(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】長いサイクル寿命、高容量のケイ素アノード並びに同アノードの製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240213BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240213BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240213BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240213BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240213BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240213BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240213BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240213BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240213BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240213BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20240213BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240213BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240213BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240213BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/134
H01M4/36 E
H01M4/587
H01M4/48
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M4/58
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 A
H01M4/1395
H01M10/058
H01M10/0566
H01M10/0565
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548290
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 US2022016965
(87)【国際公開番号】W WO2022178246
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508228061
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ハオドン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ピン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM16
5H029HJ04
5H029HJ19
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA11
5H050EA23
5H050EA24
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA09
5H050HA14
5H050HA19
(57)【要約】
高エネルギー密度、長寿命Liイオン電池に関連した材料、方法、電極、及びデバイスが提供される。リチウムイオンアノード材料が、ケイ素及び任意選択によりカーボンナノチューブを有する多孔性コアと、不規則な岩塩構造を有する酸化バナジウムリチウムから製造される高密度シェルとを含有する。酸化バナジウムリチウムは、アノード材料のための固体媒介層として機能し、ケイ素がリチウム化される時の著しい体積増加の公知の問題を克服する。酸化バナジウムリチウムは、機械的頑強性を有し、且つ電解質の浸透を防ぐ。これらの理由のために、アノード材料は、電池電解質との非常に安定な界面を形成する。技術の実施形態を実証するために実験データが示され、考察される。ケイ素アノード材料は2500mA・h/gより高い比容量を可逆的に与え得ることが示される。アノード材料は、室温並びに高温におけるすぐれたサイクルの繰り返し安定性及びカレンダー寿命を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ケイ素を含む多孔性アノード相であって、前記多孔性相が約5%~約80%から選択される多孔性相体積多孔度を特徴とする多孔性アノード相と、
(b)前記多孔性アノード相上に外側へ配置される第1の固体媒介層であって、前記第1の固体媒介層が酸化バナジウムリチウム材料を含有し、前記酸化バナジウムリチウム材料が約2.0g/cm
3~約4.5g/cm
3の密度を有し、前記酸化バナジウムリチウム材料が、Li
aV
bO
c(式中、a=0~10、b=1~3、c=1~9であり、且つa、b、及びcは、前記Li
aV
bO
cの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられる組成を有し、且つ前記Li
aV
bO
cが、可逆的にリチウム化され得る、第1の固体媒介層とを含むアノード材料。
【請求項2】
前記多孔性アノード相を封入するシェルを前記第1の固体媒介層が形成するコア-シェル材料である、請求項1に記載のアノード材料。
【請求項3】
前記第1の固体媒介層が前記多孔性アノード相の第1の面上に外側へ配置され、第2の固体媒介層が前記多孔性アノード相の第2の面上に外側へ配置される挟まれた材料であるアノード材料であって、前記第2の固体媒介層が前記酸化バナジウムリチウム材料を含有する、請求項1に記載のアノード材料。
【請求項4】
前記Li
aV
bO
cがプレリチウム化状態で存在しており、且つ前記Li
aV
bO
cにおいてa=0である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項5】
前記Li
aV
bO
cがリチウム化状態において存在しており、且つ前記Li
aV
bO
cにおいてa>0である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項6】
前記Li
aV
bO
cが、Li
3V
2O
5、Li
4V
2O
5、Li
5V
2O
5、LiVO
2、LiV
2O
5、Li
2V
2O
5、LiVO
3、LiV
3O
8、Li
2V
3O
8、Li
3V
3O
8、LiV
2O
3、Li
2V
2O
3、Li
3V
2O
3、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載のアノード材料。
【請求項7】
前記Li
aV
bO
cが結晶性である、請求項1~6のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項8】
前記Li
aV
bO
cの少なくとも50重量%が、
【数1】
空間群の不規則な岩塩構造を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項9】
前記Li
aV
bO
cの少なくとも90重量%が、
【数2】
空間群の不規則な岩塩構造を有する、請求項8に記載のアノード材料。
【請求項10】
前記第1の固体媒介層が、前記酸化バナジウムリチウム材料中に化学的に又は物理的に含有されるドーパントMをさらに含有し、その組成がLi
aV
bO
cM
d(式中、d=0.1~3であり、且つa、b、c、及びdは、前記Li
aV
bO
cM
dの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられるようになっており、且つ前記Li
aV
bO
cM
dが、可逆的にリチウム化され得る、請求項1~9のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項11】
前記ドーパントMが、Be、Mg、Ca、Zn、Fe、Cu、Sc、B、Y、Al、La、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Mn、P、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Se、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載のアノード材料。
【請求項12】
前記Li
aV
bO
cM
dの少なくとも50重量%が、
【数3】
空間群の不規則な岩塩構造を有する、請求項10に記載のアノード材料。
【請求項13】
前記多孔性相体積多孔度が約20%~約60%から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項14】
前記ケイ素が前記多孔性アノード相中に約1重量%~100重量%Siの濃度で存在している、請求項1~13のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項15】
前記ケイ素が非晶質ケイ素である、請求項1~14のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項16】
前記ケイ素が多結晶質ケイ素である、請求項1~14のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項17】
前記ケイ素が単結晶ケイ素である、請求項1~14のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項18】
前記ケイ素が約10ナノメートル~約100ミクロンの平均粒子サイズを有する、請求項1~17のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項19】
前記ケイ素が球、柱、キューブ、円柱、チューブ、ワイヤー、シート、繊維、不規則な形状、及びそれらの組合せからなる群から選択される粒子の幾何学的形状を有する粒子として存在している、請求項1~18のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項20】
前記多孔性アノード相が炭素をさらに含有する、請求項1~19のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項21】
前記炭素が、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、超微細炭素、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項20に記載のアノード材料。
【請求項22】
前記アノード材料がアノード中に存在している、請求項1~21のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項23】
前記アノードが黒鉛、非黒鉛化炭素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、又はそれらの組合せをさらに含有する、請求項22に記載のアノード材料。
【請求項24】
前記アノードが1つ以上のバインダーをさらに含有し、且つ前記バインダーが、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、及びそれらの組合せからなる群から任意選択により選択される、請求項22に記載のアノード材料。
【請求項25】
前記アノードがセル内に存在しており、且つ前記セルがカソードをさらに含み、且つ前記カソードが、LiFePO
4、LiMn
2O
4、LiNi
0.5Mn
1.5O
4、LiNi
xCo
yMn
zO
2(x+y+z=1)、LiCoO
2、LiNi
xCo
yAl
zO
2(x+y+z=1)、LiFe
xMn
yPO
4(x+y=1)、aLiNi
xCo
yMn
zO
2・(1-a)Li
2MnO
3(a=0~1及びx+y+z=1)、及びそれらの組合せからなる群から選択されるカソード材料を含む、請求項22に記載のアノード材料。
【請求項26】
(a)ケイ素及び炭素を含有するケイ素-炭素複合物を含む多孔性アノード相であって、前記多孔性アノード相が約5%~約80%から選択される多孔性相体積多孔度を特徴とする、多孔性アノード相と、
(b)前記多孔性アノード相上に外側へ配置される第1の固体媒介層であって、前記第1の固体媒介層が酸化バナジウムリチウム材料を含有し、前記酸化バナジウムリチウム材料が約2.0g/cm
3~約4.5g/cm
3の密度を有し、前記酸化バナジウムリチウム材料が、Li
aV
bO
c(式中、a=0~10、b=1~3、c=1~9であり、且つa、b、及びcは、前記Li
aV
bO
cの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられる組成を有し、且つ前記Li
aV
bO
cが、可逆的にリチウム化され得る、第1の固体媒介層とを含む、アノード材料。
【請求項27】
前記アノード材料が、前記多孔性アノード相を封入するシェルを前記第1の固体媒介層が形成するコア-シェル材料である、請求項26に記載のアノード材料。
【請求項28】
前記第1の固体媒介層が前記多孔性アノード相の第1の面上に外側へ配置され、第2の固体媒介層が前記多孔性アノード相の第2の面上に外側へ配置される挟まれた材料であるアノード材料であって、前記第2の固体媒介層が前記酸化バナジウムリチウム材料を含有する、請求項26に記載のアノード材料。
【請求項29】
前記多孔性相体積多孔度が約20%~約60%から選択される、請求項26~28のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項30】
前記ケイ素が前記多孔性アノード相中に約1重量%~約99.9重量%Siの濃度で存在している、請求項26~29のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項31】
前記炭素が前記多孔性アノード相中に約0.1重量%~約80重量%の濃度で存在している、請求項26~30のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項32】
前記ケイ素が約10ナノメートル~約100ミクロンの平均粒子サイズを有する、請求項26~31のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項33】
前記ケイ素が球、柱、キューブ、円柱、チューブ、ワイヤー、シート、繊維、不規則な形状、及びそれらの組合せからなる群から選択される粒子の幾何学的形状を有する粒子として存在している、請求項26~32のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項34】
前記炭素が、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、超微細炭素、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項26~33のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項35】
前記Li
aV
bO
cがプレリチウム化状態で存在しており、且つ前記Li
aV
bO
cにおいてa=0である、請求項26~34のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項36】
前記Li
aV
bO
cがリチウム化状態において存在しており、且つ前記Li
aV
bO
cにおいてa>0である、請求項26~34のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項37】
前記Li
aV
bO
cが、Li
3V
2O
5、Li
4V
2O
5、Li
5V
2O
5、LiVO
2、LiV
2O
5、Li
2V
2O
5、LiVO
3、LiV
3O
8、Li
2V
3O
8、Li
3V
3O
8、LiV
2O
3、Li
2V
2O
3、Li
3V
2O
3、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項36に記載のアノード材料。
【請求項38】
前記Li
aV
bO
cが結晶性である、請求項26~37のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項39】
前記Li
aV
bO
cの少なくとも50重量%が、
【数4】
空間群の不規則な岩塩構造を有する、請求項26~38のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項40】
