(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】制約付きカラーレス脱相関のための全域通過ネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
H04S 5/00 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
H04S5/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550040
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 US2022016836
(87)【国際公開番号】W WO2022178155
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518253875
【氏名又は名称】ブームクラウド 360 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ アンソニー マリグリオ ザ サード
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA04
5D162BA06
5D162CA27
5D162CB12
5D162DA23
5D162DA27
(57)【要約】
システムは、モノラルチャンネルを複数のチャンネルに脱相関する1つまたは複数のコンピューティングデバイスを含む。コンピューティングデバイスは、複数のチャンネルの和についての1つまたは複数の制約を定義する目標振幅応答を決定する。目標振幅応答は、和の振幅値と和の周波数値との間の関係によって定義される。コンピューティングデバイスは、目標振幅応答に基づいて、単一入力多出力の全域通過フィルタの伝達関数を決定し、伝達関数に基づいて、全域通過フィルタの係数を決定する。コンピューティングデバイスは、全域通過フィルタの係数を用いてモノラルチャンネルを処理して複数のチャンネルを生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノラルチャンネルから複数のチャンネルを生成するシステムであって、1つまたは複数のコンピューティングデバイスを備え、前記コンピューティングデバイスは、
前記複数のチャンネルの和についての1つまたは複数の制約を定義する目標振幅応答を決定し、前記目標振幅応答は、前記和の振幅値と前記和の周波数値との間の関係によって定義され、
前記目標振幅応答に基づいて、単一入力多出力の全域通過フィルタの伝達関数を決定し、
前記伝達関数に基づいて、前記全域通過フィルタの係数を決定し、かつ、
前記全域通過フィルタの前記係数を用いて前記モノラルチャンネルを処理して前記複数のチャンネルを生成する、
ように構成された、システム。
【請求項2】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和に対する目標ブロードバンド減衰を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和に対する目標サブバンド減衰を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つまたは複数の制約は、前記目標振幅応答の曲率を定義する臨界点を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記臨界点は、前記目標振幅応答が-3dBである周波数を定義する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記臨界点は、前記目標振幅応答が-∞dBである周波数を定義する、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和におけるフィルタ特性を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記フィルタ特性は、
ハイパスフィルタ特性、
ローパスフィルタ特性、
バンドパスフィルタ特性、または、
バンド阻止フィルタ特性
の1つを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記1つまたは複数の制約は、臨界点およびフィルタ特性を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記1つまたは複数の制約は、目標ブロードバンド減衰、臨界点、および、フィルタ特性を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記伝達関数に基づいて前記全域通過フィルタの係数を決定するように構成された前記1つまたは複数のコンピューティングデバイスは、逆離散フーリエ変換(idft)を使用するように構成された前記1つまたは複数のコンピューティングデバイスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記伝達関数に基づいて前記全域通過フィルタの係数を決定するように構成された前記1つまたは複数のコンピューティングデバイスは、位相ボコーダを使用するように構成された前記1つまたは複数のコンピューティングデバイスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記伝達関数は、前記複数のチャンネルにおける第2チャンネルの第2位相角に対する、前記複数のチャンネルにおける第1チャンネルの第1位相角の回転を定義する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記1つまたは複数のコンピューティングデバイスは、前記複数のチャンネルをモノラル出力チャンネルに合成するようにさらに構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記1つまたは複数のコンピューティングデバイスは、ネットワークを介してユーザデバイスへ前記複数のチャンネルを提供するようにさらに構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
モノラルチャンネルから複数のチャンネルを生成する方法であって、
回路によって、
前記複数のチャンネルの和についての1つまたは複数の制約を定義する目標振幅応答を決定することであって、前記目標振幅応答は、前記和の振幅値と前記和の周波数値との間の関係によって定義されること、
前記目標振幅応答に基づいて、単一入力多出力の全域通過フィルタの伝達関数を決定すること、
前記伝達関数に基づいて、前記全域通過フィルタの係数を決定すること、および、
前記全域通過フィルタの前記係数を用いて前記モノラルチャンネルを処理して前記複数のチャンネルを生成すること、
を備える、方法。
【請求項17】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和に対する目標ブロードバンド減衰を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和に対する目標サブバンド減衰を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記1つまたは複数の制約は、前記目標振幅応答の曲率を定義する臨界点を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記臨界点は、前記目標振幅応答が-3dBである周波数を定義する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記臨界点は、前記目標振幅応答が-∞dBである周波数を定義する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和におけるフィルタ特性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記フィルタ特性は、
ハイパスフィルタ特性、
ローパスフィルタ特性、
バンドパスフィルタ特性、または、
バンド阻止フィルタ特性
の1つを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つまたは複数の制約は、臨界点およびフィルタ特性を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記1つまたは複数の制約は、目標ブロードバンド減衰、臨界点、および、フィルタ特性を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記伝達関数に基づいて前記全域通過フィルタの係数を決定することは、逆離散フーリエ変換(idft)を使用することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記伝達関数に基づいて前記全域通過フィルタの係数を決定することは、位相ボコーダを使用することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記伝達関数は、前記複数のチャンネルにおける第2チャンネルの第2位相角に対する、前記複数のチャンネルにおける第1チャンネルの第1位相角の回転を定義する、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、前記回路によって、前記複数のチャンネルをモノラル出力チャンネルに合成することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記方法は、前記回路によって、ネットワークを介してユーザデバイスへ前記複数のチャンネルを提供することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
