(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】天然繊維を含む基材を有する医療機器
(51)【国際特許分類】
A61L 29/04 20060101AFI20240209BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61L29/04
A61M25/00 610
A61M25/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551771
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2022054762
(87)【国際公開番号】W WO2022180201
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512167079
【氏名又は名称】デンツプライ・アイエイチ・アクチエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】オーサ、リンドラブ、ベストリン
(72)【発明者】
【氏名】フリーダ、イセラウ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイッキ、ソヤッカ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C267
【Fターム(参考)】
4C081AC08
4C081BB01
4C081BB05
4C081CA062
4C081CD021
4C081DA03
4C081DC03
4C267AA04
4C267BB06
4C267BB13
4C267CC24
4C267CC26
4C267FF01
4C267GG11
4C267HH14
4C267HH16
(57)【要約】
尿道カテーテルなどの天然又は人工の身体開口部に挿入するための医療機器が開示される。医療機器は、内部空洞を囲み、例えば管状体を形成する壁を有する基材を備え、壁5は、近位挿入端と遠位後方端との間に延在する。壁は、セルロース繊維など、少なくとも30重量%の天然繊維を含む。一実施形態では、医療機器は、少なくとも大部分が紙で作られている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然又は人工の身体開口部に挿入するための医療機器であって、前記医療機器が、内部空洞を囲む壁であって、前記壁が近位挿入端と遠位後方端との間に延在し、前記壁が、少なくとも30重量%の天然繊維を含む、壁を有する基材を備える、医療機器。
【請求項2】
前記天然繊維が、植物、細菌及び動物の天然繊維のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記壁が、少なくとも40重量%の天然繊維、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%を含む、請求項1又は2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記壁が、紙などの天然セルロース繊維で主に作られている、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項5】
前記基材の前記壁が、単一層として第1の層によって形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項6】
前記基材の前記壁が、第1の層及び少なくとも1つの追加の層を含み、前記追加の層が、好ましくは前記第1の層と積層構造を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項7】
前記基材が管状体を形成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項8】
前記管状体が、入口開口部と、出口開口部と、前記入口開口部と出口開口部との間に延在する内部管腔とを備える、請求項7に記載の医療機器。
【請求項9】
前記管状体が、螺旋形状に巻き付けられて配置された少なくとも1つのストリップによって形成される、請求項7又は8に記載の医療機器。
【請求項10】
前記管状体が、少なくとも1つのシートによって形成され、各シートが、2つの反対の側面が互いに重なり合って又は互いに隣接して配置されるように配置される、請求項7又は8に記載の医療機器。
【請求項11】
前記基材には、前記管状体の周囲に配置された複数の折り目がさらに設けられている、請求項7~10のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項12】
前記医療機器が、カテーテル、好ましくは尿道又は直腸カテーテルである、請求項1~11のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項13】
前記基材が親水性コーティングを備え、前記親水性表面層が、好ましくは湿潤流体による湿潤時に前記医療機器に低摩擦表面特性を提供する、請求項1~12のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項14】
前記親水性コーティングが、前記基材の外側面に設けられる、請求項12又は13に記載の医療機器。
【請求項15】
前記親水性コーティングがポリビニルピロリドンを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿道又は直腸カテーテルなどの天然又は人工の身体開口部に挿入するための医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの医療機器は、細長いシャフト、又は同様の種類の基材、例えば、尿道管、直腸管、及び心血管系のものなどの生体の通路への挿入及びそれを通ることを意図した管を組み込んでいる。医療機器のこの一般的なグループ化の最も一般的な種類は、カテーテルとして知られている。例示的なカテーテルには、泌尿器科的使用のために指定されたもの、すなわち尿道カテーテル、及び腸病学的使用のために指定されたもの、例えば直腸カテーテルが含まれる。そのような医療機器の意図された使用のために、基材/細長シャフトが製造される材料によって特定のパラメータが満たされる必要がある。材料は、柔軟性、剛性、良好な耐キンク性、良好な寸法安定性、加工性、例えば形成及び接着の容易さ、ならびに放射線、蒸気、エチレンオキシド又は他の手段によって滅菌される可能性などの要件を満たさなければならない。材料はまた、尿などの使用中に曝される液体との接触に耐えることができなければならない。いくつかの製品では、さらに、親水性、表面の粗さ又は滑らかさ、滑りやすさなどの所望の表面特性を医療機器に付与する表面処理を材料が受け入れる必要がある。この後者の目的のために、基材をコーティングする可能性に影響を及ぼすため、基材材料の化学は重要である。
【0003】
長年にわたり、ポリ塩化ビニル(PVC)は、前段落で述べた要件を満たすPVCのために、カテーテルなどの身体通路に挿入するための細長いシャフトを有する医療機器を製造するために使用されてきた。例えば、同じ出願人による欧州特許第0093093号明細書は、湿潤時に低い摩擦係数を示す親水性外面コーティングを有するPVC尿道カテーテルを製造するプロセスを既知にしている。
【0004】
しかし、現在、カテーテルなどの医療機器に対するPVCの適合性は、環境上の理由、さらにPVCに添加される可塑剤の毒性のために疑問視されている。
【0005】
他の基材材料も提案されている。例えば、同一出願人による国際公開第97/49437号は、ポリエーテルブロックアミド及びスチレンブロックコポリマーを親水性カテーテルのための基材材料として使用することを提案しており、同一出願人による米国特許第8168249号明細書は、ポリオレフィン系基材材料の使用を提案している。しかしながら、これらの材料の問題は、これらの材料が製造するのに比較的高価であることである。さらに、これらの材料は、再生可能資源又は生分解性ではない。
【0006】
したがって、カテーテル及び同様の医療機器のためのほとんどの従来知られている基材には、それらが高価であり、及び/又は環境に有害であるという一般的な問題があり、ならびに/或いは親水性コーティングに関連する問題、例えば、特に浸出後の保水特性が低すぎる、基材への接着性が低すぎる、及び湿潤時に親水性表面の摩擦が高すぎるなどの問題がある。さらに、代替的又は追加的に、基材の機械的特性は、硬すぎる又は高すぎる弾性を有するなど、不十分であり得る。
【0007】
したがって、医療機器、特に親水性表面コーティングでコーティングされる医療機器用の新しい基材材料が必要とされている。具体的には、環境的に許容され、費用効果が高く、親水性コーティングを適切に接着することができ、適切な機械的及び化学的特性を有する医療機器及びその基材が必要とされている。特に、より持続可能であり、カーボンフットプリントを低減する医療機器が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0093093号明細書
【特許文献2】国際公開第97/49437号
【特許文献3】米国特許第8168249号明細書
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の目的は、上述の問題を少なくとも軽減する、天然又は人工の身体開口部に挿入するためのカテーテルなどの医療機器を提供することである。
