(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】下顎関節プロテーゼを設計するための方法および対応する生産方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/28 20060101AFI20240209BHJP
A61F 2/30 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61F2/28
A61F2/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513095
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022050847
(87)【国際公開番号】W WO2022171381
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021201278.7
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514094346
【氏名又は名称】カール ライビンガー メディツィンテクニーク ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Karl Leibinger Medizintechnik GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Kolbinger Strasse 10 78570 Muehlheim Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アクス、アデム
(72)【発明者】
【氏名】ライビンガー、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ライナウアー、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフラム、トビアス
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA03
4C097BB01
4C097DD01
4C097DD10
(57)【要約】
本発明は、治療される患者の頭蓋骨側部(2)のための下顎関節プロテーゼ(40)を設計するための方法およびコンピュータ・システムに関する。本方法の本質的な考えは、下顎関節の標準化されたモデルを患者の健康な頭蓋骨側部(1)のグラフィック表現に整合させ、対応する詳細な適合をなすように、治療される頭蓋骨側部(2)のグラフィック表現へとミラー平面に沿ってそれをミラーリングすることである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療される患者の頭蓋骨側部(2)のための下顎関節プロテーゼ(40)を設計するための方法であって、前記方法は、
前記患者の少なくとも下顎関節を含む頭蓋骨の3次元(3D)表現(10)を提供する工程(S10)と、
前記下顎関節プロテーゼ(40)の1つ以上の機能的グループのための3次元(3D)モデル(20)を提供する工程であって、前記機能的グループは、少なくとも顆頭(23)および前記顆頭(23)のための窩摺動表面(25)を含む、工程(S20)と、
前記3D表現(10)の基準頭蓋骨側部(1)における前記頭蓋骨の前記3D表現(10)に対して、提供された前記3Dモデル(20)を配置する工程であって、前記基準頭蓋骨側部(1)は、治療される前記頭蓋骨側部(2)とは反対側の頭蓋骨側部である、工程(S30)と、
サイズおよびアライメントに関して、前記基準頭蓋骨側部(1)における前記3D表現(10)の解剖学的条件に、提供された前記3Dモデル(20)を適合させる工程(S40)と、
治療される前記頭蓋骨側部(2)に、前記基準頭蓋骨側部(1)からの顆頭モデル(26)をミラーリングする工程であって、前記顆頭モデル(26)は、前記基準頭蓋骨側部(1)における前記3D表現(10)の顆頭(13)によって形成されるか、または、前記3Dモデル(20)の前記顆頭(23)の少なくとも一部(24)によって形成されるかのいずれかである、工程(S50)と、
適合された前記3Dモデル(25)から窩摺動表面(25)を抽出する工程(S60)と、
治療される前記頭蓋骨側部(2)に、抽出された前記窩摺動表面(25)を配置する工程(S70)と、
ミラーリングされた前記顆頭モデル(26)と、前記窩摺動表面(25)とを、互いに適合させるか、治療される前記頭蓋骨側部(2)における前記3D表現(10)の解剖学的構造に適合させるか、またはその両方を行う、工程(S80)と、
前記下顎関節プロテーゼ(40)のための構築データ(72)を出力する工程であって、前記構築データ(72)は、少なくとも適合されたミラーリングされた前記顆頭モデル(26)および適合された前記窩摺動表面(25)を含む、工程(S100)と、を有する、方法。
【請求項2】
窩主本体部(47)が前記窩摺動表面(45)を支えるように、前記下顎関節プロテーゼ(40)の前記窩主本体部(47)を設計する工程を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
適合されたミラーリングされた前記顆頭モデル(26)は、前記下顎関節プロテーゼ(40)の別個の頭蓋コンポーネント(41)の一部として設計されており、前記下顎関節プロテーゼ(40)の適合された前記窩摺動表面(45)は、前記下顎関節プロテーゼ(40)の別個の下顎コンポーネント(42)の一部として設計されている、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記頭蓋コンポーネント(41)および前記下顎コンポーネント(42)は、前記頭蓋コンポーネント(41)および前記下顎コンポーネント(42)がそれぞれのアイレット(51、52)を備えるように各々設計されており、前記アイレット(51、52)によって、前記頭蓋コンポーネント(41)および前記下顎コンポーネント(42)は、縫合糸(53)またはバンドによって互いに連結されることができる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
出力された前記構築データ(72)にしたがって前記下顎関節プロテーゼ(40)を生産する工程(S110)を備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記下顎関節プロテーゼ(40)のパーツ(42、43、44、46、47)は、レーザー溶融を使用するジェネレーティブな方法によって生成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記下顎関節プロテーゼ(40)の前記窩摺動表面(45)は、プラスチックから作製された、とりわけ、ポリエチレンから作製された摺動層として形成される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記下顎コンポーネント(42)は、前記顆頭モデル(26)による顆頭(46)に加えて、前記患者の下顎に前記下顎コンポーネント(42)を固定するための下顎固定プレート(44)を少なくとも有しており、前記下顎コンポーネント(42)は、チタンからワンピースで製造されている、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記頭蓋コンポーネント(41)は、チタンとポリエチレンとの複合材料から形成されており、前記患者の頭蓋に前記頭蓋コンポーネント(41)を固定するための頭蓋固定プレート(43)を有しており、前記頭蓋固定プレート(43)は、チタンから形成されている、請求項5乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成されている、コンピュータ・システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下顎に対し締結可能な、人工関節ヘッドを有する第1のインプラント・パーツ(下顎コンポーネント)と、頭蓋に対し締結可能な、関節表面を有する第2のインプラント・パーツ(頭蓋コンポーネント)とを有する、インプラント可能な下顎関節プロテーゼを設計するための方法であって、関節表面は、人工関節ヘッドのための支台(Widerlager)を形成している、方法に関する。