(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】自動車のモータ駆動式フラップ装置を駆動制御する方法
(51)【国際特許分類】
E05F 15/73 20150101AFI20240208BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240208BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240208BHJP
B60L 53/66 20190101ALI20240208BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240208BHJP
E05F 15/622 20150101ALN20240208BHJP
B60R 16/04 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
E05F15/73
B60L1/00 L
B60L58/12
B60L53/66
B60L53/14
E05F15/622
B60R16/04 S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550607
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2022054309
(87)【国際公開番号】W WO2022179999
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】102021104283.6
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508072408
【氏名又は名称】ブローゼ ファールツォイクタイレ エスエー ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト バンベルク
【氏名又は名称原語表記】BROSE FAHRZEUGTEILE SE & CO.KG,BAMBERG
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 1, 96052 Bamberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン シェーデル
【テーマコード(参考)】
2E052
5H125
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052BA07
2E052CA06
2E052DA07
2E052DB07
2E052EA09
2E052EB01
2E052EC01
2E052KA25
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125DD02
5H125EE27
5H125EE41
5H125EE70
(57)【要約】
本発明は、自動車(2)のモータ駆動式フラップ装置(1)を駆動制御する方法に関し、ここでは、フラップ装置(1)に対応付けられているモータ駆動式駆動装置(4)を駆動制御するための制御装置(3)と、制御装置(3)に接続された間隔センサ(5)と、が設けられており、間隔センサ(5)を用いて、自動車(2)のユーザ(B)によって行われるユーザアクションを識別するためにセンサ信号(S)を検出し、制御装置(3)を用いて、評価ルーチンにおいて、あらかじめ設定されたユーザアクションを識別するためにセンサ信号(S)を評価し、あらかじめ設定されたユーザアクションの識別に応じ、制御装置(3)を用いて駆動装置(4)を駆動制御する。エネルギ蓄積器の、自動車(2)外部の充電過程を表すあらかじめ設定された充電判定基準を満たす場合、センサ信号(S)の評価が、通常動作に適した評価から変更される、あらかじめ設定された充電モードにおいて、制御装置(3)を用いて評価ルーチンを行うことが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(2)のモータ駆動式フラップ装置(1)を駆動制御する方法であって、前記自動車には、中央の充電可能な電気エネルギ蓄積器が、好適には電気走行駆動装置を給電するために装備されており、前記フラップ装置(1)に対応付けられているモータ駆動式駆動装置(4)を駆動制御するための制御装置(3)と、前記制御装置(3)に接続された間隔センサ(5)と、が設けられており、前記間隔センサ(5)を用いて、前記自動車(2)のユーザ(B)によって行われるユーザアクションを識別するためにセンサ信号(S)を検出し、
前記制御装置(3)を用いて、評価ルーチンにおいて、あらかじめ設定されたユーザアクションを識別するために前記センサ信号(S)を評価し、あらかじめ設定された前記ユーザアクションの識別に応じ、前記制御装置(3)を用いて前記駆動装置(4)を駆動制御する、方法において、
