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特表2024-507206圧電用途のためのアルカリ金属ニオブ酸塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】圧電用途のためのアルカリ金属ニオブ酸塩
(51)【国際特許分類】
   C01G 33/00 20060101AFI20240208BHJP
   C01G 35/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C01G33/00 A
C01G35/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549867
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2022051589
(87)【国際公開番号】W WO2022175030
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021201568.9
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518241791
【氏名又は名称】タニオビス ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】TANIOBIS GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78-91, 38642 Goslar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュニッター
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ オッターシュテット
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン アルブレヒト
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC01
4G048AD04
4G048AE05
4G048AE07
(57)【要約】
本発明は、圧電用途のための一般組成Li(Na/K)NbO3のニオブ酸塩粉末であって、そのBET表面積に対して10~100ppm/(m2/g)の炭素含有率を有する前記ニオブ酸塩粉末に関する。さらに本発明は前記ニオブ酸塩粉末の製造方法、および圧電材料を製造するためのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電用途のための一般組成Li(Na/K)NbO3のニオブ酸塩粉末であって、そのBET表面積に対して炭素含有率10~100ppm/(m2/g)を有し、ここで前記BET表面積はDIN ISO 9277に準拠して特定され、且つ前記炭素含有率は非分散型赤外線吸収によって特定されたことを特徴とする、前記ニオブ酸塩粉末。
【請求項2】
前記ニオブ酸塩粉末が以下の組成:
{Lix(Na1-yy1-x1+zNb1-uTau3
[式中、0.02<x<0.12; 0.4<y<0.6; -0.05<z<0.05且つ0≦u≦0.25]
を有することを特徴とする、請求項1に記載のニオブ酸塩粉末。
【請求項3】
前記粉末が、DIN ISO 9277によって特定して2~8m2/gのBET表面積を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のニオブ酸塩粉末。
【請求項4】
前記ニオブ酸塩粉末が鉛不含であり、前記ニオブ酸塩粉末中の鉛含有率は、それぞれ前記ニオブ酸塩粉末の総質量に対して有利には0.01質量%未満、特に好ましくは0.001質量%未満であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のニオブ酸塩粉末。
【請求項5】
前記ニオブ酸塩粉末が、前記ニオブ酸塩粉末の懸濁液(水100mlあたり2gのニオブ酸塩粉末、25℃で2分間の反応時間)の導電率として表して、そのBET表面積に対して10~90(μS/cm)/(m2/g)、有利には10~70(μS/cm)/(m2/g)、特に好ましくは10~40(μS/cm)/(m2/g)の安定性を有し、ここで前記BET表面積はDIN ISO 9277に準拠して特定され、且つ前記導電率は水との2分間の反応(100mlあたり2gのニオブ酸塩粉末)後に懸濁液の導電率を測定することによって特定されたことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のニオブ酸塩粉末。
【請求項6】
