(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】高配合の経口フィルム製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/00 20060101AFI20240213BHJP
A61K 47/30 20060101ALI20240213BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20240213BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240213BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240213BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
A61K9/00
A61K47/30
A61K31/439
A61K47/34
A61K47/32
A61P1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547033
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 CA2022050171
(87)【国際公開番号】W WO2022165607
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518272186
【氏名又は名称】インテルジェンクス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTELGENX CORP.
【住所又は居所原語表記】6420 Abrams,St-Laurent,Quebec H4S 1Y2(CA)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ティア,ビラール
(72)【発明者】
【氏名】ペーマン,ナディーン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA99
4C076BB01
4C076CC01
4C076EE01
4C076EE16
4C076EE23
4C076FF01
4C076FF52
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB15
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA12
4C086ZA01
(57)【要約】
高配合の医薬品有効成分を有し、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、両親媒性溶解度向上剤、非両親媒性溶解度向上剤、凝集抑制剤、および界面活性剤を含む、経口フィルム剤形。経口フィルム剤形は、経口フィルムの乾燥重量の22%に相当する、少なくとも40mgの医薬品有効成分を含む。また、開示されるものは、酸性pHで低溶解度医薬品有効成分を含む経口フィルムである。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
API、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤、凝集抑制剤ならびに界面活性剤を含む経口フィルム製剤であって、前記API含有量が、少なくとも40mgであり、前記経口フィルムの総乾燥重量の少なくとも22%に相当する、経口フィルム製剤。
【請求項2】
懸濁剤/粘度増加剤のAPIに対する重量比が、好ましくは約1:5~約1:15である、請求項1に記載の経口フィルム製剤。
【請求項3】
粘膜付着性フィルム形成剤のAPIに対する重量比が、約1:0.74~約1:1.5である、請求項1に記載の経口フィルム製剤。
【請求項4】
両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤の重量比が、約9:1~約1:1であり、その際、総溶解度向上剤のAPIに対する重量比が約1:0.6~1:3である、請求項1に記載の経口フィルム製剤。
【請求項5】
凝集抑制剤のAPI含有量に対する重量比が、約1:2.3~約1:16である、請求項1に記載の経口フィルム製剤。
【請求項6】
界面活性剤のAPIに対する重量比が、約1:1~約1:4である、請求項1に記載の経口フィルム製剤。
【請求項7】
さらに、共界面活性剤を含む、請求項1に記載の経口フィルム製剤。
【請求項8】
共界面活性剤の界面活性剤に対する重量比が、約1:1~約1:3.25であり、共界面活性剤のAPIに対する重量比が、約1:2.2~約1:7である、請求項7に記載の経口フィルム製剤。
【請求項9】
さらに、防腐剤を含み、防腐剤のAPIに対する重量比が、好ましくは約1:200~約1:1333である、請求項1に記載の経口フィルム製剤。
【請求項10】
さらに、可塑剤を含む、請求項1に記載の経口フィルム製剤。
【請求項11】
さらに、香料および風味増強剤を含む、請求項1に記載の経口フィルム製剤。
【請求項12】
さらに、甘味料を含む、請求項1に記載の経口フィルム製剤。
【請求項13】
動物での使用に特に適している、請求項1に記載の経口フィルム製剤。
【請求項14】
低溶解度API、界面活性剤、酸性pHおよび少なくとも2つのポリマーを含む経口フィルム製剤であって、前記低溶解度APIが、前記経口フィルム製剤の少なくとも22重量%、好ましくは30重量%、最も好ましくは37重量%である、経口フィルム製剤。
【請求項15】
pHが5未満であるが、好ましくは4未満である、請求項14に記載の経口フィルム製剤。
【請求項16】
前記低溶解度APIが、マロピタントである、請求項14に記載の経口フィルム製剤。
【請求項17】
さらに、共界面活性剤を含む、請求項14に記載の経口フィルム製剤。
【請求項18】
さらに、粘膜付着性フィルム形成剤を含む、請求項14に記載の経口フィルム製剤。
【請求項19】
さらに、香料を含む、請求項14に記載の経口フィルム製剤。
【請求項20】
さらに、風味増強剤を含む、請求項14に記載の経口フィルム製剤。
【請求項21】
さらに、防腐剤を含む、請求項14に記載の経口フィルム製剤。
【請求項22】
さらに、甘味料を含む、請求項14に記載の経口フィルム製剤。
【請求項23】
さらに、可塑剤を含む、請求項14に記載の経口フィルム製剤。
【請求項24】
動物での使用に特に適している、請求項14に記載の経口フィルム製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月5日に出願した米国仮特許出願第63/146,458号および2021年2月7日に出願した米国仮特許出願第63/146,706号に対する優先権を主張し、その内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、経口フィルム投与製剤および経口フィルム剤形を調製するためのプロセス、ならびにより具体的には、ヒトおよび動物の両方への適用のための高活性物質含有量のフィルム投与に適している経口フィルム剤形の調製に関する。本開示はまた、経口フィルム投与製剤ならびにヒトおよび動物の両方への適用のための低溶解度APIを有する経口フィルム剤形を調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの場合、経口フィルム剤形を使用して薬剤成分を投与することが望ましい。経口フィルム剤形は、錠剤およびカプセルと比較した場合、いくつかの利点を有する。多くの人々は、錠剤およびカプセルの嚥下が困難であり、固形の経口剤形を嚥下しようと試みる間に窒息する危険があるが、フィルム剤形を困難なく自己投与することができる。同様に、種々の剤形を通じて、コンパニオンアニマルなどの動物に薬物を投与することで、多くの場合、独特の課題が存在する、特に投与精度が望まれる。動物は、錠剤の一部を拒否する可能性があり、そのうちいくらかは、多くの場合、数個の小片に分割される必要があり、投与の不正確さを増幅させる。
【0004】
経口フィルム剤形中の薬物の投与が望ましい可能性があるが、所望の吸収プロファイルを与える経口剤形を設計することは、依然として課題である。経口フィルム製剤は、薬物または医薬品有効成分(API)の吸収率を高める可能性を有する。経口フィルム製剤の望ましい利点にも関わらず、適切な経口フィルム製剤は、既知の経口フィルムのAPI含有量が制限されるため、これまでのところ部分的に適用範囲が限られている。経口フィルムの低API含有量は、薬物動態学によるだけでなく、人間または動物の口のサイズによっても部分的に規定される表面的にも厚み的にも、サイズの制限などの経口フィルムに対するいくつかの固有の要因に由来する。経口フィルムのこれらの不適切な制限により、経口フィルム製剤の可能性が比較的未開発のままであり、このことは、経口フィルム剤形を有する承認された薬物の数が限られており、動物の使用のための経口フィルム剤形が未だに承認されていないことにより明らかである。
【0005】
これらおよび他の非効率性および改善のための機会は、本開示のシステム、アセンブリおよび方法により対処される、および/または少なくとも部分的に克服される。
【発明の概要】
【0006】
開示されているものは、高活性物質配合を有する経口フィルム剤形およびプロセスである。本開示は、APIのポリマーに対する比またはAPIの総重量に対する比が少なくとも22%、好ましくは30%、最も好ましくは37%であり、総乾燥重量が260mg未満のフィルム中でAPI含有量が少なくとも60mgである製剤を有する経口フィルム投与に関する。
【0007】
本開示のいくらかの態様によれば、経口剤形は、腸内吸収の実質的な構成要素を有するAPIを送達する。
【0008】
本開示のいくらかの態様によれば、経口剤形により送達されるAPIは、マロピタントである。
【0009】
本開示は、4~9cm2内で約40mg~約80mgの活性物質を含む経口フィルムの使用に関する。
【0010】
