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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ゴデット装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/06 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
D01D5/06 107
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551212
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2022053788
(87)【国際公開番号】W WO2022179908
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】102021000977.0
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス エーファーツ
(72)【発明者】
【氏名】マルセル レーア
【テーマコード(参考)】
4L045
【Fターム(参考)】
4L045AA05
4L045BA03
4L045DB07
(57)【要約】
本発明は、駆動されると共に一部の加熱されるゴデット周壁を有する複数のゴデットを備えた溶融紡糸装置用のゴデット装置に関する。ゴデットは、そのゴデット周壁が突出するように支持壁に保持されている。加熱されるゴデット周壁は、支持壁に保持された断熱ハウジングによって部分的に取り囲まれる。この断熱ハウジングの断熱作用に影響を与えるために、断熱ハウジングのハウジング壁のうちの少なくとも1つが、支持壁に取外し可能かつ交換可能に保持されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動されると共に一部の加熱されるゴデット周壁(3.1~3.8)を有する複数のゴデット(2.1~2.8)を備えた溶融紡糸装置用のゴデット装置であって、前記ゴデット(2.1~2.8)をそのゴデット周壁(3.1~3.8)でもって突出させて保持する支持壁(1)と、該支持壁(1)に保持され、前記ゴデット(2.2~2.6)の少なくとも一部の加熱されるゴデット周壁(3.2~3.6)を取り囲み、複数のハウジング壁(5,5.1)を有する断熱ハウジング(4)と、を備えるゴデット装置において、
前記断熱ハウジング(4)の前記ハウジング壁(5,5.1)のうちの少なくとも1つは、前記支持壁(1)に取外し可能かつ交換可能に保持されていることを特徴とする、ゴデット装置。
【請求項2】
前記支持壁(1)および/または前記断熱ハウジング(4)は、交換可能な前記ハウジング壁(5.1)を選択的に保持することができる複数の保持装置(6.1,6.2)を有することを特徴とする、請求項1記載のゴデット装置。
【請求項3】
前記保持装置(6.1,6.2)は、前記断熱ハウジング(4)の空間サイズが可変となるように互いに離間して形成されていることを特徴とする、請求項2記載のゴデット装置。
【請求項4】
前記断熱ハウジング(4)の前記空間サイズは、それぞれ異なる個数の加熱されるゴデット周壁(3.2~3.6)を収容するために可変であることを特徴とする、請求項3記載のゴデット装置。
【請求項5】
前記断熱ハウジング(4)の側方で前記支持壁(1)にカバーハウジング(7)が保持されており、該カバーハウジング(7)によって、前記ゴデット(2.2~2.6)の、前記断熱ハウジング(4)の外部に配置された複数のゴデット周壁(3.2~3.6)が取囲み可能であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のゴデット装置。
【請求項6】
交換可能な前記ハウジング壁(5.1)は、前記断熱ハウジング(4)と前記カバーハウジング(7)との間に配置されていることを特徴とする、請求項5記載のゴデット装置。
【請求項7】
前記ゴデット(2.2~2.6)の前記加熱されるゴデット周壁(3.2~3.6)は、前記断熱ハウジング(4)の内部に、糸群(11)を緩和するための緩和ゴデットとして形成されており、選択的に2つまたは3つの緩和ゴデットが糸走路に対して保持されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のゴデット装置。
