IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モータートロニックス リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-高分解能アブソリュートエンコーダ 図1
  • 特表-高分解能アブソリュートエンコーダ 図2a
  • 特表-高分解能アブソリュートエンコーダ 図2b
  • 特表-高分解能アブソリュートエンコーダ 図3a
  • 特表-高分解能アブソリュートエンコーダ 図3b
  • 特表-高分解能アブソリュートエンコーダ 図4
  • 特表-高分解能アブソリュートエンコーダ 図5
  • 特表-高分解能アブソリュートエンコーダ 図6
  • 特表-高分解能アブソリュートエンコーダ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】高分解能アブソリュートエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/249 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
G01D5/249 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023547111
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 IL2022050150
(87)【国際公開番号】W WO2022168095
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/145,002
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517413454
【氏名又は名称】エムオーティーエックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラレ イヴ
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA25
2F077AA27
2F077CC02
2F077NN02
2F077NN05
2F077NN16
2F077NN24
2F077NN27
2F077PP05
2F077PP19
2F077QQ15
2F077RR03
2F077RR11
2F077RR23
2F077TT44
(57)【要約】
第1の部分Pと第2の部分Sとの相対的な位置を測定し、取得可能に符号化するための高分解能エンコーダデバイスは、部分Pの感知要素であって、前記感知要素は、感知のための可変特性を提示し、前記可変特性が前記部分Pの長さにわたって変化する、感知要素、前記可変特性を感知するためのn個のセンサであって、前記センサは互いに分離されて部分Sに配置され、前記センサは前記感知に応じて信号を出力するように構成される、センサ、及び前記n個のセンサのそれぞれから前記信号を受信するように接続され、前記相対的な位置の中のものに引き継ぐよう構成されて、各センサからのエントリをそれぞれ有するベクトルを形成し、ベクトルが前記相対的な位置をそれぞれ定義する処理装置、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分Pと第2の部分Sとの相対的な位置を測定し、取得可能に符号化するための高分解能エンコーダデバイスであって、
a)部分Pの感知要素であって、前記感知要素は、感知のための可変特性を提示し、前記可変特性が前記部分Pの長さにわたって変化する、前記感知要素、
b)前記可変特性を感知するためのn個のセンサであって、前記センサは互いに分離されて部分Sに配置され、前記センサは前記感知に応じて信号を出力するように構成される、前記センサ、及び、
c)前記n個のセンサのそれぞれから前記信号を受信するように接続され、前記相対的な位置の中のものに引き継ぐよう構成されて、各センサからのエントリをそれぞれ有するベクトルを形成し、それによって前記相対的な位置をそれぞれ定義する処理装置であって、前記処理装置は、前記ベクトルから前記相対的な位置を計算するように構成されている、前記処理装置を備える、前記高分解能エンコーダデバイス。
【請求項2】
前記信号を前記処理装置に提示する前に、前記n個のセンサからの前記信号をデジタル化するために、前記n個のセンサと前記処理装置との間にアナログ-デジタルコンバータをさらに備える、請求項1に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項3】
前記信号は、
【数84】
のベクトルA(X)として前記処理装置に入力される、請求項1または2に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項4】
前記ベクトルは、nベクトル関数
【数85】
に挿入されて、前記部分Pと前記部分Sの前記相対的な位置Xを定義する、請求項3に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項5】
ベクトル関数V(X)は、第1及び第2の数学的条件を満たすように選択され、
第1の数学的条件_XとV(X)の間には1対1(単射的)の関係があるため、位置Xで得られるベクトル値V(X)はその位置の特性となる、
第2の数学的条件_任意の2つの位置X1及びX2に対して、ノルム
【数86】
と関数
【数87】
が存在するような閾値Δが存在し、
【数88】
あるいは、
関数
【数89】
は、所定の間隔
【数90】
にわたって単調である、請求項4に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項6】
ベクトル関数V(X)はサイズpで、
【数91】

【数92】
成分を有し、前記成分B(X)は信号A(X)の数学的組み合わせである、請求項1に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項7】
前記可変特性は、
スケールのいくつかの位置に配置された異なる極性の永久磁石から生じる可変磁場強度、
スケールの諸部分や多数の光源の可変の透明度または反射率によって得られる可変の光の強度、
センサと多数の光源との間の可変の距離によって得られる可変の光の強度、
スケールの導電部の不規則な形状によって得られる可変の渦電流損失、及び、
ロータ材料の磁気特性の可変特性によって得られる可変インダクタンス、からなる群の1つのメンバーである、請求項1~6のいずれか一項に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項8】
ロータリー式エンコーダであり、前記相対的な位置が相対角度を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項9】
リニア式エンコーダであり、前記諸部分の1つは直線経路または曲線経路を構成し、前記相対的な位置は前記直線または曲線経路に沿った長さに関係する、請求項1~8のいずれか一項に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項10】
前記処理装置は、最新の既知の位置から初期位置推定値を取得するように構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項11】
ベクトル関数が以下の条件、
【数93】
が求められ、式中Δは所定の閾値である、
を満たす位置まですべての可能な位置をスキャンすることにより、初期位置を取得できるよう構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項12】
ベクトル関数の値がルックアップテーブルに保持される、請求項1~11のいずれか一項に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項13】
第1の部分Pと第2の部分Sとの相対的な位置を測定し、取得可能に符号化するための高分解能符号化方法であって、
a)感知のための可変特性を提示し、前記可変特性が前記部分Pの長さにわたって変化し、前記感知特性は、感知要素を介して提示されること、
b)部分Sで、n個の離散的な位置で前記可変特性を感知すること、
c)前記感知することに従って、前記n個の離散的な位置から信号を出力すること、
d)前記n個の離散的な位置のそれぞれから前記信号を受信すること、及び、
e)各センサからのエントリを有するベクトルを形成する前記相対的な位置の中のものにそれぞれ引き継がせて、それにより前記相対的な位置をそれぞれ定義し、エンコーダはそれにより前記ベクトルを使用して前記相対的な位置を測定し、符号化すること、を含む、高分解能符号化方法。
【請求項14】
前記信号を処理装置に与える前に、前記n個のセンサからの前記信号をデジタル化することをさらに含む、請求項13に記載の高分解能符号化方法。
【請求項15】
前記信号を、
【数94】
