種第446番(Acetobacterium species no. 446)(Morinaga et al., 1990, J. Biotechnol., Vol. 14, p. 187-194)、アセトバクテリウム・ウィリンガエ(Acetobacterium wieringae)(DSM 1911)、アセトバクテリウム・ウッディイ(Acetobacterium woodii)(DSM 1030)、アルカリバクルム・バッキ(Alkalibaculum bacchi)(DSM 22112)、アルカエオグロブス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)(DSM 4304)、ブラウティア・プロダクタ(Blautia producta)(DSM 2950、旧ルミノコッカス・プロダクタス(Ruminococcus productus)、旧ペプトストレプトコッカス・プロダクタス(Peptostreptococcus productus))、ブチリバクテリウム・メチロトロフィクム(Butyribacterium methylotrophicum)(DSM 3468)、クロストリジウム・アセチクム(Clostridium aceticum)(DSM 1496)、クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)(DSM 10061、DSM 19630およびDSM 23693)、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)(DSM 15243)、クロストリジウム・コスカチイ(Clostridium coskatii)(ATCC no. PTA-10522)、クロストリジウム・ドラケイ(Clostridium drakei)(ATCC BA-623)、クロストリジウム・フォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)(DSM 92)、クロストリジウム・グリコリカム(Clostridium glycolicum)(DSM 1288)、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)(DSM 13528)、クロストリジウム・リュングダリイC-01(Clostridium ljungdahlii C-01)(ATCC 55988)、クロストリジウム・リュングダリイERI-2(Clostridium ljungdahlii ERI-2)(ATCC 55380)、クロストリジウム・リュングダリイO-52(Clostridium ljungdahlii O-52)(ATCC 55989)、クロストリジウム・マヨンベイ(Clostridium mayombei)(DSM 6539)、クロストリジウム・メトキシベンゾボランス(Clostridium methoxybenzovorans)(DSM 12182)、クロストリジウム・ラグスダレイ(Clostridium ragsdalei)(DSM 15248)、クロストリジウム・スカトロゲネス(Clostridium scatologenes)(DSM 757)、クロストリジウム種ATCC 29797(Clostridium species ATCC 29797)(Schmidt et al., 1986, Chem. Eng. Commun., Vol. 45, p. 61-73)、デスルホトマクルム・クズネツォビイ(Desulfotomaculum kuznetsovii)(DSM 6115)、デスルホトマクルム・サーモベゾイクム亜種サーモシントロフィカム(Desulfotomaculum thermobezoicum subsp. thermosyntrophicum)(DSM 14055)、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)(DSM 20543)、メタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans C2A)(DSM 2834)、ムーレラ種HUC22-1(Moorella sp. HUC22-1)(Sakai et al., 2004, Biotechnol. Let., Vol. 29, p. 1607-1612)、ムーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)(DSM 521、旧クロストリジウム・サーモアセティカム(Clostridium thermoaceticum))、ムーレラ・サーモオートトロフィカ(Moorella thermoautotrophica)(DSM 1974)、オキソバクター・フェニギイ(Oxobacter pfennigii)(DSM 322)、スポロムサ・アエリボランス(Sporomusa aerivorans)(DSM 13326)、スポロムサ・オバタ(Sporomusa ovata)(DSM 2662)、スポロムサ・シルバセティカ(Sporomusa silvacetica)(DSM 10669)、スポロムサ・スフェロイデス(Sporomusa sphaeroides)(DSM 2875)、スポロムサ・テルミチダ(Sporomusa termitida)(DSM 4440)およびサーモアナエロバクター・キブイ(Thermoanaerobacter kivui)(DSM 2030、旧アセトゲニウム・キブイ(Acetogenium kivui))からなる群から選択することができる。
【0053】
より好ましくは、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)のATCC BAA-624菌株が使用される。さらにより好ましくは、例えば米国特許出願公開第2007/0275447号明細書および米国特許出願公開第2008/0057554号明細書に記載されているクロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)の「P7」および「P11」と標識された菌株が使用される。
【0054】
別の特に好適な細菌は、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)である。特に、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)PETC、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)ERI2、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)COLおよびクロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)O-52からなる群から選択される菌株を、対応するC2中間体を経由した合成ガスからヘキサン酸への転化に使用することができる。これらの菌株は、例えば国際公開第98/00558号、国際公開第00/68407号、ATCC 49587、ATCC 55988およびATCC 55989に記載されている。
【0055】
