(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】医療用組織接着剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 24/00 20060101AFI20240209BHJP
A61L 24/04 20060101ALI20240209BHJP
A61L 24/08 20060101ALI20240209BHJP
A61L 24/10 20060101ALI20240209BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240209BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61L24/00 300
A61L24/04 200
A61L24/08
A61L24/10
A61K9/10
A61P7/04
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023548326
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 CN2021126764
(87)【国際公開番号】W WO2022183750
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】202110239436.6
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520088616
【氏名又は名称】ハイニン ジュリョージ バイオテクノロジー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】HAINING ZHULOJI BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】East 5F, Chuangye Building, No.2, Science and Technology Innovation Center, No.128 Shuanglian Road, Haining Economic Development Zone Haining, Zhejiang 314400 China
(74)【代理人】
【識別番号】100102923
【氏名又は名称】加藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】チュー リンショウ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ショウチェ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076BB21
4C076CC14
4C076FF11
4C081AC04
4C081BA11
4C081BA14
4C081BA16
4C081CA182
4C081CC04
4C081CD012
4C081CD112
4C081CE08
4C081DA15
4C081DC12
(57)【要約】
【課題】医療用組織接着剤とその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の医療用組織接着剤は、生体組織を接着するための医療用組織接着剤であって、活性成分と、架橋助剤と分散剤とを含み、活性成分は、組織接着性基で修飾される高分子鎖又は組織接着性基で修飾されるミクロンナノ粒子であり、架橋助剤は、組織接着性基と架橋反応を起こす化合物又は組織接着性基自体の架橋反応を誘導する化合物であり、分散剤は、水性液体に接触する際に活性成分を生体組織表面に接触させることができ、かつ、親水性又は水溶性を有する化合物である。本発明の医療用組織接着剤は、分散剤により組織表面の組織液または血液を排除し、良好な排血性能、止血性能及び組織接着性能を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織を接着するための医療用組織接着剤であって
活性成分と、架橋助剤と分散剤とを含み、
前記活性成分は、組織接着性基で修飾される高分子鎖又は組織接着性基で修飾されるミクロンナノ粒子であり、
前記架橋助剤は、前記組織接着性基と架橋反応を起こす化合物又は前記組織接着性基自体の架橋反応を誘導する化合物であり、
前記分散剤は、水性液体に接触する際に前記活性成分を前記生体組織表面に接触させることができ、かつ、親水性又は水溶性を有する化合物であることを特徴とする医療用組織接着剤。
【請求項2】
前記組織接着性基は、o-ニトロベンジルフォトトリガー基と、活性エステル基と、イソシアネート基と、イソチオシアネート基と、エポキシ基と、環状カーボネート基と、環状チオカーボネート基と、活性カルボニル基と、又は活性二重結合基とを含み、
前記o-ニトロベンジルフォトトリガー基を構造式I又はII示に示し、
【数11】
式I又は式IIにおいて、LGはハロゲン原子、O-R’、S-R’又はNH-R’であり、R’は、水素、アルキル基、エーテル基、チオエーテル基、ケトン基、エステル基、チオエステル基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基又はホスホン酸エステル基のいずれか1種であり、
R
1は水素、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、チオエステル基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
R
2、R
3、R
4、R
5のいずれか1つ又は複数が前記高分子鎖又は前記ミクロンナノ粒子と結合し、
R
2、R
3、R
4、R
5のいずれか1つ又は複数が前記高分子鎖又は前記ミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子、酸ハロゲン基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
R
2、R
3、R
4、R
5のうち、前記高分子鎖又は前記ミクロンナノ粒子に結合していない置換基はそれぞれ、水素、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基から単独で選択されたいずれか1種であり、
前記活性エステル基は、式IIIで表すブタジイミド系活性エステル基又は式IVで表すトリアゾール系活性エステル基であり、
【数12】
前記ブタジイミド系活性エステル基は、R
6を介してPで表す前記高分子鎖又は前記ミクロンナノ粒子と結合し、
式IIIにおいて、R
6は直接前記高分子鎖又は前記ミクロンナノ粒子と結合するか、末端変性エーテル結合、チオエーテル結合、ケトン結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、硫酸エステル結合、スルホン酸エステル結合、スルホン酸エステル結合、ホスホン酸結合、リン酸エステル結合、スルホン結合、スルホキシド結合、アリール結合、アルキル結合又は変性アルキル結合のいずれか1種を介して前記高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、
R
7、R
8はそれぞれ、水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミン基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基から単独で選択され、又はR
7とR
8とが環状に結合し、
前記トリアゾール系活性エステル基は、R
9を介してPで表す前記高分子鎖又は前記ミクロンナノ粒子と結合し、
式IVにおいて、R9は直接前記高分子鎖又は前記ミクロンナノ粒子と結合するか、末端変性エーテル結合、チオエーテル結合、ケトン結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、硫酸エステル結合、スルホン酸エステル結合、スルホン酸エステル結合、ホスホン酸結合、リン酸エステル結合、スルホン結合、スルホキシド結合、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種を介して前記高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、
R
10、R
11はそれぞれ、水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基から選択されたいずれか1種であり、又はR
10とR
11とが環状に結合し、
前記イソシアネート基の構造式を式Vに示し、
【数13】
式Vにおいて、R
12は前記高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、R
12は前記高分子鎖又は前記ミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン基、アシルハロゲン基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
