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特表2024-507200原料を回収するためのポリカーボネート含有材料の熱分解
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】原料を回収するためのポリカーボネート含有材料の熱分解
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/12 20060101AFI20240208BHJP
   C07C 37/055 20060101ALI20240208BHJP
   C07C 39/16 20060101ALI20240208BHJP
   C07C 4/22 20060101ALI20240208BHJP
   C07C 15/46 20060101ALI20240208BHJP
   C07C 39/04 20060101ALI20240208BHJP
   C08J 11/10 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C08J11/12
C07C37/055
C07C39/16
C07C4/22
C07C15/46
C07C39/04
C08J11/10 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549821
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2021087331
(87)【国際公開番号】W WO2022174963
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】21157529.5
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エイデン ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ベリングハウゼン ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ オーレル
(72)【発明者】
【氏名】スユッツ エリク
(72)【発明者】
【氏名】クラウゼ ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】ザイデル アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
【Fターム(参考)】
4F401AA11
4F401AA23
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA70
4F401CA75
4F401CA87
4F401CA90
4F401CB01
4F401CB10
4F401CB14
4F401DA01
4F401DA12
4F401EA70
4F401FA01Z
4F401FA06Z
4F401FA07Z
4H006AA02
4H006AA04
4H006AB46
4H006AC26
4H006AC42
4H006AC91
4H006BC10
4H006FC52
4H006FE13
4H006FG22
(57)【要約】
本発明は、原料を回収するための、ポリカーボネート含有材料を熱分解する方法に関する。この方法は、少なくとも以下の工程:(a)ポリカーボネート含有化合物とポリスチレン含有化合物との混合物を含む材料を少なくとも含む熱分解対象材料を反応器へと導入する工程と、(b)少なくとも工程(a)において反応器へと導入した熱分解対象材料を、300℃~700℃の温度で分解して、熱分解物としての気相に存在する生成物と、非気相に存在する熱分解残渣とを得る工程であって、(i)分解中、反応器中の酸素ガスの量が、反応器中に存在する気体の総体積に対して、2.0体積%以下であり、かつ、(ii)分解中、熱分解物を反応器から除去し、かつ、(iii)熱分解残渣を反応器から除去する、工程と、(c)除去した熱分解物を300℃未満の温度まで冷却して、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はこれらの混合物から選択される熱分解生成物を得る工程と、(d)任意で熱分解生成物を処理する工程とを含む。対応して設計された装置においてこの方法を行う場合、ポリカーボネート含有複合材料製造用原料、特に、ビスフェノールA及びスチレンをこれらの複合材料から回収することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の工程:
(a)ポリカーボネート含有化合物とポリスチレン含有化合物との混合物を含む材料を少なくとも含む熱分解対象材料を反応器へと導入する工程と、
(b)工程(a)において前記反応器へと導入した前記熱分解対象材料の少なくとも前記材料を、300℃~700℃の温度で分解して、熱分解物としての気相生成物と、非気相熱分解残渣とを得る工程であって、
(i)前記分解中、前記反応器中の酸素ガスの量が、前記反応器中に存在する気体の総体積に対して、2.0体積%以下であり、かつ、
(ii)前記分解中、前記熱分解物を前記反応器から排出し、かつ、
(iii)前記熱分解残渣を前記反応器から排出する、工程と、
(c)排出された前記熱分解物を300℃未満の温度まで冷却して、熱分解物凝縮物、熱分解物再昇華物、又はこれらの混合物から選択される熱分解生成物を得る工程と、
(d)任意で前記熱分解生成物を処理する工程と、
を含む熱分解プロセス。
【請求項2】
工程(b)における前記温度が、350℃~650℃、好ましくは400℃~650℃、特に好ましくは420℃~600℃、非常に特に好ましくは450℃~580℃であることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
導入した前記熱分解対象材料を300℃~700℃に温度制御し、この目標温度に到達したら、対応して温度制御された熱分解対象材料の、該熱分解対象材料から生じる前記熱分解残渣の排出時間までの滞留時間を1秒~2時間、好ましくは2分~60分とすることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記反応器からの前記熱分解物の前記排出を、前記反応器を通過する気体流によって又は吸引によって、及び好ましくは、工程(a)において前記反応器に導入する前記材料の導入時間と、得られた前記熱分解物の排出時間との間の時間としての前記熱分解物の前記滞留時間を、0.1秒~10秒、好ましくは0.5秒~5秒、より好ましくは0.5秒~2秒とすることによって確保することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記反応器からの前記熱分解物の前記排出を、前記反応器を通過する気体流によって確保し、前記反応器内での前記気体流の空塔速度としての流量を0.01m/秒~20m/秒の範囲とすることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
連続プロセス制御の文脈において、少なくとも工程(a)及び工程(b)を同時に行うことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
工程(b)における前記反応器中の酸素ガスの量が、いずれの場合も前記反応器中に存在する気体の総体積に対して、0.5体積%以下、好ましくは0.1体積%以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記材料を充填した前記反応器に、不活性ガス、特に、窒素、アルゴン、CO、NO、又はこれらの混合物を満たすことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ポリカーボネート含有化合物が、少なくとも10個の-O-C(=O)-O-(式中、はポリマー主鎖の価数を表す)の構造単位を含有する少なくとも1つの化合物であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ポリスチレン含有化合物が、少なくとも10個の式:
-CRPh-CH
(式中、はポリマー主鎖の繰り返し単位の価数を表し、Rは水素原子又はメチル基であり、Phは、C~Cアルキル基及びハロゲン原子(特に塩素)から選択される少なくとも1つの基で任意に置換したフェニル基である)の繰り返し単位を含有する少なくとも1つのポリマーであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ポリカーボネート含有化合物が、(i)少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくはビスフェノールAと、(ii)ホスゲン又はジフェニルカーボネートとを反応させることにより得られる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記熱分解対象材料、より詳細には前記材料が、或る総量で前記熱分解対象材料に導入されるリン含有有機化合物の割合が、前記熱分解対象材料の総重量に対して、0重量%~0.5重量%以下のリン、好ましくは0重量%~0.1重量%以下のリン、より好ましくは0重量%~0.05重量%以下のリン、特に好ましくは0重量%~0.01重量%以下のリンとなるように規定された総量でリン含有有機化合物を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記リン含有有機化合物中に存在する前記リンが+5の形式酸化状態を有することを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記リン含有有機化合物が、有機リン酸エステル、有機ホスホン酸エステル、有機ホスファゼン及びホスホン酸アミン、特に、有機リン酸エステル及び有機ホスホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項12又は13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記リン含有有機化合物が、少なくとも1つの一般式(IV)の化合物:
【化1】
(式中、
、R、R及びRは、各々独立して、任意でハロゲン化したC~Cアルキル、アルキル、好ましくはC~Cアルキル及び/又はハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素で任意に置換したC又はCシクロアルキル、アルキル、好ましくはC~Cアルキル及び/又はハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素で任意に置換したC~C20シクロアルキル、又はアルキル、好ましくはC~Cアルキル及び/又はハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素で任意に置換したC~C12アラルキルであり、
nは、各々独立して、0又は1、好ましくは1であり、
qは0~30の数であり、
Xは、OH置換されていてもよく、かつ、8個までのエーテル結合を有していてもよい、炭素数6~30の単環式若しくは多環式芳香族ラジカル又は炭素数2~30の直鎖状若しくは分岐状脂肪族ラジカルである)から選択されることを特徴とする、請求項12~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記材料を固体粒子の形態、特に、粒状混合物の形態で前記反応器へと導入することを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
工程(a)における前記熱分解対象材料が、前記材料に加えて、少なくとも1つのフィラーも含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記熱分解対象材料が、該熱分解対象材料の総重量に対する総量で、10.0重量%~80.0重量%、より好ましくは30.0重量%~70.0重量%の前記材料を含有することを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
熱分解対象材料を供給する少なくとも1つの計量装置と、少なくとも1つの熱分解用加熱可能反応器と、少なくとも1つの熱分解物捕集器とを備える、熱分解対象材料から熱分解物を生成する熱分解装置であって、
前記熱分解用加熱可能反応器が、該反応器での300℃~700℃の温度での温度制御に使用することができる少なくとも1つの加熱素子と、また少なくとも1つの熱分解対象材料用入口と少なくとも1つの別個の熱分解物用出口とを備え、
前記計量装置が前記熱分解用加熱可能反応器の前記熱分解対象材料用入口へと少なくとも1つの供給ラインを介して接続するように、前記計量装置と前記反応器とが互いに関係して配置及び構成されており、