好ましくは、ヘキサン酸の製造は、合成ガス由来のエタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩から出発し、炭素鎖延長が可能な微生物と組み合わせたアセトジェン細菌の使用を伴う。例えば、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)を、クロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)と同時に使用してもよい。別の例では、単一のアセトジェン細胞が、双方の生物の活性を有する場合がある。例えば、アセトジェン細菌は、ウッドリュンガル経路と炭素鎖延長経路との双方を実施することができるC.カルボキシジボランス(C.carboxidivorans)であってよい。
【0056】
好ましくは、本発明による方法のステップ(a)で提供される低級アルカン酸またはそのいずれかの塩は、酢酸およびブタン酸からなる群から選択される。
【0057】
好ましくは、本発明による方法のステップ(a)で提供されるエタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩は、アセテート、プロパノエート、ブタノエート(ブチレート)およびペンタノエートからなる群から選択される少なくとも1つの他の炭素供給源と組み合わせたエタノールである。より好ましくは、本発明による方法のステップ(a)において提供されるエタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩は、エタノールおよびアセテートである。また好ましくは、本発明による方法のステップ(a)において提供されるエタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩は、エタノールと酪酸との組み合わせである。しかし、本発明による方法のステップ(a)において提供されるエタノールおよび/または低級アルカン酸またはそのいずれかの塩として、エタノールまたはアセテートを単独で有利に使用することも可能である。
【0058】
ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを製造するために炭素鎖延長を実施することができる、本発明による方法のステップ(a)における微生物は、Jeon et al. Biotechnol Biofuels (2016) 9: 129に記載されているように、炭素鎖延長が可能であり得る任意の生物であり得る。本発明のステップ(a)に存在する微生物には、野生型では炭素鎖延長が不可能であるが、遺伝子組換えの結果この形質を獲得した微生物も含まれ得る。好ましくは、(a)における微生物は、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)およびクロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)からなる群から選択され、クロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)が最も好ましい。
【0059】
ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを製造するために炭素鎖延長を実施することができる、本発明による方法のステップ(a)における微生物は、細菌を培養するための当該技術分野で一般的に知られている任意の培地、基質、条件およびプロセスを用いて培養することができる。これにより、ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを、バイオテクノロジーを用いた方法で製造することができる。ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルの製造に使用される微生物に応じて、適切な増殖培地、pH、温度、撹拌速度、接種レベルおよび/または好気性、微好気性もしくは嫌気性の条件が変化する。当業者には、本発明による方法のステップ(a)を実施するのに必要な他の条件がわかるであろう。特に、容器(例えば発酵槽)内での本発明による方法のステップ(a)の間の条件は、使用する微生物に応じて変更することができる。微生物の最適な機能化に適するように条件を変更することは、当業者の知識の範囲内である。
【0060】
本発明による方法のステップ(a)は、好ましくはpHが5~8、より好ましくは5.5~8、最も好ましくは5.5~7の水性培地中で実施される。本発明による方法のステップ(a)における圧力は、好ましくは1~10バールである。微生物は、本発明による方法のステップ(a)において、20℃~80℃の範囲の温度で接触させることができる。好ましくは、微生物は、35℃~約42℃の範囲の温度で接触される。
【0061】
好ましくは、微生物の増殖ならびにヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルの製造のために、水性培地は、微生物の増殖あるいはヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルの製造の促進に適した任意の栄養素、成分および/または補助物質を含む。特に、水性培地は、以下:炭素供給源、窒素供給源、例えばアンモニウム塩、酵母抽出物またはペプトン;無機物質;塩;補因子;緩衝剤;ビタミン;ならびに細菌の増殖を促進し得る任意の他の成分および/または抽出物のうちの少なくとも1つを含み得る。使用する培地は、特定の菌株の要求に適したものでなければならない。様々な微生物に対する培地の説明が、例えば”Manual of Methods for General Bacteriology”に記載されており、例えば、大腸菌の場合はLB培地、C.リュングダリイ(C.ljungdahlii)の場合はATCC1754培地を使用することができる。本発明による方法のステップ(a)の間の微生物は、所望の生成物を製造するのに十分な時間にわたって炭素供給源とともにインキュベートされる。例えば、少なくとも1、2、4、5、10または20時間である。
【0062】
本発明による方法のステップ(a)とステップ(b)との間に、ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを精製すると有利となる場合がある。この精製ステップは、好ましくは、(a)アルキルホスフィンオキシドおよびトリアルキルアミンから選択される少なくとも1つの抽出剤を用いたヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルの抽出を含み、より好ましくは、抽出剤は、少なくとも1つのアルキルホスフィンオキシドおよび任意に少なくとも12個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルカン、または少なくとも1つのトリアルキルアミンおよび少なくとも12個の炭素原子を含む少なくとも1つのアルカンを含む;抽出を含む精製ステップの最後に、水性培地から過剰の水を除去することができ、その結果、抽出されたヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを含む抽出剤が得られる。特に、ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルの抽出および除去を行う抽出を含む精製ステップの終了時に残るものは、ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルの製造に使用された細胞を有する発酵培地である場合があり、その場合、これらの細胞は、発酵培地とともに、ステップ(a)に再循環させることができる。
【0063】
本発明による方法のステップ(b)は、(b)(a)で得られたヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを、適切な反応条件下で少なくとも1つのケトン化触媒と接触させて、ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルを6-ウンデカノンに化学的にケトン化させるステップを含む。
