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特表2024-507502オレウロペインとマグネシウムとの組み合わせを用いる組成物及び方法
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  • 特表-オレウロペインとマグネシウムとの組み合わせを用いる組成物及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】オレウロペインとマグネシウムとの組み合わせを用いる組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7048 20060101AFI20240213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240213BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240213BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240213BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240213BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240213BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240213BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20240213BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240213BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20240213BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61P43/00 107
A61P1/16
A61P13/12
A61P9/00
A61P21/00
A61P3/00
A61P43/00 121
A61K33/06
A61K45/00
A61K31/351
A61K31/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549678
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022054563
(87)【国際公開番号】W WO2022180119
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】21159722.4
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】デ マルキ, ウンベルト
(72)【発明者】
【氏名】ファイギ, ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ステュエルサッツ, パスカル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA22
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA75
4C084ZB22
4C084ZC21
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086EA11
4C086HA04
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA94
4C086ZB22
4C086ZC21
4C086ZC75
4C206AA01
4C206CA17
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA75
4C206ZA81
4C206ZB22
4C206ZC75
(57)【要約】
オレウロペイン又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、オレウロペインとマグネシウムとの組み合わせを用いる組成物及び方法が提供される。組成物は、経口栄養組成物例えば栄養補助食品、経口栄養補助食品、食品製品、特別医療目的用食品(FSMP)であり得る。組成物を、1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、1つ以上の細胞におけるミトコンドリアエネルギー及びミトコンドリアカルシウム取り込みの増加、並びに抗酸化能の増大、酸化ストレスの低減及び/又はミトコンドリア機能の増強、個体におけるカルシウム欠乏/枯渇障害の治療又は予防のために、それを必要とする個体に投与することができる。本方法により、ミトコンドリア関連疾患又は変化したミトコンドリア機能に関連する状態を、それらの治療を必要としている個体において又はそれらのリスクがある個体において治療又は予防することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、(ii)1つ以上の細胞におけるミトコンドリアエネルギー及びミトコンドリアカルシウム取り込みの増加、並びに(iii)抗酸化能の増大、酸化ストレスの低減及び/又はミトコンドリア機能の増強、(iv)個体におけるカルシウム欠乏/枯渇障害の治療又は予防における使用のための、治療有効量でオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、組成物。
【請求項2】
前記1つ以上の細胞のうちの少なくとも一部分が、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記代謝疲労に関連する生理学的状態が、筋疲労若しくは筋力低下、エネルギーの欠如、身体エネルギーの欠如、活力の欠如又は活力低下を含む、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記有効量のオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせが、少なくとも1週間毎日経口投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記オレウロペインの代謝産物が、オレウロペインアグリコン、ヒドロキシチロソール、エレノール酸、ホモバニリルアルコール、イソホモバニリルアルコール、これらのグルクロン酸抱合体、これらのサルフェート体、これらの誘導体、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
抗酸化剤、抗炎症化合物、グリコサミノグリカン、プレバイオティクス、繊維、プロバイオティクス、脂肪酸、酵素、ミネラル、微量元素及び/又はビタミンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
食品組成物、ダイエタリー・サプリメント、栄養組成物、経口栄養補助食品、医療用食品、ニュートラシューティカルズ、飲料、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)、RTD濃縮物、摂取前に水又はミルクで再構成される粉末栄養製剤、食品添加物、特別医療目的用食品(FSMP)医薬品、ドリンク、ペットフード、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
固体粉末、粉末スティック、カプセル又は溶液の形態である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記有効量のオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせが、タンパク質、炭水化物、脂肪及びそれらの混合物からなる群から選択される成分を更に含む食品製品で投与される、請求項1~98のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
ミトコンドリア関連疾患又は変化したミトコンドリア機能に関連する状態を治療する、その発生率を低減する、及び/若しくはその重症度を低減することを必要とする、又はそのリスクがある個体における、前記治療、発生率の低減若しくは重症度の低減のための治療有効量のオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む組成物であって、前記方法が、それを必要とする又はそのリスクがある前記個体にその有効量を経口投与することを含む、組成物。
【請求項11】
