(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】超音波組織治療装置
(51)【国際特許分類】
A61N 7/00 20060101AFI20240209BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
A61N7/00
A61B18/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551973
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 IB2022051547
(87)【国際公開番号】W WO2022180511
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521009108
【氏名又は名称】ヒーリアム メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】セラ,ラン
(72)【発明者】
【氏名】メゲル,ユリ
(72)【発明者】
【氏名】スマクティン,ディミトリ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ34
4C160JJ35
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK58
4C160KK59
4C160MM33
4C160MM38
4C160NN03
4C160NN09
(57)【要約】
【課題】 エネルギの印加による組織の治療のためのデバイス及び方法を提供すること。
【解決手段】 少なくとも1つの超音波トランスデューサ(50/52/150)を含む経管アブレーションカテーテル(40)を含む装置(220/20)及び方法が記載される。少なくとも1つの超音波トランスデューサは、対象の心腔(190)内に挿入され、(a)対象の組織に超音波エネルギを印加することによって組織をアブレーションし、(b)対象の組織に非アブレーション超音波エネルギを印加することによって組織を撮像するように構成されている。拡張可能ケージ(30/301)は、少なくとも1つの超音波トランスデューサの周囲に配置される。少なくとも1つの超音波トランスデューサは、組織の3次元画像を生成するように、拡張可能ケージ内で回転すると共に軸方向に前後に平行移動するように構成されている。他の適用例も記載される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の組織と共に使用される装置であって、
経管アブレーションカテーテルであって、
前記対象の心腔内へ挿入され、(a)前記対象の組織に超音波エネルギを印加することによって前記組織をアブレーションし、(b)前記対象の組織に非アブレーション超音波エネルギを印加することによって前記組織を撮像するように構成された、少なくとも1つの超音波トランスデューサと、
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成された拡張可能ケージと、
を備える経管アブレーションカテーテルを備え、前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは、前記組織の3次元画像を生成するように、前記拡張可能ケージ内で回転すると共に軸方向に前後に平行移動するように構成されている、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは、肺静脈口の近くで左心房内へ挿入されるように構成され、前記肺静脈口の組織をアブレーションすることによって前記肺静脈を電気的に絶縁するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記組織は、前記対象の前記心腔から延出する管腔の口の組織を含み、前記超音波トランスデューサは、前記管腔の前記口の前記組織に非アブレーション超音波エネルギを印加することによって前記管腔の前記口の前記組織の3次元画像を生成するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記組織は、前記対象の前記心腔から延出する管腔の口の組織を含み、前記拡張可能ケージは複数のストラットを含み、前記ストラットのうち少なくとも一部は、前記ストラットに沿った少なくとも2つの位置で外側に湾曲して、前記ストラットの前記一部が前記管腔の壁に接触することにより、前記ケージが前記経管アブレーションカテーテルの遠位部を前記管腔内に一時的に固定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記組織は、前記対象の前記心腔から延出する管腔の口の組織を含み、前記拡張可能ケージは中央部及び遠位部を有し、前記拡張可能ケージは、前記中央部の直径が前記遠位部の直径よりも大きいことによって乳頭状構造を規定するような形状を有し、前記遠位部は、前記管腔の口内へ挿入されて前記管腔の壁に接触することによって前記管腔内に前記遠位部を一時的に固定するような形状及びサイズを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは8~20MHzの周波数で超音波エネルギを生成するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは、前記トランスデューサの長手方向軸から外側に向かう凸面を規定するような形状を有し、0.5~3mmの幅及び0.75~5mmの曲率半径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記組織は、前記対象の前記心腔から延出する管腔の口の組織を含み、前記複数のストラットのうち少なくとも一部は導電性ストラットを含み、前記導電性ストラットは、前記管腔の口の組織に接触し、前記管腔の前記口の組織内に電流を駆動することによって前記導電性ストラットに接触している前記管腔の前記口の前記組織をアブレーションするように構成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記導電性ストラットのうち少なくとも一部は絶縁部分及び導電性部分を含み、前記導電性部分は、前記管腔の前記口の組織に接触し、前記管腔の前記口の組織をアブレーションするように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記複数のストラットのうち少なくとも一部は前記ストラットに形成された開口を規定するような形状を有し、前記開口を通して前記超音波トランスデューサから前記組織へ超音波エネルギが伝送される、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記複数のストラットのうち前記一部における前記ストラットの各々は0.5~1mmの幅を有し、前記ストラットの前記開口は0.25~0.5mmの幅を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ストラットの太さは0.1~0.25mmである、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記経管アブレーションカテーテルは、ハンドルを含む近位部と、前記少なくとも1つの超音波トランスデューサが結合されている遠位部と、を含む細長いシャフトを備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記細長いシャフトは、前記超音波トランスデューサを回転させるように回転可能に構成され、前記経管アブレーションカテーテルは、前記細長いシャフトの前記遠位部に結合されて前記細長いシャフトの前記遠位部の回転位置を検出するように構成された1つ以上のセンサを備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記細長いシャフトは、前記超音波トランスデューサを回転させるように回転可能に構成され、
前記経管アブレーションカテーテルは、前記超音波トランスデューサの回転中に前記拡張可能ケージを静止状態に保つように、前記細長いシャフトの回転時に前記細長いシャフトによって前記拡張可能ケージに加えられる回転力を低減させるように構成された回転力低減機構を更に備える、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは、前記組織に前記非アブレーション超音波エネルギを印加するように構成され、前記非アブレーション超音波エネルギのうち少なくとも一部は反射されて前記超音波トランスデューサで受信されるようになっており、
前記装置は、前記反射されたエネルギのパラメータを査定して、前記組織をアブレーションするため前記超音波トランスデューサによって印加される前記超音波エネルギのパラメータを決定するように構成されたコンピュータプロセッサを更に備え、
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは、前記決定されたパラメータに基づいて前記超音波エネルギを前記組織に印加するように構成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成された膨張可能要素を更に備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記膨張可能要素は、水及び生理食塩水のうち少なくとも1つで膨張させるように構成されている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは、
アブレーション超音波エネルギを前記対象の前記組織の方へ伝送することによって前記組織をアブレーションするように構成された第1の超音波トランスデューサと、
パルスエコー超音波エネルギの1つ以上のパルスを前記対象の前記組織の方へ伝送し、前記伝送されたパルスエコー超音波エネルギの反射を受信することによって、前記組織を撮像するように構成された第2の超音波トランスデューサと、を備え、前記第2の超音波トランスデューサは、前記組織の3次元画像を生成するように、前記拡張可能ケージ内で回転すると共に軸方向に前後に平行移動するように構成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記経管アブレーションカテーテルは、
前記第1の超音波トランスデューサを支持し、前記アブレーション超音波エネルギの前記組織の方への伝送を可能とするように構成された第1のサポートと、
前記第1の超音波トランスデューサが前記アブレーション超音波エネルギを前記組織の方へ伝送している間に、前記第2の超音波トランスデューサが前記伝送されたパルスエコー超音波エネルギの前記反射を受信することができるように、前記第2の超音波トランスデューサを支持し、前記第1のサポートによって与えられる減衰よりも高い減衰レベルを与えるように構成された第2の減衰サポートと、
を備える、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記第1のサポートは、前記アブレーション超音波エネルギの前記組織の方への伝送中に前記第1の超音波トランスデューサの振動を可能とするように構成された空気バリアを含み、
前記第2の超音波減衰サポートは、バッキング層及び減衰要素のうち少なくとも1つを含む機械的サポートを含む、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
対象の心腔から延出する前記対象の管腔と共に用いられる装置であって、
遠位部が前記対象の管腔内に位置決めされるように構成されている経管アブレーションカテーテルであって、
前記対象の前記心腔内へ挿入され、前記管腔の口の組織に超音波エネルギを印加することによって前記口の前記組織をアブレーションするように構成された少なくとも1つの超音波トランスデューサと、
ストラットを含み、前記超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成された拡張可能ケージであって、中央部及び遠位部を有し、半径方向に拘束されない構成で配置された場合、前記中央部の直径が前記遠位部の直径よりも大きい乳頭状構造を規定するような形状を有し、前記遠位部は、前記管腔の前記口内へ挿入されて前記管腔の壁に接触することによって前記管腔内に前記遠位部を一時的に固定するような形状及びサイズを有する、拡張可能ケージと、
を備える経管アブレーションカテーテルを備える装置。
【請求項23】
前記拡張可能ケージは、前記ストラットが前記拡張可能ケージの前記遠位部で凸曲率を規定し、その後、変曲点を通り、前記中央部内で凹曲率を有することによって、前記乳頭状構造を規定するような形状を有する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記拡張可能ケージの前記中央部は、前記拡張可能ケージの前記遠位部の最大直径に比べて最大で5倍の最大直径を有する、請求項22又は請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記遠位部が前記管腔の前記口内へ挿入された場合、前記中央部は前記心腔内に留まるように構成されている、請求項22又は請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは、肺静脈口の近くで左心房内に位置決めされるように構成され、前記肺静脈の口の組織をアブレーションすることによって前記肺静脈を電気的に絶縁するように構成されている、請求項22又は請求項23に記載の装置。
【請求項27】
前記拡張可能ケージは回転非対称である、請求項22又は請求項23に記載の装置。
【請求項28】
前記拡張可能ケージは回転対称である、請求項22又は請求項23に記載の装置。
【請求項29】
前記超音波トランスデューサは横向きの超音波トランスデューサを含む、請求項22又は請求項23に記載の装置。
【請求項30】
前記超音波トランスデューサは遠位方向を向いた超音波トランスデューサを含む、請求項22又は請求項23に記載の装置。
【請求項31】
前記超音波トランスデューサは更に、非アブレーション超音波エネルギを前記組織に印加することによって前記対象の前記組織を撮像するように構成され、前記超音波トランスデューサは、前記組織の3次元画像を生成するように、前記拡張可能ケージ内で回転すると共に軸方向に前後に平行移動するように構成されている、請求項22又は請求項23に記載の装置。
【請求項32】
前記拡張可能ケージの前記ストラットのうち少なくとも一部は前記ストラットに形成された開口を規定するような形状を有し、前記開口を通して前記超音波トランスデューサから前記組織へ超音波エネルギが伝送される、請求項22から31のいずれか1項に記載の装置。
【請求項33】
前記複数のストラットのうち前記一部における前記ストラットの各々は0.5~1mmの幅を有し、前記ストラットの前記開口は0.25~0.5mmの幅を有する、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記ストラットの太さは0.1~0.25mmである、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
対象の心腔から延出する前記対象の管腔と共に用いられる装置であって、
経管アブレーションカテーテルであって、