好ましくは気体状の熱分解物を前記熱分解物用出口から排出し、排出された前記熱分解物を前記熱分解物捕集器へと導入することができるように、前記熱分解用加熱可能反応器と前記熱分解物捕集器とが互いに流体連通しており、
前記少なくとも1つの熱分解物捕集器が、該捕集器内で、前記反応器から排出された前記熱分解物の温度を300℃未満まで低下させて、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はこれらの混合物から選択される熱分解生成物を形成させるのに使用することができる、300℃未満の温度に温度制御された少なくとも1つの冷却装置と、冷却によって得られた前記熱分解生成物を収集及び排出する少なくとも1つの容器とを備え、
熱分解対象材料を供給する前記少なくとも1つの計量装置と、前記少なくとも1つの熱分解用加熱可能反応器と、前記少なくとも1つの熱分解物捕集器とが、同時に作動することができるように互いに関係して配置及び構成されることを特徴とする、熱分解装置。
【請求項20】
ポリカーボネート含有化合物及びポリスチレン含有化合物の同時熱分解によるポリカーボネート含有化合物の製造において使用可能な少なくとも2つのヒドロキシル基を有する有機化合物の回収と、それに伴うポリスチレン含有化合物の製造において使用されるスチレンの同時回収のための、請求項19に記載の熱分解装置の使用。
【請求項21】
いずれの場合も組成物の総重量に対して、
(i)25重量%~80重量%の総量での少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくはビスフェノールAと、
(ii)1重量%超の総量での厳密に1つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくはフェノールと、
(iii)1.5重量%超の総量での少なくとも1つのビニル置換基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくはスチレン又はα-メチルスチレンと、
を少なくとも含み、
ここで、(i)~(iii)から選択される重量割合の総量と、他の成分の重量部との合計が100重量%となるように、(i)~(iii)の重量部範囲内の重量割合を選択する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリカーボネート配合物、例えば、ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート複合樹脂等のポリカーボネート含有材料は、消費者向け商品の材料として使用されている。対応するポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート複合樹脂は、ポリカーボネートを他のポリマーと配合する、例えば、ポリカーボネートをアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)と配合することによって作製される。これらのポリカーボネート含有材料は、耐衝撃性、流動性、靭性及び難燃性等の優れた性質を有するため、電子機器及び自動車等の数多くの用途において使用されている。
【0002】
上述のポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート複合樹脂は、多くの商品の要素として市場に出た後、商品の耐用年数の終わりに有用な材料として廃棄物中に蓄積する。古くなった商品は大部分が廃棄処分に送られ、新たな商品に置き換わる。これにより発生するプラスチック廃棄物の総量は年々増加している。この廃棄物の総量の約60%が焼却又は埋め立てによって処分されている。
【0003】
プラスチック廃棄物を焼却すると、大気中にCOが排出され、地球温暖化につながる。プラスチック廃棄物は密度が低いため、埋め立て地において大きな体積を占め、そこから川及び海における全体的な汚染につながる可能性もある。そのため、廃棄物の問題を解決することができると同時に化石資源の保護も可能とする効率的なリサイクル方法を開発することが重要である。
【0004】
上述のポリカーボネート(複合)樹脂がポリマー市場を占めるのはおよそ8%であるため、これまでポリカーボネートのリサイクルは開発の焦点になって来なかった。しかしながら、将来的には、プラスチック市場は継続的に成長するため、CO排出量の削減及び化石エネルギー源の保護を両立するために、全ての種類のポリマーに対するリサイクル技術を開発することが重要である。
【0005】
プラスチック廃棄物をリサイクルするプロセスは、3つのカテゴリーに大別することができる。
(1)機械的リサイクル:ここでは、プラスチック廃棄物をそのまま再度溶融させ、次いで再利用することができる。これは、例えば、非常に純粋なPC廃棄物に対して可能である。
(2)化学的及び熱化学的リサイクル:ここでは、有用な化学原料を得るために、プラスチック廃棄物をモノマーへと解重合する又はより小さな分子へと分解する。
(3)熱的リサイクル:ここでは、プラスチック廃棄物をオフガス及び熱エネルギーに変換する。
【0006】
熱化学的リサイクルから得られた化学原料を使用して、新たな合成樹脂又は他の化学生成物を合成することができる。
【0007】
熱化学的リサイクルは熱分解と呼ばれる。大抵の場合、熱分解は、包装廃棄物に対して使用され、ドロップイン溶液の形態で、粉砕機(crackers)を用いる既知の精製プロセスにおいて或る種のリサイクルナフサとして使用される熱分解油が得られる。この熱分解プロセスにおけるポリカーボネートの熱分解については、ほとんど知られていない。
【0008】
熱分解プロセスにおいて触媒又は添加剤を使用すると、操作温度を低下させ、反応時間を短縮し、分解効率を高め、生成物分布を制限することができ、プロセスがより効率的になる。
【0009】
触媒として金属ハロゲン化物塩、特に、塩化銅及び塩化鉄触媒を使用すると、触媒を使用しない場合よりも、600℃でのポリカーボネートの熱分解においてより多量のフェノール性化合物を生成することが可能であった(非特許文献1)。また、炭化残渣を低減することを目的として、ポリカーボネートの触媒による熱分解が、種々の金属塩化物化合物を用いて最適化された(非特許文献2)。無触媒熱分解は400℃で非常にゆっくりと進むため、触媒の影響は400℃(1時間)で求められた。金属塩化物の選択は、熱分解に大きな影響を与えるものであった。NaCl、CrCl、CuCl及びAlClでは熱分解速度が向上しなかったのに対して、SnCl及びZnClでは、80%超の重量損失でポリカーボネートが分解された。
【0010】
触媒としての金属塩の使用によって、ポリカーボネートの熱分解における生成物分布を改善することもできた。触媒を使用しないポリカーボネートの熱分解における液状生成物が11種の様々な生成物を含んでいたのに対して、触媒としてZnCl又はSnClを使用した混合物は、ビスフェノールA、フェノール及びジフェニルエーテルを含むたった7種の主要生成物を含み、不純物はより少量であった。
【0011】
ポリカーボネート含有材料の熱分解のために、様々な空隙率及び酸性/塩基性を有する、金属酸化物とゼオライトとからなる触媒も知られている(非特許文献3、非特許文献4)。
【0012】
CaO及びMgO等の塩基性触媒を用いると、熱分解の温度を400℃~450℃へと大幅に低下させることができ、フェノール性化合物を高い割合で含む液状画分が同時に生成した(非特許文献5、非特許文献6)。ポリプロピレン(PP)と、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)と、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)と、ポリカーボネートとの混合物から、440℃でBPA及びCOがポリカーボネートからゆっくりと放出されることを実証することができた。
【0013】
アルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物(MgO及びMg(OH))の影響下で、純粋なポリカーボネートの蒸気熱分解により、300℃でより良好な効率及びより高いBPA収率(78%)を達成することができ、その一方でMgOを使用して500℃まで加熱すると、フェノールが高い割合(84%)で生成した(非特許文献7、非特許文献8)。
【0014】
特許文献1には、超臨界又は亜臨界状態の水を用いたポリカーボネートの解重合方法が記載されている。この方法により、ポリカーボネートの構成成分である高純度のジヒドロキシ成分(BPA)が高収率で得られた。この解重合方法は有機溶媒の使用を伴わないため、環境負荷が小さい。この方法は、高い分解率を示し、副生成物がほとんどない。
【0015】
従来技術に記載された熱分解プロセスはいずれも、分析目的でマイクログラムスケールの熱分解として使用することを主な目的としているため、工業的又は商業的使用に適していない。したがって、従来技術において提示された熱分解は、いずれの場合も、工業的又は商業的使用には適さない熱分解装置で行われる。
【0016】
特に、ポリカーボネートに加えて他の成分も含むより多量のポリカーボネート含有材料の熱分解に対しては、ポリカーボネートの熱分解の結果に対する他の成分の影響を低減することができる適切な反応器を用いた新規プロセスが必要とされる。他の成分が存在する場合であっても、ポリカーボネート含有ポリマー混合物から、ポリカーボネートの合成に再利用可能な開裂生成物、特に、ビスフェノールA(BPA)又はフェノール等の芳香族ヒドロキシ化合物を高含有量で含む熱分解生成物が選択的に得られる必要がある。エネルギーの観点からは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物、特に、下記一般式(I)の芳香族化合物は、エネルギーを大量に消費する更なる石油化学的変換工程を伴わない重縮合反応において、ポリカーボネートの製造に直接再利用することができるため、熱分解によって大部分が回収されることが好ましい。
【0017】
また、上述の新規な熱分解プロセスは、ポリカーボネートの合成において再利用可能な開裂生成物に加えて、他の成分の開裂生成物、例えば、ポリスチレン含有材料からのスチレンも大量に良好な収率で存在し、この開裂生成物が循環型リサイクルの意味で上記成分の製造に好適である、熱分解生成物を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0185309号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】M. Blazso, J. Anal. Appl. Pyrolysis, 1999, 51, 73-88
【非特許文献2】J. Chiu et al., Waste Manage., 2006, 26, 252-259
【非特許文献3】E.V. Antonakou et al. Polym. Degrad. Stab., 2014, 110, 482-491
【非特許文献4】M.N. Siddiqui et al., Thermochim. Acta, 2019, 675, 69-76
【非特許文献5】D.S. Achilias et al., J. Appl. Polym. Sci., 2009, 114, 212-221
【非特許文献6】E.C. Vouvoudi et al., Front. Environ. Sci. Eng., 2017, 11, 9
【非特許文献7】T. Yoshioka et al., Polym. Degrad. Stab., 2009, 94, 1119-1124
【非特許文献8】T. Yoshioka et al., Ind. Eng. Chem. Res., 2014, 53, 4215-4223
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、熱分解の商業的な実施のために、ポリカーボネート含有化合物とポリスチレン含有化合物との混合物を含む材料を少なくとも含む熱分解対象材料を熱分解するプロセス及び該プロセスにおいて使用可能な熱分解装置であって、これらを使用すると、比較的多量の熱分解対象材料を使用する場合であっても、使用するポリカーボネート含有材料及びポリスチレン含有材料の総重量に対して、ポリカーボネート含有材料及びポリスチレン含有材料の合成に再利用可能な開裂生成物を好ましくは40重量%超の量で含む或る量の熱分解生成物が得られる、プロセス及び熱分解装置を提供することが目的であった。ポリカーボネート含有化合物を含む熱分解対象材料の熱分解によって、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物、特に、下記一般式(I)の芳香族化合物の大部分を回収することが更なる目的であった。熱分解によって、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物、特に、下記一般式(I)の芳香族化合物及びスチレンも大部分を回収することが更なる目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本出願は、少なくとも以下の工程:
(a)ポリカーボネート含有化合物とポリスチレン含有化合物との混合物を含む材料を少なくとも含む熱分解対象材料を反応器へと導入する工程と、
(b)工程(a)において反応器へと導入した熱分解対象材料の少なくとも上記材料を、300℃~700℃の温度で分解して、熱分解物としての気相生成物と、非気相熱分解残渣とを得る工程であって、
(i)上記分解中、反応器中の酸素ガスの量が、反応器中に存在する気体の総体積に対して、0体積%~2.0体積%であり、かつ、
(ii)上記分解中、上記熱分解物を反応器から排出し、かつ、
(iii)上記熱分解残渣を反応器から排出する、工程と、
(c)排出された熱分解物を300℃未満の温度まで冷却して、熱分解物凝縮物、熱分解物再昇華物、又はこれらの混合物から選択される熱分解生成物を得る工程と、
(d)任意で熱分解生成物を処理する工程と、
を含む熱分解プロセスを提供する。
【0022】
「熱分解対象材料」という用語は、熱分解のために反応器へと導入され、そこで酸素ガスの不存在下又は低量の酸素ガスの存在下で熱処理を受ける物質の全体を指す。熱分解対象材料は、反応器への導入前は固体の形態であることが好ましい。
【0023】
「熱分解物」は、工程(b)の条件下で反応器内の気相にある(より詳細には、気体及び/又はエアロゾルの形態である)、熱分解によって形成された生成物の全体を意味するものと理解される。
【0024】
「熱分解残渣」は、工程(b)の条件下で反応器内の気相にない、熱分解によって形成される物質と熱分解対象材料の他の残渣との全体を意味するものと理解される。反応器内の熱分解残渣が固体であることを特徴とするプロセスの実施の形態が好ましい。
【0025】
「熱分解生成物」は、工程(c)において熱分解物が冷却された場合に凝縮及び/又は再昇華によって蓄積する、熱分解物からの生成物の全体を意味するものと理解される。液体である熱分解生成物は、熱分解油とも称する。
【0026】
これに関連して明確に別段の定義がされていない限り、物質(例えば、材料、熱分解対象材料、熱分解物、熱分解生成物、熱分解残渣)は、20℃、1013mbarで液体の状態である場合は「液体」である。これに関連して明確に別段の定義がされていない限り、物質(例えば、材料、熱分解対象材料、熱分解物、熱分解生成物、熱分解残渣)は、20℃、1013mbarで固体状態である場合は「固体」である。これに関連して明確に別段の定義がされていない限り、物質(例えば、材料、熱分解対象材料、熱分解物、熱分解残渣)は、20℃、1013mbarで気体として存在する場合は「気体」である。
【0027】
或る物質の化学構造が少なくとも1つの炭素-水素共有結合を含む場合、その物質は「有機」である。
【0028】
本出願において、ポリマー又はポリマー成分に対して規定される平均モル質量は、明確に別段の記載がない限り、常に重量平均モル質量Mwである。これは、原則的には、外部標準に対する測定を行うのに適切なRI検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって求めることができる。
【0029】
「ポリカーボネート含有化合物」は、ポリ反応によって得られるホモポリマー又はコポリマーから選択され、少なくとも1つの繰り返し単位が少なくとも1つの-O-C(=O)-O-(式中、はポリマー主鎖の価数を表す)の構造単位を含有する高分子化合物である。
【0030】
本出願の文脈において、「ポリスチレン含有材料」又は「ポリスチレン含有化合物」は、スチレン又はスチレン誘導体、特にスチレンに由来する構造単位を含有する材料又は化合物、好ましくはポリマーを意味するものと理解される。
【0031】
この意味で、「ポリスチレン含有化合物」は、重合反応によって得られるホモポリマー又はコポリマーから選択され、繰り返し単位として少なくとも1つの-CRPh-CH(式中、はポリマー主鎖の価数を表し、Rは水素原子又はメチル基であり、PhはC~Cアルキル基及びハロゲン原子(特に塩素)から選択される少なくとも1つの基で任意に置換したフェニル基である)の構造単位を有する高分子化合物である。上記材料は、少なくとも1つのポリカーボネート含有化合物に加えて、スチレン(R=H、Ph=フェニル)、α-メチルスチレン(R=メチル、Ph=フェニル)、p-メチルスチレン(R=H、Ph=4-メチルフェニル)、p-クロロスチレン(R=H、Ph=4-クロロフェニル)、又はこれらの混合物に由来する上述の式による少なくとも1つの構造単位を有するポリスチレン含有化合物の形態での少なくとも1つのポリマーを含むことが特に好ましい。上述の式によるRがHであることが更に好ましい。
【0032】
「反応器」は、熱分解対象材料からの材料の化学変換、例えば、熱的分解が起こる容積である。熱的分解の場合、これは、例えば、熱分解対象材料が入った加熱容器の容積とすることができる。
【0033】
本発明によれば、熱分解対象材料を、本発明のプロセスに従って、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、固定床反応器、流動床反応器、スクリュー反応器、スクリューコンベア反応器、噴流反応器(entrained-flow reactor)、噴流反応器(entrainment-flow reactor)、回転管反応器、流動床反応器及びドラム反応器から選択されることを特徴とする反応器に導入することが有利である。より詳細には、好適な反応器は、好ましくは、熱分解対象材料を連続的に導入することができるものであり、特に、回転管反応器、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、固定床反応器(特に、内部熱交換器、好ましくは内部熱交換管を備えた連続床交換式のもの(シャフト反応器))、スクリュー反応器、スクリューコンベア反応器、噴流反応器、回転管反応器又は流動床反応器から選択される。プロセスの一実施の形態においては、非常に特に好ましい反応器は、スクリュー反応器、回転オーブン又は流動床から選択される。本発明によるプロセス及びその実施の形態において好ましい更なる反応器は、本発明の熱分解装置の実施の形態及び触媒を使用するプロセスの実施の形態において説明する(以下を参照)。
【0034】
本発明によると、反応器に導入する熱分解対象材料は、ポリカーボネート含有化合物とポリスチレン含有化合物との混合物を含む少なくとも1つの材料を含む。
【0035】
本発明によるプロセスの一実施の形態においては、熱分解対象材料は、いずれの場合も熱分解対象材料の総重量に対して、10.0重量%~80.0重量%、より好ましくは30.0重量%~70.0重量%の総量の上記材料を含有する。
【0036】
好ましくは熱分解対象材料の上記材料を固体粒子の形態(特に、粒状混合物の形態)で反応器に導入することが有利であることが分かった。上記材料の粒状混合物は、該材料の緩い多数の固体粒子から形成され、これらの粒子は粒として知られるもので構成される。1つの粒とは、粉末(多数の粒は緩い固体粒子である)、ダスト(多数の粒は緩い固体粒子である)、顆粒(緩い固体粒子は幾つかの粒の凝集体である)、及び他の粒状混合物の粒子状構成要素を指す用語である。粒状混合物の流動性は、直径16.5mmの出口を有する流動試験漏斗から自重下で自由に流れる能力に関係する。
【0037】
反応器に導入する上記材料の固体粒子、より詳細には粒状混合物の緩い固体粒子は、0.01mm~5cm、好ましくは0.1mm~5cmの平均直径X50.3(体積平均)を有することが好ましい。平均粒径X50.3は、篩分けにより又はRetsch製のCamsizer粒径分析装置を使用することにより求める。
【0038】
通常、上記材料は、例えば、ホモポリマー、コポリマー、櫛型ポリマー、ブロックポリマー、又はこれらの混合物とすることができる。
【0039】
この種の上記材料は、ポリスチレン含有化合物に加えて、ポリカーボネート含有化合物として、少なくとも10個の-O-C(=O)-O-(式中、はポリマー主鎖の価数を表す)の構造単位を含有する少なくとも1つの化合物が存在することが特に好適である。
【0040】
本発明のプロセスに好適な上記材料用のポリカーボネート含有化合物は、例えば、芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネートである。これらは、文献から知られている又は文献から知られているプロセスによって製造することができる(芳香族ポリカーボネートの製造については、例えば、Schnell, "Chemistry and Physics of Polycarbonates", Interscience Publishers, 1964、及び独国特許出願公開第1495626号、独国特許出願公開第2232877号、独国特許出願公開第2703376号、独国特許出願公開第2714544号、独国特許出願公開第3000610号、独国特許出願公開第3832396号も参照のこと。芳香族ポリエステルカーボネートの製造については、例えば、独国特許出願公開第3007934号を参照のこと)。
【0041】
ポリカーボネート含有化合物として使用可能な芳香族ポリカーボネートは、例えば、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物、特にジフェノールと、ハロゲン化カルボニル、好ましくはホスゲン及び/又は芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物、好ましくはベンゼンジカルボン酸のジハロゲン化物とを、任意で連鎖停止剤、例えばモノフェノールを使用し、任意で三官能性以上の分岐剤、例えばトリフェノール又はテトラフェノールを使用する界面プロセスで反応させることによって調製される。少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物、特にジフェノールと、例えばジフェニルカーボネートとの反応による溶融重合プロセスを介した製造も可能である。
【0042】
本発明によると、ポリカーボネート含有化合物が、少なくとも以下の化合物、すなわち、(i)少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、特に好ましくはビスフェノールAと、(ii)ホスゲン又はジフェニルカーボネートとを反応させることにより得られる少なくとも1つの化合物であるこの種の上記材料を有利に使用することができる。
【0043】
ポリカーボネート含有化合物の製造については、一般式(I)から選択される少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの芳香族化合物を使用することが好ましい:
【化1】
(式中、
Aは、単結合、C~Cアルキレン、C~Cアルキリデン、C又はCシクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO-、任意でヘテロ原子を含有する更なる芳香環が縮合していてもよいC~C12アリーレン、又は式(II)若しくは式(III)のラジカルであり、
【化2】
Bは、いずれの場合も、C~C12アルキル、好ましくはメチル、ハロゲン、好ましくは塩素及び/又は臭素であり、
xは、いずれの場合も独立して、0、1又は2であり、
pは1又は0であり、
及びRは、それぞれのXに対して個々に選択することができ、各々独立して、水素又はC~Cアルキル、好ましくは、水素、メチル又はエチルであり、
は炭素であり、
mは4~7の整数、好ましくは4又は5であり、ただし、少なくとも1つの原子X上でR及びRの両方がアルキルである)。
【0044】
好ましい少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物は、ハイドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)-C~-Cアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)-C又は-Cシクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン及びα,α-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、並びにこれらの環臭素化及び/又は環塩素化誘導体である。
【0045】
特に好ましい少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物は、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、並びにまたこれらの二臭素化又は二塩素化誘導体及び四臭素化又は四塩素化誘導体、例えば、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン又は2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。特に好ましくは2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)である。