前記ミトコンドリア関連疾患又は状態が、ストレス、生理的老化、肥満、代謝速度の低下、メタボリックシンドローム、真性糖尿病、糖尿病による合併症、高脂血症、神経変性疾患、認知障害、ストレス誘発性又はストレス関連認知機能障害、気分障害、不安障害、加齢性神経細胞死又は機能不全、筋骨格障害、フレイル、プレフレイル、慢性腎疾患、腎不全、感染症、難聴、黄斑変性、ミオパチー及びジストロフィー、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
健康な中高年者における代謝低下の開始を遅らせる、筋肉量及び/若しくは筋機能を維持する、酸化ストレスを減少させる、免疫機能を維持する、並びに/又は認知機能を維持するための治療有効量のオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、組成物。
【請求項13】
個体における精神パフォーマンス又は筋パフォーマンスのうち少なくとも1つを増強するための治療有効量のオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、組成物。
【請求項14】
個体における身体活動、特に激しい身体活動後の身体パフォーマンス及び/又は体力回復を増強するための、有効量のオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、組成物。
【請求項15】
個体における認知機能を改善又は維持するための治療有効量のオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、組成物。
【請求項16】
前記認知機能が、知覚、記憶、注意、音声理解、音声生成、読解、イメージの作成、学習、推論、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
前記有効量のオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせが、カルシウムを更に含む組成物で投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記個体が、中高年者、高齢者である、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記個体が、動物、特にペットである、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
i)ミトコンドリア関連疾患又は変化したミトコンドリア機能に関連する状態の治療、その発生率の低減、又はその重症度の低減、(ii)1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、(iii)1つ以上の細胞におけるミトコンドリアエネルギー及びミトコンドリアカルシウム取り込みの増加、並びに(iv)カルシウム欠乏/枯渇障害の治療又は予防、(v)代謝速度の増加、(vi)認知機能の改善又は維持、(vii)ミトコンドリア機能の向上又は維持のうちの少なくとも1つのための、有効量でオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、単位剤形。
【請求項21】
前記代謝疲労に関連する生理学的状態が、筋疲労若しくは筋力低下、エネルギーの欠如、身体エネルギーの欠如、精神エネルギーの欠如、活力の欠如又は活力低下を含む、請求項20に記載の単位剤形。
【請求項22】
前記オレウロペイン及び/又はその代謝産物と、マグネシウムとの組み合わせから本質的になる、請求項20又は21に記載の単位剤形。
【請求項23】
1つ以上の容器内に、オレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、キット。
【請求項24】
前記1つ以上の容器が、少なくとも1つの第1の容器を含み、前記第1の容器が前記オレウロペイン及び/又は代謝産物を、少なくとも1つの第2の容器内に収容された前記マグネシウムとは別に収容し、前記キットが、前記オレウロペインを前記マグネシウムと混合して単位剤形にするための指示書を更に含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記1つ以上の容器が、それぞれ、前記オレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせの単位剤形を含む、請求項23又は24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広義には、オレウロペイン又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを使用して、細胞レベルでエネルギーを管理する、組成物及び方法に関する。組成物及び方法により、いくつかの実施形態では中高年者又は高齢者において、ミトコンドリア機能を増強し、ミトコンドリアのカルシウムユニポーターの活性化によってバイオエナジェティクスを増加させ、ひいては細胞の活性化を促進することができる。
【背景技術】
【0002】
人口の高齢化は人口動態の面で特筆すべき事象である。寿命の延長により、高齢者人口の増加が総人口の増加を上回るにつれて、高齢者人口の他の人口に対する割合は、出生率の低下もあって大幅に増加している。例えば、1950年代には60歳以上の高齢者は12人に1人であったのが、2000年代の終わりには60歳以上の高齢者は10人に1人となった。2050年代の終わりまでには、世界的に5人に1人が60歳以上の高齢者になると予測されている。
【0003】
中高年では、加齢に伴い進行する身体機能の低下及び/又は認知機能の低下を含むある程度の認知障害になることが多く、脳形態及び脳血管機能の加齢による変化が一般に観察される。認知機能の低下は、一貫して、処理速度、注意、エピソード記憶、空間能力及び実行機能などを含む広範な認知領域の老化と併せて報告されている。脳の画像解析により、これらの通常の加齢に伴う認知機能の低下は、脳の灰白質及び白質の両方の容積の減少と関連しており、加齢に伴って最も重く損傷を受けるのは前頭線条体系であることが判明している。このような皮質容積の減少は、例えば、酸化的損傷をもたらすフリーラジカルによる長期にわたる損傷の蓄積、慢性的な軽度の炎症、ホモシステインの蓄積(蓄積が増加した場合は、認知障害及び認知症のリスク因子となる)、及びミトコンドリア機能の低下などの、通常の加齢に伴う多くの有害な細胞プロセスに起因する可能性がある。直接的な細胞の損傷に加え、脳は、微小血管構造の傷害からも間接的な損傷を受ける。老化、更には認知症の病理が、互いに関連し合うこれらの因子間の複雑な相互作用を内包することは明らかである。例えば、ミトコンドリアの機能不全は結果として酸化ストレスを増加させ、酸化ストレスは炎症及び血管損傷のトリガーとなり得る。
【0004】
ミトコンドリアは、哺乳動物細胞における有酸素エネルギー生成の主要な源であり、また、内膜を隔てて大きなCa2+勾配を維持し、当該分子のシグナル伝達電位を提供する。更に、ミトコンドリアのCa2+は、ミトコンドリアにおいてATP生成の調節に働き、細胞の代謝恒常性のオーケストレーションに寄与している可能性がある。(Glancy,B.et al.(2012).”Role of mitochondrial Ca2+ in the regulation of cellular energetics.”Biochemistry 51(14):2959-2973)。ミトコンドリアCa2+の恒常性の変化は、様々な病理学的状態に関連付けられており、いくつかのヒト疾患の病因において重要である(Arduino et al.Journal Physiol.2018 Jul;596(14):2717-2733)。
【0005】
近年、栄養摂取、教育、運動及び認知エクササイズは、加齢による身体及び認知機能の低下を予防し得る介入方法として実証されている。豊富な臨床的、疫学的及び個別的なエビデンスにより、個々の栄養因子が、認知症リスク及び加齢性の神経変性を低減することが裏付けられている。しかしながら、栄養学的介入についての公式な試験で得られた結果は錯綜している(Schmitt et al.,Nutrition Reviews 68:S2-S5(2010)。また、治療的介入のためにミトコンドリアのCa2+輸送機構を利用するための取り組みがなされてきたが、ミトコンドリアのCa2+恒常性を誘導及び選択的に調節する薬理化合物は現在無い。
【0006】
[発明の概要]
全般的な実施形態では、本開示は、1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、(ii)1つ以上の細胞におけるミトコンドリアエネルギー及びミトコンドリアカルシウム取り込みの増加、並びに(iii)抗酸化能の増大、酸化ストレスの低減及び/又はミトコンドリア機能の増強、(iv)個体におけるカルシウム欠乏/枯渇障害の治療又は予防における使用のための、治療有効量でオレウロペイン及び/又は代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、組成物を提供する。
