(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ヒドロゲル組成物、ならびに放射線によって引き起こされる皮膚損傷の予防および/または処置におけるその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/498 20060101AFI20240208BHJP
A61P 9/02 20060101ALI20240208BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240208BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240208BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240208BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240208BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240208BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240208BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20240208BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240208BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240208BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240208BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240208BHJP
【FI】
A61K31/498
A61P9/02
A61P17/00
A61P29/00
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/08
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/42
A61K47/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550646
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2022054037
(87)【国際公開番号】W WO2022175428
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523316482
【氏名又は名称】タリアン・ファーマ
【氏名又は名称原語表記】TARIAN PHARMA
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ウィンクル,ガレス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】チェルニエレフスキー,ヤヌシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA07
4C076AA09
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC11
4C076CC18
4C076DD08E
4C076DD09E
4C076DD37
4C076DD37S
4C076DD38
4C076DD40S
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4C076DD46E
4C076DD55
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4C076DD59S
4C076EE06
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE30P
4C076EE32P
4C076EE41S
4C076EE45
4C076EE48
4C076FF15
4C076FF29
4C076FF51
4C086AA01
4C086BC52
4C086GA07
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA41
4C086ZA89
4C086ZB11
(57)【要約】
本発明は、局所投与に適した形態で、水性であり、血管収縮剤を含む組成物に関する。本発明は、組成物が、プロピレングリコールおよび/またはジメチルスルホキシド(DMSO)と組み合わせたポリエチレングリコール;単独でまたは組み合わせて利用されるポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、非架橋、架橋または酢酸形態のポリビニルピロリドンから選択される親水性膜形成剤;グリセリンを含む溶媒系相中のブリモニジンまたはその塩から選択される血管収縮剤を含み;ヒドロゲルの形態であることを特徴とする。本発明は、医薬としての、より詳細には放射線に起因する皮膚炎の予防および/または処置における、特に放射線療法による処置の文脈におけるその使用のための組成物にも関する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所投与に適した形態で、水性であり、血管収縮剤を含む組成物であって、前記血管収縮剤が、
プロピレングリコールおよび/またはジメチルスルホキシド(DMSO)と組み合わせたポリエチレングリコールと、
ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、非架橋、架橋または酢酸形態のポリビニルピロリドンから選択される親水性膜形成剤と、
グリセリンと
を含む溶媒系相中のブリモニジンまたはその塩から選択されることを特徴とし、且つ
前記組成物がヒドロゲルの形態であることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
親水性膜形成剤として、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
単独でまたは組み合わせて、キサンタンガムおよびヒドロキシエチルセルロース(HEC)から選択されるゲル形成剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
天然もしくは合成の抗酸化剤、またはフリーラジカル捕捉剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
抗酸化剤が、単独でまたは混合物として、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、DL-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、プロピオンアルデヒド、パルミチン酸塩、アスコルビン酸塩またはグルタチオンから選択され、好ましくはBHAおよび/またはDL-トコフェロールから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗酸化剤を、組成物の総重量の0.1重量%から4.0重量%、好ましくは0.1%から1.0%w/wの濃度で含むことを特徴とする、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
抗酸化剤を含み、ポリソルベートおよび/またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40をさらに含有することを特徴とする、請求項4~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ブリモニジンまたはその塩を、組成物の総重量の0.15重量%から3.00重量%、好ましくは0.50%から2.50%w/w、より好ましくは0.75%から1.50%w/w、さらにより好ましくは1.00%または1.50%w/wの濃度で含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ブリモニジン塩が、酒石酸ブリモニジンであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
プロピレングリコールを組成物の総重量の20重量%の濃度で組み合わせて、ポリエチレングリコールを組成物の総重量の10重量%の濃度で含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
単独でまたは組み合わせてオレイルアルコールおよびビタミンEを含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
医薬としての使用のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
放射線によって引き起こされる皮膚炎の予防および/または処置のため、特に放射線療法による処置内での、請求項12に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所投与(topical administration)に適した形態の医薬組成物の分野に関する。本発明は、より詳細には、血管収縮剤、例えばブリモニジンまたはその塩を含む医薬組成物、ならびに医薬としての、より詳細には皮膚に対する放射線損傷の予防および/または処置における使用のための組成物に関する。
【0002】
