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特表2024-507327眼科用製剤の担体または補助材料ならびにその調製方法および使用
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  • 特表-眼科用製剤の担体または補助材料ならびにその調製方法および使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】眼科用製剤の担体または補助材料ならびにその調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20240209BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240209BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 5/44 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 31/385 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 31/542 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 31/46 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 38/14 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240209BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/32
A61K9/08
A61P27/02
A61P29/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P37/06
A61P5/44
A61K31/573
A61K31/4709
A61K31/155
A61K31/385
A61K31/65
A61K31/542
A61K31/196
A61K31/46
A61K31/05
A61K31/519
A61K38/14
A61K31/436
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544444
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 CN2021134149
(87)【国際公開番号】W WO2022156371
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202110091088.2
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523277390
【氏名又は名称】チョンドゥー ルイムー バイオファーマスーティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドン チン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ ルービン
(72)【発明者】
【氏名】タン シン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA17
4C076BB24
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD07F
4C076DD08F
4C076DD09F
4C076DD38
4C076DD46
4C076DD69F
4C076EE08G
4C076EE16
4C076EE16G
4C076EE23A
4C076EE23F
4C076EE23G
4C076EE30A
4C076EE32A
4C076EE36A
4C076EE37A
4C076EE38A
4C076FF12
4C076FF16
4C076FF17
4C084AA03
4C084DA44
4C084MA17
4C084MA58
4C084NA10
4C084ZA331
4C084ZB351
4C084ZB352
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086BB04
4C086CB05
4C086CB07
4C086CB22
4C086CB29
4C086DA10
4C086DA29
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA10
4C086ZA33
4C086ZB11
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC42
4C206AA01
4C206AA10
4C206CA19
4C206FA44
4C206HA31
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA78
4C206NA10
4C206ZC35
(57)【要約】
眼科用製剤の担体または補助材料ならびにその調製方法および使用であって、眼科用薬物送達の分野に属する。前記眼科用製剤の担体または補助材料は、界面活性剤およびイオン性高分子等を成分として含有し、溶媒をさらに含有し、または、前記眼科用製剤の担体または補助材料は、低重合度ポビドンと中重合度ポビドンとを成分として含有し、溶媒をさらに含有する。前記眼科用製剤の担体または補助材料には、前記成分が溶媒中で形成したナノ粒子が含まれ、ナノ粒子は球形で、粒径が1~100nmであり、自己組織化して、粒径が10~2000nmの球形のナノスフィアを形成することができる。前記投与用担体は、薬物を内包して前眼部を通過し、効率良く後眼部に輸送して治療効果を発揮することができ、点眼投与によって眼底疾患を治療するという目標を達成し、眼科用薬品の投与の分野において長年にわたり未解決であった技術課題を解決し、極めて優れた臨床使用の将来性と非常に積極的な社会的意義を有するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用製剤の担体または補助材料であって、界面活性剤とイオン性高分子とを成分として含有し、溶媒をさらに含有することを特徴とする、眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項2】
前記界面活性剤とイオン性高分子との質量比は(1~100):(0.1~50)であり、前記界面活性剤と溶媒の割合は、溶媒100mLにつき界面活性剤が5~3000mg含まれ、
好ましくは、前記界面活性剤とイオン性高分子との質量比は(1~31):(1~7.5)であり、前記界面活性剤と溶媒の割合は、溶媒100mLにつき界面活性剤が50~3000mg含まれることを特徴とする、請求項1に記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項3】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項1または2に記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤がスパン系、ポリソルベート、ポロキサマー、アルキルグルコシド、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステルまたはラウロカプラムであることを特徴とする、請求項3に記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項5】
前記イオン性高分子が、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、グリコール酸でん粉ナトリウム、ヒアルロン酸およびその塩、キサンタンガム、アルギン酸およびその塩、二酢酸ポリエチレングリコールPEG-(COOH)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項6】
眼科用製剤の担体または補助材料であって、低重合度ポビドンと中重合度ポビドンとを成分として含有し、溶媒をさらに含有することを特徴とする、眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項7】
前記低重合度ポビドンと中重合度ポビドンとの質量比は(0.1~10):1であり、前記低重合度ポビドンと溶媒の割合は、溶媒100mLにつき低重合度ポビドンが5~3000mg含まれ、
好ましくは、前記低重合度ポビドンと中重合度ポビドンとの質量比は(0.24~1):1であり、前記低重合度ポビドンと溶媒の割合は、溶媒100mLにつき低重合度ポビドンが400~840mg含まれることを特徴とする、請求項6に記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項8】
前記低重合度ポビドンが重量平均分子量2000~5000ダルトンのポビドンであり、前記中重合度ポビドンが重量平均分子量20000~60000ダルトンのポビドンであることを特徴とする、請求項6または7に記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項9】
前記低重合度ポビドンが重量平均分子量3500ダルトンのポビドンPVP K12であり、前記中重合度ポビドンが重量平均分子量35000~50000ダルトンのポビドンPVP K30であることを特徴とする、請求項6または7に記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項10】
前記溶媒が極性溶媒であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1つに記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項11】
前記極性溶媒が水であることを特徴とする、請求項10に記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項12】
増粘剤および/または共溶媒を成分としてさらに含有し、
好ましくは、前記増粘剤がポリエチレングリコール、カルボマー、ポロキサマー、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、ポリオキシエチレン脂肪アルコール類、ヒアルロン酸およびその塩、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースのうちの少なくとも1種であり、前記共溶媒がプロピレングリコール、グリセロール、液状ポリエチレングリコール、水素添加ひまし油またはひまし油であり、前記増粘剤と界面活性剤との質量比が1:(0.1~100)であり、共溶媒と界面活性剤との質量比が(1~10):1であり、前記増粘剤と低重合度ポビドンとの質量比が1:(0.1~100)であり、共溶媒と低重合度ポビドンとの質量比が(1~10):1であり、
より好ましくは、前記増粘剤と界面活性剤との質量比が1:(0.1~30)であり、前記増粘剤と低重合度ポビドンとの質量比が1:(0.1~30)であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1つに記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項13】
ナノ粒子を含有し、前記ナノ粒子は球形で、粒径が1~100nmであり、前記ナノ粒子は眼科用製剤の担体または補助材料の成分が自己組織化して形成されたものであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1つに記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項14】
前記ナノ粒子の粒径が5~30nmであることを特徴とする、請求項13に記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項15】
ナノスフィアを含有し、前記ナノスフィアは球形で、粒径が10~2000nmであり、前記ナノスフィアはナノ粒子が自己組織化して形成されたものであることを特徴とする、請求項13または14に記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項16】
前記ナノスフィアの粒径が100~2000nmであることを特徴とする、請求項15に記載の眼科用製剤の担体または補助材料。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1つに記載の眼科用製剤の担体または補助材料の調製方法であって、前記成分と溶媒とを均一に混合して溶液とした後、溶液を粉砕またはホモジナイズして分散させることを特徴とする、調製方法。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1つに記載の眼科用製剤の担体または補助材料の、薬物を後眼部に輸送する点眼投与用担体の調製における、使用。
