(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】リチウム及び電池化学的製造における硫酸ナトリウム副生成物の処理
(51)【国際特許分類】
C01D 5/02 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
C01D5/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023550068
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 CA2022050237
(87)【国際公開番号】W WO2022174350
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516029001
【氏名又は名称】ハッチ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジョン フレイザー
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンゲロス スタマティウ
(57)【要約】
硫酸ナトリウムストリームがイオン交換プロセスで処理されて、硫酸カリウム及び塩化ナトリウムを提供する、電池化学的製造のためのプロセス。塩化ナトリウムは、クロロアルカリで処理されて、電池化学的製造プロセスにおいて上流で使用するための水酸化ナトリウムを生成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池化学的製造のためのプロセスであって、
硫酸ナトリウムストリームの少なくとも一部を受け取るステップと;
前記硫酸ナトリウムストリームにイオン交換プロセスを適用して、硫酸カリウム及び塩化ナトリウムを提供するステップと;
前記塩化ナトリウムにクロロアルカリプロセスを適用して、水酸化ナトリウムを提供するステップと;
前記電池化学的製造プロセスにおいて上流で使用するために、前記水酸化ナトリウムの少なくとも一部を戻すステップと
を含むプロセス。
【請求項2】
前記イオン交換プロセスは、
イオン交換樹脂を前記硫酸ナトリウムストリームと接触させて、前記イオン交換樹脂に硫酸イオンを充填するステップと;
前記充填されたイオン交換樹脂を塩化カリウムと接触させて、硫酸カリウム及び塩化カリウムを含む出口ブラインを形成するステップと;
前記出口ブラインに塩化カリウムを加えて前記硫酸カリウムの少なくとも一部を塩析して、固体硫酸カリウムと、塩化カリウムを含む溶液とを形成するステップと;
硫酸ナトリウム溶液又は前記硫酸ナトリウムストリームを用いて前記イオン交換樹脂を再生して、塩化ナトリウムを含む出口再生ブラインを提供するステップと
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記イオン交換プロセスは、
前記イオン交換プロセスにおいて上流で使用するために、塩化カリウムを含む前記溶液を再循環させるステップ
をさらに含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記イオン交換プロセスは、
前記出口再生ブラインに塩化ナトリウムを加えて残留硫酸ナトリウムの少なくとも一部を塩析して、固体硫酸ナトリウムと、塩化ナトリウムを含む溶液とを形成するステップ
をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記イオン交換プロセスは、
前記出口再生ブラインを冷却して残留硫酸ナトリウムの少なくとも一部を塩析して、固体硫酸ナトリウムと、塩化ナトリウムを含む溶液とを形成するステップ
をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
塩化ナトリウムを含む前記溶液は、前記クロロアルカリプロセスに提供される前記塩化ナトリウムである、請求項4又は5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記硫酸ナトリウムストリームは、金属硫酸塩製造プロセス、水酸化リチウム製造プロセス、電池化学的前駆体製造プロセス又は水酸化ナトリウムを消費するプロセスからのものである、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記金属硫酸塩製造プロセスは、硫酸ニッケル、硫酸コバルト又は硫酸マンガンを製造するためのものである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記硫酸ナトリウムストリームは、硫酸ナトリウムを含む固体又は水溶液である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記クロロアルカリプロセスからCl
2又はHClの形態の塩素を回収するステップをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
硫酸ニッケル製造プロセス、硫酸コバルト製造プロセス、マンガン製造プロセス、鉄除去プロセス、溶媒抽出プロセス、硫酸リチウムを水酸化リチウムに変換するためのプロセス又は前駆体化学的カソード材料プロセスにおいて上流で使用するために、前記水酸化ナトリウムを戻すステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
電池化学的又はリチウム化学的製造のためのプロセスであって、
硫酸ナトリウムストリームの少なくとも一部を受け取るステップ;
前記硫酸ナトリウムストリームをイオン交換プロセスで処理して、硫酸カリウム溶液及び塩化ナトリウムブラインを提供するステップ
を含むプロセス。
【請求項13】
前記硫酸カリウム溶液を塩化カリウムで処理して、硫酸カリウムの少なくとも一部を沈殿させるステップをさらに含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記出口ブラインから塩析された前記沈殿した硫酸カリウムは、分離されて、固体硫酸カリウム及び塩化カリウムブラインを提供する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記イオン交換プロセスは、
可溶性硫酸塩の水溶液を提供するステップと;
イオン交換樹脂を前記可溶性硫酸塩の水溶液と接触させて、前記イオン交換樹脂に硫酸イオンを充填するステップと;
前記充填されたイオン交換樹脂を塩化カリウムの水溶液と接触させて、出口ブラインとして前記硫酸カリウム溶液を形成するステップと;
可溶性硫酸塩の水溶液を用いて前記イオン交換樹脂を再生して、出口再生ブラインとして前記塩化ナトリウムブラインを形成するステップと
を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記イオン交換プロセスは、
前記出口再生ブラインに塩化ナトリウムを加えて、残留硫酸塩を除去し、且つ塩化ナトリウムを含む溶液を形成するステップ
をさらに含む、請求項12~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記イオン交換プロセスは、
前記出口再生ブラインを冷却して、残留硫酸塩を除去し、且つ塩化ナトリウムを含む溶液を形成するステップ
をさらに含む、請求項12~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
塩化ナトリウムを含む前記溶液は、クロロアルカリプロセスに提供されて、水酸化ナトリウムを提供する、請求項16又は17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記クロロアルカリプロセスは、Cl
2の形態の塩素も提供するか、又は後のプロセスは、前記Cl
2からHClを生成する、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記水酸化ナトリウムは、硫酸ニッケル製造プロセス、硫酸コバルト製造プロセス、硫酸マンガン製造プロセス、溶媒抽出プロセス、鉄除去プロセス、硫酸リチウムを水酸化リチウムに変換するためのプロセス又は前駆体化学的カソード材料プロセスにおいて使用するためのものである、請求項18又は19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記硫酸ナトリウムストリームは、金属硫酸塩製造プロセス、水酸化リチウム製造プロセス、電池化学的前駆体製造プロセス又は水酸化ナトリウムを消費するプロセスからのものである、請求項12~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記金属硫酸塩製造プロセスは、硫酸ニッケル、硫酸コバルト又は硫酸マンガンを製造するためのものである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記硫酸ナトリウムストリームは、硫酸ナトリウムを含む固体又は水溶液である、請求項12~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
硫酸ナトリウムから硫酸カリウムを製造するためのイオン交換プロセスであって、