皮膚損傷を与え得る放射線の種類として、日焼けの原因となり得るUVAおよびUVBを含む紫外線(UV)、可視領域の光線、赤外放射線(IR)、電離放射線、例えばX線およびα、βまたはγ線、ならびに陽子からなる放射線が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
組織への放射線曝露の初期影響の一つは、皮膚の血管拡張および発赤を引き起こす炎症応答である紅斑である。この反応は、UVへの曝露の約6~8時間後に見られ、36~48時間後に消失する。
【0004】
顔に対する選択性の高いα2-アドレナリン受容体アゴニストの皮膚適用は、直接的な皮膚の血管収縮によって紅斑を低減させることが知られている。皮膚の血管収縮の主な特徴は、真皮の細動脈および小血管の直径を減少させることによって、血流の即時減少をもたらし、特に皮膚の色の減少として生じる蒼白である。
【0005】
MIRVASO(登録商標)ゲル(0.5%w/w酒石酸ブリモニジン)は、成人の酒さに関連する顔面紅斑の対処療法に適応されている。酒石酸ブリモニジンに加え、このゲルは、カルボマーホモポリマータイプB、グリセリン、メチルパラベン、フェノキシエタノール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、二酸化チタンおよび精製水を含む。
【0006】
ブリモニジンは、特に選択性の高いα2-アドレナリン受容体アゴニストとして知られている。ブリモニジンは、α1-アドレナリン受容体よりもα2-アドレナリン受容体に対して1000倍超の選択性を有している。
【0007】
ブリモニジンは、酒さ性ざ瘡によって引き起こされる紅斑の処置に有用であることが示されており、他の皮膚障害に対しても提案されている。例えば米国特許出願第10/853585号、米国特許出願第10/626037号および米国特許出願第12/193098号を参照されたい。
【0008】
米国特許出願公開第2020/121675号明細書には、酒さの処置のために、0.3%ブリモニジン、1%ベンジルアルコール、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、カルボマーホモポリマータイプB、エデト酸二ナトリウム、ヘキシレングリコール、ポロキサマー407、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート40、精製水およびトロメタミンを含むゲル製剤が記載されている。
【0009】
治療目的で設計された局所製剤は、通常、活性剤および賦形剤からなる。製剤化の際、賦形剤の選択は、ガレノス形態の安定性およびそのテクスチャのため、局所耐容性(local tolerance)および患者コンプライアンスのために、活性剤を可溶性にし、その皮膚透過性(skin penetration)を最適化することによって薬物の有効性を保証するのに必要なものである。これらの個々の要素それぞれの最適化と同様に、肝要な因子の最適なバランスを特定して、患者、医療専門家および規制者などのニーズを満たす製品を供給することは、複雑かつ相補的な問題である。
【0010】
ブリモニジン(酒石酸塩)は、局所投与に適した化学的安定性と様々な製剤の選択肢を提供する溶解度プロファイルを示す。
【0011】
一方、塩を含むイオン化活性剤は、角質層(脂質から主になるバリア)を迅速に透過しにくいため、活性剤の放出および皮膚リザーバーを形成することは、通常、困難である。また、このような活性剤は、その水への溶解度により生体組織から急速に除去される傾向がある。
【0012】
実際、ブリモニジンは、親水性分子であるため、脂質の角質層を通過しにくい。
【0013】
しかし、ブリモニジンは、一旦角質層を横断すれば、親水性媒体(表皮、特に顆粒層および基底層、次いで真皮)に入り、次いで排除されるため、血管収縮の観点での有効性を低下させる。
【0014】
したがって、皮膚によって形成されるバリア構造は、活性な血管収縮剤が、外側の脂質層を通過して、より下層の親水性層においてすぐに排除されることなく、迅速かつ一貫した長期の血管収縮効果を16時間または24時間もの期間発揮できる、皮膚適用のために設計された局所製剤を得ることについて、真の難題をもたらすものである。
【0015】
また、活性な血管収縮剤の濃度は、全身レベルで著しくかつ潜在的に有害な曝露のリスクをもたらすことから、高くしすぎてはならない。
【0016】
また、局所適用のための組成物に用いられる特定の化合物は、副作用を引き起こす可能性があり、それらの使用および有効性を限定し得る。例えば、特定の活性剤には、刺激(irritation)を引き起こすという大きなデメリットがあり、製品の耐容性の低下をもたらし得る。このことは、患者側において処置におけるノンコンプライアンスや処置に対する不満をもたらし得る。
【0017】
このような目的のために、パラヒドロキシ安息香酸メチル、プロピレングリコール、カルボマー、フェノキシエタノール、グリセロール、二酸化チタン、水酸化ナトリウムおよび精製水をベースとするMIRVASO(登録商標)ゲル製剤は、例えば、放射線と関連がある病変の予防には適さない。この製剤は、最適化されていない薬物動態を有し、活性が適用後6~12時間に限定される。この製剤はまた、治療を目的として、例えば放射線皮膚炎の予防または処置で用いられる場合に、放射線を妨害するための二酸化チタンの粒子を含有する。
【0018】
このように、現在のところ、新規な組成物を開発し、放射線と関連する作用、特に放射線療法によるがんの処置の副作用を制限することを可能とすることが求められている。
【0019】
放射線皮膚炎(または放射線誘発皮膚炎)は、痛みを伴い、患者を悩まし得る病変を生み出して、処置の一時的または永続的な中断につながり得る。
【0020】
一方で、急性の放射線皮膚炎の処置に対するコンセンサスは、得られていない。様々な解決策が数多く提案されてきているが、現在のところ、必ず採用されるほど十分に満足がいくものはない。
【0021】
急性グレード1の放射線皮膚炎については、放射線セッションの数時間後に適用される皮膚軟化薬(例えば、DEXERYL(登録商標)またはTOPICREME(登録商標))は、皮膚に潤いを与えて、患者に短時間の幸福感(well-being)をもたらす。
【0022】
しかし、この選択肢は、ボーラス効果(放射線量の局部的増加)および熱傷のリスクを回避するために、これらの製品は、セッション前に適用されない必要があることに注意することが重要である。
【0023】
いくつかのより具体的な製品、例えばヒアルロン酸ベースのクリーム、TETA(登録商標)クリームまたはBIAFINE(登録商標)は、放射線皮膚炎の病変のために提供されている。しかし、これらの処置は有効性が証明されておらず、むしろ臨床研究では効果がないと結論付けられたことが想起される。
【0024】
局部的な局所コルチコステロイド(local topical corticosteroid)(例えば、DIPROSONE(登録商標))も、セッション後に適用される必要がある。これらの製品を使用する理論的な原理は、放射線療法によって引き起こされる炎症を低減させることにある。局所コルチコステロイドは、放射線皮膚炎の進行に対して真の利益をもたらさないが、局所アレルギー反応(local allergic reaction)の場合(例えば、マーキングのために用いた接着剤と関連する湿疹の場合)には有効なものである。
【0025】
急性の放射線皮膚炎の場合、放射線療法による処置の継続は、放射線療法士が処置の進捗および優先度に応じて必要または好ましいと判断した場合に、一時的に中断され得る。
【0026】
放射線療法を受ける乳がん患者における、放射線皮膚炎の予防のための1つの局所血管収縮剤として、エピネフリンの使用が記載されている(James F.Clearyら、Significant suppression of radiation dermatitis in breast cancer patients using a topically applied adrenergic vasoconstrictor、Radiation Oncology、2017)。
【0027】
しかし、このような製品は、即席のアルコールベースの調製物であって、蒸発するため、放射線療法による処置の直前から最大20分前までに適用されることを必要とする。
【0028】
また、最も注目すべきは、その過度に短い作用持続時間によって効果が限定されることである。問題の研究においては、50%の患者にしか顕著な利益を示さなかった。
【0029】
患者が既に耐え難いと感じているがん処置においては、副作用が最適な処置プロセスを制限している場合があり、それを妨げる可能性がある。したがって、強力で長期の保護効果を発揮し、実質的に放射線療法による皮膚への副作用を低減することを可能とする、有効な新規製剤が真に求められている。
【0030】
このように、適用部位に制限された、強力で長期の制御された皮膚の血流低下を経時的にもたらし、放射線を受ける患者、特に放射線療法で処置されるがん患者の耐容性、有効性およびコンプライアンスに関する上記欠点を克服することを目的とした新規製剤の開発が必要とされている。
【0031】
[技術的問題]
上記事情に照らして、本発明が解決することを提案する問題の一つは、確立された血管収縮剤、例えば酒石酸ブリモニジンに基づくものであり、放射線によって、特に放射線療法によるがんの処置によって引き起こされる主な皮膚への副作用を予防し、大きく低減させて、血管収縮剤の活性の持続時間および効力を改善することを目的とした、最適化された局所製剤を開発することにある。
【0032】
[得られる利点]
