(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】パラオキソナーゼ融合ポリペプチドならびに関連する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240208BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240208BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20240208BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20240208BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240208BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240208BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20240208BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20240208BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240208BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240208BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240208BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240208BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240208BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240208BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240208BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240208BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20240208BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240208BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240208BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240208BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240208BHJP
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A61P 37/08 20060101ALI20240208BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240208BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20240208BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240208BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240208BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240208BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240208BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240208BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240208BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20240208BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20240208BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240208BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240208BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K19/00
C12N9/16 Z
C12N9/22
C07K14/47
C07K16/18
C07K16/24
C12N15/55
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12P21/02 A
A61P29/00
A61P11/00
A61P11/06
A61P43/00 105
A61P11/08
A61P1/04
A61P37/02
A61P3/10
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/04
A61P37/08
A61P31/04
A61P39/02
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P9/00
A61P9/10
A61P1/16
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P7/00
A61P33/00
A61P3/00
A61P7/02
A61P35/00
A61P39/06
A61K38/46
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K9/12
A61K38/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550042
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 US2022016723
(87)【国際公開番号】W WO2022178078
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518076377
【氏名又は名称】セリピオン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レッドベター, ジェフリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハイデン-レッドベター, マーサ エス.
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG26
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA91X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA31
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA24
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC01
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4C076CC11
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC20
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC32
4C076CC34
4C076CC50
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA41
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4C084DC50
4C084NA14
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4C084ZA36
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4C084ZA59
4C084ZA61
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4C084ZA75
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB13
4C084ZB15
4C084ZB26
4C084ZB35
4C084ZB37
4C084ZC21
4C084ZC35
4C084ZC37
4C084ZC52
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
パラオキソナーゼ融合ポリペプチドに関する組成物および方法が開示される。一部の態様では、融合物は、生物学的に活性なパラオキソナーゼ(例えば、ヒトPON1またはそのバリアント)に対してアミノ末端側に連結された第1の生物学的に活性なポリペプチドを含む二重特異的分子であり、第1の生物学的に活性なポリペプチドは、DNase、RNase、SOD1、CTLA-4細胞外ドメイン、CD40細胞外ドメイン、または炎症性サイトカインに特異的に結合しそれを中和するポリペプチドである。二重特異的融合物は、第1の生物学的に活性なポリペプチドに対してカルボキシル末端側かつパラオキソナーゼに対してアミノ末端側に連結された第2の生物学的に活性なポリペプチド(例えば、ダイマー化ドメインまたは新生児Fc受容体(FcRn)に特異的に結合するドメイン)をさらに含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、T-L1-X-L2-Pを含む融合ポリペプチドであって、式中、
Tは、
DNase、
RNase、
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、
細胞傷害性Tリンパ球関連分子-4(CTLA-4)細胞外ドメイン、
CD40細胞外ドメイン、および
腫瘍壊死因子α(TNFα)またはトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)に特異的に結合しそれを中和するポリペプチド
からなる群から選択される第1の生物学的に活性なポリペプチドであり;
L1は、第1のポリペプチドリンカーであり、L1は、必要に応じて存在し;
Xは、免疫グロブリン重鎖定常領域であり、前記免疫グロブリン重鎖定常領域は、ダイマーを形成し、新生児Fc受容体(FcRn)に特異的に結合することが可能であり;
L2は、第2のポリペプチドリンカーであり、L2は、必要に応じて存在し;かつ
Pは、生物学的に活性なパラオキソナーゼであり、前記パラオキソナーゼは、配列番号6の残基16~355または26~355に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有し、配列番号6の残基1~15に対応するアミノ末端リーダー配列を含有しない
融合ポリペプチド。
【請求項2】
ヒトパラオキソナーゼ1 Q192アイソフォーム(hPON1-Q192;配列番号4)のQ192に対応する位置におけるアミノ酸が、リシンまたはアルギニンである、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項3】
hPON1-Q192のQ192に対応する位置におけるアミノ酸が、リシンである、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記ヒトパラオキソナーゼ1 Q192アイソフォーム(hPON1-Q192;配列番号4)のH115に対応する位置におけるアミノ酸が、トリプトファンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記パラオキソナーゼが、
(i)配列番号6の残基16~355または26~355、
(ii)配列番号124の残基16~355または26~355、あるいは
(iii)配列番号126の残基16~355または26~355
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
前記パラオキソナーゼが、
(i)配列番号6の残基n~355、
(ii)配列番号124の残基n~355、および
(iii)配列番号126の残基n~355
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、nが、端点を含めた16~26の整数である、請求項5に記載の融合ポリペプチド。
【請求項7】
L2が存在し、少なくとも8つのアミノ酸残基を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
L2が、12~25個のアミノ酸残基からなる、請求項7に記載の融合ポリペプチド。
【請求項9】
L2が、配列番号56に示されるアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の融合ポリペプチド。
【請求項10】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、前記DNase、前記RNaseおよび前記スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項11】
L1が存在し、前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、前記DNaseである、請求項10に記載の融合ポリペプチド。
【請求項12】
前記DNaseが、
(i)配列番号18の残基21~280、
(ii)配列番号152の残基21~280、または
(iii)配列番号136の残基21~290
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項11に記載の融合ポリペプチド。
【請求項13】
前記DNaseが、配列番号18の残基21~280または配列番号152の残基21~280に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有し、前記DNaseが、N74、G105およびA114からなる群から選択されるヒト野生型DNase1(配列番号120)のアミノ酸に対応する位置において、少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、
ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるアミノ酸置換(N74置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較してDNA結合を増加させ、
ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸置換(G105置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較してDNA結合を増加させ、かつ
ヒトDNase1のA114に対応する位置におけるアミノ酸置換(A114置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較して、エンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させる
請求項12に記載の融合ポリペプチド。
【請求項14】
前記N74置換およびG105置換の両方を含有する、請求項13に記載の融合ポリペプチド。
【請求項15】
ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるアミノ酸が、リシンである、かつ/または
ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸が、アルギニンである
請求項14に記載の融合ポリペプチド。
【請求項16】
前記A114置換を含有しない、請求項14または15に記載の融合ポリペプチド。
【請求項17】
前記G105置換およびA114置換の両方を含有する、請求項13に記載の融合ポリペプチド。
【請求項18】
ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸が、アルギニンである、かつ/または
ヒトDNase1のA114に対応する位置におけるアミノ酸が、フェニルアラニンである
請求項17に記載の融合ポリペプチド。
【請求項19】
前記N74置換、G105置換およびA114置換の各々を含有する、請求項13に記載の融合ポリペプチド。
【請求項20】
ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるアミノ酸が、リシンであり、
ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸が、アルギニンである、かつ/または
ヒトDNase1のA114に対応する位置におけるアミノ酸が、フェニルアラニンである
請求項13または19に記載の融合ポリペプチド。
【請求項21】
前記DNaseが、配列番号136の残基21~290に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有し、配列番号136のR80、R95およびN96に対応する位置におけるアミノ酸の各々が、アラニンまたはセリンである、請求項12に記載の融合ポリペプチド。
【請求項22】
前記DNaseが、
(i)配列番号18の残基21~280、
(ii)配列番号20の残基21~280、
(iii)配列番号152の残基21~280、
(iv)配列番号138の残基21~290、または
(v)配列番号140の残基21~290
に示されるアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の融合ポリペプチド。
【請求項23】
L1が、少なくとも15個のアミノ酸残基を含む、請求項11から22のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項24】
L1が、少なくとも26個のアミノ酸残基を含む、請求項23に記載の融合ポリペプチド。
【請求項25】
L1が、26~36個のアミノ酸残基からなる、請求項23に記載の融合ポリペプチド。
【請求項26】
L1が、配列番号119のアミノ酸配列の3つまたはそれよりも多くのタンデムリピートを含む、請求項11から25のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項27】
L1が、配列番号12および配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項23に記載の融合ポリペプチド。
【請求項28】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、前記RNaseである、請求項10に記載の融合ポリペプチド。
【請求項29】
前記RNaseが、配列番号22の残基29~156に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項28に記載の融合ポリペプチド。
【請求項30】
前記RNaseが、配列番号22の残基29~156に示されるアミノ酸配列を有する、請求項29に記載の融合ポリペプチド。
【請求項31】
L1が存在し、少なくとも2つのアミノ酸残基を含む、請求項28から30のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項32】
L1が、10~36個のアミノ酸残基からなる、請求項31に記載の融合ポリペプチド。
【請求項33】
L1が、配列番号119のアミノ酸配列の2つまたはそれよりも多くのタンデムリピートを含む、請求項28から32のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項34】
L1が、配列番号12に示されるアミノ酸配列を有する、請求項31に記載の融合ポリペプチド。
【請求項35】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、前記SOD1である、請求項10に記載の融合ポリペプチド。
【請求項36】
前記SOD1が、配列番号32の残基2~154に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項35に記載の融合ポリペプチド。
【請求項37】
前記SOD1が、ヒトSOD1(配列番号32)と比較して、以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを含有する:
ヒトSOD1のC7に対応する位置におけるアラニン(C7置換);および
ヒトSOD1のC112に対応する位置におけるセリン(C112置換)
請求項36に記載の融合ポリペプチド。
【請求項38】
前記C7置換およびC112置換の両方を含有する、請求項37に記載の融合ポリペプチド。
【請求項39】
前記SOD1が、配列番号54の残基23~175に示されるアミノ酸配列を有する、請求項38に記載の融合ポリペプチド。
【請求項40】
L1が存在し、少なくとも2つのアミノ酸残基を含む、請求項35から39のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項41】
L1が、10~36個のアミノ酸残基からなる、請求項40に記載の融合ポリペプチド。
【請求項42】
L1が、配列番号119のアミノ酸配列の2つまたはそれよりも多くのタンデムリピートを含む、請求項35から41のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項43】
L1が、配列番号10または配列番号12に示されるアミノ酸配列を有する、請求項40に記載の融合ポリペプチド。
【請求項44】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、前記CTLA-4細胞外ドメインである、請求項1から9のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項45】
前記CTLA-4細胞外ドメインが、配列番号66の残基21~144に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項44に記載の融合ポリペプチド。
【請求項46】
前記CTLA-4細胞外ドメインが、配列番号66の残基21~144に示されるアミノ酸配列を有する、請求項45に記載の融合ポリペプチド。
【請求項47】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、前記CD40細胞外ドメインである、請求項1から9のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項48】
前記CD40細胞外ドメインが、
(i)配列番号74の残基21~188、
(ii)配列番号78の残基21~188、
(iii)配列番号82の残基21~188、
(iv)配列番号86の残基21~188、または
(v)配列番号90の残基21~188
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項47に記載の融合ポリペプチド。
【請求項49】
前記CD40細胞外ドメインが、E64、K81、P85およびL121からなる群から選択されるヒトCD40(配列番号68)のアミノ酸に対応する位置において、少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、前記少なくとも1つのアミノ酸置換が、ヒトCD40と比較してCD40リガンド結合を増加させる、請求項48に記載の融合ポリペプチド。
【請求項50】
ヒトCD40のK81に対応する位置におけるアミノ酸が、スレオニン、ヒスチジンおよびセリンからなる群から選択される;
ヒトCD40のK81に対応する位置におけるアミノ酸が、ヒスチジンであり、ヒトCD40のL121に対応する位置におけるアミノ酸が、プロリンである;または
ヒトCD40のE64に対応する位置におけるアミノ酸が、チロシンであり、ヒトCD40のK81に対応する位置におけるアミノ酸が、スレオニンであり、ヒトCD40のP85に対応する位置におけるアミノ酸が、チロシンである、
請求項49に記載の融合ポリペプチド。
【請求項51】
前記CD40細胞外ドメインが、
(i)配列番号74の残基21~188、
(ii)配列番号78の残基21~188、
(iii)配列番号82の残基21~188、
(iv)配列番号86の残基21~188、または
(v)配列番号90の残基21~188
に示されるアミノ酸配列を有する、請求項48に記載の融合ポリペプチド。
【請求項52】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、TNFαまたはTGF-βに特異的に結合しそれを中和する前記ポリペプチドである、請求項1から9のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項53】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、単鎖抗体である、請求項52に記載の融合ポリペプチド。
【請求項54】
前記単鎖抗体が、単鎖Fv(scFv)および単一ドメイン抗体(sdAb)からなる群から選択される、請求項53に記載の融合ポリペプチド。
【請求項55】
前記単鎖抗体が、TNFαに特異的に結合しそれを中和する、請求項53または54に記載の融合ポリペプチド。
【請求項56】
前記単鎖抗体が、相補性決定領域(CDR)CDR-H1
TNFα、CDR-H2
TNFαおよびCDR-H3
TNFαを含むVHドメインを含み、VH CDRの前記セットが、配列番号108に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインの参照CDR CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のセットと比較して、3つまたはそれよりも少ないアミノ酸置換を有する、請求項55に記載の融合ポリペプチド。
【請求項57】
各VH CDRが、CDRのChothia定義、Kabat定義、AbM定義、IMGTデータベース定義または接触定義に従って定義される、請求項56に記載の融合ポリペプチド。
【請求項58】
CDR-H1
TNFα、CDR-H2
TNFαおよびCDR-H3
TNFαが、IMGTデータベース定義に従う配列番号108のVH CDRであり、それによって、
CDR-H1
TNFαが、配列番号108の残基26~33に示されるアミノ酸配列を有し;
CDR-H2
TNFαが、配列番号108の残基50~59に示されるアミノ酸配列を有し;かつ
CDR-H3
TNFαが、配列番号108の残基97~110に示されるアミノ酸配列を有する
請求項57に記載の融合ポリペプチド。
【請求項59】
前記単鎖抗体が、相補性決定領域(CDR)CDR-L1
TNFα、CDR-L2
TNFαおよびCDR-L3
TNFαを含むVLドメインを含み、VL CDRの前記セットが、配列番号110に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインの参照CDR CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のセットと比較して、3つまたはそれよりも少ないアミノ酸置換を有する、請求項55から58のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項60】
各VL CDRが、CDRのChothia定義、Kabat定義、AbM定義、IMGTデータベース定義または接触定義に従って定義される、請求項59に記載の融合ポリペプチド。
【請求項61】
CDR-L1
TNFα、CDR-L2
TNFαおよびCDR-L3
TNFαが、IMGTデータベース定義に従う配列番号110のVL CDRであり、それによって、
CDR-L1
TNFαが、配列番号110の残基27~32に示されるアミノ酸配列を有し;
CDR-L2
TNFαが、配列番号110の残基50~52に示されるアミノ酸配列を有し;かつ
CDR-L3
TNFαが、配列番号110の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する
請求項60に記載の融合ポリペプチド。
【請求項62】
前記単鎖抗体が、配列番号108に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するVHドメインを含む、かつ/または前記単鎖抗体が、配列番号110に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するVLドメインを含む、請求項55に記載の融合ポリペプチド。
【請求項63】
前記単鎖抗体が、TGF-βに特異的に結合しそれを中和する、請求項53または54に記載の融合ポリペプチド。
【請求項64】
前記単鎖抗体が、相補性決定領域(CDR)CDR-H1
TGF-β、CDR-H2
TGF-βおよびCDR-H3
TGF-βを含むVHドメインを含み、VH CDRの前記セットが、配列番号112に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインの参照CDR CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のセットと比較して、3つまたはそれよりも少ないアミノ酸置換を有する、請求項63に記載の融合ポリペプチド。
【請求項65】
各VH CDRが、CDRのChothia定義、Kabat定義、AbM定義、IMGTデータベース定義または接触定義に従って定義される、請求項64に記載の融合ポリペプチド。
【請求項66】
CDR-H1
TNFα、CDR-H2
TNFαおよびCDR-H3
TGF-βが、Kabat定義に従う配列番号112のVH CDRであり、それによって、
CDR-H1
TGF-βが、配列番号112の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し;
CDR-H2
TGF-βが、配列番号112の残基50~66に示されるアミノ酸配列を有し;かつ
CDR-H3
TGF-βが、配列番号112の残基99~106に示されるアミノ酸配列を有する
請求項65に記載の融合ポリペプチド。
【請求項67】
前記単鎖抗体が、相補性決定領域(CDR)CDR-L1
TGF-β、CDR-L2
TGF-βおよびCDR-L3
TGF-βを含むVLドメインを含み、VL CDRの前記セットが、配列番号114に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインの参照CDR CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のセットと比較して、3つまたはそれよりも少ないアミノ酸置換を有する、請求項63から66のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項68】
各VL CDRが、CDRのChothia定義、Kabat定義、AbM定義、IMGTデータベース定義または接触定義に従って定義される、請求項67に記載の融合ポリペプチド。
【請求項69】
CDR-L1
TGF-β、CDR-L2
TGF-βおよびCDR-L3
TGF-βが、Kabat定義に従う配列番号114のVL CDRであり、それによって、
CDR-L1
TGF-βが、配列番号114の残基24~40に示されるアミノ酸配列を有し;
CDR-L2
TGF-βが、配列番号114の残基56~62に示されるアミノ酸配列を有し;かつ
CDR-L3
TGF-βが、配列番号114の残基95~102に示されるアミノ酸配列を有する
請求項68に記載の融合ポリペプチド。
【請求項70】
前記単鎖抗体が、配列番号112に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するVHドメインを含む、かつ/または前記単鎖抗体が、配列番号114に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するVLドメインを含む、請求項55に記載の融合ポリペプチド。
【請求項71】
前記単鎖抗体が、
(i)配列番号92の残基21~268、
(ii)配列番号96の残基21~268、
(iii)配列番号100の残基21~269、または
(iv)配列番号104の残基21~269
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項53に記載の融合ポリペプチド。
【請求項72】
前記単鎖抗体が、
(i)配列番号92の残基21~268、
(ii)配列番号96の残基21~268、
(iii)配列番号100の残基21~269、または
(iv)配列番号104の残基21~269
に示されるアミノ酸配列を有する、請求項71に記載の融合ポリペプチド。
【請求項73】
アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、X-L2-Pを含む融合ポリペプチドであって、式中、
Xは、免疫グロブリン重鎖定常領域であり、前記免疫グロブリン重鎖定常領域は、ダイマーを形成し、新生児Fc受容体(FcRn)に特異的に結合することが可能であり;
L2は、ポリペプチドリンカーであり、L2は、必要に応じて存在し;かつ
Pは、生物学的に活性なパラオキソナーゼであり、前記パラオキソナーゼは、配列番号6の残基16~355または26~355に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有し、配列番号6の残基1~15に対応するアミノ末端リーダー配列を含有せず、
前記融合ポリペプチドが、前記免疫グロブリン重鎖定常領域に対してN末端側には生物学的に活性なポリペプチドを含まない、融合ポリペプチド。
【請求項74】
ヒトパラオキソナーゼ1 Q192アイソフォーム(hPON1-Q192;配列番号4)のQ192に対応する位置におけるアミノ酸が、リシンまたはアルギニンである、請求項73に記載の融合ポリペプチド。
【請求項75】
hPON1-Q192のQ192に対応する位置におけるアミノ酸が、リシンである、請求項74に記載の融合ポリペプチド。
【請求項76】
前記ヒトパラオキソナーゼ1 Q192アイソフォーム(hPON1-Q192;配列番号4)のH115に対応する位置におけるアミノ酸が、トリプトファンである、請求項73から75のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項77】
前記パラオキソナーゼが、
(i)配列番号6の残基16~355または26~355、
(ii)配列番号124の残基16~355または26~355、あるいは
(iii)配列番号126の残基16~355または26~355
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項73から76のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項78】
前記パラオキソナーゼが、
(i)配列番号6の残基n~355、
(ii)配列番号124の残基n~355、および
(iii)配列番号126の残基n~355
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、nが、端点を含めた16~26の整数である、請求項77に記載の融合ポリペプチド。
【請求項79】
L2が存在し、少なくとも8つのアミノ酸残基を含む、請求項73から78のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項80】
L2が、12~25個のアミノ酸残基からなる、請求項79に記載の融合ポリペプチド。
【請求項81】
L2が、配列番号56に示されるアミノ酸配列を有する、請求項79に記載の融合ポリペプチド。
【請求項82】
前記免疫グロブリン重鎖定常領域が、免疫グロブリンFc領域である、請求項1から81のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項83】
前記Fc領域が、ヒトFc領域である、請求項82に記載の融合ポリペプチド。
【請求項84】
前記ヒトFc領域が、野生型ヒト配列と比較して1つまたは複数のアミノ酸置換を含むFcバリアントである、請求項83に記載の融合ポリペプチド。
【請求項85】
前記Fc領域が、ヒトγ1 Fc領域またはヒトγ4 Fc領域である、請求項83または84に記載の融合ポリペプチド。
【請求項86】
前記Fc領域が、Eu残基C220がセリンによって置き換えられたヒトγ1 Fcバリアントである、請求項84に記載の融合ポリペプチド。
【請求項87】
Eu残基C226およびC229が各々、セリンによって置き換えられている、請求項86に記載の融合ポリペプチド。
【請求項88】
Eu残基P238が、セリンによって置き換えられている、請求項87に記載の融合ポリペプチド。
【請求項89】
前記Fc領域が、Eu残基P331がセリンによって置き換えられたヒトγ1 Fcバリアントである、85に記載の融合ポリペプチド。
【請求項90】
Eu残基P331が、セリンによって置き換えられている、請求項86から88のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項91】
前記Fc領域が、
(i)配列番号26の残基1~232または1~231、
(ii)配列番号28の残基1~232または1~231、
(iii)配列番号42の残基159~390または159~389、
(iv)配列番号116の残基1~232または1~231、あるいは
(v)配列番号118の残基1~232または1~231
に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1から81のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項92】
前記免疫グロブリン重鎖定常領域が、
(i)配列番号26の残基16~232または16~231、
(ii)配列番号116の残基16~232または16~231、あるいは
(iii)配列番号118の残基16~232または16~231
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から81のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項93】
前記免疫グロブリン重鎖定常領域が、
(i)配列番号26の残基16~232または16~231、
(ii)配列番号116の残基16~232または16~231、あるいは
(iii)配列番号118の残基16~232または16~231
に示されるアミノ酸配列を含む、請求項92に記載の融合ポリペプチド。
【請求項94】
(i)配列番号2の残基21~896、
(ii)配列番号128の残基21~896、
(iii)配列番号130の残基21~896、
(iv)配列番号148の残基21~906、
(v)配列番号158の残基21~896、
(vi)配列番号160の残基21~906、
(vii)配列番号162の残基21~906、または
(viii)配列番号164の残基21~906
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の融合ポリペプチド。
【請求項95】
(i)配列番号2の残基21~896、
(ii)配列番号128の残基21~896、
(iii)配列番号130の残基21~896、
(iv)配列番号148の残基21~906、
(v)配列番号158の残基21~896、
(vi)配列番号160の残基21~906、
(vii)配列番号162の残基21~906、または
(viii)配列番号164の残基21~906
に示されるアミノ酸配列を含む、請求項94に記載の融合ポリペプチド。
【請求項96】
(i)配列番号40の残基21~764、または
(ii)配列番号48の残基21~740
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の融合ポリペプチド。
【請求項97】
(i)配列番号40の残基21~764、または
(ii)配列番号48の残基21~740
に示されるアミノ酸配列を含む、請求項96に記載の融合ポリペプチド。
【請求項98】
(i)配列番号50の残基23~781、
(ii)配列番号52の残基23~781、または
(iii)配列番号54の残基23~791
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項35に記載の融合ポリペプチド。
【請求項99】
(i)配列番号50の残基23~781、
(ii)配列番号52の残基23~781、または
(iii)配列番号54の残基23~791
に示されるアミノ酸配列を含む、請求項98に記載の融合ポリペプチド。
【請求項100】
配列番号66の残基21~736に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項44に記載の融合ポリペプチド。
【請求項101】
配列番号66の残基21~736に示されるアミノ酸配列を含む、請求項44に記載の融合ポリペプチド。
【請求項102】
(i)配列番号74の残基21~804、
(ii)配列番号78の残基21~804、
(iii)配列番号82の残基21~804、
(iv)配列番号86の残基21~804、または
(v)配列番号90の残基21~804
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項47に記載の融合ポリペプチド。
【請求項103】
(i)配列番号74の残基21~804、
(ii)配列番号78の残基21~804、
(iii)配列番号82の残基21~804、
(iv)配列番号86の残基21~804、または
(v)配列番号90の残基21~804
に示されるアミノ酸配列を含む、請求項102に記載の融合ポリペプチド。
【請求項104】
(i)配列番号94の残基21~860、または
(ii)配列番号98の残基21~860
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項55に記載の融合ポリペプチド。
【請求項105】
(i)配列番号94の残基21~860、または
(ii)配列番号98の残基21~860
に示されるアミノ酸配列を含む、請求項104に記載の融合ポリペプチド。
【請求項106】
(i)配列番号102の残基21~861、または
(ii)配列番号106の残基21~861
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項63に記載の融合ポリペプチド。
【請求項107】
(i)配列番号102の残基21~861、または
(ii)配列番号106の残基21~861
に示されるアミノ酸配列を含む、請求項106に記載の融合ポリペプチド。
【請求項108】
(i)配列番号122の残基21~613、
(ii)配列番号132の残基21~613、
(iii)配列番号134の残基21~613、
(iv)配列番号142の残基21~610、
(v)配列番号144の残基21~610、または
(vi)配列番号146の残基21~610
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項73に記載の融合ポリペプチド。
【請求項109】
(i)配列番号122の残基21~613、
(ii)配列番号132の残基21~613、
(iii)配列番号134の残基21~613、
(iv)配列番号142の残基21~610、
(v)配列番号144の残基21~610、または
(vi)配列番号146の残基21~610
に示されるアミノ酸配列を含む、請求項108に記載の融合ポリペプチド。
【請求項110】
アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、T-L1-X-L2-Pを含む融合ポリペプチドであって、式中:
Tは、
DNase、
RNase、
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、
細胞傷害性Tリンパ球関連分子-4(CTLA-4)細胞外ドメイン、
CD40細胞外ドメイン、および
腫瘍壊死因子α(TNFα)またはトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)に特異的に結合しそれを中和するポリペプチド
からなる群から選択される第1の生物学的に活性なポリペプチドであり;
L1は、第1のポリペプチドリンカーであり、L1は、必要に応じて存在し;
Xは、第2の生物学的に活性なポリペプチドであり、Xは、必要に応じて存在し;
L2は、第2のポリペプチドリンカーであり、L2は、必要に応じて存在し;かつ
Pは、生物学的に活性なパラオキソナーゼであり、前記パラオキソナーゼは、配列番号6の残基16~355または26~355に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有し、配列番号6の残基1~15に対応するアミノ末端リーダー配列を含有しない
融合ポリペプチド。
【請求項111】
ヒトパラオキソナーゼ1 Q192アイソフォーム(hPON1-Q192;配列番号4)のQ192に対応する位置におけるアミノ酸置換が、リシンまたはアルギニンである、請求項110に記載の融合ポリペプチド。
【請求項112】
hPON1-Q192のQ192に対応する位置におけるアミノ酸が、リシンである、請求項111に記載の融合ポリペプチド。
【請求項113】
前記ヒトパラオキソナーゼ1 Q192アイソフォーム(hPON1-Q192;配列番号4)のH115に対応する位置におけるアミノ酸が、トリプトファンである、請求項110から112のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項114】
前記パラオキソナーゼが、
(i)配列番号6の残基16~355または26~355、
(ii)配列番号124の残基16~355または26~355、あるいは
(iii)配列番号126の残基16~355または26~355
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項113に記載の融合ポリペプチド。
【請求項115】
前記パラオキソナーゼが、
(i)配列番号6の残基n~355、
(ii)配列番号124の残基n~355、および
(iii)配列番号126の残基n~355
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、nが、端点を含めた16~26の整数である、請求項114に記載の融合ポリペプチド。
【請求項116】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、前記DNase、前記RNaseおよび前記スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)からなる群から選択される、請求項110から115のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項117】
L1が存在し、前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、前記DNaseである、請求項116に記載の融合ポリペプチド。
【請求項118】
前記DNaseが、
(i)配列番号18の残基21~280、
(ii)配列番号152の残基21~280;または
(ii)配列番号136の残基21~290
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項117に記載の融合ポリペプチド。
【請求項119】
前記DNaseが、配列番号18の残基21~280または配列番号152の残基21~280に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有し、前記DNaseが、N74、G105およびA114からなる群から選択されるヒトDNase1(配列番号120)のアミノ酸に対応する位置において、少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、
ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるアミノ酸置換(N74置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較してDNA結合を増加させ、
ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸置換(G105置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較してDNA結合を増加させ、かつ
ヒトDNase1のA114に対応する位置におけるアミノ酸置換(A114置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較して、エンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させる
請求項118に記載の融合ポリペプチド。
【請求項120】
ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるアミノ酸が、リシンであり、
ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸が、アルギニンである、かつ/または
ヒトDNase1のA114に対応する位置におけるアミノ酸が、フェニルアラニンである
請求項119に記載の融合ポリペプチド。
【請求項121】
前記DNaseが、配列番号136の残基21~290に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有し、配列番号136のR80、R95およびN96に対応する位置におけるアミノ酸の各々が、アラニンまたはセリンである、請求項118に記載の融合ポリペプチド。
【請求項122】
前記DNaseが、
(i)配列番号18の残基21~280、
(ii)配列番号20の残基21~280、
(iii)配列番号152の残基21~280;
(iv)配列番号138の残基21~290、または
(v)配列番号140の残基21~290
に示されるアミノ酸配列を有する、請求項118に記載の融合ポリペプチド。
【請求項123】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、前記RNaseである、請求項116に記載の融合ポリペプチド。
【請求項124】
前記RNaseが、配列番号22の残基29~156に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項123に記載の融合ポリペプチド。
【請求項125】
前記RNaseが、配列番号22の残基29~156に示されるアミノ酸配列を有する、請求項124に記載の融合ポリペプチド。
【請求項126】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、前記SOD1である、請求項116に記載の融合ポリペプチド。
【請求項127】
前記SOD1が、配列番号32の残基2~154に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項126に記載の融合ポリペプチド。
【請求項128】
前記SOD1が、配列番号54の残基23~175に示されるアミノ酸配列を有する、請求項127に記載の融合ポリペプチド。
【請求項129】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、前記CTLA-4細胞外ドメインである、請求項110から115のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項130】
前記CTLA-4細胞外ドメインが、配列番号66の残基21~144に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項129に記載の融合ポリペプチド。
【請求項131】
前記CTLA-4細胞外ドメインが、配列番号66の残基21~144に示されるアミノ酸配列を有する、請求項130に記載の融合ポリペプチド。
【請求項132】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、前記CD40細胞外ドメインである、請求項110から115のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項133】
前記CD40細胞外ドメインが、
(i)配列番号74の残基21~188;
(ii)配列番号78の残基21~188;
(iii)配列番号82の残基21~188;
(iv)配列番号86の残基21~188;または
(v)配列番号90の残基21~188
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項132に記載の融合ポリペプチド。
【請求項134】
前記CD40細胞外ドメインが、
(i)配列番号74の残基21~188;
(ii)配列番号78の残基21~188;
(iii)配列番号82の残基21~188;
(iv)配列番号86の残基21~188;または
(v)配列番号90の残基21~188
に示されるアミノ酸配列を有する、請求項133に記載の融合ポリペプチド。
【請求項135】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、TNFαまたはTGF-βに特異的に結合しそれを中和する前記ポリペプチドである、請求項110から115のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項136】
前記第1の生物学的に活性なポリペプチドが、単鎖抗体である、請求項135に記載の融合ポリペプチド。
【請求項137】
前記単鎖抗体が、単鎖Fv(scFv)および単一ドメイン抗体(sdAb)からなる群から選択される、請求項136に記載の融合ポリペプチド。
【請求項138】
前記単鎖抗体が、TNFαに特異的に結合しそれを中和する、請求項135から137のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項139】
前記単鎖抗体が、TGF-βに特異的に結合しそれを中和する、請求項135から137のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項140】
前記第2の生物学的に活性なポリペプチドが存在し、ダイマー化ドメインおよび新生児Fc受容体(FcRn)に特異的に結合するドメインから選択される、請求項110から139のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項141】
前記第2の生物学的に活性なポリペプチドが、ダイマー化ドメインである、請求項140に記載の融合ポリペプチド。
【請求項142】
第1の融合ポリペプチドと第2の融合ポリペプチドとを含むダイマー性タンパク質であって、前記第1および第2の融合ポリペプチドの各々が、請求項1から109および141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドである、ダイマー性タンパク質。
【請求項143】
請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項144】
請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドをコードするDNAセグメントを含む発現カセットであって、前記DNAセグメントが、プロモーターに作動可能に連結されている、発現カセット。
【請求項145】
請求項144に記載の発現カセットが導入された培養細胞であって、前記DNAセグメントを発現する、培養細胞。
【請求項146】
融合ポリペプチドを作製する方法であって、
請求項144に記載の発現カセットが導入された細胞を培養するステップであって、前記細胞が、前記DNAセグメントを発現し、前記コードされた融合ポリペプチドが産生される、ステップ;および
前記融合ポリペプチドを回収するステップ
を含む、方法。
【請求項147】
請求項1から109および141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドをコードするDNAセグメントを含む発現カセットであって、前記DNAセグメントが、プロモーターに作動可能に連結されている、発現カセット。
【請求項148】
ダイマー性タンパク質を作製する方法であって、
請求項147に記載の発現カセットが導入された細胞を培養するステップであって、前記細胞が、前記DNAセグメントを発現し、前記コードされた融合ポリペプチドが、ダイマー性タンパク質として産生される、ステップ;および
前記ダイマー性タンパク質を回収するステップ
を含む、方法。
【請求項149】
請求項13から22、94および95のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドをコードするDNAセグメントを含む発現カセットであって、前記DNAセグメントが、プロモーターに作動可能に連結されている、発現カセット。
【請求項150】
そのゲノムDNA内に、請求項148に記載の発現カセットを含む安定な細胞系であって、前記DNAセグメントを構成的に発現する、安定な細胞系。
【請求項151】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系である、請求項150に記載の安定な細胞系。
【請求項152】
融合ポリペプチドを作製する方法であって、
そのゲノムDNA内に、請求項149に記載の発現カセットを含む安定な細胞系を培養するステップであって、前記安定な細胞系が、前記DNAセグメントを構成的に発現し、前記コードされた融合ポリペプチドが産生される、ステップ;および
前記融合ポリペプチドを回収するステップ
を含む、方法。
【請求項153】
ダイマー性タンパク質を作製する方法であって、
そのゲノムDNA内に、請求項149に記載の発現カセットを含む安定な細胞系を培養するステップであって、前記安定な細胞系が、前記DNAセグメントを構成的に発現し、前記コードされた融合ポリペプチドが、ダイマー性タンパク質として産生される、ステップ;および
前記ダイマー性タンパク質を回収するステップ
を含む、方法。
【請求項154】
前記安定な細胞系が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系である、請求項152または153に記載の方法。
【請求項155】
請求項144、147および149のいずれか一項に記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項156】
請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド;および
薬学的に許容される担体
を含む組成物。
【請求項157】
請求項142に記載のダイマー性タンパク質;および
薬学的に許容される担体
を含む組成物。
【請求項158】
噴霧による肺への送達のために製剤化されている、請求項156または157に記載の組成物。
【請求項159】
炎症性疾患を処置するための方法であって、請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項141に記載のダイマー性タンパク質の有効量を、前記炎症性疾患を有する対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項160】
前記炎症性疾患が、炎症性肺疾患である、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
前記炎症性肺疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症(CF)、気管支拡張症、低酸素症、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および間質性肺疾患からなる群から選択される、請求項160に記載の方法。
【請求項162】
前記間質性肺疾患が、特発性肺線維症(IPF)およびサルコイドーシスからなる群から選択される、請求項161に記載の方法。
【請求項163】
前記炎症性肺疾患が、Pseudomonas aeruginosa感染によって特徴付けられる、請求項160に記載の方法。
【請求項164】
前記炎症性疾患が、炎症性腸疾患(IBD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、1型糖尿病および2型糖尿病からなる群から選択される、請求項159に記載の方法。
【請求項165】
前記炎症性疾患が、炎症性皮膚疾患である、請求項159に記載の方法。
【請求項166】
前記炎症性皮膚疾患が、乾癬およびアトピー性皮膚炎からなる群から選択される、請求項165に記載の方法。
【請求項167】
自己免疫疾患を処置するための方法であって、請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項142に記載のダイマー性タンパク質の有効量を、前記自己免疫疾患を有する対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項168】
前記自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、抗リン脂質抗体症候群、1型糖尿病、血管炎および全身性強皮症からなる群から選択される、請求項167に記載の方法。
【請求項169】
グラム陰性細菌によるバイオフィルム形成を処置するための方法であって、請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項142に記載のダイマー性タンパク質の有効量を、前記バイオフィルム形成を有する対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項170】
前記グラム陰性細菌が、Pseudomonas aeruginosaである、請求項169に記載の方法。
【請求項171】
硫黄マスタードガスまたは有機リンへの曝露を処置するための方法であって、請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項142に記載のダイマー性タンパク質の有効量を、前記硫黄マスタードガスまたは前記有機リンに曝露された対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項172】
前記有機リンが、タブン、サリン、ソマンおよびシクロサリンからなる群から選択される、請求項171に記載の方法。
【請求項173】
神経学的疾患を処置するための方法であって、請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項142に記載のダイマー性タンパク質の有効量を、前記神経学的疾患を有する対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項174】
前記神経学的疾患が、認知症によって特徴付けられる、請求項173に記載の方法。
【請求項175】
前記神経学的疾患が、パーキンソン病およびアルツハイマー病からなる群から選択される、請求項173に記載の方法。
【請求項176】
心血管疾患を処置するための方法であって、請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項142に記載のダイマー性タンパク質の有効量を、前記心血管疾患を有する対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項177】
前記心血管疾患が、アテローム動脈硬化症によって特徴付けられる、請求項176に記載の方法。
【請求項178】
前記心血管疾患が、冠動脈心疾患および虚血性脳卒中からなる群から選択される、請求項177に記載の方法。
【請求項179】
慢性肝臓疾患を処置するための方法であって、請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項142に記載のダイマー性タンパク質の有効量を、前記慢性肝臓疾患を有する対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項180】
前記慢性肝臓疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項179に記載の方法。
【請求項181】
線維性疾患を処置するための方法であって、請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項142に記載のダイマー性タンパク質の有効量を、前記線維性疾患を有する対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項182】
前記線維性疾患が、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、炎症性肺疾患、慢性肝臓疾患および慢性腎臓疾患からなる群から選択される、請求項181に記載の方法。
【請求項183】
NETosisによって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法であって、請求項11から27、94、95および117から122のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項11から27、94および95のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドのダイマー化によって形成されたダイマー性タンパク質の有効量を、NETosisによって特徴付けられる前記疾患または障害を有する対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項184】
NETosisによって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法であって、(a)請求項73から81、108および109のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは前記融合ポリペプチドのダイマー化によって形成されたダイマー性タンパク質の有効量、ならびに(b)生物学的に活性なDNaseの有効量を、NETosisによって特徴付けられる前記疾患または障害を有する対象に投与するステップを含む併用療法である、方法。
【請求項185】
前記DNaseが、
(i)配列番号18の残基21~280、
(ii)配列番号152の残基21~280、または
(iii)配列番号136の残基21~290
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項184に記載の方法。
【請求項186】
前記DNaseが、配列番号18の残基21~280または配列番号152の残基21~280に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有し、前記DNaseが、N74、G105およびA114からなる群から選択されるヒト野生型DNase1(配列番号120)のアミノ酸に対応する位置において、少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、
ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるアミノ酸置換(N74置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較してDNA結合を増加させ、
ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸置換(G105置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較してDNA結合を増加させ、かつ
ヒトDNase1のA114に対応する位置におけるアミノ酸置換(A114置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較して、エンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させる
請求項185に記載の方法。
【請求項187】
前記DNaseが、前記N74置換およびG105置換の両方を含有する、請求項186に記載の方法。
【請求項188】
ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるアミノ酸が、リシンである、かつ/または
ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸が、アルギニンである
請求項187に記載の方法。
【請求項189】
前記DNaseが、前記A114置換を含有しない、請求項187または188に記載の方法。
【請求項190】
前記DNaseが、前記G105置換およびA114置換の両方を含有する、請求項186に記載の方法。
【請求項191】
ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸が、アルギニンである、かつ/または
ヒトDNase1のA114に対応する位置におけるアミノ酸が、フェニルアラニンである
請求項190に記載の方法。
【請求項192】
前記DNaseが、前記N74置換、G105置換およびA114置換の各々を含有する、請求項186に記載の方法。
【請求項193】
ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるアミノ酸が、リシンであり、
ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸が、アルギニンである、かつ/または
ヒトDNase1のA114に対応する位置におけるアミノ酸が、フェニルアラニンである
請求項186または192に記載の方法。
【請求項194】
前記DNaseが、配列番号136の残基21~290に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有し、配列番号136のR80、R95およびN96に対応する位置におけるアミノ酸の各々が、アラニンまたはセリンである、請求項185に記載の方法。
【請求項195】
前記DNaseが
(i)配列番号18の残基21~280、
(ii)配列番号20の残基21~280、
(iii)配列番号152の残基21~280、
(iv)配列番号138の残基21~290、または
(v)配列番号140の残基21~290
に示されるアミノ酸配列を有する、請求項185に記載の方法。
【請求項196】
前記DNaseが、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、D-L1-X
dを含むDNase融合ポリペプチド内に含有され、式中、
Dは、前記DNaseであり、
L1は、少なくとも15個のアミノ酸残基を含むポリペプチドリンカーであり;かつ
X
dは、免疫グロブリンFc領域である
請求項184から195のいずれか一項に記載の方法。
【請求項197】
前記DNase融合ポリペプチドが、
(i)配列番号60の残基21~538または21~537、
(ii)配列番号62の残基21~548または21~547、
(iii)配列番号155の残基21~538または21~537、
(iv)配列番号156の残基21~548または21~547、
(v)配列番号138の残基21~548または21~547、あるいは
(vi)配列番号140の残基21~548または21~547
に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項196に記載の方法。
【請求項198】
前記DNase融合ポリペプチドが、
(i)配列番号60の残基21~538または21~537、
(ii)配列番号62の残基21~548または21~547、
(iii)配列番号155の残基21~538または21~537、
(iv)配列番号156の残基21~548または21~547、
(v)配列番号138の残基21~548または21~547、あるいは
(vi)配列番号140の残基21~548または21~547
に示されるアミノ酸配列を含む、請求項196に記載の方法。
【請求項199】
前記疾患または障害が、炎症性肺疾患である、請求項183から198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項200】
前記炎症性肺疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症(CF)、気管支拡張症、低酸素症、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および間質性肺疾患からなる群から選択される、請求項199に記載の方法。
【請求項201】
前記間質性肺疾患が、特発性肺線維症(IPF)およびサルコイドーシスからなる群から選択される、請求項200に記載の方法。
【請求項202】
前記急性呼吸促迫症候群(ARDS)が、COVID-19に関連する、請求項200に記載の方法。
【請求項203】
前記炎症性疾患が、炎症性皮膚疾患である、請求項199に記載の方法。
【請求項204】
前記炎症性皮膚疾患が、乾癬およびアトピー性皮膚炎からなる群から選択される、請求項203に記載の方法。
【請求項205】
前記疾患または障害が、自己免疫疾患である、請求項183から198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項206】
前記自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、乾癬、抗リン脂質抗体症候群、1型真性糖尿病、血管炎および全身性強皮症からなる群から選択される、請求項205に記載の方法。
【請求項207】
前記自己免疫疾患が、ループス腎炎を伴う全身性エリテマトーデス(SLE)である、請求項206に記載の方法。
【請求項208】
前記疾患または障害が、自己炎症性疾患である、請求項183から198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項209】
前記自己炎症性疾患が、炎症性腸疾患(IBD)および痛風からなる群から選択される、請求項208に記載の方法。
【請求項210】
前記疾患または障害が、神経学的疾患または障害である、請求項183から198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項211】
前記神経学的疾患または障害が、慢性神経変性疾患、中枢神経系(CNS)感染症および虚血性脳卒中からなる群から選択される、請求項210に記載の方法。
【請求項212】
前記慢性神経変性疾患が、アルツハイマー病および多発性硬化症からなる群から選択される、請求項211に記載の方法。
【請求項213】
前記CNS感染症が、髄膜炎および脳性マラリアからなる群から選択される、請求項211に記載の方法。
