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  • 特表-耐磨耗性回転子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】耐磨耗性回転子
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/16 20060101AFI20240213BHJP
   B02C 17/18 20060101ALI20240213BHJP
   B02C 17/20 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B02C17/16
B02C17/18 Z
B02C17/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547620
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2022025055
(87)【国際公開番号】W WO2022179750
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】21158944.5
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517338205
【氏名又は名称】ビューラー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレフェル、コルネル
(72)【発明者】
【氏名】ナター、エドゥアルド
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063FF14
4D063GA10
4D063GB04
4D063GB05
(57)【要約】
本発明は、略円筒形の回転子本体を有する攪拌ミル用の回転子に関するものであり、当該回転子の外壁は、攪拌ミルの動作中に、処理される供給材料が中を通って流れる粉砕チャンバの内面を画定する。セラミックリングは、回転子本体の回転子端部に配置され、回転子端部は、攪拌ミルの製品入口の反対側に配置されている。本発明はまた、本発明による回転子を備える攪拌ミル、分散体を生成するための攪拌ミルにおける本発明による回転子の使用、及び回転子を生成するための方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌ミル用の回転子(35)であって、
略円筒形の回転子本体(351)であって、前記回転子の外壁(32)は、前記攪拌ミルの動作中に、処理される供給材料が中を通って流れる粉砕チャンバの内面を画定する、略円筒形の回転子本体(351)と、
前記回転子本体(351)の回転子端部に配置されたセラミックリング(352)であって、前記回転子端部が、前記攪拌ミルの製品入口の反対側に配置されている、セラミックリング(352)と、を備える、回転子(35)。
【請求項2】
前記回転子(35)が、垂直攪拌ミルで使用するように構成されている、請求項1に記載の回転子(35)。
【請求項3】
前記セラミックリング(352)が、前記回転子本体(351)に接合されている、具体的には、ポジティブインターロック接続によってねじ止め又は接合されている、請求項1又は2に記載の回転子(35)。
【請求項4】
前記セラミックリング(352)の表面が、前記粉砕チャンバの前記内面を形成する前記回転子の前記外壁(32)の一部分を形成する、請求項1~3のいずれかに記載の回転子(35)。
【請求項5】
前記一部分が、前記回転子の前記外壁(32)に配置された粉砕ツール(38)まで延在し、前記セラミックリング(352)が、ねじれ及び/又は落下に対して、前記粉砕ツール(38)によって固定されている、請求項4に記載の回転子(35)。
【請求項6】
前記回転子本体(351)が、プラスチックで作製されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の回転子(35)。
【請求項7】
前記セラミックリング(352)が、実質的にL字形状の断面を有し、前記L字形状のセラミックリング(352)の脚部が、前記回転子(35)の外面(32)に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の回転子(35)。
【請求項8】
前記セラミックリング(352)が、実質的にU字形状の断面を有し、前記U字形状のセラミックリング(352)の脚部が、前記回転子(35)の前記外面(32)及び内面に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の回転子(35)。
【請求項9】