【0010】
この目的は、添付の特許請求の範囲による医療機器によって達成される。
【0011】
本発明の第一の態様によれば、天然又は人工の身体開口部に挿入するための医療機器が提供され、該医療機器は、内部空洞を囲む壁を有する基材を備え、壁は、近位挿入端と遠位後方端との間に延在し、該壁は、少なくとも30重量%の天然繊維を含む。
【0012】
天然繊維は、自然界で天然に生成された繊維である。天然繊維は、植物、細菌及び動物の天然繊維のうちの少なくとも1つであることが好ましい。植物性天然繊維は、植物などが産生する繊維であり、セルロース系、又はデンプンなどの多糖類系である。植物性天然繊維としては、綿、亜麻、木部繊維、ジュートなどの繊維が挙げられる。動物性天然繊維は、動物によって産生される繊維であり、タンパク質系である。動物性天然繊維には、ウール、モヘア、及びシルクが含まれる。天然繊維はまた、細菌多糖類又はセルロースのような細菌、例えばシアノバクテリア多糖類サクランによって産生され得る。
【0013】
これらの天然繊維はいずれも微生物分解を特に受けやすく、生分解性である。セルロース繊維は、例えば好気性細菌及び真菌によって分解される。セルロースは、特に光の非存在下で、高湿度及び高温で急速にカビを発生させ、分解する。ウール及びシルクはまた、例えば細菌及びカビによる微生物分解を受けやすい。動物繊維はまた、例えばガ及びカツオブシムシによる損傷を受けやすい。この分解の可能性は、天然繊維を非常に環境に優しいものにする。
【0014】
天然繊維は、機械的、化学的又は物理的に、すなわち化学反応、誘導体化、グラフト化、吸収及び/又は吸着によって、変更されていてもよい。変更の種類及び程度に応じて、天然繊維の生分解性を変化させることができる。天然繊維はまた、ミクロフィブリルのようなより小さな繊維構造で構成されてもよい。
【0015】
さらに、多くの天然繊維が非常に低コストで容易に入手可能であり、医療機器の製造の費用対効果を非常に高くする。
【0016】
天然繊維で作られた材料は、以前に使用されていた材料よりも持続可能であり、このような天然繊維系材料は生物学的起源及び再生可能な性質を有するので、カーボンフットプリントを減少させる。
【0017】
特に好ましい実施形態では、天然繊維はセルロース繊維を含む。特に、基材又はその少なくとも第1の層は、実質的に紙などのセルロース繊維ブレンドであってもよい。特に、基材/第1の層は、パルプ繊維、特にセルロース繊維の懸濁液によって形成されてもよく、さらに、従来の製紙プロセスで使用されるような様々な量の非繊維成分を含んでもよい。紙は、木材パルプ、亜麻、バガス、木材単板又は織布、わら、ジュート、ラグなどから作製することができる。
【0018】
基材/第1の層はまた、天然繊維がマトリックス中に分散した複合材又はバイオコンポジットとして形成されてもよい。例えば、基材/第1の層は、連続熱可塑性ポリマーマトリックスと、マトリックス中に分布した、例えば粒子の形態の天然繊維とを含んでもよい。熱可塑性ポリマーは、ポリラクチド及びポリ乳酸などの生分解性又は生物系ポリマーであってもよい。しかしながら、他の生分解性又は非生分解性ポリマーも使用され得る。特に、複合材料は、例えば国際公開第2020/115363号からそれ自体知られている種類のものであってもよく、該文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0019】
驚くべきことに、本発明者らは、セルロース系紙などの天然繊維をベースとし、また天然繊維によって主に形成された基材を、カテーテルなどの医療機器の基材として使用できることを見出した。そのような基材材料は、適切かつ適切な剛性及び柔軟性で製造され、良好な耐キンク性及び寸法安定性を提供することができることが分かっただけではない。さらに、驚くべきことに、そのような基材材料は、十分な期間にわたって尿などの液体に対して十分な耐性を有し得ることが見出された。さらに驚くべきことに、そのような基材材料は、親水性コーティングなどの表面コーティングでコーティングするのに適していることも分かった。
【0020】
基材又は第1の層は、少なくとも30重量%の天然繊維を含む。しかしながら、好ましくは、第1の層は、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の天然繊維を含む。一実施形態では、基材は、少なくとも部分的に紙によって形成される。
【0021】
一実施形態では、基材又は第1の層は、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%の天然セルロース繊維を含む。そのような実施形態では、基材の材料は、大部分又は非常に大きい程度がセルロースで作られていることが好ましいため、一実施形態では、材料は、水に浸されたときに比較的短時間後に崩壊するように配置されてもよい。これにより、トイレ内でも医療機器を廃棄して洗い流すことも可能になる。そうすると、医療機器は、しばらくすると通常のトイレットペーパーと同様に崩壊する。これは、水に流せるカテーテルなどの水に流せる医療機器と呼ばれ得る。
【0022】
医療機器が水に流せるか否かにかかわらず、基材/第1の層の材料は、好ましくは、使用中に液体に曝されたとき、及び使用のために活性化されたときに流体に曝されたときに医療機器が比較的無傷で安定したままであるように選択及び配置される。特に、基材は、水又は尿に曝されたとき、例えばカテーテルの場合、決定された使用期間中、例えば少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分又は15分間など、膀胱から尿を排出するのに十分な期間、水又は尿がその内部管腔を通って流れるとき、比較的無傷のままであることが好ましい。好ましくは、材料はまた、この決定された使用期間中にカテーテルの内面から外面への水分の移動に少なくともおおむね耐えるように構成される。さらに、基材に親水性コーティングなどが設けられている場合、基材は、好ましくは、親水性コーティングの湿潤及び活性化に十分な時間中に液体又は他の流体に耐えることができるなどの活性化プロセスにも耐えることができるべきである。
【0023】
尿などに対する比較的高い耐性、及び比較的低い吸収性はまた、特に尿道カテーテルの形態の医療機器が、臭気を低減するために、例えば廃棄バスケットなどに廃棄される場合に有利である。
【0024】
同時に、水に流せる医療機器が望まれる場合、基材/第1の層の材料は、好ましくは水解性であり、医療機器を水に流せるようにするのに十分な時間内など、水に浸したときに医療機器が大部分分解するように選択及び配置される。例えば、医療機器は、水に数時間以下浸漬したときに十分に分解するように配置され得る。ここで、水解性とは、水に浸されたときなど、水性環境に置かれたときに分解する材料を意味する。これにより、繊維が分離され、基材/第1の層が分解する。
【0025】
第1の層は、好ましくは、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%など、少なくとも30重量%の天然セルロース繊維を含む。
【0026】
一実施形態では、第1の層は、紙などの天然セルロース繊維で主に作られる。
【0027】
基材は、単一層として第1の層によって形成されてもよい。これにより、基材は、本質的に全体が第1の層によって形成され得る。
【0028】
基材はまた、例えばシートの圧延から、いくつかの同一の層によって形成されてもよい。
【0029】
代替で、基材は、少なくとも1つの追加の層を含んでもよく、該追加の層は、前述の第1の層との積層構造を形成する。追加の層(複数可)はまた、紙などのセルロース系層であってもよいが、多少の耐水性、多少の剛性であるなど、第1の層とは異なる組成及び特性を有してもよい。しかしながら、追加の層はまた、表面サイズ剤、表面サイズデンプン、又は熱可塑性ポリマー若しくは他のポリマー材料の薄いコーティングなどの非セルロース系材料で作製されてもよい。
【0030】
追加の層が設けられる場合、第1の層は、好ましくは最も厚い層である。
【0031】
1つ又は複数の追加の層(複数可)が使用される場合、特に基材が管状である場合、第1の層は、管の内部管腔に面する最内層として、又は管の外面を形成する最外層として配置されてもよい。2つ以上の追加の層が使用される場合、第1の層はまた、2つ以上の追加の層の間に配置された中間層であってもよい。
【0032】
セルロース繊維に加えて、セルロース系材料、特に第1の材料は、充填剤、顔料、湿潤強度化学物質、保持化学物質、架橋剤、軟化剤又は可塑剤、接着プライマー、湿潤剤、殺生物剤、光学染料、疎水化化学物質、例えばアルキルケテンダイマー(AKD)、アルキル無水コハク酸(ASA)、ワックス、樹脂などのうちの1つ又は複数などの添加剤を含んでもよい。
【0033】
充填剤は、カオリン、陶土、二酸化チタン、石膏、タルク、チョーク、粉砕大理石、粉砕炭酸カルシウム及び沈降炭酸カルシウムなどの鉱物充填剤など、製紙に使用されることが知られている任意の充填剤であってもよい。
【0034】
好ましくは、例えばロジン、流動パラフィンワックス、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルキル無水コハク酸(ASA)などの1つ又は複数のサイズ添加剤をセルロース材料に添加して、材料の所望の吸水性プロファイルを提供することができる。
