(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240208BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240208BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240208BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240208BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240208BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240208BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240208BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240208BHJP
A61K 31/4365 20060101ALI20240208BHJP
A61K 31/616 20060101ALI20240208BHJP
A61K 31/727 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P7/02
A61P9/10
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/04
A61P43/00 111
A61K31/4365
A61K31/616
A61K31/727
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574302
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 US2022016571
(87)【国際公開番号】W WO2022177968
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523311683
【氏名又は名称】セレコー・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CeleCor Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】カラー,バリー エス
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン,シー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ファント ホフ,アルナウト ウェー イェー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076DD22
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD42
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB29
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4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA54
4C086ZC42
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、血栓性障害を処置または予防するための方法であって、必要とする対象に、有効量の化合物(1)、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を、0.01~0.3mg/kg(両端を含む)の範囲の用量で投与することを含む方法に関する。本開示はさらに、このような方法において使用する組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血栓性障害を処置または予防するための方法であって、必要とする対象に、有効量の化合物(1)、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を、0.01~0.3mg/kg(両端を含む)の範囲の用量で投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記用量は、0.05~0.25mg/kg(両端を含む)の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記用量は、0.075~0.15mg/kg(両端を含む)の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記用量は、0.09~0.15mg/kg(両端を含む)の範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記用量は、0.1~0.15mg/kg(両端を含む)の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記血栓性障害は心筋梗塞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記血栓性障害はST上昇型心筋梗塞(STEMI)である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を注射によって投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記注射は筋肉注射である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記注射は皮下注射である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、溶液、懸濁液、または乳濁液の形態で投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を溶液の形態で投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液中の前記化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、0.01~100mg/mL(両端を含む)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記濃度は、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、約24mg/mL、または約25mg/mLである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶液はさらに、酢酸、塩化水素酸、クエン酸、グリセリン、及び水のうちの1つ以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩の投与によって、注射後t=0、t=1時間、t=1日、t=3日、またはt=1ヶ月において前記対象における最小の注射部位反応となる、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記対象は前記血栓性障害の1つ以上の症状を経験しており、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、症状の発症の30分~6時間以内に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記血栓性障害はSTEMIであり、前記症状は、胸痛または不快感、息切れ、目まいまたはふらつき、吐き気または嘔吐、発汗、動悸、及び不安または恐怖から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
処置することは、冠状動脈血流を少なくとも部分的に回復させるかまたは維持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、好ましくは1~5時間以内に、心筋梗塞における血栓溶解(TIMI)フレーム数またはTIMI流量の改善を達成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、少なくとも5時間以内、好ましくは1~5時間以内に、TIMIフレーム数またはTIMI流量の改善を達成することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、好ましくは1~5時間以内に、安定した血小板数を維持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、好ましくは5~90分(たとえば、15分)以内に血小板凝集の≧80%阻害を達成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、好ましくは1~5時間以内に、ST偏差分解能の改善(ベースラインと比較して≧70%)を達成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
