(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】周波数変換器ならびに周波数変換器を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240209BHJP
H02P 25/22 20060101ALI20240209BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20240209BHJP
H02M 7/493 20070101ALI20240209BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02P25/22
H02P27/06
H02M7/493
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551752
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2022054239
(87)【国際公開番号】W WO2022179980
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】102021104567.3
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519079164
【氏名又は名称】エル・エス・ピー イノヴェイティヴ オートモーティヴ システムズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】LSP Innovative Automotive Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Feringastr. 9, 85774 Unterfoehring, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ イェレープ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ロスマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ライバー
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505DD06
5H505EE35
5H505HB01
5H770AA02
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA30
5H770DA41
5H770JA17Y
5H770LA10Y
(57)【要約】
ここでは、n相電気モーター(4)に接続されるように構成された周波数変換器(2)が呈示され、ここで、電気モーター(4)の少なくとも1つの動作パラメータに依存して、または電気モーター(4)の動作モードを設定するために、ストリング(8)のそれぞれ少なくとも2つの相(U,V,W,U’,V’,W’)が相互に並列もしくは直列に接続されている。さらに、この種の周波数変換器(2)を動作させるための方法が呈示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n相電気モーター(4)に接続されるように構成された周波数変換器(2)であって、
-前記nは、6以上の整数であり、
-各相(U,V,W,U’,V’,W’)は、少なくとも1つのコイル(6)を有し、
-それぞれ少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)は統合されて1つのストランド(8)を形成し、
-前記ストランド(8)の少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)のうちのそれぞれ一方は、前記ストランド(8)の少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)のうちの他方に対して電気的に180度回転されており、
-前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の第1の半部(26)は、少なくとも1つの第1のスター点(30a)または第1の多角形結線を介して相互接続され、前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の第2の半部(28)は、少なくとも1つの第2のスター点(30b)または第2の多角形結線を介して相互接続されている、周波数変換器(2)において、
前記周波数変換器(2)が、n個のスイッチングユニット(10)を備え、それぞれ1つのスイッチングユニット(10)が1つの相(U,V,W,U’,V’,W’)に割り当てられており、それぞれ、1つのストランド(8)の少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の前記スイッチングユニット(10)は、スイッチングモジュール(12)を形成し、
-1つのストランド(8)の各相(U,V,W,U’,V’,W’)は、前記割り当てられたスイッチングモジュール(12)の前記2つのスイッチングユニット(10)のうちのそれぞれ一方に直接接続されており、
-各スイッチングユニット(10)は、電圧供給ユニット(14)に接続され、各前記スイッチングユニット(10)は、接続された前記相(U,V,W,U’,V’,W’)に供給電圧を印加するために2つの供給用スイッチング素子(16)を有しており、
-1つのスイッチングモジュール(12)の前記スイッチングユニット(10)は、電気的接続線路(18)を介して相互に接続されており、1つのスイッチングモジュール(12)の前記スイッチングユニット(10)においてそれぞれ1つの接続用スイッチング素子(20)が前記電気的接続線路(18)に配置されており、それによって、前記電気モーター(4)の少なくとも1つの動作パラメータに依存して、かつ/または前記電気モーター(4)の動作モードを設定するために、前記ストランド(8)のそれぞれ少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)が相互に並列もしくは直列に接続されることを特徴とする、周波数変換器(2)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの動作パラメータは、動作モード、特に弱めの界磁範囲内もしくは基本設定範囲内の1つの動作および/または供給電圧の現下の電圧レベルおよび/または1つもしくは複数の動作素子(16,20)の故障である、請求項1記載の周波数変換器(2)。
【請求項3】
