(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ニッケル、モリブデンおよびタングステンをベースとする触媒を有する触媒配列を使用する水素化処理方法
(51)【国際特許分類】
C10G 45/08 20060101AFI20240213BHJP
B01J 31/04 20060101ALI20240213BHJP
B01J 27/199 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C10G45/08 Z
B01J31/04 M
B01J27/199 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547596
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2022052517
(87)【国際公開番号】W WO2022171508
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ジラール エチエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ガイ アン-ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】メルドゥリニヤック イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ドーダン アントワーヌ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
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4H129CA06
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4H129NA46
(57)【要約】
本発明の主題は、150℃~600℃の蒸留範囲を有する炭化水素ベースの供給原料を水素化処理して、水素化処理済み流出物を得る方法であり、前記方法は、以下の工程を含む:a)前記炭化水素ベースの供給原料を、水素の存在中で、少なくとも1種の第1触媒と接触させ、該第1触媒は、容積V1を占め、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナをベースとする担体と、ニッケルおよびモリブデンからなる活性相とを含んでいる、工程、b)工程a)において得られた流出物を、水素の存在中で、少なくとも1種の第2触媒と接触させ、該第2触媒は、容積V2を占め、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナをベースとする担体と、ニッケル、モリブデンおよびタングステンからなる活性相と、リンとを含んでおり、V1/V2の容積分布は、それぞれ、50容積%/50容積%~90容積%/10容積%である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留範囲が150℃~600℃である炭化水素供給原料を、温度180℃~450℃、圧力0.5~30MPa、毎時空間速度0.1~20h
-1および標準の温度および圧力の条件下に測定される水素の容積/液体供給原料の容積として表される水素/供給原料の比50L/L~5000L/Lで水素化処理して、水素化処理済み流出物得るための方法であって、以下の段階:
a) 第1水素化処理段階;第1水素化処理反応セクションにおいて行い、少なくとも1個の触媒床を使用し、該触媒床は、少なくとも1種の第1水素化処理触媒を含んでおり、前記水素化処理反応セクションに、前記炭化水素供給原料と、水素を含んでいるガス流れとを少なくとも給送し、前記第1触媒は、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナをベースとする担体と、ニッケル およびモリブデンからなる活性相とを含んでいる、
b) 第2水素化処理段階;第2水素化処理反応セクションにおいて行い、少なくとも1個の触媒床を使用し、該触媒床は、少なくとも1種の第2水素化処理触媒を含んでおり、前記水素化処理反応セクションに、段階a)において得られた流出物の少なくとも一部を給送し、前記第2触媒は、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナをベースとする担体と、ニッケル、モリブデンおよびタングステンからなる活性相と、リンとを含んでいる、
を含み、第1触媒を含有している前記第1水素化処理反応セクションは、容積V1を占め、第2触媒を含有している前記第2水素化処理反応セクションは、容積V2を占め、容積の分布V1/V2は、前記の第1および第2の水素化処理反応セクションのそれぞれで、50容積%/50容積%~90容積%/10容積%である、方法。
【請求項2】
容積の分布V1/V2は、前記第1および第2の水素化処理反応セクションのそれぞれで60容積%/40容積%~85容積%/15容積%である、請求項1に記載の水素化処理法。
【請求項3】
容積の分布V1/V2は、前記第1および第2の水素化処理反応セクションのそれぞれで70容積%/30容積%~80容積%/20容積%である、請求項2に記載の水素化処理法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の水素化処理法であって、第2触媒は、以下の点で特徴付けられる方法:
- ニッケルの含有率は、NiOの形態で測定されて、触媒の全重量に対して、1重量%~4重量%である、
- モリブデンの含有率は、MoO
3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して、2重量%~9重量%である、
- タングステンの含有率は、WO
3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して、18重量%~40重量%である、
- リンの含有率は、P
2O
5の形態で測定されて、触媒の全重量に対して、0.5重量%~4重量%である。
【請求項5】
請求項4に記載の水素化処理法であって、第2触媒は、以下の点で特徴付けられる方法:
- ニッケルの含有率は、NiOの形態で測定されて、触媒の全重量に対して、3重量%~4重量%である、
- モリブデンの含有率は、MoO
3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して、2重量%~9重量%である、
- タングステンの含有率は、WO
3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して、29重量%~40重量%である、
- リンの含有率は、P
2O
5の形態で測定されて、触媒の全重量に対して、3重量%~4重量%である。
【請求項6】
第2触媒は、以下の点でさらに特徴付けられる、請求項5に記載の水素化処理法:
- モル比WO
3/MoO
3は、2~12.4mol/molである、
- モル比NiO/(WO
3+MoO
3)は、0.20~0.33mol/molである、
- モル比P
2O
5/(WO
3+MoO
3)は、0.21~0.34mol/molである。
【請求項7】
第1触媒が有するモリブデン含有率は、MoO
3として表されて、触媒の全重量に対して5重量%~40重量%であり、ニッケル含有率は、NiOとして表されて、触媒の全重量に対して1重量%~10重量%である、請求項1~6のいずれか1つに記載の水素化処理法。
【請求項8】
第1触媒は、リンをさらに含み、リン含有率は、P
2O
5として表されて、触媒の全重量に対して0.1重量%~20重量%である、請求項1~7のいずれか1つに記載の水素化処理法。
【請求項9】
第1および/または第2の触媒は、酸素含有および/または窒素含有および/または硫黄含有の有機化合物をさらに含有する、請求項1~8のいずれか1つに記載の水素化処理法。
【請求項10】
有機化合物は、カルボキシル、アルコール、チオール、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボナート、アミン、ニトリル、イミド、オキシム、ウレアまたはアミドの官能基から選ばれる1種または複数種の化学官能基を含んでいる化合物あるいはまたフラン環を含む化合物あるいはまた糖から選ばれる、請求項9に記載の水素化処理法。
【請求項11】
有機化合物は、γ-バレロラクトン、2-アセチルブチロラクトン、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、マレイン酸、マロン酸、クエン酸、酢酸、シュウ酸、グルコン酸、グルコース、フルクトース、スクロース、ソルビトール、キシリトール、γ-ケト吉草酸、コハク酸ジ(C
1-C
4アルキル)、特にコハク酸ジメチル、ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリジノン、炭酸プロピレン、3-オキソブタン酸2-メトキシエチル、ビシン、トリシン、2-フルアルデヒド(フルフラールの名称の下でも知られている)、5-ヒドロキシメチルフルフラール、2-アセチルフラン、5-メチル-2-フルアルデヒド、アスコルビン酸、乳酸ブチル、乳酸エチル、ブチリル乳酸ブチル、3-ヒドロキシブタン酸エチル、3-エトキシプロパン酸エチル、酢酸2-エトキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、1-ビニル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,5-ペンタンジオール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5-ピロリジンジオン、5-メチル-2(3H)-フラノン、1-メチル-2-ピペリジノン、4-アミノブタン酸、グリコール酸ブチル、2-メルカプトプロパン酸エチル、4-オキソペンタン酸エチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、アジピン酸ジメチルおよび3-オキソグルタル酸ジメチルから選ばれる、請求項10に記載の水素化処理法。
【請求項12】
有機化合物の含有率は、触媒の全重量に対して1重量%~30重量%である、請求項9~11のいずれか1つに記載の水素化処理法。
【請求項13】
第1および/または第2の触媒は、少なくとも部分的に硫黄ベースのものである、請求項1~12のいずれか1つに記載の水素化処理法。
【請求項14】
ガスオイル留分の水素化脱硫のための方法である、請求項1~13のいずれか1つに記載の水素化処理法。
【請求項15】
流動床接触分解法における前処理として行う、請求項1~13のいずれか1つに記載の水素化処理法。
【請求項16】
水素化分解法における前処理として行う、請求項1~13のいずれか1つに記載の水素化処理法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種の触媒の配列を使用する炭化水素供給原料の水素化処理のための方法に関し、その第2触媒は、ニッケル、モリブデンおよびタングステンをベースとする触媒である。この方法の目的は、水素化脱硫、水素化脱窒、および/または水素化脱芳香族された供給原料の製造にある。
【背景技術】
【0002】
従来の水素化処理触媒は、一般に、酸化物担体と、第VIb族および第VIII族からの金属をベースとし、それらの酸化物の形態にあり、リンもベースとする活性相とを含む。これらの触媒の調製は、一般に、金属およびリンを担体上に含浸させる段階と、それに続く乾燥・焼成の段階を含み、この段階によりそれらの酸化物の形態にある活性相を得ることが可能となる。水素化処理および/または水素化分解の反応におけるそれらの使用の前に、これらの触媒は、一般に、硫化に供されて活性体を形成する。
【0003】
有機化合物を水素化処理触媒に添加して、それらの活性を改善することは、当業者によって、特に含浸とその後の焼成を伴わない乾燥によって調製された触媒に対して推奨されている。これらの触媒は、「添加物含浸乾燥型触媒(additive-impregnated dried catalysts)」と呼ばれることが多い。
【0004】
通常、炭化水素留分を水素化処理するための触媒は、それらに含有される硫黄ベースの化合物、窒素ベースの化合物または芳香族化合物を取り除いて、例えば、所与の用途(自動車燃料、ガソリンまたはガスオイル、家庭用燃料油、ジェット燃料)のために石油製品を要求される仕様(硫黄含有率、芳香族含有率など)にすることを目的としている。
【0005】
多くの国々において空気の質に関する法規制が強化されているため、超低硫黄燃料、特にディーゼル(ULSD)の製造のためのより効果的な触媒と方法を開発するための継続的な努力がなされているところである。これらの方法のための効率的な触媒の開発において大きな進歩がなされたが、大きな課題が残っており、例えば、芳香族炭化水素に対するそれらのあまり高くない飽和活性がある。水素化処理触媒の芳香族飽和活性における改善が研究の優先事項となっているのは、最近の環境規制により、セタン価についての最小値とディーゼル留分中のポリ芳香族化合物含有率に対する下限が定められているためである。
