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特表2024-507536複数の臓器の移植レシピエントにおけるドナー由来無細胞DNAの検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】複数の臓器の移植レシピエントにおけるドナー由来無細胞DNAの検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20240213BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALN20240213BHJP
   C12Q 1/6853 20180101ALN20240213BHJP
【FI】
C12Q1/68
C12Q1/6844
C12Q1/6853
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550565
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2022017707
(87)【国際公開番号】W WO2022182878
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】63/153,800
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】513156537
【氏名又は名称】ナテラ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】デムコ,ザカリー
(72)【発明者】
【氏名】アフメッド,エバド
(72)【発明者】
【氏名】スウェナートン,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン フムレン,ポール
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QR40
4B063QR62
4B063QR72
4B063QS25
4B063QS36
(57)【要約】
本開示は、DNAを増幅及び配列決定する方法を提供し、本方法は、複数の臓器の同時移植又は順次移植を含む1つ以上の臓器の移植を受けている移植レシピエントの血液、血漿、血清、又は尿試料から無細胞DNAを抽出することであって、抽出された無細胞DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含む、抽出することと、200~50,000のプライマー対を使用して、単一反応体積において200~50,000の標的遺伝子座での標的増幅を行うことであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む、行うことと、増幅産物を高スループット配列決定によって配列決定して、配列決定リードを得て、配列決定リードに基づいて、ドナー由来無細胞DNAの量及び全無細胞DNAの量を定量することと、ドナー由来無細胞DNAの量又はその機能の量が、移植拒絶反応又は移植傷害を示すカットオフ閾値を超えているかどうかを決定することと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAを増幅及び配列決定する方法であって、
(a)1つ以上の臓器の移植を受けている移植レシピエントの血液、血漿、血清、又は尿試料から無細胞DNAを抽出することであって、前記抽出された無細胞DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含む、抽出することと、
(b)200~50,000のプライマー対を使用して、単一反応体積において200~50,000の標的遺伝子座で標的増幅を行うことであって、前記標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む、行うことと、
(c)前記増幅産物を高スループット配列決定によって配列決定して、配列決定リードを得て、前記配列決定リードに基づいて、ドナー由来無細胞DNAの量及び全無細胞DNAの量を定量することと、
(d)前記ドナー由来無細胞DNAの量又はその機能が、移植拒絶反応又は移植傷害を示すカットオフ閾値を超えているかどうかを決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記移植レシピエントが、ヒト対象である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記移植レシピエントが、膵臓、腎臓、肝臓、心臓、腸管、胸腺、及び子宮から選択される複数の移植された臓器を受けている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の移植された臓器が、同じ移植ドナー由来である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の移植された臓器が、異なる移植ドナー由来である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記移植レシピエントが、2つ以上の臓器の同時移植を受けている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記移植レシピエントが、2つ以上の臓器の順次移植を受けている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記移植レシピエントが、腎臓及び膵臓の同時移植(SPK)を受けている、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記移植レシピエントが、腎臓及び肝臓の同時移植、腎臓及び心臓の同時移植、腎臓及び肺の同時移植、膵臓及び肝臓の同時移植、又は心臓及び肺の同時移植を受けている、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記カットオフ閾値が、全無細胞DNAのうちのドナー由来無細胞DNAのパーセンテージである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記カットオフ閾値が、ドナー由来無細胞DNAのコピー数又はその機能である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記カットオフ閾値が、ドナー由来無細胞DNAの量のセットである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記カットオフ閾値が、ドナー由来無細胞DNAの設定濃度である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記標的増幅が、PCRを含み、前記200~50,000のプライマー対が、順方向PCRプライマー及び逆方向PCRプライマーを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記標的増幅が、1,000~10,000のプライマー対を使用して、単一反応体積において1,000~10,000の標的遺伝子座で標的増幅を行って、増幅産物を得ることを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記標的遺伝子座が、一塩基多型(SNP)を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
高スループット配列決定を行う前に、前記増幅産物にタグを付着させることを更に含み、前記タグが、配列決定適合性アダプターを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
標的増幅を行う前に、前記抽出された無細胞DNAにタグを付着させることを更に含み、前記タグが、増幅のためのアダプターを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記タグが、試料特異的バーコードを含み、前記方法が、高スループット配列決定の前に、複数の試料からの前記増幅産物をプールすることと、前記高スループット配列決定の間に、単一の実行で前記増幅産物のプールを一緒に配列決定することと、を更に含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
同じ移植レシピエントについてステップ(a)~(d)を長期的に繰り返すことと、前記移植レシピエントにおける前記ドナー由来無細胞DNAの量又はその機能の長期的な変化を決定することと、を更に含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記移植レシピエントにおける前記ドナー由来無細胞DNAの量又はその機能の前記長期的な変化に基づいて免疫抑制療法を調整することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、ドナー遺伝子型の事前の知識なしに行われる、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
移植傷害及び/又は移植拒絶反応の迅速な検出は、同時多臓器移植又は順次移植のいずれかによる、複数の臓器の移植レシピエントにとって依然として課題である。従来の生検ベースの検査は、侵襲性で高価であり、移植傷害及び/又は移植拒絶反応の診断の遅れにつながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
したがって、従来の生検ベースの検査よりも感度が高く、より特異的な多臓器の移植レシピエントに対する非侵襲性の移植拒絶反応の検査が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、DNAを増幅及び配列決定する方法に関し、複数の臓器の同時移植又は順次移植を含む1つ以上の臓器の移植を受けている移植レシピエントの血液、血漿、血清、又は尿試料から無細胞DNAを抽出することであって、抽出された無細胞DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含む、抽出することと、200~50,000のプライマー対を使用して、単一反応体積において200~50,000の標的遺伝子座での標的増幅を行うことであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む、行うことと、増幅産物を高スループット配列決定によって配列決定して配列決定リードを得、配列決定リードに基づいて、ドナー由来無細胞DNAの量及び全無細胞DNAの量を定量することと、ドナー由来無細胞DNAの量又はその機能が、移植拒絶反応又は移植傷害を示すカットオフ閾値を超えているかどうかを決定することと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0004】
Sigdel et al.,「Optimizing Detection of Kidney Transplant Injury by Assessment of Donor-Derived Cell-Free DNA via Massively Multiplex PCR」,J.Clin.Med.8(1):19(2019)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
「Methods for Detection of Donor-Derived Cell-Free DNA」と題され、PCT/US2019/040603として2019年7月3日に出願されたWO2020/010255は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
「Improved Methods for Detection of Donor Derived Cell-Free DNA」と題され、2020年5月29日に出願された米国仮出願第63/031,879号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
本発明は、複数の臓器の同時移植又は順次移植を含む1つ以上の臓器の移植を受けている移植レシピエントの生体試料から抽出された無細胞DNAを増幅及び配列決定する方法に関し、これは、移植拒絶反応又は移植傷害を決定するのに有用である。いくつかの実施形態において、本方法は、(a)移植レシピエントの血液、血漿、血清、又は尿試料から無細胞DNAを抽出することであって、抽出された無細胞DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含む、抽出することと、(b)200~50,000のプライマー対を使用して、単一反応体積において200~50,000の標的遺伝子座での標的増幅を行うことであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む、行うことと、(c)増幅産物を高スループット配列決定によって配列決定して配列決定リードを得、配列決定リードに基づいて、ドナー由来無細胞DNAの量及び全無細胞DNAの量を定量することと、(d)ドナー由来無細胞DNAの量又はその機能が、移植拒絶反応又は移植傷害を示すカットオフ閾値を超えているかどうかを決定することと、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、移植ドナーは、ヒト対象である。いくつかの実施形態において、移植ドナーは、非ヒト哺乳動物対象(例えば、ブタ)である。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、ヒト対象である。
【0008】
いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、膵臓、腎臓、肝臓、心臓、腸、胸腺、造血細胞、及び子宮を含むがこれらに限定されない、1つ以上の移植された臓器を受けている。
【0009】
いくつかの実施形態において、複数の臓器は、同じ移植ドナーに由来する。いくつかの実施形態において、複数の臓器は、異なる移植ドナーに由来する。
【0010】
いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、複数の臓器の同時移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、複数の臓器の順次移植を受けている。
【0011】
いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、腎臓及び膵臓(SPK)の同時移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、腎臓及び膵臓(PAK)の順次移植を受けている。
【0012】
いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、腎臓及び肝臓の同時移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、腎臓及び心臓の同時移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、腎臓及び肺の同時移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、膵臓及び肝臓の同時移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、心臓及び肺の同時移植を受けている。
【0013】
いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、腎臓及び肝臓の順次移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、腎臓及び心臓の順次移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、腎臓及び肺の順次移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、膵臓及び肝臓の順次移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、心臓及び肺の順次移植を受けている。
【0014】
いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、全無細胞DNAの量のうちドナー由来無細胞DNAのパーセンテージ、例えば、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、又は0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、又は2.0%である。いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、移植される臓器の種類に従って調整される。いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、移植される臓器の数に従って調整される。
【0015】
いくつかの実施形態において、腎臓移植を受けている移植レシピエントのカットオフ閾値は、全無細胞DNAの量のうちのドナー由来無細胞DNAの量の1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、又は2.0%である。
【0016】
いくつかの実施形態において、心臓移植を受けている移植レシピエントのカットオフ閾値は、全無細胞DNAの量のうちドナー由来無細胞DNAの量の0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、又は0.5%である。
【0017】
いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、ドナー由来無細胞DNAの量又はその機能である。いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、dd-cfDNAの相対量又は絶対量として表される。いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、血液試料の体積単位当たりのdd-cfDNAの相対量又は絶対量として表される。いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、移植レシピエントの体重、BMI、又は血液量を乗じた又は除した、血液試料の体積単位当たりのdd-cfDNAの相対量又は絶対量として表される。
【0018】
いくつかの実施形態において、dd-cfDNA(%)及びdd-cfDNAの絶対量(コピー/mL)の両方を組み合わせる2閾値アルゴリズムは、特にcfDNAレベルが高い場合における検出の改善を通して、試験感度を改善することを目的として適用される。いくつかの実施形態において、新しい2閾値アルゴリズムでは、dd-cfDNA分率カットオフは、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、又は0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、又は2.0%であり、dd-cfDNA量カットオフは、10cp/mL、又は15cp/m、又は20cp/mL、又は25cp/mL、又は30cp/mL、又は35cp/mL、又は40cp/mL、又は45cp/mL、又は50cp/mL、又は60cp/mL、又は70cp/mL、又は80cp/mL、又は90cp/mL、又は100cp/mL、又は110cp/mL、又は120cp/mL、又は130cp/mL、又は140cp/mL、又は150cp/mLである。いくつかの実施形態において、いずれかの閾値を超える試料は、AR又は移植傷害のリスクが高いとみなされた。いくつかの実施形態において、両方の閾値を超える試料は、AR又は移植傷害のリスクが高いとみなされた。
【0019】
いくつかの実施形態において、標的増幅は、PCRを含み、プライマー対は、200~50,000、500~20,000、又は1,000~10,000、又は200~500、又は500~1,000、又は1,000~2,000、又は2,000~5,000、又は5,000~10,000、又は10,000~20,000、又は20,000~50,000対の順方向及び逆方向PCRプライマーを含む。いくつかの実施形態において、標的増幅は、増幅産物を得るために、500~20,000、又は1,000~10,000、又は200~500、又は500~1,000、又は1,000~2,000、又は2,000~5,000、又は5,000~10,000、又は10,000~20,000,又は20,000~50,000のプライマー対を使用して、単一反応体積において500~20,000、又は1,000~10,000、又は200~500、又は500~1,000、又は1,000~2,000、又は2,000~5,000、又は5,000~10,000、又は10,000~20,000、又は20,000~50,000の標的遺伝子座での標的増幅を行うことを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、標的遺伝子座は、一塩基多型(single nucleotide polymorphism)(SNP)を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、本方法は、高スループット配列決定を行う前に、増幅産物にタグを付着させることを更に含み、タグが、配列決定適合性アダプターを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、本方法は、標的増幅を行う前に、抽出された無細胞DNAにタグを付着させることを更に含み、タグが、増幅のためのアダプターを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、タグは、試料特異的バーコードを含み、本方法は、高スループット配列決定の前に複数の試料からの増幅産物をプールすることと、高スループット配列決定の間に単一の実行で増幅産物のプールを一緒に配列決定することと、を更に含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、本方法は、同じ移植レシピエントについてステップ(a)~(d)を長期的に繰り返すことと、当該移植レシピエントにおけるドナー由来無細胞DNAの量又はその機能の長期的な変化を決定することと、を更に含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、本方法は、移植レシピエントにおけるドナー由来無細胞DNAの量又はその機能の長期的な変化に基づいて免疫抑制療法を調整することを更に含む。いくつかの実施形態において、本方法は、移植レシピエントにおけるドナー由来無細胞DNA又はその機能の量の増加を考慮して、免疫抑制療法を増加させることを更に含む。いくつかの実施形態において、本方法は、移植レシピエントにおけるドナー由来無細胞DNA又はその機能の量の減少を考慮して、免疫抑制療法を減少させることを更に含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、本方法は、ドナー遺伝子型の事前の知識なしに行われる。いくつかの実施形態において、本方法は、移植ドナーの遺伝子型を決定することを含まない。
【0027】
本明細書に記載される方法は、全てのタイプの移植拒絶反応又は移植傷害を非常に正確に評価する。2つ以上の採血管を含み得る単一の採血から、本明細書に記載される方法の特定の実施形態は、患者の血液中の複数の移植された臓器からのドナーcfDNAの量を測定する。多数の一塩基多型(SNP)(例えば、13,000超のSNP)及び高度なバイオインフォマティクスを使用して、これらの実施形態は、ドナー及びレシピエントcfDNAを差別化して、移植レシピエントの血液中のdd-cfDNAのパーセンテージ、又はドナー由来無細胞DNAの量、又はその機能などの結果を提供することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、例えば、トレーサーDNA、又は内部キャリブレーションDNAは、以下のうちの1つ以上が事前に知られているDNAの組成物を指す:長さ、配列、ヌクレオチド組成、量、又は生物学的起源。トレーサーDNAは、ヒト対象に由来する生体試料に添加して、当該試料中の全cfDNAの量を推定するのに役立てることができる。また、生体試料自体以外の反応混合物に添加することもできる。
【0029】
いくつかの実施形態において、例えば、一塩基多型(SNP)は、同じ種の2つのメンバーのゲノム間で異なり得る単一ヌクレオチドを指す。この用語の使用は、各バリアントが生じる頻度のいかなる制限も意味しない。
【0030】
いくつかの実施形態において、例えば、配列は、DNA若しくはRNA配列又は遺伝子配列を指す。これは、個体におけるDNA若しくはRNA分子又は鎖の一次物理的構造を指し得る。これは、そのDNA若しくはRNA分子内に見出されるヌクレオチドの配列、又はDNA若しくはRNA分子に対する相補鎖を指し得る。これは、コンピュータでのその表現としてのDNA若しくはRNA分子に含まれる情報を指し得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、例えば、遺伝子座は、個体のDNA若しくはRNA上の特定の目的領域を指し、1つ以上のSNP、可能性のある挿入若しくは欠失の部位、又はいくつかの他の関連する遺伝子変異の部位を含むが、これらに限定されない。疾患関連SNPはまた、疾患関連遺伝子座を指し得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、例えば、多型対立遺伝子、別名「多型遺伝子座」は、遺伝子型が所与の種内の個体間で変化する対立遺伝子又は遺伝子座を指す。多型対立遺伝子のいくつかの例としては、一塩基多型(SNP)、短いタンデム反復、欠失、重複及び反転が挙げられる。
【0033】
いくつかの実施形態において、例えば、対立遺伝子は、特定の遺伝子座を占めるヌクレオチド又はヌクレオチド配列を指す。
【0034】
いくつかの実施形態において、例えば、遺伝子データ、別名「遺伝子型データ」は、1つ以上の個体のゲノムの態様を記述するデータを指す。これは、遺伝子座の1つ又は1セット、部分的又は全体的な配列、部分的又は全体的な染色体、又はゲノム全体を指し得る。これは、1つ又は複数のヌクレオチドの同一性を指し得、これは、一連の連続したヌクレオチド、又はゲノム内の異なる位置からのヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを指し得る。遺伝子型データはコンピュータ上であるが、配列中の物理的ヌクレオチドを化学的にコードされた遺伝子データとみなすことも可能である。遺伝子型データは、個体「に関する」、個体「の」、個体「での」、個体「からの」又は個体「に関する」と言うことができる。遺伝子型データは、遺伝物質に対してこれらの測定が行われる遺伝子型決定プラットフォームからの出力測定を指し得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、例えば、遺伝物質、別名「遺伝子試料」は、核酸(例えば、DNA又はRNAを含む)を含む1つ以上の個体からの、組織又は血液などの物理的物質を指す
【0036】
いくつかの実施形態において、例えば、対立遺伝子データは、1つ以上の対立遺伝子のセットに関する遺伝子型データのセットを指す。これは、段階的なハプロタイプのデータを指し得る。これは、SNP同一性を指し得、挿入、欠失、反復及び変異を含む、核酸の配列データを指し得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、例えば、対立遺伝子状態とは、1つ以上の対立遺伝子のセットにおける遺伝子の実際の状態を指す。これは、対立遺伝子データによって説明される遺伝子の実際の状態を指し得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、例えば、対立遺伝子の比率又は対立遺伝子比率は、試料又は個体中に存在する遺伝子座における各対立遺伝子の量間の比率を指す。試料が配列決定によって測定された場合、対立遺伝子の比率は、遺伝子座における各対立遺伝子にマッピングする配列リードの比率を指し得る。試料が強度ベースの測定方法によって測定された場合、対立遺伝子比率は、測定方法によって推定される、その遺伝子座に存在する各対立遺伝子の量の比率を指し得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、例えば、対立遺伝子数は、特定の遺伝子座にマッピングする配列の数を指し、その遺伝子座が多型である場合、対立遺伝子の各々にマッピングする配列の数を指す。各対立遺伝子がバイナリ方式でカウントされる場合、対立遺伝子数は整数となる。対立遺伝子が確率的にカウントされる場合、対立遺伝子数は、分数であってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、例えば、プライマー、別名「PCRプローブ」は、DNA分子が同一又はほぼ同一であり、プライマーが標的多型遺伝子座にハイブリダイズするように設計された領域を含み、PCR増幅などの増幅を可能にするように設計されたプライミング配列を含む、単一のDNA分子(DNAオリゴマー)又はDNA分子(DNAオリゴマー)の集合体を指す。プライマーはまた、分子バーコードを含んでいてもよい。プライマーは、個々の分子ごとに異なるランダム領域を含んでいてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、例えば、ハイブリッド捕捉プローブは、PCR又は直接合成などの様々な方法によって生成され、試料中の特定の標的DNA又はRNA配列の1つの鎖に相補的であることを意図している、場合によっては修飾された任意の核酸配列を指す。外因性ハイブリッド捕捉プローブを調製した試料に添加し、変性-アニールプロセスを通じてハイブリダイゼーションして、外因性-内因性断片の二本鎖を形成してもよい。次いで、これらの二本鎖は、様々な手段によって試料から物理的に分離され得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、例えば、配列リードは、クローン配列決定方法を使用して測定した、ヌクレオチド塩基の配列を表すデータを指す。クローン配列決定は、単一の、又はクローンの、又はクラスターの1つの元のDNA若しくはRNA分子を表す配列データを生成し得る。配列リードはまた、ヌクレオチドが正しく呼び出された可能性を示す配列の各塩基位置に、関連する品質スコアを有し得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、例えば、配列リードをマッピングすることは、特定の生物のゲノム配列における配列リードの起点の位置を決定するプロセスである。配列リードの起点の位置は、リード及びゲノム配列のヌクレオチド配列の類似性に基づく。