処置することは、単回皮下注射後の残留ST偏差の減少を達成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
処置することは、全死因死、再発性心筋梗塞(MI)、緊急標的血管血行再建術(TVR)、または単回皮下注射後の静脈内(IV)αIIbβ3アンタゴニストもしくはIV P2Y12アンタゴニストの盲検救済使用の複合改善を達成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
処置することは、単回皮下注射後の急性ステント血栓症の減少を達成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、30日以内に、前記対象において死亡が発生しないことを達成することを含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、30日以内に、前記対象において脳卒中が発生しないことを達成することを含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、30日以内に、前記対象において心筋梗塞(MI)が再発しないことを達成することを含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、24時間まで、前記対象において急性ステント血栓症がないことを達成することを含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、30日以内に、前記対象において新規の心不全発症または心不全に対する再入院がないことを達成することを含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、24時間において、ピークの高感度心筋トロポニンT(hs-cTnT)が正常の上限の10倍未満であることを達成することを含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
化合物(1)またはその薬学的に許容される塩の第2の用量を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
P2Y12阻害剤、たとえば、チカゲロル、プラスグレル、またはクロピドグレルを前記対象に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記対象にアスピリンを投与することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記対象にアスピリン及びP2Y12阻害剤を投与することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記対象にアスピリン、P2Y12阻害剤、及びヘパリンを投与することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記対象にアスピリンが、たとえば、症状の発症前に、または症状の発症後だが投与前に投与されている、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記対象にヘパリンを投与することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記対象は冠状動脈疾患の病歴を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記対象は安定した冠状動脈疾患を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮出願第63/150,301号(2021年2月17日に出願)に対する米国特許法第119(e)条に基づく優先権を主張する。なお、この文献の内容は、その全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞(MI)(心臓発作として広く知られる)は、心臓の一部への血流が減少または停止して心筋に損傷を与えるときに発生する。世界中で、2015年に約1590万件の心筋梗塞が発生し、300万人以上がST上昇MI(STEMI)を患っていた。MIが原因で死亡する人のうち、約半分がその最初の症状から1時間以内に、病院に到着できる前に死亡する。心臓動脈が閉じている時間と心臓発作の重症度及び生存の可能性との間には直接的な関係がある。したがって、病院前処置が重要である。過去40年において、院内のSTEMI死亡率は劇的に低下したが、病院前の死亡率は変わっていない。
【0003】
P2Y12アンタゴニストの経口投与は、医療的ケアの最初の時点(たとえば救急車内)でアスピリンとともに投与されるが、効果はない。なぜならば、これらの薬剤は、STEMIにおいて最大の効果に達するまで数時間を必要とするからである。αIIbβ3(GPIIb/IIIa)アンタゴニストの早期静脈内投与によって臨床転帰は改善するが、最初のボーラス投与とそれに続く持続注入が必要である。
【0004】
病院などの介護施設への搬送には1時間以上かかる可能性があるため、MI患者が介護施設に到着する前に血小板機能の高度な阻害を達成するために投与できる即効性の治療が緊急に必要とされている。さらに、出血のリスクを減らすために、現在の標準治療など、広く同時投与される経口P2Y12アンタゴニストの効果がその最大効果に達するにつれて、即効性治療の抗血小板作用が減少することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、本明細書では、血栓性障害を処置または予防するための方法であって、必要とする対象に、有効量の化合物(1)、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を、0.01~0.3mg/kg(両端を含む)の範囲の用量で投与することを含む方法が提供される。ある実施形態では、血栓性障害はST上昇型心筋梗塞(STEMI)である。ある実施形態では、化合物(1)を、酢酸、塩化水素酸、グリセリン、及び水を含む溶液の形態で投与する。ある実施形態では、化合物(1)を凍結乾燥固体製剤の形態で投与する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】化合物(I)によって処置したSTEMI患者における化合物(1)(RUC-4)によるVerifyNowで測定したPAR1/PAR4誘発血小板凝集(BASEチャネル)の阻害を示す図である。
【
図2】94.3kgの個体に対する用量レベルによる化合物(I)に対する平均シミュレーション応答時間関係を示す図である。
【
図3】化合物(1)(RUC-4)を測定するためのVerifyNow及び光透過凝集測定法の同等性を示す図である。
【
図4】関連する受容体リガンド相互作用を含む血小板凝集の概略図である。
【
図5】A及びBは、健康な対象(5A)及びアスピリンで安定した冠状動脈疾患を有する対象(5B)において光透過凝集測定法によって測定した化合物(1)(RUC-4)によるADP誘発血小板凝集の阻害を示す図である。
【
図6】化合物(1)(RUC-4)及びチカゲロル(P2Y12阻害剤)の薬力学を示し、STEMIの処置におけるそれらの相補的効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
RUC-4は、血小板αIIbβ3受容体の阻害剤であり、米国特許第9,303,044号に記載されている。なおこの文献は、参照により本明細書に組み込まれている。本開示では、RUC-4を化合物(1)と言う。機構的に、RUC-4は、αIIbβ3へのリガンド結合の阻害を、αIIbサブユニット及びβ3サブユニットの両方に結合し、リガンド結合に必要な(MIDAS)イオン依存性接着部位からMg2+金属を置換することによって行う。これにより、受容体のβ3サブユニットがその不活性構造内に固定される。これにより、血小板減少の可能性が減る場合がある。なぜならば、データが示すところによれば、現在のαIIbβ3アンタゴニストによって生じる血小板減少のほとんどは、薬剤の結合によって誘発される受容体の構造に対する抗体の存在によるものだからである。血小板減少は、現在のすべての薬剤の潜在的に危険な副作用のうちの1つである(~0.5-2%)。またRUC-4は、薬剤レベルが低下するとリガンド結合及び血小板凝集をもたらし得る高親和性結合立体構造を誘導するエプチフィバチド及びチロフィバンなどの抗凝血剤と比べて、高い有効性を示し得る。
【0008】
一態様では、本明細書では、血栓性障害を処置または予防するための方法であって、必要とする対象に、有効量の化合物(1)、
【化2】
