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特表2024-507239真菌由来組成物、その製造プロセス及び使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】真菌由来組成物、その製造プロセス及び使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/14 20060101AFI20240208BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20240208BHJP
   C12P 19/04 20060101ALI20240208BHJP
   C12P 33/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 36/074 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240208BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20240208BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240208BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C12N1/14 G
C12N1/00 Z
C12N1/14 E
C12P19/04 B
C12P33/00
A61K36/074
A61P31/12
A61P17/00
A61K31/575
A61K47/38
A61Q19/00
A61Q19/10
A61K8/9728
A61K8/73
C09K3/00 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550296
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 FI2022050108
(87)【国際公開番号】W WO2022175600
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】20215181
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523315485
【氏名又は名称】ナチュラル リソーシズ インスティテュート フィンランド(ルーク)
(71)【出願人】
【識別番号】523315496
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ユバスキュラ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】リーッカ リンナコスキ
(72)【発明者】
【氏名】バルプ マルヨマキ
(72)【発明者】
【氏名】ペトリ キルペライネン
(72)【発明者】
【氏名】ダニク レシャムバラ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリ バンハネン
(72)【発明者】
【氏名】ピュリュ ベテリ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B064AF11
4B064AH07
4B064DA20
4B065AA01X
4B065BC08
4B065BC11
4B065CA22
4B065CA50
4C076AA11
4C076BB31
4C076EE31
4C076EE31Q
4C076EE31S
4C076FF51
4C076FF63
4C083AA111
4C083AA112
4C083AD261
4C083AD262
4C083BB48
4C083CC02
4C083CC23
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086DA11
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB33
4C088AA06
4C088AC16
4C088BA11
4C088BA37
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB33
(57)【要約】
殺ウイルス組成物、その製造方法、関連した使用、及びエンドユーザー向け製品が、本明細書では提供される。その組成物は、選択された真菌菌株ガノデルマ・ルシダム(MUS12、MUS15、MUS18及びMUS23)から、原則的に撹拌を伴わない条件で培養タンク又はバイオリアクター内の原則的に液体培養培地中で前記真菌を培養することによって得られる生物活性物質の混合物を含む。その生物活性物質は、先に示したG.ルシダム菌株の菌糸によって排出される産物として得られ、そして、ガノデリン酸やその誘導体などの二次代謝物を含有する。その組成物は、ウイルス感染の蔓延の予防において効果的であると証明された。その組成物は、皮膚や非生物表面のための消毒薬として、及び/又はパーソナルケア製品の調製における材料として使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺ウイルス組成物であって、ガノデルマ・ルシダム(Ganoderma lucidum)の選択菌株から、原則的に撹拌を伴わない条件で培養タンク又はバイオリアクター内の原則的に液体培養培地中で前記真菌を培養することによって得られる生物活性化合物の混合物を含む、殺ウイルス組成物。
【請求項2】
前記生物活性化合物の混合物が、受託番号CBS147377、CBS147378、CBS147379、CBS147380として寄託された単離G.ルシダム菌株のいずれか一つ、又はそれらの任意の組み合わせから得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記生物活性化合物の混合物が、G.ルシダムの菌糸によって排出される産物として液相で得られ、ここで、該真菌が、培養タンク又はバイオリアクター内で原則的に液体培養培地中で培養される、請求項1又は2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記のG.ルシダムから得られる生物活性化合物の混合物が、ガノデリン酸とその誘導体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記の生物活性化合物の混合物が、該組成物が占める総体積の約10パーセント~約99.9パーセントの範囲内の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ヘミセルロースをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ヘミセルロースが、リグノセルロース系バイオマスから産生される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記リグノセルロース系バイオマスが、木材由来のバイオマスである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ガノデルマ・ルシダムの選択菌株から得られる生物活性化合物の混合物を含む殺ウイルス組成物を製造するプロセスであって、以下の:
a. 培養タンク又はバイオリアクター内の原則的に液体培養培地中でG.ルシダム種を培養し;そして
b. ステップ(a)で得られた培地を採取し、液相中のG.ルシダム菌糸によって排出された産物として生物活性化合物の混合物を分離すること、
を含み、
ここで、培養タンク又はバイオリアクター内の原則的に液体培養培地中でのG.ルシダム種の培養が、原則的に撹拌を伴わない条件で実施される、プロセス。
【請求項10】
前記のガノデルマ・ルシダムの選択菌株が、受託番号CBS147377、CBS147378、CBS147379、CBS147380として寄託された単離G.ルシダム菌株のいずれか一つ、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記培養が、液中発酵によって実施される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
原則的に液体培養培地中でのG.ルシダム種の培養が、4週間~10週間の範囲に及ぶ期間にわたり、好ましくは約6~8週間の期間にわたり実施される、請求項9~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
ステップ(c)にて、ステップ(b)で得られた産物にヘミセルロースを添加することをさらに含む、請求項9~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ヘミセルロースが、該組成物が占める総体積の約0.1パーセント~約75パーセントの範囲内、好ましくは約5パーセント~約50パーセントの範囲内の量で添加される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を含む、ヒト又は非ヒト動物対象における外用向けの調製物。
【請求項16】
ウイルス感染の蔓延の予防における、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物又は請求項15に記載の調製物の非治療的使用。
【請求項17】
前記ウイルス感染が、ピコルナウイルス及びコロナウイルスのいずれか一つの1若しくは複数のメンバーによって引き起こされる、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