【0046】
少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物は、単独で又は任意の望ましい混合物として使用することができる。少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物は、文献から知られている又は文献から知られている方法によって得ることができる。
【0047】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に好適な連鎖停止剤の例としては、フェノール、p-クロロフェノール、p-tert-ブチルフェノール又は2,4,6-トリブロモフェノール、並びにまた、4-[2-(2,4,4-トリメチルペンチル)]フェノール、独国特許出願公開第2842005号による4-(1,3-テトラメチルブチル)フェノール又はアルキル置換基における総炭素数が8~20のモノアルキルフェノール若しくはジアルキルフェノール、例えば、3,5-ジ-tert-ブチルフェノール、p-イソオクチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-ドデシルフェノール及び2-(3,5-ジメチルヘプチル)フェノール及び4-(3,5-ジメチルヘプチル)フェノール等の長鎖アルキルフェノールが挙げられる。使用する連鎖停止剤の量は、いずれの場合も使用する少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物の合計モルに対して、通常、0.5モル%~10モル%である。
【0048】
本発明の好ましい実施の形態においては、使用可能な熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、好ましくは20000g/mol~40000g/mol、より好ましくは24000g/mol~32000g/mol、特に好ましくは26000g/mol~30000g/molの平均分子量(ビスフェノールAに基づくポリカーボネート標準を使用するGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定した重量平均M)を有する。
【0049】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、既知の方法で、好ましくは、使用する少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物の総量に対して、0.05モル%~2.0モル%の三官能性以上の化合物、例えば、フェノール基を3つ以上有するものを含有させることによって、分岐状にしてもよい。
【0050】
直鎖状ポリカーボネート、より好ましくはビスフェノールAに基づくものを使用することが好ましい。
【0051】
ホモポリカーボネート及びコポリカーボネートの両方が好適である。本発明に従って好ましく使用することのできるコポリカーボネートの製造については、使用する少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物の総量に対して、1重量%~25重量%、好ましくは2.5重量%~25重量%のヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを使用することもできる。これらは既知であり(米国特許第3419634号)、文献から知られているプロセスによって製造することができる。ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートも好適であり、ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートの製造は、例えば、独国特許出願公開第3334782号に記載されている。
【0052】
芳香族ポリエステルカーボネート製造用の芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物は、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル4,4’-ジカルボン酸及びナフタレン-2,6-ジカルボン酸の二酸二塩化物であることが好ましい。
【0053】
1:20~20:1の比率でのイソフタル酸の二酸二塩化物とテレフタル酸の二酸二塩化物との混合物が特に好ましい。
【0054】
ポリエステルカーボネートの製造においては、ハロゲン化カルボニル、好ましくはホスゲンも二官能性の酸誘導体として追加的に使用する。
【0055】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造に有用な連鎖停止剤としては、既に述べたモノフェノールの他に、そのクロロギ酸エステル、並びにC~C22アルキル基又はハロゲン原子によって任意で置換してもよい芳香族モノカルボン酸の酸塩化物、及び脂肪族C~C22モノカルボン酸塩化物が挙げられる。
【0056】
連鎖停止剤の量は、フェノール性連鎖停止剤の場合には少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物のモルに対して、モノカルボン酸塩化物連鎖停止剤の場合にはジカルボン酸二塩化物のモルに対して、いずれの場合も0.1モル%~10モル%である。
【0057】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造において、1つ以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸を使用することもできる。
【0058】
芳香族ポリエステルカーボネートは直鎖状であってもよく、又は既知の方法(独国特許出願公開第2940024号及び独国特許出願公開第3007934号を参照のこと)で分岐状にすることもできるが、直鎖状ポリエステルカーボネートが好ましい。
【0059】
使用する分岐剤は、例えば、(使用するジカルボン酸二塩化物に対して)0.01モル%~1.0モル%の量での、三塩化トリメシル、三塩化シアヌル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸四塩化物若しくはピロメリット酸四塩化物等の三官能性若しくは多官能性カルボン酸塩化物、又は使用するジフェノールに対して0.01モル%~1.0モル%の量での、フロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタ-2-エン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス[4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ(4-[4-ヒドロキシフェニルイソプロピル]フェノキシ)メタン、1,4-ビス[4,4’-ジヒドロキシトリフェニル)メチル]ベンゼン等の三官能性若しくは多官能性フェノールとすることができる。フェノール系分岐剤は、ジフェノールと共に最初に仕込めばよく、酸塩化物分岐剤は酸二塩化物と共に導入すればよい。
【0060】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造単位の割合は、所望の通りに変えることができる。好ましくは、カーボネート基の割合は、エステル基とカーボネート基との合計に対して、100モル%まで、特に80モル%まで、より好ましくは50モル%までである。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル部分及びカーボネート部分は両方とも、重縮合物においてブロックの形態又はランダム分布で存在することができる。
【0061】
芳香族ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートは、本発明によるプロセスの上記材料において単独で又は任意の望ましい混合物として使用することができる。
【0062】
熱分解対象材料の上記材料は、少なくとも1つのポリカーボネート含有化合物に加えて、少なくとも1つのポリスチレン含有化合物を含む。
【0063】
本出願の文脈において、「ポリスチレン含有材料」は、スチレン又はスチレン誘導体、特にスチレンに由来する構造単位を含有する化合物、好ましくはポリマーを意味するものと理解される。
【0064】
したがって、本発明によると、「ポリスチレン含有化合物」は、芳香環上で任意に置換されたスチレン(特に、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン等)に由来する繰り返し単位を含有する化合物を意味するものと理解される。
【0065】
本発明によるプロセスの一実施の形態においては、少なくとも1つのポリカーボネート含有化合物に加えて、少なくとも10個の式:
-CRPh-CH
(式中、はポリマー主鎖の繰り返し単位の価数を表し、
は水素原子又はメチル基であり、Phは、C~Cアルキル基及びハロゲン原子(特に塩素)から選択される少なくとも1つの基で任意に置換したフェニル基である)の繰り返し単位を有するポリスチレン含有化合物の形態での少なくとも1つのポリマーを含む材料を熱分解対象材料において使用することが有利である。上記材料は、少なくとも1つのポリカーボネート含有化合物に加えて、スチレン(R=H、Ph=フェニル)、α-メチルスチレン(R=メチル、Ph=フェニル)、p-メチルスチレン(R=H、Ph=4-メチルフェニル)、p-クロロスチレン(R=H、Ph=4-クロロフェニル)、又はこれらの混合物に由来する上述の式の繰り返し単位を少なくとも10個有するポリスチレン含有化合物の形態での少なくとも1つのポリマーを含むことが特に好ましい。
【0066】
本発明に従って好ましく使用することのできる材料として、少なくとも1つのポリカーボネート含有化合物に加えて、ポリスチレン含有化合物として、スチレン若しくはスチレン誘導体由来の構造単位を有するゴム変性グラフトポリマー(B1)又はスチレン若しくはスチレン誘導体由来の構造単位を有する無ゴムビニル(コ)ポリマー(B2)、又はこのようなポリマーの2つ以上の混合物から選択される少なくとも1つのポリマーを追加的に含む。
【0067】
好ましく使用されるかかるゴム変性グラフトポリマー(B1)は、
B.1.1 成分B.1に対して、5重量%~95重量%、好ましくは15重量%~92重量%、特に25重量%~60重量%のビニル芳香族化合物及び/又は環置換ビニル芳香族化合物(スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン等)を、
B.1.2 成分B.1に対して、95重量%~5重量%、好ましくは85重量%~8重量%、特に75重量%~40重量%の、好ましくは10℃未満、より好ましくは0℃未満、特に好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を有する1つ以上のゴム状グラフトベース上に、
含む。
【0068】
ガラス転移温度は、10K/分の加熱速度でDIN EN61006規格に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定され、Tは中点温度として定義される(接線法)。
【0069】
グラフトベースB.1.2は、通常、0.05μm~10μm、好ましくは0.1μm~5μm、より好ましくは0.2μm~1μmのメジアン粒径(d50)を有する。メジアン粒径d50は、それより大きい直径及び小さい直径にそれぞれ粒子の50重量%が存在する直径である。メジアン粒径d50は超遠心分離測定によって求めることができる(W. Scholtan, H. Lange, Kolloid, Z. und Z. Polymere 250 (1972), 782-1796)。
【0070】
モノマーB.1.1は、
B.1.1.1 B.1.1に対して、50重量部~99重量部、好ましくは60重量部~80重量部、特に70重量部~80重量部のビニル芳香族化合物及び/又は環置換ビニル芳香族化合物(特に、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、又はこれらの混合物から選択される)と、
B.1.1.2 B.1.1に対して、1重量部~50重量部、好ましくは20重量部~40重量部、特に20重量部~30重量部のシアン化ビニル(アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル)及び/又はメチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート等のC~Cアルキル(メタ)アクリレート及び/又は不飽和カルボン酸誘導体(無水物及びイミド等)、例えば無水マレイン酸及びN-フェニルマレイミドと、
