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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】多層組立体用フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240208BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240208BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B32B27/00 C
B32B7/12
C08G65/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549836
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2022054437
(87)【国際公開番号】W WO2022175555
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/151,820
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21181637.6
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, シャンタル
(72)【発明者】
【氏名】プレッテ, ジェームズ フランシス
(72)【発明者】
【氏名】エル-ヒブリ, モハマド ジャマール
(72)【発明者】
【氏名】チャオ, イーチアン
【テーマコード(参考)】
4F100
4J005
【Fターム(参考)】
4F100AK54B
4F100AK54G
4F100AK56B
4F100AK56G
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100AT00
4F100BA03
4F100CB02B
4F100CB02G
4F100DG01A
4F100DG01C
4F100DG04A
4F100DG04C
4F100EC18
4F100EH01
4F100GB90
4F100JB01
4F100JK01
4F100JL11B
4F100JL11G
4J005AA24
4J005BB01
4J005BB02
(57)【要約】
本発明は、それぞれポリマーを含む第1の構成要素及び第2の構成要素、並びに第1の構成要素と第2の構成要素との間に配置され、且つ第1の構成要素及び第2の構成要素に接合したフィルムを含む組立体に関する。このフィルムは、少なくとも1種のポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマー及び少なくとも1種の核剤を含むようなものである。この組立体は、破壊靭性が改善され、全体的に良好な機械的特性を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ポリマー(P1)を含む第1の構成要素と、
- ポリマー(P2)を含む第2の構成要素と、
- 前記第1の構成要素と前記第2の構成要素との間に配置され、且つ前記第1の構成要素及び前記第2の構成要素に接合したフィルムと
を含む組立体であって、
前記フィルムが、
a)少なくとも1種のポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマー
[前記PEKKポリマーは、前記ポリマー中の総モル数に基づき、少なくとも50モル%の式(M)及び(P):
【化1】
(式中、
- R及びRは、それぞれの場合において、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
- i及びjは、それぞれの場合において、0~4の範囲の独立して選択される整数である)の繰り返し単位を含み;
繰り返し単位(P)と繰り返し単位(M)とのモル比は、50:50~56:44である]と、
b)少なくとも1種の核剤と
を含むか、又はそれから構成される、組立体。
【請求項2】
前記PEKKポリマーが、前記ポリマー中の総モル数に基づき、少なくとも50モル%の式(M’)及び(P’):
【化2】
の繰り返し単位を含む、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
i及びjが、各R及びR基に関して0である、請求項1に記載の組立体。
【請求項4】
前記PEKKポリマーが、少なくとも90モル%の式(M)及び(P)の繰り返し単位を含む、請求項1又は3に記載の組立体。
【請求項5】
前記PEKKポリマーが、少なくとも95モル%の式(M)及び(P)の繰り返し単位を含む、請求項1又は3に記載の組立体。
【請求項6】
前記PEKKポリマーが、少なくとも99モル%の式(M)及び(P)の繰り返し単位を含む、請求項1又は3に記載の組立体。
【請求項7】
前記PEKKの実質的に全ての繰り返し単位が式(M)及び(P)の繰り返し単位である、請求項1又は3に記載の組立体。
【請求項8】
繰り返し単位(P)と繰り返し単位(M)とのモル比、又は繰り返し単位(P’)と繰り返し単位(M’)とのモル比が51:49~55:45である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項9】
繰り返し単位(P)と繰り返し単位(M)とのモル比、又は繰り返し単位(P’)と繰り返し単位(M’)とのモル比が54:46~53:47である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項10】
前記PEKKポリマーが、ASTM D3418に従ってDSCによって測定した場合、270~310℃、好ましくは280~305℃の範囲の融解温度Tmを示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項11】
前記PEKKポリマーが、融解熱ΔHが、次式:
ΔH>1.69×T-480 (式1)
(式中、
- Tは、PEKKの融解温度(℃)であり、且つ
- ΔHは、J/gの単位である)
を満たすようなものである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項12】
前記PEKKポリマーが、以下の一連の特性:
・ 融点T≦310℃;及び
・ 融解熱ΔH>5J/g;及び
・ ΔH>1.69×T-480 (式1)
(式中、
・ Tは、PEKKの融解温度(℃)であり、且つ
・ ΔHは、J/gの単位である)
に従う、請求項1~11のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項13】
前記PEKKポリマーの融解熱ΔHが少なくとも5.0J/gである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項14】
前記PEKKポリマーの融解熱ΔHが少なくとも6.0J/gである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項15】
前記PEKKポリマーの融解熱ΔHが少なくとも7.0J/gである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項16】
前記フィルムが、ホウ素含有化合物、アルカリ土類金属炭酸塩、酸化物、ケイ酸塩、アルカリ土類金属の塩、窒化物及び炭素ベースの化合物からなる群から選択される少なくとも1種の核剤を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項17】
前記核剤が窒化ホウ素である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項18】
前記PEKKポリマーが、ルイス酸の非存在下、又は前記モノマーの総重量に基づいて2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の量のルイス酸の存在下において溶媒中で製造されたようなものである、請求項1~17のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項19】
前記PEKKポリマーが、一般に100ppmより多い量、好ましくは200ppmより多い量、更により好ましくは300ppmより多い量のフッ素を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項20】
前記PEKKポリマーが、一般に100ppmより多い、好ましくは200ppmより多い、更により好ましくは300ppmより多い量のポリマー結合フッ素を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項21】
前記PEKKポリマーが実質的にアルミニウムを含まない、請求項1~20のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項22】
前記PEKKポリマー中のAlの量が50ppm未満、好ましくは25ppm未満、より好ましくは10ppm未満である、請求項1~21のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項23】
前記PEKKポリマーが、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下で30℃から800℃まで加熱する、ASTM D3850に従って熱重量分析によって測定した場合、少なくとも500℃、好ましくは少なくとも505℃、より好ましくは少なくとも510℃のTd(1%)を示す、請求項1~22のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項24】
前記フィルムが、15~800μm、25~600μm、好ましくは30~500μm、より好ましくは40~300μm、最も好ましくは50~250μmの範囲の厚さを有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項25】
