IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2024-507473優れた衝撃強さ及び高い熱負荷能力を有するポリカーボネートポリエステル組成物、成形コンパウンド及び成形体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】優れた衝撃強さ及び高い熱負荷能力を有するポリカーボネートポリエステル組成物、成形コンパウンド及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240213BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240213BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20240213BHJP
   C08K 5/5333 20060101ALI20240213BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240213BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240213BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L67/00
C08K5/524
C08K5/5333
C08K5/13
C08L67/02
C08K3/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547571
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2022052279
(87)【国際公開番号】W WO2022167395
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】21155830.9
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒューフェン ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】オベイカ スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ノルテ マリウス
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF00X
4J002CF06X
4J002CF07X
4J002CG01W
4J002CG04W
4J002DJ049
4J002EJ018
4J002EW066
4J002EW127
4J002FD019
4J002FD036
4J002FD037
4J002FD078
4J002FD099
4J002FD169
4J002FD209
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、以下の構成成分を含むか、又はこれらからなる、熱可塑性成形コンパウンドを製造するための組成物に関する:A)ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のポリマー、B)少なくとも1種のポリエステル、C)亜リン酸、D)少なくとも1種のホスホニット、及びE)少なくとも1種の立体障害フェノール。さらに、本発明は、上記組成物から熱可塑性成形コンパウンドを製造する方法、該成形コンパウンド自体、並びに成形体を製造するための該組成物及び該成形コンパウンドの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性成形コンパウンドを製造するための組成物であって、以下の構成成分:
A)ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーと、
B)少なくとも1種のポリエステルと、
C)亜リン酸と、
D)少なくとも1種のホスホニットと、
E)少なくとも1種の立体障害フェノールと、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記成分Aが、芳香族ポリカーボネートであり、ビスフェノールAをベースとするポリカーボネートを標準として用いる、塩化メチレン中でのゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される、22kg/mol~28kg/molの重量平均分子量Mを有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分Bが、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
成分Bとして、0.58dl/g~0.68dl/gの固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートが使用されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
40重量%~80重量%の成分Aと、
15重量%~45重量%の成分Bと、
0.005重量%~0.1重量%の成分Cと、
0.05重量%~1重量%の成分Dと、
0.05重量%~1重量%の成分Eと、
F)0重量%~25重量%の、タルクをベースとする鉱物充填剤と、
G)0重量%~20重量%の、潤滑剤及び離型剤、難燃剤、難燃相乗剤、導電性添加剤、UV/光保護剤、核剤、加水分解保護剤、耐引掻性改善添加剤、IR吸収剤、蛍光増白剤、蛍光添加剤、耐衝撃改良剤、色素及び顔料、並びに成分F以外の充填剤及び補強剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と、
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分Cが固体として使用されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物中の成分Cの割合が、0.01重量%~0.05重量%であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
成分Dとして、構造(5):
【化1】
による化合物が使用されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
成分Fが、6μm未満の上方粒度d95を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
成分F以外の充填剤及び補強剤を含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
成分A~成分Gからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物の前記構成成分を、200℃~320℃の温度で互いに混合し、その後冷却してペレット化することを特徴とする、成形コンパウンドの製造プロセス。
【請求項13】
請求項12に記載のプロセスにより得ることができる成形コンパウンド。
【請求項14】
成形体を製造するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物の、又は請求項13に記載の成形コンパウンドの使用。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物から、又は請求項13に記載の成形コンパウンドから得ることができる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性成形コンパウンドを製造するためのポリカーボネート及びポリエステルをベースとする組成物、該成形コンパウンド自体、成形体を製造するための該組成物又は該成形コンパウンドの使用、及び該成形体自体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート及び/又はポリエステルカーボネート並びにポリエステルを含む熱可塑性成形コンパウンドは長年にわたって知られている。
【0003】
これらは幅広い産業分野、特に自動車産業においてコンポーネントに使用されている。構成成分の種類及び量を変え、更なる添加剤及びポリマー配合相手を添加することにより、特性プロファイルを各用途の要件に広範囲に適合させることができる。
【0004】
多くのこのような用途のためには、成形コンパウンドから製造されるコンポーネントが比較的高い温度に耐え、衝撃応力下での高いレジリエンス等の優れた機械的特性も有していなければならない。
【0005】