の混合物であることが好ましい。
【0071】
好ましいモノマーB.1.1.1は、モノマーであるスチレン及びα-メチルスチレンのうち少なくとも1つから選択され、好ましいモノマーB.1.1.2は、モノマーであるアクリロニトリル、無水マレイン酸及びメチルメタクリレートのうち少なくとも1つから選択される。特に好ましいモノマーは、B.1.1.1としてのスチレン及びB.1.1.2としてのアクリロニトリルである。
【0072】
グラフトポリマーB.1に好適なグラフトベースB.1.2の例には、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、すなわち、エチレン/プロピレン及び任意でジエンに基づくゴム、アクリレートゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム及びエチレン/酢酸ビニルゴム、並びにまたシリコーン/アクリレート複合ゴムがある。
【0073】
好ましいグラフトベースB.1.2は、例えばブタジエン及びイソプレンに基づくジエンゴム若しくはジエンゴムの混合物、又はジエンゴム若しくはこれらの混合物と更なる共重合可能なモノマー(例えば、B.1.1.1及びB.1.1.2による)とのコポリマーである。
【0074】
グラフトベースB.1.2として特に好ましいのは、純粋なポリブタジエンゴムである。
【0075】
ポリマーB1として特に好ましいのは、例えば、独国特許出願公開第2035390号(=米国特許第3644574号)又は独国特許出願公開第2248242号(=英国特許出願公開第1409275号)又はウルマン工業化学百科事典、第19巻(1980)、p.280ffに記載されているような、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABSポリマーとも称する)又はメタクリレート-ブタジエン-スチレンコポリマー(MBSポリマーとも称する)から選択されるポリマーである。
【0076】
グラフトコポリマーB.1は、フリーラジカル重合、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合又はバルク重合、好ましくは乳化重合又はバルク重合によって製造される。
【0077】
グラフトベースB.1.2のゲル含有量は、いずれの場合もB.1.2に対して、トルエン中の不溶性画分として測定して、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、特に少なくとも60重量%である。
【0078】
グラフトベースB.1.2のゲル含有量は、適切な溶媒中25℃で、これらの溶媒に不溶な含有量として求められる(M. Hoffmann, H. Kroemer, R. Kuhn, Polymeranalytik I und II, Georg Thieme-Verlag, Stuttgart 1977)。
【0079】
特に好適なグラフトゴムとしては、米国特許第4937285号に従って、有機ヒドロペルオキシドとアスコルビン酸とから構成される開始剤系を用いたレドックス開始によって製造されるABSポリマーもある。
【0080】
グラフトモノマーは、グラフト反応において必ずしも完全にグラフトベース上にグラフトされるわけではないことが知られているため、本発明によると、グラフトポリマーB.1は、グラフトベースの存在下でのグラフトモノマーの(共)重合から生じ、処理中に得られる生成物も含むものと理解される。したがって、これらの生成物は、グラフトモノマーの遊離(コ)ポリマー、すなわち、ゴムに化学的に結合していない(コ)ポリマーも含み得る。
【0081】
2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーを、架橋目的で共重合させてもよい。架橋モノマーの好ましい例としては、エチレングリコールジメタクリレート及びアリルメタクリレート等の、炭素数3~8の不飽和モノカルボン酸と、炭素数3~12の不飽和1価アルコール又は2個~4個のOH基を有する炭素数2~20の飽和ポリオールとのエステル;トリビニル及びトリアリルシアヌレート等のポリ不飽和複素環式化合物;ジビニルベンゼン及びトリビニルベンゼン等の多官能性ビニル化合物だけでなく、トリアリルホスフェート及びジアリルフタレートも挙げられる。好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート及び少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する複素環式化合物である。特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマーであるトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ-s-トリアジン及びトリアリルベンゼンである。架橋モノマーの量は、グラフトベースB.1.2に対して、好ましくは0.02重量%~5重量%、特に0.05重量%~2重量%である。少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合、その量をグラフトベースB.1.2の1重量%未満に制限することが有利である。
【0082】
グラフトベースB.1.2の調製のためにアクリル酸エステルと共に任意で使用することのできる好ましい「他の」重合可能なエチレン性不飽和モノマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC~Cアルキルエーテル、メチルメタクリレート及びブタジエンである。グラフトベースB.1.2として好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60重量%のゲル含有量を有するエマルジョンポリマーである。
【0083】
B.1.2による他の好適なグラフトベースは、独国特許出願公開第3704657号、独国特許出願公開第3704655号、独国特許出願公開第3631540号及び独国特許出願公開第3631539号に記載されるような、グラフト活性点を有するシリコーンゴムである。
【0084】
成分B.2による無ゴムビニル(コ)ポリマーは、ビニル芳香族化合物、シアン化ビニル(不飽和ニトリル)、C~Cアルキル(メタ)アクリレート、不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸誘導体(無水物及びイミド)を含む群のうち少なくとも1つのモノマーの無ゴムホモポリマー及び/又はコポリマーであることが好ましい。
【0085】
B.2.1 いずれの場合も(コ)ポリマーB.2の総重量に対して、10重量%~100重量%、好ましくは50重量%~99重量%、より好ましくは60重量%~80重量%、特に70重量%~80重量%の、ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α-メチルスチレン)及び環置換ビニル芳香族化合物(例えば、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン)を含む群から選択される少なくとも1つのモノマーと、
B.2.2 いずれの場合も(コ)ポリマーB.2の総重量に対して、0重量%~90重量%、好ましくは1重量%~50重量%、より好ましくは20重量%~40重量%、特に20重量%~30重量%の、シアン化ビニル、例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、C~Cアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート及びtert-ブチルアクリレート、不飽和カルボン酸並びに不飽和カルボン酸誘導体、例えば、無水マレイン酸及びN-フェニルマレイミドを含む群から選択される少なくとも1つのモノマーと、
から得られる(コ)ポリマーB.2が特に好適である。
【0086】
これらの(コ)ポリマーB.2は、樹脂性であり、熱可塑性であり、ゴムを含まない。上記材料は、少なくともB.2.1スチレンとB.2.2アクリロニトリルとのコポリマー及び/又はB.2.1のホモポリマーを含むことが特に好ましい。
【0087】
この種の(コ)ポリマーB.2は既知であり、フリーラジカル重合、特に、乳化重合、懸濁重合、溶液重合又はバルク重合によって製造することができる。(コ)ポリマーは、好ましくは15000g/mol~250000g/mol、好ましくは80000g/mol~150000g/molの範囲の平均分子量M(標準としてポリスチレンを使用するGPCによって求めた重量平均)を有する。
【0088】
熱分解対象材料の上記材料は、少なくとも1つのポリカーボネート含有化合物及び少なくとも1つのポリスチレン含有化合物に加えて、難燃剤、ドリップ防止剤、難燃相乗剤、発煙防止剤、潤滑剤及び離型剤、核形成剤、帯電防止剤、導電性添加剤、安定剤(例えば、加水分解、熱老化及びUV安定剤、並びにまたエステル交換防止剤)、流動促進剤、相相溶化剤、成分A及び成分B以外の更なる高分子成分(例えば、機能性配合材)、フィラー及び強化剤、並びに染料及び顔料から選択される少なくとも1つのポリマー添加剤を追加的に含んでもよい。
【0089】
熱分解対象材料を、リン含有有機化合物の含有量が低いもの又はそのような化合物を含まないものに限定すると、熱分解生成物中の少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物の含有量を高めることができ、したがって高含有量で回収することができることも分かった。リン含有有機化合物のそのような規定の総量として適切なのは、熱分解対象材料の総重量に対して、この総量に基づく割合で、0重量%~0.5重量%以下のリン、好ましくは0重量%~0.1重量%以下のリン、より好ましくは0重量%~0.05重量%以下のリン、特に好ましくは0重量%~0.01重量%以下のリンであることが分かった。この規定された総量から生じる技術的効果は、少なくとも1つのポリカーボネート含有化合物と、対応して制限された総量でのリン含有有機化合物と、任意で追加的に少なくとも1つのポリスチレン含有化合物とを含む熱分解対象材料についても達成された。
【0090】
したがって、本発明によるプロセスの更なる実施の形態は、工程(a)に従って、熱分解対象材料が、
少なくとも1つのポリカーボネート含有化合物と、
或る総量に基づくリン含有有機化合物の割合が、熱分解対象材料の総重量に対して、0重量%~0.5重量%以下のリン、好ましくは0重量%~0.1重量%以下のリン、より好ましくは0重量%~0.05重量%以下のリン、特に好ましくは0重量%~0.01重量%以下のリンとなるように規定された総量でリン含有有機化合物と、
任意で少なくとも1つのポリスチレン含有化合物と、
を含むことを特徴とするプロセスである。
【0091】
スチレン及びその誘導体の同時回収のために、熱分解対象材料が、ポリカーボネート含有化合物とポリスチレン含有化合物との混合物と、上記総量でのリン含有有機化合物とを含む材料を少なくとも含むことが更に好ましい。
【0092】
更なる実施の形態においては、本発明によると、制限された量でのみ存在し得るリン含有有機化合物が、リンが+5の形式酸化状態を有するリン含有有機化合物から選択されることが好ましいことが分かった。
【0093】
また、熱分解対象材料が、少なくとも1つのリン原子が+5の形式酸化状態を有するリン含有有機化合物を含まないことが特に好ましいことが分かった。
【0094】
制限された量でのみ存在し得るリン含有有機化合物は、有機リン酸エステル、有機ホスホン酸エステル、有機ホスファゼン及びホスホン酸アミン、特に、有機リン酸エステル及び有機ホスホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。リン含有有機化合物は、有機リン酸モノエステル、有機リン酸ジエステル、有機リン酸トリエステル及びオリゴマーリン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が特に好ましい。したがって、これらの化合物のうち2種以上の混合物を使用することもでき、これも制限された量でのみ存在し得る。
【0095】
好ましい実施の形態において、熱分解対象材料中に制限された量でのみ存在し得る上述のホスホン酸アミン及びホスファゼンは、例えば、国際公開第00/00541号及び国際公開第01/18105号に記載されたものとすることができる。
【0096】
本発明の目的のため、制限された量でのみ存在し得る特に好ましいリン含有有機化合物は、一般式(IV)の化合物である:
【化3】
(式中、