前記ニオブ酸塩粉末が、前記ニオブ酸塩粉末の懸濁液(水100mlあたり2gのニオブ酸塩粉末、25℃で32分間の反応時間)の導電率として表して、そのBET表面積に対して10~100(μS/cm)/(m2/g)、有利には10~80(μS/cm)/(m2/g)、特に好ましくは10~50(μS/cm)/(m2/g)の安定性を有し、ここで前記BET表面積はDIN ISO 9277に準拠して特定され、且つ前記導電率は水との32分間の反応(100mlあたり2gのニオブ酸塩粉末)後に懸濁液の導電率を測定することによって特定されたことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のニオブ酸塩粉末。
【請求項7】
前記ニオブ酸塩粉末の水性懸濁液(水100mlあたり2gのニオブ酸塩粉末)の導電率が、30分間で10(μS/cm)/(m2/g)以下だけ上昇することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のニオブ酸塩粉末。
【請求項8】
前記ニオブ酸塩粉末が、前記ニオブ酸塩粉末の懸濁液(水100mlあたり2gのニオブ酸塩粉末、25℃、2分)のOH濃度として表して、そのBET表面積に対して2.0×10-5~8×10-5(mol/l)/(m2/g)の安定性を有し、ここで前記BET表面積はDIN ISO 9277に準拠して特定された一方で、前記OH濃度は、25℃で2分間の反応後の懸濁液(水100mlに対して2gのニオブ酸塩粉末)のpH値測定から算出されたことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のニオブ酸塩粉末。
【請求項9】
前記ニオブ酸塩粉末が、以下の段階:
i) リチウム、ナトリウムおよびカリウムの塩の水溶液を準備する段階であって、前記塩はリチウム、ナトリウムおよびカリウム元素の酸化物、水酸化物、過酸化物、超酸化物、硝酸塩および亜硝酸塩、およびそれらの混合物の群から選択され、前記溶液はCO2の排除下で製造される、前記段階、
ii) 第2の出発材料の水性懸濁液を準備する段階であって、前記第2の出発材料はニオブの酸化物および酸化物水和物の群から選択され、前記懸濁液はCO2の排除下で製造される、前記段階、
iii) 段階i)からの水溶液と段階ii)からの懸濁液とをCO2の排除下で混合して混合懸濁液を得る段階、
iv) iii)で得られた混合懸濁液をCO2の排除下で乾燥させて顆粒を得る段階、
v) iv)で得られた顆粒をCO2の排除下で焼成する段階、
vi) 焼成された顆粒の表面をCO2の存在下で調質する段階
を含む方法によって製造されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のニオブ酸塩粉末。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のニオブ酸塩粉末の製造方法であって、以下の段階:
i) リチウム、ナトリウムおよびカリウムの塩の水溶液を準備する段階であって、前記塩はリチウム、ナトリウムおよびカリウム元素の酸化物、水酸化物、過酸化物、超酸化物、硝酸塩および亜硝酸塩、およびそれらの混合物の群から選択され、前記溶液はCO2の排除下で製造される、前記段階、
ii) 第2の出発材料の水性懸濁液を準備する段階であって、前記第2の出発材料はニオブの酸化物および酸化物水和物の群から選択され、前記懸濁液はCO2の排除下で製造される、前記段階、
iii) 段階i)からの水溶液と段階ii)からの懸濁液とをCO2の排除下で混合して混合懸濁液を得る段階、
iv) iii)で得られた混合懸濁液をCO2の排除下で乾燥させて顆粒を得る段階、
v) iv)で得られた顆粒をCO2の排除下で焼成する段階、
vi) 焼成された顆粒の表面をCO2の存在下で調質する段階
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記焼成された顆粒の調質を、CO2と混合された空気流を用いて行い、ここで、空気流に添加されたCO2の割合は、それぞれ空気流の総体積に対して有利には1~30体積%、特に好ましくは5~20体積%であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
段階v)における焼成を、500~1000℃、有利には650~800℃の温度で、有利には0.5~2時間の時間、行うことを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
圧電セラミックを製造するための、請求項1から9までのいずれか1項に記載のニオブ酸塩粉末の使用。
【請求項14】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のニオブ酸塩粉末から製造された圧電材料。
【請求項15】