【0007】
別の実施形態では、本開示は、健康な中高年者における代謝低下の開始を遅延させる、筋肉量及び/又は筋機能を維持する、酸化ストレスを減少させる、免疫機能を維持する、及び/又は認知機能を維持するための、治療有効量のオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む組成物を提供する。
【0008】
更なる実施形態では、本開示はまた、個体における身体活動、特に激しい身体活動後の身体パフォーマンス及び/又は体力回復を増強するための、有効量のオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、組成物を提供する。一実施形態では、個体は、スポーツマン又はアスリートである。
【0009】
更なる実施形態では、本発明はまた、動物、好ましくはネコ又はイヌにも関係する。動物、特にネコ及びイヌのようなペット動物として飼育される動物の飼育者は、例えばレース又はその他の競争目的のため筋力及びパフォーマンスを増加させるために、自分のペット動物の筋肉量を増加させることを望む場合がある。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、i)ミトコンドリア関連疾患又は変化したミトコンドリア機能に関連する状態の治療、その発生率の低減、又はその重症度の低減、(ii)1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、(iii)1つ以上の細胞におけるミトコンドリアエネルギー及びミトコンドリアカルシウム取り込みの増加、並びに(iv)カルシウム欠乏/枯渇障害の治療又は予防、(v)代謝速度の増加、(vi)認知機能の改善又は維持、(vii)ミトコンドリア機能の向上又は維持のうちの少なくとも1つのための、有効量でオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、単位剤形を提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、1つ以上の容器中に、オレウロペイン及び/又はその代謝産物と、マグネシウムとの組み合わせを含むキットを提供する。
【0012】
利点及び追加の特徴は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】C2C12に由来する筋管において、オレウロペインアグリコン(Oea)がMg2+と相乗作用して、ミトコンドリアCa2+の上昇によりミトコンドリアを活性化することを示すグラフである。挿入図は、5mMカフェインによって誘発される、ミトコンドリアによるカルシウム組み込みに対する、Mg2+(1mM、灰色)、Oea(3μM、黒色)、及び1mM Mg2++3μM Oeaの組み合わせ(Mg2+/Oea)の効果を示す。挿入図のデータは、n=32の実験の平均+/-SEMである。挿入図において、*とは、P<0.05(一元配置分散分析検定)で、Mg2++Oeaの組み合わせと任意の他の示された条件との統計学的に有意な差を示す。挿入図のデータを使用して、本図において、組み合わせ(Oea+Mg2+)について予想される理論上の効果(Oea効果とMg2+効果との合計)及び実際に測定された効果を評価した。結果を、各条件についてn=32の実験の平均+/-SEMとして表す。*は、ミトコンドリアカルシウムにおける測定値と理論値との差異に関しP<0.05(スチューデントt検定)での統計的有意差を示す。
図2】C2C12に由来する筋管において、オレウロペインアグリコン(Oea)のいくつかの組み合わせが、Mg2+と相乗作用してミトコンドリアCa2+の上昇によりミトコンドリアを活性化することを示すグラフである。Oea及びMg2+の量を、各パネル(A、B、C)の上部に示す。(A)1mM Mg2+10μM Oea;(B)0.1mM Mg2+1μM Oea;(C)0.1mM Mg2+3μM Oea。予想される理論上の効果(Oea効果とMg2+効果との合計)及び組み合わせ(Oea+Mg2+)について実際に測定された効果を、図1に記載のように測定し、それらをここで比較して相乗作用を推定する。結果を、各条件についてn=32の実験の平均+/-SEMとして表す。*は、ミトコンドリアカルシウムにおける測定値と理論値との差異に関しP<0.05(スチューデントt検定)での統計的有意差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
以下、いくつかの定義を示す。しかしながら定義が以下の「実施形態」の項にある場合もあり、上記の見出し「定義」は、「実施形態」の項におけるそのような開示が定義ではないことを意味するものではない。
【0015】
本明細書に記載する全ての百分率は、別途記載のない限り、組成物の総重量によるものである。本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値のある範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは参照数字の-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数又は分数を含むと理解されるべきである。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲をサポートするものと解釈されたい。
【0016】
本開示及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」には、別段の指示がない限り、複数の参照物も含まれる。したがって、例えば、「(a)代謝産物」又は「(the)代謝産物」への言及は、1つの代謝産物を含むが、2つ以上の代謝産物も含む。
【0017】
用語「含む/備える(comprise)」、「含む/備える(comprises)」、及び「含んでいる/備えている(comprising)」は、排他的なものではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈されるべきである。しかしながら、本明細書に開示されている組成物は、本明細書において具体的に開示されていない要素を含まない場合がある。したがって、「含む/備える(comprising)」という用語を用いた実施形態の開示は、特定されている構成要素「を本質的に含む/から本質的に構成される(consisting essentially of)」実施形態、及び特定されている構成要素「を含む/から構成される(consisting of)」実施形態の開示を含む。
【0018】
本明細書で使用するとき、「オレウロペイン又はその代謝産物のうちの少なくとも1つを本質的に含む組成物」及び「カルシウムと、オレウロペイン又はその代謝産物のうちの少なくとも1つとを本質的に含む組成物」は、オレウロペイン又はその代謝産物のうちの少なくとも1つ及び任意選択のカルシウム以外に、ミトコンドリアカルシウム輸送に影響するいかなる追加の化合物も含むものではない。特定の非限定的な実施形態では、組成物は、添加物、オレウロペイン又はその代謝産物のうちの少なくとも1つ、及び任意選択的にカルシウムからなる。
【0019】
「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」又は「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。同様に、「X又はYのうちの少なくとも1つ」は、「X」又は「Y」又は「X及びYの両方」と解釈されるべきである。例えば、「オレウロペイン又はその代謝産物のうちの少なくとも1つ」は、「オレウロペイン」又は「オレウロペインの代謝産物」又は「オレウロペイン及びその代謝産物の両方」を意味する。
【0020】
本明細書において使用する場合、用語「例」及び「例えば~など(such as)」は、その後に用語の列挙が続くときは特に、単に例示的かつ説明的なものにすぎず、排他的又は包括的なものとみなされるべきではない。本明細書で使用するとき、「関連する(associated with)」及び「関係する(linked with)」は、同時に発生することを意味し、好ましくは、同じ基礎状態によって引き起こされることを意味し、最も好ましくは、特定された状態のうちの1つが、他の特定された状態によって引き起こされることを意味する。
【0021】