前記硫酸ナトリウムは、電池化学的製造の副生成物であり;及び
前記イオン交換プロセスは、硫酸カリウムと塩化カリウムとを含む出口ブラインを提供し、且つ前記出口ブラインは、塩化カリウムで処理されて、前記硫酸カリウムを塩析させる、イオン交換プロセス。
【請求項25】
可溶性硫酸塩の水溶液を提供するステップと;
イオン交換樹脂を前記可溶性硫酸塩の水溶液と接触させて、前記イオン交換樹脂に硫酸イオンを充填するステップと;
前記充填されたイオン交換樹脂を塩化カリウムの水溶液と接触させて、前記出口ブラインを形成するステップと
を含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記出口ブラインから塩析された前記硫酸カリウムは、分離されて、固体硫酸カリウム及び塩化カリウムブラインを提供する、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記塩化カリウムブラインは、前記イオン交換プロセスにおいて上流で使用するために再循環される、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
硫酸ナトリウムの水溶液を用いて前記イオン交換樹脂を再生して、塩化ナトリウムブラインを提供するステップをさらに含む、請求項25~27のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記塩化ナトリウムブラインを冷却して、残留硫酸塩の少なくとも一部を塩析するステップをさらに含む、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
クロロアルカリプロセスは、前記塩化ナトリウムブラインに適用されて、水酸化ナトリウムと、Cl
2又はHClの形態の塩素とを提供する、請求項28又は29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記水酸化ナトリウムは、硫酸ニッケル製造プロセス、硫酸コバルト製造プロセス、マンガン製造プロセス、鉄除去プロセス、硫酸リチウムを水酸化リチウムに変換するためのプロセス又は前駆体化学的カソード材料プロセスにおいて使用するためのものである、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
硫酸ナトリウムストリームは、金属硫酸塩製造プロセス、水酸化リチウム製造プロセス、電池化学的前駆体製造プロセス又は水酸化ナトリウムを消費するプロセスからのものである、請求項24~31のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項33】
前記金属硫酸塩製造プロセスは、硫酸ニッケル、硫酸コバルト又は硫酸マンガンを製造するためのものである、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記硫酸ナトリウムストリームは、硫酸ナトリウムを含む固体又は水溶液である、請求項24~33のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項35】
金属硫酸塩を生成するためのプロセスであって、
水溶液から金属硫酸塩を結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップであって、前記母液は、結晶化されていない金属硫酸塩を含む、ステップと;
前記結晶化金属硫酸塩を前記母液から分離するステップと;
前記母液の一部を水酸化ナトリウムで塩基性化して、前記結晶化されていない金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換し、それにより硫酸ナトリウムストリームを形成するステップと;
前記金属硫酸塩を結晶化するステップの上流で前記塩基性金属塩を使用するステップと;
前記硫酸ナトリウムストリームにイオン交換プロセスを適用して、硫酸カリウム及び塩化ナトリウムを提供するステップと
を含むプロセス。
【請求項36】
前記塩化ナトリウムにクロロアルカリプロセスを適用して、水酸化ナトリウムを提供するステップをさらに含む、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
電池化学的製造プロセスにおいて使用するために、前記水酸化ナトリウムの少なくとも一部を戻すステップをさらに含む、請求項36に記載のプロセス。
【請求項38】
前記塩基性化ステップにおいて使用するために、前記水酸化ナトリウムの少なくとも一部を戻すステップをさらに含む、請求項36に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池化学的製造に関し、特に硫酸ナトリウム副生成物の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
気候変動によって輸送の電化が推進されるようになり、結果としてリチウムイオン電池(LIB)などの電池が必要とされている。LIBは、既に社会に広く普及しているが、年間総消費量は、大衆市場の電気自動車での採用に要求される量と比較して少ない。LIBに対する需要の高まりとともに、それらを製造するための化学物質、特に電池グレードの金属硫酸塩に対する要求が高まっている。
【0003】
電池グレードの金属硫酸塩の製造は、廃棄が困難であり得る副生成物塩をもたらす。現行の電池化学的製造プロセスの多くでは、SX及び他の不純物除去ステップは、効率的に行うために特定のpHレベルで操作する必要がある。一般に使用される塩基の1つは、水酸化ナトリウムであり、なぜなら、それは、水溶性であり、且つ高純度で入手可能であり、これにより効率的なpH制御が可能となり、同時にスケーリング問題が最小限となり、プロセスへのさらなる不純物の導入が最小限となるためである。しかし、水酸化ナトリウムを大量に消費することで多量の硫酸ナトリウムが生成され、それにより非常に切迫した環境問題が生じる。硫酸ナトリウムは、大量商品となる化学生成物であるが、その価値が低いため(例えば、1メートルトン当たり90~150USD)、局所的な需要が存在しない場合、輸送費によってその販売の利益がなくなることが多い。さらに、硫酸ナトリウムの市場は、限定されており、新しい電池化学製品及び電池前駆体プラントから予想される製造の方が上回る場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここで、単なる例として、添付の図を参照して本開示の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示の一実施形態による、ニッケル、コバルト及び/又はマンガンの処理の硫酸ナトリウム副生成物からの硫酸カリウムの製造プロセスの概略図である。
【
図2】本開示の一実施形態による、ニッケル、コバルト及び/又はマンガンの処理の硫酸ナトリウム副生成物からの硫酸カリウムの製造プロセス及び水酸化ナトリウムの製造プロセスの概略図である。
【
図3】本開示の一実施形態による、電池化学的製造の硫酸ナトリウム副生成物からの硫酸カリウムの製造プロセスの概略図である。
【
図4】本開示の一実施形態による、硫酸ニッケルの製造の硫酸ナトリウム副生成物からの硫酸カリウムの製造プロセスの概略図である。
【
図5】本開示の一実施形態による、前駆体カソード活物質(PCAM)の製造の硫酸ナトリウム副生成物からの硫酸カリウムの製造プロセスの概略図である。
【
図6】本開示の一実施形態による、前駆体カソード活物質(PCAM)の製造の硫酸ナトリウム副生成物からの硫酸カリウムの製造プロセスの概略図である。
【
図7】本開示の一実施形態による、金属硫酸塩を生成するためのプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、硫酸カリウムを製造するために硫酸ナトリウムストリームを用いるリチウム又は電池化学的製造プロセスを提供し、このプロセスによって水酸化ナトリウムをさらに製造することができる。電池化学的製造は、カソードの製造及び/又はリチウムイオン電池内の別の構成要素の製造に使用されるリチウムを有する化合物、ニッケルを有する化合物、コバルトを有する化合物、マンガンを有する化合物を含み得る。硫酸ナトリウムストリームは、電池化学的製造プロセスの副生成物であり得、水酸化ナトリウムは、電池化学的製造において上流で使用するためのものであり得る。硫酸ナトリウムストリームは、ナトリウムをベースとする塩基溶液と、硫酸塩(溶液中の酸又は別の形態のいずれかとして)との間の反応の副生成物であり得る。このプロセスは、あまり有用ではない副生成物から、より価値の高い/望ましい生成物への価値の向上、プロセスの効率の向上及び/又は廃棄物の減少に役立ち得る。このプロセスは、硫酸ナトリウムを、肥料(K2SO4)及び塩(NaCl)などのより有用な生成物まで価値を高めることができる。このプロセスは、硫酸ナトリウムを、既存の処理施設が利用できる水酸化ナトリウム(NaOH)などの試薬まで価値を高めることができる。このプロセスにより、硫酸ナトリウムを塩化ナトリウムなどの別の副生成物に変換することができる。このプロセスにより、硫酸ナトリウムを、より価値が高いか、又は廃棄がより容易であるか、又は廃棄がより環境に優しい別の副生成物に変換することができる。