のベクトルA(X)として処理装置に入力することを含む、請求項13または14に記載の高分解能符号化方法。
【請求項16】
それぞれの前記ベクトルを、前記部分Pと前記部分Sの前記相対的な位置Xのnベクトル関数
【数95】
に挿入することを含む、請求項15に記載の高分解能符号化方法。
【請求項17】
前記ベクトル関数V(X)は、2つの数学的条件を満たすように選択され、
第1の数学的条件_XとV(X)の間には1対1(単射的)の関係があるため、位置Xで得られるベクトル値V(X)はその位置の特性となる、
第2の数学的条件_任意の2つの位置X1及びX2に対して、ノルム
【数96】
と関数
【数97】
が存在するような閾値Δが存在し、
【数98】
あるいは、
関数
【数99】
は、所定の間隔
【数100】
にわたって単調である、請求項16に記載の高分解能符号化方法。
【請求項18】
前記ベクトル関数V(X)はサイズpで、
【数101】
の成分
【数102】
を有し、前記成分B(X)は信号A(X)の数学的組み合わせである、請求項17に記載の高分解能符号化方法。
【請求項19】
前記可変特性は、
スケールのいくつかの位置に配置された異なる極性の永久磁石から生じる可変磁場強度、
スケールの諸部分や多数の光源の可変の透明度または反射率によって得られる可変の光の強度、
センサと多数の光源との間の可変の距離によって得られる可変の光の強度、
スケールの導電部の不規則な形状によって得られる可変の渦電流損失、及び、
ロータ材料の磁気特性の可変特性によって得られる可変インダクタンス、からなる群の1つのメンバーである、請求項13~18のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項20】
ベクトル関数の関数検索を実行することを含み、前記関数検索が、
前記部分Pの位置を選択し、前記部分Pの前記位置に感知要素を配置またはシミュレートすること、
前記部分Sの位置を選択し、前記部分Sの前記位置にセンサを配置またはシミュレートすること、
各センサからの信号を計算または提示すること、及び
前記信号をテストして、前記条件を満たす候補ベクトル関数を提示すること、及び、
前記条件が満たされる場合は前記候補ベクトル関数を受け入れ、前記条件が満たされない場合は前記関数の検索を繰り返す、請求項17~19のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項21】
前記相対的な位置が相対角度を含む、請求項13~20のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項22】
前記諸部分の1つは直線経路または曲線経路を含み、前記相対的な位置は前記直線または曲線経路に沿った長さに関係する、請求項13~20のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項23】
最新の既知の位置から初期位置推定値を取得することを含む、請求項13~22のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項24】
ベクトル関数が以下の条件、
【数103】
が求められ、式中Δは所定の閾値である、
を満たす位置まですべての可能な位置をスキャンすることにより、初期位置を取得することを含む、請求項13~22のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項25】
ルックアップテーブルからベクトル関数の値を取得することを含む、請求項13~24のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項26】
開始手順を実行することであって、前記開始手順が前記可変特性から前記ベクトル関数をコンパイルすることを含む、前記実行することを含む、請求項17に記載の高分解能符号化方法。
【請求項27】
前記開始手順がさらに、
候補特性及び前記可変特性のバリエーションを選択すること、
前記候補特性と前記バリエーションのシミュレーションを使用して前記ベクトル関数を設定すること、及び、
前記ベクトル関数が前記第1及び第2の条件を満たすことを検証すること、を含む、請求項26に記載の高分解能符号化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年2月3日に出願された米国仮特許出願第63/145,002号の米国特許法第119条(e)の優先権の利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、エンコーダデバイス(エンコーダ)に関し、より具体的には、ただしこれに限定されることなく、高分解能のアブソリュートベクトルエンコーダに関する。
【0003】
エンコーダは、回転要素の角度位置、またはスライド要素の相対変位を測定するために使用される。これらは通常、サーボシステムとよく呼ばれる制御システムで使用され、モーションコントローラを使用して可動要素を正確な所望の経路に従わせる。この目的のために、エンコーダデバイスには、モーションコントローラへの接続を可能にする電子インターフェイスが含まれている。
【0004】
エンコーダには、ロータリー式とリニア式の2つのタイプがあり得る。ロータリー式エンコーダは、モータやいずれかの回転デバイスのシャフトなどの回転要素の角度位置を測定するように設計されている。リニア式エンコーダは、2つのスライド要素(例えば、静止ベースに対するリニアベアリングに取り付けられたスライドキャリッジ)の相対的な動きを測定するように設計されている。
【0005】
一般的な用途では、ロータリー式エンコーダが電気モータシャフトの後端に取り付けられ、シャフトの回転角度に関する位置情報を電気モータコントローラに与える。位置情報は、高速に与えることができる。次いで、モータコントローラは、モータを所望の位置に向かって回転させるために、モータに電流を出力することができる。
【0006】
別の一般的な用途では、リニア式エンコーダがリニアモータの可動要素に取り付けられ、リニアモータのモーションコントローラに接続される。
【0007】
この特許出願の範囲では、「エンコーダデバイス」という用語は、ロータリー式エンコーダまたはリニア式エンコーダのいずれかを指すために使用される。リニア式エンコーダは、ロータリー式エンコーダと同じコンポーネントを使用し、これらのコンポーネントを直線経路上に配置することによって構築される。直線経路は、本明細書では周期と呼ばれる、多数の連続する等しい長さのセクションに分割される。第1の実装形態では、エンコーダコンポーネントは、円形経路上にこれらのコンポーネントを配置するのと同様の方法で、1つの周期に沿って配置される。他の実装形態では、第1の実装形態における同じコンポーネントの位置からの各コンポーネントの距離が周期の整数に等しいという条件で、コンポーネントをいくつかの周期にわたって配置することができる。
【0008】
自動機械では、多くの場合、可動要素が非常に高精度かつ高速で経路をたどることが要求される。これを実現するには、エンコーダデバイスを高い精度で設計しなければならず、また位置情報を高速に転送できるべきである。例として、市販のロータリー式エンコーダは0.01度を超える精度をもたらすことができ、モーションコントローラへの回転角度の値の転送速度は通常1秒あたり8,000~30,000という値の転送である。
【0009】
エンコーダデバイスを設計するためのもう1つのパラメータは、その分解能である。分解能は、エンコーダデバイスが1回転または1つの長さの単位で測定できる最小の位置の変化を表し、通常は1回転あたりの位置の値の数または直線距離で表される。分解能によって定義される最小の位置変化は通常、精度よりも小さい、つまり位置の値の出力が実際の位置と多少異なる場合でも、エンコーダデバイスは精度に必要な有効桁数よりも多くの有効桁数をもつ位置の値をもたらすことができ、この誤差は、エンコーダの精度の特性によって定義される誤差よりも小さい。高い分解能により、サーボコントローラとも呼ばれるモーションコントローラは、可動要素の厳密かつスムーズな制御を実現できる。
【0010】
エンコーダデバイスはアブソリュートまたはインクリメンタルの場合がある。アブソリュートエンコーダデバイスは固定の基準位置に対する角度位置または直線位置を測定できるが、インクリメンタルエンコーダデバイスは動作開始からの角度または直線の移動のみを測定できる。このため、インクリメンタルエンコーダデバイスを自動の機械に使用する場合、機械の動作開始ごとに基準の位置の検索を実行するのが一般的である。この検索は、基準位置に配置されたリミットスイッチまたはその他のデバイスが作動するまで、特定の方向に低速で実行される。この検索手順によりシステムに複雑さが加わり、マシンの初期の動作が遅れる。この欠点があるにもかかわらず、インクリメンタルエンコーダは、そのシンプルさと低コストにより、一般的に使用されている。多くの場合、機械製造業者はアブソリュートエンコーダの使用を好むが、現在入手可能なアブソリュートエンコーダはコストが高いため、インクリメンタルエンコーダを利用している。