前記対象の前記心腔内へ挿入され、前記管腔の口の組織に超音波エネルギを印加することによって前記口の前記組織をアブレーションするように構成された少なくとも1つの超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成され、複数のストラットを含む拡張可能ケージであって、前記ストラットのうち少なくとも一部は前記ストラットに形成された開口を規定するような形状を有し、前記開口を通して前記超音波トランスデューサから前記組織へ超音波エネルギが伝送される、拡張可能ケージと、
を備える経管アブレーションカテーテルを備える装置。
【請求項36】
前記ストラットの前記一部の前記ストラットの各々は0.5~1mmの幅を有し、前記ストラットの前記一部の前記ストラットの各々における前記開口は0.25~0.5mmの幅を有する、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記複数のストラットのうち少なくとも一部は0.1~0.25mmの太さを有する、請求項35から36のいずれか1項に記載の装置。
【請求項38】
対象の心腔から延出する前記対象の管腔と共に用いられる装置であって、
経管アブレーションカテーテルであって、
前記対象の前記心腔内へ挿入され、前記対象の組織を撮像するように構成された少なくとも1つの超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成され、複数のストラットを含む拡張可能ケージであって、前記ストラットのうち少なくとも一部は導電性ストラットを含み、前記導電性ストラットは、前記管腔の口の組織に接触し、前記組織内に電流を駆動することによって前記導電性ストラットに接触している前記組織をアブレーションするように構成されている、拡張可能ケージと、
を備える経管アブレーションカテーテルを備える装置。
【請求項39】
前記導電性ストラットのうち少なくとも一部は絶縁部分及び導電性部分を含み、前記導電性部分は、前記管腔の前記口の前記組織に接触し、前記管腔の前記口の組織をアブレーションするように構成されている、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記拡張可能ケージは高周波(RF)電流を前記組織内に駆動するように構成されている、請求項38に記載の装置。
【請求項41】
前記拡張可能ケージは交流(AC)を前記組織内に駆動するように構成されている、請求項38に記載の装置。
【請求項42】
前記拡張可能ケージは直流(DC)を前記組織内に駆動するように構成されている、請求項38に記載の装置。
【請求項43】
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは、前記管腔の前記口の前記組織の3次元画像を生成するように、前記拡張可能ケージ内で回転すると共に軸方向に前後に平行移動するように構成されている、請求項38に記載の装置。
【請求項44】
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは、超音波エネルギを前記管腔の前記口の組織に印加することによって前記管腔の前記口の前記組織をアブレーションするように構成されている、請求項38から43のいずれか1項に記載の装置。
【請求項45】
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは、肺静脈口の近くで左心房内へ挿入されるように構成され、前記肺静脈の口の組織をアブレーションすることによって前記肺静脈を電気的に絶縁するように構成されている、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
記対象の心腔と共に用いられる装置であって、
経管アブレーションカテーテルであって、
前記対象の前記心腔内へ挿入され、前記対象の組織に超音波エネルギを印加することによって前記組織をアブレーションするように構成された少なくとも1つの超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成された膨張可能要素と、
前記膨張可能要素の周囲に配置され、前記対象の組織に接触することにより前記対象の前記心腔内に前記経管アブレーションカテーテルを一時的に固定するように構成された拡張可能ケージと、
を備える経管アブレーションカテーテルを備える装置。
【請求項47】
前記膨張可能要素は水で膨張させるように構成されている、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記膨張可能要素は生理食塩水で膨張させるように構成されている、請求項46に記載の装置。
【請求項49】
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは8~20MHzの周波数で超音波エネルギを生成するように構成されている、請求項46から48のいずれか1項に記載の装置。
【請求項50】
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは10~12MHzの周波数で超音波エネルギを生成するように構成されている、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記少なくとも1つの超音波トランスデューサは11MHzの周波数で超音波エネルギを生成するように構成されている、請求項50に記載の装置。
【請求項52】
経管アブレーションカテーテルであって、
超音波エネルギを対象の組織の方へ伝送することによって前記組織をアブレーションするように構成された超音波トランスデューサと、
コンピュータプロセッサであって、
前記超音波トランスデューサの近くで血液の炭化の指示を検出し、
前記検出された血液の炭化の指示に応じて前記超音波トランスデューサからの超音波エネルギの印加を阻止するように構成された、コンピュータプロセッサと、
を備える経管アブレーションカテーテルを備える装置。
【請求項53】
前記超音波トランスデューサは更に、パルスエコー超音波エネルギの1つ以上のパルスを前記組織の方へ伝送し、前記伝送されたパルスエコー超音波エネルギの反射を受信するように構成され、
前記コンピュータプロセッサは、前記反射されたパルスエコー超音波エネルギのパラメータを決定することによって、前記超音波トランスデューサの近くで前記血液の炭化の指示を検出するように構成されている、請求項52に記載の装置。
【請求項54】
前記超音波トランスデューサは、3~50Wのパワーレベルで前記超音波エネルギを伝送して前記組織をアブレーションするように構成され、前記超音波トランスデューサは、2W未満のパワーレベルで前記パルスエコー超音波エネルギを伝送するように構成されている、請求項53に記載の装置。
【請求項55】
前記超音波トランスデューサは第1の超音波トランスデューサであり、
前記経管アブレーションカテーテルは、パルスエコー超音波エネルギを前記組織に伝送し、前記伝送されたパルスエコー超音波エネルギの反射を受信するように構成された第2の超音波トランスデューサを備え、
前記コンピュータプロセッサは、前記反射されたパルスエコー超音波エネルギのパラメータを決定することによって、前記超音波トランスデューサの近くで前記血液の炭化の指示を検出するように構成されている、請求項52から54のいずれか1項に記載の装置。
【請求項56】
前記第1の超音波トランスデューサは、3~50Wのパワーレベルで前記超音波エネルギを伝送して前記組織をアブレーションするように構成され、前記第2の超音波トランスデューサは、2W未満のパワーレベルで前記パルスエコー超音波エネルギを伝送するように構成されている、請求項54に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年2月25日に出願されたMegelの「ULTRASOUND TISSUE TREATMENT APPARATUS AND METHOD」と題する米国仮特許出願第63/153,477の優先権を主張する。これは参照により本願に含まれる。
【0002】
本発明のいくつかの適用例は、一般に、エネルギの印加による組織の治療のためのデバイス及び方法に関し、より具体的には、心房細動等の心不整脈を治療するための、超音波エネルギの印加による心臓組織のアブレーションに関する。
【背景技術】
【0003】
心房細動は、心房に関連する一般的な心不整脈である。心房細動の間、心房は不規則に鼓動し、心室との連携が失われ、これにより効率的な心臓の鼓動が中断する。心房細動の症状は、多くの場合、心臓の動悸、息切れ、及び衰弱を含む。心房細動に伴う大きな懸念は、心房内で血栓を生じる可能性があることである。心臓に形成されたこれらの血栓は他の臓器に循環し、脳卒中のような重篤な病状を招く恐れがある。
【0004】
心房細動は一般に、心臓における異常な電気的活動によって発生する。心房細動の際、心房の肺静脈口のような、通常は放電を発生しない心房の部分によって、放電が発生する可能性がある。
【0005】
一般に、アブレーション処置は、特に心不整脈を発症しやすい人で、心臓の複数の部分からの欠陥のある電気経路を終結させ、心臓を正常なリズムに戻すために用いられる。例えば、アブレーションによる肺静脈隔離術は、心房細動を治療するための一般的な医療処置である。
【発明の概要】
【0006】
本発明のいくつかの適用例によれば、例えば心臓の左心房のような心腔から延出する、例えば肺静脈のような管腔と共に用いられる装置が提供される。典型的に、装置は、心不整脈を治療するため、超音波エネルギを印加して肺静脈口の組織をアブレーションすることで肺静脈を電気的に絶縁する。いくつかの適用例において、装置は、少なくとも1つの超音波トランスデューサを備える経管アブレーションカテーテルを備える。少なくとも1つの超音波トランスデューサは、カテーテルの遠位部に結合されており、対象の心腔内へ挿入され、超音波エネルギを加えることによって肺静脈口の組織をアブレーションするように構成されている。経管アブレーションカテーテルは更に、超音波トランスデューサの周囲に配置された乳頭形状の拡張可能ケージを備える。乳頭形状は典型的に、拡張可能ケージの中央部の直径が拡張可能ケージの遠位部の直径よりも大きいことによって形成され、拡張可能ケージの遠位部は、肺静脈口に挿入されて静脈壁に接触することによって肺静脈内にカテーテルの遠位部を一時的に固定するような形状及びサイズを有する。
【0007】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージは複数のストラット(例えば可撓性ストラット)を備え、これらは、肺静脈壁に接触することによって肺静脈内に経管アブレーションカテーテルの遠位部を固定する。場合によっては、本明細書ではストラットを「可撓性ワイヤ」と呼ぶ。これら2つの用語は、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して交換可能に用いられる。典型的に、ストラットは、ストラット間に複数の比較的大きい間隙が存在して、拡張可能ケージを通る血流及び超音波エネルギの伝送を可能とするような拡張可能ケージを形成するよう構築されている。更に、いくつかの適用例では、拡張可能ケージのストラットの少なくとも一部は、ストラットに形成された1つ以上の開口を規定するような形状を有し、超音波エネルギの組織への伝送をいっそう容易にする。いくつかの適用例では、開口はストラットの長さに沿って形成される。ストラットに形成された開口は、典型的に、拡張可能ケージを通って超音波エネルギが伝送される面積を拡大することで、より多くの超音波エネルギを標的組織に到達させるので、結果として組織の加熱が増大し、より効果的な組織のアブレーションが行われる。
【0008】
いくつかの適用例では、拡張可能ケージに加えて、装置は、超音波トランスデューサの周囲に配置された、例えばバルーンのような流体充填膨張可能要素を備える。典型的に、膨張可能要素は、水及び/又は生理食塩水のような流体で膨張させる。この流体を介して超音波エネルギが伝送されるが、超音波エネルギの吸収は無視できる程度である。このような適用例において、拡張可能ケージは、膨張可能要素の周囲に配置されて、上述のように管腔内に経管アブレーションカテーテルの遠位部を位置決めする。
【0009】
典型的に、超音波トランスデューサの周囲に流体充填(例えば水充填)膨張可能要素を配置すると、超音波トランスデューサとアブレーションに指定された組織との間の血液媒質が部分的に置き換えられる。超音波エネルギは水を通って伝送されるが、概ね水によって吸収されないので、伝送される超音波エネルギが血液のみを通って伝送される場合に比べ、伝送される超音波エネルギのより多くの量が組織に到達する。
【0010】
アブレーション超音波エネルギを印加することに加えて又はその代わりに、超音波トランスデューサは、非アブレーション超音波エネルギを印加することによって対象の組織を撮像するように構成されている。典型的には、組織の3次元画像を生成するように、拡張可能ケージは、拡張可能ケージ内で超音波トランスデューサが回転すること及び軸方向に前後に平行移動することを可能とする形状及び大きさを有する。典型的に、超音波トランスデューサの回転を引き起こす経管アブレーションカテーテルの回転中、拡張可能ケージは静止状態に保たれる。いくつかの適用例において、装置は、経管アブレーションカテーテルの回転中に拡張可能ケージに加えられる回転力を低減させるための回転力低減機構を備える。
【0011】
追加的に又は代替的に、本発明のいくつかの適用例によれば、超音波トランスデューサは、トランスデューサの長手方向軸から外側に向かう凸面を規定するような形状を有する湾曲圧電超音波トランスデューサを備える。典型的に、湾曲圧電超音波トランスデューサを提供すると、(他の条件が等しいならば、圧電超音波トランスデューサが湾曲していない場合に比べて)組織の熱プロファイルが拡大することで、組織のより大きな部分がいっそう効果的に加熱されるので、組織の効果的かつ迅速なアブレーションが促進される。
【0012】
従って、本発明のいくつかの適用例によれば、対象の組織と共に使用される装置が提供される。この装置は、
経管アブレーションカテーテルであって、
対象の心腔内へ挿入され、(a)対象の組織に超音波エネルギを印加することによって組織をアブレーションし、(b)対象の組織に非アブレーション超音波エネルギを印加することによって組織を撮像するように構成された、少なくとも1つの超音波トランスデューサと、
少なくとも1つの超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成された拡張可能ケージと、
を含む経管アブレーションカテーテルを含み、少なくとも1つの超音波トランスデューサは、組織の3次元画像を生成するように、拡張可能ケージ内で回転すると共に軸方向に前後に平行移動するように構成されている。
【0013】
いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは、肺静脈口の近くで左心房内へ挿入されるように構成され、肺静脈口の組織をアブレーションすることによって肺静脈を電気的に絶縁するように構成されている。
【0014】
いくつかの適用例において、組織は、対象の心腔から延出する管腔の口の組織を含み、超音波トランスデューサは、管腔口の組織に非アブレーション超音波エネルギを印加することによって管腔口の組織の3次元画像を生成するように構成されている。