前記Li
aV
bO
cの少なくとも90重量%が、
【数5】
空間群の不規則な岩塩構造を有する、請求項39に記載のアノード材料。
【請求項41】
前記第1の固体媒介層が、前記酸化バナジウムリチウム材料中に化学的に又は物理的に含有されるドーパントMをさらに含有し、その組成がLi
aV
bO
cM
d(式中、d=0.1~3であり、且つa、b、c、及びdは、前記Li
aV
bO
cM
dの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられるようになっており、且つ前記Li
aV
bO
cM
dが、可逆的にリチウム化され得る、請求項26~40のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項42】
前記ドーパントMが、Be、Mg、Ca、Zn、Fe、Cu、Sc、B、Y、Al、La、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Mn、P、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Se、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項41に記載のアノード材料。
【請求項43】
前記Li
aV
bO
cM
dの少なくとも50重量%が、
【数6】
空間群の不規則な岩塩構造を有する、請求項41に記載のアノード材料。
【請求項44】
前記アノード材料がアノード中に存在している、請求項26~43のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項45】
前記アノードが黒鉛、非黒鉛化炭素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、又はそれらの組合せをさらに含有する、請求項44に記載のアノード材料。
【請求項46】
前記アノードが、前記アノード中に約0.1重量%~約50重量%の濃度で存在している1つ以上のバインダーをさらに含有する、請求項44に記載のアノード材料。
【請求項47】
前記バインダーが、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、及びそれらの組合せからなる群から任意選択により選択される、請求項46に記載のアノード材料。
【請求項48】
前記アノードが、約200ナノメートル~約200ミクロンの平均アノード厚を有する、請求項44に記載のアノード材料。
【請求項49】
前記アノードがセル内に存在しており、且つ前記セルがカソードをさらに含む、請求項26~48のいずれか一項に記載のアノード材料。
【請求項50】
前記カソードが、LiFePO
4、LiMn
2O
4、LiNi
0.5Mn
1.5O
4、LiNi
xCo
yMn
zO
2(x+y+z=1)、LiCoO
2、LiNi
xCo
yAl
zO
2(x+y+z=1)、LiFe
xMn
yPO
4(x+y=1)、aLiNi
xCo
yMn
zO
2・(1-a)Li
2MnO
3(a=0~1及びx+y+z=1)、及びそれらの組合せからなる群から選択されるカソード材料を含む、請求項49に記載のアノード材料。
【請求項51】
(i)ケイ素及び炭素を含有する出発ケイ素-炭素複合物を提供することと、
(ii)前記出発ケイ素-炭素複合物を約300℃以下の融点を有する熱可塑性ポリマーとブレンドし、それによってケイ素-炭素-ポリマー複合物を生成することと、
(iii)前記ケイ素-炭素-ポリマー複合物を酸化バナジウムを含有するゾル-ゲル溶液で溶液コートし、それによってケイ素-炭素-ポリマー-酸化バナジウム複合物を生成することと、
(iv)前記ケイ素-炭素-ポリマー-酸化バナジウム複合物を前記熱可塑性ポリマーを分解及び/又は気化させる有効温度で熱処理し、それによって、結晶化された酸化バナジウムを含有するシェルによって封入される多孔性アノード相を生成することと、
(v)前記結晶化された酸化バナジウムをリチウム含有還元剤で化学的にリチウム化し、それによってLi
aV
bO
c(式中、a=0~10、b=1~3、c=1~9であり、且つa、b、及びcは、前記Li
aV
bO
cの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられる組成を有する酸化バナジウムリチウム材料を生成することと、
(vi)前記酸化バナジウムリチウム材料によって封入される前記多孔性アノード相を含有するアノード材料を回収することとを含む、アノード材料を製造する方法。
【請求項52】
前記多孔性アノード相が、約5%~約80%から選択される体積多孔度を特徴とする、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記体積多孔度が約20%~約60%から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記ケイ素が球、柱、キューブ、円柱、チューブ、ワイヤー、シート、繊維、不規則な形状、及びそれらの組合せからなる群から選択される粒子の幾何学的形状を有する粒子として存在している、請求項51~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記炭素が、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、超微細炭素、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項51~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記酸化バナジウムが前記ゾル-ゲル溶液中のV
2O
5である、請求項51~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記熱可塑性ポリマーがポリラクチド(PLA)である、請求項51~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
工程(iv)における前記有効温度が約200℃~約500℃から選択される、請求項51~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
工程(iv)における前記有効温度が約300℃~約400℃から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記リチウム含有還元剤が、ブチルリチウム(LiC
4H
9)、リチウムナフタレン(LiC
10H
8)、リチウムアントラセニド(LiC
14H
9)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項51~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記Li
aV
bO
cが、Li
3V
2O
5、Li
4V
2O
5、Li
5V
2O
5、LiVO
2、LiV
2O
5、Li
2V
2O
5、LiVO
3、LiV
3O
8、Li
2V
3O
8、Li
3V
3O
8、LiV
2O
3、Li
2V
2O
3、Li
3V
2O
3、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項51~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記Li
aV
bO
cの少なくとも50重量%が、
【数7】
空間群の不規則な岩塩構造を有する、請求項51~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記Li
aV
bO
cの少なくとも90重量%が、
【数8】
空間群の不規則な岩塩構造を有する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記酸化バナジウムリチウム材料が約2.0g/cm
3~約4.5g/cm
3の密度を有する、請求項51~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
方法が、ドーパントMを前記酸化バナジウムリチウム材料に添加することをさらに含み、その組成がLi
aV
bO
cM
d(d=0.1~3であり、及びa、b、c、及びdは、前記Li
aV
bO
cM
dの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられるようになっている、請求項51~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記ドーパントMが、Be、Mg、Ca、Zn、Fe、Cu、Sc、B、Y、Al、La、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Mn、P、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Se、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記Li
aV
bO
cM
dの少なくとも50重量%が、
【数9】
空間群の不規則な岩塩構造を有する、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記アノード材料に、黒鉛、非黒鉛化炭素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、又はそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の添加剤を導入することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項69】
前記アノード材料に、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上のバインダーを導入することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項70】
前記アノード材料を第1の基材上にキャストしてアノードを形成することと、電解質を含有するセパレーターを前記アノード上に積層することと、カソード材料を第2の基材上にキャストしてカソードを形成することと、前記カソードを前記セパレーター上に積層することと、前記アノード、前記セパレーター、及び前記カソードを集電体で囲んでセルを形成することとをさらに含む、請求項51~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記電解質が、液体電解質、ポリマーゲル電解質、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記酸化バナジウムリチウム材料が前記電解質に対して不透過性である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記アノードが、約0.2mg/cm
2~約50mg/cm
2から選択されるアノード材料配合量を有する、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
前記アノードが、約0.05mA・h/cm
2~約10mA・h/cm
2から選択される前記アノードの少なくとも一方の面の面積容量を有する、請求項70に記載の方法。
【請求項75】
前記アノードが、約0.05mA・h/cm
2~約10mA・h/cm
2から選択される前記アノードの両面の面積容量を有する、請求項70に記載の方法。
【請求項76】
前記アノードが、約200ナノメートル~約200ミクロンから選択されるアノード厚を有する、請求項70に記載の方法。
【請求項77】
前記セルが少なくとも1つの充電-放電サイクルを受け、且つ前記酸化バナジウムリチウム材料が、前記少なくとも1つの充電-放電サイクルの間に0%~約20%の体積変化を有する、請求項70に記載の方法。
【請求項78】
前記セルが、複数の充電-放電サイクルにわたって繰り返して充電及び放電され、且つ前記Li
aV
bO
cが複数回可逆的にリチウム化及び脱リチウム化される、請求項70に記載の方法。
【請求項79】
前記セルが少なくとも1000サイクルにわたって充電及び放電される、請求項78に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権データ
この国際特許出願は、2021年2月19日に出願された米国仮特許出願第63/151,547号(その内容を参照によって本願明細書に組み入れる)に対する優先権を主張する。
【0002】
分野
本開示は一般的に、リチウムイオン電池に関する。より詳しくは、様々な実施形態は、リチウムイオン電池材料のためのケイ素含有アノード材料に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
高レートで安全に充電及び放電され得る再充電可能リチウムイオン電池は、電化輸送、ポータブル・エレクトロニクス、グリッド・ストレージ、及びその他の用途のために望ましい。リチウムイオン再充電可能電池が電気エネルギー貯蔵における社会のますます成長している需要を満たすために、高い電荷蓄積を有する新規な電極材料が必要とされる。
【0004】
Liイオン電池における電極の電気化学サイクルの繰り返しの間の大体積の改良形態はしばしば、応力の形成、電極の破損及び集電体からの離層のためにより良い適用を制限する。
【0005】
ケイ素は、最も高い公知の容量及び比較的低い使用電位などの利点のためにリチウムイオン電池の最も有望なアノード材料の1つである。しかしながら、Siアノードの実用的な具体化には、3つの主な問題がある。第一に、ケイ素材料の不十分なサイクル寿命は、リチウムイオンのインターカレーション及び脱インターカレーションに伴う非常に大きな体積変動(400%まで)中の微粉砕の結果として生じる。第二に、極度の不可逆的な容量損失及び低いクーロン効率は、合金/脱合金プロセス中のSiアノードの機械的破壊によって引き起こされる。最後に、固体電解質中間相(SEI)は、ケイ素の脱リチウム化中にナノ構造物が収縮する時に破断する。電解質への新しいケイ素表面の暴露によって、SEIが充電/放電サイクル毎に厚くなり続けるようになる。SEIの形成及び成長は活性リチウム及び電解質材料を消費し、比容量の減衰、より高い電池抵抗、及び不十分な電力密度をもたらす。
【0006】
リチウム化中に多数のLi原子がケイ素電極内に導入される時にアノード材料としてのケイ素の安定な長期性能は、非常に大きい体積膨張のために制限される。大体積の増加はしばしば、体積変化によって引き起こされる応力の形成、機械的破壊、及び不可逆的な副反応に帰せられるサイクルの繰り返し中の比容量の減衰の結果を有する。したがって、Si系Liイオン電池の開発は、サイクルの繰り返しによって引き起こされる体積変化及び相関した容量の減衰のために大きな課題に直面する。
【0007】
リチウムイオン電池の技術分野における前述の必要性を考慮して、改良されたアノード材料、及び特にケイ素系アノード材料が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
概要
本開示は本技術分野における前述の必要性に対処し、ここに要約され、次に以下に詳細にさらに説明される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの別形態は、
(a)ケイ素を含む多孔性アノード相であって、多孔性アノード相と多孔性相が約5%~約80%から選択される多孔性相体積多孔度を特徴とする、多孔性アノード相と、(b)多孔性アノード相上に外側へ配置される第1の固体媒介層であって、第1の固体媒介層が酸化バナジウムリチウム材料を含有し、酸化バナジウムリチウム材料が約2.0g/cm3~約4.5g/cm3の密度を有し、酸化バナジウムリチウム材料が、LiaVbOc(式中、a=0~10、b=1~3、c=1~9であり、且つa、b、及びcは、LiaVbOcの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられる組成を有し、且つLiaVbOcが、可逆的にリチウム化され得る、第1の固体媒介層とを含む、アノード材料を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、アノード材料は、多孔性アノード相を封入するシェルを第1の固体媒介層が形成するコア-シェル材料である。
【0011】
いくつかの実施形態において、アノード材料は、第1の固体媒介層が多孔性アノード相の第1の面上に外側へ配置され、第2の固体媒介層が多孔性アノード相の第2の面上に外側へ配置される挟まれた材料であり、ここで、第2の固体媒介層は酸化バナジウムリチウム材料を含有する。
【0012】
LiaVbOcはプレリチウム化状態で存在することができ、ここでLiaVbOcにおいてa=0である。代わりに、例えばアノード材料を使用する前又は使用中、LiaVbOcがリチウム化状態において存在しており、ここでLiaVbOcにおいてa>0である。
【0013】