【0011】
製造が簡単で、低コストで高い精度及び分解能をもたらすアブソリュートエンコーダデバイスを提供することが望ましい。
【0012】
2015年4月14日に発行されたVillaretによる特許US9007057には、高分解能で絶対位置情報を提供できる、単純な構造のアブソリュートエンコーダデバイスが記載されている。このデバイスは、円周に均等に配置されたn個のアナログセンサを利用する。静的部分で、特定のパターンに従って環状トラックに交互の特性のセクションを備えた回転ディスクが配置され、センサは、近接したトラックのセクションの特性を感知できるようになる。ディスクの回転中、回転ディスクの様々な部分が各センサに近接する。各センサの電気信号はまずデジタル化されて、ビット値1または0が与えられる。次に、すべてのセンサのビット値がデジタルワードに結合され、回転ディスクの角度範囲位置ごとに一意のコードの値が作成される。第2のステップでは、n個のセンサのうち1つが選択され、そのアナログ出力値を使用して高分解能の位置の値が計算される。
【0013】
上記の特許の利点は、デバイスの簡素さである。センサが円形の線に均等に配置されているため、センサ間の距離が比較的広く、市販の通常サイズのセンサが使用可能である。
【0014】
「セクタ」という用語は、上記の特許において、エンコーダ回転ディスク円形トラックの角部分として定義されており、すべてのセクタはほぼ等しい角度の大きさである。トラックの各セクタは、事前に定義されたパターンに従って、第1または第2の特性を持つ素材で作られている。
【0015】
上述の特許の第1の要件は、コードが一価であること、すなわち、コードの値が1つのセクタの範囲でのみ得られることである。
【0016】
第2の要件は、コードがグレイコードであるべきであることである。つまり、移動中、あるセクタから隣接するセクタへの移行により、デジタルコードの1ビットのみが変更される。これは、移行中のコードのエラーを回避するために必要である。
【0017】
上記の両方の要件は、2013年7月23日に付与されたVillaretの特許US8492704に記載されている方法に従って設計されたパターンを使用して達成できる。
【0018】
これら2つの要件により、以下で説明するように実際の実装に制限が生じる。
【0019】
US9007057によると、エンコーダの達成可能な全体的な分解能は、デジタルコードの分解能とアナログセンサ信号の分解能を乗じたものにほぼ等しい。
【0020】
分解能を上げるには、a)アナログセンサ読み取りの分解能、またはb)デジタルコードの分解能を上げる必要がある。
【0021】
a)に関しては、標準的なアナログセンサとアナログ-デジタルコンバータの実用的な分解能は電気ノイズによって制限される。特に、非常に短い時間内に位置の値をもたらすには高分解能エンコーダも必要であるため、高速のアナログ-デジタルコンバータが必要になる。したがって、分解能を上げることは非常に困難であり、非現実的になる。
【0022】
b)に関しては、Villaretによる特許US8492704によれば、デジタルコードの分解能の増加は、センサの数を増やし、パターンを変更することによって達成できる。ただし、センサの数nを増やすと、得られるコードの分解能は非常に非効率になる。つまり、コードの数は、可能なコードの値の数2よりも小さくなる。例えば、n=7のセンサを使用すると、98個のコードの値をもたらす実用的なパターンを見つけることができる。n=8のセンサを使用すると、実際のパターンでは128個のコード値しかもたらせない。そのため、センサの数が増えても、分解能の向上はわずかである。別の態様では、n=7のセンサの例では、比較的多数のセクタにまたがるセクションを定義する実用的なパターンが見出され、比較的大きなサイズの要素、例えば磁石を用いて容易に実装することができる。センサの数が増えると、パターンのセクションのサイズが大幅に小さくなり、実装には非現実的となり、小型のコンポーネントが必要となり、特に磁石の場合は非現実的になる可能性がある。
【0023】
したがって、さらなる高分解能化を図るためには、パターン設計に上記の制約のないエンコーダを設計することが望まれる。
【発明の概要】
【0024】
したがって、本発明の目的は、より高い分解能を提供できるエンコーダデバイスを提供することである。
【0025】
したがって、本発明の主な目的は、好ましくは市販のセンサを使用できるように互いに好適に十分に離れたセンサを有する高分解能エンコーダデバイスを提供することである。本実施形態によるエンコーダデバイスは、アナログ出力を提示するセンサを利用することができ、センサの数によって制限されない高い絶対的な分解能を得るためにメモリ及び処理手段を含むことができる。
【0026】
本実施形態によるエンコーダは2つの部分を含み得、その2つの部分は、ロータリー式エンコーダの場合には円形経路に沿って、またはリニア式エンコーダの場合には直線経路に沿って、相対的に移動可能である。ここで「線形」とは任意の曲線形状を含み、線状の直線に限定されないことを理解しなければならない。さらに、エンコーダには、多数のアナログ信号入力を受信し、位置の値を出力できる処理装置が含まれている。
【0027】
この文書の範囲では、理解を容易にするために、2つのエンコーダ部分を部分P及び部分Sと呼称する。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、第1の部分Pと第2の部分Sとの相対的な位置を測定し、取得可能に符号化するための高分解能エンコーダデバイスが提供され、
a)部分Pの感知要素であって、感知要素は、感知のための可変特性を提示し、可変特性が部分Pの長さにわたって変化する、感知要素と、
b)可変特性を感知するためのn個のセンサであって、センサは互いに分離されて部分Sに配置され、センサは感知に応じて信号を出力するように構成される、センサと、
c)n個のセンサのそれぞれから信号を受信するように接続され、相対的な位置の中のものに引き継ぐよう構成されて、各センサからのエントリをそれぞれ有するベクトルを形成し、それによって相対的な位置をそれぞれ定義する処理装置であって、処理装置は、ベクトルから相対的な位置を計算するように構成されている、処理装置と、を備える。
【0029】
エンコーダは、信号をプロセッサに提示する前に、n個のセンサからの信号をデジタル化するために、n個のセンサとプロセッサとの間にアナログ-デジタルコンバータをさらに備えることができる。
【0030】
実施形態では、信号は、
【数1】
のベクトルA(X)として処理装置に入力される。
【0031】
実施形態では、ベクトルは、nベクトル関数
【数2】
に挿入されて、P部分とS部分との相対的な位置Xを定義する。
【0032】
実施形態では、ベクトル関数V(X)は、第1及び第2の数学的条件を満たすように選択される。
【0033】
第1の数学的条件_XとV(X)の間には1対1(単射的)の関係があるため、位置Xで得られるベクトル値V(X)はその位置の特性となる。
【0034】
第2の数学的条件_任意の2つの位置X1及びX2に対して、ノルム
【数3】
と関数
【数4】
が存在するような閾値Δが存在し、
【数5】
あるいは、
関数
【数6】
は、所定の間隔
【数7】
にわたって単調である。
【0035】
実施形態では、ベクトル関数V(X)はサイズpであり、
【数8】
の成分
【数9】
を有し、成分B(X)は信号A(X)の数学的組み合わせである。
【0036】
実施形態では、可変特性は、
スケールのいくつかの位置に配置された異なる極性の永久磁石から生じる可変磁場強度、
スケールの諸部分や多数の光源の可変の透明度または反射率によって得られる可変の光の強度、
センサと多数の光源との間の可変の距離によって得られる可変の光の強度、
スケールの導電部の不規則な形状によって得られる可変の渦電流損失、及び、
ロータ材料の磁気特性の可変特性によって得られる可変インダクタンス、からなる群の1つのメンバーである。
【0037】
一実施形態はロータリー式エンコーダであり、相対的な位置は相対角度を含む。
【0038】
別の実施形態は、リニア式エンコーダである。諸部分の1つは直線経路または曲線経路を含み、相対的な位置は直線または曲線経路に沿った長さに関係する。
【0039】
実施形態では、プロセッサは、最新の既知の位置から初期位置推定値を取得するように構成されている。
【0040】
エンコーダは、ベクトル関数が以下の条件を満たす位置まですべての可能な位置をスキャンすることにより、初期位置を取得できる
【数10】
が求められ、式中Δは所定の閾値である。
【0041】
実施形態では、ベクトル関数の値はルックアップテーブルに保持される。
【0042】
本発明の第2の態様によれば、第1の部分Pと第2の部分Sとの相対的な位置を測定し、取得可能に符号化するための高分解能符号化方法であって、
a)感知のための可変特性を提示し、可変特性が部分Pの長さにわたって変化し、感知特性は、感知要素を介して提示されること、
