(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】熱間等方圧加圧によって取得され包有物が少ないTIO2‐SIO2ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 3/06 20060101AFI20240213BHJP
C03B 8/00 20060101ALI20240213BHJP
C03B 19/02 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C03C3/06
C03B8/00 B
C03B19/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547831
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 US2022014011
(87)【国際公開番号】W WO2022173592
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】キャンピオン,マイケル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハルディナ,ケネス エドワード
(72)【発明者】
【氏名】マクソン,ジョン エドワード
【テーマコード(参考)】
4G014
4G062
【Fターム(参考)】
4G014AG00
4G062AA01
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4G062KK10
4G062NN01
4G062NN29
4G062NN30
(57)【要約】
シリカ‐チタニアガラス基板は、(i)5質量パーセントから10質量パーセントのTiO2を含む組成と、(ii)20℃で-45ppb/Kから+20ppb/Kの範囲の熱膨張率(CTE)と、(iii)10℃から50℃の範囲のクロスオーバー温度(Tzc)と、(iv)20℃で1.20ppb/K2から1.75ppb/K2の範囲のCTE勾配と、(v)140ppm未満の屈折率のばらつきと、(vi)600ppm以上のOH基濃度とを含む。基板は、1kg以上の質量と、0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物とを有し、それは、(i)SiO2およびTiO2を含む煤粒子から基板を形成する工程と、(ii)基板を、高温および高圧を有する環境に基板が0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物を含むようになるまでの時間、曝す工程とを含む方法を介して行われうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ‐チタニアガラス基板において、
5質量パーセントから10質量パーセントのTiO
2を含む組成と、
20℃で-45ppb/Kから+20ppb/Kの範囲の熱膨張率(CTE)と、
10℃から50℃の範囲のクロスオーバー温度(Tzc)と、
20℃で1.20ppb/K
2から1.75ppb/K
2の範囲のCTE勾配と、
140ppm以下の屈折率のばらつきと、
600ppm以上のOH基濃度と
を含むシリカ‐チタニアガラス基板。
【請求項2】
1kg以上の質量と、
0.05毎平方インチ(約0.008/cm
2)未満の気体包有物と
を更に含む、請求項1に記載のシリカ‐チタニアガラス基板。
【請求項3】
100gから1kgの範囲の質量と、
0.05毎平方インチ(約0.008/cm
2)未満の気体包有物と
を更に含む、請求項1に記載のシリカ‐チタニアガラス基板。
【請求項4】
前記組成は、更に、0.001から0.01質量パーセントの炭素を含むものである、請求項1から3のいずれか1項に記載のシリカ‐チタニアガラス基板。
【請求項5】
前記クロスオーバー温度(Tzc)は、20℃から38℃の範囲である、請求項1から4のいずれか1項に記載のシリカ‐チタニアガラス基板。
【請求項6】
方法において、
(i)煤粒子から形成された基板であって、各該煤粒子は、SiO
2およびTiO
2を含むものであり、かつ、(ii)0.05毎平方インチ(約0.008/cm
2)以上の気体包有物を含む基板を、高温および高圧を有する環境に、該基板が0.05毎平方インチ(約0.008/cm
2)未満の気体包有物を含むようになるまでの時間、曝す工程を、
含む方法。
【請求項7】
前記基板を前記環境に曝す工程の前に、
(i)前記煤粒子を室温で、0.50g/cm
3から1.20g/cm
3の範囲の所定の密度を有する成形済み前駆体基板へと成形する工程と、
(ii)前記成形済み前駆体基板を、蒸気存在下で熱処理して、凝集した成形済み前駆体基板を形成する工程と、
(iii)前記凝集した成形済み前駆体基板を、金型に流れ込み、次の冷却工程で基板を形成する溶融物へと融解する工程と
を更に含み、
前記曝す工程の前記環境の前記高温は、1000℃から1150℃の範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基板を前記環境に曝す工程の前に、前記気体包有物は、COおよびCO
2の一方または両方含むものである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記高温は、1000℃から1800℃の範囲である、請求項6から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記高圧は、0.5kpsi(約34atm)から15kpsi(約1021atm)の範囲である、請求項6から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記高圧は、1.3kpsi(約88atm)から1.7kpsi(約116atm)の範囲であり、
前記高温は、1650℃から1800℃の範囲であり、
前記時間は、8時間から12時間の範囲であり、
前記時間が始まる前で、前記基板を前記環境に置いている間に、該環境の温度は、室温から前記高温まで、250℃/時から350℃/時の範囲の温度上昇速度で上昇するものであり、
前記時間の後で、前記基板を前記環境に置いている間に、該環境の温度は、前記高温から室温まで、250℃/時から350℃/時の範囲の温度低下速度で低下するものである、請求項6から10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2021年2月9日出願の米国仮特許出願第63/147407号の優先権の利益を主張して2021年3月24に出願された蘭国特許出願第2027828号の優先権の利益を主張し、それらの内容は、依拠され、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、TiO2の均一性が高められ、気体包有物を含まないシリカ‐チタニアガラス、および、そのようなガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロプロセッシングユニット(MPU)、フラッシュメモリ、および、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)物品などの集積回路(IC)の回路の複雑さを高めるのと同時に、集積回路のサイズを減少させようとする傾向がある。特徴物サイズが減少すると、集積回路の性能は高まり、それは、特徴物サイズが減少すると、より多くの回路を所定のサイズのチップに搭載しうるようになり、更に、動作に必要な電力が削減されるからである。例えば、回路の幅が細くなるにつれて、任意の特定の集積回路は、より多くの回路を備えうる。
【0004】
リソグラフィ法を用いることで、より小さいサイズで、より多くの数の特徴物を、集積回路を含むウエハ上に配置することが可能になる。そのようなリソグラフィ法を用いる場合、電磁波を、望ましい集積回路パターンがエッチングされる層(例えば、クロム)を含む基板上に向ける。パターンを有する層を備えた基板を、典型的には、フォトマスクと称する。フォトマスク画像を、(反射または透過のいずれかを介して)感光性フォトレジスト材料で被膜された半導体ウエハ上に投射する。
【0005】
したがって、リソグラフィ法で形成された集積回路上の回路の幅は、集積回路パターンをフォトマスクから半導体ウエハに投射するのに用いた電磁波の波長に関係する。1990年代の終わりに、半導体産業は、KrFレーザを用いて、248ナノメートル(「nm」)波長を有する電磁波を生成して、120nmから150nmの特徴物を基板にプリントしていた。その後、いくつかのリソグラフィシステムは、ArFレーザを用いて、193nmの波長を有する電磁波を生成して、50nmまでもの細い線幅を基板上にプリントしてきた。更に、F2レーザを用いて、157nmの波長を有する電磁波を生成して、更に細い線幅のプリントも試みられてきたであろう。これらの波長において、フォトマスクは、任意で、(反射性ではなく)光透過性で、高純度溶融シリカまたは第IIA族アルカリ土類金属フッ化物(例えば、フッ化カルシウム)の基板などを有する。
【0006】
今では、(「超紫外線」または「EUV」とも称される)11nmから15nmの範囲など、120nm以下の波長を有する電磁波を用いたリソグラフィシステムの出現により、22nmまでもの細い線幅をプリントするようになった。しかしながら、248nm、193nm、および、157nmのリソグラフィシステムに用いられる材料は、EUV範囲の放射線を透過せず、吸収するものである。その結果、従来の合焦光学要素の代わりに、反射光学要素(つまり、ミラー)を用いなくてはならず、更に、透過性フォトマスクの代わりに、反射性フォトマスクを用いなくてはならない。典型的なEUVLシステムにおいて、ミラーを含む集光システムは、EUV電磁波源からの光線を、集光し、成形し、更にフィルタリングして、非常に均一な強度のビームを実現する。次に、ビームを、シリコンウエハ上に転写すべきパターンを含むフォトマスクに投射する。パターンは、反射ミラーのアセンブリを含む縮小画像生成系へと反射される。反射ミラーは、フォトマスクパターン画像を生成して、フォトマスクパターンをシリコンウエハ上のフォトレジスト被膜に合焦させる。
【0007】
電磁波の波長が短いほど、要求される分解能、または、電磁波を維持するのに必要なミラーの数が多くなる。ミラーの数が増加すると、散乱により、電磁波の強度損失を生じる。これを補うために、より高い(例えば、5Wの代わりに100Wの)エネルギー源を用いて、電磁波を生成しうる。しかしながら、より高いエネルギー源は、フォトマスク、および、ミラーなどの他の光学要素を高温(例えば、約80℃)に曝すことになる。
【0008】
EUVリソグラフィシステムの使用に伴い温度が変化するので、反射光学要素およびフォトマスクの膨張/収縮性を注意深く制御しなくてはならない。特に、熱膨張率(「CTE」)を可能な限り低く保持すること、および、温度の関数としてのCTEの変化率(「CTE勾配」)を、約4℃から40℃の範囲、好ましくは、20℃から25℃で、目標温度が約22℃であるリソグラフィ処理の通常動作温度範囲で可能な限り低くすることは、非常に重要である。更に、EUVシステムにおける電磁波の波長は非常に短いので、反射光学要素またはフォトマスクの表面に存在する不規則性が、システム性能を大きく低下させることになる。したがって、反射光学要素およびフォトマスクを製造するのに用いる基板は、最高品質でなくてはならない。
【0009】
EUVリソグラフィシステムの反射光学要素およびフォトマスクの基板に用いるのに適したCTEおよびCTE勾配を有する1つの材料は、シリカ‐チタニアガラスである。シリカ‐チタニアガラスの例は、ULE(登録商標)(Corning Incorporated、Corning、N.Y.)であり、それは、単相ガラス材料である。