用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」は、ヒトなどの個体による摂取が意図され、かかる個体に対して少なくとも1種の栄養素を提供する、製品又は組成物を意味する。本明細書に記載されている多くの実施形態を含む本開示の組成物は、本明細書に開示されている要素、並びに本明細書に記載されている又は記載されていなくとも食生活において有用である任意の追加の又は任意選択の原材料、構成成分又は要素を含んでよい、それらから構成されてよい、又は本質的に含んでもよい。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「治療する」及び「治療」とは、ある状態を有する対象に対して、その状態に関連する少なくとも1つの症状を減弱、低減若しくは改善することを目的として、並びに/又はその状態の進行を遅延、低下若しくは阻止することを目的として、本明細書に開示される組成物を投与することを意味する。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」には、抑止的又は予防的治療(標的とする病的状態又は障害を予防する及び/又は発症若しくは進行を遅らせる治療)と、治癒的、治療的、又は疾患修飾的治療との両方が含まれ、例えば、診断された病的状態又は障害の治癒、遅延、症状の軽減、及び/又は進行の停止のための治療的手段、並びに、罹患する危険性がある患者、又は罹患した疑いのある患者、及び体調不良の患者、又は疾患若しくは医学的状態に罹患していると診断された患者の治療が含まれる。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」は、対象が全快するまで治療することを必ずしも意味するものではない。「処置/治療」及び「処置/治療する」という用語はまた、疾患に罹患してはいないが不健康な状態を招きやすい可能性のある個体の健康を維持及び/又は促進することも指す。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」はまた、1つ以上の主たる予防手段又は治療手段の相乗作用、又はそうでない場合強化を含むことも目的としている。非限定的な例として、処置/治療は、患者、介護者、医師、看護師、又は別の医療専門家によって行うことができる。
【0023】
ヒトと動物の両方の治療が本開示の範囲内にある。好ましくは、オレウロペイン又はその代謝産物のうちの少なくとも1つを、治療有効量又は予防有効量を提供するサービング又は単位剤形で投与する。
【0024】
用語「予防する」及び「予防」とは、その状態の症状を何ら示していない対象に対して、その状態に関連する少なくとも1つの症状の発生を抑える又は予防するために本明細書に開示される組成物を投与することを意味する。更に、「予防」には、状態又は障害の危険性、発生率、及び/又は重症度の低減が含まれる。
【0025】
本明細書で使用するとき、「有効量」とは、個体における、欠乏を治療若しくは予防する、疾患若しくは医学的状態を治療若しくは予防する、又は、更に一般的には、個体に対して、症状を軽減する、疾患の進行を管理する、若しくは栄養学的、生理学的若しくは医学的利益を提供する量である。
【0026】
相対的用語「改善された」、「増加/向上/増大した/高めた」、「増強/強化された」などは、有効量の本明細書に開示される組成物、すなわち、オレウロペイン又はその代謝産物のうちの少なくとも1つを含む組成物の、オレウロペイン及びオレウロペイン代謝産物を含まないこと以外は同一の組成物の同じ期間にわたる投与と比較した効果を指す。
【0027】
本明細書で使用するとき、「投与する」は、個体が組成物を摂取することができるように、別の個体が、言及された組成物を個体に提供することを含み、また単に、言及された組成物を摂取する個体自体の動作も含む。
【0028】
「動物」としては、限定されるものではないが、齧歯類、水棲哺乳動物、イヌ、ネコ、及び他のペットなどの家庭内動物、ヒツジ、ブタ、ウシ及びウマなどの家畜、並びにヒトを含むがこれらに限定されない、哺乳動物が挙げられる。「動物」、「哺乳動物」、又はこれらの複数形が使用される場合、これらの用語はまた、その文脈の状況により、例えば、ミトコンドリアカルシウム輸送の改善からの動物の受益により、示される又は意図する効果が示されることが可能な任意の動物にも適用される。用語「個体」又は「対象」は、本明細書において多くの場合にヒトを指すのに用いられるが、本開示はそのように限定されない。したがって、用語「個体」又は「対象」は、本明細書に開示される方法及び組成物から利益を得ることができる任意の動物、哺乳動物又はヒトを指す。
【0029】
用語「ペット」とは、本開示により提供される組成物から恩恵を得られる、又はかかる組成物を堪能することのできる、任意の動物を意味する。例えば、ペットは、鳥類、ウシ科動物、イヌ科動物、ウマ科動物、ネコ科動物、ヤギ、オオカミ科動物、ネズミ、ヒツジ又はブタといった動物であってもよいが、ペットは任意の好適な動物であり得る。用語「コンパニオンアニマル」とは、イヌ又はネコを意味する。
【0030】
「対象」又は「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトである。用語「高齢」は、ヒトに関連して、少なくとも60歳、好ましくは63歳超、より好ましくは65歳超、最も好ましくは70歳超の年齢を意味する。ヒトの文脈での「中高年者(older adult)」という用語は、45歳以上、好ましくは50歳より上、より好ましくは55歳より上の出生後年齢を意味し、高齢の個体を含む。ヒトの文脈での「中高年者(older adult)」という用語は、45歳以上、好ましくは50歳より上、より好ましくは55歳より上の出生後年齢を意味し、高齢の個体を含む。
【0031】
本明細書で使用するとき、「フレイル」は、加齢に伴い複数の生理学的システムにわたって予備能及び機能が低下することに起因して、脆弱性が高まった結果、日常的又は急性のストレッサーに対処する能力が損なわれる、臨床的に認識可能な状態として定義される。これらの基準のうちの1つ又は2つが存在するプレフレイル段階は、フレイルに進行するリスクが高いものとして特定される。
【0032】
用語「サービング」又は「単位剤形」は、本明細書で使用するとき、互換可能であり、ヒト及び動物対象のための一体型用量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、本明細書に開示されるように、オレウロペイン又はその代謝産物のうちの少なくとも1つを含む、所定量の組成物を、好ましくは医薬的に許容される希釈剤、担体、又はビヒクルを伴い、所望の効果をもたらすのに十分な量で含有する。単位剤形の仕様は、使用される具体的な化合物、達成しようとする効果、及びホスト体内の各化合物に関連する薬力学によって決まる。一実施形態では、単位剤形は、ボトルなどの容器内に収容された所定量の液体であり得る。
【0033】
「経口栄養補助食品」すなわち「ONS」は、少なくとも1つの主要栄養素及び/又は少なくとも1つの微量栄養素を含む組成物であり、例えば、無菌液体、半固体又は粉末の形態であり、食品からの栄養摂取などの他の栄養摂取を補うことを意図している。市販のONS製品の非限定例としては、MERITENE(登録商標)、BOOST(登録商標)、NUTREN(登録商標)、及びSUSTAGEN(登録商標)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ONSは、液体を更に添加せずとも摂取され得る、例えば、液量が組成物の1サービング分である、液体形態の飲料とすることができる。
【0034】
本明細書で使用するとき、「準完全栄養(incomplete nutrition)」とは、好ましくは、栄養製品が含有している主要栄養素(タンパク質、脂肪及び炭水化物)又は微量栄養素が、この栄養製品を投与される動物のための唯一の栄養源とするのに十分なレベルのものではない、栄養製品を指す。用語「完全栄養」は、対象の唯一の栄養源となることが可能な製品を指す。個体は、その栄養必要量を、完全栄養素組成物から100%摂取することができる。
【0035】
「キット」は、1つ以上の容器中で又は1つ以上の容器を伴って、キットの構成要素が、物理的に関連付けられ、そして、製造、配送、販売、又は使用のための1つのユニットとみなされることを意味している。入れ物としては、袋、箱、カートン、ボトル、任意の種類若しくは設計若しくは材料のパッケージ、上包装、シュリンク包装、添付された構成要素(例えば、ステープルで留められたもの、又は接着されたものなど)、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
「代謝疲労」とは、1つ以上の細胞内の基質不足及び/又は筋線維内の代謝産物の蓄積による、1つ以上の細胞(例えば、肝臓、腎臓、脳、骨格筋のうちの1つ以上)におけるミトコンドリア機能の低下を意味し、これは、カルシウムの放出、又はカルシウムのミトコンドリア機能を刺激する能力のいずれかを阻害する。代謝疲労に関連する生理学的状態には、筋疲労又は筋力低下、エネルギーの欠如、特に身体エネルギー及び/又は精神エネルギーの欠如、活力の欠如又は活力低下が含まれ得る。