b)部分Sで、n個の離散的な位置で可変特性を感知すること、
c)感知することに従って、n個の離散的な位置から信号を出力すること、
d)n個の離散的な位置のそれぞれから信号を受信すること、及び、
e)各センサからのエントリを有するベクトルを形成する相対的な位置の中のものにそれぞれ引き継がせて、それにより相対的な位置をそれぞれ定義し、エンコーダはそれによりベクトルを使用して相対的な位置を測定し、符号化すること、を含む、高分解能符号化方法が提供される。
【0043】
実施形態は、信号をプロセッサに提示する前に、n個のセンサからの信号をデジタル化することを含んでもよい。
【0044】
実施形態では、信号は、
【数11】
のベクトルA(X)として処理装置に入力することを含み得る。
【0045】
実施形態は、それぞれのベクトルをP部分とS部分との相対的な位置Xのnベクトル関数
【数12】
に挿入することを含み得る。
【0046】
実施形態では、ベクトル関数V(X)は、2つの数学的条件を満たすように選択される。
【0047】
第1の数学的条件_XとV(X)の間には1対1(単射的)の関係があるため、位置Xで得られるベクトル値V(X)はその位置の特性となる。
【0048】
第2の数学的条件_任意の2つの位置X1及びX2に対して、次のようなノルム
【数13】
と関数
【数14】
が存在するような閾値Δが存在する。
【数15】
あるいは、
関数
【数16】
は、所定の間隔
【数17】
にわたって単調である。
【0049】
実施形態では、ベクトル関数V(X)はサイズpであり、
【数18】
の成分
【数19】
を有し、成分B(X)は信号A(X)の数学的組み合わせである。
【0050】
実施形態では、可変特性は、以下の、
スケールのいくつかの位置に配置された異なる極性の永久磁石から生じる可変磁場強度、
スケールの諸部分や多数の光源の可変の透明度または反射率によって得られる可変の光の強度、
センサと多数の光源との間の可変の距離によって得られる可変の光の強度、スケールの導電部の不規則な形状によって得られる可変の渦電流損失、及び、
ロータ材料の磁気特性の可変特性によって得られる可変インダクタンス、の1つである。
【0051】
実施形態は、ベクトル関数の関数検索を実行することを含んでもよく、関数検索は、
部分Pの位置を選択し、部分Pの位置に感知要素を配置またはシミュレートすること、
部分Sの位置を選択し、部分Sの位置にセンサを配置またはシミュレートすること、
各センサからの信号を計算または提示すること、及び、
信号をテストして、条件を満たす候補ベクトル関数を提示すること、及び、
条件が満たされる場合は候補ベクトル関数を受け入れ、条件が満たされない場合は関数の検索を繰り返すこと、を含む。
【0052】
相対的な位置は、ロータの場合には相対角度を含む。あるいは、諸部分の1つは直線経路または曲線経路を含み、相対的な位置は直線または曲線経路に沿った長さに関係する。
【0053】
実施形態では、プロセッサは、最新の既知の位置から初期位置推定値を取得することを含み得る。
【0054】
実施形態は、ベクトル関数が以下の条件を満たす位置まですべての可能な位置をスキャンすることにより、初期位置を取得することを含むことができる、
【数20】
が求められ、式中Δは所定の閾値である。
【0055】
実施形態は、ルックアップテーブルからベクトル関数の値を取得することを含んでもよい。
【0056】
実施形態は、開始手順を実行することであって、初開始手順が可変特性からベクトル関数をコンパイルすることを含む、実行することを含むことができる。
【0057】
開始手順はさらに、
候補特性及び可変特性のバリエーションを選択すること、
候補特性とバリエーションのシミュレーションを使用してベクトル関数を設定すること、及び、
ベクトル関数が第1及び第2の条件を満たすことを検証すること、を含むことができる。
【0058】
別段の定義の無い限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本発明の実施形態の実践または試験には、本明細書に記載したものと類似または同等の方法及び材料を用いることができるが、例示的な方法及び/または材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び例は、一例にすぎず、必ずしも限定することを意図していない。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を、本明細書では、単なる例示として、添付の図面を参照しながら説明する。このとき図面を詳細にわたって具体的に参照するが、図示されている細部は例示として本発明の実施形態を説明的に考察することを目的としたものであることが強調される。この点に関して、図面を用いた説明は、本発明の実施形態がどのように実践され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の実施形態による1ターンアブソリュートエンコーダを示す簡略図である。
図2a】本発明の実施形態による、回転角の関数としてのアナログ信号のバリエーションの例を示す簡略図である。
図2b】本発明の実施形態によるすべてのアナログ信号を同じプロットに示す。
図3a】本発明の実施形態による、固定値X及びXのすべての値に対する差分N[V(X)―V(X)]のノルムのバリエーションを示す。
図3b】Xの固定値付近の同拡大図である。
図4】本発明の実施形態による、固定値X及びX周囲(55度)のXに対する差分N[V(X)―V(X)]のノルム及び関数Fのバリエーションを示す。
図5】本発明の実施形態によるエンコーダのアルゴリズムを実装する処理装置のフローチャートを表す、簡略化されたブロック図である。
図6】本発明の実施形態によるリニア式エンコーダを概略的に示す。
図7】a及びbは、本発明の実施形態による磁気エンコーダの実装形態を示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本実施形態は、高分解能絶対値ベクトルエンコーダに関する。
【0062】
本実施形態によるエンコーダは、2つの部分、部分P及び部分Sの相対的な位置Xを測定するために提供される。特定の用途によれば、部分Pは静止していてもよく、経路に沿って移動する部分Sまたは部分Sは静止していてもよい。部分Pは経路に沿って移動する。
【0063】
パターン関数が定義され、エンコーダのP部分のトラックに配置される。このトラックは、リニア式エンコーダの場合は線形、ロータリー式エンコーダの場合は円形であり、パターン関数で定義されたパターンに従ってトラックの特性がそれに沿って変化する。このパターンは、トラックに沿って連続的な可変特性をもたらすようなものである。トラック上の位置に沿って変化する特性は、それぞれ適切なセンサによって感知できる多くの適切な特性のうちのいずれか1つであり得る。例えば、
a)_ホールセンサまたは磁気センサによって感知され得る可変磁気分極、
b)_光センサによって感知可能な可変の透明度、反射率、または光偏光、
c)_渦電流センサで感知可能な可変導電率、
d)_電子機器によって感知されるインダクタンス。
【0064】
この列挙は非限定的であり、特性とセンサの他の組み合わせは、当業者により考えられることが可能であり、本特許の範囲内にあるとみなされるべきである。
【0065】
トラックの特性を感知するために、多数のセンサがエンコーダ部分Sのトラックに沿ってトラックに近接して所定の位置に配置される。経路に沿った2つの部分P及びSの相対的な移動中に、センサはパターン化されたトラックに沿って、及びパターン化されたトラックに近接して移動する。各センサは、近接するトラック部分の特性に応じて、2つのエンコーダ部分の相対的な位置Xに応じて変化するアナログ信号を出力する。各センサ出力は電子回路によって増幅及び/または調整され、アナログ値A(X)として処理装置に入力される。
【0066】
したがって、各位置Xではs個の値が利用可能であり、A(X)の値の数sが次元sのベクトル
【数21】
を与える。
【0067】
本実施形態によれば、Sセンサのパターン及び位置は、ベクトルVの以下の数学的特性を与えるように設計される。
条件a)_XとV(X)の間には1対1(単射的)の関係があるため、位置Xで得られるベクトル値V(X)はその位置の特性となる。
条件b)_任意の2つの位置X1及びX2に対して、ノルム
【数22】
と関数
【数23】
が存在するような閾値Δが存在し、
【数24】
あるいは、
関数
【数25】
は、
【数26】
に対して単調である。
【0068】
最初の操作の前に、エンコーダは校正手順を受け、その間に値V(X)がベクトルV(X)のテーブルに記録され、処理装置のメモリに保存される。
【0069】
上記の2つの特性に基づいて、Sに対するPの相対的な位置Xを評価するアルゴリズムが処理装置で実行される。
【0070】
の位置では、ベクトルの値は
【数27】
になる。
【0071】
検索アルゴリズムは2つのステップで作成される。
