(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】ウイルスベクター生産のための規定サイズの保存安定性があるプラスミドDNA/ポリエチレンイミン(PEI)粒子の組成およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/88 20060101AFI20240209BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240209BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20240209BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240209BHJP
【FI】
C12N15/88 Z
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549082
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2022016584
(87)【国際公開番号】W WO2022177981
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】ハイクアン マオ
(72)【発明者】
【氏名】イチョン フー
(72)【発明者】
【氏名】イニン チョウ
(57)【要約】
懸濁培養液におけるウイルス産生細胞の効率的なトランスフェクションのため、複数のウイルス集合プラスミドにより、最適な既定の粒径を有するDNA/ポリカチオン粒子を生産する拡張可能な方法。本開示のDNA/ポリカチオン粒子は、懸濁液の形態で優れたかつ再現性のあるトランスフェクション活性および保存安定性をもたらし、オフザシェルフ製品として使用されうる。本開示のDNA/ポリカチオン粒子製剤は、潜在的にウイルス製造過程を簡略化かつ合理化し、生産品質および一貫性を改善できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子を調製する方法であって、
(a)第1の可変流量で1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーを含む第1の流れと、第2の可変流量で1つまたは複数の核酸を含む第2の流れとを第1のフラッシュナノ複合体形成(FNC)ミキサーに流し込み、第1の粒径を有する複数のナノ粒子を形成することと、
(b)第3の可変流量で前記第1の粒径を有する複数のナノ粒子を含む第3の流れと、第4の可変流量で集合バッファーを含む第4の流れとを第2のFNCミキサーに流し込み、複数の集合ナノ粒子を形成することと、
(c)前記ステップ(b)において形成された複数の集合ナノ粒子をしばらくの期間インキュベートし、第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子を形成することと、
(d)第5の可変流量で前記第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子を含む第5の流れと、第6の可変流量で安定化バッファーを含む第6の流れとを第3のFNCミキサーに流し込み、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子を形成することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、キトサン、PAMAMデンドリマー、プロタミン、ポリ(アルギニン)、ポリ(リジン)、ポリ(ベータ-アミノエステル)、カチオン性ペプチド、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーを含む第1の流れは、約0.04mg/mL~3mg/mLのポリエチレンイミンの濃度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、cDNA、ゲノムDNA、ガイドRNA、プラスミドDNA、ベクターDNA、mRNA、miRNA、piRNA、shRNA、およびsiRNAからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の核酸は、プラスミドDNAまたは1つもしくは複数のプラスミドDNAの混合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の核酸は、1つまたは複数のプラスミドDNAの混合物を含み、前記1つまたは複数のプラスミドDNAは、トランスファープラスミドと、Gagタンパク質、Polタンパク質、Revタンパク質、およびEnvタンパク質をコードするプラスミドDNAとを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記トランスファープラスミドは、レンチウイルスベクターをコードする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記レンチウイルスベクターは、異種プロモーターを含む修飾左(5’)レンチウイルスLTRと、Psiパッケージング配列(Ψ+)と、cPPT/FLAPと、RREと、治療導入遺伝子をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたプロモーターと、修飾SIN(3’)レンチウイルスLTRとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記envタンパク質は、VSV-gエンベロープ糖タンパク質を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数の核酸を含む第2の流れは、約20μg/mL~800μg/mLのDNA濃度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の可変流量、前記第2の可変流量、前記第3の可変流量、前記第4の可変流量、前記第5の可変流量、および前記第6の可変流量は、それぞれ独立して約5mL/分~約400mL/分である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の粒径を有する複数のナノ粒子は、約2.0~4.0のpHおよび約0.05~0.8mmS cm
-1の伝導度の条件下で形成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の粒径は、約40nm~約120nmの範囲を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記集合バッファーは、リン酸緩衝食塩水を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記集合バッファーは、約6.0~約8.0のpHおよび約2.0~25.0mS cm
-1の伝導度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記リン酸緩衝食塩水は、NaCl、KCl、Na
2HPO
4、KH
2PO
4、およびそれらの組み合わせの1つまたは複数を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ(b)において形成された複数のナノ粒子は、おおよそ室温(22±4°C)でしばらくの期間インキュベートされる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記期間は、約0.2~約5時間である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の粒径は、約300nm~約500nmの範囲を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ステップ(d)の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子は、約2.0~4.0のpH、および約1.0~15.0mS cm
-1の伝導度で、安定化バッファー中で形成される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記安定化バッファーは、1つまたは複数の糖を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記1つまたは複数の糖は、トレハロースを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つまたは複数の糖は、約10%~約30%w/wのトレハロースを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記粒子を、保存のため約-80°Cで凍結乾燥または凍結させることを更に含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