前記エネルギ蓄積器の、前記自動車(2)外部の充電過程を表すあらかじめ設定された充電判定基準を満たす場合、前記センサ信号(S)の前記評価が、通常動作に適した評価から変更される、あらかじめ設定された充電モードにおいて、前記制御装置(3)を用いて前記評価ルーチンを行うことを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記評価ルーチンにおいて、妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられたフィルタを前記センサ信号(S)に適用して、前記充電モードにおける前記センサ信号(S)の前記評価を行い、好適には前記妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられた前記フィルタは、少なくとも1つの通常動作に適するように構成されるプリフィルタとの組み合わせで、特にカスケード接続され、かつ/またはプリフィルタを変更して構成されていることを特徴とする、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
あらかじめ設定された前記充電判定基準は、前記外部の充電過程が前記センサ信号に与える妨害的な影響の特徴的な時間経過を表し、前記制御装置(3)を用いて、前記センサ信号(S)の時間経過が、前記充電判定基準を満たすか否かについて監視することを特徴とする、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記充電判定基準には、前記センサ信号(S)の時間経過の振幅値を対象とする少なくとも1つのサブ判定基準および/または前記センサ信号(S)の時間経過の周波数値を対象とする少なくとも1つのサブ判定基準が含まれていることを特徴とする、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記振幅値を対象とするサブ判定基準は、前記センサ信号(S)の時間経過の特に移動平均に関係し、好適には、前記センサ信号(S)の時間経過の平均値が、あらかじめ設定された時間変位を上回ることによって前記サブ判定基準を定めることを特徴とする、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記制御装置(3)を用い、前記充電判定基準を満たす場合の前記センサ信号(S)の時間経過に依存して、妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられたフィルタの伝達関数をあらかじめ設定し、好適には前記センサ信号(S)の時間経過の振幅値および/または周波数値を対象とするサブ判定基準を満たすのに応じて前記伝達関数をあらかじめ設定する、
請求項2から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられたフィルタにより、前記センサ信号(S)の、前記ユーザアクションに特徴的な統計量、特に時間分散に依存して、前記センサ信号(S)に対する前記妨害的な影響を抑制し、好適にはあらかじめ設けられた前記フィルタにより、あらかじめ設定された閾値を下回る統計量、特に前記時間分散を有するセンサ信号(S)に対する前記妨害的な影響の抑制を行うことを特徴とする、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記評価ルーチンでは、あらかじめ設定された前記ユーザアクションが、あらかじめ設定された識別判定基準を満たすか否かについての識別するために前記センサ信号(S)を監視し、前記識別判定基準が満たされるのに応じ、あらかじめ設定された前記ユーザアクションが識別されたとみなし、通常動作に適した識別判定基準から、前記充電モードにおける前記識別判定基準を変更することを特徴とする、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記充電判定基準が満たされる場合、前記制御装置(3)を用い、前記センサ信号(S)の時間経過に基づいて前記充電過程を分類し、前記充電過程の前記分類に応じて、前記充電モードにおける前記センサ信号(S)の評価を変更し、好適には前記分類に応じて、妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられたフィルタを設定することを特徴とする、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記自動車(2)の制御装置、好適には中央自動車制御部を用い、前記制御装置(3)の前記外部の充電過程に伴って前記制御装置(3)に充電状態信号を伝送し、少なくとも部分的には、前記制御装置(3)に前記充電状態信号が存在することによって、前記充電判定基準を定めることを特徴とする、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
