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特表2024-507506インク消去流体及びそれを含有するキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】インク消去流体及びそれを含有するキット
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20240213BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20240213BHJP
【FI】
C09D11/16
C09D11/037
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549873
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2022054728
(87)【国際公開番号】W WO2022180190
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】21305223.6
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501436665
【氏名又は名称】ソシエテ ビック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE BIC
(71)【出願人】
【識別番号】521172561
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ デ オート アルサス
(71)【出願人】
【識別番号】521174152
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ ルシェルシュ サイエンティフィーク(シー.エヌ.アール.エス.)
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムギン,カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】カフィア,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ゲラル,フェリエル
(72)【発明者】
【氏名】スパンゲンベルグ,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】バウアーリン,クエンティン
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD06
4J039AD07
4J039AD20
4J039BA06
4J039BA32
4J039BC03
4J039BC07
4J039BC16
4J039BC20
4J039BC32
4J039BC36
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE23
4J039BE33
4J039CA03
4J039EA29
4J039GA26
4J039GA34
(57)【要約】
本発明は、a)着色剤として、金属ナノ粒子を含有し、当該金属ナノ粒子が、金属から本質的になり、当該金属が、銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅から選択される金属ナノ粒子と、分散剤と、を含有する水性筆記用インク組成物と、b)少なくとも1つの酸化剤を含有する消去剤流体とを含むキットに関する。本発明はまた、着色剤として金属ナノ粒子を含有する水性筆記用インク組成物を消去するための水性消去剤流体であって、当該金属ナノ粒子当該流体が、-酸化剤、及び-揮発性溶媒を含有する、水性消去剤流体にも関する。本発明は更に、消去剤流体を含有する筆記具、消去剤流体、及び/又は、それを含有するキットの使用、並びに多孔質基板上に筆記マークの誤りを修正する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水性筆記用インク組成物であって、より具体的には、水性ゲルインクであり、
-着色剤としての、より具体的には、唯一の着色剤としての金属ナノ粒子であって、前記金属ナノ粒子が金属から本質的になり、前記金属が銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅から選択され、より具体的には、前記金属が銀である、金属ナノ粒子、並びに、
-ビニルピロリドンのホモポリマー若しくはコポリマー、及び/又は、ビニルアルコールのホモポリマー若しくはコポリマー、及びこれらの混合物などの分散剤、を含有する水性筆記用インク組成物と、
b)少なくとも1つの酸化剤を含有する消去剤流体と、を含む、キット。
【請求項2】
前記インク組成物(a)及び前記消去剤流体(b)が、2つの異なる筆記具に収容されており、より具体的には、前記インク組成物(a)の筆記具が、ゲルペンであるか、又は前記インク組成物(a)及び前記消去剤流体(b)が、同一の筆記具に収容されており、より具体的には、前記筆記具が、少なくとも2つの別個のリザーバを収容しており、更により具体的には、前記水性筆記用インク組成物(a)用のアプリケータチップが、ゲルタイプのものである、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子の前記金属が、少なくとも銀、金、及びこれらの混合物を含み、より具体的には、前記金属ナノ粒子が、銀ナノ粒子である、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
前記水性筆記用インク組成物(a)が、プラズモンの効果を示す、請求項1~3のいずれか一項に記載のキット。
【請求項5】
前記水性筆記用インク組成物(a)の金属ナノ粒子の総量が、前記水性筆記用インク組成物(a)の総重量に対して0.01~10重量%、より具体的には、0.1~5重量%の範囲であり、及び/又は、前記水性筆記用インク組成物(a)の前記金属ナノ粒子が、1~200nm、具体的には、2~100nm、より具体的には、5~100nmの範囲の平均粒径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
前記分散剤が、ビニルピロリドンのホモポリマー若しくはコポリマー、及び/又は、ビニルアルコールのホモポリマー若しくはコポリマー、及び、これらの混合物から選択され、より具体的には、ビニルピロリドンのホモポリマー若しくはコポリマーであり、及び/又は、分散剤の量が、前記水性筆記用インクの総重量に基づき、0.01~10重量%の範囲、より具体的には、0.01~5重量%の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載のキット。
【請求項7】
前記水性筆記用インク組成物(a)が、
-還元剤、より具体的には、アルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、及び/又は、ヒドロキシルアミン(NHOH)、及び/又は、アスコルビン酸、及び/又は、シュウ酸、及び/又は、ギ酸、及び/又は、ホルムアルデヒド、及び/又は、ヒドラジン、及び/又は、置換ヒドラジン、例えば、1,1-ジメチルヒドラジン、又は1,2-ジメチルヒドラジン、及び/又は、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、及び/又は、トリブチルスタナン、及び/又は、水素化トリブチルスズ、及び/又は、トリフェニルホスフィン、及び/又は、トリフェニルホスファイト、及び/又は、トリクロロシラン、及び/又は、トリエチルシラン、トリス(トリメチルシリル)シラン、及び/又は、ポリメチルヒドロキシリサン、及び/又は、式(I)のレチノールのエステルから選択される還元剤
【化1】
(式中、Rは、任意選択的に置換されたC-C脂肪族基、より具体的には、(C-C)アルキル基、並びに/又は、クエン酸、及び/若しくは、クエン酸のエステル、アミド、及びチオエステルから選択されるクエン酸の誘導体、クエン酸若しくは前記誘導体の塩、水和物などのクエン酸若しくは前記誘導体の溶媒和物、及びそれらの混合物、並びに/又は、N-アシル-アミノフェノールであり、前記水酸基は、ベンゼン基のメタ位又はパラ位にあることが好ましく、パラ位にあることが好ましく、式HO-R1-NH-CO-R2のN-アシル-アミノフェノールであることが好ましく、式中、R1は、ベンゼン環であり、R2は、好ましくは1~6個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含むアルキル基であり、好ましくは水酸基は、メタ位又はパラ位にあることが好ましく、パラ位にあることが好ましい)と/あるいは、
-アルカリ金属水素化物であって、具体的には、水素化ホウ素ナトリウムNaBHである、アルカリ金属水素化物を更に含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
前記水性筆記用インク組成物(a)が、共溶媒、抗菌剤、腐食防止剤、消泡剤、及び/又は、レオロジー調整剤を更に含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のキット。
【請求項9】
前記消去剤流体(b)の前記酸化剤が、酸素O及びオゾンOなどの酸素、過酸化水素H、及び硝酸などの加水分解によって過酸化水素を生成することができる化合物、メメチルエチルセトンの有機過酸化物などの有機過酸化物、過酸化尿素、過ホウ酸塩及び過硫酸塩などのアルカリ金属臭素酸塩及び過酸塩、フッ素F及び塩素Clなどのハロゲン、パーマグネート、より具体的には、パーマグネート塩、より具体的には、過マンガン酸カリウムKMnOなどの酸化物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
前記消去剤流体(b)が、エタノール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、及びアセトニトリル、並びにこれらの混合物などの揮発性溶媒を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のキット。
【請求項11】
着色剤として、より具体的には、唯一の着色剤として、金属ナノ粒子を含有し、水性筆記用インク組成物を消去するための水性消去剤流体であって、前記金属ナノ粒子が金属から本質的になり、前記金属が銀、金、アルミニウム及び/又は銅から選択される水性消去剤流体であって、