前記周波数変換器は、前記供給用スイッチング素子(16)および前記接続用スイッチング素子(20)を駆動制御するための制御ユニット(22)を備え、該制御ユニット(22)は、前記電気モーター(4)の少なくとも1つの動作パラメータに依存して、または前記電気モーター(4)の動作モードを設定するために、前記ストランド(8)のそれぞれ少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)を相互に並列もしくは直列に接続するように構成されている、請求項2記載の周波数変換器(2)。
【請求項4】
前記動作モードは、前記電気モーター(4)のトルク増加のための1つの動作またはマルチレベル動作である、請求項1から3までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)。
【請求項5】
前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の少なくとも半部は、1つの共通のスター点(30a,30b)もしくは多角形結線を介して相互接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)。
【請求項6】
スター結線の場合に、前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の前記第1の半部(26)の少なくとも1つの前記第1のスター点(30a)および前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の前記第2の半部(28)の少なくとも1つの前記第2のスター点(30b)は分離されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)。
【請求項7】
前記周波数変換器は、ヒューズユニット(24)を備え、該ヒューズユニット(24)は、前記周波数変換器(2)と前記電気モーター(4)との間に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)。
【請求項8】
前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の前記第1の半部(26)の前記スイッチングユニット(10)および前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の前記第2の半部(28)の前記スイッチングユニット(10)は、それぞれ異なる電圧供給ユニット(14)に接続されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)。
【請求項9】
前記スイッチングユニット(10)は、1つの共通の構造ユニット内に配置され、特に統合されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)。
【請求項10】
周波数変換器(2)、特に、n相電気モーター(4)に接続された請求項1~9までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)を動作させるための方法であって、
-前記nは、6以上の整数であり、
-各相(U,V,W,U’,V’,W’)は、少なくとも1つのコイル(6)を有し、
-少なくとも2つの相(U,V,W,U’,V’,W’)は統合されて1つのストランド(8)を形成し、
-前記ストランド(8)の少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)のうちのそれぞれ一方は、前記ストランド(8)の他方の前記相(U,V,W,U’,V’,W’)に対して電気的に180度回転されており、
-前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の第1の半部(26)は、少なくとも1つの第1のスター点(30a)または第1の多角形結線を介して相互接続され、前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の第2の半部(28)は、少なくとも1つの第2のスター点(30b)または第2の多角形結線を介して相互接続されている、方法において、
前記方法は、
-前記n相電気モーター(4)の少なくとも1つの動作パラメータを捕捉するステップおよび/または設定すべき動作モードを捕捉するステップと、
-前記捕捉された動作パラメータもしくは前記設定すべき動作モードに依存して、前記ストランド(8)のそれぞれ少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)を、相互に並列もしくは直列に切り替えるステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数変換器ならびに周波数変換器を動作させるための方法に関する。
【0002】
電気モーターに接続し、電気モーターに電力供給するための周波数変換器はよく知られている。永久磁石励磁式電気モーターでは、誘導電圧は回転数に比例する。このことは、低回転数では誘導電圧が非常に低くなり、これが低回転数での効率低下を招くという結果につながる。
【0003】
さらに、低い走査レベル(デューティサイクルとも称する)は、電流経過内で望ましくない高調波成分を引き起こす。この高調波成分は、電気モーター内の望ましくない損失の原因となり、また一般に低回転数での効率を悪化させる。これらの欠点は磁束を増やすことで解消できる。これにより、電気モーターの基本設定範囲が減少し、弱めの界磁範囲が増加する。この基本設定範囲とは、ここでは一般的にかつ簡素化して言及すれば、電気モーターが最大電圧および公称周波数で動作する動作範囲と称することができる。また弱めの界磁範囲とは、ここではトルクを犠牲にして回転数の増加を達成するために、磁束、ひいては磁場が減衰する電気モーターの動作範囲として理解することができる。
【0004】
前述の基本設定範囲の減少は、より高い回転数での効率に悪影響を及ぼす。これに関連して、少ない磁束は高回転数での効率の向上につながる。それぞれの動作範囲の欠点は、例えば多段ギアを用いて対処することができるが、発生するコスト、重量、ならびに機械的損失に関しての欠点が伴う。
【0005】
さらに、前述のモーター損失を低減するために、相互接続、特に動作中の電気モーター内の電機子巻線の相互接続を(例えば回転数に依存して)変更することが可能である。
【0006】
第2の態様は、周波数変換器もしくは電気モーターの供給電圧の電圧変動に関する。特に、バッテリーによる電圧供給の場合、電気モーターの動作中のバッテリーの放電により供給電圧が変化する。この可変のバッテリー電圧は、周波数変換器の駆動制御ならびに高調波成分ひいては電気モーターの効率にも影響を与える。
