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特表2024-507481フェノール系ポリマーを含む硬化性エポキシ系
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  • 特表-フェノール系ポリマーを含む硬化性エポキシ系 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】フェノール系ポリマーを含む硬化性エポキシ系
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/62 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
C08G59/62
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547599
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2022053016
(87)【国際公開番号】W WO2022167686
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】21155833.3
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520307687
【氏名又は名称】レイン カーボン ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Rain Carbon Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ラウザー、マリアン
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA02
4J036AD01
4J036DB06
4J036JA01
4J036JA06
(57)【要約】
エポキシ樹脂と、数平均モル質量(Mn)が200~1,500g/molであるフェノール系ポリマーとを含むエポキシ系。このフェノール系ポリマーをエポキシ樹脂に使用することによって、エポキシ樹脂の硬化を促進できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、
フェノール化合物、リンカー基L及び末端基Eを含み、数平均モル質量(Mn)が200~1,500g/molであるフェノール系ポリマーであって、下記式(1)で表される構造を有するフェノール系ポリマーと、
を含むエポキシ系。
【化1】
(式中、前記リンカー基Lは、下記式(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の意味を有し、
【化2】
前記末端基Eはそれぞれ、Hの意味を有するか、又は前記式(1)のフェノール化合物に1つの結合のみを有する前記式(2)、(3)、(4)、(5)若しくは(6)の基であるか、又は下記式(2c1)、(2c2)、(3c1)若しくは(3c2)の意味を有する。
【化3】
ここで、
は、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキル、又はC(CR1819-Z-、好ましくは、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキルであり、
,R,R,R,R、R,R11及びR12は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、
及びRは、H、OH、NO、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のオキシアルキルであり、
10及びR13は、炭素数1~5のアルキル又は炭素数5~6のシクロアルキルであり、
14は、炭素数5~12のシクロアルキルであり、任意選択でメチル基又はエチル基で置換され、
15,R16及びR17は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキル、好ましくは-CHであり、
18及びR19は、それぞれ独立に、H又はCHであり、
Zは、共有結合又は-O-であり、
oは、1又は0であり、
mは、1~7の整数であり、
nは、2~21の整数である。)
【請求項2】
前記フェノール系ポリマーは、前記フェノール系ポリマーの質量を基準として、
前記フェノール化合物を50重量%~70重量%、
前記リンカー基L、特に、ジビニルベンゼン化合物、ジシクロペンタジエン化合物又は前記式(4)、(5)若しくは(6)の化合物から選択される二官能性モノマーを20重量%~50重量%、及び/又は、
【化4】
(式中、残基R~R14は、請求項1で定義したのと同じ意味を有する。)
前記末端基E、特に、前記フェノール系ポリマーのフェノール化合物に1つの結合のみを有する単官能性モノマーを0重量%~50重量%、特に5重量%~40重量%、より詳細には10重量%~40重量%含む、請求項1に記載のエポキシ系。
【請求項3】
前記フェノール系ポリマーにおいて、Rは、H、炭素数1~10のアルキル、特に炭素数1~8のアルキル、より詳細には炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~10のオキシアルキル、特に炭素数1~8のオキシアルキル、より詳細には炭素数1~5のオキシアルキルである、請求項1又は2に記載のエポキシ系。
【請求項4】
前記フェノール系ポリマーにおいて、前記リンカー基Lは、前記式(2)の意味を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のエポキシ系。
【化5】
(式中、R,R及びRは、請求項1で定義した通りであり、特にHである。)
【請求項5】
前記フェノール系ポリマーにおいて、前記末端基Eは、前記式(2c1)、(2c2)、(3c1)及び(3c2)並びに下記式(2c3)、(2c4)、(2c5)、(2c6)、(4c1)、(4c2)、(5c1)及び(5c2)のいずれか1つの意味を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載のエポキシ系。
【化6】
(式中、R~R13は、請求項1で定義した通りであり、
mは、1~7の整数であり、
15,R16及びR17は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキル、好ましくは-CHである。)
【請求項6】
前記フェノール系ポリマーにおいて、前記末端基Eは、前記式(2c5)又は(2c6)の意味を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のエポキシ系。
【化7】
(式中、R,R及びRは、請求項1で定義した通りであり、特にHである。)
【請求項7】
前記フェノール系ポリマーにおいて、OH含有量は、前記フェノール系ポリマーの質量を基準として、5~13質量%、特に6~9質量%である、請求項1から6までのいずれか1項に記載のエポキシ系。
【請求項8】
前記フェノール系ポリマーのASTM 3461による軟化点は、170℃まで、より好ましくは40℃~120℃、最も好ましくは50℃~100℃であり、及び/又は、DIN EN ISO 4630:2016-05に準拠して、測定にはトルエンの代わりにアセトンを用いて判定されたガードナー色数は、0~5、好ましくは0~2、より好ましくは0~1である、請求項1から7までのいずれか1項に記載のエポキシ系。
【請求項9】
前記エポキシ系は、アミン、無水物、フェノール及び/又はチオール官能基、特にアミン官能基を含む硬化剤を含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載のエポキシ系。
【請求項10】
フェノール化合物、リンカー基L及び末端基Eを含み、数平均モル質量(Mn)が200~1,500g/molであるフェノール系ポリマーであって、下記式(1)で表される構造を有するフェノール系ポリマーの、
エポキシ樹脂の硬化のための促進剤としての、特にアミン官能基を含む硬化剤の存在下での使用、
又は、
エポキシ樹脂の硬化剤としての、特にアミン官能基を含む共硬化剤の存在下での使用。
【化8】
(式中、前記リンカー基Lは、下記式(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の意味を有し、
【化9】
前記末端基Eはそれぞれ、Hの意味を有するか、又は前記式(1)のフェノール化合物に1つの結合のみを有する前記式(2)、(3)、(4)、(5)若しくは(6)の基であるか、又は下記式(2c1)、(2c2)、(3c1)若しくは(3c2)の意味を有する。
【化10】
ここで、
は、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキル、又はC(CR1819-Z-、好ましくは、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキルであり、
,R,R,R,R、R,R11及びR12は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、
及びRは、H、OH、NO、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のオキシアルキルであり、
10及びR13は、炭素数1~5のアルキル又は炭素数5~6のシクロアルキルであり、
14は、炭素数5~12のシクロアルキルであり、任意選択でメチル基又はエチル基で置換され、
15,R16及びR17は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキル、好ましくは-CHであり、
18及びR19は、それぞれ独立に、H又はCHであり、
Zは、共有結合又は-O-であり、
oは、1又は0であり、
mは、1~7の整数であり、
nは、2~21の整数である。)
【請求項11】
前記フェノール系ポリマーは、請求項2から8までのいずれか1項に記載の特徴の少なくとも1つによってさらに特徴付けられる、請求項10に記載のフェノール系ポリマーの使用。
【請求項12】
エポキシ樹脂と、
フェノール化合物、リンカー基L及び末端基Eを含み、数平均モル質量(Mn)が200~1,500g/molであるフェノール系ポリマーであって、下記式(1)で表される構造を有するフェノール系ポリマーと、
アミン、無水物、フェノール及び/又はチオール官能基、特にアミン官能基を含む硬化剤と、を含む成分キット(Kit-of-parts)。
【化11】
(式中、前記リンカー基Lは、下記式(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の意味を有し、
【化12】
前記末端基Eはそれぞれ、Hの意味を有するか、又は前記式(1)のフェノール化合物に1つの結合のみを有する前記式(2)、(3)、(4)、(5)若しくは(6)の基であるか、又は下記式(2c1)、(2c2)、(3c1)若しくは(3c2)の意味を有する。
【化13】
ここで、
は、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキル、又はC(CR1819-Z-、好ましくは、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキルであり、
