(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】アルデヒドを含む蒸気流から重質副生成物及び触媒配位子(LIGAN)を分離するプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 45/82 20060101AFI20240213BHJP
C07C 47/02 20060101ALI20240213BHJP
C07C 31/12 20060101ALI20240213BHJP
C07C 45/50 20060101ALI20240213BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240213BHJP
【FI】
C07C45/82
C07C47/02
C07C31/12
C07C45/50
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540824
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 GB2022050498
(87)【国際公開番号】W WO2022180394
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518329767
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ デイヴィー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】スミット, マーティン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC41
4H006AC45
4H006AC46
4H006AC52
4H006AD11
4H006BA48
4H006BC51
4H006BC52
4H006BD80
4H006BD84
4H006BE40
4H006FE11
4H039CA62
4H039CL45
(57)【要約】
アルデヒド、重質副生成物、及び触媒配位子を含む蒸気流から重質副生成物及び触媒配位子を分離するプロセスが開示される。本プロセスは、蒸気流を分留装置に送り、そこで蒸気流を液体アルデヒドと接触させて、蒸気流から触媒配位子の少なくとも一部及び重質副生成物の少なくとも一部を除去することと、除去した触媒配位子、除去した重質副生成物、及びアルデヒドの一部を含む液体底部流を分留装置から回収することと、分留装置から洗浄された蒸気流を回収することと、洗浄された蒸気流の第1の部分を凝縮して、分留装置に還流するための液体アルデヒドを生成することと、洗浄された蒸気流の第2の部分を生成物アルデヒド流として回収することと、を含む。液体底部流を分離システムに送って、液体底部流からアルデヒドの少なくとも一部を分離して、分離したアルデヒドを含む回収アルデヒド流と、除去した触媒配位子及び除去した重質副生成物を含む廃棄流と、を生成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重質副生成物及び触媒配位子を、アルデヒド、前記重質副生成物、及び前記触媒配位子を含む蒸気流から分離するプロセスであって、前記プロセスは、前記蒸気流を液体アルデヒドと接触させる分留装置に前記蒸気流を送り、前記蒸気流から前記触媒配位子の少なくとも一部及び前記重質副生成物の少なくとも一部を除去することと、除去した触媒配位子、除去した重質副生成物、及び前記アルデヒドの一部を含む液体底部流を前記分留装置から回収することと、前記分留装置から洗浄された蒸気流を回収することと、洗浄された前記蒸気流の第1の部分を凝縮して、前記分留装置に還流するための前記液体アルデヒドを生成することと、洗浄された前記蒸気流の第2の部分を生成物アルデヒド流として回収することと、を含み、前記液体底部流は分離システム送られて、前記液体底部流から少なくとも一部のアルデヒドを分離して、分離した前記アルデヒドを含む回収アルデヒド流、並びに除去した前記触媒配位子及び除去した前記重質副生成物を含む廃棄流を生成する、プロセス。
【請求項2】
前記分留装置の底部温度は140℃以下である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記分離システムは蒸留塔を備える、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記蒸留塔の底部温度は、前記分留装置の前記底部温度よりも高い、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記蒸留塔内の圧力は前記分留装置内の圧力よりも低い、請求項3又は請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記蒸留塔は、前記蒸留塔の前記底部温度が140℃以下であるように動作する、請求項3~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記分留装置はリボイラを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記リボイラは、前記分留装置の前記底部温度が少なくとも90℃であるように動作する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記液体底部流は、少なくとも50重量%のアルデヒドを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記回収アルデヒド流は、前記分留装置の上流の前記プロセスのある点に再循環される、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記触媒配位子は、有機リン配位子を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記触媒配位子は、トリフェニルホスフィンを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記触媒配位子は、160℃で少なくとも0.01mbarの蒸気圧を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記アルデヒドは、C
3~C