【0007】
さらに、今日では、特に多くの適用分野において、電気モーターの冗長性が必須かもしくは関連性を持っている。これに関連して、1つまたは複数のコンポーネントが故障した場合でも、電気モーターが少なくとも低減された電力で動作し続けることが保証されなければならない。例えば二重の態様および/またはスイッチもしくはダイオードを介した中間回路タッピングによって冗長性を可能にする実施形態が公知である。ただし、この種の冗長性は、場合によっては実現にコストがかかり、複雑になる。
【0008】
ここから出発して本発明が基礎とする課題は、前述した欠点が少なくとも軽減される、周波数変換器ならびに周波数変換器を動作させるための方法を提供することである。
【0009】
周波数変換器に関する課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を備えた周波数変換器によって解決される。方法に関する課題は、本発明によれば、請求項10の特徴を備えた方法によって解決される。好適な実施形態、発展形態および変形形態は従属請求項の対象である。
【0010】
特に、周波数変換器に向けられた課題は、n相電気モーターに接続されるように構成された周波数変換器によって解決され、ここでnは6以上の整数である。換言すれば、この課題は、相数n個の電気モーターに接続するための周波数変換器によって解決され、ここで相数nは6以上である。
【0011】
さらに、電気モーターの各相は、少なくとも1つのコイルを有することができる。それぞれ少なくとも2つの相は、好適には1つのストランドに統合されている。したがって、電気モーターが、例えば6つの相を有しているならば、それぞれ2つの相を合わせて合計3つのストランドに統合してよい。またストランドの少なくとも2つの相のうちのそれぞれ1つは、ストランドの他方の相に対して電気的に180度回転される。この電気的に180度回転されるとは、本発明では、関係する2つの相が相互に反転して切り替えられること、すなわち、1つの相を通って一方向に電流が流れる場合、反転した相を通る電流はこれとは逆方向に流れることを意味することが理解できる。
【0012】
相の第1の半部は、少なくとも1つの第1のスター点を介して、または第1の多角形結線を介して相互接続されてよい。同様に、相の第2の半部は、少なくとも1つの第2のスター点を介して、または第2の多角形結線を介して相互接続される。多角形結線の場合、例えばデルタ結線であってもよい。6相電気モーターを用いた前述の例に関しては、6つの相のうちのそれぞれ3つが、1つのスター点もしくは多角形結線を介して相互に接続されているため、全体で2つのスター点が存在している。
【0013】
周波数変換器は、さらにn個のスイッチングユニットを備え、ここで、それぞれ1つのスイッチングユニットが1つの相に割り当てられてよく、それぞれ、1つのストランドの少なくとも2つの相のスイッチングユニットは、スイッチングモジュールを形成することができる。すなわち、上記の6相電気モーターの例を参照すれば、周波数変換器は、6つのスイッチングユニットと3つのスイッチングモジュールとを有する。一般に、存在するスイッチングユニットの数もしくは総数は、電気モーターの相の数もしくは相数に対応する。
【0014】
ここでは、1つのストランドの各相は、割り当てられたスイッチングモジュールの2つのスイッチングユニットのそれぞれ一方に直接接続されてよい。直接接続されるとは、本発明ではスイッチングユニットもしくはスイッチングモジュールと、電気モーターとの間にスイッチング素子が配置されていないことを意味するものと理解することができる。
【0015】
さらに各スイッチングユニットは、電圧供給ユニットに接続され、ここで、各スイッチングユニットは、接続された相に供給電圧を印加するために2つの供給用スイッチング素子を有する。電圧供給ユニットは、本発明ではバッテリーまたは他の電圧源であり得る。供給電圧は本出願の枠内では、周波数変換器の出力電圧、つまり電気モーターに印加される電圧であり得る。この電圧は、例えば、変調された電圧、特に交流電圧であってよい。
【0016】
1つのスイッチングモジュールのスイッチングユニットは、電気的接続線路を介して相互に接続されており、ここで、1つのスイッチングモジュールのスイッチングユニットにおいてそれぞれに1つの接続用スイッチング素子が電気的接続線路に配置されている。したがって、各電気的接続線路に2つの接続用スイッチング素子が配置されている。
【0017】
供給用スイッチング素子および接続用スイッチング素子は、例えばトランジスタ、例えばMOSFETまたはIGBTであり得る。一般に、あらゆる電子(半導体)スイッチング素子が、供給用スイッチング素子および/または接続用スイッチング素子として用いることが可能である。
【0018】
電気モーターの少なくとも1つの動作パラメータに依存して、かつ/または電気モーターの動作モードを設定するために、それぞれ少なくとも2つの相の相互接続の変更が起こり得る。この変更は、少なくとも2つの相の並列接続から直列接続への変更、または直列接続から並列接続への変更であってよい。したがって、簡素化して言及すれば、電流は、相の並列接続の場合、ストランドのそれぞれ2つの相のコイルを通って並列に流れる。したがって、それぞれ2つの相の直列接続の場合、電流は、簡素化して言及すれば、最初に2つのコイルの一方を通って流れ、次いで、ストランドのそれぞれ2つの相の他方のコイルを通って流れる。
【0019】
前述の周波数変換器の構成により、(6個のみの接続用スイッチング素子および12個のみの供給用スイッチング素子の合算として)18個のみのスイッチング素子で周波数変換器を実現することが可能となり、この周波数変換器は、電気モーターの動作中に相の直列接続から並列接続への切り替えおよびその逆の切り替えを可能にする。ここでは並列接続において12個の供給用スイッチング素子がアクティブになり、それに対して直列接続では6個の接続用スイッチング素子と、12個の供給用スイッチング素子のうちの6個とがアクティブになる。アクティブになるとはここでは、これらのスイッチング素子がクロック方式で駆動制御され、それに対して他方のスイッチング素子はフリーホイールモードにあることを意味するものと理解することができる。それとは対照的に、従来技術から公知の同様のトポロジーは、通常、30個~40個のスイッチング素子ならびに場合によっては40個を超えるスイッチング素子を有する。
【0020】
本発明による周波数変換器を用いて電気モーターの動作中に切り替えを行う手段により、冒頭で述べた欠点を克服することができる。これにより、一方では、冒頭で述べたような種類の十分な冗長性を獲得することができ、他方では、発生するモーター損失を少なくとも低減することができる。以下では特別な利点を、具体的な例および実施形態に基づいてより詳細に説明する。