加えて、本発明は、インプラント可能な下顎関節プロテーゼを生産するための対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下顎関節(医学用語では、TMJ(「顎関節:temporomandibular joint」)とも称される)は、人体において最も使用される最も重要な関節の1つである。下顎関節は、咀嚼、会話、嚥下、およびストレス管理の間に、下顎(下側の顎)の移動誘導において、重要な役割を果たしている。下顎関節は、嚥下移動に起因して、睡眠中でも連続的に移動している。
【0003】
その多様な解剖学的構造およびその6つの自由度に起因して、下顎関節は、人体の最も複雑な関節の1つでもある。下顎関節がその移動シーケンスを実施することができるようにするために、関節表面の形状、歯列の条件、歯の位置、歯の形状、および咀嚼筋肉組織は、機能的システムを形成しなければならず、機能的システムは、多数のコンポーネントがあるということに起因して、ある種の故障しやすさを抱えている。左側および右側の下顎関節は、ここでは常に一緒に働き、一般的に、互いにミラー対称的に形成されている。
【0004】
しかし、下顎関節のエリアにおいて故障、たとえば、機能制限または病気が生じる場合には、患者の日常の生活の質に大きな悪影響が生じる可能性がある。正しい関節構造を再確立することは、このケースでは、外科的な解決策の過程においてのみ可能である場合があり、すなわち、正常な機能が損なわれた関節の切除(すなわち、除去)、および、下顎関節プロテーゼによるその交換によってのみ可能である場合がある。
【0005】
下顎関節プロテーゼは、たとえば、特許文献1から知られている。特許文献1は、頭蓋骨と下顎との間での並進および回転移動の組み合わせを許容するメカニズムを提供し、そこでは、摺動移動が表面間で行われる。
【0006】
しかし、下顎関節プロテーゼを設計することは、要求の厳しいタスクである。その理由は、各プロテーゼが、常に、天然の構造体の不完全な近似を表すだけであり、プロテーゼは、典型的に、このケースでは、関節運動されるコンポーネントの機能的な相互作用がチェックされることができずに、製図板上でまたはコンピュータ上で設計されるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、下顎関節プロテーゼを設計するための改善された方法、下顎関節プロテーゼのための改善された生産方法、および、下顎関節プロテーゼを設計するためのコンピュータ・システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的は、請求項1の特徴を有する方法によって実現される。したがって、治療される患者の頭蓋骨側部のための下顎関節プロテーゼを設計するための方法であって、方法は、
患者の少なくとも下顎関節を含む頭蓋骨の3次元(3D)表現を提供する工程と、
下顎関節プロテーゼの1つ以上の機能的グループのための3次元(3D)モデルを提供する工程であって、機能的グループは、少なくとも顆頭および顆頭のための窩摺動表面を含む、工程と、
3D表現の基準頭蓋骨側部における頭蓋骨の3D表現に対して、提供された3Dモデルを配置する工程であって、基準頭蓋骨側部は、治療される頭蓋骨側部とは反対側の頭蓋骨側部である、工程と、
サイズおよびアライメントに関して、基準頭蓋骨側部における3D表現の解剖学的条件に、提供された3Dモデルを適合させる工程と、
治療される頭蓋骨側部に、基準頭蓋骨側部からの顆頭モデルをミラーリングする(鏡像生成する)(gespiegelte)工程であって、顆頭モデルは、基準頭蓋骨側部における3D表現の顆頭によって形成されるか、または、3Dモデルの顆頭の少なくとも一部によって形成されるかのいずれかである、工程と、
適合された3Dモデルから窩摺動表面を抽出する工程と、
治療される頭蓋骨側部に、抽出された窩摺動表面を配置する工程と、
ミラーリングされた顆頭モデルと、窩摺動表面とを、互いに適合させるか、治療される頭蓋骨側部における3D表現の解剖学的構造に適合させるか、またはその両方を行う、工程と、
(とりわけ、下顎関節プロテーゼ3Dモデルの形態で)下顎関節プロテーゼのための構築データを出力する工程であって、構築データは、少なくとも適合されたミラーリングされた顆頭モデルおよび適合された窩摺動表面を含む、工程と
を有する、方法が提供される。
【0010】
とりわけ、適切な3Dモデルを適合させるために、および、その後に、治療される頭蓋骨側部にミラーリングを実施するために、健康な基準頭蓋骨側部における構造を使用する基本的な概念は、健康な基準頭蓋骨側部からの可能な限り多くの情報がプロテーゼの設計のために考慮に入れられることを可能にする。したがって、治療される頭蓋骨側部において互いに関節運動される下顎関節プロテーゼのインプラント・パーツの良好な相互作用が、そのように実現されることができるだけでなく、追加的に、両方の頭蓋骨側部において、可能な限り最も平行で同一の移動も実現されることができる。
【0011】
下顎関節プロテーゼを設計することは、とりわけ、構築データが提供されるように、下顎関節プロテーゼを計画もしくは設計することまたはレイアウトし、それは、最終的に、対応する機械またはもっぱら機械的な作用のみによって依然として実装され、実際の下顎関節プロテーゼを形成しなければならないことを意味すると理解される。
【0012】
本明細書において「患者」に言及するときはいつでも、これは、女性患者および男性患者の両方を意味するということが明らかである。
下顎関節プロテーゼの機能的グループは、下顎関節プロテーゼが自然の下顎関節の代わりに使用されるときに互いに関節運動する、すなわち、互いに係合する、互いに擦れる、互いに相互に支持する、および、互いに対抗力を働かせるなどする、エレメントまたはセクションのグループとして理解される。換言すれば、機能的グループは、互いの相互作用による下顎関節の移動を可能にするように設計されている少なくともそれらのエレメントを含有する。したがって、下顎関節プロテーゼでは、これらは、少なくとも顆頭(または、顆頭に対応するエレメント)および関連の関節窩の窩摺動表面(または、窩摺動表面に対応するエレメント)である。
【0013】
本明細書で使用されているような「頭蓋骨」という指定は、とりわけ、頭蓋、上顎、および下顎を含む。
「窩」および「関節窩」という用語は、本明細書において同義的に使用される。「下顎顆」、「顆」、および「顆頭」という用語も、同義的に使用される。
【0014】
本発明による主題の好適な改良例は、とりわけ、図面を参照して、従属請求項および明細書から結果として生じる。
いくつかの好適な実施形態、変形例、または、実施形態の改良例によれば、方法は、窩主本体部が窩摺動表面を支えるように、下顎関節プロテーゼの窩主本体部を設計する工程を備える。このケースでは、とりわけ、その後の下顎関節プロテーゼの窩摺動表面がプラスチック、とりわけ、ポリエチレンから形成されるということが提供されることができ、それとともに、好ましくは、チタンから形成されている窩主本体部は、材料複合材として具現化されている。たとえば、窩摺動表面は、焼結プロセスによって窩主本体部に結合されることができる。
【0015】