【請求項214】
前記疾患または障害が、代謝疾患である、請求項183から198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項215】
前記代謝疾患が、2型糖尿病および肥満からなる群から選択される、請求項214に記載の方法。
【請求項216】
前記疾患または障害が、心血管疾患である、請求項183から198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項217】
前記心血管疾患が、アテローム動脈硬化症によって特徴付けられる、請求項216に記載の方法。
【請求項218】
前記心血管疾患が、冠動脈心疾患および脳卒中からなる群から選択される、請求項217に記載の方法。
【請求項219】
前記疾患または障害が、血栓症である、請求項183から198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項220】
前記疾患または障害が、敗血症である、請求項183から198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項221】
前記疾患または障害が、虚血再灌流である、請求項183から198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項222】
前記疾患または障害が、慢性肝臓疾患である、請求項183から198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項223】
前記慢性肝臓疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項222に記載の方法。
【請求項224】
前記疾患または障害が、線維性疾患である、請求項183から198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項225】
前記線維性疾患が、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、炎症性肺疾患、慢性肝臓疾患および慢性腎臓疾患からなる群から選択される、請求項224に記載の方法。
【請求項226】
前記疾患または障害が、がんである、請求項183から198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項227】
対象において脂質酸化を低減させるための方法であって、請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項142に記載のダイマー性タンパク質の有効量を、前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項228】
加齢から対象を保護するための方法であって、請求項1から141のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは請求項142に記載のダイマー性タンパク質の有効量を、前記対象に投与するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2021年2月19日出願の米国仮特許出願第63/151,236号および同第63/151,272号の利益を主張する。上述の出願の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
配列表に対する言及
【0002】
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提供された、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、配列表を含む。2022年2月16日に作成された当該ASCIIコピーは、名称が「TRP_0410PC_20220216_Seq_Listing_ST25」であり、サイズが552,734バイトである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
肺疾患および線維症
大気オゾンレベルによって主に引き起こされる空気汚染は、将来増加すると予測される地球規模の健康問題である(Zhang et al., Front. Immunol. 10:2518, 2019)。オゾンは、強い酸化剤であり、対流圏(地表面)オゾンは、肺の炎症および損傷を引き起こす。オゾン汚染は、血管疾患および神経学的疾患にも関連付けられている(Zhang et al., 上記)。
【0004】
肺疾患は既に、世界中で顕著な健康上および経済上の負担である。肺疾患は、米国では3番目の死亡原因である。慢性閉塞性肺疾患(COPD)および喘息を含めると、そのコストは、2020年までに、年間800億ドルを超えると予測される(Foster et al., J. COPD 3:2011-2018, 2006;Nurmagambetov et al., Annals of Am. Thoracic Soc., Center for Disease Control and Prevention, 2017)。現行の治療には、COPDのための噴霧型ステロイド、抗コリン薬および気管支拡張薬(bronchodialator)、ならびに喘息のためのロイコトリエンモジュレーターおよび長時間作用型ベータアゴニストが含まれる。皮下または静脈内注射によって与えられるヒト化抗体は、制御困難な喘息患者のための追加治療として承認されている;これらの抗体は、IgEを枯渇させ(オマリズマブ)、IL-5を阻害し(メポリズマブおよびレスリズマブ)、または好酸球を枯渇させる(ベンラリズマブ)。肺疾患の改善された治療のための新たな標的およびアプローチが必要とされている。
【0005】
肺炎症は、肺内腔および組織中への好中球、好酸球、マクロファージおよびリンパ球の浸潤に関連する。好中球細胞外トラップ(NETS)に由来する細胞外DNAは、喘息、嚢胞性線維症およびCOPDを有する患者の肺中に存在する(Liu et al., Chinese Med. Journal 130:730-736, 2017;Twaddell et al., CHEST 156:774-782, 2019;Uddin et al., Front. Immunol. 10:47, 2019;Yamashita et al., J. Immunol. 191:949-960, 2013)。さらに、好酸球は、喘息を有する患者において細胞外トラップに寄与する(Dworski et al., J. Allergy Clinical Immunol. 127:1260-1266, 2011)。トラップは、肺粘液を厚くし、組織損傷を促進するミエロペルオキシダーゼおよび好中球エラスターゼが含まれる炎症性メディエーターを含有する(Uddin et al., 上記)。NET関連のミエロペルオキシダーゼおよびエラスターゼは、嚢胞性線維症患者の痰および気管支肺胞上皮洗浄中で増加し、肺疾患の重症度と相関する(Kahn et al., Genes 10:183, 2019を一般に参照されたい)。DNase1は、NETSを消化し、粘液の粘度を低減させることができ、改善された肺クリアランスを可能にする(同上)。
【0006】
DNase1で消化され得る細胞外DNAは、シリカ誘導性肺線維症にとって重要であることが見出された(Benmerzoug et al., Nature Comm. 9:5226, 2018を参照されたい)。シリカは、細胞死および肺胞空間における自己DNAの放出を誘導し、線維症をもたらすインターフェロン遺伝子の刺激剤(STING)炎症経路を誘導する(同上)。
P.aeruginosa感染
【0007】
P.aeruginosaは、易感染性個体、熱傷患者、ならびにCOPDおよび嚢胞性線維症(CF)などの肺疾患を有する患者において重症の日和見感染症を引き起こす遍在性のグラム陰性桿菌である(Mulcahy et al., Microb. Ecol. 68:1-12, 2014を参照されたい)。これは、人工呼吸器などの医療用表面上で特に厄介であり、最も一般的な院内病原体、および人工呼吸器関連肺炎を有する患者から頻繁に単離される病原体の中にある。これは、嚢胞性線維症(CF)を有する成人における主要な病原体であり、増加した臨床的増悪に関連するので、P.aeruginosaの根絶は、CF治療および他のP.aeruginosa感染に関する重要な意味を有する(例えば、Martinez-Solano et al., Chronic Infect. Dis. 47:1526-1533, 2008.;Meyer-Hamblett et al., Clin Inf. Dis. 59:624-631, 2014;Gallego et al., BMC Pulmonary Med. 14:103, 2014を参照されたい)。
【0008】
特にP.aeruginosaによる持続的な細菌肺感染の結果である肺不全は、CF患者における死亡の80%を占める。CFにおけるP.aeruginosaによる感染は、早期死亡のリスクをほぼ3倍増加させる(McColley et al., Pediatric Pulmonology 52:909-915, 2017を参照されたい)。細菌肺感染を和らげることに焦点を当てた集中的な研究にもかかわらず、CF肺における有効な処置のための追加のアプローチがなおも必要である。
【0009】
クオラムセンシング(QS)は、CF肺におけるP.aeruginosa持続を助け、その病理発生に顕著に寄与する重要な機構である。QSは、共同体全体にわたる活動の協調を可能にする、細菌によって産生される小分子、特にアシルホモセリンラクトン(またはAHL)によって媒介される。アシルホモセリンラクトンは、ホモセリンラクトン環(HSL)と、長さおよび飽和の程度が異なり得るアシル鎖とからなる基本構造を共有する。バリアント側鎖は、QS機構に特異性を与え、細菌がそれらの特異的AHLを認識しそれに応答することを可能にする。発現されたP.aeruginosaプロテオームのほぼ4分の1は、QSによって制御される。P.aeruginosaでは、QSは、多数の病原因子の発現および調節において重要な役割を果たす。QSは、バイオフィルムの形成においても重要な役割を果たす。バイオフィルムは、細菌共同体を、多糖、細胞外DNAおよびタンパク質のマトリックス中に本質的に包み、宿主の免疫応答、および抗生物質などの外部抗菌剤からそれを保護し、P.aeruginosaの生存を容易にする(Mulcahy et al., 上記)。
パラオキソナーゼ1(PON1)
【0010】
パラオキソナーゼ1(PON1)は、低密度リポタンパク質(LDL)の酸化を阻害し、その機能を守る抗酸化酵素である(Aviram et al., J. Clin. Invest. 101:1581-1590, 1998)。PON1は、有機リン、およびPseudomonas aeruginosaによって作製されるクオラムセンシング分子であるアシルホモセリンラクトンが含まれる、複数の基質を有する。PON1活性は、動脈硬化症および虚血性脳卒中からの保護において重要である(Litvinov et al., N. Am. J. Med. Sci. 4:523-532, 2012)。さらに、PON1活性は、過敏性腸症候群(IBS)または炎症性腸疾患(IBD)、例えば、クローン病を有する患者が含まれる、腸炎症を有する患者において低減される(Oran et al., J. Pak. Med. Assoc. 64:820-822, 2014;Szczelkik et al., Molecules 23:2603, 2018;Rothem et al., Free Rad. Biol. Med. 43:730-739, 2007)。大腸炎のマウスモデルにおける研究は、N-アセチルシステインによる処置が、PON1の上方調節を刺激すること、および増加したPON1活性が、結腸損傷の軽快に関連することを実証している(You et al., Dig. Dis. Sci. 54:1643-1650, 2009)。
【0011】
PON1は、複数の肺疾患においても欠損している。PON1が、肺炎症からの保護において重要であり、低いPON1活性が、肺疾患に関連するという、強い証拠が存在する。酸化ストレスは、喘息の病理発生における重要な因子であり(Sahiner et al., WAO Journal 4:151-158, 2011を参照されたい)、PON1の抗酸化活性は、喘息患者では損なわれている。喘息を有する小児では、PON1レベルは、対照よりも有意に低かった(p<0.001)(Emin et al., Allergol. Immunopathol. (Madr) 43:346-352, 2014)。追加の研究は、PON1活性が、喘息患者において有意に低い(p<0.024)ことを報告している(Sarioglu et al., Iran J. Asthma Immunol. 14:60-66, 2015)。別の研究は、PON1活性が、活動性疾患の間には喘息患者においてより低いが、PON1活性が、疾患寛解の間に増加することを示した(Tolgyesi et al., Internat. Immunol. 21:967-975, 2009)。この研究はまた、実験的マウス喘息モデルにおいて遺伝子プロファイリングを使用して、疾患活性をモニタリングするための潜在的標的としてPON1の下方調節を同定した(同上を参照されたい)。さらに、マウス喘息モデルは、PON1過剰発現が、気道炎症およびリモデリングを低減させ、炎症性サイトカインを低減させたことを示した(Chen et al., J. Cell Biochem. 119:793-805, 2018)。
【0012】
対照と比較して、COPDを有する患者は、より低いレベルの還元されたチオール基によって明らかな、有意に低いPON1活性および増加した酸化ストレスを有することが見出された(Rumora et al., J. COPD 11:539-545, 2014)。別の研究は、PON1プロモーター中の-108における多型C>Tが、COPDに強く関連したことを見出した(Rajkovic et al., J. Clin. Path. 71:963-970, 2018)。-108のTT遺伝子型およびT対立遺伝子は共に、強く関連し(p<0.001)、-108T対立遺伝子は、COPD患者におけるPON1の低減された発現における要因であり得た(同上)。
【0013】
PON1活性は、特に、活動性疾患の間、サルコイドーシスおよび間質性肺疾患を有する患者において低減されることが報告された(Ivanisevic et al., Eur. J. Clin. Invest. 46:418-424, 2016;Uzun et al., Curr. Med. Res. Opin. 24:1651-1657, 2008)。別の研究は、低酸素症の間のより低いPON1を見出した(Okur et al., Sleep Breath. 17:365-371, 2013)。PON1活性は、曝露が数十年前であっても、硫黄(sulfa)マスタードガスに曝露された、肺疾患を有する患者には存在しなかった(Golmanesh et al., Immunopharmacol. and Immunotoxicol. 35:419-425, 2013)。
【0014】
過剰量のPON1は、ミエロペルオキシダーゼを阻害するが、過剰量のミエロペルオキシダーゼは、PON1を阻害するという点で、PON1とミエロペルオキシダーゼとは、相互制御を発揮することが報告された(Huang et al., J. Clin. Invest. 123:3815-3828, 2013)。Huang et al.は、PON1およびミエロペルオキシダーゼが共に、apoA-Iにしっかりと結合したことを見出した。これは、好中球および好酸球が過剰量のミエロペルオキシダーゼを産生する炎症の条件下で減少したPON1活性についての1つの機構を提供する。しかし、正常条件下では、PON1は過剰量であり、ミエロペルオキシダーゼの活性を抑制する(同上を参照されたい)。
【0015】
組換えPON1(rPON1)は、単球性細胞系THP-1のPMA誘導性分化を阻害することが報告された(Rosenblat et al., Atherosclerosis 219:49-56, 2011)。rPON1をIP注射したマウスは、マクロファージへの単球の分化の低減、ならびにCD11bおよびCD36の発現の低減を有した。腹腔マクロファージの総細胞性過酸化物は、18%減少した(同上)。
【0016】
PON1治療は、実験的モデルにおいて研究されてきた。1つの研究は、組換えヒトPON1注射が、サリンおよびソマン吸入毒性からモルモットを保護できたことを示した(Valiyaveettil et al., Biochem. Pharmacol. 81:800-809, 2011;Valiyaveettil et al., Toxicol. Letters 202:203-208, 2011)。他の研究は、PON1による治療が、マウスにおいて有機リン中毒から保護したことを示した(Bajaj et al., Appl. Biochem. Biotechnol. 180:165, 2016;Stevens et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105:12780-12784, 2008)。これらの研究は、細菌封入体から精製された、またはバキュロウイルスベクターを用いてT.ni幼虫において作製された組換えPON1を使用した。両方のグループはまた、PON1酵素活性を安定化し増加させることを助ける、ウサギ配列に由来するバリアントであるPON1 192Kを発現させた(Bajaj et al., 上記;Stevens et al., 上記を参照されたい)。
【0017】
細菌におけるPON1の発現は、有機リンおよび神経剤に対する増強された酵素活性を有する突然変異体を選択するためにも使用されてきた(Aharoni et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:482-487, 2004;Goldsmith et al., Chemistry and Biology 19:456, 2012を参照されたい)。PON1の操作は、細菌における改善された可溶性発現を有するバリアントを見出すために、指向性進化によって実施された。1つの進化したPON1が結晶化され、PON1構造が記載された(Harel et al., Nature Struct. Mol. Biol. 11:412-419, 2004を参照されたい)。広く使用される別のPON1バリアントは、マウス、ラット、ウサギおよびヒトのPON1配列をシャッフルすることから形成されたハイブリッドPON1であるG3C9である(Aharoni et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:482-487, 2004を参照されたい)。増加した有機リン分解酵素(organophosphatase)活性を有するが、低減されたエステラーゼ活性を有する他のPON1バリアントが記載されている(Aharoni et al., 上記を参照されたい)。G型神経剤タブン、サリン、ソマンおよびシクロサリンに対する活性を増加させるG3C9のさらなる進化も報告されている(Gupta et al., Nat. Chem. Biol. 7:120-125, 2011;Goldsmith et al., Chemistry and Biology 19:456-466, 2012)。ヒトPON1と比較した場合、G3C9は、55個の位置においてアミノ酸差異を有し、さらに進化したPON1バリアントは、さらに多くのアミノ酸差異を有する(Goldsmith et al., 上記)。
【0018】
PON1およびPON1バリアントG3C9は、実験的大腸炎のマウスモデルにおいて試験されている(Yamashita et al., J. Immunol. 191:949-960, 2013)。PON1治療は、TNBS誘導性大腸炎において有効であり、ヒトにおいて現在最も有効な臨床的に使用される治療剤である抗TNFα治療と等価であった。しかし、CD4+CD45RBhigh細胞移入を用いた慢性大腸炎モデルでは、PON1は有効でなかったが、G3C9は強い有効性を示した。G3C9の有効性は、慢性大腸炎モデルにおいて、抗TNFαと等価であった(同上)。別の研究では、PON1活性は、クローン病の重症度と相関することが見出された(Sczceklik et al., Molecules 23:2603, 2018)。
【0019】
PON1による治療に向けた別のアプローチは、BL-3050と呼ばれる療法である、再構成されたapoA-IプラスPON1から形成されたHDL様粒子を注射することであった(Gaidukov et al., BMC Clinical Pharmacol. 9:18, 2009)。これらの研究では、細菌において発現されたG3C9とBL-3050複合体とは共に、有機リン中毒のマウスモデルにおいて保護的であった(同上)。
【0020】
PON1は、インスリン受容体に特異的なmAb重鎖のC末端に結合された融合タンパク質として発現されている(例えば、Boado et al., Mol. Pharm. 5:1037, 2008を参照されたい)。インスリン受容体特異的軽鎖との、このハイブリッド重鎖の発現は、インスリン受容体に結合し、PON1酵素活性を有する、二機能性抗体の分泌を生じた(同上)。このハイブリッド分子は、哺乳動物細胞(COSおよびCHO)において発現された(同上;Boado et al., Biotechnol. and Bioengineering, 108:186, 2011を参照されたい)。このハイブリッド分子は、非ヒト霊長類においても試験され、血液/脳関門を通過することが見出された;しかし、この分子は、末梢血から末梢組織中、主に肝臓中へと、迅速に除去された(Boado et al. (2011), 上記)。この分子の臨床試験の報告は存在しない。CHO細胞におけるこの融合タンパク質の発現レベルは、複数回のトランスフェクションおよびサブクローニングの後であっても低かった(5~10mg/リットル)(同上を参照されたい)。
【0021】
PON1は、膜形質導入(membrane transduction)ドメインとも融合されており、これは、PEP-1-PON1と呼ばれる(Kim et al., Biomaterials 64:45-56, 2015)。この分子は、パーキンソン病のマウスモデルにおいて、ミクログリア細胞系の炎症応答を阻害し、ドパミン作動性細胞死に対してin vivoで保護した(同上)。
【0022】
パラオキソナーゼ酵素は、P.aeruginosa由来の主要なQS分子であるC12HSL(N-3-オキソ-ドデカノイル-L-ホモセリンラクトン(N-3-oxo-dodecanoyl-L-Homoresine Lactone))が含まれるアシルホモセリンラクトン(AHL)であるQS分子を加水分解することができる。ヒトPON1の研究は、それが、ラクトンが含まれる種々の基質を加水分解する多面的酵素活性を有することを示している(Billecke et al., Drug Metabolism and Disposition 28:1335-1342, 2000;Khersonsky and Tawfik, Biochemistry 44:6371-6382, 2005;Gaidukov and Tawfik, J. Lipid Res. 48:1637-1646, 2007;Bajaj et al., Protein Science 22:1799-1807, 2013)。Drosophila melanogasterにおける1つの研究は、重要なクオラムセンシング分子N-3-オキソデカノイルホモセリンラクトン(3OC12-HSL)を加水分解することが可能なヒトPON1導入遺伝子の発現による、Pseudomonas aeruginosa致死性からの保護を実証した(Stoltz et al., J. Clin. Invest. 118:3123-3131, 2008)。
DNase1
【0023】
DNase1は、ヒトDNase1遺伝子によってコードされるカルシウムおよびマグネシウム依存的エンドヌクレアーゼである。DNase1は、一本鎖および二本鎖DNAならびにクロマチンを切断する。クロマチンの切断は、クロマチンがオープンでありアクセス可能な高感受性部位において生じ、活性遺伝子を含有する可能性が高い領域を同定するためにゲノミクスにおいて使用される(Boyle et al., Cell 132:311-322, 2008)。DNase1は、アポトーシスの間にDNAを分解することを助け(Samejima et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 6:677-688, 2008)、好中球細胞外トラップ(NETS)もまた分解する(Hakkim et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107:9813, 2010)。DNase1は、バイオフィルムDNAを消化して、バイオフィルムバイオマスにおける低減を生じることができ、抗生物質媒介性のバイオフィルム死滅を増加させることができる(Tetz et al., Antimicrob. Agents Chemother. 53:1204-1209, 2009)。
【0024】
死細胞および瀕死の細胞由来の細胞外DNAの蓄積は、ずっと以前に、全身性エリテマトーデス(SLE)を有する患者において疾患の駆動因子として同定された。DNase1は、1959年に開始して、RockefellerにおいてSLE患者に投与された。しかし、ウシDNase1が使用され、治療は、その免疫原性によって制限された(Valle et al., Autoimmunity Rev. 7:359, 2008を参照されたい)。減少したレベルのDNase1、および低減された活性を有するDNase1突然変異が、SLEを有する患者において報告されている(Valle et al., 上記を参照されたい)。尿中の低減されたDNase1活性は、ループス腎炎を有する患者において見出され、低減されたDNase1活性は、疾患進行のバイオマーカーであった(Pedersen et al., J. Pathol. Clin. Res. 4:193, 2018)。SLE患者では、アポトーシスデブリの欠損したクリアランスおよびクロマチンの蓄積が、トレランスの破壊および自己免疫疾患の発症に寄与する。
【0025】
活性化された好中球は、感染性因子と戦うために、好中球細胞外トラップ(NETs)と呼ばれる、細胞質タンパク質および顆粒タンパク質と結合したDNAを押し出し、これは、「NETosis」としても公知のプロセスである(Brinkmann, J. Innate Immun. 10:422-431, 2018を参照されたい)。しかし、NETsは標的化されず、有効に除去されない場合、付随する組織損傷および炎症を引き起こす場合が多い。NETsは、複数の不治の重篤な疾患において疾患進行を駆動することに関与している。乾癬、嚢胞性線維症、SLE、RA、I型糖尿病、敗血症、小型血管炎、IBD、II型糖尿病および肥満におけるNETsの重要性の証拠が、最近概説された(Mutua and Gershwin, Clin. Rev. Allergy Immunol., 2020, DOI 10.1007/s12016-020-08804-7)。Michailidou, Front. Immunol. 11:619705, 2020(血管炎における好中球およびNETsの関与を概説している)もまた参照されたい。NETsはまた、心血管疾患および血栓症において、ならびにNETsが腫瘍の進行および転移を促進するがんにおいて、重要な役割を果たす(Brinkmann, 上記)。嚢胞性線維症におけるそれらの重要性に加えて、NETsは、他の呼吸器疾患、例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の臨床病理においても役割を果たす(Liu et al., Chinese Med. Journal 130:730-736, 2017;Twaddell et al., CHEST 156:774-782, 2019;Uddin et al., Front. Immunol. 10:47, 2019を参照されたい)。最近、NETsは、COVID-19急性呼吸促迫症候群における免疫血栓に寄与することが見出された(Middleton et al., Blood 136:1169, 2020;Zuo et al., JCI Insight 5:e138999, 2020;Barnes et al., J. Exp. Med. 217:e20200652, 2020)。
【0026】
DNase1は、NETsを消化することが可能であり、DNase1L3と呼ばれる別の細胞外DNaseと一緒に働いて、NETsを除去する。DNase1およびDNase1L3の両方が欠損したマウスは、NETsを除去することができず、好中球活性化後の大量の血管内血餅形成および臓器損傷が原因で迅速に死亡した(Brinkmann, 上記)。血栓症へのNETsの寄与は、COVID-19患者において吸入療法によって摂取される野生型DNase1(Pulmozyme(登録商標))の臨床試験を既にもたらしている(NCT04359654)。
【0027】
組換え野生型ヒトDNase1(Pulmozyme(登録商標))は、Genentechによって産生され、肺においてDNAを消化し、うっ血を低減させるために、嚢胞性線維症(CF)のために最初に承認された。NETsに主に由来する高レベルのDNAは、CF肺において病原性である(Law et al., J. Inflammation, 14:1-8, 2017)。Pseudomonas aeruginosaバイオフィルム形成由来の細菌DNAもまた、多くのCF患者に存在し、これもまた、DNase1によって消化され得る(Whitchurch et al., Science 295:1487, 2002)。
【0028】
Pulmozymeは、噴霧によって肺に直接送達され、毎日摂取される。Pulmozymeは、CF以外の肺疾患を有する患者において研究されてきたが、代替的使用のためには承認されていない(Torbic et al., J. Pharmacy Practice 29:480, 2016)。Pulmozymeは、疾患測定値における減少なしに、マウスループスモデルにおいて(Verthelyi et al., Lupus 7:223, 1998)、およびSLE患者における第I相臨床試験において(Davis et al., Lupus 8:68-76, 1999)、試験された。pulmozyme治療の全身投与は、この酵素が、血液および肺中に豊富な球状アクチンによって阻害されることに起因して(Ulmer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 8225, 1996)、ならびにその短い半減期に起因して、制限され得る。
【0029】
CFおよびSLE患者のためにDNase1を増強するための試みがなされてきた。DNA結合界面の部位特異的突然変異誘発研究は、酵素活性にとって重要な27個のアミノ酸位置、および酵素活性に対する最小限の影響を有する、DNA相互作用に周辺的に関与する別の13個の位置を同定した(Pan et al., Prot. Sci. 7:628-636, 1998を参照されたい)。このグループは、特定の追加の正に荷電した残基を付加することによって、DNAに対する局所的静電引力を増加させることが、DNAへの結合親和性を改善しただけでなく、機能的活性を改善し、塩による阻害を除外したことも示した(Pan et al., Biochemistry 36:6624-6632, 1997;Pan and Lazarus, J. Biol. Chem. 273:11701-11708, 1998)。この観察と一致して、DNAとの重要な接触を行う2つのアルギニン(Arg-41およびArg-111)のアラニン置換は、ヒトDNase1のDNA切断活性を大きく低減させた(Pan et al., 1998, 上記)。さらに、DNA界面に対して遠位の部位における、正または負に荷電した残基の導入は、比活性を変更させなかった(Ulmer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8225-8229, 1996)。
【0030】
機能亢進型DNase1バリアントは、低いDNA濃度および短いDNA長さの条件下で、有意な増強(最大10,000倍)を示した(Pan and Lazarus, 上記)。しかし、野生型DNase1に最適な条件下では、最良のバリアントは、7倍だけ高い活性を示し、単一のアミノ酸変化(N74K)を含有した。N74K機能亢進型バリアントは、カルシウムに対する低減された依存性を示した(Pan and Lazarus, Prot. Sci. 8:1780-1788, 1999)。
【0031】
Ulmer et. al.(上記)およびPan et al. (1998, 上記)は、Ala-114のフェニルアラニン置換(A114F)が、G-アクチンによるDNase1の阻害を除外したことを示した。
【0032】
アクチン抵抗性かつ機能亢進型のDNase1突然変異体酵素が、米国特許第6,348,343号および同第6,391,607号にさらに記載されている。
【0033】
DNASE1は、多型であり、低減された活性を有する酵素をコードする対立遺伝子は、自己免疫疾患の増加したリスクに関連する。しかし、天然に存在する対立遺伝子G105Rは、活性における3倍の増加を有するDNase1バリアントをコードすることが見出された(Yasuda et al., Int. J. Biochem. Cell. Biol. 42:1216-1225, 2010)。これは、アフリカ系集団において見出される少数派の対立遺伝子であり、自己免疫疾患に対する抵抗を付与できた(同上)。
【0034】
アクチン/塩抵抗性かつ機能亢進型のDNase1を使用するDNase1治療には、大きな潜在力がある。しかし、数千個のクローンのスクリーニングにもかかわらず、増強されたDNase1を構成的に発現する安定なCHO細胞を得ることは不可能であった(Lam et al., Biotech. Progress 32: 523-533, 2017を参照されたい)。これは、CHO細胞における高い発現の間の酵素の毒性に起因すると考えられた。Lam et al.(上記)は、増強されたDNase1酵素を製造する際の問題に対する1つの潜在的解決法として、CHO細胞における誘導性の発現系を記載している。
【0035】
Dwyer et al.(J. Biol. Chem. 274:9738-43, 1999)は、Fcドメインによるダイマー化に起因して損なわれた酵素活性を有するDNaseI-Fc融合タンパク質を記載している。Dwyer et al.は、活性を改善することなしに、DNase1とFcドメインとの間に短いリンカー(最大7aa)を付加した(同上を参照されたい)。Ledbetterらに対する米国特許第8,841,416号は、21アミノ酸のリンカーを有し、組換えDNase1対照と少なくとも等価な活性を有するDNaseI-Fc融合物を記載している。
【0036】
野生型DNase1(Pulmozyme)治療は、CFではFDA承認されているが、DNase1が活性であるCFマウスモデルは存在しない。Pulmozymeは、適切なin vivo疾患モデルにおいて活性について試験することなしに、CF治療のために承認された(Greene, Hum. Exp. Toxicol., May:13 Suppl 1:S1-42, 1994)。より最近、野生型DNase1治療は、有望な結果を伴って、いくつかのin vivoモデルにおいて研究されている。DNase1は、急性喘息モデルにおいて、気道抵抗を有意に低減させることが見出されたが、炎症は低減させなかった(da Cunha et al., Exp. Lung Res. 42:66, 2016)。シリカ誘導性肺炎症モデルでは、DNase1治療は、DNA媒介性のSTING活性化を予防し、下流のI型IFN応答を遮断した(Benmerzoug et al., Nat. Comm. 9:5226, 2018)。急性肺傷害のモデルでは、DNase1治療は、肺浮腫および肺血管透過性からマウスを保護した。DNase1治療はまた、肺におけるNET形成および血小板隔離(platelet sequestration)を低減させた(Caudrillier et al., J. Clin. Invest. 122:2661, 2012)。
【0037】
マウス腫瘍モデルにおける研究は、NETsが転移を促進すること、およびDNase1またはDNase1コーティングされたナノ粒子の注射が、腫瘍転移を低減させたことを示している(Cools-Lartigue et al., J. Clin. Invest. 123:3446, 2013;Park et al., Sci. Translational Med. 8:361ra138, 2016)。別の研究は、DNase1とプロテアーゼとの組合せが、ヌードマウスモデルにおけるヒト結腸がん細胞の成長を有意に阻害したことを示した(Trejo-Becirril et al., Integrative Cancer Therapies 15:NP35-NP43, 2016)。がん患者では、好中球NET形成のマーカーである、増加した濃度のシトルリン化されたヒストンH3は、不十分な臨床転帰を強く予測した(Thalin et al., PLoS ONE 13:e0191231, 2018)。
【0038】
マウスDSS大腸炎モデル(Babicova et al., Folia Biolica (Praha) 64:10, 2018)では、DNase1治療は、結腸におけるTNFαおよびミエロペルオキシダーゼの低減を引き起こした。別の研究(Li et al., J. Crohns Colitis 2020, 14:240-253, 2020)は、DNase1治療が、サイトカイン産生を減少させ、DSS誘導性大腸炎の後の加速された血栓形成および血小板活性化を減衰させたことを見出した。
【0039】
後肢虚血再灌流モデルにおけるDNase1治療は、灌流の増加、浸潤性炎症細胞の減少、血栓症の局所的マーカーの低減を引き起こした(Albadawi et al., J. Vasc. Surg. 64:484, 2016)。虚血-再灌流誘導性急性腎臓傷害のラットモデルでは、DNase1処置は、有意な腎保護効果を示した。DNase1の外因性投与は、虚血ラットの腎臓における急性傷害の機能的特徴および組織学的特徴の両方を軽快させた(Peer et al., Am. J. Nephrol. 43:195, 2016)。
【0040】
DNase1処置は、マウスにおける盲腸結紮穿刺敗血症モデルにおいて傷害の4または6時間後に与えられた場合、臓器損傷を予防し、死亡から保護した(Mai et al., Shock 44:166, 2015)。NETs由来の細胞外DNAは、血栓形成のための足場として認識されており、DNase1の注入は、下大静脈狭窄のモデルにおいて血栓症を予防した(Brill et al., J. Thrombosis Haemostasis 10:136, 2012)。
RNase
【0041】
RNase1は、ヒトではRNase1~8からなるRNase Aスーパーファミリーのメンバーである。RNase Aは、ウシ膵臓から最初に単離され、この場所で、消化酵素として主に機能する。ヒトでは、RNase1は、一本鎖および二本鎖RNAならびにRNA/DNAハイブリッドを消化する。RNase1は、ヒトでは、複数の細胞型によって産生され、血管恒常性に主に関与すると考えられている。RNase1は、ポリヌクレオチド消化において、炎症性細胞外RNAを除去する主要な役割を果たす。さらに、RNase1は、抗ウイルス活性を有する。
【0042】
RNaseによる治療は、複数の疾患モデルにおいて研究されている。例えば、胸腺欠損マウスにおけるヒト肺腫瘍系A549の成長は、PEG-RNase1によって阻害された(Rutkoski et al., Translational Oncology 6:392-397, 2013)。RNase治療はまた、ルイス肺癌を有する同系マウス腫瘍モデルにおいて抗腫瘍活性を示し、microRNAプロファイルを変更させた(Mironova et al., Oncotarget. 8:78796-78810, 2017)。RNase1は、乳房腺癌細胞の表面上で発現される腫瘍関連抗原Globo Hに結合することが報告された(Eller et al., ACS Central Sci. 1:181-190, 2015)。
【0043】
さらに、RNase治療は、心臓移植(Kleinert et al., J. Am. Heart Assn. doi: 10.1021, 2016)、粥腫形成(Simsekyilmaz et al., Circulation 129: 598-606, 2014)および心筋梗塞(Steiger et al., JAMA 6:e004541, 2017)の動物モデルにおいて有効であることが見出された。RNase1治療はまた、急性脳卒中モデルにおいて脳浮腫および梗塞サイズを低減させた(Walberer et al., Curr. Neovas. Res. 6:12-19, 2009)。
【0044】
RNase治療は、加齢マウスにおいて術後認知機能低下を予防することが見出された(Chen et al., PLoS One 10:e0134307, 2015)。
【0045】
RNase治療は、全身性エリテマトーデス(SLE)のマウスモデルにおいても研究されている(Sun et al., J. Immunol. 190:2536-2543, 2013)。RNAセンサーTLR7の過剰発現は、自己抗体、腎臓疾患および早期死亡を伴うループス様疾患を引き起こす。これらのマウスを、RNase Aを導入遺伝子として過剰発現するマウスと交雑させることで、増加した生存、低減されたリンパ球活性化、IgGおよびC3の低減された腎臓沈着、ならびに低減された肝炎症および壊死を有する子孫が生じた(同上)。
【0046】
ヒトRNase1がP238SおよびP331S突然変異を含む突然変異したヒトIgG1 Fcドメインに融合されたRNase-Ig(米国特許第8,937,157号を参照されたい)は、全身性エリテマトーデス(SLE)およびシェーグレン症候群を有する患者における第I相および第II相臨床試験において試験されている。
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)
【0047】
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、酸素フリーラジカルをH2O2およびO2に変換する抗酸化酵素である。3つのヒトSOD酵素が存在する。SOD1は、Cu/Zn SODとも呼ばれ、鎖内ジスルフィド結合および金属結合によって安定化されたホモダイマーである細胞質酵素である(Doucette et al., J. Biol. Chem. 279:54558-54566, 2004)。SOD2は、ミトコンドリア中に局在し、その活性部位においてマンガンを使用するテトラマーである。SOD3は、分泌型であり、銅および亜鉛を含有するテトラマーである。酸化的損傷からの全面的保護におけるSOD、グルタチオンペルオキシダーゼおよびカタラーゼの役割の総説については、Ighodaro and Akinolye, Alexandria J. Med. 54:287-293, 2018を参照されたい。
【0048】
SOD3は、肺における主要な細胞外抗酸化酵素であり、この場所で、SOD3は、肺傷害の間、細胞外マトリックスを保護する。SOD3の遺伝的バリアントは、成人における減少した肺機能、およびCOPDの迅速な進行に関連する(総説については、Ganguly et al., Physiol. Genomics 37:260-267, 2009を参照されたい)。
【0049】
SOD1は、SOD1を細胞質に送達するために、細胞膜形質導入ドメインと融合されている。例えば、Eum et al.(Free Rad. Biol. Med. 37:1656-1669, 2004)は、PEP-1と呼ばれる21アミノ酸のペプチドとSODとの融合物を作製し、細菌においてこの融合タンパク質を発現させた。彼らは、PEP-1-SOD分子が、細胞膜を介してSODを送達し、虚血発作後のニューロン死の予防において、IP注射後にin vivoで有効であったことを示した。SOD1およびバリアント形態のSOD1はまた、蛍光ベースの結合およびシャペロンアッセイにおいて検出され得る融合タンパク質を創出するために、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)タグに融合されている(Ganesan et al., Cell Death and Differentiation 15:312-321, 2008)。
細胞傷害性Tリンパ球関連分子-4(CTLA-4)
【0050】
細胞傷害性Tリンパ球関連分子-4(CTLA-4)は、CD28-B7の共刺激性相互作用を阻害することによってT細胞応答の下方調節を生じる免疫調節性膜受容体である(Carreno et al., J. Immunol. 165:1352-1356, 2000)。ヒトIgG1突然変異体Fcドメインに融合されたCTLA-4の細胞外ドメイン(アバタセプト、Orencia(商標))は、T細胞上のCD28受容体の活性化を抑制するその能力に起因して、RAの治療のためにFDAによって承認されている(Linsley et al., J. Exp. Med. 174:561-569, 1991;Emma Hitt, FDA Approves Subcutaneous Abatacept for RA, Medscape Medical News, Aug. 2, 2011を参照されたい)。アバタセプトは、炎症性サイトカインのT細胞産生を阻害し、B細胞クラススイッチングおよびIgG抗体応答を阻害する。
【0051】
アバタセプト処置は、皮膚線維症を予防し、確立された炎症駆動性線維症の退縮を誘導することが示されている(Ponsoye et al., Ann. Rheum. Dis. 75:2142-2149, 2016)。さらに、アバタセプトは、Fra-2マウスの病変肺における線維形成性マーカーレベル、T細胞増殖およびM1/M2マクロファージ浸潤を有意に低減させ、これは、アバタセプトが、ヒトにおける肺線維症の処置において有用であり得ることを示している(Boleto et al., Arthritis Research and Therapy 20:197, 2018)。Pulmonary Fibrosis Foundationによれば、アバタセプトは、間質性線維症患者における第2相臨床試験で現在試験されており(試験番号NCT03215927)、多発性血管炎を伴う再発性の非重症肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)の処置について第3相臨床試験においても試験されている(試験番号NCT02108860)。共刺激阻害剤は、肺炎症に関連する損傷および修復のプロセスを抑制するための見込みのある候補として評価されている。
CD40-CD154
【0052】
CD40は、TNFα受容体スーパーファミリーのメンバーであり、リンパ球、造血細胞、ならびに線維芽細胞、上皮細胞および内皮細胞が含まれる構造的細胞上で発現される(Sime and O'Reilly, Clin. Immunol. 99:308-319, 2001)。CD40のリガンド(CD40LまたはCD154)は、活性化されたTリンパ球、活性化された血小板、肥満細胞および好酸球上で発現される。活性化されたT細胞によって発現されるCD154は、B細胞上のCD40に、クラススイッチングおよびIgG産生に必要とされる重要なシグナルを提供する。しかし、内皮細胞などの構造的細胞の表面上で発現されるCD40は、CD154に結合することによって刺激されて、炎症性サイトカインの産生を生じ得る(同上)。活性化された血小板は、それらの表面上にCD154を発現し、血液中の可溶性CD154の主要な供給源でもある。
【0053】
CD40-CD154シグナル伝達経路は、線維症が含まれる肺の傷害および疾患プロセスに関与している(Kaufman et al., J. Immunol. 172:1862-1871, 2004)。CD40受容体とCD154との間での相互作用は、炎症促進性サイトカインの産生、細胞接着分子の発現、ならびにシクロオキシゲナーゼ2(COX-2)およびプロスタグランジンE2(PGE2)の誘導が含まれる細胞活性化を誘発することができる(Zhang, J. Immunol. 160:1053-1057, 1998)。これらの事象は、次に、1型サイトカイン応答と2型サイトカイン応答との間のバランスを、2型線維形成性応答に有利に働くものにすることができる。CD40-CD154経路の抑制は、動物肺疾患モデルにおいて治療利益を有することが示されている。例えば、モノクローナル抗マウスCD40L抗体MR1は、マウスモデルにおける高酸素症肺傷害ならびに放射線誘導性の肺傷害および線維症の保護において有効であった(Adawi et al., Clin. Immunol. Immunopathol. 89:222-230, 1998;Adawi et al., Am. J. Pathol. 152:651-657, 1998)。さらに、エピジェネティック調節および転写調節に関与する、CD40-CD40L経路を抑制する分子、例えば、CXXC5ジンクフィンガータンパク質は、マウスにおいてブレオマイシン誘導性肺線維症を軽快させることが示されており(Cheng et al., BioMed. Research Intl. Volume 2020, Article ID 7840652, 2020;Xiong et al., J. Cell. Mol. Med. 23:740-749, 2018)、これは、疾患進行においてCD40-CD40L経路が果たす重要な役割を示している。
腫瘍壊死因子α(TNFα)
【0054】
腫瘍壊死因子α(TNFα)サイトカインは、マクロファージおよび単球が含まれる種々の細胞型によって産生される多面的炎症促進性メディエーターである。マクロファージは、肺におけるTNFαの主要な供給源である;しかし、上皮細胞、好酸球および肥満細胞もまた、活性化の際にTNFαを放出し得る(Malaviya et al., Pharmacol. Ther. 180:90-98, 2017;Aggarwal et al., Blood 119:651-665, 2012)。増加したレベルのTNFαは、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺傷害(ALI)/急性呼吸促迫症候群(ARDS)、サルコイドーシスおよび間質性肺線維症(IPF)が含まれるいくつかの肺炎症性疾患に関連付けられている(Malaviya et al., 上記)。
【0055】
肺病理に加えて、TNFαは、炎症性腸疾患、例えば、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)において増加し、それらに関与する。腫瘍壊死因子-アルファに対するモノクローナル抗体治療(抗TNF)は、炎症性腸疾患(IBD)を有する患者のケアを革命的に変化させている(Pouillon et al., Expert Opinion on Biological Therapy 16:1277-1290, 2016;Peyrin-Biroulet et al., The Lancet 372:67-81, 2008)。
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)
【0056】
TGF-βサイトカインは、免疫応答および調節において重要な役割を果たす(Travis and Sheppard, Annu. Rev. Immunol. 32:51-82, 2014)。哺乳動物では、TGF-βの3つの主要なアイソフォーム:TGF-β1、TGF-β2およびTGF-β3が同定されている(Fernandez and Eickelberg, Proc. Amer. Thorac. Soc. 9:111-116, 2012)。多くの細胞型がTGF-βを発現するが、TGF-βは、他の分子と複合体形成した非活性形態で発現され、その機能的効果を発揮するためには活性化を要求する。潜在型TGF-βは、プレタンパク質形態から、走化性、増殖、および炎症に関連するサイトカインの刺激が含まれる多面的活性を有するサイトカインへの切断の際に活性化される。TGF-βは、細胞増殖、分化、遊走、接着、生存、上皮-間葉転換(EMT)、ならびにコラーゲンおよび細胞外マトリックス合成を調節し、血管形成、創傷治癒および免疫調節に重要であるが、がん、転移、糖尿病および線維症疾患進行を駆動することもできる(Varga and Pasche, Curr. Opin. Rheum. 20:720-728, 2008)。TGF-βは、適応T細胞応答を調節する際に重要であることも示されており、最近の研究は、TGF-βが、肺が含まれる異なる臓器における線維症の重要なメディエーターであることを示唆している。TGF-βアイソフォームを標的化するいくつかの抗体、例えば、フレソリムマブ(GC-1008)を使用する臨床試験は、完了しているか、またはがん治療(黒色腫、神経膠腫、乳房がんおよび非小肺がん)および線維症について進行中である。さらに、TGF-β活性化に関与するまたはTGF-β活性化において重要な、αVβ6などのインテグリンを標的化する抗体もまた、特発性肺線維症(IPF)に対するそれらの有効性を決定するための第2相臨床試験において使用されている(Fernandez and Eickelberg, 上記)。
哺乳動物細胞における増強されたDNase1の発現
野生型DNase1、例えば、FDA承認された薬物Pulmozyme(登録商標)は、肺および血漿中のG-アクチンによって阻害される。増強されたDNase1は、Genentechによって操作され、アクチンによる阻害に対して抵抗性であり、かつ増加した酵素活性を有するDNase1を創出している(Pan and Lazarus, Prot. Sci. 8:1780-8, 1999)。しかし、この増強されたDNase1は、哺乳動物細胞において毒性であり、安定なCHO細胞は、数千個のクローンのスクリーニングにもかかわらず、樹立できなかった。CHO細胞における誘導性の発現は、報告された1つの潜在的解決法であった(Lam et al., Biotech. Progress 32: 523-33, 2017)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0057】
【非特許文献1】Zhang et al., Front. Immunol. 10:2518, 2019
【非特許文献2】Foster et al., J. COPD 3:2011-2018, 2006
【非特許文献3】Nurmagambetov et al., Annals of Am. Thoracic Soc., Center for Disease Control and Prevention, 2017
【非特許文献4】Liu et al., Chinese Med. Journal 130:730-736, 2017
【非特許文献5】Twaddell et al., CHEST 156:774-782, 2019
【非特許文献6】Uddin et al., Front. Immunol. 10:47, 2019
【非特許文献7】Yamashita et al., J. Immunol. 191:949-960, 2013
【非特許文献8】Dworski et al., J. Allergy Clinical Immunol. 127:1260-1266, 2011
【非特許文献9】Kahn et al., Genes 10:183, 2019
【非特許文献10】Benmerzoug et al., Nature Comm. 9:5226, 2018
【非特許文献11】Martinez-Solano et al., Chronic Infect. Dis. 47:1526-1533, 2008.
【非特許文献12】Meyer-Hamblett et al., Clin Inf. Dis. 59:624-631, 2014
【非特許文献13】Gallego et al., BMC Pulmonary Med. 14:103, 2014
【非特許文献14】McColley et al., Pediatric Pulmonology 52:909-915, 2017
【非特許文献15】Aviram et al., J. Clin. Invest. 101:1581-1590, 1998
【非特許文献16】Litvinov et al., N. Am. J. Med. Sci. 4:523-532, 2012
【非特許文献17】Oran et al., J. Pak. Med. Assoc. 64:820-822, 2014
【非特許文献18】Szczelkik et al., Molecules 23:2603, 2018
【非特許文献19】Rothem et al., Free Rad. Biol. Med. 43:730-739, 2007
【非特許文献20】You et al., Dig. Dis. Sci. 54:1643-1650, 2009
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0058】
発明の概要
一態様では、本発明は、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、T-L1-X-L2-Pを含む融合ポリペプチドであって、式中、Tは、DNase、RNase、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、細胞傷害性Tリンパ球関連分子-4(CTLA-4)細胞外ドメイン、CD40細胞外ドメイン、および腫瘍壊死因子α(TNFα)またはトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)に特異的に結合しそれを中和するポリペプチドから選択される第1の生物学的に活性なポリペプチドであり;L1は、第1のポリペプチドリンカーであり、L1は、必要に応じて存在し;Xは、免疫グロブリン重鎖定常領域であり、免疫グロブリン重鎖定常領域は、ダイマーを形成し、新生児Fc受容体(FcRn)に特異的に結合することが可能であり;L2は、第2のポリペプチドリンカーであり、L2は、必要に応じて存在し;かつPは、生物学的に活性なパラオキソナーゼであり、パラオキソナーゼは、配列番号6の残基16~355または26~355に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%または少なくとも90%の同一性を有し、配列番号6の残基1~15に対応するアミノ末端リーダー配列を含有しない、融合ポリペプチドを提供する。一部の実施形態では、生物学的に活性なパラオキソナーゼは、(i)配列番号6の残基16~355または26~355、(ii)配列番号124の残基16~355または26~355、あるいは(iii)配列番号126の残基16~355または26~355に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する。
【0059】
別の態様では、本発明は、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、T-L1-X-L2-Pを含む融合ポリペプチドであって、式中、Tは、DNase、RNase、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、細胞傷害性Tリンパ球関連分子-4(CTLA-4)細胞外ドメイン、CD40細胞外ドメイン、および腫瘍壊死因子α(TNFα)またはトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)に特異的に結合しそれを中和するポリペプチドから選択される第1の生物学的に活性なポリペプチドであり;L1は、第1のポリペプチドリンカーであり、L1は、必要に応じて存在し;Xは、第2の生物学的に活性なポリペプチドであり、Xは、必要に応じて存在し;L2は、第2のポリペプチドリンカーであり、L2は、必要に応じて存在し;かつPは、生物学的に活性なパラオキソナーゼであり、パラオキソナーゼは、配列番号6の残基16~355または26~355に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%または少なくとも90%の同一性を有し、配列番号6の残基1~15に対応するアミノ末端リーダー配列を含有しない、融合ポリペプチドを提供する。一部の変形形態では、第2の生物学的に活性なポリペプチドは存在し、ダイマー化ドメインおよび新生児Fc受容体(FcRn)に特異的に結合するドメインから選択される。一部の実施形態では、生物学的に活性なパラオキソナーゼは、(i)配列番号6の残基16~355または26~355、(ii)配列番号124の残基16~355または26~355、あるいは(iii)配列番号126の残基16~355または26~355に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する。
【0060】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてDNaseを含み、L1が存在する上記融合ポリペプチドのある特定の実施形態では、DNaseは、(i)配列番号18の残基21~280、(ii)配列番号152の残基21~280、または(iii)配列番号136の残基21~290に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する。DNaseが配列番号18の残基21~280または配列番号152の残基21~280に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する一部の実施形態では、DNaseは、N74、G105およびA114から選択されるヒト野生型DNase1(配列番号120)のアミノ酸に対応する位置において、少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、(1)ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるアミノ酸置換(N74置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較してDNA結合を増加させ、(2)ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸置換(G105置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較してDNA結合を増加させ、かつ(3)ヒトDNase1のA114に対応する位置におけるアミノ酸置換(A114置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較して、エンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させる。一部の変形形態では、融合ポリペプチドは、N74置換およびG105置換の両方、G105置換およびA114置換の両方、またはN74置換、G105置換およびA114置換の各々を含有する。これらの位置における特に適切なアミノ酸置換は、ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるリシン、ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアルギニン、および/またはヒトDNase1のA114に対応する位置におけるフェニルアラニンである。融合ポリペプチドがN74置換およびG105置換の両方を含有する一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、A114置換を含有しない。DNaseが配列番号136のアミノ酸残基21~290と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する一部の実施形態では、配列番号136のR80、R95およびN96に対応する位置におけるアミノ酸の各々は、アラニンまたはセリンである。より具体的な変形形態では、DNaseは、(i)配列番号18の残基21~280、(ii)配列番号20の残基21~280、(iii)配列番号152の残基21~280;(iv)配列番号138の残基21~290、または(v)配列番号140の残基21~290に示されるアミノ酸配列を有する。上記DNaseを含む融合ポリペプチドの一部の実施形態では、L1は、少なくとも15個のアミノ酸残基または少なくとも26個のアミノ酸残基を含む(例えば、26~60個のアミノ酸残基または26~36個のアミノ酸残基からなるL1リンカー)。特定の変形形態では、L1は、配列番号119のアミノ酸配列の3つまたはそれよりも多くの(例えば、4つまたはそれよりも多くの)タンデムリピートを含む;一部のかかる実施形態では、L1は、配列番号12または配列番号14に示されるアミノ酸配列を有する。
【0061】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてRNaseを含む上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、RNaseは、配列番号22の残基29~156に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する。より具体的な変形形態では、RNaseは、配列番号22の残基29~156に示されるアミノ酸配列を有する。ある特定の実施形態では、L1は存在し、少なくとも2つのアミノ酸残基を含む(例えば、10~36個のアミノ酸残基からなるL1リンカー)。特定の変形形態では、L1は、配列番号119のアミノ酸配列の2つまたはそれよりも多くのタンデムリピートを含む;一部のかかる実施形態では、L1は、配列番号10または配列番号12に示されるアミノ酸配列を有する。
【0062】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてSOD1を含む上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、SOD1は、配列番号32の残基2~154に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する。一部のかかる実施形態では、SOD1は、ヒトSOD1(配列番号32)と比較して、以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを含有する:ヒトSOD1のC7に対応する位置におけるアラニン(C7置換);およびヒトSOD1のC112に対応する位置におけるセリン(C112置換)。ある特定の変形形態では、融合ポリペプチドは、C7置換およびC112置換の両方を含有する。より具体的な変形形態では、SOD1は、配列番号54の残基23~175に示されるアミノ酸配列を有する。ある特定の実施形態では、L1は存在し、少なくとも2つのアミノ酸残基を含む(例えば、10~36個のアミノ酸残基からなるL1リンカー)。特定の変形形態では、L1は、配列番号119のアミノ酸配列の2つまたはそれよりも多くのタンデムリピートを含む;一部のかかる実施形態では、L1は、配列番号10または配列番号12に示されるアミノ酸配列を有する。
【0063】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてCTLA-4細胞外ドメインを含む上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、CTLA-4細胞外ドメインは、配列番号66の残基21~144に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する。より具体的な変形形態では、CTLA-4細胞外ドメインは、配列番号66の残基21~144に示されるアミノ酸配列を有する。
【0064】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてCD40細胞外ドメインを含む上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、CD40細胞外ドメインは、(i)配列番号74の残基21~188、(ii)配列番号78の残基21~188、(iii)配列番号82の残基21~188、(iv)配列番号86の残基21~188、または(v)配列番号90の残基21~188に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する。一部のかかる実施形態では、CD40細胞外ドメインは、E64、K81、P85およびL121から選択されるヒトCD40(配列番号68)のアミノ酸に対応する位置において、少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、少なくとも1つのアミノ酸置換は、ヒトCD40と比較してCD40リガンド結合を増加させる。これらの位置における特に適切なアミノ酸置換は、ヒトCD40のE64に対応する位置におけるチロシン、ヒトCD40のK81に対応する位置におけるスレオニン、ヒスチジンもしくはセリン、ヒトCD40のP85に対応する位置におけるチロシン、および/またはヒトCD40のL121に対応する位置におけるプロリンである。一部の変形形態では、ヒトCD40のK81に対応する位置におけるアミノ酸は、スレオニン、ヒスチジンおよびセリンから選択される;ヒトCD40のK81に対応する位置におけるアミノ酸は、ヒスチジンであり、ヒトCD40のL121に対応する位置におけるアミノ酸は、プロリンである;またはヒトCD40のE64に対応する位置におけるアミノ酸は、チロシンであり、ヒトCD40のK81に対応する位置におけるアミノ酸は、スレオニンであり、ヒトCD40のP85に対応する位置におけるアミノ酸は、チロシンである。より具体的な変形形態では、CD40細胞外ドメインは、(i)配列番号74の残基21~188、(ii)配列番号78の残基21~188、(iii)配列番号82の残基21~188、(iv)配列番号86の残基21~188、または(v)配列番号90の残基21~188に示されるアミノ酸配列を有する。
【0065】
上記融合ポリペプチドのある特定の実施形態では、第1の生物学的に活性なポリペプチドは、TNFαまたはTGF-βに特異的に結合しそれを中和するポリペプチドである。一部のかかる実施形態では、第1の生物学的に活性なポリペプチドは、単鎖抗体、例えば、単鎖Fv(scFv)または単一ドメイン抗体(sdAb)などである。
【0066】
TNFαに特異的に結合しそれを中和する単鎖抗体を含む上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、単鎖抗体は、相補性決定領域(CDR)CDR-H1TNFα、CDR-H2TNFαおよびCDR-H3TNFαを含むVHドメインを含み、VH CDRのセットは、配列番号108に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインの参照CDR CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のセットと比較して、3つまたはそれよりも少ないアミノ酸置換を有する(例えば、配列番号108のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3と比較してゼロ個のアミノ酸置換を有するVH CDRのセット、それによって、CDR-H1TNFα、CDR-H2TNFαおよびCDR-H3TNFαはそれぞれ、配列番号108のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3である)。各VH CDRは、例えば、CDRのChothia定義、Kabat定義、AbM定義、IMGTデータベース定義または接触定義に従って定義され得る。一部の変形形態では、各VH CDRは、CDRのIMGTデータベース定義に従って定義され、それによって、配列番号108の参照CDR CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3はそれぞれ、配列番号108の残基26~33、50~59および97~110に対応する;一部のかかる実施形態では、CDR-H1TNFα、CDR-H2TNFαおよびCDR-H3TNFαは、IMGTデータベース定義に従う配列番号108のVH CDRであり、それによって、CDR-H1TNFαは、配列番号108の残基26~33に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2TNFαは、配列番号108の残基50~59に示されるアミノ酸配列を有し、かつCDR-H3TNFαは、配列番号108の残基97~110に示されるアミノ酸配列を有する。
【0067】
TNFαに特異的に結合しそれを中和する単鎖抗体を含む上記融合ポリペプチドの他の相互に排他的でない実施形態では、単鎖抗体は、相補性決定領域(CDR)CDR-L1TNFα、CDR-L2TNFαおよびCDR-L3TNFαを含むVLドメインを含み、VL CDRのセットは、配列番号110に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインの参照CDR CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のセットと比較して、3つまたはそれよりも少ないアミノ酸置換を有する(例えば、配列番号110のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3と比較してゼロ個のアミノ酸置換を有するVL CDRのセット、それによって、CDR-L1TNFα、CDR-L2TNFαおよびCDR-L3TNFαはそれぞれ、配列番号110のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3である)。各VL CDRは、例えば、CDRのChothia定義、Kabat定義、AbM定義、IMGTデータベース定義または接触定義に従って定義され得る。一部の変形形態では、各VL CDRは、CDRのIMGTデータベース定義に従って定義され、配列番号110の参照CDR CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3はそれぞれ、配列番号110の残基27~32、50~52および89~97に対応する;一部のかかる実施形態では、CDR-L1TNFα、CDR-L2TNFαおよびCDR-L3TNFαは、IMGTデータベース定義に従う配列番号110のVL CDRであり、それによって、CDR-L1TNFαは、配列番号110の残基27~32に示されるアミノ酸配列を有し;CDR-L2TNFαは、配列番号110の残基50~52に示されるアミノ酸配列を有し;かつCDR-L3TNFαは、配列番号110の残基89~97に示されるアミノ酸配列を有する。
【0068】
TNFαに特異的に結合しそれを中和する単鎖抗体を含む上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、単鎖抗体は、配列番号108に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の同一性を有するVHドメインを含む、かつ/または単鎖抗体は、配列番号110に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の同一性を有するVLドメインを含む。より具体的な変形形態では、単鎖抗体は、配列番号108に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、かつ/または単鎖抗体は、配列番号110に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。