【0006】
硫黄、窒素、および特に芳香族化合物の含有率における低下も、水素化分解方法または流動床接触分解方法(またはFCC(Fluid Catalytic Cracking:流動接触分解)方法)の前処理の分野において、その後の水素化分解またはFCC段階における性能品質を改善するために望ましい。これらの方法は、一般に、硫黄、窒素および芳香族化合物を高度に含んでいる供給原料を処理する。
【0007】
しかしながら、水素化脱硫(hydrodesulfurization:HDS)のために最適化された水素化処理触媒は、芳香族化合物の飽和(すなわち、水素化脱芳香族(hydrodearomatization:HDA)または水素化脱窒(hydrodenitrogenation:HDN)のためには自動的には最適化されておらず、その逆も同様である。そのため、各触媒が1つの水素化処理タイプに最適化された触媒の配列を頼みとする必要がある場合が多い。
【0008】
そのような担持型触媒の配列は、例えば、特許文献1~5に記載されている。
【0009】
非担持型触媒の配列も存在し、このものは、「バルク」触媒とも呼ばれるものであり、例えば、特許文献6または7から知られている。しかしながら、担持型触媒の配列は、再生可能な触媒を用いるという利点を示し、再生可能な触媒は、加えて、(より少ない量の金属を含有しているので)安価であり、より低い金属の含有率でも活性である。
【0010】
特許文献8には、担持型モリブデンベース触媒と、その次の担持型タングステンベースの触媒との配列を用いる水素化処理法が開示されている。この文献には、2つの触媒領域の体積による分布は開示されていない。
【0011】
特許文献9には、クエン酸を添加した担持型CoMoP触媒と、その次の担持型NiMoWP触媒との配列を用いる水素化処理法が開示されている。第1触媒の容積は、5%~95%であり、第2触媒の容積は、95%~5%である。HDSおよびHDNにおける増大が観察される。
【0012】
選ばれた触媒の配列がどうであれ、誘発された改変により、燃料の硫黄、窒素および/または芳香族化合物の含有率に関する仕様を十分に満たすほど触媒系の性能品質を高めることが常に可能となるわけではない。その結果、精製業者にとって、活性および安定性の点で改善された性能品質を有する新規な水素化処理法を見出すことが不可欠として浮上している。
【0013】
本出願人の会社は、炭化水素供給原料を水素化処理するための方法であって、前記供給原料を、本方法の全体的な活性および全体的な安定性を増大させることを可能とする触媒の特定の配列と接触させる工程を含む方法を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0079542号明細書
【特許文献2】米国特許第5068025号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第1176290号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開第3013720号明細書
【特許文献5】仏国特許出願公開第3013721号明細書(特開2015-105377号公報)
【特許文献6】米国特許第7816299号明細書
【特許文献7】中国特許出願公開第102851070号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2003/0116473号明細書
【特許文献9】中国特許出願公開第105435824号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(概要)
本発明は、蒸留範囲が150℃~600℃である炭化水素供給原料を、温度180℃~450℃、圧力0.5~30MPa、毎時空間速度0.1~20h-1、標準の温度および圧力の条件下に測定される水素の容積/液体供給原料の容積として表される水素/供給原料の比50L/L~5000L/Lで水素化処理して、水素化処理済みの流出物を得るための方法に関し、前記方法は、以下の段階:
a) 第1の水素化処理段階;第1の水素化処理反応セクションにおいて行い、少なくとも1種の第1水素化処理触媒を含んでいる少なくとも1個の触媒床を使用し、前記水素化処理反応セクションに、前記炭化水素供給原料と、水素を含んでいるガス流れとを少なくとも給送し、前記第1触媒は、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナをベースとする担体と、ニッケルおよびモリブデンからなる活性相を含んでいる、
b) 第2の水素化処理段階;第2の水素化処理反応セクションにおいて行い、少なくとも1種の第2水素化処理触媒を含んでいる少なくとも1個の触媒床を使用し、前記水素化処理反応セクションに、段階a)において得られた流出物の少なくとも一部を給送し、前記第2触媒は、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナをベースとする担体と、ニッケル、モリブデンおよびタングステンからなる活性相と、リンとを含んでいる、
を含み、
第1触媒を含有している前記第1の水素化処理反応セクションは、容積V1を占め、第2触媒を含有している前記第2の水素化処理反応セクションは、容積V2を占め、容積の分布V1/V2は、前記第1および第2の水素化処理反応セクションのそれぞれで50容積%/50容積%~90容積%/10容積%である。
【0016】
本出願人の会社は、驚くべきことに、ニッケルおよびモリブデンからなる活性相をベースとする第1触媒を含有している第1の水素化処理反応セクションおよびリンの存在中でのニッケル、モリブデンおよびタングステンからなる活性相をベースとする第2触媒を含有している第2の水素化処理反応セクションの配列は、水素化処理において、特に、芳香族化合物の水素化(HDA)においてだけではなく、水素化脱硫(HDS)および/または水素化脱窒(HDN)においても活性および安定性の点で相乗効果を、第1および第2の水素化処理反応セクションのそれぞれの容積が、所定の分布、特に、前記第1および第2の水素化処理反応セクションのそれぞれで50容積%/50容積%~90容積%/10容積%を観察する場合に示すことを発見した。
【0017】
これは、HDSとHDNの一部とを特に行うニッケルおよびモリブデンからなる活性相をベースとする第1の二金属触媒と、その次の、HDAおよびHDNを特に行うリンの存在中でのニッケル、モリブデンおよびタングステンからなる活性相をベースとする第2の三金属触媒の所定の比率での共存により、仕様を満たす炭化水素留分を得るために高度に活性であり、かつ安定な触媒の配列を得ることが可能となるからである。
【0018】
一方で、第2触媒は、特にHDAおよびHDNにおいて非常に活性であることが示され、これにより、仕様を達成するために必要である第1触媒の水素化処理(特にHDSおよびHDN)反応を補うことが可能となる。典型的には、活性における増大により、望みの硫黄、窒素または芳香族化合物の含有率(例えば、ガスオイル供給原料のケースにおいて、ULSD、すなわち、Ultra Low Sulfur Diesel(超低硫黄ディーゼル)の様式で硫黄最大10ppm、あるいはまた、ポリ芳香族化合物の含有率<8重量%およびセタン価>46(夏期)および43-46(冬期))を達成するのに必要な温度は低下してよい。同様に、必要な温度低下によりサイクル時間が延長されるため、安定性が向上する。
【0019】
他方で、三金属触媒は、二金属触媒よりも失活が遅く、これにより、標準的な供給原料に関してサイクル時間を延長することがなおいっそう可能となるか、または、硫黄、窒素および/または芳香族化合物を多量に含む供給原料の処理を可能とする。
【0020】
2種の触媒の容積による分布、特に、第2触媒を含有している第2の反応セクションが第1触媒を含有している第1の反応セクションより小さい容積を占めているという事実により、第1または第2の反応セクションにおいて行われるHDS、HDNおよびHDAの反応を最適にして、仕様に合う炭化水素留分を得ることが可能となる一方で、複数の触媒の1種のみを含有している系または50容積%/50容積%~90容積%/10容積%の分布外の容積による分布を有する2種の触媒を含有している系との比較において触媒系の活性および安定性を増大させる。
【0021】
本発明による水素化処理法の別の利点は、軽質供給原料(ガスオイル)およびより重質の供給原料(減圧蒸留物)が同等に良好に処理され得るという事実にある。本発明による水素化処理法は、高含有率の窒素および芳香族化合物を含んでいる供給原料、例えば、接触分解、コーキングまたはビスブレーキングから生じた供給原料の水素化処理のためにも特に適している。
【0022】
本発明による方法により、水素化処理済み炭化水素留分、すなわち、窒素ベースの化合物、硫黄ベースの化合物および芳香族化合物を同時に含まない留分を生じさせることが可能となる。好ましくは、本発明による方法によると、水素化脱硫(HDS)転化率は、95%超、好ましくは98%超である。好ましくは、本発明による方法によると、水素化脱窒(HDN)転化率は、90%超、好ましくは95%超である。好ましくは、本発明による方法によると、芳香族化合物の水素化(HDA)転化率は、70%超、好ましくは80%超である。
【0023】
代わりの形態によると、容積の分布V1/V2は、前記第1および第2の水素化処理反応セクションのそれぞれで60容積%/40容積%~85容積%/15容積%である。
【0024】
代わりの形態によると、容積の分布V1/V2は、前記第1および第2の水素化処理反応セクションのそれぞれで70容積%/30容積%~80容積%/20容積%である。
【0025】
代わりの形態によると、第2触媒は、以下の点で特徴付けられる:
- ニッケルの含有率は、NiOの形態で測定されて、触媒の全重量に対して、1重量%~4重量%である、
- モリブデンの含有率は、MoO3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して、2重量%~9重量%である、
- タングステンの含有率は、WO3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して、18重量%~40重量%である、
- リンの含有率は、P2O5の形態で測定されて、触媒の全重量に対して、0.5重量%~4重量%である。
【0026】
代わりの形態によると、第2触媒は、以下の点で特徴付けられる:
- ニッケルの含有率は、NiOの形態で測定されて、触媒の全重量に対して、3重量%~4重量%である、
- モリブデンの含有率は、MoO3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して、2重量%~9重量%である、
- タングステンの含有率は、WO3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して、29重量%~40重量%である、
- リンの含有率は、P2O5の形態で測定されて、触媒の全重量に対して、3重量%~4重量%である。
【0027】
代わりの形態によると、第2触媒は、以下の点でさらに特徴付けられる:
- モル比WO3/MoO3は、2~12.4mol/molである、
- モル比NiO/(WO3+MoO3)は、0.20~0.33mol/molである、
- モル比P2O5/(WO3+MoO3)は、0.21~0.34mol/molである。
【0028】
代わりの形態によると、第1触媒が有するモリブデン含有率は、MoO3として表されて、触媒の全重量に対して5重量%~40重量%であり、ニッケル含有率は、NiOとして表されて、触媒の全重量に対して1重量%~10重量%である。
【0029】
代わりの形態によると、第1触媒は、リンをさらに含み、その含有率は、P2O5として表されて、触媒の全重量に対して0.1重量%~20重量%である。
【0030】
代わりの形態によると、第1および/または第2の触媒は、酸素含有および/または窒素含有および/または硫黄含有の有機化合物をさらに含有する。
【0031】