【0037】
実施形態
本開示は、(i)1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、(ii)1つ以上の細胞におけるミトコンドリアエネルギー及びミトコンドリアカルシウム取り込みの増加、並びに(iii)抗酸化能の増大、酸化ストレスの低減及び/又はミトコンドリア機能の増強、(iv)個体におけるカルシウム欠乏/枯渇障害の治療又は予防における使用のための、治療有効量でオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、組成物を提供する。
【0038】
オレウロペイン
オレウロペインは、モクセイ(Oleaceae)科に属する植物、特にオリーブ(Olea europaea)の、果実、根、幹、及びより具体的には葉に存在するポリフェノールである。
【0039】
一実施形態において、オレウロペインの少なくとも一部は、抽出によって、例えば、モクセイ科に属する植物、好ましくは、オリーブ(オリーブツリー)、イボタノキ(Ligustrum)属の植物、ハシドイ(Syringa)属の植物、トネリコ(Fraximus)属の植物、ソケイ(Jasminum)属の植物、モクセイ(Osmanthus)属の植物などのモクセイ科に属する植物の茎、葉、果実、又は核のうちの1つ以上などの植物からの抽出によって得られる。追加的に又は代替的に、オレウロペイン及び/又はその代謝産物のうちの少なくとも一部分は、化学合成によって得ることができる。
【0040】
オレウロペインの好適な代謝産物の非限定的な例としては、オレウロペインアグリコン、ヒドロキシチロソール、エレノール酸、ホモバニリルアルコール、イソホモバニリルアルコール、これらのグルクロン酸抱合体、これらのサルフェート体、これらの誘導体、及びこれらの混合物が挙げられる。別の実施形態では、オレウロペインは、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる基本的には、それぞれ「Bioconversion of oleuropein」及び「Method of selecting a probiotic」を発明の名称とする国際公開第2019/092068号及び同第2019/092066号、並びに「Homovanilylalcohol(HVA),HVA isomer,methods of making compositions comprising such compounds,and methods of using such compounds」を発明の名称とする同第2019/092069号によって開示された組成物及び方法のいずれかによって提供することができる。
【0041】
マグネシウム
マグネシウムは、そのままで、又は生理学的に許容される塩の形態で、及び/又はマグネシウム、より具体的にはMg2+を含む任意の原料を介して本発明の組成物に組み込まれ得る。例えば、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、クエン酸のマグネシウム塩、オルトリン酸のマグネシウム塩である。一実施形態では、マグネシウムは、食品組成物中の酸化マグネシウムによって提供される。
【0042】
当業者には明らかであるように、異なる原材料は、使用される当該原材料の性質及び量に応じて、異なる量のマグネシウムを本発明による組成物に提供し得る。但し、特許請求するマグネシウム量を提供するために、供給元によって提供される具体的な原材料規格に基づき必要な原材料量を計算することは、当業者にとって日常的な作業であろう。
【0043】
本組成物はまた、1つ以上の追加の生物活性化合物、例えば、抗酸化剤、抗炎症化合物、グリコサミノグリカン、プレバイオティクス、繊維、プロバイオティクス、脂肪酸、酵素、ミネラル、微量元素、及びビタミンからなる群から選択される、1つ以上の化合物を含んでいてもよい。
【0044】
「生物活性化合物」とは、基礎栄養必要量を満足することを超えて、個体の健康に貢献するか、又はヒトの身体に効果をもたらす、任意の化合物である。1つ又はそれより多くの追加の生物活性化合物は、天然の供給源に由来するものであってよい。つまり、化合物は植物、動物、魚、菌類、藻類、又は微生物発酵物の抽出物から得られてもよい。ミネラルは天然の供給源に由来するものと考えられる。好ましい実施形態では、酵素は、例えば、トリプシンなどのプロテアーゼ、又はブロメラインなどの酵素抽出物であってもよい。
【0045】
有効量のオレウロペイン及び/又はその代謝産物、並びにそのマグネシウムのそれぞれの有効量は、具体的な組成、服用者の年齢及び状態、並びに治療される具体的な障害又は疾患によって様々である。しかしながら、全般的な実施形態では、0.001mg~1.0gのオレウロペイン、好ましくは0.01mg~0.9g/日のオレウロペイン、より好ましくは0.1mg~750mg/日のオレウロペイン、より好ましくは0.5mg~500mg/日のオレウロペイン、最も好ましくは1.0mg~200mg/日のオレウロペインを個体に投与することができる。更に、本発明者らは、組み合わせにおけるオレウロペイン又は誘導体の活性用量を、同等の有効性のために低減することができることを見出した。
【0046】
一実施形態では、マグネシウムは、約30~420mgのマグネシウム、例えば約40~350mgのマグネシウム、例えば50~200mgのマグネシウム/日、例えば50~100mgのマグネシウム/日の1日投与量の量で投与することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、オレウロペイン又は代謝産物とマグネシウムとの組み合わせは、カルシウムを更に含む組成物で投与される。カルシウムの少なくとも一部分は、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、又はこれらの混合物など、1つ以上のカルシウム塩であってもよい。全般的な実施形態では、1日当たり0.1g~1.0gのカルシウム、好ましくは1日当たり125mg~950gのカルシウム、より好ましくは1日当たり150mg~900mgのカルシウム、より好ましくは1日当たり175mg~850mgのカルシウム、最も好ましくは1日当たり200mg~800mgのカルシウムを、個体に投与する。
【0048】
代替的な実施形態では、オレウロペインとマグネシウムとの組み合わせを、別個の組成物でカルシウムと共に連続的に投与することができる。用語「連続的に」とは、第1の時間に、オレウロペイン又はその代謝産物のうちの少なくとも1つを、カルシウムはなしで投与し、第2の時間(第1の時間の前又は後)に、カルシウムを、オレウロペインとマグネシウムとの組み合わせはなしで投与するよう、カルシウムと、オレウロペイン又はその代謝産物のうちの少なくとも1つとを逐次的に投与することを意味する。連続投与間の時間は、例えば、同じ日に1秒若しくは数秒、数分、若しくは数時間;同じ月に1日若しくは数日、若しくは数週間;又は同じ年に1か月若しくは数か月であってもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、オレウロペイン又はその代謝産物は、組成物中の唯一のポリフェノール、及び/又は個体に投与される唯一のポリフェノールである。別の実施形態では、オレウロペイン又はその代謝産物及びマグネシウムは、唯一の活性原材料である。
【0050】
組成物は、有効量のオレウロペイン又はその代謝産物及びマグネシウムのうち少なくとも1つを含んでもよい。例えば、組成物の1回分の供給又は投与には有効量を含むことができ、パッケージは1回分以上の供給又は投与量を含むことができる。任意選択的に、組成物は、カルシウムを更に含んでもよい。
【0051】
組成物は、酸味料、増粘剤、pH調整用緩衝剤又はpH調整用試剤、キレート剤、着色剤、乳化剤、賦形剤、香料、ミネラル、浸透剤、医薬的に許容される担体、防腐剤、安定化剤、糖、甘味料、調質剤、ビタミン、ミネラル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される食品添加物を含むことができる。
【0052】
オレウロペイン又は代謝産物とマグネシウム又は誘導体との組み合わせを、ヒト及び/又は動物、特にペットの摂取に好適な任意の組成物で投与することができる。好ましい実施形態では、かかる組み合わせは個体に経口投与又は経腸投与(例えば経管栄養法)される。例えば、かかる組み合わせは、飲料、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)、食品製品、カプセル、錠剤、散剤又は懸濁物として個体に投与することができる。
【0053】