【0069】
TGF-βに特異的に結合しそれを中和する単鎖抗体を含む上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、単鎖抗体は、相補性決定領域(CDR)CDR-H1TGF-β、CDR-H2TGF-βおよびCDR-H3TGF-βを含むVHドメインを含み、VH CDRのセットは、配列番号112に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインの参照CDR CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のセットと比較して、3つまたはそれよりも少ないアミノ酸置換を有する(例えば、配列番号112のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3と比較してゼロ個のアミノ酸置換を有するVH CDRのセット、それによって、CDR-H1TGF-β、CDR-H2TGF-βおよびCDR-H3TGF-βはそれぞれ、配列番号112のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3である)。各VH CDRは、例えば、CDRのChothia定義、Kabat定義、AbM定義、IMGTデータベース定義または接触定義に従って定義され得る。一部の変形形態では、各VH CDRは、CDRのKabat定義に従って定義され、それによって、配列番号112の参照CDR CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3はそれぞれ、配列番号112の残基31~35、50~66および99~106に対応する;一部のかかる実施形態では、CDR-H1TGF-β、CDR-H2TGF-βおよびCDR-H3TGF-βは、Kabat定義に従う配列番号112のVH CDRであり、それによって、CDR-H1TGF-βは、配列番号112の残基31~35に示されるアミノ酸配列を有し、CDR-H2TGF-βは、配列番号112の残基50~66に示されるアミノ酸配列を有し、かつCDR-H3TGF-βは、配列番号112の残基99~106に示されるアミノ酸配列を有する。
【0070】
TGF-βに特異的に結合しそれを中和する単鎖抗体を含む上記融合ポリペプチドの他の相互に排他的でない実施形態では、単鎖抗体は、相補性決定領域(CDR)CDR-L1TGF-β、CDR-L2TGF-βおよびCDR-L3TGF-βを含むVLドメインを含み、VL CDRのセットは、配列番号114に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインの参照CDR CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のセットと比較して、3つまたはそれよりも少ないアミノ酸置換を有する(例えば、配列番号114のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3と比較してゼロ個のアミノ酸置換を有するVL CDRのセット、それによって、CDR-L1TGF-β、CDR-L2TGF-βおよびCDR-L3TGF-βはそれぞれ、配列番号114のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3である)。各VL CDRは、例えば、CDRのChothia定義、Kabat定義、AbM定義、IMGTデータベース定義または接触定義に従って定義され得る。一部の変形形態では、各VL CDRは、CDRのKabat定義に従って定義され、配列番号114の参照CDR CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3はそれぞれ、配列番号114の残基24~40、56~62および95~102に対応する;一部のかかる実施形態では、CDR-L1TGF-β、CDR-L2TGF-βおよびCDR-L3TGF-βは、Kabat定義に従う配列番号114のVL CDRであり、それによって、CDR-L1TGF-βは、配列番号114の残基24~40に示されるアミノ酸配列を有し;CDR-L2TGF-βは、配列番号114の残基56~62に示されるアミノ酸配列を有し;かつCDR-L3TGF-βは、配列番号114の残基95~102に示されるアミノ酸配列を有する。
【0071】
TGF-βに特異的に結合しそれを中和する単鎖抗体を含む上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、単鎖抗体は、配列番号112に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の同一性を有するVHドメインを含む、かつ/または単鎖抗体は、配列番号114に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の同一性を有するVLドメインを含む。より具体的な変形形態では、単鎖抗体は、配列番号112に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、かつ/または単鎖抗体は、配列番号114に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。
【0072】
TNFαまたはTGF-βに特異的に結合しそれを中和する単鎖抗体を含む上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、単鎖抗体は、(i)配列番号92の残基21~268、(ii)配列番号96の残基21~268、(iii)配列番号100の残基21~269、または(iv)配列番号104の残基21~269に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する。より具体的な変形形態では、単鎖抗体は、(i)配列番号92の残基21~268、(ii)配列番号96の残基21~268、(iii)配列番号100の残基21~269、または(iv)配列番号104の残基21~269に示されるアミノ酸配列を有する。
【0073】
別の態様では、本発明は、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、X-L2-Pを含む融合ポリペプチドであって、式中、Xは、免疫グロブリン重鎖定常領域であり、免疫グロブリン重鎖定常領域は、ダイマーを形成し、新生児Fc受容体(FcRn)に特異的に結合することが可能であり;L2は、ポリペプチドリンカーであり、L2は、必要に応じて存在し;かつPは、生物学的に活性なパラオキソナーゼであり、パラオキソナーゼは、配列番号6の残基16~355または26~355に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%または少なくとも90%の同一性を有し、配列番号6の残基1~15に対応するアミノ末端リーダー配列を含有せず、融合ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖定常領域に対してN末端側には生物学的に活性なポリペプチドを含まない、融合ポリペプチドを提供する。一部の実施形態では、生物学的に活性なパラオキソナーゼは、(i)配列番号6の残基16~355または26~355、(ii)配列番号124の残基16~355または26~355、あるいは(iii)配列番号126の残基16~355または26~355に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する。
【0074】
式T-L1-X-L2-PまたはX-L2-Pを含む上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、ヒトパラオキソナーゼ1 Q192アイソフォーム(hPON1-Q192;配列番号4)のQ192に対応する位置におけるアミノ酸は、リシンまたはアルギニンである。他の相互に排他的でない変形形態では、hPON1-Q192のH115に対応する位置におけるアミノ酸は、トリプトファンである。具体的な変形形態では、パラオキソナーゼは、(i)配列番号6の残基n~355、(ii)配列番号124の残基n~355、および(iii)配列番号126の残基n~355から選択されるアミノ酸配列を有し、nは、端点を含めた16~26の整数である。
【0075】
式T-L1-X-L2-PまたはX-L2-Pを含む上記融合ポリペプチドのある特定の実施形態では、L2は存在し、少なくとも8つのアミノ酸残基を含む。一部のかかる実施形態では、L2は、12~25個のアミノ酸残基からなる。特に適切なL2リンカーは、配列番号56に示されるアミノ酸配列を有する。
【0076】
式T-L1-X-L2-PまたはX-L2-Pを有し、Xが免疫グロブリン重鎖定常領域である上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域は、免疫グロブリンFc領域である。一部のかかる実施形態では、Fc領域は、ヒトFc領域、例えば、野生型ヒト配列と比較して1つまたは複数の(例えば、1~10個の)アミノ酸置換を含むヒトFcバリアントなどである。特に適切なFc領域には、ヒトγ1およびγ4 Fc領域が含まれる。一部の変形形態では、Fc領域は、Eu残基C220がセリンによって置き換えられたヒトγ1 Fcバリアントである;一部のかかる実施形態では、Eu残基C226およびC229は各々、セリンによって置き換えられている、かつ/またはEu残基P238は、セリンによって置き換えられている。上記Fc領域を含むさらなる変形形態では、Fc領域は、Eu残基P331がセリンによって置き換えられたヒトγ1 Fcバリアントである。一部の実施形態では、Fc領域は、(i)配列番号26の残基1~232または1~231、(ii)配列番号28の残基1~232または1~231、(iii)配列番号42の残基159~390または159~389、(iv)配列番号116の残基1~232または1~231、あるいは(v)配列番号118の残基1~232または1~231に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%あるいは少なくとも95%の同一性を有する。より具体的な変形形態では、Fc領域は、(i)配列番号26の残基1~232または1~231、(ii)配列番号28の残基1~232または1~231、(iii)配列番号42の残基159~390または159~389、(iv)配列番号116の残基1~232または1~231、あるいは(v)配列番号118の残基1~232または1~231に示されるアミノ酸配列を有する。
【0077】
式T-L1-X-L2-PまたはX-L2-Pを有し、Xが免疫グロブリン重鎖定常領域である上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域は、(i)配列番号26の残基16~232または16~231、(ii)配列番号116の残基16~232または16~231、あるいは(iii)配列番号118の残基16~232または16~231に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%あるいは少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。より具体的な変形形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域は、(i)配列番号26の残基16~232または16~231、(ii)配列番号116の残基16~232または16~231、あるいは(iii)配列番号118の残基16~232または16~231に示されるアミノ酸配列を含む。
【0078】
式T-L1-X-L2-Pを有し、第1の生物学的に活性なポリペプチドがDNaseである上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号128の残基21~896、(iii)配列番号130の残基21~896、(iv)配列番号148の残基21~906、(v)配列番号158の残基21~896、(vi)配列番号160の残基21~906、(vii)配列番号162の残基21~906、または(viii)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;一部のかかる実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号128の残基21~896、(iii)配列番号130の残基21~896、(iv)配列番号148の残基21~906、(v)配列番号158の残基21~896、(vi)配列番号160の残基21~906、(vii)配列番号162の残基21~906、または(viii)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列を含む。
【0079】
式T-L1-X-L2-Pを有し、第1の生物学的に活性なポリペプチドがDNaseである上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、T-L1-Xに対応するポリペプチド領域(「T-L1-X領域」)は、配列番号149、配列番号150、配列番号153または配列番号154に示されるアミノ酸配列を含む。配列番号149、配列番号150、配列番号153または配列番号154に示されるアミノ酸配列を含むT-L1-X領域のある特定の変形形態では、(i)315位および316位の各々におけるアミノ酸は、アラニンである;(ii)319位におけるアミノ酸は、セリンである;(iii)378位におけるアミノ酸は、アラニン、グルタミンもしくはグリシンであり、346位におけるアミノ酸は、必要に応じてアラニンである;(iv)410位におけるアミノ酸は、アラニン、グリシンもしくはセリンである;(v)412位におけるアミノ酸は、セリンもしくはアラニンである;(vi)333位におけるアミノ酸は、チロシンであり、335位におけるアミノ酸は、スレオニンであり、337位におけるアミノ酸は、グルタミン酸である;かつ/または(vii)509位におけるアミノ酸は、ロイシンであり、515位におけるアミノ酸は、セリンである。配列番号149、配列番号150、配列番号153または配列番号154に示されるアミノ酸配列を含むT-L1-X領域の他の相互に排他的でない変形形態では、261~296位に対応するアミノ酸配列は、(i)[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]nであって、式中、nは、4~7の整数である、(ii)[Gly-Gly-Gly-Ser]nであって、式中、nは、5~9の整数である、および(iii)[Gly-Gly-Ser]nであって、式中、nは、6~12の整数である、からなる群から選択される式を有するGly-Serタンデムリピート配列を含む;一部のかかる実施形態では、261~296位に対応するアミノ酸配列は、(i)[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]nであって、式中、nは、4~6の整数である、(ii)[Gly-Gly-Gly-Ser]nであって、式中、nは、5~7の整数である、および(iii)[Gly-Gly-Ser]nであって、式中、nは、6~10の整数である、からなる群から選択される式を有するGly-Serタンデムリピート配列を含む。配列番号149、配列番号150、配列番号153または配列番号154に示されるアミノ酸配列を含むT-L1-X領域のさらに他の相互に排他的でない変形形態では、261位におけるアミノ酸は、アスパラギン酸である、262位におけるアミノ酸は、ロイシンである、263位におけるアミノ酸は、セリンである、294位におけるアミノ酸は、スレオニンである、295位におけるアミノ酸は、グリシンである、かつ/または296位におけるアミノ酸は、ロイシンである。配列番号149または配列番号153に示されるアミノ酸配列を含むT-L1-X領域の他の相互に排他的でない変形形態では、74位および105位の各々におけるアミノ酸は、独立して、リシンまたはアルギニンである。配列番号149に示されるアミノ酸配列を含むT-L1-X領域の他の相互に排他的でない変形形態では、114位におけるアミノ酸は、フェニルアラニンである。
【0080】
式T-L1-X-L2-Pを有し、第1の生物学的に活性なポリペプチドがRNaseである上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号40の残基21~764、または(ii)配列番号48の残基21~740に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;一部のかかる実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号40の残基21~764、または(ii)配列番号48の残基21~740に示されるアミノ酸配列を含む。
【0081】
式T-L1-X-L2-Pを有し、第1の生物学的に活性なポリペプチドがSOD1である上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号50の残基23~781、(ii)配列番号52の残基23~781、または(iii)配列番号54の残基23~791に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;一部のかかる実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号50の残基23~781、(ii)配列番号52の残基23~781、または(iii)配列番号54の残基23~791に示されるアミノ酸配列を含む。
【0082】
式T-L1-X-L2-Pを有し、第1の生物学的に活性なポリペプチドがCTLA-4細胞外ドメインである上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号66の残基21~736に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;一部のかかる実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号66の残基21~736に示されるアミノ酸配列を含む。
【0083】
式T-L1-X-L2-Pを有し、第1の生物学的に活性なポリペプチドがCD40細胞外ドメインである上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号74の残基21~804、(ii)配列番号78の残基21~804、(iii)配列番号82の残基21~804、(iv)配列番号86の残基21~804、または(v)配列番号90の残基21~804に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;一部のかかる実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号74の残基21~804、(ii)配列番号78の残基21~804、(iii)配列番号82の残基21~804、(iv)配列番号86の残基21~804、または(v)配列番号90の残基21~804に示されるアミノ酸配列を含む。
【0084】
式T-L1-X-L2-Pを有し、第1の生物学的に活性なポリペプチドがTNFαに特異的に結合しそれを中和する単鎖抗体である上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号94の残基21~860、または(ii)配列番号98の残基21~860に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;一部のかかる実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号94の残基21~860、または(ii)配列番号98の残基21~860に示されるアミノ酸配列を含む。
【0085】
式T-L1-X-L2-Pを有し、第1の生物学的に活性なポリペプチドがTGF-βに特異的に結合しそれを中和する単鎖抗体である上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号102の残基21~861、または(ii)配列番号106の残基21~861に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;一部のかかる実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号102の残基21~861、または(ii)配列番号106の残基21~861に示されるアミノ酸配列を含む。
【0086】
式X-L2-Pを有する上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号122の残基21~613、(ii)配列番号132の残基21~613、(iii)配列番号134の残基21~613、(iv)配列番号142の残基21~610、(v)配列番号144の残基21~610、または(vi)配列番号146の残基21~610に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;一部のかかる実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号122の残基21~613、(ii)配列番号132の残基21~613、(iii)配列番号134の残基21~613、(iv)配列番号142の残基21~610、(v)配列番号144の残基21~610、または(vi)配列番号146の残基21~610に示されるアミノ酸配列を含む。
【0087】
別の態様では、本発明は、第1の融合ポリペプチドと第2の融合ポリペプチドとを含むダイマー性タンパク質であって、第1および第2の融合ポリペプチドの各々が、(i)式T-L1-X-L2-Pを有し、Xがダイマー化ドメイン(例えば、免疫グロブリン重鎖定常領域、例えば、免疫グロブリンFc領域など)である上記融合ポリペプチド、または(ii)式X-L2-Pを有する上記融合ポリペプチドである、ダイマー性タンパク質を提供する。
【0088】
別の態様では、本発明は、上記融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0089】
なお別の態様では、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、上記融合ポリペプチドをコードするDNAセグメントを含む発現カセットを提供する。特定の変形形態では、コードされた融合ポリペプチドは、式T-L1-X-L2-Pを有する上記融合ポリペプチドであり、第1の生物学的に活性なポリペプチドは、(i)配列番号18のアミノ酸残基21~280または配列番号152の残基21~280と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有し、かつ(ii)N74置換、G105置換およびA114置換のうち少なくとも1つを含むDNase(例えば、2つまたは3つ全ての置換を有するDNase)である。上記発現カセットが導入された培養細胞であって、DNAセグメントを発現する培養細胞もまた、提供される。関連する態様では、本発明は、そのゲノムDNA内に、上記発現カセットを含む安定な細胞系であって、DNAセグメントを構成的に発現する、安定な細胞系を提供する。一部の実施形態では、安定な細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系である。
【0090】
別の態様では、本発明は、上記発現カセットを含むベクターを提供する。
【0091】
別の態様では、本発明は、融合ポリペプチドを作製する方法を提供する。この方法は、一般に、(i)上記発現カセットが導入された細胞を培養するステップであって、細胞が、DNAセグメントを発現し、コードされた融合ポリペプチドが産生される、ステップ、および(ii)融合ポリペプチドを回収するステップを含む。一部の変形形態では、培養細胞は、上記安定な細胞系である。
【0092】
さらに別の態様では、本発明は、ダイマー性タンパク質を作製する方法を提供する。この方法は、一般に、(i)上記発現カセットが導入された細胞を培養するステップであって、細胞が、DNAセグメントを発現し、コードされた融合ポリペプチドが、ダイマー性タンパク質として産生される、ステップ、および(ii)ダイマー性タンパク質を回収するステップを含む。一部の変形形態では、培養細胞は、上記安定な細胞系である。
【0093】
別の態様では、本発明は、上記融合ポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0094】
別の態様では、本発明は、上記ダイマー性タンパク質および薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0095】
上記組成物の一部の実施形態では、組成物は、噴霧による肺への送達のために製剤化されている。
【0096】
なお別の態様では、本発明は、炎症性疾患を処置するための方法を提供する。この方法は、一般に、上記融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量を、炎症性疾患を有する対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、炎症性疾患は、炎症性肺疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症(CF)、気管支拡張症、低酸素症、急性呼吸促迫症候群(ARDS)(例えば、COVID-19関連ARDS)および間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症(IPF)またはサルコイドーシス)などである;一部の変形形態では、炎症性肺疾患は、Pseudomonas aeruginosa感染によって特徴付けられる。他の実施形態では、炎症性疾患は、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)、全身性エリテマトーデス(SLE)(例えば、ループス腎炎を伴うSLE)、1型糖尿病および2型糖尿病から選択される。なお他の実施形態では、炎症性疾患は、炎症性皮膚疾患、例えば、乾癬またはアトピー性皮膚炎などである。
【0097】
別の態様では、本発明は、自己免疫疾患を処置するための方法を提供する。この方法は、一般に、上記融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量を、自己免疫疾患を有する対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)(例えば、ループス腎炎を伴うSLE)、シェーグレン症候群、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、抗リン脂質抗体症候群、1型糖尿病、血管炎および全身性強皮症から選択される。
【0098】
別の態様では、本発明は、グラム陰性細菌によるバイオフィルム形成を処置するための方法を提供する。この方法は、一般に、上記融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量を、バイオフィルム形成を有する対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、グラム陰性細菌は、Pseudomonas aeruginosaである。
【0099】
別の態様では、本発明は、硫黄マスタードガスまたは有機リンへの曝露を処置するための方法を提供する。この方法は、一般に、上記融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量を、硫黄マスタードガスまたは有機リンに曝露された対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、有機リンは、パラチオン、マラチオン、クロルピリホス、ダイアジノン、ジクロルボス、ホスメット、フェニトロチオン、テルブホス、テトラクロルビンホス、アザメチホスおよびアジンホス-メチルから選択される殺虫剤である。一部の実施形態では、有機リンは、タブン、サリン、ソマンおよびシクロサリンから選択される神経剤である。
【0100】
さらに別の態様では、本発明は、神経学的疾患を処置するための方法を提供する。この方法は、一般に、上記融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量を、神経学的疾患を有する対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、神経学的疾患は、パーキンソン病およびアルツハイマー病から選択される。一部の実施形態では、神経学的疾患は、認知症によって特徴付けられる疾患、例えば、アルツハイマー病などである。
【0101】
別の態様では、本発明は、心血管疾患を処置するための方法を提供する。この方法は、一般に、上記融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量を、心血管疾患を有する対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、心血管疾患は、アテローム動脈硬化症によって特徴付けられる疾患、例えば、冠動脈心疾患または虚血性脳卒中などである。一部の変形形態では、冠動脈心疾患は、急性冠症候群によって特徴付けられる。
【0102】
別の態様では、本発明は、慢性肝臓疾患を処置するための方法を提供する。この方法は、一般に、上記融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量を、慢性肝臓疾患を有する対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、慢性肝臓疾患は、非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)、アルコール関連肝臓疾患(ALD)、門脈圧亢進症、または肝臓移植後の合併症から選択される。一部の変形形態では、非アルコール性脂肪性肝臓疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0103】
別の態様では、本発明は、線維性疾患を処置するための方法を提供する。この方法は、一般に、上記融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量を、線維性疾患を有する対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、線維性疾患は、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性肺疾患、慢性肝臓疾患および慢性腎臓疾患(例えば、ループス腎炎、IgA腎症または膜性糸球体腎炎)からなる群から選択される。
【0104】
なお別の態様では、本発明は、NETosisによって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法を提供する。一部の実施形態では、この方法は、一般に、上記式T-L1-X-L2-Pを有する融合ポリペプチド、または融合ポリペプチドのダイマー化によって形成されたダイマー性タンパク質の有効量を、NETosisによって特徴付けられる疾患または障害を有する対象に投与するステップを含み、融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質は、第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてDNaseを含む。
【0105】
NETosisによって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法の他の実施形態では、この方法は、(a)上記式X-L2-Pを有する融合ポリペプチド、または融合ポリペプチドのダイマー化によって形成されたダイマー性タンパク質の有効量、および(b)生物学的に活性なDNaseの有効量を、NETosisによって特徴付けられる疾患または障害を有する対象に投与するステップを一般に含む併用療法である。併用療法の方法のある特定の実施形態では、DNaseは、(i)配列番号18の残基21~280、(ii)配列番号152の残基21~280、または(iii)配列番号136の残基21~290に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する。DNaseが配列番号18の残基21~280または配列番号152の残基21~280に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する一部の実施形態では、DNaseは、N74、G105およびA114から選択されるヒト野生型DNase1(配列番号120)のアミノ酸に対応する位置において、少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、(1)ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるアミノ酸置換(N74置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較してDNA結合を増加させ、(2)ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸置換(G105置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較してDNA結合を増加させ、かつ(3)ヒトDNase1のA114に対応する位置におけるアミノ酸置換(A114置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較して、エンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させる。一部の変形形態では、DNaseは、N74置換およびG105置換の両方、またはN74置換、G105置換およびA114置換の各々を含有する。これらの位置における特に適切なアミノ酸置換は、ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるリシン、ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアルギニン、および/またはヒトDNase1のA114に対応する位置におけるフェニルアラニンである。DNaseが配列番号136の残基21~290に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する一部の実施形態では、配列番号136のR80、R95およびN96に対応する位置におけるアミノ酸の各々は、アラニンまたはセリンである。より具体的な変形形態では、DNaseは、(i)配列番号18の残基21~280、(ii)配列番号20の残基21~280、(iii)配列番号152の残基21~280、(iv)配列番号138の残基21~290、または(v)配列番号140の残基21~290に示されるアミノ酸配列を有する。
【0106】
上記NETosisによって特徴付けられる疾患または障害を処置するための併用療法の方法のある特定の実施形態では、DNaseは、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、D-L1-Xdを含むDNase融合ポリペプチド内に含有され、式中、Dは、DNaseであり、L1は、ポリペプチドリンカー(例えば、少なくとも15個のアミノ酸残基または少なくとも26個のアミノ酸残基を含むリンカー)であり、かつXdは、免疫グロブリンFc領域である。免疫グロブリンFc領域は、式T-L1-X-L2-PまたはX-L2-Pを有する融合ポリペプチドについて上記したFc領域であり得る。一部の変形形態では、DNase融合ポリペプチドは、(i)配列番号60の残基21~538または21~537、(ii)配列番号62の残基21~548または21~547、(iii)配列番号155の残基21~538または21~537、(iv)配列番号156の残基21~548または21~547、(v)配列番号138の残基21~548または21~547、あるいは(vi)配列番号140の残基21~548または21~547に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%あるいは少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;一部のかかる実施形態では、DNase融合ポリペプチドは、(i)配列番号60の残基21~538または21~537、(ii)配列番号62の残基21~548または21~547、(iii)配列番号155の残基21~538または21~537、(iv)配列番号156の残基21~548または21~547、(v)配列番号138の残基21~548または21~547、あるいは(vi)配列番号140の残基21~548または21~547に示されるアミノ酸配列を含む。ある特定の変形形態では、DNaseは、配列番号149、配列番号150、配列番号153または配列番号154に示されるアミノ酸配列を含む。
【0107】
NETosisによって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法の一部の実施形態では、疾患または障害は、炎症性肺疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症(CF)、気管支拡張症、低酸素症、急性呼吸促迫症候群(ARDS)(例えば、COVID-19関連ARDS)または間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症(IPF)またはサルコイドーシス)などである。他の実施形態では、疾患または障害は、炎症性皮膚疾患、例えば、乾癬またはアトピー性皮膚炎などである。他の実施形態では、疾患または障害は、自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)(例えば、ループス腎炎を伴うSLE)、関節リウマチ(RA)、乾癬、抗リン脂質抗体症候群、1型真性糖尿病、血管炎または全身性強皮症などである。他の実施形態では、疾患または障害は、自己炎症性疾患、例えば、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)または痛風などである。他の実施形態では、疾患または障害は、神経学的疾患または障害、例えば、慢性神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病または多発性硬化症)、中枢神経系感染症(例えば、髄膜炎、脳炎または脳性マラリア)または虚血性脳卒中などである。他の実施形態では、疾患または障害は、代謝疾患、例えば、2型糖尿病または肥満などである。他の実施形態では、疾患または障害は、心血管疾患、例えば、アテローム動脈硬化症によって特徴付けられる心血管疾患(例えば、冠動脈心疾患または虚血性脳卒中)などである。なお他の実施形態では、疾患または障害は、血栓症、敗血症および虚血再灌流から選択される。他の実施形態では、疾患または障害は、慢性肝臓疾患、例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などである。さらに他の実施形態では、疾患または障害は、線維性疾患、例えば、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性肺疾患、慢性肝臓疾患または慢性腎臓疾患(例えば、ループス腎炎、IgA腎症または膜性糸球体腎炎)などである。
【0108】
NETosisによって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法のさらに他の実施形態では、疾患または障害は、がんである。ある特定の変形形態では、がん処置は、併用療法である。一部の併用療法実施形態では、併用療法には、抗PD-1/PD-L1治療、抗CTLA-4治療、CAR T細胞治療、またはそれらの組合せ(例えば、抗PD-1/PD-L1治療および抗CTLA-4治療の両方)を含む免疫調節療法が含まれる。他の併用療法実施形態では、併用療法には、放射線療法または化学療法が含まれる。一部の併用療法実施形態では、併用療法には、標的化療法が含まれる;一部のかかる実施形態では、標的化療法には、(i)特異的な細胞表面もしくは細胞外抗原(例えば、VEGF、EGFR、CTLA-4、PD-1またはPD-L1)を標的化する治療用モノクローナル抗体、または(ii)細胞内タンパク質、例えば、細胞内酵素(例えば、プロテアソーム、チロシンキナーゼ、サイクリン依存性キナーゼ、セリン/スレオニン-タンパク質キナーゼB-Raf(BRAF)またはMEKキナーゼ)などを標的化する小分子が含まれる。
【0109】
別の態様では、本発明は、対象において脂質酸化を低減させるための方法を提供する。この方法は、一般に、上記融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量を、対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、この方法は、対象においてNETosisをさらに低減させ、(a)上記式X-L2-Pを有する融合ポリペプチド、または融合ポリペプチドのダイマー化によって形成されたダイマー性タンパク質の有効量、および(b)生物学的に活性なDNase(例えば、上記式D-L1-Xdを有するDNase融合ポリペプチド)の有効量を投与するステップを一般に含む併用療法である。
【0110】
別の態様では、本発明は、加齢から対象を保護するための方法を提供する。この方法は、一般に、上記融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量を、対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、この方法は、(a)上記式X-L2-Pを有する融合ポリペプチド、または融合ポリペプチドのダイマー化によって形成されたダイマー性タンパク質の有効量、および(b)生物学的に活性なDNase(例えば、上記式D-L1-Xdを有するDNase融合ポリペプチド)の有効量を投与するステップを一般に含む併用療法である。
【0111】
本発明のこれらおよび他の態様は、本発明の以下の詳細な説明を参照すれば明らかになる。
定義
【0112】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、記載される方法および組成物に関する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の用語および語句は、他に特定されない限り、それらに帰せられる意味を有する。
【0113】
用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数形の指示対象を含む。
【0114】
「ポリペプチド」は、天然に産生されたものであれ合成により産生されたものであれ、ペプチド結合によって接続されたアミノ酸残基のポリマーである。約50アミノ酸残基未満のポリペプチドは、「ペプチド」とも呼ばれ得る。
【0115】
「タンパク質」は、1つまたは複数のポリペプチド鎖を含む高分子である。タンパク質は、非ペプチド性構成成分、例えば、炭水化物基もまた含み得る。炭水化物および他の非ペプチド性置換基は、タンパク質がその中で産生される細胞によってタンパク質に付加され得、細胞の型によって変動する。タンパク質は、それらのアミノ酸骨格構造の観点から本明細書で定義される;置換基、例えば、炭水化物基は、一般には特定されないが、それにもかかわらず存在し得る。
【0116】
用語「アミノ末端」(または「N末端」)および「カルボキシル末端」(または「C末端」)は、ポリペプチド内の位置を示すために本明細書で使用される。文脈が許す場合、これらの用語は、近接性または相対的位置を示すために、ポリペプチドの特定の配列または部分に関して使用される。例えば、ポリペプチド内の参照配列に対してカルボキシル末端側に位置するある特定の配列は、参照配列のカルボキシル末端に対して近位に位置するが、完全なポリペプチドのカルボキシル末端に必ずしもあるわけではない。
【0117】
用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書で同義語として使用され、5’末端から3’末端へと読まれる、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーを指す。ポリヌクレオチドには、RNAおよびDNAが含まれ、天然の供給源から単離され得、in vitroで合成され得、または天然分子と合成分子との組合せから調製され得る。ポリヌクレオチドのサイズは、塩基対(「bp」と略記される)、ヌクレオチド(「nt」)またはキロ塩基(「kb」)として表される。文脈が許す場合、後者の2つの用語は、一本鎖または二本鎖であるポリヌクレオチドを記載し得る。二本鎖ポリヌクレオチドの2つの鎖が、長さがわずかに異なり得ること、およびその末端が、酵素的切断の結果としてスタッガードであり得ることが、当業者によって認識される;したがって、二本鎖ポリヌクレオチド分子内の全てのヌクレオチドが対合しているわけではない。かかる未対合の末端は、一般に、長さが20ntを超えない。
【0118】
「セグメント」は、特定された性情を有するより大きい分子(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)の一部分である。例えば、特定されたポリペプチドをコードするDNAセグメントは、5’から3’の方向で読んだ場合に、特定されたポリペプチドのアミノ酸の配列をコードするより長いDNA分子、例えば、プラスミドまたはプラスミド断片の一部分である。また、例えば、本明細書に記載される融合ポリペプチドに関して、融合ポリペプチドの異なる構成成分(例えば、DNase、RNase、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、リンカー(複数化)、免疫グロブリンFc領域、パラオキソナーゼ)は各々、ポリペプチドセグメントと呼ばれ得る。
【0119】
用語「生物学的に活性な」は、本明細書に記載される融合分子のポリペプチドセグメントに関して使用される場合、生物システムにおいて測定可能または検出可能な生理的、生化学的または分子的効果を引き起こすポリペプチドを意味する。生物活性には、例えば、酵素活性、抗原結合、細胞表面受容体への結合、ダイマー化、真核生物細胞におけるシグナル伝達経路の活性化、細胞増殖の誘導、細胞分化の誘導などが含まれる。DNase、RNase、パラオキソナーゼ(PON)またはスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)であるポリペプチドセグメントに特に関して使用される場合、「生物学的に活性な」は、活性の程度、酵素反応速度論などにおける差異を許容して、ポリペプチドが、対応する天然に存在する酵素と同じ型の酵素活性(例えば、それぞれ、全長の野生型ヒトDNase1/DNase1L3、RNase1、PON1またはSOD1と同じ型の酵素活性)を示すことを意味する。免疫グロブリンFc領域は、本明細書で言及される場合、少なくとも、そのダイマー化活性およびFcRn結合活性によって、「生物学的に活性」であると理解される。
【0120】
文脈が明らかに他を示さない限り、「パラオキソナーゼ」(例えば、「パラオキソナーゼ1」または「PON1」)、「DNase」(例えば、「DNase1」または「DNase1L3」)、「RNase」(例えば、「RNase1」)、「スーパーオキシドジスムターゼ」(例えば、「スーパーオキシドジスムターゼ1」または「SOD1」)、「CTLA-4細胞外ドメイン」および「CD40細胞外ドメイン」に対する本明細書での言及は、上述のいずれかの天然に存在するポリペプチド、ならびにその機能的バリアントおよび機能的断片を含むと理解される。
【0121】
用語「対立遺伝子バリアント」は、同じ染色体遺伝子座を占める遺伝子の2つまたはそれよりも多くの代替的形態のいずれかを示すために本明細書で使用される。対立遺伝子変形形態は、突然変異を介して天然に生じ、集団内の表現型多型を生じ得る。遺伝子突然変異は、サイレント(コードされたポリペプチド中に変化なし)であり得る、または変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。対立遺伝子バリアントという用語は、遺伝子の対立遺伝子バリアントによってコードされるタンパク質を示すためにも、本明細書で使用される。
【0122】
用語「増強されたDNase1」は、本明細書で使用される場合、(a)天然に存在するDNase1と比較して、エンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させる少なくとも1つのアミノ酸置換、および/または(b)天然に存在するDNase1と比較してDNA結合を増加させる少なくとも1つのアミノ酸置換、を有するバリアントである、天然に存在するDNase1(例えば、ヒトDNase1)の機能亢進型および/またはアクチン抵抗性バリアントを示す。一部の実施形態では、増強されたDNase1は、エンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、増強されたDNase1は、エンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させる少なくとも1つのアミノ酸置換およびDNA結合を増加させる少なくとも1つのアミノ酸置換の両方を含む。一部の好ましい実施形態では、増強されたDNase1は、野生型ヒトDNase1(配列番号120に示される成熟アミノ酸配列)の機能亢進型バリアントである。
【0123】
用語「リンカー」または「ポリペプチドリンカー」は、ペプチド結合(複数可)によって接続され、2つの別個の別々のポリペプチド領域を連結する、2つまたはそれよりも多くのアミノ酸を示すために、本明細書で使用される。リンカーは、典型的には、別々のポリペプチド領域(例えば、Fc領域に連結されたDNaseまたはパラオキソナーゼポリペプチドなど)がそれらの別々の機能を発揮できるように設計される。リンカーは、ネイティブ配列の一部分、そのバリアント、または合成配列であり得る。リンカーはまた、略称「L」を使用して本明細書で言及される。「L」と併せた数的識別子(例えば、「1」または「2」)の使用は、異なる融合構成成分を接続するリンカー間を識別するために、本明細書で使用される:「L1」は、パラオキソナーゼではない第1の生物学的に活性なポリペプチド(例えば、DNase、RNaseまたはSOD1)のC末端を、別のポリペプチドセグメント、例えば、免疫グロブリンFc領域などのN末端に接続するリンカーを指し、「L2」は、生物学的に活性なパラオキソナーゼ(例えば、PON1)のN末端を、別のポリペプチドセグメント、例えば、免疫グロブリンFc領域などのC末端に接続するリンカーを指す。L1リンカーおよびL2リンカーの両方を含有するポリペプチド鎖に関して、これらのリンカーは、アミノ酸配列に関して、同じでも異なってもよい。第1の生物学的に活性なポリペプチドのカルボキシル末端が単一のポリペプチドリンカーを介して生物学的に活性なパラオキソナーゼのアミノ末端に直接(即ち、介在する生物学的に活性なポリペプチドなしに)連結される一部の変形形態では、かかるポリペプチドリンカーは、L1またはL2のいずれかとして言及され得る。
【0124】
用語「発現カセット」は、適切な宿主細胞におけるその転写を提供する追加のセグメントに作動可能に連結された目的のポリペプチドをコードするセグメントを含むDNA構築物を示すために使用される。かかる追加の配列には、プロモーター、および典型的には、転写ターミネーターが含まれ、1つまたは複数の選択可能なマーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどもまた含まれ得る。
【0125】
用語「ベクター」は、遺伝材料を細胞中に送達するための、組換えDNA技法によって産生されたポリヌクレオチドを示すために使用され、細胞において、ベクターは複製され得る。当該分野で周知のように、ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター、人工染色体、クローニングベクターまたは発現ベクターを指し得る。用語「発現ベクター」は、発現カセットを含むベクターを示すために使用される。
【0126】
用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼの結合および転写の開始を提供するDNA配列を含有する遺伝子の一部分を示すために、その当該分野で認識された意味で、本明細書で使用される。プロモーター配列は、遺伝子の5’非コード領域において一般に見出されるが、常にではない。
【0127】
「分泌シグナル配列」は、より大きいポリペプチドの構成成分として、それが合成される細胞の分泌経路を介してより大きいポリペプチドを方向付けるポリペプチド(「分泌ペプチド」)をコードするDNA配列である。より大きいポリペプチドは、一般に、分泌経路を介した通過の間に、分泌ペプチドを除去するように切断される。
【0128】
「作動可能に連結された」は、2つまたはそれよりも多くの実体が、それらの意図した目的のために協力して機能するように、一緒に接続されることを意味する。DNAセグメントに言及する場合、この語句は、例えば、コード配列が、正しいリーディングフレームで接続されており、転写がプロモーターにおいて開始し、コードセグメント(複数可)を介してターミネーターまで進行することを示す。ポリペプチドに言及する場合、「作動可能に連結された」は、配列の所望の機能(複数可)が保持される、共有結合的に(例えば、ジスルフィド結合によって)連結された配列および非共有結合的に(例えば、水素結合、疎水性相互作用または塩橋相互作用によって)連結された配列の両方を含む。
【0129】
用語「組換え」は、例えば、細胞、核酸、タンパク質またはベクターに関して使用される場合、その細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入、またはネイティブ核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されていること、あるいはその細胞が、そのように改変された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞のネイティブ(非組換え)形態内には見出されない遺伝子を発現する、または他の点で異常に発現される、過少発現される、もしくは全く発現されないネイティブ遺伝子を発現する。本明細書の用語「組換え核酸」は、天然には通常見出されない形態の、一般に、例えば、ポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを使用する核酸の操作によってin vitroで元々形成された核酸を意味する。この様式で、異なる配列の作動可能な連結が達成される。したがって、線状形態の単離された核酸、または通常は接続されていないDNA分子をライゲーションさせることによってin vitroで形成された発現ベクターは共に、本明細書で開示される目的のために組換えとみなされる。組換え核酸が作製され、宿主細胞または生物中に再導入されると、この組換え核酸は、非組換え的に、即ち、in vitro操作ではなく宿主細胞のin vivo細胞機構を使用して、複製すると理解される;しかし、かかる核酸は、組換え的に産生されると、引き続いて非組換え的に複製されるが、本明細書で開示される目的のためにはなおも組換えとみなされる。同様に、「組換えタンパク質」は、組換え技法を使用して、即ち、上で示した組換え核酸の発現を介して作製されたタンパク質である。
【0130】
用語「異種」は、核酸の部分に関して使用される場合、その核酸が、天然での互いに対するのと同じ関連性では通常は見出されない2つまたはそれよりも多くのサブ配列を含むことを示す。例えば、例えば、新たな機能的核酸を作製するために配置された無関係の遺伝子由来の2つまたはそれよりも多くの配列、例えば、1つの供給源由来のプロモーターおよび別の供給源由来のコード領域を有する核酸は、典型的には、組換え的に産生される。同様に、「異種」は、タンパク質の部分に関して使用される場合、そのタンパク質が、天然での互いに対するのと同じ関連性では見出されない2つまたはそれよりも多くのサブ配列(例えば、融合ポリペプチドの2つまたはそれよりも多くのセグメント)を含むことを示す。
【0131】
本明細書で使用される場合、用語「免疫グロブリン」は、免疫グロブリン遺伝子(複数可)によって実質的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質を指す。免疫グロブリンの1つの形態は、無傷のネイティブ抗体の基本的構造単位を構成する。この形態は、テトラマーであり、免疫グロブリン鎖の2つの同一な対からなり、各対は、1つの軽鎖および1つの重鎖を有する。各対において、軽鎖および重鎖可変領域は一緒になって、抗原への結合を担い、定常領域は、抗体エフェクター機能を担う。免疫グロブリンは、典型的には、脊椎動物生物において抗体として機能する。免疫グロブリンタンパク質の5つのクラス(IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgE)が、高等脊椎動物において同定されている。IgGは、主要なクラスを構成する;IgGは、血漿中で見出される2番目に豊富なタンパク質として、通常は存在する。ヒトでは、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4と称する4つのサブクラスからなる。IgGクラスの重鎖定常領域は、ギリシャ語記号γで同定される。例えば、IgG1サブクラスの免疫グロブリンは、γ1重鎖定常領域を含有する。各免疫グロブリン重鎖は、1つの種において所与のサブクラスについて本質的に不変の定常領域タンパク質ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2およびCH3;IgG3は、CH4ドメインもまた含有する)からなる定常領域を保有する。ヒトおよび非ヒト免疫グロブリン鎖をコードするDNA配列は、当該分野で公知である(例えば、Ellison et al., DNA 1:11-18, 1981;Ellison et al., Nucleic Acids Res. 10:4071-4079, 1982;Kenten et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6661-6665, 1982;Seno et al., Nuc. Acids Res. 11:719-726, 1983;Riechmann et al., Nature 332:323-327, 1988;Amster et al., Nuc. Acids Res. 8:2055-2065, 1980;Rusconi and Kohler, Nature 314:330-334, 1985;Boss et al., Nuc. Acids Res. 12:3791-3806, 1984;Bothwell et al., Nature 298:380-382, 1982;van der Loo et al., Immunogenetics 42:333-341, 1995;Karlin et al., J. Mol. Evol. 22:195-208, 1985;Kindsvogel et al., DNA 1:335-343, 1982;Breiner et al., Gene 18:165-174, 1982;Kondo et al., Eur. J. Immunol. 23:245-249, 1993;およびGenBank受託番号J00228を参照されたい)。免疫グロブリンの構造および機能の総説については、Putnam, The Plasma Proteins, Vol V, Academic Press, Inc., 49-140, 1987;およびPadlan, Mol. Immunol. 31:169-217, 1994を参照されたい。用語「免疫グロブリン」は、文脈に依存して、無傷抗体、その構成成分鎖、または鎖の断片を示すその一般的な意味で、本明細書で使用される。
【0132】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、またはその断片および/もしくは操作されたバリアントを指す。用語「抗体」には、無傷のモノクローナル抗体ならびに抗原結合性抗体断片、例えば、F(ab’)2およびFab断片などが含まれる。遺伝子操作された無傷抗体および断片、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖Fv断片、単鎖抗体、ディアボディ(diabody)、ミニボディ(minibody)などもまた含まれる。したがって、用語「抗体」は、抗原結合部位を含み、その抗原に結合することが可能な任意のタンパク質を含むように、拡張的に使用される。
【0133】
用語「遺伝子操作された抗体」は、そのアミノ酸配列が、ネイティブ(即ち、天然に存在する)抗体のアミノ酸配列から変動した、抗体を意味する。抗体の生成における組換えDNA技法の適用可能性に起因して、天然の抗体において見出されるアミノ酸の配列に限定される必要はない;抗体を、所望の特徴を得るために再設計することができる。可能な変形形態は多く、例えば、可変領域または定常領域のわずか1つまたは数個のアミノ酸の変化から、完全な再設計までの範囲である。一般に、特徴、例えば、補体結合、細胞との相互作用、および他のエフェクター機能を改善または変更するために定常領域を変化させることになる。典型的には、抗原結合特徴を改善するため、可変領域安定性を改善するため、または免疫原性のリスクを低下させるために可変領域を変化させることになる。
【0134】
「抗原結合部位」は、その抗原に結合するのに十分な抗体の部分である。最小限のかかる領域は、典型的には、免疫グロブリン可変ドメインもしくはその断片、または免疫グロブリン可変ドメインもしくはその断片の遺伝子操作されたバリアントである。単一ドメイン結合部位は、ラクダ科抗体から(Muyldermans and Lauwereys, J. Mol. Recog. 12:131-140, 1999;Nguyen et al., EMBO J. 19:921-930, 2000を参照されたい)、または単一ドメイン抗体(「dAb」;Ward et al., Nature 341:544-546, 1989;Winterらに対する米国特許第6,248,516号を参照されたい)を産生するために他の種のVHドメインから、生成することができる。ある特定の変形形態では、抗原結合部位は、天然に存在するもしくは天然に存在しない(例えば、突然変異誘発された)重鎖可変ドメインもしくは軽鎖可変ドメイン、またはそれらの組合せの相補性決定領域(CDR)を2つだけ有するポリペプチド領域である(例えば、Pessi et al., Nature 362:367-369, 1993;Qiu et al., Nature Biotechnol. 25:921-929, 2007を参照されたい)。
【0135】
全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kdまたは214アミノ酸)は、N末端では可変領域遺伝子(約110アミノ酸をコードする)によって、およびC末端ではカッパまたはラムダ定常領域遺伝子によって、コードされる。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50Kdまたは446アミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116アミノ酸をコードする)、およびガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン定常領域遺伝子(約330アミノ酸をコードする)によってコードされ、後者は、抗体のアイソタイプを、それぞれIgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEとして定義する。軽鎖および重鎖内で、可変領域と定常領域とは、約12個またはそれよりも多くのアミノ酸の「J」領域によって接続され、重鎖は、約10個またはそれよりも多くのアミノ酸の「D」領域もまた含む(一般には、Fundamental Immunology (Paul, ed., Raven Press, N.Y., 2nd ed. 1989), Ch. 7を参照されたい)。
【0136】
免疫グロブリン軽鎖または重鎖可変領域は、3つの超可変領域が割り込んだフレームワーク領域からなる。用語「超可変領域」は、本明細書で「相補性決定領域」(「CDR」)とも呼ばれ、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。CDRは、いくつかの公知の分析方法のいずれかに従って定義され得る。かかる方法の例には、例えば、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、IMGTデータベース定義および接触定義が含まれる。Kabat定義は、抗体中の残基に番号付けするための標準であり、典型的には、CDR領域を同定するために使用される(例えば、Johnson & Wu, Nucleic Acids Res. 28:214-8, 2000を参照されたい)。Chothia定義は、Kabat定義と類似であるが、Chothia定義は、ある特定の構造的ループ領域の位置を考慮に入れる(例えば、Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-17, 1986;Chothia et al., Nature 342:877-83, 1989を参照されたい)。AbM定義は、抗体構造をモデル化する、Oxford Molecular Groupが作成したコンピュータプログラムの統合スイートを使用する(例えば、Martin et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:9268-9272, 1989;"AbMTM, A Computer Program for Modeling Variable Regions of Antibodies," Oxford, UK; Oxford Molecular, Ltd.を参照されたい)。AbM定義は、Samudrala et al., "Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined Hierarchical Approach," in PROTEINS, Structure, Function and Genetics Suppl. 3:194-198, 1999によって記載されるものなど、知識データベースとab initio法との組合せを使用して、一次配列から抗体の三次構造をモデル化する。IMGTデータベース定義は、可変領域/構造に番号付けするために、フレームワーク(FR)および相補性決定領域(CDR)の定義、X線回折研究からの構造データ、および超可変ループの特徴付けを考慮に入れ、それらを組み合わせる(LeFranc, Immunol. Today 18:509, 1997を参照されたい)。接触定義は、入手可能な複合体結晶構造の分析に基づく(例えば、MacCallum et al., J. Mol. Biol. 5:732-45, 1996を参照されたい)。VLドメインのCDR L1、L2およびL3はそれぞれ、本明細書でCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3とも呼ばれる;VHドメインのCDR H1、H2およびH3はそれぞれ、本明細書でCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3とも呼ばれる。
【0137】
「フレームワーク領域」は、超可変領域残基以外(例えば、CDRのKabat定義、Chothia定義、AbM定義、IMGTデータベース定義または接触定義によって定義されるCDRの残基以外)の可変ドメイン残基である。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。したがって、「ヒトフレームワーク領域」は、天然に存在するヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域と実質的に(約85%またはそれよりも高く、通常は、90~95%またはそれよりも高く)同一なフレームワーク領域である。構成要素である軽鎖および重鎖の組み合わされたフレームワーク領域である抗体のフレームワーク領域は、CDRを位置決めし、アラインさせるように機能する。
【0138】
「免疫グロブリンヒンジ」は、CH1ドメインとCH2ドメインとを接続させる、免疫グロブリン重鎖の部分である。ヒトγ1のヒンジ領域は、Eu残基216~230におよそ対応する。
【0139】
用語「Fc断片」、「Fc領域」または「Fcドメイン」は、本明細書で使用される場合、同義語であり、細胞上の抗体受容体および補体のC1q成分への結合を担う免疫グロブリンの部分を指す(天然に存在する配列と比較して、かかる結合活性を除去するいずれのアミノ酸変化も存在しない場合)。Fcは、「結晶性断片(fragment crystalline)」を示し、タンパク質結晶を容易に形成する抗体の断片である。タンパク質分解性消化によって元々記載された明確に異なるタンパク質断片が、免疫グロブリンタンパク質の全般的な一般構造を定義し得る。文献中で元々定義されたように、Fc断片は、ジスルフィド連結された重鎖ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインからなる。本明細書で使用される場合、この用語は、CH3、CH2、および第2のかかる鎖とともにジスルフィド連結されたダイマーを形成するのに十分なヒンジの少なくとも一部分からなる単鎖もまた指す。本明細書で使用される場合、Fc領域という用語は、天然に存在するヒンジ-CH2-CH3配列のバリアントをさらに含み、これらのバリアントは、CH3ドメインのダイマー化を少なくとも介してダイマーを形成することが可能であり、改善された半減期(Fc領域が存在しない場合の融合パートナーと比較して)をin vivoで融合パートナーに付与するのに少なくとも十分な、新生児Fc受容体(FcRn)への結合を保持しつつ、増加または減少したFc受容体結合または補体結合活性を有するようなバリアントを含むことが可能である。略記された用語「Fc」は、その一般的なアミノ末端からカルボキシル末端への構造(例えば、「DNase1-L1-Fc-L2-PON1」)によって融合ポリペプチドに言及する場合に「Fc領域」を示すためにも、本明細書で使用され得る。
【0140】
本明細書で使用される場合、用語「単鎖抗体」は、単一のポリペプチド鎖内に含有される抗原結合部位(例えば、単一のポリペプチド鎖内の重鎖および軽鎖の両方由来の可変領域)を有する抗体を指す。用語「単鎖Fv」は、重鎖および軽鎖の両方由来の可変領域を含むが、定常領域を欠如する、単鎖抗体を指す。一般に、単鎖Fvは、抗原結合を可能にする所望の構造をそれが形成するのを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。単鎖抗体は、例えば、Pluckthunによって、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113 (Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, 1994), pp. 269-315中で詳細に議論されている(国際PCT公開番号WO88/01649;米国特許第4,946,778号および同第5,260,203号;Bird et al., Science 242:423-426, 1988もまた参照されたい)。単鎖抗体はまた、二重特異的および/またはヒト化であり得る。
【0141】
用語「代替的足場タンパク質」は、1つまたは複数の領域が、標的分子(例えば、炎症性サイトカイン、例えば、TNFαまたはTGF-β)に特異的に結合する1つまたは複数の結合ドメインを産生するために多様化され得る、非抗体タンパク質を指す。一部の実施形態では、結合ドメインは、抗体の特異性および親和性と類似の特異性および親和性で、標的分子に結合する。例示的な代替的足場には、フィブロネクチン(例えば、Adnectin(商標))、β-サンドイッチ(例えば、iMab)、リポカリン(例えば、Anticalin(登録商標))、EETI-II/AGRP、BPTI/LACI-D1/ITI-D2(例えば、Kunitzドメイン)、プロテインA(例えば、Affibody(登録商標))、アンキリンリピート(例えば、DARPin)、ガンマ-B-クリスタリン/ユビキチン(例えば、Affilin)、CTLD3(例えば、Tetranectin)、FynomerおよびAvimerに由来するものが含まれる。代替的足場に関する追加の情報は、Binz et al., Nat. Biotechnol. 23:1257-1268, 2005;Skerra, Current Opin. in Biotech. 18:295-304, 2007;およびSilacci et al., J. Biol. Chem. 289:14392-14398, 2014に提供される。
【0142】
用語「抗TNFα」または「抗TGFβ」は、本明細書で使用される場合、その一般的なアミノ末端からカルボキシル末端への構造(例えば、「抗TNFα-L1-Fc-L2-PON1」または「抗TGFβ-L1-Fc-L2-PON1」)によって融合ポリペプチドに言及する場合、それぞれTNFαまたはTGF-βに特異的に結合しそれを中和するポリペプチド(例えば、単鎖抗体)を指す。
【0143】
「ダイマー化ドメイン」は、本明細書で使用される場合、2つのポリペプチドが、生理的条件下で会合してダイマーを形成するような、第2のポリペプチドに対する親和性を有するポリペプチドを指す。典型的には、第2のポリペプチドは、同じポリペプチドであるが、一部の変形形態では、第2のポリペプチドは、異なる。これらのポリペプチドは、共有結合的および/または非共有結合的会合(複数可)を介して互いに相互作用し得る。ダイマー化ドメインの例には、Fc領域;ヒンジ領域;CH3ドメイン;CH4ドメイン;CH1またはCLドメイン;ロイシンジッパードメイン(例えば、jun/fosロイシンジッパードメイン、例えば、Kostelney et al., J. Immunol., 148:1547-1553, 1992を参照されたい;または酵母GCN4ロイシンジッパードメイン);イソロイシンジッパードメイン;ダイマー化する細胞表面受容体(例えば、インターロイキン-8受容体(IL-8R);またはインテグリンヘテロダイマー、例えば、LFA-1もしくはGPIIIb/IIIa)のダイマー化領域;分泌型のダイマー化するリガンド(例えば、神経増殖因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、インターロイキン-8(IL-8)、血管内皮増殖因子(VEGF)または脳由来神経栄養因子(BDNF);例えば、Arakawa et al., J. Biol. Chem. 269:27833-27839, 1994およびRadziejewski et al., Biochem. 32:1350, 1993を参照されたい)のダイマー化領域;ならびにジスルフィド結合(複数可)が、そのポリペプチドと、少なくとも1つのシステイン残基を含む第2のポリペプチドとの間で形成し得るように、少なくとも1つのシステイン残基(例えば、約1個、2個、または3個~約10個のシステイン残基)を含むポリペプチド(本明細書で以下「合成ヒンジ」)が含まれる。本発明に従う好ましいダイマー化ドメインは、Fc領域である。