【0072】
ステップ1:次のように位置Xを検索する。
【数28】
【0073】
この検索を行うには、事前に記録されたV(X)の値のテーブルが使用される。このステップを最適化するために、様々な検索方法を使用できる。
【0074】
ステップ2:評価する
【数29】
【0075】
ステップ3:
【数30】
または
【数31】
になるまでXを増減する。
【0076】
ステップ3は、上で定義した条件b)_に従って、
【数32】
が単調であるという事実によって可能になる。次に、差
【数33】
を最小化する方向、つまりXを増加または減少させる方向で検索が行われる。
【0077】
取得されたXの値は、このとき、実際の位置Xの尺度を表し、処理装置によって出力される。
【0078】
このアルゴリズムは処理装置で実行され、後述するように最適化して高速で周期的に実行できるため、本実施形態のエンコーダは測定位置を高速で出力できる。例えば、現在利用可能なマイクロプロセッサを使用すれば、毎秒30,000の測定位置の速度を達成することができる。
【0079】
本発明のエンコーダの第1の利点は、その簡素性である。エンコーダは、センサが互いに比較的離れた位置にあるように設計できるため、低コストの標準的な個別電子コンポーネントを使用できる。
【0080】
第2の利点は、製造プロセスの間に高い精度が要求されないことである。対照的に、上で論じた従来技術の引用では、精度は、事前に定義されたコードが取得されるようなものであってもよく、必要な精度または分解能を維持するために、各コードの位置の範囲は、各コードでほぼ同じであってもよい。
【0081】
第3の利点は、可変特性の多数の要素を使用してパターンを設計できることである。アナログ信号は、高分解能位置測定に有利な急速に増加または減少するセクションを示す場合がある。
【0082】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の記述で記載される、ならびに/または図面及び/もしくは実施例に示される、構造の詳細ならびに構成要素及び/または方法の配列に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実践もしくは実行することが可能である。
【0083】
ここで、エンコーダの本発明による実施形態の簡略図である図1を参照する。回転シャフト102に固定されたディスク101として図1に示されるエンコーダロータは、その外周に可変特性を有するトラック103を含む。ここでは、トラックの可変特性は、矢印104で示される可変の半径の幅の黒い環の形状として示されている。可変特性は必ずしも環状形状の幅である必要はないが、ディスクの回転角度の関数として連続的に変化する特性をより明確に示すために、本明細書では簡略化のためにそのように示されている。
【0084】
可変特性には、例として次のような様々な種類がある。
・複数の位置のロータに配置された異なる極性の永久磁石によって生じる可変磁場強度、
・ロータの諸部分や多数の光源の可変の透明度または反射率によって得られる可変の光の強度、
・センサと多数の光源との間の可変の距離によって得られる可変の光の強度、
・回転ロータの不規則な形状と多数の高周波電気コイルによって得られる可変の渦電流損失、
・ロータ材料の磁気特性の可変特性によって得られる可変インダクタンス。
【0085】
上掲の列挙は限定的なものではなく、他のタイプの特性及びセンサもこの特許の範囲で想到し得る。
【0086】
8つのセンサ103a~105hは静的であり、回転ディスク101の可変特性を感知する位置に配置される。センサ103a~105hは、それぞれ電気アナログ信号A1~A8を出力する。センサの出力は可変特性に応じて回転角度に応じて連続的に変化する。
【0087】
アナログ信号A1~A8は、アナログ-デジタルコンバータ105に入力され、その後、それらのアナログ値が処理装置(CPU、106)に入力される。次いで、CPU106は、本明細書でさらに説明される方法に従って信号値A1~A8の値を周期的に処理し、高分解能の位置の値を出力する。
【0088】
使用される特性のタイプに応じて、ここで使用される近接したディスクとセンサを備えた構成に限定されず、エンコーダの特定の幾何学的構成を使用できる。この特許の範囲では、エンコーダの回転部分(ローター)の可変特性をそれぞれ感知する多数のセンサが、シャフトの回転角度に応じて変化するアナログ電気信号を出力する任意の構成を使用することができる。
【0089】
本実施形態のエンコーダによれば、信号A1~A8、
【数34】
によって形成されるベクトルV(X)が、角度位置Xの全範囲にわたって以下の2つの条件を満たすように、連続的な可変特性が設計される。
【0090】
条件a)_XとV(X)の間には1対1(単射的)の関係があるため、位置Xで得られるベクトル値V(X)はその位置の特性となる。
【0091】
条件b)_任意の2つの位置X1及びX2に対して、ノルム
【数35】
と関数
【数36】
が存在するような閾値Δが存在し、
【数37】
あるいは、
関数
【数38】

【数39】
に対して単調である。
【0092】
これより図2A及び2Bを参照する。これらの図は、本実施形態による典型的なセンサ入力の2つのプロットである。図2aには、増幅、及びアナログからデジタルへの変換後にCPUに入力される単一センサ信号の例が示されており、図2bには、同じプロットの8つのセンサによって出力された8つの信号が示されている。
【0093】
初期動作の前に、本実施形態のエンコーダは校正手順を受ける。その校正手順中に、アナログ信号AnのベクトルVの値が、十分な分解能で1回転にわたる位置の全範囲にわたってCPUメモリのテーブルに記録され、保存される。CPUメモリのこれらのテーブルから取得されたベクトル値は、以下ではさらにVと呼ばれる。任意選択で、ベクトル導関数
【数40】
、式中Xは角度位置、を記録してCPUメモリに保存することもできる。
【0094】
説明される実施形態では、選択されるノルムNは、信号差の二乗の平方根である。
【数41】
【0095】
これより図3aを参照するが、この図は角度位置に対するノルムのプロットを示している。より具体的には、与えられた位置X=55度及び回転の全範囲(360度)の位置Xに対するノルム
【数42】
の値がプロットされる。55度の位置は説明のための例として示されているだけであり、他の任意の位置をこの目的のために使用することができる。見てわかるように、ノルムは、X=55度の周囲の狭い範囲を除いて、Xの角度の全範囲で閾値Δ(302)よりも高い値を有する。このパターンは、任意の角度位置X、すべての位置Xのコレクションについて、
【数43】
が一意の位置の連続セグメントを形成するのを確実にするように設計されている。これは条件b)の数学的結果である。幅301を有するセグメントが図3bに示されており、これは図3aのグラフのX=55度位置付近の拡大図である。好ましくは、閾値Δがセンサにより出力されるアナログ信号の分解能及びノイズレベルよりも大幅に高くなるように、パターンを設計するべきである。CPUによって実行されるアルゴリズムは、最初に位置Xを検索し、
【数44】
、式中V(X)は、事前に記録されたデータのテーブルから位置Xで、アナログ出力の値のベクトルで取得した。これらのテーブルは、上で説明したように、エンコーダの最初の操作の前に適用される校正手順で記録される。
【0096】
このような初期の検索の場合、単純な検索手順は、セグメント301などのセグメントの最小の幅よりも小さいステップで範囲全体をスキャンすることができる。しかしながら、このような手順は時間を要するため、高速に実行できる別の検索手順を以下に説明する。
【0097】
これより条件b)を考察すると、本実施形態では、関数Fがスカラーベクトル乗算によって選択され、定義される。
【数45】
式中
・Vは信号A1~A8によって形成されるベクトルである。
・V(X)はエントリポイントXで校正テーブルから取得されたベクトルである。
・Xにおける導関数
【数46】
は、校正テーブル、または校正手順の間に事前に記録されたテーブルから取得された値を使用して、CPUによって計算される。
【0098】
これより図4を参照すると、この図は、位置X=55度(406)の周りの関数Fのバリエーションを示す例示的なプロットを示す。このグラフにおいて、関数F(403)は、ノルム
【数47】
が閾値Δ(401)よりも小さい位置Xの範囲において単調であることがわかる。この範囲は、2本の垂直線404及び405によってマークされる。
【0099】

【数48】
は、位置Xとエンコーダの実際の角度位置Xの間の距離を表す。その後、多くの一般的な反復アルゴリズムを使用でき、その結果最初のアルゴリズムステップで見つかった位置Xを起点として、エンコーダ位置Xを正確に推定するに至る。
【0100】
本実施形態で選択された特定のF関数については、X=Xのとき、F関数はヌル(0)値に達する。
【0101】
最初の検索ステップの結果、Xに隣接する最初の位置Xが得られたため、一次近似で次のように書くことができる。