【0035】
AKDが使用される実施形態では、AKDの含有量は、好ましくは0.1~10重量%の範囲、好ましくは0.5~5重量%の範囲、最も好ましくは1~2重量%の範囲である。
【0036】
湿潤強度添加剤及び/又は保持化学物質は、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)などのポリマー、又はデンプンであり得る。
【0037】
ポリ乳酸(PLA)が使用される実施形態では、PLAの含有量は、好ましくは0~50重量%の範囲、好ましくは1~45重量%の範囲、より好ましくは5~40重量%の範囲、さらにより好ましくは10~35重量%の範囲、最も好ましくは20~30重量%の範囲である。PLAを材料に含めると、材料がより剛性になる。他のポリマー、好ましくはバイオ系又はバイオ系由来のポリマーも同様に使用することができる。
【0038】
一実施形態では、ポリマーは、繊維が分散され埋め込まれたマトリックスを形成し、部分的又は全体的にバイオ系複合材料である繊維複合材料を形成する。
【0039】
基材にワックス又はパラフィンを含浸又はコーティングすることも可能であり、例えば、基材はワックス紙又はパラフィン紙で形成されてもよい。そのようなワックス又はパラフィンは、例えば、管状基材の内面及び/又は外面にコーティングとして添加されてもよく、又は基材全体又はその層全体を含浸してもよい。
【0040】
好ましい実施形態では、セルロースの含有量が高く、疎水性を高める添加剤及び任意の充填剤のみが添加される。しかし、他の実施形態では、プロセス添加剤を添加してもよい。
【0041】
セルロース系材料は、製紙機械、例えば、紙、板紙、又は同様の製品の製造に使用される当業者に既知の任意の従来型の機械で製造することができる。材料は、湿潤ウェブとして形成されてもよく、次いで乾燥される。脱水はまた、ウェブを熱、真空、超音波、加圧ニップなどに曝すことを含んでもよい。脱水及び乾燥後、材料はまた、軟質又は硬質のニップ、カレンダなどによって乾燥又は平滑化されてもよい。
【0042】
従来の製紙機械によって製造された紙は、通常、縦方向(MD)に一般的に配向された繊維を有する。このような紙は、一般に、横方向(CD)よりも縦方向の方がより強くより安定している。基材にこのような紙を使用する場合、MDは、カテーテルシャフトとして使用される場合、周方向などの最も安定性が必要な方向に配置されてもよい。複数の層又はシートが使用される場合、シートのMDが互いに直交するなど、異なる方向に生じるようにシート/層を配置することも可能である。そのような実施形態では、シート/層の一方は軸方向にMDを有することができ、他方のシート/層は軸方向にCDを有する。3つ以上のシート/層が使用される場合、MDは、軸の長さ方向と比較して、0度、+/-45度及び/又は+/-90度などの追加の方向にも発生し得る。
【0043】
材料のセルロース繊維は、広葉樹繊維又は針葉樹繊維の両方からの木材セルロース繊維であってもよい。しかしながら、セルロースはまた、小麦麦わらパルプ、竹、バガス、又は他の非木材繊維源などの農業繊維などの他の供給源からのものであってもよい。材料は、好ましくは、バージン繊維からのパルプ、例えば機械パルプ、化学パルプ及び/又は熱機械パルプを含むパルプから作製される。それはまた、損紙又は再生紙、すなわち再生繊維から作製することもできる。
【0044】
材料はまた、結晶性領域と非晶質領域の両方を有する複数の基本フィブリルを含むセルロースナノファイバー材料などのナノセルロースを含んでもよい。この場合、ナノセルロースは、他のセルロースと一緒に層に含まれていてもよく、又は別の層に配置されていてもよい。ナノセルロースを使用することにより、材料は、高密度で滑らかにされた場合、形状記憶性が向上し、形状がより安定的かつ剛性になり、また他のセルロース材料よりも耐水性が高い。また、疎水化処理により耐水性が高められ得る。ナノセルロースは木材又は植物系であってもよく、セルロースナノフィブリル(CNF)又はセルロースナノ結晶(CNC)、好ましくはセルロースナノフィブリルから選択されてもよい。これにより、セルロース製品の原料が豊富で再生可能で生分解性の供給源から得られることが保証される。
【0045】
基材を形成する材料は、単層材料であるか2層以上の積層材料であるかにかかわらず、好ましくは15~180g/m2、好ましくは30~180g/m2、より好ましくは40~180g/m2、より好ましくは70~170g/m2、最も好ましくは90~130g/m2の範囲の表面重量を有する。セルロースがより厚く、より長い繊維を有する場合、本質的に同じ特性を有するより薄い材料が提供され得る。
【0046】
2つの層を有する実施形態では、外層は内層よりも低い表面重量を有してもよい。そのような外層は、より滑らかでより均一な外面を提供することができる。例えば、外層は、15~60g/m2、好ましくは20~50g/m2、最も好ましくは30~50g/m2の表面重量を有することができる。内層は、60~120g/m2、好ましくは60~100g/m2、最も好ましくは60~90g/m2の表面重量を有することができる。
【0047】
材料の吸水度は、水が材料によってどれだけ吸収され、どれだけ速く吸収されるかの尺度である。これは、Cobb値として、例えばISO535:014規格に従って測定することができる。Cobb値を測定する試験では、測定対象の材料の上に水柱を所定の時間配置する。水は、室温、典型的には23℃であるべきである。材料の重量は、湿潤の前後に、水柱及び任意の残留水を除去した後に、例えばワイプで素早く拭き取ることによって測定される。重量の差は、吸収された水の重量を構成する。60秒、120秒など、異なる湿潤時間を使用してもよいが、より長い期間及びより短い期間を使用してもよい。しかしながら、標準的な手順によれば、材料が水柱に曝される実際の時間は、表面上の残りの水を拭き取る時間などを提供するために、示された湿潤時間未満である。したがって、湿潤時間が60秒の場合、水柱への曝露は45秒であるが、計量は60秒後に行われる。本出願では、Cobb値は、湿潤が60秒間行われた測定値、すなわちCobb-60値を指す。
【0048】
低いCobb値は、少量の水しか吸収されないことを意味し、これは、材料がある程度の湿潤期間後でもその形状及び剛性を維持し、保存した場合に材料からの臭気が少ない(例えば尿による湿潤時に)ことを意味するので有利である。Cobb値が高いほど、より多くの量の水が吸収されることを意味する。これは、一般に、材料が湿潤中により容易に分解することを意味する。したがって、適切なCobb値を有する材料を見つけることは、材料が、管を通る排水中に十分に安定かつ剛性のままであり、使用後、例えばトイレに流されるときに容易に分解し得ることの指標である。
【0049】
単一のセルロース系層、すなわち第1の層のみが使用される実施形態では、それは、好ましくは、5~50g/m2の範囲のCobb値として測定される低い吸水度を有する。好ましくは、Cobb値は、10~30g/m2の範囲、最も好ましくは10~20g/m2の範囲である。
【0050】
2つ以上のセルロース系層が使用される実施形態では、内層はより低いCobb値を有してもよく、外層はより高いCobb値、又は内層の1つと同様のCobb値を有してもよい。そのような実施形態では、内層は、5~50g/m2の範囲、好ましくは10~30g/m2の範囲、最も好ましくは10~20g/m2の範囲のCobb値を有することができる。外層のCobb値は、50~150g/m2の範囲、好ましくは70~130g/m2の範囲、最も好ましくは80~110g/m2の範囲であり得る。外層のCobb値はまた、150g/m2超、例えば200g/m2以上であってもよい。しかしながら、代替で、外層は、5~50g/m2の範囲、好ましくは10~30g/m2の範囲、最も好ましくは10~20g/m2の範囲など、内層の1つと同様のCobb値を有してもよい。
【0051】
一実施形態では、内側表面のCobb値は、好ましくは30g/m2未満であり、外側表面のCobb値は、好ましくは100g/m2超である。
【0052】
基材の材料は、管状体として形成される場合、壁の中央及び/又は外面よりも内部表面、すなわち内部管腔に面して、好ましくは耐水性が高く、撥水性が高くなるように配置される。
【0053】
この目的のために、化学的表面サイズ剤、表面処理剤などを内部表面に添加してもよく、任意選択で外部表面にも添加してもよい。例えば、デンプンなどのバイオベース組成物を使用して、表面をより高密度かつコンパクトにすることができる。表面はまた、適切な添加剤によってより疎水性にすることができる。表面テクスチャ及び均一性は、例えばカレンダ加工又は表面サイジングによって調整することもできる。
【0054】
追加的又は代替的に、積層材料が使用される場合、内層は、外層及び/又は中間層などの別の層よりも吸収性が低く、耐水性が高いセルロース系層であってもよい。
【0055】
別の実施形態では、積層材料が使用される場合、ポリ乳酸(PLA)などの疎水性有機材料などの薄層がコーティングとして内面及び/又は外面に配置されてもよい。他のバイオ系ポリマー層又はシリコーン系層、デンプン系層、粘土系層、ポリエチレン(PE)層、その他の熱可塑性ポリマー層などを使用することも可能である。このような層は、積層される代わりに、スプレー又はディップコーティングなどの形態で設けられてもよい。ナノセルロースを含む層はまた、内面又は外面に向かって使用されてもよい。
