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特表2024-507299バイナリデータを送信する方法及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】バイナリデータを送信する方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/04 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
H04L27/04 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574963
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2022001872
(87)【国際公開番号】W WO2022254774
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】21305730.0
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】コルレ、ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
(57)【要約】
2つのシンボルのM/2個の集合に分割されたM-ASKコンスタレーションを用いて、バイナリデータを送信する方法が開示される。インデックスiの各集合は、コンスタレーションの第iのシンボル及び第i+M/2のシンボルを含み、集合の第1のシンボルを送信する確率pに関連付けられる。まず、等確率バイナリーソースからm-1ビットが得られ、ここで、m=logMである。次に、m-1ビットに応答して、複数のバイナリーソースにおいてバイナリーソースが選択され、インデックスiの各バイナリーソースは、pに等しい、ビットゼロを出力する確率に関連付けられる。より下位のビットとしてのm-1ビットと、最上位ビットとしての選択されたソースから得られたビットとによって形成されるバイナリワードに関連付けられたM-ASKコンスタレーションのシンボルが得られる。シンボルは、最終的に通信チャネルを介して受信機に送信される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機における、2つのシンボルのM/2個の集合に分割されたM-ASKコンスタレーションを用いて、バイナリデータを送信する方法であって、
インデックスiの各集合は、前記M-ASKコンスタレーションの第iのシンボル及び第i+M/2のシンボルを含み、ここでi∈[1;M/2]であり、前記集合の第1のシンボルを送信する確率pと、前記集合の第2のシンボルを送信する確率1-pとに関連付けられ、前記M-ASKコンスタレーションの各シンボルは、自然ラベリングを用いて定義されたバイナリワードに関連付けられ、前記方法は、
a)等確率バイナリーソースからm-1ビットを得ることであって、m=logMであることと、
b)前記m-1ビットに応答して複数のバイナリーソースにおけるバイナリーソースを選択することであって、インデックスiの各バイナリーソースは、pに等しい、ビットゼロを出力する確率に関連付けられることと、
c)選択されたバイナリーソースから1ビットを得ることと、
d)より下位のビットとしての前記m-1ビットと、最上位ビットとしての選択されたバイナリーソースから得られたビットとによって形成される前記バイナリワードに関連付けられた前記M-ASKコンスタレーションのシンボルを得ることと、
e)得られたシンボルを、通信チャネルを介して受信機に送信することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記m-1ビットに応答して複数のバイナリーソースにおけるバイナリーソースを選択することは、
前記m-1ビットによって形成されたバイナリシーケンスの十進数値を決定することと、
インデックスが前記十進数値を1だけ加算したものに等しいバイナリーソースを選択することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のバイナリーソースは、2m-1個のバイナリーソースを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
【数1】
であり、前記複数のバイナリーソースは、2m-2個のバイナリーソースに縮約され、前記m-1ビットに応答してバイナリーソースを選択することは、
前記m-1ビットによって形成されたバイナリシーケンスの十進数値Dを決定することと、
【数2】
である場合、インデックスがM/2-Dに等しいバイナリーソースを選択することと、
そうでない場合、インデックスが前記十進数値を1だけ加算したものに等しいバイナリーソースを選択することと、
を含み、
前記インデックスがM/2-Dに等しいバイナリーソースが選択される場合、選択されたバイナリーソースから得られるビットは、前記M-ASKコンスタレーションのシンボルを得る前に反転される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のバイナリーソースにおけるインデックスiの各バイナリーソースは、
【数3】
ビットのシーケンスに対しバイナリー分布マッチングを適用することによって、前記等確率バイナリーソースから得られ、Smaxは複数のバイナリーソースにおけるソースの数であり、H(p)は、パラメータpを有する2値エントロピーを示し、rは1以上の整数である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、
誤り訂正符号を用いて、前記等確率バイナリーソースから得られたr×(M-1)*kビットを符号化し、(m-1)*nビットにすることであって、n及びkは整数であることと、
前記等確率バイナリーソースから得られた
【数4】
ビットのシーケンスに対しバイナリー分布マッチングを適用することによって、前記等確率バイナリーソースから前記複数のバイナリーソースにおけるインデックスiの各バイナリーソースを得ることであって、Smaxは前記複数のバイナリーソースにおけるソースの数であり、H(p)は、パラメータpを有する2値エントロピーを示すことと、