【請求項19】
点眼投与のための眼科用製剤であって、請求項1~16のいずれか1つに記載の眼科用製剤の担体または補助材料と、眼疾患を治療するための活性成分とからなる製剤であることを特徴とする、眼科用製剤。
【請求項20】
前記眼科用製剤の担体または補助材料における界面活性剤と眼疾患を治療するための活性成分との質量比が(1~30):(1~2)であり、
または、前記眼科用製剤の担体または補助材料における低重合度ポビドンと眼疾患を治療するための活性成分との質量比が(6~40):1であることを特徴とする、請求項19に記載の眼科用製剤。
【請求項21】
前記眼科用製剤の担体または補助材料が、前記眼疾患を治療するための活性成分が内包されたナノ粒子を含有することを特徴とする、請求項19に記載の眼科用製剤。
【請求項22】
前記ナノ粒子が球形であり、その粒径が1~100nmであり、好ましくは、その粒径が5~30nmであることを特徴とする、請求項21に記載の眼科用製剤。
【請求項23】
前記眼疾患を治療するための活性成分が、小分子化合物系薬物、またはその遊離酸、またはその遊離塩基、またはその薬学的に許容可能な塩を含み、
好ましくは、前記小分子化合物系薬物が、ヌクレオシド系抗ウイルス薬物、眼圧下降薬物、抗生物質系薬物、抗酸化系薬物、抗炎症系薬物、ムスカリン受容体遮断剤薬物、免疫抑制剤系薬物、糖質コルチコイド系薬物を含み、
より好ましくは、前記ヌクレオシド系抗ウイルス薬物が、ガンシクロビル、アシクロビル、ペンシクロビル、シドホビル、ホミビルセン、ロブカビルを含み、
前記眼圧下降薬物が、炭酸脱水酵素阻害剤を含み、より好ましくは、ブリンゾラミド、アセタゾラミド、メタゾラミドであり、
前記抗生物質系薬物が、アミカシン、セフトリアキソン、セファゾリン、オキサシリン、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、バンコマイシンを含み、
前記抗炎症系薬物がオキシテトラサイクリンを含み、
前記抗酸化系薬物が、タウリン、アントシアニン、リグニンを含み、
前記ムスカリン受容体遮断剤薬物が、アトロピン、スコポラミン、アニソダミンを含み、
前記免疫抑制剤系薬物が、シクロスポリン(cyclosporin)、タクロリムス(tacrolimus)、シロリムス(sirolimus)、エベロリムス(everolimus)、ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil)、メトトレキサート、アザチオプリンおよびシクロホスファミドを含み、
前記糖質コルチコイド系薬物が、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニソロン、メチルプレドニソロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドを含むことを特徴とする、請求項19~22のいずれか1つに記載の眼科用製剤。
【請求項24】
請求項19~23のいずれか1つに記載の眼科用製剤の調製方法であって、該調製方法は、
界面活性剤、および/または増粘剤を溶媒に加えて溶液を調製するステップ(1)と、
眼疾患を治療するための活性成分および/または共溶媒をステップ(1)で得られた溶液に分散させ、さらにイオン性高分子またはその溶液を加え、分散・混合させて初期懸濁液を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた初期懸濁液を撹拌して分散させる、またはホモジナイズして分散させるステップ(3)と、を含み、
または、
低重合度ポビドン、および/または増粘剤を溶媒に加えて溶液を調製するステップ(a)と、
眼疾患を治療するための活性成分および/または共溶媒をステップ(a)で得られた溶液に分散させ、さらに中重合度ポビドンまたはその溶液を加え、分散・混合させて初期懸濁液を得るステップ(b)と、
ステップ(b)で得られた混合液を粉砕またはホモジナイズして分散させるステップ(c)と、を含むことを特徴とする、調製方法。
【請求項25】
ステップ(2)またはステップ(b)における前記分散が、機械撹拌による分散、磁気撹拌による分散、ボルテックス振とうによる分散、剪断による分散、ホモジナイズによる分散、粉砕による分散、超音波による分散から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項24に記載の調製方法。
【請求項26】
請求項19~23のいずれか1つに記載の眼科用製剤の、眼部疾患を治療するための薬物の調製における使用。
【請求項27】
前記眼科用製剤が、眼底疾患を治療するための、および/または後眼部ウイルス感染症を治療するための、および/または後眼部慢性炎症を治療するための、および/または眼圧下降のための、および/または眼部疼痛を治療するための、および/または眼内細菌または真菌の感染に対抗するための眼科用製剤であり、および/または青少年の近視や仮性近視の予防と治療に用いられる眼科用製剤であり、および/または自己免疫性疾患を治療するための眼科用製剤であり、および/または前眼部の疾患を治療するための眼科用製剤であり、および/または腫瘍成長を阻害する眼科用製剤であることを特徴とする、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記眼底疾患を治療するための眼科用製剤が、眼底血管性疾患による黄斑浮腫、炎症性浮腫、炎症性疼痛を治療するための眼科用製剤を含み、より好ましくは、網膜中心静脈閉塞性黄斑浮腫、網膜静脈分枝閉塞症性黄斑浮腫、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、病的近視黄斑浮腫、滲出型加齢性黄斑変性症による黄斑浮腫、乾燥型黄斑変性症、地図状萎縮、眼内炎、急性網膜壊死、術後炎症性疼痛、ぶどう膜炎を治療するための眼科用製剤であり、
前記後眼部ウイルス感染症を治療するための眼科用製剤が、サイトメガロウイルス性ぶどう膜炎、ウイルス性視神経炎、ウイルス性急性網膜壊死を治療するための眼科用製剤を含み、
前記眼圧下降のための眼科用製剤が、急性および慢性の緑内障ならびにその合併症を治療するための眼科用製剤を含み、
前記自己免疫性疾患を治療するための眼科用製剤が、眼部免疫性疾患または全身性自己免疫性疾患による眼部疾患を治療するための眼科用製剤であり、好ましくは、グレーブス眼病、ベーチェット症候群、散弾状網脈絡膜症、シェーグレン症候群、交感性眼炎または肉芽腫性眼病を治療するための眼科用製剤を含み、
前記前眼部の疾患を治療するための眼科用製剤が、ハイリスク角膜移植手術後の後遺症または合併症、春季カタル性角結膜炎、蚕蝕性角膜潰瘍または難治性角膜潰瘍、単純ヘルペスウイルス性角膜炎、角膜新生血管形成または角膜翼状片を治療するための眼科用製剤を含むことを特徴とする、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記眼内細菌または真菌の感染に対抗するための眼科用製剤の活性成分が抗生物質であり、
前記青少年の近視や仮性近視の予防と治療に用いられる眼科用製剤の活性成分がムスカリン受容体遮断剤であり、
前記自己免疫性疾患を治療するための眼科用製剤の活性成分が免疫抑制剤であることを特徴とする、請求項27に記載の使用。
【請求項30】
眼部疾患を治療するための方法であって、患者に対して、請求項19~23のいずれか1つに記載の眼科用製剤を使用することを特徴とする、方法。
【請求項31】
前記眼部疾患が、眼底疾患、および/または後眼部ウイルス感染症、および/または後眼部慢性炎症、および/または高眼圧疾患、および/または眼部疼痛、および/または眼内細菌または真菌の感染、および/または青少年の近視や仮性近視、および/または自己免疫性疾患、および/または前眼部の疾患、および/または眼腫瘍であることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記眼底疾患が、眼底血管性疾患による黄斑浮腫、炎症性浮腫、炎症性疼痛を含み、好ましくは、網膜中心静脈閉塞性黄斑浮腫、網膜静脈分枝閉塞症性黄斑浮腫、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、病的近視黄斑浮腫、滲出型加齢性黄斑変性症による黄斑浮腫、乾燥型黄斑変性症、地図状萎縮、眼内炎、急性網膜壊死、術後炎症性疼痛、ぶどう膜炎であり、
前記後眼部ウイルス感染症が、サイトメガロウイルス性ぶどう膜炎、ウイルス性視神経炎、ウイルス性急性網膜壊死を含み、
前記高眼圧疾患が、急性および慢性の緑内障ならびにその合併症を含み、
前記自己免疫性疾患が、眼部免疫性疾患または全身性自己免疫性疾患による眼部疾患であり、好ましくは、グレーブス眼病、ベーチェット症候群、散弾状網脈絡膜症、シェーグレン症候群、交感性眼炎または肉芽腫性眼病を含み、
前記前眼部の疾患が、ハイリスク角膜移植手術後の後遺症または合併症、春季カタル性角結膜炎、蚕蝕性角膜潰瘍または難治性角膜潰瘍、単純ヘルペスウイルス性角膜炎、角膜新生血管形成または角膜翼状片を含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記使用の方式が点眼投与であることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用薬物送達の分野に属し、具体的には眼科用製剤の担体または補助材料ならびにその調製方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
眼底疾患を有する患者は多く、中国だけでも患者数は数千万人を超えている。高齢化の進展や電子製品の普及に伴って、発病率は年々上昇することが見込まれる。よくある眼底疾患としては、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症、網膜静脈閉塞症、病的近視、地図状萎縮、眼部腫瘍、眼内炎等がある。これらによって、視力の低下、ひいては失明に至り、人々の生活の質に深刻な影響を与える恐れがある。例えば、糖尿病患者の約6.8%は糖尿病性黄斑浮腫(DME)を患っており、これは糖尿病患者が失明に至る主な原因となっている(Urias et al.,Vision Research,V139:221-227,2017;Mandal et al.,Ocular delivery of proteins and peptides: Challenges and novel formulation approaches, Advanced Drug Delivery Reviews, 126:67-95, 2018)。
【0003】
薬物療法は、眼底疾患の治療法および研究動向において、主要なものである。しかし、眼内には複雑な生理学的構造およびバリアが存在するため、薬物が眼球、特に後眼部に進入しにくく、有効用量に到達することが難しいので、効果的な治療の実現は容易ではない。眼底疾患を治療するための有効かつ安全な薬品または方法を見出すことは、当技術分野の研究者が一貫して努力し目指してきた目標である。
【0004】
臨床における眼科の投薬には、一般に3つの経路がある。(1)結膜嚢投与(点眼):薬物は角膜を通過して前房の房水に進入した後に、虹彩、毛様体まで拡散・分布することができるが、水晶体および硝子体膜のバリア効果により、水晶体および硝子体への進入は困難である。(2)眼部注射による投与:結膜下注射、前房内注射、硝子体内注射、球後注射および眼窩注射を含む。注射投与は薬物を治療部位に直接到達させることができるが、注射は外傷性であり、潜在的なリスクが存在する。例えば、前房内注射は疼痛、羞明、流涙、前房混濁、出血、角膜内皮細胞損傷、外傷性白内障等を生じさせる。また、硝子体内注射は水晶体混濁、硝子体器質化、網膜/視神経障害等を生じさせる。(3)経口投与、静脈内投与を含む全身投与:薬物は体内で一般に肝臓、腎臓または肺に集まることが多く、血液網膜関門(blood retinal barrier、BRB)により遮られて、眼球組織に到達する濃度が低くなると同時に、全身、特に主要臓器に、不要な毒性副作用をもたらす。
【0005】
現在、臨床において、薬物に眼のバリアを通過させるために、一般には眼球の硝子体内注射、または硝子体内インプラント(眼球内挿入)等の技術的手段が採用され、薬物を患者の硝子体に輸送し、それにより後眼部の疾患を治療する(凌沛学監修『眼科用薬物と製剤学』、中国軽工業出版社、2010,P3;Wang et. al., Mediators of Inflammation, Vol. 2013, Article ID 780634;Luaces-Rodriguez et al., Pharmaceutics,2018, 10, 66)。薬物の硝子体内注射または硝子体内インプラントの処置は侵襲的な投与であり、専門に訓練された眼科医が手術室などの滅菌環境で行う必要がある。処置が侵襲的であるため、例えば高眼圧、白内障、医原性感染性眼内炎、硝子体出血、網膜損傷などの合併症を引き起こす可能性がある。処置条件および処置環境に対する要求が高く、条件の整った病院内で行わなければならない。生物学的薬剤の眼科用注射剤は、生産コストおよび使用コストが高く、また、医療条件の制約により治療のタイミングが遅れる場合があり、投与計画を柔軟に調整することが難しい(M.HATA et al.,RETINA,37:1320-1328,2017)。
