(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】転移性がん治療のための併用遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20240209BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240209BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240209BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240209BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240209BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240209BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240209BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240209BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240209BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240209BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240209BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20240209BHJP
A61K 9/42 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K38/20
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K47/44
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/10
A61K9/32
A61K9/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550050
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 US2022017099
(87)【国際公開番号】W WO2022178325
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510082868
【氏名又は名称】エンジーン,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】マリー-リーヌ グーレ
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ ローラ
(72)【発明者】
【氏名】ショーナ ドーフィニー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA42
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB05
4C076BB07
4C076BB11
4C076BB21
4C076BB25
4C076CC27
4C076DD38
4C076DD66
4C076DD67
4C076EE01A
4C076EE24
4C076EE25
4C076EE26
4C076EE37
4C076EE49
4C076EE51
4C076FF21
4C076FF63
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA01
4C084DA12
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
(57)【要約】
本開示は、がん抗原に対するメモリーT細胞応答を活性化するための、好ましくはRIG-Iアゴニストと組み合わせたIL-12を限局性発現するための方法及び組成物に関する。実施形態では、方法は転移性疾患を治療するのに有効である。
【選択図】
図4C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原発性がんに対するメモリーT細胞応答の活性化をそれを必要とする患者にて行う方法であって、前記方法が:
カチオン性ポリマー及び/または脂質を含む核酸ポリプレックスと、インターロイキン-12(IL-12)をコードする治療用核酸構築物と、少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする核酸を含む治療用核酸構築物とを含む治療有効量の組成物に前記患者の原発性がんを接触させることを含み、IL-12及びRIG-Iをコードする前記治療用核酸構築物は同一のまたは異なる核酸構築物である、前記方法。
【請求項2】
前記方法が、前記患者における粘膜腫瘍以外の原発性がんを治療する、または抑制するのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、前記原発性がんとは異なる部位にて前記患者の転移性疾患を治療する、または抑制するのに有効である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記原発性がんが、乳癌、結腸癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌、卵巣癌、腎臓癌、脳腫瘍、肉腫、膀胱癌、膣癌、子宮頸癌、胃癌、消化管癌、腎臓癌、肝臓癌、甲状腺癌、食道癌、鼻腔癌、喉頭癌、口腔癌、咽頭癌、網膜芽細胞腫、子宮内膜癌、及び精巣癌から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記原発性がんとは異なる部位が、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸及び子宮頸部のうちの1以上である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記転移性疾患が、前記原発性がんとは異なる2以上の部位にある、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記RIG-Iアゴニストが、eRNA11a、VA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14及びSLR20から成る群から選択され、さらに好ましくは、eRNA41H、eRNA11aから成る群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記カチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン(PEI)、PAMAM、ポリリシン(PLL)、ポリアルギニン、キトサン、及びそれらの誘導体から成る群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記カチオン性ポリマーが、誘導体化キトサン、好ましくはアミノ官能化キトサンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アミノ官能化キトサンがアルギニンを含み、且つさらに親水性ポリオールを含む、または親水性ポリオールで官能化される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記親水性ポリオールがグルコン酸及びグルコースから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸ポリプレックスがさらに、少なくとも1つのポリアニオン性アンカー領域と少なくとも1つの親水性テール領域とを有する1以上のポリアニオン含有ブロックコポリマーを含む可逆性コーティングを含み、好ましくは、前記ポリアニオン含有ブロックコポリマーが線状の二元ブロック及び/または三元ブロックコポリマーである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
IL-12をコードする前記治療用核酸構築物が配列番号8を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
原発性がんの部位とは異なる部位における転移腫瘍の治療または抑制をそれを必要とする患者にて行う方法であって、前記方法が:
カチオン性ポリマー及び/または脂質を含む核酸ポリプレックスと、インターロイキン-12(IL-12)をコードする治療用核酸構築物と、少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする核酸を含む治療用核酸構築物とを含む治療有効量の組成物に前記患者の前記原発性がん及び/または転移腫瘍を接触させることを含み、IL-12及びRIG-Iをコードする前記治療用核酸構築物は同一のまたは異なる核酸構築物である、前記方法。
【請求項15】
前記がんが、乳癌、結腸癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌(lung cancer)、肺癌(pulmonary cancer)、卵巣癌、腎臓癌、脳腫瘍、肉腫、膀胱癌、膣癌、子宮頸癌、胃癌、消化管癌、腎臓癌、甲状腺癌、食道癌、喉頭癌、口腔癌、咽頭癌、網膜芽細胞腫、子宮内膜癌、及び精巣癌から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記原発性がんが、消化管癌、鼻腔癌または肺癌、及び泌尿生殖器癌から成る群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記原発性がんが、口腔癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、大腸癌、及び直腸癌から成る群から選択される消化管癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記原発性がんが、副鼻腔癌、中咽頭癌、気管癌、及び肺癌から成る群から選択される鼻腔癌または肺癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記原発性がんが、膀胱癌、尿路上皮癌、尿道癌、精巣癌、腎臓癌、前立腺癌、陰茎癌、副腎癌、子宮癌、子宮頸癌、及び卵巣癌から成る群から選択される泌尿生殖器癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記泌尿生殖器癌が膀胱癌である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記腫瘍の転移部位が、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸及び子宮頸部のうちの1以上にある、請求項14~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記転移腫瘍が2以上の異なる部位である、請求項14~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記RIG-Iアゴニストが、eRNA11a、VA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14及びSLR20から成る群から選択され、さらに好ましくは、eRNA41H、eRNA11aから成る群から選択される、請求項14~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記カチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン(PEI)、PAMAM、ポリリシン(PLL)、ポリアルギニン、キトサン、及びそれらの誘導体から成る群から選択される、請求項14~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記カチオン性ポリマーが、誘導体化キトサン、好ましくはアミノ官能化キトサンを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アミノ官能化キトサンがアルギニンを含み、且つさらに親水性ポリオールを含む、または親水性ポリオールで官能化される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記親水性ポリオールがグルコン酸及びグルコースから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記核酸ポリプレックスがさらに、少なくとも1つのポリアニオン性アンカー領域と少なくとも1つの親水性テール領域とを有する1以上のポリアニオン含有ブロックコポリマーを含む可逆性コーティングを含み、好ましくは、前記ポリアニオン含有ブロックコポリマーが線状の二元ブロック及び/または三元ブロックコポリマーである、請求項14~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
IL-12をコードする前記治療用核酸構築物が配列番号8を含む、請求項14~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記接触させることが膀胱内注入を含む、請求項14記載の方法。
【請求項31】
前記接触させることが、消化管(GIT)への経口投与または直腸内/結腸内投与である、請求項14に記載の方法。
【請求項32】
前記接触させることが腫瘍内注射によるものである、請求項14に記載の方法。
【請求項33】
前記接触させることが、肺への鼻腔内投与または気管内投与である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月18日出願の米国仮特許出願第63/150,846号の優先権の利益を主張し、その内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、IL-12の限局性の送達及び発現によって、好ましくはI型IFN(IFN-1)活性化因子/誘導因子と組み合わせて、遠隔部位での転移腫瘍を治療するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
がん性疾患及び腫瘍はヒトの死亡や重篤な病気の主な原因の1つである。特に転移腫瘍は、主に転移が形成され始めると現在の治療法が無効になるため、がん患者の死亡に大きく寄与する。
【0004】
転移性がんの治療は特に、体内の複数の異なる部位に広がっている場合、とてつもない難題である。通常、転移性がん患者は、体のあらゆる場所のがん細胞を殺すことを目的とした全身療法のみで治療される。しかし、残念ながら、このアプローチの有効性は理想とは程遠い。したがって、「治癒」と「転移性がん」という用語が一緒に使用されることは稀である。転移性腫瘍がある人は、既存の治療法に反応しないことが多く、これらの患者で長期寛解を達成することは、限局性がんがある患者の場合よりもはるかに可能性が低い。むしろ、転移性疾患の治療目標は通常、がんの増殖を遅らせること、またはがんによって引き起こされる症状を緩和することである。
【0005】
転移性がんの治療が難しい理由は正確には理解されてないが、転移性腫瘍細胞がすぐに適応して治療に耐性を示し得ることは明らかである。場合によっては、それぞれの転移性腫瘍がさまざまな臓器で増殖する場合がある。このため治療が困難になるが、これは各腫瘍が独自の腫瘍微小環境を有する場合があり、治療に対する反応が異なる場合があるためである。したがって、転移性がんのある人の予後は一般に不良であり、がんによる死亡のほとんどは転移性がんが占めている。
【0006】
したがって、癌腫を有する個体にて、原発性がんとは異なる第2の腫瘍部位における腫瘍細胞増殖を阻害する方法、及び原発性がんとは異なる部位における転移腫瘍を治療または抑制する方法に対するニーズが当該技術分野に残っている。幸いなことに、本開示はこれらのニーズ及びその他のニーズに応えるものである。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、I型インターフェロン(IFN-1)活性化因子/誘導因子、例えば、RIG-Iアゴニスト、STINGアゴニスト及び/またはTLR7/9アゴニストと共にIL-12を原発性腫瘍部位にて限局性に送達し、且つ発現させることによって、遠隔部位における転移腫瘍を阻害する当該技術分野にて未だ満たされていないニーズを解決する。本明細書で初めて実証されたように、主題の治療法は、細胞傷害性CD8+T細胞及びCD4+メモリーT細胞を含む原発性がんに対する頑健な免疫応答を刺激し、特に後者の細胞集団は遠隔転移に対する主題の治療法の全身効果を支援する。いくつかの実施形態では、原発性腫瘍部位は粘膜組織である。いくつかの実施形態では、原発性腫瘍部位は粘膜組織以外である。好ましい実施形態では、主題の方法及び組成物はIL-12と少なくとも1つのRIG-Iアゴニストとの同時発現を含む。
【0008】
一態様では、本開示は、がん抗原に対するメモリーT細胞応答を活性化する方法を提供する。該方法は、原発性がんを、カチオン性ポリマー及び/または脂質を含む核酸ポリプレックスと、インターロイキン-12(IL-12)をコードする治療用核酸構築物と、少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする核酸を含む治療用核酸構築物とを含む治療有効量の組成物に接触させることを含み、IL-12及びRIG-Iをコードする治療用核酸構築物は同一のまたは異なる核酸構築物である。
【0009】
いくつかの実施形態では、該方法は原発性がんを治療する、または抑制するのに有効である。実施形態では、原発性がんは、乳癌、結腸癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌、卵巣癌、腎臓癌、脳腫瘍、肉腫、膀胱癌、膣癌、子宮頸癌、胃癌、消化管のがん、腎臓癌、肝臓癌、甲状腺癌、食道癌、鼻腔癌、喉頭癌、口腔癌、咽頭癌、網膜芽細胞腫、子宮内膜癌、及び精巣癌から選択される。実施形態では、原発性がんは粘膜癌以外である。
【0010】
いくつかの実施形態では、該方法は、原発性がんとは異なる部位における転移性疾患を治療する、または抑制するのに有効である。実施形態では、原発性がんは、乳癌、結腸癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌、卵巣癌、腎臓癌、脳腫瘍、肉腫、膀胱癌、膣癌、子宮頸癌、胃癌、消化管のがん、腎臓癌、肝臓癌、甲状腺癌、食道癌、鼻腔癌、喉頭癌、口腔癌、咽頭癌、網膜芽細胞腫、子宮内膜癌、及び精巣癌から選択される。いくつかの実施形態では、原発性がんとは異なる部位は、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、及び子宮頸部のうちの1以上である。いくつかの実施形態では、転移性疾患は原発性がんとは異なる2以上の部位にある。
【0011】
いくつかの実施形態では、RIG-IアゴニストはeRNA11a、VA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14、及びSLR20から成る群から選択され、さらに好ましくは、eRNA41H、eRNA11aから成る群から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、カチオン性ポリマーはポリエチレンイミン(PEI)、PAMAM、ポリリシン(PLL)、ポリアルギニン、キトサン、及びそれらの誘導体から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、カチオン性ポリマーは誘導体化キトサン、好ましくはアミノ官能化キトサンを含む。いくつかの実施形態では、アミノ官能化キトサンはアルギニンを含み、且つさらに親水性ポリオールを含む、または親水性ポリオールで官能化される。いくつかの実施形態では、親水性ポリオールはグルコン酸及びグルコースから選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、核酸ポリプレックスはさらに、少なくとも1つのポリアニオン性アンカー領域及び少なくとも1つの親水性テール領域を有する1以上のポリアニオン含有ブロックコポリマーを含む可逆性コーティングを含み、好ましくは、ポリアニオン含有ブロックコポリマーは線状の二元ブロック及び/または三元ブロックコポリマーである。
【0014】
いくつかの実施形態では、IL-12をコードする治療用核酸構築物は配列番号8を含む。
【0015】
別の態様では、本開示は、例えば、膀胱癌のような原発性がんを有する個体における原発性がんとは異なる部位での転移腫瘍を治療する、または抑制する方法を提供し、該方法は、原発性がんを、カチオン性ポリマー及び/または脂質を含む核酸ポリプレックスと、インターロイキン-12(IL-12)をコードする治療用核酸構築物と、少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする核酸を含む治療用核酸構築物とを含む治療有効量の組成物に接触させることを含み、IL-12及びRIG-Iをコードする治療用核酸構築物は同一のまたは異なる核酸構築物である。
【0016】
実施形態では、原発性がんは、乳癌、結腸癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫、肺癌、卵巣癌、腎臓癌、脳腫瘍、肉腫、膀胱癌、膣癌、子宮頸癌、胃癌、消化管のがん、腎臓癌、甲状腺癌、食道癌、鼻腔癌、喉頭癌、口腔癌、咽頭癌、網膜芽細胞腫、子宮内膜癌、及び精巣癌から選択されるがんである。一実施形態では、原発性がんは、消化管癌、鼻腔癌または肺癌、及び泌尿生殖器癌から成る群から選択される粘膜癌である。いくつかの実施形態では、原発性粘膜癌は、口腔癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、大腸癌、及び直腸癌から成る群から選択される消化管癌である。いくつかの実施形態では、原発粘膜癌は、副鼻腔癌、中咽頭癌、気管癌、及び肺癌から成る群から選択される鼻腔癌または肺癌である。いくつかの実施形態では、原発性粘膜癌は、膀胱癌、尿路上皮癌、尿道癌、精巣癌、腎臓癌、前立腺癌、陰茎癌、副腎癌、子宮癌、子宮頸癌、及び卵巣癌から成る群から選択される泌尿生殖器癌である。いくつかの実施形態では、泌尿生殖器癌は膀胱癌である。
【0017】
いくつかの実施形態では、腫瘍の転移部位は、肝臓、肺、骨、脳、リンパ節、腹膜、皮膚、前立腺、乳房、結腸、直腸、及び子宮頸部のうちの1以上にある。いくつかの実施形態では、転移腫瘍は2以上の異なる部位にある。
【0018】
いくつかの実施形態では、RIG-Iアゴニストは、eRNA11a、VA RNA1、eRNA41H、MK4621、SLR10、SLR14、及びSLR20から成る群から選択され、さらに好ましくは、eRNA41H、eRNA11aから成る群から選択される。
【0019】
他の実施形態では、カチオン性ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、PAMAM、ポリリシン(PLL)、ポリアルギニン、キトサン、及びそれらの誘導体から成る群から選択される。別の実施形態では、カチオン性ポリマーは誘導体化キトサン、好ましくはアミノ官能化キトサンを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、カチオン性ポリマーは、アルギニンを含み、且つさらに親水性ポリオールを含む、または親水性ポリオールで官能化されているアミノ官能化キトサンである。いくつかの実施形態では、親水性ポリオールはグルコン酸及びグルコースから選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、核酸ポリプレックスはさらに、少なくとも1つのポリアニオン性アンカー領域及び少なくとも1つの親水性テール領域を有する1以上のポリアニオン含有ブロックコポリマーを含む可逆性コーティングを含み、好ましくは、ポリアニオン含有ブロックコポリマーは線状の二元ブロック及び/または三元ブロックコポリマーである。
【0022】
いくつかの実施形態では、IL-12をコードする治療用核酸構築物は配列番号8を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、接触させることは膀胱内注入を含む。別の実施形態では、投与は、経口投与または直腸内/結腸内から消化管(GIT)への投与である。いくつかの実施形態では、投与は消化管(GIT)への直腸内/結腸内投与である。さらに他の実施形態では、接触させることは腫瘍内注射による。さらに他の実施形態では、接触させることは肺への鼻腔内または気管内の投与である。
【0024】
他の特徴、目的、及び利点は後に続く本開示から明らかになるであろう。
【0025】
本開示は添付の図面を参照して開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】膀胱癌の同所性モデルにおけるmEG-70構築物による雌C57BL/6Jマウスの実験的処理のタイムラインを示す。1日目に、MB49-ルシフェラーゼ細胞(MB49-Luc;1×10
5細胞)をマウスの膀胱に注入した。移植は注入後9日目にてルシフェラーゼシグナルの生体内画像処理によって確認した。生物発光レベルに基づいてマウスを処理群(n=22)に均等に分配し、マウスは10日目(Tx1)及び17日目(Tx2)にmEG-70(1mgのDNA/mL;80μgのDNAに相当)の膀胱内注入(IVI)を受け、対照動物は1%マンニトール(偽処理)の注入を受けた。担腫瘍動物のコホートは未処理であった。生存を85日間モニタリングした。
【
図1B】mEG-70処理動物はそのうちおよそ70%が疾患で死亡した対照マウスと比べて長期生存を示した。mEG-70の生存曲線は偽処理(1%マンニトール)または未処理マウスの生存率とは有意に異なる(それぞれ*p<0.05及び**p<0.01)。
【
図1C】完全な疾患退縮を示し、76日間の観察期間中に再発しなかった(「mEG-70治癒」と呼ばれる)mEG-70で処理したマウスにMB49-Luc細胞を再負荷して、再発性疾患からの防御を評価した。17匹中15匹のマウスで頑健な腫瘍移植を示した週齢を一致させた無処置対照とは対照的に、mEG-70で治癒したマウスはすべて、再負荷後3週間まで腫瘍再発に対して耐性を示した(n=17)。