またはその薬学的に許容される塩を、0.01~0.3mg/kg(両端を含む)の範囲の用量で投与することを含む方法が提供される。
【0009】
血栓性障害
ある実施形態では、血栓性障害は心筋梗塞(MI)である。ある実施形態では、血栓性障害はSTセグメント上昇心筋梗塞(STEMI)であり、ST上昇型心筋梗塞とも言われる。ある実施形態では、血栓性障害は非STセグメント上昇心筋梗塞(NSTEMI)である。ある実施形態では、血栓性障害は急性冠症候群(ACS)である。ある実施形態では、血栓性障害は脳卒中である。ある実施形態では、血栓性障害は不安定狭心症である。ある実施形態では、血栓性障害は、大血管または微小血管血栓症であって、多様な群の誘発事象によって生じ、1つ以上の臓器または移植されたもしくは体外の人工材料(たとえば、網膜、腎臓、心臓弁、血管シャントもしくは瘻孔、左室補助人工心臓、または動脈瘤の処置に使用される血管内脳コイル状ワイヤ)に影響を与える、大血管または微小血管血栓症である。
【0010】
投与量
ある実施形態では、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩の用量は、遊離(すなわち、非塩)形態の化合物(1)の量に関して規定される。ある実施形態では、用量は0.01~0.3mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.05~0.3mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.1~0.3mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.15~0.3mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.2~0.3mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.25~0.3mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.01~0.2mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.05~0.2mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.1~0.2mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.15~0.2mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.01~0.15mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.05~0.15mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.1~0.15mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.07~0.075mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.08~0.085mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.09~0.095mg/kg(両端を含む)の範囲である。ある実施形態では、用量は0.07mg/kgである。ある実施形態では、用量は0.075mg/kgである。ある実施形態では、用量は0.08mg/kgである。ある実施形態では、用量は0.085mg/kgである。ある実施形態では、用量は0.09mg/kgである。ある実施形態では、用量は0.095mg/kgである。ある実施形態では、用量は0.10mg/kgである。ある実施形態では、用量は0.11mg/kgである。ある実施形態では、用量は0.12mg/kgである。ある実施形態では、用量は0.13mg/kgである。ある実施形態では、用量は0.14mg/kgである。ある実施形態では、用量は0.15mg/kgである。
【0011】
ある実施形態では、本方法は、化合物(1a)と称される化合物(1)の酢酸塩を対象に投与することを含む。ある実施形態では、酢酸塩は一酢酸塩である。ある実施形態では、酢酸塩は二酢酸塩である。
【0012】
用量の選択
用量の選択と関連していくつかの因子が考慮される。投与の15分以内に血小板凝集の高度な阻害(たとえば、少なくとも80%)を一貫して達成する必要がある。特に出血のリスクが最も高い低体重の人(たとえば、高齢の女性)において、出血のリスクを最小限にする必要がある。また、化合物(1)が存続すること、たとえば、少なくとも50%の血小板機能阻害を120分まで維持することも望ましい。
【0013】
しかし、化合物(1)に起因する抗血小板作用の決定は、アスピリン、チカグレロル、及び化合物(1)以外のαIIbβ3アンタゴニストなどの、他の抗血小板薬の存在によって混乱する場合がある。したがって、化合物(1)の効果を他の抗血小板薬の効果と区別できるアッセイが必要である。
【0014】
光透過凝集測定法(LTA)は、その臨床転帰との関連性から、化合物(I)などの抗血小板薬の効力を評価するためのゴールドスタンダードアッセイであると考えられる。
図4に例示するように、ADP、iso-TRAP、及びアラキドン酸(AA)などの活性剤を使用して、種々の血小板阻害剤の効果差を評価することができる。化合物(1)はADP及びAAを劇的に阻害するが、一方で、アスピリンは、ADPまたはiso-TRAP誘発LTAを有意には阻害せず、チカグレロル(及び他のP2Y12阻害剤)は、ADP誘発LTAを種々の程度に阻害し、iso-TRAP誘発LTAをわずかに阻害する(投与した用量に応じて)。ADP+PAR-4活性化ペプチドの添加により、P2Y12阻害剤による血小板凝集の阻害が完全に阻害される。
【0015】
患者が救急車で搬送されているか、または臨床検査室から離れた心臓カテーテル検査室において経皮的冠動脈インターベンション(PCI)により処置されているため、STEMI中にLTAを行うのは難しい場合がある。LTAは、血液サンプルの大幅な操作と試薬の添加が必要である。代替案として、VerifyNowのような迅速な血小板機能アッセイを、何らの操作も行わずに血液サンプルを用いて、直接使用することができる。たとえば、Joseph A.Jakubowskiら、Platelets,December 2011;22(8):619-625を参照のこと。
【0016】
VerifyNow(VN)アッセイ(Instrumentation Laboratories,Bedford,MA)は、全血、カートリッジベースで、自動化されており、採血の15分以内に結果が出る。それらは、種々のアゴニストによって活性化された血小板によるフィブリノゲンコーティングされたビーズの凝集に基づく。市販のVNアッセイは、アスピリン(VNアスピリンカートリッジ、アラキドン酸活性剤)またはP2Y12アンタゴニスト(VN PRUTestカートリッジ及びVN P2Y12カートリッジ、ADP+PGE1活性剤/阻害剤の組み合わせ)の抗血小板作用を研究するためにデザインされている。修飾トロンビン受容体活性化ペプチド(iso-TRAP)は、PRUTest及びP2Y12の両カートリッジにおける別個の反応チャンバ(ADP+PGE1反応チャンバに加えて)内に含まれており、P2Y12カートリッジにはさらに、「BASEチャネル」反応チャンバが含まれている。「BASEチャネル」反応チャンバでは、より高濃度におけるPAR-1活性化ペプチド(iso-TRAP)が、PAR-4活性化ペプチド(PAR-4AP)と組み合わされて、P2Y12アンタゴニストの効果を打開することができる強力な活性化が達成される。
【0017】
VerifyNowADP+PGE1、iso-TRAP、及びBASEチャネルアッセイを使用して、化合物(1)媒介阻害をほぼリアルタイムで報告し得る。VNアッセイを使用して、αIIbβ3アンタゴニスト対P2Y12アンタゴニストの抗血小板作用をデコンボリューションするのに役立つことができる。化合物(1)はすべての3VNアッセイを劇的に阻害するが、一方で、アスピリンはアッセイを阻害せず、チカグレロルは、ADP+PGE1アッセイを劇的に阻害し、iso-TRAPアッセイをわずかに阻害し、BASEチャネルアッセイを阻害しない。BASEチャネルアッセイを使用して、任意のP2Y12阻害剤とは無関係に化合物(1)の薬力学的効果をモニタリングした。
【0018】
組成物及び投与
本方法のある実施形態では、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩を、1つ以上の担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与する。ある実施形態では、医薬組成物は溶液である。ある実施形態では、医薬組成物はマイクロ乳濁液である。ある実施形態では、医薬組成物は懸濁液である。ある実施形態では、医薬組成物は乳濁液である。ある実施形態では、医薬組成物はゲルである。ある実施形態では、医薬組成物はスラリーである。
