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特表2024-507347Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクトの水性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクトの水性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240209BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240209BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240209BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20240209BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240209BHJP
   A61K 38/55 20060101ALI20240209BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240209BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/22
A61K47/20
A61K47/10
A61K47/26
A61K39/395 Y
A61K38/19
A61K38/18
A61K38/43
A61P29/00 101
A61P19/02
A61K38/16
A61K38/36
A61P7/04
A61K38/55
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549058
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 GB2022050424
(87)【国際公開番号】W WO2022175663
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/150,510
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519111280
【氏名又は名称】アレコル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジェゼク
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ジェリング
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC07
4C076CC14
4C076CC21
4C076CC41
4C076DD07F
4C076DD09F
4C076DD24Z
4C076DD25Z
4C076DD26Z
4C076DD37R
4C076DD38D
4C076DD41Z
4C076DD42Z
4C076DD43Z
4C076DD50Z
4C076DD51
4C076DD51Z
4C076DD57Z
4C076DD59Z
4C076DD60Z
4C076DD67D
4C076DD69F
4C076EE23F
4C076EE41
4C076EE49F
4C076EE59
4C076FF14
4C076FF43
4C076FF57
4C076FF61
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA53
4C084DA01
4C084DC01
4C084DC16
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA53
4C084ZA96
4C084ZB15
4C084ZC20
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085AA35
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA30
4H045AA50
4H045BA41
4H045DA56
4H045EA20
4H045GA45
(57)【要約】
特に、pHが約4.0~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
任意に、pKaが約3.0~約9.5の範囲であり、かつ該pKaが該組成物のpHの2 pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1種以上の緩衝剤;
任意に、1種以上の中性アミノ酸;及び
無電荷浸透圧調整剤
を含み;
該緩衝剤が、該組成物中に約0mM~約10mMの範囲の総濃度で存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが約4.0~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
任意に、pKaが約3.0~約9.5の範囲であり、かつ該pKaが該組成物のpHの2 pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1種以上の緩衝剤;
任意に、1種以上の中性アミノ酸;及び
無電荷浸透圧調整剤
を含み;
該緩衝剤が、該組成物中に約0mM~約10mMの範囲の総濃度で存在し;かつ
該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物。
【請求項2】
緩衝剤が、約0.1mM~約5mM、例えば、約0.1mM~約4mM、約0.1mM~約3mM又は約0.1mM~約2mM又は約0.1mM~約1mMなどの範囲の総濃度で存在する、請求項1記載の水溶液組成物。
【請求項3】
緩衝剤が、約1mM~約5mM、例えば、約1mM~約4mM又は約1mM~約3mMなどの範囲の総濃度で存在する、請求項1記載の水溶液組成物。
【請求項4】
緩衝剤が、<4.5mM、例えば、<4mM、<3mM、<2mM、<1mM、<0.5mM、<0.4mM、<0.3mM、<0.2mM又は<0.1mMなどの総濃度で存在する、請求項1記載の水溶液組成物。
【請求項5】
緩衝剤を実質的に含まない、請求項1記載の水溶液組成物。
【請求項6】
前記緩衝剤が、約5mM~約10mM、例えば、約5.5mM~約10mM、約6mM~約10mM、約6.5mM~約10mM、約7mM~約10mM、約7.5mM~約10mM、約8mM~約10mM、約8.5mM~約10mM又は約9mM~約10mMなどの範囲の総濃度で存在する、請求項1記載の水溶液組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載の水溶液組成物であって、
前記緩衝剤が、pKaが該組成物のpHの1単位以内であるイオン化可能な基を含む、前記水溶液組成物。
【請求項8】
前記緩衝剤(1種又は複数種)が、クエン酸、ヒスチジン、マレイン酸、亜硫酸、グリオキシル酸、アスパルテーム、グルクロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、グリコール酸、アデニン、コハク酸、アスコルビン酸、安息香酸、フェニル酢酸、没食子酸、シトシン、p-アミノ安息香酸、ソルビン酸、酢酸、プロピオン酸、アルギン酸、尿酸、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、重炭酸、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N-(2-アセトアミド)-2-イミノ二酢酸、2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸、ピペラジン、N,N′-ビス(2-エタンスルホン酸)、リン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリエタノールアミン、ピペラジン-N,N′-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N-トリス(ヒドロキシメチル)グリシン、及びN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸、及びそれらの塩、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~4、6又は7のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項9】
前記緩衝剤が、クエン酸、ヒスチジン、マレイン酸、酒石酸、乳酸、安息香酸、酢酸、重炭酸、リン酸、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンからなる群から選択され、例えば、クエン酸及びリン酸から選択される、請求項8記載の水溶液組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項記載の水溶液組成物であって、
該組成物のモル浸透圧濃度が、約200mOsm/L~約600mOsm/L、例えば、約200mOsm/L~約500mOsm/L、約200mOsm/L~約400mOsm/L、又は約300mOsm/Lの範囲である、前記水溶液組成物。
【請求項11】
ポリオールを無電荷浸透圧調整剤として含む、請求項1~10のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項12】
グリセロール、1,2-プロパンジオール、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、PEG300、及びPEG400から選択され、特に、グリセロール、マンニトール、1,2-プロパンジオール、及びスクロースから選択される無電荷浸透圧調整剤を含む、請求項1~10のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項13】
前記無電荷浸透圧調整剤の総濃度が、50~1000mM、例えば、200~500mM、又は約300mMなどである、請求項1~12のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項14】
グリシン、メチオニン、プロリン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミンから選択される1種以上の中性アミノ酸を含む、請求項1~13のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項15】
グリシン、メチオニン、プロリン及びアラニンから選択される1種以上の中性アミノ酸を含む、請求項15記載の水溶液組成物。
【請求項16】
プロリンを中性アミノ酸として含む、請求項15記載の水溶液組成物。
【請求項17】
グリシンを中性アミノ酸として含む、請求項15記載の水溶液組成物。
【請求項18】
該組成物中の前記1種以上の中性アミノ酸の総濃度が、20~200mM、例えば、50~150mMである、請求項1~17のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項19】
前記操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、10mM未満である、請求項1~18のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項20】
前記pHが、約4.0~約7.5、例えば、約5.0~約7.5など、例えば、約5.5~約7.5、例えば、約6.0~約7.5、例えば、約7.0~約7.5などの範囲である、請求項1~19のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項21】
前記操作されたタンパク質コンストラクトが、Fcドメインと異種ポリペプチドとの融合体である、請求項1~20のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項22】
前記異種ポリペプチドが、サイトカイン、成長因子、凝血因子、酵素、受容体タンパク質、GLP-1アゴニスト、並びにそれらの機能的断片及びドメインから選択される、請求項21記載の水溶液組成物。
【請求項23】
前記操作されたタンパク質コンストラクトが、エタネルセプト、アバタセプト、ベラタセプト、アフリベルセプト、リロナセプト、ロミプロスチム、イロクテイト、ルスパテルセプト、デュラグルチド、及びオルプロリクスから選択される、請求項22記載の水溶液組成物。
【請求項24】
前記異種ポリペプチドが、プロテアーゼ阻害剤である、請求項22記載の水溶液組成物。
【請求項25】
前記操作されたタンパク質コンストラクトが、2つの異なる可変結合領域を有する4本鎖抗体の形式の二重特異性抗体である、請求項1~20のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項26】
前記操作されたタンパク質コンストラクトが、2つの異なる可変結合領域を有する2本鎖抗体の形式の二重特異性抗体である、請求項1~20のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項27】
前記Fcドメインが、IgG、例えば、IgG1などのFcドメインである、請求項1~26のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項28】
前記操作されたタンパク質コンストラクトが、IgG Fcドメイン及び2つ以上の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含む、請求項1~20又は27のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項29】
前記操作されたタンパク質コンストラクトが、それぞれが1つ以上(例えば、1つ又は2つ)の免疫グロブリン鎖可変ドメインに直接連結された2本の鎖で形成されるIgG Fcドメインを含む、請求項28記載の水溶液組成物。
【請求項30】
前記操作されたタンパク質コンストラクトが、それぞれが1つ以上(例えば、1つ又は2つ)の免疫グロブリン鎖可変ドメインに間接的に連結された2本の鎖で形成されるIgG Fcドメインを含む、請求項28記載の水溶液組成物。
【請求項31】
前記免疫グロブリン鎖可変ドメインのそれぞれが、同じ特異性を有する、請求項28~30のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項32】