好適な組成物の非限定的な例としては、食品組成物、ダイエタリー・サプリメント、ダイエタリー・サプリメント(例えば、液体ONS)、完全栄養組成物、飲料、RTD、医薬品、経口栄養補助食品、医療用食品、ニュートラシューティカルズ、特別医療目的用食品(FSMP)、摂取前に水又はミルクで再構成される粉末栄養製剤、食品添加物、医薬、ドリンク、ペットフード、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
本発明による食品製品としては、発酵乳製品、例えばヨーグルト、バターミルクなどの乳製品;アイスクリーム;コンデンスミルク;ミルク;乳製品クリーム;フレーバードミルクドリンク;ホエイベースのドリンク;トッピング;コーヒークリーマ-;チョコレート;チーズベースの製品;スープ;ソース;ピューレ;ドレッシング;プリン;カスタード;乳児用食品;栄養処方物、例えば、幼児、小児、ティーンエイジャー、成人、高齢者、又は重病の者のための完全栄養処方物;例えばシリアル及びシリアルバー;を挙げることができる。
【0055】
ドリンクとしては、例えば、ミルク又はヨーグルトベースのドリンク、発酵乳、タンパク質ドリンク、コーヒー、茶、エネルギードリンク、大豆ドリンク、果物ドリンク及び/又は野菜ドリンク、果物ジュース及び/又は野菜ジュースを挙げることができる。
【0056】
オレウロペイン又は代謝産物とマグネシウム又は誘導体との組み合わせを、タンパク質、炭水化物、脂肪、及びこれらの混合物からなる群から選択される成分を更に含む食品製品で投与することができる。
【0057】
一実施形態では、タンパク質源は、好ましくは精製タンパク質(すなわち、そのタンパク質が生成された天然の食品原材料から単離されたもの)である。組成物のタンパク質含量は、好ましくは組成物の20~99重量%、例えば、組成物の20~90重量%、例えば、組成物の30~80重量%、例えば、組成物の40~80重量%、例えば50~80重量%、例えば、組成物の40~70重量%である。
【0058】
組成物に使用するのに好適なタンパク質又はその供給源の非限定的な例としては、加水分解された、部分的に加水分解された、又は加水分解されていない、タンパク質又はタンパク質源が挙げられる。これらは、乳(例えば、カゼイン、ホエイ)、動物(例えば、肉、魚)、穀物(例えば、米、トウモロコシ)、又は野菜(例えば、大豆、エンドウ豆)などの任意の既知の又は他の好適な供給源に由来してもよい。供給源又は複数種のタンパク質の組み合わせを使用してもよい。タンパク質又はその供給源の非限定的な例としては、未加工のエンドウ豆タンパク質、未加工のエンドウ豆タンパク質単離物、未加工のエンドウ豆タンパク質濃縮物、乳タンパク質単離物、乳タンパク質濃縮物、カゼインタンパク質単離物、カゼインタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質単離物、カゼインナトリウム又はカゼインカルシウム、全乳、部分的又は完全に脱脂された乳、ヨーグルト、大豆タンパク質単離物、及び大豆タンパク質濃縮物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。供給源又は複数種のタンパク質の組み合わせを使用してもよい。好ましいタンパク質としては、エンドウ豆タンパク質、ホエイタンパク質、大豆タンパク質、及びカゼインが挙げられる。カゼインタンパク質は、例えば、カゼインナトリウム及びカゼインカルシウムを含み得る。
【0059】
タンパク質源は、各アミノ酸、アミノ酸を含むポリペプチド、又はこれらの混合物によって提供され得る。筋成長、筋肉維持、及び/又は筋肉増強処置の多くでは、有益な特定のアミノ酸は、例えば、L-アルギニン、L-グルタミン、リジン、及び分枝鎖アミノ酸(すなわち、ロイシン、イソロイシン、及びバリン;特にロイシン及びイソロイシン)である。これらの特定のアミノ酸は、タンパク質源として提供されてもよく、又はタンパク質の主要な供給源に追加されてもよい。したがって、組成物中のタンパク質源は、1種以上の分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、及びバリン)、L-アルギニン及びL-グルタミンの一方又は両方、並びにリジンを含んでもよい。好ましい実施形態では、組成物は、1種以上各のアミノ酸、例えば、ロイシン、イソロイシン、及びL-アルギニンのうちの1種以上(又は全て)と一緒に、ホエイタンパク質及び/又はカゼインタンパク質を含む。
【0060】
一実施形態では、組成物は、中鎖トリグリセリド、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、及びラウリン酸のうちの1つ以上を更に含む。一実施形態では、組成物は、リン脂質、例えばホスファチジルコリンを更に含む。
【0061】
組成物は、炭水化物源及び/又は脂肪源も含有し得る。好適な脂肪の非限定的な例としては、キャノーラ油、コーン油、及び高オレイン酸ヒマワリ油が挙げられる。好適な炭水化物の非限定的な例としては、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固形物、マルトデキストリン、及びこれらの混合物が挙げられる。更に又は代替的に、食物繊維を添加してもよい。食物繊維は、酵素によって消化されずに小腸を通過し、天然の膨張性下剤及び緩下剤として機能する。食物繊維は、可溶性又は不溶性のものであってよく、概して2種類のブレンドが好ましい。好適な食物繊維の非限定的な例としては、大豆、エンドウ豆、オーツ麦、ペクチン、グアーガム、部分加水分解されたグアーガム、アラビアガム、フラクトオリゴ糖、酸性オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、シアリルラクトース、及び動物乳に由来するオリゴ糖が挙げられる。好ましい繊維ブレンドは、イヌリンと比較的短鎖のフルクトオリゴ糖との混合物である。一実施形態において、繊維含量は組成物の2~40g/Lであり、例えば4~10g/Lである。
【0062】
何らかのカルシウムに加え、1種以上のその他のミネラルを組成物に使用することができる。好適なミネラルの非限定的な例としては、ホウ素、クロム、銅、ヨウ素、鉄、マンガン、モリブデン、ニッケル、リン、カリウム、セレン、ケイ素、スズ、バナジウム、亜鉛、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
1種以上のその他のビタミンを組成物に使用することができる。好適なビタミンの非限定的な例としては、ビタミンA、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン又はナイアシンアミド)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサール、又はピリドキサミン、又は塩酸ピリドキシン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、及びビタミンB12(様々なコバラミン;一般的には、ビタミンサプリメント中のシアノコバラミン)、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸及びビオチン)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。「ビタミン」は、植物性食品及び動物性食品から天然に得られる又は合成される、プロビタミン、これらの誘導体、及びこれらの類似体などの化合物を含む。
【0064】
モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、レシチン、並びに/又はモノ及びジグリセリドなどといった、1種以上の、食品用の乳化剤を組成物に組み込むことができる。好適な塩類及び安定化剤を含めることができる。
【0065】
本明細書に開示される組成物には、治療目的での投与のための様々な製剤のいずれかを使用することができる。より詳細には、医薬組成物は、適切な薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含むことができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェア、及びエアゾール剤などの固体、半固体、液体又は気体形態の製剤として処方され得る。したがって、組成物の投与は、経口、バッカル、直腸内、非経口、腹腔内、皮内、経皮、及び気管内での投与を含む様々な方法で達成することができる。活性成分は、投与後に全身性のものであってもよく、又は局所投与の使用、壁内投与の使用、若しくは埋め込み部位において有効用量を保持するように作用する埋入物(インプラント)の使用によって局在化させてもよい。
【0066】