,R,R,R,R、R,R11及びR12は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、
及びRは、H、OH、NO、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のオキシアルキルであり、
10及びR13は、炭素数1~5のアルキル又は炭素数5~6のシクロアルキルであり、
14は、炭素数5~12のシクロアルキルであり、任意選択でメチル基又はエチル基で置換され、
15,R16及びR17は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキル、好ましくは-CHであり、
18及びR19は、それぞれ独立に、H又はCHであり、
Zは、共有結合又は-O-であり、
oは、1又は0であり、
mは、1~7の整数であり、
nは、2~21の整数である。)
【請求項13】
前記フェノール系ポリマー及び前記硬化剤は混合物として存在し、任意選択で溶媒及び/又はシンナーを含有する、請求項12に記載の成分キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂及びフェノール系ポリマーを含むエポキシ系に関する。本発明はまた、フェノール系ポリマーの、例えばコーティング及び接着剤系におけるエポキシ樹脂の促進剤としての又は硬化剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、良好な接着性と電気特性、高いガラス転移温度、優れた耐腐食性と耐溶剤性を有する幅広い種類のポリマーを構成し、接着剤、コーティング及び複合材に使用されることが周知である。
【0003】
これらの樹脂は、アミン類等の求核性を有する多官能性硬化剤との架橋反応によって又はそれ同士の反応によって硬化するエポキシド基を特徴とする。この硬化プロセスは通常、ルイス酸性又は塩基性触媒によって促進又は誘導さえされる。一般的に知られているエポキシ/アミン系の促進剤としては、例えばアルキル化フェノール、特にビスフェノールA、ノニルフェノール又はスチレン化フェノール類、これらのアルキル化フェノール類と第三級アミン類、サリチル酸若しくはベンジルアルコールとの組み合わせが挙げられる。頻繁に適用される市販の促進剤としては、Novares(登録商標)LS500、Sanko(登録商標)MSP、又はKumanox(登録商標)3111が挙げられる。
【0004】
これらの系はいずれも、効率性が高く安価に入手可能であるが、様々な適用上の又は処理上の問題に直面している。例えば、ビスフェノールAは、アレルギー特性及び催奇形性を有し、配合された系において高い結晶化傾向を示すため結果として性能が低下する。ノニルフェノールは内分泌攪乱物質として作用するため、その適用可能性は制限され、スチレン化フェノール及びサリチル酸も現在、同様の考慮事項の下にある。揮発性物質であるベンジルアルコールは泳動効果を生じさせ、多くの用途において非常に重要な特性である硬化したエポキシ樹脂のガラス転移温度を低下させる。
【0005】
欧州特許出願公開第0 126 625号明細書には、OH、炭素数1~8のアルキル基若しくはアルケニル基、又は、フェニル基、-C(CH若しくは-C(CHOH基で置換されたフェノール化合物を、酸触媒の存在下で、2つの独立して発生する-C(CH)CH又は-C(CHOH置換がなされたベンゼン化合物と反応させて得られるフェノール生成物が記載されている。
【0006】
米国特許第9 074 041号明細書には、強化材とエポキシ樹脂組成物とを含む複合成形品を調製するための硬化性エポキシ樹脂複合配合物であって、当該エポキシ樹脂組成物は、平均して1分子中に2以上のグリシジルエーテル基を有する少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種のアルカノールアミン硬化剤及び少なくとも1種のスチレン化フェノールを含む、硬化性エポキシ樹脂複合配合物が記載されている。
【0007】
米国特許第9 464 037号明細書には、スチレン化フェノール類及びヒドロキシルアミン類の付加物、並びにその合成方法が記載されている。樹脂は、酸触媒によるアルキル化反応により調製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 126 625号明細書
【特許文献2】米国特許第9 074 041号明細書
【特許文献3】米国特許第9 464 037号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の欠点を有さないエポキシ樹脂用促進剤を提供することにある。特に、従来技術の促進剤のような同等の又は改善された促進性を有する、エポキシ樹脂を硬化させるための不揮発性で非毒性の高分子促進剤系が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、
エポキシ樹脂と、
フェノール化合物、リンカー基L及び末端基Eを含み、数平均モル質量(Mn)が200~1,500g/molであるフェノール系ポリマーであって、下記式(1)で表される構造を有するフェノール系ポリマーと、を含むエポキシ系により解決される。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、前記リンカー基Lは、下記式(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の意味を有し、
【0013】
【化2】
【0014】
前記末端基Eはそれぞれ、Hの意味を有するか、又は前記式(1)のフェノール化合物に1つの結合のみを有する前記式(2)、(3)、(4)、(5)若しくは(6)の基であるか、又は下記式(2c1)、(2c2)、(3c1)若しくは(3c2)の意味を有する。
【0015】
【化3】
【0016】
ここで、
は、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキル、又はC(CR1819-Z-、好ましくは、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキルであり、
,R,R,R,R、R,R11及びR12は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、
及びRは、H、OH、NO、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のオキシアルキルであり、
10及びR13は、炭素数1~5のアルキル又は炭素数5~6のシクロアルキルであり、
14は、炭素数5~12のシクロアルキルであり、任意選択でメチル基又はエチル基で置換され、
15,R16及びR17は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキル、好ましくは-CHであり、
18及びR19は、それぞれ独立に、H又はCHであり、
Zは、共有結合又は-O-であり、
oは、1又は0であり、
mは、1~7の整数であり、
nは、2~21の整数である。)
【0017】
本発明はさらに、
フェノール化合物、リンカー基L及び末端基Eを含み、数平均モル質量(Mn)が200~1,500g/molであるフェノール系ポリマーであって、下記式(1)で表される構造を有するフェノール系ポリマーの、
エポキシ樹脂の硬化のための促進剤としての、特にアミン官能基を含む硬化剤の存在下での使用、
又は、
エポキシ樹脂の硬化剤としての、特にアミン官能基を含む共硬化剤の存在下での使用を対象とする。
【0018】
【化4】
【0019】
(式中、前記リンカー基Lは、下記式(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の意味を有し、
【0020】
【化5】
【0021】
前記末端基Eはそれぞれ、Hの意味を有するか、又は前記式(1)のフェノール化合物に1つの結合のみを有する前記式(2)、(3)、(4)、(5)若しくは(6)の基であるか、又は下記式(2c1)、(2c2)、(3c1)若しくは(3c2)の意味を有する。
【0022】
【化6】
【0023】
ここで、
は、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキル、又はC(CR1819-Z-、好ましくは、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキルであり、
,R,R,R,R、R,R11及びR12は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、
及びRは、H、OH、NO、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のオキシアルキルであり、
10及びR13は、炭素数1~5のアルキル又は炭素数5~6のシクロアルキルであり、
14は、炭素数5~12のシクロアルキルであり、任意選択でメチル基又はエチル基で置換され、
15,R16及びR17は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキル、好ましくは-CHであり、
18及びR19は、それぞれ独立に、H又はCHであり、
Zは、共有結合又は-O-であり、
oは、1又は0であり、
mは、1~7の整数であり、
nは、2~21の整数である。)
【0024】
本発明はさらに、
エポキシ樹脂と、
フェノール化合物、リンカー基L及び末端基Eを含み、数平均モル質量(Mn)が200~1,500g/molであるフェノール系ポリマーであって、下記式(1)で表される構造を有するフェノール系ポリマーと、
アミン、無水物、フェノール及び/又はチオール官能基、特にアミン官能基を含む硬化剤と、を含む成分キット(Kit-of-parts)を対象とする。
【0025】
【化7】
【0026】
(式中、前記リンカー基Lは、下記式(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の意味を有し、
【0027】
【化8】
【0028】
前記末端基Eはそれぞれ、Hの意味を有するか、又は前記式(1)のフェノール化合物に1つの結合のみを有する前記式(2)、(3)、(4)、(5)若しくは(6)の基であるか、又は下記式(2c1)、(2c2)、(3c1)若しくは(3c2)の意味を有する。
【0029】
【化9】
【0030】
ここで、
は、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキル、又はC(CR1819-Z-、好ましくは、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキルであり、
,R,R,R,R、R,R11及びR12は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、
及びRは、H、OH、NO、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のオキシアルキルであり、
10及びR13は、炭素数1~5のアルキル又は炭素数5~6のシクロアルキルであり、
14は、炭素数5~12のシクロアルキルであり、任意選択でメチル基又はエチル基で置換され、