【0021】
一実施形態では、少なくとも1つの動作パラメータは、動作モード、特に弱めの界磁範囲内もしくは基本設定範囲内の1つの動作である。代替的または補足的に、1つの動作パラメータは、供給電圧の現下の電圧レベルおよび/または1つもしくは複数の動作素子の故障である。代替的または補足的に、少なくとも1つの動作パラメータは、電気モーターの回転数であり得る。したがって、ここでは、例えば、電気モーターに配置されたギアを交換するために、予め定められた回転数で切り替えを行うことができる。したがって、ここでは、切り替えによって効率の向上を獲得することができる。
【0022】
弱めの界磁範囲内もしくは基本設定範囲内での動作に関しては、相互接続の切り替えによって電気モーターの最適化を達成することができ、ひいては損失を少なくとも最小化することができる。電気モーターが、例えば、弱めの界磁範囲内にあり、これらの相が相互に直列に接続されているならば、周波数変換器は、並列接続に切り替えることができる。このことは、抵抗損失、特に電気モーター内の無効電流損失を減少させる。それとは逆にもしくはそれと同様に、基本設定範囲内で動作する場合、複数の相の並列接続から複数の相の直列接続に切り替えることができ、このことも同様にモーター損失、特に高調波によって引き起こされる損失を低減する。
【0023】
供給電圧の現下の電圧レベルを参照すれば、例えば現下の電圧レベルが予め定められた値を下回った場合、直列接続から並列接続への切り替え、またはその逆の切り替えが行われ得る。したがって、相互接続は、現下の電圧レベルに依存して行われる。これにより、供給電圧が変動する場合、特に1つまたは複数のバッテリーを用いた供給の場合、既に冒頭で述べたような欠点を少なくとも低減することができる。
【0024】
代替的または補足的に、直列接続から並列接続への切り替え、またはその逆の切り替えは、1つまたは複数の動作素子の故障に依存して行われる。動作素子とは、本発明では排他的ではないがスイッチング素子(供給用スイッチング素子および接続用スイッチング素子)および/または個々の相のコイルとして理解することができる。この実施形態によれば、1つまたは複数の動作素子の故障の際に、それにもかかわらず、直列接続から並列接続への切り替えによって電気モーターをさらに動作させることが簡単な手法で可能になる。
【0025】
一実施形態では、周波数変換器は、スイッチング素子を駆動制御するための制御ユニットを備え、ここで、制御ユニットは、電気モーターの少なくとも1つの動作パラメータに依存して、または電気モーターの動作モードを設定するために、ストランドのそれぞれ2つの相を相互に並列もしくは直列に接続するように構成されている。ここでは、制御ユニットも同様に、例えば、供給電圧の現下の電圧レベルを制御ユニットに伝送する電圧捕捉センサに接続されてよい。次いで、ここでは、既に前述した電圧レベル依存性の切り替えを、制御ユニットによって初期化することができる。ここでは制御ユニットが、周波数変換器の全てのスイッチングユニットの全てのスイッチング素子を適宜切り替えるように構成されていることは自ずと理解できよう。
【0026】
さらなる実施形態では、電気モーターの動作モードは、「ブーストモード」とも称される(一時的な)トルク増加のための1つの動作またはマルチレベル動作である。マルチレベル動作は、本発明では、利用可能な電圧レベルもしくは電力レベルに依存したクロッキングもしくは切り替えが行われる基本的に公知の電気モーターの動作モードであり得る。これにより、供給電圧のより正確な正弦波波形が達成される。マルチレベル動作中は、例えば直列接続から並列接続への切り替えを正弦波サイクル中に行うことができる。
【0027】
一実施形態によれば、相の少なくとも半部は、1つの共通のスター点もしくは共通の多角形結線、例えばデルタ結線を介して相互接続されている。
【0028】
さらに、一実施形態によれば、スター結線の場合に、相の第1の半部の少なくとも1つの第1スター点と、相の第2の半部の少なくとも1つの第2のスター点とが分離されている。換言すれば、2つのスター結線は、別個のスター点を有している。基本的に、複数のスター点の場合、例えば12相電気モーターにおける4つのスター点(相の第1の半部の2つの第1のスター点および相の第2の半部の2つの第2のスター点)の場合、これらも同様に相互に分離して構成されている。この種の相互接続は、特に高調波特性の改善に関する利点として証明されている。
【0029】
一発展形態によれば、「回路遮断器ユニット」とも称されるヒューズユニットが、周波数変換器と電気モーターとの間に配置されている。このヒューズユニット、好適には相ごとに少なくとも1つのヒューズスイッチング素子を有しているヒューズユニットにより、障害の場合に周波数変換器を電気モーターから好適には電気的に遮断することが保証される。
【0030】
一発展形態によれば、相の第1の半部のスイッチングユニットおよび相の第2の半部のスイッチングユニットは、それぞれ異なる電圧供給ユニットに接続されている。すなわち、相の第1の半部のスイッチングユニットは、例えば第1の電圧供給ユニットに接続され、相の第2の半部のスイッチングユニットは、例えば第2の電圧供給ユニットに接続されている。したがって、周波数変換器は2重に供給することができ、このことは、電圧供給に関するさらなる冗長レベルもしくは冗長手段を獲得する。さらなる冗長性を獲得するために、2つのマイクロコントローラーを設けることも可能である。
【0031】
一実施形態では、スイッチングユニットは、1つの共通の構成ユニット内に配置され、特に共通の構成ユニット内に統合されている。したがって、換言すれば、電気モーターに供給電圧を印加するために用いられる供給用スイッチング素子と、直列接続から並列接続への切り替えおよびその逆の切り替えを実現する接続用スイッチング素子とが、1つの共通の構成ユニット内に統合されている。これにより、上述のスイッチング素子が通常は別個のユニットに実装されている既に公知の実施形態と比較して、スペース、重量、およびコストが節約される。
【0032】
周波数変換器ならびにn相電気モーターは、例えば、様々な産業用途のための電気的駆動部(パワーパックとも称される)および/または車両のための駆動部として用いることが可能である。
【0033】
具体的には、本方法に向けられた課題は、n相電気モーターに接続された周波数変換器を動作させるための方法であって、ここで、
-nは、6以上の整数であり、
-各相は、少なくとも1つのコイルを有し、
-それぞれ少なくとも2つの相は統合されて1つのストランドを形成し、