モノラルチャンネルから複数のチャンネルを生成する命令を記憶した非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサを、
前記複数のチャンネルの和についての1つまたは複数の制約を定義する目標振幅応答を決定し、前記目標振幅応答は、前記和の振幅値と前記和の周波数値との間の関係によって定義され、
前記目標振幅応答に基づいて、単一入力多出力の全域通過フィルタの伝達関数を決定し、
前記伝達関数に基づいて、前記全域通過フィルタの係数を決定し、かつ、
前記全域通過フィルタの前記係数を用いて前記モノラルチャンネルを処理して前記複数のチャンネルを生成する、
ように構成する、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項32】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和に対する目標ブロードバンド減衰を含む、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項33】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和に対する目標サブバンド減衰を含む、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項34】
前記1つまたは複数の制約は、前記目標振幅応答の曲率を定義する臨界点を含む、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項35】
前記臨界点は、前記目標振幅応答が-3dBである周波数を定義する、請求項34に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項36】
前記臨界点は、前記目標振幅応答が-∞dBである周波数を定義する、請求項34に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項37】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和におけるフィルタ特性を含む、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項38】
前記フィルタ特性は、
ハイパスフィルタ特性、
ローパスフィルタ特性、
バンドパスフィルタ特性、または、
バンド阻止フィルタ特性
の1つを含む、請求項38に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項39】
前記1つまたは複数の制約は、臨界点およびフィルタ特性を含む、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項40】
前記1つまたは複数の制約は、目標ブロードバンド減衰、臨界点、および、フィルタ特性を含む、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項41】
前記伝達関数に基づいて前記全域通過フィルタの係数を決定するように前記少なくとも1つのプロセッサを構成する前記命令は、逆離散フーリエ変換(idft)を使用するように前記少なくとも1つのプロセッサを構成する、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項42】
前記伝達関数に基づいて前記全域通過フィルタの係数を決定するように前記少なくとも1つのプロセッサを構成する前記命令は、位相ボコーダを使用するように前記少なくとも1つのプロセッサを構成する、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項43】
前記伝達関数は、前記複数のチャンネルにおける第2チャンネルの第2位相角に対する、前記複数のチャンネルにおける第1チャンネルの第1位相角の回転を定義する、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項44】
前記命令は、前記複数のチャンネルをモノラル出力チャンネルに合成するように前記少なくとも1つのプロセッサをさらに構成する、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項45】
前記命令は、ネットワークを介してユーザデバイスへ前記複数のチャンネルを提供するように前記少なくとも1つのプロセッサをさらに構成する、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にオーディオ処理に関し、より詳しくは、オーディオコンテンツの脱相関に関する。([0001])
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2021年2月19日に出願され、制約付きカラーレス脱相関のための全域通過ネットワークシステムと題した米国特許出願第17/180,643号の優先権の利益を主張し、その出願は参照により本願に組み込まれる[0001]。
【0003】
オーディオデータのチャンネルは、複数のチャンネルにアップミキシングされ得る。例えば、コンテンツプロバイダは、モノラルからステレオへのアップミキシングを望み得るが、エンドポイントデバイスは、2つの独立したチャンネルを提供できず、代替的に、ステレオチャンネルをまとめて加算する可能性がある。エンドポイントにおいて加算が生じる場合、位相反転または残響ベースエフェクトのような脱相関(decorrelation)技術が失敗し得る。位相反転を使用した場合に生じ得る失敗状態は、出力が無限に減衰する結果になり得る。そのため、アップミキシングされたチャンネルの和が最低品質要件を超えるように、アップミキシングの最悪の結果を制約することが望ましい[0002]。
【発明の概要】
【0004】
幾つかの実施形態は、モノラルチャンネルから複数のチャンネルを生成する方法を含む。その方法は、処理回路によって、複数のチャンネルの和についての1つまたは複数の制約を定義する目標振幅応答を決定することを含む。目標振幅応答は、和の振幅値と和の周波数値との間の関係によって定義される。本方法は、目標振幅応答に基づいて、単一入力多出力の全域通過フィルタの伝達関数を決定することと、伝達関数に基づいて全域通過フィルタの係数を決定すること、とをさらに含む。本方法は、モノラルチャンネルを全域通過フィルタの係数を用いて処理して複数のチャンネルを生成することをさらに含む[0003]。
【0005】
幾つかの実施形態は、モノラルチャンネルから複数のチャンネルを生成するシステムを含む。そのシステムは、複数のチャンネルの和に対する1つまたは複数の制約を定義する目標振幅応答を決定するように構成された1つまたは複数のコンピューティングデバイスを含む。目標振幅応答は、和の振幅値と和の周波数値との間の関係によって定義される。1つまたは複数のコンピュータは、目標振幅応答に基づいて、単一入力多出力の全域通過フィルタの伝達関数を決定する。1つまたは複数のコンピュータは、伝達関数に基づいて全域通過フィルタの係数を決定し、全域通過フィルタの係数を用いてモノラルチャンネルを処理して複数のチャンネルを生成する[0004]。
【0006】
幾つかの実施形態は、非一時的なコンピュータ可読媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体は、モノラルチャンネルから複数のチャンネルを生成する命令を記憶する。命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、当該プロセッサを、複数のチャンネルの和についての1つまたは複数の制約を定義する目標振幅応答を決定し、目標振幅応答は、和の振幅値と和の周波数値との間の関係によって定義され、目標振幅応答に基づいて、単一入力多出力の全域通過フィルタの伝達関数を決定し、伝達関数に基づいて全域通過フィルタの係数を決定し、かつ、全域通過フィルタの係数を用いてモノラルチャンネルを処理して複数のチャンネルを生成するように構成する[0005]。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、幾つかの実施形態に係るオーディオシステムのブロック図である[0006]。
【
図2】
図2は、幾つかの実施形態に係るコンピューティングシステム環境のブロック図である[0007]。
【
図3】
図3は、幾つかの実施形態に係る、モノラルチャンネルから複数のチャンネルを生成する処理のフローチャートである[0008]。
【
図4A】
図4Aは、幾つかの実施形態に係る、目標ブロードバンド減衰を含む目標振幅応答の一例を示す図である[0009]。
【
図4B】
図4Bは、幾つかの実施形態に係る、臨界点を含む目標振幅応答の一例を示す図である[0010]。
【
図4C】
図4Cは、幾つかの実施形態に係る、臨界点を含む目標振幅応答の一例を示す図である[0011]。
【