6アルデヒドである、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記プロセスは、ヒドロホルミル化プロセスからの、前記アルデヒド、触媒、前記触媒配位子、及び前記重質副生成物を含む液体出力流を分離器に送ることによって前記蒸気流を形成することと、前記蒸気流を前記分離器から回収することと、を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ヒドロホルミル化プロセスは、触媒、前記触媒配位子、オレフィン、及び一酸化炭素を1つ以上のヒドロホルミル化反応器に供給することと、前記オレフィンを前記一酸化炭素と反応させて、前記アルデヒド及び前記重質副生成物を形成することと、前記アルデヒド、前記触媒、前記触媒配位子、及び前記重質副生成物を含む前記液体出力流を回収することと、を含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記プロセスは、前記アルデヒド生成物流中の前記アルデヒドを1つ以上の反応器に送って、前記アルデヒドを水素化して、脂肪族アルコールを生成すること、前記アルデヒドをアミノ化して、脂肪族アミンを生成すること、前記アルデヒドを酸化して、脂肪酸を生成すること、前記アルデヒドをアルドール縮合して、アクロレインを生成すること、又は前記アルデヒドをアルドール縮合して、アクロレインを生成し、続いて前記アクロレインを脂肪族アルコールに水素化すること、を更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記プロセスは、前記アルデヒド生成物流中の前記アルデヒドを1つ以上の反応器に送って、前記アルデヒドを液相水素化して、脂肪族アルコールを生成すること、又は前記アルデヒドをアルドール縮合して、アクロレインを生成し、続いて前記アクロレインを脂肪族アルコールに液相水素化すること、を含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記プロセスは、前記脂肪族アルコール、前記脂肪族アミン、前記脂肪酸、又は前記アクロレインを精製することを含む、請求項17又は請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
請求項17~19に記載のプロセスによって得られた脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸、又はアクロレイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒドを含む蒸気流から重質副生成物及び触媒配位子を分離するプロセスに関する。特に、ただし排他的ではなく、本発明は、ヒドロホルミル化プロセスからの液体出力流(アルデヒド、触媒、触媒配位子、及び重質副生成物を含む)を気化器に送り、気化器から蒸気流を回収することによって形成されたアルデヒドを含む蒸気流から重質副生成物及び触媒配位子を分離するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンのヒドロホルミル化によるアルデヒドの生成は、周知のプロセスである。アルデヒドは、脂肪族アルコールを生成するためのアルデヒドの水素化、脂肪族アミンを生成するためのアルデヒドのアミノ化、脂肪族酸を生成するためのアルデヒドの酸化、及び例えば可塑剤の生成で使用される、アクロレインを生成するためのアルドール縮合反応など種々の下流反応に供され得る。オレフィンをアルデヒドにヒドロホルミル化し、続いてアルデヒドを水素化して脂肪族アルコールを生成することは、アルデヒドの周知の使用である。このようなプロセスの例は、Johnson Matthey及びDowによって提供されるLP OxoSMプロセスである。ヒドロホルミル化は、有機リン配位子で変性された均一系ロジウム触媒を用いて液相中で行われる。このような配位子及びプロセスの例は、米国特許第4148830号、同第4717775号、及び同第4769498号に開示されている。有機ホスフィン及び有機ホスファイト、特に有機モノホスフィン、有機ビスホスフィン、有機テトラホスフィン、有機モノホスファイト、及び有機ビスホスファイトが好ましい有機リン配位子である。本発明は、配位子が160℃で少なくとも0.01mbarの蒸気圧を有する場合に特に有用であり得る。本発明は、配位子がトリフェニルホスフィン(TPP)又はトリフェニルホスフィンオキシド(TPPO)を含む場合、特に配位子がTPPを含む場合に特に有用であり得る。
【0003】
典型的なプロセスでは、1つ以上のヒドロホルミル化反応器が、アルデヒド及び均一系触媒を含む生成物流を生成する。アルデヒドは気化によって触媒から分離され、気化アルデヒドは蒸気相のままであり、触媒液は、1つ以上のヒドロホルミル化反応器に再循環するための液体としてとどまる。気化は、典型的には、気化アルデヒド中の触媒配位子の過剰な持ち越しを防止するように操作される。しかしながら、配位子が下流の水素化において問題となり得る濃度で気化アルデヒド中に塔頂で保有されないようにすることは困難であり得る。例えば、持ち越された配位子は、下流での水素化で使用される触媒を害することがある。これは、液相水素化において特に問題となり得、気相水素化では、水素化への供給原料の気化を潜在的に使用して、持ち越された配位子を除去することができる。持ち越された配位子が低濃度であっても、触媒を害することがある。160℃で0.01mbar以上の蒸気圧を有する配位子は、許容できない持ち越しをもたらし得る。
【0004】
配位子の持ち越しを低減させようとして、様々な解決策が提案されている。例えば米国特許第5110990号に記載されているように、生成物アルデヒドなど分散液を気化アルデヒド流に噴射して気化配位子を凝縮し、次いで気化配位子を気液分離器内で分離することができるなどである。このような装置に伴う問題は、アルデヒド生成物蒸気中の重質副生成物も分散液によって凝縮されることである。したがって、配位子を再循環させることは、重質副生成物の蓄積をもたらす。分散液を注意深く制御して、重質副生成物の凝縮を回避しつつ、配位子の凝縮を促進することができることが示唆されているが、実際には達成することは困難であり、問題が生じやすい。いずれの変形例も、配位子の不十分な凝縮による配位子の問題のある持ち越し、又はこれらの副生成物の過凝縮による重質副生成物の蓄積のいずれかをもたらす。重質副生成物の蓄積は、配位子の更に高い持ち越しなどの原因になり得る、より高温での気化器の稼働を必要とし得るので問題であり得る。触媒の再循環からのパージを使用して蓄積した重質副生成物を除去することは、ロジウム損失の原因になり得る。
【0005】
更に提案された解決策が、米国特許出願公開第2018305285号に開示されている。このシステムでは、気化生成物アルデヒド流中のリン配位子及び副生成物を凝縮するように気化アルデヒド生成物流を分縮器と接触させ、気化アルデヒド生成物流の最大10重量%が凝縮される。凝縮されたリン配位子及び副生成物は、精製カラム内で凝縮アルデヒドから分離され、アルデヒドは精製カラム内で再気化され、気化アルデヒド生成物流に再循環される。いくつかの実施形態では、凝縮されたリン配位子及び副生成物はプロセスに戻されず、したがって、重質副生成物の蓄積を回避する。いくつかの実施形態では、リン配位子は、別個の蒸留システムにおいて重質副生成物から分離され、再循環され得る。このようなシステムは重質副生成物の蓄積を回避し得るが、分縮器は単一の理論段しか提供せず、したがって、達成可能な気化アルデヒド生成物流からの配位子除去効率には限界がある。
【0006】