前記フィルムが単層フィルムである、請求項1~24のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項26】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)が、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、ポリ(エーテルイミド)(PEI)、ポリ(アミドイミド)(PAI)、ポリ(アリールエーテルスルホン)5PAES)、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)、ポリ(フタラミド)(PPA)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)、ポリ(芳香族エステル)(PAE)及びこれらのブレンドからなる群から独立して選択される、請求項1~25のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項27】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)が、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、ポリ(エーテルイミド)(PEI)、ポリ(アミドイミド)(PAI)、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)、ポリ(フタラミド)(PPA)及びこれらのブレンドからなる群から独立して選択される、請求項1~25のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項28】
ポリマー(P1)及び/又はポリマー(P2)が、PEEK及びPEKKからなる群から独立して選択される、請求項1~25のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項29】
ポリマー(P1)及び/又はポリマー(P2)が、PEEK及びPEKKからなる群から独立して選択され、
PEEKは、少なくとも10モル%の繰り返し単位を含む任意のポリマーが、式(J-A’’):
【化3】
の繰り返し単位(RPEEK)(モル%は、前記ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく)であることを示し、
且つ
PEEKは、任意のポリマーが、少なくとも50モル%の式(J’-B)及び(J’-B):
【化4】
の繰り返し単位(モル%は、前記ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく)
を含むことを示す、請求項1~25のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項30】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)が、55/45~85/15、好ましくは57/43~80/20、より好ましくは58/42~75/25の範囲のT/I比を有するPEKKポリマー及びこれらの混合物から独立して選択される、請求項1~29のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項31】
- 前記第1の構成要素が、繊維及びポリマー(P1)を含む1層又は複数の層を含む複合材料であり、
- 前記第2の構成要素が、繊維及びポリマー(P2)を含む1層又は複数の層を含む複合材料であり、且つ/又は
- 前記フィルムが、スクリム、不織布又は軽量布を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項32】
前記繊維が、炭素繊維又はガラス繊維、好ましくは連続炭素繊維又は連続ガラス繊維である、請求項31に記載の組立体。
【請求項33】
核剤の割合が、前記PEKKポリマーの重量に対して、2.0重量%未満、更には1.5重量%未満である、請求項1~32のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項34】
- ポリマー(P1)を含む第1の構成要素とポリマー(P2)を含む第2の構成要素との間にフィルムを配置する工程と;
- ポリマー(P1)及びポリマー(P2)を溶融させずに、前記フィルムを溶融させるのに適切な温度(T )に前記フィルムを暴露する工程と
を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の組立体の製造方法。
【請求項35】
(T )が、式(3)又は(4):
>T+5 (3)
>T+10 (4)
(式中、Tは、前記フィルムの融解温度(℃)である)
を満たす、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
温度(T )が、前記フィルムの前記融解温度よりも高く、好ましくはポリマー(P1)及びポリマー(P2)の前記融解温度よりも低い、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
(T )が、式(7)及び/又は(8):
<Tm1-5 (7)
<Tm2-5 (8)
(式中、Tm1及びTm2は、ポリマー(P1)及び(P2)のそれぞれの融解温度である)
を満たす、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
(T )が、式(9)及び/又は(10):
<Tm1-10 (7)
<Tm2-10 (8)
(式中、Tm1及びTm2は、ポリマー(P1)及び(P2)のそれぞれの融解温度である)
を満たす、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記温度(T )が280℃~315℃の間で変動する、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記フィルムが前記温度(T )に曝露される間に圧力が印加され、前記構成要素を固結する、請求項34~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
好ましくは、ブラケット、クリップ及びスティフナーからなる群から選択される、請求項1~33のいずれか一項に記載の組立体を含む部品又は物品。
【請求項42】
航空宇宙産業又は自動車産業用の部品又は物品を調製するための物品又は部品を製造するための、請求項1~33のいずれか一項に記載の組立体の使用。
【請求項43】
請求項1~23のいずれか一項に記載のPEKKポリマーと、少なくとも1種の核剤、好ましくは窒化ホウ素とを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年2月22日出願の米国仮特許出願第63/151820号及び2021年6月25日出願の欧州特許出願公開第21181637.6号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。本出願とこのPCT出願との間に用語又は表現の明確さに影響を与える何れかの矛盾がある場合には、本出願のみが参照されるものとする。
【0002】
本発明は、それぞれポリマーを含む第1の構成要素及び第2の構成要素、並びに第1の構成要素と第2の構成要素との間に配置され、且つ第1の構成要素及び第2の構成要素に接合したフィルムを含む組立体に関する。このフィルムは、少なくとも1種のポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマー及び少なくとも1種の核剤を含むようなものである。この組立体は、特に、航空宇宙産業及び自動車産業用の部品及び物品を調製するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
多くの産業、特に航空宇宙産業内では、積層体、複合体、及び多層の異なる材料を含む他の組立体が大いに使用されており、各々の材料が最終組立体に特定の特性をもたらしている。複合体又は積層体を利用するのに必要とされ得る異なる層の間に、満足度の高い直接的な接着又は接合を達成することは、しばしば困難であることが証明されている。複合層の間で適合性が乏しいと、そのような組立体に提示される特性が制限される可能性がある。特に、特定の熱可塑性ポリマー(特に結晶性及び/又は高温熱可塑性物質)は、他の材料との接着性に乏しいことが示されており、組立体を極めて厳しい環境で使用する状況に置かれた場合、剥離及び構造的一体性が失われるという問題がもたらされる。
【0004】
熱可塑性の構成要素を共に固定及び/又は接合するための多数の技術が提案されている。特に、第1及び第2の熱可塑性の構成要素を共に固定するために、超音波溶接、誘導溶接及び熱板溶接などの多くの異なる溶接プロセスが提案されている。しかしながら、第1及び第2の部品が溶接領域で局所的に融解することにより、部品の一体性及び/又は形状に影響を及ぼす可能性がある。また、溶接領域の熱可塑性物質を融解及び/又は冷却する間に、部品に残留応力が蓄積することによって、変形が生じる可能性がある。
【0005】
溶接プロセスに関連する問題のいくつかに対処するために、フィルム及び/又は接着剤を部品及び/又は層の間に設け、それらを共に接合することが提案されている。
【0006】
国際公開第2011/001103A2号パンフレットには、複合体及び積層体などの組立体において、非晶質のポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)フィルムを結合層として使用することが記載されている。しかしながら、フィルムが非晶質性である場合、航空宇宙産業において構造物用途に使用するのに好適であるとは見なされない。一般的見地として、非晶質材料を複合体の接合層として使用すると、耐溶剤性などの特性が相対的に低い、構造物の最も弱い部分となる可能性がある。従って、接合部が液体に腐食されやすくなり、構造物の早すぎる破損をもたらす可能性がある。
【0007】
国際公開第2015/198063A1号パンフレットには、ポリアリールエーテルケトンポリマー、特にPEEKを含む第1の部品と第2の部品との間の接着剤として、PEEK-PEDEKポリマー、すなわち、式
-O-Ph-O-Ph-CO-Ph- I
の繰り返し単位と、式
-O-Ph-Ph-O-Ph-CO-Ph- II
の繰り返し単位
(式中、Phはフェニレン部分を表す)と
を有するポリマーを含む、ポリマー材料の使用が開示されている。しかしながら、PEEK-PEDEKポリマーの機械的特性は、他のポリアリールエーテルケトンポリマーほど優れたものではない。
【0008】
国際公開第2021/085797号パンフレット、国際公開第2019/243433号パンフレット及び国際公開第2018/115233号パンフレットは他の技術出願であるが、請求項1の主題を開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
改善された耐化学薬品性及び改善された機械的特性を示す組立体を調製するように、ポリマーから製造される2種の構成要素(又は部品)を一緒に強力に接合することができるフィルムが必要とされている。フィルムは、接合される2種の構成要素の溶融温度より低い温度で、有利には310℃より低い温度で処理されるべきである。
【0010】
本発明はこの技術的問題を解決することを目指す。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、添付の特許請求の範囲に記載されている。従って、本発明の目的は、請求項1~33に定義される組立体である。
【0012】
本発明の別の目的は、請求項34~40のいずれか一項に定義される組立体を製造する方法である。
【0013】
本発明の別の目的は、請求項41に定義されるような部品又は物品である。
