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特表2024-507246車両のワイパーシステムのノイズキャンセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】車両のワイパーシステムのノイズキャンセル
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20240208BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B60R11/02 S
G10K11/178 100
G10K11/178 110
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550321
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2022054284
(87)【国際公開番号】W WO2022175535
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】2101681
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512092737
【氏名又は名称】ヴァレオ システム デシュヤージュ
【氏名又は名称原語表記】VALEO SYSTEMES D’ESSUYAGE
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】ヤツェク、デンブスキ
【テーマコード(参考)】
3D020
5D061
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BA11
3D020BB01
3D020BC01
3D020BE04
5D061FF02
(57)【要約】
本発明は、ワイパーシステムが車両の車室において発生させるノイズをキャンセルする方法に関する。前記方法は、ノイズキャンセル装置により実施されるとともに、ワイパーノイズに関するフィードフォワードデータを受信するステップ(401)を備える。このようなフェードフォワードデータは、ワイパーシステムの要素に配置されたセンサから、またはワイパーシステムのモータ動作を制御するECUから発せられ得る。本方法は、前記フィードフォワードデータに基づいて、かつ前記車室における前記ワイパーノイズの伝播モデルに基づいて、ノイズキャンセル制御信号を生成するステップ(403)と、前記ノイズキャンセル制御信号を前記車両のスピーカシステム(130)に送信するステップ(404)と、をさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパーシステム(110)が車両の車室において発生させるノイズをキャンセルする方法であって、前記方法はノイズキャンセル装置(101)により実施されるとともに、
‐ワイパーノイズに関するフィードフォワードデータを受信するステップ(401)と、
‐前記フィードフォワードデータに基づいて、かつ前記車室における前記ワイパーノイズの伝播モデルに基づいて、ノイズキャンセル制御信号を生成するステップ(403)と、
‐前記ノイズキャンセル制御信号を前記車両のスピーカシステム(130)に送信するステップ(404)と、
を備える方法。
【請求項2】
前記ワイパーシステム(110)は、アーム(114)とブレード(115)とモータ(112)とを備え、
アームノイズが前記アームおよび前記ブレードにより発生し、モータノイズが前記モータにより発生し、前記ワイパーノイズは、前記アームノイズおよび/またはモータノイズを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィードフォワードデータは、前記車両のフロントガラスに配置されたセンサ(121)からのアームノイズデータ、および/または前記モータに配置されたセンサ(122)からのモータノイズデータを備える、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィードフォワードデータは、前記ワイパーシステム(110)の前記モータ(112)の動作に関するデータを備え、前記モータ動作に関する前記データは、PWM情報を備える、
請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記フィードフォワードデータは、前記ワイパーシステム(110)の前記モータ(112)の動作に関するデータを備え、前記モータ動作に関する前記データは、
‐前記モータの角度位置、
‐前記モータの角速度、
‐前記モータの加速度、
‐前記アームの位置、
‐前記アームの角速度、
‐前記アームの角加速度、
‐反転ポイント情報、
‐PWM情報、
‐前記モータにより供給されるトルク、のうちの1つ以上の要素を備える、
請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ノイズキャンセル装置(101)は、
‐モータノイズを、モータ動作に関する前記データであって少なくとも前記PWM情報を備える前記データ、およびモータノイズモデルに基づいて決定する、および/または、
‐アームノイズを、モータ動作に関する前記データであって前記アームの角加速度、前記アームの角速度、および/または反転ポイント情報を備える前記データ、およびアームノイズモデルに基づいて決定する、
請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は繰り返され、
前記ノイズキャンセル装置(101)は、前記車両における前記ワイパーノイズの前記伝播モデルを少なくとも記憶し、