【0006】
結膜嚢投与は、最も簡便で安全な眼部への投与方法である。しかし、眼の角膜は多層構造であり、外から内へ大きく分けて、リポソームに富む上皮層、水性成分に富む実質層およびリポソームに富む内皮層となっており、点眼液は、点眼されると、最初に眼の表面涙液層に接触し、次に上皮層、実質層および内皮層を通過しなければ、後眼部に到達できない。この過程において、涙液による希釈、角膜や結膜の眼表面バリア、および水晶体や硝子体の解剖学的な位置により、点眼液は前眼部の組織内に高濃度で存在する傾向があり、後眼部まで進入して有効な治療濃度に達することは難しい。従って、結膜嚢投与の方法は安全ではあるが、薬物の輸送性が悪く、眼底疾患を効果的に治療するという目的を達成することは困難である。
【0007】
以上のように、従来の眼底疾患を治療するための主要な投与方法では、いずれも安全と効果を両立させることが困難であった。
【0008】
点眼投与の方式は、静脈注射や硝子体内注射に比べて安全で便利であるという明らかな優位性を有しており、薬物を後眼部に輸送することができる眼科用製剤を発明することは、臨床実践において早急に解決すべき技術的課題であって、臨床治療における価値と社会的意義は非常に大きい。しかしながら、眼球構造の特殊性により、後眼部に進入するためには、水溶性層および脂溶性層の多重のバリアを複数回通過しなければならず、現在、研究者は様々な試みを行っているものの、望ましい効果を得るには至っていない。
【0009】
ナノテクノロジーは、薬物をナノレベルに分散させて、特殊な理化学的性質および異なる薬物分布・吸収特性を持たせ、組織および細胞への浸透を高めるものであり、薬物に新しい治療効果をもたらす可能性を持っている(T.L. CHANG et al., Nanocrystal technology for drug formulation and delivery, Front. Chem. Sci. Eng. 2015, 9(1): 1-14; S. Jiang et al., Nanotechnology in retinal drug delivery, Int. J. Ophthalmol.,2018, 11(6)1038-1044; M. Kabiri et al., A stimulus-responsive, in situ-forming, nanoparticle-laden hydrogel for ocular drug delivery, Drug Delivery and Translational Research, 2018, 8: 484-495; 賈承政ほか、ナノ材料の組織と細胞の貫通に関する研究の進展と新たな工業化、2019, 9(9): 99-118)。例えば、ナノテクノロジーを眼科用薬剤の調製に用いることで、バイオアベイラビリティを高め、放出を制御した投与を行う。Kassemらはヒドロコルチゾンのナノ懸濁剤(粒径:0.539~4.87μm)等を調製し点眼することで、ウサギの眼圧を高めることができた(M.A.Kassem et al.,Nanosuspension as an ophthalmic delivery system for certain glucocorticoid drugs,International J.Pharmaceutics,340(2007):126-133)。ある研究では、シクロスポリンAのナノカプセルは、実験動物の角膜表層に進入することはできたが、角膜全層には進入できなかったと報告されている。また、PEG化されたポリカプロラクトンナノ粒子をウサギの眼に滴下したところ、ナノ粒子は角膜上皮に浸透・進入することができた、との研究報告がある。また、ナノ薬物を結膜下注射および硝子体注射して、薬物の放出を制御・遅延させることが可能であることが、研究により発見された(金義光監修、『薬物送達におけるナノ技術の応用』、P319、化学産業出版社、2015年)。非イオン性界面活性剤/非イオン性両親媒性化合物(例えば、スパン系、ポロキサマー、ツイン系等)とコレステロールを併用して薬物を内包し、新たな薬物輸送の担体として、直径が多くはサブミクロンの小胞(non-ionic surfactant vesicles、NSVs、別名niosomes)を形成する。生体接着性材料は、小胞の眼部での滞留時間を増加させ、薬物の徐放を維持し、眼部における薬物のクリアランスを減少させることができ、角膜への浸透を増やすことができる。シクロペントラート(散瞳薬)、チモロールマレイン酸塩(緑内障薬)、アセタゾラミド(緑内障薬)をそれぞれ用いて調製された小胞は、動物実験において薬物のバイオアベイラビリティを向上させた(趙暁宇ら、新たな薬物担体における非イオン性界面活性剤小胞の応用に関する研究の進展、中国医院薬学雑誌、2008,28(1):833-5;X. Ge et al., Advances of Non-Ionic Surfactant Vesicles(Niosomes)and Their Application in Drug Delivery,Pharmaceutics,2019,11,55)。Purasらは、調製したカチオン性小胞を、遺伝子輸送段としてラットの網膜および網膜下に注射した(G.Puras et al.,A novel cationic niosome formulation for gene delivery to the retina,J.Control.Release,2014,174,27-36)。ナノテクノロジーを利用して眼科用薬物を調製することには一定の利点があるが、上記研究は依然として非侵襲性の点眼投与方式で薬物を後眼部に進入させ、且つ有効な薬物濃度を確保するという目標に到達していない。
【0010】
ナノエマルジョン(Nano-Emulsion)はマイクロエマルジョンとも呼ばれ、油相、水相、界面活性剤および共界面活性剤を適切な割合で用いて構成したものであり、親水性と親油性の特性を兼ね備えることができ、点眼投与により薬物を後眼部に輸送するドラッグデリバリーシステムを形成するという潜在的な可能性を備えている。ナノエマルジョンが良好な親水性と親油性を両立できれば、眼表面の涙液層、角膜上皮細胞層、実質層および内皮細胞層を順次通過して、有効薬物を後眼部に輸送することができるが、一般的なナノエマルジョンでは、これらを両立させることは難しい。ナノエマルジョンの油相には、植物油を用いる場合が多いが、油が分解して、製剤の安定性が悪くなってしまう恐れがある。さらに、使用される界面活性剤の量が多く(使用量は25~30%)、毒性の副作用やアレルギー反応が現れる可能性がある。また、エタノールのような共界面活性剤は、浸透圧を高め、点眼剤には適さない上に、不安定である(金義光監修、『薬物送達におけるナノ技術の応用』、P322、化学工業出版社、2015年。潘衛三監修、『薬剤学』、P404、化学工業出版社、2017年)。
【0011】
従って、薬物を後眼部に効果的に輸送する点眼投与用担体を研究することは、依然として、当分野において早急な解決が望まれながら未解決となっている技術課題である。
【発明の概要】
【0012】
上記の課題に対して、本発明は、薬物を後眼部に効率的に輸送する点眼投与用担体およびその使用を提供し、本発明の点眼投与用担体は、薬物を後眼部に効率的に輸送することができ、眼科用薬物送達の分野において人々が長く解決を望んでいたものの達成できなかった技術的難題を解決するものである。
【0013】
本発明は、眼科用製剤の担体または補助材料を提供し、該担体または補助材料は、界面活性剤とイオン性高分子とを成分として含有し、溶媒をさらに含む。
【0014】
さらに、前記界面活性剤とイオン性高分子との質量比は(1~100):(0.1~50)であり、前記界面活性剤と溶媒の割合は、溶媒100mLにつき界面活性剤が5~3000mg含まれ、
好ましくは、前記界面活性剤とイオン性高分子との質量比は(2.5~31):(1~7.5)であり、前記界面活性剤と溶媒の割合は、溶媒100mLにつき界面活性剤が50~3000mg含まれる。
【0015】
さらに、前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である。
【0016】
さらに、前記非イオン性界面活性剤がスパン系、ポリソルベート、ポロキサマー、アルキルグルコシド、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステルまたはラウロカプラムである。
【0017】
さらに、前記イオン性高分子が、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、グリコール酸でん粉ナトリウム、ヒアルロン酸およびその塩、キサンタンガム、アルギン酸およびその塩、二酢酸ポリエチレングリコールPEG-(COOH)から選択される少なくとも1種である。
【0018】
本発明はまた、眼科用製剤の担体または補助材料を提供し、該担体または補助材料は、低重合度ポビドンと中重合度ポビドンとを成分として含有し、溶媒をさらに含有する。
【0019】
さらに、前記低重合度ポビドンと中重合度ポビドンとの質量比は(0.1~10):1であり、前記低重合度ポビドンと溶媒の割合は、溶媒100mLにつき低重合度ポビドンが5~3000mg含まれ、
好ましくは、前記低重合度ポビドンと中重合度ポビドンとの質量比は(0.24~1):1であり、前記低重合度ポビドンと溶媒の割合は、溶媒100mLにつき低重合度ポビドンが400~840mg含まれる。
【0020】
さらに、前記低重合度ポビドンが重量平均分子量2000~5000ダルトンのポビドンであり、好ましくは、重量平均分子量3500ダルトンのポビドンPVP K12である。
【0021】
さらに、前記中重合度ポビドンが重量平均分子量20000~60000ダルトンのポビドンであり、好ましくは、重量平均分子量35000~50000ダルトンのポビドンPVP K30である。
【0022】
さらに、前記眼科用製剤の担体または補助材料における溶媒が極性溶媒である。
【0023】
さらに、前記極性溶媒が水である。
【0024】
さらに、前記眼科用製剤の担体または補助材料は、増粘剤および/または共溶媒を成分としてさらに含有する。
【0025】
好ましくは、前記増粘剤がポリエチレングリコール、カルボマー、ポロキサマー、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、ポリオキシエチレン脂肪アルコール類、ヒアルロン酸およびその塩、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースのうちの少なくとも1種であり、前記共溶媒がプロピレングリコール、グリセロール、液状ポリエチレングリコール、水素添加ひまし油またはひまし油であり、増粘剤と界面活性剤、または増粘剤と低重合度ポビドンとの質量比が1:(0.1~100)であり、共溶媒と界面活性剤、または共溶媒と低重合度ポビドンとの質量比が(1~10):1であり、
より好ましくは、前記増粘剤と界面活性剤、または前記増粘剤と低重合度ポビドンとの質量比が1:(0.1~30)である。
【0026】
さらに、前記眼科用製剤の担体または補助材料はナノ粒子を含有し、前記ナノ粒子は球形で、粒径が1~100nmであり、前記ナノ粒子は眼科用製剤の担体または補助材料の成分が自己組織化して形成されたものである。
【0027】
さらに、前記ナノ粒子の粒径が5~30nmである。
【0028】
さらに、前記眼科用製剤の担体または補助材料はナノスフィアを含有し、前記ナノスフィアは球形で、粒径が10~2000nmである。前記ナノスフィアは、ナノ粒子が自己組織化して形成されたものである。
【0029】
さらに、前記ナノスフィアの粒径が100~2000nmである。
【0030】
本発明はまた、前記眼科用製剤の担体または補助材料の調製方法を提供し、該調製方法は、前記成分と溶媒とを均一に混合して溶液とした後、溶液を粉砕またはホモジナイズして分散させる。
【0031】
本発明はまた、前記眼科用製剤の担体または補助材料の、薬物を後眼部に輸送する点眼投与用担体の調製における使用を提供する。
【0032】
本発明はまた、点眼投与のための眼科用製剤を提供し、該製剤は、前記眼科用製剤の担体または補助材料と、眼疾患を治療するための活性成分とからなる製剤である。
【0033】
さらに、前記眼科用製剤の担体または補助材料における界面活性剤と眼疾患を治療するための活性成分との質量比が(1~30):(1~2)であり、
または、前記眼科用製剤の担体または補助材料における低重合度ポビドンと眼疾患を治療するための活性成分との質量比が(6~40):1である。
【0034】
さらに、前記眼科用製剤の担体または補助材料は、前記眼疾患を治療するための活性成分が内包されるナノ粒子を含有する。
【0035】
