IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エドワーズ テクノロジーズ バキューム エンジニアリング (チンタオ) カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-液体リングポンプの制御 図1
  • 特表-液体リングポンプの制御 図2
  • 特表-液体リングポンプの制御 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】液体リングポンプの制御
(51)【国際特許分類】
   F04C 28/08 20060101AFI20240208BHJP
   F04C 19/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F04C28/08 A
F04C19/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550243
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 IB2022051366
(87)【国際公開番号】W WO2022175828
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/077155
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521176824
【氏名又は名称】エドワーズ テクノロジーズ バキューム エンジニアリング (チンタオ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ダイ シン
(72)【発明者】
【氏名】リウ シーボ
(72)【発明者】
【氏名】デ ボック アンドリース ダニエル ヨーゼフ
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA07
3H129AA17
3H129AB06
3H129BB07
3H129BB54
3H129CC58
3H129CC62
(57)【要約】
制御システムは、液体リングポンプ(10)と、液体リングポンプ(10)を駆動するように構成されたモータ(12)と、制御装置(20)とを備え、制御装置(20)は、モータ(12)内の電流を決定し、モータ(12)の速度を決定し、モータ(12)内の決定された電流及びモータ(12)の決定された速度の関数である関数(F)の値を計算し、計算された関数(F)の値に基づいて1又は2以上の制御信号を出力するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御システムであって
液体リングポンプと、
前記液体リングポンプを駆動するように構成されたモータと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記モータ内の電流を決定し、
前記モータの速度を決定し、
前記モータ内の決定された電流と前記モータの決定された速度の関数である関数の値を計算し、
前記計算された関数の値に基づいて1又は2以上の制御信号を出力する、
ように構成されている、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項2】
可聴及び/又は視覚警報を出力するように構成された警報モジュールをさらに含み、前記1又は2以上の制御信号の第1の制御信号は、警報モジュールの動作を制御するためのものである、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記1又は2以上の制御信号の第2の制御信号は、前記モータの動作を制御するためのものである、
請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記関数は、前記モータ内の決定された電流と前記モータの決定された速度との間の比率である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の記載の制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記関数の計算値を閾値と比較し、
前記比較に基づいて前記1又は2以上の制御信号を出力する、
ようにさらに構成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御システム
【請求項6】
前記決定された電流は、アンペア単位の電流値であり、
前記モータの速度は、回転数/分であり、