前記ノイズキャンセル装置は、前記フィードフォワードデータに基づいて、および/または前記車両の前記車室に配置されたセンサ(123)から受信したフィードバックデータに基づいて、記憶した前記モデルのうちの少なくとも1つを機械学習により更新する、
請求項1~6の一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記車両の前記車室に配置されたセンサ(123)からフィードバックデータを受信するステップ(405)をさらに備え、
前記ノイズキャンセル制御信号を生成するステップ(403)は、受信した前記フィードバックデータにさらに基づく、
請求項1~7の一項に記載の方法。
【請求項9】
ドライバーの耳(140)における残留ノイズが、前記フィードバックデータに基づいて、かつ前記車室における前記ワイパーノイズの前記伝播モデルに基づいて推定され、
前記ノイズキャンセル制御信号の生成は、前記残留ノイズにさらに基づく、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9の一項に記載の方法を実施するための命令であって、プロセッサ(301)により実行される命令を記憶するコンピュータプログラム記憶媒体。
【請求項11】
ノイズキャンセル装置(101)であって、
‐前記ノイズキャンセル装置を備える車両のワイパーシステムが発生させるノイズに関するフィードフォワードデータを受信するように構成される少なくとも1つのインターフェース(303;304)と、
‐前記車室における前記ワイパーノイズの伝播モデルを記憶するメモリ(302)と、
‐前記フィードフォワードデータおよび前記車室におけるワイパーノイズの前記伝播モデルに基づいて、ノイズキャンセル制御信号を生成するように構成されるプロセッサ(301)と、
‐前記ノイズキャンセル制御信号を前記車両のスピーカシステムに送信するように構成される別のインターフェース(308)と、
を備えるノイズキャンセル装置(101)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズキャンセルの技術分野に関する。特に、車両のワイパーにより発生するノイズのキャンセルに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
ワイパーノイズの低減は、特にノイズを回避する材料および機構の使用に関して、集中的な研究の対象である。
【0003】
しかしながら、通常必要とされる材料により、モータとアームとブレードとで構成されるワイパーシステムのコストが上昇する。
【0004】
米国特許US10235987号は、スピーカシステムを使用して車両における異なる音源からのノイズをキャンセルするためのシステムを開示している。しかし、この米国特許が開示するシステムは、ワイパーシステムが生じさせるノイズには特に適合しておらず、精度および反応性に欠ける。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、この状況を改善する。
【0006】
この目的のために、本発明の第1態様は、ワイパーシステムが車両の車室において発生させるノイズをキャンセルする方法であって、前記方法は、ノイズキャンセル装置により実施されるとともに、
‐ワイパーノイズに関するフィードフォワードデータを受信するステップと、
‐前記フィードフォワードデータに基づいて、かつ前記車室における前記ワイパーノイズの伝播モデルに基づいて、ノイズキャンセル制御信号を生成するステップと、
‐前記ノイズキャンセル制御信号を前記車両のスピーカシステムに送信するステップと、
を備える方法に関する。
【0007】
従来技術のシステムと比較して、ワイパーノイズに関するフィードフォワードデータを利用することにより、ワイパーノイズを検出する際により良好な反応性が得られるため、ノイズキャンセル制御信号を生成する際により良好な反応性が得られる。ワイパーノイズの伝播モデルを利用することにより、ノイズキャンセル制御信号のより良好な精度が得られる。また、既存のほとんどの車両はワイパーノイズのキャンセルに有用なデータを取得するように構成されたセンサを備えているため、反応性および制度の向上はソフトウェアソリューションの利用により可能である。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、ワイパーシステムは、アームとブレードとモータとを備え得る。アームノイズが、アームおよびブレードにより発生し得る。モータノイズが、モータにより発生し得る。ワイパーノイズは、前記アームノイズおよび/または前記モータノイズを含む。
【0009】
補足的に、フィードフォワードデータは、前記車両のフロントガラスに配置されたセンサからのアームノイズデータ、および/または、前記モータに配置されたセンサからのモータノイズデータを備え得る。
【0010】
ワイパーシステムに配置されたセンサを使用することにより、ワイパーシステムノイズの推定精度、ひいてはノイズキャンセル制御信号に関する精度が向上し得る。また、車室に配置されたセンサからフィードバックデータを受信する場合、ワイパーシステムが生じさせるノイズを他の音源/ノイズ源から効率的に識別することができる。
【0011】
代替的または補足的に、フィードフォワードデータは、ワイパーシステムのモータの動作に関するデータを備え得る。前記モータ動作に関する前記データは、以下の要素のうちの1つ以上を備える:
‐前記モータの角度位置、
‐前記モータの角速度、
‐前記モータの加速度、
‐前記アームの位置、
‐前記アームの角速度、
‐前記アームの角加速度、
‐反転ポイント情報、
‐PWM情報、
‐前記モータにより供給されるトルク。
【0012】