図4D】
図4Dは、幾つかの実施形態に係る、臨界点およびハイパスフィルタ特性を含む目標振幅応答の一例を示す図である[0012]。
【
図4E】
図4Eは、幾つかの実施形態に係る、臨界点およびローパスフィルタ特性を含む目標振幅応答の一例を示す図である[0013]。
【
図5】
図5は、幾つかの実施形態に係るコンピュータのブロック図である[0014]。
【0008】
図面は例示の目的のみにおいて様々な実施形態を示す。当業者は、本明細書に開示される原理から逸脱することなく、本明細書において例示される構成および方法の代替的な実施形態が採用され得ることを以下の説明から容易に認識するであろう[0015]。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面(図)および以下の記述は、例示目的のみにおいて好ましい実施形態に関する。以下の説明から、本明細書に開示される構成および方法の代替的な実施形態は、特許請求の範囲の原理から逸脱することなく採用され得る実行可能な代替形態として容易に認識されるであろうことに留意すべきである[0016]。
【0010】
次に、幾つかの実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図に示す。なお、可能な場合はどの箇所においても、類似または同様の参照番号が図面において使用される場合があり、類似または同様の機能を示す場合がある。図面は、例示目的のみにおいて、開示されたシステム(または方法)の実施形態を示す。当業者は、以下の説明から、本明細書に説明される原理から逸脱することなく、本明細書に示される構造および方法の代替的な実施形態を採用し得ることを容易に認識するであろう[0017]。
【0011】
実施形態は、モノラルチャンネルを複数のチャンネルに脱相関するためのモノラルプレゼンテーション互換性を提供するオーディオシステムに関する。オーディオシステムは、制約に従い、オーディオのカラーレス脱相関(colorless decorrelation)を使用してモノラルプレゼンテーションの互換性を実現する。オーディオシステムは、アップミキシングされたチャンネルの和が最低品質要件を満たすかそれを超えるように、アップミキシングの最悪のケースの結果を制約する。これらの品質要件または制約は、周波数の関数としての目標振幅応答によって規定され得る。脱相関とは、2つ以上のスピーカで再生されるときにオーディオデータの心理音響的範囲(または「広がり」)が増加し得るように、オーディオデータのチャンネルを変更することを指す。カラーレスとは、個々の出力チャンネルにおける入力オーディオデータのスペクトル強度が保存されることを指す。オーディオシステムは、アップミキシングに脱相関を使用する。オーディオシステムは、目標振幅応答に従って全域通過(all-pass)フィルタを構成し、その全域通過フィルタをモノラルチャンネルに適用して複数の出力チャンネルを生成する。脱相関に使用されるフィルタはカラーレスであり、モノラルオーディオの音場の範囲を知覚的に拡大する。これらのフィルタは、脱相関されたバージョンの2以上のモノラル信号の予期しない和によって発生し得る減衰および音色の変化(coloration)に関する制約をユーザが規定することを許容する[0018]。
【0012】
制約のあるカラーレス脱相関の利点には、和出力の知覚変換の種類および程度を調整する能力が含まれる。目標振幅応答によって定義され得る調整では、プレゼンテーションデバイスの特性、オーディオデータの予期されるコンテンツ、状況に応じたリスナーの知覚能力、または、モノラルプレゼンテーション互換性についての最低品質要件といった考慮がなされ得る[0019]。
【0013】
オーディオシステム
図1は、幾つかの実施形態に係るオーディオシステム100のブロック図である。オーディオシステム100は、モノラルチャンネルの複数のチャンネルへの脱相関を提供する。システム100は、振幅応答モジュール102、全域通過フィルタ構成モジュール104、および、全域通過フィルタモジュール106を含む。システム100は、モノラル入力チャンネルx(t)を処理して複数の出力チャンネル、例えば、スピーカ110aへ提供されるチャンネルy
a(t)、および、スピーカ110bへ提供されるチャンネルy
b(t)を生成する。2つの出力チャンネルが示されるが、システム100は、あらゆる数の出力チャンネル(それぞれをチャンネルy(t)とする)を生成し得る。システム100は、音楽プレイヤ、スピーカ、スマートスピーカ、スマートフォン、ウェアラブルデバイス、タブレット、ラップトップ、デスクトップ等のようなコンピューティングデバイスであってよい[0020]。
【0014】
振幅応答モジュール102は、出力チャンネルy(t)の和についての1つまたは複数の制約を定義する目標振幅応答を決定する。目標振幅応答は、周波数の関数としての振幅のような、チャンネルの和の振幅値とチャンネルの和の周波数値との関係によって定義される。チャンネルの和についての1つまたは複数の制約は、目標ブロードバンド減衰、目標サブバンド減衰、臨界点、またはフィルタ特性を含んでよい。振幅応答モジュール102は、データ114およびモノラルチャンネルx(t)を受信し、それらの入力を使用して目標振幅応答を決定し得る。データ114は、プレゼンテーションデバイス(例えば、1つまたは複数のスピーカ)の特性、オーディオデータの予期されるコンテンツ、状況に応じたリスナーの知覚能力、またはモノラルプレゼンテーション互換性についての最低品質要件といった情報を含んでよい[0021]。
【0015】
目標ブロードバンド減衰とは、全周波数に対する合計振幅の最大減衰量についての制約である。目標サブバンド減衰とは、サブバンドによって定義される周波数レンジに対する合計振幅の最大減衰量についての制約である。目標振幅応答は、和の異なるサブバンドのそれぞれに対する1つまたは複数の目標サブバンド減衰値を含み得る[0022]。
【0016】
臨界点とは、フィルタの目標振幅応答の曲率についての制約であり、和のゲインが-3dBまたは-∞dBといった予め定義された値になる周波数値として記述される。この点の配置は、目標振幅応答の曲率に全体的な影響を与え得る。臨界点の一例は、目標振幅応答が-∞dBとなる周波数に対応する。目標振幅応答の挙動は、この点に近い周波数において信号をヌル化(nullify)することであるため、臨界点はヌル点である。臨界点の他の例は、目標振幅応答が-3dBとなる周波数に対応する。この点においてチャンネルの和および差に対する目標振幅応答の挙動が交差するため、この臨界点は交点である[0023]。
【0017】
フィルタ特性は、どのようにして和がフィルタされるかについての制約である。フィルタ特性の例は、ハイパスフィルタ特性、ローパスフィルタ特性、バンドパスフィルタ特性、またはバンド阻止(band-reject)特性を含む。フィルタ特性は、あたかも等化フィルタリングの結果であるかのように、結果として得られる和の形状を記述する。等化フィルタリングは、どの周波数がフィルタを通過し得るか、または、どの周波数が阻止されるかという観点から記述され得る。したがって、ローパス特性は、変曲点を下回る周波数の通過を許容し、変曲点以上の周波数を減衰させる。ハイパス特性は、その逆であり、変曲点を超える周波数の通過を許容し、変曲点を下回る周波数を減衰させる。バンドパス特性は、変曲点付近の帯域における周波数の通過を許容し、他の周波数を減衰させる。バンド阻止特性は、変曲点付近の帯域の周波数を阻止し、他の周波数の通過を許容する[0024]。
【0018】
目標振幅応答は、和について単一よりも多い制約を定義してよい。例えば、目標振幅応答は、臨界点および全域通過フィルタの和出力のフィルタ特性についての制約を定義してよい。他の例において、目標振幅応答は、目標ブロードバンド減衰、臨界点、および、フィルタ特性についての制約を定義してもよい。独立した制約として説明したが、パラメータ空間の大部分の領域において、制約は相互に依存していてもよい。この結果は、系が位相に関して非線形であることに起因してもたらされ得る。これに対処するために、目標振幅応答パラメータの非線形関数である、目標振幅応答の追加的な上位レベルの記述子が考案されてよい[0025]。
【0019】
フィルタ構成モジュール104は、振幅応答モジュール102から受信した目標振幅応答に基づいて、単一入力多出力の全域通過フィルタの特性を決定する。特に、フィルタ構成モジュールは、目標振幅応答に基づいて全域通過フィルタの伝達関数を決定し、かつ、伝達関数に基づいて全域通過フィルタの係数を決定する。全域通過フィルタは、脱相関フィルタであり、脱相関フィルタは、目標振幅応答によって制約され、かつ、モノラル入力チャンネルx(t)に適用されて出力チャンネルya(t)およびyb(t)を生成する[0026]。
【0020】
全域通過フィルタは、目標振幅応答によって定義された制約に基づく、異なる構成およびパラメータを含んでよい。チャンネル和の目標ブロードバンド減衰を制約する脱相関フィルタは、スペクトル成分を(例えば、完全に)保存するメリットを有する。このようなフィルタは、特定のスペクトル帯域の優先順位付けに関して、入力チャンネルまたはオーディオプレゼンテーションデバイスの何れもが仮定されない場合に有用であり得る。全域通過フィルタの伝達関数は、出力チャンネルのそれぞれについて、値θによって指定されたレベルの定数関数として定義される[0027]。
【0021】