前記材料がセラミックまたはコンポジット材料であることを特徴とする、請求項14に記載の圧電材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電用途のための一般組成Li(Na/K)NbO3のニオブ酸塩粉末であって、そのBET表面積に対して10~100ppm/(m2/g)の炭素含有率を有する前記ニオブ酸塩粉末に関する。さらに本発明は前記ニオブ酸塩粉末の製造方法、および圧電材料を製造するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電性は、固体が弾性変形される際の電気分極の変化、ひいては電圧の発生を記述する。機械的変形の際に圧電電荷が発生するこの作用は通常、力、圧力および加速度センサで利用され、それらは例えば医療技術、超音波技術および自動車技術において用いられる。産業において用いられるピエゾ素子は多くの場合、合成、無機、強誘電性且つ多結晶のセラミック原料から製造されるセラミックである。典型的な基礎材料は改質チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)およびニオブ酸マグネシウム鉛(PMN)である。
【0003】
法的規制の変更によって、殊にRoHS(特定有害物質使用制限)指令の発効によって、欧州連合内で電気および電子部品における重金属の法的に許可される含有量が強く制限されたので、代替の材料が必要とされる。慣例的なセラミックについて鉛不含の有望な置き換えとして、殊に一般組成{Li(Na/K)}TauNb1-u3(u>0については略称LNKTN、u=0については略称LNKN)において、鉛含有化合物に類似する圧電特性を有するアルカリ金属ニオブ酸塩が同定された。
【0004】
しかしながら、これらの代替物は、それらが部分的に高い空気湿度の際および水に対して分解する傾向があり、そのことが導電性化合物の形成をみちびくことによって、そのセラミックが圧電用途のために適さなくなるという欠点を有する。従って、従来技術において、そのような化合物の耐水性を改善するために既に多くの取り組みがなされてきた。
【0005】
これに関し、米国特許出願公開第2014/0339458号明細書(US2014/0339458)は、主成分がニオブ酸ナトリウムカリウムであり、焼結後に炭素含有率55~1240ppmを有する圧電セラミックであって、特にその曲げ耐性が優れている前記圧電セラミックを記載している。米国特許出願公開第2014/0339458号明細書の例によれば、前記セラミックはアルカリ(土類)金属炭酸塩をNb25、Ta25およびZrO2と共に湿式粉砕し、引き続き焼成することによって製造される。そのように得られた粉末をPVA結合剤溶液およびさらに0.1~1.5%の炭素粉末と混合してプレスし、300~700℃で熱処理し、引き続く段階において1000~1250℃で焼結し、ここで、炭素の添加が焼結密度に悪影響を及ぼす。
【0006】
特許第5588771号公報(JP5588771)は、組成LixyNa(1-x-y)NbaTabSb(1-a-b)3[式中、x+y<1; 0≦x≦0.3; 0.1≦y≦0.7; 0.3≦a≦0.9、且つ0≦b≦0.2]の材料を開示している。耐湿性を高めるために、前記材料はガラスでコーティングされている。
【0007】
米国特許第10193054号明細書(US10,193,054)は、格子のAサイトに0.005~0.1モル%のSn、および格子のBサイトに0.005~0.1モル%のZrを有する主成分としてのアルカリ金属ニオブ酸塩を有するピエゾセラミックに関する。Sn2+イオンでの格子のAサイトの占有はEXAFS記録から結論付けられ、米国特許第10193054号明細書によれば、そのことによって空気湿度に対するセラミックの耐性が改善される。
【0008】
特開第2008/160045号公報(JP2008/160045)においては、疎水性の有機コーティングでコーティングされ、それによって湿分感受性が低下される、圧電粉末が記載されている。
【0009】
従来技術において提案された代替物は、安定化の取り組みが場合により非常に煩雑な製造方法をみちびき、得られる材料が部分的に非常に酸化に敏感であるか、または所望の安定化を達成するために異元素をもたらすことが必要であるという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0339458号明細書
【特許文献2】特許第5588771号公報
【特許文献3】米国特許第10193054号明細書
【特許文献4】特開第2008/160045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服し、大工業的に実行可能な方法によって得られる、鉛不含のピエゾ材料を製造するためのニオブ酸塩を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
意外なことに、この課題は、一般組成Li(Na/K)NbO3のニオブ酸塩粉末であって、殊に炭素のBET表面積に対する比によって特徴付けられる前記ニオブ酸塩粉末によって解決されることが判明した。
【0013】
従って、本発明の第1の対象は、圧電用途のための一般式Li(Na/K)NbO3のニオブ酸塩粉末であって、前記ニオブ酸塩はそのBET表面積に対して炭素含有率10~100ppm/(m2/g)を有し、ここで前記BET表面積はDIN ISO 9277に準拠して、且つ前記炭素含有率は非分散型赤外線吸収によって特定され、且つ前記ppmは質量割合に関する。
