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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】高硬度フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
C08J5/18 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549838
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2022054081
(87)【国際公開番号】W WO2022175455
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/152,010
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】トリート, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ポリーノ, ジョーエル
(72)【発明者】
【氏名】モンシャイン, ライアン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, デーヴィッド ビー.
【テーマコード(参考)】
4F071
【Fターム(参考)】
4F071AA69X
4F071AF15
4F071AF20Y
4F071AF21
4F071AF25Y
4F071AF30Y
4F071AF34Y
4F071AF61
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
(57)【要約】
本発明は、ディスプレイ、特にフレキシブルOLEDディスプレイ用の保護フィルムとして適した光学的に透明な硬質フィルムに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
【化1】
で表される繰り返し単位(Rpm)と、
次式:
【化2】
で表される繰り返し単位(Rpp)とを含む少なくとも1種のポリフェニレンポリマー[ポリマー(PP)]を含む、延伸フィルム[フィルム(OF)]であって、式中、
、R、R、R、R、R、R、及びRが、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルケトン、アリールケトン、フルオロアルキル、フルオロアリール、ブロモアルキル、ブロモアリール、クロロアルキル、クロロアリール、アルキルスルホン、アリールスルホン、アルキルアミド、アリールアミド、アルキルエステル、アリールエステル、フッ素、塩素、及び臭素からなる群から選択される、延伸フィルム[フィルム(OF)]。
【請求項2】
ポリマー(PP)が、少なくとも5モル%且つ/又は最大50モル%の繰り返し単位(Rpm)を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
ポリマー(PP)が少なくとも50モル%の繰り返し単位、好ましくは少なくとも70モル%の繰り返し単位(Rpp)を含む、請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
、R、R、及びRのうちの1つ以上が、独立して、式Ar-T-によって表され、
Arは、以下の式の群:
【化3】
から選択される式によって表され、式中、
- 各R、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
- j及びlは、互いに等しいか又は異なり、独立して、0、1、2、3、4又は5であり、
- kは、j又はlと等しいか又は異なり、独立して、0、1、2、3、又は4であり、
- Tは、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-からなる群から選択され、
各R及びRは、互いに独立して、水素、C~C12-アルキル、C~C12-アルコキシ又はC~C18-アリール基;-(CH-及び-(CF-(nは1~6の整数である);1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の脂肪族二価基である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
、R、R、及びRのうちの1つ以上が、式:
【化4】
によって表される、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記繰り返し単位(Rpm)が、
【化5】
によって表される、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記繰り返し単位(Rpp)が、式:
【化6】
によって表される、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
少なくとも一方向に少なくとも5%の自由収縮を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
- H以上の鉛筆硬度評価値;及び/又は
- 少なくとも一方向で6.0GPa以上のヤング率;及び/又は
- 4.5未満の黄色度;及び/又は
- 380~750nmの範囲で少なくとも80%の平均光透過率;