前記セラミックリング(352)によって形成される前記回転子(35)の前記外壁(32)の前記一部分の長さLと前記回転子(35)の外径Dとの比率L/Dが、0.05~0.5である、請求項1~8のいずれか一項に記載の回転子(35)。
【請求項10】
回転子壁厚さS1と前記回転子(35)の前記外壁(32)を形成する前記セラミックリング(352)の前記一部分の厚さS2との比率S1/S2が、0.1~0.9である、請求項1~9のいずれか一項に記載の回転子(35)。
【請求項11】
前記回転子本体(351)が、PA、PET、PEEK、PVDF、及びPOM、のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の回転子(35)。
【請求項12】
前記セラミックリング(352)が、ZrO、SSiC、SiSiC、及びSi、のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の回転子(35)。
【請求項13】
攪拌ミルであって、
請求項1~12のいずれか一項に記載の回転子(35)と、
固定子内壁(9)を有する固定子(2)であって、前記回転子(35)が、前記固定子(2)内に配置されている、固定子(2)と、
製品供給部と、
製品排出部と、を備え、
粉砕チャンバ(8)が、前記固定子内壁(9)と前記回転子(35)の前記外壁(32)との間に形成されており、前記供給材料が、前記製品供給部を介して前記粉砕チャンバ(8)内へ導かれ、かつ前記製品排出部を介して前記粉砕チャンバ(8)の外へ導かれ得る、攪拌ミル。
【請求項14】
分散体、具体的には電池ペーストを生成するための攪拌ミルにおける、請求項1~12のいずれか一項に記載の回転子(35)の使用。
【請求項15】
-具体的には接着、ねじ止め、又はポジティブインターロック接続によって、セラミックリング(352)を前記回転子本体(351)に接合するステップによって特徴付けられる、請求項1~12のいずれか一項に記載の回転子(35)を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌ミル用の回転子に関するものであり、具体的には、耐磨耗性で寸法安定性のプラスチック回転子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撹拌ミルは、液体中の固体の粉砕及び分散を伴う、広範囲にわたる用途を有する。撹拌ミルは、例えば、接着剤、印刷用インク、化粧品、医薬品の生産に、更には電池ペーストの原材料(具体的には、シリコン)の生産にも使用される。通常、粉砕チャンバは、垂直に配向された長手方向中心軸及びステータの周りを回転する回転子によって垂直攪拌ミル内に形成され、このチャンバでは、適用可能な場合、分散体は、補助粉砕体、例えばセラミックボールを使用して生成される。この目的のために、例えば円形ピンの形態の粉砕ツールを、回転子及び/又はステータに取り付けることができる。供給材料は、製品供給部を介して粉砕チャンバの中へ導かれ、そこで粉砕されて、製品排出部を介して排出される。そのような攪拌ミルは、例えば、欧州特許第1992412(A1)号によって知られている。
【0003】
特に電池ペーストのための原材料の生産では、x50=100~200nmの微粉度を達成しなければならず、これは、長い粉砕時間を必要とする。処理される固体の摩耗性のため、粉砕チャンバ内のプロセス領域の相当な摩耗が予想される。加えて、最終製品の金属汚染は回避されるべきであるので、他の典型的な鋼製回転子の代わりに、攪拌ミル用の無金属回転子の使用が好ましい。
【0004】
セラミック及びプラスチック回転子の使用は、先行技術において知られている。しかしながら、セラミック回転子の生産は、非常に高価であり、かつ設計が複雑である。例えば、SSiC又はSiSiCは、それらの硬度のため、高度に耐磨耗性であるが、したがって、破断し易い。これらの2つのセラミックは、鋼よりもはるかに高い、非常に良好な熱伝導度を有する。しかしながら、大型の構成要素の生産は、大きな問題を含んでいる。
【0005】
金属汚染はまた、プラスチック回転子を使用することで回避することができる。しかしながら、供給材料に応じて、このタイプの回転子は、急激な機械的摩耗を受け得る。具体的には、粉砕体圧縮の領域(高エネルギー密度の範囲)では、プラスチック材料は、大きな影響を受ける。更に、耐化学薬品性を確実にするために、回転子に使用されるプラスチックが供給材料に適合するかどうかを、その最前部で常時確認しなければならない。プラスチックの一般に低い熱伝導度は、非常に不利である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、寸法安定性があり、具体的には一般的な溶剤に対して耐性があり、具体的には電池ペーストの生産に使用することができる、コスト効率的な攪拌ミル用の回転子を提供することである。最終製品の破壊的な摩耗を伴わずに、湿式の研磨砥粒固体を可能にしなければならない。