DC充電ステーション(6)を用いて前記外部の充電過程を行うことを特徴とする、
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記フラップ装置(1)のモータによる位置変更により、閉鎖位置と開放位置との間で前記フラップ装置(1)を移動させる、
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法を実施するための制御装置。
【請求項14】
フラップ(7)を備えたフラップ装置であって、
前記フラップ装置(1)は、駆動装置(4)と、請求項13記載の制御装置(3)と、を有する、
フラップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念記載の、自動車のモータ駆動式フラップ装置を駆動制御する方法と、請求項13記載の、このような方法を実施するための制御装置と、請求項14記載の、このような制御装置を備えたフラップ装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
問題のフラップ装置は、フラップを有する。フラップは、自動車の任意のロック要素であってよい。これには、テールゲート、トランクリッド、フロントボンネット、特にエンジンボンネット、ドア、特にサイドドアまたはテールゲートまたはこれらに類するものが含まれる。フラップは、旋回可能または長手方向スライド式に自動車ボディーに配置可能である。
【0003】
本発明が出発点としている公知の方法(独国特許出願公開第102017129151号明細書)では、フラップ装置の操作は、ユーザジェスチャの形態のあらかじめ設定されたユーザアクションによって行われる。ユーザジェスチャは、例えば、ユーザのあらかじめ設定された足の動作である。このために間隔センサを用いてユーザの運動が検出される。制御装置は、間隔センサを用いて検出したセンサ信号の評価を担当する。センサデータに基づいて、あらかじめ設定された足の運動が識別されるのに応じて、結果的にフラップ装置の駆動制御が、特に、対応付けられているフラップのモータ駆動の開放が行われる。
【0004】
基本的には、モータによる位置変更の誤ったトリガを回避するために、センサ信号の前処理を行うことができ、この前処理により、プリフィルタを介し、例えば周期的な妨害信号が低減される。ここで重要であるのは、ユーザアクションの識別に与える妨害的な影響を低減し、これにより、比較的強い妨害信号であっても、モータによる位置変更の意図しないトリガを生じさせてしまわないようにすることである。ここで関係するのは特に、無線送信器、例えば放送マストおよびこれに類するものの周囲における妨害信号であり、これらの動作は、間隔センサのセンサ信号に重大な影響を与える。
【0005】
しかしながら、課題であるのはさらに、特に電動車両の分野では、高性能の電子装置が使用されていることによって一般に、間隔センサへの妨害の影響が、さらなる動作妨害を生じさせてしまうことにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底にある課題は、ユーザアクションの識別の信頼性がさらに保証されるように公知の方法を構成して発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、請求項1の上位概念記載の方法において、請求項1の特徴部分の特徴的構成によって解決される。
【0008】
本発明の根底にある知識は、電動車両の分野では、電気走行駆動装置用に設けられたエネルギ蓄積器の充電過程の際に、間隔センサに重大な妨害の影響が発生してしまうことである。
【0009】
本質的であるのは、確かに基本的には誤ったトリガの危険性は、冒頭で上述したプリフィルタを適用することによって低減することできるという着想である。しかしながら、これに対し、特に、エネルギ蓄積器の高速充電用に設けられたDC充電ステーションでは、妨害の影響により、ユーザによって行われた操作アクションは、センサ信号によってもはや識別されないため、多くの状況においてもはやモータによる位置変更を確実にトリガできないということになる。
【0010】
詳細にいうと提案されるのは、エネルギ蓄積器の、自動車外部の充電過程を表すあらかじめ設定された充電判定基準が満たされる場合、センサ信号の評価が通常動作に適した評価から変更される、あらかじめ設定された充電モードにおいて、評価ルーチンを行うことである。
【0011】
これにより、提案した解決手段によれば、充電過程おける妨害の影響の作用を所期のように低減することができ、これにより、ユーザアクションの識別の信頼性が向上する。
【0012】