さらに、前記ナノ粒子が球形であり、その粒径が1~100nmであり、好ましくは、その粒径が5~30nmである。
【0036】
さらに、前記眼疾患を治療するための活性成分が、小分子化合物系薬物、またはその遊離酸、またはその遊離塩基、またはその薬学的に許容可能な塩を含み、
好ましくは、前記小分子化合物系薬物が、ヌクレオシド系抗ウイルス薬物、眼圧下降薬物、抗生物質系薬物、抗酸化系薬物、抗炎症系薬物、ムスカリン受容体遮断剤薬物、免疫抑制剤系薬物、糖質コルチコイド系薬物を含み、
より好ましくは、前記ヌクレオシド系抗ウイルス薬物が、ガンシクロビル、アシクロビル、ペンシクロビル、シドホビル、ホミビルセン、ロブカビルを含み、
前記眼圧下降薬物が、炭酸脱水酵素阻害剤を含み、より好ましくは、ブリンゾラミド、アセタゾラミド、メタゾラミドであり、
前記抗生物質系薬物が、アミカシン、セフトリアキソン、セファゾリン、オキサシリン、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、バンコマイシンを含み、
前記抗炎症系薬物がオキシテトラサイクリンを含み、
前記抗酸化系薬物が、タウリン、アントシアニン、リグニンを含み、
前記ムスカリン受容体遮断剤薬物が、アトロピン、スコポラミン、アニソダミンを含み、
前記免疫抑制剤系薬物が、シクロスポリン(cyclosporin)、タクロリムス(tacrolimus)、シロリムス(sirolimus)、エベロリムス(everolimus)、ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil)、メトトレキサート、アザチオプリンおよびシクロホスファミドを含み、
前記糖質コルチコイド系薬物が、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニソロン、メチルプレドニソロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドを含む。
【0037】
本発明はまた、前記眼科用製剤の調製方法を提供し、該方法は、
界面活性剤、および/または増粘剤を溶媒に加えて溶液を調製するステップ(1)と、
眼疾患を治療するための活性成分および/または共溶媒をステップ(1)で得られた溶液に分散させ、さらにイオン性高分子またはその溶液を加え、分散・混合させて初期懸濁液を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた初期懸濁液を撹拌して分散させる、またはホモジナイズして分散させるステップ(3)と、を含み、
または、
低重合度ポビドン、および/または増粘剤を溶媒に加えて溶液を調製するステップ(a)と、
眼疾患を治療するための活性成分および/または共溶媒をステップ(a)で得られた溶液に分散させ、さらに中重合度ポビドンまたはその溶液を加え、分散・混合させて初期懸濁液を得るステップ(b)と、
ステップ(b)で得られた混合液を粉砕する、またはホモジナイズして分散させるステップ(c)と、を含む。
【0038】
さらに、ステップ(2)またはステップ(b)における前記分散が、機械撹拌による分散、磁気撹拌による分散、ボルテックス振とうによる分散、剪断による分散、ホモジナイズによる分散、粉砕による分散、超音波による分散から選択される少なくとも1種である。
【0039】
本発明はさらに、前記眼科用製剤の、眼部疾患治療するための薬物の調製における使用を提供する。
【0040】
さらに、前記眼科用製剤が、眼底疾患を治療するための、および/または後眼部ウイルス感染症を治療するための、および/または後眼部慢性炎症を治療するための、および/または眼圧下降のための、および/または眼部疼痛を治療するための、および/または眼内細菌または真菌の感染に対抗するための眼科用製剤であり、および/または青少年の近視や仮性近視の予防と治療に用いられる眼科用製剤であり、および/または自己免疫性疾患を治療するための眼科用製剤であり、および/または前眼部の疾患を治療するための眼科用製剤であり、および/または腫瘍成長を阻害する眼科用製剤である。
【0041】
さらに、前記眼底疾患を治療するための眼科用製剤が、眼底血管性疾患による黄斑浮腫、炎症性浮腫、炎症性疼痛を治療するための眼科用製剤を含み、より好ましくは、網膜中心静脈閉塞性黄斑浮腫、網膜静脈分枝閉塞症性黄斑浮腫、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、病的近視黄斑浮腫、滲出型加齢性黄斑変性症による黄斑浮腫、乾燥型黄斑変性症、地図状萎縮、非感染性眼内炎、急性網膜壊死、術後炎症性疼痛、ぶどう膜炎を治療するための眼科用製剤であり、
前記後眼部ウイルス感染症を治療するための眼科用製剤が、サイトメガロウイルス性ぶどう膜炎、ウイルス性視神経炎、ウイルス性急性網膜壊死を治療するための眼科用製剤を含み、
前記眼圧下降のための眼科用製剤が、急性および慢性の緑内障ならびにその合併症を治療するための眼科用製剤を含み、
前記自己免疫性疾患を治療するための眼科用製剤が、眼部免疫性疾患または全身性自己免疫性疾患による眼部疾患を治療するための眼科用製剤であり、好ましくは、グレーブス眼病、ベーチェット症候群、散弾状網脈絡膜症、シェーグレン症候群、交感性眼炎または肉芽腫性眼病を治療するための眼科用製剤を含み、
前記前眼部の疾患を治療するための眼科用製剤が、ハイリスク角膜移植手術後の後遺症または合併症、春季カタル性角結膜炎、蚕蝕性角膜潰瘍または難治性角膜潰瘍、単純ヘルペスウイルス性角膜炎、角膜新生血管形成および角膜翼状片を治療するための眼科用製剤を含む。
【0042】
さらに、前記眼内細菌または真菌の感染に対抗するための眼科用製剤の活性成分が抗生物質であり、
前記青少年の近視や仮性近視の予防と治療に用いられる眼科用製剤の活性成分がムスカリン受容体遮断剤であり、
前記自己免疫性疾患を治療するための眼科用製剤の活性成分が免疫抑制剤である。
【0043】
本発明はまた、眼部疾患を治療するための方法、すなわち、患者に対する前記眼科用製剤の使用を提供する。
【0044】
さらに、前記眼部疾患が、眼底疾患、および/または後眼部ウイルス感染症、および/または後眼部慢性炎症、および/または高眼圧疾患、および/または眼部疼痛、および/または眼内細菌または真菌の感染、および/または青少年の近視や仮性近視、および/または自己免疫性疾患、および/または前眼部の疾患、および/または眼腫瘍である。
【0045】
さらに、前記眼底疾患が、眼底血管性疾患による黄斑浮腫、炎症性浮腫、炎症性疼痛を含み、好ましくは、網膜中心静脈閉塞性黄斑浮腫、網膜静脈分枝閉塞症性黄斑浮腫、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、病的近視黄斑浮腫、滲出型加齢性黄斑変性症による黄斑浮腫、乾燥型黄斑変性症、地図状萎縮、眼内炎、急性網膜壊死、術後炎症性疼痛、ぶどう膜炎であり、
前記後眼部ウイルス感染症が、サイトメガロウイルス性ぶどう膜炎、ウイルス性視神経炎、ウイルス性急性網膜壊死を含み、
前記高眼圧疾患が、急性および慢性の緑内障ならびにその合併症を含み、
前記自己免疫性疾患が、眼部免疫性疾患または全身性自己免疫性疾患による眼部疾患であり、好ましくは、グレーブス眼病、ベーチェット症候群、散弾状網脈絡膜症、シェーグレン症候群、交感性眼炎または肉芽腫性眼病を含み、
前記前眼部の疾患が、ハイリスク角膜移植手術後の後遺症または合併症、春季カタル性角結膜炎、蚕蝕性角膜潰瘍または難治性角膜潰瘍、単純ヘルペスウイルス性角膜炎、角膜新生血管形成または角膜翼状片を含む。
【0046】
さらに、前記使用の方式が点眼投与である。
【0047】
本発明で述べるナノ粒子とは、眼科用製剤の担体または補助材料の成分が溶媒中で自己組織化して形成されたナノレベルの球形の凝集体のことである。
【0048】
本発明で述べるナノスフィアとは、ナノ粒子が溶媒中で自己組織化して形成された球形の自己組織化構造のことである。
【0049】
本発明で述べる溶媒とは、眼科用製剤の担体または補助材料の成分を溶解させることができる液体のことである。
【0050】
本発明で述べる界面活性剤とは、液体の表面張力を著しく低下させることができる物質のことである。本発明で述べる非イオン性界面活性剤とは、水中で解離しない界面活性剤のことである。
【0051】
本発明で述べるイオン性高分子とは、カチオンまたはアニオンを有する高分子重合体のことである。
【0052】
本発明で述べる低重合度ポビドンとは、分子量が10000ダルトン以下のポビドンであり、中重合度ポビドンとは分子量が10000ダルトン以上、100000ダルトン以下のポビドンのことである。
【0053】
本発明で述べる「眼疾患を治療するための活性成分」とは、眼疾患の治療のために用いることができる活性物質であり、すなわち、現在すでに眼科用医薬として使用されている活性物質、および、作用メカニズムや作用ターゲットは眼疾患の治療が可能であると示しているものの、現時点では眼科用医薬として使用されていない活性物質のことである。
【0054】
本発明で述べる点眼投与とは、薬液を眼に滴下する投与方法であり、角膜投与経路に属するものである。
【0055】
眼球構造の特殊性により、従来技術の投与方式では、いずれも安全な投与と効果的な投与を両立させることができず、効果的な投与が可能な方式には安全上の問題が存在し、安全な投与が可能な方式では効果的な投与ができなかった。例えば、硝子体内注射は、効果的な投与が可能であるが、眼内出血や疼痛等の深刻な合併症が起こり、現在最も安全である点眼投与は、非常に安全ではあるが、前眼部を通過できないため、薬物の後眼部到達が難しく、有効濃度が不十分となり、効果的な治療という目的を達成できない。
【0056】
本願の発明者は、長年の積み重ねにより、本発明の点眼投与用担体を発明し、試験の結果、該点眼投与用担体は薬物を担持することができ、薬物を硝子体に輸送して効果を発揮するとともに、安定もしていることが確認され、眼科用薬品の投与の分野において早急な解決が望まれながらいまだ解決されていない技術課題を解決するものである。
【0057】
実験から分かるように、本発明の点眼投与用担体を用いて複数種の薬物を輸送することができ、眼底において有効な(予期された)濃度に達することができ、且つ担持(内包)する眼疾患治療のための活性成分の性質および効果に影響を及ぼさない。本発明の点眼投与用担体は、従来の硝子体内注射による投与、硝子体液インプラントによる投与、経口投与および全身注射による投与のための小分子薬物の輸送に使用され、さらに、従来の硝子体内注射、硝子体内注射インプラント剤、経口投与および全身注射投与における課題を克服でき、眼内出血、疼痛等の深刻な合併症の問題を解決して、眼底疾患患者の苦痛を最大限低減させ、医学的利便性を向上させ、患者および家族の生活の質を改善し、または全身投与による全身への毒性の副作用を回避することが想定できる。
【0058】
本発明は眼の局所注射またはインプラントによる合併症を避けることができる。
【0059】
本発明が開発した製剤は投与量が少なく、毒性の副作用が小さいため、治療薬物とすることができるだけでなく、眼科疾患を予防・コントロールすることもできる。
【0060】
本発明の製剤は、臨床における長期投与のニーズを満たすことができる。
【0061】
本発明の点眼投与治療システムは、有効成分(Active Pharmaceutical Ingredient, API)として既に臨床で使用され且つ作用メカニズムが明確な小分子薬物を用いることができ、品質の制御が可能であり、製品として使用しやすく、患者の順応性が良好で、医師は患者の病状に応じて投与計画を柔軟に調整することができる。
【0062】
当然ながら、本発明の上記内容に基づき、当分野の一般的な技術的知識や慣用的手段に照らし、本発明の上記基本的な技術的思想を逸脱しないという前提において、他の様々な形態の修正、置換または変更を行うことができる。
【0063】
以下、実施例という形の具体的な実施形態によって、本発明の上記内容を更に詳細に説明する。但し、これをもって、本発明の上記主題の範囲が以下の実施例に限定されると理解してはならない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、いずれも本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、実施例1で得られたサンプルの(A)透過型電子顕微鏡画像(スケールバーは200nm)、(B)染色剤を加えて染色した後の透過型電子顕微鏡画像(スケールバーは1μm)である。
図2図2は、実施例3で得られたサンプルの透過型電子顕微鏡画像(スケールバーは0.5μm)である。
図3図3は、実施例6で得られたサンプルを染色した後の透過型電子顕微鏡画像(スケールバーは500nm)である。
図4図4は、実施例13で得られたサンプルを染色した後の透過型電子顕微鏡画像(スケールバーは200nm)である。