【0144】
用語「ダイマー」または「ダイマー性タンパク質」は、本明細書で使用される場合、ダイマー化ドメインを介して一緒に連結された、本明細書で開示される2つの(「第1の」および「第2の」)融合ポリペプチドのマルチマーを指す。文脈が明らかに他を示さない限り、「ダイマー」または「ダイマー性タンパク質」は、第1または第2の融合ポリペプチド中に追加のダイマー化ドメインを含めることによって創出され得るより高次のマルチマーの観点からの、ダイマー化した第1および第2の融合ポリペプチドへの言及を含む(例えば、免疫グロブリン軽鎖を含む第1の融合ポリペプチドおよび免疫グロブリン重鎖を含む第2の融合ポリペプチドは、CH1ドメインとCLドメインとの間の相互作用を介してヘテロダイマー化することができ、2つのかかるヘテロダイマーは、免疫グロブリン重鎖のFc領域を介してさらにダイマー化し得、それによって、テトラマーを形成する)。
【0145】
用語「新生児Fc受容体(FcRn)に特異的に結合するドメイン」または「FcRn結合ドメイン」は、本明細書で使用される場合、(i)pH5.8において高い親和性で、典型的には、106M-1またはそれよりも高い(例えば、107M-1もしくはそれよりも高い、108M-1もしくはそれよりも高い、または109M-1もしくはそれよりも高い)結合親和性(Ka)でFcRnに結合し、かつ(ii)生理的pH(例えば、pH7.4)においてFcRnに対する親和性を有さない、ポリペプチドを意味する。FcRnに対するポリペプチドの結合親和性は、例えば、Scatchard分析(Scatchard, Ann. NY Acad. Sci. 51:660, 1949)によって、当業者が容易に決定することができる。典型的には、FcRn結合ドメインは、FcRnに関連するポリペプチドと顕著には交差反応しない。ポリペプチドは、例えば、分子結合アッセイ、例えば、マルチウェルプレートアッセイ(例えば、ELISA)、フィルターアッセイまたは表面プラズモン共鳴アッセイなどを使用して、FcRnを検出するが、現在公知のFcRn関連ポリペプチドは検出しない場合、FcRnに関連するポリペプチドと顕著には交差反応しない。公知の関連するポリペプチドの例には、主要組織適合複合体(MHC)クラスIタンパク質ファミリーの公知のメンバーが含まれる。FcRn結合ドメインは、ダイマー化ドメインを相互に除外しない、即ち、ダイマー化ドメインは、FcRn結合ドメインでもあり得る。ダイマー化ドメインでもあるFcRn結合ドメインの例には、FcRn結合活性を保持するFc領域が含まれる。
【0146】
本開示の融合ポリペプチドは、式、例えば、「DNase1-L1-Fc」、「DNase1L3-L1-Fc」、「DNase1-L1-Fc-L2-PON1」、「DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1」、「RNase1-L1-Fc-L2-PON1」、「SOD1-L1-Fc-L2-PON1」、「抗TNFα-L1-Fc-L2-PON1」または「抗TGFβ-L1-Fc-L2-PON1」などによって本明細書で言及され得る。各かかる場合において、文脈が明確に他を示さない限り、融合ポリペプチドの特定のセグメントに言及する用語(例えば、「DNase1」、「DNase1L3」、「PON1」、「RNase1」、「SOD1」、「L1」または「L2」(それぞれ、第1または第2のポリペプチドリンカーの代わり)、「Fc」(「Fc領域」の代わり)など)は、本明細書でかかる用語に帰せられる意味を有すると理解され、本明細書に記載される種々の実施形態を含む。
【0147】
用語「NETosisによって特徴付けられる疾患または障害」は、本明細書で使用される場合、NETosis - 好中球細胞外トラップ(NETs)と呼ばれる、細胞質タンパク質および顆粒タンパク質と結合したDNAを、活性化された好中球が噴出するプロセス - が、臨床病理学の少なくともいくらかの役割を果たす、疾患または障害を意味する。
【0148】
用語「有効量」は、本明細書に記載されるような、対象への可溶性融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の投与による疾患の処置に関して、疾患の発生を阻害するのに、または疾患の1つもしくは複数の症状を軽快させるのに十分な、かかる分子の量を指す。例えば、本明細書に記載されるような、対象への融合タンパク質の投与による炎症性肺疾患の処置に具体的に関して、用語「有効量」は、炎症性肺疾患の発生を阻害するように、または炎症性肺疾患の1つもしくは複数の症状を軽快させるように、対象において炎症応答をモジュレートするのに十分な、かかる分子の量を指す。薬剤の有効量は、本発明の方法に従って、「有効なレジメン」で投与される。用語「有効なレジメン」は、疾患の処置または予防を達成するために適切な、投与されている薬剤の量と投薬頻度との組合せを指す。
【0149】
用語「患者」または「対象」には、本明細書に記載されるように疾患または障害を処置することに関して、哺乳動物、例えば、ヒトおよび他の霊長類などが含まれる。この用語には、家畜化された動物、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌおよびネコなどもまた含まれる。
【0150】
用語「併用療法」は、示された治療効果を達成するための少なくとも2つの明確に異なる療法の提供が関与する治療レジメンを指す。例えば、併用療法には、2つまたはそれよりも多くの化学的に明確に異なる活性成分または薬剤、例えば、本発明に従う可溶性PON1融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質、および別の薬剤、例えば、別の抗炎症剤または免疫調節剤などの投与が関与し得る。あるいは、併用療法には、単独での、または別の薬剤と併せた、本発明に従う可溶性PON1融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の投与、ならびに別の療法(例えば、放射線療法)の送達が関与し得る。併用療法を構成する明確に異なる療法は、例えば、同時の、重複する、または順次の投薬レジメンとして、送達され得る。2つまたはそれよりも多くの化学的に明確に異なる薬剤の投与に関して、これらの活性成分は、同じ組成物の一部として、または異なる組成物として投与され得ることが理解される。別々の組成物として投与される場合、異なる活性成分を含む組成物は、全て、特定の文脈が要求する場合、および担当医によって決定されるように、同じまたは異なる時点において、同じまたは異なる経路によって、同じまたは異なる投薬レジメンを使用して、投与され得る。
【0151】
用語「標的化療法」は、がんを処置することに関して、典型的には、正常細胞に対する害が少ない、特定の型のがん細胞を同定しそれを攻撃する治療剤を使用する処置の型を指す。一部の実施形態では、標的化療法は、がん細胞の成長および広がりに関与する酵素または他の分子の作用を遮断する。他の実施形態では、標的化療法は、免疫系ががん細胞を攻撃することを助ける、または毒性物質をがん細胞に直接送達する。ある特定の変形形態では、標的化療法は、小分子薬物またはモノクローナル抗体を治療剤として使用する。
【0152】
語句「加齢から保護する」は、本明細書で使用される場合、例えば、受容されたバイオマーカーによって示される、全身性の炎症または疾患のリスクにおける加齢に伴う変化が含まれる、加齢の広い局面のいずれかの阻害または軽減を指す。加齢からの保護は、疾患が対象中に存在する場合の、加齢に伴う疾患、例えば、慢性炎症性、自己免疫、神経変性、心血管または線維性疾患などの処置もまた含み得る。
【0153】
2つのアミノ酸配列は、それら2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基が、最大限の対応を求めてアラインされた場合に同じである場合、「100%のアミノ酸配列同一性」を有する。配列比較は、標準的なソフトウェアプログラム、例えば、DNASTAR(Madison、Wisconsin)によって作成されたLASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート中に含まれるものを使用して、実施され得る。最適なアラインメントを決定することによってアミノ酸配列を比較するための他の方法は、当業者に周知である(例えば、Peruski and Peruski, The Internet and the New Biology: Tools for Genomic and Molecular Research (ASM Press, Inc. 1997);Wu et al. (eds.), "Information Superhighway and Computer Databases of Nucleic Acids and Proteins," in Methods in Gene Biotechnology 123-151 (CRC Press, Inc. 1997);Bishop (ed.), Guide to Human Genome Computing (2nd ed., Academic Press, Inc. 1998)を参照されたい)。2つのアミノ酸配列は、それら2つの配列が、互いに対して少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有する場合、「実質的な配列同一性」を有するとみなされる。
【0154】
パーセント配列同一性は、従来の方法によって決定される(例えば、Altschul et al., Bull. Math. Bio. 48:603, 1986およびHenikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915, 1992を参照されたい)。例えば、2つのアミノ酸配列は、10のギャップ開始ペナルティ、1のギャップ伸長ペナルティ、およびHenikoff and Henikoff, 上記の「BLOSUM62」スコアリングマトリックスを使用して、アラインメントスコアを最適化するようにアラインされ得る。次いで、パーセント同一性が、以下のように計算される:([同一なマッチの総数]/[長いほうの配列の長さ+2つの配列をアラインするために長いほうの配列中に導入されたギャップの数])(100)。
【0155】
当業者は、2つのアミノ酸配列をアラインするために利用可能な多くの確立されたアルゴリズムが存在することを理解する。Pearson and Lipmanの「FASTA」類似性検索アルゴリズムは、本明細書で開示されるアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列とによって共有される同一性のレベルを試験するための、適切なタンパク質アラインメント法である。FASTAアルゴリズムは、Pearson and Lipman, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 85:2444, 1988およびPearson, Meth. Enzymol. 183:63, 1990によって記載されている。簡潔に述べると、FastAは、保存的なアミノ酸置換も挿入も欠失も考慮せずに、クエリー配列(例えば、配列番号6の残基16~355または26~355)と、最も高い密度の同一性(ktup変数が1である場合)または同一性の対(ktup=2の場合)のいずれかを有する試験配列とによって共有される領域を同定することによって、配列類似性を最初に特徴付ける。次いで、最も高い密度の同一性を有する10個の領域が、アミノ酸置換マトリックスを使用して、全ての対になったアミノ酸の類似性を比較することによって再度スコア付けされ、これらの領域の末端は、最も高いスコアに寄与する残基のみを含むように「トリミング」される。「カットオフ」値(配列の長さおよびktup値に基づいて、所定の式によって計算される)よりも大きいスコアを有するいくつかの領域が存在する場合、それらの領域が、ギャップを伴っておおよそのアラインメントを形成するように接続され得るかどうかを決定するために、トリミングされた初期領域が試験される。最後に、2つのアミノ酸配列の、スコアが最も高い領域が、アミノ酸の挿入および欠失を可能にする、Needleman-Wunsch-Sellersアルゴリズム(Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:444, 1970;Sellers, SIAM J. Appl. Math. 26:787, 1974)の改変版を使用してアラインされる。FASTA分析のための例となるパラメーターは、以下である:ktup=1、ギャップ開始ペナルティ=10、ギャップ伸長ペナルティ=1および置換マトリックス=blosum62。これらのパラメーターは、Pearson, Meth. Enzymol. 183:63, 1990のAppendix 2で説明されるように、スコアリングマトリックスファイル(「SMATRIX」)を改変することによって、FASTAプログラム中に導入され得る。
【0156】
用語「~に対応する」は、対象配列内の位置を記載するために参照配列中のアミノ酸残基の位置に適用される場合、参照配列と対象配列とが最適にアラインされる場合の、対象配列中の対応する位置を意味する。
【0157】
かかる値が、「約」Xまたは「およそ」Xと表される場合、Xの述べられた値は、±10%まで正確であると理解される。
【0158】
本発明の態様または実施形態が、マーカッシュ群または選択肢の他の群分けの観点から記載される場合、本発明は、全体として列挙された群全体だけでなく、その群の各メンバーを個々に、および主要な群の全ての可能な下位群もまた包含する。本発明はまた、群メンバーのいずれかのうち1つまたは複数の明確な排除を、実施形態として想定する。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【
図1】
図1は、DNase1-FcおよびDNase1-Fc-PON1融合タンパク質を発現する一過性トランスフェクトHEK293細胞からの培養上清(無血清)のウェスタンブロットを示す。トランスフェクションおよびウェスタンブロット解析は、下記の実施例1で説明するように行った。左から右へ:レーン1 - LICOR Chameleon(商標)分子量マーカー;レーン2、レーン3、レーン4 - hDNaseTM-(g4s)4-Fc-PON1-Q192Kの3つの異なる個々のクローン(#1、#2、#4)からのトランスフェクション上清;レーン5 - THER4-RNase(対照);レーン6 - LICOR Chameleon MWマーカー;レーン7 - hDNaseTM-(g4s)4-Fc #4;レーン8 - hDNaseTM-(g4s)6-Fc #2;レーン9 - THER4(対照);レーン10 - モックトランスフェクション。
【0160】
【
図2】
図2は、CHOクローン使用済み培養上清から精製されたDNase1-FcおよびDNase1-Fc-PON1融合タンパク質の還元SDS-PAGE解析を示す。安定したCHO細胞生成、融合タンパク質のプロテインA精製、およびSDS-PAGEは、下記の実施例1で説明するように行った。左から右へ:レーン1 - THER4PON1-K(対照);レーン2 - hDNaseTM-(g4s)4-Fc-PON1-K;レーン3 - hDNaseTM-(g4s)4-Fc;レーン4 - hDNaseTM-(g4s)6-Fc;レーン5 - LI-COR Chameleon(登録商標)MWマーカー;レーン6 - BioRad Precision Plus Kaleidoscope MWマーカー。
【0161】
【
図3-1】
図3Aおよび3Bは、2つの異なる基質濃度、220μMまたは66μMサケ精子DNA、でのDNase1融合タンパク質のヌクレアーゼ活性を評価する改良型SYTOX(商標)Green蛍光アッセイからの生データを示す(下記の実施例2を参照されたい)。
【0162】
【
図4-1】
図4Aおよび4Bは、改良型SYTOX(商標)Green蛍光アッセイを使用する2つの異なるDNase活性実験からのデータのミカエリス-メンテンプロットを示す(下記の実施例2を参照されたい)。
【0163】
【
図5-1】
図5Aおよび5Bは、組換えヒトDNase1およびDNase1-Fc融合タンパク質のDNase活性の相対アクチン誘導性阻害を比較するSYTOX(商標)Green蛍光アッセイからの結果を示す(下記の実施例2を参照されたい)。
【0164】
【
図6-1】
図6Aおよび6Bは、DNase1-Fc-PON1融合タンパク質のアリールエステラーゼ活性を測定する代表実験についてのミカエリス-メンテンおよびラインウィーバー-バークプロットをそれぞれ示す(下記の実施例3を参照されたい)。
【0165】
【
図7】
図7は、DNase1-Fc-PON1融合タンパク質および有機ホスファターゼ陽性対照酵素の有機ホスファターゼ活性を測定する蛍光定量アッセイの結果を示す(下記の実施例3を参照されたい)。
【0166】
【
図8】
図8および9は、HEK293トランスフェクション上清から免疫沈降したPON1融合タンパク質のウェスタンブロット解析を示す。トランスフェクション、プロテインA免疫沈降、およびウェスタンブロット解析は、下記の実施例12で説明するように行った。
【
図9】
図8および9は、HEK293トランスフェクション上清から免疫沈降したPON1融合タンパク質のウェスタンブロット解析を示す。トランスフェクション、プロテインA免疫沈降、およびウェスタンブロット解析は、下記の実施例12で説明するように行った。
【0167】
【
図10】
図10は、HEK293トランスフェクション上清から免疫沈降したPON1融合タンパク質の還元SDS-PAGE解析を示す。トランスフェクション、プロテインA免疫沈降、およびSDS-PAGEは、下記の実施例12で説明するように行った。
【0168】
【
図11】
図11~13は、HEK293培養上清から直接アッセイしたPON1融合タンパク質のアリールエステラーゼ活性(
図11)、有機ホスファターゼ活性(
図12)およびラクトナーゼ活性(
図13)を示す(下記の実施例13を参照されたい)。
【
図12】
図11~13は、HEK293培養上清から直接アッセイしたPON1融合タンパク質のアリールエステラーゼ活性(
図11)、有機ホスファターゼ活性(
図12)およびラクトナーゼ活性(
図13)を示す(下記の実施例13を参照されたい)。
【0169】
【
図13】
図11~13は、HEK293培養上清から直接アッセイしたPON1融合タンパク質のアリールエステラーゼ活性(
図11)、有機ホスファターゼ活性(
図12)およびラクトナーゼ活性(
図13)を示す(下記の実施例13を参照されたい)。
【0170】
【
図14】
図14は、HEK293トランスフェクション上清中に存在するCD40-Fc-PON1融合タンパク質への固定化CD40リガンドの高親和性結合を示す(下記の実施例14を参照されたい)。
【0171】
【
図15】
図15は、HEK293トランスフェクション上清中に存在する抗TNF-α scFv-Fc-PON1融合タンパク質への固定化TNFαの高親和性結合を示す(下記の実施例14を参照されたい)。
【発明を実施するための形態】
【0172】
発明の記載
I.概観
本発明は、パラオキソナーゼ融合ポリペプチドに関する組成物および方法を提供する。ある特定の態様では、融合ポリペプチドは、生物学的に活性なパラオキソナーゼに対してアミノ末端側に連結された第1の生物学的に活性なポリペプチドを含み、第1の生物学的に活性なポリペプチドは、DNase、RNase、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、細胞傷害性Tリンパ球関連分子-4(CTLA-4)細胞外ドメイン、CD40細胞外ドメイン、および炎症性サイトカインに特異的に結合しそれを中和するポリペプチド(例えば、腫瘍壊死因子α(TNFα)またはトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)に特異的に結合しそれを中和するポリペプチド)から選択される。一部の態様では、融合ポリペプチドは、第1の生物学的に活性なポリペプチドに対してカルボキシル末端側かつパラオキソナーゼに対してアミノ末端側に連結された第2の生物学的に活性なポリペプチドをさらに含む。第2の生物学的に活性なポリペプチドは、例えば、ダイマー化ドメインまたは新生児Fc受容体(FcRn)に特異的に結合するドメインであり得る。特に適切な第2の生物学的に活性なポリペプチドは、ダイマー化およびFcRn結合性免疫グロブリン重鎖定常領域、例えば、免疫グロブリンFc領域などである。
【0173】
他の態様では、融合ポリペプチドは、ダイマー化ドメインまたはFcRnに特異的に結合するドメイン(例えば、ダイマー化およびFcRn結合性免疫グロブリン重鎖定常領域、例えば、免疫グロブリンFc領域など)に対してカルボキシル末端側に連結された生物学的に活性なパラオキソナーゼを含み、融合ポリペプチドは、ダイマー化ドメインまたはFcRn結合ドメインに対してアミノ末端側には生物学的に活性なポリペプチドを含まない。
【0174】
他の態様では、融合ポリペプチドは、ダイマー化ドメインまたはFcRnに特異的に結合するドメイン(例えば、ダイマー化およびFcRn結合性免疫グロブリン重鎖定常領域、例えば、免疫グロブリンFc領域など)に対してアミノ末端側に連結された生物学的に活性なパラオキソナーゼを含む。
【0175】
本開示の融合ポリペプチド中の好ましいパラオキソナーゼは、パラオキソナーゼ1(PON1)ポリペプチドである。特に適切なPON1ポリペプチドは、PON1の天然に存在する非切断型リーダー配列(ヒトPON1(配列番号4)の残基1~15に一般に対応する)に対応するアミノ末端リーダー配列を欠如する。PON1と血清中の高密度リポタンパク質(HDL)との会合は、リン脂質への疎水性非切断型リーダーの直接的結合に主に依存する(Sorenson et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 19:2214-2225, 1999を参照されたい)。このリーダー配列の除去は、HDL結合からPON1を除去し、本開示に従う治療利益のための他の部位へのPON1の再標的化を容易にする。例えば、本明細書に記載されるDNaseまたはRNaseを含む融合ポリペプチドに関して、DNAまたはRNAへのPON1の再標的化は、炎症性NETsおよび細胞死の部位へと分子を指向させる。これらの部位においてDNAまたはRNAを標的化することに加えて、本明細書に記載されるDNase-PON1またはRNase-PON1融合分子は、別の重要な炎症性NET標的であるミエロペルオキシダーゼへとPON1酵素を指向させることを助け得る。また、本明細書に記載されるスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)を含む融合ポリペプチドは、PON1が、スーパーオキシドに対するSOD1の作用によって産生された過酸化水素(H2O2)を消化し、それによって、例えば、肺治療のための改善された抗酸化剤を提供し得る分子を提供する。さらに、本発明に従う他の生物学的に活性なポリペプチド(例えば、CTLA-4細胞外ドメイン、CD40細胞外ドメイン、または炎症性サイトカインに特異的に結合しそれを中和するポリペプチド)を含む融合分子は、本明細書に記載されるような治療利益のために、炎症促進性および/または免疫細胞活性化の他の部位へとPON1を標的化することができる。
【0176】
本発明のパラオキソナーゼ融合分子は、例えば、自己免疫疾患または炎症性疾患の処置が含まれる、その抗酸化性、抗炎症性、アテローム保護的(atheroprotective)および/または神経保護的特性を介した種々の疾患または障害の処置のために使用され得る。例えば、研究は、自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)の処置のためのパラオキソナーゼの使用を支持している。全身性エリテマトーデス(SLE)を有する多くの患者における自己抗体力価は、PON1の活性の喪失と相関し(Batukla et al., Ann. NY Acad. Sci. 1108:137-146, 2007を参照されたい)、SLEDAIによって評価されるSLE疾患活性およびSLICC/ACR損傷インデックスによって評価されるSLE疾患関連臓器損傷は、PON1活性と負に相関する(Ahmed et al., EXCLI Journal 12:719-732, 2013を参照されたい)。他の研究は、炎症性疾患、例えば、炎症性肺疾患の処置のためのパラオキソナーゼの使用を支持している。研究は、例えば、PON1が、肺炎症からの保護において重要であることを強く示唆しており、低いPON1活性が、肺疾患、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症(IPF)またはサルコイドーシス)などに関連することをさらに示している(例えば、Sahiner et al., WAO Journal 4:151-158, 2011;Emin et al., Allergol. Immunopathol. (Madr) 43:346-352, 2014;Sarioglu et al., Iran J. Asthma Immunol. 14:60-66, 2015;Tolgyesi et al., Internat. Immunol. 21:967-975, 2009;Chen et al., J. Cell Biochem. 119:793-805, 2018;Rumora et al., J. COPD 11:539-545, 2014;Rajkovic et al., J. Clin. Path. 71:963-970, 2018;Ivanisevic et al., Eur. J. Clin. Invest. 46:418-424, 2016;Uzun et al., Curr. Med. Res. Opin. 24:1651-1657, 2008;Okur et al., Sleep Breath. 17:365-371, 2013;Golmanesh et al., Immunopharmacol. And Immunotoxicol. 35:419-425, 2013を参照されたい)。別の研究は、低いPON1活性が、クローン病の重症度と相関することを示した(Sczceklik et al., Molecules 23:2603, 2018)。さらに、組換えPON1治療は、有機リン中毒および大腸炎の動物モデルにおいて有効性を示している(例えば、Valiyaveettil et al., Biochem. Pharmacol. 81:800-809, 2011;Valiyaveettil et al., Toxicol. Letters 202:203-208, 2011;Bajaj et al., Appl. Biochem. Biotechnol. 180:165, 2016;Stevens et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105:12780-12784, 2008;Yamashita et al., J. Immunol. 191:949-960, 2013を参照されたい)。
【0177】
本明細書に記載されるパラオキソナーゼ融合分子は、例えば、神経学的疾患の処置のためにも使用され得る。例えば、PON1は、その抗酸化特性に起因して、脳において保護的である。PON1の神経保護的役割は、PON1活性がアルツハイマー病および他の認知症を有する患者において減少することを示す研究によって支持される(例えば、Menini et al., Redox Rep. 19:49-58, 2014を参照されたい)。さらに、PON1を細胞および組織中に形質導入するためにタンパク質形質導入ドメインを含有するPON1融合物を使用する研究は、PON1形質導入が、ミクログリア細胞をin vitroで酸化ストレス誘導性の炎症応答から保護し、パーキンソン病モデルにおいてドパミン作動性ニューロン細胞死に対して保護することを示した(Kim et al., Biomaterials 64:45-56, 2015を参照されたい)。
【0178】
DNaseをさらに含む二重特異的融合物は、例えば、NETosisによって特徴付けられる疾患または障害の処置におけるものが含まれる、PON媒介性の治療が適用可能である疾患の処置に、追加の治療利益を提供する。それらだけで、または炎症促進性応答を増加させることによって組織損傷を引き起こすNETs(Mutua and Gershwin, Clin. Rev. Allergy Immunol., 2020を参照されたい)は、種々の重篤な疾患および状態に関与している。例えば、NETsは、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)(例えば、ループス腎炎を伴うSLE)、関節リウマチおよび乾癬が含まれる自己免疫疾患において見られる炎症の増強において役割を果たし得、自己炎症性疾患、例えば、炎症性腸疾患(IBD)などにも関連する(同上を参照されたい)。NETsは、敗血症、代謝疾患(例えば、2型糖尿病および肥満)、神経学的疾患(例えば、アルツハイマー病、多発性硬化症、髄膜炎、脳性マラリアおよび虚血性脳卒中)、感染性疾患、心血管疾患および血栓症(thromobosis)、腫瘍の進行および転移、肝臓疾患(例えば、アルコール関連肝臓疾患(ALD)、門脈圧亢進症、非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)、例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、ならびに肝臓移植後の合併症)、ならびに例えば、嚢胞性線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)およびCOVID-19関連急性呼吸促迫症候群(ARDS)が含まれる種々の炎症性肺疾患においても役割を果たす(例えば、同上;Brinkmann, J. Innate Immun. 10:422-431, 2018;Liu et al., Chinese Med. Journal 130:730-736, 2017;Twaddell et al., CHEST 156:774-782, 2019;Uddin et al., Front. Immunol. 10:47, 2019;Middleton et al., Blood 136:1169, 2020;Zuo et al., JCI Insight 5:e138999, 2020;Barnes et al., J. Exp. Med. 217:e20200652, 2020;Hilscher and Shah, Semin. Liver Dis. 40:171-179, 2020を参照されたい)。NETosisによって特徴付けられる疾患または障害の処置のためのDNaseの使用は、例えば、嚢胞性線維症の処置のための組換え野生型DNase(Pulmozyme(登録商標))の使用、COVID-19患者におけるPulmozymeの進行中の臨床試験(NCT04359654)、ならびに例えば、急性喘息、シリカ誘導性肺炎症、急性肺傷害、がん、大腸炎、虚血再灌流、敗血症および血栓症のモデルが含まれるいくつかの動物モデル研究によって、さらに支持される(例えば、da Cunha et al., Exp. Lung Res. 42:66, 2016;Benmerzoug et al., Nat. Comm. 9:5226, 2018;Caudrillier et al., J. Clin. Invest. 122:2661, 2012;Cools-Lartigue et al., J. Clin. Invest. 123:3446, 2013;Park et al., Sci. Translational Med. 8:361ra138, 2016;Trejo-Becirril et al., Integrative Cancer Therapies 15:NP35-NP43, 2016;Thalin et al., PloS ONE 13:e0191231, 2018;Babicova et al., Folia Biolica (Praha) 64:10, 2018;Li et al., J. Crohns Colitis 2020, 14:240-253, 2020;Albadawi et al., J. Vasc. Surg. 64:484, 2016;Peer et al., Am. J. Nephrol. 43:195, 2016;Mai et al., Shock 44:166, 2015;Brill et al., J. Thrombosis Haemostasis 10:136, 2012;Manda-Handzlik and Demkow, Cells 8:1477, 2019;Delgado-Rizo et al., Front. Immunol. 8:81, 2017を参照されたい)。
【0179】
本明細書に記載されるDNaseをさらに含む二重特異的融合物は、抗リン脂質抗体症候群(APLS)の処置においても有用である。抗リン脂質抗体症候群は、凝固亢進状態を引き起こす、リン脂質に対する抗体によって特徴付けられる自己免疫疾患である。血栓症は、動脈および静脈の両方において生じ、流産および死産が含まれる妊娠合併症を引き起こす。抗リン脂質抗体症候群は、原発性(任意の他の関連する疾患の非存在下で生じる)または二次性(別の自己免疫疾患、例えば、SLEなどとともに生じる)であり得る。稀な症例では、APLSは、全身性の血栓症に起因して迅速な臓器不全をもたらす;これは、劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPSまたはAsherson症候群)と呼ばれ、死亡の高いリスクに関連する。COVID-19に関連する急性呼吸促迫を有する患者は、in vitroでおよびマウス血栓症モデルにおいて血栓症を促進する抗リン脂質抗体を有する(Zuo et al., JCI Insight 5:e138999, 2020;Zuo et al., Sci. Trans. Med. 12:eabd3876, 2020)。抗リン脂質抗体は、好中球NET形成を刺激して、血栓形成のための足場を提供する。本明細書に記載されるDNase融合物によるNETsの消化は、血栓形成を予防することができ、既存の血餅を溶解させて、血流を回復させることを助けることができる。本発明のDNase融合分子はまた、例えば、tPA、ウロキナーゼおよびストレプトキナーゼが含まれる血栓溶解薬と一緒に使用され得る。
【0180】
例えば、DNaseをさらに含む実施形態が含まれる、本明細書に記載されるパラオキソナーゼ融合分子は、炎症性皮膚疾患の処置のためにも使用され得る。多くの研究が、炎症性皮膚疾患の病理発生における反応性酸素種および過酸化脂質の関与を報告している(例えば、Simonetti et al., Antioxidants 10:697, 2021を参照されたい)。例えば、有意に低いレベルのパラオキソナーゼ1(PON1)ならびに有意に高いレベルのミエロペルオキシダーゼ(MPO)および過酸化脂質が、アトピー性皮膚炎において見出されており(同上を参照されたい)、増加したMPOおよび減少したPON1活性は、乾癬小児においても記載されている(Bacchetti et al., Archives of Dermatological Research 312:33-39を参照されたい)。乾癬およびアトピー性皮膚炎では、炎症の間の好中球活性化は、MPOが結合したNETsの噴出をもたらし、脂質の酸化を引き起こし、過酸化脂質を消化することによって脂質を酸化から通常は保護するPON1酵素を損傷させる。DNase1によるNETsの消化は、結合したMPOを放出させ、そのクリアランスを可能にし、酸化の主要駆動因子を除去し、PON1による治療は、酸化的損傷からの保護を回復させ、患者における酸化還元電位のバランスを取り戻す。したがって、PON1およびDNase治療は、組合せとして特に有効である。
【0181】
DNaseをさらに含む実施形態が含まれる、本明細書に記載されるパラオキソナーゼ融合分子は、加齢から保護するためにも使用され得る。酸化ストレスは、加齢の主要原因であることが公知である。特に、酸化された脂質は、マクロファージスカベンジャー受容体による取込みを介した炎症の促進、および血管内皮細胞に対する損傷に起因して、加齢に関する重要な標的である。脂質酸化と加齢との間の関連性に関する議論については、例えば、Moldogazieva et al. (Oxidative Medicine and Cellular Longevity, Volume 2019, Article ID 3085756)およびBarrera et al. (Antioxidants 7:102, 2018)を参照されたい。炎症および心機能に対する酸化された脂質の毒性効果を記載するHajri (Frontiers In Bioscience, Landmark 23:1822-1847, 2018)もまた参照されたい。PON1は、過酸化脂質の消化によって脂質を酸化から保護することが公知である。したがって、PON1酵素レベルの増加と加齢の減速との間には、直接的な関連性が存在する。さらに、PON1酵素活性は、心血管疾患、自己免疫疾患および肺疾患が含まれる複数の加齢に伴う疾患において欠損していることが公知であり、増加したPON1の臨床的必要性が存在することを示している。さらに、DNaseをさらに含む実施形態は、DNaseがNETsを消化する能力に起因して、加齢を減速させるために特に有用である。NETsは、好中球および他の細胞によって産生されるミエロペルオキシダーゼ(MPO)およびエラスターゼのための足場を提供するので、炎症および酸化ストレスの主要駆動因子である。DNaseによるNETsの消化は、炎症性酵素の放出およびクリアランスを可能にする。DNaseはまた、他のDNA検知経路(例えば、STING、TLR9)を介して、炎症性活性化を除外する。
【0182】
本明細書に記載されるRNaseをさらに含む二重特異的融合物は、例えば、NETsに関連する細胞外RNAが含まれる、死細胞および瀕死の細胞に由来する細胞外RNAを消化することによる抗炎症特性を有する。細胞外RNAは、例えば、TLR2アゴニストと相乗効果を示して、マクロファージ炎症応答を強化し、このRNAの消化は、TLR2を介した炎症を予防する(Noll et al., PloS ONE 12:e0190002, 2017を参照されたい)。
【0183】
RNase含有融合物は、例えば、自己免疫疾患、炎症性疾患(例えば、炎症性肺疾患)、2型糖尿病、感染性疾患、心血管疾患(例えば、冠状動脈疾患、脳卒中)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)およびがんが含まれる種々の疾患の処置のための追加の治療利益を提供する。例えば、いくつかの研究は、炎症性肺疾患の処置のためのRNaseの使用を支持している。1つの研究は、RNAセンサーTLR3が、ウイルス病原体の非存在下でのARDS様病理の発症において主要な役割を果たすことを示している(Murray et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med. 178:1227-1237, 2008を参照されたい)。酸素治療は、ARDSにおける主要な治療介入であるが、さらなる肺損傷、およびウイルス感染に対する感受性に寄与する。酸素治療は、培養ヒト上皮細胞における増加したTLR3発現および活性化のための主要な刺激であり、TLR3の非存在または遮断は、高酸素条件への曝露後に、マウスを、肺の傷害および炎症から保護した(Murray et al., 上記を参照されたい)。別の研究は、細胞外RNAによるTLR3活性化が、急性低酸素症に応答して生じること、およびマウスにおけるRnaseAによる治療が、急性低酸素症後の肺炎症を減弱させたことを示している(Biswas et al., Eur. J. Immunol. 45: 3158-3173, 2015を参照されたい)。
【0184】
他の研究は、自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)などの処置のためのRNaseの使用を支持している。研究は、例えば、SLE疾患病理発生における、RNA免疫複合体、およびTLR7が含まれるRNA受容体の役割、ならびにSLEのマウスモデルにおけるRNase過剰発現の保護効果を示している(例えば、Sun et al., J. Immunol. 190:2536-2543, 2013を参照されたい)。
【0185】
本明細書に記載されるRNase含有融合分子は、エキソソーム中に含有されるRNAを消化することができる。肺疾患におけるエキソソームの総説については、Hough et al., Allergy 72:534-544, 2017を参照されたい。RNase1は、その塩基性の電荷に起因して、細胞膜を介してサイトゾル中へと移行することができる(Chao et al., Biochem. 50:8374-8382, 2011;Haigas et al., J. Cell Sci. 116:313-324, 2003;Johnson et al., Biochem. 46:10308-10316, 2007を参照されたい)。細胞質性阻害剤が、非常に高い親和性でRNase1に結合し、無傷の細胞をRNase毒性から保護する。しかし、細胞外小胞中のRNAが含まれる細胞外RNAは、細胞質性阻害剤によっては保護されない(Mironova et al., Oncotarget 8: 78796-78810, 2017を参照されたい)。
【0186】
本明細書に記載されるRNaseを含む融合分子は、転写後遺伝子調節に関与する小さい細胞外非コードRNAであるmicroRNA(miRNA)をさらに標的化することができる。miRNA調節不全は、肺疾患、増殖性血管疾患、心障害、腎臓疾患、真性糖尿病、線維症およびがんが含まれる広い範囲の疾患と関連付けられている(Rajasekaran et al., Front. Pharmacol. 6:254, 2015;Thum et al., Nature 456:980-984, 2008;Kato et al., Clin. J. Am. Soc. Nephrol. 4:1255-1266, 2009;Lee and Dutta, Annu. Rev. Pathol. 4:199-227, 2009;Kumar et al., Protein Cell. 3:726-738, 2012;Noetel et al., Front. Physiol. 3:49, 2012;Zampetaki and Mayr, Circ. Res. 110:508-522, 2012を参照されたい)。例えば、microRNA-33は、マウスモデルでは肉芽腫性肺組織中で、およびサルコイドーシスを有する患者のBAL液中で過剰発現される(Barna et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 54:865-871, 2016)。microRNA-33は、コレステロール輸送体ABCA1およびABCG1を下方調節して、肺胞マクロファージにおけるコレステロール蓄積、および泡沫細胞形成を促進する。別の標的は、急性呼吸促迫症候群(ARDS)のマウスモデルにおいてエキソソーム中に分泌されることが示されたmicroRNA-466であり、この場所で、microRNA-466は、NLRP3インフラマソームを活性化した(Shikano et al., BMC Pulmonary Med. 19:110, 2019)。
【0187】
本明細書に記載されるRNase含有融合物の他の標的には、ウイルスRNA、例えば、インフルエンザウイルス感染の間に肺中に放出されるプロウイルスmicroRNA(Scheller et al., J. Inf. Dis. 219:540-543, 2019を参照されたい)、またはTLR8結合を介してマクロファージ泡沫細胞形成を刺激することが報告されているHIV一本鎖RNA(Bernard et al., PloS ONE 9:e104039, 2014を参照されたい)などが含まれる。他のウイルスRNA標的には、コロナウイルスRNA(例えば、SARS-CoV-2 RNA)が含まれる。
【0188】
研究は、例えば、がん、虚血/再灌流傷害、移植片拒絶、アテローム硬化性粥腫形成、心筋梗塞、急性脳卒中および術後認知機能低下の処置のためのRNaseの使用もまた支持している(例えば、Rutkoski et al., Translational Oncology 6:392-397, 2013;Mironova et al., Oncotarget. 8:78796-78810, 2017;Eller et al., ACS Central Sci. 1:181-190, 2015;Kleinert et al., J. Am. Heart Assn. doi: 10.1021, 2016;Simsekyilmaz et al., Circulation 129: 598-606, 2014;Steiger et al., JAMA 6:e004541, 2017;Walberer et al., Curr. Neovas. Res. 6:12-19, 2009;Chen et al., PloS One 10:e0134307, 2015を参照されたい)。
【0189】
本明細書に記載されるスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)を含む二重特異的パラオキソナーゼ融合分子は、酸化ストレスからの保護において追加の治療利益を提供する。酸化的損傷からの保護におけるSOD1の役割は、例えば、Ighodaro and Akinolye, Alexandria J. Med. 54:287-293, 2018によって概説されている。そのネイティブ形態では、SOD1は、細胞内酵素である(同上を参照されたい)。本開示によれば、SOD1ポリペプチドセグメントは、治療のための改善された抗酸化剤を提供するために、融合分子のパラオキソナーゼセグメントと併せて機能する細胞外酵素として使用される。例えば、パラオキソナーゼは、SOD1酵素反応の産物である過酸化水素(H2O2)を消化することができる。さらに、H2O2の消化は、NETsに関連するミエロペルオキシダーゼの活性を抑制する。SOD1とパラオキソナーゼとの協調的な活性は、NET産生に関連する疾患を有する患者における組織の損傷および炎症からの保護における活性を改善する。本発明に従うSOD1-PON分子は、例えば、炎症性肺疾患、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコイドーシスおよび間質性肺疾患などの処置において特に有用である。一部の好ましい実施形態では、SOD1-PON融合物は、ダイマー化ドメイン、例えば、免疫グロブリンFc領域などをさらに含む;かかる変形形態は、そのネイティブ形態ではジスルフィド結合によって安定化されるダイマーであるSOD1と特に適合性である。
【0190】
本明細書に記載されるCTLA-4細胞外ドメインを含む二重特異的パラオキソナーゼ融合分子は、例えば、関節リウマチ(RA)および炎症性肺疾患が含まれる炎症性疾患および自己免疫疾患の処置において特に有用である。酸化されたコレステロールは、マクロファージおよび内皮細胞において炎症応答を活性化し(Miller and Shyy, Trends Endocrinol. Metabol. 28:143-152, 2017を参照されたい)、PON1は、リポタンパク質を酸化から保護することによってこの炎症を抑制することができる。可溶性CTLA-4(例えば、アバタセプトまたは他のCTLA4-Fc)の免疫抑制特性は、パラオキソナーゼ酵素活性と適合性であり、その結果、CTLA4-PON分子は、両方の構成成分の活性を保持し、線維性肺疾患および自己免疫/炎症性疾患において改善された活性を有する。CTLA4-PON1分子は、例えば、PON1酵素が活性なままである、単球および樹状細胞が含まれる活性化された抗原提示細胞上で発現されるCD80およびCD86に結合する。この分子は、T細胞、マクロファージおよび樹状細胞の活性化を阻害するのに有効であり、組織、例えば、炎症した肺などにおける酸化ストレスもまた低減させる。
【0191】
本明細書に記載されるCD40細胞外ドメインを含む二重特異的パラオキソナーゼ融合分子は、CD40-CD154シグナル伝達経路に関連する炎症促進性活性化事象を抑制することによって、追加の治療利益を提供する。CD40-CD154経路は、例えば、炎症性肺疾患および傷害における線維症が含まれる線維性疾患に関与し(例えば、Kaufman et al., J. Immunol. 172:1862-1871, 2004を参照されたい)、研究は、線維性疾患および炎症性肺疾患の処置においてこの経路を抑制する分子の使用を支持している(例えば、Adawi et al., Clin. Immunol. Immunopathol. 89:222-230, 1998;Adawi et al., Am. J. Pathol. 152:651-657, 1998;Cheng et al., BioMed. Research Intl. Volume 2020, Article ID 7840652, 2020;Xiong et al., J. Cell. Mol. Med. 23:740-749, 2018を参照されたい)。本発明のCD40-PON融合物は、例えば、肺疾患および自己免疫/炎症性疾患において改善された活性を有する分子が含まれる、炎症および適応免疫の両方を阻害する分子を提供する。例えば、CD40-PON1融合物は、喘息、COPD、低酸素症および間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症(IPF)またはサルコイドーシス)が含まれる、CD40活性化が炎症プロセスを悪化させ、パラオキソナーゼレベルが低いかまたは存在しない肺疾患において、改善された活性を提供し得る。CDO40-PON1融合物は、例えば、肝臓疾患(例えば、慢性肝臓疾患、例えば、アルコール関連肝臓疾患(ALD)、門脈圧亢進症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、または肝臓移植後の合併症など)および腎臓疾患(例えば、慢性腎臓疾患、例えば、ループス腎炎、IgA腎症または膜性糸球体腎炎など)の処置のためにも有益である。
【0192】
一部の実施形態では、本発明のパラオキソナーゼ融合分子は、CD154への増加した結合を有するバリアントCD40細胞外ドメインを含む。例えば、1つまたは複数の単一アミノ酸置換が、CD40リガンドへの結合を改善するために、特定の残基においてなされ得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0120091号を参照されたい)。かかるCD40細胞外ドメインバリアントは、in vitroで血小板の活性化も凝集も誘導しないCD40-Fcバリアントを提供するために、損なわれたFcγR結合を有するヒトIgG1(γ1)Fcバリアントと融合されて、ヒト血小板上のCD40およびFcγRIIaへの同時結合に由来する毒性を回避し得る。血小板の活性化および血栓症は、血小板上のFcRと、血小板表面上の抗原、例えば、VEGF、CD40およびCD40Lとの架橋に起因して生じることが示されている(Taylor et al., Blood 96:4254, 2020;Meyer et al., J. Thromb. Haemost. 7:151, 2009を参照されたい)。
【0193】
本明細書に記載されるTNFαまたはTGF-βに特異的に結合しそれを中和するポリペプチドを含む二重特異的融合分子は、炎症応答、免疫応答、および/またはこれらのサイトカインによって媒介される他の細胞性応答の阻害を介して、追加の治療利益を提供する。抗TNFα構成成分を含むパラオキソナーゼ融合物は、例えば、炎症性疾患または自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ(RA)、炎症性肺疾患(例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺傷害(ALI)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)または間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症またはサルコイドーシス))、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)または炎症性皮膚疾患(例えば、乾癬またはアトピー性皮膚炎)などを処置するために使用され得る。抗TGF-β構成成分を含むパラオキソナーゼ融合物は、例えば、炎症性疾患、線維性疾患または1型糖尿病を処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本発明の抗TGFβ-PON融合物を使用する処置のための炎症性疾患または線維性疾患は、炎症性肺疾患、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺傷害(ALI)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)または間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症(IPF)またはサルコイドーシス)などである。炎症性肺疾患の処置に関する一部の変形形態では、本明細書に記載される抗TNFαまたは抗TGF-βポリペプチドを含む融合分子は、全身的にではなく、噴霧によって肺に直接送達され、これらのサイトカインの多面的活性に起因して生じ得る望まれない副作用がより少ない、効率的な治療活性を達成し得る。
【0194】
一部の態様では、本発明は、CHOなどの安定な細胞系におけるDNase-PON融合物の構成的発現のためのそのような組成物および方法が含まれる、本明細書に記載される融合ポリペプチドおよびダイマー性タンパク質を産生するための組成物および方法を提供する。アクチン/塩抵抗性かつ機能亢進型のDNase1を構成的に発現する安定なCHO細胞を得るための以前の試みは、数千個のクローンをスクリーニングしたにもかかわらず、不首尾であった(Lam et al., Biotech. Progress 32: 523-533, 2017を参照されたい)。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される増強されたDNase1を含むDNase-PON融合物は、最小限のスクリーニングによって安定な系において容易に発現され、それによって、当該分野におけるこの問題を克服する。本開示のある特定の増強されたDNase1-PON分子を発現する安定な細胞系を容易に生成する能力は、これらの分子が、産業規模での生物薬物製造の実行可能性およびコストにおいて利点を有することを示している。
II.融合ポリペプチドおよびダイマー性タンパク質
【0195】
一態様では、本発明は、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、T-L1-X-L2-Pを含む融合ポリペプチドであって、式中、T、L1、X、L2およびPは、以下のように定義される:Tは、DNase、RNase、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、細胞傷害性Tリンパ球関連分子-4(CLTA-4)細胞外ドメイン、CD40細胞外ドメイン、および炎症性サイトカインに特異的に結合しそれを中和するポリペプチドから選択される第1の生物学的に活性なポリペプチドであり;L1は、必要に応じて存在する第1のポリペプチドリンカーであり;Xは、必要に応じて存在する第2の生物学的に活性なポリペプチドであり;L2は、必要に応じて存在する第2のポリペプチドリンカーであり;かつPは、生物学的に活性なパラオキソナーゼである、融合ポリペプチドを提供する。Xが存在する上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、Xは、ダイマー化ドメインおよび新生児Fc受容体(FcRn)に特異的に結合するドメインから選択される。典型的には、生物学的に活性なパラオキソナーゼは、天然に存在するパラオキソナーゼ1(PON1)ポリペプチドまたはその機能的バリアントもしくは断片である。DNase、RNase、SOD1、CLTA-4細胞外ドメインまたはCD40細胞外ドメインを含む変形形態では、上述の生物学的に活性なポリペプチドのいずれかは、特定された天然に存在するポリペプチドまたはその機能的バリアントもしくは断片から選択され得る。炎症性サイトカイン(例えば、TNFαまたはTGF-β)に特異的に結合しそれを中和するポリペプチドを含むある特定の変形形態では、抗サイトカインポリペプチドは、単鎖抗体または代替的足場結合タンパク質である。
【0196】
別の態様では、本発明は、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、X-L2-Pを含む融合ポリペプチドであって、式中、Xは、ダイマー化ドメインおよび新生児Fc受容体(FcRn)に特異的に結合するドメインから選択される生物学的に活性なポリペプチドであり、L2は、必要に応じて存在するポリペプチドリンカーであり、かつPは、生物学的に活性なパラオキソナーゼであり、融合ポリペプチドは、Xに対してアミノ末端側には生物学的に活性なポリペプチドを含有しない、融合ポリペプチドを提供する。典型的には、生物学的に活性なパラオキソナーゼは、天然に存在するパラオキソナーゼ1(PON1)ポリペプチドまたはその機能的バリアントもしくは断片である。
【0197】
さらに別の態様では、本発明は、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、P-L1-Xを含む融合ポリペプチドであって、式中、Pは、生物学的に活性なパラオキソナーゼであり、L1は、ポリペプチドリンカーであり、Xは、ダイマー化ドメインおよび新生児Fc受容体(FcRn)に特異的に結合するドメインから選択される生物学的に活性なポリペプチドである、融合ポリペプチドを提供する。典型的には、生物学的に活性なパラオキソナーゼは、天然に存在するパラオキソナーゼ1(PON1)ポリペプチドまたはその機能的バリアントもしくは断片である。
【0198】
上で特定された天然に存在するパラオキソナーゼまたは他の生物学的に活性なポリペプチドの機能的バリアントは、対応する生物活性についてバリアントを評価するための慣用的なアッセイを使用して、容易に同定することができる。例えば、パラオキソナーゼ1(PON1)バリアントは、リン酸ジエチルp-ニトロフェニル(diethyl p-nitrophenol phosphate)(パラオキソン)を基質として使用してホスホトリエステラーゼ活性について、または酢酸フェニルを基質として使用してアリールエステラーゼ活性について、アッセイされ得る(例えば、Graves and Scott, Curr Chem Genomics 2:51-61, 2008を参照されたい;以下の実施例3もまた参照されたい)。さらに、機能亢進型DNase1バリアントが含まれるDNase1およびDNase1L3バリアントは、(i)メチルグリーン色素が加水分解されたDNAから放出される際のA260の減少を測定するDNA-メチルグリーンアッセイ(例えば、Sinicropi et al., Anal. Biochem. 222:351-358;Pan and Lazarus, J. Biol. Chem. 273:11701-11708, 1998を参照されたい)、(ii)DNA吸収に起因するA260が、分解の関数として増加する、Kunitz濃色性(hyperchromicity)アッセイ(例えば、Kunitz, J. Gen. Physiol. 33:349-362, 1950;Pan and Lazarus, 上記を参照されたい);(iii)スーパーコイル状または線状プラスミドDNAのいずれかを基質として使用し、基質の消失および/または消化産物の出現(例えば、線状産物、またはスーパーコイル状DNAからの弛緩した産物の出現)を測定する、プラスミド消化アッセイ(例えば、Pan and Lazarus, 上記を参照されたい)、あるいは(iv)SYTOX Green色素で標識されたDNAが加水分解される際の蛍光における減少を測定する、SYTOX(商標)Green蛍光アッセイ(以下の実施例2を参照されたい)、を使用して、ヌクレアーゼ活性についてアッセイされ得る。DNase1バリアントは、基質DNAの添加前にG-アクチンとともに事前インキュベートされたDNaseを使用して、ヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害についてもアッセイされ得る(例えば、Pan et al., J. Biol. Chem. 273:18374-18381, 1998を参照されたい)。ヒトRNase1などのRNaseの場合、バリアントは、リボヌクレアーゼ活性を評価するための公知のアッセイにおいて、一本鎖または二本鎖RNAを消化するその能力についてアッセイされ得る(例えば、Libonati and Sorrentino, Methods Enzymol. 341:234-248, 2001を参照されたい)。
【0199】
SOD1バリアントは、市販のスーパーオキシドジスムターゼ比色活性キット(ThermoFisher(商標)カタログ番号:EIASODC)を使用してアッセイされ得る。このキットは、種々の試料型において、Cu/Zn、MnおよびFeスーパーオキシドジスムターゼ活性が含まれるスーパーオキシドジスムターゼ活性の全ての型を測定するように設計されている。スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカルおよび過酸化水素が含まれる反応性酸素種は、通常の細胞性好気的代謝の間に産生され、フリーラジカルは、SOD酵素が含まれるいくつかの経路によって、除外されるかまたは他の産物に変換される。このアッセイは、SOD活性を定量的に測定するはずであり、標準曲線を生成するためにウシ赤血球SOD標準を使用する。類似の分光光度的キットは、Cayman Chemicalsからも入手可能であり(商品番号706002)、このキットを使用するSOD活性アッセイは、Mason et al., Free Radic. Biol. Med. 77:130-138, 2014に記載されている。
【0200】
可溶性CLTA-4およびCD40バリアント、ならびに抗炎症性サイトカインポリペプチド(例えば、単鎖抗体)は、種々の公知のアッセイのいずれかを使用して、そのそれぞれの標的に対する(例えば、CTLA-4の場合にはCD80/CD86に対する、またはCD40の場合にはgp139に対する)所望の結合活性について評価され得る。例えば、1つのアッセイシステムは、市販のバイオセンサー機器(BIAcore(商標)、Pharmacia Biosensor、Piscataway、NJ)を使用し、このとき、候補結合ポリペプチド(例えば、候補CTLA-4-Fc、CD40-Fcまたは抗サイトカイン抗体)は、アミンまたはスルフヒドリル化学を使用して、フローセル内の金フィルムに結合したデキストラン線維に、共有結合的に結合される。可溶性標的分子(例えば、CD80-Fc、CD86-Fc、CD40L-Fc(gp139-Fc)または可溶性サイトカイン)を含有する試験試料に、セルを通過させる。固定化されたタンパク質が標的分子に対する親和性を有する場合、そのタンパク質は、標的に結合して、金フィルムの表面プラズモン共鳴における変化として検出される、媒体の屈折率における変化を引き起こす。このシステムは、そこから結合親和性が計算され得るオンレートおよびオフレートの決定、ならびに結合の化学量論の評価を可能にする。この機器の使用は、例えば、Karlsson (J. Immunol. Methods 145:229-240, 1991)およびCunningham and Wells (J. Mol. Biol. 234:554-563, 1993)によって開示されている。候補ポリペプチドの結合活性は、当該分野で公知の他のアッセイシステムを用いても評価することができる。かかるシステムには、結合親和性の決定のためのScatchard分析(Scatchard, Ann. NY Acad. Sci. 51: 660-672, 1949を参照されたい)および熱量測定アッセイ(Cunningham et al., Science 253:545-548, 1991;Cunningham et al., Science 254:821-825, 1991を参照されたい)が含まれる。
【0201】
可溶性CTLA-4およびCD40バリアントの活性もまた、適切なin vitro細胞性アッセイにおいて、機能について評価され得る。例えば、可溶性CTLA-4は、CD80発現細胞またはCD86発現細胞、例えば、B細胞、樹状細胞、またはCD80+もしくはCD86+CHO細胞による刺激に対するT細胞応答を阻害する(例えば、米国特許第5,434,131号;Linsley et al., J. Exp. Med. 174:561-569, 1991を参照されたい)。可溶性CD40は、CD154(CD40L、gp39)によるCD40陽性細胞の刺激を遮断する。CD40応答性細胞は、B細胞、単球または樹状細胞であり得る。応答は、細胞型に依存して変動し得、これには、増殖、抗体産生の抑制、または炎症性サイトカイン産生が含まれ得る(例えば、Noelle et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6550-6554, 1992;Grammer et al., J. Immunol. 154:4996-5010, 1995を参照されたい)。CD40Lレポーター細胞系は、Invivogen(San Diego、CA)からも入手可能である。このレポーター系は、ヒトCD40と、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)に融合されたNF-kB応答エレメントとをトランスフェクトしたHEK293細胞を使用する。そのリガンドまたは抗体によるCD40受容体の結合は、NF-kB活性化、およびSEAPの誘導性の発現をもたらす(Jerome et al., Anal. Biochem. 585:113402, 2019を参照されたい)。
【0202】
炎症性サイトカイン結合ポリペプチドの活性の中和もまた、当該分野で公知の細胞性アッセイを使用して評価され得る。例えば、抗TNFα結合タンパク質は、Invivogen(San Diego、CA)から入手可能な市販のTNFαレポーター細胞系を使用して、活性の中和についてアッセイされ得る。これらの細胞系は、TNFα応答性プロモーターに結合された分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子でトランスフェクトされたHEK-293細胞である(Gregory et al., Nature 488(7412):508-511, 2012;Idress et al., Molecules 25:922, 2020)。さらに、抗TGF-β結合タンパク質は、SEAPの発現を駆動するためのTGF-β応答性エレメントを含有する、Invivogen(San Diego、CA)から入手可能な類似のレポーター細胞系を使用して、活性の中和について評価され得る。このレポーター系の使用は、van Noort et al. (Cancer Res. 74:5690-5699, 2014)によって記載されている。類似のレポーター遺伝子アッセイが、Lallemand et al. (J. Immunol. Methods 373:229-239, 2011)によって、TNFαアンタゴニストについて報告されている。この研究は、ホタルルシフェラーゼ遺伝子に結合されたTNFα応答エレメントを取り込むレポーター構築物でトランスフェクトされたヒト赤白血病K562細胞を利用した。TNFαは、レポーター細胞系とのインキュベーションの前に30分間、潜在的アンタゴニストと事前混合された。残留TNFα活性は、TNFα単独の標準曲線と比較して定量化された。
【0203】
本開示に従う使用のための天然に存在するポリペプチドセグメント(例えば、天然に存在するパラオキソナーゼ、DNase、RNaseまたはSOD1)には、本開示と矛盾しない天然に存在するバリアント、例えば、対立遺伝子バリアントおよび種間ホモログなどが含まれる。
【0204】
特定の参照ポリペプチド(例えば、配列番号4の残基16~355もしくは26~355に示される野生型ヒトパラオキソナーゼ1(PON1)、配列番号16の残基23~282に示される野生型DNase1、または配列番号18の残基21~280に示される増強されたDNase1)の機能的バリアントは、一般に、参照ポリペプチドと比較して、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または付加を有すると特徴付けられる。これらの変化は、好ましくは、軽微なものである、即ち、保存的アミノ酸置換(例えば、いくつかの例示的な保存的アミノ酸置換を列挙する以下の表1を参照されたい)、およびタンパク質またはポリペプチドのフォールディングにも活性にも顕著には影響を与えない他の置換;典型的には1~約30アミノ酸の小さい欠失;ならびに小さいアミノ末端伸長またはカルボキシル末端伸長である。保存的置換は、以下からも選択され得る:1)アラニン、グリシン;2)アスパラギン酸、グルタミン酸;3)アスパラギン、グルタミン;4)アルギニン、リシン;5)イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン;6)フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;7)セリン、スレオニン;および8)システイン、メチオニン(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照されたい)。
表1: 保存的アミノ酸置換
【表1】
【0205】
天然に存在するポリペプチド中の重要なアミノ酸は、当該分野で公知の手順、例えば、部位特異的突然変異誘発またはアラニンスキャニング突然変異誘発に従って同定され得る(Cunningham and Wells, Science 244:1081-1085, 1989;Bass et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4498-4502, 1991)。後者の技法では、単一のアラニン突然変異が、分子中の全ての残基において導入され、得られた突然変異体分子は、分子の活性にとって重要なアミノ酸残基を同定するために、生物活性(例えば、PON1バリアントについてはホスホトリエステラーゼもしくはアリールエステラーゼ活性、またはDNase1バリアントについてはヌクレアーゼ活性)について試験される。さらに、関連するタンパク質相互作用の部位は、核磁気共鳴、結晶学または光親和性標識などの技法によって決定される結晶構造の分析によって決定され得る。重要なアミノ酸の正体は、関連するタンパク質(例えば、同じタンパク質機能を保持する種オルソログ)との相同性の分析からも推論され得る。
【0206】
複数のアミノ酸置換が、Reidhaar-Olson and Sauer Science 241:53-57, 1988またはBowie and Sauer Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2152-2156, 1989によって開示されるものなどの、突然変異誘発およびスクリーニングの公知の方法を使用して、なされ試験され得る。簡潔に述べると、これらの著者は、ポリペプチド中の2つまたはそれよりも多くの位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドについて選択し、次いで、突然変異誘発されたポリペプチドを配列決定して、各位置において許容される置換の範囲を決定するための方法を開示している。使用され得る別の方法は、領域特異的突然変異誘発である(Derbyshire et al., Gene 46:145, 1986;Ner et al., DNA 7:127, 1988)。
【0207】
バリアントヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、DNAシャッフリングを介して生成することもできる(例えば、Stemmer, Nature 370:389, 1994;Stemmer, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 91:10747, 1994;国際PCT公開番号WO97/20078を参照されたい)。簡潔に述べると、バリアントDNA分子は、ランダムに導入された点突然変異を生じる、親DNAのランダム断片化とその後のPCRを使用する再アセンブリとによるin vitro相同組換えによって生成される。この技法は、プロセスに追加の変動性を導入するために、親DNA分子のファミリー、例えば、対立遺伝子バリアント、または異なる種由来のDNA分子を使用することによって改変され得る。所望の活性についての選択またはスクリーニングと、その後の、突然変異誘発およびアッセイの追加の反復とは、有害な変化に対して同時に選択しつつ、望ましい突然変異について選択することによって、配列の迅速な「進化」を提供する。
【0208】
以前に議論したように、本発明に従うポリペプチド融合物は、特定のポリペプチドの「機能的断片」に対応するポリペプチドセグメントを含み得る。核酸分子の慣用的な欠失分析が、所与のポリペプチドをコードする核酸分子の機能的断片を得るために実施され得る。実例として、残基46~1099のヌクレオチド配列を有するPON1コードDNA分子は、一連の入れ子型欠失を得るために、Bal31ヌクレアーゼで消化され得る。次いで、断片は、適切なリーディングフレームで発現ベクター中に挿入され、発現されたポリペプチドは、単離され、ヌクレアーゼ活性について試験される。エキソヌクレアーゼ消化に対する1つの代替法は、所望の断片の産生を特定するための欠失または停止コドンを導入するために、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発を使用することである。あるいは、ポリペプチドをコードする遺伝子の特定の断片が、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して合成され得る。
【0209】
したがって、上で議論したような方法を使用して、当業者は、(i)参照ポリペプチド(例えば、配列番号6の残基16~355もしくは26~355に示されるPON1、配列番号16の残基23~282に示されるヒト野生型DNase1、または配列番号18の残基21~280に示される増強されたDNase1)と実質的に同一であり、かつ(ii)参照ポリペプチドの所望の機能的特性を保持する、種々のポリペプチドを調製することができる。
【0210】
本発明内で使用されるポリペプチドセグメント(例えば、パラオキソナーゼ、DNase、RNase、またはダイマー化ドメインもしくはFcRn結合ドメイン、例えば、Fc断片などに対応するポリペプチドセグメント)は、種々の種から得られ得る。タンパク質がヒトにおいて治療用に使用される場合、ヒトポリペプチド配列が使用されることが好ましい。しかし、非ヒト配列が、バリアント配列と同様、使用され得る。in vitro診断使用および獣医使用が含まれる他の使用のために、ヒトまたは非ヒト動物由来のポリペプチド配列が使用され得るが、分子間反応の種特異性が存在する場合には、患者と同じ種由来の配列が、in vivo獣医使用のため、またはin vitro使用のために、好ましい場合がある。したがって、本発明内での使用のためのポリペプチドセグメントは、限定なしに、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウサギ類および鳥類ポリペプチド、ならびにそれらのバリアントであり得る。