【0044】
いくつかの実施形態において、例えば、ドナー起源のDNA又はRNAとは、元々遺伝子型が移植ドナーのものと本質的に同等であった細胞の一部であったDNA又はRNAを指す。ドナーは、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ)であり得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、例えば、レシピエント起源のDNA又はRNAとは、元々遺伝子型が移植レシピエントのものと本質的に同等であった細胞の一部であったDNA又はRNAを指す。
【0046】
いくつかの実施形態において、例えば、移植レシピエント血漿とは、同種移植片又は異種移植片を受けている患者、例えば、臓器移植レシピエントの女性からの血液の血漿部分を指す。
【0047】
いくつかの実施形態において、例えば、遺伝子座に対応するDNA若しくはRNAの優先的濃縮、又は遺伝子座におけるDNA若しくはRNAの優先的濃縮とは、遺伝子座に対応する濃縮前DNA若しくはRNA混合物中のDNA若しくはRNAの分子のパーセンテージよりも高い、遺伝子座に対応する濃縮後DNA若しくはRNA混合物中のDNA若しくはRNAの分子のパーセンテージをもたらす任意の技術を指す。この技術は、遺伝子座に対応するDNA又はRNA分子の選択的増幅を含んでもよい。この技術は、遺伝子座に対応しないDNA又はRNA分子を除去することを含んでもよい。この技術は、方法の組み合わせを含んでもよい。濃縮度は、遺伝子座に対応する濃縮後混合物中のDNA又はRNA分子のパーセンテージを、遺伝子座に対応する濃縮前混合物中のDNA又はRNA分子のパーセンテージで割ったものとして定義される。優先的濃縮は、複数の遺伝子座で行われてもよい。本開示のいくつかの実施形態において、濃縮度は20を超える。本開示のいくつかの実施形態において、濃縮度は200を超える。本開示のいくつかの実施形態において、濃縮度は2,000を超える。優先的濃縮が複数の遺伝子座で行われる場合、濃縮度は、遺伝子座のセット中の全ての遺伝子座の平均濃縮度を指し得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、例えば、増幅とは、DNA又はRNAの分子のコピー数を増加させる技術を指す。
【0049】
いくつかの実施形態において、例えば、選択的増幅とは、DNA若しくはRNAの特定の領域に対応する、DNA若しくはRNAの特定の分子、又はDNA若しくはRNAの分子のコピー数を増加させる技術を指し得る。また、DNA若しくはRNAの非標的分子又は領域を増加させるよりも、DNA若しくはRNAの特定の標的化分子、又はDNA若しくはRNAの標的化領域のコピー数を増加させる技術を指し得る。選択的増幅は、優先的濃縮方法であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、例えば、ユニバーサルプライミング配列とは、例えば、ライゲーション、PCR、又はライゲーション媒介PCRによって標的DNA分子の集団に付加され得るDNA配列を指す。標的分子の集団に加えられると、ユニバーサルプライミング配列に特異的なプライマーを使用して、単一の増幅プライマー対を使用して標的集団を増幅することができる。ユニバーサルプライミング配列は、標的配列に関連する必要はない。
【0051】
いくつかの実施形態において、例えば、ユニバーサルアダプター、又は「ライゲーションアダプター」若しくは「ライブラリタグ」とは、標的二本鎖DNA分子の集団の5’末端及び3’末端に共有結合することができるユニバーサルプライミング配列を含むDNA分子である。アダプターの添加は、PCR増幅が行われ得る標的集団の5’末端及び3’末端にユニバーサルプライミング配列を提供し、単一の増幅プライマー対を使用して、標的集団由来の全ての分子を増幅する。
【0052】
いくつかの実施形態において、例えば、標的化とは、DNA若しくはRNAの混合物中の遺伝子座のセットに対応するDNA若しくはRNAの分子を選択的に増幅するか又は別様に優先的に濃縮するために使用される方法を指す。
【0053】
移植拒絶反応又は移植傷害を監視するためのドナー由来無細胞DNAの分析
一態様において、本発明は、移植レシピエントの血液試料中のドナー由来無細胞DNA(dd-cfDNA)の量を定量する方法に関し、本方法は、移植レシピエントの血液試料からDNAを抽出することであって、DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含む、抽出することと、500~50,000のプライマー対を使用して、単一反応体積において500~50,000の標的遺伝子座での標的増幅を行うことであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含み、各プライマー対が、100bp以下の標的配列を増幅するように設計される、行うことと、増幅産物中のドナー由来無細胞DNAの量を定量することと、を含む。
【0054】
別の態様において、本発明は、移植レシピエントの血液試料中のドナー由来無細胞DNA(dd-cfDNA)の量を定量する方法に関し、本方法は、移植レシピエントの血液試料からDNAを抽出することであって、DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含み、抽出ステップが、ドナー由来無細胞DNAを濃縮し、破裂した白血球から放出されるレシピエント由来無細胞DNAの量を減少させるサイズ選択を含む、抽出することと、500~50,000のプライマー対を使用して単一反応体積において500~50,000の標的遺伝子座での標的増幅を行うことであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む、行うことと、増幅産物中のドナー由来無細胞DNAの量を定量することと、を含む。
【0055】
別の態様において、本発明は、移植レシピエントの血液試料中のドナー由来無細胞DNA(dd-cfDNA)を検出する方法に関し、本方法は、移植レシピエントの血液試料からDNAを抽出することであって、DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含む、抽出することと、500~50,000のプライマー対を使用して、単一反応体積において500~50,000の標的遺伝子座での標的増幅を行うことであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む、行うことと、増幅産物を高スループット配列決定によって配列決定することと、ドナー由来無細胞DNAの量を定量することと、を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、本方法は、抽出されたDNAのユニバーサル増幅を行うことを更に含む。いくつかの実施形態において、ユニバーサル増幅は、破裂した白血球から放出されるレシピエント由来無細胞DNAよりも、ドナー由来無細胞DNAを優先的に増幅する。
【0057】
いくつかの実施形態において、移植ドナーは、ヒト対象である。いくつかの実施形態において、移植ドナーは、非ヒト哺乳動物対象(例えば、ブタ)である。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、ヒトである。
【0058】
いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、臓器移植、組織移植、細胞移植、及び流体移植から選択される移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、腸管移植、心臓移植、肺移植、心臓/肺移植、胃移植、精巣移植、陰茎移植、卵巣移植、子宮移植、胸腺移植、顔面移植、手移植、脚移植、骨移植、骨髄移植、角膜移植、皮膚移植、膵島細胞移植、心臓弁移植、血管移植、造血細胞、及び輸血から選択される移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、SPK移植を受けている。
【0059】
いくつかの実施形態において、定量ステップは、血液試料中のドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAの合計に対するドナー由来無細胞DNAのパーセンテージを決定することを含む。いくつかの実施形態において、定量ステップは、血液試料の体積単位当たりのドナー由来無細胞DNAの量を決定することを含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、本方法は、ドナー由来無細胞DNAの定量された量を使用して、移植の活性拒絶反応(active rejection)の発生又は発生の可能性を検出することを更に含む。いくつかの実施形態において、本方法は、ドナー遺伝子型の事前の知識なしに行われる。
【0061】
いくつかの実施形態において、各プライマー対は、約50~100bpの標的配列を増幅するように設計される。いくつかの実施形態において、各プライマー対は、75bp以下の標的配列を増幅するように設計される。いくつかの実施形態において、各プライマー対は、約60~75bpの標的配列を増幅するように設計される。いくつかの実施形態において、各プライマー対は、約65bpの標的配列を増幅するように設計される。
【0062】
いくつかの実施形態において、標的増幅は、単一反応体積において少なくとも1,000の多型遺伝子座で増幅することを含む。いくつかの実施形態において、標的増幅は、単一反応体積において少なくとも2,000の多型遺伝子座で増幅することを含む。いくつかの実施形態において、標的増幅は、単一反応体積において少なくとも5,000の多型遺伝子座で増幅することを含む。いくつかの実施形態において、標的増幅は、単一反応体積において少なくとも10,000の多型遺伝子座で増幅することを含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、方法は、多型遺伝子座である標的遺伝子座における1つ以上の対立遺伝子の量を測定することを更に含む。いくつかの実施形態において、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座は、単一反応において増幅される。
【0064】
いくつかの実施形態において、定量ステップは、マイクロアレイを使用して増幅された標的遺伝子座を検出することを含む。いくつかの実施形態において、定量ステップは、マイクロアレイを使用することを含まない。
【0065】
いくつかの実施形態において、標的増幅は、(i)少なくとも500~50,000の異なるプライマー対、又は(ii)少なくとも500~50,000の標的特異的プライマー及びユニバーサル又はタグ特異的プライマー500~50,000のプライマー対を使用して、単一反応体積において500~50,000の標的遺伝子座を同時に増幅することを含む。
【0066】
更なる態様において、本発明は、移植レシピエント内の移植拒絶反応又は移植傷害の尤度を決定する方法に関し、本方法は、移植レシピエントの血液試料からDNAを抽出することであって、DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含む、抽出することと、抽出されたDNAのユニバーサル増幅を行うことと、500~50,000のプライマー対を使用して、単一反応体積において500~50,000の標的遺伝子座での標的増幅を行うことであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む、行うことと、増幅産物を高スループット配列決定によって配列決定することと、血液試料中のドナー由来無細胞DNAの量を定量することと、を含み、dd-cfDNA量が多いほど、移植拒絶反応又は移植傷害の尤度が高いことを示す。
【0067】
更なる態様において、本発明は、移植レシピエント内の移植が急性拒絶反応を起こしていると診断する方法に関し、本方法は、移植レシピエントの血液試料からDNAを抽出することであって、DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含む、抽出することと、抽出されたDNAのユニバーサル増幅を行うことと、500~50,000のプライマー対を使用して、単一反応体積において500~50,000標的遺伝子座での標的増幅を行うことであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む、行うことと、増幅産物を高スループット配列決定によって配列決定することと、血液試料中のドナー由来無細胞DNAの量を定量することと、を含み、1%超(又は1.1%、又は1.2%、又は1.3%、又は1.4%、又は1.5%、又は1.6%、又は1.7%、又は1.8%、又は1.9%、又は2.0%)の量のdd-cfDNAは、移植が急性拒絶反応を起こしていることを示す。
【0068】
いくつかの実施形態において、移植拒絶反応は、抗体媒介性移植拒絶反応である。いくつかの実施形態において、移植拒絶反応は、T細胞媒介性移植拒絶反応である。
【0069】
いくつかの実施形態において、1%未満(又は0.9%、又は0.8%、又は0.7%、又は0.6%、又は0.5%)のdd-cfDNAの量は、移植が境界性拒絶反応を起こしているか、他の損傷を受けているか、又は安定しているかのいずれかを示す。
【0070】
更なる態様において、本発明は、対象における免疫抑制療法を監視する方法に関し、本方法は、移植レシピエントの血液試料からDNAを抽出することであって、DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含む、抽出することと、抽出されたDNAのユニバーサル増幅を行うことと、500~50,000のプライマー対を使用して、単一反応体積において500~50,000の標的遺伝子座での標的増幅を行うことであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む、行うことと、増幅産物を高スループット配列決定によって配列決定することと、血液試料中のドナー由来無細胞DNAの量を定量することと、を含み、時間間隔にわたるdd-cfDNAのレベルの変化が、移植状態を示す。