LiaVbOcは、Li3V2O5、Li4V2O5、Li5V2O5、LiVO2、LiV2O5、Li2V2O5、LiVO3、LiV3O8、Li2V3O8、Li3V3O8、LiV2O3、Li2V2O3、Li3V2O3、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。LiaVbOcは好ましくは結晶性である。LiaVbOcは約2.0g/cm3~約4.5g/cm3の密度を有することができる。
【0014】
好ましい実施形態において、Li
aV
bO
cの少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、又は99重量%(例えば100重量%)が、
【数1】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、第1の固体媒介層が、酸化バナジウムリチウム材料中に化学的に又は物理的に含有されるドーパントMをさらに含有し、その組成がLi
aV
bO
cM
d(d=0.1~3であり、a、b、c、及びdは、Li
aV
bO
cM
dの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられるようになっており、且つLi
aV
bO
cM
dが、可逆的にリチウム化され得る。ドーパントMは例えば、Be、Mg、Ca、Zn、Fe、Cu、Sc、B、Y、Al、La、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Mn、P、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Se、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。好ましくは、Li
aV
bO
cM
dの少なくとも50重量%又は少なくとも90重量%が、
【数2】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、多孔性相体積多孔度は約20%~約60%から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態において、ケイ素が多孔性アノード相中に約1重量%~100重量%Siの濃度で存在している。ケイ素は非晶質ケイ素、多結晶質ケイ素、又は単結晶ケイ素であり得る。ケイ素は、例えば約10ナノメートル~約100ミクロンの平均粒子サイズを有することができる。ケイ素は、例えば、球、柱、キューブ、円柱、チューブ、ワイヤー、シート、繊維、不規則な形状、及びそれらの組合せからなる群から選択される粒子の幾何学的形状を有する粒子として存在することができる。
【0018】
アノード材料のいくつかの実施形態において、多孔性アノード相は炭素を含有しない。アノード材料の他の実施形態において、多孔性アノード相は炭素をさらに含有する。炭素は、例えば、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、超微細炭素、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0019】
アノード材料はアノード中に存在することができる。アノードは、黒鉛、非黒鉛化炭素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、又はそれらの組合せをさらに含有することができる。アノードは、例えば、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、及びそれらの組合せ、又は他のホモポリマー又はコポリマーからなる群から任意選択により選択される1つ以上のバインダーをさらに含有することができる。
【0020】
アノードは、カソードと共に、セル内に存在することができる。カソードは、例えばLiFePO4、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNixCoyMnzO2(x+y+z=1)、LiCoO2、LiNixCoyAlzO2(x+y+z=1)、LiFexMnyPO4(x+y=1)、aLiNixCoyMnzO2・(1-a)Li2MnO3(a=0~1及びx+y+z=1)、及びそれらの組合せからなる群から選択されるカソード材料を含むことができる。
【0021】
他の別形態は、多孔性アノード相においてケイ素及び炭素の両方を含有するアノード材料を提供し、アノード材料は、
(a)ケイ素及び炭素を含有するケイ素-炭素複合物を含む多孔性アノード相であって、約5%~約80%から選択される多孔性相体積多孔度を特徴とする多孔性アノード相と、
(b)多孔性アノード相上に外側へ配置される第1の固体媒介層であって、第1の固体媒介層が酸化バナジウムリチウム材料を含有し、酸化バナジウムリチウム材料が約2.0g/cm3~約4.5g/cm3の密度を有し、酸化バナジウムリチウム材料が、LiaVbOc(式中、a=0~10、b=1~3、c=1~9であり、且つa、b、及びcは、LiaVbOcの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられる組成を有し、且つLiaVbOcが、可逆的にリチウム化され得る、第1の固体媒介層とを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、アノード材料は、多孔性アノード相を封入するシェルを第1の固体媒介層が形成するコア-シェル材料である。
【0023】
いくつかの実施形態において、アノード材料は、第1の固体媒介層が多孔性アノード相の第1の面上に外側へ配置され、第2の固体媒介層が多孔性アノード相の第2の面上に外側へ配置される挟まれた材料であり、ここで、第2の固体媒介層は酸化バナジウムリチウム材料を含有する。
【0024】
特定の実施形態において、多孔性相体積多孔度は約20%~約60%から選択され得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、ケイ素が多孔性アノード相中に約1重量%~99.9重量%Siの濃度で存在している。ケイ素は、例えば約10ナノメートル~約100ミクロンの平均粒子サイズを有することができる。ケイ素は、例えば、球、柱、キューブ、円柱、チューブ、ワイヤー、シート、繊維、不規則な形状、及びそれらの組合せからなる群から選択される粒子の幾何学的形状を有する粒子として存在することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、炭素が多孔性アノード相中に約0.1重量%~約80重量%の濃度で存在している。炭素は、例えば黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、超微細炭素、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0027】
LiaVbOcはプレリチウム化状態で存在することができ、ここでLiaVbOcにおいてa=0である。或いは、例えばアノード材料を使用する前又は使用中、LiaVbOcがリチウム化状態において存在しており、ここでLiaVbOcにおいてa>0である。
【0028】
LiaVbOcは、Li3V2O5、Li4V2O5、Li5V2O5、LiVO2、LiV2O5、Li2V2O5、LiVO3、LiV3O8、Li2V3O8、Li3V3O8、LiV2O3、Li2V2O3、Li3V2O3、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。LiaVbOcは好ましくは結晶性である。LiaVbOcは約2.0g/cm3~約4.5g/cm3の密度を有することができる。
【0029】
好ましい実施形態において、Li
aV
bO
cの少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、又は99重量%(例えば100重量%)が、
【数3】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。
【0030】
いくつかの実施形態において、第1の固体媒介層は、酸化バナジウムリチウム材料中に化学的に又は物理的に含有されるドーパントMをさらに含有し、その組成がLi
aV
bO
cM
d(d=0.1~3であり、a、b、c、及びdは、Li
aV
bO
cM
dの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられるようになっており、且つLi
aV
bO
cM
dが、可逆的にリチウム化され得る。ドーパントMは、例えばBe、Mg、Ca、Zn、Fe、Cu、Sc、B、Y、Al、La、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Mn、P、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Se、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。好ましくは、Li
aV
bO
cM
dの少なくとも50重量%又は少なくとも90重量%が、
【数4】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。
【0031】
アノード材料はアノード中に存在することができる。アノードは、黒鉛、非黒鉛化炭素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、又はそれらの組合せをさらに含有することができる。アノードは、アノード中に約0.1重量%~約50重量%の濃度で存在している1つ以上のバインダーをさらに含有することができる。バインダーは、例えば、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、及びそれらの組合せ、又は他のホモポリマー又はコポリマーからなる群から選択され得る。
【0032】
アノードは、例えば約200ナノメートル~約200ミクロンの平均アノード厚を有することができる。
【0033】
アノードは、セル内のカソードと共に、セル内に存在することができる。カソードは、例えばLiFePO4、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNixCoyMnzO2(x+y+z=1)、LiCoO2、LiNixCoyAlzO2(x+y+z=1)、LiFexMnyPO4(x+y=1)、aLiNixCoyMnzO2・(1-a)Li2MnO3(a=0~1及びx+y+z=1)、及びそれらの組合せからなる群から選択されるカソード材料を含むことができる。
【0034】
いくつかの別形態はアノード材料を製造する方法を提供し、方法は、
(i)ケイ素及び炭素を含有する出発ケイ素-炭素複合物を提供することと、
(ii)出発ケイ素-炭素複合物を約300℃以下の融点を有する熱可塑性ポリマーとブレンドし、それによってケイ素-炭素-ポリマー複合物を生成することと、
(iii)ケイ素-炭素-ポリマー複合物を酸化バナジウムを含有するゾル-ゲル溶液で溶液コートし、それによってケイ素-炭素-ポリマー-酸化バナジウム複合物を生成することと、
(iv)ケイ素-炭素-ポリマー-酸化バナジウム複合物を熱可塑性ポリマーを分解する及び/又は気化させる有効温度で熱処理し、それによって、結晶化された酸化バナジウムを含有するシェルによって封入される多孔性アノード相を生成することと、
(v)結晶化された酸化バナジウムをリチウム含有還元剤で化学的にリチウム化し、それによって、LiaVbOc(式中、a=0~10、b=1~3、c=1~9であり、且つa、b、及びcは、LiaVbOcの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられる組成を有する酸化バナジウムリチウム材料を生成することと、
(vi)酸化バナジウムリチウム材料によって封入される多孔性アノード相を含有するアノード材料を回収することとを含む。
【0035】
いくつかの方法では、多孔性アノード相は、約5%~約80%から選択される体積多孔度を特徴とする。特定の方法では、体積多孔度は約20%~約60%から選択される。
【0036】
いくつかの方法では、(多孔性アノード相における)ケイ素は球、柱、キューブ、円柱、チューブ、ワイヤー、シート、繊維、不規則な形状、及びそれらの組合せからなる群から選択される粒子の幾何学的形状を有する粒子として存在している。
【0037】
いくつかの方法では、(多孔性アノード相における)炭素は、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、超微細炭素、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0038】
いくつかの方法では、工程(iii)において、酸化バナジウムはゾル-ゲル溶液中のV2O5である。
【0039】
いくつかの方法では、工程(iv)における有効温度は約200℃~約500℃から選択され、例えば約300℃~約400℃から選択される。熱可塑性ポリマーは例えばポリラクチド(PLA)であり得る。
【0040】
いくつかの方法では、リチウム含有還元剤は、ブチルリチウム(LiC4H9)、リチウムナフタレン(LiC10H8)、リチウムアントラセニド(LiC14H9)、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0041】
いくつかの方法では、Li
aV
bO
cは、Li
3V
2O
5、Li
4V
2O
5、Li
5V
2O
5、LiVO
2、LiV
2O
5、Li
2V
2O
5、LiVO
3、LiV
3O
8、Li
2V
3O
8、Li
3V
3O
8、LiV
2O
3、Li
2V
2O
3、Li
3V
2O
3、及びそれらの組合せからなる群から選択される。好ましくは、Li
aV
bO
cの少なくとも50重量%が、
【数5】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。より好ましくは、Li
aV
bO
cの少なくとも90重量%が、
【数6】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。
【0042】
いくつかの方法では、工程(v)において製造される酸化バナジウムリチウム材料は、約2.0g/cm3~約4.5g/cm3の密度を有する。
【0043】
方法は、ドーパントMを酸化バナジウムリチウム材料に添加することをさらに含み得、その組成がLi
aV
bO
cM
d(d=0.1~3であり、及びa、b、c、及びdは、Li
aV
bO
cM
dの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられるようになっている。ドーパントMは、例えばBe、Mg、Ca、Zn、Fe、Cu、Sc、B、Y、Al、La、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Mn、P、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Se、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。好ましくは、Li
aV
bO
cM
dの少なくとも50重量%又は少なくとも90重量%が、
【数7】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。
【0044】
方法は、アノード材料に、例えば黒鉛、非黒鉛化炭素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、又はそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の添加剤を導入することをさらに含むことができる。
【0045】
方法は、アノード材料に例えばカルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上のバインダーを導入することをさらに含むことができる。
【0046】
いくつかの別形態において、方法は、アノード材料を第1の基材上にキャストしてアノードを形成することと、電解質を含有するセパレーターをアノード上に積層することと、カソード材料を第2の基材上にキャストしてカソードを形成することと、カソードをセパレーター上に積層することと、アノード、セパレーター、及びカソードを集電体で囲んでセルを形成することとをさらに含む。
【0047】
形成されたセルにおいて、電解質は、液体電解質、ポリマーゲル電解質、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。好ましくは、酸化バナジウムリチウム材料は電解質に対して不透過性である。
【0048】
形成されたセルにおいて、アノードは、約0.2mg/cm2~約50mg/cm2から選択されるアノード材料配合量を有することができる。アノードは、約0.05mA・h/cm2~約10mA・h/cm2から選択されるアノードの少なくとも一方の面の面積容量を有することができる。特定の実施形態において、アノードは、約0.05mA・h/cm2~約10mA・h/cm2から選択されるアノードの両面の面積容量を有する。アノード厚は例えば約200ナノメートル~約200ミクロンから選択され得る。