本出願人は、新規な局所組成物を開発し、処置される腫瘍または照射野への有効性を低下させ得る放射線療法の光線による妨害を回避しながら、血管収縮剤の真皮および表皮における12~14時間以上の生体利用を可能とし、放射線によって引き起こされる損傷から、特に放射線療法による処置の副作用から皮膚を保護することによって、血管収縮の持続時間および効力を改善している。
【0033】
低分子量(150g/mol未満、好ましくは100g/mol未満)の極性溶媒および高分子量(150g/mol超、好ましくは350~650g/mol)の極性溶媒を含有する、提供が複雑かつ困難な組み合わせが、皮膚表面および角質層の上層に血管収縮剤リザーバー(vasoconstrictor reservoir)を形成するために開発されている。しかし、極性化合物は親油性化合物であるほど容易に角質層に分布しないため、親水性化合物のリザーバー形成は、親油性薬剤の場合よりもはるかに複雑なものである。さらに、親水性化合物は、それ自体が生体組織に自由に分布し、血液循環によって下部の局所血管系(local vascular system)へと除去される。したがって、最適で複雑な組成バランスが、変数、例えば熱力学、残留物の表面溶解度、角質層中の溶解度、生体組織における透過性および持続性(牽引効果(traction effect)/溶媒牽引(solvent drag))を調節するために特定される必要がある。
【0034】
上記パラメーターに加え、許容可能な剤形および完成品を形成するのに重要な要素も、本発明に係る組成物を開発する際に考慮されている。本発明に係る組成物は、適切な局所耐容性および美容上の優雅さに加えて、経皮投与を促進し、十分に物理的、化学的および微生物学的な安定性を提供する、最適な溶媒系を中心としたものである。
【0035】
本出願人によって提案され最適化された局所組成物は、血管収縮プロセスの持続時間(少なくとも14時間~24時間の期間)およびその力を改善しながら、放射線の皮膚通過を妨害することなく、その有効性の低下を回避する。
【0036】
本発明に係る組成物は、角質層における極性血管収縮剤活性剤のリザーバーの形成を可能とし、これは、通常、親油性分子、例えばコルチコステロイドによってのみ得られる現象であり、極性分子は通常血液循環によってすぐに「押し流される(washed out)」。このことは、皮膚におけるある程度の持続性を可能とし、各再適用時の効果を最大化かつ迅速な効果を可能として、患者と放射線療法士の両者に対して柔軟な使用性を提供する。
【0037】
最適化された組成物は、特に放射線療法による処置に適しており、患者のコンプライアンスを助長し、抗がん処置の有効性を最大化するのに役立つ。
【0038】
また、本出願人によって開発された新規な局所製剤は、従来の組成物と比較して殆どまたは全く刺激性がなく、皮膚透過性が改善して、酒石酸ブリモニジンの溶解度が増加することから、耐容性が良好である。
【0039】
最終的に、本発明によって開発された医薬組成物はまた、経済的なものであり、簡単かつ迅速に調製できるものである。
【0040】
[技術的解決策]
上記した問題の解決策の第1の目的は、局所投与に適した形態で、水性であり、血管収縮剤を含む組成物であって、組成物は、ヒドロゲルの形態であり、血管収縮剤は、
- プロピレングリコールおよび/またはジメチルスルホキシド(DMSO)と組み合わせたポリエチレングリコール;
- 単独でまたは組み合わせて利用されるポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、非架橋、架橋または酢酸形態のポリビニルピロリドン(PVP)から選択される親水性膜形成剤、好ましくは親水性膜形成剤としてのポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー;ならびに
- グリセリン
を含む溶媒系相(solvent based phase)中のブリモニジンまたはその塩から選択される、組成物である。
【0041】
第2の目的は、医薬としての使用のための本発明に係る組成物である。
【0042】
本発明およびこれに由来する利点は、添付の図面との関連した以下の説明および非限定的な実施方法を読むことによってさらによく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】様々なヒドロゲル組成物19-0155.0058/F1、19-0155.0059/F1、19-0155.0060/F1および19-0155.0061/F1で得られた皮膚白化スコア(skin whitening stores)を表すグラフである。
【
図2】様々なヒドロゲル組成物19-0155.0100/F1および19-0155.0101/F1で得られた皮膚白化スコアを表すグラフである。
【
図3】抗酸化物質および界面活性剤を含有し得る様々なヒドロゲル組成物19-0155.0111/F1(対照;抗酸化剤なし、可溶化剤なし)、19-0155.0117/F1(1%TWEEN(登録商標)80および0.1%BHA)、19-0155.0121/F1(1.5%TWEEN80および0.1%BHA)、19-0155.0124/F1(1%KOLLIPHOR RH40および0.1%DLトコフェロール)および19-0155.0125/F1(3%KOLLIPHOR RH40および1%DLトコフェロール)で得られた皮膚白化スコアを表すグラフである。
【
図4】様々なヒドロゲル組成物19-0155.0101/F1、19-0155.0111/F1および19-0155.0112/F1で得られた皮膚白化スコアを表すグラフである。
【
図5】様々な活性ヒドロゲル組成物(酒石酸ブリモニジンを含む)で、または活性剤なし(ビヒクルのみ含有)で得られた皮膚白化スコアを表すグラフである。
【
図6】様々な活性ヒドロゲル組成物(酒石酸ブリモニジンを含む)で、または活性剤なし(ビヒクルのみ含有)で得られた平均紅斑スコアを表すグラフである。
【
図7】活性剤の濃度が変動する(酒石酸ブリモニジン1.5%、0.75%、0.25%および0.15%w/w)同じ活性ヒドロゲル組成物で得られた皮膚白化スコアを表すグラフである。
【
図8】参照血管収縮剤で得られた皮膚白化スコアを表すグラフである。
【
図9】本発明に係るヒドロゲル組成物と1.5%w/wの酒石酸ブリモニジンで改質されたMIRVASO組成物(19-0155-0098/F1)とノルエピネフリン溶液とMIRVASO(登録商標)製品(0.5%w/wの酒石酸ブリモニジン)とを比較して得られた皮膚白化スコアを表すグラフである。
【
図10】異なる濃度のキサンタンガムを含有する本発明に係るヒドロゲル組成物とMIRVASO(登録商標)製品とを比較して得られた皮膚白化スコアを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、血管収縮剤を含む局所投与に適した形態の水性組成物に関する。
【0045】
本発明に係る局所組成物は、ヒドロゲルの形態であることを特徴とする。
【0046】
ヒドロゲルは、溶解せずに、水を吸収し、水で膨潤する能力を有する親水性の三次元ポリマーマトリックスと定義される。
【0047】
典型的に、ヒドロゲルの限界の一つは、皮膚送達を助長すると共に、良好な官能的品質を提示することで知られる親油性活性剤または賦形剤とは、本質的に親水性である薬学的に許容される溶媒を添加せずに、適合しないことである。しかし、過剰濃度で不適切な極性溶媒が前述のヒドロゲル組成物に用いられる場合には、耐容性および官能特性が損なわれる可能性がある。
【0048】
ヒドロゲルは、一般に非常に良好な耐容性を示し、活性成分の適用を促進するため、皮膚疾患の局所処置で有利に用いられるガレノス形態である。これらの特質は、高い含水量および有効で生体適合性のポリマーゲル剤の使用に関連している。
【0049】
このような組成物は、有利には、親水性活性剤、例えばブリモニジンおよび好ましくは酒石酸ブリモニジンの送達に適しており、皮膚への透過性(penetration)および皮膚への浸透性(permeation)を促進する。
【0050】
本発明に係るヒドロゲルは、低粘度であり、皮膚レベルで適用部位に容易に広げることができる。これは、完成品の比較的迅速な吸収を可能にすると共に、急速乾燥後に、皮膚表面に僅かな残留物を残し、その残留感は、適用後10分未満、有利には5分未満、より有利には2分未満、さらにより有利には1分未満で消失する。
【0051】
本発明に係る局所組成物は、50cpsから3000cpsの間、好ましくは300cpsから2800cpsの間、例えば500cps、1000cps、1500cps、1600cps、1700cps、1800cps、2000cps、2500cpsまたは2750cpsの粘度を有する。
【0052】
本発明に係るヒドロゲルは、高い含水量およびグリコール含有量、ならびに皮膚表面の保水性および活性剤の長期可溶化を調節するポリマーの使用可能性によって、湿潤感覚を提供し、これによって皮膚への適用後の血管収縮の有効性の持続時間を延長する。
【0053】
本発明に係る局所組成物は、
- プロピレングリコールおよび/またはジメチルスルホキシド(DMSO)と組み合わせたポリエチレングリコール;
- 単独でまたは組み合わせて利用されるポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(KOLLIDON VA64(登録商標))、非架橋、架橋または酢酸形態のポリビニルピロリドン(PVP)から選択される親水性膜形成剤、好ましくは親水性膜形成剤としてのポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー;ならびに
- グリセリン
を含む溶媒系相中の、ブリモニジンまたはその塩から選択される血管収縮剤を含むことを特徴とする。
【0054】