本明細書において、チタンからの部分的なインプラント、セクション、またはエレメントの形成に言及するときはいつでも、チタンの代わりに、適切なチタン合金も使用されることもできるということが明らかである。
【0016】
いくつかの好適な実施形態、変形例、または、実施形態の改良例によれば、適合されたミラーリングされた顆頭モデルは、下顎関節プロテーゼの別個の頭蓋コンポーネントの一部として設計(または、レイアウト)されており、下顎関節プロテーゼの適合された窩摺動表面は、下顎関節プロテーゼの別個の下顎コンポーネントの一部として設計(または、レイアウト)されている。頭蓋コンポーネントおよび下顎コンポーネントは、別個の部分的なインプラント(または、インプラント・パーツ)として指定されることもできる。互いに分離された部分的なインプラントとして頭蓋コンポーネントおよび下顎コンポーネントを形成することは、最初に、互いに対する2つの部分的なインプラントの大きな移動の自由を可能にし、それは、医師による適切な手段または対応策、たとえば、縫合糸によって、その後に便宜的に制限されることができる。そのうえ、このように、2つの部分的なインプラントが互いに別個に生産されることができるので、生産が簡単化される。
【0017】
いくつかの好適な実施形態、変形例、または、実施形態の改良例によれば、頭蓋コンポーネントおよび下顎コンポーネントは、それぞれのアイレット(Ose)(頭蓋コンポーネント・アイレットおよび下顎コンポーネント・アイレット)を備えるように各々設計されており、アイレットによって、頭蓋コンポーネントおよび下顎コンポーネントの両方は、縫合糸またはバンドによって互いに連結されることができる。そのような縫合糸は、有利には、再吸収可能にされることができ、人体の中へ挿入された下顎関節プロテーゼに締結されることができ、頭蓋コンポーネントおよび下顎コンポーネントを互いに移動可能に連結するようになっている。これは、下顎関節プロテーゼに対して最初に馴染ませる局面において、下顎関節プロテーゼの正しい移動/咬み合わせおよび位置を学習する際に、患者を助けることが可能である。
【0018】
いくつかの好適な実施形態、変形例、または、実施形態の改良例によれば、方法は、出力された構築データにしたがって、すなわち、とりわけ、発生させられた下顎関節プロテーゼ3Dモデルにしたがって下顎関節プロテーゼを生産する工程を備える。このケースでは、方法は、下顎関節プロテーゼを生産するための方法と称されることもできる。
【0019】
いくつかの好適な実施形態、変形例、または、実施形態の改良例によれば、少なくとも下顎関節プロテーゼのパーツは、レーザー溶融を使用する(とりわけ、チタンレーザー溶融を使用する)ジェネレーティブな(または、付加的な)方法によって生成され、対応するパーツが、完全にまたは少なくとも部分的にチタンから形成されるようになっている。チタンは、下顎関節プロテーゼに十分に適切な材料であり、同時に下にある3Dモデルに対して寸法的に正確な高品質の安定したインプラントが、レーザー溶融によって生産されることができる。
【0020】
下顎関節プロテーゼの意図した使用の間に関節運動するチタンから製造されたすべてのパーツまたはエレメントは、好ましくは、研磨されている。したがって、それらの摩擦係数は、繰り返しになるが、著しく低減され、それによって、下顎関節プロテーゼのさらに良好な咬み合わせを可能にする。下顎関節プロテーゼの顆頭(すなわち、無傷の下顎関節において顆頭が果たす、下顎関節プロテーゼにおけるそれらの機能を果たすエレメント)が研磨されるということがとりわけ好適である。
【0021】
いくつかの好適な実施形態、変形例、または、実施形態の改良例によれば、下顎関節プロテーゼの窩摺動表面は、プラスチックから作製された、とりわけ、ポリエチレンから作製された摺動層として形成される。ポリエチレンは、とりわけ、UHMWPEであることが可能である。UHMWPEは、たとえば、200万~800万g/molの超高分子量を有する熱可塑性のポリエチレンである。UHMWPEの例は、たとえば、「Celanese GUR(登録商標)1020」の商品名の下で販売されている。窩摺動表面は、好ましくは、焼結プロセスの助けを借りて、チタンから製造された窩主本体部に結合されている。
【0022】
研磨されたチタンから作製された顆頭、および、互いに対して関節運動するUHMWPEから作製された窩摺動表面の組み合わせは、とりわけ低い摩擦を有すること、ひいては、とりわけ有利であるということが証明されている。
【0023】
いくつかの好適な実施形態、変形例、または、実施形態の改良例によれば、下顎コンポーネントは、顆頭モデルによる顆頭に加えて、患者の下顎に対し下顎コンポーネントを固定するための下顎固定プレートを少なくとも有している。これは、典型的には、孔部が提供されており、下顎固定プレートがスクリューによって患者の下顎に締結されることができるようになっている。しかし、他の締結手段が提供されることもでき、下顎固定プレートは、それに応じて設計されることができる。下顎コンポーネントは、好ましくは、チタンからワンピースで製造されており、とりわけ、好ましくは、チタン・レーザー・ビーム溶融によって製造されている。
【0024】
いくつかの好適な実施形態、変形例、または、実施形態の改良例によれば、頭蓋コンポーネントは、患者の頭蓋に頭蓋コンポーネントを固定するための頭蓋固定プレートを有している。これは、典型的に、孔部が提供されており、頭蓋固定プレートがスクリューによって患者の頭蓋に締結されることができるようになっている。しかし、他の締結手段が提供されることもでき、下顎固定プレートは、それに応じて設計されることができる。下顎コンポーネントは、好ましくは、チタンからワンピースで製造されており、とりわけ、好ましくは、チタン・レーザー・ビーム溶融によって製造されている。
【0025】
頭蓋コンポーネントは、好ましくは、チタンおよびポリエチレン、とりわけ、UHMWPEの複合材料から形成されている。
いくつかの好適な実施形態、変形例、または、実施形態の改良例によれば、下顎関節プロテーゼの設計および生産に加えて、方法は、下顎関節プロテーゼを患者の中に挿入またはインプラントする工程も備える。任意選択で、(好ましくは、再吸収可能な)縫合糸が、頭蓋コンポーネントおよび下顎コンポーネントをそれぞれの頭蓋コンポーネント・アイレットおよび下顎コンポーネント・アイレットを通して互いに移動可能に連結するために、挿入の前に、その間に、または、その後に、この目的のために使用されることもできる。
【0026】
本発明は、追加的に、下顎関節プロテーゼを生成させるための方法を実施するように設計されているコンピュータ・システムを提供する。
そのうえ、本発明は、実行可能なプログラム・コードを備えるコンピュータ・プログラム製品であって、実行可能なプログラム・コードは、実行されるときに、下顎関節プロテーゼを設計するための方法の一実施形態による方法を実施するように設計されている、コンピュータ・プログラム製品を提供する。
【0027】
本発明は、追加的に、実行可能なプログラム・コードを備えるコンピュータ可読の不揮発性のデータ・メモリー媒体も提供し、実行可能なプログラム・コードは、実行されるときに、下顎関節プロテーゼを設計するための方法の一実施形態による方法を実施するように設計されている。
【0028】
本発明は、追加的に、データ・ストリームも提供し、データ・ストリームは、実行可能なプログラム・コードを備え、または、そのような実行可能なプログラム・コードを提供するように設計されており、実行可能なプログラム・コードは、実行されるときに、下顎関節プロテーゼを設計するための方法の一実施形態による方法を実施するように設計されている。
【0029】
本発明は、追加的に、ウェブ・サーバーを提供し、ウェブ・サーバーは、ウェブ・サービスとして下顎関節プロテーゼを設計するための方法の一実施形態による方法を提供するかまたはアクセス可能にするように設計されている。
【0030】