【0014】
本発明によるニオブ酸塩粉末は、水および湿分に対して、今までに知られているLNKN粉末またはLNKTN粉末によりも明らかに低下した反応性を示す。改善された安定性によって、本発明によるニオブ酸塩粉末は湿った室内空気および水に基づくプロセスにおいても圧電材料をさらに処理することができる一方で、今までに知られているこの種のニオブ酸塩粉末は湿度の少ない条件下で且つ有機溶剤を用いて作業することしかできず、そのことは通常、例えば防爆設備のための高いコストと結びつけられる。
【0015】
本発明の範囲において、BET表面積は、ガス吸着を用いてBETモデルに回帰して特定されるような、質量に対する比表面積と理解され、その基礎はS.Brunauer、P.H.EmmettおよびE.TellerによってJournal of the American Chemical Society、volume 60、No.2、1938年2月、309~319ページに記載された。
【0016】
好ましい実施態様において、本発明によるニオブ酸塩粉末は以下の組成を有する:
{Lix(Na1-yy1-x1+zNb1-uTau3
[式中、0.02<x<0.12; 0.4<y<0.6; -0.05<z<0.05且つ0≦u≦0.25]。
【0017】
ここで、xはリチウムの割合を示し、0.02<x<0.12、有利には0.04≦x≦0.08である。本発明の範囲において、リチウム含有率を相応に調整することによって、より高い誘電率を達成でき、それが後の材料の圧電特性に良い影響を及ぼすことが示された。
【0018】
組成物中のナトリウムおよびカリウムの含有率は1-yもしくはyによって示され、ここで0.4<y<0.6、有利には0.43≦y≦0.53である。
【0019】
本発明によるニオブ酸塩粉末は、有利には一般式ABO3のペロブスカイト結晶構造で存在する。ここで組成A1+zBO3におけるzは格子のAサイトにおける元素、例えばカリウム、ナトリウムおよびリチウムの、格子のBサイトにおける元素、例えばニオブおよびタンタルに対する化学量論組成のずれを示す。本発明によれば有利には-0.05<z<0.05、特に好ましくは0<z<0.05が該当する。
【0020】
本発明によるニオブ酸塩粉末の組成によれば、uはタンタルの割合を示し、且つ有利には0≦u≦0.25が該当する。特定の用途のためには、ニオブ酸塩粉末の結晶格子内の格子のBサイトの割合がタンタルによって占有されていることが望ましいことがある。
【0021】
特定の理論に束縛されるものではないが、本発明によるニオブ酸塩粉末において、炭素はニオブ酸塩粉末の表面上に集中しており、そこでニオブ酸塩粒子の表面に結合された酸化ニオブ炭酸塩の形態で存在し、且つ従来のニオブ酸塩粉末の場合のようにアルカリ金属炭酸塩の形態で存在するのではないと想定される。本発明によるニオブ酸塩粉末は酸化ニオブ炭酸塩の層によって水の作用による分解に対して保護されると考えられる。
【0022】
好ましい実施態様において、本発明によるニオブ酸塩粉末の、そのBET表面積に対する炭素含有率は、それぞれ前記粉末のBET表面積に対して30~90ppm/(m2/g)、有利には40~90ppm/(m2/g)であり、ここでBET表面積および炭素含有率は上記のとおり特定された。
【0023】
本発明によるニオブ酸塩粉末は、有利にはペロブスカイト型結晶構造で存在する。これは本発明によるニオブ酸塩粉末のX線回折図によって裏付けられ、ここで主相ピークと称される最も高い強度を有する2つのピークは有利には21.5~23.2°の2θおよび30.5~33.1°の2θの範囲に存在する(図5参照)。ペロブスカイト型の主結晶相の他に、本発明によるニオブ酸塩粉末は、二次相としてのさらなる結晶相を有し得る。その際、有利にはそれはタングステンブロンズ型の結晶構造であり、その最高強度を有するピークは2つの上記の主相ピークの間に存在する。好ましい実施態様において、本発明によるニオブ酸塩粉末の二次相の割合は、X線回折図において、上記2つの主相ピークの間の二次相のそれぞれの最高ピークの、それぞれ最高の主相ピークに対する絶対値の強度比のパーセントとして表して、8.5%以下、有利には6.5%以下、特に好ましくは4.5%以下である。
【0024】
本発明によるニオブ酸塩粉末は殊に、そのBET表面積に対するその炭素含有率によって特徴付けられる。好ましい実施態様において、ニオブ酸塩粉末はDIN ISO 9277を用いて特定して2~8m2/gのBET表面積を有する。
【0025】
本発明によるニオブ酸塩粉末は殊に、従来の鉛含有ピエゾセラミックの置き換えとして意図されている。EUにおいて新たな規制が発効された後でも制限されない利用を可能にするために、本発明によるニオブ酸塩粉末は相応して鉛不含である。本発明によるニオブ酸塩粉末中の鉛含有率は、それぞれニオブ酸塩粉末の総質量に対して有利には0.01質量%未満、特に好ましくは0.001質量%未満である。
【0026】