15,R16及びR17は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキル、好ましくは-CHであり、
18及びR19は、それぞれ独立に、H又はCHであり、
Zは、共有結合又は-O-であり、
oは、1又は0であり、
mは、1~7の整数であり、
nは、2~21の整数である。)
【0031】
本発明によるフェノール系ポリマーは、例えば接着剤系において又はコーティングにおいて、エポキシ樹脂の硬化を促進する。硬化したエポキシ樹脂は良好な機械特性を有し、また、良好な耐薬品性を有する。
【0032】
さらに、本発明によるフェノール系ポリマーを本発明によるエポキシ系若しくは成分キットに又は促進剤として使用することにより、エポキシ樹脂に制御された促進特性を付与し得ることがわかった。同時に、本発明によるフェノール系ポリマーは、エポキシ系の機械的強度の低下を回避し得る。その上、本発明によるフェノール系ポリマーを含むエポキシ樹脂又はエポキシ系は、高い機械抵抗を有し得ることがわかった。さらに、本発明によるフェノール系ポリマーを含むエポキシ樹脂又はエポキシ系は、高い耐薬品性を有し得る。
【0033】
本発明によるフェノール系ポリマーを含むエポキシ樹脂又はエポキシ系、特に硬化したエポキシ系はまた、高いガラス転移温度(Tg)を有し得る。本発明によるフェノール系ポリマーを含むエポキシ樹脂又はエポキシ系、特に硬化したエポキシ系はまた、高い熱安定性を有し得る。最後に、本発明によるフェノール系ポリマーを含むエポキシ樹脂又はエポキシ系、特に硬化したエポキシ系は、金属表面及び鉱物表面に対する改善された接着性並びに/又はより高い耐腐食性を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、レオロジー分析の時間依存の結果を示す図であり、粘度が経時的に上昇していく様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明によるフェノール系ポリマーは、ターポリマーとも呼ばれる。
【0036】
以下では、まず、フェノール系ポリマーの成分とその特性について詳述する。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によれば、Rは、H、炭素数1~10のアルキル、特に炭素数1~8のアルキル、より詳細には炭素数1~5のアルキル、又は炭素数1~10のオキシアルキル、特に炭素数1~8のオキシアルキル、より詳細には炭素数1~5のオキシアルキルである。
【0038】
好ましい実施形態によれば、フェノール系ポリマーは、下記式(1)で表される構造を有する。
【0039】
【化10】
【0040】
(式中、リンカー基Lは、下記式(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の意味を有し、
【0041】
【化11】
【0042】
末端基Eはそれぞれ、Hの意味を有するか、又は式(1)のフェノール化合物に1つの結合のみを有する式(2)、(3)、(4)、(5)若しくは(6)の基であり、
【0043】
ここで、
は、H、炭素数1~15のアルキル又は炭素数1~15のオキシアルキルであり、
,R,R,R,R、R,R11及びR12は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、
及びRは、H、OH、NO、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のオキシアルキルであり、
10及びR13は、炭素数1~5のアルキル又は炭素数5~6のシクロアルキルであり、
14は、炭素数5~12のシクロアルキルであり、任意選択でメチル基又はエチル基で置換され、
nは、2~21の整数である。)
【0044】
好ましい実施形態によれば、フェノール系ポリマーは、下記式(1)で表される構造を有する。
【0045】
【化12】
【0046】
(式中、リンカー基Lは、下記式(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の意味を有し、
【0047】
【化13】
【0048】
末端基Eはそれぞれ、Hの意味を有するか、又は式(1)のフェノール化合物に1つの結合のみを有する式(2)、(3)、(4)、(5)若しくは(6)の基であるか、又は下記式(2c1)若しくは(2c2)の意味を有する。
【0049】
【化14】
【0050】
ここで、
は、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキル、又はC(CR1819-Z-、好ましくは、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキルであり、
,R,R,R,R、R,R11及びR12は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、
及びRは、H、OH、NO、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のオキシアルキルであり、
10及びR13は、炭素数1~5のアルキル又は炭素数5~6のシクロアルキルであり、
14は、炭素数5~12のシクロアルキルであり、任意選択でメチル基又はエチル基で置換され、
18及びR19は、それぞれ独立に、H又はCHであり、
Zは、共有結合又は-O-であり、
oは、1又は0であり、
nは、2~21の整数である。)
【0051】
好ましい実施形態によれば、フェノール系ポリマーは、フェノール化合物、リンカー基L及び末端基Eを含み、数平均モル質量(Mn)は200~1,500g/molであり、下記式(1)で表される構造を有する。
【0052】
【化15】
【0053】
(式中、リンカー基Lは、下記式(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の意味を有し、
【0054】
【化16】
【0055】
末端基Eはそれぞれ、式(1)のフェノール化合物に1つの結合のみを有する式(2)、(3)、(4)、(5)若しくは(6)の基であるか、又は下記式(2c1)、(2c2)、(3c1)若しくは(3c2)の意味を有する。
【0056】
【化17】
【0057】
ここで、
は、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキル、又はC(CR1819-Z-、好ましくは、H、炭素数1~15のアルキル、又は炭素数1~15のオキシアルキルであり、
,R,R,R,R、R,R11及びR12は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、
及びRは、H、OH、NO、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のオキシアルキルであり、
10及びR13は、炭素数1~5のアルキル又は炭素数5~6のシクロアルキルであり、
14は、炭素数5~12のシクロアルキルであり、任意選択でメチル基又はエチル基で置換され、
15,R16及びR17は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキル、好ましくは-CHであり、
18及びR19は、それぞれ独立に、H又はCHであり、
Zは、共有結合又は-O-であり、
oは、1又は0であり、
mは、1~7の整数であり、
nは、2~21の整数である。)
【0058】
好ましい実施形態によれば、リンカー基Lは、下記式(2)の意味を有する。
【0059】
【化18】
【0060】
(式中、R,R及びRは、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり;好ましくは、それぞれ独立に、RはHであり、RはH又はCHであり、RはH又はCHであり;さらに好ましくは、RはH、R及びRはHであり、又は、RはH、R及びRはCHである。)
【0061】
好ましい実施形態によれば、リンカー基Lは、下記式(2)の意味を有する。
【0062】
【化19】
【0063】
(式中、R,R及びRは、本書において式(2)に定義された通りであり、特にHである。)リンカー基Lが上述の意味を有する、特に、R、R及びRがHであるフェノール系ポリマーは、良好な特性を有することがわかった。特に、より軟化点が低いフェノール系ポリマーを実現できる。軟化点が低くなると、加工性及び/又はエポキシド樹脂等の他の化合物との混和性が改善され得る。
【0064】
フェノール系ポリマーは、任意選択でR置換されたフェノール化合物であってRは本書に定義される通りであるフェノール化合物を、式(2a)~(5a)のモノマーの1つと又は少なくとも2つの二重結合を有する置換若しくは非置換の炭素数5~12のシクロオレフィン化合物と、一連のフリーデルクラフツアルキル化反応において重合させることによって調製することができる。
式(2a)~(5a)のモノマーの代わりに、式(2b)のモノマーを採用してもよい。この反応は、公知の合成方法であるフリーデルクラフツアルキル化反応によって行われる。重合反応においてリンカー基Lとして用いられる式(2a)~(5a)のモノマー又は炭素数5~12のシクロオレフィン化合物の構造は、下記式(2a)、(3a)、(4a)、(5a)、
【0065】
【化20】
【0066】
又は、任意選択でメチル基又はエチル基で置換され、好ましくは2つの非共役二重結合を含む炭素数5~12のシクロオレフィン化合物から選択される。
【0067】
(式中、R~R13は、式(2)、(3)、(4)及び(5)の残基について上述した説明の通りの意味を有し、
Xは、水酸基、又は、塩素、臭素及びヨウ素から選択されるハロゲンである。)
【0068】
式(2b)の構造は以下の通りである。
【0069】
【化21】
【0070】
(式中、R、R、及びRは、式(2)の残基について上述した説明の通りであり、R15及びR16は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、Xは、水酸基、又は、塩素、臭素及びヨウ素から選択されるハロゲンである。好ましくは、残基R、R、R15及びR16は、H及び/又は1~2個の炭素原子を有するアルキルの意味を有する。特に好ましい実施形態において、残基R及びRはHの意味を有し、残基R15及びR16は-CHの意味を有する。最も好ましくは、残基R15及びR16は-CHの意味を有する。)
【0071】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(1)のフェノール系ポリマーの、したがって式(2a)、(3a)、(4a)及び(5a)によるモノマーの残基R、R、R、R、R、R、R11及びR12は、H及び/又は1から2個の炭素原子を有するアルキルの意味を有する。特に好ましい実施形態において、残基R、R、R、R、R、R、R11及びR12は、Hの意味を有する。
【0072】
上記の式(2a)、(2b)、(3a)、(4a)、(5a)又は任意選択でメチル若しくはエチル置換された炭素数5~12のシクロオレフィン化合物は、フェノール系ポリマーの重合のための出発化合物を表し、一方、式(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の基は、重合の結果フェノール系ポリマーに生じる対応するユニットLを表す。