前記コンストラクトが、2つ以上(例えば、2つ)の異なる特異性を有する免疫グロブリン鎖可変ドメインを含む、請求項28~30のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項33】
前記免疫グロブリン鎖可変ドメインが、VHHドメインである、請求項28~32のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項34】
前記免疫グロブリン鎖可変ドメインが、VHドメインである、請求項28~32のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項35】
前記免疫グロブリン鎖可変ドメインが、VLドメインである、請求項28~32のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項36】
前記タンパク質が、1~400mg/ml、例えば、10~200mg/ml、例えば、20~100mg/mlの濃度で存在する、請求項1~35のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項37】
非イオン性界面活性剤を含む、請求項1~36のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項38】
前記非イオン性界面活性剤が、アルキルグリコシド、ポリソルベート、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体、及びポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテルからなる群から選択される、請求項37記載の水溶液組成物。
【請求項39】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80などである、請求項37記載の水溶液組成物。
【請求項40】
前記非イオン性界面活性剤が、10~2000μg/ml、例えば、50~1000μg/ml、100~500μg/ml、又は約200μg/mlなどの濃度で存在する、請求項37~39のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項41】
保存料、例えば、フェノール系保存料又はベンジル系保存料などを含む、請求項1~40のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項42】
前記フェノール系保存料又はベンジル系保存料が、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、及びメチルパラベンからなる群から選択される、請求項41記載の水溶液組成物。
【請求項43】
前記保存料が、10~100mM、例えば、20~80mM又は25~50mMなどの濃度で存在する、請求項41又は42記載の水溶液組成物。
【請求項44】
療法における使用のための組成物である、請求項1~43のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【請求項45】
医薬組成物である、請求項1~44のいずれか1項記載の水溶液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクトの、低緩衝剤濃度及び低イオン強度の水溶液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクトが、療法において広く用いられている。Fcドメインは、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体及び補体系の一部のタンパク質と相互作用してそれにより免疫系を活性化する抗体のC-末端領域である。IgG、IgA、及びIgD抗体アイソタイプにおいて、Fcドメインは、それぞれが抗体の重鎖の第2及び第3定常ドメインに由来する2つの同一のタンパク質鎖断片から構成されている。IgM及びIgE抗体アイソタイプにおいて、Fcドメインは、それぞれが抗体の重鎖の第2、第3、及び第4の定常ドメインに由来する2つの同一のタンパク質鎖断片から構成される。Fcドメインの分子量は、通常、25~40kDaの範囲内であり得、かつグリコシル化が存在する場合にはより大きいことがあり得る。広範な生理学的な作用が、マスト細胞、好塩基球、及び好酸球の細胞溶解及び脱顆粒を含む、抗体Fcドメイン結合によって媒介される免疫系の活性化の結果として生じる。
【0003】
二重特異性抗体及び三重特異性抗体などの様々な操作された抗体タンパク質コンストラクトが、開発されている。抗体分子のFab部分(抗原結合特異性を付与する部分)から分離されたFcが、その生理学的な目的とは異なる目的、特に、タンパク質コンストラクトのインビボ半減期を延長する目的を果たすことができる、操作されたタンパク質コンストラクトもいくつか開発されている。
【0004】
水溶液として製剤化される場合、タンパク質は、不安定であり、保管されている間に、劣化しやすく、結果として、生物活性を喪失しやすい。劣化は、凝集、析出、又はゲル形成を含む、物理的な性質であることもある。劣化は、加水分解性の切断、脱アミド化、環状イミド形成、アスパラギン酸/グルタミン酸異性化、又は酸化を含む化学的な性質であることもある。
【0005】
劣化プロセスの速度は、温度の上昇と共に増加し、タンパク質治療分子は、一般に、低い温度であるほどより安定である。しかしながら、多くの場合、冷蔵下でさえ、液体形態で意図される有効期間(通常24ヶ月)にわたって安定である治療用タンパク質製品を開発することは難しい。加えて、患者の利便性を確保するために、多くの場合、最高で25℃又は最高で30℃などの高い温度で、特定の期間又はその全有効期間のいずれかにわたって安定な製品を開発する必要がある。
【0006】
タンパク質治療薬の安定性を制御する最も重要なパラメーターの一つは、pHである。従って、pH最適化は、製剤開発において鍵となる工程である。多くの治療用タンパク質が、4.0~8.5の間の選択されたpHで製剤化されている。pHを選択された値に確実に維持し、pH変動を確実に最小化することが重要であると考えられている。従って、ある程度の緩衝能が製剤中に必要とされることが理解されている。より大きなタンパク質分子は、通常、ポリペプチド骨格のアミノ酸側鎖内でのイオン化可能な基の存在を原因とするいくらかの自己緩衝能を有する。
【0007】
本発明は、水溶液組成物中でのFcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクトの不安定性の問題に対処する。
【0008】
WO2006/138181A2(Amgen)は、他の緩衝剤を実質的に含まない自己緩衝性タンパク質製剤を開示している。
【0009】
WO2009/073569(Abbott)は、約2.5mS/cm未満の導電率を有する、アダリムマブなどの抗体の水性製剤を開示している。
【0010】
WO2008/084237(Arecor)は、慣用の緩衝剤を意味のある量で含まないタンパク質組成物を開示している。その代わりに、組成物のpHよりも少なくとも1単位低いか又は1単位高いpKa値を有する添加剤である「置き換え緩衝剤」が利用されている。
【0011】
WO2018/094316(Just Biotherapeutics)は、アフリベルセプトを含む点眼製剤を開示している。
【0012】
WO2013/059412及びWO2014/011629(Coherus)は、エタネルセプトの水性製剤を開示している。
【発明の概要】
【0013】
(発明の概要)
本発明により、pHが約4.0~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
任意に、pKaが約3.0~約9.5の範囲であり、かつ該pKaが該組成物のpHの2 pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1種以上の緩衝剤;
任意に、1種以上の中性アミノ酸;及び
無電荷浸透圧調整剤
を含み;
該緩衝剤が、該組成物中に約0mM~約10mMの範囲の総濃度で存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載されるのは、緩衝剤が存在しないか低濃度でありかつ低いイオン強度を有する、Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクトの安定な水溶液組成物である。
【0015】
本明細書における「pH」への言及が全て、25℃で評価された組成物のpHを指すことに留意すべきである。「pKa」に対する全ての言及は、25℃で評価されたイオン化可能な基のpKaを指す(「CRC化学及び物理学ハンドブック、第79版(CRC Handbook of Chemistry and Physics、79th Edition)」、1998年、D. R. Lideを参照されたい)。必要である場合、ポリペプチド内に存在する状態のアミノ酸側鎖のpKa値を、適当な計算機を用いて推定することができる。
【0016】
本発明者らは、緩衝剤が、Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクトの安定性に対して有害な影響を有していると考えている。従って、組成物中の緩衝剤の濃度は、できる限り制限すべきである。ある実施態様において、最小限の量の緩衝剤が、安定な組成物を維持しかつpH変動を最小化するのに必要とされる。
【0017】
存在する場合、緩衝剤は、組成物のpHで緩衝能を有するものである。緩衝剤は、通常、該組成物のpHの1 pH単位以内のpKaを有するイオン化可能な基を含む。しかしながら、組成物のpHよりも1 pH単位高い又は低いpKaを有するイオン化可能な基を有する部分も、十分な量で存在するのであれば、いくらかの緩衝作用を提供することがある。一実施態様において、前記(又はある)緩衝剤は、前記組成物のpHの1 pH単位以内のpKaを有するイオン化可能な基を含む。別の実施態様において、前記(又はある)緩衝剤は、前記組成物のpHの1.5 pH単位以内のpKaを有するイオン化可能な基を含む(例えば、該組成物のpHの1~1.5 pH単位の間など)。さらなる実施態様において、前記(又はある)緩衝剤は、該組成物のpHの2 pH単位以内のpKaを有するイオン化可能な基を含む(例えば、該組成物のpHの1.5~2 pH単位の間など)。
【0018】
実施態様において、組成物は、緩衝剤を実質的に含まず、例えば、緩衝剤を全く含有しない。実施態様において、組成物は、単一の緩衝剤を含有する。実施態様において、組成物は、2種類の緩衝剤を含有する。好適には、1種以上の緩衝剤が、存在する。
【0019】
一実施態様において、前記組成物中の緩衝剤の総濃度は、4.5mM未満、例えば、4mM未満、3mM未満、2mM未満、1mM未満、0.5mM未満、0.4mM未満、0.3mM未満、又は0.2mM未満、又は0.1mM未満などである。一実施態様において、緩衝剤の総濃度は、約0.1mM~約5mM、例えば、約0.5mM~約5mM、約0.1mM~約4mM、約0.5mM~約4mM、約0.1mM~約3mM、約0.5mM~約3mM、約0.1mM~約2mM、約0.5mM~約2mM、約0.1mM~約1mM又は約0.5mM~約1mMなどの範囲である。一実施態様において、緩衝剤の総濃度は、約1mM~約5mM、約1mM~約4mM又は約1mM~約3mMの範囲である。一実施態様において、前記組成物中の緩衝剤の総濃度は、<4.5mM、例えば、<4mM、<3mM、<2mM、<1mM、<0.5mM、<0.4mM、<0.3mM、<0.2mM又は<0.1mMなどである。一実施態様において、水溶液組成物は、緩衝剤を実質的に含まない。本明細書で使用される、「実質的に含まない」は、0.1mM未満の緩衝剤を含有する水溶液組成物を意味する。溶液中の緩衝剤の濃度を考える場合、操作されたタンパク質コンストラクト自体の緩衝能があれば、除外すべきである。
【0020】
一実施態様において、緩衝剤は、約1mM~約5mM、例えば、約1mM~約4mM、約1mM~約3mM又は約1mM~約2mMなどの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、前記組成物中に、約1.5mM~約5mM、例えば、1.5mM~約4mM、約1.5mM~約3mM又は約1.5mM~約2mMなどの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、前記組成物中に、約2mM~約4mM又は約2mM~約3mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、前記組成物中に、約3.5mM~約4mMの範囲の総濃度で存在する。
【0021】
一実施態様において、緩衝剤は、約5mM~約10mM、例えば、約5.5mM~約10mM、約6mM~約10mM、約6.5mM~約10mM、約7mM~約10mM、約7.5mM~約10mM、約8mM~約10mM、約8.5mM~約10mM又は約9mM~約10mMなどの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約5mM~約9.5mM、例えば、約5.5mM~約9.5mM、約6mM~約9.5mM、約6.5mM~約9.5mM、約7mM~約9.5mM、約7.5mM~約9.5mM、約8mM~約9.5mM又は約8.5mM~約9.5mMなどの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約5mM~約9mM、例えば、約5.5mM~約9mM、約6mM~約9mM、約6.5mM~約9mM、約7mM~約9mM、約7.5mM~約9mM、又は約8mM~約9mMなどの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約5mM~約8.5mM、例えば、約5.5mM~約8.5mM、約6mM~約8.5mM、約6.5mM~約8.5mM、約7mM~約8.5mM、又は約7.5mM~約8.5mMなどの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約5mM~約8mM、例えば、約5.5mM~約8mM、約6mM~約8mM、約6.5mM~約8mM、又は約7mM~約8mMなどの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約5mM~約7.5mM、例えば、約5.5mM~約7.5mM、約6mM~約7.5mM、又は約6.5mM~約7.5mMなどの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約5mM~約7mM、例えば、約5.5mM~約7mM、又は約6mM~約7mMなどの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約5mM~約6.5mM、例えば、約5.5mM~約6.5mMなどの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約5mM~約6mMの範囲の総濃度で存在する。