【0071】
いくつかの実施形態において、本方法は、時間間隔にわたるdd-cfDNAのレベルに基づいて免疫抑制療法を調整することを更に含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、dd-cfDNAのレベルの増加は、移植拒絶反応及び免疫抑制療法の調整の必要性を示す。いくつかの実施形態において、dd-cfDNAのレベルの変化がないこと又は減少は、移植の寛容性又は安定性、及び免疫抑制療法の調整の必要性を示す。
【0073】
いくつかの実施形態において、1%を超える(又は1.1%、又は1.2%、又は1.3%、又は1.4%、又は1.5%、又は1.6%、又は1.7%、又は1.8%、又は1.9%、又は2.0%)dd-cfDNAの量は、移植が、急性拒絶反応を起こしていることを示す。いくつかの実施形態において、移植拒絶反応は、抗体媒介性移植拒絶反応である。いくつかの実施形態において、移植拒絶反応は、T細胞媒介性移植拒絶反応である。
【0074】
いくつかの実施形態において、1%未満(又は0.9%、又は0.8%、又は0.7%、又は0.6%、又は0.5%)のdd-cfDNAの量は、移植が境界性拒絶反応を起こしているか、他の損傷を受けているか、又は安定しているかのいずれかを示す。
【0075】
いくつかの実施形態において、本方法は、移植ドナー及び/又は移植レシピエントの遺伝子型を決定することを含まない。
【0076】
いくつかの実施形態において、本方法は、多型遺伝子座である標的遺伝子座における1つ以上の対立遺伝子の量を測定することを更に含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、標的遺伝子座は、少なくとも1,000の多型遺伝子座、又は少なくとも2,000の多型遺伝子座、又は少なくとも5,000の多型遺伝子座、又は少なくとも10,000の多型遺伝子座を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、約50~100bp長、又は約50~90bp長、又は約60~80bp長、又は約60~75bp長、又は約65bp長のアンプリコンにおいて増幅される標的遺伝子座。
【0079】
いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、ヒトである。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、膵島細胞移植、腸管移植、心臓移植、肺移植、骨髄移植、心臓弁移植、又は皮膚移植から選択される移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、SPK移植を受けている。
【0080】
いくつかの実施形態において、抽出ステップは、ドナー由来無細胞DNAを濃縮し、白血球の破裂から配置レシピエント由来無細胞DNAの量を減少させるサイズ選択を更に含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、ユニバーサル増幅ステップは、破裂した白血球から放出されるレシピエント由来無細胞DNAよりも、ドナー由来無細胞DNAを優先的に増幅する。
【0082】
いくつかの実施形態において、本方法は、移植後に移植レシピエントから複数の生体試料を長期的に採取することと、採取した各試料についてステップ(a)~(e)を繰り返すことと、を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、移植レシピエントからの血液試料を、約3ヶ月、又は約6ヶ月、又は約12ヶ月、又は約18ヶ月、又は約24ヶ月などの期間にわたって採取及び分析することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、移植レシピエントから、約1週間、又は約2週間、又は約3週間、又は約1ヶ月、又は約2ヶ月、又は約3ヶ月などの間隔で血液試料を採取することを含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、本方法は、1% dd-cfDNAのカットオフ閾値及び95%の信頼区間を用いて非ARに対する急性拒絶反応(AR)を同定する際に、少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%の感度を有する。
【0084】
いくつかの実施形態において、本方法は、1% dd-cfDNAのカットオフ閾値及び95%の信頼区間で非AR対するARを同定する際に、少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%の特異性を有する。
【0085】
いくつかの実施形態において、本方法は、1% dd-cfDNAのカットオフ閾値及び95%の信頼区間で非AR対するARを同定する際に、少なくとも0.8、又は0.85、又は少なくとも0.9、又は少なくとも0.95の曲線下面積(AUC)を有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、本方法は、1% dd-cfDNAのカットオフ閾値及び95%の信頼区間で正常で安定した同種移植片(STA)に対するARを同定する際に、少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%の感度を有する。
【0087】
いくつかの実施形態において、本方法は、1% dd-cfDNAのカットオフ閾値及び95%の信頼区間でSTAに対するARを同定する際に、少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%の特異性を有する。
【0088】
いくつかの実施形態において、本方法は、1% dd-cfDNAのカットオフ閾値及び95%の信頼区間でSTAに対するARを同定する際に、少なくとも0.8、又は0.85、又は少なくとも0.9、又は少なくとも0.95、又は少なくとも0.98、又は少なくとも0.99のAUCを有する。
【0089】
いくつかの実施形態において、本方法は、0.5%以下のブランク上限(LoB)、及び0.5%以下の検出限界(LoD)によって決定される感度を有する。いくつかの実施形態において、LoBは、0.23%以下であり、LoDは、0.29%以下である。いくつかの実施形態において、感度は、定量限界(LoQ)によって更に決定される。いくつかの実施形態において、LoQは、LoDの10倍であり、LoQは、LoDよりも5倍大きくてもよく、LoQは、LoDよりも1.5倍大きくてもよく、LoQは、LoDよりも1.2倍大きくてもよく、LoQは、LoDよりも1.1倍大きくてもよく、又はLoQは、LoD以上でもよい。いくつかの実施形態において、LoBは、0.04%以下であり、LoDは、0.05%以下であり、かつ/又はLoQは、LoDに等しい。
【0090】
いくつかの実施形態において、本方法は、対応するスパイク試行レベルの関数として、測定されたドナー分率の線形回帰分析から得られた線形性値を評価することによって決定される精度を有し、線形性値が、R2値であり、R2値が、約0.98~約1.0である。いくつかの実施形態において、R2値は、0.999である。いくつかの実施形態において、本方法は、スロープ値及びインターセプト値を計算するために、対応する試行スパイクレベルの関数として、測定されたドナー分率に対して線形回帰を使用することによって決定される精度を有し、スロープ値が、約0.9~約1.2であり、インターセプト値が、約-0.0001~約0.01である。いくつかの実施形態において、スロープ値は、約1であり、インターセプト値は、約0である。
【0091】
いくつかの実施形態において、本方法は、変動係数(CV)を計算することによって決定される精度を有し、CVが、約10.0%未満である。CVは、約6%未満である。いくつかの実施形態において、CVは、約4%未満である。いくつかの実施形態において、CVは、約2%未満である。いくつかの実施形態において、CVは、約1%未満である。
【0092】
いくつかの実施形態において、ARは、抗体媒介性拒絶反応(ABMR)である。いくつかの実施形態において、ARは、T細胞媒介性拒絶反応(TCMR)である。いくつかの実施形態において、ARは、急性細胞性拒絶反応(ACR)である。
【0093】
本明細書において、移植レシピエントからの試料中の移植ドナー由来無細胞DNA(dd-cfDNA)の検出方法が更に開示される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法では、移植レシピエントは、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、ヒトである。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、膵島細胞移植、腸管移植、心臓移植、肺移植、骨髄移植、心臓弁移植、又は皮膚移植から選択される移植を受けている。いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、SPK移植を受けている。いくつかの実施形態において、本方法は、移植レシピエントに対して、移植手術の日、又は移植手術後、移植手術の最大1年後に行われてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、移植レシピエントの血液試料からドナー由来無細胞DNA(dd-cfDNA)の標的遺伝子座を増幅する方法であり、本方法は、a)移植レシピエントの血液試料からDNAを抽出することであって、DNAが、移植細胞及び移植レシピエントの両方に由来する無細胞DNAを含む、抽出することと、b)標的遺伝子座での抽出されたDNAを濃縮することであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む50~5000の標的遺伝子座を含む、濃縮することと、c)標的遺伝子座を増幅することと、を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、移植レシピエントからの血液試料中のドナー由来無細胞DNA(dd-cfDNA)を検出する方法であり、本方法は、a)移植レシピエントの血液試料からDNAを抽出することであって、DNAが、移植細胞及び移植レシピエントの両方に由来する無細胞DNAを含む、抽出することと、b)標的遺伝子座での抽出されたDNAを濃縮することであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む50~5000の標的遺伝子座を含む、濃縮することと、c)標的遺伝子座を増幅することと、d)増幅された標的遺伝子座を標的遺伝子座に特異的にハイブリダイズするプローブと接触させることと、e)標的遺伝子座とプローブとの結合を検出し、それによって、血液試料内のdd-cfDNAを検出することと、を含む。いくつかの実施形態において、プローブは、検出可能なマーカーで標識される。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、移植レシピエント内の移植拒絶反応の尤度を決定する方法であり、本方法は、a)移植レシピエントの血液試料からDNAを抽出することであって、DNAが、移植細胞及び移植レシピエントの両方に由来する無細胞DNAを含む、抽出することと、b)標的遺伝子座での抽出されたDNAを濃縮することであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む50~5000の標的遺伝子座を含む、濃縮することと、c)標的遺伝子座を増幅することと、d)レシピエント血液試料中の移植DNAの量及びレシピエントDNAの量を測定することと、を含み、dd-cfDNA量が多いほど、移植拒絶反応の尤度が高いことを示す。
【0097】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、移植レシピエント内の移植が急性拒絶反応を起こしていると診断する方法であり、本方法は、a)移植レシピエントの血液試料からDNAを抽出することであって、DNAが、移植細胞及び移植レシピエントの両方に由来する無細胞DNAを含む、抽出することと、b)標的遺伝子座での抽出されたDNAを濃縮することであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む50~5000の標的遺伝子座を含む、濃縮することと、c)標的遺伝子座を増幅することと、d)レシピエント血液試料中の移植DNAの量及びレシピエントDNAの量を測定することと、を含み、1%超(又は1.1%、又は1.2%、又は1.3%、又は1.4%、又は1.5%、又は1.6%、又は1.7%、又は1.8%、又は1.9%、又は2.0%)の量のdd-cfDNAは、移植が急性拒絶反応を起こしていることを示す。
【0098】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法では、移植拒絶反応は、抗体媒介性移植拒絶反応である。いくつかの実施形態において、移植拒絶反応は、T細胞媒介性移植拒絶反応である。いくつかの実施形態において、1%未満(又は0.9%、又は0.8%、又は0.7%、又は0.6%、又は0.5%)のdd-cfDNAの量は、移植が境界性拒絶反応を起こしているか、他の損傷を受けているか、又は安定しているかのいずれかを示す。
【0099】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、対象における免疫抑制療法を監視する方法であり、本方法は、a)移植レシピエントの血液試料からDNAを抽出することであって、DNAが、移植細胞及び移植レシピエントの両方に由来する無細胞DNAを含む、抽出することと、b)標的遺伝子座での抽出されたDNAを濃縮することであって、標的遺伝子座が、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座を含む50~5000の標的遺伝子座を含む、濃縮することと、c)標的遺伝子座を増幅することと、d)レシピエント血液試料中の移植DNAの量及びレシピエントDNAの量を測定することと、を含み、時間間隔にわたるdd-cfDNAのレベルの変化が、移植状態を示す。いくつかの実施形態において、本方法は、時間間隔にわたるdd-cfDNAのレベルに基づいて免疫抑制療法を調整することを更に含む。いくつかの実施形態において、dd-cfDNAのレベルの増加は、移植拒絶反応を示し、免疫抑制療法の調整の必要性を示す。いくつかの実施形態において、dd-cfDNAのレベルの変化又は減少は、移植の寛容性又は安定性、及び免疫抑制療法の調整の必要性を示す。