本開示のいくらかの態様によれば、経口フィルム剤形は、API、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤、凝集抑制剤、界面活性剤、共界面活性剤、および防腐剤を含む。
【0011】
本開示のいくらかの態様によれば、開示された経口フィルム剤形は、API、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤、凝集抑制剤、界面活性剤および共界面活性剤を含む。
【0012】
本開示のいくらかの態様によれば、経口フィルム剤形は、APIを含み、開示された経口フィルム製剤は、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、溶解度向上剤、凝集抑制剤、界面活性剤および共界面活性剤を含む。
【0013】
本開示のいくらかの態様によれば、経口フィルム剤形は、APIを含み、開示された経口フィルム製剤は、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤、凝集抑制剤および界面活性剤を含む。
【0014】
本開示のいくらかの態様によれば、経口フィルム剤形は、共界面活性剤をさらに含む。
【0015】
本開示のいくらかの態様によれば、経口フィルム剤形は、API、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤、界面活性剤および共界面活性剤を含む。
【0016】
本開示のある特定の態様において、製剤および高API含有量経口フィルム剤形を製造するためのプロセスが開示されている。
【0017】
本開示のある特定の態様において、投与のための高API含有量経口フィルム剤形製剤が開示されている。
【0018】
本開示のある特定の態様において、経口フィルムの脆弱性およびまたは高含有量のAPIに関連するAPI分離を緩和するためのプロセスが開示されている。
【0019】
本開示のある特定の態様において、開示された経口フィルム製剤は、APIに対する比が約1:5~約1:15で懸濁剤/粘度増加剤を含む。
【0020】
本開示のある特定の態様において、開示された経口フィルム製剤は、界面活性剤に対する比が約1:2.3~約1:6.5で懸濁剤/粘度増加剤を含む。
【0021】
本開示のある特定の態様において、開示された経口フィルム製剤は、APIに対する比が約1:0.74~約1:1.5で粘膜付着性フィルム形成剤を含む。
【0022】
本開示のある特定の態様において、開示された経口フィルム製剤は、約9:1~約1:1の比で両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤の両方を含み、総溶解度向上剤のAPIに対する比は、約1:0.6~1:3である。
【0023】
本開示のある特定の態様において、開示された経口フィルム製剤は、API含有量に対する比が約0.03:1~約0.33:1で非両親媒性溶解度向上剤を含む。
【0024】
本開示のある特定の態様において、開示された経口フィルム製剤は、API含有量に対する比が約1:2.3~約1:16で凝集抑制剤を含む。
【0025】
本開示のある特定の態様において、開示された経口フィルム製剤は、API含有量に対する比が約1:1~約1:4で界面活性剤を含む。
【0026】
本開示のある特定の態様において、開示された経口フィルム製剤は、約1:1~約1:3.25の比で共界面活性剤および界面活性剤を含み、共界面活性剤のAPI含有量に対する比は、約1:2.2~約1:7である。
【0027】
本開示のある特定の他の態様において、被験者の頬側口腔内で薬剤の輸送を与えるための経口フィルムは、溶解性または崩壊性のフィルムマトリックスを含む。
【0028】
本開示のある特定の態様において、経口フィルムマトリックスは、フィルムマトリックス中に可溶化されているか、事前に可溶化され、その後フィルムマトリックス内に分散されるか、フィルムマトリックスに懸濁されるか、ポリマーマトリックスに埋め込まれているか、それらの組み合わせであるAPIを有する。
【0029】
本開示のある特定の態様において、開示された経口フィルム製剤は、低溶解度API、界面活性剤、酸性pHおよび少なくとも2つのポリマーを含み、低溶解度APIは、経口フィルム製剤の少なくとも22重量%、好ましくは30重量%、最も好ましくは37重量%である。
【0030】
本開示のある特定の態様において、低溶解度APIは、マロピタントである。
【0031】
本開示のある特定の態様において、開示された経口フィルム製剤は、pHが5未満である。
【0032】
本開示のある特定の態様において、開示された製剤および賦形剤は、動物での使用に特に適している。
【0033】
本開示のある特定の態様において、開示された製剤は、動物の嗜好性を改善するために香料および風味増強剤をさらに含む。
【0034】
種々の実施形態のこれらおよび他の特徴、利点および目的は、以下の明細書および特許請求の範囲を参照してより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、メチルエチルケトン(MEK)、ポリエチレングリコール(PEG300)、およびメタノールの混合物中のフィルム143P24を例証する。
【
図2】
図2は、16分で振盪していない模擬唾液pH6.8中のフィルム143P80Aを例証する。
【
図3】
図3は、16分で振盪していない模擬唾液pH6.8中のフィルム143P80Bを例証する。同様に、
図4および
図5は、21分で振盪していない模擬唾液pH6.8中のフィルム143P80A(
図4)対143P80B(
図5)を例証する。
【
図4】
図4は、21分で振盪していない模擬唾液pH6.8中のフィルム143P80Aを例証する。
【
図5】
図5は、21分で振盪していない模擬唾液pH6.8中のフィルム143P80Bを例証する。
【
図6】
図6は、イヌにおけるフィルム143P81Aの血液データを例証する。
【
図7】
図7は、イヌにおける注射用マロピタントを例証する。
【
図8】
図8は、イヌにおけるマロピタント注射剤と比較したフィルム143P81Aを例証する。
【
図9】
図9は、異なるpHでのマロピタントの浸透性結果のグラフ描画である。
【
図10】
図10は、クエン酸ありなしのマロピタントフィルムの浸透性結果のグラフ描画である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書で開示されている経口フィルム剤形は、一般に、経口フィルム剤形API配合可能性を高めるため、およびそのような高API含有量を有する経口フィルムに一般に関連する任意の既知の欠陥を潜在的に軽減するために高含有量のAPIまたは高パーセンテージ(w/w)のAPIを含むフィルム製剤に関する。
【0037】
「経口フィルム剤形」は、一般に、所定量の活性薬剤を被験者に経口投与するために、被験者(ヒトまたは動物)により消化することができる食用組成物を指し、その組成物はフィルムの形状である。
【0038】
用語「フィルム」は、丸薬、錠剤、カプレット、およびカプセルとは明確に異なる剤形のタイプを指し、その剤形は、物質の薄いストリップである。そのようなフィルムは、典型的に、迅速に崩壊または迅速に溶解するが、必要な場合、より長い崩壊時間を示すこともできる。フィルムは、一般に、破損なしで折り曲げる、さらには折りたたむことを可能にするのに十分可とう性である。フィルムは、典型的に、5~35mmの程度の長さおよび幅の寸法を有するが、より大きいまたはより小さい寸法も可能であり、特定の状況下では望ましい場合があり、厚みは5~300μmの程度であるが、より厚いまたはより薄い厚みも可能であり、ある特定の状況下では望ましい場合がある。
【0039】
用語「マトリックス」または「フィルムマトリックス」は、ポリマー構成要素またはポリマーの混合物を指し、これは、経口フィルム剤形内にAPIを支持するフィルム形成マトリックスを作成する。
【0040】
用語「活性薬剤」は、主に医薬品有効成分(API)を指すが、また、一般に、被験者と化学的に相互作用し、疾患の症状を排除すること、または生物学的機能を調節することなどであるがそれらに限定されない生物学的変化を引き起こすために投与される、任意の薬剤を指す。
【0041】
用語「非晶質」は、固形物の非結晶型、原子の規則的な結晶組織を欠く状態を指す。固形物の非晶質の含有量(非晶性)は、等温熱量測定、粉末X線回折(PXRD)、示差走査熱量測定(DSC)、連続的な相対湿度灌流、微小熱量測定(cRHp)、および動的水蒸気吸着測定(DVS)を含む、多くの十分に確立された方法を使用して、正確で精密に評価することができる。本文書において、非晶質という用語はまた、30%または30%を超える、より好ましくは50%を上回る非晶質物質を示す活性薬剤を指す。
【0042】
用語「安定」は、分解プロファイルにおいて変化を示さないか、製品が通常の安定性条件(例えば25℃/60%RHおよび40℃/75%RH)に長期間曝露された場合、化学的劣化がないことも示しながら、確立された仕様および回復の範囲内に留まる製品を指す。
【0043】
用語「非可溶化」は、結晶、非晶質または部分非晶質の活性薬剤の大部分が、ポリマーマトリックス中に固体粒子(例えば連続した均質な半固体相)として均一に分布していることを意味する。APIの安定性は、部分的/非可溶化分散体としてAPIを使用することにより、完成したフィルム製品中で高めることができる。可溶化API、特に結晶APIは、保存期間中および貯蔵中に経時的に再結晶化する可能性があり、製品の全体的な生物学的利用能に悪影響をおよぼす可能性がある。部分的/非可溶化APIの選択はまた、患者の全身取り込みのために、分解挙動およびフィルム投与からのAPIの放出を制御するために使用することができる。APIの取り込みおよび吸収は、薬物溶解度および生物学的利用能により管理され、したがってその結晶性および粒径を制御することにより、ヒトまたは動物の体内でAPIの生物学的利用能に影響をおよぼすことを可能にする。
【0044】
250μmと等しいかそれより小さい平均粒径の直径(D50)は、マトリックスフィルム内に均一に分配された固体粒子のサイズ分布を指す。サイズは、経口消化の場合に粗さのテクスチャまたは不快な口当たりの経験のいずれも回避するのに十分小さい可能性がある。