【0056】
場合によっては、耐水性が表面サイジングなどの表面上の添加剤によって主に達成される場合、エッジウィッキング効果を防止するために追加の措置をとることができる。そのような追加の手段は、例えば、アルキルケテンダイマー(AKD)などの添加剤を提供することであり得る。
【0057】
少なくとも医療機器の基材は主にセルロース系材料で作られているので、全ての添加材料も同様であるならば、医療機器は生分解性で無毒である。再生可能資源からのセルロースと共に、これは装置を非常に環境に優しいものにする。生分解性材料とは、ここでは、微生物プロセスにおいて、好ましくは環境曝露下で、例えば材料を堆肥化可能にする、細菌及び真菌などの微生物によって分解される有機材料を意味する。生分解性材料はまた、規格ASTM D6868及びEN13432のいずれかに従って生分解性であってもよく、規格ASTM D6400に従って堆肥化可能であってもよい。
【0058】
人工又は天然の身体開口部に挿入するための上述の医療機器は、そのような種類のものであってもよい。しかしながら、好ましくは、医療機器は、泌尿器又は腸科学の分野の医療機器向けである。一実施形態では、医療機器はカテーテルである。実施形態では、医療機器は、尿道カテーテル又は直腸カテーテルである。他の実施形態では、基材は、例えば直腸への部分的挿入のための円錐を形成してもよい。
【0059】
カテーテルとして使用される場合、カテーテルは、近位挿入端又はその近傍に配置された1つ又は複数の排水開口部又は排出開口部、いわゆる目又はアイレットと、目から排出端又は導入端に通じるカテーテルシャフトの内側の内部管腔とをさらに備えてもよい。目は、基材の壁に形成されてもよい。しかしながら、代替的に、目/開口部は、管の近位挿入端の中央に形成されてもよい。アイレットの位置、サイズ、形状、及び数は、例えば、カテーテルの用途、カテーテルのサイズなどに応じて変化し得る。別の代替として、別個の先端部が形成され、管の近位挿入端に接続されてもよく、例えば、閉じた近位端を形成し、側面に目/開口部が設けられてもよい。そのような別個の先端部は、例えば、プラスチック材料によって形成されてもよく、溶接、接着剤などによって管に接続されてもよい。先端部はまた、繊維系基材自体から形成されてもよい。
【0060】
基材は、カテーテルとして使用される場合、また他の用途に使用される場合、好ましくは円形断面形状を有する。しかしながら、楕円形などの他の断面形状、又は多角形、好ましくは三角形、長方形、六角形などの丸みを帯びた角を有する多角形も実現可能である。
【0061】
排水開口部の形成は、打ち抜き、切断、又は他のそれ自体周知の方法によって行うことができる。
【0062】
さらに、カテーテルの遠位部分は、少なくともその一部において、カテーテルシャフトよりも大きい断面寸法を有してもよい。遠位部分は、例えば、フレア状又は漏斗状であってもよく、遠位端に向かって寸法が増加し、それにより、使用中にカテーテルを取り扱いやすくし、カテーテルが過度に挿入されるのを防止する。そのような後方端部は、基材内に直接形成されてもよい。しかしながら、追加的又は代替的に、別個の後方要素が基材の遠位端に取り付けられてもよい。そのような別個の後方部分は、例えば、プラスチック、繊維、又は繊維複合材料によって形成されてもよく、溶接、接着剤などによって管に接続されてもよい。実施形態では、後方部分は、管/基材で使用されるのと同じ又は類似の材料で作製されてもよい。
【0063】
カテーテルは、間欠性の短時間の使用のための尿道カテーテルが好ましい。「短期使用」という用語は、時間的に制限された使用、特に15分未満、好ましくは10分未満、最も好ましくは5分未満の期間に制限された使用を示す。
【0064】
一連の実施形態では、基材は管状体を形成する。管状体は、入口開口部と、出口開口部と、該入口開口部と出口開口部との間に延在する内部管腔とを含むことができる。管状体は、好ましくは、略円形の断面を有する。しかしながら、楕円形、又は、三角形、長方形、若しくは六角形などの、好ましくは丸みを帯びた角を有する、多角形の形状などの他の断面形状も実現可能である。
【0065】
管状基材はまた、他の用途、例えば他の種類のカテーテルとしての使用、プローブとしての使用、例えばカテーテルなどの操作及び取り扱いを補助するための管状挿入補助具としての使用などに使用されてもよい。
【0066】
管状体は、例えば飲用ストローからそれ自体知られているように、螺旋形状の少なくとも1つのストリップを巻くことによって形成されてもよい。例えば、管状体は、国際公開第2004/6626号、米国特許第2084673号明細書及び米国特許第2983616号明細書のいずれか1つに開示されている方法で形成されてもよく、該文献は参照により本明細書に組み込まれる。好ましい実施形態では、少なくとも2つのストリップが平行に使用され、最も好ましくは3つのストリップが使用される。
【0067】
代替で、管状体は、単一層又は2層以上のいずれかを含む少なくとも1枚の材料のシートによって形成されてもよい。管を形成するために、各シートは、2つの反対の側面が互いに重なり合って又は互いに隣接して配置されるように配置されてもよい。特に、単一のシートが使用される場合、反対の側面は、互いに接触して、好ましくは重なり合って配置され、強い接続を提供するために、好ましくは重なりで互いに接続されてもよい。したがって、管状体は、ここでは、2つの反対の側面が軸方向に延在する接続線に沿って接続されるように配置されたシートによって形成される。接続は、ホットメルト接着剤などの接着剤によって形成されてもよい。接着剤は生体適合性であることが好ましい。代替で、基材に薄いプラスチック層又はポリマー分散体の層が設けられている場合、接続は溶接によって提供されてもよい。いくつかのシートが設けられる場合、シートは互いに重なり合って配置されてもよく、シートの接合対向面は周方向に変位する。そのような実施形態では、対向する側面は、代わりに、下にある又は上に重ねるシートを介して接続されてもよい。管状体のそのような形成は、例えば、国際公開第2020/229215号に論じられているように行うことができ、該文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0068】
しかしながら、押出、成形、湿式成形、3Dプリンティングなどによるなど、管状体を形成する他の方法も実現可能である。
【0069】
女性の尿道カテーテルとして使用するなどの特定の用途では、基材はあまり柔軟である必要はない。女性の尿道は比較的短く、典型的には約4cmであり、比較的直線状である。したがって、比較的剛性のカテーテル基材を使用することができる。男性尿道カテーテルとして使用するためなど、他の用途については、男性尿道は比較的長く、典型的には18~20センチメートルであり、湾曲した経路を有するため、基材はある程度の柔軟性を有する必要がある。そのような用途のために、基材は、より可撓性であるように適合されてもよい。一方、腸病学、すなわち腸管理に使用されるカテーテルは、比較的剛性であり得る。
【0070】
一実施形態では、第1の層に接続され、ポリマーなどのより可撓性の材料であってもよい追加の層の使用によって、より可撓性の基材が提供されてもよい。
【0071】
代替的又は追加的に、柔軟性は、柔軟性を高める構造的配置を提供することによって増加されてもよい。例えば、基材の壁には、様々な方向に曲がりやすくするために波形が設けられてもよい。
【0072】
一実施形態では、基材は、管状体の周囲に配置された複数の折り目を設けることができる。そのような折り目は、円周の周りに同心円として配置されてもよいが、例えば螺旋として、又は複数の螺旋として、例えば互いに平行に配置されてもよい。折り目には、中央に窪み又は突起が設けられ、凸状又は凹状のビードを形成する。このような折り目は、それ自体、折り線に使用するのに周知であるが、ここでは基材の柔軟性を高めるために使用される。折り目は、好ましくは、基材の長さにわたって分布して配置され、例えば、2~20mm、好ましくは2~15mm、より好ましくは2~10mmの範囲内の分離距離で配置されてもよい。折り目は、管状基材の外面及び/又は内面にあってもよい。一実施形態では、基材は、クレーピングなどの折り目付けプロセスを有する縮れたテクスチャを備えることができる。
【0073】
追加的又は代替的に、尿道カテーテルなどの医療機器の挿入可能な先端部はまた、より柔軟性が増していてもよく、例えば、基材/シャフトよりも柔軟であってよい。このような柔軟性の向上は、上記と同じ方法で、例えば折り目を設けることによって得ることができる。
【0074】
基材には、親水性コーティングがさらに設けられてもよく、親水性表面層は、好ましくは、湿潤流体による湿潤時に医療機器に低摩擦表面特性を提供する。親水性コーティングは、基材の外面に設けられることが好ましい。一実施形態では、親水性コーティングはポリビニルピロリドンを含む。このような親水性コーティングは、身体開口部への医療機器の挿入をより容易かつより快適にし、ユーザに対する痛み及び危険のリスクを低減する。
【0075】
一実施形態では、親水性コーティングは、1つ又は複数の非硬化油系親水性ポリマー(複数可)であってもよい。
【0076】
驚くべきことに、親水性コーティングは、天然繊維、特に天然セルロース繊維を含む基材に付着すると、非常によく接合し、優れた特性を提供することが見出された。特に、これはPVPを含む親水性コーティングの場合に当てはまるようである。