上記の実施形態および改良例は、合理的である場合には、所望のように互いに組み合わせられることができる。本発明のさらなる可能な設計、改良例、および実装形態は、また、例示的な実施形態に関して上記または以降に記述されている本発明の特徴の明示的に述べられていない組み合わせを含む。
【0031】
本発明は、図面の図における例示的な実施形態に基づいて、より詳細に以降に説明される。部分的に概略的な図において、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態による方法を説明するための概略フローチャートを示す図。
【
図2】患者の頭蓋骨の3次元グラフィック表現を示す図。
【
図3a】下顎のグラフィック表現、および、共通のグラフィック環境における下顎関節プロテーゼの機能的グループのための3Dモデルを正面から示す図。
【
図3b】3Dモデルが下顎のグラフィック表現に適合された後の、下顎のグラフィック表現、および、共通のグラフィック環境における下顎関節プロテーゼの機能的グループのための3Dモデルを正面から示す図。
【
図4a】
図3aからの状況の描写を側面から示す図。
【
図4b】
図3bからの状況の描写を側面から示す図。
【
図5a】健康な頭蓋骨側部においてマークされている顆頭と、治療される頭蓋骨側部における欠陥のある顆頭とを有する下顎のグラフィック表現の上方からの図。
【
図5b】欠陥のある顆頭の上に顆頭モデルが重ね合わせられている、
図5aからの図。
【
図6a】下顎関節プロテーゼの機能的グループの3Dモデルの顆頭の概略的な詳細図。
【
図7a】下顎関節プロテーゼの機能的グループの3Dモデルの窩摺動表面の詳細図。
【
図7b】3Dモデルからのその抽出の後の、
図7aからの窩摺動表面を示す図。
【
図8a】欠陥のある顆頭の切除の後の患者の頭蓋骨のグラフィック表現を示す図。
【
図8b】
図8bからの図であるが、頭蓋が隠された状態の図。
【
図9a】患者の頭蓋骨解剖学的構造への下顎関節プロテーゼ3Dモデルの機能的グループの適合の結果を斜め右下から示す図。
【
図9b】
図9aからの状況を示しているが、頭蓋が隠された状態で正面から見られた図。
【
図10】患者の頭蓋骨のグラフィック表現の上に配置されている下顎関節プロテーゼ3Dモデルを示す図。
【
図11】頭蓋骨モデルに取り付けられている、本発明の実施形態にしたがって生産された下顎関節プロテーゼを示す図。
【
図12】本発明のさらなる実施形態によるコンピュータ・システムの概略的な表現を示す図。
【
図13】本発明のさらなる実施形態によるコンピュータ・プログラム製品の概略的な表現を示す図。
【
図14】本発明のさらなる実施形態によるデータ・メモリー媒体の概略的な表現を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
すべての図において、同一のまたは機能的に同一のエレメントおよびデバイスは、そうでないことが示されていない場合には、同じ参照記号を提供されている。
図1は、本発明の1つの実施形態による方法を説明するための概略フローチャートを示している。
【0034】
工程S10において、患者の頭蓋骨の3次元(3D)表現が提供され、その表現は、少なくとも下顎関節(または、場合によっては、事故もしくは病気の後のその残るもの)を含む。
【0035】
この目的のために、最初に工程S11において、患者の頭蓋骨の解剖学的データが提供されることができる(読み出される、要求される、および受信されるなど)。患者の頭蓋骨の解剖学的データの提供S11は、たとえば、医療用イメージング・データ、すなわち、とりわけ、医療用イメージング方法、とりわけ断層撮影方法、たとえば、コンピュータ断層撮影(CT)、デジタルボリューム断層撮影(DVT)、または「コーン・ビーム・コンピュータ断層撮影」(CBCT)、および磁気共鳴断層撮影(MRT)などによって発生させられたデータ、を使用して(または、医療用イメージング・データの提供によって)行われることができる。
【0036】
そのような医療用イメージング・データは、一般的に、DICOMフォーマットで提供され、他のフォーマットも可能である。「DICOM」は、登録商標であり、「Digital Imaging and Communications in Medicine」を表す。本明細書においてDICOM規格に言及するときはいつでも、これは、とりわけ、DICOM規格PS3.1 2020dの現行バージョンとして理解されることができ、先行または後続のDICOM規格バージョンにしたがった構造化レポートも使用されることができる。DICOMデータは、とりわけ、PACSから読み出されるかまたは要求されることができ、PACSは、「Picture Archiving and Communication System」を表す。
【0037】
イメージング・データは、典型的に、層状イメージとしてDICOMフォーマットで提供され、そこから、3Dデータが、対応する3Dイメージ発生ソフトウェアによって発生させられる。3Dデータは、たとえば、STLフォーマットで提供されることができる。STLフォーマットは、三角形のファセットの助けを借りて3D本体部の表面を記述し、そのそれぞれは、三角形の3つのコーナー・ポイントおよび関連の表面法線によって特徴付けられる。
【0038】
オリジナルの医療用イメージング・データは、患者の頭蓋骨の外側に追加的な身体部分および/または骨を有する可能性があるということが明らかである。これらは、また、提供された頭蓋骨の解剖学的データの中に含まれることができるか、または、中間工程において除去されることができる。その理由は、頭蓋骨の骨の解剖学的構造についてのデータが、下顎関節プロテーゼの設計および後の生産に十分であるからである。
【0039】
工程S12において、セグメント化が実施されることができ、すなわち、とりわけ、医療用イメージング・データに基づいて、各ケースにおいて特定の骨(または、他の人体部分)に関連付けられるものとして、解剖学的データのピクセルまたはボクセルの分類が実施されることができる。たとえば、訓練された人工ニューラル・ネットワーク、とりわけ、いわゆる、「畳み込みニューラル・ネットワーク」(CNN)が、この目的のために適切である。したがって、本方法に必要とされる人間の骨格のパーツ、すなわち、とりわけ、頭蓋骨は、そのようなセグメント化に基づいて自動的に認識されることができ、これらのパーツに関係する(すなわち、パーツを備える)関連のイメージング・データは、任意選択で、さらなる使用のために隔離されることができる。
【0040】
また、解剖学的データは、複数のソースからの医療用イメージング・データから構成されることができる。たとえば、患者の歯の従来のまたは3DのX線写真による歯科用スキャン(または、「歯科用データ」)も、3Dデータの一部であることが可能である。歯科用スキャンは、たとえば、歯の古典的な石膏印象に基づくことが可能であり、それは、患者が以前にかけられたものと同じCTスキャナーにかけられる(次いで、データは、DICOMイメージ・スタックとして提供される)。代替的に、歯科用スキャンは、場合によっては、患者の口の中に直接的に最新の3D口腔スキャナーを使用してスキャンされることができる。したがって、後者のケースでは、歯科用スキャンは、有利には、STLフォーマットで同時に提供され、石膏印象/CTを介して発生させられる必要がない。
【0041】
関連のイメージング・データは、その後に、工程S13において、3D顎矯正ソフトウェアの中へ読み込まれ、工程S12からのセグメンテーションとともにその中で処理されることができる。そして、3D顎矯正ソフトウェアは、個々のイメージング・データ(たとえば、DICOM層イメージなどのようなDICOMデータ)から3D表現を発生させ、たとえば、モニターに3D表現を表示することが可能であり、モニターは、コンピューティング・デバイスに動作可能に接続されている。