【0073】
出発化合物である式(2a)、(2b)、(3a)、(4a)、(5a)及び任意選択でメチル又はエチル置換された炭素数5~12のシクロオレフィン化合物は、精製された物質として使用することができるが、あるいは、特定の出発化合物が化合物の混合物の一部である形でも使用することができる。特に、これは、ジビニルベンゼンがフェノール系ポリマーの重合の出発化合物として使用される場合に当てはまる。このような化合物混合物を使用する場合、出発化合物、特にリンカー基Lの出発モノマーは、当該混合物の化合物の重量を基準として、少なくとも50重量%~100重量%、好ましくは50重量%~80重量%の量で当該混合物中に存在するべきである。
【0074】
式(2a)~(5a)の化合物及び任意選択でメチル又はエチル置換された炭素数5~12のシクロオレフィン化合物R14を用いて重合させて式(1)のフェノール系ポリマーを生成するためのフェノール化合物は、フェノール、ベンジルフェノール、(α-メチルベンジル)フェノール、(α,α-ジメチルベンジル)フェノール、ベンジルオキシフェノール、(α-メチルベンジルオキシ)フェノール、(α,α-ジメチルベンジルオキシ)フェノール、フェニルフェノール、フェノキシフェノール、炭素数1~15のアルキルフェノール、特に炭素数1~10のアルキルフェノール、より詳細には炭素数1~8のアルキルフェノール、さらにより詳細には、炭素数1~5のアルキルフェノール、及び炭素数1~15のオキシアルキルフェノール、特に炭素数1~10のオキシアルキルフェノール、より詳細には炭素数1~8のオキシアルキルフェノール、さらにより詳細には、炭素数1~5のオキシアルキルフェノール、例えば、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、エチルフェノール及びイソプロピルフェノールから選択できる。
【0075】
重合のための触媒は、ルイス酸又はブレンステッド酸とすることができる。好ましくは、触媒は、AlCl、BF、ZnCl、HSO、TiCl又はこれらの混合物から選択される。触媒は、0.1~1モル%の量で使用することができる。フェノール化合物が、25℃~180℃、好ましくは35℃~100℃の温度での加熱により溶解した後、又は適当な溶媒(例えば、トルエン)に溶解した後に触媒を添加する。その後、式(2a)~(5a)から選択されるモノマー化合物又は任意選択でメチル若しくはエチル置換された炭素数5~12のシクロオレフィン化合物をフェノール化合物に滴下する。
あるいは、触媒を、フェノール化合物と、式(2a)~(5a)のモノマー化合物又は任意選択でメチル若しくはエチル置換された炭素数5~12のシクロオレフィン化合物との混合物に添加する。触媒を添加する際、反応混合物を、例えば-10℃~10℃に冷却してもよい。式(2a)、(3a)、(4a)若しくは(5a)の化合物又は任意選択でメチル若しくはエチル置換された炭素数5~12のシクロオレフィン化合物の添加時間は、10分~2時間の間で選択できる。反応は、1.5~2.5時間継続させることができる。重合反応は、40℃~200℃、好ましくは60℃~150℃、より好ましくは60℃~100℃の温度で行うことができる。好ましくは、重合は周囲圧力下で行われる。重合は、好適な添加剤、好ましくは石灰の添加により停止させることができる。得られたポリマーは、濾過及び/又は水蒸気蒸留により精製することができる。
【0076】
フェノール系ポリマーのモル質量(Mn)は、200~1,500g/molの範囲、好ましくは350又は400~800g/molの範囲である。
【0077】
フェノール系ポリマーの質量平均分子量(Mw)は、好ましくは500~12,000g/mol、より好ましくは600~10,000g/mol、さらにより好ましくは700~9,000g/molである。
【0078】
フェノール系ポリマーのz-平均分子量(Mz)は、好ましくは800~35,000g/mol、より好ましくは900~25,000g/mol、さらにより好ましくは1,000~20,000g/molである。
【0079】
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)及びz-平均分子量(Mz)は、特にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定してもよい。GPCでは、カラム材料として、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体を使用してもよい。3μmのプレカラム1つと、3μmで1000Åの主カラム3つとを使用してもよい。PSS-Polymers社のSECcurity2-Systemを使用してもよい。物質は、RI検出器を用いて検知してもよい。溶離剤として、安定剤不含でULC/MSグレードのTHFを使用することが好ましい。測定は、40℃の等温で実施することが好ましい。検量線としては、PSS-Polymers社のReadyCal-Kit Poly(styrene) low(Mp 266-66,000 Da)を外部標準として使用してもよい。
【0080】
上述した範囲の低分子量のフェノール系ポリマーは、特性、特にエポキシ樹脂との混和性と相溶性が改善されたことがわかった。この結果、硬化が促進され、場合によっては、機械特性及び/又は耐薬品性が改善された。
【0081】
フェノール系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、有利には-10℃~90℃、好ましくは-10℃~70℃、より好ましくは-5℃~50℃、最も好ましくは0℃~40℃である。上述した範囲のガラス転移温度を有するフェノール系ポリマーは、良好な加工性及び/又はエポキシ樹脂等の他の化合物における良好な溶解性を示すことがわかった。
【0082】
ガラス転移温度は、好ましくは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定される。Mettler Toledo社のイントラクーラーを備えたDSC 2/400を採用してもよい。測定には、ピンホール付きアルミニウムるつぼ、特にME-26763 ALるつぼを採用してもよい。ガラス転移温度の評価には、-40℃~150℃の測定窓内で1分間に10Kの加熱/冷却速度の加熱-冷却-加熱-冷却シーケンスを採用してもよい。Tgの評価は、DIN53765に、特にDIN53765:1994-03に準拠して行う。
【0083】
フェノール系ポリマーは、フェノール化合物の50重量%~70重量%を構成してもよい。フェノール系ポリマーは、フェノール系ポリマーの重量(質量)を基準として、リンカー基L、特に、ジビニルベンゼン化合物、ジシクロペンタジエン化合物又は式(4)、(5)若しくは(6)の化合物から選択される二官能性モノマー(リンカーL)を20重量%~50重量%含んでもよい。ジビニルベンゼン化合物は、好ましくは式(2)の化合物、より好ましくはR、R及びRが本書で定義される通りである式(2)の化合物、最も好ましくは、R、R及びRがHである式(2)の化合物である。ジシクロペンタジエン化合物は、好ましくは式(3)の化合物である。さらに、フェノール系ポリマーは、フェノール系ポリマーの重量(質量)を基準として、単官能性モノマー(末端基E)を0重量%~50重量%、特に5重量%~40重量%、より詳細には10重量%~35重量%含んでもよい。上述してきた単官能性モノマーという語は、フェノール系ポリマーの重合のための、式(2a),(4a)及び(5a)の化合物並びに任意選択でメチル若しくはエチル置換された炭素数5~12のシクロオレフィン化合物の出発混合物中に存在することができるが、フェノール系ポリマーを得るための重合反応で反応することができる二重結合1つ又はハロゲン1つのみを有する化合物を意味する。このような変性された出発化合物又は単官能性の出発化合物は、重合反応において末端封止剤として作用し、式(1)の末端基Eを形成することができる。末端基Eのさらなる例については後述する。一実施形態によれば、末端基EはHではない。他の実施形態によれば、末端基Eは、Hと、本書に規定されるHではない少なくとも1つのさらなる末端基Eとの混合物である。
【0084】
好ましい実施形態によれば、末端基Eは、式(2c1)、(2c2)、(2c3)、(2c4)、(2c5)、(2c6)、(4c1)、(4c2)、(5c1)、(5c2)、(3c1)又は(3c2)の意味を有してもよい。
【0085】
【化22】
【0086】
(式中、R~R13は、式(2)、(3)、(4)及び(5)の残基について上述した説明の通りの意味を有し、
mは、1~7の整数であり、
15,R16及びR17は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキル、好ましくは-CHである。)
【0087】
Hとは異なる末端基E、特に、上述の式の意味を有する末端基Eを使用する場合、フェノール系ポリマーの促進特性を調整することができる。上述した末端基Eがフェノール系ポリマーに組み込まれる場合、促進を増大できることがわかった。さらに、フェノール系ポリマーと他の化合物、特にエポキシ樹脂との混和性を向上させることができた。
【0088】
末端基Eはまた、任意選択でメチル基又はエチル基で置換された炭素数5~12のシクロアルキル基の意味を有してもよい。
【0089】
したがって、末端基Eは、有利には、下記式(2d1)、(2d2)、(2d3)、(2d4)、(2d5)、(2d6)、(2d7)、(2d8)、(4d1)、(4d2)、(5d1)、(5d2)、(3d1)又は(3d2)の意味を有する単官能性モノマーから得てもよい。
【0090】
【化23】
【0091】
(式中、R~R13は、式(2)、(3)、(4)及び(5)の残基について上述した説明の通りの意味を有し、
15、R16及びR17は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、
mは、1~7の整数であり、
Xは、水酸基、又は、塩素、臭素及びヨウ素から選択されるハロゲンである。)
【0092】
末端基Eはまた、任意選択でメチル基又はエチル基で置換された、1つの二重結合のみを有する炭素数5~12のシクロオレフィン化合物の意味を有するモノマーからも得てもよい。
【0093】
一実施形態によれば、末端基Eは、下記式(2c1)、(2c2)、(2c3)、(2c4)、(2c5)又は(2c6)の意味を有する。
【0094】
【化24】
【0095】
(式中、R、R、R、R15及びR16は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、好ましくは、式中、それぞれ独立に、RはHであり、RはH又はCHであり、RはH又はCHであり、R15は炭素数1~5のアルキルであり、R16は炭素数1~5のアルキルである。)好ましくは、末端基Eは、上述の式(2c1)、(2c3)又は(2c5)の意味を有し、式中、R、R、R、R15及びR16は、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、より好ましくは、式中、それぞれ独立に、RはHであり、RはH又はCHであり、RはH又はCHであり、R15は炭素数1~5のアルキルであり、R16は炭素数1~5のアルキルである。)
【0096】
好ましい実施形態によれば、末端基Eは、下記式(2c5)又は(2c6)の意味を有する。