【請求項8】
前記ゴデット(2.2~2.6)の前記加熱されるゴデット周壁(3.2~3.6)は、前記断熱ハウジング(4)の外部に前延伸ゴデットとして形成されており、選択的に3つまたは2つの前延伸ゴデットが糸走路に対して保持されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のゴデット装置。
【請求項9】
前記緩和ゴデット(2.2~2.6)と前記前延伸ゴデット(2.2~2.6)との間に、糸群(11)を延伸するための延伸ゾーンが形成されていることを特徴とする、請求項7または8記載のゴデット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、複数のゴデットを備えた溶融紡糸装置用のゴデット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に記載したゴデット装置は、例えば国際公開第2015/049316号に基づき公知である。
【0003】
溶融紡糸プロセスにて合成糸を製造する場合には、合成糸の延伸と、内部応力を減少させるための糸の緩和とが、ゴデット装置によって行われる。このようなゴデット装置は、一部の加熱されないゴデット周壁と、一部の加熱されるゴデット周壁とを備えた複数のゴデットを有している。これらのゴデットの加熱されるゴデット周壁は、糸を温度調整するために用いられ、これによって糸材料が延伸温度に加熱され、内部応力を減少させるために糸材料が緩和温度に加熱される。このとき、ゴデット周壁は、その都度の処理状態に応じて、それぞれ異なる表面温度を有している。この場合には、コンパクトな配置形態に基づき、温度管理することで周辺からゴデットのゴデット周壁に可能な限り影響が与えられていないことが必要となる。したがって、ゴデット周壁が周辺に対して断熱されて配置されることが知られている。それにもかかわらず、コンパクトな配置形態を維持することができるようにするために、温度調整されるゴデット周壁を取り囲む断熱ハウジングが使用される。
【0004】
このために、公知のゴデット装置では、より高い温度で加熱されるゴデット周壁が、断熱ハウジングの内部に配置されている。より低い表面温度を有するゴデット周壁を備えた加熱されるゴデットは、断熱ハウジングの外部に保持されていて、公知のゴデット装置では、カバーハウジングによって周辺から分離されている。このために、ゴデットと、断熱ハウジングと、カバーハウジングとは、支持壁に保持されている。この場合、カバーハウジングと断熱ハウジングとは、ゴデット周壁の周面での糸群の糸走行を可能にするために、糸開口を有している。
【0005】
製品変更によって、ゴデットの表面温度に影響を与える糸群の熱処理を変えることが要求される際には、場合によって付加的な断熱手段が必要となる。
【0006】
しかしながら、先行技術では、全ての加熱されるゴデットが断熱ハウジングの内部に配置されているゴデット装置も知られている。このようなゴデット装置は、独国特許出願公開第102013211809号明細書に基づき公知である。断熱ハウジングの内部には、ゴデット周壁同士を互いに断熱するために、複数の断熱要素が設けられている。しかしながら、このことは、いずれにせよ複数のゴデット周壁を互いに等しい表面温度で作動させる場合には、装置上の手間を増加させてしまう。
【0007】
しかしながら、ゴデット装置またはゴデット装置の一部が交換可能に機械フレームに保持されているゴデット装置も知られている。このようなゴデット装置は、独国特許出願公開第102017011183号明細書に記載されている。したがって、製品変更に際して糸を延伸しかつ緩和するために、大がかりな組換え作業が必要となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題は、冒頭に記載した形態の溶融紡糸装置用のゴデット装置を改良して、多種多様な合成糸を、可能な限り少ない装置上の手間でかつ手間を要する組換え作業なしに延伸しかつ緩和することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明によれば、断熱ハウジングのハウジング壁のうちの少なくとも1つが、支持壁に取外し可能かつ交換可能に保持されていることによって解決される。
【0010】