前記イソチオシアネート基を式VIに示し、
【数14】
式VIにおいて、R
13は前記高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、R
13は前記高分子鎖又は前記ミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン基、ハロゲン化アシル基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカルボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
前記エポキシ基を式VIIに示し、
【数15】
式VIIにおいて、R
14は前記高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、R
14は前記高分子鎖又は前記ミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン基、ハロゲン化アシル基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカルボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
R
15は、水素、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基、変性アルキル基のいずれか1種であり、又はR
14と環状に結合し、
前記環状カーボネート基を式VIIIに示し、
【数16】
式VIIIにおいて、R
16は前記高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、R
16は前記高分子鎖又は前記ミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、水酸基、メルカプト基、ハロゲン基、ハロゲン化アシル基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカルボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
R
17は、水素、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、又はR16と環状に結合し、
前記環状チオカーボネート基は、式IXで表す7つの化合物のいずれか1種であり、
【数17】
前記活性カルボニル基を式Xに示し、
【数18】
式Xにおいて、R
18は前記高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、R
18は前記高分子鎖又は前記ミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン基、ハロゲン化アシル基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカルボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
R
19は、水素、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、又はR
18と環状に結合し、
前記活性二重結合基を式XIに示し、
【数19】
式XIにおいて、R
20は前記高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、R
20は前記高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、水酸基、メルカプト基、ハロゲン基、ハロゲンアシル基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
R
21は、水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、又はR
20と環状に結合する請求項1に記載の医療用組織接着剤。
【請求項3】
前記分散剤は液体分散剤であり、前記液体分散剤はポリオール系化合物又は液状ポリエチレングリコールとその誘導体の1種又は複数種の混合物とを含む請求項1に記載の医療用組織接着剤。
【請求項4】
前記ポリオール系化合物の一般式はC
nH
2n-m+2(OH)
mであり、nは2以上の正の整数であり、mはn以下の正の整数であり、
前記ポリエチレングリコール及びその誘導体は、直鎖型ポリエチレングリコール、分岐型ポリエチレングリコール、マルチアームポリエチレングリコールホモポリマー、共重合体及びその末端基変性又は塩生成物のいずれか1種又は複数種である請求項3に記載の医療用組織接着剤。
【請求項5】
前記分散剤は固体分散剤であり、前記固体分散剤は加熱条件下で前記活性成分と前記架橋助剤とを均一に分散する液体に溶解され、かつ、前記活性成分と前記架橋助剤と反応しなく、
前記分散剤は、固体ポリエチレングリコール及びその誘導体又は糖類化合物のいずれか1種又は複数種である請求項1に記載の医療用組織接着剤。
【請求項6】
前記固体ポリエチレングリコール及びその誘導体は、直鎖型ポリエチレングリコール、分岐型ポリエチレングリコール、マルチアームポリエチレングリコールホモポリマー、共重合体及びその末端基変性又は塩生成物のいずれか1種又は複数種であり、
前記糖類化合物は、グルコース、フルクトース、マルトース、キシリトール又はソルビトールのいずれか1種又は複数種である請求項5に記載の医療用組織接着剤。
【請求項7】
前記架橋助剤は、前記組織接着性基と架橋反応を起こす化合物であり、前記架橋助剤は、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基又はヒドロキシル基を含有する化合物のいずれか1種又は複数種である請求項1に記載の医療用組織接着剤。
【請求項8】
前記アミノ基含有の化合物は、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、セリシンタンパク質、シェルポリ糖及びその誘導体又は共重合体、末端アミノ基含有2アームポリエチレングリコール、末端アミノ基含有マルチアームポリエチレングリコール又は末端アミノ基含有ポリウレタンのいずれか1種又は複数種であり、
前記カルボキシル基含有の化合物は、ヒアルロン酸、カルボキシメチルキトサン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ポリグリコール酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン、ゼラチン、コラーゲン、セリシン、ポリ乳酸及びその誘導体又は共重合体のいずれか1種又は複数種であり、
前記メルカプト基含有の化合物は、ポリシステイン、ゼラチン、コラーゲン及びその誘導体のいずれか1種又は複数種であり、
前記ヒドロキシル基含有の化合物は、ヒアルロン酸、キトサン、アガロース、セルロース、デンプン、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ポリグリカンアルデヒド酸、シクロデキストリン、ポリセリン、ゼラチン、コラーゲン、セリシンタンパク質、ポリビニルアルコール及びその誘導体又は共重合体のいずれか1種又は複数種である請求項7に記載の医療用組織接着剤。
【請求項9】
前記架橋助剤は、前記組織接着性基自体の架橋反応を促進する化合物であり、
前記架橋助剤は過酸化物又は還元剤である請求項1に記載の医療用組織接着剤。
【請求項10】
前記過酸化物は、アルキル過酸化物、ジアルキル過酸化物、ジアルキル過酸化物、ペルオキシエステル、ペルオキシカーボネート又はケトン過酸化物のいずれか1種又は複数種であり、
前記還元剤は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、第一鉄塩、ナフテン酸塩、第三級アミン系化合物又はチオールのいずれか1種又は複数種である請求項9に記載の医療用組織接着剤。
【請求項11】
前記高分子鎖は天然糖類化合物又は親水性又は水溶性合成ポリマーである請求項1に記載の医療用組織接着剤。
【請求項12】
前記ミクロンナノ粒子は前記高分子鎖で形成されるナノ粒子又はマイクロ粒子であり、
前記高分子鎖は天然糖類化合物又は親水性又は水溶性合成ポリマーである請求項1に記載の医療用組織接着剤。
【請求項13】
前記天然糖類化合物は、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、デキストラン、アガロース、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、エチレングリコールキトサン、プロピレングリコールキトサン、キトサン乳酸塩、カルボキシメチルキトサン又はキトサン四級アンモニウム塩のいずれか1種である請求項11又は12に記載の医療用組織接着剤。
【請求項14】