代わりの形態によると、有機化合物は、カルボキシル、アルコール、チオール、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボナート、アミン、ニトリル、イミド、オキシム、ウレアまたはアミドの官能基から選ばれる1種または複数種の化学官能基を含んでいる化合物あるいはまたフラン環を含む化合物あるいはまた糖から選ばれ、好ましくは、それは、γ-バレロラクトン、2-アセチルブチロラクトン、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、エチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid:EDTA)、マレイン酸、マロン酸、クエン酸、酢酸、シュウ酸、グルコン酸、グルコース、フルクトース、スクロース、ソルビトール、キシリトール、γ-ケト吉草酸、コハク酸ジ(C1-C4アルキル)、特にコハク酸ジメチル、ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリジノン、炭酸プロピレン、3-オキソブタン酸2-メトキシエチル、ビシン、トリシン、2-フルアルデヒド(フルフラールの名称の下でも知られている)、5-ヒドロキシメチルフルフラール、2-アセチルフラン、5-メチル-2-フルアルデヒド、アスコルビン酸、乳酸ブチル、乳酸エチル、ブチリル乳酸ブチル、3-ヒドロキシブタン酸エチル、3-エトキシプロパン酸エチル、酢酸2-エトキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、1-ビニル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,5-ペンタンジオール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5-ピロリジンジオン、5-メチル-2(3H)-フラノン、1-メチル-2-ピペリジノン、4-アミノブタン酸、グリコール酸ブチル、2-メルカプトプロパン酸エチル、4-オキソペンタン酸エチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、アジピン酸ジメチルおよび3-オキソグルタル酸ジメチルから選ばれる。
【0032】
代わりの形態によると、有機化合物の含有率は、触媒の全重量に対して1重量%~30重量%である。
【0033】
代わりの形態によると、第1および/または第2の触媒は、少なくとも部分的に硫化されている。
【0034】
代わりの形態によると、水素化処理法は、ガスオイル留分の水素化脱硫(HDS)のための方法である。
【0035】
代わりの形態によると、水素化処理法は、流動床接触分解法における前処理として行われる。
【0036】
代わりの形態によると、水素化処理法は、水素化分解法における前処理として行われる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(発明の詳細な説明)
(定義)
続いて、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10列の金属に対応する。
【0038】
用語「比表面積」は、機関誌The Journal of the American Chemical Society”, 1938, 60, 309に記載されているBrunauer-Emmett-Teller法から確立された規格ASTM D 3663-78に従う窒素吸着によって決定されるBET比表面積(SBET(m2/g))を意味するように理解される。
【0039】
触媒または触媒の調製のために用いられる担体の全細孔容積は、規格ASTM D4284-83に従う水銀ポロシメトリ圧入によって、最大圧力4000bar(400MPa)で、表面張力484dynes/cmおよび接触角140°を用いて測定される容積を意味するように理解される。ぬれ角は、Jean CharpinおよびBernard Rasneurによって記述された刊行物"Techniques de l'ingenieur, traite analyse et caracterisation"[エンジニアの技術、分析および特性評価に関する論文]、1050~1055頁の推奨にしたがって140°に等しいとみなされた。より高い精度を得るために、全細孔容積の値は、サンプル上で水銀圧入ポロシメトリによって測定された全細孔容積の値から30psi(約0.2MPa)に対応する圧力で同一のサンプル上で測定された水銀圧入ポロシメトリによって測定された全細孔容積の値を減算したに対応する。
【0040】
第VIII族および第VIb族からの金属の含有率は、蛍光X線によって測定される。
【0041】
第VIb族からの金属、第VIII族からの金属およびリンの含有率は、550℃でのマッフル炉中の2時間にわたる触媒サンプルの強熱減量についての補正後の酸化物として表される。強熱減量は、水分の喪失に起因する。それは、ASTM D7348に従って決定される。
【0042】
水素化処理は、水素化脱硫(HDS)、水素化脱窒(HDN)および芳香族化合物の水素化(HDA)を特に包含する反応を意味するように理解される。
【0043】
(供給原料)
本発明の水素化処理法により処理されるべき炭化水素供給原料が示す蒸留範囲は、150℃~600℃、好ましくは180℃~580℃である。
【0044】
炭化水素供給原料は、任意の化学的性質のものであり得、すなわち、下記の芳香族化合物の含有率とは別に、パラフィン、オレフィンおよびナフテンから選ばれる異なる化学ファミリーの間で任意の分布を有する。
【0045】
水素化処理法において使用される供給原料は、例えば、ガスオイル、減圧ガスオイル、常圧残渣、減圧残渣、常圧蒸留物、減圧蒸留物、重質燃料油、オイル、ワックスおよびパラフィン、使用済み油、脱アスファルト残渣または原油、熱または触媒の転化方法に由来する供給原料、リグノセルロース供給原料、またはより一般的には、バイオマスから生じる供給原料、例えば、植物油であり、これらは、単独でまたは混合物として利用される。処理される供給原料、特に、上記のものは、一般に、ヘテロ原子、例えば、硫黄、酸素および窒素を含有し、重質の供給原料について、それらは、通常、金属も含有する。
【0046】
供給原料中の芳香族化合物含有率は、20重量%以上、好ましくは25重量~90重量%、より好ましくは30重量%~80重量%である。芳香族化合物含有率は、出版物Burdett R.A, Taylor L.W and Jones L.C, Journal of Molecular Spectroscopy, Rept. Conf., Inst. Petroleum, London, 1954, 30-41 (Pub. 1955)に記載されている方法に従って決定される。
【0047】
供給原料中の窒素含有率は、150重量ppm以上、好ましくは200~10000重量ppm、より好ましくは300~4000重量ppmである。
【0048】
供給原料中の硫黄含有率は、一般に0.01重量%~5重量%、好ましくは0.2重量%~4重量%、よりなおさら好ましくは0.25重量%%~3重量%である。
【0049】
前記炭化水素供給原料は、場合によっては、金属、特に、ニッケルおよびバナジウムを含有することができる。前記炭化水素供給原料のニッケルとバナジウムを組み合わせた含有率は、好ましくは50重量ppm未満、好適には25重量ppm未満、よりなおさら好ましくは10重量ppm未満である。
【0050】
前記炭化水素供給原料は、場合によっては、アスファルテンを含有することができる。前記炭化水素供給原料のアスファルテン含有率は、一般に3000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、よりなおさら好ましくは200ppm未満である。
【0051】
前記炭化水素供給原料は、場合によっては、樹脂を含有することができる。樹脂含有率は、1重量%超、特に5重量%超であり得る。樹脂含有率は、規格ASTM D 2007-11に従って測定される。炭化水素供給原料には、樹脂がほとんど含まれていないこともあり得る(1重量%未満)。
【0052】
1つの実施形態によると、前記炭化水素供給原料は、有利には、LCO(Light Cycle Oil(ライトサイクルオイル)または接触分解ユニットから生じた軽質ガスオイル)、常圧蒸留物、例えば、原油の直接蒸留または転化ユニット、例えば、流動床接触分解、コーキングまたはビスブレーキングから生じたガスオイル、または常圧残渣の固定床または沸騰床の脱硫または水素化転化のための方法を起源とする蒸留物、または前記上述の供給原料の混合物から選ばれる。
【0053】
別の実施形態によると、前記炭化水素供給原料は、有利には、HCO(Heavy Cycle Oil(ヘビーサイクルオイル)(接触分解ユニットから生じた重質ガスオイル)、減圧蒸留油物、例えば、原油の直接蒸留または転化ユニット、例えば、接触分解、コーキングまたはビスブレーキングから生じたガスオイル、芳香族化合物の抽出のためのユニットを起源とする供給原料、潤滑油ベースまたは潤滑油ベースの溶媒脱ろうから生じたガスオイル、常圧残渣および/または減圧残渣および/または脱アスファルト油の固定床または沸騰床の脱硫または水素化転化のための方法を起源とする蒸留物から選ばれるか、または、供給原料は、脱アスファルト油であり得るかまたは植物油を含むことができ、あるいはまた、バイオマスから生じた供給原料の転化を起源とすることができる。本発明の水素化分解法により処理される前記炭化水素供給原料は、前記上述の供給原料の混合物であることもできる。
【0054】
(方法の実施および操作条件)
本発明による方法は、1基、2基またはそれ以上の基の反応器において行われ得る。それは、一般に、固定床において行われる。
【0055】
2基の反応器において本発明による方法が行われる場合、段階a)は、供給原料によって通過される第1の反応セクションを含んでいる第1の反応器において行われ得、次いで、段階b)は、第1の反応器の下流に置かれた、第2の反応セクションを含んでいる第2の反応器において行われ得る。場合によっては、第1の反応器から出る段階a)からの流出物は、分離段階に供され得る。この分離段階により、段階a)における水素化処理の間に形成されたH2SおよびNH3を特に含有している軽質フラクションを、部分的に水素化処理された炭化水素を含有している重質フラクションから分離することが可能となる。分離段階の後に得られた重質フラクションは、続いて、第2の反応器に導入される。この第2の反応器により、本発明による方法の段階b)を行うことが可能となる。分離段階は、蒸留、フラッシュ分離または当業者に知られている任意の他の方法によって行われ得る。
【0056】
単一の反応器において本方法が行われる場合、段階a)は、第1の反応セクションを含有している第1の領域において行われ、段階b)は、第1の領域の下流の第2の反応セクションを含有している第2の領域において行われる。
【0057】
第1触媒を含有している前記第1の水素化処理反応セクションは、容積V1を占め、第2触媒を含有している前記第2の水素化処理反応セクションは、容積V2を占め、容積の分布V1/V2は、前記第1および第2の水素化処理反応セクションのそれぞれで、50容積%/50容積%~90容積%/10容積%、好ましくは60容積%/40容積%~85容積%/15容積%、特に好ましくは70容積%/30容積%~80容積%/20容積%である。
【0058】
2種の触媒の容積による分布、特に、第2触媒を含有している第2の反応セクションが第1触媒を含有している第1の反応セクションより小さい容積を占めているという事実により、第1または第2の反応セクションにおいて行われるHDS、HDNおよびHDAの反応を最適にすることが可能となる。これは、第2触媒の過剰に大きい容積により、窒素ベースの化合物の定量的な分解は可能とされず、それ故に、HDA反応の阻害がもたらされるためである。逆に、第2触媒の過剰に少ない容積により、HDA反応を最大にすることは可能とされない。
【0059】
本発明による水素化処理法の段階a)またはb)において用いられる操作条件は、一般に以下の通りである:温度は、有利には180℃~450℃、好ましくは250℃~440℃であり、圧力は、有利には0.5~30MPa、好ましくは1~18MPaであり、毎時空間速度は、有利には0.1~20h-1、好ましくは0.2~5h-1である。毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、ここでは、炭化水素供給原料の毎時容積流量対触媒(1種または複数種)の容積の比として定義される。水素/供給原料の比は、標準の温度および圧力の条件下に測定される水素の容積/液体供給原料の容積として表されて、有利には50L/L~5000L/L、好ましくは80~2000L/Lである。
【0060】
操作条件は、段階a)およびb)において同一であるかまたは異なり得る。好ましくは、それらは同一である。
【0061】
(本発明において使用される触媒の組成)
本発明によると、水素化処理法は、第1触媒と第2触媒との配列を使用し、第1触媒は、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナをベースとする担体と、ニッケルおよびモリブデンからなる活性相とを含んでおり、第2触媒は、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナをベースとする担体と、ニッケル、モリブデンおよびタングステンからなる活性相と、リンとを含んでいる。
【0062】
(第1触媒)
第1触媒は、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナをベースとする担体と、ニッケルおよびモリブデンからなる活性相とを含む。それは、リン、有機化合物および場合によるホウ素および/またはフッ素をさらに含むことができる。
【0063】
前記第1触媒の水素化機能基は、活性相としても知られているものであり、これは、ニッケルおよびモリブデンによって提供される。
【0064】
好ましくは、ニッケルおよびモリブデンの全含有率は、酸化物として表されて、触媒の全重量に対して有利には6重量%超である。