【0019】
ある実施形態では、医薬組成物は化合物(1)の薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される塩は酢酸塩、たとえば、一酢酸塩または二酢酸塩である。
【0020】
ある実施形態では、化合物(1)、その薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、溶液である。ある実施形態では、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩の濃度(溶液中)は、0.01~100mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は0.05~100mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は0.1~100mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は1~100mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は10~100mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は15~100mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は20~100mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は30~100mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は40~100mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は50~100mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は0.05~50mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は0.1~50mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は1~50mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は10~50mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は15~50mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は20~50mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は30~50mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は40~50mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は0.05~25mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は0.1~25mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は1~25mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は10~25mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は15~25mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は20~25mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は0.05~10mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は0.1~10mg/mL(両端を含む)である。ある実施形態では、濃度は1~10mg/mL(両端を含む)である。
【0021】
ある実施形態では、溶液中の化合物(1)またはその薬学的に許容される塩の濃度は、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、15mg/、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、約24mg/mL、または約25mg/mLである。
【0022】
ある実施形態では、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を、注射によって対象に投与する。特定の実施形態では、注射は皮下注射である。他の特定の実施形態では、注射の部位には、腕、脚、大腿、背中、臀部、及び腹部が含まれる。ある実施形態では、注射投与は、プレフィルドシリンジ、ペン、または自動注射器を用いて行う。ある実施形態では、投与は、自動注射器による自己投与である。
【0023】
ある実施形態では、注射の量は2mL以下である。ある実施形態では、注射の量は1mL以下、たとえば、約0.9mL、約0.8mL、約0.7mL、約0.6mL、約0.5mL、約0.4mL、約0.3mL、約0.2mL、または約0.1mLである。
【0024】
ある実施形態では、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物の投与によって、注射後t=0、t=1時間、t=1日、t=3日、またはt=1ヶ月において対象における最小の注射部位反応(たとえば、打撲傷、出血、腫れ、及び不快感)となる。ある実施形態では、投与によって、30日以内に、たとえば、25、20、15、10、または5日以内に消散する注射部位反応となる。
【0025】
ある実施形態では、本明細書で開示した方法は単回投与(たとえば、注射)を含む。ある実施形態では、本明細書で開示した方法は複数の投与(たとえば、注射)を含む。たとえば、ある実施形態は、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩、またはその組成物の第1の用量、及び随意に第2の用量を投与することを含む。第2の用量は、このような投与が望ましい、優位である、または必要な場合に投与する。
【0026】
ある実施形態では、後続の(たとえば、第2の)投与の投与量は、第1の投与の投与量と同じ用量である。ある実施形態では、後続の(たとえば、第2の)投与の投与量は、第1の投与の投与量とは異なる。代表的な投与量、製剤、及び濃度については本明細書に記載する。
【0027】
組み合わせ
ある実施形態では、本明細書に記載の方法はさらに、対象にさらなる治療化合物(たとえば、1つ以上のさらなる治療化合物)を投与することを含む。ある実施形態では、さらなる治療化合物は抗凝血剤である。ある実施形態では、さらなる治療化合物はヘパリンである。ある実施形態では、さらなる治療化合物は、P2Y12阻害剤、たとえば、チカゲロル、プラスグレル、またはクロピドグレルである。ある実施形態では、さらなる治療化合物はアスピリンである。ある実施形態では、さらなる治療化合物は、カングレロール、ワルファリン、エノキサパリン、フォンダパリヌクス、ダルテパリン、ビバリルジン、ヒルジン、リバーロキサバン、ダビガトラン、アピキサバン、及びエドキサバンから選択される。
【0028】
ある実施形態では、本明細書に記載の方法はさらに、対象にP2Y12阻害剤及びヘパリンを投与することを含む。ある実施形態では、本明細書に記載の方法はさらに、対象にアスピリン及びヘパリンを投与することを含む。
【0029】
ある実施形態では、さらなる治療薬は、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与する前に、対象に投与する。ある実施形態では、さらなる治療薬は、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与した後で、対象に投与する。ある実施形態では、さらなる治療薬は、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物の投与と同時に、対象に投与する。
【0030】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、対象にアスピリンが、症状の発症前に、または症状の発症後だが、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物の投与前に、投与されている。