充電過程において、センサ信号に与える妨害的な影響に関して、評価を変更するためには、種々異なる変形形態が考えられる。請求項2記載の特に好ましい実施形態では、充電モードにおけるセンサ信号の評価は、評価ルーチンにおいて、妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられたフィルタのセンサ信号に適用して行われる。ここでこのフィルタは、充電過程の存在に応じて固有に構成可能であり、センサ信号の評価の充電モードによっていわばスイッチオンされてよい。ユーザアクションの識別は、このようなフィルタリングされたセンサ信号において行われる。
【0013】
請求項3記載の特に好ましい実施形態では、あらかじめ設定された充電判定基準は、外部の充電過程がセンサ信号に与える妨害的な影響の特徴的な時間経過を表し、制御装置を用いて、センサ信号の時間経過が、充電判定基準を満たすか否かについて監視するように構成される。この際に重要であるのは、エネルギ蓄積器の充電過程が、センサ信号の特徴的な時間経過それ自体において、例えば、充電ステーションによって引き起こされる、妨害信号またはこれに類するものの時間的なシーケンスにおいて識別できるという着想である。これに対応して、制御装置を用い、制御技術的手段により、充電過程が容易に識別可能である。
【0014】
請求項4および5は、特に振幅値および周波数値に関連付けられたサブ判定基準を含み得る、充電過程を識別するために構成されている好ましい実施形態に関する。
【0015】
請求項6記載の特に好ましい実施形態では、妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられるフィルタは、充電判定基準を満たす際のセンサ信号の時間経過に依存して設けられる。したがって、例えば、充電過程に特徴的な時間経過は、充電過程それ自体を識別するためにだけに利用されるのではなく、フィルタは、それぞれの充電過程の妨害的な影響に固有に適合可能である。特に動作安全性が高い変形形態は、請求項8に記載のように、充電過程の分類に基づいてフィルタを設定することである。
【0016】
請求項7記載の実施形態では、妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられるフィルタは、統計量、例えば分散等に依存してセンサ信号に対する妨害的な影響を抑制することができる。これにより、例えば、ユーザアクションの領域外において、センサ信号の時間経過を平滑化することができる。
【0017】
さらに、請求項8によると、有利な実施形態では、充電モードにおいて、評価ルーチンに使用される識別判定基準を変更し、これにより、ユーザアクションの確実な識別を保証する。識別判定基準の適合化は、充電モードにおける上述したフィルタの適用とは無関係に、またはこれに付加的に行うことができる。
【0018】
さらに、自動車の制御装置を介する、例えば充電ステーションとの通信を介する充電過程の識別も考えられ、このことは、請求項10記載の実施形態において考慮される。ここでは充電判定基準は、充電状態信号が存在することによって充電判定基準を定めることができる。
【0019】
請求項13記載の独立した重要な別の教示によると、提案した方法を実施するために構成されている上述した制御装置は、そのようなものとして特許請求される。提案した方法についてのすべての説明を参照されたい。
【0020】
請求項14記載の独立した重要な別の教示によると、提案した方法の実施の根底にある上述のフラップ装置が、そのようなものとして特許請求される。この点についても、提案した方法についての説明を参照されたい。
【0021】
以下では、ただ1つの実施例を示す図面に基づいて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】提案した方法を実施するための提案したフラップ装置を備えた自動車を示す図である。
【
図2】提案した方法による監視経過を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示した、自動車2のモータ駆動式フラップ装置1の動作に提案した方法は関する。自動車2には、中央の充電可能な電気エネルギ蓄積器が装備されており、この電気エネルギ蓄積器は、この図ではまた好適には、電気走行駆動装置に給電するために使用される。特に、自動車は、電動車両として、電気走行駆動装置だけを介して駆動される。
【0024】
制御装置3は、フラップ装置1に対応付けられているモータ駆動の、好適には電気駆動装置4の駆動制御に使用される。図示されかつこの点において好ましい実施例では、駆動装置4は、フラップ装置1の側方に配置されており、駆動装置は、この図ではまた好適にはスピンドル駆動部である。
【0025】