【0007】
プロセスは、硫酸ナトリウムストリームの少なくとも一部を受け取るステップと;硫酸ナトリウムストリームをイオン交換プロセスで処理して、硫酸カリウム及び塩化ナトリウム、例えば硫酸カリウム溶液及び塩化ナトリウムブラインを提供するステップとを含み得る。このプロセスは、硫酸カリウム溶液を塩化カリウムで処理して、硫酸カリウムの少なくとも一部を沈殿させるステップを含み得る。このプロセスは、塩化ナトリウムブラインを処理して、残留硫酸塩を除去するステップを含み得る。このプロセスは、塩化ナトリウムブラインにクロロアルカリプロセスを適用して、水酸化ナトリウムを提供するステップを含み得る。このプロセスは、電池化学的製造又はリチウム化学的製造プロセスにおいて上流で使用するために、水酸化ナトリウムの少なくとも一部を戻すステップを含み得る。
【0008】
硫酸ナトリウムストリームは、硫酸ナトリウム又は可溶性硫酸塩溶液の形成に適したあらゆる硫酸アニオン源を含むあらゆる適切なストリーム又は供給材料であり得る。硫酸ナトリウムは、電池化学的製造の副生成物であり得る。硫酸ナトリウムストリームは、金属硫酸塩製造プロセス、水酸化リチウム製造プロセス、電池化学的前駆体製造プロセス又は水酸化ナトリウムを消費するプロセスからのものであり得る。鉱石などの幾つかの供給材料からのリチウムの製造は、硫酸ナトリウム廃棄物ストリームをもたらす場合もあり、前記廃棄物ストリームは、本開示の実施形態による硫酸ナトリウムストリームとしての使用に適切であり得る。金属硫酸塩製造プロセスは、硫酸ニッケル、硫酸コバルト又は硫酸マンガンを製造するためのプロセスであり得る。硫酸ナトリウムストリームは、硫酸ナトリウムを含む固体であり得る。硫酸ナトリウムストリームは、硫酸ナトリウムを含む水溶液などの溶液であり得る。硫酸ナトリウムストリームは、イオン交換プロセス中に使用するための可溶性硫酸塩の水溶液を形成するためなど、本明細に開示のプロセスで使用する前に前処理することができる。
【0009】
本開示の1つ以上の実施形態によるイオン交換プロセスは、可溶性硫酸塩の水溶液を提供するステップと;可溶性硫酸塩の水溶液をイオン交換樹脂と接触させて、イオン交換樹脂に硫酸イオンを充填するステップと;充填されたイオン交換樹脂を塩化カリウムの水溶液と接触させて、混合硫酸カリウム/塩化カリウム出口ブラインを形成するステップとを含み得る。出口ブラインは、硫酸カリウムを塩析するための塩化カリウムを用いた処理など、硫酸カリウムを回収するためのあらゆる適切な方法で処理することができる。出口ブラインから塩析された硫酸カリウムを分離して、固体硫酸カリウム及び塩化カリウムブラインを提供することができる。結果として得られる塩化カリウムブラインは、イオン交換プロセスにおいて上流で使用するために再循環され得る。イオン交換プロセスは、弱塩基アニオン交換樹脂又は強塩基アニオン交換樹脂などのあらゆる適切な固定相を使用することができる。イオン交換プロセスは、再生サイクルをさらに含み得る。イオン交換樹脂は、硫酸ナトリウムストリームなどの硫酸ナトリウム溶液又は硫酸ナトリウムストリームから誘導される水溶液を用いて再生することができる。再生サイクルは、塩化ナトリウムを含む出口再生ブラインを提供し得る。塩化ナトリウムブラインは、硫酸塩及び/又は別の不純物を含み得る。塩化ナトリウムブラインは、硫酸ナトリウムを塩析するための塩化ナトリウムの添加などにより、硫酸塩を除去するために処理され得る。
【0010】
1つ以上の実施形態では、このプロセスにより、塩化ナトリウムブラインなどの塩化ナトリウムが製造される。塩化ナトリウムブラインは、微量の別の塩、例えば残留するKCl、K2SO4、Na2SO4及び/又は別の微量の不純物を含み得る。塩化ナトリウムブラインは、残留硫酸塩などの残留不純物を除去するために処理され得る。塩化ナトリウムブラインは、クロロアルカリプロセスで処理されて、水酸化ナトリウムを提供することができる。クロロアルカリプロセスは、Cl2又はHClの形態の塩素を提供することもできる。水酸化ナトリウムは、プロセスにおいて上流で使用され得るか、又は水酸化ナトリウムを必要とするあらゆる別のプロセスに使用され得る。水酸化ナトリウムは、硫酸ニッケル製造プロセス、硫酸コバルト製造プロセス、鉄除去プロセス、硫酸リチウムを水酸化リチウムに変換するためのプロセス又は前駆体化学的カソード材料プロセスにおいて使用するためのものであり得る。
【0011】
図1は、ニッケル、コバルト及び/又はマンガンの金属からの前駆体カソード活物質(PCAM)の製造の硫酸ナトリウム副生成物からの硫酸カリウムの製造を示す。
図1のプロセスは、硫酸ナトリウムストリームの二価のイオン交換を伴い、続いてアニオン交換プロセスが行われて、結晶化及び乾燥を行って塩化ナトリウム塩を製造することができる塩化ナトリウムブラインと;塩化カリウムを加えて硫酸カリウムを沈殿させ、これを回収することができる硫酸カリウム溶液とが生成される。硫酸カリウムの沈殿のストリップ液は、アニオン交換に再利用することができる。
【0012】
図2は、アニオン交換プロセスで生成された塩化ナトリウムブラインがさらに処理されることを除いて、
図1と類似の硫酸カリウムの製造プロセスを示す。
図2の塩化ナトリウムブラインは、蒸発させ精製した後、クロロアルカリプロセスで処理されて、プロセスにおいて使用するための塩素(Cl
2として)及び水酸化ナトリウムが生成される。
【0013】
図3は、電池化学的製造プロセス(上部)と、イオン交換プロセスによって硫酸ナトリウム副生成物を硫酸カリウムに変換する追加のプロセス(下部)とを示す。
図3で使用されるイオン交換プロセスは、
図1又は2に示されるプロセスなどの本開示の一実施形態によるものであり得る。
【0014】
図4は、ニッケル供給材料から硫酸カリウムを製造するプロセスを示す。
図4のニッケル供給材料は、硫酸ニッケル及び硫酸ナトリウムが得られるように処理され、その硫酸ナトリウムは、硫酸カリウム及び塩化ナトリウムが得られるようにイオン交換によってさらに処理される。
【0015】
図5は、前駆体カソード活物質(PCAM)製造プロセスの硫酸ナトリウム副生成物から硫酸カリウム及び塩化ナトリウムを製造するプロセスを示す。
【0016】
図6は、電池グレードの硫酸塩から硫酸カリウムを製造するプロセスを示す。
図6の電池グレードの硫酸塩は、前駆体カソード活物質(PCAM)及び硫酸ナトリウムが得られるように処理され、その硫酸ナトリウムは、硫酸カリウム及び塩化ナトリウムが得られるようにイオン交換によってさらに処理される。
【0017】
図1又は3~6に記載のプロセスによって製造された塩化ナトリウムは、水酸化ナトリウム及び塩素を得るためのクロロアルカリプロセスなどを用いて、さらに処理することができる。
【0018】
図7は、金属硫酸塩の生成方法を示し、これにより硫酸ナトリウムストリームも生成される。
図7において製造された硫酸ナトリウムは、本開示に従ってさらに処理して、硫酸カリウム及び塩化ナトリウムを得ることができる。これにより製造された塩化ナトリウムは、クロロアルカリプロセスなどを用いてさらに処理して、水酸化ナトリウム及び塩素を得ることができる。これにより製造された水酸化ナトリウムは、塩基性化ステップなどのプロセスの別の箇所で使用することができる。
【0019】
金属硫酸塩を生成するためのプロセス
電池前駆体化学物質は、水酸化ナトリウムを硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び/又は硫酸マンガンの混合物に添加することによって形成することができる。前記添加は、別の添加剤又は試薬、例えばアンモニアの存在下で行うことができる。水酸化ナトリウムを硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び/又は硫酸マンガンなどの電池前駆体化学物質に添加することにより、金属水酸化物の沈殿が生じる。この金属水酸化物の回収時、濾液は、硫酸ナトリウムを含み得る。電池化学的製造の硫酸ナトリウム副生成物は、結晶化又はさらなる精製を行うことができる。電池化学的製造の硫酸ナトリウム副生成物は、さらなる精製を行って又は行わずに、本明細書に記載の1つ以上の実施形態によるプロセスにおける硫酸ナトリウムストリームとして使用することができる。
【0020】