【0015】
いくつかの適用例において、組織は、対象の心腔から延出する管腔の口の組織を含み、拡張可能ケージは複数のストラットを含み、ストラットの少なくとも一部は、ストラットに沿った少なくとも2つの位置で外側に湾曲して、ストラットの一部が管腔の壁に接触することにより、ケージが経管アブレーションカテーテルの遠位部を管腔内に一時的に固定するように構成されている。
【0016】
いくつかの適用例において、組織は、対象の心腔から延出する管腔の口の組織を含み、拡張可能ケージは中央部及び遠位部を有し、拡張可能ケージは、中央部の直径が遠位部の直径よりも大きいことによって乳頭状構造を規定するような形状を有し、遠位部は、管腔口内へ挿入されて管腔の壁に接触することによって管腔内に遠位部を一時的に固定するような形状及びサイズを有する。
【0017】
いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは8~20MHzの周波数で超音波エネルギを生成するように構成されている。
【0018】
いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは、トランスデューサの長手方向軸から外側に向かう凸面を規定するような形状を有し、0.5~3mmの幅及び0.75~5mmの曲率半径を有する。
【0019】
いくつかの適用例において、組織は、対象の心腔から延出する管腔の口の組織を含み、複数のストラットのうち少なくとも一部は導電性ストラットを含み、これらの導電性ストラットは、管腔口の組織に接触し、管腔口の組織内に電流を駆動することによって導電性ストラットに接触している管腔口の組織をアブレーションするように構成されている。
【0020】
いくつかの適用例において、導電性ストラットのうち少なくとも一部は絶縁部分及び導電性部分を含み、導電性部分は、管腔口の組織に接触し、管腔口の組織をアブレーションするように構成されている。
【0021】
いくつかの適用例において、複数のストラットのうち少なくとも一部はストラットに形成された開口を規定するような形状を有し、開口を通して超音波トランスデューサから組織へ超音波エネルギが伝送される。
【0022】
いくつかの適用例において、複数のストラットのうち一部におけるストラットの各々は0.5~1mmの幅を有し、ストラットの開口は0.25~0.5mmの幅を有する。いくつかの適用例において、ストラットの太さは0.1~0.25mmである。
【0023】
いくつかの適用例において、経管アブレーションカテーテルは、ハンドルを含む近位部と、少なくとも1つの超音波トランスデューサが結合されている遠位部と、を含む細長いシャフトを含む。いくつかの適用例において、細長いシャフトは、超音波トランスデューサを回転させるように回転可能に構成され、経管アブレーションカテーテルは、細長いシャフトの遠位部に結合されて細長いシャフトの遠位部の回転位置を検出するように構成された1つ以上のセンサを含む。
【0024】
いくつかの適用例において、
細長いシャフトは、超音波トランスデューサを回転させるように回転可能に構成され、
経管アブレーションカテーテルは、超音波トランスデューサの回転中に拡張可能ケージを静止状態に保つように、細長いシャフトの回転時に細長いシャフトによって拡張可能ケージに加えられる回転力を低減させるように構成された回転力低減機構を更に含む。
【0025】
いくつかの適用例において、
少なくとも1つの超音波トランスデューサは、組織に非アブレーション超音波エネルギを印加するように構成され、非アブレーション超音波エネルギの少なくとも一部は反射されて超音波トランスデューサで受信されるようになっており、
装置は、反射されたエネルギのパラメータを査定して、組織をアブレーションするため超音波トランスデューサによって印加される超音波エネルギのパラメータを決定するように構成されたコンピュータプロセッサを更に含み、
少なくとも1つの超音波トランスデューサは、決定されたパラメータに基づいて超音波エネルギを組織に印加するように構成されている。
【0026】
いくつかの適用例において、装置は、超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成された膨張可能要素を更に含む。いくつかの適用例において、膨張可能要素は、水及び生理食塩水のうち少なくとも1つで膨張させるように構成されている。
【0027】
いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは、
アブレーション超音波エネルギを対象の組織の方へ伝送することによって組織をアブレーションするように構成された第1の超音波トランスデューサと、
パルスエコー超音波エネルギの1つ以上のパルスを対象の組織の方へ伝送し、伝送されたパルスエコー超音波エネルギの反射を受信することによって、組織を撮像するように構成された第2の超音波トランスデューサと、を含み、第2の超音波トランスデューサは、組織の3次元画像を生成するように、拡張可能ケージ内で回転すると共に軸方向に前後に平行移動するように構成されている。
【0028】
いくつかの適用例において、経管アブレーションカテーテルは、
第1の超音波トランスデューサを支持し、アブレーション超音波エネルギの組織の方への伝送を可能とするように構成された第1のサポートと、
第1の超音波トランスデューサがアブレーション超音波エネルギを組織の方へ伝送している間に、第2の超音波トランスデューサが伝送されたパルスエコー超音波エネルギの反射を受信することができるように、第2の超音波トランスデューサを支持し、第1のサポートによって与えられる減衰よりも高い減衰レベルを与えるように構成された第2の減衰サポートと、
を含む。
【0029】
いくつかの適用例において、
第1のサポートは、アブレーション超音波エネルギの組織の方への伝送中に第1の超音波トランスデューサの振動を可能とするように構成された空気バリアを含み、
第2の減衰サポートは、バッキング層及び減衰要素のうち少なくとも1つを含む機械的サポートを含む。
【0030】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、対象の心腔から延出する対象の管腔と共に用いられる装置が提供される。この装置は、
遠位部が対象の管腔内に位置決めされるように構成されている経管アブレーションカテーテルであって、
対象の心腔内へ挿入され、管腔口の組織に超音波エネルギを印加することによって管腔口の組織をアブレーションするように構成された少なくとも1つの超音波トランスデューサと、
ストラットを含み、超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成された拡張可能ケージであって、中央部及び遠位部を有し、半径方向に拘束されない構成で配置された場合、中央部の直径が遠位部の直径よりも大きい乳頭状構造を規定するような形状を有し、遠位部は、管腔口内へ挿入されて管腔の壁に接触することによって管腔内に遠位部を一時的に固定するような形状及びサイズを有する、拡張可能ケージと、
を含む経管アブレーションカテーテルを含む。
【0031】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージは、ストラットが拡張可能ケージの遠位部で凸曲率を規定し、その後、変曲点を通り、中央部内で凹曲率を有することによって、乳頭状構造を規定するような形状を有する。
【0032】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージの中央部は、拡張可能ケージの遠位部の最大直径に比べて最大で5倍の最大直径を有する。
【0033】
いくつかの適用例において、遠位部が管腔口内へ挿入された場合、中央部は心腔内に留まるように構成されている。
【0034】
いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは、肺静脈口の近くで左心房内に位置決めされるように構成され、肺静脈口の組織をアブレーションすることによって肺静脈を電気的に絶縁するように構成されている。
【0035】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージは回転非対称である。いくつかの適用例において、拡張可能ケージは回転対称である。
【0036】
いくつかの適用例において、超音波トランスデューサは横向きの超音波トランスデューサを含む。いくつかの適用例において、超音波トランスデューサは遠位方向を向いた超音波トランスデューサを含む。
【0037】
いくつかの適用例において、超音波トランスデューサは更に、非アブレーション超音波エネルギを組織に印加することによって対象の組織を撮像するように構成され、超音波トランスデューサは、組織の3次元画像を生成するように、拡張可能ケージ内で回転すると共に軸方向に前後に平行移動するように構成されている。
【0038】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージのストラットのうち少なくとも一部はストラットに形成された開口を規定するような形状を有し、開口を通して超音波トランスデューサから組織へ超音波エネルギが伝送される。
【0039】
いくつかの適用例において、複数のストラットのうち一部におけるストラットの各々は0.5~1mmの幅を有し、ストラットの開口は0.25~0.5mmの幅を有する。いくつかの適用例において、ストラットの太さは0.1~0.25mmである。
【0040】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、対象の心腔から延出する対象の管腔と共に用いられる装置が提供される。この装置は、
経管アブレーションカテーテルであって、
対象の心腔内へ挿入され、管腔口の組織に超音波エネルギを印加することによって管腔口の組織をアブレーションするように構成された少なくとも1つの超音波トランスデューサと、
超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成され、複数のストラットを含む拡張可能ケージであって、ストラットのうち少なくとも一部はストラットに形成された開口を規定するような形状を有し、開口を通して超音波トランスデューサから組織へ超音波エネルギが伝送される、拡張可能ケージと、
を含む経管アブレーションカテーテルを含む。
【0041】
いくつかの適用例において、ストラットの一部のストラットの各々は0.5~1mmの幅を有し、ストラットの一部のストラットの各々における開口は0.25~0.5mmの幅を有する。いくつかの適用例において、複数のストラットの少なくとも一部は0.1~0.25mmの太さを有する。
【0042】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、対象の心腔から延出する対象の管腔と共に用いられる装置が提供される。この装置は、
経管アブレーションカテーテルであって、
対象の心腔内へ挿入され、対象の組織を撮像するように構成された少なくとも1つの超音波トランスデューサと、
超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成され、複数のストラットを含む拡張可能ケージであって、ストラットのうち少なくとも一部は導電性ストラットを含み、これらの導電性ストラットは、管腔口の組織に接触し、組織内に電流を駆動することによって導電性ストラットに接触している組織をアブレーションするように構成されている、拡張可能ケージと、
を含む経管アブレーションカテーテルを含む。
【0043】
いくつかの適用例において、導電性ストラットのうち少なくとも一部は絶縁部分及び導電性部分を含み、導電性部分は、管腔口の組織に接触し、管腔口の組織をアブレーションするように構成されている。
【0044】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージは高周波(RF)電流を組織内に駆動するように構成されている。いくつかの適用例において、拡張可能ケージは交流(AC)を組織内に駆動するように構成されている。いくつかの適用例において、拡張可能ケージは直流(DC)を組織内に駆動するように構成されている。
【0045】
いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは、管腔口の組織の3次元画像を生成するように、拡張可能ケージ内で回転すると共に軸方向に前後に平行移動するように構成されている。
【0046】
いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは、超音波エネルギを管腔口の組織に印加することによって管腔口の組織をアブレーションするように構成されている。
【0047】
いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは、肺静脈口の近くで左心房内へ挿入されるように構成され、肺静脈口の組織をアブレーションすることによって肺静脈を電気的に絶縁するように構成されている。
【0048】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、対象の心腔と共に用いられる装置が提供される。この装置は、
経管アブレーションカテーテルであって、
対象の心腔内へ挿入され、対象の組織に超音波エネルギを印加することによって組織をアブレーションするように構成された少なくとも1つの超音波トランスデューサと、
超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成された膨張可能要素と、
膨張可能要素の周囲に配置され、対象の組織に接触することにより対象の心腔内に経管アブレーションカテーテルを一時的に固定するように構成された拡張可能ケージと、
を含む経管アブレーションカテーテルを含む。
【0049】
いくつかの適用例において、膨張可能要素は水で膨張させるように構成されている。いくつかの適用例において、膨張可能要素は生理食塩水で膨張させるように構成されている。
【0050】
いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは8~20MHzの周波数で超音波エネルギを生成するように構成されている。いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは10~12MHzの周波数で超音波エネルギを生成するように構成されている。いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは11MHzの周波数で超音波エネルギを生成するように構成されている。
【0051】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、
経管アブレーションカテーテルであって、
超音波エネルギを対象の組織の方へ伝送することによって組織をアブレーションするように構成された超音波トランスデューサと、
コンピュータプロセッサであって、
超音波トランスデューサの近くで血液の炭化の指示を検出し、
検出された血液の炭化の指示に応じて超音波トランスデューサからの超音波エネルギの印加を阻止するように構成された、コンピュータプロセッサと、
を含む経管アブレーションカテーテルを含む。
【0052】