【0014】
本発明の別の目的は、請求項42に定義される使用である。
【0015】
本発明の別の目的は、請求項43で定義されるPEKKポリマーを含む組成物である。
【0016】
これらの目的について、より正確且つ詳細な情報を以下に提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、積層体、複合体、及びそれぞれの材料が組立体に特定の特性をもたらす異なる材料の多層を含む他の組立体の分野におけるものである。これらの集合体は、同一であっても異なっていてもよい少なくとも2種の構成要素、並びに本明細書中、「接合フィルム」と記載されることもある少なくとも1種のフィルムを含む。
【0018】
本開示に記載される使用されるフィルムは、組立体構造、特にポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマーから製造される組立体構造において、ポリマー構成要素を接合するために適した一連の特性を示す。これらのフィルムは、少なくとも1種のポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマー及び少なくとも1種の核剤を含む。PEKKポリマーは、そのT/I比が50:50~56:44の範囲、好ましくはT/I比が51:49~55:45の範囲であるようなものである。このPEKKポリマーは、更に、航空宇宙産業における複合構造の場合のように、耐化学薬品性及び機械的特性が必要とされる組立体構造に良好に適合させる結晶化度を示す。
【0019】
本明細書に記載のフィルムは、接合されるポリマー構成要素と有利に適合する。
【0020】
本出願では、
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
- 要素又は構成要素が、列挙された要素又は構成要素のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に企図される関連する実施形態では、要素又は構成要素は、個別の列挙された要素若しくは構成要素の任意の1つでもあり得るか、又は明示的に列挙された要素若しくは構成要素の任意の2つ以上からなる群からも選択され得、要素又は構成要素のリストに列挙されたいかなる要素又は構成要素も、このようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、
- 端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び同等物を含む。
【0021】
本発明の第1の目的は、
- ポリマー(P1)を含む第1の構成要素と、
- ポリマー(P2)を含む第2の構成要素と、
- 第1の構成要素と第2の構成要素との間に配置され、且つ第1の構成要素及び第2の構成要素に接合したフィルムと
を含む組立体であって、
フィルムが、特定のT/I比を示す少なくとも1種のポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマー及び少なくとも1種の核剤を含む組立体である。
【0022】
本発明に関して、「接合」という用語は、構成要素が他と互いに、又はそれぞれ互いに、好ましくは永久的に付着することを意味する。
【0023】
組立体のフィルムは、更に、スクリム及び/又は不織布補強材及び/又は軽量布を含んでもよく、これらは、溶融流を調整するのに役立ち、且つ/又は接合する均一な表面を提供し、更に、接合線における局所的な形態に影響を与える可能性がある。
【0024】
本発明の組立体は、構築される複合部品に応じて、更なる構成要素(第3、第4、第5、...)及びフィルムを含んでもよい。例えば、本発明の組立体は、ポリマー(P3)を含む第3の構成要素、及び第2の構成要素と第3の構成要素との間のフィルムを含んでもよく、この追加のフィルムは、第2の構成要素及び第3の構成要素を接合する。
【0025】
PEKKポリマー
本明細書に記載されるポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーは、少なくとも50モル%の式(M)及び(P)の繰り返し単位を含むようなものである(モル%はポリマー中の総モル数に基づく):
【化1】
(式中、
- R及びRは、それぞれの場合において、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
- i及びjは、それぞれの場合において、0~4の範囲の独立して選択される整数であり;
繰り返し単位(P)及び繰り返し単位(M)のモル比(本明細書中、「T/I比」と記載される)は、50:50~56:44、好ましくは51:49~55:45である)。
【0026】
一実施形態によれば、R及びRは、上記の式(P)及び(M)のそれぞれの位置において、1個以上のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン及び四級アンモニウム基を任意選択的に含むC1~C12部位からなる群から独立して選択される。
【0027】
本開示の一実施形態によれば、PEKK中の繰り返し単位の少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は全ては、式(M)及び(P)の繰り返し単位である。
【0028】
一実施形態において、PEKKの繰り返し単位の実質的に全てが、式(M)及び(P)の繰り返し単位である。一実施形態において、PEKKの繰り返し単位は、式(M)及び(P)の繰り返し単位からなる。
【0029】
フィルムのポリマー構成要素として利用されるPEKKの、「T/I比」とも記載される、繰り返し単位(M)に対する繰り返し単位(P)のモル比は、50:50~56:44、好ましくは51:49~55:45の範囲である。PEKKは、好ましくは、54:46又は53:47のT/I比を有する。
【0030】
別の実施形態によれば、i及びjは、各R及びR基についてゼロである。この実施形態によれば、PEKKポリマーは、少なくとも50モル%の式(M’)及び(P’)の繰り返し単位を含む(モル%はポリマー中の総モル数に基づく):
【化2】
【0031】
本開示の一実施形態によれば、PEKK中の繰り返し単位の少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は全ては、式(M’)及び(P’)の繰り返し単位である。
【0032】
一実施形態において、PEKKの繰り返し単位の実質的に全ては、式(M’)及び(P’)の繰り返し単位である。一実施形態において、PEKKの繰り返し単位は、式(M’)及び(P’)の繰り返し単位からなる。
【0033】
フィルムのポリマー構成要素として利用されるPEKKの、「T/I比」とも記載される、繰り返し単位(M’)に対する繰り返し単位(P’)のモル比は、50:50~56:44、好ましくは51:49~55:45の範囲である。PEKKは、好ましくは、54:46又は53:47のT/I比を有する。
【0034】
上記の通り、フィルムのポリマー構成要素として利用されるPEKKの、「T/I比」とも記載される、繰り返し単位(M)/(M’)に対する繰り返し単位(P)/(P’)のモル比は、50:50~56:44、好ましくは51:49~55:45の範囲である。構成要素PEKKは、好ましくは、54:46又は53:47のT/I比を有する。
【0035】
本開示の一実施形態によれば、本明細書に記載のPEKKポリマーは、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定される、270~310℃、好ましくは280~305℃の範囲のTmを有する。
【0036】
より詳細には、融解温度Tmは、ASTM D3418に従って、10℃/分の加熱冷却速度を用いてDSCにより測定される。Tmは2回目のヒートスキャンで決定される。以下のサイクルに従うことができる:
- 1回目の加熱サイクル:10.00℃/分で30.00℃から400.00℃、400.00℃で1分間等温;
- 1回目の冷却サイクル:10.00℃/分で400.00℃から30.00℃、1分間等温;
- 2回目の加熱サイクル:10.00℃/分で30.00℃から400.00℃、400.00℃で1分間等温。
【0037】
本開示の一実施形態によれば、本明細書に記載のPEKKポリマーは、融解熱ΔHfが以下の式を満たすようなものである:
ΔH>1.69×T-480 (式1)
(式中、
- Tは、PEKKの融解温度(℃)であり、且つ
- ΔHは、J/gの単位である)。
【0038】
このような式は、本発明に関して、所定の融解温度(Tm)に対して許容される結晶化度のPEKKを、同じTmにおいて許容されない結晶化度のPEKKから区別する経験式である。
【0039】
本開示の一実施形態によれば、本明細書に記載のPEKKポリマーは、融解熱ΔHfが少なくとも5J/g、少なくとも6J/g又は少なくとも7J/gであるようなものである。融解熱は、請求項13~15の一項に定義される通りであってよい。
【0040】
より詳細には、ASTM D3418に従って、10℃/分の加熱及び冷却速度を使用して、2回目のヒートスキャンにおいてDSCによって測定される融解熱。以下のサイクルに従うことができる:
- 1回目の加熱サイクル:10.00℃/分で30.00℃~400.00℃、400.00℃で1分間等温;
- 1回目の冷却サイクル:10.00℃/分で400.00℃~30.00℃、1分間等温;
- 2回目の加熱サイクル:10.00℃/分で30.00℃~400.00℃、400.00℃で1分間等温。
【0041】
PEKKポリマーの合成
PEKKポリマーの合成は、典型的には、PEKKポリマーを得るために溶媒中でモノマーを重縮合する工程及び溶媒及び塩を抽出する工程を含む。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、モノマーの重縮合は、ルイス酸の非存在下で生じるか、又はモノマーの総重量に基づいて2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の量のルイス酸の存在下で生じる。
【0043】
本発明に関連して、ルイス酸は、BF、AlCl、FeCl、CFSOH及びCHSOHからなる群から選択されるものとして定義され得る。
【0044】
好ましい実施形態において、PEKKポリマーの合成は、
工程a)DPSなどの溶媒中、ルイス酸の非存在下又はモノマーの総重量に基づいて2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の量のルイス酸の存在下において、以下のモノマー(P-OH)、(M-OH)、(P-F)及び/又は(M-F):
【化3】
(式中、
- R、R、R及びRは、それぞれの場合において、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
- p、q、r及びsは、それぞれの場合において、0~4の範囲の独立して選択される整数である)
を重縮合する工程であって、