前記a)~前記e)を、(m-1)ビットのn個の集合のそれぞれに適用することと、
を更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
表から前記確率pを得て、前記受信機に、得られた前記確率pを示す少なくとも1つのインデックスエントリを送信することを更に含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
所定の通信チャネル分布から確率pを推定し、推定された確率を前記受信機に送信することを更に含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
前記受信機から確率pを受信することを更に含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項10】
2つのシンボルのM/2個の集合に分割されたM-ASKコンスタレーションを用いて、バイナリデータを送信するように構成された送信機であって、インデックスiの各集合は、前記M-ASKコンスタレーションの第iのシンボル及び第i+M/2のシンボルを含み、ここでi∈[1;M/2]であり、前記集合の第1のシンボルを送信する確率pに関連付けられ、前記M-ASKコンスタレーションの各シンボルは、自然ラベリングを用いて定義されたバイナリワードに関連付けられ、前記送信機は、
a)等確率バイナリーソースからm-1ビットを得ることであって、m=logMであることと、
b)前記m-1ビットに応答して複数のバイナリーソースにおけるバイナリーソースを選択することであって、インデックスiの各バイナリーソースは、pに等しい、ビットゼロを出力する確率に関連付けられることと、
c)選択されたバイナリーソースから1ビットを得ることと、
d)より下位のビットとしての前記m-1ビットと、最上位ビットとしての前記選択されたバイナリーソースから得られたビットとによって形成される前記バイナリワードに関連付けられた前記M-ASKコンスタレーションのシンボルを得ることと、
e)得られたシンボルを、通信チャネルを介して受信機に送信することと、
を行うように構成された少なくとも1つのプロセッサを備える、送信機。
【請求項11】
プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含むコンピュータープログラム製品であって、前記プログラムコード命令は、前記プログラムコード命令が前記プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実施させる、コンピュータープログラム製品。
【請求項12】
プログラムコード命令を含むコンピュータープログラムを記憶する記憶媒体であって、前記プログラムコード命令は、前記プログラムコード命令が前記記憶媒体から読み出され、プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実施させる、記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態のうちの少なくとも1つは、包括的には、M-ASKコンスタレーション(ASKは、「振幅偏移変調(Amplitude-Shift Keying)」の英語の頭字語である)を用いたバイナリデータの送信方法に関する。また、本発明の実施形態のうちの少なくとも1つは、それに対応する送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムにおいて、送信機は、通信チャネル(例えば、光ファイバ)によって受信機に結合される。送信機は、通常、入力データ、例えばビットストリームを、コンスタレーションと呼ばれる有限集合に属するシンボルに符号化するように構成された符号化器を含む。1次元ASK(「振幅偏移変調(Amplitude-Shift Keying)」の英語の頭字語)及び2次元QAM(「直交振幅変調(Quadrature-Amplitude Keying)」の英語の頭字語)は、そのようなコンスタレーションの例である。ここで、1次元又は2次元のコンスタレーションは、シンボルがそれぞれ、R又はRにおける値をとることを意味する。Rは、実数の集合である。
【0003】
次に、これらのシンボルは、通信チャネルを介して受信機に送信される。受信機は、受信したシンボルを復号して出力データにするように構成された復号器を含む。
【0004】
一様に分布したシンボルが送信される通信システムでは、通常、整形損失が発生する。したがって、チャネル容量に近づけるためには、送信機が入力データを処理して、送信するシンボルの確率分布を変更する必要があることが知られている。より厳密には、入力データは、通信チャネルに適合する不均一な確率分布を有するように、送信されるシンボルを処理する。この動作は確率的整形と呼ばれ、整形利得としても知られるエネルギー節約を実現する。又は、ガウスチャネルでは、マクスウェル-ボルツマン分布により、準最適性能をもたらすことが知られている。しかしながら、入力データを処理してマクスウェル-ボルツマン分布に当てはめることは、複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、高性能でありながら実施が容易であり、非ガウスチャネルにも適応される、バイナリデータを送信する方法を得ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態のうちの少なくとも1つは、包括的には、送信機における、2つのシンボルのM/2個の集合に分割されたM-ASKコンスタレーションを用いて、バイナリデータを送信する方法であって、インデックスiの各集合は、M-ASKコンスタレーションの第iのシンボル及び第i+M/2のシンボルを含み、ここでi∈[1;M/2]であり、第1のシンボルを送信する確率pと、集合の第2のシンボルを送信する確率1-pとに関連付けられ、M-ASKコンスタレーションの各シンボルは、自然ラベリングを用いて定義されたバイナリワードに関連付けられ、上記方法は、