【0097】
【化25】
【0098】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、好ましくはHである。)
【0099】
好ましい実施形態によれば、リンカー基Lは、下記式(2)の意味を有し、
【0100】
【化26】
【0101】
末端基Eは、下記式(2c5)又は(2c6)の意味を有する。
【0102】
【化27】
【0103】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、H又は炭素数1~5のアルキルであり、好ましくはHである。)
【0104】
フェノール系ポリマーは高いOH含有量を有していてもよく、好ましくは、フェノール系ポリマーの重量を基準として、5~13重量%、特に好ましくは6~9重量%であってもよい。フェノール系ポリマーのASTM 3461による軟化点は、170℃まで、より好ましくは40~120℃、最も好ましくは50~100℃である。フェノール系ポリマーの水酸基含有量は、Hではない末端基Eを組み込むことによって影響を受け得る。水酸基含有量が高いと、フェノール系ポリマーの促進又は硬化作用の向上が可能となる。フェノール系ポリマーの軟化点もまた、Hではない末端基Eを組み込むことによって影響を受けることがある。軟化点が低くなると、水溶液の粘度が低下するため、エポキシ系のフェノール系ポリマーを顧客に提供するために使用されるシンナー又は希釈剤の量を減らすことが可能になる。溶媒は特に、硬化物から放出されてもよく又は既に完全に放出されていてもよい。シンナーは特に、硬化物中に残存してもよい。低沸点のシンナーは特に、低沸点シンナーの総質量を基準として、例えば、低沸点シンナーの30重量%まで、又は20重量%まで、又は10重量%まで、硬化物から部分的に放出されてもよい。
【0105】
また、軟化点をフェノール系ポリマーの製造に用いられる反応温度によって調整することも可能であるが、温度が高くなるとガードナー色数も高くなるため、好ましくない。一実施形態によれば、フェノール系ポリマーの、DIN EN ISO 4630:2016-05に準拠して、測定にはトルエンの代わりにアセトンを用いて判定されたガードナー色数は、0~5、好ましくは0~2、より好ましくは0~1である。ガードナー色数が低いフェノール系ポリマーを含有するエポキシ系は、ほとんど無色又は無色であるコーティングを調製することを可能にする。
【0106】
本発明によるエポキシ系のさらなる特性を以下に記載する。
【0107】
本発明のエポキシ系は、1液型のエポキシ系であっても2液型のエポキシ系であってもよい。1液型のエポキシ系では、エポキシ樹脂、硬化剤、促進剤及び他の成分は特に、同じ混合物、1液の中に含まれる。1液型のエポキシ系では、硬化剤は周囲温度では潜在反応性であり、高温度で活性になる。1液型のエポキシ系では、硬化剤は好ましくは、無水物、チオール及び/又はフェノール官能基を含む。潜在性硬化剤としては、例えば、ジシンアミド、BFモノエチルアミン錯体等のBF錯体、芳香族アミン類、及び2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。しかしながら、カルボン酸及び/又はイソシアネート官能基を含む硬化剤も、1液型のエポキシ系に使用することができる。1液型のエポキシ系の促進剤又は任意選択の追加の促進剤は特に、硬化温度で触媒活性を示すアミン類とすることができる。2液型のエポキシ系では、エポキシ樹脂と硬化剤は別々である。エポキシ樹脂と硬化剤とを組み合わせて、エポキシ樹脂と硬化剤との架橋を行う。2液型のエポキシ系の硬化剤は、好ましくはアミン類又はそれらの誘導体である。2液型のエポキシ系の促進剤は特に、硬化剤が含まれる液の方に組み込まれてもよい。2液型のエポキシ系の促進剤又は任意選択の追加の促進剤は特に、アミン、フェノール、アルコール、チオール又はカルボン酸の官能基を含む化合物であってもよい。1液型のエポキシ系でも2液型のエポキシ系でも、エポキシ樹脂は、硬化剤と架橋して存在してもよい。
【0108】
エポキシ系は特に、アミン、無水物、フェノール及び/又はチオール官能基、特にアミン官能基を含む硬化剤も含んでもよい。本発明によるフェノール系ポリマーが促進剤として使用される場合、エポキシ系は好ましくは硬化剤を含有する。本発明によるフェノール系ポリマーが硬化剤として使用される場合、エポキシ系は、アミン、無水物、フェノール及び/又はチオール官能基、特にアミン官能基を含む硬化剤を共硬化剤として含有してもよい。エポキシ系において、エポキシ樹脂は、硬化剤と架橋して存在してもよい。
【0109】
アミン官能基を含む硬化剤又は共硬化剤は、例えば、脂肪族アミン類、ジシアンジアミド、置換グアニジン類、フェノール、アミノ、ベンゾオキサジン、無水物、アミドアミン類、ポリアミド類、ポリアミン類、カルボジイミド類、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンアミンテトラミン(TETA)、1-(o-トリル)-ビグアニド、アミン末端ポリオール類、メチレンジアニリン(MDA)、トルエンジアミン(TDA)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DADS)等の芳香族アミン類、及びこれらの混合物から選択してもよいが、これらに限定されない。
【0110】
無水物官能基を含む硬化剤又は共硬化剤は、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ナジックメチル無水物(メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物とも呼ばれる)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び、これらの混合物などが挙げられる。
【0111】
フェノール官能基を含む硬化剤又は共硬化剤は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、テトラブロモビスフェノールA、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ヒドロキノンノボラック、レゾルシノールノボラック、ナフトールノボラック等のノボラック類、及び、これらの混合物などが挙げられる。
【0112】
チオール官能基を含む硬化剤又は共硬化剤は、例えば、メタンジチオール、プロパンジチオール、シクロヘキサンジチオール、2-メルカプトエチル-2,3-ジメルカプトコハク酸塩、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(2-メルカプト酢酸)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプト酢酸)、1,2-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(チオグリコール酸塩)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(チオグリコール酸塩)、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(β-チオプロピオネート)、プロポキシル化アルカンのトリグリシジルエーテルのトリス-メルカプタン誘導体、及び、ジペンタエリスリトールポリ(β-チオプロピオネート)等の脂肪族チオール類;脂肪族チオール類のハロゲン置換誘導体;ジ-、トリス-又はテトラ-メルカプトベンゼン、ビス-、トリス-又はテトラ-(メルカプトアルキル)ベンゼン、ジメルカプトビフェニル、トルエンジチオール及びナフタレンジチオール等の芳香族チオール類;芳香族チオール類のハロゲン置換誘導体;アミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、アルコキシ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、アリールオキシ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、及び、1,3,5-トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等の複素環含有チオール類;複素環含有チオール類のハロゲン置換誘導体;ビス-、トリス-又はテトラ(メルカプトアルキルチオ)ベンゼン、ビス-、トリス-又はテトラ(メルカプトアルキルチオ)アルカン、ビス(メルカプトアルキル)ジスルフィド、ヒドロキシアルキルスルフィドビス(メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシアルキルスルフィドビス(メルカプトアセテート)、メルカプトエチルエーテルビス(メルカプトプロピオネート)、1,4-ジチアン-2,5-ジオールビス(メルカプトアセテート)、チオジグリコール酸ビス(メルカプトアルキルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトアルキルエステル)、4,4-チオ酪酸ビス(2-メルカプトアルキルエステル)、3,4-チオフェンジチオール、ビスマスチオール、及び、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール等の少なくとも2個のメルカプト基を有し、メルカプト基に加えて硫黄原子を含有するチオール化合物、並びに、これらの混合物などが挙げられる。
【0113】
エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック、フェノール樹脂、エポキシ化天然油及び多価アルコールをベースとする少なくとも1つのエポキシ樹脂が含まれてもよい。これらの化合物はまた、例えばエピクロロヒドリンと反応させたものであってもよい。エポキシ樹脂の他の例は、米国特許第9 074 041号明細書の第4コラム、24~46行目に記載されている。
【0114】
本書に記載のエポキシ樹脂は、例えば、酸化鉄、二酸化チタン、有機顔料、炭酸カルシウム、タルク、スルホン酸バリウム、シリカ、マイカ、ガラスパール、砂、三酸化アルミナ、酸化マグネシウム、又は、リン酸亜鉛等の顔料及び/又は充填剤を用いて着色及び充填された系であり得る。
【0115】
本書に記載のエポキシ樹脂は、反応性又は非反応性の希釈剤を含有することができる。希釈剤は、シンナーと呼ばれてもよい。本書に記載のエポキシ系及び/又はエポキシ樹脂は、特に非反応性の溶媒を含有してもよい。すでに上述して説明したように、溶媒は特に、硬化物から完全に放出されてもよく又は既に完全に放出されていてもよい。シンナーは特に、硬化物中に残存してもよい。低沸点のシンナーは特に、低沸点シンナーの総質量を基準として、例えば、低沸点シンナーの30重量%まで、又は20重量%まで、又は10重量%まで、硬化物から一部放出されてもよい。反応性希釈剤は、例えば、2~20個の炭素単位を有する直鎖又は環状骨格、又はエーテル骨格、又はエステル骨格を有する1~5個のグリシジル官能基を有する低分子量化合物が挙げられる。
非反応性溶媒及び/又は希釈剤は、例えば、アセトン、ケトン、エステル、エーテル、芳香族溶媒又はこれらの混合物が挙げられる。
【0116】
したがって、エポキシ系もまた、上述の顔料及び/又は充填剤及び/又は反応性希釈剤及び/又は非反応性希釈剤を含有してもよい。