約67±5w/w%のDNA、9±5w/w%の結合ポリエチレンイミン(PEI)、および24±5w/w%の残留ポリエチレンイミン(PEI)を含む、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子。
【請求項27】
平均ゼータ電位が約35±5mVである、請求項26に記載の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子。
【請求項28】
約300nm~約500nmの粒径を有する、請求項26に記載の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子。
【請求項29】
前記粒径は、約300nm、約400nm、および約500nmからなる群から選択される、請求項28に記載の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子。
【請求項30】
300nmのz平均粒径に対して約0.15±0.05の多分散性指数、400nmのz平均粒径に対して約0.25±0.05の多分散性指数、および500nmのz平均粒径に対して約0.35±0.05の多分散性指数を有する、請求項29に記載の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子。
【請求項31】
レンチウイルスベクターを調製する方法であって、1つまたは複数の細胞を、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法により調製されたポリカチオン/核酸ナノ粒子または請求項26~30のいずれか一項に記載の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子に接触させることを含む、方法。
【請求項32】
前記1つまたは複数の細胞は、HEK293細胞またはその誘導体を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記1つまたは複数の細胞は、HEK293S細胞、HEK293T細胞、HEK293F細胞、HEK293FT細胞、HEK293FTM細胞、HEK293SG細胞、HEK293SGGD細胞、HEK293H細胞、HEK293E細胞、HEK293MSR細胞、またはHEK293A細胞を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記1つまたは複数の細胞は、HEK293T細胞を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記1つまたは複数の細胞は、懸濁培養液に適したHEK293T細胞を含む、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【政府の利益についての声明】
【0001】
本発明は、米国国立衛生研究所により授与された助成金EB018358の下、政府支援により成された。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療は、さまざまな遺伝性疾患および後天性疾患を治療する際にますます利用されるようになっている。これらの治療のほとんどは、レンチウイルス、レトロウイルス、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターなどのウイルスベクターを使用して送達されている。これらのベクターを生産する最も一般的な方法の1つは、ウイルスアクセサリータンパク質をコードするプラスミドDNA(pDNA)およびベクターバックボーンを含むトランスファープラスミドによる、HEK293パッケージング細胞株またはその誘導体の一過性トランスフェクションである。ベンチマークトランスフェクション試薬としては、リン酸カルシウム、リポフェクタミン、およびポリ(エチレンイミン)(PEI)が挙げられる。PEIを使用する典型的なトランスフェクション手順においては、例えば、pDNAおよびPEIは、血清の少ない培地に別々に溶解され、続いて混合され、電荷媒介の複合体コアセルベーションによりpDNA/PEIナノ粒子が形成される。所定のインキュベーション期間の後、複合粒子は、細胞培養液に追加される。PEIによる複合体コアセルベーションは、pDNAの細胞移入、エンドソーム脱出、および核輸送を促進し、ウイルスアクセサリータンパク質の発現をもたらす。
【0003】
ウイルスベクターの生産に対する要求は高まっている。これらの高まる要求を満たすためには、安全で効果的な治療結果を一貫して届けることを保証する拡張可能で再現性のある生産方法が不可欠である。しかしながら、トランスフェクションの直前にpDNA/PEI粒子を手動で調製するために広く採用されている方法は、バッチ間の差異が大きい。従って、当該分野では、使いやすいという特徴および投与量を減少させるのに十分な高いDNA濃度を有するオフザシェルフpDNA/PEI粒子製品を使用して、実験のばらつきを抑え、最大のトランスフェクション効率を達成するという解決策から利益を得ることができる。
【発明の概要】
【0004】
従って、いくつかの態様においては、本開示の保護対象は、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子を調製する方法であって、
(a)第1の可変流量で1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーを含む第1の流れと、第2の可変流量で1つまたは複数の核酸を含む第2の流れとを第1のフラッシュナノ複合体形成(FNC)ミキサーに流し込み、第1の粒径を有する複数のナノ粒子を形成することと、
(b)第3の可変流量で第1の粒径を有する複数のナノ粒子を含む第3の流れと、第4の可変流量で集合バッファーを含む第4の流れとを第2のFNCミキサーに流し込み、複数の集合ナノ粒子を形成することと、
(c)ステップ(b)において形成された複数の集合ナノ粒子をしばらくの期間インキュベートし、第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子を形成することと、
(d)第5の可変流量で第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子を含む第5の流れと、第6の可変流量で安定化バッファーを含む第6の流れとを第3のFNCミキサーに流し込み、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子を形成することと
を含む方法を提供する。
【0005】
いくつかの態様においては、1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、キトサン、PAMAMデンドリマー、プロタミン、ポリ(アルギニン)、ポリ(リジン)、ポリ(ベータ-アミノエステル)、カチオン性ペプチド、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。特定の態様においては、1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミンである。
【0006】
いくつかの態様においては、1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーを含む第1の流れは、約0.04mg/mL~3mg/mLのポリエチレンイミンの濃度を有する。
【0007】
態様によっては、1つまたは複数の核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、cDNA、ゲノムDNA、ガイドRNA、プラスミドDNA、ベクターDNA、mRNA、miRNA、piRNA、shRNA、およびsiRNAからなる群から選択される。特定の態様においては、1つまたは複数の核酸は、プラスミドDNAまたは異なる種のプラスミドDNAの混合物を含む。
【0008】
特定の態様においては、1つまたは複数の核酸は、1つまたは複数のプラスミドDNAの混合物を含み、1つまたは複数のプラスミドDNAは、トランスファープラスミドと、Gagタンパク質、Polタンパク質、Revタンパク質、およびEnvタンパク質をコードするプラスミドDNAとを含む。
【0009】
いくつかの態様においては、トランスファープラスミドは、レンチウイルスベクターをコードする。
【0010】