前記親水性又は水溶性の合成ポリマーは、2アームポリエチレングリコール、マルチアームポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、樹枝状体、合成ポリペプチド、ポリウレタン、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンのいずれか1種又は複数種である請求項11又は12に記載の医療用組織接着剤。
【請求項15】
前記活性成分、前記架橋助剤及び前記分散剤の質量比は、1:(0.01~10):(0.1~30)である請求項1に記載の医療用組織接着剤。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の医療用組織接着剤を調製するための医療用組織接着剤の調製方法であって、
活性成分及び架橋助剤を粉末状に研磨し、液体分散剤を加え、均一に混合して得られるステップと、
又は活性成分及び架橋助剤を粉末状に研磨し、溶融した固体分散剤を加え、均一に分散して得られるステップと、
を含む医療用組織接着剤の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用組織接着剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用接着剤は主に組織接着剤、止血剤、組織封止剤を含み、臨床手術で広く応用されている。組織接着剤とは、組織同士又は組織と非組織の表面との接着、出血の抑制(止血剤)、及び気体と液体の漏出に対する障壁(シール剤)として機能するinsitu重合特性を有する物質を広義に定義することができる。理想的な医療用接着剤は、生体適合性、生分解性、下層組織との機械的順応性、許容できる膨潤指数、保存安定性などの要求を満たす必要がある。具体的には、安全で無毒で、滅菌と製造が容易の特徴に加え、流体の性質を持ち、傷口の部位で使いやすく、生理環境下で急速に固化し、流血と手術時間を減らすことができ、優れた組織癒着性能を有し、特定の時間内に安定を保ち、癒合の過程で元の機械的性能を維持し、分解時間が適切で、分解物が無毒であるなどの特性を有する。
【0003】
現在、市販されている医療用接着剤は一般的に活性成分と架橋剤を分注することが一般的であり、使用時にそれぞれ溶解して溶液にしてから、注射ヘッドをブレンドして活性成分と架橋剤を混合して出血部位に注射する。
【0004】
しかし、これは臨床での使用が不便で、ゲル化速度がコントロールできず、速すぎたり遅すぎたりして、組織表面の大量の血液に流されやすく、止血効果が十分ではなく、少量の血のにじむ状況の止血にしか適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願第CN201910049714.4号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、活性成分と補助架橋剤を分散剤として水と相溶しないヒマシ油などの疎水性有機溶媒を用いて分散させ、疎水性分散による血液排除作用により活性成分が組織表面に接触する確率を高め、大量の血液を有する組織表面に付着できるようにする。しかし、活性成分と補助架橋剤が大量の疎水性分散剤に包まれているため、十分な水に接触して溶解とその後の架橋が起こりにくく、ゲル化速度が遅く、ゲル化強度が悪いという問題があり、大出血に対する迅速な止血と強力な組織接着の目的も達成できない。
【0007】
本発明は医療用組織接着剤とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の医療用組織接着剤は、生体組織を接着するための医療用組織接着剤であって、活性成分と、架橋助剤と分散剤とを含み、活性成分は、組織接着性基で修飾される高分子鎖又は組織接着性基で修飾されるミクロンナノ粒子であり、架橋助剤は、組織接着性基と架橋反応を起こす化合物又は組織接着性基自体の架橋反応を誘導する化合物であり、分散剤は、水性液体に接触する際に活性成分を生体組織表面に接触させることができ、かつ、親水性又は水溶性を有する化合物である。
【0009】
本発明の医療用組織接着剤において、組織接着性基は、o-ニトロベンジルフォトトリガー基と、活性エステル基と、イソシアネート基と、イソチオシアネート基と、エポキシ基と、環状カーボネート基と、環状チオカーボネート基と、活性カルボニル基と、又は活性二重結合基とを含み、
o-ニトロベンジルフォトトリガー基を構造式I又はII示に示し、
【0010】
【0011】
式I又は式IIにおいて、LGはハロゲン原子、O-R’、S-R’又はNH-R’であり、R’は、水素、アルキル基、エーテル基、チオエーテル基、ケトン基、エステル基、チオエステル基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基又はホスホン酸エステル基のいずれか1種であり、
R1は水素、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、チオエステル基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
R2、R3、R4、R5のいずれか1つ又は複数が高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、
R2、R3、R4、R5のいずれか1つ又は複数が高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子、酸ハロゲン基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
R2、R3、R4、R5のうち、高分子鎖又はミクロンナノ粒子に結合していない置換基はそれぞれ、水素、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基から単独で選択されたいずれか1種であり、
活性エステル基は、式IIIで表すブタジイミド系活性エステル基又は式IVで表すトリアゾール系活性エステル基であり、
【0012】
【0013】
ブタジイミド系活性エステル基は、R6を介してPで表す高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、
式IIIにおいて、R6は直接高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合するか、末端変性エーテル結合、チオエーテル結合、ケトン結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、硫酸エステル結合、スルホン酸エステル結合、スルホン酸エステル結合、ホスホン酸結合、リン酸エステル結合、スルホン結合、スルホキシド結合、アリール結合、アルキル結合又は変性アルキル結合のいずれか1種を介して高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、
R7、R8はそれぞれ、水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミン基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基から単独で選択され、又はR7とR8とが環状に結合し、
トリアゾール系活性エステル基は、R9を介してPで表す高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、
式IVにおいて、R9は直接高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合するか、末端変性エーテル結合、チオエーテル結合、ケトン結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、硫酸エステル結合、スルホン酸エステル結合、スルホン酸エステル結合、ホスホン酸結合、リン酸エステル結合、スルホン結合、スルホキシド結合、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種を介して高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、
R10、R11はそれぞれ、水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基から選択されたいずれか1種であり、又はR10とR11とが環状に結合し、
イソシアネート基の構造式を式Vに示し、
【0014】
【0015】
式Vにおいて、R12は高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、R12は高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン基、アシルハロゲン基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
イソチオシアネート基を式VIに示し、
【0016】
【0017】
式VIにおいて、R13は高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、R13は高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン基、ハロゲン化アシル基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカルボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