図5図5は、実施例36で得られたサンプルの(A)透過型電子顕微鏡画像(スケールバーは0.5μm)、(B)染色剤を加えた後の透過型電子顕微鏡画像(スケールバーは0.5μm)である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明で使用される試薬または機器は、市販の製品を購入して入手することができ、具体的な条件が明示されていない限り、従来の条件またはメーカーが推奨する条件に従って使用される。
【0066】
一部の機器および設備は以下のとおりである。
【0067】
ES225SM-DR(E)電子分析天秤、プレシーザ社(スイス)
DF-101S集熱式恒温加熱磁気撹拌機、鞏義市英峪高科儀器廠(河南、中国)
WH-2マイクロボルテックスミキサー、上海▲ろ▼西分析儀器廠有限公司(上海、中国)
分散機:T25 イージークリーンデジタル、IKA社(ドイツ)
KQ-500型超音波洗浄器、昆山市超声波儀器有限公司(昆山、中国)
JP-010T型超音波洗浄器、深セン市潔盟清洗設備有限公司
AH-NANO Plus高圧ホモジナイザー、安拓思納米技術(蘇州)有限公司(中国)
PM-DK2遊星型ボールミル、卓的儀器設備(上海)有限公司(上海、中国)
メトラー・トレド FE20 pHメーター、メトラー・トレド社(スイス)
NS-90ナノ粒度分析計、珠海欧美儀器有限公司(珠海、中国)
アジレント1100HPLC高速液体クロマトグラフィ、アジレントテクノロジー社(米国)
API 4000トリプル四重極型質量分析計(米国アプライドバイオシステム社)
STY-1A浸透圧測定器、天津市天大天発科技有限公司(天津、中国)。
【0068】
本発明の製剤の性質測定方法は以下のとおりである。
【0069】
粒径測定方法
実施例または比較例で調製したサンプル1mLをサンプルセルに移し、測定温度を40℃に設定し、サンプルセルをNS-90ナノ粒度分析計にセットして、測定を開始した。各サンプルは測定を3回繰り返し、3回の測定結果の平均値を取って、該サンプルの測定結果、粒度(光強度分布、および%)および多分散性指数(PdI、Polydispersity Index)として示した。
【0070】
浸透圧測定方法
溶液の凝固点降下を測定し、浸透圧モル濃度を測定した。操作:STY-1A浸透圧測定器のプローブの洗浄:蒸留水を100μLずつ3つのサンプル管に入れ、機器を予熱した後、100μLの蒸留水が入ったサンプル管を機器プローブに螺合取付し、3回洗浄を選択して、「洗浄」をクリックし、3回繰り返した。測定:機器情報テーブルにサンプル情報を入力して、「テスト」をクリックした。ピペットガンでサンプル100μLをサンプル管に移し、機器に軽く螺合取付し、測定の「起動」をクリックした。測定を3回繰り返し、3回の測定結果の平均値を測定結果とした。
【0071】
pH値の測定方法
FE20型pHメータを、それぞれpH緩衝溶液(pHはそれぞれ4.00、6.86、9.18)で校正し、電極を純水で洗浄した後、無繊維紙で余分な水分を吸い取って、測定対象の液体サンプルに浸漬し、読み取りボタンを押して測定を開始した。読み取りが安定した後に得られたデータをサンプルのpH値とした。
【0072】
測定した溶液のpHが<5、または>9であれば、酸またはアルカリでpH6~8に調整する必要があり、一般的なpH調整剤は、NaOHおよびHCl、リン酸およびリン酸塩(例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)、クエン酸およびクエン酸塩(例えばクエン酸ナトリウム)、ホウ酸およびホウ砂である。測定した液体の浸透圧が等張に達していなければ、適量の塩化ナトリウムを添加し、等張に到達させるかまたはそれに近づけた。
【0073】
特に明記しない限り、後眼部への薬物送達の効果を検証する方法は以下の通りである。
【0074】
試験機器および設備は以下のとおりである。高速液体クロマトグラフィー、型番:LC-20AD(日本島津)質量分析計:型番:API4000トリプル四重極型質量分析計(米国アプライドバイオシステム社):クロマトグラフィカラム:フォーティス ペース C18 5μM、2.1×30mm(英国フォーティス社)。
【0075】
ラット:健康な成体のSprague Dawley(SD)ラットを選び、被験群と対照群とに分け、各群6つの眼とし、被験群には本発明の実施例で調製した眼科用製剤を、対照群には薬物2mg/生理食塩水5mLの懸濁液(使用前にボルテックス振とうし均一にしたもの)を、各眼に20μL滴下した。投与して0.5時間または1時間後に動物を安楽死させ、速やかに硝子体を採取し、硝子体サンプルをホモジナイズ処理した後、-80℃で保存した。硝子体ホモジネートを10μL取り、90μLの95%エタノールを加え、2分間超音波処理し、1分間ボルテックス混合を行って、硝子体ホモジネート液を得た。ホモジネート液を50μL取り、175μLのメタノールを加え、3minボルテックス混合を行い、4°C、12000rpmで10min遠心分離し、上澄み液を0.45μmのシリンジフィルターで濾過し、濾液をLC/MS/MS(正イオンモード、MRM SCAN)分析に用いた。
【0076】
ニュージーランドウサギ:健康な3~4ヶ月齢の雄のニュージーランドウサギで、体重2.0~2.5kgのものを選び、2つの群に分け、各群4つの眼とした。ニュージーランドウサギを作業台に把持し、安静になった後、1つの群の眼(ブランク対照)に生理食塩水をそれぞれ30μl滴下し、もう一つの群の眼に被験物をそれぞれ30μl滴下して、1時間後に安楽死させ、両眼の房水および硝子体を迅速に採取して、-80℃で保存した。
【0077】
ニュージーランドウサギの房水サンプル50μlを取り、50μlの75%アセトニトリル-水を加え、内部標準物質(ミダゾラム20ng/mlアセトニトリル溶液)150μLを加え、10分間ボルテックス混合した後、4℃ 10000rpmで5min遠心分離し、上澄み液を取って、LC-MS/MS分析に用いた。ニュージーランドウサギの硝子体サンプルをホモジナイズした後、100μlを取り、100μlの75%アセトニトリル-水を加え、内部標準物質(50ng/mlアセトニトリル溶液)50μLを加え、10分間ボルテックス混合した後、4℃ 10000rpmで5min遠心分離し、上澄み液を取って、LC-MS/MS(正イオンモード、MRM SCAN)分析に用いた。
【0078】
実施例1:本発明の眼科用製剤の調製
表1に従って、0.24gのCMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム、イオン性高分子)を秤量して、40mLの純水を含んだガラス三角フラスコに加え、磁気撹拌を開始して2時間撹拌し、溶液1を得た。1.0gのポリソルベート80(界面活性剤)と0.24gのHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、増粘剤)をそれぞれ秤量して、60mLの純水を含んだガラス三角フラスコに加え、磁気撹拌を開始し、水浴により40℃前後で1.5時間加熱して、溶液2を得た。40mgのデキサメタゾンと4.0mLのPEG400(すなわち界面活性剤の使用量の4.3倍(w/w))を秤量して溶液2に投入し、30分間加熱・撹拌を続けた後、溶液1を加え、30分間撹拌して、混合液を得た。混合液を、分散機を用いて回転速度9500回転で5分間分散させ、機械を止めて泡が消失した後に、ブフナー漏斗を用いて減圧濾過して、分散液を得た。分散液を高圧ホモジナイザーに移して、温度を15±5℃に制御し、400Bar前後の圧力で3分間ホモジナイズし、次に>800Barまで圧力を上げて25分間ホモジナイズし、300Barまで減圧して2分間ホモジナイズした後に排出し、無色透明の溶液を得て、さらに減圧濾過して除菌し且つ機械不純物を除去して、不純物除去後の無色透明の溶液を得た。
【0079】
pHと浸透圧の調整:700mgのNaHPOと400mgのNaHPOを加えてpHをpH=6.3に調整し、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を282mOsmol/kgに調節した。
【0080】
HPLCの測定:測定機器:アジレント1100高速液体クロマトグラフィ、操作ソフト:OpenLab CDS c.01.10 (201) Chemstation Edition。
【0081】
クロマトグラフィ条件:クロマトグラフィカラムはWaters XBridge C18 5μm、4.6x250mmであり、カラム温度35℃、流量1.0mL/min、測定波長240nm、移動相:0.1%リン酸水溶液(72.0%)-アセトニトリル(28.0%)イソクラティック溶離。サンプルを移動相で5倍に希釈した後に10μLを取って液体クロマトグラフに注入した。測定結果:96.2%であった。
【0082】
粒度は20.6nm(85.6%)、PdI:0.266であった。室温で光を避けて1ヶ月保存したところ、該サンプルの外観と含有量に変化はなかった。
【0083】
点眼0.5時間後の動物の硝子体デキサメタゾン濃度:53.4(ng/g)、RSD:36.6%であった。対照群に、2mgのデキサメタゾン/5mLの生理食塩水の懸濁液(使用前にボルテックス振とうし均一にしたもの)を各眼に20μL滴下した。対照群に点眼して0.5時間後、動物の硝子体においてデキサメタゾンは検出されなかった(検出限界より低い、<1ng/g)。
【0084】
実施例2:
調製方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。不純物除去後の無色透明の溶液を得た。
【0085】
pH調整:0.2NのNaOHまたは/および0.1NのHClでpH6.5に調整した。
【0086】
HPLCの測定方法は実施例1と同じであり、HPLC含有量測定結果:95.1%、粒径12.9nm(92.1%)、PdI:0.509であった。安定性は比較的良好で、室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。2ヶ月後に少量の沈殿が生じた。
【0087】
点眼1時間後のラットの硝子体API濃度:13.9ng/g、RSD:17.2%であった。
【0088】
実施例3:
調製方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の黄色がかった透明な溶液を得た後、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を273mOsmol/kgに調節した。
【0089】
HPLCの測定:カラム:ZORBAX Eclipse Plus C18、4.6×100mm 3.5μm、移動相A:0.1%ギ酸水溶液、移動相B:ACN。温度:35℃、測定波長:296nm、流量:0.8ml/min、グラジエント溶離の手順:0-2’:95%A-5%B、15’:55%A-45%B、18-21’:35%A-65%B、23’:95%A-5%B。測定結果:98.2%であった
粒径13.2nm(81.2%)および57.7nm(13.1%)、PDI:0.431であった。安定性が良好で、40℃で光を避けて20日間放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0090】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:315ng/g、RSD:29.4%であった。
【0091】
点眼0.5時間後のニュージーランドウサギの硝子体API濃度:142ng/g、RSD:34.3%であった。
【0092】
実施例4:
調製方法は実施例3を参照し、不純物除去後の黄色がかった透明な溶液を得た。原料および使用量は表1に示すとおりである。
【0093】
測定結果:16.6nm(96.2%)、PdI:0.229。
【0094】
HPLCの測定方法は実施例3と同じであり、測定結果:97.5%であった。安定性が良好で、40℃で光を避けて20日間放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0095】
実施例5:
調製方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の無色透明な溶液を得た後、0.1NのNaOHでpH6.5に調整した。
【0096】
HPLCの測定:カラム:ZORBAX Eclipse Plus C18、4.6×100mm 3.5μm、移動相A:40mM酢酸アンモニウム水溶液(pH5.0)、移動相B:MeOH、温度:35℃、測定波長:233nm,流量:0.8ml/min、グラジエント溶離の手順:0-2’:100%A、20-22’:60%A-40%B、23’:100%A。測定結果:97.4%。
【0097】
粒径11.8nm(71.6%)、PdI:0.519であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0098】
実施例6:
調製方法は実施例5を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の無色透明な溶液を得た後、1Nのクエン酸ナトリウム溶液でpH6.5に調整し、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を297mOsmol/kgに調節した。