フィルタを構成または作成するために、フィルタ構成モジュール104は、式1による連続時間プロトタイプを使用して、直交全域通過フィルタのペアを決定する。
【0022】
【0023】
全域通過フィルタは、2つの出力信号間の90度位相関係、および、入力信号と両方の出力信号との間の合成振幅関係についての制約を提供するが、入力(モノラル)信号と2つの(ステレオ)出力信号の何れかとの間の位相関係を保証しない[0029]。
【0024】
Η(x(t))の離散形は、Η2(x(t))で表され、かつ、モノラル信号x(t)に対する作用によって定義される。その結果は、式2によって定義されるように、2次元ベクトルである。
【0025】
【0026】
フィルタ構成モジュール104は、式3による2×2の直交回転行列を決定する。
【0027】
【0028】
ここで、θは、回転角を規定する[0031]。
【0029】
フィルタ構成モジュール104は、式4によって定義されるように、1次元への投影を決定する。
【0030】
【0031】
それらの積は、式5によって定義されるように、第2の2×1次元投影の右に連結される。
【0032】
【0033】
フィルタ構成モジュール104によって構成されたフィルタは、したがって式6によって定義され得る。
【0034】
【0035】
式6によって定義されたように、全域通過フィルタは、他のチャンネルに対する1つの出力チャンネルの位相角回転を許容する[0034]。
【0036】
全域通過フィルタの多出力は、2つの出力チャンネルに限定されない。幾つかの実施形態において、システム100は、モノラル入力チャンネルから2つよりも多い出力チャンネルを生成する。全域通過フィルタは、式7による回転および投影の演算ON(θ)を定義することによって、Nチャンネルに一般化され得る。
【0037】
【0038】
ここで、θは、回転角の(N-1)次元ベクトルである。次いで、この演算を式に代入してよく、N次元の出力ベクトルには、入力の各脱相関バージョンが含まれる結果になる。全域通過フィルタは、例えば、和のブロードバンド減衰が+∞dBであるため本質的に制約されない位相反転脱相関を使用する場合とは異なり、和のブロードバンド減衰の制約を許容する[0035]。
【0039】
ここにおいてαbとして表される、N=2のケースにおける和のブロードバンド減衰は、以下によって決定されてよい。
【0040】
【0041】
和に使用されるチャンネルが位相項のみ異なる結果、減衰制約αbは正確である。ブロードバンド減衰定数を含む目標振幅応答を定義するには、式9をθについて解けばよい。
【0042】
【0043】
式9を用いて、全域通過フィルタAb(x(t),θ)は、和のブロードバンド減衰についての制約によってパラメータ化することが可能である。プレゼンテーションの状況において、この式から得られるパラメータθは、出力の知覚的な空間範囲を最大化するであろう。αbは、最小の許容和ゲイン係数によって規定されるため、知覚される広がり(perceived width)が特定のユースケースについての要件を超える場合、より大きなゲイン係数をもたらすθの値が選択され得る[0038]。
【0044】
N>2の場合、式8のより一般化された形式は、式10によって定義される。
【0045】
【0046】
式10は、θの値を選択しながら制約として適用され得る[0039]。
【0047】
Ab(x(t),θ)の係数は、下記のとおり、直交フィルタネットワークΗ2(x(t))1およびΗ2(x(t))2、並びに、角度θによって決定される。
【0048】
【0049】
ここで、直交フィルタ係数βh1およびβh2は、直交フィルタ自体の実装に依存する[0040]。
【0050】
幾つかの実施形態において、和における減衰のスペクトルサブバンド領域を制限する脱相関フィルタは、和における多少の音色の変化が許容される場合に望ましい。和が完全にカラーレスでなければならないという制約を緩和することにより、空間範囲は、Ab(x(t),θ)のようなフィルタによって可能な範囲を超えてさらに拡大され得る。結果として得られる目標振幅応答は、定数関数から多項式に緩和され、多項式の特性は、イコライゼーション用のフィルタを規定する際に使用される制御と類似した制御を使用してパラメータ化され得る[0041]。
【0051】
幾つかの実施形態において、システム100は、全域通過フィルタの時間領域仕様を使用する。例えば、1次全域通過フィルタが、式12によって定義されてよい。
【0052】
【0053】
ここで、βは、-1から+1の範囲のフィルタ係数である。フィルタの実装は、式13によって定義されてよい。
【0054】
【0055】
このフィルタの伝達関数は、ある出力から他の出力への差動位相偏移
【0056】
【0057】
によって表される。この差動位相偏移は、式14によって定義されるように、角周波数ωの関数である。
【0058】
【0059】
ここで、目標振幅応答は、式9においてθに
【0060】
【数16】
を代入することによって導出され得る。式15および式16に定義されるように、和のゲインα
f=3dBである周波数f
cが、チューニングのための臨界点として使用され得る。
【0061】
【0062】
【0063】
目標振幅応答を0dBに規格化することにより、この臨界点は、-3dBポイントであり得るパラメータfcに対応する[0044]。
【0064】
幾つかの実施形態において、目標振幅応答は、ブロードバンドおよびサブバンドの減衰についての制約を定義し得る。フィルタ係数βfがとり得る値のすべてについて、この系は、和におけるローパスフィルタのようにいつも振る舞う。これは、βfによってスケールされないx(t-1)の項のためである[0045]。
【0065】
Af(x(t),β)をAb(x(t),θ)に組み合わせることにより、より多くの適応的な制約関数を実現することが可能である。形式的には、式17によって定義されるように、2つのフィルタが結合される。
【0066】
【0067】
ここで、γf:{0,1}およびγb:{0,1}は、それぞれ、1次全域通過フィルタサブシステムAf(x(t),β)およびAb(x(t),θ)をバイパスするブールパラメータである。これらのパラメータは、γf=γb=1のケースにおいて式17によって定義されるように、2つのパラメータ空間の結合に対して、パラメータの追加的な固有のサブ空間を加えることを許容する[0046]。
【0068】
式(15)において定義される角周波数ωcは、目標振幅応答が漸近的に-∞に近づく臨界点となる。
【0069】
【0070】
ここで、ψは、式(19)を介して高次パラメータ0<θbf<1/2およびΓ:{0.1}によって導き出される。
【0071】
【0072】
パラメータθbfは、変曲点fcについてのフィルタ特性の制御を許容する。0<θbf<1/4の場合、特性はローパスであり、fcにおいてヌルとなり、目標振幅関数のスペクトルスロープは、θbfが増加するにつれて、好適な低周波数からフラットな状態まで滑らかに補間される。1/4<θbf<1/2の場合、θbfが増加するにつれて、特性はfcにおいてヌルであるフラットな状態からハイパスまで滑らかに補間される。θbf=1/4の場合、目標振幅関数は、fcにおいてヌルである純粋なバンド阻止となる[0048]。
【0073】
パラメータΓは、fcおよびθbfによって決定される目標振幅関数を2つのチャンネルの和(つまりはL+R)または差(つまりはL-R)の何れかに配置(place)するブール値である。フィルタネットワークへの両方の出力の全域通過制約により、Γの動作は相補的な目標振幅応答の間において切り替わる[0049]。
【0074】
係数βbfおよび係数βabの両方のセットは、系全体の最終的な係数βabfの計算に用いられる。これは式(17)における合成演算を提供する。係数空間において、2つの線形フィルタの合成は、2つの多項式の乗算と等価である。これを考慮して、(17)において結合された系の定義から直接に得られる係数βabfは、以下のように記述され得る。
【0075】
【0076】
ここで、シンボル★は、多項式係数の乗算を明示するために用いられる[0050]。
【0077】
幾つかの実施形態において、システム100は、全域通過フィルタについて周波数領域仕様を使用する。例えば、フィルタ構成モジュール104は、式9の形式において数式を使用して、K個の狭帯域減衰制約α≡α1,α2,・・・,αKのベクトル化された目標振幅応答から、K個の位相角θ≡θ1,θ2,・・・,θKのベクトル化された伝達関数を決定してよい[0051]。
【0078】
位相角ベクトルθは、式21によって定義されるような有限インパルス応答フィルタを生成する。
【0079】
【0080】
ここで、DFT-1は逆離散フーリエ変換およびj≡√-1を意味する。そして、2(K-1)個のFIRフィルタ係数のベクトルBn(θ)は、式22によって定義されるように、x(t)に適用されてよい。
【0081】
【0082】
ここで、
【0083】
【0084】
は、畳み込み演算を意味する[0053]。
【0085】
式21および式22は、目標振幅応答を制約するための効果的な手段を提供するが、その実装は多くの場合、逆DFT演算に起因する比較的高次のFIRフィルタに依存する。これは、リソースに制約のあるシステムには不向きかもしれない。そのような場合には、式16に関連して説明したような、低次の無限インパルス応答(IIR)の実装が使用されてよい[0054]。
【0086】