【0065】
好ましくは、モリブデンの含有率は、MoO3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して5重量%~40重量%、好ましくは8重量%~39重量%、より好ましくは10重量%~38重量%である。
【0066】
好ましくは、ニッケルの含有率は、NiOの形態で測定されて、触媒の全重量に対して、1重量%~10重量%、好ましくは1.5重量%~9重量%、より好ましくは2重量%~8重量%である。
【0067】
好ましくは、第1触媒中のニッケル対モリブデンのモル比は、優先的には0.1~0.8、好ましくは0.15~0.6、よりなおさら好ましくは0.2~0.5である。
【0068】
第1触媒は、ドーパントとしてリンも含むことができる。ドーパントは、追加される元素であり、それ自体では何らの触媒的性質を示さないが、活性相の触媒活性を高める。
【0069】
前記触媒中のリンの含有率は、P2O5の形態で測定されて、触媒の全重量に対して0.1重量%~20重量%、P2O5として表されて好ましくは0.2重量%~15重量%、大いに好ましくは0.3重量%~11重量%である。
【0070】
第1触媒中のリン対モリブデンのモル比は、0.05以上、好ましくは0.07以上、好ましくは0.08~1、好ましくは0.1~0.9、大いに好ましくは0.15~0.8である。
【0071】
第1触媒は、有利には、ホウ素、フッ素およびホウ素とフッ素の混合物から選ばれる少なくとも1種のドーパントを含有することもできる。
【0072】
触媒がホウ素またはフッ素またはホウ素とフッ素の混合物を含有する場合、ホウ素またはフッ素またはこれら2種の混合物の含有率は、ホウ素酸化物としておよび/またはフッ素元素として表されて、触媒の全重量に対して、好ましくは0.1重量%~10重量%、好ましくは0.2重量%~7重量%、大いに好ましくは0.2重量%~5重量%である。
【0073】
前記触媒の細孔容積は、一般に0.1cm3/g~1.5cm3/g、好ましくは0.15cm3/g~1.1cm3/gである。全細孔容積は、規格ASTM D4284に従う水銀ポロシメトリによって、ぬれ角140°により、Rouquerol F.、Rouquerol J.およびSingh K.による研究Adsorption by Powders & Porous Solids: Principle, Methodology and Applications, Academic Press, 1999に記載されているように、例えば、Micromeritics(登録商標)ブランドのAutopore III(登録商標)モデル機器によって測定される。
【0074】
第1触媒は、5~400m2/g、好ましくは10~350m2/g、好ましくは40~350m2/g、大いに好ましくは50~300m2/gの比表面積によって特徴付けられる。比表面積は、本発明では、規格ASTM D3663に従うBET法によって決定され、この方法は、上記引用の同一の研究に記載されている。
【0075】
第1触媒の担体は、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナを含み、好ましくは、それからなる。
【0076】
前記触媒の担体がアルミナをベースとする場合、それは、担体の全重量に対して50重量%超のアルミナを含有し、一般に、それは、下記に定義されるようにアルミナのみまたはシリカ-アルミナを含有する。
【0077】
好ましくは、担体は、アルミナ、好ましくは押出アルミナを含む。好ましくは、担体は、ガンマアルミナからなる。
【0078】
アルミナ担体が有利に示す全細孔容積は、0.1~1.5cm3・g-1、好ましくは0.4~1.1cm3・g-1である。全細孔容積は、規格ASTM D4284に従う水銀ポロシメトリによって、ぬれ角140°により、Rouquerol F.、Rouquerol J.およびSingh K.による研究書Adsorption by Powders & Porous Solids: Principle, Methodology and Applications, Academic Press, 1999に記載されているように、例えば、Micromeritics(登録商標)ブランドのAutopore III(登録商標)モデル機器によって測定される。
【0079】
アルミナ担体の比表面積は、有利には、5~400m2・g-1、好ましくは10~350m2・g-1、より好ましくは40~350m2・g-1である。比表面積は、本発明では、規格ASTM D3663に従うBET法によって決定され、この方法は、上記に引用されたのと同一の研究書に記載されている。
【0080】
別の好適なケースにおいて、前記触媒の担体は、担体の全重量に対して最低50重量%のアルミナを含有しているシリカ-アルミナである。担体中のシリカ含有率は、担体の全重量に対して最高50重量%、一般に45重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
【0081】
ケイ素の供給源は、当業者に周知である。言及がなされてよいのは、例として、ケイ酸、粉体の形態にあるシリカまたはコロイドの形態にあるシリカ(シリカゾル)、またはオルトケイ酸テトラエチルSi(OEt)4である。
【0082】
前記触媒のための担体がシリカをベースとする場合、それは、担体の全重量に対して50重量%超のシリカを含有し、一般に、それは、シリカのみを含有する。
【0083】
特に好適な代わりの形態によると、担体は、アルミナ、シリカまたはシリカ-アルミナからなる。
【0084】
加えて、担体は、有利には、ゼオライトを含有することもできる。このケースにおいて、当業者に知られているゼオライトの任意の供給源および任意の関連する調製方法が組み込まれ得る。好ましくは、ゼオライトは、FAU、BEA、ISV、IWR、IWW、MEI、UWYの群から選ばれ、好ましくは、ゼオライトは、FAUおよびBEAの群から選ばれ、例えば、ゼオライトYおよび/またはベータゼオライト、特に好ましくは、例えば、USYおよび/またはベータゼオライトである。ゼオライトが存在する場合、その含有率は、担体の全重量に対して0.1重量%~50重量%である。
【0085】
担体は、有利には、ビーズ状、押出物状、ペレット状または不規則かつ非球形の凝集物であって、その具体的な形状は、粉砕段階から生じ得るものの形態で提供される。
【0086】
第1触媒は、添加物の役割のために知られている1種のまたは1群の有機化合物をさらに含むことができる。添加物の機能は、非添加触媒との比較において触媒活性を増大させることにある。より特定的には、触媒は、1種または複数種の酸素含有有機化合物および/または1種または複数種の窒素含有有機化合物および/または1種または複数種の硫黄含有有機化合物をさらに含むことができる。好ましくは、触媒は、1種または複数種の酸素含有有機化合物および/または1種または複数種の窒素含有有機化合物をさらに含むことができる。好ましくは、有機化合物は、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1個の酸素および/または窒素の原子を含有し、他のヘテロ原子を含有していない。
【0087】
一般に、有機化合物は、カルボキシル、アルコール、チオール、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボナート、アミン、ニトリル、イミド、オキシム、ウレアまたはアミドの官能基から選ばれる1種または複数種の化学官能基を含んでいる化合物あるいはまたフラン環を含む化合物あるいはまた糖から選ばれる。
【0088】
酸素含有有機化合物は、カルボキシル、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステルまたはカルボナートの官能基から選ばれる1種または複数種の化学官能基を含んでいる化合物あるいはまたフラン環を含む化合物あるいはまた糖から選ばれる1種または複数種であり得る。酸素含有有機化合物は、ここでは、別のヘテロ原子を含んでいない化合物を意味するように理解される。例として、酸素含有有機化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200~1500g/mol)、プロピレングリコール、2-ブトキシエタノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、トリエチレングリコールジメチルエーテル、グリセロール、アセトフェノン、2,4-ペンタンジオン、ペンタノン、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、γ-ケト吉草酸、コハク酸ジ(C1-C4アルキル)、特にコハク酸ジメチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、3-オキソブタン酸2-メトキシエチル、3-オキソブタン酸2-メタクリロイルオキシエチル、ジベンゾフラン、クラウンエーテル、オルトフタル酸、グルコース、フルクトース、スクロース、ソルビトール、キシリトール、γ-バレロラクトン、2-アセチルブチロラクトン、炭酸プロピレン、2-フルアルデヒド(フルフラールの名称の下でも知られている)、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-(ヒドロキシメチル)-2-フルアルデヒドまたは5-HMFの名称の下でも知られている)、2-アセチルフラン、5-メチル-2-フルアルデヒド、2-フロ酸メチル、フルフリルアルコール(フルフラノールの名称の下でも知られている)、酢酸フルフリル、アスコルビン酸、乳酸ブチル、乳酸エチル、ブチリル乳酸ブチル、3-ヒドロキシブタン酸エチル、3-エトキシプロパン酸エチル、3-メトキシプロパン酸メチル、酢酸2-エトキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、3-エチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、5-メチル-2(3H)-フラノン、グリコール酸ブチル、4-オキソペンタン酸エチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、3-オキソグルタル酸ジメチル、酒石酸ジメチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジイソプロピル、酒石酸ジ(tert-ブチル)、リンゴ酸ジメチル、リンゴ酸ジエチル、リンゴ酸ジイソプロピルおよびリンゴ酸ジブチルからなる群から選ばれる1種または複数種であり得る。
【0089】
窒素含有有機化合物は、アミンまたはニトリルの官能基から選ばれる1種または複数種の化学官能基を含んでいる化合物から選ばれる1種または複数種であり得る。窒素含有有機化合物は、ここでは、別のヘテロ原子を含んでいない化合物を意味するように理解される。例として、窒素含有有機化合物は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、アセトニトリル、オクチルアミン、グアニジンおよびカルバゾールからなる群から選ばれる1種または複数種であり得る。
【0090】
酸素・窒素含有有機化合物は、カルボキシル、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボナート、アミン、ニトリル、イミド、アミド、ウレアまたはオキシムの官能基から選ばれる1種または複数種の化学官能基を含んでいる化合物から選ばれる1種または複数種であり得る。酸素・窒素含有有機化合物は、ここでは、別のヘテロ原子を含んでいない化合物を意味するように理解される。例として、酸素・窒素含有有機化合物は、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、モノエタノールアミン(monoethanolamine:MEA)、1-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルホルムアミド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アラニン、グリシン、ニトリロ三酢酸(nitrilotriacetic acid:NTA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸(N-(2-hydroxyethyl)ethylenediamine-N, N',N'-triacetic acid:HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(diethylenetriaminepentaacetic acid:DTPA)、テトラメチル尿素、グルタミン酸、ジメチルグリオキシム、ビシン、トリシン、シアノ酢酸2-メトキシエチル、1-エチル-2-ピロリジノン、1-ビニル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5-ピロリジンジオン、1-メチル-2-ピペリジノン、1-アセチル-2-アゼパノン、1-ビニル-2-アゼパノンおよび4-アミノブタン酸からなる群から選ばれる1種または複数種であり得る。