【0211】
一部の実施形態では、パラオキソナーゼセグメントは、ヒトパラオキソナーゼ1(PON1)またはその機能的バリアントもしくは断片である。例えば、一部の実施形態では、パラオキソナーゼは、(a)配列番号6、配列番号8または配列番号4のアミノ酸残基16~355または26~355と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有し、かつ(b)配列番号6の残基1~15(配列番号8または配列番号4の残基1~15としても示される)に対応するアミノ末端リーダー配列を含有しない。一部のかかる実施形態では、生物学的に活性なパラオキソナーゼは、配列番号6、配列番号8または配列番号4のアミノ酸残基16~355、17~355、18~355、19~355、20~355、21~355、22~355、23~355、24~355、25~355または26~355と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する。
【0212】
上記PON1またはその機能的バリアントもしくは断片の一部の変形形態では、ヒトパラオキソナーゼ1 Q192アイソフォーム(PON1-Q192;配列番号4)のQ192に対応する位置におけるアミノ酸は、リシンまたはアルギニンである。他の相互に排他的でない変形形態では、パラオキソナーゼは、hPON1-Q192と比較して、以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを含有する:(i)18Rに対応する位置におけるアスパラギン酸;(ii)N19に対応する位置におけるアルギニンまたはグリシン;(iii)H20に対応する位置におけるグルタミン;(iv)Q21に対応する位置におけるリシン;(v)Y24に対応する位置におけるグルタミン酸またはフェニルアラニン;(vi)L28に対応するアミノ酸におけるフェニルアラニン;(vii)A30に対応する位置におけるバリン;(viii)L31に対応する位置におけるヒスチジン;(ix)Q35に対応する位置におけるスレオニン;(x)I48に対応する位置におけるバリン;(xi)E49に対応する位置におけるアスパラギン酸;(xii)T50に対応する位置におけるアスパラギン;(xiii)M55に対応する位置におけるロイシンまたはイソロイシン;(xiv)L69に対応する位置におけるバリン;(xv)K75に対応する位置におけるメチオニン;(xvi)N78に対応する位置におけるアスパラギン酸;(xvii)N80に対応する位置におけるアスパラギン酸;(xviii)S81に対応する位置におけるリシン;(xix)P82に対応する位置におけるセリン;(xx)T96に対応する位置におけるバリン;(xxi)L98に対応する位置におけるセリン;(xxii)G101に対応する位置におけるグルタミン酸;(xxiii)S105に対応する位置におけるアスパラギン;(xxiv)K106に対応する位置におけるスレオニン;(xxv)F107に対応する位置におけるロイシン;(xxvi)V109に対応する位置におけるイソロイシン;(xxvii)S111に対応する位置におけるスレオニン;(xxviii)H115に対応する位置におけるトリプトファンまたはアラニン;(xxix)A126に対応する位置におけるスレオニン;(xxx)M127に対応する位置におけるバリン;(xxxi)H134に対応する位置におけるアルギニン;(xxxii)D136に対応する位置におけるグルタミン;(xxxiii)A137に対応する位置におけるセリン;(xxxiv)K138に対応する位置におけるセリン;(xxxv)L143に対応する位置におけるバリン;(xxxvi)N166に対応する位置におけるセリン;(xxxvii)L167に対応する位置におけるバリン;(xxxviii)G180に対応する位置におけるアラニン;(xxxix)Y185に対応する位置におけるグルタミン酸;(xl)F186に対応する位置におけるグルタミン;(xli)L187に対応する位置におけるリシンまたはアラニン;(xlii)Y190に対応する位置におけるリシン;(xxliii)L191に対応する位置におけるグルタミン;(xliv)Q192に対応する位置におけるリシン;(xlv)W194に対応する位置におけるリシン;(xlvi)Y197に対応する位置におけるヒスチジン;(xlvii)L198に対応する位置におけるグルタミン酸;(xlviii)L200に対応する位置におけるグルタミン;(xlix)W202に対応する位置におけるリシン;(l)Y204に対応する位置におけるフェニルアラニン;(li)V206に対応する位置におけるスレオニン;(lii)S211に対応する位置におけるアスパラギン;(liii)E212に対応する位置におけるアスパラギン酸;(liv)F222に対応する位置におけるセリンまたはメチオニン;(lv)N265に対応する位置におけるアスパラギン酸;(lvi)E276に対応する位置におけるバリン;(lvii)M289に対応する位置におけるグルタミン;(lviii)I291に対応する位置におけるロイシン;(lix)F293に対応する位置におけるグルタミン酸またはチロシン;(lx)S296に対応する位置におけるプロリン;(lxi)E297に対応する位置におけるリシン;(lxii)A301に対応する位置におけるグリシン;(lxiii)N309に対応する位置におけるアスパラギン酸;(lxiv)T312に対応する位置におけるセリン;(lxv)Q319に対応する位置におけるバリン;(lxvi)T332に対応する位置におけるセリン;およびS335に対応する位置におけるアラニン。
【0213】
一部の変形形態では、パラオキソナーゼは、G3C9として同定されるヒトPON1のバリアント(Aharoni et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:482-487, 2004;Harel et al., Nat. Struct. Mol. Biol. 11:412-419, 2004;Mukherjee and Gupta, J. Toxicol. 2020:1-16, 2020;Goldsmit et al., Chemistry and Biology 19:456-466, 2012)、またはその機能的バリアントもしくは断片である。GC39は、ヒトアイソフォームからの55個のアミノ酸置換を含み、神経剤に対する触媒活性を改善し、細菌における可溶性発現を改善する。このパラオキソナーゼ配列バリアントの全長形態は、配列番号123(ヌクレオチド)および配列番号124(アミノ酸)に列挙される。一部の実施形態では、本発明に従う使用のためのGC39パラオキソナーゼまたはその機能的バリアントは、配列番号124のアミノ酸残基16~355または26~355と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する;一部のかかる実施形態では、GC39パラオキソナーゼまたはその機能的バリアントは、配列番号124のアミノ酸残基16~355、17~355、18~355、19~355、20~355、21~355、22~355、23~355、24~355、25~355または26~355と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する。G3C9またはその活性なバリアント(例えば、以下で議論されるM-IIG1)を含むPON1融合物は、一部の短期治療適用、例えば、硫黄マスタードガスへの曝露または有機リンへの曝露の処置などにおいて特に有用であり得る。
【0214】
上記融合ポリペプチドの一部の実施形態では、パラオキソナーゼは、IIG1(本明細書でM-IIG1とも呼ばれる;Goldsmith et al., Chemistry & Biology 19, 456-466, 2012を参照されたい)として同定されるGC39の改変されたもしくはさらなるバリアント形態、またはその機能的バリアントもしくは断片である。M-IIG1の全長配列は、配列番号125(ヌクレオチド)および配列番号126(アミノ酸)に示される。一部の実施形態では、本発明に従う使用のためのM-IIG1パラオキソナーゼまたはその機能的バリアントは、配列番号126のアミノ酸残基16~355または26~355と少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する;一部のかかる実施形態では、M-IIG1パラオキソナーゼまたはその機能的バリアントは、配列番号126のアミノ酸残基16~355、17~355、18~355、19~355、20~355、21~355、22~355、23~355、24~355、25~355または26~355と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する。
【0215】
より具体的な変形形態では、パラオキソナーゼは、(i)配列番号6の残基16~355、(ii)配列番号6の残基17~355、(iii)配列番号6の残基18~355、(iv)配列番号6の残基19~355、(v)配列番号6の残基20~355、(vi)配列番号6の残基21~355、(vii)配列番号6の残基22~355、(viii)配列番号6の残基23~355、(ix)配列番号6の残基24~355、(x)配列番号6の残基25~355、および(xi)配列番号6の残基26~355から選択されるアミノ酸配列(即ち、配列番号6の残基n~355から選択されたアミノ酸配列であって、nは、端点を含めた16~26の整数である)を有する。他の変形形態では、パラオキソナーゼは、(i)配列番号8の残基16~355、(ii)配列番号8の残基17~355、(iii)配列番号8の残基18~355、(iv)配列番号8の残基19~355、(v)配列番号8の残基20~355、(vi)配列番号8の残基21~355、(vii)配列番号8の残基22~355、(viii)配列番号8の残基23~355、(ix)配列番号8の残基24~355、(x)配列番号8の残基25~355、および(xi)配列番号8の残基26~355から選択されるアミノ酸配列(即ち、配列番号8の残基n~355から選択されるアミノ酸配列であって、nは、端点を含めた16~26の整数である)を有する。なお他の変形形態では、パラオキソナーゼは、(i)配列番号4の残基16~355、(ii)配列番号4の残基17~355、(iii)配列番号4の残基18~355、(iv)配列番号4の残基19~355、(v)配列番号4の残基20~355、(vi)配列番号4の残基21~355、(vii)配列番号4の残基22~355、(viii)配列番号4の残基23~355、(ix)配列番号4の残基24~355、(x)配列番号4の残基25~355、および(xi)配列番号4の残基26~355から選択されるアミノ酸配列(即ち、配列番号4の残基n~355から選択されるアミノ酸配列であって、nは、端点を含めた16~26の整数である)を有する。なお他の変形形態では、パラオキソナーゼは、(i)配列番号124の残基16~355、(ii)配列番号124の残基17~355、(iii)配列番号124の残基18~355、(iv)配列番号124の残基19~355、(v)配列番号124の残基20~355、(vi)配列番号124の残基21~355、(vii)配列番号124の残基22~355、(viii)配列番号124の残基23~355、(ix)配列番号124の残基24~355、(x)配列番号124の残基25~355、および(xi)配列番号124の残基26~355から選択されるアミノ酸配列(即ち、配列番号124の残基n~355から選択されるアミノ酸配列であって、nは、端点を含めた16~26の整数である)を有する。さらに他の変形形態では、パラオキソナーゼは、(i)配列番号126の残基16~355、(ii)配列番号126の残基17~355、(iii)配列番号126の残基18~355、(iv)配列番号126の残基19~355、(v)配列番号126の残基20~355、(vi)配列番号126の残基21~355、(vii)配列番号126の残基22~355、(viii)配列番号126の残基23~355、(ix)配列番号126の残基24~355、(x)配列番号126の残基25~355、および(xi)配列番号126の残基26~355から選択されるアミノ酸配列(即ち、配列番号126の残基n~355から選択されるアミノ酸配列であって、nは、端点を含めた16~26の整数である)を有する。
【0216】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてDNaseを含む融合ポリペプチドの一部の実施形態では、DNaseは、ヒト野生型DNase1またはその機能的バリアントもしくは断片である。例えば、一部の実施形態では、DNaseは、(i)配列番号16のアミノ酸残基23~282、(ii)配列番号18のアミノ酸残基21~280、(iii)配列番号20のアミノ酸残基21~280、または(iv)配列番号152のアミノ酸残基21~280と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の実施形態では、DNaseは、(i)配列番号16のアミノ酸残基23~282、(ii)配列番号18のアミノ酸残基21~280、(iii)配列番号20のアミノ酸残基21~280、または(iv)配列番号152のアミノ酸残基21~280と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0217】
ある特定の好ましい実施形態では、DNaseセグメントは、天然に存在するDNase1の機能亢進型かつ/またはアクチン抵抗性バリアント(「増強されたDNase1」)、例えば、増強されたヒトDNase1バリアントなどである。例えば、一部の変形形態では、DNaseは、N74、G105およびA114から選択される成熟野生型ヒトDNase1(配列番号120)のアミノ酸に対応する位置において、少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、(1)ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるアミノ酸置換(N74置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較してDNaseのDNA結合を増加させ、(2)ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアミノ酸置換(G105置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較してDNaseのDNA結合を増加させ、かつ(3)ヒトDNase1のA114に対応する位置におけるアミノ酸置換(A114置換)は、存在する場合には、ヒトDNase1と比較して、DNaseのエンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させる。これらの位置における置換に適切なアミノ酸には、ヒトDNase1のN74に対応する位置におけるリシン、ヒトDNase1のG105に対応する位置におけるアルギニン、および/またはヒトDNase1のA114に対応する位置におけるフェニルアラニンが含まれる。一部の変形形態では、上記増強されたヒトDNase1バリアントは、N74置換、G105置換およびA114置換のうち少なくとも2つ(例えば、少なくとも、ヒトDNase1のN74およびG105の両方またはG105およびA114の両方に対応する位置における置換)を含有する。一部の実施形態では、増強されたヒトDNase1は、N74置換、G105置換およびA114置換の各々を含有する。他の変形形態では、増強されたヒトDNase1は、N74置換およびG105置換を含有するが、A114置換は含有しない。ある特定の実施形態では、増強されたDNase1は、(i)配列番号18のアミノ酸残基21~280、(ii)配列番号20のアミノ酸残基21~280、または(iii)配列番号152の残基21~280と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の変形形態では、増強されたDNase1は、配列番号18のアミノ酸残基21~280と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、増強されたDNase1は、N74置換、G105置換およびA114置換の各々を含有するが、ヒトDNase1と比較してDNaseのDNA結合を増加させる任意の他のアミノ酸置換を含有しない、かつ/またはヒトDNase1と比較して、DNaseのエンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させる任意の他のアミノ酸置換を含有しない。他の変形形態では、増強されたDNase1は、配列番号152のアミノ酸残基21~280と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、増強されたDNase1は、N74置換およびG105置換の各々を含有するが、ヒトDNase1と比較してDNaseのDNA結合を増加させる任意の他のアミノ酸置換を含有しない、かつ/またはA114置換、もしくはヒトDNase1と比較して、DNaseのエンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させる任意の他のアミノ酸置換を含有しない。アクチン抵抗性を欠如する増強されたDNaseを含む融合物は、融合分子のより高い発現を可能にするために、宿主細胞(例えば、CHO)に対する毒性を減少させるために特に有益である。
【0218】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてDNaseを含む融合ポリペプチドの他の実施形態では、DNaseは、カルボキシル末端核局在化シグナル(本明細書ではNLS2と呼ばれ、配列番号136のアミノ酸残基291~305に対応する)が欠失している短縮化形態のヒト野生型DNase1L3、またはそのような短縮化形態のヒトDNase1L3の機能的バリアントもしくは断片である。例えば、一部の実施形態では、DNaseは、(i)配列番号136のアミノ酸残基21~290、(ii)配列番号138のアミノ酸残基21~290、または(iii)配列番号140のアミノ酸残基21~290と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の実施形態では、DNaseは、(i)配列番号136のアミノ酸残基21~290、(ii)配列番号138のアミノ酸残基21~290、または(iii)配列番号140のアミノ酸残基21~290と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。短縮化形態のヒトDNase1L3またはその機能的バリアントを含む、ある特定の好ましい実施形態では、DNaseは、野生型ヒトDNase1L3(配列番号136)と比較して、分子のN末端の半分における核局在化シグナル(本明細書ではNLS1と呼ばれ、配列番号136のアミノ酸残基80~96に対応する)を不活性化する1つまたは複数のアミノ酸置換を含有する、バリアントDNase1L3であり、一部のそのような実施形態では、配列番号136のR80、R95およびN96に対応する位置のアミノ酸の各々は、アラニンまたはセリンである(例えば、R80、R95およびN96の各々がアラニンである、またはR80、R95およびN96の各々がセリンである)。野生型NLS1コンセンサス配列が除去されている上記の短縮化形態のDNase1L3であるバリアントのより特異的な実施形態では、DNaseは、(i)配列番号138のアミノ酸残基21~290または(ii)配列番号140のアミノ酸残基21~290に示されるアミノ酸配列を有する。
【0219】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてRNaseを含む融合ポリペプチドの一部の実施形態では、RNaseは、ヒト野生型RNase1またはその機能的バリアントもしくは断片である。例えば、一部の実施形態では、RNaseは、配列番号22のアミノ酸残基29~156と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の変形形態では、RNaseは、配列番号22のアミノ酸残基29~156と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0220】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)を含む融合ポリペプチドの一部の実施形態では、SOD1は、ヒト野生型SOD1またはその機能的バリアントもしくは断片である。例えば、一部の実施形態では、SOD1は、配列番号32のアミノ酸残基2~154と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の変形形態では、SOD1は、配列番号32のアミノ酸残基2~154と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の変形形態では、ヒトSOD1(配列番号32)のC7に対応する位置のアミノ酸は、システインではなく、および/またはヒトSOD1のC112に対応する位置のアミノ酸は、システインではなく、一部のそのような実施形態では、ヒトSOD1のC7に対応する位置のアミノ酸は、アラニンであり、および/またはヒトSOD1のC112に対応する位置のアミノ酸は、セリンである。より特異的な変形形態では、SOD1は、C7位のアミノ酸がアラニンに変化しており、C112位のアミノ酸がセリンである、配列番号32の残基2~154に示されるアミノ酸配列(配列番号52の残基23~175または配列番号54の残基23~175としても示される)を含む。
【0221】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてCTLA-4細胞外ドメインを含む融合ポリペプチドの一部の実施形態では、細胞外ドメインは、ヒト野生型CTLA-4細胞外ドメインまたはその機能的バリアントもしくは断片である。例えば、一部の実施形態では、CTLA-4細胞外ドメインは、配列番号66のアミノ酸残基21~144と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の変形形態では、CTLA-4細胞外ドメインは、配列番号66のアミノ酸残基21~144と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0222】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてCD40細胞外ドメインを含む融合ポリペプチドの一部の実施形態では、細胞外ドメインは、ヒト野生型CD40細胞外ドメインまたはその機能的バリアントもしくは断片である。例えば、一部の実施形態では、CD40細胞外ドメインは、(i)配列番号74の残基21~188、(ii)配列番号78の残基21~188、(iii)配列番号82の残基21~188、(iv)配列番号86の残基21~188、または(v)配列番号90の残基21~188と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の実施形態では、CD40細胞外ドメインは、(i)配列番号74の残基21~188、(ii)配列番号78の残基21~188、(iii)配列番号82の残基21~188、(iv)配列番号86の残基21~188、または(v)配列番号90の残基21~188と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0223】
ある特定の好ましい実施形態では、CD40細胞外ドメインは、E64、K81、P85およびL121から選択される野生型ヒトCD40(配列番号68)のアミノ酸に対応する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、この少なくとも1つのアミノ酸置換は、ヒトCD40と比較してCD40リガンド結合を増加させる。これらの位置における特に好適なアミノ酸置換は、ヒトCD40のE64に対応する位置におけるチロシン、ヒトCD40のK81に対応する位置におけるスレオニン、ヒスチジンもしくはセリン、ヒトCD40のP85に対応する位置におけるチロシン、および/またはヒトCD40のL121に対応する位置におけるプロリンである。一部の変形形態では、CD40細胞外ドメインは、ヒトCD40のE64、K81、P85およびL121に対応する位置のうちの少なくとも2つ(例えば、少なくともヒトCD40のK81およびL121に対応する位置に、置換、または少なくともヒトCD40のE64、K81およびP85に対応する位置に、置換)を含有する。一部の実施形態では、ヒトCD40のK81に対応する位置におけるアミノ酸は、スレオニン、ヒスチジンおよびセリンから選択される。他の実施形態では、ヒトCD40のK81に対応する位置におけるアミノ酸は、ヒスチジンであり、ヒトCD40のL121に対応する位置におけるアミノ酸は、プロリンである。さらに他の実施形態では、ヒトCD40のE64に対応する位置におけるアミノ酸は、チロシンであり、ヒトCD40のK81に対応する位置におけるアミノ酸は、スレオニンであり、ヒトCD40のP85に対応する位置におけるアミノ酸は、チロシンである。特異的な変形形態では、CD40細胞外ドメインは、(i)配列番号74の残基21~188、(ii)配列番号78の残基21~188、(iii)配列番号82の残基21~188、(iv)配列番号86の残基21~188、または(v)配列番号90の残基21~188に示されるアミノ酸配列を含む。
【0224】
炎症性サイトカインに特異的に結合しそれを中和するポリペプチドを第1の生物学的に活性なポリペプチドとして含む融合ポリペプチドの一部の実施形態では、炎症性サイトカインは、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、トランスフォーミング増殖因子(TGF)スーパーファミリーのメンバー、インターロイキン、ケモカイン、コロニー刺激因子(CSF)、またはインターフェロンである。より特定の実施形態では、炎症性サイトカインは、腫瘍壊死因子α(TNFα)、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-11(IL-11)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-13(IL-13)、インターロイキン-17A(IL-17A)、インターロイキン-17F(IL-17F)、インターロイキン-1α(IL-1α)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-18(IL-18)、インターロイキン-21(IL-21)、インターロイキン-31(IL-31)、インターロイキン-33(IL-33)、インターロイキン-36α(IL-36α)、インターロイキン-36β(IL-36β)、インターロイキンIL-36γ(IL-36γ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびインターフェロンγ(IFNγ)からなる群から選択される。一部の変形形態では、炎症性サイトカインに特異的に結合しそれを中和するポリペプチドは、抗体である。一部の代替変形形態では、炎症性サイトカインに特異的に結合しそれを中和するポリペプチドは、代替足場タンパク質である。
【0225】
TNFαに特異的に結合しそれを中和するポリペプチド(「抗TNFαポリペプチド」)を含む融合ポリペプチドの、ある特定の実施形態では、抗TNFαポリペプチドは、抗TNFαモノクローナル抗体アダリムマブと同じ重鎖および軽鎖可変ドメイン(VHおよびVL)を有する抗体と、TNFαへの結合について競合する。アダリムマブVHおよびVLのアミノ酸配列は、本明細書において配列番号108および配列番号110にそれぞれ示される(重鎖および軽鎖可変領域についてのそれぞれGenBank受託番号LQ961187およびLQ961186;国際PCT公開番号WO2014/159579も参照されたい)。
【0226】
TGF-βに特異的に結合しそれを中和するポリペプチド(「抗TGF-βポリペプチド」)を含む融合ポリペプチドの、ある特定の実施形態では、抗TGF-βポリペプチドは、抗TGF-βモノクローナル抗体フレソリムマブと同じ重鎖および軽鎖可変ドメイン(VHおよびVL)を有する抗体と、TGF-βへの結合について競合する。フレソリムマブVHおよびVLのアミノ酸配列は、本明細書において配列番号112および配列番号114にそれぞれ示される(重鎖および軽鎖可変領域についてのそれぞれGenBank受託番号JC232803.1およびJC232805;国際PCT公開番号WO2013/065869も参照されたい)。
【0227】
アダリムマブまたはフレソリムマブのVHおよびVLドメインを有する抗体とそれぞれTNFαまたはTGF-βへの結合について競合する結合タンパク質の能力は、試験TNFα結合タンパク質(例えば、抗体)もしくはその機能的結合断片が、アダリムマブのVHおよびVLドメインを有する(即ち、それぞれ配列番号108および配列番号110のVHおよびVLドメインを有する)参照抗体のTNFαへの特異的結合を防止もしくは阻害するアッセイ、または試験TNF-β結合タンパク質(例えば、抗体)もしくはその機能的結合断片が、フレソリムマブのVHおよびVLドメインを有する(即ち、それぞれ配列番号112および配列番号114のVHおよびVLドメインを有する)参照抗体のTNF-βへの特異的結合を防止もしくは阻害するアッセイによって決定され得る。典型的に、そのようなアッセイは、固体表面に結合した精製標的タンパク質またはその標的タンパク質を有する細胞、非標識試験タンパク質(即ち、TNFα結合もしくはTGF-β結合タンパク質、または候補TNFα結合もしくはTGF-β結合タンパク質)、および標識参照抗体の使用を含む。競合的阻害は、試験タンパク質の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することにより測定される。通常、試験タンパク質は、過剰に存在する、および/または最初に結合できるようにされる。競合アッセイにより同定される可溶性TNFα結合またはTGF-β結合タンパク質(「競合TNFα結合またはTGF-β結合タンパク質」)としては、参照抗体により結合される同じエピトープに結合するタンパク質、参照抗体により結合されるエピトープとオーバーラップするエピトープに結合するタンパク質、および参照抗体により結合されるエピトープの、立体障害が生じるのに十分なほど近位にある、エピトープに結合するタンパク質が挙げられる。通常、競合TNFα結合またはTGF-β結合タンパク質(例えば、競合抗TNFαまたは抗TGF-β抗体)が過剰に存在する場合、それは、TNFαまたはTGF-β標的タンパク質への参照抗体の特異的結合を少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、または少なくとも75%阻害することになり、一部の事例では、結合は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、またはそれより高度に阻害される。逆に言うと、参照抗体が結合される場合、それは、好ましくは、後で添加される競合TNFα結合またはTGF-β結合タンパク質(例えば、競合抗TNFαまたは抗TGF-β抗体)の結合を少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%阻害することになり、一部の事例では、結合は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、またはそれより高度に阻害される。
【0228】
ある特定の好ましい実施形態では、本発明による使用のための炎症性サイトカインに特異的に結合しそれを中和するポリペプチドは、一本鎖抗体である。特に好適な一本鎖抗体としては、一本鎖Fv(scFv)および単一ドメイン抗体(sdAb)が挙げられる。一本鎖抗体は、例えば、所望の特異性を有する同定された無傷のネイティブモノクローナル抗体または抗体断片に由来し得る。モノクローナル抗体およびそれらの抗原結合性抗体断片を調製および単離するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Current Protocols in Immunology, (Cooligan et al. eds., John Wiley and Sons, Inc. 2006);Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor, NY, 2nd ed. 1989);およびMonoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications (Hurrell ed., CRC Press, Inc., Boca Raton, FL, 1982)を参照されたい。scFvをはじめとする抗原結合性断片を、例えば、当技術分野において公知の方法に従ってファージディスプレイライブラリーを使用して、調製することができる。当業者には明らかであるように、これらの方法は、本発明による使用のための炎症性サイトカインに対する抗体の産生に同様に応用できる。
【0229】
ネイティブ抗体可変領域のアミノ酸配列を、組換えDNA技法の適用によって変えることができる。したがって、抗体を、所望の特徴を得るために再設計することができる。典型的には、抗原結合特徴を改善するために、可変領域の安定性を改善するために、または免疫原性のリスクを低下させために、可変領域を変化させることになる。ファージディスプレイ技法を用いることもできる。例えば、Huse et al., Science 246:1275-1281, 1989;Ladnerら、米国特許第5,571,698号を参照されたい。
【0230】
ヒトにおける使用のための治療用抗体については、公知の手順に従って抗体の非ヒト領域をヒト化することが、通常、望ましい。ヒト化抗体を作製する方法は、例えば、米国特許第5,530,101号、同第5,821,337号、同第5,585,089号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号において開示されている。ヒト化抗体を作製する方法は、例えば、米国特許第7,732,578号においても開示されている。典型的に、ヒト化抗炎症性サイトカイン抗体は、マウスドナー免疫グロブリンの相補性決定領域(CDR)、ならびにヒトアクセプター免疫グロブリンの重鎖および軽鎖フレームワークを含む。多くの場合、ヒトフレームヒトワーク領域内のフレームワーク残基は、抗原結合を変える、好ましくは改善する、ためにドナー抗体からの対応する残基で置換されることになる。これらのフレームワーク置換は、当技術分野において周知の方法により、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDR残基とフレームワーク残基の相互作用のモデリング、および特定の位置における異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較により、同定される。Queenら、米国特許5,585,089号;Riechmann et al., Nature 332:323, 1988を参照されたい。
【0231】
本発明は、完全ヒト抗体、例えば、ヒト抗体発現ライブラリー(例えば、ファージディスプレイライブラリー)から選択されたもの;対応する内因性免疫グロブリン遺伝子座が不活性化されているヒト重鎖遺伝子座およびヒト軽鎖遺伝子座トランスジェニック非ヒト動物(例えば、マウス)において作製されたもの;または炎症性サイトカイン標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化することにより調製されたものなどの使用も、包含する。
【0232】
本発明による使用のための抗体は、例えば、5×10-4M未満、10-4M未満、5×10-5M未満、10-5M未満、5×10-6M未満、10-6M未満、5×10-7M未満、10-7M未満、5×10-8M未満、10-8M未満、5×10-9M未満、10-9M未満、5×10-10M未満、10-10M未満、5×10-11M未満、10-11M未満、5×10-12M未満、10-12M未満、5×10-13M未満、10-13M未満、5×10-14M未満、10-14M未満、5×10-15M未満、または10-15M未満である、解離定数(Kd)を含む、結合親和性を有する。
【0233】
本発明による使用のための抗体は、参照抗体と比較して1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または付加を有するバリアントを含み、したがって、このバリアントは、参照抗体の1つまたは複数の生物学的特性を保持する。ある特定の実施形態では、抗体は、配列番号108および配列番号110にそれぞれ示される通りのVHおよび/またはVL配列を有する参照抗TNFα中和抗体と比較して1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または付加を有するバリアントであり、したがって、この抗体は、TNFαに特異的に結合するおよびTNFα活性を中和する参照抗体の能力を保持する。他の実施形態では、抗体は、配列番号112および配列番号114にそれぞれ示される通りのVHおよび/またはVL配列を有する参照抗TNF-β中和抗体と比較して1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または付加を有するバリアントであり、したがって、この抗体は、TNF-βに特異的に結合するおよびTNF-β活性を中和する参照抗体の能力を保持する。当業者は、参照抗体と比較して1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または付加を有するバリアントを容易に産生することができる。遺伝学的(抑制、欠失、突然変異など)、化学的および酵素的技法を含む、これらのバリアントを得るための技法は、当業者に公知である。
【0234】
TNFαに特異的に結合しそれを中和する一本鎖抗体(「抗TNFα一本鎖抗体」)を含む上記の融合ポリペプチドの一部の実施形態では、抗TNFα一本鎖抗体は、抗TNFαモノクローナル抗体アダリムマブの1つまたは複数のCDRを含む。したがって、ある特定の変形形態では、抗TNFα一本鎖抗体は、アダリムマブVHドメイン(配列番号108)の重鎖CDR(CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3領域のうちの少なくとも1つ)、および/またはアダリムマブVLドメイン(配列番号110)の軽鎖CDR(CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3領域のうちの少なくとも1つ)を含む。典型的な実施形態では、抗TNFα一本鎖抗体は、アダリムマブVHドメイン(配列番号108)の2つもしくは3つのCDR、および/またはアダリムマブVLドメイン(配列番号110)の2つもしくは3つのCDRを有する。抗TNFα一本鎖抗体がアダリムマブVHドメインの少なくとも1つのCDRを有する、一部の変形形態では、抗体は、アダリムマブVLドメインの少なくとも1つのCDRをさらに含み、一部のそのような実施形態では、抗体は、アダリムマブの3つ全ての重鎖CDRおよび3つ全ての軽鎖CDR(即ち、配列番号108のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3、ならびに配列番号110のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3)を有する。1つまたは複数のCDRは、例えば、CDRのChothia定義、Kabat定義、AbM定義、IMGTデータベース定義、または接触定義に従って、定義され得る。CDRのIMGTデータベース定義によれば、アダリムマブのCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3は、それぞれ、配列番号108の残基26~33、50~59、および97~110に対応し、アダリムマブのCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3は、それぞれ、配列番号110の残基27~32、50~52、および89~97に対応する。CDRのKabat定義によれば、アダリムマブのCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3は、それぞれ、配列番号108の残基31~35、50~66、および99~110に対応し、アダリムマブのCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3は、それぞれ、配列番号110の残基24~34、50~56、および89~97に対応する。上記の抗TNFα一本鎖抗体の特定の変形形態では、一本鎖抗体は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク領域、またはヒト免疫グロブリンフレームワーク領域に対して少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するそのバリアントを有する、VHドメインおよび/もしくはVLドメインを含む。
【0235】
一部の実施形態では、抗TNFα一本鎖抗体は、(a)配列番号108のアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖可変ドメイン、および/または(b)配列番号110のアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖可変ドメインを含む。
【0236】
一部の実施形態では、本発明による使用のための抗TNFα一本鎖抗体は、重鎖CDR CDR-H1TNFα、CDR-H2TNFα、およびCDR-H3TNFαを含み、VH CDRのこのセットは、アダリムマブVHドメイン(配列番号108)の参照CDR CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のセットと比較して10またはそれより少ないアミノ酸置換を有する。他の相互に排他的でない実施形態では、抗TNFα一本鎖は、軽鎖CDR CDR-L1TNFα、CDR-L2TNFα、およびCDR-L3TNFαを含み、VL CDRのこのセットは、アダリムマブVLドメイン(配列番号110)の参照CDR CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のセットと比較して10またはそれより少ないアミノ酸置換を有する。ある特定の実施形態では、抗TNFα一本鎖抗体は、上記の重鎖および軽鎖CDRの両方のセットを含む。特に好適な抗TNFα一本鎖抗体は、CDR CDR-H1TNFα、CDR-H2TNFα、およびCDR-H3TNFαを含む重鎖可変ドメインと、CDR CDR-L1TNFα、CDR-L2TNFα、およびCDR-L3TNFαを含む軽鎖可変ドメインとを含み、重鎖CDRのこのセットは、アダリムマブのCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3と比較して6つまたはそれより少ない、典型的には5つまたはそれより少ない、より典型的には4つまたはそれより少ない、最も典型的には3つまたはそれより少ないアミノ酸置換を有し、軽鎖CDRのこのセットは、アダリムマブのCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3と比較して6つまたはそれより少ない、典型的には5つまたはそれより少ない、より典型的には4つまたはそれより少ない、最も典型的には3つまたはそれより少ないアミノ酸置換を有する。上記のCDRは、例えば、CDRのChothia定義、Kabat定義、AbM定義、IMGTデータベース定義、または接触定義に従って、定義され得る。上記の抗TNFα抗体の特定の変形形態では、VHおよびVLドメインの各々は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク領域、またはヒト免疫グロブリンフレームワーク領域に対して少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するそのバリアントを有する。
【0237】
TGF-βに特異的に結合しそれを中和する一本鎖抗体(「抗TGF-β一本鎖抗体」)を含む上記の融合ポリペプチドの一部の実施形態では、抗TGF-β一本鎖抗体は、抗TGF-βモノクローナル抗体フレソリムマブの1つまたは複数CDRを含む。したがって、ある特定の変形形態では、抗TGF-β一本鎖抗体は、フレソリムマブVHドメイン(配列番号112)の重鎖CDR(CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3領域のうちの少なくとも1つ)、および/またはフレソリムマブVLドメイン(配列番号114)の軽鎖CDR(CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3領域のうちの少なくとも1つ)を含む。典型的な実施形態では、抗TGF-β一本鎖抗体は、フレソリムマブVHドメイン(配列番号112)の2つもしくは3つのCDR、および/またはフレソリムマブVLドメイン(配列番号114)の2つもしくは3つのCDRを有する。抗TGF-β一本鎖抗体がフレソリムマブVHドメインの少なくとも1つのCDRを有する、一部の変形形態では、抗体は、フレソリムマブVLドメインの少なくとも1つのCDRをさらに含み、一部のそのような実施形態では、抗体は、フレソリムマブの3つ全ての重鎖CDRおよび3つ全ての軽鎖CDR(即ち、配列番号112のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3、ならびに配列番号114のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3)を有する。1つまたは複数のCDRは、例えば、CDRのChothia定義、Kabat定義、AbM定義、IMGTデータベース定義、または接触定義に従って、定義され得る。CDRのKabat定義によれば、フレソリムマブのCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3は、それぞれ、配列番号112の残基31~35、50~66、および99~106に対応し、フレソリムマブのCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3は、それぞれ、配列番号114の残基24~40、56~62、および95~102に対応する。上記の抗TGF-β一本鎖抗体の特定の変形形態では、一本鎖抗体は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク領域、またはヒト免疫グロブリンフレームワーク領域に対して少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するそのバリアントを有する、VHドメインおよび/もしくはVLドメインを含む。
【0238】
一部の実施形態では、抗TGF-β一本鎖抗体は、(a)配列番号112のアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である重鎖可変ドメイン、および/または(b)配列番号114のアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である軽鎖可変ドメインを含む。
【0239】
一部の実施形態では、本発明による使用のための抗TGF-β一本鎖抗体は、重鎖CDR CDR-H1TGF-β、CDR-H2TGF-β、およびCDR-H3TGF-βを含み、VH CDRのこのセットは、フレソリムマブVHドメイン(配列番号112)の参照CDR CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のセットと比較して10またはそれより少ないアミノ酸置換を有する。他の相互に排他的でない実施形態では、抗TGF-β一本鎖は、軽鎖CDR CDR-L1TGF-β、CDR-L2TGF-β、およびCDR-L3TGF-βを含み、VL CDRのこのセットは、フレソリムマブVLドメイン(配列番号114)の参照CDR CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のセットと比較して10またはそれより少ないアミノ酸置換を有する。ある特定の実施形態では、抗TGF-β一本鎖抗体は、上記の重鎖および軽鎖CDRの両方のセットを含む。特に好適な抗TGF-β一本鎖抗体は、CDR CDR-H1TGF-β、CDR-H2TGF-β、およびCDR-H3TGF-βを含む重鎖可変ドメインと、CDR CDR-L1TGF-β、CDR-L2TGF-β、およびCDR-L3TGF-βを含む軽鎖可変ドメインとを含み、重鎖CDRのこのセットは、フレソリムマブのCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3と比較して6つまたはそれより少ない、典型的には5つまたはそれより少ない、より典型的には4つまたはそれより少ない、最も典型的には3つまたはそれより少ないアミノ酸置換を有し、軽鎖CDRのこのセットは、フレソリムマブのCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3と比較して6つまたはそれより少ない、典型的には5つまたはそれより少ない、より典型的には4つまたはそれより少ない、最も典型的には3つまたはそれより少ないアミノ酸置換を有する。上記のCDRは、例えば、CDRのChothia定義、Kabat定義、AbM定義、IMGTデータベース定義、または接触定義に従って、定義され得る。上記の抗TGF-β抗体の特定の変形形態では、VHおよびVLドメインの各々は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク領域、またはヒト免疫グロブリンフレームワーク領域に対して少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するそのバリアントを有する。
【0240】
本発明による使用のための抗炎症性サイトカイン抗体は、親和性成熟実施形態を含む。親和性成熟抗体は、当技術分野において公知の手順により産生することができる(例えば、Marks et al., Bio/Technology 10:779-783, 1992;Barbas et al., Proc Nat. Acad. Sci. USA 91:3809-3813, 1994;Schier et al., Gene 169:147-155, 1995;Yelton et al., J. Immunol. 155:1994-2004, 1995;Jackson et al., J. Immunol. 154:3310-9, 1995;Hawkins et al., J. Mol. Biol. 226:889-896, 1992;およびPCT公開番号WO2004/058184を参照されたい)。抗体の親和性を調整するための1つの方法は、「ライブラリースキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。一般に、ライブラリースキャニング突然変異誘発は、次のように行われる。少なくとも1つのCDR内の(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDR内の)1つまたは複数のアミノ酸位置が、当技術分野において認知されている方法を使用して2個またはそれより多くの(例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個の)アミノ酸に置き換えられる。これによって、2つまたはそれより多くのメンバーという複雑度(位置ごとに2個またはそれより多くのアミノ酸が置換される場合)を各々が有するクローンの小さいライブラリー(一部の実施形態では、分析されるアミノ酸位置ごとに1つ)が生成される。一般に、ライブラリーは、ネイティブ(非置換)アミノ酸を含むクローンも含む。各ライブラリーからの少数のクローン、例えば、約20~80クローン(ライブラリーの複雑度に依存して)が、標的ポリペプチド(または他の結合標的)に対する結合親和性についてスクリーニングされ、結合が増加される、同じである、減少される、または結合しない候補が、同定される。結合親和性は、例えば、約2倍のまたはそれより大きい結合親和性の差を検出するBiacore(商標)表面プラズモン共鳴分析を使用して、決定され得る。Biacore(商標)は、出発抗体が、比較的高い親和性、例えば約10nMまたはそれより小さいKD、で既に結合している場合、特に有用である。
【0241】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとして抗TNFα一本鎖抗体を含む融合ポリペプチドの一部の実施形態では、抗TNFα一本鎖抗体は、(i)配列番号92のアミノ酸残基21~268または(ii)配列番号96のアミノ酸残基21~268と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の変形形態では、抗TNFα一本鎖抗体は、(i)配列番号92のアミノ酸残基21~268または(ii)配列番号96のアミノ酸残基21~268と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0242】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとして抗TGF-β一本鎖抗体を含む融合ポリペプチドの一部の実施形態では、抗TGF-β一本鎖抗体は、(i)配列番号100のアミノ酸残基21~269または(ii)配列番号104のアミノ酸残基21~269と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の変形形態では、抗TGF-β一本鎖抗体は、(i)配列番号100のアミノ酸残基21~269または(ii)配列番号104のアミノ酸残基21~269と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0243】
本発明による使用のためのポリペプチドリンカーは、天然に存在することがあり、合成であることがあり、または両方の組合せであることがある。リンカーは、2つの別々のポリペプチド領域(例えば、Fc領域とパラオキソナーゼ、またはFc領域とDNase)を結合し、連結されたポリペプチド領域を、より長いポリペプチドの別々の別個のドメインとして維持する。リンカーは、別々の別個のドメインが共働するが別々の特性を維持することを可能にし得る(例えば、パラオキソナーゼまたはDNaseに連結されたFc領域の場合、Fc領域に対するFc受容体(例えば、FcRn)結合を維持することができ、その上、パラオキソナーゼの機能特性(例えば、有機ホスファターゼもしくはアリールエステラーゼ活性)またはDNaseの機能特性(例えば、DNA結合およびヌクレアーゼ活性)が維持されることになる)。異種ポリペプチドを接続するための天然に存在するペプチドリンカーおよび人工ペプチドリンカーの使用の例については、例えば、Hallewell et al., J. Biol. Chem. 264, 5260-5268, 1989;Alfthan et al., Protein Eng. 8, 725-731, 1995;Robinson and Sauer, Biochemistry 35, 109-116, 1996;Khandekar et al., J. Biol. Chem. 272, 32190-32197, 1997;Fares et al., Endocrinology 139, 2459-2464, 1998;Smallshaw et al., Protein Eng. 12, 623-630, 1999;米国特許第5,856,456号を参照されたい。
【0244】
典型的に、リンカーポリペプチド内の残基は、全体的に親水性の性質を提供するように、ならびに非免疫原性および可動性であるように、選択される。本明細書で使用される場合、「可動性」リンカーは、溶液中で実質的に安定な高次立体構造を欠いているものであるが、局所的安定領域は許容される。一般に、小さい、極性の、および親水性の残基が好ましく、嵩高い疎水性の残基は望ましくない。局所電荷のあるエリアは避けるべきである。リンカーポリペプチドが荷電残基を含む場合、それらの残基は、通常、そのポリペプチドの小領域内に正味の中性電荷を持たせるように位置することになる。したがって、荷電残基を反対の電荷の残基に隣接して配置することが好ましい。一般に、リンカーポリペプチドに含めるのに好ましい残基としては、Gly、Ser、Ala、Thr、AsnおよびGlnが挙げられ、より好ましい残基としては、Gly、Ser、AlaおよびThrが挙げられ、最も好ましい残基は、GlyおよびSerである。一般に、Phe、Tyr、Trp、Pro、Leu、Ile、LysおよびArg残基は、避けられ(リンカーの免疫グロブリンヒンジ領域内に存在する場合を除いて)、Pro残基は、それらの疎水性、および可動性の欠如に起因して避けられ、LysおよびArg残基は、潜在的な免疫原性に起因して避けられることになる。リンカーの配列はまた、望ましくないタンパク質分解を避けるように設計されることになる。
【0245】
ある特定の実施形態では、リンカーL1は、少なくとも2個または少なくとも3個のアミノ酸残基(例えば、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも16個、少なくとも26個、または少なくとも36個のアミノ酸残基)を含む。特定の変形形態では、L1は、2~60個のアミノ酸残基、3~60個のアミノ酸残基、5~40個のアミノ酸残基、または15~40個のアミノ酸残基からなる。他の変形形態では、L1は、2~50個、2~40個、2~36個、2~35個、2~30個、2~26個、3~50個、3~40個、3~36個、3~35個、3~30個、3~26個、5~60個、5~50個、5~40個、5~36個、5~35個、5~30個、5~26個、10~60個、10~50個、10~40個、10~36個、10~35個、10~30個、10~26個、15~60個、15~50個、15~36個、15~35個、15~30個、または15~26個のアミノ酸残基からなる。他の変形形態では、L1は、16~60個、16~50個、16~40個、または16~36個のアミノ酸残基からなる。さらに他の変形形態では、L1は、20~60個、20~50個、20~40個、20~36個、25~60個、25~50個、25~40個、または25~36個のアミノ酸残基からなる。さらに他の変形形態では、L1は、26~60個、26~50個、26~40個、または26~36個のアミノ酸残基からなる。より特異的な変形形態では、L1は、16個のアミノ酸残基、21個のアミノ酸残基、26個のアミノ酸残基、31個のアミノ酸残基、または36個のアミノ酸残基からなる。一部の実施形態では、L1は、残基配列番号10に、配列番号12または配列番号14の残基268~288に示される、アミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0246】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてDNaseを含む融合ポリペプチドの典型的な変形形態では、L1は、存在し、少なくとも15個のアミノ酸残基を含む。例えば、DNaseのカルボキシル末端を別の融合体成分(例えば、免疫グロブリンFc領域)のアミノ末端に結合するL1リンカーは、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、または少なくとも26個のアミノ酸残基を含み得る。より特定の変形形態では、L1は、15~60個のアミノ酸残基、15~51個のアミノ酸残基、15~50個のアミノ酸残基、15~46個のアミノ酸残基、15~45個のアミノ酸残基、15~41個のアミノ酸残基、15~40個のアミノ酸残基、15~36個のアミノ酸残基、26~60個のアミノ酸残基、26~51個のアミノ酸残基、26~50個のアミノ酸残基、26~46個のアミノ酸残基、26~45個のアミノ酸残基、26~41個のアミノ酸残基、26~40個のアミノ酸残基、または26~36個のアミノ酸残基からなる。さらにより特異的な変形形態では、DNaseを連結するL1は、26個のアミノ酸残基、27個のアミノ酸残基、28個のアミノ酸残基、29個のアミノ酸残基、30個のアミノ酸残基、31個のアミノ酸残基、32個のアミノ酸残基、33個のアミノ酸残基、34個のアミノ酸残基、35個のアミノ酸残基、または36個のアミノ酸残基からなる。一部の実施形態では、DNaseを連結するL1は、配列番号12または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0247】
第1の生物学的に活性なポリペプチドとしてRNaseまたはSOD1を含む融合ポリペプチドの一部の変形形態では、L1は、存在し、少なくとも2個のアミノ酸残基を含む。例えば、RNaseまたはSOD1のカルボキシル末端を別の融合体成分(例えば、免疫グロブリンFc領域)のアミノ末端に結合するL1リンカーは、少なくとも3個、少なくとも5個、または少なくとも10個のアミノ酸残基を含み得る。より特定の変形形態では、RNaseまたはSOD1を連結するL1は、2~60個のアミノ酸残基、2~51個のアミノ酸残基、2~50個のアミノ酸残基、2~46個のアミノ酸残基、2~45個のアミノ酸残基、2~41個のアミノ酸残基、2~40個のアミノ酸残基、2~36個のアミノ酸残基、10~60個のアミノ酸残基、10~51個のアミノ酸残基、10~50個のアミノ酸残基、10~46個のアミノ酸残基、10~45個のアミノ酸残基、10~41個のアミノ酸残基、10~40個のアミノ酸残基、または10~36個のアミノ酸残基からなる。より特異的な変形形態では、RNaseまたはSOD1を連結するL1は、16または26個のアミノ酸残基からなる。一部の実施形態では、RNaseまたはSOD1を連結するL1は、配列番号10または配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0248】
本明細書に記載の式P-L1-Xを含む融合ポリペプチドの一部の変形形態では、L1は、少なくとも20個のアミノ酸残基を含む。例えば、パラオキソナーゼのカルボキシル末端を別の融合体成分(例えば、免疫グロブリンFc領域)のアミノ末端に結合するL1リンカーは、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、または少なくとも36個のアミノ酸残基を含み得る。ある特定の変形形態では、L1は、20~60個のアミノ酸残基、20~50個のアミノ酸残基、20~45個のアミノ酸残基、20~40個のアミノ酸残基、20~36個のアミノ酸残基、26~60個のアミノ酸残基、26~50個のアミノ酸残基、26~45個のアミノ酸残基、26~40個のアミノ酸残基、26~36個のアミノ酸残基、36~60個のアミノ酸残基、36~50個のアミノ酸残基、36~45個のアミノ酸残基、または36~40個のアミノ酸残基からなる。一部の実施形態では、パラオキソナーゼのカルボキシル末端を連結するL1は、配列番号12または配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0249】
例示的なL2リンカーは、少なくとも3個のアミノ酸残基を含み、典型的には最大で60アミノ酸残基である。ある特定の変形形態では、L2リンカーは、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個のアミノ酸残基を含む。より特異的な変形形態では、L2は、6~30個、6~25個、6~20個、7~30個、7~25個、7~20個、8~30個、8~25個、8~20個、9~30個、9~25個、9~20個、10~30個、10~25個、10~20個、11~30個、11~25個、11~20個、12~30個、12~25個、または12~20個のアミノ酸残基からなる。一部の実施形態では、L2は、配列番号56に示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0250】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、複数のグリシン残基を含む。例えば、一部の実施形態では、ポリペプチドリンカー(例えば、L1)は、複数のグリシン残基および必要に応じて少なくとも1個のセリン残基を含む。特定の変形形態では、ポリペプチドリンカー(例えば、L1)は、配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号29)、例えば、配列番号29のアミノ酸配列の2つまたはそれより多くのタンデムリピートなどを含む。一部の実施形態では、リンカーは、配列[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n([配列番号29]n)を含み、nは、正の整数、例えば、2~8、2~7、2~6、3~8、3~7、3~6、4~8、4~7、または4~6の整数などである。式[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]nを含むポリペプチドリンカーの特異的な変形形態では、nは4である。式[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]nを含むポリペプチドリンカーの別の特異的な変形形態では、nは6である。式[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]nを含むポリペプチドリンカーのさらに別の特異的な変形形態では、nは5である。ある特定の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、ポリペプチドリンカーの2つの他の配列の間に挿入された(例えば、リンカーのN末端のAsp-Leu-SerとリンカーのC末端のThr-Gly-Leuとの間に挿入された)一連のグリシンおよびセリン残基(例えば、[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n、式中、nは、上記の通り定義される)を含む。他の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、ポリペプチドリンカーの別の配列の一方または両方の末端に結合されたグリシンおよびセリン残基(例えば、[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n、式中、nは、上記の通り定義される)を含む。
【0251】
Xが存在する上記の融合ポリペプチドの一部の実施形態では、Xは、ダイマー化ドメインである。様々なダイマー化ドメインが、本明細書に記載されるようなある特定の融合ポリペプチド実施形態およびダイマー性融合タンパク質による使用に好適である。ダイマー化ドメインを含む融合ポリペプチドの、ある特定の実施形態では、ダイマー化ドメインは、免疫グロブリン重鎖定常領域である。免疫グロブリン重鎖定常領域は、ネイティブ配列定常領域であることがあり、またはバリアント定常領域であることがある。典型的な変形形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域は、in vivoで融合ポリペプチドに改善された半減期をもたらすのに十分な親和性で新生児Fc受容体(FcRn)に結合することができる。本発明による使用に特に好適な免疫グロブリン重鎖定常領域は、免疫グロブリンFc領域である。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、1つまたは複数のエフェクター機能(例えば、ADCCおよびCDCエフェクター機能の一方または両方)を欠いている。
【0252】
免疫グロブリンFc領域を含む融合ポリペプチドの一部の実施形態では、免疫グロブリンFc領域は、野生型ヒトIgG配列と比較して、分子がグリコシル化されないためのアミノ酸置換をCH2領域に有するヒトIgG Fc領域であり、このアミノ酸置換は、これに限定されないが、N297(ヒトIgG重鎖定常領域のEu番号付け)(配列番号26、配列番号28、配列番号116または配列番号118のアミノ酸位置82に対応する)におけるアミノ酸置換を含む。別の実施形態では、Fc領域は、ヒンジ領域の3つのシステイン(C220、C226、C229)各々が非システイン残基(例えば、セリン)に変化しており、必要に応じてCH2ドメインの238位におけるプロリンが非プロリン残基(例えば、セリンまたはアスパラギン酸)に変化している、ヒトIgG1(γ1)である。別の実施形態では、Fc領域は、システインC220が非システイン残基(例えば、セリン)に変化しており、必要に応じてCH2ドメインの238位におけるプロリンが非プロリン残基(例えば、セリンまたはアスパラギン酸)に変化している、ヒトγ1である。別の実施形態では、Fc領域は、N297が非アスパラギン残基(例えば、アラニン、グルタミンまたはグリシン)に変化している、ヒトγ1である。別の実施形態では、Fc領域は、Eu 292位~300位の間に1つまたは複数のアミノ酸置換を有するヒトγ1である。別の実施形態では、Fc領域は、残基292~300の間の任意の位置に1つまたは複数のアミノ酸付加または欠失を有するヒトγ1である。別の実施形態では、Fc領域は、SCCヒンジを有する(即ち、システインC220がセリンに変化しており、Eu 226および229位の各々にシステインがある)、またはSSSヒンジを有する(即ち、Eu 220、226および229位における3個のシステインの各々がセリンに変化している)、ヒトγ1である。さらなる実施形態では、Fc領域は、SCCヒンジを有しかつP238にアミノ酸置換を有するヒトγ1である。別の実施形態では、Fcドメインは、半減期に重要なFcRn結合に影響を与えることなくFcガンマ受容体(I、II、III)による結合を変更するアミノ酸置換を有するヒトγ1である。さらなる実施形態では、Fc領域は、Ehrhardt and Cooper, Curr. Top. Microbiol. Immunol. 2010 Aug. 3 (Immunoregulatory Roles for Fc Receptor-Like Molecules);Davis et al., Ann. Rev. Immunol. 25:525-60, 2007 (Fc receptor-like molecules);またはSwainson et al., J. Immunol. 184:3639-47, 2010において開示されているようなFc領域である。
【0253】
一部の実施形態では、Fc領域は、融合タンパク質の抗原非依存性エフェクター機能を変更するアミノ酸置換を含む。一部のそのような実施形態では、Fc領域は、結果として生じる分子の循環半減期を変更するアミノ酸置換を含む。そのようなFcバリアントは、これらの置換を欠いているFc領域と比較してFcRnへの結合の増加または減少のいずれかを示し、したがって、結果として生じる分子の血清中での、それぞれ半減期の延長または短縮をもたらす。FcRnに対する親和性が改善されたFcバリアントは、より長い血清中半減期を有すると予測され、このようなFcバリアントは、哺乳動物を処置する方法に、投与されたFc融合体の長い半減期が所望される場合、および肺経由での循環血液への輸送の増加が所望される場合、有用に応用される。その一方で、FcRn結合親和性が低下したFcバリアントは、より短い半減期を有すると予想され、このようなバリアントも、例えば、哺乳動物への投与に、短縮された循環時間が有利であり得る場合(例えば、融合タンパク質が、長期間にわたって循環血液中に存在すると毒性副作用をもたらす場合)、有用である。NETosisによって特徴付けられる状態の処置には、FcRn結合を変更することによるDNase-Fc融合タンパク質の半減期の微調整が有用となり得るのは、NETが、発病の一因となる一方で、ある特定の状況では有益でもあるからである。病原性NETの消化は、それほど長い半減期を必要としない可能性があり、そのためDNaseのより迅速なクリアランスによって好中球がそれらの保護的抗菌機能でNETを形成することができるようになる可能性がある。FcRn結合親和性が低下したFcバリアントは、胎盤を横断する可能性も低く、それ故、妊婦における疾患または障害の処置にも有用である。加えて、FcRn結合親和性の低下が所望され得る他の応用は、脳、腎臓および/または肝臓への局在化が所望される応用を含む。1つの例示的な実施形態では、本発明の融合分子は、血管系から腎臓糸球体の上皮を横断する輸送の低減を示す。別の実施形態では、本発明の融合分子は、血液脳関門(BBB)を横断する脳から血管腔への輸送の低減を示す。一実施形態では、FcRn結合が変更された融合分子は、Fcドメインの「FcRn結合ループ」内に1つまたは複数のアミノ酸置換を有するFc領域を含む。FcRn結合活性を変更する例示的なアミノ酸置換は、参照により本明細書に組み込まれる国際PCT公開番号WO05/047327において開示されている。FcRn結合活性を増加させる例示的なアミノ酸置換は、例えば、Wang et al., Protein Cell 9:63-73, 2018(例えば表1を参照されたい)によっても、記載されている。一部の実施形態では、FcRn結合活性が増加したFcバリアントは、Eu 252、254、および256位の各々にアミノ酸置換(例えば、M252Y、S254T、およびT256E)を有する。他の変形形態では、FcRn結合活性が増加したFcバリアントは、Eu 428および434位の各々にアミノ酸置換(例えば、M428LおよびN434S)を有する。
【0254】
他の実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、ポリペプチドの1つまたは複数の抗原依存性エフェクター機能、特に、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または補体活性化を、例えば野生型Fc領域と比較して、変更するアミノ酸置換を含む、Fcバリアントを含む。例示的な実施形態では、そのような融合ポリペプチドは、Fcガンマ受容体(FcγR、例えば、CD16)への結合の変更を示す。そのような融合ポリペプチドは、野生型ポリペプチドと比較してFcγRへの結合の増加または減少どちらかを示し、従って、増強または低下したエフェクター機能をそれぞれ媒介する。FcγRに対する親和性が改善されたFcバリアントは、エフェクター機能を増強すると予想され、そのようなバリアントは、哺乳動物を処置する方法に、標的分子破壊が所望される場合、有用に応用される。その一方で、FcγR結合親和性が低下したFcバリアントは、エフェクター機能を低下させると予想され、このような融合タンパク質も、例えば、標的細胞破壊が望ましくない状態の処置、例えば、正常な細胞が標的分子を発現し得る場合、または融合分子の慢性投与が望ましくない免疫系活性化をもたらす可能性がある場合に、有用である。一実施形態では、Fc領域を含む融合ポリペプチドは、野生型Fc領域を含むポリペプチドと比較して、オプソニン化、ファゴサイトーシス、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)またはエフェクター細胞モジュレーションからなる群から選択される、少なくとも1つの変更された抗原依存性エフェクター機能を示す。抗原依存性エフェクター機能が変更されたFcバリアントを含むDNase融合分子の典型的な実施形態では、Fcバリアントは、対応する野生型Fc領域と比較して1つまたは複数の低下したエフェクター機能を有する。
