(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】味覚マスキング化合物及び組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240213BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240213BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240213BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20240213BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240213BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20240213BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20240213BHJP
A61K 31/465 20060101ALI20240213BHJP
A61K 31/7034 20060101ALI20240213BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240213BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240213BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240213BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240213BHJP
A21D 2/14 20060101ALN20240213BHJP
A21D 13/80 20170101ALN20240213BHJP
A23G 1/32 20060101ALN20240213BHJP
A23L 13/00 20160101ALN20240213BHJP
A23C 9/152 20060101ALN20240213BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/00 C
A23L2/52 101
A23L2/00 B
A23L2/02 B
A61P1/02
A61K31/522
A61K31/485
A61K31/465
A61K31/7034
A61K31/7048
A61K47/26
A61Q11/00
A61K8/60
A21D2/14
A21D13/80
A23G1/32
A23L13/00 A
A23L13/00 Z
A23C9/152
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023549863
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2022053946
(87)【国際公開番号】W WO2022175388
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523311764
【氏名又は名称】ヘルステック バイオ アクティヴス,エス.エル.ユー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クレスポ モンテロ,フランシスコ ジャヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ドーレ,トム ネリー エイム
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B032
4B042
4B047
4B117
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC06
4B001AC08
4B001AC22
4B001AC99
4B001BC01
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4B014GB01
4B014GK02
4B014GL03
4B014GP01
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4B117LL09
4C076BB01
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4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA09
4C086NA14
4C086ZA67
(57)【要約】
本発明は、味覚マスク剤としての式(I)の化合物又はその立体異性体若しくは塩
【化1】
(式中、R1は、1又は2個の単糖単位からなる糖である)の使用及び上記化合物を含有する味覚マスキング組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摂取可能な製品における苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質の苦味、酸味、辛味、又は不快な味の印象をマスクするまたは軽減するための、式(I)の化合物又はその立体異性体若しくは塩
【化1】
(式中、R1は、1又は2個の単糖単位からなる糖である)の使用であって;
前記式(I)の化合物が、ヘスペリジングリコシドと組み合わせて又はそれとの混合物として使用されない、
式(I)の化合物又はその立体異性体若しくは塩の使用。
【請求項2】
前記式(I)の化合物が、(Ia)
【化2】
(式中、R1は、2個の単糖単位からなる糖である)である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記式(Ia)の化合物が、(2S)-5-ヒドロキシ-2-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-7-[(2S,3R,4S,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-{[(2R,3R,4R,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシメチル}オキサン-2-イル]オキシ-2,3-ジヒドロクロメン-4-オンである、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記化合物が、その中で99:1~80:20、好ましくは99:1~90:10の重量比で(2S)-及び(2R)-エナンチオマーが存在する味覚マスキング組成物として使用される、請求項2又は3の何れか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記物質が、カフェイン、テオブロミン、テオフィリン、メチルキサンチン、キニーネ、ブルシン、ストリキニーネ、ニコチン、サリシン、アルブチン、ネオヘスペリジン、ヘスペリジン、ナリンギン、クエルシトリン、ルチン、フロリジン、ペンタガロイルグルコース、ガレート型カテコール又はエピカテコール、プロアンチオシアニジン(proanthyocyanidines)又はプロシアニジン、テアルビジン、ケルセチン、タキシフォリン、ミリセチン、サリシン、ガンマ-オリザノール、カフェイン酸又はそのエステル、リモニン、ノミリン、ポリメトキシル化フラボン、アブシンチン、アマロゲンチン、マグネシウム塩、カルシウム塩、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム、グルタミン酸カリウム、コハク酸カリウム、リンゴ酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、フルオロキノロン抗生物質、パラセタモール、イブプロフェン、アスピリン、ベータ-ラクタム抗生物質、アンブロキソール、プロピルチオウラシル、グアイフェネシン、ビタミンH、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、安息香酸デナトニウム、スクラロースオクタアセタート、ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、プロリン、ヒスチジン、チロシン、リジン、フェニルアラニン、ダイズタンパク質、乳清タンパク質、豆類タンパク質、米タンパク質、麻タンパク質、チアタンパク質、小麦タンパク質、ジャガイモタンパク質、トウモロコシタンパク質、ヒマワリタンパク質、アスパルテーム、ステビオールグリコシド、ラカンカ、コラーゲンペプチド、カンナビノイド、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4の何れか1項に記載の使用。
【請求項6】
