(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】全般性不安障害又は生命を脅かす疾患に関連しない他の不安のための心理療法を補助するためのリゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)及びLSD類似体の作用
(51)【国際特許分類】
   A61K  45/00        20060101AFI20240213BHJP        
   A61P  25/22        20060101ALI20240213BHJP        
   A61K  31/4045      20060101ALI20240213BHJP        
   A61K  31/137       20060101ALI20240213BHJP        
   A61P  25/24        20060101ALI20240213BHJP        
   A61K  31/661       20060101ALI20240213BHJP        
   A61K  31/48        20060101ALI20240213BHJP        
【FI】
A61K45/00 
A61P25/22 
A61K31/4045 
A61K31/137 
A61P25/24 
A61K31/661 
A61K31/48 
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548818
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 IB2022051350
(87)【国際公開番号】W WO2022175821
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522340934
【氏名又は名称】ユニヴェルシテートスピタル  バーゼル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉  良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫  敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口  昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤  和彦
(72)【発明者】
【氏名】リヒティ,マティアス  エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ホルツ,フリーデリケ  ソフィー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086CB05
4C086DA34
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA12
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA08
4C206FA09
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA12
(57)【要約】
  幻覚物質を個人に投与し、及び不安を治療し、具体的には幻覚物質の投与を過ぎて数週間にわたり、患者において、不安の評点スケールスコア尺度(STAIグローバル又は状態若しくは特性不安)、及び/又は抑うつの尺度(HDRS又はBDIスコア)、及び/又は全般的な心理的苦痛の尺度(SCL-90評点)の低減を生じさせることにより、生命を脅かす重篤な身体疾患などの原因と特に関連しない不安障害を治療する方法。生命を脅かす重篤な身体疾患などの原因と関連しない不安を有する個人に幻覚物質(好ましくはLSD)を投与し、及び個人においてポジティブな急性薬物効果及びポジティブな長期治療効果を誘発することにより、不安を治療する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  生命を脅かす重篤な身体疾患と特に関連しない不安障害を治療する方法であって、
  個人に幻覚物質を投与する工程;及び
  不安を治療し、及び前記幻覚物質の投与を過ぎて数週間にわたり、前記個人において、不安、抑うつの尺度、全般的な心理的苦痛の尺度及びその組み合わせからなる群から選択される評点スケールスコア尺度の低減を生じさせる工程
を含む方法。
【請求項2】
  不安の前記評点スケールスコア尺度は、STAIグローバル、状態及び特性不安からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
  抑うつの前記評点スケールスコア尺度は、HDRS及びBDIスコアからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
  全般的な心理的苦痛の前記評点スケールスコア尺度は、SCL-90評点である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
  前記幻覚物質は、LSD、その塩、その類似体及びその相同体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
  LSDは、25~400μgの量で投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
  LSDの第2用量は、前記投与工程から4~5週後に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
  前記幻覚物質は、トリプタミン又はフェネチルアミンであり、及び5D-ASCスケールでLSDと同じ又は同様の急性効果を誘発し、並びにプシロシビン、メスカリン、ジメチルトリプタミン(DMT)、2,5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン(DOI)、2,5-ジメトキシ-4-ブロモアンフェタミン(DOB)、その塩、その酒石酸塩、その類似体及びその相同体からなる群から選択される物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
  前記不安は、全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害、恐怖症、適応障害及び心的外傷後ストレス障害からなる群から選択される内因性不安である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
  前記不安と関連するか又は共存する抑うつ又は気分の落ち込みを治療する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
  前記個人において心理的苦痛を低減し、及び/又は生活の質を高める工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
  前記幻覚物質の投与前及び後、別の日に施される心理療法を強化する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
  前記個人は、他の幻覚物質の使用後、定性的に異なるサイケデリック反応の必要性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
  不安を治療する方法であって、
  生命を脅かす重篤な身体疾患などの原因と関連しない不安を有する個人に幻覚物質を投与する工程;及び
  前記個人においてポジティブな急性薬物効果及びポジティブな長期治療効果を誘発する工程
を含む方法。
【請求項15】
  前記幻覚物質は、LSD、その塩、その類似体及びその相同体からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
  LSDは、25~400μgの量で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
  前記幻覚物質は、トリプタミン又はフェネチルアミンであり、及び5D-ASCスケールでLSDと同じ又は同様の急性効果を誘発し、並びにプシロシビン、メスカリン、ジメチルトリプタミン(DMT)、2,5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン(DOI)、2,5-ジメトキシ-4-ブロモアンフェタミン(DOB)、その塩、その酒石酸塩、その類似体及びその相同体からなる群から選択される物質を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.技術分野
  本発明は、サイケデリック状態を誘発し、及び全般性不安障害のための心理療法を補助するためのLSD及びLSD類似体又は誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景技術
  リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)などの幻覚剤は、意識の変化、ポジティブな感情、向上した自己観察、環境、身体及び自己の知覚並びに自我の消失の経験など、特有の自覚的作用を誘発することができる物質である(Carhart-Harris et al., 2016b;Dolder et al., 2016;Holze et al., 2021;Liechti, 2017;Passie et al., 2008;Schmid et al., 2015)。
【0003】
  LSD、プシロシビン、DMT及びメスカリンなどのすべてのセロトニン作動性幻覚剤は、5-HT2A受容体でのアゴニストであり(Rickli et al., 2016)、したがって全体的に非常に類似の作用をもたらし得る。さらに、幻覚物質は、LSDの臨床治験で特に示されるように、セロトニン5-HT2A受容体の活性化を介してヒトでその急性作用をもたらす(Holze et al., 2021;Preller et al., 2017)。
【0004】
  その治療上の利点に寄与し得る幻覚剤の急性作用は、寛大さ、信頼、人々との縁故又はエマルジョンの感情の増加、心理的問題における洞察及び別に詳述される神経再生プロセスの刺激による治療上の関係の向上を含む(Vollenweider et al., 2020)。
【0005】
  幻覚剤は、病状の潜在的な治療法として研究されている。臨床試験では、嗜癖を有する患者(Krebs et al., 2012)、生命を脅かす疾患と特に関連する不安を有する患者(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015)におけるLSDの使用並びに大うつ病(Carhart-Harris et al., 2016a;Davis et al., 2021;Griffiths et al., 2016;Roseman et al., 2017;Ross et al., 2016)、末期疾患(Griffiths et al., 2016;Grob et al., 2011;Ross et al., 2016)に伴う不安(Griffiths et al., 2016;Grob et al., 2011;Ross et al., 2016)を有する患者及び異なる形態の嗜癖(Bogenschutz, 2013;Bogenschutz et al., 2015;Garcia-Romeu et al., 2019;Garcia-Romeu et al., 2015;Johnson et al., 2014;Johnson et al., 2016)におけるプシロシビンの使用での有益な効果が記述された。さらに、活性な幻覚物質N,N-ジメチルトリプタミン(DMT)を含有するサイケデリックな醸造アヤワスカ(brew Ayahuasca)(Dominguez-Clave et al., 2016)は、抑うつを軽減し得るという限定された証拠がある(Dos Santos et al., 2016;Palhano-Fontes et al., 2019;Sanches et al., 2016)。
【0006】
  いくつかの研究では、幻覚剤での治験に不安を有する患者が含まれた。より以前のいくつかの研究は、進行期の癌及び/又は瀕死と関連する実存する不安を有する患者において幻覚剤を使用して1950~70年代に行われた(Grof et al., 1973;Kast, 1966;Kast et al., 1964;Pahnke et al., 1969)。
【0007】
  Grobらは、進行期の癌及び不安を有する患者12名においてプシロシビンを用いた最初の現代二重盲検プラセボ(ナイアシン)対照試験を行った(Grob et al., 2011)。この研究では、主に癌及び不安を有する患者への中程度の用量のプシロシビンの投与の実現性及び安全性が確立された。データの一部から、気分及び不安の改善に対してポジティブな傾向が明らかとなった。具体的には、薬物投与後1日目及び2週目に、気分に対するプシロシビンの傾向効果があったが、不安の有意な改善は見られなかった(
図1)。この結果から、さらなる研究の必要性が裏付けられた。プシロシビンは、本発明でも使用される変性意識状態スケールの5次元(5D-ASC;
図2)で評価されたサイケデリック状態を急性的に誘発した(Grob et al., 2011)。不安の診断は、この研究において様々であり、急性ストレス障害、全般性不安障害、癌が原因の不安障害又は不安を有する適応障害を含んだが、重要なことに、進行期の癌がすべての患者に存在した。
 
【0008】
  Griffithsらは、生命を脅かす癌を有する患者51名において、抑うつ及び不安を有する患者で無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った。抑うつ気分は、大うつ病性障害、気分変調性障害又は不安及び抑うつ気分を有する適応障害の基準を満たすと定義された。不安は、全般性不安障害、慢性不安を有する適応障害又は不安及び抑うつ気分を有する適応障害の基準を満たすと定義された。参加者51名すべては、潜在的に生命を脅かす癌の診断を有し、65%が再発性転移性疾患を有した。この研究では、高用量のプシロシビン22mg又は30mg/70kgに対して非常に低い(プラセボ様)用量のプシロシビン1mg又は3mg/70kgの投与でのクロスオーバー設計並びにセッション間の5週及び6か月目の経過観察を用いた。高用量のプシロシビンにより、生活の質の向上及び死の不安の低減と共に抑うつ気分及び不安の大幅な低減が生じた(
図3A~3C)。6か月目の経過観察において、これらの変化は、維持され(
図3A~3C)、参加者の約80%が抑うつ気分及び不安の臨床的に有意な低減を示し続けた。参加者は、生活/自己についての態度、気分、関係及び精神性の向上が高用量体験に起因するとし、80%を超える参加者は、幸福/人生満足度が中程度に又は大きく増加したと認めた(Griffithsetal., 2016)。プシロシビンに対するより高い急性的な神秘的経験の質問票(MEQ)スコアは、プシロシビン投与後5週目により低い不安及び抑うつとポジティブに関連付けられ(
図4A~4B)、より高いポジティブな急性プシロシビン作用は、よりよい長期間の治療上の利点に関連することが示された(Griffiths et al., 2016)。
 
【0009】
  Rossらは、生命を脅かす癌を有する患者29名における不安及び抑うつに対するプシロシビン治療の無作為化対照試験を行った(Ross et al., 2016)。患者の62%は、ステージIII又はIVの進行癌を有した。26名の患者が適応障害を有し、3名の患者のみが全般性不安障害を有した。患者は、ランダムに単回投与シロシビン(0.3mg/kg)又はナイアシンプラセボに割り当てられた。主要アウトカムは、7週目にクロスオーバー前に群間で評価された不安及び抑うつであった。プシロシビンにより、不安及び抑うつが改善し、生活の質が向上した(
図5A~5C及び6A~6C)。再び、より高い神秘的タイプの経験は、長期的なよりよい治療結果と関連付けられた。
 
【0010】
  Carhart-Harrisらは、患者12名における治療抵抗性抑うつの治療の心理学的補助と共にプシロシビン(7日空けて10mg及び25mg)作用の非盲検実施可能性試験を行った(Carhart-Harris et al., 2016a)。対照群はなかった。プシロシビンは、患者のすべてに忍容性がよかった。注目される副作用は、薬物開始中の一過性の不安であり(すべての患者)、一過性混乱又は思考障害(患者9名)、軽度及び一過性の悪心(患者4名)並びに一過性の頭痛(患者4名)であった。ベースラインに対して、抑うつ症状は、高用量治療後1週(p=0.002)及び3か月(p=0.003)で顕著に低減された(
図7)。不安及び性快感消失における顕著な及び持続性の改善も注目された。この研究は、治療抵抗性抑うつに対するプシロシビンの安全性及び有効性の予備的支持を提供した(Carhart-Harris et al., 2016a)。
 
【0011】
  Davisらは、2つのプシロシビンのセッション(セッション1:20mg/70kg;セッション2:1週間後に30mg/70kg)又は遅らせた治療のウェイティングリストに無作為化された、大うつ病を有する患者27名において無作為化試験を行った(Davis et al., 2021)。主要アウトカムは、セッション2から1週後及び4週後の抑うつ重症度であった(ハミルトンうつ病評価尺度、HAMD)。患者24名が介入を完了した。即時処置群における1週及び4週目の平均(SD)HAMDスコア(8.0[7.1]及び8.5[5.7])は、遅延処置群における5週及び8週の同等時点でのスコア(23.8[5.4]及び23.5[6.0])よりも統計学的に有意に低かった(
図8)。効果サイズは、5週目(Cohen d=2.2;95%CI,1.4~3.0;P<0.001)及び8週目(Cohen d=2.6;95%CI,1.7~3.6;P<0.001)で大きかった。所見から、療法でのプシロシビンは、抑うつの治療に有効であり、したがって癌及び抑うつを有する患者におけるこの介入の先の研究の結果及び治療抵抗性抑うつを有する患者における非無作為化研究の結果が拡張されると示唆される(Davis et al., 2021)。
 
【0012】
  Gasserらは、生命を脅かす疾患及び関連する不安を有する患者においてLSDで最初の現代的研究を行った(Gasseret al., 2014)。治療は、薬物を含まない心理療法セッション及び2~3週空けて2つのLSDセッションを含んだ。患者12名が含まれ、8名は、2~3週空けて2つのLSDセッションでLSD200μg(経口でカプセルとして)を2回投与され、患者3名にプラセボ(低用量のLSD20μg)を投与した。すべての患者は、状態・特性不安尺度(STAI)の状態又は特性尺度のいずれかで不安のレベルが増加し(>40ポイント)、半数は、精神障害の診断・統計マニュアル(DSM)-IVに従って全般性不安障害と診断された。この研究では、ベースラインの不安スコアと比較して、2つのLSDセッションから2か月後にSTAI不安の有意な減少が実証された(
図9A~9B)。対照的に、プラセボセッション後、STAIスコアは、減少しなかった。しかしながら、プラセボ対照群は、処置群との統計的比較には少なすぎた。この研究により、LSD治療後12か月まで不安の低減の持続も実証されたが、プラセボ群では確認されなかった(Gasser et al., 2015)。薬物関連の重篤な有害作用、パニック反応又は他の医学的若しくは精神医学的合併症はなかった。この研究の著者は、不安障害を有する患者においてLSDを安全に使用することができるが、有効性を確認するために、より大きい対照試験に値すると結論付けた(Gasser et al., 2014)。12か月での経過観察研究でも、12か月までの有害作用がないことが実証され、この研究におけるLSDの有益な効果の定性的根拠が示された(Gasser et al., 2015)。
 