本発明の範囲の調査は、本発明によるニオブ酸塩粉末が、水に対して、従来技術の比較可能なニオブ酸塩粉末よりも改善された安定性を有するという結果をもたらした。
【0027】
特定の理論に束縛されるものではないが、ニオブ酸塩粉末の表面が酸化ニオブ炭酸塩層によって覆われており、それが下にあるアルカリ金属ニオブ酸塩粉末を水による分解から保護すると想定される。
【0028】
通常、水中に懸濁される任意のアルカリ金属ニオブ酸塩粉末の部分的な分解は、粒子表面上で以下の反応式に従って進行すると想定される:
ANbO3+xH2O→A1-xxNbO3+xA+OH-[式中、A=Li、Na、K]。
【0029】
発生するイオンによって、ニオブ酸塩粉末の分解が進行する際、懸濁液の導電率およびOH濃度、ひいてはpH値が上昇する。相応して、それぞれニオブ酸塩粉末のBET表面積に対する、所定のアルカリ金属ニオブ酸塩粉末懸濁液の導電率およびpH値は、ニオブ酸塩粉末の安定性についての尺度として用いられ得る。導電率および/またはpH値の上昇が遅いほど、ニオブ酸塩粉末はより安定する。従って、本発明によるニオブ酸塩粉末が、そのBET表面積に対するニオブ酸塩粉末の懸濁液の導電率として表して(水100mlに対して2gのニオブ酸塩粉末、25℃、2分の反応時間)、10~90(μS/cm)/(m2/g)、有利には10~70(μS/cm)/(m2/g)、特に好ましくは10~40(μS/cm)/(m2/g)の安定性を有する実施態様が好ましい。その際、ニオブ酸塩粉末のBET表面積はDIN ISO 9277準拠して特定された一方で、導電率は、25℃で2分間の水との反応後(水100mlあたり2gのニオブ酸塩粉末)に、ニオブ酸塩粉末の懸濁液の導電率を測定することによって特定された。
【0030】
さらに、意外なことに、本発明によるニオブ酸塩粉末の水性懸濁液の導電率の上昇は、予想されたよりも明らかにゆっくりと起きることが判明し、そのことは、その意外な安定性についてのさらなる徴候とみなされる。従って、ニオブ酸塩粉末が、そのBET表面積に対するニオブ酸塩粉末の懸濁液の導電率として表して(水100mlあたり2gのニオブ酸塩粉末、25℃、32分の反応時間)、10~100(μS/cm)/(m2/g)、有利には10~80(μS/cm)/(m2/g)、特に好ましくは10~50(μS/cm)/(m2/g)の安定性を有する、本発明によるニオブ酸塩粉末の実施態様が好ましい。その際、ニオブ酸塩粉末のBET表面積はDIN ISO 9277準拠して特定された一方で、導電率は、25℃で32分間の水との反応後(水100mlあたり2gのニオブ酸塩粉末)に、懸濁液の導電率を測定することによって特定された。
【0031】
本発明によるニオブ酸塩粉末の水性懸濁液(水100mlあたり2gのニオブ酸塩粉末)の導電率が、25℃で、30分の反応時間中に10(μS/cm)(m2/g)以下だけ上昇する実施態様が特に好ましい。
【0032】
本発明によるニオブ酸塩粉末の安定性についてのさらなる尺度として、上記の考察に従って、ニオブ酸塩粉末の水性懸濁液のpH値、およびそれに結びつけてOHイオンの濃度(OH濃度)が用いられ得る。従って、本発明によるニオブ酸塩粉末が、本発明によるニオブ酸塩粉末の水性懸濁液(2gのニオブ酸塩粉末、25℃、2分の反応時間)のOH濃度として表して、そのBET表面積に対して2.0×10-5~8×10-5(mol/l)/(m2/g)の安定性を有する実施態様が好ましい。その際、BET表面積はDIN ISO 9277 に準拠して特定された一方で、OH濃度は、25℃で2分間の反応後の懸濁液(水100mlに対して2gのニオブ酸塩粉末)のpH値測定から特定された。調査は、より長い反応時間後にOH濃度も意外にもわずかしか上昇しないことを示した。従って、本発明によるニオブ酸塩粉末が、本発明によるニオブ酸塩粉末の水性懸濁液(2gのニオブ酸塩粉末、25℃、32分の反応時間)のOH濃度として表して、そのBET表面積に対して2.0×10-5~9×10-5(mol/l)/(m2/g)の安定性を有し、ここで、前記BET表面積はDIN ISO 9277に準拠して特定された一方で、前記OH濃度は、25℃で32分間の反応後の懸濁液(水100mlに対して2gのニオブ酸塩粉末)のpH値測定から算出された、さらなる実施態様が好ましい。
【0033】
本発明によるニオブ酸塩粉末は有利にはASTM B822に準拠して、5分間の超音波による前処理後にレーザー回折によって特定して、0.3~1.5μm、好ましくは0.5~1.0μmの粒子サイズD50を有する。
【0034】
本発明の範囲において、意外なことに、本発明によるニオブ酸塩粉末の有利な特性は殊に、ニオブ酸塩粉末の製造がCO2不含の雰囲気中で行われる場合に生じることが判明した。従って、本発明によるニオブ酸塩粉末が、以下の段階:
i) リチウム、ナトリウムおよびカリウムの塩の水溶液を準備する段階であって、前記塩はリチウム、ナトリウムおよびカリウム元素の酸化物、水酸化物、過酸化物、超酸化物、硝酸塩および亜硝酸塩、およびそれらの混合物の群から選択され、前記溶液はCO2の排除下で製造される、前記段階、