【0064】
本発明による方法のステップ(b)では、任意の金属酸化物触媒またはその混合物を使用することができる。ケトン化により、ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルが反応して1つの6-ウンデカノンが得られ、その際、1つの水および1つの二酸化炭素が除去される。無水ヘキサン酸((CH3(CH2)4)COOCO(CH2)4CH3)が形成され得るヘキサン酸のケトン化に関与し得る機序は、少なくともWoo, Y., Ind. Eng. Chem. Res. 2017, 56: 872-880に開示されている。様々な金属酸化物触媒の存在下でのヘキサン酸のケトン化は、Wang, S. J. Phys. Chem. C 2017, 121, 18030-18046にも示されている。
【0065】
本発明による方法のステップ(b)において使用されるケトン化触媒は、好ましくは、ステップ(a)により生物学的に製造されたヘキサン酸から6-ウンデカノンを効率的に製造するための不均一系触媒である。特に、ケトン化触媒は、好ましくは、ヘテロポリ酸(H3PW12O40)触媒、酸化ニオブ(Nb2O5)触媒、酸化チタン(TiO2)触媒、酸化セリウム(CeO2)触媒、亜鉛-クロム(Zn-Cr)混合酸化物触媒、酸化マンガン(MnOx)触媒、酸化ランタン(La2O3)触媒、酸化マグネシウム(MgO)触媒、酸化鉄(FeO、FeO2、Fe2O3、Fe3O4、Fe4O5、Fe5O6、Fe5O7)、ケイ素-アルミニウム(SiyAlzO)混合酸化物触媒、酸化アルミニウム(Al2O3)触媒およびジルコニア(ZrO2)触媒からなる群から選択される任意の金属酸化物触媒またはその混合物である。MnOxの「x」は、1、2または4であってよい。SiyAlzOの「y」および「z」は、比z/yが0~1の任意の数となる任意の数を指すことができる。
【0066】
例示的なケトン化は、Pham T. N., ACS Catal. 2013, 3: 2456-2473に開示されているように、適切な不均一系水素化金属触媒および適切な反応条件を用いて実施される。開示されている条件は、6-ウンデカノンの効果的な収率のために使用される触媒に応じて変化し得る。さらに別の例では、ヘキサン酸を6-ウンデカノンにケトン化するために、Glinski, M. et al, Polish J. Chem. 2004, 78: 299-302に開示されている内容に基づいて、MnO2および/またはAl2O3触媒を使用することができる。さらなる一例では、米国特許第6,265,618号明細書の特に実施例3に開示されているように、ヘキサン酸を6-ウンデカノンにケトン化する際にNb2O5触媒を使用することができる。当業者であれば、単純な試行錯誤により、ヘキサン酸から6-ウンデカノンを製造するための適切な触媒および適切な条件を従来技術に基づいて特定することができるであろう。Orozco, L.M et al ChemSusChem, 2016, 9(17): 2430-2442およびOrozco, L.M et al Green Chemistry, 2017, 19(6): 1555-1569にも、本発明による方法のステップ(b)においてケトン化触媒として使用することができる他の触媒が開示されている。
【0067】
金属酸化物触媒またはその混合物は、好ましくは、ヘテロポリ酸(H3PW12O40)触媒、酸化チタン(TiO2)触媒、酸化セリウム(CeO2)触媒、亜鉛-クロム(Zn-Cr)混合酸化物触媒、酸化マンガン(MnO2)触媒、酸化ランタン(La2O3)触媒、酸化マグネシウム(MgO)触媒、酸化鉄(FeO、FeO2、Fe2O3、Fe3O4、Fe4O5、Fe5O6、Fe5O7)、ケイ素-アルミニウム(Si-Al)混合酸化物触媒およびジルコニア(ZrO2)触媒からなる群から選択される。好ましくは、ステップ(b)のケトン化触媒は、ジルコニアエアロゲル触媒である。これは、Woo, Y., Ind. Eng. Chem. Res. 2017, 56: 872-880に開示されているように、ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルのケトン化において使用することができる。Lee, Y. et al in Applied Catalysis A: General.2015,506: 288-293には、異なるケトン化触媒、ならびにヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルのケトン化におけるその有効性が開示されている。当業者であれば、Lee Y.らにより記載された方法を用いて、ヘキサン酸および/またはその塩および/またはそのエステルのケトン化に使用するのに適したケトン化触媒および/または条件を非常に容易に決定することができる。
【0068】
特に、ステップ(b)の好適な反応条件は、100℃~50℃、100℃~45℃、100℃~40℃、100℃~35℃、100℃~30℃、100℃~25℃、100℃~20℃、150℃~50℃、150℃~45℃、150℃~40℃、150℃~35℃、150℃~30℃、150℃~25℃、150℃~20℃、200℃~50℃、200℃~45℃、200℃~40℃、200℃~35℃、200℃~30℃、200℃~25℃、250℃~50℃、250℃~45℃、250℃~40℃、250℃~35℃、250℃~300℃などの反応温度を含む。
【0069】
好ましくは、本発明による方法の(b)は、150℃~350℃の温度で実施される。
【0070】
好ましくは、6MgO/SiO2触媒は、本発明による方法のステップ(b)におけるケトン化触媒であり、ステップ(b)は、150℃~350℃の温度、好ましくは200℃~350℃の温度で実施される。
【0071】
本発明による方法のステップ(c)は、ステップ(b)で得られた6-ウンデカノンを少なくとも1つの水素化金属触媒と接触させて、6-ウンデカノンを6-ウンデカノールに接触水素化させるステップを提供する。第二級アルコールである6-ウンデカノール(C11H24O)は、6-ウンデカノンの触媒的水素化の生成物であり、水素分子が炭素-酸素二重結合に付加され、最終的に最終生成物として6-ウンデカノールが得られる。
【0072】
本発明による方法における水素化金属触媒は、均一系触媒であっても不均一系触媒であってもよい。均一系金属触媒は、当該技術分野で知られている金属錯体であってよい。好ましくは、本発明による方法におけるステップ(c)の水素化金属触媒は、不均一系触媒である。固体触媒を使用する多相触媒反応を用いることのいくつかの利点には、触媒と生成物との分離が容易であること、回収が容易であること、触媒のリサイクルが容易であること、および操作条件が比較的穏やかであることが含まれる。また、不均一系触媒を使用することによる経済的および環境的インセンティブも明確である。好ましくは、本発明による方法におけるステップ(c)の水素化金属触媒は、ルテニウム(Ru)触媒、レニウム(Re)触媒、ニッケル(Ni)触媒、鉄(Fe)触媒、コバルト(Co)触媒、パラジウム(Pd)触媒および白金(Pt)触媒からなる群から選択される。本発明による方法におけるステップ(c)の水素化金属触媒は、好ましくは、ルテニウム(Ru)触媒、レニウム(Re)触媒、ニッケル(Ni)触媒、鉄(Fe)触媒、コバルト(Co)触媒および白金(Pt)触媒からなる群から選択される。