【0077】
本発明の一実施形態では、親水性コーティングは、欧州特許第0093093号及び欧州特許第0217771号に従って形成されてもよく、該文献は参照により本明細書に組み込まれる。代替で、コーティングは、UV照射又は電子ビーム照射などの照射によって架橋されたPVP又は任意の他の適切な親水性ポリマーによって形成されてもよい。
【0078】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態を参照して明らかになり、解明されるであろう。
【0079】
例示目的のために、添付の図面に示されている実施形態を参照して、本発明を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】本発明の一実施形態による例示的な尿道カテーテルの図である。
【
図2】本発明の実施形態による例示的な直腸カテーテルの図である。
【
図3】本発明の実施形態による別の例示的な直腸カテーテルアセンブリの図である。
【
図4】本発明の一実施形態による管状体の概略斜視図である。
【
図5a】本発明の他の2つの実施形態による管状体の概略斜視図である。
【
図5b】本発明の他の2つの実施形態による管状体の概略側面図である。
【
図6a】本発明の実施形態による、1つ又は複数の層を有する管を形成する材料の様々な実施形態を示す断面図である。
【
図6b】本発明の実施形態による、1つ又は複数の層を有する管を形成する材料の様々な実施形態を示す断面図である。
【
図6c】本発明の実施形態による、1つ又は複数の層を有する管を形成する材料の様々な実施形態を示す断面図である。
【
図6d】本発明の実施形態による、1つ又は複数の層を有する管を形成する材料の様々な実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の好ましい実施形態は、実施形態間で交換可能であり、特に指示がない限り、異なる方法で組み合わせることができる。明確にするために、図面に示されている特定の構成要素の寸法は、本発明の実際の実装形態における対応する寸法、例えば医療機器の長さ、幅、及び高さなどとは異なり得ることにも留意されたい。
【0082】
図1に概略的に示される例示的な尿道カテーテルは、挿入先端部13を有する挿入可能な近位部分を備える挿入可能セクション11と、カテーテルシャフト14と、漏斗又はコネクタ部分及び排出端を形成する遠位部分の非挿入可能セクション12とを有するカテーテル1を備える。非挿入可能セクション12は、少なくとも一部において、挿入可能セクション11よりもより径が大きいことが好ましい。非挿入可能セクションの後端は、フレア状又は漏斗形状であってもよく、採尿バッグなどのテーパ状の接続部に接続されるように配置されていてもよい。しかしながら、非挿入可能セクションは、代替的に、比較的均一な断面積を有してもよい。
【0083】
排水開口部15、いわゆる目又はアイレットは、挿入先端部13に又はその近傍に設けられ、カテーテルシャフト内に形成された内部管腔を介して非挿入可能セクション12の排出開口部に接続される。この実施形態では、カテーテルは単一の管腔を備えるが、2つ以上の管腔も実現可能である。
【0084】
カテーテルシャフトは基材を形成し、管腔の形態の内部空洞を囲む壁を形成する。カテーテルシャフト及び壁は、近位挿入端、挿入先端部13、及び遠位後方端の間に延在する。基材及び壁の少なくとも第1の層は、天然繊維、好ましくは植物性、細菌性又は動物性の天然繊維を含む材料で作られる。この材料については、以下でより詳細に論じる。
【0085】
挿入先端部は、基材と同じ材料によって形成されてもよく、例えば、カテーテルシャフトの一体のモノリシック部分として形成されてもよい。しかしながら、代替的に、挿入先端部は、例えばプラスチック材料によって形成された別個の部品として形成され、接着剤、溶接などによってシャフトに接続されてもよい。そのような実施形態では、挿入先端部は、好ましくは、閉じた丸みを帯びた近位端を形成し、排水開口部が、挿入先端部の側面、又はカテーテルシャフトの壁に設けられる。別個の部品として形成される場合、この部品はまた、シャフトで使用されるのと同じ又は同様の材料などの天然繊維に基づく材料によって、又は天然繊維に基づくがより柔軟であるなどのシャフトの材料とは異なる特性及び特徴を有する別の材料によって形成されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、カテーテルシャフトの中央開口端部は、それ自体で、又は他の排出開口部と組み合わせて排出開口部として機能することができる。そのような実施形態では、挿入先端部は必要とされない。例示的な例では、排水開口部は基材/カテーテルシャフトの壁に設けられている。
【0086】
後方部分はまた、基材と同じ材料によって形成されてもよく、例えば、カテーテルシャフトの一体のモノリシック部分として形成されてもよい。しかしながら、代替的に、後方部分は、例えばプラスチック材料によって形成された別個の部品として形成され、接着剤、溶接などによってシャフトに接続されてもよい。別個の部品として形成される場合、この部品はまた、シャフトで使用されるのと同じ又は同様の材料などの天然繊維に基づく材料によって、又は天然繊維に基づくがより剛性であるなどのシャフトの材料とは異なる特性及び特徴を有する別の材料によって形成されてもよい。後方部分は、好ましくはカテーテルシャフトよりも大きい断面積を有するべきであり、例えば漏斗として形成されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、後方部分は、カテーテルシャフトと同じ径を有してもよく、単にカテーテルシャフトの延長部として形成されてもよい。
【0087】
カテーテルが女性ユーザ向けである場合、カテーテルシャフト/基材は、4~12cm、好ましくは5~10cmの範囲の長さを有することができる。カテーテルが男性ユーザ向けである場合、カテーテルシャフト/基材は、20~40cm、好ましくは30~40cmの範囲の長さを有することができる。
【0088】
女性の尿道カテーテルとして使用するために、基材は、あまり柔軟である必要はない。女性の尿道は比較的短く、典型的には約4cmであり、比較的直線状である。したがって、比較的剛性のカテーテル基材を使用することができる。男性尿道カテーテルとして使用するためなど、他の用途については、男性尿道は比較的長く、典型的には18~20センチメートルであり、湾曲した経路を有するため、基材はある程度の柔軟性を有する必要がある。そのような用途のために、基材は、より可撓性であるように適合されてもよい。
【0089】
一実施形態では、第1の層に接続され、ポリマーなどのより可撓性の材料であってもよい追加の層の使用によって、より可撓性の基材が提供されてもよい。そのような配置は、以下でさらに論じられる。
【0090】
代替的又は追加的に、柔軟性は、柔軟性を高める構造的配置を提供することによって増加されてもよい。例えば、基材の壁には、様々な方向に曲がりやすくするために波形が設けられてもよい。
【0091】
一実施形態では、基材には、管状体の周囲に配置された複数の折り目が設けられてもよい。折り目には、中央に窪み又は突起が設けられ、凸状又は凹状のビードを形成する。このような折り目は、それ自体、折り線に使用するのに周知であるが、ここでは基材の柔軟性を高めるために使用される。折り目は、好ましくは、基材の長さにわたって分布して配置され、例えば、2~20mm、好ましくは2~15mm、より好ましくは2~10mmの範囲内の分離距離で配置されてもよい。代替で、折り目は、カテーテルの特定の部分にのみ配置されてもよい。一実施形態では、基材は、クレーピングなどの折り目付けプロセスを有する縮れたテクスチャを備えることができる。基材を一方向にコンパクトにするために、折り目などを使用することもできる。例えば、男性のカテーテルとして使用される場合、これは、カテーテルを収納位置においてより短い状態で配置することを可能にし、それが使用されることが意図される場合により長い長さに拡張することを可能にするように使用することができる。
【0092】
基材を含むカテーテルには、親水性コーティングがさらに設けられてもよく、親水性表面層は、好ましくは、湿潤流体による湿潤時に医療機器に低摩擦表面特性を提供する。親水性コーティングは、基材の外面に設けられることが好ましい。一実施形態では、親水性コーティングはポリビニルピロリドンを含む。このような親水性コーティングは、身体開口部への医療機器の挿入をより容易かつより快適にし、ユーザに対する痛み及び危険のリスクを低減する。
【0093】
好ましくは、少なくとも挿入可能セクション11は、親水性コーティングでコーティングされる。典型的には、挿入可能な長さは、女性患者については50~140mm、男性患者については200~350mm内である。PVPが好ましい親水性材料であるにもかかわらず、他の親水性材料、例えば、ポリビニル化合物、多糖類、ポリウレタン、ポリアクリレート又はビニル化合物とアクリレート又は無水物とのコポリマー、特にポリエチレンオキシド、ヘパリン、デキストラン、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ビニルピロリドンとヒドロキシエチルメチルアクリレートとのコポリマー又はポリメチルビニルエーテルとマレイン酸無水物とのコポリマーから選択される親水性ポリマーが使用されてもよい。しかしながら、親水性表面コーティングの代わりに、カテーテルの挿入可能セクション全体は、天然繊維を含む層と組み合わされた親水性材料で形成されてもよい。