医薬剤形では、化合物は、薬学的に許容可能な塩として投与されてもよい。これらはまた、別の薬学的に活性な化合物と適切に関連させて使用してもよい。以下の方法及び添加物は、単なる例示であり、決して限定するものではない。
【0067】
経口製剤では、化合物は、単独で使用することができ、又は、錠剤、散剤、顆粒剤若しくはカプセル剤を製造するための適切な添加剤との組み合わせ、例えば、乳糖、マンニトール、トウモロコシデンプン、若しくはバレイショデンプンなどの従来の添加剤との組み合わせ;結晶セルロース、セルロース機能性誘導体、アラビアゴム、トウモロコシデンプン又はゼラチン等の結合剤との組み合わせ;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤との組み合わせ;タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤との組み合わせ;並びに所望であれば、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤及び香味剤との組み合わせで、使用できる。
【0068】
組成物は、1週間に少なくとも1日、好ましくは1週間に少なくとも2日、より好ましくは1週間に少なくとも3日若しくは4日(例えば、1日おき)、最も好ましくは1週間に少なくとも5日、1週間に6日、又は1週間に7日、投与してよい。投与期間は、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1カ月間、より好ましくは少なくとも2カ月間、最も好ましくは少なくとも3カ月間、例えば、少なくとも4カ月間であり得る。一実施形態では、投与は少なくとも毎日であり、例えば、対象は1日に1回以上投与を受け得る。いくつかの実施形態では、投与は、個体の残りの寿命にわたって継続される。他の実施形態では、投与は、医学的状態について検出可能な症状がなくなるまで行われる。具体的な実施形態では、投与は、少なくとも1つの症状について検出可能な改善が起こるまで行われ、更なる場合においては、寛解を維持するために継続される。
【0069】
治療方法
本明細書に開示される組成物は、(i)1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、(ii)1つ以上の細胞におけるミトコンドリアエネルギー及びミトコンドリアカルシウム取り込みの増加、並びに(iii)抗酸化能の増大、酸化ストレスの低減及び/又はミトコンドリア機能の増強、(iv)個体におけるカルシウム欠乏/枯渇障害の治療又は予防に、有効であり得る。
【0070】
一実施形態では、1つ以上の細胞のうちの少なくとも一部分は、肝臓、腎臓、脳、及び骨格筋からなる群から選択される少なくとも1つの身体部分の一部である。
【0071】
別の実施形態では、代謝疲労には、エネルギー、特に身体的エネルギーの欠如、活力の欠如又は活力低下が含まれる。
いくつかの実施形態において、本方法は、投与前に、状態を有するものとして又は状態のリスクがあるものとして個体を識別することを含む。
【0072】
別の実施形態では、本開示は、治療又は予防を必要とする個体又はリスクがある個体において、ミトコンドリア関連疾患又は変化したミトコンドリア機能に関連する状態を治療又は予防する(例えば、発症率及び/又は重症度を低減する)ための、オレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを提供する。本方法は、有効量のオレウロペイン又はその代謝産物のうちの少なくとも1つを、処置を必要としている個体に、又は前記リスクのある個体に経口投与することを含む。
【0073】
理論に束縛されるものではないが、様々な種類のストレスがミトコンドリアのストレス損傷をもたらすことで、ミトコンドリアが細胞機能全般に不可欠な数多くの役割を果たす能力が低下すると考えられる。本明細書に開示される方法は、ミトコンドリアへのストレス損傷を伴う状態を治療するのに有用であり得る。この損傷は、ミトコンドリア疾患を含むがこれらに限定されない多くの経路のいずれかで顕在化され得る。
【0074】
ミトコンドリア疾患は、ミトコンドリアDNA又は核DNAにおける遺伝性変異又は自然突然変異のいずれかの結果によるものであり、ミトコンドリア内に通常存在するタンパク質又はRNA分子の機能が変化することで生じる。しかしながら、ミトコンドリアの機能の問題は、まだ完全には解明されていない発達及び発育中に生じる因子により、特定の組織にのみ影響を及ぼし得る。ミトコンドリアタンパク質の組織特異的アイソフォームを考慮したとしても、臨床で見られるミトコンドリア疾患症候群に罹患する臓器系のパターンが多様であること(variable patterns)を説明することは難しい。
【0075】
ミトコンドリア疾患は、赤血球を除く身体の全ての細胞に存在する特殊な区画であるミトコンドリアの損傷に起因する。ミトコンドリアは、身体が生命の維持及び発育の支援に必要とするエネルギーの90%超の生成に関与する。ミトコンドリアが機能しなくなると、細胞において生成されるエネルギーが減少する。細胞は損傷を受け、更には細胞死に至る。このプロセスが全身で繰り返されると、システム全体が破綻し始め、この破綻によりその人の生命が重度に脅かされることになる。ミトコンドリア疾患は主に子供が罹患するが、成人の発症も認められるようになってきている。
【0076】
ミトコンドリアの疾患は、脳、心臓、肝臓、骨格筋、腎臓、並びに内分泌系及び呼吸器系の細胞に対し最も損傷を引き起こすようである。
【0077】
ミトコンドリア異常における多くの症状は、非特異的なものである。症状はまた、周期的な悪化を伴う一時的な経過を示す場合もある。ミトコンドリア医学のレビュー論文では、ミトコンドリア病の様々な顕在化の中でも、一過性の片頭痛状態、並びに筋肉痛、胃腸症状、耳鳴り、うつ病、慢性疲労、及び糖尿病が言及されている。ミトコンドリア異常を有する患者では、臨床症状は、典型的には、病気、空腹、過度の運動、及び極端な環境温度などの生理学的ストレッサーに関連してエネルギー需要が高いときに生じる。更に、恐らく、患者が十分なATP産生を行うことができないほど多量の脳のエネルギー要求量に起因して、心理的ストレッサーが症状を引き起こすことも多い。
【0078】
どの細胞が影響を受けるかに応じて、症状は、運動制御の喪失、筋力低下及び筋肉の痛み、胃腸障害及び嚥下困難、不十分な成長、心疾患、肝疾患、糖尿病、呼吸器合併症、発作、視覚的/聴覚的問題、乳酸アシドーシス、発達遅延、並びに感染症易罹患性を含み得る。
【0079】
ミトコンドリア疾患としては、限定するものではないが、アルパーズ症候群、バース症候群、β酸化異常、カルニチン欠乏症、カルニチン-アシル-カルニチン欠損症、慢性進行性外眼筋麻痺症候群、コエンザイムQ10欠損症、複合体I欠損症、複合体II欠損症、複合体III欠損症、複合体IV欠損症、複合体V欠損症、CPT I欠損症、CPT II欠損症、クレアチン欠乏症候群、チトクロムc酸化酵素欠損症、グルタル酸血症2型、カーンズ・セイヤー症候群、乳酸アシドーシス、LCHAD(長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症)、レーベル遺伝性視神経症、リー病(Leigh disease)、致死性乳児心筋症(lethal infantile cardiomyopathy)、ルフト病、MAD(中鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症)、ミトコンドリア細胞症、ミトコンドリアDNA枯渇、ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、及び脳卒中様症状、ミトコンドリア脳症、ミトコンドリアミオパチー、ミトコンドリア劣性運動失調症候群(mitochondrial recessive ataxia syndrome)、筋ジストロフィー、ミオクローヌスてんかん及び赤色ぼろ線維疾患(ragged-red fiber disease)、筋神経性胃腸管型脳症(myoneurogenic gastrointestinal encephalopathy)、ニューロパチー、運動失調、網膜色素変性症、及び下垂症、ピアソン症候群、POLG変異、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症、ピルビン酸脱水素酵素欠損症、SCHAD(短鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症)、並びに極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症が挙げられる。
【0080】