消毒、清浄及び/又は洗浄における、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物及び/又は請求項15に記載の調製物の使用。
【請求項19】
パーソナルケア製品又はスキンケア製品の製造における、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物及び/又は請求項15に記載の調製物の使用。
【請求項20】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物及び/又は請求項15に記載の調製物を含む、皮膚又は非生物表面のための消毒薬。
【請求項21】
受託番号CBS147377、CBS147378、CBS147379及びCBS147380として寄託された菌株から成る群から選択されるガノデルマ・ルシダム菌株。
【請求項22】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)によって引き起こされる感染の蔓延の予防における、受託番号CBS147377、CBS147378、CBS147379、CBS147380として寄託された単離ガノデルマ・ルシダム菌株のいずれか一つ、又はそれらの任意の組み合わせから得られる生物活性化合物の混合物を含む、組成物の非治療的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、概して、ガノデルマ・ルシダム(Ganoderma lucidum)真菌由来の物質を伴う組成物及び方法に関する。特に、本発明は、選択されたG.ルシダム菌株から得られる生物活性化合物の混合物を含む組成物、前記組成物を製造する方法、並びに特に、ウイルス感染の蔓延の予防、消毒及びパーソナルケア製品の製造におけるその使用に関係する。
【背景技術】
【0002】
背景
ウイルス感染は、世界中の人々に影響を及ぼす最も一般的な疾患である。ウイルス感染との闘いは、ウイルス複製に関する高い変異率と低い忠実度に起因するウイルス群の新しい血清型の出現に絶えず立ち向かっている。
【0003】
エンテロウイルス、ロタウイルスやノロウイルスなどの非エンベロープウイルスは、安定しており、かつ、数週間~何カ月にわたり表面にとどまった後でも感染性を維持する。それらのウイルスは、化学消毒薬に対してほとんど感受性を示さないので、現在のところ、言及した病原菌に感染した構内の汚染除去のための非毒性手段は存在しない。ジカウイルスや、SARS-CoV2-Covid19パンデミックの起因菌を含めたコロナウイルスなどのエンベロープウイルスは、特定の消毒薬で治療したときに、安定性が低く、そしてより分解傾向にある。それにもかかわらず、これらのウイルス種のいずれもが、世界的な重大なアウトブレイクを引き起こし、困難な症状と高い死亡率に通じ、そして世界経済における甚大な損失を引き起こす可能性がある。
【0004】
一例として、エンテロウイルス(EV)は、世界で最も蔓延したウイルスの代表である。それらはポリオウイルス感染症、手足口病(HFMD)、髄膜炎、心筋炎、脳炎及び急性弛緩性麻痺(AFP)などの急性感染症を含めた、中等症~重症に及ぶ多くの感染症を引き起こす。加えて、エンテロウイルスは、1型糖尿病(T1D)、喘息及びアレルギーなどの慢性疾患の発症における環境要因である。ポリオ以外のエンテロウイルスに対して幅広く使用できるワクチンは存在しないので、新しいエンテロウイルス血清型が絶えず現れるという事実によって、ワクチンの開発を複雑にさせる。
【0005】
全体的に見て、ワクチンの開発は、新種のウイルスが現れる速度に後れをとっている。ウイルス感染の蔓延を予防するための追加又は代替の方法としては、手や表面の消毒、並びに様々な生物学的安全性レベルに設定した要件を満たすように設計された防護器具の装着が挙げられる。
【0006】
その一方、真菌は生理活性分子の幅広い起源を提供し、さらに、一部の真菌種は、報告された抗ウイルス活性を有する化合物を含有及び/又は排出する。特に、担子菌ガノデルマ、特に、G.ルシダム(G. lucidum)は、霊芝(Lingzhi又はReishi mushroom)とも呼ばれ、東アジアでは医療目的のために広く使用される。ガノデルマ種は、トリテルペノイド、ステロイド、アルカロイド及びポリサッカライドを含んでおり、それから得られる中でもトリテルペノイドは最も豊富な化合物群である。
【0007】
G.ルシダムのトリテルペノイド(15超の化合物)に関しては、抗炎症効果、抗酸化効果、抗ヒスタミン効果及びコレステロール低下効果などの様々な治療効果が、例えば、US2013/184244A1(Minto et al)で報告されている。G.ルシダム由来の抽出物の薬効特性はUS6,726,911B(Julich et al)でさらに言及されている。JP2016-044155A(Takeshi et al)は、インフルエンザウイルスに対してG.ルシダムトリテルペノイドの抗ウイルス活性を考察している。後者の試料では、種々のガノデリン酸を含めた、トリテルペノイド化合物の混合物が、クロロホルムなどの有機溶媒を用いて、又は熱水抽出によって真菌から抽出された。
【0008】
それにもかかわらず、多くの場合、同じ種の中の幅広い変種の単離株のスクリーニングは、選択菌株が予想された生物学的活性を有するか否かを決定するのに不可欠であることが多い。そのうえ、菌糸体真菌の工業規模製造は、液体培養条件の慎重な最適化、並びに所望の化合物の過剰産生を回避するための菌株選択を必要とする。
【0009】
新しい血清型による毎年のインフルエンザのエピデミック、コロナウイルスのパンデミック及び最近の感染症アウトブレイク(エボラやチクングンヤ熱など)は、効果的な表面消毒薬需要の要望に拍車をかけている。多くのウイルスが、無症候で感染性因子を担持する個体を含めた感染個体からの分泌物と接触することによる直接的及び間接的接触によって一般的に広まるので、安全かつ幅広く作用する殺生物剤がウイルス感染者と遭遇することが明らかに必要である。
【0010】
上記の観点から、新しく、信頼でき、かつ、無毒の抗ウイルス化合物、特に、外用のものを開発するのに関連する技術分野の補完とアップデートすることが望ましく思える。その意味で、ガノデルマ種は、前記真菌とそれによって産生される物質の生物学的可能性の更なる探査のための魅力的な標的を提供する。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、関連技術の限界及び不利から生じる問題をそれぞれ解決する、又は少なくとも軽減することである。その目的は、殺ウイルス組成物、その製造プロセス及び関連使用に関する様々な実施形態によって達成される。したがって、本発明の一態様において、独立請求項1に定義されている内容による殺ウイルス組成物が提供される。
【0012】
実施形態において、殺ウイルス組成物は、ガノデルマ・ルシダムの選択菌株から、原則的に撹拌を伴わない条件で培養タンク又はバイオリアクター内の原則的に液体培養培地中で前記真菌を培養することによって得られる生物活性化合物の混合物を含む。生物活性化合物の混合物は、前記組成物の有効成分を構成する。
実施形態において、生物活性化合物の混合物は、受託番号CBS147377、CBS147378、CBS147379、CBS147380としてブダペスト条約の規則の下で寄託された単離G.ルシダム菌株のいずれか一つ、又はそれらの任意の組み合わせから得られる。
【0013】
実施形態において、生物活性化合物の混合物は、G.ルシダムの菌糸によって排出される産物として液相で得られ、ここで、該真菌は、培養タンク又はバイオリアクター内で原則的に液体培養培地中で培養される。
実施形態において、G.ルシダムから得られる生物活性化合物の混合物は、ガノデリン酸とその誘導体を含む。
【0014】
実施形態において、有効成分を構成する生物活性化合物の混合物は、前記組成物中に、該組成物が占める総体積の約10パーセント~約99.9パーセントの範囲内の量で存在する。
実施形態において、その組成物は、ヘミセルロースをさらに含む。実施形態において、ヘミセルロースは、リグノセルロース系バイオマスから産生される。実施形態において、リグノセルロース系バイオマスは、木材由来のバイオマスである。
【0015】
別の態様において、独立請求項9で定義される内容に従って、ガノデルマ・ルシダムの選択菌株から得られる生物活性化合物の混合物を含む殺ウイルス組成物を製造するプロセスが提供される。
実施形態において、そのプロセスは:(a) 培養タンク又はバイオリアクター内の原則的に液体培養培地中でG.ルシダム種を培養し;そして(b) ステップ(a)で得られた培地を採取し、液相中のG.ルシダム菌糸によって排出された産物として生物活性化合物の混合物を分離し、任意選択でそれに続いて、前記産物を濃縮又は希釈すること、を含み、ここで、培養タンク又はバイオリアクター内の原則的に液体培養培地中でのG.ルシダム種の培養は、原則的に撹拌を伴わない条件で実施される。
実施形態において、その培養は、液中発酵によって実施される。
【0016】
実施形態において、原則的に液体培養培地中でのG.ルシダム種の培養は、4週間~10週間の範囲に及ぶ期間にわたり、好ましくは約6週間~8週間の期間にわたり、ステップ(a)において実施される。
実施形態において、そのプロセスは、ステップ(c)において、ステップ(b)で得られた産物にヘミセルロースを添加することをさらに含む。実施形態において、ヘミセルロースは、ステップ(c)において、該組成物が占める総体積の約0.1パーセント~約75パーセントの範囲内、好ましくは約5パーセント~約50パーセントの範囲内の量で添加される。
【0017】
更なる態様において、独立請求項15で定義される内容に従って、先の態様の一部による組成物を含む、ヒト又は非ヒト動物対象における外用向けの調製物が提供される。