【0045】
用語「懸濁された」(およびその変形)は、バルク液体媒体中の固形物質(例えば粒子または粉末)の分散体を指し、固形物質は、分子レベルでは完全に溶解されず、撹拌なしでは最終的に液体から沈殿する。懸濁液中で、懸濁した物質は、液体中に完全には溶解されない。
【0046】
用語「ポリマー」は、多くの繰り返し単位で作られた長い分子鎖を指す。
【0047】
用語「水溶性原料」は、特定の溶媒中に溶解することができる原料を指す。
【0048】
用語「非水溶性原料」は、特定の溶媒中に溶解することができないという意味の原料を指す。
【0049】
用語「懸濁剤」(「粘度増加剤」とも呼ばれる)は、薬物ビヒクルの粘度を十分に高めることにより、隣接する懸濁粒子が互いに結合するのに十分に接近することを防止するために使用され、立体の安定化により、懸濁液を安定に維持することができ、上記の特性のほか、ある特定の懸濁剤/粘度増加剤がさらに生物の粘膜と相互作用して強化された経口フィルムの粘膜付着性を作成する、水溶性原料または非水溶性原料またはそれらの組み合わせを指す。例には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(ポリマー構造は、疎水性(メトキシ基)および親水性置換基(ヒドロキシプロポキシ基)の両方を組み合わせ、2%水溶液粘度は、約1298~約5040ミリパスカル秒(mPas)(2%、20C)である)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(2%水溶液粘度は、約150mPasを超える(2%、25C))、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、水溶性カルボキシメチルセルロース(CMC)、ゲラン、プロピレングリコールアルギン酸、水溶性アルギン酸塩、アカシア、ペクチン、キサンタン、グアーガム、カラギーナン、および水不溶性アルギン酸誘導体、水不溶性CMC誘導体、コロイド状二酸化ケイ素、アガー、ローカストビーン、トラガカントなどのガムの1つまたは混合物の形状での多糖が含まれる。また、300mPAs(10%、20C)およびそれより大きい水溶液粘度を有する分子量(MW)が1000000MWおよびそれより大きい(85およびそれより大きいK値)ポリビニルピロリドンならびに高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)(MWが600000を超える)が含まれる。以下:HPMC(ポリマー構造は、疎水性および親水性置換基の両方を組み合わせていない、およびまたは水溶液粘度が1298mPas未満であるか5040mPasを超える(2%、20C))、メチルセルロース(MC)、微結晶セルロース(MCC)、粉末セルロース、グリコール酸ナトリウムでんぷん、でんぷん、1,000,000MW未満のMWおよび85未満のK値で、300mPAs未満(10%、20C)の水溶液粘度を有するポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリプラスドンクロスポビドン、HPC(2%水溶液粘度が150mPas未満(2%、25C)である)、水不溶性ベントナイトの1つまたは混合物は、用語「懸濁剤/粘度増加剤」の定義から排除される。
【0050】
用語「界面活性剤」は、極性親水性ヘッド(イオン性または非イオン性)および非極性疎水性テールを有する、親水性親油性バランス(HLB)が7であるかそれより高く、両親媒性構造を有する界面活性剤を指す。界面活性剤は、固体と懸濁ビヒクルとの間の界面張力および接触角を低下させることにより、粒子の自由表面エネルギーを消失させるために使用され、PEG300オレイン酸グリセリド類(ラブラフィル(登録商標)M-1944CS)、PEG300リノール酸グリセリド類(ラブラフィル(登録商標)m-2125CS);ヒドロキシル化レシチン;カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド類;ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリオレエート;ソルビタンエステル類(ソルビタン脂肪酸エステル類)、例えば:ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、例えば:ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノイソステアレートポリエチレングリコールモノステアレート(Gelucire48/16)、14,600以下のMW、3100mPAs(77C)以下の粘度を有するポロキサマーを含むが、プロピレングリコールモノカプリレートI型、プロピレングリコールモノカプリレートII型、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、グリセリルモノオレエートなどのHLBが7未満の界面活性剤は除外する。
【0051】
必ずしも必要ではないが、共界面活性剤は、第2の界面活性剤として作用し、薬物可溶化を助けることができる。共界面活性剤は、界面活性剤と対をなし、固体と懸濁ビヒクルとの間の界面張力を十分に下げる。共界面活性剤には、短鎖および中鎖アルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、またはプロピレングリコール;PEG400などのポリエチレングリコール類、グリセロールなどのアルカントリオール;N-メチルピロリドン(Pharmasolve)、2-ピロリドン(Soluphor P);ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(商標))、プロピレングリコールモノカプリレートI型、プロピレングリコールモノカプリレートII型、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエートが含まれるが、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオールは除外される。共界面活性剤は、時には溶解度向上剤として、ある特定の場合には可塑剤として作用することができる。
【0052】
用語「溶解度向上剤」はまた、非共有相互作用を介して低溶解度の薬物を可溶化するために使用され、前記薬物の分解および生物学的利用能の強化を可能にする賦形剤を指す。非共有相互作用には、ファンデルワールス力、水素結合、双極子-双極子およびイオン-双極子相互作用が含まれ、ある特定の場合には電磁相互作用が好ましい。本開示において、溶解度向上剤は、2種類の賦形剤の組み合わせ:疎水性および親水性の構成成分の両方を有するタイプ(I)の両親媒性構造および親水性構成成分の大部分もしくは疎水性構成成分の大部分のいずれかまたはそれらの組み合わせを有するタイプ(II)の非両親媒性構造を含む。溶解度向上剤は、2つのカテゴリの両親媒性溶解度向上剤に分割される、A)150mPas以下(NMT)(5%、25C)の水溶液粘度を有する低分子量(MW)のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(95,000以下)のセルロース系、B)HLBが3~12(カテゴリI)またはHLBが12以上(カテゴリII)または2つのカテゴリの組み合わせの界面活性剤:ラウリル硫酸ナトリウム、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)およびポリ(プロピレンオキシド)(PPO)のコポリマー、すなわち14,600以下のMW、3100mPas(77C)以下の粘度を有するポロキサマー;PEG300オレイン酸グリセリド類、PEG300リノール酸グリセリド類;ソルビタンエステル類(ソルビタン脂肪酸エステル類)、例えば:ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、例えば:ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノイソステアレートプロピレングリコールモノカプリレートI型およびII型、カプリロカプロイルポリオキシ-8グリセリド類。C)NMT700mPAs(10%、20C)の水溶液粘度を有する1,500,000以下のMWのポリビニルピロリドン、D)NMT90mPAs(5%、25C)の水溶性粘度を有する200,000以下のMWのポリエチレンオキシド(PEO)。シクロデキストリン類。非両親媒性溶解度向上剤の第2のカテゴリ、タイプ(II):A)親水性の構成成分の大部分を有する:グリセロール、プロピレングリコール、およびPEG。6600以下のMWで390mPas以下(NMT)(98.98C+/-0.3C)の粘度の前記PEG、B)親水性親油性バランス(HLB)が3未満の油状の界面活性剤および油状の溶解度向上剤などの疎水性構成成分の大部分を有する:中鎖トリグリセリド(MCT)およびグリセロールモノリノレエート(Maisin CC(商標))、大豆油、オリーブ油、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート。
【0053】
用語「粘膜付着性フィルム形成剤」は、フィルムマトリックス、フィルムストリップ、フィルムシートを形成し、水性環境中で分解し、生体付着特性を粘膜に付与するポリマーを指し、その例にはPEO、プルラン、CMC、HPC、HPMCが含まれ、エチルセルロース(EC)、ポリビニルアルコール(PVA)、でんぷん、ポリメタクリレートポリマーは除外される。
【0054】
用語「凝集抑制剤」は、経時的に成長する傾向があるマイクロサイズの難溶性薬物粒子を防止するために使用される親水性ポリマーを指し、それらにとって、ポリビニルピロリドンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、より熱力学的に安定した分配が好ましく、ポリマー構造は、疎水性(メトキシ基)および親水性置換基(ヒドロキシプロポキシ基)の両方を組み合わせており、5040mPas以下(2%、20C)の水溶液粘度を有しており、単独で、または5040mPas以下(2%、20C)の水溶液粘度のメチルセルロース(MC)と混合して使用し、5040mPasを超える(2%、20C)水溶液粘度のHPMCおよびMC単独は除外される。