溶融コンパウンディング中のポリカーボネート-ポリエステル成形コンパウンドの製造中及び/又は成形コンパウンドの加工中、例えば射出成形中に、ポリカーボネートとポリエステルとの間で望ましくないエステル交換反応がしばしば起こる。このような反応は、特に、好ましくない条件下、例えば高い温度、長い滞留時間、及び溶融コンパウンディング中又は射出成形中の高い機械的応力下において起きる。
【0006】
これにより、重要な特性が損なわれる可能性がある。例えば、成形体の耐熱変形性又はレジリエンスが低下する可能性がある。さらに、形態学的特性が変化する可能性があり、すなわち、ポリエステルの結晶化及び溶融挙動が乱され、ポリカーボネートのガラス転移温度がより低い値にずれる可能性がある。しかし、急速な結晶化は射出成形加工中の離型挙動にプラスの影響があるため、サイクル時間が減少し、コンポーネント製造がより効率的となる。結晶化が乱れなければ、アグレッシブな媒体に対する耐性に関しても有利である。
【0007】
したがって、ポリカーボネート及びポリエステルから構成される成形コンパウンドに安定化のための添加剤を供給することが望ましい。従来技術においては、これに関する多数の文献が存在する。
【0008】
特許文献1は、リンベースの酸を用いて黄変に対して安定化されたポリカーボネート-ポリエステル組成物を開示する。
【0009】
特許文献2は、リン化合物を用いて変色に対して保護されたポリカーボネート及びポリエステルの混合物を開示する。
【0010】
特許文献3は、ポリカーボネート-ポリアルキレンテレフタレート組成物用の安定化剤としての亜リン酸の立体障害エステルを開示する。
【0011】
特許文献4は、ポリカーボネート、ポリアルキレンテレフタレート、鉱物充填剤、及び安定化剤としての亜リン酸を含む組成物を開示する。
【0012】
特許文献5は、ポリテトラメチレンテレフタレート、ビスフェノールAポリカーボネート、及び選択されたリン化合物の混合物からなり、優れた機械的特性により特徴付けられる組成物を開示する。
【0013】
特許文献6は、ジアリール水素ホスファイト、ジアルキル水素ホスファイト、若しくはアルキルアリール水素ホスファイト又はこれらの混合物のいずれかであることができる、少量のホスファイトを安定化剤として使用することにより、熱劣化に対して安定化されたポリカーボネート組成物を開示する。
【0014】
特許文献7は、ポリカーボネートも含むことができ、或る特定のリン含有添加剤を用いて溶融粘度が安定化可能な2種のポリエステルの配合組成物を開示する。
【0015】
特許文献8は、ポリエステル樹脂及び/又はポリカーボネート樹脂、アクリルコアシェル耐衝撃改良剤及び安定化剤パッケージから構成される熱可塑性組成物が、耐衝撃改良剤成分及び安定化剤成分を最初に予備混合し、その後、予備混合物をポリエステル及び/又はポリカーボネートと混合する、改善されたプロセスにより提供されることを開示する。得られた配合組成物は、多量の安定化剤を使用しなくとも、優れた特性を保持する。
【0016】
特許文献9は、ポリブチレンテレフタレート若しくはポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートの混合物、ポリカーボネート、無機充填剤、安定化剤、並びに任意選択でスチレンゴム耐衝撃改良剤を含む組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第85/02622号
【特許文献2】独国特許出願公開第2414849号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0417421号
【特許文献4】欧州特許出願公開第3608358号
【特許文献5】米国特許第4088709号
【特許文献6】独国特許出願公開第2402367号
【特許文献7】欧州特許出願公開第0604074号
【特許文献8】欧州特許出願公開第0114288号
【特許文献9】欧州特許出願公開第0604080号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ポリカーボネート/ポリエステル組成物の安定化については多くの文献に記載されているが、依然として改善の必要があった。
【0019】
改善された衝撃強さを有する成形体の製造に適している熱可塑性成形コンパウンドを製造するための組成物を提供することが望ましかった。
【0020】
さらに、たとえ成形体が好ましくない加工条件下、例えば非常に高い温度及び/又は非常に長い滞留時間で製造されたとしても、成形体の耐熱変形性がわずかしか低下しないことが望ましかった。したがって、耐熱変形性が加工条件によって最小限しか影響されず、これによりこの特性の再現性の改善を確実にすることが目的である。
【0021】
優れた相分離が達成されるように、上述の転移温度、すなわちポリエステルの結晶化温度、ポリエステルの融点、及びポリカーボネートのガラス転移温度が、可能な限り高い値にあることも望ましかった。
【課題を解決するための手段】
【0022】
驚くべきことに、以下の構成成分:
A)ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーと、
B)少なくとも1種のポリエステルと、
C)亜リン酸と、
D)少なくとも1種のホスホニットと、
E)少なくとも1種の立体障害フェノールと、
を含むか、又はこれらからなる、熱可塑性成形コンパウンドを製造するための組成物によって所望の特性が示されることがここに見出された。
【0023】
組成物は、成分Fとして、任意選択で、タルクをベースとする少なくとも1種の鉱物充填剤を含み、成分Gとして、任意選択で、潤滑剤及び離型剤、難燃剤、難燃相乗剤、導電性添加剤、UV/光保護剤、核剤、加水分解保護剤、耐引掻性改善添加剤、IR吸収剤、蛍光増白剤、蛍光添加剤、耐衝撃性改良剤、色素及び顔料、並びに成分F以外の充填剤及び補強剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤も含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好ましい実施形態において、組成物は、
40重量%~80重量%、より好ましくは45重量%~75重量%、特に好ましくは50重量%~66重量%の成分Aと、
15重量%~45重量%、より好ましくは18重量%~40重量%、特に好ましくは20重量%~35重量%の成分Bと、
0.005重量%~0.1重量%、より好ましくは0.008重量%~0.06重量%、特に好ましくは0.01重量%~0.05重量%の成分Cと、
0.05重量%~1重量%、より好ましくは0.08重量%~0.8重量%、特に好ましくは0.1重量%~0.3重量%の成分Dと、
0.05重量%~1重量%、より好ましくは0.08重量%~0.8重量%、特に好ましくは0.1重量%~0.3重量%の成分Eと、
0重量%~25重量%、より好ましくは0重量%~20重量%、特に好ましくは5重量%~20重量%の成分Fと、
0重量%~20重量%、より好ましくは0.1重量%~15重量%、特に好ましくは0.2重量%~10重量%の成分Gと、
を含む。
【0025】
特に明記しない限り、全ての重量%は組成物全体に対してである。
【0026】
好ましい実施形態において、組成物は、90重量%程度、より好ましくは95重量%程度、特に好ましくは100重量%程度が成分A~成分Gからなる。
【0027】
異なる成分の上述の優先される個々の範囲及び好ましい実施形態は、互いに自由に組み合わせることができる。
【0028】
成分A
本発明に従って、適した成分Aの芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネートは、文献から知られているか、又は文献から既知の方法によって製造可能である(芳香族ポリカーボネートの製造については、例えば、Schnell, "Chemistry and Physics of Polycarbonates", Interscience Publishers, 1964、そしてまた独国特許出願第1495626号、独国特許出願公開第2232877号、独国特許出願公開第2703376号、独国特許出願公開第2714544号、独国特許出願公開第3000610号、独国特許出願公開第3832396号を参照、芳香族ポリエステルカーボネートの製造については、例えば、独国特許出願公開第3007934号を参照)。
【0029】
芳香族ポリカーボネートは、例えばジフェノールと、カルボニルハロゲン化物、好ましくはホスゲン及び/又は芳香族ジカルボニルジハロゲン化物、好ましくはベンゼンジカルボン酸のジハロゲン化物とを、界面法により任意に連鎖停止剤、例えばモノフェノールを使用して、任意に三官能性又は三官能性超の分岐剤、例えばトリフェノール又はテトラフェノールを使用して反応させることによって製造される。ジフェノールと、例えば炭酸ジフェニルとの反応による溶融重合法を介した製造も同様に可能である。
