(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】口腔組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/744 20150101AFI20240209BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20240209BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/96 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/21 20060101ALI20240209BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240209BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240209BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240209BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240209BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240209BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240209BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240209BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240209BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61K35/744
A61Q11/00
A61K8/99
A61K8/25
A61K8/73
A61K8/36
A61K8/81
A61K8/92
A61K8/19
A61K8/24
A61K8/26
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/86
A61K8/55
A61K8/96
A61K8/64
A61K8/49
A61K8/21
A61K8/31
A61P1/02
A61K9/06
A61K47/04
A61K47/06
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/36
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549043
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 IB2022051269
(87)【国際公開番号】W WO2022172230
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507324555
【氏名又は名称】ブリス テクノロジーズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ジョン デイビッド フランシス ヘイル
(72)【発明者】
【氏名】ロヒット ジャイン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076BB22
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4C076CC09
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4C076EE32
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4C083AA031
4C083AA032
4C083AA071
4C083AA121
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4C083AC861
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4C083AD531
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4C083AD572
4C083BB04
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4C087AA01
4C087BC61
4C087CA09
4C087MA28
4C087MA57
4C087NA03
4C087ZA67
(57)【要約】
ストレプトコッカス・サリバリウス、粘度調整剤、緩衝剤、及び非水性担体を含む口腔組成物、例えば、歯磨きゲル又は歯磨き粉などが、本明細書に記載される。有利なことには、その口腔組成物は、プロバイオティクスの遅延放出プロフィール、対象の口腔における改善された定着、改善された安定性、及び/又は改善されたシネレシスを含めた所望の特性を提供し得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレプトコッカス・サリバリウス、粘度調整剤、緩衝剤、及び非水性担体を含む口腔組成物であって、投与後15分の時点での、該組成物から口腔へのストレプトコッカス・サリバリウスの放出が、約35%~約95%の範囲内にある、前記口腔組成物。
【請求項2】
投与後30分の時点での、前記組成物から口腔へのストレプトコッカス・サリバリウスの放出が、約50%~約98%の範囲内にある、請求項1に記載の口腔組成物。
【請求項3】
前記ストレプトコッカス・サリバリウスが、ストレプトコッカス・サリバリウスM18、ストレプトコッカス・サリバリウスK12、又はそれらの組み合わせである、請求項1又は2に記載の口腔組成物。
【請求項4】
前記組成物が、約1×10
5~約1×10
12cfu/gの量でストレプトコッカス・サリバリウスを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項5】
前記組成物が、約1~約15% w/wの量で粘度調整剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項6】
前記粘度調整剤が、疎水性シリカ、ワックス、エチルセルロース、ステアリン酸、タピオカデンプン、キサンタンゴム、Carbopol 974p、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項7】
前記ワックスが、ハクロウ、オウロウ、パラフィンロウ、ホホバワックス、微結晶性ワックス、シアバター、ココアバター、及びそれらのうちの任意の2つ以上組み合わせから成る群から選択される、請求項6に記載の口腔組成物。
【請求項8】
前記組成物が、約1~約30% w/wの量で緩衝剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項9】
前記緩衝剤が、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム若しくはカリウム塩、炭酸マグネシウム、水和酸化アルミニウム、ベントナイト粘土、カオリン粘土、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項10】
前記リン酸ナトリウム又はカリウム塩が、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから選択される、請求項9に記載の口腔組成物。
【請求項11】
前記非水性担体が、中鎖脂肪酸、トリアセチン、オレイン酸エチル、グリセロール、プロピレングリコール、植物油、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項12】
前記非水性担体が、中鎖脂肪酸、トリアセチン、オレイン酸エチル、プロピレングリコール、植物油、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項13】
前記中鎖脂肪酸が、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルである、請求項11又は12に記載の口腔組成物。
【請求項14】
前記植物油が、ヒマワリ油、キャノーラ油、ダイズ油、オリーブ油、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項11又は12に記載の口腔組成物。
【請求項15】
乳化剤、抗菌剤、甘味料、香味剤、フッ化物源、追加のプロバイオティクス、発泡剤、着色剤、研磨材、増白剤、歯の知覚過敏症向けの剤、抗酸化剤、再石灰化剤、又はそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項16】
前記乳化剤が、ポリソルベート80、オレイン酸ソルビタン、タマゴレシチン、ダイズレシチン、ポリオキシル35ヒマシ油、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項15に記載の口腔組成物。
【請求項17】
前記抗菌剤が、キシリトール、エリスリトール、Manukaハチミツ、Kamahiハチミツ、プロポリス、ティーツリー油、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項15に記載の口腔組成物。
【請求項18】
前記甘味料が、モグロサイド甘味料、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、サッカリン、タウマチン、ソルビトール、マルトデキストリン、イソマルト、スクロース、ハチミツ、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項15に記載の口腔組成物。
【請求項19】
前記フッ化物源が、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項15に記載の口腔組成物。
【請求項20】
前記追加のプロバイオティクスが、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、ストレプトコッカス属、サッカロミセス属、リモシラクトバチルス属、ラクチカゼイバチルス属、リギラクトバチルス属、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項15に記載の口腔組成物。
【請求項21】
前記研磨材が、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸塩、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム水和物、粘土、活性炭、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二ナトリウム、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項15に記載の口腔組成物。
【請求項22】
前記組成物が、25℃にて少なくとも2カ月の保存期間を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項23】
前記組成物が、ペースト又はゲルである、請求項1~22のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項24】
前記組成物がゲルであり、かつ、25℃にて約35,000~約65,000cpの粘性を有する、請求項23に記載の口腔組成物。
【請求項25】
前記組成物が、歯磨き粉である、請求項1~23のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項26】
前記組成物が、25℃にて約70,000~約2,000,000cpの粘性を有する、請求項25に記載の口腔組成物。
【請求項27】
前記組成物が、25℃にて約20,000~約500,000cpの粘性を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項28】
前記組成物が、25℃にて5分間にわたり13,000rpmにて遠心分離された後に、約10%~約40%のシネレシス率を有する、請求項1~27のいずれか一項に記載の口腔組成物。
【請求項29】
ストレプトコッカス・サリバリウス、緩衝剤、粘度調整剤、乳化剤、及び非水性担体を含む歯磨き粉組成物であって、ここで、該緩衝剤が炭酸カルシウムであり、かつ、該粘度調整剤が疎水性シリカである、前記歯磨き粉組成物。
【請求項30】
前記組成物が、以下の:
約1×10
5~約1×10
10cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、
約1~約30% w/wの炭酸カルシウム、
約1~約15% w/wの疎水性シリカ、及び
約0.1~約5% w/wの乳化剤、
を含む、請求項29に記載の歯磨き粉組成物。
【請求項31】
前記組成物が、以下の:
約1×10
6~約1×10
10cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、
約10~約20% w/wの炭酸カルシウム、
約3~約8% w/wの疎水性シリカ、及び
約1~約2% w/wの乳化剤、
を含む、請求項29に記載の歯磨き粉組成物。
【請求項32】
前記組成物が、以下の:
約1×10
8~約1×10
9cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、
約15% w/wの炭酸カルシウム、
約4~約6% w/wの疎水性シリカ、及び
約1% w/wの乳化剤、
を含む、請求項29に記載の歯磨き粉組成物。
【請求項33】
前記組成物が、以下の:
約1×10
8~約1×10
9cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、
約18%~約22% w/wの炭酸カルシウム、
約6~約10% w/wの疎水性シリカ、及び
約2.5% w/wの乳化剤、
を含む、請求項29に記載の歯磨き粉組成物。
【請求項34】
前記組成物が、該組成物の全重に基づいて、以下の:
・約1×10
8~約1×10
9cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、
・約20% w/wの緩衝剤、
・約1~約10% w/wの粘度調整剤、
・約2.5% w/wの乳化剤、
・約0.76% w/wのフッ化物源、
・約2~約8% w/wの抗菌剤、
・約0.01~約5%のそれぞれの香味剤、及び
・約3% w/wの甘味料、
を含む、請求項29に記載の歯磨き粉組成物。
【請求項35】
前記組成物が、該組成物の全重に基づいて、以下の:
・約1×10
8~約1×10
9cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、
・約20% w/wの炭酸カルシウム、
・約4~約8% w/wの疎水性シリカ、
・約2~約8%のキサンタンガム、
・約2.5% w/wのポリソルベート80、
・約0.76% w/wのフッ化物源、
・約2~約8% w/wのキシリトール、
・約2~約3% w/wのスペアミント香味油、
・約2~約3% w/wのペパーミント香味油、
・約0.3% w/wのSmoothenol Flavour30712(マルトデキストリン、アラビアゴム及びトリアセチンを含む)、及び
・約3% w/wのSynergy Powder Sweetener PF7513(マルトデキストリン及び天然の香味料を含む)、
を含む、請求項29に記載の歯磨き粉組成物。
【請求項36】
投与後15分の時点での、前記組成物から口腔へのストレプトコッカス・サリバリウスの放出が、約35%~約95%の範囲内にある、請求項29~35のいずれか一項に記載の歯磨き粉組成物。
【請求項37】
ストレプトコッカス・サリバリウス、炭酸カルシウム、疎水性シリカ、乳化剤、及び非水性担体を含む歯磨き粉組成物であって、ここで、投与後15の時点での、該組成物から口腔へのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約35%~約95%の範囲内にある、前記歯磨き粉組成物。
【請求項38】
請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、以下のステップ:
a) 非水性担体と乳化剤を混合し;
b) ストレプトコッカス・サリバリウスと緩衝剤を、ステップa) からの混合物中に分散させ;
c) 粘度調整剤を、ステップb) からの混合物に加え;そして、
d) ステップc)から混合物を均質化して、その組成物を提供すること、
を含む、前記方法。
【請求項39】
請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、以下のステップ:
a) 非水性担体を加熱し;
b) 粘度調整剤を、加熱した非水性担体に加え;
c) ステップb)から混合物をある程度冷まし、乳化剤をその混合物に加え;
d) ステップc)から混合物をさらに冷まし、ストレプトコッカス・サリバリウスをその混合物に加え;そして、
e) ステップd)から混合物を均質化して、その組成物を提供すること、
を含む、前記方法。
【請求項40】
対象の口腔衛生を改善する方法であって、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物を該対象の口腔に適用することを含む、前記方法。
【請求項41】
対象の口腔にプロバイオティクスを送達する方法であって、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物を該対象の口腔に適用することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は概して、生きたプロバイオティクスを含む口腔組成物に関する。本発明はまた、概して、口腔組成物を調製する方法及び口腔衛生を改善するためにその組成物を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
生きたプロバイオティクスを含む歯磨き粉や歯磨きゲルは、数多くの技術的課題のためあまり見られない。これらの課題としては、歯磨き粉製剤中でプロバイオティクスを生きたまま維持し、それと同時にそのプロバイオティクスの徐放を提供し、かつ、対象の口腔の定着を容易する難しさが挙げられる。そのうえ、各プロバイオティクスは、組成物中でさまざまに反応する。従来の歯磨き粉や歯磨きゲル組成物は、典型的に、そのすべてがプロバイオティクス細菌の優れた培地としての役割を果たす、水、様々なゴム、セルロース誘導体、糖及び糖アルコール、並びに緩衝剤を包含する。この過剰な成長が栄養の過度の使用をもたらし、そしてそれに続いて死滅期に至り、そしてそれは、次に細胞生存率の低下、ひいては効果がない生成物をもたらす。さらに、それらの水性の性質と構成要素に起因して、水性歯磨き粉及び歯磨きゲルは、病原菌の増殖を予防するために保存料の添加を必要とする。これらの保存料は典型的に、非選択的なので、プロバイオティクス細胞の死滅につながり、ひいては短期間での有効性の損失につながる。典型的な発泡歯磨き粉における強力な界面活性剤の存在もまた、口腔の現場でのプロバイオティクス細胞の生存率に影響して、プロバイオティクスを無効にする。水性ビヒクルを含有する組成物は、そのため、プロバイオティクスのための口腔衛生製剤として臨床的に効果的ではなく、商業的に実行可能でもない。
【0003】
非水性オイル又は脂質ベースのプロバイオティクス製剤は、水分がない為、より良い保存期間安定性を提供するが、プロバイオティクス放出速度問題を含めた他の課題を引き起こす。オイルと粘度調整剤の粘性マトリックス中に分散したプロバイオティクスは、そのマトリックス内に捕捉されるようになり、そして、そのマトリックスからのプロバイオティクスのわずかな又は不十分な放出につながる可能性がある。これは次に、プロバイオティクスの利用不可能性又は低い利用可能性、そしてインビボにおける低い定着有効性の一因となる。逆に、オイル又は水性及びオイル製剤なしに、プロバイオティクスは放出媒質から即座に放出されてもよい。これは、プロバイオティクスが定着を達成するのに十分な時間にわたり口腔内に保持されることを許さなかった。
【0004】
非水性オイル又は脂質製剤を調製するときに直面し得る別の課題はシネレシスである。シネレシスは、保管時のゲルの収縮によるマトリックスからのオイルの漏出である。シネレシスを克服するために、シネレシスを予防するために高い割合のゲル化剤(例えば、水素化脂質、ワックス)を包含することを必要とすることが多い。しかしながら、高い割合のゲル化剤の添加は、歯磨き粉として分注することが難しい又はプロバイオティクスの放出を許さない、高い粘性の系をもたらし得る。
【0005】
理解されるように、液体懸濁液の状態での組成物は、歯磨き粉適用に好適でない。しかしながら、高い粘性の組成物もまた好適でない。
【0006】
一部の製剤では、その製剤としてのプロバイオティクスの混合が室温にて固形化することを可能にするための加熱ステップを必要とする。固形化の問題は、均一な混合を得るための長時間の高剪断均質化を使用することで対処されることが多い。これらの状態は、製剤の長期間の安定性及び有効性に影響し得るプロバイオティクスの死滅又はより弱いプロバイオティクス細胞を生み出すリスクをもたらす。
【0007】
WO2017/195074 A1(OraHealth Corp.)では、プロバイオティクスを含有し得るマウスコーティング用の脂質ベースの混合物が記載される。その組成物はゲルであってもよいが、WO2017/195074 A1ではペーストは記載されていない。WO2012/097429 A1(Viva Pharmaceutical Inc)では、プロバイオティクス細菌を含有する軟ゲルカプセルが記載される。WO2010/054439 A1(Unistraw Patent Holdings Limited)では、非水性、オイルベースのマトリックスであってもよいマトリックス中に埋め込まれたプロバイオティクス細菌が記載される。
【0008】
Seokらの「Formulating a probiotic toothpaste for vitamin B6 delivery system」、Journal of International Research in Medical and Pharmaceutical Sciences、2018 (13)では、口腔内にビタミンB6を送達するためのプロバイオティクス歯磨き粉製剤が記載される。そのプロバイオティクス要素は、TheraBreath Oral Care Probiotics Citrusであり、そしてそれは、ストレプトコッカス・サリバリウス菌株K12及びM18(BLIS K12及びM18)細胞を含有する。Seokらは、口腔におけるビタミンB6の経粘膜送達に注目する。その組成物は、グリセリン、過酸化水素、及び水を含めたプロバイオティクスと両立しない様々な構成要素を含む。
【0009】
CN111558033には、少なくともタンパク質分解酵素、非タンパク質分解酵素、BLIS K12及びM18、並びに少なくとも1つのラクトバチルス属を含む口腔洗浄組成物が記載される。これらの組成物はまた、プロバイオティクスと両立しないグリセロール及び水を含む。
【0010】
これらの文書はプロバイオティクスを含有する口腔ゲルを企図するが、本発明者らは、プロバイオティクス生存率とのバランスがとれた適切な放出プロフィールを示すか、又はストレプトコッカス・サリバリウスを含む、これらの特許出願に基づいて開発されたいずれの市販の口腔組成物も知らない。
【0011】
WO2001027143(BLIS Technologies)には、それぞれ受託番号DSM13084及びDSM13085としてDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Braunschweig、Germanyにて寄託されたストレプトコッカス・サリバリウス菌株K12及びK30が記載される。口を含めた上気道の感染症を予防又は処置するためのこれらのプロバイオティック株の使用もまた記載される。処置されるべき状態としては、連鎖球菌性咽頭炎や虫歯が挙げられる。WO2005007178(BLIS Technologies)にはさらに、口臭の処置のためのストレプトコッカス・サリバリウスK12及びK30の使用も記載される。
【0012】
WO2003070919(BLIS Technologies)には、寄託番号DSM14685としてDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Braunschweig、Germanyにて寄託されたストレプトコッカス・サリバリウス菌株Mia(M18としても知られている)が記載される。その抗ミュータンス連鎖球菌(MS)活性、特にS.ミュータンス(S. mutans)及びS.ソブリナス(S. sobrinus)に対するその活性、並びに虫歯の処置に関するこのプロバイオティック株の使用もまた記載される。食品、飲料、シロップ、うがい薬、歯磨き粉、ロゼンジ、及び口腔スプレーなどの口腔製剤がWO2001027143、WO2003070919及びWO2005007178で言及されるが、これまで、これらのストレプトコッカス・サリバリウスを含有する市販の歯磨き粉又は歯磨きゲル製剤も開発されていない。市販製品がないことは、プロバイオティクスの望ましい放出特性を示すと同時にプロバイオティクス生存率を維持する、プロバイオティクス歯磨き粉又は歯磨きゲル組成物を作り出す難しさを反映している。
【0013】
安定しており、かつ、所望の放出及び定着特徴を提供するプロバイオティクス口腔組成物は現在でも必要とされ続けている。この需要を満たすのにいくらかの助けになる;及び/又は少なくとも有用な選択肢を公用に提供することが、本発明の目的である。
【0014】
本発明の他の目的は、例としてのみ与えられる以下の説明から明らかになり得る。
【0015】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品などは、単に、本発明に関する状況を提供する目的のためだけのものである。それが優先日以前に存在した場合に、これらの事項のいずれか又はすべてが、従来技術の基盤の一部を形成するか又は本発明に関連する分野の共通した一般的知識であると承認したと解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0016】
第一の態様において、本発明は、ストレプトコッカス・サリバリウス、粘度調整剤、緩衝剤、及び非水性担体を含む口腔組成物を提供し、ここで、投与後15分の時点での、その組成物から口腔へのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約35%~約95%の範囲内にある。
【0017】
第二の態様において、本発明は、ストレプトコッカス・サリバリウス、緩衝剤、粘度調整剤、乳化剤、及び非水性担体を含む歯磨き粉組成物を提供し、ここで、その緩衝剤は炭酸カルシウムであり、かつ、その粘度調整剤は疎水性シリカである。
【0018】
第三の態様において、本発明は、ストレプトコッカス・サリバリウス、炭酸カルシウム、疎水性シリカ、乳化剤、及び非水性担体を含む歯磨き粉組成物を提供し、ここで、投与後15の時点での、その組成物から口腔へのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約35%~約95%の範囲内にある。
【0019】
第四の態様において、本発明は、第一、第二、又は第三の態様による組成物の製造方法であって、以下のステップ:
a) 非水性担体と乳化剤を混合し;
b) ストレプトコッカス・サリバリウスと緩衝剤を、ステップa) からの混合物中に分散させ;
c) 粘度調整剤を、ステップb) からの混合物に加え;そして、
d) ステップc)から混合物を均質化して、その組成物を提供すること、
を含む前記方法を提供する。
【0020】
第五の態様において、本発明は、第一、第二、又は第三の態様による組成物の製造方法であって、以下のステップ:
a) 非水性担体を加熱し;
b) 粘度調整剤を、加熱した非水性担体に加え;
c) ステップb)から混合物をある程度冷まし、乳化剤をその混合物に加え;
d) ステップc)から混合物をさらに冷まし、ストレプトコッカス・サリバリウスをその混合物に加え;そして、
e) ステップd)から混合物を均質化して、その組成物を提供すること、