【0055】
用語「防腐剤」は、あらゆる細菌を死滅させ、薬物の貯蔵中に生じる可能性があるカビの増殖を防止するための薬学的に許容される原料を指し、その例にはメチルプロピルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、プロピレングリコール、および安息香酸が含まれる。
【0056】
フィルム層は、その長さまたは幅よりも遥かに小さい厚みを有するシート様物質である。例えば、経口経粘膜デバイスは、典型的に、約50μm~500μm(すなわち、0.05mm~0.5mm)程度の厚みを有するが、より厚いまたはより薄いフィルムは適している可能性がある;幅および長さの寸法は、典型的に約5mm~36mm程度であるが、より大きいまたはより小さい寸法を使用することができる。フィルム層は、同様に円形または楕円形の形状であり得、まっすぐか丸まった角を有する。本開示によるフィルム層は、1.5mmと等しいか、それより薄い活性物質含有フィルム層として理解される。
【0057】
頬内または舌下のフィルム剤形は、単一のフィルム層、または複数の層を含むことができる。いくらかの実施形態において、二層または多層のフィルムは、口腔粘膜に対して配置されるAPIを含む粘膜付着性層および舌もしくは咀嚼からの摩擦に対して、または単に唾液の定期的な洗浄に対して保護バリアとして作用する粘膜から外に向かう第2の層を含む。この保護層はまた、胃腸(GI)管での腸内摂取よりもむしろ口腔内でのAPIの指向性吸収を促進するように機能する。用語「粘膜付着性または生体付着性」は、フィルム層の組成物が粘膜に付着するように製剤化されることを意味し、粘膜を通る活性薬剤の送達が目標とされる。例えば、フィルムを製剤化する際に使用される生体付着性ポリマーは、生体付着層が、適用された粘膜と接触したままであり、活性薬剤が粘膜を通って血流に直接入ることを可能にすることを確実にするために標的となる粘膜での環境内で適切な付着を示すように選択されるべきである。粘膜付着性原料は、多くの場合、製品と粘膜表面との間の強力な結合を担っている。
【0058】
用語「着香料または香料」およびその変形は、一般に、塩味、甘味、または酸味を除く風味を付与するために使用される、それらの製造で必要とされる風味補助剤あり、またはなしの濃縮製剤を指す。着香料は、天然、人工、またはすべての天然および合成の香料を組み合わせることによる天然および人工(N&A)または当技術分野で既知の他の形態として分類される可能性がある。着香料は、固形の着香料および液体の着香料として、それらの物理的分類により類別される。
【0059】
用語「風味増強剤」およびその変形は、一般に、ある特定の味を特に強化するか、それら自体の特に強い味を有することなく望ましくない風味を低減する化合物を指す。それらは、呈味成分を調和させ、食品/薬物製剤をより快適なものにする。例には、マルトール、エチルマルトールおよびグルタミン酸一ナトリウム、グルタミン酸、グルタミン酸塩、プリン-5-リボヌクレオチド類、イノシン、グアノシン、アデノシン5-一リン酸類、糖類、甘味料、カルボン酸類(例えば、クエン酸、りんご酸、および酒石酸)、食塩(NaCl)、アミノ酸類、いくらかのアミノ酸誘導体(例えば、グルタミン酸一ナトリウム-MSG)、および頻繁に使用される香辛料(例えば、コショウ)、酵母、酵母エキス、乾燥酵母など、またはそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0060】
用語「甘味料」およびその変形は、一般に、甘味を食品または製剤に付与するために使用される固体または液体の原料を指す。甘味料は、多くの場合、栄養(カロリー)または非栄養(ノンカロリー)、天然または合成のいずれかとして分類される。甘味料の例には、スクロース、デキストロース、ラクトース、グルコース、アドバンテーム、ソルビトール、マンニトール、液状グルコース、蜂蜜糖蜜、サッカリン、スクラロース、レバウジオシドAステビア、レバウジオシドMステビア、ステビオシド、モグロシドIV、モグロシドV、アリテーム、サッカリン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、チクロ、ネオテーム、N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシベンジルイル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン1-メチルエステル、N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-3-メチルブタニル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン1-メチルエステル、N-[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン1-メチルエステル、クルクリン、チクロ、アスパルテーム、アセスルファムカリウムなどまたはそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0061】
用語「可塑剤」は、フィルム形成ポリマー(例えば、フィルム中の水溶性ポリマーまたは複数の水溶性ポリマー)のガラス転移温度を下げる構成要素を指す。可塑剤は、可とう性を高め、弾性を高め、フィルムの脆さを低下させる。本開示のフィルム経口剤形で使用することができる可塑剤の例には、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリオクチル、アセチルクエン酸トリオクチル、クエン酸トリヘキシル、セバシン酸ジブチル、PEG300、PEG400、グリセリンなどが含まれる。可塑剤は、フィルム経口剤形の全質量の25%以下、例えば0.5%~25%、1%~20%、2%~15%または5%~10%の量で添加される可能性がある。
【0062】
本開示の固形製剤に使用するための難水溶性物質の難水溶性は、水にAPIを可溶化する困難に関連する特性を意味する。本開示において、例えば、37℃での難水溶性物質の溶解度は、10mg/L以下、好ましくは1mg/L以下、より好ましくは0.5mg/L以下である。
【0063】
APIまたは製剤は、生物薬剤学分類システム(BCS)にしたがって、最も高い用量強度が<250mlの水に1~7.5のpH範囲全体にわたって溶解する場合、溶解度が高いと考えられる。
【0064】
本明細書で使用されるように、溶解度は、以下のように決定される。最初に、過剰量の難水溶性物質が精製水(5ml)に添加される。得られる混合物を、温度自動調節タンク中、37℃で30分間インキュベートし、ボルテックスミキサ内で撹拌する。インキュベートおよび撹拌のサイクルを3回以上繰り返し、得られる懸濁液をシリンジフィルタ(日本ポールにより製造された、商標名:アクロディスクLC25、PVDF、孔径0.2mm)で濾過する。濾液中の難水溶性物質の濃度(mg/L)を溶解度とみなす。
【0065】
ある特定の実施形態によれば、経口フィルム製剤は、フィルムマトリックスおよびAPIを含む。マロピタントは、本開示の適用性を示すための代表的な活性物質として本明細書で使用された。APIは、溶媒系、メチルエチルケトン(MEK)、ポリエチレングリコール(PEG300)、およびメタノールの混合物に初期に完全に可溶化された。ここで表1を参照すると、APIは、溶媒系を含むフィルム製剤に製剤化された。有機溶媒および水に可溶化するフィルム形成剤ポリマーのリストが、大量の利用可能な水溶性フィルム形成ポリマーと比較した場合に限定されるので、溶媒系は、フィルム形成剤ポリマーの選択など、さらなる課題が存在する。製剤化に対処するこの限定された適合ポリマーの選択は、ポリマーフィルムマトリックスを有する溶媒ベースの経口フィルム製剤を開発する場合、克服すべき重要なハードルとなる。現在例証している製剤(表1)において、製剤143P24A湿式ブレンドは、ライナーにコーティングしてから、40℃の温度で60分の期間乾燥させ、API含有量が20×30mmのフィルム表面積あたり60mgであるフィルムのコーティングされたウェブとなった。それらの経口フィルムは、良好なフィルム形成特性を示したが、APIの再結晶化が製造後まもなく観察された(
図1を参照されたい)。分解プロファイル、API安定性、機械的フィルム特性などの経口フィルムの重要な特性に影響する可能性があるので、APIの再結晶化は、経口フィルム開発において望ましくない。
【0066】
【0067】
以前例証した製剤1で得られた明らかな結晶化を軽減するために、代替の製剤および代替のプロセスを使用した。APIは、代わりに、フィルムをキャストするために使用したポリマーの水溶液中、微粒子形状で懸濁された。懸濁したAPIアプローチを使用すると、キャスト経口フィルム内で制御されていない不要な再結晶化を防止または少なくとも軽減することに役立つ。ポリマーを有する水溶液中で微粒子状のAPIを使用すると、結果として、懸濁したAPIをその中に含む均一に分配された二相性フィルムとなる。この代替の製剤およびプロセスは、再結晶化の低減、軽減および/または防止には十分であるが、経口フィルム投与あたりのAPI含有量の均一性に関してさらなる重大な課題が存在する。経口フィルムテクスチャに関しても重大な課題が存在し、多くの場合、受け入れられないフィルム機械的特性が生じる。経口フィルムの機械的特性は、脆い、したがって経時的に亀裂が入る経口フィルム製品、十分には硬くない製品、キャスト経口フィルム剤形の適切な包装を可能にする適切な付着特性を有していない製品を有するなどのいくつかの理由で受け入れられない可能性がある。ここで表3を参照すると、APIは、マロピタント(有効成分の生物薬剤学分類システム、BCSクラスII)を使用してメタノール中の懸濁液として製剤化された。この製剤は、結果として、フィルム形成剤ポリマーの添加の前にメタノール中での大きい結晶の形成となり、製剤化の失敗を表していた。前の溶液への水の一部の添加は、結果として大きい凝集体となった。