【0049】
セルが少なくとも1つの充電-放電サイクルを受ける時、酸化バナジウムリチウム材料は好ましくは、充電-放電サイクルの間に0%~約20%の体積変化を有する。
【0050】
典型的な実施形態において、セルは、複数の充電-放電サイクルにわたって繰り返して充電及び放電され、ここで、LiaVbOcが複数回可逆的にリチウム化及び脱リチウム化される。セルは例えば少なくとも1000サイクルにわたって充電及び放電される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図面の簡単な説明
【
図1】Siアノード設計のための最新技術(構造物1及び2)をいくつかの実施形態においてアノード材料としてc-LVO-ボイド-Si/CNTを提供する本技術と比較するいくつかの概略図を含む。
【
図2】ケイ素-炭素複合物上のLVO固体媒介層のいくつかの実施形態を例示するいくつかの概略図を含む。
【
図3】c-LVO-ボイド-Si/CNTアノード材料の典型的な幾何学的形状を例示するいくつかの概略図を含む。
【
図4】いくつかの実施形態において、c-LVO-ボイド-Si/CNTを製造する典型的なプロセスを示す。
【
図5】いくつかの実施形態において、パターン化Si電極の典型的な構造を図示する。
【
図6】いくつかの実施形態において、Si上のLVO固体媒介層の性能を説明する。
【
図7】いくつかの実施形態において、リチウムのためのインターカレーションホストとしてLVO固体媒介層の性能を説明する。
【
図8】いくつかの実施形態において、中性子回折及びX線回折によって測定される好ましいLVOの不規則な岩塩構造を例示する。
【
図9】実施例1における、アニールした後のSi薄膜、Si-V
2O
5薄膜、及びSi-V
2O
5薄膜のXRDスペクトルを示す。
【
図10】実施例2における、V
2O
5-Si-V
2O
53層薄膜設計のSEM及びXRD画像を示す。
【
図11】実施例3における、ここに開示される技術を試験するために行われる実験からのデータの4つのグラフを含む。
【
図12】実施例3における、100サイクル後の分解されたSi薄膜セルの写真画像を示す。
【
図13】実施例4における、LVO-Si-LVO薄膜構造物と比較したSiについてのサイクルの繰り返し及びカレンダー寿命試験を説明するグラフを示す。
【
図14】実施例5における、LVO層の利点を検証するために室温におけるカレンダー寿命を明らかにするグラフを示す。
【
図15】実施例6における、分解されたサイクル繰り返し済みのセルの一連のSEM及びXRD画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
実施形態の詳細な説明
本開示の原理、組成物、材料、システム、及び方法は、技術の様々な非限定的な実施形態を参照することによって詳細に説明される。
【0053】
この説明によって、当業者は技術をもたらし、使用することができ、それは、技術のいくつかの実施形態、改造、別形態、代替物、及び使用を説明する。本技術のこれらの及びその他の実施形態、特徴、及び利点は、添付した図面と共に以下の詳細な説明を参照する時に当業者にはいっそう明らかになるであろう。
【0054】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、この技術が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0055】
別記しない限り、本明細書及びクレームにおいて使用される条件、濃度、寸法などを表わす全ての数は、全ての場合において用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、それと反対に指示されない限り、以下の明細書及び添付したクレームに示される数値パラメーターは、少なくとも特定の解析技法に応じて変化し得る近似値である。
【0056】
「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「を特徴とする(characterized by)」と同義語である用語「含む(comprising)」は、包括的又は非限定的であり、追加的な、列挙されない要素又は方法の工程を除外しない。「含む(Comprising)」は、示されたクレームの要素が本質的であるが、他のクレームの要素を加えることができ、さらにクレームの範囲内の構成物を形成することを意味するクレームの言語において使用される技術の用語である。
【0057】
本明細書中で用いられる時、「からなる(consisting of)」という語句は、クレームに明記されていない任意の要素、工程、又は成分を除外する。「からなる(consists of)」という語句(又はその別形態)はプリアンブルの直後ではなくクレームの本文の節に現れる時、それはその節に示される要素だけを限定する。他の要素は、全体としてクレームから除外されない。本明細書中で用いられる時、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という語句は、クレームの範囲を明記した要素又は方法の工程、さらに、クレームされる係争物の基礎及び新規な特性に本質的に影響を与えないそれらに限定する。
【0058】
用語「含む(comprising)」(「含む(including)」と同義)、「からなる(consisting of)」及び「本質的に~からなる(consisting essentially of)」に対して、これらの3つの用語のうちの1つが本明細書で使用される場合、ここで開示され且つクレームされる係争物は、マーカッシュグループにおいて使用される場合を除いて、他の2つの用語のどちらかの使用を含むことができる。したがって、特に明示的に列挙されていないいくつかの実施形態において、「含む(comprising)」の任意の場合を「からなる」又は、代わりに、「本質的に~からなる」で置き換えることができる。用語「含む(including)」は、「制限なしに、~を含む」等の意味として読み取られるべきである。用語「実施例」を用いて、考察における項目の典型的な実例、その網羅的ではない又は限定的なリストを提供する。
【0059】
「従来の」、「伝統的な」、「通常の」、「標準的な」、「公知の」などの形容詞及び同様な意味の用語は、説明される項目をその時点までに又は一時に利用可能な項目に限定するとして解釈されるべきでなく、代わりに、現在又は将来のいつでも利用可能であるか又は公知であり得る従来の、伝統的な、通常の、又は標準的な技術を包含すると読まれるべきである。同様に、本特許出願が当業者に明白であるか又は公知の技術に言及する場合、このような技術は、現在又は将来のいつでも当業者に明白であるか又は公知の技術を包含する。
【0060】
本明細書及び添付したクレームにおいて使用される時、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がはっきりと他に指示しない限り、複数形の指示物を含む。用語「a」又は「an」は、「少なくとも1つの」、「1つ以上の」等の意味として読み取られるべきである。いくつかの実例における「1つ以上の」、「少なくとも」、「限定されないが」又は他の同様な語句などの拡張的語及び語句の存在は、このような拡張的語句がない場合がある実例においてもっと狭い事例が意図されるか又は必要とされることを意味すると読まれるべきでない。
【0061】
ケイ素(Si)は、黒鉛の場合の10倍のリチウム貯蔵容量である、4200mA・h/gというケイ素のリチウム貯蔵容量のためにリチウムイオン電池のエネルギー密度を増加させることが大いに期待される。研究開発の取り組みは、Siのサイクル寿命を改良することに焦点が合わせられており、それは、非機械的適合固体電解質界面(SEI)層と結びついた関連の大きな体積変化によって制限される。SEI層は、電解質の分解によって生じるリチウムイオン電池のアノード材料の表面上に形成される不動態化層である。SEI層の特質は、リチウムイオン電池のサイクル性、レート容量、不可逆的な容量損失、及び安全性に重要な役割を果たす。
【0062】
長期寿命Siアノードのための既存の設計基準は確立しており、粒子の破損を抑えることによってサイクルの繰り返し中にSiへの電気接続を維持すること、並びに電気化学界面面積の変化及びSEI層の破損を最小にすることを含む。
【0063】
現在のSiアノード技術は典型的に、破損せずに体積変化に対応するSiナノ構造物を使用する。Siナノ粒子、ナノワイヤー、ナノチューブ、薄膜、及び多孔性構造物は全て、粒子の破損を緩和する能力を実証した。電解質との接触面積を最小にするためにナノ構造物はしばしば、より大きな粒子に組み立てられる。そうでなければ、ナノ材料の大きな表面積はSEIの形成を損なう。Li||Siハーフセルにおいて、1000サイクル超の長いサイクル寿命が実証された。ナノ構造物を使用して破損を緩和する他に、或る既存の技術は比容量の範囲(すなわち、LixSiにおけるx)を制限してサイクル寿命を改良する。ハーフセルにおけるSiのサイクルの繰り返しの成功に加えてSiアノードが4Vカソードと対にされる場合にフルセルにおいても進歩があった。いくつかのセルは、500~1000サイクルの間安定なサイクルの繰り返しを有すると実証された。
【0064】
しかしながら、貯蔵中、Siセルの容量の減衰は従来、寿命容量スループットの一次関数であった。この直線相関は、電池の寿命にわたる活性リチウム消費速度は一定である-SEIは有効に不動態化していないことを示す。SEI層に関連する錯体化学のために、黒鉛は良い不動態化材料であることが公知であるという事実にもかかわらず、この問題は、Siアノードが炭素でコートされる時でも観察された。SEI層の化学組成は、様々な有機種(例えば、有機ポリマー)及び無機種(例えば、LiF)を含むことができる。下にあるSi構造物は、炭素表面コーティングに機械的応力をかけ、それはさらには、炭素上のSEIに伝わる。これまで、SEIの連続的な破損及びスポーリングが生じる場合があり、貯蔵中又はサイクルの繰り返し中に速い容量の減衰をもたらす。
【0065】
本発明は、少なくとも一つには、高密度酸化バナジウムリチウムの使用に基づいており、これは長期サイクル寿命Siアノード材料における固体媒介層として、イオン導電性及び電子導電性である。酸化バナジウムリチウムが高密度化される場合、酸化バナジウムリチウムは炭素よりも機械的に強靭であり、電解質に対してより不透過性である。さらに、酸化バナジウムリチウムの極性性質はまた、おそらくそれらをSEI層に十分に付着させる。
【0066】
Siを保護する酸化物シェル材料の他に、シェルにかかる応力を最小にしながら体積膨張を可能にするSi構造を選択することが望ましい。既存の技術は、ザクロ様構造物を使用することを試みる。二次粒子は通常、炭素コーティングで封止され、Li+イオンを伝導しながら内部細孔内への電解質の侵入を抑える。しかしながら、ザクロ様構造物を作る時に課題がある。
【0067】
本発明は、少なくとも一つには、上述の高密度酸化バナジウムリチウムを同様に利用しながら、ケイ素の体積膨張を吸収するために、最適化された多孔度を有する多孔性アノード相の設計に基づいている。いくつかの好ましい実施形態において、ここに開示される技術を使用して、ケイ素シート及びカーボンナノチューブのコア(コアは、内部多孔度を有する)と、高密度LVOのシェルとを製造することができる。本開示において、「LVO」は、ドーパントが存在していない場合LiaVbOc、1つ以上のドーパントが存在している場合LiaVbOcMdを意味する(a、b、c、及びdの範囲については下記を参照)。LVOは、0V~2Vの間の電位領域でのリチウムのための最近発見された可逆的なホストである。内部多孔度は、リチウム化する間にケイ素の体積膨張を吸収する。高密度層は、電解質との非常に安定な界面を特徴とし、最小の体積変化を有し、数秒でその容量の半分を供給することができる、非常に急速な速度論を有する。炭素と比べて、LVOは機械的に強く、Siへの急速な電荷移動媒介物の役割を果たす。
【0068】
いくつかの別形態は、
(a)ケイ素を含む多孔性アノード相であって、多孔性相が約5%~約80%から選択される多孔性相体積多孔度を特徴とする、多孔性アノード相と、
(b)多孔性アノード相上に外側へ配置される第1の固体媒介層であって、第1の固体媒介層が酸化バナジウムリチウム材料を含有し、酸化バナジウムリチウム材料が約2.0g/cm3~約4.5g/cm3の密度を有し、酸化バナジウムリチウム材料が、LiaVbOc(式中、a=0~10、b=1~3、c=1~9であり、且つa、b、及びcは、LiaVbOcの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられる組成を有し、且つLiaVbOcが、可逆的にリチウム化され得る、第1の固体媒介層とを含む、アノード材料を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態において、アノード材料は、多孔性アノード相を封入するシェルを第1の固体媒介層が形成するコア-シェル材料である。「封入する」とは、固体媒介層が多孔性アノード相を完全に密閉することを意味する。
【0070】
いくつかの実施形態において、アノード材料は、第1の固体媒介層が多孔性アノード相の第1の面上に外側へ配置され、第2の固体媒介層が多孔性アノード相の第2の面上に外側へ配置される挟まれた材料であり、ここで、第2の固体媒介層は酸化バナジウムリチウム材料を含有する。
【0071】
LiaVbOcはプレリチウム化状態で存在することができ、ここでLiaVbOcにおいてa=0である。アノード材料を使用中、及び可能性としてはアノード材料を使用する前、LiaVbOcがリチウム化状態において存在しており、ここでLiaVbOcにおいてa>0である。リチウム化状態である時、aの値は例えば約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.5、4.0、4.5、又は5.0であり得る。
【0072】
LiaVbOcは、Li3V2O5、Li4V2O5、Li5V2O5、LiVO2、LiV2O5、Li2V2O5、LiVO3、LiV3O8、Li2V3O8、Li3V3O8、LiV2O3、Li2V2O3、Li3V2O3、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。LiaVbOcの電荷を平衡させる限り、a、b、及びcの非整数値が可能である。
【0073】
LiaVbOcは好ましくは結晶性であるか、又は少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%の結晶度を有する。少なくとも80%の結晶度を有するLiaVbOcは本明細書において結晶性LVO、又はc-LVOと称される。LVO結晶度はX線回折を用いて測定することができる。
【0074】
LiaVbOcは約2.0g/cm3~約4.5g/cm3の密度を有することができる。様々な実施形態において、LiaVbOcは、任意の間の範囲を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、又は4.5g/cm3の密度を有する。
【0075】
好ましい実施形態において、Li
aV
bO
cの少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、又は99重量%(例えば100重量%)が、
【数8】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。本開示において、「DRS」は、不規則な岩塩構造を意味する。不規則な岩塩構造は、Liu et al., “A disordered rock salt anode for fast-charging lithium-ion batteries”, Nature volume 585, pages 63-67 (2020)(その内容を参照によって本願明細書に組み入れる)に開示されている。
【0076】
いくつかの実施形態において、第1の固体媒介層は、酸化バナジウムリチウム材料中に化学的に又は物理的に含有されるドーパントMをさらに含有し、その組成がLiaVbOcMd(d=0.1~3であり、a、b、c、及びdは、LiaVbOcMdの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられるようになっており、且つLiaVbOcMdは、可逆的にリチウム化され得る。
【0077】
ドーパントを使用してLVOの性質を変えることができる。例えば、ドーパントを使用して、リチウム化、脱リチウム化、又は他の速度論、リチウム化能力、LVO安定性、及び/又は他の要因を調節することができる。ドーパントMは、例えばBe、Mg、Ca、Zn、Fe、Cu、Sc、B、Y、Al、La、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Mn、P、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Se、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。複数のドーパントがLiaVbOcMd中に存在することができ、その場合、実験式における各々のドーパントは、d=0.1~3を有することができる。ドーパントは、1つ以上の二価、三価、四価、五価、又は六価のドーパントを含むことができる。