を含む前記方法を提供する。
【0021】
第六の態様において、本発明は、対象の口腔衛生を改善する方法であって、第一、第二、又は第三の態様による組成物をその対象の口腔に適用することを含む前記方法を提供する。
【0022】
第七の態様において、本発明は、対象の口腔にプロバイオティクスを送達する方法であって、第一、第二、又は第三の態様による口腔組成物をその対象の口腔に投与することを含む前記方法を提供する。
【0023】
以下の実施形態及び好みは、上記の態様のいずれか単独又は任意の2つ以上の任意の組み合わせに関し得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、投与後30分の時点での、その組成物から口腔へのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約50%~約98%の範囲内にある。
【0025】
好ましくは、ストレプトコッカス・サリバリウスは、ストレプトコッカス・サリバリウスM18、ストレプトコッカス・サリバリウスK12、又はそれらの組み合わせである。
【0026】
好ましくは、その組成物は、約1×105~約1×1012cfu/gの量でストレプトコッカス・サリバリウスを含む。より好ましくは、その組成物は、約1×107~約1×1010cfu/gの量でストレプトコッカス・サリバリウスを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、その組成物は、約1~約15% w/wの量で粘度調整剤を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、粘度調整剤は、疎水性シリカ、ワックス、エチルセルロース、ステアリン酸、タピオカデンプン、キサンタンゴム、Carbopol 974p(カルボマー)、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。好ましくは、粘度調整剤は、疎水性シリカ、エチルセルロース、ワックス、又はそれらのうちの2つ以上の組み合わせである。
【0029】
好ましくは、ワックスは、ハクロウ、オウロウ、パラフィンロウ、ホホバワックス、微結晶性ワックス、シアバター、ココアバター、及びそれらのうちの任意の2つ以上組み合わせから成る群から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態において、その組成物は、約1~約30% w/wの量で緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約10~約20% w/wの量で緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約15% w/wの量で緩衝剤を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、緩衝剤は、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム若しくはカリウム塩、炭酸マグネシウム、水和酸化アルミニウム、ベントナイト粘土、カオリン粘土、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、そのリン酸ナトリウム又はカリウム塩は、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから選択される。
【0032】
いくつかの実施形態において、非水性担体は、中鎖脂肪酸、トリアセチン、オレイン酸エチル、グリセロール、プロピレングリコール、植物油、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、非水性担体は、中鎖脂肪酸、トリアセチン、オレイン酸エチル、プロピレングリコール、植物油、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。好ましくは、中鎖脂肪酸は、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルである。好ましくは、植物油は、ヒマワリ油、キャノーラ油、ダイズ油、オリーブ油、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態において、その組成物はさらに、乳化剤、抗菌剤、甘味料、香味剤、フッ化物源、追加のプロバイオティクス、発泡剤、着色剤、研磨材、増白剤、歯の知覚過敏症向けの剤、抗酸化剤、再石灰化剤、又はそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、乳化剤は、ポリソルベート80、オレイン酸ソルビタン、タマゴレシチン、ダイズレシチン、ポリオキシル35ヒマシ油、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態において、抗菌剤は、キシリトール、エリスリトール、Manukaハチミツ、Kamahiハチミツ、プロポリス、ティーツリー油、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態において、甘味料は、モグロサイド甘味料、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、サッカリン、タウマチン、ソルビトール、マルトデキストリン、イソマルト、スクロース、ハチミツ、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。
【0037】
いくつかの実施形態において、フッ化物源は、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態において、追加のプロバイオティクスは、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、ストレプトコッカス属、サッカロミセス属、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、追加のプロバイオティクスは、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、ストレプトコッカス属、サッカロミセス属、リモシラクトバチルス属、ラクチカゼイバチルス属、リギラクトバチルス属、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態において、研磨材は、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、フッ化物、塩化ナトリウム、リン酸塩、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム水和物、粘土、活性炭、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二ナトリウム、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、研磨材は、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸塩、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム水和物、粘土、活性炭、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二ナトリウム、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。
【0040】
いくつかの実施形態において、その組成物は、25℃/60%のRHにて少なくとも2カ月の保存期間を有する。いくつかの実施形態において、その組成物は、25℃/60%のRHにて少なくとも6カ月の保存期間を有する。いくつかの実施形態において、その組成物は、25℃/60%のRHにて少なくとも30カ月の保存期間を有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、その組成物は、25℃にて1,900,000cp超の粘性を有する。いくつかの実施形態において、その組成物は、25℃にて約20,000~約2,000,000cpの粘性を有する。いくつかの実施形態において、その組成物は、25℃にて約20,000~約500,000cpの粘性を有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、その組成物は、ペースト又はゲルである。いくつかの実施形態において、その組成物は、ゲルであり、かつ、25℃にて約35,000~約65,000cpの粘性を有する。いくつかの実施形態において、その組成物は、歯磨き粉である。好ましくは、そのペーストは、25℃にて約70,000~約100,000cpの粘性を有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、その組成物は、25℃にて5分間にわたり13,000rpmにて遠心分離された後に、約10%~約40%のシネレシス率を有する。いくつかの実施形態において、その組成物は、25℃にて5分間にわたり13,000rpmにて遠心分離された後に、約20%~約40%のシネレシス率を有する。いくつかの実施形態において、その組成物は、25℃にて5分間にわたり13,000rpmにて遠心分離された後に、約10%~約20%、又は約13%~約18%のシネレシス率を有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、その組成物は:約1×105~約1×1010cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、約1~約30% w/wの炭酸カルシウム、約1~約15% w/wの疎水性シリカ、及び約0.1~約5% w/wの乳化剤を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、その組成物は:約1×106~約1×1010cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、約10~約20% w/wの炭酸カルシウム、約3~約8% w/wの疎水性シリカ、及び約1~約2% w/wの乳化剤を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、その組成物は:約1×108~約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、約15% w/wの炭酸カルシウム、約4~約6% w/wの疎水性シリカ、及び約1% w/wの乳化剤を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、その組成物は:約1×108~約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、約20% w/wの炭酸カルシウム、約6~約10% w/wの疎水性シリカ、及び約2.5% w/wの乳化剤を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、その組成物は:約1×108~約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、約18~約22% w/wの炭酸カルシウム、約6~約10% w/wの疎水性シリカ、及び約2.5% w/wの乳化剤を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて、以下の:
・約1×108~約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、
・約20% w/wの緩衝剤、
・約1~約10% w/wのそれぞれの粘度調整剤、
・約2.5% w/wの乳化剤、
・約0.76% w/wのフッ化物源、
・約2~約8% w/wの抗菌剤、
・約0.01~約5%のそれぞれの香味剤、及び
・約3% w/wの甘味料、
を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて、以下の:
・約1×108~約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18、
・約20% w/wの炭酸カルシウム、
・約4~約8% w/wの疎水性シリカ、
・約2~約8%のキサンタンガム、
・約2.5% w/wのポリソルベート80、
・約0.76% w/wのフッ化物源、
・約2~約8% w/wのキシリトール、
・約2~約3% w/wのスペアミント香味油、
・約2~約3% w/wのペパーミント香味油、
・約0.3% w/wのSmoothenol Flavour30712(マルトデキストリン、アラビアゴム及びトリアセチンを含む)、及び
・約3% w/wのSynergy Powder Sweetener PF7513(マルトデキストリン及び天然の香味料を含む)、
を含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、投与後15分の時点での、その組成物から口腔へのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約35%~約95%の範囲内にある。
【0052】
いくつかの実施形態において、その方法は、対象の虫歯を低減する方法、対象の歯から着色及び/又はプラークを取り除く及び/又は予防する方法、対象の歯のエナメル質を強化する方法、歯肉炎を処置及び/又は予防する方法、歯肉の回復を補助する方法、並びに/或いは口臭を予防する方法である。
【0053】
いくつかの実施形態において、プロバイオティクスは、口腔に少なくとも部分的に定着する。好ましくは、プロバイオティクスは、ストレプトコッカス・サリバリウス、例えば、M18、K12、又はそれらの組み合わせなどである。
【0054】
本発明は、広義には、当該出願の明細書において、個別に又はまとめて、言及される又は示される部材、要素及び特徴、並びに2つ以上の前記部材、要素又は特徴に関する任意の又はすべての組み合わせから成っているものとすることも可能であり、そしてここで、本発明が関連する技術分野において既知の等価物を有する特定の整数が本明細書において言及される場合、斯かる既知の等価物は、個別に説明したかのように本明細書中に援用されるものとする。