前記閾値は0.015以上の値である、
請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記閾値は約0.02に等しい、
請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記制御システムは、可聴及び/又は視覚警報を出力するように構成された警報モジュールをさらに備え、
前記制御装置は、前記関数の計算値が前記閾値以下であるとの判定に応答して、前記可聴及び/又は視覚警報を出力するように前記警報モジュールを制御するための第1の制御信号を出力するようにさらに構成される、
請求項5から7のいずれか1項に記載の記載の制御システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記関数の計算値が前記閾値以下であるとの判定に応答して、前記液体リングポンプを駆動する前記モータを停止させるための第2の制御信号を前記モータに出力するようにさらに構成されている、
請求項5から8のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記関数の計算値が予め設定された期間にわたって前記閾値以下であることに応答して、前記第2の制御信号を前記モータに出力するように構成されている、
請求項9に記載の制御システム。
【請求項11】
前記予め設定された期間は、2秒から5秒の範囲である、
請求項10記載の制御システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記関数の計算値が前記閾値よりも大きいとの判定に応答して、前記モータを制御して前記液体リングポンプを駆動するための第3の制御信号を前記モータに出力するようにさらに構成されている、
請求項5から11のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項13】
前記制御システムは、
作動液を前記液体リングポンプにポンプ送給するように構成されたポンプと、
前記ポンプを駆動するように構成されたさらなるモータと、をさらに備え、
前記1又は2以上の制御信号のうちの制御信号は、前記ポンプの動作を制御するためのものである、
請求項1から12のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項14】
前記制御装置は、可変周波数駆動装置を備える、
請求項1から13のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項15】
システムを制御する方法であって、前記システムは、液体リングポンプと、前記液体リングポンプを駆動するように構成されたモータと、制御装置とを備え、前記方法は、
前記制御装置が、前記モータ内の電流を決定するステップと、
前記制御装置が、前記モータの速度を決定するステップと、
前記制御装置が、関数の値を計算するステップであって、前記関数は、前記モータ内の決定された電流及び前記モータの決定された速度の関数である、ステップと、
前記制御装置が、前記関数の計算値に基づいて1又は2以上の制御信号を出力するステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
コンピュータシステム又は1又は2以上のプロセッサによって実行されると、プログラム又は複数のプログラムが、前記コンピュータシステム又は前記1又は2以上のプロセッサに、
前記コンピュータシステム又は前記1又は2以上のプロセッサに接続され、液体リングポンプを駆動するように構成されているモータ内の電流を決定し、
前記モータの速度を決定し、
前記モータ内の決定された電流及び前記モータの決定された速度の関数である関数の値を計算し、
前記計算された関数の値に基づいて1又は2以上の制御信号を出力する、
ことを行わせるように構成されたプログラム又は複数のプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載のプログラム又は複数のプログラムのうちの少なくとも1つを記憶する機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体リングポンプの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
液体リングポンプは、一般に真空ポンプ及びガス圧縮機として商業的に使用される既知のタイプのポンプである。液体リングポンプは、一般に、内部にチャンバを有するハウジングと、チャンバ内に延びる軸と、軸に取り付けられたインペラと、軸を駆動するために軸に動作可能に結合されたモータなどの駆動システムとを含む。インペラ及び軸は、液体リングポンプのチャンバ内に偏心して配置される。