いくつかの適用例において、
超音波トランスデューサは更に、パルスエコー超音波エネルギの1つ以上のパルスを組織の方へ伝送し、伝送されたパルスエコー超音波エネルギの反射を受信するように構成され、
コンピュータプロセッサは、反射されたパルスエコー超音波エネルギのパラメータを決定することによって、超音波トランスデューサの近くで血液の炭化の指示を検出するように構成されている。
【0053】
いくつかの適用例において、超音波トランスデューサは、3~50Wのパワーレベルで超音波エネルギを伝送して組織をアブレーションするように構成され、超音波トランスデューサは、2W未満のパワーレベルでパルスエコー超音波エネルギを伝送するように構成されている。
【0054】
いくつかの適用例において、
超音波トランスデューサは第1の超音波トランスデューサであり、
経管アブレーションカテーテルは、パルスエコー超音波エネルギを組織に伝送し、伝送されたパルスエコー超音波エネルギの反射を受信するように構成された第2の超音波トランスデューサを含み、
コンピュータプロセッサは、反射されたパルスエコー超音波エネルギのパラメータを決定することによって、超音波トランスデューサの近くで血液の炭化の指示を検出するように構成されている。
【0055】
いくつかの適用例において、第1の超音波トランスデューサは、3~50Wのパワーレベルで超音波エネルギを伝送して組織をアブレーションするように構成され、第2の超音波トランスデューサは、2W未満のパワーレベルでパルスエコー超音波エネルギを伝送するように構成されている。
【0056】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、対象の心腔から延出する対象の管腔と共に用いられる装置が提供される。この装置は、
遠位部が対象の管腔内に位置決めされるように構成されている経管アブレーションカテーテルであって、
対象の心腔内へ挿入され、管腔口の組織に超音波エネルギを印加することによって管腔口の組織をアブレーションするように構成された少なくとも1つの超音波トランスデューサと、
超音波トランスデューサの周囲に配置されるように構成され、複数のストラットを含む拡張可能ケージであって、ストラットのうち少なくとも一部は、ストラットに沿った少なくとも2つの位置で外側に湾曲して、ストラットの一部が管腔の壁に接触することにより、ケージが経管アブレーションカテーテルの遠位部を管腔内に一時的に固定するように構成されている、拡張可能ケージと、
を含む経管アブレーションカテーテルを含む。
【0057】
いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは、肺静脈口の近くで左心房内へ挿入されるように構成され、肺静脈口の組織をアブレーションすることによって肺静脈を電気的に絶縁するように構成されている。
【0058】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージは回転非対称である。いくつかの適用例において、拡張可能ケージは回転対称である。
【0059】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージは、湾曲位置で、管腔の壁に接触した場合に圧力を加えて組織を押すことにより、トランスデューサと組織との間の距離を調整するように構成されている。
【0060】
いくつかの適用例において、少なくとも2つの位置で外側に湾曲しているストラットの各々は、第1の湾曲部の曲率半径が10~20mmであり、第2の湾曲部の曲率半径が5~10mmであるような形状を有する。
【0061】
いくつかの適用例において、複数のストラットのうち少なくとも一部は導電性ストラットを含み、これらの導電性ストラットは、管腔の口の組織に接触し、管腔口の組織内に電流を駆動することによって導電性ストラットに接触している管腔口の組織をアブレーションするように構成されている。
【0062】
いくつかの適用例において、導電性ストラットのうち少なくとも一部は絶縁部分及び導電性部分を含み、導電性部分は、管腔口の組織に接触し、管腔口の組織をアブレーションするように構成されている。
【0063】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージは高周波(RF)電流を組織内に駆動するように構成されている。いくつかの適用例において、拡張可能ケージは交流(AC)を組織内に駆動するように構成されている。いくつかの適用例において、拡張可能ケージは直流(DC)を組織内に駆動するように構成されている。
【0064】
いくつかの適用例において、複数のストラットのうち少なくとも一部はストラットに形成された開口を規定するような形状を有し、開口を通して超音波トランスデューサから組織へ超音波エネルギが伝送される。
【0065】
いくつかの適用例において、複数のストラットのうち一部におけるストラットの各々は0.5~1mmの幅を有し、ストラットの開口は0.25~0.5mmの幅を有する。いくつかの適用例において、ストラットの太さは0.1~0.25mmである。
【0066】
いくつかの適用例において、経管アブレーションカテーテルは、ハンドルを含む近位部と、少なくとも1つの超音波トランスデューサが結合されている遠位部と、を含む細長いシャフトを含む。いくつかの適用例において、装置は更に、細長いシャフトの遠位部に結合されて細長いシャフトの遠位部の回転位置を検出するように構成された1つ以上のセンサを含む。
【0067】
いくつかの適用例において、超音波トランスデューサは横向きの超音波トランスデューサを含む。いくつかの適用例において、超音波トランスデューサは遠位方向を向いた超音波トランスデューサを含む。
【0068】
いくつかの適用例において、経管アブレーションカテーテルの遠位先端部は、管腔の壁の組織をアブレーションするように構成された電極を含む。
【0069】
いくつかの適用例において、超音波トランスデューサは更に、非アブレーション超音波エネルギを対象の組織に印加することによって組織を撮像するように構成され、超音波トランスデューサは、組織の3次元画像を生成するように、拡張可能ケージ内で回転すると共に軸方向に前後に平行移動するように構成されている。
【0070】
いくつかの適用例において、組織は管腔口の組織を含み、超音波トランスデューサは、管腔口の組織に非アブレーション超音波エネルギを印加することによって管腔口の組織を撮像するように構成されている。
【0071】
いくつかの適用例において、装置は更に、拡張可能ケージ上に配置された1つ以上の音響基準マーカを含む。
【0072】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、
経管アブレーションカテーテルを含み、この経管アブレーションカテーテルは、
対象の心腔内へ挿入されるように構成された圧電超音波トランスデューサを含み、圧電超音波トランスデューサは、トランスデューサの長手方向軸から外側に向かう凸面を規定するような形状を有し、0.5~3mmの幅及び0.75~5mmの曲率半径を有する。
【0073】
いくつかの適用例において、少なくとも1つの超音波トランスデューサは、肺静脈口の近くで左心房内に位置決めされるように構成され、肺静脈口の組織をアブレーションすることによって肺静脈を電気的に絶縁するように構成されている。
【0074】
いくつかの適用例において、超音波トランスデューサは1~2mmの幅を有する。いくつかの適用例において、超音波トランスデューサは0.1~0.3mmの厚さを有する。いくつかの適用例において、超音波トランスデューサは2~20mmの長さを有する。
【0075】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、対象の心腔から延出する対象の管腔と共に用いられる装置が提供される。この装置は、
経管アブレーションカテーテルであって、
超音波エネルギを対象の組織に伝送することによって組織をアブレーションするように構成された超音波トランスデューサと、
経管アブレーションカテーテルと動作可能な通信状態にあり、管腔内の血流の変化を検出するように構成されたセンサと、
コンピュータプロセッサであって、
検出された血流の変化に基づいて、アブレーションに最適な組織標的部位を決定し、
最適な組織標的に超音波エネルギを伝送するように超音波トランスデューサを駆動するように構成されたコンピュータプロセッサと、
を含む経管アブレーションカテーテルを含む。
【0076】
いくつかの適用例において、センサはドップラー超音波検査デバイスを含む。いくつかの適用例において、センサは、管腔内の血流の変化を示す音指示を検出するように構成されている。
【0077】
いくつかの適用例において、経管アブレーションカテーテルは更に、検出された血流の変化に応じて、伝送される超音波エネルギが最適な組織標的部位に印加されるように超音波トランスデューサの位置を調整するように構成されたアクチュエータを含む。
【0078】
いくつかの適用例において、
最適な組織標的は管腔口を含み、
センサは、管腔と心腔との間の血流の変化を検出するように構成され、
コンピュータプロセッサは、管腔と心腔との間の検出された血流の変化に基づいて、超音波エネルギを管腔口に伝送するように超音波トランスデューサを駆動するように構成されている。
【0079】
いくつかの適用例において、
最適な組織標的は肺静脈口を含み、
超音波トランスデューサは、対象の心房内に位置決めされるように構成され、
センサは、肺静脈と心房との間の血流の変化を検出するように構成され、
コンピュータプロセッサは、肺静脈と心房との間の検出された血流の変化に基づいて、超音波エネルギを肺静脈口に伝送するように超音波トランスデューサを駆動するように構成されている。
【0080】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、方法が提供される。この方法は、
少なくとも1つの超音波トランスデューサを含む経管アブレーションカテーテルを、対象の心房内へ前進させることと、
センサを用いて、少なくとも1つの超音波トランスデューサの近くで血流の変化を検出して、心房に対する肺静脈の位置を決定することと、
位置の決定に応じて、超音波トランスデューサを活性化して肺静脈口の組織をアブレーションすることと、
を含む。
【0081】
いくつかの適用例において、センサを用いることはドップラー超音波検査を用いることを含む。いくつかの適用例において、センサを用いることは、センサを用いて血流の変化を示す音指示を検出することを含む。いくつかの適用例において、方法は更に、位置の決定に応じて超音波トランスデューサの位置を調整することを含む。
【0082】
いくつかの適用例において、方法は更に、
超音波トランスデューサを用いて心房の3次元画像データを生成することと、
画像データを、センサによって検出された血流の変化と組み合わせて用いて、心房に対する肺静脈の位置を決定することと、
を含む。
【0083】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、方法が提供される。この方法は、
少なくとも1つの超音波トランスデューサを対象の心腔内へ前進させて、対象の心筋組織をアブレーションすることと、
非アブレーション超音波エネルギを心筋組織に印加して、非アブレーション超音波エネルギの少なくとも一部が反射されて超音波トランスデューサで受信されるようにすることと、
反射されたエネルギのパラメータを査定して、心筋組織をアブレーションするため超音波トランスデューサによって印加される超音波エネルギのパラメータを決定することと、
決定されたパラメータに基づいて超音波エネルギを心筋組織に印加することと、
を含む。
【0084】
いくつかの適用例において、反射されたエネルギのパラメータを査定することは、反射されたエネルギのエネルギレベルを決定することを含む。いくつかの適用例において、反射されたエネルギのパラメータを査定して、心筋組織をアブレーションするため超音波トランスデューサによって印加される超音波エネルギのパラメータを決定することは、反射されたエネルギのパラメータを査定して、心筋組織をアブレーションするため超音波トランスデューサによって印加される超音波エネルギのパワーレベルを決定することを含む。いくつかの適用例において、反射されたエネルギのパラメータを査定することは、反射されたエネルギのパラメータを査定して超音波トランスデューサが所望の位置にあるか否かを決定することと、これに応じて超音波トランスデューサの位置を調整することと、を含む。
【0085】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、対象の心腔から延出する対象の管腔と共に用いられる装置が提供される。この装置は、
経管アブレーションカテーテルを含み、この経管アブレーションカテーテルは、
近位部及び遠位部を有する細長いシャフトと、
シャフトの遠位部に結合されており、対象の心腔内へ挿入され、管腔口の組織に超音波エネルギを印加することによって組織をアブレーションするように構成された少なくとも1つの超音波トランスデューサと、含み、
細長いシャフトは、超音波トランスデューサを回転させるように回転可能に構成され、
経管アブレーションカテーテルは更に、シャフトの遠位部に配置された拡張可能ケージであって、超音波トランスデューサが対象の心腔内に位置決めされた場合にケージの拡張状態で超音波トランスデューサを取り囲むように構成された拡張可能ケージと、
超音波トランスデューサの回転中に拡張可能ケージを静止状態に保つように、細長いシャフトの回転時に細長いシャフトによって拡張可能ケージに加えられる回転力を低減させるように構成された回転力低減機構と、
を含む。
【0086】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、
経管アブレーションカテーテルであって、
アブレーション超音波エネルギを対象の組織の方へ伝送することによって組織をアブレーションするように構成された第1の超音波トランスデューサと、
パルスエコー超音波エネルギの1つ以上のパルスを組織の方へ伝送し、伝送されたパルスエコー超音波エネルギの反射を受信するように構成された第2の超音波トランスデューサと、
第1の超音波トランスデューサを支持するように構成され、アブレーション超音波エネルギの組織の方への伝送を可能とするように構成された第1のサポートと、
第1の超音波トランスデューサがアブレーション超音波エネルギを組織の方へ伝送している間に、第2のトランスデューサが伝送されたパルスエコー超音波エネルギの反射を受信することができるように、第2の超音波トランスデューサを支持し、第1のサポートによって与えられる減衰よりも高い減衰レベルを与えるように構成された第2のサポートと、
を含む経管アブレーションカテーテルを含む。
【0087】
いくつかの適用例において、
第1のサポートは、アブレーション超音波エネルギの組織の方への伝送中に第1の超音波トランスデューサの振動を可能とするように構成された空気バリアを含み、
第2のサポートは、バッキング層及び減衰要素のうち少なくとも1つを含む機械的サポートを含む。
【0088】
本発明は、以下の実施形態の詳細な説明を図面と共に読むことによって、より充分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1A】本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内の組織に超音波エネルギを印加するための装置の概略図である。