【0022】
一実施態様において、緩衝剤は、約3mM~約10mM、約3.5mM~約9.5mM、約4mM~約9mM、約4.5mM~約8.5mM、約5mM~約8mM、約5.5mM~約7.5mM又は約6mM~約7mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約3.5mM~約10mM、約4mM~約10mM、約4.5mM~約10mM、約5mM~約10mM、約5.5mM~約10mM又は約6mM~約10mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約3mM~約9.5mM、約3.5mM~約9.5mM、約4mM~約9.5mM、約4.5mM~約9.5mM、約5mM~約9.5mM、約5.5mM~約9.5mM又は約6mM~約9.5mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約3mM~約9mM、約3.5mM~約9mM、約4mM~約9mM、約4.5mM~約9mM、約5mM~約9mM、約5.5mM~約9mM又は約6mM~約9mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約3mM~約8.5mM、約3.5mM~約8.5mM、約4mM~約8.5mM、約4.5mM~約8.5mM、約5mM~約8.5mM、約5.5mM~約8.5mM又は約6mM~約8.5mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約3mM~約8mM、約3.5mM~約8mM、約4mM~約8mM、約4.5mM~約8mM、約5mM~約8mM、約5.5mM~約8mM又は約6mM~約8mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約3mM~約7.5mM、約3.5mM~約7.5mM、約4mM~約7.5mM、約4.5mM~約7.5mM、約5mM~約7.5mM、約5.5mM~約7.5mM又は約6mM~約7.5mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約3mM~約7mM、約3.5mM~約7mM、約4mM~約7mM、約4.5mM~約7mM、約5mM~約7mM、約5.5mM~約7mM又は約6mM~約7mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約3mM~約6.5mM、約3.5mM~約6.5mM、約4mM~約6.5mM、約4.5mM~約6.5mM、約5mM~約6.5mM、又は約5.5mM~約6.5mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約3mM~約6mM、約3.5mM~約6mM、約4mM~約6mM、約4.5mM~約6mM、又は約5mM~約6mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約3mM~約5.5mM、約3.5mM~約5.5mM、約4mM~約5.5mM、又は約4.5mM~約5.5mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約3mM~約5mM、約3.5mM~約5mM、又は約4mM~約5mMの範囲の総濃度で存在する。一実施態様において、緩衝剤は、約3mM~約4.5mM、又は約3.5mM~約4.5mMの範囲の総濃度で存在する。
【0023】
水溶液のpHは、酸を添加すると低下し、塩基を添加すると上昇する。所与の温度かつ大気圧で、酸の添加時に低下するpHの大きさ又は塩基の添加時に上昇するpHの大きさは、(1)添加された酸又は塩基の量、(2)水溶液の初期pH(すなわち、該酸又は該塩基の添加の前)、及び(3)緩衝剤の存在に依存する。従って、(1)所与のpHから出発すると、より多い量の酸又は塩基の添加は、より大きなpH変化の大きさをもたらし、(2)所与の量の酸又は塩基の添加は、中性のpH(すなわち、pH 7.0)で最大のpH変化をもたらし、pH変化の大きさは、初期pHがpH 7.0から離れるにつれて低下し、(3)所与のpHから出発して、pH変化の大きさは、緩衝剤の非存在下でよりも緩衝剤の存在下での方が少ない。このように、緩衝剤は、酸又は塩基を溶液に添加した場合にpHの変化を減少させる能力を有する。
【0024】
好適には、物質は、強酸又は強塩基のいずれかを添加して溶液中の該酸又は該塩基の0.1mMの増加をもたらした場合に、該緩衝剤を含まない同一の溶液と比較して75%まで、好ましくは、50%、最も好ましくは、25%まで溶液のpH変化の大きさを減少させる能力があれば緩衝剤であるとみなされる。
【0025】
逆に言えば、好適には、物質は、強酸又は強塩基のいずれかを添加して溶液中の該酸又は該塩基の0.1mMの増加をもたらした場合に、該物質を含まない同一の溶液と比較して75%まで、好ましくは、50%、最も好ましくは、25%まで溶液のpH変化の大きさを減少させる能力がなければ、緩衝剤であるとみなされない。
【0026】
一実施態様において、前記又はある緩衝剤は、アミノ酸である。別の実施態様において、前記又はある緩衝剤は、アミノ酸ではない。実施態様において、組成物は、アミノ酸であるリジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン酸、及びアスパラギン酸を含まない。実施態様において、組成物は、システインを含まない。
【0027】
存在する場合、好適な緩衝剤としては:クエン酸、ヒスチジン、マレイン酸、亜硫酸、グリオキシル酸、アスパルテーム、グルクロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、グリコール酸、アデニン、コハク酸、アスコルビン酸、安息香酸、フェニル酢酸、没食子酸、シトシン、p-アミノ安息香酸、ソルビン酸、酢酸、プロピオン酸、アルギン酸、尿酸、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、重炭酸、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N-(2-アセトアミド)-2-イミノ二酢酸、2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸、ピペラジン、N,N′-ビス(2-エタンスルホン酸)、リン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリエタノールアミン、ピペラジン-N,N′-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N-トリス(ヒドロキシメチル)グリシン、及びN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸、及びそれらの塩、並びにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。一実施態様において、緩衝剤は、ヒスチジン、マレイン酸、亜硫酸、グリオキシル酸、アスパルテーム、グルクロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、グリコール酸、アデニン、コハク酸、アスコルビン酸、安息香酸、フェニル酢酸、没食子酸、シトシン、p-アミノ安息香酸、ソルビン酸、酢酸、プロピオン酸、アルギン酸、尿酸、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、重炭酸、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N-(2-アセトアミド)-2-イミノ二酢酸、2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸、ピペラジン、N,N′-ビス(2-エタンスルホン酸)、リン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリエタノールアミン、ピペラジン-N,N′-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N-トリス(ヒドロキシメチル)グリシン、及びN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸、及びそれらの塩、並びにそれらの組合せから選択される。一実施態様において、緩衝剤は、クエン酸、マレイン酸、亜硫酸、グリオキシル酸、アスパルテーム、グルクロン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、グリコール酸、アデニン、コハク酸、アスコルビン酸、安息香酸、フェニル酢酸、没食子酸、シトシン、p-アミノ安息香酸、ソルビン酸、酢酸、プロピオン酸、アルギン酸、尿酸、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、重炭酸、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N-(2-アセトアミド)-2-イミノ二酢酸、2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸、ピペラジン、N,N′-ビス(2-エタンスルホン酸)、リン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリエタノールアミン、ピペラジン-N,N′-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)グリシン、及びN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸、及びそれらの塩、並びにそれらの組合せから選択される。一実施態様において、緩衝剤は、クエン酸、ヒスチジン、マレイン酸、酒石酸、乳酸、安息香酸、酢酸、重炭酸、リン酸、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)からなる群から選択され、例えば、ヒスチジン、マレイン酸、酒石酸、乳酸、安息香酸、酢酸、重炭酸、リン酸、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、特に、ヒスチジン、乳酸、酢酸、リン酸、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)などからなる群から選択される。例えば、緩衝剤は、リン酸である。あるいは、緩衝剤は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)である。あるいは、緩衝剤は、ヒスチジンである。あるいは、緩衝剤は、乳酸である。あるいは、緩衝剤は、酢酸である。あるいは、緩衝剤は、クエン酸である。
【0028】
実施態様において、組成物は、リン酸ナトリウムを含まない。実施態様において、組成物が、リン酸緩衝剤(例えば、リン酸ナトリウム)を含む場合、好適には、濃度は、4.5mM未満、例えば、4.0mM未満である。
【0029】
本発明の組成物の主溶媒は、注射用水などの水である。組成物の他の成分(例えば、ポリオール)は、操作されたタンパク質コンストラクトの可溶化に貢献し得る。
【0030】
組成物は、ポリオールなどの無電荷浸透圧調整剤を含む。無電荷浸透圧調整剤の例としては、グリセロール、1,2-プロパンジオール、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、PEG300、及びPEG400が挙げられる。好適には、無電荷浸透圧調整剤は、グリセロール、マンニトール、1,2-プロパンジオール、及びスクロースから選択される。含まれる場合、無電荷浸透圧調整剤の総濃度は、好適には、50~1000mM、例えば、200~500mM、例えば、約300mMなどである。
【0031】
組成物は、好適には、生理学的に許容可能であり、従って、非経口投与に適したモル浸透圧濃度を有する。従って、組成物のモル浸透圧濃度は、好適には、約200mOsm/L~約600mOsm/L、例えば、約200mOsm/L~約500mOsm/L、約200mOsm/L~約400mOsm/L、又は約300mOsm/Lの範囲である。
【0032】
一実施態様において、組成物のモル浸透圧濃度は、約200mOsm/L~約550mOsm/L、例えば、約200mOsm/L~約500mOsm/L、約200mOsm/L~約450mOsm/L、約200mOsm/L~約400mOsm/L、約200mOsm/L~約350mOsm/L、又は約200mOsm/L~約300mOsm/Lの範囲である。一実施態様において、組成物のモル浸透圧濃度は、約250mOsm/L~約600mOsm/L、例えば、約300mOsm/L~約600mOsm/L、約350mOsm/L~約600mOsm/L、約400mOsm/L~約600mOsm/L、約450mOsm/L~約600mOsm/L、又は約500mOsm/L~約600mOsm/Lの範囲である。組成物は、例えば、ヒト血漿と等張である。また、組成物は、低張性又は高張性であってもよく、例えば、投与前の希釈が意図されるものである。一実施態様において、組成物は、僅かに高張性である。一実施態様において、組成物のモル浸透圧濃度は、約300mOsm/L~約500mOsm/L、例えば、約350mOsm/L~約500mOsm/Lなど、例えば、約400mOsm/L~約500mOsm/Lなどの範囲である。
【0033】
組成物は、任意に、1種以上の中性アミノ酸を含み得る。本明細書で使用される場合、中性アミノ酸は、側鎖が、組成物のpHで顕著にイオン化される(例えば、側鎖の20%超、特に、50%超が負又は正の電荷を有する)イオン化可能な基を含有しないアミノ酸である。例示的な中性アミノ酸は、グリシン、メチオニン、プロリン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニン、アスパラギン、及びグルタミン、特に、それらのL異性体から選択される。