「塩または薬学的に許容される塩」は、哺乳動物において局所使用に安全で有効であり、所望の生物活性を有する目的の化合物の塩を指す。薬学的に許容される塩としては、特定の化合物中に存在する酸性または塩基性の基の塩を含む。薬学的に許容される酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、重硫酸、リン酸、酸リン酸、イソニコチン酸、酢酸、乳酸、サリチル酸、クエン酸、酒石酸、パントテン酸、重酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ゲンチジン酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、糖酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸およびパモ酸(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸))の塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明で用いられる特定の化合物は、様々なアミノ酸と薬学的に許容される塩を形成できる。好適な塩基塩としては、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛およびジエタノールアミンの塩が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩の総説については、Bergeら、66 J.PHARM.SCI.1~19(1977)を参照されたい。「水和物」は、非共有結合分子間力によって結合している化学量論量または非化学量論量の水をさらに含む、目的の化合物またはその薬学的に許容される塩を指す。
【0055】
好ましくは、本発明に係る組成物に用いられるブリモニジンは、酒石酸ブリモニジンであるものの、塩形態は、ヒドロゲル製剤の安定性の観点から問題を示す。
【0056】
塩は、実際に、非イオン性界面活性剤およびポリマーと相互作用し、その水溶解度を低下させ、結果として半固形製剤の物理的安定性に害し得る。対照的に、塩形態の活性剤は、水溶解度が比較的高く、水性製剤の設計および評価を有利には可能にし、感覚および局所耐容性の観点から改善した性能を提供することができる。
【0057】
好ましくは、組成物の総重量の0.15重量%から3.00重量%の間の濃度のブリモニジンまたはその塩、好ましくは酒石酸ブリモニジンが、全身曝露のいかなるリスクも防止しながら、有効性、および適用後24時間までの効果持続時間の改善を得るために好ましくは用いられる。
【0058】
好ましくは、本発明に係る組成物は、ブリモニジンまたはその塩、好ましくは酒石酸ブリモニジンを、組成物の総重量の0.50重量%から2.50重量%の間、好ましくは0.75%から1.50%w/wの間、より好ましくは1.00%から1.50%w/wの間、さらにより好ましくは1.00%または1.50%w/wの濃度で含む。
【0059】
ブリモニジン、好ましくは酒石酸ブリモニジンの濃度および適用される用量は、有利には適用箇所に従って適合させることができる。
【0060】
実際に、皮膚によって形成されるバリアは、特に通過される角質層について、頭皮よりも手足で厚く、他の身体部分、特に胸部では、中程度の厚さを有する。したがって、同用量に対して、好ましく用いられる濃度は、身体の他の部分で用いられる濃度、例えば胸部の0.75~1.5%w/wの濃度、または例えば手足の例えば1.5~3%w/wと比較して、有利には頭皮で低く、0.15~0.5%w/wの領域である。
【0061】
本発明に係る局所組成物は、プロピレングリコールおよび/またはジメチルスルホキシド(DMSO)と組み合わせて、ポリエチレングリコール(PEG)を含むことを特徴とする。
【0062】
低分子量のポリエチレングリコール(PEG)は、通常、主に多くの種類の活性成分に有効な溶媒であることから、局所製品に一般に用いられるが、これは、局所投与については、必ずしも最も有効な賦形剤とはならない。
【0063】
これは主に、皮膚による吸収を制限するその高い極性と分子量によるものである。これらの特性は、皮膚において活性剤の溶媒のビヒクルとしての可能性(牽引効果)を制限する。これは通常、溶媒が皮膚に溶解し、溶解した溶質を皮膚に輸送する際に起こる。
【0064】
また、PEGの高い可溶化能力は、局所投与に対して準最適な熱力学をもたらし得、高濃度で使用した場合、揮発性成分、例えば水の蒸発にしばしば関連する製品変質(product transformation)を、皮膚での放出を促進するために用いることができない。全体的に見れば、高濃度は可能であるが、これらの特性は送達効率を低下させ得、局所剤の適用用量の大部分が皮膚表面に残るかまたは接触移動によって周囲に消失する。
【0065】
送達効率の増加、僅かな適用用量は、経皮送達の目標レベルを達成するための用量増加の必要性および高いPEG濃度を用いる必要性を制限することができる。
【0066】
PEGの透過性および浸透性は、その分子量によることも示されている。
【0067】
それにも関わらず、本発明に係るヒドロゲル組成物において、PEGは局所製剤に必要なものである。
【0068】
PEG-600までの低分子量のPEG、例えばPEG-200、PEG-300、PEG-400またはPEG-400SRは、好ましく用いられ、より好ましくはPEG-400、さらに好ましくはPEG-400SRは、刺激の可能性を低減して、極性不純物を除去し、賦形剤と活性剤(酒石酸ブリモニジン)の間の相互作用およびその後の活性剤の分解を低減することによって、本発明に係るヒドロゲル組成物の安定性および耐容性を有利には助長する。
【0069】
PEG-400またはPEG-400SRは、その分子量および高い極性(低分配係数)によって角質層への透過性が比較的低いものの、表面可溶化のための皮膚表面および角質層の上層での活性剤の沈殿率を低下させるためのPEGであって、本発明に係るヒドロゲル組成物に好ましく用いられる。これは、皮膚の生存可能な層への、特に石酸ブリモニジンの標的部位が位置する真皮神経叢への酒石酸ブリモニジンの長期投与に有利に機能する。PEG-400またはPEG-400SRは、皮膚表面および角質層の上層での溶液中の酒石酸ブリモニジンの良好な保持を促進するのに十分な溶解度を有する。
【0070】
好ましくは、本発明に係る組成物は、PEGを、組成物の総重量の1重量から20重量%、好ましくは5重量%から15重量%、より好ましくは10重量%の濃度で含む。
【0071】
プロピレングリコール(PG、1,2-プロパンジオール)は、様々な経口および非経口医薬製剤において溶媒および保存剤として広く用いられる、無色透明で吸湿性(hygroscopic)の液体である。
【0072】
PGは、グリセリンより良好な一般的な溶媒として知られており、コルチコステロイド、フェノール、バルビツール酸塩、ビタミン(AおよびD)、殆どのアルカロイドおよび多くの局所麻酔薬(local anaesthetics)を含む、多種多様な材料を溶解する。
【0073】
一方、PGは、酒石酸ブリモニジンの場合、グリセリンの可溶化能力の50%を示す。
【0074】
抗菌剤として、PGは、エタノールと同様の効果を有するが、カビに対しては効果が若干低く、プロファイルはグリセリンのプロファイルに匹敵する。
【0075】
PGはまた、ある程度の揮発性を示し、僅かな適用用量が皮膚への適用時または少なくとも適用から37時間以内に蒸発するものの、はるかに多い大部分が、角質層を透過して、皮膚の深層に入り込む。
【0076】
PGの角質層への比較的迅速な透過性および揮発性は、その溶媒の残留ビヒクルを枯渇させ、ビヒクル中の活性剤の熱力学的活性を高めて、拡散の推進力を調節する。また、PGの透過性および浸透性は、角質層の脂質バリアを破壊して、拡散抵抗を低減することができる。
【0077】
このように、PGは、皮膚への通過性および浸透性について好ましい物理的および化学的特性を有し、皮膚を通って吸収される。したがって、PGによって容易に溶解される(すなわち、溶媒/ビヒクルへの高い親和性を有する)溶質は、有利には、耐溶媒性機序を介した皮膚透過性の向上または牽引効果から恩恵を得ることができる。
【0078】
薬学的に関連する化合物の経皮送達がPGによって促進できることを示す様々な化合物のデータが文献に記載されているにも関わらず、複雑な溶媒系において、有効で、安定なかつ薬学的に許容される本発明に係る局所組成物を用いて得る場合、安定性、活性剤、特に酒石酸ブリモニジンの透過効率、ならびに耐容性についてこれらの特性を予測することは、当業者にとって明らかなことではない。
【0079】
さらに強い理由から、PGは、大半の活性剤よりも迅速に皮膚を透過することが知られており、したがって、皮膚表面での活性剤の沈殿は、その作用の持続時間を制限する。
【0080】
加えて、インビボで用いられるPGの濃度は、局所的な刺激反応および全身毒性の問題を回避するため、通常、約20%w/w以下に制限される。
【0081】
本発明に係る局所組成物において、溶媒および透過促進剤(penetration enhancer)としてPGを使用する選択肢は、溶解度および他のビヒクル関連の変数によって容易に予測できるものではない。
【0082】
好ましくは、本発明に係る組成物は、PGを、組成物の総重量の5重量%から40重量%、好ましくは10重量%から30重量%、より好ましくは15重量%から25重量%、さらに好ましくは20重量%の濃度で含む。
【0083】
ジメチルスルホキシド(DMSO)は、無色、無臭、水混和性および吸湿性の非プロトン性溶媒である。DMSOは、いくつかのポリマー剤に加えて多くの小さな極性および非極性分子を溶解する能力に関して、また抗ウイルス剤、ステロイドおよび抗生物質を含む親水性および親油性化合物の透過を促進する薬剤として知られている。
【0084】
DMSOについては、