一態様では、金属硫酸塩を生成するためのプロセスが提供され、このプロセスは、水溶液から金属硫酸塩を結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップであって、母液は、結晶化されていない金属硫酸塩を含む、ステップと;母液から結晶化金属硫酸塩を分離するステップと;母液の一部を水酸化ナトリウムで塩基性化して、結晶化されていない金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換し、それにより硫酸ナトリウムストリームを形成するステップと;金属硫酸塩を結晶化させるステップの上流で塩基性金属塩を使用するステップと;硫酸ナトリウムストリームにイオン交換プロセスを適用して、硫酸カリウム及び塩化ナトリウムを提供するステップとを含む。このプロセスは、塩化ナトリウムにクロロアルカリプロセスを適用して、水酸化ナトリウムを提供するステップをさらに含み得る。このプロセスは、電池化学的製造プロセスにおいて使用するために、水酸化ナトリウムの少なくとも一部を戻すステップをさらに含み得る。例えば、水酸化ナトリウムは、金属硫酸塩の結晶化から得られた母液の一部の塩基性化に使用することができる。結晶化は、母液をブリードさせることと、金属硫酸塩の結晶化時の不純物の結晶化を選択的に抑制するために、ブリード速度を制御することとをさらに含み得る。結晶化は、金属硫酸塩の結晶化時の不純物の結晶化を選択的に抑制するために、晶析装置内の自由水の量を制御することをさらに含み得る。自由水の量の制御は、晶析装置からの水の蒸発速度を制御すること又は晶析装置への水の添加を制御することを含み得る。母液の一部を塩素化して、結晶化されていない金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換するステップは、母液をブリードさせることと、金属硫酸塩の結晶化の上流で中和される酸の量と少なくともほぼ同じ量の塩基性金属塩が生成されるように、ブリード速度を制御することとをさらに含み得る。結晶化金属硫酸塩は、電池グレードの結晶化金属硫酸塩であり得る。
【0021】
本明細書に記載の金属硫酸塩を生成するためのプロセスの1つ以上の実施形態では、プロセスは、供給材料を浸出させるステップと、金属硫酸塩を含む水溶液を形成するステップとをさらに含む。1つ以上の実施形態では、供給材料は、混合水酸化物沈殿物、混合硫化物沈殿物、硫化ニッケル精鉱、硫化コバルト精鉱、ニッケルラテライト、ニッケルマット、フェロニッケル、リサイクルされたリチウムイオン電池若しくはリチウムイオン電池の製造スクラップから誘導される材料又は使用済みカソード材料のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含む。本明細書に記載のプロセスの1つ以上の実施形態では、このプロセスは、塩基性金属塩を母液から単離するステップをさらに含む。1つ以上の実施形態では、塩基性金属塩を単離するステップは、1段階又は2段階沈殿回路を使用することと、塩基性金属塩を選択的に沈殿させることとを含む。本明細書に記載のプロセスの1つ以上の実施形態では、金属硫酸塩は、硫酸ニッケル、硫酸コバルト又は硫酸マンガンのいずれか1つ又はそれらの組み合わせである。本明細書に記載のプロセスの1つ以上の実施形態では、塩基性金属塩は、金属水酸化物を含む。1つ以上の実施形態では、金属水酸化物は、水酸化ニッケル、水酸化コバルト又は水酸化マンガンのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含む。
【0022】
本明細書に記載の金属硫酸塩を生成するためのプロセスの1つ以上の実施形態では、金属硫酸塩を結晶化させるステップは、硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び硫酸コバルトのいずれか1つ又は2つを水溶液から選択的に結晶化させることを含む。本明細書に記載のプロセスの1つ以上の実施形態では、金属硫酸塩を結晶化させるステップは、硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び硫酸コバルトのいずれかの組み合わせを水溶液から選択的に結晶化させることを含む。本明細書に記載のプロセスの1つ以上の実施形態では、結晶化金属硫酸塩は、電池グレードの結晶化金属硫酸塩又は電気めっきグレードの結晶化金属硫酸塩である。
【0023】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載の金属硫酸塩を生成するためのプロセスは、金属硫酸塩を含む水溶液(例えば、硫酸塩マトリックス浸出貴液(PLS)を精製するステップを含み、ここで、Cu(例えば、硫化、溶媒抽出、セメンテーション、イオン交換などにより)、Fe及びAl(例えば、沈殿、イオン交換などにより)、Zn(例えば、硫化、溶媒抽出、イオン交換などにより)、Co(例えば、溶媒抽出、イオン交換、沈殿などにより)、Ca(例えば、溶媒抽出、イオン交換などにより)、Mg(例えば、溶媒抽出、イオン交換などにより)、F(例えば、カルシウム/石灰の添加により)又は黒鉛(例えば、濾過により)などの特定の不純物又は成分を除去するために、PLSに対して精製段階(本明細書では不純物又は成分の除去段階とも呼ばれる)のいずれか1つ又はそれらの組み合わせが行われる。硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、硫酸マンガン(MnSO4)及び硫酸リチウム(Li2SO4)のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを精製PLSから選択的に結晶化するのに十分な条件下で精製PLSを晶析装置中に導入して、結晶化金属硫酸塩を母液中に生成することができる(例えば、供給材料に依存して、リチウム、マグネシウム、ナトリウム又はカリウムに対して真空下の強制循環晶析装置などにより)。これらの結晶化金属硫酸塩は、次に、母液から単離される(例えば、晶析装置から排出される)。1つの結晶化サイクル(例えば、1つの晶析装置を使用)が結晶化金属硫酸塩の生成に不十分である場合(例えば、より高濃度の不純物を含む供給材料を用いると生じ得る)、晶析装置から排出された結晶を純水中に溶解させて硫酸塩水溶液を形成して、これを第2の結晶化サイクル(例えば、第2の晶析装置を使用)に導入して再結晶させることができる。
【0024】
結晶化後、母液は、望ましくない塩/金属(例えば、Li2SO4、MgSO4、Na2SO4など)及び溶液から結晶化しなかった金属硫酸塩(本明細書では結晶化されていない金属硫酸塩とも呼ばれる)を含む。溶液中に残存する望ましくない材料からこれらの結晶化されていない金属硫酸塩を選択的に回収するために、母液を晶析装置からブリードさせ、塩基化して、結晶化されていない金属硫酸塩を金属水酸化物(例えば、Ni(OH)2、Co(OH)2、Mn(OH)2など)などの塩基性金属塩に変換する。これらの金属水酸化物は、上流で使用されて、PLSを形成する浸出及び/又はプロセスの精製段階中に導入される酸を中和し、これにより金属水酸化物は金属硫酸塩に戻り、これは、次に、結晶化によって単離することができる。上流で使用する前に、金属水酸化物は、母液から単離し、洗浄することができ、移送のために水を加えて再撹拌することができ、これにより空気への曝露を制限することができ、したがって水酸化物の酸化を制限することができる。
【0025】
金属水酸化物の中和剤としての使用に加えて、このプロセスは、晶析装置から出た母液を塩素化し、任意に浸出及び/又は精製段階中に導入された酸を中和するために、中和剤の外部供給源(例えば、添加された酸化物、水酸化物)を使用することもできる。これらの外部中和剤は、それらの廃棄物から(例えば、電気分解などにより)再生する能力、廃棄物ストリーム(例えば、作用物質としてのCaO/CaCO3、廃棄物としてのCaSO4・2H2O;作用物質としてのNaOH、廃棄物としてのNa2SO4)の形成を最小限にするか若しくは回避するため;又はより価値の高い副生成物を生成する能力(例えば、作用物質としてのKOH、副生成物としてのK2SO4)のいずれかで選択される。1つ以上の実施形態では、NaOHが中和剤として使用され、硫酸ナトリウムストリームが塩基性化ステップ中に形成される。
【0026】
一般に、金属硫酸塩を生成するためのプロセスは、あまり供給材料によって左右されず、供給原材料(例えば、精鉱、混合水酸化物/硫化物沈殿物、別のNiをベースとする供給材料)及びリサイクルされた供給材料(例えば、使用済み電池材料)を許容することができる。このプロセスは、条件(例えば、加圧浸出、加圧酸化)下で供給材料を浸出させて、金属硫酸塩を含む水溶液(例えば、硫酸塩マトリックス浸出貴液(PLS)を形成することも含む。このプロセスにより、結晶化した硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、硫酸マンガン(MnSO4)及び硫酸リチウム(Li2SO4)のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを生成することができる。このプロセスにより、結晶化した硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)及び硫酸マンガン(MnSO4)のいずれか1つ又は2つを生成することができる。このプロセスにより、結晶化した硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)及び硫酸マンガン(MnSO4)の3つすべてを生成することができる。このプロセスから単離された結晶化金属硫酸塩のうち、一部は、電池グレードであり得る。このプロセスから単離された結晶化金属硫酸塩のうち、一部は、電気めっきへの使用に適切であり得る。このプロセスから単離された結晶化金属硫酸塩のうち、一部は、金属硫酸塩水和物(例えば、結晶の一体部分として種々の比率で結合した結晶化金属硫酸塩及び水分子;例えば、金属硫酸塩1つ当たり1つの水分子、又は金属硫酸塩1つ当たり6つの水分子、又は金属硫酸塩1つ当たり7つの水分子の比率)であり得る。
【0027】