【0031】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、対象にP2Y12阻害剤が、症状の発症前に、または症状の発症後だが、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物の投与前に、投与されている。本明細書に記載の方法のある実施形態では、対象にアスピリン及びP2Y12阻害剤が、症状の発症前に、または症状の発症後だが、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物の投与前に、投与されている。本明細書に記載の方法のある実施形態では、対象にP2Y12阻害剤が、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物の投与と同時に投与されている。本明細書に記載の方法のある実施形態では、対象にP2Y12阻害剤が、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与した後に、投与されている。
【0032】
投与
本方法のある実施形態では、対象は血栓性障害の1つ以上の症状を経験しており、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩を、症状の発症またはMIのECG所見の診断の実証の6時間以内に投与する。ある実施形態では、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩を、症状の発症の5時間以内に投与する。ある実施形態では、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩を、症状の発症の4時間以内に投与する。ある実施形態では、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩を、症状の発症の3時間以内に投与する。ある実施形態では、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩を、症状の発症の2時間以内に投与する。ある実施形態では、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩を、症状の発症の1時間以内に投与する。ある実施形態では、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩を、症状の発症の30分以内に投与する。ある実施形態では、化合物(1)またはその薬学的に許容される塩を、症状の発症の15分以内に投与する。
【0033】
ある実施形態では、症状は、胸痛または不快感、息切れ、目まいまたはふらつき、吐き気または嘔吐、発汗、動悸、及び不安または恐怖から選択される。ある実施形態では、STセグメント上昇の診断は、特徴的なECG所見によって確立される。
【0034】
臨床目的
明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、冠状動脈血流を回復させることを含む。ある実施形態では、処置することは、冠状動脈血流を少なくとも部分的に回復させることを含む。たとえば、冠状動脈血流は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%だけ回復させてもよい。
【0035】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、冠状動脈血流を回復させるか、少なくとも部分的に回復させるか、または維持することを含む。
【0036】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、対象における心筋梗塞における血栓溶解(TIMI)フレーム数、TIMI流量グレード、またはTIMI心筋灌流グレードの改善を達成することを含む。ある実施形態では、改善はプラセボと比較したものである。プラセボは、何ら処置が存在しないこと、または生物学的効果のない処置との比較を指す。ある実施形態では、改善は、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与した後、1~5時間以内に達成される。
【0037】
ある実施形態では、TIMIフレーム数の少なくとも5の減少が、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与した後、1~5時間以内に達成される。
【0038】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、対象において安定した血小板数を達成及び/または維持することを含む。ある実施形態では、血小板数は、10%、20%、または30%を超えて変化することはない。
【0039】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、対象において血小板凝集の≧80%阻害を達成することを含む。ある実施形態では、対象において血小板凝集の≧80%阻害を達成することは、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与した後、5~90、5~60、または10~30分以内に達成される。ある実施形態では、対象において血小板凝集の≧80%阻害を達成することは、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与した後、約15分以内に達成される。
【0040】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、対象におけるST偏差分解能を達成することを含む。ある実施形態では、対象におけるST偏差分解能は、ベースラインと比較して≧70%である。ある実施形態では、ST偏差分解能は、プラセボと比較して測定される。ある実施形態では、対象におけるST偏差分解能は、ベースラインと比較して≧80%である。ある実施形態では、対象におけるST偏差分解能は、ベースラインと比較して≧90%である。ある実施形態では、対象におけるST偏差分解能は、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与した後、約1~5時間以内に達成される。
【0041】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、対象における残留ST偏差の減少を達成することを含む。ある実施形態では、減少はプラセボと比較して測定する。ある実施形態では、対象における残留ST偏差の減少は、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物の単回投与(たとえば、単回皮下注射)の後に達成される。ある実施形態では、対象における残留ST偏差の減少は、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与した後、約1~5時間以内に達成される。
【0042】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、12ヶ月においてプラセボに対して全死因死亡率及び/または心血管系死亡率の減少を達成することを含む。
【0043】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与(たとえば、単回皮下注射)した後、1ヶ月までの、対象における全死因死、再発性心筋梗塞(MI)、緊急標的血管血行再建術(TVR)、または静脈内(IV)αIIbβ3アンタゴニストもしくはIV P2Y12アンタゴニストの盲検救済使用の複合改善を達成することを含む。ある実施形態では、決定は、プラセボと比較して、PCI/血管造影後1ヶ月までプラセボに対して行う。
【0044】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与(たとえば、単回皮下注射)した後、24時間まで、対象における急性ステント血栓症の減少を達成することを含む。ある実施形態では、ステント血栓症の減少はプラセボに対して測定する。
【0045】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与(たとえば、単回皮下注射)した後、数年間、心不全の減少を直接または間接的に達成することを含む。ある実施形態では、減少はプラセボに対して測定する。この効果は、B型ナトリウム利尿タンパク質(BNP)の測定によって、具体的には化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与した後、約1日以内に測定されるN末端プロB型ナトリウム利尿タンパク質を測定することによって、予測することができる。
【0046】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与(たとえば、単回皮下注射)した後、30日以内に、対象において死亡が発生しないことを達成することを含む。ある実施形態では、死亡が発生しないことはプラセボに対して測定する。