【数49】
【0102】
この方程式を
【数50】
で乗算すると、位置Xの最初の推定値が得られる。
【数51】
【0103】
この計算は数回繰り返され、そのたびにXに対して推定値Xが使用される。これらの反復は急速に収束し、数回の反復後に実際の位置の非常に正確な推定値Xが得られる。
【0104】
この反復アルゴリズムは高速で周期的に実行でき、CPUは正確な高分解能の位置の値を高速で出力できる。
【0105】
達成可能な最大の精度δXは、ノイズとアナログーデジタルコンバータの分解能による信号Aの考えられる誤差δA、及びベクトル導関数
【数52】
の振幅によって決まる。
【0106】
ノイズと分解能に起因するベクトル誤差δVの場合、結果として生じる位置の誤差は、
【数53】
に近似できる。
【0107】
したがって、位置の誤差を減らすために、エンコーダはできるだけ高い値
【数54】
が得られるように設計する必要がある。
【0108】
他の反復アルゴリズムは、少なくともX―Xという位置の範囲で単調である関数
【数55】
の存在によって可能になるものと考えることができ、それに対して
【数56】
は、Vがセンサ信号の値によって形成されるベクトルであり、エンコーダの角度位置Xで出力する。
【0109】
エンコーダの角度位置を正確に推定するためにCPUで実行されるアルゴリズムの継続について上で説明した。継続は、以下で説明するように、最初に
【数57】
のための位置Xを見つけるかどうか次第である。
【0110】
考察すべきケースは2つある。
【0111】
第1の場合、例えばエンコーダの電源を入れた後、エンコーダのおおよその位置はわからない。この場合、起動手順が定義され、CPUのプログラムは、セグメントの最小の幅よりも小さいステップで角度位置の全範囲をスキャンする。例えば、図2a及び図2bのセグメント301がある。このような手順には時間がかかるが、これはエンコーダの初期化手順の一部であり、エンコーダの機能には影響しない。
【0112】
第2の場合では、エンコーダ角度位置Xの最初の正確な推定値は前のサイクルから入手できる。エンコーダには制限された回転速度Cがあり、CPUアルゴリズムは非常に短いサイクル時間で実行されるため、エンコーダロータの実際の角度位置Xは以前に測定された位置Xに非常に近くなる。範囲(X―X)で関数
【数58】
が単調である場合、ステップ2のアルゴリズムを実行でき、新しい位置Xを正確に推定できる。したがって、サイクル時間が十分に短い場合、CPUはエンコーダの角度位置を周期的に測定できる。
【0113】
例として、エンコーダの最大速度はC=12,000rpm、サイクル時間はdt=30マイクロ秒である。この例では、エンコーダの角度位置は1サイクル内でC.dt=2.16度変化し得る。図4を参照すると、関数
【数59】
(403)が約9度の範囲で単調であることが分かる(407、2つの点線408、409の間の範囲で二重矢印として示されている)。
【0114】
さらに、速度に比例した増分を加えることで、よりエンコーダの実際の位置に近い位置Xを算出することができる。物理的なシステムでは最大加速度が制限されているため、以前に計算された位置に速度の外挿を適用すると、第2のステップのアルゴリズムにより近い開始位置Xが得られ、エンコーダに適用できる最大速度が増加する。
【0115】
図5を参照すると、簡略化されたフローチャートは、上述のエンコーダアルゴリズムを示している。フローチャートのブロックには1から11までの番号が付けられており、以下で、各ブロックで表されるCPUプログラムの処理を説明する。
【0116】
ブロック1:エンコーダの電源がオンになると、エンコーダ処理装置はブロック1から開始し、ブロック2に進む。
【0117】
ブロック2:
・前の位置変数PXの変数が定義され、「不明」とラベル付けされる。
・変数Cはエンコーダの角速度に対して定義され、ゼロ、C=0に設定される。
・ブロック3に進む。
【0118】
決定ブロック3:
・前の位置PXが不明な場合は、ブロック4の起動手順に進む。
・前の位置PXがわかっている場合は、ブロック5に進む。
【0119】
ブロック4:
・条件
【数60】
が確認されるまで、位置Xのすべての範囲を小さなステップでスキャンする。この検索のステップは、校正手順の間に事前に定義される。
・ブロック6に進む。
【0120】
ブロック5~11は、破線の等高線501で示されているように、アルゴリズムのサイクルを記述する。CPUプログラムはサイクルの演算を高速に周期的に実行する。
【0121】
ブロック5:
・アルゴリズムのサイクルは最初のものではなく、以前の位置がわかっており、その既知の位置を使用して現在の位置の最初の大まかな推定を行うことができる。速度の推定値Cがまた、前のサイクル
【数61】
から計算されている。次に、位置推定値XがX=PX+C*dtによって計算される。
・ブロック6に進む
【0122】
ブロック6:
・位置のより正確な推定値Xは、上記の式2によって計算される。
【数62】
・決定ブロック7に進む
【0123】
決定ブロック7:
・位置の推定値X1が必要な分解能にあるかどうかを確認するには、その差
【数63】
を確認する
【0124】
値εは事前定義されており、エンコーダの必要な分解能よりも小さい値に設定される。
【0125】
あるいは、差分
【数64】
を確認することもできる。
【0126】
値δは、推定ノイズレベルとアナログ-デジタルコンバータの分解能に類似させて事前に定義される。
【0127】
・δが所定の値εより小さい場合、ブロック9に進み、値Xがエンコーダによって出力される。
・それ以外の場合は、ブロック8に進み、値Xが別の反復の新しい開始点として使用される。
【0128】
ブロック8
・値Xは、次の反復の新しい開始点としてXにコピーされる。したがって、ブロック7の条件が検証されるまで、各反復はブロック6、7、8を通過する。反復回数は、通常5回未満である。
・ブロック6に進む
【0129】
ブロック9
・位置の値Xはエンコーダによって出力される
・ブロック10に進む
【0130】
ブロック10
・速度は現在位置Xと前のPXとの差から計算される。ここで、dtはサイクル時間、つまりPXとXの計算の間の時間差である。
・ブロック11に進む
【0131】
ブロック11:
・次のサイクルのための位置
【数65】
を記録する。
・次のサイクルではブロック5に戻る。
【0132】
以下に要約するように、本開示の原理に従って、様々な検索アルゴリズムが考えられる。
【0133】
a)_開始(電源オン)のとき、最初のアルゴリズムサイクルで、条件
【数66】
を検証する位置Xが見つかるまですべての位置範囲をスキャンし、それを開始の値として使用する。
b)_最初のサイクルではない場合、前のサイクル位置とシステムの物理モデルを使用して開始位置Xを推定する。
c)_単調関数Fを使用して反復検索を実行し、検索方向をガイドする。
【0134】
上記のアルゴリズムは、前述の可変特性の2つの必須条件に依存している。
【0135】
条件a)_XとV(X)の間には1対1(単射的)の関係があるため、位置Xで得られるベクトル値V(X)はその位置の特性となる。
条件b)_任意の2つの位置X1及びX2に対して、ノルム
【数67】
と関数
【数68】
が存在するような閾値Δが存在し、
【数69】
あるいは、
関数
【数70】
は、
【数71】
に対して単調である。
【0136】
上で定義したように、エンコーダには2つの部分PとSが含まれる。部分Pは可変特性を誘発し、その特性はPとSの相対的な動きに応じて変化する。可変特性を生成するために、幾何学的なパターンに従って、感知要素を部分Pに配置できる。部分Sは、この可変特性の比較的遠くに配置されたセンサを含む。したがって、可変特性により、PとSの間の相対的な位置に応じて変化するセンサ出力信号が得られる。
【0137】
このような可変特性を生み出す物理的な配置を設計するために、例えばコンピュータを使用して可変特性検索方法を構築することができる。
【0138】
コンピュータプログラムでは、ノルムと関数Fが定義されている。閾値Δは、アナログ信号の最大ノイズレベルの標準よりも大幅に高く定義される。
【0139】
変数maxdVcdtが定義され、ゼロに初期化される。
【0140】
条件aとbを満たす候補の可変特性の検索は、次のように実行できる。
【0141】
1:シミュレーションモデルで、ランダムな寸法またはその他のパラメータの数に従って、多数のアクティブ要素をエンコーダの部分Pに、センサをエンコーダの部分Sに配置する。
【0142】
2:各センサの結果の信号A(X)とすべての位置Xのベクトル
【数72】
を計算するシミュレーションプログラムを使用する。
【0143】
3:関数
【数73】
が単射的であるかどうかを確認する(条件a)。そうでない場合は、ステップ1に戻る。一般に、ランダムな配置を使用する場合、関数V(X)が単射的でない確率は非常に低くなる。
【0144】
4:条件bが検証されるかどうかを確認する。そうでない場合は、1に戻る。