【0010】
1つの従来の方法において、火炎加水処理を用いて、シリカ‐チタニアガラスを形成する。シリカ前駆体と非常に高純度のチタニア前駆体(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよびチタンイソプロポキシド)の蒸気状の混合物を、火炎に送って、SiO2-TiO2煤粒子を形成する。煤粒子は、固体シリカ‐チタニア光学ブランクの中に層状で融解する。これを、いくつかの場合に、「直接ガラスに」処理と称する。この処理は、ガラスの大きいブールを生成する。
【0011】
しかしながら、その方法は、光学ブランクに、脈理を形成する。脈理は、ガラスにおける周期的な不均一部であり、基板の多くの物性に悪影響を与える。脈理は、微粒子形成中の火炎内の熱変動、および、微粒子が成膜される時に成長するガラスの熱変動により生じる。脈理は、交互に並んだ異なるCTEの薄層を生じて、したがって、層間の圧縮平面と引張平面が交互に並ぶことになる。「ULE」ガラスにおける脈理は、ガラスの上面および下面と平行な方向に顕著である。
【0012】
いくつかの例において、脈理は、反射光学要素において、オングストローム二乗平均(rms)レベルで表面仕上げに影響し、ガラスの研磨性に悪影響を与えうることが見出されている。脈理を有するガラスを研磨すると、不均等に材料除去し、容認できない表面粗さを生じて、EUVリソグラフィ要素などの要求が厳しい利用例について問題を生じうる。例えば、中頻度の表面構造を生じて、EUVリソグラフィについて投射システムで用いるミラーで画像劣化を生じうる。
【0013】
他の問題は、低頻度の不均一性であり、スプリングバックとして知られた現象を生じる。スプリングバックは、非均一なCTEを有するガラス物品の形状変化を称する。形状の変化は、典型的には、ガラス物品から材料を除去した時に生じる。更に、脈理は、基板の熱膨張の不均一性を生じて、それから製造された反射光学要素が最適ではない熱特性を有するものとなる。脈理は、光学不均一性も生じて、基板を、多数の光学透過要素(例えば、レンズ、窓、プリズム)で用いるのに適さないものにする。
【0014】
更なる問題は、この「直接ガラスに」処理によって製造された基板の長さに亘るTiO2濃度において、長いスケールの均一性が欠如することである。TiO2濃度の長いスケールの均一性の欠如は、多数のバーナーを用いた結果であると考えられる。
【0015】
他の欠点は、基板内に気体包有物が存在することに関する。脈理と同様に、気体包有物は、基板の研磨に悪影響を与え、基板の表面を歪めて、典型的にはレーザを用いて行われる基板の検査を妨げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、適したCTE、CTE勾配、EUV利用のための他の材料物性を有するだけでなく、更に、脈理および気体包有物がないシリカ‐チタニアガラスの製造方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示は、そのような要求に取り組むために、SiO2およびTiO2を含む非凝集煤粒子を生成し、非凝集煤粒子を基板の中に押し込んで、次に、熱間等方圧加圧工程で、基板を高温高圧環境に曝すものである。非凝集煤粒子を基板の中に押し込むことで、基板に高い組成均一性を与えて、目に見えるような脈理の形成を防ぐ。基板を、高圧高温環境に曝す前は、基板は、多くの気体包有物を有しうる。しかしながら、基板を、高温高圧環境に曝すと、気体包有物は崩壊する。その結果、基板は、非常に少ない気体包有物を有するものとなる。更に、その結果、基板は、特に更なるアニーリング処理を基板に行った後に、EUV利用に適した材料物性を有し、それは、望ましいCTE、CTE勾配、クロスオーバー温度、OH基濃度、硬さを含む。次に、基板をスライスして、ミラーおよびフォトマスクなどEUVリソグラフィ利用のための大きさの複数の基板を形成しうる。
【0018】
本開示の第1の態様によれば、シリカ‐チタニアガラス基板は、(i)5質量パーセントから10質量パーセントのTiO2を含む組成と、(ii)20℃で-45ppb/Kから+20ppb/Kの範囲の熱膨張率(CTE)と、(iii)10℃から50℃の範囲のクロスオーバー温度(Tzc)と、(iv)20℃で1.20ppb/K2から1.75ppb/K2の範囲のCTE勾配と、(v)140ppm未満の屈折率のばらつきと、(vi)600ppm以上のOH基濃度とを含む。
【0019】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様のシリカ‐チタニアガラス基板は、(i)1kg以上の質量と、(ii)0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物とを更に含む。
【0020】
本開示の第3の態様によれば、第1の態様のシリカ‐チタニアガラス基板は、(i)100gから1kgの質量と、(ii)0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物とを更に含む。
【0021】
本開示の第4の態様によれば、第1から第3の態様のいずれか1つのシリカ‐チタニアガラス基板は、更に、0.02毎平方インチ(約0.003/cm2)未満の気体包有物を更に含む。
【0022】
本開示の第5の態様によれば、第1から第4の態様のいずれか1つのシリカ‐チタニアガラス基板は、更に、気体包有物を含まないものである。
【0023】
本開示の第6の態様によれば、第1から第5の態様のいずれか1つのシリカ‐チタニアガラス基板において、組成は、0.001から0.01質量パーセントの炭素を更に含む。
【0024】
本開示の第7の態様によれば、第1から第6の態様のいずれか1つのシリカ‐チタニアガラス基板は、鉄、クロム、ジルコニウム、鉄の酸化物、クロムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、および、クリストバライトの1つ以上を含む1つ以上の固体包有物を更に含む。
【0025】
本開示の第8の態様によれば、第1から第7の態様のいずれか1つのシリカ‐チタニアガラス基板は、4.60GPaから4.75GPaの硬さを更に含む。
【0026】
本開示の第9の態様によれば、第1から第8の態様のいずれか1つのシリカ‐チタニアガラス基板において、クロスオーバー温度(Tzc)は、20℃から38℃の範囲である。
【0027】
本開示の第10の態様によれば、第1から第9の態様のいずれか1つのシリカ‐チタニアガラス基板において、クロスオーバー温度(Tzc)は、22℃から38℃の範囲である。
【0028】
本開示の第11の態様によれば、第1から第10の態様のいずれか1つのシリカ‐チタニアガラス基板において、20℃でのCTE勾配は、1.30ppb/K2から1.65ppb/K2の範囲である。
【0029】
本開示の第12の態様によれば、第1から第11の態様のいずれか1つのシリカ‐チタニアガラス基板において、屈折率のばらつきは、60ppm未満である。
【0030】
本開示の第13の態様によれば、第1から第12の態様のいずれか1つのシリカ‐チタニアガラス基板において、屈折率のばらつきは、20ppmから60ppmの範囲である。
【0031】
本開示の第14の態様によれば、第1から第13の態様のいずれか1つのシリカ‐チタニアガラス基板において、OH基濃度は、600ppmから1400ppmの範囲である。
【0032】
本開示の第15の態様によれば、第1から第14の態様のいずれか1つのシリカ‐チタニアガラス基板において、OH基濃度は、700ppmから1200ppmの範囲である。
【0033】
本開示の第16の態様によれば、方法は、(i)煤粒子から形成された基板であって、各煤粒子は、SiO2およびTiO2を含むものであり、かつ、(ii)0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)以上の気体包有物を含む基板を、高温および高圧を有する環境に、基板が0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物を含むようになるまでの時間、曝す工程を含む。
【0034】
本開示の第17の態様によれば、第16の態様の方法は、基板を環境に曝す工程の前に、(i)煤粒子を、非凝集煤粒子として形成する工程と、(ii)煤粒子を収集する工程とを更に含む。
【0035】
本開示の第18の態様によれば、第16または第17の態様の方法は、基板を環境に曝す工程の前に、(i)煤粒子を室温で、0.50g/cm3から1.20g/cm3の範囲の所定の密度を有する成形済み前駆体基板へと成形する工程と、(ii)成形済み前駆体基板を、蒸気存在下で熱処理して、基板を形成する工程とを更に含み、基板は、成形済み前駆体基板を熱処理する工程の後に不透明である。
【0036】
本開示の第19の態様によれば、第16または第17の態様の方法は、基板を環境に曝す工程の前に、(i)煤粒子を室温で、0.50g/cm3から1.20g/cm3の範囲の所定の密度を有する成形済み前駆体基板へと成形する工程と、(ii)成形済み前駆体基板を、蒸気存在下で熱処理して、凝集した成形済み前駆体基板を形成する工程と、(iii)凝集した成形済み前駆体基板を、金型に流れ込み、次の冷却工程で基板を形成する溶融物へと融解する工程を更に含み、曝す工程の環境の高温は、1000℃から1150℃の範囲である。
【0037】
本開示の第20の態様によれば、第18または第19の態様の方法において、成形済み前駆体基板を蒸気存在下で熱処理する工程は、成形済み前駆体基板を、0.1atmから10atmの範囲の圧力を凝集環境内で実現するように蒸気が導入された凝集環境に曝す工程を含むものである。
【0038】
本開示の第21の態様によれば、第16から第20の態様のいずれか1つの方法は、基板を環境に曝す工程の後に、基板を、少なくとも100時間、900℃から1200℃の範囲の最高温度でアニーリングする工程を更に含む。
【0039】
本開示の第22の態様によれば、第16から第21の態様のいずれか1つの方法は、基板を環境に曝す工程の後に、基板を複数の基板へとスライスする工程を更に含み、各複数の基板は、100gから1kgの範囲の質量を有する。
【0040】
本開示の第23の態様によれば、第22の態様の方法において、各複数の基板は、0.01毎平方インチ(約0.002/cm2)未満の気体包有物を含む。
【0041】
本開示の第24の態様によれば、第22の態様の方法において、各複数の基板は、気体包有物を含まない。
【0042】
本開示の第25の態様によれば、第22から第24の態様のいずれか1つの方法は、反射多層フィルムを、複数の基板の少なくとも1つの上に加える工程と、吸収部を反射多層フィルムの上に形成する工程とを更に含む。
【0043】
本開示の第26の態様によれば、第16から第25の態様のいずれか1つの方法において、基板を環境に曝す工程の前に、気体包有物は、COおよびCO2の一方または両方を含む。
【0044】
本開示の第27の態様によれば、第26の態様の方法において、基板を環境に曝す工程の前に、気体包有物は、COおよびCO2を合わせて少なくとも70モルパーセント含む。
【0045】
本開示の第28の態様によれば、第16から第27の態様のいずれか1つの方法において、高温および高圧を有する環境は、不活性ガスを含む。
【0046】
本開示の第29の態様によれば、第16から第28の態様のいずれか1つの方法において、高温は、1000℃から1800℃の範囲である。
【0047】
本開示の第30の態様によれば、第16から第29の態様のいずれか1つの方法において、高圧は、0.5kpsi(約34atm)から15kpsi(約1021atm)の範囲である。
【0048】