より一層更なる態様において、独立請求項16で定義される内容に従って、先の態様の一部による組成物及び/又は調製物の非治療的使用が、ウイルス感染の蔓延を予防する際に提供される。実施形態において、前記使用は、ピコルナウイルス(Picornaviridae)及びコロナウイルス(Coronaviridae)ファミリーのいずれか一つの1若しくは複数のメンバーによって引き起こされるウイルス感染の蔓延を予防する際に提供される。
【0018】
更なる態様において、独立請求項18及び19でそれぞれ定義される内容に従って、先の態様のいくつかによる組成物及び/又は調製物の使用は、消毒(disinfecting)、清浄(sanitizing)及び/又は洗浄(cleaning)、並びにパーソナルケア製品又はスキンケア製品の製造において提供される。
更なる態様において、独立請求項20で定義される内容による皮膚又は非生物表面の消毒薬が、提供される。
【0019】
更なる態様において、独立請求項21で定義される内容によるガノデルマ・ルシダム菌株が、提供される。
より一層更なる態様において、独立請求項22で定義される内容に従って、選択されたガノデルマ・ルシダム菌株から得られる生物活性化合物の混合物を含む組成物の非治療的使用が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)によって引き起こされる感染の蔓延を予防する際に提供される。
本発明の有用性は、その各々の特定の実施形態に応じて様々な理由から生じる。
【0020】
初めに、本発明は、著しい殺生物、特に、殺ウイルス特性を有する、無毒の組成物を提供する。その組成物は、皮膚や表面を消毒するためなどの、外用向けに特に好適である。その組成物は、それ自体、或いは手の除菌用ローションや汎用消毒薬、石鹸、様々な保湿剤、クレンジングパッド、おしぼり及びウェットティッシュ、フェイスマスク、病院や一般使用向けの繊維製品、エアフィルタなどの様々なパーソナルケアアイテム及び他のエンドユーザー向け製品を製造する際の構成要素として使用できる。原則的に液状で得られる、その組成物は、それ自体が洗浄及び/又は消毒薬/調製物として使用できるか、或いはそれは、後処理されて、粉末(powered)調製物又は例えば、棒状石鹸などの原則的に固形の調製物を形成できる。液体組成物/調製物は、溶液又はスプレー/エアゾールとして提供でき;さらに、それは、例えば、フェイスライナー又はフェイスマスクといったアイテムの製造にさらに使用できる。半固形調製物(乳濁液、クリームなどのスキンケア/化粧品製品)がさらに製造できる。これにより、その組成物は、汎用的であり、そして、エンドユーザーのニーズに大幅に合わせることが可能である。
【0021】
本開示による組成物の有効成分を形成する真菌由来の、生物活性化合物の混合物は、様々なタイプの一般的なエンテロウイルス、コロナウイルス、並びにロタウイルスを含めた多くのウイルス種に対する優れた殺ウイルス活性が実証された。これにより、本発明は、例えば、病院、学校、デイケア、ショッピングモール、空港などの公共環境における一般的なウイルスの蔓延を実質的に制限するために、表面や目的物を処理するため、並びに手を消毒するためなどの、外用向けの、広範囲の抗ウイルス性を提供する。
【0022】
さらに、真菌の従来の発酵に使用されるバイオリアクターシステムや関連プロセスとの比較において、本発明は、より少ないエネルギー集約様式での製造プロセスを可能にする。これは、かき混ぜ及び/又は撹拌手段を備えた培養タンク/バイオリアクターの必要性を排除することによって達成される。固定タンク又はバイオリアクター内での製造プロセスの実施の理由で(ここで、固定とは(単数若しくは複数の)スターラー/アジテーターを備えていないタンク又はバイオリアクターを指す)、本明細書に開示された方法は、設備費、並びにエネルギー、水及び添加剤消費に関連するコストを削減することを可能にし、よって、製造プロセスの全体的なコスト効率を改善し、かつ、パイロット規模から商業製造への移行を容易にする。加えて、本発明は、糸状菌類の増殖形態の最適化を目的とする計測を回避するか又は少なくとも最小限にすることが可能である。複雑かつコスト高な、成長最適化手順は、従来のかき混ぜ型バイオリアクターシステムで真菌を培養する際に必須である。
【0023】
「殺生物性」という用語は、一般的に、任意の有害生物体を破壊する、抑止する、無害状態にするか、又はそれらに対して抑制効果を発揮する物質を指す。
「殺ウイルス性」という用語は、一般的に、ウイルスを生育不能な状態する(ウイルスを中和又は破壊する)物質を指す。「抗ウイルス性」という用語は、一般的に、細胞内の他の生存ウイルスの複製を阻害する、及び/又は典型的には、細胞受容体に結合するのを阻害するか、又は重要な生物学的プロセスを妨げることによって、ウイルス粒子が細胞内に侵入することを予防する物質を指す。
【0024】
本開示との関連において、「殺ウイルス」及び「抗ウイルス性」という用語は互換的に使用され、ここで、「抗ウイルス性」という用語は、別段の明確な指示がない限り、ウイルスを破壊又は中和する物質の能力を強調するために「殺ウイルス」の一般的な意味を主に与えられる。
【0025】
「菌株」という用語は、例えば、同じ種の中の別の真菌とは、特定の遺伝要素に関して特徴的に異なる真菌のサブタイプを示すために本明細書で使用される;それに対して、「単離株」という用語は、多くの単離株が1種類の真菌菌株から得られることをさらに強調するために本明細書で利用される。
【0026】
「第1の」及び「第2の」という用語は、別段の明示的な記述がない限り、特定の順序又は重要度を示すものではなく、ある要素を別の要素と単に区別するために本明細書で使用される。
本発明の異なる実施形態は、詳細な説明を考慮することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、細胞変性効果(CPE)阻害アッセイを使用して、それらの抗ウイルス活性を評価するための、感染性因子、ここではコクサッキーウイルス(coxsackievirus)B3(CVB3)、に対する初期ガノデルマ・ルシダムサンプル(2~27)のスクリーニングの結果を例示する。
図2図2は、CPE阻害アッセイを使用した、CVB3に対する選択されたG.ルシダムサンプルの抗ウイルス効果を確認する結果を例示する。
図3図3は、CPE阻害アッセイを使用した、様々な希釈のCVB3に対する、選択されたG.ルシダム菌株(MUS12)の抗ウイルス活性を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。
図4図4は、CPE阻害アッセイを使用して、それらの抗ウイルス活性を評価するための、感染性因子、ここではコクサッキーウイルスB1(CVB1)、に対する初期G.ルシダムサンプル(2~27)のスクリーニングの結果を例示する。
図5図5は、CPE阻害アッセイを使用して、それらの抗ウイルス活性を評価するための、感染性因子、ここではコクサッキーウイルスA9(CVA9)、に対する初期G.ルシダムサンプル(2~27)のスクリーニングの結果を例示する。
図6図6は、定量的逆転写PCR(RT-qPCR)アッセイを使用した、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)に対する、選択されたG.ルシダムサンプルの抗ウイルス効果を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。
図7図7は、CPE阻害アッセイを使用した、感染性因子(CVA9)に対する前記産物の抗ウイルス活性に対する、真菌由来産物を用いた感染性因子の(前)処理中に使用される処理パラメータ(時間及び温度)の効果の評価に対する結果を例示する。
図8図8は、感染性因子(CVA9)に対する、G.ルシダムサンプルの抗ウイルス活性に対する一定な撹拌の効果を例示する。
図9図9Aは、CPE阻害アッセイを使用した、感染性因子(CVA9)に対する、選択されたG.ルシダムサンプル(すべてMUS18)の抗ウイルス活性に対するヘミセルロース化合物(HEM)の潜在的効果を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。図9Bは、CPE阻害アッセイを使用した、感染性因子(CVA9)に対して選択されたG.ルシダムサンプルが抗ウイルス活性をそれでも示す希釈閾値を測定することを目的とする実験的試みの結果を例示する。
図10図10A及び10Bは、感染性因子(CVA9)に対する、市販のガノデリン酸A、TQ、Y及びTRのスクリーニングの結果を例示する。
図11図11A~Fは、CPE阻害アッセイを使用した、感染性因子(CVA9)に対する、選択されたG.ルシダムサンプルの抗ウイルス活性に対するヘミセルロース化合物の潜在的効果を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。
図12A-12B】図12A及び12Bは、CPE阻害アッセイを使用した、感染性因子(CVA9)に対する、任意選択でヘミセルロース化合物の存在下での、選択されたG.ルシダムサンプルの抗ウイルス活性に対するインキュベーション期間と温度の効果を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。
図12C図12Cは、任意選択でヘミセルロースの存在下での、選択されたG.ルシダムサンプルの細胞毒性を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施形態の詳細な説明
本発明は、ガノデルマ・ルシダム真菌の選択菌株から得られる生理活性物質の混合物を含む真菌由来の殺ウイルス組成物の提供、前記選択されたG.ルシダム菌株、該組成物を製造するプロセス、その関連使用及びエンドユーザー向け製品に関係する。