【0100】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法では、標的遺伝子座は、約50~100bp長、又は約60~80bp長のアンプリコンで増幅される。いくつかの実施形態において、アンプリコンは、約65bp長である。
【0101】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、レシピエント血液試料中の移植DNAの量及びレシピエントDNAの量を測定することを更に含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、移植ドナー及び移植レシピエントの遺伝子型を決定することを含まない。
【0103】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、マイクロアレイを使用して増幅された標的遺伝子座を検出することを更に含む。
【0104】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法では、多型遺伝子座及び非多型遺伝子座は、単一反応において増幅される。
【0105】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法では、DNAは、標的遺伝子座で優先的に濃縮される。
【0106】
いくつかの実施形態において、複数の多型遺伝子座における試料中のDNAを優先的に濃縮することは、複数の環状化前プローブ(pre-circularized probe)を得ることであって、各プローブが、多型遺伝子座のうちの1つを標的とし、プローブの3’及び5’末端が、少数の塩基によって、遺伝子座の多型部位から分離されているDNAの領域にハイブリダイズするように設計され、少数の塩基が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21~25、26~30、31~60、又はこれらの組み合わせである、得ることと、環状化前プローブを試料からのDNAにハイブリダイズさせることと、DNAポリメラーゼを使用して、ハイブリダイズしたプローブ末端間のギャップを埋めることと、環状化前プローブを環状化することと、環状化プローブ(circularized probe)を増幅することと、を含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、複数の多型遺伝子座におけるDNAを優先的に濃縮することは、複数のライゲーション媒介PCRプローブを得ることであって、各PCRプローブが、多型遺伝子座のうちの1つを標的とし、上流及び下流PCRプローブが、DNAの一方の鎖上の、少数の塩基によって遺伝子座の多型部位から分離されているDNA領域にハイブリダイズするように設計され、少数が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21~25、26~30、31~60、又はそれらの組み合わせである、得ることと、ライゲーション媒介PCRプローブを第1の試料からのDNAにハイブリダイズさせることと、DNAポリメラーゼを使用してライゲーション媒介PCRプローブ間のギャップを埋めることと、ライゲーション媒介PCRプローブをライゲーションすることと、ライゲーションされたライゲーション媒介PCRプローブを増幅することと、を含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、複数の多型遺伝子座においてDNAを優先的に濃縮することは、多型遺伝子座を標的とする複数のハイブリッド捕捉プローブを得ることと、ハイブリッド捕捉プローブを試料中のDNAにハイブリダイズさせることと、ハイブリダイズしていないDNAのいくつか又は全てをDNAの第1の試料から物理的に除去することと、を含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、ハイブリッド捕捉プローブは、多型部位に隣接しているが、重複していない領域にハイブリダイズするように設計される。いくつかの実施形態において、ハイブリッド捕捉プローブは、多型部位に隣接しているが、重複していない領域にハイブリダイズするように設計され、隣接する捕捉プローブの長さは、約120塩基未満、約110塩基未満、約100塩基未満、約90塩基未満、約80塩基未満、約70塩基未満、約60塩基未満、約50塩基未満、約40塩基未満、約30塩基未満、及び約25塩基未満からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態において、ハイブリッド捕捉プローブは、多型部位と重複する領域にハイブリダイズするように設計され、複数のハイブリッド捕捉プローブが、各多型遺伝子座について少なくとも2つのハイブリッド捕捉プローブを含み、各ハイブリッド捕捉プローブが、その多型遺伝子座における異なる対立遺伝子に相補的であるように設計される。
【0110】
いくつかの実施形態において、複数の多型遺伝子座でDNAを優先的に濃縮することは、複数の内側順方向プライマーを得ることであって、各プライマーが、多型遺伝子座のうちの1つを標的とし、内側順方向プライマーの3’末端が、多型部位から上流の、少数の塩基によって多型部位から分離されているDNAの領域にハイブリダイズするように設計され、少数が、1、2、3、4、5、6~10、11~15、16~20、21~25、26~30、又は31~60塩基対からなる群から選択される、得ることと、任意選択的に、複数の内側逆方向プライマーを得ることであって、各プライマーが、多型遺伝子座のうちの1つを標的とし、内側逆方向プライマーの3’末端が、多型部位から上流の、少数の塩基によって多型部位から分離されているDNA領域にハイブリダイズするように設計され、少数が、1、2、3、4、5、6~10、11~15、16~20、21~25、26~30、又は31~60塩基対からなる群から選択される、得ることと、内側プライマーをDNAにハイブリダイズさせることと、ポリメラーゼ連鎖反応を使用してDNAを増幅して、アンプリコンを形成することと、を含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、本方法はまた、複数の外側順方向プライマーを得ることであって、各プライマーが、多型遺伝子座のうちの1つを標的とし、外側順方向プライマーが、内側順方向プライマーから上流のDNAの領域にハイブリダイズするように設計される、得ることと、任意選択的に、複数の外側逆方向プライマーを得ることであって、各プライマーが、多型遺伝子座のうちの1つを標的とし、外側逆方向プライマーが、内側逆方向プライマーからすぐ下流のDNAの領域にハイブリダイズするように設計される、得ることと、第1のプライマーをDNAにハイブリダイズさせること、ポリメラーゼ連鎖反応を使用してDNAを増幅することと、を含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、本方法はまた、複数の外側逆方向プライマーを得ることであって、各プライマーが、多型遺伝子座のうちの1つを標的とし、外側逆方向プライマーが、内側逆方向プライマーから下流のDNAの領域にハイブリダイズするように設計される、得ることと、任意選択的に、複数の外側順方向プライマーを得ることであって、各プライマーが、多型遺伝子座のうちの1つを標的とし、外側順方向プライマーが、内側順方向プライマーからすぐ上流のDNAの領域にハイブリダイズするように設計される、得ることと、第1のプライマーをDNAにハイブリダイズさせること、ポリメラーゼ連鎖反応を使用してDNAを増幅することと、を含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、第1の試料を調製することは、第1の試料中のDNAにユニバーサルアダプターを付加することと、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して第1の試料中のDNAを増幅することと、を更に含む。いくつかの実施形態において、アンプリコンの少なくとも一部は、100bp未満、90bp未満、80bp未満、70bp未満、65bp未満、60bp未満、55bp未満、50bp未満、又は45bp未満であり、分率は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は99%である。
【0114】
いくつかの実施形態において、DNAの増幅は、1つ又は複数の個々の反応体積で行われ、各個々の反応体積が、100超の異なる順方向及び逆方向プライマー対、200超の異なる順方向及び逆方向プライマー対、500超の異なる順方向及び逆方向プライマー対、1,000超の異なる順方向及び逆方向プライマー対、2,000超の異なる順方向及び逆方向プライマー対、5,000超の異なる順方向及び逆方向プライマー対、10,000超の異なる順方向及び逆方向プライマー対、20,000超の異なる順方向及び逆方向プライマー対、50,000超の異なる順方向及び逆方向プライマー対、又は100,000超の異なる順方向及び逆方向プライマー対を含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、試料を調製することは、試料を複数の部分に分割することを更に含み、各部分のDNAが、複数の多型遺伝子座のサブセットで優先的に濃縮される。いくつかの実施形態において、内側プライマーは、望ましくないプライマー二重鎖を形成する可能性が高いプライマー対を同定し、望ましくないプライマー二重鎖を形成する可能性が高いと同定されたプライマーの対のうちの少なくとも1つを複数のプライマーから除去することによって選択される。いくつかの実施形態において、内側プライマーは、標的化された多型遺伝子座の上流又は下流のいずれかにハイブリダイズするように設計されている領域を含み、任意選択的に、PCR増幅を可能にするように設計されたユニバーサルプライミング配列を含む。いくつかの実施形態において、プライマーの少なくともいくつかは、個々のプライマー分子ごとに異なるランダム領域を更に含む。いくつかの実施形態において、プライマーの少なくともいくつかは、分子バーコードを更に含む。
【0116】
いくつかの実施形態において、本方法は、(a)標的遺伝子座を含む核酸試料に対して多重ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行って、(i)少なくとも1,000の異なるプライマー対、又は(ii)少なくとも1,000の標的特異的プライマー及びユニバーサル若しくはタグ特異的プライマーのいずれかを使用して、少なくとも1,000の異なる標的遺伝子座を同時に増幅して、標的アンプリコンを含む増幅産物を生成することと、(b)増幅産物を配列決定することと、を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、マイクロアレイを使用することを含まない。
【0117】
いくつかの実施形態において、本方法は、(a)標的遺伝子座を含む無細胞DNA試料に対して多重ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行って、(i)少なくとも1,000の異なるプライマー対、又は(ii)少なくとも1,000の標的特異的プライマー及びユニバーサル若しくはタグ特異的プライマーのいずれかを使用して、少なくとも1,000の異なる標的遺伝子座を同時に増幅して、標的アンプリコンを含む増幅産物を生成することと、(b)増幅産物を配列決定することと、を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、マイクロアレイを使用することを含まない。
【0118】
いくつかの実施形態において、本方法は、移植ドナー及び移植レシピエントの一方又は両方から遺伝子型データ得ることも含む。いくつかの実施形態において、移植ドナー及び移植レシピエントの一方又は両方から遺伝子型データを得ることは、ドナー及びレシピエントからのDNAを調製することを含み、調製することが、調製されたDNAを得るために複数の多型遺伝子座でDNAを優先的に濃縮することと、任意選択的に、調製されたDNAを増幅することと、複数の多型遺伝子座での調製された試料中のDNAを測定することと、を含む。
【0119】
いくつかの実施形態において、染色体上の複数の多型遺伝子座の対立遺伝子数の予測される確率の結合分布モデルを構築することは、移植ドナー及び移植レシピエントの一方又は両方から得られた遺伝子データを使用して行われる。いくつかの実施形態において、第1の試料は、移植レシピエント血漿から単離されており、移植レシピエントから遺伝子型データを得ることは、調製された試料に対して行われたDNA測定からレシピエント遺伝子型データを推定することによって行われる。
【0120】
いくつかの実施形態において、優先的濃縮は、2倍以下、1.5倍以下、1.2倍以下、1.1倍以下、1.05倍以下、1.02倍以下、1.01倍以下、1.005倍以下、1.002倍以下、1.001倍以下、及び1.0001倍以下からなる群から選択される倍率の、調製された試料と第1の試料との間の対立遺伝子バイアスの平均度(average degree)をもたらす。いくつかの実施形態において、複数の多型遺伝子座は、SNPである。いくつかの実施形態において、調製された試料中のDNAの測定は、配列決定によって行われる。
【0121】
いくつかの実施形態において、診断ボックスは、移植レシピエントにおける移植状態を決定するのを助けるために開示され、診断ボックスは、開示される方法の調製及び測定ステップを実行することが可能である。
【0122】
いくつかの実施形態において、対立遺伝子数は、バイナリではなく、確率的である。いくつかの実施形態において、複数の多型遺伝子座での調製された試料中のDNAの測定値を使用して、移植が1つ又は複数の連鎖したハプロタイプを受け継いでいるかどうかを決定する。
【0123】
いくつかの実施形態において、対立遺伝子数の確率の結合分布モデルを構築することは、染色体中の異なる位置で染色体が交差する確率に関するデータを使用して、その染色体上の多型対立遺伝子間の依存性をモデル化することによって行われる。いくつかの実施形態において、対立遺伝子数の結合分布モデルを構築することと、各々の仮説の相対確率を決定するステップは、参照染色体の使用を必要としない方法を用いて行われる。
【0124】
いくつかの実施形態において、各仮説の相対確率を決定することは、調製された試料中のドナー由来無細胞DNA(dd-cfDNA)の推定分率を利用する。いくつかの実施形態において、対立遺伝子数の確率を計算し、各仮説の相対確率を決定する際に使用される調製された試料からのDNA測定値は、一次遺伝子データを含む。いくつかの実施形態において、最大確率を有する仮説に対応する移植状態の選択は、最大尤度推定値又は最大事後推定値を使用して実行される。
【0125】