これにより、センサシステムに配置される音響センサを必要とすることなくワイパーシステムのノイズを推定することができるため、ノイズキャンセル制御信号の生成に関する反応性を向上させつつ、本方法に関するコストが低減される。
【0013】
補足的に、ノイズキャンセル装置は、
‐モータノイズを、モータ動作に関する前記データであって少なくとも前記PWM情報を備える前記データ、およびモータノイズモデルに基づいて決定し得る、および/または、
‐アームノイズを、モータ動作に関する前記データであって前記アームの角加速度、前記アームの角速度、および/または反転ポイント情報を備える前記データ、およびアームノイズモデルに基づいて決定し得る。
【0014】
これにより、モータ動作の関連パラメータを考慮することで、モータノイズおよび/またはアームノイズの決定に関する精度が向上し得る。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記方法は繰り返され得る。前記ノイズキャンセル装置は、前記車両における前記ワイパーノイズの前記伝播モデルを少なくとも記憶し得る。前記ノイズキャンセル装置は、前記フィードフォワードデータに基づいて、および/または前記車両の前記車室に配置されたセンサから受信したフィードバックデータに基づいて、記憶した前記モデルのうちの少なくとも1つを機械学習により更新し得る。
【0016】
機械学習を利用することにより、以下が可能になる。
‐ノイズキャンセル制御信号の生成精度が向上する。
‐ワイパーシステムの部品の経年劣化を考慮する。
‐ノイズキャンセル装置に記憶された所定のモデルを有する必要がなくなる。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、本方法は、前記車両の前記車室に配置されたセンサからフィードバックデータを受信するステップをさらに備え得る。前記ノイズキャンセル制御信号を生成するステップは、受信した前記フィードバックデータにさらに基づき得る。
【0018】
フィードフォワードデータに補足してフィードバックデータを利用することにより、本方法の精度が向上し得る。
【0019】
補足的に、ドライバーの耳における残留ノイズが、前記フィードバックデータに基づいて、かつ前記車室における前記ワイパーノイズの前記伝播モデルに基づいて推定され得る。前記ノイズキャンセル制御信号の生成は、前記残留ノイズにさらに基づき得る。
【0020】
ドライバーの耳に到達する残留ノイズを考慮することにより、本方法の精度が向上し得る。
【0021】
本発明の第2態様は、第1態様による前記方法を実施するための命令であって、プロセッサにより実行される命令を記憶するコンピュータプログラム記憶媒体に関する。
【0022】
本発明の第3態様は、ノイズキャンセル装置であって、
‐前記ノイズキャンセル装置を備える車両のワイパーシステムが発生させるノイズに関するフィードフォワードデータを受信するように構成される少なくとも1つのインターフェースと、
‐前記車室における前記ワイパーノイズの伝播モデルを記憶するメモリと、
‐前記フィードフォワードデータおよび前記車室におけるワイパーノイズの前記伝播モデルに基づいて、ノイズキャンセル制御信号を生成するように構成されるプロセッサと、
‐前記ノイズキャンセル制御信号を前記車両のスピーカシステムに送信するように構成される別のインターフェースと、
を備えるノイズキャンセル装置に関する。
【0023】
本発明の他の特徴および利点は、以下に詳述する説明、および添付図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明のいくつかの実施形態によるワイパーシステムのノイズをキャンセルするためのシステムを示す。
図2図2は、本発明のいくつかの実施形態による、ワイパーシステムとセンサ間の音響伝達関数を示す。
図3図3は、本発明のいくつかの実施形態によるノイズキャンセル装置の構造を示す。
図4図4は、本発明のいくつかの実施形態による方法のステップを備えるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、ワイパーシステム110のノイズをキャンセルするためのシステムを示す。
【0026】
システムは、ワイパーシステム110を備える車両に組み込まれ得る。
【0027】
一般的に、ワイパーシステム110は、以下のような複数の要素を備える。
‐第1モータ112。
‐選択的である第2モータ113。ワイパーシステムが第2モータ116を備える場合、第1モータ112はマスターモータであり得る一方で、第2モータ113はスレーブモータである。
‐第1モータ112を制御するように構成され、モータ動作に関するデータにアクセスする電子制御ユニット(以下ECU)111。
‐第1モータにより動作するアーム114。アームは、例えば軸を中心として回転し得る。
‐アーム114に取り付けられたブレード115であって、車両のフロントガラス116を清掃するように構成されたブレード115。
【0028】
アーム114とブレード115とは、第1モータ112または第2モータ113の負荷をともに形成する。
【0029】
ワイパーシステム110のいくつかの要素は、車両の運転快適性および/または車両の運転安全性を低下させ得るノイズを発生させる原因となり得る。以下において、第1モータ112が発生させるノイズ(以下モータノイズと称する)、およびフロントガラス116の清掃中にアーム114およびブレード115が発生させるノイズ(以下アームノイズと称する)を中心に説明する。しかしながら、本発明は、ワイパーシステム110の他の要素、例えば第2モータ113、または図1に示さないワイパー液ポンプが発生させるノイズの補償を包含する。
【0030】
ECU111は、モータ動作に関するデータ、特に以下のものにアクセスする。