態様によっては、レンチウイルスベクターは、異種プロモーターを含む修飾左(5’)レンチウイルスLTRと、Psiパッケージング配列(Ψ+)と、cPPT/FLAPと、RREと、治療導入遺伝子をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたプロモーターと、修飾SIN(3’)レンチウイルスLTRとを含む。
【0011】
他の態様においては、Envタンパク質は、VSV-gエンベロープ糖タンパク質を含む。
【0012】
いくつかの態様においては、1つまたは複数の核酸を含む第2の流れは、約20μg/mL~800μg/mLのDNA濃度を有する。
【0013】
いくつかの態様においては、第1の可変流量、第2の可変流量、第3の可変流量、第4の可変流量、第5の可変流量、および第6の可変流量は、それぞれ独立して約5mL/分~約400mL/分である。
【0014】
いくつかの態様においては、第1の粒径は、約40nm~約120nmの範囲を有する。態様によっては、第1の粒径を有する複数のナノ粒子は、約2.0~4.0のpHおよび約0.05~2.0mS cm-1の伝導度の条件下で形成される。
【0015】
いくつかの態様においては、ステップ(b)における集合バッファーは、リン酸緩衝食塩水を含む。態様によっては、集合バッファーは、約2.0~25.0mS cm-1の伝導度を有する。態様によっては、集合バッファーは、約6.0~約8.0のpHを有する。態様によっては、リン酸緩衝食塩水は、NaCl、KCl、Na2HPO4、KH2PO4、およびそれらの組み合わせの1つまたは複数を含む。
【0016】
いくつかの態様においては、ステップ(b)において形成された複数のナノ粒子は、おおよそ室温(22±4°C)でしばらくの期間インキュベートされる。
【0017】
いくつかの態様においては、期間は、約0.2~約5時間である。
【0018】
いくつかの態様においては、第2の粒径は、約300nm~約500nmの範囲を有する。
【0019】
いくつかの態様においては、ステップ(d)の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子は、約2.0~4.0のpHおよび約1.0~15.0mS cm-1の伝導度の条件下で形成される。
【0020】
いくつかの態様においては、安定化バッファーは、少なくとも1つの糖を含む。態様によっては、糖は、トレハロースを含む。特定の態様においては、1つまたは複数の糖は、約10%~約30%w/wのトレハロースを含む。特定の態様においては、安定化バッファーは、HClを含む。更により特定の態様においては、安定化バッファーは、約0.25mmol/L~20mmol/Lのプロトンを含む。
【0021】
いくつかの態様においては、本開示の方法は、粒子を、保存のため約-80°Cで凍結乾燥または凍結させることを更に含む。
【0022】
他の態様においては、本開示の保護対象は、約67±5w/w%のDNA、9±5w/w%の結合ポリエチレンイミン(PEI)、および24±5w/w%の残留ポリエチレンイミン(PEI)を含む複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子を提供する。いくつかの態様においては、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子は、約35±5mVの平均ゼータ電位を有する。いくつかの態様においては、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子は、約300nm~約500nmの粒径を有する。いくつかの態様においては、粒径は、300nm、400nm、および500nmからなる群から選択される。いくつかの態様においては、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子は、300nmのz平均粒径に対して約0.15±0.05の多分散性指数、400nmのz平均粒径に対して約0.25±0.05の多分散性指数、および500nmのz平均粒径に対して約0.35±0.05の多分散性指数を有する。
【0023】
他の態様においては、本開示の保護対象は、ウイルスベクターを調製する方法であって、1つまたは複数の細胞を、本開示の方法により調製されたポリカチオン/核酸ナノ粒子または本明細書に記載の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子に接触させることを含む方法を提供する。態様によっては、1つまたは複数の細胞は、HEK293細胞を含む。特定の態様においては、1つまたは複数の細胞は、HEK293S細胞、HEK293T細胞、HEK293F細胞、HEK293FT細胞、HEK293FTM細胞、HEK293SG細胞、HEK293SGGD細胞、HEK293H細胞、HEK293E細胞、HEK293MSR細胞、またはHEK293A細胞を含む。特定の態様においては、1つまたは複数の細胞は、HEK293T細胞を含む。より特定の態様においては、1つまたは複数の細胞は、懸濁培養液に適したHEK293T細胞を含む。
【0024】
本開示の保護対象により全体または一部において取り上げられている、本開示の保護対象のいくつかの態様が上述されたが、他の態様は、記載が進むにつれ、以下に最適に記載された添付の実施例および図面に関連して取り上げられたとき、明らかになるであろう。
【0025】
特許または出願ファイルは、少なくとも1つのカラー付きの図面を含む。カラー図面を有する本特許または特許出願文書のコピーは、請求および必要な手数料の支払いに応じて米国特許商標庁より提供される。
【0026】
このように、本開示の保護対象を一般的な用語で記載してきたが、次に、添付の図面を参照する。図面は必ずしも縮尺どおりに記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】300nm~500nmの粒径を有するDNA/ポリエチレンイミン(PEI)粒子を生産する手順の概要を示す模式図である。レンチウイルスベクター(LVV)を生産するのに好適なpDNA/PEI粒子は、約400nm~約500nmのz平均サイズ(Z平均は、動的光散乱(DLS)により測定された粒子の集合物の強度加重平均流体力学的サイズである)を有する。
【
図2】集合バッファーとの混合時のインキュベーション中の粒子の成長動態を示す。この例において、200μg/mLの初期DNA濃度、0.53mg/mLのPEIpro(登録商標)濃度、ならびに54.8mmol/LのNaCl、1.08mmol/LのKCl、4mmol/LのNa
2HPO
4、および0.72mmol/LのKH
2PO
4を有する集合バッファーが使用される。この条件下では、成長に再現性があり、サイズ[nm]=2.9×時間[時間]+111.6として、モデル化されうる。
【
図3】
図3A、3B、及び3Cは、約60nm~約1000nmの制御されたサイズの安定的な粒子のトランスフェクション効率を示す。
図3Aは、レポーターとしてのルシフェラーゼの導入遺伝子発現の効率を示す。
図3B及び
図3Cは、GFP陽性細胞のパーセンテージに対する(
図3B)、及びGFP陽性細胞の集団における平均蛍光強度に対する(
図3C)、GFPの導入遺伝子発現の効率を示す。
【
図4】
図4A、4B、4C、及び4Dは、標準的な生産過程後に-80°C未満の温度で保存された400nmの粒子の長期安定性を示す。
図4Aは、DLSにより測定されたz平均サイズを示す。
図4Bは、DLSにより測定された多分散性指数(PDI)を示す。
図4Cは、NanoDrop DNA濃度評価により測定されたDNA維持率を示す。
図4Dは、解凍された粒子の懸濁液が室温に達した後、30分または4時間後の、解凍された粒子のトランスフェクション効率を示す。トランスフェクション効率スコアが1とは、粒子を手動で調製する方法により達成された最も高いスコアと比較したときと同等のトランスフェクション効率を意味する。
【
図5A】15mLの小さなバイオリアクター(Ambr15)において生産されたLVVの、感染力価に対するpDNA/PEI粒径の影響を示す。1倍の投与量レベルとは、懸濁培養液中で1μg pDNA mL
-1であることを表す。各サイズの群の力は、実験の設計において異なっており、図に示す個々のデータ点により完全に示されている。対照レベルは、トランスフェクション実験の直前にpDNA/PEI粒子を手動で調製する標準化されたインハウス手順で得られた最適な結果を表す。
【
図5B】15mLの小さなバイオリアクター(Ambr15)において生産されたLVVの、P:I比に対するpDNA/PEI粒径の影響を示す。1倍の投与量レベルとは、懸濁培養液中で1μg pDNA mL
-1であることを表す。各サイズの群の力は、実験の設計において異なっており、図に示す個々のデータ点により完全に示されている。対照レベルは、トランスフェクション実験の直前にpDNA/PEI粒子を手動で調製する標準化されたインハウス手順で得られた最適な結果を表す。
