(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】制御性T細胞を増殖させる方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240209BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240209BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240209BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240209BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240209BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240209BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240209BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240209BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240209BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
C12N5/10
A61P37/06
A61P29/00
A61K35/17
C07K16/28
C12N15/09 100
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550647
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2022017526
(87)【国際公開番号】W WO2022182763
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520352311
【氏名又は名称】ケーエスキュー セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】トゥンセル, ケレム ジョナタン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BB19
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087DA32
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB08
4C087ZB11
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA28
(57)【要約】
本明細書で提供されているのは、操作されたTregを含む制御性T細胞(Treg)を、それらの安定性及び活性を維持しながら増殖させるための生体外の方法である。Tregの成長及び増殖を改善することに加えて、制御性T細胞の不連続刺激(DSORT(商標))の使用を含むことができる該方法は安定性及び活性が向上したTregを生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御性T細胞(Treg)集団を増殖させる方法であって、前記方法が、
(a)第1の刺激剤の存在下でTreg集団を培養して、第1の刺激したTreg集団を生成することを含む第1の刺激工程と;
(b)刺激剤の非存在下で前記第1の刺激したTreg集団を培養し続けて第1の休止させたTreg集団を生成することを含む第1の休止工程とを含む、前記方法。
【請求項2】
(c)第2の刺激剤の存在下で前記第1の休止させたTreg集団を培養して第2の刺激したTreg集団を生成することを含む第2の刺激工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、
(d)刺激剤の非存在下で前記第2の刺激したTreg集団を培養し続けて第2の休止させたTreg集団を生成することを含む第2の休止工程を含み、任意でさらに
(e)第3の刺激剤の存在下で前記第2の休止させたTreg集団を培養して第3の刺激したTreg集団を生成することを含む第3の刺激工程を含み;任意でさらに
(f)刺激剤の非存在下で前記第3の刺激したTreg集団を培養し続けて第3の休止させたTreg集団を生成することを含む第3の休止工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらに刺激したTreg集団を生成するための1以上の追加の刺激工程(複数可)、及び/またはさらに休止させたTreg集団を生成するための1以上の追加の休止工程(複数可)をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法がさらに、前記第1の休止させたTreg集団を遺伝子操作することを含み、請求項2に記載の方法がさらに、前記第2の刺激したTreg集団を遺伝子操作することを含み;請求項3に記載の方法がさらに、前記第2の休止させたTreg集団、前記第3の刺激したTreg集団、または前記第3の休止させたTreg集団を遺伝子操作することを含み;または、請求項4に記載の方法が、前記さらに刺激したTreg集団または前記さらに休止させたTreg集団を遺伝子操作することをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法がさらに、前記第1の休止させたTreg集団を回収することを含み;請求項2に記載の方法がさらに、前記第2の刺激したTreg集団を回収することを含み;請求項3に記載の方法がさらに、前記第2の休止させたTreg集団、前記第3の刺激したTreg集団、または前記第3の休止させたTreg集団を回収することを含み;請求項4に記載の方法が、前記さらに刺激したTreg集団または前記さらに休止させたTreg集団を回収することをさらに含み;または請求項5に記載の方法がさらに、前記遺伝子操作したTreg集団を回収することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
制御性T細胞(Treg)集団を増殖させる方法であって、前記方法が、
(a)刺激剤を含む培地にてTreg集団を培養して、第1の刺激したTreg集団を生成することを含む第1の刺激工程と;
(b)前記刺激したTreg集団を洗浄して前記刺激剤を含む前記培地を除去し、洗浄したTreg集団を生成することと;
(c)前記洗浄したTreg集団を新鮮な培地で培養して第1の休止させたTreg集団を生成することとを含む、前記方法。
【請求項8】
前記新鮮な培地がどんな刺激剤も含まない、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらに、前記第1の休止させたTreg集団を遺伝子操作すること及び/または刺激剤を含む培地にて前記第1の休止させたTreg集団を培養して第2の刺激したTreg集団を生成することを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
制御性T細胞(Treg)集団を増殖させる方法であって、前記方法が、
(a)刺激剤の非存在下で以前刺激したTreg集団を培養して第1の休止させたTreg集団を生成することを含む休止工程と;
(b)前記第1の休止させたTreg集団に刺激剤を加えて刺激したTreg集団を生成することを含む刺激工程とを含む、前記方法。
【請求項11】
さらに、前記Tregを遺伝子操作することを含み、任意で、前記第1の休止させたTreg集団を遺伝子操作することを含む、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法がさらに、前記遺伝子操作したTreg集団を培養することを含む、請求項5または11に記載の方法。
【請求項13】
前記操作したTreg集団の培養が刺激剤の存在下で行われ、任意で、前記方法がさらに、前記刺激剤の非存在下で前記操作したTreg集団を培養し続けることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記操作したTreg集団の培養が前記刺激剤の非存在下で行われ、任意で、前記方法がさらに、刺激剤の存在下で前記操作したTreg集団を培養し続けることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
制御性T細胞(Treg)集団を増殖させる方法であって、前記方法が、
(a)Treg集団を遺伝子操作して操作したTreg集団を生成することと;
(b)刺激剤の存在下で前記操作したTreg集団を培養して刺激した操作したTreg集団を生成することを含む刺激工程と;
(c)刺激剤の非存在下で前記刺激した操作したTreg集団を培養し続けて休止させた操作したTreg集団を生成することを含む休止工程とを含む、前記方法。
【請求項16】
制御性T細胞(Treg)集団を増殖させる方法であって、前記方法が、
(a)Treg集団を遺伝子操作して操作したTreg集団を生成することと;
(b)刺激剤の非存在下で前記操作したTreg集団を培養して休止させた操作したTreg集団を生成することを含む休止工程と;
(c)刺激剤の存在下で前記休止させた操作したTreg集団を培養して刺激した操作したTreg集団を生成することを含む刺激工程とを含む、前記方法。
【請求項17】
遺伝子操作する前に、前記Treg集団が刺激剤の存在下で前記集団を培養することを含む刺激工程に供される;または、遺伝子操作する前に、前記Treg集団が刺激剤の存在下で前記集団を培養することを含む刺激工程に供され、次いで、刺激剤の非存在下で前記集団を培養することを含む休止工程に供される;または、遺伝子操作する前に、前記Treg集団が刺激剤の存在下で前記集団を培養することを含む刺激工程、次いで、刺激剤の非存在下で前記集団を培養することを含む休止工程、次いで刺激剤の存在下で前記集団を培養することを含む別の刺激工程に供される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記遺伝子操作が刺激剤の非存在下で行われる、請求項11~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法がさらに、前記Treg集団を回収することを含む、請求項7~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
さらに、対象から前記Treg集団を得ることを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
さらに、対象の胸腺、末梢血、臍帯血、もしくは組織試料から前記Treg集団を得ることを含む;またはさらに、工程(a)の前記培養の前に、対象の末梢血から前記Treg集団を得ることを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記Treg集団が対象の胸腺、末梢血、臍帯血、もしくは組織試料から得られ;または前記Treg集団が前記対象の末梢血から得られた、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象がヒトである、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
四量体抗体複合体が、前記操作した集団の前記刺激工程及び/または前記培養のうちの少なくとも1つにおける前記刺激剤であり;任意で、前記四量体抗体複合体が、CD3、CD28、CD2、またはそれらの組み合わせに特異的に結合する、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片、及び/または抗CD28抗体もしくはその抗原結合断片が、前記操作した集団の前記刺激工程及び/または前記培養のうちの少なくとも1つにおける前記刺激剤である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
CD3結合及び/またはCD28結合の超磁性ビーズが前記操作した集団の前記刺激工程及び/または前記培養のうちの少なくとも1つにおける前記刺激剤である、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が超磁性ビーズを使用しない、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記方法全体を通して同じ刺激剤が使用される、または少なくとも2つの異なる刺激剤が前記方法にて使用される;及び/または前記刺激剤は前記方法の前記刺激工程のすべてを通して同じ濃度で存在する、または少なくとも2つの異なる濃度の刺激剤が前記方法で使用される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記TregがIL-2の存在下で培養され、任意で、前記方法の間にIL-2濃度を低下させる、または任意で、IL-2が約7日間は約800単位/mLの濃度で存在し、その後は約300単位/mLで存在する、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記Treg集団を刺激剤の存在下で約1~約5日間培養し、次いで、刺激剤の非存在下で約1から約5日間培養し、次に、刺激剤の存在下で約1~約5日間培養し、その後遺伝子操作する;及び/または前記Treg集団を刺激剤の存在下で約3~約4日間培養し、次に、刺激剤の非存在下で約3~約4日間培養し、次に、刺激剤の存在下で約1~約4日間培養し、その後遺伝子操作する、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記Treg集団を表Aに従って刺激剤の存在下及び/または非存在下で培養する、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記Tregを、N-アセチル-L-システインの存在下で培養し、任意で、前記N-アセチル-L-システインが培養にて約5mMの濃度で存在する、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記Treg集団が約250倍に増殖したときに前記Treg集団を遺伝子操作する、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
対象からTregを取得してから約6日から約10日後に前記Treg集団を遺伝子操作する、任意で、対象からTregを取得してから約7日後に前記Treg集団を遺伝子操作する、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記遺伝子操作が前記Treg集団に核酸を導入することを含み;
任意で、前記核酸がウイルス核酸である、または前記核酸がウイルス核酸ではない;及び/または
任意で、前記核酸がタンパク質をコードし、任意で前記タンパク質は異種タンパク質であり、さらに任意で前記異種タンパク質はキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項5、6及び11~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記遺伝子操作が前記Treg集団に遺伝子調節システムを導入することを含む、請求項5、6及び11~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記遺伝子調節システムが(i)核酸分子;(ii)酵素タンパク質;もしくは(iii)核酸分子及び酵素タンパク質を含み;または
前記遺伝子調節システムがsiRNA、shRNA、マイクロRNA(miR)、アンタゴmiR、もしくはアンチセンスRNAから選択される核酸分子を含む;または
前記遺伝子調節システムが酵素タンパク質を含み、前記酵素タンパク質は前記Tregにおける1以上の遺伝子の標的配列に特異的に結合するように操作されており、任意で、前記酵素タンパク質は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、もしくはメガヌクレアーゼである;または
前記遺伝子調節システムが核酸分子及び酵素タンパク質を含み、前記核酸分子はガイドRNA(gRNA)分子であり、前記酵素タンパク質はCasタンパク質もしくはCasオルソログであり、任意で前記Casタンパク質はCas9タンパク質である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記導入が、エレクトロポレーションまたはリボ核タンパク質(RNP)が介在する方法を使用する、請求項35~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記方法が人工抗原提示細胞を使用しない、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記方法がラパマイシンを使用しない、または前記方法がラパマイシンを使用することを含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記方法が前記Tregの数を11日間で少なくとも1000倍増やす、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記方法が刺激剤の存在下で6日間培養したTregよりも表面積が小さいTregを生じる;及び/または前記方法が刺激剤の存在下で6日間培養したTregと比べてHelios+Foxp3+Tregの割合の増加を生じる;及び/または前記方法が刺激剤の存在下で6日間培養したTregと比べてエフェクターT細胞(Teff)の増殖を抑制する能力が高いTregを生じる;及び/または前記方法が前記Treg集団の過剰刺激を防止する;及び/または前記方法が刺激剤の存在下で6日間培養したTregと比べて活性化誘導性の細胞死を減らす、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
Teffの増殖を抑制する前記高い能力は少なくとも8倍高い能力である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記TregにおけるHelios発現の少なくとも75%が維持される、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記TregがHelios+である、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記Tregが完全に脱メチル化されたTreg特異的脱メチル化領域(TSDR)を有する、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
さらに、前記Treg集団を凍結保存することを含む、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
請求項1~47のいずれか1項に記載の方法によって生成されるTreg集団。
【請求項49】
請求項1~47のいずれか1項に記載の方法によって生成される凍結保存されたTreg集団。
【請求項50】
さらに、対象に前記Treg集団を投与することを含む、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
対象にて自己免疫疾患または炎症性疾患を治療する方法であって、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法を使用して得られたTreg集団または請求項48に記載のTregの有効量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項52】
対象にて移植片対宿主病(GVHD)を治療するまたは予防する方法であって、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法を使用して得られたTreg集団または請求項48に記載のTregの有効量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項53】
対象にて免疫応答を減らす方法であって、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法を使用して得られたTreg集団または請求項48に記載のTregの有効量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項54】
前記Treg集団が前記対象に対して同種異系である、または、前記Treg集団が前記対象に対して自家である、請求項50~53のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、2021年2月23日に出願された米国仮出願第63/152,787号の優先権利益を主張する。
【0002】
電子出願された配列表への参照
2022年2月22日に作成され、サイズが11,366バイトの「4195_022PC01_Seqlisting_ST25」という名称のテキストファイルとして2022年2月23日に提出された配列表は参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
分野
本明細書で提供されているのは、操作したTregを含む制御性T細胞(Treg)を、それらの安定性及び活性を維持しながら増殖させるための生体外の方法である。
【0004】
背景
制御性T細胞(Treg)は自己免疫の防止に重要である。Tregは、炎症とエフェクターT細胞(Teff)の活性を抑制して恒常性を維持するCD4+T細胞である。Tregの数及び/または機能の欠陥は自己免疫疾患の患者で頻繁に観察される。Tregの治療用途の可能性が認識されており、Tregは種々の自己免疫状態及び移植片対宿主病(GvHD)の治療に関する臨床試験で評価されている。
【0005】
新たに単離されたTregを使用した臨床研究は過去にも実施されているが、Treg養子細胞療法(ACT)の広範な使用には、十分な数の細胞を生成するために生体外でのTregの増殖が必要である。生体外での増殖は、Tregの純度、安定性、及び固有の抑制機能が損なわれないように行う必要がある。
【0006】
Tregの安定した且つ活性がある集団を効果的に増殖させることができないことは重大な難題を生じている。Tregの臨床な操作は通常、CD25発現細胞の単離用のCliniMACSのような密閉型GMP認定磁気濃縮システムが使用されるが、それは活性化されたエフェクターT細胞(Teff)の大量の混入を生じる。そのような細胞の増殖は、mTORプロテインキナーゼ阻害剤であるラパマイシンを培養物に添加することによって、少なくとも部分的に防ぐことができる。TregはmTOR阻害に対して比較的耐性がある一方で、研究によって、ラパマイシンが35日間にわたるTregの増殖を約35%減らすことが見いだされている。さらに、ラパマイシンは、例えば、CCR4及びCXCR3のような組織ホーミング受容体の発現、と同様にそれらの機能(例えば、CTLA-4、LAP)及び系列(Helios及びFoxp3)を変化させることによってTregの表現型に影響を与え、それは遺伝子編集の効果を不明瞭にしてもよく、または変化させてもよい。
【0007】
ラパマイシンは、試験管内でのTregの純度を向上させ、または増殖を誘導するために使用されている唯一の化合物ではない。TGF-βは、ビタミンA誘導体であるオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と共に前臨床試験にて、Tregの生体外での増殖をサポートすることが示されているが、CCR9及びインテグリン-α4β7のような腸管ホーミング受容体やCD161の上方調節のようにTregの表現型に大きな影響を与える。
【0008】
ラパマイシンとATRAを使用する別のアプローチは、胸腺、末梢血、または臍帯血から採取した、ナイーブCD45RA+ナイーブTregのさらに均質な集団から開始することである。そのような単離された産物は、エフェクターT細胞をほとんど含有しないので、ラパマイシンの非存在下での長期のTregの増殖にさら好適である。生体外で増殖させたナイーブTregは、ナイーブ表現型を維持し、前臨床モデルにおける自己免疫疾患の予防に必要であることが示されているCD62LやCCR7のようなリンパ節(LN)ホーミングマーカーを発現することが示されている。しかしながら、Tregの純度と安定性に関しては、時間は最も重要な因子の1つである。Tregは、試験管内で活性化されると抑制性となり、培養中の最初の1~2週間ずっと高レベルの抑制能力を維持し、その間、Tregは混入したエフェクターT細胞の増殖を効果的に防ぐ。しかしながら、時間の経過とともに、他のT細胞の増殖を制御するTregの能力が低下し、非Tregが急速に蓄積し、純粋なTreg集団が失われる。
【0009】
したがって、Tregの生体外の増殖に現在利用可能なプロトコールは不十分な増殖及び/または安定性をもたらす。したがって、純粋で安定した高機能のTreg集団を生成するためにTregを増殖させる効率的な方法に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
培養の最初の1~2週間でTregの増殖を最大化し、活性化後の早期にTregの増強された抑制活性を利用する制御性T細胞(Treg)を増殖させる方法が本明細書で提供されている。本明細書で実証されているように、制御性T細胞の不連続刺激(DSORT(商標))は、刺激と休止の期間を交互に行うことによって急速なTregの増殖を達成することができる。例示的なDSORT(商標)プロセスを
図8に示す。1000倍を超える増殖率にもかかわらず、そのような方法は純粋で安定した高機能Treg産物を作り出すことができる。有利なことに、これらの方法は、培養の最初の1~2週間の間、細胞の増殖を遅らせるためにラパマイシンを使用する必要がない。
【0011】
本明細書で提供されているのは、制御性T細胞(Treg)集団を増殖させるための方法であり、該方法は:(a)第1の刺激剤の存在下でTreg集団を培養して第1の刺激したTreg集団を生成することを含む第1の刺激工程と;(b)刺激剤の非存在下で第1の刺激したTreg集団を培養し続けて、第1の休止させたTreg集団を生成することを含む第1の休止工程とを含む。いくつかの態様では、該方法はさらに、(c)第1の休止させたTreg集団を第2の刺激剤の存在下で培養して第2の刺激したTreg集団を生成することを含む第2の刺激工程を含む。いくつかの態様では、該方法はさらに、(d)第2の刺激Treg集団を刺激剤の非存在下で培養し続けて第2の休止Treg集団を生成することを含む第2の休止工程を含む。いくつかの態様では、該方法はさらに、(e)第2の休止Treg集団を第3の刺激剤の存在下で培養して第3の刺激Treg集団を生成することを含む第3の刺激工程を含む。いくつかの態様では、該方法はさらに、(f)第3の刺激Treg集団を刺激剤の非存在下で培養し続けて第3の休止Treg集団を生成することを含む第3の休止工程を含む。いくつかの態様では、該方法はさらに、さらに刺激したTreg集団を生成するための1以上の追加の刺激工程(複数可)、及び/またはさらに休止させたTreg集団を生成するための1以上の追加の休止工程(複数可)を含む。
【0012】
いくつかの態様では、該方法はさらに、第1の休止させたTreg集団、第2の刺激したTreg集団、第2の休止させたTreg集団、第3の刺激したTreg集団、第3の休止させたTreg集団、さらに刺激したTreg集団、またはさらに休止させたTreg集団を遺伝子操作することを含む。
【0013】
いくつかの態様では、該方法はさらに、第1の休止させたTreg集団、第2の刺激したTreg集団、第2の休止させたTreg集団、第3の刺激したTreg集団、第3の休止させたTreg集団、さらに刺激したTreg集団、さらに休止させたTreg集団、または遺伝子操作したTreg集団を回収することを含む。
【0014】
本明細書で提供されているのは、制御性T細胞(Treg)集団を増殖させるための方法であり、該方法は:(a)刺激剤を含む培地でTreg集団を培養して第1の刺激したTreg集団を生成することを含む刺激工程と;(b)刺激したTreg集団を洗浄して刺激剤を含む培地を取り除いて洗浄Treg集団を生成することと;(c)洗浄Treg集団を新鮮な培地で培養して第1の休止Treg集団を生成することとを含む。いくつかの態様では、新鮮な培地はいかなる刺激因子も含まない。いくつかの態様では、該方法はさらに、第1の休止Treg集団を遺伝子操作することを含む。いくつかの態様では、該方法はさらに、刺激剤を含む培地で第1の休止Treg集団を培養して第2の刺激したTreg集団を生成することを含む。
【0015】
本明細書で提供されているのは、制御性T細胞(Treg)集団を増殖させるための方法であり、該方法は:(a)以前刺激したTreg集団を刺激剤の非存在下培養して第1の休止Treg集団を生成することを含む休止工程と;(b)第1の休止Treg集団に刺激剤を加えて刺激したTreg集団を生成することを含む刺激工程とを含む。
【0016】
いくつかの態様では、該方法はさらに、Tregを遺伝子操作することを含む。いくつかの態様では、該方法はさらに、第1の休止Treg集団を遺伝子操作することを含む。
【0017】
いくつかの態様では、該方法はさらに、遺伝子操作したTreg集団を培養することを含む。
【0018】
いくつかの態様では、遺伝子操作したTreg集団の培養は刺激剤の存在下で行われる。いくつかの態様では、該方法はさらに、操作したTreg集団を刺激剤の非存在下で培養し続けることを含む。
【0019】
いくつかの態様では、遺伝子操作したTreg集団の培養は刺激剤の非存在下で行われる。いくつかの態様では、該方法はさらに、遺伝子操作したTreg集団を刺激剤の存在下で培養し続けることを含む。
【0020】
本明細書で提供されているのは、制御性T細胞(Treg)集団を増殖させるための方法であり、該方法は:(a)Treg集団を遺伝子操作して操作したTreg集団を生成することと;(b)操作したTreg集団を刺激剤の存在下で培養して刺激した操作したTreg集団を生成することを含む刺激工程と;(c)刺激した操作したTreg集団を刺激剤の非存在下で培養し続けて休止させた操作したTreg集団を生成することを含む休止工程とを含む。
【0021】
本明細書で提供されているのは、制御性T細胞(Treg)集団を増殖させるための方法であり、該方法は:(a)Treg集団を遺伝子操作して操作したTreg集団を生成することと;(b)操作したTreg集団を刺激剤の非存在下で培養して休止させた操作したTreg集団を生成することを含む休止工程と;(c)休止させた操作したTreg集団を刺激剤の存在下で培養して刺激した操作したTreg集団を生成することを含む刺激工程とを含む。
【0022】
いくつかの態様では、遺伝子操作する前に、Treg集団は、刺激剤の存在下で集団を培養することを含む刺激工程に供される。
【0023】
いくつかの態様では、遺伝子操作する前に、Treg集団は、刺激剤の存在下で集団を培養することを含む刺激工程と、次いで刺激剤の非存在下で集団を培養することを含む休止工程とに供される。
【0024】
いくつかの態様では、遺伝子操作する前に、Treg集団は、刺激剤の存在下で集団を培養することを含む刺激工程と、次いで刺激剤の非存在下で集団を培養することを含む休止工程と、次いで刺激剤の存在下で集団を培養することを含む別の刺激工程とに供される。
【0025】
いくつかの態様では、遺伝子操作は刺激剤の非存在下で行われる。
【0026】
いくつかの態様では、方法はさらに、Treg集団を回収することを含む。
【0027】
いくつかの態様では、方法はさらに、対象からTreg集団を得ることを含む。
【0028】
いくつかの態様では、方法はさらに、対象の胸腺、末梢血、臍帯血または組織試料からTreg集団を得ることを含む。
【0029】
いくつかの態様では、方法はさらに、工程(a)の培養の前に対象の末梢血からTreg集団を得ることを含む。
【0030】
いくつかの態様では、Treg集団は対象の胸腺、末梢血、臍帯血または組織試料から得られた。いくつかの態様では、Treg集団は対象の末梢血からを得られた。
【0031】
いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0032】
いくつかの態様では、四量体抗体複合体は、操作された集団の刺激工程及び/または培養の少なくとも1つにおける刺激剤である。いくつかの態様では、四量体抗体複合体は、CD3、CD28、CD2、またはそれらの組み合わせに特異的に結合する。
【0033】