【0013】
  LSDは、身体疾患がなく、抑うつを有する患者においてより小さくより古いいくつかの研究でも使用された(Savage, 1952)。LSDは、1988~1993年にスイスにおいて、情動障害(抑うつ、不安、強迫性障害)を有する患者で、サポートする研究データの非存在下において及び臨床治験外で実験的及び一時的にも使用された(Gasser, 1996)。1960~70年代にプラセボ対照臨床治験外でのLSDが同様に使用された(Pahnke et al., 1970)。しかしながら、身体疾患のない不安を有する患者におけるLSDの有効性についての臨床試験データを欠いている。プシロシビンなどの他の幻覚剤でさえ、癌と関連する不安及び抑うつに関するデータのみあるが、身体疾患に関連しない不安障害(Griffiths et al., 2016;Ross et al., 2016)又は抑うつ(Carhart-Harris et al., 2018;Carhart-Harris et al., 2016a;Davis et al., 2021)についてのデータはない。
【0014】
  Schmidらにより、スイスの精神医学的患者におけるLSDのコントロールされた治療的使用が記述された。観察的研究から、心理療法に加えて、LSDで治療された11名の患者が記述された。患者は、心的外傷後ストレス障害(4)、大うつ病(2)、不安性人格障害(1)、自己愛性人格障害(1)、強迫性障害(1)及び解離性障害(2)に罹患していた。LSDは、健康な対象において評されるものと同等の及び癌と関連する不安を有する患者若しくは抑うつを有する患者においてプシロシビンを用いた他の研究(Grob et al., 2011;Roseman et al., 2017)又は癌と関連する不安を治療するためにLSDを使用する研究(Gasser et al., 2014;Liechti et al., 2017)で報告されるものとほぼ同等の5D-ASC尺度及びMEQに対する急性効果(
図10及び11)をもたらした。
 
【0015】
  過去40年にヒトにおける公式の研究がなかった後、LSDは、現在、健康な対象で調査されている。Carhart-Harris及び同僚は、静脈内投与されるLSD40~80μgを用いて、健康なボランティア10名において、実験的な単盲検、被験者内、プラセボ対照パイロット試験を実施した(Carhart-Harris et al., 2015;Kaelen et al., 2015)。LSDは、「思考の混乱」、「素晴らしい気持ち」及び「内部の暖かさを感じる」などの自覚的効果をもたらす(Kaelen et al., 2015)。LSDは、わずかに血圧及び心拍数を上昇させた(Kaelen et al., 2015)。LSDは、被暗示性を向上させ(Carhart-Harris et al., 2015)、音楽に対する情緒反応を高め(Kaelen et al., 2015)、共感覚様体験を誘発した(Terhune et al., 2016)。次いで、同じグループは、LSD75μgの用量(静脈内,経口LSD約100μgに相当する)を用いて、対象20名における別のより大きいプラセボ対照クロスオーバー研究を行い、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)スキャンセッション(Carhart-Harris et al., 2016b;Carhart-Harris et al., 2016c;Kaelen et al., 2016;Lebedev et al., 2016;Roseman et al., 2016;Speth et al., 2016;Tagliazucchi et al., 2016)を含んだ。すべての参加者は、古典的な幻覚物質での少なくとも1回の以前の経験を有し、LSDを平均で14回使用したことがあった(Carhart-Harris et al., 2016b)。LSDは、気分の高揚、幸福な状態をもたらし、思考障害、妄想思考及びパラノイアなどの急性精神病様症状ももたらした。幸福な経験よりも著しく小さい不安のごくわずかな増加があった。全体的に、ポジティブな影響に対する偏りがあった。プシロシビンについて以前に記述されているように(Griffiths et al., 2008;MacLean et al., 2011)、LSDは、永続的効果をもたらした(Carhart-Harris et al., 2016b)。LSDは、プラセボと比較して2週目で楽観主義及び特性の開放性を増加させた。2週目で妄想思考に対する作用がなく、悩みが少なくなり、妄想思考を有する先入概念が少なくなる傾向があった(Carhart-Harris et al., 2016b)。データから、健康な対象において、幻覚剤は、中~長期間で開放性及び心理学的ウェルビーイングを高めたことが示される(Carhart-Harris et al., 2016b;Griffiths et al., 2008;MacLean et al., 2011)。一貫して、プラセボ対照研究からの経過観察データ(Carhart-Harris et al., 2016b;Studerus et al., 2011)又は疫学的データ(Johansen et al., 2015;Krebs et al., 2013b)によれば、健康な対象による幻覚物質の使用に伴う心理学的又は精神医学的問題の証拠はなかった。
【0016】
  いくつかの二重盲検、プラセボ対照、無作為順序クロスオーバー第I相試験をスイスの健康な対象において行った。最初の研究では、対象16名(男性8名、女性8名)においてLSD200μgの用量を経口で用い、LSDの心理学的、生理学的、内分泌及び薬物動態作用を特徴付けた(Dolder et al., 2015b;Schmid et al., 2015;trajhar et al., 2016)。LSDの投与により、12時間続く覚醒意識の顕著な変化をもたらした。LSDによって誘発された主な作用は、視覚的幻覚、視聴覚の共感覚並びにポジティブに経験される現実感喪失及び人格喪失感現象を含んだ。自覚的ウェルビーイング、幸福、他者との親密さ、開放性及び信頼がLSDによって増加した。LSDは、血圧、心拍数、体温、瞳孔サイズ、血漿コルチゾール、プロラクチン、オキシトシン及びアドレナリンを有意に増加させた。LSDによって生じた有害作用は、72時間以内に完全に鎮静した。重篤な急性有害作用は、確認されなかった(Schmidet al., 2015;Strajhar et al., 2016)。投与から1.5時間後にLSDの最大濃度に達した。次いで、3.6時間から12時間までの半減期及びより遅いその後の消失を有する一次速度式に従って濃度が減少した。LSDの薬物動態プロファイルに性差は確認されなかった。LSDに対する急性自覚的及び交感神経作用反応は、時間の経過による血漿中の濃度と密に関連し、急性耐性を示さなかった(Dolder et al., 2015b)。
【0017】
  第2の研究では、健康な対象24名(男性12名、女性12名)における100μgのLSD用量の効果を試験した(Dolder et al., 2016)。次の研究では、健康な対象16名において25、50、100、200μgの用量及びプラセボの効果を試験した(Holze et al., 2021)。別の研究では、MDMA及びd-アンフェタミンの効果と、LSD100μgの効果とを比較した(Holze et al., 2020b)。
【0018】
  fMRI研究において、LSDは、恐ろしい刺激に対する扁桃体の反応性を低減することが見出された。その結果は、プシロシビンの投与後に得られた所見と適合しており、ネガティブな表情の認知を弱め(Kometer et al., 2012;Schmidt et al., 2013)、恐ろしい顔に対する扁桃体BOLD応答を低減することが報告された(Kraehenmann et al., 2015)。さらに、LSDによる扁桃体非活性化は、その急性自覚的サイケデリック作用を伴った。このように、幻覚物質を用いた扁桃体反応性の低減は、潜在的な治療効果を反映し、ネガティブな感情の認知を低減し、治療同盟を促進し得る。
【0019】
  LSDは、恐ろしい顔及び悲しい顔の認知を低減し、MDMAと同様に情動的共感及び向社会性(Dolder et al., 2016)を高めることにより、感情的情報の処理もポジティブに変化させた(Hysek et al., 2014)。健康な参加者におけるLSDのこれらの効果は、患者におけるLSD補助心理療法に対するトランスレーショナルな関連性を有する可能性があり、ネガティブな感情の認知を低減し、治療同盟を促進すると期待され得る。
【0020】
  LSDは、癌などの生命を脅かす疾患を有する患者で調査されている。上述の研究は、身体疾患のない全般性不安障害を有する患者を含んでおらず、したがって、身体疾患の非存在下で不安を有する患者がサイケデリック補助療法から利点を得るかどうかは、未知であり、調べられていない。プシロシビン及びLSDは、癌に関連する不安を有する患者における不安、抑うつ及び生活の質を改善する証拠があるが、全般性不安又は社交不安障害を有する患者も利点を得るであろうと仮定することができない。
【0021】
  全般性不安障害及び社交不安障害などの他のタイプの不安障害は、非常に蔓延しており、定量的により大きい健康問題を表し、癌及び他の生命を脅かす疾患への適応障害よりも高い費用を社会に課す。さらに、セロトニントランスポーター阻害剤(シタロプラム、パロキセチン)、クエチアピン又はプレガバリンなどの薬物の慢性投与など、薬理学的治療の選択肢は、限られている。これらの投薬は、実質的に有害な薬物作用を有し、有効性が限定される。心理療法は、有効に使用され得る。しかしながら、付加的及び補足的な治療の選択肢が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
  したがって、全般性不安障害の有効な治療法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の概要
  本発明は、個人に幻覚物質を投与し、及び不安を治療し、具体的には幻覚物質の投与を過ぎて数週間にわたり、患者において、不安の評点スケールスコア尺度(STAIグローバル(global)又は状態若しくは特性不安)、及び/又は抑うつの尺度(HDRS又はBDIスコア)、及び/又は全般的な心理的苦痛の尺度(SCL-90評点)の低減を生じさせることにより、生命を脅かす重篤身体疾患などの原因と特に関連しない不安障害を治療する方法を提供する。
【0024】
  本発明は、生命を脅かす重篤な身体疾患などの原因と関連しない不安を有する個人に幻覚物質(好ましくはLSD)を投与し、及び個人においてポジティブな急性薬物作用及びポジティブな長期治療効果を誘発することにより、不安を治療する方法を提供する。
【0025】
  本発明の他の利点は、添付の図面と関連して考えた場合、以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるようになるため、容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図面の説明
            【
図1A】先行技術における、進行期の癌及び不安を有する患者の抑うつに対するプシロシビンの効果のグラフであり、BDIスコアを示す。
 
            【
図1B】先行技術における、進行期の癌及び不安を有する患者の抑うつに対するプシロシビンの効果のグラフであり、STAI状態不安スコアを示す。
 
            【
図2A】先行技術における、進行期の癌及び不安を有する患者においてプシロシビンで生じた心の急性変化を示すグラフであり、5D-ASC次元を示す。
 
            【
図2B】先行技術における、進行期の癌及び不安を有する患者においてプシロシビンで生じた心の急性変化を示すグラフであり、さらなる変化を示す。
 
            【
図3A】先行技術におけるプシロシビンで処置された癌患者における抑うつの低減を示すグラフである。
 
            【
図3B】先行技術におけるプシロシビンで処置された癌患者における不安の低減を示すグラフである。
 
            【
図3C】先行技術におけるプシロシビンで処置された癌患者における生活の質の向上を示すグラフである。
 
            【
図4A】先行技術における、クロスオーバー前の癌を有する患者におけるプシロシビン投与から5週間後の、不安の変化と、プシロシビンで誘発された急性的な神秘的経験との関連を示すグラフである。
 
            【
図4B】先行技術における、クロスオーバー前の癌を有する患者におけるプシロシビン投与から5週間後の、抑うつの変化と、プシロシビンで誘発された急性神秘的経験との関連を示すグラフである。
 
            【
図5A】先行技術における、癌を有する患者におけるプシロシビン単回投与後及びナイアシンプラセボと比較した抑うつの低減を示すグラフである。
 
            【
図5B】先行技術における、癌を有する患者におけるプシロシビン単回投与後及びナイアシンプラセボと比較した状態不安の低減を示すグラフである。
 
            【
図5C】先行技術における、癌を有する患者におけるプシロシビン単回投与後及びナイアシンプラセボと比較した特性不安の低減を示すグラフである。
 
            【
図6A】先行技術における、クロスオーバー後の癌を有する患者におけるプシロシビン単回投与後及びナイアシンプラセボと比較した抑うつの低減を示すグラフである。
 
            【
図6B】先行技術における、クロスオーバー後の癌を有する患者におけるプシロシビン単回投与後及びナイアシンプラセボと比較した状態不安の低減を示すグラフである。
 
            【
図6C】先行技術における、クロスオーバー後の癌を有する患者におけるプシロシビン単回投与後及びナイアシンプラセボと比較した特性不安の低減を示すグラフである。
 
            【
図7】先行技術における対照群を含まない非盲検試験における、投与から1週間及び3か月後の抑うつスコアに対する、治療抵抗性抑うつを有する患者における1回量のプシロシビンの効果を示す。
 
            【
図8】先行技術における、抑うつスコアに対する及び後の治療を待っている患者と比較した、大うつ病を有する患者における2回量のプシロシビンの効果を示す。
 
            【
図9A】先行技術における、生命を脅かす疾患を有する患者、プラセボ処置され、次いでクロスオーバー治療された患者において、薬物を投与して2か月後の、LSD(n=8)群及びプラセボ(n=3)群における、状態不安スコアに対する2つのLSDセッションの効果を示すグラフであり、2か月後及び12か月後の両方の群(n=9)からの残りのすべての患者についてデータを示す。
 
            【
図9B】先行技術における、生命を脅かす疾患を有する患者、プラセボ処置され、次いでクロスオーバー治療された患者において、薬物を投与して2か月後の、LSD(n=8)群及びプラセボ(n=3)群における、特性不安スコアに対する2つのLSDセッションの効果を示すグラフであり、2か月後及び12か月後の両方の群(n=9)からの残りのすべての患者についてデータを示す。
 
            【
図10】先行技術における、精神医学的患者及び健康な被験者におけるLSDで誘発された心の急性変化を示すグラフである。
 
            【
図11】先行技術における、精神医学的患者及び健康な被験者における神秘的タイプの経験を示す。
 
            【
図12】本発明における試験(例)の患者登録プランの図解である。
 
            【
図13】結果の測定を含む治験来院プランの図示である。
 
            【
図14】実施例の試験で処置された不安障害を有する患者に関する、患者の特徴を示す表である。
 
            【
図15A】被験者間(n=9~10/群)の不安障害を有する患者における不安、抑うつ及び心理的苦痛に対するLSD及びプラセボの効果のグラフであり、STAI-Sを示す。
 
            【
図15B】被験者間(n=9~10/群)の不安障害を有する患者における不安、抑うつ及び心理的苦痛に対するLSD及びプラセボの効果のグラフであり、STAI-Tを示す。
 
            【
図15C】被験者間(n=9~10/群)の不安障害を有する患者における不安、抑うつ及び心理的苦痛に対するLSD及びプラセボの効果のグラフであり、STAI-Gを示す。
 
            【
図15D】被験者間(n=9~10/群)の不安障害を有する患者における不安、抑うつ及び心理的苦痛に対するLSD及びプラセボの効果のグラフであり、HDRSを示す。
 
            【
図15E】被験者間(n=9~10/群)の不安障害を有する患者における不安、抑うつ及び心理的苦痛に対するLSD及びプラセボの効果のグラフであり、BDIを示す。
 
            【
図15F】被験者間(n=9~10/群)の不安障害を有する患者における不安、抑うつ及び心理的苦痛に対するLSD及びプラセボの効果のグラフであり、SCL-90グローバルを示す。
 