【0007】
本発明の基本的な概念は、攪拌ミルの回転子の回転子本体を使用することであり、この回転子本体は、高エネルギー密度の領域に、具体的にはプロセス領域の下部領域に、すなわち回転子の下端部に、セラミックで作製された摩耗要素を有する。具体的には、プロセス領域の底部に、すなわち回転子の下部領域に垂直に配置された攪拌ミルの場合、重力、並びに高い回転子速度と組み合わせた製品固体及び粉砕体による粉砕体の偏向は、回転子に高い摩耗をもたらす。一般に、攪拌ミルにおいて最も高い摩耗は、回転子端部、すなわち製品入口の反対側において生じる。
【0008】
したがって、本発明によれば、略円筒形の回転子本体を有する回転子が提供され、当該回転子の外壁は、攪拌ミルの動作中に、処理される供給材料が中を通って流れる粉砕チャンバの内面を画定する。セラミックリングは、高いエネルギー入力を伴う回転子の領域に配置される。この領域は、攪拌ミルへの製品の入口の反対側にある回転子の側面である。垂直攪拌ミルでは、これは、回転子本体の下部分である。セラミックリングの表面は、具体的には、粉砕チャンバの内面を形成する回転子の外壁の一部分を形成する。この一部分は、好ましくは、回転子の外壁に配置された粉砕ツールまで延在する。したがって、粉砕ツールは、ねじれ及び/又は落下に対して、セラミックリングを固定することができる。
【0009】
セラミックリングは、好ましくは、回転子本体に接合され、具体的にはポジティブインターロックによってねじ止め、接着、又は接続される。好ましい実施形態によれば、回転子本体がプラスチックで作製される場合、セラミックリングはまた、回転子本体内に鋳造することができる。
【0010】
セラミックリングは、実質的にL字形状の断面を有することができ、L字形状のセラミックリングの長い側、すなわちその脚部は、回転子の外面に配置される。代替的に、セラミックリングは、実質的にU字形状の断面を有することができ、その脚部は、回転子の外面及び内面に配置される。
【0011】
好ましくは、セラミックリングによって形成される回転子の外壁の一部分の長さLと回転子の外径Dとの比率L/Dは、0.05~0.5である。回転子の外壁を形成するセラミックリングの一部分の厚さS1と回転子壁の総厚さS2との比率S1/S2は、好ましくは、0.1~0.9である。
【0012】
プラスチック回転子は、PA、PET、PEEK、PVDF、及びPOM、のうちの少なくとも1つを有することができる。セラミックリングは、ZrO、SSiC、SiSiC、及びSi、のうちの少なくとも1つを有することができる。
【0013】
本発明は、本発明による回転子を備えた攪拌ミルを更に提供する。既知のミルによれば、本発明による攪拌ミルは、ステータ内壁を備えたステータを更に備え、回転子は、ステータ内に配置されている。更に、製品供給部及び製品排出部が提供され、粉砕チャンバは、ステータ内壁と回転子の外壁との間に形成される。供給材料は、製品供給部を介して粉砕チャンバ内へ導かれ、かつ製品排出部を介して粉砕チャンバの外へ導かれ得る。
【0014】
回転子の外径Dとステータの内径D2との比率は、0.6≦D/D2≦0.95が好ましい。更に、攪拌ミルは、回転子の一部分の中に配置された内側ステータを有することができ、製品排出部は、回転子と内側ステータの外壁との間に形成されている。内側ステータの外径d22と回転子の内径d1との比率は、0.8≦d22/d1≦0.98が好ましい。
【0015】
本発明は、分散体を、具体的には電池ペーストを生成するための攪拌ミルにおける、本発明による回転子の使用、及び回転子を生成する方法に更に関する。本方法は、-具体的には接着、ねじ止め、又はポジティブインターロック接続によって-セラミックリングを回転子本体と接合するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、図を参照しながら下でより詳細に説明される。
図1】先行技術の垂直攪拌ミルの断面図である。
図2】本発明の一実施形態による、垂直攪拌ミル用の回転子の断面図である。
図3】本発明の別の実施形態による、垂直攪拌ミル回転子用の回転子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、一例として、先行技術による垂直配置攪拌ミルの詳細を示す。図1に示される攪拌ミルは、従来の様式で内部粉砕チャンバ8を備えたミル容器又はステータ2を有する。粉砕チャンバ8は、粉砕要素43が少なくとも部分的に充填される。撹拌機ミルは、内側固定子22と、中心長手方向軸19を中心として回転することができる回転子35とを更に備える。粉砕チャンバ8内へ突出する第1のツール38が、回転子35に取り付けられている。粉砕チャンバ8内へ突出する第2のツール74が、容器又は固定子の内壁9に取り付けられている。処理された供給材料は、回転子35と内側固定子22との間の間隙を通して導かれて、粉砕体43を保持する保護スクリーン30を形成し、吐出ライン31を介して流れ出る。