更に提案された解決策が、米国特許第4792636号に開示されている。この開示では、(i)一酸化炭素及び配位子と錯体結合したロジウムを含有するロジウム錯体ヒドロホルミル化触媒、(ii)過剰な配位子、(iii)少なくとも1種の任意選択的に置換されたC7~C17アルデヒド、及び(iv)アルデヒド凝縮生成物を含有する、任意選択的に置換されたC6~C16オレフィンのロジウム触媒ヒドロホルミル化によって得られた液体ヒドロホルミル化生成物媒体から、任意選択的に置換されたC7~C17アルデヒドを回収するためにプロセスが提供されており、このプロセスは、
(a)当該液体ヒドロホルミル化媒体を脱気することと、
(b)脱気した液体ヒドロホルミル化媒体を、当該少なくとも1種のC7~C17アルデヒドの蒸発をもたらす温度及び圧力条件下に維持された蒸発ゾーンに通すことと、
(c)蒸発ゾーンから液体触媒含有流を回収することと、
(d)蒸発ゾーンを出る触媒含有流を冷却することと、
(e)(i)少なくとも1種の、任意選択的に置換されたC7~C17アルデヒド、(ii)配位子、及び(iii)少量の当該アルデヒド凝集生成物を含有する、蒸発ゾーンからの蒸気流を回収することと、
(f)当該蒸気流を分留ゾーンに送ることと、
(g)当該分留ゾーンから、(i)当該少なくとも1種のC7~C17アルデヒドを含有する蒸気生成物流、並びに(ii)当該配位子及びアルデヒド凝縮生成物を含有する液体底部流を回収することと、
(h)工程(d)の冷却した当該触媒含有流及び工程(g)の当該液体底部流の物質の少なくとも一部を当該ヒドロホルミル化ゾーンに再循環させることと、を含む。
【0007】
液体底部流の少なくとも一部は、ヒドロホルミル化ゾーンに再循環させることができる。あるいは、分留ゾーンから回収された底部流は、配位子回収ゾーンに送ることができ、このゾーンで配位子は、例えば分留によってアルデヒド凝縮生成物から分離され、得られた分離された配位子はヒドロホルミル化ゾーンに再循環させることができる。分留ゾーンからの底部生成物流の一部をヒドロホルミル化ゾーンに再循環させ、残りを配位子回収ゾーンで処理し、そこから回収された配位子を再循環させることも可能である。
【0008】
このようなスキームでは、液体底部流中の任意の生成物アルデヒドは廃棄され得る。液体底部流中の生成物アルデヒドの濃度を低減させる試みは、分留ゾーンの底部をより高温で稼働させることによって行われ得るが、このような手法は、過剰な重質副生成物の形成、更には分留ゾーンのリボイラにおける分解の原因になり得る。重質副生成物の形成は、望ましくないことに、そうでなければ所望の生成物として回収されるであろうアルデヒドを消費する。いずれの分解生成物も、分留ゾーンを出るアルデヒド生成物を汚染し得る。このスキームはまた、重質副生成物が触媒リガンドと共にクローズボイラ(close boilers)になり得る、より短鎖のアルデヒドに対しては実用的でないことがある。
【0009】
アルデヒド異性体を分離するための蒸留塔、例えば、n-ブタナールをi-ブタナールから分離するためのブタナール異性体塔を含むプロセスでは、全ての持ち越しTPPを異性体塔内で除去することができる。例えば、国際公開第2017182780号に記載された装置は、第1のブタナール異性体塔内で持ち越しTPPを除去し、したがって、TPPは、触媒を毒し得るアルドール化及び続いての水素化に送られる供給物中に存在しないであろう。しかしながら、異性体を分離する商業的必要性がない場合には、このような装置は経済的であるとは言えない。
【0010】
したがって、気化生成物アルデヒド流中の配位子の持ち越しを阻止するためのより効率的かつ効果的なシステムが依然として必要とされている。本発明の好ましい実施形態は、従来技術における上記の欠点のうちの1つ以上を克服することを目的とする。特に、本発明の好ましい実施形態は、アルデヒド、重質副生成物、及び触媒配位子を含むヒドロホルミル化生成物流からアルデヒドを分離するための改善されたプロセスを提供しようとする。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の態様によると、アルデヒド、重質副生成物、及び触媒配位子を含む蒸気流から触媒配位子を分離するプロセスが提供され、このプロセスは、分留装置に蒸気流を送り、そこで蒸気流を液体アルデヒドと接触させ、蒸気流から触媒配位子の少なくとも一部及び重質副生成物の少なくとも一部を除去することと、除去した触媒配位子、除去した重質副生成物、及びアルデヒドの一部を含む液体底部流を分留装置から回収することと、分留装置から洗浄された蒸気流を回収することと、洗浄された蒸気流の第1の部分を凝縮して、分留装置に還流するための液体アルデヒドを生成することと、洗浄された蒸気流の第2の部分を生成物アルデヒド流として回収することと、を含み、液体底部流は分離システムに送られて、液体底部流からアルデヒドの少なくとも一部を分離して、分離したアルデヒドを含む回収アルデヒド流、並びに除去した触媒配位子及び除去した重質副生成物を含む廃棄流を生成する。
【0012】
液体底部流を分離システムに送って、液体底部流からアルデヒドの少なくとも一部を分離することによって、より柔軟なシステムが形成される。例えば、システムは、重質副生成物を形成する可能性及び潜在的な分解も低減する条件で分留装置を動作させる柔軟性を有し、一方、分離システムは、回収アルデヒド流中でのアルデヒドの回収を最大化する条件で動作させることができる。これは、分留装置が分離システムよりも著しく大きい流量、したがってアルデヒドインベントリを処理しており、したがって分留装置における重質副生成物の形成及び潜在的な分解がより重大な問題を引き起こす可能性があるので、有利であり得る。重質副生成物は、例えばアルデヒドが関与する反応によってリボイラ中で形成され得る。したがって、このような重質副生成物の形成は、所望のアルデヒド生成物の損失を表す。更に、分解が起こると、分解生成物が分留装置の上方に移動し、生成物アルデヒド流を汚染し得る。より大型の分留装置はより経済的な条件で動作することができ、従来技術のプロセスにおけるそれらの条件での動作において生じるであろうアルデヒド生成物の損失がないために、この柔軟性はまた、より経済的な性能を可能にし得る。
【0013】
洗浄された蒸気流の第2の部分は、好ましくは第1の部分と一緒に凝縮され、液体生成物アルデヒド流として回収され得る。洗浄された蒸気流の第2の部分は、好ましくは洗浄された蒸気流を分縮器に供給して第1の部分を凝縮し、続いて気液分離器に供給して第1の部分と第2の部分とを分離することによって、蒸気流として回収され得る。
【0014】
本プロセスは、好ましくは、ヒドロホルミル化プロセスからの液体出力流(アルデヒド、触媒、触媒配位子、及び重質副生成物を含む)を分離器に送ることによって蒸気流を形成することと、蒸気流を分離器から回収することと、を含む。分離器は、例えば膜分離器であり得るが、好ましくは気化器である。気化器は、例えば、直列の熱交換器及びノックアウトドラムを備え得る。蒸気流は、好ましくは、気化器に送られるアルデヒドの50~99重量%を含む。蒸気流は、典型的には、触媒配位子の小部分と、気化器に送られる重質副生成物と、を含む。例えば、ヒドロホルミル化からの液体出力流は、5重量%~20重量%の触媒配位子を含み得、蒸気流は、好ましくは5000ppmw以下、好ましくは2500ppmw以下の触媒配位子を含む。別の例として、気化器に入る触媒配位子の最大10重量%が蒸気流中に存在し得る。C3以下など短鎖長オレフィンでは、好ましくは、気化器に入る触媒配位子の1重量%以下が蒸気流中に存在する。好ましくは、触媒及び触媒配位子の大部分は、気化器内の液体流中、典型的には気化器の底部において回収され、好ましくはヒドロホルミル化プロセスに再循環される。