            【
図16A】被験者(n=19/群)内で不安障害を有する患者における不安、抑うつ及び心理的苦痛に対するLSDの効果のグラフであり、STAI-Sを示す。
 
            【
図16B】被験者(n=19/群)内で不安障害を有する患者における不安、抑うつ及び心理的苦痛に対するLSDの効果のグラフであり、TAI-Tを示す。
 
            【
図16C】被験者(n=19/群)内で不安障害を有する患者における不安、抑うつ及び心理的苦痛に対するLSDの効果のグラフであり、STAI-Gを示す。
 
            【
図16D】被験者(n=19/群)内で不安障害を有する患者における不安、抑うつ及び心理的苦痛に対するLSDの効果のグラフであり、HDRSを示す。
 
            【
図16E】被験者(n=19/群)内で不安障害を有する患者における不安、抑うつ及び心理的苦痛に対するLSDの効果のグラフであり、BDIを示す。
 
            【
図16F】被験者(n=19/群)内で不安障害を有する患者における不安、抑うつ及び心理的苦痛に対するLSDの効果のグラフであり、SCL-90グローバルを示す。
 
            【
図17】LSD又はプラセボにより誘発された心の急性変化を示すグラフである。
 
            【
図18】LSD又はプラセボにより誘発された神秘的タイプの急性効果を示すグラフである。
 
            【
図19】第2の投与後2週時点での、LSDの急性効果と、LSDの治療効果との相関係数を示す表である。
 
            【
図20】すべての来診でのレポートの合計数として挙げられる有害事象のリストを示す。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
  本発明は、個体に幻覚物質(好ましくはLSD)を投与し、及び不安を治療し、好ましくは具体的には幻覚物質の投与を過ぎて数週間にわたり、個人において、不安の評点スケールスコア尺度(STAIグローバル又は状態若しくは特性不安)、及び/又は抑うつの尺度(HDRS又はBDIスコア)、及び/又は全般的な心理的苦痛の尺度(SCL-90評点)の低減を生じさせることにより、全般性不安障害などの生命を脅かす身体疾患と関連しない不安を治療する方法を提供する。
【0028】
  本明細書で使用される「全般性不安障害」とは、持続的及び過度な心配を特徴とする状態を意味する。全般性不安障害は、個人が少なくとも6か月以上、心配をコントロールすることが難しく、少なくとも3つの定義された症状(緊張感、過敏又は落ち着きのなさ、切迫した危険を感じる、パニック又は絶望感、心拍数の増加、速い呼吸(過換気)、発汗及び/又は震え、脱力感又は疲労感、集中困難、睡眠障害及び胃腸(GI)問題の経験)を有する。全般性不安障害は、疾患などの特定のストレッサーによって起こる不安と異なる。
【0029】
  本明細書において治療される個体は、全般性不安障害並びに社交不安障害(対人恐怖、毎日の付き合いの不安、恐怖、自己意識及び困惑の原因となる)などの不安障害、パニック障害(理由のない突然の、圧倒的な恐怖及び鼓動が早くなる、呼吸困難及び発汗)又は他の恐怖症、適応障害又は心的外傷後ストレス障害を患い得る。この方法は、抑うつ又は不安と関連するか又は共存する気分の落ち込みも治療し得る。
【0030】
  本発明では、好ましくは、幻覚物質としてのLSD、その塩、その酒石酸塩、その類似体、その相同体又はいずれかのエルゴタミンを使用する。限定されないが、例えばプシロシビン、メスカリン、ジメチルトリプタミン(DMT)、2,5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン(DOI)、2,5-ジメトキシ-4-ブロモアンフェタミン(DOB)、その塩、その酒石酸塩、その類似体又はその相同体などの他の幻覚剤が本発明の方法において使用され得、それは、トリプタミン又はフェネチルアミンであり、及びLSDと同じ若しくは類似の、5D-ASCスケールでの急性効果を誘発する。
【0031】
  LSDは、好ましくは、用量200μgで投与されるが、25~400μgの範囲も使用され得る。好ましくは、2回用量のLSDが投与される。通常200μg(25~400μg)の第2用量は、最初の投与後3~5週に投与され得る。LSDの効果は、投与後8~12時間継続し得、個体は、好ましくは、この期間中、精神科医などの医療関係者によって管理される。他の幻覚剤が当業者によって投与され得る。
【0032】
  LSDは、好ましくは、経口投与されるが、経鼻、経皮、皮下、静脈内及び筋肉内製剤も適切であり得る。
【0033】
  単回用量も投与され得、効果が得られる。同じ療法士により及び同じセッティング内で実施される場合又は最初のLSD投与によって条件付けられた効果が存在するため、プラセボ又はLSDの低用量が使用される場合、本発明を用い、及び不安障害を有する患者におけるLSDセッション後のさらなる非薬物セッションが有益であり得る。
【0034】
  上述の第1相及び用量設定試験に基づいて、患者においてパイロット試験において同様に行われたように、患者において本発明で使用されるように、より高い200μg用量が選択された(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015)。しかしながら、用量設定プロセス中及び利用可能となった多くの薬物動態データを用いて、過去の研究では、報告されたLSD200μgではなく140μgが使用されたことが明らかとなったことに留意すべきである(Holzeet al., 2020a;Holze et al., 2021)。実際には、本発明の別の利点は、過去の研究では定義されていない用量が使用されたのに対して、患者において初めて薬学的に定義された用量のLSDが使用されたことであり、用量におけるLSDの含有率及び含量均一性が明らかではなかったことを意味し、後の研究でさえ、元の出版物で報告された含有率(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015)よりもおよそ30%低いLSD含有率(Holze et al., 2019)が実証された。重要なことに、本発明で使用された用量と対照的に、健康な対象におけるより古い研究でも、薬学的に定義されていないLSDの用量が使用された(Dolder et al., 2015b;Dolder et al., 2016;Schmid et al., 2015)。
【0035】
  上述のように、LSD、プシロシビン及びDMT含有植物由来アヤフアスカなどの幻覚剤が、生命を脅かす疾患と関連する抑うつを有する個人の治療において使用されている。しかしながら、全般性不安障害又は生命を脅かす疾患と関連しない、したがって適応障害タイプの不安ではない他の不安障害を有する患者において、LSDを使用する研究はなかった。実際に、癌の発症前1年以内に不安又は情動障害を有する患者は、通常、癌及び関連する不安を有する患者における幻覚剤の効果を評価する過去の研究では除外された(Grob, 2011 #1910;Gasser, 2015 #3955)。
【0036】
  癌及び他の生命を脅かす疾患により、適応障害タイプの不安が起こり得る。このタイプの不安は、身体疾患の前には患者に存在せず、癌又は生命を脅かす疾患によって生じる実際の命の危険への恐れの結果として発症する。サイケデリック療法は、癌関連不安の低減を目的とし、実存の危機を促進するように設計され、死の恐怖の低減を目的とする場合が多い(Grob, 2011 #1910;Gasser, 2015 #3955)。対照的に、全般性不安障害、社交不安障害(対人恐怖)、パニック障害及び/又は広場恐怖などの恐怖の、身体的原因がない不安の形態において、疾患の明らかな外部原因は存在しない。患者は「明らかな理由がないこと」に悩んでおり、疾患を引き起こす理由が欠如した状態で、機能がひどく損なわれ得る。過去のかかるタイプの不安は内因性とも呼ばれており、精神外の別の原因によって起こる外因性タイプの不安と対照的に精神内から生じる。
【0037】
  実施例1において、全般性不安障害を有するヒト患者における研究で、本発明の革新は、重症の身体疾患の非存在下で全般性不安障害を有する患者を含む、二重盲検プラセボ対照、無作為化試験におけるプラセボと初めて比較された。実施例における研究では、気分及び心理的苦痛に対する有意な有益な効果並びに不安の評点に対して傾向的改善が実証された。LSDは、第2の投与後、状態・特性不安尺度(STAI)-S、STAI-T及びSTAI-G評点を有意に低減した。STAI-S及びSTAI-G評点は、最初の投与後に既に有意に低減された。LSDは、HDRS、BDI及びSCL-90グローバルでの第2投与後のスコアを有意に低減した。LSDは、5D-ASC質問票のすべてのスケールの有意な及び顕著な変化を誘導した。LSDは、MEQ30質問票のタイプの経験の評点を有意に及び大きく増加させた。LSDの良好な薬物効果から、処置から2週間後の良好な治療結果が予測される。
【0038】
  この方法は、個人において心理的苦痛も低減し、及び/又は生活の質を高め得る。この方法は、個人が受ける心理療法(例えば、幻覚物質(投与)前及び後、別の日に施される)も高め得る。個人が、他の幻覚物質の使用後に不十分な治療反応又は有害作用を有する場合にこの方法を用いることができ、2次治療として用いられ得る。個人が、他の幻覚物質の使用後に定性的に異なるサイケデリック反応の必要性を有する場合にこの方法を用いることもできる。
【0039】
  本発明では、サイケデリック状態を誘発し、心理療法を補助するためにLSDが使用され、全般性不安障害におけるLSDの使用を指示する第1データを提供し、気分、心理的苦痛の症状及び/又は生活の質を改善し、これらの患者及び社会に医学的利益を提供する。
【0040】
  本発明の化合物は、個々の患者の臨床症状、投与部位及び方法、投与スケジュール、患者の年齢、性別、体重及び医師に公知の他の因子を考慮に入れて、優れた医療行為に従って施され、投与される。したがって、本明細書の目的で薬学的に「有効な量」とは、当技術分野で公知のように、かかる考察によって決定される。その量は、限定されないが、生存率の向上若しくはより迅速な回復又は症状の改善若しくは排除及び当業者によって適切な基準として選択される他の指標など、改善を達成するのに有効な量でなければならない。
【0041】
  本発明の方法において、本発明の化合物は様々な方法で投与され得る。それらは、化合物として投与され得、単独で又は薬剤として許容される担体、希釈剤、補助剤及び賦形剤と組み合わせて活性成分として投与され得ることに留意されたい。化合物は、経口、皮下投与又は静脈内、筋肉内及び鼻腔内投与など、非経口投与され得る。治療される患者は、温血動物であり、特にヒトなどの哺乳動物である。薬剤として許容される担体、希釈剤、補助剤及び賦形剤並びにインプラント担体は、一般に、本発明の活性成分と反応しない不活性、非毒性固体若しくは液体充填剤、希釈剤又は封入材料を意味する。
【0042】
  投与は、単回投与又は複数回投与又は数時間にわたる連続投与であり得る。
【0043】
  本発明の化合物を非経口で投与する場合、一般に、注射可能な単位剤形(溶液、懸濁液、エマルジョン)で製剤化される。注入に適した医薬製剤としては、滅菌水溶液又は分散液及び注入可能な滅菌溶液若しくは分散液に再構成される滅菌粉末が挙げられる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、その適切な混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体であり得る。
【0044】
  例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液に場合には必要な粒径の維持及び界面活性剤の使用によって適切な流動性が維持され得る。綿実油、ゴマ油、オリーブ油、ダイズ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油又はラッカセイ油及びエステル、例えばミリスチン酸イソプロピルなどの非水性賦形剤も配合組成物のための溶媒システムとして使用され得る。さらに、組成物の安定性、無菌性及び等張性を高める様々な添加剤、例えば抗菌保存剤、酸化防止剤、キレート剤及び緩衝剤が添加され得る。微生物作用の予防は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等によって保証され得る。多くの場合、等張化剤、例えば糖類、塩化ナトリウム等を含むことが望ましい。注入可能な薬剤形態の持続性吸収は、吸収を遅らせる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によって生じ得る。しかしながら、本発明に従って使用されるいずれの賦形剤、希釈剤又は添加剤も化合物と適合性でなければならないであろう。
【0045】
  注入可能な滅菌溶液は、所望の通りに他の様々な成分と共に、必要量の適切な溶媒に、本発明の実施に用いられる化合物を組込むことによって調製され得る。
【0046】
  本発明の薬理学的製剤は、種々の賦形剤、補助剤、添加剤及び希釈剤などのいずれかの適合性担体を含有する注入可能な製剤で患者に投与され得るか;又は本発明で用いられる化合物は、徐放性皮下植込錠若しくはモノクローナル抗体、ベクター送達、イオン導入、ポリマーマトリックス、リポソーム及びミクロスフェアなどの標的送達システムの形態で患者に非経口で投与され得る。本発明において有用な送達システムの例としては、5,225,182;5,169,383;5,167,616;4,959,217;4,925,678;4,487,603;4,486,194;4,447,233;4,447,224;4,439,196;及び4,475,196が挙げられる。他の多くのかかる植込錠、送達システム及びモジュールは、当業者によく知られている。
【0047】
  本発明は、生命を脅かす重篤な身体疾患などの原因と関連しない不安を有する個体に幻覚物質を投与し、個体においてポジティブな急性薬物作用及びポジティブな長期治療効果を誘発することにより、不安を治療する方法も提供する。実施例1に示すように、LSDは、5D-ASC質問票のすべてのスケールの有意な及び顕著な変化を誘発し、LSDは、MEQ30質問票(急性効果を示す)に対する神秘的タイプの経験の評点を有意に及び大きく増加させた。5D-ASC及びMEQ30質問票に対するLSDのこれらの急性効果は、第2投与から2週間後のLSDの治療効果と関連した(長期治療効果を示す)。
【0048】
  本発明はさらに、以下の実験試験の実施例を参照して詳細に説明される。実施例は、説明の目的でのみ提供され、指定がない限り、限定的であると意図するものではない。したがって、本発明は、実施例に限定されると決して解釈すべきではないが、本明細書に提供される教示の結果として明らかとなる、いずれか及びすべての変形形態を包含すると解釈すべきである。
【実施例】
【0049】
実施例1
  精神医学的不安障害患者又は重篤な身体疾患に関連する不安症状を有する患者において、LSD処置を用いて無作為化、二重盲検、プラセボ対照第II相試験を実施した。
【0050】
  この試験は、身体疾患を有する及び身体疾患を有しない患者の両方を含んだ。全般性不安障害における、したがって癌若しくは死の恐怖に関連しない不安状態における本発明の使用を例示するために、身体疾患を有しない患者からのデータを示す。
【0051】
  具体的には、全般性不安障害を有する患者において、6週空けた2つのセッションにおいて、LSD又はプラセボを二重盲検法で投与し、セッション間において、第2のセッション後2、8及び16週で不安、抑うつ及び心理的苦痛を評価した。次いで、LSDを投与した患者は、プラセボにクロスオーバーし、逆も同様であった。
【0052】
  したがって、試験により、第1期間における被験者間のプラセボに対するLSDの効果(並行設計)及び全試験期間にわたりプラセボに対する被験者内でのLSDの効果(クロスオーバー設計)が評価された。
【0053】
  LSDは、以下に詳述される全般性不安障害を有するこれらの患者において不安、抑うつ及び生活の質に対する有益な効果を有した。
【0054】
研究のイントロダクション
  リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)は、原型の古典的な幻覚誘起物質である(Nichols, 2004;Passie et al., 2008)。LSDは最初に、その向精神作用も発見したSandoz社の化学者であるAlbert Hofmannによって合成された(Hofmann, 1979)。1950年代から1970年代において、LSDは初期に、精神病様状態及び精神病をモデル化するために実験ツール(「精神異常発現薬」)として(Bercel et al., 1956;Koelle, 1958)及び「精神異常発現(物質補助)心理療法」における補助剤として使用された。
【0055】
  LSDは、アルコール症(Krebs et al., 2012)、嗜癖(Savage et al., 1973)、群発頭痛(Sewell et al., 2006)及び末期疾患に伴う不安(Gasser et al., 2014;Grof et al., 1973;Pahnke et al., 1969)の治療のために研究されている。LSDは、数千の初期の科学的レポートでよく研究される物質となった(Hintzen et al., 2010;Nichols, 2004;Nichols, 2016;Passie et al., 2008)。
【0056】
  今日、LSDは、娯楽的(個人的又は精神的)目的で違法に使用されている。3800万人の米国の人々又は12歳を超える15%が生涯に一度、幻覚誘起物質を摂取したと推定される(Johnston et al., 2016;Krebs et al., 2013a)。欧州では、成人の中でのLSD使用の生涯普及率は、6~8%の範囲であると推定される。したがって、西洋社会のかなりの割合が、この物質の作用に精通している。
【0057】
  LSDは、強迫性薬物探索(嗜癖)と関連せず、医学的緊急事態及び有害作用が比較的、ほとんど存在しない(Nichols, 2016)。LSD又はプシロシビンの使用は、メンタルヘルス問題と関連せず、保護的でさえあり得る(Johansen et al., 2015;Krebs et al., 2013b)。LSDの広範な娯楽的使用にも関わらず、LSDを用いた臨床研究は、政治的及び文化的圧力並びに法的制約のために、1970年代に停止された。
【0058】
  最近では、幻覚誘起物質の医学的価値が再び、いくつかの臨床試験において研究されている(Baumeister et al., 2014;Bogenschutz et al., 2015;Davenport, 2016;Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015;Grob et al., 2011;Johnson et al., 2014;Kupferschmidt, 2014;Nichols, 2016)。具体的には、LSD及びプシロシビンのいずれも、生命を脅かす疾患と関連する不安を低減することが示された(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015;Grob et al., 2011)。これらの予備的データに基づき、連邦内務省保健局(BAG)による特殊なケースバイケースの認可でのコンパッショネートユースの状況において、スイスで専門の精神科医により、少数の患者がLSDで治療されている。
【0059】
  現在入手可能なパイロット試験データは、量及び質が不十分であり、より大きい、プラセボ対照試験において確認する必要がある。したがって、本発明の試験実施例は、不安障害を有する患者(新規な使用)における不安及び抑うつ又は/及び生命を脅かす疾患と関連する増加した不安に対する(過去の使用、確証的データ)、プラセボと比較したLSDの効果を評価することを目的とする。
【0060】
  この研究は、患者におけるLSD補助心理療法の安全性及び有効性について、第II相タイプのパイロット試験を行った精神科医、P.Gasser医師との共同研究で行われた(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015)。
【0061】
  この研究は、Swiss Medical Society for Psycholytic Therapy (Schweizerische Arztegesellschaft fur Psycholytische Therapie, SAEPT)及びバーゼル大学病院によって財政的に支援された。
【0062】
実施例試験の目的
  本発明の革新の目標は、1)不安の低減(STAI)、2)抑うつの低減(HDRS及びBDI)、及び3)全般的な精神病理学的症状(SCL-90)の改善を探究し、安全性を実証することであった。
【0063】
試験法
試験設計
  実施例試験では、それぞれが24週続き(LSD対プラセボ補助心理療法)、2週のシーケンス間の期間によって離された2つの治療順序で、二重盲検クロスオーバー設計を使用した。順序は釣り合いが取られ、ランダムであった。各参加者は、52週の全試験期間にわたってその独自のコントロールとしての役割を果たした。治療の効果は、クロスオーバー前の最初の24週の試験期間に被験者間でも比較された。
【0064】
試験期間
  この試験は、2017年1月1日から2021年12月31日まで(全般性不安障害を有する患者について2020年12月31日まで)実施し;参加者ごとの期間:スクリーニングを含む52週間及び102週目での経過観察を有する。
【0065】
治験実施施設
  1)バーゼル大学病院の外来治験センター、2)個人の精神科診療Gasser医師(Solothurn)。
【0066】
治験責任医師/職員
  LSD/プラセボセッション及び治験来院が、治験責任医師/精神科医によって行われる。一般的に、1名の医師がセッション又は来診を行い、同じ医師が、治験全体を通して同じ患者を治療する。
【0067】
治験母集団
生命を脅かす疾患を有する又は生命を脅かす疾患のない不安
  目的は、生命を脅かす疾患を有する又は生命を脅かす疾患のない、不安障害を有する患者を組み入れることであった。治験患者は、DSM不安障害の診断基準を満たすか、又は状態若しくは特性STAIの40を超えるスコアを報告する必要があった(Spielberger et al., 1983)。生命を脅かす疾患のない患者は常に、不安障害のDSM-V診断を満たす必要があった(高いSTAI不安のみでは、これらの患者に組み入れるには不十分であった)。その目的は、生命を脅かす疾患を有する又は生命を脅かす疾患のない不安を有する患者のおよそ等しい大きさのサブグループを組み入れることであった。
【0068】
募集
  患者は大部分が、参加している治験の精神科医(個人開業のGasser医師)の患者から集められた。40名の参加者が治験に登録された。治験中のドロップアウトは、治験を完了した(12か月)少なくとも30名の被験者の最終的な治験サンプルに到達するように置き換えられた。1年当たりにおよそ10名の参加者が募集され、募集期間は4年、総期間は5年となった(
図12)
 