【0030】
芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネートの製造用のジフェノールは、好ましくは、式(1):
【化1】
(式中、
Aは、単結合、C~C-アルキレン、C~C-アルキリデン、C~C-シクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO-、任意でヘテロ原子を含む更なる芳香族環が縮合されてもよいC~C12-アリーレン、又は式(2)若しくは式(3):
【化2】
の基であり、
Bは、それぞれの場合に、C~C12-アルキル、好ましくは、メチル、ハロゲン、好ましくは、塩素及び/又は臭素であり、
xは、それぞれ独立して、0、1、又は2であり、
pは、1又は0であり、かつ、
及びRは、各Xにつき個別に選択可能であり、それぞれ独立して、水素又はC~C-アルキル、好ましくは、水素、メチル、又はエチルであり、
は、炭素であり、かつ、
mは、4~7の整数、好ましくは4又は5であるが、但し、少なくとも1つの原子X上でR及びRは同時にアルキルである)のジフェノールである。
【0031】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)-C~C-アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)-C~C-シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、及びα,α-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、並びにそれらの環臭素化誘導体及び/又は環塩素化誘導体である。
【0032】
特に好ましいジフェノールは、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、並びにこれらの二臭素化誘導体又は二塩素化誘導体及び四臭素化誘導体又は四塩素化誘導体、例えば、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、又は2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0033】
ジフェノールは、個別に、又はあらゆる所望の混合物の形態で使用されてもよい。ジフェノールは、文献から知られているか、又は文献の方法によって入手可能である。
【0034】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に適した連鎖停止剤の例としては、フェノール、p-クロロフェノール、p-tert-ブチルフェノール、又は2,4,6-トリブロモフェノール、並びに長鎖アルキルフェノール、例えば、4-[2-(2,4,4-トリメチルペンチル)]フェノール、独国特許出願公開第2842005号による4-(1,3-テトラメチルブチル)フェノール、及びアルキル置換基中に合計8個~20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノール又はジアルキルフェノール、例えば、3,5-ジ-tert-ブチルフェノール、p-イソオクチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-ドデシルフェノール、並びに2-(3,5-ジメチルヘプチル)フェノール及び4-(3,5-ジメチルヘプチル)フェノールが挙げられる。使用される連鎖停止剤の量は一般に、それぞれの場合に使用されるジフェノールのモル合計に対して0.5mol%から10mol%の間である。
【0035】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、20kg/mol~40kg/mol、好ましくは20kg/mol~32kg/mol、特に好ましくは22kg/mol~28kg/molの平均分子量(重量平均M、ビスフェノールAをベースとするポリカーボネート標準を使用してGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定される)を有する。好ましい範囲は、本発明の組成物における機械的特性及びレオロジー特性の特に有利なバランスをもたらす。
【0036】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートを、既知のようにして、好ましくは、使用されるジフェノールの総合計に対して0.05mol%~2.0mol%の三官能性又は三官能性超の化合物、例えば、3つ以上のフェノール基を有する化合物を組み込むことによって分岐させることができる。直鎖状ポリカーボネートを使用することが好ましく、より好ましくはビスフェノールAをベースとする直鎖状ポリカーボネートを使用することが好ましい。
【0037】
ホモポリカーボネート及びコポリカーボネートの両方が適している。成分Aによる本発明のコポリカーボネートはまた、使用されるジフェノールの総量に対して1重量%~25重量%、好ましくは2.5重量%~25重量%のヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを使用して製造され得る。これらは知られており(米国特許第3419634号)、文献から既知の方法によって製造され得る。ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートも同様に適しており、ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートの製造は、例えば、独国特許出願公開第3334782号に記載されている。
【0038】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造用の芳香族ジカルボニルジハロゲン化物は、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル4,4’-ジカルボン酸、及びナフタレン-2,6-ジカルボン酸のジアシルジクロリドである。
【0039】
イソフタル酸及びテレフタル酸のジアシルジクロリドの1:20から20:1の間の比率における混合物が特に好ましい。
【0040】
ポリエステルカーボネートの製造では、カルボニルハロゲン化物、好ましくはホスゲンが更に二官能性酸誘導体として併用される。
【0041】
既に述べたモノフェノールに加えて、芳香族ポリエステルカーボネートを製造するための連鎖停止剤としては、これらのクロロ炭酸エステル及び任意選択でC~C22-アルキル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい芳香族モノカルボン酸の酸クロリド、並びに脂肪族C~C22-モノカルボン酸クロリドが挙げられる。
【0042】
連鎖停止剤の量は、それぞれの場合、フェノール系の連鎖停止剤の場合にはジフェノールのモル数に対して、そしてモノカルボン酸クロリドの連鎖停止剤の場合にはジカルボン酸ジクロリドのモル数に対して、0.1mol%~10mol%である。
【0043】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造において、1つ以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸を使用することもできる。
【0044】
芳香族ポリエステルカーボネートは、既知のように直鎖状又は分岐状であり得るが(独国特許出願公開第2940024号及び独国特許出願公開第3007934号を参照)、ここで、直鎖状ポリエステルカーボネートが好ましい。
【0045】
使用され得る分岐剤は、例えば、(使用されるジカルボニルジクロリドに対して)0.01mol%~1.0mol%の量における三官能性若しくは多官能性のカルボニルクロリド、例えば、トリメソイルトリクロリド、シアヌロイルトリクロリド、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボニルテトラクロリド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボニルテトラクロリド、若しくはピロメリトイルテトラクロリド、又は使用されるジフェノールに対して0.01mol%~1.0mol%の量における三官能性若しくは多官能性のフェノール、例えば、フロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタ-2-エン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス[4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ(4-[4-ヒドロキシフェニルイソプロピル]フェノキシ)メタン、1,4-ビス[4,4’-ジヒドロキシトリフェニル)メチル]ベンゼンである。フェノール系の分岐剤をジフェノールと一緒に初期充填することができ、酸クロリドの分岐剤を酸ジクロリドと一緒に導入することができる。