制御装置3には間隔センサ5が接続されている。間隔センサ5を用いて、自動車2のユーザBによって行われるユーザアクションを識別するためにセンサ信号Sが検出される。この実施例ではまた好適には、間隔センサ5は、容量式間隔センサである。このような容量式間隔センサは好適には、例えば自動車2の横方向に延在する少なくとも1つの電極を有する。検出されたセンサ信号Sは、この実施例では、間隔センサ5とユーザBとの、容量式の測定に基づく間隔情報を表しており、ここではセンサ信号Sにより、好適には間隔の定量化が可能になる。この実施例では、間隔センサ5を用いて、自動車2のユーザBによって行われるユーザの運動が識別可能である。容量式センサの他に、間隔情報を算出するための別のセンサ、例えばレーダセンサまたはこれに類するものが考えられる。
【0026】
評価ルーチンでは、制御装置3を用いて、あらかじめ設定されたユーザアクションを識別するためにセンサ信号Sが評価される。あらかじめ設定されたユーザアクションは好適には、
図1に示したように、あらかじめ設定されたユーザジェスチャG、この実施例ではユーザBの身体部分を用いたユーザの運動である。好適には、あらかじめ設定されたユーザジェスチャGは、ユーザBの足の運動、特にキック運動である。図示しない実施形態によると、ユーザアクションは、自動車2のドアグリップの領域において行われることも可能であり、間隔センサ5は、ドアグリップまたはドアグリップの領域に設けられる。ユーザアクションは、例えば、ドアグリップへのユーザBの手の接近、またはあらかじめ設定されたユーザジェスチャ、例えばワイプ運動またはこれに類するものであってもよい。
【0027】
ユーザアクション、この実施例ではユーザジェスチャGを識別するために、ユーザアクション判定基準を設けることができる。評価ルーチンでは、この実施例においては制御装置3を用いて、センサ信号Sが、ユーザジェスチャ判定基準を満たしているか否かがチェックされる。チェックの結果に応じて、例えば、検出されたユーザアクションが、無効として棄却されるか、または有効なユーザアクションとして判定される。最初に挙げたケースでは、駆動装置4の駆動制御は結果的に行われない。次に挙げたケースでは、制御装置3を用いて駆動装置4が駆動制御され、これにより、この実施例では、フラップ装置1のモータによる位置変更が行われる。
【0028】
ここで重要であるのは、エネルギ蓄積器の、自動車2外部の充電過程を表すあらかじめ設定された充電判定基準を満たす場合、センサ信号Sの評価が通常動作に適した評価から変更される、あらかじめ設定された充電モードにおいて、評価ルーチンを行うことである。
【0029】
評価を変更するによって充電モードでは、ユーザアクションは同様に、引き続いて高い信頼性で識別されるようになる。誤ったトリガを抑制するためのプリフィルタのような手段とは異なり、この実施例では、評価ルーチンが変更され、これにより、妨害的な影響にもかかわらず、同様に高い識別確率を維持できる。
【0030】
外部の充電過程とは、少なくとも一部が、自動車2外部の充電装置を介し、この実施例では、自動車2に接続されている充電ステーション6によって行われる充電過程のことと理解される。
【0031】
充電モードにおけるセンサ信号Sの評価は好適には、評価ルーチンにおいて、妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられたフィルタをセンサ信号Sに適用して行われる。この際、あらかじめ設けられたフィルタは、充電過程における識別確率の改善についての要求に固有に適合可能である。
【0032】
この実施例ではまた好適には、あらかじめ設定された充電判定基準は、外部の充電過程がセンサ信号Sに与える妨害的な影響の特徴的な時間経過を表すように、また制御装置3を用いて、センサ信号Sの時間経過が、充電判定基準を満たすか否かについて監視されるように構成される。
【0033】
ここで、時間経過とは、時間的に連続する複数のセンサ信号Sのシーケンスと理解される。したがって、充電判定基準の監視にはセンサ信号Sの瞬時値だけが含まれるのではない。外部の充電過程の開始に伴うセンサ信号Sの例示的な時間経過は、
図2に示されている。
【0034】
この図では、外部の充電過程の妨害的な影響の特徴的な時間経過は、充電ステーション6の動作に起因し、例えば、充電ステーション6のタイプに応じ、かつ充電ステーション6と間隔センサ5との相対的な配置に依存して変化し得る。妨害的な影響は、場合によってはもっぱら、充電ステーション6のパワーエレクトロニクスの動作と、またこれによって生じる、間隔センサ5に作用する妨害放射とに起因し得る。外部の充電過程と、間隔センサ5のセンサ信号Sと、の相互作用については別の原因も考えられる。
【0035】
図2に示したセンサ信号Sの時間経過では、時点t
0に充電ステーション6を介する駆動制御が始まり、この駆動制御は、時点t
1までの充電過程の初期化ステップにより、センサ信号Sに明らかな妨害的な影響を生じさせ、この妨害的な影響は、センサ信号Sの振幅の大きな変動によって識別可能である。これには、妨害的な影響の小さいt
1~t