a)等確率バイナリーソースからm-1ビットを得ることであって、m=logMであることと、
b)m-1ビットに応答して複数のバイナリーソースにおけるバイナリーソースを選択することであって、インデックスiの各バイナリーソースは、pに等しい、ビットゼロを出力する確率に関連付けられることと、
c)選択されたソースから1ビットを得ることと、
d)より下位のビットとしてのm-1ビットと、最上位ビットとしての選択されたソースから得られたビットとによって形成されるバイナリワードに関連付けられたM-ASKコンスタレーションのシンボルを得ることと、
e)得られたシンボルを、通信チャネルを介して受信機に送信することと、
を含む、方法に関する。
【0007】
この送信方法は、マクスウェル-ボルツマン分布を当てはめることを試行する送信方法よりも実施が容易である。より厳密には、上記の方法では、少ない数のバイナリーソースを用いた整形動作を実施することが可能になる。
【0008】
1つの実施の形態において、m-1ビットに応答して複数のバイナリーソースにおけるバイナリーソースを選択することは、
m-1ビットによって形成されたバイナリシーケンスの十進数値を決定することと、
インデックスが十進数値を1だけ加算したものに等しいバイナリーソースを選択することと、
を含む。
【0009】
1つの実施の形態において、複数のバイナリーソースは、2m-1個のバイナリーソースを含む。
【0010】
1つの実施の形態において、
【数1】
であり、複数のバイナリーソースは、2m-2個のバイナリーソースに縮約され、m-1ビットに応答してバイナリーソースを選択することは、
m-1ビットによって形成されたバイナリシーケンスの十進数値Dを決定することと、
【数2】
である場合、インデックスがM/2-Dに等しいバイナリーソースを選択することと、
そうでない場合、インデックスが十進数値を1だけ加算したものに等しいバイナリーソースを選択することと、
を含み、
インデックスがM/2-Dに等しいバイナリーソースが選択される場合、選択されたソースから得られるビットは、M-ASKコンスタレーションのシンボルを得る前に反転される。
【0011】
1つの実施の形態において、複数のバイナリーソースにおけるインデックスiの各バイナリーソースは、
【数3】
ビットのシーケンスに対しバイナリー分布マッチングを適用することによって、等確率バイナリーソースから得られ、ここで、Smaxは複数のバイナリーソースにおけるソースの数であり、H(p)は、パラメータpを有する2値エントロピーを示し、rは1以上の整数である。
【0012】
1つの実施の形態において、方法は、
誤り訂正符号を用いて、等確率バイナリーソースから得られたr×(M-1)*kビットを符号化し、(m-1)*nビットにすることであって、ここで、n及びkは整数であることと、
等確率バイナリーソースから得られた
【数4】
ビットのシーケンスに対しバイナリー分布マッチングを適用することによって、等確率バイナリーソースから複数のバイナリーソースにおけるインデックスiの各バイナリーソースを得ることであって、ここで、Smaxは複数のバイナリーソースにおけるソースの数であり、H(p)は、パラメータpを有する2値エントロピーを示すことと、
a)~e)を、(m-1)ビットのr*n個の集合のそれぞれに適用することと、
を更に含む。
【0013】
1つの実施の形態において、方法は、表から確率pを得て、受信機に、得られた確率を示す少なくとも1つのインデックスエントリを送信することを更に含む。
【0014】
1つの実施の形態において、方法は、所定の通信チャネル分布から確率pを推定し、推定された確率を受信機に送信することを更に含む。
【0015】
1つの実施の形態において、方法は、受信機から確率pを受信することを更に含む。
【0016】
本発明の実施の形態のうちの少なくとも1つは、包括的には、2つのシンボルのM/2個の集合に分割されたM-ASKコンスタレーションを用いて、バイナリデータを送信するように構成された送信機であって、インデックスiの各集合は、M-ASKコンスタレーションの第iのシンボル及び第i+M/2のシンボルを含み、ここでi∈[1;M/2]であり、集合の第1のシンボルを送信する確率pに関連付けられ、M-ASKコンスタレーションの各シンボルは、自然ラベリングを用いて定義されたバイナリワードに関連付けられる、送信機に関する。送信機は、
a)等確率バイナリーソースからm-1ビットを得ることであって、m=logMであることと、
b)m-1ビットに応答して複数のバイナリーソースにおけるバイナリーソースを選択することであって、インデックスiの各バイナリーソースは、pに等しい、ビットゼロを出力する確率に関連付けられていることと、
c)選択されたソースから1ビットを得ることと、
d)より下位のビットとしてのm-1ビットと、最上位ビットとしての選択されたソースから得られたビットとによって形成されるバイナリワードに関連付けられたM-ASKコンスタレーションのシンボルを得ることと、
e)得られたシンボルを、通信チャネルを介して受信機に送信することと、
を行うように構成された少なくとも1つのプロセッサを備える。
【0017】
プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含むコンピュータープログラム製品であって、プログラムコード命令は、プログラムコード命令がプログラマブルデバイスによって実行されると、実施の形態のいずれか1つによる方法を実施させる、コンピュータープログラム製品が開示される。
【0018】
プログラムコード命令を含むコンピュータープログラムを記憶する記憶媒体であって、プログラムコード命令は、プログラムコード命令が記憶媒体から読み出され、プログラマブルデバイスによって実行されると、実施の形態のいずれか1つによる方法を実施させる、記憶媒体が開示される。
【0019】
本発明の特徴は、実施形態の少なくとも1つの例の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】特定の実施形態による通信システムを概略的に示す図である。
図2】8-ASKコンスタレーションのシンボルを示す図である。