-少なくとも1つの酸化剤、より具体的には、過酸化水素H、酸素O及びオゾンOなどの酸素、硝酸などの加水分解によって過酸化水素を生成することができる化合物、メチルエチルセトンの有機過酸化物などの有機過酸化物、過酸化尿素、過ホウ酸塩及び過硫酸塩などのアルカリ金属臭素酸塩及び過酸塩、フッ素F及び塩素Clなどのハロゲン、パーマグネート、より具体的には、パーマグネート塩、より具体的には、過マンガン酸カリウムKMnOなどの酸化物、並びにこれらの混合物からなる群から選択され、より具体的には、前記消去剤流体の総重量に基づき、10~60重量%、具体的には、20~40重量%の範囲の酸化剤総量で含有される酸化剤と、
-揮発性溶媒、より具体的には、水溶性溶媒、より具体的には、エタノール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、及びアセトニトリル、並びにそれらの混合物から選択される揮発性溶媒と、を含む、水性消去剤流体。
【請求項12】
前記揮発性溶媒が、エタノール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、及びアセトニトリル、並びにこれらの混合物から、より具体的には、エタノール、及び/又は、N,N-ジメチルホルムアミドから選択され、更により具体的には、エタノールである、請求項11に記載の水性消去剤流体。
【請求項13】
前記水性消去剤流体中の揮発性溶媒の総量が、前記消去剤流体の総重量に基づき、5~30重量%、より具体的には10~20重量%の範囲である、請求項11又は12に記載の水性消去剤流体。
【請求項14】
前記少なくとも1つの酸化剤が、過酸化水素H、酸素、硝酸、有機過酸化物、アルカリ金属臭素酸塩及び過酸塩、フッ素F及び塩素Clなどのハロゲン、酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択され、更により具体的には、前記少なくとも1つの酸化剤が、過酸化水素Hを含み、より具体的には、酸化剤の総量が、前記消去剤流体の総重量に基づき、10~60重量%、より具体的には、20~40重量%の範囲である、請求項11~13のいずれか一項に記載の水性消去剤流体。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか一項に記載の消去剤流体を含有する筆記具であって、具体的には、前記筆記具は、
-請求項11又は14に記載の消去剤流体を収容する軸方向バレルと、
-前記軸方向バレル内に貯蔵された、請求項11又は14に記載の消去剤流体を送出するペン本体と、を備え、
より具体的には、前記筆記具が、フェルトペン、修正液、マーカからなる群から選択され、更により具体的には、フェルトペンである、筆記具。
【請求項16】
唯一の着色剤として金属ナノ粒子を含有する水性筆記用インク組成物を消去するための、請求項11~14のいずれか一項に記載の、又は請求項1~10のいずれか一項に記載のキットに含有される、消去剤流体の使用であって、前記金属ナノ粒子が、金属から本質的になり、前記金属が、銀、金、アルミニウム、及び/又は銅から選択され、より具体的には、前記水性筆記用インク組成物が、請求項1及び3~8のいずれか一項に記載されているか、又は請求項1~10のいずれか一項に記載のキットに含有されるか、又は更なる着色剤とともに金属ナノ粒子を含有する水性筆記用インク組成物の色を変化させるためのものであり、前記金属ナノ粒子が、金属から本質的になり、前記金属が、銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅から選択され、前記水性筆記用インク組成物が、請求項1及び3~8のいずれか一項に具体的に記載されており、又は請求項1~10のいずれか一項に記載のキットに含有される、使用。
【請求項17】
唯一の着色剤として金属ナノ粒子を含有する水性筆記用インク組成物によって多孔質基板上に筆記マークの誤りを修正する方法であって、前記金属ナノ粒子が、金属から本質的になり、前記金属が、銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅から選択され、前記水性筆記用インク組成物が、請求項1及び3~8のいずれか一項に具体的に記載されるか、又は請求項1~10のいずれか一項に記載のキットに含有され、前記方法は、
A)修正の必要に応じて、前記筆記マークが裸眼で見えなくなるまで、請求項11~14のいずれか一項に記載されているか、請求項1~10のいずれか一項に記載のキットに含有される、前記消去剤流体を前記筆記マーク上に付与することと、
B)前記多孔質基板が乾燥すると、前記着色剤として金属ナノ粒子を含有する水性筆記用インク組成物であって、前記金属ナノ粒子が、金属から本質的になり、前記金属が銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅から選択され、前記水性筆記用インク組成物が、請求項1~10のいずれか一項に記載のキットに具体的に含有されるか、又は請求項1及び3~8のいずれか一項に記載のものである、水性筆記用インク組成物で、前記多孔質基板上の消去スポット上に上書きすることと、を含む、方法。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか一項に記載のキットを使用する方法であって、
A1)前記水性筆記用インク組成物(a)で多孔質基板上に書き込むことと、
B1)必要に応じて、ステップA1)で得られた、前記筆記マークの一部の色を、前記筆記マークが裸眼で見えなくなるまで、又は前記筆記マークの色が裸眼で変化するまで、前記消去剤流体(b)で消去するか、又は変化させることと、
C1)必要に応じて、前記多孔質基板が乾燥すると、前記多孔質基板の前記消去スポット上に前記水性筆記用インク組成物(a)で上書きすることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年2月25日に出願された、欧州特許出願第21305223.6号の表題「NK ERADICATING FLUID AND KIT CONTAINING IT」の利益を主張し、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、インク消去流体、消去可能なインク、及びそれらを含むキットに関する。
【0003】
3つの技術は、多孔質基板上に一旦付与され、筆記マークの誤りを修正するために使用される。
-インク消去剤システム(pHインク)であって、消去可能なインク(着色剤として少なくとも1つのpH感受性染料を伴う)と、消去流体(pH消去剤)と、書換えインク(少なくとも1つの非pH感受性染料を伴う)と、を含むインク消去剤システム。
【0004】
このインク消去剤システムに関連する1つの問題として、3つの異なる筆記具が必要とされ得ることであり、1つは消去流体用、1つは消去可能なインク用、1つは再書き込みインク用であり、これはユーザにとって好適でない。加えて、消費者は、元のマーキングに使用されるべき消去可能なインクと、再書き込みインクとを容易に混同し得る。
-熱変色性インク(着色剤としてロイコ染料を伴う)であって、消しゴムの摩擦によって発生する熱を仕様して消去可能なもの。
【0005】
熱変色性インクに関する技術的問題は、消去が低温で可逆的であるため、消去された描画線が不必要に再生され得ることである。
-可剥性インク(着色剤として顔料を伴う)であって、消しゴムの使用によって消去可能なもの。
【0006】
可剥性インクの技術的問題は、消去後に多孔質面の質感に変化を生じ、修正された誤りに読者の注目を引きつけてしまい得ることである。
【0007】
したがって、好ましくは、温度変化による望ましくない色損失、及び/又は、望ましくない色戻りを回避しつつ、良好な消去性を有する新規の水性消去可能インク組成物を見出す必要がある。加えて、2つの流体、すなわち、消去流体と、消去流体を使用して修正することができ、修正を行うために使用することもできるか、又は別の上書きインクの代わりに使用することもできる単一のインクと、だけが必要とされる、改良システムを見出すことが好都合であり得る。
【0008】
これらの技術的問題を克服するために、本発明者らは、驚くべきことに、水性インク組成物中での、着色剤としての金属ナノ粒子の使用であって、金属ナノ粒子が金属から本質的になり、金属が、ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマー、及び/又は、ビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマー、及びこれらの混合物など、銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅から選択される使用が、酸化剤によって容易に消去可能であり、同一のインクが上書きインクとして使用可能であることを見出している。更に、理論に束縛されるものではないが、着色剤として金属ナノ粒子を含む水性インク組成物中のポリビニルピロリドン、及び/又は、ポリビニルアルコールなどの分散剤の使用が、優れた立体安定性を提供し、及び/又は、金属ナノ粒子が直接接触すること、及び/又は、凝集すること、及び/又は、水性インク中で沈殿することを防ぐのを助け、これによってより強固な、及び/又は、安定したプラズモン効果が得られるようにする。特に、このような集塊、及び/又は、凝集、及び/又は、沈降は、プラズモンの効果の獲得を妨げることもある。更に、分散剤の存在は、インクが酸化剤でより容易に消去されることを可能にし得る。
【0009】
米国特許第5427278号は、透明又は半透明の強調インクを除去するための酸化剤の使用を記載している。しかしながら、このようなインクは、着色剤として金属ナノ粒子を含有しない。更に、消去剤として使用できる酸化剤のリストは短いものしかなく、例えば、ハロゲン含有漂白液;次亜塩素酸塩(漂白剤)、トリアジン塩素、及びトリアジン型誘導体で形成されるアルカリ及びアルカリ土類塩溶液;次亜塩素酸ナトリウム、リチウム、及びカルシウム溶液;ナトリウム又はカリウムのジクロロ-s-トリアジントリオン及びトリクロロ-ストリアジントリオン溶液など、クロロリントリアジントリオン溶液;過硫酸ナトリウム、カリウム、及びアンモニウム、及び一過硫酸カリウムの溶液;並びに1-ブロモ-3-クロロ-5-ジメチルヒダントイン単独、又は1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントインとの組み合わせの溶液である。特に、この文献では、過酸化水素の3%溶液、過酸化水素の6%溶液、アンモニアの添加された過酸化水素の6%溶液(ヘアーブリーチ剤)が効果的でないことと、更に、イットリウム、ストロンチウム、ナトリウム、バリウム、カリウム、セリウム、銀、コバルト、セリウムアンモニウム、及びランタンの硝酸塩の種々の溶液による試験、並びに、過塩素酸、重クロム酸、及び過マンガン酸カリウムによる試験もまた不満足な結果となることが証明されたことについて言及している。したがって、特定の酸化剤のみを消去剤として使用することができた。