【0069】
組み入れ基準
  1.年齢>25歳
  2.SCID-IVにより指示される不安障害のDSM-IV基準を満たすか、又は治験組み入れでの状態若しくは特性STAIスケールの少なくとも40のスコアを有する。
  3.参加者の40%以上が、進行期の潜在的に致死的な疾患(自己免疫、神経学的疾患又はCNS併発のない癌)の診断を有する。患者は、外来患者であり、末期ではなく、12か月を超えるおよその推定余命を有する可能性がある。
  4.進行期の潜在的に致死的な疾患のない患者は、不安障害のDSM-IV基準を満たす必要がある(高STAIスコアは組み入れるには十分ではない)。
  5.治験手順及び治験に伴うリスクの十分な理解。
  6.参加者が進んで、治験手順の厳守に従い、同意書にサインしなければならない。
  7.参加者が進んで、実験的セッション期間中に精神医学的薬物の摂取を控える。参加者が抗うつ薬での治療を受けているか、又は固定された毎日の投与計画で抗不安薬を摂取している場合、薬物間相互作用の可能性を避けるために、LSD/プラセボ治療セッション前に十分に長い期間(その間隔は、特定の薬物の半減期[通常、3~7日]の少なくとも5倍であるであろう)、かかる薬物を中止しなければならない。
  8.心理療法を継続中の場合、治験実施者がその療法士と直接情報交換するために免除認可書にサインすることを条件として、治験に集められた参加者は、外部の療法士に会い続け得る。参加者は、療法士を替えるべきではないか、療法の頻度を増加若しくは減少させるべきではないか、又は治験中(経過観察を含まない)に新たなタイプの療法を開始すべきではない。
  9.参加者は、長期的な鎮痛剤又はカフェイン又はニコチンを除外して、各LSD/プラセボ治療セッションの24時間以内はいずれの向精神薬の使用も控えなければならない。参加者は、LSDの各投与前の少なくとも2時間及び投与後の6時間、ニコチンを使用しないことに同意しなければならない。参加者は、各LSD治療セッション前の少なくとも1日にわたり、アルコール含有飲料を摂取しないことに同意しなければならない。LSD治療セッション前の24時間以内に行われた、抑えきれない痛みを治療するための非日常的な投薬により、参加者との話し合い後に治験実施者の自由裁量で決定されて、治療セッションの予定が別日に変更され得る。
  10.参加者は進んで、LSD/プラセボ投与後24時間以内に車両を運転しないか又は機械を操作しない意向を示さなければならない。
【0070】
除外基準
  1.妊娠しているか、又は授乳しているか、又は妊娠の可能性のある女性及び避妊の有効な手段(ダブルバリア避妊法、すなわちピル/子宮内避妊器具及び予防/避妊ペッサリー)を実施していない女性。
  2.原発性精神異常の過去又は現在の診断。精神異常の一等親血縁者を有する被験者も除外される。
  3.過去又は現在の双極性障害(DSM-IV)。
  4.現在の物質使用障害(過去2か月以内、DSM-V、ニコチンを除く)。
  5.癌、重篤な循環器疾患、未治療の高血圧、重篤な肝疾患(上限値若しくは正常値の5倍を超える肝酵素の上昇)若しくは重度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス推定値<30ml/分)のCNS併発を含む身体疾患又は治験実施者の判断で副作用の可能性が高すぎると提起される他の疾患。
  6.体重45kg未満。
  7.治験経過中の自殺のリスク又は精神医学的入院が必要となる可能性。
  8.向精神薬(必要に応じて、抗不安薬及び疼痛管理投薬以外)との継続中の並行療法が必要とされ、休薬期間を遵守することができないか又は遵守しようとしない。
【0071】
イベントのスケジュール
  参加者のイベントのスケジュールを
図13に示す。52週の過程にわたって、参加者は、2時間の検診、11~13時間のLSD/プラセボ治療セッション4回、1時間の治験来院10回及び1時間の治験終了来診に参加した。経過観察(臨床治験期間の一部ではない)も、メールによって送付された質問票を使用して実施される。
 