【0094】
しかしながら、代替的に、カテーテルに親水性コーティングを設けなくてもよく、例えば、挿入前にゲルで潤滑してもよい。
【0095】
別の一連の実施形態では、医療機器は、
図2に概略的に示すように、直腸カテーテルである。直腸カテーテルは、挿入先端部23を有する挿入可能な近位部分と、カテーテルシャフト24とを備える挿入可能セクション21と、漏斗又は接続部分及び排出端を形成する遠位部分の非挿入可能セクション22とを備える。非挿入可能セクション22は、少なくとも一部において、挿入可能セクション21よりもより径が大きいことが好ましい。非挿入可能セクションの後方端部は、液体リザーバ、ポンプなどに接続される界面を有してもよい。
【0096】
出口開口部25は、挿入先端部23に又はその近傍に設けられ、カテーテルシャフト内に形成された内部管腔を介して非挿入可能セクション22の入口開口部に接続されている。この実施形態では、カテーテルは、リザーバから出口開口部(複数可)に灌注液を移送するための1つの管腔を備える。バルーンなどの拡張可能な保持要素26の膨張及び収縮のために、追加の管腔を設けることができる。したがって、この例では、カテーテルシャフトは2つの管腔を備える。しかしながら、空気又は液体の供給を必要としない他の種類の保持要素も実現可能であり、保持要素なしで直腸カテーテルを使用することも可能である。そのような実施形態では、カテーテルは単一の管腔を有してもよい。
【0097】
カテーテルシャフトは基材を形成し、管腔の形態の内部空洞を囲む壁を形成する。カテーテルシャフト及び壁は、近位挿入端、挿入先端部23、及び遠位後方端の間に延在する。基材及び壁の少なくとも第1の層は、天然繊維を含む材料で作られる。この材料については、以下でより詳細に論じる。
【0098】
挿入先端部は、基材と同じ材料によって形成されてもよく、例えば、カテーテルシャフトの一体のモノリシック部分として形成されてもよい。しかしながら、代替的に、挿入先端部は、例えばプラスチック材料によって、又は天然繊維を含む材料によって形成された別個の部品として形成され、接着剤、溶接などによってシャフトに接続されてもよい。そのような実施形態では、挿入先端部は、好ましくは、閉じた丸みを帯びた近位端を形成し、排水開口部が、挿入先端部の側面、又はカテーテルシャフトの壁に設けられる。しかしながら、他の実施形態では、カテーテルシャフトの中央開口端部は、排水開口部として機能することができる。そのような実施形態では、挿入先端部は必要とされない。例示的な例では、出口開口部は先端部に設けられ、これも閉じた前方端部を形成する。
【0099】
後方部分はまた、基材と同じ材料によって形成されてもよく、例えば、カテーテルシャフトの一体のモノリシック部分として形成されてもよい。しかしながら、代替的に、後方部分は、例えばプラスチック材料又は天然繊維を含む材料によって形成された別個の部品として形成され、接着剤、溶接、摩擦嵌合接続などによってシャフトに接続されてもよい。後方部分は、カテーテルシャフトよりも大きい断面積を有してもよく、例えば漏斗として形成されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、後方部分は、カテーテルシャフトと同じ径を有してもよく、単にカテーテルシャフトの延長部として形成されてもよい。
【0100】
直腸カテーテルは、4~15cm、好ましくは5~10cmの範囲の長さを有し得る。
【0101】
直腸カテーテルはまた、上述の尿道カテーテルと同様に、親水性コーティングを備えてもよい。
【0102】
上述の直腸カテーテルは、例えば、経肛門的洗腸療法に使用することができ、カテーテルシャフトの比較的長い部分は、灌注液の導入のために使用者の直腸に挿入することができる。しかしながら、直腸カテーテルを浣腸に使用することもできる。
【0103】
直腸カテーテル/プローブには、カテーテル/プローブを直腸内に深く挿入することを禁止し、またカテーテルを保持する手にいくらかの保護を提供するためのアバットメント又は停止部材が設けられてもよい。そのような直腸カテーテルの配置を
図3に示す。
【0104】
図3の直腸カテーテルの配置では、
図2に関連して説明したのと同じカテーテル2を使用することができる。しかしながら、この場合、カテーテルは保持要素を有する必要はない。さらに、例えば円錐の形態のアバットメント27が設けられ、挿入先端部23の近傍にその最小端部が取り付けられ、そこから後方端部に向かって幅が徐々に延びている。幅は、円錐形のアバットメントを形成するように均一に延在してもよい。しかしながら、好ましくは、例示的な例のように、アバットメントは、基部に向かって、すなわち遠位側面でより大きく先細になり、先端部/頂部に向かって、すなわち近位側面であまり目立たない。これにより、
図3に示すようなホーン形状が得られる。
【0105】
この直腸カテーテル配置では、アバットメント27は、カテーテルシャフトに加えて、又は代替として、内部空洞(円錐又はホーンの内部)を囲む壁を形成する基材を形成することができる。アバットメント及び壁は、近位挿入端、すなわち頂点と、遠位後方端、すなわち基部との間に延在する。基材及び壁の少なくとも第1の層は、天然繊維を含む材料で作られる。この材料については、以下でより詳細に論じる。
【0106】
上述の尿道及び直腸カテーテルのように、医療機器の基材が管状体を形成する実施形態では、管状体は様々な方法で製造することができる。
【0107】
管状体は、
図4に概略的に示すように、少なくとも1つのストリップ3を螺旋状に巻くことによって形成されてもよい。そのような管状体の形成は、それ自体、例えば飲用ストローから知られている。例えば、管状体は、国際公開第2004/6626号、米国特許第2084673号明細書及び米国特許第2983616号明細書のいずれか1つに開示されている方法で形成されてもよく、該文献は参照により本明細書に組み込まれる。好ましい実施形態では、少なくとも2つのストリップが平行に使用され、最も好ましくは3つのストリップが使用される。
【0108】
或いは、管状体は、単一の層又は2層以上のいずれかを含む材料の単一のシート3’によって形成されてもよい。管を形成するために、
図5aに示すように、シートの2つの側面を互いに接続し、好ましくは重なり合って強固な接続を提供することができる。したがって、管状体は、ここでは、2つの反対の側面が軸方向に延在する接続線に沿って接続されるように配置されたシートによって形成される。接続は、ホットメルト接着剤などの接着剤によって形成されてもよい。接着剤は生体適合性であることが好ましい。
【0109】
代替で、
図5bに示すように、2枚以上のシート3a及び3bで管状体を形成してもよく、シートの両面が互いに接触して配置されるか、又は互いに近接して配置されるように、各シートが配置され、シートが互いに対して周方向にずれて、シートの接合面が互いにずれる。次いで、接合面に隣接するシートの少なくとも一部は、例えば接着剤がシートの一方又は両方に配置されることによって、上に重ねる又は下にあるシートに接続されてもよい。このような管状体は、例えば、ドイツ、ハンブルグのHauni Maschinenbau GmbHから市販されているHauni Straw Maker(HSM)などの製造機器によって製造されてもよい。このようにして形成された管状体は、管状体の全体にわたって非常に均一な厚さを得ることができる。
【0110】
しかしながら、押出、成形、湿式成形、3Dプリンティングなどによるなど、管状体を形成する他の方法も実現可能である。
【0111】
医療機器の基材は、天然繊維を含む。一実施形態では、天然繊維は基材全体に使用される。他の実施形態では、天然繊維は、1つの層、第1の層に使用され、1つ又は複数の追加の層が第1の層に接続されている。
【0112】
基材は、
図6aに概略的に示すように、第1の層273と呼ばれるセルロース系層などの天然繊維をベースとした単層からなる1枚又は数枚のシートで形成されてもよい。
【0113】
しかしながら、他の実施形態では、材料は、
図6bに示すように、セルロース系材料274などの天然繊維に基づく積層された第2の層の形態などの、1つ又は複数の追加の層を含んでもよい。
【0114】
追加的又は代替的に、材料はまた、非セルロース系層、例えば薄いポリマーフィルム又はコーティングを含んでもよい。
図6cは、そのような薄いフィルム又はコーティング275が第2のセルロース系材料274の上に配置される実施形態を示す。
図6dは、第1のセルロース系材料273の下側の反対面にも薄いコーティング又はフィルム276が配置されている実施形態を示す。
【0115】
しかしながら、第1のセルロース系層上に配置された薄いポリマーフィルム又はコーティングなどの他の組み合わせも可能である。
【0116】
基材/第1の層は、少なくとも30重量%の天然繊維で、特にセルロース繊維、好ましくは少なくとも40重量%の天然繊維で、特にセルロース繊維、例えば少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%を含み得る。
【0117】
一実施形態では、第1の層は、天然セルロース繊維で主に作られる。好ましい実施形態では、第1の層は紙で作られる。
