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特表2024-507381カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20240209BHJP
【FI】
G01C21/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551183
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2022051913
(87)【国際公開番号】W WO2022179794
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】102021104425.1
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー メッツガー
(72)【発明者】
【氏名】イェンス シュトローベル
(72)【発明者】
【氏名】モハンマド トゥリアン
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB22
2F129BB33
2F129BB48
2F129DD13
2F129EE78
2F129GG17
2F129GG18
(57)【要約】
本発明は、カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法であって、カルマンフィルタには、システムの少なくとも1つのセンサによって測定された少なくとも1つの測定値が供給される、方法において、少なくとも、a)カルマンフィルタを用いてシステム状態の推定を実施するステップであって、予測ステップ及び当該予測ステップに続く補正ステップを用いて、推定結果と、当該推定結果の信頼性に関する付随情報とを求める、ステップと、b)推定に付随する予測された推定結果と、推定に付随する修正された推定結果との間の不一致を考慮に入れて、推定結果の信頼性に関する情報を修正するための係数を求めるステップと、c)ステップb)において求められた係数を使用して、推定結果の信頼性に関する情報を修正するステップとを含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求める方法であって、前記カルマンフィルタには、システムの少なくとも1つのセンサによって測定された少なくとも1つの測定値が供給される、方法において、少なくとも、
a)前記カルマンフィルタを用いて前記システム状態の推定を実施するステップであって、予測ステップ及び前記予測ステップに続く補正ステップを用いて、推定結果と、前記推定結果の信頼性に関する付随情報とを求める、ステップと、
b)推定に付随する予測された推定結果と、推定に付随する修正された推定結果との間の不一致を考慮に入れて、前記推定結果の信頼性に関する情報を修正するための係数を求めるステップと、
c)前記ステップb)において求められた前記係数を使用して、前記推定結果の信頼性に関する情報を修正するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップb)において求められた前記係数は、分散係数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記推定結果の信頼性に関する情報を修正するための前記係数を求める前記ステップは、推定に付随する少なくとも1つのモデル値と、推定に付随する少なくとも1つの測定値との間の不一致も考慮に入れて行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記推定結果の信頼性に関する情報を修正するための前記係数を求める前記ステップは、前記係数の分散も考慮に入れて行われる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法を実施するためのコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている、車両(2)用の位置特定装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法に関する。さらに、この方法を実施するためのコンピュータプログラム、コンピュータプログラムを含む機械可読記憶媒体、及び、位置特定装置が開示される。本発明は、特に、自動運転又は自律運転に関連して適用可能である。
【背景技術】
【0002】
従来技術
全地球航法衛星システム(GNSS)を用いることにより、地球上のどの地点においても地理的な位置特定を行うことが可能である。GNSS衛星は、地球を周回し、符号化された信号を送信する。これらの信号の支援を用いて、GNSS受信機は、信号受信時点と送信時刻との間の時間差を推定することにより、受信機から衛星までの距離又は間隔を計算する。衛星までの推定された距離は、例えば、十分な数(典型的には、5個を超える数)の衛星が追跡されていれば、GNSSセンサによって受信機の位置の推定値に変換することができる。現在、地球を周回するGNSS衛星は、130個を超えて存在し、このことは、通常、それらのうちの最大65個が局所的地平線において視認可能であることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