【0072】
スクリーニング手順
インフォームド・コンセント
  被験者は、口頭で及び承認された書面の同意書により、治験手順及びそれに伴うリスクについて説明された。治験責任医師及び被験者の両方が個人的に、同意の確認として同意書にサインし、日付を入れた。
【0073】
肉体的健康
  被験者は、病歴、身体的検査、バイタルサイン及び血液化学などの治験責任医師によって検査された。体重及び身長も測定された。
【0074】
精神的健康
  DSM-IVのSCIDを用いて、被験者をスクリーニングした(Wittchen et al., 1997)。被験者が精神医学的選択基準を満たすか否かも決定する治験精神科医によって精神医学的問診も行われた。精神医学的問診はSCIDで開始し、不安障害のDSM-IV診断を提供し、排他的なI軸診断(すなわち現在の物質使用障害、精神異常、双極性障害)を除外した。次いで、HDRS、BDI、STAI及びSCL-90を完了した。
【0075】
物質使用の履歴及び尿中薬物スクリーニング
  物質の履歴を検診中に記録した。以前の類似の治験(Gasser et al., 2014)と同様に、大部分の参加者が、幻覚発現薬の経験がないであろうことが期待された。同様に、プシロシビンは、一般に、以前の体験がほとんど乃至全くない被験者において使用されていた(Griffiths et al., 2008;Griffiths et al., 2011;Griffiths et al., 2006;Johnson et al., 2014;MacLean et al., 2011)。過去の物質使用障害(過去2か月以内ではない)は、重篤な副作用が幻覚誘起物質によって起こらなかった場合には除外基準ではなかった。被験者は、治験中の違法な薬物使用を慎むように求められ、試験セッション前に薬物スクリーニングが実施された。尿中薬物スクリーニングが陽性だった場合(疼痛管理に使用される場合、テトラヒドロカンナビノール(Northcote)又はオピオイドを除いて)、治験セッションが延期された。これは、THC消費が、数週間まで尿中に検出され得、治験日前の使用日数が結果に影響を与えそうにもないためである。パイロット試験データ(Gasser et al., 2014)に基づき、本発明者らは、尿中薬物スクリーニングが陽性ではないと予想した。被験者は、過剰なアルコール摂取を控え(飲酒10杯以下/週)、及び試験セッション前日に控えるように求められた。
【0076】
スクリーニング臨床検査
  クレアチニン及びALATなどのスクリーニング検査で慣例の臨床血液検査を実施した。
【0077】
性格
  性格特性は、精神活性物質に対する自覚的応答に影響することが知られている(Studerus et al., 2012;White et al., 2006)。NEO-5因子性格検査(NEO-FFI)及びフライブルク性格検査(FPI)を検診中に行い、性格特性及びこの治験におけるLSDに対する反応への、潜在的な調節作用を評価した。同じ装置が、健康な対象において実験的研究において使用されている。本発明者らは、性格特性がLSDの作用を変化させるかどうか又はLSDによって性格特性が変化するかどうかを探求する(Carhart-Harris et al., 2016b;Griffiths et al., 2008;MacLean et al., 2011)。
【0078】
LSD/プラセボセッション
  4つのLSD/プラセボセッションのそれぞれが、午前8から午後8時まで12時間続いた。セッションは、バーゼル大学病院の外来研究センター又はP.Gasser医師の個人開業オフィス(Solothurn center)で行われた。セッションの初めに、現在の気分及び精神状態が話し合われ、尿中薬物スクリーニングが行われ、最後の来診からのAEが記録された。治験実施者は、オープンクエスチョン又は関心事に取り組んだ。参加者は、ベッドに横たわるか又は椅子に気楽に腰掛けるように勧められた。バスルームに行く以外は、参加者は、12時間の実験セッションの全期間、処置室に居続け、参加者の反応に応じて及び必要に応じて、LSD/プラセボ投与した後8~12時間まで絶えず管理された。この治験で使用された用量でのLSDの自覚的効果は、8~12時間続くと予想された(Gasser et al., 2014;Holze et al., 2021;Schmid et al., 2015)。その用量は比較的高く、正常な自我構造の完全な解体なく、一般的なLSD経験の完全なフルスペクトラムを生じることが示されている(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015;Holze et al., 2021;Schmid et al., 2015)。LSD/プラセボ作用中に、参加者は、意識を内部に集中するように指示された。被験者は、最初の時間アイシェードを着け(又は照明を薄暗くし)、音楽を聴くように勧められ、治験実施者との多くの話し合い/会話は控えた。被験者は、心拍数及び血圧が測定された場合、2時間毎に短い身体的接触でほぼ影響を受けない状態のままであった。LSD/プラセボ投与から10~12時間後のセッションの最後に、5D-ASC、SCQ、AMRS及びVASを用いて、参加者によって急性自覚的ピーク効果が遡及的に評点付けされ、その経験を話し合った。LSD/プラセボ投与から10~12時間後、参加者は、パートナー、親類又は友人等によって提供される同行及び監視下で帰宅した。監視が利用できなかった場合又は作用が残り続けた場合、治験実施施設でその日の夜を過ごした。
【0079】
治験来院
  60~90分間の予備的治験来院は、参加者の履歴(身の上話)、性格、健康状態、現在の社会的及び感情的状況(意味を中心とした)、懸念事項を話し合い並びにLSDの作用を説明し、質問に答え、LSD/プラセボ補助セッション(意図、期待(Johnson et al., 2008))の準備をするのに役立った。ミーティングのさらなる重要な目的は、患者と治験実施者とのラポート及び信頼の十分なレベルを確立することを含んだ。患者の不安及び個人的状態(身体疾患に関連する又は非身体性)が調べられ、実験セッション中に起こり得ることが話し合われた。最初のLSD/プラセボセッションの2週前に、1つの予備的来院が予定され、2回のLSD/プラセボセッション間の来院は、6週間空けられた。物質補助セッション後の来診は、セッション中に患者の経験を話し合い、まとめる役割を果たした。これらのセッションには正式なガイドラインはなかった(精神異常発現療法の要素、セッション中に流した音楽の再利用を、互いに意味づけすること;(Breitbart et al., 2014;Johnson et al., 2008;Leuner, 1969)。患者は、自らの経験について書き記すように動機付けされ、次いで、自身のレポートについてもセッション中に話し合った。3つのミーティングが、LSD/プラセボセッションから2、8及び16週間後に予定され、結果の評価が含まれた。10回の治験来院のこのスケジュールは、非物質ミーティングの最低回数を表す。さらなるミーティングが必要に応じて予定されたが、義務的ではなく、治療上必要な場合にのみ実施された。ミーティングの回数は、両方の治療期間において同様であった。したがって、さらなるミーティングが治験の第1治療期間に行われた場合、相当する時点で第2治療期間にもさらなるミーティングが予定された。さらなるミーティングが第2治療期間においてのみ行われた場合、ミーティング回数及び理由を、症例報告書(CRF)に記録しなければならない。セッションが治療スケジュールに従って行われる時点(週数)は、可能な限りしっかりと遵守すべきであったが(+/-1~3週)、その逸脱はプロトコル違反とみなさなかった。すべてのミーティングの実際の日付は、CRFに記録された。セッションの回数及び全体の内容は、本発明の治験において大部分が標準化され、同じ治験医師が、治験全体にわたって患者を世話した。治験実施者と患者-治験実施者との相互作用の差は、被験者内でのLSD及びプラセボの効果を比較することも含む治験のクロスオーバー設計によって低減された。
【0080】
並行薬物使用及び他の療法
  LSDの急性投与と慢性的投薬との多くの相互作用が研究されていた(Hintzen et al., 2010;Passie et al., 2008)。並行薬物投与を検診において及び各来診/治験セッション前に記録した。常用薬(高血圧用の薬物、アスピリン、スタチン、鎮痛薬)は、一般に、治験中継続されたが、LSD/プラセボセッション前に抗うつ薬を休止しなければならなかった。文献及び臨床上の薬理学的判断を用いて、プロトコルにおいて記載の状況に対して、慢性的投薬をさらに休止する必要があるか否かを決定した:抗うつ薬:選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は、LSDに対する反応を弱め得る(Bonson et al., 1996a;Bonson et al., 1996b;Strassman, 1992)。リチウム又は三環系抗うつ薬は、LSDの効果を高め得る(Bonson et al., 1996b)。慢性的投薬としてこれらの薬物のいずれかを用いた参加者は、各LSD/プラセボセッション前に少なくとも5回の半減期において抗うつ薬及び抗不安薬を減らす必要があった。一般に、これにより、1週間休止された。パイロット試験(Gasser et al., 2014)において、患者12名のうちの2名でこのアプローチを用いた。このアプローチは、プシロシビンを用いた臨床試験で使用され、プシロシビンの投与の2週間前に抑うつ及び不安のための薬物を休止し、治療反応が顕著であったために、後に元に戻さなかった(Carhart-Harris et al., 2016b;Griffiths, 2016)。抗うつ薬での継続中の治療を必要とする被験者は、本治験から除外された。抗不安薬:ベンゾジアゼピンでのいずれかの抗不安薬治療が、治験中に必要に応じて継続された。治験日及びLSD/プラセボセッション中に、抗不安薬の使用は認められなかったが、言葉によるサポートで治療することができない不安の症例では許された。鎮痛薬:慢性的鎮痛剤投薬は、LSD/プラセボセッションを含む治験中に必要に応じて継続された。他の継続中の心理療法は続けることができたが、セッションの回数は増加又は減少されず、
治験期間中に新たな心理療法は開始されなかった。
【0081】
評価及び尺度
精神測定的評価
状態・特性不安尺度(STAI)
  STAIは、成人における不安を評価するための、広く使用される自己申告手段である。それは、状態及び特性不安の別々の測定を含む(Spielberger et al., 1983)。STAIは、不安、緊張、神経質及び心配の感情の本質的な質を評価する。STAIでは、状態不安の一時的状態と、特性不安のより全般的及び長期にわたる質とを区別する。STAI状態不安サブスケールでは、質問票を埋めた時点での感情を尋ね、STAI特性不安サブスケールでは、被験者が一般的に自分自身をどのように見るかを示すように被験者に尋ねる。両方のサブスケールに関して、20~39のスコアは、軽度の不安を表し、40~59のスコアは、中程度の不安を示すのに対して、60~80のスコアは重度の不安を示した。不安障害を有する患者における試験の結果尺度として、状態及び特性STAIのいずれも一般に使用される(Fisher et al., 1999;Laakmann et al., 1998)。全体的なSTAIスコアは、状態及び特性不安スケールスコアを合計することによって導くことができる(範囲:40~160ポイント)。パイロット試験と同様に、STAIスケールスコアの両方を用いて、検診での試験組み入れが決定された(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015)。さらに、パイロット試験及びプシロシビンを用いた類似の試験(Grob et al., 2011)と同様に、次いでSTAIは、この治験の主要な結果尺度であった。パイロット試験から、両方のスケールで同等の反応を有する、生命を脅かす疾患を有する患者におけるLSD補助心理療法セッション後2か月の時点において、被験者内でSTAI状態及び特性不安の低減を示した(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015)。しかしながら、適切なサイズのプラセボ群は含まれなかった。4週及び12週での時間の経過によるSTAI特性尺度の低減が、進行期の癌を有する不安のプシロシビン治療のパイロット試験において見られた(Grob et al., 2011)。プシロシビンは、プラセボ投与と比較して、2週間後にプラセボと比較された状態及び特性STAIスコアを有意には低減しなかった(Grobet al., 2011)。しかしながら、この試験は被験者12名、わずか2週までのプラセボ条件を含んだ。本発明の試験において、両方のSTAIスケールが、スクリーニングにおいて、LSD及びプラセボ投与の2週前に、LSD及びプラセボ投与から2週、8週及び16週後及び経過観察で実施された。評点付けが、(Spielberger et al., 1983)に従って行われ、スクリーニングにおいて行われ、この試験で使用された臨床データベース(SecuTrial)でも実行された。
【0082】
ハミルトンうつ病評価尺度(HDRS)
  治験精神科医が、患者の抑うつ重症度をHDRSで評価した(Hamilton, 1960;Hamilton, 1980)。この評点スケールは、気分の落ち込み、自殺傾向、癇癪、緊張、食欲低下、不眠症、興味喪失、身体症状等の抑うつに関連する症状を問う21項目(3~5ポイントの評点)からなる。集計スコアを記載のように計算し(Hamilton, 1960)、臨床データベース(SecuTrial)に提供した。
【0083】
ベック抑うつ質問票(BDI)
  BDIは、抑うつの重症度を測定するために開発された21の質問からなる(Beck et al., 1961)。ドイツのBDI-II版(Hautzinger et al., 2006;Kuhner et al., 2007)を自己評価として使用した。BDIによって以前に、進行期の癌を有する患者における不安に対するプシロシビン補助心理療法から6か月後に気分の向上が明らかとなった(Grob et al., 2011)。集計スコアを記載のように計算し(Hamilton, 1960)、臨床データベース(SecuTrial)に提供した。
【0084】
症状チェックリスト-90-R(SCL-90-R)
  SCL-90-Rは、全体的な心理的苦痛を評価するために、広く使用されている心理的状況の症状質問票である(Derogatis et al., 1976;Schmitz et al., 2000)。本発明者らは、ドイツ版を使用した(Schmitz et al., 2000)。結果の尺度は、グローバル重症度指数、陽性症状苦痛指数及び陽性症状全体であった。これらのSCL-90スコアの減少が、生命を脅かす疾患を有する患者におけるLSD補助心理療法後に確認された(Gasser et al., 2014)。SCL-90スコアは(Franke, 2002)に従って計算された。
【0085】
変性意識状態(5D-ASC)
  変性意識状態(5D-ASC)スケールの5次元は、94項目からなる視覚アナログスケールである(Dittrich, 1998;Studerus et al., 2010)。その手段は、5つのスケールで構成され、気分、不安、現実感喪失、人格喪失感、知覚変化、聴覚変化及び覚醒低下の評価を可能にする。このスケールは十分に検証されており(Studerus et al., 2010)、健康な対象(Schmid et al., 2015)及び患者(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015)における実験的研究でLSDの急性自覚的作用を特徴付けるために使用されている。5D-ASCスケールは、各セッションの終わりに一度施行され、被験者は、治験セッション中にピーク変化を遡及的に評点付けするように指示される。スケールの各項目は、0~100mm  VASでスコア付けされた。5-ASCのサブスケールへの個々の項目の属性は(Dittrich, 1998;Studerus et al., 2010)に従い、新たなサブスケールは、公開されているように定義された(Dittrich, 1998;Studerus et al., 2010)。サブスケールへの項目のリンクは、臨床データベース(SecuTrial)において提供された。プシロシビンに対する急性ピーク反応及びプシロシビンの長期治療効果の関連は、繰り返し述べられている(Carhart-Harris et al., 2016a;Griffiths, 2016)。神秘的タイプの経験は、LSD及びプシロシビンの治療的可能性に決定的に寄与すると仮定される(Griffiths, 2016)。この(神秘的)ピーク経験の側面は、統一性の経験(内部、外部、知覚者によって認知される)、時間/空間の超越(永遠/無限)、美しさ、神聖さ/畏敬の念、深く感じられるポジティブな気分、言葉で言い表せないこと(言葉で説明するのが不可能な)及び逆説性(死んだが、同時にそれほど生きていると決して感じなかった)(Barrett et al., 2015;Griffiths et al., 2008;MacLean et al., 2011;MacLean et al., 2012)を含む。一方で、LSDは、その潜在的な治療効果にも寄与し得る方法で感情の処理を変化させる(Dolder et al., 2016)。
【0086】
意識状態の質問票(SCQ)
  この100項目の質問表は、6ポイントスケールで評点付けされ(Griffiths et al., 2011;Griffiths et al., 2006)、プシロシビン(Griffiths et al., 2006)及びLSD(Gasser et al., 2014)と共に用いられている。このスケールは、プシロシビンを用いた研究における神秘的経験を評価し(Griffiths et al., 2011;Griffiths et al., 2006)、かかる経験とプシロシビンのポジティブな長期作用との関連を探求するために使用されている。SCQは、各セッションの終わりに一度施行され、被験者は、試験セッション中にピーク変化を遡及的に評点付けするように指示される。プシロシビンで以前の研究と同様に、「完全な」神秘的経験の基準は、少なくとも60%の以下の6つのスケール:外部若しくは内部統一性、神聖さの感覚、知的な質、時間の超越、ポジティブな気分及び言葉に言い表せないこと、のそれぞれでのスコアであった。各ドメインスケールでのデータは、最大可能スコアのパーセンテージとして表された。サブスケールへの項目のリンクは、臨床データベース(SecuTrial)において提供された。
【0087】
形容詞的気分評価尺度(AMRS)
  AMRS又はEWL60Sは、6次元で気分の反復評価を可能にする、60項目リッカート尺度である:活発、不活発、ウェルビーイング、不安/抑うつ気分、外向性及び内向性並びに感情的興奮性。ドイツのEWL60S版が使用される(Janke et al., 1978)。AMRSは、各セッションの終わりに一度施行され、被験者は、試験セッション中にピーク変化を遡及的に評点付けするように指示される。サブスケールへのスコアリングは(Janke et al., 1978)に従って実施され、臨床データベース(SecuTrial)において提供された。
【0088】
視覚アナログスケール(VAS)
  セッションの最後に、VASのセットを使用し、セッション全体にわたるLSD/プラセボの効果が評点付けされる(ピーク効果を参照して)。VASは、以前に使用されている、「いずれかの薬物作用」、「良好な薬物作用」、「悪い薬物作用」、「不安」、「幸福」及び「開放」の評点を含んだ(Schmid et al., 2015)。
【0089】
有害作用
  被験者は、セッション中又は次のセッション/来院での治験セッションと、治験終了(EOS)来院での治験セッションとの間の有害事象(AE)を報告するように、求められた。治験実施者は、チェックリスト適応フォーム(Gasser et al., 2014;Griffiths et al., 2006;Schmid et al., 2015)を用いてセッション中に起こった幻覚誘起物質特異的なAEを評点付けした。ピーク効果は、患者の説明及び治験実施者による治験実施者の観察に基づいてセッションの最後に、頭痛、めまい、口腔乾燥、悪心、不安、妄想性思考、感情的苦痛、感情的不安定性、目のかすみ、悪寒/寒気、平衡失調に対して、「報告せず」、「軽度」、「中等度」又は「重症」として評点付けられる。心拍数及び血圧は2時間間隔で測定された(Grob et al., 2011)。
【0090】
治験終了(EOS)来院
  治験の最後に、治験医師は、身体的検査及び血液化学を報告した。有害事象が記録された。
【0091】
長期間の経過観察
  経過観察(臨床治験の一部ではない)は、パイロット試験において同様に実施されるように、治験完了から52週後にメールによって行われる(Gasseretpal., 2015)。参加者は、いずれかの有益な又は有害な継続する作用を知らせるように求められる。STAI、BDI及びSCL-90が繰り返される。さらに、スクリーニング中に使用される性格質問票(NEO-FFI及びFPI)が繰り返されて、性格の潜在的な変化が評価される(Carhart-Harris et al., 2016b;MacLean et al., 2011)。さらに、143項目のジョンホプキンス大学の持続的効果質問票が使用され、態度、気分、挙動及び精神的経験の変化についての情報が探られる(Griffiths et al., 2011;Griffiths et al., 2006)。140項目が6ポイントスケールで評点付けされ、生活についての態度(13の陽性項目及び13の陰性項目)、自己についての態度(11の陽性項目及び11の陰性項目)、気分の変化(9の陽性項目及び9の陰性項目)、挙動の変化(1つの陽性項目及び1つの陰性項目)、精神性(22の陽性項目及び21の陰性項目)を含む。3つのさらなる質問が含まれる:1.その経験は個人的にどの程度意義あるものだったか?2.その経験があなたに精神的にどの程度、意味があったか?3.経験及びその経験の熟考により、個人的ウェルビーイング又は人生満足度の現在の意味が変化したと思うか?
【0092】
治験薬
  LSDの娯楽的使用:LSDは、娯楽的(個人的又は精神的)目的で使用されている。3800万人の米国人又は12歳を超える15%が生涯に一度、幻覚誘起物質を摂取していると推定される(Krebs et al., 2013a)。LSDは最も広く使用されている幻覚発現薬であり;2400万人のアメリカ人が、その生涯で少なくとも1度LSDを使用した(Johnston et al., 2016;Krebs et al., 2013a)。したがって、西洋社会のかなりの割合が、この物質の作用に精通している。
【0093】
  LSDの薬理学:LSDは、部分的5-HT2A受容体アゴニストLSD(Nichols, 2016;Rickli et al., 2015;Rickli et al., 2016)である。LSDは、5-HT1受容体、アドレナリンα1受容体及びドーパミンD1-3受容体も刺激する(Rickli et al., 2015)。しかしながら、これらの受容体相互作用は、LSDの向精神作用に対する関連性が低いと考えられる(Nichols, 2016)。幻覚誘起物質の自覚的作用は、一般に、5-HT2A受容体の活性化によって主に仲介されると考えられる(Nichols, 2016;Vollenweider et al., 1998)。
【0094】
  この治験の用量選択:本発明の研究では、パイロット試験(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015)と同様にLSD水和物(エタノール溶液,経口)200μgの用量が使用される。この用量は、ヒトにおける中-高用量に相当する(Passie et al., 2008)。同じ用量が健康な対象でも臨床で使用されている(Dolder et al., 2015a;Dolder et al., 2015b;Holze et al., 2021;Schmid et al., 2015)。
【0095】
  LSDの臨床薬理学:LSDの作用(200μg)は、投与後2時間でピークとなり、投与後12時間まで続く(Dolder et al., 2015b;Holze et al., 2021;Schmid et al., 2015)。LSDの血漿中消失半減期は、3~3.6時間である(Aghajanian et al., 1964;Dolder et al., 2015b;Holze et al., 2019;Holze et al., 2020a;Holze et al., 2021)。
【0096】
  対照試験におけるLSDの有害作用:LSDの投与後の知覚変化としては、錯覚、偽幻覚、色覚の増感、物体及び顔の変態様変化、万華鏡的若しくは景色的な視覚心像、共感覚並びに思考及び時間経験の変化が挙げられる(Holze et al., 2021;Passie et al., 2008;Schmid et al., 2015)。身体イメージの変化、身体的プロセスの異常な内部知覚及び体形の変身変化を含む身体知覚が変化する(Holze et al., 2021;Passie et al., 2008;Schmid et al., 2015)。本発明の研究で使用されるLSDの用量において、被験者は、自身の思考コントロールを維持するように期待され、精神病患者とは対照的に、被験者は、薬物誘発経験の一過性状態を認識したままである。LSD200μgを用いた研究において、思考及び身体コントロールの完全な消失は確認されなかった(Holze et al., 2021;Schmid et al., 2015)。LSDの自覚的作用は、コントロールされた臨床設定において全体的な陽性として経験され、健康な被験者及び患者において全体的に類似していたが(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015; Holze et al., 2021;Passie et al., 2008;Schmid et al., 2015;Schmid et al., 2021)、一過性の不快気分、不安又は気分変動を含み得る。患者におけるパイロット試験において、LSDもプラセボも、薬物関連の重篤な有害事象を引き起こさず、すなわちパニック反応、パニック反応、自殺関連危機又は精神病性状態及び入院を必要とする医学的又は精神医学的緊急事態がなかった。AEは、中等度の不安(LSDセッションの23%及びプラセボセッションの50%において)、軽度~中等度の感情的苦痛(LSDセッションの36%及びプラセボセッションの33%において)、軽度の情動不安定性(LSDセッションの14%及びプラセボセッションの0%において)、中程度の寒気(LSDセッションの45%及びプラセボセッションの0%において)、軽度の歩行障害(LSDセッションの32%及びプラセボセッションの0%において)を含んだ。数例において、いくらかの感情的苦痛が、翌日まで持続した(Gasser et al., 2014)。LSDセッション後1日又は2日間の軽度の過敏(毎日のパフォーマンスを妨げない)が、何人かの被験者によって報告された(Gasser et al., 2015)。フラッシュバック現象は確認されなかった。12か月間の経過観察(Gasser et al., 2015)において、いずれの参加者も、LSDセッションからの継続的なネガティブな作用を報告しなかった。LSDの初期の作用(例えば、激しい感情、セルフコントロールの変化)の対処において一部の参加者によって報告された一時的な困難さを超えて、以前の所見と一致するAEは言及されなかった(Cohen, 1960;Gasser, 1996)。対照試験セッティングでの健康な被験者におけるLSD(200μg)の急性AEは、集中困難(参加者16名の被験者数:LSD後10名及びプラセボ後1名)、頭痛(LSD後9名及びプラセボ後3名)、めまい(LSD後7名及びプラセボ後0名)、悪心(LSD後4名及びプラセボ後1名)、中等度の一過性不安(LSD後4名及び及びプラセボ後0名)(Schmid et al., 2015)を含んだ。他の研究者も同様に、初期の悪心、食欲の低下、軽度の頭痛、めまい及び震えを報告している(Holze et al., 2021;Passie et al., 2008)。LSDは、瞳孔散大などの軽度の交感神経作用刺激を引き起こした(Passie et al., 2008;Schmid et al., 2015)。SAEはなかった。バーゼルの施設で50名を超える健康な被験者において他の研究で安全性プロファイルが確認された(Dolder et al., 2016;Holze et al., 2021;Holze et al., 2020b)。幻覚誘起物質を用いた臨床試験において、軽度又は中等度の予期不安が、薬物作用の開始の最初の時点で一般的である(Griffiths et al., 2006)。不快気分、不安及びリファレンスの軽度の一過性観念/妄想性思考も一部の対象で起こり得、安心させることで容易に管理することができる(Griffiths et al., 2006;Schmid et al., 2015)。ネガティブな経験(バッドトリップ)及びフラッシュバック現象は、未制御条件で起こり得る(Strassman, 1984)。一方で、制御され、支持された条件下では、LSD経験は報告によれば、継続的なポジティブな効果を有した(Carhart-Harris et al., 2016b)。同様に、プシロシビンは、態度、気分及び挙動に対して持続するポジティブな効果を有した(Griffiths et al., 2011;MacLean et al., 2011;Studerus et al., 2011)。持続する神経認知機能障害はない(Halpern et al., 1999)。疫学的研究から、幻覚誘起物質使用者において精神障害が増加しないことが判明した(Johansen et al., 2015;Krebs et al., 2013b)。LSDは、非常に高い用量でも神経毒性作用を引き起こさない。
【0097】