より好ましくは、本発明による方法におけるステップ(c)の水素化金属触媒は、Ni触媒、Pd触媒およびPt触媒からなる群から選択される。一例では、本発明による方法におけるステップ(c)で使用される水素化金属触媒は、Alonso, F. Tetrahedron, 2008, 64: 1847-52に記載のニッケルナノ粒子である。別の例では、本発明による方法におけるステップ(c)の水素化金属触媒として、Gorgas, N., Organometallics, 2014, 33 (23): 6905-6914に開示された鉄(II)PNPピンサー錯体を使用することができる。さらに別の例では、Tariq Shah M., et al., ACS Applied Materials & Interfaces, 2015: 7(12), 6480-9に開示されたルテニウム(Ru)触媒、レニウム(Re)触媒、ニッケル(Ni)触媒、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)触媒または白金(Pt)触媒のマグネタイトナノ粒子を、本発明による方法におけるステップ(c)の不均一系金属触媒として使用することができる。さらに別の例では、本発明による方法におけるステップ(c)の均一系水素化金属触媒として、Chen, J-X., Tetrahedron, 2000, 56: 2153-2166に開示された銅-ホスフィン錯体が使用される。さらなる一例では、不均一系Pt触媒、特にJournal of Molecular Catalysis A: Chemical, 2014, 388-389: 116-122に開示されたPt/Al2O3触媒を、本発明による方法におけるステップ(c)において使用することができる。ChemSusChem, 2017: 10(11), 2527-2533にも、6-ウンデカノンから6-ウンデカノールへの水素化に、酸触媒と組み合わせてまたは酸触媒なしで使用することのできる、Pt/C、Ru/CおよびPd/Cのような様々な不均一系触媒が開示されている。上記に基づいて、当業者であれば、6-ウンデカノンから6-ウンデカノールを得るために、本発明による方法におけるステップ(c)で使用すべき適切な水素化触媒を決定することができる。当業者であれば、6-ウンデカノンの水素化から6-ウンデカノールを効率的に製造するのに適切な水素化金属触媒を決定し、それに応じて条件を変化させることが容易にできるであろう。
【0073】
本発明による方法のステップ(d)では、少なくとも1つのアシル基供与体による6-ウンデカノールのエステル化を行う。
【0074】
任意の種類のアシル基供与体を、群A)および群B)のアシル基供与体に使用することができ;これらは例えば、カルボン酸自体、その無水物、またはカルボン酸エステル、例えばメチル、エチルエステルおよび/またはグリセリンエステルであり得る。総じて、本発明による方法におけるステップ(d)では、好ましくは本発明による組成物に含まれる6-ウンデカノールエステルに含まれるアシル基を供与する群A)および群B)に使用されるアシル基供与体が好ましい。
【0075】
好ましくは、本発明によれば、群A)のアシル基供与体は、トリグリセリド、特に天然油脂から選択され、より好ましくは、ココナッツ脂肪、パーム核油、オリーブ油、パーム油、アルガン油、ヒマシ油、アマニ油、ババス油、菜種油、藻類油、ゴマ油、大豆油、アボカド油、ホホバ油、サフラワー油、アーモンド油、綿実油、シアバター、ヒマワリ油、クパスバターおよび多価不飽和脂肪酸(PUFAS)の割合が高い油を含む、好ましくはそれらからなる群から選択される。同様に、上記の鎖長分布および修飾を有するソルビタンエステル、モノグリセリドおよびジグリセリドを優先的に使用することも可能である。
【0076】
本発明による方法のステップ(d)では、エステル化を、古典的なエステル化法によって実施することができる。エステル化は、無触媒で、酵素による触媒により、酸触媒により、または塩基触媒により実施することができる。本発明による方法のステップ(d)では、エステル化は、酵素触媒作用によるエステル化であってよく、これは、好ましいエステル化の種類である。これは、例えば、少なくとも1つのリパーゼを用いて実施することができる。好ましくは、本発明による方法におけるステップ(d)の酵素触媒作用によるエステル化で使用されるリパーゼは、真菌部門の生物から単離可能であるもの、および真菌部門の生物から単離可能であるものと少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、98%または99%のアミノ酸レベルの相同性を有するリパーゼである。参照配列との比較により、アミノ酸レベルの相同性を有する酵素は、好ましくは、ラウリン酸プロピル単位で少なくとも50%、特に少なくとも90%の酵素活性を有する。カルボン酸エステルヒドロラーゼのラウリン酸プロピル単位での活性の測定値は、所与の酵素に対する至適温度で測定され、ここで、「至適温度」とは、酵素が最も高い活性を有する温度を意味すると理解される。例えば、カンジダ・アンタルクティカ(Candida antarctica)のアクセッション番号P41365を有するリパーゼAおよびBの場合、至適温度は60℃である。
【0077】
本発明の文脈における「アミノ酸レベルの相同性」とは、ここで、また以下で、既知の方法を用いて決定可能である「アミノ酸の同一性」を意味するものと理解される。総じて、特定の要件を考慮したアルゴリズムを有する特別なコンピュータプログラムが使用される。同一性を決定するための好ましい方法では、最初に、比較される配列間の最大のアラインメントを生成する。同一性を決定するためのコンピュータプログラムとしては、
- GAP(Deveroy, J. et al., Nucleic Acid Research 12 (1984), page 387, Genetics Computer Group University of Wisconsin, Medicine (WI)および
- BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschul, S. et al., Journal of Molecular Biology 215 (1990), pages 403-410
のGCGプログラムパッケージが挙げられるが、これらに限定されない。BLASTプログラムは、米国国立生物工学情報センター(National Center For Biotechnology Information)(NCBI)および他の供給源(BLAST Handbook, Altschul S. et al., NCBI NLM NIH Bethesda ND 22894; Altschul S. et al.,前出)から入手可能である。
【0078】
当業者は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の類似性または同一性の計算のために種々のコンピュータプログラムが利用可能であることを認識している。例えば、2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージは、例えば、NeedlemanおよびWunschによって開発されたアルゴリズム(J. Mol. Biol. (48): 444-453 (1970))によって開発されたアルゴリズムによって決定することができ、このアルゴリズムは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに統合されており(http://www.gcg.comにて入手可能)、Blossom 62行列またはPAM250行列のいずれか、16、14、12、10、8、6または4のギャップ重み、および1、2、3、4、5または6の長さ重みが使用される。当業者であれば、異なるパラメータを使用することでわずかに異なる結果が得られるが、全体として2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージが大きく異なることはないことを認識するであろう。通常、Blossom 62行列は、デフォルト設定(ギャップ重み:12、長さ重み:1)で使用される。