エポキシ基を式VIIに示し、
【0018】
【0019】
式VIIにおいて、R14は高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、R14は高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン基、ハロゲン化アシル基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカルボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
R15は、水素、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基、変性アルキル基のいずれか1種であり、又はR14と環状に結合し、
環状カーボネート基を式VIIIに示し、
【0020】
【0021】
式VIIIにおいて、R16は高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、R16は高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、水酸基、メルカプト基、ハロゲン基、ハロゲン化アシル基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカルボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
R17は、水素、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、又はR16と環状に結合し、
環状チオカーボネート基は、式IXで表す7つの化合物のいずれか1種であり、
【0022】
【0023】
活性カルボニル基を式Xに示し、
【0024】
【0025】
式Xにおいて、R18は高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、R18は高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン基、ハロゲン化アシル基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカルボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
R19は、水素、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、又はR18と環状に結合し、
活性二重結合基を式XIに示し、
【0026】
【0027】
式XIにおいて、R20は高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合し、R20は高分子鎖又はミクロンナノ粒子と結合する前では末端アミノ基、水酸基、メルカプト基、ハロゲン基、ハロゲンアシル基、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、活性エステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、活性カルボニル基又は活性二重結合基変性アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、
R21は、水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、カーボネート基、チオカーボネート基、環状カーボネート基、環状チオカーボネート基、アミド基、硫酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スルホン基、スルホキシレン基、アリール基、アルキル基又は変性アルキル基のいずれか1種であり、又はR20と環状に結合することが好ましい。
【0028】
本発明の医療用組織接着剤において、分散剤は液体分散剤であり、液体分散剤はポリオール系化合物又は液状ポリエチレングリコールとその誘導体の1種又は複数種の混合物とを含むことが好ましい。
【0029】
本発明の医療用組織接着剤において、高分子鎖は天然糖類化合物又は親水性又は水溶性合成ポリマーであり、ミクロンナノ粒子は高分子鎖で形成されるナノ粒子又はマイクロ粒子であり、高分子鎖は天然糖類化合物又は親水性又は水溶性合成ポリマーであることが好ましい。
【0030】
本発明の医療用組織接着剤において、天然糖類化合物は、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、デキストラン、アガロース、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、エチレングリコールキトサン、プロピレングリコールキトサン、キトサン乳酸塩、カルボキシメチルキトサン又はキトサン四級アンモニウム塩のいずれか1種であることが好ましい。
【0031】
本発明の医療用組織接着剤において、親水性又は水溶性の合成ポリマーは、2アームポリエチレングリコール、マルチアームポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、樹枝状体、合成ポリペプチド、ポリウレタン、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンのいずれか1種又は複数種であることが好ましい。
【0032】
本発明の医療用組織接着剤において、架橋助剤は、アミノ基含有化合物、アミノ基含有化合物からなるナノ粒子、又はアミノ基含有化合物からなるミクロン粒子のいずれか1種または複数種であることが好ましい。
【0033】
本発明の医療用組織接着剤において、アミノ基を含む化合物は親水性または水溶性の動植物タンパク質、コラーゲン、血清タンパク質、アクチン、エラスチン、タンパク質分解物、ポリエチレンイミン、枝体、合成ポリペプチド、ポリリシン、アルギニン、ヒスチジン、アミノ末端ポリエチレングリコール、アミノ末端ポリエチレングリコール又はアミノ末端ポリウレタンのいずれか1種または複数種であることが好ましい。
【0034】
本発明の医療用組織接着剤において、ポリオール系化合物の一般式はCnH2n-m+2(OH)mであり、nは2以上の正の整数であり、mはn以下の正の整数であり、ポリエチレングリコール及びその誘導体は、直鎖型ポリエチレングリコール、分岐型ポリエチレングリコール、マルチアームポリエチレングリコールホモポリマー、共重合体及びその末端基変性又は塩生成物のいずれか1種又は複数種であることが好ましい。
【0035】
本発明の医療用組織接着剤において、架橋助剤は、アミノ基含有化合物、アミノ基含有化合物からなるナノ粒子、又はアミノ基含有化合物からなるミクロン粒子のいずれか1種または複数種であることが好ましい。
【0036】
本発明の医療用組織接着剤において、分散剤は固体分散剤であり、固体分散剤は加熱条件下で活性成分と架橋助剤とを均一に分散する液体に溶解され、かつ、活性成分と架橋助剤と反応しなく、分散剤は、固体ポリエチレングリコール及びその誘導体又は糖類化合物のいずれか1種又は複数種であることが好ましい。
【0037】
本発明の医療用組織接着剤において、ポリエチレングリコール及びその誘導体は、直鎖型ポリエチレングリコール、分岐型ポリエチレングリコール、マルチアームポリエチレングリコールホモポリマー、共重合体及びその末端基変性又は塩生成物のいずれか1種又は複数種であることが好ましい。
【0038】
本発明の医療用組織接着剤において、架橋助剤は、組織接着性基と架橋反応を起こす化合物であり、架橋助剤は、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基又はヒドロキシル基を含有する化合物のいずれか1種又は複数種であることが好ましい。
【0039】
本発明の医療用組織接着剤において、アミノ基含有の化合物は、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、セリシンタンパク質、シェルポリ糖及びその誘導体又は共重合体、末端アミノ基含有2アームポリエチレングリコール、末端アミノ基含有マルチアームポリエチレングリコール又は末端アミノ基含有ポリウレタンのいずれか1種又は複数種であり、カルボキシル基含有の化合物は、ヒアルロン酸、カルボキシメチルキトサン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ポリグリコール酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン、ゼラチン、コラーゲン、セリシン、ポリ乳酸及びその誘導体又は共重合体のいずれか1種又は複数種であり、メルカプト基含有の化合物は、ポリシステイン、ゼラチン、コラーゲン及びその誘導体のいずれか1種又は複数種であり、ヒドロキシル基含有の化合物は、ヒアルロン酸、キトサン、アガロース、セルロース、デンプン、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ポリグリカンアルデヒド酸、シクロデキストリン、ポリセリン、ゼラチン、コラーゲン、セリシンタンパク質、ポリビニルアルコール及びその誘導体又は共重合体のいずれか1種又は複数種であることが好ましい。