を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
-(i)請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー(PP)と、液体媒体とを含有する液体組成物(C)を準備すること; -(ii)工程(i)で準備した組成物(C)を処理してフィルムを得ること;
-(iii)工程(ii)で得た前記フィルムを機械方向及び/又は横方向のうちの少なくとも1つに延伸すること;
-(iv)任意選択的に、工程(iii)から得られた前記延伸フィルムをヒートセットすること;
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルム(OF)の製造方法。
【請求項11】
-(i^)請求項1~7のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマー(PP)を含む固体組成物(C)を準備すること;
-(ii^)前記固体組成物をフィルムへと溶融加工すること;
-(iii^)工程(ii^)で得た前記フィルムを機械方向及び/又は横方向のうちの少なくとも1つに延伸すること;
-(iv^)任意選択的に、工程(iii^)から得られた前記延伸フィルムをヒートセットすること;
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルム(OF)の製造方法。
【請求項12】
延伸工程(iii)及び(iii^)が、工程(iii)又は(iii^)で得られた前記フィルムを軟化温度まで加熱し、固相で一方向に延伸することによって行われる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
延伸が、少なくとも2対のロールを使用して行われ、少なくとも1つの他の対に対して下流にある少なくとも1対のロールが、他の対のロールよりも速く回転する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか1項に記載のフィルム(OF)を含むディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月22日出願の米国仮特許出願第63/152010号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ディスプレイの技術分野に関し、特に、フレキシブル有機エレクトロルミネッセントディスプレイ(OLED)などのフレキシブルディスプレイの製造に適した光学薄膜に関する。
【背景技術】
【0003】
有機エレクトロルミネッセントディスプレイ(OLED)は、その高速応答性、広い色域、超薄型、フレキシブル性などのため、ディスプレイ分野において徐々に主流になってきている。
【0004】
高い熱安定性、高温での高い寸法安定性、高い硬度、高い光学的透明性、及び高い引張強さを有するポリマー系光学フィルムは、フレキシブルディスプレイの基材として、及びOLED、特にフレキシブルアクティブマトリクス有機発光ダイオード(AMOLED)デバイスのウィンドウカバーとして使用するために、現代のエレクトロニクスにおいて広く必要とされている。望まれる光学特性には、高い光透過率、低いヘイズ、及び低い黄色度が含まれる。
【0005】
しかしながら、ポリオレフィン及びポリエステルフィルムなどの従来のポリマー系光学フィルムは、熱安定性及び寸法安定性が不十分であり、一方でポリイミドなどの標準的な高温ポリマー系フィルムは、非常に着色された外観を有しており、可視光領域における光透過性が不十分である。
【0006】
最近の進歩により、Kolon(商標)CPIという商品名で市販されているものなどの、低い黄色度、良好な柔軟性、及び高い硬度を特徴とする無色透明のポリイミドフィルムが開発された。
【0007】
フィルム及びシートの製造の技術分野においては、フェニレン繰り返し単位を含むポリマーを使用することが開示されている。例えば、米国特許第5886130号明細書には、フェニレン単位を含むねじれたリジッドロッドコポリマー、及び繊維、フィルム、又はシートを形成するためのその使用が開示されている。
【0008】
米国特許第5976437号明細書には、ポリマー鎖に少なくとも95モル%の1,4-結合が含まれており且つペンダント可溶化側基が組み込まれている直鎖ポリフェニレンが開示されている。直鎖ポリフェニレンは、延伸フィルムなどのフィルムへと加工することができる。
【0009】
しかしながら、本出願人の知る限り、ねじれたリジッドロッドポリフェニレンポリマーから製造された延伸フィルム、又はディスプレイ用フィルムとしてのその使用は当該技術分野でこれまで開示されていない。
【発明の概要】
【0010】
驚くべきことに、出願人は、少なくとも1種のねじれたリジッドロッドポリフェニレンポリマーを含む延伸フィルムがフレキシブルディスプレイ用途での使用に適していることを見出した。
【0011】
出願人は、驚くべきことに、本発明による延伸フィルムが、低い黄色度、高い光透過率、及び高い硬度を特徴とすることを見出した。
【0012】
従って、第1の態様では、本発明は、少なくとも1種のポリフェニレンポリマー[ポリマー(PP)]を含むフィルム[フィルム(OF)]に関する。
【0013】
有利には、フィルム(OF)は、一軸又は二軸延伸された延伸フィルムである。