【0046】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造単位の割合は、所望により変えることができる。好ましくは、カーボネート基の割合は、エステル基及びカーボネート基の総合計に対して、最大100mol%、特に最大80mol%、より好ましくは最大50mol%である。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル部分、また、そのカーボネート部分は、ブロックの形態をとることができるか、又は重縮合物中にランダムな分布を有することができる。
【0047】
熱可塑性芳香族ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートは、単独で又はあらゆる所望の混合物において使用さてもよい。
【0048】
成分Aとして、ビスフェノールAをベースとするポリカーボネートを使用することが好ましい。
【0049】
組成物中における成分Aの割合は、好ましくは40重量%~80重量%、より好ましくは45重量%~75重量%、特に好ましくは50重量%~66重量%である。
【0050】
成分B
本発明によれば、ポリエステル又はポリエステルの混合物が成分Bとして使用される。
【0051】
ポリエステルは、芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸と、脂肪族、脂環式又は芳香脂肪族ジオールとの反応生成物であってもよい。
【0052】
本発明によるポリエステルの製造において使用されるジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、テトラメチルシクロブタンジオール、イソソルビトール、2-エチルプロパン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、3-エチルペンタン-2,4-ジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジエチルプロパン-1,3-ジオール、ヘキサン-2,5-ジオール、1,4-ジ(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチルシクロブタン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン並びにこれらの混合物が挙げられる(独国特許出願公開第2407674号、独国特許出願公開第2407776号、独国特許出願公開第2715932号)。
【0053】
脂環式カルボン酸として、例えばシクロヘキサンジカルボン酸を使用することができる。この酸から誘導される適切なポリエステルは、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノールを含み、PCCDと呼ばれる。このようなポリエステルの製造プロセスは、例えば米国特許第6455564号に記載されている。
【0054】
成分Dのポリエステルは、好ましくは、ポリアルキレンテレフタレートである。
【0055】
好ましい実施形態において、これらは、テレフタル酸又はその反応性誘導体、例えばジメチルエステル又は無水物と、脂肪族、脂環式又は芳香脂肪族ジオールとの反応生成物、及びこれらの反応生成物の混合物である。
【0056】
したがって、ポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸及び、脂肪族、脂環式又は芳香脂肪族ジオールとから誘導された構造単位を含有する。
【0057】
本発明に関して、ポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基だけでなく、一定割合の更なる芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸も、最大50mol%、好ましくは最大25mol%の量で含有するポリエステルも含むと理解されるべきである。これらは、例えば、8個~14個の炭素原子を有する芳香族若しくは脂環式ジカルボン酸、又は4個~12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸を含有することができる。
【0058】
テレフタル酸及びイソフタル酸のみを使用することが好ましい。
【0059】
本発明によるポリアルキレンテレフタレートの製造において用いられるジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、テトラメチルシクロブタンジオール、イソソルビトール、2-エチルプロパン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、3-エチルペンタン-2,4-ジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジエチルプロパン-1,3-ジオール、ヘキサン-2,5-ジオール、1,4-ジ(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチルシクロブタン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン並びにこれらの混合物が挙げられる(独国特許出願公開第2407674号、独国特許出願公開第2407776号、独国特許出願公開第2715932号)。
【0060】
これらのポリアルキレンテレフタレートの一般的な名称は、例えばPET、PBT、PETG、PCTG、PEICT、PCT又はPTTである。
【0061】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基のジカルボン酸成分に対して、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、及び、エチレングリコール基及び/又はブタン-1,4-ジオール基のジオール成分に対して、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%を含有する。
【0062】
好ましい実施形態において、テレフタル酸及びその反応性誘導体(例えばそのジアルキルエステル)とエチレングリコール及び/又はブタン-1,4-ジオールとからのみ製造されるポリアルキレンテレフタレート、並びにこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が、成分Bとして用いられる。
【0063】
ポリアルキレンテレフタレートは、例えば独国特許出願公開第1900270号及び米国特許第3692744号に従って、比較的少量の三価若しくは四価のアルコール又は三塩基性若しくは四塩基性のカルボン酸を組み込むことによって分岐させてもよい。好ましい分岐剤の例はトリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールである。
【0064】
テレフタル酸及びその反応性誘導体(例えば、そのジアルキルエステル)と、エチレングリコール及び/又はブタン-1,4-ジオールとからのみ製造されたポリアルキレンテレフタレート、並びにこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
【0065】
特に好ましい実施形態において、成分Bとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、又はこれらのポリエステルの混合物が使用される。ポリエチレンテレフタレートの使用が最も好ましい。
【0066】
好ましく用いられるポリアルキレンテレフタレートは、好ましくは0.52dl/g~0.95dl/g、特に好ましくは0.56dl/g~0.80dl/g、非常に特に好ましくは0.58dl/g~0.68dl/gの固有粘度を有する。固有粘度を決定するには、ウベローデ粘度計において、DIN 53728-3に従って、25℃、1重量%の濃度でジクロロ酢酸中の比粘度をまず測定する。
【0067】
決定された固有粘度は、その後、測定された比粘度×0.0006907+0.063096(×は乗算を示す)から計算される。
【0068】
好ましい固有粘度を有するポリアルキレンテレフタレートが、本発明による組成物において機械的特性及びレオロジー特性の有利なバランスを実現する。