‐PWM情報等の第1モータ112の電力供給情報。PWM情報は、モータの周波数および/またはデューティサイクルを備え得る。また、電力供給情報は、第1モータ112に給電する電源または駆動装置の電圧レベルまたは電流レベルを備え得る。第2モータ113についても、ECU111は同一情報にアクセスし得る。
‐第1モータ112の角度位置または角速度。第2モータ113についても、ECU111は同一情報にアクセスし得る。
‐第1モータ112が駆動するアーム115の位置。アーム115が第2モータ113により駆動される場合、同一情報にアクセスし得る。
‐反転ポイント情報。反転ポイントは、アームが到達する最端位置に対応する。したがって、アーム115の軌跡は、2つの反転ポイントを備える。ECUは、アーム115が反転ポイントの一方に到達したとき、これを検出し得る。
‐第1モータ113により供給されるトルク。および/または、
‐上述のトルクに基づいて、ECUは、雪、雨または埃の有無等の負荷に適用されるトルクに影響を及ぼすフロントガラスの表面に関する情報にアクセスすることもできる。
【0031】
本発明によるノイズキャンセルシステムは、ノイズキャンセル装置101を備える。ノイズキャンセル装置101は、ECU111から、および/または以下のセンサのうちの1つ以上から情報を受信するように構成されている。
‐ワイパーシステムに配置された第1センサ121であって、特にアーム114およびブレード115に、例えばフロントガラス116に配置された第1センサ121。第1センサ121は、特にブレード115とフロントガラス116との接触を理由としてアーム114およびブレード115が発生させる音響ノイズに関するデータを記録するように構成されている。この目的のために、第1センサ121は、マイクロホン、またはフロントガラス116の振動を検出するように構成された圧電システム等の振動センサであり得る。より一般的には、第1センサ121は、アーム114およびブレード115が発生させるノイズを、直接的または間接的に、車室の内部または倍部において検出することができる任意の技術を包含する。
‐ワイパーシステム110に配置された、特に第1モータ112に配置された第2センサ122。第2センサ122は、第1モータ112が発生させる音響ノイズに関するデータを記録するように構成されている。この目的のために、第2センサ122は、第1モータ112の近傍のマイクロホンであり得る、または、第1モータ112の振動を検出するように構成された振動センサであり得る。追加のセンサが、第2モータ113に配置され得るとともに、第2モータ113が発生させる音響ノイズに関するデータを記録するように構成され得る。
‐ドライバーが着席する車両の車室に配置される第3センサ123であって、車両の車室内で伝播するノイズおよび音を検出するように構成された第3センサ123。この目的のために、第3センサ123は、車室マイクロホンまたは車室マイクロホンアレイであり得る。
‐環境データを検出するように構成された第4センサ124。環境データは、速度センサにより直接的に検出され得る、または車両のモータの入力パワーに基づいて間接的に測定され得る車両の速度を包含し得る。代替的または補足的に、環境データは、雨検出データや雪検出データ等の気象学的データを包含し得る。さらに代替的または補足的に、環境データは、汚れの存在を示す汚れ指示データを包含し得る。汚れ指示データを検出するように、第4センサ124は、車両に装着されたフロントカメラであって、例えばフロントガラス116を介して車両の前方の道路に向けられたフロントカメラであり得る。
【0032】
ドライバーの耳140も、図1に示されている。耳140は、耳が位置する車室の所定の空間的位置における音およびノイズを検出するように配置されたマイクロホンと同化し得る。
【0033】
ノイズキャンセル装置101は、ノイズキャンセル制御信号を生成するとともに、ノイズキャンセル制御信号を車両のスピーカシステム130に送信するようにさらに構成されている。スピーカシステム130の技術、それが備えるスピーカの個数、および車両におけるスピーカのそれぞれの位置は、特に限定されない。
【0034】
ノイズキャンセル制御信号に基づいて、スピーカシステム130は、ノイズキャンセル音響信号を車両の車室に放送するように構成されている。スピーカシステム130は、ノイズキャンセル音響信号に加えて他の音を出力し得ることに留意されたい。例えば、スピーカシステム130は、音楽またはGPS音声アシストを出力し得る。本発明によれば、ノイズキャンセル音響信号の他に出力される音は、特に制限されない。
【0035】
以下にさらに説明するように、ノイズキャンセル音声信号により、第1モータ112が発生させるノイズ、および/またはアーム114およびブレード115が発生させるノイズを補償することができる。
【0036】
図2は、本発明のいくつかの実施形態による、ワイパーシステムとセンサ間の音響伝達関数を示す。
【0037】
よく知られているように、音響伝達関数は、音響源の位置、受信機および音響チャネル(ノイズ/音は、音響源で発生した後に音響チャネルを介して受信機に到達する)の位置に依存する。
【0038】
第1受信機を車両の車室に配置された第3センサ123としてみなして、3つの異なる音響源に関する3つの音響伝達関数を検討する。
【0039】
第1音響源は、動作中にノイズを発生させる第1モータ112である。第1音響関数201は、第1モータ112が発生させるモータノイズと第3センサ123が受信するモータノイズとの関係により規定される。
【0040】
第2音響源は、特にフロントガラス116との接触を理由としてノイズを発生させるアーム114およびブレード115である。第2音響関数202は、アーム114およびブレード115が発生させるアームノイズと第3センサ123が受信するアームノイズとの関係により規定される。第2音響源は周期的に移動しているため、第2音響関数202は周期的に変化するとみなす場合、より正確に記述されることに留意されたい。