【
図1B】本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内の組織に超音波エネルギを印加するための装置の概略図である。
【
図1C】本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内の組織に超音波エネルギを印加するための装置の概略図である。
【
図1D】本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内の組織に超音波エネルギを印加するための装置の拡張可能ケージの概略図である。
【
図1E】本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内に位置決めされた組織に超音波エネルギを印加するための装置の概略図である。
【
図2A】本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内の組織に超音波エネルギを印加するための装置の概略図である。
【
図2B】本発明のいくつかの適用例に従った、超音波エネルギが伝送される際に通過する様々な媒質による超音波エネルギの吸収に対する、アブレーション部位からの超音波トランスデューサの距離の効果を示すグラフである。
【
図3A】本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内の組織に超音波エネルギを印加するための装置の概略図である。
【
図3B】本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内の組織に超音波エネルギを印加するための装置のコンポーネントの図である。
【
図3C】本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内の組織に超音波エネルギを印加するための装置のコンポーネントの図である。
【
図4A】本発明のいくつかの適用例に従った、超音波トランスデューサの回転中に拡張可能ケージに加えられる回転力を低減させるための回転力低減機構の概略図である。
【
図4B】本発明のいくつかの適用例に従った、超音波トランスデューサの回転中に拡張可能ケージに加えられる回転力を低減させるための回転力低減機構の概略図である。
【
図4C】本発明のいくつかの適用例に従った、超音波トランスデューサの回転中に拡張可能ケージに加えられる回転力を低減させるための回転力低減機構の概略図である。
【
図4D】本発明のいくつかの適用例に従った、超音波トランスデューサの回転中に拡張可能ケージに加えられる回転力を低減させるための回転力低減機構の概略図である。
【
図4E】本発明のいくつかの適用例に従った、超音波トランスデューサの回転中に拡張可能ケージに加えられる回転力を低減させるための回転力低減機構の概略図である。
【
図4F】本発明のいくつかの適用例に従った、超音波トランスデューサの回転中に拡張可能ケージに加えられる回転力を低減させるための回転力低減機構の概略図である。
【
図5A】本発明のいくつかの適用例に従った、湾曲圧電超音波トランスデューサの概略図である。
【
図5B】本発明のいくつかの適用例に従った、
図5Aの超音波トランスデューサを用いた超音波エネルギ伝送プロファイルの画像である。
【
図5C】本発明のいくつかの適用例に従った、
図5Aの超音波トランスデューサを用いた超音波エネルギ伝送プロファイルの画像である。
【
図5D】本発明のいくつかの適用例に従った、
図5Aの超音波トランスデューサの放射角度に対するトランスデューサの様々な寸法の効果を示すグラフである。
【
図6】本発明のいくつかの適用例に従って実行される方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0090】
本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内の組織に超音波エネルギを印加するための装置の概略図である
図1A、
図1B、及び
図1Cを参照する。
【0091】
図1Aは、制御コンソール27と、ハンドル25と、対象体内の組織に超音波エネルギを印加するための装置20と、を含む、超音波組織治療のためのシステム220の概要を示す。
図1Bから
図1Cは、異なる形状の拡張可能ケージを有する装置20の実施形態を示す。これらについては以下で更に詳しく記載する。
【0092】
図1Aに示されているシステム220は、典型的に、標的組織に超音波エネルギを印加するように構成された超音波トランスデューサ50(及び/又は以下で記載される超音波トランスデューサ52/150)を備える装置20を含む。装置20は典型的に、コンピュータプロセッサ26とディスプレイ23とを含む制御コンソール27と共に動作可能である。
【0093】
例えば、コンピュータプロセッサ26は、超音波エネルギの印加に関連する様々なパラメータ(印加された及び/又は反射された超音波エネルギのパラメータ等)を検出し、(例えば、最適な超音波エネルギ印加パラメータ等を選択することによって)超音波トランスデューサを駆動して超音波エネルギを伝送するように構成されている。これについては以下で更に詳しく記載する。いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサ26は、超音波トランスデューサを回転するように及び/又は前後に平行移動するように駆動する。これについては以下で更に詳しく記載する。例えばコンピュータプロセッサは、ハンドル25内に(又はシステム220の他の場所に)収容されたアクチュエータ(例えばモータ)によって超音波トランスデューサの動きを制御することができる。いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサ26は、ハンドル25又は他のユーザ入力インタフェース(キーボード29等)を介して受信したユーザ入力に応答して装置20を制御するように構成されている。
【0094】
コンピュータプロセッサ26は、典型的に、専用コンピュータを生成するためコンピュータプログラム命令によってプログラムされたハードウェアデバイスである。例えば、本明細書に記載されている技法を実行するようにプログラムされた場合、コンピュータプロセッサ26は典型的に、専用の超音波エネルギ印加コンピュータプロセッサとして機能する。
【0095】
次に、本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内の標的解剖構造の組織に超音波エネルギを印加するための装置20の概略図である
図1Bを参照する。装置20は典型的に、対象の心腔から延出する対象の管腔と共に用いるように構成されている。いくつかの適用例において、心腔は心房であり、心房から延出する管腔は肺静脈である。
【0096】
典型的に、装置20は、心房細動のような心不整脈を治療するために超音波エネルギを印加する。本発明のいくつかの適用例に従って、超音波エネルギは心筋組織へ向けて印加され、特に、例えば肺静脈口のような、心不整脈の誘発、維持、又は伝搬に関与する心筋組織内の部位へ向けて印加される。このため、上述のように、装置20は、心臓の左心房から延出する肺静脈と共に用いるような形状及びサイズを有する。装置20は、超音波エネルギを印加して肺静脈口の組織のアブレーションを行うように構成され、結果としてアブレーションされた部位の組織を瘢痕化させる。瘢痕は典型的に、肺静脈口で発生した異常な電気パルスが心腔内へ伝搬するのを阻止し、これによって肺静脈を心房から電気的に絶縁し、心不整脈を軽減又は防止する。
【0097】
いくつかの適用例において、装置20は、細長い軸を含む経管アブレーションカテーテル40を備える。細長い軸は、ハンドル25(例えば
図1Aに示されている)を含む近位部と、少なくとも1つの超音波トランスデューサ50が結合された遠位部と、を有する。なお、この文脈で、本明細書及び特許請求の範囲において、「近位」とは、装置のユーザに近い方を意味し、「遠位」とは、ユーザから遠い方を意味し、装置を最初に対象体内へ挿入する開口部から更に対象体内に入った奥の方を意味する。
【0098】
経管アブレーションカテーテル40は、低侵襲的処置で、対象の心腔(例えば心房)内への超音波トランスデューサ50の前進を容易にする。超音波トランスデューサ50は典型的に、心房内へ挿入されて、例えば肺静脈口のような管腔口の組織に超音波エネルギを印加することにより、その組織をアブレーションする。アブレーション超音波エネルギの印加に加えて又はその代わりに、超音波トランスデューサ50は、非アブレーション超音波エネルギを印加することによって対象の組織を撮像するように構成されている。
【0099】
いくつかの適用例において、超音波トランスデューサ50は横向きのトランスデューサを含む。他の適用例において、超音波トランスデューサ50は遠位方向を向いた超音波トランスデューサを含む。いくつかの適用例では、2つ以上の超音波トランスデューサ50が経管アブレーションカテーテル40に結合され、それらのうち少なくとも1つは遠位方向を向いた超音波トランスデューサであり、少なくとも1つは横向きの超音波トランスデューサである。更に、いくつかの適用例では、組織における損傷形成を更に支援するため、経管アブレーションカテーテル40の遠位先端部は、アブレーション治療に指定された組織内に電流を駆動するように構成された電極を含む。
【0100】
いくつかの適用例において、装置20は更に、例えば拡張可能ケージのような固定要素を備え、これは、経管アブレーションカテーテル40の遠位部で超音波トランスデューサ50の周囲に配置されるよう構成された3次元構造を規定する形状を有する。
図1Bは、本発明のいくつかの適用例に従った形状を有する拡張可能ケージ30を示し、
図1A及び
図1Cは、本発明の他の適用例に従った形状を有する拡張可能ケージ301を示す。
【0101】
図1Bで示されているように、拡張可能ケージ30は複数のストラット32を含む(例えば、ニチノール、ステンレス鋼、ニッケルチタン、又はそれらの組み合わせ等、弾性金属から作製することができる可撓性ストラット)。上述のように、場合によっては、本明細書ではストラットを「可撓性ワイヤ」と呼ぶ。これら2つの用語は、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して交換可能に用いられる。拡張可能ケージ30は、対象の心腔から延出する対象の管腔内に、例えば心臓の心房から延出する肺静脈の管腔内に、経管アブレーションカテーテル40の遠位部を位置決めするように構成されている。
【0102】
拡張可能ケージ30は、ストラット32が管腔壁に接触することによって、経管アブレーションカテーテル40の遠位部を管腔内に位置決めし、一時的に固定する。典型的に、拡張可能ケージ30は、例えば肺静脈のような管腔の壁に係合するが、管腔を通る血流を阻害することはない(図示のように、拡張可能ケージ30は、これを通って血液が流れるような形状を有する)。
【0103】
拡張可能ケージ30は典型的に、折り畳まれた状態で、経管アブレーションカテーテル40を介して対象体内の標的解剖構造部位へ送達される。ストラット32は典型的に、例えば肺静脈のような管腔内での展開時に折り畳み構成から拡張構成へ自動的に拡張する形状記憶合金を含む。対象体から経管アブレーションカテーテル40を引き出すことが求められる場合は、ハンドルに機械的な圧縮力又は引張力を加えることで、ストラット32は拡張状態から既定の折り畳み形状へ折り畳まれる。本明細書に記載される拡張可能ケージ及び拡張可能ケージの部分の形状とは、通常、拡張可能ケージが半径方向に拘束されない構成である場合(例えば標的解剖構造部位で展開された場合)に拡張可能ケージが有するように設定された形状を意味する。
【0104】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージ30は回転対称である。他の適用例において、拡張可能ケージ30は回転非対称である。
【0105】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージ30は、トランスデューサ50及び/又はカテーテル40を管腔の中心に位置決めするように構成されている。他の適用例において、拡張可能ケージ30は、トランスデューサ50及び/又はカテーテル40を管腔内で非対称に位置決めするように、すなわち血管腔の中心に位置決めしないように構成されている。例えば拡張可能ケージ30は、トランスデューサ50を、アブレーション及び/又は撮像に指定された管腔壁の一部に照準を合わせるように位置決めすることができる。例えば拡張可能ケージ30は、管腔口がアブレーション及び/又は撮像に指定された場合、超音波トランスデューサ50がその管腔口の方へ超音波エネルギを伝送するように、経管アブレーションカテーテル40を固定するように構成できる。いくつかの適用例において、拡張可能ケージ30は、超音波トランスデューサ50と管腔壁との間の半径方向の分離を維持するように、かつ、撮像又はアブレーションに指定された部位から所望の距離にトランスデューサ50を位置決めするように構成されている。例えば拡張可能ケージ30は、管腔壁に接触した場合に圧力を加えて組織を押すことにより、超音波トランスデューサ50とアブレーション及び/又は撮像に指定された組織との間の距離を調整するように構成されている。いくつかの適用例において、拡張可能ケージ30は、組織の動きに関連するアーチファクトを低減しながら損傷形成を検出するため、撮像中に超音波トランスデューサ50を組織から固定の距離に維持するように構成されている。
【0106】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージ30は、拡張可能ケージ30の遠位部36が拡張可能ケージ30の中央部34よりも細い形状である乳頭状構造を有する。細い遠位部36を有すると、典型的に、例えば肺静脈のような血管腔等、様々な直径の比較的小さいか又は細い解剖構造内への拡張可能ケージ30の挿入が容易になる。例えば、いくつかの適用例では、ケージ30の細い遠位部36のみが静脈内に挿入され、装置20の残り部分は心房内に留まる。いくつかの適用例では、これにより、ケージ30の細い遠位部36は肺静脈に対してケージ30を固定する。
【0107】
典型的に、拡張可能ケージ30の遠位端から開始して、ストラットは最初に、(拡張可能ケージの外側に対して)凸曲率を規定し、次いで変曲点21を通り、凹曲率を有する。細い遠位部は、拡張可能ケージの遠位端から変曲点まで延出する。
【0108】
いくつかの適用例では、拡張可能ケージ30の中央部34における最大直径D1は、拡張可能ケージ30の細い遠位部36の最大直径D2に比べて最大で5倍大きく、これにより、肺静脈内への細い遠位部36の挿入が容易になる。
【0109】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージ30は、ストラット32の少なくとも一部が、単一のストラットに沿った少なくとも2つの位置で、例えば湾曲位置22及び24で、外側に湾曲する(すなわち、拡張可能ケージの外側に対して凸状に湾曲する)ように構築されている。いくつかの適用例において、外側に湾曲したエリアは、管腔壁に接触することにより、管腔内に経管アブレーションカテーテル40を固定する。いくつかの適用例において、少なくとも2つの位置(例えば22及び24)で外側に湾曲しているストラット32は、第1の湾曲位置22の曲率半径が10~20mmであり、第2の湾曲位置24の曲率半径が5~10mmであるような形状を有する。なお、湾曲位置22及び24の曲率半径は、これらの部分が管腔壁に対して付勢された場合に組織が概ね貫通又は損傷しないようなものである。