【0069】
ポリアルキレンテレフタレートは、既知の方法により製造することができる(例えば、Kunststoff-Handbuch, volume VIII, p. 695 ff, Carl-Hanser-Verlag, Munich 1973を参照)。
【0070】
組成物中の成分Bの割合は、好ましくは15重量%~45重量%、より好ましくは18重量%~40重量%、特に好ましくは20重量%~35重量%である。
【0071】
成分C
成分Cとして、組成物は亜リン酸HPOを含む。
【0072】
別の用語はホスホン酸である。以下では、亜リン酸の用語のみが使用される。
【0073】
亜リン酸は固体として又は水溶液として使用することができる。固体としての使用が好ましい。本発明による組成物では、これにより、コンパウンディング中に使用されるポリマー成分の安定性が改善するため、組成物の機械的特性が改善する。さらに、酸水溶液を用いるよりもコンパウンディングユニットへの計量供給がより簡単であり、起こり得る機械部品の腐食のリスクも著しく低減される。
【0074】
成分Cは、有機又は無機の吸着剤又は吸収剤に結合させて、この形態で使用することもできる。これは、例えば、組成物のコンパウンディングの前に、成分Cを吸着剤又は吸収剤と混合して自由流動粉末を形成することによって行われる。これらの吸収剤又は吸着剤は、好ましくは、大きな外部表面積及び/又は内部表面積を有する、微細に分割された材料及び/又は多孔質の材料である。
【0075】
これらの材料は、好ましくは、熱的に不活性な無機材料、例えば、金属又は遷移金属の酸化物又は混合酸化物、ケイ酸塩、シリカ、硫化物、窒化物である。特に好ましい実施形態において、これらは、天然又は合成起源の、微細に分割された及び/又はミクロ微孔質のシリカ又は酸化ケイ素又はケイ酸塩である。
【0076】
亜リン酸をポリカーボネート又はポリエステルをベースとするマスターバッチの形態で用いることも可能である。マスターバッチという用語は、亜リン酸が組成物中に意図される使用濃度よりも多量に熱可塑性プラスチック(ポリカーボネート又はポリエステル)と予備混合されることを意味すると理解されるべきである。この混合物は、その後、組成物中に所望の酸濃度が達成されるように、適切な量で組成物に添加される。
【0077】
組成物中の成分Cの割合は、好ましくは0.005重量%~0.1重量%、より好ましくは0.008重量%~0.06重量%、特に好ましくは0.01重量%~0.05重量%である。
【0078】
成分D
組成物は、成分Dとしてホスホニットを含む。2種以上のこのような成分の混合物も使用することができる。
【0079】
ホスホニットは亜ホスホン酸HP(OH)から誘導され、以下の一般構造(4):
【化3】
(式中、
nは1、2、3、又は4であり、
、R及びRは、それぞれ独立して、C~C60-アルキル、C~C12-アリール及びC~C12シクロアルキル及び水素であることができ、ここで、特定される基は、それぞれの場合に、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環によって置換されることができ、ここで、R及びRは同時に水素となることはない)を有する。
【0080】
基は、好ましくは、C~C-アルキル、分岐C~C-アルキル、又はクミルによって置換され、ここで、置換基は同じでも異なってもよい。
【0081】
基がアリール基である場合、これらは、好ましくは2位及び4位、又は2位、4位及び6位において置換される。これらの位置におけるtert-ブチル置換基が非常に特に好ましい。
【0082】
ホスホニットは、単核(n=1)又は多核(n=2、3又は4)の、脂肪族、脂環式及び/又は芳香族置換されたホスホニットであってもよい。
【0083】
「多核」ホスホニットとは、1つの分子内に2つ以上のホスホニット基、すなわち一箇所が有機置換され、さらに有機置換された酸素原子を2つ持つリン原子を有するものを意味すると理解される。
【0084】
構造(4)についての別名は「次亜リン酸エステル」又は更に「亜リン酸エステル」である。
【0085】
特に好ましくは、構造(5):
【化4】
による物質が成分Dとして使用される。
【0086】
成分D)においては、構造(5)に加えて、構造(5)を主成分としつつ、その、他の異性体構造も存在することができる。
【0087】
化合物(5)は、CAS:119345-01-6として分類され、BASF(独国)からIrgafos(商標)P-EPQの名称で市販されている。
【0088】
組成物中の成分Dの割合は、好ましくは0.05重量%~1重量%、より好ましくは0.08重量%~0.8重量%、特に好ましくは0.1重量%~0.3重量%である。
【0089】
成分E
組成物は、成分Eとして立体障害フェノールを含む。2種以上のこのような成分の混合物も使用することができる。
【0090】
一般構造(6a)又は(6b):
【化5】
(式中、nは、1、2、3、又は4であり、
、R、及びRは、それぞれ独立してC~C-アルキル又は水素であり、
Xは、直接結合又はC~C60の有機基であり、該有機基は、酸素及び/又は窒素を含んでもよく、
は、直接結合、炭素、C~C-アルキル、アリール、又は式(7a)、(7b)若しくは(7c):
【化6】
による構造である)の化合物が特に好ましい。
【0091】
成分Eは、特に好ましくは、構造(8)及び(9):
【化7】
のうちの少なくとも1種の化合物から選択される。
【0092】
化合物(8)は、CAS:6683-19-8として分類され、BASF(独国)からIrganox(商標)1010の名称で市販されている。
【0093】
化合物(9)は、CAS:2082-79-3として分類され、BASF(独国)からIrganox(商標)1076の名称で市販されている。
【0094】
組成物中の成分Eの割合は、好ましくは0.05重量%~1重量%、より好ましくは0.08重量%~0.8重量%、特に好ましくは0.1重量%~0.3重量%である。
【0095】
成分F
成分Fとして、熱可塑性成形コンパウンドは、任意選択で、補強剤として、タルクをベースとする少なくとも1種の鉱物充填剤を含んでもよい。
【0096】
好ましい実施形態において、タルクをベースとする鉱物充填剤が唯一の補強剤である。
【0097】
本発明に関して、タルクベースの鉱物充填剤として適しているのは、当業者がタルク又はタルカムと関連付ける任意の粒状充填剤である。市販されており、その製品説明に特徴的特色としてタルク又はタルカムという用語が含まれている全ての粒状充填剤も適している。
【0098】
充填剤の総質量に対して、50重量%超、好ましくは80重量%超、特に好ましくは95重量%超、とりわけ好ましくは98重量%超の、DIN 55920によるタルク含量を有する鉱物充填剤が好ましい。
【0099】
タルクは、天然に存在するタルク又は合成的に製造されたタルクを意味すると理解されるべきである。
【0100】
純粋なタルクは、3MgO・4SiO・HOの化学組成を有するため、それぞれの場合にタルクに対して、31.9重量%のMgO含量、63.4重量%のSiO含量、及び4.8重量%の化学結合水含量を有する。これは、層状構造を有するケイ酸塩である。
【0101】
天然に存在するタルク材料は、一般に上記の理想的な組成を有しないが、それは、これらが、例えば、他の元素によるマグネシウムの部分置換によって、アルミニウムによるケイ素の部分置換によって、及び/又は、ドロマイト、マグネサイト及びクロライト等の他の鉱物との相互成長によって、汚染されているためである。
【0102】
成分Fとして特に好ましく使用されるタルクのグレードは、特に高純度によって特徴付けられ、それぞれの場合にタルクに対して、28重量%~35重量%、好ましくは30重量%~33重量%、特に好ましくは30.5重量%~32重量%のMgO含量によって、及び、55重量%~65重量%、好ましくは58重量%~64重量%、特に好ましくは60重量%~62.5重量%のSiO含量によって、特徴づけられる。
【0103】
特に好ましい種類のタルクは、それぞれの場合にタルクに対して、5重量%未満、特に好ましくは1重量%未満、特に0.7重量%未満のAl含量によっても特徴付けられる。
【0104】
また、有利であるため好ましいのは、特に、0.1μm~20μm、好ましくは0.2μm~10μm、より好ましくは0.5μm~5μm、さらにより好ましくは0.7μm~2.5μm、特に好ましくは1.0μm~2.0μmの平均粒径d50を有する微粉グレードの形態での、本発明によるタルクの使用である。
【0105】