【0091】
硫黄含有有機化合物は、チオール、チオエーテル、スルホンまたはスルホキシドの官能基から選ばれる1種または複数種の化学官能基を含んでいる化合物から選ばれる1種または複数種であり得る。例として、硫黄含有有機化合物は、チオグリコール酸、2,2’-チオジエタノール、2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン酸、ベンゾチオフェンのスルホン誘導体またはベンゾチオフェンのスルホキシド誘導体、2-メルカプトプロパン酸エチル、3-(メチルチオ)プロパン酸メチルおよび3-(メチルチオ)プロパン酸エチルからなる群から選ばれる1種または複数種であり得る。
【0092】
好ましくは、有機化合物は、酸素を含有する;好ましくは、それは、γ-バレロラクトン、2-アセチルブチロラクトン、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、マレイン酸、マロン酸、クエン酸、酢酸、シュウ酸、グルコン酸、グルコース、フルクトース、スクロース、ソルビトール、キシリトール、γ-ケト吉草酸、コハク酸ジ(C1-C4アルキル)、より具体的にはコハク酸ジメチル、ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリジノン、炭酸プロピレン、3-オキソブタン酸2-メトキシエチル、ビシン、トリシン、2-フルアルデヒド(フルフラールの名称の下でも知られている)、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-(ヒドロキシメチル)-2-フルアルデヒドまたは5-HMFの名称の下でも知られている)、2-アセチルフラン、5-メチル-2-フルアルデヒド、アスコルビン酸、乳酸ブチル、乳酸エチル、ブチリル乳酸ブチル、3-ヒドロキシブタン酸エチル、3-エトキシプロパン酸エチル、酢酸2-エトキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、1-ビニル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,5-ペンタンジオール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5-ピロリジンジオン、5-メチル-2(3H)-フラノン、1-メチル-2-ピペリジノン、4-アミノブタン酸、グリコール酸ブチル、2-メルカプトプロパン酸エチル、4-オキソペンタン酸エチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、アジピン酸ジメチルおよび3-オキソグルタル酸ジメチルから選ばれる。
【0093】
それ/それらが存在する場合、触媒中に存在する酸素含有および/または窒素含有および/または硫黄含有の有機化合物(1種または複数種)の全含有率は、触媒の全重量に対して、一般に1重量%~30重量%、好ましくは1.5重量%~25重量%、より好ましくは2重量%~20重量%である。
【0094】
乾燥段階を必要とする触媒の調製の間に、有機化合物の導入に続く乾燥段階(1回または複数回)が、200℃未満の温度で行われ、触媒上に残る炭素に基づいて計算されて、導入された有機化合物の量の好ましくは最低30%、好ましくは最低50%、大いに好ましくは最低70%を保持するようにする。残留炭素は、ASTM D5373に従う元素分析によって測定される。
【0095】
(第2触媒)
本発明によると、第2触媒は、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナをベースとする担体と、ニッケル、モリブデンおよびタングステンからなる活性相とを含む。本発明による第2触媒は、ドーパントとしてリンも含む。それは、有機化合物および/または場合によるホウ素および/またはフッ素をさらに含むことができる。
【0096】
前記第2触媒の水素化機能基(活性相としても知られている)は、ニッケル、モリブデンおよびタングステンから構成される。
【0097】
第2触媒は、以下の点で特徴付けられる:
- ニッケルの含有率は、NiOの形態で測定されて、触媒の全重量に対して1重量%~4重量%である、
- モリブデンの含有率は、MoO3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して2重量%~9重量%である、
- タングステンの含有率は、WO3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して18重量%~40重量%である、
- リンの含有率は、P2O5の形態で測定されて、触媒の全重量に対して0.5重量%~4重量%である。
【0098】
好ましくは、第2触媒は、以下の点で特徴付けられる:
- ニッケルの含有率は、NiOの形態で測定されて、触媒の全重量に対して3重量%~4重量%、好ましくは3.1重量%~3.9重量%、より好ましくは3.2重量%~3.8重量%である、
- モリブデンの含有率は、MoO3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して2重量%~9重量%、好ましくは2重量%~4重量%、好ましくは2.2重量%~3.8重量%、より好ましくは2.5重量%~3.5重量%である、
- タングステンの含有率は、WO3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して29重量%~40重量%、好ましくは34重量%~40重量%、好ましくは35重量%~39.9重量%、より好ましくは36重量%~39重量%である、
- リンの含有率は、P2O5の形態で測定されて、触媒の全重量に対して好ましくは3重量%~4重量%、好ましくは3.1重量%~3.9重量%、大いに好ましくは3.2重量%~3.8重量%である。
【0099】
好ましくは、WO3/MoO3モル比は、2~12.4mol/mol、好ましくは5.3~12.4mol/mol、好ましくは5.7~11.1mol/mol、よりなおさら好ましくは6.4~9.7mol/molである。
【0100】
好ましくは、NiO/(WO3+MoO3)モル比は、0.20~0.33mol/mol、好ましくは0.21~0.31mol/mol、よりなおさら好ましくは0.22~0.30mol/molである。
【0101】
好ましくは、P2O5/(WO3+MoO3)モル比は、0.21~0.34mol/mol、好ましくは0.22~0.33mol/mol、よりなおさら好ましくは0.23~0.32mol/molである。
【0102】
リンの存在中のニッケル、モリブデンおよびタングステンからなる活性相をベースとする触媒であって、担体上に堆積させられ、上記の異なる金属および/またはリンの間で特定の比率を示すものは、相乗効果によって、優れた水素化処理活性および安定性を、特に、芳香族化合物の水素化(HDA)だけではなく、水素化脱硫(HDS)および/または水素化脱窒(HDN)においても示す。
【0103】
任意の1つの理論に傾倒することを望むことなく、特定の比率を用いる各金属およびリンの含有率の最適化により、触媒性能品質において改善をもたらす活性相を得ることが可能となるだろう。これは、タングステンが芳香族化合物の水素化においてモリブデンより活性であることが知られているためである;しかしながら、それの硫化はより困難である。タングステンを含有している活性相におけるモリブデンの接近およびWO3/MoO3比における増大により、タングステンの硫化性および観察される触媒性能品質を改善することが可能となるが、所定のWO3/MoO3比までは、モリブデン含有率が低すぎてタングステンの硫化性に影響を及ぼすことができない。それ故に、WO3/MoO3比の最適化により、最適化されたNiO/(WO3+MoO3)およびP2O5/(WO3+MoO3)の比との組み合わせで、水素化処理において、特に、芳香族化合物の水素化(HDA)において非常に活性でありかつ安定である触媒を得ることが可能となる。
【0104】
上記の特定の比率を有している三金属性触媒は、それ故に、上流の前記第1の二金属性触媒との配列の間に特に好適である。
【0105】
加えて、触媒が示す第VIb族からの金属(Mo+W)の密度は、触媒の単位面積当たりの前記金属の原子の数として表されて、触媒の面積(nm2)当たり第VIb族からの金属の原子5~12個、好ましくは6~11個、よりなおさら好ましくは7~10個である。第VIb族からの金属の密度は、触媒の単位面積当たりの第VIb族からの金属の原子の数(触媒の面積(nm2)当たりの第VIb族からの金属の原子の数)として表され、例えば、以下の関係式から計算される:
【0106】
【0107】
式中、
XMo=モリブデンの重量%;
XW=タングステンの重量%;
NA=アボガドロ数、6.022×1023に等しい;
S=触媒の比表面積(m2/g)、規格ASTM D3663に従って測定される;
MMo=モリブデンのモル質量;
MW=タングステンのモル質量。
【0108】
例として、触媒が3重量%の酸化モリブデンMoO3(すなわち、2.0重量%のMo)および29.3重量%の酸化タングステンを含有し、122m2/gの比表面積を有するならば、密度d(Mo+W)は、以下に等しい:
【0109】
【0110】
第2触媒は、有利には、ホウ素、フッ素およびホウ素とフッ素の混合物から選ばれる少なくとも1種のドーパントを含有することもできる。このドーパントが存在する場合、その含有率は、第1触媒について記載された通りである。
【0111】
第2触媒の細孔容積は、一般に0.1cm3/g~1.5cm3/g、好ましくは0.15cm3/g~1.1cm3/gである。全細孔容積は、規格ASTM D4284に従う水銀ポロシメトリによって、ぬれ角140°により、Rouquerol F.、Rouquerol J.およびSingh K.による研究書Adsorption by Powders & Porous Solids: Principle, Methodology and Applications, Academic Press, 1999に記載されたようにして、例えば、Micromeritics(登録商標)ブランドのAutopore III(登録商標)モデル機によって測定される。
【0112】
第2触媒は、比表面積:5~400m2/g、好ましくは10~350m2/g、好ましくは40~350m2/g、大いに好ましくは50~300m2/gによって特徴付けられる。比表面積は、本発明においては、規格ASTM D3663に従うBET法によって決定され、この方法は、上記に引用されたのと同一の研究書に記載されている。
【0113】
第2触媒の担体は、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナを含み、好ましくは、それからなる。担体は、第1触媒について記載されたような担体である。それは、第1触媒について記載されたようなゼオライトをさらに含むことができる。それは、第1触媒の担体と同一であるかまたは異なり得る。
【0114】
本発明による第2触媒は、1種のまたは1群の有機化合物をさらに含むことができ、用いられる有機化合物の性質および量は、第1触媒についてのパートに記載されている。2種の触媒が1種または複数種の有機化合物を含む場合、このものは、同一であるかまたは異なることができる。
【0115】
好適な実施形態によると、本水素化処理方法は、リンの存在中でニッケルおよびモリブデンをベースとする第1触媒を含有している第1の水素化処理反応セクションおよびリンの存在中でニッケル、モリブデンおよびタングステンをベースとする第2触媒を含有している第2の水素化処理反応セクションの配列を使用し、第1触媒を含有している前記第1の水素化処理反応セクションは、容積V1を占め、第2触媒を含有している前記第2の水素化処理反応セクションは、容積V2を占め、容積の分布V1/V2は、前記第1および第2の水素化処理反応セクションのそれぞれで50容積%/50容積%~90容積%/10容積%であり、前記第2触媒は、以下によって特徴付けられる:
- ニッケルの含有率は、NiOの形態で測定されて、触媒の全重量に対して3重量%~4重量%、好ましくは3.1重量%~3.9重量%、より好ましくは3.2重量%~3.8重量%である;
- モリブデンの含有率は、MoO3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して2重量%~9重量%、好ましくは2重量%~4重量%、好ましくは2.2重量%~3.8重量%、より好ましくは2.5重量%~3.5重量%である;
- タングステンの含有率は、WO3の形態で測定されて、触媒の全重量に対して29重量%~40重量%、好ましくは34重量%~40重量%、好ましくは35重量%~39.9重量%、より好ましくは36重量%~39重量%である;
- 前記触媒中のリンの含有率は、P2O5の形態で測定されて、触媒の全重量に対して好ましくは3重量%~4重量%、好ましくは3.1重量%~3.9重量%、大いに好ましくは3.2重量%~3.8重量%である;