【0055】
本明細書中に開示される数値範囲(例えば、1~10)はまた、その範囲内のすべての有理数 (例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、及び10)、並びに同様に、その範囲内の有理数の任意の範囲(例えば、2~8、1.5~5.5、及び3.1~4.7)への参照を組み込むことも意図しており、そのため、本明細書中に明確に開示される全範囲のうちのすべての部分範囲が本明細書に明確に開示される。これらは、何が具体的に意図されるかに関する例にすぎずないので、最低値と最高値との間の数値の可能な組み合わせのすべてが、同じような形で本出願において明確に述べられていると考えるべきである。
【0056】
この明細書では、特許明細書、他の外部文書、又は他の情報源に対して参照がなされる場合、これは概して、本発明の特徴を考察するための状況を提供することを目的とするものである。別段の具体的な記述がない限り、斯かる外部文書に対する参照は、どんな権限においても、斯かる文書又は斯かる情報源が従来技術である、又は当該技術分野における共有の一般知識の一部を形成することの承認として理解されるものではない。
【0057】
本発明が関係する当業者に対して、本発明の構造における多くの変更、並びに多様な実施形態及び適用は、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなしにそれら自体が示唆される。本明細書の開示及び記載は、単なる例示にすぎないので、あらゆる意味において制限することを意図するものではない。
【0058】
本発明は広く先に定義されるとおりのものであるが、当業者は、本発明がそれに制限されないこと、及び本発明はまた、以下の説明が例を挙げる実施形態も包含すること、を理解している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
本発明は、以下のとおり添付した図面を参照して説明される。
【0060】
【
図1】
図1は、比較製剤(左から右に向かって)C-1、C-2及びC-3のサンプルを示す。
【
図2】
図2は、冷蔵保存を続けた後の製剤C-1のサンプルを示す。
【
図3】
図3は、製剤A-4、C-1及びC-2の加速シネレシスを示すグラフである。
【
図3B】
図3Bは、製剤A-4、C-1、C-2、B-6及びB-7の加速シネレシスを示すグラフである。
【
図4】
図4は、製剤A-1を使用した放出調査の結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、製剤A-2を使用した放出調査の結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、製剤A-3を使用した放出調査の結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、BLIS M18ロゼンジ、並びに製剤A-1~A-4、A-7及びC-1~C-3を使用した放出調査の結果を示すグラフである。
【
図7B】
図7Bは、BLIS M18ロゼンジ、並びに製剤A-1~A-4、A-7、C-1~C-3、CN111558033の製剤、及び製剤B-6とB-7を使用した放出調査の結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、M18及びK12を含有するロゼンジの投与後のM18による対象における定着を示す棒グラフである。
【
図9】
図9は、歯磨き粉A-4を用いた歯磨き後のM18による対象における定着を示す棒グラフである。
【
図10】
図10は、Seokらの製剤を用いた安定性調査の結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、CN111558033の製剤を用いた安定性調査の結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、製剤A-4、A-6、B-8、B-9、B-10、B-11、B-3、B-6、及びC-2の安定性データを示すグラフである。
【
図13】
図13は、歯磨き粉製剤の状態と比較した、原料中のBLIS M18の阻害活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の詳細な説明
ストレプトコッカス・サリバリウス、粘度調整剤、緩衝剤、及び非水性担体を含む口腔組成物、例えば、歯磨きゲル又は歯磨き粉などが、本明細書に記載される。有利なことには、その口腔組成物は、プロバイオティクスの遅延放出プロフィールをもたらす制御放出特性を提供するように慎重に製剤化され、そしてそれは、対象の口腔における定着さえも可能にする。その組成物はまた、長期間安定性を示し、及び/又はわずかなシネレシスしか示さない。長期間安定性は、標準的な保管及び湿度条件下でのプロバイオティクスの有効な生存数を確保する組成物の能力である。シネレシスは、液体の分離を伴ったゲルの収縮である。
【0062】
定義
【0063】
「を含む(comprising)」という用語は、本願明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「から少なくとも部分的に成る(consisting at least in part of)」を意味する。「を含む(comprising)」という用語を包含する本願明細書及び特許請求の範囲における各記述を解釈するとき、それ以外又は該用語で始まるもの以外の特徴が存在していてもよい。「comprise」、「comprised」及び「comprises」などの関連用語は同様に解釈されるものとする。
【0064】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、「及び」若しくは「又は」、又はその両方を意味する。
【0065】
本明細書で使用される場合、名詞に続く「(単数若しくは複数の)(s)」は、その名詞の複数形及び/又は単数形を意味する。例えば、本明細書中の製剤で使用される、一般的な化学及び生物学的用語は、それらの通常の意味を有する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ゲル」という用語は、液体(例えば、非水性担体)を閉じ込め、そしてそれが浸透した凝縮塊から成る、少なくとも2つの構成要素の固形又は半固形の系を意味する。
【0067】
本明細書で使用される場合、「ペースト」という用語は、好適な担体中に微細分散された固形物の大部分(例えば、約20~50重量%)を含有する、半固形の剤形を意味する。
【0068】
「対象」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ウシ及びその他のペットや家畜を含めた哺乳類を指す。
【0069】
単位「cfu/g」は、1グラムあたりのコロニー形成単位を意味する。
【0070】
プロバイオティクス
【0071】
ストレプトコッカス・サリバリウスは、ヒト口腔、具体的には、舌に主に定着するグラム陽性細菌であり、かつ、優位な片利共生生物種である。それらは、プロバイオティクス細菌としての使用のために高度に調査される。多くのストレプトコッカス・サリバリウス種が、口腔及び歯科衛生向けに、商品名BLIS M18及びBLIS K12でBLIS Technologiesによって商業化されている。
【0072】
本発明における使用に好適なさまざまなストレプトコッカス・サリバリウス菌株が当該技術分野で知られている。ストレプトコッカス・サリバリウスK12は、1999年10月8日にDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg 1 b、D-38124、Braunschweig、Germanyにより寄託され、受入番号DSM13084が割り当てられた。ストレプトコッカス・サリバリウスK12は、参照により本明細書に援用されるWO2001027143前掲に記載されている。ストレプトコッカス・サリバリウスM18は、2001年12月12日にDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg 1 b、D-38124、Braunschweig、Germanyにて寄託され、受入番号DSM14685が割り当てられた。ストレプトコッカス・サリバリウスM18は、参照により本明細書に援用されるWO2003070919前掲に記載されている。
【0073】
いくつかの実施形態において、ストレプトコッカス・サリバリウスは、生きたプロバイオティクスである。いくつかの実施形態において、ストレプトコッカス・サリバリウス菌株は、M18、K12、又はそれらの組み合わせである。
【0074】
いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×105~約1×1012cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスを含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×106~約1×1010cfu/、約1×107~約1×109cfu/、約1×107~約1×1010cfu/、約1×108~約1×1010cfu/、又は約1×108~約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスを含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスを含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約2×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスを含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、ストレプトコッカス・サリバリウスの複数の菌株が存在する場合、その組成物は、約1×105~1×1012cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスのそれぞれの菌株を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×106~約1×1010cfu/、約1×107~約1×109cfu/、約1×107~約1×1010cfu/、約1×108~約1×1010cfu/、又は約1×108~約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスのそれぞれの菌株を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスのそれぞれの菌株を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約2×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスのそれぞれの菌株を含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×105~約1×1012cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×106~約1×1010cfu/、約1×107~約1×109cfu/、約1×107~約1×1010cfu/、約1×108~約1×1010cfu/、又は約1×108~約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約2×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×105~約1×1012cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスK12を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×106~約1×1010cfu/、約1×107~約1×109cfu/、約1×107~約1×1010cfu/、約1×108~約1×1010cfu/、又は約1×108~約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスK12を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスK12を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約2×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスK12を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×105~約1×1012cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18及び約1×105~約1×1012cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスK12を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1×106~約1×1010cfu/、約1×107~約1×109cfu/、約1×107~約1×1010cfu/、約1×108~約1×1010cfu/、又は約1×108~約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスM18及び約1×106~約1×1010cfu/、約1×107~約1×109cfu/、約1×107~約1×1010cfu/、約1×108~約1×1010cfu/、又は約1×108~約1×109cfu/gのストレプトコッカス・サリバリウスK12を含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、その組成物はさらに、追加のプロバイオティクスを含む。好適なプロバイオティクスとしては、これだけに限定されるものではないが、ラクトバチルス属(例えば、L.アシドフィルス、L.ロイテリ、L.ラムノサス、又はL.サリバリウス)、ビフィドバクテリウム属(例えば、B.ビフィダム、B.ロンガム、又はB.ラクティスBB12)、ストレプトコッカス属(例えば、S.オラリス、S.ウベリス、又はストレプトコッカス・サリバリウスK12)、及びサッカロミセス属(例えば、S.ブラウディ又はS.セレビシエ)が挙げられる。注釈、ラクトバチルス・ロイテリは、現在、リモシラクトバチルス・ロイテリとして知られており、ラクトバチルス・ラムノサスは、現在、ラクチカゼイバチルス・ラムノサスとして知られており、及びラクトバチルス・サリバリウスは、現在、リギラクトバチルス・サリバリウスとして知られている。従って、好適なプロバイオティクスとしては、これだけに限定されるものではないが、ラクトバチルス属(例えば、L.アシドフィルス)、ビフィドバクテリウム属(例えば、B.ビフィダム、B.ロンガム、又はB.ラクティスBB12)、ストレプトコッカス属(例えば、S.オラリス、S.ウベリス、又はストレプトコッカス・サリバリウスK12)、サッカロミセス属(例えば、S.ブラウディ又はS.セレビシエ)、リモシラクトバチルス属(例えば、L.ロイテリ)、ラクチカゼイバチルス属(例えば、L.ラムノサス)、又はリギラクトバチルス属(例えば、L.サリバリウス)が挙げられる。