【0078】
Li
aV
bO
cM
dは約2.0g/cm
3~約4.5g/cm
3の密度を有することができる。好ましくは、Li
aV
bO
cM
dの少なくとも50重量%又は少なくとも90重量%が、
【数9】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。様々な実施形態において、Li
aV
bO
cM
dの少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、又は99重量%(例えば100重量%)が、
【数10】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。
【0079】
第1の固体媒介層の厚さは例えば約5nm~約1μmから選択され得る。様々な実施形態において、第1の固体媒介層の厚さは任意の間の範囲(例えば、10~300ナノメートル)を含めて約5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、225nm、250nm、275nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、又は950nmである。第1の固体媒介層の厚さはアノード材料全体にわたって均一であり得るか、又は多孔性アノード相の寸法に沿って変化し得る。
【0080】
封入材料ではなく挟まれた材料を使用する実施形態において、第2の固体媒介層の厚さは例えば約5nm~約1μmから選択され得る。様々な実施形態において、第2の固体媒介層の厚さは任意の間の範囲(例えば、10~300ナノメートル)を含めて約5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、225nm、250nm、275nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、又は950nmである。第2の固体媒介層の厚さは、第1の固体媒介層の厚さと同じであっても異なっていてもよい。典型的に、2つの厚さは同じであるか又はほぼ同じであるが、この場合そうである必要はない。
【0081】
多孔性アノード相のサイズは例えば約50nm~約100μmから選択され得る。多孔性アノード相のサイズは、多孔性アノード相の平均有効直径を意味し、ここで、有効直径は、幾何学的形状に関係なく多孔性アノード相の体積として等価体積を有する球の直径である。様々な実施形態において、多孔性アノード相のサイズは任意の間の範囲を含めて約50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、又は100μmである。
【0082】
いくつかの実施形態において、多孔性相体積多孔度が約20%~約60%から選択される。様々な実施形態において、多孔性相体積多孔度は、任意の間の範囲(例えば、10~70%、30~50%等)を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は80%である。
【0083】
いくつかの実施形態において、ケイ素が多孔性アノード相中に約1重量%~100重量%Siから選択される濃度で存在している。様々な実施形態において、ケイ素が多孔性アノード相中に任意の間の範囲を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98、99、又は100重量%の濃度で存在している。
【0084】
ケイ素は非晶質ケイ素、多結晶質ケイ素、又は単結晶ケイ素であり得る。多結晶質ケイ素粒子との混合物中に非晶質ケイ素粒子が存在することができる。単結晶ケイ素粒子との混合物中に多結晶質ケイ素粒子が存在することができる。多結晶質ケイ素粒子と単結晶ケイ素粒子の両方との混合物中に非晶質ケイ素粒子が存在することができる。
【0085】
ケイ素は、例えば約10ナノメートル~約10ミクロンから選択される平均粒子サイズを有することができる。様々な実施形態において、ケイ素は、任意の間の範囲を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、又は10μmの平均粒子サイズを有する。いくつかの実施形態において、ケイ素粒子はナノ粒子サイズ範囲(1000nm未満)である。非球形Si粒子(例えば、シート)については、上記のサイズは、任意の形状のSi粒子として等価体積を有する球の直径である有効直径を意味する。
【0086】
粒子サイズは、例えば動的光散乱法、レーザー回折、又は画像分析など、様々な技術によって測定することができる。動的光散乱法は、典型的にサブミクロン領域の粒子のサイズ及びサイズ分布を1ナノメートルまでの最新技術を用いて測定するための非侵襲的な、確立した技術である。レーザー回折は、数百ナノメートルから数ミリメートルまでの範囲のサイズの材料の広範囲に使用される粒子サイズ決定技術である。粒子サイズを測定するための典型的な動的光散乱計測器及びレーザー回折計測器は、Malver Instruments Ltd., Worcestershire, UKから入手可能である。粒子サイズ及び分布を推定するための画像分析は、顕微鏡写真、走査電子顕微鏡写真、又は他の画像で直接行なうことができる。
【0087】
ケイ素は、例えば球、柱、キューブ、円柱、チューブ、ワイヤー、シート、繊維、不規則な形状、及びそれらの組合せからなる群から選択される粒子の幾何学的形状を有する粒子として存在することができる。特定の実施形態において、ケイ素は主に、Siシート又はナノシートとして存在している。
【0088】
アノード材料のいくつかの実施形態において、多孔性アノード相は炭素を含有しない。アノード材料の他の実施形態において、多孔性アノード相が炭素をさらに含有する。炭素は、例えば黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、超微細炭素、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。カーボンナノチューブの他にも、フラーレンなど、他の炭素ナノ構造物が可能であり、それらは幾何学的に中空球、楕円体、チューブ、シート、又は他の形状であり得る。炭素はナノ粒子、マイクロ粒子、又はそれらの組合せであり得る。様々な実施形態において、炭素は、任意の間の範囲を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約1nm、2nm、5nm、10nm、15nm、20nm、30nm、40nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、又は10μmの平均粒子サイズを有する。
【0089】
アノード材料はアノード中に存在することができる。アノードは、黒鉛、非黒鉛化炭素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、又はそれらの組合せをさらに含有することができる。アノードは、例えば、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、及びそれらの組合せ、又は他のホモポリマー又はコポリマーからなる群から任意選択により選択される1つ以上のバインダーをさらに含有することができる。
【0090】
アノードは、カソードと共にセル内に存在することができる。「セル」は、化学反応から電気エネルギーを生じさせるか又は電気エネルギーを使用して化学反応を引き起こすかどちらかであることができる電気化学セルである。
【0091】
カソードは、例えばLiFePO4、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNixCoyMnzO2(x+y+z=1)、LiCoO2、LiNixCoyAlzO2(x+y+z=1)、LiFexMnyPO4(x+y=1)、aLiNixCoyMnzO2・(1-a)Li2MnO3(a=0~1及びx+y+z=1)、及びそれらの組合せからなる群から選択されるカソード材料を含むことができる。
【0092】
他の別形態は、多孔性アノード相においてケイ素及び炭素の両方を含有するアノード材料を提供し、アノード材料は、
(a)ケイ素及び炭素を含有するケイ素-炭素複合物を含む多孔性アノード相であって、約5%~約80%から選択される多孔性相体積多孔度を特徴とする多孔性アノード相と、
(b)多孔性アノード相上に外側へ配置される第1の固体媒介層であって、第1の固体媒介層が酸化バナジウムリチウム材料を含有し、酸化バナジウムリチウム材料が約2.0g/cm3~約4.5g/cm3の密度を有し、酸化バナジウムリチウム材料が、LiaVbOc(式中、a=0~10、b=1~3、c=1~9であり、且つa、b、及びcは、LiaVbOcの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられる組成を有し、且つLiaVbOcが、可逆的にリチウム化され得る、第1の固体媒介層とを含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、アノード材料は、多孔性アノード相を封入するシェルを第1の固体媒介層が形成するコア-シェル材料である。
【0094】
いくつかの実施形態において、アノード材料は、第1の固体媒介層が多孔性アノード相の第1の面上に外側へ配置され、第2の固体媒介層が多孔性アノード相の第2の面上に外側へ配置される挟まれた材料であり、ここで、第2の固体媒介層は酸化バナジウムリチウム材料を含有する。
【0095】
特定の実施形態において、多孔性相体積多孔度は約20%~約60%から選択され得る。様々な実施形態において、多孔性相体積多孔度は、任意の間の範囲(例えば、10~70%、30~50%等)を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は80%である。
【0096】
いくつかの実施形態において、ケイ素が多孔性アノード相中に約1重量%~99.9重量%Siの濃度で存在している。様々な実施形態において、ケイ素が多孔性アノード相中に任意の間の範囲を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98、99、又は100重量%の濃度で存在している。
【0097】
ケイ素は非晶質ケイ素、多結晶質ケイ素、又は単結晶ケイ素であり得る。多結晶質ケイ素粒子との混合物中に非晶質ケイ素粒子が存在することができる。単結晶ケイ素粒子との混合物中に多結晶質ケイ素粒子が存在することができる。多結晶質ケイ素粒子と単結晶ケイ素粒子の両方との混合物中に非晶質ケイ素粒子が存在することができる。
【0098】
ケイ素は、例えば約10ナノメートル~約10ミクロンから選択される平均粒子サイズを有することができる。様々な実施形態において、ケイ素は、任意の間の範囲を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、又は10μmの平均粒子サイズを有する。いくつかの実施形態において、ケイ素粒子はナノ粒子サイズ範囲(1000nm未満)である。非球形Si粒子(例えば、シート)については、上記のサイズは、任意の形状のSi粒子として等価体積を有する球の直径である有効直径を意味する。
【0099】
ケイ素は、例えば、球、柱、キューブ、円柱、チューブ、ワイヤー、シート、繊維、不規則な形状、及びそれらの組合せからなる群から選択される粒子の幾何学的形状を有する粒子として存在することができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、炭素は多孔性アノード相中に約0.1重量%~約80重量%の濃度で存在している。様々な実施形態において、炭素は多孔性アノード相中に任意の間の範囲を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約0.1、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80重量%の濃度で存在している。
【0101】
炭素は、例えば黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、超微細炭素、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0102】
LiaVbOcはプレリチウム化状態で存在することができ、ここでLiaVbOcにおいてa=0である。アノード材料を使用中、及び可能性としてはアノード材料を使用する前、LiaVbOcはリチウム化状態において存在しており、ここでLiaVbOcにおいてa>0である。リチウム化状態である時、aの値は例えば約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.5、4.0、4.5、又は5.0であり得る。
【0103】
LiaVbOcは、Li3V2O5、Li4V2O5、Li5V2O5、LiVO2、LiV2O5、Li2V2O5、LiVO3、LiV3O8、Li2V3O8、Li3V3O8、LiV2O3、Li2V2O3、Li3V2O3、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。LiaVbOcの電荷を平衡させる限り、a、b、及びcの非整数値が可能である。
【0104】
LiaVbOcは好ましくは結晶性であるか、又は少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%の結晶度を有する。少なくとも80%の結晶度を有するLiaVbOcは本明細書において結晶性LVO、又はc-LVOと称される。LVO結晶度はX線回折を用いて測定することができる。
【0105】
LiaVbOcは約2.0g/cm3~約4.5g/cm3の密度を有することができる。様々な実施形態において、LiaVbOcは、任意の間の範囲を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、又は4.5g/cm3の密度を有する。
【0106】
好ましい実施形態において、Li
aV
bO
cの少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、又は99重量%(例えば100重量%)が、
【数11】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。
【0107】
いくつかの実施形態において、第1の固体媒介層が、酸化バナジウムリチウム材料中に化学的に又は物理的に含有されるドーパントMをさらに含有し、その組成がLiaVbOcMd(d=0.1~3であり、a、b、c、及びdは、LiaVbOcMdの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられるようになっており、且つLiaVbOcMdが、可逆的にリチウム化され得る。ドーパントMは、例えばBe、Mg、Ca、Zn、Fe、Cu、Sc、B、Y、Al、La、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Mn、P、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Se、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0108】
Li
aV
bO
cM
dは約2.0g/cm
3~約4.5g/cm
3の密度を有することができる。好ましくは、Li
aV
bO
cM
dの少なくとも50重量%又は少なくとも90重量%が、
【数12】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。様々な実施形態において、Li
aV
bO
cM
dの少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、又は99重量%(例えば100重量%)が、
【数13】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。
【0109】
アノード材料の厚さは、例えば約50nm~約10μmから選択され得る。様々な実施形態において、アノード材料の厚さは、任意の間の範囲を含めて約50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、又は10μmである。
【0110】
第1の固体媒介層の厚さは例えば約5nm~約1μmから選択され得る。様々な実施形態において、第1の固体媒介層の厚さは、任意の間の範囲(例えば、50~250ナノメートル)を含めて約5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、225nm、250nm、275nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、又は950nmである。第1の固体媒介層の厚さはアノード材料全体にわたって均一であり得るか、又は多孔性アノード相の寸法に沿って変化し得る。