【0040】
本発明の医療用組織接着剤において、架橋助剤は、組織接着性基自体の架橋反応を促進する化合物であり、架橋助剤は過酸化物又は還元剤であることが好ましい。
【0041】
本発明の医療用組織接着剤において、過酸化物は、アルキル過酸化物(ROOH)、ジアルキル過酸化物(ROOR’)、ジアルキル過酸化物(RCOOOOCR’)、ペルオキシエステル(RCOOOR’)、ペルオキシカーボネート(ROCOOOOCOR’)又はケトン過酸化物[(R2C(OOH)2]のいずれか1種又は複数種であり、ベンゾイルペルオキシド、ターシャリーブチルの過酸化、シクロヘキサノンの過酸化、メチルエチルケトンの過酸化、過酸化水素、過硫酸塩、過硫酸水素塩、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムであることが好ましい。
【0042】
本発明の医療用組織接着剤において、還元剤は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、第一鉄塩、ナフテン酸塩、第三級アミン系化合物又はチオールのいずれか1種又は複数種であり、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ナフテン酸コバルト、N、N-ジメチルアニリン、テトラエチレンジアミンであることが好ましい。
【0043】
本発明の医療用組織接着剤において、活性成分、架橋助剤及び分散剤の質量比は、1:(0.01~10):(0.1~30)であることが好ましい。
【0044】
本発明の医療用組織接着剤の調製方法は、医療用組織接着剤を調製するための医療用組織接着剤の調製方法であって、活性成分及び架橋助剤を粉末状に研磨し、液体分散剤を加え、均一に混合して得られるステップと、又は活性成分及び架橋助剤を粉末状に研磨し、溶融した固体分散剤を加え、均一に分散して得られるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0045】
本発明の医療用組織接着剤は、本医療用組織接着剤が組織液又は血液を含む湿った組織表面に接触した場合、医療用組織接着剤中の分散剤は吸水溶解し、溶解した分散剤は組織表面の組織液または血液を排除し、活性成分と補助架橋剤が十分に組織表面に接触できるようにする。その後、活性成分中の接着性を有する分子断片は速やかに組織表面のアミノ基、カルボキシル基または水酸基と化学結合を起こし、強い組織接着力を形成する。同時に、医療用組織接着剤は組織液と血液中の水をさらに吸収し、吸収された水は分散剤と徐々に混合し、活性成分と補助架橋剤に徐々に浸潤し、活性成分と補助架橋剤を十分に溶解させ、これにより、活性成分中の粘着性を持つ分子断片と補助架橋剤上のアミノ基が反応したり、粘着性を刺激する分子自身が架橋したりして、医療用組織接着剤全体がゲル化して硬化し、最終的に創面閉鎖の効果が得られる。
【0046】
本発明の医療用組織接着剤とその製造方法は、接着性を有する分子断片の活性成分と、架橋助剤と分散剤とを含むため、本発明が提供する医療用組織接着剤は、分散剤を用いて組織表面の組織液又は血液を排除するか、活性成分中の接着性を有する分子断片を組織表面のアミノ基と迅速に化学結合させて強い組織接着力を形成するだけでなく、活性成分中の接着性を有する分子断片と架橋助剤上のアミノ基との反応を起こさせ、医療用組織接着剤全体を急速にゲル化して硬化させることができ、良好な排血性能、止血性能、組織接着性能及び創面閉鎖性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は実施例1の医療用組織接着剤の写真である。
【
図2】
図2は実施例2の医療用組織接着剤の排血性能試験における使用効果を示す写真である。
【
図3】
図3は実施例2の医療用組織接着剤の吸水ゲル化性能試験における使用効果を示す写真である。
【
図4】
図4は実施例7の医療用組織接着剤の吸水ゲル化性能試験における使用効果を示す写真である。
【
図5】
図5は試験例4におけるウサギ肝臓出血モデルを示す写真である。
【
図6】
図6は試験例4における医療用組織接着剤の使用効果を示す写真である。
【
図7】
図7は試験例2におけるウサギ腹大動脈出血モデルを示す写真である。
【
図8】
図8は試験例2における医療用組織接着剤の使用効果を示す写真である。
【
図9】
図9は試験例7における医療用組織接着剤の使用効果を示す写真である。
【
図10】
図10は試験例6における医療用組織接着剤の使用効果を示す写真である。
【
図11】
図11は本発明実施例8の医療用接着剤の写真である。
【
図12】
図12は本発明実施例9の医療用接着剤の写真である。
【
図13】
図13は本発明実施例10の医療用組織接着剤の写真である。
【
図14】
図14は本発明実施例11の医療用組織接着剤の吸水ゲル化性能試験における使用効果を示す写真である。
【
図15】
図15は本発明実施例8の医療用組織接着剤の吸水ゲル化性能試験における使用効果を示す別の写真である。
【
図16】
図16は本発明の試験例4の医療用組織接着剤の吸水ゲル化性能試験における使用効果を示す写真である。
【
図17】
図17は本発明の試験例4の医療用組織接着剤の吸水ゲル化性能と膨潤性能試験における使用効果を示す写真である。
【
図18】
図18は本発明の試験例5の医療用組織接着剤の吸水ゲル化効果を示す写真である。
【
図19】
図19は本発明の試験例6の医療用組織接着剤の使用初期効果を示す写真である。
【
図20】
図20は本発明の試験例6で医療用組織接着剤を使用して接着した後の効果を示す写真である。
【
図21】
図21は本発明の試験例7におけるウサギ腹大動脈出血モデルを示す写真である。
【
図22】
図22は本発明の試験例7におけるウサギ腹大動脈止血後の効果を示す写真である。
【
図23】
図23は本発明の試験例7におけるウサギ大腿動脈出血モデルを示す写真である。
【
図24】
図24は本発明の試験例7における一般医療用ガーゼを用いた比較効果を示す写真である。
【
図25】
図25は本発明の試験例7における一般医療用ガーゼ使用後の効果を示す写真である。
【
図26】
図26は本発明の試験例7における医療用組織接着剤の使用効果を示す写真である。
【
図27】
図27は本発明の試験例7における医療用組織接着剤の使用効果を示す写真である、及び
【
図28】
図28は本発明の試験例8における医療用組織接着剤の接着強度の試験効果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下は、液体分散剤又は固体分散剤で調製された医療用組織接着剤について、それぞれ詳細に説明する。
【0049】
本発明を実現する技術的手段、創作特徴、目的と効能を簡単に理解できるように、以下に実施例及び図面を併せて本発明の医療用組織接着剤及びその製造方法について詳細に説明する。
【0050】
以下の実施例では、説明を簡略化するために、Nーヒドロキシコハク酸イミドはその略語「NHS」、oーニトロベンジル系フォトトリガーはその略語「NB」、1ー(3―ジメチルアミノプロピル)ー3ーエチルカルボジイミド塩酸塩はその略語「EDC」、4ー(4,6ージメトキシトリアジンー2ーイル)ー4ーメチルモルホリン塩酸塩はその略語「DMTMM」を使用する。
【0051】
以下の実施例で用いた一部原料の分子量分布は以下の通りであり、
ポリグルタミン酸:分子量70~100万、
ポリエチレンイミン:分子量7万、
ヒアルロン酸:分子量100万、
ポリリジン:分子量1500、
グルカン:分子量10万、
末端カルボキシル基含有4アームポリエチレングリコール:分子量2000、
末端アミノ含有4アームポリエチレングリコール:分子量2000。
【0052】
下記実施例1~実施例7、試験例1~試験例3は、液体分散剤で調製された医療用組織接着剤の関連実施例と試験例である。
【実施例1】
【0053】
本実施例で提供される医療用組織接着剤は質量比で、グラフト置換率が10%のNBで修飾されたポリグルタミン酸1部、ポリエチレンイミン0.01部および1,2ープロパンジオール1部から調製される。
そのうち、NBで修飾されたポリグルタミン酸(PGNAB)の調製方法は以下の通りであり、アミノ化NB:ポリグルタミン酸:EDC:NHSを質量比1:15:1:1で水に溶解し、pHを5.5に調整し、35℃まで加熱し、3時間攪拌して反応させ、透析して凍結乾燥させ、グラフト置換率が10%のNBで修飾されたポリグルタミン酸を得る。
アミノ化NB構造式は以下の通りであり、
【0054】
【0055】
本実施例が提供する医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、グラフト置換率が10%のNBで修飾されたポリグルタミン酸と、ポリエチレンイミンと1,2ープロパンジオールとを質量比1:0.01:1で均一に混合して得られる、最終製品を