本明細書に記載のプロセスの1つ以上の実施形態では、このプロセスは、供給材料を浸出させるステップと、金属硫酸塩を含む水溶液を形成するステップとを含む。例えば、このプロセスは、1つ以上の供給材料の投入から開始することができる。適切な供給材料としては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)又はリチウム(Li)のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含むあらゆる供給材料が挙げられる。幾つかの実施形態では、供給材料は、供給原材料及びリサイクル材料の供給材料のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含み得る。供給原材料の例としては、混合水酸化物沈殿物(MHP)、混合硫化物沈殿物(MSP)、硫化ニッケル精鉱、硫化コバルト精鉱、ニッケルラテライト、ニッケルマット又はフェロニッケルが挙げられるが、これらに限定されない。リサイクル材料の供給材料の例としては、使用済みカソード材料及びリサイクルされたリチウムイオン電池若しくはリチウムイオン電池の製造スクラップから誘導される材料(一括して本明細書ではブラックマスと呼ばれる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
供給材料は、金属硫酸塩を含む水溶液(PLS)、例えば硫酸塩マトリックス浸出貴液を形成する条件下で浸出させることができる。一般に、浸出条件は、酸ストリーム;酸ストリーム及び過酸化水素;酸ストリーム及び二酸化硫黄;又は酸ストリーム及びスクロースなどの別の還元剤を含み得る酸性浸出液ストリームと供給材料を反応させることを含む。浸出条件は、酸素又は空気を用いて加圧容器中で供給材料を酸化させることにより、供給材料を可溶化することも含み得る。硫酸塩マトリックスPLSの形成において、酸ストリームは、硫酸塩源として機能することができ、例えば硫酸を含み得るか;又は酸ストリーム及び/若しくは供給材料は、硫酸塩源として機能することができる。
【0029】
PLSの形成に適切であり得る多数の浸出条件が存在する。処理される供給材料の種類又は供給源に基づいて、当業者は、どのような浸出条件の選択及び試験を行って、その選択を確認し、特定の条件を規定するかを理解している。例えば、浸出は、周囲条件又は周囲条件よりも高い温度及び/若しくは圧力で行うことができる。MHP又はブラックマスを含む供給材料の場合、浸出は、例えば、酸及び還元剤を添加して約65℃の温度及び大気圧で行うことができる。MSP又はニッケルマットを含む供給材料の場合、浸出は、150~220℃の温度における加圧浸出及び/又は加圧酸化によって行うことができる。
【0030】
浸出条件は、酸又は塩基の試薬の使用が最小限になるように選択することができる。例えば、浸出条件は、供給材料と酸性浸出液ストリームとの互いに反対方向での接触及び流動を伴う対向流浸出を含み得る。このような対向流を用いることで浸出効率を高めることができ、浸出段階における酸試薬の使用を減少させることができる。酸試薬の使用が減少することにより、後に塩基によって中和する必要が生じるプロセス下流を通過する酸が減少するため、対向流浸出は、塩基試薬の使用も減少させることができる。幾つかの実施形態では、浸出条件は、加圧浸出を含み得、これは、供給材料中の硫化物を酸化させることによって硫酸塩を生成することができ、これにより供給材料中の金属を可溶化するために使用される追加の酸試薬が不要となる。
【0031】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載の金属硫酸塩を生成するためのプロセスは、金属硫酸塩を含む水溶液(例えば、硫酸塩マトリックス浸出貴液(PLS)を精製するステップを含み、ここで、PLSに対して、特定の不純物又は成分を除去するための精製段階(本明細書では不純物又は成分の除去段階とも呼ばれる)のいずれか1つ又はそれらの組み合わせが行われる。
【0032】
浸出後、1つ以上の不純物又は成分を除去することによってPLSを精製するために、PLSに対して1つ以上の精製段階を行うことができる。除去される不純物又は成分の種類及び量は、少なくとも部分的には、PLSが形成される供給材料の種類及びプロセスによって得られる最終製品の仕様(例えば、純度、グレード、硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)及び硫酸マンガン(MnSO4)の1つのみ又は2つが必要な場合など)によって決定される。除去される不純物又は成分の例としては、ナトリウム(Na)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、リチウム(Li)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)が挙げられるが、これらに限定されない。除去が必要となり得る成分としては、ニッケル、コバルト及びマンガンのいずれか1つ又は2つを挙げることができ、それにより、例えば電池グレードの金属硫酸塩などの最終製品として使用するために、結晶化した硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)及び硫酸マンガン(MnSO4)の1つのみ又は2つが晶析装置から単離される。別の場合、硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)及び硫酸マンガン(MnSO4)の3つすべてが晶析装置から単離される。電池グレードの金属硫酸塩が必要である場合、例えば、電池グレードの硫酸ニッケルの場合に許容されるそのような不純物の特定の製品仕様(例えば、限度)が存在し、前記製品仕様を超える量でプロセスの供給材料、水又は試薬中に存在するあらゆるこのような不純物は、その濃度を低下させる必要がある。
【0033】
PLSから不純物又は成分を除去するための多くの適切な方法が存在する。このような方法としては、沈殿、大気浸出若しくは加圧浸出、スルフィド化、溶媒抽出、イオン交換及びセメンテーションが挙げられるが、これらに限定されない。適切な方法(及びその操作条件)の選択は、少なくとも部分的には、除去される不純物又は成分の種類及び量並びにプロセスによって得られる最終製品の仕様に応じて行われる。例えば、銅は、沈殿、溶媒抽出、スルフィド化、セメンテーション又はイオン交換などによって除去することができ、鉄及びアルミニウムは、沈殿又はイオン交換などによって除去することができ、亜鉛は、スルフィド化、溶媒抽出又はイオン交換などによって除去することができ、コバルトは、溶媒抽出、イオン交換又は酸化沈殿などによって除去することができる。それぞれの方法の条件及び操作パラメーターは、一般に知られており、除去される不純物又は成分の種類及び量に応じて選択することができる。
【0034】
例えば、セメンテーションは、第1の金属イオンと第2の固体金属との間の酸化還元反応を伴うプロセスであり、これにより最初に第1の金属イオンが還元されて第2の固体金属となり、第1の固体金属が酸化されて第2の金属イオンになる。セメンテーションは、例えば、銅を除去するために選択することができ、なぜなら、別の試薬を使用することなく、プロセスに価値のある金属を加えることができ(例えば、ニッケル粉末が第1の固体金属として使用される場合、Niを加えることにより)、且つ/又は酸又は塩基の試薬をプロセスに加える必要なく不純物を除去できる(例えば、還元により)からである。
【0035】
PLSから不純物又は成分を除去するための精製段階は、酸又は塩基の試薬の使用が最小限となるように選択することができる。例えば、Cuは、ニッケル粉末を用いたセメンテーションによって除去することができ、これは、わずかな酸を必要とし、塩基が不要であり、酸を生成しないが、対照的に、溶媒抽出(SX)によるCuの除去では、除去されるCu1モル当たり1モルの硫酸が必要であり、前記添加された酸のすべては、下流の塩基によって中和する必要がある。Fe及びAlなどの別の不純物は、pH(例えば、約5.5まで)上昇させることによる沈殿によって除去することができ、これは、塩基を加える必要があるが、酸を加える必要がなく、塩基は、外部中和剤又はプロセスの下流で生成する塩基性金属塩として導入することができる。対照的に、イオン交換(IX)によるFe及びAlの除去では、Fe及びAlを交換カラム上に充填するために塩基を加える必要があり、交換カラムからFe及びAlを除去するために酸を加えることも必要であり、これらの不純物を廃棄可能な形態に変換するために追加の試薬又はプロセスステップも必要である。
【0036】
本明細書に記載のプロセスは、水溶液から金属硫酸塩を結晶化させて結晶化金属硫酸塩を形成するステップを含み得る。溶液から硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン及び/又は硫酸リチウムのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを選択的に結晶化又は共結晶化させるのに十分な条件下で精製PLSを晶析装置中に導入することができる。このような選択的結晶化は、母液中に1つ以上の結晶化金属硫酸塩(例えば、NMC硫酸塩及び/又は硫酸リチウム)を提供するために、精製PLS(供給材料に依存する)中に残存するリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの成分に対して行われる。