【0041】
第3音響源は、本発明によるノイズキャンセル音響信号を出力するスピーカシステム130である。上述のように、スピーカ130は、ノイズキャンセル音響信号に加えて他の音を同時に出力し得る。第3音響関数203は、スピーカシステム130が出力する音響信号と第3センサ123が受信する対応する音響信号との関係により規定される。上述のように、スピーカシステム130は、複数のスピーカを備え得る。本例において、各スピーカは、特定のスピーカが出力する音響信号と第3センサ123が受信する対応する音響信号との関係を示す任意の第3音響関数に関連付けられる。
【0042】
上述のように、第3センサ123は、センサのアレイであり得る。本例において、3つの音響伝達関数が、アレイのセンサの各々に対して規定される。スピーカシステム130が複数のスピーカを備える場合、2+n個(nは、スピーカシステム130のスピーカの個数)の音響伝達関数が、アレイのセンサの各々に対して規定される。
【0043】
第1音響伝達関数、第2音響伝達関数、および第3音響伝達関数は、車室の形状、音源のそれぞれの位置、第3センサ123の位置、車室の材料、および他の要因に依存する。本発明のいくつかの実施形態によれば、音響伝達関数は、例えば車両製造業者により予め決定されて、後述するノイズキャンセル装置101のメモリ等のメモリに記憶されている。代替的に、第1音響伝達関数、第2音響伝達関数、および第3音響伝達関数は、車室の内部におけるワイパーシステムノイズの伝播モデル、および車室の内部でスピーカシステム130が出力するノイズキャンセル音響信号の伝播モデルに基づいて決定され得る。2つの別個のモデルが、ワイパーノイズ伝播に対して使用され得る。すなわち、一方はモータノイズ伝播に対しするものであり、他方はアームノイズ伝播に対するものである。これらのモデルは、予め決定してもよいし、機械学習を使用して決定してもよい。機械学習とは、3つの音源から発せられた実際の音響信号であって第3センサ123が受信した音響信号に基づいてモデルをトレーニングすることを意味する。これらのモデルにより、第3センサ123が受信した音響信号に基づいて、ドライバーの耳140に到達する音およびノイズを推測することができる。これらのモデルは、ノイズキャンセル装置101のメモリにも同様に記憶され得る。
【0044】
本発明による音響モデルは、メモリに記憶された一連のパラメータを備える顕在モデルだけでなく、機械学習のみにより構築された暗黙モデルの両方を包含する。例えば、第2音響伝達関数は、ECU111から取得したアーム114の位置に基づいて、かつ第3センサ123が取得したデータに基づいて、機械学習により決定され得る。本例において、本データに基づいて決定されるアームノイズのモデルは、暗黙的なものである。
【0045】
第1関数、第2関数、および第3関数が既知である場合、ノイズキャンセル装置101は、モータノイズ、アームノイズ、および/またはそれらそれぞれの音源が発生させるノイズキャンセル音響信号を、第3センサ123が受信する音響信号に基づいて推定することができる。以下にさらに説明するように、この情報をフィードバック情報として利用して、ノイズキャンセル装置101によるノイズキャンセル制御信号の生成に関する精度を向上させることができる。
【0046】
ここで、第2受信機が車両の車室に配置されたドライバーの耳140であるとみなして、3つの異なる音響源に関する別の一連の3つの音響伝達関数を検討する。
【0047】
第1音響源は、動作中にノイズを発生させる第1モータ112である。第4音響関数204は、第1モータ112が発生させるモータノイズとドライバーの耳140が受信するモータノイズとの関係により規定される。
【0048】
第2音響源は、アーム114およびブレード115である。第5音響関数205は、アーム114およびブレード115が発生させるアームノイズとドライバーの耳140が受信するアームノイズとの関係により規定される。第2音響伝達関数のように、第2音響源は周期的に移動しているため、第5音響関数205は周期的に変化するとみなす場合、より正確に記述されることに留意されたい。
【0049】
第3音響源は、本発明によるノイズキャンセル音響信号を出力するスピーカシステム130である。第6音響関数206は、スピーカシステム130が出力する音響信号とドライバーの耳140が受信する対応する音響信号との関係により規定される。上述のように、スピーカシステム130は、複数のスピーカを備え得る。本例において、各スピーカは、特定のスピーカが出力する音響信号とドライバーの耳140が受信する対応する音響信号との関係を示す任意の第6音響関数に関連付けられる。
【0050】
第4音響関数、第5音響関数、および第6音響関数は、例えば車両製造業者により予め決定され得るとともに、後述するノイズキャンセル装置101のメモリ等のメモリに記憶され得る。また、第4音響関数、第5音響関数、および第6音響関数は、車両の車室における音の伝播モデルに基づいて、第1音響関数、第2音響関数、および第3音響関数から導出され得る。これらのモデルは、予め決定してもよいし、機械学習を使用して決定してもよい。そして、第3センサ123が受信した音響信号を利用して、ドライバーの耳が受信する音響信号を計算するとともに、残留ノイズを計算することができる。これら音響信号および残留ノイズをノイズキャンセル装置101によるフィードバック情報として利用して、スピーカシステム130に送信されるノイズキャンセル制御信号の計算を向上させることができる。上述のように、車両におけるノイズの伝播モデルは、顕在的であっても暗黙的であってもよい。