図3】特定の実施形態による、M-ASKコンスタレーションの、2つのシンボルのM/2個の集合への分割の原理を示す図である。
図4A】特定の実施形態による、整形符号化器のブロック図である。
図4B】別の特定の実施形態による、整形符号化器のブロック図である。
図5】特定の実施形態による送信方法のフローチャートである。
図6】別の特定の実施形態による、整形符号化器のブロック図である。
図7】別の特定の実施形態による、整形符号化器のブロック図である。
図8】特定の実施形態による復号方法のフローチャートである。
図9】特定の実施形態による、整形符号化器のハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す図である。
図10】特定の実施形態による、復号デバイスのハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の実施形態を実施することができる通信システム1を概略的に示す図である。通信システム1は、通信チャネル12によって互いに結合された送信機10及び受信機14を備える。送信機10は、少なくとも1つの等確率バイナリーソースS0によって入力データが供給され、所与のアルファベットXにおいて選択されたシンボルを出力する。入力データは、例えば、オーディオ/ビデオビットストリームのビットである。一例示的な実施形態において、アルファベットXはM-ASKコンスタレーションであり、ここで、M=2であり、mは整数である。M-ASKコンスタレーションのシンボルは、以下のように定義される。
【数5】
【0022】
結果として、このコンスタレーション内の各シンボルは、m=logMビットのシーケンスによって表すことができる。図2は、8-ASKコンスタレーションのシンボルを示す図である。第1のシンボルは-7であり、最後のシンボルは7である。以下では、ASK変調を参照して様々な実施形態を説明する。しかしながら、本発明の実施形態は、ASK変調に制限されない。例えば、本発明の実施形態は、QAM変調と共に用いられてもよい。
【0023】
図1において、Xを、確率分布p(x)=p(X=x)、x∈Xを有する通信チャネル12の入力におけるシンボルを表す離散確率変数とする。p(y|x)を、例えば、全てのxについてガウスチャネルp(y|x)~N(x,σ)を有する、チャネル分布とする。Yを、通信チャネル出力のランダム変数とする。ガウスチャネルの場合、Yは、Y=X+Wと定義される。ここで、Wはガウス雑音であり、例えばW~N(0,σ)である。
【0024】
ガウスチャネルについて、信号対雑音比(SNR)は以下のように定義される。
【数6】
【0025】
任意の通信チャネルを指定し、p(x)を、所与のコンスタレーションについて相互情報(MI)を最大にする入力Xの分布とする。
【数7】
ここで、Pは最大平均出力である。最大化が確率分布に対してのみではなく、可能な入力すべてに対するものである、量
【数8】
は、チャネル容量と呼ばれる。以下において、離散的な入力を考慮し、最適化はその分布に対してのみ行われる。コンスタレーション(すなわち、離散的な入力要素の位置の集合)は、最適化変数ではない。
【0026】
【数9】
は、準最適分布の集合として、以下のように定義される。
【数10】
ここで、εは、通信システムの要件に依存する量である。
【0027】
確率整形(probabilistic shaping)の目的は、その確率分布が相互情報I(X;Y)を最大にするか又はほぼ最大にするように入力を処理することである。換言すれば、入力の分布は、
【数11】
内にあるべきである。
【0028】
M-ASKコンスタレーションについて、p(x)は、多くの場合、MB分布(「マクスウェル-ボルツマン分布(Maxwell-Boltzmann distribution)」の英語の頭字語)として選ばれる。この場合、得られる性能は、p(x)を用いて得られたものに近い(すなわち、小さなεについて、
【数12】
である)。しかしながら、MB分布の実施は複雑である。
【0029】
特定の実施形態によれば、M-ASKの場合の複雑性を限定するために、可能な分布の集合は、以下のように表されるものに限定される。
全ての
【数13】
について、
【数14】
である。ここで、
【数15】
は確率の和が1となるように用いられるスケーリング定数である。変数
【数16】
をpによって表す。結果として、相互情報は、
【数17】
について、
【数18】
に関して最適化される。
【0030】
このため、本原理によれば、M-ASKコンスタレーションは、M/2個の集合に分割され、インデックスiの各集合は、第iのシンボル及び第
【数19】
のシンボルを含み、
【数20】
である。このため、8-ASKの場合、シンボルの集合は、以下の表のように定義される。
【表1】
【0031】
このため、1つの実施形態による整形符号化器は、等しい確率(すなわち、α)でM/2個の集合のうちの1つの集合iをランダムに選択するように構成され、確率pで集合iの第1のシンボルを送信し、確率1-pで第2のシンボルを送信する。集合の選択は、誤り訂正符号を伴う場合がある。集合iごとに、確率pが送信機及び受信機の双方によって知られている。
【0032】
第1の実施形態において、確率値pは、所与のチャネル分布についてオフラインで計算される。例えば、チャネル内の雑音のガウス分布について、確率値pは一回限りオフラインで計算され、そのため、その後変更されない。
【0033】
第2の実施形態において、確率値pは、通信チャネルの所与の範囲のパラメータについてオフラインで計算され、送信機10と受信機14との間で共有される表に記憶される。例えば、チャネル分布がガウス分布である場合、パラメータは、この通信チャネルのSNRとすることができる。したがって、表において、p値の1つの所定の集合は、SNR値の各所定の範囲と関連付けられる。このため、送信機10は、現在のSNR値に応答して表からp値の所定の集合を選択し、それに応じて受信機14に通知する。
【0034】