【0255】
一実施形態では、Fc領域を含む融合ポリペプチドは、活性化FcγR(例えば、FcγI、FcγIIa、またはFcγRIIIa)への結合の変更を示す。別の実施形態では、融合タンパク質は、阻害性FcγR(例えば、FcγRIIb)への結合親和性の変更を示す。FcRまたは補体結合活性を変更する例示的なアミノ酸置換は、参照により本明細書に組み込まれる国際PCT公開番号WO05/063815において開示されている。エフェクター機能が低下された例示的なFcバリアントは、例えば、Tam et al., Antibodies 6:12, 2017(ヒトIgG1(γ1)およびIgG4(γ4)のバリアントを記載している);Wang et al., Protein Cell 9:63-73, 2018 (例えば、表1を参照されたい);Lo et al., J. Biol. Chem. 292:3900-3908, 2017;Idusogie et al., J. Immunol. 164:4178-4184, 2000 によっても記載されている(これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる)。抗原依存性エフェクター機能を低下させる好適なFcバリアントとしては、例えば、Eu 238位および/または331位にアミノ酸置換(例えば、P238Sおよび/またはP331SまたはP331A)を有するバリアントが挙げられる。加えて、ヒトFcのEu 234および235位におけるアミノ酸置換(例えば、IgG1におけるL234A/L235A、IgG4におけるF234A/L235A)は、FcγR結合を低減させ、抗CD3 mAbに導入されたときにサイトカインストームを低減させることが示されており(例えば、Wang et al.、上掲を参照されたい)、Eu 329位におけるアミノ酸置換(例えば、P329A)は、C1q結合を低減させる点で非常に有効である(例えば、Lo et al.、上掲を参照されたい)。ADCCおよびCDCエフェクター機能を除去するための他の例示的な手法は、ヒトIgG2(Eu 118~260位)およびIgG4(Eu 261~447位)に由来するハイブリッドFcドメインを作製する手法、またはIgG4から選択されたアミノ酸置換を含有するようにヒトIgG2を改変する手法である。Wang et al.、上掲を参照されたい。
【0256】
Fc領域を含む融合ポリペプチドは、Fc領域のグリコシル化を変更するアミノ酸置換も含み得る。例えば、融合タンパク質のFcドメインは、グリコシル化(例えば、N連結型もしくはO連結型グリコシル化)の低減につながる突然変異を有することがあり、または野生型Fcドメインの変更されたグリコフォーム(例えば、低フコースグリカンまたはフコース不含グリカン)を含むことがある。別の実施形態では、分子は、グリコシル化モチーフ、例えば、アミノ酸配列NXTまたはNXSを含有するN連結型グリコシル化モチーフ、の付近またはその中にアミノ酸置換を有する。グリコシル化を低減させるまたは変更する例示的なアミノ酸置換は、国際PCT公開番号WO05/018572および米国特許出願公開第2007/0111281号において開示されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0257】
グリコシル化を低減させ、FcのADCCおよびCDCエフェクター機能も低下させる、特に好適なアミノ酸置換としては、Eu 297位におけるアミノ酸置換(例えば、N297A、N297Q、またはN297G)が挙げられる。例えば、Wang et al.、上掲を参照されたい。N297置換を265位における置換(例えば、D265A)と対にしてCDCをさらに低下させることもできる。例えば、Lo et al.、上掲を参照されたい。
【0258】
文脈による別段の明確な指示がない限り、本発明の融合ポリペプチドにおいて本明細書に記載のFcバリアントの様々な実施形態を組み合わせることができることは、当業者には理解されるであろう。
【0259】
一部の実施形態では、免疫グロブリンFc領域は、(i)配列番号26の残基1~232もしくは1~231、(ii)配列番号28の残基1~232もしくは1~231、(iii)配列番号42の残基159~390もしくは159~389、(iv)配列番号116の残基1~232もしくは1~231、または(v)配列番号118の残基1~232もしくは1~231に示される配列から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、Fc領域は、(i)配列番号26の残基1~232もしくは1~231、(ii)配列番号28の残基1~232もしくは1~231、(iii)配列番号42の残基159~390もしくは159~389、(iv)配列番号116の残基1~232もしくは1~231、または(v)配列番号118の残基1~232もしくは1~231に示されるアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0260】
一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域は、(i)配列番号26の残基16~232もしくは16~231、(ii)配列番号116の残基16~232もしくは16~231、または(iii)配列番号118の残基16~232もしくは16~231に示される配列から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域は、(i)配列番号26の残基16~232もしくは16~231、(ii)配列番号116の残基16~232もしくは16~231、または(iii)配列番号118の残基16~232もしくは16~231に示されるアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0261】
Xが存在する上記の融合ポリペプチドの一部の変形形態では、Xは、FcRn結合ドメインである。特に好適なFcRn結合ドメインとしては、例えば免疫グロブリンFc領域などの、FcRn結合活性を保持する免疫グロブリン重鎖定常領域が挙げられ、一部のそのような変形形態では、Fc領域は、本明細書に記載の(例えば、ダイマー化ドメインの文脈における上記の)Fc領域である。他の実施形態では、FcRn結合ドメインは、アルブミン(例えば、ヒトアルブミン)である。さらに他の好適なFcRn結合ドメインとしては、FcRnに対して結合親和性を有する、一本鎖抗体(例えば、scFv)、ペプチドアプタマー、または代替足場タンパク質が挙げられ、そのような代替FcRn結合分子は、例えば、大きい発現ライブラリー(例えば、免疫グロブリンドメイン、ランダム化ペプチドまたは他のタンパク質構造のライブラリー)のスクリーニングによる結合剤の選択を可能にするディスプレイ技術を使用して、容易に作出される。そのようなディスプレイ技術は、当技術分野において一般に周知であり、例えば、ファージディスプレイを含む。例えば、Antibody Engineering: A Practical Approach, McCafferty, Hoogenboom, and Chiswell Eds., IRL Press 1996を参照されたい。FcRn結合ドメインを生成するための代替足場タンパク質としては、例えば、アビマー、アンキリンリピート、およびアドネクチン、ならびに所望の分子標的に対する特異的親和性を生じさせるように進化させることができるドメインを有する他のタンパク質(例えば、Silverman et al., Nature Biotechnology 23:1556-1561, 2005;Zahnd et al., J. Mol. Biol. 369:1015-1028, 2007;Lipovsekらの米国特許第7,115,396号を参照されたい)が挙げられる。
【0262】
上記のDNaseを含むパラオキソナーゼ融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896もしくは1~896、(ii)配列番号128の残基21~896もしくは1~896、(iii)配列番号130の残基21~896もしくは1~896、(iv)配列番号148の残基21~906もしくは1~906、配列番号158の残基21~896もしくは1~896、(vi)配列番号160の残基21~906もしくは1~906、(vii)配列番号162の残基21~906もしくは1~906、または(viii)配列番号164の残基21~906もしくは1~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896もしくは1~896、(ii)配列番号128の残基21~896もしくは1~896、(iii)配列番号130の残基21~896もしくは1~896、(iv)配列番号148の残基21~906もしくは1~906、(v)配列番号158の残基21~896もしくは1~896、(vi)配列番号160の残基21~906もしくは1~906、(vii)配列番号162の残基21~906もしくは1~906、または(viii)配列番号164の残基21~906もしくは1~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0263】
上記のRNaseを含むパラオキソナーゼ融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号40の残基21~764もしくは1~764または(ii)配列番号48の残基21~740もしくは1~740に示される配列から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号40の残基21~764もしくは1~764または(ii)配列番号48の残基21~740もしくは1~740に示されるアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0264】
上記のスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)を含むパラオキソナーゼ融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号50の残基23~781もしくは1~781、(ii)配列番号52の残基23~781もしくは1~781、または(iii)配列番号54の残基23~791もしくは1~791に示される配列から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号50の残基23~781もしくは1~781、(ii)配列番号52の残基23~781もしくは1~781、または(iii)配列番号54の残基23~791もしくは1~791に示されるアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0265】
上記のCTLA-4細胞外ドメインを含むパラオキソナーゼ融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号66の残基21~736または1~736に示される配列から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号66の残基21~736または1~736に示されるアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0266】
上記のCD40細胞外ドメインを含むパラオキソナーゼ融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号74の残基21~804もしくは1~804、(ii)配列番号78の残基21~804もしくは1~804、(iii)配列番号82の残基21~804もしくは1~804、(iv)配列番号86の残基21~804もしくは1~804、または(v)配列番号90の残基21~804もしくは1~804に示される配列から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号74の残基21~804もしくは1~804、(ii)配列番号78の残基21~804もしくは1~804、(iii)配列番号82の残基21~804もしくは1~804、(iv)配列番号86の残基21~804もしくは1~804、または(v)配列番号90の残基21~804もしくは1~804に示されるアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0267】
上記のTNFαに特異的に結合しそれを中和するポリペプチドを含むパラオキソナーゼ融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号94の残基21~860もしくは1~860または(ii)配列番号98の残基21~860もしくは1~860に示される配列から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号94の残基21~860もしくは1~860または(ii)配列番号98の残基21~860もしくは1~860に示されるアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0268】
上記のTGF-βに特異的に結合しそれを中和するポリペプチドを含むパラオキソナーゼ融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号102の残基21~861もしくは1~861または(ii)配列番号106の残基21~861もしくは1~861に示される配列から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号102の残基21~861もしくは1~861または(ii)配列番号106の残基21~861もしくは1~861に示されるアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0269】
本明細書に記載の式X-L2-Pを含むパラオキソナーゼ融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号122の残基21~613もしくは1~613、(ii)配列番号132の残基21~613もしくは1~613、(iii)配列番号134の21~613もしくは1~613、(iv)配列番号142の残基21~610もしくは1~610、(v)配列番号144の残基21~610もしくは1~610、または(vi)配列番号146の残基21~610もしくは1~610に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号122の残基21~613もしくは1~613、(ii)配列番号132の残基21~613もしくは1~613、(iii)配列番号134の21~613もしくは1~613、(iv)配列番号142の残基21~610もしくは1~610、(v)配列番号144の残基21~610もしくは1~610、または(vi)配列番号146の残基21~610もしくは1~610に示されるアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0270】
本発明は、第1および第2のポリペプチド融合体を含むダイマー性タンパク質であって、ポリペプチド融合体の各々が上記のダイマー化ドメインを含む、ダイマー性タンパク質も提供する。したがって、別の態様では、本発明は、第1の融合ポリペプチドと第2の融合ポリペプチドとを含むダイマー性タンパク質であって、第1および第2の融合ポリペプチドの各々が、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、T-L1-X-L2-P(式中、Tは、DNase、およびRNase、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、細胞傷害性Tリンパ球関連分子-4(CTLA-4)細胞外ドメイン、CD40細胞外ドメイン、および炎症性サイトカインに特異的に結合しそれを中和するポリペプチド(例えば、腫瘍壊死因子α(TNFα)またはトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)に特異的に結合しそれを中和するポリペプチド)から選択される第1の生物学的に活性なポリペプチドであり;L1は、必要に応じて存在する第1のポリペプチドリンカーであり;Xは、ダイマー化ドメインであり;L2は、必要に応じて存在する第2のポリペプチドリンカーであり;Pは、生物学的に活性なパラオキソナーゼである)を含む、ダイマー性タンパク質を提供する。別の態様では、本発明は、第1の融合ポリペプチドと第2の融合ポリペプチドとを含むダイマー性タンパク質であって、第1および第2の融合ポリペプチドの各々が、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、X-L2-P(式中、Xは、ダイマー化ドメインであり、L2は、必要に応じて存在するポリペプチドリンカーであり、Pは、生物学的に活性なパラオキソナーゼである)を含む、ダイマー性タンパク質を提供する。別の態様では、本発明は、第1の融合ポリペプチドと第2の融合ポリペプチドとを含むダイマー性タンパク質であって、第1および第2の融合ポリペプチドの各々が、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、P-L1-X(式中、Pは、生物学的に活性なパラオキソナーゼであり、L1は、ポリペプチドリンカーであり、Xは、ダイマー化ドメインである)を含む、ダイマー性タンパク質を提供する。
III.ポリペプチド融合体およびダイマー性タンパク質を作製するための材料および方法
【0271】
本発明は、DNAおよびRNA分子を含むポリヌクレオチド分子であって、上記に開示された融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子も提供する。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖分子と二本鎖分子の両方を含む。融合ポリペプチドの様々なセグメント(例えば、Fc断片;DNaseおよびPポリペプチドセグメント)をコードするポリヌクレオチドを生成し、核酸の組換えマニピュレーションのための公知の方法を使用して互いに連結させて本明細書に記載の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを形成することができる。
【0272】
本開示による融合成分(例えば、DNase(例えば、DNase 1)、パラオキソナーゼ(例えば、PON1)、RNase(例えば、RNase1)、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、CTLA-4およびCD40細胞外ドメイン、ならびに免疫グロブリンFc領域)をコードするDNA配列は、一般に、当技術分野において公知である。例示的なDNA配列は、本明細書に開示される(配列表を参照されたい)。これらのポリペプチドのいずれかをコードする追加のDNA配列を、当業者は、遺伝子コードに基づいて容易に生成することができる。対応するRNA配列を、UでのTの置換によって生成することができる。遺伝子コードの縮重を考えると、所与のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子間に相当な配列変異があり得ることは、当業者には容易に分かるであろう。そのようなポリペプチドの機能的バリアントおよび断片をコードするDNAおよびRNAを、ポリヌクレオチド配列に変異を導入するための公知の組換え法を使用して獲得し、続いて、コードされたポリペプチドを発現させ、適切なスクリーニングアッセイを使用して機能活性(例えば、ヌクレアーゼ活性)を決定することもできる。
【0273】
DNAおよびRNAを調製するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、相補的DNA(cDNA)クローンを、目的のポリペプチドをコードする大量のRNAを産生する組織または細胞から単離されるRNAから、調製することができる。全RNAを、グアニジンHCl抽出、続いて、CsCl勾配での遠心分離による単離を使用して、調製することができる(Chirgwin et al., Biochemistry 18:52-94, 1979)。ポリ(A)+RNAは、AvivおよびLederの方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:1408-1412, 1972)を使用して全RNAから調製される。相補的DNAは、公知の方法を使用してポリ(A)+RNAから調製される。代替形態では、ゲノムDNAを単離することができる。cDNAおよびゲノムクローンを同定および単離するための方法は、周知であり、当技術分野における通常の技能レベルの範囲内であり、ライブラリーをプローブまたはプライミングするための本明細書に開示される配列またはその部分の使用を含む。目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、ハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」、Mullis、米国特許第4,683,202号)により、同定され、単離される。発現ライブラリーを、目的のポリペプチドに対する抗体、受容体断片、または他の特異的結合パートナーを用いて、プローブすることができる。
【0274】
本発明のポリヌクレオチドを自動合成によって調製することもできる。短い二本鎖セグメント(60~80bp)の産生は、技術的に容易であり、相補鎖の合成、次いでそれらのアニーリングにより遂行され得る。より長いセグメント(典型的には、>300bp)は、長さ20~100ヌクレオチドである一本鎖断片からモジュール形態でアセンブルされる。ポリヌクレオチドの自動合成は、当技術分野における通常の技能レベルの範囲内であり、好適な機器および試薬は、商業的供給業者から入手可能である。一般に、Glick and Pasternak, Molecular Biotechnology, Principles & Applications of Recombinant DNA, ASM Press, Washington, D.C., 1994;Itakura et al., Ann. Rev. Biochem. 53:323-356, 1984;およびClimie et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:633-637, 1990を参照されたい。
【0275】
別の態様では、融合ポリペプチドを含むダイマー性タンパク質を含む、本発明のポリペプチド融合体を産生するための、材料および方法が、提供される。融合ポリペプチドを、遺伝子操作された宿主細胞において従来の技法に従って産生することができる。好適な宿主細胞は、外来性DNAを用いて形質転換またはトランスフェクトすることができ培養下で成長させることができる細胞型であり、細菌、真菌細胞、および培養高等真核細胞(多細胞生物の培養細胞を含む)、特に、培養哺乳動物細胞を含む。クローン化DNA分子をマニピュレートするための技法および外来性DNAを様々な宿主細胞に導入するための技法は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989、およびAusubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, Green and Wiley and Sons, NY, 1993によって開示されている。
【0276】
一般に、宿主細胞における融合ポリペプチドの産生のために、融合ポリペプチドをコードするDNA配列は、発現カセット内の、典型的には転写プロモーターおよびターミネーターを含む、その発現に必要とされる他の遺伝子エレメントに、作動可能に連結される。典型的には、発現カセットは、宿主細胞への送達用の発現ベクター内に含有される。ベクターは、一般に、1つまたは複数の選択可能なマーカーおよび1つまたは複数の複製起点も含有することになるが、ある特定の系内に選択可能なマーカーが別のベクターによって提供されることがあること、および外来性DNAの複製が、例えば、安定な細胞系の生成の際などに、宿主細胞ゲノムへの発現カセットの組込みによりもたらされることがあることは、当業者には分かるであろう。プロモーター、ターミネーター、選択可能なマーカー、ベクターおよび他のエレメントの選択は、当技術分野における通常の技能レベルの範囲内の通例の設計の問題である。多くのそのようなエレメントが文献に記載されており、商業的供給業者を通して入手可能である。
【0277】
DNase融合ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に方向付けるために、分泌シグナル配列が発現カセット内に提供される。コードされる分泌ペプチドは、対応するネイティブタンパク質(例えば、配列番号16のアミノ酸残基1~22に示される通りのネイティブDNase分泌ペプチド、配列番号38のアミノ酸残基1~28に示される通りのネイティブRNase分泌ペプチド、または配列番号68のアミノ酸残基1~20に示される通りのネイティブCD40分泌ペプチド)のものであることがあり、または別の分泌されるタンパク質(例えば、t-PA;米国特許5,641,655号を参照されたい)に由来することがあり、またはde novo合成されることがある。操作された切断部位を、宿主細胞におけるタンパク質分解プロセシングを最適化するために、分泌ペプチドとポリペプチド融合体の残部の間の接合部に含めることができる。分泌シグナル配列は、ポリペプチド融合体をコードするDNA配列に作動可能に連結されており、即ち、2つの配列は、正しいリーディングフレーム内で結合されており、新たに合成されたポリペプチド融合体を宿主細胞の分泌経路に方向付けるように位置する。分泌シグナル配列は、一般に、目的のポリペプチドをコードするDNA配列の5’側に位置するが、ある特定のシグナル配列が目的のDNA配列内の他の場所に位置することもある(例えば、Welchら、米国特許第5,037,743号;Hollandら、米国特許第5,143,830号を参照されたい)。本発明による使用に好適な分泌シグナル配列としては、例えば、ヒトVK3リーダーペプチド(配列番号58)をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
【0278】
宿主細胞分泌経路による、本明細書に記載のダイマー化ドメインを含む融合ポリペプチドの発現は、ダイマー性タンパク質の産生につながると予想される。したがって、別の態様では、本発明は、上記の第1および第2の融合ポリペプチドを含むダイマー性タンパク質(例えば、第1の融合ポリペプチドと第2の融合ポリペプチドとを含むダイマー性タンパク質であって、第1および第2の融合ポリペプチドの各々が、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、本明細書に記載のT-L1-X-L2-P、X-L2-P、またはP-L1-Xを含む、ダイマー性タンパク質)を提供する。ダイマーを、好適な条件下での成分ポリペプチドのインキュベーションによってin vitroでアセンブルすることもできる。一般に、in vitroでのアセンブリは、変性および還元条件下でタンパク質混合物をインキュベートすること、続いてポリペプチドをリフォールディングし、再酸化させてダイマーを形成することを含むことになる。細菌細胞において発現されたタンパク質の回収およびアセンブリは、下記に開示される。
【0279】
培養哺乳動物細胞は、本発明の中での使用に好適な宿主である。外来性DNAを哺乳動物宿主細胞に導入するための方法としては、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション(Wigler et al., Cell 14:725, 1978;Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7:603, 1981: Graham and Van der Eb, Virology 52:456, 1973)、電気穿孔(Neumann et al., EMBO J. 1:841-845, 1982)、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション(Ausubel et al.、上掲)、およびリポソーム媒介トランスフェクション(Hawley-Nelson et al., Focus 15:73, 1993;Ciccarone et al., Focus 15:80, 1993)が挙げられる。培養哺乳動物細胞における組換えポリペプチドの産生は、例えば、Levinsonら、米国特許第4,713,339号;Hagenら、米国特許第4,784,950号;Palmiterら、米国特許第4,579,821号;およびRingold、米国特許第4,656,134号において開示されている。好適な培養哺乳動物細胞としては、COS-1(ATCC番号CRL 1650)、COS-7(ATCC番号CRL 1651)、BHK(ATCC番号CRL 1632)、BHK 570(ATCC番号CRL 10314)、293(ATCC番号CRL 1573;Graham et al., J. Gen. Virol. 36:59-72, 1977)およびチャイニーズハムスター卵巣(例えば、CHO-K1、ATCC番号CCL 61;CHO-DG44、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980)細胞系が挙げられる。追加の好適な細胞系は、当技術分野において公知であり、公的寄託機関、例えば、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)、Manassas、Virginiaから入手可能である。強力な転写プロモーター、例えば、SV-40、サイトメガロウイルスまたは骨髄増殖性肉腫ウイルスからのプロモーター、を使用することができる。例えば、米国特許第4,956,288号および米国特許出願公開第20030103986号を参照されたい。他の好適なプロモーターとしては、メタロチオネイン遺伝子からのもの(米国特許第4,579,821号および同第4,601,978号)およびアデノウイルス主要後期プロモーターが挙げられる。哺乳動物細胞において使用するための発現ベクターとしては、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関、10801 University Blvd.、Manassas、VA USAに受託番号98669、98668、およびPTA-5266でそれぞれ寄託されたpZP-1、pZP-9、およびpZMP21、ならびにこれらのベクターの誘導体が挙げられる。
【0280】
薬物選択は、一般に、外来DNAが挿入された培養哺乳動物細胞を選択するために使用される。そのような細胞は、一般に「トランスフェクタント」と呼ばれる。選択剤の存在下で培養された細胞であって、それらの子孫に目的の遺伝子を-そのゲノムDNAへの発現カセットの組込みによって-伝えることができる細胞は、「安定なトランスフェクタント」と呼ばれる。例示的な選択可能なマーカーは、抗生物質ネオマイシンに対する耐性をコードする遺伝子である。選択は、ネオマイシン型の薬物、例えばG-418など、の存在下で行われる。選択系を使用して、目的の遺伝子の発現レベルを上昇させることもでき、これは、「増幅」と呼ばれるプロセスである。増幅は、低レベルの選択剤の存在下でトランスフェクタントを培養すること、次いで、選択剤の量を増加させて、導入された遺伝子の高レベルの産物を産生する細胞を選択することによって行われる。例示的な、増幅可能な、選択可能なマーカーは、メトトレキサートに対する耐性を付与するジヒドロ葉酸レダクターゼである。他の薬物耐性遺伝子(例えば、ハイグロマイシン耐性、多剤耐性、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ)も使用することができる。細胞表面マーカーおよび他の表現型選択マーカーを、トランスフェクト細胞の同定(例えば、蛍光活性化細胞選別による)を助長するために使用することができ、これらのマーカーには、例えば、CD8、CD4、神経成長因子受容体、緑色蛍光タンパク質などが含まれる。
【0281】
一部の態様では、本発明は、本明細書に記載のパラオキソナーゼ融合ポリペプチドをコードする発現カセットをそのゲノムDNA内に含有する安定な細胞系であって、コードされたパラオキソナーゼ融合体を構成的に発現する安定な細胞系を提供する。安定な細胞系を、当技術分野において一般に公知の方法によって生成することができ、これらの方法は、一般に、限界希釈(limited dilution)および拡大による安定なトランスフェクタントのポリクローナルコロニーからの単一の安定な細胞クローンの同定を含む。次いで、選択されたクローンのタンパク質発現を評価して、拡大のための高発現クローンを同定することができる。一部の実施形態では、安定な細胞系は、哺乳動物細胞系、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系などである。本開示によるDNase-PON融合ポリペプチドを構成的に発現する安定な細胞系の一部の好ましい実施形態では、DNaseは、本明細書に記載の増強されたDNase1であり、一部のそのような実施形態では、DNase-PON融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896もしくは1~896、(ii)配列番号148の残基21~906もしくは1~906、(iii)配列番号158の残基21~896もしくは1~896、または(iv)配列番号160の残基21~906もしくは1~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、増強されたDNase1-Fc-PON1融合ポリペプチドである。一部の変形形態では、安定な細胞系は、融合ポリペプチド(例えば、DNase1-Fc-PON1融合ポリペプチド)を、細胞培養物1Lあたり少なくとも25mg、少なくとも50mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも200mg/L、または少なくとも500mg/Lの濃度で産生することができる哺乳動物細胞系(例えば、CHО)である。典型的には、本明細書に記載のDNase1-Fc融合ポリペプチドは、最初の単離されたクローンからおおよそ25~100mg/Lのレベルで発現され得る。最初の培養物のリクローニングは、多くの場合、発現を安定化し、2~3倍増加させることができる。発現レベルの増幅は、メトトレキサートのレベルを50nMの初期濃度から最大で1uMもの高さまで上昇させながら細胞を低密度でさらに播種することによって、達成することもできる。細胞が適応したら、限界希釈クローニングのさらなるラウンドが、高い発現レベルを維持するために必要とされる。
【0282】
昆虫細胞、植物細胞および鳥類細胞をはじめとする他の高等真核細胞も宿主として使用することができる。植物細胞において遺伝子を発現させるためのベクターとしてのAgrobacterium rhizogenesの使用は、Sinkar et al., J. Biosci. (Bangalore) 11:47-58, 1987により総説されている。昆虫細胞の形質転換およびそれらにおける外来ポリペプチドの産生は、Guarinoら、米国特許第5,162,222号および国際PCT公開番号WO94/06463によって開示されている。
【0283】
昆虫細胞を、一般にAutographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)に由来する、組換えバキュロウイルスに感染させることができる(King and Possee, The Baculovirus Expression System: A Laboratory Guide, Chapman & Hall, London;O'Reilly et al., Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual, Oxford University Press., New York, 1994;およびRichardson, Ed., Baculovirus Expression Protocols. Methods in Molecular Biology, Humana Press, Totowa, NJ, 1995を参照されたい)。組換えバキュロウイルスをLuckowら(J. Virol. 67:4566-4579, 1993)により記載されたトランスポゾンに基づく系の使用によって産生することもできる。移入ベクターを利用するこの系は、キット形態(BAC-TO-BACキット;Life Technologies、Gaithersburg、MD)で市販されている。移入ベクター(例えば、PFASTBAC1;Life Technologies)は、目的のタンパク質をコードするDNAをE.coliに維持されているバキュロウイルスゲノムに「バクミド」と呼ばれる大きいプラスミドとして移動させるためにTn7トランスポゾンを含有する(Hill-Perkins and Possee, J. Gen. Virol. 71:971-976, 1990;Bonning et al., J. Gen. Virol. 75:1551-1556, 1994;Chazenbalk and Rapoport, J. Biol. Chem. 270:1543-1549, 1995を参照されたい)。当技術分野において公知の技法を使用して、ポリペプチド融合体をコードする移入ベクターがE.coli宿主細胞に導入されて形質転換を生じさせ、細胞が、組換えバキュロウイルスを示す中断されたlacZ遺伝子を含有するバクミドについてスクリーニングされる。組換えバキュロウイルスゲノムを含有するバクミドDNAが、一般的な技法を使用して単離され、Sf9細胞などのSpodoptera frugiperda細胞にトランスフェクトするために使用される。その後、ポリペプチド融合体を発現する組換えウイルスが産生される。組換えウイルスストックは、当技術分野において一般に使用されている方法により作製される。
【0284】
タンパク質産生のために、組換えウイルスが、宿主細胞、典型的には、ツマジロクサヨトウ、Spodoptera frugiperda(例えば、Sf9もしくはSf21細胞)またはTrichoplusia ni(例えば、HIGH FIVE細胞;Invitrogen、Carlsbad、CA)に由来する細胞系を感染させるために使用される(一般に、Glick and Pasternak、上掲を参照されたく、米国特許第5,300,435号も参照されたい)。無血清培地が、細胞を成長および維持するために使用される。好適な培地製剤は、当技術分野において公知であり、商業的供給業者から入手することができる。細胞は、おおよそ2~5×105細胞の接種密度から1~2×106細胞の密度に成長させられ、成長した時点で、組換えウイルスストックが、0.1~10、より典型的にはほぼ3、の感染多重度(MOI)で添加される。使用される手順は、入手可能な実験マニュアル(例えば、King and Possee、上掲;O'Reilly et al.、上掲;Richardson、上掲)に一般に記載されている。
【0285】
酵母細胞をはじめとする真菌細胞も本発明の中で使用することができる。このことに関連して特に興味深い酵母種としては、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、およびPichia methanolicaが挙げられる。外来性DNAを用いてS.cerevisiae細胞を形質転換するための方法、およびそれらから組換えポリペプチドを産生するための方法は、例えば、Kawasaki、米国特許第4,599,311号;Kawasakiら、米国特許第4,931,373号;Brake、米国特許第4,870,008号;Welchら、米国特許第5,037,743号;およびMurrayら、米国特許第4,845,075号によって開示されている。形質転換細胞は、選択可能なマーカーによって決定される表現型、一般に、薬物耐性、または特定の栄養素(例えば、ロイシン)の非存在下で成長する能力、により選択される。Saccharomyces cerevisiaeにおける使用のための例示的なベクター系は、グルコース含有培地での成長により形質転換細胞を選択することを可能にする、Kawasakiら(米国特許第4,931,373号)により開示されたPOT1ベクター系である。酵母における使用に好適なプロモーターおよびターミネーターとしては、糖分解酵素遺伝子からのもの(例えば、Kawasaki、米国特許第4,599,311号;Kingsmanら、米国特許第4,615,974号;およびBitter、米国特許第4,977,092号を参照されたい)およびアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子からのものが挙げられる。米国特許第4,990,446号;同第5,063,154号;同第5,139,936号;および同第4,661,454号も参照されたい。Hansenula polymorpha、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces fragilis、Ustilago maydis、Pichia pastoris、Pichia methanolica、Pichia guillermondii、およびCandida maltosaをはじめとする、他の酵母用の形質転換系が、当技術分野において公知である。例えば、Gleeson et al., J. Gen. Microbiol. 132:3459-3465, 1986;Cregg、米国特許第4,882,279号;およびRaymond et al., Yeast 14:11-23, 1998を参照されたい。Aspergillus細胞は、McKnightら、米国特許第4,935,349号の方法に従って用いることができる。Acremonium chrysogenumを形質転換するための方法は、Suminoら、米国特許第5,162,228号により開示されている。Neurosporaを形質転換するための方法は、Lambowitz、米国特許第4,486,533号により開示されている。Pichia methanolicaにおける組換えタンパク質の産生は、米国特許第5,716,808号;同第5,736,383号;同第5,854,039号;および同第5,888,768号において開示されている。
【0286】
細菌Escherichia coli、Bacillusおよび他の属の株を含む、原核生物宿主細胞も、本発明の中で有用な宿主細胞である。これらの宿主を形質転換するための技法、およびそれらにおいてクローニングされた外来DNA配列を発現させる技法は、当技術分野において周知である(例えば、Sambrook et al.、上掲を参照されたい)。E.coliなどの細菌において融合ポリペプチドを発現させる場合、ポリペプチドは、細胞質内に、典型的には不溶性顆粒として、保持されることがあり、または細菌分泌配列により細胞周辺腔に方向付けられることがある。前者の場合、細胞は溶解され、顆粒は、回収され、例えばグアニジンHClまたは尿素を使用して、変性される。次いで、変性されたポリペプチドは、変性剤を、例えば、尿素の溶液および還元型グルタチオンと酸化型グルタチオンの組合せに対する透析、続いて、緩衝食塩溶液に対する透析により、希釈することによって、リフォールディングおよびダイマー化され得る。代替形態では、タンパク質は、可溶性形態で細胞質から回収され、変性剤を使用せずに単離され得る。タンパク質は、例えばリン酸緩衝食塩水中の、水性抽出物として細胞から回収される。目的のタンパク質を捕捉するために、抽出物は、クロマトグラフ媒体、例えば、固定化抗体またはヘパリン-セファロースカラムに、直接適用される。分泌されたポリペプチドは、細胞を(例えば、超音波処理または浸透圧ショックにより)破壊し、タンパク質を回収することによって変性およびリフォールディングの必要性をなくすことにより、細胞周辺腔から可溶性および機能的形態で回収され得る。例えば、Lu et al., J. Immunol. Meth. 267:213-226, 2002を参照されたい。
【0287】
形質転換またはトランスフェクト宿主細胞は、選択された宿主細胞の成長に必要な栄養素および他の成分を含有する培養培地で従来の手順に従って培養される。限定培地および複合培地をはじめとする様々な好適な培地は、当技術分野において公知であり、一般に、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミンおよびミネラルを含む。培地は、増殖因子または血清のような成分も、必要に応じて含有し得る。成長培地は、外から加えられたDNAを含有する細胞を、例えば、発現ベクターに担持されたまたは宿主細胞にコトランスフェクトされた選択可能なマーカーにより補完される薬物選択または必須栄養素欠乏によって、一般に選択することになる。
【0288】
一部の変形形態では、本明細書に記載のアクチン耐性DNase1-PON融合ポリペプチド(例えば、(i)配列番号2の残基21~896もしくは1~896または(ii)配列番号148の残基21~906もしくは1~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアクチン耐性DNase1-L1-Fc-L2-PON1融合ポリペプチド)の産生のための宿主細胞は、その発現中に増強されるDNaseの毒性を低下させるためにDNase1阻害剤の存在下で培養される。DNase1阻害剤は、当技術分野において一般に公知であり、例えば、阻害剤ルチンを含む(例えば、Kolarevic et al., Chem. Biodiversity 16:e1900060, 2019を参照されたい)。ある特定の実施形態では、DNase1阻害剤の存在下で培養される宿主細胞は、哺乳動物細胞、例えば、CHOなどである。
【0289】
本発明のタンパク質は、従来のタンパク質精製方法により、典型的には、クロマトグラフィー技法の組合せにより、精製される。一般に、Affinity Chromatography: Principles & Methods, Pharmacia LKB Biotechnology, Uppsala, Sweden, 1988;およびScopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York, 1994を参照されたい。免疫グロブリンFc領域を含むタンパク質を、固定化プロテインAを用いる親和性クロマトグラフィーにより精製することができる。ゲル濾過などの追加の精製ステップを使用して、所望のレベルの純度を得ること、または脱塩、緩衝液交換などを行うことができる。
【0290】
例えば、分画および/または従来の精製方法を使用して、組換え宿主細胞から精製された本発明の融合ポリペプチドおよびダイマー性タンパク質を得ることができる。一般に、硫酸アンモニウム沈殿および酸またはカオトロープ抽出が、試料の分画に使用され得る。例示的な精製ステップとしては、ヒドロキシアパタイト、サイズ排除、FPLCおよび逆相高速液体クロマトグラフィーを挙げることができる。好適なクロマトグラフ媒体としては、誘導体化デキストラン、アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、特殊シリカなどが挙げられる。PEI、DEAE、QAEおよびQ誘導体が好適である。例示的なクロマトグラフ媒体としては、フェニル、ブチルもしくはオクチル基で誘導体化された媒体、例えば、Phenyl-Sepharose FF(Pharmacia)、Toyopearl butyl 650(Toso Haas、Montgomeryville、PA)、Octyl-Sepharose(Pharmacia)など;またはポリアクリル酸樹脂、例えば、Amberchrom CG 71(Toso Haas)などが挙げられる。好適な固体支持体としては、それらが使用されることになる条件下で不溶性である、ガラスビーズ、シリカ系樹脂、セルロース樹脂、アガロースビーズ、架橋アガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋ポリアクリルアミド樹脂などが挙げられる。これらの支持体を、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基および/または糖鎖部分によるタンパク質の結合を可能にする反応性基で修飾することができる。
【0291】
カップリング化学の例としては、臭化シアン活性化、N-ヒドロキシスクシンイミド活性化、エポキシド活性化、スルフヒドリル活性化、ヒドラジド活性化、ならびにカルボジイミドカップリング化学のためのカルボキシルおよびアミノ誘導体が挙げられる。これらのおよび他の固体媒体は、当技術分野において周知であり、広く使用されており、商業的供給業者から入手可能である。ポリペプチド単離および精製のための特定の方法の選択は、通例の設計の問題であり、部分的には選択される支持体の特性によって決定される。例えば、Affinity Chromatography: Principles & Methods (Pharmacia LKB Biotechnology 1988);Doonan, Protein Purification Protocols (The Humana Press 1996)を参照されたい。
【0292】
タンパク質単離および精製の追加の変形形態を当業者は考案することができる。例えば、本明細書に記載の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質に特異的に結合する抗体(例えば、DNaseに対応するポリペプチドセグメントに特異的に結合する抗体)を使用して、免疫親和性精製によって大量のタンパク質を単離することができる。
【0293】
特定の特性を活用することによって、本発明のタンパク質を単離することもできる。例えば、固定化金属イオン吸着(IMAC)クロマトグラフィーを使用して、ポリヒスチジンタグを含むものをはじめとするヒスチジンリッチタンパク質を精製することができる。手短に述べると、キレートを形成するために、先ず、ゲルが二価金属イオンで荷電される(Sulkowski, Trends in Biochem. 3:1, 1985)。ヒスチジンリッチプロテインが、使用される金属イオンに依存して異なる親和性でこのマトリックスに吸着されることになり、競合的溶出、pHの低下、または強いキレート剤の使用によって溶出されることになる。他の精製方法としては、レクチン親和性クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーによるグリコシル化タンパク質の精製が挙げられる(例えば、M. Deutscher, (ed.), Meth. Enzymol. 182:529, 1990を参照されたい)。本発明の追加の実施形態の中では、目的のポリペプチドと親和性タグ(例えば、マルトース結合タンパク質)の融合体が、精製を助長するために構築され得る。さらに、融合ポリペプチドまたはそのダイマーの受容体結合特性またはリガンド結合特性が精製に活用され得る。
【0294】
一部の変形形態では、本明細書に記載の増強されたしかし非アクチン耐性のDNase1(即ち、ヒトDNase1と比較してDNaseのエンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させるいずれのアミノ酸置換も、ヒトDNase1と比較して、含有しないDNase)を含むDNase1-PON融合分子は、分子のアクチン結合を低減させることによってアクチン耐性であるDNase-Fc融合分子を得るために、精製後にエチレンジアミン(EDA)で処理される。EDA処理されたDNase1-PON融合分子は、次いで、当技術分野において一般に公知の方法(例えば、米国特許第11,225,648号を参照されたい)を使用してEDAを除去するようにさらに処理される。そのような実施形態は、非アクチン耐性形態の増強されたDNase1の発現のほうが宿主細胞(例えば、CHO)への毒性が低くなるので、薬学的使用のためのDNase1-PON融合体のより高度な発現の達成に有利である。特定の実施形態では、EDAで処置されることになる精製DNase1-PONは、(i)配列番号158の残基21~896または(ii)配列番号160の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0295】
本発明のポリペプチドは、典型的には、夾雑高分子、特に、他のタンパク質および核酸に関して少なくとも約80%の純度、より典型的には少なくとも約90%の純度、好ましくは少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の純度に精製され、感染性および発熱性物質を含んでいない。本発明のポリペプチドを、99.9%より高度に純粋である薬学的純粋な状態に精製することもできる。ある特定の調製物では、精製ポリペプチドは、他のポリペプチド、特に、動物起源の他のポリペプチドを、実質的に含んでいない。
IV.使用方法および医薬組成物
【0296】
本発明の融合ポリペプチドおよびダイマー性タンパク質を使用して、様々な疾患または障害の処置のための治療を施すことができる。パラオキソナーゼ融合ポリペプチドは、例えば、炎症、自己免疫、神経学的、心血管および/または線維性疾患および障害の処置に、特に有用である。本明細書に記載の第1の生物学的に活性なポリペプチド(例えば、DNase、RNase、またはSOD1)をさらに含む二重特異性融合体に関する態様では、融合ポリペプチドおよびダイマー性タンパク質は、処置のための1つまたは複数の追加の生物学的活性をさらに提供し得る。例えば、DNaseまたはRNaseを含むパラオキソナーゼ融合ポリペプチドは、例えば、NETosisによって特徴付けられる疾患および障害の処置に、特に有用である。加えて、CTLA-4またはCD40細胞外ドメインを含むパラオキソナーゼ融合ポリペプチドは、例えば、異常な適応免疫応答によって特徴付けられる疾患または障害の処置に、特に有用である。さらに別の例として、CD40細胞外ドメイン、またはTGF-βに特異的に結合しそれを中和するポリペプチドを含む、パラオキソナーゼ融合ポリペプチドは、例えば、線維性炎症応答によって特徴付けられる疾患および障害の処置に、特に有用である。
【0297】
一部の態様では、本発明は、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経学的疾患、感染性疾患、代謝性疾患、心血管疾患、肝臓疾患、線維性疾患、血栓症、敗血症、虚血再灌流、グラム陰性菌によるバイオフィルム形成、硫黄マスタードガスへの曝露、有機リンへの曝露、およびがんから選択される疾患または障害を処置するための方法を提供する。方法は、一般に、疾患または障害を有する対象に、本明細書に記載の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量を投与するステップを含む。
【0298】
本発明による処置に適している炎症性疾患としては、例えば、炎症性肺疾患、例えば、喘息、嚢胞性線維症(CF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、低酸素症、間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症(IPF)またはサルコイドーシス)、および急性呼吸促迫症候群(ARDS)などが挙げられる。ARDSの処置を含む特定の実施形態では、ARDSは、COVID-19に関連する。一部の実施形態では、炎症性肺疾患は、Pseudomonas aeruginosa感染によって特徴付けられる。一部の変形形態では、炎症性肺疾患を有する患者は、硫黄マスタードガス(SM)に曝露された患者である。他の変形形態では、炎症性肺疾患を有する患者は、有機リン、例えば、殺虫剤(例えば、パラチオン、マラチオン、クロルピリホス、ダイアジノン、ジクロルボス、ホスメット、フェニトロチオン、テルブホス、テトラクロルビンホス、アザメチホス、もしくはアジンホス-メチル)または他の神経毒(例えば、タブン、サリン、ソマンもしくはシクロサリン)に曝露された患者である。
【0299】
本発明による処置に適している他の炎症性疾患としては、自己炎症性疾患(即ち、一見炎症非誘発性のエピソードと明らかな自己免疫病態の相対的欠如とによって特徴付けられる自然免疫系活性化障害)が挙げられる。例示的な自己炎症性疾患としては、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎)、ベーチェット病、全身発症性若年性特発性関節炎(JIA)、痛風、偽痛風、貯蔵(ゴーシェ)障害、遺伝性血管性浮腫(HAE)、非典型溶血性尿毒症症候群、家族性地中海熱(FMF)、TNF受容体関連周期熱症候群(TRAPS)、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS))、NOD2関連自己炎症性疾患(NAID)、およびブラウ症候群が挙げられる。
【0300】
さらに他の実施形態では、本発明による処置のための炎症性疾患または障害は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、1型糖尿病、2型糖尿病、肝炎(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)、憩質炎、過敏性腸症候群、および腎炎から選択される。さらに他の変形形態では、炎症性疾患または障害は、炎症性皮膚疾患、例えば、乾癬またはアトピー性皮膚炎である。
【0301】
炎症性疾患を処置するための方法のより特定の実施形態では、炎症性疾患処置のための融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-Fc-L2-PON1、SOD1-L1-Fc-L2-PON1、SOD1-Fc-L2-PON1、CTLA4-L1-Fc-L2-PON1、CTLA4-Fc-L2-PON1、CD40-L1-Fc-L2-PON1、CD40-Fc-L2-PON1、抗TNFα-L1-Fc-L2-PON1、抗TNFα-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-L1-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-Fc-L2-PON1、Fc-L2-PON1、もしくはPON1-L1-Fcを有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質であり、一部のそのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号40の残基21~764、(iii)配列番号48の残基21~740、(iv)配列番号50の残基23~781、(v)配列番号52の残基23~781、(vi)配列番号54の残基23~791、(vii)配列番号66の残基21~736、(viii)配列番号74の残基21~804、(ix)配列番号78の残基21~804、(x)配列番号82の残基21~804、(xi)配列番号86の残基21~804、(xii)配列番号90の残基21~804、(xiii)配列番号94の残基21~860、(xiv)配列番号98の残基21~860、(xv)配列番号102の残基21~861、(xvi)配列番号106の残基21~861、(xvii)配列番号122の残基21~613、(xviii)配列番号142の残基21~610、(xix)配列番号148の残基21~906、(xx)配列番号158の残基21~896、(xxi)配列番号160の残基21~906、(xxii)配列番号162の残基21~906、または(xxiii)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。自己炎症性疾患を処置するための方法の一部の実施形態では、融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-L1-Fc-L2-PON1、もしくはRNase1-Fc-L2-PON1を有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質である。関節リウマチ、乾癬性関節炎、または若年性特発性関節炎を処置するための方法の一部の実施形態では、融合分子は、構造CTLA4-L1-Fc-L2-PON1もしくはCTLA4-Fc-L2-PON1を有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのどちらかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質である。炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)を処置するための方法の一部の実施形態では、融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、抗TNFα-L1-Fc-L2-PON1、もしくは抗TNFα-Fc-L2-PON1を有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質である。炎症性皮膚疾患(例えば、乾癬またはアトピー性皮膚炎)を処置するための方法の一部の実施形態では、融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、抗TNFα-L1-Fc-L2-PON1、抗TNFα-Fc-L2-PON1、Fc-L2-PON1、もしくはPON1-L1-Fcを有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質である。
【0302】
本発明による処置に適している自己免疫疾患としては、例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、乾癬、多発性硬化症、1型糖尿病、血管炎、および全身性硬化症(強皮症としても公知)が挙げられる。他の実施形態では、自己免疫疾患は、セリアック病、神経炎、多発性筋炎、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、白斑、シェーグレン症候群、自己免疫性膵炎、自己免疫性肝炎、糸球体腎炎、ループス腎炎、強皮症、抗リン脂質症候群、自己免疫性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性甲状腺疾患、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ウェゲナー肉芽腫症、重力筋無力症、アジソン病、自己免疫性ぶどう膜網膜炎、尋常性天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、交感性眼炎、ぶどう膜炎、自己免疫性溶血性貧血、肺線維症、慢性ベリリウム症、および特発性肺線維症から選択される。血管炎の処置を含む一部の変形形態では、血管炎は、小型血管炎および中型血管炎から選択され、他の変形形態では、血管炎は、大型血管炎である。
【0303】
自己免疫疾患を処置するための方法のより特定の実施形態では、自己免疫疾患処置のための融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-Fc-L2-PON1、SOD1-L1-Fc-L2-PON1、SOD1-Fc-L2-PON1、CTLA4-L1-Fc-L2-PON1、CTLA4-Fc-L2-PON1、CD40-L1-Fc-L2-PON1、CD40-Fc-L2-PON1、抗TNFα-L1-Fc-L2-PON1、抗TNFα-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-L1-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-Fc-L2-PON1、Fc-L2-PON1、もしくはPON1-L1-Fcを有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質であり、一部のそのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号40の残基21~764、(iii)配列番号48の残基21~740、(iv)配列番号50の残基23~781、(v)配列番号52の残基23~781、(vi)配列番号54の残基23~791、(vii)配列番号66の残基21~736、(viii)配列番号74の残基21~804、(ix)配列番号78の残基21~804、(x)配列番号82の残基21~804、(xi)配列番号86の残基21~804、(xii)配列番号90の残基21~804、(xiii)配列番号94の残基21~860、(xiv)配列番号98の残基21~860、(xv)配列番号102の残基21~861、(xvi)配列番号106の残基21~861、(xvii)配列番号122の残基21~613、(xviii)配列番号142の残基21~610、(xix)配列番号148の残基21~906、(xx)配列番号158の残基1~896、(xxi)配列番号160の残基21~906、(xxii)配列番号162の残基21~906、または(xxiii)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、乾癬、1型糖尿病、または小型血管炎を処置するための方法の一部の実施形態では、融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1もしくはDNase1L3-L1-Fc-L2-PON1を有する融合ポリペプチドであるか、またはそのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質である。全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群または1型糖尿病を処置するための方法の一部の実施形態では、融合分子は、構造RNase1-L1-Fc-L2-PON1もしくはRNase1-Fc-L2-PON1を有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのどちらかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質である。関節リウマチまたは乾癬性関節炎を処置するための方法の一部の実施形態では、融合分子は、構造CTLA4-L1-Fc-L2-PON1もしくはCTLA4-Fc-L2-PON1を有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのどちらかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質である。
【0304】
本発明による処置に適している神経学的疾患としては、例えば、CNSの炎症によって特徴付けられる神経変性疾患、例えば、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、または筋萎縮性側索硬化症(ALS)などが挙げられる。一部の実施形態では、神経学的疾患は、認知症、例えばアルツハイマー病など、によって特徴付けられる神経学的疾患である。多発性硬化症(MS)を処置するための方法のより特定の変形形態では、MSは、脊髄視神経型MS、一次進行型MS(PPMS)、または再発寛解型MS(RRMS)である。他の実施形態では、本発明による処置のための神経学的疾患は、CNS感染症、例えば、髄膜炎、脳炎、または脳性マラリアなどである。髄膜炎を処置するための方法のより特定の変形形態では、髄膜炎は、細菌性髄膜炎であり、一部のそのような実施形態では、CNS感染症は、S.pneumoniae、N.meningitis、S.aureus、E.coli、A.baumanii、S.oralis、S.capitis、またはS.epidermidis感染症である。本明細書に記載の融合分子での処置に適している他の神経学的疾患または障害としては、例えば、急性脳損傷、例えば、虚血性脳卒中などが挙げられる。さらに他の実施形態では、神経学的疾患は、脳がん、例えば、星状細胞腫、未分化星状細胞腫、神経膠芽種、乏突起神経膠腫、退形成乏突起神経膠腫、上衣腫、原発性CNSリンパ腫、髄芽腫、胚細胞腫瘍、松果体新生物、髄膜腫、下垂体腫瘍、神経鞘の腫瘍(例えば、シュワン腫)、脊索腫、頭蓋咽頭腫、および脈絡叢腫瘍(例えば、脈絡叢癌)から選択される頭蓋内腫瘍である。
【0305】
神経学的疾患を処置するための方法のより特定の実施形態では、神経学的疾患処置のための融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-Fc-L2-PON1、SOD1-L1-Fc-L2-PON1、SOD1-Fc-L2-PON1、CTLA4-L1-Fc-L2-PON1、CTLA4-Fc-L2-PON1、CD40-L1-Fc-L2-PON1、CD40-Fc-L2-PON1、抗TNFα-L1-Fc-L2-PON1、抗TNFα-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-L1-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-Fc-L2-PON1、Fc-L2-PON1、もしくはPON1-L1-Fcを有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質であり、一部のそのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号40の残基21~764、(iii)配列番号48の残基21~740、(iv)配列番号50の残基23~781、(v)配列番号52の残基23~781、(vi)配列番号54の残基23~791、(vii)配列番号66の残基21~736、(viii)配列番号74の残基21~804、(ix)配列番号78の残基21~804、(x)配列番号82の残基21~804、(xi)配列番号86の残基21~804、(xii)配列番号90の残基21~804、(xiii)配列番号94の残基21~860、(xiv)配列番号98の残基21~860、(xv)配列番号102の残基21~861、(xvi)配列番号106の残基21~861、(xvii)配列番号122の残基21~613、(xviii)配列番号142の残基21~610、(xix)配列番号148の残基21~906、(xx)配列番号158の残基21~896、(xxi)配列番号160の残基21~906、(xxii)配列番号162の残基21~906、または(xxiii)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。認知症(例えば、アルツハイマー病)、急性脳損傷(例えば、虚説性脳卒中)、または脳がんによって特徴付けられる神経変性疾患を処置するための方法の一部の実施形態では、融合分子は、構造DNase-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-L1-Fc-L2-PON1、もしくはRNase1-Fc-L2-PON1を有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質である。多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、またはCNS感染症を処置するための方法の一部の実施形態では、融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1もしくはDNase1L3-L1-Fc-L2-PON1を有するポリペプチドであるか、またはそのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質である。
【0306】
本発明による処置に適している感染性疾患としては、例えば、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、および寄生虫感染症が挙げられる。寄生虫感染症の処置を含む一部の実施形態では、感染症は、Trypanosoma brucei、Leishmania、Plasmodium falciparum、またはToxoplasma gondii感染症である。細菌感染症の処置を含む一部の実施形態では、感染症は、Staphylococcus aureus、Streptococcus pneumoniae、またはMycobacterium tuberculosis感染症である。他の実施形態では、細菌感染症は、Pseudomonas aeruginosa感染症である。さらに他の実施形態では、細菌感染症は、Borrelia burgdorferi感染症(ライム病)である。ウイルス感染症の処置を含む一部の実施形態では、感染症は、インフルエンザウイルス(例えば、A型インフルエンザウイルス)または呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症である。さらに他の実施形態では、感染症は、CNS感染症、例えば、髄膜炎(例えば、細菌性髄膜炎)、脳炎、または脳性マラリアなどである。
【0307】
感染性疾患を処置するためのパラオキソナーゼ融合分子は、典型的に、DNase、RNase、SOD1、または抗TGF-β中和ポリペプチドを第1の生物学的に活性なポリペプチドとして含むか、または単一特異性パラオキソナーゼ融合分子であり得る。より特定の変形形態では、感染性疾患処置のための融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-Fc-L2-PON1、SOD1-L1-Fc-L2-PON1、SOD1-Fc-L2-PON1、抗TNFα-L1-Fc-L2-PON1、抗TNFα-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-L1-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-Fc-L2-PON1、Fc-L2-PON1、もしくはPON1-L1-Fcを有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質である。一部のそのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号40の残基21~764、(iii)配列番号48の残基21~740、(iv)配列番号50の残基23~781、(v)配列番号52の残基23~781、(vi)配列番号54の残基23~791、(vii)配列番号94の残基21~860、(viii)配列番号98の残基21~860、(ix)配列番号102の残基21~861、(x)配列番号106の残基21~861、(xi)配列番号122の残基21~613、(xii)配列番号142の残基21~610、(xiii)配列番号148の残基21~906、(xiv)配列番号158の残基21~896、(xv)配列番号160の残基21~906、(xvi)配列番号162の残基21~906、または(xvii)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0308】