いくつかの実施形態において、移植状態を呼び出すことはまた、結合分布モデル及び対立遺伝子数確率を使用して決定された状態仮説の各々の相対確率と、リード数分析からなる群から得られた統計技術を使用して計算された状態仮説の各々の相対確率とを組み合わせることと、ヘテロ接合率、ドナー遺伝情報が使用される場合にのみ利用可能な統計量、特定のドナー/レシピエント状況についての正規化された遺伝子型シグナルの確率、第1の試料又は調製された試料の推定移植分率を使用して計算される統計量、及びそれらの組み合わせを比較することと、を含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、信頼度推定値は、呼び出された移植状態について計算される。いくつかの実施形態において、本方法はまた、呼び出された移植状態に基づいて臨床措置(clinical action)をとることを含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、決定された移植状態を表示するレポートは、本方法を使用して生成される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法とともに使用されるように設計された移植状態を決定するためのキットが開示され、本キットは、複数の内側順方向プライマー及び任意選択的に複数の内側逆方向プライマーを含み、プライマーの各々は、標的染色体及び任意選択的に更なる染色体に上の多型部位のうちの1つからすぐ上流及び/又は下流のDNAの領域ハイブリダイズするように設計され、ハイブリダイゼーション領域は、少数の塩基によって多型部位から分離されており、少数が、1、2、3、4、5、6~10、11~15、16~20、21~25、26~30、31~60、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0128】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、より短いcfDNAを選択するための選択ステップを含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、cfDNAを濃縮するためのユニバーサルアプリケーションステップを含む。
【0130】
いくつかの実施形態において、dd-cfDNAの量がカットオフ閾値を上回るという決定は、移植の急性拒絶反応を示す。機械学習を使用して、拒絶反応と非拒絶反応とを判定してもよい。
【0131】
いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、血液試料中のdd-cfDNAのパーセンテージ(dd-cfDNA%)として表される。
【0132】
いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、血液試料の体積単位当たりのdd-cfDNAの量として表される。
【0133】
いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、血液試料の体積単位当たりのdd-cfDNAの量に、移植レシピエントの体重又は血液量を乗じたものとして表される。
【0134】
いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、患者の体重又は血液量を考慮に入れる。
【0135】
いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、以下のうちの1つ以上を考慮に入れる:血漿の体積当たりのドナーゲノムコピー、血漿の体積当たりの無細胞DNA収率、ドナー身長、ドナー体重、ドナー年齢、ドナー性別、ドナー民族性、ドナー臓器質量、ドナー臓器、生体対死亡ドナー、関連対無関連ドナー、レシピエント身長、レシピエント体重、レシピエント年齢、レシピエント性別、レシピエント民族性、クレアチニン、eGFR(糸球体濾過率の推定値)、cfDNAメチル化、DSA(ドナー特異的抗体)、KDPI(腎臓ドナープロファイル指標)、薬剤(免疫抑制、ステロイド、血液希釈剤など)、感染症(BKV、EBV、CMV、UTI、TTV)、レシピエント及び/又はドナーHLA対立遺伝子又はエピトープミスマッチ、腎臓同種移植病理学のBanff分類、並びに正当対監視又はプロトコル生検。
【0136】
いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリングされる。
【0137】
いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケールされたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の感度が少なくとも80%であり、信頼区間は95%である。
【0138】
いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも70%であり、信頼区間は95%である。
【0139】
いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケールされたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の感度が少なくとも80%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケールされたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の感度が少なくとも85%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケールされたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の感度が少なくとも90%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケールされたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の感度が少なくとも95%であり、信頼区間は95%である。
【0140】
いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも70%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも75%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも85%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも90%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも95%であり、信頼区間は95%である。
【0141】
多重増幅
いくつかの実施形態において、本方法は、選択的に濃縮されたDNAの配列を決定する前に、1つの反応混合物中の複数の多型遺伝子座を増幅するための多重増幅反応を行うことを含む。
【0142】
特定の例示的な実施形態において、核酸配列データは、多重増幅反応を用いて作成される一連のアンプリコンの複数のコピーの高スループットDNA配列決定を行うことによって作成され、一連のアンプリコンの各々のアンプリコンは、多型遺伝子座のセットの少なくとも1つの多型遺伝子座に広がり、このセットの多型遺伝子座の各々が増幅される。例えば、これらの実施形態において、少なくとも100、200、500、1,000、2,000、5,000、10,000、20,000、50,000、又は100,000の多型遺伝子座(例えば、SNP遺伝子座)にわたってアンプリコンを増幅する多重PCRを実行してもよい。この多重反応は、単一の反応として、又は異なる部分集合の多重反応のプールとして設定することができる。本明細書で提供される多重反応方法(例えば、本明細書に開示される大規模マルチプレックスPCR)は、改良された多重化、したがって、感度レベルを達成するのに役立つように増幅反応を行う例示的なプロセスを提供する。
【0143】
いくつかの実施形態において、増幅は、直接多重化PCR、連続PCR、ネスティッドPCR、二重ネスティッドPCR、片側及び片側半(one-and-a-half sided)ネスティッドPCR、完全ネスティッドPCR、片側完全ネスティッドPCR、片側ネスティッドPCR、ヘミネスティッドPCR、ヘミネスティッドPCR、三重ヘミネスティッドPCR、セミネスティッドPCR、片側セミネスティッドPCR、逆セミネスティッドPCR法、又は片側PCRを用いて行われ、これらは、2012年11月21日に出願された米国出願第13/683,604号、米国公開第2013/0123120号、2011年11月18日に出願された米国出願第13/300,235号、米国公開第2012/0270212号及び2014年5月16日に出願された米国出願第61/994,791号(これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0144】
いくつかの実施形態において、マルチプレックスPCRが使用される。いくつかの実施形態において、核酸試料において標的遺伝子座を増幅する方法は、(i)核酸試料と、少なくとも100、200、500、1,000、2,000、5,000、10,000、20,000、50,000、又は100,000の異なる標的遺伝子座を同時にハイブリダイズするプライマーのライブラリとを接触させ、単一反応混合物を生成することと、(ii)この反応混合物をプライマー伸長反応条件(例えばPCR条件)に供して、標的アンプリコンを含む増幅産物を生成することとを伴う。いくつかの実施形態において、標的遺伝子座の少なくとも50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、又は99.5%が増幅される。様々な実施形態において、増幅産物の60、50、40、30、20、10、5、4、3、2、1、0.5、0.25、0.1、又は0.05%未満が、プライマーダイマーである。いくつかの実施形態において、プライマーは、溶液状態である(例えば、固相ではなく液相に溶解する)。いくつかの実施形態において、プライマーは、溶液状態であり、固体支持体に固定されていない。いくつかの実施形態において、プライマーは、マイクロアレイの一部ではない。
【0145】
特定の実施形態において、多重増幅反応は、反応の少なくとも1/2について、制限されたプライマー条件で行われる。いくつかの実施形態において、制限されたプライマー濃度は、多重反応のうちの反応の1/10、1/5、1/4、1/3、1/2、又は全てで使用される。PCRなどの増幅反応において制限されたプライマー条件を達成する上で考慮すべき因子が、本明細書で提供される。
【0146】
特定の実施形態において、多重増幅反応は、例えば、2,500~50,000の多重反応を含んでいてもよい。特定の実施形態において、以下の範囲の多重反応が行われる。範囲の下限で100、200、250、500、1000、2500、5000、10,000、20,000、25000、50000から、範囲の上限で200、250、500、1000、2500、5000、10,000、20,000、25000、50000及び100,000まで。
【0147】
一実施形態において、マルチプレックスPCRアッセイは、1つ以上の染色体上の潜在的にヘテロ接合性のSNP又は他の多型若しくは非多型遺伝子座を増幅するように設計され、これらのアッセイは、単一反応で使用され、DNAを増幅する。PCRアッセイの数は、50~200PCRアッセイ、200~1,000PCRアッセイ、1,000~5,000PCRアッセイ又は5,000~20,000PCRアッセイ(それぞれ、50~200反応分、200~1,000反応分、1,000~5,000反応分、5,000~20,000反応分、20,000より多い反応分)であってもよい。一実施形態において、少なくとも10,000PCRアッセイ(10,000反応分)のマルチプレックスプールは、潜在的にヘテロ接合性のSNP遺伝子座単一反応を増幅し、血液、血漿、血清、固形組織、又は尿試料から得られたcfDNAを増幅するように設計される。各遺伝子座のSNP頻度は、クローンによって、又はアンプリコンを配列決定するいくつかの他の方法によって決定されてもよい。別の実施形態において、元々のcfDNA試料は、2つの試料に分割され、並行な5,000反応分のアッセイが行われる。別の実施形態において、元々のcfDNA試料は、n個の試料に分割され、並行な(約10,000/n)反応分のアッセイが行われ、ここで、nは、2~12又は12~24又は24~48又は48~96である。
【0148】
一実施形態において、本明細書に開示される方法は、高効率な高度に多重化された標的化PCRを使用してDNAを増幅し、その後、高スループット配列決定によって、各標的遺伝子座での対立遺伝子頻度を決定する。高度に多重化された標的化PCRを高効率な方法で行うことを可能にする1つの技術は、互いにハイブリダイズする可能性が低いプライマーを設計することを伴う。PCRプローブは、典型的にはプライマーと呼ばれ、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも2,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも20,000、又は少なくとも50,000の潜在的なプライマー対との間の潜在的に有害な相互作用又はプライマーと試料DNAとの間の意図していない相互作用の熱力学的モデルを作成し、次いで、このモデルを用いて、プール中の他の設計と不適合な設計を除外することによって選択される。高度に多重化された標的化PCRを高効率な方法で行うことを可能にする別の技術は、標的化PCRに対して、部分的又は完全なネスティング手法を用いることである。これらの手法の1つ又は組み合わせを用いることで、単一のプールにおいて、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも2,000、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも20,000又は少なくとも50,000のプライマーの多重化が可能になり、得られた大部分のDNAを含む増幅DNAは、配列決定されると、標的遺伝子座にマッピングする。これらの手法の1つ又は組み合わせを用いることで、単一のプールにおいて多数のプライマーの多重化が可能になり、得られた増幅DNAは、標的遺伝子座にマッピングする50%より多い、80%より多い、90%より多い、95%より多い、98%より多い、又は99%より多いDNA分子を含む。
【0149】
マルチプレックスPCRから得られた遺伝子データを分析するために、バイオインフォマティクス法が使用される。本明細書に開示される方法に有用及び関連するバイオインフォマティクス法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2018/0025109号に見出すことができる。
【0150】
高スループット配列決定
いくつかの実施形態において、アンプリコンの配列は、高スループット配列決定を行うことにより決定される。
【0151】