【0068】
【0069】
製剤2の失敗に続いて、APIは、分散粒子として新規製剤に配合された。この新規製剤である製剤3(表3を参照)は、サポートライナーへの粘着性が望ましくない程度に高いレベルを示す経口フィルムで生成される。適切な付着特性は、経口フィルム開発において、実験室規模の製剤から商業規模のプロセスへのスケールアップ能力を評価する際に重要である。この望ましくない程度に高い付着力は、フィルム製剤を大規模製造に適さないものにする。さらに、製剤3は、より長い崩壊時間を示す。この製剤3(表3を参照)の崩壊時間は、異なるAPI、すなわちタダラフィルを使用する同様の製剤(製剤4、表4を参照)と比較した場合、タダラフィルがマロピタントと同じBCSクラスIIであり、製剤中に同じ量で存在する事実にもかかわらず、6倍長い。そのため、高活性物質濃度または高配合の経口フィルムに使用された場合、表面上同様のAPIの崩壊特性における驚くほど重大な差異が示される。これは、経口フィルムの活性物質の量が多いほど(活性物質濃度が高いほど)、フィルム特性がそのような活性物質の物理的および化学的特性により、おそらく経口フィルムマトリックスと安定的な方法で相互作用するその物理的能力により、より多くの影響を受けるので重要である。
【0070】
【0071】
【0072】
実施形態によれば、難水溶性で高親油性の薬物であるマロピタント(生物薬剤学分類システム、BCSクラスII)は、異なるOFマトリックスに高配合(最大表面が600mm2であるか、最小濃度がmm2あたり約0.08mgである経口フィルム剤形あたり少なくとも50mg)で組み込まれる。マロピタントは、本研究のモデル薬物として使用された。抗嘔吐薬であるクエン酸マロピタントは、イヌおよびネコなどのコンパニオンアニマルにおける嘔吐および乗り物酔いを処置するために、錠剤の形状で経口投与されるか、皮膚の下に注射される。これまでの失敗した試みおよび製剤化の失敗にもかかわらず、マロピタントは、高配合の経口フィルムに成功裏に取り込まれた(製剤5、表5を参照)。代表的な薬物高配合のOF製剤を表す製剤5は、API、フィルム形成ポリマー、可塑剤、共界面活性剤を含む。
【0073】
実施形態によれば、フィルム形成剤ポリマーに適した薬物高配合の経口フィルム剤形には、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸プロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、プルラン、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ガムが含まれるがこれらに限定されない。適切な界面活性剤には、PEG300(ジポリヒドロキシステアレート)が含まれるがこれらに限定されない。適切な可塑剤/共界面活性剤には、ヒドロキシル化レシチン、ラブラフィル(種々のテールを有するポリ-オキシル-6グリセリド類)、およびtween20が含まれるがこれらに限定されない。さらに、高配合の経口フィルムは、油を含む可能性がある。そのような高いフレーバ・カバレッジが必要とされる場合、高配合経口フィルムに適した油には、MCT、Maisine(グリセロールモノリノレエート)およびハッカ油などのフレーバオイルが含まれるがこれらに限定されない。ポリマー、可塑剤、界面活性剤、および油の種類と量との間の相互作用は、高配合のOFの機械的強度ならびに分解、崩壊、および粘膜付着性能に対して重要な役割を果たす。
【0074】
薬物高配合OFの開発中に生じる問題は、主にその機械的特性および粘膜付着性に関する。そのため、可とう性、崩壊時間、折りたたみおよび粘着性に対するAPI配合、界面活性剤、可塑剤および/またはポリマーの濃度の影響は、予備的に評価された。
【0075】
実施形態によれば、フィルムブレンドは、水ベース、溶媒ベースまたは溶媒ベースおよび水ベースの系の組み合わせを使用する。本開示のある特定の態様におけるAPIは、フィルムマトリックスに分散、またはフィルムマトリックスに可溶化、または予め可溶化した後にフィルムマトリックスに分散、ポリマーマトリックスに埋め込み、またはそれらの組み合わせで配合される。異なるフィルム製剤は、異なる溶媒系でのポリマー、界面活性剤、および可塑剤の組み合わせおよび濃度を変更することにより調製された。
【0076】
本明細書で開示されているものは、3つの異なる製剤化アプローチである懸濁、溶解および事前の可溶化である。
【0077】
懸濁されたAPIベースの経口フィルム製剤は、APIを液体ブレンドに懸濁し、その後、後に続くコーティングおよび乾燥中に固形経口フィルムマトリックス内に分散されることにより調製される。(例:143P81B、143P37A)。
【0078】
この代表的な製剤におけるフィルムブレンド製造プロセスは、APIが、ヒドロキシル化レシチンなどであるがこれに限定されない両親媒性界面活性剤およびグリセリンなどであるがこれに限定されない共界面活性剤に懸濁され、その後均質化されている水ベースの系を含む。均質化ステップが実行されると、API懸濁液は、HPMC(E4M)などであるがこれに限定されない高粘度のポリマーの添加で安定化される。しかし、フィルム形成ポリマーの導入前、(PEG300)などであるがこれに限定されない可塑剤は、ブレンドに導入される。可塑剤は、完成した最終の乾燥OF製品における経口フィルム可とう性を最適化するために添加される。可塑剤が添加されると、HPC(SSL)などであるがこれに限定されない低粘度のポリマーは、前の湿式ブレンドに添加される。このように、低粘度のポリマーは、前のAPI懸濁液と一緒にブレンドされ、有機APIの水系への組み込みを支援する。低粘度のポリマーの添加は、HPMC E50の添加に続き、最終の乾燥OFでのAPI結晶成長を防止する。湿式ブレンドに風味を付与するため、香料(すなわち天然ペット香料(PC-0050))、風味増強剤(すなわちSavorboost BK)、および甘味料(すなわちMagnasweet)を湿式ブレンドとブレンドして、最終の乾燥OFにおける許容される風味プロファイルを作成する。ブレンドプロセスの最後のステップで、PEOなどであるがこれに限定されない主要なフィルム形成剤ポリマーが添加され、ブレンドと混合される。最終のブレンドは、その後脱気され、存在する気泡を除去する。脱気プロセスが完了すると、ブレンドは指定された間隔で平坦なライナーに注がれ、コーティングされたライナーは、その後オーブン乾燥され、経口フィルムウェブを生成する。経口フィルムウェブは、その後、所望の寸法に切断され、個々のパウチに包装される。
【0079】
【0080】
他の実施形態によれば、ここで製剤6、表6を参照すると、同様のフィルムブレンド製造プロセスを使用して、APIを均質化し、溶解度が異なる2つの界面活性剤(すなわち、水分散性界面活性剤ラブラフィル2125CS(リノレオイルポリオキシ-6グリセリド類)および水溶性界面活性剤Tween20)および可塑剤(すなわちグリセリン)を有する水中で懸濁液を作成する。第1の均質化の後、API懸濁液は、PGA LV(アルギン酸プロピレングリコール低粘度)などであるがこれに限定されない高粘度ポリマーの支援により安定化される。最後に、主要なフィルム形成ポリマー(すなわちプルラン)は、API懸濁液とブレンドされる。ブレンドの脱気の後、ブレンドは、以前記載したものと同じプロセスにしたがって、個々のパウチに包装された完成したOFを生成する。
【0081】
【0082】
いくらかの実施形態によれば、ここで代表的な製剤7、表7を参照すると、高配合の経口フィルムを設計する第2のアプローチを、経口フィルム剤形内での事前に可溶化したAPIの使用のために利用する。このプロセスにおいて、経口フィルム剤形の調製には、溶媒系の溶媒和特性を変更することでさらに懸濁される液体ブレンド中にAPIを可溶化することが含まれる。溶媒中に沈殿したAPIは、その後、最終の経口フィルム製品をコーティングおよび乾燥させることにより固形フィルムマトリックス内にさらに分散される(例:143P26C)。
【0083】
この例において、選択されたAPI候補であるマロピタントを、2つの界面活性剤(すなわちラブラフィル2125CsおよびTween20)の支援により、MEKおよびメタノールで作られた溶媒ベースの系に可溶化する。APIの分解が達成された後、MEK-メタノールの混合物に不溶性であるグリコール酸ナトリウムでんぷんを、ステップワイズで系に添加し、溶媒混合物におけるAPI溶解度を調節する。その後、APIは、グリコール酸でんぷんの添加の結果として沈殿する。沈殿した(または事前に可溶化した)APIを、その後グリコール酸ナトリウムでんぷんのネットワークに分散させる。HPC GXFなどであるがこれに限定されない増粘剤ポリマーは、APIの分散を支持し、さらなる結晶成長を防止するためにブレンドに添加される。後の段階で、HPC LFおよびPVP K90などであるがこれらに限定されない主要なフィルム形成ポリマーは、湿式ブレンドと一緒にブレンドされ、最適な可とう性を生成し、最終の乾燥OF中のAPI結晶成長(PVP K90)を防止する。最終のブレンドを脱気して気泡を除去し、その後、指定された間隔で平坦なライナーに注ぎ、コーティングされたライナーはオーブンで乾燥され、所望の寸法に切断され、個々のパウチに包装されるフィルムウェブを生成する。
【0084】
【0085】
実施形態によれば、ここで製剤8、表8を参照すると、API候補は、2つの界面活性剤(すなわちラブラフィル2125CsおよびTween20)の支援により、MEKで作られた溶媒ベースの系に可溶化される。APIの可溶化後、精製水をステップワイズで系に添加して、API溶解度を変更し、API粒径の増大を制御して、微細懸濁液を得る。水溶性フィルム形成剤ポリマーおよび増粘剤を湿式ブレンドと一緒にブレンドし、安定に分散した懸濁系を作成する。最終のブレンドを脱気して気泡を除去し、その後、指定された間隔で平坦なライナーに注ぎ、コーティングされたライナーはオーブンで乾燥され、所望の寸法に切断され、個々のパウチに包装されるフィルムウェブを生成する。