【0034】
好適には、中性アミノ酸は、グリシン、メチオニン、プロリン、及びアラニンから選択され、特に、プロリン及びグリシンから選択され、特に、プロリンである。
【0035】
存在する場合、前記1種以上の中性アミノ酸の総濃度は、例えば、20~250mM、例えば、20~200mM、例えば、50~150mM、例えば、50~100mM、又は25~75mMであり得る。あるいは、これは、100~250mM、例えば、150~200mMであり得る。
【0036】
本発明者らは、イオンの存在が、Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクトの安定性に対して有害な影響を有すると考えている。従って、組成物のイオン強度は、できる限り制限されるべきである。
【0037】
操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く組成物の総イオン強度は、20mM未満、好適には、10mM未満、例えば、9mM未満、8mM未満、7mM未満、6mM未満、又は5mM未満である。「総イオン強度」という用語は、下記の溶液中の全てのイオンの濃度の関数として本明細書で使用される:
【数1】
(式中、cxは、イオンxのモル濃度(mol L-1)であり、zxは、イオンcxの正味の電荷である)。合計は、該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く、溶液中に存在する全てのイオン(n)をカバーする。任意選択の中性アミノ酸が、本発明の組成物においてはゼロの正味電荷を有し、従って、総イオン強度に寄与しないことが理解されるであろう。いかなる場合でも、いずれの中性アミノ酸の寄与も含まれない。
【0038】
組成物のpHは、約4.0~約8.5、例えば、約4.0~約7.5又は約5.0~約8.5など、例えば、約6.0~約8.5、例えば、約6.5~約8.5又は約6.0~約7.5、例えば、約7.0~約7.5などの範囲である。対象となる他の範囲としては、約5.0~約8.0、例えば、約5.0~約7.5、例えば、約5.5~約7.5、特に、約6.0~約7.5が挙げられる。
【0039】
一実施態様において、組成物のpHは、約4.0~約8.5、例えば、約4.0~約8.0、約4.0~約7.5、約4.0~約7.0、約4.0~約6.5、約4.0~約6.0、約4.0~約5.5、又は約4.0~約5.0などの範囲である。一実施態様において、組成物のpHは、約4.5~約8.5、例えば、約4.5~約8.0、約4.5~約7.5、約4.5~約7.0、約4.5~約6.5、約4.5~約6.0、又は約4.5~約5.5などの範囲である。一実施態様において、組成物のpHは、約5.0~約8.5、例えば、約5.0~約8.0、約5.0~約7.5、約5.0~約7.0、約5.0~約6.5、又は約5.0~約6.0などの範囲である。一実施態様において、組成物のpHは、約5.5~約8.5、例えば、約5.5~約8.0、約5.5~約7.5、約5.5~約7.0、又は約5.5~約6.5などの範囲である。一実施態様において、組成物のpHは、約6.0~約8.5、例えば、約6.0~約7.5、又は約6.0~約7.0などの範囲である。
【0040】
本発明の組成物は、操作されたタンパク質コンストラクトを含む。操作されたタンパク質コンストラクトは、一般工学(generic engineering)(遺伝子融合)又は合成化学の産物として通常作製される非天然タンパク質である。操作されたタンパク質コンストラクトは、場合によっては、1つのインタクトなタンパク質コンストラクト内に、2種以上の個々のタンパク質(及び/又は個々のタンパク質をコードする個々の遺伝子)に元々は存在していた複数の有益な性質を兼ね備える。例えば、Fcドメインを、特定の所望の生物学的機能(例えば、GLP-1アゴニスト)を有するタンパク質に連結(すなわち、融合)することができ、それによって、それを酵素分解から保護し、従って、その循環半減期を増加させる。あるいは2つ以上の抗原結合性免疫グロブリンドメインを、直接的に又は追加のドメインによってのいずれかでFcドメインに連結(すなわち、融合)して、複数の結合価及び/又は特異性を有する操作された抗体を作製することができる。このような遺伝子工学又は合成化学の原理を用いるタンパク質構造の人工的な操作は、高度に望ましい疾患治療のための生理学的性質を有する操作されたコンストラクトをもたらすことが多いものの、例えば、通常は露出されていない広範な疎水性パッチ又は他の不安定性ホットスポットなどの、新たに生成したタンパク質表面での構造モチーフの非天然の曝露を招くことが多い。これは、次に、操作されたタンパク質コンストラクトの安定性の悪化、例えば、凝集する傾向の増加などをもたらす。本発明は、操作されたタンパク質コンストラクトのこのような不安定性の増加に対処する。
【0041】
完全ヒト型単一特異性抗体(及び他の非ヒト種の天然抗体)は、細菌又は真菌などの異種宿主における発現によって産生させた場合であっても、「操作されたタンパク質コンストラクト」という用語には包含されない。ヒト免疫系を有するように操作された非ヒト動物(マウスなど)によって産生されたヒト単一特異性抗体も、「操作されたタンパク質コンストラクト」という用語によって包含されない。例えば、アダリムマブは、操作されたタンパク質コンストラクトではない。一実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、キメラ抗体ではなく、特に、単一特異性キメラ抗体ではない。一実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、ヒト化抗体ではなく、特に、単一特異性ヒト化抗体ではない。
【0042】
本発明の操作されたタンパク質コンストラクトは、Fcドメインを含む。Fcドメインは、Fc受容体又は補体系の一部のタンパク質と相互作用して免疫系を活性化する抗体のドメインであり、その誘導体を含む。Fcドメインは、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)、IgA(例えば、IgA1又はIgA2)、IgD、IgM、IgY、及びIgEアイソタイプ由来であり得る。IgG、IgA、及びIgDアイソタイプ由来のFcドメインは、各々が抗体の重鎖の第2及び第3定常ドメインに由来する、ジスルフィド結合によって接続された2つの同一のタンパク質鎖断片を含む。IgM及びIgEアイソタイプに由来するFcドメインは、各々が抗体の重鎖の第2、第3、及び第4の定常ドメインに由来する、ジスルフィド結合によって接続された3つの同一のタンパク質鎖断片を含む。Fcドメインは、任意に、グリコシル化されていてもよい。最も好適には、Fcドメインは、IgG、特に、IgG1又はIgG4、とりわけ、IgG1のFcドメインである。Fcドメインは、典型的には、25~40kDaの分子量を有し得、これは、グリコシル化されたFcドメインの場合には、より高くてもよい。本用語に包含されるFcドメインの誘導体には、Fcドメインが抗原結合性部位を含むように修飾されているFcabsとして知られるドメインが含まれる(タンパク質工学、設計及び選択(Protein Engineering, Design and Selection)」(2017) 30(9) 657-671を参照されたい)。誘導体のさらなる例としては、コンジュゲートした誘導体、例えば、別の部位にコンジュゲートしたFcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクトなどが挙げられる。そのような部位は、PEGなどの化学的に不活性なポリマーを含む。いくつかの実施態様において、Fcドメインは、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/又はエフェクター機能(例えば、抗原依存性細胞傷害活性)などの操作されたタンパク質コンストラクトの1つ以上の性質を変化させる1つ以上の修飾を含有する。
【0043】
実施態様において、前記操作されたタンパク質コンストラクトは、Fcドメインと異種ポリペプチドとの融合体である。Fcドメインの一方の、好ましくは、双方の鎖が、異種ポリペプチドに連結(すなわち、融合)されている。異種ポリペプチドは、Fcドメイン又はその鎖と隣接する配列内に天然には見られないポリペプチドであり、特に、抗体の抗原結合性部分(すなわち、Fab部分)ではない。好適には、Fcドメインの各鎖は、前記操作されたタンパク質コンストラクトがホモ二量体となるように、同じ異種ポリペプチドに連結(すなわち、融合)されている。
【0044】
実施態様において、異種ポリペプチドは、リガンド、好ましくは、特異的リガンドに結合することができる。異種ポリペプチドは、別のタンパク質、例えば、人体において役割を有しているタンパク質(限定するものではないが、サイトカインなど)と相互作用することができることがある。実施態様において、異種ポリペプチドは、サイトカイン、成長因子、凝血因子、酵素、受容体タンパク質、GLP-1アゴニスト、並びにそれらの機能的断片及びドメインから選択される。
【0045】
実施態様において、異種ポリペプチドは、腫瘍壊死因子(TNF)、例えば、TNFαに結合することができ、例えば、TNF受容体、例えば、TNF受容体2、特に、その可溶性形態を含み得る。実施態様において、異種ポリペプチドは、CD80又はCD86などの膜タンパク質に結合することができ、例えば、CLTA-4の細胞外ドメイン又はその一部を含む。実施態様において、異種ポリペプチドは、VEGFに結合することができ、例えば、VEGFR1及び/又はVEGR2の細胞外ドメイン又はその一部を含む。実施態様において、異種ポリペプチドは、IL-1に結合することができ、例えば、IL-1R11及び/又はIL-1RAcPなどのインターロイキンの細胞外ドメイン又はその一部を含む。実施態様において、異種ポリペプチドは、c-Mplなどのトロンボポエチン受容体に結合することができる。実施態様において、異種ポリペプチドは、第VIII因子もしくは第IX因子などの凝血因子又はその一部である。実施態様において、異種ポリペプチドは、hActRIIbタンパク質又はその誘導体である。実施態様において、異種ポリペプチドは、プロテアーゼ阻害剤である。実施態様において、異種ポリペプチドは、GLP-1アゴニストである。
【0046】
例示的なFcドメインを含有する操作されたタンパク質コンストラクトとしては、エタネルセプト、アバタセプト、ベラタセプト、アフリベルセプト、リロナセプト、ロミプロスチム、イロクテイト、ルスパテルセプト、デュラグルチド、及びオルプロリクスが挙げられる。一実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、デュラグルチドである。一実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、アバタセプトである。一実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、アフリベルセプトである。一実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、エタネルセプトである。
【0047】
実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、抗体の抗原結合性部分(すなわち、Fab部分)をまさに含む。実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、2つの異なる可変結合領域を有する4本鎖抗体の形式の二重特異性抗体である。実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、2つの異なる可変結合領域を有する2本鎖抗体の形式の二重特異性抗体である(すなわち、重鎖のみの抗体)。重鎖のみの抗体は、例えば、ラクダ科動物から単離された抗体から誘導することができる。2本鎖形式又は4本鎖形式のいずれであっても、そのような二重特異性抗体は、例えば、CDR1a、CDR2a、CDR3a、CDR1b、CDR2b、及びCDR3bと表示される、抗体のアームa及びbについて1組の3つのCDRを有し得、ここで、CDR1aは、CDR1bと同じではなく、かつ/又はCDR2aは、CDR2bと同じではなく、かつ/又はCDR3aは、CDR3bと同じではない。好適には、6つのCDRのいずれもが、該6つのCDRのうちの他のいずれとも同じではない。
【0048】
実施態様において、前記操作されたタンパク質コンストラクトは、Fcドメインが抗原結合性部位を含むよう修飾されているFcabの形式の二重特異性抗体又は三重特異性抗体である。
【0049】
ある実施態様において、2つの操作されたタンパク質コンストラクトが、例えば、ジスルフィド結合を介して会合して二量体タンパク質を形成することができる。
【0050】
実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、IgG Fcドメイン及び2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ、例えば、2つ又は4つなどの)の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含む。本明細書で使用される場合、免疫グロブリン鎖可変ドメインは、抗体に由来する、抗原に結合するドメインである。免疫グロブリン鎖可変ドメインを、Fcドメインに直接連結することができ、又はFcドメインに例えば、介在する定常ドメインを介して間接的に連結することができる。免疫グロブリン鎖可変ドメインの特異性は、CDRによって決定され、免疫グロブリン鎖可変ドメインは、通常、3つのCDRを有する。例示的な免疫グロブリン鎖可変ドメインとしては、通常の4本鎖抗体由来のVH及びVLドメイン、並びに、例えば、ラクダ科動物にみられるような重鎖のみの抗体に由来するVHHドメインが挙げられる。実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、それぞれが1つ以上(例えば、1つ、2つ、又は3つ、例えば、1つ又は2つなど)の免疫グロブリン鎖可変ドメインに直接的に又は間接的に連結された2本の鎖で形成されるIgG Fcドメインを含む。実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、それぞれが1つ以上(例えば、1つ又は2つ)の免疫グロブリン鎖可変ドメインに直接連結された2本の鎖で形成されるIgG Fcドメインを含む。本明細書で使用される場合、「直接連結された」は、任意に、ペプチドリンカーを介して、かつ免疫グロブリン鎖可変ドメイン(例えば、定常ドメイン)ではない介在ドメインを何ら存在させずに直接連結(すなわち、融合)されたことを意味する。実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、それぞれが1つ以上(例えば、1つ又は2つ)の免疫グロブリン鎖可変ドメインに間接的に連結された2本の鎖で形成されるIgG Fcドメインを含む。本明細書で使用される場合、「間接的に連結された」は、1つ以上の介在ドメイン(例えば、定常ドメイン)での連結(すなわち、融合)を意味する。ペプチドリンカーは、さまざまなドメインの間に存在し得る。実施態様において、免疫グロブリン鎖可変ドメインのそれぞれは、同じ特異性を有する(すなわち、操作されたタンパク質コンストラクトは、単一特異性である)、例えば、免疫グロブリン鎖可変ドメインのそれぞれは、同じである。実施態様において、コンストラクトは、2つ以上(例えば、2つ)の異なる特異性を有する免疫グロブリン鎖可変ドメインを含み(すなわち、操作されたタンパク質コンストラクトは、多重特異性であり、例えば、二重特異性であり)、例えば、少なくとも2つの免疫グロブリン鎖可変ドメインは、同じではない。