【0111】
封入材料ではなく挟まれた材料を使用する実施形態において、第2の固体媒介層の厚さは例えば約5nm~約1μmから選択され得る。様々な実施形態において、第2の固体媒介層の厚さは任意の間の範囲(例えば、10~300ナノメートル)を含めて約5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、225nm、250nm、275nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、又は950nmである。第2の固体媒介層の厚さは、第1の固体媒介層の厚さと同じであっても異なっていてもよい。典型的に、2つの厚さは同じであるか又はほぼ同じであるが、この場合そうである必要はない。
【0112】
多孔性アノード相の厚さは、例えば約100nm~約100μmから選択され得る。様々な実施形態において、多孔性アノード相の厚さは任意の間の範囲を含めて約100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、又は100μmである。
【0113】
いくつかの実施形態において、多孔性相体積多孔度は約20%~約60%から選択される。様々な実施形態において、多孔性相体積多孔度は任意の間の範囲を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は80%である。
【0114】
アノード材料はアノード中に存在することができる。アノードは、黒鉛、非黒鉛化炭素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、又はそれらの組合せをさらに含有することができる。
【0115】
アノードは、アノード中に約0.1重量%~約50重量%から選択される濃度で存在している1つ以上のバインダーをさらに含有することができる。様々な実施形態において、アノードは、任意の間の範囲を含めて約0.1、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50重量%の濃度の1つ以上のバインダーを含有する。
【0116】
バインダーは、例えば、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、及びそれらの組合せ、又は他のホモポリマー又はコポリマーからなる群から選択され得る。
【0117】
アノードは例えば約200ナノメートル~約200ミクロンから選択される平均アノード厚を有することができる。様々な実施形態において、アノードは、任意の間の範囲を含めて約200nm、300nm、400nm、500nm、1μm、2μm、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、125μm、150μm、175μm、又は200μmの平均アノード厚を有する。
【0118】
アノードは、セル内のカソードと共にセル内に存在することができる。カソードは、例えばLiFePO4、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNixCoyMnzO2(x+y+z=1)、LiCoO2、LiNixCoyAlzO2(x+y+z=1)、LiFexMnyPO4(x+y=1)、aLiNixCoyMnzO2・(1-a)Li2MnO3(a=0~1及びx+y+z=1)、及びそれらの組合せからなる群から選択されるカソード材料を含むことができる。特定のカソード材料はLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NMC811)である。例えば、80重量%Siによって、アノード材料は、2500mA・h/gの可逆容量を有し、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2カソード及び一般的なカーボネート系電解質と対にする時に350W・h/kgセルを容易に可能にする。
【0119】
ここに開示される技術を電池の設計において使用することができる。電池は、並列に及び/又は直列に接続された、1つ以上のセルからなる。電池形態は、公知であるように、例えば円筒形、角柱及びパウチセルなど、広範囲に変化する。電池は、例えばアノード、カソード、追加のLi源、及び集電体(例えば、銅箔)を含むことができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、LVOで保護されたSiをアノードに加工することができる。特定の実施形態において、LVOで保護されたSiをプレリチウム化してLi原材料を補償することができる。負極(アノード)をLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2などの4Vカソードと対にすることができる。電極を交互に積み重ねてパウチ型セルを製造することができ、又は巻き上げてシリンダーセルを製造することができる。セルは、350W・h/kg以上の高エネルギー密度を与えることができる。
【0121】
電池は、例えば非水電解質、水性電解質、及びイオン性液体から選択される1つ以上の電解質を使用することができる。電解質は一般的に、溶媒中のリチウム塩(アニオン+リチウムカチオン)を含む。
【0122】
リチウム塩には、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiN(FSO2)2(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiN(CF3SO2)2(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、及びLiIなどが含まれるがそれらに限定されず、それらを単独で又は2つ以上の混合物として使用することができる。いくつかの実施形態においてLiBF4及びLiPF6が好ましい。
【0123】
電解質において使用することができる溶媒の例には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、メチルホルメート、メチルアセテート、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、ジオキサン、アセトニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3-プロパンスルトン、N-メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、スルホン、スルホラン、脂肪族エーテル、環状エーテル、グライム、ポリエーテル、燐酸エステル、シロキサン、ジオキソラン、及びN-アルキルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒が含まれる。本技術分野に公知であるが、他の少量成分及び不純物が電解質中に存在することができる。
【0124】
いくつかの実施形態において、従来の黒鉛電池パックより優れており且つ電池パック内により少ない数のセルを有する新しい電池システムにおいてここに開示される技術を使用することができる。この電池システムは、開示されるアノード構造物の任意の1つ(又はそれ以上)を利用することができ、Liリッチ酸化物及び/又はLi(NiMnCo)O2層状酸化物などの、4V高容量カソードと対にすることができる。この電池システムは、350W・h/kgを超える比エネルギーを達成することができる。電池の電圧は3.7V超であり得る。電池は<10%の容量損失で1000サイクル可能であり得、<10%の容量損失で2週間の間55℃で貯蔵後に安定していることができる。この高エネルギー密度電池システムは、電気自動車、スマートデバイス、及び高エネルギー密度を有する高出力ポータブルデバイスなど、多くの商業用途に適している。
【0125】
いくつかの実施形態において、ここで開示されるアノード材料は、電解質とSiとの間の接触が全くないため、長いサイクル寿命(例えば、3000サイクルまで又はそれ以上)及び長いカレンダー寿命(例えば、10まで又はそれ以上)を可能にする、独特の構造を有する。また、炭素(例えば、CNT)網状構造は、LVOシェルに対する機械的支持を提供し、カレンダリング及びサイクルの繰り返し中の機械的応力を低減する。LVO/Si多層構造物を使用する実験結果(実施例を参照)は、LVOがSiを液体電解質から単離することができることを裏づけ、55℃での貯蔵下で安定なサイクルの繰り返し及び劇的に改良されたクーロン効率をもたらす。
【0126】
アノード材料を製造する1つの典型的な方法は以下の通りである。内部のボイドスペースは、200℃などの適した温度でのポリ(乳酸)(PLA)の熱蒸発によって生じ得、残留有機化合物を残さない。PLAは、160℃の融点を有する熱可塑性物質であり、また、例えばプロピレンカーボネートに可溶性であり、それは簡単な溶融ブレンディング又はエマルションからの沈殿によってコア構造物の製造を可能にする。シェル構造物は、V2O5ゾル-ゲル溶液からの溶液コーティングと、その後の、350℃での適度の熱処理とによって形成され得、これはPLAを蒸発させ、酸化物を結晶化し、シェルを封止する。次に、化学的リチウム化を用いてLVOシェル構造物を生成することができる。
【0127】
いくつかの別形態はアノード材料を製造する方法を提供し、この方法は、
(i)ケイ素及び炭素を含有する出発ケイ素-炭素複合物を提供することと、
(ii)出発ケイ素-炭素複合物を約300℃以下の融点を有する熱可塑性ポリマーとブレンドし、それによってケイ素-炭素-ポリマー複合物を生成することと、
(iii)ケイ素-炭素-ポリマー複合物を酸化バナジウムを含有するゾル-ゲル溶液で溶液コートし、それによってケイ素-炭素-ポリマー-酸化バナジウム複合物を生成することと、
(iv)ケイ素-炭素-ポリマー-酸化バナジウム複合物を熱可塑性ポリマーを分解する及び/又は気化させる有効温度で熱処理し、それによって、結晶化された酸化バナジウムを含有するシェルによって封入される多孔性アノード相を生成することと、
(v)結晶化された酸化バナジウムをリチウム含有還元剤で化学的にリチウム化し、それによって、LiaVbOc(式中、a=0~10、b=1~3、c=1~9であり、且つa、b、及びcは、LiaVbOcの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられる組成を有する酸化バナジウムリチウム材料を生成することと、
(vi)酸化バナジウムリチウム材料によって封入される多孔性アノード相を含有するアノード材料を回収することとを含む。
【0128】
いくつかの方法では、多孔性アノード相は、約5%~約80%から選択される体積多孔度を特徴とする。特定の方法では、体積多孔度は約20%~約60%から選択される。
【0129】
いくつかの方法では、(多孔性アノード相における)ケイ素は球、柱、キューブ、円柱、チューブ、ワイヤー、シート、繊維、不規則な形状、及びそれらの組合せからなる群から選択される粒子の幾何学的形状を有する粒子として存在している。
【0130】
いくつかの方法では、(多孔性アノード相における)炭素は、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、超微細炭素、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0131】
いくつかの方法では、工程(iii)において、酸化バナジウムは、ゾル-ゲル溶液中のV2O5である。他の酸化バナジウムには、VO、V2O3、VO2、V3O5、V3O7、V4O9、V6O13、V4O7、V5O9、V6O11、V7O13、andV8O15などが含まれるそれらに限定されない。
【0132】
いくつかの方法では、工程(iv)における有効温度は約200℃~約500℃から選択され、例えば約300℃~約400℃から選択される。様々な実施形態において、工程(iv)における温度は任意の間の範囲を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、又は600℃である。
【0133】
熱可塑性ポリマーは例えばポリラクチド(PLA)であり得る。使用することができる他の熱可塑性ポリマーには、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレンテレフタレートなどが含まれるそれらに限定されない。
【0134】
いくつかの方法では、リチウム含有還元剤は、ブチルリチウム(LiC4H9)、リチウムナフタレン(LiC10H8)、リチウムアントラセニド(LiC14H9)、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0135】
いくつかの方法では、Li
aV
bO
cは、Li
3V
2O
5、Li
4V
2O
5、Li
5V
2O
5、LiVO
2、LiV
2O
5、Li
2V
2O
5、LiVO
3、LiV
3O
8、Li
2V
3O
8、Li
3V
3O
8、LiV
2O
3、Li
2V
2O
3、Li
3V
2O
3、及びそれらの組合せからなる群から選択される。好ましくは、Li
aV
bO
cの少なくとも50重量%が、
【数14】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。より好ましくは、Li
aV
bO
cの少なくとも90重量%が、
【数15】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。
【0136】
いくつかの方法では、工程(v)において製造される酸化バナジウムリチウム材料は、約2.0g/cm3~約4.5g/cm3の密度を有する。様々な実施形態において、LiaVbOcは、任意の間の範囲を含めて約、少なくとも約、又は最大でも約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、又は4.5g/cm3の密度を有する。
【0137】
方法はドーパントMをLVO材料に添加することをさらに含むことができ、その組成がLi
aV
bO
cM
d(d=0.1~3であり、及びa、b、c、及びdは、Li
aV
bO
cM
dの電荷を平衡させるように選択される)によって与えられるようになっている。ドーパントMは、例えばBe、Mg、Ca、Zn、Fe、Cu、Sc、B、Y、Al、La、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Mn、P、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Se、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。好ましくは、Li
aV
bO
cM
dの少なくとも50重量%又は少なくとも90重量%が、
【数16】
空間群の不規則な岩塩構造を有する。
【0138】
方法は、アノード材料に、例えば黒鉛、非黒鉛化炭素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、又はそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の添加剤を導入することをさらに含むことができる。
【0139】
方法は、アノード材料に、例えばカルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、スチレンブタジエンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上のバインダーを導入することをさらに含むことができる。
【0140】
いくつかの別形態において、方法は、アノード材料を第1の基材上にキャストしてアノードを形成することと、電解質を含有するセパレーターをアノード上に積層することと、カソード材料を第2の基材上にキャストしてカソードを形成することと、カソードをセパレーター上に積層することと、アノード、セパレーター、及びカソードを集電体で囲んでセルを形成することとをさらに含む。形成されたセルにおいて、電解質は、液体電解質、ポリマーゲル電解質、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0141】
好ましくは、酸化バナジウムリチウム材料は電解質に対して不透過性である。「不透過性」とは、セルのサイクルの繰り返し中に、電解質の0.1重量%以下が酸化バナジウムリチウム材料に浸透し、それがSEI層内に堆積され、及び/又は多孔性アノード相内に浸透するようになっていることを意味する。好ましくは、0.01重量%以下、より好ましくは電解質の0.001重量%以下が酸化バナジウムリチウム材料に浸透する。最も好ましくは、検出可能な電解質が酸化バナジウムリチウム材料に本質的に全く浸透しない。特定の電解質が酸化バナジウムリチウム材料上に吸着されるか又は酸化バナジウムリチウム材料中に部分的に吸収され得、それでもなお酸化バナジウムリチウム材料全体にわたって浸透しないことを指摘しておく。