【0079】
本発明の文脈では、上記のアルゴリズムによる60%の同一性は、60%の相同性を意味する。それ以上の同一性についても同様である。
【0080】
本発明による方法におけるステップ(d)の酵素触媒作用によるエステル化において特に優先して使用されるリパーゼは、アクセッション番号O59952のサーモマイセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)由来のリパーゼ、アクセッション番号P41365のカンジダ・アンタルクティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼAおよびB、ならびにアクセッション番号P19515のムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)由来のリパーゼ、アクセッション番号O59952のフミコラ(Humicola)種由来のリパーゼ、アクセッション番号S32492のリゾムーコル・ジャバニカス(Rhizomucor javanicus)由来のリパーゼ、アクセッション番号P61872のリゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)由来のリパーゼ、アクセッション番号P20261、P32946、P32947、P3294およびP32949のカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)由来のリパーゼ、アクセッション番号P61871のリゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)由来のリパーゼ、アクセッション番号P25234のペニシリウム・カメンベルティ(Penicillium camemberti)由来のリパーゼ、アクセッション番号ABG73613、ABG73614およびABG37906のアスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)由来のリパーゼ、ならびにアクセッション番号P61869のペニシリウム・シクロピウム(Penicillium cyclopium)由来のリパーゼ、ならびにそのそれぞれの少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、98%または99%のアミノ酸レベルの相同体の群から選択される酵素である。相同性に関しては、上記の定義が参照される。
【0081】
本発明による方法におけるステップ(d)の酵素触媒作用によるエステル化において同様に使用される市販の例およびカルボン酸エステル加水分解物は、Lipozyme TL IM、Novozym 435、Lipozyme IM 20、Lipase SP382、Lipase SP525、Lipase SP523、(いずれもNovozymes A/S(デンマーク、バウスベア)社製の市販品)、Chirazyme L2、Chirazyme L5、Chirazyme L8、Chirazyme L9(いずれもRoche Molecular Biochemicals(ドイツ、マンハイム)社製の市販品)、Purolite社製CALB Immo Plus(商標)およびLipase M “Amano”、Lipase F-AP 15 “Amano”、Lipase AY “Amano”、Lipase N “Amano”、Lipase R “Amano”、Lipase A “Amano”、Lipase D “Amano”、Lipase G “Amano”(いずれも天野エンザイム(株)(日本)社製の市販品)である。
【0082】
本発明による方法におけるステップ(d)の酵素触媒作用によるエステル化は、好ましくは、20℃~160℃、好ましくは25℃~130℃、特に30℃~90℃の範囲の反応温度で実施される。
【0083】
本発明による方法におけるステップ(d)の酵素触媒作用によるエステル化は、好ましくは、1バール未満、好ましくは0.5バール未満、より好ましくは0.05バール未満の圧力で実施される。
【0084】
代替的な好ましい一実施形態では、本発明による方法におけるステップ(d)の酵素触媒作用によるエステル化は、1バールを超える圧力、好ましくは2バール~10バールの範囲内の圧力で実施される。これに関連して、反応混合物に不活性ガスが供給されることが好ましく;これらは、好ましくは、窒素およびアルゴンを含む、好ましくはそれらからなる群から選択される。
【0085】
本発明による方法のステップ(d)の酸触媒によるエステル化は、例えば、ブレンステッド酸またはルイス酸を用いて行うことができる。例えば、塩酸、スルホン酸(例えばメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸)、硫酸、リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、スズ(II)塩、例えば酸化スズ、亜鉛塩、例えば酸化亜鉛もしくは亜鉛アセチルアセトナートまたはジルコニウム塩が挙げられる。また、スルホン化ポリスチレンなどのポリマー/樹脂系触媒や担持触媒を使用することもできる。上記の酸を併用することもできる。本発明による方法のステップ(d)の塩基触媒によるエステル化は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩、例えばそれぞれの水酸化物、酸化物、リン酸塩または炭酸塩を用いて実施することができる。さらに、アミンまたはアルコールもしくは有機酸のアルカリ金属塩を塩基として使用することができる。上記の塩基を併用することもできる。30~260℃、好ましくは100~200℃の温度が、本発明による方法におけるステップ(d)の酸または塩基触媒によるエステル化において典型的に使用される。水の凝縮を支援するために、真空および/または窒素もしくはアルゴンのような不活性ガスの流れを適用することもできる。
【0086】
本発明はさらに、ウンデカン-6-オールと以下:
A)6~32個、好ましくは6~22個、より好ましくは8~22個の炭素原子を有するモノカルボン酸、および
B)2~44個、好ましくは3~38個、より好ましくは4~18個の炭素原子を有する多官能性カルボン酸、好ましくはトリカルボン酸およびジカルボン酸、より好ましくは2~18個、好ましくは3~13個、より好ましくは4~11個の炭素原子を有するジカルボン酸
から選択される1つとのエステル化により得られる6-ウンデカノールエステル(本発明による水性組成物に含まれる6-ウンデカノールエステルと同一)
または本発明による方法によって得られる6-ウンデカノールエステル
から選択される少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルの、化粧品配合物を製造するための使用を提供する。
【0087】
本発明はさらに、皮膚の乾燥を回避するための、本発明による水性組成物中に含まれる、または本発明による方法によって得られる少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルの使用を提供する。