【0003】
作動時、チャンバは作動液(サービス液とも呼ばれる)で部分的に満たされる。駆動システムが軸とインペラを駆動すると、液体リングは、チャンバの内壁上に形成され、それによって隣接するインペラのベーンの間の個々の空間(volume)を分離するシールを提供する。インペラ及び軸は液体リングに対して偏心して配置され、その結果、インペラの隣接するベーンの間及び液体リングに囲まれた空間が周期的に変動する。
【0004】
液体リングが軸からさらに離れている部分では、隣接するインペラのベーンの間の容積が大きくなり、その結果、チャンバ内の圧力が小さくなる。これにより、液体リングが軸からさらに離れている部分は、ガス吸入ゾーンとして機能する。液体リングが軸に近い部分では、隣接するインペラのベーンの間の容積が小さくなり、その結果、その部分の圧力が大きくなる。これは、液体リングが軸に近い部分がガス排気ゾーンとして機能することを可能にする。
【0005】
液体リングポンプの例は、単段液体リングポンプ及び多段液体リングポンプを含む。単段液体リングポンプは、単一のチャンバ及びインペラのみを伴う。多段液体リングポンプ(例えば2段液体リングポンプ)は、直列に接続された複数のチャンバ及びインペラを伴う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、長時間の停止後などの状況によっては、液体リングポンプが「ドライ」又は「ドライラン」状態で作動を開始する場合があることを認識している。このようなドライ状態では、液体リングポンプ内の作動液のレベルが望ましいレベルよりも低くなる。その結果、液体リングポンプ内で大量の熱が発生し、液体リングポンプの構成要素が損傷する可能性がある。本発明者らは、液体リングポンプのメカニカルシールが、液体リングポンプをドライ状態で運転することによって生じる熱による損傷を受けやすい傾向にあることを認識している。
【0007】
本発明者らはさらに、液体リングポンプのドライ状態での運転を防止、低減、又は制限する方法で液体リングポンプを制御する方法を提供することが望ましいことを認識している。
【0008】
本発明者らはさらに、液体リングポンプがドライ状態で作動している場合、液体リングポンプを駆動するモータ内の電流(すなわち、モータの固定子巻線内の電流など、モータの配線内の電流)は、通常の作動状態における電流よりも低いことを認識している。しかしながら、液体リングポンプがドライ状態で作動しているか否かを検出するために、この電流の測定値のみを使用することは、駆動されている液体リングポンプがドライ状態で作動していないにもかかわらず、低速で運転されているモータの電流が同様に低くなる傾向があるため、不可能である傾向がある。本発明者らはさらに、液体リングポンプのドライ状態は、液体リングポンプを駆動するモータ内の電流とそのモータの速度の関数(比率など)に基づいて決定できることを認識している。
【0009】
一態様において、制御システムが提供され、制御システムは、液体リングポンプと、液体リングポンプを駆動するように構成されたモータと、制御装置とを備え、制御装置は、モータ内の電流を決定し、モータの速度を決定し、モータ内の決定された電流とモータの決定された速度の関数である関数の値を計算し、計算された関数の値に基づいて1又は2以上の制御信号を出力するように構成されている。
【0010】
制御システムは、可聴及び/又は視覚警報を出力するように構成された警報モジュールをさらに備えることができる。1又は2以上の制御信号のうちの第1の制御信号は、警報モジュールの動作を制御するためのものとすることができる。1又は2以上の制御信号のうちの第2の制御信号は、モータの動作を制御するためのものとすることができる。
【0011】
関数は、モータ内の決定された電流とモータの決定された速度との間の比率とすることができる。
【0012】
制御装置は、関数の計算値を閾値と比較し、比較に基づいて1又は2以上の制御信号を出力するようにさらに構成することができる。決定された電流は、アンペア単位の電流値とすることができる。モータの速度は、回転数/分とすることができる。閾値は、0.015以上の値とすることができる。閾値は、約0.02に等しいものとすることができる。
【0013】
制御システムは、可聴及び/又は視覚警報を出力するように構成された警報モジュールをさらに備えることができる。制御装置は、関数の計算値が閾値以下であるとの判定に応答して、可聴警報及び/又は視覚警報を出力するように警報モジュールを制御するための第1の制御信号を出力するようにさらに構成することができる。