【
図2A】膀胱癌の同所性モデルにおけるmEG-70構築物による雌C57BL/6Jマウスの実験的処理のタイムラインを示す。1日目にMB49-ルシフェラーゼ細胞(MB49-Luc;1×105細胞)をマウスの膀胱に注入した。注入後9日目にルシフェラーゼシグナルの生体内画像処理によって移植を確認し、生物発光のレベルに基づいて処理群(n=22)に均等に分配した。マウスは10日目(Tx1)と17日目(Tx2)にmEG-70(1mgのDNA/mL;80μgのDNAに相当)の膀胱内注入(IVI)を受け、対照動物は1%マンニトール(偽処理)の注入を受けた。担腫瘍動物のコホートは未処理だった。すべてのマウスが膀胱癌で死亡する、または腫瘍がない(生物発光シグナルが陰性で臨床症状なし)とみなされるまで生存をモニタリングした。85日目に、生存している腫瘍のないmEG-70処理マウス及び週齢を一致させた対照にMB49-Luc細胞(1×10
5細胞)をIVIによって再負荷した。mEG-70処理マウスはすべて腫瘍が存在しないままであり、153日目に、MB49-Luc(1×10
5細胞)またはB16-F10細胞(1×10
5細胞)のいずれかを脇腹皮下に再負荷した。
【
図2B】mEG-70処理動物はMB49-Luc細胞による遠隔腫瘍の再負荷から保護された。9匹の動物のうち1匹だけが腫瘍増殖を示し、それは著しくゆっくり進行した。対照的に、無処置対照コホートでは、腫瘍が増殖したマウスは9匹のうち8匹だった。
【
図2C】応答の特異性を評価するためにB16-F10細胞をマウスに再負荷した。再負荷群及び無処置対照群のマウスはすべて、頑健なB16-F10腫瘍移植を示した(n=8/群)。
【
図3A】膀胱癌の同所性モデルにおけるmEG-70構築物による雌C57BL/6Jマウスの実験的処理のタイムラインを示す。MB49-ルシフェラーゼ細胞(MB49-Luc;1×10
5細胞)を雌C57BL/6Jの膀胱(12~16週)に注入し、注入後9日目のルシフェラーゼシグナルの生体内画像処理によって移植を確認した(Lumina LT IVIS画像処理システムを使用)。マウスは生物発光のレベルに基づいて処理群(n=20)に均等に分配され(ルシフェラーゼ陰性マウスは試験から除外された)、10日目(Tx1)と17日目(Tx2)にmEG-70(1mgのDNA/mL、80μgのDNAに相当)の膀胱内注入(IVI)を受け、対照動物は1%マンニトール(偽処理)の注入を受けた。すべてのマウスが膀胱癌で死亡するまで、または腫瘍がないとみなされるまで(生物発光シグナルが陰性で臨床症状なし;データを示さず)、生存をモニタリングした。167日目に、生存している腫瘍のないmEG-70処理マウスと、週齢を一致させた無処置対照に、枯渇を確立するために連続4日間、その後維持するために週に2回アイソタイプ対照(非枯渇)、抗CD4抗体、または抗CD8抗体のいずれかのうち1つを腹腔内注射した。3回目の枯渇抗体注射後、マウスの脇腹皮下にMB49-Luc細胞(1×10
5細胞)を再負荷した(170日目;n=6)。ノギスで測定することによって腫瘍をモニタリングし;腫瘍体積は式(長さ×幅
2/2)を使用して算出した。
【
図3B】アイソタイプ対照抗体(非枯渇)を投与された無処置マウスは増殖する皮下腫瘍を有している一方で、mEG-70処理動物はすべてMB49-Luc細胞による遠隔腫瘍再負荷から保護された。
【
図3C】抗CD4抗体を投与されたマウス(CD4+T細胞枯渇)は、無処置であろうと、またはmEG-70処理によって以前治療されていようと、増殖するMB49-Luc皮下腫瘍を有する。
【
図3D】抗CD8抗体(CD8+T細胞枯渇)を投与された無処置マウスはすべて増殖する皮下腫瘍を有するが、mEG-70処理動物では6匹のうち1匹だけが活発に増殖する腫瘍を有した。
【
図4A】mEG-70構築物による雌C57BL/6Jマウスの実験的処理のタイムラインを示す。MB49-ルシフェラーゼ細胞(MB49-Luc;100μL中に2.5×10
5細胞)を、麻酔下でC57BL/6Jマウス(12~16週)の右脇腹に皮下移植して疾患を誘導した。腫瘍が約50~200mm
3に達したとき、マウスを無作為に処理群に割り当てた(n=10)。1日目、4日目、8日目、11日目、15日目及び18日目にmEG-70(50μL中0.5mgのDNA/mL、25μgのDNAに相当)をマウスに直接腫瘍内(IT)投与し、対照動物には1%マンニトール(偽処理)を投与した。担腫瘍動物のコホートは未処理だった。ノギスで測定することによって週に3回、腫瘍サイズをモニタリングした(腫瘍体積は式(長さ×幅
2/2)を使用して算出した)。腫瘍のないmEG-70で治癒した個体(mEG-70「治癒」;n=9)にて腫瘍が再発していないことを確認するために、70日目にLumina LT IVIS画像処理システムを使用してルシフェラーゼシグナルの生物発光画像処理を実施した。73日目に、mEG-70で治癒し、週齢を一致させた対照の左脇腹にMB49-Luc細胞(100μL中2.5×10
5細胞)を皮下移植した。ノギスで測定することによって週3回、腫瘍をモニタリングし;腫瘍体積は式(長さ×幅
2/2)を使用して算出した。
【
図4B】mEG-70の腫瘍内(IT)投与は偽処理マウスと比べて腫瘍増殖を阻害した。
【
図4C】mEG-70「治癒」マウスは反対側脇腹の腫瘍細胞の再負荷から保護された。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、遠隔部位における転移性疾患の治療のために、原発性腫瘍部位におけるIL-12及びRIG-Iアゴニストの限局性発現を企図する。例えば、膀胱への膀胱内投与、肺へのエアロゾル化投与、腫瘍内注射、及び/または消化管(GIT)への経口剤形のような粘膜組織での限局性遺伝子治療は、望ましくない全身性の副作用を最小限に抑えながら免疫調節性タンパク質の限局性発現を促進する魅力的なアプローチを提示する。さらに、本明細書で初めて実証されるように、驚くべきことに、本明細書に開示されている非ウイルスベクタープラットフォームを使用するIL-12及びRIG-Iアゴニストを含む治療用核酸の送達は、原発性腫瘍から離れた部位での転移腫瘍の治療する及び防止するのに使用できる、細胞傷害性CD8+T細胞及びCD4+メモリーT細胞の双方を含む強力で全身性の抗腫瘍活性を引き起こすことが見いだされている。
【0028】
理論に束縛されるものではないが、主題の開示による原発性がん部位におけるIL-12経路の活性化は、エフェクターCD4+及びCD8+細胞に作用し、メモリーT細胞の誘導を含む強力な抗腫瘍機能及び抗血管新生機能をもたらすのに対して、RIG-I経路の同時または逐次の刺激はI型インターフェロン及びIFN刺激遺伝子の誘導をもたらし、CD8+細胞傷害性T細胞に対する腫瘍抗原の交差提示の改善につながる。本明細書に記載され、例示されている好ましい実施形態では、これらの協調した生物学的メカニズムを組み合わせて、頑強で長持ちする抗腫瘍免疫応答を駆動する驚くべき且つ顕著に強力な炎症反応を生成し、RIG-Iアゴニストによる自然免疫系の刺激を適応免疫応答のIL-12が介在する刺激につなぎ合わせる。
【0029】
定義
別途定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語、表記法、及び他の科学用語は、本開示が関係する分野の当業者らによって一般に理解される意味を有するように意図される。場合によっては、一般に理解される意味を有する用語は、明確にするために及び/またはすぐに参照できるように本明細書中で定義され、本明細書におけるそのような定義の包含は、必ずしも、当該技術分野において一般に理解されているものを超える差を表すように解釈されるべきではない。本明細書に記載または参照される手法及び手順は、一般によく理解され、当業者らによって、従来の方法論、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd ed.(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに記載の広く利用される分子クローニング方法論を使用して一般に用いられる。必要に応じて、市販のキット及び試薬の使用を含む手順は、別途記載のない限り、一般に、製造者が定義したプロトコール及び/またはパラメーターに従って実施される。
【0030】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0031】
「約」という用語は、示された値及びその値の上下範囲を示し、包含する。特定の実施形態では、「約」という用語は、指定された値±10%、±5%、または±1%を示す。特定の実施形態では、示されている場合、「約」という用語は、指定された値±その値の1標準偏差を示す。
【0032】
「それらの組み合わせ」という用語は、その用語が参照する要素のすべての可能な組み合わせを含む。
【0033】
本明細書で使用されるとき「メモリーT細胞応答」または「メモリーT細胞の誘導」という用語は、T細胞上の分子、抗原提示細胞(APC)、及び炎症性サイトカインメディエーター間の協調的相互作用を介したナイーブT細胞の「活性化」を指し、これにより、刺激されたT細胞が、免疫学的侵襲、例えば、がん抗原に対処するのに適したエフェクターへと分化する。メモリーT細胞応答は当該技術分野で知られている。例えば、Pennock et al,(2013),Adv.Physiol.Educ.37(4):273-283;Sprent et al.(2011),Nat.Immunol.12:478-84;MacLeod et al.(2010),Immunology,130(1):10-15を参照のこと。
【0034】
したがって、「メモリーT細胞応答を活性化すること」とは、免疫防御に介在することができるT細胞を作り出すための無処置/休止状態からのT細胞の活性化及びプログラミングを指す。
【0035】
本明細書で使用されるとき「がん抗原」または「腫瘍抗原」という用語は、腫瘍抗原として作用することができる腫瘍細胞内で産生されるタンパク質を指す。「がん抗原」または「腫瘍抗原」は当該技術分野で知られている。例えば、がんエピトープデータベース及び分析リソース(CEDAR)は、文献から厳選されたがんエピトープの包括的な収集ならびにがんエピトープの予測及び分析ツールを提供する。例えば、Kosaloglu-Yalqn1 et al.(2021),Front.Immunol.12:1-14を参照のこと。例示的ながん抗原は、例えば、caped.icp.ucl.ac.be/Peptide/listでのワールドワイドウェブにて利用可能ながん抗原性ペプチドデータベースにも開示されている。
【0036】
本明細書で使用されるとき「原発性腫瘍」または「原発性がん」という用語は、腫瘍の進行が始まり、がん性塊を生じるように進行する解剖学的部位に存在する腫瘍を指す。例示的な原発性がんには、膀胱、結腸、肺、膣、卵巣、子宮頸部、腎臓、胃、消化管、前立腺、脳、乳房、膵臓、肺、甲状腺、子宮内膜、食道、喉頭、鼻腔癌、口腔癌、黒色腫、咽頭癌、網膜芽細胞腫、精巣癌などの原発性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書に開示されている方法は、抗原、例えばがん抗原に対する強力なメモリーT細胞応答を活性化するのに有用であるので、がん性病変または腫瘍が抑制または治癒され得る。さらに、がん抗原に対する強力なメモリーT細胞応答を活性化する本明細書に開示されている方法は、この方法が原発性がんとは異なる部位にて転移性疾患を治療するまたは抑制するのに有効であるように長持ちする全身性免疫をもたらす。
【0038】
本明細書で使用されるとき「転移性」という用語は、原発性腫瘍の部位から離れた部位で発生する腫瘍を指す。
【0039】
本明細書で使用されるとき「転移性疾患」という用語は、腫瘍を別の臓器または組織(またはその一部)に、隣接しない別の臓器または組織(またはその一部)に広げる可能性がある状態または症状を指す。一実施形態では、転移性疾患はがん転移性疾患、例えば、転移の確立を指す。一部のがん細胞は、リンパ管及び/または血管の壁を貫通する能力を獲得する場合があり、その後、血流(循環腫瘍細胞)を介して体内の他の部位及び組織に循環することができる。このプロセスは通常、(それぞれ)リンパ性または血行性の伝播として知られている。腫瘍細胞は別の部位で静止した後、血管または壁を再貫通して増殖し続け、最終的には臨床的に検出可能な別の腫瘍が形成される。この新しい腫瘍は転移性(または二次または三次)腫瘍として知られている。腫瘍細胞が転移する場合、その新しい腫瘍は二次腫瘍または転移性腫瘍、「転移」または「転移性疾患」と呼ばれ、その細胞は元の原発性腫瘍の細胞と似ている。これは、例えば、膀胱がんが子宮に転移した場合、二次腫瘍は異常な子宮細胞ではなく、異常な膀胱細胞で構成されることを意味する。この場合、子宮内の腫瘍は子宮がんではなく転移性膀胱がんと呼ばれる。
【0040】
「転移性疾患」には、がん性腫瘍、例えば、粘膜癌に由来するがんの転移性伝播が含まれるが、これに限定されない。「転移性疾患」には、良性腫瘍からの転移性の伝播も含まれる。したがって、例示的な実施形態では、転移性疾患には、乳房、結腸、前立腺、膵臓、皮膚、肺、卵巣、腎臓、脳、膀胱、膣、子宮頸部、胃、消化管、肝臓、甲状腺、食道、鼻腔癌、喉頭、口腔癌、咽頭癌、網膜芽細胞腫、子宮内膜、及び精巣などのがん性及び良性の腫瘍からの転移性伝播が挙げられる。いくつかの実施形態では、転移性疾患は転移性膀胱癌である。
【0041】
本明細書に開示されている方法は、癌腫を有する個体にて原発性がんとは異なる部位での転移腫瘍を治療する、または抑制することによって転移性疾患を防止する、または治療するのに有用である。したがって、本明細書で使用されるとき、「転移性疾患の防止または治療」という表現は、カチオン性ポリマー及び/または脂質を含む核酸ポリプレックスと、インターロイキン-12(IL-12)をコードする治療用核酸構築物と、少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする核酸を含む治療用核酸構築物とを含む組成物の、転移性疾患の発生を限定するまたは減らす、がんの転移能を限定する、及び/または対照と比べた場合の転移の数及び播種を限定する、あるいは病気を治癒させる能力を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている方法は、転移性疾患に関連する症状の予防、または転移性疾患に関連する症状の重症度を制限するのに有用である。
【0042】
本明細書に記載されている方法はまた、転移性疾患の進行を制限するのにも有用であり得る。本明細書で使用されるとき、「転移性疾患の進行を制限する」という表現は、カチオン性ポリマー及び/または脂質を含む核酸ポリプレックスと、インターロイキン-12(IL-12)をコードする治療用核酸構築物と、少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする核酸を含む治療用核酸構築物とを含む組成物の、転移の出現を遅らせるもしくは抑制する、転移の数を制限する、転移のサイズを制限する、及び/または転移を含有する臓器もしくは組織の数を制限する能力を指す。一実施形態では、本明細書に記載されている方法は、転移性疾患の進行に関連する症状を予防すること、または転移性疾患の進行に関連する症状の重症度を制限することにも有用であり得る。
【0043】
したがって、任意の疾患または障害の「治療すること」または「治療」は、特定の実施形態では、対象に存在する疾患または障害を改善することを指す。「治療すること」または「治療」は、対象によって識別できなくてもよい少なくとも1つの身体的パラメーターを改善することを含む。さらに別の実施形態では、「治療すること」または「治療」は、身体的に(例えば、識別可能な症状の安定化)または生理学的に(例えば、身体的パラメーターの安定化)あるいはその双方のいずれかで、疾患または障害を調整することを含む。さらに別の実施形態では、「治療すること」または「治療」は、疾患または障害の発症を遅らせるまたは予防することを含む。例えば、例示的な実施形態では、「がんを治療する」という語句は、がん細胞の増殖の阻害、がんの伝播(転移)の阻害、腫瘍増殖の阻害、がん細胞数または腫瘍増殖の減少、がんの悪性度(例えば、分化の増加)の低下、あるいはがん関連症状の改善を指す。さらに、本明細書で使用されるとき「治療」には、疾患の再発の予防または遅延、疾患の進行の遅延または減速、疾患状態の改善、疾患の(部分的または全体的)寛解の提供、疾患を治療するのに必要な1以上の他の薬物の投与量の減少、疾患の進行の遅延、生活の質の向上または改善、体重増加の上昇、及び/または生存期間の延長が含まれる。「治療」によって包含されるのはまた、がんの病理学的帰結の軽減である。
【0044】
本明細書で使用されるとき、「治療有効量」または「有効量」という用語は、対象に投与される場合に、疾患または障害を治療するのに有効である主題の組成物の量を指す。例えば、例示的な実施形態では、「有効量」という語句は、「治療有効量」または「治療有効用量」などと相互交換可能に使用され、がんを治療するのに有効な治療剤の量を意味する。本明細書で提供されている組成物の有効量は、動物の疾患状態、週齢、性別、体重のような因子に応じて変化してもよい。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「対象」または「個体」という用語は哺乳類対象を意味する。例示的な対象には、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ラクダ、トリ、ヤギ、及びヒツジが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書で提供されている抗体で治療することができるがん、自己免疫の疾患もしくは状態、及び/または感染症を有する。いくつかの実施形態では、対象は、がん、自己免疫の疾患もしくは状態、及び/または感染症を有することが疑われるヒトである。
【0046】
「キトサン」は、N-アセチルグルコサミンのポリマーである、キチンの部分的または完全に脱アセチル化された形態である。脱アセチル化度が50%を超えるキトサンが本開示では使用される。
【0047】
キトサンは、脱アセチル化部位の遊離アミノ基を官能化することによって誘導体化されてもよい。本明細書に記載されている誘導体化キトサンは、負に荷電した核酸に効果的に結合及び複合体化すること、制御可能なサイズのナノ粒子に形成され得ること、細胞によって取り込まれ得ること、ならびに細胞内に適切な時間で核酸を放出することができることを含む、核酸送達ビヒクルに有利である多数の特性を有する。1%~50%の間で任意の官能化度を持つキトサン。(官能化前のまたは官能化がないキトサンポリマー上の遊離アミノ部分の数に対して、官能化パーセントを決定する。)脱アセチル化度及び官能化度は、官能化キトサン誘導体に特定の電荷密度を付与する。
【0048】
本開示に係るポリオールは、3、4、5、6、または7の炭素骨格を有してもよく、少なくとも2つのヒドロキシル基を有してもよい。そのようなポリオール、またはそれらの組み合わせは、カチオン部分(例えば、リシン、オルニチンのようなアミノ基を含む分子、グアニジニウム基、アルギニンを含む分子、またはそれらの組み合わせ)で官能化されているキトサンのようなキトサン骨格へのコンジュゲートに有用であり得る。
【0049】
本明細書で使用される「C2-C6アルキレン」という用語は、任意に1以上の炭素-炭素多重結合を含有する線状または分枝状の二価炭化水素ラジカルを指す。誤解を避けるために、本明細書で使用される「C2-C6アルキレン」という用語は、アルカン、アルケン、及びアルキンの二価ラジカルを包含する。
【0050】
本明細書で使用されるとき、別途指示のない限り、「ペプチド」及び「ポリペプチド」という用語は、相互交換可能に使用される。
【0051】
「ポリペプチド」という用語は、従来のポリペプチド(すなわち、LまたはD-アミノ酸を含有する短いポリペプチド)、ならびに所望の機能的活性を保持するペプチド同等物、ペプチド類似体、及びペプチド模倣体を指すように最も広い意味で使用される。ペプチド同等物は、1以上のアミノ酸を関連有機酸、アミノ酸などで置き換えること、または側鎖もしくは官能基を置換または修飾することによって、従来のペプチドとは異なり得る。
【0052】
ペプチド模倣体は、当該技術分野で知られているように、代替の結合によって置き換えられた1以上のペプチド結合を有してもよい。当該技術分野で知られているように、ペプチド骨格の一部または全部は、機能的アミノ酸側鎖の可動性を制限するために、立体配座的に拘束された環状アルキルまたはアリール置換基で置き換えることもできる。
【0053】
本開示のポリペプチドは、当該技術分野で周知である組み換え及び合成方法のような認識された方法によって生成されてもよい。ペプチド合成の手法は周知であり、Merrifield,J.Amer.Chem.Soc.85:2149-2456(1963),Atherton,et al.,Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press(1989),及びMerrifield,Science,232:341-347(1986)に記載されたものが挙げられる。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「線状ポリペプチド」は、構成アミノ酸側鎖に共有結合している分岐基を欠くポリペプチドを指す。本明細書で使用されるとき、「分岐ポリペプチド」は、構成アミノ酸側鎖に共有結合している分岐基を含むポリペプチドを指す。
【0055】
本明細書で使用されるとき、カチオンまたはポリオールの「最終官能化度」は、それぞれ、カチオン(例えば、アミノ)またはポリオールで官能化されたキトサン骨格上のカチオン(例えば、アミノ)基の割合を指す。したがって、「α:β比」、「最終官能化度比」(例えば、アルギニンの最終官能化度:ポリオールの最終官能化度の比)などは、「モル比」または「数比」という用語と相互交換可能に使用されてもよい。
【0056】
分散系は、連続媒体全体に分布した分散相として知られる粒子物質から成る。キトサン核酸ポリプレックスの「分散系」は、水和キトサン核酸ポリプレックスを含む組成物であり、ポリプレックスは媒体全体に分布している。
【0057】
本明細書で使用されるとき、「予備濃縮された」分散系は、濃縮された分散系を形成するための濃縮プロセスを受けていないものである。
【0058】
本明細書で使用されるとき、ポリプレックス沈殿物を「実質的に含まない」は、組成物が、目視検査で観察することができる粒子を本質的に含まないことを意味する。
【0059】
本明細書で使用されるとき、生理学的pHは、6~8の間のpHを指す。
【0060】
「キトサン核酸ポリプレックス」またはその文法上の同等物は、複数のキトサン分子及び複数の核酸分子を含む複合体を意味する。好ましい実施形態では、(例えば、二重)誘導体化キトサンは、該核酸と複合体化される。
【0061】
本明細書で使用されるとき「ポリエチレングリコール」(「PEG」)という用語は、-(CH2CH2-O)-の繰り返し単位及びHO-(CH2CH2-O)n-Hの一般式を有するエチレンオキシドのポリマーを意味することが意図される。
【0062】
本明細書で使用されるとき「モノメトキシポリエチレングリコール」(「mPEG」)という用語は、-(CH2CH2-O)-の繰り返し単位及びCH3O-(CH2CH2-O)n-Hの一般式を有するエチレンオキシドのポリマー、例えば、一端がメトキシ基でキャップされたPEGを意味することが意図される。
【0063】
I.転移性疾患
がんの転移とは、がん細胞が体の一部から近くの組織、器官、さらには体の離れた部分に広がることを指す。通常、がんが原発臓器から離れた臓器に広がる場合、全身性疾患とみなされ、制御するのは困難である。転移性疾患を発症した対象のための治療選択肢は限られており、予後は通常、不良である。
【0064】
転移性疾患が存在する場合、局所療法は無駄であると見なされていた。しかしながら、現在、一部の悪性腫瘍(例えば、腎臓、乳房、及び前立腺)では、転移拡散が確立されているにもかかわらず、原発性腫瘍の治療によって死亡率が低下し得ることが理解されている(例えば、Morgan SC,et al.Nat.Rev.Clin.Oncol.2011,Jun,7;8(8):504-6;Sami-Ramzi Leyh-Bannurah et al.(2017)European Urology,72:118-124を参照のこと)。それでも、原発性腫瘍に対する治療は既存の転移の進行を遅らせ得る一方で、通常、治癒をもたらすことはない。
【0065】
幸いなことに、以下に詳細に説明するように、驚くべきことに、原発性腫瘍の部位に限局性に送達された、本明細書に開示されている組成物が、長持ちする全身性の特異的な抗腫瘍免疫を提供することが見いだされている。
【0066】
II.組成物
本明細書で提供されているのは、ポリアニオン含有ブロックコポリマー、例えば、二元ブロック及び/または三元ブロックコポリマーのコーティングと複合体化されたキトサン誘導体核酸ナノ粒子(ポリプレックス)を含むキトサン組成物であり、この場合、個々のポリマー分子は、負に荷電したアンカー領域及び1以上の非荷電親水性テール領域を含む。本開示の方法及び組成物にて有用な例示的なポリマー分子は、ポリエチレングリコール(PEG)部分及びポリアニオン(PA)部分を含む「PEG-PA」ポリマー分子である。
【0067】
A.キトサン
キトサン誘導体核酸ナノ粒子のキトサン構成成分は、カチオン官能基及び/または親水性部分で官能化することができる。2つの異なる官能基で官能化されたキトサンは二重誘導体化キトサン(DD-キトサン)と呼ばれる。例示的なDD-キトサンは、親水性部分(例えば、ポリオール)及びカチオン官能基(例えば、アミノ基)の双方で官能化される。例示的なキトサン誘導体は、例えば、US2007/0281904、及びUS2016/0235863にも記載されており、それぞれ、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0068】