【0029】
その組成物は、有効成分として、生物活性化合物の混合物を含み、そしてそれは、さらに真菌由来産物とも呼ばれる。この産物は、選択されたG.ルシダム菌株を原則的に液体培養培地中で培養することによって得られる。制御された条件(製造サイクル)で前記液体培地中での真菌の成長段階を本明細書で定義する、培養が、有利なことに、撹拌及び/又はかき混ぜの不存在下で実施されることは不可欠である。培養は、有利なことに、例えば、浸漬発酵などの液体発酵法を使用して実施される。
一部の実施形態において、有効成分に加えて、その組成物はさらに、ヘミセルロースを含む。
【0030】
フィンランドを起源とするG.ルシダム単離株によるスクリーニングにより、発明者らは、限られた数のG.ルシダム菌株が、(単数若しくは複数の)強力な抗病害性効果を有する代謝産物溶液を、特定の培養条件で産生するのに有効であるという、驚くべき成果に至った(図1、4及び5のスクリーニング結果を参照のこと)。それらの生物学的活性に関してスクリーニングされた菌株は、腐食した切り株上で成長したガノデルマ真菌の子実体から単離された。本発明の基礎となる調査研究の間、特定の培養条件下で、選択された二倍体G.ルシダム菌株によって成長/発酵培地中に排出される産物が、顕著な抗病害性活性を示すことがわかった。特に、言及された真菌由来産物は、これだけに限定されるものではないが、ウイルスファミリー、ピコルナウイルス科(エンテロウイルス)やコロナウイルス科(コロナウイルス)のメンバーを含めたヒトウイルス病原体の感染力を強力に阻害した。さらに、その真菌由来産物は、レオウイルス科(Reoviridae)(ロタウイルス)、フラビウイルス科(Flaviviridae)(ジカウイルス)及びカリシウイルス科(Caliciviridae)(ノロウイルス)に対して有効に見える。
【0031】
顕著な抗ウイルス活性を有するガノデリン酸やその誘導体などの生物活性化合物/代謝産物の混合物を産生することが観察されたG.ルシダム菌株には、参照番号MUS12、MUS15、MUS18及びMUS23を付与した。これらの菌株は、本開示において、選択されたG.ルシダム菌株を指す。
【0032】
ガノデルマ・ルシダム菌株MUS12、MUS15、MUS18及びMUS23を、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約規則の下、国際寄託機関(IDA)としてウェステルダイク菌類多様性研究所(CBS, Netherlands)に2020年12月17日付で寄託した。寄託番号は以下のとおりである:菌株MUS12についてCBS147377;菌株MUS15についてCBS147378;菌株MUS18についてCBS147379及び菌株MUS23についてCBS147380。
【0033】
菌株MUS12、MUS15、MUS18及びMUS23の同定は、複数の遺伝子領域のDNA配列決定を使用して実施された。分子系統解析(未掲載)では、フィンランドで採集されたガノデルマ・ルシダム真菌が、例えば、以前に中国で発見されたG.ルシダムと明らかに異なることが明らかになった。
【0034】
生物活性化合物の混合物は、前記選択されたG.ルシダム菌株の菌糸によって、その真菌が培養タンク又はバイオリアクター内の前記培地中で増殖するときに、産生サイクル中に(液体)培養培地中に排出される産物として液相内で得られる。真菌代謝を起源とするこの生理活性物質としては、二次代謝物群、特に、トリテルペノイド化合物群に属する生合成物質が挙げられる。産生サイクルの最後には、液体培地中に排出された真菌由来産物は、例えば、真菌細胞やその他の不溶残渣を取り除くために濾過によって分離され、任意選択で濃縮又は希釈がそのあとに続く。
【0035】
二次代謝物は、(一次代謝物とは対照的に)宿主の基本的な増殖と成長に必須ではないが、生存と環境内での競争において重要な役割を担っている化学物質と典型的に定義される。
【0036】
選択されたG.ルシダム菌株から得られる生理活性物質は、ガノデリン酸(GA)とその誘導体の群を含む。ガノデリン酸は、密接に関連するトリテルペノイドの一種である、ラノステロールの誘導体であり、そして、ガノデルマ種に広く存在している。前記産物及びそれを含む組成物の生物学的活性又は活性は、ガノデリン酸とトリテルペノイドに固有の関連活性が主に下地となっていると思われる。しかしながら、G.ルシダム種内の選択菌株だけが、顕著な殺ウイルス活性を有することが実験的に実証された(以下でさらに詳細に説明)。
【0037】
真菌由来産物の化学的組成は、基準としての純粋なガノデリン酸A(ChemFaces, Chinaから購入されたガノデリン酸A;カタログ番号CFN92051)を用いて実施された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析された。(二次)代謝産物混合物中に同時に存在する同定された化合物は、異なる形態のテルペノイドであり、そしてそれは、ガノデリン酸A基準のものに対応するHPLCピークをもたらした(未掲載)。これとともに記載した真菌由来産物の抗ウイルス効果は、成長培地中に排出されたこれらのテルペノイドと任意選択で他の化合物(例えば、ステロイド、ポリサッカライドなど)の組み合わせに与えられた。実験的試みでは、多くのガノデルマ・ルシダム菌株だけが抗ウイルス代謝産物を産生し(図1、4及び5)、及び、基準として使用される純粋なガノデリン酸がまったく抗ウイルス活性を有していないこと(図10A、10B)を確認した。
【0038】
G.ルシダム菌株MUS12、MUS15、MUS18及びMUS23から得られた真菌由来産物は、非エンベロープウイルス(エンテロウイルス、ロタウイルスなど)に対する、並びにエンベロープウイルス(コロナウイルス、ジカウイルスなど)に対する殺ウイルス活性が実証された。上記菌株から得られた代謝産物は、ヒト細胞に対していずれの毒性も示すことなく、個々のウイルス種又はウイルス種の組み合わせに対して抗ウイルス作用を有することがわかった。
【0039】
上記G.ルシダム菌株から得られた産物の殺ウイルス活性を実証する実験的試みの結果は、図1~6を参照することによって説明される。対照としては、模擬感染(ウイルス及びG.ルシダム由来サンプルのいずれも含まない細胞を用いた陰性対照)と対照感染(ウイルスに感染しているが、G.ルシダム由来サンプルで処理していない細胞を用いた陽性対照)が挙げられる。陰性対照は「対照ウイルス」と図上に示される。
【0040】
細胞変性効果(CPE)阻害アッセイを使用した、サンプルの抗ウイルス活性を評価するための多くの感染性因子に対する初期ガノデルマ・ルシダムサンプル(2~27)のスクリーニングの結果を例示する図1、4及び5を参照する。図1、4及び5に例示された試みでは、感染性因子は、それぞれコクサッキーウイルスB3、B1及びA9(CVB3、CVB1及びCVA9;ATCC)であった。これらのコクサッキーウイルスは、ピコルナウイルスファミリー(エンテロウイルス属)に属するエンテロウイルスである。サンプル2~27は、以下でさらに記載した手順に従って培養した様々なG.ルシダム単離株由来の真菌由来代謝産物溶液である。
【0041】
図1は、CVB3に対する選択されたG.ルシダム菌株の抗ウイルス活性を評価する結果を例示する。インビトロにおける試みは、市販の細胞株A549(ヒト腺癌の肺胞基底上皮細胞)を用いておこなわれ、ここで、20,000細胞/ウェルの密度の細胞が、37℃にて24時間にわたり96ウェル平底マイクロタイタープレート上で培養された。7E+06PFU/ml(プラーク形成単位/ml)の感染力価を有するCVB3(10% v/v)は、細胞感染前1時間にわたり37℃にてG.ルシダムサンプル(90% v/v)で前処理された。ウイルスの最終希釈は、細胞に基づいて1:50,000であり、2.3のMOI(感染多重度)値をもたらした。感染を、37℃にて24時間にわたり継続させた。
【0042】
インキュベーション後に、細胞は、中性バッファー(リン酸緩衝生理食塩水、PBSが利用された)で洗浄され、そして、CPE染料(CPE染料:0.03%のクリスタルバイオレット、2%のエタノール、及び36.5%のホルムアルデヒド)を使用して染色された。染色した細胞は、水でさらに洗浄され、そして、溶解バッファー(47.5%のエタノール中の0.8979gのクエン酸ナトリウム及び1NのHCl)溶液で処理された。細胞生存率(%)は、マルチラベルプレートリーダー装置(Perkin Elmer VICTOR X4)により570nmで吸の吸収率を計測することによって分光光度測定で測定された。試験及び対照サンプルのそれぞれは、三連で試験され、そして、その値は、平均値+/-その平均値の標準誤差(平均±SEM)として表される。試験サンプルと陽性対照は、模擬感染(陰性対照)に対して正規化された。
【0043】
図4は、コクサッキーウイルスB1(CVB1)に対する選択されたG.ルシダム菌株(2~27)の抗ウイルス活性を評価する結果を例示する。図1に関して記載したものと同じ実験構成を、真菌ウイルス混合物中のCVB1感染力価が5E+06PFU/mlであること、及びウイルスの最終希釈が細胞に基づいて1:30,000であり、1.6の感染多重度をもたらすこと、を除いて、利用した。
【0044】
図5は、コクサッキーウイルスA9(CVA9)に対する選択されたG.ルシダム菌株(2~27)の抗ウイルス活性を評価する結果を例示する。図1及び4に関して記載したものと同じ実験構成を、CVA9感染力価が3.2E+08PFU/mlであること、及び細胞に基づいて1:5,000の最終希釈が106の感染多重度をもたらすこと、を除いて、利用した。
【0045】