【0117】
本書に記載のエポキシ樹脂及びエポキシ系は、コーティング、例えば、床コーティング、建築コーティング、金属コーティングに、接着剤に、シーラントに、特に、金属建築、木造及びコンクリート建築における構造用接着剤に、ラミネート、特に、電子回路及び機器のラミネートに、複合材及び鋳造用途に、化学ダボに、電気的カプセル化に使用してもよい。同じことが、本書に記載のエポキシ系にも当てはまる。
【0118】
本発明によるエポキシ系の一部として本書に記載されるフェノール系ポリマーはまた、エポキシ樹脂の硬化のための促進剤として使用されてもよい。本発明のフェノール系ポリマーがエポキシ樹脂の硬化のための促進剤として使用される場合、アミン、無水物、フェノール及び/又はチオール官能基を含む硬化剤が存在するのが好ましい。より好ましくは、アミン官能基を含む硬化剤が存在する。
【0119】
本発明によるエポキシ系の一部として本書に記載されるフェノール系ポリマーはまた、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されてもよい。本発明のフェノール系ポリマーがエポキシ樹脂の硬化のための硬化剤として使用される場合、アミン、無水物、フェノール及び/又はチオール官能基、特にアミン官能基を含む共硬化剤も存在してもよい。
【0120】
エポキシ系の文脈で上述したフェノール系ポリマー、エポキシ樹脂、硬化剤、促進剤、任意選択での追加の促進剤、及び任意選択での追加の化合物に関する詳細はすべて、フェノール系ポリマーの使用においても当てはまる。
【0121】
特に、本発明によるエポキシ系の一部として本書に記載されるフェノール系ポリマーは、室温以下で促進剤として機能してもよい。より高い温度では、本発明のフェノール系ポリマーはまた、硬化剤として機能してもよい。フェノール系ポリマーは、50~200℃、好ましくは100~170℃、より好ましくは120~160℃の温度で、エポキシ樹脂の硬化剤として特に良好な結果をもたらすことがわかった。
【0122】
本発明によるエポキシ系の一部として本書に記載されるフェノール系ポリマーは、好ましくは室温以下、特に-10℃~40℃、さらに詳細には15℃~25℃の温度で、エポキシ樹脂の促進剤として使用される。
【0123】
フェノール系ポリマーがエポキシ樹脂の促進剤として又は硬化剤として使用される場合、フェノール系ポリマーは、好ましくはエポキシ系、好ましくは本発明によるエポキシ系の一部である。
【0124】
硬化剤としては、フェノール系ポリマーを、所望の架橋度に応じて様々な量で使用してもよい。硬化剤としては、フェノール系ポリマーは好ましくは、特に鋳造、ラミネート及び接着の用途において、エポキシ系の全質量を基準として、OH:エポキシ基の比率を0.5:1~10:1、好ましくは1:1~10:1として使用される。促進剤としては、フェノール系ポリマーは、エポキシ系の総質量を基準として、好ましくは0.5~20重量%、より好ましくは5~15重量%、さらにより好ましくは8~12重量%又は0.5~30重量%、より好ましくは0.5~25重量%、さらにより好ましくは0.5~20重量%、0.5~15重量%、最も好ましくは0.5~12重量%の量で使用される。促進剤としては、フェノール系ポリマーは、エポキシ樹脂の総質量を基準として、より好ましくは0.5~20重量%、より好ましくは5~15重量%、さらにより好ましくは8~12重量%、又は0.5~30重量%、より好ましくは0.5~25重量%、さらにより好ましくは0.5~20重量%、0.5~15重量%、最も好ましくは0.5~12重量%の量で使用される。好ましくは、フェノール系ポリマーは、促進剤として使用される。
【0125】
さらに、本発明はまた、エポキシ樹脂と;本発明によるエポキシ系の一部として本書に記載のフェノール系ポリマーと;アミン、無水物、フェノール及び/又はチオール官能基、特にアミン官能基を含む硬化剤とを含む成分キットを提供する。本発明による成分キットは、好ましくは2液型のエポキシ系である。
【0126】
エポキシ系の文脈で上述したフェノール系ポリマー、エポキシ樹脂、硬化剤、促進剤、任意選択での追加の促進剤、及び任意選択での追加の化合物に関する詳細はすべて、成分キットにおいても当てはまる。
【0127】
成分キットにおいて、フェノール系ポリマー及び硬化剤は、任意選択で溶媒及び/又はシンナーを含有する混合物として存在することが好ましい。
【0128】
以下の実施例により、本発明をさらに説明する。
【実施例
【0129】
略号
SP=軟化点
DVB=ジビニルベンゼン
EVB=エチルビニルベンゼン
DIPB=ジイソプロペニルベンゼン
DVBP=ジビニルベンゼン-フェノール
DCPD=ジシクロペンタジエン
【0130】
【表1】
【0131】
実施例1
フェノール(282g)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のトルエン(138g)に70℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(2.01mL)を添加した。この反応混合物に、ジビニルベンゼン(195g、純度62%)を滴下ロートから30分間かけて滴下した。滴下後、この溶液を反応温度90℃で2時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0132】
【表2】
【0133】
実施例1a
フェノール(282g)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に70℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(2.01mL)を添加した。この反応混合物に、ジビニルベンゼン(195g、純度62%)を滴下ロートから30分間かけて滴下した。滴下後、この溶液を反応温度120℃で2時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、黄色がかった固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
実施例1b
フェノール(282g)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に70℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(2.01mL)を添加した。この反応混合物に、ジビニルベンゼン(195g、純度62%)を滴下ロートから30分間かけて滴下した。滴下後、この溶液を反応温度140℃で2時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、黄色がかった固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
実施例2
フェノール(254g)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のトルエン(138g)に70℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(2.01mL)を添加した。この反応混合物に、ジビニルベンゼン(195g、純度62%)を滴下ロートから30分間かけて滴下した。滴下後、この溶液を反応温度90℃で2時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0138】
【表5】
【0139】
【表6】
【0140】
実施例3
フェノール(94g)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のトルエン(61g)に40℃で溶解させた後、BF3*(OEt2)(0.88mL)を添加した。この反応混合物に、ジシクロペンタジエン(44g、純度80%、ビニル芳香族(インデン、メチルスチレン異性体)5%、Braskem社)を滴下ロートから30分間かけて滴下した。滴下後、この溶液を反応温度120℃で3時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、250℃で水蒸気蒸留して精製することにより、赤色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0141】
【表7】
【0142】
実施例4
フェノール(282g)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のトルエン(92g)に40℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(2.70mL)を添加した。この反応混合物に、ジシクロペンタジエン(132g、純度80%、ビニル芳香族(インデン、メチルスチレン異性体)5%、Braskem社)を滴下ロートから30分間かけて滴下した。滴下後、この溶液を反応温度120℃で3時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、250℃で水蒸気蒸留して精製することにより、赤色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0143】
【表8】
【0144】
実施例5
4-Tert-オクチルフェノール(255g)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(255g)に70℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(0.921mL)を添加した。この反応混合物に、ジビニルベンゼン(195g、純度62%、ジビニルベンゼン:エチルビニルベンゼン=62:38)を滴下ロートから14分間かけて滴下した。滴下後、この溶液を反応温度90℃で2時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0145】
【表9】
【0146】
実施例6
フェノール(254g)及びジビニルベンゼン(195g、純度62%、ジビニルベンゼン:エチルビニルベンゼン=62:38)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に30℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(0.624mL)を少量ずつ添加した。この反応混合物を氷浴で冷却した。添加後、溶液を反応温度70℃で1時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0147】
【表10】
【0148】
実施例7
フェノール(203g)及びジビニルベンゼン(195g、純度62%、ジビニルベンゼン:エチルビニルベンゼン=62:38)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に30℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(0.624mL)を少量ずつ添加した。この反応混合物を氷浴で冷却した。添加後、溶液を反応温度70℃で1時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0149】
【表11】
【0150】
実施例8