【0015】
蒸気流を液体アルデヒドと接触させる分留装置に蒸気流を送ることによって、蒸気流からの配位子のより効率的な分離を達成し得る。これは、分留装置が複数の理論段に機会を提供するためである。好ましくは、分留装置は、少なくとも2つの理論段、より好ましくは少なくとも4つの理論段を含む。理論段は、分留装置に関連する凝縮器用の理論段を含み得る。洗浄された蒸気流から凝縮された液体アルデヒドを分留装置への還流として使用することは、更なる成分をシステムに導入しない、洗浄液の効率的な供給源である。
【0016】
液体底部流を分離システム、例えば蒸留塔に送って、液体底部流からアルデヒドの少なくとも一部を分離して、分離したアルデヒドを含む回収アルデヒド流と、除去した触媒配位子及び除去した重質副生成物を含む廃棄流と、を生成する。したがって、ヒドロホルミル化の有用な生成物である分離したアルデヒドは、プロセスから失われない。除去した重質副生成物をプロセスに戻さないことによって、本発明は、プロセスにおける重質副生成物の蓄積を阻止する。分留装置の使用は、有利には、下流プロセスへの触媒配位子の過剰な持ち越しを阻止するための効率的な多理論段分離も可能にしつつ、分離流として液体底部流を生成する。分離流を生成しない従来技術のプロセスは、重質副生成物の蓄積の原因になり得、一方、単一の理論段を用いる従来技術のプロセスは、触媒配位子の除去においてそれほど効率的ではないことがある。アルデヒドが液体底部流から回収されない従来技術のプロセスは、液体底部流中での望ましくないアルデヒド損失をもたらす条件、又は液体底部流中のアルデヒドを最小限に抑えるが、分留装置内での重質副生成物形成の結果としてアルデヒドの損失をもたらし得、分留装置内での分解及び分解生成物によるアルデヒド生成物流の汚染を潜在的にもたらし得る条件のいずれかでの動作を必要とする。本発明のプロセスはまた、分留装置においてより高い還流比で動作し得、したがって、蒸気流から除去される触媒配位子及び重質副生成物の割合を増加させる。分離システムがなければ、より高い還流比は、液体底部流中のより高濃度のアルデヒドを阻止するために、より過酷な条件、例えば高温で動作する分留装置リボイラを必要とするか、又は、より高濃度のアルデヒド損失をもたらすかのいずれかであろう。
【0017】
回収アルデヒド流は、好ましくはプロセスに再循環される。回収アルデヒド流は、好ましくは分留装置の上流に再循環される。回収アルデヒド流は、分留装置に再循環され得る。好ましくは、蒸気流は気化器から回収され、回収アルデヒド流は好ましくは気化器に再循環される。気化器がノックアウトドラムを備える場合、回収アルデヒド流は、好ましくは当該ノックアウトドラムに再循環される。回収アルデヒド流が分留装置に再循環される場合、好ましくは液体還流として分留装置に再循環される。いくつかの実施形態では、回収アルデヒド流は、生成物アルデヒド流と合わされ得るが、分離システムにおける分離が不完全であるために、回収アルデヒド流がいくらかの触媒配位子を含有し得るので、好ましくない場合がある。
【0018】
好ましくは、回収アルデヒド流は、少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%のアルデヒドを含む。回収アルデヒド流中のより高いアルデヒド含量は、当該流を使用する可能性を増加させ得る。例えば、アルデヒド含量が高い場合、回収アルデヒド流を生成物アルデヒド流と組み合わせることがより望ましくなり得る。
【0019】
廃棄流は、好ましくは10重量%以下、好ましくは7.5重量%以下のアルデヒドを含む。したがって、本プロセスの所望の生成物であるアルデヒドの廃棄は低く保たれる。本発明は、有利には、廃棄流中のそのような低濃度のアルデヒドを達成する一方で、分留装置における低底部温度からも利益を得る。廃棄流は、好ましくは廃棄に送られ、したがって、除去した重質副生成物が、蓄積し得るプロセスに戻されないことを確実にする。
【0020】
分離システムが蒸留塔を備える場合、蒸留塔は好ましくはリボイラ及び還流凝縮器を含む。分留装置にリボイラを有することもなお有利であり得る。分離システムは、液体底部流からアルデヒドを回収するので、分留装置にリボイラが不在の場合でも、アルデヒド損失は有利に最小化される。しかしながら、分離システムで回収されたアルデヒドは、典型的には、上流で、例えば、アルデヒドが希釈剤として作用する上流の水素化反応器に再循環される(つまり、反応器が追加の流量を処理するためにより大きい必要があることを潜在的に意味する)。分留装置にリボイラを設けることにより、有利には、例えばより低温で、従来技術の装置において望ましいであろうよりも多くのアルデヒドを液体底部流に送ることを可能にし、有利には、重質副生成物又は分解生成物がリボイラ内で形成されるリスクを低減するが、それにもかかわらず、過剰量のアルデヒドが分離システムに送られて再循環することを回避する方法でリボイラを動作させる柔軟性を提供することができる。分留装置にリボイラを設けることにより、本発明は、重質副生成物の形成及び分解の低減という利点を維持しつつ、再循環アルデヒドによる上流プロセスの希釈の低減という更なる利点を得ることができる。分留装置にリボイラを有することはまた、分留装置の還流比の増加を可能にし、したがって、液体底部流中の液体アルデヒドの量を増加させずに、蒸気流から除去される触媒配位子及び重質副生成物の割合を増加させ得る。したがって、上述した本発明の利点を維持しつつ、より多くの触媒配位子及び副生成物重質分の除去を達成することができる。分離システムを設けることと合わせて分留装置にリボイラを設けることは、プロセスを制御するための追加の選択肢を提供することによって、例えば入力流の組成の変化に対処するためのプロセスの柔軟性を増加させ得る。したがって、リボイラを設けることにより、プロセスの柔軟性及び操作性の容易さを向上させ得る。
【0021】