【0014】
有利には、前記ポリマー(PP)は唯一のポリマーである、すなわち、これは更なるポリマーを添加することなく単独で使用される。
【0015】
有利には、前記フィルム(OF)は、ポリマー(PP)を含むフィルムを作製すること、前記フィルムを少なくとも一方向に延伸すること、任意選択的に前記フィルムを熱処理すること、を含む方法によって作製される。
【0016】
更に、本発明によるフィルム(OF)は、H以上の鉛筆硬度;及び/又は4.0以下の黄色度によって特徴付けられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書において使用される「フィルム」という用語は、フィルムであるかシートであるかにかかわらず、プラスチックウェブを含む一般的な意味で使用される。典型的には、本発明のフィルム及び本発明で使用されるフィルムは、150μm以下の厚さを有する。
【0018】
本明細書において使用される「延伸」という用語は、「固相延伸」、すなわち、キャストフィルムを構成する全てのポリマーのTg(ガラス転移温度)よりも高く、且つキャストフィルムを構成する全てのポリマーが溶融状態にある温度よりも低い温度で行われるキャストフィルムの延伸プロセスを指す。
固相延伸は、一軸、横方向、又は好ましくは長手方向、又は二軸であってよい。
【0019】
「延伸フィルム」という表現は、上で定義した延伸プロセスによって得られるフィルムを指す。
【0020】
「機械(又は長手)方向又は横方向の延伸比」という語句は、フィルムがその元のサイズに対してその方向に延伸された倍数を指す。例えば、フィルムが長手方向に元のサイズの3倍に延伸された場合、長手方向の延伸比は3:1になる。
【0021】
本明細書において使用される「長手方向」又は「機械方向」という語句は、フィルムの「長さに沿った」方向を指す。
【0022】
本明細書において使用される「横方向」という語句は、機械方向又は長手方向に対して垂直な、フィルムを横切る方向を指す。
【0023】
化合物、化学式又は式の一部を特定する記号又は数字の前後の括弧の使用は、それらの記号又は数字を本文の残りの部分からよりよく区別する目的を有するにすぎず、従って、前記括弧は省略することも可能である。
【0024】
本出願では、いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本発明の他の実施形態に適用可能であり、及びそれらと交換可能であり;端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含む。
【0025】
フィルム(OF)
従って、本発明の第1の目的は、少なくとも1種のポリフェニレンポリマーであるポリマー(PP)を含む、フィルムであるフィルム(OF)である。
【0026】
フィルム(OF)は延伸フィルムである。本発明の一実施形態では、フィルム(OF)は一軸延伸フィルムである。前記実施形態の好ましい態様では、フィルム(OF)は長手方向又は機械方向(MD)に延伸される。
【0027】
或いは、フィルム(OF)は二軸延伸フィルムであってもよい。
【0028】
延伸フィルム(OF)は、複屈折性であることを特徴とする。
【0029】
一実施形態では、フィルム(OF)は、長手方向及び横方向の少なくとも一方において少なくとも5%の自由収縮を有する。「自由収縮」という表現は、本明細書では、例えば一定温度のオーブン又はオイルバス内などでポリマー(PP)のTgを超える温度に加熱された場合に、拘束されていないフィルム(OF)のサンプルが一方又は両方の直交方向で示す収縮の量を示すために使用される。
【0030】
自由収縮は、以下の実験のセクションで詳述するように、ポリマー(PP)のTgを超える温度で決定することができる。
【0031】
フィルム(OF)は、好ましくは、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%の長手方向の自由収縮を有する。長手方向の自由収縮は、典型的には100%を超えず、好ましくは50%を超えない。
【0032】
有利な実施形態では、フィルム(OF)は横方向の自由収縮を実質的に有さない。すなわち、自由収縮は1%未満である。
【0033】
フィルム(OF)は、1つの単一層、すなわち単層フィルムからなることができ、或いは、これは、少なくとも1つの層が少なくとも1種のポリフェニレンポリマーであるポリマー(PP)を含む2つ以上の層を含むことができる。追加の層はポリマー(PP)を含んでいてもよく、或いはそれらは別のポリマーを含んでいてもよい。フィルム(OF)は、典型的には単層フィルムである。
【0034】
フィルム(OF)は、有利には、フィルムの総重量に対して少なくとも95重量%の少なくとも1種のポリマー(PP)を含む。フィルム(OF)は、少なくとも98重量%の少なくとも1種のポリマー(PP)を含んでいてもよい。フィルム(OF)は1種以上のポリマー(PP)からなることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種のポリマー(PP)に加えて、フィルム(OF)は、限定するものではないが、酸化防止剤(例えば、紫外光安定剤及び熱安定剤)、加工助剤、造核剤、潤滑剤、難燃剤、煙抑制剤、静電気防止剤、ブロッキング防止剤、補強充填剤などの任意選択的な添加剤を更に含むことができる。適切な充填剤の中でも、Si、Zr、Zn、Tiの酸化物、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、アルミノケイ酸塩(天然粘土及び合成粘土を含む)、ジルコン酸塩などの酸化物を挙げることができる。