したがって、本開示の一態様は、ストレス(例えば、幼少期ストレス及び/又はその影響)、肥満、代謝速度の低下、メタボリックシンドローム、真性糖尿病、高脂血症、神経変性疾患、認知障害、ストレス誘発性又はストレス関連認知機能障害、気分障害(例えば、ストレス誘発性又はストレス関連気分障害)、不安障害(例えば、ストレス誘発性又はストレス関連不安障害)、及び加齢性神経細胞死又は機能不全(例えば、特定の神経変性疾患に起因しない加齢性神経細胞死又は機能不全)からなる群から選択される少なくとも症状の治療又は予防に有効な量の、オレウロペイン及び/又はその代謝産物と、マグネシウムとの組み合わせを含む、単位剤形の組成物である。
【0081】
本開示の別の態様は、ストレス、肥満、代謝速度の低下、メタボリックシンドローム、真性糖尿病、心血管疾患、高脂血症、神経変性疾患、認知障害、ストレス誘発性又はストレス関連認知機能障害、気分障害(例えば、ストレス誘発性又はストレス関連気分障害)、不安障害(例えば、ストレス誘発性又はストレス関連不安障害)、及び加齢性神経細胞死又は機能不全(例えば、特定の神経変性疾患に起因しない加齢性神経細胞死又は機能不全)からなる群から選択される少なくとも状態を、この状態を有する個体において治療する方法である。
【0082】
これらの方法の一実施形態では、治療又は予防される高脂血症は、高トリグリセリド血症を含む。これらの方法の一実施形態では、治療又は予防される高脂血症は、遊離脂肪酸の増加を含む。これらの方法の一実施形態では、治療又は予防される加齢性神経細胞死又は機能不全は、高齢者などの中高年者への組成物の投与による。
【0083】
治療又は予防されるストレスは、幼少期ストレス、すなわち、生後5歳までの期間の間に経験されるストレスであり得る。幼少期ストレスは、うつ病、不安、及び異常なリスクテイキング行動の発症率又はそれに対する感受性の増加などの心理的パラメータを含む、認知能力に重大な悪影響を与えることが報告されている。幼少期ストレスを経験した個体において、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、及び大うつ病の発症率が高いことが報告されている。
【0084】
本開示の別の態様は、健康な中高年者において、代謝低下の開始を遅らせる、筋肉量を維持する、酸化ストレスを減少させる、免疫機能を維持する、及び/又は認知機能を維持する方法である。
【0085】
本明細書に開示される組成物はまた、ミトコンドリア活性の欠陥若しくは低下が疾患若しくは状態の病態生理に関与している、又はミトコンドリア機能の増加が所望の有益な効果をもたらす、様々な追加の疾患及び状態のいずれかの治療にも使用することができる。そのような状態の非限定的な例としては、精子の運動能低下に関連する男性不妊症、黄斑変性、並びに他の加齢性及び遺伝性眼障害及び聴覚消失(例えば、加齢性聴覚消失)が挙げられる。
【0086】
本開示の更に別の態様は、i)ミトコンドリア関連疾患又は変化したミトコンドリア機能に関連する状態の治療、その発生率の低減、又はその重症度の低減、(ii)1つ以上の細胞における代謝疲労に関連する生理学的状態の改善、(iii)1つ以上の細胞におけるミトコンドリアエネルギー及びミトコンドリアカルシウム取り込みの増加、並びに(iv)カルシウム欠乏/枯渇障害の治療又は予防、(v)代謝速度の増加、(vi)認知機能の改善又は維持、(vii)ミトコンドリア機能の向上又は維持のうちの少なくとも1つのための、有効量でオレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含む、単位剤形である。
【0087】
一実施形態では、代謝疲労に関連する生理学的状態には、筋疲労又は筋力低下、エネルギーの欠如、身体エネルギーの欠如、活力の欠如又は活力低下が含まれる。
【0088】
更なる実施形態では、単位剤形は、オレウロペイン及び/又はその代謝産物と、マグネシウムとの組み合わせから本質的になる。いくつかの実施形態では、これらの化合物のうちの1つ以上は、単離された化合物であってもよい。
【0089】
本開示はまた、1つ以上の容器中に、オレウロペイン及び/又はその代謝産物とマグネシウムとの組み合わせを含むキットを提供する。キットの一実施形態では、1つ以上の容器は、少なくとも1つの第1の容器を含み、当該第1の容器がオレウロペイン及び/又は代謝産物を、少なくとも1つの第2の容器内に収容されたマグネシウムとは別に収容し、このキットは、オレウロペインをマグネシウムと混合して単位剤形にするための指示書を更に含む。
【0090】
キットの一実施形態では、その組み合わせは、1つ以上の予めパッケージ化された単位剤形として一緒に提供されてもよく、例えば、各容器が予めパッケージ化された単位剤形を1つ含有するように、それぞれが乾燥粉末を含有する別個の容器として提供されてもよい。
【0091】
別の実施形態では、キットは、一緒に混合して本明細書に開示される組成物の1つ以上を形成するための、複数の組成物を含むことができる。例えば、キットは、互いに関係のある別々の容器中に2つ以上の乾燥粉末を収容することができ、この別々の粉末はそれぞれ、最終的な単位剤形の一部を含有する。このような実施形態の非限定的な例として、キットは、オレウロペインを収容する1つ以上の第1の容器を含むことができ、また、マグネシウムを収容する1つ以上の第2の容器も含むことができる。第1の容器のうちの1つの内容物を第2の容器のうちの1つと混和して、組成物の単位剤形の少なくとも一部を形成することができる。
【0092】
上記の投与例は、間断のない連日投与を必要とするものではない。それよりむしろ、投与期間中の2~4日間の中断など、投与には何回かの短期間の中断があってもよい。本組成物の理想的な投与継続期間は当業者により決定され得る。
【0093】
本発明を、以下の非限定的な実施例により更に詳細に記載する。
【実施例
【0094】
以下の非限定的な例は、本明細書に開示される組成物及び方法を裏付ける、実験データを示すものである。
【0095】
材料及び方法
生細胞におけるミトコンドリア活性化に対するオレウロペインアグリコン(Oea)、Mg2+及びそれらの組み合わせの効果を試験するために、本発明者らは、C2C12細胞から分化した筋管におけるミトコンドリアカルシウム上昇を測定した。
【0096】
C2C12細胞はATCCから購入した。C2C12細胞を、高グルコースDMEM培地(Gibco)+10%ウシ胎児血清中、4500個/ウェルの密度で384ウェルプレートに播種した。2%ウマ血清を含有するDMEM中で細胞を6日間増殖させることにより、C2C12細胞から筋管を分化させた。
【0097】
ミトコンドリアカルシウムの測定は、ミトコンドリアにおいて発光標的とされるカルシウムセンサのミトコンドリア変性エクオリンを発現するアデノウイルス(Sirion biotech)に感染させた筋管を使用して行った(Montero et al.,2004)。エクオリンの再構成のために、感染の48時間後、1μMの野生型セレンテラジンを添加したエクオリン標準緩衝液(145mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのMgCl、1mMのCaCl、10mMのグルコース、及び10mMのHepes、pH7.4)中で、細胞又は筋管を室温(22±℃)で2時間インキュベートした。処置のために、Mg2+(図に示すように、0mM対照、0.1mM又は1mM)及びオレウロペインアグリコン(図に示すように、1mM、又は3mM、又は10mM)を、MgClを含まないエクオリン緩衝液中で2時間インキュベートした。筋管を5mMのカフェインで刺激し、刺激中の総カルシウムの推移をカフェイン刺激中の曲線下面積として計算した。発光をFLIPR cell imaging reader(Molecular devices)で測定した。発光データのカルシウム濃度への変換(Calibration)を、前述のようなアルゴリズムを使用して行った(Alvarez&Montero、2002)。定量にはExcel(Microsoft)及びGraphPad Prism7.02(GraphPad)ソフトウェアに基づくカスタムモジュール分析を使用した。
【0098】
結果
図1で示したように、C2C12に由来する筋管において、オレウロペインアグリコン(Oea)は、Mg2+と相乗作用してミトコンドリアCa2+の上昇によりミトコンドリアを活性化する。図2で示したように、C2C12に由来する筋管において、オレウロペインアグリコン(Oea)とMg2+とのいくつかの組み合わせは、相乗作用してミトコンドリアCa2+の上昇によりミトコンドリアを活性化する。
【0099】
本明細書で述べる現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。そのような変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、なされ得る。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
図1
図2
【国際調査報告】