本発明による使用のためのタルクベースの鉱物充填剤は、好ましくは、10μm未満、好ましくは7μm未満、特に好ましくは6μm未満、とりわけ好ましくは4.5μm未満の上方粒径又は粒度d95を有する。充填剤のd95値及びd50値は、ISO 13317-3に従ってSEDIGRAPH D5000沈降分析によって決定される。
【0106】
タルクベースの鉱物充填剤は、任意選択で、ポリマーマトリクスとのより優れた結合を達成するために、表面処理を施されたものであってもよい。これらは、例えば、官能化シランをベースとする接着促進剤系が与えられたものであってもよい。
【0107】
完成品の極薄切片の電子顕微鏡写真、及び充填剤粒子の代表的な量(約50個)の測定によって決定される、粒状充填剤の平均アスペクト比(直径対厚さ)は、好ましくは1~100、特に好ましくは2~25、とりわけ好ましくは5~25の範囲にある。
【0108】
成形コンパウンド/成形体を得るための加工の結果、粒状充填剤は、成形コンパウンド中/成形体中で、最初に使用された充填剤よりも小さいd95/d50を有することができる。
【0109】
組成物中の成分Fの割合は、好ましくは0重量%~25重量%、より好ましくは0重量%~20重量%、特に好ましくは5重量%~20重量%である。
【0110】
成分G
組成物は、成分Gとして市販のポリマー添加剤を含むことができる。
【0111】
成分Eの市販のポリマー添加剤としては、例えば、内部及び外部潤滑剤及び離型剤(例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート、モンタンワックス又はポリエチレンワックス)、難燃剤、難燃相乗剤、導電性添加剤(例えば、導電性のカーボンブラック又はカーボンナノチューブ)、UV/光保護剤、核剤(例えば、フェニルホスフィン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、芳香族カルボン酸の塩)、加水分解保護剤、耐引掻性改善添加剤(例えばシリコーンオイル)、IR吸収剤、蛍光増白剤、蛍光添加剤、耐衝撃改良剤(コアシェル構造有り又は無し)、更なるポリマー配合相手、並びに色素及び顔料(例えば、二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ニグロシン及びアントラキノン)、並びに充填剤及び補強剤(成分Fとは異なる)等の添加剤、或いは挙げられた複数の添加剤の混合物が挙げられる。
【0112】
更なる補強剤は、好ましくは、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、ガラス球、セラミック球、珪灰石及びガラス繊維からなる群から選択される。
【0113】
本発明による組成物は、好ましくは、少なくとも1種の離型剤、好ましくはペンタエリスリトールテトラステアレートを含有する。
【0114】
好ましい実施形態において、組成物は、成分Gとして、潤滑剤及び離型剤、UV/光保護剤、帯電防止剤、色素、顔料並びに充填剤及び補強剤(成分Fとは異なる)を含む群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。
【0115】
添加剤は、単独で、又は混和物中/マスターバッチの形態で用いることができる。
【0116】
好ましい実施形態において、組成物は、成分F以外の他の充填剤及び補強剤を含まない。
【0117】
好ましい実施形態において、組成物は、ゴム変性グラフトポリマーを含まない。
【0118】
好ましい実施形態において、組成物は、ビニル(コ)ポリマー、特にSAN(スチレン-アクリロニトリル)を含まない。
【0119】
好ましい実施形態において、組成物はリンベースの難燃剤を含まない。
【0120】
成分を含まないとは、組成物中に、0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、とりわけ好ましくは0重量%のこの成分が存在することを意味すると理解されるべきである。
【0121】
組成物中の成分Gの割合は、好ましくは0重量%~20重量%、より好ましくは0.1重量%~15重量%、特に好ましくは0.2重量%~10重量%である。
【0122】
成形コンパウンド及び成形体の製造
本発明による組成物は、熱可塑性成形コンパウンドを製造するために使用することができる。本発明による熱可塑性成形コンパウンドは、例えば、組成物の各構成成分をよく知られている方法で混合し、好ましくは200℃~320℃、特に好ましくは240℃~310℃、非常に特に好ましくは260℃~300℃の温度で、例えば、内部混練機、押出機及び二軸押出機等の通例の装置において、溶融コンパウンディング及び溶融押出することで製造することができる。本願において、このプロセスを概してコンパウンディングと呼ぶ。
【0123】
したがって、「成形コンパウンド」という用語は、組成物の構成成分が溶融コンパウンディング及び溶融押出されることで得られる生成物を意味すると理解されるべきである。
【0124】
組成物の個々の構成成分の混合は、既知の方法で、連続的又は同時のいずれかで、約20℃(室温)又はそれより高い温度のいずれかで行うことができる。これは、例えば、数種の構成成分を押出機の主取入れ口を介して計量導入し、残りの構成成分をコンパウンディングプロセスのより後で側方押出機を介して導入することができることを意味する。
【0125】
本発明による成形コンパウンドは、任意の種類の成形体及び半製品を製造するために使用することができる。これらは、例えば、射出成形プロセス、押出成形プロセス及びブロー成形プロセスによって製造することができる。加工の更なる形態は、従前に製造されたシート又はフィルムからの熱成形による成形体の製造である。本発明による成形コンパウンドは、押出法、ブロー成形法及び熱成形法による加工に特に適している。
【0126】
半製品の例としてはシートが挙げられる。
【0127】
組成物の構成成分を射出成形機中又は押出ユニット中に直接計量供給し、これらを加工して成形体を得ることも可能である。
【0128】
本発明による組成物及び成形コンパウンドから製造可能なそのような成形体の例は、モニタ、フラットスクリーン、ノートブック、プリンタ、コピー機等の事務機器用のフィルム、形材、任意の種類のハウジング部品;建設分野用のシート、パイプ、電気機器ダクト、窓、ドア及び他の形材、並びに、スイッチ、プラグ及びソケット等の電気及び電子コンポーネント、並びに、車両用、特に自動車分野用の部品である。本発明による組成物及び成形コンパウンドは、以下の成形体又は成形品の製造にも適している:鉄道車両、船舶、航空機、バス及び他の自走体用の内部装備部品、自走体用車体コンポーネント、小型変圧器を含む電気機器のハウジング、情報の処理及び伝送のための機器のハウジング、医療機器用のハウジング及び上張り、マッサージ機器及びそのハウジング、子供用の乗り物玩具、シート状壁部材、安全機器のハウジング、断熱輸送コンテナ、衛生及び浴室機器用の成形部品、換気口用の保護グリル、並びに園芸機器のハウジング。
【0129】
本発明はさらに、上述の組成物から製造される成形体、好ましくはシート等のシート状成形品、及び、例えば、ミラーハウジング、フェンダ、スポイラ、ボンネット等の車体部品に関する。
【0130】
成形体は小型でも大型でもよく、外装又は内装用途に用いることができる。車両構造、とりわけ自動車分野用の大型の成形品を製造することが好ましい。本発明による成形コンパウンドは、とりわけ、車体外装部品、例えばフェンダ、トランク蓋、エンジンボンネット、バンパー、荷台、荷台用カバー、車両ルーフ又は他の車体付属部品を製造するために使用することができる。
【0131】
本発明による成形コンパウンド/組成物から作製された成形体又は半製品は、更なる材料、例えば金属又はプラスチックとの複合体中に配置することもできる。例えば車体外装部品の任意の塗装後、塗装層を本発明による成形コンパウンド上及び/又は複合材料中に使用される材料上に直接配置することができる。本発明による成形コンパウンド、及び本発明による成形コンパウンドから作製された成形品/半製品は、幾つかのコンポーネント又は部品を接着及び結合する通例の技術、例えば、共押出、フィルムインサート成形、インサートのオーバーモールディング、接着結合、溶接、ねじ止め又は圧締め等によって、他の材料との複合体又はそれ自体において、例えば車体外装部品等の完成部品を製造するために使用することができる。
【0132】
本発明の更なる実施形態1~実施形態40を以下に記載する:
【0133】
1.熱可塑性成形コンパウンドを製造するための組成物であって、以下の構成成分:
A)ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーと、
B)少なくとも1種のポリエステルと、
C)亜リン酸と、
D)少なくとも1種のホスホニットと、
E)少なくとも1種の立体障害フェノールと、
を含む、組成物。