【0142】
形成されたセルにおいて、アノードは、約0.2mg/cm2~約50mg/cm2から選択されるアノード材料配合量を有することができる。様々な実施形態において、アノード材料配合量は任意の間の範囲を含めて約、又は少なくとも約0.2、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50mg/cm2である。
【0143】
アノードは、約0.05mA・h/cm2~約10mA・h/cm2から選択されるアノードの少なくとも一方の面の面積容量を有することができる。特定の実施形態において、アノードは、約0.05mA・h/cm2~約10mA・h/cm2から選択されるアノードの両面の面積容量を有する。様々な実施形態において、アノードは、任意の間の範囲を含めて約、又は少なくとも約0.05、0.1、0.2、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、又は10mA・h/cm2のアノードの両面の面積容量を有する。
【0144】
典型的な実施形態において、セルは、複数の充電-放電サイクルにわたって繰り返して充電及び放電され、ここで、LiaVbOcは複数回可逆的にリチウム化及び脱リチウム化される。セルは、例えば少なくとも1000サイクルにわたって充電及び放電され得る。様々な実施形態において、充電-放電サイクルの数は、例えば1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、又は5000、又はさらに多い。
【0145】
セルが少なくとも1つの充電-放電サイクルを受ける時、酸化バナジウムリチウム材料は好ましくは、充電-放電サイクルの間に0%~約20%の体積変化を有する。様々な実施形態において、1回の充電-放電サイクル後、酸化バナジウムリチウム材料は、任意の間の範囲を含めて。約、又は最大でも約20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、又は0.0%の体積変化を有する。様々な実施形態において、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000回の充電-放電サイクル後、酸化バナジウムリチウム材料は、任意の間の範囲を含めて約、又は最大でも約20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、又は0.0%の体積変化を有する。
【0146】
様々な実施形態によって本明細書に開示される技術はここで、図面(
図1~15)を参照してより詳細に説明される。図面は、図解目的だけのために提供され、開示される技術の典型的な又は実施例の実施形態を単に表わすにすぎない。これらの図面は開示される技術の読者の理解を容易にするために提供され、その幅、範囲、又は適用性を限定すると考えられるべきでない。明確にするために及び説明を容易にするために、これらの図面は必ずしも縮尺通りではないということに留意しなければならない。
【0147】
図1は、Siアノード設計(構造物1及び2)のための最新技術を、いくつかの実施形態においてアノード材料としてc-LVO-ボイド-Si/CNTを提供する本技術と比較するいくつかの概略図を含む。
【0148】
図1の構造物1(先行技術)は、次の通り、多段階プロセスによって得ることができる。最初にSiを酸化させてSiO
2-Siコア-シェル構造物(SiO
2シェル及びSiコア)を形成し、それをレソルシノール-ホルムアルデヒドゲルでコートする。次に、構造物を複数のサイズにしてC-SiO
2-Si構造物(C外殻、SiO
2内殻、及びSiコア)を形成する。次に、SiO
2をフッ化水素でエッチングしてC-ボイド-Si構造物(Cシェル、ボイドスペース、及びSiコア)を形成する。残念なことに、炭素マトリックスは、エッチングプロセスによって確認されるように本質的に多孔性である。これらの内部細孔は、内部にSEIの形成をもたらす電解質の浸透の難点がある。
【0149】
図1の構造物2(先行技術)は、シラン源から多孔性炭素網目構造中にナノSiを堆積させ、その後に、炭素コーティングのCVDが行われる化学蒸着(CVD)を使用する。この方法は、高密度コーティングを場合によってはもたらすことができる。しかしながら、サイクルの繰り返し中のコーティング厚及びコーティングの頑強性は未知数である。さらに、CVD Siプロセスは、Siの所望のサイズ及び分布を得るために非常に精密に制御される必要があり、それは、拡大縮小可能性のその容易さを大幅に低減する。
【0150】
構造物1及び2と対照して、
図1における構造物c-LVO-ボイド-Si/CNTは本技術によって提供される。c-LVOは、高密度固体媒介層として機能する結晶性酸化バナジウムリチウムである。c-LVOは、Si、カーボンナノチューブ(CNT)、及びボイドからなるコアの周りにシェルを形成する。「Si/CNT」は、ケイ素-炭素複合物と称することができ、「ボイド-Si/CNT」は多孔性アノード相と称することができ、c-LVOは、固体媒介層と称することができる。固体媒介層c-LVOは、ボイド-Si/CNT多孔性アノード相上に外側へ配置される。カーボンナノチューブは、長いくねったチューブとして
図1のc-LVO-ボイド-Si/CNT構造に示されている。CNTではなく炭素の他の形態-例えば、グラフェン、炭素繊維等を利用することができる。
【0151】
図1に示されるように、c-LVO-ボイド-Si/CNTアノード材料は、Siの体積膨張を吸収する(ボイドからの)内部多孔度を有するSiシート及びカーボンナノチューブのコアを含むことができる。
図1における約10%多孔度は例示目的にすぎず、多孔性相体積多孔度は一般的に、例えば約5%~約80%の範囲であり得る。シェルは、限定されないが、Li
3+xV
2O
5(x=0~2)などの高密度結晶性酸化バナジウムリチウム(c-LVO)から製造される。Li
3+xV
2O
5は、従来のナノ構造化Siアノードにおいて使用される一般に使用される炭素コーティングに取って代わる。ここで開示されるアノード材料は、電池電解質と非常に安定な界面(
図1におけるSEI層)を形成する。アノード材料は、すぐれたサイクルの繰り返し安定性(長いサイクル寿命)及び長いカレンダー寿命を実証する。
【0152】
図2は、ケイ素-炭素複合物上のLVO固体媒介層の実施形態を説明するいくつかの概略図を含む。LVO-ボイド-Si/CNTの出発原料が提供される。結晶性酸化バナジウムリチウム(c-LVO)シェルは密度が高く、高いイオン導電性であり、電解質に対して不透過性である。リチウム化は、SEI層と共に、LVO-ボイド-Li
xSi/CNT材料を形成する。LVOシェルは電解質の浸透を阻止する。LVO-ボイド-Li
xSi/CNTを脱リチウム化した時、LVO-ボイド-Si/CNTが再び形成され、SEI層が残り、電解質の浸透がLVOシェルによってさらに阻止される。
【0153】
図2に示される実施形態など、本明細書に開示される技術の実施形態において、LVO保護層はいくつかの重要な特徴を提供する:
(1)LVO層はリチウムイオン導電性である。
(2)LVO層は電解質に対して不透過性である。
(3)LVO層は、不変界面面積で全く不動態化している電解質と共に安定なSEIを形成することができる。
(4)LVO層は、Si作動の電位領域におけるリチウムのための有効なインターカレーションホストである。及び
(5)LVO層は機械的に強靭である。
【0154】
いくつかの実施形態において、アノード材料は、黒鉛アノードよりもはるかに高い、2500mA・h/g超の放電容量を有する。さらに、アノード材料は、複雑な製造プロセスなしに長いサイクル寿命及びカレンダー寿命を達成することができる。いくつかの実施形態において、アノード材料は、10%未満の容量損失で1000サイクルを行うことができる。いくつかの実施形態において、アノード材料は、10%未満の容量損失で2週間の間55℃で貯蔵後に安定性を維持する。このアノード材料は、350W・h/kgより大きい比エネルギー密度を有する長期寿命、高エネルギーセルを可能にする。
【0155】
図3は、c-LVO-ボイド-Si/CNTアノード材料の典型的な幾何学的形状を例示するいくつかの概略図を含む。典型的な幾何学的形状には、楕円構造物、球形構造物、及び層状構造物が含まれる。コア内へのCNT網目構造の導入は、圧縮中にLVOシェルへの実質的な機械的支持を提供し、シェル自体にかかる応力を開放する。LVOシェルは好ましくは、破断せずにケイ素の膨張に応答するために十分に延性であり、電解質からのSiのすぐれた保護をもたらす。
【0156】
図4は、c-LVO-ボイド-Si/CNTを製造する典型的なプロセスを示す。Si粒子(例えば、Siシート)をCNT及びPLAと混合してPLA-Si/CNTのコアを形成し、ゾル-ゲル技術を用いてそれをH
2O
2中に溶解されたV
2O
5ゲルでコートして、複合ゲルとしてa-V
2O
5-PLA-Si/CNT(a-V
2O
5=非晶質V
2O
5)を形成する。PLAは、350℃でのV
2O
5の結晶化(c-V
2O
5=結晶性V
2O
5)のずっと前に200℃で分解及び蒸発することができるので、いくつかの実施形態においてそれが選択される。PLAは、触媒量のSnO
2で任意選択によりドープされる。複合ゲルを加熱して溶媒を蒸発させ、その後に、PLAが分解され、それは200~300℃で気化してガス生成物を形成する。350℃にさらに加熱することにより、V
2O
5の結晶化を促進してc-V
2O
5(結晶性V
2O
5)を製造し、シェル内の多孔度を除く。リチウム金属及び/又はブチルリチウムなどによる化学的リチウム化は、c-V
2O
5をc-LVO固体媒介層に変換し、それによって最終c-LVO-ボイド-Si/CNT材料を形成する。この方法は、化学エッチング又は化学蒸着を用いずに中空構造物を形成し、結晶化によってシェルを封止し、拡大縮小可能なプロセスの流れによって理想的な構造物を達成する。
【0157】
図5は、いくつかの実施形態においてパターン化Si電極の典型的な構造を図示する。銅(Cu)上のSi配列は、マスクとしてニッケル(Ni)メッシュグリッドによって製造することができる。電子線蒸発によって製造されるLVO-Si多層構造物を使用して、電気化学サイクルの繰り返し中のLVO破損及びSi内への電解質の浸透を防ぐために、LVO-Siの厚さ要件を調べることができる。2つの形態を
図5に示す:Siが完全に封入される第1の形態、及びSiの側面が露出される第2の形態。
【0158】
第1の構造物(
図5、左下側)は完全密閉構造物であり、すなわち、LVOによって完全密閉されたパターン化Siである。また、Siは炭素(例えば、CNT)を含有しても含有しなくてもよい。例えば、電子線蒸発によってCu箔基材を最初にV
2O
5でコートする。次に、Niメッシュを便利マスクとして取り付け(マスクは
図5の上部に示される)、表面としっかり接触させておき、電子線蒸発によってパターン化Si膜を成長させる。
図5の上部構造物は、典型的なマスクの上面図である。メッシュは、異なるサイズ、例えば、2000メッシュ(7.6μm×7.6μmの穴サイズを有する)で利用可能である。リソグラフィ技術を用いて、最低1μmまでのパターンサイズを使用することができる。Siの厚さは、堆積時間によって制御される。次に、マスクを取り除き、V
2O
5の別の層をキャッピング層として堆積させる。次に、構造物全体を例えば、1時間の間350℃で熱アニールして、V
2O
5の結晶化を促進する。次に、結晶化されたV
2O
5をリチウム化してLVOを形成する。Si層の側面をLVOによって封止する(完全に密閉する)。
【0159】
図5の第1の形態において、例えばSiパターンサイズは、約1μm~約10μmであり得、膜の厚さは約50nm~約1μm以上であり得、LVO厚さは約10nm~約300nmであり得る。LVOの機械的性質は、より厚いSi膜(すなわち、>1μm)の使用を可能にできる。特定の実施形態において、同じオーダーでその高さ及びサイズを有するSi島は、基材の効果を最小にするのに役立ち、観察される機械的安定度がSi/LVO相互作用を直接に反映するようにする。
【0160】
第2の形態(
図5、右下側)において、第1の形態と同様なサイズ及び厚さを有するLVO/Si/LVOサンドイッチ構造物が堆積される。製造中の唯一の必要な変更は、全ての3つの層(LVO、次にSi、次に別のLVO)の堆積のためにマスク(
図5の上部)を使用することである。各LVO層が形成された後、又は全ての層が製造された後に、結晶化されたV
2O
5をリチウム化してLVOを形成することができる。この第2の形態において、Si層の側面は封止されない。したがって、Si層は直接に機械的に拘束されず、端縁は液体電解質と接触している。しかしながら、厚さとサイズの間に小さな比がある時、相対接触面積は非常に小さい。さらに、Si膜は高さ方向に自由に膨張する。
【0161】
先行技術と比較して、
図5における両方のアプローチは、サイクルの繰り返し中にSiの体積変化をより良く吸収することができ、Cu基材によって加えられる応力を最小にすることによって離層及び容量損失を緩和することができる。
【0162】
図6は、典型的なSi上のLVO固体媒介層の性能を説明する。LVOは、0~2V範囲のリチウムのためのインターカレーションホストであり、Siのサイクルの繰り返しの電位範囲において実質的容量を有する。Siの脱リチウム化の電位(1Vまで)において、黒鉛が完全に脱リチウム化される間LVOはその充電状態(SOC)の最中に作動する。この特性は、LVOがSiへのレドックス媒介物として機能するために重要である。
【0163】
図6(a)はLVOの充電-放電プロファイルを示し、ケイ素及び黒鉛の充電-放電プロファイルが比較のために含まれる。
図6(b)は、異なったSi/LVO比の模擬充電-放電曲線を示す。模擬充電-放電曲線は、SiとLVOとの間の比によって容量が変化することを示す。80重量%などのSiの高い配合量において、LVOからの容量寄与はごくわずかであり、電極は、2500mA・h/gの可逆容量を有する。Siからの全ての体積変化は粒子中のボイドによって説明され、したがって電極の膨張は最小であることが予想される。
【0164】
図7は、リチウムのためのインターカレーションホストとしてLVO固体媒介層の性能を説明する。V
2O
5は、十分に研究されたカソード材料である。1.5Vまでリチウム化される時、V
2O
5は不規則な岩塩構造を有するLi
3V
2O
5を形成する。いくつかの実施形態において、不規則な岩塩相は、さらにリチウム化される時にさらにより多くのリチウムを受け取ってLi
4V
2O
5又はLi
5V
2O
5を形成することができ、260mA・h/gの可逆容量をもたらすことができる。例えばTiO
2と対照的に、リチウム化と脱リチウム化との間にごくわずかなヒステリシスがある。
図7において説明されるように、LVOは、0~1Vの間で分解ではなく安定なインターカレーションを受けるごく少数の酸化物のなかの1つである。LVOは、0-2V範囲のリチウムのためのインターカレーションホストであり、Siのサイクルの繰り返しの電位範囲において実質的容量を有する。LVOは極めて迅速な速度論及び非常にすぐれたサイクルの繰り返し安定性を有し、それは、Siを保護するために好ましい。したがって、LVOはiリチウムのための非常に安定なインターカレーションホストである。
【0165】
図8は、中性子回折及びX線回折によって測定される好ましいLVOの不規則な岩塩構造を説明する。
図8は、不規則な岩塩構造はサイクルの繰り返し中に十分に維持されることを示す。いくつかの実施形態において、この電位領域において予想されるように、SEI層が酸化物表面上に形成される。いくつかの実施形態において、構造的改良は、格子パラメーターの変化が1.8%にすぎず、それは5.5%の体積変化に変換する-平滑な黒鉛よりもずっと小さいことを示す。この小さな体積変化は、非常にすぐれたサイクルの繰り返し安定性をもたらし、
図7(b)に示されるように、1000サイクルに対してごくわずかな容量減衰がある。また、材料は、非常にすぐれたレート能力を示し、
図7(a)によって説明されるように、その容量の半分を20A/gで、又は20秒未満で供給する。LVOの安定性、高いレート能力、及び使用電位は、それをSiのための保護層としての機能を果たす理想的な材料にする。
【実施例】
【0166】
実施例
以下の実験を行ない、開示される技術を試験した。実験は、本発明の範囲を制限することを意図していない。
【0167】
実施例1:薄膜材料の調製。
この実施例の実験において、Si及びV2O5薄膜を電子線蒸発によってCu基材上に堆積させた。基本的な実験のためにCu基材上の厚さ200nmのSi薄膜を選択した。Si膜を物理的に保護し、並びに閉じ込めるために、厚さ300nmのV2O5膜をSi膜の上面及び下面の両方に堆積させ、その後に、アニールしてV2O5の結晶相を達成した。
【0168】
材料の結晶構造は、X線回折(XRD)によって確認された。
図9は、Si薄膜、Si-V
2O
5薄膜、及びアニールした後のSi-V
2O
5薄膜のXRDスペクトルを示す。V
2O
5は、不十分な電気化学的性能を意味する、堆積後の非晶質構造物を示した。しかしながら、アニールした後に結晶相が出現した。V