【0110】
上述のように、いくつかの適用例において、超音波トランスデューサ50は、非アブレーション超音波エネルギを組織に印加することによって組織の画像を生成するように構成されている。いくつかの適用例において、超音波トランスデューサ50は、経管アブレーションカテーテル40の長手方向軸LAを中心として矢印A1で示される方向に回転し、また、長手方向軸LAに沿って長手方向で前後に矢印A2で示される方向に平行移動することにより、(例えば肺静脈口の)3次元画像を生成する。本発明のいくつかの適用例によれば、拡張可能ケージ30の寸法は、拡張可能ケージ30がトランスデューサの周囲に配置されている時に、トランスデューサ50が矢印A1及びA2で示される方向にケージ内で回転すること及び前後に平行移動することを可能とするようなものである。
【0111】
いくつかの適用例において、拡張可能ケージ30は更に、装置20が位置決めされている解剖構造を電気的に刺激するように、及び/又はその解剖構造からの電気信号を検知するように構成されている。いくつかのそのような適用例において、拡張可能ケージ30は、アブレーション処置及び損傷形成を監視するため、アブレーションの前、アブレーションの最中、又はアブレーションの後に電気的活動を記録するように構成された1つ以上の電極60(
図3Aに示されている)を含む。いくつかの適用例では、1つ以上の電極60による監視に基づいて、アブレーション治療パラメータ(例えば、エネルギ印加の持続時間及び/又は組織に印加されるエネルギのレベル)を調節する。
【0112】
追加的に又は代替的に、拡張可能ケージ30を形成する複数のストラット32の少なくとも一部は、例えば金属製可撓性ワイヤのような導電性ストラットを含み、これは、管腔壁(例えば管腔口)の組織に接触し、この組織内に電流を駆動することによって導電性ストラット/ワイヤに接触している組織をアブレーションするように構成されている。典型的に、そのような適用例では、超音波トランスデューサ50は、主に組織を撮像するために用いられる。
【0113】
いくつかのそのような適用例では、導電性ストラットの少なくとも一部は、導電性の部分と電気的に絶縁された部分を含む。典型的に、ストラットの絶縁部分ではストラットは絶縁材料でコーティングされ、導電性部分ではストラットは露出している。典型的に、組織に接触するストラット32の位置は導電性であり、組織内に電流を駆動して組織をアブレーションするようになっている(例えば、
図1Bに示されている湾曲位置22及び24であり、典型的に管腔壁に対して付勢される)。
【0114】
本発明のいくつかの適用例によれば、拡張可能ケージ30は、ストラット32の導電性の部分を介して組織内に高周波(RF)電流を駆動する。追加的に又は代替的に、拡張可能ケージ30は、ストラット32の導電性の部分を介して組織内に交流及び/又は直流(DC)を駆動する。
【0115】
次に、本発明のいくつかの適用例に従った、装置20の概略図である
図1Cを参照する。
図1Cで示されているように、いくつかの適用例において、装置20は拡張可能ケージ301を備え、ストラット32は拡張可能ケージ301の球形を規定するような形状を有する。概して、拡張可能ケージ301には、拡張可能ケージ30(
図1Bで示されている)の乳頭形状を与える遠位部36の狭隘化が存在しない。細い遠位部36が拡張可能ケージの遠位端から変曲点21(これは拡張可能ケージ301では存在しない)まで延出することを除いて、拡張可能ケージ301は拡張可能ケージ30と概ね同じである。
【0116】
再び
図1Aを参照すると、
図1Aに示されている拡張可能ケージの形状は、限定でなく例示として図示されていることに留意するべきである。なお、必要な変更を加えて、
図1Bに示されている形状を有する拡張可能ケージ30、楕円形の拡張可能ケージ(図示せず)、又は他の任意の形状を有する拡張可能ケージを含む、拡張可能ケージの他の任意の適切な形状を使用してもよい。更に、
図1Dから
図6を参照して本明細書で記載されている本発明の追加の実施形態は、拡張可能ケージ30又は拡張可能ケージ301のいずれの形状にも適用可能であることに留意するべきである。
【0117】
次に、本発明のいくつかの適用例に従った、拡張可能ケージ30の概略図である
図1Dを参照する。
図1Bで示されているように、拡張可能ケージ30は複数の比較的大きい間隙90を規定する形状を有し、これらの間隙90を通って超音波エネルギが超音波トランスデューサ50からアブレーション及び/又は撮像に指定された組織へ伝送されるように、ストラット32が拡張可能ケージ30を形成するよう構築されている。更に、いくつかの適用例では、超音波エネルギの組織への伝送を更に促進するため、拡張可能ケージ30のストラット32の少なくとも一部は、ストラットに形成された1つ以上の開口94を規定するような形状を有する(開口94は
図1Dに示されている)。ストラット32に形成された開口は典型的に、拡張可能ケージ30を通って超音波エネルギが伝送される面積を拡大することで、より多くの超音波エネルギを標的組織に到達させるので、結果として組織の加熱が増大し、より効果的な組織のアブレーションが行われる。
【0118】
ストラット32の幅は通常、ストラット32間で間隙90の形成を可能とするよう充分に細く、それと同時に、管腔内での経管アブレーションカテーテル40の遠位部の必要な固定及び安定化を与えるよう充分に太い。従って、ストラット32に開口94を設けると、管腔内でカテーテル40を充分に固定しながら、拡張可能ケージ30を介した組織への超音波エネルギの伝達が向上する。典型的に、1つのストラット32の幅W1は0.5~1mmであり、例えば0.7mmである。ストラットの開口の幅W2は、0.25~0.5mmであり、例えば0.35mmである。なお、いくつかの適用例において、開口94はストラット32の全長にわたって延出する。あるいは、いくつかの適用例において、開口94はストラット32の長さの一部に沿って延出する。
【0119】
引き続き
図1Bから
図1Dを参照する。典型的に、本発明のいくつかの適用例によれば、複数のストラット32のそれぞれ又は一部分の太さは、超音波トランスデューサ50によって生成される超音波周波数に対する超音波波長の値未満である。ストラット32の太さが、使用される周波数に対する超音波波長(血液中で伝搬する場合)の値よりも小さい場合、超音波の伝搬に対する干渉(例えばストラットによる妨害)は低減するので、より多くのエネルギが組織に到達する。
【0120】
本発明のいくつかの適用例によれば、組織の効果的な加熱及びアブレーションを達成するため、超音波エネルギは、8~20MHzの周波数、例えば10~12MHz、例えば11MHzで印加される。一般的に、超音波波長は周波数が上昇するにつれて低下するので、超音波トランスデューサ50が例えば8~20MHzの周波数、例えば10~12MHz、例えば11MHzで動作される場合、ケージ30を通る超音波の伝搬を促進するため、ストラット32は概ね0.1~0.25mm(例えば0.14~0.2)の太さを有する。
【0121】
次に、本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内に位置決めされた装置20の概略図である
図1Eを参照する。
【0122】
いくつかの適用例では、装置20を左心房190内へ前進させ、肺静脈口に隣接した位置又は肺静脈口内の位置に配置する。いくつかの適用例では、経中隔アプローチを用いて装置20を左心房190内へ前進させる(
図1Eに例示で示されている)。あるいは、経心尖アプローチを用いて、左心室尖及び僧帽弁を介して装置20を左心房190へ前進させてもよい(アプローチは図示されていない)。更に代替的には、大動脈、左心室、及び僧帽弁を介して装置20を左心房190へ前進させてもよい(アプローチは図示されていない)。
【0123】
典型的に、装置20は、折り畳まれた状態で拡張可能ケージ30によって左心房190内へ前進させる。ストラット32は、心臓の左心房内で折り畳み構成から拡張構成に拡張し、装置20を動作可能状態にする。装置20は、肺静脈160の口及び心房壁170の組織に隣接して配置されて、ケージ30の一部(典型的には中央部34の一部)が壁170に固定されるようになっている。ケージ30の遠位部36は、典型的に、アブレーションに指定された組織(典型的には肺静脈口)に対して超音波トランスデューサ50を最適に配置するため、肺静脈160内へ前進させる。追加的に又は代替的に、拡張可能ケージ30の遠位部36は、肺静脈の壁に圧力を加えることによって超音波エネルギの印加中に装置20を所定位置に固定し維持するため、肺静脈160内へ前進させる。
【0124】
図1Eは肺静脈の外側に配置された超音波トランスデューサ50を示すが、装置20は、超音波トランスデューサをカテーテル40に沿って更に遠位方向に配置することで、ケージ30の遠位部36を肺静脈内へ前進させた場合に超音波トランスデューサが肺静脈内へ前進するように構成してもよいことに留意するべきである。
【0125】
更に、本発明の範囲は、左心房及び肺静脈以外の解剖学的位置で本明細書に記載されている装置及び方法を使用することを含むことに留意するべきである。
【0126】
次に、本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内の組織に超音波エネルギを印加するための装置20の概略図である
図2Aを参照する。また、
図2Bも参照する。
図2Bは、典型的に、比較的高い周波数(例えば8~20MHz、例えば10~12MHz、例えば11MHz、例えば11.2MHz)の超音波エネルギを印加した際、アブレーションに指定された組織部位(例えば肺静脈)から超音波トランスデューサまでの距離(ミリメートル単位)を徐々に大きくした場合の、血液(ライン106で示されている)及び心筋組織(ライン105で示されている)による超音波エネルギの吸収を示すグラフである。
【0127】
図2Aで示されているように、いくつかの適用例において、装置20は、拡張可能ケージ30に加えて、超音波トランスデューサ50の周囲に配置されるように構成された、例えばバルーン等の流体充填膨張可能要素100を備える。典型的に、膨張可能要素100は、水(例えば蒸留水)及び/又は生理食塩水、及び/又は生理食塩水と同様の音響減衰係数を有する任意の液体のような流体で膨張させる。この流体を介して超音波エネルギが伝送されるが、超音波エネルギの吸収は無視できる程度である。このような適用例では、上述したように、拡張可能ケージ30が膨張可能要素100の周囲に配置されて、経管アブレーションカテーテル40の遠位部を管腔内に位置決めする。
【0128】
通常、(
図1Bから
図1Cで示されているように)拡張可能ケージ30は存在するが膨張可能要素100は存在しない場合、超音波トランスデューサ50から放出された超音波エネルギが組織へ伝送される際の主要媒質は血液である。これは、拡張可能ケージ30が、血管腔(例えば肺静脈)を通る血流を可能とする形状を有するためである。トランスデューサ50からの超音波エネルギが血液を介して組織へ伝送される際、エネルギの一部は血液によって吸収されるので、組織に到達する超音波エネルギ量は低減する。これは、6MHz等の低い周波数を用いる場合に比べ、本発明のいくつかの適用例に従って組織の効果的なアブレーションを行うため比較的高い周波数(例えば8~20MHz、例えば10~12MHz、例えば11MHz)の超音波を用いる場合には、特に当てはまる。
【0129】
典型的に、
図2Bで示されているように、超音波トランスデューサ50の圧電要素(PZT)とアブレーション/撮像に指定された組織(肺静脈(PV))との間の距離が大きくなればなるほど、より多くの超音波エネルギが血管内の血液によって吸収される(従って、組織に到達するエネルギが少なくなる)。例えば、アブレーションに指定された組織から約10mmの距離に超音波トランスデューサ50が位置決めされている場合、伝送される超音波エネルギのうち組織に到達するのは一部の量のみ(例えば約50%)である。このような場合、組織は、アブレーションの達成に充分な程度に加熱されない可能性がある。
【0130】
典型的に、
図2Bで示されているように、血液による超音波エネルギの吸収(ライン106)は、超音波が進む距離が長くなるにつれて増大し、これに対応して、心筋組織による超音波エネルギの吸収は低減する(ライン105)。
【0131】
図2Aで示されているように、超音波トランスデューサ50の周囲に流体充填(例えば水充填)膨張可能要素100を配置すると、超音波トランスデューサ50とアブレーションに指定された組織との間の血液媒質が部分的に置き換えられる。上述したように(また、
図2Bで示したように)、超音波エネルギは水を通って伝送されるが、実質的に水で吸収されないので、伝送される超音波エネルギが血液のみを通って伝送される場合に比べ、伝送される超音波エネルギのより多くの量が組織に到達する。
【0132】
例えば、膨張可能要素100は、トランスデューサ50とアブレーションに指定された組織との間の距離のうち最大50%(例えば30~40%)を占めるように水で膨張させ、これによって、膨張可能要素100が存在しなければ管腔内の血液で吸収された可能性のある超音波エネルギ量を低減させる。典型的に、膨張可能要素100を提供すると、伝送される超音波エネルギが血液のみを通って伝送される場合に比べ、超音波トランスデューサ50は、低いパワーレベルかつ短い持続時間の動作が可能となる。
【0133】
有利には、膨張可能要素100は、拡張可能ケージ30に追加して使用される(従って、管腔内でのアブレーションカテーテル40の位置決めには利用されない)ので、膨張可能要素100は、例えば超音波トランスデューサが挿入される解剖学的部位、及び/又は超音波トランスデューサ50の動作パラメータに基づいて、いずれかの所望の膨張度に膨張させればよい。いくつかの適用例において、膨張可能要素100は、6~9mm、例えば8mmの直径まで、水で膨張させる。
【0134】
次に、本発明のいくつかの適用例に従った、対象体内の組織に超音波エネルギを印加するための装置20の概略図である
図3Aを参照する。また、本発明のいくつかの適用例に従った、装置20の追加のコンポーネントの図である
図3B及び
図3Cも参照する。
【0135】
本発明のいくつかの適用例によれば、アブレーションの目的で超音波エネルギを印加することに加えて、超音波トランスデューサ50は、パルスエコー超音波エネルギの1つ以上のパルスを指定された組織部位の方へ伝送し、伝送されたパルスエコー超音波エネルギの反射を受信することにより、音響センシングを実行するように構成されている。一般的に、反射されたパルスエコー超音波エネルギのパラメータは、組織に印加された超音波エネルギ及び組織に対する超音波エネルギの効果を示すことができる。上述したように、いくつかの適用例において、装置20は制御コンソール27及びコンピュータプロセッサ26(例えば
図1Aに示されている)を備え、これらは、反射されたパルスエコー超音波エネルギのパラメータを決定して、印加された超音波エネルギの効果又は指示を検出するように構成されている。