いくつかの態様では、抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片、及び/または抗CD28抗体もしくはその抗原結合断片は、操作された集団の刺激工程及び/または培養の少なくとも1つにおける刺激剤である。
【0034】
いくつかの態様では、CD3結合及び/またはCD28結合の超磁性ビーズは操作された集団の刺激工程及び/または培養の少なくとも1つにおける刺激剤である。
【0035】
いくつかの態様では、方法は超磁性ビーズを使用しない。
【0036】
いくつかの態様では、方法全体を通して同じ刺激剤が使用される。いくつかの態様では、少なくとも2つの異なる刺激剤が方法にて使用される。
【0037】
いくつかの態様では、刺激剤は方法の刺激工程すべての全体を通して同じ濃度で存在する。いくつかの態様では、少なくとも2つの異なる濃度の刺激剤が方法にて使用される。
【0038】
いくつかの態様では、TregはIL-2の存在下で培養される。いくつかの態様では、方法の間にIL-2濃度を減らす。いくつかの態様では、IL-2は約7日間約800単位/mLの濃度で存在し、その後、約300単位/mLで存在する。
【0039】
いくつかの態様では、Treg集団を、刺激剤の存在下で約1~約5日間培養し、次いで、刺激剤の非存在下で約1~約5日間培養し、その後、刺激剤の存在下で約1~約5日間培養し、その後遺伝子操作する。
【0040】
いくつかの態様では、Treg集団を、刺激剤の存在下で約3~約4日間培養し、次いで、刺激剤の非存在下で約3~約4日間培養し、その後、刺激剤の存在下で約1~約4日間培養し、その後遺伝子操作する。いくつかの態様では、Treg集団は表Aに従って刺激剤の存在下及び/または非存在下で培養される。
【0041】
いくつかの態様では、TregはN-アセチル-システインの存在下で培養される。いくつかの態様では、N-アセチル-L-システインは培養物中に約5mMの濃度で存在する。
【0042】
いくつかの態様では、Treg集団が約250倍に増殖したときにTreg集団は遺伝子操作される。いくつかの態様では、Treg集団は、Tregが対象から得られてから約6日~約10日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Treg集団はTregが対象から得られてから約7日後に遺伝子操作される。
【0043】
いくつかの態様では、遺伝子操作はTreg集団に核酸を導入することを含む。いくつかの態様では、核酸はウイルス核酸である。いくつかの態様では、核酸はウイルス核酸ではない。いくつかの態様では、核酸はタンパク質をコードする。いくつかの態様では、タンパク質は異種タンパク質である。いくつかの態様では、異種タンパク質はキメラ抗原受容体(CAR)である。
【0044】
いくつかの態様では、遺伝子操作はTreg集団に遺伝子調節システムを導入することを含む。いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、(i)核酸分子;(ii)酵素タンパク質;または(iii)核酸分子及び酵素タンパク質を含む。いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、siRNA、shRNA、マイクロRNA(miR)、アンタゴmiR、またはアンチセンスRNAから選択される核酸分子を含む。いくつかの態様では、遺伝子調節システムは酵素タンパク質を含み、酵素タンパク質はTreg内の1以上の遺伝子の標的配列に特異的に結合するように操作されている。いくつかの態様では、酵素タンパク質は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼである。いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、核酸分子及び酵素タンパク質を含み、その際、核酸分子はガイドRNA(gRNA)分子であり、酵素タンパク質はCasタンパク質またはCasオルソログである。いくつかの態様では、Casタンパク質はCas9タンパク質である。
【0045】
いくつかの態様では、導入はエレクトロポレーションまたはリボ核タンパク質(RNP)が介在する方法を使用する。
【0046】
いくつかの態様では、方法は人工抗原提示細胞を使用しない。
【0047】
いくつかの態様では、方法はラパマイシンを使用しない。いくつかの態様では、方法はラパマイシンを使用することを含む。
【0048】
いくつかの態様では、方法は11日間でTregの数を少なくとも1000倍増やす。
【0049】
いくつかの態様では、方法は、刺激剤の存在下で6日間培養したTregよりも表面積が小さいTregを生じる。いくつかの態様では、方法は刺激剤の存在下で6日間培養したTregと比べてHelios+FoxP3+Treg集団を増やす。いくつかの態様では、方法は刺激剤の存在下で6日間培養したTregと比べてエフェクターT細胞(Teffs)の増殖を抑制する能力が高いTregを生じる。いくつかの態様では、Teffの増殖を抑制する高い能力は少なくとも8倍高い能力である。
【0050】
いくつかの態様では、方法はTreg集団の過剰刺激を防止する。
【0051】
いくつかの態様では、方法は刺激剤の存在下で6日間培養したTregと比べて活性化が誘導する細胞死を減らす。
【0052】
いくつかの態様では、TregにおけるHelios発現の少なくとも75%が維持される。
【0053】
いくつかの態様では、TregはHelios+である。
【0054】
いくつかの態様では、Tregは完全に脱メチル化されたTreg特異的脱メチル化領域(TSDR)を有する。
【0055】
いくつかの態様では、方法はさらに、Treg集団を凍結保存することを含む。
【0056】
本明細書で提供されているのは、本明細書で提供されているいずれかによって作り出されるTreg集団である。いくつかの態様では、本明細書で提供されているのは、本明細書で提供されている任意の方法によって作り出されるTregの凍結保存集団である。
【0057】
いくつかの態様では、方法はさらに、対象にTreg集団を投与することを含む。
【0058】
本明細書で提供されているのは、本明細書で提供されている任意の方法または本明細書で提供されている任意のTregを使用して得られたTreg集団の有効量を対象に投与することを含む、対象にて自己免疫疾患または炎症性疾患を治療する方法である。
【0059】
本明細書で提供されているのは、本明細書で提供されている任意の方法または本明細書で提供されている任意のTregを使用して得られたTreg集団の有効量を対象に投与することを含む、対象にて移植片対宿主病(GVHD)を治療するまたは予防する方法である。
【0060】
本明細書で提供されているのは、本明細書で提供されている任意の方法または本明細書で提供されている任意のTregを使用して得られたTreg集団の有効量を対象に投与することを含む、対象にて免疫応答を低下させる方法である。
【0061】
いくつかの態様では、Treg集団は対象にとって同種異系である。いくつかの態様では、Treg集団は対象にとって自家である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】CD3/28/2四量体モノクローナル抗体(mAb)またはDynabeadsによる連続的なまたは不連続的な刺激を受けた制御性T細胞(Treg)の増殖を示す。(実施例2を参照のこと)
【
図2】連続的(「基準」)または不連続的な(「DSORT(商標)」)刺激を受けたTregの活性化の尺度としての相対的なサイズを示す。(実施例3を参照のこと)
【
図3】連続刺激または長い非刺激期を伴う不連続刺激を受けたTregの増殖を示す。刺激はCD3/28/2四量体モノクローナル抗体(mAb)またはDynabeadsのいずれかによって実施した。(実施例4を参照のこと)
【
図4】連続的(「Cont」)刺激または不連続的(DSORT(商標))刺激を受けたCRISPR操作したTregの増殖を示す。白抜き四角はn=3の平均値を表す。(実施例5を参照のこと)
【
図5】DSORT(商標)を使用して得られたTregの細胞数(左y軸)及び増殖倍数(右y軸)を示すグラフ(上)及び交互増殖プロトコールに加えてDSORT(商標)(「KSQ Tx」)を使用して得られた増殖倍数を示す表(下)を提供する。「Thiel」試験とは、THEIL,A.,et al.,”Adoptive transfer of allogeneic regulatory T cells into patients with chronic graft-versus-host disease,”Cytotherapy,17(4):P473-486(April,2015)を指す。「Bluestone」試験とは、BLUESTONE,J.A.,et al.,”Type 1 diabetes immunotherapy using polyclonal regulatory T cells,”Sci.Transl.med.7(315):315ra189(November,2015)を指す。「Canavan」試験とは、CANAVAN,J.B.,et al.”Developing in vitro expanded CD45RA+ regulatory T cells as an adoptive cell therapy for Crohn’s disease,”Gut,65(4):584-594(published online February,2015)を指す。「Safina」試験とは、SAFINIA,N.,et al.,”Successful expansion of functional and stable regulatory T cells for immunotherapy in liver transplantation,”Oncotarget,7(7):7563-7577(February,2016)を指す。「Trzonkowska」試験とは、MAREK-TRZONKOWSKA,N.,et al.,”Mild hypothermia provides Treg stability,”Scientific Reports,7:11915(September,2017)を指す。「Lombardi」試験とは、FRASER,H.,et al.,”A Rapamycin-Based GMP-Compatible Process for the Isolation and Expansion of Regulatory T Cells for Clinical Trials,”Molecular Therapy-Methods & Clinical Development,8:198-209(January,2018)を指す。「Leventhal」試験とは、MATHEW,J.M.,et al.,”A Phase I Clinical Trial with Ex Vivo Expanded Recipient Regulatory T cells in Living Donor Kidney Transplants,”Scientific Reports,8:7428(May,2018)を指す。「Thonhoff」試験とは、THONHOFF,J.R.,et al.,”Expanded autologous regulatory T-lymphocyte infusions in ALS,”Neurology Neuroimmunology & Neuroinflammation,5(4):1-7(July,2018)を指す。「MacDonald」試験とは、MACDONALD,K.N.,et al.,”Cryopreservation timing is a critical process parameter in a thymic regulatory T-cell therapy manufacturing protocol,”Cytotherapy,21(12):1216-1233(December,2019)を指す。(実施例6を参照のこと)
【
図6】(A)Helios及びFoxp3の発現がある細胞及び発現がない細胞におけるTreg特異的脱メチル化領域(TSDR)のメチル化状態を示す。(B)Heliosを発現する細胞の割合が異なる細胞集団のエフェクターT細胞の増殖を抑制する能力を示す。(C)Heliosの発現は不連続(「DSORT(商標)」)刺激または連続(「基準」)刺激を使用して増殖した細胞である。(実施例7を参照のこと)
【
図7】連続刺激(基準増殖)または不連続刺激(DSORT(商標))を受けたTregがCD4
+エフェクターT細胞の増殖を抑制する能力を示す。(実施例8を参照のこと)
【
図8】Tregを交互の刺激サイクルと休止サイクルに供し、遺伝子操作する例示的なDSORT(商標)プロセスの概略図である。「フラスコ」はTregをプレートからフラスコに移すことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門的及び科学的用語は、本開示が関連する当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。矛盾が生じる場合は、定義を含めて本出願が優先される。別段文脈によって要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書に記載されている全ての刊行物、特許、及び他の参考文献は、個々の刊行物、または特許出願が参照によって組み込まれることが具体的かつ個別に示され、あらゆる目的のためにその全体が参照によって本明細書に援用される。
【0064】
本明細書で記載したものと類似または同等の方法及び材料を、本開示の実施または試験で使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。材料、方法及び実施例は例示にすぎず、限定を意図するものではない。本開示のその他の特徴及び利点は、詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0065】
本開示をさらに定義するために、以下の用語及び定義を提供する。
【0066】
本明細書にて態様が「含む(comprising)」という用語を使用して記載される場合は常に、「から成る(consisting of)」及び/または「から本質的に成る(consisting essentially of)」という用語で記載される類似の態様も提供されることが理解される。
【0067】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途指示されない限り、複数の対象を含む。
【0068】
本明細書における用語「または」の使用は代替物を相互に排除することを意味するものではない。本出願では、「または」の使用は、明示的に述べられていない、または当業者によって理解されていない限り「及び/または」を意味する。複数の従属請求項の文脈では、「または」の使用は、1を超える先行する独立請求項または従属請求項にさかのぼって言及する。本明細書で使用されるときの用語「及び/または」は、その他のものの有無にかかわらず、2つの明示した特徴または成分のそれぞれの個別の開示として解釈されるべきである。したがって、本明細書における「A及び/またはB」のような語句で使用される用語「及び/または」は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、ならびに「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/またはC」のような語句で使用される「及び/または」という用語は、次の態様:A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)の各々を包含することが意図される。
【0069】
単位、接頭辞、及び記号は、国際単位系(SI)が承認した形式で示される。数値範囲はその範囲を定義する数を含むものとする。本明細書で提供されている見出しは、本開示のさまざまな態様を限定するものではなく、全体として本明細書を参照することによって得られ得る。したがって、すぐ下で定義されている用語は、本明細書を全体として参照することによってさらに完全に定義される。
【0070】
本明細書で使用されるとき、「約」という用語は記載されている数の±10%を含む。したがって、「約10」は9~11を意味する。当業者によって理解されているように、本明細書における「約」値またはパラメーターに対する言及は、その値またはパラメーター自体を対象とする具体例を含む(且つ説明する)。例えば、「約X」について言及する記述は「X」の記述を包含する。
【0071】
本明細書で使用されるとき「制御性T細胞」または「Treg」という用語は、免疫系を調節し、自己抗原に対する寛容を維持し、ならびに自己免疫疾患及び炎症疾患を抑止するフォークヘッドボックスP3(Foxp3)転写因子を構成的に発現するT細胞の部分集団を指す。これらの細胞は一般に、エフェクターT細胞の誘導と増殖を抑制し、または下方調節し、且つ抗原提示細胞の機能を調節する。Tregは、細胞間接触によって、または免疫抑制性サイトカインの放出を介して抑制活性(すなわち、従来のT細胞の増殖の阻害)が可能である細胞である。
【0072】
本明細書で使用されるとき、「集団」という用語は細胞の集団を指し、その際、その大部分、すなわち、細胞の総数の少なくとも50%(任意で、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも約80%)が目的の細胞の特定の特性(例えば、目的の機能的特性及び/またはマーカー)を有する。したがって、「Treg集団」とは、細胞の大部分がTregであるが、一部の細胞はTregではない細胞であり得る(例えば、一部の細胞はTeffであり得る)細胞の集団を指す。
【0073】
本明細書で使用されるとき、「培養」とは、定義されたまたは制御された条件下で試験管内にて1以上の細胞を増殖させることを指す。定義できる培養条件の例には、温度、混合ガス、時間、培地配合が含まれる。
【0074】
本明細書で使用されるとき、「培養培地」及び「細胞培養培地」及び「フィード培地」及び「発酵培地」という用語は、細胞、特に哺乳類細胞の増殖及び/または維持に使用される栄養溶液を指す。限定しないで、これらの溶液は通常、以下のカテゴリー:(1) エネルギー源、ふつうはグルコースのような炭水化物の形態;(2)すべての必須アミノ酸、ふつうは20のアミノ酸の基本セット;(3)低濃度で必要とされるビタミン及び/または他の有機化合物;(4)遊離脂肪酸または遊離脂質、例えばリノール酸;及び(5)微量元素の1以上に由来する少なくとも1つの成分を提供し、その際、微量元素は、通常はマイクロモル範囲の非常に低い濃度で必要とされる無機化合物または天然に存在する元素として定義される。栄養溶液には、以下のカテゴリー:(1)ホルモン及び他の成長因子、例えば、血清、インスリン、トランスフェリン、及び上皮増殖因子;(2)塩類、例えば、マグネシウム、カルシウム、及びリン酸塩;(3)HEPESのような緩衝液;(4)アデノシン、チミジン、及びヒポキサンチンのようなヌクレオシド及び塩基;(5)タンパク質及び組織加水分解物、例えば、精製ゼラチン、植物材料、または動物副産物から得ることができるペプトンまたはペプトン混合物;(6)ゲンタマイシンのような抗生物質;(7)細胞保護剤、例えばプルロニック(登録商標)ポリオール;ならびに(8)ガラクトースのいずれかに由来する1以上の成分を選択的に補充することができる。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)のような市販されている培地は宿主細胞の培養に好適である。さらに、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979),Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)に記載されている培地のいずれかを宿主細胞の培養培地として使用することができる。任意の他の必要な補充物も適切な濃度で含まれ得る。
【0075】
本明細書で使用されるとき、「刺激剤」または「刺激剤」は、Treg上のT細胞受容体及び/またはCD28もしくはGITRのような共刺激分子を(直接的または間接的に)活性化する、及び/または分裂促進活性を有する薬剤を指す。刺激剤はTregの増殖を高めることができる。刺激剤として作用する薬剤の能力はCD3ゼータサブユニット上のITAMモチーフのリン酸化を増加させる能力によって立証することができる。
【0076】
本明細書で使用されるとき、「刺激剤の存在下」または「刺激剤の存在下」での培養は、Treg上のT細胞受容体及び/またはCD28やGITRのような共刺激分子を活性化するのに十分な量の刺激剤の存在下でTregを培養することを指す。
【0077】
本明細書で使用されるとき、「刺激剤の非存在下」または「刺激剤の非存在下」での培養は、Treg上のT細胞受容体及び/またはCD28やGITRのような共刺激分子を活性化するのに十分な量の刺激剤の非存在下で培養することを指す。「刺激剤の非存在下」での培養には、いかなる刺激剤も使用せずに培養することが含まれる。
【0078】
本明細書で使用されるとき「播種」という用語は培養を開始するために培養培地に細胞を添加することを指す。
【0079】
本明細書で使用されるとき「遺伝子操作」という用語は、バイオテクノロジーを使用して細胞内の核酸を直接操作することによって、細胞の遺伝子構成(すなわち、少なくとも1つの核酸の)を変更(付加、抑制、または置換)するプロセスを指す。遺伝子操作には、例えば、細胞または細胞集団に異種核酸を導入することが含まれる。核酸は、例えば、形質導入または形質移入によって細胞または細胞集団に導入することができる。
【0080】
「形質導入」または「形質導入すること」という用語は、ウイルスによる遺伝物質の導入及びレシピエント細胞におけるその発現を指す。
【0081】
本明細書で使用されるとき「形質移入」または「形質移入すること」という用語は、DNA(例えば、製剤化されたDNA発現ベクター)を細胞に導入し、それによって細胞の形質転換を可能にするプロセスを指す。
【0082】
本明細書で使用されるとき「ベクター」という用語は、宿主細胞内で複製する及び/または組み込むベクターの能力を破壊することなく外来核酸の挿入を可能にする核酸分子を指す。
【0083】
本明細書で使用されるとき「組換えベクター」という用語は、ベクターに挿入された別のポリヌクレオチドを転移または輸送することができるポリヌクレオチド分子を指す。挿入されるポリヌクレオチドは発現カセットであってもよい。いくつかの態様では、組換えベクターはウイルスベクターまたは非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)であってもよい。
【0084】
「発現カセット」または「発現構築物」はプロモーターに操作可能に連結されたDNAポリヌクレオチド配列を指す。「操作可能に連結される」は、そのように説明される構成要素が、その意図される様式でそれらが機能することを可能する関係にある並置を指す。例えば、プロモーターは、そのプロモーターがポリヌクレオチド配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、ポリヌクレオチド配列に操作可能に連結されている。
【0085】
本明細書で使用されるとき、「発現」及び「発現する」という用語は細胞内で起こる転写及び翻訳を指すために使用される。宿主細胞における生成物遺伝子の発現レベルは、細胞に存在する対応するmRNAの量、またはその細胞によって産生される生成物遺伝子によってコードされるタンパク質の量のいずれか、または双方に基づいて決定されてもよい。
【0086】
「試料」という用語は、生物学的組成物(例えば、細胞または組織の一部)を指す。いくつかの態様では、試料は、対象から直接得られるという点で「一次試料」であり;いくつかの態様では、「試料」は、例えば特定の成分を除去するための、及び/または特定の対象成分を単離または精製するための一次試料の処理の成果である。いくつかの態様では、試料は血液試料である。
【0087】
「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すのに相互交換可能に使用され、最小長には限定されない。アミノ酸残基のそのようなポリマーは、天然または非天然のアミノ酸残基を含む場合があり、また、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体、及び多量体を含むが、これらに限定されない。完全長タンパク質及びその断片の双方は、定義に包含される。この用語にはまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化などが含まれる。さらに、本開示の目的に関して、「ポリペプチド」とは、タンパク質が所望の活性を維持する限り、ネイティブ配列に対する欠失、付加及び置換のような(概して本質的に保存的な)修飾を有するタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発などによる意図的なものであってもよく、またはタンパク質を産生する宿主の突然変異もしくはPCR増幅に起因するエラーなどによる偶発的なものであってもよい。
【0088】
「抗体」という用語は、標的、例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、またはこれらの組み合わせを、当該免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介して認識しこれに結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語は、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体を含む融合タンパク質、及び当該抗体が所望の生物活性を示す限り任意の他の修飾された免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる重鎖定常ドメインの同一性に基づいて、免疫グロブリンのクラス: IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、またはそれらのサブクラス(アイソタイプ)(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)のいずれかのものであることができる。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なる周知のサブユニット構造及び三次元構造を有する。抗体は裸であることができ、または毒素や放射性同位体等のような他の分子とコンジュゲートすることができる。
【0089】
「抗体断片」という用語はインタクトな抗体の一部を指す。「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」または「抗原結合領域」は抗原に結合するインタクトな抗体の一部を指す。抗原結合性断片はインタクトな抗体の抗原決定可変領域(例えば、相補性決定領域(CDR))を含有することができる。抗体の抗原結合断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、線状抗体、及び単鎖抗体が挙げられるが、これらに限定されない。抗体の抗原結合断片は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、またはハムスター)及びヒトのような任意の動物種に由来することができ、または人工的に生成することができる。
【0090】
本明細書で使用されるとき、「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は相互交換可能に使用され、当該技術分野では一般的である。可変領域は通常、抗体の一部、一般に軽鎖または重鎖の一部を指し、通常、成熟重鎖のアミノ末端ほぼ110~120アミノ酸または110~125アミノ酸及び成熟軽鎖のほぼ90~115アミノ酸を指し、それらは抗体間で配列が大きく異なり、特定の抗原に対する特定の抗体の結合と特異性に使用される。配列の可変性は相補性決定領域(CDR)と呼ばれる領域に集中している一方で、可変ドメイン内のさらに保存された領域はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。どんな特定のメカニズムまたは理論にも束縛されることを望まないで、軽鎖及び重鎖のCDRは主に、抗体と抗原との相互作用及び特異性に関与すると考えられている。いくつかの態様では、可変領域はヒト可変領域である。いくつかの態様では、可変領域は齧歯類またはマウスのCDR及びヒトのフレームワーク領域(FR)を含む。いくつかの態様では、可変領域は霊長類(例えば、非ヒト霊長類)の可変領域である。いくつかの態様では、可変領域は齧歯類またはマウスのCDR及び霊長類(例えば、非ヒト霊長類)のフレームワーク領域(FR)を含む。
【0091】
「VL」及び「VLドメイン」という用語は抗体の軽鎖可変領域を指すのに相互交換可能に使用される。「VH」及び「VHドメイン」という用語は抗体の重鎖可変領域を指すのに相互交換可能に使用される。
【0092】
いくつかの態様では、抗体の抗原結合断片はscFvである。本明細書で使用されるとき、「単鎖可変断片」または「scFv」という用語は、免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。重鎖(VH)及び軽鎖(VL)は直接連結される、またはVHのN末端をVLのC末端と接続する、またはVHのC末端をVLのN末端と接続するペプチドをコードするリンカー(例えば、10、15、20、または25アミノ酸)によって連結される。リンカーは、柔軟性のためにグリシンを豊富に含むことができ、同様に、溶解性のためにセリンまたはスレオニンを豊富に含むことができる。定常領域の除去とリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は元の免疫グロブリンの特異性を保持する。単鎖Fvポリペプチド抗体は、VHコード配列及びVLコード配列を含む核酸から発現させることができる。
【0093】
本明細書にて相互交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、任意の長さのヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかのポリマー形態を指す。したがって、この用語には、一本鎖、二本鎖、または多重鎖のDNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリン塩基及びピリミジン塩基を含むポリマー、または他の天然の、化学的もしくは生化学的に修飾された、非天然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基が含まれるが、これらに限定されない。「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、記載されている態様に適用できるように、一本鎖ポリヌクレオチド(例えば、センスまたはアンチセンス)及び二本鎖ポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。
【0094】
「操作された抗原受容体」という用語は、キメラ抗原受容体(CAR)または組換えT細胞受容体(TCR)のような、天然に存在しない抗原特異的受容体を指す。「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、T細胞シグナル伝達ドメインに連結された、例えば、抗体(例えばscFv)の抗原結合ドメインを含有する人工的に構築されたハイブリッドポリペプチドを指す。抗原結合ドメイン及びT細胞シグナル伝達ドメインはヒンジを介して連結することができる。「TCR」は、当該技術分野における一般的な意味を有し、特定の標的を認識し、TCRα鎖及び/またはTCRβ鎖を含むタンパク質複合体を指す。
【0095】
「ヒンジ」または「ヒンジ領域」という用語は、隣接するポリペプチド領域に構造的柔軟性及び間隔を与える、柔軟な接続子領域、例えば、天然のまたは合成のポリペプチドを指す。
【0096】
「修飾された」という用語は、対応する未修飾の物質または化合物と比べて改変または変更されている物質または化合物(例えば、細胞、ポリヌクレオチド配列、及び/またはポリペプチド配列)を指す。
【0097】
核酸、ポリペプチド、細胞、または生物に適用される場合、本明細書で使用されるとき「天然に存在する」という用語は、自然界に見いだされる核酸、ポリペプチド、細胞、または生物を指す。例えば、自然界の供給源から単離することができ、且つ研究室にてヒトによって意図的に修飾されていない生物(ウイルスを含む)に存在するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は天然に存在する。