苦味、酸味、辛味又は不快な味を生じさせる前記物質が、前記摂取可能な製品において天然に存在する物質である、請求項1~5の何れか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記物質が、グリーニング病に罹患している柑橘類植物果実中に存在する物質である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記物質が、ポリメトキシル化フラボン、リモニン、ノミリン、ヘスペリジン、又はそれらの混合物である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記製品中の前記苦味、酸味、辛味又は不快な味を生じさせる前記物質が、前記製品に人為的に添加されている、請求項1~5の何れか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記摂取可能な製品が、食品である、請求項1~9の何れか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記食品が、飲料製品である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記飲料が、柑橘類ジュースである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記柑橘類ジュースが、グリーニング病に罹患している柑橘類果実植物から作製される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記式(I)又は(Ia)の化合物が、前記製品の総重量の10重量ppm~500重量ppm、好ましくは100重量ppm~300重量ppm、より好ましくは100重量ppm~200重量ppmの量で添加される、請求項1~13の何れか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記苦味、酸味、辛味、又は不快な味の軽減が、前記式(I)又は(Ia)の化合物を添加されない製品の味と比較した場合少なくとも10%の軽減である、請求項1~14の何れか1項に記載の使用。
【請求項16】
式(I)の化合物:
【化3】
(式中、R1は、2個の単糖単位からなる糖でありかつ(2S)-及び(2R)-エナンチオマーは、99:1~80:20、好ましくは99:1~90:10の重量比で存在する)を含む味覚マスキング組成物であって;ヘスペリジングリコシドを含有しない、味覚マスキング組成物。
【請求項17】
前記式(I)の化合物が、ヘスペリジンである、請求項16に記載の味覚マスキング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年2月18日提出の欧州特許出願第EP21382129.1号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、味覚マスキングの分野に関し、特にこれは、味覚メイキング(taste-making)化合物及び上記化合物を含有する味覚マスキング組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
不快な味を生じる食物、飲料及び医薬製品中で頻繁に見られる多くの物質がある。上記物質の多くは、柑橘類果実、コーヒー又は茶のような上記製品において天然に生じるものの、これらは、上記の不快な味ゆえにそれらの価値を大きく低下させ得る。実際に、、例えば、ブラックコーヒー、紅茶若しくは緑茶、ビール、赤ワイン、グレープフルーツ製品又はビターレモン(bitter lemon)における、食品又は飲料の苦味及び/又は渋味を受容する消費者は極めて稀である。殆どの他のケースにおいて、これらの味は、望ましくなく、排除されるか又はマスクされなければならず、従ってその後の処理が必要である。
【0004】
健康的とみなされ、健康食品調製物に意図的に添加される多くの物質はしかし、消費者により味に関して悪いと知覚される。これは、有益な抗酸化特性及び発癌抑制特性を有すると報告されている、ある種のビタミン、ミネラル、ペプチド若しくはタンパク質加水分解産物の苦味又はある種の植物ベースのフェノール、フラボノイド、イソフラボン、テルペン及びグルコシノレートの苦味若しくは渋味の場合であり得る。
【0005】
別の例は、より健康的な塩化ナトリウムの代替物として食品に塩味を提供するためにますます使用されている、塩化カリウムに付随する苦い後味である。
【0006】
味に関する消耗品の特に問題のある群は、医薬製品であり、これはしばしば、苦味、渋味又は金属味を有する有効成分を含有する。この不都合な知覚は、特に、嫌な味に特に感受性が高い集団群、特に小児において、患者のコンプライアンスにさらに悪影響を与え得る。
【0007】
結果的に、消費物品の味は消費者によるそれらの受容において重要な役割を果たすので、消耗品において、即ち食物、飲料及び医薬製品において不快な味を抑制するか又は軽減するための努力がなされてきた。
【0008】
従って、苦味、酸味、辛味又は不快な味を効果的に抑制できる又は少なくとも軽減できる物質、好ましくは天然の又は天然と同一の物質を発見することが望ましい。
【0009】
各特定の物質に依存して、及び各特定の消費可能な製品に依存して、異なる味覚マスキング溶液が、先行技術で広く報告されてきたように、使用され得、例えば、いくつかの可能な戦略は、苦味物質を部分的に除去すること、それらを被覆するか若しくはマイクロカプセルに封入すること、香味料及び/又は甘味料を添加すること、又は特定の味覚マスキング物質を添加することである。
【0010】
苦味、酸味、辛味、渋味又は金属味を調整するか、軽減するか又は抑制することが可能な味覚マスキング物質の使用は、多くの特定の適用に有用であることが証明されている。
【0011】
かなりの数の物質が、食物及び医薬における味覚マスキング剤としての使用について、当技術分野で報告されてきた。例は、とりわけ、タウマチン及びネオヘスペリジンジヒドロカルコンなどの、いくつかの甘味料;シクロデキストリン、ポリ-γ-グルタミン酸及びキトサンなどの、ポリマー及び錯化剤;ネオジオスミン;L-オルニチル-β-アラニン又はL-オルニチニルタウリンなどのL-オルニチン及び誘導体;L-アスパルチル-L-フェニルアラニンカリウム塩などのアスパラギン酸を含有するいくつかのジペプチド;ステアリン酸、パルミチン酸及びラウリン酸ナトリウムなどの、飽和脂肪酸のナトリウム塩;有機リン酸塩、ホスホン酸塩、バナジン酸塩、チオリン酸塩及び重リン酸塩;エリオジクチオール及びホモエリオジクチオールなどのフラバノンである。
【0012】
塩化ナトリウムは、多くの苦味物質に対して苦味マスキング効果を呈する(Breslin & Beauchamp,1997,Nature;vol.387,p.563)が;相対的に多量の塩の摂取は、例えば心血管系障害につながり得る。
【0013】
ネオジオスミン及びジオスミンは、例えばRaithore Smita et al.,2020により;Journal of Agricultural and Food Chemistry;vol.68;pp.1038-1050において、苦味マスキング物質として報告されている。ネオジオスミンの添加による苦味の軽減は、適切な苦味阻害剤としてネオジオスミンを開示する国際公開第91/18523A1号パンフレット又はネオジオスミンによる柑橘類ジュースにおける苦味の軽減を開示する米国特許第4031265A号明細書でも報告されている。
【0014】
また、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンは、有効な味覚マスキング物質として報告されており、例えば、それは、Borrego et al.,Neohesperidin Dihydrochalcone,in:L O’Brien Nabors,eds.Alternative Sweeteners,Fourth Edition,CRC Press,2012,94-95で開示されるように、パラセタモール、デキストロメトルファン及び他の医薬品のような物質の苦味をマスクするために、並びに特別食において、使用されている。
【0015】
しかし、味覚マスキングの許容可能なレベルを達成することは通常、味覚マスキング物質のかなりの量の使用を必要とし、これは、費用及びさらなるオフノート(off-notes)の点で満足できるものではない。
【0016】
従って、不快な味を効果的に調整でき、軽減でき又は抑制できる、及び味覚マスキング化合物又は組成物の低下された量の使用を必要とする、好ましくは天然の、新しい味覚マスキング化合物及び組成物が当技術分野で必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Breslin & Beauchamp,1997,Nature;vol.387,p.563
【非特許文献2】Raithore Smita et al.,2020により;Journal of Agricultural and Food Chemistry;vol.68;pp.1038-1050