【0086】
【0087】
いくらかの実施形態によれば、APIは経口フィルム剤形に可溶化される。経口フィルム投与の調製のこのプロセスにおいて、APIは、溶解した担体賦形剤を有する液体ブレンドに可溶化される。APIが溶解した担体賦形剤で可溶化されると、この溶液は、コーティングおよび乾燥すると、固形のフィルムマトリックス内に分散されるようになる。(例:143p23A、143p23B)
【0088】
ここで製剤9、表9を参照すると、選択されたAPI候補であるマロピタントは、油ビヒクルMCTおよび共界面活性剤PEG300の支援により、MEKおよびメタノールで作られた溶媒ベースの系に可溶化される。API分解の後、水溶性フィルム形成剤ポリマーであるコポビドンおよびHPC LFは、湿式ブレンドと一緒にブレンドされ、透明なマロピタント溶液を作成する。最終のブレンドを脱気して気泡を除去し、その後、指定された間隔で平坦なライナーに注ぎ、コーティングされたライナーはオーブンで乾燥され、所望の寸法に切断され、個々のパウチに包装されるフィルムウェブを生成する。製剤9は、適切な溶媒ベースの製剤の代表的な製剤であり、そこでAPIは、経口フィルムマトリックス内で分解され、それによって経口フィルムの内容物の均一性が改善される。
【0089】
【0090】
ここで製剤10、表10を参照すると、MCT油が除去された製剤9の代替の製剤が開示される。
【0091】
【0092】
ここで表11を参照すると、フィルムブレンドが水ベースの系、溶媒ベースの系またはそれらの組み合わせを使用することが開示される。本開示のある特定の態様におけるAPIは、フィルムマトリックスに分散、フィルムマトリックスに可溶化、または予め可溶化した後にフィルムマトリックスに分散、ポリマーマトリックスに埋め込み、またはそれらの組み合わせで配合される。異なるフィルム製剤は、異なる溶媒系でのポリマー、界面活性剤、および可塑剤の濃度を変更し、適切な経口フィルム剤形を提供し、本開示のある特定の態様を最適化することにより調製された。
【0093】
【0094】
さらに表11を参照すると、一定で迅速な再結晶化のため、完全に可溶化したアプローチが成功せず、事前に可溶化したアプローチが評価されたと結論づけることができるが、スケールアップを準備するのに移動するためにより実験が必要とされ、懸濁されたアプローチは、スケールアップを準備するために限られた製剤化を必要とする。
【0095】
多くの製剤化戦略は、マロピタントの原薬の水溶解性が低いことを克服し、多量のこのAPIを経口フィルムに配合するために調査されてきている。APIがフィルムマトリックスに分散している場合、またはAPIが可溶化されている場合、製剤化のためのアプローチの成功が達成される。フィルムマトリックスの物理的特性、崩壊速度、原薬有効表面積および溶解度などの製剤化の他の態様はまた、フィルム溶解速度、したがってAPI生物学的利用能を改善させるために考慮された。
【0096】
マロピタントは、BCSクラスII化合物であり、低溶解度および高浸透性を有しており、その水溶性が生物学的利用能の制限要因となることを意味する。そのため、開発された製剤化の重要なパラメータは、選択された製造溶媒系での溶解度である。
【0097】
以下の溶解度研究を、種々の溶媒および溶解度向上剤中、マロピタント原薬で実行した。結果から、フィルムマトリックス内に最大80mgのAPIを配合する有望なプロトタイプが明らかになっている。溶解度研究の間、APIをステップワイズで、溶解度向上剤があるか溶解度向上剤がない、一連の許可された溶媒(または溶媒の組み合わせ)に可溶化した。溶媒系は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、および水に基づいていた。溶解度向上剤には、Maiscine CC(MGO)(HLB1)、中鎖トリグリセリド(MCT)油(HLB1)、ラブラフィル1944cs(HLB9)、ラブラフィル2125CS(HLB9)、グリセリン、Tween20(HLB16.7)、PEG300、プロピレングリコール、SLS(HLB40)が含まれていた。得られた混合物は、可溶化を評価するために目視検査された。使用された主要な装置は、ガラス瓶、マグネチックスターラーバー、スターラープレート、および超音波破砕装置であった。結果を以下の表12に示す。
【0098】
【0099】
ここで表12を参照すると、MCTおよびラブラフィル2125CS、Tween20可溶化システムが、マロピタントフィルムを製剤化するのに最適な系と考えられると結論づけることができる。マロピタントOFは、以下の2つのアプローチ:フィルム内の可溶化APIまたは経口フィルムマトリックス内の懸濁されたAPIとして開発される。
【0100】
いくらかの実施形態によれば、APIはMEKを使用して可溶化され(またはアセトンもしくは他の組み合わせ溶媒中の溶解度を最適化し)、可溶化系(MCTおよびラブラフィル2125CS:Tween20)を添加する。課題は、MEKに可溶性であるフィルム形成剤の制限された数である。これを解決するために、溶媒系にいくらかの極性を導入するために1/5のメタノールを溶媒系に導入する。溶解度向上剤は、分解を促進するためおよびインビボでAPIの再結晶化を防止するために導入される。
【0101】
いくらかの実施形態によれば、APIは、アルコール、水、またはそれらとMEKもしくはアセトンとの組み合わせのうち1つを使用して懸濁される。目的は、フィルムブレンド中のAPIの粒径を制御することである。ホモジェナイザの使用は、ブレンド中のAPI PSDを制御するために推奨される。開示されるフィルム製剤技術が、溶媒を除去するための乾燥ステップを含むので、このステップは、APIがブレンド中に可溶化される場合、迅速な結晶化を生じる危険性をもたらす。高TGフィルム形成剤ポリマーの使用は、必須ではないが好ましい。
【0102】
実施形態によれば、フィルム形成ポリマーは、フィルム乾燥重量の30%~60%、好ましくは40%~50%を表し、形成する。APIの可溶化剤(solublizer)/界面活性剤に対する望ましい比は、1:3~1:4である。
【0103】
本開示のある特定の態様において、フィルムマトリックスは、生理液中で崩壊および/または分解する可能性がある。マトリックスの破壊の調節には、pH制御(例の143p80A 143P80B)、界面活性剤HLB変化(例の143P69A VS 143P80B)、医薬品有効成分の溶解度またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0104】
【0105】
フランツ型セルモデルを使用して、人工膜を通るマロピタントの浸透性を改善するために多くの実験を実行した。最初に、異なる比でマロピタントおよび異なる酸の溶液および懸濁液を調製した。
図9は、マロピタント/クエン酸溶液(比2.74:1、pH:4.24)、マロピタント/クエン酸懸濁液(比6.7:1、pH:5.22)、マロピタント/クエン酸懸濁液(比32:1、pH:6.22)およびマロピタント/リン酸クエン酸緩衝液(pH:8.0)の浸透性結果を示す。
【0106】
図9に示すように、結果から、酸性環境がマロピタントの浸透を促進することが示される。
【0107】
異なるpHでのマロピタントの溶液/懸濁液を用いて得られた結果に基づき、クエン酸ありなしのマロピタント経口フィルムを調製した。
【0108】
【0109】
【0110】
クエン酸を有するフィルム製剤(表14)の調製プロセスは、水ベースの系を含み、そこでAPIは、ヒドロキシル化レシチンなどであるがこれに限定されない界面活性剤、グリセリンおよびTween20などであるがこれらに限定されない共界面活性剤ならびにクエン酸に懸濁され、その後均質化される。均質化ステップが完了すると、API懸濁液は、HPMC(E4M)などであるがこれに限定されない高粘度ポリマーの添加で安定化される。ポリマーが添加および均質化されると、HPC(SSL)などであるがこれに限定されない低粘度ポリマーは、湿式ブレンドに添加され混合される。低粘度ポリマーの添加に続いて、最終の乾燥フィルムでのAPI結晶成長を防止するためにHPMC E50を添加する。続いて、PEOなどであるがこれに限定されない主要なフィルム形成剤ポリマーは添加され、ブレンドに混合される。最終のブレンドを脱気して、気泡の存在を除去した。脱気プロセスの完了で、ブレンドを指定された間隔でライナーにコーティングし、乾燥して所望の寸法に切断し、個々のパウチに包装する。
【0111】
クエン酸がない経口フィルム(表15)の製造は、クエン酸があるフィルムと同じ製造プロセスを使用した。
【0112】
製剤143P80A対143P80Bの比較により、クエン酸の使用が浸食を促進し、得られるOFが、崩壊なしで浸食されることが明らかになる。
【0113】
製剤143P69A対143P80Bの比較(両方ともクエン酸をまったく含まない)により、tween20の存在下での崩壊がより遅くなることが明らかになる。
【0114】
クエン酸またはtween20のいずれかの使用により、乳濁液形成を中断させるようである。
【0115】
図2および
図3は、16分で振盪がない偽唾液pH6.8でのフィルム143P80A(
図2)対143P80B(
図3)を例証する。同様に、
図4および
図5は、21分で振盪がない偽唾液pH6.87でのフィルム143P80A(
図4)対143P80B(
図5)を例証する。
【0116】
21分で振盪がない偽唾液pH6.8での143P80B(
図5)。
【0117】
図9は、クエン酸がないものに対して製剤がクエン酸を含む場合の改善されたマロピタント浸透性を例証する。
【0118】
粘膜付着の最適化
【0119】
OFは、経口粘膜の表面に付着するように設計されるべきである。付着は、既知の粘膜付着性OFと比較して評価される。
【0120】
以下の例(143P81A対143P81B)について、粘膜付着性は、経口粘膜を刺激するために、脱塩水に溶解した6.7%w/wゼラチンをペトリ皿に注ぎ、室温で冷却させたブタ皮膚ゼラチンディッシュプレートを使用することにより評価された。長方形のテストされたフィルムを、ゼラチンと10秒間接触させ、その後取り外した。ゼラチン表面へのOFの粘着性を評価する。