(P-OH)及び(M-OH)のモル数:(P-F)及び(M-F)のモル数のモル比が、
【数1】
であるようなものであり、
好ましくは、モル比は、≧対0.985、≧対0.990又は≧対0.995であり、
好ましくは、モル比は、≦対1.015、≦対1.010又は≦対1.005である、工程、
工程b)粉末を得るために溶媒及び塩を抽出する工程
を含む。
【0045】
好ましくは、p=q=r=s=0である。
【0046】
上記の方法は、特に低い揮発分を有する特定のPEKK粉末を製造し、これは特定の特性、特に特定の高い融解エンタルピーΔHを有するPEKKを得るのに役立つ。一実施形態によれば、PEKKポリマーは、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下で30℃から800℃まで加熱する、ASTM D3850に従った熱重量分析で測定されたとき、少なくとも500℃、好ましくは少なくとも505℃、より好ましくは少なくとも510℃のTd(1%)を有する。Td(1%)は、所定の量の揮発性物質(=1.0重量%)が試料から抜けた温度を示す。
【0047】
一実施形態において、R、R、R及びRは、上記の式(P-OH)、(P-F)、(M-OH)及び(M-F)の各々の位置において、1つ以上のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン及び四級アンモニウム基を任意選択的に含むC1~C12部位からなる群から独立して選択される。
【0048】
T/I比は、(P-F)+(P-OH)及び(M-F)+(M-OH)の量によって制御される。
【0049】
好ましい実施形態において、PEKKポリマーを導く重縮合は、以下のモノマー:(P-OH)、(M-OH)及び(P-F)のみを含む。
【0050】
工程a):工程a)の重縮合は求核置換に基づく。重縮合は、NaCO、KCO又はそれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1種の塩の存在下、DPSなどの溶媒中で行われる。工程a)における温度は、通常、250℃~350℃、より特に300℃~350℃である。
【0051】
塩基の量は、好ましくは、モノマーの全てのOH基を活性化するために十分な量であるべきである。塩基の量は、通常、OH基の量よりわずかに多い。1.0~5.0%のモル過剰が使用されてよい。
【0052】
一実施形態によれば、塩基は、溶媒及びモノマーを含む混合物に添加され、混合物は好ましくは250℃より高い温度、特に250℃~350℃の温度で添加される。塩基の導入時間は、10分~120分間、好ましくは30分~90分間であってよい。
【0053】
別の好ましい実施形態によれば、重縮合の最後に、モノマー(P-F)及び/又は(M-F)、好ましくは(P-F)を混合物に添加する。これにより、PEKKポリマーがフッ素末端基を含むことが保証される。
【0054】
工程b)では、工程a)で得られたポリマーを、溶媒及び塩を除去するように処理する。例えば、工程b)は、ポリマーを、水、アルコール、エーテル、ケトン及びそれらの組み合わせの群から選択される液体と接触させることによって実施され得る。液体は、好都合には、水と、水、アルコール、エーテル、ケトン及びそれらの組み合わせの群から選択される液体との混合物であってもよい。液体はまた、酸又は塩基を含んでもよい。
【0055】
合成アプローチは、PEKKを、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)及びリン酸水素二カリウム(KHPO)又はこれらの混合物の少なくとも1つの溶液と接触させる工程、好ましくはPEKKをそれらで洗浄する追加の工程を伴い得る。例えば、PEKKを、溶液、例えばNaHPO及びNaHPOの両方を含む水溶液と接触させてよい(例えば、それによって洗浄してもよい)。本明細書で用いられる溶液で使用されるリン酸塩は、例えば、無水物、一水和物、二水和物又は七水和物であり得る。
【0056】
PEKKポリマーをリン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)及びリン酸水素二カリウム(KHPO)又はこれらの混合物の少なくとも1つの溶液と接触させる工程に加えて、合成アプローチは、PEKKを接触させる少なくとも1つの工程、好ましくはPEKKを、PEKKポリマーを中和するのに十分な量の酸又は塩基を含む溶液で洗浄する工程も伴い得る。
【0057】
好適な酸及び塩基としては、アルコール、ケトン、アミド、芳香族炭化水素などの有機溶媒中又は溶媒の沸点より低い温度の水中で少なくとも0.1重量%の溶解度を示す任意の有機又は無機の酸又は塩基が挙げられる。好ましくは、溶媒は、最大で250℃、より好ましくは最大で150℃、最も好ましくは最大で100℃の沸点を有する。好ましくは、酸は、3.0~7.5の範囲のpKを有し、好ましくは、塩基は、-1.0~8.0の範囲のpKを有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、酸は、酢酸、一アルカリ金属クエン酸及びこれらの組み合わせから選択される。
【0059】
いくつかの実施形態では、塩基は、有機アミン、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、テトラアルキルアンモニウムアセテート、テトラアルキルホスホニウムヒドロキシド、テトラアルキルホスホニウムアセテート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ヒドロキシド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属一水素リン酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属リン酸及びこれらの組み合わせから選択される。
【0060】
好ましい溶媒は、水、アルコール、エーテル、又はケトンであり、沸点が多くとも150℃であるが、少なくとも0.1重量%の酸又は塩基を溶解することができ、PEKKポリマーと不利に反応しない任意の溶媒を使用することができる。好ましくは、溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールである。より好ましくは、溶媒は、水、メタノール又はエタノールである。いくつかの実施形態において、2種以上の溶媒を使用することができる。
【0061】
PEKKポリマーは、より特には、実施例1~3に開示された製法に従って、特に実施例3に従って調製してもよく、T/I比は、モノマーの量の変動によって変更される(表1及び2参照)。
【0062】
本明細書に開示される調製方法は、一般的に、又は開示される特定の実施形態に従って、以下の特性の1つ又は複数を有する特定のPEKKポリマーを得ることを可能にする:
- PEKKポリマーは、一般に100ppmより高い、好ましくは200ppmより高い、更に好ましくは300ppmより高い量でフッ素を含む。このようなポリマー結合フッ素は、フッ素含有モノマーの使用の必然的な特徴である;
- PEKKポリマーはアルミニウムを実質的に含まない。PEKKポリマー中のAlの量は、一般に50ppm未満、好ましくは25ppm未満、より好ましくは10ppm未満である;
- PEKKポリマーは、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下で30℃から800℃まで加熱する、ASTM D3850に従った熱重量分析で測定されたとき、少なくとも500℃、好ましくは少なくとも505℃、より好ましくは少なくとも510℃のTd(1%)を有する。
【0063】
Al及びF含有量は、AlについてのICP-OES分析及びフッ素についての燃焼-イオンクロマトグラフィーなどの、元素分析によって都合よく測定される。
【0064】
核剤
本発明によれば、フィルムは、少なくとも1種の核剤を更に含む。核剤は、ホウ素含有化合物(例えば、窒化ホウ素、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸カルシウムなど)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウムマグネシウム)、酸化物(例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、三酸化アンチモンなど)、ケイ酸塩(例えば、タルク、ケイ酸ナトリウムアルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなど)、アルカリ土類金属の塩(例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなど)、窒化物などからなる群から選択され得る。核剤はまた、炭素系であり得る。このカテゴリーの核剤には、グラファイト、グラフェン、グラファイトナノプレートレット及び酸化グラフェンが含まれる。カーボンブラック並びに炭素の他の形態であってもよい。
【0065】
核剤が窒化ホウ素であった場合に特に良好な結果が得られた。
【0066】
核剤の割合は、PEKKポリマーの重量に対して、一般に2.0重量%未満、更に1.5重量%未満である。この割合は、通常、0.1重量%より高く、更に0.5重量%より高い。この割合は、通常、0.5重量%~2.0重量%、又は0.5重量%~1.5重量%であり得る。
【0067】
他の添加剤
いくつかの実施形態において、フィルムは、PEKKポリマー及び核剤以外の更なる構成要素として、少なくとも1種の添加剤を含む。好適な添加剤としては、(i)染料などの着色剤、(ii)二酸化チタン、硫化亜鉛及び酸化亜鉛などの顔料、(iii)光安定剤、例えば、UV安定剤、(iv)熱安定剤、(v)有機ホスファイト及びホスホナイトなどの酸化防止剤、(vi)酸スカベンジャー、(vii)加工助剤、(ix)内部潤滑剤及び/又は外部潤滑剤、(x)難燃剤、(xi)煙抑制剤、(x)帯電防止剤、(xi)ブロッキング防止剤、(xii)カーボンブラック及びカーボンナノフィブリルなどの導電性添加剤、(xiii)可塑剤、(xiv)流動調整剤、(xv)増量剤、(xvi)金属不活性化剤並びに(xvii)シリカなどの流動助剤が含まれるが、それらに限定されない。フィルムは、1種の添加剤、2種、3種又は数種の添加剤、例えば、1種の熱安定剤及び1種の顔料など、上記で列挙したものと同一のカテゴリー又は異なるカテゴリーの添加剤を含んでいてもよい。
【0068】
これらの実施形態によれば、そのような添加剤の量は、フィルムの総重量に基づいて、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、更に好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満である。
【0069】
別の実施形態において、フィルムは任意の充填剤を含まないか、又は0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満の任意の充填剤を含む。