本プロセスは、洗浄された蒸気流を少なくとも部分的に凝縮して、分留装置に還流させるための液体アルデヒドを生成することを含む。本プロセスは、洗浄された蒸気流の大部分を、例えば洗浄された蒸気流中のアルデヒドの本質的に全てを凝縮器内で凝縮することによって凝縮して凝縮流を生成し、次いでこれを分割して分留装置に還流するための液体アルデヒド及び生成物アルデヒド流を生成することを含み得る。この場合、生成物アルデヒド流は、液体生成物アルデヒド流として回収される。凝縮は、凝縮器、好ましくは、続いてノックアウトドラム又は他の気液分離器において行われて、アルデヒドと共に凝縮しなかった任意の軽質成分を除去し得る。あるいは、本プロセスは、洗浄された蒸気流中のアルデヒドを部分的に凝縮することと、凝縮したアルデヒドを分離して、生成物アルデヒド流として回収される不凝縮アルデヒドから、分留装置に還流するための液体アルデヒドを生成することと、を含み得る。したがって、生成物アルデヒド流は、蒸気生成物アルデヒド流となる。このような実施形態では、部分凝縮は、好ましくは分縮器、好ましくは、続いてノックアウトドラム又は他の気液分離器において行われて、蒸気生成物アルデヒド流から、分留装置に還流するための液体アルデヒドを分離し得る。蒸気生成物アルデヒド流は、その後、更なる凝縮器、好ましくは、続いてノックアウトドラム又は他の気液分離器において凝縮されて、アルデヒドと凝縮しなかった全ての軽質成分を除去して、液体生成物アルデヒド流を生成し得る。このような装置は、既存のプラントへの追加導入として特に魅力的であり得、したがって、本発明は、このような装置を設置するためにプラントを改修する方法を含み得る。既存のプラントは、蒸気流を凝縮するための既存の凝縮器を有し、既存の凝縮器は、好ましくは大幅な変更なしに、更なる凝縮器として使用することができる。分留装置及び分縮器、並びに本発明に関連する他の機器は、既存の凝縮器の上流に設置されるであろう。
【0022】
好ましくは、蒸気流は、少なくとも80重量%のアルデヒド、より好ましくは少なくとも90重量%のアルデヒドを含む。蒸気流は、少なくとも0.5重量%の重質副生成物、又は少なくとも1重量%の重質副生成物、又は少なくとも2重量%の重質副生成物を含み得る。好ましくは、蒸気流は、10重量%以下の重質副生成物、より好ましくは5重量%以下の重質副生成物を含む。本発明は、蒸気流が少なくとも10ppmwの触媒配位子を含む場合に特に有利であり得、蒸気流が少なくとも20ppmwの触媒配位子を含む場合に更に有利であり得る。除去されない場合、そのような濃度の触媒配位子は、下流の触媒、特に下流の水素化触媒において著しい被毒問題を引き起こし得る。蒸気流は、少なくとも100ppmw若しくは少なくとも200ppmwの触媒配位子、又は少なくとも500ppmwの触媒配位子を含み得る。好ましくは、蒸気流は、5000ppmw以下の触媒配位子、より好ましくは2500ppmw以下の触媒配位子を含む。蒸気流はまた、他の汚染物質、例えばオレフィン、パラフィン、アルコール及び更なる汚染物質、特に軽質(すなわちアルデヒドよりも軽い)汚染物質を含み得る。
【0023】
生成物アルデヒド流は、好ましくは10ppmw以下の触媒配位子、より好ましくは5ppmw以下、更により好ましくは1ppmw以下の触媒配位子を含む。蒸気流中の触媒配位子の好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも97重量%、更により好ましくは少なくとも99重量%、更により好ましくは少なくとも99.5重量%が、分留装置において除去される。そのような高濃度の触媒配位子除去、したがって生成物アルデヒド流中の低濃度の触媒配位子は、分留装置における除去の効率のために、経済的な方法で可能であり得る。
【0024】
液体底部流は、少なくとも5重量%の重質副生成物、又は少なくとも10重量%の重質副生成物を含み得る。液体底部流は、少なくとも60重量%の重質副生成物を含み得、少なくとも80重量%の重質副生成物を含み得る。しかしながら、有利なことに、本発明は、より多くのアルデヒドが液体底部流に入るような方法での分留装置の動作を可能にし得る。したがって、液体底部流は、好ましくは50重量%以下の重質副生成物を含む。好ましくは、液体底部流は、少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも50重量%のアルデヒドを含む。これらのようなより高いアルデヒド濃度は、典型的には、分留装置の底部におけるより穏やかな条件から生じ、熱負荷の低下、並びに望ましくない重質副生成物の形成及び分解反応の回避という関連する利点を伴う。
【0025】
好ましくは、分留装置の還流比は、少なくとも0.05、より好ましくは少なくとも0.1である。還流比は、分留装置に還流される液体アルデヒドの質量流量をアルデヒド生成物流の質量流量で除したものである。還流比は、0.5以下であることが好ましい。より高い還流比、例えば少なくとも0.1は、分離システムが過剰なアルデヒド損失を阻止するので、本発明において特に有利に使用され得る。
【0026】
分留装置でリボイラが使用される場合、リボイラは、好ましくは、分留装置の底部温度が少なくとも90℃であるように動作する。リボイラは、好ましくは、分留装置の底部温度が140℃以下であるように動作する。そのような温度で動作することにより、重質副生成物の形成によるアルデヒドの望ましくない損失又は分解反応による汚染物質の形成を回避しながら、アルデヒドの一部を有利に再気化させて分留装置に入れ得る。
【0027】
上記の動作条件は、触媒配位子がTPPであり、アルデヒドがC3~C6アルデヒド、特にブチルアルデヒドを含む場合に特に有利であり得る。
【0028】
好ましくは、分離システムは蒸留塔を含む。蒸留塔は、好ましくは、蒸留塔の底部温度が分留装置の底部温度よりも高いように動作する。蒸留塔は、好ましくは、蒸留塔の底部温度が140℃以下であるように動作する。蒸留塔の底部温度は、好ましくは少なくとも90℃、より好ましくは少なくとも100℃である。蒸留塔の底部温度は、分留装置の底部温度よりも高いことが好ましい。分留装置のより低い底部温度は、より高い流量の物質を処理する分留装置での重質副生成物の形成又は分解のリスクを低減し、一方、蒸留塔のより高い底部温度は、回収アルデヒド流へのアルデヒドの回収を増加させる。蒸留塔の底部温度は、分留装置の底部温度よりも、好ましくは少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも20℃、更により好ましくは少なくとも30℃高い。
【0029】
蒸留塔の圧力は、好ましくは少なくとも0.3baraである。蒸留塔の圧力は、好ましくは1.2bara以下である。蒸留塔内の圧力は、分留装置の圧力よりも低いことが好ましい。好ましくは、蒸留塔内の圧力は、分留装置内の圧力よりも少なくとも0.1bar、好ましくは少なくとも0.2bar、より好ましくは少なくとも0.5bar低い。より低い圧力は、典型的には、機器サイズの増加を意味するが、蒸留塔は、分留装置よりも低い流量を処理し、したがって、依然として機器のより小さい部分であり得る。より低い圧力は、有利には、重質副生成物の形成又は分解が起こり得る温度を必要とすることなく、回収アルデヒド流へのアルデヒドのより多量の分離を可能にする。したがって、分留装置はより高い圧力で動作し得るので、分留装置は経済的な大きさであり得、一部のアルデヒドを液体底部流に流し込むことができ、より低い流量を処理し、したがっていずれにしてもより小さい蒸留塔は、より低い圧力で動作し、重質副生成物の形成によるアルデヒド損失又は分解生成物による汚染なしにアルデヒドの良好な回収を達成する。
【0030】