【0010】
欧州特許第2180022号は、消去流体及び消去可能インクを開示している。しかしながら、このようなインクは、着色剤として金属ナノ粒子を含有しない。更に、酸化剤は消去剤の長いリストの中で引用されており、具体例は与えられていない。
【0011】
国際公開第2020/104367号及び国際公開第2020/104346号は、着色剤として金属ナノ粒子を含有する水性筆記用インク組成物を開示している。しかしながら、これらの文献は、水性インク中への分散剤の添加の存在を開示しておらず、筆記マークを消去するために酸化剤を含有する消去剤流体を使用することが可能であることも開示していない。
【0012】
したがって、特定の消去流体及び特定の消去可能インクを含み、特に、上書きインクとしても使用することができるキットが必要とされている。
【0013】
したがって、本発明は、
a)水性筆記用インク組成物であって、より具体的には、水性ゲルインクであり、
-着色剤としての、より具体的には、唯一の着色剤としての金属ナノ粒子であって、金属ナノ粒子が金属から本質的になり、金属が銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅から選択され、より具体的には、金属が銀である、金属ナノ粒子、並びに、
-ビニルピロリドンのホモポリマー若しくはコポリマー、及び/又は、ビニルアルコールのホモポリマー若しくはコポリマー、及びこれらの混合物などの分散剤、を含有する水性筆記用インク組成物と、
b)少なくとも1つの酸化剤を含有する消去剤流体と、を含む、より具体的には、以上からなるキットに関する。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。特定の実施形態は、本発明をよりよく説明するためのものであるが、本発明はこれらの特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0015】
本発明の意味において、「を含む(comprising a)」及び「を含有する(containing a)」は、「少なくとも1つを含む(comprising at least one)」及び「少なくとも1つを含有する(containing at least one)」と同義であると理解されるべきである。
【0016】
本発明の意味において、「...と...との間」又は「...から...までの範囲」という表現は、境界値を含むものと理解されるべきである。
【0017】
本発明の意味において、「インク」という用語は、筆記具、特にペンにおいて使用されることを意図された「筆記用インク」を意味することが意図される。筆記用インクは、印刷機で使用され、同じ技術的制約、したがって同じ仕様を有しない「印刷用インク」と混同してはならない。実際、筆記用インクは、筆記具のチャネルよりも大きいサイズの固体粒子を含有してはならず、これは、必然的に不可逆的に筆記が停止されることになる、筆記具の詰まりを回避するためである。更に、使用される筆記具に好適なインク流量、特に100~500mg/200mの筆記流量、具体的には150~400mg/200mの筆記流量を可能にしなければならない。また、筆記媒体を汚すことを回避するために、十分に急速に乾く必要がある。また、経時的な移染(出液)の問題を回避する必要がある。したがって、本発明によるインクは、それが意図される筆記具、特にペンに好適であろう。
【0018】
更に、「筆記用インク」は、筆記中の漏出を回避するために、流動性が高すぎてはならない。しかしながら、筆記動作の流れを容易にするために、十分に流動的である必要がある。
【0019】
本発明の特定の場合において、筆記用インクは、より具体的には、「ゲルインク」であり得る。特に、このようなゲルインクは、チキソトロピー性インクに相当し、特に20℃で、静止状態(1s-1のせん断速度)にて測定された粘度は、例えば、60mmの円錐及び1°の角度を有するMalvern KINEXUSなどの円錐及び平板型レオメータなど、同一のレオメータを使用して、20℃で5,000s-1のせん断速度にて測定された粘度とは異なり、特に、これより高くなる。特定の実施形態において、これらの条件下で測定されたゲルインクの粘度は、1s-1のせん断速度で、1,000~7,000mPa.s、具体的には、2,000~5,000mPa.s、より具体的には、2,500~3,500mPa.s、5,000s-1のせん断速度で、具体的には、5~50mPa.s、より具体的には、7~40mPa.s、更により具体的には、10~20mPa.sの範囲である。
【0020】
本発明の意味において、「本質的に金属からなる金属ナノ粒子」という用語は、ナノ粒子の主成分が金属であり、特に、金属酸化物(酸化銀、酸化金、酸化銅、酸化アルミニウム)などの不純物などの金属ナノ粒子中の他の成分が微量にしか存在しないことを意味することが意図されている。より具体的には、金属の含有量は、ナノ粒子の総重量に対して、少なくとも95重量%、更により具体的には、少なくとも98重量%である。より具体的には、不純物の含有量は、ナノ粒子の総重量に対して、5重量%未満、更により具体的には、2重量%未満である。
【0021】
特定の実施形態において、金属ナノ粒子は金属のみからなる。
【0022】
より具体的には、本発明に係る金属ナノ粒子の金属は、少なくとも銀、金、及びこれらの混合物、更により具体的には、少なくとも銀を含み、更により具体的には、本質的にこれらからなり、特に、これらで構成される。更により具体的には、金属ナノ粒子は、銀ナノ粒子、金ナノ粒子、又はこれらの混合物である。更により具体的には、金属ナノ粒子は、銀ナノ粒子である。
【0023】
特定の実施形態によると、水性筆記用インク組成物は、鉄、特に、鉄粉を本質的に含まない。
【0024】
より具体的には、本発明に係る金属ナノ粒子は、1~200nm、更により具体的には、2~100nm、更により具体的には、5~100nmの範囲の平均粒径を有する。より具体的には、金属ナノ粒子の最長寸法は、1~200nm、更により具体的には、2~100nm、更により具体的には、5~100nmの範囲である。より具体的には、金属ナノ粒子の全ての寸法は、1~200nm、更により具体的には、2~100nm、更により具体的には、5~100nmの範囲である。この平均粒径及び粒子の寸法は、ISO9001:2015規格に従って、2D画像(顕微鏡:JEOL ARM 200)の分析によって判定される。
【0025】
本発明に係る金属ナノ粒子は、球、プレートレット、ロッド、ワイヤ(特に、五角形、Y字型、K字型、及び多分岐ワイヤ)、バー、ファセット準球形状、角柱、花形状、多面体形状、三角形形状、双角錐形状、切頭三角形形状、正方形形状、長方形形状、六角形プレート、ウニ形状又は更に不規則な形状、より具体的には、ウニ形状、及び/又は、多面体形状など、異なる形状を有することができる。これらは球形状ではないのがより好都合である。
【0026】
特定の実施形態において、水性筆記用インク組成物(a)の金属ナノ粒子の総量は、水性筆記用インク組成物(a)の総重量に対して、0.01~10重量%、具体的には、0.01~5重量%、より具体的には、0.1~5重量%の範囲である。
【0027】
本発明に係る金属ナノ粒子は、水性筆記用インク組成物(a)中で着色剤の役割を有する。
【0028】
特定の実施形態において、金属ナノ粒子を含有する水性筆記用インク組成物(a)は、プラズモンの効果(プラズモン効果とも称される)を示す。したがって、使用される成分の含有量に応じて、インク組成物の異なるプラズモンの色が、得られ得る。
【0029】
実際、プラズモンの色は、金属ナノ粒子による光吸収、及び/又は、水性筆記用インク組成物(a)注の金属ナノ粒子同士の離間の両方によるものである。
【0030】
水性筆記用インク組成物(又はこれらが含まれる材料)の色は、その特性とともに、これらのサイズ、形状、及び距離に応じて変化し得る。これは、金属ナノ粒子の場合に頻繁に存在するプラズモン共鳴によるものである。
【0031】
金属ナノ粒子を特定の周波数の波に曝露すると、電子が特定の場所に集まり、金属ナノ粒子の形状及びサイズに応じて変化する。この電子の集塊は、金属ナノ粒子の異方性を生じ得、これがひいては光の吸収と散乱の変化に繋がり、結果として特定の色を生じる。
【0032】
プラズモン共鳴は、当該金属ナノ粒子の結合による金属ナノ粒子間の距離によっても影響を受けることがある。実際、金属ナノ粒子が近ければ近いほど、これらは互いに相互作用し、プラズモン効果とも称される、これらの結合効果を増加させる。
【0033】
同様に、金属ナノ粒子の形状がプラズモン共鳴に影響を与える。
【0034】
特に、かかるプラズモンの効果は、UV(ultraviolet、紫外線)-可視-NIR(near infra-red、近赤外)吸収分光法によって特徴付けることができる。
【0035】
具体的には、水性筆記用インクの総量は、水性インク組成物の総重量に対して、50~95重量%、より具体的には、60~90重量%、更により具体的には、70~85重量%の範囲である。
【0036】
水性筆記用インク(a)は、ビニルピロリドンのホモポリマー若しくはコポリマー、及び/又は、ビニルアルコールのホモポリマー若しくはコポリマー、並びにこれらの混合物、より具体的には、ビニルピロリドンのホモポリマー、及び/又は、コポリマー、更により具体的には、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)など、分散剤(安定化剤とも称される)を含有する。
【0037】
より具体的には、ビニルピロリドンのホモポリマー及び/又はコポリマー(複数も含む)、特に、ホモポリマーは、5kDa超、具体的には、15~2000kDa、より具体的には、30~500kDa、更により具体的には、80~350kDaの重量平均分子量を有してもよく、例えばPVP K40である。
【0038】
より具体的には、ビニルアルコールのホモポリマー及び/又はコポリマー(複数も含む)、特に、ホモポリマーは、20kDa超、具体的には、50~100kDa、より具体的には、60~80kDaの重量平均分子量を有し得る。
【0039】