一実施形態では、本明細書に記載されている二重誘導体化キトサンは、脱アセチル化度が少なくとも50%であるキトサンを含む。一実施形態では、脱アセチル化度は、少なくとも60%、さらに好ましくは、少なくとも70%、さらに好ましくは、少なくとも80%、さらに好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも95%である。好ましい実施形態では、本明細書に記載されている二重誘導体化キトサンは、脱アセチル化度が少なくとも98%であるキトサンを含む。
【0069】
本明細書に記載されているキトサン誘導体は、中性及び生理学的pHで可溶性である幅広い平均分子量を有し、本開示の目的のために、3~110kDaの範囲の分子量を含む。本明細書に記載されている実施形態は、誘導体化キトサンのさらに低い平均分子量(25kDa未満、例えば、約5kDa~約25kDa)を特徴とし、これは、望ましい送達及び形質移入の特性を有することができ、サイズが小さく、良好な溶解性を有する。低平均分子量の誘導体化キトサンは一般に、高い分子量のものよりも溶解性が高いので、前者は、核酸をさらに容易に放出し、細胞の形質移入を増加させる核酸/キトサン複合体を生成する。多くの文献で、キトサンに基づく送達システムのためのこれらパラメーターのすべての最適化について記載されている。
【0070】
当業者は、キトサンが、式Iの構造(式中、nは、任意の整数であり、各R1は独立して、アセチルまたは水素から選択され、水素から選択されるR1の程度は、50%~100%である)を有する複数の分子を指すことを理解するであろう。また、例えば、3kD~110kDの平均分子量を有するものと呼ばれるキトサンは一般に、例えば、それぞれ、3kD~110kDの重量平均分子量を有する複数のキトサン分子を指し、キトサン分子のそれぞれは異なる鎖長(n+2)を有してもよい。「n-量体キトサン」と呼ばれるキトサンは、必ずしも式Iのキトサン分子(式中、各キトサン分子はn+2の鎖長を有する)を含むとは限らないこともよく認識される。むしろ、本明細書で使用されるような「n-量体キトサン」は、複数のキトサン分子を指し、これらのそれぞれは、異なる鎖長を有してもよく、多くは、鎖長がnであるキトサン分子と実質的に同等または等しい平均分子量を有する。例えば、24-量体のキトサンは、複数のキトサン分子を含んでもよく、それぞれは、例えば、7~50の範囲に及ぶ異なる鎖長を有するが、これは、鎖長が24のキトサン分子と実質的に同等または等しい重量平均分子量を有する。
【0071】
本開示の二重誘導体化キトサンはまた、ポリオール、またはポリオールのような親水性官能基で官能化されてもよい。理論に束縛されることを望むものではないが、キトサン(アルギニン-キトサンを含む)の親水性を高めるのに役立つ場合があるポリオールなどの親水性基で官能化すること、及び/またはヒドロキシル基を供与することが仮説として考えられる。いくつかの実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子の親水性官能基はグルコン酸である、またはそれを含む。例えば、WO2013/138930を参照のこと。いくつかの実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子の親水性官能基は、グルコースである、またはそれを含む。追加的または代替的に、親水性官能基は、ポリオールを含むことができる。例えば、US2016/0235863を参照のこと。キトサンの官能化のための例示的なポリオールはさらに、以下に記載される。
【0072】
本明細書に記載されている官能化キトサン誘導体は、二重誘導体化キトサン化合物、例えば、カチオン-キトサン-ポリオール化合物を含む。一般に、カチオン-キトサン-ポリオール化合物は、アミノ含有部分、例えば、アルギニン、リシン、オルニチン、もしくはグアニジニウムを含む分子、またはそれらの組み合わせで官能化される。特定の実施形態では、カチオン-キトサン-ポリオール化合物は、以下の式Iの構造を有する:
【化1】
式中、nは1~650の整数であり、
αは、カチオン部分(例えば、リシン、オルニチン、グアニジニウム基を含む分子、アルギニン、またはそれらの組み合わせのようなアミノ基を含む分子)の最終官能化度であり、
βは、ポリオールの最終官能化度であり;
各R
1は独立して、水素、アセチル、カチオン(例えば、アルギニン)、及びポリオールから選択される。
【0073】
好ましくは、本開示の二重誘導体化キトサンは、カチオンアミノ酸であるアルギニンで官能化されてもよい。
【0074】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、1%、2%、4%、7%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、またはそれ以上の最終官能化度でグルコン酸と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、1%、2%、4%、7%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、またはそれ以上の最終官能化度でグルコースと結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約1%~約25%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約40%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。
【0075】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約35%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約20%~約35%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約25%~約35%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約25%~約30%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。
【0076】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%~約40%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%~約35%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%~約30%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%~約28%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。
【0077】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約35%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約30%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約28%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約28%の最終官能化度でカチオン部分(例えば、アルギニン)と結合したキトサンを含む。
【0078】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約2%~約30%、約5%~約30%、約7.5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約22%、約5%~約20%、約5%~約15%、または約5%~約10%の最終官能化度でグルコン酸と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約7.5%~約25%、約7.5%~約20%、約7.5%~約15%、または約7.5%~約12%の最終官能化度でグルコン酸と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%の最終官能化度でグルコン酸と結合したキトサンを含む。
【0079】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約2%~約30%、約5%~約30%、約7.5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約22%、約5%~約20%、約5%~約15%、または約5%~約10%の最終官能化度で親水性ポリオールと結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約7.5%~約25%、約7.5%~約20%、約7.5%~約15%、または約7.5%~約12%の最終官能化度で親水性ポリオールと結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%の最終官能化度で親水性ポリオールと結合したキトサンを含む。
【0080】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約2%~約30%、約5%~約30%、約7.5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約22%、約5%~約20%、約5%~約15%、または約5%~約10%の最終官能化度でグルコースと結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約7.5%~約25%、約7.5%~約20%、約7.5%~約15%、または約7.5%~約12%の最終官能化度でグルコースと結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%の最終官能化度でグルコースと結合したキトサンを含む。
【0081】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約2%~約40%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約2%~約30%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約5%~約40%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約5%~約25%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約7.5%~約40%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約20%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約40%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約15%、または約10%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。
【0082】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約2%~約35%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約2%~約30%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約5%~約35%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約5%~約25%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約7.5%~約35%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約20%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約35%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約15%、または約10%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。
【0083】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約10%~約30%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約2%~約30%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約12%~約30%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約5%~約25%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約14%~約30%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約20%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%~約30%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約15%、または約10%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。
【0084】
一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約25%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約15%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約28%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約7.5%~約15%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約25%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約5%~約20%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。一実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約28%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約5%~約20%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。
【0085】
好ましい実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約14%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約10%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。好ましい実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約12%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。別の好ましい実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約14%の最終官能化度でアルギニンと結合したキトサン及び約10%の最終官能度でグルコースと結合したキトサンを含む。別の好ましい実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約15%の最終官能化度でアルギニンと結合したキトサン及び約12%の最終官能度でグルコースと結合したキトサンを含む。
【0086】
好ましい実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約28%の最終官能化度でカチオン(例えば、アルギニン)と結合したキトサン及び約10%の最終官能度で親水性ポリオール(例えば、グルコースまたはグルコン酸)と結合したキトサンを含む。別の好ましい実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、約28%の最終官能化度でアルギニンと結合したキトサン及び約10%の最終官能度でグルコースと結合したキトサンを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、必要に応じて、DD-キトサンは、DD-キトサン誘導体、例えば、追加の官能化を組み込んだDDキトサン、例えば、結合したリガンドを有するDD-キトサンを含む。「誘導体」は、共有結合的に修飾されたN-アセチル-D-グルコサミン及び/またはD-グルコサミンユニットを含むキトサン系ポリマー、ならびに他のユニットを組み込むかまたは他の部分に結合したキトサン系ポリマーの幅広い分類を含むと理解されるであろう。誘導体は、アルギニン官能化キトサンで行われるように、グルコサミンのヒドロキシル基またはアミン基の修飾に基づくことが多い。キトサン誘導体の例には、トリメチル化キトサン、チオール化キトサン、ガラクトシル化キトサン、アルキル化キトサン、PEI組み込みキトサン、ウロン酸修飾キトサン、グリコールキトサンなどが挙げられるが、これらに限定されない。キトサン誘導体に関するさらなる教示について、例えば、pp.63-74 of “Non-viral Gene Therapy”,K.Taira,K.Kataoka,T.Niidome(editors),Springer-Verlag Tokyo,2005,ISBN 4-431-25122-7;Zhu et al.,Chinese Science Bulletin,December 2007,vol.52(23),pp.3207-3215;及びVarma et al.,Carbohydrate Polymers 55(2004)77-93を参照のこと。
【0088】
A.1.キトサン核酸ポリプレックス
キトサン誘導体ナノ粒子組成物は一般に、少なくとも1つの核酸分子、好ましくは、複数のそのような核酸分子を含有する。典型的な核酸分子は、例えば、複数のホスホジエステルまたはその誘導体(例えば、ホスホロチオエート)の形態で、核酸骨格の構成成分としてリンを含む。カチオン官能化キトサン誘導体の核酸に対する比率は、カチオン(+)のリン(P)に対するモル比を特徴とすることができ、この場合、(+)はカチオン官能化キトサン誘導体のカチオンを指し、(P)は核酸骨格のリンを指す。通常、(+):(P)のモル比は、キトサン-誘導体-核酸複合体がポリアニオン含有ブロックコポリマー可逆性コーティングの非存在下で正電荷を有するように選択される。したがって、(+):(P)のモル比は一般に1より大きい。好ましい実施形態では、(+):(P)のモル比は、1.5を超え、少なくとも2、または2を超える。特定の好ましい実施形態では、(+):(P)のモル比は2より大きい。
【0089】
場合によっては、(+):(P)モル比は、3:1である、または約3:1である。場合によっては、(+):(P)モル比は、4:1である、または約4:1である。場合によっては、(+):(P)モル比は、5:1である、または約5:1である。場合によっては、(+):(P)モル比は、6:1である、または約6:1である。場合によっては、(+):(P)モル比は、7:1である、または約7:1である。場合によっては、(+):(P)モル比は、8:1である、または約8:1である。場合によっては、(+):(P)モル比は、9:1である、または約9:1である。場合によっては、(+):(P)モル比は、10:1である、または約10:1である。
【0090】
場合によっては、(+):(P)モル比は、1超~約20:1以下、約2~約20:1以下、または約2~約10:1以下である。場合によっては、(+):(P)モル比は、約2超~約20:1以下、または約2超~約10:1以下である。場合によっては、(+):(P)モル比は、約3~約20:1以下、約3~約10:1以下、約3~約8:1以下、または約3~約7:1以下である。場合によっては、(+):(P)モル比は、約3~20:1以下、約3~10:1以下、約3~8:1以下、または約3~7:1以下である。
【0091】
特定の実施形態では、(+):(P)モル比は、100:1、好ましくは、100:1未満である。例えば、特定の実施形態では、(+):(P)モル比は、1超~100:1以下であることができる。場合によっては、(+):(P)モル比は、2超~100:1以下であることができる。場合によっては、(+):(P)モル比は、3以上~100:1以下であることができる。場合によっては、(+):(P)モル比は、5以上~100:1以下であることができる。場合によっては、(+):(P)モル比は、7以上~100:1以下であることができる。場合によっては、(+):(P)モル比は、2超~50:1以下であることができる。場合によっては、(+):(P)モル比は、3以上~50:1以下であることができる。場合によっては、(+):(P)モル比は、5以上~50:1以下であることができる。場合によっては、(+):(P)モル比は、7以上~50:1以下であることができる。場合によっては、(+):(P)モル比は、2超~25:1以下であることができる。場合によっては、(+):(P)モル比は、3以上~25:1以下であることができる。場合によっては、(+):(P)モル比は、5以上~25:1以下であることができる。場合によっては、(+):(P)モル比は、7以上~25:1以下であることができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子のカチオン官能基は、アミノ基である、またはそれを含む。そのようなアミノ官能化キトサン誘導体ナノ粒子の例としては、グアニジニウムもしくはグアニジニウム基を含む分子、リシン、オルニチン、アルギニン、またはそれらの組み合わせで官能化されるキトサンを含有するものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、カチオン官能基は、アルギニンである。アミノ官能化キトサン誘導体の核酸に対する比率はアミノ(N)のリン(P)に対するモル比を特徴とすることができ、この場合、(N)はアミノ官能化キトサン誘導体のアミノ基の窒素原子を指し、(P)は、核酸骨格のリンを指す。通常、N:Pのモル比は、キトサン誘導体核酸複合体がPEG-PAポリマー分子の非存在下で、生理学的に適切なpHにて正電荷を有するように選択される。したがって、N:Pのモル比は一般に1より大きい。好ましい実施形態では、N:Pのモル比は1.5より大きい、少なくとも2である、または2より大きい。特定の好ましい実施形態では、N:Pのモル比は2より大きい。
【0093】
場合によっては、N:Pモル比は、3:1である、または約3:1である。場合によっては、N:Pモル比は、4:1である、または約4:1である。場合によっては、N:Pモル比は、5:1である、または約5:1である。場合によっては、N:Pモル比は、6:1である、または約6:1である。場合によっては、N:Pモル比は、7:1である、または約7:1である。場合によっては、N:Pモル比は、8:1である、または約8:1である。場合によっては、N:Pモル比は、9:1である、または約9:1である。場合によっては、N:Pモル比は、10:1である、または約10:1である。
【0094】
場合によっては、N:Pモル比は、1超~約20:1以下、約2~約20:1以下、または約2~約10:1以下である。場合によっては、N:Pモル比は、約2超~約20:1以下、または約2超~約10:1以下である。場合によっては、N:Pモル比は、約3~約20:1以下、約3~約10:1以下、約3~約8:1以下、または約3~約7:1以下である。場合によっては、N:Pモル比は、約3~20:1以下、約3~10:1以下、約3~8:1以下、または約3~7:1以下である。
【0095】
特定の実施形態では、N:Pモル比は、100:1、好ましくは、100:1未満である。例えば、特定の実施形態では、N:Pモル比は、1超~100:1以下であることができる。場合によっては、N:Pモル比は、2超~100:1以下であることができる。場合によっては、N:Pモル比は、3以上~100:1以下であることができる。場合によっては、N:Pモル比は、5以上~100:1以下であることができる。場合によっては、N:Pモル比は、7以上~100:1以下であることができる。場合によっては、N:Pモル比は、2超~50:1以下であることができる。場合によっては、N:Pモル比は、3以上~50:1以下であることができる。場合によっては、N:Pモル比は、5以上~50:1以下であることができる。場合によっては、N:Pモル比は、7以上~50:1以下であることができる。場合によっては、N:Pモル比は、2超~25:1以下であることができる。場合によっては、N:Pモル比は、3以上~25:1以下であることができる。場合によっては、N:Pモル比は、5以上~25:1以下であることができる。場合によっては、N:Pモル比は、7以上~25:1以下であることができる。
【0096】
好ましい実施形態では、主題のポリプレックスは、2~100、例えば、2~50、例えば、2~40、例えば、2~30、例えば、2~20、例えば、2~5のアミン対リン酸塩(N/P)の比を有する。好ましくは、N/P比は、キトサンの分子量に反比例し、すなわち、さらに小さい分子量の(例えば、二重)誘導体化キトサンはさらに高いN/P比を必要とし、逆もまた同様である。
【0097】