蒸留塔の還流比は、好ましくは少なくとも0.1である。蒸留塔の還流比は、好ましくは1.2以下である。そのような条件、特にそれらの温度、圧力及び還流比範囲の組み合わせは、重質副生物の形成によるアルデヒドの損失、又は回収アルデヒド流を触媒配位子若しくは分解生成物で汚染することなく、回収アルデヒド流中のアルデヒドを回収するのに特に有利であり得る。このような条件は、触媒配位子がTPPであり、アルデヒドがC3~C6アルデヒドである場合に特に好適であり得る。
【0031】
触媒配位子は、好ましくは有機リン配位子を含む。有機リン配位子は、好ましくは有機ホスフィン又は有機ホスファイト、特に有機モノホスフィン、有機ビスホスフィン、有機テトラホスフィン、有機モノホスファイト、又は有機ビスホスファイトである。本発明は、配位子が160℃で少なくとも0.01mbarの蒸気圧を有する場合に特に有用であり得る。本発明は、配位子がトリフェニルホスフィン(TPP)又はトリフェニルホスフィンオキシド(TPPO)を含む場合、特に配位子がTPPを含む場合に特に有用であり得る。
【0032】
アルデヒドは、好ましくはC3~C6アルデヒドである。より好ましくは、アルデヒドはブチルアルデヒド又はバレルアルデヒドを含み、最も好ましくは、アルデヒドはブチルアルデヒドを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、蒸気流は、それ自体が有機モノホスフィン、有機ビスホスフィン、有機テトラホスフィン、有機モノホスファイト、又は有機ビスホスファイトなど有機リン化合物であり得る配位子分解生成物を更に含み得る。配位子分解生成物は、触媒配位子と共に分離され得る。一部の配位子分解生成物は、それ自体が触媒配位子として作用し得、したがって、触媒配位子は、それ自体が別の触媒配位子の分解生成物であり得る。
【0034】
当業者は、アルデヒドを形成する化学プロセスにおける重質副生成物の形成に精通しているであろう。重質副生成物は、典型的には、アルデヒド二量体及び三量体などアルデヒド凝縮生成物を含む。アルデヒド凝縮生成物はまた、テトラマーを含み得る。
【0035】
当業者は、充填床及びトレイ設計など様々な分留装置設計を認識しているであろう。分留装置は、スクラバであり得る。
【0036】
分離システムは、蒸留塔など分留装置を含むことが好ましいが、例えば、膜分離システムなど別のタイプの分離システムであり得る。
【0037】
好ましくは、本プロセスは、アルデヒド生成物流を1つ以上の反応器に送り、アルデヒドを水素化して脂肪族アルコールを生成し、アルデヒドをアミノ化して脂肪族アミンを生成し、アルデヒドを酸化して脂肪酸を生成し、又はアルドール縮合反応でアクロレインを生成することを含む。好ましくは、本プロセスは、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸、又はアクロレインを、例えば1つ以上の塔での蒸留によって精製することを含む。アクロレインは、好ましくは液相水素化において、アルコール、好ましくは2-エチルヘキサノール又は2-プロピルヘキサノール、最も好ましくは2-エチルヘキサノールに水素化され得る(好ましくは、次いで精製される)。最も好ましくは、本プロセスは、アルデヒド生成物流を1つ以上の反応器に送って、アルデヒドを水素化して脂肪族アルコール、好ましくはブタノールを生成することを含む。本プロセスは、好ましくは、例えば1つ以上の塔での蒸留によってアルコールを精製することを含む。水素化は、好ましくは液相水素化である。本発明は、アルデヒド又はアルデヒドのアルドール縮合によって生成されたアクロレインのいずれかの下流液体水素化が存在する場合に特に有益であり得る。これは、液体水素化用の触媒が、触媒配位子による被毒を特に受けやすいためである。
【0038】
本プロセスは、好ましくは、ヒドロホルミル化プロセスからの液体出力流(アルデヒド、触媒、触媒配位子、及び重質副生成物を含む)を分離器に送ることによって蒸気流を形成することと、蒸気流を分離器から回収することと、を含む。分離器は好ましくは気化器であり、例えば直列に配置された熱交換器及びノックアウトドラムを備え得る。ヒドロホルミル化プロセスは、好ましくは、触媒、触媒配位子、オレフィン、及び一酸化炭素を1つ以上のヒドロホルミル化反応器に供給することと、オレフィンを一酸化炭素と反応させて、アルデヒド及び重質副生成物を形成することと、アルデヒド、触媒、触媒配位子、及び重質副生成物を含む液体出力流を回収することと、を含む。一酸化炭素は、好ましくは合成ガス中に含まれる。したがって、本プロセスは、好ましくは、触媒、触媒配位子、オレフィン、及び一酸化炭素を1つ以上のヒドロホルミル化反応器に供給することと、オレフィンを一酸化炭素と反応させて、アルデヒド及び重質副生成物を形成することと、アルデヒド、触媒、触媒配位子、及び重質副生成物を含む液体出力流を回収することと、液体出力流を分離器に送り、分離器から蒸気流を回収することであって、蒸気流は、アルデヒド、好ましくは少なくとも50重量%のアルデヒド、触媒配位子の小部分、及び重質副生成物の小部分を含む、ことと、蒸気流を分留装置に送り、そこで蒸気流を液体アルデヒドと接触させて、蒸気流から触媒配位子の少なくとも一部及び重質副生成物の少なくとも一部を除去することと、除去した触媒配位子、除去した重質副生成物、及びアルデヒドの一部を含む液体底部流を分留装置から回収することと、分留装置から洗浄された蒸気流を回収することと、洗浄された蒸気流の第1の部分を凝縮して、分留装置に還流するための液体アルデヒドを生成することと、洗浄された蒸気流の第2の部分を生成物アルデヒド流として回収することと、を含み、液体底部流は分離システムに送られて、液体底部流から少なくとも一部のアルデヒドを分離して、分離したアルデヒドを含む回収アルデヒド流、並びに除去した触媒配位子及び除去した重質副生成物を含む廃棄流を生成する。
【0039】
好ましくは、本プロセスは、分離器から液体流を回収することであって、液体流は触媒及び触媒配位子の大部分を含む、ことと、液体流を1つ以上のヒドロホルミル化反応器に再循環させることと、を含む。触媒は、好ましくはロジウムを含む。流れが成分の大部分を含むと言われる場合、流れは、分離器に供給された当該成分の量の少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、更により好ましくは少なくとも99重量%を含み得、流れが成分の小部分を含むと言われる場合、流れは、分離器に供給される当該成分の量の25重量%以下、より好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更により好ましくは1重量%以下を含み得る。
【0040】
本発明の第2の態様によると、本発明の第1の態様によるプロセスによって得られる脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸、又はアクロレインが提供される。好ましくは、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸、又はアクロレインは、脂肪族アルコール、最も好ましくはブタノールである。好ましくは、脂肪族アルコールは本質的にブタノールからなる。別の好ましい態様では、本発明の第1の態様によるプロセスによって得られるアクロレインを水素化することによって得られる脂肪族アルコール、好ましくは2-エチルヘキサノール又は2-プロピルヘキサノール、最も好ましくは2-エチルヘキサノールが提供される。