グラム陰性菌によるバイオフィルム形成を処置するための方法の一部の実施形態では、グラム陰性菌は、Pseudomonas aeruginosaである。グラム陰性菌によるバイオフィルム形成を処置するための特定の変形形態では、バイオフィルム形成処置のための融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、Fc-L2-PON1、もしくはPON1-L1-Fcを有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質であり、一部のそのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号122の残基21~613、(iii)配列番号142の残基21~610、(xix)配列番号148の残基21~906、(xx)配列番号158の残基21~896、(xxi)配列番号160の残基21~906、(xxii)配列番号162の残基21~906、または(xxiii)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0309】
本発明に従って処置され得る代謝性疾患としては、例えば、2型糖尿病および肥満症が挙げられる。代謝性疾患を処置するための方法の特定の変形形態では、代謝性疾患処置のための融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-Fc-L2-PON1、Fc-L2-PON1、もしくはPON1-L1-Fcを有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質であり、一部のそのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号40の残基21~764、(iii)配列番号48の残基21~740、(iv)配列番号122の残基21~613、(v)配列番号142の残基21~610、(vi)配列番号148の残基21~906、(vii)配列番号158の残基21~896、(viii)配列番号160の残基21~906、(ix)配列番号162の残基21~906、または(x)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0310】
本発明に従って処置され得る心血管疾患としては、例えば、アテローム性動脈硬化症によって特徴付けられる心血管疾患が挙げられる。一部の実施形態では、アテローム性動脈硬化症によって特徴付けられる心血管疾患は、冠動脈心疾患または虚血性脳卒中である。冠動脈心疾患の処置を含むより特定の変形形態では、冠動脈心疾患は、急性冠症候群によって特徴付けられる。心血管疾患を処置するための方法の、ある特定の変形形態では、心血管疾患処置のための融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-Fc-L2-PON1、Fc-L2-PON1、もしくはPON1-L1-Fcを有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質であり、一部のそのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号40の残基21~764、(iii)配列番号48の残基21~740、(iv)配列番号122の残基21~613、(v)配列番号142の残基21~610、(vi)配列番号148の残基21~906、(vii)配列番号158の残基21~896、(viii)配列番号160の残基21~906、(ix)配列番号162の残基21~906、または(x)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0311】
血栓症、敗血症、または虚血性再灌流を処置するための方法の一部の実施形態では、そのような処置のための融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-L1-Fc-L2-PON1、もしくはRNase1-Fc-L2-PON1を有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質であり、一部のそのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号40の残基21~764、(iii)配列番号48の残基21~740、(iv)配列番号148の残基21~906、(v)配列番号158の残基21~896、(vi)配列番号160の残基21~906、(vii)配列番号162の残基21~906、または(viii)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0312】
抗リン脂質症候群、血栓症、または虚血性脳卒中を処置するための方法の一部の実施形態では、本明細書に記載のDNase含有融合分子は、血栓溶解剤を含む併用療法の別個の療法の1つとして患者に投与される。一部のそのような実施形態では、血栓溶解剤は、アニストレプラーゼ、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、t-PA、テネクテプラーゼ、およびロキナーゼから選択される。
【0313】
硫黄マスタードガス(SM)への曝露または有機リン(例えば、タブン、サリン、ソマン、もしくはシクロサリン)への曝露を処置するための方法の一部の実施形態では、そのような曝露の処置のための融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-Fc-L2-PON1、SOD1-L1-Fc-L2-PON1、SOD1-Fc-L2-PON1、CTLA4-L1-Fc-L2-PON1、CTLA4-Fc-L2-PON1、CD40-L1-Fc-L2-PON1、CD40-Fc-L2-PON1、抗TNFα-L1-Fc-L2-PON1、抗TNFα-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-L1-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-Fc-L2-PON1、Fc-L2-PON1、もしくはPON1-L1-Fcを有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質であり、一部のそのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号128の残基21~896、(iii)配列番号130の残基21~896、(iv)配列番号40の残基21~764、(v)配列番号48の残基21~740、(vi)配列番号50の残基23~781、(vii)配列番号52の残基23~781、(viii)配列番号54の残基23~791、(ix)配列番号66の残基21~736、(x)配列番号74の残基21~804、(xi)配列番号78の残基21~804、(xii)配列番号82の残基21~804、(xiii)配列番号86の残基21~804、(xiv)配列番号90の残基21~804、(xv)配列番号94の残基21~860、(xvi)配列番号98の残基21~860、(xvii)配列番号102の残基21~861、(xviii)配列番号106の残基21~861、(xix)配列番号122の残基21~613、(xx)配列番号132の残基21~613、(xxi)配列番号134の残基21~613、(xxii)配列番号142の残基21~610、(xxiii)配列番号144の残基21~610、(xxiv)配列番号146の残基21~610、(xxv)配列番号148の残基21~906、(xxvi)配列番号158の残基21~896、(xxvii)配列番号160の残基21~906、(xxviii)配列番号162の残基21~906、または(xxix)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0314】
本発明に従って処置され得る肝臓疾患または障害としては、慢性肝臓疾患、例えば、非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)、アルコール関連肝臓疾患(ALD)、門脈圧亢進症、および肝臓移植後の合併症などが挙げられる。非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)の処置を含む一部の変形形態では、NAFLDは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。肝臓疾患を処置するための方法の特定の変形形態では、肝臓疾患処置のための融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、CD40-L1-Fc-L2-PON1、CD40-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-L1-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-Fc-L2-PON1、Fc-L2-PON1、もしくはPON1-L1-Fcを有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質であり、一部のそのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号74の残基21~804、(iii)配列番号78の残基21~804、(iv)配列番号82の残基21~804、(v)配列番号86の残基21~804、(vi)配列番号90の残基21~804、(vii)配列番号102の残基21~861、(viii)配列番号106の残基21~861、(ix)配列番号122の残基21~613、(x)配列番号142の残基21~610、(xi)配列番号148の残基21~906、(xii)配列番号158の残基21~896、(xiii)配列番号160の残基21~906、(xiv)配列番号162の残基21~906、または(xv)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0315】
本発明による処置に適している線維性疾患または障害としては、全身性硬化症、全身性エリテマトーデス、炎症性肺疾患、慢性肝臓疾患、および慢性腎臓疾患が挙げられる。炎症性肺疾患の処置を含む一部の変形形態では、線維性疾患は、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症もしくはサルコイドーシス)、急性呼吸促迫症候群、または喘息である。慢性肝臓疾患の処置を含む一部の変形形態では、線維性疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎、アルコール関連肝臓疾患、門脈圧亢進症、または肝臓移植後の合併症である。慢性腎臓疾患の処置を含む一部の変形形態では、線維性疾患は、ループス腎炎、IgA腎症、または膜性糸球体腎炎である。肝臓疾患を処置するための方法の特定の変形形態では、肝臓疾患処置のための融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、CD40-L1-Fc-L2-PON1、CD40-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-L1-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-Fc-L2-PON1、Fc-L2-PON1、もしくはPON1-L1-Fcを有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質であり、一部のそのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号74の残基21~804、(iii)配列番号78の残基21~804、(iv)配列番号82の残基21~804、(v)配列番号86の残基21~804、(vi)配列番号90の残基21~804、(vii)配列番号102の残基21~861、(viii)配列番号106の残基21~861、(ix)配列番号122の残基21~613、(x)配列番号142の残基21~610、(xi)配列番号148の残基21~906、(xii)配列番号158の残基21~896、(xiii)配列番号160の残基21~906、(xiv)配列番号162の残基21~906、または(xv)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0316】
がんを処置するためのパラオキソナーゼ融合分子は、典型的に、DNase、RNase、または抗TGF-β中和ポリペプチドを第1の生物学的に活性なポリペプチドとして含む。より特定の変形形態では、がん処置のための融合分子は、構造DNase1-L1-Fc-L2-PON1、DNase1L3-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-L1-Fc-L2-PON1、RNase1-Fc-L2-PON1、抗TGFβ-L1-Fc-L2-PON1、もしくは抗TGFβ-Fc-L2-PON1を有するポリペプチドであるか、または前述の融合ポリペプチドのいずれかのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質であり、一部のそのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基21~896、(ii)配列番号40の残基21~764、(iii)配列番号48の残基21~740、(ix)配列番号102の残基21~861、(v)配列番号106の残基21~861、(vi)配列番号148の残基21~906、(vii)配列番号158の残基21~896、(viii)配列番号160の残基21~906、(ix)配列番号162の残基21~906、または(x)配列番号164の残基21~906に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0317】
本発明に従って処置され得るがんとしては、例えば、以下のものが挙げられる:頭頸部のがん(例えば、口腔、中咽頭(orophyarynx)、上咽頭、下咽頭、鼻腔もしくは副鼻腔、咽頭、唇、または唾液腺のがん);肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞癌、または中皮腫(mesothelimia));消化管がん(例えば、結腸直腸がん、胃がん、食道がん、または肛門がん);消化管間質腫瘍(GIST);膵臓腺癌;膵腺房細胞癌;小腸のがん;肝臓または胆管のがん(例えば、肝細胞腺腫、肝細胞癌、血管肉腫、肝外または肝内胆管癌、ファーター膨大部のがん、または胆嚢がん);乳がん(例えば、転移性乳がんまたは炎症性乳がん);婦人科がん(例えば、子宮頸がん、卵巣がん、卵管がん、腹膜癌、膣がん、外陰部がん、妊娠性トロホブラスト腫瘍、または子宮内膜がんもしくは子宮肉腫を含む子宮がん);泌尿器系のがん(例えば、前立腺癌;膀胱がん;陰茎がん;尿道がん、または腎盂および尿管を含む腎臓がん、例えば腎細胞癌もしくは移行上皮癌など);精巣がん;中枢神経系(CNS)のがん、例えば、頭蓋内腫瘍(例えば、星状細胞腫、未分化星状細胞腫、神経膠芽種、乏突起神経膠腫、退形成乏突起神経膠腫、上衣腫、原発性CNSリンパ腫、髄芽腫、胚細胞腫瘍、松果体新生物、髄膜腫、下垂体腫瘍、神経鞘の腫瘍(例えば、シュワン腫)、脊索腫、頭蓋咽頭腫、脈絡叢腫瘍(例えば、脈絡叢癌)、または神経細胞もしくは膠細胞起源の他の頭蓋内腫瘍)または脊髄の腫瘍(例えば、シュワン腫、髄膜腫);内分泌腺新生物(例えば、甲状腺がん、例えば、甲状腺癌、髄様がん、もしくは甲状腺リンパ腫など;膵内分泌腫瘍、例えば、インスリノーマもしくはグルカゴノーマなど;副腎癌、例えば、褐色細胞腫など;カルチノイド腫瘍;または副甲状腺癌);皮膚がん(例えば、扁平上皮癌;基底細胞癌;カポジ肉腫;または悪性黒色腫、例えば、眼球内黒色腫など);骨がん(例えば、骨肉腫(bone sarcoma)、例えば、骨肉腫(osteosarcoma)、軟骨骨腫、またはユーイング肉腫);多発性骨髄腫;緑色腫;軟部組織肉腫(例えば、線維性腫瘍または線維組織球性腫瘍);平滑筋または骨格筋の腫瘍;血管またはリンパ管血管周囲腫瘍(例えば、カポジ肉腫);滑膜腫瘍;中皮腫;神経性腫瘍;傍神経節腫瘍;骨外性軟骨性または骨性腫瘍;ならびに多能性間葉系腫瘍。一部のそのような実施形態では、本明細書に記載のパラオキソナーゼ融合分子は、例えば、免疫調節療法(例えば、CAR T細胞療法(例えば、June et al., Science 359:1361-1365, 2018を参照されたい)、もしくは免疫チェックポイント阻害剤を含む療法)、放射線療法または化学療法を含む併用療法などの、併用療法の別個の療法の1つとして、がん患者に投与される。
【0318】
ある特定の実施形態では、併用がん療法は、本明細書に記載のDNase-PON、RNase-PON、または抗TGFβ-PON融合分子と、標的化療法薬、例えば、特定の細胞表面もしくは細胞外抗原を標的化する治療用モノクローナル抗体、または細胞内タンパク質(例えば、細胞内酵素)を標的化する小分子などを含む。例示的な抗体標的化療法薬としては、抗VEGF(例えば、ベバシズマブ)、抗EGFR(例えば、セツキシマブ)、抗CTLA-4(例えば、イピリムマブ)、抗PD-1(例えば、ニボルマブ)、および抗PD-L1(例えば、ペムブロリズマブ)が挙げられる。例示的な小分子標的化療法薬としては、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブ)、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤(例えば、セリシクリブ)、BRAF阻害剤(例えば、ベムラフェニブまたはダブラフェニブ)、およびMEKキナーゼ阻害剤(例えば、トラメチニブ)が挙げられる。
【0319】
免疫チェックポイント阻害剤を含む一部のがん併用療法変形形態では、併用療法は、抗PD-1/PD-L1療法、抗CTLA-4療法、または両方を含む。ある特定の態様では、本明細書に記載のDNase-PON、RNase-PON、または抗TGFβ-PON融合分子は、抗CTLA-4または抗PD-1/PD-L1療法のどちらかに対する奏効率はもちろん、抗CTLA-4と抗PD-1/PD-L1の併用療法に対する奏効率も上昇させることができる。本発明の融合分子は、抗CTLA-4、抗PD-1/PD-L1、またはこれらの組合せに関連する毒性を低減させることにも有用であり得る。
【0320】
ある特定の変形形態では、本発明に従って処置されるがんは、悪性黒色腫、腎細胞癌、非小細胞肺がん、膀胱がん、および頭頸部がんから選択される。これらのがんは、免疫チェックポイント阻害剤 抗PD-1/PD-L1および抗CTLA-4に対して応答を示した。Grimaldi et al., Expert Opin. Biol. Ther. 16:433-41, 2016;Gunturi et al., Curr. Treat. Options Oncol. 15:137-46, 2014;Topalian et al., Nat. Rev. Cancer 16:275-87, 2016を参照されたい。したがって、一部のより特異的な変形形態では、これらのがんのいずれかが、抗PD-1/PD-L1療法、抗CTLA-4療法、または両方と組み合わせて、本明細書に記載のDNase-PON、RNase-PON、または抗TGFβ-PON融合分子で処置される。
【0321】
他の態様では、本発明は、対象における脂質酸化を低減させるための方法を提供する。方法は、一般に、本明細書に記載の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量を対象に投与するステップを含み、対象における1つまたは複数の酸化脂質が低減される。一部の実施形態では、方法は、対象における疾患または障害(例えば、上記で論じられた疾患または障害)の存在に関連する1つまたは複数の酸化脂質を低減させる。他の実施形態では、1つまたは複数の酸化脂質は、そのような疾患または障害を発症するリスクに関連し、特定の変形形態では、融合分子での処置は、対象における疾患または障害の発症リスクを低下させる。
【0322】
別の態様では、本発明は、対象を老化から保護するための方法を提供する。方法は、一般に、本明細書に記載の融合ポリペプチドの融合ポリペプチドのまたはダイマー性タンパク質の有効量を対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、対象は、加齢に伴う疾患または障害(例えば、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、心血管疾患、または線維性疾患)を有する。他の実施形態では、対象は、そのような加齢に伴う疾患または障害を発症するリスクがあり、融合分子での処置は、対象における疾患または障害のリスクを低下させる。
【0323】
上記の疾患または障害を処置する、脂質酸化を低減させる、または老化から保護するための方法の一部の実施形態では、方法は、(a)上記の式X-L2-PもしくはP-L1-Xを有するパラオキソナーゼ融合ポリペプチドの有効量、またはこの融合ポリペプチドのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質の有効量、および(b)生物学的に活性なDNaseの有効量を、患者に投与するステップを含む併用療法である。そのような実施形態は、例えば、NETosisによって特徴付けられる疾患および障害の処置に、特に有用である。一部の変形形態では、方法は、構造Fc-L2-PON1もしくはPON1-L1-Fcを有するパラオキソナーゼ融合ポリペプチド、またはそのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質の投与を含み、一部のそのような実施形態では、パラオキソナーゼ融合ポリペプチドは、構造Fc-L2-PON1を有し、(i)配列番号122の残基21~613、(ii)配列番号132の残基21~613、(iii)配列番号134の残基21~613、(iv)配列番号142の残基21~610、(v)配列番号144の残基21~610、または(vi)配列番号146の残基21~610に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。生物学的に活性なDNaseは、例えば、本明細書に記載のDNase1またはDNase1L3ポリペプチド(例えば、本明細書に記載のDNase含有パラオキソナーゼ融合体のDNase成分に対応するポリペプチド、例えば、配列番号18の残基21~280、配列番号20の残基21~280、または配列番号152の残基21~280に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる増強されたDNase1ポリペプチドなど)であり得る。一部の実施形態では、DNaseは、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、D-L1-Xd(式中、Dは、DNaseであり、L1は、ポリペプチドリンカー(例えば、DNase含有パラオキソナーゼ融合分子に関して本明細書に記載のL1リンカー)であり、Xdは、本明細書に記載の免疫グロブリンFc領域である)を含む融合ポリペプチドの中に含有され(またはこの融合ポリペプチドのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質とともに含有され)、一部のそのような実施形態では、DNase融合ポリペプチドは、(i)配列番号60の残基21~538もしくは21~537、(ii)配列番号62の残基21~548もしくは21~547、(iii)配列番号155の残基21~538もしくは21~537、(iv)配列番号156の残基21~548もしくは21~547、(v)配列番号138の残基21~548もしくは21~547、または(vi)配列番号140の残基21~548もしくは21~547に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0324】
上記のパラオキソナーゼ融合分子およびDNaseの投与を含む、併用療法の一部の実施形態では、DNaseは、配列番号149、配列番号150、配列番号153または配列番号154に示されるアミノ酸配列を含むDNase1-L1-Fc融合ポリペプチドの中に含有される。DNase融合ポリペプチドが配列番号149、配列番号150、配列番号153、または配列番号154に示されるアミノ酸配列を含む、併用療法の方法のある特定の変形形態では、(i)315および316位の各々におけるアミノ酸は、アラニンであり、(ii)319位におけるアミノ酸は、セリンであり、(iii)378位におけるアミノ酸は、アラニン、グルタミンもしくはグリシンであり、346位におけるアミノ酸は、必要に応じてアラニンであり、(iv)410位におけるアミノ酸は、アラニン、グリシン、もしくはセリンであり、(v)412位におけるアミノ酸は、セリンもしくはアラニンであり、(vi)333位におけるアミノ酸は、チロシンであり、335位におけるアミノ酸は、スレオニンであり、337位におけるアミノ酸は、グルタミン酸であり、および/または(vii)509位におけるアミノ酸は、ロイシンであり、515位におけるアミノ酸は、セリンである。DNase融合ポリペプチドが配列番号149、配列番号150、配列番号153または配列番号154に示されるアミノ酸配列を含む、併用療法の方法の他の相互に排他的でない変形形態では、261~296位に対応するアミノ酸配列は、(i)「Gly-Gly-Gly-GLy-Ser]n(式中、nは、4~7の整数である)、(ii)「Gly-Gly-Gly-Ser]n(式中、nは、5~9の整数である)、および(iii)「Gly-Gly-Ser]n(式中、nは、6~12の整数である)からなる群から選択される式を有する、Gly-Serタンデムリピート配列を含み、一部のそのような実施形態では、261~296位に対応するアミノ酸配列は、(i)「Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n(式中、nは、4~6の整数である)、(ii)「Gly-Gly-Gly-Ser]n(式中、nは、5~7の整数である)、および(iii)「Gly-Gly-Ser]n(式中、nは、6~10の整数である)からなる群から選択される式を有する、Gly-Serタンデムリピート配列を含む。DNase融合ポリペプチドが配列番号149、配列番号150、配列番号153、または配列番号154に示されるアミノ酸配列を含む、併用療法の方法のさらに他の相互に排他的でない変形形態では、261位におけるアミノ酸は、アスパラギン酸であり、262位におけるアミノ酸は、ロイシンであり、263位におけるアミノ酸は、セリンであり、294位におけるアミノ酸は、スレオニンであり、295位におけるアミノ酸は、グリシンであり、および/または296位におけるアミノ酸は、ロイシンである。DNase融合ポリペプチドが配列番号149または配列番号153に示されるアミノ酸配列を含む、併用療法の方法の他の相互に排他的でない変形形態では、(i)74および105位の各々におけるアミノ酸は、独立して、リシンもしくはアルギニンであり、ならびに/または(ii)114位におけるアミノ酸は、フェニルアラニンである。
【0325】
上記の疾患または障害を処置する、脂質酸化を低減させる、または老化から保護するための方法の一部の実施形態では、方法は、(a)上記の式X-L2-PもしくはP-L1-Xを有するパラオキソナーゼ融合ポリペプチド、またはこの融合ポリペプチドのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質の有効量、および(b)生物学的に活性なアポリポタンパク質A-1(ApoA1)(例えば、国際PCT公開番号WO2017/044424に記載のApoA1-Fc融合ポリペプチド、またはこの融合ポリペプチドのダイマー化により形成されるダイマー性タンパク質)の有効量を、患者に投与するステップを含む併用療法である。
【0326】
治療上の使用のために、本明細書に記載の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質は、処置が求められる疾患または障害の管理に関連する従来の方法論と一致する様式で送達される。本開示に従って、融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の有効量は、疾患または障害の予防または処置に十分な時間、十分な条件下で、そのような処置を必要とする対象に投与される。
【0327】
本明細書に記載の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の投与のための対象には、既存の疾患または障害を呈している患者ばかりでなく特定の疾患または障害を発症するリスクが高い患者も含まれる。ある特定の実施形態では、対象は、処置が求められる疾患または障害を有すると診断された。さらに、対象は、処置の過程において疾患または障害のあらゆる変化について(例えば、疾患または障害の臨床症状の増加または減少について)モニターされ得る。また、一部の変形形態では、対象は、パラオキソナーゼ、DNase、RNase、SOD1、CTLA-4細胞外ドメイン、CD40細胞外ドメイン、またはTNFαもしくはTGF-βに特異的に結合しそれを中和するポリペプチド(例えば、抗体)から選択されるタンパク質の投与を含む処置を必要とする別の疾患または障害に罹患していない。
【0328】
予防的応用では、医薬組成物または薬剤は、特定の疾患に罹患しやすいまたは別様に特定の疾患のリスクがある患者に、そのリスクを消失もしくは低下させるのにまたはその疾患の開始を遅らせるのに十分な量で、投与される。治療的応用では、組成物または薬剤は、そのような疾患が疑われるまたは既に罹患している患者に、疾患およびその合併症の症状を治癒させるのにまたは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、投与される。これを果たすために妥当な量は、治療または薬学的有効用量または量と呼ばれる。予防レジメンと治療レジメンの両方において、薬剤は、十分な応答(例えば、炎症性肺疾患では肺胞液クリアランスの増進)が達成されるまで数回の投薬で通常は投与される。典型的には、応答がモニターされ、所望の応答が消え始めたら反復投薬が施される。
【0329】
本発明の方法による処置のための対象患者を同定するために、一般に認められているスクリーニング方法を用いて、特定の疾患に関連するリスク因子を決定することまたは対象において同定された既存の疾患の状態を決定することができる。そのような方法は、例えば、個体が、特定の疾患を有すると診断された親戚を有するかどうかを決定すること、を含み得る。スクリーニング方法は、例えば、遺伝的要素があることが分かっている特定の疾患についての家族の状態を決定するための従来の精密検査も含み得る。この目的に向けて、目的の特定の疾患に関連する遺伝子マーカーを有する個体を同定するために、ヌクレオチドプローブが常套的に用いられ得る。加えて、特定の疾患のマーカーを同定するのに有用である多種多様な免疫学的方法が、当技術分野において公知である。既知の患者総体症状、年齢因子、関連リスク因子などによって示されるようなスクリーニングを実行することができる。これらの方法によって、臨床医は、処置のために本明細書に記載される方法を必要とする患者を常套的に選択することが可能になる。これらの方法に従って、本発明の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質を使用する処置を、独立した処置プログラムとして実行することができ、または他の処置の追跡、補助もしくは協調処置レジメンとして実行することができる。
【0330】
NETosisによって特徴付けられる疾患または障害の処置のために、NET標的化療法による恩恵を受ける可能性が高い対象患者を、例えば、候補患者におけるNETを測定することにより、同定することができる。NETをin vivoで測定するための複数の方法がある(総説については、例えば、Masuda et al., Clin. Chim. Acta 459:89-93, 2016を参照されたい)。1つの方法は、フローサイトメトリーを使用して、非細胞透過性DNA色素で染色することにより細胞関連DNAを測定する(Zharkova et al., Cytometry A 95:268-278, 2019)。他の方法は、DNAに関連するミエロペルオキシダーゼ活性の測定、またはシトルリン化ヒストンH3の測定を含む(例えば、Matsuda et al.、上掲を参照されたい)。さらに別の方法は、血中好中球を自己血漿とともにインキュベートすることによりNETosisを測定する(Abrams et al., Am. J. Resp. Crit. Care Med. 200:869, 2019)。この方法は、重症患者における播種性血管内凝固を予測することができた(同書)。
【0331】
投与のために、本発明による融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質は、医薬組成物として製剤化される。本明細書に記載の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質を含む医薬組成物を、治療用分子が薬学的に許容される担体と混合物で併用される薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って、製剤化するこができる。組成物は、その投与がレシピエント患者によって耐容され得る場合、「薬学的に許容される担体」であると言われる。滅菌リン酸緩衝食塩水は、薬学的に許容される担体の一例である。他の好適な担体は、当業者に周知である。例えば、Gennaro (ed.), Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, 19th ed. 1995)を参照されたい。製剤は、1つまたは複数の賦形剤、保存薬、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面でのタンパク質損失を防止するためのアルブミンなどをさらに含み得る。
【0332】
本発明の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質を含む医薬組成物は、対象に有効量で投与される。融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質を、対象に、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、心房内、関節内、非経口、鼻腔内、肺内、経皮、胸膜内、くも膜下腔内および経口投与経路によるものを含む、様々な投与方式によって、投与することができる。予防および処置を目的として、融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質を、対象に、単回ボーラス送達で、長期間にわたって連続送達(例えば、連続経皮送達)によって、または反復投与プロトコールで(例えば、毎時間、毎日、もしくは毎週)、投与することができる。
【0333】
一部の実施形態では、本発明の融合分子またはダイマー性タンパク質を含む医薬組成物は、噴霧による肺への送達用に製剤化される。エリスロポエチン-FC、インターフェロンベータ1a-FcおよびFSH-Fcをはじめとする、Fc融合タンパク質の肺送達の以前の研究は、免疫グロブリン輸送FcRn経路が肺内で活性であり、20%~50%のバイオアベイラビリティをもたらすことを示した(Bitonti et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:9763-9768, 2004;Bitonti and Dumont, Adv. Drug Deliv. Rev. 58:1106, 2006;Valle et al., J. Interferon Cytokine Res. 32:178-184, 2012を参照されたい)。本明細書に記載のFcRn結合パラオキソナーゼ融合分子(例えば、Fc領域を含有するパラオキソナーゼ融合分子)の肺送達は、局所的にも、循環および末梢器官においても作用し得る。処置が、本明細書に記載のパラオキソナーゼ融合分子およびDNaseでの併用療法である、ある特定の実施形態では、パラオキソナーゼ融合分子(例えば、本明細書に記載のFc-L2-PON1融合体)とDNase(例えば、本明細書に記載のDNase-Fc融合体)の両方が、ネブライザーにより送達される。ネブライザーによる肺への送達を含む一部の変形形態では、処置されることになる疾患または障害は、炎症性肺疾患(例えば、嚢胞性線維症、間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症またはサルコイドーシス)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、硫黄マスタードガスへの曝露、有機リンへの曝露)、グラム陰性菌(例えば、Pseudomonas aeruginosa)によるバイオフィルム形成、および敗血症から選択される。他の相互に排他的でない変形形態では、噴霧による肺への送達用のFcRn結合融合分子(例えば、本明細書に記載のFc-L2-PON1融合体
)は、対応する野生型Fcと比較してFcRn結合親和性が上昇されたFcバリアントを含み、したがって、ネブライザーでの吸入後に、融合分子の半減期を延長し、血液中の濃度を上昇させることになる。
【0334】
複数の生物製剤が、噴霧後に生物活性を保持するよう製剤化されることに成功している(例えば、Hertel et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 93:79-94, 2015を参照されたい)。本発明のパラオキソナーゼ融合分子の送達用の製剤は、肺送達に好適な賦形剤、例えば、多くのバイオ医薬製剤に含まれている界面活性剤であるポリソルベート80(PS80)またはポリソルベート20(PS20)などを含み得る。そのような安定化賦形剤は、それらの臨界ミセル濃度より高い濃度で適用されたとき、タンパク質を気液界面での分解から保護する(例えば、0.01%より高い%のPS80は、G-CSF、LDH、rhConIFN、およびt-Paの安定化に有効であり、0.04%で適用されたPS20は、Fc-ガンマRIIbの保護に有効であった)。別の好適な安定化賦形剤は、例えば0.35%またはそれより高い%で、適用されるHP-ベータ-シクロデキストリン(HP-ベータ-CD)である(Hertel et al.、上掲を参照されたい)。一部の変形形態では、安定化賦形剤は、本明細書に記載のパラオキソナーゼ融合分子(例えば、DNase1-Fc-PON1)の噴霧送達に必要とされない(例えば、野生型ヒトDNase1(Pulmozyme(登録商標))は、賦形剤を必要とせずにジェットまたは振動メッシュ(VM)ネブライザーのどちらかでの噴霧後に凝集せず、安定したままであることが示されている、Cipolla et al., Pharm. Res. 11:491-498, 1994;Scherer et al., J. Pharm. Sci. 100:98-109, 2011を参照されたい)。
【0335】
有効な投薬量の決定は、典型的に、ヒト臨床試験により追跡調査される動物モデル研究に基づくものであり、モデル対象における対象疾患または障害の発生率または重症度を有意に低下させる有効投薬量および投与プロトコールの決定によって導かれる。本発明の組成物の有効用量は、投与の手段、標的部位、患者の生理状態、患者がヒトであるのか動物であるのか、投与される他の薬物療法、処置が予防的であるのか治療的であるのか、ならびに組成物自体の比活性および個体において所望の応答を惹起するその能力をはじめとする、多くの異なる因子によって変わる。通常、患者はヒトであるが、一部の疾患では、患者が非ヒト哺乳動物であることもある。典型的に、投薬量レジメンは、最適な治療応答をもたらすように、即ち、安全性および有効性を最適化するように、調整される。したがって、治療または予防有効量は、いずれの望ましくない副次的効果より有益な効果のほうが勝る(例えば、炎症性肺疾患の処置の場合、いずれの望ましくない副次的効果より、例えば、肺胞液クリアランスの改善、肺の生理状態および機能の改善などのような、いずれかの有益な効果のほうが勝る)量でもある。本発明の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の投与について、投薬量は、典型的に、対象の体重のkgあたり約0.1μg~100mg、または1μg/kg~約50mg/kg、より通常は10μg~5mg/kgの範囲である。より特異的な実施形態では、薬剤の有効量は、約1μg/kg~約20mg/kgの間、約10μg/kg~約10mg/kgの間、または約0.1mg/kg~約5mg/kgの間である。この範囲内の投薬量を、例えば、1日に複数回の投与または1日1回、週1回、2週間に1回、または月1回投与を含む、単回または複数回投与により達成することができる。例えば、ある特定の変形形態では、レジメンは、初回投与、続いての週1回または2週間に1回の間隔での複数回の後続投与からなる。別のレジメンは、初回投与、続いての月1回または2ヵ月に1回の間隔での複数回の後続投与からなる。あるいは、投与は、疾患もしくは障害の臨床症状のモニタリングおよび/または疾患バイオマーカーもしくは他の疾患相関因子のモニタリングによる指摘に応じて不定期であることもある。
【0336】
ネブライザーでの吸入による送達(例えば、炎症性肺疾患、例えば、嚢胞性線維症または間質性肺疾患などの処置のための)を含む、一部の特異的な実施形態では、本発明の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質は、1日に約1mg~約5mg、または約2mg~約4mgの用量でネブライザーにより肺に投与される。全身投与(例えば、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、関節リウマチ、または炎症性腸疾患の処置のための)を含む、他の特異的な実施形態では、本発明の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質は、1ヵ月~6週間ごとに約50mg~約1,000mg、約50mg~約800mg、約50mg~約500mg、約100mg~約500mg、約100mg~約400mg、約100mg~約300mg、約150mg~約250mg、または約200mgの用量で(例えば、静脈内または皮下注射により)投与される。本明細書に記載のパラオキソナーゼ融合分子およびDNaseでの併用療法については、パラオキソナーゼ融合分子(例えば、本明細書に記載のFc-L2-PON1融合体)とDNase(例えば、本明細書に記載のDNase-Fc融合体)の各々が、これらの用量で投与され得る。
【0337】
炎症性肺疾患の処置のための本発明のパラオキソナーゼ融合組成物の有効性の評価に特に好適な動物モデルとしては、例えば、da Cunhaら(Exp. Lung Res. 42:66, 2016)(野生型(wt)DNase1処置による、気道抵抗の有意な低減を示す)によって記載されたようなマウスオボアルブミン誘導性急性喘息モデル、Benmerzougら(Nat. Comm. 9:5226, 2018)(wt DNase1処置による、DNA媒介STING活性化の防止および下流のI型IFN応答の遮断を示す)によって記載されたようなマウスシリカ誘導性肺炎症モデル、およびCaudrillierら(J. Clin. Invest. 122:2661, 2012)(wt DNase1処置による、肺水腫および肺血管透過性からの保護ならびに肺中のNET形成および血小板分離の低減を示す)によって記載されたような輸血関連急性肺傷害のマウスモデルが挙げられる。
【0338】
硫黄マスタードガスまたは有機リンへの曝露の処置のための本明細書に記載のパラオキソナーゼ融合組成物の有効性の評価に好適な動物モデルとしては、例えば、Valiyaveettilら(Biochem. Pharmocol. 81:800-809, 2011;Toxicol. Letters 202:203-208, 2011)(組換えヒトPON1注射による、サリンおよびソマン吸入毒性からの保護を示す)によって記載されたようなモルモットモデル、ならびにBajajら(Appl. Biochem. Biotechnol. 180:165-176, 2016)およびStevensら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105:12780-12784, 2008)(PON1の組換えQ192Kバリアントを使用する、有機リン被毒からの保護を示す)によって記載されたようなマウスモデルが挙げられる。
【0339】
炎症性腸疾患の処置のための本明細書に記載のパラオキソナーゼ組成物の有効性の評価に特に好適な動物モデルとしては、TNBS誘導性大腸炎モデル、およびマウスにCD4+CD45RBhigh細胞が移入された慢性大腸炎モデルが挙げられる。例えば、Yamashita et al., J. Immunol. 191:949-960, 2013(TNBS誘導性大腸炎モデルにおけるPON1療法のおよび慢性大腸炎モデルにおけるPON1バリアント(G3C9)の有効性を示す)を参照されたい。別の好適なモデルは、マウスにおけるデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性大腸炎モデルである。例えば、Babicova et al., Folia Biolica (Praha) 64:10, 2018(DSS誘導性大腸炎のwt DNase1処置による、結腸におけるTNFαおよびミエロペルオキシダーゼの低減を示す);Li et al., J. Crohns Colitis 2020, 14:240-253, 2020(DSS誘導性大腸炎のDNase1処置による、サイトカイン産生の減少ならびに加速された血栓形成および血小板活性化の減衰を示す)を参照されたい。
【0340】
関節リウマチ(RA)のコラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデルも公知である(例えば、Brand et al., Nat. Protoc. 2:1269-1275, 2007を参照されたい)。CIAは、RAと同様の免疫学的および病理学的特徴を共有し、そのため、CIAは、DNase組成物の有効性を評価するための理想的なモデルになる。RAの別の好適なモデルは、LewisラットにおけるPG-PS(プロテオグリカン-多糖)誘導性関節炎である(例えば、Esser et al., Arthritis and Rheumatism 28:1402-1411, 1985;Brooks et al., Proc. Intl. Soc. Mag. Reason. Med. 11:1526, 2003を参照されたい)。
【0341】
多発性硬化症(MS)の好適な動物モデルとしては、例えば、炎症、脱髄および衰弱につながる、CNS抗原(EAEの文脈では「脳炎誘発物質」と呼ばれる)での免疫化によるCNSにおける自己免疫応答の誘導に頼る、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)モデルが挙げられる(例えば、Constantinescu et al., British Journal of Pharmacology 164:1079-1106, 2011を参照されたい)。
【0342】
本発明のパラオキソナーゼ融合分子の有効性を評価するための他の公知の動物モデルとしては、例えば、Albadawiら(J. Vasc. Surg. 64:484, 2016)(wt DNase1療法による、灌流の増加、浸潤炎症性細胞の減少、および局所血栓症マーカーの低減を示す)によって記載されたような後肢虚血再灌流モデル、Peerら(Am. J. Nephrol. 43:195, 2016)(wt DNase1療法による腎保護効果を示す)によって記載されたような虚血-再灌流誘導性急性腎傷害のラットモデル、Maiら(Shock 44:166, 2015)(wt DNase1療法による、臓器損傷の防止および死亡からの防御を示す)によって記載されたようなマウスにおける盲腸結紮・穿刺敗血症モデル、およびBrillら(J. Thrombosis Haemostasis 10:136, 2012)(wt DNase1療法による血栓症の予防を示す)によって記載されたような下大静脈狭窄のモデルが挙げられる。さらに他の例示的な動物モデルとしては、RNase療法の有効性を示すために使用される心臓移植拒絶、プラーク形成および心筋梗塞のモデル(例えば、Kleinert et al., J. Am. Heart Assn. doi:10.1021, 2016;Simsekyilmaz et al., Circulation 129:598-606, 2014;Steiger et al., JAMA 6:e004541, 2017を参照されたい)、ならびにWalbererら(Curr. Neovas. Res. 6:12-19, 2009)(RNase1療法による脳浮腫および梗塞サイズの低減を示す)によって記載されたような急性脳卒中モデルが挙げられる。
【0343】
本発明の融合分子を動物腫瘍モデルにおいて抗腫瘍活性について評価することもできる。例えば、NET形成に関連する腫瘍転移を低減させる点でのDNase-PON処置の有効性を、例えば、Cools-Lartigueら(J. Clin. Invest. 123:3446, 2013)(重症術後感染症のモデルおけるwt DNase1の全身投与による注射された腫瘍(肺癌)細胞の転移の低減を示す)およびParkら(Sci. Translational Med. 8:361ra138, 2016)(wt DNase1コートナノ粒子の全身投与による、乳がん細胞の肺への転移の低減を示す)によって記載されたような、マウスモデルにおいて評価することができる。例えば、Trejo-Becirrilら(Integrative Cancer Therapies 15:NP35-NP43, 2016)(DNase1とプロテアーゼの組合せによる腫瘍成長の阻害を示す)によって記載されたような、ヒト結腸がん細胞系SW480が皮下移植されたヌードマウスを用いるモデルも、公知である。他の好適なモデルとしては、Rutkoskiら(Translational Oncology 6:392-397, 2013)(PEG-RNase1を使用する、マウスにおける腫瘍成長の阻害を示す)によって記載されたヒト肺腫瘍異種移植モデル、およびMironova et al., Oncotarget 8:78796-78810, 2017(RNase療法による抗腫瘍活性を示す)によって記載された、ルイス肺癌を有する同種マウス腫瘍モデルが挙げられる。
【0344】
別の公知の動物腫瘍モデルは、免疫原性が低い腫瘍であるB16黒色腫である。腫瘍免疫療法の複数のモデルが研究されている。Ngiow et al., Adv. Immunol. 130:1-24, 2016を参照されたい。B16黒色腫モデルは、チェックポイント阻害剤 抗CTLA-4、抗PD-1およびこれらの組合せを用いて、幅広く研究されている。単独での抗CTLA-4には、GM-CSF形質導入腫瘍ワクチンと組み合わせたときにのみ、または抗PD-1と組み合わせたときにのみ、このモデルにおいて強力な治療効果がある。Weber, Semin. Oncol. 37:430-439, 2010;Ai et al., Cancer Immunol. Immunother. 64:885-92, 2015;Haanen et al., Prog. Tumor Res. 42:55-66, 2015を参照されたい。悪性黒色腫の処置のためのDNase-PON、RNase-PON、または抗TGFβ-PON融合分子の有効性は、例えば、触知可能な皮下腫瘍結節が形成されたB16黒色腫マウスへの投与後に遅くなった腫瘍成長によって示される。パラオキソナーゼ融合分子の有効性を、B16黒色腫マウスにおいて、単独で、または代替的に別の抗がん療法(例えば、腫瘍ワクチンを伴うもしくは伴わない、または抗PD-1/PD-L1を伴うもしくは伴わない、抗CTLA-4)と組み合わせて、評価することができる。例えば、本明細書に記載のDNase-PON、RNase-PONまたは抗TGFβ-PON融合分子と抗CTLA-4との組合せを腫瘍ワクチンの非存在下で使用することによるB16黒色腫マウスにおける腫瘍拒絶によって、パラオキソナーゼ融合体療法を使用することによる抗CTLA-4への応答増強が実証される。マウスにおいて機能的に活性だがこれらのモデルにおいて免疫原性である(およびそれによって、7~10日後に中和抗体が形成されることになる可能性が高い)と予想されるヒトタンパク質配列を含むパラオキソナーゼ融合分子を評価するための例示的な研究では、マウスに本発明の融合分子が短期間投与(例えば、1週間、例えば、約40mg/kgの2用量を3日の間隔を空けて、投与)され得、次いで、腫瘍成長が、典型的には融合分子の注射後2~3週間、モニターされ得る。
【0345】
医薬組成物の投薬量を、担当臨床医が、標的部位で所望の濃度を維持するように変えることができる。例えば、静脈内送達方式が選択された場合、標的組織における血流中の薬剤の局部濃度は、1リットルあたり組成物約1~50ナノモルの間であり得、対象の状態および予測される測定応答に依存して時には1リットルあたり約1.0ナノモル~1リットルあたり10、15または25ナノモルの間であることもある。より高濃度またはより低濃度が、送達方式、例えば粘膜表面への送達に対して経皮送達、に基づいて選択されることもある。投薬量は、投与される製剤、例えば、粉末に対してスプレー式点鼻薬、持続放出性の経口粒子または注射される粒子、経皮製剤など、の放出速度に基づいて調整すべきでもある。同じ血清中濃度レベルを達成するために、例えば、5ナノモル濃度の放出速度(標準条件下で)を有する徐放性粒子は、10ナノモル濃度の放出速度を有する粒子の投薬量の約2倍で投与されることになる。投薬を、例えば、投与される融合分子の活性に依存して、変えることもできる。例えば、DNase1がアクチン耐性でない(即ち、DNase1が、ヒトDNase1と比較してDNaseのエンドヌクレアーゼ活性のG-アクチン誘導性阻害を減少させるいずれのアミノ酸置換もヒトDNase1と比較して含有しない)、DNase1-PON融合分子に関しては、アクチンによる阻害を、同様のしかしアクチン耐性のDNase1-PON融合分子に対して有効である用量と比較して用量を増加させることによって、克服することができる。
【0346】
本明細書に記載の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質を含む医薬組成物を、液体形態で、エアロゾルで、または固体形態で提供することができる。液体形態は、注射可能な溶液、エアロゾル、液滴、トポロジカル溶液および経口懸濁液によって説明される。例示的な固体形態としては、カプセル、錠剤、および制御放出形態が挙げられる。後述の形態は、ミニ浸透圧ポンプおよび埋込物によって説明される。例えば、Bremer et al., Pharm. Biotechnol. 10:239, 1997;Ranade, "Implants in Drug Delivery," in Drug Delivery Systems 95-123 (Ranade and Hollinger, eds., CRC Press 1995);Bremer et al., "Protein Delivery with Infusion Pumps," in Protein Delivery: Physical Systems 239-254 (Sanders and Hendren, eds., Plenum Press 1997);Yewey et al., "Delivery of Proteins from a Controlled Release Injectable Implant," in Protein Delivery: Physical Systems 93-117 (Sanders and Hendren, eds., Plenum Press 1997)を参照されたい。他の固体形態としては、クリーム、ペースト、他のトポロジカルな応用などが挙げられる。
【0347】
分解性の高分子マイクロスフェアが、治療用タンパク質の高い全身レベルを維持するために設計されている。マイクロスフェアは、分解性ポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、非生体分解性酢酸エチルビニルポリマーから調製され、タンパク質がポリマー内に封入される。例えば、Gombotz and Pettit, Bioconjugate Chem. 6:332, 1995;Ranade, "Role of Polymers in Drug Delivery," in Drug Delivery Systems 51-93 (Ranade and Hollinger, eds., CRC Press 1995);Roskos and Maskiewicz, "Degradable Controlled Release Systems Useful for Protein Delivery," in Protein Delivery: Physical Systems 45-92 (Sanders and Hendren, eds., Plenum Press 1997);Bartus et al., Science 281:1161, 1998;Putney and Burke, Nature Biotechnology 16:153, 1998;Putney, Curr. Opin. Chem. Biol. 2:548, 1998を参照されたい。ポリエチレングリコール(PEG)コートナノスフェアは、治療用タンパク質の静脈内投与のための担体にもなり得る。例えば、Gref et al., Pharm. Biotechnol. 10:167, 1997を参照されたい。
【0348】
例えば、Ansel and Popovich, Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (Lea & Febiger, 5th ed. 1990);Gennaro (ed.), Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, 19th ed. 1995)、およびRanade and Hollinger, Drug Delivery Systems (CRC Press 1996)によって示されているように、他の剤形を当業者は考案することができる。
【0349】
本明細書に記載の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質の全身投与を含む一部の実施形態では、融合分子は、緩衝食塩水(例えば、1mMの塩化カルシウムを加えた2mMの炭酸塩、pH7.5で緩衝された食塩水)中で製剤化される。
【0350】
本明細書に記載の医薬組成物を併用療法に関連して使用することもできる。例えば、本明細書に記載のパラオキソナーゼ融合分子およびDNaseの投与を含む併用療法のために、パラオキソナーゼ融合分子およびDNase(例えば、本明細書に記載のDNase-Fc融合体)の各々を、別々にまたは混合物としてのどちらかで、緩衝食塩水(例えば、1mMの塩化カルシウムを加えた2mMの炭酸塩、pH7.5で緩衝された食塩水)中で製剤化することができる。
【0351】
医薬組成物を、本明細書に記載の融合ポリペプチドまたはダイマー性タンパク質を含む容器を含むキットとして供給することができる。治療用分子を、例えば、単一もしくは複数用量の注射可能な溶液の形態で、または注射の前に復元されることになる滅菌粉末として、備えることができる。あるいは、そのようなキットは、治療用タンパク質の投与用のドライパウダー分散機、液体エアロゾル発生器、またはネブライザーを含むことができる。そのようなキットは、医薬組成物の適応症および用法に関する書面情報をさらに含むことができる。
【0352】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0353】
(実施例1)
DNase1-FcおよびDNase1-Fc-PON1融合タンパク質の構築および発現
構築物を設計し、合成し、正しい配列を有するカセットを組み合わせて、特有のDNase1融合分子をコードする合成融合遺伝子を生成した。各構築物は、野生型ヒトDNase1(配列番号15および16に示される通りのヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列;GenBank受託番号NM_005223も参照されたい)のバリアントを含んだ。DNase1バリアントは、成熟野生型ヒト配列(配列番号120)と比較してアミノ酸置換をN74位(N74K)、G105位(G105R)およびA114位(A114F)に含有した(成熟タンパク質に対応するバリアントDNase1ヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列は、配列番号17の残基61~840、および配列番号18の残基21~280にそれぞれ示される)。用いたシグナルペプチド配列は、融合タンパク質の高レベル発現および分泌を駆動する効率的な異種リーダーペプチドであるヒトVK3リーダーペプチド(配列番号57および配列番号58に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)であった。(Gly4Ser)4リンカー((g4s)4;配列番号11および配列番号12に示される通りのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列)または(Gly4Ser)6リンカー((g4s)6;配列番号13および配列番号14に示される通りのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列)のどちらかであるペプチドリンカーを使用して、DNase1カセットをヒトIgG1 Fcバリアント(SSSヒンジ、P238S、P331S)のN末端に融合させた。Fcバリアントヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号27および配列番号28に示される。生成された完成DNase1-Fc構築物は、次の通りである:
[hVK3LP]-[hDNase1 N74K-G105R-A114F]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc](本明細書では以降、hDNaseTM-(g4s)4-Fcとも呼ばれる;配列番号59および配列番号60に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);および
[hVK3LP]-[hDNase1 N74K-G105R-A114F]-(g4s)6-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc](本明細書では以降、hDNaseTM-(g4s)6-Fcとも呼ばれる;配列番号61および配列番号62に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)。
【0354】
hDNaseTM-(g4s)4-FcまたはhDNaseTM-(gs)6-Fcのカルボキシル末端を、未切断リーダーペプチドの最初の15個のアミノ酸が欠失しているヒトPON1のバリアント(PON1 Q192K;配列番号5および配列番号6に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)が後に続く、N連結型グリコシル化部位(NGS;配列番号55および配列番号56に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)を含有するペプチドリンカーに、融合させることによって、機能的PON1酵素をさらに含む二重特異性構築物も生成した。完成DNase-Fc-PON1構築物は、次の通りである:
[ヒトVK3LP]-[hDNase1 N974K-G105R-A114F]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc]-NGS-[PON1 Q192K]、(配列番号1および配列番号2に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)(本明細書では以降、hDNaseTM-(g4s)4-Fc-PON1-Q192K、hDNaseTM-(g4s)4-Fc-PON1-K、またはDNaseTM-(g4s)4-Fc-P1-Kとも呼ばれる);および
[ヒトVK3LP]-[hDNase1 N974K-G105R-A114F]-(g4s)6-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc]-NGS-[PON1 Q192K]、(配列番号147および配列番号148に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)(本明細書では以降、DNaseTM-(g4s)6-Fc-P1-Kとも呼ばれる)。
DNase1-FcおよびDNase1-Fc-PON1融合タンパク質の一過性発現
【0355】
全ての融合遺伝子を、pUCに基づくベクター内にアセンブルし、次いで、融合遺伝子の発現を駆動するCMVプロモーターを含有するpcDNA3プラスミド誘導体である哺乳動物発現ベクターpDGの多重クローニング部位に挿入した。プラスミドDNAを、QIAGEN(Germantown、MD)ミニまたはマキシプレッププラスミドDNAキットを使用して調製した。精製プラスミドDNAを、おおよそ50~75%の集密度で播種したHEK293細胞に、Polyfect(QIAGEN、Germantown、MD)トランスフェクション試薬を製造業者の使用説明書に従って使用してトランスフェクトした。培養培地をトランスフェクションの翌日にDMEM Fluorobrite(商標)(Life Technologies、Carlsbad、CA)無血清培地に変え、トランスフェクト細胞をさらに48時間インキュベートした後に培養上清を回収した。
【0356】
図1は、HEK293一過性トランスフェクションの代表セットからの融合タンパク質発現のウェスタンブロット解析の結果を示す。培養上清をゲル電気泳動のために次のように直接ロードした:上清を収集し、1/4の試料体積の4×還元LDS試料緩衝液(Life Technologies、Carlsbad、CA)を添加し、試料を10分間、72℃で加熱し、試料を1分間、3000rpmで微量遠心機(microfuge)において遠心分離し、各試料からのローディング緩衝液中30μlの試料(2分の1)を、4~12%Bis-Tris NuPAGEゲル(Life Technologies、Carlsbad、CA)にロードした。タンパク質分子量マーカーを各ゲルに含めた(Chameleon(登録商標)DUO分子量マーカー;LI-COR Biosciences、Lincoln、NE)。SDS-PAGEゲルを、NuPAGE MOPS泳動用緩衝液(Life Technologies、Carlsbad、CA)中、還元条件下、185ボルトでおおよそ1~1.5時間、泳動させた。XCellブロットモジュール(Life Technologies、Carlsbad、CA)と、10%メタノールを含有するNUPAGE-MOPS(Life Technologies、Carlsbad、CA)転写用緩衝液とを使用して、ゲルをニトロセルロース膜にブロットした。ブロットをLI-COR Odyssey Intercept(商標)ブロッキング緩衝液中でブロックし、続いて、希釈ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)二次抗体(Jackson Immunoresearch、WestGrove、PA)とともにインキュベートした。二次抗体をAlexafluor 790近IR色素(LI-COR Odyssey検出)とコンジュゲートし、ブロッキング緩衝液で、4℃で1:25,000希釈し、一晩、揺動した。ブロットを、0.1%Tween(登録商標) 20を含有するTris緩衝食塩水(TBS)で、4回洗浄した。次いで、ブロットをTBS緩衝液ですすぎ、LICOR Odyssey(商標)スキャナーでスキャンした。トランスフェクション試料は、次のようにロードした:レーン1 - LICOR Chameleon(商標)分子量マーカー;レーン2、レーン3、レーン4 - hDNaseTM-(g4s)4-Fc-PON1-Q192Kの3つの異なる個々のクローン(#1、#2、#4)からのトランスフェクション上清;レーン5 - THER4-RNase(対照;apoA1-(g4s)4-SSSヒンジ-P238S-P331S-Fc-NGS-RNase1;米国特許出願公開第2018/0201664を参照されたい);レーン6 - LICOR Chameleon MWマーカー;レーン7 - hDNaseTM-(g4s)4-Fc #4;レーン8 - hDNaseTM-(g4s)6-Fc #2;レーン9 - THER4(対照;apoA1-(g4s)4-SSSヒンジ-P238S-P331S-Fc;国際PCT公開番号WO2017/044424を参照されたい);レーン10 - モックトランスフェクション。各マーカーバンドの近似分子量(kDa)が、ウェスタンブロットの右側に示されている。
DNase1-FcおよびDNase1-Fc-PON1融合タンパク質の安定発現
【0357】
DNase1融合タンパク質の安定な産生を、CMVプロモーターの制御下のDNase1融合分子cDNAを含有する選択可能な増幅可能なプラスミド、pDG、の、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)DG44細胞への電気穿孔によって、達成した。pDGベクターは、プラスミドの選択圧を増大させるためにプロモーターが減弱された、DHFR選択可能マーカーをコードするpcDNA3の改変バージョンである。プラスミドDNA(200μg)を、QIAGEN HISPEEDマキシプレップキットを使用して調製した。精製プラスミドを特有のAscI部位で線状化し(New England Biolabs、Ipswich、MA、カタログ番号R0558)、フェノール抽出により精製し(Sigma-Aldrich、St Louis、MO)、エタノールで沈殿させ、洗浄し、組織培養培地であるExcell 302(カタログ番号14324、SAFC/Sigma Aldrich、St Louis、MO)に再懸濁させた。サケ精子DNA(Sigma-Aldrich、St Louis、MO)を、フェノール抽出およびエタノール沈殿の直前に担体DNAとして添加した。プラスミドおよび担体DNAを共沈させ、400μgを使用して電気穿孔によって2×107のCHO DG44細胞にトランスフェクトした。
【0358】
電気穿孔のために、グルタミン(4mM)、ピルビン酸塩、組換えインスリン(1μg/ml)、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび2×DMEM非必須アミノ酸(全て、Life Technologies、Grand Island、NYからのもの)を含有する、Excell 302培地(カタログ番号13424C、SAFC Biosciences/Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)において、細胞を対数期まで成長させた。この培地を、本明細書では以降、「Excell 302完全」培地と呼ぶ。トランスフェクトされていない細胞およびトランスフェクトされることになる細胞のための培地は、HT(ヒポキサンチンおよびチミジンの100×溶液から希釈されたもの)(Invitrogen/Life Technologies、Grand Island、NY)も含有した。電気穿孔を、キャパシタンスエクステンダーを備えているBioRad(Hercules、CA)GenePulser電気穿孔ユニットを使用して、280ボルト、950マイクロファラッドで行った。電気穿孔を、0.4cmギャップ滅菌使い捨てキュベットにおいて行った。電気穿孔された細胞を電気穿孔後に5分間インキュベートした後、これらの処理された細胞をT75フラスコの中の非選択Excell 302完全培地に移した。トランスフェクト細胞を、回収を可能にするために一晩、37℃、5%CO2で非選択培地においてインキュベートした後、96ウェル平底プレート(Costar)に250細胞/ウェル(2500細胞/ml)~2000細胞/ウェル(20,000細胞/ml)の範囲の様々な段階希釈度で選択的に播種した。細胞クローニングのための培養培地は、50nMのメトトレキサートを含有するExcell 302完全であった。トランスフェクションプレートに5日間隔で80μlの新鮮培地を供給した。最初の数回の供給の後、100μlの培地を除去し、新鮮培地に置き換えた。プレートをモニターし、クローンが入っている個々のウェルに、クローン増生がほぼ集密になるまで供給し、ほぼ集密になったら、クローンを、1ml培地/ウェルを含有する24ウェル皿に拡大した。24ウェルプレートへの細胞の移入およびそこでの拡大の前に、元の96ウェルプレートからの培養上清のアリコートを第2の96ウェルプレートに回収した。この第2のプレートを、IgG濃度を推定するためのELISA解析のための希釈を行うまで、凍結しておいた。
【0359】
組換え融合タンパク質の産生レベルについての培養上清のスクリーニング:最初のトランスフェクタントのクローン増生が十分になったら、マスターウェルからの培養上清の段階希釈物を解凍し、-IgGサンドイッチELISAの使用により希釈物をDNase1融合タンパク質の発現についてスクリーニングした。手短に述べると、NUNC Maxisorpプレートを、一晩、4℃で、PBS中の2マイクログラム/mlのF(ab’2)ヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch、West Grove、PA;カタログ番号109-006-098)でコーティングした。プレートをPBS/3%BSAでブロックし、培養上清の段階希釈物を、室温で2~3時間、または4℃で一晩、インキュベートした。プレートをPBS/0.05%Tween(登録商標) 20で3回洗浄し、PBS/0.5%BSA中、1:7500~1:10,000のホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートF(ab’2)ヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch、West Grove、PA;カタログ番号109-036-098)とともに1~2時間、室温でインキュベートした。プレートをPBS/0.05%Tween(登録商標) 20で5回洗浄し、結合をSureBlue Reserve(商標)TMB基質(KPL Labs/SeraCare、Gaithersburg、MD;カタログ番号53-00-02)で検出した。反応を等体積の1N HClの添加によって停止させ、各プレートのウェルあたりの吸光度をVarioSkan LUXプレートリーダー(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)によって450nMで読み取った。培養上清の希釈物のOD450と、公知の標準物質、本開示に記載のクローンと同一の-Igテールを有するプロテインA精製ヒト-IgG融合タンパク質、典型的には、THER4(apoA1-(g4s)4-SSSヒンジ-P238S-P331S Fc;国際PCT公開番号WO2017/044424を参照されたい)、またはヒトCD180に標的化されたscFv-Fc(G28-8)、の段階希釈物を使用して作成した標準曲線とを比較することにより、濃度を推定した。プレートリーダーソフトウェアおよびMicrosoft Office ExcelまたはGraphPad Prism 8.4.3(San Diego、CA)を使用して、データを収集し、解析した。最高発現DNase-lnk-Fcクローンは、25~55μg/mlの範囲で発現したが、最高発現DNase-lnk-Fc-PON1-Kクローンは、おおよそ10~30μg/mlで発現した。
【0360】