-ストランドの少なくとも2つの相のうちのそれぞれ一方は、ストランドの他方の相に対して電気的に180度回転されており、
-相の第1の半部は、少なくとも1つの第1のスター点または第1の多角形結線を介して相互接続され、相の第2の半部は、少なくとも1つの第2のスター点または第2の多角形結線を介して相互接続されており、
以下のステップ:
-n相電気モーターの少なくとも1つの動作パラメータを捕捉するステップまたは設定すべき動作モードを捕捉するステップと、
-捕捉された動作パラメータもしくは設定すべき動作モードに依存して、ストランドのそれぞれ少なくとも2つの相を、相互に並列もしくは直列に切り替えるステップとを含む本方法によって解決される。
【0034】
周波数変換器は、特に、既に前述した周波数変換器である。周波数変換器に関して説明した利点および好適な実施形態は、内容にのっとって本方法にも転用することができ、その逆も同様である。
【0035】
以下では本発明の実施例を、図面に基づきより詳細に説明する。これらの図面の一部は非常に簡素化された描写で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】電気モーターに接続された本発明の第1の実施形態による周波数変換器の簡略化された回路図である。
【
図2】1つの相の例における直列接続の場合にそこで特徴付けられる電流経過を伴う
図1による回路図である。
【
図3】1つの相の例における並列接続の場合にそこで特徴付けられる電流経過を伴う
図1による回路図である。
【
図4】それぞれ分離されたスター点を有するスター結線の12相システムの略図である。
【
図5】n相電気モーターに接続するための本発明による周波数変換器の簡略化された回路図である。
【
図6】本発明による周波数変換器によって実現されるマルチレベル動作中の略図化された電圧波形を示した図である。
【
図7】周波数変換器の代替的実施例を示した図である。
【0037】
これらの図面において、同じように作用する構成部品は常に同じ参照番号で示されている。
【0038】
図1に示されている本発明による周波数変換器2は、6つの相U,V,W,U’,V’,W’を有する電気モーター4に接続されており、周波数変換器2は、回路およびその接続で概略的にのみ示されている。
【0039】
各相U,V,W,U’,V’,W’は、少なくとも1つの、
図1による実施例では厳密に1つのコイル6を有している(
図2~
図5参照)。それぞれ2つの相U,V,W,U’,V’,W’は、1つのストランド8に統合されている。ストランド8は、
図2では例示的にそれぞれのストランド8を形成する相を取り囲むようにして示されている。ストランド8の2つの相U,V,W,U’,V’,W’のうちのそれぞれ一方は、同じストランド8の他方の相U,V,W,U’,V’,W’に対して電気的に180度回転されており、つまり反転して切り替えられる。それぞれの反転して切り替えられた相U’,V’,W’はダッシュによって示されている。それにより、本実施例では、U’相はU相に対して反転して切り替えられた相であり、V’相は、V相に対して反転して切り替えられた相であり、W’相は、W相に対して反転して切り替えられた相である。
【0040】
周波数変換器2はさらに、本実施例では、破線の矩形で示される6つのスイッチングユニット10を有する。それぞれ1つのスイッチングユニット10は、1つの相U,V,W,U’,V’,W’に割り当てられている。また1つのストランド8の2つの相U,V,W,U’,V’,W’の各スイッチングユニット10は、スイッチングモジュール12を形成する。図面において、それぞれ図的に見て上下に位置するスイッチングユニット10は、1つのスイッチングモジュール12を形成しており、そのため、本発明による
図1の周波数変換器2は、3つのスイッチングモジュール12を有している。ここでは、それぞれ1つのストランド8の各相U,V,W,U’,V’,W’は、割り当てられたスイッチングモジュール12の2つのスイッチングユニット10のうちのそれぞれ一方に直接、つまり介在的に配置された構成部品なしで接続されている。換言すれば、
図1による周波数変換器2では、図平面で見て上方の左側のスイッチングユニット10がU相に直接接続され、それに対して下方の左側のスイッチングユニット10はU’相に直接接続されている。上方の左側のスイッチングユニットおよび下方の左側のスイッチングユニットは、ここでは前述したスイッチングモジュール12を形成する。これと同様に、上方の中央のスイッチングユニット10はV相に直接接続され、それに対して下方の中央のスイッチングユニット10はV’相に直接接続されている。さらに、上方の右側のスイッチングユニット10はW相に直接接続され、それに対して下方の右側のスイッチングユニット10はW’相に直接接続されている。図面において、2つの交差する線路上の点は導通接続を表しているが、点が示されずに交差する線路は相互に電気的に接続されていない。
【0041】
各スイッチングユニット10は、概略的にのみ示されている電圧供給ユニット14に接続されており、この電圧供給ユニット14は、個々の相U,V,W,U’,V’,W’に供給電圧を印加する。この目的のために、各スイッチングユニット10は、2つの供給用スイッチング素子16を有する。これらの供給用スイッチング素子16は、本実施例ではMOSFETとして構成されている。供給電圧とは、ここでは、例えば電気モーター4に印加される周波数変換器2の出力電圧を意味するものと理解することができる。
【0042】
またスイッチングモジュール12のスイッチングユニット10は、電気的接続線路18を介して相互に接続されている。スイッチングモジュール12のスイッチングユニット10には、それぞれ1つの接続用スイッチング素子20が配置されている。したがって、換言すれば各接続線路18には、それぞれ2つの接続用スイッチング素子20が配置されており、それらのうちのそれぞれ1つがスイッチングモジュール12のスイッチングユニット10に割り当てられているか、もしくはそこに配置されている。
【0043】
電気モーター4の少なくとも1つの動作パラメータに応じて、または電気モーター4の動作モードの設定のために、1つのストランド8のそれぞれ2つの相U,V,W,U’,V’,W’が相互に並列もしくは直列に接続されている。この目的のために、周波数変換器2は、供給用スイッチング素子16および接続用スイッチング素子20を駆動制御するように構成された制御ユニット22を有する。
【0044】
補足的に、周波数変換器2は、「サーキットブレーカモジュール」とも称されるヒューズユニット24を有し、電気モーター4と周波数変換器2との間に配置されている。ヒューズユニット24は、通常、図示されていないスイッチング素子を有し、それらは、障害の場合に電気モーター4を好適には周波数変換器2から電気的に遮断するように構成されている。