本開示の核酸は一般に、ホスホジエステル結合を含有することになるが、場合によっては、種々の目的、例えば、安定性及び保護のいずれかのために組み込まれる代替の骨格または他の修飾もしくは部分を有してもよい核酸類似体が含まれる。企図される他の類似体核酸は非リボース骨格を持つものを含む。加えて、天然に存在する核酸、類似体、及びその双方の混合物を作成することができる。核酸は、一本鎖もしくは二本鎖であってもよく、または二本鎖もしくは一本鎖の配列の双方の部分を含有してもよい。核酸としては、DNA、RNA、及びハイブリッドが挙げられるが、これらに限定されず、核酸は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドの任意の組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンタニン、ヒポキサンタニン、イソシトシン、イソグアニンなどを含む塩基の任意の組み合わせを含有する。核酸は、任意の形態のDNA、三重鎖、二本鎖、または一本鎖、アンチセンス、siRNA、リボザイム、デオキシリボザイム、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、キメラ、マイクロRNA、及びそれらの誘導体を含む任意の形態のRNAを含む。核酸は、限定されないが、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴ(PMO)、ロックされた核酸(LNA)、グリコール核酸(GNA)、及びトレオース核酸(TNA)を含む人工核酸を含む。リンを含まない人工核酸の場合、(+):PまたはN:P比の同等の測定値は、ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)塩基の数によって近似することができることが理解されるであろう。
【0098】
好ましい実施形態では、組成物のポリプレックスは、官能化前の110kDa未満、さらに好ましくは、65kDa未満、さらに好ましくは、50kDa未満、さらに好ましくは、40kDa未満、最も好ましくは、30kDa未満の平均分子量を有するキトサン分子を含む。いくつかの実施形態では、組成物のポリプレックスは、官能化前の15kDa未満、10kDa未満、7kDa未満、または5kDa未満の平均分子量を有するキトサンを含む。
【0099】
好ましい実施形態では、ポリプレックスは、平均して、680グルコサミンモノマー単位未満、さらに好ましくは、400グルコサミンモノマー単位未満、さらに好ましくは、310グルコサミンモノマー単位未満、さらに好ましくは、250グルコサミンモノマー単位未満、最も好ましくは、190グルコサミンモノマー単位未満を有するキトサン分子を含む。いくつかの実施形態では、ポリプレックスは、平均して、95グルコサミンモノマー単位未満、65グルコサミンモノマー単位未満、45グルコサミンモノマー単位未満、または35グルコサミンモノマー単位未満を有するキトサン分子を含む。
【0100】
本明細書に記載されているものを含むが、これらに限定されないキトサン、及び(例えば、二重)誘導体化キトサン核酸ポリプレックスは当該技術分野で既知の任意の方法で調製されてもよい。
【0101】
A.2.核酸
上記のように、キトサンポリプレックスは複数の核酸を含有することができる。一実施形態では、核酸構成成分は治療用核酸を含む。主題の(例えば、二重)誘導体化キトサン核酸ポリプレックスは、例えば、ホルモン、酵素、サイトカイン、ケモカイン、抗体、分裂促進因子、成長因子、分化因子、細胞アポトーシスに影響を及ぼす因子、炎症に影響を及ぼす因子、免疫応答に影響を及ぼす因子(例えば、免疫刺激因子)などのような治療用タンパク質をコードする核酸を含む、当該技術分野で既知の任意の治療用核酸の使用に適している。
【0102】
治療用核酸を使用して、欠損遺伝子の置き換えもしくは増強として役立てることによって遺伝子治療を達成してもよく、または、治療用産物をコードすることによって特定の遺伝子産物の欠如を補ってもよい。治療用核酸はまた、内在性遺伝子の発現を阻害してもよい。治療用核酸は、翻訳産物のすべてまたは一部をコードしてもよく、細胞にすでに存在するDNAと再結合し、それによって、遺伝子の欠陥部分を置換することによって機能してもよい。それは、また、タンパク質の一部をコードしてもよく、遺伝子産物の共抑制によってその効果を発揮してもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、核酸構成成分は治療用核酸構築物を含む。治療用核酸構築物は、治療効果を発揮することができる核酸構築物である。治療用核酸構築物は、治療用タンパク質をコードする核酸、及び治療用RNAである転写物を産生する核酸を含んでもよい。
【0104】
本明細書に記載され、例示されている好ましい実施形態では、治療用核酸構築物は、単独で、または追加の免疫刺激分子(複数可)と組み合わせて、IL-12をコードする核酸を含む。IL-12は、4つのα-ヘリックスバンドル構造を持つヘテロ二量体の1型サイトカインである。IL-12p70としても知られる活性があるヘテロ二量体は、IL-12A(p35をコードする)及びIL-12B(p40をコードする)という2つの別個の遺伝子によってコードされる2つのサブユニットで構成される。IL-12Aには少なくとも6つのスプライス変異体転写物がある(ENST00000305579.6、ENST00000466512.1、ENST00000480787.5、ENST00000468862.5、ENST00000496308.1、及びENST00000480088.1)。ヒトIL-12Aアイソフォーム1前駆体の核酸配列及びペプチド配列は、例えば、それぞれNM_000882.4、NM_001354582.2、NM_001354583.2、及びNP_000873.2、NP_001341511.1、及びNP_001341512.1である。マウスIL12aの核酸配列及びペプチド配列は、例えば、それぞれNM_001159424.2及びNP_001152896.1である。ヒトIL-12Bゲノム配列、転写物、及びペプチド配列は、例えば、それぞれNG_009618.1、NM_002187.3、及びNP_002178.2である。マウスIL-12Bの核酸配列及びペプチド配列は、例えば、NM_001303244及びNP_001290173.1である。
【0105】
いくつかの実施形態では、単鎖IL-12タンパク質は、短いアミノ酸リンカー配列を介してp40サブユニットをp35サブユニットに融合することによって生成することができる。2つのサブユニットはp40-リンカー-p35またはp35-リンカー-p40のいずれかの方向で連結することができる。タンパク質はリンカーの5’でのサブユニットからのシグナルペプチドの包含の結果として分泌される一方で、シグナルペプチドはリンカー配列の下流のサブユニットから除去される。好ましい実施形態では、リンカー配列は、ウシのエラスチンに由来し、バリン(V)、プロリン(P)及びグリシン(G)の残基で構成される10アミノ酸配列(VPGVGVPGVG)を含む。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、(GGGGS)nのようなG残基及び/またはセリン(S)残基を含有してもよい。他の実施形態では、リンカー配列はG、S、及びP、アルギニン(R)、リシン(K)、スレオニン(T)及びグルタミン酸(E)を含むが、これらに限定されない追加のアミノ酸を含有してもよい。例示的な実施形態では、リンカーはGSGSSRGGSGSGGSGGGGSK(配列番号1)、GSTSG(A/S)GKSSEGKG(配列番号2)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号3)、GGGGGGS(配列番号4)またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号5)から成る群から選択される。
【0106】
例示的な実施形態では、hIL-12p40p35をコードする核酸配列は、以下を含む:
atgtgccatcagcaacttgtcatctcctggttctccctcgtgttcctggcctcccctcttgtcgcgatttgggagctgaagaaagatgtgtacgtcgtggaactcgactggtacccggacgcccccggggaaatggtggtgctcacttgtgatactcccgaagaggatggaattacctggaccctcgatcagtcctccgaggtcttgggatccggcaaaactctgaccatccaagtcaaggaattcggcgacgcggggcagtacacctgtcacaagggcggagaagtgctgtcgcactcactcctgctccttcacaaaaaggaggacggcatctggtcgaccgacatcctgaaggaccagaaggaacccaagaacaagacctttctgcgctgcgaggccaagaactattcgggaaggttcacctgttggtggctgactaccatctccaccgacctgactttctccgtgaagtcctctcggggttcgagcgacccgcagggtgttacgtgcggtgctgcaaccctgtccgcggagagagtgcggggggacaacaaggaatacgagtactcagtggaatgccaggaagatagcgcctgccctgccgccgaagagtccctgccgattgaagtcatggtggacgcagtgcataagttgaaatatgagaactacacctcgtcgttcttcatccgggacatcatcaagcctgacccccctaagaatctgcagctcaagcccctcaagaactccagacaggtcgaagtgtcctgggagtacccagatacgtggagcacaccgcactcgtacttctccttgaccttctgcgtccaagtgcagggaaagtccaaacgggagaagaaggaccgcgtgttcactgataagacttccgctactgtgatctgccgcaaaaacgccagcatcagcgtgcgcgcgcaagatagatactactcaagctcttggtccgaatgggcgtccgtgccatgctcggtgcccggcgtgggcgtgcctggagtgggagcccggaacttgccggtggccacccctgaccccggaatgttcccttgcctgcaccactcccaaaaccttctgagggctgtgtccaacatgctgcagaaggctcggcagaccctggaattctacccctgcacctccgaggagatcgaccacgaagatattaccaaggacaagacctcaaccgtggaagcctgcctgcccctggaactgaccaagaacgaatcgtgcctgaatagccgggaaacctccttcatcaccaacggctcctgcctggcctcacgaaagaccagctttatgatggccctgtgcctgagctcgatctacgaggacctgaagatgtaccaggtcgagttcaagactatgaacgccaagctgctgatggatccgaagcggcagatcttcttggaccagaatatgctggcagtgatcgacgagctgatgcaggccctcaacttcaactccgagactgtgccgcaaaagtcgagcctggaggaaccggacttctacaagaccaagatcaagttatgtattctcctgcacgcgtttaggattcgcgccgtgaccattgatagagtgatgtcctacctgaacgccagctga(配列番号6)
【0107】
例示的な実施形態では、hIL-12p40p35アミノ酸配列は以下を含む:
M C H Q Q L V I S W F S L V F L A S P L V A I W E L K K D V Y V V E L D W Y P D A P G E M V V L T C D T P E E D G I T W T L D Q S S E V L G S G K T L T I Q V K E F G D A G Q Y T C H K G G E V L S H S L L L L H K K E D G I W S T D I L K D Q K E P K N K T F L R C E A K N Y S G R F T C W W L T T I S T D L T F S V K S S R G S S D P Q G V T C G A A T L S A E R V R G D N K E Y E Y S V E C Q E D S A C P A A E E S L P I E V M V D A V H K L K Y E N Y T S S F F I R D I I K P D P P K N L Q L K P L K N S R Q V E V S W E Y P D T W S T P H S Y F S L T F C V Q V Q G K S K R E K K D R V F T D K T S A T V I C R K N A S I S V R A Q D R Y Y S S S W S E W A S V P C S V P G V G V P G V G A R N L P V A T P D P G M F P C L H H S Q N L L R A V S N M L Q K A R Q T L E F Y P C T S E E I D H E D I T K D K T S T V E A C L P L E L T K N E S C L N S R E T S F I T N G S C L A S R K T S F M M A L C L S S I Y E D L K M Y Q V E F K T M N A K L L M D P K R Q I F L D Q N M L A V I D E L M Q A L N F N S E T V P Q K S S L E E P D F Y K T K I K L C I L L H A F R I R A V T I D R V M S Y L N A S Stop(配列番号7)
【0108】
別の例示的な実施形態では、治療用核酸は、配列番号7の配列を有するポリペプチドをコードするopt-hIL-12と呼ばれるコドン最適化ヒトインターロイキン-12遺伝子で構成される4156bpのプラスミドDNA(pDNA)(配列番号8)を含み、これは、スクロースに基づく抗生物質不使用選択マーカー(RNA-OUT)を持つNTC9385R骨格上の構成的に活性があるサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターに連結されている。表1に4156bpのプラスミド(配列番号8)を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0109】
R6Kの複製起点は、プラスミドの複製をEscherichia coli(E.coli)の特定の株に限定する。opt-hIL12遺伝子はサイトカインタンパク質IL-12の2つのサブユニット(p40及びp35)をコードする。サブユニットの1:1化学量論量を確保するために、EG-70プラスミドは、短い反復エラスチンリンカー配列を加えることによってp40~p35を単量体化するために単一のオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するように設計された。また、プラスミドは、eRNA11a(免疫刺激性二本鎖リボ核酸[dsRNA])及びアデノウイルスVA RNA1の遺伝子で構成される。これらの遺伝子の2つのRNA産物はRIG-I経路を刺激し、それはさらに多くの免疫細胞を局所組織に動員する。さらなる実施形態では、この治療用核酸は、アルギニン及びグルコースで官能化され、且つ取り外し可能なPEG-b-PLE賦形剤でコーティングされる二重誘導体化キトサンポリマーに包装され、医薬組成物EG-70が形成される。該組成物を、1w/w%マンニトール溶液におけるナノ粒子水性分散系として製剤化し、濾過して滅菌し、乾燥粉末に凍結乾燥し、4℃で保存する。ナノ粒子分散系の平均粒度は75~175ナノメートルの範囲内にある。
【0110】
治療用核酸には、環状の二本鎖DNAプラスミド、ミニ環状DNA(Science Report 6:2315, 2016)または閉端型直鎖状の二本鎖DNAの形態での治療用DNAも含まれる(Li et al,PLoS One,8(8):e69879,2013)。
【0111】
治療用核酸にはまた、治療用RNAも含まれ、それは哺乳類細胞にて治療効果を発揮することができるRNA分子である。治療用RNAには、メッセンジャーRNA、アンチセンスRNA、siRNA、短いヘアピンRNA、マイクロRNA、及び酵素RNAが挙げられるが、これらに限定されない。治療用核酸は、三重分子を形成するように意図される核酸、タンパク質結合核酸、リボザイム、デオキシリボザイム、及び小さいヌクレオチド分子を含むが、これらに限定されない。多くの種類の治療用RNAが当該技術分野で既知である。例えば、Meng et al.,A new developing class of gene delivery:messenger RNA-based therapeutics,Biomater.Sci.,5,2381-2392,2017;Grimm et al.,Therapeutic application of RNAi is mRNA targeting finally ready for prime time ? J.Clin.Invest.,117:3633-3641,2007;Aagaard et al.,RNAi therapeutics:Principles,prospects and challenges,Adv.Drug Deliv.Rev.,59:75-86,2007;Dorsett et al.,siRNAs:Applications in functional genomics and potential as therapeutics,Nat.Rev.Drug Discov.,3:318-329,2004を参照のこと。これらは二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)を含む。
【0112】
A.3.発現制御領域
好ましい実施形態では、本開示のポリプレックスは、コード領域に操作可能に連結された発現制御領域を含む治療構築物である治療用核酸を含む。治療構築物は治療用核酸を生成し、これは、それ自体で治療的であってもよく、または治療用タンパク質をコードしてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、治療構築物の発現制御領域は、構成的活性を有する。多くの好ましい実施形態では、治療構築物の発現制御領域は、構成的活性を有さない。これは、治療用核酸の動的発現を提供する。「動的」発現とは、経時的に変化する発現を意味する。動的発現は、検出可能な発現の期間で隔てられた発現が低いまたは存在しない、いくつかのそのような期間を含んでもよい。多くの好ましい実施形態では、治療用核酸は調節可能なプロモーターに操作可能に連結される。これは、治療用核酸の調節可能な発現を提供する。
【0114】
発現制御領域は、プロモーター及びエンハンサーのような調節ポリヌクレオチド(場合によって、本明細書ではエレメントと呼ばれる)を含み、これらは、操作可能に連結された治療用核酸の発現に影響を及ぼす。
【0115】
本明細書に含まれる発現制御エレメントは、細菌、酵母、植物、または動物(哺乳類もしくは非哺乳類)由来であることができる。発現制御領域は、全長プロモーター配列、例えば、ネイティブプロモーター及びエンハンサーエレメント、ならびに完全なまたは非変異体機能の全部または一部を保持する(例えば、ある程度の栄養調節または細胞/組織特異的発現を保持する)部分配列またはポリヌクレオチド変異体を含む。本明細書で使用されるとき、「機能的」という用語及びその文法的変形は、核酸配列、部分配列、またはフラグメントに関して使用される場合、その配列が、天然の核酸配列の1以上の機能(例えば、非変異体または非修飾配列)を有することを意味する。本明細書で使用されるとき、「変異体」という用語は、配列の置換、欠失、もしくは付加、または他の修飾(例えば、ヌクレアーゼに耐性のある修飾形態のような化学誘導体)を意味する。
【0116】
本明細書で使用されるとき、「作動可能な連結」という用語は、それらが意図された方法で機能することを可能にするように記載された構成要素の物理的並置を指す。核酸と操作可能に連結された発現制御エレメントの例では、関係は、制御エレメントが核酸の発現を調節するようなものである。通常、転写を調節する発現制御領域は、転写された核酸の5’末端付近(すなわち、「上流」)に並置される。発現制御領域は、また、転写された配列の3’末端(すなわち、「下流」)または転写物内(例えば、イントロン内)に位置することができる。発現制御エレメントは、転写された配列から離れた距離に位置することができる(例えば、核酸から100~500、500~1000、2000~5000以上のヌクレオチド)。発現制御エレメントの具体例は、プロモーターであり、これは、通常、転写された配列の5’に位置する。発現制御エレメントの別の例は、転写された配列の5’もしくは3’、または転写された配列内に位置することができるエンハンサーである。
【0117】
いくつかの発現制御領域は、操作可能に連結された治療用核酸に調節可能な発現を付与する。シグナル(場合によって、刺激と呼ばれる)は、そのような発現制御領域に操作可能に連結された治療用核酸の発現を増加または減少させることができる。シグナルに応答して発現を増加させるそのような発現制御領域は誘導性と呼ばれることが多い。シグナルに応答して発現を減少させるそのような発現制御領域は抑制性と呼ばれることが多い。通常、そのようなエレメントによって与えられる増加または減少の量は、存在するシグナルの量に比例し、シグナルの量が多い程、発現の増加または減少が大きくなる。
【0118】
多数の調節可能なプロモーターが、当該技術分野で既知である。好ましい誘導性発現制御領域には、小分子化学化合物で刺激される誘導性プロモーターを含むものを含む。一実施形態では、発現制御領域は、経口的に送達可能であるが、通常は、食品には見られない化学物質に応答する。特定の例は、例えば、米国特許第5,989,910号;同第5,935,934号;同第6,015,709号;及び同第6,004,941号に見いだすことができる。
【0119】
特に興味深いプロモーター/エンハンサー配列には以下が含まれる:
【表2】
【0120】
本開示のいくつかの実施形態では、治療構築物は、起点、マルチクローニング部位及び選択可能なマーカーを含むプラスミド内に含まれる。いくつかの実施形態では、10kb未満のプラスミドが望ましい。いくつかの実施形態では、使用されるプラスミドは、ヒト患者における遺伝子治療に好適であり、及び/または哺乳類の組織における高レベルの一過性遺伝子発現のために操作される。好ましい実施形態では、プラスミドは、Nanoplasmid(商標)(例えば、NTC9385プラスミド、NTC9385R、NTC9385R-RIG-I、NTC9385R(3CpG)、NTC9385R-eRNA41H-CpG、NTC8685プラスミド(Nature Technology)、gWIZプラスミド(Genlantis)、またはpVAX1プラスミド(Thermofisher Scientific)から成る群から選択される。例えば、米国特許第US6,027,722号、同第US6,287,863号、同第US6,410,220号、同第US6,573,091号、同第US9,012,226号、同第US9,017,966号、同第US9,018,012号、同第US9,109,012号、同第US9,487,788号、同第US9,487,789号、同第US9,506,082号、同第US9,550,998号、同第US9,725,725号、同第US9,737,620号、同第US9,950,081号、同第US10,047,365号、同第US10,144,935、及び同第US10,167,478号を参照のこと。いくつかの実施形態では、プラスミドは、抗生物質選択剤を除去するため及び/または発現レベルを高めるために「改造されている」。
【0121】
さらなる教示については、その全体が参照によって本明細書に明示的に組み込まれるWO2008/020318を参照のこと。一実施形態では、(例えば、二重)誘導体化キトサン核酸ポリプレックスの核酸は人工核酸である。
【0122】
一実施形態では、DD-キトサン核酸ポリプレックスの核酸は、治療用核酸である。一実施形態では、治療用核酸は、治療用RNAである。好ましい治療用RNAとしては、アンチセンスRNA、siRNA、短いヘアピンRNA、マイクロRNA、及び酵素RNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
一実施形態では、治療用核酸はDNAである。
【0124】
一実施形態では、治療用核酸は治療用タンパク質をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、治療用タンパク質はIL-12である。
【0125】
B.ポリオール
キトサン誘導体ナノ粒子はポリオールで官能化することができる。一般に、本開示で有用なポリオールは通常、親水性である。場合によっては、キトサン誘導体ナノ粒子はアミノ基のようなカチオン構成成分及びポリオールで官能化される。アミノ基のようなカチオン部分及びポリオールで官能化されたそのようなキトサン誘導体ナノ粒子は「二重誘導体化キトサンナノ粒子」と呼ばれる。
【0126】
いくつかの実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は式IIのポリオールを含み:
【化2】
式中、
R
2は、H及びヒドロキシルから選択され、
R
3は、H及びヒドロキシルから選択され、
Xは、1以上のヒドロキシル置換基で任意に置換されたC
2-C
6アルキレンから選択される。
【0127】
いくつかの実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は、式IIのポリオールで官能化され、式中、R2はH及びヒドロキシルから選択され;R3はH及びヒドロキシルから選択され;Xは1以上のヒドロキシル置換基で任意に置換されたC2-C6アルキレンから選択される。
【0128】
いくつかの実施形態では、キトサン誘導体ナノ粒子は式IIIのポリオールを含み:
【化3】
式中、
-----Yは、=Oまたは-H
2であり、
R
2は、H及びヒドロキシルから選択され、
R
3は、H及びヒドロキシルから選択され、
Xは、1以上のヒドロキシル置換基で任意に置換されたC
2-C
6アルキレンから選択され、
【0129】
【化4】
は、ポリオールと誘導体化キトサンの間の結合を表す。
【0130】