【0036】
存在する場合、フィルム(OF)中の添加剤の総濃度は、ポリマー(PP)の総重量に対して少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1.0重量%、更には少なくとも2.0重量%である。フィルム(OF)中の添加剤の総濃度は、その光学特性、すなわち透過率と黄色度に影響を与えないような濃度である。添加剤の合計量は、通常、ポリマー(PP)の総重量に対して30重量%、更には20重量%を超えない。
【0037】
ポリマー(PP)は、次式:
【化1】
で表される繰り返し単位(Rpm)と、次式:
【化2】
で表される繰り返し単位(Rpp)とを含み、式中、
、R、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルケトン、アリールケトン、フルオロアルキル、フルオロアリール、ブロモアルキル、ブロモアリール、クロロアルキル、クロロアリール、アルキルスルホン、アリールスルホン、アルキルアミド、アリールアミド、アルキルエステル、アリールエステル、フッ素、塩素、及び臭素からなる群から選択される。
【0038】
ポリマー(PP)は、(ポリマー(PP)100モルあたり)少なくとも5モル%、更には少なくとも10モル%、少なくとも12モル%、好ましくは少なくとも15モル%の繰り返し単位(Rpm)を含む。ポリマー(PP)は、(ポリマー(PP)100モルあたり)50モル%以下、更には40モル%以下の繰り返し単位(Rpm)を含み得る。
【0039】
ポリマー(PP)は、少なくとも10モル%(ポリマー(PP)100モルあたり)の繰り返し単位(Rpp)を含む。有利には、ポリマー(PP)は、少なくとも40モル%、好ましくは少なくとも50モル%、更には少なくとも60モル%の繰り返し単位(Rpp)を含む。有利には、ポリマー(PP)は、(ポリマー(PP)100モルあたり)70モル%以上、更には85モル%以上の繰り返し単位(Rpp))を含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、ポリマー(PP)は、(ポリマー(PP)100モルあたり)15~5モル%の繰り返し単位(Rpm)と85~95モル%の繰り返し単位(Rpp)とを含み得る。
【0041】
繰り返し単位(Rpm)及び(Rpp)において、好ましくは、R、R、R、及びRの1つ以上は、独立して、式Ar-T-によって表され、
式中、
- Arは、以下の式の群:
【化3】
から選択される式によって表され、式中、
- 各R、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
- j及びlは、互いに等しいか又は異なり、独立して、0、1、2、3、4、又は5であり、
- kは、j又はlと等しいか又は異なり、独立して、0、1、2、3、又は4であり、
- Tは、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-からなる群から選択され、
ここで、
- 各R及びRは、互いに独立して、水素、C~C12-アルキル、C~C12-アルコキシ又はC~C18-アリール基;-(CH-及び-(CF-(nは1~6の整数である);1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の脂肪族二価基である。
【0042】
いくつかの実施形態では、R、R、R及びRの1つ以上は、式:
【化4】
によって表される。
【0043】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(Rpm)は、式
【化5】
によって表される。
【0044】
いくつかの実施形態では、R、R、R及びRの1つ以上は、独立して、式Ar’’-T’’-によって表され、
ここで、
- Ar’’は、以下の式の群
【化6】
から選択される式によって表され、式中、
- 各R、R、及びRは、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
- j’’及びl’’は、互いに等しいか又は異なり、独立して、0、1、2、3、4又は5であり、
- k’’は、j’’又はl’’と等しいか又は異なり、独立して、0、1、2、3、又は4であり、
- T’’は、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-からなる群から選択され、
- 各R及びRは、互いに独立して、水素、C~C12-アルキル、C~C12-アルコキシ又はC~C18-アリール基;-(CH-及び-(CF-(nは1~6の整数である);1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の脂肪族二価基である。
【0045】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(Rpp)は、式:
【化7】
によって表される。
【0046】
好ましい実施形態では、前記ポリマー(PP)は、商品名PrimoSpire(登録商標)SRPとしてSolvay Specialty Polymersから商業的に入手可能である。