【0014】
制御装置は、関数の計算値が閾値以下であるとの判定に応答して、液体リングポンプを駆動するモータを停止させるための第2の制御信号をモータに出力するようにさらに構成することができる。制御装置は、予め設定された期間にわたって関数の計算値が閾値以下であることに応答して、第2の制御信号をモータに出力するように構成することができる。予め設定された期間は、2秒から5秒の範囲、例えば約3秒とすることができる。
【0015】
制御装置は、関数の計算値が閾値よりも大きいとの判定に応答して、モータを制御して液体リングポンプを駆動する(例えば、駆動し続ける)ための第3の制御信号をモータに出力するように構成することができる。
【0016】
制御システムは、液体リングポンプに作動液をポンプ送給するように構成されたポンプと、ポンプを駆動するように構成されたさらなるモータとをさらに備えることができる。1又は2以上の制御信号のうちの制御信号は、ポンプの動作を制御するためのものとすることができる。
【0017】
制御装置は、可変周波数駆動装置を備えることができる。
【0018】
さらなる態様において、システムを制御する方法が提供される。システムは、液体リングポンプと、液体リングポンプを駆動するように構成されたモータと、制御装置とを備える。本方法は、制御装置が、モータ内の電流を決定するステップと、制御装置が、モータの速度を決定するステップと、制御装置が、関数の値を計算するステップであって、関数は、モータ内の決定された電流及びモータの決定された速度の関数である、ステップと、制御装置が、関数の計算された値に基づいて1又は2以上の制御信号を出力するステップと、を含む。
【0019】
さらなる態様において、コンピュータシステム又は1又は2以上のプロセッサによって実行されると、プログラム又は複数のプログラムが、コンピュータシステム又は1又は2以上のプロセッサに、コンピュータシステム又は1又は2以上のプロセッサに接続され、液体リングポンプを駆動するように構成されているモータ内の電流を決定し、モータの速度を決定し、モータ内の決定された電流及びモータの決定された速度の関数である関数の値を計算し、関数の計算された値に基づいて1又は2以上の制御信号を出力する、ことを行わせるように構成されたプログラム又は複数のプログラムが提供される。
【0020】
さらなる態様において、上記態様によるプログラム又は複数のプログラムのうちの少なくとも1つを記憶する機械可読記憶媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】真空システムを示す概略図である(縮尺通りではない)。
図2】液体リングポンプを示す概略図である(縮尺通りではない)。
図3】真空システムによって実施される制御プロセスの特定のステップを示すプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、真空システム2を示す概略図である(縮尺通りではない)。真空システム2は、設備4に接続されており、真空システム2は、作動時、設備4からガス(例えば、空気)を吸引することによって設備4に真空又は低圧環境を確立するようになっている。
【0023】
この実施形態では、真空システム2は、逆流防止弁6、液体リングポンプ10、モータ12、分離器14、ポンプシステム16、制御装置20、及び警報モジュール22を備える。
設備4は、吸引又は真空ライン又はパイプ28を介して液体リングポンプ10の入口に接続される。
【0024】
逆流防止弁6は、吸引ライン28上に配置されている。逆流防止弁6は、設備4と液体リングポンプ10との間に配置されている。
逆流防止弁6は、設備4から液体リングポンプ10への流体(例えば空気などのガス)の流れを許容し、逆方向、すなわち液体リングポンプ10から設備4への流体の流れを阻止又は妨害するように構成されている。
【0025】
この実施形態では、液体リングポンプ10は単段液体リングポンプである。
液体リングポンプ10のガス入口は吸引ライン28に接続されている。液体リングポンプ10のガス出口は、排気ライン又はパイプ30に接続されている。液体リングポンプ10は、第1の作動液パイプ32を介してポンプシステム16に接続されている。液体リングポンプ10は、第1の作動液パイプ32を介してポンプシステム16から作動液を受け取るように構成されている。液体リングポンプ10は、モータ12によって駆動される。
【0026】
図2は、例示的な液体リングポンプ10の断面の概略図である(縮尺通りではない)。真空システム2の残りの部分については、図2に示された液体リングポンプ10の説明の後に、以下でより詳細に説明する。