【非特許文献3】Borrego et al.,Neohesperidin Dihydrochalcone,in:L O’Brien Nabors,eds.Alternative Sweeteners,Fourth Edition,CRC Press,2012,94-95
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、味覚マスキング効果を呈する、容易に利用可能な天然物質、特に、摂取可能な製品中で苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質の苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象をマスクすること又は軽減することのために使用され得る物質、を発見することである。
【0019】
従って、第1の態様では、本発明は、摂取可能な製品において苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質の苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象をマスクするための又は軽減するための、一般式(I)の化合物又はその立体異性体若しくは塩:
【化1】
(式中、R1は、1又は2個の単糖単位からなる糖である)の使用に関し;
上記式(I)の化合物は、ヘスペリジングリコシドと組み合わせて又はそれとの混合物としては使用されない。
【0020】
本発明の第2の態様は、式(I)の化合物
【化2】
(式中、R1は、2個の単糖単位からなる糖であり、(2S)-及び(2R)-エナンチオマーが、99:1~80:20、好ましくは99:1~90:10の重量比で存在する)を含む味覚マスキング組成物に関し、上記組成物は、ヘスペリジングリコシドを含有しない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、2種類の濃度:100ppm(
図1A)及び200ppm(
図1B)でヘスペリジン2Sが添加されている、オレウロペインを含有するオレンジジュースの官能プロファイルを表すスパイダー図である。評価された官能記述子は、0~5のポイントスケールでの、酸味、苦味、渋味、オレンジノート、フラボノイドノート、ウッディーノート、口当たり、オフフレーバー:ウッディー、フラボノイド、持続性及びドライさ(dryness)であった(0=なし、1=非常に弱い、2=弱い、3=中程度、4=強い、5=非常に強い)。
【
図2】
図2は、200ppmでヘスペリジン2Sが添加されている、塩化カリウム含有クラッカーの官能プロファイルを表すスパイダー図である(
図2)。評価された官能記述子は、0~5のポイントスケールでの、塩味、金属味、辛味及び後味(lingering)であった(0=なし、1=非常に弱い、2=弱い、3=中程度、4=強い、5=非常に強い)。
【
図3】
図3は、200ppmヘスペリジン2Sを含有するダークチョコレート(95%)の官能プロファイルを表すスパイダー図である(
図3)。評価された官能記述子は、0~5のポイントスケールでの、ココアノート、苦味、渋味、フラボノイドノート、口当たり、後味(lingering)、オフフレーバー:フラボノイドであった(0=なし、1=非常に弱い、2=弱い、3=中程度、4=強い、5=非常に強い)。
【
図4】
図4は、グリーニング病に罹患したオレンジ由来でありかつ2種類の濃度:100ppm(
図4A)及び200ppm(
図4B)でヘスペリジン2Sを含有するオレンジジュースの官能プロファイルを表すスパイダー図である。評価された官能記述子は、0~5のポイントスケールでの、最初の甘味、酸味、苦味、渋味、オレンジノート、フラボノイドノート、ボディー、苦い後味、グリーンオレンジノート及び加熱調理された(cooked)ノートであった(0=なし、1=非常に弱い、2=弱い、3=中程度、4=強い、5=非常に強い)。
【
図5】
図5は、2種類の濃度:100ppm(
図5A)及び200ppm(
図5B)でヘスペリジン2Sが添加された、搾りたてオレンジジュースの官能プロファイルを表すスパイダー図である。評価された官能記述子は、0~5のポイントスケールでの、甘味、酸味、苦味、渋味、オレンジノート、口当たり及び後味(lingering)であった(0=なし、1=非常に弱い、2=弱い、3=中程度、4=強い、5=非常に強い)。
【
図6】
図6は、添加された2種類の濃度:100ppm(
図6A)及び200ppm(
図6B)のヘスペリジン2Sを含有するトニックウォーターの官能プロファイルを表すスパイダー図である。評価された官能記述子は、0~5のポイントスケールでの、全体的な甘味、酸味、レモン-ライムノート、渋味、苦味及び口当たりであった(0=なし、1=非常に弱い、2=弱い、3=中程度、4=強い、5=非常に強い)。
【
図7】
図7は、2種類の濃度:100ppm(
図7A)及び200ppm(
図7B)でヘスペリジン2Sが添加された、オレウロペインを含有する植物ベースのバーガーの官能プロファイルを表すスパイダー図である。評価された官能記述子は、0~5のポイントスケールでの、ジューシーさ、硬さ、弾力性、脂肪的質感、肉様ノート、豆様ノート、苦味、フラボノイドノート及びウッディー-ウォールナッツ様ノートであった(0=なし、1=非常に弱い、2=弱い、3=中程度、4=強い、5=非常に強い)。
【
図8】
図8は、2種類の濃度:100ppm(
図5A)及び200ppm(
図5B)でヘスペリジン2Sが添加されたプロテインミルクシェイクの官能プロファイルを表すスパイダー図である。評価された官能記述子は、0~5のポイントスケールでの、全体的な甘味、ココアノート、乾燥ソラマメ様ノート、パウダリー、渋味、苦味及び口当たりであった(0=なし、1=非常に弱い、2=弱い、3=中程度、4=強い、5=非常に強い)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の著者は、本発明による式(I)の化合物が驚くべきことに、味覚マスキング化合物として使用され得、特にそれが、摂取可能な製品における苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質の、苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象をマスクするため又は軽減するために使用され得ることを見出した。
【0023】
従って、第1の態様では、本発明は、摂取可能な製品における苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質の苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象をマスクするため又は軽減するための、一般式(I)の化合物又はその立体異性体若しくは塩
【化3】
(式中、R1は、1又は2個の単糖単位からなる糖である)の使用に関し;
上記式(I)の化合物は、ヘスペリジングリコシドと組み合わせて又はそれとの混合物として使用されない。
【0024】
本記載に沿って、並びに特許請求の範囲において、単数形は、その前に「a」、「an」又は「the」が通常付き、文脈から明らかに別段示されない限り、複数も含むものと解釈されるべきである。
【0025】
本明細書中で使用される場合、定量的な値の前で使用される「約」という用語は、具体的な定量的値及びまた与えられる値の±10%を超えない、好ましくは与えられる値の±5%を超えない変動を含むものとして解釈されるべきである。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「味覚マスキング剤」、「味覚マスキング化合物」又は「味覚マスク剤」という用語は、味覚マスキング効果を提供する何れかの物質、化合物又は組成物を指す。味覚マスキング効果は、当技術分野で周知のように、物質の不快な味又は不快な味の印象の知覚される軽減、調整又は排除を意味する。特に、本発明の化合物は、摂取可能な製品における苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質の苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象をマスクできる又は軽減できる物質である。
【0027】
一般的には、味覚マスキング効果を発揮するために、味覚マスキング化合物又は組成物は、不愉快な味がする物質と混合され、一般に、摂取可能な又は食用の製品中に両方が含有される。或いは、本発明による式(I)の化合物又は本発明による味覚マスキング組成物は、in situで調製され得るので、両方の構成成分、即ち本発明による式(I)の化合物又は本発明による味覚マスキング組成物は、不快な味がする物質に、特に、苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質に、又は不快な味がする物質を含む摂取可能な製品に、添加され得、一般的にはその後、十分混合される。
【0028】
特定の実施形態では、本発明に従い使用される式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物:
【化4】
(式中、R
1は、2個の単糖単位からなる糖である)である。
【0029】
好ましい実施形態では、式(I)又は(Ia)の化合物は、(2S)-5-ヒドロキシ-2-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-7-[(2S,3R,4S,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-{[(2R,3R,4R,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシメチル}オキサン-2-イル]オキシ-2,3-ジヒドロクロメン-4-オンである。
【0030】
別の特定の実施形態では、本発明による式(I)の化合物は、あらゆる混合比で、(2S)-及び(2R)-エナンチオマーの混合物として使用される。好ましくは、2つのエナンチオマーの混合物として使用される場合、(2S)-及び(2R)-エナンチオマーは、99:1~70:30、より好ましくは99:1~80:20、さらにより好ましくは99:1~90:10の重量比で存在する。好ましい実施形態では、重量比は、99:1~93:7である。
【0031】
別の特定の実施形態では、本発明による式(I)の化合物は、味覚マスキング組成物として使用され、上記味覚マスキング組成物は、ヘスペリジングリコシドを含有しない。より特定の実施形態では、式(I)の化合物の(2S)-及び(2R)-エナンチオマーは、99:1~70:30の重量比、好ましくは99:1~80:20、より好ましくは99:1~90:10の重量比で上記味覚マスキング組成物中に含有される。さらにより好ましい実施形態では、重量比は、99:1~93:7である。
【0032】
従って、別の態様では、本発明は、式(I)の化合物
【化5】
(式中、R1は、2個の単糖単位からなる糖であり、(2S)-及び(2R)-エナンチオマーは、99:1~80:20、好ましくは99:1~90:10の重量比で存在する)を含む味覚マスキング組成物を指し;上記組成物は、ヘスペリジングリコシドを含有しない。
【0033】
特定の実施形態では、本発明の上記味覚マスキング組成物中で使用される上記式(I)の化合物は、ヘスペリジンである。より好ましい実施形態では、上記化合物は、(2S)-5-ヒドロキシ-2-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-7-[(2S,3R,4S,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-{[(2R,3R,4R,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシメチル}オキサン-2-イル]オキシ-2,3-ジヒドロクロメン-4-オンである。
【0034】
本発明による上記味覚マスキング組成物は、他の味覚マスキング化合物を含み得、ヘスペリジングリコシドを含まない。特定の実施形態では、上記組成物中で使用され得る他の味覚マスキング化合物は、例えば、ナリンゲニン、エリオジクチオール、エリオジクチオール7-メチルエーテル、エリオジクチオール5-メチルエーテル、ホモエリオジクチオール、フロレチン、ルチン、ケルシチン、イソクエルシトリン及び/又はそれらの塩、誘導体及び/又は混合物である。特定の実施形態では、本組成物は、ナリンゲニンと組み合わせて本発明による式(I)の化合物を含有する。別の特定の実施形態では、本組成物は、フロレチンと組み合わせて本発明による式(I)の化合物を含有する。別の特定の実施形態では、本組成物は、エリオジクチオールと組み合わせて本発明による式(I)の化合物を含有する。別の特定の実施形態では、本組成物は、ホモエリオジクチオールと組み合わせて本発明による式(I)の化合物を含有する。別の特定の実施形態では、本組成物は、ルチンと組み合わせて本発明による式(I)の化合物を含有する。別の特定の実施形態では、本組成物は、ケルシチンと組み合わせて本発明による式(I)の化合物を含有する。別の特定の実施形態では、本組成物は、イソクエルシトリンと組み合わせて本発明による式(I)の化合物を含有する。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、摂取可能な製品における苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質の、苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象をマスクするか又は軽減する方法に関し、上記方法は、上記苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質に、本発明による式(I)の化合物又は本発明による式(I)の化合物を含む味覚マスキング組成物を添加する段階を含む。一般的には、本発明による式(I)の化合物又は本発明による式(I)の化合物を含む組成物は、味覚マスキングの有効な量で上記物質に添加される。
【0036】
本発明に付随する実施例で示されるように、式(I)の化合物は強い味覚マスキング活性を示すことが分かった。実際に、本発明による式(I)の化合物は、驚くべきことに、様々な摂取可能な製品において、苦味、酸味、辛味又は不快な味を生じさせる物質の苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を軽減でき及び/又はマスクできる。
【0037】
パラセタモールに対するラセミ体ヘスペリジン及び非ラセミ体ヘスペリジン(H2S)の苦味マスキング効果を、アッセイした。実施例1で示されているように、両方の化合物は、パラセタモール溶液の不快な味の印象を軽減できた。特に良好な結果が、H2S(93%ヘスペリジン2S:7%ヘスペリジン2R)で得られ、それらはラセミ体ヘスペリジンで得られる既に良好な苦味の軽減よりも大幅にパラセタモールの苦味を軽減できた。さらに、異なるフラボノイド化合物、ネオジオスミンを使用して苦味の軽減についての比較試験もアッセイした。結果は、ラセミ体ヘスペリジン及び非ラセミ体ヘスペリジン(H2S)の両方がネオジオスミンよりも大幅に苦味を軽減したことを示し、非ラセミ体ヘスペリジンの場合に軽減の幅がより大きかった(表2-1及び表2-3を参照)。
【0038】
実施例2において、オレンジジュースへのオリーブポリフェノール、特にオレウロペインの添加から生じるウッディーな味及び苦味は、本発明による式(I)の化合物がオレウロペインを含有するオレンジジュースに添加されるとマスクされることが示される。特に、化合物(2S)-5-ヒドロキシ-2-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-7-[(2S,3R,4S,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-{[(2R,3R,4R,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシメチル}オキサン-2-イル]オキシ-2,3-ジヒドロクロメン-4-オン(2S-ヘスペリジン又はH2S)が、オレウロペインを含有するオレンジジュース試料にH2O-NaOH溶液として添加される。この結果は、苦味及びウッディーな味の明らかな軽減を示す。さらに、オレンジノートが増強されることが観察される。
【0039】
実施例3において、クラッカーへのKClの添加から生じる金属味及び辛味ノートは、本発明による式(I)の化合物がクラッカーに添加されると抑制されることが示される。さらに、
図2で示されるように、クラッカーへの化合物H2Sの添加は、塩味の増加をもたらし、全体的によりバランスの取れたクラッカーの味を与える。
【0040】
発明者らは、ダークチョコレート試料への、本発明による式(I)の化合物、特にH2Sの添加(実施例4)が、驚くべきことに苦味及び渋味を軽減することも示した。さらに、
図3で見られるように、ココアノートが僅かに増強され、フラボノイドノートは存在しない。
【0041】
発明者らは、リモニン溶液に対する本発明による式(I)の化合物の効果も試験した(実施例5)。柑橘類グリーニング病(又はHLB)は、ベクター媒介性病原体により引き起こされる柑橘類の疾患である。罹患している樹木は、非常に苦味がある、厚く、淡い色の果皮を有する、小さく不規則な形態の果実を産する。特徴的な苦味の主な原因の1つは、2種類の分子:リモニン及びノミリン、の増加である。これらの結果は、リモニン溶液への、本発明による化合物、特にH2Sの添加が、顕著な脱苦味効果を生じることを明らかに示す(表7参照)。
【0042】
さらに、グリーニング病に罹患したオレンジから得られるオレンジジュースに対するヘスペリジンの効果も試験した。以下の実施例6で示されるように、グリーニング病に罹患したオレンジから得られたオレンジジュースへのヘスペリジンの添加は、驚くべきことに、苦味、酸味及び渋味を顕著に軽減する。
【0043】