一実施形態では、3~7の炭素を有する本開示に係るポリオールは1以上の炭素-炭素多重結合を有してもよい。好ましい実施形態では、本開示に係るポリオールはカルボキシル基を含む。さらに好ましい実施形態では、本開示に係るポリオールはアルデヒド基を含む。本開示に係るポリオールがアルデヒド基を含む場合、そのようなポリオールは開鎖構造(アルデヒド)及び環状構造(ヘミアセタール)の双方を包含することを当業者は認識するであろう。
【0131】
ポリオールの非限定例には、グルコン酸、トレオン酸、グルコース、及びトレオースが挙げられる。カルボキシル基及び/またはアルデヒド基を有し得るか、または糖類もしくはその酸形態であることができる他のそのようなポリオールの例は、米国特許第10,046,066号でさらに詳細に記載されており、その開示は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。ポリオールが特定の立体化学に限定されないことを、当業者は認識するであろう。
【0132】
好ましい実施形態では、ポリオールは、2,3-ジヒドロキシルプロパン酸、2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロキシルヘプタナール;2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシルヘキサナール;2,3,4,5-テトラヒドロキシルヘキサナール;及び2,3-ジヒドロキシルプロパナールから成る群から選択されてもよい。
【0133】
好ましい実施形態では、ポリオールは、D-グリセリン酸、L-グリセリン酸、L-グリセロ-D-マンノヘプトース、D-グリセロ-L-マンノヘプトース、D-グルコース、L-グルコース、D-フコース、L-フコース、D-グリセルアルデヒド、及びL-グリセルアルデヒドから成る群から選択され得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、ポリオールは式IVまたは式Vの化合物であってもよい。
【化5】
【0135】
好ましい実施形態では、ポリオールは、式IVの化合物である。場合によっては、式IVのポリオールは、還元的アミノ化によってキトサンに結合されている。
【0136】
カルボキシル基を有する親水性ポリオールは、キトサンまたはアミン官能化キトサンのようなカチオン官能化キトサン(例えば、Arg結合キトサン(Arg-キトサン))に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、ポリオールは、6.0±0.3の反応pHで結合される。このpHでは、求核置換反応メカニズムに従って、親水性ポリオールのカルボン酸基がキトサン骨格上の非結合アミンによって攻撃されてもよい。
【0137】
当業者は、そのような親水性ポリオールをArg-キトサンに結合させる場合、求核置換反応は主にキトサン骨格のアミン基で発生する可能性が高いけれども、少量の親水性ポリオールが同じメカニズムを介してArgのアミン基と共有結合を形成してもよいことも可能であることを認識するであろう。
【0138】
天然糖である親水性ポリオールは、還元的アミノ化とそれに続くNaCBH3またはNaBHによる還元を使用して、キトサン、カチオン官能化キトサン、例えば、アミン官能化キトサン(例えば、Arg結合キトサン(Arg-キトサン))に結合されてもよい。
【0139】
C.ポリマー:ポリプレックス組成物
キトサンポリプレックスは、複数のポリマーと混合することができ、該ポリマーは親水性非荷電部分、及び負に荷電した(アニオン)部分を含む。上記のように、キトサンポリプレックスは、アニオン部分含有ポリマーとの複合体化がない、または複合体化前に正電荷を有するように製剤化される。したがって、好適な条件下で、ポリマー構成成分は、キトサン誘導体核酸ポリプレックスと可逆的な電荷:電荷複合体を形成することになる。いくつかの実施形態では、ポリマー構成成分のポリマーは、非分岐状である。いくつかの実施形態では、ポリマーは、分岐状である。場合によっては、ポリマー構成成分は、分岐ポリマー及び非分岐ポリマーの混合物を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、ポリマー構成成分は、投与後、細胞に入った後、及び/またはエンドサイトーシス後に、キトサンポリプレックスから放出される。理論に拘束されることを望むものではないが、ポリプレックス及びアニオン部分含有ポリマーを複合体化することによって、このように形成されたポリプレックス:ポリマー組成物は、形質移入効率を実質的に妨げることなく、試験管内、溶液中、及び/または生体内の安定性の改善を提供し得ると仮定される。いくつかの実施形態では、このように形成されたポリプレックス:ポリマー組成物は、例えば、別途、ポリマー構成成分のない同一のポリプレックスと比べて、粘膜接着特性の低減を提供し得る。
【0141】
好ましい実施形態では、ポリプレックス:ポリマー組成物は、生理学的pHで、低い正味の正の、中性の、または正味の負のゼータ電位を有する(約+10mV~約-20mV)。そのような組成物は、生理学的条件での凝集の減少、及び生体内での遍在するアニオン構成成分への非特異的結合の低減を示し得る。該特性は、細胞と接触して核酸の細胞内放出の増強をもたらすように、そのような組成物の移動を増強(例えば、粘液で拡散の増強)させ得る。
【0142】
好ましい実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、1000nm未満、さらに好ましくは、500nm未満、最も好ましくは、200nm未満の平均流体力学的直径を有する。特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、50nm~1000nm以下、好ましくは、50nm~500nm以下、最も好ましくは、50nm~200nm以下の平均流体力学的直径を有する。特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、50nm~175nm以下、好ましくは、50nm~150nm以下の平均流体力学的直径を有する。特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、75nm~1000nm以下、好ましくは、75nm~500nm以下、最も好ましくは、75nm~200nm以下の平均流体力学的直径を有する。特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、75nm~175nm以下、好ましくは、75nm~150nm以下の平均流体力学的直径を有する。特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、100nm超且つ175nm未満の平均流体力学的直径を有する。
【0143】
一実施形態では、ポリプレックス:ポリマー組成物は、80%、少なくとも80%、または好ましくは90%、さらに好ましくは少なくとも90%の%スーパーコイルDNA含量を有する。
【0144】
一実施形態では、ポリプレックス:ポリマー組成物は、生理学的pHで+10mV~-10mV、最も好ましくは、生理学的pHで+5mV~-5mVの平均ゼータ電位を有する。
【0145】
ポリプレックス:ポリマー組成物は、好ましくは、粒径に関して均質である。したがって、好ましい実施形態では、組成物は、低い平均多分散度指数(「PDI」)を有する。特に好ましい実施形態では、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散系は、0.5未満、さらに好ましくは、0.4未満、さらに好ましくは、0.3未満、さらにより好ましくは、0.25未満、最も好ましくは、0.2未満のPDIを有する。
【0146】
場合によっては、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散系は、1回以上の凍結融解サイクル後に、上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒度(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1以上を示す。場合によっては、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散系は、溶液中4℃で少なくとも48時間保存した後に、上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒度(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1以上を示す。場合によっては、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散系は、溶液中4℃で少なくとも1または2週間以上保存した後に、上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒度(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1以上を示す。
【0147】
場合によっては、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散系は、凍結乾燥及び再水和の後に上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒度(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1以上を示す。場合によっては、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散系は、噴霧乾燥及び再水和後に上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒度(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1以上を示す。場合によっては、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散系は、少なくとも250μg/mLの核酸濃度に(例えば、タンジェンシャルフロー濾過のような限外濾過で)濃縮された場合に、上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒度(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1以上を示す。場合によっては、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散系は、125μg/mL~約1,000μg/mLの核酸濃度に濃縮された場合の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒度(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1以上を示す。場合によっては、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散系は、125μg/mL~約25,000μg/mLの核酸濃度に濃縮された場合の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒度(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1以上を示す。場合によっては、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散系は、125μg/mL~約2,000μg/mLの核酸濃度に濃縮された場合の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒度(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1以上を示す。場合によっては、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散系は、125μg/mL~約5,000μg/mLの核酸濃度に濃縮された場合の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒度(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1以上を示す。場合によっては、ポリプレックス:ポリマー組成物の分散系は、125μg/mL~約10,000μg/mLの核酸濃度に濃縮された場合の上述のPDI、平均ゼータ電位、%スーパーコイルDNA、または平均粒度(nm)もしくはサイズ範囲のうちの1以上を示す。
【0148】
一般に、本明細書に記載されているポリプレックス:ポリマー組成物は、賦形剤、例えば、凍結保護剤、抗凍結剤、界面活性剤、再水和または湿潤剤などがない状態でも、好ましい溶液挙動(例えば、安定性及び/または非凝集)(PDIまたは平均粒度で測定)を示す。場合によっては、本明細書に記載されているポリプレックス:ポリマー組成物は、生理学的流体または模擬生理学的流体にて、好ましい溶液挙動(例えば、安定性及び/または非凝集)(PDIまたは平均粒度で測定)を示す。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているポリプレックス:ポリマー組成物は、疑似腸液にて、哺乳類尿にて、及び/または哺乳類膀胱で(例えば、尿と接触して)保存された場合、安定である。
【0149】
上記のように、本明細書に記載されているポリプレックス:ポリマー組成物は好ましくは、組成物にて実質的にサイズ安定性である。好ましい実施形態では、本開示の組成物は、6時間、さらに好ましくは12時間、さらに好ましくは24時間、最も好ましくは48時間室温にて、100%未満、さらに好ましくは50%未満、最も好ましくは25%未満平均直径が増加するポリプレックス:ポリマー粒子を含む。特に好ましい実施形態では、本開示の組成物は、少なくとも24時間または少なくとも48時間室温で、25%未満平均直径が増加するポリプレックス:ポリマー粒子を含む。
【0150】
主題の組成物のポリプレックス:ポリマー粒子は好ましくは、冷却条件下にて実質的にサイズ安定性である。好ましい実施形態では、本開示の組成物は、6時間、さらに好ましくは12時間、さらに好ましくは24時間、最も好ましくは48時間、2~8℃にて、100%未満、さらに好ましくは50%未満、最も好ましくは25%未満平均直径が増加するポリプレックス:ポリマー粒子を含む。
【0151】
主題の組成物のポリプレックス:ポリマー粒子は好ましくは、凍結融解条件下で実質的にサイズ安定性である。好ましい実施形態では、本開示の組成物は、-20~-80℃での凍結からの解凍後6時間、さらに好ましくは12時間、さらに好ましくは24時間、最も好ましくは48時間室温にて、100%未満、さらに好ましくは50%未満、最も好ましくは25%未満平均直径が増加するポリプレックスを含む。
【0152】
好ましい実施形態では、組成物は0.5mg/mlを超える核酸濃度を有し、沈殿ポリプレックスを実質的に含まない。さらに好ましくは、組成物は、少なくとも0.6mg/ml、さらに好ましくは、少なくとも0.75mg/ml、さらに好ましくは、少なくとも1.0mg/ml、さらに好ましくは、少なくとも1.2mg/ml、最も好ましくは、少なくとも1.5mg/mlの核酸濃度を有し、沈殿ポリプレックスを実質的に含まない。別の好ましい実施形態では、組成物は、2mg/mlを超える核酸濃度を有し、沈殿ポリプレックスを実質的に含まない。さらに好ましくは、組成物は、少なくとも2.5mg/ml、さらに好ましくは、少なくとも5mg/ml、さらに好ましくは、少なくとも10mg/ml、さらに好ましくは、少なくとも15mg/ml、最も好ましくは、約25mg/mlの核酸濃度を有し、沈殿ポリプレックスを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、0.5mg/mL~約25mg/mLの核酸濃度を有し、沈殿ポリプレックスを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、約25mg/mL以下の核酸濃度を有し、沈殿ポリプレックスを実質的に含まない。組成物を水和させることができる。好ましい実施形態では、組成物は、複合体を形成していない核酸を実質的に含まない。
【0153】
好ましい実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子の組成物は、等張である。ポリプレックスの安定性を維持しながら等張性を達成することは、医薬組成物を製剤化するのに非常に望ましく、これらの好ましい組成物は、医薬製剤及び治療用途に十分に適する。
【0154】
特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物はpHを下げることによってコーティングされずに、例えば、PEGのようなポリマーコートの全部または一部を放出することができる。特定の実施形態では、ポリマーのポリアニオン性アンカー領域のpKaを下回るpH条件下で粒子をインキュベートすることによってポリマーコートが放出される。例えば、ポリマーコートがポリグルタマートである場合、ポリマーコートは、粒子をポリグルタマートのpKaより低いpH、例えば、約4.25未満のpHでインキュベートすることによって放出することができる。特定の実施形態では、ポリマーコートは、ポリマーコートのポリアニオン性アンカー領域のpKaより低い、少なくとも0.25pH単位または少なくとも0.5pH単位下であるpH条件下で粒子をインキュベートすることによって放出することができる。
【0155】
特定の実施形態では、ポリプレックス:ポリマー粒子組成物は、粒子を高いイオン強度にさらすことによってコーティングされずに、例えば、PEGのようなポリマーコートの全部または一部を放出することができる。
【0156】
理論に束縛されることを望むものでないが、特定の生理学的条件が、本明細書に記載されている可逆的にPEG化されているキトサンDNAポリプレックスの部分的な(例えば、5%超)、実質的な(50%超)、広範囲の(例えば、90%超)、または完全な(100%)脱コーティングを促進することができると仮定される。例えば、特定の細胞内区画(例えば、エンドソーム、初期エンドソーム、後期エンドソーム、またはリソソーム)における低pH条件は、ポリマーコートの放出を促進することができる。別の例として、特定の細胞外条件は、本明細書に記載されている可逆的にPEG化されているキトサンDNAポリプレックスの部分的な(例えば、5%超)、実質的な(50%超)、広範囲の(90%超)、または完全な(100%)脱コーティングを促進することができる。場合によっては、消化管の特定の位置で通常生じる高いイオン強度及び/または酸性pH条件は、本明細書に記載されている可逆的にPEG化されているキトサンDNAポリプレックスの部分的な(例えば、5%超)、実質的な(50%超)、広範囲の(90%超)、または完全な(100%)脱コーティングを促進することができる。
【0157】
特定の実施形態では、本明細書に記載されているPEG化ポリプレックスは、細胞、組織、または身体区画(例えば、腸、小腸、大腸、結腸、肺、または膀胱)への送達のために製剤化されるので、ポリプレックスがPEG化されているままであり、それによって、標的細胞の形質移入を容易にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているPEG化ポリプレックスは、細胞内環境への侵入後または侵入中に、部分的に(例えば、5%超)、実質的に(50%超)、広範囲に(例えば、90%超)、または完全に(100%)ポリマーコートを放出する。特定の実施形態では、本明細書に記載されているPEG化ポリプレックスが、細胞、組織、または身体区画(例えば、腸、小腸、大腸、結腸、肺、または膀胱)への送達時にポリマーコートを部分的に(例えば、5%超)、実質的に(50%超)、広範囲に(例えば、90%超)、または完全に(100%)放出するように、本明細書に記載されているPEG化ポリプレックスは細胞、組織、または身体区画(例えば、腸、小腸、大腸、結腸、肺、または膀胱)への送達のために製剤化される。
【0158】
ポリマーのアニオン性アンカー領域のアニオン電荷密度及び/またはpKaは、意図された条件下で放出を促進する、または阻害するように調整できることが理解されるであろう。同様に、pH、体積、及びイオン強度、ならびに製剤の他の条件を調整して、意図された条件下での放出を促進するまたは抑制することができることが理解されるであろう。例えば、低pHの胃環境を介して腸に送達することについては、胃環境のpHを高めるために、PEG化ポリプレックス製剤を緩衝剤中で腸溶コーティング及び/または送達することができる。最適化された可逆的にPEG化されている粒子組成物は、本明細書に記載されているアッセイを使用して安定性及び形質移入効率をアッセイすることによって特定することができる。
【0159】
アニオン部分含有ポリマーと複合体化されたキトサンポリプレックスを含む組成物は、「(+):(-)モル比」と呼ばれる、(例えば、二重)誘導体化キトサンポリプレックスのカチオン官能基(+)のポリマーのアニオン部分(-)に対する比を特徴とすることができる。この(+):(-)モル比は約1:100を超えて約10:1未満まで変化することができる。
【0160】
特定の実施形態では、(+):(-)モル比は約1:75を超えて約8:1未満までであることができる。場合によっては、(+):(-)モル比は1:10を超えて10:1未満までであることができる。場合によっては、(+):(-)モル比は、1:10または約1:10から1:10または約1:10までであることができる。場合によっては、(+):(-)モル比は、1:8または約1:8から8:1または約8:1までであることができる。特定の実施形態では、(+):(-)モル比は、1:50を超えて約10:1未満までであることができる。場合によっては、(+):(-)モル比は、1:25を超えて約10:1未満までであることができる。場合によっては、(+):(-)モル比は1:10を超えて約7:1未満までであることができる。場合によっては、(+):(-)モル比は、1:8を超えて約7:1未満までであることができる。場合によっては、(+):(-)モル比は1:8を超えて約6:1未満までであることができる。
【0161】
特定の実施形態では、(例えば、二重)誘導体化キトサンポリプレックスのカチオン官能基がアミノ部分である場合、アニオン部分含有ポリマーと複合体化されたキトサンポリプレックスを含む組成物は、(例えば、二重)誘導体化キトサンポリプレックスのアミノ基(N)のポリマーのアニオン(A)部分に対する比(「N:Aモル比」と呼ばれる)を特徴とすることができる。このN:Aモル比は約1:100を超えて約10:1未満まで変化することができる。
【0162】
特定の実施形態では、N:Aモル比は約1:75を超えて約8:1未満までであることができる。場合によっては、N:Aモル比は、1:10を超えて10:1未満までであることができる。場合によっては、N:Aモル比は、1:10または約1:10から10:1または約10:1までであることができる。場合によっては、N:Aモル比は1:8または約1:8から8:1または約8:1までであることができる。特定の実施形態では、N:Aモル比は1:50を超えて約10:1未満までであることができる。場合によっては、N:Aモル比は1:25を超えて約10:1未満までであることができる。場合によっては、N:Aモル比は1:10を超えて約7:1未満までであることができる。場合によっては、N:Aモル比は1:8を超えて約7:1未満までであることができる。場合によっては、N:Aモル比は1:8を超えて約6:1未満までであることができる。
【0163】
さらに、または代わりに、アニオン部分含有ポリマーと複合体化されたキトサンポリプレックスを含む組成物は、(例えば、二重)誘導体化キトサンポリプレックスのカチオン官能基(+)の核酸のリン原子(P)とポリマーのアニオン部分(-)とに対する3構成成分比(「(+):P:(-)モル比」と呼ばれる)を特徴とすることができる。
【0164】
特定の実施形態では、(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:40~約40:1で変化することができる。特定の実施形態では、(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、(+):(-)のモル比は少なくとも1:40~約1:10で変化することができる。いくつかの実施形態では、(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:25~約25:1で変化することができる。いくつかの実施形態では、(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:25~約1:10で変化することができる。場合によっては、(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:20~約20:1で変化することができる。場合によっては、(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:20~約1:10で変化することができる。場合によっては、(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:10~約10:1で変化することができる。場合によっては、(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:25~約2:1で変化することができる。場合によっては、(+):Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、(+):(-)のモル比は、少なくとも1:20~約1:1で変化することができる。
【0165】