【0027】
図2に示される液体リングポンプ10は、実質的に円筒形のチャンバ102を画定するハウジング100と、チャンバ102内に延びる軸104と、軸104に固定的に取り付けられたインペラ106とを備える。液体リングポンプ10のガス入口108(吸引ライン28に接続されている)は、チャンバ102のガス吸入口に流体連通している。液体リングポンプ10のガス出口(図2には示されていない)は、チャンバ102のガス出力に流体的に接続されている。
【0028】
液体リングポンプ10の作動中、作動液は、第1の作動液パイプ32を介してチャンバ102内に受け入れられる。また、軸104はモータ12によって回転され、それによってチャンバ102内でインペラ106が回転する。インペラ106が回転すると、チャンバ102内の作動液(図示せず)がチャンバ102の壁に押し付けられ、それにより、隣接するインペラベーン間の個々の容積をシールし隔離する液体リングが形成される。また、ガス(空気など)は、吸引ライン28からガス吸入口108及びチャンバ102のガス吸入口を介してチャンバ102に引き込まれる。このガスは、インペラ106の隣接するベーンの間に形成された容積に流入する。インペラ106の回転により、この容積が縮小する。インペラ106の回転は、チャンバ102のガス吸入口からチャンバ102のガス出力へ移動する際に、容積内に含まれるガスを圧縮し、圧縮されたガスはチャンバ102から出る。チャンバ102を出た圧縮ガスは、次に、ガス出口及び排気ライン30を介して液体リングポンプを出る。
【0029】
ここで図1の説明に戻ると、排気ライン30は、液体リングポンプ10のガス出口と分離器14の入口との間に接続されている。分離器14は、排気ライン30を介して液体リングポンプ10に接続されており、排気流体(すなわち、水滴及び/又は蒸気を伴うか、又は含む可能性のある圧縮ガス)が分離器14によって受け取られるようになっている。
【0030】
分離器14は、液体リングポンプ10から受け取った排気流体をガス(例えば空気)と作動液に分離するように構成されている。受け取った排気流体から分離されたガスは、システム出口パイプ34を介して、分離器14、及び真空システム2から排出される。
分離器14は、受け取った排気流体から分離された作動液が、ドレン又は排出パイプ36を介して分離器14、及び真空システム2から出力される作動液出口を備える。
【0031】
この実施形態では、ポンプシステム16は、ポンプ(例えば遠心ポンプ)と、そのポンプを駆動するように構成されたモータとを備える。ポンプシステム16は、作動液供給源38から第2の作動液パイプ40を介して作動液をポンプ送給し、この作動液を第1の作動液パイプ32を介して液体リングポンプにポンプ送給するように構成されている。
【0032】
作動液供給源38は、何らかの適切な作動液供給源とすることができる。例えば、作動液が水である実施形態では、作動液供給源38は、幹線上水道、川、湖、貯水タンク等とすることができる。
【0033】
制御装置20は、1又は2以上のプロセッサを備えることができる。この実施形態では、制御装置20は、比例積分(PI)制御装置である。この実施形態では、制御装置20は、可変周波数駆動装置(VFD)42を備える。VFD42は、モータ12の速度を制御するように構成されている。VFD42は、ポンプシステム16のモータの速度を制御するようにさらに構成することができる。
【0034】
制御装置20は、そのVFD42を介して、及び第1の接続44を介してモータ12に接続されており、モータ12を制御するための制御信号は、制御装置20からモータ12に送ることができるようになっている。第1の接続44は、電線、光ファイバー、又は無線接続を含むがこれらに限定されない何らかの適切なタイプの接続とすることができる。モータ12は、制御装置20から受け取った制御信号に従って動作するように構成されている。制御装置20によるモータ12の制御については、図3を参照して後述する。
【0035】
制御装置20は、そのVFD42を介して、及び第2の接続46を介してポンプシステム16にさらに接続されており、ポンプシステム16を制御するための制御信号は、制御装置20からポンプシステム16のモータに送ることができるようになっている。第2の接続46は、電線、光ファイバー、又は無線接続を含むがこれらに限定されない何らかの適切なタイプの接続とすることができる。ポンプシステム16は、制御装置20から受け取った制御信号に従って動作するように構成されている。
【0036】