図1、4及び5に示された結果は、菌株MUS12(寄託番号CBS147377;サンプル識別番号10A)、MUS23(CBS147380;サンプル識別番号17A)、MUS15(CBS147378;サンプル識別番号20B)及びMUS18(CBS147379;サンプル識別番号26A-B)によって産生された生理活性物質が、様々な感染性因子によって引き起こされたウイルス感染から細胞を防護できることを明確に示す。
【0046】
G.ルシダム菌株MUS12、MUS15、MUS18及びMUS23由来の生物学的活性産物の抗ウイルス活性を確認するために、これらの菌株が、図1に関して記載したのと同じ実験構成を使用して、CVB3に対してさらに試験された。結果は図2にまとめられている。図2の結果は、二回(2)の独立した実験(ここでは、それぞれサンプル(nos.10A、17A、20B、26A及び26B)が五連で試験された)からの平均値(平均±SEM)を表す。感染力価とMOI値は、図1について報告されたものと同じであった、すなわち、真菌ウイルス混合物中のCVB3力価は7E+06PFU/mlであり、及びウイルスの最終希釈は細胞に基づき1:50,000であり、2.3の感染多重度をもたらした。図2の例は、真菌由来産物サンプルで処理した感染細胞(細胞株A549)の細胞生存率が、無処置感染細胞のそれと比較して有意に高いことを実証する。
【0047】
G.ルシダム菌株MUS12(寄託番号CBS147377;サンプル識別番号10A)は、上述と同じ構成を使用した、様々な希釈のCVB3に対する抗ウイルス活性を評価するためにさらに選択され、そして、これらの試みの結果は図3にまとめられている。図3の結果は、実験から平均±SEM値を表し、ここでは、各サンプルが五連で試験された。これらの結果は、真菌由来産物が1:3,000(「10A+CVB3 1:3k」)の希釈物でさえウイルスとの闘いにおいて有効であり、約30%の生存細胞をもたらすことを実証するが、その一方で、真菌由来産物サンプルを伴わない同じウイルス希釈物は、約90%の細胞を殺滅する(「CVB3 1:3k」と表された対照サンプルを参照のこと)。約75%の細胞が、感染細胞サンプルで生き残り、ここでは、真菌由来産物で処理されたウイルスは、1:30,000~最大1:50,000の比で希釈された(それぞれ「10A+CVB3 1:30k」及び「10A+CVB3 1:50k」を参照のこと)。比較において、陽性対照としての役割を果たす感染細胞サンプルは、たった約15%の生存率であることを実証した(それぞれ「CVB3 1:30k」及び「CVB3 1:50k」)。
【0048】
真菌由来産物の抗病害性効果が様々なウイルス病原菌を越えて保存されるか否かを解明するために、類似の実験が、コロナウイルスファミリーに属し、かつ、コロナウイルス疾患2019(Covid-19)の起因物と定義される重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)に対しておこなわれた。結果は、図6にまとめられている。
【0049】
図6で参照された試みが、市販のベロ細胞株(ベロE6)を用いておこなわれた。SARS-CoV2ウイルス(フィンランドの患者から単離された)は、菌株MUS18及びMUS23(1時間、34℃)から得られたG.ルシダム真菌サンプルを用いて前処理された。前処理したウイルスは、続いて3日間にわたりベロE6細胞と共にインキュベートされ;その後、細胞サンプルは、定量的逆転写PCR(RT-qPCR)アッセイを使用して分析された。要するに、ウイルスRNAが、市販のRNA抽出キットを使用して上清サンプルから抽出されて、そして、Covid19診断検査キットを使用して検出された。両方のキットをPerkin Elmerから購入した。縦軸に沿ってプロットした定量化サイクル(C)値(図6)は、サンプル中の標的核酸の量に対して反比例した;そのため、C値が低ければ低いほど、サンプル中の標的核酸の量がより高く、そして、逆もまた同様であった。図6から、当業者は、RNAの量が対照サンプルにおいて高く(ウイルス対照、「VC 1:50k」と定義されるサンプルを参照のこと)、その一方で、標的RNAの量は試験サンプル(MUS18、MUS23)で極端に減少したこと(ここでは、ウイルスは真菌で前処理された(より高いC値))を観察し得る。実験は、選択されたG.ルシダム菌株がSARS-CoV2ウイルスに対して有効な生物活性化合物の混合物を産生することを明確に示した。
【0050】
組成物の抗病害性、特に抗ウイルス活性が、本明細書に記載した所定の条件で培養した選択されたG.ルシダム菌株によって産生されるガノデリン酸とその誘導体の混合物に関係することを確認するために、多くの市販のガノデリン酸、すなわち、ChemFaces, Chinaから購入したガノデリン酸A、TQ、Y及びTR(GA Aについてカタログ 番号CFN92051、GA TQについてカタログ 番号CFN92237、GA Yについてカタログ 番号CFN90294及びGA TRについてカタログ 番号CFN92235)を感染性因子に対して試験した。結果は、図10A及び10Bにまとめられており、ここでは、図10Aはガノデリン酸Aを用いた実験を示し、及び図10Bはガノデリン酸TQ、Y及びTRを用いた実験を示す。
【0051】
市販のGAを、様々な濃度のそれらの抗ウイルス活性を測定するためにCVA9に対してスクリーニングした(GA Aについて100μM、500μM、1mM、5mM及び10mM;GA TQ、Y及びTRについて12.5μM、25μM、50μM、100μM及び500μM)。GA TQ、Y、TRによるウイルスの混合物、及びGA Aによるウイルスの混合物に関する感染力価は、それぞれ2E+08PFU/ml及び1.6E+08PFU/mlであり、そして、それぞれ100及び66.7のMOI値をもたらした。CVA9は、細胞(細胞株A549)を感染させる前に、37℃にて1時間にわたりGAサンプルで処理された。その結果は、市販のガノデリン酸製品が感染性因子に対して少しの抗ウイルス活性も実証しないことを示す。
【0052】
感染性因子への後者の殺ウイルス活性に対する真菌由来産物を用いた感染性因子の(前)処理中に使用した処理パラメーター(処理継続時間と温度)の効果の評価に関する結果を示す図7を参照する。インビトロにおける試みは、細胞株A549を用いておこなわれ、ここで、12,000細胞/ウェルの密度の細胞が、37℃にて24時間にわたり96ウェル平底マイクロタイタープレート上で培養された。3.2E+08PFU/mlのウイルス力価を有する感染性因子、ここではCVA9(10% v/v)は、G.ルシダム由来サンプル(90% v/v)を用いて(前)処理された。実験では、真菌由来産物は、菌株MUS18(CBS147379;サンプル識別番号140B)から産生された。処理は、様々な時間間隔(5分と60分)及び様々な温度にて、すなわち、37℃及び室温(室温、23~24℃)にておこなわれた。ウイルスサンプル混合物は、130のMOI値を達成するために、10(10)倍にさらに希釈され、そして、細胞には真菌処理ウイルスを感染させ、37℃にて24時間のインキュベーション期間があとに続いた。
【0053】
インキュベーション後に、細胞は、PBSで洗浄され、そして、CPE染料を使用して染色された。染色した細胞は、水で洗浄され、溶解緩衝溶液によって処理された。細胞生存率(%)は、マルチラベルプレートリーダー装置(Perkin Elmer VICTOR X4)により570nmにおける吸収率を計測することによって分光光度測定で測定された。結果は、2つの独立した実験からの平均±SEM値である。試験サンプルと陽性対照との差の統計的有意性は、一元配置ANOVA検定とそれに続くボンフェローニ検定を使用して評価された。その結果に基づいて、選択されたG.ルシダム菌株から得られた真菌由来産物(ここでは、G.ルシダム由来サンプル)が、真菌由来抽出物による前記感染性因子の処理が短時間間隔(5分)の間に実施されたときでさえ、感染性因子に対して顕著な殺ウイルス活性を実証することは明白である。選択されたG.ルシダム菌株の殺ウイルス活性は、感染性因子が室温(23~24℃)又は37℃にて真菌由来産物で処理されたかどうかに関係なく、原則的に変化がないままであった。
【0054】
以下は、選択されたガノデルマ・ルシダム菌株から得られた真菌由来産物を含む組成物を製造するプロセスを説明する。
【0055】
そのプロセスは、培養タンク又はバイオリアクター内の原則的に液体培養培地中で選択されたG.ルシダム菌株を培養することを伴う。その真菌培養物を、予定された期間中、及びインキュベーション温度にかかわって、成長培地関連パラメーター、(日)光の存在/不存在などを含めた特定の条件下、培養タンク内で成長させる。特定の条件下、前記予定された期間中の真菌の成長は、製造サイクルとも呼ばれる。その製造プロセスは、例えば、2L(2リットル)タンクから10~100L超の体積を有する工業的規模の反応器まで、の範囲内で完全に拡大縮小が可能である。2Lを下回る体積は排除されないが、それらは産業培養にとって通常は実現可能でない。製造サイクルには、同じ液体培地を使用して、より少ない体積で真菌菌株を前培養することを先行してもよい。一例として、0.1Lの三角フラスコ内で培養した前培養物が、十分に確立された手順に従って、2Lタンクに植え付けられた。
【0056】
例示的な成長(発酵)培地は、D-グルコース(35g)、ペプトン(5g)、酵母抽出物(2.5g)、塩及びビタミン、状況に応じて、リン酸カリウムKHPO(1g)、硫酸マグネシウム七水和物MgSO×7HO(0.5g)、及びチアミン(0.05g)など、を含有する。上記の量を1000mlの水に加える。溶液pHは5.5である。他の適切な成長培地の使用は排除されない。
【0057】