第3の実施形態において、受信機14によって、パイロットシンボルの受信後、チャネル分布が推定される。次に、受信機14はp値を最適化し、これらを、シグナリングチャネルを用いることによって送信機10にフィードバックする。代替的には、受信機14は、チャネル分布を推定し、推定されたチャネル分布を送信機10に送信する。送信機10は、p値を最適化し、これらを受信機14にフィードバックする。p値の集合の最適化は、線形探索とすることができ、すなわち、可能なp値の部分集合を定義し、推定されたチャネル分布に関連付けられた相互情報を計算する。選ばれたp値は、相互情報を最大にする値である。一変形例において、p値の集合は、式(1)等の最適化問題を解くことによって得られる。ここで、以下の制約、pi+M/2=1-pがp値に適用される。
【0035】
図3に示すように、コンスタレーション内の各シンボルが、より下位のビットが左にある自然ラベリング(natural labelling)を用いてバイナリシーケンスによって表されるM-ASKコンスタレーションの場合、整形符号化器100は、図4A及び図4Bに示すように実施することができる。整形符号化器100は、送信機10の一部である。整形符号化器100は、スイッチ102及びシンボルマッパ104を備え、図5にフローチャートを示すような整形方法を実施するように構成される。必要に応じ、整形符号化器100は、チャネルコーディングモジュールとも呼ばれるECC(「誤り訂正符号(Error-Correcting Code)」の英語の頭字語)モジュール106を更に備えることができる。ECCモジュール106は、通常、入力としてk*(m-1)ビットを取り、n*(m-1)ビットを出力する。ここで、k及びnは、所定の整数値、例えばk=500及びn=1000である。決まった比率k/nである場合、n*(m-1)が大きいほど、性能が良好になる。一方、レイテンシーはn*(m-1)と共に増大する。
【0036】
図4Aにおいて、整形符号化器100は、バイナリーソースS0~S2m-1によってビットを供給される。Smax+1を、別個のバイナリーソース(すなわち、S0を含む)の数とする。すなわち、Smax=2m-1である。ソースS0は、等しい確率p(0)=p(1)=1/2を有するビットを出力する。i∈[1;2m-1]の各ソースSiは、確率pで0のビットを出力し、このため、確率(1-p)で1のビットを出力するように構成される。
【0037】
図4Bにおいて、整形符号化器100は、等しい確率p(0)=p(1)=1/2を有するビットを出力する単一のバイナリーソースS0によってビットを供給される。この場合、ソースS1~S2m-1は、この単一のソースS0から、例えばバイナリDM(「分布マッチャ(Distribution Matcher)」の英語の頭字語)を用いることによって、すなわち、ソースS1~S2m-1ごとに1つ得られる。バイナリDMは、例えば、Electron. Lett., vol. 55, no. 9, pp. 537-539, 2019において公開された、Boehnke他による、「Polar coded distribution matching」と題する文書において開示されている。しかしながら、本発明の実施形態は、ソースS1~S2m-1を得るこの特定の方法に制限されない。
【0038】
図4Bの整形符号化器100が、所与のソースSiごとにECCモジュールを含まない場合、DMiは、入力として、ソースS0によって生成された
【数21】
を取り、
【数22】
ビットを出力する。ここで、Smax=2m-1であり、各ビットは、確率pで0に等しく、rは、1以上の所定の整数であり、H(p)はパラメータpを有する2値エントロピーである。このため、各DMiの出力は、確率pで0のビットを出力するソースSiとみなされる。
【0039】
図4Bの整形符号化器100が、k*(m-1)ビットを符号化してn*(m-1)ビットにし、この動作をr回繰り返すECCモジュール106を備える例において、各DMiは、入力として、ソースS0によって生成された
【数23】
を取り、
【数24】
ビットを出力する。ここで、Smax=2m-1であり、各ビットは確率pで0に等しい。
【0040】
図5に戻り、ステップS300において、ソースS0から(m-1)ビットが得られる。以下において、これらの(m-1)ビットを、(b,b,...,bm-1)と表す。これらの(m-1)ビットは、シンボルのLSBビットを形成する。M-ASKコンスタレーションは、第iのシンボル及び第
【数25】
のシンボル、ただし
【数26】
を含む2つのシンボルのM/2個の集合に分割されるため、同じ集合に属する2つのシンボルは、同一のLSBビットを有する。例えば、図3を参照すると、集合2に属するシンボル-5及びシンボル3は、LSBビットとして「10」を有する。したがって、ソースS0から(m-1)ビットを得ることにより、M/2個の集合、このため1つのソースSiから1つの集合を選択することが可能になる。
【0041】
ステップS302において、S0から得られた(m-1)ビットに応答して、2m-1個のバイナリーソースの中から、スイッチ102によって1つのソースSiが選択される。実際に、(m-1)ビットの各可能なバイナリシーケンスと、2m-1個の集合(このため、2m-1個のソース)との間に1対1のマッピングが存在する。選択された集合/ソースのインデックスiは、(m-1)ビットのバイナリシーケンス(b,b,...,bm-1)の十進数値D(b,b,...,bm-1)を1だけ増分させたもの、すなわち1+D(b,b,...,bm-1)に等しい。コンスタレーション内の各シンボルは、より下位のビットが左にある自然ラベリングを用いたバイナリシーケンスによって表され、値
【数27】
である。バイナリ自然ラベリングは、図3において、8-ASKコンスタレーションについて示されている。
【0042】
ステップS304において、整形ビットと呼ばれるビットbが、この選択されたソースから得られる。得られたビットは、シンボルのMSBである。このため、S300において得られた(m-1)ビットは、MSBが出力された1つのソースを選択するようにスイッチを制御する。
【0043】
ステップS306において、シンボルマッパ104は、S300においてLSBとして得られた(m-1)ビット、及びS304においてMSBとして得られた選択されたビットによって形成されるバイナリワードに対応して送信されるシンボルを生成する。バイナリワードは(b,b,...,bm-1,b)であり、LSBが左側にある。