制御装置20は、第3の接続48を介して警報モジュール22にさらに接続されており、警報モジュール22を制御するための制御信号は、制御装置20から警報モジュール22に送ることができるようになっている。第3の接続48は、電線、光ファイバー、又は無線接続を含むがこれらに限定されない何らかの適切なタイプの接続とすることができる。
【0037】
警報モジュール22は、真空システム2から離れた人間及び/又は他のシステム(例えば、コンピュータシステム)に警報又は通知を提供又は出力するように構成される。適切な警報又は通知の例としては、可聴警報(アラームなど)及び視覚警報(ディスプレイ上のメッセージ、又は点滅する光など)を含むが、これらに限定されない
【0038】
このようにして、真空システム2の実施形態が提供される。
上記の構成を実装し、後述する方法ステップを実行するための制御装置20を含む装置は、何らかの適切な装置、例えば1又は2以上のコンピュータ又は他の処理装置又はプロセッサを構成すること又は適合させることによって、及び/又は追加のモジュールを提供することによって提供することができる。装置は、コンピュータメモリ、コンピュータディスク、ROM、PROMなどの機械可読記憶媒体、又はこれらの何らかの組合せ又は他の記憶媒体に記憶された、1又は複数のコンピュータプログラムの形態の命令及びデータを使用するためのコンピュータ、コンピュータネットワーク、又は1又は2以上のプロセッサを備えることができる。
【0039】
図3は、液体リングポンプ10の動作を制御するための制御プロセスの一実施形態の特定のステップを示すプロセスフローチャートである。
図3のフローチャートに図示され、以下に説明されるプロセスステップの一部は、省略することができること、又はそのようなプロセスステップは、以下に提示され、図3に示されるものとは異なる順序で実行することができることに留意されたい。さらに、全てのプロセスステップは、便宜上及び理解を容易にするために、時間的に連続する個別のステップとして示されているが、プロセスステップのいくつかは、実際には、同時に実施すること又は少なくとも時間的にある程度重複して実施することができる。
【0040】
図3のプロセスは、「アンチ・ドライラン(anti-dry run)」プロセスとみなすことができる。
ステップs2では、制御装置20は、パワーダウンの「オフ」状態から、液体リングポンプ10を駆動するようにモータ12を制御する。換言すると、液体リングポンプのポンプ動作が開始される。
【0041】
ステップs4において、制御装置20は、モータ12内の電流、すなわちモータ12の固定子巻線内の電流のようなモータ12の配線内の電流を決定又は測定する。詳細には、この実施形態では、VFD42は、モータ12の電流を決定又は測定する。詳細には、この実施形態では、VFD42は、モータ12からの入力電力をACからDCに変換し、その後、所望の周波数を得るためにACに戻す。出力電流は、この変換プロセス中に決定又は測定される。電流の測定値は、VSD42の集積回路基板のレジスタに格納することができる。
【0042】
モータ12の電流は、液体リングポンプ10のポンプ動作の開始時又は開始直後に、例えばモータ12の始動から所定時間内に決定又は測定することができる。
【0043】
ステップs6において、制御装置20は、モータ12の速度を決定又は測定する。詳細には、この実施形態では、VFD42がモータ12の速度を決定又は測定する。より詳細には、VFDは、モータ12に供給される出力電力の周波数を決定する。モータ12の速度は、VFD42によってモータ12に供給される出力電力の周波数を用いて決定される。詳細には、この実施形態では、モータ12の速度は、
で決定される。ここで、nNはモータ12の速度、fは出力電力の周波数、Pはモータ12の極対数である。
【0044】
モータ12の速度は、液体リングポンプ10のポンプ動作の開始時又は開始直後に、例えばモータ12の始動から所定時間内に決定又は測定することができる。
好ましくは、モータ12の速度は、ステップs4でモータ12の電流が決定又は測定された時点又はその時点と同じ時点で決定又は測定される。
【0045】
ステップs8において、制御装置20は、モータ12の電流(ステップs4で決定)及びモータの速度(ステップs6で決定)の関数を計算する。
この実施形態では、制御装置20は、電流とモータ12の速度の比率を計算する。換言すれば、制御装置20は、関数F、すなわち
を計算する。ここで、Iは、モータ12の決定された電流であり、これは、アンペア、Aで測定することができ、sは、決定されたモータ12の速度であり、rpmで測定することができる。
【0046】