・らせん型からβ(ベータ)シートへのケラチンの細胞内高次構造の調節、
・ケラチンからの結合水の置換、
・皮膚脂質の抽出、
・脂質流動性および拡散抵抗の減少をもたらす極性頭部の脂質基との相互作用、
・角質層における脂質アルキル鎖との相互作用、
・脂質二重層間の水性ドメインにおける浸透物の溶解度の増加を介した角質層におけるビヒクルの分布(distribution)の増加
を含む、いくつかの可能性のある皮膚浸透機序が記載されている。
【0085】
DMSOは、皮膚を容易に透過し、そこに含浸することが周知である。
【0086】
驚くべきことに、DMSOは、皮膚を介した活性剤の送達に関して溶媒の追跡効果ももたらすことができる。
【0087】
DMSOの効果は、その濃度レベルに依存する。一般的に言えば、60%w/wを超えるDMSO濃度を含有する共溶媒系は、最適な効率をもたらす。
【0088】
一方で、このような比較的高濃度のDMSOは、最も顕著には紅斑および刺激を引き起こすことがある。
【0089】
これらの因子は、局所および経皮組成物において高濃度でDMSOを使用することを制限する。
【0090】
DMSOは、低濃度で、例えば局所鎮痛製品PENNSAID(登録商標)中45%の濃度で角質層の活性可溶化剤として使用できる。
【0091】
本発明に係る組成物にて、DMSOは、従来の組成物と比較して、制限された濃度、20%w/w未満、好ましくは10%w/w未満、より好ましくは5%w/wの領域で好ましくは用いられる。
【0092】
有利には、DMSO中の酒石酸ブリモニジンの比較的高い溶解度は、制限された濃度と相まって、DMSOを本発明に係る組成物の好ましい溶媒にする。
【0093】
本発明に係るヒドロゲル組成物にて、PEG:PGおよび/またはPEG:DMSOの比を制御することは、特に利点がある。
【0094】
PGおよび/またはDMSOと組み合わせた、PEGの過度に高い濃度、50%w/wを超える濃度は、酒石酸ブリモニジンの血管収縮の強度の観点からマイナスの影響を及ぼす。
【0095】
好ましい一実施形態にて、PEGおよびPGは、1:1~1:5、好ましくは1:2の比で用いられる。
【0096】
好ましい一実施形態にて、PEGおよびDMSOは、1:1~5:1、好ましくは2:1の比で用いられる。
【0097】
本発明に係るヒドロゲル組成物の特定の好ましい実施形態によれば、PEGは、PGのみと組み合わせて、より好ましくはPEG-400SRおよびPGと組み合わせて利用される。
【0098】
好ましくは、本発明に係る組成物は、プロピレングリコール(PG)を、組成物の総重量の20重量%の濃度で組み合わせて、ポリエチレングリコール(PEG)を、組成物の総重量の10重量%の濃度で含む。
【0099】
本発明に係る局所組成物は、単独でまたは組み合わせて、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、非架橋、架橋または酢酸形態のポリビニルピロリドン(PVP)から選択される親水性膜形成剤を含むことを特徴とする。
【0100】
好ましくは、本発明に係る組成物は、単独でまたは組み合わせて、親水性膜形成剤を、組成物の総重量の0.1重量%~1.5重量%、好ましくは0、25重量%~1.4重量%、より好ましくは0.5重量%~1.3重量%、さらに好ましくは0.75重量%~1.25重量%、さらにより好ましくは1重量%の濃度で含む。
【0101】
好ましくは、本発明に係る局所組成物は、親水性膜形成剤としてポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(KOLLIDON VA64(登録商標))を含む。
【0102】
好ましくは、本発明に係る組成物は、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(KOLLIDON VA64(登録商標))を、組成物の総重量の0.1重量%~1.5重量%、好ましくは0.25重量%~1.4重量%、より好ましくは0.5重量%~1.3重量%、より好ましくは0.75重量%~1.25重量%、さらに好ましくは1重量%の濃度で含む。
【0103】
本発明に係る局所組成物は、グリセリンをさらに含むことを特徴とする。
【0104】
グリセリン(グリセロール)は、角質層の保水性を高め、水和を改善できる保湿剤として知られてる。
【0105】
グリセリンは、皮膚バリアの正常な機能をサポートし、皮膚の弾力性および可塑性を促進し、皮膚の滑らかさを改善し、抗刺激効果を提供することが知られ、用いられている。グリセリンは、実際に表皮と大気から角質層に水を引き込むことができる。
【0106】
グリセリンは、その比較的高い極性により、プロピレングリコールと同様の程度および深さまで皮膚を透過することはないものの、角質層の親水性領域にリザーバーを蓄積および形成して、含水量を増加できる。
【0107】
グリセリンと角質層の相互作用、皮膚におけるその分布、および酒石酸ブリモニジンに対するその比較的高い溶解度(プロピレングリコールの2倍の溶解度)は、皮膚表面のべたつきを生じさせずに、改善した経皮投与および長期的な透過性に関して利点を提供する。
【0108】
好ましくは、本発明に係る組成物は、グリセリンを、組成物の総重量の1重量%から20重量%、好ましくは2重量%から15重量%、より好ましくは3重量%から10重量%、さらに好ましくは4重量%の濃度で含む。
【0109】
特に有利な方法では、PGとグリセリンの組み合わせは、角質層中での活性剤、好ましくは酒石酸ブリモニジンの分布を改善する。
【0110】
さらに有利には、DMSOは、PGと同様の機能を提供するが、酒石酸ブリモニジンに対する溶解度はより高い。この溶解度の違いは、皮膚を介して製品を投与するのに有利である。
【0111】
好ましくは、本発明に係る局所組成物は、単独でまたは組み合わせて利用されるキサンタンガムまたはヒドロキシエチルセルロース(HEC)から選択されるゲル化剤をさらに含み、より好ましくは、本発明に係る局所組成物は、ゲル化剤として少なくともキサンタンガムを含む。
【0112】
好ましくは、本発明に係る組成物は、好ましくは組み合わせて、キサンタンガムおよび/またはHECを、組成物の総重量の0.1重量%から1.5重量%の濃度で含み、キサンタンガムを、0.2重量%から1重量%、より好ましくは0.2重量%から0.75重量%、さらに好ましくは0.2~0.5重量%の濃度で含み、HECを、0.3~0.5重量%の濃度で含む。
【0113】
下記表1に、キサンタンガム(XANTHANE FNCSP-PC(登録商標))および/またはHEC(NATROSOL 250HHX(登録商標))を含む本発明に係るヒドロゲル組成物の例を示す。
【0114】
【0115】
可撓性の混合膜は、他の不揮発性溶媒、PGおよびPEGに加え、キサンタンガムおよび/またはHEC、ならびにポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(KOLLIDON VA64(登録商標))に用いて皮膚表面に有利に形成され、ブリモニジン、好ましくは酒石酸ブリモニジンのリザーバーの形成を可能として、ブリモニジンの沈殿を減速し、その作用期間を延長する。
【0116】
好ましくは、本発明に係る局所組成物は、天然もしくは合成抗酸化剤、またはフリーラジカル捕捉剤も含む。
【0117】
抗酸化剤は、単独でまたは混合物として、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、DL-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、プロピオンアルデヒド、パルミチン酸塩、アスコルビン酸塩またはグルタチオンから選択され、好ましくはBHAおよび/またはDL-トコフェロールから選択される。
【0118】
抗酸化剤は、本発明に係るヒドロゲル組成物において、組成物の総重量の0.01重量%から4.0重量%の間、より好ましくは0.1%から1.0%w/wの間、さらに好ましくは0.1%の濃度で用いられ、例えば、BHAは0.1%w/wおよび/またはDL-トコフェロールは0.1%w/wで好ましくは用いられる。
【0119】
好ましくは、本発明に係る組成物は、フリーラジカル捕捉剤、好ましくはアミホスチンを、組成物の総重量の0.1重量%~3重量%、例えば2.5%w/wの濃度で含む。
【0120】
好ましくは、本発明に係る局所組成物は、抗酸化剤を含む場合、ポリソルベート、好ましくはポリソルベート80(TWEEN80 SR(登録商標))および/またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(KOLLIPHOR RH40(登録商標))も含む。
【0121】
好ましくは、本発明に係る局所組成物は、ポリソルベート、好ましくはポリソルベート80(TWEEN80 SR(登録商標))を、組成物の総重量の5重量%未満、より好ましくは1~1.5重量%、さらに好ましくは1重量%で、および/またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40を、組成物の総重量の3重量%未満で、好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40を、1重量%で含む。
【0122】
好ましくは、本発明に係る局所組成物は、単独でまたは組み合わせて、オレイルアルコール(KOLLICREAM OA(登録商標))およびビタミンEをさらに含む。
【0123】
PGおよびグリセリンを含む、吸湿性、保湿性および皮膚コンディショニング特性を有する溶媒を含む親水性溶媒相の組込みは、角質層中の酒石酸ブリモニジンの溶解度を改善し、角質層の含水量を増加させるのに役立つ。
【0124】
抗酸化剤の有利な組込みは、活性剤の安定性を改善する。