本発明の有利な改良形態は、各々の従属請求項の特徴および特徴の組合せによって定義してある。
【0011】
本発明は、完全延伸糸を製造するために、ゴデットの加熱されるゴデット周壁を実質的に2つのグループに分割することができるということに基づいている。各々のグループは複数の加熱されるゴデット周壁を備えている。この場合、それぞれ延伸および緩和のために使用されるゴデット周壁の個数しか変えられない。したがって、通常、収縮処理のための糸の後処理は、最大3つのゴデット周壁または代替的に2つのゴデット周壁によって実施される。必要に応じて、それぞれ異なる個数のゴデット周壁を断熱ハウジング内で断熱するために、本発明によれば、断熱ハウジングの複数のハウジング壁のうちの少なくとも1つを取り外して交換することができる。したがって、断熱ハウジングのハウジング壁のうちの1つが、取外し可能かつ交換可能に支持壁に保持されている。
【0012】
それぞれ等しい表面温度を有するゴデット周壁の個数が変えられる際には、支持壁および/または断熱ハウジングが、交換可能なハウジング壁を選択的に保持することができる複数の保持装置を有する本発明の改良形態が好適に実施されている。したがって、ゴデット周壁の個数に応じて、それぞれ異なる遮蔽を断熱ハウジングの内部で実現することができる。
【0013】
保持装置が、断熱ハウジングの空間サイズが可変となるように互いに離間して形成されている本発明の改良形態が特に有利である。したがって、保持装置は、糸入口開口を通してしか隣り合ったゴデットに対してアクセスすることができない閉鎖された断熱ハウジングを形成する交換可能なハウジング壁のそれぞれ1つの位置を保証している。
【0014】
溶融紡糸プロセスにて完全延伸糸を製造するためには、断熱ハウジングの空間サイズが、それぞれ異なる個数の加熱されるゴデット周壁を収容するために可変である本発明の改良形態が特に有利であると判った。これによって、ゴデット周壁を位置不変に配置したまま、糸の延伸および緩和をそれぞれ異なる個数のゴデットによって実施することが可能となる。
【0015】
オペレータを保護しかつ生じる蒸気を回避するために、さらに、断熱ハウジングの側方で支持壁にカバーハウジングが保持されており、このカバーハウジングによって、ゴデットの、断熱ハウジングの外部に配置された複数の加熱されるゴデット周壁が取囲み可能であることが特定されている。
【0016】
この場合、交換可能なハウジング壁が、断熱ハウジングとカバーハウジングとの間に配置されている本発明の改良形態が特に有利である。したがって、選択的にカバーハウジングまたは断熱ハウジングを拡大または縮小することができる。
【0017】
合成糸における緩和および応力減少のためには、ゴデット周壁に120~160℃、好ましくは130~160℃の範囲内の比較的高い表面温度が必要となるので、ゴデットの加熱されるゴデット周壁が、断熱ハウジングの内部に、糸群を緩和するための緩和ゴデットとして形成されており、選択的に2つまたは3つの緩和ゴデットが糸走路に対して保持されている本発明の改良形態が特に有利である。ただ1つの加熱されるゴデット周壁による変更だけで、互いに異なる糸タイプおよびプロセスを実施することが可能となる。したがって、完全延伸糸を乾燥状態で延伸しかつ緩和することが知られている。また、このような完全延伸糸を湿潤状態で延伸しかつ緩和することも知られている。ただし、各々の方法タイプには、互いに異なる個数の緩和ゴデットが必要となる。
【0018】
したがって、ゴデット周壁の加熱されるゴデットが、断熱ハウジングの外部に、有利には前延伸ゴデットとして形成され、選択的に3つまたは2つの延伸ゴデットが糸走路に対して保持されている。したがって、このために、5つの加熱されるゴデットの位置不変の配置を利用することができ、これによって、互いに異なる糸タイプおよび互いに異なる製造プロセスを実施することができる。
【0019】
この場合、緩和ゴデットと前延伸ゴデットとの間に、有利には、糸群を延伸するための延伸ゾーンが形成されている。前延伸ゴデットと緩和ゴデットとの分割に応じて、延伸ゾーンを変位させることができる。
【0020】
したがって、本発明に係るゴデット装置は特にフレキシブルに使用可能であり、これによって、ゴデットを位置不変に配置しつつ、合成糸が延伸されかつ緩和される。
【0021】