【0045】
以下では電流経過と一緒に正確な相互接続を、いくつかの選択されたケースおよび相U,V,W,U’,V’,W’について説明する。このことは、それぞれ他のケースもしくは相U,V,W,U’,V’,W’についても同様に当てはまる。
【0046】
図2には、
図1による周波数変換器2の回路図が再び示されている。電気モーター4は、
図2では6つの相U,V,W,U’,V’,W’のみに縮小されて示されている。さらに、個々の相U,V,W,U’,V’,W’と周波数変換器2の端子との相互接続もしくは接続は簡略化されて示されている。ヒューズユニット24を通した相互接続は、単に破線によって簡略化されて示されている。
【0047】
図2から認識できるように、それぞれ相U,V,W,U’,V’,W’の第1の半部26および第2の半部28は、それぞれ1つの共通のスター点30a,30bを介して相互接続されている。ここでは、参照符号30aによって相U,V,W,U’,V’,W’の第1の半部26の第1のスター点が示され、参照符号30bによって相U,V,W,U’,V’,W’の第2の半部28の第2のスター点が示される。両スター点30a,30bに関する以下の実施形態でも、簡略化のために参照符号30のみが使用される。代替的に、それぞれ第1の半部26および第2の半部28は、多角形結線を介して、特にデルタ結線を介して相互接続される。したがって、換言すれば、それぞれ3つの相は、1つのスター点30を有するスター結線を形成する。特に、
図2の実施形態によれば、反転相と非反転相とがそれぞれ1つの半部26,28を形成し、それらはそれぞれ1つの共通のスター点30を介して相互接続されている。
【0048】
以下では、相U,V,W,U’,V’,W’を直列接続した場合の電流Iにおける電流経過を説明する。例としてここでは、U相ならびにこれに反転して切り替えられたU’相が用いられ、これらの相には図平面で見て左側のスイッチングモジュール12が割り当てられている。
【0049】
以下では一般に、上方または下方、ならびに右側、中央もしくは左側のスイッチングユニット10などの用語が使用される場合、これらは図面内での描写を表し、より簡単な理解に用いられるべきである。以下では、例えば他に明示的に言及しない限り、言及されていないスイッチング素子は閉じられている、すなわち非透過的に切り替えられているスイッチング状態を説明する。電流経過は、複数の矢印によって大まかに示されている。
【0050】
左側のスイッチングモジュール12に正の供給電圧が印加されると、電流Iが、上方の左側のスイッチングユニット10の上方の供給用スイッチング素子16を通り、相端子Uを介してそこに接続されている線路を通って電気モーター4に流れる。そこでは、電流Iは、U相のコイル6を通って第1の半部26のスター点30aの方向に流れる。このスター点30aで電流Iは分岐して、それぞれW相およびV相のコイル6を通って電気モーター4から相端子の方向に流れる。W相の相端子を通って周波数変換器2に還流する部分電流ITは、右側のスイッチングモジュール12の電気的接続線路18を介して流れ、したがって、上方の右側のスイッチングユニット10の接続用スイッチング素子20を通って流れ、この部分電流ITが再びW’相の相端子を介して電気モーター4に還流する前に、下方の右側のスイッチングユニット10の接続用スイッチング素子20を通って流れる。そこでは、部分電流ITは、W’相のコイル6を介して第2の半部28のスター点30bに流れる。
【0051】
V相の相端子を通って周波数変換器2に還流する部分電流ITは、中央のスイッチングモジュール12の電気的接続線路18を介して流れ、したがって、上方の中央のスイッチングユニット10の接続用スイッチング素子20を通って流れ、この部分電流ITが再びV’相の相端子を介して電気モーター4に還流する前に、下方の中央のスイッチングユニット10の接続用スイッチング素子20を通って流れる。そこでは、部分電流ITは、V’相のコイル6を介して同様に第2の半部28のスター点30bに流れる。
【0052】
第2の半部28のこのスター点30bで当接する2つの部分電流ITは、その後1つの電流IとしてU’相のコイルを通って(ここでは、以前にU相のコイル6を通って流れたのとは逆方向に)周波数変換器2に、詳細には下方の左側のスイッチングユニット10に還流し、下方の左側のスイッチングユニット10の下方の供給用スイッチング素子16を介してアースに流される。
【0053】
これと同様に、他の相が印加される場合、負の供給電圧が印加されるときもしくは交流電圧の場合の負の半波中に電流は逆方向に流れる。ここでは、唯一の違いは、U相に関して上方の左側のスイッチングユニット10において上方の供給用スイッチング素子16の代わりに下方のスイッチング素子16が透過的に切り替えられ、下方の左側のスイッチングユニット10では下方の供給用スイッチング素子16の代わりに上方の供給用スイッチング素子16が透過的に切り替えられていることである。
【0054】
しかしながら、上記の例は、通常の動作中に例えばパルス幅変調を用いてクロッキングされたスイッチング素子16,20の特定の一時的なスイッチング状態を表しているだけであることは自明である。さらに、上述の電流経過は、周波数変換器2および電気モーター4内の電流経過についての非限定的な例として用いられる。周波数変換器の呈示された相互接続によって可能になる他の電流経過も考えられる。
【0055】
特に、本発明にとって重要なのは、電気的接続線路18ならびにそこに配置される接続用スイッチング素子20であり、これらは、コンパクトな構造形式および上述した電流通流ならびに本発明による周波数変換器2内の直列接続を可能にする。
【0056】
次に
図3では、並列接続の際のU相の例における電流経過を示して説明する。
【0057】
ここでは、左上のスイッチングユニット10の上方の供給用スイッチング素子16は、透過的に切り替えられており、電流Iはここを介して電気モーター4のU相の相端子に流れる。そこでは、電流IがU相のコイル6を通って第1の半部26のスター点30aに流れ、そこで分岐する。電流Iが部分的にW相およびV相のコイル6ならびにそれらの相端子を通って再び周波数変換器2に還流した後、部分電流ITは、それぞれ下方の供給用スイッチング素子16を介して流れ、上方の中央のスイッチングユニット10も上方の右側のスイッチングユニット10もアースされる。
【0058】