フェノール(177g)及びジビニルベンゼン(195g、純度62%、ジビニルベンゼン:エチルビニルベンゼン=62:38)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に30℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(0.624mL)を少量ずつ添加した。この反応混合物を氷浴で冷却した。添加後、溶液を反応温度70℃で1時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0151】
【表12】
【0152】
実施例9
フェノール(141g)及びジビニルベンゼン(195g、純度62%、ジビニルベンゼン:エチルビニルベンゼン=62:38)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に30℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(0.624mL)を少量ずつ添加した。この反応混合物を氷浴で冷却した。添加後、溶液を反応温度70℃で1時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0153】
【表13】
【0154】
実施例10
フェノール(141g)及びジビニルベンゼン(215g、純度62%、ジビニルベンゼン:エチルビニルベンゼン=62:38)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に30℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(0.624mL)を少量ずつ添加した。この反応混合物を氷浴で冷却した。添加後、溶液を反応温度70℃で1時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0155】
【表14】
【0156】
【表15】
【0157】
実施例11
フェノール(254g)及びジビニルベンゼン(195g、純度80%、ジビニルベンゼン:エチルビニルベンゼン=80:20)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に30℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(0.234mL)を少量ずつ添加した。この反応混合物を氷浴で冷却した。添加後、溶液を反応温度70℃で1時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0158】
【表16】
【0159】
実施例12
フェノール(207g)及びジビニルベンゼン(195g、純度80%、ジビニルベンゼン:エチルビニルベンゼン=80:20)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に30℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(0.234mL)を少量ずつ添加した。この反応混合物を氷浴で冷却した。添加後、溶液を反応温度70℃で1時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0160】
【表17】
【0161】
【表18】
【0162】
実施例13
フェノール(141g)及びジイソプロペニルベンゼン(158g)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に30℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(0.234mL)を少量ずつ添加した。この反応混合物を氷浴で冷却した。添加後、溶液を反応温度70℃で1時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0163】
【表19】
【0164】
実施例14
フェノール(141g)、スチレン(52g)及びジイソプロペニルベンゼン(79g)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に30℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(0.234mL)を少量ずつ添加した。この反応混合物を氷浴で冷却した。添加後、溶液を反応温度70℃で1時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0165】
【表20】
【0166】
実施例15
フェノール(141g)、スチレン(73g)及びジイソプロペニルベンゼン(48g)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に30℃で溶解させた後、BF3*(OEt)(0.234mL)を少量ずつ添加した。この反応混合物を氷浴で冷却した。添加後、溶液を反応温度70℃で1時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0167】
【表21】
【0168】
【表22】
【0169】
実施例16
フェノール(141g)、α-メチルスチレン(59g)及びジイソプロペニルベンゼン(79g)を、ジムロートコイル冷却器及び滴下ロートを備えた三つ口フラスコ中のキシレン(138g)に30℃で溶解させた後、BF3*(OEt2)(0.234mL)を少量ずつ添加した。この反応混合物を氷浴で冷却した。添加後、溶液を反応温度70℃で1時間撹拌した。重合はチョークの添加により停止させた。粗生成物を濾過し、230℃で水蒸気蒸留して精製することにより、無色固体の樹脂を得た。フェノール系ポリマーの特性評価の結果を以下の表に示す。
【0170】
【表23】
【0171】
上述した合成の例からわかるように、高分子のフェノール系ポリマーの特性は広範囲に変化し得る。
【0172】
以上の結果からわかるように、材料特性は、末端封止剤(末端基E)の影響を受け得る。末端封止剤の影響に関するさらなる実験ついて、以下に示す。
【0173】
末端封止剤の含有量が材料特性及び加工性に与える影響
エポキシ系は、一般的に、2つの液状物質(エポキシプレポリマーと硬化剤)を混合することによって硬化され、種々の添加剤と充填剤によって変性される。通常、プレポリマーと硬化剤の粘性はいずれも、取り扱い及び硬化プロセスに、その結果として、硬化した樹脂の最終的な特性に大きな影響を及ぼす。単一成分及び最終組成物の粘度は、本書で合成される化合物等の単一材料の物理特性と化学特性(例えば、軟化点、Tg、極性及び官能基)に関連する。これらの物理特性及び化学特性によって直接影響を受けるその他の側面として、硬化剤又は一般的なシンナーにおける所与の温度での溶解度及び溶解挙動がある。とりわけ、溶解温度は、多種多様な硬化剤の温度感受性により、非常に重要であることが多い。したがって、本発明に示される促進剤の軟化点の制御は、その適用性に劇的な影響を及ぼす。
【0174】
【表24】
【0175】
表20b(実施例13~15)及び表20a(実施例6対11及び実施例7対12)に示すように、モノビニル(EVB及びスチレン)化合物とジビニル(DVB及びDIPB)化合物との比は、分子量分布に、及び得られる樹脂の軟化点とTgに極めて重大な影響を及ぼす。
【0176】
【表25】
【0177】
同一の反応条件及び一定のフェノール含有量においては、モノビニル化合物の含有量が増加するにつれ、分子量、軟化点及びTgは減少する。さらに、この変化は、フェノール含有量の変化とは異なり、最終樹脂のOH含有量にわずかな影響しか与えない(上記表12参照)。モノビニル化合物とジビニル化合物の合計に対するフェノールの割合が増加すると、モノビニル化合物を使用する場合と同様に、OH含有量は増加し、軟化点、Tg及び分子量は減少する。
【0178】
単量体比(モノビニル芳香族化合物対ジビニル芳香族化合物対フェノール)とは対照的に、反応温度は、色のみを除いて、生成物の特性にわずかな影響を示すか、又は全く影響を示さない(表20c)。反応温度が高くなると、生成物はより黄変する。これらの結果は、分子量は、例えば一般的なカチオン重合反応のように反応温度により制御することはできないため、末端封止剤による分子量制御の必要性を改めて強く示している。
【0179】
【表26】
【0180】
上述のように、軟化点と分子量は、樹脂の溶解性と加工性、及びエポキシ用途における配合物の粘度に重大な影響を及ぼす。この効果と、この効果と末端封止剤含有量との関連性を表20d、表20f及び表20gに示す。同一の反応条件及び同一のフェノール含有量で調製された樹脂(実施例6対11;実施例13対14対15)を、コーティング産業で一般的に使用される種々の溶媒とシンナーに、及び硬化剤に溶解させた。
【0181】
一般手順:樹脂の溶解
50gの樹脂及び100gのシンナー/溶媒を、ジムロートコイル冷却器及びオーバーヘッド攪拌機を備えた300mLの三つ口丸底フラスコに投入した。この混合物を室温で1時間撹拌した。その後、完全溶解とならなかった場合、樹脂が完全に溶解するまで、混合物の温度を5分間で10℃ずつ上昇させた。少なくともいくつかの樹脂については、シンナーの量はもっと少なくても、加熱時に、特に樹脂の軟化点を超えて加熱する時に溶解させるのに十分であったであろうと思われるが、上記のプロトコルに従い、100mLの溶媒/シンナーを採用した。
【0182】
【表27】
【0183】
低粘度の溶媒であるブタン-2-オンとキシレンは、すでに室温で全ての樹脂を溶解することができた。しかしながら、溶解力が低下するにつれ(ベンジルアルコール、L40、Epikure(登録商標)548)、軟化点としたがって末端封止剤含有量の影響がより本質的なものとなる。
【0184】
【表28】
【0185】
上記の結果は、末端封止剤含有量が減少し、したがって軟化点が上昇するにつれ、溶解プロセスはより困難になり、それに応じて溶解温度を上げる必要があったことを示している。重要な点として、追加の末端封止剤なしで調製された実施例13(溶解例3)の場合には、L40及び硬化剤Epikure 548において完全な溶解は達成できなかった。
【0186】
【表29】
【0187】
粘度の測定値は、同等の傾向を示す。樹脂の軟化点が樹脂とシンナーとの混合物の粘度に及ぼす影響は、シンナー/溶媒の粘度の増加に伴って劇的に増大する(表20f)。軟化点を高くすると、樹脂/シンナーの粘度は、はるかに顕著な増加を示す(溶解例1及び2;溶解例3~5、表20f及び20g)。
【0188】
【表30】
【0189】
混合物の粘度を一定とした場合の軟化点が樹脂の投入量に及ぼす影響
一般に産業界では、コーティング配合物は、それぞれ明確な粘度又は粘度範囲を有することが求められる。したがって、本発明に示される促進剤のような添加剤の投与可能量は、その添加剤が粘度に及ぼす影響に直接関連する。
軟化点が、ひいては末端封止剤含有量が促進剤の投与量に及ぼす影響を実証するために、実施例6及び11の樹脂をシンナーL40に溶解させた。さらにL40(表20h)を添加することにより、両混合物の粘度を同じレベルに調整した。詳細は以下の通りである。
【0190】