【0099】
HPLCの測定:カラム:ZORBAX 300SB-CN、2.1×150mm、5μm、移動相:40mM KHPO(pH4.5):メタノール(75:25)イソクラティック溶離、温度:35℃、測定波長:233nm、流量:0.8ml/min、測定結果:99.1%。
【0100】
粒径21.6nm(94.4%)、PdI:0.206であった。室温で光を避けて2ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0101】
点眼0.5時間後の動物の硝子体API濃度:39.8±16.6ng/gであった。
【0102】
実施例7:
調製方法は実施例5を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の無色透明な溶液を得た。pH測定結果は6.9で、調整は不要であった。
【0103】
HPLCの測定方法は実施例5を参照し、測定結果:98.6%、粒径16.6nm(98%),PdI:0.227であった。室温で光を避けて2ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0104】
実施例8:
調製方法は実施例5を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の無色透明な溶液を得た。pH測定結果は6.5で、調整は不要であった。
【0105】
HPLCの測定方法は実施例5を参照し、測定結果:97.8%であった。粒径17.1nm(55.5%),513(36.3%),PdI:0.795であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0106】
実施例9:
調製方法:60mgのCMC-Naを秤量して、15mLの純水を含んだガラス三角フラスコに加え、磁気撹拌を開始して2時間撹拌し、溶液1を得た。0.24gのポリソルベート80と0.12gのHPMC(増粘剤)をそれぞれ秤量して、15mLの純水を含んだ別のガラス三角フラスコに加え、磁気撹拌を開始し、水浴により40℃前後で3時間加熱して、溶液2を得た。15mgのリポ酸および1mLのグリセロール(界面活性剤の使用量の5.25倍(w/w)に相当)を秤量して溶液2に投入し、30分間加熱・撹拌を続けた後、溶液1を加え、30分間撹拌して、混合液を得た。混合液を、分散機を用いて回転数11,000回転で3分間分散させ、機械を止めて、溶液の泡が消失した後に、高圧ホモジナイザーに移してホモジナイズ処理(条件は実施例1を参照)し、無色透明な溶液を得て、次に減圧濾過して除菌するとともに機械不純物を除去し、不純物除去後の無色透明な溶液を得た。
【0107】
pHおよび浸透圧の調整方法:0.1Nのクエン酸ナトリウム溶液でpH6.3に調整し、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を294mOsmol/kgに調節した。
【0108】
HPLCの測定:カラム:ZORBAX Eclipse Plus C18、4.6×100mm 3.5μm、移動相A:0.1%リン酸(pH3.0)、B:メタノール-アセトニトリル(1:1)。温度:35℃、測定波長:215nm、流量:0.8ml/min、グラジエント溶離の手順:0-5’:60%A-40%B、28-30’:40%A-60%B、測定結果:97.4%であった。粒度測定結果:17.8nm(98.6%)、PdI:0.222であった。3~8℃で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に変化はなかった。
【0109】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:52.6±17.9ng/gであった。
【0110】
対照群に、2mgのリポ酸/5mLの生理食塩水の懸濁液(使用前にボルテックス振とうし均一にしたもの)を各眼に20μL滴下した。対照群に点眼して0.5時間後、動物の硝子体においてリポ酸は検出されなかった(検出限界より低い、<1ng/g)。
【0111】
実施例10:
調製方法およびpH、浸透圧の調整方法は実施例5を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の無色透明な溶液を得た。
【0112】
HPLCの測定方法は実施例5と同じであり、HPLC測定結果:98.4%であった。
【0113】
測定結果:粒径348nm(85%)、PdI:0.422。
【0114】
室温で光を避けて1ヶ月間放置したところ、1ヶ月では外観および含有量に有意な変化はなく、2ヶ月後に少量の沈殿が生じた。
【0115】
実施例11:
調製方法およびpH、浸透圧の調整方法は実施例9を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。ここで、共溶媒であるプロピレングリコールの使用量は、界面活性剤の6.2倍(w/w)とした。
【0116】
HPLCの測定波長は233nm、その他の測定方法は実施例9と同じであり、測定結果:98.1%、粒径25.8nm(87.4%)、PdI:0.317であった。3~8℃で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に変化はなかった。
【0117】
実施例12:
調製方法およびpH、浸透圧の調整方法は実施例9を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。ここで、共溶媒であるプロピレングリコールの使用量は、界面活性剤の8.9倍(w/w)とした。
【0118】
HPLCの測定方法は実施例9と同じであり、測定結果:95.2%であった。粒径31.5nm(82.9%)、PdI:0.347であった。3~8℃で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に変化はなかった。
【0119】
実施例13:
調製方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の黄色がかった透明な溶液を得た。
【0120】
pH、浸透圧の調整:0.1NのNaOHでpH6.3に調整し、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を297mOsmol/kgに調節した。
【0121】
HPLCの測定波長は280nmであり、その他の測定方法は実施例1と同じとし、測定結果:97.3%、粒径16.7nm(98.1%)、PdI:0.225であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に変化はなかった。
【0122】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:66.5±18.1ng/gであった。
【0123】
対照群に、2mgのドキシサイクリン/5mLの生理食塩水の懸濁液(使用前にボルテックス振とうし均一にしたもの)を各眼に20μL滴下した。対照群に点眼して0.5時間後、動物の硝子体においてドキシサイクリンは検出されなかった(検出限界より低い、<1ng/g)。
【0124】
実施例14:
調製方法およびpH、浸透圧の調整方法は実施例13を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の黄色がかった透明な溶液を得た。
【0125】
HPLCの測定方法は実施例13と同じであり、HPLC含有量測定結果:98.2%、粒径17.2nm(97.9%)、PdI:0.208であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に変化はなかった。
【0126】
実施例15:
調製方法およびpH、浸透圧調整方法は実施例13を参照し、共溶媒の添加は以下のとおりである。1.5mLのプロピレングリコール(界面活性剤の10倍(w/w)に相当)を秤量して界面活性剤と共に媒体水に加え、磁気撹拌し、水浴で加熱し溶解させて溶液2を得て、不純物除去後の黄色がかった透明な溶液を得た。原料および使用量は表1に示すとおりである。
【0127】
HPLCの測定方法は実施例13と同じであり、測定結果:95.2%、粒径29.7nm(89.3%)、PdI:0.382であった。3~8℃で光を避けて1ヶ月放置したところ、フロックの出現が見られた。
【0128】
実施例16:
調製方法およびpH、浸透圧の調整方法は実施例9を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。
【0129】
HPLCの測定方法は実施例9と同じであり、測定結果:0.486mg/mL(メトホルミン)、0.481mg/mL(リポ酸)、粒径18.9nm+302.1nm、PdI:0.529であった。3~8℃で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に変化はなかった。
【0130】
点眼0.5時間後の動物の硝子体API濃度:86.5ng/gリポ酸、69.5ng/gメトホルミンであった。
【0131】
実施例17:
調製方法およびpH、浸透圧の調整方法は実施例9を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。
【0132】
HPLCの測定方法は実施例9と同じであり、測定結果:0.487mg/mL(ドキシサイクリン)、0.478mg/mL(リポ酸)、粒径20.2nm+251.6nm、PdI:0.701であった。3~8℃で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に変化はなかった。
【0133】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:57.3ng/gリポ酸、68.4ng/gメトホルミンであった。
【0134】
実施例18:
調製方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の無色透明な溶液を得た後、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を301mOsmol/kgに調節した。pH測定結果は6.6で、調整は不要であった。
【0135】
HPLCの測定:カラム:ZORBAX Eclipse Plus C18,4.6x100mm 3.5μm、移動相A:0.1%リン酸、移動相B:アセトニトリル、温度:35℃、測定波長:260nm、流量:0.8ml/min、グラジエント溶離の手順:0-2’:95%A-5%B、20-25’:65%A-35%B、28’:95%A-5%B、測定結果:98.2%。粒径20.3nm(83.6%)、PdI:0.249であった。室温で1ヶ月放置したところ、外観および含有量に変化はなかった。
【0136】
点眼1時間後のニュージーランドウサギの硝子体API濃度は138ng/gであり、房水における濃度は681ng/gであった。
【0137】
実施例19:
調製方法およびpH、浸透圧の調整方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の黄色がかった透明な溶液を得た。
【0138】
HPLCの測定:カラム:ZORBAX Eclipse Plus C18,4.6x100mm 3.5μm、移動相A:0.1%リン酸、移動相B:メタノール(80:20)イソクラティック溶離、温度:35℃、測定波長:280nm、流量:0.8ml/min、測定結果:98.4%。粒径39.7nm(95.5%)、PdI:0.318であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に変化はなかった。
【0139】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:78.3ng/gであった。
【0140】
実施例20:
調製方法およびpH、浸透圧の調整は実施例19を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。不純物除去後の黄色がかった透明の溶液を得た。
【0141】
HPLCの測定方法は実施例19と同じであり、測定結果:97.8%、粒径:46.2nm(95.5%)、PdI:0.343であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0142】
実施例21:
調製方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の無色透明な溶液を得て、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を271mOsmol/kgに調節した。pH測定結果は6.6で、調整は不要であった。
【0143】