これと同様に、下方の中央のスイッチングユニット10および下方の右側のスイッチングユニット10の2つの上方の供給用スイッチング素子16を通ってそれぞれの部分電流ITが同時に流れる。続いて、これらの2つの部分電流ITは、W’相およびV’相の相端子を介してW’相およびV’相のコイル6を通って第2の半部28のスター点30bに流れる。2つの部分電流ITがそこで1つの電流Iに合流した後で、この電流Iは、U’相のコイル6を通ってU’相の相端子を介して電気モーター4から周波数変換器2内に流入し、これによってそこでは下方の左側のスイッチングユニット10の下方の供給用スイッチング素子16を通ってアースに流される。
【0059】
したがって、基本的には並列接続は、6つの独立したハーフブリッジを用いた相互接続に対応する。
【0060】
図4には、それぞれ別個のスター点30を有するスター結線の12相システムU,V,W,X,Y,Z,U’,V’,W’,X’,Y’,Z’の略図が示されている。電気モーター4内のこの種の相の実施形態では、それぞれ3つの相が1つのスターに一緒に接続され、したがって4つの別個のスター結線のスター点30は、すべて相互に分離されている。このことは、特に望ましくない高調波の回避に関して有利であることが証明されている。
【0061】
図5には、n相電気モーター4用の本発明による周波数変換器2の回路図の概略図が示されている。簡略化のために、
図5には周波数変換器2、電気モーター4およびヒューズユニット24のみが示されている。
【0062】
図5の回路図によれば、スイッチングユニット10は、大文字A,BおよびCの付された3つのブロックに分割されている。ブロックAおよびCによるスイッチングユニット10は、既に上述したスイッチングユニット10に対応している。ブロックBによるスイッチングユニット10は、それらがそれぞれ2つの接続用スイッチング素子20を有している限りブロックAおよびCのスイッチングユニット10とは異なる。この実施形態は、ブロックBによるスイッチングユニット10が「接続ユニット」として用いられ、したがって、ブロックAによるスイッチングユニット10およびブロックCによるスイッチングユニット10は、電気モーターが複数の相、特にこれまでに説明した6相よりも多い相を有する場合に相互接続されるという考察に基づいている。例えば9つのスイッチングユニット10を備えた周波数変換器2の態様、つまりそれぞれ3つのスイッチングユニット10を備えたブロックA,BおよびCの態様では、9相電気モーターを動作させることができる。さらなる多相電気モーター4を動作させるために、ブロックBを、ブロックAとブロックCとの間に多重に配置してよい。代替的または補足的に、ブロックごとに複数の相をカバーできるようにするために、ブロックごとに複数のスイッチングユニット10(ブロックA,B,Cのそれぞれの右方端部において波線により概略的に示されている)を設けてもよい。したがって、
図5に示されている本発明による周波数変換器2のモジュール性により、当該周波数変換器2は、多相電気モーター4に適合化させることが可能である。
【0063】
図6は、マルチレベル動作中の周波数変換器2の電圧Uもしくは並列接続から直列接続への、あるいはその逆のスイッチング間隔の略図化された経過を示す。
【0064】
ここでは、参照符号U
schwellによって、直列接続と並列接続との間の切り替えが行われる電圧値が示されている。これは、
図6においても、縦線ならびにそれぞれのスイッチング範囲上の中括弧によって明確化されている。クロッキングされた実電圧U
realによって正弦波状の目標電圧U
sollが設定される。周波数変換器のマルチレベル動作は原理的に公知なので、さらなる詳細な説明はここでは省く。
【0065】
図7には、周波数変換器2の代替例が示されている。ここでは、各スイッチングユニット10は、8つの供給用スイッチング素子16と、概略的にのみ示されている接続用スイッチング素子20とを有する。
図6には、6つの相(U,V,W,U’,V’,W’)を有する電気モーター4を動作させるための周波数変換器2が示されている。
【0066】
本発明は、上述した実施例に限定されるものではない。それどころか、本発明の他の変形形態も、当業者であれば本発明の対象から逸脱することなく本明細書から導き出すことが可能である。さらに、とりわけ実施例に関連して説明した個々の全ての特徴は、本発明の対象から逸脱することなく、他のやり方で相互に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0067】
2 周波数変換器
4 電気モーター
6 コイル
8 ストランド
10 スイッチングユニット
12 スイッチングモジュール
14 電圧供給ユニット
16 供給用スイッチング素子
18 電気的接続線路
20 接続用スイッチング素子
22 制御ユニット
24 ヒューズユニット
26 相の第1の半部
28 相の第2の半部
30a 相の第1の半部の第1のスター点
30b 相の第2の半部の第2のスター点
U 電気モーターの相
V 電気モーターの相
W 電気モーターの相
X 電気モーターの相
Y 電気モーターの相
Z 電気モーターの相
U’ 電気モーターの逆相
V’ 電気モーターの逆相
W’ 電気モーターの逆相
X’ 電気モーターの逆相
Y’ 電気モーターの逆相
Z’ 電気モーターの逆相
I 電流
IT 部分電流
A スイッチング素子の第1のブロック
B スイッチング素子の第2のブロック
C スイッチング素子の第3のブロック
Uschwell 切り替えのための閾値電圧値
Ureal 実電圧値
Usoll 目標電圧値
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n相電気モーター(4)に接続されるように構成された周波数変換器(2)であって、
-前記nは、6以上の整数であり、
-各相(U,V,W,U’,V’,W’)は、少なくとも1つのコイル(6)を有し、
-
少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)は統合されて1つのストランド(8)を形成し、
-前記ストランド(8)の少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)のうちのそれぞれ一方は、前記ストランド(8)の少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)のうちの他方に対して電気的に180度回転されており、
-前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の第1の半部(26)は、少なくとも1つの第1のスター点(30a)または第1の多角形結線を介し
て接続され、前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の第2の半部(28)は、少なくとも1つの第2のスター点(30b)または第2の多角形結線を介し
て接続されている、周波数変換器(2)において、