GNSSに基づいて車両の位置や速度などの航法データを求めるためには、いわゆるカルマンフィルタが定着している。カルマンフィルタは、通常、誤差の含まれる観測に基づくシステム状態の推定に用いられる。カルマンフィルタは、推定結果に対して付加的に、推定結果の信頼性に関する付随情報も提供する。しかしながら、これらの情報は、通常、共分散行列として出力され、多くの場合、過度に楽観的であることが観察できた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の開示
本明細書において請求項1によって提案されるのは、カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法であって、カルマンフィルタには、システムの少なくとも1つのセンサによって測定された少なくとも1つの測定値が供給される、方法において、少なくとも、
a)カルマンフィルタを用いてシステム状態の推定を実施するステップであって、予測ステップ及び当該予測ステップに続く補正ステップを用いて、推定結果と、当該推定結果の信頼性に関する付随情報とを求める、ステップと、
b)推定に付随する予測された推定結果と、推定に付随する修正された推定結果との間の不一致を考慮に入れて、推定結果の信頼性に関する情報を修正するための係数を求めるステップと、
c)ステップb)において求められた係数を使用して、推定結果の信頼性に関する情報を修正するステップと、
を含む方法である。
【0005】
ステップa)、b)及びc)は、本方法の実施のために、例えば、提示された順序により少なくとも1回及び/又は繰り返し実施することができる。さらに、ステップa)、b)及びc)、特にステップa)及びb)は、少なくとも部分的に並行して又は同時に実施することができる。特に、ステップb)による修正のための係数は、ステップa)における推定の間に、少なくとも部分的に求めることができ、又は、同様に及び/又は共に推定することもできる。さらに、ステップc)による修正は、ステップa)の間に、又は、推定結果の信頼性に関する(最終)情報の出力の前に、少なくとも部分的に行うことができる。
【0006】
本方法は、特に、推定結果の信頼性に関する情報をより現実的に提供するために用いられる。好適には、本方法は、例えばGNSS/INS位置特定センサなどの位置特定装置において推定位置及び/又は速度に対する代表的な分散又は共分散行列を提供するために役立つ可能性がある。
【0007】
少なくとも1つのシステム状態は、例えば、少なくとも1つの(固有)位置及び/又は(固有)速度を含み得る。少なくとも1つのセンサは、例えば、GNSSセンサ、イナーシャセンサ(即ち、慣性センサ)、及び/又は、RADARセンサ、LIDARセンサ、超音波センサ、カメラセンサなどの環境センサを含み得る。その上さらに、操舵角センサ及び/又はホイール回転数センサを使用することができる。本方法は、車両において及び/又は車両のために実行することができる。例えば、本方法は、車両の位置特定装置によって実行することができる。少なくとも1つのセンサは、車両内又は車両上に配置されるものとしてもよい。少なくとも1つのシステム状態は、1つの状態、特に車両の航法状態(位置、姿勢、方向)及び/又は移動状態(速度、加速度)を記述することができる。車両とは、例えば、好ましくは、少なくとも部分的に自動化された走行モード用に又は自律的な走行モード用に設定された自動車であり得る。
【0008】
カルマンフィルタは、通常、カルマンフィルタ方程式によって定義される。通常のカルマンフィルタ方程式は、以下のように行列表記で記述することができる:
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0009】
特に、各測定変数(μ)に対して同じスケーリングを有する対応するモデル変数(μ)が存在する場合、及び/又は、逆に、各モデル変数に対して同じスケーリングを有する対応する測定変数が存在する場合は、式中符号K,Σ’,Σ,Σ,μ’,μ,μを用いた明示的な方程式を使用することができる。そうでない場合は、例えば、式中符号H,K’,P,R,
【数6】
,zを用いた方程式GL3乃至GL5を使用することができる。数値計算について、これらの方程式は、予め明示的な形式にもたらすことができ、このことは特に、方程式の両辺におけるH又はHの除算によって行うことができる。
【0010】
方程式GL1及びGL2は、カルマンフィルタの推定過程を記述している。ここで、
【数7】
又はμは、時間ステップkにおけるシステム状態ベクトル又はモデル値ベクトル(予測ステップの推定結果)を記述し、Fは、時間ステップk-1から時間ステップkまでシステム状態を伝播する遷移行列を記述し、Bは、決定論的外乱の動特性及びシステム状態への投影を記述し、