2O
5のリチウム化後に、不規則な岩塩相Li
3V
2O
5は、かなりの混合導電率及び高可逆容量を有する。Li
3V
2O
5膜は、すぐれた電気化学サイクルの繰り返しを有する。
【0169】
実施例2:V
2O
5-Si-V
2O
53層構造のSEM分析。
V
2O
5-Si-V
2O
53層の構造を分析するために、走査型電子顕微鏡法(SEM)及びエネルギー分散型X線分析(XRD)を行ない、結果を
図10に示す。
【0170】
図10(a)に明らかにされるように、3層の上面は、アニールした後に全く亀裂又は離層なしに非常に平滑であった。3層膜の厚さは、
図10(b)に示される横断面SEM画像を用いて測定された。全厚は約800nmであり、それは電子線エバポレーターセンサーからの表示と一致している。
【0171】
XRDを用いて元素分析を行ない、薄膜の組成の図表を作った。
図10(c)に示されるように、元素Siの信号は、膜の中心に集中していた。
図10(d)に示されるように、元素V信号は上面及び下面に集中しており、V
2O
5がSiの各面上に外側へ配置されるSi及びV
2O
5のサンドイッチ構造を意味する。XRD画像に基づいて、Si層の厚さは約200nmであり、2つのV
2O
5膜の厚さは約300nmである。
【0172】
これらのSEM及びEDX画像は、ここに開示される技術の一実施形態である、3層薄膜設計を示す。
【0173】
実施例3:試験Li||薄膜アノード電池。
図11は、ここに開示される技術を試験するために行われた実験からのデータの4つのグラフを含む。特に、
図11は、ここに開示される技術のいくつかの実施形態において使用されるLVO-Si-LVOサンドイッチ構造物の比容量及びサイクルの繰り返し速度は保護されていないSi膜の比容量及びサイクルの繰り返し速度と比較する方法を示す。
図11(a)はSi薄膜のサイクルの繰り返し性能を示し、
図11(b)はSi薄膜の電圧プロファイルを示し、
図11(c)は3層薄膜ハーフセルのサイクルの繰り返し性能を示し、
図11(d)は3層薄膜ハーフセルの電圧プロファイルを示す。電流密度は、最初の3サイクルについて0.02mA/cm
2であり、次いで0.06mA/cm
2であった。
図11において「Cap」=容量である。
【0174】
電子線蒸発によってLVO-Si-LVOサンドイッチ構造物が製造された。V2O5及びSi目標を使用して、銅基材上のV2O5-Si-V2O5構造物を最初に形成し、ここで、V2O5及びSi層の厚さはそれぞれ約300nm及び200nmである。この構造物は、リチウム対向電極と対になった電極として直接に使用される。最初のサイクルの間、V2O5を最初にリチウム化してLi3V2O5を形成し、それをその後、Siのリチウム化ととともにさらにリチウム化する。代わりに、又はさらに、V2O5のリチウム化はまた、それをブチルリチウムなどのリチウム化剤と反応させることによって化学的に達成することができる。
【0175】
1つの実験において、基本的なSi薄膜をLi||薄膜セルにおいて試験した。結果を
図11(a、b)において説明する。
図11(a、b)に示されるように、最初の放電で、Si薄膜は約0.2Vの平均電圧で3300mA・h/g超の比容量を示し、これは約0.19mA・h/cm
2のアノード面積容量に相当する。しかしながら、大きな不可逆容量のために、3回の形成サイクル後、残されたSiの比容量はたった1600mA・h/gであった。セルの容量保持率は、100サイクル後に約36%であり、これは0.08mA・h/cm
2のアノード面積容量に相当する。
図11(b)に示されるように、急速な容量減衰もまた、電圧プロファイルにおいて観察される。図示されるように、放電プラトーは短くなり、連続的に下方に移行した。この現象のための1つの妥当な説明は、寄生反応生成物がセル容量を減少させるだけでなく、セルの抵抗を増加させるということである。
【0176】
比較して、3層膜もまた、Li薄膜セルにおいて試験された。3層膜は、Cu基材上のLVO-Si-LVOである。
図11(c、d)に示されるように、1回目の放電後に不可逆容量があり、複合物の総重量に基づいた比容量を790mA・h/gから510mA・h/gに減少させる。
図11(d)の1回目の放電の電圧プロファイルに観察されるように、2.5V~0.5Vの間に複数の短い電圧プラトーがあり、それはV
2O
5のリチウム化に相当する。したがって、不可逆容量は、SiとV
2O
5の両方に由来しているであろう。
図11(d)に示されるように、1回目の充電から出発して、電圧プロファイルは、Si及びV
2O
5の混合リチウム化プロセスのために、0.01V~2Vの間で非常に平滑であった。
図11(c)によると、0.16mA・h/cm
2の高可逆的な面積容量が観察されたが、これは同じ厚さを有するSi薄膜アノードの容量の2倍である。もっと重要なことに、4回目のサイクルから出発して、セルは、100サイクル後に容量の約100%を維持した。3層のサイクル性は、LVOの保護がSi系アノードのサイクル寿命を改良することを実証する。
【0177】
図11は、LVO-Si-LVOサンドイッチ構造物の比容量及びサイクルの繰り返し速度がCu上に堆積された200nmの保護されていないケイ素膜の比容量及びサイクルの繰り返し速度に匹敵することを示す。より具体的には、
図11は、保護されていないケイ素膜がサイクルの繰り返しによって徐々に容量減衰を受けることを示す。極めて対照的に、LVO-Si-LVOサンドイッチ構造物は、本質的に完全な容量維持率を示す。このタイプのハーフセル試験において、差異は、LVOがSiの体積膨張に対処し且つ電気的接触を維持するのに役立つことを示す。
【0178】
図12は、100サイクル後の分解されたSi薄膜セルの写真画像を示す。100サイクル後に、セルを分解してSi薄膜のモルフォロジーを検査した。
図12において説明されるように、Si膜はCu基材から完全に剥離され、その結合性を維持しなかった。Si薄膜は、アノードとして急速な電気化学挙動の低下並びに機械的破損を示した。LVO-Si-LVOサンドイッチ構造物は、Si薄膜よりも優れている。
【0179】
実施例4:高温におけるセルのカレンダー寿命試験。
実験を実施して高温におけるカレンダー寿命を試験する。
図13は、LVO-Si-LVO薄膜構造物と比較したSiのためのサイクルの繰り返し及びカレンダー試験を説明するグラフを示す。実施例3におけるのと同じセル形態が利用された。
【0180】
図13(a)はSi薄膜のサイクルの繰り返し性能を示す。
図13(b)はSi薄膜の電圧プロファイルを示す。
図13(c)は、LVO-Si-LVO3層薄膜ハーフセルのサイクルの繰り返し性能を示す。
図13(d)は、LVO-Si-LVO3層薄膜ハーフセルの電圧プロファイルを示す。セルをカレンダー寿命試験のために55℃で24時間の間放電状態で試験し、冷却後に、セルを室温で充電した。電流密度は、最初の3サイクルの間0.02mA/cm
2であり、次いで0.06mA/cm
2であった。
【0181】
小さな電流密度で3回の形成サイクル後に、セルをC/5でサイクルを繰り返した。5回目の放電後に、セルは電池試験機から切り離され、55℃の高温で24時間の間静置し、その後に、約1時間の間冷却プロセスを行なった。セルを電池試験機に戻し、5回目の充電プロセスを開始した。セルを通常のサイクルに置く前に同じプロセスをもう一回繰り返した。
【0182】
図13(a、b)において説明されるように、5回目の放電で2000mA・h/g超の放電比容量でLi||Si薄膜セルが出発した。しかしながら、静置プロセスの後に、たった約1000mA・h/gの比容量しか残されておらず、50%未満のクーロン効率であった。6回目のサイクルで同じデータが再現され、その後に、連続した容量減衰サイクルが続いた。さらに、
図13(b)において説明されるように、5回目及び6回目の充電の電圧プロファイルは、いくつかの実験で充電する前に0.6V超の開放電圧(OCV)を示した。放電状態で、Siアノードの電位はLi金属と同じであると考えられ、これはカソードとアノードとの間の最小量の自己放電を意味する。OCVの増加とクーロン効率の減少の両方は、アノードと電解質の間の反応がSi系アノードのカレンダー寿命に著しく影響を与えることを示唆する。
【0183】
図13(c、d)において説明されるように、3層薄膜-Liセルは、かなり改良されたカレンダー寿命性能を示した。LVO保護によって、セルは、3回の形成サイクル後に約520mA・h/gの可逆的比容量を示した。高温での静置プロセスの後に、クーロン効率は、5回目のサイクル及び6回目のサイクルそれぞれについて86%及び87%であった-基本的なSi薄膜セルを超える著しい改良があった。さらに、後のサイクルにおいて容量減衰は無く、わずかな容量の回復さえあった。5回めの充電及び6回目の充電の始めのOCVは約0.4Vであり、最小量のLiイオンがアノードから失われることを意味する。
【0184】
図13が実証するように、LVO保護の利点は、高温貯蔵試験においていっそう明白である場合がある。例えば、
図13において説明される試験において、6回目及び7回目のサイクルで、Siは、その完全リチウム化状態で24時間の間55℃で貯蔵され、その後に脱リチウム化容量が測定された。例示されるように、この実施例の試験において、クーロン効率は98%の一定値から45%に低下するが、これは大幅な低下である。この実施例の試験の貯蔵期間の間、セルを開回路にしておいたため、容量の損失はサイクルの繰り返し中の周期的な体積変化の結果ではなかった。もっと正確に言えば、SEI層を通しての漏出のためにリチウム原材料の顕著な低下があった。後続サイクルにおける完全なリチウム化後にSi可逆容量は完全に回復しなかったが、高温貯蔵中の活性リチウムの損失と比べて低下は比較的少なかった。
図13において例示される実施例の試験は、黒鉛による不動態化としてであるとは思われない、Siアノード上のSEIに関連した課題を実証する。それと対照して、LVO-Si-LVOサンドイッチ構造物のサイクルの繰り返し及び貯蔵挙動は、Li||Si薄膜セルよりもずっと良かった。LVO媒介物層によって、完全なリチウム化状態で24時間の間55℃での貯蔵後に、クーロン効率は99%から90%にしか低下しなかった-保護のないSiと著しい対照をなしている。注記として、薄膜設計を考えれば面積/体積比が非常に高いので、これは要求の厳しい試験であった。
【0185】
図13において例示される実施例試験の間の比較は、LVOは、電池のカレンダー寿命のすぐれた指標である、高温貯蔵中のSiのための非常に有効な保護層であることを示す。
【0186】
実施例5:室温におけるセルのカレンダー寿命試験。
カレンダー寿命をさらに解明するために、もっと多くの実施例試験を室温(約25℃)で行ない、LVO層の機能を検証した。これらの試験の結果を
図14において説明する。
図14(a)は、Si薄膜のサイクルの繰り返し性能を示す。
図14(b)は、LVO-Si-LVO3層薄膜ハーフセルのサイクルの繰り返し性能を示す。セルを放電状態で24時間の間室温で静置した。電流密度は最初の3サイクルの間0.02mA/cm
2であり、次いで0.06mA/cm
2であった。
【0187】
これらの試験において、最初の3回の形成サイクルの充電及び放電の面積容量は、約0.14mA・h/cm
2であった。しかしながら、4回目のサイクルから出発して、面積容量はたった約0.05mA・h/cm
2容量を供給した。大きな容量は、Si薄膜の不十分な速度論を意味し得る。この含意は、
図11に示されるデータと一致している。
図14(a)において説明されるように、各々のサイクル試験は、10サイクルを繰り返すこと及び放電状態での24時間の静置からなり、それはクーロン効率及び容量維持率の両方の明らかな傾向を示した。非静置サイクルで急速な容量減衰があるにもかかわらず、静置サイクルでの平均クーロン効率は約92%であり、場合により、極度の寄生反応から生じる。これらの試験において、53サイクル後にたった0.03mA・h/cm
2の面積容量が残った。
【0188】
同じカレンダー寿命試験方法をLVO-Si-LVO3層に適用した。
図14(b)において説明されるように、最初の3回の形成サイクルは、0.13mA・h/cm
2の面積容量となり、これは、電流密度の増加のために4回目のサイクルで0.09mA・h/cm
2に低下し、30%未満の容量損失である。比較によって、単一Si薄膜セルは、4回目のサイクルで65%超の容量を失った。ここで、10サイクル後毎の静置サイクルの平均クーロン効率は約96%であり、Si薄膜セルからの著しい改良を示した。53サイクル後に、0.08mA・h/cm
2容量が残っており、高可逆的システムを意味する。
【0189】
実施例4及び5は、高温及び室温の両方で、LVO層を導入する時に改良されたカレンダー寿命を実証する。
【0190】
実施例6:分解されたサイクル繰り返し済みセルのSEM分析。
上記の実施例によると、多数のサイクル後にLVO-Si-LVO3層セルの容量損失はほとんどないことが実験的に観察された。さらに検討するために、分解されたサイクル繰り返し済みのセルでSEMが行われた。
図15は、実施例実験から取られた一連のSEM及びXRD画像を示す。
図15(a)は、多数のサイクル後のLVO-Si-LVO3層セルの上面のSEM画像を示す。
図15(b)は、多数のサイクル後のLVO-Si-LVO3層セルの傾斜横断面のSEM画像を示す。
図15(c)は、多数のサイクル後のLVO-Si-LVO3層セルの横断面のSEM画像を示す。
図15(d)は、多数のサイクル後のLVO-Si-LVO3層セルのEDXマップを示し、ここで、EDXマップは
図15(c)のSEM画像に相当する。
【0191】
図15において説明されるように、3層膜は皺が寄り、多数のサイクル後にCu基材から部分的に剥離した。これらの観察は、容量減衰の原因を示す証拠を提供することができる。例えば、
図15(c、d)のEDXマッピングは、サイクル繰り返し済み膜の3層構造物を明らかに示し、基材から剥離される間3つの膜が一緒によく付着したことを意味する。この観察は、物理的障壁閉じ込めのためのLi
xV
2O
5(3≦x≦5)機能を裏づけることができる。離層を引き起こす体積膨張を完全に除くことができる場合、サイクルの繰り返し挙動をさらに高めることもできる。
【0192】
この詳細な説明において、複数の実施形態並びに添付した図面が参照され、そこで実例として技術の特定の典型的な実施形態が示される。これらの実施形態は、当業者が技術を実践できるように十分に詳細に説明され、様々な開示される実施形態の改良を当業者は行なうことができることは理解されるべきである。
【0193】
上記の方法及び工程が特定の順序で起こる特定の事象を示す場合、特定の工程の順序付けを改良することができ且つこのような改良は技術の別形態に従っていることを当業者は認識するであろう。さらに、特定の工程は、可能な場合並列プロセスで同時に、並びに逐次に行なうことができる。
【0194】
本明細書において引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の刊行物、特許、又は特許出願が本明細書において具体的に且つ個々に言及されるかのように、それらの全体において本明細書に参照によって組み込まれる。
【0195】
上記の実施形態、別形態、及び図面は、本技術の実用性及び汎用性を示すべきである。本明細書に示される特徴及び利点の全てを提供するわけではない他の実施形態もまた、技術の趣旨及び範囲から逸脱せずに、利用することができる。このような改良及び別形態は、請求の範囲によって規定される技術の範囲内にあると考えられる。
【0196】
開示される技術の様々な実施形態は上に説明されたが、それらは例としてのみ示され、限定的ではないことは理解されるはずである。同様に、様々な図表は、開示される技術の実施例の構築的又は他の形態を表わすことができ、それは、開示される技術に含まれ得る特徴及び機能性を理解するのを助けるために示される。開示される技術は、例示された実施例の構造又は形態に制限されないが、様々な代替構造及び形態を使用して所望の特徴を導入することができる。本明細書に開示される技術の所望の特徴を導入するために代替機能性、論理的、又は物理的分割及び形態を導入することができることは当業者には明白であろう。さらに、流れ図に関して、操作的記述、及び方法、本明細書において工程を示す順序は、文脈が他に指示しない限り、様々な実施形態を実施して、記載された機能を同じ順序で行なうべきであるとは考えていない。
【0197】
様々な典型的な実施形態及び具体化を用いて開示される技術が説明されるが、個々の実施形態の1つ以上において説明される様々な特徴、態様、及び機能性は、それらの適用性をそれらが説明される特定の実施形態に限定されるのではなく、代わりに、このような特徴が、説明される実施形態の一部であるとして示されるかどうかにかかわらず、単独で又は様々な組合せで、開示される技術の他の実施形態の1つ以上に適用することができることは理解されるはずである。したがって、本明細書に開示される技術の幅及び範囲は、上述の典型的な実施形態のいずれかによって制限されるべきではない。本特許出願を読んだ後に当業者に明白になるが、例示された実施形態及びそれらの様々な代替物を導入することができ、例示された実施例に限定しない。
【国際調査報告】