前記周波数変換器(2)が、n個のスイッチングユニット(10)を備え、それぞれ1つのスイッチングユニット(10)が1つの相(U,V,W,U’,V’,W’)に割り当てられており、それぞれ、1つのストランド(8)の少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の前記スイッチングユニット(10)は、スイッチングモジュール(12)を形成し、
-1つのストランド(8)の各相(U,V,W,U’,V’,W’)は、前記割り当てられたスイッチングモジュール(12)の前記2つのスイッチングユニット(10)のうちのそれぞれ一方に直接接続されており、
-各スイッチングユニット(10)は、電圧供給ユニット(14)に接続され、各前記スイッチングユニット(10)は、接続された前記相(U,V,W,U’,V’,W’)に供給電圧を印加するために2つの供給用スイッチング素子(16)を有しており、
-
各スイッチングモジュール(12)の前記スイッチングユニット(10)
のそれぞれは、電気的接続線路(18)を介して相互に接続されており、1つのスイッチングモジュール(12)の前記スイッチングユニット(10)においてそれぞれ1つの接続用スイッチング素子(20)が前記電気的接続線路(18)に配置されており、それによって、
前記電気モーター(4)の少なくとも1つの動作パラメータに依存して、かつ/または前記電気モーター(4)の動作モードを設定するために、前記ストランド(8)のそれぞれ少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)が相互に並列もしくは直列に接続される
ことを特徴とする、周波数変換器(2)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの動作パラメータは、動作モード、特に弱めの界磁範囲内もしくは基本設定範囲内の1つの動作および/または供給電圧の現下の電圧レベルおよび/または1つもしくは複数の動作素子(16,20)の故障である、請求項1記載の周波数変換器(2)。
【請求項3】
前記周波数変換器は、前記供給用スイッチング素子(16)および前記接続用スイッチング素子(20)を駆動制御するための制御ユニット(22)を備え、該制御ユニット(22)は、前記電気モーター(4)の少なくとも1つの動作パラメータに依存して、または前記電気モーター(4)の動作モードを設定するために、前記ストランド(8)のそれぞれ少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)を相互に並列もしくは直列に接続するように構成されている、請求項2記載の周波数変換器(2)。
【請求項4】
前記動作モードは、前記電気モーター(4)のトルク増加のための1つの動作またはマルチレベル動作である、請求項1から3までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)。
【請求項5】
前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の少なくとも半部は、1つの共通のスター点(30a,30b)もしくは多角形結線を介し
て接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)。
【請求項6】
スター結線の場合に、前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の前記第1の半部(26)の少なくとも1つの前記第1のスター点(30a)および前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の前記第2の半部(28)の少なくとも1つの前記第2のスター点(30b)は分離されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)。
【請求項7】
前記周波数変換器は、ヒューズユニット(24)を備え、該ヒューズユニット(24)は、前記周波数変換器(2)と前記電気モーター(4)との間に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)。
【請求項8】
前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の前記第1の半部(26)の前記スイッチングユニット(10)および前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の前記第2の半部(28)の前記スイッチングユニット(10)は、それぞれ異なる電圧供給ユニット(14)に接続されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)。
【請求項9】
前記スイッチングユニット(10)は、1つの共通
のユニット内に配置され、特に
1つの共通のユニット内に統合されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)。
【請求項10】
n相電気モーター(4)に接続された請求項1~9までのいずれか1項記載の周波数変換器(2)を動作させるための方法であって、
-前記nは、6以上の整数であり、
-各相(U,V,W,U’,V’,W’)は、少なくとも1つのコイル(6)を有し、
-
少なくとも2つの相(U,V,W,U’,V’,W’)は統合されて1つのストランド(8)を形成し、
-前記ストランド(8)の少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)のうちのそれぞれ一方は、前記ストランド(8)の他方の前記相(U,V,W,U’,V’,W’)に対して電気的に180度回転されており、
-前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の第1の半部(26)は、少なくとも1つの第1のスター点(30a)または第1の多角形結線を介し
て接続され、前記相(U,V,W,U’,V’,W’)の第2の半部(28)は、少なくとも1つの第2のスター点(30b)または第2の多角形結線を介し
て接続されている、方法において、
前記方法は、
-前記n相電気モーター(4)の少なくとも1つの動作パラメータを捕捉するステップおよび/または設定すべき動作モードを捕捉するステップと、
-前記捕捉された動作パラメータもしくは前記設定すべき動作モードに依存して、前記ストランド(8)のそれぞれ少なくとも2つの前記相(U,V,W,U’,V’,W’)を、相互に並列もしくは直列に切り替えるステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【国際調査報告】