【0136】
いくつかの適用例では、超音波トランスデューサ50に加えて、第2の超音波トランスデューサ52が経管アブレーションカテーテル40に結合されている。いくつかのそのような適用例において、第1の超音波トランスデューサ50は、アブレーション超音波エネルギを管腔の組織の方へ伝送することによって組織をアブレーションするように構成され、第2の超音波トランスデューサ52は、パルスエコー超音波を組織へ伝送し、伝送されたパルスエコー超音波の反射を受信するように構成されている。例えば、第1の超音波トランスデューサ50は、3W超、例えば3W~50W、例えば6~35Wのパワーレベルで、超音波エネルギを伝送して組織をアブレーションするように構成され、第2の超音波トランスデューサ52は、最大で2W(例えば2W未満)のパワーレベルでパルスエコー超音波エネルギを伝送するように構成されている。
【0137】
典型的に、超音波トランスデューサ50は、空気バリア(
図5Aに参照番号80で示されている)を含む第1のサポートの上に吊るされるので、アブレーションエネルギを組織に印加する際、比較的低い減衰で、超音波トランスデューサ50のほぼ自由な振動が可能である。これは通常、アブレーションエネルギの組織への効果的な伝送を可能とする。これに対して、伝送されたパルスエコー超音波エネルギのリターン信号(反射)を検出するパルスエコー超音波トランスデューサ52は、トランスデューサ52として、一般に、反射信号の検出中に自己振動しない。
【0138】
図3Aで示されているように、トランスデューサ50及び52は、アブレーションカテーテル40上で相互に隣接して配置される(また、通常、単一の筐体内で組み立てられる)ので、トランスデューサ50の機械的振動がトランスデューサ52に到達するのを防ぐ必要がある。トランスデューサ52が振動すると、反射信号(特に、トランスデューサのごく近くから(例えば1mmの距離から)反射した信号)の検出における効果が低下する可能性が高いからである。
【0139】
典型的に、超音波トランスデューサ50は、空気バリアの上に吊るされ、アブレーションエネルギを組織に印加する際、比較的低い減衰で、超音波トランスデューサ50のほぼ自由な振動が可能であるのに比べ、パルスエコー超音波トランスデューサ52は、比較的高い減衰で、バッキング層120(
図3B)及び/又は減衰要素140、例えば減衰リング(
図3C)を含む減衰サポートによって支持されている。これにより、双方のトランスデューサが相互に隣接して配置されながら、超音波トランスデューサ52によってセンシングが可能となると共に、超音波トランスデューサ50によってアブレーションエネルギ伝送が可能となる。典型的に、バッキング層120は減衰要素140によって取り囲まれ、減衰要素140は、超音波トランスデューサ50の機械的振動を超音波トランスデューサ52に到達することから分離するように意図された軟質材料及び/又は高密度(低硬度Pebax(登録商標)又はPebax(登録商標)及び/又はタングステン)を含む。なお、
図3Cでは、減衰要素140は、限定ではなく例示として丸い形状を有するものとして示されている。減衰要素140は典型的に、超音波トランスデューサ52の形状に対応する形状を有する(例えば矩形又は方形を有し得る)。
【0140】
上述のように、いくつかの適用例において、反射された超音波エネルギは、組織に印加された超音波エネルギ及び組織に対する超音波エネルギの効果を示すことができ、超音波トランスデューサの動作パラメータを変更するための入力として機能し得る。例えば、検出された反射超音波エネルギに応答して、アブレーションのパワー、デューティサイクル、又は他の任意のパラメータを調節する。いくつかの適用例では、反射超音波エネルギを用いて、アブレーション治療の治療後処置の結果を査定する、及び/又はアブレーション治療中の損傷形成の進行を査定する。
【0141】
いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサ26は、反射パルスエコー超音波エネルギのパラメータを決定することによって、超音波トランスデューサ50及び/又は52の近くで血液の炭化の指示を検出し、検出された血液の炭化の指示に応じて、超音波トランスデューサからの超音波エネルギの印加を阻止するように構成されている。通常、血液の炭化は超音波の伝送を妨害し、トランスデューサと組織との間の距離は既知であるので、反射超音波エネルギのパラメータから血液の炭化の指示及びその位置を導出することができる。
【0142】
本発明のいくつかの適用例に従った装置20を示す
図1Aから
図3Aを再び参照する。上述のように、経管アブレーションカテーテル40は細長いシャフトを有し、これは、細長いシャフトの近位部にあるハンドル25と、細長いシャフトの遠位部にある少なくとも1つの超音波トランスデューサ50と、を含む。
【0143】
典型的に、超音波トランスデューサ50は、アブレーションカテーテル40の長手方向軸LAに対して、
図1Bに矢印A1で示されている方向に回転可能である。超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)の回転は、一般に、装置20の様々な機能及び動作特徴を容易にする。
【0144】
例えば、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)は、回転して組織の画像を生成する。画像は、2次元画像及び/又は3次元画像とすることができる。生成される画像は、
図1Aに示されているディスプレイ23に表示できる。3次元画像を生成するため、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)は、回転し(
図1Aに矢印A1で示されている)、かつ、軸LAに沿って長手方向軸に前後に平行移動する(
図1Aに矢印A2で示されている)。いくつかの適用例において、トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)は、トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)が位置決めされている解剖構造(例えば、心腔及びこの心腔から延出している管腔の口)の連続的な撮像を行う。典型的に、解剖構造の3次元画像を生成すると、アブレーションを実行する組織内の最適な位置及び最適な面を識別することが可能となる。通常、トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)は更に、アブレーションに指定された解剖構造の近くの撮像を行う。例えば、心臓に実行されるアブレーション処置によって生じる可能性がある食道の損傷を軽減するため、撮像を用いて、装置20に対する食道の位置を識別できる。
【0145】
追加的に又は代替的に、超音波トランスデューサ50は回転して、アブレーション/撮像に指定された組織部位にトランスデューサ50の照準を合わせる。更に追加的に又は代替的に、超音波トランスデューサ50は、アブレーション超音波エネルギを連続的に伝送しながら回転することで、血管腔口(例えば肺静脈口)を取り囲む連続的な円形の損傷を生成することができる。
【0146】
典型的に、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)の回転は、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)が結合されているアブレーションカテーテル40の細長い軸の回転によって発生する。アブレーションカテーテル40の細長いシャフトの回転は、細長いシャフトの近位部(例えば
図1Aに示されているハンドル25)におけるアクチュエータ(例えばノブ又はモータ)の回転によって生じる。回転運動は、近位部から、細長いシャフトに沿って、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)が結合されているシャフトの遠位部へ伝達されて、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)を回転させるようになっている。
【0147】
一般に、超音波トランスデューサ50及び/又はトランスデューサ52の回転及び長手方向の位置を決定することが有利である。例えば、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)の回転角を監視すると、通常、滑らかな2次元及び3次元画像の生成が容易になる。回転運動は細長いシャフトの近位部(例えばハンドル)で生成されるので、ハンドルの回転角を測定することで、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)の回転角を査定できる。しかしながら、細長いシャフトの近位部で生じる回転運動の全てが細長いシャフトに沿ってシャフトの遠位部へ伝達されるわけではない場合がある。更に、細長いシャフトの近位部と細長いシャフトの遠位部の回転位置との間には時間差が存在し得る。従って、超音波トランスデューサ50の(及び/又は、例えば超音波トランスデューサ50及び/又はトランスデューサ52の回転角を決定するため、トランスデューサ52の)回転位置を正確に測定することが望ましい場合、回転が開始する細長いシャフトの近位部(例えばハンドル)の回転角を測定することでは充分でない可能性がある。
【0148】
本発明のいくつかの適用例によれば、装置20は、細長いシャフトの近位部の回転位置とは別個に、細長いシャフトの遠位部の回転位置を決定し、これによって超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)の回転位置を決定するように構成された機構を備える。
【0149】
従って、いくつかの適用例において、装置20は、遠位回転検出センサ28(
図4Aで概略的に示されている)を備える。
【0150】
例えば、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)にジャイロスコープが結合されている。ジャイロスコープは、典型的に、細長いシャフトの遠位部の回転角を測定し、これによって超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)の回転角を決定するように構成されている。
【0151】
追加的に又は代替的に、細長いシャフトの遠位部の回転位置は、画像案内技術を用いて決定することができる。画像案内技術として、例えば、拡張可能ケージ30に結合され、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)によって放出された超音波エネルギを反射する基準マーカ(図示せず)が利用される。以下で記載するように、拡張可能ケージ30は通常、細長いシャフトの遠位部及び超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)の回転中に静止状態を維持する。従って、いくつかの適用例では、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)を用いて生成された超音波画像内の基準マーカの位置を識別し、これによって拡張可能ケージ30に対する超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)の回転位置を導出することにより、静止状態のケージに対する超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)の回転位置を識別する。
【0152】
更に追加的に又は代替的に、細長いシャフトの遠位部の回転位置を決定するため、シャフトの遠位部、拡張可能ケージ30上、及び/又は超音波トランスデューサ50上に配置された他の任意のタイプの1つ以上のセンサを用いることができる。例えば、第1の磁気コイルをシャフトの遠位部及び/又は超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)に結合して、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)の回転位置が変化すると第1の磁気コイルの回転位置も変化するようにすればよい。第2の磁気コイルをケージに結合して、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)が回転しても第2の磁気コイルの回転位置が一定のままであるようにすればよい。追加的に又は代替的に、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)が回転しても第2の磁気コイルの回転位置が一定のままであるように、第2の磁気コイルをシャフトの遠位部に結合してもよい。第1及び第2のコイル間の磁束の変化を測定することによって、超音波トランスデューサ50(及び/又はトランスデューサ52)の回転位置を導出する。
【0153】
上述のように、拡張可能ケージ30及び超音波トランスデューサ50の双方は、経管アブレーションカテーテル40の細長いシャフトの遠位端に配置されている。拡張可能ケージ30はシャフトに結合されているが、シャフトの遠位部及び超音波トランスデューサ50の回転中、拡張可能ケージ30は拡張して静止した状態を維持する。(管腔内で拡張可能ケージ30が回転するスペースは限られているので、通常、拡張可能ケージ30は回転することができない。従って、拡張可能ケージ30を回転させる試みは、超音波トランスデューサ50の回転を阻止する可能性が高い。)細長いシャフトの回転中に拡張可能ケージ30を静止状態に維持するため、いくつかの適用例において、装置20は、細長いシャフトの回転時に細長いシャフトによって拡張可能ケージ30に加えられる回転力を低減させるための回転力低減機構を備え、これによって、超音波トランスデューサ50の回転中に拡張可能ケージ30を静止状態に保つ。
【0154】
次に、経管アブレーションカテーテル40の細長いシャフト42の回転時に細長いシャフトによって拡張可能ケージ30に加えられる回転力を低減させるよう構成された回転力低減機構200のコンポーネントの概略図である
図4Aから
図4Fを参照する。回転力低減機構200のコンポーネントは通常、細長いシャフト42の遠位部に配置されて、スイベル機構と同様に、拡張可能ケージ30を静止状態に保ちながら、超音波トランスデューサ50の回転を可能とする。いくつかのそのような適用例において、細長いシャフト42は、内側の細長いシャフト42I及び外側の細長いシャフト42Oを含む。典型的に、拡張可能ケージ30の近位端は外側の細長いシャフト42Oに結合されている。更に典型的には、超音波トランスデューサ50は内側の細長いシャフト42I上に配置され、回転は、外側の細長いシャフト42O内での内側の細長いシャフト42Iの回転を介して超音波トランスデューサへ伝達される(すなわち、内側の細長いシャフト42Iは外側の細長いシャフト42O内で回転し、外側の細長いシャフトは回転的に静止した状態を保つ)。
【0155】
いくつかの適用例において、回転力低減機構200は、スイベルベアリング44と、ベアリングストッパ46と、遠位先端カバー45と、を含む(
図4B、
図4C、
図4D、
図4E、及び
図4F)。典型的に、スイベルベアリングは、細い近位部44Aと、この近位部よりも直径が大きい遠位の幅広部44Bと、を含む。スイベルベアリング44は典型的に、内側の細長いシャフト42Iの遠位部に結合されて(