本開示の第31の態様によれば、第16から第30の態様のいずれか1つの方法において、時間は、少なくとも1時間である。
【0049】
本開示の第32の態様によれば、第16から第31の態様のいずれか1つの方法において、時間が始まる前で、基板を環境に置いている間に、環境の温度は、室温から高温まで、125℃/時から500℃/時の範囲の温度上昇速度で上昇する。
【0050】
本開示の第33の態様によれば、第16から第32の態様のいずれか1つの方法において、その時間が終了した後で、基板が環境内に置かれている間に、環境の温度は、高温から室温まで、125℃/時から500℃/時の範囲の温度低下速度で低下する。
【0051】
本開示の第34の態様によれば、第16から第33の態様のいずれか1つの方法において、(i)高圧は、1.3kpsi(約88atm)から1.7kpsi(約116atm)の範囲であり、(ii)高温は、1650℃から1800℃の範囲であり、(iii)時間は、8時間から12時間の範囲であり、(iv)時間が始まる前で、基板を環境に置いている間に、環境の温度は、室温から高温まで、250℃/時から350℃/時の範囲の温度上昇速度で上昇するものであり、(v)時間が終了した後で、基板を環境に置いている間に、環境の温度は、高温から室温まで、250℃/時から350℃/時の範囲の温度低下速度で低下するものである。
【0052】
本開示の第35の態様によれば、第16から第34の態様のいずれか1つの方法において、基板を環境に曝す間に、グラファイトを含む支持部は、基板を支持する。
【0053】
本開示の第36の態様によれば、第16から第35の態様のいずれか1つの方法において、基板を環境に曝す工程の後に、基板は、(i)5質量パーセントから10質量パーセントのTiO2を含む組成と、(ii)20℃で-45ppb/Kから+20ppb/Kの範囲の熱膨張率(CTE)と、(iii)10℃から50℃の範囲のクロスオーバー温度(Tzc)と、(iv)20℃で1.20ppb/K2から1.75ppb/K2の範囲のCTE勾配と、(v)140ppm未満の屈折率のばらつきと、(vi)600ppm以上のOH基濃度とを含む。
【0054】
本開示の第37の態様によれば、第16から第36の態様のいずれか1つの方法において、基板を環境に曝す工程の後に、基板は、4.60GPaから4.75GPaの範囲の硬さを含む。
【0055】
本開示の第38の態様によれば、第16から第37の態様のいずれか1つの方法において、(i)クロスオーバー温度(Tzc)は、20℃から38℃の範囲であり、(ii)20℃でのCTE勾配は、1.30ppb/K2から1.65ppb/K2の範囲であり、(iii)屈折率のばらつきは、20ppmから60ppmの範囲であり、(iv)OH基濃度は、600ppmから1400ppmの範囲である。
【0056】
本開示の第39の態様によれば、第16から第21および第26から第38の態様のいずれか1つの方法において、基板は、1kg以上の質量を更に含み、基板を環境に曝す工程の後に、基板は、更に、0.01毎平方インチ(約0.002/cm2)未満の気体包有物を含む。
【0057】
本開示の第40の態様によれば、第39の態様の方法において、基板を環境に曝す工程の後に、基板は、気体包有物を含まない。
【0058】
本開示の第41の態様によれば、第16から第21および第26から第40の態様のいずれか1つの方法は、反射多層フィルムを基板上に加える工程と、吸収部を反射多層フィルム上に形成する工程とを更に含む。
【0059】
本開示の第42の態様によれば、方法は、(i)SiO2およびTiO2を含む煤粒子を、非凝集煤粒子として形成する工程と、(ii)煤粒子を収集する工程と、(iii)煤粒子を成形済み前駆体基板へと成形する工程と、(iv)成形済み前駆体基板を蒸気存在下で熱処理して、0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)以上の気体包有物を含む基板を形成する工程と、(v)基板を、1000℃から1800℃の範囲の高温および0.5kpsi(約34atm)から15kpsi(約1021atm)の範囲の高圧を有する環境に、気体包有物の数が0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満に減少するまでの1時間から120時間の範囲の時間、曝す工程とを含む。
【0060】
本開示の第43の態様によれば、第42の態様の方法において(i)所定の時間が始まる前に、環境の温度は、室温から高温まで、基板が存在する状態で、125℃/時から500℃/時の範囲の温度上昇速度で上昇し、(ii)所定の時間が終了した後に、環境の温度は、高温から室温まで、基板が存在する状態で、125℃/時から500℃/時の範囲の温度低下速度で低下する。
【0061】
本開示の第44の態様によれば、第42または第43の態様の方法において、基板を環境に曝す工程の後に、基板は、5質量パーセントから10質量パーセントのTiO2を含む組成と、(ii)20℃で、-45ppb/Kから+20ppb/Kの範囲の熱膨張率(CTE)と、(iii)10℃から50℃の範囲のクロスオーバー温度(Tzc)と、(iv)20℃で1.20ppb/K2から1.75ppb/K2の範囲のCTE勾配と、(v)140ppm以下の屈折率のばらつきと、(vi)600ppm以上のOH基濃度と、(vii)4.60GPaから4.75GPaの範囲の硬さとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】気体包有物を僅かに有するか、全く有さず、基板をEUV利用に適するものにする超低熱膨張性の組成を有する基板の形成方法のフローチャートである。
【
図2】SiO
2およびTiO
2を含む組成を有する煤粒子を形成するシステムの概略図であえる。
【
図3】基板の形成方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図4A】基板を高温高圧の環境に、ある時間、曝す前の代表的な基板の写真であり、基板は、多数の気体包有物を有する。
【
図4B】基板を高温高圧の環境に、ある時間、曝した後の代表的な基板の写真であり、基板は、気体包有物を有さない。
【
図4C】温度および圧力を、
図4A、4Bの基板を環境に曝した時間の関数として示すグラフである。
【
図5A】実施例5Aに関し、その試料の屈折率均一性のマップを示している。
【
図5B】実施例5Bに関し、その試料の屈折率均一性のマップを示している。
【
図5C】実施例5Cに関し、その試料の屈折率均一性のマップを示している。
【
図5D】実施例5Dに関し、その試料の屈折率均一性のマップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本明細書で用いるように、「ppm」は、質量で表した百万分率を意味する。
【0064】
ここで、
図1~3を参照すると、方法10は、工程12において、(i)煤粒子16から形成された基板14であって、各煤粒子16は、SiO
2およびTiO
2を含むものであり、かつ、(ii)0.05毎平方インチ(約0.008/cm
2)以上の気体包有物18を有する基板14を、高温および高圧を有する環境20に、基板14が0.05毎平方インチ(約0.008/cm
2)未満の気体包有物18を有するようになるまでの時間、曝す工程を含む。実施形態において、基板14を環境20に曝す前に、基板14は、0.10毎平方インチ(約0.016/cm
2)以上の気体包有物18、0.20毎平方インチ(約0.031/cm
2)以上の気体包有物18、0.30毎平方インチ(約0.047/cm
2)以上の気体包有物18、0.40毎平方インチ(約0.062/cm
2)以上の気体包有物18、0.50毎平方インチ(約0.078/cm
2)以上の気体包有物18、0.60毎平方インチ(約0.093/cm
2)以上の気体包有物18、0.70毎平方インチ(約0.109/cm
2)以上の気体包有物18、0.80毎平方インチ(約0.124/cm
2)以上の気体包有物18、0.90毎平方インチ(約0.140/cm
2)以上の気体包有物18、または、1.0毎平方インチ(約0.155/cm
2)以上の気体包有物18を有する。実施形態において、基板14を環境20に曝す前に、基板14は、0.05毎平方インチ(約0.008/cm
2)の気体包有物18、0.10毎平方インチ(約0.016/cm
2)の気体包有物18、0.20毎平方インチ(約0.031/cm
2)の気体包有物18、0.30毎平方インチ(約0.047/cm
2)の気体包有物18、0.40毎平方インチ(約0.062/cm
2)の気体包有物18、0.50毎平方インチ(約0.078/cm
2)の気体包有物18、0.60毎平方インチ(約0.093/cm
2)の気体包有物18、0.70毎平方インチ(約0.109/cm
2)の気体包有物18、0.80毎平方インチ(約0.124/cm
2)の気体包有物18、0.90毎平方インチ(約0.140/cm
2)の気体包有物18、1.0毎平方インチ(約0.155/cm
2)の気体包有物18、2.0毎平方インチ(約0.31/cm
2)の気体包有物18、4.0毎平方インチ(約0.62/cm
2)の気体包有物18、または、これらの値の任意の2つによって画定される範囲内の数の気体包有物18(例えば、0.10から1.0毎平方インチ(約0.016から約0.155/cm
2)の気体包有物18、0.30から4.0毎平方インチ(約0.047から約0.62/cm
2)の気体包有物18など)を有する。耐圧室21が、環境20を提供しうる。
【0065】
本開示の目的のために、「気体包有物」は、(i)基板14内に位置して、(ii)少なくとも50μmの寸法を有する気泡を意味する。1平方インチ毎の気体包有物18の数を、下方および側面からの照明下で基板全体を視覚的に検査することで特定しうる。気体包有物18は、約50μmの寸法を有する場合に、視覚的に検出可能になる。略球状の気体包有物18について、寸法は、気体包有物18の直径である。細長い気体包有物18について、寸法は、気体包有物18の長軸である。白色光を用いた光学顕微鏡を使って、任意の特定の気体包有物18の寸法の値を特定しうる。但し、気体包有物18を、光学顕微鏡の助けなしで視認可能な場合には、気体包有物18は少なくとも50μmの寸法を有すると推定しうる。
【0066】
方法10の工程12において、基板14を環境20に曝した後に、基板14は、0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物18を有する。実施形態において、方法10の工程12において、基板14を環境20に曝した後に、基板14は、0.04毎平方インチ(約0.006/cm2)未満の気体包有物18、0.03毎平方インチ(約0.005/cm2)未満の気体包有物18、または、0.02毎平方インチ(約0.003/cm2)未満の気体包有物18を有する。実施形態において、方法10の工程12において、基板12を環境20に曝した後に、基板14は、0.01毎平方インチ(約0.002/cm2)未満の気体包有物18を有する。実施形態において、方法10の工程12において、基板14を環境20に曝した後に、基板14は、気体包有物18を有さない。
【0067】