以下に、本発明を幾つかの実施例に基づき添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1.1】複数の作動状況における本発明に係るゴデット装置の第1の実施例の概略図である。
図1.2】複数の作動状況における本発明に係るゴデット装置の第1の実施例の概略図である。
図2図1に示した実施例の断熱ハウジングの概略的な横断面図である。
図3.1】本発明に係るゴデット装置の別の実施例の概略図である。
図3.2】本発明に係るゴデット装置の別の実施例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1.1および図1.2には、本発明に係るゴデット装置の第1の実施例が概略図で示してある。この実施例は、溶融紡糸装置にて完全延伸糸(FDY)を製造するために使用される複数のゴデットの典型的な配置形態を示している。両図のうちの一方について明示的に言及しない限り、以下の説明は両図に当てはまる。
【0024】
図示の実施例は複数のゴデット2.1~2.8を有している。これらのゴデット2.1~2.8は、予め規定された糸走路に対して配置されている。この糸走路は糸群11によって示してある。ゴデット2.1~2.8は、それぞれ駆動されるゴデット周壁3.1~3.8が支持壁1の前面に対して突出しているように、支持壁1に配置されている。ゴデット2.1~2.8の駆動装置(図示せず)は支持壁の裏面に配置されている。このような構造形態のゴデット装置は十分に公知であり、例えば国際公開第2015/049316号に詳しく記載されているため、本明細書では引用した同号を参照するものとし、その他、駆動装置の配置形態についてさらに説明しないことにする。
【0025】
糸群11における糸を互いに比較的狭幅の糸間隔を置いて1回の巻掛けでゴデット周壁3.1~3.8を介して案内するために、通常、第1のゴデット2.1の上流に走入装置(図示せず)が配置されている。このような走入装置は、コームヤーンガイドと、切断装置と、吸引装置とを有しており、これによって、糸切れの際、溶融紡糸装置から到来した糸をまとめて導出することができる。これについても、引用した同号を参照するものとする。
【0026】
糸群11を溶融紡糸プロセスにおいて延伸しかつ緩和するために、それぞれ加熱されるゴデット周壁3.2~3.6を備えた全部で5つのゴデット2.2~2.6が設けられている。残りのゴデット2.1,2.7,2.8は大幅に縮径されて形成されており、加熱されないゴデット周壁3.1,3.7,3.8を備えて形成されている。
【0027】
ゴデット2.1~2.8は、支持壁1に位置不変に配置されて保持されており、糸群11用の規定の糸走路を形成している。ゴデット周壁3.1~3.8には、糸群11が1回巻き掛けられる。この場合、巻掛け角は、加熱されるゴデット周壁3.2~3.6では、それぞれ160°~360°、特に好適には180°~360°の範囲内にある。その際、ゴデット周壁3.1~3.8の周速度は、プロセスに応じて、割り当てられた駆動装置によって個別に制御可能である。また、ゴデット2.2~2.6内に設けられゴデット周壁3.2~3.6を加熱するための加熱手段も個別に制御可能であり、これによって、糸群11を熱処理するための予め規定の表面温度が維持される。ゴデット2.2~2.6の加熱されるゴデット周壁3.2~3.6は、互いに分離されて断熱ハウジング4内に部分的に配置されており、これによって、ゴデット周壁3.2~3.6同士の間の小さな間隔に基づく表面温度の相互の影響が阻止される。断熱ハウジング4は、断熱材料から形成された複数のハウジング壁5によって形成されている。
【0028】
断熱ハウジング4の側方に並んで、カバーハウジング7が割り当てられている。このカバーハウジング7によって、加熱されるゴデット周壁3.2,3.3が断熱ハウジング4の外部で覆われており、周辺に対して遮蔽されている。この実施例では、カバーハウジング7は断熱ハウジング4の側方に保持されている。この断熱ハウジング4とカバーハウジング7とは一緒に支持壁1に保持されている。断熱ハウジング4とカバーハウジング7とは、支持壁1におけるゴデット2.2~2.6のゴデット周壁3.2~3.6を完全に取り囲むように、支持壁1に対して突出している。断熱ハウジング4とカバーハウジング7とは、互いに別個にまたは一緒にドアによって閉鎖されてよい。
【0029】