- WO3/MoO3モル比は、2~12.4mol/mol、好ましくは5.3~12.4mol/mol、好ましくは5.7~11.1mol/mol、よりなおさら好ましくは6.4~9.7mol/molである;
- NiO/(WO3+MoO3)モル比は、0.20~0.33mol/mol、好ましくは0.21~0.31mol/mol、よりなおさら好ましくは0.22~0.30mol/molである;
- P2O5/(WO3+MoO3)モル比は、0.21~0.34mol/mol、好ましくは0.22~0.33mol/mol、よりなおさら好ましくは0.23~0.32mol/molである。
【0116】
この好適な実施形態によると、第1および/または第2の触媒は、少なくとも1種の酸素含有および/または窒素含有および/または硫黄含有の有機化合物をさらに含む。
【0117】
この実施形態によると、有機化合物は、好ましくは、γ-バレロラクトン、2-アセチルブチロラクトン、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、マレイン酸、マロン酸、クエン酸、酢酸、グルコン酸、グルコース、フルクトース、スクロース、ソルビトール、キシリトール、γ-ケト吉草酸、コハク酸ジ(C1-C4アルキル)、特にコハク酸ジメチル、ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリジノン、炭酸プロピレン、3-オキソブタン酸2-メトキシエチル、ビシン、トリシン、2-フルアルデヒド(フルフラールの名称の下でも知られている)、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-(ヒドロキシメチル)-2-フルアルデヒドまたは5-HMFの名称の下でも知られている)、2-アセチルフラン、5-メチル-2-フルアルデヒド、アスコルビン酸、乳酸ブチル、乳酸エチル、ブチリル乳酸ブチル、3-ヒドロキシブタン酸エチル、3-エトキシプロパン酸エチル、酢酸2-エトキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、1-ビニル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,5-ペンタンジオール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5-ピロリジンジオン、5-メチル-2(3H)-フラノン、1-メチル-2-ピペリジノン、4-アミノブタン酸、グリコール酸ブチル、2-メルカプトプロパン酸エチル、4-オキソペンタン酸エチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、アジピン酸ジメチルおよび3-オキソグルタル酸ジメチルから選ばれる。
【0118】
(調製方法)
第1および第2の触媒は、当業者に知られている担持型触媒の調製のための任意の方法により調製され得る。
【0119】
第1および第2の触媒は、以下の段階を含んでいる調製方法により調製され得る:
i) ニッケル前駆体、モリブデン前駆体、タングステンが存在する場合タングステン前駆体、およびリンが存在する場合リンを、アルミナまたはシリカまたはシリカ-アルミナをベースとする担体と接触させて、触媒前駆体を得る段階、
ii) 段階i)から生じた前記触媒前駆体を、200℃未満の温度で乾燥させる段階、
iii) 場合による、段階ii)において得られた触媒前駆体を、200℃~550℃の温度で焼成する段階、
iv) 場合による、段階ii)または段階iii)において得られた触媒を硫化する段階。
【0120】
段階i)の接触操作の間に、第1および第2の触媒の調製は、選択された担体上への金属およびリンの含浸によって行われ得る。含浸は、例えば、乾式含浸の用語下に当業者に知られている方法により行われ得る。乾式含浸において、可溶性塩の形態にあるちょうどの量の望みの元素が選ばれた溶媒、例えば、脱塩水に、担体の多孔度を可及的に正確に満たすように導入される。
【0121】
活性相の前駆体は、同時にまたは連続的に導入され得る。各前駆体の含浸は、有利には、少なくとも2回行われ得る。異なる前駆体は、このように有利には、異なる含浸および熟成の回数により連続的に含浸させられ得る。前駆体の1種はまた、数回含浸させられ得る。
【0122】
好ましくは、活性相の前駆体は、同時に導入される。
【0123】
用いられ得るニッケル前駆体は、有利には、ニッケルの酸化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、炭酸塩および硝酸塩から選ばれる;例えば、ヒドロキシ炭酸ニッケル、炭酸ニッケルまたは水酸化ニッケルが、好ましく用いられる。
【0124】
用いられ得るモリブデン前駆体は、当業者に周知である。例えば、使用がなされてよいのは、モリブデンの供給源の中で、酸化物および水酸化物、モリブデン酸およびそれらの塩、特に、アンモニウム塩、例えば、モリブデン酸アンモニウムまたは七モリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸(H3PMo12O40)およびそれらの塩、および場合によってはケイモリブデン酸(H4SiMo12O40)およびその塩である。モリブデンの供給源は、例えば、ケギン、欠損ケギン、置換ケギン、ドーソン、アンダーソンまたはストランドベルグのタイプのヘテロポリ化合物でもあり得る。使用が好ましくなされるのは、三酸化モリブデンおよびストランドベルグ、ケギン、欠損ケギンまたは置換ケギンのタイプのヘテロポリアニオンである。
【0125】
用いられ得るタングステン前駆体も当業者に周知である。例えば、使用がなされてよいのは、タングステンの供給源の中で、酸化物および水酸化物、タングステン酸およびそれらの塩、特に、アンモニウム塩、例えば、タングステン酸アンモニウムまたはメタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸およびそれらの塩、および場合によってはケイタングステン酸(H4SiW12O40)およびその塩である。タングステンの供給源は、ヘテロポリ化合物、例えば、ケギン、欠損ケギン、置換ケギンまたはドーソンのタイプのものでもあり得る。使用が好ましくなされるのは、酸化物およびアンモニウム塩、例えば、メタタングステン酸アンモニウム、またはケギン、欠損ケギンまたは置換ケギンのタイプのヘテロポリアニオンである。
【0126】
リンは、含浸によって完全にまたは部分的に導入され得る。好ましくは、それは、含浸、好ましくは乾式含浸によって、ニッケル、モリブデンおよびタングステンの前駆体を含有している溶液を用いて導入される。
【0127】
前記リンは、有利には、単独でまたは活性相との混合物として導入され得、これは、水素化機能基が多数回導入されるならば水素化機能基の含浸の段階のいずれかの間になされ得る。前記リンは、全部または一部、酸素含有および/または窒素含有および/または硫黄含有の有機化合物が水素化機能基とは別に導入される(後に記載される後含浸および前含浸のケース)ならば、このものの含浸の間にも導入され得る。それは、担体の合成からも、担体の合成の任意の段階で導入され得る。それは、それ故に、アルミナ前駆体である、選ばれたアルミナゲルマトリクス、例えば、好ましくは、オキシ水酸化アルミニウム(ベーマイト)の混練の前、その最中またはその後に導入され得る。
【0128】
好適なリン前駆体は、オルトリン酸H3PO4であるが、その塩およびエステル、例えば、リン酸アンモニウムも適している。リンは、第VIb族からの元素(1種または複数種)と同時に、ケギン、欠損ケギン、置換ケギンまたはストランドベルグのタイプのヘテロポリアニオンの形態でも導入され得る。
【0129】
本発明に記載されている任意の含浸溶液は、当業者に知られている任意の極性溶媒を含んでよい。用いられる前記極性溶媒は、有利には、メタノール、エタノール、水、フェノールおよびシクロヘキサノールによって形成される群から選ばれ、これらは、単独でまたは混合物として利用される。好ましくは、極性のプロトン性溶媒が用いられる。一般的な極性溶媒、さらにはそれらの誘電率のリストは、書籍“Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry”, C. Reichardt, Wiley-VCH, 3rd edition, 2003, pages 472-474に見出され得る。大いに好ましくは、用いられる溶媒は、水またはエタノールであり、特に好ましくは、溶媒は、水である。1つの可能な実施形態において、溶媒は、含浸溶液に存在しなくてよい。
【0130】
第1または第2の触媒がホウ素、フッ素またはホウ素とフッ素の混合物から選ばれるドーパントをさらに含む場合、この(これらの)ドーパントの導入は、上記のリンの導入と同一の方法で、調製の種々の段階において種々の方法で行われ得る。
【0131】
ホウ素前駆体は、ホウ酸、オルトホウH3BO3、二ホウ酸アンモニウムまたは五ホウ酸アンモニウム、酸化ホウ素またはホウ酸エステルであり得る。ホウ素は、例えば、水/アルコール混合物中または水/エタノールアミン混合物中のホウ酸の溶液によって導入され得る。好ましくは、ホウ素前駆体は、ホウ素が導入されるならば、オルトホウ酸である。
【0132】
用いられ得るフッ素前駆体は、当業者に周知である。例えば、フッ化物アニオンがフッ化水素酸またはその塩の形態で導入され得る。これらの塩は、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機化合物により形成される。有機化合物のケースにおいて、塩は、有利には、有機化合物とフッ化水素酸との間の反応による反応混合物中に形成される。フッ素は、例えば、フッ化水素酸またはフッ化アンモニウムまたは二フッ化アンモニウムの水溶液の含浸によって導入され得る。
【0133】
第1または第2の触媒が酸素含有および/または窒素含有および/または硫黄含有の有機化合物をさらに含む場合、このものは、乾燥段階ii)の前に導入される。有機化合物は、一般に、含浸によって、活性相およびリンの存在中または非存在中および溶媒の存在中または非存在中で導入される。
【0134】
有機化合物の導入は、金属の導入に対する有機化合物の導入のタイミングにおいて特に異なっているいくつかの実施形態を含む。それは、金属の含浸と同時にか(共含浸)、または金属の含浸の後(含浸後)にか、または最後に、金属の含浸の前(前含浸)にか、特に担体の調製の間に、優先的には、形付けの間にまたは事前形成担体上の含浸によって行われ得る。各実施形態は、単独でまたは組み合わせで利用されて、1回または複数回の段階において進めることができる。
【0135】
さらに、接触段階は、少なくとも2つの実施形態、例えば、共含浸および後含浸を組み合わせることができる。代わりの実施形態によると、段階i)による接触操作は、少なくとも2つの接触実施形態、例えば、活性相およびリンと有機化合物の共含浸、その次の200℃未満の温度での乾燥、次いで、共含浸のために用いられたものと同一または異なり得る有機化合物の後含浸を組み合わせる。各実施形態は、単独でまたは組み合わせで利用されて、1回または複数回の段階において進めることができる。
【0136】
有機化合物(1種または複数種)は、有利には、含浸溶液に導入され、含浸溶液は、調製実施形態に応じて、活性相およびリンの前駆体を含有しているものと同一の溶液であるかまたは異なる溶液であり得、以下に対応する量とする:
- 有機化合物対の触媒前駆体の第VIb族からの元素(1種または複数種)(第1触媒についてMoまたは第2触媒について(MoおよびW))の合計のモル比は、含浸溶液(1種または複数種)に導入された成分に基づいて計算されて0.01~5mol/mol、好ましくは0.05~3mol/mol、好ましくは0.05~1.5mol/mol、大いに好ましくは0.1~1.2mol/molであり、および
- 有機化合物対ニッケルのモル比は、含浸溶液(1種または複数種)に導入された成分に基づいて計算されて、0.02~17mol/mol、好ましくは0.1~10mol/mol、好ましくは0.15~8mol/mol、大いに好ましくは0.6~5mol/molである。
【0137】
いくつかの有機化合物が存在する場合、存在する有機化合物のそれぞれについて異なるモル比が適用される。
【0138】
有利には、各含浸段階の後に、含浸済み担体は放置熟成させられる。熟成により、含浸溶液が担体内に均一に分散することが可能となる。
【0139】
本発明に記載されている任意の熟成段階は、有利には、大気圧で、水飽和雰囲気中、17℃~50℃の温度で、好ましくは周囲温度で行われる。一般に、10分~48時間、好ましくは30分~5時間の熟成期間が十分である。より長い期間は規定外とはされないが、必ずしも何らかの改善を提供するわけではない。
【0140】
本発明による調製方法の段階ii)によると、段階i)において得られた触媒前駆体は、場合によっては、熟成させられ、200℃未満、好ましくは50℃~180℃、好適には70℃~150℃、大いに好適には75℃~130℃の温度での乾燥段階に供される。
【0141】