【0041】
本発明の一態様に関連して説明される特徴は、本発明の別の態様において等しく適用可能であり得ることが理解されるであろう。いくつかの特徴は、本発明の特定の態様に適用可能でなくてもよく、本発明の特定の態様から除外されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
これから、添付の図を参照して、限定的な意味ではなく例として、本発明の実施形態を説明する。
【0043】
【0044】
比較プロセスは、本発明と比較するためのプロセスであり、従来技術のプロセスではなくてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下のプロセス例は、Aveva Simsci ProIIを使用してシミュレートした。当業者は、シミュレーションパッケージの使用が化学分野におけるプロセスを評価するための十分に確立された方法であることを理解するであろう。
【0046】
図1は、熱交換器50a及びノックアウトドラム50bを備える気化器50と、凝縮器52と、を含むが、分留器を含まない参照プロセスを示す。このプロセスでは、液体触媒再循環スキームを使用したRh/TPP触媒プロピレンヒドロホルミル化は、2.5重量%のプロピレン及びプロパン、70重量%のブチルアルデヒド、15重量%の重質副生成物、11.9重量%のTPPを含有し、残りが不凝縮ガス、触媒、及びブタノールである流れを生成する。この供給物1は、1.2bara及び130℃で動作する気化器50に供給され、供給物の約70重量%が気化されて、3.5重量%のプロピレン及びプロパン、93.7重量%のブチルアルデヒド、2.4重量%の重質副生成物、並びに不凝縮ガス、ブタノール及び約1300ppmwのTPPを含有する蒸気流2を生成する。蒸気流2は、40℃で動作する凝縮器52に供給され、液体/蒸気凝縮器出口流4を生成し、この出口流4はノックアウトドラム53に送られ、約1315ppmwのTPPを含有する液体アルデヒド生成物流7を生成する。不凝縮蒸気は排出流5中に排出される。液体流9は、触媒及びTPP配位子をヒドロホルミル化に再循環させる。
【0047】
図2は、
図1と同様であるが、分留装置51を更に含むプロセスを示す。
図2において、供給物1(上記の組成を有する)は、熱交換器50a及びノックアウトドラム50bを備える気化器50に供給され、蒸気流2を生成する。蒸気流2は、4つの理論段を有する分留装置51に供給される。分留装置51は、1.1baraの圧力で動作し、78℃の底部温度を有する。分留装置51は、凝縮した塔頂留出物の還流(還流流6)を受けて、還流比0.3を提供する。蒸気流3は、40℃で動作する凝縮器52に供給され、液体/蒸気凝縮器出口流4を生成し、この出口流4はノックアウトドラム53に送られる。不凝縮蒸気は排出流5中に排出され、残りの液体は還流6と1ppb未満のTPPを含有する液体アルデヒド生成物流7とに分割される。実際には、この濃度のTPPは検出限界未満である。分留装置液体底部流18は、約75重量%のブチルアルデヒドを含有し、気化器50のノックアウトドラム50bに再循環される。気化器50で気化された実質的に全ての重質副生成物は、液体底部流18及びノックアウトドラム50bを介して液体流9に戻り、触媒再循環に戻る。これにより、触媒溶液中の重質副生成物が更に蓄積し、したがって、重質副生成物の除去が重質副生成物の形成と等しくなるまで、気化器50の温度を更に上昇させる必要がある。このシナリオでは、重質副生成物は逃れることができず、触媒溶液から、例えば液体流9からパージが行われるまで蓄積し続け得る。しかしながら、このようなパージを行うことは、置き換えに費用がかかるロジウムの損失の原因となり得るので、望ましくない。
【0048】
したがって、代替的な実施形態は、
図3に示すようなものであり得る。この図では、同様の番号が付された項目は
図1及び2と同様であり、ここでは再度説明しないが、液体底部流8は廃棄に送られる。このようにして、重質副生成物は蓄積しない。しかしながら、
図2におけるように約75重量%のブチルアルデヒドを含む全液体底部流8は廃棄に送られる。分留装置51における還流比は、アルデヒド生成物流7中のTPP濃度を十分に低く維持するために十分に大きい必要があるため、廃棄されるブチルアルデヒドは、かなり大量であり得る。
【0049】
図4では、同様の番号が付された項目は
図1~3と同様であり、ここでは再度説明しないが、分留装置51はリボイラ54を含む。リボイラ54は、アルデヒドを再気化させ、それを分留装置51に戻すことによって、液体底部流38を濃縮する。分留装置51は、
図2及び
図3について記載した比率と同じ還流比で動作し、液体アルデヒド生成物流7は、1ppb未満のTPPを含む。リボイラ54は、アルデヒドの損失を最小限に抑えるために、液体底部流38中で5重量%のアルデヒド濃度を提供するように制御される。液体底部流38は再循環されないが、廃液としてパージされる。リボイラ54は、163℃の温度で動作する。このような高いリボイラ温度及び低いアルデヒド濃度では、液体の沸点がアルデヒド濃度のごくわずかな変化で著しく変化するので、リボイラの制御が困難な場合がある。これは、不安定なリボイラ動作をもたらし得る。更に、そのような高温は、更に重質副生成物を形成する傾向があり、アルデヒドの損失をもたらし、場合によっては重質副生成物を分解する。そのような分解は、アルデヒド生成物流7を汚染する傾向にある軽質副生成物を生成し得るため、望ましくない。
【0050】
図5において、本発明によるプロセスは、分留装置151の後に分離システム155を含む。上記の供給流1と同じ供給源及び組成を有する供給流101は、熱交換器150a及びノックアウトドラム150bを備える気化器150に供給されて蒸気流102を生成し、これは、これまでの図の供給流1、気化器50、蒸気流2、及び分留器51に関して上述したように、分留器151に送られる。分留装置151は、0.3の還流比及び78℃の底部温度で動作する。
図2~
図4と同様に、洗浄された蒸気流103は、分留装置151の頂部から回収され、凝縮器152に送られる。凝縮器152は、洗浄された蒸気流103中の実質的に全てのアルデヒドを含む洗浄された蒸気流103の大部分を凝縮して、液体/蒸気凝縮器出口流104を生成し、これはノックアウトドラム153に送られ、そこから不凝縮蒸気が排出流105中に排出される。残りの液体は、還流流106と液体アルデヒド生成物流107とに分割される。液体アルデヒド流107は、1ppb未満のTPPを含む。液体底部流108は、75重量%のブチルアルデヒドを含む。液体底部流108は、分離システムに送られ、この実施形態では、この分離システムは0.5bara、0.1の還流比、及び蒸留塔155の124℃の底部温度で動作する蒸留塔155の形態の更なる分留装置を含む。蒸留塔155は、リボイラ156と、凝縮器158と、ノックアウトドラム157と、を備える。廃棄流188は、蒸留塔155の底部から回収される。廃棄流は、5重量%のブチルアルデヒドを含む。廃棄流188は廃棄に送られる。蒸留塔155の塔頂から、ブチルアルデヒド並びに場合によっては微量のTPP及び重質副生成物を含む、回収アルデヒド流118が回収される。この実施形態では、回収アルデヒド流118は、気化器150のノックアウトドラム150bに再循環される。回収アルデヒド流118はまた、プロセスの他の場所で再循環され得る。いくつかの実施形態では、回収アルデヒド流118は、生成物アルデヒド流107と合わされ得る。