【0145】
5:
【数74】
の最小値
【数75】
を評価する。
【数76】
の場合は現在の配置を記録し、
【数77】
を設定する。
1に戻る。
【0146】
検索は、
【数78】
の値をできるだけ高くするために、できるだけ長く実行できる。
【0147】
上述の探索方法の1では、いくつかの次元またはパラメータのランダムな選択が使用されている。他の方法を使用して、毎回新しい可変特性関数を作成することもできる。例えば、人工知能やニューロンネットワーク技術をより効率的に使用できる。
【0148】
上述の実施形態では、ベクトルV(X)はベクトル
【数79】
として定義され、A(X)はアナログーデジタルコンバータによって増幅されデジタル化された後のセンサ信号である。ただし、A(X)のいずれかの数学的組み合わせを使用して他の信号を取得することが可能である。例えば、線形結合
【数80】
を使用でき、式中Mは行列である。特に、ベクトル
【数81】
の次元は、センサの数より大きくても小さくてもよい。
【0149】
例えば、ロータリー式エンコーダのSの部分の対称的な位置にある2つのセンサの信号を1つの信号に加算して、シャフトの回転の偏心を補正できる。
【0150】
別の例では、正規化された信号
【数82】
を使用して、同じ係数のすべての信号に影響を与える電源の変動によって引き起こされる不正確さを排除できる。
【0151】
ベクトル
【数83】
は、同じ特性aとbを検証するために、上記の検索方法によって設計できる。
【0152】
図6を参照すると、本実施形態によるリニア式エンコーダが示されている。エンコーダは、エンコーダのPの部分を構成するリニアスケール601を含む。線形スケールでは、可変特性602が誘発され、スケールの長さに沿って可変であり、ここでは可変の厚さの黒い帯として表されている。可変特性には、例として次のような多くの種類があり得る。
・複数の位置のスケールに配置された異なる極性の永久磁石によって生じる可変磁場強度、
・スケールの諸部分や多数の光源の可変の透明度または反射率によって得られる可変の光の強度、
・センサと多数の光源との間の可変の距離によって得られる可変の光の強度、
・スケールの導電部の不規則な形状と渦電流センサによって得られる可変の渦電流損失、
・ロータ材料の磁気特性の可変特性によって得られる可変インダクタンス。
【0153】
上掲の列挙は限定的なものではなく、他のタイプの特性及びセンサも本特許の範囲で想到し得る。
【0154】
エンコーダヘッド604は、エンコーダのSの部分を構成することができる。エンコーダヘッドとスケールは、直線の経路で、互いに相対的に移動する。エンコーダヘッドには8つのセンサ(603a~603h)が含まれている。各センサは、ヘッドの位置及びスケールに対するヘッドの位置に応じて、スケールの可変特性を感知する。
【0155】
次に、これらのセンサからの電気信号は、A/Dコンバータ(605)によって増幅及びデジタル化され、処理装置606(CPU)に送信される。
【0156】
上述の可変特性検索方法は、エンコーダの可変特性を設計するために使用され、上述のエンコーダアルゴリズムは、処理装置によって実装される。
【0157】
したがって、アブソリュートリニア式エンコーダは、単純な物理設計で設計できる。
【0158】
これより図7a及び7bを参照すると、ロータリー式エンコーダの実装形態が示されている。図7aには、軸方向の断面が示されている。エンコーダは、シャフト703と、このシャフトに固定され、固定されたエンコーダ本体701の内側で回転可能なディスク702とを含む。図2bに示すディスク702には、様々な位置に多数の永久磁石704a~704jが取り付けられている。再び図7aを参照すると、エンコーダ本体に固定されたプリント回路基板(PCB)706は、705a、705eなどの磁気センサを含む。この特定の例では、8つの磁気センサ705a~705hがある。軸方向の位置は705a及び705eについて図7aに示され、半径方向の位置は、図7bの705a~705hに示されている。磁気センサ705a~705hは、永久磁石704a~704jに対して軸方向に近接して配置される。この軸方向の距離により、これらのセンサにおいて誘導される磁場は、ディスクの回転と共に継続的に変化する。上記の可変特性の検索方法は、磁石のサイズと位置を設計して、磁石に可変磁場を誘導し、上記の必要条件aとbを満たす電気信号を有する磁気センサを生成する。
【0159】
この特定の例では、13個の永久磁石704a~704jがディスクの円周に配置されている。したがって、これらの永久磁石のランダムなサイジングと位置決めは13個のパラメータを含蓄する。上述の可変特性の検索方法は周期的に実行でき、各サイクルで永久磁石の位置とサイズの13個のパラメータの値を選択し、シミュレーションプログラムを実行して、センサ信号を分析できる。
【0160】
PCB706には、エンコーダアルゴリズムを実行し、電線707を介して角度位置の値を出力するためのアナログ-デジタルコンバータ及び処理装置(図示せず)が取り付けられている。
【0161】
このため、高分解能で非常に簡素な構成のアブソリュート磁気エンコーダを、低コストで製造することができる。
【0162】
この文書では、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの同根語は、「限定ではないが、~を含む(including but not limited to)」を意味する。
【0163】
「~からなる(consisting of)」という用語は、「を含み(備え)、~に限定される」ことを意味する。
【0164】
本明細書で使用する場合、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、「ある、1つの(a)」、「ある、1つの(an)」及び「この、その(the)」という単数形には、複数の指示対象が含まれる。
【0165】
明確にするために別個の実施形態の文脈において説明される本発明の特定の特徴は、また、単一の実施形態において組み合わせて提供され得、本文は、そのような単一の実施形態が明確に詳細に記載されているかのように解釈されることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において説明される本発明の様々な特徴はまた、別々に、もしくは任意の適切な副次的な組み合わせで提供され得、または本発明の任意の他の説明された実施形態において適切であるとして提供され得、本文は、そのような別個の実施形態または副次的な組み合わせが、本明細書に明確に詳細に記載されているかのように解釈される。
【0166】
様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは機能しない場合を除いて、それらの実施形態の本質的な特徴と見なすべきではない。
【0167】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明したが、多くの代替形態、修正形態及び変形形態が当業者には明らかであろうことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲に含まれるそのようなすべての代替形態、修正形態及び変形形態を包含することが意図されている。
【0168】
本明細書に記述される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、個別の刊行物、特許、または特許出願のそれぞれが、参照により本明細書に組み込まれることが明確及び個別に示されるのと同程度に、明細書への参照により全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本願におけるいずれかの参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であるということの承認として解釈するべきではない。セクションの見出しが使用されている場合、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分解能エンコーダデバイスであって、前記エンコーダデバイスの第1の部分Pと前記エンコーダデバイスの第2の部分Sとの相対的な位置を測定し、取得可能に符号化するためのものであり前記第1の部分Pと前記第2の部分Sは、互いに対して移動可能であり、
a)前記エンコーダデバイスの前記第1の部分Pの長さに沿って配置された感知要素であって、前記感知要素は、感知のための可変特性を提示し、前記可変特性が前記第1の部分Pの前記長さにわたって変化する、前記感知要素、
b)前記可変特性を感知するためのn個のセンサであって、前記センサは互いに分離されて前記第2の部分Sに沿って配置され、前記センサは前記可変特性の前記感知に応じて信号を出力するように構成される、前記センサ、及び、