【0070】
別の実施形態において、フィルムは充填剤を含まないが、スクリム、不織布又は軽量布などの、以下に説明するような「強化繊維状繊維」を含む。「強化繊維状繊維」という用語は、複合構造の強化のために採用された1種又は複数種の繊維状材料、すなわち「強化繊維」を含み得る。「繊維」という用語は、少なくとも0.5mmの長さを有する有機及び/又は無機の繊維を指すために本明細書では用いられる。
【0071】
本明細書に記載されるように、フィルムは、少なくとも1種のPEKKポリマーであるポリマー構成要素、並びに少なくとも1種の核剤を含む。本明細書で使用される「ポリマー構成要素」という用語は、繰り返し単位を有し、少なくとも2,000g/モルの分子量を有する化合物を意味する。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記で詳述したPEKKポリマーは、フィルム中で唯一のポリマー構成要素である。
【0073】
いくつかの他の実施形態において、フィルムのポリマー構成要素は、2種以上のポリマーのブレンド、例えば、いくつかのPEKKポリマー又は別個のポリマーのブレンドを含む。
【0074】
例えば、フィルムのポリマー構成要素は、PEKKと更に1種の別個のポリマーとのブレンドからなってもよく、ここでポリマー構成要素の少なくとも60重量%は上述のPEKKからなり、40重量%未満は上述のPEKKポリマーとは異なる少なくとも1つのポリマーからなる。別の例として、フィルムのポリマー構成要素は、少なくとも70重量%の上述のPEKKと、30重量%未満の上述のPEKKポリマーとは異なる少なくとも1種のポリマーとからなる。さらに別の例として、フィルムのポリマー構成要素は、少なくとも80重量%の上述のPEKKと、20重量%未満の上述のPEKKポリマーとは異なる少なくとも1種のポリマーとからなる。別の例として、フィルムのポリマー構成要素は、少なくとも90重量%の上述のPEKKと、10重量%未満の上述のPEKKポリマーとは異なる少なくとも1種のポリマーとからなる。
【0075】
いくつかの実施形態において、フィルムのポリマー構成要素は、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、又は0.5重量%未満の上記のPEKKポリマーとは異なるポリマーからなる。
【0076】
このような別個のポリマーは、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマー、及びポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマーからなる群から選択され得る。追加のポリマー構成要素がPAESポリマーである場合、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、及びポリ(エーテルスルホン)(PES)からなる群から選択され得る。追加のポリマー構成要素がPAEKポリマーである場合、有利には、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)ポリマー、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマー、ポリ(エーテルケトン)(PEK)、ポリ(エーテルケトンエーテルケトンケトン)(PEKEKK)、及びPEEK-PEDEKコポリマーからなる群から選択され得る。追加のポリマー構成要素は、ポリエーテルイミド(PEI)又はポリ(アミドイミド)(PAI)などのポリイミドであり得る。
【0077】
特定の実施形態において、フィルムは、少なくとも90重量%のPEKKポリマー及び少なくとも1種の添加剤を含む。最も好ましくは、フィルムは、フィルムの総重量に基づいて、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%のPEKKポリマー及び少なくとも1種の添加剤を含む。
【0078】
スクリム、不織布及び軽量強化材
組立体のフィルムは、スクリム及び/又は不織布強化材及び/又は軽量布を更に含んでもよく、これらは、溶融流を調整するのに役立ち、及び/又は接合する均一な表面を提供し、また接合線の局所的形態に影響を与える可能性がある。
【0079】
本明細書に記載のフィルムは、有利には、スクリム、又はスクリム層を含み得る。スクリムは、天然織布、合成織布、不織布、ニット(緯糸挿入ニットを含むがこれらに限定されない)又はプラスチックから製造されていてもよい。
【0080】
本明細書に記載のフィルムはまた、有利には、不織布織物又は繊維ウェブとも呼ばれる不織布を含んでいてもよい。
【0081】
このようなスクリム、不織布又は軽量布は、均一な接合線の厚さを維持するのに役立つため、有利である。
【0082】
フィルムの調製プロセス
本明細書に記載のフィルムは、15~800μm、25~600μm、好ましくは30~500μm、より好ましくは40~300μm、最も好ましくは50~250μmの範囲の厚さを有し得る。
【0083】
記載されたフィルムは、ポリマー加工における当該技術分野で公知のあらゆる従来の方法によって調製されてもよい。例えば、フィルムの構成要素を、任意選択的に一軸延伸又は二軸延伸をしながら、キャスト押出によってフィルムの形態で加工することができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、フィルムの作製方法は、フィルムの構成要素の物理的混合物を融解混練することを含む。共回転及び逆回転押出機、一軸スクリュー押出機、コニーダー、ディスクパックプロセッサー並びに様々な他のタイプの押出装置などの従来の融解混練装置を使用することができる。好ましくは、押出機、より好ましくは二軸スクリュー押出機を使用することができる。
【0085】
一実施形態によれば、フィルムの成分をDPSなどのPEKKの溶媒中で接触させ、ポリマーが溶媒に全部又は一部溶解する温度で混合物を撹拌する。次いで、溶媒を、例えば既に上記で開示した方法によって抽出する。実施例4はこの実施形態を示す。
【0086】
一実施形態によれば、フィルムの成分を含む物理的混合物は、押出機でコンパウンドされ、次いでペレット又は顆粒に切断される。その後、顆粒又はペレットを更に加工して、フィルムを製造することができる。
【0087】
或いは、物理的混合物は、押出機内で混練され、その後フィルムに直接成形される。
【0088】
フィルムの製造に特に適した技術は、融解した組成物を細長い形状のダイを通して押し出して押出テープを得、前記押出テープをキャスト/圧延してフィルムを得ることを伴う。テープは、適切なロールに通すことによって圧延してフィルムにすることができ、ロールは適切な温度で維持することができ、その速度は要求される厚さを達成するように調整することができる。フィルムの厚さは、ダイで調整される。フィルムを固化させるために使用した冷却温度に応じて、完成(押出)形態のフィルムを非晶質又は半結晶にすることができる。
【0089】
有利な実施形態において、フィルムは単層フィルムであり、すなわちPEKKコポリマーを含む1層のみからなる。
【0090】
フィルムがスクリム、不織布又は軽量布を含む場合、これらの強化層又は織物強化材は、APCプロセス、スラリー含浸プロセス又はフィルムラミネーションなどの様々な方法によってPEKKポリマーを含浸させることができる。例えば、このプロセスは、
- ポリマー粉末粒子の形状のPEKK構成要素、少なくとも水性溶媒及び少なくとも1種の界面活性剤を含む液体媒体中に布を含浸させること、
- 含浸した布をPEKKの融解温度よりも高い温度まで加熱すること、並びに
- 例えば特定の形状の少なくとも1つのダイを用いて布を成形すること
を含む。
【0091】
ポリマー(P1)及び(P2)
「ポリマー(P1)を含む第1の構成要素」という表現は、少なくとも1つの表面、特にポリマー(P1)を含む接合フィルムと接触する表面を有する構成要素を指すために本明細書で使用される。第1の構成要素は、前記ポリマー(P1)から構成されてもよい。或いは、第1の構成要素は、ポリマー(P1)を含む1つの表面を含む。ポリマー(P1)を含む表面は、典型的に、接合フィルムとの接合を形成するのに好適な厚さを有する。前記厚さは、便宜上5μm以上であり得る。
【0092】
「ポリマー(P2)を含む第2の構成要素」という表現は、少なくとも1つの表面、特にポリマー(P2)を含む接合フィルムと接触する表面を有する構成要素を指すために本明細書で使用される。第2の構成要素は、前記ポリマー(P2)から構成されてもよい。或いは、第2の構成要素は、ポリマー(P2)を含む1つの表面を含む。ポリマー(P2)を含む表面は、典型的に、接合フィルムとの接合を形成するのに好適な厚さを有する。前記厚さは、便宜上5μm以上であり得る。
【0093】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)は、同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0094】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)は、結晶性及び/又は高温熱可塑性ポリマーからなる群から独立して選択され得る。非限定的な例としては、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、ポリ(エーテルイミド)(PEI)、ポリ(アミドイミド)(PAI)、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)、ポリ(フタルアミド)(PPA)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)、ポリ(芳香族エステル)(PAE)及びこれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
好ましい実施形態において、ポリマー(P1)及びポリマー(P2)は、PAEK、及びPAEKのブレンドからなる群から独立して選択される。PAEKは、例えば、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)ポリマー、PEEKコポリマー、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマー、ポリ(エーテルケトン)(PEK)及びポリ(エーテルケトンエーテルケトンケトン)(PEKEKK)からなる群から選択することができる。PEEKコポリマーは、例えば、PEEK-PEDEKコポリマーであることが可能である。
【0096】
ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)