【0118】
基材の材料は、好ましくは、水、尿、又は他の液体に曝されたときに基材が比較的無傷で安定したままであるように選択及び配置される。好ましくは、基材は、そのような液体が決定された使用期間中、例えば少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10又は15分間など、膀胱から尿を排出するのに少なくとも十分な期間、その内部管腔を通って流れるときに無傷で安定したままであるように配置される。好ましくは、材料はまた、この決定された使用期間中に基材の内面から外面への水分の移動に少なくともある程度耐えるように構成される。さらに、基材に親水性コーティングなどが設けられている場合、基材は、好ましくは、親水性コーティングの湿潤に十分な時間中に液体又は他の流体に耐えることができるなどの活性化プロセスにも耐えることができるべきである。
【0119】
同時に、基材の材料は、好ましくは水解性であり、基材が水に浸されたときに、例えば基材を水に流せるようにするのに十分な時間内に、大部分が分解するように選択及び配置される。例えば、水に数時間以下浸漬したときに基材が十分に分解するように配置することができる。
【0120】
追加の層はまた、セルロース系層であってもよく、又は他の天然繊維に基づいていてもよいが、好ましくは、第1の層とは少なくともある程度異なる特性、例えばより耐水性である、及び/又はより剛性を有する特性を有する。任意のそのような追加の層は、好ましくは、少なくとも30重量%の天然繊維で、特にセルロース繊維、好ましくは少なくとも40重量%の天然繊維で、特に少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%などのセルロース繊維を含んでもよい。
【0121】
一実施形態では、基材を形成する材料の全ての層がセルロース系層である。
【0122】
しかしながら、追加の層はまた、表面サイズ剤、表面サイズデンプン又は熱可塑性ポリマーの薄いコーティングなどの非セルロース系材料で作製されてもよい。
【0123】
セルロース繊維などの天然繊維に加えて、材料、特に第1の層の材料は、充填剤、顔料、湿潤強度化学物質、保持化学物質、架橋剤、軟化剤又は可塑剤、接着プライマー、湿潤剤、殺生物剤、光学染料、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルキル無水コハク酸(ASA)などの疎水化化学物質、ワックス、樹脂のうちの1つ又は複数などの添加剤を含むことができる。また、デンプン及び表面サイズ剤も添加剤として使用することができる。
【0124】
充填剤は、カオリン、陶土、二酸化チタン、石膏、タルク、チョーク、粉砕大理石、粉砕炭酸カルシウム及び沈降炭酸カルシウムなどの鉱物充填剤など、製紙に使用されることが知られている任意の充填剤であってもよい。
【0125】
例えば、ロジン、流動パラフィンワックス、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルキル無水コハク酸(ASA)などの1つ又は複数のサイズ添加剤を繊維系材料に添加して、材料の所望の吸収性プロファイルを提供することができる。
【0126】
AKDが使用される実施形態では、AKDの含有量は、好ましくは0.1~10重量%の範囲、好ましくは0~5~5重量%の範囲、最も好ましくは1~2重量%の範囲である。
【0127】
ポリ(乳酸)(PLA)が使用される実施形態では、PLAの含有量は、好ましくは0~50重量%の範囲、好ましくは1~45重量%の範囲、より好ましくは5~40重量%の範囲、さらにより好ましくは10~35重量%の範囲、最も好ましくは20~30重量%の範囲である。PLAを材料に含めると、材料がより剛性になる。
【0128】
湿潤強度添加剤及び/又は保持化学物質は、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)などのポリマー、又はデンプンであり得る。
【0129】
天然繊維系材料、特にセルロース系材料は、製紙機械、例えば、紙、板紙、又は同様の製品の製造に使用される当業者に既知の任意の従来型の機械で製造することができる。脱水はまた、ウェブを熱、真空、超音波、加圧ニップなどに曝すことを含んでもよい。脱水及び乾燥後、材料はまた、軟質又は硬質のニップ、カレンダなどによって乾燥又は平滑化されてもよい。
【0130】
材料のセルロース繊維は、広葉樹繊維又は針葉樹繊維の両方からの木材セルロース繊維であってもよい。しかしながら、セルロースはまた、小麦麦わらパルプ、竹、バガス、又は他の非木材繊維源などの農業繊維などの他の供給源からのものであってもよい。材料は、好ましくは、バージン繊維からのパルプ、例えば機械パルプ、化学パルプ及び/又は熱機械パルプを含むパルプから作製される。それはまた、損紙又は再生紙、すなわち再生セルロース繊維から作製することもできる。
【0131】
材料はまた、結晶性領域と非晶質領域の両方を有する複数の基本フィブリルを含むセルロースナノファイバー材料などのナノセルロースを含んでもよい。この場合、ナノセルロースは、他のセルロースと一緒に層に含まれていてもよく、又は別の層に配置されていてもよい。ナノセルロースは木材又は植物系であってもよく、セルロースナノフィブリル(CNF)又はセルロースナノ結晶(CNC)、好ましくはセルロースナノフィブリルから選択されてもよい。これにより、セルロース製品の原料が豊富で再生可能で生分解性の供給源から得られることが保証される。
【0132】
基材を構成する材料は、単層材料であるか2層以上の積層材料であるかにかかわらず、90~130g/m2の範囲の表面重量を有することが好ましい。セルロースがより厚く、より長い繊維を有する場合、本質的に同じ特性を有するより薄い材料が提供され得る。
【0133】
2つの層を有する実施形態では、外層は内層よりも低い表面重量を有してもよい。そのような外層は、より滑らかでより均一な外面を提供することができる。例えば、外層は、20~60g/m2、好ましくは25~50g/m2、最も好ましくは30~50g/m2の表面重量を有することができる。内層は、60~120g/m2、好ましくは60~100g/m2、最も好ましくは60~90g/m2の表面重量を有することができる。
【0134】
管状体に形成されるときの基材の材料は、好ましくは、内部及び/又は外部表面、すなわち、内部管腔及び外部に面して、壁の中央よりも耐水性が高く、撥水性が高くなるように配置される。
【0135】
この目的のために、化学的表面サイズ剤、表面処理剤などを内部表面に添加してもよく、任意選択で外部表面にも添加してもよい。
【0136】
追加的又は代替的に、積層材料が使用される場合、内層は、外層及び/又は中間層などの別の層よりも吸収性が低く、耐水性が高いセルロース系層であってもよい。
【0137】
別の実施形態では、積層材料が使用される場合、ポリ(乳酸)(PLA)などの疎水性有機材料などの薄層がコーティングとして内面に配置されてもよい。シリコーン系層、デンプン系層、粘土系層、ポリエチレン(PE)層、又は他の熱可塑性ポリマー層などを使用することも可能である。このような層は、積層される代わりに、スプレー又はディップコーティングなどの形態で設けられてもよい。ナノセルロースを含む層もまた、内面に向かって使用され得る。
【0138】
基材を形成するシート材料は、好ましくは生分解性で非毒性である。
【0139】
基材の材料がセルロースからなる程度が大きい、又は非常に大きい場合、組成に応じて、水に浸したときに比較的短時間後に分解させることができる。これにより、基材/医療機器をトイレ内でも廃棄して洗い流すことも可能になる。そうすると、しばらくすると、通常のトイレットペーパーと同様に基材が分解する。
【0140】
実験
第1の実験ラインでは、紙ベースの基材を親水性コーティングでコーティングすることが可能であるかどうか、及びそのようなコーティングが従来使用されている基材材料に適用された場合と同様に良好であるかどうかを評価した。
これらの試験には、以下の紙材料を使用した。
A)90g/m2の坪量を有するStora Enso製のLumiflex Light
B)60g/m2の坪量を有するBillerud Korsnas製SteriKraft
C)螺旋構成で配置された紙ストライプの3つの層からなり、直径6mm(CH18に対応)及び壁厚0.5mmを有する、IKEA製の「Fornyande」と名付けられた飲用ストロー
【0141】
これらの基材を管に形成し、PVPコーティングでコーティングし、照射により架橋した。これらの基材をA1、B1及びC1と呼ぶ。
【0142】
管に形成された他の基材を、他の種類の親水性PVP系コーティングでコーティングした。これらの追加のコーティングは以下の通りであった。
【0143】
一般に欧州特許第0093093号明細書に開示され、欧州特許第2177238号明細書にも記載されている種類の、イソシアネート及び塩化メチレンを含有する溶媒ベースの架橋系によって形成されたPVPコーティング。このようにしてコーティングされた基材は、A2及びB2と呼ばれる。
【0144】
環境上及び安全上の理由から、NMPを除外することを除いて、国際公開第2004/075944号の実施例1に記載の方法に従って、UV照射によって架橋されたPVPコーティング。これは、コーティングの特性に大きな影響を与えないと推定される。このようにしてコーティングされた基材は、A3及びB3と呼ばれる。
【0145】