例えば、モータ12内の電流は77Aと決定し、モータ12の回転数は2100rpmと決定することができる。従って、関数Fの値は、77/2100=0.037となる。
【0047】
ステップs10において、制御装置20は、決定された関数値Fを閾値と比較する。第1の閾値は、何らかの適切な値とすることができる。本発明者らは、液体リングポンプのドライラン状態は、F=0.015の関数値に対応する可能性があることを認識している。従って、好ましくは、閾値は0.015より大きい。例えば、閾値は0.015-0.030の範囲、より好ましくは0.015-0.025の範囲、さらに好ましくは約0.020とすることができる。
【0048】
ステップs10において、制御装置20が、関数値Fが閾値以下であると判定した場合、例えば、F≦0.02の場合、方法はs12に進む。
しかしながら、ステップs10において、制御装置20が、関数値Fが閾値より大きいと判定した場合、方法はs18に進む。ステップs18については、以下でより詳細に説明する。
【0049】
ステップs12において、関数値Fが閾値以下であるとの判定に応答して、制御装置20は、液体リングポンプ10がドライラン状態で作動している、すなわち液体リングポンプ10内に作動液が不十分であると判定する。従って、ステップs12において、制御装置20は、警報モジュール22を制御して警報を出力させる。
【0050】
ステップs14において、制御装置20の制御の下で、警報モジュール22は、真空システム2の人間オペレータのために、可視及び/又は可聴警報などの警報、アラーム、又は通知を出力する。従って、人間オペレータは、適切なアクションをとるように通知される。そのようなアクションの例としては、限定されるものではないが、ドライラン状態の根本原因が何であるかを確認又は決定すること、異常要因を除去するためのアクションをとること、制御装置のディスプレイ上でエラーをリセットすること、及びシステムを再始動することが挙げられる。
【0051】
ステップs16において、液体リングポンプ10が予め設定された期間以上にドライラン状態で作動しているとの判定に応答して、制御装置20は、液体リングポンプ10の駆動を停止するようにモータ12を制御する。従って、液体リングポンプ10が閾値未満の関数F値で予め設定された期間作動している場合、液体リングポンプ10は停止される。有利には、液体リングポンプのこの停止は、液体リングポンプ10の「ドライ」状態、すなわち内部の作動液が不十分な状態での液体リングポンプ10の作動によって発生する過度の熱によって引き起こされる可能性がある、液体リングポンプのメカニカルシールなどの液体リングポンプ10の構成要素への損傷を低減又は制限する傾向がある。
【0052】
予め設定された期間は、例えば人間オペレータによって設定可能又は調整可能である。予め設定された期間は、何らかの適切な期間とすることができる。本発明者らは、約2秒から5秒の間、より好ましくは約3秒が、液体リングポンプ10の構成要素への損傷の低減を改善する傾向があることを認識している。
【0053】
ステップs16の後、液体リングポンプ10が停止して図3のプロセスが終了する。図3のプロセスは、その後、ステップs2で液体リングポンプ10を始動して再開させることができる。
ここで、ステップs10で、制御装置20が、関数値Fが閾値より大きいと判定した場合に戻ると、方法はs18に進む。
【0054】
ステップs18において、制御装置20は、液体リングポンプ10がドライラン状態で作動していない、すなわち液体リングポンプ10内に十分な作動液があると判定する。従って、ステップs18において、制御装置20は、液体リングポンプ10の駆動を継続するようにモータ12を制御する。液体リングポンプ10は、それが停止され、図3のプロセスが終了するまで、このように駆動することができる。
【0055】
このようにして、真空システム2によって実行される制御プロセスの一実施形態が提供される。
有利には、上述のシステム及び方法は、ドライ状態、すなわち作動液が不十分な状態での作動を低減又は制限する方法で液体リングポンプを制御することを可能にする。従って、上述のシステム及び方法は、液体リングポンプの構成要素、例えばそのメカニカルシールの損傷を低減又は制限する傾向がある。
【0056】