【数8】
は、決定論的外乱のベクトル(例えば既知の操作変数)を記述し、P又はΣは、
【数9】
の誤差の共分散行列(予測ステップの推定結果の信頼性に関する情報)を記述し、Qは、プロセスノイズ又はプロセスノイズの共分散行列を記述する。方程式GL3乃至GL5は、推定されたモデル値の、センサによって捕捉された測定値を用いた補正又は融合を記述する。ここで、Hは、観測行列を記述し、Kは、いわゆるカルマンゲインを記述し、R又はΣは、測定ノイズの共分散行列を記述し、
【数10】
又はμは、時間ステップkにおいて存在する新しい観測値又は測定値を含む測定値ベクトルを記述し、
【数11】
は、新しい観測値の適用後のシステム状態(補正ステップの推定結果)を記述し、
【数12】
又はΣ’は、
【数13】
の誤差の共分散行列(補正ステップの推定結果の信頼性に関する情報)を記述する。
【0011】
ステップa)においては、カルマンフィルタを用いたシステム状態の推定の実施が行われ、ここでは、予測ステップと当該予測ステップに続く補正ステップとを用いて、推定結果及び推定結果の信頼性に関する(それぞれの)関連情報が求められる。予測ステップは、方程式GL1及びGL2によって表すことができる。補正ステップは、方程式GL3乃至GL5によって表すことができる。時間ステップkにおけるシステム状態は、本明細書においては例示的に式中符号
【数14】
によって表され、通常、予測ステップの推定結果を示す(方程式GL1)。式中符号Pを有する共分散行列は、通常、予測ステップの推定結果の信頼性に関する情報を示す(方程式GL2)。式中符号Kは、いわゆるカルマンゲインを表す(方程式GL3)。式中符号μ’は、修正されたシステム状態、したがって通常、補正ステップ後の推定結果を表す(方程式GL4)。この修正された推定結果は、通常、総推定結果又は時間ステップkについてのカルマンフィルタの複数(2つ)の出力の1つを示す(方程式GL5)。式中符号Σ’は、修正された共分散行列を示し、したがって通常、補正ステップの推定結果又は時間ステップkについての総推定結果の信頼性に関する情報を表す。修正された共分散行列は、通常、時間ステップkについてのカルマンフィルタの複数(2つ)の出力のうちのさらなる又は第2の出力を形成する。
【0012】
ステップb)においては、推定に付随する予測された推定結果と、推定に付随する修正された推定結果との間の不一致を考慮に入れて、推定結果の信頼性に関する情報を修正するための係数を求めることが行われる。基本的に、ここでは、1つの係数又は複数の係数を求めることができ、これらはそれぞれ、推定に付随する予測された推定結果と、推定に付随する修正された推定結果との間の不一致を考慮に入れて求められる。係数又は係数のうちの1つは、予測ステップの推定結果の信頼性に関する情報(式中符号:P)の修正のために使用することができる。代替的に又は累積的に、係数又は係数のうちの1つは、補正ステップの推定結果の信頼性に関する情報(式中符号:Σ’)を修正するために使用することができる。好適には、係数又は係数のうちの1つは、少なくとも、補正ステップの推定結果の信頼性に関する情報を修正するために(式中符号:Σ’;又は、方程式GL5においては、例えば方程式GL5の補正のために)用いられる。
【0013】
不一致は、推定に付随する予測された推定結果(式中符号:
【数15】
又はμ)と、推定に付随する修正された推定結果(式中符号:
【数16】
又はμ’)との間で求められる。このことは、換言すれば、特に、モデル値の予測値と推定値との間の不一致が求められるように記述することもできる。その上さらに、さらなる不一致及び/又は相関が、係数を求めることに導入される可能性もある。
【0014】
係数とは、例えば、行列、特に関連する共分散行列に対するいわゆる余係数であり得る。余係数は、特に、観測値のために選択された共分散行列が、楽観的、即ち、余係数>1であるか、又は、悲観的、即ち、余係数<1であるかを示す。
【0015】
ステップc)においては、ステップb)において求められた係数を使用して、推定結果の信頼性に関する情報の修正が行われる。求められた係数は、ここでは例示的にσで表すことができる。
【0016】
この場合、例えば、予測ステップの推定結果の信頼性に関する情報の修正を行うことができる。特に、この文脈においては、予測ステップに対する共分散行列(式中符号:P又はΣ;方程式GL2)は、修正又はスケーリングが可能である。これは、例えば、以下の方程式GL2newに従って行うことができる:
【数17】
【0017】
代替的又は累積的に、補正ステップの推定結果の信頼性に関する情報の修正を行うことができる。特に、この文脈においては、補正ステップに対する共分散行列(式中符号:P’又はΣ’;方程式GL5)は、修正又はスケーリングが可能である。これは、例えば、以下の方程式GL5newに従って行うことができる:
【数18】
【0018】
特に、ステップc)の実施のために、上記で例示的に提示されたカルマンフィルタ方程式GL1乃至GL5を有する方程式系において、方程式GL2は、方程式GL2newによって置換可能であり、及び/又は、方程式GL5は、方程式GL5newによって置換可能である。