実施形態において、基板14は、1kg以上の質量を有する。実施形態において、基板14は、1kgから5kg、1kgから50kg、または、5kgから50kgの質量を有する。実施形態において、基板14は、1kg、2kg、3kg、5kg、10kg、15kg、20kg、25kg、30kg、35kg、40kg、45kg、50kg、または、これらの値の任意の2つの間の任意の範囲内(例えば、10kgから25kg、15kgから45kgなど)の質量を有する。基板14の質量は、質量計を用いて特定しうる。実施形態において、基板14は、1kg以上の質量を有し、方法10の工程12において、基板14を環境20に曝した後に、基板14は、気体包有物18を含まないか、0.01毎平方インチ(約0.002/cm2)の気体包有物18から0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)の気体包有物を有するなど、0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物を有する。実施形態において、基板14は、1kgから5kgの範囲の質量を有し、方法10の工程12において、基板14を環境20に曝した後に、基板14は、気体包有物18を含まないか、0.01毎平方インチ(約0.002/cm2)の気体包有物18から0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物を有するなど、0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物を有する。
【0068】
実施形態において、気体包有物18は、COおよびCO2の一方または両方を含む。実施形態において、気体包有物18は、COおよびCO2を合わせて少なくとも70モルパーセント含む。実施形態において、気体包有物18は、N2を、単独で、または、COおよびCO2の一方または両方に追加で含む。COおよび/またはCO2が存在するのは、少なくとも部分的には、煤粒子16を形成する間に燃料が燃焼した結果によると考えられるが、更に後述する。気体包有物18内の気体は、大気圧近くの圧力である。
【0069】
実施形態において、高温および高圧を有する環境20は、不活性ガスを含む。「不活性ガス」は、基板14と化学反応しない気体を意味する。実施形態において、不活性ガスは、希ガスの1つ以上である。実施形態において、不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、および、キセノンの1つ以上である。実施形態において、不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、または、キセノンである。実施形態において、不活性ガスは、アルゴンである。
【0070】
実施形態において、高圧は、0.5kpsi(約34atm)から15kpsi(約1021atm)の範囲である。実施形態において、高圧は、1.4kpsi(約95atm)から15kpsi(約1021atm)の範囲である。実施形態において、高圧は、0.5kpsi(約34atm)、0.6kpsi(約41atm)、0.7kpsi(約48atm)、0.8kpsi(約54atm)、0.9kpsi(約61atm)、1.0kpsi(約68atm)、1.1kpsi(約75atm)、1.2kpsi(約82atm)、1.3kpsi(約88atm)、1.4kpsi(約95atm)、1.5kpsi(約102atm)、2kpsi(約136atm)、3kpsi(約204atm)、4kpsi(約272atm)、5kpsi(約340atm)、6kpsi(約408atm)、7kpsi(約476atm)、8kpsi(約544atm)、9kpsi(約612atm)、10kpsi(約680atm)、11kpsi(約749atm)、12kpsi(約817atm)、13kpsi(約885atm)、14kpsi(約953atm)、15kpsi(約1021atm)、または、これらの値の任意の2つによって画定される範囲内(例えば、0.8kpsi(約54atm)から15kpsi(約1021atm)、2kpsi(約136atm)から10kpsi(約680atm)、6kpsi(約408atm)から12kpsi(約817atm)など)である。本明細書に開示の全ての圧力は、ゲージ圧である。
【0071】
実施形態において、高温は、1000℃から1800℃の範囲である。実施形態において、高温は、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、1400℃、1500℃、1600℃、1601℃、1650℃、1700℃、1750℃、1775℃、1800℃、または、これらの値の任意の2つの間の任意の範囲内(例えば、1100℃から1700℃、1300℃から1400℃、1601℃から1800℃など)である。
【0072】
実施形態において、基板14は、環境20に、少なくとも1時間、曝される。実施形態において、基板14は、環境20に、1時間から120時間の範囲の時間、曝される。実施形態において、時間は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間、108時間、120時間、または、これらの値の任意の2つの間の任意の範囲内(例えば、1時間から24時間、10時間から108時間、11時間から36時間、24時間から120時間など)である。実施形態において、グラファイトを含む支持部22は、基板14を環境20に曝す工程の間、基板14を支持する。
【0073】
実施形態において、(i)高圧は、1.3kpsi(約88atm)から1.7kpsi(約116atm)の範囲であり、(ii)高温は、1650℃から1800℃の範囲であり、(iii)時間は、8時間から12時間の範囲であり、(iv)その時間が始まる前に、基板が環境内に置かれている間に、環境の温度は、室温から高温まで、250℃/時から350℃/時の範囲の温度上昇速度で上昇し、(v)その時間が終了した後で、基板が環境内に置かれている間に、環境の温度は、高温から室温まで、250℃/時から350℃/時の範囲の温度低下速度で低下する。実施形態において、(i)高圧は、13kpsi(約885atm)から17kpsi(約1157atm)の範囲であり、(ii)高温は、1650℃から1800℃の範囲であり、(iii)時間は、8時間から12時間の範囲である。実施形態において、(i)高圧は、1000atm(約14.7kpsi)であり、(ii)高温は、1750℃であり、(iii)時間は、10時間である。温度が高いほど、より低い圧力に適応しうる。圧力が高いほど、より低い温度に適応しうる。より低い温度とより低い圧力が組み合わさると、基板14から気体包有物18の除去が不十分になる、つまり、900℃から1000℃の高温が、15kpsi(約1021atm)の高圧と組み合わさると、削減される気体包有物18の数が基板14を通して不十分だったことが分かった。同様に、1100℃の高温が、1.5kpsi(約102atm)の高圧と組み合わさると、削減される気体包有物18の数が基板14を通して不十分だった。
【0074】
実施形態において、その時間が始まる前に、基板が環境内に置かれている間に、環境20の温度は、室温から高温まで、150℃/時から500℃/時の範囲の温度上昇速度で上昇する。実施形態において、温度上昇速度は、150℃/時、200℃/時、250℃/時、300℃/時、350℃/時、400℃/時、450℃/時、500℃/時、または、これらの値の任意の2つによって画定される任意の範囲内(例えば、250℃/時から350℃/時、200℃/時から300℃/時など)である。実施形態において、所定の時間が終了した後で、基板14が環境20内に置かれている間に、環境20の温度は、高温から室温まで、150℃から500℃/時の範囲の温度低下速度で低下する。実施形態において、温度低下速度は、150℃/時、200℃/時、250℃/時、300℃/時、350℃/時、400℃/時、450℃/時、500℃/時、または、これらの値の任意の2つによって画定される任意の範囲内(例えば、250℃/時から350℃/時、200℃/時から300℃/時など)である。実施形態において、温度上昇速度は、温度低下速度と同じである。他の実施形態において、温度上昇速度は、温度低下速度と異なる。実施形態において、15kpsi(約1021atm)の高圧、1750℃の高温、10時間という時間、300℃/時の温度上昇速度および温度低下速度であれば、基板14が約6kgの質量を有する場合に、結果的に、約1mmから2mm以下の範囲の寸法を有する略全て気体包有物18を除去する。
【0075】
基板14を高圧および高温を有する環境20に曝す工程12を、「熱間等方圧加圧」と称することもある。理論に縛られる訳ではないが、高温および高圧が、気体包有物18内の気体を拡散させるか、または、シリカ‐チタニアガラスの中に溶解させると考えられる。気体の拡散または溶解は、気体包有物18の寸法を、光学的拡大をせずに視認可能な寸法より小さい寸法まで(つまり、約50μm未満の寸法を有するまで)、または、完全に崩壊するまで減少させる。より具体的には、環境20が気体包有物18に加える圧力が、気体包有物18の寸法を減少させ、それにより、環境20の圧力と等しくなるまで圧力を高めると考えられる。更に、気体包有物18内の圧力が上昇することで、気体包有物18内の気体(例えば、CO、CO2、N2)の平衡溶解度を高め、気体の分子が気体包有物18を出て、シリカ‐チタニアガラス構造に入る。分子が外に出ることで、気体包有物18の圧力を低下させ、更に、気体包有物18の寸法を減少させる。この拡散または溶解は、気体包有物18が完全に崩壊するまで続きうる。
【0076】
実施形態において、方法10は、更に、工程24において、基板14を環境20に曝す工程12の前に、(i)煤粒子16を、非凝集煤粒子16として形成する工程と、(ii)煤粒子16を収集する工程とを含む。特に
図2を参照すると、煤粒子16を、非凝集煤粒子16として形成するために、システム26を用いうる。システム26は、シリカ前駆体30の供給源28を含む。供給源28は、窒素などのキャリアガスの投入口32を、供給源28の基部か、その近くに有して、シリカ前駆体30の蒸気流を形成する。キャリアガスの迂回流を、他の投入口34で導入して、蒸気流の飽和を防ぐ。蒸気流は、分布システム36を通ってマニホールド38に送られる。
【0077】
システム26は、更に、チタニア前駆体42の供給源40を含む。供給源40も、チタニア前駆体42を通って送られるキャリアガスの投入口44を有し、チタニア前駆体42の蒸気流を形成する。キャリアガスの迂回流は、他の投入口46で導入される。蒸気流は、他の分布システム48を通ってマニホールド38に送られる。
【0078】
シリカ前駆体30の蒸気流とチタニア前駆体42の蒸気流は、マニホールド38で混合されて、2つの蒸気流の混合物を形成する。混合物は、ヒューム管路50を通って、炉54の上側部分に載置されたバーナー52に送られる。2つの蒸気流の混合物は、更に、バーナー52において、燃料/酸素混合物と合わさる。燃料は、天然ガスでありうる。混合物は燃焼し、1600℃を超える温度で酸化して、非凝集煤粒子16を形成し、各煤粒子16は、SiO2およびTiO2を含む。換言すれば、二酸化ケイ素と二酸化チタンは、原子レベルで混合されて、各煤粒子16においてSi‐O‐Ti結合を形成する。各煤粒子16は、追加で、二酸化ケイ素の領域および二酸化チタンの領域を含む。非凝集煤粒子16は冷却されて、収集室56に向けられ、そこで、煤粒子16の収集を生じる。代表的なシリカ前駆体30は、SiCl4、および、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)を含む。代表的なチタニア前駆体42は、TiCl4、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)、および、チタン酸テトライソプロピル(TPT)を含む。シリカ前駆体30の蒸気流とチタニア前駆体42の蒸気流の相対流速は、望ましい質量パーセントのTiO2を有する基板14を製造するための煤粒子16を形成するように選択される。実施形態において、シリカ前駆体30の蒸気流とチタニア前駆体42の蒸気流の相対流速を設定して、結果的に、基板14が5質量パーセントから10質量パーセントのTiO2を含むようにする。煤粒子16および結果的に得られる基板14中のTiO2の質量パーセントを、X線蛍光(「XRF」)を介して特定しうる。