有利には、制御装置、例えばVFDは、VFD自体の作動パラメータ又は状態を使用して、モータ内の電流及びモータの速度を決定するように構成されている。VFDは、主としてモータの速度制御用に構成することができる。VFDの作業プロセス中、モータ内の電流とVFDが出力する電力の周波数の両方が測定され、ファームウェア/実行ソフトウェアによってVFDのレジスタに格納される。これらの値は、制御装置プロセッサとVFDとの間の既存の通信によって、制御装置プロセッサが有利に利用できる。従って、これらのパラメータのいずれか又は両方を測定するための追加のセンサの必要性は、低減、排除、又は回避される傾向にある。このようなセンサが故障するリスクも低減又は排除される傾向にある。さらに、省スペース(spec-saving)も達成される傾向にある。さらに、センサのメンテナンス要件も低減又は排除される傾向にある。それにもかかわらず、いくつかの実施形態では、モータ内の電流及びモータの速度の一方又は両方は、センサによって測定することができる。このようなセンサは、モータに結合することができ、測定値を制御装置に送るように構成することができる。
【0057】
上記実施形態において、真空システムは、図1を参照して上述した要素を備える。詳細には、真空システムは、逆流防止弁、液体リングポンプ、モータ、分離器、ポンプシステム、制御装置、警報モジュール、及びそれらの間の接続部を備える。しかしながら、他の実施形態では、真空システムは、上述した要素の代わりに又はそれに加えて他の要素を備える。また、他の実施形態では、真空システムの要素の一部又は全部を、上述したものとは異なる適切な方法で一緒に接続することができる。いくつかの実施形態では、複数の液体リングポンプを実装することができる。
【0058】
上記の実施形態において、分離器は、分離された作動液及び分離されたガスをそれぞれの出力パイプを介してシステムから出力する。しかしながら、他の実施形態では、分離された作動液及び/又は分離されたガスは、システムから出力されない。例えば、いくつかの実施形態では、作動液は分離器から液体リングポンプにリサイクルされる。作動液の再利用は、有利には、運転コスト及び水の使用量を低減する傾向がある。いくつかの実施形態では、分離器を省略することができる。
【0059】
上記の実施形態において、液体リングポンプは単段液体リングポンプである。しかしながら、他の実施形態では、液体リングポンプは、異なるタイプの液体リングポンプ、例えば多段液体リングポンプである。
【0060】
上記の実施形態において、作動液は水である。しかしながら、他の実施形態では、作動液は、異なるタイプの作動液である。
【0061】
上記の実施形態において、制御装置はPI制御装置である。しかしながら、他の実施形態では、制御装置は、比例(P)制御装置、積分(I)制御装置、微分(D)制御装置、比例-微分(PD)制御装置、比例-積分-微分(PID)制御装置、又はファジー論理制御装置などの異なるタイプの制御装置である。
【0062】
上記の実施形態において、単一の制御装置が複数のシステム要素(例えば、モータ)の動作を制御する。しかしながら、他の実施形態では、複数の制御装置を使用することができ、各制御装置は、要素群のそれぞれのサブセットを制御する。例えば、いくつかの実施形態では、各モータは、それぞれの専用制御装置を有することができる。
【0063】
上記の実施形態において、モータの配線内の電流とモータ速度の関数Fは、
である。しかしながら、他の実施形態において、モータの配線内の電流とモータ速度の異なる関数が実行される。例えば、決定された電流及び/又はモータ速度に重みを適用することができる。
【0064】
上記の実施形態において、関数Fの値と閾値との比較に基づいて、警報及び液体リングポンプの可能性のある停止が実行される。しかしながら、他の実施形態において、関数Fの値と閾値との比較に基づいて、警報及び液体リングポンプの停止の一方又は両方に代えて、又はこれに加えて、1又は2以上の異なるアクションが実行される。例えば、いくつかの実施形態では、関数Fの値と閾値との比較に基づいて、液体リングポンプがドライ状態で作動していると判定された場合、ポンプシステムのモータを制御して、液体リングポンプへの作動液の流れを調整又は調節すること、例えば、液体リングポンプへの作動液の流れを増加させることができる。従って、液体リングポンプは、ドライ状態での作動から抜け出ることができる。
【符号の説明】
【0065】
2 真空システム
4 設備
6 逆流防止弁
10 液体リングポンプ
12 モータ
14 分離器
16 ポンプシステム
20 制御装置
22 警報モジュール
28 吸引ライン
30 排気ライン
32 第1の作動液パイプ
34 システム出口パイプ
36 排出パイプ
38 作動液供給源
40 第2の作動液パイプ
42 可変周波数駆動装置
44 第1の接続
46 第2の接続
100 ハウジング
102 チャンバ
104 軸
106 インペラ
108 ガス入口
S2-S28 方法ステップ
図1
図2
図3
【国際調査報告】