【0051】
操作されたタンパク質コンストラクトは、好ましくは、治療用の操作されたタンパク質コンストラクトである。そのような操作されたタンパク質コンストラクトは、所望の治療又は予防活性を有し、疾患又は医学的な障害の治療、阻害、又は予防に適応とされている。ある実施態様において、前記操作されたタンパク質コンストラクトは、実質的に純粋であり、すなわち、組成物は、単一の操作されたタンパク質コンストラクトを含み、実質的な量のいかなる追加のタンパク質をも含まない。好ましい実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、組成物の総蛋白含量の少なくとも99%、好ましくは、少なくとも99.5%、より好ましくは、少なくとも約99.9%を構成する。好ましい実施態様において、操作されたタンパク質コンストラクトは、医薬組成物における使用に十分に純粋である。
【0052】
操作されたタンパク質コンストラクトは、好適には、約1~400mg/ml、好適には、10~200mg/ml、より好適には、20~100mg/ml、例えば、約50mg/mlの濃度で組成物中に存在する。
【0053】
組成物は、非イオン性界面活性剤を含み得る。非イオン性界面活性剤は、例えば、ポリソルベート、アルキルグリコシド、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体、及びポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテルからなる群から選択され得る。
【0054】
特に好適な非イオン性界面活性剤のクラスは、ポリソルベート20又はポリソルベート80などのポリソルベート(エトキシ化ソルビタンの脂肪酸エステル)である。ポリソルベート20は、ラウリン酸とポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ここで、数字20は、分子中のオキシエチレン基の数を示す)から形成されるモノエステルである。ポリソルベート80は、オレイン酸とポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ここで、数字20は、分子中のオキシエチレン基の数を示す)から形成されるモノエステルである。ポリソルベート20は、特に、Tween 20、また、Alkest TW 20を含むさまざまなブランド名で知られている。ポリソルベート80は、特に、Tween 80、また、Alkest TW 80を含むさまざまなブランド名で知られている。他の好適なポリソルベートとしては、ポリソルベート40及びポリソルベート60が挙げられる。
【0055】
別の好適な非イオン性界面活性剤のクラスは、アルキルグリコシド、特にドデシルマルトシドである。他のアルキルグリコシドとしては、ドデシルグルコシド、オクチルグルコシド、オクチルマルトシド、デシルグルコシド、デシルマルトシド、トリデシルグルコシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルグルコシド、テトラデシルマルトシド、ヘキサデシルグルコシド、ヘキサデシルマルトシド、スクロースモノオクタノエート、スクロースモノデカノエート、スクロースモノドデカノエート、スクロースモノトリデカノエート、スクロースモノテトラデカノエート、及びスクロースモノヘキサデカノエートが挙げられる。
【0056】
別の好適な非イオン性界面活性剤のクラスは、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、特に、ポリエチレングリコール(2)ヘキサデシルエーテル(Brij 52)、ポリエチレングリコール(2)オレイルエーテル(Brij 93)、及びポリエチレングリコール(2)ドデシルエーテル(Brij L4)から選択されるものなどのブランド名Brijで知られているものである。他の好適なBrij界面活性剤としては、ポリエチレングリコール(4)ラウリルエーテル(Brij 30)、ポリエチレングリコール(10)ラウリルエーテル(Brij 35)、ポリエチレングリコール(20)ヘキサデシルエーテル(Brij 58)、及びポリエチレングリコール(10)ステアリルエーテル(Brij 78)が挙げられる。
【0057】
別の好適な非イオン性界面活性剤のクラスは、ポロクサマー、特に、ポロクサマー188、ポロクサマー407、ポロクサマー171、及びポロクサマー185としても知られる、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロック共重合体である。また、ポロクサマーは、Pluronics又はKoliphorsのブランド名でも知られている。例えば、ポロクサマー188は、Pluronic F-68として販売されている。
【0058】
別の好適な非イオン性界面活性剤のクラスは、ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテル、特に、Triton X-100のブランド名でも知られている4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコールである。
【0059】
一実施態様において、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート又はポロクサマーであり、好適には、ポリソルベートである。組成物中の非イオン性界面活性剤の濃度は、通常、10~2000μg/mlの範囲内、例えば、50~1000μg/ml、100~500μg/ml、又は約200μg/mlなどであろう。
【0060】
さらに、本発明の組成物は、フェノール系保存料又はベンジル系保存料などの保存料を含み得る。保存料は、好適には、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、及びメチルパラベン、特に、フェノール、m-クレゾール、及びベンジルアルコールからなる群から選択される。保存料の濃度は、通常、10~100mM、例えば、20~80mM、例えば、25~50mMなどである。組成物中の保存料の最適な濃度は、組成物が、薬局方抗微生物有効性試験(Pharmacopoeia Antimicrobial Effectiveness Test)(米国薬局方<51>、第32巻)に確実に合格するよう選択される。
【0061】
一実施態様において、本発明は、pHが約4.0~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
任意に、pKaが約3.0~約9.5の範囲であり、かつ該pKaが該組成物のpHの2 pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1種以上の緩衝剤;
1種以上の中性アミノ酸;及び
無電荷浸透圧調整剤
を含み:
該緩衝剤が、該組成物中に約0mM~約10mMの範囲の総濃度で存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。具体的な一副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約0.1~約5mM、例えば、約1~約3mMなどの該組成物中の総濃度で前記組成物中に存在する。別の特定の副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約5.5mM~約10mM、例えば、約5.5mM~約8mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。
【0062】
一実施態様において、本発明は、pHが約6.0~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
任意に、pKaが約4.0~約9.5、例えば、約5.0~約9.5の範囲であり、かつ該pKaが該組成物のpHの2 pH単位以内、例えば、1.5 pH単位以内、例えば、1pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1種以上の緩衝剤;
任意に、1種以上の中性アミノ酸;及び
無電荷浸透圧調整剤
を含み:
該緩衝剤が、該組成物中に約0mM~約10mMの範囲の総濃度で存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。具体的な一副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約0.1mM~約5mM、例えば、約1mM~約3mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。別の特定の副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約5.5mM~約10mM、例えば、約5.5mM~約8mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。
【0063】
一実施態様において、本発明は、pHが約4.0~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
2つの異なる可変結合領域を有する2本鎖抗体の形式の二重特異性抗体であるFcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
任意に、pKaが約3.0~約9.5の範囲であり、かつ該pKaが該組成物のpHの2 pH単位以内、例えば、1.5 pH単位以内、例えば、1pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1種以上の緩衝剤;
任意に、1種以上の中性アミノ酸;及び
無電荷浸透圧調整剤、例えば、ポリオール
を含み;
該緩衝剤が、該組成物中に約0mM~約10mMの範囲の総濃度で存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。具体的な一副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約0mM~約5mM、例えば、約1mM~約3mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。別の特定の副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約5.5mM~約10mM、例えば、約5.5mM~約8mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。
【0064】
一実施態様において、本発明は、pHが約4.0~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
任意に、pKaが約3.0~約9.5の範囲であり、かつ該pKaが該組成物のpHの2 pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1種以上の緩衝剤;
1種以上の中性アミノ酸;
無電荷浸透圧調整剤、例えば、ポリオール;及び
非イオン性界面活性剤
を含み;
該緩衝剤が、該組成物中に約0mM~約10mMの範囲の総濃度で存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。具体的な一副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約0.1mM~約5mM、例えば、約1mM~約3mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。別の特定の副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約5.5mM~約10mM、例えば、約5.5mM~約8mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。
【0065】
一実施態様において、本発明は、pHが約4.0~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
任意に、pKaが約3.0~約9.5の範囲であり、かつ該pKaが該組成物のpHの2 pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1種以上の緩衝剤;
例えば、グリシン、メチオニン、プロリン及びアラニンから選択される1種以上の中性アミノ酸;
無電荷浸透圧調整剤、例えば、ポリオール;及び
保存料
を含み
該緩衝剤が、該組成物中に約0mM~約10mMの範囲の総濃度で存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。具体的な一副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約0.1mM~約5mM、例えば、約1mM~約3mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。別の特定の副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約5.5mM~約10mM、例えば、約5.5mM~約8mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。
【0066】