【0121】
【0122】
【0123】
製剤143p81A(糖:スクラロースを含む)対143P81B(可塑剤PEG300および粘膜付着性ポリマーHPMC E50を含む)の比較により、143p80Aがより粘着性であることが明らかになる。
【0124】
【0125】
【0126】
ここで表18および表19を参照すると、表16に概説された代表的な製剤を投与することにより得られた血液データが開示される。表18および表19のデータは、
図6、
図7および
図8に示される。驚いたことに、開示された高配合経口フィルム剤形は、平均で注射剤の75%を超えるまでのCmaxを示した。投与後1時間の血液濃度は、注射剤の50%以上であり、この動物投与の高配合経口フィルム製剤の明らかな成功を示した。
【0127】
タダラフィルを含む製剤は、マロピタントを含む製剤と比較された。
【0128】
BCS分類の4つのクラスのうち1つの親油性、疎水性、親水性の1つまたは複数のAPIの高API配合(60mg)を有する経口フィルムが開示される。
【0129】
タダラフィルはまた、薬物候補としてテストされた。経口摂取されたタダラフィルを使用して、男性の勃起不全を処置する。
【0130】
タダラフィルは、水に事実上不溶性である。製剤は、有機溶媒の混合物(メタノール、イソプロパノール、およびアセトン)中で開発される。
【0131】
【0132】
ある特定の実施形態によれば、フィルムマトリックスはまた、pH調整剤、甘味料、浸透促進剤、着香料、可塑剤、フィルム形成剤ポリマー、乳白剤および溶解度向上剤を含む可能性がある。経口フィルムはまた、微量の残留溶媒を含む可能性がある。いくらかの実施形態によれば、着香料はまた、浸透促進剤としても作用する可能性がある。
【0133】
ある特定の実施形態によれば、液体フィルム形成製剤は、一般に、少なくとも1つのフィルム形成ポリマーおよび溶媒系を含む。溶媒系は、単一の溶媒または典型的には混和性である2つもしくはそれより多い溶媒の混合物で構成することができる。液体フィルム形成製剤は、フィルムの機能性、加工性、味、安定性、または審美性を強化または修飾する他の原料を組み込む可能性がある。そのようなフィルム形成添加物には、着色剤、乳白剤、風味材料、可塑剤、界面活性剤、安定剤などが含まれる。
【0134】
本開示のフィルムに使用することができる水溶性ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースを含む水溶性セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、コポビドン(1-ビニル-2-ピロリドンおよび酢酸ビニルのコポリマー)、ビニルピロリドンの他のコポリマー、置換ビニルピロリドンの他のポリマーまたはコポリマー、ポリビニルピロリドンの誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、多糖類、キサンタン、トラガカント、グアー、アカシアおよびアラビアガムを含む天然ガム、ならびに水溶性ポリアクリレートが含まれる。同様に、事実上水に不溶性のポリマー、例えば微結晶セルロース、エチルセルロース、およびヒプロメロースフタレートは、製剤で使用することができる。これらの水溶性および非水溶性ポリマーまたは他のポリマーの組み合わせも使用することができる。
【0135】
ある特定の実施形態によれば、フィルムマトリックスはまた、種々の重量比のAPI/ポリマーを含む可能性がある。API/ポリマー重量比は、活性薬剤に応じて変更される可能性があるが、1に近いはずである。典型的な経口フィルムのポリマー/API重量比は、本明細書で開示されているものとは対照的に、典型的には約2:1~約10:1の範囲内であり、APIのポリマーに対する比は、1:1に近い、好ましくは約0.8:1~約1:0.8の範囲内、より好ましくは約0.9:1~約1:0.9の範囲内である。換言すると、開示されている経口フィルム剤形は、重量の観点からほぼ同一であるポリマー成分を有する。
【0136】
経口フィルム剤形の調製における上述した難水溶性APIの含有量は、一般に1wt%~40wt%、好ましくは2wt%~30wt%、より好ましくは5wt%~20wt%である。
【0137】
ある特定の実施形態によれば、上で概説したような難水溶性APIは、一般に、BCSのクラスIIまたはクラスIVとして分類されたAPIであると理解されている。難溶性化合物またはAPIはまた、APIの塩である可能性がある。
【0138】
本開示のプロセスにおいて有利に使用される可能性がある薬物の例には、アセクロフェナク、アデノシン、アドリアマイシン、アルファカルシドール、アロセトロン、アルプラゾラム、アモキサシリン(amoxacilline)、硫酸アンフェタミン、アリピプラゾール、アスピリン、アトルバスタチンカルシウム、アトロピン、バシトラシン、ビカルタミド、ボセンタン、ブデソニド、ブスピロン、カルバマゼピン、セレコキシブ、シロスタゾール、シサプリド、シタロプラム、クロファジミン、クロピドグレル重硫酸塩、シクロスポリン、酢酸シプロテロン、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール、ダナゾール、デラビルジン、デスロラタジン、デキサメタゾン、ジアゼパム、ジクロフェナク、ジピリダモール、ドセタキセル、ドラルジン(dolargin)、ドンペリジン、ドンペリドン、ドネペジル、ドキソルビシン、エファビレツ(efavirez)、エンタカポン、エスタゾラム、エベロリムス、エゼチミブ、フェロジピン、フルニトラゼパム、フルタミド、葉酸、フルベストラン(fulvestran)、フロセミドゲフィチニブ、グリペリジド(gliperizide)、グリセオフルビン、ヒドロコルチゾン、イブプロフェン、インドメタシン、イトラコナゾン(itraconazone)、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ランドプラゾール(landoprazole)、レナリドミド、レボノルゲストレル、ロペラミド、ロラタジン、ロバスタチン、リゾチーム、メカミルアミン、メタフェタミン(metaphetamine)、モルヒネ、ナプロキセン、ナプロキソン(naproxone)、ニフェジピン、ニトラゼパム、ノルエチンドロン、ノルゲスチマート、ノルゲストレル、オフロキサシン、オランゼピン(olanzepine)、オメプラゾール、パクリタキセルフィトステロール、ピモジド、ピロキシカム、プラゼパム、プロゲステロン、ラロキシフェンHCl、ラロキシフェン、リドグレル、サリチル酸、シンバスタチン、スチグマステロール、タダラフィル、テムシロリムス、テルフェナジン、トルバプタン、トラコリムス(tracolimus)、トリクラベンダゾール、トリプシンシュリン(trypsinsulin)、ツボクラリン、ジドブジン、ジプラシドン、およびβ-エストラジオールが含まれる。
【0139】
ある特定の実施形態によれば、高含有量の難水溶性APIを有する経口フィルム製剤(例えば、経口フィルム製剤中の難水溶性物質の含有量が20wt%以下である経口フィルム製剤)が開示される。
【0140】
ある特定の実施形態によれば、経口フィルム剤形は、フィルム内で微粒子形状であるのとは対照的に可溶化されているAPIを含む。
【0141】
ある特定の実施形態によれば、経口フィルム剤形は、フィルムマトリックス内に懸濁状態で配置されているAPIを含む。そのような実施形態において、APIは、好ましくはD(90)が約2~20μmの粒径を有する粒子を有する微粒子状のAPIである。事実上不溶性であるか難水溶性のAPIは、微粒子状の活性物質として経口フィルム剤形内に組み込まれる可能性がある。
【0142】
ある特定の実施形態によれば、開示されている経口フィルム製剤は、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤、凝集抑制剤、界面活性剤、共界面活性剤を含み、懸濁剤/粘度増加剤は、約1:5~約1:15のAPI含有量の比で存在する。懸濁剤/粘度増加剤の界面活性剤に対する比は、一般に約1:2.3~約1:6.5、好ましくは約1:3.5~約1:4.5である。経口フィルム製剤の粘膜付着性フィルム形成剤のAPIに対する比は、約1:0.74~約1:1.5であるが、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤は両方とも、約9:1~約1:1の比で存在し、その際、総溶解度向上剤のAPIに対する比が約1:0.6~1:3、好ましくは1:1~1:2であり、非両親媒性溶解度向上剤単独では、API含有量に対して約0.03:1~約0.33:1の比である。そのような製剤中の好ましい凝集抑制剤は、API含有量に対する比が約1:2.3~約1:16である。界面活性剤は、API含有量に対する比が好ましくは約1:1~約1:4で存在し、共界面活性剤および界面活性剤は、比が約1:1~約1:3.25であり、共界面活性剤のAPIに対する比は、約1:2.2~約1:7である。
【0143】
ある特定の実施形態によれば、開示されている経口フィルム製剤は、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤、凝集抑制剤、界面活性剤、共界面活性剤を含み、懸濁剤/粘度増加剤は、API含有量に対して約1:5~約1:15の比で存在する。懸濁剤/粘度増加剤の界面活性剤に対する比は、一般に約1:2.3~約1:6.5、好ましくは約1:3.5~約1:4.5であり、粘度増加剤の界面活性剤に対する比は、典型的には約1;2.3~1:6.5である。経口フィルム製剤の粘膜付着性フィルム形成剤のAPIに対する比は、約1:0.74~約1:1.5であるが、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤は両方とも、約9:1~約1:1の比で存在し、その際、総溶解度向上剤のAPIに対する比は、約1:0.6~1:3、好ましくは1:1~1:2であり、非両親媒性溶解度向上剤単独ではAPI含有量に対して約0.03:1~約0.33:1の比である。そのような製剤中の好ましい凝集抑制剤は、API含有量に対する比が約1:2.3~約1:16である。界面活性剤は、API含有量に対する比が好ましくは約1:1~約1:4で存在し、共界面活性剤および界面活性剤は、比が約1:1~約1:3.25であり、共界面活性剤のAPIに対する比は、約1:2.2~約1:7である。