全域通過フィルタモジュール106は、フィルタ構成モジュール104によって構成された全域通過フィルタをモノラルチャンネルx(t)に適用して出力チャンネルya(t)およびyb(t)を生成する。チャンネルx(t)への全域通過フィルタの適用は、式6、11、15または17によって定義されるように実施されてよい。全域通過フィルタモジュール106は、チャンネルya(t)をスピーカ110aへ、チャンネルyb(t)をスピーカ110bへ、というように、個々の出力チャンネルを個々のスピーカへ提供する[0055]。
【0087】
図2は、幾つかの実施形態に係るコンピューティングシステム環境200のブロック図である。コンピューティングシステム200は、オーディオシステム202を含んでよく、オーディオシステム202は、ネットワーク208を介してユーザデバイス210aおよび210bに接続された、1つまたは複数のコンピューティングデバイス(例えば、サーバ)を含み得る。オーディオシステム202は、ネットワーク208を介して、オーディオコンテンツをユーザデバイス210aおよび210b(それぞれをユーザデバイス210とも称する)に提供する。ネットワーク208は、システム202とユーザデバイス210との間の通信を促進する。ネットワーク106は、インターネットを含む様々なタイプのネットワークを含み得る[0056]。
【0088】
オーディオシステム202は、1つまたは複数のプロセッサ204と、コンピュータ可読媒体206とを含む。1つまたは複数のプロセッサ204は、1つまたは複数のプロセッサに、モノラルチャンネルからマルチ出力チャンネルを生成するといった機能を実施させるプログラムモジュールを実行する。プロセッサ204は、1つまたは複数の中央演算処理装置(CPU)、グラフィックス処理装置(GPU)、コントローラ、ステートマシン、他のタイプの処理回路、またはそれらの1つまたは複数の組み合わせを含み得る。プロセッサ204は、とりわけ、プログラムモジュール、オペレーティングシステムデータ、ローカルメモリをさらに含み得る[0057]。
【0089】
コンピュータ可読媒体206は、振幅応答モジュール102、フィルタ構成モジュール104、全域通過フィルタモジュール106、および、チャンネル和モジュール212のためのプログラムコードを記憶する非一時的な記憶媒体である。全域通過フィルタモジュール106は、振幅応答モジュール102およびフィルタ構成モジュール104によって構成され、モノラルチャンネルからマルチ出力チャンネルを生成する。システム202は、個々の出力チャンネルをレンダリングするマルチスピーカ214を有するユーザデバイス210aへマルチ出力チャンネルを提供する[0058]。
【0090】
チャンネル和モジュール212は、全域通過フィルタモジュール106によって生成されたマルチ出力チャンネルの和をとることによって、モノラル出力チャンネルを生成する。システム202は、モノラル出力チャンネルをレンダリングするシングルスピーカ216を有するユーザデバイス210bへモノラル出力チャンネルを提供する。幾つかの実施形態において、チャンネル和モジュール212は、ユーザデバイス210bに配置される。オーディオシステム202は、スピーカ216向けにマルチチャンネルをモノラルチャンネルに変換するユーザデバイス210bへマルチ出力チャンネルを提供する。ユーザデバイス210は、ユーザにオーディオコンテンツを提示する。ユーザデバイス210は、音楽プレイヤ、スマートスピーカ、スマートフォン、ウェアラブルデバイス、タブレット、ラップトップ、デスクトップ等といった、ユーザのコンピューティングデバイスであってよい[0059]。
【0091】
処理例
図3は、幾つかの実施形態に係る、モノラルチャンネルから複数のチャンネルを生成する処理300のフローチャートである。
図3に示される処理は、オーディオシステム(例えば、システム100または202)の構成要素によって実施されてよい。他の実施形態において、他のエンティティが
図3におけるステップの幾つかまたは全部を実施してもよい。実施形態は、異なる、および/または、追加のステップを含んでもよいし、または異なる順序において各ステップを実施してもよい[0060]。
【0092】
オーディオシステムは、モノラルチャンネルから生成されるマルチチャンネルの和についての1つまたは複数の制約を定義する目標振幅応答を決定305する。マルチチャンネルの和についての1つまたは複数の制約は、目標ブロードバンド減衰、目標サブバンド減衰、臨界点、または、フィルタ特性を含んでよい。臨界点は、3dBにおける変曲点であってよい。フィルタ特性は、ハイパスフィルタ特性、ローパスフィルタ特性、バンドパス特性、またはバンド阻止特性の1つを含んでよい[0061]。
【0093】
1つまたは複数の制約は、プレゼンテーションデバイスの特性(例えば、スピーカの周波数応答、スピーカの位置)、オーディオデータの予期されるコンテンツ、状況に応じたリスナーの知覚能力、または、モノラルプレゼンテーション互換性についての最低品質要件に基づいて、決定されてよい。例えば、スピーカが200Hzを下回る周波数を十分に再生できない場合、オーディオシステムは、その周波数を下回る目標振幅応答の減衰領域を効果的に隠蔽してよい。同様に、予期されるオーディオコンテンツが会話である場合、オーディオシステムは、通じやすさに必要とされる周波数以外の周波数にのみ影響を与える目標振幅応答を選択してよい。リスナーが、その場所にある別のスピーカアレイのような、状況に応じた他のソースから可聴合図(audible cues)を得る場合、オーディオシステムは、それらの同時の合図と相補的な目標振幅応答を決定してよい[0062]。
【0094】
オーディオシステムは、目標振幅応答に基づいて、単一入力多出力の全域通過フィルタの伝達関数を決定310する。伝達関数は、出力チャンネルの相対的な位相角回転を定義する。伝達関数は、周波数の関数としての位相角回転の観点において、フィルタネットワークが個々の出力に対して入力に与える影響を記述する[0063]。
【0095】
オーディオシステムは、伝達関数に基づいて全域通過フィルタの係数を決定315する。これらの係数は、制約のタイプおよび選ばれた実装に最適な方法によって選択されて入力オーディオストリームに適用される。係数セットの幾つかの例は、式11、16、18、20および21によって定義される。幾つかの実施形態において、伝達関数に基づいて全域通過フィルタの係数を決定することは、逆離散フーリエ変換(idft)を使用することを含む。この場合、係数セットは、式21によって定義されるように決定されてよい。幾つかの実施形態において、伝達関数に基づいて全域通過フィルタの係数を決定することは、位相ボコーダを使用することを含む。この場合、係数セットは、時間領域のデータを再合成する前に周波数領域において適用されることを除いて、式21によって定義されるように決定されてよい[0064]。
【0096】
オーディオシステム320は、全域通過フィルタの係数を用いてモノラルチャンネルを処理して複数のチャンネルを生成する。システムが、式11、16、18および20におけるようなIIR実装を用いて時間領域において動作している場合、係数は、適切なフィードバックおよびフィードフォワードの遅延を拡縮(scale)してよい。式21のようなFIR実装が使用される場合には、結果としてフィードフォワード遅延のみが用いられてよい。係数が周波数領域において決定されて適用される場合、係数は、再合成前のスペクトルデータに虚数乗法によって適用されてよい。オーディオシステムは、ネットワークを介してオーディオシステムに接続されたユーザデバイスのようなプレゼンテーションデバイスに、複数の出力チャンネルを提供してよい。幾つかの実施形態において、プレゼンテーションデバイスがシングルスピーカのみを有するような場合、オーディオシステムは、複数のチャンネルをモノラル出力チャンネルに合成し、モノラル出力チャンネルをプレゼンテーションデバイスに提供する[0065]。
【0097】
図4Aは、幾つかの実施形態に係る、目標ブロードバンド減衰を含む目標振幅応答の一例を示す図である。モノラルチャンネルから生成されたマルチチャンネルの和402と、マルチチャンネルの差404とが示される。目標振幅応答の制約は、和に適用される一方、差は全域通過特性を保持するために適応し得る。この例において、全周波数にわたる目標ブロードバンド減衰は、-6dBである[0066]。
【0098】
図4Bは、幾つかの実施形態に係る、臨界点を含む目標振幅応答の一例を示す図である。モノラルチャンネルから生成されたマルチチャンネルの和406と、マルチチャンネルの差408とが示される。臨界点は、1kHzにおける-3dB臨界点(例えば、交点)を含む[0067]。
【0099】
図4Cは、幾つかの実施形態に係る、臨界点を含む目標振幅応答の一例を示す図である。モノラルチャンネルから生成されたマルチチャンネルの和410と、マルチチャンネルの差412とが示される。臨界点は、1kHzにおける-∞dB臨界点(例えば、ヌル)を含む[0068]。
【0100】
図4Dは、幾つかの実施形態に係る、臨界点およびハイパスフィルタ特性を含む目標振幅応答の一例を示す図である。モノラルチャンネルから生成されたマルチチャンネルの和414と、マルチチャンネルの差416とが示される。-∞dB臨界点は、1kHzにあり、かつ、ハイパスフィルタ特性がある[0069]。
【0101】