粘度調整剤
【0080】
口腔組成物は粘度調整剤を含む。有利なことには、粘度調整剤は、その組成物の安定性を制御するため、及び、例えば、口腔環境に投与されたときに、プロバイオティクスの放出プロフィールを調節するために使用され得る。
【0081】
好適な粘度調整剤としては、これだけに限定されるものではないが、疎水性シリカ(例えば、ハクロウ、オウロウ、パラフィンワックス、ホホバワックス、微結晶性ワックス)、シアバター、ココアバター、エチルセルロース、ステアリン酸、タピオカデンプン、キサンタンガム、Carbopol 974p(カルボマー)、ピーナッツバター、又はそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、粘度調整剤はエチルセルロースである。いくつかの実施形態において、粘度調整剤は、エチルセルロースとワックス、例えば、ミツロウなどとの組み合わせである。好ましくは、粘度調整剤は疎水性シリカ(例えば、Aerosil R972R)である。
【0082】
いくつかの実施形態において、口腔組成物は、その組成物の全重に基づいて約1~約15% w/wの量で粘度調整剤を含む。例えば、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約4~約15%、約4~約10%、約3~約8%、約4~約6%、又は約4~約8% w/wの量で粘度調整剤を含んでもよい。様々な実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約6~約10%、又は約7~約9% w/wの量で粘度調整剤を含んでもよい。例えば、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、又は約15% w/wの量で粘度調整剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約6% w/wの量で粘度調整剤(例えば、疎水性シリカ)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約7% w/wの量で粘度調整剤(例えば、疎水性シリカ)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約8% w/wの量で粘度調整剤(例えば、疎水性シリカ)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約5% w/wの量で粘度調整剤(例えば、キサンタンガム)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約2% w/wの量で粘度調整剤(例えば、キサンタンガム)を含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、複数の粘度調整剤が存在する場合、口腔組成物は、該組成物の全重に基づいて約1~約15% w/wの量で各粘度調整剤を含む。例えば、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約1~約10%、約1~約15%、約1~約8%、約2~約15%、約2~約10%、約2~約15%、約2~約8%、約4~約15%、約4~約10%、約3~約8%、約4~約6%、又は約4~約8% w/wの量でそれぞれの粘度調整剤を含んでもよい。様々な実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約6~約10%、又は約7~約9% w/wの量でそれぞれの粘度調整剤を含んでもよい。例えば、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、又は約15% w/wの量でそれぞれの粘度調整剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、粘度調整剤は、疎水性シリカ及びキサンタンガムである。
【0084】
緩衝剤
【0085】
口腔組成物は緩衝剤を含んでもよい。有利なことには、緩衝剤は、口腔組成物中でのプロバイオティクスの増殖を促進し、該組成物のシネレシスを調節し、及び/又は研磨材として機能し得る。
【0086】
好適な緩衝剤としては、これだけに限定されるものではないが、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム若しくはカリウム塩(例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、及びリン酸二水素カリウムなど)、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム水和物、ベントナイト粘土、カオリン粘土、尿素、又はそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。好ましくは、緩衝剤は炭酸カルシウムである。長期間の安定性に関して、出願人らは、不溶性(沈殿していない)炭酸カルシウムが、少なくとも6カ月にわたる良好な微生物安定性を実証することを、驚いたことに見出した。いかなる理論にも縛られることを望むものではないが、発明者らは、沈殿した又はわずかに水に溶ける炭酸カルシウムがより吸湿性であり得、これにより安定性に影響すると考える。様々な実施形態において、炭酸カルシウムは、不溶性炭酸カルシウムである。不溶性炭酸カルシウムは、Pure Nature又はSigmaから供給され得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、口腔組成物は、該組成物の全重に基づいて約1~約30% w/wの量で緩衝剤を含む。例えば、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約5~約25%、又は約10~約20% w/wの量で緩衝剤を含んでもよい。様々な実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約15~約25%、又は約18~約22% w/wの量で緩衝剤を含んでもよい。様々な実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約12~約18% w/wの量で緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、又は約30% w/wの量で緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、緩衝剤(例えば、炭酸カルシウム)は、その組成物の全重に基づいて約15% w/wである。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約20% w/wの量で緩衝剤(例えば、炭酸カルシウム)を含む。
【0088】
非水性担体
【0089】
口腔組成物は非水性担体を含む。好適な非水性担体としては、これだけに限定されるものではないが、中鎖脂肪酸、トリアセチン、オレイン酸エチル、グリセロール、プロピレングリコール、植物油、ポリエチレングリコール、又はそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。様々な実施形態において、非水性担体は、中鎖脂肪酸、トリアセチン、オレイン酸エチル、プロピレングリコール、植物油、ポリエチレングリコール、又はそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから選択される。好ましくは、中鎖脂肪酸は、Miglyol812Nなどのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(飽和ココナッツ/パーム核油由来カプリル及びカプリン脂肪酸と植物由来グリセロールのトリグリセリドエステル)である。いくつかの実施形態において、植物油は、ヒマワリ油、キャノーラ油、ダイズ油、オリーブ油、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。
【0090】
いくつかの実施形態において、口腔組成物は、十分な量(適量)、すなわち、該組成物の総w/w%を100%にする量の分量で非水性担体を含む。いくつかの実施形態において、口腔組成物は、該組成物の全重に基づいて約30~約95% w/wの量で非水性担体を含む。いくつかの実施形態において、口腔組成物は、該組成物の全重に基づいて約55~約95% w/wの量で非水性担体を含む。例えば、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約60~約95%、約60~約90%、約65~約90%、又は約65~約90% w/w含んでもよい。様々な実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約30~約95%、約30~約90%、約35~約95%、約35~約90%、約40~約95%、約40~約90%、約45~約95%、約45~約90%、約50~約90%、又は約50~約90% w/wの量で非水性担体を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、口腔組成物は非水性である。いくつかの実施形態において、その組成物は、実質的に無水である。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて7%未満の水、5%未満の水、3%未満の水、2%未満の水、1%未満の水、0.5%未満の水、0.1%未満の水、又は0.01%未満の水を含む。本組成物では、水としては、環境から吸収された湿気が挙げられる。
【0092】
乳化剤
【0093】
口腔組成物はさらに、乳化剤を含んでもよい。有利なことには、乳化剤は、その組成物中の固体粒子の分散を容易にし得る。例えば、乳化剤は、その組成物中のプロバイオティクスの分散を容易にし得る。乳化剤は、非イオン性界面活性剤であっても、又は両性界面活性剤であってもよい。非イオン性界面活性剤の例としては、これだけに限定されるものではないが、ポリソルベート80(Tween80)、オレイン酸ソルビタン(Span80)、及びポリオキシル35ヒマシ油(Cremaph又はEL)が挙げられる。両性界面活性剤の例としては、これだけに限定されるものではないが、例えば、タマゴレシチンやダイズレシチンなどのレシチン、及びホスファチジルコリンが挙げられる。
【0094】
いくつかの実施形態において、口腔組成物は、該組成物の全重に基づいて約0.1~約5% w/wの量で乳化剤を含む。例えば、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約0.5~約4%、約0.5~約3%、又は約0.5~約2% w/wの量で乳化剤を含んでもよい。様々な実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約1.5~約3.5%又は約2~約3% w/wの量で乳化剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約1% w/wの量で乳化剤(例えば、Tween80、ポリソルベート80)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約2.5% w/wの量で乳化剤(例えば、Tween80、ポリソルベート80)を含む。
【0095】
研磨材
【0096】
口腔組成物は、例えば、歯から着色及び/又はプラークを取り除く、並びに/或いは歯を磨くために、該組成物の洗浄特性を改善するために研磨材を含んでもよい。好適な研磨材としては、これだけに限定されるものではないが、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ナトリウム塩、リン酸塩、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム水和物、粘土(例えば、ベントナイトやカオリン)、活性炭、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二ナトリウム、又はそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0097】
当業者は、研磨材の量が所望の洗浄特性を得るように選択され得ることを理解する。研磨材の量の増大は、その組成物の洗浄特性を改善する。しかしながら、あまりに大量の研磨材の包含は、その組成物が口腔の洗浄に使用されるとき、その組成物が歯、例えば、歯のエナメル質に損害を与えさせる。例えば、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約1~約40%、約1~約30%、約1~約25%、約1~約20%、約5~約40%、約5~約30%、約5~約25%、約5~約15%、約10~約35%、約15~約30%、約6~約14%、約7~約13%、約8~約12%、約9~約11%、又は約10% w/wの量で研磨材を含んでもよい。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、又は約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、又は約30% w/wの量で研磨材を含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、研磨材、例えば、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム水和物、粘土(例えば、ベントナイトやカオリン)、及び活性炭はまた、その組成物の粘性に影響し得る。