顕著な抗ウイルス活性を有する組成物を製造するために、(ステップaでの)製造サイクル中の真菌菌株の培養が原則的に撹拌を伴わない条件で実施されることが、さらに不可欠である(図8に対する説明を参照のこと)。4週間~10週間の期間にわたり、好ましくは約6週間~約8週間の期間にわたり、一定の条件で成長させた真菌菌株が、最適な抗病害性挙動を実証することが示された。より長い培養期間(最大6カ月)は、所望の産物を産生する点において可能であるが、しかしながら、斯かる長期は産業実施において実現可能でない可能性がある。最適成長条件としては、20~25℃の範囲内の温度と(日)光の不存在が挙げられる。例示的な8週間の製造サイクルには、1週間の前培養期間が先行した。当業者は、先に特定した制限の範囲内で製造サイクルに対して前培養期間の継続を調整する際に少しの困難も経験しないであろうと思われる。
【0058】
製造サイクルの間、真菌は、有利なことに、例えば、浸漬発酵などの液体発酵法によって培養される。いかなる他の適切な方法も排除されない。
【0059】
製造法を再び参照すると、培養タンク又はバイオリアクター内、原則的に液体培養培地中で培養された選択されたG.ルシダム菌株(MUS12、MUS15、MUS18及びMUS23)は、原則的に撹拌を伴わない条件でのみ、顕著な抗病害性特性を有する生理活性物質を産生することが確証された。
【0060】
伝統的システムでは、ガノデルマ種のような糸状菌類は、かき混ぜ型バイオリアクター内で培養される。しかしながら、本発明の基礎となる研究は、スターラー又は他の撹拌手段を備えた専用バイオリアクター/発酵槽を伴う従来の製造構成では、抗ウイルス化合物の排出が阻害されるという予期せぬ結果に発明者らを導いた。
【0061】
特に、従来のバイオリアクター構成(例えば、スターラーを備えた、従来の発酵槽などのバイオリアクター)において任意選択でおこなわれる製造サイクル全体を通じた一定のかき混ぜ条件は、本発明の概念による抗ウイルス化合物の製造に好適でないことが実証された。斯かる従来のかき混ぜ型発酵槽で作られる真菌由来化合物は、抗ウイルス活性が実証されておらず、これにより、撹拌及び/又はかき混ぜを伴う条件が、抗ウイルス組成物の製造に好適でないことが示された。
【0062】
感染性因子に対する、G.ルシダム(菌株MUS18)から得られる生物活性産物の抗ウイルス活性に対する一定の撹拌の効果は、図8によって実証される。真菌増殖/発酵のプロセスは、先に概説されたガイドラインに従って、しかし、かき混ぜ型反応器(該反応器はかき混ぜ手段を備えていた)内でおこなわれた。要するに、その試みは、2カ月(約8週間)の製造サイクルを用いて2Lバッチ発酵槽内でおこなわれた。後者には、0.1Lの三角フラスコ内での菌株の7日間の前培養(25℃、120rpm、暗室内)が先行した。成長/製造サイクルの間、MUS18サンプルは、規定の時間間隔(8週間にわたり週に一度)で採取され、そして、CPE阻害アッセイを使用してそれらの抗ウイルス活性を評価するためにコクサッキーウイルスA9(ウイルス力価3.2E+08PFU/ml;MOI 133)に対して試験された。バッチ発酵槽内の条件は以下のとおりであった:(日)光の不存在下で室温+25℃及び一定のかき混ぜ(120rpm)。同じ成長培地が、静置発酵のためにも使用された。pH及び酸素(O)レベルが培養の間観察された(調整なし);しかしながら、著しい変化は観察されなかった。
【0063】
増殖サイクルを通じた一定の撹拌の条件下で採収されたサンプルは、撹拌を排除した培養中に採収されたサンプルとは対照的に、抗ウイルス活性を実証していない。したがって、選択されたG.ルシダム菌株を、撹拌条件下で、かき混ぜ型バイオリアクター内で培養/発酵させたとき、形成された化合物(代謝産物)の混合物には、抗病原性、本明細書では抗ウイルス性の活性がないことが実験的に立証された。
【0064】
前培養中の成長培地の撹拌は、真菌由来代謝産物の抗病害性活性に影響がなかった。記載した構成では、0.1Lフラスコは、適度なスピードで(120rpm)にて軌道振盪機上でのインキュベートを可能にした。
【0065】
本明細書で製造サイクルと定義される、成長期間、すなわち、約4~10週間、好ましくは、約6~8週間の期間の間、培養真菌菌株は、液体成長培地中に最適量の着目の生体化合物/代謝産物を放出することが観察された。製造サイクルの後、培地は、例えば、培養タンク又はバッチ反応器から培地を取り出すことによって採取され、そして、G.ルシダムの菌糸によって液相内に排出された未精製の産物は、遠心分離及び/又は(滅菌)濾過などの従来の手法によって真菌細胞及び不溶性破片から分離される。製造サイクルの後の採取及び分離段階は、製造プロセスのステップbとも呼ばれる。分離の間、未精製の代謝産物は、精製されて、実施形態による組成物のための有効成分をもたらす。分離又は精製産物は、任意選択で、更なる濃縮又は希釈に供されることもできる。濃縮は、例えば、凍結乾燥によっておこなわれてもよい。希釈は、任意の適切な希釈媒質を用いて実施され得る。例示的な希釈媒質としては、任意選択で、塩化マグネシウム(MgCl)を含むPBSなど、リン酸及び塩化物ベースの緩衝溶液が挙げられる。いくつかの特定の例において、2mMの塩化マグネシウムを含有するPBSが利用された。
【0066】
実施形態において、真菌由来組成物は、先に記載したプロセスのステップbで得られた生物活性化合物/代謝産物の混合物から成り、そして、真菌由来生物活性産物とも呼ばれる。ある他の実施形態において、その組成物は、少なくとも1つのヘミセルロース化合物又は様々なヘミセルロース化合物の混合物をさらに含む。
【0067】
前記生物活性真菌代謝産物によってウイルス粒子に対して発揮される効果は、ウイルス粒子の安定化によって表され、それらを強力に塊状化する。選択されたG.ルシダム真菌菌株の代謝経路で生合成された生物活性産物へのヘミセルロースの添加は、酸化防止能や高い機械的安定性など、得られた組成物に追加の生物学的な能力を伝える。典型的には、ヘミセルロースは、担体/安定化剤として作用する。
【0068】
(単数若しくは複数の)ヘミセルロース化合物は、本明細書中で先に開示したプロセスのステップbにて得られた、分離された、及び任意選択で濃縮又は希釈された、真菌由来生物活性産物に混合される。(単数若しくは複数の)ヘミセルロースの混合は、その組成物を得るための真菌由来産物の分離/精製(そして任意選択で濃縮又は希釈)直後に実現され得る。真菌由来産物は、ヘミセルロースがそれに加えられるとき、特に、加えられたヘミセルロースが溶液で提供されるとき、ある程度希釈されるようになる。
【0069】
あるいは、ヘミセルロースは、使用直前に真菌由来産物に混合され得る。そのため、第一の成分として真菌由来生物活性産物と、第二の成分として少なくとも1つのヘミセルロース化合物を含むキットが提供され、前記第一及び第二の成分は、それらの共同使用前の任意の時点で互いに組み合わせるためのものである。そのキットでは、真菌由来有効成分対ヘミセルロース化合物の比は、その組成物に関して開示されるのと原則的に同じように維持される。
【0070】
少なくとも1つのヘミセルロース化合物は、有利なことには、リグノセルロース系バイオマスから製造される。ヘミセルロース化合物は、木材又は非木材バイオマスのいずれか一方から製造され得る;それでも、場合によっては、木材由来バイオマスが好まれる。本発明の目的のために、リグノセルロース系バイオマスは、落葉樹/硬木(例えば、カバ、カバノキ属亜種)、針葉樹/軟木(トウヒ、トウヒ属亜種;マツ、マツ属亜種)及び/又はそれらの混合物から製造され得る。例示的な製造試験では、ヘミセルロース化合物は、カバとトウヒ、カバとマツ、トウヒとマツの混合物、及びカバとトウヒとマツの混合物から製造された。
【0071】
場合によっては、(単数若しくは複数の)ヘミセルロース化合物は、マンナン、キシラン及びそれらの任意の組み合わせを含む。マンナンポリサッカライドは、主にガラクトグルコマンナン(GGM)やグルコマンナン(GM)で表されるが、さらに、キシランは、主にグルクロノキシラン(GX)やグルクロノアラビノキシラン(GAX)で表される。我々は、キシランは典型的に硬木で生じるが、それに対して、軟木の主なヘミセルロースポリサッカライドが、言及されたグルコマンナン又はガラクトグルコマンナンであることに留意する。
【0072】
(単数若しくは複数の)ヘミセルロース化合物は、水蒸気抽出、熱水抽出などの好適な抽出法又は任意の他の適切な方法を用いて得ることができる。
場合によっては、該組成物は、ガラクツロン酸(galatouronic acid)及び/又はラムノースなどのペクチンをさらに含む。
【0073】
その組成物中の真菌由来生物活性産物の一部は、該組成物によって占められる総体積の、約10パーセント~約99.9パーセントの範囲内、いくつかの実施形態において、約50パーセント~約75パーセントの範囲内であり、その組成物は、原則的に液相、例えば、溶液又は懸濁液など、で提供される。場合によっては、その組成物の真菌由来活性産物の一部は、組成物によって占められる総体積の少なくとも25パーセントである。
【0074】
前記組成物であるヘミセルロース化合物の一部は、その組成物によって占められる総体積の約0.1パーセント~約75パーセントの範囲内、好ましくは約5パーセント~約50パーセントの範囲内で存在する。
【0075】
これにより、ヘミセルロース成分は、その組成物中の真菌由来生物活性産物の希釈媒質としての役割を果たす。ヘミセルロースに加えて又はヘミセルロースの代わりに、その組成物は、(単数若しくは複数の)リン酸及び/又は塩化物ベースのバッファー(PBS、MgCl)、水又は清潔な成長培地溶液などの他の何らかの希釈媒質を含む。
【0076】