  物質の製造及び品質管理:分析的に純粋なLSDをLipomed AG, Arlesheim, Switzerlandから入手した。同じ材料をパイロット試験に使用し(Gasser et al., 2014)、バーゼル(Dolder et al., 2015b;Holze et al., 2020a;Holze et al., 2021;Holze et al., 2020b;Schmid et al., 2015;Strajhar et al., 2016)、チューリヒ(Kraehenmann et al., 2017a;Kraehenmann et al., 2017b;Preller et al., 2017;Preller et al., 2019)及びロンドン(Carhart-Harris et al., 2016b;Carhart-Harris et al., 2015;Kaelen et al., 2015)において健康な対象でその研究が以前に行われた。最初の以前の研究とは対照的に、LSDは、濃い色のガラスバイアル(水/アルコール)中の飲料溶液LSDとして製剤化し、カプセルには製剤化しなかった。これにより、製剤の定期的な分析品質管理が容易となり、研究期間全体を通して及びLSDを用いた患者における臨床治験で初めて、製剤の含量均一性及び安定性が実証された(Holze et al., 2019)。スイス医薬品局承認適正製造規範(GMP)施設(Apotheke C.Hysek医師)により、臨床薬物及びプラセボ(同一バイアルにおいてLSDを含まない溶液)が調製され、ランダムな個別の包装、ラベリング及び品質管理(QC)が実施される。治験医薬品(IMP)の製造は、スイス医薬品局によって承認され、LSDの使用は、BAGによって承認を受けた。
【0098】
無作為化及び盲検
  各被験者は、2種類の治療を受けた。被験者及び治験実施者は、治療順序を知らされなかった。GMP施設が無作為化を実施した。治療順序を釣り合わせた。治療順序は、各被験者番号(コードリスト)に割り当てられ、GMP施設によって保持された。
【0099】
データ分析
試料サイズの推定
  PASS(登録商標)(Kaysville, Utah)で粉末分析を実施した。所定の主要評価項目はSTAI不安であった。パイロット試験からのデータを試料サイズの推定に使用した(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015)。パイロット試験において、LSDは、被験者内でのSTAI状態不安スコア(平均±SD,[範囲])53.1±13.5(27~71)から41.5±9.7(26~58)に、11.6±9.5ポイント下がった(PIに利用可能な生データ)。特性不安スコアは、53.3±11.3(31~70)から45.3±10.3(32~62)へと、8.0±7.7ポイント下がった(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015)。状態又は特性尺度スコアは、スクリーニングでのすべての被験者において40を超えたのに対して、一部の被験者においてLSD又はプラセボ投与前に、ベースライン測定でのスコアは40未満であった。既知のパイロット試験データに基づいて、6の試料サイズが80%粉末を達成し、既知のSD9.5及び両側1標本t検定を用いた有意性レベル(α)0.05を用いて、11.6のSTAI状態不安のこの差が検出される。しかしながら、これらのデータは、適切なプラセボ対照を含まず、実質的なプラセボ/心理療法補助反応を説明しない、時間の経過による変化を示す(De Candia et al., 2009;Fisher et al., 1999;Laakmann et al., 1998;Lopresti et al., 2014)。小さいが、それでも臨床的に関連する(Fisher et al., 1999;Laakmann et al., 1998)、LSDを受けての及びプラセボと比較して変化15%のSDを有する10%の不安スコアの低減であると想定すると、18の試料サイズは、被験者内比較を用いて有意性レベル0.05で粉末を達成する必要がある。さらに、本発明者らは、さらなる二次的結果を分析した。したがって、被験者40名を組み入れ、最大10名の置き換えのない脱落が許されるように計画された。パイロット試験において、被験者70名が参加に興味を持った。電話/Eメールによって簡潔に評価された際、50名は、資格がないか又は断られ、20名が完全にスクリーニングされて、12名が治験に組み入れられた(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015)。このパイロット試験データに基づき、興味を示した人々240名の中で対象80名を完全にスクリーニングし、治験に40名を組み入れ、最終データ分析において少なくとも30名で終わると予想される。
【0100】
結果の分析
  データを治験質問票において紙面で回収し、CRFに組み入れた。したがって、CRFは、ソースデータを含む。次いで、GCP互換性データベースにデータを入れた。次いで、データベース内で、試験材料のそれぞれのマニュアルを用いて、STAI及び他の質問票スコアを計算した。第1治療期間の被験者間と、プラセボ対照に対するLSDとして被験者内で治療された、治療結果を分析した。ここで示される第1分析において、このグループは終了し、一方、生命を脅かす疾患及び不安を有する患者のグループは後に分析されるため、全般性不安障害を有する患者のみが分析された。患者10名が最初にLSDを投与され、患者11名が最初にプラセボを投与され、これら2つのグループが互いに比較された。2つのグループは最初に比較され、年齢、性別分布、疾患及び疾患の重症度に関するその類似性が実証された。次いで、すべての結果を、ベースラインからの変化としてLSDとプラセボとで、治療効果が評価される各セッションに関して別々に比較した(セッション来院間並びに第2治療セッション後2週、8週及び16週)。各時点及び各セッションに対するt検定を用いた及び共変量としてベースラインを用いた分析に一致するであろう、ベースラインからの差について、LSDとプラセボとのコントラストを分析した。次いで、LSD及びプラセボ作用を被験者内でも比較した。最初に、各治療前にベースラインからの差を、各治療、評価基準及び時点に関して計算した。次いで、各結果について及び各時点において、これらの作用をLSDとプラセボ間で比較した。この分析から、被験者内及び全クロスオーバー設計において、プラセボと比較してLSDの作用が評価された。両方の治療を終了した被験者19名についてのみデータを分析し、被験者2名は、単に第1治療期間を終了したのみであるため、被験者間比較に組み入れられた被験者2名についてデータを分析しなかった。ベースライン差の使用により、被験者間及び被験者内での疾患重症度の差が説明され、第1治療期間からの持ち越し効果が低減された。これらすべての分析について、複数の試験に補正は適用されなかった。これは、不安のみの患者のサブグループ分析であり、すべての患者の終末の治験分析ではなかった。統計分析はStatistica(登録商標)(StatSoft Version 12)を使用して実施されるであろう。混合作用モデルを用いた補足的分析又はベースラインの説明のないスコアについての分析により、全体的に非常に類似の結果が得られたが、本明細書には示していない。
【0101】
被験者の保護
  LSD特異的毒性及び安全性のモニタリングを参照されたい。
【0102】
参加に対するリスク
  身体的リスク:LSDの使用は、既知の身体的リスクと関連しないが、以下に記載のような精神医学的合併症を引き起こし得る。
【0103】
  予想される急性有害作用:不快気分、不安、気分変動、夢遊状態、一過性人格喪失感及び現実感喪失現象、軽度及び一過性妄想性思考、ネガティブな経験(不安、不快気分、バッドトリップ)、振戦、不穏状態、急性知覚変化、急性精神運動機能障害、軽度頻脈、軽度高血圧、悪心、頭痛、めまい、震え、食欲不振(Johnson et al., 2012;Passie et al., 2008;Schmid et al., 2015;Studerus et al., 2011)。重症又は重篤な有害作用は予想されなかった。
【0104】
  可能性のある持続的有害作用:フラッシュバック現象(以下参照)、精神病性反応。
【0105】
  静脈穿刺(スクリーニング及びEOS):痛み、挫傷及び血栓性静脈炎のリスクがあった。
【0106】
  被験者のプライバシーに対するリスク:データ収集の潜在的なリスクとしては、守秘義務違反が挙げられる。臨床データは、治験実施者により保持されるコードリストによって個人データにリンクされる。
【0107】
  財政的リスク:治験実施施設への移動費用(払い戻されない)を除いて、被験者に対する費用のリスクはなかった。保険の補償が提供された。
【0108】
LSD特異的毒性の考察
  幻覚誘起物質研究での主な安全性問題は、本質的に生理学的問題ではなく心理学的問題である。未監督及び未準備条件下でさえ、暴力又は自己破壊的挙動を伴う幻覚誘起物質に対する反応は稀であり、幻覚誘起物質の危険性の非現実的な理由を作らないことが重要である(Johnson et al., 2008)。それにもかかわらず、このような危険性のレポートがめったにないとしても、本発明者らはかかるリスクを重大に受け取り、その発生を防ぐステップを取る必要があった。
【0109】
  心理学的作用:一過性不安及び抑うつ反応が、一部の被験者において予想された(Passie et al., 2008;Schmid et al., 2015)。LSD及び他の精神活性物質を使用した臨床研究において、軽度又は中等度の予期不安は、薬物作用の最初の時点で一般的である(Griffiths et al., 2006;Liechti et al., 2001;Schmid et al., 2015)。これらの反応は、治験実施者による支持的ケアと同時に解決されると予想される(Griffiths et al., 2011;Griffiths et al., 2006;Schmid et al., 2015)。本発明の試験で使用されるLSDの用量において、被験者は、その思考コントロールの大部分を維持すると予想され、精神病患者と対照的に、被験者は、薬物誘発経験の一過性状態を認識したままであった。より顕著な不安、不安発作又は動揺の事象は、必要に応じて、ベンゾジアゼピン投与で治療され得る。治験精神科医が、セッション中に存在し、セッション後に接触することができた。ネガティブな経験(バッドトリップ)及びフラッシュバック現象は、一般に未制御条件下で起こり得る(Strassman, 1984)。治験セッション後の精神医学的合併症の場合及び参加者が、治験に関連するネガティブな経験を話し合いたい場合にも、治験日を過ぎてさらなる支援を提供する治験精神科医と接触することができた。自傷傾向挙動:LSDを摂取している人々は、酔った状態での運転などの無謀な挙動に関与し得る。このリスクは、精神活性物質の作用が完全に鎮まるまで、治験実施者による継続した監督によって大幅に低減された。LSD使用後の持続性の精神医学的症状及び/又は精神病は、この治験に組み入れられた非精神病被験者のコホートでは起こりそうにない稀な反応である。LSD又はプシロシビンは、それを直接引き起こすのではなく、既に精神病に罹り易い人々におけるエピソードの引き金となり得る。非精神病性及び少なくとも25歳の被験者がこの治験に組み入れられた。
【0110】
  生殖的及び発達上のリスク:LSDは、突然変異誘発性でも、催奇形性でもなく、その慢性的使用は先天性欠損とは関連しない。妊婦はこの治験から除外され、女性参加者には、有効な避妊が必須であり、各試験セッション前に妊娠検査が行われた。
【0111】
  乱用傾向:スイスにおいて、LSDが麻酔薬として予定されている。LSDは、乱用傾向がたとえあったとしても、ほとんどない。幻覚誘起物質は動物によって自己投与されず、ヒトLSD依存症候群は存在しない(Passie et al., 2008)。現在、物質を使用している対象を治験には組み入れなかったが、過去の物質使用障害は除外判断基準ではなかった。幻覚誘起物質が、オピオイド(Belleville et al., 1956;Ross, 2012;Savage et al., 1973)、アルコール(Bogenschutz et al., 2015;Krebs et al., 2012;Kurland et al., 1967;Liester, 2014;Ludwig et al., 1969;Mangini, 1998;Pahnke et al., 1970)及びニコチン依存(Johnson et al., 2014)などのいくつかの物質使用障害において使用されており、研究されている。違法な薬物使用は、繰り返し行われる尿中薬物スクリーニングを用いて試験中、モニターされた。
【0112】
  神経毒性:LSDは、神経毒性ではない(Nichols, 2016;Passie et al., 2014;Passie et al., 2008)。
【0113】
  フラッシュバック:フラッシュバックは、以前の物質関連経験の要素の挿間的及び短い(数秒又は数分)反復として定義され得る(Holland et al., 2011;Passie et al., 2014)。これらの経験はポジティブ又はネガティブであり得る。かかる現象は、多くの物質の使用後に報告されており、物質を使用しない人々にも蔓延している(Holland et al., 2011)。臨床的に有意なフラッシュバックは、幻覚誘起物質持続性知覚障害としても定義される。この障害は、稀であると考えられるが、不安障害を有する患者において起こり得、それは、通常、数か月~1年の限定された経過を有するであろう(Halpern et al., 1999;Holland et al., 2011;Passie et al., 2014)。
【0114】
安全性のモニタリング
  幻覚誘起物質研究のガイドライン:本明細書に記載の手順は、高用量幻覚誘起物質研究のガイドライン(Fischman et al., 1998;Gouzoulis-Mayfrank et al., 1998;Johnson et al., 2008)及び精神活性物質の研究の実施における経験に基づく。その手順は、潜在的な副作用を最小限に抑えると同時に、精神活性の安全な投与を支持することを意図する。
【0115】
  参加者の年齢:LSD及びプシロシビンは、年齢22~62の対象(Carhart-Harris et al., 2016b)及び年齢20~64の対象(Bogenschutz et al., 2015;Griffiths et al., 2006)それぞれにおいて、最近の対照試験で研究されている。若年は、プシロシビンに対するネガティブな反応及び不安の増加と関連している(Studerus et al., 2012)。したがって、25歳未満の対象は、除外される(Studerus et al., 2012)。対照的に、高年齢の対象は、プシロシビンに応じたコントロール喪失の恐れが少ないことが報告された(Studerus et al., 2012)。年齢上限はないが、身体疾患及び臓器機能不全は除外基準である。試験又は使用される物質に(ネガティブに)干渉し得る、薬を服用している対象は除外される。幻覚誘起物質の作用を変化させることが知られている薬物は:三環系抗うつ薬、リチウム、セロトニン取り込み阻害剤、抗精神病薬及びモノアミンオキシダーゼ阻害剤である(Johnson et al., 2008)。
【0116】
  他の精神障害:精神医学的スクリーニング基準は、LSDに対する長期間の精神病性反応を誘発する、既に低い可能性を最小限にするのに重要である。精神分裂病若しくは他の精神異常(病状が原因の)又は双極性障害のDSM-IV基準を満たす現在若しくは過去の病歴を有する対象は除外された。上記は、安全性を確保するのに除外される最も重要な条件である。これらの疾患を有する一等親血縁者を有する対象も除外された。幻覚誘起物質が、これらの疾患を有する患者において又は具体的にはこれらの疾患を治療するために使用されていたため、不安の他に、合併性抑うつ症、強迫性障害などの他の精神障害又は以前の物質使用障害は、除外されなかった(Gasser et al., 2015;Grob et al., 2011;Krebs et al., 2012;Moreno et al., 2006;Ross, 2012)。
【0117】
  反応の予測因子:対照試験環境における幻覚誘起物質投与に続く、より心地よい及び神秘的タイプの経験を予測する重要な因子は:吸収の性格特性のスコアが高いこと(新しい経験に開放的)及び試験セッション前の過去数週にほとんど心理的問題を経験していないことである(Studerus et al., 2012)。幻覚誘起物質に対する不快な及び/又は不安な反応と関連する因子は:低年齢、感情的不安定性及び脳のスキャンを含むセッティングである(Johnson et al., 2008;Studerus et al., 2012)。性格に関して、幻覚誘起物質の使用を含む新しい経験に対してより開放的である被験者は、その治験への参加により興味を持ちやすく、この自己選択バイアスは、かかる試験の安全性を高める(Johnson et al., 2008;Studerus et al., 2011)。幻覚誘起物質に対して以前に重篤な副作用を有する患者は含まれない。治験実施者は、参加者が、各セッション前にその経験にネガティブな影響を有し得る、心理的問題を最近経験したか否かを尋ね、そうである場合、セッションは、延期又は中止され得た。
【0118】
  薬物経験:向精神薬を有する以前の経験は、精神活性物質に対する反応に影響し得る。プシロシビンでの対照試験において、薬物使用及び幻覚誘起物質での予備経験は、プシロシビン反応に中程度にのみ影響を与えた(Studerus et al., 2012)。幻覚誘起物質ネイティブな被験者は、全体的により強いプシロシビン作用を報告する傾向があった(Studerus et al., 2012)。大麻を時々吸った(1月に複数回)被験者は、稀にTHCを使用した被験者と比較して、より愉快な作用及び不安が低い傾向を経験した(Studerus et al., 2012)。幻覚誘起物質使用の以前の経験を有する健康な参加者と幻覚誘起物質ネイティブな被験者との間において、LSDに対する反応の差は、見られなかった(Schmid et al., 2015)。注目すべきことに、常用薬物使用の対象は、上記の研究に含まれなかった(Studerus et al., 2012)。本発明の研究は、LSDを用いた以前の研究(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015;Schmid et al., 2015)と類似の及びプシロシビンを使用して他者によって行われた研究(Griffiths et al., 2011;Griffiths et al., 2006;Studerus et al., 2011)と類似の、以前の薬物曝露が全くない又は限定された薬物曝露のみの患者も主に含んだ。
【0119】
  治験職員:対人間の雰囲気は、幻覚誘起物質に対する反応に重要である(Johnson et al., 2008)。セッション中にボランティアと共に存在した研究職員は、物質に対する潜在的な医学的及び心理学的副作用に精通していなければならなかった(Johnson et al., 2008)。職員は、人間関係のスキルも有し、幻覚誘起物質で誘発される変性意識状態の評価に精通しているべきである(Johnson et al., 2008)。臨床感受性(例えば、共感、敬意)は、職員の資格を考慮する場合、正式な学位よりも重要であると見なされる(Johnson et al., 2008)。本発明の研究において、治験実施者は、精神活性物質の治療後の研究対象のケアの経験があり、物質の作用中に同席した(12時間まで)。ボランティアは、急性物質作用中には決して一人にならなかった(Johnson et al., 2008)。治験実施者は、スクリーニング及び予備的来診からボランティアを知っていた。セッション中に同席した治験医師は、良好な対人間関係を確立するために、ボランティアと共にスクリーニングセッションも行った。
【0120】
セッション中の安全性手順
  セッション中、被験者は常時、監視下にあった。1名が、参加者と共にセッションルームに常に居た。参加者がトイレを使用する必要がある場合、参加者は、トイレに付き添われた。ドアには鍵をかけなかった(スタッフが鍵を持っていた)。職員は、物質作用中に参加者が治験実施施設を出ることができないことを確かめた。不測の事態(火災警報又はその他)では、1名が被験者と常にとどまった。
【0121】
  有害な心血管作用:軽度の心臓刺激作用のみが予測された。心血管作用(血圧及び心拍数)が繰り返し測定された。血圧値が180/120mmHgを超えるか又は収縮期血圧が90mmHg未満に下がった場合、綿密なモニタリングが実施された。高血圧性反応(Psys>220mmHg)の治療は、ロラゼパム及びトログリセリンを含むと考えられた。低血圧の治療は、トレンデレンブルグ体位を含むと考えられた。心拍停止は、即時の心肺蘇生及び救急車を呼ぶ電話の引き金となったであろう。
【0122】
  頭痛:LSDは、一過性頭痛を引き起こし得る(Schmid et al., 2015)。パイロット試験において、LSDセッションの明後日に中等度の頭痛のために、参加者1名がアセトアミノフェンを要した。逆に、LSDは報告によれば、群発頭痛及び片頭痛のエピソードを低減する(Davenport, 2016;Karst et al., 2010;Sewell et al., 2006)。パイロット試験において、LSDは、片頭痛患者2名において片頭痛発作回数を顕著に低減した。
【0123】
  痛み:一部の患者が、自身の身体疾患が原因でセッション中に鎮痛薬を必要とし得た。パイロット試験において、患者3名が、セッション中に常用の鎮痛薬を摂取した。
【0124】
  有害な心理学的反応:LSDは、その全体的にポジティブな気分の作用にも関わらず、一過性の不快性反応及びコントロール可能な懸念/不安を生じさせ得ると予想された。副作用(「バッドトリップ」)は、コントロールされたセッティング、参加者選択基準及び上述の参加者準備及び職員によって提供される参加者の対人間サポートによって最小限にされると予想された。被験者は、心理的苦痛の徴候に関して、治験実施者によって常に及び慎重に観察された。予想外の重篤な不安は最初に、治験精神科医により心理学的サポートで、続いてベンゾジアゼピンの投与によって治療される。個人のサポート及び安堵は、有害な心理学的反応に対する最も適切及び重要な対応である。必要に応じて、腕/肩に触れて被験者を安心させ、被験者が調査研究に参加し、精神活性物質を摂取したこと及び数時間で正常な意識に戻るであろうことを口頭で気付かせた。被験者は、一般に、異常な感情を受け入れ、自分を見下して話そうとするのではなく、経験を手放すか又は自身の経験から自らをそらすようにアドバイスされる(Johnsonetal., 2008)。これらの技術は、ほぼすべての事例で十分であると考えられ、研究チームによってうまく用いられてきた。健康な被験者においてパニックのコントロールに投薬は必要とされそうにないが(Hasler et al., 2004;Johnson et al., 2008;Schmid et al., 2015)、不安障害を有する患者におけるパイロット試験と同様に、この研究における不安障害患者の一部では、これが予想された(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015)。パイロット試験において、患者3名が、実際のLSDセッション中ではないが、治験中にベンゾジアゼピンを摂取した(Gasser et al., 2014)。
【0125】
  めまい/歩行のコントロール:ピーク薬物作用中を除いて、被験者は難なく歩き回ることができた(Schmid et al., 2015)。しかしながら、LSD/プシロシビンの知覚的及び固有受容性作用により、歩行が難しくなり、誘導が補助になり得る。
【0126】
  他のAE。治験医師によって臨床的判断に基づいて、他のすべての副作用を適宜、治療した。セッション中の悪心又は頭痛は理想的には、その作用が薬物間相互作用を回避すると完全に決定されるまで、投薬での治療はされない。必要に応じて、セッション後、頭痛の治療のためにパラセタモールが使用され得た。
【0127】
  セッション間のAE:これらの作用は、次のセッションの最初に又はEOSにおいてAEとして評価された。
【0128】
  セッションモニタリングの期間:自覚的作用が完全に終わるまで、被験者を綿密にモニタリングした。これは、LSDに関して12時間以内と考えられた。LSD200μgを用いた以前の研究において、その作用は12時間まで続いた(Holze et al., 2021;Schmid et al., 2015)。この時間を超えて、綿密なモニタリングは必要なく、被験者は自宅に戻ることができた。したがって、LSD/プラセボ投与から12時間後、参加者は、自宅に戻ることを許されたが、パートナー、親戚又は友達による同行及び監視が提供される場合のみ許された。試験セッション後、治験実施者によって評価される自覚的作用が止まった場合にのみ、被験者が去ることを許された。監視が利用可能でない場合又は作用が続く場合、その夜は治験実施施設で過ごさなければならなかった。この場合、治験実施者は、安全性ガイドラインに示されるように、治験実施施設であるが、別の部屋に居た(Johnson et al., 2008)。
【0129】
  セッション後の安全性手順:以前の研究経験に基づいて(Gasser et al., 2014;Gasser et al., 2015;Schmid et al., 2015)、正式な経過観察サポートは必要なかった。セッション間のAEは、次の治験来院及びEOS来院において報告された。必要に応じて、早めのミーティングが予定された。物質投与から24時間以内は、車を運転すること又は機械を操作することを被験者に禁じた。
【0130】
毒性のモニタリング
安全性の定義
有害事象(AE):
  IMPを投与された臨床試験の被験者における及び必ずしもこの治療との因果関係をない好ましくない医療上の出来事。したがって、AEは、IMPに関連すると考えられるかどうかに関わらず、(IMP)の使用に一時的に伴う、いずれかの好ましくない及び意図されない徴候(異常な臨床)、症状又は疾患であり得る。
【0131】
副作用(AR):
  IMPに対する正当な因果関係を有すると、治験実施者/スポンサーによって判断されるIMPに対するすべての有害な及び意図されない反応。正当な因果関係という表現は、概して、因果関係を示唆する証拠又は議論があることを伝えることを意味する。
【0132】
予期されない副作用(UAR):
  AR、その性質又は重症度は、該当する製品情報と一致しない(例えば、未承認の治験薬製品の治験実施者のパンフレット又は正式に認可された製品特性概要(SmPC))。副作用の結果が該当する製品情報と一致しない場合、この副作用は、予想外とみなすべきである。予測されるよりも、重症で起こる、IB又はSmPCに記載の副作用も予想外であるとみなされる。
【0133】
重篤な有害事象(SAE)又は重篤な副作用:
  いずれかの用量での好ましくない医療上の出来事又は作用により、死に至るか、生命を脅かすか、入院若しくは既存の入院の延長が必要となるか、持続的な若しくは著しい障害若しくは不能状態に至るか、又は先天性異常若しくは先天性欠損となる。これに関連して、生命を脅かすという用語は、治験参加者が事象の時点で即時の死亡リスクがある事象を意味し;より重症であった場合、死亡の原因となり得た事象を意味しない。
【0134】
疑われる予測できない重篤な副作用(SUSAR)
  疑われる副作用は、予想外及び重篤であるIMPに関連した。
【0135】
因果関係:
  この治験で起こった大部分の有害事象及び副作用は、重篤であるかどうかに関わらず、この治験に使用された薬が原因の、治療関連毒性と予想された。因果関係の割当ては、以下の表1における定義を用いて治験実施者によって行われた。
【0136】
【0137】
有害事象(AE)のドキュメンテーション
  重症度又はIMPとの関連性に関わらず、被験者のCRFに記載及び記録された。AEは、重症度について評点付けされ、標準的な基準に従って治験実施者により、治験介入に対する潜在的な関連性が評価された。AEを有する被験者を適切に処置した。患者の疾患によって説明されない異常な実験室値は、正常になるまで又は異常が説明でき、被験者の完全性にリスクがなくなるまで繰り返さなければならなかった。
【0138】
法的認可
  LSDは、スイス(Anhangd der BetmV-Swissmedic)において予定された物質である。治験薬局方は、この物質を使用する許可をBAGに与えた。
【0139】
治験のドキュメンテーション及び記録保存
  治験実施者は、治験の実施を完全に文書に記録することが可能になるように、適切に記録を維持した。プロトコル、識別コード、CRF、試験結果レポートのオリジナル、調剤のログ、対応、インフォームド・コンセントの記録及び治験の実施に関係する他の文書のコピーは、バーゼル大学病院のアーカイブにファイルで10年間保管される。すべての形式がタイプされるか又は青色若しくは黒色のボールペンを使用して記入され、判読できなければならない。エラーは線を引いて消されるが、跡形もなく消されはせず、訂正が挿入され、治験実施者又は権限保持者によって変更が署名され、日付が入れられる。登録された各被験者に対して、CRFが終了され、治験実施者によって署名される。これは、治験を終了できない被験者にも当てはまる。
【0140】
品質管理及び品質保証
職員のトレーニング及びSOP
  治験職員はGCPトレーニングを完了した。治験は、ICH GCP E6に準拠して及びバーゼル大学病院のCTUのQMSに従って実施された。
【0141】
モニタリング
  CTUバーゼルによって治験をモニターした。
【0142】
身体疾患なく、不安障害を有する患者
  身体疾患なく、不安障害を有する患者からのデータのみがここに示される。21名の患者が治療を開始し、24週までに第1治験期間を終了した。患者2名が脱落し、患者19名が治験全体を終了した。
【0143】
  患者の特徴を
図14に示す。重症の身体疾患なく、不安障害を有する患者21名が治験に組み入れられた(男性11名、女性10名)。平均年齢は46歳であった。第1治験期間後に2名が脱落した。したがって、合計21名の患者が、並行群比較に利用可能であり、19名の患者は、LSD及びプラセボの被験者内比較に組み入れることができた。
 