図1に示す。
【実施例2】
【0056】
本実施例が提供する医療用組織接着剤は質量比で、グラフト置換率が10%のNHSで修飾されたヒアルロン酸(HANHS)1部、ポリウレタン0.5部及びグリセリン2部から調製される。
そのうち、NHSで修飾されたヒアルロン酸(HANHS)の調製方法は以下の通りであり、ヒアルロン酸:EDC:NHSを質量比10:1:1で水に溶解し、pHを5.5に調整し、35℃まで加熱し、1時間攪拌して反応させ、透析して凍結乾燥させ、グラフト置換率が10%のNHSで修飾されたヒアルロン酸を得る。
本実施例が提供する医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、グラフト置換率が10%のNHSで修飾されたヒアルロン酸と、ポリウレタンと、グリセリンとを質量比1:0.5:2で均一に混合して得られる。
【実施例3】
【0057】
本実施例が提供する医療用組織接着剤は質量比で、アルデヒド基グラフト置換率が30%のアルデヒド基で修飾されたデキストラン(ODEX)1部、ゼラチン0.2部及びエチレングリコール1.5部から調製される。
そのうち、アルデヒド基で修飾されたデキストランの調製方法は以下の通りであり、デキストラン:過ヨウ素酸ナトリウムをモル比1:1で水に溶解し、pHを4.5に調節し、1.5時間攪拌反応させ、透析して凍結乾燥させ、アルデヒド基グラフト置換率が30%のアルデヒド基で修飾されたデキストランを得る。
本実施例が提供する医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、アルデヒド基グラフト置換率が30%のアルデヒド基で修飾されたデキストランと、ゼラチンとエチレングリコールとを質量比1:0.1:30で均一に混合して得られる。
【実施例4】
【0058】
本実施例が提供する医療用組織接着剤は質量比で、グラフト置換率が100%の活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-NHS)1部、末端アミノ含有4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-NH2)0.2部及びグリセリン1.5部から調製される。
そのうち、末端アミノ含有4アームポリエチレングリコールの調製方法は以下の通りであり、末端カルボキシル含有4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-COOH):EDC:NHSを質量比1:0.1:0.1で水に溶解し、pHを5.5に調整し、35℃まで加熱し、0.5時間攪拌して反応させ、透析して凍結乾燥させ、グラフト置換率が100%の活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-NHS)を得る。
本実施例が提供する医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、グラフト置換率が10%のNHSで修飾されたヒアルロン酸と、ポリウレタンとグリセリンとを質量比1:0.5:2で均一に混合して得られる。
【実施例5】
【0059】
本実施例が提供する医療用組織接着剤は質量比で、グラフト置換率が100%の組織接着性基で修飾されたミクロン粒子(mHA-NHS、ミクロン粒子直径5μm)1部、キトサン0.5部及びグリセリン2部から調製される。
そのうち、組織接着性基で修飾されたミクロン粒子の調製方法は以下の通りであり、ヒアルロン酸:EDC:NHSを質量比1:0.1:0.1で水に溶解し、pHを5.5に調整し、35℃まで加熱し、0.5時間して攪拌反応させ、3回遠心洗浄した後、グラフト置換率が100%の組織接着性基で修飾されたミクロン粒子(mHA-NHS)を得る。
本実施例が提供する医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、グラフト置換率が100%の組織接着性基で修飾されたミクロン粒子と、キトサンとグリセリンとを質量比1:0.5:2で均一に混合して得られる。
【実施例6】
【0060】
本実施例が提供する医療用組織接着剤は質量比で、グラフト置換率が4%の組織接着性基で修飾された高分子主鎖がNBで修飾されたヒアルロン酸(HANB)1部、キトサンナノ粒子0.5部(nCS、ナノ粒子直径50nm)及びグリセリン1.5部から調製される。
そのうち、組織接着性基で修飾された高分子主鎖がNBで修飾されたヒアルロン酸の調製方法は以下の通りであり、NB:ヒアルロン酸:EDC:NHSを質量比1:20:1:1で水に溶解し、pHを5.5に調整し、35℃まで加熱し、2時間攪拌して反応させ、透析して凍結乾燥させ、グラフト置換率が4%の組織接着性基で修飾された高分子主鎖がNBで修飾されたヒアルロン酸を得る。
本実施例が提供する医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、グラフト置換率が4%の組織接着性基で修飾された高分子主鎖がNBで修飾されたヒアルロン酸と、キトサンナノ粒子とグリセリンとを質量比1:0.5:1.5で均一に混合して得られる。
【実施例7】
【0061】
本実施例が提供する医療用組織接着剤は質量比で、グラフト置換率が10%のNHSで修飾されたヒアルロン酸(HANHS)1部、ポリウレタン0.5部及びシリコーンオイル2部から調製される。
そのうち、NHSで修飾されたヒアルロン酸(HANHS)の調製方法は、実施例2と同じである。
本実施例が提供する医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、グラフト置換率が10%のNHSで修飾されたヒアルロン酸と、ポリウレタン0.5部とシリコーンオイルとを質量比1:0.5:2で均一に混合して得られる。
【0062】
「試験例1」
排血性能及び吸水ゲル化性能試験
排血性能の試験方法は以下の通りであり、ガラススライドに2mlの血液を滴下し、そして、血液に実施例2又は実施例7の医療用組織接着剤を2ml滴下する。
排血性能の試験結果を
図2に示す。
図2に示すように、実施例2の医療用組織接着剤は親水性分散剤のグリセリンを使用しているため、迅速に血液を排出し、スライドの底部に接触し、その後血液中の水を吸収してゲルに硬化することができる。これにより、この組織接着剤は優れた排血性能と吸水ゲル化性能を備えていることを証明した。実施例7により提供される医療用組織接着剤は、疎水性分散剤のシリコーンオイルを使用しているため、迅速に血液を排出し、スライドの底部にも接触することができる。
吸水ゲル化性能の試験方法:シャーレに脱イオン水5mlを入れ、脱イオン水に実施例2又は実施例7の医療用組織接着剤を0.2ml滴下する。
吸水ゲル化性能の試験結果を写真3-4に示す。
図3に示すように、実施例2の医療用組織接着剤に使用される親水性分散剤であるグリセリンは水と相互に溶解し、急速に水を吸収し、活性成分と架橋助剤を溶解してゲル化することができるため、その色は、外から内へ、乳白色から徐々に無色透明になり、2分後に完全に無色透明になり、完全なゲルを形成する。
しかしながら、
図4に示すように、実施例7の医療用組織接着剤は、水と相互に溶解できない疎水性分散剤シリコーンオイルを使用しているため、活性成分と架橋助剤が大量のシリコーンオイルに包まれ、水は活性成分と架橋助剤に接触して溶解しにくく、浸漬時間が増加するにつれて、乳化状態の接着剤は外から内へ、徐々に水に分散されて乳白色の粒子状になり、最終的には完全なゲルの塊を形成することができない。
【0063】
「試験例2」
組織接着性能、創面閉鎖性能及び止血性能試験
試験方法1:まず、
図4に示すように、直径2mmの針を用いてウサギの肝臓に肝臓損傷モデルを作製し、血液が大量に流出することが観察される、。次に、ガーゼに実施例4の医療用組織接着剤を塗り付けて損傷部に10秒間覆い、ガーゼを除去する。
試験結果を
図5に示す。
図5に示すように、医療用組織接着剤は肝臓表面に強く接着され、血液中の水を吸収してゲル化し、血液が流出しないようになった。これにより、この組織接着剤は優れた組織接着性能、創面閉鎖性能、止血性能を持っていることを証明した。
試験方法2:
図7に示すように、直径2 mmの針を用いてウサギ腹大動脈に腹大動脈損傷の大量出血モデルを作製し、血液が大量噴出することが観察される。次に、ガーゼに実施例2又は実施例7の医療用組織接着剤を塗り付けて損傷部に10秒間覆い、ガーゼを除去する。
試験結果を
図8-9に示す。
図8に示すように、実施例2の医療用組織接着剤は腹大動脈の表面に強く接着され、血液中の水を吸収してゲル化し、血液が流出しないようになり、腹部大動脈と損傷部に付着した接着剤がはっきりと見えることができる。これにより、この組織接着剤は優れた組織接着性能、創面閉鎖性能、止血性能を持っていることを証明した。
しかし、
図9に示すように、実施例7により提供される医療用組織接着剤は腹大動脈損傷部の大量出血を止めることができず、依然として大量の血液が急速に噴出して腹腔を浸漬している。これにより、疎水性分散剤を用いた医療用組織接着剤は有効な創面閉鎖性能と止血性能がないことを証明した。