【0051】
本発明によるノイズキャンセル装置101の目標は、ドライバーの耳140に到達する際のモータノイズおよび/またはアームノイズをキャンセルすることができるノイズキャンセル音響信号を正確かつ迅速に計算して生成することである。この目的のために、ノイズキャンセル音響信号は、周波数スペクトルおよび強度の点でモータノイズおよび/またはアームノイズに類似しているが、逆の位相を有する必要がある。
【0052】
ここで第3受信機が第2センサ122であるとみなすと、音響源は第2モータ112である。なぜならば、第2センサ122は、これに専用であるとともにこれに配置されているからである。第7音響伝達関数207は、第1モータ112が発生させるモータノイズと第2センサ122が受信するモータノイズとの関係により規定される。
【0053】
第7音響伝達関数207は、予め決定され得る。例えば、車両の製造業者により前もって決定され得るとともに、ノイズキャンセル装置101のメモリに記憶され得る。第2センサ122が第1モータ112に配置されているため、第7音響伝達関数207は、比較的シンプルである。
【0054】
第7音響伝達関数207により、第1モータが発生させるモータノイズを推定することができる。この情報をノイズキャンセル装置101が利用することで、ノイズキャンセル制御信号の計算を向上させることができる。
【0055】
ここで第4受信機が第1センサ121であるとみなすと、音響源はアーム114およびブレード115である。なぜならば、第1センサ121は、これらに専用であるとともにこれらに配置されているからである。第8音響伝達関数208は、アーム114およびブレード115が発生させるアームノイズと第1センサ121が受信するアームノイズとの関係により規定される。
【0056】
第8音響伝達関数208は、予め決定され得る。例えば、車両の製造業者により前もって決定され得るとともに、ノイズキャンセル装置101のメモリに記憶され得る。第1センサ121がアーム114およびブレード115に配置されているため、これを計算することは比較的シンプルである。
【0057】
第8音響伝達関数により、アーム114およびブレード115が発生させるアームノイズを推定することができる。この情報をノイズキャンセル装置101が利用することで、ノイズキャンセル制御信号の計算を向上させることができる。
【0058】
したがって、第1センサ122および/または第2センサ121が発する音響信号を、フィードフォワードデータとしてノイズキャンセル装置101が利用することで、ノイズキャンセル制御信号の生成に関する反応性を向上させることができる。
【0059】
また、第1センサ121および/または第2センサ122が取得した音響信号を、ノイズキャンセル装置101が利用して、車室に配置された第3センサ123から受信した音響信号におけるアームノイズとモータノイズとノイズキャンセル音響信号とを区別することができる。実際に、第1センサ121は、どの周波数または周波数スペクトルがモータノイズに対応するかを示し得る一方で、第2センサ122は、どの周波数または周波数スペクトルがアームノイズに対応するかを示し得る。
【0060】
したがって、第3センサ123からのフィードバックデータと第1センサ121および/または第2センサ122からのフィードフォワードデータとを組み合わせて利用することにより、ノイズキャンセル装置101によるノイズキャンセル制御信号の生成の精度および反応性を両者とも向上させることができる。
【0061】
第1センサ121および/または第2センサ122が収集したデータをフィードフォワードデータとして使用する代替例として、ECU111からの動作データに関するデータおよび以下のアームノイズのアームノイズモデルおよび/またはモータノイズのモータノイズモデルを、フィードフォワードデータとして使用することができる。
‐予め決定され得るか機械学習により決定され得るアームノイズのアームノイズモデル。アームノイズモデルにより、既に列記したECU111からのモータ動作に関するデータに基づいて、アームノイズを評価することができる。アームノイズは、アーム114の位置、速度および加速度に強く依存するため、これらのデータを考慮したアームノイズモデルによりアームノイズの推定に関する精度が向上することに留意されたい。アームノイズモデルは、ノイズキャンセル装置101のメモリに記憶され得る。また、アームノイズモデルは、第1センサ121が取得した音響信号に基づいて、そして選択的に第3センサ123からのフィードバックデータに基づいてトレーニングされ得る。代替的に、アームノイズモデルは、第1センサ121からデータを受信せずに、第3センサ123からのフィードバックデータおよびECU111からのデータのみに基づいて、機械学習により構築され得る。
‐予め決定されるか機械学習により決定され得るモータノイズのモータノイズモデル。モータノイズモデルにより、既に列記したECU111からのモータ動作に関するデータに基づいて、モータノイズを評価することができる。特に、PWM情報はモータノイズの評価に特に関する。したがって、PWM情報を考慮したモータノイズモデルにより、モータのノイズの推定に関する精度が向上する。モータノイズモデルは、ノイズキャンセル装置101のメモリに記憶され得る。また、モータノイズモデルは、第2センサ122が取得した音響信号に基づいて、そして選択的に第3センサ123からのフィードバックデータに基づいてトレーニングされ得る。代替的に、モータノイズモデルは、第2センサ122からデータを受信せずに、第3センサ123からのフィードバックデータおよびECU111からのデータのみに基づいて、機械学習により構築され得る。
【0062】