理論に束縛されるものではないが、分散剤は、特に、金属ナノ粒子の集塊、及び/又は、凝集、及び/又は、沈降を回避し得る。このような集塊、及び/又は、凝集、及び/又は、沈降は、プラズモンの効果の形成を妨げる。特に、そのような集塊、及び/又は、凝集、及び/又は、沈降は、プラズモンの効果の獲得を妨げる可能性があるため、そのような筆記用インクは、酸化剤を含有する消去剤流体で消去することがより困難になる。
【0040】
より具体的には、分散剤の総量は、水性筆記用インク組成物(a)の総重量に対して、0.01~10重量%、より具体的には、0.01~5重量%、更により具体的には、0.1~0.4重量%の範囲である。
【0041】
水性筆記用インク組成物(a)は、
-還元剤、より具体的には、アルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、及び/又は、ヒドロキシルアミン(NHOH)、及び/又は、アスコルビン酸、及び/又は、シュウ酸、及び/又は、ギ酸、及び/又は、ホルムアルデヒド、及び/又は、ヒドラジン、及び/又は、置換ヒドラジン、例えば、1,1-ジメチルヒドラジン、又は1,2-ジメチルヒドラジン、及び/又は、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、及び/又は、トリブチルスタナン、及び/又は、水素化トリブチルスズ、及び/又は、トリフェニルホスフィン、及び/又は、トリフェニルホスファイト、及び/又は、トリクロロシラン、及び/又は、トリエチルシラン、トリス(トリメチルシリル)シラン、及び/又は、ポリメチルヒドロキシリサン、及び/又は、式(I)のレチノールのエステルから選択される還元剤
【0042】
【化1】
(式中、Rは、任意選択的に置換されたC-C脂肪族基、より具体的には、(C-C)アルキル基、並びに/又は、クエン酸、及び/若しくは、クエン酸のエステル、アミド、及びチオエステルから選択されるクエン酸の誘導体、クエン酸若しくは当該誘導体の塩、例えば水和物などのクエン酸若しくは当該誘導体の溶媒和物、及びそれらの混合物、並びに/又は、N-アシル-アミノフェノールであり、当該水酸基は、ベンゼン基のメタ位又はパラ位にあることが好ましく、パラ位にあることが好ましく、式HO-R1-NH-CO-R2のN-アシル-アミノフェノールであることが好ましく、式中、R1は、ベンゼン環であり、R2は、好ましくは1~6個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含むアルキル基であり、好ましくは水酸基は、メタ位又はパラ位にあることが好ましく、パラ位にあることが好ましい)と/あるいは、
-アルカリ金属水素化物であって、具体的には、水素化ホウ素ナトリウムNaBHである、アルカリ金属水素化物を更に含有し得る。
【0043】
具体的には、式(I)のレチノールのエステル(複数も含む)において、Rは、C-C脂肪族基を表し、当該脂肪族基が、任意選択的に、少なくとも1つのヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、C-Cアルキル、及び/又は、C-Cアルコキシ基で置換されており、当該脂肪族基は、より具体的には、C-Cアルキル基、更により具体的には、C-Cアルキル基、特に、メチル基であり、特に、置換されていない。Rがメチル基を表す、式(I)によって表されるレチノールのエステルは、酢酸レチニル(CAS番号:127-47-9)として一般に知られており、酢酸ビタミンAとしても知られており、Sigma-Aldrichから購入することができる。
【0044】
具体的には、N-アシル-アミノフェノールは、N-アセチル-パラ-アミノフェノールである。この特定の実施形態によると、式HO-R1-NH-CO-R2において、R1は、ベンゼン環であり、R2は、メチルラジカルであり、水酸基は、パラ位にある。パラセタモール又はアセトアミノフェンとしても知られるN-アセチル-パラ-アミノフェノール(CAS番号:103-90-2)は、Doliprane(登録商標)、Tylenol(登録商標)、Calpol(登録商標)、Panadol(登録商標)、Dafalgan(登録商標)、Efferalgan(登録商標)などの異なる商品名で購入することができる。
【0045】
より具体的には、水性筆記用インク組成物(a)の還元剤は、
-クエン酸塩及び/又は塩化物のアルカリ金属塩、及び/又は、アルカリ土類金属塩、及び/又は、炭酸塩、より具体的には、クエン酸アルカリ塩、及び/又は、アルカリ塩化物塩、及び/又は、アルカリ炭酸塩、更により具体的には、クエン酸ナトリウム、及び/又は、塩化マグネシウム、及び/又は、塩化カルシウム、更により具体的には、クエン酸ナトリウム;
-アスコルビン酸;
-アルカリ金属水素化物、具体的には、水素化ホウ素ナトリウムNaBH
-及び、これらの混合物から選択される。
【0046】
より具体的には、還元剤は、クエン酸ナトリウム(特に、クエン酸三ナトリウム)、アスコルビン酸、及び水素化ホウ素ナトリウムNaBHの混合物である。
【0047】
本発明において、クエン酸塩のアルカリ金属は、クエン酸リチウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ルビジウム、クエン酸セシウム、及びクエン酸フランシウム、具体的には、クエン酸ナトリウム又はクエン酸カリウム、より具体的には、クエン酸ナトリウムから選択され得る。
【0048】
本発明において、クエン酸塩のアルカリ土類金属塩は、クエン酸ベリリウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸ストロンチウム、クエン酸バリウム、及びクエン酸ラジウム、具体的には、クエン酸マグネシウム、又はクエン酸カルシウム、より具体的には、クエン酸カルシウムから選択され得る。
【0049】
一本発明において、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、及びこれらの混合物、より具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、及び炭酸バリウムのうちの少なくとも1つ、更により具体的には、炭酸カルシウムから選択され得る。
【0050】
本発明において、アルカリ金属水素化物は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(NaHB(OAc))、水素化ホウ素トリ-sec-ブチルナトリウム、水素化ホウ素トリ-sec-ブチルホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化ホウ素トリ-sec-ブチルリチウム、水素化ホウ素ニッケル、アルミン酸水素化リチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、ナトリウムビス(2-水素化メトキシエトキシアルミニウムから選択されてもよく、具体的には、アルカリ金属水素化物は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)である。
【0051】
特に、存在する場合には、水性筆記用インク組成物(a)のアルカリ金属塩の総量は、水性筆記用インク組成物(a)の総重量に基づき、少なくとも0.001重量%であり、特に0.01~0.05重量%の範囲である。
【0052】
特に、存在する場合には、水性筆記用インク組成物(a)のアルカリ金属水素化物の量は、水性筆記用インク組成物(a)の総重量に基づき、少なくとも0.0000001重量%であり、より具体的には、0.0000001~0.00007重量%の範囲である。
【0053】
本発明において、クエン酸の誘導体は、クエン酸のエステル、アミド、及びチオエステル、クエン酸又は当該誘導体の塩、水和物などのクエン酸又は当該誘導体の溶媒和物、並びにこれらの混合物から選択される。クエン酸及び/又は誘導体の供給業者は、Fluka(商標)、Sigma-Aldrich(商標)、TCI chemicals(商標)の中から選択される。
【0054】
クエン酸のエステルは、具体的には、アルキルエステル、好ましくは、C1-30アルキルエステル、好ましくはC1-20アルキルエステル、好ましくはC1-6アルキルエステルである。クエン酸のエステルは、モノエステル、ジエステル及び/又はトリエステル、好ましくはクエン酸のトリエステルであり得る。本発明において使用されるクエン酸のエステルは、クエン酸イソデシル、クエン酸イソプロピル、クエン酸ステアリル、クエン酸ジラウリル、クエン酸ジステアリル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリカプリリル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリエチルヘキシル、クエン酸トリヘキシルデシル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリラウリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、クエン酸トリイソステアリル、クエン酸トリステアリル、クエン酸エチル、クエン酸トリブチル又はクエン酸トリエチルなどのクエン酸トリC12-15-アルキル、クエン酸トリカプリリル、クエン酸トリエチルへキシル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリイソステアリル、クエン酸イソデシル、クエン酸ステアリル、クエン酸ジラウリル、及びクエン酸エチルを含む。好ましくは、本発明のクエン酸のエステルは、クエン酸トリブチル及びクエン酸トリエチルである。
【0055】
本発明において使用されるクエン酸のアミドは、一級アミンとクエン酸との反応によって調製され得る。アミドを形成するためのアミノ化反応は、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,4th Ed.,Vol.2,p.348-351に記載されているように、有機化学分野で周知の様々な条件を使用して実施され得る。好ましい方法は、プロトン性溶剤中でクエン酸を3つ以上の等価物と反応させることを含む。全ての一級アミン又は好ましくは必要なC1~C18のアルキル置換基を含有する一級アミンの混合物が、本発明のトリアルキルシトラミドの調製に利用され得る。シトラミド中のアルキル基は、同じであるか、又は異なっていてもよく、直鎖状又は分岐状であってもよい。好適なアルキル基の例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、2-メチルブチル、3-メチル-2-ブチル、n-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、シクロヘキシル、2-エチルブチル、4-メチル-2-ペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシルである。具体的には、本発明のクエン酸のアミドは、トリブチルシトラミド及びトリエチルシトラミドである。