【0019】
好適には、この文脈においては、補正ステップの推定結果の信頼性に関する情報の少なくとも1つの修正が行われる(予測ステップの推定結果の信頼性に関する情報が修正されない場合でも)。このことは、換言すれば、好適には、少なくとも方程式GL5が、方程式GL5newによって置換されるように記述することもできる(方程式GL2が方程式GL2newによって置換されない場合においても)。
【0020】
代替的又は累積的に、ステップc)の実施のために、修正された若しくは最終的な共分散行列D又はすべての総分散行列Dは、特に以下の式に従って求めることができる:
D=σΣ’
【0021】
好適な実施形態によれば、ステップb)において求められた係数が分散係数であることが提案される。分散係数は、特に、カルマンフィルタ又はカルマンフィルタ方程式の1つ又は複数の分散又は共分散行列(例えば、P及び/又はΣ’)のスケーリングのために用いられる。これに対する例は、既に前述の段落において、特に方程式GL2new及びGL5newに関連して提示されている。(分散)係数とは、例えば、行列、特に関連する共分散行列に対するいわゆる余係数であり得る。余係数は、特に、観測値のために選択された共分散行列が、楽観的、即ち、余係数>1であるか、又は、悲観的、即ち、余係数<1であるかを示す。
【0022】
さらなる好適な実施形態によれば、推定結果の信頼性に関する情報を修正するための係数を求めることが、推定に付随する少なくとも1つのモデル値(式中符号:
【数19】
又はμ)と、推定に付随する少なくとも1つの測定値(式中符号:
【数20】
又はμ)との間の不一致も考慮に入れて行われることが提案される。
【0023】
さらなる好適な実施形態によれば、推定結果の信頼性に関する情報を修正するための係数を求めることが、係数の分散(式中文字:
【数21】
)も考慮に入れて行われることが提案される。
【0024】
係数の対応する分散(式中符号:
【数22】
)は、例えば、以下の式に従って求めることができる:
【数23】
【0025】
係数は、好適には、(カルマンフィルタ用の)ベイズの定理に基づくことができる。このことは、換言すれば、係数が、好適にはベイズの定理の適用下において求められるように記述することもできる。σは、通常、未知のパラメータであるため、事前分布は、正規ガンマ分布とみなすことができる。正規分布する尤度関数の場合、正規ガンマ事前分布も同様に共役となり、事後分布についても正規ガンマ分布をもたらす。ここでの「事前分布」とは、通常、方程式GL1及びGL2による推定過程の結果
【数24】
及びPに関連する。「尤度関数」は、通常、補正ステップの方程式GL4及びGL5による関数に関係する。「事後分布」は、ここでは通常、補正ステップの結果
【数25】
及び
【数26】
に関係する。
【0026】
特に好適な実施形態によれば、(分散係数としての)係数は、例えば、以下の式に従って求める又は推定することができる:
【数27】
【0027】
ここで、σは、係数を記述し、nは、観測値(測定値)の数を記述し、kは、それぞれの時間ステップを記述し、vは、係数の分散を記述し(例えば上記に提示された式に従って求められる)、x’は、修正された推定結果を有する状態ベクトルを記述し(方程式GL4)、xは、推定に付随するモデル値又はモデル値ベクトルを有する状態ベクトルを記述し(予測ステップにおいて又は方程式GL1に従って求められる)、Pは、予測ステップに対する共分散行列を記述し(方程式GL2)、zは、観測ベクトル又は測定値ベクトルを記述し、Hは、観測行列を記述し(これはシステム状態の値を観測値に写像する)、Rは、測定ノイズの共分散行列を記述する。
【0028】
ステップc)に従って修正された情報は、例えば、位置特定パラメータの整合性に関する少なくとも1つの整合性パラメータを求めるために使用することができる。この場合、少なくとも1つの位置特定パラメータは、例えば、車両を位置特定するために用いることができる。少なくとも1つの位置特定パラメータは、例えば、車両の(固有)位置及び/又は(固有)速度を含み得る。少なくとも1つの整合性パラメータは、例えば、該当する位置特定パラメータの(真の)値周りの信頼範囲又は信頼間隔を記述することができる。好適には、整合性パラメータは、いわゆる保護レベルであり得る。
【0029】
さらなる態様によれば、本明細書に提示された方法を実施するためのコンピュータプログラムが提案される。このことは、換言すれば、特に、プログラムがコンピュータによって実行されるときに、当該コンピュータに本明細書に記載された方法を実施させるための命令を含むコンピュータプログラム(製品)に関する。
【0030】
さらなる態様によれば、本明細書において提案されるコンピュータプログラムが格納又は記憶されている機械可読記憶媒体が提案される。通常、機械可読記憶媒体とは、コンピュータにより読み取り可能なデータ担体である。
【0031】