【0134】
2.成分Aが、芳香族ポリカーボネートであり、ビスフェノールAをベースとするポリカーボネートを標準として用いる、塩化メチレン中でのゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される、22kg/mol~28kg/molの重量平均分子量Mを有することを特徴とする、実施形態1に記載の組成物。
【0135】
3.成分Aが、ビスフェノールAをベースとする芳香族ポリカーボネートであることを特徴とする、実施形態1又は2に記載の組成物。
【0136】
4.成分Bが、テレフタル酸に由来する構造単位と、最大50mol%の、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸に由来する構造単位とを含有することを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0137】
5.成分Bが、テレフタル酸及びイソフタル酸以外の酸の構造単位を含有しないことを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0138】
6.成分Bが、テレフタル酸以外の酸の構造単位を含有しないことを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0139】
7.成分Bが、エチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、プロパンジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、テトラメチルシクロブタンジオール及びイソソルビトールから誘導される構造単位を含有することを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0140】
8.成分Bが、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートからなる群から選択されることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0141】
9.成分Bとして、0.52dl/g~0.95dl/gの固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートが使用されることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0142】
10.成分Bとして、0.56dl/g~0.80dl/gの固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートが使用されることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0143】
11.成分Bとして、0.58dl/g~0.68dl/gの固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートが使用されることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0144】
12.上記実施形態のいずれかに記載の組成物であって、
40重量%~80重量%の成分Aと、
15重量%~45重量%の成分Bと、
0.005重量%~0.1重量%の成分Cと、
0.05重量%~1重量%の成分Dと、
0.05重量%~1重量%の成分Eと、
F)0重量%~25重量%の、タルクをベースとする鉱物充填剤と、
G)0重量%~20重量%の、潤滑剤及び離型剤、難燃剤、難燃相乗剤、導電性添加剤、UV/光保護剤、核剤、加水分解保護剤、耐引掻性改善添加剤、IR吸収剤、蛍光増白剤、蛍光添加剤、耐衝撃改良剤、色素及び顔料、並びに成分F以外の充填剤及び補強剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤と、
を含む、組成物。
【0145】
13.組成物中の成分Aの割合が、40重量%~80重量%、より好ましくは45重量%~75重量%、特に好ましくは50重量%~66重量%であることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0146】
14.組成物中の成分Bの割合が、15重量%~45重量%、より好ましくは18重量%~40重量%、特に好ましくは20重量%~35重量%であることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0147】
15.組成物中の成分Cの割合が、0.005重量%~0.1重量%、より好ましくは0.008重量%~0.06重量%、特に好ましくは0.01重量%~0.05重量%であることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0148】
16.組成物中の成分Dの割合が、0.05重量%~1重量%、より好ましくは0.08重量%~0.8重量%、特に好ましくは0.1重量%~0.3重量%であることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0149】
17.組成物中の成分Eの割合が、0.05重量%~1重量%、好ましくは0.08重量%~0.8重量%、より好ましくは0.1重量%~0.3重量%であることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0150】
18.組成物中の成分Fの割合が、0重量%~25重量%、より好ましくは0重量%~20重量%、特に好ましくは5重量%~20重量%であることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0151】
19.組成物中の成分Gの割合が、0重量%~20重量%、より好ましくは0.1重量%~15重量%、特に好ましくは0.2重量%~10重量%であることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0152】
20.上記実施形態のいずれかに記載の組成物であって、
50重量%~66重量%の成分Aと、
20重量%~35重量%の成分Bと、
0.01重量%~0.05重量%の成分Cと、
0.1重量%~0.3重量%の成分Dと、
0.1重量%~0.3重量%の成分Eと、
5重量%~20重量%の成分Fと、
0.2重量%~10重量%の成分Gと、
を含む、組成物。
【0153】
21.成分Cが固体として使用されることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0154】
22.成分Cが、有機又は無機の吸着剤又は吸収剤に結合して使用されることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0155】
23.成分Cが、シリカに結合して使用されることを特徴とする、実施形態20に記載の成物。
【0156】
24.成分Dとして、構造(5):
【化8】
による化合物が使用されることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0157】
25.成分Eが、構造(8)及び(9):
【化9】
による少なくとも1種の化合物から選択されることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0158】
26.成分Fとして、0.7重量%未満のAl含量を有するタルクが使用されることを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0159】
27.成分Fが、6μm未満の上方粒度d95を有することを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0160】
28.成分F以外の充填剤及び補強剤を含まない、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0161】
29.組成物が、ゴム変性グラフトポリマーを含まないことを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0162】
30.組成物が、ビニル(コ)ポリマーを含まないことを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0163】
31.組成物が、スチレン-アクリロニトリルコポリマーを含まないことを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0164】