【0099】
当業者は、いくつかの実施形態において、例えば、緩衝剤などのその組成物の他の成分、例えば、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、リン酸塩、及びナトリウム塩などが研磨材としても機能し得ることを理解する。
【0100】
抗菌剤
【0101】
抗菌剤の例としては、これだけに限定されるものではないが、キシリトール、エリスリトール、抗菌性ハチミツ(ManukaハチミツやKamahiハチミツなど)、プロポリス、及びティーツリー油が挙げられる。好ましくは、抗菌剤はキシリトールである。それらの当業者は、一部の抗菌剤がプロバイオティクスに害を及ぼし得ることを理解する。従って、斯かる抗菌剤は、避けられるか、或いは口腔組成物のプロバイオティクスの量又は有効性を実質的に低減するのを避けるのに十分な少ない量で使用されるべきである。
【0102】
その組成物は、該組成物の全重に基づいて約1~約20%、約2~約15%、約3~約10%、約4~約6%、又は約5% w/wの量で抗菌剤を含んでもよい。その組成物は、該組成物の全重に基づいて約2~約10%、又は約2~約8% w/wの量で抗菌剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、又は約20% w/wの量で抗菌剤を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約5% w/wの量で抗菌剤(例えば、キシリトール)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約2% w/wの量で抗菌剤(例えば、キシリトール)を含む。
【0103】
フッ化物源
【0104】
口腔組成物は、例えば、該組成物の処置特性を改善するために、フッ化物源を含んでもよい。有利なことには、フッ化物源を含む口腔組成物は、口腔に投与されるとき、歯のエナメル質を強化し、及び/又は虫歯を軽減し得る。フッ化物源はフッ化物塩であってもよい。例えば、フッ化物源は、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、又はそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0105】
フッ化物源の量は、例えば、処置指針又は規制要求を満たすために、市販及び/又は調節因子に依存し得る。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約0.38%~約3.8%、又は約0.76% w/wの量でフッ化物源を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約0.3~約4%、約0.4~約3%、約0.5~約2%、約0.6~約1%、又は約0.7% w/wの量でフッ化物源を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約0.5~約1.5%、又は約0.6~約1.2% w/wの量でフッ化物源を含む。
【0106】
甘味料
【0107】
口腔組成物は甘味料を含んでもよい。好適な甘味料としては、これだけに限定されるものではないが、モグロサイド甘味料(ラカンカ抽出物)、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、サッカリン、タウマチン、ソルビトール、マルトデキストリン、イソマルト、スクロース、ハチミツ、Synergy Powder Sweetener PF7513、又はそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。Synergy Powder Sweetener PF7513は、79%のマルトデキストリンと21%の天然香味物質を含んでいる。
【0108】
いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約0.05~約5%、約0.1~約4%、約0.2~約3%、約0.3~約2%、約0.4~約1%、又は約0.5% w/wの量で甘味料を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約0.5% w/wの量で甘味料(例えば、Synergy Powder Sweetener)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約3% w/wの量で甘味料(例えば、Synergy Powder Sweetener PF7513)を含む。
【0109】
香味剤
【0110】
その組成物は、当該技術分野で知られている従来の香味剤を含んでもよい。香味剤の例としては、これだけに限定されるものではないが、スペアミント油、ペパーミント油、オレンジフレーバー、アニスシードフレーバー、バニラフレーバー、クローブ油、ライムフレーバー、Smoothenol Flavour 30712、及びそれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。Smoothenol Flavour 30712は、マルトデキストリン、アラビアゴム及びトリアセチンを含んでもよく、苦味又は金属のような後味をマスクするために舌受容体に結合することが知られている。当業者は、選択された香味剤がプロバイオティクス生存率と両立できなければならないことを理解する。
【0111】
その組成物は、該組成物の全重に基づいて例えば、0.01~約10%、約0.01~約9%、約0.01~約8%、約0.01~約7%、約0.01~約6%、約0.01~約5%、約0.5~約4.5%、約1~約4%、約1.5~約3.5%、約2~約3%、又は約2.5% w/wの量でそれぞれの(単数若しくは複数の)香味剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて、約0.1%、約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、又は約5% w/wの量で香味剤を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約2.5% w/wの量で香味剤(例えば、スペアミント香味油)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約2.75% w/wの量で香味剤(例えば、ペパーミント香味油)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、該組成物の全重に基づいて約0.3% w/wの量で香味剤(例えば、Smoothenol Flavour 30712)を含む。
【0112】
様々な実施形態において、その組成物は、少なくとも1つの香味剤を含む。いくつかの実施形態において、複数の香味剤が使用されるとき、その組成物は、約0.1%~約4% w/wのそれぞれの香味剤、例えば、約0.5%~約4%、約1%~約4%、約1.5%~約4%、約2%~約4%、約0.5%~約3%、約1%~約3%、約1.5%~約3%、又は約2%~約3% w/wのそれぞれの香味剤を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、2.5% w/wのスペアミント香味油、2.75% w/wのペパーミント香味油、及び0.3% w/wのSmoothenol Flavour 30712を含む。
【0113】
追加の添加剤
【0114】
当業者は、口腔組成物が、例えば、歯磨きゲル又は歯磨き粉などの口腔組成物で慣習的に使用される他の添加剤を含んでもよいことを理解する。技術分野の熟練した読者は、添加剤がプロバイオティクス生存率及び有効性と両立できる必要があることをさらに理解する。斯かる添加剤は、その組成物の処置、化粧、安定性、外観及び/又は官能特性を提供又は改善し得る。好適な添加剤の例としては、これだけに限定されるものではないが、着色剤(例えば、Brilliantブルー、Foodグリーン、二酸化チタン、又は白色着色料などの食品グレード染料)、発泡剤(例えば、ポリソルベート80)、増白剤(例えば、過酸化カルバミド又は過酸化水素)、歯の知覚過敏症向けの剤(例えば、硝酸カリウム、アルギニン又はフッ化スズ)、抗酸化剤(例えば、ビタミンC又はビタミンE)、他の抗齲蝕剤(例えば、キシリトール、フッ化物、マヌカハチミツ又はタンニン)、再石灰化剤(例えば、ヒドロキシアパタイト又はリン酸カルシウム)、プレバイオティクス(例えば、ガラクトース又はラフィノース)、及び/又は天然抽出物(例えば、アムラ(マラッカノキ(Phyllanthus emblica))、ニーム(インドセンダン(Azadirachta indica))、クローブ(チョウジノキ(Syzygium aromaticum))、トゥルシー(ホーリーバジル(Ocimum tenuiflorum))、又はターメリック(ウコン(Curcuma longa))が挙げられる。斯かる添加剤は、口腔製剤に典型的な量で本発明の口腔組成物中に包含されてもよい。生きた細菌又は凍結乾燥細菌の口腔投与に好適な、さまざまな医薬的に許容される添加剤が当該技術分野で周知される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Gennaro, ed., 1990, Mack Publishing Co., Easton, Pa., or Remington's Pharmaceutical Sciences, 23rd ed., Adejare, ed., 2021, Academic Press Inc.を参照し、参照により本明細書に援用する)。
【0115】
本出願人らは、多くの一般的な発泡剤がM18及びK12を殺滅する又は阻害するを、驚いたことに見出した。市販の製剤にBLIS M18及び/又はK12を加えることはできないが、なぜなら、例えば、グリセロール、発泡剤、及び/又は水などの標準的な歯磨き粉成分によりその微生物が殺滅されるからである。
【0116】
口腔組成物の形態
【0117】
口腔組成物は、ゲル又はペースト、例えば、歯磨き粉の形態であってもよい。その組成物の粘性は、25℃にて1,900,000cp超であってもよい。その組成物の粘性は、25℃にて約20,000~約2,000,000cpまであってもよい。その組成物の粘性は、25℃にて約20,000~約500,000cp、例えば、25℃にて約30,000~約400,000、約40,000~約100,000、又は約40,000~約70,000cpであってもよい。その組成物がゲルの形態であるとき、その組成物の粘性は、いくつかの実施形態において、25℃にて約35,000~約65,000cpである。その組成物がペーストの形態であるとき、その組成物の粘性は、いくつかの実施形態において、25℃にて約70,000~100,000cpである。
【0118】
粘性は、0.3RPMに設定したBrookfield Helipath Spindle(S96)を使用したBrookfield LVDVI Primeを使用して25℃にて計測され得る。熟練作業者は、粘性を計測するのに使用できる他の方法を理解する。
【0119】
化学的安定性や放出特性は別として、「シネレシス」に関する組成物の物理的安定性は、オイルベースの製剤が一般的に遭遇する別の課題である。シネレシスとは、保管時のゲルネットワークの収縮による組成物からのオイルの漏出である。シネレシスを克服ために、粘度調整剤及び/又は緩衝剤の量は、シネレシスを軽減するために増強されてもよい。しかしながら、あまりに多いこれらの成分の追加は、高い粘性の系(半固体)をもたらし得る。組成物の粘性が高過ぎる場合、歯磨き粉として分注することを難しくするか、又はプロバイオティクスの放出を妨げる若しくは阻害する可能性がある。好ましくは、ゲルネットワークは、保管時の物理的安定性を維持するために十分に強いが、例えば、みがき又は口腔内での分散などの撹拌を用いたプロバイオティクスの放出を可能にできるくらい弱い。好ましくは、ゲルネットワークは、ゲル構造を維持するために温度や湿度、及び保管時の物理的ストレスに対処するために十分に強いが、はみがきなどの撹拌時に又は唾液流によりこじ開けることができるくらい柔らかい。ゲル強度、ブルーム強度、生物学的接着、及び稠度などのゲル物性は、質感分析装置を使用して計測され得る。
【0120】
シネレシスは、加速シネレシス又はリアルタイムシネレシスを使用して計測され得る。加速シネレシスは、Journal of Dairy Science, Vol: 100, Issue: 2, Page: 901-907に記載の遠心加速試験を使用して計測できる。簡単に言えば、1gの製剤を、別々の1.5mLのエッペンドルフチューブ内に秤量し、そして、室温にて1、5、及び10分間にわたり13,000rpmにて遠心分離する(エッペンドルフ遠心分離機5415D、Lab supply NZ)。それぞれの時点にて漏出した液体(上清)の体積を別のエッペンドルフチューブ内に移して、秤量する。漏出した液体の累積パーセンテージを計算し、そして、シネレシスを比較した。リアルタイムのシネレシスを同じ手順を用いて計測し、サンプル以外は遠心加速に供さず、製剤の収縮に起因した保管によるすべての自然発生的な漏出を回収し、そして、計測する。
【0121】
いくつかの実施形態において、その組成物は、25℃にて5分間にわたり13,000rpmにて遠心分離された後に、約10%~約40%のシネレシス率を有する。いくつかの実施形態において、口腔組成物は、25℃にて5分間にわたり13,000rpmにて遠心分離された後に、約20%~約40%のシネレシス率を有する。いくつかの実施形態において、口腔組成物は、25℃にて5分間にわたり13,000rpmにて遠心分離された後に、約30%のシネレシス率を有する。いくつかの実施形態において、口腔組成物は、25℃にて10分間にわたり13,000rpmにて遠心分離された後に、約20%~約40%のシネレシス率を有する。いくつかの実施形態において、その組成物は、25℃にて5分間にわたり13,000rpmにて遠心分離された後に、約10%~約20%、又は約13%~約18%のシネレシス率を有する。いくつかの実施形態において、口腔組成物は、25℃にて10分間にわたり13,000rpmにて遠心分離された後に、約30%のシネレシス率を有する。様々な実施形態において、シネレシスは22℃にて計測され得る。