プロテインA精製上清を、融合タンパク質を発現している使用済みCHO細胞培養物から収集し、0.2μm PES expressフィルター(Nalgene、Rochester、NY)によって濾過し、4℃の50ml滅菌コニカル遠心分離管(Repligen、Waltham、MA)の中での培養上清とプロテインA-アガロース(IPA 300架橋アガロース)スラリーの緩徐な回転を使用する親和性クロマトグラフィーに供した。プロテインAアガロースに結合した融合タンパク質を遠心分離により回収し、培養上清を除去し、交換し、上清の所望の体積が処理されるまでインキュベーションプロセスを反復した。次いで、最終プロテインAアガローススラリーを、滅菌、酸洗浄済みエコノカラム(BioRad、Hercules、CA)にロードして樹脂を洗浄した。次いで、溶出の前に、カラムを数カラム体積のカラム洗浄緩衝液(Gentle Ag-Ab binding buffer、Pierce/ThermoFisher、Waltham、MA)で洗浄して一切の残留培養上清を除去した。次いで、結合したタンパク質を、穏やかなAg/Ab溶出用緩衝液(Pierce/ThermoFisher、Waltham、MA)を使用して、樹脂から溶出した。画分(0.8~1.0ml)を収集し、Nanodrop(Wilmington DE)微量試料分光光度計を使用して280nMで各画分からのアリコート(2μl)のタンパク質濃度を決定し、溶出用緩衝液のみを使用してブランクを決定した。融合タンパク質を含有する画分をプールし、Spectrum Laboratories G2(Ranch Dominguez、CA、カタログ番号G235057、Fisher Scientific カタログ番号08-607-007)float-a-lyzerユニット(MWCO 20kDa)を使用する[0.9%塩化ナトリウム、5mM 炭酸水素ナトリウム、1mM HEPES緩衝液、1mM 塩化カルシウム、pH7.5]に対する透析によって緩衝液交換を行った。透析を、滅菌2.2リットルCorningローラーボトルにおいて、4℃で一晩、行った。透析後、0.2μMフィルターユニットを使用してタンパク質を濾過し、Pyrotell LALゲル凝固システムシングルテストバイアル(STV)(カタログ番号G2006、Associates of Cape Cod、East Falmouth、MA)を使用してアリコートをエンドトキシン汚染について試験した。
【0361】
図2は、SDS-PAGE電気泳動およびImperial Protein Stain(Pierce/ThermoFisher、Waltham、MA/Rockville、MD;カタログ番号24615)での染色後の、安定したCHOトランスフェクションからの精製タンパク質を示す。5マイクログラムの各プロテインA精製融合タンパク質を、1×LDS還元試料緩衝液中、72℃で10分間インキュベートし、続いて、4~12%Bis-Tris NuPAGEゲル(Life Technologies、Carlsbad、CA)にロードした。タンパク質分子量マーカーを各ゲルに含めた(Chameleon(登録商標)DUO分子量マーカー(LI-COR Biosciences、Lincoln、NE)およびPrecision Plus分子量マーカー(BioRad、Hercules、CA))。SDS-PAGEゲルを、NuPAGE MOPS泳動用緩衝液(Life Technologies、Carlsbad、CA)中で還元条件下、175ボルトでおおよそ2時間、泳動させた。ゲルを100mlの蒸留水で3回洗浄し、次いで、室温で揺動しながら2.5時間、30mlのImperial Stain(Pierce/ThermoFisher、Waltham、MA)で染色した。ゲルを100~200mlの蒸留水で4回洗浄することによって脱染し、プラスチックスリーブに入れた後、染色されたゲルを撮影/スキャンした。レーンに、次のようにロードした:レーン1 - THER4PON1-K(apoA1-(g4s)4-SSSヒンジ-P238S-P331S-Fc-NGS-PON1-K;国際PCT公開番号WO2017/044424を参照されたい);レーン2 - hDNaseTM-(g4s)4-Fc-PON1-K;レーン3 - hDNaseTM-(g4s)4-Fc;レーン4 - hDNaseTM-(g4s)6-Fc;レーン5 - LI-COR Chameleon(登録商標)MWマーカー;レーン6 - BioRad Precision Plus Kaleidoscope MWマーカー。各マーカーバンドの近似分子量(kDa)が、染色されたゲルの右側に示されている。
(実施例2)
DNase1-FcおよびDNase1-Fc-PON1融合タンパク質のDNase活性
【0362】
DNase1融合タンパク質のヌクレアーゼ活性を、改良型SYTOX(商標)Green蛍光アッセイを使用して評価した。SYTOX Green色素(DMSO中の5mM溶液、カタログ番号S7020)をMolecular Probes/Invitrogen(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)から入手した。サケ精子DNAもThermoFisher Scientific(UltraPure、せん断され、フェノール精製されたもの、カタログ番号15632011)から入手した。酵素活性アッセイを、固定酵素濃度での基質濃度の滴定、または固定基質濃度での酵素濃度の滴定、どちらかによって行った。基質滴定実験のために、サケ精子DNAとSYTOX Green染色剤とを、1×DNase反応緩衝液(10mM Tris、pH7.5、5mM MgCl2、1mM CaCl2)中、400μM(140ug/ml)サケ精子DNAに対して14μM sytox greenの比で混合し、混合物を37℃でおおよそ2時間インキュベートして、標識し、平衡化した。ストック標識DNAの適切な希釈物を酵素活性アッセイのために作製した。SYTOX Green標識DNAの3分の1倍段階希釈物を別のプレートで調製し、50μlの各希釈物をアッセイプレートに移して、最終反応において次の基質濃度を生じさせた:1)220μMサケ精子DNA(SS DNA)および10μM SYTOX Green;2)147μM SS DNAおよび6.7μM SYTOX Green;3)98.78μM SS DNAおよび4.4μM SYTOX Green;4)66μM SS DNAおよび3.01μM SYTOX Green;ならびに5)44μM SS DNAおよび2.05μM SYTOX Green。
【0363】
各融合タンパク質または組換えDNase 1酵素を、1× DNase反応緩衝液中の評価される所望の最終濃度の2倍の濃度(9nMの初期濃度、または4.5nMの最終濃度)で調製した。50マイクロリットルの各融合タンパク質または組換え酵素を、標識基質を収容しているアッセイプレートの各ウェルに添加した。プレートを直ちにプレートリーダーに移し、485nm励起および528nm発光波長を使用して蛍光を測定した。VarioSkan LUX蛍光プレートリーダー(Thermo Scientific、Waltham、MA)を用いて合計40分間、45秒ごとに読み取る動態アッセイを使用して、試料蛍光をモニターした。RFU(相対蛍光単位)をウェルごとに時間の関数としてプロットした。各ウェルの蛍光シグナルは、ヌクレアーゼ活性の増加に伴ってより急速に減少した。
【0364】
図3は、2つの異なる基質濃度、220μMまたは66μMサケ精子DNA、で時間の関数として相対蛍光単位(RFU)を解析する生データのグラフ表示を示す。これらの実験については、使用する酵素濃度を4.5nMに固定した。DNase1TM-(g4s)4-FcおよびDNase1TM-(g4s)6-Fc融合タンパク質の比活性は、全ての基質濃度で組換え野生型ヒトDNase1より高かった。より低い基質濃度(より生理的に適切なレベル)では、二重特異性融合タンパク質(DNase1TM-(g4s)4-Fc-P1-K)のほうが組換え野生型DNase1より高い活性を示したが、より高いDNA基質濃度では、野生型DNase1のほうが二重特異性融合タンパク質より高い活性を有した。
【0365】
図4Aおよび4Bは、これらの条件を使用する2つの異なるDNase活性実験(「実験#1」および「実験#2」)からのデータのミカエリスメンテンプロットを示す。実験#1および実験#2における各融合タンパク質についての推定KmおよびVmaxを、各実験についての表形式データを収載する下記の表2に示す。Vmaxまたは最大速度についての単位は、消化されたSYTOX標識サケDNAのμmol/分であり、Kmについての単位は、標識サケ精子DNAのμmolである。VarioSkan LUXプレートリーダー(Thermo Scientific、Waltham、MA)のSkanIt(商標)ソフトウェアを使用して生データを解析し、次いで、Microsoft Excel(Redmond、WA)およびGraphPad Prism 8.4.3(San Diego CA)を使用してデータをさらに解析した。
表2: 4.5 nMのDNase融合タンパク質についての表形式ミカエリスメンテンデータ
【表2】
Vmax: 消化されたサケ精子DNAのμmol/分
Km: サケ精子DNAのμmol
【0366】
DNase融合タンパク質がアクチン阻害に対して感受性であるかどうかを評価するために、酵素活性アッセイをアクチンの存在または非存在下でも行った。これらのアッセイを、固定酵素濃度での基質濃度の滴定、または固定基質濃度での酵素濃度の滴定、どちらかによって行った。基質滴定実験のために、サケ精子DNAとSYTOX Green染色剤とを、1×DNase反応緩衝液(10mM Tris、pH7.5、5mM MgCl2、1mM CaCl2)中、400μM(140μg/ml)サケ精子DNAに対して14μM sytox greenの比で混合し、混合物を37℃でおおよそ2時間インキュベートして、標識し、平衡化した。
【0367】
各融合タンパク質または組換えDNase1酵素を、1×DNase反応緩衝液中の評価される所望の最終濃度の4倍の濃度(18nMの初期濃度、または4.5nMの最終濃度)で調製した。次いで、各4×試料を、4×=160μg/mlのもしくはヌクレアーゼ反応において40μg/mlの最終濃度のウサギ骨格筋アクチンタンパク質(Cytoskeleton、Denver、CO.、カタログ番号AKL99-A)を含有する溶液と、またはアクチンを含有しない反応緩衝液と、1:1で混合した。80μg/mlのアクチンを有する9nMの融合タンパク質を含有する試料を、37℃で45~60分間インキュベートした後、標識SYTOX green基質を添加した。Sytox green基質は、1×DNase反応緩衝液中の14μMのSytox green色素への160μg/mlのサケ精子DNAの添加および37℃で60~120分間の平衡化によって調製した。50マイクロリットルの各アクチン処理融合タンパク質または組換え酵素を、50μlの標識基質を収容しているアッセイプレートの各ウェルに添加した。プレートを直ちにプレートリーダーに移し、485nm励起および528nm発光波長を使用して蛍光を測定した。VarioSkan LUX蛍光プレートリーダー(Thermo Scientific、Waltham、MA)を用いて合計40分間、45秒ごとに読み取る動態アッセイを使用して、試料蛍光をモニターした。RFU(相対蛍光単位)をウェルごとに時間の関数としてプロットした。各ウェルの蛍光シグナルは、ヌクレアーゼ活性の増加に伴ってより急速に減少した。
図5Aおよび5Bは、DNaseTM-(g4s)4-Fc分子についてのおよび組換えヒトDNaseについての時間の関数としてのRFUをプロットするグラフを示す。組換えヒトDNase1のヌクレアーゼ活性は、アクチンによって阻害されたが、融合タンパク質バリアントは、これらの条件下で阻害されなかった。
(実施例3)
DNase1-Fc-PON1融合タンパク質のパラオキソナーゼ活性
アリールエステラーゼ活性
【0368】
酢酸フェニルを基質として使用して、DNase1TM-(g4s)4-Fc-PON1-Q192K融合タンパク質のアリールエステラーゼ活性を評価した。酵素活性アッセイを、固定酵素濃度での基質濃度の滴定、または固定基質濃度での酵素濃度の滴定、どちらかによって行った。酢酸フェニル活性アッセイのための反応緩衝液は、20mM Tris-HCl、pH8.0、1mM CaCl2を含有した。基質溶液は、反応緩衝液および10mMの酢酸フェニルを含有し、その一方で、酵素溶液は、反応緩衝液と適切な濃度の酵素を含有した。反応における5mMの酢酸フェニル基質の最終濃度のために、基質溶液を酵素溶液で1:1希釈した。融合タンパク質(酵素)濃度がアッセイに存在し、それを、40μg/mlから1/3段階希釈(40、26.8、17.96、12.05、8.06、5.4、3.62、および2.4μg/ml)で滴定した。VarioSkan LUX蛍光プレートリーダーを用いて合計10分間、45秒ごとに読み取る動態アッセイを使用して、試料吸光度をモニターした。270nmでのモル吸光率は、時間の関数として形成されるフェノールの測度として役立つ。フェノールについての1310M-1cm-1のモル吸光係数を使用して、吸光の変化を反応速度に変換した。
【0369】
加えて、アリールエステラーゼ活性アッセイを、次のような1/3倍段階的漸減で存在する酢酸フェニル基質の量を滴定して行った:15mM、10.05mM、6.73mM、4.51mM、3.02mM、2.03mM、1.36mM、および0.91mM基質。いずれの場合にも、存在する融合タンパク質(酵素)の量は、7.5μg/mlであった。DNase1TM-(g4s)4-Fc-PON1-Q192K分子について、この濃度は、75nMに相当する。
図6Aおよび6Bは、DNaseTM-(g4s)4-Fc-PON1-Q192K融合タンパク質のアリールエステラーゼ活性を測定する代表実験についてのミカエリスメンテン解析およびラインウィーバーバークプロットを示す。複数の実験を比較したとき、Vmax平均値は、おおよそ0.027mMフェノール/分(mmol/リットル=nmol/ul)であり、Kmは、おおよそ2.7mM酢酸フェニル(mmol/リットル=nmol酢酸フェニル/ul)であった。
有機ホスファターゼ活性
【0370】
Enzcheckパラオキソナーゼ活性アッセイ(カタログ番号E33702、ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)を使用して、DNase1TM-(g4s)4-Fc-PON1-Q192K融合タンパク質の有機ホスファターゼ活性を評価した。このアッセイは、360/450nmの励起/発光極大値を使用してキットに備えられている蛍光性有機リンアナログの変換を測定する、パラオキソナーゼの有機ホスファターゼ活性についての非常に高感度の蛍光定量アッセイである。アッセイを、動態アッセイとして設定することができ、あるいはエンドポイントアッセイのために特定の期間の後に打ち切ることができる。単位時間あたりの相対蛍光単位(RFU)の変化を、蛍光標準物質から生成した標準曲線と1U単位のパラオキソナーゼが37℃で毎分1nmolの蛍光産物を生成する換算係数とを使用して、試料中のパラオキソナーゼの単位に変換する。融合タンパク質試料中に存在するパラオキソナーゼの量を、キットに備えられているパラオキソナーゼ陽性対照と比較することができる。
図7は、ヒト血清試料比較のための平均乃至は平均より高い活性範囲の有機ホスファターゼ陽性対照の2つの異なる希釈物によって生成されたRFU曲線と比較した、DNase1TM-(g4s)4-Fc-PON1-Q192K融合タンパク質の有機ホスファターゼ活性のグラフ表示を示す。試験した融合タンパク質は、11ヵ月間4℃で保存したものであったが、それにもかかわらずPON1アッセイにおいて平均より高い活性を有した。
【0371】
アリールエステラーゼおよび有機ホスファターゼと同様の活性アッセイ、例えば、ペルオキシダーゼ活性アッセイ(Amplex Redペルオキシド/ペルオキシダーゼアッセイ、ThermoFisher Scientific、Waltham MA、カタログ番号A22188)または一般的なホスファターゼアッセイ(ENzChekホスファターゼアッセイ、ThermoFisher Scientific、Waltham MA、カタログ番号12020)などを、本明細書に記載の融合タンパク質に存在するPON1酵素活性について、行うことができる。
(実施例4)
DNase-FcおよびDNase-Fc-PON1融合タンパク質によるバイオフィルム形成の阻害を評価するためのアッセイ
【0372】
DNase-FcおよびDNase-Fc-PON1融合タンパク質をバイオフィルム形成アッセイで特徴付けて、Pseudomonas aeruginosaバイオフィルム形成の阻害を評価する。Pseudomonas aeruginosa培養物を、単離された細菌コロニーから、2xYTまたはLB培地などの富栄養培地への接種によって成長させる。一晩培養物をトリプシン大豆ブロス/0.5%グルコース(Teknova、Hollister、CA)で1:100希釈し、希釈された培養物を使用して100μl/ウェルを96ウェル組織培養プレートに接種する。希釈された細菌培養物の接種の前に、ウェルを異なる濃度の目的の各融合タンパク質でプレコーティングする。あるいは、融合タンパク質を希釈された細菌培養物に直接添加して、溶解状態で阻害活性を評価する。プレートをアッセイの前に4~8時間、37℃でインキュベートする。ウェル間変動を制御するために全ての条件を6~8反復で行う。インキュベーション後、培養物を吸引によって除去するか、またはプレートを反転させ、液体を振り落とすことによって除去する。次いで、プレートをPBSで洗浄して、未結合細胞および培地を除去する。洗浄後、125μlの0.1%クリスタルバイオレット溶液を各ウェルに添加し、プレートを15分間、室温でインキュベートする。プレート洗浄機を使用してプレートを水またはPBSで3~4回すすぐ。最終洗浄後、マイクロタイタープレートを裏返し、数時間または一晩、放置して乾燥させる。バイオフィルムを定量化するために、125μlの30%酢酸を各々の乾燥したウェルに添加してクリスタルバイオレットを可溶化する。プレートを室温で15分間インキュベートし、125μlのクリスタルバイオレットを新しい平底マイクロタイター皿に移す。次いで、ブランク溶液として30%酢酸を使用してVarioskanプレートリーダーにおいて550nmでウェルの吸光度を測定する。バイオフィルム阻害パーセントを、[処理した融合タンパク質の吸光度平均値/未処理の吸光度平均値]の比を1から引いて100を掛けることによって推定する。
【0373】
市販のバイオフィルム形成キットは、Dojindo(Donjindo Laboratories、Kumamoto、Japan)からも入手でき、これは、バイオフィルム形成のために固定マイクロタータープレートを使用し、それによって洗浄ステップが単純化される。
(実施例5)
SOD1-Fc-PON1融合タンパク質の構築
【0374】
野生型ヒトSOD1の配列(GenBank受託番号NM_000454.5、CR450355.1、およびCR4541742.1を参照されたい)をNCBI配列データベースから入手し、ヒトIgG1 Fcバリアント(SSSヒンジ、P238S、P331S Fc;配列番号27および配列番号28に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)のN末端に結合した(Gly4Ser)2リンカー((g4s)2;配列番号9および配列番号10に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)をコードする部分融合遺伝子を既に含有する分子への挿入用の発現カセットとして設計し、合成する。ヒトFcバリアントのカルボキシル末端を、未切断リーダーペプチドの最初の15個のアミノ酸が欠失しているヒトPON1のバリアント(PON1 Q192K;配列番号5および配列番号6に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)が後に続く、N連結型グリコシル化部位(NGS;配列番号55および配列番号56に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)を含有するペプチドリンカーに、融合させる。SOD1の予測アミノ酸配列は、分泌のためのシグナルペプチドを含有しないため、異種シグナルペプチドの正しい位置での切断を達成するためにSOD1との接合部位に追加のアミノ酸を有するヒトVK3シグナル配列の改変バージョンを設計する。SOD1のアミノ末端メチオニンは、この改変SOD1の成熟分泌バージョンには非存在であり、したがって、改変シグナルペプチドの切断後の予測N末端アミノ酸は、アラニンである。コードされる改変VK3リーダーおよびN末端SOD1配列は、METPAQLLFLLLLWLPDTTGMA/ATKAVCVL(配列番号50の残基1~30)であり、この配列中のスラッシュマークは、VK3リーダーペプチド(VK3LP)とSOD1の間の接合部を示す。完成SOD1融合構築物は、[ヒトVK3LP]-[hSOD1]-(g4s)2-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](配列番号49および配列番号50に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)である。
【0375】
SOD1の配列バリアントを含有する追加のSOD1融合遺伝子も構築する。バリアントは、代替アミノ酸をヒトSOD1の7および112位のシステイン(配列番号32の完全長未熟SOD1配列によるアミノ酸番号付け)の代わりに用い、それによって予測アミノ酸配列のC7AおよびC112S二重突然変異体形態を作出する。この配列は、最初にPargeら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6109-6113, 1992)によって、改善された可溶性および安定性を有するSOD1の熱安定性突然変異体として記載された。このSOD1二重突然変異体バリアントを、(Gly4Ser)2リンカー(上記参照)または(Gly4Ser)4リンカー((g4s)4;配列番号11および配列番号12に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)のどちらかを使用して、ヒトFcバリアント(SSSヒンジ、P238S、P331S Fc;上記参照)のN末端に融合させる。Fcのカルボキシル末端をNGSリンカーに融合させ、このリンカーの後に、野生型SOD1融合体について上で説明した通りのPON1 Q192Kバリアントが続く。完成二重突然変異体SOD1融合構築物は、[ヒトVK3LP]-[hSOD1 C7A C112S]-(g4s)2-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](配列番号51および配列番号52に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)および[ヒトVK3LP]-[hSOD1 C7A C112S]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](本明細書では以降、SOD1-P1-Kとも呼ばれる;配列番号53および配列番号54に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)である。
【0376】
SOD1-Fc-PON1融合タンパク質のスーパーオキシドジスムターゼ活性を、市販のキット、例えば、SOD比色活性キット(ThermoFisher Scientific、Waltham MA、カタログ番号EIASODC)、またはCayman Chemicalから入手可能な同様のキット(Cayman Chemical、Ann Arbor、MI;カタログ番号706002)を使用して測定する。
(実施例6)
RNase1-Fc-PON1融合タンパク質の構築
【0377】
野生型ヒトRNase 1の配列(GenBank受託番号NM_198235.3、NM_198234.3、NM_198232.3、およびNM_002933.5を参照されたい)を、NCBI配列データベースから入手し、そのネイティブリーダー配列を有する野生型RNase 1(配列番号21および配列番号22に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)またはヒトVK3リーダーペプチド(VK3LP)配列に結合したRNase 1(配列番号23および配列番号24に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)をコードする発現カセットとして設計し、合成する。次いで、これらのRNase1コードカセットを、C220S、C226S、C229SおよびP238Sアミノ酸置換を有するが野生型CH2およびCH3ドメインを有さないヒトIgG1 Fcバリアント(SSSヒンジ、P238S Fc;配列番号41の残基475~1170および配列番号42の残基159~390に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)に、融合させる。野生型RNase1-Fc構築物(ネイティブリーダーを有する)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号41および配列番号42に示され、VK3LP-RNase1-Fc構築物のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号43および配列番号44に示される。これらの構築物は、RNase1のカルボキシル末端をFcのN末端に連結する、制限部位にコードされた2個の異種アミノ酸(Asp-Leu;配列番号42の残基157~158、または配列番号44の残基149~150)を含有する。
【0378】
RNase1コードカセットを、(Gly4Ser)4リンカーペプチド((g4s)4;配列番号11および配列番号12に示される通りのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列)を介してSSSヒンジ、P238S Fcバリアントにも融合させる。得られるRNase1-(g4s)4-Fcヌクレオチドおよび予測アミノ酸配列は、配列番号33および配列番号34(ネイティブリーダーを有する野生型RNase1について)ならびに配列番号35および配列番号36(ヒトVK3リーダーに融合した成熟野生型RNase1について)に示される。
【0379】
上記のRNase1-Fc構築物の各々におけるヒトFcバリアントのカルボキシル末端を、未切断リーダーペプチドの最初の15個のアミノ酸が欠失しているヒトPON1のバリアント(PON1 Q192K;配列番号5および配列番号6に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)が後に続く、N連結型グリコシル化部位(NGS;配列番号55および配列番号56に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)を含有するペプチドリンカーに、融合させる。生成される完成RNase1-Fc-PON1構築物は、次の通りである:
hRNase1-[SSSヒンジ-P238S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](配列番号45および配列番号46に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);
hVK3LP-hRNase1-[SSSヒンジ-P238S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](配列番号47および配列番号48に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);
hRNase1-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](配列番号37および配列番号38に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);および
hVK3LP-hRNase1-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](配列番号39および配列番号40に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)。
(実施例7)
CTLA4-Fc-PON1融合タンパク質の構築
【0380】
野生型、完全長、ヒトCTLA-4の配列(GenBank受託番号AF414120.1およびL15006.1を参照されたい)をNCBI配列データベースから入手し、ヒトVK3リーダーペプチド(VK3LP)配列(配列番号57および配列番号58に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)に結合したヒトCTLA-4細胞外ドメインをコードする発現カセットの設計および合成に使用する。次いで、これらのCTLA-4コードカセットを、FcドメインにC220S、C226S、C229S、P238SおよびP331Sアミノ酸置換を有するヒトIgG1 Fcバリアント(SSSヒンジ、P238S、P331S Fc;配列番号27および配列番号28に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)に、融合させる。VK3LP-CTLA4-Fc構築物のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号63および配列番号64に示される。これらの構築物は、CTLA-4のカルボキシル末端をFc領域のN末端に連結する、制限部位にコードされた2個の異種アミノ酸(Asp-LeuまたはDL;配列番号63の残基433~438、または配列番号64の残基145~146)を含有する。
【0381】
上記のCTLA4-Fc構築物の各々におけるヒトFcバリアントのカルボキシル末端を、未切断リーダーペプチドの最初の15個のアミノ酸が欠失しているヒトPON1のバリアント(PON1 Q192K;配列番号5および配列番号6に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)が後に続く、N連結型グリコシル化部位(NGS;配列番号55および配列番号56に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)を含有するペプチドリンカーに、融合させる。生成される完成CTLA4-Fc-PON1構築物(hVK3LP-[hCTLA-4EC]-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc]-NGS-[PON1 Q192K];本明細書では以降、CTLA4-Fc-P1-Kとも呼ばれる)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号65および配列番号66に記載される。
(実施例8)
CD40-Fc-PON1融合タンパク質の構築
【0382】
野生型、完全長、ヒトCD40の配列(配列番号67および配列番号68に示されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列;GenBank受託番号NM_001250を参照されたい)をNCBI配列データベースから入手し、そのネイティブリーダー配列を有するヒトCD40細胞外ドメイン、またはヒトVK3リーダーペプチド(VK3LP)配列(配列番号57および配列番号58に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)に結合したヒトCD40細胞外ドメインをコードする、発現カセットの設計および合成に使用する。次いで、これらのCD40コードカセットを、(Gly4Ser)4ペプチドリンカー(隣接制限部位およびコードされたアミノ酸を含む、配列番号11および配列番号12に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)、およびFcドメインにC220S、C226S、C229S、P238SおよびP331Sアミノ酸置換を有するヒトIgG1 Fcバリアント(SSSヒンジ、P238S、P331S Fc;配列番号27および配列番号28に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)に、融合させる。ネイティブリーダーを有する野生型CD40-Fc構築物([hCD40 EC]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc])のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号69および配列番号70に示され、VK3LPリーダーを有するCD40-Fc構築物(hVK3LP-[hCD40 EC]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc])のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号71および配列番号72に示される。
【0383】
CD40の野生型形態に加えて、CD40リガンド(CD154またはgp39)に対して改善された結合親和力を示すいくつかのバリアントを生成した。野生型、完全長ヒトCD40(配列番号68)によるアミノ酸番号付けを使用して、野生型配列と比較してこれらのCD40バリアントの各々についてのアミノ酸置換は、(i)K81T、(ii)K81H、L121P、(iii)K81S、および(iv)E64Y、K81T、P85Yである。バリアントCD40-Fc構築物は、次の通りである:
hVK3LP-[hCD40 EC K81T]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc](配列番号75および配列番号76に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);
hVK3LP-[hCD40 EC K81H-L121P]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc](配列番号79および配列番号80に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);
hVK3LP-[hCD40 EC K81S]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc](配列番号83および配列番号84に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);および
hVK3LP-[hCD40 EC E64Y-K81T-P85Y]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc](配列番号87および配列番号88に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)。
【0384】
上記のCD40-Fc構築物の各々におけるヒトFcバリアントのカルボキシル末端を、未切断リーダーペプチドの最初の15個のアミノ酸が欠失しているヒトPON1のバリアント(PON1 Q192K;配列番号5および配列番号6に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)が後に続く、N連結型グリコシル化部位(NGS;配列番号55および配列番号56に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)を含有するペプチドリンカーに、融合させる。生成される完成CD40-Fc-PON1構築物は、次の通りである:
hVK3LP-[hCD40 EC]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](配列番号73および配列番号74に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);
hVK3LP-[hCD40 EC K81T]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](配列番号77および配列番号78に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);
hVK3LP-[hCD40 EC K81H-L121P]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](配列番号81および配列番号82に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);
hVK3LP-[hCD40 EC K81S]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](配列番号85および配列番号86に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);および
hVK3LP-[hCD40EC E64Y-K81T-P85Y]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S Fc]-NGS-[PON1 Q192K]、(配列番号89および配列番号90に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)(本明細書では以降、CD40TM-Fc-P1-Kとも呼ばれる)。
(実施例9)
抗TNF-α scFv-Fc-PON1融合タンパク質の構築
【0385】
ヒトTNF-αに標的化されたHumira(商標)またはアダリムマブ抗体の配列を、IMGTデータベースINN番号7860、鎖番号INN 7860_HおよびINN 7860_Lから入手する。アダリムマブ抗TNF-α抗体配列のGenBank受託番号は、重鎖可変領域についてはLQ961187であり、軽鎖可変領域についてはLQ961186である。国際PCT公開番号WO2014/159579も参照されたい。これらの配列を使用して、ヒトVK3リーダーペプチド(VK3LP)配列(配列番号57および配列番号58に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)に結合したアダリムマブ抗体の重鎖および軽鎖V領域を含むscFvをコードする発現カセットを設計し、合成する。これらのV領域配列を(Gly4ser)4リンカーセグメントによって結合させてscFvを構築する。抗TNF-α scFvを、VL-VH配向とVH-VL配向の両方で構築する。ヒトVK3LP抗TNF-α VL-VH scFvのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号91および配列番号92に示され、ヒトVK3LP抗TNF-α VH-VL scFvのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号95および配列番号96に示される。
【0386】
次いで、制限部位にコードされた2個の異種アミノ酸(Asp-Leu;配列番号93および配列番号97の残基816~822、または配列番号94および配列番号98の残基269~270)を使用して、これらのTNF-α scFvコードカセットをそのscFvのカルボキシル末端においてFcドメインのN末端に連結させる。Fcドメインは、C220S、C226S、C229SおよびP238Sアミノ酸置換を有するがCH2およびCH3ドメインの残りの残基が野生型であるヒトIgG1 Fcバリアント(SSSヒンジ、P238S Fc;配列番号41の残基475~1170および配列番号42の残基159~390に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)をコードする。scFv-Fc構築物の各々におけるヒトFcバリアントのカルボキシル末端を、未切断リーダーペプチドの最初の15個のアミノ酸が欠失しているヒトPON1のバリアント(PON1 Q192K;配列番号5および配列番号6に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)が後に続く、N連結型グリコシル化部位(NGS;配列番号55および配列番号56に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)を含有するペプチドリンカーに、融合させる。生成される完成抗TNF-α scFv-Fc-PON1構築物は、次の通りである:
hVK3LP-[VL-VH抗TNFアルファ scFv]-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc]-NGS-[PON1 Q192K]、(配列番号93および配列番号94に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)(本明細書では以降、アダリムマブscFv-Fc-P1-Kとも呼ばれる);および
hVK3LP-[VH-VL抗TNFアルファ scFv]-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](配列番号97および配列番号98に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)。
(実施例10)
抗TGF-β scFv-Fc-PON1融合タンパク質の構築
【0387】
ヒトTGF-βサイトカインアイソフォームに標的化されたヒト化フレソリムマブ抗体(GC1008)の配列をIMGT配列データベースから入手する。鎖ID指定は、INN 9158_HおよびINN 9158_Lである。フレソリムマブ抗TGF-β抗体配列のGenBank受託番号は、重鎖についてはJC 232803.1であり、軽鎖についてはJC 232805である。この抗体の配列は、米国特許第7,723,486号および国際PCT公開番号WO2013/065869にも収載されている。これらの配列を使用して、ヒトVK3リーダーペプチド(VK3LP)配列(配列番号57および配列番号58に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)に結合したGC1008/フレソリムマブ抗体の重鎖および軽鎖V領域を含むscFvをコードする発現カセットを設計し、合成する。これらのV領域配列を(Gly4ser)4リンカーセグメントによって結合させてscFvを構築する。抗TGF-β scFvを、VL-VH配向とVH-VL配向の両方で構築する。ヒトVK3LP抗TGF-β VH-VL scFvのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号99および配列番号100に示され、ヒトVK3LP抗TGF-β VL-VH scFvのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号103および配列番号104に示される。
【0388】
次いで、制限部位にコードされた2個の異種アミノ酸(Asp-Leu;配列番号101および配列番号105の残基819~825、または配列番号102および配列番号106の残基270~271)を使用して、これらのTGF-β scFvコードカセットをそのscFvのカルボキシル末端においてFcドメインのN末端に融合させる。Fcドメインは、C220S、C226S、C229SおよびP238Sアミノ酸置換を有するがCH2およびCH3ドメインの残りの残基が野生型であるヒトIgG1 Fcバリアント(SSSヒンジ、P238S Fc;配列番号41の残基475~1170および配列番号42の残基159~390に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)をコードする。scFc-Fc構築物の各々におけるヒトFcバリアントのカルボキシル末端を、未切断リーダーペプチドの最初の15個のアミノ酸が欠失しているヒトPON1のバリアント(PON1 Q192K;配列番号5および配列番号6に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)が後に続く、N連結型グリコシル化部位(NGS;配列番号55および配列番号56に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)を含有するペプチドリンカーに、融合させる。生成される完成抗TGF-β scFv-Fc-PON1構築物は、次の通りである:
hVK3LP-[抗hTGFベータ VH-VL scFv]-SSSヒンジ-P238S-P331S Fc]-NGS-PON1 Q192K](配列番号101および配列番号102に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);および
hVK3LP-[抗hTGFベータ VL-VH scFv]-SSSヒンジ-P238S-P331S Fc]-NGS-PON1 Q192K](配列番号105および配列番号106に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)。
(実施例11)
DNase1L3-FcおよびDNase1L3-Fc-PON1融合タンパク質の構築
【0389】
構築物を設計し、合成した。正しい配列を有するカセットを組み合わせて、特有のDNase1L3融合分子をコードする2つの合成融合遺伝子を生成する。各構築物は、野生型ヒトDNase1L3(配列番号135および136に示される通りのヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列)のバリアントを含む。各DNase1L3配列を改変して、C末端核局在化シグナル(NLS2)に対応する野生型配列のアミノ酸残基291~305を除去する。各DNase1L3バリアントは、分子のN末端の半分に位置する核局在化シグナル(NLS1)を不活性化するために、R80、R95およびN96位に、野生型ヒト配列(配列番号136)と比較してアミノ酸置換も含有する(3つの位置全てがアラニンに変化している、または3つの位置全てがセリンに変化している、どちらか)。R80A/R95A/N96A突然変異を含有する成熟DNase1L3バリアントに対応するヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列は、配列番号137の残基61~870および配列番号138の残基21~290にそれぞれ示され、R80S/R95S/N96S突然変異を含有する成熟DNase1L3バリアントに対応するヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列は、配列番号139の残基61~870および配列番号140の残基21~290にそれぞれ示される。用いたシグナルペプチド配列は、ヒトVK3リーダーペプチドであった(配列番号57および配列番号58に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)。DNase1カセットを、(Gly4Ser)4ペプチドリンカー((g4s)4;配列番号11および配列番号12に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)を使用してヒトIgG1 Fcバリアント(SSSヒンジ、P238S、P331S)のN末端に融合させた。Fcバリアントヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号27および配列番号28に示される。生成された完成DNase1L3-Fc構築物は、次の通りである:
hVK3LP-[hDNase1L3 R80A-R95A-N96A NLS2デルタ]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc](配列番号137および配列番号138に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);および
hVK3LP-[hDNase1L3 R80S-R95S-N96S NLS2デルタ]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc](配列番号139および配列番号140に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)。
【0390】
未切断リーダーペプチドの最初の15個のアミノ酸が欠失しているヒトPON1のバリアント(PON1 Q192K;配列番号5および配列番号6に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)が後に続く、N連結型グリコシル化部位(NGS;配列番号55および配列番号56に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)を含有するペプチドリンカーに、上記の各バリアントDNase1L3-Fc配列のカルボキシル末端を融合させることによって、機能的PON1酵素をさらに含む二重特異性構築物も生成する。完成DNase1L3-Fc-PON1構築物は、次の通りである:
hVK3LP-[hDNase1L3 R80A-R95A-N96A NLS2デルタ]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc]-NGS-[PON1 Q192K](配列番号161および配列番号162に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列);および
hVK3LP-[hDNase1L3 R80S-R95S-N96S NLS2デルタ]-(g4s)4-[SSSヒンジ-P238S-P331S Fc]-NGS-[PON1 Q192K]、(配列番号163および配列番号164に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列)(本明細書では以降、DNase1L3-Fc-P1-Kとも呼ばれる)。
(実施例12)
二重特異性および単一特異性PON1融合タンパク質の構築および発現
【0391】
実施例1、5、7~9、および11で説明したような様々なFc融合遺伝子を、pUCに基づくベクター内にアセンブルし、アセンブルされた遺伝子をさらなるマニピュレーションの前にDNA配列決定によりスクリーニングした。アセンブルされた遺伝子は、DNase1、SOD1、CTLA-4、CD40、抗TNFα scFv、およびDNase1L3「T」領域融合パートナーの各々についての単一特異性(T-L1-Fc)形態と二重特異性PON1(T-L1-Fc-L2-PON1)形態の両方を含んだ。アセンブルされたPON1融合構築物は、次のものを含んだ:DNaseTM-(g4s)6-Fc-P1-K、SOD1-Fc-P1-K、CTLA4-Fc-P1-K、CD40TM-Fc-P1-K、アダリムマブscFv-Fc-P1-K、およびDNase1L3-Fc-P1-K。加えて、単一特異性Fc-PON1融合構築物をアセンブルした(配列番号121および配列番号122に示される通りのヌクレオチドおよびアミノ酸配列;本明細書では以降、Fc-PON1-KまたはFc-P1-Kとも呼ばれる)。2つのApoA1-Fc-PON1融合体:THER4-P1-K(PCT公開番号WO2017/044424の配列番号45および配列番号46に示されているヌクレオチドおよびアミノ酸配列)およびTHER6-P1-K(THER4-P1-Kと同一だが、リンカー配列内に4つの(Gly4Ser)リピートではなく(Gly4Ser)の6つのリピートを有する)も、アセンブルした。次いで、所望の配列を含有する融合遺伝子カセットを、融合遺伝子の発現を駆動するCMVプロモーターを含有するpcDNA3プラスミド誘導体である哺乳動物発現ベクターpDGの多重クローニング部位に挿入した。プラスミドDNAを、QIAGEN(Germantown、MD)ミニまたはマキシプレッププラスミドDNAキットを使用して調製した。精製プラスミドDNAを、おおよそ50~75%の集密度で播種したHEK293細胞に、Polyfect(QIAGEN、Germantown、MD)トランスフェクション試薬を製造業者の使用説明書に従って使用してトランスフェクトした。培養培地をトランスフェクションの翌日にDMEM Fluorobrite(商標)(Life Technologies、Carlsbad、CA)無血清培地に変え、トランスフェクト細胞をさらに48時間インキュベートした後、培養上清を回収した。培養上清を0.2μm PESシリンジフィルターによって濾過した後、解析した。
【0392】
図8および
図9は、HEK293一過性トランスフェクションの代表セットからの融合タンパク質発現のウェスタンブロット解析の結果を示す。培養上清を60μlのプロテインAアガロース(Repligen、Waltham MA)で免疫沈降させ、穏やかな抗原-抗体結合用緩衝液pH8.0(Pierce/Life Technologies,Carlsbad、CA)で洗浄し、Fluorobrite DMEM中の0.5mlの293トランスフェクション上清を各微量遠心管に添加した。免疫沈降物を一晩、4℃で回転させ、3000rpmで遠心分離し、結合用緩衝液pH8.0で洗浄した後、60μlの2×LDS試料緩衝液(Life Technologies、Carlsbad、CA)を添加し、試料を10分間、72℃で加熱し、試料を1分間、3000rpmで微量遠心機において遠心分離し、各試料からのローディング緩衝液中15μlの試料(4分の1)を、4~12%Bis-Tris NuPAGEゲル(Life Technologies、Carlsbad、CA)にロードした。タンパク質分子量マーカーを各ゲルに含めた(Chameleon(登録商標)DUO分子量マーカー;LI-COR Biosciences、Lincoln、NEおよび/またはPrecision Plus Kaleidoscope MWマーカー;BIORAD、Hercules、CA)。SDS-PAGEゲルを、NuPAGE MOPS泳動用緩衝液(Life Technologies、Carlsbad、CA)中で還元条件下、185ボルトでおおよそ1~1.5時間、泳動させた。XCellブロットモジュール(Life Technologies、Carlsbad、CA)と、10%メタノールを含有するNUPAGE-MOPS(Life Technologies、Carlsbad、CA)転写用緩衝液とを使用して、ゲルをニトロセルロース膜にブロットした。ブロットをLI-COR Odyssey Intercept(商標)ブロッキング緩衝液中でブロックし、続いて、希釈ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)二次抗体(Jackson Immunoresearch、WestGrove、PA)とともにインキュベートした。二次抗体をAlexafluor 790近IR色素(LI-COR Odyssey検出)とコンジュゲートし、ブロッキング緩衝液で、4℃で1:35,000希釈し、一晩、揺動した。ブロットを、0.1%Tween(登録商標) 20を含有するTris緩衝食塩水(TBS)で、4回洗浄した。次いで、ブロットをTBS緩衝液ですすぎ、LICOR Odyssey(商標)スキャナーでスキャンした。
図8に示されているウェスタンブロットについては、トランスフェクション試料を次のようにロードした:レーン1 - CTLA4-Fc、レーン2 - CTLA4-Fc-P1-K、レーン3 - SOD1-Fc-P1-K、レーン4 - SOD1-Fc、レーン5 - THER6-P1-K、レーン6 - LICOR Chameleon DUO MWマーカー、レーン7 - DNaseTM-(g4s)6-Fc-P1-K、レーン8 - Fc-P1-K、レーン9 - CD40TM-Fc-P1-K;レーン10 - アダリムマブscFv-Fc-P1-K、レーン11 - DNase1L3-Fc-P1-K、レーン12 - CD40TM-Fc。各マーカーバンドの近似分子量(kDa)が、ウェスタンブロットの右側に示されている。
図9に示されているウェスタンブロットについては、トランスフェクション試薬を次のようにロードした:レーン1 - THER6-P1-K、レーン2 - SOD1-Fc-P1-K、レーン3 - THER4-P1-K、レーン4 - Fc-P1-K、レーン5 - CD40TM-Fc-P1-K;レーン6 - CD40TM-Fc、レーン7 - LICOR Chameleon DUO MWマーカー、レーン8 - BIORAD Precision Plus Kaleidoscope MWマーカー、レーン9 - アダリムマブscFv-Fc-P1-K、レーン10 - アダリムマブscFv-Fc、レーン11 - DNase1L3-Fc-P1-K、レーン12 - DNase1L3-Fc。各マーカーバンドの近似分子量(kDa)が、ウェスタンブロットの右側に示されている。
【0393】
図10は、HEK293トランスフェクション上清から免疫沈降したタンパク質のSDS-PAGE解析の結果を示す。培養上清を60μlのプロテインAアガロース(Repligen、Waltham MA)で免疫沈降させ、穏やかな抗原-抗体結合用緩衝液pH8.0(Pierce/Life Technologies、Carlsbad、CA)で洗浄し、Fluorobrite DMEM(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)中の0.5mlの293のトランスフェクション上清を各微量遠心管に添加した。免疫沈降物を一晩、4℃で回転させ、3000rpmで遠心分離し、結合用緩衝液pH8.0で洗浄した後、60ulの2×LDS試料緩衝液(Life Technologies、Carlsbad、CA)を添加し、試料を10分間、72℃で加熱し、試料を1分間、3000rpmで微量遠心機において遠心分離し、各試料からのローディング緩衝液中15μlの試料(4分の1)を、4~12%Bis-Tris NuPAGEゲル(Life Technologies、Carlsbad、CA)にロードした。SDS-PAGEゲルを、NuPAGE MOPS泳動用緩衝液(Life Technologies、Carlsbad、CA)中で還元条件下、185ボルトでおおよそ1~1.5時間、泳動させた。電気泳動後、ゲルを蒸留水で数回洗浄し、次いで2時間、Imperial Protein Stain(Pierce/ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)中でインキュベートした。蒸留水で数回洗浄して非特異的染色剤を除去することによって、ゲルを脱染した。次いで、Canon PIXMA MG8220スキャナーを使用してゲルをスキャンしてバンドを可視化した。レーンに、次のようにロードした:レーン1 - CTLA4-Fc、レーン2 - CTLA4-Fc-P1-K、レーン3 - SOD1-Fc-P1-K、レーン4 - SOD1-Fc、レーン5 - THER6- P1-K、レーン6 - BIORAD Precision Plus Kaleidoscope分子量マーカー、レーン7 - DNaseTM-(g4s)6-Fc-P1-K、レーン8 - Fc-P1-K、レーン9 - CD40TM-Fc-P1-K;レーン10 - アダリムマブscFv-Fc-P1-K、レーン11 - DNase1L3-Fc-P1-K、レーン12 - CD40TM-Fc。各マーカーバンドの近似分子量(kDa)が、ゲル画像の右側に示されている。
(実施例13)
PON1融合タンパク質の機能活性についてのin vitro評価
【0394】
PON1融合タンパク質の機能活性を一連のin vitroアッセイで評価した。アッセイのいくつかについては、タンパク質活性を、多くの場合、一過性トランスフェクトHEK293細胞の培養上清から直接分析した。他のin vitroアッセイについては、機能活性の評価の前に、融合タンパク質を先ず培養上清(HEK 293またはCHO DG44トランスフェクト細胞のどちらか)から精製した。融合タンパク質は、プロテインA親和性クロマトグラフィーによって培養上清から精製した。培養上清を0.2μm PES expressフィルター(Nalgene、Rochester、NY)によって濾過し、4℃の50ml滅菌コニカル遠心分離管(Repligen、Waltham、MA)の中での培養上清とプロテインA-アガロース(IPA 300架橋アガロース)スラリーの緩徐な回転を使用する親和性クロマトグラフィーに供した。プロテインAアガロースに結合した融合タンパク質を遠心分離により回収し、培養上清を除去し、交換し、上清の所望の体積が処理されるまでインキュベーションプロセスを反復した。次いで、最終プロテインAアガローススラリーを、滅菌、酸洗浄済みエコノカラム(BioRad、Hercules、CA)にロードして樹脂を洗浄した。次いで、溶出の前に、カラムを数カラム体積のカラム洗浄緩衝液(Gentle Ag-Ab binding buffer、Pierce/ThermoFisher、Waltham、MA)で洗浄して一切の残留培養上清を除去した。次いで、結合したタンパク質を、穏やかなAg/Ab溶出用緩衝液(Pierce/ThermoFisher、Waltham、MA)を使用して、樹脂から溶出した。画分(0.8~1.0ml)を収集し、Nanodrop(Wilmington DE)微量試料分光光度計を使用して280nMで各画分からのアリコート(2μl)のタンパク質濃度を決定し、溶出用緩衝液のみを使用してブランクを決定した。融合タンパク質を含有する画分をプールし、Spectrum Laboratories G2(Ranch Dominguez、CA、カタログ番号G235057、Fisher Scientific カタログ番号08-607-007)float-a-lyzerユニット(MWCO 20kDa)を使用する[0.9%塩化ナトリウム、5mM 炭酸水素ナトリウム、1mM HEPES緩衝液、1mM 塩化カルシウム、pH7.5]に対する透析によって緩衝液交換を行った。透析を、滅菌、2.2リットルCorningローラーボトルにおいて4℃で一晩、行った。透析後、0.2μMフィルターユニットを使用してタンパク質を濾過し、Pyrotell LALゲル凝固システムシングルテストバイアル(STV)(カタログ番号G2006、Associates of Cape Cod、East Falmouth、MA)を使用してアリコートをエンドトキシン汚染について試験した。
【0395】
図11は、HEK 293培養上清から直接のPON1アリールエステラーゼ活性の代表アッセイからの結果を示す。このアッセイについては、培養上清をトランスフェクションから72時間後にFluorobrite DMEM(無血清)に回収し、使用前に0.2umシリンジフィルターで滅菌濾過した。上清をアッセイのために反応緩衝液で最終所望希釈度の2倍に希釈した。希釈された上清を、UV透過性96ウェル平底マイクロタイタープレート(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)の個々のウェルに分取した。反応を25℃で行った。測定の直前に、アリールエステラーゼ基質酢酸フェニルの適切な希釈物をマルチチャネルピペッターで各ウェルに添加した。グラフに示されているデータについては、培養上清を1:8希釈し、50μlを各ウェルに添加した。次いで、基質を50μl/ウェルで添加してアッセイを開始した。大部分のアッセイについて、基質の最終濃度が3~5mMになるように6~10mMの酢酸フェニルを使用した。酢酸フェニルのフェノールへの変換をモニターするために、270nmでの吸光度変化を、22.5分間、45秒ごとに読み取り(30測定/ウェル)を行う動態アッセイでモニターした。次いで、各時点での吸光度を時間の関数としてプロットした。
【0396】
図12は、二重特異性および単一特異性PON1融合タンパク質中のPON1部分の有機ホスファターゼ活性を測定する同様の評価を示す。これらのアッセイにおいて使用した基質は、EnzCHEKパラオキソナーゼアッセイキット(Molecular Probes/ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)に収容されている有標有機ホスファターゼ基質であった。このアッセイは、360/450nmの励起/発光極大値を使用してキットに備えられている蛍光性有機リンアナログの変換を測定する、パラオキソナーゼの有機ホスファターゼ活性についての非常に高感度の蛍光定量アッセイである。アッセイを、動態アッセイとして設定することができ、あるいはエンドポイントアッセイのために特定の期間の後に打ち切ることができる。単位時間あたりの相対蛍光単位(RFU)の変化を、蛍光標準物質から生成した標準曲線と1U単位のパラオキソナーゼが37℃で毎分1nmolの蛍光産物を生成する換算係数とを使用して、試料中のパラオキソナーゼの単位に変換する。融合タンパク質試料中に存在するパラオキソナーゼの量を、キットに備えられているパラオキソナーゼ陽性対照と比較することができる。
図12は、HEK 293一過性トランスフェクションで発現されたSOD1-Fc-P1-K、CTLA4-Fc-P1-KおよびCD40TM-Fc-P1-K融合タンパク質のうちのいくつかからのならびにFc-PON1-K(Fc-P1-K)融合タンパク質の精製バッチからの培養上清の段階希釈物中に存在する有機ホスファターゼ活性のグラフ表示を示す。有機ホスファターゼ活性を、ヒト血清試料比較のために、平均乃至は平均より高い活性範囲の有機ホスファターゼ陽性対照の2つの異なる希釈物によって生成されたRFU曲線と比較する。Fc-PON1-K精製融合タンパク質は、このアッセイにおいて高い活性を示した。蛍光標準曲線と比較した計算は、PON1有機ホスファターゼ活性が700mU/μg、または40U/umol、Fc-P1-Kであることを示す。HEK293トランスフェクションからの培養上清もアッセイに含めた。それらはグラフ上に示されていないが、アダリムマブscFv-Fc-P1-Kトランスフェクションからの上清は、CD40TM-Fc-P1-Kトランスフェクションについて観察された活性プロファイルによく似ていた。同様に、DNase1L3-Fc-P1-Kトランスフェクションからの上清は、グラフ上に示されているSOD1-Fc-P1-Kトランスフェクションについて観察された無視できるほど小さい活性レベルとよく似ていた。
【0397】
図13は、二重特異性および単一特異性PON1融合タンパク質中のPON1部分のラクトナーゼ活性を測定するアッセイの結果を示す。これらのアッセイにおいて使用した基質は、1×反応緩衝液中1mMの最終濃度でのジヒドロクマリン(DHC)(Millipore-Sigma、St.Louis、MO)であった。DHCアッセイのための反応緩衝液は、50mM Tris HCl(pH7.4)、1mM CaCl
2であった。HEK293培養上清を反応緩衝液で1:4希釈し、25μlを96ウェルUV STAR(Greiner BioOne、Thomas Scientific)マイクロタイタープレートの個々のウェルに添加した。反応緩衝液中の基質ジヒドロクマリン(DHC)溶液を各ウェル(75μl)に添加して100μlの最終体積を生じさせた。基質の加水分解をOD 270で15分間モニターした。融合タンパク質によるDHCの加水分解を時間の関数としてのOD270の変化としてモニターした。
【0398】
パラオキソナーゼ酵素活性に加えて、T-L1-X-L2-P融合タンパク質のアミノ末端における異なる「T」ドメインの機能特性も評価した。「T」ドメインの同一性に依存して、標的抗原への結合、または酵素活性を、モニターした。
図14は、CD40TM-Fc-P1-K融合タンパク質におけるヒトCD40受容体細胞外ドメイン三重突然変異体のCD40リガンドへの抗原結合アッセイの結果を示す。抗原結合ELISAアッセイは、次のように行った:ヒトCD40リガンドをBioLegend(San Diego、CA)から入手した。ヒトCD40リガンドを0.1M炭酸緩衝液(pH9.0)で2μg/mlの濃度に希釈し、100ul/ウェルを、96ウェルNUNC immulon II MaxiSorpプレート(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)内のアッセイで使用する各ウェルに分取した。プレートを一晩、4℃でインキュベートした後、一晩、4℃で、200ul/ウェルのPBS/2.0%BSAでブロックした。プレートを洗浄緩衝液(PBS、0.5%Tween(登録商標)-20、0.005%Kathon)で洗浄し、HEK 293トランスフェクション上清の段階希釈物をプレートのウェルに添加した。抗原結合についての陽性対照として、CD40リガンドに標的化されたマウス抗体も、プレート上で段階希釈した。プレートを上清または抗体希釈物とともに4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で4回洗浄し、次いで、1:10,000の希釈度でのホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG Fc特異的、またはヤギ抗マウスIgG1(Jackson Immunoresearch、West Grove、PA)とともにインキュベートした。
図14は、希釈度の関数として450nmでの吸光度をプロットすることによるCD40WT-Fc、CD40TM-Fc-P1-Kトランスフェクション上清、およびCD40L特異的抗体希釈物についてのCD40リガンド結合曲線を示す。CD40突然変異体形態は、野生型CD40Fc含有上清と比較してCD40リガンドへの改善された結合活性を示す。
【0399】
図15は、固定化TNF-αを用いる抗原結合ELISAにおけるHumira(商標)(アダリムマブ)scFv含有融合タンパク質上清についてのTNF-アルファ(TNF-α)への結合データを示す。抗原結合ELISAアッセイは、次のように行った:ヒトTNF-αをBioLegend(San Diego、CA)から入手した。TNF-αタンパク質を0.1M炭酸緩衝液(pH9.0)で1μg/mlの濃度に希釈し、100μl/ウェルを、96ウェルNUNC immulon II MaxiSorpプレート(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)内のアッセイで使用する各ウェルに分取した。プレートを一晩、4℃でインキュベートした後、一晩、4℃で、200μl/ウェルのブロッキング緩衝液(PBS/2.0%BSA)でブロックした。プレートを洗浄緩衝液(PBS、0.5%Tween(登録商標)-20、0.005%Kathon)で洗浄し、HEK293トランスフェクション上清またはマウス抗ヒトTNF抗体(BioLegend、San Diego、CA)どちらかの段階希釈物をプレートのウェルに添加した。プレートを上清または抗体希釈物とともに4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で4回洗浄し、次いで、1:10,000の希釈度でのホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG Fc特異的、またはヤギ抗マウスIgG1(Jackson Immunoresearch、West Grove、PA)とともにインキュベートした。
図15は、450nmでの吸光度を希釈度の関数としてプロットした、アダリムマブscFv-Fcトランスフェクション上清、アダリムマブscFv-Fc-P1-Kトランスフェクション上清、またはTNF-α特異的抗体についてのTNF-α結合曲線を示す。HEK293一過性トランスフェクションにおいて発現されたアダリムマブscFv含有融合タンパク質は、プレート上に固定化されたヒトTNF-αに結合する。
(実施例15)
PON1融合タンパク質の投与による肺線維症の処置
【0400】
肺線維症に対する異なるPON1融合タンパク質の効果を、疾患のin vivoマウスモデルを使用して評価した。1つのそのようなモデルは、ブレオマイシン誘導性肺線維症マウスモデルにおける肺線維症の処置に対する精製融合タンパク質の有効性のin vivo評価を含む。ブレオマイシン(BLM)誘導性肺線維症は、IPFの最もよく確立された疾患モデルであり、治療薬候補の有効性およびメカニズムを調査するために広く使用されている。このモデルでは、肺胞傷害および間質性炎症/線維症が気管内BLM投与によって誘導される。この研究の目的は、BLM誘導性肺線維症モデルにおける肺炎症および線維症に対するPON1融合体試験化合物の効果を調べ、ニンテダニブの対照調製物に対する応答と比較することである。0日目に、食塩水中の塩酸ブレオマイシンの3.0mg/kgの用量での動物1匹あたり50μlの体積でのMicrosprayerを使用する単回気管内投与によって肺線維症を発症するようにマウスを誘導する。7日目の試験化合物での処置の開始の前日にマウスを体重変化に基づいてマウス12匹の群に分ける。マウスに試験化合物を(試験群に依存して)鼻腔内/静脈内/腹腔内投与する。化合物を7日目から20日目まで毎日投与し、21日目に動物を屠殺し、試料を線維症マーカーについて分析する。
【0401】
研究終了時に、抗凝結剤なしで全血試料を、メデトミジン、ミダゾラムおよびブトルファノールの混合麻酔下、腹部大動脈経由で採取する。分離血液から上清を収集し、さらなる処理まで-80℃で保管する。肺をマウスから回収し、左側の2つの葉を切除し、一方の葉を凍結し、もう一方を生化学的アッセイ、例えば、ヒドロキシプロリンまたは炎症マーカーの測定のために回収する。残りの肺葉を10%中性緩衝ホルマリンで固定し、マッソントリクローム染色および組織学的検査のためにパラフィン包埋する。肺線維症エリアの定量的分析のために、デジタルカメラを使用して倍率100倍でマッソントリクローム染色切片の明視野画像をランダムに捉え、20視野/マウスにおける胸膜下領域を、肺線維症をグレード分類するための基準(Ashcroft, T., et al., J Clin Pathol, 1988; 41:467-70)に従って評価して、Ashcroftスコアを生成する。全ての切片を実験者が盲検的に分析する。統計を処置群ごとに行って、平均Aschroftスコアを計算し、異なる処置群におけるスコアをビヒクル群と比較する。
【0402】
融合タンパク質の別の送達方法を用いてもよい。一例として、上気道に限局される鼻腔内スプレー送達よりむしろ、融合タンパク質の噴霧のほうが、肺のより深部への融合分子の送達を改善することができ、それによって肺の全エリアをより有効に標的化することができる。融合タンパク質を、賦形剤を用いてまたは用いずに噴霧し、タンパク質回収率、凝集および酵素活性について試験することができる。振動メッシュ(VM)ネブライザー(PARI eFlow.Omron NE-U100、Lake Forest、IL)を、この器具を使用して他のタンパク質の噴霧が成功しているので、およびVMネブライザーは小型かつ携帯型であるため、使用することができる。1mMのCaCl2を加えた食塩水(Pulmozyme(登録商標)緩衝液)中、1mg/mlの噴霧されるタンパク質(500μl)を、滅菌60mm低タンパク質結合組織培養皿上に収集する。回収した融合タンパク質を、噴霧の前および後に、SDSゲル、サイズ排除HPLC(SEC)によって、タンパク質濃度および酵素活性について分析して、賦形剤の効果およびタンパク質に対する噴霧の効果を評価する。
【0403】
本発明の特定の実施形態を、例証を目的として本明細書に記載したが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく様々な変更を加えることができることは、上述のことから、理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。本明細書に引用する全ての刊行物、特許および特許出願は、それらの全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】