【0125】
したがって、本発明に係るヒドロゲル組成物は、酒石酸ブリモニジンの経皮送達を改善および延長し、酸素反応型および炎症性メディエーターと比較して、十分な長期の局所血管収縮や表皮と真皮の優れた保護によって患者のニーズを満たすのに役立つ。
【0126】
本発明に係る組成物は、適用しやすく、潜在的に刺激される皮膚に適用できる。
【0127】
これらは、急速に乾燥して、皮膚にごく僅かな残留物を残す。
【0128】
本発明に係る局所組成物は、4.0から6.0の間、好ましくは4.2から5.5の間、より好ましくは4.3から5.0の間、さら好ましくは4.5のpHを有する。
【0129】
本発明の別の目的は、医薬としてのその使用のための本発明に係るヒドロゲル組成物に関する。
【0130】
好ましくは、本発明に係るヒドロゲル組成物は、放射線によって引き起こされる損傷の予防および/または処置に用いられ、放射線は、光子もしくは陽子に由来するか、または天然、治療上もしくは偶発的であり、紫外線(UV)、すなわち日焼けの原因となり得るUVAおよびUVB、可視範囲の放射、赤外放射線(IR)またはさらには電離放射線、例えばX線およびα、β、γ線、またはさらには陽子ビームを含む。
【0131】
好ましくは、本発明に係るヒドロゲル組成物は、放射線によって引き起こされる皮膚炎の予防および/または処置のため、とりわけ例えばX線または陽子による放射線療法による処置内で使用される。
【実施例】
【0132】
以下、本発明について実施例を用いて例示する。
【0133】
[実施例1]純粋な溶媒における飽和溶解度の測定
(方法)
飽和溶液を、過剰量の原薬を様々な溶媒に添加し、試料を連続的に撹拌しながら室温で密閉容器に24時間貯蔵することによって調製した。
【0134】
試料の大半はマグネチックスターラーにより撹拌したが、粘性試料(例えば純粋なグリセリン)の場合、試料を、回転ミキサーを用いて撹拌した。回転ミキサーの速度を、試料の適正な混合を確実にするように調節した。これは一般に、よりゆっくりとした回転速度を含む。
【0135】
平衡化時間後、試料を遠心分離または濾過し、酒石酸ブリモニジンをThermo Scientific Dionex U3000 UPLC-UVシステムを用いて定量した。以下にクロマトグラフィー条件を記載する。
・カラム:Sunfire C18 150mm×4.6mm、3.5μm
・カラム温度:40℃
・注入量:5μl
・流量:0.8ml/分
・UV検出:246nm
【0136】
(結果)
下記表2に、UPLC-UVによって決定されたように、別々に使用した溶媒ごとの飽和溶解度の結果を要約する。
【0137】
【0138】
(結論)
得られた結果から、DMSOは、酒石酸ブリモニジンの優れた溶媒であると考えられる。8.5%w/wの酒石酸ブリモニジンの添加後でも飽和に達しなかった。
【0139】
水は、次に優れた溶媒と考えられる;塩形態の活性は、おそらく水への溶解度に有利に働く。
【0140】
次いで、降順に、グリセリン(GLY)、グルカン、プロピレングリコール(PG)およびPEG-400であった。
【0141】
他の溶媒について観察された溶解度は、著しく低く、酒石酸ブリモニジンの溶解度の結果は満足のいくものではなかった。
【0142】
興味深いことに、よく知られた溶媒、例えばTranscutolおよびDMIは、酒石酸ブリモニジンに対してグリセリンまたはプロピレングリコールよりはるかに効果が低い溶媒であると考えられる。
【0143】
[実施例2]溶媒の混合物における飽和溶解度の測定
(方法)
飽和溶液を実施例1と同様に調製し、インキュベートして測定した。
【0144】
(結果)
下記表3に、UPLC-UVによって決定されたように、別々に使用した溶媒ごとの飽和溶解度の結果を要約する。
【0145】
【0146】
(結論)
予想した通り、溶媒の非水性混合物は、水を含有する混合物より低い溶解力(solubility power)を有するものと考えられる。
【0147】
それにも関わらず、得られた結果によれば、PG/PEG-400/GLY/PVP(20:10:5:1)を含有する不揮発性の混合物は、水性混合物PG/PEG-400/GLY/PVP/水(20:10:5:1:40)と比較して、約22%の活性剤を可溶化することができたと考えられる。これは、水が蒸発した後でも、残留製剤において、水性ゲルの不揮発性の極性成分が、酒石酸ブリモニジンを皮膚表面および角質層に溶解するある程度の能力を有し得ることを示している。
【0148】
1%または1.5%の濃度の酒石酸ブリモニジンを使用する場合、活性剤は、適用前の当初の製剤の水性溶媒相中において、それぞれ約30%または50%飽和であってよい。しかし、製剤を皮膚表面に適用すると、水が比較的すぐに蒸発した。
【0149】
したがって、得られた結果は、製剤の物理的な安定性については有利であると思われるものの、従来の皮膚分布に関しては必ずしもそうではなく、熱力学的な活性が比較的低いものであった。
【0150】
[実施例3]単一溶媒および溶媒の予備的混合物における安定性の測定
下記表4に記載のように、溶媒の組み合わせを調製した。評価を促進するために、0.1%酒石酸ブリモニジンを各混合物に添加した。試料を、室温、40℃および50℃で1か月間貯蔵し、T=0およびT=1か月の間隔でサンプリングした。
【0151】
【0152】
下記表5に、この研究で生成された適合性データを要約する。
【0153】
【0154】
得られた結果から、平均値は、99.36%から101.45%の間であり、相対標準偏差は、1%未満であった。
【0155】
Glucam E20なしの溶媒ブレンドは、最も好ましい安定性プロファイルを示し、グリセリンは安定性を改善すると考えられる。Glucam E10が5%の濃度で組成物に含まれる場合に、酒石酸ブリモニジンの安定性は改善した。酒石酸ブリモニジンの測定値は、Glucam濃度が増加すると低下する傾向にあった。最も安定な溶媒の混合物は、M8(水中、30%Transcutol)に対して、次いでM1(水中、10%DMSO、5%Glucam E10および5%グリセリン)に対して得られた。
【0156】
得られたデータは、Glucam E10およびE20を使用すると、酒石酸ブリモニジンが不安定になるリスクが高まることを示した。一方で、Transcutol、DMSOおよびグリセリンは、許容可能な適合性プロファイルを示した。
【0157】
[実施例4]本発明に係る製剤における様々な溶媒の皮膚白化効果の評価
本発明に係る製剤において、プロピレングリコール(PG)、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびポリエチレングリコール400(PEG-400)は、酒石酸ブリモニジンの目的の溶媒として特定された。
【0158】
これらの溶媒の濃度は、各種の低粘度ヒドロゲル製剤(表6)において変動し、皮膚白化は、皮膚白化モデルを用いて評価した。試験した溶媒ごとに異なる濃度の選択は、溶解度データおよび局所耐容性の考察に基づくものであった。例えば、DMSOは、酒石酸ブリモニジンに対してPGより良好な溶媒であるため、より低い濃度を、残留製剤の熱力学的活性をより好ましいものにするために選択した。
【0159】
これらの試料ヒドロゲル製剤では、ヒドロキシエチルセルロース(HEC、Natrasol HHX)をゲル化剤として使用した。
【0160】
【0161】
図1に、皮膚白化スコアをグラフ形態で示し(3回の反復の平均)、傾向を、データを解釈するために使用した。
【0162】
得られた結果から、PGを含有する製剤は、DMSO等価物より高いピーク白化スコアと共により迅速な作用発現をもたらしたと思われる。
【0163】
最善の結果は、20%PGおよび10%PEG-400を含有する製剤(19-0155.0059/F1)で得られ、迅速な作用発現および長期の作用持続時間と共に最善の皮膚白化をもたらした。19-0155.0059/F1製剤で得られた皮膚白化プロファイルは、皮膚白化の作用速度、強度および持続時間に関する最善のバランスを示す。
【0164】
[実施例5]本発明に係る製剤における様々なポリマーの皮膚白化効果の評価
皮膚白化に対するいくつかの製剤の基剤の効果を、各種の低粘度ヒドロゲル製剤で試験した(表7)。また試験した製剤は、すべて安定性に関する利点を有するキサンタンガムを含む。
【0165】
【0166】
このようにして得られ、
図2に例示する結果に基づき、試験した2種の低粘度ヒドロゲルは、許容される皮膚白化プロファイルをもたらした。同一の溶媒系(20%PG+10%PEG-400)を2種の組成物それぞれで使用したが、ポリマーの組み合わせは、製剤19-0155.0100/F1が、KOLLIDON VA-64(登録商標)、NATROSOL HEC(登録商標)およびキサンタンガムを含有し、製剤19-0155.0101/F1が、キサンタンガムのみを含有するという点で異なる。製剤19-0155.0100/F1は、製剤19-0155.0101/F1よりも適用後の高い粘度および優れた皮膚接着を示した。
【0167】
製剤19-0155.0100/F1については、より顕著な白化、および製剤19-0155.0101/F1については、僅かに長い白化の傾向があった。
【0168】
組成物間の有意差は、感覚受容および乾燥時間に関して観察された。
【0169】
KOLLIDON VA-64(登録商標)、NATROSOL HEC(登録商標)およびキサンタンガムを含有する製剤19-0155.0100/F1は、適用時に若干べたつき、長い乾燥時間を必要とすることにより官能的品質がやや好ましさにかけるが、長期の作用持続時間、これによって長期の血管収縮剤の効果を可能にする。
【0170】
[実施例6]本発明に係る製剤における様々な抗酸化剤の皮膚白化効果の評価