【
図5C】1μg pDNA mL
-1の投与量レベルで400nmのpDNA/PEI粒子を使用する2lのバイオリアクターにおいて生産されたLVVの感染力価を示す。各条件につきn=1のバイオリアクターである。対照レベルは、トランスフェクション実験の直前にpDNA/PEI粒子を手動で調製する標準化されたインハウス手順で得られた最適な結果を表す。
【
図5D】1μg pDNA mL
-1の投与量レベルで400nmのpDNA/PEI粒子を使用する2lのバイオリアクターにおいて生産されたLVVのP:I比を示す。各条件につきn=1のバイオリアクターである。対照レベルは、トランスフェクション実験の直前にpDNA/PEI粒子を手動で調製する標準化されたインハウス手順で得られた最適な結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の保護対象について、本発明の全てではないが一部の実施形態が示されている添付の図面を参照して、より詳細に説明する。同一の数字は、全体を通して同一の要素を指す。本開示の保護対象は、多くの異なる形態で具体化されてよく、本明細書に記載の実施形態に限定して解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用される法的要件を満たすように提供される。実際、本明細書に記載の本開示の保護対象の多くの変更および他の実施形態は、前述の説明および関連図面に示された教示の利益を有する、本開示の保護対象が属する技術分野に精通している者であれば思い浮かぶであろう。そのため、本開示の保護対象は、開示された特定の実施形態に限定されず、変更および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されていることを理解されたい。
【0029】
細胞、例えば、HEK293細胞またはその誘導体の再現性のあるトランスフェクションのために、濃縮され、安定的な、オフザシェルフのDNA/ポリエチレンイミン(PEI)粒子を生成し、ウイルスベクターを生産する方法は、今のところ存在しない。本開示の保護対象は、トランスフェクション過程を簡略化かつ合理化し、それにより、その過程を操作者非依存とし、ウイルスベクターのスケールアップ生産を促進する。本開示の保護対象は、一過性トランスフェクション過程によるウイルスベクターの生産における、低い再現性および一貫性のない収量にも対処する。従って、本開示の保護対象は、オフザシェルフ粒子製剤をもたらし、いくつかの実施形態においては、レンチウイルスベクター(LVV)生産のため、サイズが400nm~500nmである。
【0030】
いくつかの実施形態においては、本開示の保護対象は、規定サイズを有する保存安定性があるDNA/PEI粒子を調製する方法を提供する。
図1を参照すると、本開示の方法は、以下の3つの異なるステップに分けることができる:
(1)約120nm未満の粒径を有するプラスミドDNA/PEIナノ粒子を、集合のいわゆる「基本単位」として生成する。この第1のステップは、サイズおよび組成のより高い均一性ならびに約40nm~約120nmのサイズ制御を保証するため、フラッシュナノ複合体形成過程を使用して達成される。これらの基本単位のナノ粒子を生成するためには、当該技術分野で既知の他の方法も使用できる;
(2)イオン強度を制御する(塩濃度を増加させる)かつ表面電荷密度を減少させる(pHを増加させる)ことによりナノ粒子集合を誘発する。このステップは、フロー条件下、FNC混合チャンバー内で40~120nmの基本単位のナノ粒子を集合バッファーと混合し、溶液を所定の時間、室温で保持し、約300nm~約500nmの所望の粒径範囲をもたらすことにより達成される。粒径の成長は制御された動態によりモデル化できるため、粒子のサイズは、集合バッファーのpHおよび塩濃度を調製することにより、かつインキュベーションの時間を調整することにより制御される;および
(3)イオン強度を減少させ、表面電荷密度を増加させる(pHを減少させる)ことにより、成長を停止させ、粒子を安定させる。このステップは、フロー条件下、FNC混合チャンバー内で集合溶液中の粒子を安定化溶液と混合することにより達成される。
【0031】
得られた粒子は、-80°Cで懸濁液の形態で保存できる。安定化溶液(培地)は、非常に高い保存安定性を示し、これにより、この製剤をオフザシェルフ製品とすることができる。
【0032】
A. ポリカチオン/核酸ナノ粒子を調製する方法
従って、いくつかの実施形態においては、本開示の保護対象は、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子を調製する方法であって、
(a)第1の可変流量で1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーを含む第1の流れと、第2の可変流量で1つまたは複数の核酸を含む第2の流れとを第1のフラッシュナノ複合体形成(FNC)ミキサーに流し込み、第1の粒径を有する複数のナノ粒子を形成することと、
(b)第3の可変流量で第1の粒径を有する複数のナノ粒子を含む第3の流れと、第4の可変流量で集合バッファーを含む第4の流れとを第2のFNCミキサーに流し込み、複数の集合ナノ粒子を形成することと、
(c)ステップ(b)において形成された複数の集合ナノ粒子をしばらくの期間インキュベートし、第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子を形成することと、
(d)第5の可変流量で第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子を含む第5の流れと、第6の可変流量で安定化バッファーを含む第6の流れとを第3のFNCミキサーに流し込み、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子を形成することと
を含む方法を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、キトサン、PAMAMデンドリマー、プロタミン、ポリ(アルギニン)、ポリ(リジン)、ポリ(ベータ-アミノエステル)、カチオン性ペプチド、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。特定の実施形態においては、1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミンである。
【0034】
いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーを含む第1の流れは、約0.04mg/mL~3mg/mLのポリエチレンイミンの濃度を有する。
【0035】
実施形態によっては、1つまたは複数の核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、cDNA、ゲノムDNA、ガイドRNA、プラスミドDNA、ベクターDNA、mRNA、miRNA、piRNA、shRNA、およびsiRNAからなる群から選択される。特定の実施形態においては、1つまたは複数の核酸は、プラスミドDNAまたは異なる種のプラスミドDNAの混合物を含む。
【0036】
特定の実施形態においては、pDNAの混合物は、パッケージ可能なウイルスベクターと、ウイルスベクターを生産するのに必要かつ十分な1つまたは複数のウイルス構造/アクセサリータンパク質を含むトランスファープラスミドとをコードする。
【0037】
いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の核酸を含む第2の流れは、約20μg/mL~800μg/mLのDNA濃度を有する。
【0038】
いくつかの実施形態においては、第1の可変流量、第2の可変流量、第3の可変流量、第4の可変流量、第5の可変流量、および第6の可変流量は、それぞれ独立して約5mL/分~約400mL/分である。
【0039】
いくつかの実施形態においては、第1の粒径は、約40nm~約120nmの範囲を有する。いくつかの実施形態においては、第1の粒径を有する複数のナノ粒子は、約2.0~4.0のpHおよび約0.05~2.0mS cm-1の伝導度の条件下で形成される。
【0040】
いくつかの実施形態においては、ステップ(b)における集合バッファーは、リン酸緩衝食塩水を含む。いくつかの実施形態においては、集合バッファーは、約2.0~25.0mS cm-1の伝導度を有する。実施形態によっては、集合バッファーは、約6.0~約8.0のpHを有する。実施形態によっては、リン酸緩衝食塩水は、NaCl、KCl、Na2HPO4、KH2PO4、およびそれらの組み合わせの1つまたは複数を含む。
【0041】