【0056】
本発明において使用されるクエン酸のチオエステルは、チオールとクエン酸を有する誘導体との反応によって調製され得る。チオール及び誘導体のいくつかの例は、アリルメルカプタン、2-アミノエタンチオール、2-アミノベンゼンチオール、3-アミノベンゼンチオール、4-アミノベンゼンチオール、1,3-ベンゼンジメタンチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオールが使用され得る。具体的には、クエン酸のチオエステルは、アリルメルカプタンとクエン酸との間の反応によって得られる。
【0057】
クエン酸塩としても知られているクエン酸の塩は、カルシウム、カリウム、又はナトリウムなどの様々なレベル(モノ、ジ、トリ)の異なる金属カチオンを伴う場合がある。クエン酸は、様々な果物及び野菜、特に柑橘系の果物中に微量より多く存在する。クエン酸塩は、全て、クエン酸とそれぞれの塩の水酸化物又は炭酸塩との化学反応によって生成される。
【0058】
本発明において使用されるクエン酸の塩は、クエン酸アルミニウム、クエン酸カルシウム、クエン酸銅、クエン酸二アンモニウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸第二銅、クエン酸第二鉄、クエン酸マグネシウム、クエン酸マンガン、クエン酸一ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸亜鉛を含む。具体的には、本発明のクエン酸の塩は、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、及びクエン酸二アンモニウムである。
【0059】
本発明におけるクエン酸又は当該誘導体の溶媒和物は、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム塩二水和物、クエン酸二ナトリウム塩三水和物の中から選択される。具体的には、本発明のクエン酸の溶媒和物は、クエン酸一水和物である。
【0060】
特定の実施形態において、水性筆記用インク組成物(a)中の還元剤の量は、水性筆記用インク組成物(a)の総重量に対して0.0000001重量%~0.5重量%の範囲である。
【0061】
特定の実施形態において、水性筆記用インク組成物(a)は、クエン酸ナトリウムを、水性筆記用インク組成物(a)の総重量に対して、具体的には0.001~0.1重量%、より具体的には、0.01~0.05重量%の範囲の総量で含有する。
【0062】
特定の実施形態において、水性筆記用インク組成物(a)は、アスコルビン酸を、水性筆記用インク組成物(a)の総重量に対して、具体的には0.0005~0.5重量%、より具体的には、0.001~0.1重量%、更により具体的には、0.005~0.05重量%の範囲の総量で含有する。
【0063】
特定の実施形態において、水性筆記用インク組成物(a)は、水素化ホウ素ナトリウムを、水性筆記用インク組成物(a)の総重量に対して、具体的には、少なくとも0.0000001重量%の総量で、より具体的には、0.0000001~0.00007重量%の範囲で含有する。
【0064】
水性筆記用インク(a)はまた、以下に記載されるとおり、古典的なインク原料、特に、助溶剤、抗菌剤、腐食防止剤、消泡剤、レオロジー改質剤などの古典的なゲルインク原料も含み得る。
【0065】
したがって、水性筆記用インク(a)は、共溶媒を含み得る。使用することができる助溶剤の中で、以下の
-トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレン-グリコール-モノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルフェノキシエタノール、フェノキシプロパノールなどのグリコールエーテル、
-アルコールであって、ベンジルアルコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどのC-C15の直鎖又は分枝アルコール、
-酢酸エチル又は酢酸プロピルなどのエステル、
-炭酸プロピレン又は炭酸エチレンなどの炭酸エステル、
-これらの混合物など、水に混和性の極性溶剤について言及し得る。
【0066】
特定の実施形態において、助溶剤は、グリコールエーテルからなる群から選択され、より具体的には、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレン-グリコール-モノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、及びそれらの混合物からなる群から選択される。更に具体的な実施形態では、助溶剤は、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0067】
具体的には、水性筆記用インク(a)中の共溶媒の総量は、水性筆記用インク(a)の総重量に対して、5~35重量%、より具体的には、9~30重量%、更により具体的には11~25重量%の範囲である。
【0068】
水性筆記用インク(a)は、イソチアゾリノン(Thor製のACTICIDE(登録商標))、具体的には、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、及びこれらの混合物からなる群から選択される抗菌剤を含み得る。
【0069】
具体的には、水性筆記用インク(a)中の抗菌剤の総量は、水性筆記用インク(a)の総重量に対して0.01~0.5重量%、より具体的には、0.1~0.2重量%の範囲である。
【0070】
水性筆記用インク(a)は、腐食防止剤、具体的には、トリトリアゾール、ベンゾトリアゾール、及びこれらの混合物からなる群から選択される腐食防止剤を含み得る。
【0071】
具体的には、水性筆記用インク(a)中の腐食防止剤の総量は、水性筆記用インク(a)の総重量に対して、0.05~1重量%、より具体的には、0.07~0.6重量%、更により具体的には、0.08~0.4重量%の範囲である。
【0072】
水性筆記用インク(a)は、消泡剤、具体的には、ポリシロキサン系消泡剤、より具体的には、変性ポリシロキサンの水性エマルジョン(Synthron製のMOUSSEX(登録商標)、Evonik製のTEGO(登録商標)Foamexなど)を含み得る。
【0073】
具体的には、水性筆記用インク(a)中の消泡剤の総量は、水性筆記用インクの総重量に対して、0.05~1重量%、より具体的には、0.1~0.5重量%、更により具体的には、0.2~0.4重量%の範囲である。
【0074】
水性筆記用インク(a)は、ゲル化効果を生じることのできる、特に、粘度がせん断速度の時間に依存するチキソトロピー現象を生じることが可能な、例えば、キサンタンガム、アラビアガム、及びこれらの混合物などの多糖類からなる群から選択されるレオロジー改質剤を含んでもよい。
【0075】
具体的には、水性筆記用インク(a)中のレオロジー改質剤の総量は、水性筆記用インク(a)の総重量に対して、0.08~2重量%、より具体的には、0.2~0.8重量%、更により具体的には、0.3~0.6重量%の範囲である。
【0076】
水性筆記用インク(a)はまた、
-水酸化ナトリウム及びトリエタノールアミンなどのpH調整剤、
-潤滑剤、
-合体剤、
-架橋剤、
-湿潤剤、
-可塑剤、
-酸化防止剤、及び
-UV安定剤など、他の添加剤も含み得る。
【0077】
特定の実施形態において、本発明に係る水性筆記用インクは、金属ナノ粒子以外の他のいかなる着色剤も含有しない。したがって、いかなる染料又は顔料も含有しない。この場合、水性筆記用インク(a)の色は、金属ナノ粒子のみによるものであり、インクは、消去可能な水性筆記用インクである。
【0078】
本発明の目的のために、「消去可能なインク」という用語は、本発明に係る消去剤流体(b)の使用によって、筆記後に消去することができる任意のインクを意味することが意図される。したがって、このインクによって、特に多孔質支持体上に得られた、筆記マークは、本発明に係る消去剤流体(b)を使用することによって、筆記後いつでも消去することができる。
【0079】
具体的には、インクは、不可逆消去可能な水性筆記用インクである。インクの色は、消去後に再び現れることはできない。
【0080】
別の特定の実施形態において、本発明に係る水性筆記用インク(a)は、金属ナノ粒子以外の更なる着色剤を含有する。この場合、水性インク組成物は、変色性インクである。
【0081】
本発明の目的のために、「変色性インク」という用語は、その色(第1又は初期色)が、本発明に係る消去剤流体(b)の使用によって、書き込み後に、好都合なのは第1の色とは異なる別の色(第2の色)に変化することのできる任意のインクを意味することが意図される。したがって、このインクによって、特に多孔質支持体上に得られた筆記マークの色は、本発明に係る消去剤流体(b)の使用によって、筆記後いつでも別の色に変化させることができる。
【0082】
具体的には、インクは、不可逆色変化水性筆記用インクである。一度色が変化すると、それを再び変化させることは不可能であり、特に、初期色(第1の色)に戻すことは不可能である。
【0083】
特に、更なる着色剤は、染料、顔料、又はこれらの混合物、特に、染料であり得る。
【0084】
染料又は顔料は、当業者に公知の任意の染料又は顔料であってもよく、水性筆記用インク、特に、水性筆記用ゲルインクに使用することができる。具体的には、水性筆記用インク(a)中の更なる着色剤の総量は、水性筆記用インク(a)の総重量に基づき、0.01~30重量%、より具体的には、0.05~25重量%の範囲である。
【0085】
特定の実施形態において、着色剤は、染料である。
【0086】
「染料」という用語は、それらが可溶化される媒体、すなわち、水性筆記用インク(a)の水性媒体に可溶性であり、インクが消去剤流体(b)によって消去された後に、多孔質基材上に塗布されたインク組成物を着色することが意図された、任意の形態の着色された鉱物又は有機粒子を意味すると理解されるべきである。水性筆記用インク組成物(a)中の染料の存在により、消去剤流体(b)に消去することにより、筆記の初期の色を別の色に変化させることができるようになる。好都合なのは、染料が、熱変色性染料又は光変色性染料又は感圧染料ではないことである。