【0079】
他の実施形態において、上記のように垂直に下方に向かって落下する煤粒子16の代わりに、煤粒子16を、石英管58を通って上方に向けて、その場合に、流れは、煤粒子16を、煤粒子16を除去するように設計された1つ以上のフィルターバッグ60に運ぶ。N2パルスを、周期的にフィルターバッグ60に与えて、煤粒子16がフィルターバッグ60上に過剰に蓄積するのを防ぐ。煤粒子16は、1つ以上の各フィルターバッグ60から1つ以上の収集室56’の中に落下し、各収集室56’は、個々のフィルターバッグ60の下に配置されたステンレスホッパーでありうる。次に、煤粒子16は更にステンレスホッパーから、55ガロン(約208リットル)缶の中に収集されて、更に後述するような成形済み前駆体基板62へと成形されるまで、そこに保存される。
【0080】
実施形態において、煤粒子16は、収集室56、56’に達する前に、約200℃以下まで冷却される。実施形態において、煤粒子16は、収集室56、56’から取り出される前に、室温まで冷却される。実施形態において、煤粒子16は、球状である。実施形態において、煤粒子は、ブルナウアー エメット テラー(「BET」)理論により決定された80m2/g未満、70m2/g未満、60m2/g未満、または、50m2/g未満の特定の表面積を有する。実施形態において、煤粒子は、ブルナウアー エメット テラー(「BET」)理論により決定された10m2/g、20m2/g、30m2/g、40m2/g、50m2/g、60m2/g、70m2/g、80m2/g、または、これらの値の任意の2つによって画定される任意の範囲内(例えば、10m2/gから60m2/g、20m2/gから70m2/gなど)の特定の表面積を有する。
【0081】
バーナー52での燃料は、典型的には、炭素系なので、煤粒子16は、SiO2およびTiO2に追加で、COおよびCO2を更に含む組成を有する。このCOおよびCO2は、基板14を高温および高圧を有する環境20に曝す工程12の前に基板14に気体包有物18が存在することに寄与する1つの原因である。これは、背景技術の段落で記載した「直接ガラスに」処理を介して形成した基板と相違する点であり、「直接ガラスに」処理は、典型的に気体包有物18を生じず、仮に存在したとしても、「直接ガラスに」処理で生成された気体包有物18は、概して、O2を含み、COおよびCO2を含まない。
【0082】
実施形態において、方法10は、基板14を環境20に曝す前に、更に、(i)工程64において、煤粒子16を、室温で、0.50g/cm3から1.20g/cm3の範囲の所定の密度を有する成形済み前駆体基板66へと成形する工程と、(ii)工程68において、成形済み前駆体基板66を、蒸気存在下で、熱処理して、凝集した成形済み前駆体基板70を形成する工程とを含む。煤粒子16を成形済み前駆体基板へと成形するために、煤粒子16を収集室56、56’から取得し、次に、金型に送る。金型は、成形済み前駆体基板66として望ましい形状を煤粒子16に与える形状を有する。成形済み前駆体基板66を、「煤ブランク」と称することもある。実施形態において、金型は、円筒状(例えば、内径10インチ(約25.4cm))で、グラファイトを含み、煤粒子16は、成形済み前駆体基板66が0.50g/cm3から1.20g/cm3の範囲の密度を有するまで、単軸方向に押圧される。実施形態において、煤粒子16は、0.50g/cm3、0.60g/cm3、0.70g/cm3、0.80g/cm3、0.90g/cm3、1.00g/cm3、1.10g/cm3、1.20g/cm3、または、これらの値の任意の2つによって画定される任意の範囲内(例えば、0.70g/cm3から1.10g/cm3、0.80g/cm3から1.00g/cm3など)の密度を有するまで、単軸方向に押圧される。押圧機構は、密度を特定するのに用いられる超音波ゲージを含みうる。煤密集体を、超音波ゲージで測定して所定の密度まで押圧すると、押圧プレートの移動を停止しうる。実施形態において、一定の押圧速度を用いて、次に、保持を延長する。窒素は、グラファイト金型の燃焼を防ぐ。金型は、実施形態において円筒状である成形済み前駆体基板66の形状を画定する。
【0083】
成形済み前駆体基板66を蒸気存在下で熱処理して、凝集した成形済み前駆体基板70を形成する方法10の工程68を、「凝集」と称しうる。工程68において、成形済み前駆体基板66を、高温の空気または不活性ガスを用いた凝集環境を提供する炉の中に配置して、成形済み前駆体基板66に存在する気体の少なくとも一部をパージし除去する。凝集環境内の高温は、100℃から900℃の範囲、200℃から700℃の範囲、または、300℃から600℃の範囲でありうる。
【0084】
炉内の凝集環境は、次に、一定の速度で流れる蒸気によって蒸気に変化して、炉内において、0.1atmから10atmの範囲、または、0.5atmから5.0atmの範囲、または、0.7atmから2.5atmの範囲、または、0.9から1.3atmの範囲の圧力など、10気圧までの圧力を実現する。凝集環境の温度は、900℃から1850℃の範囲、900℃から1700℃の範囲、900℃から1500℃の範囲、または、900℃から1300℃の範囲である。成形済み前駆体基板66を凝集環境に曝す時間は、少なくとも0.5時間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、または、少なくとも5時間でありうる。これにより、成形済み前駆体基板66は、密集して、凝集した成形済み前駆体基板70になる。実施形態において、凝集した成形済み前駆体基板70は、成形済み前駆体基板66を蒸気存在下で熱処理する工程68の後に、不透明である。
【0085】
実施形態において、成形済み前駆体基板66を蒸気存在下で熱処理(つまり、凝集)して、凝集した成形済み前駆体基板70を形成する工程68の後に、凝集した成形済み前駆体基板70は、工程12において高圧および高温の環境20に曝される基板14である。
【0086】
他の実施形態において、成形済み前駆体基板66を蒸気存在下で熱処理(つまり、凝集)する工程68の後で、基板14を環境20に曝す前に、方法10は、工程71において、凝集した成形済み前駆体基板66を、金型に流れ込み、次の冷却工程で基板14を形成する溶融物へと融解する工程を更に含む。実施形態において、金型は、グラファイトを含む。この融解処理を、N2雰囲気を有するグラファイト炉内で行う。炉内の凝集した成形済み前駆体基板70の周りの温度は、少なくとも凝集した成形済み前駆体基板70の融点まで徐々に上昇する。凝集した成形済み前駆体基板70は融解されて、金型によって画定される形状になる。冷却されると、基板14が形成される。基板14は、蒸気存在下で凝集する工程68の間に不透明性を失う。しかしながら、ここでも、基板14を通して、気体包有物18が形成されている。基板14の外面は、金型のグラファイトに接触することで、変色を生じうる。変色は、機械加工または切断を介して除去しうる。
【0087】
既に記載したように、実施形態において、基板14を環境20に曝す間の高温は、1000℃から1800℃の範囲である。実施形態において、工程71を用いて凝集した成形済み前駆体基板70を融解させた場合には、高温範囲の低温部分(例えば、1000℃から1200℃の範囲、または、1000℃から1150℃の範囲)を用いて、その後、冷却して基板14を形成する。工程71を用いずに、凝集した成形済み前駆体基板70が、工程12で高温および高圧を有する環境20に曝す基板14の場合、高温範囲の低温部分では、典型的には、気体包有物18を崩壊させず、高温範囲の高温部分(例えば、1700℃から1800℃の範囲)を用いて、気体包有物18を崩壊させるべきである。
【0088】
実施形態において、基板14を環境20に曝した後に、方法10は、更に、基板14をアニーリングする工程72を含む。基板14をアニーリングする工程は、基板14の内部応力を緩和する。内部応力が緩和することで、基板14を(更に後述するように)EUV利用で用いるのに適する複数の基板14a、14b...14nへとスライスするなどで、より質の高い切断および機械加工が可能になる。更に、基板14をアニーリングする工程72は、基板14のクロスオーバー温度を低下させ、基板14のCTE勾配を平坦にする。アニーリング時間が長いほど、基板14のCTE勾配は平坦になる。実施形態において、基板14をアニーリングする工程72は、少なくとも100時間、900℃から1200℃の範囲の最高温度を用いてアニーリングする工程を含む。実施形態において、基板14をアニーリングする工程72は、少なくとも250時間、900℃から1000℃の範囲の最高温度を用いてアニーリングする工程を含む。
【0089】
このように、基板14は、シリカ‐チタニア基板である。基板14は、5質量パーセントから10質量パーセントのTiO2、および、90質量パーセントから95質量パーセントのSiO2を含む組成を含む。実施形態において、基板14の組成は、更に、0.001から0.01質量パーセントの炭素を含む。基板14に炭素が存在するのは、COおよびCO2の分子が気体包有物18から基板14へ拡散した結果である。基板14の組成は、従来から知られた量的分析技術を用いて特定される。適した技術は、8より大きい原子番号の元素にはX線蛍光分光法(XRF)、並びに、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分光法(ICP-MS)、および、電子マイクロプローブ分析である。例えば、J.Nolte、ICP Emission Spectrometry:A Practical Guide、Wiley-VCH(2003)、H.E.Taylor、Inductively Coupled Plasma Mass Spectroscopy:Practices and Techniques、Academic Press(2000)、および、S.J.B.Reed、Electron Microprobe Analysis、Cambridge University Press;第2版(1997)を参照のこと。各元素について、約10分の分析時間について、電子マイクロプローブ分析を用いて、約200ppmのF、並びに、約20ppmのCl、Br、Fe、および、Snの検出限界を容易に実現しうる。微量の元素については、ICP-MSが好ましい。実施形態において、基板14は、更に、鉄を含む1つ以上の固体包有物を含む。実施形態において、基板14は、更に、鉄、クロム、ジルコニウム、鉄の酸化物、クロムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、および、クリストバライトの1つ以上を含む1つ以上の固体包有物を含む。
【0090】
基板14を環境20に曝した後に、基板14は、基板14をEUVリソグラフィで用いるのに適するようにする超低膨張性を有する。実施形態において、基板14は、方法10の後に、20℃で、-45ppb/Kから+20ppb/Kの範囲のCTEを含む。実施形態において、基板14は、方法10の後に、20℃で、-45ppb/K、-40ppb/K、-35ppb/K、-30ppb/K、-25ppb/K、-20ppb/K、-15ppb/K、-10ppb/K、-5ppb/K、0ppb/K、+5ppb/K、+10ppb/K、+15ppb/K、+20ppb/K、または、これらの値の任意の2つによって画定された任意の範囲内(例えば、-40ppb/Kから-25ppb/K、-15ppb/Kから+15ppb/Kなど)のCTEを含む。
【0091】