糸群11を案内するために、カバーハウジング7と断熱ハウジング4とは複数の糸開口8.1~8.3を有している。糸開口8.1は、ゴデット周壁3.1,3.2の間でカバーハウジング7のハウジング壁7.1に形成されており、糸開口8.2,8.3は、断熱ハウジング4のハウジング壁5に形成されている。このために、カバーハウジング7と断熱ハウジング4との間で、この断熱ハウジング4に、交換可能なハウジング壁5.1が形成されている。この交換可能なハウジング壁5.1は、保持装置6.1によって断熱ハウジング4に保持されているかまたは直に支持壁1に保持されている。保持装置6.1は、交換可能なハウジング壁5.1が断熱ハウジング4に取外し可能に結合されるように形成されている。保持装置6.1に加えて、更なる保持装置6.2が断熱ハウジング4に形成されているかまたは直に支持壁1に形成されている。保持装置6.1,6.2は、互いに離間して断熱ハウジング4に形成されている。この場合、ハウジング壁5.1は、選択的に保持装置6.1または保持装置6.2に保持されている。ハウジング壁5.1の配置は、糸群11を延伸しかつ緩和するためのその都度のプロセスおよび糸タイプに左右される。
【0030】
断熱ハウジング4およびカバーハウジング7よりも下側には、それぞれ加熱されないゴデット周壁3.7,3.8を備えたゴデット2.7,2.8が配置されている。糸群11の、ゴデット周壁3.7,3.8により展開された走行平面は、通常、後処理のために使用される。したがって、ゴデット周壁3.7の上流には、好ましくは、糸群11の糸を流体によって湿潤させるための湿潤装置が配置されている。ゴデット周壁3.7,3.8の間では、好ましくは、糸を巻き上げてパッケージを形成する前に糸群11の糸に糸結合を得るために、交絡装置が使用される。このような装置は図示もしていなければ、詳しく説明もしていない。これについては、ここでも同じく、引用した国際公開第2015/049316号を参照するものとする。
【0031】
図1.1には、ハウジング壁5.1の第1の配置形態が示してある。断熱ハウジング4のハウジング壁5.1は保持装置6.1に配置されており、カバーハウジング7と断熱ハウジング4との間に糸入口を形成している。ハウジング壁5.1のこの配置形態では、断熱ハウジング4が、全部で3つの加熱されるゴデット周壁3.4,3.5,3.6を取り囲みかつ断熱するために、最大の空間サイズを有している。上流に配置された加熱されるゴデット周壁3.2,3.3は、カバーハウジング7内に保持されている。
【0032】
糸群11の糸を延伸しかつ緩和するためには、まず、ゴデット周壁3.2,3.3において糸の予熱が行われる。このために、ゴデット周壁3.2,3.3は、例えば、それぞれ50℃~110℃、特に好適には60℃~80℃の表面温度を有している。糸群を前もって熱処理するためのこれらのゴデットは、前延伸ゴデットと呼ぶこともできる。このために、この前延伸ゴデット2.2,2.3はカバーハウジング7によって遮蔽される。
【0033】
糸を延伸するために必要な差速度は、ゴデット周壁3.3と3.4の間で発生する。これに関して、糸は、真ん中のゴデット2.4のゴデット周壁3.4の入口で延伸される。延伸後、糸群11の糸に緩和ひいては応力減少が直接開始され、したがって、ゴデット周壁3.4の表面温度が、例えば160℃の温度に加熱されている。糸群11の糸における応力減少のために、ゴデット2.4~2.6のゴデット周壁3.4~3.6は、ほぼ等しい周速度および/または同一の表面温度で作動する。ゴデット2.4~2.6のゴデット周壁3.4~3.6は、1~5%だけ低下した周速度および/または10~70%だけ低下した表面温度で作動されてよい。糸群を緩和するために使用されるゴデットを、本明細書では緩和ゴデットとも呼ぶ。これに関して、ゴデット周壁3.4~3.6を備えた全部で3つの緩和ゴデット2.4~2.6が、断熱ハウジング4の内部に配置され、支持壁1に断熱されて保持されている。
【0034】
図1.1に示した、カバーハウジング7および断熱ハウジング4の内部での加熱されるゴデット周壁3.2~3.6の配置形態および分配形態は、好ましくは、糸が乾燥状態で紡糸装置から引き出されるプロセスのために使用される。
【0035】