一実施態様において、本発明は、pHが約4.0~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインと、サイトカイン、成長因子、凝血因子、酵素、受容体タンパク質、GLP-1アゴニスト、並びにそれらの機能的断片及びドメインから選択される異種タンパク質との融合体である、Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
任意に、pKaが約3.0~約9.5の範囲であり、かつ該pKaが該組成物のpHの2 pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1種以上の緩衝剤;
任意に、1種以上の中性アミノ酸;及び
無電荷浸透圧調整剤、例えば、ポリオール
を含み;
該緩衝剤が、該組成物中に約0mM~約10mMの範囲の総濃度で存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。具体的な一副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約0.1mM~約5mM、例えば、約1mM~約3mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。別の特定の副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約5.5mM~約10mM、例えば、約5.5mM~約8mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。
【0067】
一実施態様において、本発明は、pHが約4.0~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
2つの異なる可変結合領域を有する4本鎖抗体の形式の二重特異性抗体である、Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
任意に、pKaが約3.0~約9.5の範囲であり、かつ該pKaが該組成物のpHの2 pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1種以上の緩衝剤;
任意に、1種以上の中性アミノ酸;及び
無電荷浸透圧調整剤、例えば、ポリオール
を含み;
該緩衝剤が、約0mM~約5mMの範囲の総濃度で該組成物中に存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。具体的な一副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約0.1mM~約5mM、例えば、約1~約3mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。
【0068】
一実施態様において、本発明は、pHが約4.0~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
2つの異なる可変結合領域を有する2本鎖抗体の形式の二重特異性抗体であるFcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
任意に、pKaが約3.0~約9.5の範囲であり、かつ該pKaが該組成物のpHの2 pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1種以上の緩衝剤;
任意に、1種以上の中性アミノ酸;及び
無電荷浸透圧調整剤、例えば、ポリオール
を含み;
該緩衝剤が、約0mM~約5mMの範囲の総濃度で該組成物中に存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。具体的な一副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約0.1mM~約5mM、例えば、約1mM~約3mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。
【0069】
一実施態様において、本発明は、pHが約6.0~約7.5の範囲の水溶液組成物であって:
2つの異なる可変結合領域を有する2本鎖抗体の形式の二重特異性抗体であるFcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
任意に、pKaが約5.0~約8.5の範囲であり、かつ該pKaが該組成物のpHの2 pH単位以内、例えば、1.5 pH単位以内、例えば、1pH単位以内である、少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質である1種以上の緩衝剤;
任意に、1種以上の中性アミノ酸;及び
無電荷浸透圧調整剤、例えば、ポリオール
を含み;
該緩衝剤が、約0mM~約5mMの範囲の総濃度で該組成物中に存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。具体的な一副実施態様において、1種以上の緩衝剤は、約0.1mM~約5mM、例えば、約1mM~約3mMなどの範囲の総濃度で前記組成物中に存在する。
【0070】
一実施態様において、本発明は、pHが約6.0~約8.5、例えば、約6.5~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
リン酸及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)から選択される緩衝剤;
例えば、プロリン及びグリシンから選択される1種以上の中性アミノ酸;並びに
無電荷浸透圧調整剤、例えば、スクロース
を含み;
該緩衝剤が、約0.1mM~約5mMの範囲の総濃度で該組成物中に存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。
【0071】
一実施態様において、本発明は、pHが約6.0~約8.5、例えば、約6.5~約8.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
リン酸及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)から選択される緩衝剤;
例えば、プロリン及びグリシンから選択される1種以上の中性アミノ酸;並びに
無電荷浸透圧調整剤、例えば、スクロース
を含み;
該緩衝剤が、約5.5mM~約10mMの範囲の総濃度で該組成物中に存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満であり、かつ、好適には、10mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。
【0072】
一実施態様において、本発明は、pHが約5.0~約8.0、例えば、約5.0~約7.5、例えば、約5.5~約7.5、例えば、約6.0~約7.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
リン酸及びクエン酸から選択される緩衝剤;及び
無電荷浸透圧調整剤、例えば、スクロース
を含み;
該緩衝剤が、約0.1mM~約5mMの範囲の総濃度で該組成物中に存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。
【0073】
一実施態様において、本発明は、pHが約5.0~約8.0、例えば、約5.0~約7.5、例えば、約5.5~約7.5、例えば、約6.0~約7.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
リン酸及びクエン酸から選択される緩衝剤;及び
無電荷浸透圧調整剤、例えば、スクロース
を含み;
該緩衝剤が、約5.5mM~約10mMの範囲の総濃度で該組成物中に存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満、好適には、10mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。
【0074】
一実施態様において、本発明は、pHが約5.0~約8.0、例えば、約5.0~約7.5、例えば、約5.5~約7.5、例えば、約6.0~約7.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
リン酸及びクエン酸から選択される緩衝剤;
例えば、プロリン及びグリシンから選択される1種以上の中性アミノ酸;並びに
無電荷浸透圧調整剤、例えば、スクロース
を含み;
該緩衝剤が、約0.1mM~約5mMの範囲の総濃度で該組成物中に存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。
【0075】
一実施態様において、本発明は、pHが約5.0~約8.0、例えば、約5.0~約7.5、例えば、約5.5~約7.5、例えば、約6.0~約7.5の範囲である水溶液組成物であって:
Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
リン酸及びクエン酸から選択される緩衝剤;
例えば、プロリン及びグリシンから選択される1種以上の中性アミノ酸;並びに
無電荷浸透圧調整剤、例えば、スクロース
を含み;
該緩衝剤が、約5.5mM~約10mMの範囲の総濃度で該組成物中に存在し;かつ該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、20mM未満、好適には、10mM未満である、前記水溶液組成物を提供する。
【0076】
一実施態様において、本発明は、
pHが約4.0~約8.5の範囲の水溶液組成物であって:
IgG Fcドメイン及び2つ以上の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクト;
pKaが約3.0~約9.5の範囲であり、かつ該pKaが、該組成物のpHの2 pH単位以内である少なくとも1つのイオン化可能な基を有する物質であり、かつ、例えば、クエン酸、ヒスチジン、マレイン酸、酒石酸、乳酸、安息香酸、酢酸、重炭酸、リン酸、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)から選択される1種以上の緩衝剤;
非イオン性界面活性剤;
グリセロール、1,2-プロパンジオール、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、PEG300、及びPEG400から選択される無電荷浸透圧調整剤;並びに
任意に、1種以上の中性アミノ酸
を含み;
該緩衝剤が、約1mM~約10mMの総濃度で該組成物中に存在し;操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く該組成物の総イオン強度が、約20mM未満(例えば、約10mM未満)であり;かつ該組成物のモル浸透圧濃度が、約200mOsm/L~約500mOsm/L、例えば、約350mOsm/L~約500mOsm/Lなどの範囲である、前記水溶液組成物を提供する。
【0077】
好適には、本発明の組成物は、2~8℃での長期間、例えば、少なくとも4週間、8週間、12週間、12ヶ月、18ヶ月、又は24ヶ月などにわたる保管の後に澄んだ溶液のままである。
【0078】
好適には、本発明の組成物は、25℃での長期間、例えば、少なくとも4週間、8週間、12週間、12ヶ月、18ヶ月、又は24ヶ月などにわたる保管の後に澄んだ溶液のままである。
【0079】
好適には、本発明の組成物は、30℃での長期間、例えば、少なくとも4週間、8週間、12週間、12ヶ月、18ヶ月、又は24ヶ月などにわたる保管の後に澄んだ溶液のままである。
【0080】
好適には、本発明の組成物は、40℃又は50℃(すなわち、加速安定性試験に適した温度)でのある期間、例えば、少なくとも1日、3日、1週間、2週間、又は4週間などにわたる保管の後に澄んだ溶液のままである。
【0081】
好適には、本発明の組成物は、2~8℃又は上昇させた温度のいずれかで、より高い濃度の同じ緩衝剤(1種又は複数種)を含む同等の組成物中でよりも向上した貯蔵安定性を有する。
【0082】
好適には、本発明の組成物は、2~8℃又は上昇させた温度のいずれかで、より高い総イオン強度を有する同等の組成物中でよりも向上した貯蔵安定性を有する。
【0083】
一実施態様において、本発明の組成物は、2~8℃での少なくとも4週間、8週間、12週間、12ヶ月、18ヶ月、又は24ヶ月にわたる保管の後に、5%を超えない総不純物、例えば、4%を超えない、例えば、3%を超えない、例えば、2%を超えない総不純物を含む(陽イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、又は類似の適当な技術によって測定される組成物中の操作されたタンパク質コンストラクトの総重量による)。
【0084】
一実施態様において、本発明の組成物は、25℃での少なくとも4週間、8週間、12週間、12ヶ月、18ヶ月、又は24ヶ月にわたる保管の後に、5%を超えない総不純物、例えば、4%を超えない、例えば、3%を超えない、例えば、2%を超えない総不純物を含む(陽イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、又は類似の適当な技術によって測定される、組成物中の操作されたタンパク質コンストラクトの総重量による)。
【0085】
一実施態様において、本発明の組成物は、30℃での少なくとも4週間、8週間、12週間、12ヶ月、18ヶ月、又は24ヶ月にわたる保管の後に、5%を超えない総不純物、例えば、4%を超えない、例えば、3%を超えない、例えば、2%を超えない総不純物を含む(陽イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、又は類似の適当な技術によって測定される、組成物中の操作されたタンパク質コンストラクトの総重量による)。
【0086】
一実施態様において、本発明の組成物は、40℃での少なくとも1日、3日、1週間、2週間、又は4週間にわたる保管の後に、5%を超えない総不純物、例えば、4%を超えない、例えば、3%を超えない、例えば、2%を超えない総不純物を含む(陽イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、又は類似の適当な技術によって測定される、組成物中の操作されたタンパク質コンストラクトの総重量による)。
【0087】