、R、R及びRは、各々独立して、任意でハロゲン化したC~Cアルキル、いずれの場合もアルキル、好ましくはC~Cアルキル及び/又はハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素で任意に置換したC又はCシクロアルキル、C~C20アリール又はC~C12アラルキルであり、
nは、独立して、0又は1であり、
qは0~30であり、
Xは、OH置換されていてもよく、かつ、8個までのエーテル結合を有していてもよい、炭素数12~30の多環式芳香族ラジカル又は炭素数2~30の直鎖状若しくは分岐状脂肪族ラジカルである)。
【0097】
式(IV)中のR、R、R及びRは、各々独立して、C~Cアルキル、フェニル、ナフチル又はフェニル-Cアルキル~フェニル-Cアルキルであることが好ましい。次に、芳香族基であるR、R、R及びRは、ハロゲン及び/又はアルキル基、好ましくは塩素、臭素及び/又はC~Cアルキルで置換されていてもよい。特に好ましいアリールラジカルは、クレシル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニル又はブチルフェニル、並びにまたこれらの対応する臭素化誘導体及び塩素化誘導体である。
【0098】
式(IV)中のXは、好ましくは、炭素数12~30の多環式芳香族ラジカルである。これは、好ましくは、一般式(I)の少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物に由来する。
式(IV)中のnは、独立して、0又は1とすることができ、nは好ましくは1である。
qは、0~30、好ましくは0~20、より好ましくは0~10の整数値を有する、又は混合物の場合には、0.8~5.0、好ましくは1.0~3.0、更に好ましくは1.05~2.00、特に好ましくは1.08~1.60の平均値を有する。
式(IV)中のXは、特に好ましくは、
【化4】
又はその塩素化誘導体若しくは臭素化誘導体を表し、特に、Xは、ビスフェノールA又はジフェニルフェノールに由来する。Xは、特に好ましくは、ビスフェノールAに由来する。
【0099】
式(IV)のリン化合物は、特に、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、ジフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、ジフェニル2-エチルクレシルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート及びビスフェノールAで繋がったオリゴホスフェートである。ビスフェノールAに由来する式(IV)のオリゴマーリン酸エステルを使用することが特に好ましい。
【0100】
制限された量でのみ存在し得るリン含有有機化合物として、式(IVa)に示すビスフェノールAに基づくオリゴホスフェートを使用することが最も好ましい。
【化5】
【0101】
上述のリン有機化合物は既知であり(例えば、欧州特許出願公開第363608号、欧州特許出願公開第640655号を参照のこと)、又は既知の方法によって同様に調製することができる(例えば、ウルマン工業化学百科事典、第18巻、p.301ff、1979; Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], vol. 12/1, p. 43; Beilstein vol. 6, p. 177)。
【0102】
制限された量でのみ存在し得る本発明に従って好適なリン含有有機化合物としては、例えば、異なる化学構造を有する有機リン酸エステル及び/又は同じ化学構造を有するが、分子量の異なる有機リン酸エステルの混合物を使用することもできる。
【0103】
制限された量でのみ存在し得るリン含有有機化合物としてオリゴマーリン酸エステルを使用する場合、同じ構造を有するが、鎖長の異なる混合物を使用することが好ましい。ここで、式(IV)及び式(IVa)に示すq値は、平均のq値である。平均のq値は、アセトニトリルと水との混合物(50:50)中、40℃で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、リン化合物の組成(分子量分布)を求め、そこからqの平均値を算出することによって求められる。
【0104】
好ましい実施の形態においては、組成物は、離型剤としてペンタエリスリトールテトラステアレートを含む。
【0105】
本発明のプロセスの熱分解における熱分解対象材料の計量及び処理性は、工程(a)における熱分解対象材料が、上記材料に加えて、少なくとも1つのフィラーも含むことによって簡略化することができる。フィラーは、熱分解の際のポリカーボネートの熱的分解に触媒作用を及ぼさないことが好ましい。よって、フィラーが、好ましくはSiOから選択される、熱分解の際のポリカーボネートの熱的分解に対して触媒活性を示さない少なくとも1つの金属酸化物であることが特に好ましい。
【0106】
ポリカーボネート材料を、フィラー、例えば砂と混合して、本発明によるプロセスの連続プロセス制御をより簡略化することが好ましい。特に、反応器内及び計量装置から反応器への供給における上記材料の付着が回避される。一実施の形態においては、フィラー及び上記材料を、フィラーと上記材料との体積比が少なくとも0.1:1~10:1である混合物として熱分解対象材料に供給する。
【0107】
触媒を使用して、熱分解プロセスをより選択的かつ効率的に行うことができる。本発明によるプロセスの一実施の形態において、工程(a)で導入する熱分解対象材料が、上記材料に加えて、上記材料の分解反応に影響を与える少なくとも1つの触媒も含むと、より効果的かつより選択的な分解が得られる。適切な触媒は、熱分解温度を低下させ、生成物のスペクトルを所望の生成物に低減し、任意で炭化を最小限に抑えることができる。効率的なプロセスのためには、安価な触媒が好ましい。例えば、無機塩、耐火性酸化物、鉱物及び工業用石等の簡易なイオン交換プロセスで任意にイオン交換可能な天然由来材料は、大掛かりな合成を必要としないため、触媒とすることができる。それらは容易に入手可能であるため、比較的安価である。一方、ゼオライト(例えば、ZSM-5、A、X、Y等のタイプ)等の合成触媒は、効果的ではあるが、特別に製造する必要があるため、安価ではない触媒の例である。
【0108】
触媒としての機能に加えて、触媒は熱分解における熱分解対象材料の計量及び処理性を簡略化することもできる。触媒を使用すると、この場合に使用するフィラーの量を低減することができる。一実施の形態においては、フィラー及び触媒の総量を、上記材料の量に対する体積比が少なくとも0.1:1~10:1である混合物として熱分解対象材料に供給する。
【0109】
熱分解反応において、少なくとも1つの触媒を、アルカリ性無機材料からなる群より選択することが好ましく、上で定義された天然由来材料の群から選択することがより好ましい。これらの無機材料は、耐火性酸化物とすることができる。耐火性酸化物は、300℃~700℃の高温で安定な金属酸化物である。触媒として機能するそのような酸化物には、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、チタン、クロム、亜鉛、スズ、及びその他の金属の酸化物、又は酸化アルミニウムと酸化マグネシウム及び/又は酸化カルシウムとの組合せが含まれる。結晶性無機材料には、アルミノシリケート、リン酸シリコンアルミニウム、シリカライト、スピネル、並びにその他には天然ゼオライト及び粘土が含まれる。したがって、触媒として特に好適なのは、無機塩、鉱物、金属酸化物、混合酸化物、粘土及びゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
【0110】
均一触媒及び不均一触媒の両方を使用することができるが、本発明によるプロセスの好ましい実施の形態は、触媒が不均一触媒の形態である。触媒を好ましくは固体粒子の形態で(特に、粒状混合物の形態で)反応器に導入すると有利であることが分かった。使用する不均一触媒は、その固体粒子、より詳細にはその粒状混合物の緩い固体粒子における平均粒径である平均直径X50.3(体積平均)が、0.01mm~5cm、好ましくは0.1mm~5cmであることが特に好ましい。平均粒径X50.3は、篩分けにより又はRetsch製のCamsizer粒径分析装置を使用することにより求める。
【0111】
不均一触媒を使用する場合、更に好ましい実施の形態において、触媒粒子が、上記材料の粒子より小さい又は同じ粒径を有することが特に好適であることが分かった。したがって、熱分解対象材料中に存在する触媒の平均粒径が、最大で、その熱分解対象材料中に存在する上記材料の平均粒径に対応することが好ましい。
【0112】
特に好ましい好適な触媒として、熱分解対象材料は少なくとも1つの塩基性触媒を含むことができる。固体塩基性触媒の場合、触媒中の塩基性中心の数及び強さは、フーリエ変換赤外分光法及びCOの昇温脱離(TPD-CO)によって求める、又は標準的な滴定法を使用して求めることができる。
【0113】
触媒を加える場合、触媒をフィラーと混合する、フィラー上に被覆させる又はフィラーの代わりに使用することができる。
【0114】
本発明によるプロセスにおいて使用する触媒は、炭化材料の堆積物及び他の炭素残渣を形成する傾向があるため、触媒を使用する場合は、触媒を容易に好ましくは排出して連続的に再生することのできる反応器を使用することが好ましい。したがって、固定床反応器の使用よりも、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、移動床、スクリュー反応器、スクリューコンベア反応器、噴流反応器、回転円錐反応器又は流動床反応器の使用が好ましい。
【0115】
失活した触媒(例えば、炭化により失活した)は熱分解残渣中に存在するが、反応器から熱分解残渣を排出した後、再生器に供給し、再生後に工程(b)の熱分解対象材料に加えて熱分解反応器へと導入することができる。短い接触時間、触媒と供給流中の成分との集中的な混合及び再生触媒の熱分解ゾーンへの連続的なリサイクルを可能にする反応器が最も好ましい。これは、スクリュー反応器、回転オーブン又は流動床の場合に当てはまるため、これらの反応器が特に好ましい。
【0116】
工程(a)において反応器に導入する熱分解対象材料は、工程(b)に従って少なくとも部分的に分解され、熱分解物及び熱分解残渣が形成される。
【0117】
反応器への導入後、熱分解対象材料を300℃~700℃の範囲の温度に加熱する。本発明によるプロセスの結果の特に成功した改善は、一実施の形態において、導入した熱分解対象材料を300℃~700℃で温度制御し、この目標温度に到達したら、対応して温度制御された熱分解対象材料の、この熱分解対象材料から得られる熱分解残渣の排出時間までの滞留時間を、1秒~2時間、好ましくは2分~60分とすることにより達成することができる。この時間の間の反応器内の酸素ガスの温度及び含有量は、工程(b)で規定する値である。
【0118】
本発明によるプロセスにおける熱分解対象材料が触媒を含む場合、この触媒は排出された熱分解残渣中に存在する。したがって、プロセスの更なる実施の形態においては、上述の排出された熱分解残渣を、そこに含有される触媒を再生する工程に供給する。
【0119】
これとは独立して、工程(b)において行う反応器からの熱分解物の排出を、反応器を通過する気体流によって又は吸引によって、及びより好ましくは、工程(a)において反応器に導入する上記材料の導入時間と、熱分解物の排出時間との間の時間としての熱分解物の滞留時間を、0.1秒~10秒、好ましくは0.5秒~5秒、より好ましくは0.5秒~2秒とすることによって確保することで良好な結果を達成することができる。
【0120】
この目的のために気体流を反応器に通過させる場合、この気体流用の気体としては、好ましくは、窒素、アルゴン、CO、NO、又はこれらの混合物から選択される不活性ガスが特に好適である。
【0121】
気体流を使用して熱分解物を排出する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が0.01m/秒~20m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として固定床反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が0.03m/秒~1m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として流動床反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が0.5m/秒~2m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として噴流反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が5m/秒~20m/秒の範囲であることが好ましい。
【0122】