図4Eは、幾つかの実施形態に係る、臨界点およびローパスフィルタ特性を含む目標振幅応答の一例を示す図である。モノラルチャンネルから生成されたマルチチャンネルの和418と、マルチチャンネルの差420とが示される。-∞dB臨界点は、1kHzにあり、かつ、ローパスフィルタ特性がある[0070]。
【0102】
図5は、幾つかの実施形態に係るコンピュータ500のブロック図である。コンピュータ500は、オーディオシステム100または202のようなオーディオシステムを実行する回路を含むコンピューティングデバイスの一例である。チップセット504に結合された少なくとも1つのプロセッサ502が図示される。チップセット504は、メモリコントローラハブ520と、入出力(I/O)コントローラハブ522とを含む。メモリ506およびグラフィックスアダプタ512は、メモリコントローラハブ520に結合され、かつ、ディスプレイデバイス518は、グラフィックスアダプタ512に結合される。ストレージデバイス508、キーボード510、ポインティングデバイス514、および、ネットワークアダプタ516は、I/Oコントローラハブ522に結合される。コンピュータ500は、様々なタイプの入力または出力デバイスを含み得る。コンピュータ500の他の実施形態は、異なるアーキテクチャを有する。例えば、メモリ506は、幾つかの実施形態において、プロセッサ502に直結される[0071]。
【0103】
ストレージデバイス508は、ハードドライブ、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD、またはソリッドステートメモリデバイスといった、1つまたは複数の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含む。メモリ506は、プロセッサ502に使用される、プログラムコード(1つまたは複数の命令から成る)およびデータを保持する。プログラムコードは、
図1から
図3を参照して述べた処理態様に対応してよい[0072]。
【0104】
ポインティングデバイス514は、キーボード510との組み合わせにおいて使用され、データをコンピュータシステム500に入力する。グラフィックスアダプタ512は、画像および他の情報をディスプレイデバイス518に表示する。幾つかの実施形態において、ディスプレイデバイス518は、ユーザの入力および選択を受け付けることが可能なタッチスクリーンを含む。ネットワークアダプタ516は、コンピュータシステム500をネットワークに結合する。コンピュータ500の幾つかの実施形態は、
図5に示したものとは異なる、および/または、他の構成要素を有する[0073]。
【0105】
回路は、非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶されたプログラムコードを実行する1つまたは複数のプロセッサを含んでよく、プログラムコードは、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、オーディオシステムまたはオーディオシステムのモジュールを実行するように1つまたは複数のプロセッサを構成する。オーディオシステムまたはオーディオシステムのモジュールを実行する回路の他の例は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または他のタイプのコンピュータ回路といった集積回路を含んでよい[0074]。
【0106】
追加的な考慮事項
開示された構成のメリットおよび有利な点の例には、強化されたオーディオシステムがデバイスおよび関連するオーディオレンダリングシステムに適応することによる動的なオーディオ強化、並びに、ユースケース情報(例えば、オーディオ信号がゲーム用途よりも音楽再生用に使用されることを示す)といったデバイスOSによって利用可能とされる他の関連情報が含まれる。強化されたオーディオシステムは、(例えばソフトウェア開発キットを使用して)デバイスに統合されるか、オンデマンドでアクセスできるようにリモートサーバに保存される。このように、デバイスは、そのオーディオレンダリングシステムまたはオーディオレンダリング構成に固有のオーディオ強化システムのメンテナンスに、ストレージまたは処理のリソースを費やす必要がない。幾つかの実施形態において、強化されたオーディオシステムは、利用可能なデバイス固有のレンダリング情報の様々なレベルにわたって効果的なオーディオ強化を適用できるように、レンダリングシステム情報の様々なクエリのレベルを変化させることを可能にする[0075]。
【0107】
本明細書を通じて、複数のインスタンスが、単一のインスタンスとして記述された構成要素、動作、または構造を実装する場合がある。1つまたは複数の方法における個々の動作は、別個の動作として図示および説明されるが、個々の動作の1つまたは複数が同時に実施されてもよく、動作が図示された順序において実行される必要はない。例示された構成において別個のコンポーネントとして示された構造および機能は、組み合わされた構造またはコンポーネントとして実装されてもよい。同様に、単一のコンポーネントとして示された構造および機能は、別個のコンポーネントとして実装されてもよい。これらおよび他の変形、修正、追加、および改良は、本明細書の主題の範囲内にある[0076]。
【0108】
特定の実施形態は、論理または多くの構成要素、モジュール、または機構を含むものとして本明細書において記述される。モジュールは、ソフトウェアモジュール(例えば、機械可読媒体または伝送信号において具現化されたコード)またはハードウェアモジュールの何れかを構成し得る。ハードウェアモジュールは、特定の動作を実施可能な有形のユニットであり、特定の方法において構成または配置され得る。例示的な実施形態において、1つまたは複数のコンピュータシステム(例えば、スタンドアロン、クライアント、またはサーバコンピュータシステム)、またはコンピュータシステムの1つまたは複数のハードウェアモジュール(例えば、プロセッサまたはプロセッサ群)は、本明細書に記載されるような特定の動作を実行するように動作するハードウェアモジュールとして、ソフトウェア(例えば、アプリケーションまたはアプリケーション部分)によって構成され得る[0077]。
【0109】
本明細書において記載した例示的な方法の様々な動作は、関連する動作を実行するように、(例えば、ソフトウェアによって)一時的に構成された、または恒久的に構成された、1つまたは複数のプロセッサによって、少なくとも部分的に実行され得る。一時的に構成されるか恒久的に構成されるかに関わらず、そのようなプロセッサは、1つまたは複数の動作または機能を実行するように動作するプロセッサ実装モジュールを構成し得る。本明細書において言及されるモジュールは、幾つかの例示的な実施形態において、プロセッサ実装モジュールを構成し得る[0078]。
【0110】
同様に、本明細書に記載される方法は、少なくとも部分的にプロセッサ実装され得る。例えば、方法の動作の少なくとも一部は、1つまたは複数のプロセッサまたはプロセッサ実装ハードウェアモジュールによって実行されてもよい。特定の動作の実行は、1つまたは複数のプロセッサ間で分散されてもよく、単一のマシン内に常駐するだけでなく、多くのマシンにわたって展開されてもよい。幾つかの例示的な実施形態において、プロセッサまたはプロセッサ群は、単一の場所(例えば、家庭環境内、オフィス環境内、またはサーバファームとして)に配置されてもよく、他の実施形態では、プロセッサは多くの場所に分散されてもよい[0079]。
【0111】
特に断らない限り、「処理する(processing)」、「計算する(computing)」、「算出する(calculating)」、「決定する(determining)」、「提示する(presenting)」、「表示する(displaying)」などの用語を使用する本明細書における説明は、マシン(例えば、コンピュータ)の動作または処理を指す場合がある。マシンは、1つまたは複数のメモリ(例えば、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはそれらの組み合わせ)、レジスタ、または情報を受信、記憶、送信、または表示する他のマシン構成要素における物理的(例えば、電子的、磁気的、または光学的)な量として表されるデータを操作または変換する[0080]。
【0112】
本明細書において使用される「1つの実施形態」または「一実施形態」へのいかなる参照も、実施形態に関連して記載される特定の要素、特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所において「一実施形態において」という表現が現れるが、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない[0081]。
【0113】
幾つかの実施形態は、「結合された(coupled)」および「接続された(connected)」という表現を、それらの派生語と共に使用して説明され得る。これらの用語は、互いの同義語として意図されていないことを理解すべきである。例えば、幾つかの実施形態では、2つ以上の要素が互いに直接に物理的または電気的に接触していることを示すために、「接続」という用語を用いて説明される場合がある。別の例では、幾つかの実施形態は、2つ以上の要素が直接に物理的または電気的に接触していることを示すために、「結合」という用語を用いて説明されることがある。しかし、「結合」という用語は、2つ以上の要素が互いに直接には接触していないが、それでも依然として互いに協力または相互作用することを意味する場合もある。実施形態は、この文脈において、限定されない[0082]。