いくつかの実施形態においては、ステップ(b)において形成された複数のナノ粒子は、おおよそ室温(22±4°C)でしばらくの期間インキュベートされる。
【0042】
いくつかの実施形態においては、期間は、約0.2~約5時間である。
【0043】
いくつかの実施形態においては、第2の粒径は、約300nm~約500nmの範囲を有する。
【0044】
いくつかの実施形態においては、ステップ(d)の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子は、約2.0~4.0のpHおよび約1.0~15.0mS cm-1の伝導度の条件下で形成される。
【0045】
いくつかの実施形態においては、ステップ(d)における安定化バッファーは、少なくとも1つの糖を含む。実施形態によっては、糖は、トレハロースを含む。特定の実施形態においては、1つまたは複数の糖は、約10%~約30%w/wのトレハロースを含む。特定の実施形態においては、安定化バッファーは、HClを含む。更により特定の実施形態においては、安定化バッファーは、約0.25mmol/L~20mmol/Lのプロトンを含む。
【0046】
いくつかの実施形態においては、本開示の方法は、粒子を、保存のため約-80°Cで凍結乾燥または凍結させることを更に含む。
【0047】
B. ポリカチオン/核酸ナノ粒子の特徴
他の実施形態においては、本開示の保護対象は、約67±5w/w%のDNA、9±5w/w%の結合ポリエチレンイミン(PEI)、および24±5w/w%の残留ポリエチレンイミン(PEI)を含む複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子を提供する。いくつかの実施形態においては、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子は、約35±5mVの平均ゼータ電位を有する。いくつかの実施形態においては、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子は、約300nm~約500nmの粒径を有する。いくつかの実施形態においては、粒径は、300nm、400nm、および500nmからなる群から選択される。いくつかの実施形態においては、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子は、300nmのz平均粒径に対して約0.15±0.05の多分散性指数、400nmのz平均粒径に対して約0.25±0.05の多分散性指数、および500nmのz平均粒径に対して約0.35±0.05の多分散性指数を有する。
【0048】
C. ウイルスベクターを調製する方法
他の実施形態においては、本開示の保護対象は、ウイルスベクターを調製する方法であって、1つまたは複数の細胞を、本開示の方法により調製されたポリカチオン/核酸ナノ粒子または本明細書に記載の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子に接触させることを含む方法を提供する。
【0049】
特定の実施形態においては、1つまたは複数の細胞は、ウイルスベクターを生成するために本明細書において検討される、ポリカチオン/核酸ナノ粒子、例えば、pDNA/PEI複合体によりトランスフェクトされる。
【0050】
本明細書において検討されるナノ粒子によるトランスフェクションに適した細胞の実例としては、CHO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、C3H 10T1/2細胞、FLY細胞、Psi-2細胞、BOSC 23細胞、PA317細胞、WEHI細胞、COS細胞、BSC 1細胞、BSC 40細胞、BMT 10細胞、VERO細胞、W138細胞、MRC5細胞、A549細胞、HT1080細胞、293細胞、B-50細胞、3T3細胞、NIH3T3細胞、HepG2細胞、Saos-2細胞、Huh7細胞、HeLa細胞、W163細胞、211細胞、211A細胞、またはそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
好適な実施形態においては、本明細書において検討されるナノ粒子によるトランスフェクションに適した細胞は、HEK293細胞またはその誘導体を含む。本明細書において検討される、特定の実施形態での使用に適したHEK293細胞の誘導体としては、HEK293S細胞、HEK293T細胞、HEK293F細胞、HEK293FT細胞、HEK293FTM細胞、HEK293SG細胞、HEK293SGGD細胞、HEK293H細胞、HEK293E細胞、HEK293MSR細胞、およびHEK293A細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
他の特に好適な実施形態においては、1つまたは複数の細胞は、懸濁培養液に適したHEK293T細胞を含む。
【0053】
いくつかの実施形態においては、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターである。本明細書において検討される、特定の実施形態での使用に適したレトロウイルスベクターの実例としては、モロニーマウス白血病ウイルス(M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプーマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)、ならびにレンチウイルスに由来するベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
好適な実施形態においては、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。本明細書において検討される、特定の実施形態での使用に適したレンチウイルスベクターの実例としては、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;1型HIVおよび2型HIVを含む)、ビスナマエディウイルス(VMV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)に由来するベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
より好適な実施形態においては、レンチウイルスベクターは、1型HIVまたは2型HIVに由来する。
【0056】
特定の実施形態においては、トランスファープラスミドは、左(5’)レンチウイルスLTRと、Psiパッケージ配列(Ψ+)と、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)と、Rev応答配列(RRE)と、治療導入遺伝子をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたプロモーターと、右(3’)レンチウイルスLTRとを含むレンチウイルスベクターをコードする。レンチウイルスベクターは、ポリアデニル化配列、インシュレーター、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、B型肝炎ウイルス(HPRE)、等を含むがこれらに限定されるものではない転写後調節エレメントを任意に含んでよい。
【0057】
特定の実施形態においては、トランスファープラスミドは、異種プロモーターを含む修飾左(5’)レンチウイルスLTRと、Psiパッケージ配列(Ψ+)と、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)と、Rev応答配列(RRE)と、治療導入遺伝子をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたプロモーターと、修飾(3’)レンチウイルスLTRとを含むレンチウイルスベクターをコードする。
【0058】
特定の実施形態においては、トランスファープラスミドは、修飾5’LTRを含むレンチウイルスベクターをコードし、ここで、5’LTRのU3領域は、異種プロモーターに置き換えられ、ウイルス粒子の生産中にウイルスゲノムの転写を推進する。使用されうる異種プロモーターの例としては、例えば、ウイルスサルウイルス40(SV40)(例えば、初期または後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、前初期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、および単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーターが挙げられる。
【0059】