【0088】
本発明はさらに、化粧品配合物における有効成分および紫外線保護フィルター、好ましくは紫外線保護フィルター、より好ましくは有機紫外線保護フィルターの可溶化のための、本発明による水性組成物中に含まれる、または本発明による方法によって得られる少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルの使用を提供する。
【0089】
本発明はさらに、化粧品配合物の良好でべたつかない皮膚感触を提供するための、本発明による水性組成物中に含まれる、または本発明による方法によって得られる少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルの使用を提供する。
【0090】
本発明はさらに、皮膚または毛髪上で分散する化粧品配合物の能力を低減するための、本発明による水性組成物中に含まれる、または本発明による方法によって得られる少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルの使用を提供する。これは、アイケアまたはフェイスケア配合物における使用に有益である。
【0091】
本発明はさらに、好ましくはpH5未満のpH値および/または15℃未満の温度でエマルションの形態の化粧品配合物を安定化させるための、本発明による水性組成物中に含まれる、または本発明による方法によって得られる少なくとも1つの6-ウンデカノールエステルの使用を提供する。
【0092】
本発明による使用は、化粧品用途である。
【0093】
以下に提示する実施例は、本発明を例示的に説明するものであり、本発明が実施例において特定された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本発明の適用範囲は、本明細書および特許請求の範囲の全体から明らかである。
【0094】
以下の図は、実施例の一部である:
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図1】凍結/融解を繰り返した後のエマルションを示す図である。
【0096】
実施例:
実施例1:エタノールおよびアセテートからの6-ドデカノールの合成
クロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)の培養およびヘキサン酸の抽出
クロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)細菌を培養し、エタノールおよびアセテートからヘキサン酸へのバイオトランスフォーメーションを行った。製造されたヘキサン酸のイン・サイチュ抽出のために、テトラデカンとトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)との混合物を培養に連続的に通した。いずれの培養ステップも、ブチルゴム栓により気密閉鎖可能な耐圧ガラス瓶内で嫌気条件下に行った。
【0097】
クロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)の前培養を、1000mL耐圧ガラス瓶中で、250mLのEvoDM45培地(pH5.5、0.004g/Lの酢酸Mg、0.164g/Lの酢酸Na、0.016g/Lの酢酸Ca、0.25g/Lの酢酸K、0.107mL/LのH3PO4(8.5%)、2.92g/Lの酢酸NH4、0.35mg/Lの酢酸Co、1.245mg/Lの酢酸Ni、20μg/Lのd-ビオチン、20μg/Lの葉酸、10μg/Lの塩酸ピリドキシン、50μg/Lの塩酸チアミン、50μg/Lのリボフラビン、50μg/Lのニコチン酸、50μg/Lのパントテン酸Ca、50μg/LのビタミンB12、50μg/Lのp-アミノ安息香酸塩、50μg/Lのリポ酸、0.702mg/Lの(NH4)2Fe(SO4)2×4H2O、1ml/Lの酢酸KS(93.5mM)、20mL/Lのエタノール、0.37g/Lの酢酸)内で、37℃、150rpm、換気速度1L/hで、25%のCO2と75%のN2との混合物を用いて開放されたウォーターバスシェーカーで処理した。ガスは、反応器のヘッドスペースに排出した。pHを、2.5MのNH3溶液の自動添加により5.5に保持した。新鮮培地を2.0d-1の希釈率で連続的に反応器に供給し、発酵ブロスを、孔径0.2μmのKrosFlo(登録商標)中空糸ポリエーテルスルホン膜(Spectrumlabs、米国、ランチョ・ドミンゲス)に通して反応器から連続的に除去して細胞を反応器に保持し、OD600nmを約1.5に保持した。
【0098】
主培養のために、150mlのEvoDM39培地(pH5.8、0.429g/Lの酢酸Mg、0.164g/Lの酢酸Na、0.016g/Lの酢酸Ca、2.454g/Lの酢酸K、0.107mL/LのH3PO4(8.5%)、1.01 mL/Lの酢酸、0.35mg/Lの酢酸Co、1.245mg/Lの酢酸Ni、20μg/Lのd-ビオチン、20μg/Lの葉酸、10μg/Lの塩酸ピリドキシン、50μg/Lの塩酸チアミン、50μg/Lのリボフラビン、50μg/Lのニコチン酸、50μg/Lのパントテン酸Ca、50μg/LのビタミンB12、50μg/Lのp-アミノ安息香酸塩、50μg/Lのリポ酸、0.702mg/Lの(NH4)2Fe(SO4)2×4H2O、1ml/Lの酢酸KS(93.5mM)、20mL/Lのエタノール、8.8 mLのNH3溶液(2.5モル/L)、27.75ml/Lの酢酸(144g/L))を1000mlの瓶に植菌し、前培養で得られた100mlの細胞ブロスを加えて、OD600nmを0.71とした。
【0099】
培養を、37℃、150rpm、換気速度1L/hで、25%のCO2と75%のN2との混合物を用いて、開放されたウォーターバスシェーカー内で65時間行った。ガスは、反応器のヘッドスペースに排出した。pHを、2.5MのNH3溶液の自動添加により5.8に保持した。新鮮な培地を0.5d-1の希釈率で反応器に連続的に供給し、OD600nmを約0.5に保持して発酵ブロスを反応器から連続的に除去した。発酵ブロスに、テトラデカン中の6%(w/w)のTOPOの混合物120gを追加で添加した。その後、この有機混合物を反応器に連続的に供給し、有機相も1d-1の希釈率で反応器から連続的に除去した。培養中、水相と有機相との双方から5mLの試料を採取し、OD600nm、pHおよび生成物形成を調べた。生成物濃度の測定は、半定量的1H-NMR分光法によって行った。内部定量標準物質として、トリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム(T(M)SP)を使用した。水相での主培養中に、エタノール8.18g/L、アセテート3.20g/L、ブチレート1.81g/Lおよびヘキサノエート0.81g/Lの定常濃度に達した。OD600nmは、0.5で安定したままであった。有機相では、エタノール0.43g/kg、アセテート0.08g/kg、ブチレート1.13g/kgおよびヘキサノエート8.09g/kgの定常濃度に達した。実験後、細胞はさらなる培養に移されても生存していた。水性培地とテトラデカン中の6%TOPOとの系における基質および生成物の分配係数KDを、両相の濃度から算出した。
【0100】
【0101】
定常状態でのKDは、エタノールで0.05、酢酸で0.03、酪酸で0.62、およびヘキサン酸で9.99であった。
【0102】
ヘキサン酸から6-ウンデカノンへのケトン化