【0087】
したがって、本発明に係る水性筆記用インク組成物(a)は、少なくとも1つの染料を含む。水性筆記用インク組成物(a)はまた、いくつかの染料を含み得る。染料は、例えば、直接染料(例えば、C.Iダイレクトブラック17、19、22、32、38、51、71;C.Iダイレクトイエロー4、26、44、50;C.Iダイレクトレッド1、4、23、31、37、39、75、80、81、83、225、226、227;C.Iダイレクトブルー1、15、41、71、86、87、106、108、199等)、酸性染料(例えば、C.Iアシッドブラック1、2、24、26、31、52、107、109、110、119、154;C.Iアシッドイエロー1、7、17、19、23、25、29、38、42、49、61、72、78、110、127、135、141、142;C.Iアシッドレッド8、9、14、18、26、27、33、35、37、51、52、57、82、83、87、92、94、111、129、131、138、186、249、254、265、276;C.I.アシッドバイオレット15、17、49;C.Iアシッドブルー1、3、7、9、15、22、23、25、40、41、43、62、78、83、90、93、100、103、104、112、113、158;C.Iアシッドグリーン3、9、16、25、27;C.Iアシッドオレンジ56など)、食用色素(例えば、C.I.フードイエロー3など)、マラカイトグリーン(C.I4200)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)メチルバイオレットFN(C.I.42535)、ローダミンF4G(C.I.45160)、及びローダミン6GCP(C.I45160)、並びにこれらの混合物から選択され得る。
【0088】
存在する場合、水性筆記用インク(a)中の染料の総量は、水性筆記用インク組成物(a)の総重量に対して重量に対して、0.01~30重量%、好都合なのは、0.05~25重量%、より好都合なのは0.3~10重量%の範囲であり得る。
【0089】
別の特定の実施形態において、着色剤は、顔料である。
【0090】
「顔料」という用語は、それらが可溶化される媒体、すなわち、水性筆記用インク組成物(a)の水性媒体に不溶性であり、インクが消去剤流体(b)によって消去された後に、多孔質基材上に塗布されるとインク組成物を着色することが意図された、金属ナノ粒子を除く任意の形態の白色又は有色の鉱物又は有機粒子を意味するものとして理解されるべきである。したがって、顔料としては、例えば、カーボンブラック、群青、二酸化チタン顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、スレン顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、トロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料等の有機顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、真珠光沢顔料、合成マイカ、ガラスフレーク、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物の透明被膜等が挙げられ得る。顔料はまた、一般的に、粉砕又は粒子サイズの低減が適切な分散剤を伴って安定した分散体を達成した、分散体中に含有される。顔料は、具体的には、顔料分散体であり、より具体的には、顔料ブラック7(SunChemical(登録商標)によるFlexiverse III black 7など)、顔料ブルー15:3(SunChemical(登録商標)によるAPE FRE BL 15:3 DISPなど)、顔料レッド(SunChemical(登録商標)によるPigment red 210など)、顔料グリーン7(SunChemical(登録商標)によるSunsperse Eco green、Flexiverse FD Green、Flexiverse Green 7、Flexiverse HC GRN 7など)、顔料バイオレット23(SunChemical(登録商標)によるCellusperse(登録商標)Aバイオレット4 BPなど)、顔料イエロー74(SunChemical(登録商標)によるFG Yellow 1SLなど)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施形態において、顔料は、ピグメントブラック7(SunChemical(登録商標)によるFlexiverse III black 7など)、ピグメントブルー15:3(SunChemical(登録商標)によるAPE FRE BL 15:3 DISPなど)、及びこれらの混合物からなる群において選択される。
【0091】
特定の実施形態によると、顔料分散体中の顔料の直径は、1μm未満、好ましくは、0.7μm未満である。
【0092】
具体的には、水性筆記用インク(a)中の顔料分散体の総量は、水性筆記用インク組成物(a)の総重量に対して、0.1~30重量%、より具体的には、0.05~25重量%、更により具体的には、0.3~10重量%の範囲である。
【0093】
具体的には、顔料分散体中の顔料の総量は、顔料分散体の総重量に対して、10~50重量%、より具体的には、30~50重量%、更により具体的には、35~45重量%、更により具体的には、38~45重量%の範囲である。
【0094】
特定の実施形態において、水性筆記用インク(a)は、固定色を有する。
【0095】
本発明の意味において、「固定色」という用語は、目視観察による水性ゲルインクの色が、具体的には、7暦日(1週間)以内、したがって消去剤流体(b)の使用前には、紙、段ボール、又は織物の吸収性支持体上への塗布前、及び吸収性支持体上への塗布後、同一であることを意味することが意図される。別の特定の実施形態において、水性筆記用インク(a)は、可変色を有さない。
【0096】
本発明の意味において、「可変色」という用語は、目視観察による水性ゲルインクの色が、具体的には、消去剤流体(b)の使用前、紙、段ボール、又は織物の吸収性支持体上への塗布前、及び吸収性支持体上への塗布後、同一でないことを意味することが意図される。
【0097】
本発明の目的のために、「多孔質基材」という用語は、細孔を含有する基材を意味することを意図している。多孔質基材は、インクのような外部物質が基材内に浸透することを可能にする、空のスペース又は細孔を有する。
【0098】
特に、多孔質基材は、紙、印刷用紙、又は厚紙などのセルロース繊維を含む多孔質基材の中から選択される。
【0099】
本発明に係る金属ナノ粒子は、水性筆記用インク組成物(a)の調製中に、インク原料の残りに添加される水性懸濁液の形態で、ex-situで調製することができる。
【0100】
本発明に係る金属ナノ粒子は、一般に、ナノ粒子の成長と、ひいてはそのサイズ及び形状を制御するために、ビニルピロリドンのホモポリマー若しくはコポリマー、及び/又は、ビニルアルコールのホモポリマー若しくはコポリマー、更により具体的には、ポリビニルピロリドンなどの上記のものなどの分散剤の存在下で、還元剤、具体的には、2つの還元剤、より具体的には、3つの還元剤、特に、強力な還元剤、具体的には、クエン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、具体的には、クエン酸アルカリ塩、更により具体的にはクエン酸ナトリウム、アルカリ金属水素化物、具体的には、NaBH、及びアスコルビン酸による、金属塩の還元により調整される。
【0101】
特定の実施形態において、本発明に係る金属ナノ粒子を含有する水性懸濁液の調製工程は、
i.金属ナノ粒子のシードの水性懸濁液を調製するステップと、
ii.金属ナノ粒子の成長を実施するステップと
iii.任意選択で、特に、工程(ii)で得られた水性懸濁液の遠心分離、及び/又は、真空下での蒸発、及び/又は、タンジェンシャルフローナノ濾過による金属ナノ粒子の濃縮ステップと、を備える。
【0102】
ステップ(i)は、特に、金属塩(銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅塩、具体的には、銀、及び/又は、金塩、より具体的には、銀塩)を、水及び還元剤、具体的には、2つの還元剤、特に上記のもの、特に、クエン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、具体的には、クエン酸アルカリ塩、より具体的にはクエン酸三ナトリウムなどのクエン酸ナトリウムと、アルカリ金属水素化物、具体的にはNaBH、更により具体的にはクエン酸ナトリウムとNaBHとの混合物と混合することによって行われる。
【0103】
特定の実施形態において、水性懸濁液に添加される金属塩(銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅塩、具体的には、銀、及び/又は、金塩、より具体的には、銀塩)の総量は、金属ナノ粒子のシードの水性懸濁液の総重量に対して、0.0005~0.05重量%、より具体的には、0.001~0.01重量%の範囲である。
【0104】
特定の実施形態において、水性懸濁液中のクエン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、具体的には、クエン酸アルカリ塩、より具体的にはクエン酸三ナトリウムなどのクエン酸ナトリウムの総量は、金属ナノ粒子のシードの水性懸濁液の総重量に対して0.0005~0.05重量%、より具体的には0.001~0.01重量%の範囲である。
【0105】
特定の実施形態において、水性懸濁液中のアルカリ金属水素化物、具体的には、NaBHの総量は、金属ナノ粒子のシードの水性懸濁液の総重量に対して、0.0001~0.01重量%、より具体的には0.0005~0.005重量%の範囲である。
【0106】
ステップ(i)は、より具体的には、10ナノメートル未満のサイズを有する、「核」とも称される金属ナノ粒子のシードの水性懸濁液を取得させるものである。
【0107】
ステップ(i)で得られた金属ナノ粒子のシードの水性懸濁液は、ステップ(ii)で使用する前に、例えば、2時間熟成させることができる。
【0108】
ステップ(ii)は、金属ナノ粒子のシードの水性懸濁液を、
-ビニルピロリドンのホモポリマー若しくはコポリマー、及び/又は、ビニルアルコールのホモポリマー若しくはコポリマー、より具体的にはポリビニルピロリドンなどの分散剤。