【0042】
また、グラフィック表現の提供S10は、提供された医療用イメージング・データの準備を含むことが可能である。必要とされる場合には、たとえば、上顎および下顎の位置を正確に定義するために、ならびに、ターゲット咬合を描写するために、完全な顎矯正計画が、3D顎矯正ソフトウェアによって実施されることができ、ここで、上記に記述されているような歯科用データが使用されることができる。
【0043】
咬合という用語は、上顎の歯と下顎の歯との任意の接触を指定する。読み込まれたイメージング・データまたは発生させられた3Dデータの計画または任意の他の操作または準備は、コンピューティング・デバイス(コンピューティング・デバイスは、ソフトウェアを実行する)および表示デバイス(たとえば、モニター)に動作可能に接続されている入力デバイスによって実施されることができる。入力デバイスは、たとえば、キーボード、コンピュータ・マウス、または触覚入力ユニットなどを含むことが可能である。また、入力デバイスは、タッチ・スクリーンを含むことも可能であり、入力デバイスおよびモニターが互いに一体化されることができるようにもなっている(
図12および関連の記述も参照)。
【0044】
工程S14において、個々のデータ構造またはエレメント、とりわけ、頭蓋骨、上顎、下顎などが、繰り返しなるが、STLフォーマットで最終的なスプリントとともに顎矯正プログラムからエクスポートされることができる。
【0045】
工程S15において、3Dイメージ発生ソフトウェアおよび/または3D顎矯正ソフトウェアからのさまざまなSTLデータが、3D構造体をモデリングするためのグラフィック・ユーザ・インターフェース(または、3Dモデリング・ソフトウェア)の中へ読み込まれることができる。最終的に、工程S16において、患者の頭蓋骨の3次元(3D)表現が、グラフィック・ユーザ・インターフェースの中に発生させられ、それは、さらなる方法のための基礎として使用される。
【0046】
患者の頭蓋骨の3D表現を提供する工程S10に使用される工程S11~S16の代替的に、場合によってはすでに提供された頭蓋骨の3D表現が、また、(揮発性のまたは不揮発性の)データ・メモリーから直接的に読み出すことによって提供されることができる。たとえば、正確な3D表現は、直前に行われた患者の頭蓋骨への先行介入からすでに存在することが可能である。
【0047】
したがって、解剖学的データの提供S10の後に、頭蓋骨のグラフィック表現は、有利には、少なくとも、2つの下顎関節(とりわけ、側頭骨および下顎を含む)のエリアにおいて提供される。
【0048】
図2は、患者の頭蓋骨のそのような3次元(3D)グラフィック表現10を概略的に示している。
さらなる工程S17において、垂直方向のミラー平面11(矢状面)および/またはフランクフルト水平面12が、グラフィック表現10の中へ自動的に導入されることができる。3D表現における解剖学的条件が完全にはミラー対称的でない場合には、最良にマッチする矢状面が、たとえば、サポート・ベクトル・マシンなどのような人工知能エンティティを使用して、自動的に決定されることができる。技術者によって自動的にまたは事前に定義されたそのようなミラー平面も、好ましくは、必要な場合には、医師によってチェックおよび適合される。
【0049】
工程S20において、下顎関節の少なくとも顆頭、および、下顎関節の顆頭のための摺動表面を含む、たとえば、3Dデータ・セットから読み込まれる、下顎関節プロテーゼの1つ以上の機能的グループのための3次元(3D)モデルが提供される。そのようなデータ・セットは、たとえば、慣用的なCADソフトウェアにおいて提供されることができる。
【0050】
図3aおよび
図4aは、上側エリアにおけるそのようなモデル20を各々示しており、
図3aは、正面図を示しており、
図4aは、側面図を示している。現在使用されている例では、患者の左側は、健康な頭蓋骨側部であり、一方では、右側は、治療される頭蓋骨側部2である。また、健康な頭蓋骨側部は、本明細書では、基準頭蓋骨側部1とも称される。その理由は、それが、一般的に、治療のための機能する解剖学的配置に関する基準を提供するからである。下顎15のグラフィック表現のみが、各ケースにおいて示されており、とりわけ、
図3aでは、治療される頭蓋骨側部2において、下顎15の顆頭が欠陥を有していることが明らかである。
図4aは、
図3aからの状況を示しており、図は、基準頭蓋骨側部1のものである。
【0051】
さまざまなモデルが、モデル20のために使用されることができ、それらは、複雑さおよび機能性などに関して異なる特質を各々有している。驚くことには、比較的に単純な機能的モデルでも、この目的のために十分に適切であるということが示されている。このケースでは、いくつかの基本的な幾何学的な物体、たとえば、トーラス断面などが、機能的グループを記述するために使用されることができ、機能的グループは、機能的なカウンター・エレメントとして機能する下顎コンポーネント22および頭蓋コンポーネント21に分割される。下顎コンポーネント22は、3Dモデル20の顆頭23を備え、それは、好ましくは、おおよそ紡錘形状に形成されている。頭蓋コンポーネント21は、関節窩および関節結節を備え、各々、有利には、トーラス断面からモデル化されており、互いに連続的におよび安定的に接続されている。
【0052】
そのような機能的モデルの特定の設計および縮尺通りの寸法決めのために、経験的に決定される平均値が、モデル20を定義するために使用されることができる。したがって、一旦定義されると、モデル20は、以降に詳細に記述されるように、すべての患者のための基礎として使用されることができる。
【0053】
工程S30において、3Dモデル20は、3D表現10に対して(すなわち、仮想3次元空間などのような同じグラフィック表現またはグラフィック環境において)配置され、有利には、最初に基準頭蓋骨側部1の上に配置される。グラフィック環境(「グラフィック・ユーザ・インターフェース」(GUI)とも称されることができる)は、たとえば、2次元のコンピュータ表示スクリーンによって表示されることができる。しかし、たとえば、仮想現実または拡張現実メガネの助けを借りて、仮想現実または拡張現実デバイスが使用されるということも考えられる。ユーザの空間的想像力が直接的に対処または利用されるので、3次元表現の3次元キャラクターが、そのようなデバイスの助けを借りて客観的により良好に表現されることができることが多い。
【0054】
工程S40において、3Dモデル20は、その後に、有利には、3Dモデル20が下顎15のグラフィック表現との関係で意図された機能的なアライメントになるように、グラフィック環境において適合される、すなわち、とりわけ、スケーリングされるS41、位置決めされるS42、および/または、配向されるS43。換言すれば、3Dモデル20は、基準側部1に位置付けされている下顎関節が位置決めおよび配向されるように配置されており、とりわけ、顆頭および窩に注意が払われる。3Dモデル20のモデル輪郭は、両側において、すなわち、頭蓋コンポーネント21および下顎コンポーネント22の両方においてほぼ(すなわち、本質的に)平坦に終端するということが目標として定式化されることができる。換言すれば、3Dモデル20は、3Dモデル20の顆頭が基準頭蓋骨側部1における実際の窩と相互作用する(すなわち、その中で移動および/または摺動する)ことができるように配置されることができ、および/または、基準頭蓋骨側部1における実際の顆頭が3Dモデル20の窩と相互作用することができるように配置されることができる。
【0055】
3Dモデル20を適合させるS40ために、グラフィック・ユーザ・インターフェースは、ユーザがグラフィック表現10のエレメントおよび/または3Dモデル20のエレメント(または、全体)を回転させること、シフトさせること、再スケールすることなどを可能にする機能を有することが可能である。