2の期間が続く。最終的には時点t
2以降、実際の充電過程が始まり、この充電過程により、ここでもセンサ信号Sの振幅の大きな変動が発生する。
【0036】
既に述べたように、これは、充電ステーション6において観察され得るようなセンサ信号Sの例示的な経過である。時間経過の別の特徴も考えられる。しかしながら、
図2から明らかであるのは、センサ信号Sの瞬時値が確かに充電過程において変動を有し得るが、この変動は、例えば放送送信機等のような別の妨害的な影響においても類似の形状で生じ得ることである。しかしながら、ここにおいて充電過程の初期化の際のこの時間経過は、充電過程が開始されたことについて特徴的である。
【0037】
さらに
図2には、妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられたフィルタによってフィルタリングされたセンサ信号S’の時間経過も示されている。ここでは、操作アクションによって観察されるセンサ信号Sを実質的に変更することなく、妨害的な影響を大幅に抑制することが関心の的である。好適には、妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設定されたフィルタは、少なくとも1つの通常動作に適するように構成されるプリフィルタとの組み合わせで、特にカスケード接続されて構成されている。このフィルタは、例えば充電モードにおいてプリフィルタに従属していてよい。プリフィルタには、様々な変形形態、例えばローパス、ハイパスおよびこれらの組み合わせならびに特に適応型(ノイズ)フィルタが考えられる。誤ったトリガを抑制するために設けられるプリフィルタ、例えば、適応型ノイズフィルタは、放送信号を抑制するために、充電モードにおいて変更されるかまたはスイッチオフされることも考えられる。
【0038】
充電判定基準には好適には、センサ信号Sの時間経過の振幅値を対象とする少なくとも1つのサブ判定基準および/またはセンサ信号Sの時間経過の周波数値を対象とする少なくとも1つのサブ判定基準が含まれている。したがって、
図2の例示的な時間経過では、この図に存在する特徴的な妨害的な影響は、例えば、振幅についての大きな変動(t
0~t
1)、わずかな変動(t
1~t
2)、大きな変動(t
2以降)の時間的な並びを介して、かつ/または対応する周波数領域における並びを介して、容易に検出可能である。
【0039】
別の実施形態によると、振幅値を対象とするサブ判定基準は、センサ信号Sの時間経過の特に移動平均に関係する。ここでは、外部の充電過程の妨害的な影響に応じて、様々な変形形態が考えられる。
図2に示した時間経過では、例えば、振幅値の平均値の時間変位が観察される。この図では、充電過程の前(t
0の前)の平均値、特に移動算術平均μ
0は、充電過程の開始以降(t
2以降)の平均値μ
1と明らかに異なっており、このことはここでも、充電過程に特徴的な妨害な影響に起因し得るものである。好適にはこのサブ判定基準は、センサ信号Sの時間経過の平均値が、あらかじめ設定された時間変位を上回ることによって定めることができる。
【0040】
特に好ましい別の1つの実施形態によると、妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられたフィルタの伝達関数は、制御装置3を用い、充電判定基準を満たす場合のセンサ信号Sの時間経過に依存してあらかじめ設定可能である。この際に考えられるのは、あらかじめ設定された複数のフィルタの構成を制御装置3に格納し、充電モードに対し、観察される時間経過に応じて1つまたは複数のフィルタを選択することである。好適には、特に容易に実施可能な実施形態において、センサ信号Sの時間経過の振幅値および/または周波数値を対象とするサブ判定基準を満たすのに応じて伝達関数をあらかじめ設定する。
【0041】
妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられたフィルタには特に、帯域フィルタおよび/または非線形フィルタが含まれていてよい。例えば、帯域フィルタの周波数特性は、周波数値に関係するサブ判定基準を満たすのに応じて設定される。
【0042】
あらかじめ設けられたフィルタにより、センサ信号Sの、ユーザアクションに特徴的な統計量、特に時間分散、標準偏差またはこれに類するものに依存して、センサ信号Sに対する妨害的な影響を抑制することができる。ここでは、あらかじめ設けられたフィルタにより、あらかじめ設定された閾値を下回る統計量、特に時間分散を有するセンサ信号Sに対して、妨害的な影響の抑制が行われる。例えば、
図2に示したように、わずかな分散を有するセンサ信号Sが平滑化されるのに対し、閾値を上回る分散を有するセンサ信号Sは、わずかに減衰されるかまたは減衰されない。
図2には、例示的に時点t
3において、ユーザアクションに起因するセンサ信号Sの経過が示されている。例えば、期間t