32.組成物が、リンベースの難燃剤を含まないことを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0165】
33.組成物が炭素繊維を含まないことを特徴とする、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0166】
34.90重量%程度が成分A~成分Gからなる、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0167】
35.95重量%程度が成分A~成分Gからなる、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0168】
36.成分A~成分Gからなる、上記実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0169】
37.実施形態1~36のいずれかに記載の組成物の構成成分を、200℃~320℃の温度で互いに混合し、その後冷却してペレット化することを特徴とする、成形コンパウンドの製造プロセス。
【0170】
38.実施形態37に記載のプロセスにより得ることができる成形コンパウンド。
【0171】
39.成形体を製造するための、実施形態1~36のいずれかに記載の組成物の、又は実施形態37に記載の成形コンパウンドの使用。
【0172】
40.実施形態1~36のいずれかに記載の組成物から、又は実施形態38に記載の成形コンパウンドから得ることができる成形体。
【実施例
【0173】
成分A-1
24kg/molの分子量(重量平均M、ビスフェノールAをベースとするポリカーボネート標準を使用してGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定される)を有するビスフェノールAをベースとする直鎖状ポリカーボネート。
【0174】
成分A-2
28kg/molの分子量(重量平均M、ビスフェノールAをベースとするポリカーボネート標準を使用してGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定される)を有するビスフェノールAをベースとする直鎖状ポリカーボネート。
【0175】
成分B-1
0.623dl/gの固有粘度を有するポリエチレンテレフタレート(例えば、Invista(独国)のPET)。比粘度は、25℃、1重量%濃度でジクロロ酢酸中にて測定される。固有粘度は比粘度から以下の式によって算出される。
固有粘度=比粘度×0.0006907+0.063096
【0176】
成分B-2
0.664dl/gの固有粘度を有するポリエチレンテレフタレート(例えば、Invista(独国)のPET)。比粘度は、25℃、1重量%濃度でジクロロ酢酸中にて測定される。固有粘度は比粘度から以下の式によって算出される。
固有粘度=比粘度×0.0006907+0.063096
【0177】
成分C-1
固体としての亜リン酸HPO、Sigma-Aldrich Chemie GmbH(独国)
【0178】
成分C-2(比較)
Zn(HPO、Budit(商標)T21、Budenheim(独国)
【0179】
成分D-1
構造(5)による二量体ホスホニット、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスホニット、Irgafos(商標)P-EPQ、BASF(独国)
【化10】
【0180】
成分D-2(比較):
構造(10)によるホスファイト安定化剤、Irgafos(商標)168、トリス(2,4-ジ-tert-ブチル-フェニル)ホスファイト);BASF(独国)
【化11】
【0181】
成分E-1
構造(8)による立体障害フェノール、Irganox(商標)1010、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、BASF(独国)
【化12】
【0182】
成分E-2
構造(9)による立体障害フェノール、Irganox(商標)1076、オクタデシル3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート、BASF(独国)
【化13】
【0183】
成分F
sedigraphを使用して測定した1.2μmの平均粒子直径d50及び3.5μmのd95を有し、0.5重量%のAl含量を有するタルク、Imerys Talc(オーストリア国)製のJetfine(商標)3CA
【0184】
成分G-1
離型剤としてのペンタエリスリトールテトラステアレート、Cognis Oleochemicals GmbH(独国)
【0185】
成分G-2
潤滑剤/離型剤としてのモンタン酸エステルワックス(Licowax(商標)E)
【0186】
成分G-3
カーボンブラック、Black Pearls(商標)800、Cabot
【0187】
成形コンパウンドの製造
成分A~成分Eを含む本発明による成形コンパウンドを、Coperion, Werner and Pfleiderer(独国)のZSK25二軸押出機にて270℃の融解温度で製造する。
【0188】
試験片の製造及び試験
各コンパウンディングから得たペレットを、融解温度270℃及び金型温度70℃で射出成形機(例えばArburg製)にて試験片に加工した。
【0189】
耐熱変形性を、270℃、滞留時間43秒で製造した、80mm×10mm×4mmの寸法を有する、片側に射出された試験棒について、DIN ISO 306(ビカット軟化温度、荷重50N及び加熱速度120K/hでの方法B、2013年からの版)に従って測定した。さらに、ビカット軟化温度を、300℃、滞留時間129秒で製造した試験棒について測定した。差分Δビカット=ビカット(270℃、滞留時間43秒の試験片)-ビカット(300℃、滞留時間129秒の試験片)を、熱負荷能力の尺度として得る。
【0190】
衝撃強さを、ISO 180/1U(1982年版)に従って、室温(23℃)で80mm×10mm×4mmの寸法を有する試験棒について10回の測定によって決定する。
【0191】
ポリカーボネートのガラス転移温度(TPC)、ポリエステルの融解温度(TPET)、及びポリエステルの結晶化温度(TPET)を、ISO 11357-3:2018に従って示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定した:温度、並びに融解及び結晶化のエンタルピーを、Mettler DSC 3+機器を使用して決定した。測定は、窒素雰囲気中(50ml N/min)、加熱速度10K/min、-40℃~320℃の温度範囲で実施した。この場合、加熱及び冷却を数回繰り返した。Tは、それぞれの場合に、2回目の加熱及び1回目の冷却中のガラス転移の中間点として決定した。Tは2回目の加熱中のピーク温度として決定し、Tは1回目の冷却中のピーク温度として決定した。
【0192】
調査した材料の不安定な相挙動/熱損傷により、ポリエステルの融解温度(TPET)及び/又はポリエステルの結晶化温度(TPET)を決定することができなかった場合は、「測定不能」と記す。
【0193】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために役立つ。
【0194】
【表1】
【0195】
【表2】
【0196】
【表3】
【0197】
第1表は、成分C、成分D及び成分Eを含む本発明による組成物によって、改善された衝撃強さと相まって、高い熱応力後のわずかな熱変形温度の低下(Δビカット)しか伴わない成形体の製造が可能となることを示す。さらに、DSCの調査は、ポリカーボネート成分及びポリエステル成分の各転移温度が、複数回の加熱中と繰り返しの冷却中のどちらにおいても高いレベルにあるため、相分離及び相安定性が良好に保たれると推測可能であることを示す。
【0198】
成分Cを使用しない場合(C1)、高い熱応力下では熱変形温度が著しく低下し、ポリカーボネート成分及びポリエステル成分が望ましくない形で混合される。成分Dの添加を高めても、成分Cの欠如を補うことはできない。
【0199】
成分Dがホスホニットではなく、ホスファイトである場合(C6、C7及びC8)、特にレジリエンスが所望のレベルにない。
【0200】
酸性リン酸塩を成分Cとして使用する場合(C9)、レジリエンスも低下し、転移温度が低下する。
【0201】
本発明による成分Cのみを使用し、成分D及び成分Eが欠けている場合、転移温度は、同量の成分Cに対して低下する(C10と比較した実施例4)。これは、成分Cの量をより増やすことによって補うことはできず、というのも、そうすると衝撃強さが著しく低下するためである(C12)。
【0202】
成分C、成分D、及び成分Eを組み合わせる利点は、鉱物充填剤を用いない組成物においても明らかである(第2表)。
【国際調査報告】