HPLCの測定:カラム:ZORBAX Eclipse Plus C18,4.6x100mm 3.5μm、移動相:0.1%HPO-アセトニトリル(85:15)イソクラティック溶離、温度:35℃、測定波長:217nm、流量:0.7ml/min、測定結果:99.6%。粒径15.2nm(93.4%),PdI:0.227であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に変化はなかった。
【0144】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:79.4ng/gであった。
【0145】
実施例22:
調製方法は実施例21を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の無色透明な溶液を得て、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を265mOsmol/kgに調節した。pH測定結果は6.5で、調整は不要であった。
【0146】
HPLCの測定方法は実施例21と同じであり、測定結果:98.3%、粒径11.9(91.9%)nm、PdI:0.206であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0147】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:46.2(ng/g)であった。
【0148】
実施例23:
調製方法は実施例9を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。ここで、共溶媒であるプロピレングリコールの使用量は界面活性剤の4.5倍(w/w)であり、pHは6.5であり、等張に近かったため、調節は不要であった。
【0149】
HPLCの測定方法:カラム:ZORBAX Eclipse Plus C18、4.6×100mm 3.5μm、移動相A:0.1%リン酸、B:アセトニトリル(80:20)、イソクラティック溶離、温度:35℃、測定波長:306nm、流量:0.8ml/min。測定結果:95.7%。
【0150】
粒径27.5nm(77.9%)、PdI:0.328であった。3~8℃で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0151】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:20.3±9.3ng/gであった。
【0152】
実施例24:
調製方法は実施例23を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。ここで、共溶媒プロピレングリコールの使用量は界面活性剤の4.5倍(w/w)とし、不純物除去後の無色透明の溶液を得た。
【0153】
pHは6.6であり、pHの調整を行う必要がなく、浸透圧の調節は、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を293mOsmol/kgに調節した。
【0154】
HPLCの測定方法は実施例14を参照し、測定結果:96.1%であった。
【0155】
粒径24.5nm(85.5%)、PdI:0.253であった。3~8℃で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0156】
実施例25:
調製方法は実施例23を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。ここで、共溶媒グリセロールの使用量は界面活性剤の4.5倍(w/w)とし、不純物除去後の無色透明の溶液を得た。
【0157】
pHは6.4であり、pHの調整を行う必要がなく、浸透圧の調節は、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を305mOsmol/kgに調節した。
【0158】
HPLCの測定方法は実施例14を参照し、測定結果:94.7%であった。
【0159】
粒径26.2nm(75.2%)、PdI:0.325であった。3~8℃で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0160】
実施例26:
調製方法は実施例23を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。ここで、共溶媒プロピレングリコールの使用量は界面活性剤の4.5倍(w/w)とし、不純物除去後の無色透明の溶液を得た。
【0161】
pH、浸透圧の調整:0.2NのNaOHでpH6.2に調整し、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を305mOsmol/kgに調節した。
【0162】
HPLCの測定方法は実施例14を参照し、測定結果:95.3%であった。
【0163】
粒径22.7nm(83.4%)、PdI:0.372であった。3~8℃で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0164】
実施例27:
調製方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の無色透明な溶液を得た後、1Mのクエン酸ナトリウム水溶液でpH6.2に調整し、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を307mOsmol/kgに調節した。
【0165】
HPLCの測定:カラム:ZORBAX Eclipse Plus C18,4.6x100mm 3.5μm、移動相A:水、移動相B:メタノール、流量:0.8ml/min、グラジエント溶離の手順:0-10’:100%A-0%B、15’:55%A-45%B、18-21’:35%A-65%B、温度:30℃、測定波長:255nm、純度測定結果:99.2%、粒径19.6nm(75.9%)、PdI:0.424であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0166】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:580ng/gであった。
【0167】
実施例28:
調製方法は実施例9を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。ここで、共溶媒プロピレングリコールの使用量は界面活性剤の5倍(w/w)とし、不純物除去後の無色透明の溶液を得た。
【0168】
pH、浸透圧の調整:0.1NのNaOHでpH6.3に調整し、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を290mOsmol/kgに調節した。
【0169】
HPLCの測定方法は実施例9を参照し、測定結果:96.1%であった。
【0170】
粒径23.7nm(84.2%)、PdI:0.323であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0171】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:62.5ng/gであった。
【0172】
実施例29:
調製方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。ここで、共溶媒PEG400の使用量は界面活性剤の5倍(w/w)とし、不純物除去後の無色透明の溶液を得た。
【0173】
pHと浸透圧の調整:1MのNaHPO溶液でpH6.2に調整し、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を295mOsmol/kgに調節した。
【0174】
HPLCの測定方法は実施例1と同じであり、測定結果:97.3%、粒径22.4nm(91.4%)、PdI:0.293であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0175】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:42.7ng/gであった。
【0176】
実施例30:
調製方法は実施例9を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。ここで、共溶媒プロピレングリコールの使用量は界面活性剤の4.2倍(w/w)とし、不純物除去後の無色透明の溶液を得た。
【0177】
pH、浸透圧の調整:0.1NのNaOHでpH6.3に調整し、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を288mOsmol/kgに調節した。
【0178】
HPLCの測定方法は実施例9を参照し、測定結果:95.6%、粒径24.1nm(81.5%)、PdI:0.357であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0179】
実施例31:
調製方法は実施例5を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。ここで、共溶媒プロピレングリコールの使用量は界面活性剤の5.2倍(w/w)とし、不純物除去後の無色透明の溶液を得た。
【0180】
pH、浸透圧の調整:0.2NのNaOHでpH6.3に調整し、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を310mOsmol/kgに調節した。
【0181】
HPLCの測定方法は実施例5を参照し、測定結果:97.2%、粒径27.5nm(79.6%)、PdI:0.364であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、目に見える微粒子が認められた。
【0182】
実施例32:
調製方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。不純物除去後の無色透明な溶液を得た後、1Mのクエン酸ナトリウム溶液でpH6.2に調整し、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を308mOsmol/kgに調節した。
【0183】
HPLCの測定:カラム:ZORBAX Eclipse Plus C18、4.6×100mm 3.5μm、移動相A:0.1%リン酸水溶液、移動相B:メタノール。温度:35℃、測定波長:280nm、流量:0.8ml/min、グラジエント溶離の手順:0-2’:85%A-15%B、15-20’:35%A-65%B、22-25’:15%A-85%B、測定結果:95.3%、粒径:17.6nm(93.9%)、PdI:0.229であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0184】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:185.3ng/gであった。
【0185】
実施例33:
調製方法は実施例9を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。ここで、共溶媒ひまし油の使用量は界面活性剤の3倍とした。
【0186】
HPLCの測定波長280nm、その他の条件は実施例9と同じであり、測定結果:94.7%、粒径19.7nm(86.4%)、PdI:0.331、pH6.8であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0187】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:37.6(ng/g)であった。
【0188】
実施例34
調製方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりであり、不純物除去後の無色透明な溶液を得た。pH6.5で調整の必要はなかった。
【0189】
HPLCの測定波長245nm、その他の測定条件は実施例1と同じであり、測定結果:98.1%、粒径18.6nm(96.9%)、PdI:0.257であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0190】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:43.8ng/gであった。
【0191】
実施例35:
原料および使用量は表1に示すとおりであり、調製方法は実施例1を参照した。不純物除去後の無色透明な溶液を得た。
【0192】
測定結果:粒径18.6nm(96.5%),PdI:0.218。
【0193】
HPLC含有量測定結果:97.2%。
【0194】
室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0195】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:5.1ng/gであった。