一実施態様において、本発明の組成物(陽イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、又は類似の適当な技術によって測定)は、2~8℃での少なくとも4週間、8週間、12週間、12ヶ月、18ヶ月、又は24ヶ月にわたる保管の後に、同一の医薬成分を含む市販の組成物(同一の技術によって測定)よりも低いレベルの不純物を含む。
【0088】
一実施態様において、本発明の組成物(陽イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、又は類似の適当な技術によって測定)は、25℃での少なくとも4週間、8週間、12週間、12ヶ月、18ヶ月、又は24ヶ月にわたる保管の後に、同一の医薬成分を含む市販の組成物(同一の技術によって測定)よりも低いレベルの不純物を含む。
【0089】
一実施態様において、本発明の組成物(陽イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、又は類似の適当な技術によって測定)は、30℃での少なくとも4週間、8週間、12週間、12ヶ月、18ヶ月、又は24ヶ月にわたる保管の後に、同一の医薬成分を含む市販の組成物(同一の技術によって測定)よりも低いレベルの不純物を含む。
【0090】
一実施態様において、本発明の組成物(陽イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、又は類似の適当な技術によって測定)は、40℃又は50℃での少なくとも1日、3日、1週間、2週間、又は4週間にわたる保管の後に、同一の医薬成分を含む市販の組成物(同一の技術によって測定)よりも低いレベルの不純物を含む。
【0091】
実施態様において、本発明の組成物は、療法における使用のための組成物である。実施態様において、本発明の組成物は、医薬組成物である。組成物、例えば、静脈内投与用に意図されるものは、投与前希釈用の濃縮物として調製され得る。
【0092】
水溶液組成物に関して上述した全ての実施態様は、本発明の方法及び使用にも同様に適用される。
【0093】
また、本明細書に記載される組成物の1回用量又は複数回用量が入った、例えば、プラスチック又はガラス製の、容器も提供される。該容器は、例えば、バイアル、充填済みシリンジ、充填済み輸液バッグ、又は注射装置と共に用いるための交換可能な物品となるように設計されたカートリッジとすることができる。
【0094】
好適には、本発明の組成物は、注射、特に、静脈内注入、静脈内注射、皮下注射、又は筋肉内注射用に包装され得る。
【0095】
本発明の一態様は、注射針と一緒に本発明の組成物の1回用量又は複数回用量が入った容器を備える、単回又は複数回の使用のための注射又は注入装置、特に、皮下又は筋肉内注射又は注入に適した装置である。実施態様において、容器は、複数回用量が入った交換可能なカートリッジである。一実施態様において、注射装置は、ペンの形態である。一実施態様において、注射装置は、充填済みシリンジの形態である。一実施態様において、注射又は注入装置は、ポンプ又は別の装着可能な注射又は注入装置の形態である。
【0096】
本発明による組成物は、本明細書に記載されるように、良好な物理的及び化学的安定性を有することが期待される。
【実施例
【0097】
(実施例)
(一般的方法)
(タンパク質コンストラクトの安定性を評価する方法)
((a)目視評価)
目視可能粒子は、好適には、2.9.20.欧州薬局方モノグラフ(European Pharmacopoeia Monograph)(微粒子汚染:目視可能粒子(Particulate Contamination: Visible Particles))を用いて検出される。必要とされる装置は:
垂直に保持された適当なサイズのつや消し黒色パネル
前記黒色パネルの隣に垂直に保持された適当なサイズの無反射白色パネル
適当なシェード付きの白色光源と適当な散光器とを取り付けた調節可能なランプホルダー(それぞれの長さが525mmである2本の13W蛍光管が入った観察用照明器が適当である)
を備える観察台(viewing station)からなる。観察点での照射の強度は、2000ルクス~3750ルクスの間に維持される。
【0098】
付着したラベルがあれば、容器から除去し、外側を、洗浄し乾燥させる。容器を、穏やかに回転させるか又は上下反転させて、気泡が導入されていないことを確実とし、白色のパネルの前で約5秒間観察する。手順を、黒色パネルの前で繰り返す。粒子の存在を記録する。
目視スコアを、以下のようにランク付けする:
目視スコアA:粒子を実質的に含まない澄んだ溶液、<10個の粒子
目視スコアB:ランプの下でのみ目視可能な粒子
目視スコアC:通常の実験室条件下での顕著な目視可能な外観の変化。
目視スコアCの試料中の粒子は、通常光下での略式の目視評価で明確に検出可能であるのに対して、目視スコアA及びBの試料は、同評価において、一般に、澄んだ溶液のように見える。目視スコアA及びBの試料は、「合格」とみなされ;目視スコアCの試料は、「不合格」とみなされる。
【0099】
((b)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC))
高分子量種の量が、300×7.8mm TSK Gel G3000 SWXL(又は同等物)サイズ排除カラムをガードカラムとともに用いて測定される。移動相は、リン酸ナトリウムバッファーpH 6.75であり、1ml/分の流速、20μlの注入体積を用い、280nmで検出される。結果は、%高分子種(HMWS)、すなわち、クロマトグラムにおける、凝集タンパク質に対応する全ピーク面積の和/全てのタンパク質関連ピークの和として表される。例えば、繰り返しのサイズ排除カラムの使用を原因として、%面積(モノマー、HMWS、及び低分子種(LMWS))の絶対値の点で、時点間での小さいばらつきが観察されることがある。しかしながら、所与の時点の範囲内では、試料は、同じ状態のカラムを用いて試験されるため、該時点の範囲内に求められた値は、試験された水溶液中でのタンパク質の相対的な安定性の非常に良好な指標を表す。%HMWSの増加は、時刻ゼロでの(すなわち、保管温度でのインキュベーション直前の)%HMWS値と比較した所与の時点で観察される%HMWSの変化を意味する。
【0100】
((c)陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))
関連種の量は、Protein-Pak Hi Res SPカラムを用いて測定される。移動相Aは、20mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)であり;移動相Bは、20mMリン酸ナトリウム+0.5M NaCl(pH 6.0)である。以下のグラジエント溶出が用いられる:0分-100% A、4分-80% A、10分-55% A、12分-0% A。流速は、1.0ml/分であり;注入体積は、3μlであり、214nmでUV検出を行う。結果は、%主ピーク(すなわち、天然タンパク質)、%酸性種、及び%塩基性種として表される。%関連種=%酸性種+%塩基性種。
【0101】
(実施例1-実施例製剤)
以下の実施例製剤が、調製され得る:
(実施例A)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
リン酸ナトリウム 1mM
スクロース 300mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0102】
(実施例B)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
酢酸ナトリウム 3mM
スクロース 300mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて5.0に調整
【0103】
(実施例C)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
酢酸ナトリウム 3mM
スクロース 300mM
プロリン 100mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて5.0に調整
【0104】
(実施例D)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
リン酸ナトリウム 3mM
スクロース 300mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0105】
(実施例E)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
TRIS 1mM
スクロース 300mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0106】
(実施例F)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
TRIS 3mM
スクロース 300mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0107】
(実施例G)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
TRIS 3mM
スクロース 500mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0108】
(実施例H)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
リン酸ナトリウム 1mM
スクロース 300mM
プロリン 100mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0109】
(実施例I)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
TRIS 1mM
スクロース 300mM
プロリン 100mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0110】
(実施例J)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
リン酸ナトリウム 1mM
スクロース 300mM
グリシン 100mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0111】
(実施例K)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
リン酸ナトリウム 1mM
スクロース 400mM
グリシン 150mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0112】
(実施例L)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
TRIS 1mM
スクロース 300mM
グリシン 100mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0113】
(実施例M)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
リン酸ナトリウム 7mM
スクロース 300mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0114】
(実施例N)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
酢酸ナトリウム 7mM
スクロース 300mM
プロリン 100mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて5.0に調整
【0115】
(実施例O)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
リン酸ナトリウム 7mM
スクロース 300mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0116】
(実施例P)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
リン酸ナトリウム 7mM
スクロース 300mM
プロリン 100mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0117】
(実施例Q)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
リン酸ナトリウム 9mM
スクロース 300mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0118】
(実施例R)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
酢酸ナトリウム 9mM
スクロース 300mM
プロリン 100mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて5.0に調整
【0119】
(実施例S)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
リン酸ナトリウム 9mM
スクロース 300mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
【0120】
(実施例T)
Fc-融合タンパク質* 50mg/ml
リン酸ナトリウム 9mM
スクロース 300mM
プロリン 100mM
注射用水 適量
pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのいずれかを用いて7.0に調整
*Fc-融合タンパク質は、(1)エタネルセプト、(2)アフリベルセプト、又は(3)デュラグルチド。
【0121】
(実施例AA~TT)
Fc-融合タンパク質の代わりに、二重特異性抗体であるFcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクトが用いられることを除き、実施例A~Tと同じ製剤を調製する。
【0122】
(実施例AAA~TTT)
Fc-融合タンパク質の代わりに、三重特異性抗体であるFcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクトが用いられることを除き、実施例A~Tと同じ製剤を調製する。
【0123】
製剤の安定性が、40℃で2、4、及び8週間のインキュベーション後に、目視評価、SEC、及びCEX(一般的方法を参照されたい)を用いて決定される。
【0124】