特定の実施形態においては、トランスファープラスミドは、ウイルスベクター複製を不完全にする修飾自己不活型(SIN)3’LTRを含むレンチウイルスベクターをコードする。SINベクターは、3’LTRのU3領域の1つまたは複数の修正を含み、1回目のウイルス複製より後のウイルス転写を防止する。これは、右(3’)LTR U3領域が、ウイルス複製中に左(5’)LTR U3領域のテンプレートとして使用されるため、ウイルス転写物がU3エンハンサー-プロモーターなしでは作成できないからである。特定の実施形態においては、3’LTRは、U3領域が削除され、Rおよび/またはU5領域が、例えば、異種または合成ポリ(A)配列、1つまたは複数のインシュレーターエレメント、および/または誘導性プロモーターにより置き換えられるように修飾される。
【0060】
特定の実施形態においては、1つまたは複数のpDNAは、パッケージ可能なウイルスベクターゲノムと、gag、pol、env、tat、rev、vif、vpr、vpu、vpx、およびnefからなる群から選択されるウイルス構造/アクセサリータンパク質の1つまたは複数とを含むトランスファープラスミドをコードする。好適な実施形態においては、ウイルス構造/アクセサリータンパク質は、gag、pol、env、tat、およびrevからなる群から選択される。より好適な実施形態においては、ウイルス構造/アクセサリータンパク質は、gag、pol、env、およびrev、またはgag、pol、およびenvからなる群から選択される。
【0061】
ウイルスエンベロープタンパク質(env)は、最終的に細胞株から生成された組換えレトロウイルスに感染して形質転換されうる宿主細胞の範囲を判定する。1型HIV、2型HIV、SIV、FIV、およびEIVなどのレンチウイルスの場合、Envタンパク質は、gp41およびgp120を含む。
【0062】
本発明において用いられうるEnv遺伝子の実例としては、MLVエンベロープ、10A1エンベロープ、BAEV、FeLV-B、RD114、SSAV、Ebola、Sendai、FPV(家禽ペストウイルス)、およびインフルエンザウイルスエンベロープが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、RNAウイルス(例えば、ピコルナウイルス科、カリシウイルス科(Calciviridae)、アストロウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科、コロナウイルス科、パラミクソウイルス科、ラブドウイルス科、フィロウイルス科、オルトミクソウイルス科、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科、レオウイルス科、ビルナウイルス科、レトロウイルス科のRNAウイルスファミリー)のエンベロープ、およびDNAウイルス(ヘパドナウイルス科、サーコウイルス科、パルボウイルス科、パポバウイルス科、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科(Poxyiridae)、およびイリドウイルス科のファミリー)のエンベロープをコードする遺伝子が利用されてよい。代表的な例としては、FeLV、VEE、HFVW、WDSV、SFV、狂犬病、ALV、BIV、BLV、EBV、CAEV、SNV、ChTLV、STLV、MPMV、SMRV、RAV、FuSV、MH2、AEV、AMV、CT10、およびEIAVが挙げられる。
【0063】
他の実施形態においては、特定の実施形態での使用に適したEnvタンパク質としては、以下のウイルスのいずれか:A型インフルエンザ、例えば、H1N1、H1N2、H3N2、およびH5N1(鳥インフルエンザ)、B型インフルエンザ、C型インフルエンザウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルス群のいずれかのウイルス、腸管アデノウイルス、パルボウイルス、デング熱ウイルス、サル痘、モノネガウイルス目、リッサウイルス、例えば、狂犬病ウイルス、ラゴスコウモリウイルス、モコラウイルス、デュベンヘイジウイルス、ヨーロッパコウモリウイルス1&2、およびオーストラリアコウモリウイルス、エフェメロウイルス、ベジクロウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ヘルペスウイルス、例えば、1型および2型単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス(HHV)、6型および8型ヒトヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パピローマウイルス、マウスガンマヘルペスウイルス、アレナウイルス、例えば、アルゼンチン出血熱ウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、サビア関連出血熱ウイルス、ベネズエラ出血熱ウイルス、ラッサ熱ウイルス、マチュポウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridiae)、例えば、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、ハンタウイルス、腎症候性出血熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱を含むフィロウイルス科(フィロウイルス)、キャサヌル森林病ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルスを含むフラビウイルス科、およびパラミクソウイルス科、例えば、ヘンドラウイルスおよびニパウイルス、大痘瘡および小痘瘡(天然痘)、アルファウイルス、例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、SARS関連コロナウイルス(SARS-CoV)、ウエストナイルウイルス、いずれかの脳炎(encephaliltis)ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
好適な実施形態においては、Env遺伝子は、VSV-Gエンベロープ糖タンパク質をコードする。
【0065】
いくつかの好適な実施形態においては、本明細書において検討されるpDNA/PEI複合体は、異種プロモーターを含む修飾左(5’)レンチウイルスLTRと、Psiパッケージ配列(Ψ+)と、cPPT/FLAPと、RREと、治療導入遺伝子をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたプロモーターと、修飾SIN(3’)レンチウイルスLTRとを含むレンチウイルスベクターをコードするトランスファープラスミド;レンチウイルスgag/polをコードするプラスミド、revをコードするプラスミド、およびEnv遺伝子をコードするプラスミド、好ましくはVSV-Gエンベロープ糖タンパク質を含む。
【0066】
長年の特許法の慣例に従い、「a」、「an」、および「the」という用語は、特許請求の範囲を含めて、本願において使用されるとき、「1つまたは複数」を指す。従って、例えば、「対象(a subject)」への言及は、文脈が明らかに反対の場合(例えば、複数の対象(a plurality of subjects))等を除き、複数の対象を含む。
【0067】
多くの実施形態において本開示の方法によって処置される「対象」は、望ましくはヒト対象であるが、本明細書に記載の方法は、「対象」という用語に含まれることが意図されている全ての脊椎動物種に関して有効であることを理解されたい。従って、「対象」には、既存の病態もしくは疾患の治療、または病態もしくは疾患の発症を予防するための予防的治療など、医療目的のヒト対象、または医療目的、獣医学目的、もしくは開発目的の動物対象を含みうる。好適な動物対象としては、霊長類、例えば、ヒト、サル、類人猿、等;ウシ(bovine)、例えば、ウシ(cattle)、雄ウシ(oxen)、等;ヒツジ(ovine)、例えば、ヒツジ(sheep)等;ヤギ(caprine)、例えば、ヤギ(goat)等;ブタ(porcine)、例えば、ブタ(pig)、雄ブタ(hog)、等;ウマ(equine)、例えば、ウマ(horse)、ロバ、シマウマ、等;野生のネコ(cat)および飼いネコ(cat)を含むネコ(feline);イヌ(dog)を含むイヌ(canine);ウサギ(rabbit)、ノウサギ(hare)、等を含むウサギ類(lagomorph);およびマウス、ラット、等を含むげっ歯類を含むがこれらに限定されるものではない哺乳類が挙げられる。動物は、遺伝子導入動物であってよい。いくつかの実施形態においては、対象は、胎児、新生児、乳児、若年、および成人対象を含むがこれらに限定されるものではないヒトである。さらに、「対象」には、病態もしくは疾患に罹患している、または罹患している疑いのある患者を含みうる。したがって、本明細書では、「対象」および「患者」という用語は互換的に使用される。「対象」という用語は、対象の生物、組織、細胞、または細胞の集合体も指す。