0~t
1に発生する分散が使用され、これにより、妨害的な影響の後続の抑制に適切な、分散についての閾値が決定される。さらに、閾値を上回る統計量を有するセンサ信号Sに対し、別のフィルタ、例えば1つまたは複数のローパスフィルタを設けることが考えられる。
【0043】
既に上述したように、評価ルーチンでは、あらかじめ設定されたユーザアクションが、ここでユーザアクション判定基準を含むあらかじめ設定された識別判定基準を満たすか否かについて識別するためにセンサ信号Sが監視される。識別判定基準が満たされるのに応じて、あらかじめ設定されたユーザアクションが識別されたとみなされる。別の実施形態によると、妨害的な影響を抑制するために、通常動作に適した識別判定基準から、充電モードにおける識別判定基準を変更するように構成される。この実施形態ではこれによると、ユーザアクションの識別は、充電過程における境界条件に適合され、これにより、高い識別確率が保証される。
【0044】
別の有利な実施形態によると、充電判定基準が満たされる場合、制御装置3を用い、センサ信号Sの時間経過に基づいて充電過程を分類する。例えば、充電過程の異なるクラスの、例えば、充電ステーション6の異なるタイプの構成を設定し、制御装置3により、現在の充電過程をクラスの1つに分類する。充電過程の分類に依存して、充電モードにおけるセンサ信号Sの評価を変更する。好適には、分類に応じて、妨害的な影響を抑制するためにあらかじめ設けられたフィルタを設定する。この実施例ではまたは好適には、様々なクラスに対して異なるフィルタタイプが構成され、これにより、フィルタは、例えば、充電ステーション6のそれぞれのタイプに固有に形成可能である。
【0045】
本明細書に示していない別の実施形態によると、自動車2の制御装置、好適には中央自動車制御部を用い、外部の充電過程に伴って制御装置3に充電状態信号を伝送する。制御装置は、例えば、充電過程を識別するために、充電ステーション6と通信可能である。同様に、制御装置は、自動車2の充電装置および/またはエネルギ蓄積器の充電状態の動作に基づいて充電過程を推定することができる。ここでは充電状態信号は、自動車2のローカルな通信ネットワーク、好適にはLINバスを介して、制御装置3に伝送される。好適には、少なくとも部分的には、制御装置3に充電状態信号が存在することによって充電判定基準を定める。これにより、1つの実施形態では、制御装置によって充電モードをトリガすることができる。
【0046】
センサ信号Sの時間経過に基づく充電過程の識別は、充電状態信号を介して妥当性検査を行うことも可能である。例えば、センサ信号Sの時間経過に基づく充電過程の識別に加えて充電状態信号が存在する場合にのみ、充電モードになる。例えば、充電判定基準が満たされる場合、制御装置3を用いて充電状態信号を問い合わすことも可能である。
【0047】
しかしながら、択一的な別の実施形態によると、提案した方法は、このような充電状態信号なしに行われ、これにより、制御装置3は、センサ信号Sに基づき、それ自体で充電過程を識別する。これにより、自動車2の制御装置および通信ネットワークの適合化を省略することができる。
【0048】
外部の充電過程は、この実施例ではまた好適には、妨害的な影響が特に重大であることが明らかになっているDC充電ステーションを用いて行われる。DC充電ステーション用いて、特に、例えば22kWを上回る電力で、エネルギ蓄積器の高速充電が行われる。しかしながらAC充電ステーションを用いた充電過程も同様に考えられる。
【0049】
この実施例ではまた好適には、フラップ装置1のモータによる位置変更により、
図1に示した閉鎖位置と、図示しない開放位置と、の間でフラップ装置1を移動させる。ここでは、フラップ7の駆動装置は、フラップ装置1に対応付けられる。フラップ7の考えられる実施形態については、冒頭の説明を参照されたい。ユーザジェスチャの識別に応じて、フラップ装置1の別の要素をモータ駆動で調整することも同様に考えられる。これについての実施例は、例えばフレームレスウィンドウううんガラスに対する、フラップ7を開放する際のウィンドウガラスの位置変更であり、ここではこのような位置変更は、ドアグリップ内またはドアグリップにおける間隔センサ5によってトリガされる。
【0050】
独立して重要な別の教示によると、提案した方法を実施するように構成されている制御装置3は、そのようなものとして特許請求される。特に好ましくは実施形態では、提案した方法を実施するように設計されているソフトウェアが、制御装置3上で動作する。提案した方法についてのすべての説明を参照されたい。
【0051】
同様に独立して重要な別の教示によると、フラップ装置1が、そのようなものとして特許請求され、フラップ装置1は、好適にはフラップ7に対応付けられた駆動装置4と、提案した制御装置3と、を有する。この点についても、提案した方法についてのすべての説明を参照されたい。
【国際調査報告】