従って、本発明の特定の実施形態では、苦味、酸味、辛味又は不快な味を生じさせる上記物質は、上記摂取可能な製品において天然に生じる物質である。より特定の実施形態では、上記物質は、グリーニング病に罹患した植物の柑橘類果実に存在する物質である。より具体的には、上記柑橘類果実は、オレンジである。より特定の実施形態では、上記物質は、ポリメトキシル化フラボン、例えばノビレチン及びタンゲレチン、リモニン、ノミリン、ヘスペリジン又はそれらの混合物である。
【0044】
本発明の特定の実施形態では、上記摂取可能な製品は、食品である。好ましくは、上記食品は、飲料製品である。好ましい実施形態では、上記飲料は、柑橘類ジュースである。本発明の特定の実施形態では、上記柑橘類ジュースは、グリーニング病に罹患している柑橘類果実植物から作製されるジュースである。
【0045】
別の特定の実施形態では、本発明による式(I)の化合物は、柑橘類ジュース中の、特にグリーニング病に罹患している植物の果実から得られるオレンジジュース中の苦味の印象を生じさせる物質の苦味の印象をマスクするため又は軽減するために使用される。
【0046】
苦い味又は苦味は、舌の味蕾にある味覚受容体細胞の頂端膜に位置する特別な苦味受容体に結合するある種の物質により生じると考えられる。苦味受容体は、Gタンパク質カップリング受容体(GPCR)スーパーファミリーのメンバーであると考えられ、T2Rと呼ばれる。これらの苦味受容体は、化学的に非常に多様であるリガンドと相互作用し得、そのため苦味として記載される多数の物質があり、その化学構造は多くの異なる化学クラスに属し得る。
【0047】
苦味物質の非限定リストは、例えば、フラバノン、例えばナリンギン、ネオヘスペリジン又はヘスペリジンなど;フラボン、例えばタンゲリチン(tangeritin)又はノビレチンなど;フラボノール、例えばアビクラリン、ケルセチン、クエルシトリン、イソケルセチン、ミリセチン又はルチンなど;フラバノール、例えばタキシフォリン、カテキン(カテキン、エピカテキン、没食子酸エピカテキン、エピガロカテキン又は没食子酸エピガロカテキン)又はテアフラビン(テアフラビン、イソテアフラビン、ネオテアフラビン、テアフラビン-3-ガラート、テアフラビン-3’-ガラート、テアフラビン-3,3’-ジガラート、イソテアフラビン-3-ガラート又はテアフラビン酸);イソフラボン、例えばゲニステイン又はダイゼインなど;カルコン、例えばフロリジン、トリテルペン、例えばリモニン、ノミリン又はリモニングルコシドなど;ヒドロキシケイ皮酸、例えばカフェイン酸又はそのエステルなど;オリーブポリフェノール、例えばオレウロペインなど、グルコシノレート、例えばシニグリン、プロゴイトリン又はグルコブラシシンなど;アルカロイド、例えばニコチン、テオブロミン、テオフィリン、キニーネ又はカフェインなど;フェノール性グリコシド、例えばサリシン又はアルブチンなど;ホップの樹脂で見出される苦いアルファ酸、例えばフムロン、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン又はプレフムロンなど;金属塩、特にカリウム、マグネシウム及びビスマス塩、例えば塩化カリウム、グルコン酸カリウム、炭酸カリウム、コハク酸カリウム、乳酸カリウム、リンゴ酸カリウムなど;次クエン酸ビスマス、クエン酸ビスマス、次没食子酸ビスマス、サリチル酸ビスマス又は硫酸マグネシウムなど;いくつかの薬学的有効成分、例えばフルオロ-キノロン抗生物質、アスピリン、イブプロフェン、パラセタモール、デキストロメトルファン、フェニレフリン、ロペラミド、トラマドール、ラニチジン塩酸塩、アセチルシステイン、硫酸グルコサミン、エリスロマイシン、レボスルピリド、クロルヘキシジン、ジオスミン、β-ラクタム抗生物質、アンブロキソール又はグアイフェネシンなど;不飽和脂肪酸;ビタミン;苦味があるアミノ酸(例えばロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、プロリン、ヒスチジン、チロシン、リジン又はフェニルアラニン)及びいくつかの苦味があるペプチド、特に疎水性アミノ酸フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、イソロイシン及びバリンを含有するものを含む。
【0048】
一般に、苦味を付与することが知られている何れかの物質の味は、本発明による式(I)の化合物又は本発明の組成物を使用してマスクされ得る。特定の実施形態では、苦味をマスクするために特に使用される場合、本発明による味覚マスキング化合物又は組成物は、抗苦味剤又は苦味マスキング剤と呼ばれ得る。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、苦味、酸味、辛味又は不快な味を生じさせる上記物質は、カフェイン、テオブロミン、テオフィリン、メチルキサンチン、キニーネ、ブルシン、ストリキニーネ、ニコチン、サリシン、アルブチン、ネオヘスペリジン、ヘスペリジン、ナリンギン、クエルシトリン、ルチン、フロリジン、ペンタガロイルグルコース、ガレート型カテコール又はエピカテコール、プロアンチオシアニジン(proanthyocyanidines)又はプロシアニジン、テアルビジン、ケルセチン、タキシフォリン、ミリセチン、サリシン、ガンマ-オリザノール、カフェイン酸又はそのエステル、リモニン、ノミリン、ポリメトキシル化フラボン、アブシンチン、アマロゲンチン、マグネシウム塩、カルシウム塩、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム、グルタミン酸カリウム、コハク酸カリウム、リンゴ酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、フルオロキノロン抗生物質、パラセタモール、イブプロフェン、アスピリン、ベータ-ラクタム抗生物質、アンブロキソール、プロピルチオウラシル、グアイフェネシン、ビタミンH、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、安息香酸デナトニウム、スクラロースオクタアセタート、ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、プロリン、ヒスチジン、チロシン、リジン、フェニルアラニン、ダイズタンパク質、乳清タンパク質、豆類タンパク質、米タンパク質、麻タンパク質、チアタンパク質、小麦タンパク質、ジャガイモタンパク質、トウモロコシタンパク質、ヒマワリタンパク質、アスパルテーム、ステビオールグリコシド、ラカンカ、コラーゲンペプチド、カンナビノイド及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0050】
別の特定の実施形態では、上記製品において上記苦味、酸味、辛味又は不快な味を生じさせる上記物質は、上記製品に人為的に添加されている。
【0051】
「不快な味の印象を生じさせる物質」という用語は、本明細書中で使用される場合、摂取可能な製品において不快な味の印象を生じさせる物質、特に渋い、カードボードのような、埃っぽい、ドライな、小麦粉っぽい、変敗した、及び/又は金属的な味がする物質及び/又は渋い、カードボードのような、埃っぽい、ドライな、小麦粉っぽい、変敗した、又は金属的な後味を有する物質を指す。
【0052】
本発明の使用に従いマスクされ得る不快な味又は不快な味の印象の中でも、例えば、渋味及び金属味である。
【0053】
渋味は、ミョウバン及びタンニンなどの物質への曝露の結果としての上皮のシルキング(shirking)、ドローイング(drawing)又はパッカリングゆえの感覚の複合としてAmerican Society for Testing and Materials(ASTM、2004)により定義される。渋味の分子は、唾液タンパク質、特にプロリンリッチなタンパク質と反応し、それらを沈殿させ、結果的な潤滑性の喪失が、口内での渋味と関連する触覚をもたらすと考えられる。
【0054】
渋味分子は、果実又は葉又は樹皮に存在する、一般的に植物ベースの生成物、最も一般的にはタンニン、である。一般的に渋味として知覚されるいくつかの物質は、例えば茶、赤ワイン、ルバーブ及び熟していない柿及びバナナである。
【0055】
渋味の印象をもたらす物質の典型例は、緑茶であり、これは、カテキンとして知られるいくつかのポリフェノールを含有し、それらは、収れん剤、即ちカテキン、エピガロカテキンガラート、エピガロカテキン、エピカテキンガラート、エピカテキン及びそれらの個々の立体異性体として知られる。渋味を生じさせる物質の他の例は、豆類タンパク質、乳清タンパク質及び大豆タンパク質などの、タンパク質である。渋味物質の別の例は、紅茶のテアフラビン、即ちテアフラビン、テアフラビン-3-ガラート、テアフラビン-3’-ガラート、テアフラビン-3,3’-ジガラート及びテアフラビン酸である。
【0056】
いくつかの物質の味は、苦味及び渋味の混合物として知覚され得る。従って、例えば、緑茶及び紅茶の渋味は、苦味/渋味の混合物として知覚される場合がある。
【0057】