【0056】
図3aおよび
図4aは、工程S30の後の状況を各々示している。それぞれの関連の
図3bまたは
図4bでは、工程S40を実施した後の状況が示されている。
図4bでは、3Dモデル20の顆頭23が、どのように下顎15のグラフィック表現の基準頭蓋骨側部1における顆頭13(
図4aを参照)の上に本質的に合致して重ねられているかということを、とりわけよく見ることができる。
【0057】
工程S50において、顆頭モデルは、ミラー平面11において、基準頭蓋骨側部から治療される頭蓋骨側部2へミラーリングされる。
図5aは、ここでは、上方からの下顎15の図において、3D表現10の顆頭13がどのように基準頭蓋骨側部1の顆頭モデル26(以下の記述を参照)としての使用のためにマークされるかということを示している。
図5bは、工程S50の後の3D表現10において、治療される頭蓋骨側部2における欠陥のある顆頭が、どのように顆頭モデル26と重ね合わせられるかということを示している。グラフィック・ユーザ環境によって、および、グラフィック・ユーザ環境において、ユーザは、治療させる頭蓋骨側部2の解剖学的構造に顆頭モデル26を正確にマッチさせるために、たとえば、スムーズな遷移および面一の仕上がりを実現するために、工程S50の後に、依然として事後修正を実施することも可能である。
【0058】
3D表現10の基準頭蓋骨側部1の顆頭13は、この顆頭13に欠陥がない場合には、有利には、顆頭モデルとして使用される。このケースでは、この顆頭13も、治療される頭蓋骨側部2における患者の解剖学的構造の中へ良好に組み込まれることができるということが推測されることができる。この目的のために、3D表現10の基準頭蓋骨側部1の顆頭13、またはその一部は、ユーザによるグラフィック環境における選択のためにマークされることができる。
【0059】
これが不可能である場合には、たとえば、基準頭蓋骨側部の顆頭13が欠陥を有するか、または、治療される頭蓋骨側部2に使用不可能な形状を有する場合には、別の所定の3D構造が、顆頭モデルとして使用されることもできる。
【0060】
たとえば、
図6aに概略的に示されているように、3Dモデル20の顆頭23の少なくとも一部は、代替的に、顆頭モデル26、たとえば、工程S40にしたがってすでに事前にスケーリングされている所定のセクション24(または、「詳細」もしくは「部分」)などとして使用されることもできる。
図6bは、任意選択で、下顎関節プロテーゼの下顎コンポーネントのセクション(たとえば、下顎固定プレート)への丸み付けおよび/または詳細適合の後に、そのような定義された、再スケーリングされた、位置決めされた、および配向されたセクション24を図示している。
【0061】
そのうえ、上記の記述に代えて、別の所定の3D構造が、顆頭モデル26として使用されることもできる。
工程S60において、窩の表面幾何学形状が、3Dモデル20から抽出され、その3Dモデル20は、下顎関節プロテーゼの顆頭のための下顎関節プロテーゼのその後の窩摺動表面を表しており、または、少なくとも、そのためのベースとして使用される。いくつかの変形例では、3Dモデル20は、窩がもっぱら3D表面としてその中に具現化されるように、すなわち、窩がもっぱらその窩摺動表面25から構成されるように、すでに考えられることができる。
【0062】
図7aは、窩摺動表面25の方に見た、3Dモデル20の頭蓋コンポーネント21のセクションを示している。摺動表面25における窪みが良好に見られることができ、下顎関節プロテーゼの顆頭(または、その代替物)が、その後に、その中に係合する。
【0063】
図7bは、抽出された窩摺動表面25が隔離されたものを示している。
工程S70において、抽出された窩摺動表面25が、治療される頭蓋骨側部に配置される。これは、顆頭23を参照してすでに上記に記述されているように、ミラー平面11においてミラーリングすることによって実施されることができる。これは、工程S40において実施された適合に起因して、基準頭蓋骨側部1における窩摺動表面25がすでに整合されてマッチしており、したがって、ミラー平面11におけるそのミラーリングの後に、治療される頭蓋骨側部2における窩摺動表面25の本質的にマッチしたアライメントも存在するということが推測されることができるという利点を有している。
【0064】
代替的に、窩摺動表面25は、工程S41において再スケーリングされた3Dモデル20から直接的に抽出されることもでき、その後に、治療される頭蓋骨側部2に直接的に配置されることもできる。その後に、一般的に、上記に記述された工程S41、S42、S43と同様に、さらなる適合、位置決め、および/または(再)配向の工程が必要である可能性がある。
【0065】
工程S80において、治療される頭蓋骨側部2におけるミラーリングされた顆頭モデル26および窩摺動表面25が、互いに適合され、および/または、治療される頭蓋骨側部2における患者の解剖学的構造に適合される。
【0066】
医療的介入の間に、患者の下顎関節の損傷部分が、治療される頭蓋骨側部2において除去されることができる(切除)。これおよびその結果は、すでに計画されており、グラフィック表現において考慮に入れられている可能性がある。
【0067】
図8aは、欠陥のある顆頭13のグラフィック表現の除去が完了した後の、治療される頭蓋骨側部2からの患者の頭蓋骨のグラフィック表現10を示している。
図8aに示されているグラフィック表現は、シミュレートされた切除、すなわち、グラフィック表現10に対してのみ実施された手術の結果であることのいずれかが可能である。代替的に、示されているグラフィック表現10は、実際の切除の後に実施された医療用イメージング方法に基づく、たとえば、1つまたは複数の断層撮影方法に基づくことも可能である。
【0068】
図8aでは、工程S80において、どのように窩摺動表面25および顆頭モデル26が互いに適合され、および、頭蓋骨解剖学的構造に適合されることができるかということも非常に明らかである。グラフィック・ユーザ・インターフェースは、グラフィック表現10のさまざまな部分が示されることおよび隠されることを可能にすることができる。
【0069】
図8bでは、たとえば、頭蓋の大部分が隠されたケースが示されている。したがって、たとえば、頭蓋の解剖学的構造への窩摺動表面25の最適な適合(配置、配向など)の後に、頭蓋が隠された状態で、顆頭モデル26の配置、配向などが、とりわけ、
図8bに示されているように、基準頭蓋骨側部1における顆頭13および関連の窩摺動表面の相互作用および配置を基準として同時に観察した状態で、治療される頭蓋骨側部2における窩摺動表面25に細かく調節されることができる。加えて、切除境界16も、
図8aおよび
図8bに見ることができ、切除境界16は、すでに述べられたように、実際の切除境界、または、仮想の、単に計画された、もしくは推定された切除境界のいずれかを表すことが可能である。
【0070】
図9aおよび
図9bは、2つの異なる視点からの工程S80における適合の最終結果を示している。
図9aは、頭蓋が大きく示された状態で斜め下方から、計画された下顎関節プロテーゼの機能的グループ、すなわち、窩摺動表面25および顆頭モデル26を示している。
図9bは、追加された窩摺動表面25および追加された顆頭モデル26を備えた下顎15を真正面から示しており、頭蓋の大部分が隠されており、その図は、健康な基準頭蓋骨側部1における下顎関節の機能的グループとともに、計画された下顎関節プロテーゼの機能的グループを表している。
【0071】
図9aおよび
図9bによる両方の表現は、グラフィック・ユーザ・インターフェースにおいて、ユーザによって望まれるような他の方式で、回転させられ、拡大され、縮小され、および表示変更されることができ、ユーザが、患者の解剖学的条件への最適な適合を実現することができるようになっている。
【0072】