ヘミセルロースは、乳濁液として優れた特性を有する。それらは、組成物の構造特性(例えば、均一性など)を高める。さらに、ヘミセルロースは、強い抗酸化性と長い保存期間を有する。実験的試みでは、ヘミセルロースが真菌由来生物活性産物の生物学的活性(ここでは、抗ウイルス性)を妨げないことを示した。実際には、ヘミセルロースは、前記抗ウイルス活性を支援し、そして、安定化させる。真菌由来生物活性産物がヘミセルロースにより(50:50の比で)半分に希釈された組成物は、その抗病害性/抗ウイルス活性を失わない(図9A)。
【0077】
CPE阻害アッセイを使用した、感染性因子(CVA9)に対する選択されたG.ルシダムサンプル(図9Aで言及された真菌サンプルはすべてMUS18、CBS147379である)の抗ウイルス活性に対するヘミセルロース化合物(HEM)の潜在的効果を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する図9Aを参照する。その試みでは、ヘミセルロース化合物とはカバ由来のヘミセルロースであり、及び感染性因子とはCVA9(感染力価1.6E+09PFU/ml)であった。試験サンプル及び対照は三連で試験され、そしてその値は平均±SEMとして表される。その結果は、それぞれ75:25、最大50:50のパーセント比でヘミセルロースと混合されたG.ルシダム由来産物を含む組成物が、良好な抗ウイルス活性を有し、かつ、(単数若しくは複数の)感染性因子に対して細胞を防護できることを示す。
【0078】
図9Bは、選択されたG.ルシダム由来サンプルが抗病害性活性をそれでも示す希釈閾値を測定することを目的とする実験的試みの結果を例示する。2mMのMgClを含有するPBSバッファーを用いた、選択されたG.ルシダムサンプル(菌株MUS18)の希釈系列が調製され、そして、細胞変性効果(CPE)阻害アッセイを使用して感染性因子(ここではCVA9)に対して試験された。感染性因子(CVA9ウイルス力価2×108PFU/ml及びMOI 100)が、連続希釈(10% v/v、1% v/v、0.1% v/v)された多くの真菌由来サンプルを用いて前処理されたことを除いて、本明細書で先に記載したのと同じ実験構成が利用された。細胞株A549が利用された。試験及び対照サンプルのそれぞれは三連で試験され、そして、その値は平均±SEMとして表される。その結果は、約10容積パーセントの真菌由来物質(残りは希釈バッファーである)を含む組成物が100%の細胞生存率を実証することを示す。より少量(例えば、1% v/v)でさえ、真菌由来活性産物は、その抗ウイルス活性(約75%の生存細胞をもたらす)、及びウイルス感染から細胞を防護するその能力を確実に実証する。
【0079】
図11A~11Fは、CPE阻害アッセイを使用した、感染性因子(CVA9)に対するG.ルシダムサンプル(MUS12、MUS15、MUS18及びMUS23)の抗ウイルス活性に対する、培養タンク又はバイオリアクター内の液体培地に加えられたヘミセルロース化合物の潜在的効果を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。すべての実験で、ヘミセルロース化合物は1.5%(v/v)の濃度で加えられた。以下の対照が利用された:ウイルスに感染させたが、試験サンプルで処理されなかった細胞を含む、陽性対照(「ctrl CVA9」で示される);ウイルスを伴わず、かつ、試験サンプルでの処理もない細胞を含む、陰性対照(「模擬感染」で示される);及びそのウイルスを用いて試験された成長培地のみを含む追加対照(「模擬サンプル」で示される)。
【0080】
図11A及び11Bは、ヘミセルロースの有無によるCVA9に対する、G.ルシダムサンプルの抗ウイルス活性を評価するための比較結果を示す。これにより、真菌菌株は、標準培地中(ヘミセルロースの添加なし;図11A)及びヘミセルロース化合物の添加を伴った標準培地中(1.5% v/v;硬木ヘミセルロース、すなわち、カバのキシランが利用された;図11B)で培養された。感染性因子とヘミセルロース化合物を含む混合物(ウイルス-化合物混合物)中の真菌由来産物の濃度は80% v/vであった。CVA9ウイルス力価は2×106PFU/mlであり、そしてMOIは1であった。サンプルは、37℃にて1時間インキュベートされた。結果は、平均±SEMとして表される。その結果は、ヘミセルロース化合物が真菌菌株の抗ウイルス活性を支援することを実証する。
図11C~11Fは、真菌由来産物と一緒のヘミセルロースの使用を伴う。
【0081】
図11Cは、CVA9に対するG.ルシダム菌株MUS18及びMUS23の抗ウイルス活性を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。真菌菌株は、ヘミセルロース化合物(1.5% v/v;カバのキシラン)が補われた標準培地中で培養された。感染性因子とヘミセルロース化合物を含有する混合物中の真菌由来産物の濃度は80% v/vであった。CVA9ウイルス力価は2×106PFU/mlであり、そしてMOIは1であった。サンプルは、37℃にて1時間インキュベートされた。試験及び対照サンプルのそれぞれは五連で試験され、そして、その値は平均±SEMとして表される。
【0082】
図11Dは、CVA9に対するG.ルシダム菌株MUS12、MUS18及びMUS23の抗ウイルス活性を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。この実験では、ヘミセルロース化合物は軟木ヘミセルロース(マツ及びトウヒから得られたヘミセルロース化合物の混合物)であり、1.5% v/vの量で成長培地中に加えられた。感染性因子とヘミセルロース化合物を含有する混合物中の真菌由来産物の濃度は80% v/vであった。CVA9ウイルス力価は2×106PFU/mlであり、そしてMOIは1であった。サンプルは、37℃にて1時間インキュベートされた。結果は、平均±SEMとして表される。
【0083】
図11Eは、CVA9に対するG.ルシダム菌株MUS12、MUS15、MUS18及びMUS23の抗ウイルス活性を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。ヘミセルロース化合物は、硬木ヘミセルロース(カバのキシラン)であり、1.5% v/vの量で成長培地中に加えられた。感染性因子とヘミセルロース化合物を含有する混合物(ウイルス-化合物混合物)中の真菌由来産物の濃度は80% v/vであった。CVA9ウイルス力価は2×106PFU/mlであり、そしてMOIは1であった。サンプルは、37℃にて1時間インキュベートされた。結果は、平均±SEMとして表される。
【0084】
図11Fは、CVA9に対するG.ルシダム菌株MUS12、MUS15、MUS18及びMUS23の抗ウイルス活性を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。ヘミセルロース化合物は軟木ヘミセルロース(マツ及びトウヒから得られたヘミセルロース化合物の混合物)であり、1.5% v/vの量で成長培地中に加えられた。感染性因子とヘミセルロース化合物を含有する混合物(ウイルス-化合物混合物)中の真菌由来産物の濃度は80% v/vであった。CVA9ウイルス力価は2×108PFU/mlであり、そしてMOIは100であった。サンプルは、37℃にて1時間インキュベートされた。結果は、平均±SEMとして表される。
【0085】
図11C~11Fの結果は、製造プロセスに加えられた硬木(カバ、図11C、11E)及び軟木(マツ-トウヒ、図11D、11F)の両方から得られたヘミセルロース化合物が、真菌由来産物の抗ウイルス活性とウイルス感染から細胞を防護するその能力を支援することを示す。
【0086】
ヘミセルロース化合物が真菌由来産物の抗ウイルス特性に対する安定化効果を有することは、図12A及び11Bに示された結果によってさらに実証される。
【0087】
図12A及び12Bは、CPE阻害アッセイを使用した、エンテロウイルスであるコクサッキーウイルス(coxackievirus)A9(CVA9)に対する、任意選択でヘミセルロース化合物の存在下での、選択されたG.ルシダムサンプルの抗ウイルス活性に対するインキュベーション期間と温度の効果を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。ヘミセルロースと混合されたときの真菌由来産物の安定性が、評価された。
【0088】
その試みでは、G.ルシダム菌株MUS12及びMUS18が、単独で、並びに硬木と軟木(通常、それぞれ「HEMカバ」と「HEMマツ-トウヒ」と示される)から得られたヘミセルロース化合物と共に、試験された。インキュベーション条件は、ヘミセルロースから潜在的に発生するいずれかの追加効果を検出するために、比較的低いレベルで真菌由来産物によって発現される抗ウイルス効果を保存するように選択された。これらの条件としては、例えば、2×106PFU/mlの高い感染力価と、任意選択で短いインキュベーション時間(1分間、rf.図12A)が挙げられる。
【0089】
真菌由来産物サンプル、ヘミセルロースサンプル、及びその混合物は、様々な温度レジュメ(室温と54℃)にて2週間にわたりプレインキュベートされた。感染性因子(CVA9)は、以下の処方箋:100マイクロリットルの総体積中、10%の真菌由来産物、25%のヘミセルロース化合物、及び緩衝溶液(PBS-MgCl)中のCVA9、に従って前記サンプルに混合された。
【0090】