【0144】
ある特定の実施形態によれば、開示されている経口フィルム製剤は、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤、凝集抑制剤、界面活性剤、共界面活性剤を含み、懸濁剤/粘度増加剤は、API含有量に対して約1:5~約1:15の比で存在する。懸濁剤/粘度増加剤の界面活性剤に対する比は、一般に約1:2.3~約1:6.5、好ましくは約1:3.5~約1:4.5である。経口フィルム製剤の粘膜付着性フィルム形成剤のAPIに対する比は、約1:0.74~約1:1.5であるが、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤は両方とも、約9:1~約1:1の比で存在し、その際、総溶解度向上剤のAPIに対する比は、約1:0.6~1:3、好ましくは1:1~1:2であり、非両親媒性溶解度向上剤単独ではAPI含有量に対して約0.03:1~約0.33:1の比である。そのような製剤中の好ましい凝集抑制剤は、API含有量に対する比が約1:2.3~約1:16である。界面活性剤は、API含有量に対する比が好ましくは約1:1~約1:4で存在し、共界面活性剤および界面活性剤は、比が約1:1~約1:3.25であり、共界面活性剤のAPIに対する比は、約1:2.2~約1:7である。
【0145】
ある特定の実施形態によれば、開示されている経口フィルム製剤は、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤、凝集抑制剤、界面活性剤、共界面活性剤を含み、懸濁剤/粘度増加剤は、界面活性剤に対して、約1:2.3~約1:6.5の比で存在する。経口フィルム製剤の粘膜付着性フィルム形成剤のAPIに対する比は、約1:0.74~約1:1.5であるが、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤は両方とも、約9:1~約1:1の比で存在し、その際、総溶解度向上剤のAPIに対する比は、約1:0.6~1:3、好ましくは1:1~1:2であり、非両親媒性溶解度向上剤単独ではAPI含有量に対して約0.03:1~約0.33:1の比である。そのような製剤中の好ましい凝集抑制剤は、API含有量に対する比が約1:2.3~約1:16である。界面活性剤は、API含有量に対する比が好ましくは約1:1~約1:4で存在し、共界面活性剤および界面活性剤は、比が約1:1~約1:3.25であり、共界面活性剤のAPIに対する比は、約1:2.2~約1:7である。
【0146】
ある特定の実施形態によれば、開示されている経口フィルム製剤は、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤、界面活性剤、共界面活性剤を含み、懸濁剤/粘度増加剤は、API含有量に対して約1:5~約1:15の比で存在する。懸濁剤/粘度増加剤の界面活性剤に対する比は、一般に約1:2.3~約1:6.5、好ましくは約1:3.5~約1:4.5である。経口フィルム製剤の粘膜付着性フィルム形成剤のAPIに対する比は、約1:0.74~約1:1.5であるが、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤は両方とも、約9:1~約1:1の比で存在し、その際、総溶解度向上剤のAPIに対する比は、約1:0.6~1:3、好ましくは1:1~1:2であり、非両親媒性溶解度向上剤単独ではAPI含有量に対して約0.03:1~約0.33:1の比である。界面活性剤は、API含有量に対する比が好ましくは約1:1~約1:4で存在し、共界面活性剤および界面活性剤は、比が約1:1~約1:3.25であり、共界面活性剤のAPIに対する比は、約1:2.2~約1:7である。
【0147】
ある特定の実施形態によれば、開示されている経口フィルム製剤は、懸濁剤/粘度増加剤、粘膜付着性フィルム形成剤、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤、凝集抑制剤および界面活性剤を含み、懸濁剤/粘度増加剤は、APIに対して約1:5~約1:15の比で存在する。懸濁剤/粘度増加剤の界面活性剤に対する比は、一般に約1:2.3~約1:6.5、好ましくは約1:3.5~約1:4.5である。経口フィルム製剤の粘膜付着性フィルム形成剤のAPIに対する比は、約1:0.74~約1:1.5であるが、両親媒性溶解度向上剤および非両親媒性溶解度向上剤は両方とも、約9:1~約1:1の比で存在し、その際、総溶解度向上剤のAPIに対する比は、約1:0.6~1:3、好ましくは1:1~1:2であり、非両親媒性溶解度向上剤単独ではAPI含有量に対して約0.03:1~約0.33:1の比である。そのような製剤中の好ましい凝集抑制剤は、API含有量に対する比が約1:2.3~約1:16である。界面活性剤は、API含有量に対する比が好ましくは約1:1~約1:4で存在する。
【0148】
本開示のある特定の態様において、開示されているような製品を製造するプロセスには、活性薬剤を分散剤/可溶化剤に分散させ、結晶核生成および成長を阻害することにより活性薬剤の非晶形を安定化するステップが含まれる。非晶形の活性薬剤およびポリマー分散体を含む固形分散体粉末は、既知の技術を使用して生成することができる。分散体として使用することができるポリマーの例には、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、コポビドン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、オイドラギットE、オイドラギットNE、オイドラギットL&S、オイドラギットRL&RS、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメローススクシニルアセテート、エチレングリコール、プロピレングリコールブロックコポリマー(ポラキサマー(polaxamer))、ポリエチレングリコール、ポリメタクリレート類、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーおよびポビドンが含まれる。
【0149】
非晶質活性薬剤または非晶質活性薬剤を含む固形分散体は、活性薬剤を分解することなく液体フィルム形成製剤と混合される。懸濁液は、ある特定の速度で制限された時間の間混合され、懸濁された活性薬剤の含有量の均質性、許容される低レベルの気泡を有するブレンドを生成するが、活性薬剤の非晶質の性質を維持する。さらに、生成されたフィルムの安定性を高めるために、再結晶化の防止による既知の安定性向上の影響を有する分散体を使用することができる。経口フィルムの安定性には、一定の定義された期間にわたる分解生成物の形成に対する安定性が含まれ、同様に、非晶性および耐熱性を維持する。経口フィルムの安定性は、活性薬剤の分解プロファイルにより評価することができる。分解の速度における低下はいずれも、フィルム製品内の活性薬剤の非晶性変化の指標である。
【0150】
湿式ブレンドにおける混合速度は、非晶質または部分非晶質の活性薬剤を導入し、湿式ブレンド懸濁液および米国薬局方(USP)試験905およびまたはASTM E2810もしくはE2710の定義にしたがった含有量の均一性を有する最終のフィルム製品を作成するのに十分である。混合時間は、活性薬剤を可溶化していない均一な懸濁混合物を作成するために、混合速度と組み合わせて必要とされる時間である。非晶質の活性薬剤が液体ブレンドに溶解する場合、最終製品の物理的および化学的特徴は、大きく変化し、プロセスを不安定で予測不可能なものにし、再結晶の可能性の機会を高める。湿式ブレンド混合およびその組成は、非晶質の活性薬剤の再結晶化をもたらす再凝集を防止するように設定される必要がある。
【0151】
本明細書で開示されている経口フィルム剤形を製造する方法およびプロセスは、一般に固形の非晶形または部分非晶形で活性薬剤を調製、取得、またはそうでなければ提供することを含み、場合によっては活性薬剤をポリマー分散体と組み合わせ、液体フィルム形成製剤に活性薬剤を均一に懸濁している固形分散体と呼ばれる活性薬剤ポリマーベースの粒子系を得、溶媒を除去して(例えば乾燥オーブン内での蒸発により)、フィルムマトリックス内に均一で安定して分配された非晶質または部分非晶質の活性薬剤を含む固形経口フィルム剤形を得る。
【0152】
製造手順:
経口フィルムは、可溶性原料およびまたは分散性原料のすべてを選択培地中に溶解し、すべての賦形剤が可溶化およびまたは分散されて均一なブレンドを生じるまで混合することにより生成される。その後、有効成分をブレンドに添加し、製剤に応じて可溶化または分散させる。ブレンドは、均一性が得られるまで混合され、その後、ポリマーをブレンドに添加し、完全に溶解するまで混合する。溶解および均質化されると、混合速度を下げて、ブレンドの脱気を可能にする。
【0153】
フィルム製品の調製は、典型的に、液体フィルム製剤を基板にキャストまたはそうでなければ薄く拡げ、溶媒のすべてまたはほとんどをフィルムから乾燥させ(例えば蒸発させ)、包装または加工のために、材料の薄く、半固体/固体のフィルムシートを生成し、フィルムシートを個々の単位剤形に切断する。
【0154】
上記説明は、好ましい実施形態のみについてのものであると考えられる。これらの実施形態の改変は、当業者により、また例証された実施形態を作るか使用する者により行われる。そのため、上述した実施形態が単に例示だけであり、本開示の範囲を限定することを意図しておらず、均等論を含む特許法の原則にしたがって解釈されるような以下の特許請求の範囲により定義されることが理解される。
【国際調査報告】