他の物質は、基本の味又は基本の(当初の)風味は不快ではないが、苦味、渋味又は金属ノートのような追加的な不快な味を有し得る。限定されないが、これらの物質は、アスパルテーム、ネオテーム、スーパーアスパルテーム、サッカリン、スクラロース、タガトース、モネリン、ラカンカ、ステビア抽出物、個々のステビオールグリコシド又はそれらの組み合わせ、ヘルナンドゥルシン、タウマチン、ミラクリン、グリチルリチン、グリチルレチン酸及びシクラメートを含む群に属し得る。
【0058】
本発明の別の態様は、本発明による式(I)の化合物又は本発明による式(I)の化合物を含む味覚マスキング組成物を摂取可能な製品に添加することを含む、少なくとも1つの苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質を含有する摂取可能な製品の不快な味をマスクするための工程である。
【0059】
本発明による味覚マスキング化合物又は組成物は一般的に、不快な味がする物質を含む、一般的には苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質を含む摂取可能な製品に添加される。摂取可能な製品に本化合物又は味覚マスキング組成物を添加する段階は、プレミックス組成物を添加すること、並びに一般的には十分に混合した後に摂取可能な製品に本発明による式(I)の化合物を組み込むことを含むと意図される。
【0060】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質と、本発明による式(I)の化合物又は本発明による式(I)の化合物を含む組成物を含む摂取可能な製品を指す。好ましくは、不快な味がする物質は、苦味又は渋味物質である。
【0061】
摂取可能な製品中に含有される不快な味がする物質の量は、摂取可能な製品が本発明による味覚マスキング化合物又は組成物を含まない場合に不快なものとして知覚されるのに十分であるべきである。
【0062】
一実施形態では、摂取可能な製品中の不快な味がする物質の量は、味覚マスキング化合物又は組成物なしでの摂取可能な製品の総重量に基づき、1ppm~5000ppmの範囲である。
【0063】
本発明による化合物又は組成物は、味覚マスキングの有効な量で摂取可能な製品に添加される。本明細書中で使用される場合、「味覚マスキングの有効な量」は、本発明による化合物又は組成物なしの摂取可能な製品と比較した場合に、不快な味がする物質の不快な味をマスクするか、軽減させるか、調整するか又は除去するために十分な量である。味覚マスキングの有効な量は、特定の不快な味がする物質に、摂取可能な製品中のその相対量に、及び特定の摂取可能な製品に、依存して広く変動し得る。当業者は、それぞれの特定の場合において適切な量の化合物又は組成物を選択することにおいて困難はない。
【0064】
特定の実施形態では、本発明による式(I)の化合物又は本発明による組成物は、摂取可能な製品の総重量に対して、1ppm~2000ppmで含まれる、好ましくは1ppm~1000ppmで含まれる、及びより好ましくは1ppm~500ppmで含まれる量で添加される。好ましい実施形態では、上記量は、摂取可能な製品の総重量に対して、10ppm~300ppm、より好ましくは50ppm~300ppm、さらにより好ましくは100ppm~300ppm含まれる。さらにより好ましい実施形態では、上記量は、摂取可能な製品の総重量に対して、100ppm~200ppm含まれる。摂取可能な製品の総重量は、添加される味覚マスキング化合物又は組成物の重量も含むものとする。
【0065】
「摂取可能な製品」という用語は、本明細書中で使用される場合、ヒト又は動物の何れかにより経口摂取させることを目的とするあらゆる物質に広く関し、かつ飲まれるか、食べられるか、飲み込まれるか又はそうでなければ摂取される、物質、即ち食品及び医薬、を含む。さらに、「摂取可能な製品」という用語は、摂取されると意図されないが、最初に口に入れられ、その後排出される物質、例えばチューインガム及び口腔ケア組成物、例えばマウスウォッシュ、練り歯磨き又は歯磨きジェルなども含むものとする。
【0066】
本発明の一実施形態では、摂取可能な製品は、食品、医薬及び口腔ケア組成物からなる群から選択され;好ましくは食品及び医薬から選択される。
【0067】
以下の実施例1で示されるように、本発明による式(I)の化合物、特にヘスペリジンは、例えばパラセタモール溶液などの医薬製品の苦味を軽減できる。実際に、表2で示されるように、100ppmのH2Sが添加される場合、20%の苦味軽減が得られる。さらに、250ppmのH2Sがパラセタモール溶液に添加される場合には、37%の苦味軽減が得られる。
【0068】
従って、本発明の別の実施形態では、摂取可能な製品は、医薬製品である。
【0069】
本発明の別の実施形態では、摂取可能な製品は、食品である。
【0070】
「食品」という表現は、本明細書中で使用される場合、ヒト又は動物の栄養を目的とする何れかの食用製品を意味し、かつ固体、半固体及び、飲料も含む液体を含む。「食品」という表現はまた、部分的にのみ摂取され、その後口腔から排出される製品、特にチューインガムも含む。
【0071】
その中に本発明による味覚マスキング化合物又は組成物が添加される適切な飲料は、苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質を含有するある種の飲料であり得るが限定されない。好ましくは、上記飲料は、苦味物質を含有し、それは、炭酸を含み得るか又は非炭酸の何れかであり得、アルコール又は非アルコール性の何れかであり得、とりわけ、例えば、フルーツ香味料入りのソフトドリンク、ソーダ、コーラ、スポーツ飲料及び一般的には果実を含有する及び/又は果実、野菜、芳香性の植物、茶、コーヒー又はココアで香りづけされたあらゆる飲料を含み;それはまた、例えば、ワイン又はビールを含有する飲料も含み;それはまた、例えば、苦味及び又は渋味を有するタンパク質加水分解産物、ビタミン及び/又はファイトニュートリエントを含有するエネルギー又は健康飲料も含む。好ましい実施形態では、上記飲料は、柑橘類果実ジュースである。好ましくは、上記飲料は、ミルク又はミルクベースの飲料ではない。
【0072】
飲料のカテゴリーは、すぐに飲める飲料並びに、水で再構成されることが意図される、粉末、顆粒、錠剤又は液体濃縮物のような他の形態を含む。
【0073】
本発明による味覚マスキング化合物又は組成物をその中に添加するために適切な他の食品は、多くのものの中でも、例えば、ベーカリー製品、例えばパン、ケーキ、ビスケット、マフィン及び、一般に焼いた食品の何れか;また乳製品、例えばヨーグルト、飲むヨーグルト、フローズンヨーグルト、クリーム、チーズ又はアイスクリームなど;ダイズベースの製品、例えば豆乳又はダイズ-レシチンなど;菓子製品、例えばチョコレート、キャラメル、キャンディー、マジパン又はチューインガムなど;シリアルタイプの製品、例えば朝食シリアル、シリアルバー、エネルギー/栄養バー又はフレークなど;果実由来の製品、例えばジャム、果実ピュレ、保存果実及びソースなど;野菜由来製品、例えばソース、乾燥野菜、保存野菜又は凍結野菜など;油に基づく製品及びエマルション、例えばマヨネーズ及びいくつかのドレッシングなどであり、ただし、それらは苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質を含有する。
【0074】
食品カテゴリーはまた、特に栄養又は栄養補助食品、即ち、いくつかの栄養成分、例えば、ヒトの食事を補うことが意図されるビタミン、ミネラル、アミノ酸、タンパク質、植物(botanicals)、酵素または他の物質に富み、かつ例えば、一般的には飲料又はバーとして、何れかの適切な食品形態であり得る、食品も含む。
【0075】
食品という表現にまた含まれるのは、デザートミックス又は乾燥された調理済み食料などの、あらゆる種類の乾燥された製品である。
【0076】
食品はまた、特に、動物の栄養を目的とするあらゆる食物も含む。
【0077】
本発明による味覚マスキング化合物又は組成物をその中に添加するために適切な医薬製品は、不快な味がする健康サプリメント、例えばビタミン、ミネラル及びそれらの混合物の何れかの種類も含む、苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる有効成分を含むものである。好ましくは、有効成分は、フルオロキノロン抗生物質、イブプロフェン、パラセタモール、β-ラクタム抗生物質、アンブロキソール、グアイフェネシン及びそれらの混合物から選択される。実際に、以下の実施例1で示されるように、パラセタモール溶液へのヘスペリジン2S(H2S)の添加は、苦味の実質的な軽減をもたらす。従って、本発明の特定の実施形態では、有効成分は、パラセタモールである。
【0078】
医薬製品は、ヒト又は獣医学的治療の何れかのための経口投与に適切な何れかの形態であり得る。医薬製品は、当業者にとって周知であるような、経口投与に適切な何れかの形態、例えば固体形態、例えば錠剤、咀嚼錠、口腔内崩壊錠(ODT)、舌下錠、口腔内崩壊フィルム(フラッシュフィルム(flash film))、薬用キャンディー、チュアブルガム又は粉末など;又は液体形態、例えばドロップ、シロップ及び懸濁液など;また或いは、投与される液体中で溶解されると意図される粉末、顆粒又は錠剤の形態、例えば発泡性の錠剤であり得る。