c)前記n個のセンサのそれぞれから前記信号を受信するように接続され、前記第1の部分Pに沿った相対的な位置の中のものに引き継ぐよう構成されて、各センサからのエントリをそれぞれ有するベクトルを形成し、それによって前記相対的な位置をそれぞれ定義する処理装置であって、前記処理装置は、前記ベクトルから前記相対的な位置を計算するように構成されており前記処理装置は、さらに、ベクトル関数が以下の条件、
【数1】
が求められ、式中Δは所定の閾値である、
を満たす位置まですべての可能な位置をスキャンすることにより、初期位置を取得できるよう構成されている、前記処理装置を備える、前記高分解能エンコーダデバイス。
【請求項2】
前記信号を前記処理装置に提示する前に、前記n個のセンサからの前記信号をデジタル化するために、前記n個のセンサと前記処理装置との間にアナログ-デジタルコンバータをさらに備える、請求項1に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項3】
前記信号は、
【数2】
のベクトルA(X)として前記処理装置に入力される、請求項1または2に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項4】
前記ベクトルは、nベクトル関数
【数3】
に挿入されて、前記部分Pと前記部分Sの前記相対的な位置Xを定義する、請求項3に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項5】
ベクトル関数V(X)は、第1及び第2の数学的条件を満たすように選択され、
第1の数学的条件_XとV(X)の間には1対1(単射的)の関係があるため、位置Xで得られるベクトル値V(X)はその位置の特性となる、
第2の数学的条件_任意の2つの位置X1及びX2に対して、ノルム
【数4】
と関数
【数5】
が存在するような閾値Δが存在し、
【数6】
あるいは、
関数
【数7】
は、所定の間隔
【数8】
にわたって単調である、請求項4に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項6】
ベクトル関数V(X)はサイズpで、
【数9】

【数10】
成分を有し、前記成分B(X)は信号A(X)の数学的組み合わせである、請求項1に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項7】
前記可変特性は、
スケールのいくつかの位置に配置された異なる極性の永久磁石から生じる可変磁場強度、
スケールの諸部分や多数の光源の可変の透明度または反射率によって得られる可変の光の強度、
センサと多数の光源との間の可変の距離によって得られる可変の光の強度、
スケールの導電部の不規則な形状によって得られる可変の渦電流損失、及び、
ロータ材料の磁気特性の可変特性によって得られる可変インダクタンス、からなる群の1つのメンバーである、請求項1~6のいずれか一項に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項8】
ロータリー式エンコーダであり、前記相対的な位置が相対角度を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項9】
リニア式エンコーダであり、前記諸部分の1つは直線経路または曲線経路を構成し、前記相対的な位置は前記直線または曲線経路に沿った長さに関係する、請求項1~8のいずれか一項に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項10】
前記処理装置は、最新の既知の位置から初期位置推定値を取得するように構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項11】
ベクトル関数の値がルックアップテーブルに保持される、請求項1~10のいずれか一項に記載の高分解能エンコーダデバイス。
【請求項12】
第1の部分Pと第2の部分Sとの相対的な位置を測定し、取得可能に符号化するための高分解能符号化方法であって、前記第1の部分Pと第2の部分Sは、互いに対して移動可能であり、前記方法は、
a)感知のための可変特性を提示し、前記可変特性が前記第1の部分Pの長さにわたって変化し、前記感知特性は、前記第1の部分Pの前記長さにわたって配置された感知要素を介して提示されること、
b)前記第2の部分Sで、n個の離散的な位置で前記可変特性を感知すること、
c)前記感知することに従って、前記n個の離散的な位置から信号を出力すること、
d)前記n個の離散的な位置のそれぞれから前記信号を受信すること、
e)各センサからのエントリを有するベクトルを形成する前記相対的な位置の中のものにそれぞれ引き継がせて、それにより前記相対的な位置をそれぞれ定義し、エンコーダはそれにより前記ベクトルを使用して前記相対的な位置を測定し、符号化すること、及び、
f)ベクトル関数が以下の条件、
【数11】
が求められ、式中Δは所定の閾値である、
を満たす位置まですべての可能な位置をスキャンすることにより、初期位置を取得すること、を含む、高分解能符号化方法。
【請求項13】
前記信号を処理装置に与える前に、前記n個のセンサからの前記信号をデジタル化することをさらに含む、請求項12に記載の高分解能符号化方法。
【請求項14】
前記信号を、
【数12】
のベクトルA(X)として処理装置に入力することを含む、請求項12または13に記載の高分解能符号化方法。
【請求項15】
それぞれの前記ベクトルを、前記部分Pと前記部分Sの前記相対的な位置Xのnベクトル関数
【数13】
に挿入することを含む、請求項14に記載の高分解能符号化方法。
【請求項16】
前記ベクトル関数V(X)は、2つの数学的条件を満たすように選択され、
第1の数学的条件_XとV(X)の間には1対1(単射的)の関係があるため、位置Xで得られるベクトル値V(X)はその位置の特性となる、
第2の数学的条件_任意の2つの位置X1及びX2に対して、ノルム
【数14】
と関数
【数15】
が存在するような閾値Δが存在し、
【数16】
あるいは、
関数
【数17】
は、所定の間隔
【数18】
にわたって単調である、請求項15に記載の高分解能符号化方法。
【請求項17】
前記ベクトル関数V(X)はサイズpで、
【数19】
の成分
【数20】
を有し、前記成分B(X)は信号A(X)の数学的組み合わせである、請求項16に記載の高分解能符号化方法。
【請求項18】
前記可変特性は、
スケールのいくつかの位置に配置された異なる極性の永久磁石から生じる可変磁場強度、
スケールの諸部分や多数の光源の可変の透明度または反射率によって得られる可変の光の強度、
センサと多数の光源との間の可変の距離によって得られる可変の光の強度、
スケールの導電部の不規則な形状によって得られる可変の渦電流損失、及び、
ロータ材料の磁気特性の可変特性によって得られる可変インダクタンス、からなる群の1つのメンバーである、請求項1217のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項19】
ベクトル関数の関数検索を実行することを含み、前記関数検索が、
前記部分Pの位置を選択し、前記部分Pの前記位置に感知要素を配置またはシミュレートすること、
前記部分Sの位置を選択し、前記部分Sの前記位置にセンサを配置またはシミュレートすること、
各センサからの信号を計算または提示すること、及び
前記信号をテストして、前記条件を満たす候補ベクトル関数を提示すること、及び、
前記条件が満たされる場合は前記候補ベクトル関数を受け入れ、前記条件が満たされない場合は前記関数の検索を繰り返す、請求項1618のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項20】
前記相対的な位置が相対角度を含む、請求項1219のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項21】
前記諸部分の1つは直線経路または曲線経路を含み、前記相対的な位置は前記直線または曲線経路に沿った長さに関係する、請求項1219のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項22】
最新の既知の位置から初期位置推定値を取得することを含む、請求項1221のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項23】
ルックアップテーブルからベクトル関数の値を取得することを含む、請求項1222のいずれか一項に記載の高分解能符号化方法。
【請求項24】
開始手順を実行することであって、前記開始手順が前記可変特性から前記ベクトル関数をコンパイルすることを含む、前記実行することを含む、請求項16に記載の高分解能符号化方法。
【請求項25】
前記開始手順がさらに、
候補特性及び前記可変特性のバリエーションを選択すること、
前記候補特性と前記バリエーションのシミュレーションを使用して前記ベクトル関数を設定すること、及び、
前記ベクトル関数が前記第1及び第2の条件を満たすことを検証すること、を含む、請求項24に記載の高分解能符号化方法。
【国際調査報告】