【0064】
「試験例3」
接着速度試験
試験方法:実施例1~実施例7の医療用組織接着剤を2枚の豚皮の間に塗布し、塗布量は0.1 mL/cm
2であり、その後、組織接着剤を塗布した豚皮を水に浸漬し、接着時間を記録する。
試験結果を表1と
図10に示す。
【0065】
【0066】
図10に示すように、実施例1~実施例6の組織接着剤はいずれも60s以内でゲル化して硬化し、2枚の豚皮を接着することができ、接着速度が非常に速く、様々な医療現場に広く適用できる。
【0067】
下記実施例8~実施例17、試験例4~試験例8は、固体分散剤を用いて調製された医療用組織接着剤の関連実施例と試験例である。
【実施例8】
【0068】
本実施例が提供する医療用組織接着剤は質量比で、グラフト置換率が100%の活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-NHS)1部、ポリエチレンイミン(PEI)0.12部及びポリエチレングリコール1000(PEGー1000)3部から調製される。
そのうち、活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-NHS)の調製方法は以下の通りであり、末端カルボキシル基含有4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-COOH):EDC:NHSを質量比1:0.1:0.1で水に溶解し、pHを5.5に調整し、35℃まで加熱し、0.5時間攪拌して反応させ、透析して凍結乾燥させ、グラフト置換率が100%の活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコールを得る。
本実施例が提供する医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、グラフト置換率が100%の活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコールと、末端アミノ基含有4アームポリエチレングリコールとポリエチレングリコール1000とを質量比1:0.12:3で50℃乾燥加熱条件下でポリエチレングリコール1000を溶解した後、活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコールと末端アミノ基含有4アームポリエチレングリコールを均一に混合して型に入れ、冷却して得られる。最終製品を
図11に示す。
【実施例9】
【0069】
本実施例が提供する医療用組織接着剤は質量比で、グラフト置換率が100%の組織接着性基で修飾されたミクロン粒子(mHA-NHS、ミクロン粒子直径5μm)1部、キトサン0.5部及びポリエチレングリコール1000 2部から調製される。
そのうち、組織接着性基で修飾されたミクロン粒子の調製方法は以下の通りであり、ヒアルロン酸:EDC:NHSを質量比1:0.1:0.1で水に溶解し、pHを5.5に調整し、35℃まで加熱し、0.5時間攪拌して反応させ、3回遠心洗浄した後、グラフト置換率が100%の組織接着性基で修飾されたミクロン粒子(mHA-NHS)を得る。
本実施例が提供する医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、ポリエチレングリコール1000を50℃で溶解した後、グラフト置換率が100%の組織接着性基で修飾されたミクロン粒子と、キトサンとを質量比2:1:0.5で均一に混合して得られる、最終製品を
図12に示す。
【実施例10】
【0070】
本実施例が提供する医療用組織接着剤はモル比で、末端アクリレート含有4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-AA)1部、過硫酸アンモニウム1部、塩化第一鉄1部及びポリエチレングリコール1000(PEG-1000)2部から調製される。
本実施例が提供する医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、末端アクリレート含有4アームポリエチレングリコール、過硫酸アンモニウム、塩化第一鉄及びポリエチレングリコール1000をモル比1:1:1:2で50℃乾燥加熱条件下で均一に混合して型に入れ、冷却して得られる、最終製品を
図13に示す。
【実施例11】
【0071】
本実施例が提供する医療用組織接着剤は質量比で、グラフト置換率が10%のメタクリル酸無水物で修飾されたポリグルタミン酸(PGAMA)1部、過ヨウ素酸ナトリウム0.1部、ビタミンC 0.1部及びポリエチレングリコール1500(PEG-1500)3部から調製される。
そのうち、メタクリル酸無水物で修飾されたポリグルタミン酸(PGAMA)の調製方法は以下の通りであり、質量比でポリグルタミン酸1部を脱イオン水に完全溶解し、ポリグルタミン酸カルボキシル基含有量:メタクリル酸無水物モル比は10:1であるメタクリル酸無水物をポリグルタミン酸溶液に加え、pHを8-9に調整し、4時間攪拌して反応させ、透析して凍結乾燥させ、グラフト置換率が10%のメタクリル酸無水物で修飾されたポリグルタミン酸を得る。
本実施例が提供する医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、グラフト置換率が10%のメタクリル酸無水物で修飾されたポリグルタミン酸と、過ヨウ素酸ナトリウムと、ビタミンCとポリエチレングリコール1500とを質量比1:0.1:0.1:3で50℃乾燥加熱条件下で均一に混合し、冷却後に試料を粉末に研磨して得られる、最終製品を
図14に示す。
【実施例12】
【0072】
本実施例が提供する医療用組織接着剤は質量比で、グラフト置換率が100%の活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-NHS)、末端アミノ基含有4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-NH2)0.2部及びポリエチレングリコール1000(PEG-1000)1.5部から調製される。
そのうち、末端活性エステル含有4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-NHS)の調製方法は以下の通りであり、末端カルボキシル基含有4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-COOH):EDC:NHSを質量比1:0.1:0.1で水に溶解し、pHを5.5に調整し、35℃まで加熱し、0.5時間攪拌して反応させ、透析して凍結乾燥させ、グラフト置換率が100%の活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコールを得る。
本実施例が提供する医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、グラフト置換率が100%である活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコールと、末端アミノ基含有4アームポリエチレングリコールとポリエチレングリコール1000とを質量比1:0.2:1.5で50℃乾燥加熱条件下で均一に混合して型に入れ、冷却して得られる。
【実施例13】
【0073】
本実施例が提供される医療用組織接着剤はモル比で、過ヨウ素酸ナトリウム1部、ビタミンC 1部及び末端アクリレート含有4アームポリエチレングリコール1000(4a-PEG-AA-1000)2部から調製される。
本実施例が提供される医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、過ヨウ素酸ナトリウム、ビタミンC及び末端アクリレート含有4アームポリエチレングリコール1000を質量比1:1:2で50℃乾燥加熱条件下で均一に混合して型に入れ、冷却して得られる。
【実施例14】
【0074】
本実施例が提供する医療用組織接着剤は質量比で、グラフト置換率が100%の活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-NHS)1部、ポリエチレンイミン(PEI)0.12部及びマルトース2部から調製される。
そのうち、活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコールの調製方法は以下の通りであり、末端カルボキシル基含有4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-COOH):EDC:NHSを質量比1:0.1:0.1で水に溶解し、pHを5.5に調整し、35℃まで加熱し、0.5時間攪拌して反応させ、透析して凍結乾燥させ、グラフト置換率が100%の活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコールを得る。