【0079】
本発明の味覚マスキング化合物又は組成物は、医薬技術又は商品技術の分野の熟練者にとって周知であるように、従来の方法で摂取可能な製品に添加されてよく、例えば、処方の他の賦形剤と一緒に、医薬製品に、又は製造工程の適切な段階で食品に添加され得る。
【0080】
上記の例は、摂取可能な製品における苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質を含有する非限定の及びあらゆる摂取可能な製品であり、本発明による化合物又は組成物をそこに添加するために適切であり得ることが理解される。
【0081】
次の例は、本発明をさらに例示する。
【0082】
本発明のさらなる態様及び実施形態は、以下の続く項において記載される:
【0083】
項1:摂取可能な製品における苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象を生じさせる物質の、苦味、酸味、辛味又は不快な味の印象をマスクするため又は軽減するための、式(I)の化合物又は立体異性体又はその塩
【化6】
(式中、R1は、水素である)の使用であって、上記式(I)の化合物は、ヘスペリジングリコシドと組み合わせて又はそれとの混合物として使用されない、使用。
【0084】
項2:上記物質が、カフェイン、テオブロミン、テオフィリン、メチルキサンチン、キニーネ、ブルシン、ストリキニーネ、ニコチン、サリシン、アルブチン、ネオヘスペリジン、ヘスペリジン、ナリンギン、クエルシトリン、ルチン、フロリジン、ペンタガロイルグルコース、ガレート型カテコール又はエピカテコール、プロアンチオシアニジン(proanthyocyanidines)又はプロシアニジン、テアルビジン、ケルセチン、タキシフォリン、ミリセチン、サリシン、ガンマ-オリザノール、カフェイン酸又はそのエステル、リモニン、ノミリン、ポリメトキシル化フラボン、アブシンチン、アマロゲンチン、マグネシウム塩、カルシウム塩、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム、グルタミン酸カリウム、コハク酸カリウム、リンゴ酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、フルオロキノロン抗生物質、パラセタモール、イブプロフェン、アスピリン、ベータ-ラクタム抗生物質、アンブロキソール、プロピルチオウラシル、グアイフェネシン、ビタミンH、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、安息香酸デナトニウム、スクラロースオクタアセタート、ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、プロリン、ヒスチジン、チロシン、リジン、フェニルアラニン、ダイズタンパク質、乳清タンパク質、豆類タンパク質、米タンパク質、麻タンパク質、チアタンパク質、小麦タンパク質、ジャガイモタンパク質、トウモロコシタンパク質、ヒマワリタンパク質、アスパルテーム、ステビオールグリコシド、ラカンカ、コラーゲンペプチド、カンナビノイド及びそれらの混合物からなる群から選択される、項1に記載の使用。
【0085】
項3:苦味、酸味、辛味又は不快な味を生じさせる上記物質が、上記摂取可能な製品において天然に存在する物質である、項1~2の何れか1項に記載の使用。
【0086】
項4:上記物質が、グリーニング病に罹患している柑橘類植物果実中に存在する物質である、項3に記載の使用。
【0087】
項5:上記物質が、ポリメトキシル化フラボン、リモニン、ノミリン、ヘスペリジン又はそれらの混合物である、項4に記載の使用。
【0088】
項6:上記製品における上記苦味、酸味、辛味又は不快な味を引き起こす上記物質が、上記製品に人為的に添加されている、項1~5の何れか1項に記載の使用。
【0089】
項7:上記摂取可能な製品が、食品である、項1~2の何れか1項に記載の使用。
【0090】
項8:上記食品が、飲料製品である、項1~7の何れか1項に記載の使用。
【0091】
項9:上記飲料が、柑橘類ジュースである、項8に記載の使用。
【0092】
項10:上記柑橘類ジュースが、グリーニング病に罹患している柑橘類果実植物から作製される、項9に記載の使用。
【0093】
項11:上記式(I)又は(Ia)の化合物が、上記製品の総重量の重量で、10ppm~500ppm、好ましくは、100ppm~300ppm、より好ましくは100ppm~200ppmの量で添加される、項1~10の何れか1項に記載の使用。
【0094】
項12:上記苦味、酸味、辛味又は不快な味の軽減が、上記式(I)又は(Ia)の化合物が添加されていない製品の味と比較した場合、少なくとも10%の軽減である、項1~11の何れか1項に記載の使用。
【0095】
実施例
味覚マスキング組成物
ヘスペリジン2S(H2S)は、HealthTech Bio Actives,S.L.U.(微粒子化;Cardiose;93%ヘスペリジン2S:7%ヘスペリジン2R)により供給された。
【0096】
ヘスペリジン2Sは、水中での非常に低い溶解度(10ppm未満)を有する。しかし、NaOHの存在下で、その溶解度は上昇する。液体マトリクス中の構成成分を試験するために、非加熱H
2O-NaOH溶液を、調製した(表1)。
【表1】
【0097】
実施例1:パラセタモールの苦味のマスキング
パラセタモールに対するヘスペリジンの苦味マスキング効果を、アッセイした。抗苦味効果を、パラセタモールの溶液に対する用量応答プロファイルとして測定した。
【0098】
各物質のマスキング効果を評価するために、それぞれがパラセタモール5000ppm及び、表1で指示されるように調製された異なる濃度のヘスペリジン、即ち10、50、100及び250、を含有する、いくつかの水溶液を調製した。
【0099】
調整された試験パネルは、異なる濃度の水中のいくつかのパラセタモール溶液と各溶液を比較し、苦味が等しい(equibitter)パラセタモール溶液を決定した。苦味が等しい(equibitter)溶液を、パネルの評価全ての平均として計算した。
【0100】
マスキング効果又は苦味軽減のパーセンテージを次に、次の式を使用して、各試験溶液中に含有されるパラセタモールの基準量(5000ppm)及び苦味が等しい(equibitter)溶液のパラセタモールの量から計算した:
【数1】
【0101】
従って、例えば、5000ppmのパラセタモール及び250ppmのヘスペリジンを含有する溶液は、4000ppmのパラセタモールを含有する溶液と苦味が等しかった。従って、マスキング効果は、20%であった。結果を表2に示す:
【表2】
【0102】
表2-1中の結果は、ヘスペリジンがパラセタモール溶液の苦味を軽減できることを示す。100ppmのH2Sが添加されると、20%の苦味軽減が得られる。37%の苦味軽減が、250ppmのH2Sが添加されると得られる。
【0103】
パラセタモールに対するラセミ体ヘスペリジン(57%ヘスペリジン2S:43%ヘスペリジン 2R;HealthTech Bio Actives,S.L.U.Beniel,Spainにより購入)の苦味マスキング効果もまた、アッセイした。抗苦味効果を、上記のようにパラセタモールの溶液に対する用量応答プロファイルとして測定した。
【表3】
【0104】
この結果は、非ラセミ体ヘスペリジン(93%ヘスペリジン2S:7%ヘスペリジン2R)が、ラセミ体ヘスペリジンで得られた苦味軽減と比較した場合、より大きい程度にパラセタモールの苦味を軽減できたことを示す。実際に、100ppmヘスペリジンを試験した場合、苦味軽減のパーセンテージは、ラセミ体で13%であり、それに対し非ラセミ体では20%であった。さらに、250ppmのH2Sを試験した場合、18%の軽減がラセミ体ヘスペリジンで得られ、それに対し非ラセミ体ヘスペリジン2Sが使用された場合は37%の軽減であった。
【0105】
さらに、異なるフラボノイド化合物、ネオジオスミン(HealthTech Bio Actives,S.L.U.Beniel,Spainにより購入)の苦味マスキング効果もまた、試験した。抗苦味効果を、前に説明したようにパラセタモールの溶液に対する用量反応プロファイルとして測定した。
【表4】
【0106】
表2-3での結果は、ネオジオスミンが、ヘスペリジン2Sよりも低い程度にパラセタモール溶液の苦味を軽減できることを示す。100ppmネオジオスミンが添加される場合、12%の苦味軽減が得られ、一方で100ppmのH2Sが添加される場合、20%苦味軽減が得られる。また、250ppmネオジオスミンは、16%の苦味軽減を生じさせ、それに対し250ppmのH2Sが添加される場合は、37%である。
【0107】
実施例2:オレウロペインを含有するオレンジジュース中のヘスペリジン2Sの評価
異なる濃度(100ppm及び200ppm)のヘスペリジン2Sを含有するNaOH:H