【0098】
「単離されている」ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、自然界には見られない形態であるポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物である。単離されたポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物には、もはやそれらが自然界に見られる形態ではない程度まで精製されたものが含まれる。いくつかの態様では、単離されている抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は実質的に純粋である。本明細書で使用されるとき、「実質的に純粋」とは、少なくとも50%純粋(すなわち、汚染物質を含まない)である物質を指す。したがって、「実質的に純粋」には、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも98%純粋、または少なくとも99%純粋である物質も含まれる。
【0099】
「生体内」という用語は、哺乳類対象の体内で起こる事象を指し、細胞培養物(哺乳類細胞培養物を含む)で起こる事象を指すものではない。
【0100】
「生体外」という用語は、哺乳類対象の体の外側、人工環境で起こる事象を指す。
【0101】
「試験管内」という用語は、試験システム内で起こる事象を指す。試験管内アッセイには、生細胞または死細胞が採用されてもよい細胞ベースのアッセイが含まれ、またインタクトの細胞が採用されない無細胞アッセイも含まれてもよい。
【0102】
本明細書で使用されるとき、「治療」とは有益なまたは所望の臨床成果を得るためのアプローチである。本明細書で使用されるとき、「治療」とはヒトを含む哺乳類における疾患に対する治療剤の投与または適用を対象とする。本開示の目的に関して、有益なまたは所望の臨床結果としては、1以上の症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の広がり(例えば、転移)の予防もしくは遅延、疾患の再発の予防もしくは遅延、疾患進行の遅延もしくは緩徐化、疾患状態の改善、疾患もしくは疾患の進行の阻害、疾患もしくはその進行の阻害もしくは緩徐化、その発症の阻止、及び寛解(部分的または全体的かどうかにかかわらず)、のうち1以上が挙げられるが、これらに限定されない。増殖性疾患の病理学的結果の低下も、「治療」に包含される。本明細書に記載されている方法は、治療のこれらの態様のうち任意の1以上を企図したものである。上記に沿って、治療という用語は障害の全ての態様を100パーセント除去する必要はない。
【0103】
本明細書で使用されるとき、「遅延させること」は、疾患の発症または進行の延期、妨害、緩徐化、遅延、安定化、抑制及び/または先延ばしを意味する。この遅延は、治療されている病歴及び/または個体に応じて異なる期間であることができる。
【0104】
「治療上有効な量」の物質は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重のような因子、ならびに個体における所望の反応を引き出す物質の能力によって変更される場合がある。治療上有効な量はまた、治療上有益な効果が、物質のいずれかの毒性または有害な影響にまさる量でもある。治療上有効な量は、1回以上の投与で送達され得る。治療有効量は、所望の治療効果を達成するのに必要な投与量及び期間での有効な量を指す。
【0105】
「予防有効量」は、所望の予防成果(例えば、感染または疾患の発症の防止)を達成するのに必要な投与量及び期間での有効な量を指す。
【0106】
「低下する」または「減少する」とは、基準値と比べて特定の値の少なくとも5%、例えば5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%の低下での低下または減少を指す。
【0107】
「増加する」とは、基準値と比べて特定の値の少なくとも5%、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、100%、200%、300%、400%、500%以上の増加での特定の値における増加を指す。
【0108】
「投与する」、「投与すること」、「投与」などという用語は、生物作用の所望の部位への治療剤の送達を可能にするために使用することができる方法を指す。本明細書に記載されている薬剤及び方法と共に採用することができる投与技法は、例えば、Goodman and Gilman,The Pharmacological Basis of Therapeutics,current ed.;Pergamon;and Remington’s,Pharmaceutical Sciences(current edition),Mack Publishing Co.,Easton,Paに見いだすことができる。2以上の治療剤の投与には同時(同時発生)投与、及び任意の順序での連続的投与が含まれる。
【0109】
「個体」または「対象」という用語は、動物、例えば、ヒトのような哺乳類を指すのに本明細書では相互交換可能に使用される。場合によっては、ヒト、げっ歯類、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、哺乳類実験用動物、哺乳類家畜動物、哺乳類スポーツ用動物、及び哺乳類のペットを含むが、これらに限定されない哺乳類を治療する方法が提供される。いくつかの例では、「個体」または「対象」とは、疾患または障害に対する治療を必要とする個体または対象を指す。場合によっては、治療を受ける対象は、対象が治療に関連する障害を有する、または障害に罹患する特定のリスクがあると特定されたことがあるという事実を示している患者であることができる。
【0110】
本開示の目的のために、治療に使用される制御性T細胞は、後に投与される対象(「自家細胞」)または別の個体(「同種異系細胞」)から単離することができる。本明細書で使用されるとき、「同種異系細胞」とは、ある対象(ドナー)から単離され、別の対象(レシピエントまたは宿主)に注入される細胞を指す。本明細書で使用されるとき、「自家細胞」とは、単離され、同じ対象(レシピエントまたは宿主)に注入して戻される細胞を指す。
【0111】
「医薬製剤」及び「医薬組成物」という用語は、有効成分(複数可)の生物活性が有効になるような形態であり、且つ製剤が投与されることになる対象にとって許容できない毒性である追加成分をまったく含有していない調製物を指す。そのような製剤は滅菌されてもよい。
【0112】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される」という用語とは、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した、安全な医学的判断の範囲内にあり、妥当な利益/リスク比に見合う、化合物、材料、組成物及び/または製剤を指す。
【0113】
「薬学的に許容される担体」とは、患者への投与向けの「医薬組成物」を一緒に含む治療剤と共に用いるための、非毒性の固形物、半固形物もしくは液体充填材、希釈剤、カプセル化材料、製剤補助剤、または当該技術分野の従来の担体を指す。薬学的に許容される担体は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、製剤の他の成分と相溶性がある。薬学的に許容される担体は、用いられる製剤に適切なものである。
【0114】
「滅菌」製剤は、無菌である、または生きている微生物及びそれらの胞子を実質的に含まない。
【0115】
分子生化学及び細胞生化学の一般的な方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,HaRBor Laboratory Press,2001);Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.(Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons,1999);Protein Methods(Bollag et al.,John Wiley & Sons,1996);Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagner et al.eds.,Academic Press,1999);Viral Vectors (Kaplift & Loewy eds.,Academic Press,1995);Immunology Methods Manual,(I.Lefkovits ed.,Academic Press,1997);and Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle & Griffiths,John Wiley & Sons,1998)のような標準的な教科書に見いだすことができる。
【0116】
Treg及びTreg集団
転写因子フォークヘッドボックスP3(FoxP3)を発現するTregは免疫系にて天然に存在する。したがって、本明細書で提供されているいくつかの態様では、TregはFoxP3+CD4+T細胞である。転写因子Heliosも、免疫系にて天然に存在する多くのTregで発現される。したがって、本明細書で提供されているいくつかの態様では、TregはFoxP3+Helios+またはFoxP3+CD4+Helios+T細胞である。
【0117】
いくつかの態様では、Tregは完全に脱メチル化されたTreg特異的脱メチル化領域(TSDR)を有する。
【0118】
FoxP3、Helios、及びTSDRの脱メチル化は細胞内のTregマーカーである。しかしながら、CD25hi(高分子密度)及びCD127lo(低分子密度)を含む細胞表面マーカーもTregのマーカーとして機能し、例えば、フローサイトメトリーを使用してTregを特定するのに使用することができる。したがって、いくつかの態様では、TregはCD25+T細胞である。いくつかの態では、TregはCD25+CD4+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD25hiCD4+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD127loT細胞である。いくつかの態様では、TregはCD127loCD4+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD25hiCD127loCD4+T細胞である。
【0119】
いくつかの態様では、TregはCD25+FoxP3+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD25+CD4+FoxP3+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD25hiCD4+FoxP3+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD127loFoxP3+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD127loCD4+FoxP3+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD25hiCD127loCD4+FoxP3+T細胞である。
【0120】
いくつかの態様では、TregはCD45RAhiCD25hiCD127loCD4+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD45RAhiCD25hiCD127loCD4+FoxP3+T細胞である。
【0121】
いくつかの態様では、TregはCD25+FoxP3+Helios+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD25+CD4+FoxP3+Helios+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD25hiCD4+FoxP3+Helios+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD127loFoxP3+Helios+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD127loCD4+FoxP3+Helios+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD25hiCD127loCD4+FoxP3+Helios+T細胞である。
【0122】
いくつかの態様では、TregはCD45RAhiCD25hiCD127loCD4+Helios+T細胞である。いくつかの態様では、TregはCD45RAhiCD25hiCD127loCD4+FoxP3+Helios+T細胞である。
【0123】
いくつかの態様では、Tregは、SOCS、PD-1、CLTA4、ニューロピリン、TRAIL、及び/またはGITRを発現する。
【0124】
いくつかの態様では、TregはIL-10及び/またはTGFβを発現する。
【0125】
いくつかの態様では、TregはヒトTregである。
【0126】
活性化された細胞は、前方散乱(FSC)プロファイルに基づいて特徴付けることができる。細胞の相対的なサイズに比例するFSC値が高いほど、活性化が大きいことを示す。本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregの細胞サイズ(FSC-A)は、従来の方法に従って生成されるTreg、例えば6日間(約144時間)連続で刺激したTregよりも小さい可能性がある。(例えば、実施例3を参照のこと)。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、6日間(約144時間)連続して刺激したTregの0.75倍未満である相対的な細胞サイズ(FSC-A)を有する。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、6日間(約144時間)連続して刺激したTregの0.8倍未満の相対的な細胞サイズ(FSC-A)を有する。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、6日間(約144時間)連続して刺激したTregの0.75倍未満の相対的な細胞サイズ(FSC-A)を有する。
【0127】
Treg集団も本明細書で提供されている。いくつかの態様では、集団は少なくとも1×103個の細胞、少なくとも1×104個の細胞、少なくとも1×105個の細胞、少なくとも1×106個の細胞、少なくとも1×107個の細胞、少なくとも1×108個の細胞、少なくとも1×109個の細胞、または少なくとも1×1010個の細胞を含む。いくつかの態様では、集団は少なくとも1×103個のTreg、少なくとも1×104個のTreg、少なくとも 1×105個のTreg、少なくとも1×106個のTreg、少なくとも1×107個のTreg、少なくとも1×108個のTreg、少なくとも1×109個のTreg、または少なくとも1×1010個のTregを含む。
【0128】
いくつかの態様では、Treg集団における細胞の少なくとも60%がTregである。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の少なくとも70%がTregである。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の少なくとも75%がTregである。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の少なくとも80%がTregである。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の少なくとも85%がTregである。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の少なくとも90%がTregである。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の少なくとも95%がTregである。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の少なくとも96%がTregである。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の少なくとも97%がTregである。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の少なくとも98%がTregである。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の少なくとも99%がTregである。
【0129】
いくつかの態様では、Treg集団における細胞の1%未満がエフェクターT細胞である。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の2%未満がエフェクターT細胞である。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の3%未満がエフェクターT細胞である。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の4%未満がエフェクターT細胞である。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の5%未満がエフェクターT細胞である。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の10%未満がエフェクターT細胞である。
【0130】
いくつかの態様では、Treg集団における細胞の1%未満がCD25-CD4+またはCD8+T細胞である。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の2%未満がCD25-CD4+またはCD8+T細胞である。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の3%未満がCD25-CD4+またはCD8+T細胞である。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の4%未満がCD25-CD4+またはCD8+T細胞である。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の5%未満がCD25-CD4+またはCD8+T細胞である。いくつかの態様では、Treg集団における細胞の10%未満がCD25-CD4+またはCD8+T細胞である。集団内のCD25-CD4+またはCD8+T細胞である細胞の割合はフローサイトメトリーを使用して決定することができる。
【0131】
いくつかの態様では、提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の0.75倍未満である平均相対細胞サイズ(FSC-A)を有する。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の0.8倍未満である平均相対的な細胞サイズ(FSC-A)を有する。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の0.75倍未満である相対的な細胞サイズ(FSC-A)を有する。
【0132】
本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団におけるHelios+FoxP3+Tregの比率は、従来の方法に従って生成されるTreg集団、例えば、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団よりも少なくてもよい。(例えば、実施例7を参照のこと)。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の少なくとも1.5倍の割合のHelios+FoxP3+CD4+T細胞を有することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の少なくとも2倍の割合のHelios+FoxP3+CD4+T細胞を有することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の1.5~3倍の割合のHelios+FoxP3+CD4+T細胞を有することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の1.5~2.5倍の割合のHelios+FoxP3+CD4+T細胞を有することができる。Treg集団におけるHelios+FoxP3+Tregの割合はフローサイトメトリーを使用して決定することができる。
【0133】
いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも50%はHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも60%はHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも70%はHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも75%はHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも80%はHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも85%はHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも90%はHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも95%はHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも96%はHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも97%はHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも98%はHeliosを発現する。Heliosを発現するTreg集団における細胞の割合はフローサイトメトリーを使用して決定することができる。
【0134】
いくつかの態様では、Heliosを発現するTregの割合は、本明細書で提供されている方法に従ってTregを増殖させる場合(及び任意で遺伝子操作される場合)、50%を超えて減少しない。いくつかの態様では、Heliosを発現するTregの割合は、本明細書で提供されている方法に従ってTregを増殖させる場合(及び任意で遺伝子操作される場合)、40%を超えて減少しない。いくつかの態様では、Heliosを発現するTregの割合は、本明細書で提供されている方法に従ってTregを増殖させる場合(及び任意で遺伝子操作される場合)、30%を超えて減少しない。いくつかの態様では、Heliosを発現するTregの割合は、本明細書で提供されている方法に従ってTregを増殖させる場合(及び任意で遺伝子操作される場合)、25%を超えて減少しない。
【0135】
いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも60%はFoxP3を発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも70%はFoxP3を発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも75%はFoxP3を発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも80%はFoxP3を発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも85%はFoxP3を発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも90%はFoxP3を発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも95%はFoxP3を発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも96%はFoxP3を発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも97%はFoxP3を発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも98%はFoxP3を発現する。FOXP3を発現するTreg集団における細胞の割合はフローサイトメトリーを使用して決定することができる。
【0136】
いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも50%はFoxP3及びHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも60%はFoxP3及びHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも70%はFoxP3及びHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも75%はFoxP3及びHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも80%はFoxP3及びHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも85%はFoxP3及びHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも90%はFoxP3及びHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも95%はFoxP3及びHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも96%はFoxP3及びHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも97%はFoxP3及びHeliosを発現する。いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法によって生成されるTreg集団における細胞の少なくとも98%はFoxP3及びHeliosを発現する。FOXP3及びHeliosを発現するTreg集団における細胞の割合はフローサイトメトリーを使用して決定することができる。
【0137】
本明細書で実証されているように、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、従来の方法に従って生成されるTreg集団、例えば、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団と比べてエフェクターT細胞(Teff)の増殖を抑制する高い能力を有することができる。(例えば、実施例8を参照のこと)
【0138】
Treg集団がTeffの増殖を抑制する能力は、例えば、本明細書の実施例1に提供されているような試験管内抑制アッセイを使用して決定することができる。Treg集団がTeffの増殖を抑制する能力は試験管内で検出することができる。
【0139】
本明細書で提供されている一態様では、Teffの増殖を抑制するTreg集団の能力は、以下のアッセイ(i)一晩静置したTregを10μl/mLのImmunoCult CD3/28/2四量体(StemCell Technologies,Cat#10970))及びIL-2(300単位/mL)を含有するTreg培地中で刺激することと、(ii)Treg を洗浄して四量体及びIL-2を取り除くことと、(iii)Treg培地にTregを再浮遊させることと、(iv)Tregを細胞トレースバイオレット(CTV)で標識したPBMCと混合すること(例えば、1:1~1:16の比率で)と、(v)0.1mLのImmunoCultCD3/28/2四量体(3μl/mL)を4日間(約96時間)添加することと、(vi)CD3、CD4、及びCD8について細胞を染色することとを使用して決定される。Tregの非存在下と比べてTregの存在下でCD4+またはCD8+エフェクターT細胞からのCTVシグナルが低いことは、TregがTeffの増殖を抑制することを示している。
【0140】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の少なくとも2倍のTeffの増殖を抑制する能力を有することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の少なくとも3倍のTeffの増殖を抑制する能力を有することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の少なくとも4倍のTeffの増殖を抑制する能力を有することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の少なくとも5倍のTeffの増殖を抑制する能力を有することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の少なくとも6倍のTeffの増殖を抑制する能力を有することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の少なくとも7倍のTeffの増殖を抑制する能力を有することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の少なくとも8倍のTeffの増殖を抑制する能力を有することができる。
【0141】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の約2~約10倍のTeffの増殖を抑制する能力を有することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の約4~約10倍のTeffの増殖を抑制する能力を有することができる。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTreg集団は、6日間(約144時間)連続して刺激したTreg集団の約6~約10倍のTeffの増殖を抑制する能力を有することができる。
【0142】
いくつかの態様では、本明細書に記載されている方法の工程(例えば、すべての刺激工程、すべての休止工程、及び存在する場合にはすべての編集工程)は、30日未満、または29日未満、または28日未満、または27日未満、または26日未満、または25日未満、または24日未満、または23日未満、または22日未満、または21日未満、または20日未満、または19日未満、または18日未満、または17日未満、または16日未満、または14日未満で、または14日未満で、または14日~30日の間、または14日~25日の間、または15日~28日、または15日~25日の間で完了する。
【0143】
Tregの刺激
本明細書で提供されているように、Treg集団を増殖させる方法は、Treg集団を刺激剤の存在下で培養する刺激工程を含むことができる。刺激工程は刺激したTreg集団を生成することができる。
【0144】