【0068】
概して、活性薬剤または薬物送達デバイスの「有効な量」とは、所望の生物学的反応を誘発するのに必要な量を指す。当業者には理解されるように、薬剤またはデバイスの有効な量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤、医薬組成物の構成、標的組織などの因子に応じて変化しうる。
【0069】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」という用語は、文脈上別段の意味を有する場合を除き、非排他的な意味で使用される。同様に、「含む(include)」という用語およびその文法的変形は、非限定的であることを意図しており、リスト内の項目の列記は、リスト化された項目に置換または追加されうる他の同様の項目を排除するものではない。
【0070】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される量、サイズ、寸法、比率、形状、公式化、パラメーター、パーセンテージ、数量、特性、および他の数値を表す全ての数は、「約」という用語が値、量、または範囲とともに明示的に表示されなくても、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものと理解される。従って、反対の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、正確ではなく、正確である必要はないが、本開示の保護対象により得ようとする所望の特性に応じて、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、および当業者に公知の他の要因を反映して、近似値とするおよび/または所望により大きくまたは小さくすることができる。例えば、値について言及するとき、「約」という用語は、開示される方法を実施するため、または開示される組成を使用するために適切であるような、いくつかの実施形態においては±100%、いくつかの実施形態においては±50%、いくつかの実施形態においては±20%、いくつかの実施形態においては±10%、いくつかの実施形態においては±5%、いくつかの実施形態においては±1%、いくつかの実施形態においては±0.5%、およびいくつかの実施形態においては±0.1%の規定量からの変動を包含することを意味しうる。
【0071】
さらに、1つまたは複数の数または数値範囲に関連して使用されるとき、用語「約」は、範囲内の全ての数を含む、そのような全ての数値を指すと理解されるべきであり、記載された数値の上下に境界を拡張することによってその範囲を修正する。端点による数値範囲の記載には、その範囲に組み込まれる全ての数、例えば、その分数を含む全整数(例えば、1~5という記載には、1、2、3、4、および5、ならびにその分数、例えば、1.5、2.25、3.75、4.1、等が含まれる)、およびその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は、本開示の保護対象の代表的な実施形態を実施するための指針を当業者に提供するために含まれる。本開示および当該技術分野における一般的な技術水準に照らして、当業者であれば、以下の実施例は例示的なものであることのみを意図しており、本開示の保護対象の範囲から逸脱することなく、多数の変更、修正、および改変が採用されうることが理解できる。以下の総合的な説明および具体例は、例示を目的としたものであり、他の方法によって本開示の化合物を製造することを任意の方法で限定するものと解釈されるものではない。
【0073】
(実施例1)
基本単位のDNA/PEIナノ粒子の調製
レンチウイルスベクタートランスファープラスミド、およびレンチウイルスgag/pol、rev、およびVSV-gをコードするプラスミドが、20μg/mL~800μg/mLの総最終DNA濃度に希釈され、結合した。プラスミドの種の数、長さ、または具体的な遺伝子地図に制限はない。
【0074】
プラスミド溶液および希釈されたPEIpro(登録商標)溶液(0.04mg/mL~3mg/mL)が、2つの別々のNORM-JECTシリンジに充填され、閉じ込め衝突ジェット(CIJ)デバイスに接続された。溶液は、10mL/分~40mL/分の流量下でデジタルシリンジポンプにより制御されたCIJデバイスに注入される。結果として得られる溶離剤であるナノ粒子の懸濁液は、40nm~120nmのZ平均サイズを有する。
【0075】
(実施例2)
PECナノ粒子集合および成長制御
集合バッファーは、約7.0~約7.4のpHで、34.3mM~343mMの異なるイオン強度を有して調製される。リン酸緩衝食塩水(PBS)が、集合バッファーを調製するために典型的に使用された。対応する各成分の濃度は、以下のとおりである:0.2倍のPBS(27.4mmol/LのNaCl、0.54mmol/LのKCl、2mmol/LのNa2HPO4、および0.36mmol/LのKH2PO4;32.5mMのイオン強度)~2倍のPBS(274mmol/LのNaCl、5.4mmol/LのKCl、20mmol/LのNa2HPO4、および3.6mmol/LのKH2PO4;325.4mMのイオン強度)。全ての成分は、典型的に比例して変化する。
【0076】
実施例1から調製された基本単位のナノ粒子懸濁液、および集合バッファーが、2つの別々のシリンジに充填され、CIJデバイスに接続された。溶液は、10mL/分~40mL/分の流量で、デジタルシリンジポンプにより制御されたCIJデバイスに注入される。収集された粒子の懸濁液は、室温(22±4°C)で所定の時間インキュベートされ、300nm~500nmの所望のサイズに成長する。例えば、200μg/mLの初期DNA濃度で、0.53mg/mLのPEIpro(登録商標)濃度のとき、68.6mMのイオン強度の集合バッファー(54.8mmol/LのNaCl、1.08mmol/LのKCl、4mmol/LのNa
2HPO
4、および0.72mmol/LのKH
2PO
4)が使用され、インキュベーション時間は、それぞれ、300nmの粒子の場合は60分、400nmの粒子の場合は100分、および500nmの粒子の場合は140分である(
図2)。
【0077】
(実施例3)
PECナノ粒子安定化および凍結乾燥
0.25mmol/L~20mmol/Lのプロトン(例えば、HCl溶液)および19%w/wのトレハロースの安定化バッファー、ならびに実施例2において得られた集合粒子懸濁液が、CIJデバイスに接続されている2つの別々のシリンジに充填される。溶液は、10mL/分~40mL/分の流量で、デジタルシリンジポンプにより制御されたCIJデバイスに注入される。安定化された粒子は、保存のため-80°Cまで凍結乾燥または凍結されうる。
【0078】
(実施例4)
集合粒子の組成および特徴付け
最適化されたDNA/PEI粒子とは、50μg DNA/mLのプラスミドの総濃度で、複数の種のプラスミドの混合物およびPEIpro(登録商標)から調製されたプラスミドDNA/PEI複合体を含む、サイズが既定され、保存安定性がある懸濁液を指す。粒子は、動的光散乱(DLS)測定に従って、300nm~500nmのz平均サイズを有する。代表的な品質管理シートが、以下、表1に示される。粒子は、-80°Cで、凍結された懸濁液の形態で2カ月より長く保存されうる。
【0079】
集合粒子の組成は、粒径にかかわらず以下の通りである:67±5w/w%のDNA、9±5w/w%の結合PEI、および24±5w/w%の残留PEI。全ての粒子の平均ゼータ電位は、35±5mVであった。典型的な多分散性指数は、300nmのz平均サイズについては0.15±0.05、400nmの粒子については0.25±0.05、および500nmの粒子については0.35±0.05である。
【0080】
300nm、400nm、または500nmの集合粒子の3つのバッチ例についての代表的な品質管理シートが、表1に示される。
【0081】
【0082】
(実施例5)
トランスフェクション活性の特徴付け
本方法を使用して生産された安定的な粒子のトランスフェクション効率を評価する際、20000細胞/ウェルのHEK293T細胞株の単層培養液、および0.5×106細胞/mLのHEK293F細胞株の懸濁培養液が、投与の1日前に散布された。単層培養液の場合、粒子は、1μg/mLの最終DNA濃度になるように培地と予混合され、続いて、この粒子含有培地により、元の培養培地が置き換えられる。培地の刷新および細胞の採取は、それぞれ、投与後4時間および24時間で実施される。懸濁培養液の場合、粒子は、培養液に直接注入され、続いて、懸濁細胞に必要な通常の撹拌が成される。培地は全く刷新されず、細胞は投与後48時間で採取される。これらの条件下で、典型的な結果が得られた。