【0047】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与(たとえば、単回皮下注射)した後、30日以内に、対象において脳卒中が発生しないことを達成することを含む。ある実施形態では、脳卒中が発生しないことはプラセボに対して測定する。
【0048】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与(たとえば、単回皮下注射)した後、30日以内に、対象において心筋梗塞(MI)が再発しないことを達成することを含む。ある実施形態では、心筋梗塞が再発しないことはプラセボに対して測定する。
【0049】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与(たとえば、単回皮下注射)した後、24時間まで、対象において急性ステント血栓症が発生しないことを達成することを含む。ある実施形態では、急性ステント血栓症が発生しないことはプラセボに対して測定する。
【0050】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与(たとえば、単回皮下注射)した後、30日以内に、新規の心不全発症または心不全に対する再入院がないことを達成することを含む。ある実施形態では、新規の心不全発症または心不全に対する再入院がないことはプラセボに対して測定する。
【0051】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、処置することは、化合物(1)、その薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の医薬組成物を投与(たとえば、単回皮下注射)した後、24時間において、ピークの高感度心筋トロポニンT(hs-cTnT)が正常の上限の10倍未満であることを達成することを含む。ある実施形態では、ピークhs-CTnTはプラセボに対して測定する。
【0052】
患者集団
ある実施形態では、対象は冠状動脈疾患の病歴を有する。ある実施形態では、対象は安定した冠状動脈疾患を有する。ある実施形態では、対象は冠状動脈疾患の病歴がない。
【0053】
ある実施形態では、対象は、血栓性障害の症状の発症時に他の薬理療法を投与されている(または自己投与している)。いくつかの実施形態では、他の薬理療法としては、アスピリン、ワルファリン、スタチン、及びP2Y12阻害剤のうちの1つ以上が挙げられる。
【0054】
特定の実施形態
特定の態様では、本明細書において、STEMIを処置するための方法であって、必要とする対象に、0.075mg/kgの化合物(1)を含む組成物を皮下注射によって投与することを含む方法が提供される。特定の実施形態では、組成物は、酢酸、塩化水素酸、グリセリン、及び水をさらに含む。特定の実施形態では、組成物は、酢酸、塩化水素酸、クエン酸、グリセリン、及び水をさらに含む。
【0055】
他の特定の態様では、本明細書において、STEMIを処置するための方法であって、必要とする対象に、0.09mg/kgの化合物(1)を含む組成物を皮下注射によって投与することを含む方法が提供される。特定の実施形態では、組成物は、酢酸、塩化水素酸、グリセリン、及び水をさらに含む。特定の実施形態では、組成物は、酢酸、塩化水素酸、クエン酸、グリセリン、及び水をさらに含む。
【0056】
特定の態様では、本明細書において、STEMIを処置するための方法であって、必要とする対象に、0.11mg/kgの化合物(1)を含む組成物を皮下注射によって投与することを含む方法が提供される。特定の実施形態では、組成物は、酢酸、塩化水素酸、グリセリン、及び水をさらに含む。特定の実施形態では、組成物は、酢酸、塩化水素酸、クエン酸、グリセリン、及び水をさらに含む。
【0057】
特定の態様では、本明細書において、STEMIを処置するための方法であって、必要とする対象に、0.13mg/kgの化合物(1)を含む組成物を皮下注射によって投与することを含む方法が提供される。特定の実施形態では、組成物は、酢酸、塩化水素酸、グリセリン、及び水をさらに含む。特定の実施形態では、組成物は、酢酸、塩化水素酸、クエン酸、グリセリン、及び水をさらに含む。
【0058】
定義
特に指示がない限り、用語「投与する」、「投与している」、または「投与」は、本明細書に記載の化合物またはその組成物を、対象内または対象上に移植、吸収、摂取、注射、吸入、または他の方法で導入することを指す。
【0059】
用語「状態」、「疾患」、及び「障害」は交換可能に用いてもよい。
【0060】
本明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩の「有効量」は、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な量を指す。本明細書に記載の化合物の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、副作用、疾患、または障害の重症度、特定の化合物の素性、薬物動態、及び薬力学、処置中の状態、投与の様式、経路、及び所望のまたは必要な頻度、対象の種、年齢、及び健康状態または全身状態などの因子に応じて変化し得る。ある実施形態では、有効量は治療的に有効な量である。ある実施形態では、有効量は予防的処置である。ある実施形態では、有効量は、本明細書に記載の単回投与における化合物の量である。ある実施形態では、有効量は、本明細書に記載の複数回投与における化合物の総量である。ある実施形態では、所望の投与量を、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、3日おき、毎週、2週に1回、3週に1回、または4週に1回に送達する。ある実施形態では、所望の投与量を、複数の投与(たとえば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、またはそれ以上の投与)を用いて送達する。
【0061】
用語「薬学的に許容される塩」は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに、ヒト及び非ヒト動物の組織と接触させて使用するのに適しており、また合理的な利益/リスク比に見合った塩を指す。薬学的に許容される塩は、当該技術分野において良く知られている。たとえば、Bergeらが、薬学的に許容される塩について、J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19において詳細に説明している。なおこの文献は、参照により本明細書に組み込まれている。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、好適な無機及び有機の酸ならびに塩基に由来するものを含む。薬学的に許容される無毒性の酸付加塩の例は、無機酸(たとえば、塩化水素酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、及び過塩素酸)によって、または有機酸(たとえば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、またはマロン酸)によって、またはイオン交換などの当該技術分野で知られた他の方法を使用することによって形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩としては以下が挙げられる。アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パオ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩など。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、及びN+(C1-4アルキル)4
-塩が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属の塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に許容される塩としては、適切な場合には、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、及びアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成される無毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。
【0062】