特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、3:1:3.5~3:1:17.5である。特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、5:1:3.5~5:1:17.5である。特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、7:1:3.5~7:1:17.5である。特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、約3:1:3.5、3:1:7、3:1:10、3:1:15、3:1:17.5、または3:1:20である。特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、約5:1:3.5、5:1:7、5:1:10、5:1:15、5:1:17.5、または5:1:20である。特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、約7:1:3.5、7:1:7、7:1:10、7:1:15、7:1:17.5、または7:1:20である。特定の好ましい実施形態では、(+):P:(-)は、約10:1:10、10:1:15、10:1:20、10:1:25、10:1:30、または10:1:40である。
【0166】
アニオン部分含有ポリマーと複合体化したアミノ官能化キトサンポリプレックス粒子は、(例えば、二重)誘導体化キトサンポリプレックスのアミノ官能基(N)の核酸のリン原子(P)とポリマーのアニオン部分(A)に対する3構成成分比(「N:P:Aモル比」と呼ばれる)を特徴とすることができることを、当業者は理解するであろう。特定の実施形態では、N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、P:Aのモル比は少なくとも1:40~約40:1で変化することができる。
【0167】
特定の実施形態では、N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、P:Aのモル比は、少なくとも1:40~約1:10で変化することができる。特定の実施形態では、N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、P:Aのモル比は、少なくとも1:25~約25:1で変化することができる。特定の実施形態では、N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、P:Aのモル比は、少なくとも1:25~約1:10で変化することができる。場合によっては、N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、P:Aのモル比は、少なくとも1:20~約20:1で変化することができる。場合によっては、N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、P:Aのモル比は、少なくとも1:20~約1:10で変化することができる。場合によっては、N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、P:Aのモル比は、少なくとも1:10~約10:1で変化することができる。場合によっては、N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、P:Aのモル比は、少なくとも1:25~約2:1で変化することができる。場合によっては、N:Pが少なくとも2:1~20:1以下である場合、P:Aのモル比は、少なくとも1:20~約1:1で変化することができる。
【0168】
特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、3:1:3.5~3:1:17.5である。特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、5:1:3.5~5:1:17.5である。特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、7:1:3.5~7:1:17.5である。特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、10:1:10~10:1:40である。特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、約3:1:3.5、3:1:7、3:1:10、3:1:15、3:1:17.5、または3:1:20である。特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、約5:1:3.5、5:1:7、5:1:10、5:1:15、5:1:17.5、または5:1:20である。特定の好ましい実施形態では、N:P:Aは、約7:1:3.5、7:1:7、7:1:10、7:1:15、7:1:17.5、または7:1:20である。特定の実施形態では、N:P:Aは、約10:1:10、10:1:15、10:1:20、10:1:25、10:1:30、または10:1:40である。
【0169】
C.1.親水性非荷電部分
ポリマーの親水性非荷電部分は、ポリアルキレンポリオールまたはポリアルキレンオキシポリオール部分、またはそれらの組み合わせであることができる、またはそれらを含むことができる。ポリマーの親水性非荷電部分は、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレンオキシグリコール部分であることができるか、またはそれらを含み得る。特定の実施形態では、ポリアルキレングリコール部分は、ポリエチレングリコール部分及び/またはモノメトキシポリエチレングリコール部分である、またはそれらを含む。特定の好ましい実施形態では、ポリマーの非荷電部分は、ポリエチレングリコールである、またはそれを含む。ポリマーの親水性非荷電部分は、ポリ乳酸のような他の生物学的に適合性のあるポリマー(複数可)であることができるか、またはそれを含み得る。
【0170】
PEGに加えて、いくつかの親水性の非荷電実体が当該技術分野で既知である。例えば、Lowe et.al.,Antibiofouling polymer interfaces:poly(ethyleneglycol)and other promising candidates,Polym.Chem.,6,198-212,2015、及びKnop et.al.,Poly(ethylene glycol)in Drug Delivery:Pros and Cons as Well as Potential Alternatives.Angewandte Chemie International Edition,49(36),6288-6308,2010を参照のこと。ポリマーの親水性非荷電部分の例は、ポリ(グリセロール)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、ポリ(スルホベタインメタクリラート)、及びポリ(カルボキシベタインメタクリラート)、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びポリ(ビニルピロリドン)であるが、これらに限定されない。
【0171】
親水性部分は約500Da~約50,000Daの重量平均分子量を有することができる。いくつかの実施形態では、親水性部分は、約1,000Da~約10,000Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、親水性部分は、約1,500Da~約7,500Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、親水性部分は、約3,000Da~約5,000Daの重量平均分子量を有する。場合によっては、親水性部分は5,000Daまたは約5,000Daの重量平均分子量を有する。
【0172】
C.2.アニオン性ポリマー部分
ポリマーのアニオン性ポリマー部分は、生理学的pHで負に電荷している複数の官能基を含むことができる。多種多様なアニオン性ポリマーは、本明細書に記載されている方法及び組成物での使用に好適であるが、但し、そのようなアニオン性ポリマーは、親水性非荷電ポリマー部分を有するポリマーの構成成分として提供することができ、正に荷電する(例えば、二重)誘導体化キトサン-核酸ナノ粒子との(例えば、可逆的な)電荷:電荷複合体を形成することができるという条件がある。
【0173】
例示的なアニオン性ポリマーとしては、生理学的pHで正味の負電荷を有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、ポリペプチドまたはその一部は、生理学的pHで負荷電側鎖を有するアミノ酸から成る。例えば、ポリマーのアニオン性ポリマー部分は、ポリグルタマートポリペプチド、ポリアスパルテートポリペプチド、またはそれらの混合物であることができる。追加のアミノ酸またはその模倣体は、ポリアニオンポリペプチドに組み込むことができる。例えば、グリシン及び/またはセリンアミノ酸は、柔軟性を増加させるか、または2次構造を低減させるために組み込むことができる。
【0174】
場合によっては、アニオン性ポリマーは、アニオン炭水化物ポリマーである、またはそれを含み得る。例示的なアニオン炭水化物ポリマーとしては、生理学的pHで負電荷を有するグリコサミノグリカンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアニオングリコサミノグリカンとしては、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヒアルロン酸、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ポリマーのアニオン性ポリマー部分は、ヒアルロン酸である、またはそれを含む。
【0175】
追加または代替のアニオン炭水化物ポリマーは、デキストラン硫酸を含むポリマーを含み得る。
【0176】
場合によっては、ポリアニオン部分は、ポリメタクリル酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、メタクリル酸とその塩のコポリマー、ならびにアクリル酸及び/またはメタクリル酸及びその塩のコポリマー、例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリル酸コポリマーから成る群から選択されるポリアニオンである、またはそれを含む。
【0177】
場合によっては、ポリアニオン部分は、アルギネート、カラギーナン、ファーセレラン、ペクチン、キサンタン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、セルロース、酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロース、ペンダントカルボキシル基、リン酸基または硫酸基を含有する合成ポリマー及びコポリマー、主に負電荷のポリアミノ酸、ならびに生体適合性ポリフェノール材料から成る群から選択されるポリアニオンである、またはそれらを含む。
【0178】
ポリマーのアニオン部分は約500Da~約5,000Daの重量平均分子量を有することができる。いくつかの実施形態では、アニオン部分は、約500Da~約3,000Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、アニオン部分は、約500Da~約2,500Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、アニオン部分は、約500Da~約2,000Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、アニオン部分は、約500Da~約1,500Daの重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、アニオン部分は、約1,000Da~約5,000Daの重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、アニオン部分は、約1,000Da~約3,000Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、アニオン部分は、約1,000Da~約2,500Daの重量平均分子量を有する。特定の実施形態では、アニオン部分は約1,000Da~約2,000Daの重量平均分子量を有する。場合によっては、アニオン部分は1,500Daまたは約1,500Daの重量平均分子量を有する。
【0179】
本明細書で使用されるとき、「ブロックコポリマー(block copolymer)」、「ブロックコポリマー(block co-polymer)」などは別個のホモポリマー領域を含有するコポリマーを指す。二元ブロックコポリマーは2つの異なるホモポリマー領域を含有する。三元ブロックコポリマーは3つの異なるホモポリマー領域を含有する。3つの異なる領域が、それぞれ異なることができ(例えば、AAAA-BBBB-CCCC)、または2つの領域が、同じ(例えば、AAAA-BBBB-AAAA)、類似(例えば、AAAA-BBBB-AAA)であることができ、この場合、「A」、「B」、及び「C」はコポリマーを形成する異なるモノマーサブユニットが含まれることを表す。例えば、「A」は、ポリエチレングリコールのホモポリマーのエチレングリコールモノマーサブユニットを表し、Bは、ポリグルタミン酸ホモポリマーのグルタミン酸サブユニットを表すことができる。ブロックコポリマーは、線状(例えば、二元または三元)ブロックコポリマーであることができる。本開示で使用される線状二元ブロック及び三元ブロックコポリマーの例示的な実施形態には、以下の包括的ではないリストに列挙されているものが挙げられる:
【表3-1】
【表3-2】
【0180】
一実施形態では、ブロックコポリマーは、以下の構造を有するPEG-ポリグルタミン酸ポリマーである、またはそれを含む:
【化6】
【0181】
一実施形態では、ブロックコポリマーは、以下の構造を有するPEG-ポリアスパラギン酸ポリマーである、またはそれを含む:
【化7】
【0182】
一実施形態では、ブロックコポリマーは、以下の構造を有するPEG-ヒアルロン酸ポリマーである、またはそれを含む:
【化8】
【0183】
D.代替的なカチオン性ポリマー及び脂質
本開示の核酸ポリプレックスは、酵素分解からヌクレオチドを濃縮する及び保護するように機能する。キトサン及びその誘導体に加えて、この目的のために有利に使用することもできる代わりの材料には、他の正に電荷する(すなわち、カチオン性の)ポリマー及び/または脂質が挙げられる。
【0184】
本開示の治療用核酸構築物とポリプレックスを形成するのに使用できるカチオン性ポリマーの例には、ポリアミン;ポリ有機アミン(例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンイミンセルロース及びその誘導体);ポリ(アミドアミン)(PAMAM及びその誘導体);ポリアミノ酸(例えば、ポリリシン(PLL)、ポリアルギニン及びその誘導体);多糖類(例えば、セルロース、デキストラン、DEAEデキストラン、デンプン);スペルミン、スペルミジン、ポリ(ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム)、ポリ(4(-ビニル-N-アルキル-ピリジウミウム)、ポリ(アクリロイル-トリアルキルアンモニウム)、及びTatタンパク質が挙げられる。例えば、Samal et al.,Cationic polymers and their therapeutic potential,Chem.Soc.Rev.41:7147-94(2012)を参照のこと。
【0185】
正に帯電した脂質の例には、ホスファチジン酸のアミノアルコールとのエステル、例えば、ジパルミトイルホスファチジン酸またはジステアロイルホスファチジン酸のヒドロキシエチレンジアミンとのエステルが挙げられる。正に電荷した脂質のさらに具体的な例には、3β-[N--(N’,N’-ジメチルアミノエチル)カルバモイル)コレステロール(DC-chol);臭化N,N’-ジメチル-N,N’-ジオクタシルアンモニウム(DDAB);塩化N,N’-ジメチル-N,N’-ジオクタシルアンモニウム(DDAC);塩化1,2-ジオレオイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DORI);1,2-ジオレオイルオキシ-3-[トリメチルアンモニオ]プロパン(DOTAP);塩化N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム(DOTMA);ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);1,2-ジオクタデシルオキシ-3-[トリメチルアンモニオ]-プロパン(DSTAP);及び例えば、Martin et al.,Current Pharmaceutical Design,2005,11,375-394に記載されているカチオン性脂質が挙げられる。
【0186】
任意の濃度及び任意の比率での脂質とポリマーとのブレンドを使用することもできる。様々な等級を使用して異なるポリマー種を異なる比率で混合することは、寄与するポリマーのそれぞれから取り入れる特性をもたらすことができる。種々の末端基化学も採用することができる。
【0187】
III.作成方法
上記のように、当業者は、本開示のポリプレックス:ポリマー粒子が種々の方法で生成されてもよいことを理解するであろう。例えば、ポリプレックス粒子を生成し、その後、ポリマーと接触させることができる。例示的な非限定的な実施形態では、ポリプレックス粒子は、官能化キトサン及びヌクレオチド原料を提供及び組み合わせることによって調製される。原料濃度は、様々なアミノ対リン酸塩(N/P)比、混合比、及び標的ヌクレオチド濃度に適応するように調整されてもよい。いくつかの実施形態、特に小さなバッチ、例えば、2mL未満のバッチでは、官能化キトサン、及びヌクレオチド原料は、容器をボルテックスしながら、官能化キトサン原料にヌクレオチド原料を徐々に滴下することによって混合されてもよい。他の実施形態では、官能化キトサン及びヌクレオチド原料は、2つの流体流をインライン混合することによって混合されてもよい。他の実施形態では、得られるポリプレックス分散系は、限外濾過(例えば、タンジェンシャルフロー濾過(TFF))または溶媒蒸発(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥)のような当該技術分野で既知の手段によって濃縮されてもよい。ポリプレックス形成のための好ましい方法は、WO2009/039657に開示されており、その全体が参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0188】
同様に、ポリプレックス粒子原料(例えば、ポリプレックス組成物を含む水溶液)を提供し(例えば、上記の反応混合物から単離し)、ポリマー原料(例えば、ポリマーを含む水溶液)と組み合わせることができる。原料濃度を調節して、種々のアミノ-対-アニオンの比(N/A)、アミノ-対-リン(N:P)の比、N:P:Aの比、混合比、及び標的ヌクレオチド濃度を調整してもよい。いくつかの実施形態、特に小さなバッチ、例えば、2mL未満のバッチでは、原料は、容器をボルテックスしながら、第1の原料(例えば、ポリプレックス)を第2の原料(例えば、ポリマー)にゆっくりと滴下することによって、混合されてもよい。他の実施形態では、原料は2つの流体流をインライン混合することによって混合されてもよい。他の実施形態では、得られるポリプレックス:ポリマー複合体分散系は、限外濾過(例えば、タンジェンシャルフロー濾過(TFF))または溶媒蒸発(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥)のような当該技術分野で既知の手段によって濃縮されてもよい。
【0189】
1.粉末製剤
本開示のポリプレックス:ポリマー組成物は粉末を含む。好ましい実施形態では、本開示は乾燥粉末のポリプレックス:ポリマー組成物を提供する。好ましい実施形態では、乾燥粉末のポリプレックス:ポリマー組成物は本開示のキトサン-核酸ポリプレックス分散系の脱水(例えば、噴霧乾燥または凍結乾燥)を介して生成される。
【0190】
2.医薬製剤
本開示はまた、本開示のポリプレックス:ポリマー組成物を含む「薬学的に許容される」または「生理学的に許容される」製剤も提供する。そのような製剤は、開示されている治療方法を実施するために対象に生体内で投与することができる。
【0191】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される」及び「生理学的に許容される」という用語は、好ましくは、過度の有害な副作用(例えば、悪心、腹痛、頭痛など)を生じさせることなく、対象に投与することができる担体、希釈剤、賦形剤などを指す。投与のためのそのような調製物は、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、及びエマルションを含む。液体製剤は、懸濁剤、溶剤、シロップ剤、及びエリキシル剤を含む。液体製剤は、固体の再構成によって調製されてもよい。
【0192】
医薬製剤は、対象への投与と適合性のある担体、希釈剤、賦形剤、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などから作製することができる。そのような製剤は、錠剤(コーティングされたまたはコーティングされていない)、カプセル剤(ハードまたはソフト)、マイクロビーズ、エマルション剤、散剤、顆粒剤、結晶剤、懸濁剤、シロップ剤、またはエリキシル剤に含有することができる。他の添加剤のうち、補助的な活性化合物及び防腐剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなどもまた存在し得る。
【0193】
賦形剤には、塩、等張剤、血清タンパク質、緩衝剤もしくは他のpH調整剤、酸化防止剤、増粘剤、非荷電ポリマー、防腐剤、または抗凍結剤を挙げることができる。本開示の組成物に使用される賦形剤はさらに、等張剤及び緩衝液または他のpH調整剤を含んでもよい。これらの賦形剤は、好ましい範囲のpH(約6.0~8.0)及び浸透圧(約50~400mmol/L)を得るために添加されてもよい。好適な緩衝液の例は、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、及びスルホン化有機分子緩衝液である。そのような緩衝液は、0.01~1.0%(w/v)の濃度で組成物中に存在し得る。等張剤は、当該技術分野で既知のもの、例えば、マンニトール、デキストロース、グルコース、及び塩化ナトリウム、または他の電解質のいずれかから選択されてもよい。好ましくは、等張剤は、グルコースまたは塩化ナトリウムである。等張剤は、それが導入される生物学的環境の浸透圧と同一のまたは同様の浸透圧を組成物に与える量で使用されてもよい。組成物における等張剤の濃度は、使用される特定の等張剤の性質に依存し、約0.1~10%の範囲であってもよい。グルコースが使用される場合、それは好ましくは、1~5%w/v、さらに具体的には、5%w/vの濃度で使用される。等張剤が塩化ナトリウムである場合、それは好ましくは、最大1%w/v、特に0.9%w/vの量で用いられる。本開示の組成物はさらに、防腐剤を含有してもよい。防腐剤の例は、ポリヘキサメチレン-ビグアニジン、塩化ベンザルコニウム、安定したオキシクロロ錯体(Purite(登録商標)として知られているもの)、酢酸フェニル水銀、クロロブタノール、ソルビン酸、クロルヘキシジン、ベンジルアルコール、パラベン、及びチメロサールである。通常、そのような防腐剤は約0.001~1.0%の濃度で存在する。さらに、本開示の組成物は凍結保存剤も含有してもよい。好ましい凍結保存剤は、グルコース、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、ソルビトール、コロイド状二酸化ケイ素、100,000g/モル未満の好ましい分子量のデキストラン、グリセロール、及び100,000g/モル未満の分子量のポリエチレングリコール、またはそれらの混合物である。最も好ましいのは、グルコース、トレハロース、及びポリエチレングリコールである。通常は、そのような凍結保存剤は、約0.01~10%の濃度で存在する。
【0194】
医薬製剤は、意図された投与経路と適合性があるように製剤化することができる。例えば、経口投与のために、組成物は賦形剤と共に組み込まれ、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤、またはコーティング、例えば、腸溶性コーティング(Eudragit(登録商標)またはSureteric(登録商標))の形態で使用され得る。薬学的に適合性である結合剤、及び/または補助物質は経口製剤に含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分のいずれか、もしくは同様の性質の化合物を含有し得る:結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントガム、もしくはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンもしくはラクトース;崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル、もしくはコーンスターチ;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくは他のステアリン酸塩;滑剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味料、例えば、スクロースもしくはサッカリン;または、着香剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくは香味料。
【0195】
製剤は、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、身体からの急速な分解または排除から組成物を保護するための担体も含み得る。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはステアリン酸グリセリルのような時間遅延材料を単独で、またはワックスと組み合わせて用いられてもよい。
【0196】