【0083】
(実施例6)
粒子再構成、およびHEK293F細胞懸濁培養液におけるトランスフェクション効率によるDNA/PEI粒子の保存安定性の特徴付け
凍結された粒子のストックが、保存の異なる時点で-80°Cから回収され、追加的な加熱源は使用せずに、室温でサンプルを静置することにより解凍される。サンプルが室温に達すると、粒子懸濁液は、短時間ボルテックスされた後、使える状態となる。粒子懸濁液は、培養サイズに応じてピペット操作またはポンプによりHEK293F細胞の懸濁培養液に追加される。再構成された粒子は、平均サイズ、多分散性指数、およびDNA濃度を含む、凍結前の特徴を全て維持していた(
図4A~
図4D)。そのような安定性は、少なくとも2カ月検証された。解凍された粒子懸濁液は、使用前、室温で少なくとも4時間安定的である。この特徴により、操作者非依存で、強固な、再現性のあるトランスフェクション結果ならびにウイルス生産の品質および収量が保証される。400nmの粒子のトランスフェクション効率は、現在、産業界により採用されて試薬の製造業者(Polyplusトランスフェクション(登録商標)、850 bd Sebastien Brant、67400 Illkirch フランス)により推奨される標準的な操作手順を使用して手動で生産された粒子により達成可能な、最も高いトランスフェクション効率に相当する。
【0084】
(実施例7)
Ambr15マイクロバイオリアクターにおけるLVVの生産
異なるサイズの粒子が生産され、使用されるまで-80°Cで保存された。粒子は、一晩、ドライアイスに載せて輸送可能である。到着すると、粒子は、使用されるまで-80°C未満で保存された。インハウスで懸濁液に適合したHEK293T細胞が、15mLのAmbr15マイクロバイオリアクター(Sartorius Stedim Biotech、フランス)内に散布された。細胞が所定の密度に達すると、培養液は、1つの容器分かん流され、続いて、リキッドハンドラーの自動化ピペット操作を使用して、50μg pDNA mL-1の対応する量の解凍された粒子を追加することにより、1または2μg mL-1の同等のDNA濃度の粒子によりトランスフェクトされた。並行して、手動で混合されたpDNA/PEI粒子のトランスフェクションが、同一のプロセス条件を使用して実施された。所定のインキュベーション時間後、マイクロバイオリアクターの培養液は、1つの容器分、再びかん流された。マイクロバイオリアクターの培養液は、収集され、500gでの5分間の遠心分離により浄化された。上澄みは、分析のためサンプリングされた。力価単位/mL(TU mL-1)の感染力価の結果が、qPCRにより判定され、カプシドタンパク質p24(ng mL-1)が、酵素結合免疫吸着検査法(Alliance HIV-I p24 ELISA Plate Kit、Perkin Elmer、USA)により評価された。p24値は、総LVV粒子の指標であり、検出された感染力価とp24との比率は、粒子対感染力(P:I)比に派生した。例えば、100のP:Iは、生産された100個のウイルス粒子の内、1つが機能的なLVVであることを意味する。
【0085】
これらの小規模スケールの評価において、培養上清から得られたLVV力価は、粒径が100nmから400nmになるにつれて増加し、続いて、500nmの粒子ではわずかに減少した。これは、レポーター遺伝子のトランスフェクション結果と一致していた(
図5A)。400nmの粒子は、標準的な方法による壊れやすい粒子により達成された最高レベルの生産性を示す内部対照と同等の力価(78%)をもたらした。解凍後、環境温度で2時間実験台において静置した後、400nmの粒子は、同一のレベルのトランスフェクションおよびLVV力価をもたらし(
図5A)、標準的な方法を使用して達成するのが困難な、優れた粒子の安定性を示した。さらに、400nmの粒子は、標準的な方法では見られなかった投与量依存的な反応を示した。400nmの粒子による同等の力価は、対照よりも感染性の割合が高いことにより、より少ない総数のLVVの生産により達成された。このことは、低い粒子対感染力(P:I)比により示された(
図5B)。
【0086】
【0087】
(実施例8)
ベンチスケールのLVVの生産
同一の懸濁液に適合したHEK293T細胞株が使用され、インハウス開発された2lの使い捨てバイオリアクター内に散布された。細胞が所定の密度に達すると、培養液は、交互接線流デバイスを利用して1つの容器分かん流され、続いて、蠕動ポンプを使用して、50μg pDNA mL-1の対応する量の解凍された粒子を追加することにより、1または1.5μg mL-1の同等のDNA濃度の粒子によりトランスフェクトされた。培養液は、続いて、発現のピークで収集され、深層ろ過により浄化された。続いて、標準的な樹脂ベースのクロマトグラフィーを利用したLVVの精製が完了し、その後、限外ろ過および透析ろ過を経て、最終製剤が得られた。感染力価およびp24の結果は、続いて、上述した方法を使用して判定された。
【0088】
ambr(登録商標)15の方法と同様に、解凍された粒子の懸濁液が、蠕動ポンプを使用したベンチトップ操作により、培養液の上部に速やかに追加された。容器は、力価を試験するのに先立って、バッチ収集され、精製された。これらの安定化された400nmの粒子の感染力価(解凍後、0.5時間または2時間静置)は、標準的な調製プロトコルによる最高レベルよりも優れており(128%および187%、それぞれ、n=1のバイオリアクター)(
図5C)、このスケールでより低いP:I比も検証された(
図5D)。これらの結果により、400nmの粒子は、LVV生産および集合に不可欠な複数のプラスミドの共発現を改善したかもしれないことが示唆される。
【0089】
【0090】
(実施例9)
実施例の概要
本研究により、LVV生産細胞株におけるトランスフェクション効率は、pDNA/PEI粒子のサイズに決定的に依存するという重要な洞察が明らかになり、トランスフェクションに最適なサイズ範囲は400nm~500nmであると特定された。段階的な過程は、表面電荷の反転およびイオン強度の条件付けに基づいて設計され、60nm~1000nmの平均サイズのpDNA/PEI粒子が、高いサイズ制御により調製された。調製された粒子は、標準的な操作の場合は環境温度で、長期保存の場合は-80°Cで、懸濁液中で優れた安定性を示した。この粒径操作方法により、高い均一性がもたらされ、一連のステップにより、集合動態の高い同調性が可能になる。スケールアップ生産方法は、混合手順を提供するのに合わせた集合動態により、継続的な流動混合過程-FNCプラットフォーム-に基づいて開発された。400nmのpDNA/PEI粒子製剤の最適なトランスフェクション活性および安定性は、予め調製され、凍結保存され、輸送され、そして解凍された粒子を使用したLVVの生産において有効であり、実際のバイオリアクター設定において業界標準を使用して生産された粒子と一致する性能を示した。この新たな拡張可能な製造方法は、生産性および量の制御の改善により、広範囲の遺伝子治療ベクターの生産まで容易に拡張可能な、高いトランスレーショナルポテンシャルを有する。
[参照]
【0091】
本明細書に記載の全ての出版物、特許出願、特許、および他の参照文献は、本開示の保護対象が属する技術分野に精通している者のレベルを示すものである。全ての出版物、特許出願、特許、および他の参照文献は、個々の出版物、特許出願、特許、および他の参照文献が具体的にかつ個々に参照により組み込まれる場合と同一の程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。多数の特許出願、特許、および他の参照文献が本明細書で参照されているが、このような参照は、これらの文書のいずれかが当技術分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものではないことが理解されよう。本明細書と組み込まれた参考文献との間に矛盾がある場合は、本明細書(組み込まれた参考文献に基づく場合がある、その修正を含む)が優先するものとする。本明細書では、特に断りのない限り、標準的な技術上認められた用語の意味を使用する。本明細書では、さまざまな用語の標準的な略語を使用する。
【0092】
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【0093】
前述の保護対象は、理解を明瞭にする目的で、図示および例示によってある程度詳細に説明されたが、当業者には、添付の特許請求の範囲内で特定の変更および修正を実施できることが理解されよう。
【国際調査報告】