したがって、本発明による別の有利な組み合わせは、第3センサ123からのフィードバックデータとECU111からのフィードフォワードデータとを利用することである。ECU111からのフィードフォワードデータは、モータ動作に関するデータに対応する。これを、アームノイズモデルおよび/またはモータノイズモデルと組み合わせることにより、アームおよび/またはモータが発生させるノイズを推定することができる。特に、PWM情報により、モータノイズの周波数スペクトルを特定することができ、ひいては、第3センサ123から受信したフィードバック音響信号におけるモータノイズを特定することができる。
【0063】
本実施形態において、第1センサ121および第2センサ122は不要である。このことにより、完全にソフトウェアにおいてソリューションを実施することができるため有利である。なぜならば、ほとんどの車両は、第3センサ123等の車室センサ、およびフィードフォワードデータを提供できるECU111等のワイパーシステム用の駆動ユニットをすでに備えているからである。第3センサ123が車室マイクロホンアレイであるとき、マイクロホンアレイが車室の三次元スペースに配置されている場合に優先的に、第3センサ123は、マイクロホンアレイに対して実施される位相分析に基づいてアームノイズを分離し得る。第3センサ123は、本例において、アームノイズの検出という第1センサ121の役割を包含し得る。代替的に、第3センサは、車室における単一のマイクロホンであり、ノイズキャンセル装置101は、ノイズキャンセル制御信号を、第3センサ123からのデータおよびECU111からのフィードフォワードデータに基づいて生成する。
【0064】
図3は、本発明のいくつかの実施形態によるノイズキャンセル装置101の構成を示す。
【0065】
ノイズキャンセル装置101は、プロセッサ301とメモリ302とを備えている。メモリは、例えば、プロセッサ301が命令を実行する場合、図4を参照して後述する方法のステップを実施するための命令を記憶し得る。
【0066】
また、メモリ302は、上述のモデルおよび伝達関数のうちの1つ以上を記憶し得る。これらを以下に再度列記する。
‐第1伝達関数~第8伝達関数。
‐車室におけるアームノイズの伝播モデル。このモデルは、変化するアームの位置を考慮し得る。実際に、アームの位置は、それがフロントガラス116を清掃するにつれて周期的に変化する。アームの位置に、ECU111を介してアクセスできる。位置は、例えば、ECU111を介してアクセス可能な角度である。車室におけるアームノイズの伝播モデルは、前記角度に依存する。車室におけるアームノイズの伝播モデルは、前記アームの角速度および加速度も考慮し得る。
‐車室におけるモータノイズの伝播モデル。
‐車室のスピーカシステム130が発生させる音の伝播モデル。
‐モータ動作に関するデータに基づいてアームノイズを推定するためのアームノイズモデル。
‐モータ動作に関するデータに基づいてモータノイズを推定するためのモータノイズモデル。
‐車両の部品、例えばアーム114、ブレード115、第1モータ112、および/またはECU111等のワイパーシステムの部品の経年劣化を表す使用モデル。使用モデルは、車両のライフサイクル中に機械学習により継続的にトレーニングされ得るとともに、他のモデルの更新に使用され得る。例えば、ブレード115の経年劣化は、アームノイズモデルに影響を及ぼし得る。そして、アームノイズモデルは、使用モデルに基づいて更新され得る。
【0067】
上述のように、これらすべてのモデルおよび伝達関数は、予め決定され得るとともに固定され得る、または機械学習を用いて継続的に更新および改善され得る。特に、上述のモータノイズモデルは、機械学習に基づいて継続的にトレーニングされて、PWM情報に基づくモータノイズの決定が特に最適化され得る。
【0068】
ノイズキャンセル装置101は、
‐第1センサ121と通信するように構成された第1インターフェース303と、
‐第2センサ122と通信するように構成された第2インターフェース304と、
‐第3センサ123と通信するように構成された第3インターフェース305と、
‐第4センサ124と通信するように構成された第4インターフェース306と、
‐ECU111と通信するように構成された第5インターフェース307と、
‐スピーカシステム130と通信するように構成された第6インターフェース308であって、特に、プロセッサ301が生成したノイズキャンセル制御信号を、他のインターフェースが受信した情報に基づいて送信するように構成された第6インターフェース308と、
をさらに備え得る。
【0069】
ノイズキャンセル装置101は、本発明による上記の6個のインターフェースを必ずしも備える必要はないことを理解されたい。特に、本発明は、以下の実施形態を包含する。
‐ノイズキャンセル装置101が、モータノイズのみをキャンセルする。本例において、ノイズキャンセル装置101は、第1インターフェース303を備えなくてもよい。
‐ノイズキャンセル装置101が、アームノイズのみをキャンセルする。本例において、ノイズキャンセル装置は、第2インターフェース304を備えなくてもよい。
‐ノイズキャンセル装置101が、フィードフォワードデータのみを利用してノイズキャンセル制御信号を決定する。本例において、ノイズキャンセル装置101は、第3インターフェース305を備えなくてもよい。
‐ノイズキャンセル装置101が、ECU111からのフィードフォワードデータのみを利用してノイズキャンセル制御信号を決定する。本例において、ノイズキャンセル装置101は、第1インターフェース~第4インターフェースを備えなくてもよい。
‐ノイズキャンセル装置101が、第1センサ121および/または第2センサ122からのフィードフォワードデータのみを利用してノイズキャンセル制御信号を生成する。本例において、ノイズキャンセル装置101は、第3インターフェース305および第5インターフェース307を備えなくてもよい。