坐剤及び他の直腸投与可能な製剤(例えば、浣腸によって投与可能なもの)もまた企図される。さらに、直腸送達に関して、例えば、Song et al.,Mucosal drug delivery:membranes,methodologies,and applications,Crit.Rev.Ther.Drug.Carrier Syst.,21:195-256,2004;Wearley,Recent progress in protein and peptide delivery by noninvasive routes,Crit.Rev.Ther.Drug.Carrier Syst.,8:331-394,1991を参照のこと。
【0197】
投与のための適切な追加の医薬製剤は当該技術分野で既知であり、本開示の方法及び組成物に適用可能である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)18th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.;The Merck Index(1996)12th ed.,Merck Publishing Group,Whitehouse,N.J.;及びPharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms,Technonic Publishing Co.,Inc.,Lancaster,Pa.,(1993)を参照のこと)。
【0198】
IV.投与
一実施形態では、ポリプレックス:ポリマー組成物の使用は生理学的pHでのポリプレックスの長期安定性を提供する。これは、有効な投与を提供する。
【0199】
細胞または組織に接触させる多数の投与経路のうちのいずれかが可能であり、特定の経路の選択は部分的には、標的の細胞または組織に依存するであろう。注射器、内視鏡、カニューレ、挿管チューブ、カテーテル、ネブライザー、吸入具及び他の物品が投与に使用されてもよい。
【0200】
いくつかの実施形態では、がんは膀胱癌である。化学療法剤の膀胱内投与は一部の膀胱癌に対する標準的な治療である。簡潔には、膀胱内療法は、尿道カテーテルの挿入によって治療剤を膀胱に直接注入することを含む。いくつかの実施形態では、主題の組成物は尿中での増強された安定性を提供し、それによって限局性発現が改善される。
【0201】
障害もしくは状態、または症状の進行もしくは悪化を防止することまたは抑制することは良好な転帰であるけれども、対象を治療するための用量または「有効量」は好ましくは、測定可能または検出可能な程度に状態の症状のうちの1つ、いくつか、またはすべてを改善するのに十分である。したがって、標的組織にて治療用核酸を発現させることによって治療可能な状態または障害の場合、本開示の方法によって治療可能な状態を改善するために製造される治療用RNAまたは治療用タンパク質の量は状態及び所望の結果に依存し、当業者が容易に確認することができる。適切量は、治療される状態、所望の治療効果、及び個々の対象(例えば、対象内の生物学的利用能、性別、齢など)に依存することになる。有効量は関連する生理学的効果を測定することによって確認することができる。
【0202】
獣医の応用もまた、本開示によって企図される。したがって、一実施形態では、本開示は、治療を必要とする非ヒト哺乳類に本開示のポリプレックス:ポリマー組成物を投与することを含む、非ヒト哺乳類を治療する方法を提供する。本開示の組成物はまた、粘膜に投与されてもよい。例えば、組成物は、小腸及び/または大腸及びの粘膜細胞または粘膜組織を含むが、これらに限定されない消化管の粘膜細胞または粘膜組織に投与することができる。他の標的の粘膜細胞または粘膜組織には、眼、気道上皮、肺、膣、及び膀胱の細胞または組織が挙げられるが、これらに限定されない。他の標的の細胞または組織には、乳房、結腸、前立腺、膵臓、皮膚、肺、卵巣、腎臓、脳、膀胱、膣、子宮頸部、胃、消化管、腎臓、肝臓、甲状腺、食道、鼻腔癌、喉頭、口腔癌、咽頭癌、網膜芽細胞腫、子宮内膜、及び精巣などの細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0203】
この目的のための典型的な製剤には、液剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤、溶剤、クリーム剤、泡状剤、フィルム剤、インプラント、スポンジ、繊維剤、散剤、及びマイクロエマルション剤が挙げられる。
【0204】
本開示の化合物は、通常、ドライパウダー吸入器から乾燥粉末の形態で(単独で、混合物として、例えば、ラクトースとの乾燥ブレンドで、もしくは混合構成成分粒子として)、または好適な噴射剤の使用の有無にかかわらず、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、もしくはネブライザーからエアロゾル噴霧として鼻腔内にまたは吸入によって粘膜に投与することができる。
【0205】
吸入器または吸入具で使用されるカプセル剤、ブリスター及びカートリッジは、本開示の化合物、ラクトースまたはデンプンのような好適な粉末基剤、及びI-ロイシン、マンニトール、またはステアリン酸マグネシウムのような性能調整剤の粉末混合物を含有するように製剤化されてもよい。
【0206】
吸入/鼻腔内投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。調節放出製剤は、遅延放出、徐放性放出、パルス放出、制御放出、標的放出、及びプログラム放出を含む。
【0207】
本開示の化合物は、例えば、坐剤、ペッサリー、または浣腸の形態で、直腸または膣に投与されてもよい。ココアバターは、従来の坐薬基剤であるが、種々の代替品が必要に応じて使用されてもよい。
【0208】
直腸/膣内投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。調節放出製剤は、遅延放出、徐放性放出、パルス放出、制御放出、標的放出、及びプログラム放出を含む。
【0209】
本開示の化合物はまた、通常、液滴の形態で眼または耳に直接投与されてもよい。眼投与及び耳投与に好適な他の製剤には、軟膏剤、生分解性(例えば、吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)及び非生分解性(例えば、シリコーン)インプラント、ウエハー、レンズ、及び粒子系が挙げられる。製剤は、また、イオントフォレーシスで送達されてもよい。
【0210】
眼/耳投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。調節放出製剤は、遅延放出、徐放性放出、パルス放出、制御放出、標的放出、またはプログラム放出を含む。
【0211】
1.粘膜投与
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は粘膜に投与される。例えば、組成物は膀胱の粘膜細胞または粘膜組織、ならびに小腸及び/または大腸及び/または結腸の粘膜細胞または粘膜組織を含むが、これらに限定されない消化管の粘膜細胞または粘膜組織に投与することができる。他の標的の粘膜細胞または粘膜組織には、眼、気道上皮、肺、膣、及び膀胱の細胞または組織が挙げられるが、これらに限定されない。
【0212】
この目的のための典型的な製剤には、液剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤、溶剤、クリーム剤、泡状剤、フィルム剤、インプラント、スポンジ、繊維剤、散剤、及びマイクロエマルション剤が挙げられる。
【0213】
膀胱粘膜に関する例示的な実施形態では、本明細書に記載されている化合物は膀胱内療法を使用して投与することができる。膀胱内療法は、尿道カテーテルの挿入によって治療剤を膀胱に直接注入することを含む。薬剤は0.5時間~6時間の間、膀胱に置かれる。それは膀胱がん化学療法の標準投与経路である。それは、膀胱における疾患部位に直接薬剤を送達するために利用可能な外部の解剖学的アクセスを利用し、それによって、体内の他の場所にて健康な組織に、注入された薬剤が不必要に曝露されるのを回避する。
【0214】
膀胱投与のための製剤は、即時放出及び/または調節放出されるように製剤化されてもよい。調節放出製剤は、遅延放出、徐放性放出、パルス放出、制御放出、標的放出、またはプログラム放出を含む。
【0215】
本開示の化合物は、鼻腔内にまたは吸入によって、通常、ドライパウダー吸入器から乾燥粉末の形態で(単独で、混合物として、例えば、ラクトースとの乾燥ブレンドで、もしくは混合構成成分粒子として)、または好適な噴射剤の使用の有無にかかわらず、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、もしくはネブライザーからエアロゾル噴霧として、粘膜に投与することもできる。
【0216】
吸入器または吸入具で使用されるカプセル剤、ブリスター及びカートリッジは、本開示の化合物、ラクトースまたはデンプンのような好適な粉末基剤、及びI-ロイシン、マンニトール、またはステアリン酸マグネシウムのような性能調整剤の粉末混合物を含有するように製剤化されてもよい。
【0217】
吸入/鼻腔内投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。調節放出製剤は、遅延放出、徐放性放出、パルス放出、制御放出、標的放出、及びプログラム放出を含む。
【0218】
本開示の化合物は、例えば、坐剤、ペッサリー、または浣腸の形態で、直腸または膣に投与されてもよい。ココアバターは、従来の坐薬基剤であるが、種々の代替品が必要に応じて使用されてもよい。
【0219】
直腸/膣内投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。調節放出製剤は、遅延放出、徐放性放出、パルス放出、制御放出、標的放出、及びプログラム放出を含む。
【0220】
本開示の化合物はまた、通常、液滴の形態で眼または耳に直接投与されてもよい。眼投与及び耳投与に好適な他の製剤には、軟膏剤、生分解性(例えば、吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)及び非生分解性(例えば、シリコーン)インプラント、ウエハー、レンズ、及び粒子系が挙げられる。製剤は、また、イオントフォレーシスで送達されてもよい。
【0221】
眼/耳投与用の製剤は、即時放出及び/または調節放出になるように製剤化されてもよい。調節放出製剤は、遅延放出、徐放性放出、パルス放出、制御放出、標的放出、またはプログラム放出を含む。
【0222】
2.腫瘍内投与
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は腫瘍(がん)に直接投与される。例えば、カチオン性ポリマー及び/または脂質を含む核酸ポリプレックスと、インターロイキン-12(IL-12)をコードする治療用核酸構築物と、少なくとも1つのRIG-Iアゴニストをコードする核酸を含む治療用核酸構築物とを含む組成物をがんに直接接触させ、局所に投与することによって、乳房、前立腺、皮膚、肺、脳、膀胱、胃、腎臓などのような組織にて組成物をがんに投与することができ、この場合、IL-12及びRIG-Iをコードする治療用核酸構築物は同一のまたは異なる核酸構築物である。
【0223】
腫瘍内注射は、当該技術分野において知られている(例えば、Melero et al.,(2021),Nature Reviews Clinical Oncology,18:558-576を参照のこと)。
【0224】
V.治療応用
本明細書に開示されている方法は、がん抗原に対する強いメモリーT細胞応答を活性化する。したがって、本開示での使用が企図される治療用タンパク質は、多種多様な活性を有し、多種多様な障害の治療で使用される。したがって、治療用タンパク質活性の以下の記載、及び本開示の治療用核酸及びタンパク質で治療可能な適応症の記載は、例示的であり、網羅的であることを意図するものではない。「対象」という用語は動物を指し、哺乳類が好ましく、ヒトが特に好ましい。治療上の実施形態の具体的な非限定例が以下に記載されている。
【0225】
いくつかの治療上の実施形態では、治療用ポリプレックス:ポリマー組成物は、例えば、腫瘍内注射によって腫瘍に直接適用される。治療効果が転移性疾患に適用される場合、本明細書に記載されているポリプレックス:ポリマー組成物が接触する細胞または組織は腫瘍性であるが、治療効果は原発性腫瘍または原発標的組織に対して遠位である。
【0226】
場合によっては、治療上の実施形態は粘膜組織に適用されるが、非粘膜標的の組織、細胞、または臓器に作用することが意図される。そのような実施形態では、治療効果が非粘膜性である場合、本明細書に記載されているポリプレックス:ポリマー組成物が接触する細胞または組織は粘膜性であることが理解される。いくつかの実施形態では、治療作用は粘膜標的に対して近位である。例えば、粘膜細胞は、IL-12及び/または別の免疫刺激分子を産生し、且つ分泌するように形質移入することができる。しかしながら、治療効果が転移性疾患であるような非粘膜性である他の実施形態では、本明細書に記載されているポリプレックス:ポリマー組成物が接触する細胞または組織は粘膜性であるが、治療効果は原発性腫瘍または原発粘膜性標的組織に対して遠位である。
【0227】
一実施形態では、本開示のポリプレックス:ポリマー組成物は治療的処置または予防的処置に使用されてもよい。そのような組成物は、本明細書では治療用組成物と呼ばれることがある。上記のように、主題の組成物及び方法は主に、IL-12をコードする治療用核酸を、単独で、または追加の自然及び/または適応型の免疫刺激分子、例えば、RIG-Iアゴニストと併せて使用する。いくつかの実施形態では、治療用核酸はさらに、例えば、RIG-Iアゴニスト、STINGアゴニスト、TLR7/9アゴニスト、及び/または他のパターン認識受容体アゴニストのようなIFN-1活性化因子/誘導因子をコードする。例えば、Vasou et al.,Viruses,9:186(2017)を参照のこと。いくつかの実施形態では、治療用核酸はさらに、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM3、B7-H3、B7-H4、LAG-3、KIR及びそれらのリガンドから成る群から選択される免疫チェックポイント分子のモジュレーターをコードする。
【0228】
好適なIFN-1活性化因子/誘導因子には、RIG-Iアゴニスト(例えば、eRNA11a、アデノウイルスVA RNA1、eRNA41H、MK4621(Merck)、SLR10、SLR14及びSLR20)、STING(すなわち、インターフェロン遺伝子の刺激剤)アゴニスト(例えば、CDN、すなわち、サイクリックジヌクレオチド)、PRRago(例えば、CpG、ImiquimodまたはポリI:C)、ならびにTRL7及びTLR9を含むTLRアゴニスト(例えば、CPG-1826、GS-9620、AED-1419、CYT-003-QbG10、AVE-0675またはPF-7909)、ならびにRLR刺激剤(例えば、RIG-I、Mda5、またはLGP2刺激剤)が挙げられる。いくつかの実施形態では、IFN-1活性化因子/誘導因子は樹状細胞、T細胞、B細胞、及び/またはT濾胞ヘルパー細胞を誘導する。
【0229】
好ましい実施形態では、IFN-1活性化因子/誘導因子はRIG-Iアゴニストである。RIG-I(レチノイン酸誘導性遺伝子I、Ddx58によってコードされる)はRNAセンサーとして作用する細胞質性抗ウイルス性ヘリカーゼであり、これは細胞質におけるウイルスRNAを検出し、その認識の際に活性化される。パターン認識受容体、RIG-IはRNAヘリカーゼドメインと2つのN末端カスパーゼ動員ドメイン(CARD)とを含有し、それはシグナルを下流のシグナル伝達アダプターMAVS(ミトコンドリア抗ウイルス-シグナル伝達タンパク質)に中継する。MAVSを介したRIG-1シグナル伝達は、TBK1及びIRF7/8を介した、IFNα及びIFNβを含むI型IFN応答の誘導ならびにカスパーゼ8依存性アポトーシスの活性化を含む種々の応答をもたらす。それらは、がん細胞を含むほとんどの組織に見いだされる(Kato et al.,Immunol.Rev.243(1):91-98(2011))。
【0230】
RIG-I誘導の応答は細胞間で異なる。メラニン細胞及び線維芽細胞のような正常な健常細胞は、RIG-I誘導のアポトーシスに対して非常に耐性がある一方で、腫瘍細胞はRIG-I誘導の細胞死に非常に感受性が高い(Besch et al.,2009;Kubler et al.,2010)。RIG-Iの天然リガンドは、5’三リン酸または5’二リン酸(5’pppまたは5’pp)を含有する二本鎖RNAのウイルス性の短い平滑末端である。RIG-I特異的リガンドは現在、がんの免疫療法のために開発されている(Duewell et al.,2014,2015;Ellermeier et al.,2013;Schnurr & Duewell,Oncoimmunology,2(5):e24170(2013)及び2014)。RIG-Iリガンドの強力な抗腫瘍活性の一部は、CD8+T細胞への抗原の交差提示を促進し、且つ細胞毒性活性を誘導するための下流能力である(Hochheiser et al.,2016)。RIG-Iリガンドはまた、インフルエンザのようなウイルス感染モデルにて強い治療活性も示す(Weber-Gerlach & Weber,2016)。
【0231】
RNAポリメラーゼIIIプロモーターからRIG-Iリガンドを発現するプラスミドベクター骨格は、強力な合成RIG-Iリガンドを特定するのに使用されている(Luke et al.,J.Virol.85(3):1370-1383)。三リン酸で修飾されたステムループRNAは本開示では特にアゴニストとして使用される。これらには、(i)収束転写によって発現される免疫刺激性dsRNAであるeRNA11aを(ii)アデノウイルスVA RNAI、SLR20と組み合わせるeRNA41H、5’三リン酸配列で修飾された二本鎖三リン酸化20塩基対ステムループRNA(Elion et al.,Cancer Res.78(21):6183-6195(2018))、ならびに一方の末端に安定なテトラループを持つ代替的なポリリン酸化RNAであるSLR10及びSLR14(Jiang et al.,J.Exp.Med.216:2854-68(2019))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0232】
本明細書に記載されている組成物及び方法にて有利に使用される追加のRIG-Iアゴニストには、RIG-I及びヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン2経路の活性化を介して作用する広範なスペクトルの抗ウイルス性の自然のセンサーアゴニストであるSB-9200(Jones et al.J.Med.Virol.89:1620-1628(2017)、MK 4621(RGT100,Merck)、CBS-13-BPS、インフルエンザウイルスパンハンドルプロモーターの構造を模倣する合成RIG-I特異的アゴニスト(Lee et al.Nucleic Acids Res.46:10553(2018);IVT-B2 RNA(Lien et al.Molecular Therapy,24:135-45(2016)、SeV DVG(Xu et al.,mBio,65:e01265-15(2015))、99ヌクレオチドのヘアピン(M8)を持つウリシンに富んだ配列を有する5’pppRNA(Chiang et al.J.Virol.89:8011-25(2015)、及び3pRNAが挙げられる。
【0233】
前述の実施形態によれば、対象の組成物及び方法にてIL-12と同時発現するのに好適なRIG-Iアゴニストには、RIG-I DNAワクチン、プラスミドがコードするRNAポリメラーゼIII発現RNAベースのRIG-Iアゴニスト、例えば、eRNA11a、アデノウイルスVA RNA1、eRNA41H(Nature Technology Corp)、GFP2、Lamin A/C及びLamin VSV、トリ-GFPs、SAD ΔPLp、トリ-G-AC-U、Flu vRNA、RNaseLフラグメント、pppRVL、pppVSVL、ppp-shRNA-luc3VA1、5’ppp-dsRNA、3p-hpRNA、MK4621(Merck)、SLR10、SLR14、SLR20、CBS-13-BPS、IVT-B2 RNA、SeV CVG、SB-9200、及びEllermeier et al.,Cancer Research,(2013),73(6)に開示されているようなsiRNAが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、IL-12との同時発現に好適なSTINGアゴニストには、DDX41を含むDExD/Hヘリカーゼが挙げられるが、これらに限定されず、TLRアゴニストには、例えば、CpG-1826(ODN1826、Invivogen)のようなCpGジヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0234】
前述の実施形態によれば、主題の組成物及び方法にてIL-12と同時発現するのに好適な免疫チェックポイント分子のモジュレーターには、例えば、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM3、B7-H3、B7-H4、LAG-3、及びKIR(例えば、KN035(Ablynx/Sanofi);Inhibrix 105)のうちの1以上に向けた単一ドメイン抗体(sdAb)(Wan et al.,Oncol.Rep.(2018);Hosseinzadeh et al.,Rep.Biochem & Mol.Bio.,(2017);Dougan et al.,Can.Imm.Res.(2016);Ingram et al.,PNAS,(2018)、及びWO2017198212も参照のこと);ドミナントネガティブPD-1分子(例えば、Atara Therapeutics)、PD-L1に対して高い親和性を有するPD-1変異体(例えば、競合的アンタゴニスト)(Maute、PNAS(2015));及びCD28に対する結合が上昇したCD80変異体(複数可)(例えば、WO2017/181152)が挙げられる。
【0235】
場合によっては、当該IFN-1アゴニスト及び/または当該免疫チェックポイント阻害剤は以下によってコードされる。
-当該誘導体化キトサン核酸ポリプレックス中の当該治療用核酸構築物;
-当該誘導体化キトサン核酸ポリプレックス中の異なる治療用核酸構築物;
-異なる誘導体化キトサン核酸ポリプレックス内の治療用核酸構築物(例えば、IL-12をコードする構築物を含まない);
-治療用核酸構築物(例えば、PEIまたはカチオン性脂質製剤のような代替核酸送達製剤に製剤化される)。
【0236】
IL-12をコードする治療用核酸構築物及び当該IFN-1アゴニスト及び/または当該免疫チェックポイント阻害剤をコードする治療用核酸構築物は同時にまたは順次、投与することができる。場合によっては、当該IFN-1アゴニスト及び/または当該免疫チェックポイント阻害剤をコードする治療用核酸構築物は、単一の製剤で、または単一の、例えば、混合された2つの異なる製剤の組み合わせで同時投与される。場合によっては、IL-12をコードする治療用核酸構築物及び当該IFN-1アゴニスト及び/または当該免疫チェックポイント阻害剤をコードする治療用核酸構築物は順次、投与される。
【0237】
本開示の免疫刺激分子は、腫瘍細胞または他の過剰増殖性細胞の増殖または維持に関与するタンパク質(複数可)を阻害するように設計されたshRNA(短いヘアピンRNA)分子をコードしてもよい。プラスミドDNAは治療用タンパク質及び1以上のshRNAを同時にコードしてもよい。さらに、当該組成物の核酸は、プラスミドDNAと、センスRNA、アンチセンスRNAまたはリボザイムを含む合成RNAとの混合物であってもよい。
【0238】
VI.治療の方法
過剰増殖性障害
主題の組成物及び方法は過剰増殖性障害の治療において有利に使用される。例示的な過剰増殖性障害には、乳房、結腸、前立腺、膵臓、皮膚、肺、卵巣、腎臓、脳、膀胱、膣、子宮頸部、胃、消化管、腎臓、肝臓、甲状腺、食道、鼻腔、喉頭、口腔、咽喉、網膜、子宮内膜、精巣などの過剰増殖性障害が挙げられる。特に重要であるのは、原発性がん/腫瘍から原発性がんとは異なる部位に転移している過剰増殖性障害を治療するための組成物及び方法である。
【0239】
いくつかの実施形態では、過剰増殖性障害は、粘膜組織またはその近傍の組織における過剰増殖性障害である。本開示の方法及び組成物は、口腔癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、大腸癌、及び直腸癌を含むが、これらに限定されない消化管癌の治療に使用されてもよい。本開示の方法及び組成物によって治療され得る鼻腔癌及び肺癌には、副鼻腔癌、中咽頭癌、気管癌、及び肺癌が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の方法及び組成物によって治療され得る泌尿生殖器癌には、膀胱癌、尿路上皮癌、尿道癌、精巣癌、腎臓癌、前立腺癌、陰茎癌、副腎癌、子宮癌、子宮頸癌及び卵巣癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0240】
上記で提供された方法のいずれか1つに係るいくつかの実施形態では、該方法はさらに、非核酸に基づく免疫刺激分子を(腫瘍の部位に全身性にまたは限局性に)投与することを含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、免疫刺激分子は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM3、B7-H3、B7-H4、LAG-3、KIR及びそれらのリガンドから成る群から選択される免疫チェックポイント分子のモジュレーターである。いくつかの実施形態では、免疫調節剤はPD-L1またはPD-L1の阻害剤である。いくつかの実施形態では、PD-1の阻害剤は抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブである。いくつかの実施形態では、免疫調節剤はCTLA-4の阻害剤である。いくつかの実施形態では、CTLA-4の阻害剤は抗CTLA-4抗体、例えば、イピリムマブまたはトレメリムマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1の阻害剤は抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブである。
【0242】