【0044】
ステップS308において、得られたシンボルは、通信チャネル12を介して受信機14に送信される。ステップS300~S308は、次の(m-1)ビットの集合について繰り返すことができる。
【0045】
図4Aの整形符号化器100が、n個の(m-1)ビットの集合を出力するECCモジュール106を備える場合、各集合の(m-1)ビットは、ステップS302において1つのソースSiを選択するために独立して用いられ、このため1つの整形ビットbが選択される。換言すれば、ステップS300~S308は、ECCモジュール106によって出力される(m-1)ビットの各集合について繰り返される。
【0046】
以下に、M=8及びm=3について例示する。この場合、様々な集合が以下の表において定義される。
【表2】
【0047】
S300においてS0から得られた2つのビット「10」から、インデックス2の集合が選択され、このため、スイッチ102が、S302においてソースS2を選択するように位置決めされる。S304においてS2から得られるビットが「1」である場合、得られるバイナリワードは「101」であり、このため、S306においてコンスタレーションのシンボル3にマッピングされる。したがって、シンボル3は、シンボルマッパ104によって出力され、S308において送信される。
【0048】
S300においてS0から得られた2つのビットが「11」である別の例では、インデックス4の集合がS302において選択される。スイッチはソースS4に位置決めされる。S304においてS4から得られるビットが「1」である場合、シンボルマッパは、S306においてシンボル7(バイナリワード「111」に対応する)を出力する。S304においてS4から得られるビットが「0」である場合、シンボルマッパは、S306においてシンボル「-1」(バイナリワード「110」に対応する)を出力する。
【0049】
ガウスチャネル等のいくつかのチャネルの場合、p(x)は対称である。結果として、
【数28】
である。図3を参照すると、p3=1-p2及びp4=1-p1である。
【0050】
この対称性を考慮すると、図4Aの整形符号化器100は、図6に示すように更に簡略化することができる。バイナリーソースの数は、2で除算され、ビット反転は、いくつかのソースが選択されるときに用いられる。この場合、Smax=2m-2である。
【0051】
,b,...,bm-1を、S300においてバイナリーソースS0から得られるm-1ビットとする。
【数29】
である場合、スイッチは、S302において、図4におけるような対応するソースを選択し、すなわち、インデックスD(b,b,...,bm-1)+1のソースを選択し、S304において選択されたソースから得られたビットは反転されない。
【数30】
である場合、スイッチは、S302において、インデックス
【数31】
のソースを選択し、S304において選択されたソースから得られたビットは反転されない。
【0052】
以下に、M=8及びm=3について例示する。この場合、様々な集合が以下の表において表される。この場合、5つではなく、3つのバイナリーソース(S0、S1及びS2)のみが必要とされる。
【表3】
【0053】
S300においてS0から得られた2つのビット「10」から、インデックス2の集合が選択され、このため、スイッチ102が、S302においてソースS2を選択するように位置決めされる。S304においてS2から得られるビットが「1」である場合、得られるバイナリワードは「101」であり、このため、S306においてコンスタレーションのシンボル3にマッピングされる。したがって、シンボル3は、シンボルマッパ104によって出力され、S308において送信される。
【0054】
S300においてS0から得られた2つのビットが「11」である別の例では、次にインデックス4の集合が選択される。このため、スイッチ102は、S302においてソースS1を選択するように位置決めされる。S304においてS1から得られたビットが「1」に等しい場合、これは反転モジュール108によって反転される(すなわち、0に変更される)。最後に、シンボルマッパはシンボル「-1」(バイナリワード「110」に対応する)を出力する。S304においてS1から得られたビットが「0」に等しい場合、これは反転モジュール108によって反転される(すなわち、1に変更される)。最後に、シンボルマッパはシンボル「7」(バイナリワード「111」に対応する)を出力する。このため、ビット反転は、インデックス3及び4の集合が選択されるときにのみ適用される。
【0055】
図6には表されていない)一変形において、整形符号化器100は、等しい確率p(0)=p(1)=1/2を有するビットを出力する単一のバイナリーソースS0によってビットを供給される。この場合、ソースS1~S2m-2は、この単一のソースS0から、バイナリDM(「分布マッチャ」の英語の頭字語)を用いることによって、図4Bに示すのと同じようにS1~S2m-2ごとに1つずつ得られる。このため、整形符号化器が所与のソースSiごとにECCモジュールを備えない場合、DMiは、入力として、ソースS0によって生成された
【数32】
を取り、
【数33】
ビットを出力する。ここで、Smax=2m-2である。
【0056】
整形符号化器が、k*(m-1)ビットを符号化してn*(m-1)ビットにし、この動作をr回繰り返すECCモジュールを備える例において、各DMiは、入力として、ソースS0によって生成された
【数34】
を取り、
【数35】
ビットを出力する。ここで、Smax=2m-2である。
【0057】
複雑性を更に低減するために、別個のバイナリーソースの数は、隣接するシンボルが同じ確率を有するように強制することによって低減することができる。例えば、8-ASKの場合、pはpに等しく設定される。同じpiに関連付けられたシンボルは、同じバイナリーソースからビットを選択する。Smaxが小さい(例えば2に等しい)場合であっても、
【数36】