本明細書で使用される場合、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)は、Ar’-C(=O)-Ar*基(式中、Ar’及びAr*は、互いに同じであるか又は異なり、芳香族基である)を含む繰り返し単位(RPAEK)を含む任意のポリマーを示し、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく。繰り返し単位(RPAEK)は、以下の式(J-A)~式(J-D)の単位からなる群から選択される:
【化4】
(式中、
R’は、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
j’は、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)。
【0097】
繰り返し単位(RPAEK)において、それぞれのフェニレン部分は、独立して、繰り返し単位(RPAEK)においてR’とは異なる他の部位への1,2、1,4又は1,3結合を有し得る。好ましくは、フェニレン部分は、1,3又は1,4結合を有し、より好ましくは、それらは、1,4結合を有する。
【0098】
繰り返し単位(RPAEK)において、フェニレン部分がポリマーの主鎖を連結するもの以外の他の置換基を有さないように、j’は、好ましくは、各位置においてゼロである。
【0099】
一実施形態によれば、PAEKは、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)である。
【0100】
本明細書で使用される場合、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づいて、式(J-A)の繰り返し単位(RPEEK)を含む任意のポリマーを示す:
【化5】
(式中、
R’は、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
j’は、各R’について、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数(例えば、1、2、3、又は4)である)。
【0101】
式(J-A)によれば、繰り返し単位(RPEEK)の各芳香環は、1~4のラジカル基R’を含み得る。j’が0である場合、対応する芳香環は、いかなるラジカル基R’も含まない。
【0102】
繰り返し単位(RPEEK)の各フェニレン部分は、互いに独立して、他のフェニレン部分への1,2、1,3又は1,4結合を有し得る。ある実施形態によれば、繰り返し単位(RPEEK)の各フェニレン部分は、互いに独立して、他のフェニレン部分への1,3又は1,4結合を有する。更に別の実施形態によれば、繰り返し単位(RPEEK)の各フェニレン部分は、他のフェニレン部分への1,4結合を有する。
【0103】
一実施形態によれば、R’は、上の式(J-A)中での各位置において、1つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含む、C1~C12部位、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン並びに4級アンモニウム基からなる群から独立して選択される。
【0104】
一実施形態によれば、j’は、各R’についてゼロである。換言すれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(RPEEK)は、式(J’-A)に従う。
【化6】
【0105】
本開示の別の実施形態によれば、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)は、繰り返し単位の少なくとも10モル%が式(J-A’’):
【化7】
の繰り返し単位(RPEEK)(モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく)である任意のポリマーを示す。
【0106】
本開示の一実施形態によれば、PEEK中の繰り返し単位の少なくとも10モル%(ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく)、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は全ては、式(J-A)、(J’-A)及び/又は(J’’-A)の繰り返し単位(RPEEK)である。
【0107】
PEEKポリマーは、そのため、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。PEEKポリマーがコポリマーである場合、それは、ランダム、交互又はブロックコポリマーであり得る。
【0108】
PEEKがコポリマーである場合、これは、式(J-D)
【化8】
(式中、
R’は、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
j’は、各R’について、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)
の繰り返し単位などの、繰り返し単位(RPEEK)とは異なり、且つこの繰り返し単位に加えて、繰り返し単位(R*PEEK)から構成されることが可能である。
【0109】
式(J-D)によれば、繰り返し単位(R*PEEK)の各芳香環は、1~4のラジカル基R’を含み得る。j’が0である場合、対応する芳香環は、いかなるラジカル基R’も含まない。
【0110】
一実施形態によれば、R’は、上の式(J-D)中での各位置において、1個又は複数個のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン並びに第四級アンモニウム基を任意選択的に含む、C1~C12部位からなる群から独立して選択される。
【0111】
一実施形態によれば、j’は、各R’についてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R*PEEK)は、式(J’-D)に従う。
【化9】
【0112】
本開示の別の実施形態によれば、繰り返し単位(R*PEEK)は、式(J’’-D)に従う。
【化10】
【0113】
本開示の一実施形態によれば、PEEK中の繰り返し単位の90モル%(ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく)未満、80モル%未満、70モル%未満、60モル%未満、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、10モル%未満、5モル%未満、1モル%未満、又は全ては、式(J-D)、(J’-D)、及び/又は(J’’-D)の繰り返し単位(R*PEEK)である。
【0114】
一実施形態によれば、PEEKポリマーは、PEEK-PEDEKコポリマーである。本明細書で使用される場合、PEEK-PEDEKコポリマーは、
式(J-A)、(J’-A)、及び/又は(J’’-A)の繰り返し単位(RPEEK)と、
式(J-D)、(J’-D)又は(J’’-D)の繰り返し単位(R*PEEK)(本明細書では繰り返し単位(RPEDEK))とも記載される)と
を含むポリマーを示す。PEEK-PEDEKコポリマーは、95/5~5/95、90/10~10/90、又は85/15~15/85の範囲の繰り返し単位の相対モル比(RPEEK/RPEDEK)を含み得る。繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEDEK)の合計は、例えば、少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%のPEEKコポリマー中の繰り返し単位を表すことができる。また、繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEDEK)の合計は、100モル%のPEEKコポリマー中の繰り返し単位を表すこともできる。
【0115】
PEEKは、Solvay Specialty Polymers USA,LLCからKetaSpire(登録商標)PEEKとして市販されている。
【0116】
本開示の一実施形態によれば、PEEKポリマーは、(ポリスチレン標準を使って、160℃でフェノール及びトリクロロベンゼン(1:1)を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される)55,000~105,000g/モル、例えば65,000~85,000g/モル、の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0117】
別の実施形態では、PAEKは、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)である。ポリマー(P1)及び(P2)に関連して記載されるPEKKは、組立体の2種の構成要素を接合するフィルムを調製するために使用されるものとは異なるものであり得る。特に、このPEKKポリマーは、異なるT/I比を有し得る。ポリマー(P1)及び(P2)は、同一のPEKK又は異なるPEKK自体、例えば、異なるT/I比を有するPEKKであり得る。
【0118】
より正確には、組立体の第1成分及び第2成分のポリマーとして使用され得るポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)は、実際には、50モル%より多い式(J-B)及び(J-B)の繰り返し単位を含むポリマーを示す(モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく):
【化11】
(式中、R及びRは、各場合に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
i及びjは、各場合に、0~4の範囲の独立して選択される整数である)。
【0119】
一実施形態によれば、R及びRは、上の式(J-B)及び(J-B)中で、各位置において、任意選択的に1種又は複数のヘテロ原子を含む、C1~C12部位、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン及び4級アンモニウム基からなる群から独立して選択される。
【0120】
別の実施形態によれば、i及びjは、各R及びR基についてゼロである。この実施形態によれば、PEKKポリマーは、少なくとも50モル%の式(J’-B)及び(J’-B)の繰り返し単位を含み、モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく:
【化12】
【0121】
本開示の一実施形態によれば、PEKK中の繰り返し単位の少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は全てのPEKK中の繰り返し単位は、式(J-B)及び(J-B)の繰り返し単位である。
【0122】
特定の実施形態において、ポリマー(P1)及びポリマー(P2)は、55/45~85/15、好ましくは57/43~80/20、より好ましくは58/42~75/25の範囲の、T/I比とも記載される、繰り返し単位(J-B)/(J’-B)に対する繰り返し単位(J-B)/(J’-B)のモル比を有する、上記に定義されるようなPEKKポリマーから独立して選択される。