本実施例が提供される医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、マルトースを150℃の乾燥加熱条件下で溶解し、100%の活性エステルで修飾された4アームポリエチレングリコール(4a-PEG-NHS)とポリエチレンイミン(PEI)とを質量比2:1:0.12で均一に混合して型に入れ、冷却して得られる。
【実施例15】
【0075】
本実施例が提供される医療用組織接着剤は比較例として、モル比で過ヨウ素酸ナトリウム1部及び末端アクリレート含有4アームポリエチレングリコール1000(4a-PEG-AA-1000)1部から調製される。
本実施例が提供される医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、過ヨウ素酸ナトリウムと末端アクリル酸エステル含有4アームポリエチレングリコール1000とを質量比1:1で50℃乾燥加熱条件下で均一に混合して型に入れ、冷却して得られる。
【実施例16】
【0076】
本実施例が提供される医療用組織接着剤はモル比で、過ヨウ素酸ナトリウム1部、ビタミンC 0.5部及び末端アクリレート含有4アームポリエチレングリコール1000(4a-PEG-AA-1000)1部から調製される。
本実施例が提供される医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、過ヨウ素酸ナトリウムと、ビタミンCと末端アクリレート含有4アームポリエチレングリコール1000とを質量比1:0.5:1で50℃乾燥加熱条件下で均一に混合して型に入れ、冷却して得られる。
【0077】
「試験例3」
本実施例が提供される医療用組織接着剤はモル比で、ビタミンC 1部及び末端アクリレート含有4アームポリエチレングリコール1000(4a-PEG-AA-1000)1部から調製される。
本実施例が提供される医療用組織接着剤の調製方法は以下の通りであり、ビタミンCと末端アクリレート含有4アームポリエチレングリコール1000とを質量比1: 1で50℃乾燥加熱条件下で均一に混合して型に入れ、冷却して得られる。
【0078】
「試験例4」
吸水ゲル化性能試験
吸水ゲル化性能試験方法1:シャーレに脱イオン水2mlを入れ、脱イオン水に10mm*1mm円柱状の実施例8の医療用組織接着剤を置く。
吸水ゲル化性能の試験結果を
図15と
図16に示す。
図15に示すように、実施例8の医療用組織接着剤は、固体分散剤であるポリエチレングリコールを使用しているため、重力作用により水などの液体を排出し、シャーレの底部に接触し、水を吸収してゲル化することができる。これにより、この組織接着剤は優れた排水性能と吸水ゲル化性能を持っていることを証明した。
図16に示すように、実施例8により提供された医療用組織接着剤に使用された親水性分散剤ポリエチレングリコールは水に溶けることができ、分散剤を溶解した後、急速に活性成分と架橋助剤を溶解してゲル化し、その色が外から内へ、乳白色から徐々に無色透明になり、5分後に完全に無色透明になり、完全なゲルを形成する。
吸水ゲル化性能の試験方法2:シャーレに脱イオン水2mlを入れ、脱イオン水に実施例9から提供される直径10mmの円柱状医療用組織接着剤を置く。
吸水ゲル化性能の試験結果を
図17に示す。
図17に示すように、実施例9から提供された医療用接着剤は、親水性固体分散剤であるポリエチレングリコールを使用しているため、水で溶解するとき、分散されたミクロン粒子が架橋助剤と反応してゲルを形成することができ、接着剤が白色から無色透明になり、ミクロン粒子同士が接続して完全なゲルを形成し、ほとんど膨潤しない。
【0079】
「試験例5」
吸水ゲル化性能試験
吸水性能試験方法:遠心管に1mLの脱イオン水を入れ、4アームポリエチレングリコール1000の質量比100mgの実施例13、実施例15、実施例16、実施例17から提供される医療用組織接着剤を加える。
吸水ゲル化試験結果を
図18に示す。
図18に示すように、実施例13の医療用組織接着剤は、酸化還元性質を有する架橋助剤と固体分散剤の活性成分とする4アームポリエチレングリコールとを含むため、完全なヒドロゲルを形成することができる。実施例16は、架橋助剤の含有量が最適ではないため、部分ヒドロゲルしか形成できなかった。実施例15及び実施例17は、単一の酸化剤又は還元剤成分のみを含有して架橋を促進することができないため、水中で分散してゲル化できなかった。これにより、活性成分に対する架橋助剤の役割が必要であることを証明した。
【0080】
「試験例6」
血液粘着性能試験
試験方法:まず、新鮮な組織を血液に浸漬し、
図19に示すように実施例14の医療用組織接着剤200mgを採取して血液付き組織の表面に15s押し当て、血液に3分間静置する。
試験結果を
図20に示す。
図20に示すように、実施例14の医療用組織接着剤は、血液付きの組織表面に強く粘着してゲルを形成することができ、組織上の接着剤がはっきりと見えられる。これにより、血液における当該組織接着剤の粘着性能を証明した。
【0081】
「試験例7」
組織接着性能、創面閉鎖性能及び止血性能試験
試験方法1:
図21に示すように、直径2 mmの針を用いてウサギ腹大動脈に腹大動脈損傷の大量出血モデルを作製し、血液の大量噴出が観察できる。その後、実施例8の医療用組織接着剤を損傷部に塗り付けて15秒間押し当てて放す。
試験結果を
図22に示す。
図22に示すように、実施例8の医療用組織接着剤は腹部大動脈の表面に強く粘着し、血液中の水を吸収してゲル化すると同時に血液が流出しなくなり、腹大動脈と損傷部に粘着する接着剤がはっきりと見えられる。これにより、この組織接着剤は優れた組織接着性能、創面閉鎖性能と止血性能を持っていることを証明した。
試験方法2:
図23に示すように、ウサギ大腿動脈をメスで直接切断し、大量の血液が噴出する。その後、すぐに一般医療用ガーゼで傷口の出血部に押し当てたところ、ガーゼが急速に血液に赤く染まり、3分押した後も、
図24に示すように大量の血液がガーゼを通して滲出している。ガーゼを除去した後も、
図25に示すように、大量の血液が噴き出しており、出血は減少していない。
試験結果を
図26と
図27に示す。
図26に示すように、上記の同じように大腿動脈が切断された大出血の状況下で、実施例10の医療用組織接着剤をガーゼ上に広げ、損傷部に10秒間押し当てて放したところ、ガーゼが血で赤く染まり続けていない、出血を止めていた。引き続き3分間観察して、ガーゼが血で赤く染まり続けていない、血液の滲出が見られない。これにより、実施例10の医療用組織接着剤が優れた組織接着性能、創面閉鎖性能及び止血性能を持っていることを証明した。
図27に示すように、ガーゼを除去した後、傷口部に接着剤で覆われて閉鎖され、血液の流出が見られず、この医療用組織接着剤は強い創面閉鎖と止血能力があることを証明した。
【0082】
「試験例8」
接着強度試験
試験方法:実施例12の医療用組織接着剤を2枚の豚皮の間に挟み、使用量は0.1 cm*0.1 cm*0.01 cm*、その後、組織接着剤を塗布した豚皮を水に浸漬し、5min後、2枚の豚皮に対して万能試験機で引張試験を行う。
試験結果を
図28に示す。
図28に示すように、実施例12の医療用組織接着剤は2枚の豚皮を強く接着することができ、引っ張った後も接着剤が2枚の豚皮の間に残し、実施例5の医療用組織接着剤が強い接着強度を持っていることを証明した。
【0083】
「実施例の作用と効果」
実施例1~施例6に記載の医療用組織接着剤及びその製造方法は、液体分散剤を使用しており、親水性液体分散剤は血液に接触する瞬間に血液を押し分けるので、活性成分上の接着性基が組織表面のアミノ基と十分に接触して反応することができ、血液と組織液におけるタンパク質上のアミノ基との反応による接着性への影響を受けず、その後、親水性液体分散剤は血液と組織液における水を吸収して急速に相互溶解し、さらに活性成分を溶解し、活性成分における粘着性を有する分子断片と架橋助剤上のアミノ基との反応をトリガーし、医療用組織粘着剤全体を急速にゲル化して硬化させることができる。したがって、実施例1~実施例6で調製された医療用組織接着剤は、良好な排血性能を有すると同時に迅速に架橋してゲル化することができ、迅速に組織接着と創面閉鎖を実現することができる。
実施例8~実施例17に記載の医療用組織接着剤及びその製造方法は、固体親水性分散剤を使用しており、固体分散剤は血液に接触する瞬間に、重力と密度の作用下で最初に組織の表面に接触し、水を吸収して溶解することにより、活性成分上の接着性基が組織表面のアミノ基と十分に接触して反応することができ、血液と組織液におけるタンパク質上のアミノ基との反応による接着性への影響を受けず、その後、固体親水性液体分散剤は血液と組織液における水を吸収して活性成分をさらに溶解し、活性成分における粘着性を有する分子断片と架橋助剤上のアミノ基との反応をトリガーし、医療用組織粘着剤全体を急速にゲル化して硬化させることができる。したがって、実施例8~実施例17で調製された医療用組織接着剤は、良好な排血性能を有すると同時に迅速に架橋してゲル化することができ、迅速に組織接着と創面閉鎖を実現することができる。
【0084】
上記の実施形態は、本発明の好ましい例として提示したものであり、発明の保護範囲を限定することは意図していない。
【国際調査報告】