本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)の少なくとも40%が活性化される。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)の少なくとも50%が活性化される。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)の少なくとも60%が活性化される。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)の少なくとも70%が活性化される。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)の少なくとも80%が活性化される。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)の少なくとも90%が活性化される。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)の少なくとも95%が活性化される。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)の少なくとも96%が活性化される。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)の少なくとも97%が活性化される。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)の少なくとも98%が活性化される。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)の少なくとも99%が活性化される。
【0145】
個々の刺激工程の間中、Tregは刺激剤の存在下で途切れることなく培養される。いくつかの態様では、個々の刺激工程は(刺激工程の開始時に)Treg培養物への刺激剤の単回添加を含むので、刺激剤の濃度は刺激工程全体を通して変化(例えば、減少)することができる。いくつかの態様では、個々の刺激工程は所望の濃度の刺激剤を維持するために、Treg培養物に刺激剤を繰り返し添加することを含む。
【0146】
本明細書で提供されているいくつかの方法は刺激工程から始まる。刺激工程はまた、休止工程の後に行うこともでき、及び/または休止工程の前に行うこともできる。いくつかの態様では、刺激工程は2回の休止工程の間に存在する。
【0147】
刺激剤は、抗原非特異的刺激因子(例えば、抗CD3抗体)または抗原特異的刺激因子、例えば、MHCペプチド多量体であることができる。いくつかの態様では、刺激剤は、例えば、TCRに結合することによってTreg上のT細胞受容体を活性化する。いくつかの態様では、刺激剤は、例えば、CD28に結合することによってTreg上のCD28を活性化する。いくつかの態様では、刺激剤は、例えば、TCR及びCD28に結合することによってTreg上のT細胞受容体及びCD28を活性化する。いくつかの態様では、刺激剤はPHAまたはConAのような分裂促進因子である。
【0148】
いくつかの態様では、刺激剤は抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様では、刺激剤は抗体複合体である。いくつかの態様では、刺激剤は四量体抗体複合体である。いくつかの態様では、四量体抗体複合体はCD3、CD28、及び/またはCD2に特異的に結合する。いくつかの態様では、四量体抗体複合体はCD3、CD28、及びCD2に特異的に結合する。CD3、CD28、及びCD2に特異的に結合する例示的な四量体抗体複合体は、ImmunoCult CD3/28/2四量体としてStemCell Technologies、カタログ番号10970から入手可能である。
【0149】
いくつかの態様では、四量体抗体複合体は少なくとも0.5ng/mlの濃度で存在する。
【0150】
いくつかの態様では、刺激剤は抗CD3抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様では、抗CD3抗体またはその抗原結合断片はOKT3である。そのような刺激剤は少なくとも0.5ng/mlの濃度で存在することができる。
【0151】
「抗CD3抗体」という用語は、成熟T細胞のT細胞抗原受容体におけるCD3受容体に対するヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及びマウス抗体を含む、抗体、例えばモノクローナル抗体を指す。抗CD3抗体には、ムロモナブとしても知られるOKT-3が含まれる。抗CD3抗体には、T3及びCD3cとしても知られるUHCT1クローンも含まれる。他の抗CD3抗体には、例えば、オテリズマブ、テプリズマブ、及びビシリズマブが挙げられる。
【0152】
「OKT-3」抗体(本明細書では「OKT3」とも呼ぶ)は、例えば、Miltenyi Biotech,Inc.,San Diego,Calif.,USAからOKT-3 30ng/mL、MACS GMP CD3 pureとして市販されている。ムロモナブの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び配列番号2に示す。
QVQLQQSGAELARPGASVKMSCKASGYTFTRYTMHWVKQRPGQGLEWIGYINPSRGYTNYNQKFKDKATLTTDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARYYDDHYCLDYWGQGTTLTVSSAKTTAPSVYPLAPVCGGTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号1)
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSYMNWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPAHFRGSGSGTSYSLTISGMEAEDAATYYCQQWSSNPFTFGSGTKLEINRADTAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC(配列番号2)
【0153】
いくつかの態様では、刺激剤は抗CD28抗体またはその抗原結合断片である。そのような刺激剤は少なくとも0.5ng/mlの濃度で存在することができる。
【0154】
刺激剤は細胞またはビーズのような基材上に存在することができる。ビーズは、プラスチック、ガラス、またはその他の好適な材料であることができ、通常、1~20ミクロンの範囲である。いくつかの態様では、ビーズは常磁性ビーズである。いくつかの態様では、ビーズは超磁性ビーズである。したがって、例えば、刺激剤は抗CD3コーティングされた超磁性ビーズ及び/または抗CD28コーティングされた超磁性ビーズであることができる。そのような刺激剤は、例えば、約5μg/mlまたは約10μg/mlの濃度で存在することができる。そのような刺激剤は、例えば、約2.5μg/ml~約15μg/mlの濃度で存在することができる。
【0155】
基質としての使用に好適な細胞には、抗原提示細胞(APC)及び人工抗原提示細胞(aAPC)が挙げられる。
【0156】
いくつかの態様では、刺激剤は抗原提示細胞(APC)または人工抗原提示細胞(aAPC)である。aAPCは照射されたaAPCであることができる。
【0157】
いくつかの態様では、刺激剤はビーズ上にない。
【0158】
いくつかの態様では、刺激剤は、CD3、CD28、及び/またはCD2に特異的に結合する四量体抗体複合体、抗CD3抗体またはその抗原結合断片、抗CD28抗体またはその抗原結合断片、及び/または抗原提示細胞または人工抗原提示細胞である。
【0159】
いくつかの態様では、刺激剤は、Treg増殖を、例えば、72時間以内に少なくとも1.5倍増やすのに十分な濃度で存在する。いくつかの態様では、刺激剤は、Treg増殖を、例えば、72時間以内に少なくとも2倍増やすのに十分な濃度で存在する。いくつかの態様では、刺激剤は、Treg増殖を、例えば、72時間以内に少なくとも3倍増やすのに十分な濃度で存在する。Treg の増殖は、ATPの定量に基づいて培養物にて代謝活性がある生細胞の数を決定するCell Titer Glo(登録商標)のような発光細胞生存率アッセイを使用して測定することができる。
【0160】
いくつかの態様では、刺激剤は、試験管内で培養されたT細胞の活性化状態の一般的に使用される指標である、細胞の前方散乱(FSC)プロファイルを増加させるのに十分な濃度で存在する。
【0161】
本明細書で提供されているように、Treg集団を増殖させる方法は複数の刺激工程を含むことができる。そのような態様では、刺激工程は同じ刺激剤を使用することができ、または刺激工程は異なる刺激剤を使用することができる。複数の刺激工程が同じ刺激剤を使用する場合、刺激剤は同じ濃度の刺激剤を使用することができ、または異なる濃度の刺激剤を使用することができる。刺激剤は、単一の刺激工程が2つの刺激剤の使用を(同時に及び/または連続的に)含むことができるように、組み合わせて使用することができる。したがって、いくつかの態様では、刺激剤はCD3及びCD28でコーティングされた超磁性ビーズである。
【0162】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は2つの刺激工程(休止工程によって分離される)を含む。本明細書で提供されている方法は少なくとも2つの刺激工程(休止工程によってそれぞれ分離される)を含む。本明細書で提供されている方法は少なくとも3つの刺激工程(休止工程によって分離される)を含む。
【0163】
いくつかの態様では、刺激工程は少なくとも1日(約24時間)である。いくつかの態様では、刺激工程は少なくとも2日(約48時間)である。いくつかの態様では、刺激工程は少なくとも3日(約72時間)である。いくつかの態様では、刺激工程は少なくとも4日(約96時間)である。
【0164】
いくつかの態様では、刺激工程は約1日(約24時間)である。いくつかの態様では、刺激工程は約2日(約48時間)である。いくつかの態様では、刺激工程は約3日(約72時間)である。いくつかの態様では、刺激工程は約4日(約96時間)である。
【0165】
いくつかの態様では、刺激工程は約1日(約24時間)~約5日(約120時間)である。いくつかの態様では、刺激工程は約1日(約24時間)~約4日(約96時間)である。いくつかの態様では、刺激工程は約1日(約24時間)~約3日(約72時間)である。いくつかの態様では、刺激工程は約2日(約48時間)~約5日(約120時間)である。いくつかの態様では、刺激工程は約2日(約48時間)~約4日(約96時間)である。いくつかの態様では、刺激工程は約3日(約72時間)~約4日(約96時間)である。
【0166】
日によっては、刺激工程は6日(約144時間)を超えない、または5日(約120時間)を超えない。
【0167】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は少なくとも2つ(例えば、2つ)の刺激工程(休止工程によってそれぞれ分離される)を含み、その際、第1の刺激工程は第2の刺激工程よりも長い。いくつかの態様では、第1の刺激工程は、第2の刺激工程より、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、または少なくとも約72時間長い。第1の刺激工程は、例えば、約1日(約24時間)~約4日(約96時間)であることができ、第2の刺激工程は、例えば、約1日(約24時間)~約3日(約72時間)であることができる。いくつかの態様では、第1の刺激工程は約3日(約72時間)であり、第2の刺激工程は約2日(約48時間)である。
【0168】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法はTregを遺伝子操作する前に、少なくとも1回の刺激工程を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は、Tregを遺伝子操作する前に、少なくとも2回の刺激工程(それぞれ休止工程によって分離される)を含む。
【0169】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は、Tregを遺伝子操作した後に、少なくとも1回の刺激工程を含む。
【0170】
Tregを休止させること
本明細書で提供されているように、Treg集団を増殖させる方法は、Treg集団を刺激剤の非存在下で培養する休止工程を含むことができる。休止工程は休止させたTreg集団を生成することができる。本明細書で使用されるとき、休止とは刺激剤が存在しないことを指す(且つ、例えば、細胞の成長、分裂、増殖、またはTregの他の活性が存在しないことを指すものではない)。
【0171】
本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の非存在下で培養されたTreg集団におけるTregの有意な部分は活性があるT細胞受容体、及び/またはCD28またはGITRのような共刺激分子を含まない。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の非存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)のわずか20%しか活性化されない。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の非存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)のわずか15%しか活性化されない。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の非存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)のわずか10%しか活性化されない。本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、刺激剤の非存在下でTreg集団を培養すると、集団におけるTreg上のT細胞受容体及び/または共刺激分子(例えば、CD28またはGITR)のわずか5%しか活性化されない。
【0172】
当業者は、Treg集団が刺激剤の非存在下で培養されているかどうかを決定するための方法を知っているであろう。例えば、刺激剤の除去/非存在は、当業者に既知の方法を使用して、例えば、細胞サイズ及び/または粒度の変化を決定することによって、Treg活性化マーカーの下方調節を決定することによって、及び/または免疫抑制性サイトカイン産生の下方調節によって定量されてもよい。
【0173】
いくつかの態様では、刺激剤の非存在は細胞サイズ及び/または粒度の変化を決定することによって決定される。いくつかの態様では、細胞サイズ及び/または粒度の変化はフローサイトメーター(すなわち、FSC/SSC測定)を使用して測定される。本明細書で言及されているように、活性化された細胞はその前方散乱(FSC)プロファイルに基づいて特徴付けることができる。いくつかの態様では、刺激剤を除去する前のTreg集団の細胞サイズ(FSC-A)と比べて、刺激剤の非存在下では、Treg集団の細胞サイズ(FSC-A)は、約40%未満、または約50%未満、または約60%未満、または約70%未満、または約75%未満、または約80%未満、または約90%未満、またはそれ以下である。いくつかの態様では、刺激剤の非存在下でのTreg集団の細胞サイズ(FSC-A)は、刺激剤の除去後約12時間、または約18時間、または約24時間、または約36時間、または約48時間、または約72時間で決定される。いくつかの態様では、刺激剤の除去前のTreg集団の細胞サイズ(FSC-A)は、刺激剤の除去前の約2時間、約1時間、約30分、約15分、またはそれ未満の時点で決定される。
【0174】
刺激剤の非存在を決定するための他の非限定的な例には、Treg活性化マーカー(例えば、FoxP3、Helios、CTLA4、CD25、CD69、HLA-DR)の下方調節を決定すること、及び/または免疫抑制性サイトカイン産生(例えば、IL-10、TGFb)の下方調節を決定することが挙げられる。いくつかの態様では、刺激剤を除去する前のTreg集団のTreg活性化マーカーの発現及び/または免疫抑制性サイトカインの産生と比べて、刺激剤の非存在下では、Treg活性化マーカーの発現及び/または免疫抑制性サイトカインの産生は、約40%未満、または約50%未満、または約60%未満、または約70%未満、または約75%未満、または約80%未満、または約90%未満、またはそれ以下である。いくつかの態様では、刺激剤の非存在下でのTreg集団のTreg活性化マーカーの発現及び/または免疫抑制性サイトカインの産生は、刺激剤の除去後約12時間、または約18時間、または約24時間、または約36時間、または約48時間、または約72時間で決定される。いくつかの態様では、刺激剤の除去前のTreg集団のTreg活性化マーカーの発現及び/または免疫抑制性サイトカインの産生は、刺激剤の除去前の約2時間、約1時間、約30分、約15分、またはそれ未満の時点で決定される。
【0175】
休止工程はTreg培養物から刺激剤を除去することによって開始することができる。刺激剤は、例えば、洗浄工程及び/または遠心分離工程によって除去することができる。本明細書で実証されているように、例えば、2日(約48時間)、または3日(約72時間)、または4日(約96時間)、またはそれ以上の刺激後、休止工程のための刺激を除去すると、Tregの増殖に改善がもたらされ得る。
【0176】
いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも25%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも50%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも60%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも70%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも80%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも90%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも91%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも92%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも93%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも94%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも95%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも96%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも97%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも98%減らす。いくつかの態様では、刺激剤の濃度は、刺激工程に存在する刺激剤の濃度と比べて休止工程にて少なくとも99%減らす。いくつかの態様では、休止工程では刺激剤は存在しない、すなわち、Tregはどんな刺激剤も含まずに培養される。本明細書で提供されているいくつかの方法は休止工程から始まる。休止工程 は刺激工程の後に行うこともでき、及び/または刺激工程の前に行うことができる。いくつかの態様では、休止工程は2回の刺激工程の間に存在する。
【0177】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は少なくとも1回の休止工程を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は少なくとも2回の休止工程を含む。
【0178】
いくつかの態様では、休止工程は少なくとも1日(約24時間)である。
【0179】
いくつかの態様では、休止工程は少なくとも2日(約48時間)である。
【0180】
いくつかの態様では、休止工程は約3日(約72時間)である。
【0181】
いくつかの態様では、休止工程は約4日(約96時間)である。
【0182】
いくつかの態様では、休止工程は約5日(約120時間)である。
【0183】
いくつかの態様では、休止工程は約1日(約24時間)~約5日(約120時間)である。いくつかの態様では、休止工程は約1日(約24時間)~約4日(約96時間)である。いくつかの態様では、休止工程は約1日(約24時間)~約3日(約72時間)である。いくつかの態様では、休止工程は約2日(約48時間)~約4日(約96時間)である。いくつかの態様では、休止工程は約2日(約48時間)~約5日(約120時間)である。いくつかの態様では、休止工程は約3日(約72時間)~約4日(約96時間)である。
【0184】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は、Tregを遺伝子操作する前に、少なくとも1回の休止工程を含む。本明細書で使用されるとき、遺伝子操作「前」の休止工程は、遺伝子操作の直前に休止工程が行われることを必要としない。したがって、刺激工程、次に休止工程、その後刺激工程、次いで遺伝子操作を含む方法は、遺伝子操作の前に休止工程を含む方法である。
【0185】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法はTregを遺伝子操作した後に、少なくとも1回の休止工程を含む。
【0186】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法はTregを遺伝子操作した後に休止工程を含む。いくつかの態様では、Tregを遺伝子操作し、その後、遺伝子操作と休止工程との間に刺激工程を含まずに休止させる。
【0187】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は、(i)Tregが遺伝子操作される前の少なくとも1回の休止工程、及び(ii)Tregが遺伝子操作された後、例えば、Tregが再び刺激される前に少なくとも1回の休止工程を含む。
【0188】
Tregの増殖
本明細書で提供されているように、Tregを増殖させる方法は、Tregを刺激することとTregを休止させることとの交互の期間、または「不連続刺激」を含むことができる。したがって、いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は少なくとも1回の刺激工程と少なくとも1回の休止工程とを含む。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は休止工程によって分離される少なくとも2回の刺激工程を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法はそれぞれ休止工程によって分離される少なくとも3回の刺激工程を含む。いくつかの態様では、Tregは、例えば、休止工程の間に遺伝子操作することができる(本明細書の他の場所で考察されているように)(すなわち、刺激剤の非存在下でTregを遺伝子操作することができる)。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は遺伝子操作を含まない。
【0189】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は、第1の刺激工程、続いて第1の休止工程、その後に第2の刺激工程、その後に第2の休止工程を含む。いくつかの態様では、Tregは第2の休止工程の後に回収される。
【0190】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は、第1の刺激工程、続いて第1の休止工程、その後に第2の刺激工程、その後に第2の休止工程、その後に第3の刺激工程、その後に第3の休止工程を含む。いくつかの態様では、Tregは第3の休止工程の後に回収される。
【0191】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は、第1の刺激工程、続いて第1の休止工程、その後に第2の刺激工程、その後、その間にTregが遺伝子操作される第2の休止工程、その後に第3の刺激工程、その後に第3の休止工程を含む。いくつかの態様では、Tregは第3の休止工程の後に回収される。
【0192】
刺激工程及び休止工程の時間の非限定的な例が本明細書に記載されている。非限定的な態様では、第1の刺激工程は約2日(約48時間)~約5日(約120時間)(例えば、約3日(約72時間))であることができ;第1の休止工程は約2日(約48時間)~約5日(約120時間)(例えば、約3日(約72時間))であることができ;第2の刺激工程は、約2日(約48時間)~約5日(約120時間)(例えば、約2日(約48時間))であることができ;第2の休止工程は、約2日(約48時間)~約5日(約120時間)(例えば、約3日(約72時間))であることができ;第3の刺激工程は、約2日(約48時間)~約5日(約72時間)(例えば、約2日(約48時間))であることができ;且つ第3の休止工程は約2日(約48時間)~約5日(約120時間)(例えば、約2日(約48時間))であることができる。休止工程と刺激工程の時間の非限定的な例を表Aに提供する。
【表1】
【0193】
いくつかの態様では、Tregは凍結保存される。
【0194】
本明細書で提供されているように、TregはTregに好適な培地にて培養することができる。例示的なT細胞培地は、例えば、(i)10%ヒト非働化血清を補充したX-VIVO15T細胞増殖培地(Lonza,Cat#04-418Q)、(ii)5mMのHEPES、2mMのL-グルアミン、50mg/mlのペニシリン、50mg/mlのストレプトマイシン、5mM非必須アミノ酸、5mMピルビン酸ナトリウム、及び10%FBSを補充したRPMI1640培地、または(iii)10%熱非働化ウシ胎児血清(Biosource International)、非必須アミノ酸、0.5mMのピルビン酸ナトリウム、5mMのHepes、1mMのglutaMaxI、及び55μMのβ-メルカプトエタノールを含むDMEMベースを含むことができる。
【0195】
Treg培養培地はさらに、例えば、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-15(IL-15)、及び/またはインターロイキン-7(IL-7)のようなインターロイキンのようなサイトカインを含むことができる。
【0196】
「IL-2」(または「IL2」)という用語は、インターロイキン-2として知られるサイトカイン及びT細胞増殖因子を指し、ヒト及び哺乳類の形態、保存的アミノ酸置換がある形態、それらのグリコフォーム、バイオ後続品、及び変異体を含むIL-2のすべての形態が含まれる。IL-2は、例えば、Nelson,J.Immunol.2004,172,3983-88及びMalek,Annu.Rev.Immunol.2008,26,453-79に記載されており、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。IL-2 という用語は、アルデスロイキン(PROLEUKIN、使い捨てバイアルあたり2,200万IUで複数の供給業者から市販されている)のようなIL-2のヒト組換え型、と同様にCellGenix,Inc.,Portsmouth,N.H.,USA(CELLGRO GMP)またはProSpec-Tany TechnoGene Ltd.,East Brunswick,N.J.,USA(Cat.No.CYT-209-b)によって商業的に供給されている組換え型IL-2、及び他の供給業者の他の市販同等品を包含する。アルデスロイキン(デスアラニル-1、セリン-125ヒトIL-2)は分子量約15kDaの非グリコシル化ヒト組換え型IL-2である。IL-2という用語はまた、Nektar Therapeutics,South San Francisco,Calif.,USAから入手可能なPEG化IL-2プロドラッグNKTR-214を含む、IL-2のPEG化形態も包含する。本発明での使用に好適なNKTR-214及びペグ化IL-2は、米国特許出願公開第US2014/0328791A1号及び国際特許出願公開第WO2012/065086A1号に記載されており、その開示はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本発明での使用に好適な結合型IL-2の別の形態は、米国特許第4,766,106号、同第5,206,344号、同第5,089,261号、及び同第4,902,502号に記載されており、これらの開示はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本発明での使用に好適なIL-2の製剤は、米国特許第6,706,289号に記載されており、その開示はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。ヒトIL2遺伝子はNCBI Gene ID 3558によって特定されている。ヒトIL2遺伝子の例示的なヌクレオチド配列はNCBI参照配列:NG_016779.1である。
【0197】
本明細書での使用に好適な組換えヒトIL-2のアミノ酸配列は以下のとおりである。
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFCQSIISTLT(配列番号3)。
【0198】
アルデスロイキン(デスアラニル-1、セリン-125ヒトIL-2)は分子量約15kDaの非グリコシル化ヒト組換え型IL-2である。本明細書で提供されている方法での使用に好適なアルデスロイキンのアミノ酸配列は以下のとおりである:
PTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLT(配列番号4)。
【0199】
インターロイキン2(IL-2)は免疫系におけるサイトカインシグナル伝達分子の一種であり、免疫を担当する白血球(白血球、多くの場合はリンパ球)の活性を調節する15.5~16kDaのタンパク質であることが報告されている。IL-2は、微生物感染に対する生体の自然な反応の一部であり、リンパ球によって発現されるIL-2受容体に結合することによってその効果に介在すると理解されている。IL-2の主な供給源は活性化CD4+T細胞と活性化CD8+T細胞である。
【0200】
IL-2は、主にT細胞に対する直接的な影響を介して、免疫系、寛容、及び免疫の重要な機能にて本質的な役割を担っていると考えられている。T細胞が成熟する胸腺では、特定の未熟T細胞の、体内の正常な健康な細胞を攻撃する準備ができている他のT細胞を抑制する制御性T細胞への分化を促進することによってIL-2は自己免疫疾患を防止する。IL-2は活性化誘導細胞死(AICD)を増強する。また、IL-2は、最初のT細胞が抗原によって刺激された場合、T細胞がエフェクターT細胞及びメモリーT細胞に分化するのを促進するので、生体が感染症を撃退するのを助ける。IL-2は他の極性サイトカインと一緒に、ナイーブCD4+T細胞のTh1リンパ球及びTh2リンパ球への分化を刺激する一方で、Th17リンパ球及び濾胞性Thリンパ球への分化を妨げる。その発現及び分泌は厳密に調節されており、免疫応答の増強及び抑制における一時的な正及び負のフィードバックループ双方の一部として機能する。抗原によって選択されたT細胞クローンの数と機能の拡大に依存するT細胞免疫記憶の発達における役割を通して、IL-2は細胞性免疫の持続にて役割を担う。
【0201】
いくつかの態様では、Tregはインターロイキン(例えば、IL-2)の存在下で培養される。インターロイキン(例えば、IL-2)は、組換えインターロイキン(例えば、IL-2)であることができる。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は少なくとも400単位/mLである。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は少なくとも500単位/mLである。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は少なくとも550単位/mLである。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は少なくとも600単位/mLである。
【0202】
いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は1,000単位/mL以下である。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は900単位/mL以下である。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は800単位/mL以下である。
【0203】
いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は約200単位/mL~約2,500単位/mLである。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は約500単位/mL~約1,000単位/mLである。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は約500単位/mL~約900単位/mLである。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は約500単位/mL~約800単位/mLである。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は約550単位/mL~約1,000単位/mLである。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は約550単位/mL~約900単位/mLである。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は約550単位/mL~約800単位/mLである。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は約600単位/mL~約1,000単位/mLである。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は約600単位/mL~約900単位/mLである。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度は約600単位/mL~約800単位/mLである。
【0204】
インターロイキン(IL-2など)の濃度は、ここで提供される方法中に変更することができる。例えば、インターロイキン(例えば、IL-2)の濃度を低下させることができる。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)は約800単位/mLの濃度で存在し、次いで約300単位/mLの濃度に低下させる。いくつかの態様では、インターロイキン(例えば、IL-2)は約800単位/mLの濃度で約7日間(約168時間)存在し、次いで約300単位/mLで存在する。
【0205】
「IL-7」(本明細書では「IL7」とも呼ばれる)という用語は、骨髄及び胸腺の間質細胞によって分泌されるサイトカインである。また、それは角化細胞、樹状細胞、肝細胞、ニューロン、及び上皮細胞によっても産生されるが、通常のリンパ球によっては産生されない。IL-7は多分化能(多分化能)造血幹細胞のリンパ前駆細胞への分化を刺激する(IL-3によって分化が刺激される骨髄前駆細胞とは対照的に)。IL-7はリンパ系列(B細胞、T細胞、NK細胞)のすべての細胞の増殖を刺激することが報告されている。それは、B細胞の成熟、T細胞及びNK細胞の生存、発生、及び恒常性の特定の段階での増殖に重要であると考えられている。ヒトIL7遺伝子のヌクレオチド配列の例は、NCBI参照配列:AH006906.2である。本明細書で提供されている方法での使用に好適な組換えヒトIL-7のアミノ酸配列は以下のとおりである。
MDCDIEGKDGKQYESVLMVSIDQLLDSMKEIGSNCLNNEFNFFKRHICDANKEGMFLFRAARKLRQFLKMNSTGDFDLHLLKVSEGTTILLNCTGQVKGRKPAALGEAQPTKSLEENKSLKEQKKLNDLCFLKRLLQEIKTCWNKILMGTKEH(配列番号5)。
【0206】
本明細書で提供されている方法で利用される場合、IL-7の濃度は約10U/ml~約7,000U/mlであることができる。いくつかの態様では、IL-7の濃度は約5ng/ml~約3,500ng/mlであることができる。
【0207】
「IL-15」(「IL15」とも呼ばれる)という用語は、インターロイキン-15として知られるサイトカイン及びT細胞増殖因子を指し、本発明で利用されるとき、ヒト及び他の哺乳類の形態、保存的アミノ酸置換がある形態、それらのグリコフォーム、バイオ後続品、及び変異体を含むIL-15のすべての形態が含まれる。IL-15は、例えば、Steel JC,Waldmann TA,Morris JC (January 2012),”Interleukin-15 biology and its therapeutic implications in cancer,”Trends in Pharmacological Sciences,33(1):35-41及びWaldmann TA,Tagaya Y(1999),”The multifaceted regulation of interleukin-15 expression and the role of this cytokine in NK cell differentiation and host response to intracellular pathogens,”Annual Review of Immunology,17:19-49に記載されており、それらの開示はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。IL-15という用語はIL-15の組換え型も包含する。本明細書で使用されるとき、IL-15という用語はIL-15のペグ化形態も包含する。ヒトIL15遺伝子はNCBI遺伝子ID3600によって特定されている。ヒトIL15遺伝子のヌクレオチド配列の例は、NCBI参照配列:NG_029605.2である。本明細書で提供されている方法での使用に好適な組換えヒトIL-15のアミノ酸配列は以下のとおりである。
MNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS(配列番号6)
【0208】
IL-15は0.5ng/mlを超える濃度で本明細書に提供されている方法にて利用され得る。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は1ng/mlを超える。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は2ng/mlを超える。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は10ng/mlを超える。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は50ng/mlを超える。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は75ng/mlを超える。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は100ng/mlを超える。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は150ng/mlを超える。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は200ng/mlを超える。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は10,000ng/ml未満、任意で9000、8000、7000、6000、5000、4000、3000、2000、または1000ng/ml未満である。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は約300ng/mlである。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は約1000ng/mlである。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は1000ng/mlを超える。いくつかの態様では、IL-15の濃度は100ng/mlを超える。いくつかの態様では、IL-15の濃度は約100ng/ml~約1000ng/mlである。いくつかの態様では、IL-15の濃度は約300ng/mlである。
【0209】
IL-15は1U/mlを超える濃度で本明細書に提供されている方法にて利用され得る。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は2U/mlを超える。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は4U/mlを超える。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は20U/mlを超える。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は200U/mlを超える。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は20,000U/ml未満、任意で18,000、16,000、14,000、12,000、10,000、8000、6000、4000、または2000ng/ml未満である。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は約600U/mlである。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は約2000U/mlである。いくつかの態様では、利用されるIL-15の濃度は2000U/mlを超える。いくつかの態様では、IL-15の濃度は200U/mlを超える。いくつかの態様では、IL-15の濃度は約200U/ml~約2000U/mlである。いくつかの態様では、IL-15の濃度は約600U/mlである。
【0210】
いくつかの態様では、TregはN-アセチル-L-システイン(NAC)の存在下で培養される。いくつかの態様では、NACは培養物にて約5mMの濃度で存在する。いくつかの態様では、NACは培養物にて約8.2mg/mlの濃度で存在する。
【0211】
いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約125,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約250,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約500,000個の細胞の濃度で培養される。
【0212】
いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約125,000個の細胞~1mlあたり約5,000,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約250,000個の細胞~1mlあたり約5,000,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約500,000個の細胞~1mlあたり約5,000,000個の細胞の濃度で培養される。
【0213】
いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約125,000個の細胞~1mlあたり約3,000,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約250,000個の細胞~1mlあたり約3,000,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約500,000個の細胞~1mlあたり約3,000,000個の細胞の濃度で培養される。
【0214】
いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約125,000個の細胞~1mlあたり約2,500,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約250,000個の細胞~1mlあたり約2,500,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約500,000個の細胞~1mlあたり約2,500,000個の細胞の濃度で培養される。
【0215】
いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約125,000個の細胞~1mlあたり約2,000,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約250,000個の細胞~1mlあたり約2,000,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約500,000個の細胞~1mlあたり約2,000,000個の細胞の濃度で培養される。
【0216】
いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約125,000個の細胞~1mlあたり約1,500,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約250,000個の細胞~1mlあたり約1,500,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約500,000個の細胞~1mlあたり約1,500,000個の細胞の濃度で培養される。
【0217】
いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約125,000個の細胞~1mlあたり約1,000,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約250,000個の細胞~1mlあたり約1,000,000個の細胞の濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり約500,000個の細胞~1mlあたり約1,000,000個の細胞の濃度で培養される。
【0218】
いくつかの態様では、Tregは1mlあたり5,000,000個の細胞を超えない濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり3,000,000個の細胞を超えない濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり2,500,000個の細胞を超えない濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり2,000,000個の細胞を超えない濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり1,500,000個の細胞を超えない濃度で培養される。いくつかの態様では、Tregは1mlあたり1,000,000個の細胞を超えない濃度で培養される。
【0219】
いくつかの態様では、Tregは、T細胞の増殖に好適な温度、例えば少なくとも摂氏25度、少なくとも摂氏30度、または摂氏約37度で培養される。
【0220】
いくつかの態様では、方法は、エフェクターT細胞(Teff)の増殖を制限することができるラパマイシンの使用を含む。ラパマイシンは、例えば、培養の最初の週に使用することができる。いくつかの態様では、ラパマイシンは培養の最初の2週間に使用することができる。いくつかの態様では、方法はラパマイシンの使用を含まない。いくつかの態様では、方法は遺伝子操作の前にラパマイシンの使用を含まない。いくつかの態様では、方法は培養の最初の2週間にラパマイシンの使用を含まない。いくつかの態様では、方法はラパマイシンの使用を含まない。培養の最初の週。
【0221】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は超磁性ビーズの使用を含む。いくつかの態様では、方法は超磁性ビーズの使用を含まない。いくつかの態様では、方法はビーズの使用を含まない。
【0222】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は人工抗原提示細胞の使用を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は人工抗原提示細胞の使用を含まない。
【0223】
いくつかの態様では、本明細書で提供されているTregを増殖させる方法は:(a)刺激剤(例えば、任意で10μl/mlの濃度でCD3、CD28、及びCD2に特異的に結合する四量体抗体複合体)の存在下でTregを約3日間(約72時間)(例えば、0日目から3日目)培養することと;(b)任意で洗浄によって刺激剤(例えば、CD3、CD28、及びCD2に特異的に結合する四量体抗体複合体)を除去すること;任意で1ml当たり50万個の細胞で細胞を再播種すること;刺激剤の非存在下で細胞を約3日間(約72時間)(例えば、3日目から6日目)培養することとを含み、その際、該方法は、Tregの少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、または約80倍の増殖をもたらす。
【0224】
いくつかの態様では、本明細書で提供されているTregを増殖させる方法は、
(a)刺激剤(例えば、任意で10μl/mlの濃度でのCD3、CD28、及びCD2に特異的に結合する四量体抗体複合体)の存在下でTregを約3日間(約72時間)(例えば、0日目から3日目)培養することと;
(b)任意で洗浄することによって、刺激剤(例えば、CD3、CD28、及びCD2に特異的に結合する四量体抗体複合体)を除去すること;任意で1ml当たり50万細胞で細胞を再播種すること;刺激剤の非存在下で細胞を約3日間(約72時間)(例えば、3日目から6日目)培養することと;
(c)刺激剤(例えば、任意で10μl/mlの濃度でのCD3、CD28、及びCD2に特異的に結合する四量体抗体複合体)の存在下でTregを約2日間(約48時間)(例えば、6日目から8日目)培養すること;1mlあたり50万個の細胞の濃度に調整することと;
(d)任意で洗浄することによって、刺激剤(例えば、CD3、CD28、及びCD2に特異的に結合する四量体抗体複合体)を除去すること;Tregを遺伝子操作すること;刺激剤の非存在下で約3日間(約72時間)(例えば、8日目から11日目)細胞を培養することと;
(e)刺激剤(例えば、任意で10μl/mlの濃度でのCD3、CD28、及びCD2に特異的に結合する四量体抗体複合体)の存在下でTregを約2日間(約48時間)(例えば、11日目から13日目)培養することと;
(f)任意で洗浄することによって、刺激剤(例えば、CD3、CD28、及びCD2に特異的に結合する四量体抗体複合体)を除去すること;任意で1ml当たり50万個の細胞で細胞を再播種すること;刺激剤の非存在下で細胞を約2日間(約48時間)(例えば、13日目から15日目)培養することと;
(g)細胞を回収することとを含む。
【0225】
工程(a)~(g)を含むそのような方法は、IL-2(任意で400IU/mlの濃度)及び/またはNAC(任意で8.2mg/mlの濃度)の存在下でTregを培養することを含むことができる。いくつかの態様では、IL-2の濃度は、2~9日目、11日目、13日目、及び14日目に400IU/mlに調整される。
【0226】
工程(a)~(g)を含むそのような方法は、細胞を複数回、例えば4日目、5日目、7日目、11日目、13日目、及び14日目に分割することを含むことができる。
【0227】
いくつかの態様では、Tregは、工程(b)の終わりまでに、例えば6日目までに少なくとも60倍、または少なくとも70倍、工程(b)の終わりまでに、例えば6日目までに80倍に増殖している。
【0228】
いくつかの態様では、Tregは工程(b)の終わりまでに、例えば6日目までに約80倍に増殖している。
【0229】
いくつかの態様では、工程(c)はさらに、TregをT25フラスコに移す工程を含む。
【0230】
本明細書で提供されている増殖方法を使用して、Treg集団におけるTregの数を、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、少なくとも1500倍、少なくとも2000倍、少なくとも2500倍、少なくとも3000倍、少なくとも3500倍、または少なくとも4000倍増やすことができる。
【0231】
いくつかの態様では、Tregの数は10日以内に少なくとも500倍増加する。
【0232】
いくつかの態様では、Tregの数は20日以内に少なくとも1000倍増加する。いくつかの態様では、Tregの数は19日以内に少なくとも1000倍増加する。いくつかの態様では、Tregの数は18日以内に少なくとも1000倍増加する。いくつかの態様では、Tregの数は17日以内に少なくとも1000倍増加する。いくつかの態様では、Tregの数は16日以内に少なくとも1000倍増加する。いくつかの態様では、Tregの数は15日以内に少なくとも1000倍増加する。いくつかの態様では、Tregの数は14日以内に少なくとも1000倍増加する。いくつかの態様では、Tregの数は13日以内に少なくとも1000倍増加する。いくつかの態様では、Tregの数は12日以内に少なくとも1000倍増加する。いくつかの態様では、Tregの数は11日以内に少なくとも1000倍増加する。
【0233】
いくつかの態様では、Tregの数は20日以内に少なくとも2500倍増加する。いくつかの態様では、Tregの数は20日以内に少なくとも3000倍増加する。いくつかの態様では、Tregの数は20日以内に少なくとも3500倍増加する。いくつかの態様では、Tregの数は20日以内に少なくとも4000倍増加する。
【0234】
本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、例えば、本明細書で提供されている方法がTreg集団の過剰刺激を防止し、及び/または活性化誘導細胞死を防止するので、改善された特性を有する。例えば、いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、例えば、刺激剤の存在下で6日間(約144時間)培養されたTregと比べて、さらに小さい表面積を有する。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、刺激剤の存在下で6日間(約144時間)培養されたTreg表面積の0.9倍未満、0.85倍未満、0.8倍未満または0.75倍未満である表面積を有する。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、例えば、刺激剤の存在下で6日間(約144時間)培養されたTregと比べて高い比率のHelios+FoxP3+Tregを有する。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、例えば、刺激剤の存在下で6日間(約144時間)培養されたTregと比べて高い倍率の増殖を有する。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、例えば、刺激剤の存在下で6日間(約144時間)培養されたTregの増殖倍率の少なくとも1.5倍または少なくとも2倍である増殖倍率を有する。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、例えば、刺激剤の存在下で6日間(約144時間)培養されたTregと比べてエフェクターT細胞(Teffs)の増殖を抑制する高い能力を有する。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、例えば、刺激剤の存在下で6日間(約144時間)培養されたTregと比べてTeffの増殖を抑制する少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍高い能力を有する。
【0235】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って増殖させたTregは、増殖前のTreg集団と比べて、Helios発現の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%を維持する。
【0236】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、遺伝子操作後も増殖し続ける。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、遺伝子操作後(例えば、遺伝子操作後3日(約72時間)以内または4日(約96時間)以内)に少なくとも1.5倍に増殖する。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、遺伝子操作後(例えば、遺伝子操作後3日(約72時間)以内または4日(約96時間)以内)に少なくとも2倍に増殖する。いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法に従って生成されるTregは、遺伝子操作後(例えば、遺伝子操作後3日(約72時間)以内または4日(約96時間)以内)に少なくとも3倍に増殖する。
【0237】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は、増殖した(及び任意で遺伝子操作された)Treg集団を回収することを含む。いくつかの態様では、回収は刺激工程の直後に行われる。いくつかの態様では、回収は休止工程の直後に行われる。
【0238】
いくつかの態様では、刺激工程は遺伝子操作後、且つ回収前に行われる。いくつかの態様では、休止工程は遺伝子操作後、且つ回収前に行われる。いくつかの態様では、刺激工程及び休止工程の双方は遺伝子操作後、且つ回収前に行われる。
【0239】
いくつかの態様では、本明細書で提供されている方法は、増殖した(及び任意で遺伝子操作された)Treg集団を凍結保存することを含む。いくつかの態様では、凍結保存は刺激工程の直後に行われる。いくつかの態様では、凍結保存は休止工程の直後に行われる。
【0240】
Tregの遺伝子操作
本明細書で提供されている方法のいくつかの態様では、Tregは遺伝子操作される。遺伝子操作は、例えば、核酸または遺伝子調節システムをTregまたはTreg集団に導入することを含むことができる。核酸または遺伝子調節システムは、例えば、エレクトロポレーション及び/またはリボ核タンパク質(RNP)介在法によることを含む、当該技術分野で知られている方法を使用して導入することができる。
【0241】
遺伝子操作を介してTregに導入できる核酸は、ウイルス核酸または非ウイルス核酸であることができる。
【0242】
TregまたはTreg集団に導入される核酸はタンパク質をコードする核酸であることができる。タンパク質はTreg(複数可)に対して異種であるタンパク質であることができる。例えば、タンパク質はキメラ抗原受容体(CAR)または操作されたTCRのような操作された抗原受容体であることができる。
【0243】
いくつかの態様では、操作された抗原受容体は、シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインにヒンジ及び膜貫通ドメインを介して融合された細胞外抗原結合ドメインを含むCARである。いくつかの態様では、CARの細胞外ドメインは抗体に由来する抗原結合断片を含む。本開示にて有用な抗原結合ドメインには、例えば、scFvが含まれる。いくつかの態様では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、TCR複合体ゼータ鎖(例えば、CD3ξシグナル伝達ドメイン)、FcγRIII、FcεRI、またはTリンパ球活性化ドメインに由来することができる。いくつかの態様では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインはさらに、共刺激ドメイン、例えば、4-1BB、CD28、CD40、MyD88、またはCD70ドメインを含む。いくつかの態様では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインはさらに、例えば、4-1BB、CD28、CD40、MyD88、またはCD70ドメインのうちのいずれか2つのような2つの共刺激ドメインを含む。例示的なCAR構造及び細胞内シグナル伝達ドメインは当該技術分野で知られている(例えば、参照によって本明細書に組み込まれるWO2009/091826、US20130287748、WO2015/142675、WO2014/055657、及びWO2015/090229を参照のこと)。
【0244】
自己免疫疾患(例えば、GVHD、大腸炎、及び多発性硬化症)に関連する抗原に特異的なCARは、例えば、Zhang et al.,Frontiers in Immunology,9:1-8(2018);Int’l Publ.No.WO2017218850A1;及びMacDonald et al.,JCI,2016;126(4):1413-1424で考察されており、そのそれぞれが全体として参照によって本明細書に組み込まれる。
【0245】
いくつかの態様では、操作された抗原受容体は操作されたTCRである。操作されたTCRは、特定の標的抗原を認識するT細胞集団から単離されている及びクローニングされているTCRα鎖及び/またはTCRβ鎖を含む。操作されたTCRは、内在性対応物と同じメカニズムを介して抗原を認識する(例えば、標的細胞の表面に発現される主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質の文脈にて提示される同族抗原の認識による)。この抗原の結合は内在性シグナル伝達経路を刺激し、TCRを操作した細胞の活性化と増殖をもたらす。
【0246】
本明細書では、「遺伝子調節システム」という用語は、細胞に導入されたときに内在性標的DNA配列を修飾することができ、それによって、コードされた遺伝子産物の発現または機能を調節することができるタンパク質、核酸、またはそれらの組み合わせを指す。本開示の方法での使用に好適な多数の遺伝子編集システムが当該技術分野で知られており、それらには、shRNA、siRNA、ジンクフィンガーヌクレアーゼシステム、TALENシステム、及びCRISPR/Casシステムが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の方法にて有用な遺伝子調節システムは、例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2020/160489号に提供されている。
【0247】
本明細書で使用されるとき「調節する」という用語は、内在性標的遺伝子に対する遺伝子調節システムの効果に関して使用される場合、内在性標的遺伝子の配列の任意の変化、内在性標的遺伝子のエピジェネティックな状態の任意の変化、及び/または内在性標的遺伝子によってコードされるタンパク質の発現または機能の任意の変化を包含する。
【0248】
いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、例えば、内在性標的配列に1以上の突然変異を導入することによって、例えば、内在性標的配列に1以上の核酸を挿入するまたは欠失させることによって内在性標的遺伝子の配列の変化に介在することができる。内在性標的配列の変化に介在することができる例示的なメカニズムには、非相同末端結合(NHEJ)(例えば、古典的なまたは代替の)、マイクロホモロジー介在性末端結合(MMEJ)、相同組換え修復(例えば、内在性ドナーテンプレートの介在)、SDSA(合成依存性鎖アニーリング)、一本鎖アニーリングまたは一本鎖侵入が挙げられるが、これらに限定されない。
【0249】
いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、内在性標的配列のエピジェネティックな状態の変化に介在することができる。例えば、いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、内在性標的遺伝子DNAの共有結合修飾(例えば、シトシンのメチル化及びヒドロキシメチル化)または関連するヒストンタンパク質の共有結合修飾(例えば、リジンのアセチル化、リジン及びアルギニンのメチル化、セリン及びスレオニンのリン酸化、リジンのユビキチン化及びSUMO化)に介在することができる。
【0250】
いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、内在性標的遺伝子によってコードされるタンパク質の発現の変化に介在することができる。そのような態様では、遺伝子調節システムは、内在性標的DNA配列の修飾によって、またはDNA配列によりコードされるmRNA産物に作用することによって、コードされたタンパク質の発現を調節することができる。いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、修飾された内在性タンパク質の発現をもたらすことができる。そのような態様では、遺伝子調節システムが介在する内在性DNA配列に対する修飾は、遺伝子操作されていないTregにおける対応する内在性タンパク質と比べて機能の低下を示す内在性タンパク質の発現をもたらす。そのような態様では、修飾された内在性タンパク質の発現レベルは増加することも、低下することもでき、遺伝子操作されていないTregにおける対応する内在性タンパク質の発現レベルと同じである、または実質的に類似することができる。
【0251】
遺伝子操作を介してTregに導入することができる遺伝子調節システムは、(i)核酸分子;(ii)酵素タンパク質;または(iii)核酸分子及び酵素タンパク質を含むことができる。そのような遺伝子調節システムは、siRNA、shRNA、マイクロRNA(miR)、アンタゴmiR、またはアンチセンスRNAから選択される核酸分子を含むことができる。そのような遺伝子調節システムは、Tregにおける1以上の遺伝子の標的配列に特異的に結合するように操作されている酵素タンパク質を含むことができる。酵素タンパク質は、例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼであることができる。そのような遺伝子調節システムは、核酸分子及び酵素タンパク質を含むことができ、その際、核酸分子はガイドRNA(gRNA)分子であり、酵素タンパク質はCasタンパク質またはCasオルソログである。Casタンパク質はCas9タンパク質であることができる。
【0252】
核酸に基づく遺伝子調節システム
本明細書で使用されるとき、核酸に基づく遺伝子調節システムは、外来性タンパク質を必要とせずに内在性標的遺伝子の発現を調節することができる1以上の核酸分子を含むシステムである。いくつかの態様では、核酸に基づく遺伝子調節システムは、標的核酸配列に相補性であるRNA干渉分子またはアンチセンスRNA分子を含む。
【0253】
「アンチセンスRNA分子」とは、長さに関わらず、mRNA転写物に相補性であるRNA分子を指す。アンチセンスRNA分子とは、細胞、組織、または対象に導入することができ、内在性の遺伝子サイレンシング経路に頼らず、むしろ標的mRNA転写物のRNA分解酵素Hが介在する分解に頼るメカニズムを介して、内在性の標的遺伝子産物の発現低下をもたらす一本鎖RNA分子を指す。いくつかの態様では、アンチセンス核酸は、修飾された骨格、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、または当該技術分野で知られている他のものを含む、または非天然ヌクレオシド間結合を含んでもよい。いくつかの態様では、アンチセンス核酸はロックド核酸(LNA)を含むことができる。
【0254】
本明細書で使用されるとき「RNA干渉分子」は、内在性遺伝子サイレンシング経路(例えば、ダイサー及びRNA誘導サイレンシング複合体(RISC))を介した標的mRNAの分解によって内在性の標的遺伝子産物の発現低下に介在するRNAポリヌクレオチドを指す。例示的なRNA干渉因子には、マイクロRNA(本明細書では「miRNA」とも呼ばれる)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、RNAアプタマー、及びモルホリノが挙げられる。
【0255】
いくつかの態様では、核酸に基づく遺伝子調節システムは、1以上のmiRNAを含む。miRNAは、長さ約21~25ヌクレオチドの天然に存在する小さな非コードRNA分子を指す。miRNAは1以上の標的mRNA分子に対して少なくとも部分的に相補性である。miRNAは、翻訳抑制、mRNAの切断、及び/または脱アデニル化を介して内在性の標的遺伝子産物の発現を下方調節する(例えば、減少させる)ことができる。
【0256】
いくつかの態様では、核酸に基づく遺伝子調節システムは1以上のshRNAを含む。shRNAは、ステムループ構造を形成し、相補性のmRNA配列の分解を引き起こす、長さ約50~70ヌクレオチドの一本鎖RNA分子である。shRNAは、プラスミドまたは非複製組換えウイルスベクターにクローニングして細胞内に導入することができ、shRNAがコードする配列のゲノムへの統合をもたらす。そのため、shRNAは内在性の標的遺伝子の翻訳と発現を安定かつ一貫して抑制することができる。
【0257】
いくつかの態様では、核酸に基づく遺伝子調節システムは1以上のsiRNAを含む。siRNAは通常、長さが約21~23ヌクレオチドの二本鎖RNA分子を指す。siRNA は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれる複数タンパク質の複合体と会合し、その間に「パッセンジャー」センス鎖が酵素的に切断される。活性化されたRISCに含有されるアンチセンス「ガイド」鎖は、配列の相同性のためRISCを対応するmRNAに誘導し、同じヌクレアーゼが標的mRNAを切断し、結果的に特異的な遺伝子サイレンシングを生じる。最適には、siRNAは、長さが18、19、20、21、22、23、または24ヌクレオチドであり、その3’末端に2塩基のオーバーハングを有する。siRNAは個々の細胞及び/または培養系に導入することができ、その結果、標的mRNA配列が分解される。siRNA及びshRNAは、Fire et al.,Nature,391:19,1998 及び米国特許第7,732,417号;同第8,202,846号;及び同第8,383,599号にさらに記載されている。
【0258】
いくつかの態様では、核酸に基づく遺伝子調節システムは1以上のモルホリノを含む。本明細書で使用されるとき「モルホリノ」は、標準的な核酸塩基がモルホリン環に結合され、ホスホロジアミデート結合を介して連結されている修飾核酸オリゴマーを指す。siRNA及びshRNAと同様に、モルホリノは相補性のmRNA配列に結合する。しかしながら、モルホリノは相補性な mRNA配列を標的にして分解するのではなく、mRNA翻訳の立体阻害やmRNAスプライシングの変化を介して機能する。
【0259】
いくつかの態様では、核酸に基づく遺伝子調節システムは、表1に列挙されるものから選択される標的遺伝子のDNA配列によってコードされるRNAと少なくとも90%同一である標的RNA配列に結合する核酸分子(例えば、siRNA、shRNA、RNAアプタマー、またはモルホリノ)を含む。いくつかの態様では、核酸に基づく遺伝子調節システムは表1に列挙されたものから選択される標的遺伝子のDNA配列によってコードされるRNAと少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である標的RNA配列に結合する核酸分子(例えば、siRNA、shRNA、RNAアプタマー、またはモルホリノ)を含む。いくつかの態様では、核酸に基づく遺伝子調節システムは、表1に列挙されたものから選択される標的遺伝子のDNA配列によってコードされるRNAと100%同一である標的RNA配列に結合する核酸分子(例えば、siRNA、shRNA、RNAアプタマー、またはモルホリノ)を含む。
【表2】
【0260】
いくつかの態様では、核酸ベースの遺伝子調節システムは、Sigma Aldrich、Dharmacon、ThermoFisherなどのような供給業者から入手可能なsiRNA及びshRNA構築物のような、当該技術分野で知られているものから選択されるsiRNA分子またはshRNA分子を含む。
【0261】
いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、2以上の核酸分子(例えば、2以上のsiRNA、2以上のshRNA、2以上のRNAアプタマー、または2以上のモルホリノ)を含み、その際、核酸分子の少なくとも1つは、表1から選択される標的遺伝子のDNA配列によってコードされるRNA配列と少なくとも90%同一である標的RNA配列に結合する。いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、2以上の核酸分子(例えば、2以上のsiRNA、2以上のshRNA、2以上のRNAアプタマー、または2以上のモルホリノ)を含み、その際、核酸分子の少なくとも1つは、表1から選択される標的遺伝子のDNA配列によってコードされるRNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である標的RNA配列に結合する。いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、2以上の核酸分子(例えば、2以上のsiRNA、2以上のshRNA、2以上のRNAアプタマー、またはつ以上のモルホリノ)を含み、その際、核酸分子の少なくとも1つは、表1から選択される標的遺伝子のDNA配列によってコードされるRNA配列と100%同一である標的RNA配列に結合する。
【0262】
タンパク質に基づく遺伝子調節システム
いくつか態様では、タンパク質に基づく遺伝子調節システムは、核酸ガイド分子を必要とせずに、配列特異的な方法で内在性標的遺伝子の発現を調節することができる1以上のタンパク質を含むシステムである。いくつかの態様では、タンパク質に基づく遺伝子調節システムは、1以上のジンクフィンガー結合ドメイン及び酵素ドメインを含むタンパク質を含む。いくつかの態様では、タンパク質に基づく遺伝子調節システムは、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)ドメイン及び酵素ドメインを含むタンパク質を含む。そのような態様は本明細書では「TALEN」と呼ばれる。
【0263】
1.ジンクフィンガーシステム
ジンクフィンガーに基づくシステムは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインと酵素ドメインの2つのタンパク質ドメインを含む融合タンパク質を含む。「ジンクフィンガーDNA結合ドメイン」、「ジンクフィンガータンパク質」、または「ZFP」は、1以上のジンクフィンガーを介して配列特異的にDNAを結合する、タンパク質、またはさらに大きなタンパク質内のドメインであり、それは、その構造が亜鉛イオンの配位を介して安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である。ジンクフィンガードメインは、標的DNA配列に結合することによって、酵素ドメインの活性をその配列の近傍に向け、それにより、標的配列の近傍の内在性標的遺伝子の修飾を誘導する。ジンクフィンガードメインは、事実上あらゆる所望の配列に結合するように操作することができる。したがって、切断または組換えが所望される標的DNA配列を含有する標的遺伝子座(例えば、表1で参照される標的遺伝子における標的遺伝子座)を特定した後、1以上のジンクフィンガー結合ドメインは標的遺伝子座内の1以上の標的DNA配列に結合するように操作することができる。細胞におけるジンクフィンガー結合ドメインと酵素ドメインを含む融合タンパク質の発現は、標的遺伝子座の修飾に影響を与える。
【0264】
いくつかの態様では、ジンクフィンガー結合ドメインは1以上のジンクフィンガーを含む。Miller et al.(1985),EMBO J.4:1609-1614;Rhodes(1993),Scientific American Febuary:56-65;米国特許第6,453,242号 。通常、単一のジンクフィンガードメインの長さは約30アミノ酸である。個々のジンクフィンガーは、3ヌクレオチド(すなわち、トリプレット)配列(または、隣接するジンクフィンガーの4ヌクレオチド結合部位と1ヌクレオチドだけ重複し得る4ヌクレオチド配列)に結合する。したがって、ジンクフィンガー結合ドメインが結合するように操作されている配列(例えば、標的配列)の長さによって、操作されたジンクフィンガー結合ドメインにおけるジンクフィンガーの数が決定されるであろう。例えば、フィンガーモチーフが重複する亜部位に結合しないZFPについては、6ヌクレオチドの標的配列は 2つのフィンガー結合ドメインによって結合され;9ヌクレオチドの標的配列は3つのフィンガー結合ドメインによって結合される、等である。標的部位内の個々のジンクフィンガーの結合部位(すなわち、亜部位)は連続している必要はないが、複数のフィンガー結合ドメインにおけるジンクフィンガー間のアミノ酸配列(すなわち、フィンガー間リンカー)の長さと性質に応じて1つまたはいくつかのヌクレオチドによって分離することができる。いくつかの態様では、個々のZFNのDNA結合ドメインは、3~6の間の個々のジンクフィンガーリピートを含み、それぞれ9~18の間の塩基対を認識することができる。
【0265】
ジンクフィンガー結合ドメインは選択した配列に結合するように操作することができる。例えば、Beerli et al.(2002),Nature Biotechnol.20:135-141;Pabo et al.(2001),Ann.Rev.Biochem.70:313-340;Isalan et al.(2001),Nature Biotechnol.19:656-660;Segal et al.(2001),Curr.Opin.Biotechnol.12:632-637;Choo et al.(2000),Curr.Opin.Struct.Biol.10:411-416を参照のこと。操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比べて、新規の結合特異性を有することができる。操作方法には、合理的な設計や種々の種類の選択が含まれるが、これらに限定されない。
【0266】
ジンクフィンガードメインによる結合のための標的DNA配列の選択は、例えば、米国特許第6,453,242号に開示されている方法に従って達成することができる。ヌクレオチド配列の簡単な目視検査も標的DNA配列の選択に使用できることは当業者には明らかであろう。したがって、標的DNA配列選択のための任意の手段を、本明細書に記載されている方法にて使用することができる。標的部位は一般に少なくとも9ヌクレオチドの長さを有するので、少なくとも3つのジンクフィンガーを含むジンクフィンガー結合ドメインによって結合される。しかしながら、例えば、4フィンガーの結合ドメインの12ヌクレオチドの標的部位への結合、5フィンガーの結合ドメインの15ヌクレオチドの標的部位への結合、または6フィンガーの結合ドメインの18ヌクレオチドの標的部位への結合も可能である。明らかなように、さらに大きな結合ドメイン(例えば、7フィンガー、8フィンガー、9フィンガーなど)のさらに長い標的部位への結合も可能である。
【0267】
いくつかの態様では、ジンクフィンガー結合ドメインは、表1に列挙されたものから選択される標的遺伝子の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、ジンクフィンガー結合ドメインは、表1に列挙されたものから選択される標的遺伝子の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、ジンクフィンガー結合ドメインは表1に列挙されたものから選択される標的遺伝子の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、ジンクフィンガーシステムは、Sigma Aldrichのような供給業者から入手可能なもののような当該技術分野で既知のものから選択される。
【0268】
いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、それぞれジンクフィンガー結合ドメインを含む2以上のZFP融合タンパク質を含み、その際、ジンクフィンガー結合ドメインの少なくとも1つは、表1から選択される標的遺伝子の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、それぞれジンクフィンガー結合ドメインを含む2以上のZFP融合タンパク質を含み、その際、ジンクフィンガー結合ドメインの少なくとも1つは表1から選択される標的遺伝子の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、遺伝子調節システムはそれぞれジンクフィンガー結合ドメインを含む2以上のZFP融合タンパク質を含み、その際、ジンクフィンガー結合ドメインの少なくとも1つは、表1から選択される標的遺伝子の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0269】
ジンクフィンガー融合タンパク質の酵素ドメイン部分は、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得られ得る。酵素ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼには、制限エンドヌクレアーゼ及びホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、2002-2003 Catalogue,New England Biolabs,Beverly,Mass.;及びBelfort et al.(1997),Nucleic Acids Res.25:3379-3388を参照のこと。DNAを切断するさらなる酵素が知られている(例えば、51ヌクレアーゼ;マングビーンヌクレアーゼ;膵臓DNA分解酵素I;ミクロコッカスヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linn et al.(eds.),Nucleases,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1993も参照のこと)。これらの酵素(またはそれらの機能的断片)のうちの1以上を切断ドメインの供給源として使用することができる。
【0270】
本明細書に記載されているZFPの酵素ドメインとして使用するのに好適な例示的な制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は多くの種に存在し、DNAに配列特異的に結合し(認識部位で)、且つ結合部位でまたはその近傍でDNAを切断することができる。特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から除去された部位でDNAを切断し、分離可能な結合ドメイン及び切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素FokIは、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチド及び他方の鎖上のその認識部位から13ヌクレオチドにてDNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号、同第5,436,150号、及び同第5,487,994号、ならびにLi et al.(1992),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4275-4279;Li et al.(1993),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2764-2768;Kim et al.(1994a),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:883-887;Kim et al.(1994b),J.Biol.Chem.269:31,978-31,982を参照のこと。したがって、いくつかの態様では、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素由来の酵素ドメイン、及び1以上のジンクフィンガー結合ドメインを含む。
【0271】
その切断ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的なIIS型制限酵素はFokIである。この特定の酵素は二量体として活性がある。Bitinaite et al.(1998),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:10,570-10,575.したがって、ジンクフィンガー-FokI融合を使用した標的とされる二本鎖DNAの切断については、それぞれFokI酵素ドメインを含む2つの融合タンパク質を使用して、触媒活性がある切断ドメインを再構成することができるあるいは、ジンクフィンガー結合ドメイン及び2つのFokI酵素ドメインを含有する単一のポリペプチド分子も使用することができるFokI酵素ドメインを含む例示的なZFPは米国特許第9,782,437号に記載されている。
【0272】
2.TALENシステム
TALENに基づくシステムは、TALエフェクターDNA結合ドメインと酵素ドメインを含むタンパク質を含む。それらは、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメイン(DNA鎖を切断するヌクレアーゼ)に融合することによって作成される。上述のFokI制限酵素は、TALENに基づく遺伝子調節システムでの使用に好適な例示的な酵素ドメインである。
【0273】
TALエフェクターは、Xanthomonas属細菌が植物に感染したときに、III型分泌系を介して細菌によって分泌されるタンパク質である。DNA結合ドメインは、12番目と13番目のアミノ酸が異なる、高度に保存された繰り返しの33~34アミノ酸配列を含有する。これら2つの位置は、反復可変性二残基(RVD)と呼ばれ、非常に可変的であり、特定のヌクレオチド認識と強く相関する。したがって、TALエフェクタードメインは、適切なRVDを含有する反復セグメントの組み合わせを選択することによって、特定の標的DNA配列に結合するように操作することができる。RVDの組み合わせについての核酸特異性は次のとおりである:HDはシトシンを標的とし、NIはアデネニンを標的とし、NGはチミンを標的とし、及びNNはグアニンを標的とする(しかし、いくつかの態様では、NNはさらに低い特異性でアデネニンに結合することもできる)。
【0274】
いくつかの態様では、TALエフェクタードメインは、表1に列挙されたものから選択される標的遺伝子の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、TALエフェクタードメインは、表1に列挙されたものから選択される標的遺伝子の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、TALエフェクタードメインは表1に列挙されたものから選択される標的遺伝子の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0275】
いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、それぞれTALエフェクタードメインを含む2以上のTALエフェクター融合タンパク質を含み、その際、TALエフェクタードメインの少なくとも1つは、表1から選択される標的遺伝子の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、それぞれTALエフェクタードメインを含む2以上のTALエフェクター融合タンパク質を含み、その際、TALエフェクタードメインの少なくとも1つは表1から選択される標的遺伝子の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、遺伝子調節システムはそれぞれTALエフェクタードメインを含む2以上のTALエフェクター融合タンパク質を含み、その際、TALエフェクタードメインの少なくとも1つは、表1から選択される標的遺伝子の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0276】
TALエフェクター反復を組み立てるための方法及び組成物は当該技術分野で知られている。例えば、Cermak et al,Nucleic Acids Research,39:12,2011,e82を参照のこと。TALエフェクター反復の構築用のプラスミドはAddgeneから市販されている。
【0277】
組み合わせ核酸/タンパク質に基づく遺伝子調節システム
組み合わせ遺伝子調節システムは部位特異的修飾ポリペプチド及び核酸ガイド分子を含む。本明細書では、「部位特異的修飾ポリペプチド」は、核酸ガイド分子に結合し、それが結合される核酸ガイド分子によって標的核酸配列(例えば、内在性の標的DNAまたはRNA配列)に差し向けられ、標的核酸配列を修飾する(例えば、標的核酸配列の切断、突然変異、またはメチル化)ポリペプチドを指す。
【0278】
部位特異的修飾ポリペプチドは核酸ガイドに結合する部分と活性部分の2つの部分を含む。いくつかの態様では、部位特異的修飾ポリペプチドは、部位特異的酵素活性(例えば、DNAメチル化、DNAまたはRNAの切断、ヒストンのアセチル化、ヒストンのメチル化など)を示す活性部分を含み、その際、酵素活性の部位はガイド核酸によって決定される。場合によっては、部位特異的修飾ポリペプチドは、内在性標的核酸配列を修飾する酵素活性(例えば、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン化活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポザーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、フォトリアーゼ活性またはグリコシラーゼ活性)を有する活性部分を含む。他の場合では、部位特異的修飾ポリペプチドは、内在性標的核酸配列に関連するポリペプチド(例えば、ヒストン)を修飾する酵素活性(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性または脱ミリストイル化活性)を有する活性部分を含む。) いくつかの態様では、部位特異的修飾ポリペプチドは、標的DNA配列の転写を調節する(例えば、転写を増加または減少させるための)活性部分を含む。いくつかの態様では、部位特異的修飾ポリペプチドは、標的RNA配列の発現または翻訳を調節する(例えば、転写を増加または減少させるための)活性部分を含む。
【0279】
核酸ガイドは2つの部分:内在性標的核酸配列に相補性であり、且つそれと結合することができる第1の部分(本明細書では「核酸結合セグメント」と呼ぶ)、及び部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用することができる第2の部分(本明細書では「タンパク質結合セグメント」と呼ぶ)を含む。いくつかの態様では、核酸ガイドの核酸結合セグメント及びタンパク質結合セグメントは単一のポリヌクレオチド分子内に含まれる。いくつかの態様では、核酸ガイドの核酸結合セグメント及びタンパク質結合セグメントはそれぞれ、別個のポリヌクレオチド分子内に含まれるので、核酸ガイドは、互いに会合して機能性ガイドを形成する2つのポリヌクレオチド分子を含む。
【0280】
核酸ガイドは、標的核酸配列と特異的にハイブリッド形成することによって、組み合わせたタンパク質/核酸遺伝子調節システムの標的特異性に介在する。いくつかの態様では、標的核酸配列は、標的遺伝子のmRNA転写物内に含まれるRNA配列のようなRNA配列である。いくつかの態様では、標的核酸配列は、標的遺伝子のDNA配列内に含まれるDNA配列である。本明細書における標的遺伝子への言及は、複数の標的遺伝子座(すなわち、特定の標的遺伝子配列の一部(例えば、エクソンまたはイントロン))を含むその特定の遺伝子の完全長DNA配列を包含する。各標的遺伝子座内にあるのは、本明細書に記載されている遺伝子調節システムによって修飾され得る本明細書にて「標的DNA配列」と呼ばれるDNA配列のさらに短い区間である。さらに、各標的遺伝子座は、遺伝子調節システムによって誘発される修飾の正確な位置(例えば、挿入、欠失、または突然変異の位置、DNA破断の位置、またはエピジェネティックな修飾の位置)を指す「標的修飾部位」を含む。
【0281】
本明細書に記載されている遺伝子調節システムは、単一の核酸ガイドを含んでもよく、または複数の核酸ガイド(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の核酸ガイド)を含んでもよい。
【0282】
いくつかの態様では、組み合わせタンパク質/核酸遺伝子調節システムは、アルゴノート(Ago)タンパク質(例えば、T.thermophilesのAgoまたはTtAgo)由来の部位特異的修飾ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、部位特異的修飾ポリペプチドはT.thermophilesのAgo DNAエンドヌクレアーゼであり、核酸ガイドはガイドDNA(gDNA)である(Swarts et al.,Nature,507(2014),258-261を参照のこと)。いくつかの態様では、本開示はgDNAをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの態様では、gDNAをコードする核酸は発現ベクター、例えば、組換え発現ベクターに含まれる。いくつかの態様では、本開示は、TtAgo部位特異的修飾ポリペプチドまたはその変異体をコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの態様では、TtAgo部位特異的修飾ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、発現ベクター、例えば、組換え発現ベクターに含まれる。
【0283】
いくつかの態様では、本明細書に記載されている遺伝子編集システムは、CRISPR(クラスター化され、規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し)/Cas(CRISPR関連)ヌクレアーゼシステムである。いくつかの態様では、CRISPR/Casシステムはクラス2システムである。クラス2 CRISPR/Casシステムは、II型、V型、及びVI型システムの3つの型に分類される。いくつかの態様では、CRISPR/CasシステムはCas9タンパク質を利用するクラス2のII型である。いくつかの態様では、部位特異的修飾ポリペプチドはCas9 DNAエンドヌクレアーゼ(またはその変異体)であり、核酸ガイド分子はガイドRNA(gRNA)である。いくつかの態様では、CRISPR/Casシステムは、Cas12タンパク質(例えば、Cas12a(Cpf1としても知られる)、Cas12b(C2c1としても知られる)、Cas12c(C2c3としても知られる)、Cas12d(CasYとしても知られる)、及びCas12e(CasXとしても知られる))を利用するクラス2のV型システムである。いくつかの態様では、部位特異的修飾ポリペプチドはCas12DNAエンドヌクレアーゼ(またはその変異体)であり、核酸ガイドはgRNAである。いくつかの態様では、CRISPR/Casシステムは、Cas13タンパク質(例えば、Cas13a(C2c2としても知られる)、Cas13b、及びCas13c)を利用するクラス2及びVI型システムである(Pyzocha et al.,ACS Chemical Biology,13(2),347-356を参照のこと)。いくつかの態様では、部位特異的修飾ポリペプチドはCas13 RNAエンドヌクレアーゼであり、核酸ガイド分子はgRNAである。
【0284】
Casポリペプチドは、gRNA分子と相互作用し、gRNA分子と協働して、標的DNA配列または標的RNA配列にホーミングまたは局在することができるポリペプチドを指す。Casポリペプチドには、天然に存在するCasタンパク質、及び天然に存在するCas配列とは1以上のアミノ酸残基が異なる操作された、改変された、またはその他の修飾されたCasタンパク質が含まれる。
【0285】
ガイドRNA(gRNA)は2つのセグメント:DNA結合セグメント及びタンパク質結合セグメントを含む。いくつかの態様では、gRNAのタンパク質結合セグメントは1つのRNA分子に含まれ、DNA結合セグメントはもう1つの別のRNA分子に含まれる。そのような態様は、本明細書では「二重分子gRNA」または「二分子gRNA」または「二重gRNA」と呼ばれる。いくつかの態様では、gRNAは単一のRNA分子であり、本明細書では「単一ガイドRNA」または「sgRNA」と呼ばれる。「ガイドRNA」または「gRNA」という用語は包括的であり、2分子ガイドRNAとsgRNAの双方を指す。