本発明に係る組成物の開発において、好適な化学的安定性を保証することは必要である。pHは、化学的安定性をサポートするのに重要な要素である。予備研究および皮膚の天然のpHに基づき、目標値は、pH4.0~5.5とした。別の重要な要素は、酸化であり、酸化を防止または制御するための予備段階として、抗酸化剤のスクリーニングを含んだ。
【0171】
抗酸化剤選択方法の第1の工程は、抗酸化剤と目的の製剤との物理的適合性を評価することである。多くの有効な抗酸化剤、例えばブチルヒドロオキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピルおよびトコフェロールは、本質的に親油性である。そのため、これらの成分は、比較的容易に溶解するか、またはエマルションの典型的な油相と可逆的に適合する。しかし、これらの疎水性および低い水溶解度は、ヒドロゲルへの組込みを問題が多く、複雑なものにする。それにもかかわらず、予備試験のために、2種の抗酸化剤、BHAおよびトコフェロールを、より詳細には本発明による各種のヒドロゲル製剤でスクリーニングした。
【0172】
BHAは、バルク油と水中油型エマルションの両方で広範に用いられる脂溶性の高い抗酸化剤である。BHAは、抗微生物活性を有することが報告されており、他の抗酸化剤、例えばBHTおよびα-トコフェロールの再生を介した共抗酸化活性を示した。BHAは、BHTおよび没食子酸プロピルと、ならびに補足剤または共力剤(synergists)、例えばクエン酸と組み合わせてしばしば用いられる。
【0173】
天然ビタミンEは、RRR-α-トコフェロール(一般にd-α-トコフェロールとして公知である。)と称され、合成生成形態(synthetically produced form)は、オール-rac-α-トコフェロール(一般にdl-α-トコフェロールとして公知である。)である。α-トコフェロールは、親油性抗酸化剤であり、広範な生化学および生理的プロセスにおいて重要な役割を果たし、これは陽子供与体(proton donor)として選択された。α-トコフェロールは、ビタミンCおよび他の天然の抗酸化剤との相乗効果を有する。中性および酸性環境において再生するα-トコフェロールの効果も報告されている。
【0174】
親油性抗酸化剤用の可能性のある溶媒PGおよびPEG-400の存在にもかかわらず、1種または複数の追加の可溶化剤の使用が有利であり得る。可溶化剤として一般に用いられる2種の界面活性剤TWEEN80(登録商標)(ポリソルベート80)およびKOLLIPHOR RH40(登録商標)(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)をスクリーニングした。
【0175】
下記表8に、本実施例で試験した組成物を記載する。
【0176】
【0177】
欧州薬局方(B、BY、Y、R、GY)により標準化された参照溶液を用いた色評価を使用して、低粘度ヒドロゲルの色を評価した。活性剤酒石酸ブリモニジンは、pH依存性の黄色を付与し、透明なゲルは、色評価を促進する中間色(medium)を付与した。
【0178】
また、製剤は、2~3か月後、40℃で色強度の増加がごく僅かであったことから、十分な安定性を証明した。
【0179】
組成物のpHは、40℃で3か月の貯蔵後も4.5~5の許容される範囲内である。
【0180】
得られた結果から、0.1%BHAまたは0.1%トコフェロールを含有する製剤は、全て透明であった。
【0181】
一方、製剤19-0155.0125/F1は、外観が濁っており、これは、試験した他の組成物と比較して抗酸化剤(1%トコフェロール)のレベルの増加と関係があり得る。KOLLIPHOR RH40(登録商標)の濃度を、高トコフェロール負荷を可溶化するために増加させる必要がある。
【0182】
トコフェロール含有量を1%から0.5%に減少させた場合でも、組成物は濁りを示した(データは図示せず)。
【0183】
最終的に、高濃度の可溶化剤でも1%BHAを可溶化することはできなかった。
【0184】
高濃度トコフェロールの可溶化に関連する問題にも関わらず、製剤19-0155.0125/F1を、皮膚白化モデルにおいて表8の他の組成物でも試験して、皮膚白化に対する3%KOLLIPHOR RH40(登録商標)および1%トコフェロールの効果を評価した。この実施例で試験した組成物はすべて20%PG、4%グリセリン、10%PEG-400、0.2%キサンタンガムおよび1%KOLLIDON VA64(登録商標)を含有することに注意することが重要である。
【0185】
図3に、得られた結果を示す(3つの複製の平均±標準偏差に基づく)。
【0186】
0.1%BHAまたは0.1%トコフェロールおよび1.5%以下のTWEEN80(登録商標)または1%KOLLIPHOR RH40(登録商標)を含有する製剤はすべて、いわゆる対照製剤19-0155.0111/F1と同じように挙動した。これらの組成物それぞれが、同様の皮膚白化プロファイルを示し、2~4時間かけて最大スコア3.0を達成した。白化活性の速度も同様で許容されるものであり、スコアは、3時間後2.0以上であった。効果持続時間も非常に満足できるものであり、皮膚白化スコアは、24時間で0.5~1であった。したがって、これらの組成物は、優れた皮膚白化性能を提供するものであった。
【0187】
他方で、製剤19-0155.0125/F1は、他の組成物より挙動が著しく不十分であり、はるかに緩やかな発現、低いピークおよび短い白化時間を有するものであった。実際に、白化は、16時間後ベースラインに戻った。高濃度、すなわち3.0%のKOLLIPHOR RH40(登録商標)は、酒石酸ブリモニジンの熱力学的活性、ならびに一次および/または残留組成物からのその放出に関与し得、実際にそれを変化させ得ると仮定された。皮膚白化に対する同様の効果が、
図4に示すように、5%TWEEN80を製剤19-0155.0112/F1中0.1%BHAと組み合わせて使用した(表7)場合に観察された。
【0188】
得られた結果によれば、0.1%のBHAおよびトコフェロール以下の濃度の抗酸化剤は、物理的不安定性なしに、または皮膚白化の外観、強度もしくは持続時間を損なうことなく、1.5%のTWEEN80(登録商標)および最大1%のKOLLIPHOR RH40(登録商標)を含む本発明に係るヒドロゲル組成物に、有利に組み込むことができた。
【0189】
一方で、KOLLIPHOR RH40(登録商標)の濃度を3%に増加した場合、皮膚白化性能の著しい低下が観察された。
【0190】
[実施例7]インビボ血管収縮モデルを用いた、低粘度ヒドロゲルの様々な組成物の皮膚白化効果の評価
下記表9に、試験した低粘度ヒドロゲルの組成物および物理的安定性を示す。これらの製剤は、肯定的安定性および性能評価後の組成物19.0155-0101および19.0155-0121に基づくものである。
【0191】
【0192】
以下に記載するインビボ血管収縮プロトコルを用い、各組成物について3回試験した。
【0193】
60マイクロリットルの各組成物を、プラスチック製Oリングを用いて規定した10cm2の面積に、容積式ピペットを用いて上胸部に8a.m.に盲検無作為方式で1回適用した。
【0194】
適用後、30秒のマッサージが続き、続いて次に適用後の製品を10分間乾燥させた。
【0195】
0~3(3=最大)の従来のスケールでの白化スコアを、適用の1、2、3、4、8、10、12、14、16および24時間後に測定した。
【0196】
図5に、得られた結果を例示する。結果から、1.5%w/w酒石酸ブリモニジンを含む製剤は、血管収縮を示す高レベルの長期皮膚白化をもたらした。
【0197】
ヒドロゲル製剤は、いずれも(19-0155.0135/F1および19-0155.0134/F1)同様の血管収縮プロファイルをもたらした。血管収縮の程度も同様であり、1時間後に約1.5であり、約4時間後に最大値であった。血管収縮の強度は、適用後14時間まで約3.0のままであり、24時間後に1.0~1.5に低下した。
【0198】
[実施例8]
表10に列挙した酒石酸ブリモニジンおよびビヒクルを含む活性組成物について、UV誘発性紅斑モデルを用いて評価した。
【0199】
組成物を、以下に記載するプロトコルを用いて適用した。方法は、3人の健康なボランティアにおけるUV照射前の夜およびUV照射の2時間前の適用を含んだ。
【0200】
対象毎に個々の最小紅斑線量(MED)を、実験の24時間前に決定した。9つの小区域を各対象の背側胴体に定め、組成物を5mg/cm2の線量でこれらの区域に適用した。UV線量を1×MED(MEDまたはDEM[最小紅斑線量])、2×MED(2MED)および3×MED(3MED)で投与し、この線量に同化した。
【0201】
実験的な読み取りを、調査員の紅斑スコアおよびChromameter比色計を用いて照射の24時間後に行った。
【0202】
【0203】
【0204】
1.5%酒石酸ブリモニジンを含有する活性組成物は、ビヒクルと比較して、紅斑スコアの実質的な低下を示した。1.5%w/w酒石酸ブリモニジンを抗酸化剤と組み合わせた場合、抗紅斑効果に関する更なる利点が観察された。抗酸化剤モデルとして、BHAおよびα-トコフェロールを、0.1%および1%w/wの濃度で使用した。
【0205】
本発明に係るヒドロゲル組成物は、UV誘発性紅斑モデルにおいて有効な抗紅斑特性を示した。1.5%w/w酒石酸ブリモニジンを、抗酸化剤、BHAまたはα-トコフェロールと組み合わせた場合、追加の利点が、紅斑の処置および/または予防に関して観察された。酒石酸ブリモニジンを、1.0%の各抗酸化剤と組み合わせた場合、最も強力な抗紅斑効果が観察された。
【0206】
[実施例9]性能試験-インビボヒト皮膚白化(血管収縮)モデル
インビボ血管収縮モデルを研究に適合させ、効果の出現、振幅および持続時間について、本発明による局所製剤の性能を評価した。