図1.2には、ゴデット2.1~2.8が同じ形態で配置された実施例が示してある。この実施例では、断熱ハウジング4の交換可能なハウジング壁5.1が、保持装置6.2に保持されている。これによって、断熱ハウジング4の空間サイズが縮小し、糸入口8.2が、糸走路においてゴデット周壁3.4,3.5の間に形成されている。したがって、ゴデット2.5,2.6のゴデット周壁3.5,3.6だけが、残りのゴデット2.2~2.4に対して断熱されて断熱ハウジング4の内部に配置されている。この断熱ハウジング4の外部に配置されたゴデット周壁3.2~3.4は、カバーハウジング7内にかつ断熱ハウジング4の開放領域内に配置されている。
【0036】
図1.2に示した断熱ハウジング4の構成の実施例では、糸群11を延伸のために必要な延伸温度に加熱するために、ゴデット2.2~2.4が前延伸ゴデットとして使用される。糸群の延伸は、糸走路においてゴデット周壁3.4,3.5の間で行われる。
【0037】
緩和のために、ゴデット周壁3.5,3.6が、緩和ゴデット2.5,2.6として断熱ハウジング4の内部に配置されている。断熱ハウジング4のこの構成は、好ましくは、糸を湿潤状態で紡糸装置から引き出すプロセスで使用される。
【0038】
図1.1および図1.2に示した保持装置6.1,6.2は、種々異なる構造的な構成で断熱ハウジング4に直に形成されていてもよいし、支持壁1に形成されていてもよい。1つの可能な実施例が図2に概略的に示してある。図2には、支持壁1に保持された断熱ハウジング4の一部が示してある。断熱ハウジング4は、ハウジング壁5を介して支持壁1に保持される。保持装置6.1は差込み接続装置9として形成されている。このために、断熱ハウジング4の壁5が複数の差込み開口9.1を有している。これらの差込み開口9.1内には、交換可能なハウジング壁5.1の複数の保持突起10が保持されている。したがって、ハウジング壁5.1を簡単に着脱することができる。この場合、差込み開口9.1は、延長のために、対応するように支持壁1にも形成されていてよい。しかしながら、代替的には、保持装置6.1を支持壁1に直に形成することも可能である。
【0039】
図3.1および図3.2には、本発明に係るゴデット装置の別の実施例が複数の作動状況で示してある。図3.1および図3.2に示した実施例は、ゴデット2.1~2.8および断熱ハウジング4ならびにカバーハウジング7の配置形態に関して、図1.1および図1.2に示した実施例と同一に形成されている。この限りにおいて、ここでは前述した実施例との違いだけを説明し、その他の点については前述した説明を参照するものとする。
【0040】
図3.1および図3.2に示した実施例では、断熱ハウジングに、交換可能なハウジング壁5.1を取り付けるためのただ1つの保持装置6.1しか設けられていない。この保持装置6.1に対して離間して、断熱ハウジング4の内部に断熱性の分離壁5.2が配置されている。この分離壁5.2はハウジング壁5と共にゴデット周壁3.4,3.5の間に糸入口8.3を形成している。
【0041】
保持装置6.1には、ハウジング壁5.1が取外し可能かつ交換可能に保持されており、これによって、ゴデット2.4のゴデット周壁3.4を選択的に単独で断熱して保持することができる。この状況は図3.1に示してある。
【0042】
図3.1から明らかであるように、ハウジング壁5.1は、カバーハウジング7を断熱ハウジング4から分離して糸入口8.2を形成している。したがって、ゴデット周壁3.4~3.6は断熱ハウジング4の内部に配置されている。この場合、ゴデット周壁3.4は別個に断熱されて保持されている。したがって、糸群11の延伸および緩和のために、全部で2つの前延伸ゴデット2.2,2.3がカバーハウジング7内に提供され、全部で3つの緩和ゴデット2.4~2.6が断熱ハウジング4内に提供される。
【0043】
図3.2に示した作動状態では、ハウジング壁5.1は取り外されており、これによって、カバーハウジング7に対するゴデット周壁3.4の領域が開放されている。したがって、断熱ハウジング4のこの構成では、糸群11の延伸および緩和のために、全部で3つの前延伸ゴデット2.2~2.4と、全部で2つの緩和ゴデット2.5,2.6とが提供される。
【0044】
ここで念のために明示的に述べておくと、図示の実施例では、断熱ハウジングの内部に配置されたゴデット周壁の各々の個数は一例である。また、カバーハウジングの内部のゴデットの個数も一例である。本発明に係るゴデット装置にとって重要なのは、取外し可能かつ交換可能なハウジング壁によって断熱ハウジングの断熱作用を変えることである。
図1.1】
図1.2】
図2
図3.1】
図3.2】
【国際調査報告】