図4B)、細長いシャフト42と共に回転するようになっている。ベアリングストッパ46は、スイベルベアリング44の近位の細い部分を取り囲むように配置され、スイベルベアリングの遠位の幅広部分がベアリングストッパの遠位に配置されるようになっている。スイベルベアリングの遠位の幅広部の直径は、典型的に、ベアリングストッパによって規定される管腔よりも大きいので、スイベルベアリングの遠位の幅広部は、スイベルベアリングがベアリングストッパに対して近位に引っ張られるのを防止するようになっている。遠位先端カバー45は典型的に、スイベルベアリングの遠位の幅広部44Bを覆う。ベアリングストッパ及び遠位先端カバーは、回転的に静止した状態に保持されながら、スイベルベアリングの連続的で滑らかな回転を可能とする(これにより、細長いシャフトの連続的で滑らかな回転を可能とする)ように構成されている。
【0156】
典型的に、拡張可能ケージ30は、(a)ケージの近位端が外側の細長いシャフト42Oに結合されていること、及び(b)上述のように、ケージ自体が対象の組織に接触していることによって、回転が阻止される。ケージの遠位部(例えばケージ遠位リング48)は典型的にベアリングストッパ46に結合され、これによって、ベアリングストッパの回転を阻止するねじり力をベアリングストッパに加える。ベアリングストッパは典型的に、ベアリングストッパ内でスイベルベアリング44が自由に回転できることによって、内側の細長いシャフト42Iが回転し続けることを可能とし、また、内側の細長いシャフトの回転運動をケージから分離して、ケージ30にねじり力が加わるのを防止するようになっている。
【0157】
スイベルベアリング44は典型的に、細長いシャフト42の回転を可能としながら、細長いシャフト42の遠位端で拡張可能ケージ30の拡張及び折り畳みを可能とする。上述のように、典型的には、拡張可能ケージ30の近位端は外側の細長いシャフト42Oに結合されている。更に典型的には、ケージを半径方向に拡張するためには、内側の細長いシャフト42Iの遠位端を外側の細長いシャフト42Oの方へ近位に引っ張ることにより、ケージの遠位端をケージの近位端の方へ近位に引っ張る。幅広遠位部44Bは典型的に、内側の細長いシャフトの遠位端の近位方向運動をベアリングストッパへ伝達し、次いでベアリングストッパは近位方向運動をケージの遠位端へ伝達し、これにより、ケージの遠位端をケージの近位端の方へ引っ張って、ケージを軸方向に短くすると共に半径方向に拡張する。典型的に、ケージを半径方向に収縮させるためには、内側の細長いシャフト42Iの遠位端を外側の細長いシャフト42Oから離れる方へ遠位に押すことにより、ケージの遠位端をケージの近位端から離れる方へ遠位に押す。幅広遠位部44Bは典型的に、内側の細長いシャフトの遠位端の遠位方向運動を遠位先端カバー45へ伝達し、次いで遠位先端カバー45は遠位方向運動をベアリングストッパ及びケージの遠位端へ伝達し、これにより、ケージの遠位端をケージの近位端から離れる方へ押して、ケージを軸方向に長くすると共に半径方向に収縮させる。
【0158】
従って回転力低減機構200は、一方では、内側の細長いシャフト42Iの軸方向運動をケージ30の遠位端の軸方向運動と結合するように構成され、他方では、内側の細長いシャフト42Iの回転運動とケージ30の遠位端の回転運動とを分離するように構成されている。
【0159】
図4Fは、
図4Aから
図4Eを参照して上述したように、超音波トランスデューサ50の回転中に拡張可能ケージ30の回転を阻止するため、装置20と共に組み立てられた回転力低減機構200のコンポーネントの断面図である。
【0160】
次に、本発明のいくつかの適用例に従った、湾曲圧電超音波トランスデューサ150及びその超音波エネルギ伝送プロファイルの概略図である
図5A、
図5B、及び
図5Cを参照する。また、本発明のいくつかの適用例に従った、圧電超音波トランスデューサ150の放射角度に対する圧電超音波トランスデューサ150の様々な曲率半径及び長さの効果を示すグラフである
図5Dも参照する。
【0161】
図5Aで示されているように、いくつかの適用例において、超音波トランスデューサ50は湾曲圧電超音波トランスデューサ150を含む。
図5Aは、冷却チャネル156の近くで、空気バリア80の上に吊るされ、トランスデューサ筐体カプセル化層154内に配置された湾曲圧電超音波トランスデューサ150の断面を示す。
【0162】
圧電超音波トランスデューサ150は、トランスデューサの長手方向軸から外側に向いた凸面152を規定し、この凸面の曲率半径が0.75~5mmであるような形状を有する。典型的に、圧電超音波トランスデューサ150は、凸面から(例えば静脈口の)組織に超音波エネルギを印加することによって、(例えば静脈口の)組織をアブレーションするように構成されている。典型的に、トランスデューサ150の湾曲によって、(平坦なトランスデューサを使用する場合に比べて)超音波エネルギの影響を受けるエリアが拡大し、より高速な及び/又は効率的なアブレーション処置が可能となる。
【0163】
いくつかの適用例において、超音波トランスデューサ150の幅は0.5~3mm(例えば1~2mm)であり、厚さは0.1~0.3mmである。いくつかの適用例において、圧電超音波トランスデューサ150の曲率半径は、0.75~5mm、例えば1~3mm、例えば1.5~2mmである。
【0164】
図5B及び
図5Cは、本発明のいくつかの適用例に従って、湾曲圧電超音波トランスデューサ150を用いてアブレーションを実行した場合の、肺静脈内の熱プロファイル(
図5B)及び圧力プロファイル(
図5C)を示す。典型的に、湾曲圧電超音波トランスデューサ150を提供すると、組織のより大きい部分がいっそう効果的に加熱されるように組織の熱プロファイルを拡大できるので、効果的かつ迅速な組織のアブレーションが容易になる。一部の例では、湾曲圧電超音波トランスデューサ150を用いる場合、同じ幅、長さ、及び厚さの平坦な圧電超音波トランスデューサを用いて同じパワーパラメータを適用する場合に比べて、加熱される組織エリアは少なくとも2倍大きい。
図5Bで示されているように、曲率半径が2mm、幅が1.5mmである圧電超音波トランスデューサ150を提供することにより、概してサイドローブが現れることなく(概ね均質な損傷を示す)、28度の放射角度と概ね均一な組織の熱プロファイルが得られた。
【0165】
図5Dのグラフは、本発明のいくつかの適用例に従った、圧電超音波トランスデューサ150の放射角度に対する圧電超音波トランスデューサ150の曲率半径及び表面幅の効果を示す。
図5Dにおいて、ライン101は、表面幅が1mmである圧電超音波トランスデューサを用いた放出角度に対する曲率半径の効果を示す。ライン102は、表面幅が1.5mmである圧電超音波トランスデューサを用いた放出角度に対する曲率半径の効果を示す。ライン103は、表面幅が2mmである圧電超音波トランスデューサを用いた放出角度に対する曲率半径の効果を示す。図示のように、曲率半径が1.5~2mm、表面幅が1.5mmの超音波トランスデューサ150を提供することにより、28度の放出角度が得られた(ライン102で示されている)。
【0166】
再び
図1Aから
図5Aを参照し、更に
図6も参照する。いくつかの適用例では、経管アブレーションカテーテル40と動作可能な通信状態にある(例えばカテーテル40に結合されている)センサを用いて、対象の心腔から延出する管腔と心腔との間の血流の変化(例えば、肺静脈と心房との間の血流の変化)を検出して、管腔と心腔との間の接続点を示し、これにより管腔口の位置を示す。典型的に、血流の変化は、血液が管腔口を通過して心腔内へ入った時に検出され得る(例えば肺静脈口と心房)。検出された血流の変化に基づいて、コンピュータプロセッサ26は、アブレーションに最適な組織標的部位(例えば管腔口)を決定し、その最適な組織標的に超音波エネルギを伝送するように超音波トランスデューサ50及び/又は150を駆動するように構成されている。
【0167】
いくつかの適用例において、センサは、血流を検知すると共に血流のパターンの変化を検出するためのドップラー超音波検査デバイスを含む。追加的に又は代替的に、経管アブレーションカテーテル40は更に、検出された血流の変化に応じて、伝送される超音波エネルギが最適な組織標的部位に印加されるように超音波トランスデューサ50及び/又は150の位置を調整するように構成されたアクチュエータを含む。
【0168】
本発明のいくつかの適用例に従った、血流の変化の検出に応じて実行される方法のステップを示すフローチャートである
図6を参照する。いくつかの適用例では、超音波トランスデューサ50及び/又は150を対象の心房内へ前進させ(ステップ310)、超音波トランスデューサの近くで血流の変化を検出して、心房に対する肺静脈の位置を決定し(ステップ320)、この位置の決定に応じて、超音波トランスデューサ50及び/又は150を活性化して肺静脈口の組織をアブレーションする(ステップ340)。任意選択的に、超音波トランスデューサを活性化する(ステップ340)前、位置の決定に応じて超音波トランスデューサ50及び/又は150の位置を調整する(ステップ330)。
【0169】
いくつかの適用例では、心房に対する肺静脈口の位置を確認するため、ドップラー超音波検査によって検出された血流変化から導出された位置データを、心房及び肺静脈口の3次元画像データと組み合わせて用いる。
【0170】
本発明のいくつかの適用例によれば、任意のタイプの音指示を用いて、心房と肺静脈との間の血流パターンの変化を検出し、典型的に所望のアブレーション部位である肺静脈口の位置を示すことができる。例えば、本明細書に記載されている超音波トランスデューサ50、52、及び/又は150のうちいずれか1つを用いて、心房と肺静脈との間の血流パターンの変化を検出できる。
【0171】
再び
図1Aから
図6を参照する。上述のように、装置20は、心筋組織の組織のアブレーション及び撮像に加えて、音響センシングを実行するように構成されている。
【0172】
例えば、アブレーションの目的のために超音波エネルギを伝送する前、装置20は、音響センシングによって、アブレーションに指定された標的組織に対して超音波トランスデューサ50が最適に位置決めされているか否かを査定し、これに応じて組織にアブレーションエネルギを印加するか、あるいは、超音波トランスデューサ50の位置を調整する、及び/又は組織に印加されるエネルギレベルを調整するように構成されている。
【0173】
いくつかの適用例において、装置20(特に、装置20の超音波トランスデューサ50/52/150)は、超音波トランスデューサの適正な位置決めを確認するため、低強度の非アブレーション超音波エネルギを伝送するように構成されている。いくつかの適用例において、装置20は、トランスデューサが受信した超音波エコーのパラメータを査定することによって、標的組織に対する超音波トランスデューサ50/52/150の適正な位置決めを査定する。例えば、装置20は、トランスデューサが受信した超音波エコーの振幅(すなわち、エコーのエネルギレベル)を測定することによって、標的組織に対する超音波トランスデューサ50/52/150の適正な位置決めを査定する。超音波トランスデューサ50/52/150が組織に対して誤った位置にある場合、エコーの振幅は小さく(これは、組織に対する音場の角形成が大きい接触面積を生成し、従って低いエネルギ密度を生成することに起因して、送達されるエネルギが分散し、正しく方向付けられないからである)、超音波トランスデューサ50/52/150が標的組織に対して適正に位置決めされている場合、エコーの振幅は増大する。典型的に、超音波トランスデューサ50/52/150が所望の位置にあるという査定に応じて、超音波トランスデューサは活性化されて組織をアブレーションする。代替的に、組織に印加されるエネルギレベルを調整して、超音波トランスデューサ50/52/150の最適でない位置決めを補償する。更に代替的には、超音波トランスデューサ50/52/150の位置を調整して、より適切に組織を標的とする。
【0174】
追加的に又は代替的に、アブレーションエネルギを印加して組織に損傷を形成する場合、標的組織からトランスデューサによって受信されたリターン超音波エコーの振幅を測定することによって、アブレーションを監視することができる。超音波エネルギは損傷を通って伝送しないので、リターン超音波の増大は、組織における適切な形状の損傷を示す。
【0175】
追加的に又は代替的に、様々な組織深さから戻ってくる超音波エコーの振幅(又は他のパラメータ)の測定を用いて、組織の深さに沿った変化(例えば損傷の形成)を比較及び査定する。いくつかの適用例では、リターン超音波エコーのグラフ表現を表示する。例えば、各深さ間隔で行われたアブレーションの程度を示す色画素を各深さ間隔に割り当てたグラフ表現(例えば0.1~0.3mmの解像度)を提示することができる。
【0176】
引き続き
図1Aから
図6を参照する。なお、本発明のいくつかの適用例によれば、装置20は、心房細動以外のタイプの心不整脈を治療するために用いることができる。例えば装置20は、心室頻拍等の疾患を治療するために用いられる。そのような適用例では、装置20を対象の心室内へ前進させ、本発明の適用例に従って超音波エネルギを印加して心室の組織をアブレーションすることにより、損傷を生成する。
【0177】
更に、心筋部位に対する超音波エネルギの印加は、血管口に限定されず、心不整脈の誘発又は維持に関与する心臓の任意の領域に適用され得ることに留意するべきである。
【0178】
更に、本明細書の記載の多くは心臓組織に関し、特に、左心房及び左心房から延出する肺静脈に関するが、本発明の範囲は、本明細書に記載されている装置及び方法を体内の他の管腔に対して使用することを含むことに留意するべきである(「管腔」は一般に、管状臓器であり得るが必ずしもそうではない対象体の臓器内の内部オープンスペース、すなわち腔を意味する。)例えば、本明細書に記載されている装置及び方法は、必要な変更を加えて、対象の動脈、静脈、腸、心臓、嚢、洞、胃、肺、肺血管系、気道、又は対象の尿生殖器に対して使用され得る。
【0179】
本明細書に記載されている装置及び方法は更に、必要な変更を加えて、腎デナベーション、標的肺デナベーション、肺高血圧症デナベーション、内臓神経デナベーション、頸動脈小体デナベーション、がん性肺結節アブレーション、肥大型心筋症アブレーション、及び/又は肝動脈デナベーションを含む治療のため、対象の他の組織の治療に使用され得ることに留意するべきである。
【0180】
いくつかの適用例において、本明細書に記載されている超音波エネルギ印加技法は、パルスフィールドアブレーション(PFA:Pulsed Field Ablation)及び/又は高周波(RF)アブレーションのような他のタイプのアブレーションと組み合わせて実施される。いくつかの適用例では、超音波アブレーションの代わりに又はそれに加えて、他の適切なエネルギ源(例えばRFエネルギ、レーザエネルギ、極低温エネルギ、及び/又は、紫外線及び/又は赤外線等の電磁エネルギ)が用いられる。
【0181】
本発明が上記で具体的に図示及び記載したものに限定されないことは、当業者に認められよう。本発明の範囲は、上記で記載した様々な特徴のコンビネーション及びサブコンビネーションの双方を含み、また、当業者が前述の記載を読む際に想起する従来技術に存在しない変形及び変更を含む。
【国際調査報告】