乾燥段階は、有利には、当業者に知られている任意の技術によって行われる。それは、有利には、大気圧または減圧で、好ましくは大気圧で行われる。それは、有利には、横断床(traversed bed)において、高温空気または任意の他の高温ガスを用いて行われる。好ましくは、固定床において乾燥が行われる場合、用いられるガスは、空気または不活性ガス、例えば、アルゴンまたは窒素のいずれかである。大いに好ましくは、乾燥は、横断床において、窒素および/または空気の存在中で行われる。好ましくは、乾燥段階は、5分~4時間、好ましくは30分~4時間、大いに好ましくは1時間~3時間の短い継続期間を有する。有機化合物が存在する場合、乾燥は、導入された有機化合物の最低30%を優先的に保持するように行われる;好ましくは、この量は、触媒上に残っている炭素に基づいて計算されて、50%超、よりなおさら好ましくは70%超である。乾燥段階b)の終結の際に、乾燥済み触媒が得られる。
【0142】
場合によっては、乾燥段階ii)の後に、焼成段階iii)が続けられ得る。
【0143】
この代わりの形態によると、乾燥段階ii)の終結の際に、焼成段階c)が、200℃~600℃、好ましくは250℃~550℃の温度で、不活性雰囲気(例えば窒素)下にまたは酸素を含有している雰囲気(例えば空気)下に行われる。この熱処理の継続時間は、一般に0.5時間~16時間、好ましくは1時間~5時間である。この処理の後に、活性相は、それ故に、酸化物の形態で見出される;ヘテロポリアニオンは、それ故に、酸化物に転化される。同様に、触媒は、有機化合物が導入された時の有機化合物をもはや含有していないか、または、ほとんど含有していない。しかしながら、それの調製の間の有機化合物の導入により、活性相の分散を増大させることが可能となり、それ故に、より活性な触媒がもたらされる。
【0144】
有機化合物が存在する場合、触媒は、好ましくは、焼成に供されない。用語「焼成」は、ここでは、空気または酸素を含有しているガス下、200℃以上の温度での熱処理を意味するように理解される。
【0145】
しかしながら、触媒前駆体は、有機化合物の導入の前に、特に、活性相、およびリンの含浸の後に焼成段階を経ることができる。
【0146】
第1または第2の触媒は、フレッシュな触媒、すなわち、触媒ユニット、特に水素化処理においてそれまでに触媒として用いられなかった触媒であり得る。
【0147】
本発明による第1または第2の触媒は、再生および/または再回復(rejuvenated)の触媒であることもできる。再生および/または再回復の触媒は、触媒ユニットにおいて、特に、水素化処理および/または水素化分解において触媒として用いられ、例えば焼成(再生)によるコークの部分的または完全な除去の少なくとも1回の段階に供された触媒を意味するように理解される。再生は、当業者に知られている任意の手段によって行われ得る。再生は、一般に、350℃~550℃、一般に400℃~520℃、または420℃~520℃、または450℃~520℃の温度での焼成によって行われ、500℃未満の温度がしばしば有利である。
【0148】
再生触媒がもはや十分な活性相および/またはリンを含まない場合、またはそれが上記の好適な比外の比(1または複数)を示す場合、再生触媒は、活性相および/またはリンの1種または複数種の前駆体を再生触媒に導入することによって再回復させられ得る。金属およびリンと同時にまたは別個に少なくとも1種の有機化合物を導入することも可能である。導入される有機化合物は、フレッシュな触媒がそのような有機化合物を含んでいた場合にその触媒の有機化合物と同一であってもなくてもよい。熟成、乾燥および場合による焼成および場合による硫化に関する上記の操作条件は、当然、この最後の実施形態の関連において適用可能である。
【0149】
水素化処理反応におけるその使用の前に、第1および/または第2の触媒を硫化触媒に変換して、その活性体を形成するようにすることが有利である。この活性化または硫化の段階は、当業者に周知な方法によって、有利には、水素および硫化水素の存在中でのスルホ還元雰囲気下に行われる。
【0150】
代わりの形態によると、第1または第2の触媒は、有利には、乾燥段階ii)または任意選択の焼成段階iii)後に、硫化段階に供される。
【0151】
前記触媒は、有利には、現場外(ex situ)または現場内(in situ)で硫化される。硫化剤は、H2Sガス、元素硫黄、CS2、チオール、スルフィドおよび/またはポリスルフィド、硫黄化合物を含有している沸点が400℃未満である炭化水素留分または触媒を硫化することを目的として炭化水素供給原料の活性化のために用いられる任意の他の硫黄含有化合物である。前記硫黄含有化合物は、有利には、アルキルジスルフィド、例えば、ジメチルジスルフィド(dimethyl disulfide:DMDS)、アルキルスルフィド、例えばジメチルスルフィド、チオール、例えば、n-ブチルチオール(または1-ブタンチオール)、およびtert-ノニルポリスルフィドタイプのポリスルフィド化合物から選ばれる。触媒は、脱硫されるべき供給原料中に含有される硫黄によっても硫化され得る。好ましくは、触媒は、硫化剤および炭化水素供給原料の存在中で現場内硫化される。大いに好ましくは、触媒は、ジメチルジスルフィドを添加した炭化水素供給原料の存在中で現場内硫化される。
【0152】
(ガスオイル留分のULSD法における本発明による方法の適用)
第1の実施形態によると、本発明による前記水素化処理法は、前記触媒の配列の存在中で行われるガスオイル留分の水素化処理、特に、水素化脱硫(HDS)のための方法である。本発明による前記水素化処理法は、前記ガスオイル留分中に存在する硫黄ベースの化合物を除去して、現行の環境基準、すなわち10ppmまでの許容硫黄含有率を満たすようにすることに狙いが定められる。それにより、水素化処理されるべきガスオイル留分の芳香族化合物および窒素の含有率を大幅に低下させることも可能となる。
【0153】
本発明の方法により水素化処理されるべき前記ガスオイル留分は、0.02重量%~5.0重量%の硫黄を含有する。それは、有利には、直留蒸留(または直留ガスオイル)、コーキングユニット、ビスブレーキングユニット、水蒸気分解ユニット、より重質の供給原料の水素化処理および/または水素化分解のためのユニットおよび/または接触分解ユニット(流動接触分解)から得られる。前記ガスオイル留分は、優先的には、沸点が大気圧で250℃~400℃である化合物の最低90%を示す。
【0154】
本発明による前記ガスオイル留分の水素化処理のための方法は、以下の操作条件下に行われる:温度は、200℃~400℃、優先的には300℃~380℃であり、全圧は、2MPa~10MPa、より優先的には3MPa~8MPaであり、これに伴う炭化水素供給原料の容積当たりの水素の容積の比は、標準の温度および圧力の条件下に測定される水素の容積/液体供給原料の容積として表されて、100~600リットル/リットル、より優先的には200~400リットル/リットルであり、毎時空間速度(HSV)は、0.5~10h-1、優先的には0.7~8h-1である。
【0155】
HSVは、時間で表される接触時間の逆数に相当し、本発明による水素化処理法を実施する反応ユニットに充填された触媒の容積当たりの液体炭化水素供給原料の容積流量の比によって定義される。本発明による前記ガスオイル留分を水素化処理するための方法を実施する反応ユニットは、優先的には、固定床として操作される。
【0156】
(水素化分解法における本発明による方法の適用)
第2の代わりの形態によると、本発明による水素化処理法は、有利には、水素化分解法、より特定的には、「単一段階」水素化分解法または「二段階」水素化分解法における前処理として行われる。水素化分解法により、石油フラクション、特に減圧蒸留物(vacuum distillates:VDs)を、より軽質のかつよりグレードアップ可能な生成物(ガソリン、中間留分)に転化することが可能となる。本発明による水素化処理法は、前記減圧蒸留物留分中に存在する硫黄ベースの化合物、窒素ベースの化合物または芳香族化合物を取り除くことに狙いが定められる。
【0157】
非常に多様な供給原料が処理され得る。一般に、それらは、最低20容積%、しばしば最低80容積%の、大気圧において340℃超で沸騰する化合物を含有する。供給原料は、例えば、減圧蒸留物であり得、また、供給原料は、潤滑油ベースからの芳香族化合物の抽出のためのユニットを起源とするか、または、潤滑油ベースの溶媒脱ろう、および/または脱アスファルト油から生じるか、または、供給原料は、脱アスファルト油またはフィッシャー・トロプシュ法から生じたパラフィン、または、上記の供給原料の任意の混合物であり得る。一般に、供給原料は、大気圧で340℃超、よりなおさら良好には大気圧で370℃超のT5沸点を有する。すなわち、供給原料中に存在する化合物の95%は、340℃超、よりなおさら良好には370℃超の沸点を有する。本発明による方法において処理される供給原料の窒素含有率は、通常200重量ppm超、好ましくは500~10000重量ppmである。本発明による方法において処理される供給原料の硫黄含有率は、通常0.01重量%~5.0重量%である。供給原料は、場合によっては、金属(例えば、ニッケルおよびバナジウム)を含有することができる。アスファルテンの含有率は、一般に、3000重量ppm未満である。
【0158】
「単一段階」水素化分解法は、まず一般的に、徹底的な水素化処理を含み、その目的は、供給原料が水素化分解触媒(1種または複数種)上に送られる前に供給原料の徹底的なHDN、徹底的なHDSおよび徹底的なHDSおよび徹底的なHDAを行うことにある。前記単一段階水素化分解法が特に有利であるのは、前記水素化分解触媒(1種または複数種)がゼオライト結晶を含んでいる担体を含む場合である。この供給原料の徹底的な水素化処理は、より軽質な部分の供給原料の制限された転化のみをもたらし、これは、依然として不十分であり、それ故に、より活性な水素化分解触媒(1種または複数種)上で完了する必要がある。しかしながら、異なる触媒床の間での流出物の分離は発生しないことが留意されるべきである:水素化処理触媒床の出口における流出物の全部が、前記水素化分解触媒(1種または複数種)を含有している触媒床(1個または複数個)上に注入され、次いで、形成された生成物は分離される。水素化分解のこのバージョンは、代わりの形態を有し、その形態は、供給原料のより徹底的な転化の目的のための水素化分解触媒床の少なくとも1つへの未転化部分のリサイクルを示す。有利には、本発明による特定の配列を含んでいる本発明による水素化処理法は、単一段階水素化分解法における水素化分解触媒の上流で行われる。加えて、それにより、前処理段階の終結の際に窒素含有率を制限することが可能となり、窒素に対して非常に敏感なゼオライトをベースとする水素化分解触媒を保護する。
【0159】
「二段階」水素化分解法は、第1段階を含み、その目的は、「単一段階」方法におけるのと同様に、供給原料の水素化処理を行うことにあるが、一般に40%~60%の程度の供給原料の転化を達成することにもある。第1段階から生じた流出物は、続いて、分離(一般に蒸留による)に供され、これは、最も多くの場合、中間分離と称されるものであり、その目的は、未転化部分から転化生成物を分離することにある。本発明による二段階水素化分解法の第2段階において、第1段階の間に転化されなかった供給原料の部分のみが処理される。この分離により、本発明による二段階水素化分解法が、中間留分(ケロセン+ディーゼル)について本発明による単一段階法より選択的になることが可能となる。これは、転化生成物の中間分離が、水素化分解触媒(1種または複数種)上で第2段階においてナフサおよびガスを与える「過剰分解」を防止するためである。さらに、第2段階において処理される供給原料の未転化部分は、一般に、非常に低い含有率のNH3およびまた窒素ベースの有機化合物:一般に20重量ppm未満、さらに実際に10重量ppm未満を含有することが留意されるべきである。
【0160】
前記第1段階は、本発明による触媒の特定の配列および水素化分解触媒の存在中で行われ、水素化処理および転化:一般に40%~60%程度を行うようにする。本発明による触媒の特定の配列の触媒床は、有利には、水素化分解触媒の上流で見出される。前記第2段階は、一般に、前記第1段階の実施のために存在するものとは組成において異なる水素化分解触媒の存在中で行われる。
【0161】
水素化分解法は、一般に、250℃~480℃、有利には320℃~450℃、好ましくは330℃~435℃の温度で、2~25MPa、好ましくは3~20MPaの圧力下に行われ、各触媒の容積に対する供給原料の毎時空間速度(HSV)は、有利には0.1~40h-1、好ましくは0.2~12h-1、大いに好ましくは0.4~6h-1であり、水素/供給原料の比は、水素の標準立方メートル(Sm3)/炭化水素供給原料の立方メートル(m3)として表されて、有利には80SL/L~5000SL/L、好ましくは100~2000SL/Lである。減圧蒸留物の水素化分解のための方法は、マイルド水素化分解から高圧水素化分解までに広がる圧力および転化の範囲をカバーする。マイルド水素化分解は、中程度の転化率:一般に40%未満をもたらし、低圧、好ましくは2MPa~6MPaで操作する水素化分解を意味するように理解される。
【0162】