【0037】
様々な種類の晶析装置が、NMC硫酸塩及び/又は硫酸リチウムの選択的結晶化又は共結晶化を行うために適切であり得る。このような晶析装置としては、蒸発晶析装置、強制循環(FC)晶析装置、間接強制循環(IFC)晶析装置及びドラフトチューブバッフル(DTB)晶析装置が挙げられるが、これらに限定されない。このような晶析装置の条件及び操作パラメーターは、結晶化される金属硫酸塩の種類及び純度並びに/又はPLS中の不純物の種類及び濃度に応じて選択することができる。例えば、IFC又はDTB晶析装置が使用される場合、NMC硫酸塩を結晶化させるときにより粗い結晶が形成され得、これによりリチウム、ナトリウム、マグネシウム及び/又はカリウムなどの前記結晶化中の不純物の取り込みを抑制することができる。強制循環晶析装置が使用される場合、PLSを周囲温度(例えば、約25℃)まで瞬間冷却するために減圧下で操作することができ、これにより水の蒸発並びにNMC硫酸塩及び/又は硫酸リチウムの結晶化を促進することができる。このような場合、蒸発する自由水の量を、リチウム又はナトリウムなどのある種の不純物の飽和点に到達するのに必要な量よりも少なくすることができる。リチウム及びナトリウムなどの不純物に対して硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンをともに選択的に結晶化させるために晶析装置が使用される場合、晶析装置を1~5又は1.5~2.5のpHレベルで操作することができる。幾つかの実施形態では、0未満、1.5未満又は0.5~1.5のpHレベルが有効である。
【0038】
さらに、溶液中の別の硫酸塩及び成分(例えば、不純物)に対して1つの金属硫酸塩又は複数の金属硫酸塩の組み合わせが選択的に結晶化されるように、晶析装置の条件及び操作パラメーターを選択することができる。例えば、1つ又は2つの金属硫酸塩の濃度がPLS中で非常に低濃度であり、第3の金属硫酸塩がはるかに高濃度である場合、晶析装置のブリード速度(例えば、十分速いブリード速度)を慎重に選択することで、1つ又は2つの金属硫酸塩に対して第3の金属硫酸塩を選択的に結晶化させることができる。
【0039】
晶析装置の条件及び操作パラメーターは、結晶化金属硫酸塩の純度が管理されるように選択することもできる。結晶化中の晶析装置からの母液のブリーディング及びブリーディングが起こる速度は、例えば、不純物の結晶化を選択的に抑制することにより、結晶化金属硫酸塩の純度に影響を与え得る。本明細書で使用される場合、特定の不純物の結晶化不純物を選択的に抑制するためのブリード速度の選択とは、別の不純物の結晶化を抑制するよりも特定の不純物の結晶化を抑制する、ある範囲内の実現可能なブリード速度に晶析装置ブリード速度を設定することを意味する。ブリード速度は、特定の不純物の結晶化の抑制が最大化されるように選択することができる。不純物は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどであり得る。より速い母液のブリード速度を用いることは、結晶化金属硫酸塩の純度に影響を与え得る母液中の不純物及び別の成分の濃度をより低く維持するのに役立つ。
【0040】
さらに、不純物の溶解度は、温度依存性であり得、そのため、晶析装置温度を選択することは、結晶化される金属硫酸塩の純度の管理に有効であり得る。例えば、硫酸リチウムの溶解度は、温度上昇とともに低下し、そのため、晶析装置がより高い温度で操作される場合、PLS中に残存する硫酸リチウムが析出して、結晶化金属硫酸塩の純度に影響を与え得る。しかし、晶析装置がより低い温度で操作される場合、硫酸リチウムは、溶液中に残存し、結晶化される金属硫酸塩を有する溶液からの析出が防止され得る。代わりに、同じブリード速度が維持される間、晶析装置が異なる温度条件で操作される場合、異なるレベルの不純物の汚染が得られる場合がある。対照的に、ナトリウムの溶解度は、温度上昇とともに増加する。そのため、晶析装置がより高い温度で操作される場合、ナトリウムは、溶液中に残存し得、晶析装置のブリード速度を増加させることで、結晶化される金属硫酸塩を有する溶液から析出する前に晶析装置からナトリウムを除去することができる。しかし、晶析装置がより低い温度で操作される場合、母液中に残存するナトリウムは、そのより低い溶解度のために沈殿するか、又はニッケルと反応して、結晶化金属硫酸塩の純度に影響し得る複塩を形成し得る。
【0041】
不純物の溶解度は、PLS及び/又は母液中に存在する自由水の量にも依存し得、そのため、晶析装置中の水位の管理は、結晶化される金属硫酸塩の純度の管理の有効な手段であり得る。例えば、幾つかの場合、金属硫酸塩は、金属硫酸塩水和物(すなわち結晶の一体部分として画定された比率で結合した結晶化金属硫酸塩及び水分子)として溶液から結晶化し、これにより母液中の水の濃度が低下する。自由水の濃度が低下することにより、母液中の不純物(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)の濃度は、それらが溶液から結晶化する時点で増加して、結晶化金属硫酸塩の純度に影響が生じることもある。しかし、晶析装置中でPLS及び/若しくは母液に十分な量の水が加えられる場合又は上流処理後にPLS中に過剰量の水が残存する場合(例えば、少なくとも水和物が形成されるために失われると予想される量の水)、その自由水の存在は、溶液からの不純物の結晶化を抑制し得る。
【0042】
結晶化金属硫酸塩は、それらを晶析装置から排出することによって母液から単離することができる。例えば、結晶化金属硫酸塩は、スラリーとして排出することができ、これをフィルター又は遠心分離機に通すことによって母液から結晶を分離することができる。濾液又は遠心分離液(すなわち母液)は、次に、晶析装置に戻すことができるか、又はその一部をブリードさせることができ、単離された結晶は、フィルター又は遠心分離機上で洗浄し、乾燥させることができる。幾つかの場合、より汚染された供給材料からPLSが形成される場合など、1つのみの晶析装置の使用では、適切に純粋な結晶化金属硫酸塩を生成するのに不十分となる。第1の晶析装置から排出された結晶は、次に、水(例えば、純水)中に溶解させ、続いて第2の晶析装置中に導入して再結晶させ、さらに精製することができる。
【0043】
本明細書に記載の金属硫酸塩を生成するためのプロセスは、母液の一部を塩基性化して、結晶化されていない金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換するステップを含み得る。本明細書に記載のプロセスの1つ以上の実施形態では、このプロセスは、第2の中和剤を用いて母液の一部を塩基性化して、結晶化されていない金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換するステップを含む。1つ以上の実施形態では、塩基性金属塩を、結晶化されていない金属硫酸塩に戻すステップは、第1の中和剤として塩基性金属塩を用いて、金属硫酸塩を結晶化させるステップの上流の酸を中和することを含む。
【0044】
結晶化母液は、Li2SO4、Na2SO4などの塩及び金属のような別の不純物及び成分に加えて、結晶化されていない金属硫酸塩を含み得る。これらの結晶化されていない金属硫酸塩を選択的に回収し、上流で中和剤(本明細書では第1の中和剤とも呼ばれる)として使用するための塩基性金属塩を形成するために、母液は、晶析装置からブリードされ、母液中に残存する結晶化されていない金属硫酸塩を金属水酸化物(例えば、Ni(OH)2、Co(OH)2、Mn(OH)2など)などの前記塩基性金属塩に変換するために塩基性化される。母液を塩基性化する場合、pHレベルを7.5~10又は7.5~9.5に上昇させるのに十分な塩基を加えることができる。結果として得られる金属水酸化物は、母液から沈殿し、濾過によって母液から単離し、洗浄してケーキを形成することができ、リパルピングしてスラリーを形成することができる。例えば、金属水酸化物は、濾過、濃縮及び濾過又は遠心分離によって回収することができ、次にフィルター又は遠心分離機上で洗浄してケーキを形成することができる。このケーキの少なくとも一部は、リパルプタンクに通し、水又はプロセス溶液を用いてスラリーにすることができる。金属水酸化物は、例えば、1段階又は2段階沈殿回路により、母液から選択的に沈殿させることができる。沈殿回路は、母液中にそれらが存在するため、金属水酸化物中の不純物から金属水酸化物を選択的に沈殿させるために使用することができる。
【0045】