ケトン化を、加熱した連続式流動層型反応器で行った。まず、反応器にシリカ上の酸化マグネシウム(50重量%、14.00g)を装入し、アルゴン流下(54mL/min)で330℃にて1時間加熱した。温度を360℃まで上げた。その後、テトラデカン中のヘキサン酸の混合物(v/v:3/1)を、3.3mL/hの速度で反応器に連続的に供給した。ガス状流出流を、水と、ドライアイスおよびイソプロパノールの混合物とで冷却された2つの冷却トラップで収集した。収集したフラクションを秤量し、ガスクロマトグラフィー(GC)で組成を分析した。合計で370.65gのヘキサン酸を反応器に供給し、これは、最大理論収量271.70gの6-ウンデカノン、ならびに副産物としての28.75gの水および70.21gの二酸化炭素に相当する。得られた6-ウンデカノンの量は267.67gであり、水の量は28.32gであった。これは、全転化で99%の質量回収率に相当する。この高い製造性および選択性は、通常のGC測定によって確認され、微量のヘキサン酸のみが検出され、副生成物は検出されなかった。
【0103】
6-ウンデカノンから6-ウンデカノールへの水素化
6-ウンデカノンから6-ウンデカノールへの水素化反応を、300mlのオートクレーブ反応器(PARR Instrument Company)で行った。反応器をアルミニウムブロック内に設置し、反応器内に設置した熱電対で温度を制御した。典型的には、30mgの固体触媒、170.3mg、1.0mモルの基質を、オーブン乾燥したマグネチックスターラーを入れた4mlのガラスバイアルに加えた。溶媒として2.0mlの無水トルエンを使用し、バイアルにスクリューキャップを取り付け、隔壁にニードルを刺した。バイアルを反応器に入れた。反応器を10バールのH2で3回パージし、その後、圧力を20バールに上げた。反応器を、目的の温度である120℃まで20時間かけて加熱した。反応後、氷浴を用いて反応器を5℃まで冷却し、気相をゆっくりと放出させ、残った液体を固体触媒から慎重に分離し、内部標準物質(100μLのn-ヘキサデカン)を用いて別個に分析した。
【0104】
触媒3.0Co@γ-Al2O3は、99%のケトン転化率および98%のアルコール収率を示した。触媒調製法は、以下のとおりである:3重量%Co@γ-Al2O3、還元剤としてアスコルビン酸、キャッピング剤としてグルコースをH2O中で使用、800℃で2時間熱分解、Co塩は硝酸コバルト(II)六水和物。典型的な合成では、149mg、0.51mモルのCo(NO3)2。6H2Oを20mlの脱塩水に溶解させ、続いて265mg、3.0mモルのアスコルビン酸および92mg、1ミリモルのD-(+)-グルコースの水溶液を段階的に加えた。内容物を、90℃で2~3時間撹拌した。次に、1.0gのγ-Al2O3担体を加え、スラリーをR.T.で一晩撹拌した。余分な水を遠心分離で除去し、固形物をオーブンで120℃にて10時間乾燥させ、次いで、アルゴン雰囲気下に800℃で2時間熱分解させた。
【0105】
実施例2:ウンデカ-6-イルヘキサノエート
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、ヘキサン酸(98%以上(実施例1で得られた精製中間体)116.2g/モル、70.9g、0.61モル)との混合物を、0.17gのp-トルエンスルホン酸の触媒添加下に160℃に加熱し、撹拌した。得られた水を、酸価が20mgKOH/g未満に達するまで、真空中で窒素流下に連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、水で洗浄し、真空中で蒸留した。無色ないしわずかに黄色の油が得られた。鹸化価:207mgKOH/g純度(GC):>98%
【0106】
実施例3:ウンデカ-6-イルラウレート
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、ラウリン酸(99%以上(Sigma-Aldrich社製)200.3g/モル、116.2g、0.58モル)との混合物を、1.1gのp-トルエンスルホン酸の触媒添加下に150℃まで加熱し、撹拌した。得られた水を、酸価が20mgKOH/g未満に達するまで、真空中で窒素流下に連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、水で洗浄し、真空中で蒸留した。無色ないしわずかに黄色の油が得られた。鹸化価:158mgKOH/g純度(GC):>98%
【0107】
実施例4:ウンデカ-6-イルステアレート
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、ステアリン酸(92%以上、Palmac90-18(IOI社製)、酸価199mgKOH/g、284g/モル、156.2g、0.55モル)との混合物を、0.26gの酸化スズ(II)の触媒添加下に180℃に加熱し、撹拌した。得られた水を、酸価が20mgKOH/g未満に達するまで、真空中で窒素流下に連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、H2O2溶液で漂白し、水で洗浄した。乾燥後、わずかに黄色がかったワックスが得られた。酸価:<1mgKOH/g;鹸化価:129mgKOH/g純度(GC):>95%
【0108】
実施例5:ウンデカ-6-イルカプリレート/カプレート
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、カプリル酸/カプリン酸(Kortacid 0810(Oleon社製)、酸価360mgKOH/g、156g/モル、95.2g、0.61モル)との混合物を、0.2gのp-トルエンスルホン酸の触媒添加下に160℃で加熱し、撹拌した。得られた水を、酸価が20mgKOH/g未満に達するまで、真空中で窒素流下に連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、水で洗浄し、真空中で蒸留した。わずかに黄色がかった油が得られた。鹸化価:181mgKOH/g純度(GC):>97%
【0109】
実施例6:ウンデカ-6-イルココエート
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、蒸留ココナッツ脂肪酸(WilfarinDC-0818(Wilmar社製)、酸価270mgKOH/g、208g/モル、114.4g、0.55モル)との混合物を、0.43gの酸化スズ(II)の触媒添加下に160℃で加熱し、撹拌した。得られた水を、酸価が20mgKOH/g未満に達するまで、真空中で窒素流下に連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、H2O2溶液で漂白し、水で洗浄した。乾燥後、黄色がかった油が得られた。酸価:1mgKOH/g;鹸化価:156mgKOH/g純度(GC):>95%
【0110】
実施例7:ウンデカ-6-イル12-ヒドロキシステアレート
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、12-ヒドロキシステアリン酸(H.C.O. Fatty Acid(Jayant社製)、酸価182mgKOH/g、308g/モル、169.4g、0.55モル)との混合物を、0.27gの酸化スズ(II)の触媒添加下に180℃で加熱し、撹拌した。得られた水を、酸価が20mgKOH/g未満に達するまで、真空中で窒素流下に連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、H2O2溶液で漂白し、水で洗浄した。乾燥後、黄色がかったワックスが得られた。酸価:1mgKOH/g;鹸化価:122mgKOH/g純度(GC):>92%