50gの樹脂及び50gのL40を、ジムロートコイル冷却器及びオーバーヘッド攪拌機を備えた300mLの三つ口丸底フラスコに投入した。混合物を、完全溶解となるまで、上述した溶解の例で確立した温度(表20d参照;実施例6の樹脂の溶解温度80℃、実施例11の樹脂の溶解温度130℃)まで加熱した。その後、両混合物の粘度を測定した。次に、溶解例7の粘度を目標値とし、溶解例6の粘度をL40を26.6g添加することにより同様の値に調整した。
【0191】
【表31】
【0192】
投与実験の結果により、分子量と軟化点を明確に制御することによって、配合物中の投与量を改善できることが実証された。とりわけ、溶液の促進活性の主要な指標であるOH含有量が異なることから、EVB含有量の違いによりこの有益な効果が誘発されたことを示している。さらに、末端基含有量を調整して軟化点を調整することにより、例えば80重量%までの固形分を含むいわゆる「高固形分」系、又は、溶媒及び/若しくはシンナーを含まない「無溶剤」系を得ることが可能で、このことは、シンナーの量を最終的に除去する必要がない程の低レベルにまで減少させることができる、又はシンナー若しくは溶媒の使用を完全に回避することさえできるため興味深い。高固形分系は主に希釈剤又はシンナーを用いて調製される。既に説明したように、溶媒は通常、硬化物から放出されるか又は既に放出されている。シンナーは通常、硬化物中に残存する。
【0193】
分析方法の説明
GPCによるモル質量分布
モル質量分布(Mn、Mw、Mz)は、PSS-Polymers社が供給するSECcurity2-Systemを用いてゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により推定した。使用したカラム系は、3μmのプレカラム1つと、3μmで1000Åの主カラム3つとからなり、カラム材料として充填されたのはスチレンジビニルベンゼン共重合体であった。物質検知のために、屈折率(RI)検出器を使用した。溶離剤として、Biosolve社が供給する安定剤不含でULC/MSグレードのTHFを使用した。各測定は40℃の等温で実施された。外部標準として、PSS-Polymers社が供給する「ReadyCal-Kit Poly(styrene) low」(Mp 266-66 000 Da)を使用した。
【0194】
DSCによるガラス転移温度
ガラス転移温度(Tg)は、Mettler Toledo社が供給するイントラクーラーを備えたDSC 2/400を用いて推定した。試料容器として、容積40μlのピンホール付きアルミニウムるつぼ(ME-26763 ALるつぼ)を使用した。試料重量は10~20mgであった。熱特性を評価するために、分析方法として、-40℃~150℃の測定窓内で1分間に10Kの加熱/冷却速度の加熱-冷却-加熱-冷却シーケンスを選択した。Tgの評価は、DIN53765に準拠して行った。
【0195】
メトラーリング&ボールによる軟化点(SP)
軟化点は、ASTM D 3461「アスファルトとピッチの軟化点-メトラーカップ&ボール法」に準拠して、「リング&ボール」法によって推定した。試験装置として、Mettler Toledo社が供給するFP 90 Central ProcessorとFP 83 HT Dropping Point Cellとを組み合わせて使用した。
【0196】
水酸基含有量
水酸基含有量は、DIN 53240-2(1-メチルイミダゾールを触媒として無水酢酸を用いて遊離OH基をアセチル化した後、0.5M水酸化ナトリウムで滴定)に準拠して電位差滴定によって推定した。測定は、Deutsche METROHM GmbH & Co. KGが供給する自動滴定装置(Titrandoに、Titroprozessor 840 Touch ControlとDosimate 6.2061.010を組み合わせた)を用いて実施した。
【0197】
レオメータによる粘度測定
樹脂シンナー/溶媒混合物の粘度をAnton Paar社のMCR301レオメータで測定した。250mPas未満の粘度用のダブルギャップ形状(DG26.7)又は250mPasを超える粘度用の共軸円筒(CC27)のいずれかを使用した。測定は、剪断速度25s-1の回転モードで、25℃又は30℃の等温で実施した。
【0198】
エポキシ系における促進剤の適用
フェノール系ポリマー、例えば、上記の実施例で調製されたDVBP樹脂は、コーティング、接着剤及び複合配合物の変性剤として好適である。特に、エポキシベースの系において、促進剤及び耐薬品性向上剤として使用可能である。
【0199】
エポキシ系におけるその効果を調べるために、合成例2に由来するジビニルベンゼンフェノール(DVBP)樹脂を、市販のエポキシ樹脂Epikote 828を硬化剤Epikure 548で硬化させて試験した。比較のために、追加促進剤(標準)を含まずスチレン化フェノールの影響のないエポキシ系であり、エポキシ樹脂の硬化に一般に適用される促進剤Novares LS500を、エポキシ樹脂Epikote 828及び硬化剤Epikure 548で試験した。さらに、硬化したエポキシ樹脂の機械特性と耐薬品性に及ぼす影響を調べた。
【0200】
エポキシ樹脂の硬化のための一般手順
Epikote 828と、Epikure 548と表21に示す対応する促進剤との混合物を室温で100mLプラスチックカップに入れ、高速ミキサーで2500rpmで1分間混合した。
【0201】
【表32】
【0202】
その後、様々な用途試験のために、対応する量の試料を抽出した。硬化は室温で行った。
【0203】
促進の効果
上記混合物20gをレオロジー分析のために抽出した。抽出は、上記の物質の混合後に直接開始し、レオメータに移した。硬化プロセスは、上記一般手順に従って40℃でレオメータにより分析した。レオロジー分析の時間依存の結果を表22及び図1に示す。表22は、レオロジー測定中の時間と粘度との関係における代表的な時点を示す。図1は、粘度が経時的に上昇していく様子を示している。
【0204】
【表33-1】
【0205】
【表33-2】
【0206】
【表33-3】
【0207】
このように、各実験において粘度は、ある明確な時間の後に指数関数的に増加した。スチレン化フェノールを用いた硬化例2のエポキシ系の粘度と、硬化例1のエポキシ系の粘度はいずれも、促進効果を示す追加の添加剤なしの硬化例3の標準系よりも速く上昇した。その上、合成例2により例示されるフェノール系ポリマーの、硬化例1における硬化プロセスの促進に及ぼす影響は、硬化例2におけるスチレン化フェノールを上回っている。
【0208】
レオメータによる複素粘度
エポキシ硬化の複素粘度を、Anton Paar社のMCR302レオメータを用いて測定した。アルミ板系(PP15形状)を使用した。測定は、40℃の等温で、周波数10rads-1の振動モードで、せん断ギャップを1mmとして行った。変形は10%で開始し、1分間に0.2%ずつ、1%まで低減した。1%まで変形が低減した後、トルクが100mNmに達するまで、この変形レベルで残りの測定を行った。
【0209】
エポキシ系の機械特性への影響
振り子硬度試験機による振り子硬度
硬化したエポキシ樹脂の振り子硬度を、BYK-Gardner社が供給するケーニッヒ式振り子硬度試験機(DIN 53 157)を用いて測定した。様々な混合物のそれぞれ10gを規定の成形型に注ぎ、最初の測定の前の1日間室温で保管した。調製した試料を試験機にクランプし、振り子を開始位置に固定した。振り子を解放して測定を開始した。測定を、1、2、6及び13週間の保管期間後に繰り返し行った。測定結果を表23に示す。
【0210】
【表34】
【0211】
表23からわかるように、硬化例1の促進剤としてフェノール系ポリマーを含むエポキシ系は、測定の開始時(0週間)にすでに高い振り子硬度値に達した。対照的に、促進剤を含まないエポキシ系は、測定開始時の振り子硬度がそれよりも低く、また、促進剤としてスチレン化フェノールを含むエポキシ系は、さらに低い初期振り子硬度を示した。最初の1週間後、全ての硬化例で振り子硬度値は高くなった。その後、促進剤として合成例2のフェノール系ポリマーを含む硬化例1では、振り子硬度はかなり一定であったが、促進剤を含まない硬化例3では、最初の1週間後に振り子硬度が大きく増加した。対照的に、スチレン化フェノール促進剤を含むエポキシ系は、第2週から第13週までにおいても、振り子硬度の著しい増加を示した。
【0212】
引張試験による引張強さと最大伸び
硬化したエポキシ樹脂の引張強さ及び破断伸度を、株式会社島津製作所製の引張試験機オートグラフAGS-Xにより測定した。様々な混合物のそれぞれを、規定の骨型の成形型に注ぎ、室温で2週間保管した。測定前に、試料の寸法を測定した。測定は、開始ゲージ長さ130.0mm、速度10mm/分、室温で行った。測定結果と、計算により得られた平均値を表24に示す。
【0213】
【表35】
【0214】
スチレン化フェノールだけでなくベンジルアルコール又はノニルフェノールのような低分子量促進剤はしばしば、高い破断伸度により例示されるエポキシ系の軟化を引き起こす。引張試験(表24)に示されるように、合成例2のフェノール系ポリマーは、促進剤を含まないエポキシ系と比較して、機械特性にわずかな効果しか及ぼさない。
【0215】
耐薬品性への影響
耐薬品性試験の一般手順
様々な混合物のそれぞれ10gを5つの規定の成形型に注ぎ、室温で2週間保管した。その後、試料の重量を測定し、各試料を90mLの別個の試験媒体を充填した100mLの密閉ガラス瓶に浸漬した。試験媒体は、以下のものを用いた。
1.酢酸水溶液(10w%)
2.水酸化ナトリウム水溶液(5w%)
3.キシレン
4.水
【0216】
各週に、試料をガラス瓶から取り出し、残留する試験媒体を除去して、重量を測定した。重量測定後、試料をガラス瓶に戻した。この工程を6週間繰り返した。
【0217】
【表36】
【0218】
硬化例2及び硬化例3はいずれも、水性条件下において硬化したエポキシ樹脂の貯蔵安定性が向上したことを示している(表25)。これは、膨潤作用による重量の増加量が減少していくことに示されている。促進剤を使用する場合、重量増加は0.96重量%(硬化例1)及び1.11重量%(硬化例2)に減少し、1.30重量%(硬化例3)とは対照的である。
【0219】
【表37】
【0220】
酸性条件下(表26)及び塩基性条件下(表27)の両方で、合成例2の促進剤の親水特性が明らかとなった。膨潤は、酸性条件下においては、5.63重量%(硬化例3)から2.67重量%(硬化例1)まで低減し、塩基性条件下においては、1.06重量%(硬化例3)から0.83重量%(硬化例1)まで低減した。両方の場合において、この効果は、硬化例2のスチレン化フェノール(酸性1.96重量%;塩基性0.90重量%)に匹敵する。
【0221】
【表38】
【0222】
【表39】
【0223】
硬化例1(促進剤として合成例2のフェノール系ポリマー)の硬化したエポキシ系と、硬化例3(促進剤なし)の硬化したエポキシ系はいずれも、キシレンに対する非常に高い耐薬品性を示した。試験期間中、膨潤効果はほとんど観察できなかった(硬化例3では0.11重量%;硬化例1では0.08重量%)(表28)。これと比較して、硬化例2のスチレン化フェノール促進剤は、耐薬品性を著しく低下させた。6週間後、硬化例2では、2.43重量%の重量増加が検出された。
【0224】
上述した耐薬品性試験は、DVBP樹脂が、水性及び有機の影響に対して全面的に改良されたコーティング系のための変性剤であることを実証している。
図1
【国際調査報告】