製剤の安定性が、25℃で2、4、8、及び12週間のインキュベーション後に、目視評価、SEC、及びCEX(一般的方法を参照されたい)を用いて決定される。
【0125】
製剤の安定性が、2~8℃で2、4、8、及び12週間のインキュベーション後に、目視評価、SEC、及びCEX(一般的方法を参照されたい)を用いて決定される。
【0126】
(実施例2-40℃及び50℃でのデュラグルチドの安定性に対する緩衝剤濃度及び浸透圧調整剤の電荷の作用)
デュラグルチド(1mg/ml)の安定性に対する緩衝剤濃度及び浸透圧調整剤の電荷の作用 を調査した。クエン酸緩衝剤及びリン酸緩衝剤を試験した。塩化ナトリウム(150mM)を、荷電浸透圧調整剤として使用し、スクロース(250mM)を無電荷浸透圧調整剤として使用した。試験した全ての製剤は、pH 6.5に調整した。加えて、市販のデュラグルチド製品(Trulicity)の製剤を、比較用の対照製剤として使用した。表1に、試験した製剤をまとめる。全ての製剤に対し、40℃及び50℃で4週間ストレスを与えた。デュラグルチドの安定性を、SECを用いて高分子量種生成率をモニタリングすることによって追跡した。
【0127】
表1: 試験したデュラグルチドの製剤。全ての製剤は、デュラグルチド(1mg/ml)を含有しており、pH 6.5に調整された。
【表1】
*クエン酸ナトリウム(9.3mM)をクエン酸(0.7mM)と混合することによって調製。
【0128】
試験した全ての製剤は、双方の温度での保管の後に目視試験に合格した(目視スコアA)。50℃及び40℃での保管の後の製剤2-1~2-21中でのHMWS生成率を、表2に示す。HMWS生成率は、非常に低い緩衝剤濃度及び無電荷浸透圧調整剤を含む製剤中で最も低かった。スクロースの存在下では、40℃で、5mMまでのクエン酸緩衝剤を含む組成物中には、検出可能なHMWSの増加は観察されなかった。HMWS生成率は、より高いクエン酸緩衝剤の濃度では増加した。同様に、50℃での、より加速したストレス下では、HMWS生成率は、クエン酸緩衝剤の濃度に比例しており、5mM以下の緩衝剤濃度では非常に低かった。類似の観察が、リン酸緩衝剤を用いてなされた。対照的に、HMWS形成が、塩化ナトリウムの存在下で全ての緩衝剤濃度において観察された。
【0129】
表2: SECによって評価された製剤2-1~2-21中40℃及び50℃でのデュラグルチド(1mg/ml)の安定性
【表2】
*残念ながら、当該製剤の試験は、製剤自体とは無関係の理由で失敗した。
【0130】
(実施例3-50℃でのアバタセプトの安定性に対する緩衝剤濃度及び浸透圧調整剤の電荷の作用)
アバタセプト(4.25mg/ml)の安定性に対する緩衝剤濃度及び浸透圧調整剤の電荷の作用を調査した。クエン酸緩衝剤及びリン酸緩衝剤を試験した。塩化ナトリウム(150mM)を、荷電浸透圧調整剤として使用し、スクロース(250mM)を無電荷浸透圧調整剤として使用した。試験した全ての製剤は、pH 6.8に調整した。加えて、市販のアバタセプト製品(Orencia)の製剤を、比較用の対照製剤として使用した。表3に、試験した製剤をまとめる。全ての製剤に対し、50℃で2週間ストレスを与えた。アバタセプトの安定性を、SECを用いて高分子量種生成率をモニタリングすることによって追跡した。
【0131】
表3: 試験したアバタセプトの製剤。全ての製剤は、アバタセプト(4.25mg/ml)を含有しており、pH 6.8に調整された。
【表3】
【0132】
試験した全ての製剤は、50℃での保管の後に、目視試験に合格した(目視スコアA)。50℃での保管の後の製剤3-1~3-19中のHMWS生成率を、表4に示す。HMWS生成率は、非常に低い緩衝剤濃度及び無電荷浸透圧調整剤を含む製剤中で最も低かった。HMWS生成率は、クエン酸緩衝剤の場合及びリン酸緩衝剤の場合の双方で、増加する緩衝剤濃度とともに増加した。対照的に、HMWS形成は、塩化ナトリウムの存在下では緩衝剤濃度にかかわらず非常に高かった。
【0133】
表4: SECによって評価された製剤3-1~3-19中の50℃でのアバタセプト(4.25mg/ml)の安定性
【表4】
【0134】
(実施例4-40℃でのアバタセプトの安定性に対する緩衝剤濃度及び浸透圧調整剤の電荷の作用)
アバタセプト(4.25mg/ml)の安定性に対するクエン酸緩衝剤濃度及び浸透圧調整剤の電荷の作用を調査した。塩化ナトリウム(150mM)を荷電浸透圧調整剤として使用し、スクロース(250mM)を無電荷浸透圧調整剤として使用した。試験した全ての製剤は、pH 6.8に調整した。表5に、試験した製剤をまとめる。全ての製剤に対して、40℃で2週間ストレスを与えた。アバタセプトの安定性を、SECを用いて高分子量種生成率をモニタリングすることによって追跡した。
【0135】
表5: 試験したアバタセプトの製剤。全ての製剤は、アバタセプト(4.25mg/ml)を含有しており、pH 6.8に調整された。
【表5】
【0136】
試験した全ての製剤は、40℃での保管の後に目視試験に合格した(目視スコアA)。40℃での保管の後の製剤4-1~4-9中のHMWS生成率を、表6に示す。HMWS生成率は、非常に低いクエン酸緩衝剤濃度及び無電荷浸透圧調整剤を含む組成物中で最も低かった。HMWS生成率は、増加するクエン酸緩衝剤濃度とともに増加した。対照的に、HMWS形成は、塩化ナトリウムの存在下では緩衝剤濃度にかかわらず非常に高かった。
【0137】
表6: SECによって評価された製剤4-1~4-9中40℃でのアバタセプト(4.25mg/ml)の安定性
【表6】
【0138】
(実施例5-1mM緩衝剤及び無電荷浸透圧調整剤の存在下における50℃でのアバタセプトの安定性に対するプロリンの作用)
アバタセプト(4.25mg/ml)の安定性に対するプロリン(50mM)の作用を、1mM緩衝剤及び無電荷浸透圧調整剤の存在下で調査した。スクロース(250mM)を無電荷浸透圧調整剤として使用した。試験した全ての製剤は、pH 6.8に調整した。表7に、試験した製剤をまとめる。全ての製剤に対して50℃で2週間ストレスを与えた。アバタセプトの安定性を、SECを用いて高分子量種生成率をモニタリングすることによって追跡した。
【0139】
表7: 試験したアバタセプトの製剤。全ての製剤は、アバタセプト(4.25mg/ml)を含有しており、pH 6.8に調整された。
【表7】
【0140】
試験した全ての製剤は、50℃での保管の後に目視試験に合格した(目視スコアA)。50℃での保管の後の製剤5-1~5-4中のHMWS生成率を、表8に示す。1mM緩衝剤及びスクロース(250mM)を含む組成物中のプロリン(50mM)の存在は、より低いHMWS生成率をもたらした。
【0141】
表8: SECによって評価された製剤5-1~5-4中50℃でのアバタセプト(4.25mg/ml)の安定性
【表8】
【0142】
(実施例6-1mM緩衝剤及び無電荷浸透圧調整剤の存在下における40℃でのアバタセプトの安定性に対するプロリン及びグリシンの作用)
アバタセプト(4.25mg/ml)の安定性に対するプロリン(50mM)及びグリシン(50mM)の作用を、1mM緩衝剤及び無電荷浸透圧調整剤の存在下で調査した。クエン酸緩衝剤及びリン酸緩衝剤を試験した。スクロース(250mM)を無電荷浸透圧調整剤として使用した。試験した全ての製剤は、pH 6.8に調整した。表9に、試験した製剤をまとめる。全ての製剤に対して40℃で2週間ストレスを与えた。アバタセプトの安定性を、SECを用いて高分子量種生成率をモニタリングすることによって追跡した。
【0143】
表9: 試験したアバタセプトの製剤。全ての製剤は、アバタセプト(4.25mg/ml)を含有しており、pH 6.8に調整された。
【表9】
【0144】
試験した全ての製剤は、40℃での保管の後に目視試験に合格した(目視スコアA)。40℃での保管の後の製剤6-1~6-6中のHMWS生成率を、表10に示す。1mM緩衝剤及びスクロース(250mM)を含む組成物中のプロリン(50mM)及びグリシン(50mM)の存在は、より低いHMWS生成率をもたらした。
【0145】
表10: SECによって評価された製剤6-1~6-6中40℃でのアバタセプト(4.25mg/ml)の安定性
【表10】
【0146】
(実施例7-低強度組成物中40℃でのアバタセプトの安定性に対する緩衝剤濃度、浸透圧調整剤、及び中性アミノ酸の作用)
40℃でのアバタセプトの安定性に対する緩衝剤濃度、浸透圧調整剤、及び中性アミノ酸の作用を調査した。クエン酸を緩衝剤として使用した。スクロース及び1,2-プロパンジオールを浸透圧調整剤として試験し、プロリンを中性アミノ酸として試験した。試験した全ての製剤は、pH 6.8に調整した。表11に、試験した製剤をまとめる。全ての製剤に対し、40℃で2週間及び4週間のストレスを与えた。アバタセプトの安定性を、SECを用いて高分子量種生成率をモニタリングすることによって追跡した。
【0147】
表11: 試験したアバタセプトの製剤。全ての製剤は、アバタセプト(4.25mg/ml)を含有しており、pH 6.8に調整された。
【表11】
【0148】
試験した全ての製剤は、40℃で2週間及び4週週間の保管の後に目視試験に合格した(目視スコアA)。40℃での保管の後の製剤7-1~7-18中のHMWS生成率を、表12に示す。HMWS生成率が、クエン酸の濃度が増加するにつれて、特に、10mM以上の濃度で増加したことが示された。HMWS生成率が、無電荷浸透圧調整剤として1,2-プロパンジオールをスクロースの代わりに用いてごくわずかにのみ増加することが示された。スクロースを含有する製剤への中性アミノ酸(プロリン)の添加は、スクロース濃度を150mMまで低下させた場合でさえ、最も低いHMWS生成率をもたらした。
【0149】
表12: SECによって評価された、pH 6.8に調整された製剤7-1~7-18中40℃でのアバタセプト(4.25mg/ml)の安定性。
【表12】
【0150】
(比較例8-30℃での免疫グロブリンG1(IgG1)の安定性に対する緩衝剤濃度、浸透圧調整剤の電荷、及び中性アミノ酸の作用)
IgG1(100mg/ml)の安定性に対する緩衝剤濃度及び浸透圧調整剤の電荷の作用を調査した。クエン酸緩衝剤を試験した。塩化ナトリウム(150mM)を荷電浸透圧調整剤として使用し、グリセロール(300mM)を無電荷浸透圧調整剤として使用した。IgG1の安定性に対するプロリン及びグリシン(50mM)の作用も、1mM緩衝剤及び両浸透圧調整剤の存在下で調査した。試験した全ての製剤はポリソルベート80(0.2mg/ml)を含有しており、pH 6.0に調整された。表13に、試験した製剤をまとめる。全ての製剤に対して、30℃で8週間ストレスを与えた。IgG1の安定性を、SECを用いて高分子量種生成率をモニタリングすることによって追跡した。
【0151】
表13: 試験したIgG1の製剤。全ての製剤は、IgG1(100mg/ml)及びポリソルベート80(0.2mg/ml)を含有しており、pH 6.0に調整された。
【表13】
【0152】
試験した全ての製剤は、30℃での保管の後に目視試験に合格した(目視スコアA)。30℃での保管後の製剤8-1~8-8中のHMWS生成率を、表14に示す。HMWS生成率は、塩化ナトリウムの存在下及びグリセロールの存在下の双方で、緩衝剤濃度が増加するにつれて低下した(製剤8-1~8-3を比較、及び製剤8-4~8-6を比較)。クエン酸濃度が低い(1又は5mM)場合は、製剤のイオン強度が高いほどより高い安定性を示す傾向がわずかに存在した(製剤8-1を製剤8-4と比較、及び製剤8-2を製剤8-5と比較)。クエン酸濃度が高い(20mM)場合、この順序は逆転した(製剤8-3を製剤8-6と比較)が、この例において、双方の製剤のイオン強度は、70mMを越えていた。中性アミノ酸(プロリン又はグリシン)の存在は、ごくわずかなHMWS生成率の増加をもたらした。
【0153】
表14: SECによって評価された製剤8-1~8-8中30℃でのIgG1(100mg/ml)の安定性
【表14】
【0154】
(実施例の概要)
実施例2~7のデータは、Fcドメインを含有する操作されたタンパク質コンストラクトの製剤が、最高で5mMの緩衝剤を含有しかつ低イオン強度(例えば、該操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除いて20mM未満など)の場合に、安定であることを示す。より高い緩衝剤濃度、特に、10mM超、及びより高いイオン強度、特に、20mM超(操作されたタンパク質コンストラクトの寄与を除く)は、不安定化を招くものであった。中性アミノ酸の存在は、さらに安定化を招くものであった。驚くべきことに、これは、試験された4本鎖抗体(IgG1型)によって示される挙動と反対である。比較例8のデータは、この抗体が、より高い緩衝剤濃度かつより高いイオン強度でより安定であったことを示す。中性アミノ酸の存在は、さらに不安定化を招くものであった。
【0155】
理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、天然構造テンプレート(例えば、免疫グロブリン)に基づく天然タンパク質又は組換えタンパク質と比較して、Fcドメインを含む新規の操作されたタンパク質コンストラクトの発現は、タンパク質表面における疎水性パッチの存在量の増加と加水分解性の切断を受けやすい領域などの不安定部位の露出の増加をもたらすと考えている。次いで、このことは、凝集及び構造的劣化を起こす傾向の増加を招く。本発明は、理論に束縛されるものではないが、共同して非天然の疎水性パッチを隠すように働き、かつ不自然に露出された不安定部位でのプロトン交換速度を最小化して、Fcドメインを含む操作されたタンパク質コンストラクトの安定性の相当な向上をもたらすと考えられる製剤の特徴を兼ね備える。
【0156】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲の全体にわたり、文脈がそうでないことを必要とする場合を除き、「を含む(comprise)」という単語、並びに「を含む(comprises)」及び「を含む(comprising)」などのその変形は、記載されたインテジャー(integer)、工程、インテジャーの群、又は工程の群を含めるが、任意の他のインテジャー、工程、インテジャーの群、又は工程の群を排除しないことを意味するものと理解される。
【0157】
本発明の明細書の全体にわたり言及された全ての特許、特許出願、及び参考文献は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0158】
本発明は、好適な及びより好適な群並びに適当な及びより適当な群並びに上述の群の実施態様の全ての組合せを包含する。
【国際調査報告】