ii) 第2の出発材料の水性懸濁液を準備する段階であって、前記第2の出発材料はニオブの酸化物および酸化物水和物の群から選択され、前記懸濁液はCO2の排除下で製造される、前記段階、
iii) 段階i)からの水溶液と段階ii)からの懸濁液とをCO2の排除下で混合して混合懸濁液を得る段階、
iv) iii)で得られた混合懸濁液をCO2の排除下で乾燥させて顆粒を得る段階、
v) iv)で得られた顆粒をCO2の排除下で焼成する段階、
vi) 焼成された顆粒の表面をCO2の存在下で調質する段階
を含む方法によって得られる実施態様が好ましい。
【0035】
好ましい実施態様において、第2の出発材料はさらにタンタルの酸化物および/または酸化物水和物を含有し得る。
【0036】
通常、鉛不含ピエゾセラミックにおいて使用するためのアルカリ金属ニオブ酸塩粉末は、炭素を含有する前駆体、例えばアルカリ金属炭酸塩から製造される。ほとんどの工程段階は室内空気下で実施されるので、室内空気に含有されるCO2が妨げられずに侵入し得る。そのように得られたニオブ酸塩粉末は、高い炭素割合以外に、水に対する高い分解傾向を有する。炭素はアルカリ金属炭酸塩の形態で材料中に結合されていると推測される。しかしながら、これらのアルカリ金属炭酸塩は吸湿性且つ水溶性であるので、アルカリ金属ニオブ酸塩粉末の分解を促進し、従って圧電特性に悪影響を及ぼす。これに対し、CO2不含の、少なくともCO2の少ない雰囲気中での製造、およびCO2の存在中での制御された調質は、炭素が酸化ニオブ炭酸塩の形態でニオブ酸塩粒子の表面に存在し、そのことによって、本発明によるニオブ酸塩粉末で観察された意外な安定性が達成されることをみちびくと考えられる。
【0037】
本発明の範囲において、意外なことに、ニオブ酸塩粉末がまず炭素不含または少なくとも炭素が少なく製造され、且つ引き続く工程段階において定義された条件下でCO2含有ガス流に曝露されるニオブ酸塩粉末の製造方法が、意外にも高い耐水性および耐湿性を有する本発明によるニオブ酸塩粉末を産出することが判明した。従って、本発明のさらなる対象は、以下の段階:
i) リチウム、ナトリウムおよびカリウムの塩の水溶液を準備する段階であって、前記塩はリチウム、ナトリウムおよびカリウム元素の酸化物、水酸化物、過酸化物、超酸化物、硝酸塩および亜硝酸塩、およびそれらの混合物の群から選択され、前記溶液はCO2の排除下で製造される、前記段階、
ii) 第2の出発材料の水性懸濁液を準備する段階であって、前記第2の出発材料はニオブの酸化物および酸化物水和物の群から選択され、前記懸濁液はCO2の排除下で製造される、前記段階、
iii) 段階i)からの水溶液と段階ii)からの懸濁液とをCO2の排除下で混合して混合懸濁液を得る段階、
iv) 段階iii)において得られた混合懸濁液をCO2の排除下で乾燥させて顆粒を得る段階、
v) 段階iv)において得られた顆粒をCO2の排除下で焼成する段階、
vi) 焼成された顆粒の表面をCO2の存在下で調質する段階
を含む、本発明によるニオブ酸塩粉末の製造方法である。
【0038】
本発明によるニオブ酸塩粉末を製造するために、工程段階i)~v)をCO2の排除下で実施し、有利にはCO2不含の雰囲気中で実施することが特に有利であることが判明した。相応の技術は当業者に公知であり、当業者によって日常的に使用されている。
【0039】
好ましい実施態様において、第2の出発材料はさらにタンタルの酸化物および/または酸化物水和物を含有し得る。
【0040】
本発明によるニオブ酸塩粉末の製造は制御された条件下で行われる。好ましい実施態様において、焼成された顆粒の調質はCO2と混合された空気流を用いて行われ、ここで、空気流に添加されるCO2の割合は、それぞれ空気流の総体積に対して有利には1~30体積%、特に好ましくは5~20体積%である。さらに、調質を有利に焼成炉内で行うことができるので、焼成された顆粒の煩雑な移動を省略できる。従って、段階vi)における調質を、焼成炉において行う本発明による方法の実施態様が好ましい。さらに、調質の成功は周囲の相対空気湿度に影響されることがある。その際、調質のために使用される空気/CO2混合物の相対湿度が特定の範囲内に保持される場合が有利であると判明した。従って、CO2導入前の相対空気湿度が、20℃で特定して40~60%である雰囲気中で調質を行う実施態様が好ましい。さらに、調質を実施するために、500℃未満の比較的狭い温度範囲が有利であると判明した。従って、本発明による方法の段階vi)における調質は有利には温度200~400℃、有利には250~300℃で行われる。意外なことに、200℃未満の温度では望ましくない炭酸水素塩の形成が高まる一方で、示された値を上回る温度ではアルカリ金属ニオブ酸塩粉末の反応性の増加に基づき、制御された製造が困難になることが判明した。
【0041】
本発明による方法について、出発材料が可能な限り小さい粒径を有する場合が有利であると判明した。従って、本発明による方法の好ましい実施態様において、第2の出発材料は、SEM写真の画像分析を用いて特定して1.0μm未満、有利には0.5μm未満、特に好ましくは0.3μm未満の最大一次粒子サイズを有する。