投与が意図される「対象」は、ヒト(すなわち、任意の年齢層の男性または女性、たとえば、小児対象(たとえば、乳幼児、児童、または青年)、または成人対象(たとえば、若年成人、中年成人、または高齢成人))または非ヒト動物を指す。ある実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(たとえば、霊長類(たとえば、カニクイザルまたはアカゲザル)、商業的に関連する哺乳動物(たとえば、牛、豚、馬、羊、ヤギ、猫、または犬)、または鳥(たとえば、鶏、カモ、ガン、または七面鳥などの商業的に関連する鳥))である。ある実施形態では、非ヒト動物は、魚、爬虫類、または両生類である。非ヒト動物は、任意の発達段階におけるオスまたはメスであってもよい。非ヒト動物は、トランスジェニック動物または遺伝子操作された動物であってもよい。用語「患者」は、疾患の処置を必要とするヒト対象を指す。
【0063】
用語「処置」、「処置する」、及び「処置している」は、本明細書に記載の疾患または症状の回復、軽減、または進行の阻害を指す。いくつかの実施形態では、処置は、疾患の1つ以上の徴候または症状が起きたかまたは観察された後に投与してもよい。他の実施形態では、処置は、疾患の徴候または症状がない場合には投与してもよい。たとえば、処置は、症状の発症前に(たとえば、症状の病歴を考慮して及び/または病原体への露出を考慮して)、かかりやすい対象に投与してもよい。また処置は、たとえば、再発を遅延または予防するために、症状が消散した後に続けてもよい。
【0064】
用語「予防する」、「予防している」、または「予防」は、疾患にかからず、また疾患にかからなかったが、疾患が発症するリスクがある対象、または疾患にかかっていたが、疾患にかかっておらず、しかし疾患が後戻りするリスクがある対象の予防的処置を指す。ある実施形態では、対象は、集団の平均的な健康なメンバーよりも、疾患が発症するリスクが高いかまたは疾患が後戻りするリスクが高い。
【0065】
本明細書に記載の化合物の「予防上有効な量」は、状態またはその状態に関連する1つ以上の症状を予防するか、またはその再発を予防するのに十分な量である。化合物の予防上有効な量とは、状態の予防において予防的利益を与える、単独でのまたは他の薬剤との組み合わせでの治療薬の量を意味する。用語「予防上有効な量」は、全体的な予防を改善するかまたは他の予防薬の予防効果を高める量を包含することができる。
【0066】
組成物
別の態様では、本明細書において、本明細書に記載の量及び/または濃度での化合物(I)またはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む組成物が提供される。
【0067】
実施例
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0068】
【表2】
例3.インビトロ研究
アスピリンを毎日服用しているかまたは服用していない健康なボランティアからのクエン酸ナトリウム(0.32%)またはPPACK(100μM)のいずれかで抗凝固処理された全血を、化合物(I)(RUC-4)によってインビトロで処置して、30~900nMの最終的な全血濃度を達成した。血液を室温で10分間インキュベートし、その後、IIb/IIIaまたはPRUカートリッジのいずれかによってテストした。
【0069】
例4.研究結果
インビトロ研究の結果
化合物(I)(RUC-4)は、IIb/IIIa及びPRUカートリッジの両方におけるVN isoTRAPチャネル、ならびにPRUカートリッジにおけるADP+PGE
1チャネルの用量依存性の阻害を引き起こす。どちらのチャネルも、20μM ADP誘導光透過凝集(LTA)の阻害に匹敵する結果をもたらす。P2Y12アンタゴニストは、ADP+PGE
1チャネルを阻害するが、isoTRAPチャネルは阻害しないため、P2Y12アンタゴニストによって処置されていない患者に対するRUC-4の効果は、PRUまたはIIb/IIIaカートリッジのいずれかにおいてPRU ADP+PGE
1チャネルまたはisoTRAPチャネルによってモニタリングし得る。P2Y12アンタゴニストによって処置された患者におけるRUC-4効果は、いずれかのカートリッジにおけるisoTRAPチャネルによってモニタリングし得る。結果を
図3に示す。
【0070】
例5.アスピリンを服用している健康なボランティア及び安定したCAD患者におけるインビボ研究
順次に、アスピリンを受けている健康なボランティア(HV)、次に安定した冠状動脈疾患(CAD)を有する患者に、RUC-4またはプラセボの漸増用量をセンチネル用量で無作為盲検法で与えた。アデノシン二リン酸塩(ADP;20μM)に対する血小板凝集(IPA)の阻害、RUC-4血中濃度、実験室評価、及び臨床的評価を、24時間及び7日間を通して行った。15分以内に≧80%のIPAが生産される用量になるまで用量を増加して、4時間以内にベースラインに向けて戻ることが達成された。またVerifyNow(VN)も、安定したCAD患者のサブセットにおいて測定した。
【0071】
例6.研究結果
インビボ研究結果
SC注射の15分後、平均±SD IPAは、プラセボ後に6.9+7.1%であり、RUC-4後に0.05mg/kg(n=6)において71.8±15.0%及び0.075mg/kg(n=6)において84.7±16.7%であった。すべての場合において、IPAは、90~120分かけて減少した。CAD:プラセボまたは0.04mg/kg(n=2)、0.05mg/kg(n=6)、及び0.075mg/kg(n=18)のRUC-4のSC注射の15分後、IPAはそれぞれ、14.6+11.7%、53.6±17.0%、76.9±10.6%、及び88.9±12.7%であった。RUC-4血中濃度は、IPAと密接して相関していた。アスピリンは、IPAまたはRUC-4の血中濃度には影響しなかった。結果を
図5に示す。
【0072】
例7.ST上昇心筋梗塞(STEMI)患者におけるインビボ研究
非盲検、用量漸増、第2相のCEL-02試験は、初回経皮的冠動脈インターベンション(pPCI)を受ける救急車内でアスピリン及びチカグレロルによって処置されたSTEMI患者におけるRUC-4の薬力学(PD)、薬物動態学(PK)、安全性、及び忍容性を評価することを目的とした。St.Antonius Hospital Nieuwegein,NetherlandsでpPCIを受けるSTEMI患者が、冠動脈造影前にRUC-4の重量調整された皮下注射を1回受けた。8人の評価可能な患者ごとに評価した後、用量を、血小板阻害に対する最適な用量に達するまで増大させた。すべての患者が、救急車内でアスピリン、チカグレロル、及び未分画ヘパリン(UFH)(5000IU)によって同時に処置を受けた。PCI中のさらなるUFHは、ACTが<200秒(2500~5000IU)の場合にのみ投与した。(PD)及び(PK)に対する血液サンプルを、RUC-4投与前、及びそれから15、45、60、90、120、180、及び240分後に採取した。血小板阻害を、プロテアーゼ活性化受容体-1(PAR-1)ペプチド(iso-TRAP)及びPAR-4活性化ペプチドをアゴニストとして使用して、経口P2Y12阻害剤による血小板阻害を無効にする、VerifyNow P2Y12アッセイBASEチャネルによって測定した。
【0073】
例8.研究結果
インビボ研究結果
27人の患者が、RUC-4を0.075mg/kg(n=8)、0.090mg/kg(n=9)、または0.11mg/kg(n=10)の用量で受けた。RUC-4は、投与後15分で用量反応性の最大血小板阻害を示した(平均[SD]、それぞれ83.7%[9.9%]、89.6%[6.6%]、及び92.5%[5.8%])。投与後120分で、血小板阻害は、それぞれ17.9%(17%)、22.6%(32.9%)及び31.6%(15.7%)であった。結果を
図1にも示す。STEMI患者におけるこの研究では、RUC-4の単回皮下投与により、15分以内に最大血小板機能阻害の用量依存性の応答が誘発され、120分以内に血小板機能の用量依存性の回復が誘発された。
【0074】
実施形態
1.血栓性障害を処置または予防するための方法であって、必要とする対象に、有効量の化合物(1)、
【化3】
またはその薬学的に許容される塩を、0.01~0.3mg/kg(両端を含む)の範囲の用量で投与することを含む、前記方法。
【0075】
2.前記用量は、0.05~0.25mg/kg(両端を含む)の範囲である、実施形態1に記載の方法。
【0076】
3.前記用量は、0.075~0.15mg/kg(両端を含む)の範囲である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
4.前記用量は、0.09~0.15mg/kg(両端を含む)の範囲である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
5.前記用量は、0.1~0.15mg/kg(両端を含む)の範囲である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
6 前記血栓性障害は心筋梗塞である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