室温で超低CTEを有することは、基板14の形状を、ミラーまたはフォトマスクのいずれに形成された場合で、EUVリソグラフィ処理の間に加熱されても略一定に保つために重大である。基板14のCTEは、「Apparatus and Method for the Determination of the Absolute Coefficient of Thermal Expansion in Ultralow Expansion Materials」という名称の米国特許第10458936号明細書に記載の方法10によって特定され、その開示は、本明細書に参照により全体として組み込まれる。その技術を簡単に説明すると、以下の通りである。
【0092】
全ての試料の熱膨張率を、Compact High Resolution Dilatometer(CHRD)を用いて測定した。測定は、試料温度を、約25℃から70℃の範囲で段階的に変化させる工程、および、各設定点で、試料の長さを光学干渉法によって測定する前に、試料温度を安定させる工程から構成される。機器の不安定性により生じるシステムエラーを最小にするために、試料を機器から隔てるように注意する。全測定を高真空(<5×10-5hPa)で行って、干渉計に対する環境の影響を防ぎ、より良い温度制御を実現する。
【0093】
試料温度を、試料に熱的に密着した白金抵抗センサを用いて測定する。センサは、NISTトレーサブル規格を満たすように較正されたもので、抵抗測定を、研究グレードの極低温コントローラを用いて行う。
【0094】
CTEの誤差は、原則的に機器の安定性に関連するシステムの影響を受け易いΔLの測定値によって支配され、これらの影響を最小化して補正することが、CHRD機器の開発の焦点だった。米国特許第10458936号明細書に記載のように、ある冗長量を有して取得されたデータにアルゴリズムを用いて、データを補正し、測定は、単調増加する温度の関数としてではなく、交互に上昇低下する試料温度の関数として行われて、それにより、機器のドリフトを検出して補正可能にする。
【0095】
データを補正してから、長さ変化(ΔL)の温度依存度を、式(1)を用いて温度でフィッティングし、尚、「*」は、掛けるの意味である:
【0096】
【0097】
但し、
sLength=フィッティングしていない測定した試料長さ、
CTE20=フィッティングパラメータ(ppb/℃で表した20℃での試料のCTE)、
Slope=フィッティングパラメータ(ppb/℃2で表した20℃でのCTE勾配)、
T=℃で表した測定した試料温度である。
【0098】
長さ変化の式(1)は、式(2)によって与えられる約0℃から約80℃の範囲で有効な「ULE」ガラスのCTE(T)の簡略な二次式から導出される:
【0099】
【0100】
CTE20およびSlopeは、試料特有のパラメータであり、この測定の結果、得られたものである。CTEの式における二次項の係数は、「ULE」ガラスおよび同様の組成のSiO2-TiO2ガラスについて普遍であり、データ処理においてフィッティングしていない。尚、フィッティングは、長さ測定値の基準値に基づく長さのオフセットも含み、したがって、長さの相対変化だけに関するCTE測定とは無関係であることに留意すべきである。
【0101】
実際に使用する観点から、重要なガラスのパラメータは、CTE(T)曲線のゼロクロスオーバー(Tzc)温度であり、フィッティングしたCTE20およびSlopeの値を用いて、式(3)を使って計算しうる:
【0102】
【0103】
実施形態において、基板14は、方法10の後に、10℃から50℃の範囲のクロスオーバー温度(Tzc)を含む。実施形態において、基板14は、方法10の後に、20℃から38℃の範囲、または、22℃から38℃の範囲のクロスオーバー温度(Tzc)を含む。実施形態において、基板14は、方法10の後に、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、または、これらの値の任意の2つによって画定される任意の範囲内(例えば、15℃から40℃、20℃から45℃など)のクロスオーバー温度(Tzc)を含む。クロスオーバー温度は、基板14のCTEが丁度ゼロの時の温度である。基板14をEUVリソグラフィ利用で用いる場合、リソグラフィ処理中の基板14の熱膨張を最小にするために、理想的には、クロスオーバー温度は基板14が経験すると予想される温度以内である。EUVリソグラフィシステムの設計者は、システムでの各基板14について最適なクロスオーバー温度を、システムが対処しうる熱負荷、サイズ、および、熱除去速度に基づいて計算する。基板14のクロスオーバー温度は、更に、上記米国特許第10458936号明細書に記載の技術によって決定される。
【0104】
実施形態において、基板14は、方法10の後に、20℃で、1.20ppb/K2から1.75ppb/K2の範囲のCTE勾配を有する。実施形態において、基板14は、方法10の後に、20℃で、1.20ppb/K2、1.25ppb/K2、1.30ppb/K2、1.35ppb/K2、1.40ppb/K2、1.45ppb/K2、1.50ppb/K2、1.55ppb/K2、1.60ppb/K2、1.65ppb/K2、1.70ppb/K2、1.75ppb/K2、または、これらの値の任意の2つによって画定される任意の範囲内(例えば、1.30ppb/K2から1.65ppb/K2の範囲、1.35ppb/K2から1.75ppb/K2の範囲など)のCTE勾配を有する。基板14のCTE勾配は、基板の温度の関数としての基板14のCTEの変化率である。基板14を、EUVリソグラフィ利用で用いる場合、理想的には、CTE勾配を最小にして、基板14が、EUVリソグラフィ処理中の基板14の温度の変動により生じる最小の熱膨張を経験するようにする。更に、CTE勾配を、上記米国特許第10458936号明細書に記載の技術によって測定する。
【0105】
本明細書で用いるように、「屈折率のばらつき」という用語は、所定の方向に沿った基板14の試料の光軸に垂直な平面で測定した屈折率の最大変化量を意味する。屈折率を、室温で、633nmの波長(He-Neレーザ)で動作するZygo干渉計を用いて測定した。測定のサンプリング領域は、269マイクロメートル×269マイクロメートルだった。各サンプリング領域について、試料の全厚さに亘って平均屈折率測定値を取得した。サンプリング領域を、試料の全表面に亘って走査して、一連の測定で取得される最大屈折率の値と最小屈折率の値の差として画定される屈折率の最大変化量を特定するのに用いる一連の局所屈折率の値を取得した。屈折率のばらつきを特定するための試料は、6インチ(約15.24cm)×6インチ(約15.24cm)×0.25インチ(約0.64cm)(厚さ)の寸法を有し、意図した光軸に垂直にして測定した。屈折率のばらつきを測定する場合、基板14の試料は、均一な厚さを有する。約633nm(He-Neレーザ)での干渉法は、試料に亘る屈折率のばらつきマップを提供するのに有用であることを示した。当業者が典型的に行うように、ある方向に沿った屈折率のばらつきを記載する場合、傾き、および、ピストン分を引く。したがって、本開示の意味において、ある方向に沿った(試料の半径方向などの)屈折率のばらつきは、傾きもピストンも含まない。干渉法測定を準備する時に、基板14の試料を、熱的に安定させる。基板14の表面を、研磨するか、屈折率マッチングオイルを用いて透明にする。干渉計空洞部の全ての光学要素の表面形状、および、試料の屈折率のばらつきは、干渉計で測定した全波面歪みを生じさせる。屈折率のばらつきを、試料から測定した最高屈折率と最低屈折率の差として計算する。
【0106】
屈折率のばらつきは、TiO2濃度のばらつきと相関する。更に、基板14内の屈折率のばらつきは、基板14内のCTEのばらつきと相関する。したがって、屈折率のばらつきが大きいほど、基板14の温度が上昇する時に、より不均一に基板14が膨張する(基板14の温度が低下する時に、より不均一に基板14が収縮する)。
【0107】
実施形態において、基板14は、方法10の後に、140ppm以下の屈折率のばらつきを有する。実施形態において、基板14は、方法10の後に、60ppm以下の屈折率のばらつきを有する。実施形態において、基板14は、方法10の後に、130ppm以下、120ppm以下、110ppm以下、100ppm以下、90ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、または、30ppm以下の屈折率のばらつきを有する。実施形態において、基板14の屈折率のばらつきは、20ppmから140ppmである。実施形態において、基板14の屈折率のばらつきは、20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、100ppm、110ppm、120ppm、130ppm、140ppm、または、これらの値の任意の2つによって画定される任意の範囲内(例えば、20ppmから60ppm、30ppmから110ppmなど)である。
【0108】
実施形態において、基板14は、方法10の後に、600ppmから1400ppmの範囲など、600ppm以上のOH基濃度を有する。実施形態において、基板14は、方法10の後に、600ppm、700ppm、800ppm、900ppm、1000ppm、1100ppm、1200ppm、1300ppm、1400ppm、または、これらの値の任意の2つによって画定される任意の範囲内(例えば、700ppmから1200ppmの範囲、または、600ppmから1200ppmの範囲)のOH基濃度を有する。本明細書で用いるように、OH基濃度は、試料の測定値の平均である。成形済み前駆体基板66を蒸気存在下で凝集させて、凝集した成形済み前駆体基板70を形成する方法10の工程68の間に、水酸(OH)基は基板14に入り込みうる。水酸基を含むことは、粘度の低下につながる。粘度の低下は、冷却された時に、より完全な構造緩和を促進して、基板14の仮想温度を低下させる。基板14のようなシリカ‐チタニアガラスの仮想温度は、CTE勾配と相関すると考えられる。低い仮想温度は、低いCTE勾配につながる。基板14の試料におけるOH基濃度は、フーリエ変換赤外線(「FTIR」)分光法を用いて測定される。試料は、6mmの経路長を有し、両方の主面は研磨されて、測定の直前に、試料は有機溶剤で清浄にされる。OH基は、高シリカ含有量のガラスにおいて、3600cm-1および4500cm-1近くに特徴的吸収帯域を有する。3600cm-1吸収帯域のピーク近くの透過率を測定し、(4000cm-1近くの非吸収波長における背景強度を占める)基準透過率との比を求める。透過率を、ランベルト‐ベールの法則と共に用いて、OH濃度を取得する。より具体的には、モル・リットル-1で表したOH濃度cを、ランベルト‐ベールの法則から導出する。
【0109】
【0110】
但し、
【0111】
【0112】
であり、εは、リットル・モル-1・cm-1で表したモル吸光度であり、cは、モル・リットル-1で表した濃度であり、bは、cmで表した経路長(試料厚さ)である。
【0113】
したがって、濃度は、
【0114】
【0115】
である。
【0116】
したがって、質量ppmで表したOH濃度は、モル・リットル-1で表したcから、ガラスの密度、および、OHの分子量を用いて計算しうる。K.M.Davisら、「Quantitative Infrared Spectroscopic Measurement of Hydroxyl Concentration in Silica Glass」、J.Non-Crystalline Solids、203(1996)27-36において、高純度シリカガラスについて、特定の波長(約3670cm-1など)における定数εが入手可能である。
【0117】