工程S90において、工程S80において適合された顆頭モデル26および窩摺動表面26から構成された機能的グループに基づいて、下顎関節プロテーゼ3Dモデル30が発生させられる。この目的のために、とりわけ、天然の骨の状況への移行は、患者のために具体的に設計され、設計ガイドライン(たとえば、定義された最小寸法決めを有する)に基づいてレイアウトされることができる。
【0073】
図10は、例として、そのような発生させられた下顎関節プロテーゼ3Dモデル30を示しており、それは、現実には下顎関節プロテーゼ自体がその後に患者の実際の頭蓋骨に取り付けられるように、患者の頭蓋骨のグラフィック表現10の上に精密に配置されている。
【0074】
下顎関節プロテーゼ3Dモデル30は、このケースでは、頭蓋コンポーネント31および下顎コンポーネント32を含む。頭蓋コンポーネント31は、窩摺動表面25と、その窩摺動表面25に接続されている頭蓋固定プレート33とを備える。下顎コンポーネント32は、顆頭モデル26による1つの顆頭と、下顎固定プレート34とを備える。
図10では、下顎固定プレート34は、細長い変形させられたストリップとして示されている。しかし、患者の特定の解剖学的条件に応じて、下顎固定プレート34は、他の形状を有することも可能である。たとえば、下顎固定プレート34は、下顎の外側輪郭に沿ったその細長い形状に加えて、1つまたは複数の横断方向の側枝を有することも可能であり、および/または、角度を付けられることもできる。
【0075】
頭蓋コンポーネント31は、窩摺動表面26を支える窩主本体部を有するように設計されることができ、頭蓋固定プレート33が窩主本体部に対し締結されるかまたは窩主本体部から頭蓋固定プレート33が生じる。
【0076】
頭蓋固定プレート33は、好ましくは、開口部を有しており、締結手段、たとえば、スクリューがその開口部の中へ導入され、患者の頭蓋に対し頭蓋固定プレート33を締結することが可能である。下顎固定プレート34は、好ましくは、開口部を有しており、締結手段、たとえば、スクリューがその開口部の中へ導入され、患者の下顎に対し下顎固定プレート34を締結することが可能である。
【0077】
任意選択で、各ケースにおいて、頭蓋コンポーネント31におよび下顎コンポーネント32に、アイレットが提供されることができる。縫合糸またはバンドは、これらの2つのアイレットを通して誘導されて結ばれることができ、次いで閉じられた縫合糸(または、同様のもの)が、2つのアイレットを、ひいては、頭蓋コンポーネント31および下顎コンポーネント32を互いに移動可能に連結するようになっている(この点において
図11および関連の記述も参照)。
【0078】
下顎関節プロテーゼ3Dモデル30を上述のアイレットを含むように設計することは、有利には、下顎関節プロテーゼ3Dモデル30を発生させる際の最後の工程として行われる。その理由は、この時点において、下顎関節プロテーゼが許容する、予期される移動および自由度が明らかであるからである。
【0079】
工程S100において、構築データが、発生させられた下顎関節プロテーゼ3Dモデル30に基づいて、発生および出力されることができる。たとえば、構築データは、下顎関節プロテーゼ3Dモデル30にしたがった下顎関節プロテーゼ40の自動的な生産のための1つまたは複数のマシンに全体的にまたは部分的に出力されることができる。構築データとともに、制御信号も出力されることができ、その制御信号は、相応にマシンを制御する。
【0080】
任意選択の工程S110において、下顎関節プロテーゼは、以降に説明されているように、出力構築データにしたがって、すなわち、下顎関節プロテーゼ3Dモデル30にしたがって生産されることができる。方法がこの工程S110を備える実施形態では、その方法は、下顎関節プロテーゼを生産するための方法と称されることもできる。当然のことながら、構築データに基づいて下顎関節プロテーゼを生産するための工程S110は、先行する工程から独立して実施され、とりわけ、先行する工程の実行から空間的におよび/または時系列的に分離されて実施されることもできる。
【0081】
任意選択のさらなる工程において、下顎関節プロテーゼは、最終的に、患者において使用されることができる。
図11は、例示的な図示を示しており、本発明にしたがってレイアウトされて生産された下顎関節プロテーゼ40が、図示のために、頭蓋骨モデル60に締結されている。
【0082】
図11は、ここで、どのように下顎関節プロテーゼ40(下にある下顎関節プロテーゼ3Dモデル30と非常に類似している)が頭蓋コンポーネント41および下顎コンポーネント42を有するかを示している。
【0083】
頭蓋コンポーネント41は、頭蓋固定プレート43を備え、頭蓋固定プレート43は、
図11に示されている状況では、頭蓋骨モデル60にスクリューを使用して留められている。頭蓋コンポーネント41は、窩主本体部47を追加的に備え、窩主本体部47は、頭蓋固定プレート43に接続されており、窩摺動表面45を支えるように設計されている。頭蓋固定プレート43および窩主本体部47は、有利には、ワンピースで形成され、とりわけ、ジェネレーティブに(または、換言すれば、付加的に)、好ましくは、チタンの選択的レーザー溶融のための方法で形成されることができる。
【0084】
それとは対照的に、窩摺動表面45は、有利には、ポリエチレン材料から、好ましくは、「超高分子量ポリエチレン」(「UHMWPE」によって省略されるか、または、場合によっては、「UHMW」によって省略されることもある)から形成される。UHMWPEは、たとえば、200万~800万g/molの超高分子量を有する熱可塑性のポリエチレンである。好ましくは、窩摺動表面45は、焼結プロセスの助けを借りて、チタンから製造された窩主本体部に結合される。したがって、頭蓋コンポーネント41は、全体として、チタンおよびUHMWPEから作製された複合材料から形成されることができる。UHMWPEから形成されたコンポーネントは、たとえば、接着ベースとしての1つの面のみを有する独立したコンポーネントとして、溶融されることができる。したがって、UHMWPEコンポーネントを取り囲むインレーのスタイルの壁も可能であるが、必要であるわけではない。
【0085】
下顎コンポーネント42は、下顎関節プロテーゼ3Dモデル30の中の顆頭モデル26に対応して精密に形成されている顆頭46に加えて、下顎固定プレート44を備える。
図11に示されている例では、下顎固定プレートは、下顎のクラウン延在(Kronenfortsatzes)の方向に延在している角度付きのセクションを有する。
【0086】
下顎コンポーネント42は、好ましくは、ワンピースで生産され、とりわけ、ジェネレーティブに(または、換言すれば、付加的に)生産され、とりわけ、好ましくは、チタンの選択的レーザー溶融のための方法で生産される。窩摺動表面45上での顆頭46の摺動能力を改善するために、すなわち、咬み合わせの対を可能な限り低摩擦にするために、顆頭46は、有利には研磨される。頭蓋コンポーネント41と下顎コンポーネント42との間の基本的に別個の部分的なインプラント間の摺動ペアは、したがって、好ましくは、UHMWPEおよび研磨されたチタンから構成されている。
【0087】
しかし、複合コンポーネントとして同様に下顎コンポーネント42を生産することも考えられ、とりわけ、顆頭46は、下顎コンポーネント42の残りの部分、とりわけ、下顎固定プレート44とは異なる材料から形成されることができる。たとえば、顆頭46は、セラミック材料から形成されることができる。
【0088】
また、
図11は、追加的に、頭蓋コンポーネント41に取り付けられている頭蓋コンポーネント・アイレット51と、下顎コンポーネント42に取り付けられている下顎コンポーネント・アイレット52とを示している。加えて、頭蓋コンポーネント・アイレット51および下顎コンポーネント・アイレット52を連結するリング形状の閉じられた縫合糸53も示されている。