工程(b)における熱分解における分解に対する本発明の条件として、反応器内の温度は300℃~700℃であり、反応器中の酸素ガスの量は、反応器中に存在する気体の総体積に対して、0体積%~2.0体積%である。
【0123】
本発明によると、この酸素ガスの量は、熱分解対象材料の上記材料を充填した反応器を、不活性ガス、特に、窒素、アルゴン、CO、NO、又はこれらの混合物で満たすことによって確立される。不活性ガスを、酸素ガス以外の反応性ガス、特に、メタン、気体状HO、水素ガス、又はこれらの混合物から選択される気体と追加的に混合することもできる。
【0124】
反応器への熱分解対象材料の導入による酸素ガスの侵入を最小限に抑えるために、熱分解対象材料を工程(a)において導入する前に、例えば、反応器の上流の貯蔵容器内で、例えば、ストリッピングガスを用いたストリッピングによって酸素ガスを追い出すことによって、熱分解対象材料から酸素ガスを除去することができる。例えば、不活性ガス、より詳細には、窒素、アルゴン、CO、NO、又はこれらの混合物を、貯蔵容器内でストリッピングガスとして上から又は下から(好ましくは上から)フリットを介して容器内に通過させ、そして酸素ガスを追い出すように熱分解対象材料に通過させることができる。
【0125】
本発明によるプロセスの好ましい実施の形態においては、工程(b)における温度は、350℃~650℃、好ましくは400℃~650℃、特に好ましくは420℃~600℃、非常に特に好ましくは450℃~580℃である。
【0126】
本発明によるプロセスの更に好ましい実施の形態においては、工程(b)における反応器中の酸素ガスの量は、いずれの場合も反応器中に存在する気体の総体積に対して、0.5体積%以下、好ましくは0.1体積%以下である。
【0127】
本発明によるプロセスの非常に好ましい実施の形態においては、1番目に、工程(b)における温度が、350℃~650℃、好ましくは400℃~650℃、特に好ましくは420℃~600℃、非常に特に好ましくは450℃~580℃であり、2番目に、反応器中の酸素ガスの量が、いずれの場合も反応器中に存在する気体の総体積に対して、0.5体積%以下、好ましくは0.1体積%以下である。
【0128】
プロセスの好ましい実施の形態は、連続プロセス制御を提供する。このために、連続プロセス制御の文脈において、少なくとも工程(a)及び工程(b)を同時に行う。
【0129】
工程(c)に従って得られた熱分解生成物を、標準的な分離方法を使用して処理して、それにより、(i)少なくとも2つのヒドロキシル置換基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくはビスフェノールAと、(ii)少なくとも1つのビニル置換基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくはスチレンとを得ることができる。BPAを得る標準的な方法は、BPA/フェノール付加物の結晶化又はトルエン中での析出によるものである。他の選択肢としては、熱分解生成物混合物からのBPAの蒸留又は抽出がある。スチレン又はフェノール等の他の生成物は蒸留によって分離することができる。
【0130】
本発明によるプロセスは、適切に構成された熱分解装置を用いて行うことができる。したがって、本発明は、熱分解対象材料を供給する少なくとも1つの計量装置と、少なくとも1つの熱分解用加熱可能反応器と、少なくとも1つの熱分解物捕集器とを備える、熱分解対象材料から熱分解物を生成する熱分解装置であって、
上記熱分解用加熱可能反応器が、該反応器での300℃~700℃の温度での温度制御に使用することができる少なくとも1つの加熱ユニットと、また少なくとも1つの熱分解対象材料用入口と少なくとも1つの別個の熱分解物用出口とを備え、
計量装置が熱分解用加熱可能反応器の熱分解対象材料用入口へと少なくとも1つの供給ラインを介して接続するように、計量装置と反応器とが互いに関係して配置及び構成されており、
好ましくは気体状の熱分解物を上記熱分解物用出口から排出し、排出された熱分解物を熱分解物捕集器へと導入することができるように、熱分解用加熱可能反応器と熱分解物捕集器とが互いに流体連通しており、
少なくとも1つの熱分解物捕集器が、該捕集器内で、上記反応器から排出された熱分解物の温度を300℃未満まで低下させて、熱分解物凝縮物、熱分解物再昇華物、又はこれらの混合物から選択される熱分解生成物を形成させるのに使用することができ、300℃未満の温度に温度制御された少なくとも1つの冷却装置と、冷却によって得られた熱分解生成物を収集及び排出する少なくとも1つの容器とを備え、
熱分解対象材料を供給する少なくとも1つの計量装置と、少なくとも1つの熱分解用加熱可能反応器と、少なくとも1つの熱分解物捕集器とが、同時に作動することができるように互いに関係して配置及び構成されることを特徴とする、熱分解装置を更に提供する。
【0131】
加熱可能反応器に使用される加熱ユニットは、例えば加熱素子、例えば、加熱コイル若しくは加熱プレート、又は気体流を加熱し、加熱した気体流を反応器へと導入する装置とすることができる。
【0132】
好ましい実施の形態においては、反応器は、気体源への少なくとも1つの接続であって、反応器中の好ましくは空塔流量としての流量が0.01m/秒~20m/秒である気体流が、調整器、例えばバルブを介して、反応器を通って熱分解物捕集器へと流れる接続を追加的に含む。反応器として固定床反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が0.03m/秒~1m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として流動床反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が0.5m/秒~2m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として噴流反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内での気体流の空塔速度としての流量が5m/秒~20m/秒の範囲であることが好ましい。
【0133】
気体源からの気体流は、上述の通り反応器に導入する前に、例えば、加熱ユニットによって加熱してもよい。
【0134】
本発明による装置の熱分解物捕集器は、この捕集器内で、反応器から排出された熱分解物の温度を50℃未満まで(より好ましくは30℃未満まで)低下させて、熱分解生成物を形成させるのに使用することができる冷却装置を備えることが好ましい。これには、熱交換器の原理に従って作動する冷却ユニットが特に好適である。
【0135】
本発明によると、「流体連通」は、システムの部分を互いに接続し、それを介して、任意の物質状態であり得る物質を1つのプラント構成要素から次の構成要素へと輸送することができる装置の一部を意味するものと理解され、例えば、管の形態での供給ラインである。
【0136】
本発明は、ポリカーボネート含有化合物及びポリスチレン含有化合物の同時熱分解によるポリカーボネート含有化合物の製造において使用される少なくとも2つのヒドロキシル基を有する有機化合物の回収と、それに伴うポリスチレン含有化合物の製造において使用されるスチレンの同時回収のための、上述の本発明の主題の熱分解装置の使用を更に提供する。
【0137】
上記使用の好ましい実施の形態において、熱分解装置を、同時スチレン回収に加えて、ポリカーボネート含有化合物の製造において使用したビスフェノールAの回収に使用する。
【0138】
本発明によるプロセス及び本発明による装置は、上述の目的の達成に貢献し、プロセスの工程(c)において、いずれの場合も組成物の総重量に対して、
(i)25重量%~80重量%の総量での少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくは上記一般式(I)による芳香族化合物、非常に特に好ましくはビスフェノールAと、
(ii)1重量%超の総量での厳密に1つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくはフェノールと、
(iii)1.5重量%超の総量での少なくとも1つのビニル置換基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくはスチレン又はα-メチルスチレンと、
を少なくとも含み、
ここで、成分(i)~成分(iii)の重量割合と、組成物の他の成分の重量割合との合計が100重量%となる、組成物を熱分解生成物として提供する。
【0139】
組成物が少量の高沸点成分を含むことが好ましい。したがって、上述の組成物の好ましい実施の形態は、1013mbarでの沸点が少なくとも300℃であるヒドロキシル基を含まない少なくとも1つの有機化合物を0.5重量%~10.0重量%の総量で含有する。
【0140】
同様に好ましい実施の形態においては、組成物は、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、並びにまたこれらの二臭素化若しくは二塩素化誘導体及び四臭素化若しくは四塩素化誘導体、例えば、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン若しくは2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、又はこれらの混合物から選択される少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物を25重量%~80重量%の総量で含有する。
【0141】
組成物の成分(i)及び成分(ii)の上述の実施の形態の上述の特徴を組み合わせることがより更に好ましい。
【0142】
まとめると、限定するものではないが、以下の本発明の態様1~態様35が更なる実施の形態として考えられる。
【0143】
1. 少なくとも以下の工程:
(a)ポリカーボネート含有化合物とポリスチレン含有化合物との混合物を含む材料を少なくとも含む熱分解対象材料を反応器へと導入する工程と、
(b)工程(a)において反応器へと導入した熱分解対象材料の少なくとも上記材料を、300℃~700℃の温度で分解して、熱分解物としての気相生成物と、非気相熱分解残渣とを得る工程であって、
(i)分解中、反応器中の酸素ガスの量が、反応器中に存在する気体の総体積に対して、2.0体積%以下であり、かつ、
(ii)分解中、熱分解物を反応器から排出し、かつ、
(iii)熱分解残渣を反応器から排出する、工程と、
(c)排出された熱分解物を300℃未満の温度まで冷却して、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はこれらの混合物から選択される熱分解生成物を得る工程と、
(d)任意で熱分解生成物を処理する工程と、
を含む熱分解プロセス。
【0144】
2. 反応器が、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、固定床反応器、流動床反応器、スクリュー反応器、スクリューコンベア反応器、噴流反応器、噴流反応器、回転管反応器、流動床反応器及びドラム反応器から選択される、特に、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、固定床反応器(特に、内部熱交換器を備えた連続床交換式のもの(シャフト反応器))、スクリュー反応器、スクリューコンベア反応器、噴流反応器、回転管反応器又は流動床反応器から選択されることを特徴とする、態様1に記載のプロセス。
【0145】
3. 工程(b)における温度が、350℃~650℃、好ましくは400℃~650℃、特に好ましくは420℃~600℃、非常に特に好ましくは450℃~580℃であることを特徴とする、態様1又は2に記載のプロセス。
【0146】
4. 導入した熱分解対象材料を300℃~700℃に温度制御し、この目標温度に到達したら、対応して温度制御された熱分解対象材料の、該熱分解対象材料から生じる熱分解残渣の排出時間までの滞留時間を1秒~2時間、好ましくは2分~60分とすることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0147】
5. 反応器からの熱分解物の排出を、反応器を通過する気体流によって又は吸引によって、及び好ましくは、工程(a)において反応器に導入する上記材料の導入時間と、得られた熱分解物の排出時間との間の時間としての熱分解物の滞留時間を、0.1秒~10秒、好ましくは0.5秒~5秒、より好ましくは0.5秒~2秒とすることによって確保することを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0148】
6. 反応器からの熱分解物の排出を、反応器を通過する気体流によって確保し、反応器内での気体流の空塔速度としての流量を0.01m/秒~20m/秒の範囲とすることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0149】