である。実際には、S0に加えて2つの追加のバイナリーソースが、ガウスチャネルのために整形利得の大部分を得るのに十分である。このため、少数のバイナリーソースを用いて略最適な性能を達成することが可能である。バイナリーソースの数を限定することによって、以下のようないくつかの利点が提供される。
・整形符号化器の複雑度の低減、このため送信機の(必要な動作数の観点における)複雑度の低減、
・確率の最適化の複雑度の低減、
・送信機がp個の値をシグナリングするときの送信機と受信機との間のシグナリングの低減、及び、
・送信機及び受信機の双方が表からp値を得るときの表のサイズの低減。
【0058】
一般的には、単一の等確率バイナリーソースS0のみが利用可能である。このため、図4Bに示すように、追加のバイナリーソースが単一のバイナリーソースS0から得られる。図7は、2つの追加のバイナリーソースが単一のバイナリーソースS0から得られる特定の実施形態による整形符号化器100を示す。この実施形態において、Smax=2及びビットは、(例えば、レイテンシー又はシステム制約に起因して)パケットごとに処理されなくてはならない。H(p)が、パラメータpを有する2値エントロピーを表すものとする。まず、ソースS0によって、
【数37】
ビットが生成される。(m-1)*k*rビットが得られ、誤り訂正符号モジュール106により符号化される。誤り訂正符号モジュール106は、(m-1)*n*rビットを出力する。これに並行して、
【数38】
ビット及び
【数39】
ビットが、2つのバイナリー分布マッチャDM1及びDM2によって処理される。DM1は、
【数40】
ビットのシーケンスを出力し、ここで、各ビットは、確率pで0に等しく、DM2は、
【数41】
ビットのシーケンスを出力し、ここで各ビットは確率pで0に等しい。誤り訂正符号モジュール106の出力において、m-1ビットのn個の集合のそれぞれは、対応するDMの出力において1つの整形ビットbを選択するようにスイッチ102を制御する。このため、図5に関して開示された方法は、m-1ビットのn個の集合のそれぞれに適用される。図6に開示されたビット反転を、選択されたソースに依存して更に適用することができる。
【0059】
スイッチが第1のDMに
【数42】
ビットを要求し、第2のDMに
【数43】
ビットを要求することが可能である。ここで、εはランダム量である。1つのソースがもはや利用可能なビットを有しない場合、他のソースからビットが選択される。
【0060】
図4A図7に関して記載した、上述した整形符号化器のうちの任意のものを用いてM-ASKシンボルが得られると、送信機10は、偏波、時間、周波数及び空間等のいくつかの次元を通じてこれらを送信する。例えば、送信機10は、一方が実部、及び他方が虚部の複素シンボルにおいて2つのASKシンボルをグループ化することができる。この場合、M-ASK変調は、QAM変調とも呼ばれる。
【0061】
様々な実施形態において、整形符号化器100は、より下位のビットを符号化するのに用いられるECCモジュール106を必要に応じて備えてもよい。一例において、ECCモジュールは、マルチレベルpolar符号化を用いてこれらのビットを符号化するように構成される。マルチレベルコーティングの原理を以下に説明する。
【0062】
連鎖律を用いると、通信チャネルの入力Xと出力Yとの間の相互情報を以下のように表すことができる。
【数44】
ここで、Bは、検討されるラベリングの第iのビットに対応する確率変数を表す。
【0063】
1ビットレベルは、I(B;Y|B,...,Bi-1)によって表されるチャネルを指す。バイナリコードを用いてこの第iのレベルにわたって情報を送信するとき、コーディングレートは、I(B;Y|B,...,Bi-1)にマッチするように選ばれる。実際には、用いられるコードに依存するバックオフが適用される。この通信チャネルは、対数尤度比(LLR)によって特徴付けることもできる。
【0064】
=b,...,Bi-1=bi-1を所与として、
【数45】
を、B=0を用いて得られたコンスタレーションのシンボルの集合とし、
【数46】
を、B=1を用いて得られたコンスタレーションのシンボルの集合とする。受信シンボルyを所与として、LLRは以下のように定義される。
【数47】
【0065】
第1のレベルにおけるビットは等確率のままであるため、p(B=1|B=b,...,Bi-1=bi-1)=p(B=0|B=b,...,Bi-1=bi-1)=0.5が得られ、相互情報が以下のように計算される。
【数48】
【0066】
整形のために用いられる最後のビットレベルに関して、
【数49】
及び
【数50】
が得られ、相互情報が以下のように計算される。
【数51】
【0067】
検討されるSNRの範囲について、整形ビットbは、チャネルコードを用いて符号化される必要がない。相互情報I(Y;B|B,...,Bm-1)は、対応するレベルのエントロピーに等しく、すなわち、通信チャネルは「クリーン」である。このため、整形ビットbは、上記で開示された実施形態においてチャネルコードを用いて符号化されない。結果として、図7におけるkの値は、
【数52】
として選ぶことができる。
【0068】
このとき、マルチレベルpolar符号化は、単に、各ビットレベルが、率I(Y;B|B,...,Bi-1)を有するpolar符号で符号化されることを意味する。ブロック長は、用いられるpolar符号のサイズを指す。
【0069】
受信機側で、リスト復号を用いてpolar符号を復号する。リスト復号については、IEEE Transactions on Information Theory, vol. 61, n°5, pages 2213-2226において2013年に公開された「List decoding of polar codes」と題するTal他の文書において開示されている。リスト復号器は、MAP復号を実行する。結果として、復号器は、LLRを入力として取り(式(2)を参照)、これは、計算される入力分布の知識を必要とする。換言すれば、受信機は、リスト復号のためにpの値を知る必要がある。
【0070】
図8に、特定の実施形態による復号方法のフローチャートを示す。
【0071】