【0123】
PEKKポリマーは、ポリマー中に存在するイソフタロイル(I)部分に対するテレフタロイル(T)部分のモル比であるT/I比によって特徴付けられることが知られている。
【0124】
他の実施形態では、ポリマー(P1)及びポリマー(P2)は、各PEKKポリマーがT/I比によって特徴付けられる第1及び第2のPEKKポリマーを含む組成物から独立して選択されてもよく、第1のPEKKポリマーのT/I比は、第2のPEKKポリマー、特に330℃以下の融解温度を有するそれらの組成物のT/I比とは異なる。本実施形態の一態様において、第1のPEKKポリマーは、a)少なくとも50/50、好ましくは少なくとも54/46、より好ましくは少なくとも56/44;最も好ましくは少なくとも57/43のT/I比、及び/又はb)最大64/36、好ましくは最大63/37、より好ましくは最大62/38のT/I比を有することが好ましい。第2のPEKKポリマーは、a)少なくとも65/35、好ましくは少なくとも66/34、より好ましくは少なくとも67/33のT/I比、及び/又はb)最大85/15、好ましくは最大83/17、より好ましくは最大82/18のT/Iを有することが好ましい。
【0125】
PEKKは特に、Solvay Specialty Polymers USA,LLCからNovaSpire(登録商標)PEKKとして、又はCypek(登録商標)FC及びCypek(登録商標)DSとして市販されている。
【0126】
一実施形態において、ポリマー(P1)及び/又は(P2)は、求核性のPEKK、すなわち、ルイス酸の非存在下でのモノマーの重縮合によって製造されるPEKKであり、ここで、モノマーは、ジヒドロキシ及びジフルオロベンゾイル含有芳香族化合物、及び/又はヒドロキシル-フルオロベンゾイル含有芳香族化合物である。
【0127】
代替的実施形態において、ポリマーPEKKは、求電子性PEKKである。
【0128】
別の実施形態において、PAEKは、ポリ(エーテルケトン)(PEK)である。本明細書で使用する場合、「ポリ(エーテルケトン)」及び「ポリマー(PEK)」という表現は、繰り返し単位(RPEK)の50モル%より多くが、式(K’-C):
【化13】
の繰り返し単位(モル%は、PEK中の繰り返し単位の総モル数に基づく)
である任意のポリマーを示す。
【0129】
この実施形態によれば、PEKポリマーは、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくともモル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は実質的に全ての繰り返し単位(RPEK)が、繰り返し単位(K’-C)であるようなものであり得る。好ましいPEKポリマーは、実質的に全ての繰り返し単位が式(K’-C)の単位であるポリマーであり、末端基、欠陥及び少量の不純物が存在し得ることが理解される。
【0130】
いくつかの実施形態において、ポリマー(PAEK)は、ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)(PEDEK)である。本明細書で使用する場合、「ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)」又は「ポリマー(PEDEK)」という表現は、繰り返し単位(R)の50モル%より多くが、式(K’-D):
【化14】
の繰り返し単位(モル%は、PEDEK中の繰り返し単位の総モル数に基づく)である任意のポリマーを示す。
【0131】
この実施形態によれば、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくともモル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は実質的に全ての繰り返し単位(R)が、上記で詳述された繰り返し単位(K’-D)である。好ましいPEDEKポリマーは、実質的に全ての繰り返し単位が式(K’-D)の単位であるポリマーであり、末端基、欠陥及び少量の不純物が存在し得ることが理解される。
【0132】
いくつかの実施形態において、組立体の第1の構成要素は、ポリマー(P1)、並びに充填剤を含み得る。前記充填剤は、繊維状充填剤又は非繊維状充填剤を含み得る。前記充填剤は、繊維状充填剤及び非繊維状充填剤の両方を含み得る。
【0133】
加えて、又は代わりに、組立体の第2の構成要素は、ポリマー(P2)、並びに充填剤を含み得る。前記充填剤は、繊維状充填剤、又は非繊維状充填剤を含み得る。前記充填剤は、繊維状充填剤、及び非繊維状充填剤の両方を含み得る。
【0134】
好ましい実施形態によれば、組立体の第1の構成要素及び第2の構成要素の両方は、少なくとも1種の充填剤を含み、この充填剤は、同一であっても異なっていてもよい。この実施形態によれば、第1の構成要素及び第2の構成要素との間に配置されるフィルムは、それ自体が充填剤を含んでいてもよく、この充填剤は、組立体の第1の構成要素又は第2の構成要素で使用される充填剤と同一であっても異なっていてもよい。或いは、第1の構成要素及び第2の構成要素との間に配置されるフィルムは、好ましくは充填剤を含まない(又はフィルムの総重量に基づいて1重量%未満、0.5重量%未満、若しくは更に0.1重量%未満の量の充填剤を含む)。
【0135】
好適な繊維状充填剤としては、例えば、炭素繊維、グラファイト繊維、Eガラス繊維などのガラス繊維、炭化ケイ素繊維などのセラミック繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、高弾性率ポリエチレン(PE)繊維、ポリエステル繊維及びポリ-p-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などのポリベンゾオキサゾール繊維、アラミド繊維などの合成ポリマー繊維、ホウ素繊維、玄武岩繊維、石英繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維並びにこれらの混合物が挙げられる。繊維は、連続であっても又は不連続であってもよく、整列していても又はランダムに配向していてもよい。
【0136】
いくつかの実施形態において、繊維は、少なくとも1種の炭素繊維を含む。本明細書で使用される「炭素繊維」という用語は、グラファイト化、部分グラファイト化、及び非グラファイト化炭素強化用繊維、並びにこれらの混合物を含むことを意図する。炭素繊維は、例えば、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)、芳香族ポリアミド又はフェノール樹脂などの異なるポリマー前駆体を熱処理及び熱分解することによって得ることができ、また、炭素繊維は、ピッチ系材料から得てもよい。「グラファイト繊維」という用語は、炭素繊維を高温で熱分解(2000℃超)することによって得られる炭素繊維を意味することを意図し、炭素原子がグラファイト構造と同様に配置される。炭素繊維は、好ましくは、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、グラファイト繊維、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0137】
いくつかの実施形態において、繊維は、少なくとも1種のガラス繊維を含む。ガラス繊維は、円形断面又は非円形断面(卵形若しくは長方形断面など)を有し得る。使用されるガラス繊維が円形断面を有する場合、3~30μmの平均ガラス繊維直径、特に好ましくは5~12μmの平均ガラス繊維直径を有することが好ましい。円形断面を有する異なるタイプのガラス繊維は、それらが製造されるガラスのタイプに応じて市場で入手可能である。特に、E-ガラス又はS-ガラスから製造されたガラス繊維が挙げられ得る。いくつかの実施形態において、ガラス繊維は、非円形断面を有する標準的なE-ガラス材料である。いくつかの実施形態において、組立体の第1及び第2の構成要素は、円形断面を有するSガラス繊維を含む。
【0138】
一実施形態において、本発明の組立体の第1及び第2の構成要素は、連続繊維を含む。本明細書で言及される「連続繊維」は、3mm以上、より典型的には10mm以上の長さ、且つ500以上、より典型的には5000以上のアスペクト比を有する繊維を指す。
【0139】
本発明の一実施形態において、第1の構成要素は、1層又は複数の層を含む、積層体とも呼ばれる複合材料であり、これらの層は、例えば、ポリマー(P1)及び繊維を含む。ポリマー(P1)は、例えば、繊維上に含浸、コーティング、又は積層されていてもよい。
【0140】
本発明の更なる実施形態において、第2の構成要素は、1層又は複数の層を含む、積層体とも呼ばれる複合材料であり、これらの層は、例えば、繊維及びポリマー(P2)を含む。ポリマー(P2)は、例えば、繊維上に含浸、コーティング、又は積層されていてもよい。
【0141】
本発明の第2の目的は、上記のフィルムを使用した組立体の製造方法である。本方法は、
a)ポリマー(P1)を含む第1の構成要素及びポリマー(P2)を含む第2の構成要素の間にフィルムを配置することと;
b)フィルムを温度(T )に曝露することと
を含み、ここで、
≧T (1)であるか、又は
>T (2)であるか、又は
>T+5 (3)であるか、又は
>T+10 (4)であり、
ここで、Tはフィルムの融解温度(℃)である。
【0142】
すなわち、温度(T )は、フィルムを溶融させるのに適した処理温度である。温度(T )は、フィルムの溶融温度(T)に等しく、好ましくはそれ以上である。
【0143】
温度(T )は、330℃未満、好ましくは320℃未満、より好ましくは310℃未満であってよい。温度(T )は、270℃より高くてよい、例えば275℃より高くてよい。温度(T )は、274℃~328℃の範囲、例えば278℃~315℃の範囲であってよい。
【0144】
いくつかの実施形態によれば、温度(T )は、ポリマー(P1)の融解温度(Tm1)よりも低く、及び/又はポリマー(P2)の融解温度(Tm2)よりも低く:
<Tm1 (5)であり、及び/又は
<Tm2 (6)である。
ここで、Tm1及びTm2は、それぞれ、ポリマー(P1)及びポリマー(P2)の融解温度である。
【0145】
有利なことに、温度(T )は、好ましくは、ポリマー(P1)(Tm1)及びポリマー(P2)(Tm2)の両方の融解温度よりも低い。
【0146】
いくつかの実施形態によると、
<Tm1-5 (7)であり、
<Tm2-5 (8)であり、
<Tm1-10 (9)であり、及び/又は
<Tm2-10 (10)である。
【0147】
いくつかの好ましい実施形態において、組立体のフィルム並びに第1及び第2の構成要素が温度(T )に曝露する間、本方法は、組立体を固体化するために、組立体に圧力を加えることを更に含む。換言すれば、本方法は、好ましくは、工程b)のフィルムを温度(T )に曝露することと同時に、第1及び第2の構成要素に圧力を加えることを更に含む。