【0122】
口腔環境における有効性のために、本発明の組成物は、処置された対象の口腔の定着を促進する量にてストレプトコッカス・サリバリウスを経時的に提供するように慎重に処方される必要がある。有利なことには、その組成物は、すべてのストレプトコッカス・サリバリウスプロバイオティクスの即時放出を避け、かつ、経時的にストレプトコッカス・サリバリウスの徐放を提供するように処方される必要がある。
【0123】
その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、該組成物中の総ストレプトコッカス・サリバリウスの累積パーセンテージ放出、例えば、該組成物中の総ストレプトコッカス・サリバリウスの35%、によって説明される。
【0124】
いくつかの実施形態において、口腔への投与後15分で、その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約35%~約95%の範囲内にある。いくつかの実施形態において、口腔への投与後15分で、その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約40%~約95%の範囲内にある。いくつかの実施形態において、口腔への投与後15分で、その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約35%~約90%の範囲内にある。いくつかの実施形態において、口腔への投与後15分で、その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約40%~約90%の範囲内にある。いくつかの実施形態において、口腔への投与後15分で、その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約40%~約85%、約40%~約80%、又は約40%~約75%の範囲内にある。
【0125】
いくつかの実施形態において、口腔への投与後30分で、その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約50%~約98%の範囲内にある。いくつかの実施形態において、口腔への投与後30分で、その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約50%~約95%の範囲内にある。いくつかの実施形態において、口腔への投与後30分で、その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約55%~約98%の範囲内にある。いくつかの実施形態において、口腔への投与後30分で、その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約55%~約95%の範囲内にある。いくつかの実施形態において、口腔への投与後30分で、その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約60%~約98%、約60%~約95%、又は約60%~約93%の範囲内にある。
【0126】
いくつかの実施形態において、その組成物は、口腔への投与後約15分で、ストレプトコッカス・サリバリウスの約40%を放出する。いくつかの実施形態において、その組成物は、口腔への投与後約30分で、ストレプトコッカス・サリバリウスの約60%を放出する。
【0127】
いくつかの実施形態において、口腔への投与後60分で、その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約60%~約100%の範囲内にある。いくつかの実施形態において、口腔への投与後60分で、その組成物からのストレプトコッカス・サリバリウスの放出は、約65%~約100%の範囲内にある。
【0128】
いかなる理論にも縛られることを望むものではないが、製剤からのプロバイオティクスの放出が、定着するその能力に関してプロバイオティクスの成功の可能性を示すと考えられる。製剤からの放出が速過ぎる場合、その時、それは、低い定着成功プロフィールを有する可能性がある。ほとんどのプロバイオティクスが、唾液と共に、喉に迅速に飲み込まれる。逆に、製剤からの放出が遅過ぎる場合、その時、プロバイオティクスは、口腔の定着を可能にするのに十分に高いレベルが得られない可能性がある。そのため、適切な放出及び定着が起こるようにできる、きめ細かく調整された放出プロフィールが所望される。
【0129】
口腔組成物を調製する方法
【0130】
本明細書に記載した口腔組成物は、最初に、非水性担体と乳化剤とを混合することによって調製して、混合物を提供してもよい。ストレプトコッカス・サリバリウス、緩衝剤、及び任意選択で、他の固体成分が加えられ、そして、簡単な混合を使用した混合によって分散させる。次に、粘度調整剤が混合物に加えられ、そして、その混合物は、例えば、約3~約5分間にわたり均質化されて、口腔組成物が提供される。いくつかの実施形態において、混合物は、高剪断ホモジナイザ又はオーバーヘッドスターラーを用いて均質化される。
【0131】
あるいは、口腔組成物は、約140℃~約150℃の温度まで、非水性担体、例えばヒマワリ油を加熱することを含む方法によって調製されてもよい。次に、粘度調整剤が加熱された非水性担体に加えられ、そして、その混合物が、例えば、約600~約700rpmの速度で撹拌される。いくつかの実施形態において、その混合物は、粘度調整剤、例えば、エチルセルロースを可溶化して、透明な混合物を提供するまで撹拌される。次に、その混合物を、例えば、約80℃~約90℃の温度まで、ある程度冷まし、続いて、該混合物に乳化剤を加える。その混合物を、例えば、約25℃~約35℃までさらに冷まし、次に、ストレプトコッカス・サリバリウスを加える。次に、その混合物を均質化して、口腔組成物を提供する。いくつかの実施形態において、その混合物は、高剪断ホモジナイザ又はオーバーヘッドスターラーで均質化される。
【0132】
口腔衛生を改善する方法
【0133】
その組成物は、対象の口腔衛生を改善するのに有用である。例えば、WO2001027143、WO2002070719、及びWO2005007178(前掲)(その全体として参照により本明細書に援用する)で同定されるあらゆる状態を予防又は処置することによる。ストレプトコッカス・サリバリウスM18はまた、歯垢を低減するのを助け、口腔衛生及び口腔フローラを支援し、虫歯を軽減し、虫歯を予防し、歯肉炎を処置及び予防し、並びに歯周病を処置及び予防することも知られている(Burton, J.P., et al., 2013 J. Med. Microbiol. 62, 875-884; Burton, J.P., et al., 2013, PLoS ONE 8.; Di Pierro, et al. 2015. Clin Cosmet Investig Dent. 7:107-13; L Scariya, D.V, N., M Varghese, 2015. Int. J. Pharma Bio Sci. 6, 242-250)。
【0134】
従って、対象の口腔衛生を改善する方法であって、本明細書に記載した口腔組成物を該対象の口腔に投与することを含む前記方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、その方法は、対象における虫歯を軽減するものである。いくつかの実施形態において、その方法は、対象の歯の着色及び/又はプラークを取り除く及び/又は予防するものである。いくつかの実施形態において、その方法は、対象の歯のエナメル質を強化するものである。いくつかの実施形態において、その方法は、歯肉炎を処置する及び/又は予防するものである。いくつかの実施形態において、その方法は、歯茎の治癒を補助するものである。いくつかの実施形態において、その方法は、口臭を予防するためのものである。
【0135】
対象の口腔にプロバイオティクスを送達する方法であって、本明細書に記載した口腔組成物を該対象の口腔に投与することを含む前記方法もまた本明細書に開示される。有利なことには、そのプロバイオティクスは、口腔に少なくとも部分的に定着し得る。好ましくは、そのプロバイオティクスは、例えば、M18、K12、又はそれらの組み合わせなどストレプトコッカス・サリバリウスである。
【0136】
いくつかの実施形態において、対象の口腔に口腔組成物を投与することは、該対象の歯、歯茎、舌、頬部腔(buccal cavity)、及び/又は歯周ポケットに該組成物を投与することを含む。例えば、その組成物は、その対象の歯、歯茎、舌、及び/又は頬部腔に対するブラッシング、スポッティング、コーティング、マッサージによって、又はその対象の歯周ポケットへの充填によって、口腔に投与されてもよい。あるいは、対象の口腔衛生を改善する方法は、義歯又はマウスガードに対して本明細書に記載した口腔組成物を投与することを含んでもよい。その組成物は義歯又はマウスガードに投与されてもよく、ここで、該義歯又はマウスガードは、該対象の口腔内又は該口腔外に存在する。その組成物は、これだけに限定されるものではないが、歯が生える前の子供又は口内乾燥患者における使用に関して有用であり得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、その組成物は口腔への投与後に吐き出される、例えば、その組成物は口腔への投与直後に吐き出されてもよい。いくつかの実施形態において、その組成物は、少なくとも約1分間、約2分間、約3分間、約4分間、約5分間、約6分間、約7分間、約8分間、約9分間、約10分間、約15分間、約20分間、約25分間、又は約30分間にわたり口腔内に保持される。いくつかの実施形態において、その組成物は、口腔への投与後に吐き出されない。
【0138】
いくつかの実施形態において、その対象はヒトである。ある他の実施形態において、その対象は、動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ウシ、又は他のペット若しくは家畜などである。
【0139】
以下の非限定的な例は、本発明を例示するために提供されるものであり、その範囲を決して制限することはない。
【実施例】
【0140】
歯磨き粉を調製する方法(製剤A4、A5、A6、及びA-7、表1)
【0141】
非水性担体と乳化剤(Tween80)を、液体が混濁するまで、ビーカー内で緩やかに混合した。ストレプトコッカス・サリバリウスM18、ストレプトコッカス・サリバリウスK12(A-7向け)、炭酸カルシウム、及びキシリトールを、そのビーカーに加え、そして、緩やかに混合して、液体媒質中に固形物を分散させた。次に、疎水性シリカを加え、そして、その混合物を、高剪断ホモジナイザ(Ultra Turrax)又はエアーオーバヘッドスターラーを使用して(発熱を避けるために断続的に)3~5分間均質化した。
【0142】
シリカ歯磨きゲルを調製する方法(製剤A3、表1)
【0143】
非水性担体(オリーブ油)と乳化剤(Tween80)を、液体が混濁するまで、ビーカー内で緩やかに混合した。ストレプトコッカス・サリバリウスM18を、そのビーカーに加え、そして、緩やかに混合して、液体媒質中に固形物を分散させた。次に、疎水性シリカを加え、そして、その混合物を、高剪断ホモジナイザ(Ultra Turrax)又はエアーオーバヘッドスターラーを使用して(発熱を避けるために断続的に)3~5分間均質化した。
【0144】
エチルセルロース歯磨きゲルを調製する方法(製剤A1及びA2、表1)
【0145】
非水性担体(ヒマワリ油)を、マグネティックスターラーホットプレートで140~160℃の温度まで加熱した。マグネティックスターラーバーを使用して連続的に撹拌(600~700rpm)しながら、エチルセルロースを、その熱いオイルにゆっくり加えた。エチルセルロースの良好な可溶化を達成するのに使用したrpmは、600~700rpmであった。より高い速度では気泡を形成する可能性があり、そして、より低い速度では、エチルセルロースを完全に可溶化するのに十分でない可能性がある。ゆっくりとした添加と連続した撹拌が、エチルセルロース塊の形成を避けるために望ましい。エチルセルロースが完全に溶解して、透明溶液を提供する時点で(約40分)、加熱を停止し、そして、ビーカーを非加熱スターラープレートに移した。その混合物を撹拌しながら、ゆっくり冷ました。その混合物の温度が80~90℃に達した時点で、均一な混合物が達成されるまで連続的に撹拌しながら、
乳化剤(Tween80又はSpan80)を加え、続いて、ミツロウを加えた。その混合物を室温(約25℃~35℃)まで冷ました。ストレプトコッカス・サリバリウスM18及び例えば、キシリトールや甘味料などの他の固形物を、連続的に撹拌しながら加えた。場合によっては、混合物の均一性を改善するために、高剪断ホモジナイザ又はエアーオーバヘッドブレンダを使用してもよい。
【0146】
実施例1:製剤例
【0147】
前述の方法に従って調製した歯磨きゲル(A-1~A-3)及び歯磨き粉(A-4~A-7)製剤の例を表1に示す。比較製剤C-1~C-3もまた、表1に示す。C-1を、WO2017195074A1の実施例1に従って調製した。C-2を、WO2012097429A1の実施例3に従って調製した。C-3を、ビーズへの適用を用いなかったことを除いて、WO2010054439A1の実施例7に従って調製した。すべての量を、製剤の全重に基づく% w/w単位で示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表2】
【0148】
製剤の外観と受容性
【0149】
その製剤を、該製剤の視覚、嗅覚、及び味覚の官能特性を評価することによって嗜好性(palability)に関して評価した。
【0150】
A-4は、望ましいペースト様稠度及び流動特性を有する不透明~白色の外観を有した。
【0151】
製剤C-1~C-3を