ステップS400において、集合の、ステップS302において送信機側で選択されたソースのインデックスiがまず得られる。集合の選択が、送信機によって誤り訂正符号によりブロック単位で行われる場合、チャネル復号によってインデックスiが得られる(すなわち、集合のインデックスのブロックが共に復号される)。
【0072】
ステップS402において、集合のインデックスiが復号されると、集合iの2つのシンボルのうちの一方が、受信したyに基づいて検出される。ほとんどのチャネル復号器は、最大事後(MAP)復号を実行する。集合i内の送信されたシンボルの検出は、MAP検出も実行することができる。MAP復号は、入力分布を知ることを要する。換言すれば、受信機は、効率的な復号のためにpの値を知る必要がある。
【0073】
いくつかの場合、集合iにおける最大尤度(ML)検出を行えば十分である。なぜなら、信頼性が十分高く、事後確率を考慮に入れる必要がないためである。結果として、pの知識は、チャネル復号器によってのみ用いることができる。
【0074】
ステップS404において、検出されたシンボルからビットを復元するために、逆マッピングが適用される。このステップは、ステップS306の逆である。ステップS406において、ステップS302の逆が適用される。このため、スイッチ102は、適切なソースにMSBビットを送信するように位置決めされる。バイナリDMが送信機側で用いられる場合、逆バイナリDMが適用されることも可能である。
【0075】
ビット反転が送信機側で適用される場合、ビット反転は、ステップS406において、反転モジュール108によって受信機側で適用される。
【数53】
である場合、復号されたビットは反転され、ここで、
【数54】
は復号されたより下位のビットの値を表す。
【0076】
図9に、特定の実施形態による、送信機10のハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す。
【0077】
送信機10は、通信バス110によって接続された、プロセッサ又はCPU(「中央処理ユニット(Central Processing Unit)」の頭字語)111と、ランダムアクセスメモリRAM112と、リードオンリーメモリROM113と、ハードディスク又は記憶媒体リーダ、例えばSD(「セキュアデジタル(Secure Digital)」の頭字語)カードリーダ等の記憶ユニットSTCK114と、送信機10がデータを送受信することを可能にする通信インタフェースCOM115の少なくとも1つのセットとを備える。
【0078】
プロセッサ111は、ROM113から、外部メモリ(SDカード等)から、記憶媒体(HDD等)から又は通信ネットワークからRAM112内にロードされた命令を実行することが可能である。送信機10の電源が入れられると、プロセッサ111は、RAM112からの命令を読み出し、これらを実行することが可能である。これらの命令は、プロセッサ111に、図4A図7に関して記載した方法を実施させるコンピュータープログラムを形成する。
【0079】
図4A図7に関して記載した方法は、プログラマブル機械、例えば、DSP(「Digital Signal Processor」(デジタル信号プロセッサ)の頭字語)、マイクロコントローラ又はGPU(「Graphics Processing Unit」(グラフィックス処理装置)の頭字語)による命令のセットの実行によってソフトウェアの形態で実施することもできるし、機械又は専用の構成要素(チップ又はチップセット)、例えば、FPGA(「Field-Programmable Gate Array」(フィールドプログラマブルゲートアレイ)の頭字語)若しくはASIC(「Application-Specific Integrated Circuit」(特定用途向け集積回路)の頭字語)によってハードウェアの形態で実施することもできる。概して、送信機10は、図4A図7に関して記載した方法を実施するように適合及び構成された電子回路類を含む。
【0080】
図10に、特定の実施形態による、受信機14のハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す。
【0081】
受信機14は、通信バス210によって接続された、プロセッサ又はCPU(「中央処理ユニット(Central Processing Unit)」の頭字語)201と、ランダムアクセスメモリRAM202と、リードオンリーメモリROM203と、ハードディスク又は記憶媒体リーダ、例えばSD(「セキュアデジタル(Secure Digital)」の頭字語)カードリーダ等の記憶ユニットSTCK204と、受信機14がデータを送受信することを可能にする通信インタフェースCOM205の少なくとも1つのセットとを備える。
【0082】
プロセッサ201は、ROM203から、外部メモリ(SDカード等)から、記憶媒体(HDD等)から又は通信ネットワークからRAM202内にロードされた命令を実行することが可能である。受信機14の電源が入れられると、プロセッサ201は、RAM202からの命令を読み出し、これらを実行することが可能である。これらの命令は、プロセッサ201に、図4A図7に関して記載した方法を実施させるコンピュータープログラムを形成する。
【0083】
図8に関して記載した方法は、プログラマブル機械、例えば、DSP(「Digital Signal Processor」(デジタル信号プロセッサ)の頭字語)、マイクロコントローラ又はGPU(「Graphics Processing Unit」(グラフィックス処理装置)の頭字語)による命令のセットの実行によってソフトウェアの形態で実施することもできるし、機械又は専用の構成要素(チップ又はチップセット)、例えば、FPGA(「Field-Programmable Gate Array」(フィールドプログラマブルゲートアレイ)の頭字語)若しくはASIC(「Application-Specific Integrated Circuit」(特定用途向け集積回路)の頭字語)によってハードウェアの形態で実施することもできる。概して、受信機14は、図8に関して記載した方法を実施するように適合及び構成された電子回路類を含む。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】