【0148】
本発明の方法は、好ましくは、組立体の制御された冷却からなる工程c)を更に含む。この追加工程は、フィルムの結晶化度を高めるために有利である。組立体のフィルムは、好ましくは、冷却後に少なくとも3%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも15%、特に少なくとも20%の結晶化度を示し、結晶化度は以下の実施例に記載されているように測定される。
【0149】
本発明の第3の態様は、様々な最終用途に使用される部品又は物品を調製するための、本明細書に記載の組立体の使用に関する。航空宇宙産業及び自動車産業における用途について言及されてもよい。例えば、本発明の組立体を含むか又はそれから構成される部品又は物品としては、ブラケット、クリップ、スティフナー、及び他の同様のタイプの部品を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
以下、本発明を、非限定的な実施例によって以下のセクションで更に詳細に説明する。
【0151】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0152】
使用される原材料
1,2-ジクロロベンゼン、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、3,5-ジクロロベンゾイルクロリド、塩化アルミニウム(AlCl)、メタノールを、Sigma Aldrichから購入した。
【0153】
インド特許第193687号明細書(1999年6月21日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる)に従って、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを調製した。
【0154】
ジフェニルスルホン(ポリマーグレード)は、Provironから調達した(純度99.8%)。
【0155】
炭酸ナトリウム、軽ソーダ灰は、Solvay S.A.,Franceから調達し、使用前に乾燥させた。その粒径は、d90が130μmであるようなものであった。
【0156】
90<45μmの炭酸カリウムは、Armand productsから調達し、使用前に乾燥させた。
【0157】
塩化リチウム(無水粉末)は、Acrosから調達した。
【0158】
NaHPO・2HO及びNaHPOは、Sigma-Aldrichから購入した。
【0159】
1,4-ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼン(1,4-DFDK)及び1,3ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼン(1,3-DFDK)は、Gilbらの米国特許第5,300,693号明細書(1992年11月25日に出願され、その全体を参照により本明細書に援用される)の実施例1に従ってフルオロベンゼンのフリーデルクラフツアシル化によって調製した。1,4-DFDKのいくらかは、米国特許第5,300,693号明細書に記載されているようにクロロベンゼン中での再結晶により精製し、1,4-DFDKのいくらかは、DMSO/エタノール中での再結晶により精製した。DMSO/エタノール中で再結晶させることによって精製した1,4-DFDKを、重合反応で1,4-DFDKとして使用して下記に記載されるPEKKを製造する一方で、クロロベンゼン中で再結晶させた1,4-DFDKを、1,4-ビス(4’-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン(1,4-BHBB)の前駆体として使用した。
【0160】
1,4-BHBB及び1,3-ビス(4’-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン(1,3-BHBB)は、Hackenbruchらの米国特許第5,250,738号明細書(1992年2月24日に出願され、その全体を参照により本明細書に援用される)の実施例1に記載される手順に従って、それぞれ1,4-DFDK、及び1,3-DFDKの加水分解によって製造した。それらは、DMF/エタノール中での再結晶化によって精製した。
【0161】
窒化ホウ素:Boronid(登録商標)S1-SF、3M Corporationから市販されている六方晶窒化ホウ素グレード
【0162】
ガラス転移温度(Tg)、融解温度(T)、結晶化温度(Tc)及び融解熱(ΔH)の測定
ガラス転移温度(T)、融解温度(T)、結晶化温度(T)及び融解熱(ΔH)は、ASTM D3418に従って、示差走査熱量計(DSC)を用い、10℃/分の昇降温速度で決定する。
【0163】
(中間点、ハーフハイト法を使用)、融解熱ΔH、及びT(融解吸熱のピーク温度)は2回目の加熱走査において決定した。Tは、1回目の冷却走査における結晶化発熱のピーク温度として決定した。
【0164】
組成物の融解は、220℃から最後の吸熱を超える温度まで引かれる直線ベースラインにわたる面積として得た。接合構造体(部品)におけるフィルムの結晶化度を評価する場合は、1回目の加熱走査での融解熱を測定した。
【0165】
手順の詳細は以下の通りである:キャリアガスとしての窒素(純度99.998%、50mL/分)と共に、TA Instruments DSC Q20を使用した。温度及び熱流量較正は、インジウムを使用して行った。試料サイズは5~7mgであった。重量を±0.01mgと記録した。加熱サイクルは、
- 1回目の加熱サイクル:10.00℃/分で30.00℃~400.00℃、400.00℃で1分間等温;
- 1回目の冷却サイクル:10.00℃/分で400.00℃~30.00℃、1分間等温;
- 2回目の加熱サイクル:10.00℃/分で30.00℃~400.00℃、400.00℃で1分間等温であった。
【0166】
メルトフローインデックスの測定
メルトフローインデックスは、ASTM D1238に従って、3.8kgの荷重を用いて、指示された温度(材料の融点に応じて340~380℃)で決定した。荷重8.4kgの最終的なMFIは、得られた値に2.35を掛けることによって得た。
【0167】
合成実施例
T/I=71/29を有するPEKK#1
撹拌機、N注入管、反応媒体中に突っ込まれている熱電対付きのClaisenアダプター、並びに凝縮器及びドライアイストラップ付きのDean-Starkトラップを備えた500mLの4口反応フラスコに、112.50gのジフェニルスルホン(DPS)、23.054gの1,3-BHBB、16.695gの1,4-BHBB及び41.292gの1,4-DFDKを導入した。フラスコの内容物を真空下で排気し、その後(10ppm未満のOを含有する)高純度窒素で満たした。その後、反応混合物を連続窒素パージ下に置いた(60mL/分)。反応混合物を270℃までゆっくり加熱した。270℃で、13.725gのNaCO及び0.078gのKCOを60分かけて粉末ディスペンサーから反応混合物に添加した。添加の終了時に、反応混合物を1℃/分で310℃に加熱した。310℃で2分後に、1.107gの1,4-DFDKを、反応器に窒素パージを保ちながら反応混合物に添加した。5分後に、0.741gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後に、別の0.402gの1,4-DFDKを反応器に添加し、反応混合物を15分間温度に保った。15gのジフェニルスルホンの別の装入物を反応混合物に添加し、それを15分間撹拌下に保った。
【0168】
その後、反応器の内容物を反応器からステンレス鋼製受け皿に注ぎ込んで冷却した。固形物を分割し、2mmの篩を通してアトリションミル内で粉砕した。ジフェニルスルホン及び塩をpH1~12のアセトン及び水で混合物から抽出した。最後の洗浄のために、0.67gのNaHPO・2HO及び0.62gのNaHPOを1200mLのDI水に溶解させた。次いで、粉末を、反応器から取り出し、真空下に120℃で12時間乾燥させ、72gの黄色粉末を得た。
【0169】
PEKK#2及びPEKK#3:様々なT/I及び種々の溶融粘度(MV)を有するPEKKポリマー
以下の表1に示される量の試薬を用いて、実施例1と同一の手順を行った。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
実施例4のPEKK組成物の溶液ブレンドのための一般手順
撹拌機、N導入管、反応媒体中に熱電対を挿入するクレーゼン(Claisen)アダプター、及び冷却管を取り付けた500mLの4つ口反応フラスコに、235.00gのジフェニルスルホン(DPS)、並びに核剤として窒化ホウ素を導入した(表3)。フラスコの内容物を330℃までゆっくりと加熱した。330℃で100gのPEKKポリマー粉末#3を、フレックス管を介して溶融DPS中にゆっくりと添加した。添加の最後に、撹拌速度を上げてよく混合し、混合物を330℃で更に1時間保持した。
【0173】
その後、反応器の内容物を反応器からステンレス鋼製受け皿に注ぎ込んで冷却した。固形物を分割し、2mmの篩を通してアトリションミル内で粉砕した。ジフェニルスルホンを混合物からアセトンと水を用いて抽出した。最後の洗浄のために、0.67gのNaHPO・2HO及び0.62gのNaHPOを1200mLのDI水に溶解した。その後、粉末を反応器から取り出し、真空下120℃で12時間乾燥させ、90~95gの黄色の粉末を得た。
【0174】
【表3】
【0175】
【表4】
【0176】
上記の収集したデータによって示されるように、実施例4のPEKK組成物(本発明による)は、実施例1~3のPEKK組成物(核剤なし)と比較して、改善された結晶化及び結晶化度を示す。
【0177】
実施例4のPEKK組成物の測定された融解エンタルピーΔHfは、以下の式1により計算される最小ΔHfよりも高く、これは、実施例4のPEKK組成物が以下の式を満たすことを意味する:
ΔH>1.69×T-480 (式1)
式中、
- Tは、単位が℃の融点であり、
- ΔHは、J/gの単位である。
【0178】
従って、本発明による実施例4のPEKK組成物は、
・ 融点T≦310℃;
・ 融解熱ΔH>5J/g;及び
・ 式1を満たすΔH
の一連の特性を示し、これは積層構造に使用するフィルムに加工するために適している。
【0179】
比較例に関しては、
- T/I比が71/29に等しいPEEK#1は、Tmが高すぎ、310℃より高く、式1を満たさない;
- T/I比が58/42に等しいPEKK#2は、その測定された融解熱ΔHが式1で計算される最小融解熱ΔHに等しいため、式1を満たさない;そして
- T/I比が本発明の範囲内(50:50~56:44)のPEKK#3は、非晶質(Tmなし)であるため、流体による攻撃を受けやすく、構造物の早期破壊につながるため、構造用途での使用には適さない。
【国際調査報告】