【0111】
実施例8:ウンデカ-6-イルイソステアレート
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、イソステアリン酸(PRISORINE 3503(Croda社製)、酸価190mgKOH/g、295g/モル、162.3g、0.55モル)との混合物を、0.13gの酸化スズ(II)の触媒添加下に180℃で加熱し、撹拌した。得られた水を、酸価が20mgKOH/g未満に達するまで、真空中で窒素流下に連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、H2O2溶液で漂白し、水で洗浄した。乾燥後、黄色がかった油が得られた。酸価:2mgKOH/g;鹸化価:125mgKOH/g純度(GC):>90%
【0112】
実施例9:ウンデカ-6-イルオレエート
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、オレイン酸(Wilfarin OA 7075(Wilmar社製)、酸価200mgKOH/g、281g/モル、154.6g、0.55モル)との混合物を、0.25gの酸化スズ(II)の触媒添加下に180℃で加熱し、撹拌した。得られた水を、酸価が20mgKOH/g未満に達するまで、真空中で窒素流下に連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、H2O2溶液で漂白し、水で洗浄した。乾燥後、黄色い油が得られた。酸価:1mgKOH/g;鹸化価:128mgKOH/g純度(GC):>92%
【0113】
実施例10:ビス(ウンデカ-6-イル)マレート
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、D,L-リンゴ酸(98%以上(Sigma-Aldrich社製)、134.1g/モル、37.5g、0.28モル)との混合物を、0.14gのp-トルエンスルホン酸の触媒添加下に160℃で加熱し、撹拌した。得られた水を、酸価が30mgKOH/g未満に達するまで、真空中で窒素流下に連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、水で洗浄した。乾燥後、黄色がかった油が得られた。酸価:2mgKOH/g;鹸化価:255mgKOH/g純度(GC):>90%
【0114】
実施例11:ビス(ウンデカ-6-イル)スクシネート
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、コハク酸(99%以上(Sigma-Aldrich社製)、118.9g/モル、33.3g、0.28モル)との混合物を、0.13gのp-トルエンスルホン酸の触媒添加下に180℃で加熱し、撹拌した。得られた水を、酸価が30mgKOH/g未満に達するまで、真空中で窒素流下に連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、水で洗浄した。乾燥後、わずかに黄色がかったワックスが得られた。酸価:2mgKOH/g;鹸化価:262mgKOH/g純度(GC):>90%
【0115】
実施例12:ビス(ウンデカ-6-イル)セバケート
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、セバシン酸(99%以上(Sigma-Aldrich社製)、202.3g/モル、56.6g、0.28モル)との混合物を、0.8gのp-トルエンスルホン酸の触媒添加下に180℃で加熱し、撹拌した。得られた水を、酸価が30mgKOH/g未満に達するまで、真空中で窒素流下に連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、水で洗浄した。乾燥後、黄色がかったワックスが得られた。酸価:1mgKOH/g;鹸化価:223mgKOH/g純度(GC):>90%
【0116】
実施例13:フラン-2,5-ジカルボン酸ビス(ウンデカ-6-イル)エステル
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、ジメチルフラン-2,5-ジカルボキシレート(99%以上(Sigma-Aldrich社製)、184.1g/モル、53.4g、0.29モル)との混合物を、0.15gのp-トルエンスルホン酸の触媒添加下に150℃で加熱し、撹拌した。得られたメタノールを、酸価が約20mgKOH/g未満に達するまで真空中で連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、水で洗浄した。乾燥後、黄色がかった油が得られた。酸価:2mgKOH/g;鹸化価:260mgKOH/g純度(GC):>85%
【0117】
実施例14:トリス(ウンデカ-6-イル)シトレート
ウンデカン-6-オール(172.3g/モル、100.0g、0.58モル)と、クエン酸(99%以上(Sigma-Aldrich社製)、192.1g/モル、34.6g、0.18モル)との混合物を、0.13gのp-トルエンスルホン酸の触媒添加下に180℃で加熱し、撹拌した。得られた水を、酸価が約30mgKOH/gに達するまで、真空中で窒素流下に連続的に留去した。生成物を水酸化カリウム溶液で中和し、次いで、ろ過し、水で洗浄した。乾燥後、黄色がかったワックスが得られた。酸価:2mgKOH/g;鹸化価:260mgKOH/g純度(GC):>85%
【0118】
実施例15:適用試験
6-ウンデカノールエステルを含む水性組成物の有利な特性を示すために、以下のW/Oエマルションを一般的な方法で製造した。水相をゆっくりと添加し、油相に取り込ませた。その後、混合物を均質化させた。参照基質としてTEGOSOFT DC(ヤシ油脂肪酸デシル)を比較例で使用したが、これは本発明の範囲外である。
【0119】
凍結融融解結安定性を評価するために、以下のボディローション用配合物を、室温から-15℃まで、そして室温に戻る2回の凍結融解サイクルに供した。水性組成物の凍結安定性を、試料が再び室温に達した後の目視検査によって調べた。凍結安定性を説明するために、以下の用語を使用した:
【表1】
【0120】
化粧品用エマルションの官能性を、訓練を受けた官能パネルによって評価する。少なくとも5名が、評価試料の組成を知ることなく、配合物の官能プロファイルを評価する。大多数のパネリストが記述した特性を、以下の表に報告する;示された数字は、重量パーセンテージである。
【0121】
【0122】
図1では、実施例3を含む配合物Bを左側に、凍結融解サイクル後のヤシ油脂肪酸デシル含有配合物Aを右側に比較して示している。官能結果から、驚くべきことに、本発明による実施例を含む系が、高い吸収性および吸収から5分後の滑り性を示しつつ、参照試料と比較して低い分配能力を示すことが判明した。凍結安定性試験後、本発明による系は、不安定性の徴候を示さないのに対して、比較試料は、化粧品配合物としては許容できない強度の離水を示す。
【0123】
実施例16:本発明による6-ウンデカノールエステルを含むさらなる例示的な水性組成物
以下の実施例は、様々な化粧品配合物における6-ウンデカノールエステルの汎用性、および乳化剤、安定剤、防腐剤またはUV-フィルターや抗菌剤のような活性化合物といった、通常は配合が困難な様々な他の成分との適合性を実証するものである。本発明の適用は、示された配合物に限定されるものではない。実施例の製造は、一般的な標準法に従って行った。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【国際調査報告】