いくつかの実施形態では、免疫調節剤はIFN-1アゴニスト、例えば、RIG-Iアゴニスト、STINGアゴニスト、またはTLR7/9アゴニストである。同時投与するのに好適なRIG-Iアゴニストには、短いポリI:C及びポリAU組成物(例えば、ポリ(I:C)/LyoVec錯体(Invivogen))、RGT100(MK4621、Merck)SLR20(Elion et al.;SLR10&SLR14(Jiang et al.)、及びUS8871799、US8895608、US8927561、US9,073,946、US9458492、US9555106、US9884876、US9956285、US9775894、US9861574、US9937247、US10167476、US10350158、US10434064、US10273484、US9381208B2、US9738680B2、US9790509、US10059943、US9109012B2、US9937247B2、US9816091B2、US9133456B2、US9409941B2、US9340789B2、US9040234B2、US20200071316、US20200063141A1、US20200061097A1、US20200055871A1、US20200016253A1、US20190076463A1、US20180195063A1、US20160287623A1に開示されたようなアゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。
【0243】
IL-12と共に同時投与するのに好適なSTINGアゴニストには、c-Di-AMPナトリウム塩、c-Di-GMPナトリウム塩、2’,3’-cGAMPナトリウム塩、3’,3’-cGAMPナトリウム塩、10-カルボキシメチル-9-アクリダノン(CMA)、DMXAA(Tocris Bioscience,InvivoGen,Nimbus Therapeutics)、G10、α-マンゴスチン、CRD100(Curadev)、cAIMP、2’2’-c-GAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、2’3’-c-ジ-AMP、c-ジ-IMP、c-ジ-UMP、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸(DMXAA)、MK-1454(Merck)ML RR-S2 CDG、ML RR-S2CDA(ADU-S100)、SB11285(Springbank Pharmaceuticals)、MAVU(AbbVie)、DiABZI、ジナトリウムジチオ-(Rp1Rp)-[サイクリック[A(2’5’)pA(3’5’)p]][Rp,Rp]-サイクリック9アデノシン-(2’5’)-モノホスホロチオエート-アデノシン-(3’5)-モノホスホロチオエート)、ジナトリウム(RR-S2 CDA、ADU-S100、MIW815)(Corrales et al.,2016)、ならびにU.S.10,176,292、U.S.9,724,408、U.S.10,011,630、U.S.10,435,469、U.S.10,414,747、U.S.10,413,612、U.S.10,131,686、U.S.10,106,574、U.S.10,047,115、U.S.10,045,961、U.S.10,011,630、U.S.9,994,607、U.S.9,937,247、U.S.9,840,533、U.S.9,770,467、U.S.9,724,408、U.S.9,718,848、及びU.S.9,642,830に開示された組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0244】
IL-12と共に同時投与するのに好適なTLR7アゴニスト及びTLR9アゴニストには、レシキモド及びイミキモド(Aldara)を含むイミダゾキノリン及びその類似体、ヒドロキシクロロキン、クロロキン(chloroquire)、ブロピリミン、ロキソリビン、イサトリビン、CpGオリゴヌクレオチド、安定化免疫調節性RNA(SIMRA)AST-008(Exicure)、MEDI9197、ならびにU.S.434,064、U.S.10,413,612、U.S.10,407,431、U.S.10,370,342、U.S.10,364,266、U.S.10,208,037、U.S.10,202,386、U.S.9,944,649、U.S.9,902,730、U.S.9,868,955、U.S.9,359,360、U.S.9,295,732、U.S.9,243,050、U.S.9,228,184、U.S.9,216,192、U.S.9,2206,430、U.S.8,735,421、U.S.8,728,486、U.S.8,399,423及びU.S.8,242,106に開示された組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0245】
いくつかの実施形態では、非核酸に基づく免疫調節剤及び主題の組成物は同じ組成物中のように、同時に投与される。いくつかの実施形態では、非核酸に基づく免疫調節剤及び主題の組成物は順次投与される。
【0246】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されているがんを治療するための方法はさらに、対象に少なくとも1つの追加の治療剤を投与することを含む。さらなる実施形態では、追加の治療剤は化学療法薬または放射線治療薬である。いくつかの実施形態では、化学療法薬には、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、5-フルオロウラシル1、ブレオマイシン、メソトレキセート、イフォサミド、オキサリプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、ゲムシタビン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、ペメトレキセド、ペントスタチン、チオグアナジン(thioguanadine)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、エニポシド、コルヒチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的ながん特異的な薬剤及び抗体には、アファチニブ、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アキシチニブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブレンツキシマブ、ベドチン、カボザンチニブ、カナキヌマブ、カルフィルゾミブ、セツキシマブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デノスマブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イブリツモマブチウキセタン、ルブルチニブ、イマチニブ、イピリムマブ、ラパチニブ、ニロチニブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペルツズマブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、リツキシマブ、ロミデプシン、ルキソリチニブ、シプロイセル-T、ソラフェニブ、テムシロリムス、トシリズマブ、トファシチニブ、トシツモマブ、トラメチニブ、トラスツズマブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギブ、ボリノスタット、Ziv-アフリベルセプト、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は免疫複合体の投与前に、投与と同時に、または投与後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は全身性に投与される。例えば、いくつかの実施形態では、追加の治療剤は静脈内注射によって投与される。
【0247】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている方法を使用して治療されるがんは膀胱癌である。米国で現在承認されている従来の膀胱がん治療は尿道内バチルス・カルメット・ゲランワクチンである。この抗原ワクチンは、膀胱細胞を刺激してインターフェロンを発現させ、次に、患者の生来の免疫系を動員してがん細胞表面抗原をさらに良好に認識し、がん細胞を攻撃すると考えられている。しかしながら、症例の3分の1以上ではこのワクチンは無効である。同様に、外来性に製造されたインターフェロンポリペプチドの膀胱内注入も調べられているが、効果は示されていない。主題の組成物及び方法を、これら従来のアプローチと併せて有利に採用して免疫応答を増強し、且つ改善することもできる。
【0248】
本明細書に示されている実施例は、本開示のいくつかの実施形態を例示するが、いかなる形でも本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0249】
実施例1:膀胱癌の同所性モデルにおける長持ちする抗腫瘍免疫の評価
mEG-70ナノ粒子の長持ちする抗腫瘍免疫を評価するために、マウス膀胱癌の同所性モデルを使用した。簡潔には、コドンが最適化されたマウスIL-12(オプト-マウスIL-12p40p35)遺伝子は、サイトカインタンパク質IL-12の2つのサブユニット(p40及びp35)をコードする。サブユニットの1:1化学量論量を確保するために、mEG-70プラスミドは、短い反復エラスチンリンカー配列を加えることによってp40~p35を単量体化する単一のオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するように設計された。コドンが最適化された配列を、NTC9385RまたはNTC9385R-eRNA41Hベクター骨格にクローニングし、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるWO2020/183239に開示されているように発現を確認した。プラスミドは、eRNA11a(免疫刺激性二本鎖リボ核酸[dsRNA])及びアデノウイルスVA RNA1の遺伝子を含む。これらの遺伝子の2つのRNA産物はRIG-I経路を刺激し、これによって局所組織にさらに多くの免疫細胞を動員する。
【0250】
この治療用核酸は、アルギニン及びグルコースで官能化され、且つ取り外し可能なPEG-b-PLE賦形剤でコーティングされる二重誘導体化キトサンポリマーにパッケージングされ、WO2020/183239に開示されているような医薬組成物mEG-70を形成する。
【0251】
マウスの膀胱をポリ-L-リシンで前処理し、尿路上皮表層の剥離を促進し、がん細胞の移植を容易にすることによって疾患を確立した。ルシフェラーゼ遺伝子(MB49-Luc)を安定に過剰発現する尿路上皮癌細胞を、その後、マウス膀胱(マウス当たり100,000細胞)に注入し、注入後9日目に生体内画像処理システム(IVIS)を使用してルシフェラーゼ発現を確認した。生物発光シグナルの強度を使用して、生物発光のレベルに基づいて動物を処理群(n=22)に割り当てた。陽性生物発光シグナルのない動物を試験から除外した。
【0252】
イソフルランによる麻酔下でマウスは10日目(Tx1)と17日目(Tx2)にmEG-70(1mgのDNA/mL;80μgのDNAに相当)の膀胱内注入(IVI)を受け、対照動物は1%マンニトール(偽処理)の注入を受けた。この投与計画は、WO2020/183239に開示されているように決定されたタンパク質発現動態の評価に基づいて選択した。担腫瘍動物のコホートは未処理であった。
【0253】
MB49-Luc細胞の注入後、生存を85日間モニタリングした。統計的有意性を、ログランク(Mantel-Cox)検定によって分析した(それぞれ偽処理及び未処理と比べたmEG-70についての*p<0.05及び**p<0.01)。(C)生存している腫瘍のないmEG-70処理マウス(生物発光シグナルが陰性で臨床症状なし)及び週齢の一致した対照に、85日目にMB49-Luc細胞(1×105細胞)のIVIで再負荷した。再負荷の7日後、14日後、及び21日後(それぞれ、試験の92日目、99日目、及び106日目)に生物発光の生体内画像処理によって腫瘍移植をモニタリングした。
【0254】
図1Bに示すように、mEG-70処理動物は、そのうちおよそ70%が疾患で死亡した対照マウスと比べて長期生存を示した。mEG-70の生存曲線は偽処理(1%マンニトール)または未処理マウスの生存率とは有意に異なる(それぞれ*p<0.05及び**p<0.01)。
【0255】
完全な疾患退縮を示し、76日間の観察期間中に再発しなかった(「mEG-70治癒」と呼ばれる)処理したマウスにMB49-Luc細胞を再負荷して、再発性疾患からの防御を評価した。17匹のマウスのうち15匹にて頑健な腫瘍移植を示した齢の一致した無処置対照とは対照的に、mEG-70で治癒したマウスはすべて、再負荷後から3週間まで腫瘍再発に対して耐性を示した(n=17)。
図1Cを参照のこと。
【0256】
まとめると、これらのデータは、長持ちする全身性の抗腫瘍免疫がmEG-70処理に応答して確立されていることを示唆している。
【0257】
実施例2:遠隔腫瘍の再負荷
実施例1に記載されているように、MB49-ルシフェラーゼ細胞(MB49-Luc;1×105細胞)を雌C57BL/6Jの膀胱(12~16週)に注入し、注入後9日目のルシフェラーゼシグナルの生体内画像処理によって移植を確認した(Lumina LT IVIS画像処理システムを使用)。マウスは生物発光のレベルに基づいて処理群(n=22)に均等に分配され(ルシフェラーゼ陰性マウスは試験から除外された)、10日目(Tx1)と17日目(Tx2)にmEG-70ナノ粒子(1mgのDNA/mL、80μgのDNAに相当、実施例1を参照のこと)の膀胱内注入(IVI)を受け、対照動物は1%マンニトール(偽処理)の注入を受けた。担腫瘍動物のコホートは未処理であった。
【0258】
すべてのマウスが膀胱癌で死亡する、または腫瘍がないとみなされるまで(生物発光シグナルが陰性で臨床症状なし)、生存をモニタリングした。85日目に、生存している腫瘍のないmEG-70処理マウス及び週齢を一致させた対照にMB49-Luc細胞(1×10
5細胞)をIVIによって再負荷した。mEG-70処理マウスはすべて腫瘍が存在しないままであり、153日目に、MB49-Luc(1×10
5細胞;
図2B)またはB16-F10細胞(1×10
5細胞;
図2C)のいずれかを脇腹皮下に再負荷した。週齢の一致した動物のコホートも、皮下細胞移植のための対照のために含めた。ノギスで測定することによって腫瘍をモニタリングし;腫瘍体積は式(長さ×幅
2/2)を使用して算出した。
【0259】
図2Bに示すように、mEG-70処理動物はMB49-Luc細胞による遠隔腫瘍の再負荷から保護された。9匹の動物のうち1匹だけが腫瘍増殖を示し、それは著しくゆっくり進行した。対照的に、無処置対照コホートでは、腫瘍が増殖したマウスは9匹のうち8匹だった。
【0260】
反応の特異性を評価するためにB16-F10細胞をマウスに再負荷した。再負荷群及び無処置対照群のマウスはすべて、頑健なB16-F10腫瘍移植を示した(n=8/群)。
図2Cを参照のこと。
【0261】
まとめると、これらのデータは、長持ちする全身性の及び特異的な抗腫瘍免疫がmEG-70処理に応答して確立されていることを示唆している。
【0262】
実施例3:遠位腫瘍の再負荷中のT細胞の枯渇
以下の実施例は、主題の治療法で達成された、長持ちする全身性の抗腫瘍免疫がT細胞依存性であることを説明する。
【0263】
実施例1に記載されているように、MB49-ルシフェラーゼ細胞(MB49-Luc;1×10
5細胞)を雌C57BL/6Jの膀胱(12~16週)に注入し、注入後9日目のルシフェラーゼシグナルの生体内画像処理によって移植を確認した(Lumina LT IVIS画像処理システムを使用)。マウスを、生物発光のレベルに基づいて処理群(n=20)に等しく分配した(ルシフェラーゼ陰性マウスを試験から除外した)。
図3Aは実験のタイムラインの概略図を提供している。
【0264】
マウスは10日目(Tx1)と17日目(Tx2)にmEG-70ナノ粒子(1mgのDNA/mL;80μgのDNAに相当、実施例1を参照のこと)の膀胱内注入(IVI)を受け、対照動物は1%マンニトール(偽処理)の注入を受けた。すべてのマウスが膀胱癌で死亡するまで、または腫瘍がないとみなされるまで(生物発光シグナルが陰性で臨床症状なし)、生存をモニタリングした。
【0265】
167日目に、生存している腫瘍のないmEG-70処理マウスと、週齢を一致させた無処置対照に、枯渇を確立するために連続4日間、その後維持するために週に2回アイソタイプ対照(非枯渇)、抗CD4抗体、または抗CD8抗体を腹腔内注射した。3回目の枯渇抗体注射後、マウスの脇腹皮下にMB49-Luc細胞(1×10
5細胞)を再負荷した(170日目;n=6)。ノギスによる測定によって腫瘍をモニタリングした。腫瘍体積は式[長さ×幅
2/2]を使用して算出した。結果を以下に要約し、
図3(B~D)に示す。
【0266】
アイソタイプ対照抗体(非枯渇)を受けた無処置マウスはすべて、増大する皮下腫瘍を有していた。対照的に、mEG-70で処理したマウスはすべて、MB49-Luc細胞による遠隔腫瘍の再負荷から保護された(
図3B)。
【0267】
抗CD4抗体を投与されたマウス(CD4+T細胞枯渇)はすべて、無処置であろうと、またはmEG-70処理によって以前治療されていようと、増大するMB49-Luc皮下腫瘍を有していた(
図3C)。
【0268】
抗CD8抗体(CD8+T細胞枯渇)を投与された無処置のマウスはすべて、増大する皮下腫瘍を有していた。対照的に、mEG-70で処理された6匹の動物のうち1匹のみが活発に増大する腫瘍を有していた(
図3D)。注目すべきことに、CD8+T細胞が枯渇した、mEG-70処理したマウス6匹のうち2匹が、静止状態であり、増大が遅延した小さな腫瘍塊を有していた。
【0269】
したがって、mEG-70で処理したマウスにおける再負荷からの保護は、CD4+T細胞の非存在下では損なわれる。したがって、mEG-70処理はCD4+T細胞が主として介在する長持ちする且つ全身性の抗腫瘍免疫を提供する。
【0270】
実施例4:反対側脇腹での再負荷
以下の実施例は、皮下腫瘍における腫瘍内直接注射によって投与されたmEG-70が、長持ちする及び全身性の双方である抗腫瘍応答をもたらすことを説明する。
【0271】
MB49-ルシフェラーゼ細胞(MB49-Luc;100μL中に2.5×105細胞)を麻酔下でC57BL/6Jマウス(12~16週)の右脇腹に皮下移植した。腫瘍が約50~200mm3に達したら、マウスを無作為に処理群(n=10)に割り当てた。
【0272】
1日目、4日目、8日目、11日目、15日目及び18日目にmEG-70ナノ粒子(50μL中0.5mgのDNA/mL、25μgのDNAに相当)をマウスに直接腫瘍内(IT)投与し、対照動物には1%マンニトール(偽処理)を投与した。担腫瘍動物のコホートは未処理だった。ノギスで測定することによって週3回、腫瘍サイズをモニタリングし、腫瘍体積は式[長さ×幅
2/2]を使用して算出した(
図4A)。
【0273】
腫瘍が再発していないことを確認するために、腫瘍がないmEG-70で処理したマウス(mEG-70「治癒」;n=9)にて70日目にLumina LT IVIS画像処理システムを使用してルシフェラーゼシグナルの生物発光画像処理を実施した。73日目に、mEG-70で治癒した且つ週齢が一致した対照は、左脇腹でMB49-Luc細胞(100μLにて2.5×105細胞)の皮下移植を受けた。ノギスで測定することによって週3回、腫瘍をモニタリングし;腫瘍体積は式[長さ×幅2/2]を使用して算出した。
【0274】
図4Bに示すように、mEG-70の腫瘍内(IT)投与は偽処理マウスと比べて腫瘍増殖を阻害した。さらに、mEG-70「治癒」マウスは反対側脇腹での腫瘍細胞の再負荷から保護された(
図4C)。
【0275】
したがって、皮下腫瘍における腫瘍内直接注射によって投与したmEG-70は、長持ちする且つ全身性の抗腫瘍応答をもたらした。
【0276】
実施例5:転移性膀胱癌におけるヒト臨床試験
膀胱癌は、米国(US)の男女にてそれぞれ4番目及び10番目に多い一般的な悪性腫瘍である(American Cancer Society 2019)。筋層非浸潤性膀胱癌(NIMBC)は一般的に、外科的切除(TURBT)によって管理され、その後、再発率を35%低下させるために、24時間以内に膀胱内化学療法(ゲムシタビンまたはマイトマイシン)の単回投与が行われることが多い(Sylvester et al,2016)。
【0277】
病理から膀胱癌の存在を確認した後、医師は、BCG療法を伴うことが多い継続的な治療計画を立てる。著しい有害作用、及び30%~40%の失敗率にもかかわらず、BCGによる膀胱内免疫療法は、高度(Ta以上)のNMIBC患者における再発及び/または進行を防止するために使用される主な治療である。BCGに反応しないNMIBC患者はBCGによる更なる治療の恩恵を受ける可能性が極めて低く、したがって新たな治療の研究のための独自の集団を表しているにもかかわらず、BCGは疾患の無い状態を達成するために第2の維持過程で投与されることが多い(Jarow et al,2015)。
【0278】
薬理学的介入または膀胱切除がない場合、BCG不応答性NMIBCは、切除疾患の有無にかかわらず、持続し、進行することになる。TURBT後に投与されることが多いゲムシタビン及びマイトマイシンは、有効なサルベージ剤ではないので、現在のところ、BCGに失敗した患者に利用できる有効な治療法は存在しない。したがって、BGC不応性疾患に対する治療は、(BCG難治性または再発に関わらず)すべての腫瘍を外科的に除去して無病生存を保証する根治的膀胱切除術である。NMIBCに利用可能な治療選択肢が少なく、患者が早期の疾患のために根治的な臓器切除を続けているという事実により、真に大きな満たされていない医学的ニーズが説明される。難治性患者で有効であるさらに効果的な治療がNMIBCでは切迫して必要である。
【0279】
例示的な実施形態では、治療用核酸は、配列番号8で示されるような、スクロースに基づく抗生物質不使用選択マーカー(RNA-OUT)を持つNTC9385R骨格上の構成的に活性があるサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターに連結されているopt-hIL-12と呼ばれるコドン最適化ヒトインターロイキン-12遺伝子で構成される4156bpのプラスミドDNA(pDNA)を含む。
【0280】
R6Kの複製起点は、プラスミドの複製をEscherichia coli(E.coli)の特定の株に限定する。opt-hIL12遺伝子はサイトカインタンパク質IL-12の2つのサブユニット(p40及びp35)をコードする。サブユニットの1:1化学量論量を確保するために、EG-70プラスミドは、短い反復エラスチンリンカー配列を加えることによってp40~p35を単量体化する単一のオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するように設計された。また、プラスミドは、eRNA11a(免疫刺激性二本鎖リボ核酸[dsRNA])及びアデノウイルスVA RNA1の遺伝子で構成される。これらの遺伝子の2つのRNA産物はRIG-I経路を刺激し、これによって局所組織にさらに多くの免疫細胞を動員する。さらなる実施形態では、この治療用核酸は、アルギニン及びグルコースで官能化され、且つ、取り外し可能なPEG-b-PLE賦形剤でコーティングされた二重誘導体化キトサンポリマーにパッケージングされ、医薬組成物EG-70を形成する。該組成物を、1w/w%マンニトール溶液におけるナノ粒子水性分散系として製剤化し、濾過して滅菌し、乾燥粉末に凍結乾燥し、4℃で保存する。ナノ粒子分散系の平均粒度は75~175ナノメートルの範囲内にある。
【0281】
本試験は、BCG療法に失敗し、根治的膀胱切除術を待っている患者の遠位部位でのEG-70の膀胱内投与の安全性及び膀胱腫瘍に対するその効果を評価する。この試験は、各コホートで3人の患者を治療する古典的な用量漸増試験になる。EG-70の初期用量は、非臨床的毒性学のデータ及び非臨床的有効性データに基づくものとし、GLP-毒性学試験で見られる最小毒性用量の少なくとも1/5である。投影されるフェーズIの用量漸増は、用量制限毒性(DLT)なしで治療される連続するコホートについて、最大1/2-log増分で行われる。
【0282】
二次腫瘍の増殖を防止/根絶するために免疫系を刺激するのに膀胱へのナノ粒子の送達が十分かどうかを評価するために患者をモニタリングする。
* * * *
【0283】
均等物
本明細書に記載されているすべての刊行物、特許、及び特許出願は、全体が、あらゆる目的のために、それぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が参照によって組み込まれように具体的且つ個々に指示されるのと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。上記の開示は、独立した有用性を持つ複数の別個の開示を包含してもよい。これらの開示のそれぞれが好ましい形態(複数可)で開示されているが、本明細書に開示され及び例示されたその特定の実施形態は、多数の変形が可能であるので、限定的な意味で考慮されるべきではない。本開示の主題は、本明細書に開示されている種々の要素、特徴、機能、及び/または特性のすべての新規且つ非自明な組み合わせ及び副組み合わせを含む。以下の特許請求の範囲は特に、新規且つ非自明であるとみなされる特定の組み合わせ及び副組み合わせを指摘する。特徴、機能、要素、及び/または特性の他の組み合わせ及び副組み合わせで実行される開示は、本出願で、本出願の優先権を主張する出願で、または関連出願で特許請求されてもよい。このような特許請求の範囲は、異なる開示に向けられたものであれ、同じ開示に向けられたものであれ、また、元の特許請求の範囲と比べて、さらに広い範囲であれ、狭い範囲であれ、等しい範囲であれ、または異なる範囲であれ、本開示の主題の範囲内に含まれるものとみなされる。
【配列表】
【国際調査報告】