【0144】
  すべての患者は、不安障害の診断及びスクリーニングでの最小STAI-S又はSTAI-Tスコア40を有した。合計21名の患者の中で、一次診断として、原発性不安障害を有する患者18名、全般性不安障害を有する患者15名、対人恐怖を有する患者9名、パニック障害を有する患者7名が存在した。患者3名が大うつ病の診断を有した。すべての患者21名のうちの9名は、抗うつ薬での治療を有し(リチウムでの治療が1名)、LSD又はプラセボの投与の少なくとも2週前にすべての事例で抗うつ薬が漸減され、5名が抗不安薬(ベンゾジアゼピン)を有した。疾患スコアは、治験組み入れ(
図14)及びベースライン治療で同等であった。
 
【0145】
  患者の特徴は、最初にプラセボを投与された群と比較して、最初にLSDを投与された群においてほぼ同じであり、第1治療期間中にLSD及びプラセボ処置患者の有効な並行群比較が可能となった(並行設計、被験者間比較)。
【0146】
  図15A~15Fは、不安、抑うつ及び心理的苦痛の評点に対するLSD及びプラセボの効果を示す。
図15は、最初にプラセボで、次いでLSDで治療された患者(最初にプラセボ,患者数=11)又は最初にLSDで、次いでプラセボで治療された患者(最初にLSD,患者数=10)の平均値及びSEM値としてデータを示す。第1治験期間にLSD又はプラセボを3週及び8週時点で投与し、第2治験期間に29週及び33週の時点で再び投与した。LSDは、10週時点(第2投与から2週間後)でSTAI-S(
図15A)、STAI-T(
図15B)及びSTAI-G(
図15C)評点を、プラセボと比較して有意に低減した(
**p値=それぞれ0.008、0.001及び0.002)。STAI-S及びSTAI-G評点は、第1セッション後に既に有意に減少した(
*p値=それぞれ0.03及び0.04)(
図15A及び15C)。STAI-S、STAI-T、STAI-G評点は、プラセボと比較して、LSD後に16週及び24週時点で(第2投与から8及び16週後)減少し続けたが(
図15A~C)、統計的有意性には及ばなかった。同様に、LSDは、プラセボと比較して、10週時点で(第2投与から2週後)、HDRS(
図15D)、BDI(
図15E)及びSCL-90グローバル(
図15F)に対して有意にスコアを低減した(p値はそれぞれ0.002、0.02及び0.004であった)。HDRSについて、LSDは、既に第1セッション後にスコアを低減した(
*p=0.04)(
図15D)。STAI及びSCL-90グローバルに対するLSDの効果は、第2投与から8週及び16週後の16週及び24週時点において及びプラセボと比較して減少したままであったが(
図15A~C及び
図15F)、統計的有意性には及ばなかった。
 