実施形態において、基板14は、方法10の後に、4.60GPaから4.75GPaの範囲の硬さを更に含む。実施形態において、硬さは、4.60GPa、4.61GPa、4.62GPa、4.63GPa、4.64GPa、4.65GPa、4.66GPa、4.67GPa、4.68GPa、4.69GPa、4.70GPa、4.71GPa、4.72GPa、4.73GPa、4.74GPa、4.75GPa、または、これらの値の任意の2つによって画定される任意の範囲内(例えば、4.62GPaから4.73GPaの範囲、4.61GPaから4.69GPaの範囲など)である。本開示の目的では、硬さを、「Standard Test Method for Knoop Indentation Hardness of Glass」という名称のASTM C730を介して特定する。硬さを、200gの荷重を用いて測定し、試料に沿って5か所で測定した。試料は、30mm×50mm×4mmだった。測定は、試料の中心近くで、200μmから500μmの測定間隔で行われた。5つの測定結果を平均して、試料の硬さを取得した。更に後述するように、驚くべきことに、方法10は、同様の組成であるが、背景技術の段落に記載した「直接ガラスに」方法など、異なる処理を介して製造された基板の硬さより低い範囲の特徴的な硬さを有する基板14を生成した。硬さが低下するので、基板14を、より効果的に研磨して、不規則性を削減した表面にし、したがって、EUVリソグラフィ中に、より短い波長を用いて、シリコンウエハ上により細い線幅を転写可能になる。理論に縛られる訳ではないが、硬さの低下は、方法10の工程12の結果、一酸化炭素および二酸化炭素分子が拡散して、ガラスの中に溶解したからであると考えられる。
【0118】
実施形態において、方法10は、工程74において、工程12で基板を環境20に曝し、工程72で基板14をアニーリングした後に、基板14を複数の基板14a、14b...14nへとスライスする(
図3を参照)工程を更に含む。実施形態において、各複数の基板14a、14b...14nは、100gから1キログラムの質量、および、0.01毎平方インチ(約0.002/cm
2)から0.49毎平方インチ(約0.076/cm
2)の範囲など、0.05毎平方インチ(約0.008/cm
2)未満の気体包有物を有する。実施形態において、各複数の基板14a、14b...14nは、500gから1キログラムの質量を有し、気体包有物18を含まない。実施形態において、各複数の基板14a、14b...14nは、(i)100g、200g、300g、400g、500g、600g、700g、800g、900g、1kg、または、これらの値の任意の2つによって画定された任意の範囲内(例えば、100gから700gの範囲、200gから900gの範囲など)の質量を有し、(ii)0.01毎平方インチ(約0.002/cm
2)未満の気体包有物18以下など、0.05毎平方インチ(約0.008/cm
2)未満の気体包有物を有するか、気体包有物18を含まない。基板14が複数の基板14a、14b...14nへとスライスされる前に、約0.06毎平方インチ(約0.009/cm
2)の気体包有物18を有する場合、気体包有物18がランダムに分布すると仮定すると、(全部で8枚と仮定した)スライスした複数の基板14a、14b...14nの約50%は、気体包有物18を含まないものとなりうる。基板14が複数の基板14a、14b...14nへとスライスされる前に、約0.01毎平方インチ(約0.002/cm
2)の気体包有物18を有する場合、気体包有物18がランダムに分布すると仮定すると、(全部で8枚と仮定した)スライスした複数の基板14a、14b...14nの約87.5%は、気体包有物18を含まないものとなりうる。当然、基板14が複数の基板14a、14b...14nへとスライスされる前に、1平方インチ毎に気体包有物18を殆ど有さない場合、全てのスライスした複数の基板14a、14b...14nは、気体包有物18を含まないものとなりうる。
【0119】
各複数の基板14a、14b...14nは、複数の基板14a、14b...14nをそこからスライスした基板14について記載したCTE、クロスオーバー温度、CTE勾配、屈折率のばらつき、OH基濃度、硬さ、および、組成特性を有する。そのような質量を有し、1平方インチ毎に、そのような少ない気体包有物18を有するか、気体包有物18を全く含まないので、各複数の基板14a、14b...14nは、EUVリソグラフィにおいて、ミラーまたはフォトマスクとして用いるのに適する。したがって、上記方法10、および、結果的に得られる基板14(および、複数の基板14a、14b...14n)は、従来の技術からの大きな改良を示している。基板14が、約6kgの質量を有する場合、基板14をスライスする工程は、約7枚か8枚のEUVフォトマスクとしての利用に適切なサイズを有する基板14a、14b...14nを製造しうる。
【0120】
実施形態において、方法10は、更に、反射多層フィルム78を基板14上か、複数の基板14a、14b...14nの少なくとも1つに加える工程76を含み、実施形態において、吸収部80を反射多層フィルム78上に形成する(
図3を参照)。多層フィルム78は、EUVリソグラフィ分野で知られたように、モリブデンおよびケイ素、または、モリブデンおよびベリリウムの層を含みうる。反射多層フィルム78の層を、マグネトロンスパッタリングまたは他の適した技術を介して加えうる。吸収部80は、EVUリソグラフィ処理中にウエハに転写すべきパターンを画定する。反射多層フィルム78を基板に加える実施形態において、反射多層フィルム78を、工程12で基板14を環境20に曝した後、または、曝す前に、加えうる。次に、工程74において、反射多層フィルム78および吸収部80を有する基板を、複数の基板14a、14b...14nへとスライスし、したがって、各複数の基板14a、14b...14nは、多層フィルム74および吸収部80を含む。
【実施例】
【0121】
実施例1
実施例1について、基板をSiO
2およびTiO
2を含む煤粒子から形成し、それは、煤粒子を形成する工程と、形成された煤粒子を収集する工程と、収集した煤粒子を、室温で、成形済み前駆体基板へと成形する工程と、成形済み前駆体基板を蒸気存在下で熱処理して、凝集した前駆体基板を形成する工程と、次に、凝集した前駆体基板をグラファイト金型の中で溶融させ、それを冷却してグラファイト金型から取り外して、基板を形成する工程を含むものだった。煤粒子形成中に用いたシリカ前駆体は、オクタメチルシクロテトラシロキサンから構成され、チタニア前駆体は、チタンイソプロポキシドだった。煤粒子は、フィルターバッグの下に配置された収集室から収集された。
図4Aに示すように、基板は、大量の気体包有物(1毎平方インチ(約0.155/cm
2)より多くの気体包有物)を含むものだった。
【0122】
次に、基板を、高圧格納槽で、1750℃の高温および15kpsi(約1021atm)の高圧を有する環境に、24時間、曝した。アルゴンを用いて、高圧を提供した。24時間が始まる前に、(環境の中に基板を有する)環境の温度は、室温から1750℃まで、
図4Cに再現したグラフに示す温度上昇速度で上昇した。同様に、24時間が終了した後に、(環境の中に基板を有する)環境の温度は、1750℃から室温まで、
図4Cに再現したグラフに示す温度低下速度で低下した。
【0123】
その結果、基板は、0.05毎平方インチ(約0.008/cm
2)未満の気体包有物を含むものだった。より具体的には、
図4Bの基板に示すように、基板は気体包有物を含まなかった。基板を、高温および高圧に曝すことで、曝す工程の前に存在した多数の気体包有物を崩壊させた。
【0124】
実施例2A~3D
これらの実施例について、SiO2およびTiO2を含む非凝集煤粒子を、2つの別々のバッチで形成し、それは、実施例2A~2Cについてのバッチと、実施例3A~3Dについてのバッチだった。次に、各バッチについて、非凝集煤粒子を収集した。シリカ前駆体の流速に対するチタニア前駆体の流速は、実施例3A~3Dを得たバッチと比べて、実施例2A~2Cを得たバッチの方が僅かに速かった。結果は、実施例2A~2Cは、7.67モル%のTiO2を含む組成を有し、一方、実施例3A~3Dは、7.61モル%のTiO2を含む組成を有するものだった。次に、各バッチからの非凝集煤粒子を、2つの別々の成形済み前駆体基板へと成形した。次に、凝集工程中に、各成形済み前駆体基板を蒸気存在下で熱処理して、2つの別々の基板を形成し、それは、実施例2A~2Cの基板と、実施例3A~3Dの基板だった。両方の基板は、大量の気体包有物(例えば、1毎平方インチ(約0.155/cm2)より多くの気体包有物)を有するものだった。
【0125】
次に、気体包有物に取り組むために、2つの各基板を、高温および高圧を有する環境に、ある時間、曝した。高温および高圧に曝して気体包有物に取り組む工程の前に、2つの基板のどちらにも、溶融工程を行わなかった。実施例2A~2Cからの基板を、1700℃の高温および100atm(約1.47kpsi)の高圧に、10時間、曝した。これに対し、実施例3A~3Dからの基板を、1700℃の高温および1000atm(約14.7kpsi)の高圧に、10時間、曝した。換言すれば、1700℃の高温および10時間という時間は一定で、高圧は、2つの各基板で異なるものだった(100atmに対し、1000atm)。高温および高圧は、各基板に存在する気体包有物を実質的に除去した。
【0126】
次に、各基板を複数の基板へとスライスして、そこから、実施例2A~2Cの基板、および、実施例3A~3Dの基板を選択した。実施例2A、2B、3A、3BのOH基濃度を測定して、上記手順を介して計算した。実施例2A、2Bは、約820ppmのOH基濃度を有した。実施例3A、3Bは、約1090ppmのOH基濃度を有した。
【0127】
次に、実施例2A~3Dの複数の基板をアニーリングした。実施例2A、2B、3A、3Bを、「サイクル1」と称する1組の共通条件でアニーリングした。実施例2C、3C、3Dを、サイクル1とは異なる「サイクル2」と称する他の組の共通条件でアニーリングした。サイクル1の方が、サイクル2より、合計時間が短く、最高温度が高いものである。
【0128】
各実施例について、CTE、Tzc、CTE勾配を、既に記載した技術により特定した。次の表1に結果を示している。結果を分析したところ、OH基濃度が高いほど、基板のCTE、Tzc、CTE勾配が低くなることが分かった。更に、時間の長いサイクル2のアニーリングの結果、CTE、Tzc、CTE勾配が非常に低くなる。
【0129】
【0130】
実施例4A~4Dおよび比較例4E、4F
実施例4A~4Dおよび比較例4Eについて、SiO2およびTiO2を含む非凝集煤粒子を、単一のバッチで形成した。煤粒子におけるTiO2は、7.5質量%から7.7質量%だった。次に、各バッチの非凝集煤粒子を収集し、成形済み前駆体基板へと成形し、凝集工程中に、蒸気存在下で熱処理し、次に、溶融させて、基板を形成した。次に、基板を、高温および高圧を有する環境に、ある時間、曝して、気体包有物を除去した。次に、基板を、実施例4A~4Dおよび比較例4Eの5つの試料へとスライスした。各試料は、約50mm×50mm×4mmの寸法を有するものだった。
【0131】
実施例4A、4Bの試料を、1700℃の高温および100atm(約1.47kpsi)の高圧に、10時間、曝した。これに対し、実施例4C、4Dの試料を、1700℃の高温および1000atm(約14.7kpsi)の高圧に、10時間、曝した。換言すれば、1700℃の高温および10時間という時間は一定で、高圧は、各基板ペアで異なるものだった(100atmに対し、1000atm)。高温および高圧は、実施例4A~4Dの各基板に存在する気体包有物を実質的に除去した。比較例4Eは、気体包有物に取り組むために高温および高圧に曝すことはしなかった。次に、実施例4A~4Dおよび比較例4Eの全ての基板を、サイクル#2より短い時間が短く、高い最高温度を有する上記サイクル#1でアニーリングした。
【0132】