2O溶液を、上で説明されるように(表1)調製し、500ppm Olews 40%(500ppm Olews 40%=160ppmオレウロペイン)を含有するオレンジジュースに添加した。Olews 40%は、HealthTech Bio Actives S.L.U.(Beniel,Spain)により提供された。
【表5】
【0108】
オレウロペインに対する味覚マスキング効果を、パラセタモールに対して実施例1で使用されたものと類似の手順に従い、アッセイした。
【0109】
各試験された溶液について、試験パネルは、苦味が等しいオレウロペイン溶液を決定し、マスキング効果を、実施例1で説明されるように計算した。専門家のパネルを、H2Sの添加後にオレウロペインを含有するオレンジジュース調製物の不快な味の印象の軽減を決定するために使用した。
【0110】
この結果は、200ppmのH2Sが添加された場合、オレウロペインを含有するオレンジジュース調製物中のウッディーな味及び苦味がマスクされたことを示した(
図1A)。
【0111】
さらに、200ppmのH2Sが添加された場合、オレウロペインから生じるウッディーな味及び苦味は、顕著にマスクされ(40%)、また、オレンジノートが、増強された(
図1B)。
【0112】
実施例3:減少されたNaClを有するクラッカー中のヘスペリジン2Sの評価
H2Sの200ppmの投与量を、減少された塩化ナトリウム(NaCl)の含量を有しかつ塩化カリウム(KCl;Panreac)を含有するクラッカーに添加した。このクラッカーの組成を、以下の表4で開示する:
【表6】
【0113】
味覚マスキング効果を、実施例1で開示されるものと類似の手順に従って、アッセイした。専門家のパネルを使用して、H2Sの添加後の塩化カリウム含有調製物の不快な味の印象の軽減を決定した。
【0114】
この結果は、参照物と比較して顕著な改善を示した。
図2で示されるように、KCl含有クラッカーの辛味及び金属ノートは、抑制された。さらに、減少された塩化ナトリウム含量を有するクラッカーへのH2Sの添加は、塩味の増加をもたらし、全体的によりバランスの良いクラッカーの味を与えた。
【0115】
実施例4:ダークチョコレート95%におけるヘスペリジン2Sの評価
ダークチョコレート(95%)調製物における不快な味の印象の軽減を、異なる濃度のH2S(100ppm及び200ppm)を使用して評価した。
【0116】
ヘスペリジン2S(乾燥粉末)を、融解したダークチョコレート(95%)の試料中に組み込んだ。液体マスを冷却し、成形し、固形チョコレートを得た。
【表7】
【0117】
専門家のパネルを使用して、ダークチョコレート(95%)調製物の不快な味の印象の低下を決定した。
【0118】
図3で見られるように、200ppmのH2Sの添加は、苦味の軽減をもたらし、一方でココアノートが、僅かに増強された。
【0119】
さらに、200ppmのH2Sの添加は、顕著な改善を生じた。この場合、苦味及び渋味が軽減され、フラボノイドノートは存在しなかった(
図3参照)。
【0120】
実施例5:リモニン溶液中のヘスペリジン2Sの評価
柑橘類グリーニング病(Huanglongbing又はHLB)は、ベクター媒介性病原体により引き起こされる柑橘類の疾患である。原因物質は、運動性細菌、カンジダツス・リベリバクター(Candidatus Liberibacter)spp.である。
【0121】
罹患樹木は、発育が阻止され、季節外れの開花が多発し(その殆どは落下する)、かつ底部が緑色のままであり非常に苦味がある、厚く淡い色の果皮を有する、小さく不規則な形態の果実を産する。特徴的な苦味の主な原因の1つは、2つの分子:リモニン及びノミリン、の増加である。
【0122】
グリーニング病モデルにおけるヘスペリジンによる不快な味の印象(苦味)の軽減を調べるために、リモニン溶液を、表6で示されるように調製した。この溶液を、試験のために使用した。リモニン(99,66%)は、TargetMolから購入した。
【表8】
【0123】
リモニン溶液(50ppm)中のH2S(200ppm)の効果を、評価した。専門家のパネルを使用して、リモニン含有調製物の不快な味の印象の軽減を決定した。
【0124】
この結果(表7)は、200ppmの投与量のH2Sが実質的な脱苦味効果(30%の苦味軽減)を生じたことを示す。
【表9】
【0125】
実施例6:グリーニング病罹患オレンジジュースにおけるヘスペリジン2Sの評価
【0126】
グリーニング病に罹患した樹木からのオレンジから得られたオレンジジュース試料は、F&M Solutions(Brasil)によって提供された。このジュース試料は、地元のブラジルの農家由来の罹患した樹木の枝から回収したオレンジを搾ることによって調製された。搾ったオレンジジュースは、瓶詰めされ、当技術分野で周知の標準的な方法によって低温殺菌された。
【0127】
異なる濃度のヘスペリジン2S(100ppm及び200ppm)を、グリーニング病に罹患したオレンジジュースにおいて評価した。
【表10】
【0128】
専門家のパネルを使用して、異なる試料の不快な味の印象の軽減を決定した。
【0129】
この結果(
図4A及び
図4B)は、対照試料(グリーニング病罹患オレンジジュース)は、顕著な甘さを有しないが、高い酸味、渋味及び苦味を有し、長く続く(lingering)苦い後味を残すことを示す。
【0130】
100ppmのH2Sの添加は、苦味、酸味及び渋味の顕著な軽減を生じた。グリーンオレンジノート及び苦い後味の軽減もまた、検出された。さらに、全体的なオレンジノートの僅かな低下があるが、顕著なフラボノイドノートがある。
【0131】
200ppmのH2Sの添加はまた、程度はより小さいものの、苦味、酸味及び渋味の軽減を生じた。グリーンオレンジノート及び苦い後味の軽減もある。全体的なオレンジノートの軽減及びフラボノイドノートの増加がある。
【0132】
実施例7:搾りたてオレンジジュースにおけるヘスペリジン2Sの評価
異なる濃度(100ppm及び200ppm)のヘスペリジン2Sを含有するNaOH:H
2O溶液を、上(表1)で説明されるように調製し、搾りたてオレンジジュースに添加した。
【表11】
【0133】
専門家のパネルを使用して、異なる濃度のH2Sの添加後に搾りたてオレンジジュースの不快な味の軽減を決定した。
【0134】
この結果は、100ppm又は200ppmのH2Sが添加された場合、このオレンジジュース中の渋味及び苦味が明らかに軽減されたことを示した(
図5A及び5B)。
【0135】
実施例8:トニックウォーターにおけるヘスペリジン2Sの評価
異なる濃度(100ppm及び200ppm)のヘスペリジン2Sを含有するNaOH:H
2O溶液を、上(表1)で説明されるように調製し、下の表10で示されるように調製したトニックウォーター試料に添加した。
【表12】
【0136】
専門家のパネルを使用して、異なる試料の不快な味の印象の軽減を決定した。
【0137】
この結果(
図6A及び
図6B)は、100ppmのH2Sの添加が苦味の顕著な軽減を生じたことを示す。200ppmのH2Sの添加もまた、苦味の軽減を生じた。
【0138】
実施例9:オレウロペインを含有する植物ベースのバーガーにおけるヘスペリジン2Sの評価
植物ベースのバーガー中の不快な味の印象の軽減を、異なる濃度のH2S(100ppm及び200ppm)を使用して評価した。ヘスペリジン2S(乾燥粉末)を、以下の表11で示されるように、HealthTech Bio Actives,S.L.U.(Beniel,Spain)(2000ppm Olews 40%=600ppmオレウロペイン)により提供される2000ppm Olews 40%を含有する調製物中に組み込んだ:
【表13】
【0139】
専門家のパネルを使用して、植物ベースのバーガー調製物の不快な味の印象の軽減を決定した。
【0140】
図7Aで見られるように、100ppmのH2Sの添加は、苦味の軽減をもたらした。また、ウッディーなオフフレーバーが、軽減される。さらに、フラボノイドノートは存在しなかった(
図7A参照)。
【0141】
200ppmのH2Sの添加は、顕著な改善を生じた。この場合、苦味及び豆類様ノートが、軽減された。ウッディーなオフフレーバーノートも軽減された。さらに、フラボノイドノートは存在しなかった(
図7B参照)。
【0142】
実施例10:タンパク質ミルクシェイクにおけるヘスペリジン2Sの評価
異なる濃度(100ppm及び200ppm)のヘスペリジン2Sを含有するNaOH:H
2O溶液を、上(表1)で説明されるように調製し、以下の表12で示されるように調製されたタンパク質ミルクシェイクに添加した。
【表14】
【0143】
味覚マスキング効果を、実施例1で使用されたものと類似の手順に従い、アッセイした。専門家のパネルを使用して、H2Sの添加後にタンパク質ミルクシェイク調製物の不快な味の印象の軽減を決定した。
【0144】
この結果は、100ppm又は200ppmのH2Sが添加された場合、苦味が軽減されることを示した。さらに、乾燥ソラマメ様ノートもまた、軽減された(
図8)。
【国際調査報告】