水素化分解触媒は、二機能タイプのものである:それらは、酸機能基を水素化/脱水素機能基と組み合わせる。酸機能基は、多孔質担体によって提供され、その表面は、一般に150m2・g-1から800m2・g-1までで変動し、表面酸度を示し、例えば、ハロゲン化(特に塩素化またはフッ素化)アルミナ、ホウ素およびアルミニウムの酸化物の組み合わせ、無定形または結晶性のメソ細孔アルミノケイ酸塩および酸化物バインダ中に分散したゼオライトがある。水素化/脱水素機能基は、元素周期律表の第VIb族からの少なくとも1種の金属および場合による第VIII族からの少なくとも1種の金属をベースとする活性相の存在によって提供される。最も一般的な配合は、ニッケル-モリブデン(NiMo)およびニッケル-タングステン(NiW)のタイプのもの、よりまれにはコバルト-モリブデンのタイプのものである。調製の後に、水素化/脱水素機能基は、しばしば、酸化物の形態で存在する。水素化分解触媒の水素化/脱水素相の形成をもたらす通常の方法は、第VIb族からの少なくとも1種の金属および場合による第VIII族からの少なくとも1種の金属の分子前駆体(1種または複数種)の酸性酸化物担体上の堆積からなり、「乾式含浸」技術と、その次の熟成、乾燥および焼成の段階により行われ、使用される前記金属(1種または複数種)の酸化された形態の形成をもたらす。水素化分解法のための活性でありかつ安定な形態は硫化された形態であるので、これらの触媒は、硫化段階を経る必要がある。この硫化段階は、関連する方法のユニット(参照がなされるのは現場内硫化である)においてまたはユニットへの触媒の充填に先行して(ここで参照がなされるのは、現場外硫化である)行われ得る。
【0163】
(FCC法における本発明による方法の適用)
第3の代わりの形態によると、本発明による水素化処理法は、有利には、流動床接触分解(またはFCC:fluid catalytic cracking流動接触分解)法における前処理として行われる。FCC法は、当業者に知られている従来通りの方法で、適切な分解条件下に、より低い分子量の炭化水素生成物を生じさせるという目的のために行われ得る。例えば、接触分解の概要記載(接触分解の最初の工業的使用は、1936年に遡るか(Houdry法)、または、流動床触媒の使用について1942年に遡る)は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Volume A 18, 1991, pages 61 to 64に見出されることになる。
【0164】
FCC法において使用が通常になされるのは、マトリクス、任意選択の添加物および少なくとも1種のゼオライトを含んでいる従来の触媒である。ゼオライトの量は可変であるが、触媒の重量に対して、通常3重量%から60重量%までにわたり、しばしば6重量%から50重量%までにわたり、一般に10重量%から45重量%までにわたる。ゼオライトは、通常、マトリクス中に分散している。添加物の量は、触媒の重量に対して、通常0重量%から30重量%までにわたり、しばしば0重量%から20重量%までにわたる。マトリクスの量は、100重量%までの補足を表す。添加物は、一般に、元素周期律表の第IIa族からの金属の酸化物、例えば、マグネシウム酸化物またはカルシウム酸化物、希土類金属の酸化物および第IIa族からの金属のチタン酸塩によって形成される群から選ばれる。マトリクスは、一般に、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、粘土またはこれらの生成物の2種以上の混合物である。最も一般的に用いられるゼオライトは、ゼオライトYである。
【0165】
分解は、実質的に垂直の反応器において、上向き様式(ライザー)または下向き様式(ドロッパー)のいずれかで行われる。触媒および操作条件のチョイスは、処理される供給原料に応じて望まれる生成物に依存し、例えば、M. Marcillyによる紙面のページ990-991に記載されている通りであり、これは、revue de l'institut francais du petrole [Review of the French Institute of Petroleums:French Institute of Petroleumsの総説], Nov.-Dec. 1975, pages 969-1006のにおいて出版されたものである。操作は、通常、450℃~600℃の温度および1分未満、しばしば0.1~50秒の反応器中の滞留時間で行われる。
【0166】
前処理により、前処理段階の終結の際に窒素含有率を制限して窒素に対して非常に敏感なゼオライトをベースとする接触分解触媒を保護することがさらに可能となる。
【0167】
(実施例)
以下の実施例により、本発明による特定の配列を用いたHDAおよびHDNの活性における顕著な増加が実証される。
【0168】
実施例1~3には、触媒C1~C3の調製が記載されている。酸化物の形態で、触媒の重量に対して表される金属およびリンにおける各触媒の最終組成、およびまた、WO3/MoO3、NiO/(WO3+MoO3)およびP2O5/(WO3+MoO3)の比を以下の表1に示す。
【0169】
実施例4~7には、芳香族化合物の水素化(HDA)およびガスオイルの水素化脱窒(HDN)における、触媒C1、C2およびC3の異なる配列の評価が記載されている。
【0170】
(実施例1:アルミナ担持NiMoP触媒C1の調製)
ニッケル、モリブデンおよびリンを、アルミナ担体A1 100gに加える。アルミナ担体A1が示す強熱減量は、4.9重量%であり、BET比表面積は、230m2/gであり、細孔容積は、水銀ポロシメトリによって測定されて、0.78mL/gであり、平均細孔径は、水銀ポロシメトリによる容積中位径として定義されて、11.5nmであり、「押出物」の形態で提供される。担体A1が示す吸水量は、0.77mL/gである。含浸溶液の調製を、酸化モリブデン(Merck(登録商標)、純度>99.5重量%)37.41g、ヒドロキシ炭酸ニッケル(Merck(登録商標)、純度99.9重量%)11.96gおよびオルトリン酸溶液(Merck(登録商標)、水中85重量%)14.53gの蒸留水67.2mL中の90℃での溶解によって行う。乾式含浸の後に、押出物を、水飽和雰囲気中、周囲温度で24時間にわたって放置熟成させ、次いで、90℃で16時間にわたってそれらを乾燥させる。触媒C1の含浸・乾燥済みの担体に、続いて、乾式含浸によって、コハク酸ジメチル(dimethyl succinate:DMSU)および酢酸(純度75%)の混合物を含有している溶液を添加する。モル比は、以下の通りである:DMSU/Mo=0.85mol/mol、DMSU/酢酸=0.5mol/mol。触媒は、再び、熟成の段階を、20℃で3時間にわたって、空気下に経、次いで、横断床タイプのオーブン中、120℃で3時間にわたって乾燥させる。このようにして得られた乾燥済み触媒をC1とする。触媒C1の最終組成は、酸化物の形態で表されて、以下の通りである:MoO3=25.1±0.2(重量%)、NiO=5.1±0.1(重量%)およびP2O5=6.0±0.1(重量%)。
【0171】
(実施例2:アルミナ担持NiMoWP触媒C2の調製)
ニッケル、モリブデン、タングステンおよびリンを、実施例1において提示されたのと同一の担体A1に加える。含浸溶液の調製を、酸化モリブデン(Merck(登録商標)、純度>99.5重量%)6.12g、メタタングステン酸アンモニウム水和物(Merck(登録商標)、≧85.0重量%WO3)74.74g、硝酸ニッケル六水和物(Merck(登録商標)、純度99.999重量%)26.07gおよびオルトリン酸溶液(Merck(登録商標)、水中85重量%)10.24gの蒸留水68.3mL中の90℃での溶解によって行う。担体A1 100gの乾式含浸の後に、押出物を水飽和雰囲気中、周囲温度で24時間にわたって放置熟成させ、次いで、90℃で16時間にわたってそれらを乾燥させる。このようにして得られた乾燥済み触媒をC2とする。
【0172】
触媒C2の最終組成は、酸化物の形態で表されて、以下の通りである:MoO3=3.4±0.1(重量%)、WO3=36.6±0.2(重量%)、NiO=3.7±0.1(重量%)およびP2O5=3.5±0.1(重量%)。
【0173】
(実施例3:有機化合物(アスコルビン酸)の後添加によるアルミナ担持NiMoWP触媒C3の調製)
実施例2において上記され、「押出物」の形態で提供される触媒前駆体C2 100gに、アスコルビン酸(Merck(登録商標)、純度100%)28.78gを含有しており、その容積が触媒前駆体C2の細孔容積に等しい水溶液を含浸させる。関与する量は、アスコルビン酸の量が、モリブデンのモルおよびタングステンのモル当たり0.5mol(ニッケルのモル当たり1.9molに相当する)になるようにされる。押出物を、水飽和雰囲気中、周囲温度で16時間にわたって放置熟成する。触媒前駆体C3を、次いで、120℃で2時間にわたって乾燥させ、触媒C3を与える。
【0174】
触媒C3の最終組成は、酸化物の形態で表されて、以下の通りである:MoO3=3.4±0.1(重量%)、WO3=36.6±0.2(重量%)、NiO=3.7±0.1(重量%)およびP2O5=3.5±0.1(重量%)。
【0175】
【0176】
(実施例4~7:ガスオイルの芳香族化合物の水素化(HDA)および水素化脱窒(HDN)における触媒C1、C2およびC3の配列の評価)
触媒C1、C2およびC3から得られた触媒の配列をガスオイルの芳香族化合物の水素化(HDA)においてテストした。
【0177】
供給原料は、常圧蒸留(直留蒸留とも呼ばれる)から生じたガスオイル30容積%および接触分解ユニットから生じた軽質ガスオイル(Light Cycle Oil(ライトサイクルオイル):LCOとしても知られている)70容積%の混合物である。用いられたテスト供給原料の特徴付けは、以下の通りである:15℃での密度=0.8994g/cm3(NF EN ISO 12185)、20℃での屈折率=1.5143(ASTM D1218-12)、硫黄含有率=0.38重量%、窒素含有率=0.05重量%。
・模擬蒸留(ASTM D2887)
- IP :133℃;
- 10% :223℃;
- 50% :285℃;
- 90% :357℃;
- FP :419℃
【0178】
横断式固定床を有している等温試験規模反応器においてテストを行い、流体は、底部から上向きに循環する。反応器は、触媒C1、C2およびC3の異なる配列を評価することを可能にする2箇所の触媒領域を含む。供給原料は、第1に第1触媒が充填された第1の領域を通過し、次に第2触媒が充填された第2の領域を通過する。
【0179】
実施例4(本発明に合致する)によると、第1領域は、触媒C1を充填され(容積の75%)、次いで、第2領域は、触媒C2を充填される(容積の25%)。
【0180】
実施例5(本発明に合致する)によると、第1領域は、触媒C1を充填され(容積の75%)、次いで、第2領域は、触媒C3を充填される(容積の25%)。
【0181】
実施例6(本発明に合致しない)によると、第1領域は、触媒C1を充填され(容積の40%)、次いで、第2領域は、触媒C2を充填される(容積の60%)。
【0182】
実施例7(本発明に合致しない)によると、第1領域は、触媒C1を充填され(容積の95%)、次いで、第2領域は、触媒C2を充填される(容積の5%)。
【0183】
触媒の硫化を事前に現場内で、350℃で、反応器中、圧力下に、常圧(直留)蒸留ガスオイル供給原料(15℃での密度=0.8491g/cm3(NF EN ISO 12185)および当初硫黄含有率=0.42重量%)に2重量%のジメチルジスルフィドを加えたものによって行う。
【0184】
触媒テストを、以下の操作条件下に行った:全圧8MPa、2箇所の触媒領域の全容積4cm3、温度330℃、水素流量3.0L/hおよび供給原料流量4.5cm3/h。
【0185】
流出物の特徴を分析する:15℃での密度(NF EN ISO 12185)、20℃での屈折率(ASTM D1218-12)、模擬蒸留(ASTM D2887)、硫黄含有率および窒素含有率。芳香族炭素の残留含有率の計算を、n-d-M法によって行う(ASTM D3238)。芳香族化合物の水素化度の計算を、供給原料中の芳香族炭素の含有率から流出物の芳香族炭素の含有率を差し引いたもの対テスト供給原料の含有率の比として行う。水素化脱窒度の計算を、供給原料中の窒素の含有率から流出物の窒素の含有率を差し引いたもの対テスト供給原料の窒素の含有率の比として行う。
【0186】
テストされた触媒の配列の触媒性能品質を表2に与える。基準として選ばれた触媒C1(反応器の第1の領域)95容積%+触媒C2(反応器の第2の領域)5容積%の配列(実施例7)に対する相対的容積活性(relative volume activity:RVA)としてそれらを表して、HDA反応について1.7のオーダーが、HDN反応について1のオーダーが想定される。
【0187】
表2に、本発明による特定の配列によって寄与される触媒効果に関する利得が明確に示されている。これは、本発明による触媒の配列により、ガスオイルの水素化脱芳香族(HDA)および水素化脱窒(HDN)の反応における容積活性を大幅に増大させることが可能となるためである。
【0188】
【国際調査報告】