比較例4Fについて、非凝集煤粒子は形成されず、その場合、上記方法による圧縮もされなかった。むしろ、比較例4Fについては、OVD(上付け蒸着)処理を用いて、バーナーにおいて、スートブランクをシリカ前駆体およびチタニア前駆体の燃焼により生成し、結果的に生じた煤を、マンドレル上に収集し、凝集させ、更に、「直接ガラスに」処理におけるガラスブールを形成するように収集した。次に、ガラスブールを、サイクル#1によりアニーリングした。
【0133】
次に、各試料の硬さを、上記技術を介して測定した。表2にデータを示している。分析データが示すように、収集し、非凝集煤を押圧、次に、気体包有物に取り組むために高温および高圧に曝して形成された実施例4A~4Dの試料は、4.60GPaと4.75GPaの間の特徴的硬さを有し、それは、収集し、非凝集煤を押圧するが、気体包有物に取り組むための高温および高圧に曝す工程は行わずに形成された比較例4Eの試料の硬さ(4.98GPa)より低かった。更に、収集し、非凝集煤を押圧し、次に、気体包有物に取り組むための高温および高圧に曝す工程を行って形成された実施例4A~4Dの試料は、背景技術の段落に記載の「直接ガラスに」処理を介して形成されて気体包有物に取り組むために高温および高圧に曝すことをしなかった比較例4Fの試料の硬さ(4.83GPa)より低い4.60GPaと4.75GPaの間の特徴的硬さを有した。したがって、本明細書に記載の方法は、結果的に、4.60GPaから4.75GPaの範囲の特徴的硬さを有する基板を形成し、それは、同様の組成であるが、異なる処理を介して形成された基板の硬さより低い。実施例4A~4Dの試料は、上記サイクル#1ではなく、上記サイクル#2によるアニーリングを行った場合、4.60GPaから4.75GPaの範囲である同じ硬さを有したであろうと考えられる。
【0134】
【0135】
実施例5A~5D
実施例5A~5Dについて、SiO2およびTiO2を含む非凝集煤粒子を、3つの異なるバッチで形成した。次に、各バッチの非凝集煤粒子を収集し、成形済み前駆体基板へと成形し、凝集工程中に、蒸気存在下で熱処理し、次に、溶融させて、基板を形成した。次に、各基板を、高温および高圧を有する環境に、ある時間、曝して、気体包有物を除去した。そこから実施例5A、5Bの試料をスライスする基板を、100atm(約1.5kpsi)の高圧および1700℃の高温に、10時間、曝した。そこから実施例5Cの試料をスライスする基板を、1000atm(約15kpsi)の高圧および1700℃の高温に、10時間、曝した。そこから実施例5Dの試料をスライスする基板を、100atm(約1.5kpsi)の高圧および1750℃の高温に、10時間、曝した。次に、各基板を、上記サイクル#2によりアニーリングした。次に、各バッチからの4つの異なる基板をスライスして、実施例5A~5Dの試料にした。実施例5A、5Bの試料は、同じ基板からスライスされたものだった。5C、5Dの試料は、2つの異なる試料からスライスされた(各試料は、異なるバッチから生じた)。スライスした後に、各試料の寸法は、約143mm×150mm×7.4mmだった。
【0136】
次に、実施例5A~5Dの各試料の屈折率のばらつきを、上記干渉技術(He-Neレーザ)を介して測定した。データを、次の表3に示している。各実施例5A~5Dについて、屈折率のばらつきのマップを
図5A~5Dに再現している。表3のデータを分析すると、(i)圧力が高いほど、屈折率のばらつきが低くなること、(ii)温度が高いほど、屈折率のばらつきが低くなること、および、(iii)屈折率のばらつきは、基板に沿った位置の関数として変化しうること(実施例5Aに対し、実施例5B)が分かった。
【0137】
【0138】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0139】
実施形態1
シリカ‐チタニアガラス基板において、
5質量パーセントから10質量パーセントのTiO2を含む組成と、
20℃で-45ppb/Kから+20ppb/Kの範囲の熱膨張率(CTE)と、
10℃から50℃の範囲のクロスオーバー温度(Tzc)と、
20℃で1.20ppb/K2から1.75ppb/K2の範囲のCTE勾配と、
140ppm以下の屈折率のばらつきと、
600ppm以上のOH基濃度と
を含むシリカ‐チタニアガラス基板。
【0140】
実施形態2
1kg以上の質量と、
0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物と
を更に含む、実施形態1に記載のシリカ‐チタニアガラス基板。
【0141】
実施形態3
100gから1kgの範囲の質量と、
0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物と
を更に含む、実施形態1に記載のシリカ‐チタニアガラス基板。
【0142】
実施形態4
前記組成は、更に、0.001から0.01質量パーセントの炭素を含むものである、実施形態1から3のいずれか1つに記載のシリカ‐チタニアガラス基板。
【0143】
実施形態5
4.60GPaから4.75GPaの範囲の硬さを
更に含む、実施形態1から4のいずれか1つに記載のシリカ‐チタニアガラス基板。
【0144】
実施形態6
前記クロスオーバー温度(Tzc)は、20℃から38℃の範囲である、実施形態1から5のいずれか1つに記載のシリカ‐チタニアガラス基板。
【0145】
実施形態7
前記20℃でのCTE勾配は、1.30ppb/K2から1.65ppb/K2の範囲である、実施形態1から6のいずれか1つに記載のシリカ‐チタニアガラス基板。
【0146】
実施形態8
前記屈折率のばらつきは、60ppm未満である、実施形態1から7のいずれか1つに記載のシリカ‐チタニアガラス基板。
【0147】
実施形態9
前記OH基濃度は、600ppmから1400ppmの範囲である、実施形態1から8のいずれか1つに記載のシリカ‐チタニアガラス基板。
【0148】
実施形態10
方法において、
(i)煤粒子から形成された基板であって、各該煤粒子は、SiO2およびTiO2を含むものであり、かつ、(ii)0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)以上の気体包有物を含む基板を、高温および高圧を有する環境に、該基板が0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物を含むようになるまでの時間、曝す工程を、
含む方法。
【0149】
実施形態11
前記基板を前記環境に曝す工程の前に、
(i)前記煤粒子を、非凝集煤粒子として形成する工程と、
(ii)前記煤粒子を収集する工程と
を更に含む、実施形態10に記載の方法。
【0150】
実施形態12
前記基板を前記環境に曝す工程の前に、
(i)前記煤粒子を室温で、0.50g/cm3から1.20g/cm3の範囲の所定の密度を有する成形済み前駆体基板へと成形する工程と、
(ii)前記成形済み前駆体基板を、蒸気存在下で熱処理して、前記基板を形成する工程と
を更に含み、
前記基板は、前記成形済み前駆体基板を熱処理する工程の後に不透明である、実施形態10または11に記載の方法。
【0151】
実施形態13
前記基板を前記環境に曝す工程の前に、
(i)前記煤粒子を室温で、0.50g/cm3から1.20g/cm3の範囲の所定の密度を有する成形済み前駆体基板へと成形する工程と、
(ii)前記成形済み前駆体基板を、蒸気存在下で熱処理して、凝集した成形済み前駆体基板を形成する工程と、
(iii)前記凝集した成形済み前駆体基板を、金型に流れ込み、次の冷却工程で基板を形成する溶融物へと融解する工程と
を更に含み、
前記曝す工程の前記環境の前記高温は、1000℃から1150℃の範囲である、実施形態10または11に記載の方法。
【0152】
実施形態14
前記成形済み前駆体基板を前記蒸気存在下で熱処理する工程は、該成形済み前駆体基板を、0.1atmから10atmの範囲の圧力を凝集環境内で実現するように蒸気が導入された該凝集環境に曝す工程を含むものである、実施形態12または13に記載の方法。
【0153】
実施形態15
前記基板を前記環境に曝す工程の後に、
前記基板を、少なくとも100時間、900℃から1200℃の範囲の最高温度でアニーリングする工程を
更に含む、実施形態10から14のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
実施形態16
前記基板を前記環境に曝す工程の前に、前記気体包有物は、COおよびCO2の一方または両方含むものである、実施形態10から15のいずれか1つに記載の方法。
【0155】
実施形態17
前記高温は、1000℃から1800℃の範囲である、実施形態10から16のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
実施形態18
前記高圧は、0.5kpsi(約34atm)から15kpsi(約1021atm)の範囲である、実施形態10から17のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
実施形態19
前記高圧は、1.3kpsi(約88atm)から1.7kpsi(約116atm)の範囲であり、
前記高温は、1650℃から1800℃の範囲であり、
前記時間は、8時間から12時間の範囲であり、
前記時間が始まる前で、前記基板を前記環境に置いている間に、該環境の温度は、室温から前記高温まで、250℃/時から350℃/時の範囲の温度上昇速度で上昇するものであり、
前記時間の終了した後で、前記基板を前記環境に置いている間に、該環境の温度は、前記高温から室温まで、250℃/時から350℃/時の範囲の温度低下速度で低下するものである、実施形態10から18のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
実施形態20
前記基板を前記環境に曝す工程の後に、該基板は、
(i)5質量パーセントから10質量パーセントのTiO2を含む組成と、
(ii)20℃で-45ppb/Kから+20ppb/Kの範囲の熱膨張率(CTE)と、
(iii)10℃から50℃の範囲のクロスオーバー温度(Tzc)と、
(iv)20℃で1.20ppb/K2から1.75ppb/K2の範囲のCTE勾配と、
(v)140ppm未満の屈折率のばらつきと、
(vi)600ppm以上のOH基濃度と
を含むものである、実施形態10から19のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
実施形態21
前記基板を前記環境に曝す工程の後に、該基板は、
4.60GPaから4.75GPaの範囲の硬さを含むものである、実施形態10から20のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
実施形態22
前記クロスオーバー温度(Tzc)は、20℃から38℃の範囲であり、
前記20℃でのCTE勾配は、1.30ppb/K2から1.65ppb/K2の範囲であり、
前記屈折率のばらつきは、20ppmから60ppmの範囲であり、
前記OH基濃度は、600ppmから1400ppmの範囲である、実施形態10から21のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
実施形態23
前記基板は、更に、1kg以上の質量を含み、
前記基板を前記環境に曝す工程の後に、該基板は、更に、0.05毎平方インチ(約0.008/cm2)未満の気体包有物を含むものである、実施形態10から22のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0162】
14 基板
16 煤粒子
18 気体包有物
20 環境
56 収集室
60 フィルターバッグ
【国際調査報告】