7. 反応器中の熱分解物が気相にあることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0150】
8. 反応器中の熱分解残渣が固体であることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0151】
9. 連続プロセス制御の文脈において、少なくとも工程(a)及び工程(b)を同時に行うことを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0152】
10. 工程(b)における反応器中の酸素ガスの量が、いずれの場合も反応器中に存在する気体の総体積に対して、0.5体積%以下、好ましくは0.1体積%以下であることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0153】
11. 上記材料を充填した反応器に、不活性ガス、特に、窒素、アルゴン、CO、NO、又はこれらの混合物を満たすことを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0154】
12. 不活性ガスを、酸素ガス以外の反応性ガス、特に、メタン、気体状HO、水素ガス、又はこれらの混合物から選択される気体と追加的に混合し得ることを特徴とする、態様11に記載のプロセス。
【0155】
13. ポリカーボネート含有化合物が、少なくとも10個の-O-C(=O)-O-(式中、はポリマー主鎖の価数を表す)の構造単位を含有する少なくとも1つの化合物であることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0156】
14. ポリスチレン含有化合物が、少なくとも10個の式:
-CRPh-CH
(式中、はポリマー主鎖の繰り返し単位の価数を表し、Rは水素原子又はメチル基であり、Phは、C~Cアルキル基及びハロゲン原子(特に塩素)から選択される少なくとも1つの基で任意に置換したフェニル基である)の繰り返し単位を含有する少なくとも1つのポリマーであることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0157】
15. ポリカーボネート含有化合物が、(i)少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくはビスフェノールAと、(ii)ホスゲン又はジフェニルカーボネートとを反応させることにより得られる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0158】
16. 熱分解対象材料、より詳細には上記材料が、或る総量で熱分解対象材料に導入されるリン含有有機化合物の割合が、熱分解対象材料の総重量に対して、0重量%~0.5重量%以下のリン、好ましくは0重量%~0.1重量%以下のリン、より好ましくは0重量%~0.05重量%以下のリン、特に好ましくは0重量%~0.01重量%以下のリンとなるように制限された総量でリン含有有機化合物を含むことを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0159】
17. リン含有有機化合物中に存在するリンが+5の形式酸化状態を有することを特徴とする、態様16に記載のプロセス。
【0160】
18. リン含有有機化合物が、有機リン酸エステル、有機ホスホン酸エステル、有機ホスファゼン及びホスホン酸アミン、特に、有機リン酸エステル及び有機ホスホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、態様16又は17に記載のプロセス。
【0161】
19. リン含有有機化合物が、少なくとも1つの一般式(IV)の化合物:
【化6】
(式中、
、R、R及びRは、各々独立して、任意でハロゲン化したC~Cアルキル、アルキル、好ましくはC~Cアルキル及び/又はハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素で任意に置換したC又はCシクロアルキル、アルキル、好ましくはC~Cアルキル及び/又はハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素で任意に置換したC~C20シクロアルキル、又はアルキル、好ましくはC~Cアルキル及び/又はハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素で任意に置換したC~C12アラルキルであり、
nは、各々独立して、0又は1、好ましくは1であり、
qは0~30の数であり、
Xは、OH置換されていてもよく、かつ、8個までのエーテル結合を有していてもよい、炭素数6~30の単環式若しくは多環式芳香族ラジカル又は炭素数2~30の直鎖状若しくは分岐状脂肪族ラジカルである)から選択されることを特徴とする、態様16~18のいずれか1つに記載のプロセス。
【0162】
20. 工程(a)における熱分解対象材料が、
少なくとも1つのポリカーボネート含有化合物と、
或る総量で導入するリン含有有機化合物の割合が、熱分解対象材料の総重量に対して、0重量%~0.5重量%以下のリン、好ましくは0重量%~0.1重量%以下のリン、より好ましくは0重量%~0.05重量%以下のリン、特に好ましくは0重量%~0.01重量%以下のリンとなるように制限された総量でのリン含有有機化合物と、
任意で少なくとも1つのポリスチレン含有化合物と、
を含むことを特徴とする、態様16~19のいずれか1つに記載のプロセス。
【0163】
21. 上記材料を固体粒子の形態、特に、粒状混合物の形態で反応器へと導入することを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0164】
22. 反応器に導入する上記材料の固体粒子、より詳細には粒状混合物の緩い固体粒子が、0.01mm~5cmの平均直径X50.3(体積平均)を有することを特徴とする、態様21に記載のプロセス。
【0165】
23. 工程(a)における熱分解対象材料が、上記材料に加えて、少なくとも1つのフィラーも含むことを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0166】
24. フィラーが、好ましくはSiOから選択される、ポリカーボネートの熱分解に対して触媒活性を示さない少なくとも1つの金属酸化物であることを特徴とする、態様23に記載のプロセス。
【0167】
25. 工程(a)における熱分解対象材料が、上記材料に加えて、上記材料の分解反応に影響を与える少なくとも1つの触媒も含むことを特徴とする、上記の態様のいずれか1つに記載のプロセス。
【0168】
26. 触媒が、無機塩、鉱物、金属酸化物、混合酸化物、粘土及びゼオライトからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、態様25に記載のプロセス。
【0169】
27. 触媒が塩基性触媒であることを特徴とする、態様25又は26に記載のプロセス。
【0170】
28. 触媒が不均一触媒であることを特徴とする、態様25~27のいずれか1つに記載のプロセス。
【0171】
29. 熱分解対象材料が、該熱分解対象材料の総重量に対する総量で、10.0重量%~80.0重量%、より好ましくは30.0重量%~70.0重量%の上記材料を含有することを特徴とする、態様1~28のいずれか1つに記載のプロセス。
【0172】
30. 熱分解対象材料を供給する少なくとも1つの計量装置と、少なくとも1つの熱分解用加熱可能反応器と、少なくとも1つの熱分解物捕集器とを備える、熱分解対象材料から熱分解物を生成する熱分解装置であって、
上記熱分解用加熱可能反応器が、該反応器での300℃~700℃の温度での温度制御に使用することができる少なくとも1つの加熱素子と、また少なくとも1つの熱分解対象材料用入口と少なくとも1つの別個の熱分解物用出口とを備え、
計量装置が熱分解用加熱可能反応器の熱分解対象材料用入口へと少なくとも1つの供給ラインを介して接続するように、計量装置と反応器とが互いに関係して配置及び構成されており、
好ましくは気体状の熱分解物を熱分解物用出口から排出し、排出された熱分解物を熱分解物捕集器へと導入することができるように、熱分解用加熱可能反応器と熱分解物捕集器とが互いに流体連通しており、
少なくとも1つの熱分解物捕集器が、該捕集器内で、反応器から排出された熱分解物の温度を300℃未満まで低下させて、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はこれらの混合物から選択される熱分解生成物を形成させるのに使用することができ、300℃未満の温度に温度制御された少なくとも1つの冷却装置と、冷却によって得られた熱分解生成物を収集及び排出する少なくとも1つの容器とを備え、
熱分解対象材料を供給する少なくとも1つの計量装置と、少なくとも1つの熱分解用加熱可能反応器と、少なくとも1つの熱分解物捕集器とが、同時に作動することができるように互いに関係して配置及び構成されることを特徴とする、熱分解装置。
【0173】
31. ポリカーボネート含有化合物及びポリスチレン含有化合物の同時熱分解によるポリカーボネート含有化合物の製造において使用可能な少なくとも2つのヒドロキシル基を有する有機化合物の回収と、それに伴うポリスチレン含有化合物の製造において使用されるスチレンの同時回収のための、態様30に記載の熱分解装置の使用。
【0174】
32. 熱分解装置を、ポリカーボネート含有化合物の製造に使用するビスフェノールAの回収に使用することを特徴とする、態様31に記載の使用。
【0175】
33. いずれの場合も組成物の総重量に対して、
(i)25重量%~80重量%の総量での少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくはビスフェノールAと、
(ii)1重量%超の総量での厳密に1つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくはフェノールと、
(iii)1.5重量%超の総量での少なくとも1つのビニル置換基を有する少なくとも1つの芳香族化合物、好ましくはスチレン又はα-メチルスチレンと、
を少なくとも含み、
ここで、(i)~(iii)から選択される重量割合の総量と、組成物の他の成分の重量部との合計が100重量%となるように、(i)~(iii)の重量部範囲内の重量割合を選択する、組成物。
【0176】
34. 熱分解生成物であることを特徴とする、態様33に記載の組成物。
【0177】
35. 態様1~29のいずれか1つに記載のプロセスにおいて得られる熱分解生成物であることを特徴とする、態様34に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0178】
例1(本発明):
Covestro Deutschland AG(レーバークーゼン、ドイツ)製のポリカーボネート/ABS配合物Bayblend(商標)FC85(以下、PC配合物と称する)(リン含有有機化合物を含まない)の熱分解を、N通気を行いつつ固定床反応器において500℃で行った。ポリカーボネートは、それぞれ2gを含有するホルダーを備えた5つのAl坩堝に入れて反応器に導入した。ポリカーボネート配合物の滞留時間は30分とした。反応器内での気体流の流量(空塔速度)は0.07m/秒とした。反応器の下流には、得られた熱分解生成物の液体成分を分離、回収するための2つの凝縮器を配置した。熱分解残渣中の得られた炭化材料の含有量は、熱分解後の坩堝の重さを測ることにより求めた。2つの凝縮器の下流での気体は、GCによって特性評価した。油の形態で得られた熱分解生成物の成分は、GC-FIDによって決定した。これは、Supelco SPB50カラムを備えたAgilent 7890Aを用いて行った。この目的のため、熱分解油をアセトンで1:50又は1:100に希釈した。
【0179】
例2(本発明ではない):
Covestro Deutschland AG製のポリカーボネート/ABS配合物Bayblend(商標)FC85の熱分解を、N通気を行いつつ固定床反応器において800℃で行った。PCは、それぞれ2gを含有するホルダーを備えた5つのAl坩堝に入れて反応器に導入した。PC配合物の滞留時間は30分とした。反応器内での気体流の流量(空塔速度)は0.07m/秒とした。反応器の下流には、得られた熱分解生成物の液体成分を分離、回収するための2つの凝縮器を配置した。熱分解残渣中の得られた炭化材料の含有量は、熱分解後の坩堝の重さを測ることにより求めた。2つの凝縮器の下流での気体は、GCによって特性評価した。油の形態で得られた熱分解生成物の成分は、例1で記載した分析方法に従ってGC-FIDによって決定した。
【0180】
【表1】
【国際調査報告】