【0114】
本明細書において使用される場合、用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」またはその他の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図している。例えば、要素のリストから構成されるプロセス、方法、成形品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されていない、またはそのようなプロセス、方法、成形品、または装置に固有の他の要素を含み得る。さらに、明示的に反対の記載がない限り、「または」は包括的な意味であり、排他的な意味ではない。例えば、条件Aまたは条件Bは、次の何れかにより満たされる。Aは真(または存在する)でありBは偽(または存在しない)である、Aは偽(または存在しない)でありBは真(または存在する)、および、AとBの両方が真(または存在する)である[0083]。
【0115】
さらに、「a」または「an」の使用は、本明細書における実施形態の要素および構成要素を説明するために採用される。これは、単に便宜上であり、本発明の一般的な意味を与えるために行われる。本明細書は、他の意味であることが明らかでない限り、1つまたは少なくとも1つを含むように解釈されるべきであり、単数形は複数形も含む[0084]。
【0116】
本明細書の幾つかの部分は、情報に対する動作のアルゴリズムおよび記号表現の観点から実施形態を説明している。これらのアルゴリズムの記述および表現は、データ処理技術の当業者によって一般的に使用され、当業者にその作業の本質を効果的に伝えるために使用される。これらの動作は、機能的、計算的、または論理的に記述されるが、コンピュータプログラムまたは等価な電気回路、マイクロコードなどによって実装されると理解される。さらに、一般性を損なうことなく、これらのオペレーションの配置をモジュールと呼ぶことも、時に利便であることが示される。既述の動作とそれらに関連するモジュールは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組み合わせによって具現化され得る[0085]。
【0117】
本明細書において記載されるあらゆるステップ、動作、または処理は、単独で、または他の装置と組み合わせて、1つまたは複数のハードウェアモジュールまたはソフトウェアモジュールによって実施または実装され得る。一実施形態において、ソフトウェアモジュールは、コンピュータプログラムコードを含むコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品によって実装され、コンピュータプログラム製品は、既述の何れかまたはすべてのステップ、動作、または処理を実行するコンピュータプロセッサによって実行されることが可能である[0086]。
【0118】
実施形態は、本明細書における動作を実行するための装置にも関連し得る。この装置は、所要の目的のために特別に構成されてもよいし、および/または、コンピュータに格納されたコンピュータプログラムによって選択的に起動または再構成される汎用のコンピューティングデバイスを構成してもよい。そのようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステムバスに結合され得る、非一時的な有形のコンピュータ可読記憶媒体、または、電子的な命令の記憶に適したあらゆるタイプの媒体に記憶され得る。さらに、本明細書において言及されるコンピューティングシステムは、シングルプロセッサを含んでもよいし、計算能力を高めるマルチプロセッサデザインを採用するアーキテクチャであってもよい[0087]。
【0119】
実施形態はまた、本明細書において記載されるコンピューティングプロセスによって生成される製品に関連し得る。そのような製品は、コンピューティングプロセスから得られる情報を含んでよく、その情報は、非一時的な有形のコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてよく、本明細書において記載されるコンピュータプログラム製品または他のデータの組み合わせのあらゆる実施形態を含んでよい[0088]。
【0120】
本開示を読めば、当業者は、本明細書において開示された原理によるオーディオコンテンツ脱相関のためのシステムおよび処理のための、さらなる代替的な構造的および機能的な設計を理解するであろう。したがって、特定の実施形態および用途を図示し説明したが、開示された実施形態は、本明細書において開示された詳細な構造および構成要素に限定されないものと理解されるべきである。当業者に明らかであろう様々な変形、変更およびバリエーションが、添付の特許請求の範囲において定義された意図および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された方法および装置の配置、動作および詳細においてなされ得る[0089]。
【0121】
最後に、本明細書において使用される文言は、主として読み易さと説明の目的のために選択されたものであり、特許権の外縁または輪郭を規定するために選択されたものではない。したがって、特許権の範囲は、この詳細な説明によって限定されず、むしろ、この出願に基づいて発行される特許請求の範囲によって限定されることが意図される。よって、実施形態の開示は、以下の特許請求の範囲に規定される特許権の範囲を例示する意図であって限定する意図はない[0090]。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノラルチャンネルから複数のチャンネルを生成するシステムであって、1つまたは複数のコンピューティングデバイスを備え、前記コンピューティングデバイスは、
前記複数のチャンネルの和についての1つまたは複数の制約を定義する目標振幅応答を決定し、前記目標振幅応答は、前記和の振幅値と前記和の周波数値との間の関係によって定義され、
前記目標振幅応答に基づいて、単一入力多出力の全域通過フィルタの伝達関数を決定し、
前記伝達関数に基づいて、前記全域通過フィルタの係数を決定し、かつ、
前記全域通過フィルタの前記係数を用いて前記モノラルチャンネルを処理して前記複数のチャンネルを生成する、
ように構成された、システム。
【請求項2】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和に対する目標ブロードバンド減衰を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和に対する目標サブバンド減衰を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つまたは複数の制約は、前記目標振幅応答の曲率を定義する臨界点を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記臨界点は、前記目標振幅応答が-3dBである周波数を定義する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記臨界点は、前記目標振幅応答が-∞dBである周波数を定義する、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和におけるフィルタ特性を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記フィルタ特性は、
ハイパスフィルタ特性、
ローパスフィルタ特性、
バンドパスフィルタ特性、または、
バンド阻止フィルタ特性
の1つを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記1つまたは複数の制約は、臨界点およびフィルタ特性を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記1つまたは複数の制約は、目標ブロードバンド減衰、臨界点、および、フィルタ特性を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記伝達関数に基づいて前記全域通過フィルタの係数を決定するように構成された前記1つまたは複数のコンピューティングデバイスは、逆離散フーリエ変換(idft)を使用するように構成された前記1つまたは複数のコンピューティングデバイスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記伝達関数に基づいて前記全域通過フィルタの係数を決定するように構成された前記1つまたは複数のコンピューティングデバイスは、位相ボコーダを使用するように構成された前記1つまたは複数のコンピューティングデバイスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記伝達関数は、前記複数のチャンネルにおける第2チャンネルの第2位相角に対する、前記複数のチャンネルにおける第1チャンネルの第1位相角の回転を定義する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記1つまたは複数のコンピューティングデバイスは、前記複数のチャンネルをモノラル出力チャンネルに合成するようにさらに構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記1つまたは複数のコンピューティングデバイスは、ネットワークを介してユーザデバイスへ前記複数のチャンネルを提供するようにさらに構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