その細胞(細胞株A549、ATCC)は、37℃にて24時間にわたり96ウェルプレート(12,000細胞/ウェル)上で培養された。2日目に、感染性因子(CVA9)と化合物(任意選択でヘミセルロースが補われた真菌由来産物)の混合物は、先に記載のように、好適なバッファー(例えば、PBS-MgCl)で調製され、そして、室温(RT)にて1分間及び15分間にわたりインキュベートされた。この混合物は、10%のDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)を使用して10倍に希釈され、そして、細胞に加えて、1の最終MOI値を達成した。細胞変性効果は、37℃にて2日間進展させた。したがって、48時間後に、細胞を、PBSで二回洗浄し、続いて、固定し、そして、CPE色素(0.03%のクリスタルバイオレット、2%のエタノール及び36.5%のホルムアルデヒド)を使用して10分間染色する。染色し、そして、水でウェルを洗浄した後に、細胞を、溶解バッファー(47.5%のエタノール中、0.8979gのクエン酸ナトリウム及び1NのHCl)を使用して溶解して、クリスタルバイオレットを溶出した。生存細胞の吸収度は、PerkinElmer VICTORTM X4多重標識リーダーを使用して570nmにて分光光度測定によって計測された。
【0091】
3μg/mLの量でエピガロカテキンガレート(EGCG)が、追加の陽性対照として使用された。
細胞が室温にて1分間の間、ウイルス-化合物混合物で処理された実験の結果は、図12Aに示されている。
【0092】
短いインキュベーション期間(1分間)の後に、真菌由来産物(10%)を単独で含有するサンプル、並びに硬木(HEMカバ)と軟木(HEMマツ-トウヒ)由来のヘミセルロースを含有するサンプルは、高い感染力価を有するCVA9感染に対する効果的な防護ができない。加えて、真菌由来産物単独、及びヘミセルロース化合物単独を含有するサンプルの結果は、違いを示さなかった。対照的に、真菌由来産物に添加されたヘミセルロース化合物は、ウイルス感染に対する高レベルの防護を実証した(概して「MUS18+HEM」で示されるサンプル群を参照のこと)。
【0093】
54℃にて2週間にわたりプレインキュベートされた真菌由来産物及びヘミセルロース化合物は、ウイルス感染に対して防護特性を有していない。しかしながら、54℃にて2週間にわたりプレインキュベートされた真菌由来産物とヘミセルロース化合物の混合物は、良好な抗ウイルス防護を実証した。
【0094】
1分の処理で得られた結果は、原料から新たに得たとき、様々なヘミセルロース種の間で統計学的に有意差は示さなかった。しかしながら、軟木ヘミセルロース種(マツ-トウヒ)は、室温(**=p<0.01)及び54℃(*=p<0.05)にて硬木ヘミセルロース種(カバ)に比べて、統計的に良好な結果を実証した。予想されるように、陽性対照は、培養細胞の高い生存率を実証し、その一方で、対照感染(ctrl CVA9)は、細胞の低い生存率を実証した。表示「ns」は「特異性なし」を表す。
【0095】
図12Bの結果は、真菌由来産物の抗ウイルス効果に対してヘミセルロースによって発揮された安定化効果が、ウイルスとのより長いインキュベーション期間(15分間)中でもまた維持されることを実証する。
【0096】
実験条件は、図12Aに関して記載したのと概ね同じであった。図12Bの結果は、真菌由来産物単独で室温にて既に有効であることが実証されている。しかしながら、54℃にて(2週間にわたり)前処理した真菌由来産物単独及びヘミセルロース種単独では、低い抗ウイルス効果を有した(サンプルMUS12 54℃、MUS18 54℃、HEMカバ 54℃及びHEMマツ-トウヒ54℃を参照のこと)。対照的に、真菌由来産物へのヘミセルロースの添加は、54℃処理後でさえ、ウイルス感染に対する優れた防護が実証された。本実験では、軟木(マツ-トウヒ)由来のヘミセルロース化合物は、54℃にて(*=p<0.05)硬木(カバ)由来のもの及び新たに使用したとき(**=p<0.01)に比べて、統計的に良好であるが、室温にて有意差がないことが実証されている。
【0097】
図12Cは、任意選択でヘミセルロースの存在下での、選択されたG.ルシダムサンプルの細胞毒性を評価することを目的とする実験的試みの結果を例示する。これらの結果は、真菌由来産物とヘミセルロースが細胞に対して細胞毒性を示さないことを示す。
【0098】
G.ルシダム菌株MUS12とMUS18由来の産物及び硬木(カバ)と軟木(マツ-トウヒ)由来のヘミセルロース化合物、並びにその組み合わせは、細胞に対して直接的に試験されて、様々な温度にて実施した処理後のそれらの潜在的細胞毒性を評価した。図12Cの結果は、そのサンプルのいずれもが細胞毒性でなかったことを実証する。
【0099】
図9A、11A~F及び12A~Bの結果は、ヘミセルロース化合物が、選択されたG.ルシダム菌株由来の生物活性産物の抗ウイルス活性を支援し、さらに、真菌由来産物に対する安定化効果を発揮し、これにより、得られた組成物を外用に特に好適である液体形態で安定させること、を明確に実証する。
【0100】
別の態様において、ヒト又は非ヒト動物対象における外用のための調製物が提供され、そして、前記調製物は、本明細書中で先に記載した実施形態によるガノデルマ・ルシダム真菌の選択された菌株から得られた生物活性化合物の混合物を含む組成物を含むか、又はそれらから成る。
【0101】
その組成物を構成する成分に加えて、その調製物は、溶媒、添加剤、保存料、増粘剤のうちの少なくとも1つ、又はそれらの組み合わせをさらに含む。その調製物は、原則的に液状(溶液、懸濁液)、半固形(乳濁液、クリーム)又は固形(例えば、棒状石鹸)で提供されてもよい。そのうえ、その調製物は、粉末、スプレー又はエアゾールとして提供されてもよい。粉末調製物は、さらに圧縮されて、装飾化粧品で使用されるアイテムを形成する。
【0102】
いくつかの好ましい構成において、その調製物は、スキンケア製品(クリーム、セラムなど)などの化粧品産物として、又は装飾化粧品アイテムとして提供される。(単数若しくは複数の) 言及した化粧品産物は、例えば、アンチエイジング機能性など、少なくとも1つの追加機能性を好ましくは付与する。
様々な構成において、その調製物は、皮膚又は非生物表面向けの消毒薬、洗浄剤、清浄剤などとして提供される。
【0103】
一態様において、本発明は、消毒、清浄及び/又は洗浄における前記組成物及び調製物のうちのいずれか一つの使用に関係する。よって、(非生物)表面及び物体を処理する際の、並びにヒト及び非ヒト動物対象の皮膚と毛髪の消毒のための、組成物及び/又は調製物の使用が提供される。いくつかの構成において、前記の組成物及び/又は調製物の使用は、特に、換気装置(air exchangers)及び/又は空調システムに使用されるものなどのエアフィルタを処理するために、空気清浄用途で提供される。
【0104】
別の態様において、本発明は、パーソナルケア製品及び/又はスキンケア製品の製造における前記組成物及び調製物のいずれか一つの使用に関係する。(単数若しくは複数の)パーソナルケア製品としては、これだけに限定されるものではないが、クレンジングパッド、コットンパッド、おしぼり及びウェットティッシュ、フェイシャルライナー、フェイスマスク、幼児ケア製品、病院向け繊維製品及び/又は個人使用線維製品などの繊維製品、個人使用向けのエアフィルタなどが挙げられる。
【0105】
更なる態様において、本発明は、ウイルス感染の蔓延の予防における、記載した実施形態による組成物及び/又は調製物の非治療的使用に関係する。
特に、その組成物及び関連調製物は、ピコルナウイルス科、コロナウイルス科、レオウイルス科及びフラビウイルス科のいずれかの一つの1若しくは複数のメンバーによって引き起こされるウイルス感染の蔓延を防止するのに有益である。図1~6及び9A、9Bを参照することによって説明されるとおり、真菌由来抽出物と、任意選択で(単数若しくは複数の)ヘミセルロース化合物を含む組成物は、様々なタイプのコクサッキーウイルス及びコロナウイルスに関連するSARS-CoV2に関する顕著な殺ウイルス活性が実証される。
【0106】
ピコルナウイルス(エンテロウイルスを含む)及びコロナウイルスに対する真菌由来のトリテルペノイド含有産物の機能の機構は、恐らく、そのウイルス粒子に対する前記産物の直接的な作用に基づいている。本明細書に開示された選択されたG.ルシダム菌株によって送り込まれるトリテルペノイドベースの化合物の一部は、いくつかの文献情報源によると、特徴的な部位又はウイルスプロテアーゼに共通の保存されたアミノ酸領域に対して作用し、それを通して阻害作用を発揮すると考えられる。本開示による真菌由来産物は、エンベロープウイルスと非エンベロープウイルスとの間の構造類似性に基づいてロタウイルスやフラビウイルスに対してもその殺ウイルス活性を発揮すると思われる。
【0107】
更なる態様において、ガノデルマ・ルシダム菌株が提供され、前記菌株は、受託番号CBS147377、CBS147378、CBS147379及びCBS147380としてブダペスト条約の規則の下で寄託された菌株から成る群から選択される。
より一層更なる態様において、受託番号CBS147377、CBS147378、CBS147379、CBS147380としてブダペスト条約の規則の下で寄託された単離ガノデルマ・ルシダム菌株のいずれか一つ、又はそれらの任意の組み合わせから得られる生物活性化合物の混合物を含む組成物の非治療的使用は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)によって引き起こされる感染の蔓延の予防において提供される。
【0108】
技術の進歩に伴って、本発明の基本概念が様々な方法で実施され、組み合わせられ得ることは、当業者にとって明白である。したがって、本発明及びその実施形態は、本明細書において先に記載した実施例に限定されることなく、特許請求の範囲内で概ね変化し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A-12B】
図12C
【国際調査報告】