-少なくとも1つの還元剤、より具体的には、2つの還元剤、特に、上記のようなもの、特に、クエン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩の混合物、具体的には、クエン酸アルカリ塩、より具体的には、クエン酸三ナトリウムなどのクエン酸ナトリウム、及び更なる還元剤、より具体的には、アスコルビン酸、更により具体的には、クエン酸ナトリウムとアスコルビン酸との混合物、及び
-ステップi)で使用される金属塩と同一の金属からの金属塩、と混合することによって実施され得る。
【0109】
一実施形態では、金塩は、任意選択的に、三水和物の形態のHAuClである。
【0110】
一実施形態において、銀塩は、AgNO、AgClO、AgSO、AgCl、AgBr、AgOH、AgO、AgBF、AgIO、及びAgPFのうちの少なくとも1つであり、より具体的には、銀塩は、AgNO、特に、AgNOの水溶液である。特に、銀塩は、硝酸銀の水溶液の形態である。
【0111】
一実施形態において、アルミニウム塩は、AlCl、Al(NO、Al(SOのうちの少なくとも1つであり、より具体的には、アルミニウム塩は、AlClである。
【0112】
一実施形態において、銅塩は、Cu(SO)、CuCl、Cu(NO、Cu(COのうちの少なくとも1つであり、より具体的には、銅塩は、CuClである。
【0113】
一実施形態において、水性懸濁液中に添加される金属塩(銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅塩、具体的には、銀、及び/又は、金塩、より具体的には銀塩)の総量は、水性懸濁液の総重量に基づき、0.0005~0.05重量%、具体的には、0.001~0.01重量%の範囲である。
【0114】
別の実施形態において、水性懸濁液中に添加されるクエン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、具体的には、クエン酸アルカリ塩、より具体的には、クエン酸三ナトリウムなどのクエン酸ナトリウムの総量は、水性懸濁液の総重量に基づき、0.001~0.1重量%、具体的には、0.005~0.05重量%の範囲である。
【0115】
特定の実施形態において、水性懸濁液において添加されるアスコルビン酸の総量は、水性懸濁液の総重量に基づき、0.0001~0.1重量%、具体的には、0.0005~0.05重量%の範囲である。
【0116】
具体的な実施形態において、水性懸濁液中に添加されたポリビニルピロリドンの総量は、水性懸濁液の総重量に基づき、0.01~2重量%、具体的には、0.05~1重量%の範囲である。
【0117】
取得された金属ナノ粒子の水性懸濁液は、固定色を有する。
【0118】
特定の実施形態において、水性懸濁液中の金属ナノ粒子の総量は、水性懸濁液の総重量に基づき、0.0001~0.02重量%、具体的には、0.0005~0.01重量%の範囲である。
【0119】
その色は、金属ナノ粒子の種別(金、銀、アルミニウム、又は銅)、及びその量、及び使用される還元剤の量に応じて変動し得る。その色は、特に、クエン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、具体的には、クエン酸アルカリ塩、より具体的には、クエン酸三ナトリウムなどのクエン酸ナトリウムの割合、及び/又は、金属塩の量によって決まり得る。例えば、水性インク懸濁液の色は、クエン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩、具体的には、クエン酸アルカリ塩、より具体的には、クエン酸三ナトリウムなどのクエン酸ナトリウムの量が多いほど、及び/又は、金属塩が銀である場合には、銀塩の量が多いほど、黄色から赤色、青色へと変化し得る。
【0120】
本発明のプロセスは、広範囲の温度にわたって実施することができる。一般的に、プロセスは、0~100℃、具体的には、5~70℃、より具体的には、10~40℃の温度範囲内で実施される。比較的低いプロセス温度は、プロセス効率とプロセス経済性に貢献し、更に現在の生態学的要求を満たす。実際、本発明のプロセスは水性媒体中で実施され、したがって「グリーンプロセス」である。加えて、低温では、より安定した分散液が取得され、銀ナノ粒子がより小さなサイズを呈するという利点がある。理論に束縛されるものではないが、ポリビニルピロリドン、及び/又は、ポリビニルアルコールなどの分散剤の使用は、金属ナノ粒子が懸濁液中で直接接触、及び/又は、凝集、及び/又は、沈降するのを防止するのに役立ち得る。
【0121】
より具体的には、当該調製方法は、濃縮ステップ(iii)を含む。より具体的には、ステップ(iii)は、金属ナノ粒子を懸濁液に濃縮するために、ステップ(ii)で得られた金属ナノ粒子を含有する水性懸濁液の遠心分離、及び/又は、真空下での蒸発、及び/又は、タンジェンシャルフローナノ濾過によって行われる。金属ナノ粒子の濃縮水性懸濁液は、このようにして得られる。
【0122】
特定の実施形態において、金属ナノ粒子を含有する水性懸濁液は、例えば10000rpmで30分間、遠心分離することができる。
【0123】
特定の実施形態において、濃縮後の水性懸濁液中の金属ナノ粒子の総量は、濃縮後の水性懸濁液の総重量に基づき、0.01~10重量%、具体的には、0.05~5重量%の範囲である。
【0124】
次いで、水性筆記用インク(a)は、工程(iii)で得られた濃縮懸濁液又は工程(ii)で得られた水性懸濁液を、古典的な水性筆記用インク原料、特に、上記のような共溶媒、抗菌剤、腐食防止剤、消泡剤、レオロジー調整剤などの古典的な水性ゲルインク原料も含み得る水性筆記用インク組成物に組み込むことによって、又は再分散させることによって、調製することができる。
【0125】
特定の実施形態において、水性筆記用インク組成物中の金属ナノ粒子の総量は、水性筆記用インク組成物の総重量に基づき、0.01~10重量%、具体的には、0.1~5重量%の範囲である。
【0126】
本発明に係るキットはまた、少なくとも1つの酸化剤を含有する消去剤流体(b)、より具体的には、水性消去剤流体も含有する。
【0127】
特に、消去剤流体(b)の酸化剤は、光、及び/又は、空気、より具体的には、酸素O及びオゾンOなどの酸素、過酸化水素H、及び硝酸などの加水分解によって過酸化水素を生成することができる化合物、メチルエチルセトンの有機過酸化物などの有機過酸化物、過酸化尿素、過ホウ酸塩及び過硫酸塩などのアルカリ金属臭素酸塩及び過酸塩、フッ素F及び塩素Clなどのハロゲン、パーマグネート、具体的にはパーマグネート塩、より具体的には過マンガン酸カリウムKMnOなどの酸化物、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるものに接触して分解可能であり、より具体的には、これは、過酸化水素H、及び/又は、重炭酸塩溶液である。
【0128】
より具体的には、本発明による消去剤流体(b)に使用するのに好適な酸化剤は、筆記用インク組成物(a)のナノ粒子の金属の酸化還元電位よりも高い、より具体的には、金、及び/又は、銀、及び/又は、銅、及び/又は、アルミニウムの酸化還元電位よりも高い、更により具体的には、金、及び/又は、銀の酸化還元電位よりも高い、更により具体的には、銀の酸化還元電位よりも高い酸化還元電位を有する(特に、金、銀、銅、及びアルミニウムの酸化還元電位は、以下のとおりである)。
E(Au3+/Au)=1.52V
E(Ag/Ag)=0.80V
E(Cu2+/Cu)=0.34V
E(Al3+/Al)=-1.66V))。
【0129】
特定の実施形態において、消去剤流体(b)中の酸化剤の総量は、消去剤流体(b)の総重量に基づき、10~60重量%、具体的には、20~40重量%の範囲である。
【0130】
特定の実施形態において、消去剤流体は、水性流体である。
【0131】
より具体的には、消去剤流体(b)中の水の総量は、消去剤流体(b)の総重量に基づき、40~90重量%、具体的には、60~80重量%の範囲である。
【0132】
消去剤流体(b)は、揮発性溶媒、特に、エタノール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、及びアセトニトリルなど、より具体的には、エタノール、及び/又はN,N-ジメチルホルムアミドから選択されるもの、更により具体的には、エタノールを更に含有することができる。この溶媒は、消去剤流体をより容易に乾燥させる。より具体的には、消去剤流体(b)中の揮発性溶媒の総量は、消去剤流体(b)の総重量に基づき、5~30重量%、具体的には、10~20重量%の範囲である。
【0133】
消去剤流体(b)はまた、イソチアゾリノン(Thor製のACTICIDE(登録商標))など、具体的には、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、及びこれらの混合物からなる群から選択される他の添加剤、及び/又は、共溶剤も含有し得る。
【0134】
消去剤流体(b)は、酸化剤を水及び任意選択の揮発性溶媒及び任意選択の添加剤と単に混合するなど、当業者に周知の方法で調製することができる。
【0135】
特定の実施形態において、水性筆記用インク組成物(a)及び消去剤流体(b)は、2つの異なる筆記具に収容される。
特に、各筆記具は、
-水性筆記用インク組成物(a)又は消去剤流体(b)を収容する軸バレルと、
-軸方向バレル内に貯蔵された水性筆記用インク組成物(a)又は消去剤流体(b)を送達するペン本体と、を備える。
【0136】
水性筆記用インク組成物(a)の筆記具は、ゲルペン、フェルトペン、マーカからなる群から選択されてもよく、具体的にはゲルペンであってもよい。
【0137】
消去剤流体(b)の筆記具は、フェルトペン、修正液、マーカからなる群から選択されてもよく、具体的には、フェルトペンであり得る。
【0138】
別の特定の実施形態において、水性筆記用インク組成物(a)及び消去剤流体(b)は、同一の筆記具に含まれる。
【0139】
具体的には、当該筆記具は、少なくとも2つの別個のリザーバ、より具体的には、互いに対向する(特に、筆記具の両端にある)2つのアプリケータ先端部を含む。水性筆記用インク組成物(a)用のアプリケータチップは、ゲルタイプ、フェルトタイプ、又はマーカータイプ、具体的には、ゲルタイプであり得る。
【0140】
消去剤流体(b)用のアプリケータチップは、ゲルタイプ、フェルトタイプ、修正液タイプ、マーカータイプ、具体的には、フェルトタイプであり得る。
【0141】
本発明はまた、着色剤として、より具体的には、唯一の着色剤として、金属ナノ粒子を含有する水性筆記用インク組成物を消去するための水性消去剤流体であって、当該金属ナノ粒子が金属から本質的になり、当該金属が銀、金、アルミニウム及び/又は銅から選択される水性消去剤流体であって、