7.前記血栓性障害はST上昇型心筋梗塞(STEMI)である、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
8.前記化合物またはその薬学的に許容される塩を注射によって投与する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
9.前記注射は筋肉注射である、実施形態8に記載の方法。
【0083】
10.前記注射は皮下注射である、実施形態8に記載の方法。
【0084】
11.前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、溶液、懸濁液、または乳濁液の形態で投与する、実施形態8~10のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
12.前記化合物またはその薬学的に許容される塩を溶液の形態で投与する、実施形態11に記載の方法。
【0086】
13.前記溶液中の前記化合物またはその薬学的に許容される塩の濃度は、0.01~100mg/mL(両端を含む)である、実施形態12に記載の方法。
【0087】
14.前記濃度は、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、約24mg/mL、または約25mg/mLである、実施形態13に記載の方法。
【0088】
15.前記溶液はさらに、酢酸、塩化水素酸、クエン酸、グリセリン、及び水のうちの1つ以上を含む、実施形態11~12のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
16.前記化合物またはその薬学的に許容される塩の投与によって、注射後t=0、t=1時間、t=1日、t=3日、またはt=1ヶ月において前記対象における最小の注射部位反応となる、実施形態8~15のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
17.前記対象は前記血栓性障害の1つ以上の症状を経験しており、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、症状の発症の30分~6時間以内に投与する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
18.前記血栓性障害はSTEMIであり、前記症状は、胸痛または不快感、息切れ、目まいまたはふらつき、吐き気または嘔吐、発汗、動悸、及び不安または恐怖から選択される、実施形態17に記載の方法。
【0092】
19.処置することは、冠状動脈血流を少なくとも部分的に回復させるかまたは維持することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
20.処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、好ましくは1~5時間以内に、心筋梗塞における血栓溶解(TIMI)フレーム数またはTIMI流量の改善を達成することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
21.処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、少なくとも5時間以内、好ましくは1~5時間以内に、TIMIフレーム数またはTIMI流量の改善を達成することを含む、実施形態20に記載の方法。
【0095】
22.処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、好ましくは1~5時間以内に、安定した血小板数を維持することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
23.処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、好ましくは5~90分(たとえば、15分)以内に血小板凝集の≧80%阻害を達成することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
24.処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、好ましくは1~5時間以内に、ST偏差分解能の改善(ベースラインと比較して≧70%)を達成すること含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
25.処置することは、単回皮下注射後の残留ST偏差の減少を達成することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
26.処置することは、全死因死、再発性心筋梗塞(MI)、緊急標的血管血行再建術(TVR)、または単回皮下注射後の静脈内(IV)αIIbβ3アンタゴニストもしくはIV P2Y12アンタゴニストの盲検救済使用の複合改善を達成することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
27.処置することは、単回皮下注射後の急性ステント血栓症の減少を達成することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
28.処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、30日以内に、前記対象において死亡が発生しないことを達成することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
29.処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、30日以内に、前記対象において脳卒中が発生しないことを達成することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
30.処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、30日以内に、前記対象において心筋梗塞(MI)が再発しないことを達成することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
31.処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、24時間まで、前記対象において急性ステント血栓症がないことを達成することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
32.処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、30日以内に、前記対象において新規の心不全発症または心不全に対する再入院がないことを達成することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
33.処置することは、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を投与した後、24時間において、ピークの高感度心筋トロポニンT(hs-cTnT)が正常の上限の10倍未満であることを達成することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
34.化合物(1)またはその薬学的に許容される塩の第2の用量を投与することをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
35.P2Y12阻害剤、たとえば、チカゲロル、プラスグレル、またはクロピドグレルを前記対象に投与することをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
36.前記対象にアスピリンを投与することをさらに含む、実施形態34に記載の方法。
【0110】
37.前記対象にアスピリン及びP2Y12阻害剤を投与することを含む、実施形態35に記載の方法。
【0111】
38.前記対象にアスピリン、P2Y12阻害剤、及びヘパリンを投与することを含む、実施形態35に記載の方法。
【0112】
39.前記対象にアスピリンが、たとえば、症状の発症前に、または症状の発症後だが投与前に投与されている、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
40.前記対象にヘパリンを投与することをさらに含む、実施形態34に記載の方法。
【0114】
41.前記対象は冠状動脈疾患の病歴を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
42.前記対象は安定した冠状動脈疾患を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【国際調査報告】