‐ノイズキャンセル装置101が、他の組み合わせのデータを利用する。この場合、第1インターフェース~第6インターフェースのすべてが不要である。
【0070】
図4は、本発明のいくつかの実施形態による方法のステップを示すフローチャートである。
【0071】
本発明による方法のステップは、すべてノイズキャンセル装置101により実施され得る。
【0072】
ステップ401において、ノイズキャンセル装置101は、ワイパーシステムが発生させるノイズに関するフィードフォワードデータを受信する。例えば、
‐第1センサ121からのアームノイズに関するフィードフォワードデータ、
‐第2センサ122からのモータノイズに関するフィードフォワードデータ、
‐第4センサ124からの環境データに関するフィードフォワードデータ。および/または、
‐ECU111からのモータ動作に関するフィードフォワードデータ。
【0073】
ステップ402において、ノイズキャンセル装置101は、ワイパーノイズに関するフィードフォワードデータに基づいて、ワイパーノイズを決定する。上述のように、ワイパーノイズは、アームノイズおよび/またはモータノイズを備え得る。
【0074】
フィードフォワードデータが第1センサ121および/または第2センサ122からのものである場合、ワイパーノイズは、フィードフォワードデータに直接的に基づいて、例えばメモリ302に記憶された第7音響伝達関数および第8音響伝達関数に基づいて推定される。
【0075】
フィードフォワードデータがECU111からのものである場合、ワイパーノイズは、アームノイズモデルまたはモータノイズモデルをモータ動作に関するデータに適用することにより推定される。
【0076】
ワイパーノイズを決定することにより、アームノイズおよび/またはモータノイズに関する周波数スペクトルを特定することも可能となる。これを利用して、車室に配置された第3センサ123からのフィードバックデータにおける異なるノイズや音を区別することができる。実際に、ノイズキャンセル音響信号に基づいてキャンセルすべきワイパーシステムのノイズを、車室内の他の音またはノイズから識別することが重要である。例えば、ドライバーや同乗者の話し声、車両のモータ、車両の内部または外部の他のノイズ/音等の、ワイパーシステムおよびスピーカシステム130以外の他のノイズ源が存在し得る。場合により、例えば警報やパトカーのサイレンのようにワイパーシステム以外の音源からのノイズをキャンセルしないことが安全上きわめて重要である。したがって、フィードフォワードデータは、本発明によれば、第3センサ123が取得したデータのどの部分がワイパーシステムに対応するかどうかを決定するために有利に利用される。
【0077】
ステップ403において、ノイズキャンセル装置101は、ステップ402で受信したフィードフォワードデータに基づいて、および車室におけるワイパーノイズの伝播モデル、例えば車室におけるアームノイズの伝播モデルおよび/またはモータノイズの伝播モデルに少なくとも基づいて、ノイズキャンセル制御信号を生成する。従来技術のシステムに比較して、フィードフォワードデータによりモータノイズおよび/またはアームノイズを検出する際の反応性が向上し得るとともに、ワイパーノイズの伝播モデルにより、ノイズキャンセル制御信号の精度が向上し得る。ノイズキャンセル装置101は、他のモデルおよび/または伝達関数を考慮し得る。これにより、ノイズキャンセル制御信号の生成におけるより高い精度が得られる。
【0078】
ステップ403は、後述するように、ステップ406からの他のフィードバックデータを考慮し得る。これにより、ノイズキャンセル制御信号の生成精度が向上し得る。
【0079】
ステップ404において、ステップ403で生成されたノイズキャンセル制御信号は、スピーカシステム130に第6インターフェース308を介して送信される。これにより、スピーカシステムは、ノイズキャンセル制御信号に基づいてノイズキャンセル音響信号を出力する。
【0080】
ステップ405において、ノイズキャンセル装置101は、第3センサ123からフィードバックデータを受信する。フィードバックデータに基づいて、ノイズキャンセル装置101は、異なる音/ノイズの音源を識別し得るとともに、モータノイズ、アームノイズ、および/またはスピーカシステム130が発したノイズキャンセル音響信号を分離し得る。フィードバックデータは、同乗者の会話、演奏される音楽等の他のノイズ/音の音源をも備え得る。ノイズキャンセル装置101は、3つの音源112、114および130と、ノイズキャンセル制御信号の生成に関係しない他の音響源とを区別するように構成されている。
【0081】
フィードバックデータに基づいて、ノイズキャンセルシステムは、ステップ406において、車室におけるアームノイズの伝播モデルに基づいて、または第1音響伝達関数~第6音響伝達関数に基づいて、ドライバーの耳140における残留ノイズを特定し得るとともに、それに応じてフィードバックループにおけるノイズキャンセル制御信号の生成を適合させ得る。
【0082】
上述のように、ノイズキャンセル装置101に記憶されて利用されるモデルは、固定されていてもよいし、機械学習を用いてステップ402およびステップ406からのデータに基づいて継続的にトレーニングさせてもよい。これにより、ノイズキャンセル制御信号を生成する際により良好な精度が得られる。機械学習ステップ407は、上述のステップ402およびステップ406の出力に基づいている。
【0083】
本発明は、例として上述した実施形態に限定されず、他の代替例にも及ぶ。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】