【0042】
一般的な予想とは対照的に、本発明による方法の範囲においては、粉末粒子の凝集傾向がほんのわずかであることが観察された。従って、本発明による方法の好ましい実施態様において、段階iii)における混合懸濁液中の固形分は、ASTM B822に準拠して、レーザー回折を用いて超音波浴での前処理はせずに特定して2.0μm未満、有利には1.5μm未満、特に好ましくは1.2μm未満の粒子サイズD50を有する。その際、粒子サイズ分布における割合D50は、示された値を上回るかもしくは下回る粒子サイズを有する粒子の割合を示す。
【0043】
本発明によるニオブ酸塩粉末を製造する際、前記方法の段階iv)における乾燥をCO2の排除下で実施することが殊に有利であることが判明した。有利には、乾燥は静的乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥または噴霧焼成を用いて行われる。
【0044】
意外なことに、顆粒の焼結は、従来技術で慣例的であるよりも明らかに低い温度で実施され得ることが示された。従って、本発明による方法の段階v)における焼成を500~1000℃の範囲の温度で実施することが有利であると判明した。従って、本発明による方法の段階v)における焼成を、500~1000℃、有利には650~800℃の温度で、有利には0.5~2時間の時間、行う実施態様が好ましい。
【0045】
焼成後に得られる顆粒の目標通りの調質を行うことができるように、有利にはこれを焼成後に冷却する。従って、焼成後に冷却段階が続き、有利には顆粒中で200~400℃、好ましくは250~300℃の温度が達成される実施態様が好ましい。
【0046】
本発明によるニオブ酸塩粉末はその意外な安定性に基づき、殊に圧電材料の製造のために適している。従って、本発明のさらなる対象は、圧電材料を製造するための、本発明によるニオブ酸塩粉末の使用である。前記材料は有利にはセラミック材料、コンポジットおよび複合材料である。
【0047】
本発明のさらなる対象は、本発明によるニオブ酸塩粉末から製造された圧電材料、有利には圧電セラミックまたは圧電コンポジットである。本発明によるセラミックは通常、本発明によるニオブ酸塩粉末を、グリーン成形技術、例えばプレス、(スクリーン)印刷またはフィルム延伸によって、結合剤、溶剤、レオロジー添加剤および場合により焼結助剤を利用して、機能にとって望ましい大きさおよび形状にもたらし、引き続き、セラミックへと、つまり結晶粒の多結晶の結合体へと焼結することによって製造される。多層アクチュエータの場合、ニオブ酸塩粉末の未焼結のフィルムと金属ペーストを有する結合剤とを交互に印刷し、積層して切断し、次いで共に焼結する。焼結されたセラミックは外面の金属被覆後、引き続き、圧電特性を得るために高電界中で分極処理される。
【0048】
前記圧電材料は、医療技術、超音波技術および自動車技術において用いられるような例えば圧電素子、例えば多層アクチュエータ、曲げ変換器、超音波センサおよび超音波変換器を製造するために使用されることができる。
【0049】
本発明を以下の実施例を用いてより詳細に説明するが、これは本発明の概念の限定として理解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】粉末懸濁液のOH濃度のグラフである。
図2】粉末懸濁液の導電率のグラフである。
図3】本発明によるニオブ酸塩粉末のSEM写真である。
図4】比較例によるニオブ酸塩粉末のSEM写真である。
図5】本発明によるニオブ酸塩粉末のXRDスペクトルである。
【実施例
【0051】
組成(Li0.07(Na0.500.500.931.02NbO3(例1~6および8~10)、並びに組成(Li0.07(Na0.500.500.931.02Nb0.80Ta0.203(例7)の種々のニオブ酸塩粉末を、以下に記載される方法によって製造し、ここで、特段記載されない限りCO2の排除下で作業した。まず、例1について、21.62gの硝酸リチウム(LiNO3)、177.02gの硝酸ナトリウム(NaNO3)および210.59gの硝酸カリウム(KNO3)を含有する水溶液と、1562gの水酸化ニオブ(Nb(OH)5)の水性懸濁液(26.12質量%のNbを含有)との混合物を製造した。例2~6、および8~10については、例1と同じモル比を設定した。例7については、20モル%の水酸化ニオブを水酸化タンタルによって置き換えた。前記混合物をそれぞれ95℃で、乾燥キャビネット内で減圧下且つCO2不含の空気雰囲気下で乾燥させた。そのように得られた顆粒を、1.5時間、焼成炉内で700~800℃で焼成し、次いで乾燥したCO2不含の空気の空気流中で300もしくは250℃に冷却した。そのように得られた生成物を、5~15体積%のCO2が添加された空気流中で40分間、300もしくは250℃で処理した。調質のために使用された空気の相対空気湿度は、CO2の導入前に20℃で特定して45%であった。それぞれの反応条件を表1に要約する。