【0051】
この実施形態における廃棄流118中のブチルアルデヒドの濃度は、
図4に関連して上述した実施形態と同じである。しかしながら、この濃度は、
図4における分留装置51のリボイラ54における163℃の温度と比較して、分留装置151における78℃の底部温度及び蒸留塔155における124℃の底部温度で達成される。より低い温度は、例えば、熱負荷、したがって運転コストを低減することによって、重質副生成物の形成によるアルデヒド損失を低減することによって、及び/又は分解生成物からの汚染を低減することによって有利であり得る。このプロセスはまた、蒸留塔155が分留装置151から物理的に分離しており、したがって、
図4のリボイラ54とは異なり、分留装置151から独立して動作することができるという利点を有する。分留装置151からの液体底部流108を蒸留塔155に供給することによって、蒸留塔155は、分留装置151からほぼ独立して動作することができ、したがって、蒸留塔155でリボイラ156を動作させるいかなる困難も、分留装置151の動作に影響を及ぼさない。これにより、主な一連の動作から扱いにくい機器を分離することができ、それによって主な一連の動作を容易にすることができる。
【0052】
上記の実施例の結果を以下の表にまとめる。
【0053】
【0054】
図5に関して記載されるプロセスは、他のプロセスと比較して低い負荷を必要としつつも、重質副生成物の形成に起因するアルデヒド損失のリスクが低減され、汚染のリスクが低減され、操作性が向上した優れたアルデヒド生成物流107仕様を達成することができることが明らかである。
【0055】
図6では、同様の番号が付された項目はこれまでの図と同様であり、ここでは再度説明しないが、プロセスは
図5のプロセスと同様であるが、今回は分留装置151にリボイラ154を含む。したがって、得られた液体底部流138は、
図5の流れ108と比較してアルデヒド含量が減少している場合がある。有利なことに、分留装置151のリボイラ154及び蒸留塔155のリボイラ156の存在は、動作のより大きな柔軟性をもたらす。これにより、例えば、分留装置151の底部温度を、重質副生成物の形成及び分解反応を阻止するのに十分低く維持することと、液体底部流138中のアルデヒド含量をいくらか低減するのに十分高く維持することとの間で、最適なバランスをとることを可能にし得る。蒸留塔155は液体底部流138からアルデヒドを回収するが、回収アルデヒド流118は、典型的には気化器150のノックアウトドラム150bに再循環され、そこからヒドロホルミル化反応器に再循環される。この再循環はアルデヒド損失を阻止し、したがって、重質副生成物の形成によるアルデヒド損失及び分解生成物による汚染を軽減する温度を使用しながら、パージ中のアルデヒド損失を阻止するという本発明の利点が達成されるが、上流のヒドロホルミル化反応器を通して大量のアルデヒドを再循環させることは、ヒドロホルミル化反応器中の反応物を望ましくなく希釈し得る。分留装置151にリボイラ154を有し、蒸留塔155にリボイラ156を有することは、有利には、再循環アルデヒドによる過度の希釈を回避しつつ、重質副生成物の形成及び分解による汚染の最適な軽減を可能にし得る。
【0056】
図7では、同様の番号が付された項目はこれまでの図と同じであり、ここでは再度説明しないが、洗浄された蒸気流103は分縮器162に送られる。分縮器162はアルデヒドの一部を凝縮し、これは還流166として分留装置151に戻される。分縮器162からの蒸気出口流163は、更なる凝縮器152に送られ、残りのアルデヒドの実質的に全てが凝縮される。更なる凝縮器152からの出口流104は、ノックアウトドラム153に送られ、蒸気排出流105と液体生成物アルデヒド流107とに分離される。このような装置は、プラントが気化器150からの蒸気を凝縮する既存の凝縮器を有し、これを大幅に変更せずに更なる凝縮器152として使用することができるので、追加導入として特に魅力的であり得る。次いで、分留装置151及び分縮器162は、既存の気化器150と更なる凝縮器152との間に設置される。
図7に示す分縮器162は、本発明の他の実施形態、例えば、
図5、
図6、又は
図8に関連して説明した実施形態においても同様に使用することができる。
【0057】
図8では、同様の番号が付された項目は、これまでの図のプロセスと同様であり、それらの説明は繰り返さない。プロピレン、一酸化炭素、ロジウム、及びTPPを含む流れ201がヒドロホルミル化反応器250に供給される。ヒドロホルミル化反応器250において、プロピレンは一酸化炭素と反応してブチルアルデヒドを形成し、ブチルアルデヒドは、熱交換器150a及びノックアウトドラム150bを備える気化器150への供給流である液体出力流101中でヒドロホルミル化反応器250を出る。蒸気流102及び液体流109が気化器150から回収される。ロジウム及びTPPを含む液体流109は、ヒドロホルミル化反応器250に再循環される。蒸気流102は、これまでの図に関連して説明したように分留装置151内で処理される。液体生成物アルデヒド流107は、水素含有流202と共に水素化反応器251に送られる。水素化反応器251において、液体生成物アルデヒド流107からのブチルアルデヒドは、水素流202からの水素と反応してブタノールを形成し、ブタノール生成物流207中で回収される。次いで、ブタノール生成物流207を精製工程、典型的には蒸留に供して、所望の純度のブタノール生成物を回収することができる。
【0058】
上記の実施形態は、任意の限定的な意味ではなく、あくまで例として記載されており、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正が可能であることが当業者には理解されるであろう。例えば、オレフィンはブチレンであり得、アルデヒドはバレルアルデヒドであり得る。別の例として、水素化反応器251は、脂肪族アミンを生成するためのアミノ化反応器、脂肪族酸を生成するための酸化反応器、又は次いで水素化反応器に供給されてアルコールを生成し得るアクロレインを生成するためのアルドール縮合反応と置き換えられてよく、水素流202は、当業者に明らかであるように、他の反応物流と置き換えられる。気化器150は、熱交換器150a及びノックアウトドラム150bを備えるが、気化器の他の設計が、例えば、蒸気流102を生成するために使用され得る。
【国際調査報告】