-少なくとも1つの酸化剤、具体的には、過酸化水素H、酸素O及びオゾンOなどの酸素、硝酸などの加水分解によって過酸化水素を生成することができる化合物、メチルエチルセトンの有機過酸化物などの有機過酸化物、過酸化尿素、過ホウ酸塩及び過硫酸塩などのアルカリ金属臭素酸塩及び過酸塩、フッ素F及び塩素Clなどのハロゲン、パーマグネート、より具体的には、パーマグネート塩、より具体的には、過マンガン酸カリウムKMnOなどの酸化物、並びにこれらの混合物からなる群から選択され、より具体的には、過酸化水素H、酸素O及びオゾンOなどの酸素、硝酸の中から選択される加水分解によって過酸化水素を生成することができる化合物、有機過酸化物、尿素過酸化物、アルカリ金属臭素塩及び過酸塩、パーマグネート、具体的には、パーマグネート塩、より具体的には、過マンガン酸カリウムKMnO、並びにこれらの混合物からなる群から選択され、より具体的には、酸化剤は、過酸化水素Hである酸化剤と、
-エタノール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、及びアセトニトリル、並びにそれらの混合物などの揮発性溶媒、より具体的には、エタノール、及び/又は、N,N-ジメチルホルムアミドから選択され、更により具体的には、エタノールである奇抜性溶媒と、を含有する水性消去剤流体にも関する。
【0142】
特に、揮発性溶媒は、水溶性溶媒であり、より具体的には、エタノール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、及びアセトニトリル、並びにこれらの混合物から選択される。
【0143】
特定の実施形態において、水性消去剤流体中の揮発性溶媒の総量は、消去剤流体の総重量に基づき、5~30重量%、具体的には、10~20重量%の範囲である。
【0144】
特定の実施形態において、水性消去剤流体中の酸化剤の総量は、消去剤流体の総重量に基づき、10~60重量%、具体的には、20~40重量%の範囲である。
【0145】
特定の実施形態において、消去剤流体は、水性流体である。
【0146】
より具体的には、水性消去剤流体中の水の総量は、消去剤流体の総重量に基づき、40~90重量%、具体的には、60~80重量%の範囲である。
【0147】
特定の実施形態において、水性消去剤流体は、着色剤を含有しない。
【0148】
特に、消去剤流体は、キットについて上述したとおりであり、上述したように調製することができる。
【0149】
本発明は更に、本発明に係る消去剤流体を含有する筆記具であって、
-本発明に係る消去剤流体を含有する軸方向バレルと、
-軸方向バレル内に貯蔵された本発明に係る消去剤流体を送出するペン本体であって、
より具体的には、当該筆記具が、フェルトペン、修正液、マーカからなる群から選択され、更により具体的には、フェルトペンである筆記具に関する。
【0150】
本発明はまた、本発明に係る、又は本発明に係るキットに含有される少なくとも1つの酸化剤を含有する消去剤流体の使用であって、
-唯一の着色剤として金属ナノ粒子を含有する水性筆記用インク組成物を消去するためであって、当該金属ナノ粒子が、金属から本質的になり、当該金属が、銀、金、アルミニウム、及び/又は銅から選択され、より具体的には、当該水性筆記用インク組成物が、上述のもの、又は本発明に係るキットに含有されるものであることと、又は、
-更なる着色剤とともに金属ナノ粒子を含有する水性筆記用インク組成物の色を変化させるためのものであり、当該金属ナノ粒子が、金属から本質的になり、当該金属が、銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅から選択され、水性筆記用インク組成物が、具体的には、上述のもの、又は本発明に係るキットに含有されるものであることと、を目的とする使用にも関する。
【0151】
本発明は更に、唯一の着色剤として金属ナノ粒子を含有する水性筆記用インク組成物によって多孔質基板上に筆記マークの誤りを修正する方法であって、金属ナノ粒子が、金属から本質的になり、当該金属が、銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅から選択され、当該水性筆記用インク組成物が、具体的には、上述のものであるか、又は本発明に係るキットに含有されるものであり、当該方法は、
A)修正の必要に応じて、筆記マークが裸眼で見えなくなるまで、本発明に係る、又は本発明に係るキットに含有される、消去剤流体を筆記マーク上に付与することと、
B)多孔質基板が乾燥すると、特に、少なくとも1分後、着色剤として金属ナノ粒子を含有する水性筆記用インク組成物であって、当該金属ナノ粒子が、金属から本質的になり、当該金属が銀、金、アルミニウム、及び/又は、銅から選択され、水性筆記用インク組成物が、具体的には、本発明に係るキットに含有されるか、又は上述の水性筆記用インク組成物で、多孔質基板上の消去スポット上に上書きすることと、を含む、方法に関する。
【0152】
本発明は、最後に、本発明に係るキットを使用する方法であって、
A1)水性筆記用インク組成物(a)で多孔質基板上に書き込むことと、
B1)必要に応じて、ステップA1)で得られた、筆記マークの一部の色を、筆記マークが裸眼で見えなくなるまで、又は筆記マークの色が裸眼で変化するまで、消去剤流体(b)で消去するか、又は変化させることと、
C1)必要に応じて、多孔質基板が乾燥すると、特に、少なくとも1分後、多孔質基板の消去スポット上に水性筆記用インク組成物(a)で上書きすることと、を含む、方法に関する。
【0153】
本発明は、非限定的な方法で与えられる実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【0154】
実施例1:ex-situ工程によって調製された銀ナノ粒子を有するインク組成物を含有したキット
銀シードナノ粒子の水性懸濁液の調製(ステップ(i))
第1のステップ(i)において、銀シードナノ粒子の水性懸濁液を、20.59gの蒸留水、0.00085gの硝酸銀(9370.1 Cark Roth)、0.0013gのクエン酸三ナトリウム(S1804-500G Sigma Aldrich)を混合することによって調製する。
【0155】
混合物をホモジナイザミキサで400rpmの速度で1分間均質化した。次に、0.000227gの水素化ホウ素ナトリウムNaBH(71321~25G Fluka Analytical)を滴下添加した。次いで、得られた黄色溶液を暗所に貯蔵し、2時間熟成させた。
【0156】
固定色を有する銀ナノ粒子の水性懸濁液の調製(ステップ(ii))
第2のステップ(ii)では、528.59gの蒸留水、1.25gのポリビニルピロリドン(PVP40-100G Sigma Aldrich)、5mLのステップ(i)で得られたシード溶液、0.097gのクエン酸三ナトリウム(S1804-500G Sigma Aldrich)、0.044gのアスコルビン酸(A92902-100G Sigma Aldrich)を混合することによって、固定色を有する銀ナノ粒子の水性懸濁液を調製する。
【0157】
混合物をホモジナイザミキサで400rpmの速度で1分間均質化した。
【0158】
次いで、0.021gのAgNOを、400rpmの速度でホモジナイザミキサを用いて混合物にゆっくりと添加した。溶液の色は無色から黄色、赤色、そして最終的に緑色に変化する。
【0159】
遠心分離による金属ナノ粒子の濃縮工程(ステップ(iii))
AgNOの最後の添加から1分後に、銀ナノ粒子の水性懸濁液を10000rpmで30分間遠心分離した。
【0160】
この濃縮ステップ中に、銀ナノ粒子の水性懸濁液をデカントし、この遠心分離後に得られた最終体積は5mLであった。
【0161】
遠心分離ステップ後のこの最終体積は、0.014gのAgナノ粒子を含む。
【0162】
更に、Agナノ粒子の形状は、主に多面体であり、ISO9001:2015規格に従って、2D画像(顕微鏡:JEOL ARM 200)の分析によって測定された平均粒径は、50~70ナノメートルを含む。
【0163】
固定色を有する水性ゲルインクの調整
水性ゲルインクを、0.53gのグリセリン(共溶媒)、0.42gのポリエチレングリコール(共溶媒)、0.01gのActicide(登録商標)MBS(抗菌剤)、及び0.02gのAdditin(登録商標)RC8221(腐食防止剤)を混合することにより調製した。混合物を、ホモジナイザミキサで15m.s-1の速度で15分間均質化し、35℃の温度で加熱した。次いで、0.02gのキサンタンガム(レオロジー改質剤)を混合物に添加した。混合物をホモジナイジングミキサで15m.s-1の速度で15分間、35℃の温度で均質化した。上記工程(iii)で得られたナノ粒子の緑色水性懸濁液4.27gを混合物にゆっくりと添加した。混合物を2時間30分静置した。次いで、0.015gのMoussex(登録商標)S 9092(消泡剤)を添加した。混合物をホモジナイジングミキサで15m.s-1の速度で30分間、35℃の温度で均質化した。
【0164】
得られた水性ゲルインクを室温(25℃)で冷却した。
【0165】
水性ゲルインクは緑色である。水性ゲルインクの総量は、5.28gであり、水性ゲルインクは、0.22重量%のAgナノ粒子を含む。
【0166】
更に、Agナノ粒子の形状は、主に多面体であり、ISO9001:2015規格に従って、2D画像(顕微鏡:JEOL ARM 200)の分析によって測定された平均粒径は、50~70ナノメートルを含む。
【0167】
消去剤流体(b)の調製
3つの異なる消去剤流体が想定される。
-30%(w/w)における過酸化水素水溶液を、消去剤流体(b1)として調製した。
-1Mの重炭酸ナトリウム溶液を消去剤流体(b2)として調製した。
-80%の30%(w/w)における過酸化水素水溶液と20%のエタノールとの混合物を、消去剤流体(b3)として調製した。
【0168】
インクの消去工程
得られた水性インク組成物(a)で多孔質基材(カリグラフノート:Calligraphe LIGNE 7000、70g・m-2、210×297mm、80頁、Clairefontaine製)に筆記したところ、色は変化せず緑色のままであった。筆記直後に消去剤流体(b1又はb2又はb3)を用いて筆記マークを消去し、筆記マークの色を消去した。
【0169】
そして、消去後(消去剤流体b1又はb2を用いて10分程度後、消去剤流体b3を用いて1分程度後)には、同一の水性インク組成物(a)を用いて上書きすることができた。
【国際調査報告】