図1に示す。C-1は、製造時にA-4に類似していたが、保管により、不快な外観のもろいフレークに変わった(
図2を参照のこと)。組成物の岩石様及びフレーク状の形態のため、C-1は、歯磨き粉又は歯磨きゲルとして使用されるのに好適な形態ではなかった。C-2は、なめらかなロウ状の、黄色がかった外観を有したが、5℃にて維持したとき、岩石様の固形物に変わった。C-3は、乏しい流動特性を有する粘度が高い懸濁液であった。この形態は、歯磨き粉としての使用に好適でなかった。
【0152】
安定性試験
【0153】
製剤の安定性を、保管時に生存状態で残ったプロバイオティクスの量を計測することによって評価した。
【0154】
製剤を、非常に低い水蒸気移動率を有するプラスチックチューブ又はガラスバイアル内に包装した。次に、その製剤を、25℃及び60%の相対湿度(RH)にて、又は5℃にてインキュベータ内に置いた。プロバイオティクス生存率を、指定した時点にて標準的な計数方法によって計測した。
【0155】
6カ月後に、製剤A-4及びA-6は全体的に、ガラスバイアル及び歯磨きチューブの両方で、5℃/60%のRH及び5℃の両方にて、良好な安定性を示した。A-4及びA-6は、両方の温度にてプロバイオティクスの一定の生菌数を維持した。
【0156】
A-1~A-3は、少なくとも30カ月にわたりガラスバイアル内で25℃/60%のRHにて良好な安定性を示した。
【0157】
シネレシス
【0158】
シネレシスを、製剤A-4及びC-1~C-3において計測した。シネレシスの2つの形態:加速及びリアルタイム、を計測した。
【0159】
加速シネレシス調査では、製剤を1、5、及び10分間にわたる13,000rpmでの遠心分離に供することを含む。次に、各製剤のシネレシスの量を計測した。
【0160】
加速シネレシス調査の結果を
図3に示す。A-4は、1分間及び5分間にてシネレシスを示し、10分後のシネレシスの最小限の増大を伴った安定水準に達した。試験した製剤に関して、C-1は、最小限のシネレシスを示した。C-1は、10分の遠心分離まで少しのシネレシスも示さなかった。いかなる理論にも縛られることを望むものではないが、低いシネレシスは、ゲルネットワークが強過ぎることを示唆している可能性がある。強いゲルネットワークは、ゲルマトリックスからのプロバイオティクスの放出を妨げる可能性がある。C-2は、A-4と比較して、より少ないシネレシスを示した。C-1のように、低いシネレシスは、物理的安定性に有益であり得るが、ゲルネットワークからのプロバイオティクスの放出を妨げる可能性がある。C-3は、1分にてすぐに、プロバイオティクス粉末(沈殿物)からのオイル(上清)の分離を示し、そして、その効果は試験期間を通じて増加した。C-3はゲルではないので、この効果はシネレシスではなく、液相と固相の分離である。
【0161】
リアルタイムシネレシス調査では、製剤を、25℃及び60%のRHにて維持し、そして、シネレシスについて観察した。
【0162】
A-1、C-1又はC-2に関して、シネレシスは観察されなかった。加速シネレシス調査について観察した場合、C-3は、1カ月の時点後にプロバイオティクス粉末(沈殿物)からのオイル(上清)の分離を示した。C-3はゲルではないので、この効果はシネレシスではなく、液相と固相の分離である(
図1)。
【0163】
放出プロフィール
【0164】
製剤A-1~A-4、A-7、及びC-1~C-3の放出プロフィールを評価した。BLIS M18ロゼンジを対照として使用した。製剤を、放出用媒質、すなわち、製剤を漏れ出した細菌を回収するための液体リザーバ、の中に置いた。放出用媒質を、37℃及びpH6.7に設定して、唾液/口腔のpHを模倣した。放出用媒質を、マグネティックスターラーバーを使用して約200rpmにて撹拌して、唾液の流れを模倣した。0.895gのBLIS M18ロゼンジ又は0.5gのプロバイオティクス製剤を放出用媒質に加えた(~1.5×109cfu/用量)。放出用媒質の100μLのアリコートを回収することによって、T=0、1、5、10、15、30、60、120又は180分にてサンプルを取り出し、そしてそれを、PBS(900μL)で希釈し、そして、計数するまで-20℃にて保存した。37℃にて100μLの新鮮な放出用媒質をビーカーに加えて、放出用媒質体積を維持した。分析時に、ロゼンジ又はペースト実験からのサンプルを、室温まで解凍し、そして、100μLの溶液を、10-6まで連続希釈し、次に、各希釈において3×10μLを使用してCAB K12寒天平板上でスポット平板培養した。次に、そのプレートを37℃及び5% CO2のインキュベータ内に18~20時間置き、続いて、手作業又は自動コロニー計数器を使用して計数した。
【0165】
放出プロフィール実験の結果を
図4~7に示す。ロゼンジ中のBLIS M18は、このモデルにおいて10分までに100%に達した。製剤A-1及びA-3は、30分で~85%の遅延放出を示した。A-2は、15分以内に95%の放出を示した。A-4のプロバイオティクスの累積放出は、最初の15分で約45%であり、その後の徐放を伴った。これらの結果は、ペースト又はゲルプラットフォームからのプロバイオティクスの放出が調整され得ることを示す。
【0166】
C-1及びC-2は、120分までに効果的にプロバイオティクスを放出しなかった(<5%)。C-3は、15分までに100%までプロバイオティクスを放出した。製剤の液体性質に起因して、M18の即時放出(100%)は5分以内に起こるであろうと予想される。
【0167】
定着
【0168】
BLISロゼンジ又はストレプトコッカス・サリバリウスM18含有歯磨き粉の後に口腔内で測定可能な(meaurable)レベルのプロバイオティクスを定着及び増大させるプロバイオティクス製剤の能力を調べるために、調査を実施した。
【0169】
比較試験を健常成人ヒトボランティアで実施し、ここで、ストレプトコッカス・サリバリウスM18及びストレプトコッカス・サリバリウスK12含有BLISロゼンジを、7日間にわたり毎日2回投与した。最初の投与の8時間後と最後の投与の24時間後に回収した唾液サンプルを、ストレプトコッカス・サリバリウスM18様コロニーについて分析した。
【0170】
ロゼンジは、8時間において唾液中の検出可能なプロバイオティクスの増大を実証した(
図8を参照のこと)。
【0171】
類似のプロトコールを使用して、A-4製剤の定着特性を調査した。健常ヒトボランティアは、7日間にわたり毎日2回、製剤A-4を用いて歯を磨いた。唾液サンプルを、最初の投与の8時間後と最後の投与の24時間後に回収した。
【0172】
データは、類似の定着が、ストレプトコッカス・サリバリウスM18含有ロゼンジと比較して、歯磨き粉製剤の8時間後に達成でき、そして、24時間後により良好であり得ることを示す(
図9を参照のこと)。歯磨き粉は、より短い期間しか口腔内に存在していないにもかかわらず、定着においてロゼンジ製剤に匹敵する有効性を有するので、これは驚くべきことである。
【0173】
実施例2:官能試験
【0174】
前述の方法に従って調製した歯磨き粉(B-1~B-13)製剤の例を表3に示す。すべての量を、製剤の全重に基づく% w/w単位で示す。
【表3】
【表4】
【0175】
官能試験を、3日間にわたり毎日2回各歯磨き粉を使用するための5~10人の参加者を確保し、そして、標準的な歯磨き粉と比較することによって実施した。参加者は、以下の:
・総合的な好ましさ
・フォームの量
・口爽やかさ
・洗浄能力
・とろみ
・好ましい食感
・好ましいフレーバー
・フレーバーの強さ
・苦い/金属のような後味
・長引く後味
・味が良い
を含めた多くのパラメーターを評定した。
【0176】
B3は、B1及びB2と比較して好ましかった。B6は、B5及びB4と比較して好ましかった。B6とB7が、最も好ましい製剤であった。
【0177】
標準的な歯磨き粉と比較して、B3とB7は、全体的に好ましく、具体的には、口爽やかさと洗浄能力に関して好ましかった。
【0178】
安定性試験を、実施例1に記載の手順を使用して実施した。サンプルB3、B6、B8、B9、及びB10は、25℃/60%のRHにて少なくとも6カ月にわたり安定していることがわかった(
図12)。
【0179】
実施例3:Seokらに対する比較調査
【0180】
製剤を、Seok, Y., & Lee, J. (2018). Formulating a probiotic toothpaste for vitamin B6 delivery system. Journal of International Research in Medical and Pharmaceutical Sciences, 13(2), 53-67に従って調製した。
【表5】
【0181】
代替品
*炭酸カルシウム(純粋な天然物、New Zealand)
**10mlのオリーブ油+15mlのTween80+22.5gの乳化ロウ
Azoneは使用しなかった。
【0182】
安定性試験を、実施例1に従って実施した。Seokの製剤における細胞カウントは、すぐに6log低下した。保管の24時間後に、検出可能な生きたBLIS M18又はK12細胞は存在しなかった(
図10)。細胞は、ビヒクルとしての水、並びに抗菌成分であるドデシル硫酸ナトリウム、グリセリン、Azone、及び過酸化水素の存在が原因で生存可能でなかったと予想される。
【0183】
実施例4:CN111558033に対する比較調査
【0184】
製剤を、CN111558033に従って調製した。
【表6】
【0185】
代替品
*Tween80
【0186】
安定性試験を、実施例1に従って実施した。CN111558033製剤の細胞カウントは、60日間を通じて着実に低下した。
【0187】
放出プロフィール試験は、実施例1に記載の方法を使用して評価した。CN111558033の製剤が、1分以内に組成物中のストレプトコッカス・サリバリウスの98%を放出、すなわち、即時放出、することがわかった。プロバイオティクスが水ビヒクル中に懸濁されているので、そのため、放出用媒質中に即座に分散されるので、ストレプトコッカス・サリバリウスが即座に放出されたと予想される。
【0188】
実施例5:発泡剤の比較
【0189】
この実施例を、BLIS M18の生存率に対する様々な発泡剤の効果を実証するために実施した。
【0190】
サンプルを、以下の:
1. 1.1gのBLIS M18を、9.9gのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と5分間混合し、そして、PBSを用いて10分の1まで希釈し、
2. CABK12及びBaCa寒天平板に加え、
3. 平板に10μLの発泡剤をスポットし、37℃、5%のCO
2にて24時間インキュベートし、
4. 阻害を測定すること、
によって調製した。
【表7】
【0191】
実施例6:標準的な歯磨き粉への添加
【0192】
この実施例を、標準的な歯磨き粉製剤におけるBLIS M18及びK12の生存率を実証するために実施した。
【0193】
BLIS M18及びK12を標準的なColgate(登録商標)歯磨き粉とも混合した。M18のサンプルは、BLIS M18の3ログの即時低下を示し、そして、7日後には、生きた細菌は検出されなかった。
【0194】
M18叢に対するコルゲート歯磨き粉の塗布でもまた阻害を示した。
【0195】
BLIS K12の結果は類似していた。
【0196】
実施例7:歯磨き粉製剤におけるM18の阻害
【0197】
この実施例を、原料としてのM18と歯磨き粉製剤中のM18による他の細菌種の阻害を比較するために実施した。
【0198】
原料を、PBS中に懸濁したトレハロース、マルトデキストリン、及びラクチトールから成る凍結乾燥保護剤(lyoprotectants)混合物中のストレプトコッカス・サリバリウスM18細胞の凍結乾燥細胞として提供した。
【0199】
使用した歯磨き粉製剤は、実施例2に記載のB-11であった。
【0200】
ストレプトコッカス・サリバリウスM18原料生成物(トレハロース/ラクチトール/マルトデキストリンを伴ったM18粉末);-BLIS Technologies Ltd, New Zealand製);S.ミュータンス(S.mutans)10449(ATCC 25175)-アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手可能;S.ピオゲネス(S.pyogenes)71-698;S.ピオゲネスFF22;S.ピオゲネスW-1;A.ビスコサス(A.viscosus)T14;S.ミュータンス31c-要求によりBLIS Technologies Ltdから入手可能。S.ピオゲネス71-679-Lewis Wannamakerから贈与された基準。
【0201】
BLIS歯磨き粉中のM18の阻害能力を、M18原料と比較した。製剤は、1×109のM18カウントを有した。その製剤をシリンジにより0.1gに計測し、そして、産生菌画線のために平板上に分注した。原料をPBSで希釈し(対照)、同様に1×109のM18カウントを有するそれをピペット分注した(100μl)。
【0202】
バクテリオシン産生を、延期拮抗薬試験を使用して評価した(Tagg and Bannister 1979; Med Microbiology 12:397.)。簡単に言えば、試験菌株が寒天培地中に(単数若しくは複数の)バクテリオシンを分泌し、そして、これに続いて、様々なバクテリオシン感受性(インジケータ)菌株をバクテリオシン含有寒天に適用する。バクテリオシンがインジケータ菌株を阻害する場合、バクテリオシン寒天上での付随するその増殖の不存在(すなわち、阻害領域)がある。この調査では、延期拮抗薬試験を、ストレプトコッカス・サリバリウスM18を用いて実施して、さまざまな口腔内細菌、特にS.ミュータンス及びS.ピオゲネスに対するインビトロ阻害活性を評価した。
【0203】
いくつかのM18歯磨き粉製剤は、特に、効率的に口腔病原菌を阻害するように見えることがわかった(
図13)。この実験では、歯磨き粉製剤中のM18が、PBS対照と比較して類似の又はより良好なBLIS活性を有することを示す。
【0204】
本発明の範囲を上記の実施例だけに制限することを企図しない。当業者によって理解されるであろうとおり、添付の特許請求の範囲に明確に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更が可能である。
【化1】
【化2】
【国際調査報告】