【0018】
図2は、図1に示される垂直攪拌ミル用の回転子の断面図を示す。本発明の示される実施形態による回転子は、外壁32を備えた略円筒形の回転子本体351を有する。外径Dを有する回転子本体351は、プラスチック又は鋼で作製することができ、ここでは、プラスチックが好ましい。回転子は、図1に示される固定子とともに、攪拌ミルの動作中に、処理される供給材料が中を通って流れる粉砕チャンバを形成する。
【0019】
垂直攪拌ミルの回転子での最も大きい摩耗は、一般に、回転子の下部領域、すなわち、重力及び高い回転子速度と組み合わせた供給材料と粉砕体との偏向により高いエネルギー密度が現れる領域において生じる。一般に、攪拌ミルでは、垂直攪拌ミル及び水平攪拌ミルの両方において、動作中に最も大きい摩耗が生じる領域は、製品入口の反対側の領域である。本発明によれば、環状摩耗リングは、この領域に正確に提供され、硬質の、したがって高耐磨耗性のセラミック材料から製造される。この場合では、例えば、材料は、ZrO、SSiC、SiSiC、及びSiである。したがって、回転子35の大部分は、コスト効率的な回転子基体から製造することができるが、摩耗し易い部分は、耐磨耗性セラミック材料と置き換えられる。
【0020】
図2においてYで表され、更に拡大された詳細図に示されるように、セラミックリング352は、実質的にL字形状のプロファイルを有することができ、L字の短い側は、下側を形成し、L字の長い側、すなわち脚部は、最も大きい摩耗が生じる外側32の下部分を形成する。したがって、外側32の長さLの下部分、及び総壁厚S2を有する回転子の下側は、セラミックリング352によって形成される。
【0021】
セラミックリング352は、回転子本体に接合され、例えば、ねじ止めされ、接着され、又はプラスチック回転子本体の場合はまた、プラスチック内へ鋳造される。Xで表された図2のセクションに示されるように、回転子の外側32において、セラミックリング352は、好ましくは、粉砕ツール38の最下列まで延在する。したがって、セラミックリング352は、具体的にはねじれ又は落下に対して、ツール38によって追加的に固定することができる。
【0022】
回転子の総壁厚S2に対するセラミックリングの壁厚S1については、0.1<S1/S2<0.9が好ましい。
【0023】
図3は、本発明の別の実施形態による、回転子の断面図を示す。図2のように、セラミックで作製された摩耗要素は、回転子本体351の下部分に取り付けられている。図3に示される実施形態によれば、これも同様にセラミックリング352の形態で実現されるが、図2とは異なり、実質的にU字形状のプロファイルを有しており、よって、外側32の下側及び一部分に加えて、回転子の内側の表面の一部分、すなわち製品排出部の一部分もまた、U字の第2の脚部を介して、摩耗要素によって補強される。これも同様に、図3においてYで表される詳細図でより正確に示される。Xで表された図3のセクションに示されるように、ここでも、外側32において、セラミックリング352は、少なくとも粉砕ツール38の最下列まで延在することができる。
【0024】
本発明は、本発明による回転子を使用する攪拌ミルを更に提供する。この目的のために、一例として図1に示される回転子35だけが、例えば図2又は3に示されるように本発明による回転子と置き換えられる。そのような攪拌ミルの典型的な拡張は、値を回転子35の外径と固定子2の内径との比率について、0.6~0.95の値をもたらす。内側固定子22の外径と回転子35の内径との比率は、例えば、0.8~0.98である。
【0025】
本発明による回転子は、具体的には、セラミックリング352を回転子本体351に接合することによって生成することができる。これは、具体的には、接着、ねじ止め、又はポジティブインターロック接続によって行うことができる。回転子本体352がプラスチックで作製されている場合、セラミックリング352はまた、プラスチック体351内に鋳造することができる。
【0026】
本発明による回転子及び本回転子を使用する攪拌ミルは、具体的には、高い微粉度、例えばx50=100~200nmの微粉度を必要とし、その結果、長い粉砕時間が必要である分散体の生産に適しており、これらの分散体は、できる限り金属汚染を含まないように保たれなければならない。これは、例えば、電池ペーストの原材料の生産に当てはまる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】