【0286】
gRNAのタンパク質結合セグメントは、部分的には、互いにハイブリッド形成して二本鎖RNA二重鎖(dsRNA二重鎖)を形成する2つの相補性のヌクレオチドの区間で構成され、Casタンパク質への結合を促進する。gRNAの核酸結合セグメント(または「核酸結合配列」)は、特定の標的核酸配列に相補性であり、それに結合することができるヌクレオチド配列を含む。gRNAのタンパク質結合セグメントはCasポリペプチドと相互作用し、gRNA分子と部位特異的修飾ポリペプチドの相互作用によってCasが内在性核酸配列に結合し、標的核酸配列内またはその周囲に1以上の修飾を作り出す。標的修飾部位の正確な位置は、(i)gRNAと標的核酸配列の間の塩基対形成の相補性;及び(ii)標的DNA配列内のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる(標的RNA配列ではプロトスペーサーフランキング配列(PFS)と呼ばれる)短いモチーフの位置の双方によって決定される。PAM/PFS配列はCasが標的核酸配列に結合するのに必要とされる。種々のPAM/PFS配列が当該技術分野で知られており、特定のCasエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ)との使用に好適である(例えば、Nat Methods.2013,Nov;10(11):1116-1121及びSci Rep.2014;4:5405を参照のこと)。いくつかの態様では、PAM配列は標的DNA配列における標的修飾部位の50塩基対以内に位置する。いくつかの態様では、PAM配列は標的DNA配列における標的修飾部位の10塩基対以内に位置する。この方法によって標的とすることができるDNA配列は、標的修飾部位までのPAM配列の相対距離と、配列特異的なgRNAが介在するCas 結合に介在する固有の20塩基対配列の存在とによってのみ制限される。いくつかの態様では、PFS配列は標的RNA配列の3’末端に位置する。いくつかの態様では、標的修飾部位は標的遺伝子座の5’末端に位置する。いくつかの態様では、標的修飾部位は標的遺伝子座の3’末端に位置する。いくつかの態様では、標的修飾部位は標的遺伝子座のイントロンまたはエキソンの範囲内に位置する。
【0287】
いくつかの態様では、本開示はgRNAをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの態様では、gRNAをコードする核酸は発現ベクター、例えば、組換え発現ベクターに含まれる。いくつかの態様では、本開示は部位特異的修飾ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの態様では、部位特異的修飾ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、発現ベクター、例えば、組換え発現ベクターに含まれる。
【0288】
1.Casタンパク質
いくつかの態様では、部位特異的修飾ポリペプチドはCasタンパク質である。本明細書で提供されているものを含む任意のCasタンパク質を使用することができる。S.pyogenes、S.aureus、N.meningitidis、S.thermophiles、Acidovorax avenae、Actinobacillus pleuropneumoniae、Actinobacillus succinogenes、Actinobacillus suis、Actinomyces sp.、Cycliphilusdenitrificans、Aminomonas paucivorans、Bacillus cereus、Bacillus smithii、Bacillus thuringiensis、Bacteroides sp.、Blastopirellula marina、Bradyrhizobium sp.、Brevibacillus laterospoxus、Campylobacter coli、Campylobacter jejuni、Campylobacter lari、Candidatus puniceispirillum、Clostridium cellulolyticum、Clostridium perfringens、Corynebacterium accolens、Corynebacterium diphtheria、Corynebacterium matruchotii、Dinoroseobacter shibae、Eubacterium dolichum、Gammaproteobacterium、Gluconacetobacter diazotrophicus、Haemophilus parainfluenzae、Haemophilus sputomm、Helicobacter canadensis、Helicobacter cinaedi、Helicobacter mustelae、Ilyobacter polytropus、Kingella kingae、Lactobacillus crispatus、Listeria ivanovii、Listeria monocytogenes、Listeriaceae bacterium、Methylocystis sp.、Methylosinus trichosporium、Mobiluncus mulieris、Neisseria bacilliformis、Neisseria cinerea、Neisseria flavescens、Neisseria lactamica、Neisseria meningitidis、Neisseria sp.、Neisseria wadsworthii、Nitrosomonas sp.、Parvibaculum lavamentivorans、Pasteurella multocida、Phascolarctobacterium succinatutens、Ralstonia syzygii、Rhodopseudomonas palustris、Rhodovulum sp.、Simonsiella muelleri、Sphingomonas sp.、Sporolactobacillus vineae、Staphylococcus aureus、Staphylococcus lugdunensis、Streptococcus sp.、Subdoligranulum sp.、Tistrella mobilis、Treponema sp.、またはVerminephrobacter eiseniaeに由来するCas分子を含む種々の種のCas分子は本明細書に記載されている方法及び組成物にて使用することができる。
【0289】
いくつかの態様では、Casタンパク質は天然に存在するCasタンパク質である。いくつかの態様では、Casエンドヌクレアーゼは、C2C1、C2C3、Cpf1(Cas12aとも呼ばれる)、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12e、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、Casl、CaslB、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csnl及びCsx12としても知られる)、Cas10、Csyl、Csy2、Csy3、Csel、Cse2、Cscl、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmrl、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csbl、Csb2、Csb3、Csxl7、Csxl4、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csxl、Csxl5、Csfl、Csf2、Csf3、及びCsf4から成る群から選択される。
【0290】
いくつかの態様では、Casタンパク質はCas13タンパク質のようなエンドリボヌクレアーゼである。いくつかの態様では、Cas13タンパク質は、Cas13a(Abudayyeh et al.,Nature,550(2017),280-284)、Cas13b(Cox et al.,Science,(2017)358:6336,1019-1027)、Cas13c(Cox et al.,Science,(2017)358:6336,1019-1027)、またはCas13d(Zhang et al.,Cell,175(2018),212-223)タンパク質である。
【0291】
いくつかの態様では、Cas9タンパク質は、本明細書で具体的に提供されているCas9タンパク質のいずれかを含む、任意のCas9タンパク質である。いくつかの態様では、Casタンパク質は野生型のまたは天然に存在するCasタンパク質またはCas9オルソログである。野生型Cas9は、HNHヌクレアーゼドメインを使用してDNAの標的鎖を切断し、RuvC様ドメインを使用して非標的鎖を切断するマルチドメイン酵素である。gRNAの特異性に基づいてWT Cas9がDNAに結合すると、二本鎖DNAの切断が生じ、これは非相同末端結合(NHEJ)または相同組換え修復(HDR)によって修復することができる。例示的な天然に存在するCas9分子は、Chylinski et al.,RNA Biology,201310:5,727-737に記載されており、追加のCas9オルソログは、国際PCT公開第WO2015/071474号に記載されている。そのようなCas9分子には、クラスター1細菌ファミリー、クラスター2細菌ファミリー、クラスター3細菌ファミリー、クラスター4細菌ファミリー、クラスター5細菌ファミリー、クラスター6細菌ファミリー、クラスター7細菌ファミリー、クラスター8細菌ファミリー、クラスター9細菌ファミリー、クラスター10細菌ファミリー、クラスター11細菌ファミリー、クラスター12細菌ファミリー、クラスター13細菌ファミリー、クラスター14細菌ファミリー、クラスター15細菌ファミリー、クラスター16細菌ファミリー、クラスター17細菌ファミリー、クラスター18細菌ファミリー、クラスター19細菌ファミリー、クラスター20細菌ファミリー、クラスター21細菌ファミリー、クラスター22細菌ファミリー、クラスター23細菌ファミリー、クラスター24細菌ファミリー、クラスター25細菌ファミリー、クラスター26細菌ファミリー、クラスター27細菌ファミリー、クラスター28細菌ファミリー、クラスター29細菌ファミリー、クラスター30細菌ファミリー、クラスター31細菌ファミリー、クラスター32細菌ファミリー、クラスター33細菌ファミリー、クラスター34細菌ファミリー、クラスター35細菌ファミリー、クラスター36細菌ファミリー、クラスター37細菌ファミリー、クラスター38細菌ファミリー、クラスター39細菌ファミリー、クラスター40細菌ファミリー、クラスター41細菌ファミリー、クラスター42細菌ファミリー、クラスター43細菌ファミリー、クラスター44細菌ファミリー、クラスター45細菌ファミリー、クラスター46細菌ファミリー、クラスター47細菌ファミリー、クラスター48細菌ファミリー、クラスター49細菌ファミリー、クラスター50細菌ファミリー、クラスター51細菌ファミリー、クラスター52細菌ファミリー、クラスター53細菌ファミリー、クラスター54細菌ファミリー、クラスター55細菌ファミリー、クラスター56細菌ファミリー、クラスター57細菌ファミリー、クラスター58細菌ファミリー、クラスター59細菌ファミリー、クラスター60細菌ファミリー、クラスター61細菌ファミリー、クラスター62細菌ファミリー、クラスター63細菌ファミリー、クラスター64細菌ファミリー、クラスター65細菌ファミリー、クラスター66細菌ファミリー、クラスター67細菌ファミリー、クラスター68細菌ファミリー、クラスター69細菌ファミリー、クラスター70細菌ファミリー、クラスター71細菌ファミリー、クラスター72細菌ファミリー、クラスター73細菌ファミリー、クラスター74細菌ファミリー、クラスター75細菌ファミリー、クラスター76細菌ファミリー、クラスター77細菌ファミリー、またはクラスター78細菌ファミリーのCas9分子が挙げられる。
【0292】
いくつかの態様では、天然に存在するCas9ポリペプチドは、SpCas9、SpCas9-HF1、SpCas9-HF2、SpCas9-HF3、SpCas9-HF4、SaCas9、FnCpf、FnCas9、eSpCas9、及びNmeCas9から成る群から選択される。いくつかの態様では、Cas9タンパク質は、Chylinski et al.,RNA Biology,2013,10:5,727-737;Hou et al.,PNAS Early Edition,2013,1-6)に記載されているCas9アミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0293】
いくつかの態様では、Casポリペプチドは、以下の活性:
a. ニッカーゼ活性、すなわち、核酸分子の一本鎖、例えば、非相補鎖または相補鎖を切断する能力;
b. 二本鎖ヌクレアーゼ活性、すなわち、一態様では、2つのニッカーゼ活性の存在である、二本鎖核酸の双方の鎖を切断し、二本鎖破壊を作り出す能力;
c. エンドヌクレアーゼ活性;
d. エキソヌクレアーゼ活性;及び/または
e. ヘリカーゼ活性、すなわち、二本鎖核酸のらせん構造をほどく能力のうちの1以上を含む。
【0294】
いくつかの態様では、Casポリペプチドは、DNA損傷シグナル伝達タンパク質、エキソヌクレアーゼ、またはホスファターゼを動員する異種タンパク質に融合されて、何らかの修復メカニズムによる標的配列の修復の可能性または修復速度をさらに高める。いくつかの態様では、WT Casポリペプチドは、相同組換え修復による外来性核酸配列の組み込みを促進するために、核酸修復鋳型と共に共発現される。
【0295】
いくつかの態様では、さまざまなCasタンパク質(すなわち、種々の種に由来するCas9タンパク質)は、さまざまなCasタンパク質の種々の酵素特性を利用するために(例えば、異なるPAM配列の優先性のために;酵素活性の増加または低下のために;細胞毒性レベルの増加または減少のために;NHEJ、相同組換え修復、一本鎖切断、二本鎖切断の間のバランスを変更するために)提供されている種々の方法で使用するのに有利であってもよい。
【0296】
いくつかの態様では、Casタンパク質はS.pyogenes由来のCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNGG、NAG、NGAを認識する(Mali et al,Science,2013;339(6121):823-826)。いくつかの態様では、Casタンパク質はS.thermophiles由来のCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNGGNG及び/またはNNAGAAW(W=AまたはT)を認識する(例えば、Horvath et al,Science,2010;327(5962):167-170,及びDeveau et al,J.Bacteriol.2008;190(4):1390-1400を参照のこと)。いくつかの態様では、Casタンパク質はS.mutans由来のCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNGG及び/またはNAAR(R=AまたはG)を認識する(例えば、Deveau et al,J.BACTERIOL.2008;190(4):1390-1400を参照のこと)。いくつかの態様では、Casタンパク質はS.aureus由来のCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフNNGRR(R=AまたはG)を認識する。いくつかの態様では、Casタンパク質はS.aureus由来のCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフN GRRT(R=AまたはG)を認識する。いくつかの態様では、Casタンパク質はS.aureus由来のCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフN GRRV(R=AまたはG)を認識する。いくつかの態様では、Casタンパク質はN.meningitidis由来のCas9タンパク質であり、PAM配列モチーフN GATTまたはN GCTT(R=AまたはG、V=A、GまたはC)を認識する(例えば、Hou et ah,PNAS,2013,1-6を参照のこと)。前述の態様では、Nは、任意のヌクレオチド残基、例えば、A、G、CまたはTのいずれかであり得る。いくつかの態様では、Casタンパク質はLeptotrichia shahiiに由来するCas13aタンパク質であり、単一の3’A、U、またはCのPFS配列モチーフを認識する。
【0297】
いくつかの態様では、Casタンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、国際PCT公開第WO2015/071474号またはChylinski et al.,RNA Biology,2013,10:5,727-737に記載されているCasタンパク質と少なくとも90%同一であるCasタンパク質をコードする。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、国際PCT公開第WO2015/071474号またはChylinski et al.,RNA Biology,2013,10:5,727-737に記載されているCasタンパク質と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一であるCasタンパク質をコードする。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、国際PCT公開第WO2015/071474号またはChylinski et al.,RNA Biology,2013,10:5,727-737に記載されているCasタンパク質と100%同一であるCasタンパク質をコードする。
【0298】
2.Cas突然変異型
いくつかの態様では、CasポリペプチドはCasポリペプチドの1以上の特性を変更するように操作される。例えば、いくつかの態様では、Casポリペプチドは、変化した酵素特性、例えば、変化したヌクレアーゼ活性(天然に存在するまたは他の参照のCas分子と比べて)または変化したヘリカーゼ活性を含む。いくつかの態様では、操作されたCasポリペプチドは、そのサイズを変える改変、例えば、Casポリペプチドの別の特性に大きな影響を与えることなくそのサイズを減少させるアミノ酸配列の欠失を有することができる。いくつかの態様では、操作されたCasポリペプチドはPAM認識に影響を与える変化を含む。例えば、操作されたCasポリペプチドは、対応する野生型Casタンパク質によって認識されるPAM配列以外のPAM配列を認識するように変化させることができる。
【0299】
所望の特性を持つCasポリペプチドは、所望の特性を有する突然変異型または改変されたCasポリペプチドを提供するための、天然に存在するCasポリペプチドまたは親Casポリペプチドの改変を含む多くの方法で作製することができる。例えば、1以上の突然変異を親Casポリペプチド(例えば、天然に存在するまたは操作されたCasポリペプチド)の配列に導入することができる。そのような突然変異及び差異は、置換(例えば、保存的置換または非必須アミノ酸の置換);挿入;または欠失を含んでもよい。いくつかの態様では、突然変異型Casポリペプチドは、親Casポリペプチドと比べて1以上の突然変異(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、30、40または50の突然変異)を含む。
【0300】
いくつかの態様では、突然変異型Casポリペプチドは天然に存在するCasポリペプチドとは異なる切断特性を含む。いくつかの態様では、Casは不活性化Cas(dCas)突然変異型である。いくつかの態様では、Casポリペプチドはどんな固有の酵素活性を含まず、標的核酸の切断に介在することができない。いくつかの態様では、dCasは、非切断に基づく様式で標的核酸を修飾することができる異種タンパク質と融合されてもよい。例えば、いくつかの態様では、dCasタンパク質は、転写活性化因子ドメインまたは転写抑制因子ドメイン(例えば、クルッペル関連ボックス(KRABまたはSKD);Mad mSIN3相互作用ドメイン(SIDまたはSID4X);ERF抑制因子ドメイン(ERD))、MAX相互作用タンパク質1(MXI1)、メチル-CpG結合タンパク質2(MECP2)など)に融合される。そのような場合には、dCas融合タンパク質はgRNAによって標的核酸内の特定の位置(すなわち、配列)に差し向けられ、例えば、プロモーターへのRNAポリメラーゼの結合を阻止する(転写活性化因子の機能を選択的に阻害する)こと、及び/または局所クロマチン状態を改変すること(例えば、標的DNAを修飾する、または標的DNAに関連するポリペプチドを修飾する融合配列が使用される場合)のような遺伝子座特異的な調節を発揮する。場合によっては、変化は一過性である(例えば、転写の抑制または活性化)。場合によっては、その変化は遺伝性である(例えば、標的DNAまたは標的DNAに関連するタンパク質、例えばヌクレオソームヒストンに対してエピジェネティック修飾が行われる場合)。
【0301】
いくつかの態様では、dCasはdCas13突然変異型である(Konermann et al.,Cell,173(2018),665-676)。次いで、これらのdCas13突然変異型を、アデノシンデアミナーゼ(例えば、ADAR1及びADAR2)を含むRNAを修飾する酵素に融合させることができる。アデノシンデアミナーゼはアデニンをイノシンに変換し、翻訳機構はこれをグアニンと同様に扱い、それによってRNA配列に機能的なA→G変化を作り出す。いくつかの態様では、dCasはdCas9突然変異型である。
【0302】
いくつかの態様では、突然変異型Cas9はCas9ニッカーゼ突然変異型である。Cas9ニッカーゼ突然変異型は触媒活性があるドメイン(HNHドメインまたはRuvCドメインのいずれか)を1つだけ含む。Cas9ニッカーゼ突然変異型はgRNAの特異性に基づいてDNA結合を保持するが、DNAの1本の鎖のみを切断することができ、その結果、一本鎖の切断(例えば「ニック」)を生じる。いくつかの態様では、2つの相補性のCas9ニッカーゼ突然変異型(例えば、不活化されたRuvCドメインを持つ1つのCas9ニッカーゼ突然変異型、及び不活化されたHNHドメインを持つ1つのCas9ニッカーゼ突然変異型)が、2つのそれぞれの標的配列に対応する2つのgRNAと共に同じ細胞内で発現され;1つの標的配列はセンスDNA鎖上にあり、もう1つはアンチセンスDNA鎖上にある。この二重ニッカーゼシステムは、二本鎖切断を生成するのに十分な近さに2つの的外れニックが生成される可能性は低いので、千鳥状の二本鎖切断をもたらし、標的の特異性を高めることができる。いくつかの態様では、Cas9ニッカーゼ突然変異型は、相同組換え修復による外来性核酸配列の組み込みを促進するために、核酸修復鋳型と共に共発現される。
【0303】
いくつかの態様では、本明細書に記載されているCasポリペプチドは、CasポリペプチドのPAM/PFS特異性を改変するように操作することができる。いくつかの態様では、突然変異型Casポリペプチドは、親CasポリペプチドのPAM/PFS特異性とは異なるPAM/PFS特異性を有する。例えば、天然に存在するCasタンパク質を修飾して、突然変異型Casポリペプチドが認識するPAM/PFS配列を変更して、的外れ部位を減らし、特異性を改善し、またはPAM/PFS認識要件を排除することができる。いくつかの態様では、Casタンパク質を修飾してPAM/PFS認識配列の長さを増やすことができる。いくつかの態様では、PAM認識配列の長さは少なくとも4、5、6、7、8、9、10または15アミノ酸長である。異なるPAM/PFS配列を認識する、及び/または的外れ活性が低下したCasポリペプチドは指向性進化を使用して生成することができる。Casポリペプチドの指向性進化に使用できる例示的な方法及びシステムは、例えば、Esvelt et al.Nature,2011,472(7344):499-503に記載されている。
【0304】
例示的なCas突然変異型は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、国際PCT公開第WO2015/161276号及びKonermann et al.,Cell,173(2018),665-676に記載されている。
【0305】
3.gRNA
本開示は、部位特異的修飾ポリペプチドを特定の標的核酸配列に導くガイドRNA(gRNA)を提供する。gRNAは、核酸を標的とするセグメント及びタンパク質結合セグメントを含む。gRNAの核酸を標的とするセグメントは、標的核酸配列における配列に相補性であるヌクレオチド配列を含む。したがって、gRNAの核酸を標的とするセグメントはハイブリッド形成(すなわち、塩基対形成)を介して配列特異的な方法で標的核酸と相互作用し、核酸を標的とするセグメントのヌクレオチド配列はgRNAが結合するであろう標的核酸内の位置を決定する。gRNAの核酸を標的とするセグメントは、標的核酸配列内の任意の所望の配列とハイブリッド形成するように修飾することができる(例えば、遺伝子操作によって)。
【0306】
ガイドRNAのタンパク質結合セグメントは部位特異的修飾ポリペプチド(例えば、Casタンパク質)と相互作用して複合体を形成する。ガイドRNAは、結合したポリペプチドを、上述の核酸を標的とするセグメントを介して標的核酸内の特定のヌクレオチド配列に誘導する。gRNAのタンパク質結合セグメントは互いに相補性であり、二本鎖RNA二重鎖を形成するヌクレオチドの2つの区間を含む。
【0307】
いくつかの態様では、gRNAは2つの別個のRNA分子を含む。いくつかの態様では、2つのRNA分子のそれぞれは、2つのRNA分子の相補性ヌクレオチドがハイブリッド形成してタンパク質結合セグメントの二本鎖RNA二重鎖を形成するように、互いに相補性であるヌクレオチドの区間を含む。いくつかの態様では、gRNAは単一RNA分子(sgRNA)を含む。
【0308】
標的遺伝子座に対するgRNAの特異性には、標的遺伝子座内の標的核酸配列に対して相補性である約20ヌクレオチドを含む核酸結合セグメントの配列が介在する。いくつかの態様では、対応する標的核酸配列は長さが約20ヌクレオチドである。いくつかの態様では、本開示のgRNA配列の核酸結合セグメントは、標的遺伝子座内の標的核酸配列に対して少なくとも90%相補性である。いくつかの態様では、本開示のgRNA配列の核酸結合セグメントは、標的遺伝子座内の標的核酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%または99%相補性である。いくつかの態様では、本開示のgRNA配列の核酸結合セグメントは、標的遺伝子座内の標的核酸配列に対して100%相補性である。
【0309】
いくつかの態様では、標的核酸配列はRNA標的配列である。いくつかの態様では、標的核酸配列はDNA標的配列である。いくつかの態様では、gRNA配列の核酸結合セグメントは、表1に列挙されたものから選択される標的遺伝子の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、gRNA配列の核酸結合セグメントは、表1に列挙されたものから選択される標的遺伝子の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、gRNA配列の核酸結合セグメントは表1に列挙されたものから選択される標的遺伝子の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0310】
いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、それぞれDNA結合セグメントを含む2以上のgRNA分子を含み、その際、核酸結合セグメントの少なくとも1つは、表1から選択される標的遺伝子の標的DNA配列と少なくとも90%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、遺伝子調節システムは、それぞれ核酸結合セグメントを含む2以上のgRNA分子を含み、その際、核酸結合セグメントの少なくとも1つは表1から選択される標的遺伝子の標的DNA配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である標的DNA配列に結合する。いくつかの態様では、遺伝子調節システムはそれぞれ核酸結合セグメントを含む2以上のgRNA分子を含み、その際、核酸結合セグメントの少なくとも1つは、表1から選択される標的遺伝子の標的DNA配列と100%同一である標的DNA配列に結合する。
【0311】
いくつかの態様では、本明細書に記載されているgRNA配列の核酸結合セグメントは、特定の標的遺伝子座または標的遺伝子に特有の標的配列を特定するために、当該技術分野で知られているアルゴリズム(例えば、Cas-OFFファインダー)を使用して的外れ結合を最小限に抑えるように設計される。
【0312】
いくつかの態様では、本明細書に記載されているgRNAは、ヌクレアーゼに対する安定性を導入する1以上の修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオチドを含むことができる。いくつかの態様では、これらの修飾されたgRNAは非修飾gRNAと比べて、低下した自然免疫応答を誘発してもよい。「自然免疫応答」という用語には、サイトカインの発現及び放出、特にインターフェロンの発現及び放出、及び細胞死の誘導が関与する、一般にウイルス起源または細菌起源の一本鎖核酸を含む外来性核酸に対する細胞性応答が含まれる。
【0313】
いくつかの態様では、本明細書に記載されているgRNAは、5’末端またはその近傍(例えば、それらの5’末端の1~10、1~5、または1~2ヌクレオチド以内)で修飾される。いくつかの態様では、gRNAの5’末端は、真核生物のmRNAキャップ構造またはキャップ類似体(例えば、G(5’)ppp(5’)Gキャップ類似体、m7G(5’)ppp(5’)Gキャップ類似体、または3’-0-Me-m7G(5’)ppp(5’)Gアンチリバースキャップ類似体(ARCA))を含めることによって修飾される。いくつかの態様では、試験管内で転写されたgRNAは、ホスファターゼ(例えば、仔ウシ腸アルカリホスファターゼ)による処理によって修飾され、5’三リン酸基が取り除かれる。いくつかの態様では、gRNAは、その3’末端にまたはその近傍(例えば、その3’末端の1~10、1~5、または1~2ヌクレオチド以内)に修飾を含む例えば、いくつかの態様では、gRNAの3’末端は、1以上(例えば、25~200)のアデニン(A)残基の付加によって修飾される。
【0314】
いくつかの態様では、修飾ヌクレオシド及び修飾ヌクレオチドはgRNAに存在することができるが、他の遺伝子調節システム、例えば、mRNA、RNAi、またはsiRNAに基づくシステムにも存在してもよい。いくつかの態様では、修飾されたヌクレオシド及びヌクレオチドは:
a. ホスホジエステル主鎖結合における非結合リン酸酸素の一方または双方、及び/または結合リン酸酸素の1以上の変更、例えば置換;
b. リボース糖の構成要素、例えばリボース糖上の2’ヒドロキシルの変更、例えば置換;
c. 「デホスホ」リンカーによるリン酸部分の大規模置換;
d. 天然に存在する核酸塩基の修飾または置換;
e. リボース-リン酸主鎖の置換または修飾;
f. オリゴヌクレオチドの3’末端または5’末端の修飾、例えば末端リン酸基の除去、修飾または置換、または部分の結合;及び
g. 糖の修飾のうちの1以上を含むことができる。
【0315】
いくつかの態様では、上に挙げた修飾を組み合わせて、2、3、4、またはそれ以上の修飾を有することができる修飾ヌクレオシド及び修飾ヌクレオチドを提供することができる。例えば、いくつかの態様では、修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは修飾された糖及び修飾された核酸塩基を有することができる。いくつかの態様では、gRNAのあらゆる塩基が修飾される。いくつかの態様では、gRNA分子のリン酸基のそれぞれがホスホロチオエート基で置換される。
【0316】