【0047】
典型的には、フィルム(OF)は、150μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下の厚さを有する。フィルム(OF)は、15μm以上、好ましくは20μm以上の厚さを有する。
【0048】
フィルム(OF)は、有利には、20~85μm、好ましくは25~75μmの厚さを有し得る。
【0049】
出願人は、驚くべきことに、少なくとも1種のポリマー(PP)を含む延伸フィルムが、低い黄色度及び高い透過率などの優れた光学特性と共に、高い値の硬度及び引張弾性率を有することを見出した。この特性の組み合わせにより、これらはディスプレイ用途の保護フィルムとしての使用に非常に適している。
【0050】
一実施形態では、フィルム(OF)は、H以上の評価、有利には2H以上の評価のASTM D3363に従って測定される鉛筆硬度を有する。
【0051】
更に、一実施形態では、フィルム(OF)は、ASTM D882に従って測定した場合、機械方向又は横方向の少なくとも一方において6.0GPa以上のヤング率を有する。
【0052】
別の実施形態では、フィルム(OF)は、4.5以下、好ましくは4.0以下、更には3.5以下の、ASTM E313に従って測定される黄色度を有する。
【0053】
更なる実施形態では、フィルム(OF)は、380~750nmの範囲で少なくとも80%の平均光透過率を有する。光学特性は厚さ50μmのフィルムで測定された。
【0054】
本発明のフィルム(OF)は、当該技術分野で公知の技術に従って製造することができる。
【0055】
本発明の更なる目的は、フィルム(OF)の製造方法である。
【0056】
本発明の第1の実施形態によれば、フィルム(OF)の製造方法は、
(i)
- 上で定義した少なくとも1種のポリマー(PP)と、
- 液体媒体と、
を含有する液体組成物(C)を準備すること;
(ii)工程(i)で準備した組成物(C)を処理してフィルムを得ること;
(iii)工程(ii)で得たフィルムを機械方向(MD)及び/又は横方向(TD)のうちの少なくとも1つに延伸すること;
を含む。
【0057】
工程(i)では、組成物(C)は任意の従来技術によって製造される。例えば、液体媒体がポリマー(PP)に添加されてもよく、或いは好ましくはポリマー(PP)が液体媒体に添加されてもよく、更にはポリマー(PP)と液体媒体が同時に混合されてもよい。
【0058】
任意の好適な混合装置が用いられ得る。ポリマー(PP)と液体媒体との混合は、任意選択的に不活性雰囲気下に保持された密閉容器中で都合よく行うことができる。
【0059】
適切な液体媒体の注目すべき非限定的な例は、例えばN-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、メチル-5-ジメチルアミノ-2-メチル-5-オキソペンタノエート(商品名Rhodialsov Polarclean(登録商標)として商業的に入手可能)、トリエチルホスフェート(TEP)などの極性非プロトン性溶媒;並びにクロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素化溶媒である。
【0060】
工程(ii)において、組成物(C)は、典型的には、キャスティングによって処理され、それによってフィルムが得られる。キャスティングは、通常、キャスティングナイフ、ドローダウンバー、又はスロットダイを使用して液体組成物(C)の均一なフィルムを適切な支持体全体に広げる工程を含む。その後、キャストフィルム又はテープから液体媒体を除去するために、乾燥工程が典型的には行われる。
【0061】
工程(ii)で得られたフィルム又はテープは、工程(iii)において、以下に詳述するように、機械方向(MD)及び/又は横方向(TD)のうちの少なくとも1つで固相延伸プロセスを受ける。
【0062】
残留応力を除去するために、工程(iii)で得られたフィルムに対して、フィルムを軟化温度より十分に低い温度まで加熱してから放冷する工程であるヒートセット又はアニール工程を任意選択的に行うことができる。
【0063】
或いは、本発明によるフィルムは、押出成形、それに続く延伸、及び任意選択的なアニール処理又はヒートセットによって得ることができる。
【0064】
従って、本発明の第2の実施形態による方法は、
(I^)上で定義した少なくとも1種のポリマー(PP)を準備する工程;
(ii^)少なくとも1種のポリマー(PP)をフィルムへと溶融加工する工程;
(iii^)工程(ii^)で得たフィルムを機械方向(MD)及び/又は横方向(TD)のうちの少なくとも1つに延伸する工程;
を含む。
【0065】
この技術によれば、少なくとも1種のポリマー(PP)が押出機に供給され、溶融され、次いでダイを通して押し出され、その結果溶融テープが得られ、これはその後、工程(iii^)で延伸される。ポリマー(PP)は、典型的には、通常250℃未満、好ましくは200℃未満の温度でダイを通して押し出される。二軸押出機は、少なくとも1種のポリマー(PP)を加工するための好ましい装置である。
【0066】
第1及び第2の実施形態による方法の工程(iii)及び(iii^)における固相延伸は、フラットフィルム延伸プロセスによって行うことができる。
【0067】