欧州特許第2198897号明細書の開示による、電子ビーム照射によって架橋されたPVPコーティング。このようにしてコーティングされた基材は、A4及びB4と呼ばれる。
【0146】
いくつかのコーティングについては、親水性尿道カテーテル用の基材として使用されていることが知られている従来使用されているポリオレフィン系ポリマー基材を参照として使用した。これらの比較基準基材は、CR2、CR3及びCR4と呼ばれる。
【0147】
第1の試験では、コーティングを手動で評価した。これらの試験の結果を以下の表1に示す。
【0148】
表1:手動評価の結果等級は1~5で、5がとても良いで、1がとても悪い。
【0149】
【0150】
C1)の基材に生じる粗さは、コーティングを通して感じられる管の継ぎ目に起因する。この目的のために、この基材を他のコーティングに使用しなかった。それにもかかわらず、全ての紙基材が著しく良好であり、優れた低摩擦性及び滑りやすさを示した。また、評価全体を通して滑りやすさが持続した。
【0151】
また、試験した全ての紙ベース基材は、比較例CR2、CR3及びCR4と同様に良好な滑りやすさを有し、粗さ及び摩擦に耐える能力において比較例と同様にさらに本質的に良好であったことに留意されたい。
【0152】
第2の試験では、コーティングの保水性を試験した。コーティングの長さは鋼製定規を用いて測定し、管の直径はノギスを用いて測定した。コーティングされた紙の管を水に10秒間浸し、導入された先端部、すなわち管状先端部を閉じた。管を湿潤/活性化の前に秤量し、次いで1分間乾燥させ、続いて秤量し、それぞれ実験室環境で1分及び6分の乾燥後に測定値を得た。
【0153】
これらの測定の結果を以下の表2に示す。
【0154】
表2:保水測定の結果
【0155】
【0156】
したがって、全ての試験例における全ての保水量は非常に良好であり、従来の尿道カテーテルの基準を十分に超えることが分かる。
【0157】
第3の試験では、コーティングの摩擦を評価した。200gのロードセルを備えたHarland Friction Tester FTS6000を用いて摩擦を測定した。測定の前に、コーティングを水中で10秒間濡らした。これらの測定の結果を以下の表3に示す。
【0158】
表3:摩擦測定
【0159】
【0160】
これらの測定された摩擦値は極めて低い。試験されたサンプルについて測定された摩擦係数(COF)は、今日利用可能なほとんどの親水性尿道カテーテルのCOFをはるかに下回る。材料C)は、ストローの継ぎ目が測定を妨害するため、評価されなかった。
【0161】
別の一連の実験では、紙ベースの管状体が、カテーテル処置中に起こるであろう尿及び他の液体中の曝露に耐えることができるかどうかを評価した。これらの実験のために、上述の材料C)に対応する、紙製の市販の飲用ストローを使用した。
【0162】
第1の試験では、37℃の温度で合成尿。Cを容器内に配置し、紙のストローをリザーバの出口に接続した。リザーバの出口を開けて、合成尿をおよそ3ml/sの速度で5分間、紙のストローを通して流した。
【0163】
第二の試験では紙のストローを37度に加熱した合成尿に浸漬した。内側及び外側の両方において、人の身体の体温で紙のストローを尿に曝す効果を評価するために、Cをビーカー内に5分間。
【0164】
各試験後、圧縮試験を行った。試験前に、紙のストローは硬く、曲げることができないと感じられた。尿に曝された後、紙のストローはわずかに柔らかくなったと感じられた。しかしながら、ストローは、無傷のままであり、いくらかより屈曲可能で柔軟であっても、圧縮時につぶれなかった。50グラム及び100グラムの力で圧縮した場合、ストローはつぶれなかったか、又は圧縮の影響を受けなかった。
【0165】
これらの試験は、紙ベースのカテーテルが、通常の断続的なカテーテル処置中にそれが曝される尿及び他の液体への曝露に耐える能力を有することを示している。
【0166】
別の一連の実験では、紙ベースの管状体を女性及び男性の尿道に挿入することができるかどうかを評価した。これらの実験のために、紙製の市販の飲用ストローを使用した。使用した飲用ストローは、a)IKEAによって販売されている「Fornyande」と呼ばれる同じストロー、及びb)House of Marieによって販売されている波形の屈曲性ストローであった。後者のストローは、一般にCH18カテーテルに対応する。これらのストローには波形/折り目が設けられ、螺旋構成に配置されたストライプの層を有する紙製であった。ストローa)は、コーティングなしで、及びまた前述の親水性コーティングでコーティングされて使用された。その他の試験には、ゲル潤滑剤を用いた。参考として、CH18の市販のLoFric(登録商標)カテーテル(出願人Dentsply IH ABより入手可能)を使用した。
【0167】
試験のために、ウィスコンシン州フォートアトキンソンのNasco製のゴム状シリコーンによって作製された女性及び男性の尿道モデルを使用した。また、3D印刷した硬質プラスチックで作製した男性尿道の角度をモデル化した男性尿道モデルを用いた。
【0168】
人工女性尿道で試験すると、おそらく紙の管とシリコーン尿道モデルとの間の高い摩擦のために、乾燥したコーティングされていない紙のストローを挿入することが困難であることが分かった。しかしながら、紙のストローはその形態を保持し、挿入及びモデルからの引き抜き後にねじれも損傷もなかった。ゲル潤滑剤で潤滑された紙のストローの場合、尿道モデルからストローへの挿入及び尿道モデルから引き抜くことがより容易であり、挿入及び引き抜き特性はカテーテルとしての使用に完全に許容されると考えられた。親水性コーティングが施された紙のストローを10秒間湿潤/活性化し、次いで尿道モデルに挿入した。この管は、尿道モデルへの挿入及び尿道モデルからの引き抜きが最も容易であった。コーティングされた紙の管の挿入及び引き抜きの直後に、コーティングされていない紙の管を尿道モデルに挿入したが、この場合も、この管は挿入及び引き抜きの両方が困難であり、コーティングされた紙の管とコーティングされていない紙の管との間の大きな差を示している。挿入又は引き抜き中に分解した紙の管はない。さらに、基準カテーテルを尿道モデルで使用した。このカテーテルの挿入は、滑らかな挿入及び引き抜きを伴って、コート紙カテーテルと非常に類似していると感じられた。
【0169】
このことから、紙ベースのカテーテルは、女性の尿道への挿入に使用することができ、親水性コーティングでコーティングされている場合、従来使用されている親水性尿道カテーテルと同様の特性を有すると結論付けることができる。
【0170】
男性尿道モデルについても同様の試験を行った。コーティングされていない乾燥波形ストローを首尾よく挿入し、次いで、3D印刷した雄の尿道モデルから除去された。これは、折り目又は波形によって追加された柔軟性が、男性の尿道で使用される紙カテーテルに十分であることを示している。シリコーン男性尿道モデルに使用した場合、紙の管は乾燥してコーティングされていない場合には挿入が困難であることが分かった。しかし、ゲル潤滑剤で潤滑した場合、管はモデル尿道及びモデル膀胱に首尾よく挿入され、また容易に除去された。挿入されたチューブは、それらの完全性を維持し、カテーテル留置プロセス全体を通して、つぶれている、又はねじれておらず、損傷を受けていない。
【0171】
このことから、コーティングされ活性化された紙の管は、尿道モデルに挿入して引き抜くための市販のLoFric(登録商標)カテーテルと同じくらい容易で滑らかであると結論付けることができる。ゲル潤滑剤で潤滑された紙の管は、それほど良好ではないが、十分に機能する。また、コーティングされていない潤滑されていない管であっても、いくらか有利ではないとしても、少なくとも女性用に使用することができる。
【0172】
結論(付記)
ここで、本発明の特定の実施形態について説明してきた。しかしながら、当業者には明らかなように、いくつかの代替が可能である。例えば、異なる種類のセルロース系材料、ならびに植物、細菌及び動物の天然繊維に基づく他の材料を使用することができ、非セルロース系の層と組み合わせることもできる。さらに、基材はコーティングされていてもコーティングされていなくてもよく、様々なタイプの親水性コーティングが使用されてもよい。
【0173】
そのような及び他の明らかな修正は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の範囲内にあるとみなされなければならない。上記の実施形態は、本発明を限定するのではなく例示するものであり、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態を設計することができることに留意されたい。特許請求の範囲において、括弧の間に配置された参照符号は、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。「含む(comprising)」という語は、特許請求の範囲に列挙されたもの以外の他の要素又はステップの存在を排除するものではない。要素に先行する「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語は、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。さらに、単一のユニットが、特許請求の範囲に記載のいくつかの手段の機能を実行してもよい。
【国際調査報告】