さらなる態様によれば、車両用の位置特定装置が提案され、ここで、当該位置特定装置は、本明細書に記載の方法を実施するように構成されている。位置特定装置は、例えば、本方法を実行するための命令が実行可能なコンピュータ及び/又は制御装置(コントローラ)を含み得る。この目的のために、コンピュータ及び/又は制御装置は、例えば、提示されたコンピュータプログラムを実行することができる。例えば、コンピュータ又は制御装置は、コンピュータプログラムを実行可能にするために、提示された記憶媒体にアクセスすることができる。位置特定装置とは、例えば、特に車両内又は車両上に配置された運動及び位置センサであり得る。
【0032】
方法に関連して説明してきた詳細、特徴、及び、好適な実施形態は、対応して本明細書に提示されたコンピュータプログラム及び/又は記憶媒体及び/又は位置特定装置においても生じ得るし、その逆もあり得る。その限りにおいては、特徴のより詳細な特徴付けについては、本明細書に記載の説明を完全に参照されたい。
【0033】
以下においては、本明細書に提示された解決手段及びそれらの技術的環境を図面に基づきより詳細に説明する。本発明は、図示の実施例に限定されるべきものではないことに留意されたい。特に、明示的に他の方法が示されない限り、図面において説明した事例の部分的な態様を抽出し、他の図面及び/又は本明細書からの他の構成要素及び/又は知見と組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本明細書に提示された方法の例示的なシーケンスを概略的に示した図である。
図2】本明細書に提示された方法のさらなる例示的なシーケンスを概略的に示した図である。
図3】本明細書に記載された位置特定装置を備えた例示的な車両を概略的に示した図である。
図4】本方法を説明するための例示的な測定結果を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本明細書に提示された方法の例示的なシーケンスを概略的に示している。この方法は、カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるために用いられ、ここで、カルマンフィルタには、システムの少なくとも1つのセンサによって測定された少なくとも1つの測定値が供給される。ブロック110,120及び130によって示されたステップa)、b)及びc)の順序は、例示的なものであり、本方法の実施のために、例えば、少なくとも一回、図示の順序により実施することができる。
【0036】
ブロック110においては、ステップa)により、カルマンフィルタを用いてシステム状態の推定の実施が行われ、ここで、予測ステップ及び当該予測ステップに続く補正ステップを用いて、推定結果と、当該推定結果の信頼性に関する付随情報とが求められる。ブロック120においては、ステップb)により、推定に付随する予測された推定結果と、推定に付随する修正された推定結果との間の不一致を考慮に入れて、推定結果の信頼性に関する情報を修正するための係数を求めることが行われる。ブロック130においては、ステップc)により、ステップb)において求められた係数を使用して、推定結果の信頼性に関する情報を修正することが行われる。
【0037】
この場合、ステップb)において求められた係数は、分散係数であるものとしてよい。さらに、推定結果の信頼性に関する情報を修正するための係数を求めることは、推定に付随する少なくとも1つのモデル値と、推定に付随する少なくとも1つの測定値との間の不一致も考慮に入れて行うことが可能である。また、推定結果の信頼性に関する情報を修正するための係数を求めることは、係数の分散を考慮に入れて行うことも可能である。
【0038】
本方法を用いることにより、カルマンフィルタセットアップ内において分散係数を推定するための特に好適な方法が提示可能になる。その際、推定された分散係数に共分散行列を乗じることが可能である。好適には、提案された手法を用いることにより、推定位置と速度とに対して可及的に有意な共分散行列をカルマンフィルタから出力することができ、これは、(GNSS/INSに基づく)位置特定センサについての代表的な不確実性を得るための基礎として使用することができる。対応する代表的な不確実性は、特に、所定の高い信頼レベルの範囲内において生じ得る誤差(推定位置-真の位置)を担保するために役立たせることができる。
【0039】
本方法において、特に、推定位置に対する代表的な分散を得るために、特に好適には、カルマンフィルタの推定共分散行列に対するベイズの定理に基づく分散係数を求めることができる。このことは、換言すれば、係数は、好適にはベイズの定理の適用下において求められるように記述することもできる。
【0040】
ベイズの観点からは、カルマンフィルタにおける推定値は、事前分布に尤度関数を乗じることにより得ることができる。カルマンフィルタにおいては尤度関数が正規分布するので、事前分布は共役事前分布となり、これは同じ系列の事後分布をもたらす。また、正規ガンマ分布も共役事前分布であることを示すことができ、これは、正規ガンマ事後分布をもたらす。それゆえ、事前分布の共分散は、未知の共分散行列に分散係数を乗じたものとみなすことができる:
D(x)=σΣ
【0041】
そのような共分散行列の考慮下においては、特に、カルマンフィルタの各ステップにおける二乗シグマ又は分散係数は、以下のように推定できることを示すことができる:
【数28】
【0042】
ここで、σは、係数を記述し、nは、観測値の数を記述し、kは、それぞれの時間ステップを記述し、vは、係数の分散を記述し、x’は、修正された推定結果を有する状態ベクトルを記述し、xは、推定に付随するモデル値又はモデル値ベクトルを有する状態ベクトルを記述し(予測ステップにおいて又は方程式GL1に従って求められる)、Pは、予測ステップに対する共分散行列を記述し(方程式GL2)、zは、観測ベクトル又は測定値ベクトルを記述し、Hは、観測行列を記述し(これはシステム状態の値を観測値に写像する)、Rは、測定ノイズの共分散行列を記述する。
【0043】
図2は、本明細書に提示された方法のさらなる例示的なシーケンスを概略的に示している。ブロック210においては、予測ステップに対する共分散行列を求めることが行われる。この場合、ブロック220においては、プロセスノイズの加算を行うことができる(式中符号:Q;方程式GL2参照)。その上さらに、ブロック230により、(場合によっては必要となる)共分散行列の初期化を実現することができる。ブロック240においては、補正ステップにおいて共分散行列の補正が行われる(方程式GL5参照)。ブロック250においては、係数σを例えば上記提示の式に従って求めることが行われる。ブロック260においては、係数を用いて修正又はスケーリングされた共分散行列の出力が行われる(方程式GL5new参照)。
【0044】
図3は、本明細書に記載の位置特定装置1を備えた例示的な車両2を概略的に示している。この位置特定装置1は、本明細書に記載の方法を実施するように構成されている。
【0045】
図4は、本方法を説明するための例示的な測定結果を概略的に示している。これらの測定結果は、係数σに対する上記式からの項
【数29】
の偏差を示している。この項は、特に好適には、推定に付随する予測された推定結果と、推定に付随する修正された推定結果との間の不一致を考慮に入れるために役立たせることができる(本方法のステップb)参照)。
【0046】
一方では、8字型の軌道を走行する例示的なケースに対するシミュレーションでは、非線形的傾向が強い軌道の際に、(分散)係数の式において提示された項がより大きい値をとることが観察できた。他方では、これに対応する(図4に示されている)結果は、実際の走行試験でも観察できた。特にその際には、提示された項がカーブ走行時に増加することが観察できた。
【0047】
これにより、好適には、推定結果の信頼性に関する情報のより現実的な提供が可能となる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求める方法であって、前記カルマンフィルタには、システムの少なくとも1つのセンサによって測定された少なくとも1つの測定値が供給される、方法において、少なくとも、
a)前記カルマンフィルタを用いて前記システム状態の推定を実施するステップであって、予測ステップ及び前記予測ステップに続く補正ステップを用いて、推定結果と、前記推定結果の信頼性に関する付随情報とを求める、ステップと、
b)推定に付随する予測された推定結果と、推定に付随する修正された推定結果との間の不一致を考慮に入れて、前記推定結果の信頼性に関する情報を修正するための係数を求めるステップと、
c)前記ステップb)において求められた前記係数を使用して、前記推定結果の信頼性に関する情報を修正するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップb)において求められた前記係数は、分散係数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記推定結果の信頼性に関する情報を修正するための前記係数を求める前記ステップは、推定に付随する少なくとも1つのモデル値と、推定に付随する少なくとも1つの測定値との間の不一致も考慮に入れて行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記推定結果の信頼性に関する情報を修正するための前記係数を求める前記ステップは、前記係数の分散も考慮に入れて行われる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
コンピュータプログラムであって、当該コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されるときに、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法を前記コンピュータに実施させるための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体。
【請求項7】
請求項に記載の機械可読記憶媒体備えている、車両(2)用の位置特定装置(1)。
【国際調査報告】