【0196】
実施例36:
原料および使用量は表1に示すとおりであり、調整方法は実施例1を参照した。共溶媒PEG400の添加質量は界面活性剤と等しく(1:1(w/w))、不純物除去後の無色透明な溶液を得た。
【0197】
測定結果:粒径19.6nm(97.0%)、PdI:0.289、pH6.33、浸透圧:275mOsmol/kg、HPLC含有量測定結果:N/A。
【0198】
室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0199】
比較例1
調製方法および測定方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。
【0200】
測定結果:粒径10.0nm(98.8%)、PdI:0.363であった。安定性:冷暗所に1ヶ月放置した後、沈殿が生じた。
【0201】
比較例2
調製方法および測定方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表1に示すとおりである。
【0202】
測定結果:粒径196nm(61.6%),PdI:0.828であった。安定性:冷暗所に1ヶ月放置した後、フロック状の沈殿が生じた。その上澄み液を取って粒径を測定した結果:530nm(53.9%)および225nm(46.1%)、PDI:1.00であった。
【0203】
実施例37:
表2に従って0.25gのポビドン(PVP)K30を秤量して15mLの純水を含んだガラス三角フラスコに加え、2時間磁気撹拌し、溶液1を得た。60mgのHPMCと60mgのポビドン(PVP)K12それぞれ秤量して、15mLの純水を含んだ別のLガラス三角フラスコに加え、磁気撹拌を開始し、水浴により40℃で2時間加熱して、溶液2を得た。36mgのモキシフロキサシン塩酸塩を秤量して溶液2に投入し、30分間加熱・撹拌を続けた後、溶液1を加え、30分間撹拌して、混合液を得た。実施例3と同様の分散、高圧ホモジナイズおよび膜濾過操作によって細菌および機械不純物を除去し、不純物除去後の黄色がかった透明な溶液を得て、塩化ナトリウムを加えて浸透圧を285MoSmol/kgに調節した。
【0204】
測定結果:粒径14.0nm(54.2%)、222nm(31.9%)および10.1nm(13.1%)、PdI:0.564g、HPLC含有量測定結果:96.4%であった。
【0205】
安定性:40℃で光を避けて20日間放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。粒径が増大し、測定結果:242nm(77.9%)および18.1nm(12.4%)であった。
【0206】
実施例38:
調製方法は実施例1を参照し、原料および使用量は表2に示すとおりである。ここで、共溶媒PEG400の使用量は低重合度ポビドンの5倍(w/w)とした。不純物除去後の無色透明の溶液を得た。pH6.5で調整は不要であった。
【0207】
HPLCの測定方法は実施例1と同じであり、測定結果:98.1%であった。
【0208】
粒径15.1nm(87.1%)および3.1nm(11.0%)、PdI:0.288であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に有意な変化はなかった。
【0209】
点眼0.5時間後のラットの硝子体API濃度:5.1ng/gであった。
【0210】
実施例39:
原料および使用量は表2に示すとおりであり、調製方法およびHPLCの測定方法は実施例21を参照した。pH測定結果:6.68で、調整は不要であった。
【0211】
HPLC測定結果:99.3%、粒径11.5nm(62.9%)および77.8nm(23.6%)、PdI:0.362であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、外観および含有量に変化はなかった。
【0212】
実施例40:
原料および使用量は表2に示すとおりであり、調製方法は実施例1を参照した。不純物除去後の無色透明な溶液を得た。
【0213】
HPLCの測定方法は実施例1を参照し、測定結果:98.5%、粒径125.6nm(63.5%)、13.6nm(33.1%)、PdI:0.255であった。室温で光を避けて1ヶ月放置したところ、薄いエマルジョンが形成され、白色の沈殿があった。
【0214】
比較例3
原料および使用量は表2に示すとおりであり、調製方法は実施例1を参照し、中重合度ポビドンをイオン性高分子CMC-Naに置き換えて、淡白色のエマルジョンを得た。
【0215】
測定結果:粒径1299nm、PdI:0.175であった。一晩放置したところ白色の沈殿が生じた。
【0216】
点眼投与後のラットの硝子体内API濃度の測定結果により、本発明の眼科用薬品は、眼疾患を治療するための活性成分を担持して眼球構造のバリアを通過することができ、結膜嚢投与(点眼投与)の方式により有効用量の薬物を硝子体に送達させることができるため、硝子体内注射等の侵襲性の投与方式を回避でき、また、総薬物量を大幅に減らすことで、全身での薬物の吸収を減少させ、毒性副作用の発生が回避できる、ということが示された。
【0217】
表1
【0218】
表2
【0219】
以下、本発明の眼科用製剤の担体または補助材料の有益な効果を、実験例によって証明する。
【0220】
実験例1 本発明の担体の透過型電子顕微鏡観察結果
透過型電子顕微鏡(JEM-2100 Plus、日本電子(JEOL)社)
実施例3-1で調製した液体サンプルを1滴吸引して銅材質のサンプルメッシュに滴下し、5分間静置して余分な液体サンプルを吸引した後、自然乾燥させて、電子顕微鏡サンプル室に置いて測定を行った。サンプル染色:液体サンプルを1滴吸引して銅材質のサンプルメッシュに滴下し、サンプルメッシュ上の余分なサンプルを除去した後、2%リンモリブデン酸を1滴加え、5分間静置した後に余分な液体を吸引し、自然乾燥させ、サンプルメッシュを電子顕微鏡に置いて測定を行った。結果を図1に示す。この結果から、本発明で調製した薬物を担持する担体は、溶媒中で粒径が1~100nmの球形構造(ナノ粒子、図1A)を形成し、ナノ粒子はさらに粒径が10~2000nmの球体(ナノスフィア、図1B)に自己組織化できることがわかる。
【0221】
実験例2 粒径、含有量および安定性の測定
1.実験方法
実施例および比較例で調製したサンプル1mLをサンプルセルに移し、測定温度を40℃に設定し、サンプルセルをNS-90ナノ粒度分析計にセットして、測定を開始した。各サンプルは測定を3回繰り返し、3回の測定結果の平均値を取って、該サンプルの測定結果、粒度(光強度分布、および%)および多分散性指数(PdI、Polydispersity Index)として示した。測定後に光を避けて保存し、外観変化を観察するとともに、粒径を再度測定した。
【0222】
アジレントの1100高速液体クロマトグラフィーを用いて、本発明で調製した眼科用製剤サンプルのHPLC含有量を測定した。
【0223】
2.実験結果
表4、表5を参照されたい。
【0224】
表4
【0225】
表5
【0226】
上記結果から分かるように、本発明で調製された担体または補助材料は、様々なタイプの眼科用薬物を封入して眼科用製剤に調製することが可能であり、また、製剤の粒径が小さく、HPLC測定による薬物の含有量が高く、長期間放置しても、形態および含有量はいずれも安定している。これは、本発明で調製された担体または補助材料が、眼科用薬物の封入率が高く、安定性に優れていることを示している。一方、本発明とは異なる補助材料や原料を用いて調製された比較例の製剤は、安定性が悪く、短期間で沈殿または変質といった現象が発生した。
【0227】
実験例3 本発明の担体または補助材料で調製された眼科用製剤の抗ウイルス実験
1.実験対象:実施例3-27で調製したガンシクロビル点眼のドラッグデリバリーシステム
2.実験方法:
実施例で調製したガンシクロビル点眼のドラッグデリバリーシステムについて、インビトロでの抗ヒトサイトメガロウイルス試験を行った。
【0228】
ヒトサイトメガロウイルス株HCMV-AD169を選択し、ヒト胚性肺線維芽細胞(MRC-5)に感染させ、50%有効量(EC50)でガンシクロビル被験品の抗ウイルス活性を考察した。試験は4群に分けて行い、本実施例で調製した点眼のドラッグデリバリーシステム被験群、ガンシクロビル原薬被験群、陰性対照群(MRC-5細胞)、陽性対照群(MRC-5細胞にHCMV-AD169を感染させたもの)とした。2つの被験群のサンプルを培養液で500、250、125、62.5、31.25、15.63μg/mLの6つの希釈濃度に希釈し、希釈度別に4つのウェルを設定し、細胞変性効果(cytopathic effect、CPE)の指標を、0は細胞変性なし、1は≦25%の細胞変性、2は25~50%の細胞変性、3は50~75%の細胞変性、4は75~100%の細胞変性とした。Reed-Muench法を用いて、50%有効量(EC50)を以下のように計算した。EC50=10n、n=[(有効率が50%を超える希釈度の対数)+(有効率が50%を超えるパーセント-50%)/(有効率が50%を超えるパーセント-有効率が50%未満のパーセント)×希釈係数の対数]。
【0229】
試験のプロセスは以下のとおりである。MRC-5細胞を約1.5×105/mLに調整して、96ウェルプレートに加え、各ウェルに100μLの培養液を添加し、37℃、5%COのインキュベータに入れて培養し、細胞が壁に接着して単層を形成した後に上澄み液を廃棄した。そして、対照群を除く各被験群は、予備試験で得られた50%細胞毒性濃度(TC50)の100倍の濃度で、各ウェルに100μLずつ加えて2時間培養し、上澄み液を廃棄し、100μLの一連の被験サンプルを加えて引き続き培養し、各ウェルのCPEを観察し、陽性対照群の病変のCPEが90%以上に達したところで、各ウェルのCPEを記録し、Reed-Muench法で50%有効量(EC50)を計算した。
【0230】
3.実験結果:表6に示すとおりである。
【0231】
表6 試験サンプルのHCMV-AD169ウイルスに対する阻害試験結果
【0232】
結論:実施例27で調製したガンシクロビル点眼のドラッグデリバリーシステムと、ガンシクロビル原薬のインビトロとでは、ウイルス阻害効果において差はなかった。
【0233】
上記の結果はまた、本発明の眼科用製剤の担体または補助材料が、点眼投与用の薬物担体として、担持(内包)する眼疾患治療のための活性成分の薬効に影響を及ぼさないことを示している。
【0234】
実験例4 本発明の担体または補助材料で調製された眼科用製剤のインビトロ静菌実験
1.実験対象:実施例3-3で調製したモキシフロキサシン点眼のドラッグデリバリーシステム。
【0235】
1.1.実験方法:
実施例で調製したモキシフロキサシン点眼液のドラッグデリバリーシステムについてインビトロ静菌試験(MIC)を行うもので、モキシフロキサシン原薬を対照品とし、実施例6で調製されたモキシフロキサシン点眼のドラッグデリバリーシステムを被験品として、薬剤感受性プレートを作成し、薬剤感受性プレートに7~8つの倍数希釈濃度のモキシフロキサシン原薬(対照品)および被験品を含有させた。接種ループで、18h~24hインキュベートした菌株(25株)を採取し、滅菌した生理食塩水中で、0.5マクファーランド濁度に相当する菌懸濁液に調製した。これを液体薬剤感受性試験培地に加え、菌液と液体培地の割合を1:200とし、十分に均一に混合し、各ウェルに100μLの希釈後の菌液を加えた。これを35℃±2℃の環境で16h~20hインキュベートした。濁度によって各ウェル内の細菌の成長状況を判断し、低濃度から高濃度へと観察し、細菌の成長を抑制できる最低の薬物濃度が、すなわち該薬物のMICである。
【0236】
1.2.実験結果:表7に示すとおりである。
【0237】
表7 モキシフロキサシン点眼液ドラッグデリバリーシステム薬剤感受性試薬(微量液体希釈法)の試験結果
【0238】
結論:実施例3で調製したモキシフロキサシン点眼液ドラッグデリバリーシステムと対照とを比較したところ、静菌作用において有意な差はなかった。
【0239】
上記の結果は、本発明の眼科用製剤の担体または補助材料が、点眼投与用担体として、担持(内包)する眼疾患治療のための活性成分の性質および効果に影響を及ぼさないことを示している。
【0240】
以上のように、本発明は、眼科用製剤の担体または補助材料ならびにその調製方法および使用を提供する。本発明の眼科用製剤の担体または補助材料は、点眼投与用担体として、担持(内包)する眼疾患治療のための活性成分の性質および効果に影響を及ぼさず、薬物を内包して前眼部を通過し、効率良く後眼部に輸送して治療効果を発揮することができ、点眼投与によって眼底疾患を治療するという目標を達成し、眼科用製剤の投与の分野において長年にわたり早急な解決が望まれていた未解決の技術課題を解決し、極めて優れた臨床での使用価値と非常に積極的な社会的意義を有するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】