金属水酸化物は、プロセスの上流に導入され、浸出及び/又は精製段階において導入される酸を中和するための中和剤として使用される。例えば、約0%~40%の金属水酸化物(例えば、ケーキとして)を浸出段階中に導入することができ、約60%~100%の金属水酸化物(例えば、ケーキとして)を精製段階中に導入することができる。金属水酸化物を中和剤として用いることで、外部中和剤を導入する必要性が減少し且つ/又はなくなり、これにより試薬の使用(及び関連するコスト)が減少し、生成物の純度に影響し得る不純物(例えば、外部中和剤からのカチオンのNa+、K+、Ca2+、Mg2+)のさらなる供給源が減少し且つ/又はなくなり、別の場合、不純物の共沈及び結晶化金属硫酸塩の汚染を回避するために晶析装置のブリード速度の上昇が必要となる。幾つかの場合、中和剤として使用できる塩基性金属塩、例えば金属水酸化物の十分な量を保証するため、形成される金属水酸化物の量が、浸出及び/又は精製段階で導入される酸の量と少なくともほぼ同等又はほぼ同等となるように、母液が晶析装置からブリードされ、塩基性化されて、金属水酸化物が形成される速度を制御することができる。例えば、精製PLSが高純度である場合、晶析装置のブリード速度は、結晶化金属硫酸塩(例えば、前述のようなもの)の純度の管理を管理するためにあまり速くする必要がない場合があるが、それにもかかわらず、晶析装置のブリード速度は、上流で使用するために十分な量の金属水酸化物の形成を保証するために増加させる必要が生じ得る。別の場合、形成される金属水酸化物の量と外部中和剤の添加量とを合わせたものが、浸出及び/又は精製段階で導入される酸の量と少なくともほぼ同等又はほぼ同等となるように、母液が晶析装置からブリードされ、塩基性化されて、金属水酸化物が形成される速度を制御することができるが、外部中和剤の使用により、結晶化金属硫酸塩の純度に影響が生じる濃度の不純物(例えば、カチオンのNa+、K+、Li+、Mg2+など)が導入されないように、添加される外部中和剤の量は、十分に少なく維持される。そのような場合、形成された金属水酸化物と外部中和剤との組み合わせを用いて、資本コスト及び/又は運転コストを管理することができる。さらに、金属水酸化物が上流プロセスに計量供給される速度は、前記プロセスのpH設定点(例えば、浸出、精製など)によって制御することができる。
【0046】
さらに、塩基性金属塩(例えば、金属水酸化物)を中和剤として用いることで、精製PLS中で塩基性金属塩が金属硫酸塩に戻される。変換された金属硫酸塩を含む精製PLSは、次に、晶析装置まで進められ、そこで、変換された金属硫酸塩を結晶化させ、母液から単離することができる。単離及び母液の塩基性化により、溶液中の結晶化されていない金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換することと、中和剤としてこれらの塩基性金属塩使用して、塩基性金属塩を、結晶化により後に単離可能な金属硫酸塩に戻すこととのこのループにより、特定の供給材料から得られる単離された結晶化金属硫酸塩の収率を改善することができる。
【0047】
塩基性金属塩、例えば金属水酸化物の中和剤としての使用に加えて、プロセスでは、精製段階において外部供給源の中和剤(例えば、添加された酸化物、水酸化物など)を使用して酸を中和することができ、且つ/又は晶析装置からブリードした母液を塩基化することができる(本明細書では第2の中和剤とも呼ばれる)。外部中和剤の種類及び量の選択は、少なくとも部分的には、精製段階の性質並びに金属硫酸塩及び母液中の別の成分の種類に応じて行うことができる。当業者が認識しているように、精製段階中における使用及び/又は母液の塩基性化における使用に適した様々な種類の外部中和剤が存在する。適切な外部中和剤としては、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)又は酸化マグネシウム(MgO)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)及び酸化マグネシウム(MgO)のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを外部中和剤として使用することができる。精製段階における使用及び/又は母液の塩基性化における使用にあまり適していない種類の外部中和剤が存在することを当業者は認識している。例えば、アンモニアを外部中和剤としての使用することにより、複塩、例えば硫酸ニッケルアンモニウム塩又は金属錯体、例えば又はNi及び/又はCo錯体が形成され得る。このようなカチオン、塩又は錯体により、プロセスが実現できなくなり、且つ/又は必要な溶媒抽出回路のために運転コスト及び資本コストが増加し得る。
【0048】
外部中和剤の量は、精製段階の性質に応じて選択することができる。例えば、精製段階で除去する必要があるCuが高濃度で存在する場合、銅の溶媒抽出段階で生成する酸を中和するために、高濃度/体積の中和剤が必要となり得る。さらに、精製段階で除去する必要があるFeが高濃度で存在する場合、pHを上昇させ、加水分解によってFeを除去するために、高濃度/体積の中和剤が必要となり得る。
【0049】
塩回収ステップにより、特定の副生成物、例えば商業的に価値がある副生成物が生成され、回収されるように、外部中和剤の種類を選択することができる。例えば、外部中和剤として水酸化カリウムが選択される場合、その使用によって肥料の硫酸カリウム(K2SO4)が生成される。外部中和剤として水酸化カルシウムが選択される場合、その使用によって石膏(CaSO4・2H2O)が生成し、これは、廃棄物として廃棄され得るか又は乾式壁及び建築物に使用され得る生成物である。外部中和剤として酸化マグネシウム(MgO)が選択される場合、その使用によって硫酸マグネシウムが生成する。外部中和剤として水酸化リチウム(LiOH)が選択される場合、その使用によって硫酸リチウムが生成する。
【0050】
外部中和剤の種類は、塩回収ステップによって回収され、再生される能力に基づいて選択することもでき、それにより中和剤をプロセスで使用し、次に再利用のために再生することができる。例えば、外部中和剤として水酸化ナトリウムが選択される場合、その使用によって硫酸ナトリウムが副生成物として生成する。水酸化ナトリウムは、電気分解によって硫酸ナトリウムから再生することができる。一般に、電気分解により、副生成物の硫酸ナトリウムから、プロセスで再利用するための水酸化ナトリウムに直接変換して戻すことができ、この変換中に硫酸が生成する。特に、電気分解では、塩溶液から酸及び塩基を再生するために、印加電位及び1つ以上イオン選択性膜が使用され、電気分解は、選択性膜で分離された2つ以上の区画を含み得る電気化学セルを使用して行われる。例えば、電気分解は、6Vの電位で1500~3000A/m2の電流密度を用いて操作される3区画セルを含み得、これは、約20重量%の水酸化ナトリウム溶液とともに硫酸ナトリウムからの約10重量%の硫酸溶液を生成することができ、これらの両方は、プロセスにおいて上流で使用するために再循環され得る。外部中和剤としてLiOHが選択される場合、その使用によって硫酸リチウムが生成し、これは、塩基性化及び結晶化若しくは電気分解などの下流の回収ステップを用いてLiOHに戻すことができるか、又は販売できる生成物として炭酸リチウムに変換することができる。
【0051】
1つ以上の実施形態では、外部中和剤は、水酸化ナトリウムであり、その使用によって硫酸ナトリウムが副生成物として生成する。この硫酸ナトリウム副生成物は、本明細書に開示されるプロセスにおける硫酸ナトリウムストリームとして使用することができる。この硫酸ナトリウムストリームをイオン交換プロセスで処理して、硫酸カリウム溶液及び塩化ナトリウムブラインを提供することができる。
【0052】
本開示の1つ以上の実施形態では、本明細書に記載の金属硫酸塩を生成するためのプロセスにより、硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、硫酸マンガン(MnSO4)及び硫酸リチウム(Li2SO4)のいずれか1つ又はそれらの組み合わせの選択的結晶化又は共結晶化が行われる。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のプロセスにより、結晶化した硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)及び硫酸マンガン(MnSO4)の1つ又は2つの選択的結晶化又は共結晶化が行われる。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のプロセスにより、結晶化した硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)及び硫酸マンガン(MnSO4)の3つすべての選択的共結晶化が行われる。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のプロセスにより、電池グレードの結晶化金属硫酸塩が得られる。1つ以上の実施形態では、このプロセスにより、電気めっきグレードの結晶化金属硫酸塩が得られる。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のプロセスは、電池グレードの結晶化金属硫酸塩を単離するために溶媒抽出回路を使用しない。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のプロセスにより、資本コスト及び運転コストが低下し、結晶化金属硫酸塩の収率が増加し、且つ/又は固体廃棄物としての硫酸ナトリウムが減少するか若しくはなくなる(水酸化ナトリウムが外部中和剤として使用され、電気分解によって硫酸ナトリウムが水酸化ナトリウムに戻される場合又は必要な外部中和剤の量が減少する場合)。