【0147】
  次いで、治験のクロスオーバー設計を利用して、治療効果を被験者内でも評価し、19名の患者が両方の治療を受けた(第1治療期間中に1名の患者にプラセボのみ、1名はLSDのみを投与された)。一部の測定及び時点に関して、1名又は2名の被験者からのデータが欠落した。
図15A~15Fに例証するように、第1治療フェーズにおけるLSDの治療効果が第2治療フェーズにまで続いたために、キャリーオーバー効果が存在した。ベースライン値におけるシフトを説明するために、ベースラインからの差としてデータを分析した(0週又は26週時点)。LSDは、プラセボと比較した第2投与後2週時点で、プラセボと比較したすべての尺度(STAI-S、STAI-T、STAI-G、HDRS、BDI及びSCL-90グローバル)について症状スコアを有意に低減した(p値=それぞれ0.01、0.003、0.003、0.03、0.002及び0.004)(
図16A~16F)。
 
【0148】
  図15A~15Fは、第2治療期間中のその効果と比較して、第1治療期間中のLSDの作用についての重要な情報も提供する。第1治療期間中の第1及び第2の2つの投与後に効果は明らかに存在した。第2治療期間中にも効果が存在した。しかしながら、プラセボは、一般に、第1治療中にLSDを既に投与されていた被験者において第2治療期間中のLSDと同様な効果を有した。参加者が、LSDを用いた第1セッション中に同じ療法士と同じセッティングで会った点から、これは、条件付け反応によって説明することができる。これは、同じ療法士及び同じセッティング内で実施される場合又は第1LSD投与によって条件付けされた作用が存在するためにプラセボ又は低用量のLSDを使用する場合、本発明を用い、及び不安障害を有する患者におけるLSDセッション後にさらなる非薬物セッションが有益であり得ることを意味するであろう。
 
【0149】
  患者19名において、プラセボデータを使用せず、LSD条件に関するデータを最終的に時間の経過にしたがって評価した。再び、第2治療後2週時点でLSDは、ベースライン測定値と被験者内を比較して、STAI-S、STAI-T、STAI-G、HDRS、BDI及びSCL-90グローバルスコアに対してすべての結果尺度でスコアを低減した(p値=それぞれ0.006、0.01、0.03、0.02、0.03)。
【0150】
  LSD及びプラセボによって誘発される心の急性変化を
図17に示す。LSDは、5D-ASC質問票のすべてのスケールに有意な及び顕著な変化を引き起こした(プラセボに対して、すべてp<0.001)。急性LSD効果は、セッション1及び2で同等であった。LSDの急性効果は、一般に、同じLSD用量200μgでの臨床セッティング(Holze et al., 2021)において処置された健康な被験者において確認された効果よりも高かった。具体的には、LSDのポジティブな効果(名称OBスコア)は、健康な被験者と比較して不安な患者において高く、コントロール及び認知の障害及び肉体からの離脱などのネガティブな効果並びに知覚的VR効果がほぼ同等であった。したがって、本発明は、健康な被験者に対する、患者におけるネガティブな急性効果プロファイルに対して全体的にほぼ同等の又はより優れたポジティブな急性効果プロファイルを有する、不安患者におけるLSDの全体的にポジティブな急性効果を実証する。
 
【0151】
  LSD及びプラセボの急性的な神秘的タイプの効果を
図18に示す。LSDは、有意に及び強くMEQ30質問票の神秘的タイプの経験の評点を高めた。効果は、第1及び第2セッションで類似していた。同じLSD用量200μgでの臨床セッティング(Holze et al., 2021)で処置された健康な被験者と比較して、不安患者において効果は高い傾向があった。本発明において、LSDは明らかに、他の治療研究及び患者母集団においてプシロシビンに対するポジティブな治療結果と関連することが知られている神秘的タイプの効果をもたらした(Garcia-Romeu et al., 2015;Griffiths et al., 2016)。
 
【0152】
  長期間の治療上の利点と急性効果の関連:5D-ASC及びMEQ30質問票に対するLSDの急性効果は、第2投与から2週間後のLSDの治療効果と関連付けられる。具体的には、特に第2LSD投与でのOBスコア%は、STAI-S、STAI-G、BDI及びSCL-90グローバルスコアの減少によって証明される治療改善と有意に相関した(すべてのp値<0.05,ピアソン相関性,n=20)。同様に、第2LSDセッションでのMEQ30に対するLSDの急性効果は、STAI-S、STAI-G及びSCL-90グローバルスコアの減少と有意に相関した(すべてのp値<0.05,ピアソン相関性,n=20)。相関係数を
図19に示す。本発明は、LSDの優れた薬物効果から、治療から2週間後の優れた治療結果が予測されることを示す。この知見は、プシロシビンを用いた研究と一致する(Griffiths et al., 2016;Roseman et al., 2017)。さらに、本発明は、2つのセッションのうちの第2セッションから、2週間後の結果が最もよく予測されたことを実証する。さらに、OB及びMEQ30スケールで評価されるポジティブなLSD効果のみが予測され、AEDスケールで評価される、よりネガティブな急性効果は、治療結果と有意に関連付けられなかった。さらに、VRスコアで評価される視覚的変化からは、治療反応は予測されなかった。
 
【0153】
有害事象
  治療セッション中に具体的に尋ねられた有害事象(AE)は、患者2名におけるLSD作用の開始時の不安(プラセボでは全くない)、LSDを投与された患者1名における強い不安/パラノイア(プラセボでは全くない)、LSDを投与された患者2名における悪心(プラセボでは全くない)及びLSDを投与された患者1名における頭痛(プラセボでは全くない)を含んだ。
【0154】
  第1LSDセッション中に患者1名にパラノイアが起こり、ベンゾジアゼピン及び抗精神薬で治療し、重篤な有害事象(SAE)として評点付けした。次いで、この患者では、用量を予定された200μgの代わりに100μgに下げ、そして、この治療は耐容性がよかった。
【0155】
  有害事象(AE)を
図20の表に示す。数字は、治療セッションを含まない期間のすべての来診で報告されたAEの合計である。物質の非存在下での、これらの経過観察来院時の最も頻度が高いAEは:疲労(LSD9,プラセボ7)、風邪(LSD7,プラセボ3)、頭痛(LSD6,プラセボ14)、めまい(LSD5,プラセボ4)、集中困難(LSD5,プラセボ6)、悪心(LSD3,プラセボ4)、抑うつ(LSD3,プラセボ0)であった。
 
【0156】
  この研究におけるSAEは、患者1名におけるLSDセッション中の上記のパラノイアを含み、それはLSDに対する予想される反応であった。別のSAEは、既存の強迫性障害が原因であり、この患者におけるLSD治療前であるプラセボ期間中の患者1名の入院からなった。したがって、これは物質に対する反応ではなかった。別のSAEは、LSD期間中の及びLSD治療と関連しないとみなされる、患者1名における鼻中隔弯曲症の予定された手術からなった。別のSAEは、LSD治療フェーズの最後に妊娠した患者1名における自然流産からなり、妊娠も流産もLSD治療と関連しないと考えられた。
【0157】
  本出願全体を通して、米国特許などの種々の刊行物は、著者及び年代によって参照され、特許は、番号によって参照される。刊行物の完全な引用は、以下に記載される。本発明が関連する従来技術をより詳細に説明するために、これらの刊行物及び特許の開示は、その全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0158】
  本発明は、説明的な手法で記述されており、使用されている専門用語は、限定ではなく、説明するための用語の性質のものであることが意図されることが理解されるであろう。
【0159】
  明らかに、本発明の多くの修正形態及び変形形態が上記の教示に照らして可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内において、本発明は、具体的に記載される以外の別の方法で実施され得ることが理解されるであろう。
【0160】
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