【0207】
通常、製品は、前腕の腹側部に適用され、皮膚白化に基づき、0、1、2または3の任意スコアが割り当てられる。
【0208】
実施した試験は、
・皮膚白化モデルの実装および較正
・試験した各製剤の適用量の効果
・試験したヒドロゲル製剤における酒石酸ブリモニジンの負荷用量の効果
・皮膚白化モデルにおける皮膚白化に対する投薬頻度の効果
の段階的アプローチを含む。
【0209】
(皮膚白化試験方法論)
使用したモデルのパラメーターを記載する。
・製品を無作為に適用、8amに適用
・適用
・上胸部
・容積式ピペットを用いた60マイクロリットルの製剤
・プラスチックOリングを用いて規定された表面積(10cm2)
・製品の塗布後、30秒のマッサージおよび10分の乾燥時間
【0210】
(評価)
・ランク付けの時点で10ポイント
・適用の1、2、3、4、8、10、12、14、16および24時間後
・調査員の白化スコア:0~3(3=最大)のスケール
【0211】
(皮膚白化試験の設定および較正)
皮膚白化モデルの性能(感受性、特異性および範囲)を評価するために、いくつかの予備実験を、低粘度ヒドロゲル製剤ベースを用いて実施した。
【0212】
予備実験は
・標準試験面積に適用された被験項目の量、すなわち10cm2あたり60μl、30μlおよび15μl
・酒石酸ブリモニジンの負荷用量の変動、すなわち1.5%w/w、0.75%w/w、0.25%w/wおよび0.15%w/w
・投薬頻度/投薬スケジュール
の評価を含んでいた。
【0213】
(皮膚白化モデルにおけるヒドロゲル被験物質中の酒石酸ブリモニジンの負荷用量の効果)
下記表11に、使用した組成物の詳細を記載する。
【0214】
【0215】
モデルは、酒石酸ブリモニジンの濃度に関連する適当なランク順に製剤を配置することができた(
図7)。製剤を、最高から最低までの白化スコア
・1.5%酒石酸ブリモニジン>0.75%酒石酸ブリモニジン>0.25%酒石酸ブリモニジン~=0.15%酒石酸ブリモニジン
の順でランク付けした。
【0216】
この分類は、製剤
・19-0155.0111/F1>19-0155.0128/F1>19-0155.0129/F1~=19-0155.0130/F1
に等しい。
【0217】
1.5%の酒石酸ブリモニジンを含有する製剤19-0155.0111/F1は、最大の皮膚白化スコア3.0に到達する唯一の製剤であり、12時間が経過した後も1.0を上回ったままであった。
【0218】
[実施例10]皮膚白化モデルにおける参照製品の性能
皮膚白化モデル(血管収縮)を、皮膚白化/血管収縮をもたらすことが公知である参照医薬製品を用いて試験した。初期研究は
・MIRVASO(登録商標)ゲル(0.5%w/w酒石酸ブリモニジン)
・クロベタゾールプロピオン酸エステルクリーム、0.05%w/w
・Fahl(Effect of topical vasoconstrictor exposure upon tumoricidal radiotherapy.Int J Cancer;135(4):981~988、2014)によって用いられ、かつClearyら(Significant suppression of radiation dermatitis in breast cancer patients using a topically applied adrenergic vasoconstrictor.Radiation Oncology、2017)によって用いられた製剤と同様のノルエピネフリン塩酸塩溶液(70:30エタノール:水中82mg/ml)
を用いて行われた。
【0219】
皮膚白化モデルは、皮膚白化の外観、強度および持続時間に関して、各種の製剤中で適用されたいくつかの活性剤によってもたらされる皮膚白化能力の差別化を可能にする。
【0220】
モデルは、製剤スクリーニング段階で十分な再現性および識別性能を示す。
【0221】
クロベタゾールプロピオン酸エステルクリームは、皮膚白化に関わる明確に定義された製品/活性剤として選択された。実際に局所コルチコステロイドのインビボ有効性および生物学的同等性(1997FDA指針、https://www.fda.gov/media/70931/download)は、この血管収縮効果を用いて評価される。
【0222】
図8に、MIRVASO(登録商標)ゲル、クロベタゾールプロピオン酸エステルクリーム0.05%w/wおよびエピネフリンHCl溶液(70:30エタノール:水中82mg/ml)の皮膚白化データをグラフ形態で示す。
【0223】
MIRVASO(登録商標)ゲルは、著しい白化をもたらさなかった。これは、MIRVASO(登録商標)ゲルが、比較的薄く敏感な顔の皮膚に適用されて酒さを処置するために設計されたからであると予想された。原則として、酒さ患者の皮膚は敏感であるため、これらの製品は、高濃度の可能性のある皮膚浸透剤を含有しなかった。さらに、顔の皮膚は、胸部の皮膚より薄く、したがって、透過および浸透に対するバリアが低い。作用の強度および持続時間は、放射線誘発皮膚炎の所望の要望を満たすには不十分であった。
【0224】
ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)溶液は、適用の1時間後急速で中程度の皮膚白化をもたらしたが、効果は、4時間の観察間隔後に薄まり始めた。白化は、10時間後0.5以下であり、僅か16時間後にベースラインに戻った。初期効果は有望であったが、効果の持続時間および強度は不十分であった。
【0225】
極性分子ノルエピネフリンおよびその水性エタノールビヒクルとは異なり、クロベタゾールプロピオン酸エステルクリームは、作用の緩やかな発現を示し、14~16時間に2時間かけてピーク白化スコア2.0に漸増した。白化の急速な低下が16時間で開始し、24時間でベースラインに戻った。クロベタゾールの白化作用の緩やかな発現は、活性剤の物理的および化学的特性に関連し得、その親油性の性質が、リザーバーの形成およびより親水性のノルエピネフリンと比較して、生きた表皮におけるより限られた分布をもたらすことを意味する。また、血管収縮の薬力学的機序もクロベタゾールプロピオン酸エステルとノルエピネフリンで異なることに注意することが重要である。
【0226】
また、改質MIRVASO型製剤を、1.5%w/wの高用量の酒石酸ブリモニジン(19-0155-0098/F1))で調製した。この評価は、MIRVASOと同様のビヒクルにおける皮膚白化に対する増加用量の影響を評価するために行われた。同じ実験において、本発明に係る低粘度ヒドロゲル組成物(19-0155-101/F1)も同様の濃度で試験した。
図9に、2種の製剤の対応する皮膚白化の結果を示す。ノルエピネフリン溶液および市販のMIRVASO(登録商標)ゲル(0.5%酒石酸ブリモニジン)も、比較に含まれている。
【0227】
試験した組成物を上記表に記載する。
【0228】
改質MIRVASOゲル(1.5%酒石酸ブリモニジン 19-0155-0098/F1)は、市販のMIRVASO(登録商標)ゲル(0.5%酒石酸ブリモニジン)と比較して、皮膚白化の強度および持続時間の実質的な増加をもたらした。
【0229】
一方、皮膚白化の強度は、本発明による技術的問題を解決するための所望の長時間存続しなかった。
【0230】
この性能の制約と同様に、MIRVASOビヒクルも、放射線皮膚炎に適していない。前述したように、MIRVASOビヒクル中の二酸化チタン粒子の存在は、使用した高エネルギー電磁波に関連する放射線療法の線量を妨げ、破壊する。
【0231】
驚くべきことに、本発明による低粘度ヒドロゲル製剤(19-0155-101/F1)は、改質MIRVASOゲル(1.5%酒石酸ブリモニジン 19-0155-0098/F1)と比較して、作用の発現、ピーク効果および作用持続時間に関して改善された性能を提供した。
【0232】
本発明に係る低粘度ヒドロゲル製剤(19-0155-101/F1)は、適用の8時間後性能の著しい優位性を示した(
図9)。
【0233】
皮膚白化モデルの再現性は、製剤19-0155-101/F1の3つの複製に関連する小さい標準偏差によって示された(
図9中、結果は、3つの複製の平均±標準偏差として提示されている。)。
【0234】
[実施例11]
本実施例は、本発明に係るヒドロゲル組成物中のキサンタンガムの濃度を増加することから生じる利点を示すために、提供された。ヒドロゲル製剤19-0155.0163は、0.5%w/wキサンタンガムを含有し、試験した他の製剤19-0155.0135/F1および19-0155.0111/F1は、0.2%w/wキサンタンガムを含有する。表9及び表7に、製剤19-0155.0135/F1および19-0155.0111/F1の詳細を各々示し、下記表12に、製剤19-0155.0163について詳述する。
【0235】
【0236】
下記表13に、製剤190155.0163について得られた安定性データについて列挙する。
【0237】
【0238】
高濃度のキサンタンガム(例えば0.2%w/wと比較して0.5%)を含む本発明に係る組成物は、ヒドロゲルが適用部位で良好に保持されるため有利であった。
【0239】
一般に、増粘剤、例えばキサンタンガムのレベルの増加は、局所適用された半固体からの活性剤の経皮放出を低減する傾向がある。
【0240】
しかしながら、
図10に示すように、異なる濃度のキサンタンガムを含有する本発明に係るヒドロゲル組成物とMIRVASO(登録商標)製品とを比較して得られた皮膚白化スコアについて得られた結果(2回の反復の平均)によれば、キサンタンガムを0.5%の濃度で含む本発明に係る組成物190155.0163は、0.2%キサンタンガムを含む同様の組成物で得られたものに匹敵する、最善の結果をもたらした。
【国際調査報告】