【0053】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスにより、資本コスト及び運転コストが低下し、なぜなら、結晶化金属硫酸塩を単離するために、溶媒抽出回路の代わりに晶析装置が使用されるからである。結晶化にエネルギー入力が必要であるが、添加した試薬を使用する必要はなく、それにより運転コストが減少する。さらに、結晶化に関連する資本コストは、溶媒抽出回路に関連する資本コストよりも小さい。
【0054】
別の実施形態では、本明細書に記載のプロセスにより、試薬の使用が減少することによって資本コスト及び運転コストが低下する。例えば、硫酸ニッケルを形成するためのニッケル溶媒抽出回路では、生成される硫酸ニッケル1モル当たり1モルの硫酸及び2モルの水酸化ナトリウムの消費が必要となる。対照的に、結晶化では、加えた試薬を使用する必要がない。本明細書に記載のプロセスは、溶媒抽出ステップが精製段階の一部として使用される場合でも試薬の使用を減少させることができ、前記溶媒抽出では、一般により少ない投入量(すなわちより低濃度の不純物)となり、そのため、必要な酸及び塩基が少なくなる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスにより、処理ステップの数が減少することによって資本コスト及び運転コストが低下する。プロセスステップ数の減少により、資本コスト及び運転コストが低下するだけでなく、プロセスの複雑さも低下し、それによりプロセスの実施に必要なインフラ及びスキルセットの複雑さも低下する。例えば、溶媒抽出は、抽出、スクラビング及びストリッピングの複数の段階を必要とする比較的複雑な単位操作であり、水性排出ストリームの処理、汚れの除去、有機蒸気回収及び防火のためのシステムが必要である。結晶化金属硫酸塩を単離するために、溶媒抽出回路の代わりに晶析装置を使用することにより、このようなプロセスの複雑さ(及び関連のコスト)を回避することができる。
【0055】
別の実施形態では、本明細書に記載のプロセスにより、リチウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムなどのプロセスの浸出及び/又は精製段階における特定の不純物又は成分の添加が減少するか又は防止されることにより、結晶化金属硫酸塩の収率が増加する。例えば、結晶化金属硫酸塩のワンパス収率が晶析装置中で増加するため、リチウム、ナトリウムなどの不純物の母液中の濃度も増加する。結果として、結晶化金属硫酸塩の純度を管理するために(例えば、母液中で不純物がそれらの飽和濃度に近づくことを抑制又は防止することにより)、晶析装置のブリード速度も増加させる必要がある。しかし、晶析装置のブリード速度の増加により、ブリードした結晶化されていない金属硫酸塩の塩基性化及び沈殿が行われ、試薬を消費するため、非効率的になり得る。したがって、プロセスの浸出及び/又は精製段階におけるこれらの不純物の添加の減少又は防止を行うことは、不純物と金属硫酸塩との共結晶化を回避しながら、晶析装置をより遅いブリード速度で操作できることを意味し、これにより結晶化金属硫酸塩のワンパス収率を改善することができ、運転コストも低下させることができる。本開示のプロセスの1つ以上の実施形態では、特定の不純物(例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウムなど)の添加は、晶析装置からブリードする母液から沈殿した塩基性金属塩(例えば、金属水酸化物のNi(OH)2、Co(OH)2、Mn(OH)2など)を使用することによって減少又は防止される。幾つかの実施形態では、不純物(例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウムなど)の塩基性金属塩中への沈殿を減少させるか又は防止するために、塩基性金属塩の沈殿及び洗浄は、慎重に制御される(例えば、pHレベルの選択、2段階沈殿回路の使用などにより)。
【0056】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスは、結晶化母液の単離及び塩基性化により、溶液中の結晶化されていない金属硫酸塩を塩基性金属塩(例えば、金属水酸化物)に変換し、それらの塩基性金属塩を中和剤として使用して、結晶化のためにそれらの塩を金属硫酸塩に戻すループを用いることにより、結晶化金属硫酸塩の収率を増加させる。このループの反復する性質により、結晶化金属硫酸塩の非常に良好な回収が保障される。
【0057】
別の実施形態では、本明細書に記載のプロセスは、硫酸ナトリウムから水酸化ナトリウムを再生することにより、廃棄物ストリームとしての硫酸ナトリウムを減少させるか又はなくす。硫酸ナトリウムは、一般に市場性が低いと考えられる副生成物であり、環境的観点及び財務的観点の両方から費用のかかる廃棄物問題となる可能性がある。
【0058】
本明細書及び請求項において使用される場合、文脈が明確に別のことを示さない限り、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、複数の言及を含む。本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、それに続くものが非排他的であることを意味し、あらゆる別の追加の適切な項目、例えば必要に応じて1つ以上のさらなる特徴、構成要素及び/又は成分を含む場合も含まない場合もあると理解される。
【0059】
本明細書で使用される場合、「NMC」は、ニッケル、マンガン及び/又はコバルトを意味する。例えば、NMC硫酸塩は、硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び/又は硫酸コバルトを意味する。本明細書で使用される場合、「金属硫酸塩」は、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び/又は硫酸マンガンのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを意味する。さらに「金属水酸化物」は、水酸化ニッケル、水酸化コバルト及び/又は水酸化マンガンのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを意味する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「結晶化」、「結晶化すること」又は「結晶化される」は、PLS中の金属硫酸塩から選択的にゆっくり形成する結晶ネットワークの形成過程を意味し、これにより純粋な結晶化合物が得られる(少なくともX線回折によって示される)。対照的に、本明細書で使用される場合、「沈殿」は、塩基性化剤の添加と、溶液からの結晶性又は非晶質固体の形成とを特徴とする過程を意味する。本明細書で使用される場合、「共結晶化する」又は「共結晶化すること」は、溶液から2つ以上の成分(例えば、金属硫酸塩、不純物など)がともに(例えば、同時に)結晶化することを意味する。本明細書で使用される場合、金属硫酸塩が「選択的に結晶化すること」又は「選択的に共結晶化すること」と言及する場合、「選択的」は、すべてではないがほとんどの不純物又は別の成分以外の金属硫酸塩が結晶化することを意味し、換言すると、「選択的」は、純粋な結晶化金属硫酸塩が形成されることを意味する。
【0061】
本明細書で使用される場合、塩基性金属塩、例えば金属水酸化物が「選択的に沈殿した」と言及する場合、「選択的」は、すべてではないがほとんどの不純物又は別の成分以外の塩基性金属塩が沈殿することを意味し、換言すると、「選択的」は、純粋な塩基性金属塩が形成されることを意味する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「金属硫酸塩の結晶化の上流で中和される酸の量」は、(i)(例えば、浸出段階及び/又は精製段階における)金属硫酸塩の結晶化の上流のプロセスに加えられた酸を中和すること;(ii)不純物及び/又は成分を除去するために精製段階中に生成する酸を中和すること;又は(iii)それらの両方の組み合わせを意味する。加えられた酸又は生成した酸の量は、浸出段階及び/又は精製段階の条件によって決定され、使用される供給材料並びに既知の不純物及びその成分を考慮して決定することができ、精製段階は、浸出段階並びに浸出及び精製段階のそれぞれの場合の化学反応/プロセス及びそれらの化学量論で得られた浸出貴液を処理するために使用される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「自由水」は、水和層の一部ではなく、且つ/又は格子構造に組み込まれていない、水溶液の液相を構成する水を意味する。「自由水の量」は、水溶液中に存在する自由水の体積(例えば、mL、L)を意味する。
【0064】
本明細書に記載の実施形態は、単なる例であることが意図される。当業者により、特定の実施形態に対する変更形態、修正形態及び変形形態がなされ得る。特許請求の範囲は、本明細書に記載の特定の実施形態によって限定されるべきではなく、全体として本明細書と整合性のある方法で解釈されるべきである。
【国際調査報告】