【0052】
【表1】
【0053】
組成(Li0.07(Na0.500.500.931.02NbO3の比較例1の粉末を、第1の段階において、22.25gの炭酸リチウム(Li2CO3)、212.01gの炭酸ナトリウム(Na2CO3)および276.46gの炭酸カリウム(K2CO3)をエタノール中の1121.0gの酸化ニオブ(Nb25)と共に24時間、ボールミル処理することによって製造した。比較例2~8については、比較例1と同じモル比を設定した。そのように得られた混合物を、CO2を排除せずに室内空気下で乾燥させ、均質化し、CO2を排除せずに室内空気下で750~950℃の範囲の種々の温度(表2参照)で焼成することによって処理した。空気中で5体積%のCO2(比較例7)もしくは空気中で15体積%のCO2(比較例8)を用い、且つ調質のために使用された空気の、CO2の添加前の20℃での相対空気湿度45%での、300℃で40分間のCO2調質は、これらの材料の場合、水に対する安定性の改善をみちびかず、比較材料の水性懸濁液の導電率およびOH-濃度はCO2含有雰囲気中での調質によって顕著に変化しなかった。
【0054】
【表2】
【0055】
そのように製造された粉末を、主元素の化学分析によって分析した。物理的特性をXRD、SEM粒子サイズ分布、およびDIN ISO 9277に準拠するBET表面積測定によって評価した。炭素含有率を、非分散型赤外線吸収によって、試料素材を素焼きの磁器ボートに計量供給した後に管状炉内で酸素の存在中で燃焼することによって特定した。分析ガスCO2は非分散型赤外線吸収によって検出された。その分析はLeco Instrumente GmbH社の炭素・硫黄測定器で行われた。他方で、得られたニオブ酸塩粉末の水に対する安定性を、2gのニオブ酸塩粉末を100mlの脱イオン水中に懸濁させ、25℃で2分間もしくは32分間撹拌し、懸濁液の導電率およびpH値を測定することによって特定し、ここで、調べられたpH値がOH濃度を計算するための基礎となった。結果を表3に要約する。
【0056】
【表3】
【0057】
図1は、2もしくは32分後の粉末のBET表面積あたりの炭素含有率の関数としての、粉末懸濁液(20℃で水100mlに対して2gの粉末)の、粉末のBET表面積に対する測定された導電率のグラフを示す。
【0058】
図2は、粉末のBET表面積あたりの炭素含有率の関数としての、粉末懸濁液(20℃で水100mlに対して2gの粉末)の、粉末のBET表面積に対する、相応のpH値に基づく2もしくは32分後の算出されたOH濃度のグラフを示す。
【0059】
図1および2からわかるとおり、BET表面積に対する炭素含有率が本発明の範囲内である粉末は、懸濁液の導電率およびOH濃度として表して、従来の方法によって製造された比較可能な粉末よりも、水に対する明らかに改善された安定性を示す。
【0060】
図3および4はそれぞれ、例8(図3)による本発明によるニオブ酸塩粉末もしくは比較例6(図4)によるニオブ酸塩粉末のSEM写真を示す。2つの写真の比較は、粉末の表面モフォロジーにおける相違を明らかに示し、それは本発明による粉末の制御された調質に起因すると考えられる。
【0061】
図5は例8による本発明によるニオブ酸塩粉末のXRDスペクトルを示し、ここで二次相の割合(二次相の最も高いピークの、主相の最も高いピークに対する絶対値のパーセントでの強度比)は4.96%であった。
【0062】
例が示すとおり、本発明による方法は穏やかな条件下で、微細だが大部分が結晶化し且つわずかにしか凝集しないアルカリ金属ニオブ酸塩粉末を高い均質性で製造することを可能にし、水に対するその反応性はCO2処理によって低下され得る。このようにして、制御された炭素含有率を有する非常に焼結性があり微細なアルカリ金属ニオブ酸塩粉末が得られ、それは水および(空気)湿分に対して明らかに低下した反応性、ひいてはより良好な貯蔵安定性、プレスおよび焼結に際するより安定な加工性を有し、並びに多層アクチュエータを製造するためのキャスティングスリップを製造する際の水性配合物の可能性を提供する。さらに、本発明によるニオブ酸塩粉末は非常に小さな一次粒子サイズ、および既に知られている粉末よりも明らかに狭い一次粒子サイズ分布を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
図1は、粉末のBET表面積あたりの炭素含有率の関数としての、粉末懸濁液(20℃で水100mlに対して2gの粉末)の、粉末のBET表面積に対する、相応のpH値に基づく2もしくは32分後の算出されたOH濃度のグラフを示す。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
図2は、2もしくは32分後の粉末のBET表面積あたりの炭素含有率の関数としての、粉末懸濁液(20℃で水100mlに対して2gの粉末)の、粉末のBET表面積に対する測定された導電率のグラフを示す。
【国際調査報告】