モノラルチャンネルから複数のチャンネルを生成する方法であって、
回路によって、
前記複数のチャンネルの和についての1つまたは複数の制約を定義する目標振幅応答を決定することであって、前記目標振幅応答は、前記和の振幅値と前記和の周波数値との間の関係によって定義されること、
前記目標振幅応答に基づいて、単一入力多出力の全域通過フィルタの伝達関数を決定すること、
前記伝達関数に基づいて、前記全域通過フィルタの係数を決定すること、および、
前記全域通過フィルタの前記係数を用いて前記モノラルチャンネルを処理して前記複数のチャンネルを生成すること、
を備える、方法。
【請求項17】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和に対する目標ブロードバンド減衰を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和に対する目標サブバンド減衰を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記1つまたは複数の制約は、前記目標振幅応答の曲率を定義する臨界点を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記臨界点は、前記目標振幅応答が-3dBである周波数を定義する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記臨界点は、前記目標振幅応答が-∞dBである周波数を定義する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和におけるフィルタ特性を含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項23】
前記フィルタ特性は、
ハイパスフィルタ特性、
ローパスフィルタ特性、
バンドパスフィルタ特性、または、
バンド阻止フィルタ特性
の1つを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つまたは複数の制約は、臨界点およびフィルタ特性を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記1つまたは複数の制約は、目標ブロードバンド減衰、臨界点、および、フィルタ特性を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記伝達関数に基づいて前記全域通過フィルタの係数を決定することは、逆離散フーリエ変換(idft)を使用することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記伝達関数に基づいて前記全域通過フィルタの係数を決定することは、位相ボコーダを使用することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記伝達関数は、前記複数のチャンネルにおける第2チャンネルの第2位相角に対する、前記複数のチャンネルにおける第1チャンネルの第1位相角の回転を定義する、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、前記回路によって、前記複数のチャンネルをモノラル出力チャンネルに合成することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記方法は、前記回路によって、ネットワークを介してユーザデバイスへ前記複数のチャンネルを提供することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
モノラルチャンネルから複数のチャンネルを生成する命令を記憶した非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサを、
前記複数のチャンネルの和についての1つまたは複数の制約を定義する目標振幅応答を決定し、前記目標振幅応答は、前記和の振幅値と前記和の周波数値との間の関係によって定義され、
前記目標振幅応答に基づいて、単一入力多出力の全域通過フィルタの伝達関数を決定し、
前記伝達関数に基づいて、前記全域通過フィルタの係数を決定し、かつ、
前記全域通過フィルタの前記係数を用いて前記モノラルチャンネルを処理して前記複数のチャンネルを生成する、
ように構成する、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項32】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和に対する目標ブロードバンド減衰を含む、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項33】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和に対する目標サブバンド減衰を含む、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項34】
前記1つまたは複数の制約は、前記目標振幅応答の曲率を定義する臨界点を含む、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項35】
前記臨界点は、前記目標振幅応答が-3dBである周波数を定義する、請求項34に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項36】
前記臨界点は、前記目標振幅応答が-∞dBである周波数を定義する、請求項34に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項37】
前記1つまたは複数の制約は、前記複数のチャンネルの前記和におけるフィルタ特性を含む、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項38】
前記フィルタ特性は、
ハイパスフィルタ特性、
ローパスフィルタ特性、
バンドパスフィルタ特性、または、
バンド阻止フィルタ特性
の1つを含む、請求項
37に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項39】
前記1つまたは複数の制約は、臨界点およびフィルタ特性を含む、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項40】
前記1つまたは複数の制約は、目標ブロードバンド減衰、臨界点、および、フィルタ特性を含む、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項41】
前記伝達関数に基づいて前記全域通過フィルタの係数を決定するように前記少なくとも1つのプロセッサを構成する前記命令は、逆離散フーリエ変換(idft)を使用するように前記少なくとも1つのプロセッサを構成する、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項42】
前記伝達関数に基づいて前記全域通過フィルタの係数を決定するように前記少なくとも1つのプロセッサを構成する前記命令は、位相ボコーダを使用するように前記少なくとも1つのプロセッサを構成する、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項43】
前記伝達関数は、前記複数のチャンネルにおける第2チャンネルの第2位相角に対する、前記複数のチャンネルにおける第1チャンネルの第1位相角の回転を定義する、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項44】
前記命令は、前記複数のチャンネルをモノラル出力チャンネルに合成するように前記少なくとも1つのプロセッサをさらに構成する、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項45】
前記命令は、ネットワークを介してユーザデバイスへ前記複数のチャンネルを提供するように前記少なくとも1つのプロセッサをさらに構成する、請求項31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
図2は、幾つかの実施形態に係るコンピューティングシステム環境200のブロック図である。コンピューティングシステム200は、オーディオシステム202を含んでよく、オーディオシステム202は、ネットワーク208を介してユーザデバイス210aおよび210bに接続された、1つまたは複数のコンピューティングデバイス(例えば、サーバ)を含み得る。オーディオシステム202は、ネットワーク208を介して、オーディオコンテンツをユーザデバイス210aおよび210b(それぞれをユーザデバイス210とも称する)に提供する。ネットワーク208は、システム202とユーザデバイス210との間の通信を促進する。ネットワーク
208は、インターネットを含む様々なタイプのネットワークを含み得る[0056]。
【国際調査報告】