フィルム(OF)を作製するためのフラットフィルム延伸プロセスは、以下の通りに説明することができる。工程(ii)及び(ii^)の終わりに得られた少なくとも1種のポリマー(PP)を含むフィルムは、適切に選択された延伸温度まで加熱され、加熱されたフィルムは、その後少なくとも1つの方向に少なくとも1.2:1の延伸比で延伸され、最後に延伸フィルムを得るために冷却される。延伸されたフィルムは、更なる熱処理によって任意選択的にアニール処理又はヒートセットされてもよい。
【0068】
一軸延伸の場合、本発明のフィルムの延伸比は、典型的には長手方向又は機械方向に少なくとも1.2:1、好ましくは少なくとも1.5:1、更には2:1である。1.5:1~2:1の延伸比で鉛筆硬度と弾性率に関しての有利な結果が得られた。
【0069】
二軸延伸の場合、本発明のフィルムの延伸比は、各方向に少なくとも1.2:1、更には1.25:1である。
【0070】
本発明によるフィルムの製造のための好ましい延伸プロセスは、一軸延伸プロセスを含む。一軸延伸は、溶液からのキャスティング又は押出のいずれかによって、好ましくは溶液からのキャスティングによって得られたフィルム又はシートを、異なる速度で回転する少なくとも2対のロールの間で延伸することによって行うことができ、少なくとも1つの他の対に対して下流にある1対のロールは、上流の対のロールよりも速く回転する。最初のロールの対は加熱してシートの表面温度を安定化し、内部シートの温度バランスをとる時間を確保する。2つ目のロールの対は、より速く回転することにより、フィルムを長手方向に延伸する。ニップは、最適な延伸温度での同時の圧延と延伸を制御する。典型的には、このセットは、一軸延伸ポリマーシートをヒートセット及び/又は冷却するために使用される少なくとも3つ目のロールのセットを含む。
【0071】
本発明のフィルムの典型的な延伸温度は、150℃~220℃、より好ましくは160℃~200℃、更には170℃~190℃の範囲である。
【0072】
或いは、本発明によるフィルムは、同時又は逐次テンターフレーム法を用いて固相状態で延伸することによって得ることができる。同時テンターフレーム法では二軸延伸シートのみが得られる一方で、逐次テンターフレーム法では二軸延伸シートと一軸延伸(MD又はTD)シートのいずれも得ることができる。その後、フィルムは急冷され、フィルムの分子が配向状態で何らかの形で凍結されて巻き取られる。
【0073】
本発明のフィルムは、高い硬度と透明性が要求される広範囲の用途に使用することができる。
【0074】
適切な用途の非限定的な例は、ディスプレイ一般、例えばLCDディスプレイなどの硬度と良好な光学特性を必要とする任意の用途における保護層としてである。本発明のフィルムの有利な用途は、フレキシブルディスプレイのカバー層としてである。
【0075】
従って、本発明の更なる目的は、フィルム(OF)を含む物品、特にフィルム(OF)を含むディスプレイ、典型的にはフレキシブルOLEDディスプレイである。
【0076】
本発明は、以下の実験の部に含有される実施例によってより詳細に本明細書で以下に例示されるが;実施例は例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0077】
実験の部
原材料
N-メチルピロリドン(NMP)は、Fisher Scientificから入手した。Primospire(登録商標)PR120(ポリフェニレン)は、Solvay Specialty Polymersから入手した。
【0078】
方法
機械的(引張)試験
引張弾性率、強度、及び破断点伸びは、ASTM D882に従って機械方向で測定した。
【0079】
鉛筆硬度
鉛筆硬度は、750gの鉛筆荷重を用いてASTM D3363を使用して測定した。
【0080】
自由収縮
既知の寸法のフィルムのサンプルを190~200℃の油浴に15秒間浸漬した。サンプルを取り出し、寸法を再度測定した。%収縮は、比:(d最初-d最後)/(d最初)として計算した。
【0081】
黄色度
黄色度は、フィルムでASTM E313に従って測定した。
【0082】
実施例1-溶液キャストフィルム作製の基本手順
20gのポリフェニレン(Primospire(登録商標)PR-120)を250mLの丸底フラスコに入れた。これに、N-メチルピロリドン113.3gを添加し、ポリマーが溶解するまで80℃で撹拌した。このようにして得た溶液をガラス基材上にコーティングし、80℃のホットプレート上で1時間乾燥し、次いで200℃に加熱したオーブンに16時間入れた。フィルムをオーブンから取り出し、ガラスから剥がして、厚さ50~60ミクロンのポリフェニレンフィルムを得た。
【0083】
実施例2:延伸フィルム作製の基本手順
実施例1で製造したポリフェニレンフィルムを、Bruckner GmbH製のKaro IV Laboratory Stretcher内に入れた。フィルムを一軸方向(実施例2a~2d)又は二軸方向(実施例2e)に延伸した。機械方向(MD)及び横方向(TD)の延伸比と、得られたフィルムの特性が表1にまとめられている。
【0084】
【表1】
【0085】
表1の結果は、本発明の延伸フィルムが、同じポリマー(PP)を含む非延伸フィルムと比較して改善された機械的特性及び硬度を有することを示している。
【0086】
本発明の延伸フィルムは、良好な光学特性、特に低い黄色度を有する。
【国際調査報告】