【0089】
縫合糸53は、患者における下顎関節プロテーゼ40の使用の前または後に、アイレット51、52において取り付けられることができる。下顎関節の複雑な移動機能、および、下顎関節プロテーゼ40のときどきわずかに異なる機能に起因して、縫合糸53は、患者の脳が新しい状況を処理するまで、最初に患者に支援を提供することが可能である。とりわけ、縫合糸53は、患者が頭蓋コンポーネント41および下顎コンポーネント42を互いに離れ過ぎるように移動させることを防止することが可能であり、すなわち、縫合糸53は、保持機能を果たすことが可能であり、または、換言すれば、基準移動を許容することが可能である。
【0090】
縫合糸53(または、バンドなど)は、有利には、再吸収可能な材料から形成されることができる。材料の再吸収持続時間は、有利には、大多数のケースにおいてその機能がもはや必要とされない時点において、縫合糸53が完全に再吸収されるように寸法決めされている。具体的には、これは、治癒プロセスが進められ、新しい位置および移動シーケンスが患者のために想定され、自然に見えるときであり、上顎および下顎は、一般的に、天然の/健康な状況においてもそうであるように、自然の筋肉ループによって再び保持されて制御される。これは、本発明の背後にある全体的な概念の中へ組み込まれており、それによれば、下顎関節プロテーゼ40は、平均的な患者の自然の解剖学的条件および機能性の可能な限り近くになるだけではなく、非常に具体的には、各個々の患者の近くになる。
【0091】
図12は、本発明の別の実施形態による、コンピュータ・システム100の概略的な表現を示している。コンピュータ・システム100は、下顎関節プロテーゼ40を設計ための本発明による方法、好ましくは、
図1から
図11を参照して上記に記述されている方法を実施するように設計および構成されている。とりわけ、コンピュータ・システム100は、この目的のために、対応するソフトウェアがその上で実行されるパーソナルコンピュータ(PC)から構成されることができる。ソフトウェアは、上記に記述されている工程S10~S100をユーザが実施することを可能にするように設計されることができる。
【0092】
コンピュータ・システム100は、入力インターフェース110を備えることが可能であり、入力インターフェース110によって、患者の医療データ71が読み込まれることができる。医療データ71は、とりわけ工程S10を参照して上記に記述されたように、医療用イメージデータ、および/または、処理されたデータなどであることが可能である。とりわけ、医療データ71は、DICOMデータ、たとえば、断層撮影イメージデータおよび歯科用データなどを含むことが可能である。医療データ71は、たとえば、PACS(「picture archiving and communication system」)から、または、クラウド・ストレージ・ソリューションなどから、受信および/または要求されることができる。
【0093】
入力インターフェース110から、受信される医療データ71は、コンピューティング・デバイス150に送信され、コンピューティング・デバイス150は、典型的に、セントラル・プロセッサー・ユニット151(CPU)、ワーキング・メモリー152(「ランダム・アクセス・メモリー」、RAM)、不揮発性のデータ・メモリー153、表示デバイス154(たとえば、モニター、ARもしくはVRメガネ、またはタッチ・スクリーン)、およびユーザ入力インターフェース155(たとえば、キーボードおよびコンピュータ・マウス、タッチ・スクリーンなど)を有しており、それらは、ソフトウェアを実行するために、および、方法を実施するために、互いに動作可能に連結されている。ソフトウェアは、この目的のために、不揮発性のデータ・メモリー153の中に記憶されることができ、ワーキング・メモリー152の中でセントラル・プロセッサー・ユニット151によって実行されることができる。代替的にまたは追加的に、ソフトウェア、または、ソフトウェアの個々のモジュールもしくはプラグ・インが、ウェブ・サービスとして提供されることもできる。
【0094】
コンピュータ・システム100は、出力インターフェース190を追加的に備え、出力インターフェース190は、工程S100においてその方法の中でコンピューティング・デバイス150によって発生させられる構築データ72を、たとえば、データ・バッファー・メモリーに、下顎関節プロテーゼ40の1つもしくは複数のパーツを生産するためのマシン、たとえば、レーザー溶融を使用してインプラント・パーツを生成させるマシンに、または、それに類するものに出力するように設計されている。
【0095】
図13は、実行可能なプログラム・コード250を備えるコンピュータ・プログラム製品200の概略的な表現を示しており、実行可能なプログラム・コード250は、実行されるときに、下顎関節プロテーゼ40を設計するための方法の実施形態による方法、とりわけ、
図1から
図11に基づいて上記に記述された方法を実施するように設計されている。
【0096】
図14は、実行可能なプログラム・コード350を備える不揮発性のコンピュータ可読のデータ・メモリー媒体300の概略的な表現を示しており、実行可能なプログラム・コード350は、実行されるときに、下顎関節プロテーゼ40を設計するための方法の一実施形態による方法、とりわけ、
図1から
図11に基づいて上記に記述された方法を実施するように設計されている。
【0097】
本発明は、好適な例示的な実施形態に基づいて上記に記述されたが、本発明は、それに制限されるものではなく、さまざまな方式で修正可能である。とりわけ、本発明は、本発明の中核概念から逸脱することなく、多様な方式で変更または修正されることができる。
【0098】
要約すると、本発明は、治療される患者の頭蓋骨側部に関する下顎関節プロテーゼを設計するための方法およびコンピュータ・システムを提供する。この方法の中核概念は、下顎関節の標準化されたモデルを患者の健康な頭蓋骨側部のグラフィック表現に整合させ、次いで、ミラー平面においてこれをミラーリングし、治療される頭蓋骨側部のグラフィック表現を形成し、そこでモデルへの詳細な適合も実施するようになっているということである。
【符号の説明】
【0099】
1 基準頭蓋骨側部
2 治療される頭蓋骨側部
10 頭蓋骨のグラフィック表現
11 ミラー平面
12 フランクフルト水平面
13 下顎のグラフィック表現の顆頭
15 下顎のグラフィック表現
16 切除境界
20 3Dモデル
21 3Dモデルの頭蓋コンポーネント
22 3Dモデルの下顎コンポーネント
23 3Dモデルの顆頭
24 3Dモデルの顆頭のセクション
25 3Dモデルの窩の摺動表面
26 顆頭モデル
30 下顎関節プロテーゼ3Dモデル
31 下顎関節プロテーゼ3Dモデルの頭蓋コンポーネント
32 下顎関節プロテーゼ3Dモデルの下顎コンポーネント
33 下顎関節プロテーゼ3Dモデルの頭蓋固定プレート
34 下顎関節プロテーゼ3Dモデルの下顎固定プレート
40 下顎関節プロテーゼ
41 下顎関節プロテーゼの頭蓋コンポーネント
42 下顎関節プロテーゼの下顎コンポーネント
43 下顎関節プロテーゼの頭蓋固定プレート
44 下顎関節プロテーゼの下顎固定プレート
45 下顎関節プロテーゼの窩摺動表面
46 下顎関節プロテーゼの顆頭
47 下顎関節プロテーゼの窩主本体部
51 頭蓋コンポーネント・アイレット
52 下顎コンポーネント・アイレット
53 縫合糸
60 頭蓋骨モデル
71 医療データ
72 構築データ
100 コンピュータ・システム
110 入力インターフェース
150 コンピューティング・デバイス
151 セントラル・プロセッサー・ユニット
152 ワーキング・メモリー
153 不揮発性のデータ・メモリー
154 表示デバイス
155 ユーザ入力インターフェース
190 出力インターフェース
S10..S110 方法工程
【国際調査報告】