いくつかの態様では、ソフトウェアツールを使用して、ユーザーの標的配列内のgRNAの選択を最適化することができ、例えば、ゲノム全体にわたる全体の的外れ活性を最小限に抑えることができる。的外れ活性は切断以外であってもよい。例えば、S.pyogenesのCas9を使用した考えられるgRNAの選択ごとに、ソフトウェアツールはミスマッチ塩基対の特定の数(例:1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)までを含有するゲノム全体にわたるすべての潜在的な的外れ配列(NAGまたはNGGPAMに先行する)を特定することができる。各的外れ配列における切断効率は、例えば、実験に由来する重み付けスキームを使用して予測することができる。次に、考えられる各gRNAを、予測される的外れ切断の合計に従ってランク付けすることができ;上位にランク付けされたgRNAは、狙い通りの切断が最も大きく、的外れ切断が最も少ない可能性が高いものを表す。他の機能、例えば、gRNAベクター構築のための自動試薬設計、的確なSurveyorアッセイのためのプライマー設計、及び次世代配列決定を介した的外れ切断のハイスループット検出及び定量のためのプライマー設計も、そのツールに含めることができる。
【0317】
本明細書で提供されているいくつかの方法は遺伝子操作から始まる。そのような遺伝子操作の後には、例えば、1以上の休止工程及び/または1以上の刺激工程が続くことができる。例えば、Tregを遺伝子操作し、休止させ、次いで刺激することができる。あるいは、Tregを遺伝子操作し、刺激し、次いで休止させることができる。
【0318】
本明細書で提供されている方法の他の態様では、1以上の休止工程及び/または1以上の刺激工程の後にTregを遺伝子操作することができる。例えば、Tregは、第1の刺激工程、休止工程、及び第2の刺激工程の後に遺伝子操作することができる。
【0319】
いくつかの態様では、Tregは遺伝子操作の直前に刺激因子の存在下で培養される。いくつかの態様では、Tregは刺激剤の非存在下で遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは遺伝子操作の直後に刺激剤の非存在下で(休止して)培養される。いくつかの態様では、Tregは休止工程の間に(例えば、刺激剤の非存在下で)遺伝子操作される。
【0320】
いくつかの態様では、Tregは遺伝子操作の直前に刺激剤の非存在下で培養される。
【0321】
いくつかの態様では、Tregは培養にて約6日~約12日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約6日~約11日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約6日~約10日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約6日~約9日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約6日~約8日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約7日~約12日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約7日~約11日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約7日~約10日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約7日~約9日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約7日~約8日後に遺伝子操作される。
【0322】
いくつかの態様では、Tregは培養にて少なくとも6日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて少なくとも7日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて少なくとも8日後に遺伝子操作される。
【0323】
いくつかの態様では、Tregは培養にて約6日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約7日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約8日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約9日後に遺伝子操作される。いくつかの態様では、Tregは培養にて約10日後に遺伝子操作される。
【0324】
いくつかの態様では、Tregは、刺激剤への曝露の合計10日を超えない後に遺伝子操作され、その際、合計10日には5日を超える連続した日を含まない。いくつかの態様では、Tregは、刺激剤への曝露の合計9日を超えない後に遺伝子操作され、その際、合計9日には5日を超える連続した日を含まない。いくつかの態様では、Tregは、刺激剤への曝露の合計8日を超えない後に遺伝子操作され、その際、合計8日には5日を超える連続した日を含まない。いくつかの態様では、Tregは、刺激剤への曝露の合計7日以内の後に遺伝子操作され、その際、合計7日には連続5日を超える日は含まれない。いくつかの態様では、Tregは、刺激剤への曝露の合計6日を超えない後に遺伝子操作され、その際、合計6日には5日を超える連続した日を含まない。
【0325】
いくつかの態様では、Tregは、刺激剤への曝露の合計少なくとも4日の後に遺伝子操作され、その際、合計4日には3日を超える連続した日を含まない。いくつかの態様では、Tregは、刺激剤への曝露の合計少なくとも5日の後に遺伝子操作され、その際、合計5日には3日を超える連続した日を含まない。いくつかの態様では、Tregは、刺激剤への曝露の合計少なくとも6日の後に遺伝子操作され、その際、合計4日には6日を超える連続した日を含まない。いくつかの態様では、Tregは、刺激剤への曝露の合計少なくとも7日の後に遺伝子操作され、その際、合計7日には5日を超える連続した日を含まない。
【0326】
遺伝子操作前の培養日数は、例えば、第1の刺激工程、休止工程、及び第2の刺激工程を含むことができる。
【0327】
いくつかの態様では、TregはTreg集団が約100倍~約500倍に増殖した時点で遺伝子操作される。いくつかの態様では、TregはTreg集団が約250倍に増殖した時点で遺伝子操作される。
【0328】
Tregの単離
増殖の前に、Tregは、例えば、対象から、または対象から得られた試料から単離することができる。いくつかの態様では、Tregは対象の末梢血、胸腺、リンパ節、脾臓、骨髄、臍帯血、または組織試料から得られる。いくつかの態様では、Tregは対象の末梢血、胸腺、リンパ節、脾臓、骨髄、臍帯血、または組織試料から得られる試料から得られる。対象は、例えば、ヒト対象のような哺乳類対象であることができる。
【0329】
いくつかの態様では、Tregは末梢血から得られる。いくつかの態様では、Tregヒト末梢血から得られる。
【0330】
いくつかの態様では、Tregはヒト末梢血由来のPBMCから得られ、その際、CD4+T細胞は陰性免疫磁気選択(例えば、EasySepヒトCD4+T細胞単離キットを使用)を介して単離され、CD4+T細胞はCD25、CD4、CD127、及びhCD45RAに対する抗体で標識され、且つCD4+CD25hiCD127loCD45RA+Tregが選択される。
【0331】
PBMCは密度勾配沈降によって血液から単離することができ、CD4+T細胞は磁気細胞選別によるPBMCからの陽性選択によって濃縮することができる。CD4+T細胞を次いで、CD4、CD25、CD127のような制御性T細胞マーカーに特異的な蛍光標識抗体で染色し、その後、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって分離してCD4+CD25+CD127loTregを濃縮し、例えばCD4+CD25-CD127+の従来のT細胞から分離することができる。
【0332】
Tregを含有する試料が分離されると、Tregを濃縮することができる。Tregは、例えば、免疫抑制性Tregに特異的な細胞表面マーカーの選択を標的とし、FACS、固相磁気ビーズ等のような自動細胞選別を使用して分離することによって濃縮することができる。Tregを濃縮する方法は、例えば、米国特許第7,722,862号にて提供されており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。濃縮には陽性選択及び/または陰性選択が含まれ得る。例えば、陰性選択を使用して、例えば、CD8、CD11b、CD16、CD19、CD36、及び/またはCD56のような非Treg細胞型に特異的な表面マーカーを持つ細胞を取り除くことができる。
【0333】
いくつかの態様では、例えば、CD4+T細胞のFACSを使用する、CD45RAhiCD25hiCD127loCD4+細胞についての細胞選別を使用してTregは単離される。いくつかの態様では、合計CD45RAhiCD25hiCD127loCD4+細胞についての細胞選別を使用してTregは単離される。
【0334】
いくつかの態様では、Tregは、磁気ビーズを使用してCD25+T細胞を濃縮することによって単離される。いくつかの態様では、Tregは蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用してCD25+T細胞を濃縮することによって単離される。
【0335】
いくつかの態様では、Tregは、CD4及びCD25の存在、ならびにIL-7R(CD127)のα鎖の欠如に基づいて単離される。
【0336】
いくつかの態様では、Tregは磁気ビーズを使用しないで単離される。いくつかの態様では、Tregは人工抗原提示細胞を使用しないで単離される。いくつかの態様では、Tregは磁気ビーズまたは人工抗原提示細胞を使用しないで単離される。
【0337】
いくつかの態様では、Tregは、リンパ球密度勾配遠心分離を使用して対象から末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、磁気ビーズを使用してCD8+細胞を枯渇させ、次いでCD25+T細胞を濃縮することによって得られる。
【0338】
いくつかの態様では、Tregはビーズ分離によって(例えば、対象から)単離される。
【0339】
増殖したTregの用途
本明細書で提供されているのはまた、本明細書で提供されている方法に従って増殖させているTregを使用する方法である。例えば、増殖したTregを対象に投与することができる。投与は、例えば、対象にて自己免疫疾患または炎症性疾患を治療するため、対象にて移植片対宿主病(GVHD)を治療または予防するため、及び/または対象にて免疫応答を低下させるためであることができる。対象は、哺乳類対象、例えば、ヒト対象であることができる。
【0340】
いくつかの態様では、自己免疫性または炎症性の疾患または障害は、乾癬、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、I型糖尿病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、HCVに関連する血管炎、円形脱毛症、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、自己免疫性肝炎、炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎、血管炎、側頭動脈炎、狼瘡、セリアック病、リウマチ性多発筋痛、及び関節炎から成る群から選択される。
【0341】
いくつかの態様では、Tregは対象から得られ、本明細書で提供されている任意の方法に従って増殖させ、次いで同じ対象に投与される。したがって、本明細書で提供されている増殖したTregの使用は自家性であることができる。
【0342】
いくつかの態様では、Tregは対象から得られ、本明細書で提供されている任意の方法に従って増殖させ、次いで異なる対象に投与される。したがって、本明細書で提供されている増殖したTregの使用は同種異系間であることができる。
【0343】
症状の治療または予防に有効であろうTregの量は疾患の性質に左右されるであろう。採用されるべき正確な用量は、投与経路及び状態の重篤度にも依存するであろう。通常、T細胞療法の施行は体重1キログラムあたりの細胞数によって定義される。しかしながら、T細胞は投与後に複製し、増殖する。細胞は当該技術分野で知られている注入技術によって投与することができる。
【実施例】
【0344】
本明細書に記載されている実験は、自己免疫疾患の治療のための免疫療法としての臨床使用のためにヒト制御性T細胞(Treg)の増殖を最大化するための周期的な試験管内アプローチを使用する。
【0345】
実施例1:材料及び方法
材料
gRNA:示されている場合、すべての実験では単一分子のgRNA(sgRNA)が使用されている。二重gRNA分子は、ヌクレアーゼを含まない二重鎖緩衝液(IDTカタログ番号11-01-03-01)にて200μMのtracrRNA(IDTカタログ番号1072534)を200μMの標的特異的crRNA(IDT)によって95℃で5分間二重鎖化し、tracrRNA:crRNA二本鎖100μMを形成することによって形成されたが、その際、tracrRNAとcrRNAは1:1の比率で存在する。
【0346】
Cas9:Cas9はS.pyogenes由来のCas9タンパク質(IDT Cat#1074182)の導入によって標的細胞にて発現された。
【0347】
RNP:gRNA-Cas9リボ核タンパク質(RNP)は、1.2μLの100μMtracrRNA:crRNA二重鎖を、1μLの20μMCas9タンパク質及び0.8μLのPBSと混合することによって形成された。混合物を室温で20分間インキュベートしてRNP複合体を形成した。
【0348】
方法
ヒトTreg細胞の単離:末梢血Treg細胞を新鮮な白血球パックまたは健康なボランティア献血者由来の全血から段階的に単離した。まず、EasySep直接ヒトPBMC単離キット(StemCell Technologies、カタログ番号19654)を使用して末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。次に、EasySepヒトCD4+T細胞単離キット(StemCell Technologies、カタログ番号17952)を使用して、陰性免疫磁気選択を介してCD4+T細胞を単離した。単離されたCD4+T細胞を、hCD25(PE、BioLegend)、hCD4(APC、BD Pharmingen)、hCD127(BV421、BD Pharmingen)及びhCD45RA(APC-Cy7、BD Pharmingen)に対する抗体で標識し、次いで以下のパラメーター:CD4+CD25hiCD127loCD45RA+に基づいて選別した。
【0349】
生体外でのヒトTreg細胞の増殖:単離したTregを、10%ヒト熱非働化血清、ヒトIL-2(800単位/mL)、N-アセチル-L-システイン(5mM)、及び10μl/mLのImmunoCult CD3/28/2四量体(StemCell Technologies、カタログ番号10970))を補充したX-VIVO 15T細胞増殖培地(Lonza、カタログ番号04-418Q)(以下、Treg培地と呼ぶ)にて1.25×105細胞/mL(ウェルあたり0.2mL)で96ウェルU底プレート(Falcon、BD Pharmingen)に播種した。培養3日目に細胞を洗浄し、IL-2を含有するTreg培地に元の濃度で再播種し、3日間増殖させた。この増殖期の間に、細胞を毎日分割して1.25×105細胞/mLの濃度を維持した。培養6日目に、細胞をCD3/28/2四量体(10μl/mL)で再刺激し、濃度を5×105細胞/mLに調整した(この細胞密度は培養期間の残りの間維持された)。IL-2の濃度は、培養の最初の7日間は800単位/mLに維持し、その後300単位/mLに減らした。四量体は各刺激サイクルの初日にのみ培養物に添加され、毎日補充されることはなかった。残りの培養期間を通して、刺激と増殖のサイクルを3~4日ごとに繰り返した。培養Treg細胞の純度は、以下に概説するようなフローサイトメトリーによって定期的にチェックした。
【0350】
Treg細胞のRNP形質移入:示されている場合、Cas9-RNPを使用してTregを以下のように編集した:培養8日目にTreg細胞を洗浄し、5×107細胞/mLでPBSに再浮遊させた。Treg細胞に無関係な遺伝子であるOR1A1(配列番号7:GCTGACCAGTAACTCCCAGG)を標的とする単一ガイドRNA(sgRNA)を試験管内にて95℃で5分間、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)と複合体形成させた。新しく生成された二重鎖分子を材料(前出)に記載されているようなCas9タンパク質と混合し、室温で20分間インキュベートして、リボ核タンパク質(RNP)を形成した。エレクトロポレーションの直前に、細胞をヌクレオフェクション緩衝液(18%のサプリメント1、Amaxa P3初代細胞4D-NuclefectorXキット S(カタログ番号V4XP-3032)からの82% P3緩衝液)に8×107細胞/mLの濃度で再浮遊させた。この細胞浮遊液を、上記の工程で得たRNP溶液及び不活性一本鎖DNAオリゴヌクレオチド(Alt-R Cas9エレクトロポレーションエンハンサー)と20:5:1の比率で混合した。「T細胞、ヒト、刺激」プログラム(EO-115)に従って細胞をエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの後、80μLの温めたX-VIVO15培地を各ウェルに添加し、IL-2(300単位/mL)を含有するX-VIVO15培地中にて2×106細胞/mLの密度で細胞を培養フラスコにプールした。
【0351】
編集効率の評価この方法では、Qiagen Blood and Cell Culture DNA Mini Kit(カタログ番号:13323)を使用して業者推奨のプロトコールに従って編集したT細胞からゲノムDNA(gDNA)を単離し、定量した。gDNAの単離に続いて、Illumina Next Generation配列決定アダプターの添加に必要なオーバーハングを含有する遺伝子座特異的なPCRプライマーを使用して、編集されたゲノムDNAの領域を増幅するためにPCRを実行した。得られたPCR産物を1%アガロースゲル上で泳動し、ゲノム遺伝子座の特異的かつ適切な増幅が確実に行われるようにした後、Monarch PCR & DNA Cleanup Kit(カタログ番号:T1030S)を使用して業者推奨のプロトコールに従ってPCRクリーンアップを実施した。次に、精製されたPCR産物を定量し、Illumina配列決定アダプターと多重化に必要な試料固有のインデックス配列をアニーリングするために2回目のPCRを実行した。この後、AMPure XPビーズ(社内で製造)を使用して精製する前に、PCR産物を1%アガロースゲル上で泳動してサイズを評価した。次に、精製されたPCR産物を、Kapa Illumina Library Quantification Kit(カタログ番号:KK4923)及びKapa Illumina Library Quantification DNA Standards(カタログ番号:KK4903)を使用したqPCRによって定量した。次に、定量した生成物を、Illumina NextSeq 500/550中出力試薬カートリッジv2(カタログ番号:FC-404-2003)を使用してIllumina NextSeq 500システムに負荷した。作成した配列決定データの分析を実行して、編集したT細胞プールのDNAの予想される切断部位での挿入と欠失(インデル)を評価した。
【0352】
OR1A1編集Treg細胞の免疫表現型検査及びTSDR分析:培養Treg細胞の純度を、CD4の表面染色(クローンSK3、室温で10分間)、その後の生存率染色(LIVE/DEAD FixableNear-IR染色、ThermoFisher Scientific、カタログ番号L34975、室温で5分)、固定/透過処理(eBioscience FoxP3/転写因子染色緩衝液セット、カタログ番号:00-5523-00、室温で45分)、そして最後に、Helios(クローン22F6)及びFoxP3(クローン259D/C7)の室温での30分間の細胞内染色によって増殖の間、定期的に調べた。データ収集には LSRFortessa(BD Biosciences)を使用し、FlowJo ソフトウェア(TreeStar)を使用して分析を実行した。TSDR分析では、OR1A1についてTreg細胞を編集してから12日後に、細胞を上記のように抗hCD4及び生存色素で染色し、続いて0.5%パラホルムアルデヒド(BioLegend、カタログ番号420801)で室温にて10分間固定した。固定した細胞を1%BSAを含有するPBSで2回洗浄し、細胞膜を透過化するために氷冷メタノール(100%)にて氷上で30分間インキュベートし、その後上記のようにHelios及びFoxP3について細胞内染色した。染色後、細胞を洗浄し、1%BSAを伴うPBSに再浮遊させ、BD FACSAria II細胞選別機にてFoxP3-、FoxP3+Helios-、FoxP3+Helioslo、及びFoxP3+Helioshi(1×106細胞/サブセット)として選別した。Qiagen Blood and Cell Culture DNA Mini Kit(カタログ番号:13323)を使用して業者推奨のプロトコールに従って、上述のような選別された集団のそれぞれからゲノムDNA(gDNA)を単離した。ゲノムDNAの重亜硫酸塩変換とパイロシーケンスをEpigenDx(アッセイID ADS783-FS2)によって実行し、FoxP3遺伝子領域のメチル化状態を定量した。
【0353】
Tregによる同種異系または自家のTエフェクター細胞の試験管内抑制:新鮮なまたは凍結したTregの抑制機能は、Canavan et al.(”A rapid diagnostic test for human regulatory T-cell function to enable regulatory T-cell therapy”Blood.2012,Feb,23;119(8))によって開発されたFastImmune法の改変版、と同様に社内で開発された従来の試験管内抑制アッセイを使用して決定した。凍結したTregの場合、アッセイ開始の4日前に細胞を解凍し、IL-2(300単位/mL)を含有するTreg培地中で一晩静置した。一晩静置したTregを、10μl/mLのImmunoCult CD3/28/2四量体(StemCell Technologies、カタログ番号10970)及びIL-2(300単位/mL)を含有するTreg培地にて再刺激した。アッセイ開始の1日前、凍結した同種異系または自家のPBMCを解凍し、以下のように細胞追跡バイオレット(CTV)で標識した;0.1%BSAを含有するPBSでPBMCを2回洗浄した後、細胞を2.5×107細胞/mLで同じ緩衝液に再浮遊させた。等量のCTV(12.5μM)を細胞浮遊液にゆっくりと加え、続いて暗所、室温にて8分間インキュベートした。標識した細胞を10容量のTreg培地で3回洗浄し、IL-2(100単位/mL)を含有する同じ培地に1×106細胞/mLで再浮遊させた。翌日、標識したPBMCを1回洗浄して残留IL-2を除去し、Treg培地に5×105細胞/mLで再浮遊させた。次いで、ウェル当たりこの細胞浮遊液50マイクロリットルを2枚の96ウェルU底プレート(各アッセイに1枚)に加えた。予め活性化したTreg細胞を2回洗浄してIL-2及び四量体を除去し、Treg培地中に5×105細胞/mLで再浮遊させた。Treg 細胞の5段階の2倍連続希釈を別のプレート上にて2つ組で調製し、そこから50μlを2つのアッセイプレートのそれぞれに移し、Treg:PBMC比が1/1~1/16になるようにし、最後の行はPBMCのみを含有した。Dynabeads Human Treg Expander(Thermo Fisher Scientificカタログ番号11129D、7’500ビーズ/ウェル)及びAPC結合抗ヒトCD40LmAb(クローン24-31、BioLegendカタログ番号310805、1:50希釈)をウェルあたり0.2mLの最終容量でFastImmune Assayの各ウェルに添加した。試験管内抑制アッセイプレートにウェルあたり0.1mLのImmunoCult CD3/28/2四量体(3μl/mL)を加えた。37℃で7~12時間インキュベートした後、FastImmuneアッセイを停止し、細胞をCD3(クローンHIT3a)、CD4(クローンSK3)、CD8(クローンSK1)及びCD69(クローンFN50)に対するmAbで染色した(mAbはすべてBioLegendから購入した)。Treg抑制のレベルは、Tregの非存在下及び存在下で培養したTエフェクター細胞上のCD40L及びCD69の発現(平均蛍光強度)を比較するフローサイトメトリーによって決定した。従来の抑制アッセイは4日間のインキュベート後に終了し、細胞をCD3、CD4、及びCD8について染色した (クローン及び業者については上記を参照のこと)。CD4及びCD8Tエフェクター細胞についてのCTV希釈をフローサイトメトリーで捕捉し、FlowJo(TreeStar Inc)のDivision Indexを使用して、元の集団内の細胞が受けた細胞分裂の平均回数を計算した。
【0354】
実施例2:Tregの増殖に対する連続刺激と不連続刺激の効果
刺激期間(すなわち、刺激が存在する場合)の後に非刺激条件の期間(すなわち、刺激が存在しない場合)が続く不連続な刺激投与計画を実施することによってTregの増殖が加速できるかどうかを調べるためにアッセイを実施した。ヒトTregを末梢血から単離したCD4+T細胞からCD45RA
+CD25
hiCD127
loとしてFACS選別し、次いでIL-2及びNACの存在下でCD3/28/2四量体抗体(白抜き記号)またはCD3/28でコーティングした磁性Dynabeadsで刺激した。3日間の培養後、細胞を洗浄し、計数し、次いで四量体抗体(Ab)/Dynabeadsの有無にかかわらず培地とIL-2を含有する2つの別々のウェルに分割した。培養6日目に細胞を再度計数したところ、その時点で不連続刺激を受けたTregは約40倍に増殖していたのに対して、連続刺激したTregは約20倍にすぎなかった。(
図1を参照)。細胞が四量体AbまたはDynabeadsのどちらで刺激されたかに関係なく、2つの条件間の増殖の差異が観察された。(同上を参照のこと)。
実施例3:Tregの活性化に対する連続刺激と不連続刺激の効果
【0355】
3日間の非刺激条件がTregの活性化状態にどのような影響を与えるかを評価するためにアッセイを実行した。細胞の前方散乱(FSC)プロファイルに比例する相対的な細胞サイズは、試験管内で培養されたT細胞の活性化状態の指標として一般的に使用される:ナイーブ細胞は表面積が小さいため、T細胞受容体(TCR)ライゲーションを受けた活性化細胞に比べてFSC値は低くなる。この実験の結果は、3日間刺激され、その後3日間非刺激条件が続いたTregは、6日間連続で刺激したTregよりも表面積が大幅に小さいことを示している。(
図2を参照のこと)。
【0356】
実施例4:Tregの増殖に対する長期非刺激の影響
長期間の非刺激条件がTregの増殖にどのような影響を与えるかを実証するためのアッセイを実施した。
図1に示すように、刺激の後に3日間の非刺激条件が続くと、Tregの増殖が加速される。非刺激条件の期間が7日間に延長されると、10日目にTregが再刺激された場合でも、0日目と11日目の間の増殖倍数として決定される増殖は基準条件(連続刺激)と比べて減少する。(
図3を参照のこと)。
【0357】
実施例5:操作したTregの増殖に対する連続刺激と不連続刺激の効果
不連続刺激(DSORT(商標))または連続刺激(基準)に供されたTregのCRISPR操作後の細胞回復を比較するためにアッセイを実施した。細胞が約250倍に増殖したときに操作を実行した。DSORT(商標)Tregは8日目に約250倍に増殖し;基準のTregは11日目に約250倍に増殖した。Cas9タンパク質と一緒に細胞に形質移入(エレクトロポレーション)したTreg非関連遺伝子Or1a1に対する単一ガイドRNA(sgRNA)を使用して操作を実行した。
【0358】
形質移入当日、形質移入1日後、その後の試験の残りの期間は1~2日ごとに生存Tregの数を測定した。DSORT(商標)Treg(白抜き四角)は遺伝子操作後さらに3倍に増殖し続けた一方で、基準Treg(黒丸)は形質移入後に遺伝子操作前のレベルに回復できなかった。(
図4を参照のこと)
【0359】
実施例6:DSORT(商標)増殖プロトコールと他の増殖プロトコールの比較
DSORT(商標)Tregの増殖速度を、生体外増殖用の公的に入手可能なプロトコールを使用して生成されるTregの増殖速度と比較した。結果を
図5に示す。上のグラフは3人の異なるドナーから単離され、増殖の8日目に対照遺伝子(Or1a1)について操作したTregの11日間にわたる生体外DSORT(商標)増殖における細胞数(左y軸)と増殖倍率(右y軸)を示す。下の表は2015年から2019年の間に公開された種々の試験に由来するTregの対応する増殖倍率を示す。これらの公開された試験におけるTregは11日を超えて培養されており、遺伝子操作されていなかった。上のグラフからのDSORT(商標)Tregの平均増殖倍率は参考のために表(「KSQ Tx 2020」とラベル付け)に含まれている。この表の結果は、操作されたDSORT(商標)Tregの増殖倍率が、他の増殖プロトコールに従った操作されていないTregで観察された最高増殖倍率であってもそのほぼ2倍であったことを示している。
【0360】
実施例7:Tregの安定性に対する連続刺激と不連続刺激の効果
不連続な刺激を受けた場合に、Tregが試験管内で系列安定性をどのように維持するかを検討するためのアッセイを実行した。
【0361】
HeliosはTregにてFoxP3の発現を強化する転写因子である。ある細胞世代から次の世代まで安定性を維持するTregは、完全に脱メチル化されたTreg特異的脱メチル化領域(TSDR、FoxP3遺伝子内の遺伝子座)を有するのに対して、試験管内でエフェクターT細胞から変換された(いわゆる誘導型Treg)、または炎症条件下で不安定化しやすいTregのTSDRは部分的にメチル化されている。この実験のTregはFoxP3とHeliosの発現に基づいて4つのサブセットに選別された。次に、選別された細胞をDNAメチル化アッセイ(パイロシークエンシング)を使用して分析し、TSDR遺伝子座のメチル化レベルを決定した。
図6Aに示す結果は、Helios+Tregのみが完全に脱メチル化されたTSDRを有したことを示している。
【0362】
種々の割合のHelios+細胞を含むTregを、エフェクターT細胞の増殖を抑制するTregの能力を測定する従来の試験管内抑制アッセイに供した。
図6Bでは、抑制のレベル(x軸、倍率変化、FCとして示される)をHelios+Tregの割合(y軸)に対してプロットした。Helios+細胞の割合が高いTregはエフェクターT細胞の増殖の抑制において、Helios+細胞の割合が低いTregよりも優れていた。このデータはTreg機能のマーカーとしてのHeliosの重要性を裏付けている。
【0363】
DSORT(商標)プロトコールを使用して生成されたHelios+Tregの割合を、培養12日目の基準(途切れることなく刺激された)Tregを使用して生成されたHelios+Tregの割合と比較した。
図6Cに示す結果は、DSORT(商標)プロトコールを使用して生成されるTregの大部分がHelios+であったことを示している。
【0364】
実施例8:Tregの抑制活性に対する連続刺激と不連続刺激の効果
DSORT(商標)(黒四角)と基準(途切れることなく刺激された)Treg(白抜き四角)の抑制機能を比較するためにアッセイを実行した(
図7)。
図7に提示されたグラフは、TregのPBMCに対する種々の比率(x軸)でのCD4+エフェクターT細胞の増殖を示す(y軸にて最大増殖の%として示す)。グラフにおける水平破線はIC50(50%抑制時のTreg:PBMCの比)を示す。
図7に提示する表は、複数のドナーからのDSORT(商標)及び基準のTregのIC50値を示す。これらのデータに基づくと、DSORT(商標)Tregは基準Tregよりも少なくとも8倍抑制性である。
* * *
【0365】
本明細書に引用されている特許及び刊行物はすべて、その全体的が参照によって本明細書に完全に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】