移植レシピエント及び/又は移植ドナーの遺伝子データは、これらに限定されないが、遺伝子型決定マイクロアレイ及び高スループット配列決定を含む群から得られるツール及び/又は技術を使用して、適切な遺伝子材料を測定することによって、分子状態から電子状態に変換され得る。いくつかの高スループット配列決定法としては、Sanger DNA配列決定、パイロシーケンシング、ILLUMINA SOLEXAプラットフォーム、ILLUMINAのゲノムアナライザ、又はAPPLIED BIOSYSTEMの454配列決定プラットフォーム、HELICOSのTRUE SINGLE MOLECULE SEQUENCINGプラットフォーム、HALCYON MOLECULARの電子顕微鏡配列決定法、又は任意の他の配列決定法が挙げられる。いくつかの実施形態において、高スループット配列決定は、Illumina NextSeq(登録商標)上で行われ、続いて、ヒト参照ゲノムへの脱多重化及びマッピングが行われる。これらの方法は全て、DNAの試料に格納された遺伝子データを、処理される途中のメモリデバイスに典型的に格納される遺伝子データのセットに物理的に変換する。
【0152】
いくつかの実施形態において、選択的に濃縮されたDNAの配列は、マイクロアレイ分析を行うことによって決定される。一実施形態において、マイクロアレイは、ILLUMINA SNPマイクロアレイ、又はAFFYMETRIX SNPマイクロアレイであってもよい。
【0153】
いくつかの実施形態において、選択的に濃縮されたDNAの配列は、定量PCR(qPCR)又はデジタルドロップレットPCR(ddPCR)分析を行うことによって決定される。qPCRは、特定の時間(概して増幅サイクルごとに)における蛍光の強度を測定し、標的分子(DNA)の相対量を決定する。ddPCRは、各分子が1つのドロップレット内にあるため、実際の分子数(標的DNA)を測定し、したがってそれを別個の「デジタル」測定値とする。これは、ddPCRが試料の陽性分率、すなわち適切な増幅により蛍光している液滴の数を測定するため、絶対的な定量を提供する。この陽性分率は、鋳型核酸の初期量を正確に示す。
【0154】
トレーサーDNA及びその使用
試料中の全cfDNAの量を推定するためのトレーサーDNAは、2020年5月29日に出願され、「Improved Methods for Detection of Donor Derived Cell-Free DNA」と題された米国仮出願第63/031,879号に記載されている(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、トレーサーDNAは、合成二本鎖DNA分子を含む。いくつかの実施形態において、トレーサーDNAは、非ヒト起源のDNA分子を含む。
【0155】
いくつかの実施形態において、トレーサーDNAは、約50~500bp、又は約75~300bp、又は約100~250bp、又は約125~200bp、又は約125bp、又は約160bp、又は約200bp、又は約500~1,000bpの長さを有するDNA分子を含む。
【0156】
いくつかの実施形態において、トレーサーDNAは、同じ又は実質的に同じ長さを有するDNA分子、例えば約125bp、又は約160bp、又は約200bpの長さを有するDNA分子を含む。いくつかの実施形態において、トレーサーDNAは、異なる長さを有するDNA分子、例えば、約125bpの長さを有する第1のDNA分子、約160bpの長さを有する第2のDNA分子、及び約200bpの長さを有する第3のDNA分子を含む。いくつかの実施形態において、異なる長さを有するDNA分子を使用して、試料中の無細胞DNAのサイズ分布を決定する
【0157】
いくつかの実施形態において、トレーサーDNAは標的配列を含み、標的配列は、プライマーの対に結合可能なプライマー結合部位の対の間に位置するバーコードを含む。いくつかの実施形態において、トレーサーDNAの少なくとも一部は、SNP遺伝子座を含む内因性配列をバーコードで置き換えることによって、内因性ヒトSNP遺伝子座に基づいて設計される。mmPCR標的濃縮ステップの間、SNP遺伝子座を標的とするプライマー対はまた、バーコードを含むトレーサーDNAの一部を増幅することもできる。
【0158】
いくつかの実施形態において、バーコードは、任意のバーコードである。いくつかの実施形態において、バーコードは、同じプライマー対によって増幅可能な対応する内因性ゲノム配列の逆相補体を含む。
【0159】
いくつかの実施形態において、トレーサーDNA内の標的配列に、内在性ゲノム配列が片側又は両側で隣接している。いくつかの実施形態において、トレーサーDNA内の標的配列に、非内因性配列が片側又は両側で隣接している。
【0160】
いくつかの実施形態において、トレーサーDNAは、複数の標的配列を含む。いくつかの実施形態において、トレーサーDNAは、プライマーの第1の対に結合可能なプライマー結合部位の第1の対の間に位置する第1のバーコードと、プライマーの第2の対に結合可能なプライマー結合部位の第2の対の間に位置する第2のバーコードを含む、第1の標的配列を含む。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2の標的配列は、SNP遺伝子座を含む内因性配列をバーコードで置き換えることによって、1つ以上の内因性ヒトSNP遺伝子座に基づいて設計される。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のバーコードは、任意のバーコードである。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のバーコードは、第1又は第2のプライマー対によって増幅可能な対応する内因性ゲノム配列の逆相補体を含む。いくつかの実施形態において、トレーサーDNA内の第1及び/又は第2の標的配列に、内因性ゲノム配列が片側又は両側で隣接している。いくつかの実施形態において、トレーサーDNA内の第1及び/又は第2の標的配列に、非内因性配列が片側又は両側で隣接している。
【0161】
いくつかの実施形態において、トレーサーDNAは、同じ又は実質的に同じ配列を有するDNA分子を含む。いくつかの実施形態において、トレーサーDNAは、異なる配列を有するDNA分子を含む。
【0162】
いくつかの実施形態において、トレーサーDNAは、第1の標的配列を含む第1のDNAと、第2の標的配列を含む第2のDNAとを含む。いくつかの実施形態において、第1の標的配列及び第2の標的配列は、同じプライマー結合部位の間に位置する異なるバーコードを有する。いくつかの実施形態において、第1の標的配列及び第2の標的配列は、同じプライマー結合部位の間に配置された異なるバーコードを有し、異なるバーコードは、同じ長さ又は実質的に同じ長さを有する。いくつかの実施形態において、第1の標的配列及び第2の標的配列は、同じプライマー結合部位の間に配置された異なるバーコードを有し、異なるバーコードは、異なる長さを有する。いくつかの実施形態において、第1の標的配列及び第2の標的配列は、異なる内因性ヒトSNP遺伝子座に基づいて設計され、したがって、異なるプライマー結合部位を含む。いくつかの実施形態において、第1のDNAの量及び第2のDNAの量は、トレーサーDNAにおいて同じ又は実質的に同じである。いくつかの実施形態において、第1のDNAの量及び第2のDNAの量は、トレーサーDNAにおいて異なる。
【0163】
トレーサーDNAを使用した全無細胞DNAの量の決定
特定の実施形態において、トレーサーDNAを使用して、本明細書に記載の方法の正確さ及び精度を改善し、より広い入力範囲にわたる定量に役立ち、異なるサイズ範囲での異なるステップの効率を評価し、及び/又は入力材料の断片サイズ分布を計算することができる。
【0164】
本発明のいくつかの実施形態は、生体試料中の全無細胞DNAの量を定量する方法であって、a)生体試料から無細胞DNAを単離することであって、第1のトレーサーDNAが、無細胞DNAの単離の前又は後に添加される、単離することと、b)100個以上の異なるプライマー対を使用して、単一反応体積における100個以上の異なる標的遺伝子座での標的増幅を行うことと、c)高スループット配列決定により増幅産物を配列決定して、配列決定リードを生成することと、d)第1のトレーサーDNAに由来する配列決定リードを使用して全無細胞DNAの量を定量することと、を含む方法に関する。
【0165】
いくつかの実施形態において、本方法は、血漿抽出の前に、第1のトレーサーDNAを全血試料に添加することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、血漿抽出の後及び無細胞DNAの単離の前に、第1のトレーサーDNAを血漿試料に添加することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、単離された無細胞DNAを含む組成物に、第1のトレーサーDNAを添加することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、単離された無細胞DNAにアダプターを連結して、アダプター連結DNAを含む組成物を得ることと、アダプター連結DNAを含む組成物に、第1のトレーサーDNAを添加することと、を含む。
【0166】
いくつかの実施形態において、本方法は、標的増幅の前に、第2のトレーサーDNAを添加することを更に含む。いくつかの実施形態において、本方法は、標的増幅の後に、第2のトレーサーDNAを添加することを更に含む。
【0167】
いくつかの実施形態において、試料中の全cfDNAの量は、トレーサーDNAのNOR(バーコードによって識別可能)、試料DNAのNOR、及び血漿試料に添加されたトレーサーDNAの既知の量を使用して推定される。いくつかの実施形態において、トレーサーDNAのNORと試料DNAのNORとの間の比率を使用して、全無細胞DNAの量を定量する。いくつかの実施形態において、バーコードのNORと対応する内因性ゲノム配列のNORとの間の比率を使用して、全無細胞DNAの量を定量する。いくつかの実施形態において、この情報を血漿体積とともに使用して、血漿の体積当たりのcfDNAの量を計算することもできる。いくつかの実施形態において、これらは、ドナーDNAのパーセンテージを乗じて、全ドナーcfDNA及び血漿の体積当たりのドナーcfDNAを計算することができる。
【0168】
したがって、一態様において、本発明は、生体試料中の全無細胞DNAの量を定量する方法に関し、本方法は、a)生体試料から無細胞DNAを単離することであって、第1のトレーサーDNA組成物が、無細胞DNAの単離の前又は後に添加される、単離することと、b)100以上の異なるプライマー対を使用して、単一反応体積において100以上の異なる標的遺伝子座での標的増幅を行うことと、c)増幅産物を高スループット配列決定によって配列決定して、配列決定リードを生成することと、d)第1のトレーサーDNA組成物に由来する配列決定リードを使用して全無細胞DNAの量を定量することと、を含む。
【0169】
更なる態様において、移植レシピエントの生体試料中のドナー由来無細胞DNAの量を定量する方法に関し、本方法は、a)移植レシピエントの生体試料から無細胞DNAを単離することであって、単離された無細胞DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含み、第1のトレーサーDNA組成物が、無細胞DNAの単離の前又は後に添加される、単離することと、b)100以上の異なるプライマー対を使用して、単一反応体積において100以上の異なる標的遺伝子座での標的増幅を行うことと、c)増幅産物を高スループット配列決定によって配列決定して、配列決定リードを生成することと、d)ドナー由来無細胞DNAの量及び全無細胞DNAの量を定量することであって、全無細胞DNAの量が、第1のトレーサーDNA組成物に由来する配列決定リードを使用して定量される、定量することと、を含む。
【0170】
更なる態様において、本発明は、移植拒絶反応又は移植傷害の発生又は発生の可能性を決定する方法に関し、a)移植レシピエントの生体試料から無細胞DNAを単離することであって、単離された無細胞DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含み、第1のトレーサーDNA組成物が、無細胞DNAの単離の前又は後に添加される、単離することと、b)100以上の異なるプライマー対を使用して、単一反応体積において100以上の異なる標的遺伝子座での標的増幅を行うことと、c)増幅産物を高スループット配列決定によって配列決定して、配列決定リードを生成することと、d)ドナー由来無細胞DNAの量及び全無細胞DNAの量を定量することであって、全無細胞DNAの量が、第1のトレーサーDNA組成物に由来する配列決定リードを使用して定量される、定量することと、ドナー由来無細胞DNAの量を閾値と比較することによって、ドナー由来無細胞DNAの量を使用して移植拒絶反応又は移植傷害の発生又は発生の可能性を決定することであって、閾値が、全無細胞DNAの量に従って決定される、決定することと、を含む。
【0171】
いくつかの実施形態において、閾値は、ドナー由来無細胞DNAの配列決定リード数の関数である。
【0172】
いくつかの実施形態において、本方法は、全無細胞DNAの量が所定の範囲外である場合、試料にフラグを立てることを更に含む。いくつかの実施形態において、本方法は、全無細胞DNAの量が所定の値を上回る場合に、試料にフラグを立てることを更に含む。いくつかの実施形態において、本方法は、全無細胞DNAの量が所定の値未満である場合に、試料にフラグを立てることを更に含む。
【0173】
いくつかの実施形態において、本方法は、血漿抽出の前に、第1のトレーサーDNA組成物を全血試料に添加することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、血漿抽出の後及び無細胞DNAの単離の前に、第1のトレーサーDNA組成物を血漿試料に添加することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、単離された無細胞DNAを含む組成物に、第1のトレーサーDNA組成物を添加することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、単離された無細胞DNAにアダプターを連結して、アダプター連結DNAを含む組成物を得ることと、アダプター連結DNAを含む組成物に、第1のトレーサーDNA組成物を添加することと、を含む。
【0174】
いくつかの実施形態において、本方法は、標的増幅の前に、第2のトレーサーDNA組成物を添加することを更に含む。いくつかの実施形態において、本方法は、標的増幅の後に、第2のトレーサーDNA組成物を添加することを更に含む。
【0175】
いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、異なる配列を有する複数のDNA分子を含む。
【0176】
いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、異なる濃度を有する複数のDNA分子を含む。
【0177】
いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、異なる長さを有する複数のDNA分子を含む。いくつかの実施形態において、異なる長さを有する複数のDNA分子を使用して、試料中の無細胞DNAのサイズ分布を決定する。
【0178】
いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、非ヒト起源の複数のDNA分子を含む。
【0179】
いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、各々標的配列を含み、標的配列は、プライマー対のうちの1つに結合可能なプライマー結合部位の対の間に位置するバーコードを含む。いくつかの実施形態において、バーコードは、同じプライマー対によって増幅可能な対応する内因性ゲノム配列の逆相補体を含む。
【0180】
いくつかの実施形態において、トレーサーDNAのリード数と試料DNAのリード数との間の比率を使用して、全無細胞DNAの量を定量する。いくつかの実施形態において、バーコードのリード数と対応する内因性ゲノム配列のリード数との間の比率を使用して、全無細胞DNAの量を定量する。
【0181】
いくつかの実施形態において、標的配列に、内因性ゲノム配列が片側又は両側で隣接している。いくつかの実施形態において、標的配列に、非内因性配列が片側又は両側で隣接している。
【0182】
いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、合成二本鎖DNA分子を含む。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、50~500bpの長さを有するDNA分子を含む。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、75~300bpの長さを有するDNA分子を含む。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、100~250bpの長さを有するDNA分子を含む。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、125~200bpの長さを有するDNA分子を含む。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、約200bpの長さを有するDNA分子を含む。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、約160bpの長さを有するDNA分子を含む。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、約125bpの長さを有するDNA分子を含む。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のトレーサーDNA組成物は、500~1,000bpの長さを有するDNA分子を含む。
【0183】
いくつかの実施形態において、標的増幅は、単一反応体積において少なくとも100個の多型又はSNP遺伝子座を増幅することを含む。いくつかの実施形態において、標的増幅は、単一反応体積において少なくとも200個の多型又はSNP遺伝子座を増幅することを含む。いくつかの実施形態において、標的増幅は、単一反応体積において少なくとも500個の多型又はSNP遺伝子座を増幅することを含む。いくつかの実施形態において、標的増幅は、単一反応体積において少なくとも1,000個の多型又はSNP遺伝子座を増幅することを含む。いくつかの実施形態において、標的増幅は、単一反応体積において少なくとも2,000個の多型又はSNP遺伝子座を増幅することを含む。いくつかの実施形態において、標的増幅は、単一反応体積において少なくとも5,000個の多型又はSNP遺伝子座を増幅することを含む。いくつかの実施形態において、標的増幅は、単一反応体積において少なくとも10,000個の多型又はSNP遺伝子座を増幅することを含む。
【0184】
いくつかの実施形態において、各プライマー対は、約35~200bpの標的配列を増幅するように設計される。いくつかの実施形態において、各プライマー対は、約50~100bpの標的配列を増幅するように設計される。いくつかの実施形態において、各プライマー対は、約60~75bpの標的配列を増幅するように設計される。いくつかの実施形態において、各プライマー対は、約65bpの標的配列を増幅するように設計される。
【0185】
いくつかの実施形態において、移植レシピエントは、ヒト対象である。いくつかの実施形態において、移植は、ヒト移植である。いくつかの実施形態において、移植は、ブタ移植である。いくつかの実施形態において、移植は、非ヒト動物からの移植である。
【0186】
いくつかの実施形態において、移植は、臓器移植、組織移植、又は細胞移植である。いくつかの実施形態において、移植は、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、腸管移植、心臓移植、肺移植、心臓/肺移植、胃移植、精巣移植、陰茎移植、卵巣移植、子宮移植、胸腺移植、顔面移植、手移植、脚移植、骨移植、骨髄移植、角膜移植、皮膚移植、膵島細胞移植、心臓弁移植、血管移植、又は輸血である。
【0187】
いくつかの実施形態において、本方法は、移植拒絶反応を、抗体媒介性移植拒絶反応、T細胞媒介性移植拒絶反応、移植片傷害、ウイルス感染、細菌感染、又は境界性拒絶反応として決定することを更に含む。いくつかの実施形態において、本方法は、1つ以上のがんの可能性を定量することを更に含む。がんスクリーニング、検出、及びモニタリングは、PCT特許公開第2015/164432号、同第2017/181202号、同第2018/083467号、及び同第2019/200228号に開示されており、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の実施形態において、本発明は、患者をスクリーニングして、1つ以上のがん治療に対する患者の予測される応答性又は耐性を決定することに関する。この決定は、標的遺伝子の野生型対変異型の存在、又は場合によっては標的遺伝子の増加又は過剰発現を決定することによって行うことができる。そのような標的スクリーニングの例としては、KRAS、NRAS、EGFR、ALK、KIT等が挙げられる。例えば、様々なKRAS変異が本発明によるスクリーニングに好適であり、これらに限定されないが、G12C、G12D、G12V、G13C、G13D、A18D、Q61H、K117Nを含む。加えて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、PCT特許公開第2015/164432号、同第2017/181202号、同第2018/083467号、及び同第2019/200228号。
【0188】
いくつかの実施形態において、本方法は、ドナー遺伝子型の事前の知識なしに行われる。いくつかの実施形態において、本方法は、レシピエント遺伝子型の事前の知識なしに行われる。いくつかの実施形態において、本方法は、ドナー及び/又はレシピエント遺伝子型の事前の知識なしに行われる。いくつかの実施形態において、本方法を実施する前に、ドナー又はレシピエントのいずれかの遺伝子型決定は必要とされない。
【0189】
いくつかの実施形態において、生体試料は、血液試料である。いくつかの実施形態において、生体試料は、血漿試料である。いくつかの実施形態において、生体試料は、血清試料である。いくつかの実施形態において、生体試料は、尿試料である。いくつかの実施形態において、生体試料は、リンパ液である。いくつかの実施形態において、試料は、固形組織試料である。
【0190】
いくつかの実施形態において、本方法は、移植レシピエントから複数の生体試料を長期的に収集することと、収集した各試料についてステップ(a)~(d)を繰り返すこととを更に含む。
【0191】
いくつかの実施形態において、定量ステップは、血液試料中のドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAの合計に対するドナー由来無細胞DNAのパーセンテージを決定することを含む。いくつかの実施形態において、定量ステップは、ドナー由来無細胞DNAの量を決定することを含む。いくつかの実施形態において、定量ステップは、血液試料の体積単位当たりのドナー由来無細胞DNAの量を決定することを含む。
【0192】
別の態様において、本発明は、移植レシピエントにおける移植を、急性拒絶反応を生じているものとして診断する方法であって、a)移植レシピエントの生体試料から無細胞DNAを単離することであって、単離された無細胞DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含み、第1のトレーサーDNA組成物が、無細胞DNAの単離の前又は後に添加される、単離することと、b)100個以上の異なるプライマー対を使用して、単一反応体積における100個以上の異なる標的遺伝子座での標的増幅を行うことと、c)高スループット配列決定により増幅産物を配列決定して、配列決定リードを生成することと、d)ドナー由来無細胞DNAの量及び全無細胞DNAの量を定量することとを含み、閾値を超えるドナー由来無細胞DNAの量は、移植が急性拒絶反応を生じていることを示し、閾値は、全無細胞DNAの量に従って決定され、全無細胞DNAの量は、第1のトレーサーDNA組成物に由来する配列決定リードを使用して定量される方法に関する。
【0193】
別の態様において、本発明は、移植レシピエントにおける免疫抑制療法をモニタリングする方法であって、a)移植レシピエントの生体試料から無細胞DNAを単離することであって、単離された無細胞DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含み、第1のトレーサーDNA組成物が、無細胞DNAの単離の前又は後に添加される、単離することと、b)100個以上の異なるプライマー対を使用して、単一反応体積における100個以上の異なる標的遺伝子座での標的増幅を行うことと、c)高スループット配列決定により増幅産物を配列決定して、配列決定リードを生成することと、d)ドナー由来無細胞DNAの量及び全無細胞DNAの量を定量することとを含み、時間間隔にわたるドナー由来無細胞DNAのレベルの変化は、移植状態を示し、ドナー由来無細胞DNAのレベルは、全無細胞DNAの量に応じてスケーリングされ、全無細胞DNAの量は、第1のトレーサーDNA組成物に由来する配列決定リードを使用して定量される方法に関する。
【0194】
いくつかの実施形態において、本方法は、時間間隔にわたるdd-cfDNAのレベルに基づいて免疫抑制療法を調整することを更に含む。
【0195】
いくつかの実施形態において、dd-cfDNAのレベルの増加は、移植拒絶反応又は移植傷害を示し、免疫抑制療法の調整の必要性を示す。いくつかの実施形態において、dd-cfDNAのレベルの変化がないこと又は減少は、移植の寛容性又は安定性、及び免疫抑制療法の調整の必要性を示す。
【0196】
いくつかの実施形態において、本方法は、ドナー由来無細胞DNAを濃縮し、白血球の破裂から配置レシピエント由来無細胞DNAの量を減少させるサイズ選択を更に含む。
【0197】
いくつかの実施形態において、本方法は、溶解又は損傷した白血球に由来するレシピエント由来無細胞DNAよりも、ドナー由来無細胞DNAを優先的に増幅する、ユニバーサル増幅ステップを更に含む。
【0198】
いくつかの実施形態において、本方法は、移植後に移植レシピエントから複数の血液、血漿、血清、固形組織、又は尿試料を長期的に収集することと、収集した各試料についてステップ(a)~(d)を繰り返すことと、を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、移植レシピエントからの血液、血漿、血清、固形組織、又は尿試料を、約3ヶ月、又は約6ヶ月、又は約12ヶ月、又は約18ヶ月、又は約24ヶ月などの期間にわたって採取及び分析することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、移植レシピエントから、約1週間、又は約2週間、又は約3週間、又は約1ヶ月、又は約2ヶ月、又は約3ヶ月などの間隔で血液、血漿、血清、固形組織、又は尿試料を採取することを含む。
【0199】
いくつかの実施形態において、dd-cfDNAの量がカットオフ閾値を上回るという決定は、移植の急性拒絶反応を示す。機械学習を使用して、拒絶反応と非拒絶反応とを判定してもよい。機械学習は、PCT/US2019/041981として2019年7月16日に出願された、WO2020/018522、名称「Methods and Systems for calling Ploidy States using a Neural Network」に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリングされる。
【0200】
いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、血液試料中のdd-cfDNAのパーセンテージ(dd-cfDNA%)として表される。いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、dd-cfDNAの量又は絶対量として表される。いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、血液試料の体積単位当たりのdd-cfDNAの量又は絶対量として表される。いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、血液試料の体積単位当たりのdd-cfDNAの量又は絶対量に、移植レシピエントの体重、BMI又は血液量を乗じたものとして表される。
【0201】
いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、患者の体重、BMI又は血液量を考慮に入れる。いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、以下のうちの1つ以上を考慮に入れる:血漿の体積当たりのドナーゲノムコピー、血漿の体積当たりの無細胞DNA収率、ドナー身長、ドナー体重、ドナー年齢、ドナー性別、ドナー民族性、ドナー臓器質量、ドナー臓器、生体対死亡ドナー、ドナーとレシピエントとの家族関係(又はその欠如)、レシピエント身長、レシピエント体重、レシピエント年齢、レシピエント性別、レシピエント民族性、クレアチニン、eGFR(糸球体濾過率の推定値)、cfDNAメチル化、DSA(ドナー特異的抗体)、KDPI(腎臓ドナープロファイル指標)、薬剤(免疫抑制、ステロイド、血液希釈剤など)、感染症(BKV、EBV、CMV、UTI)、レシピエント及び/又はドナーHLA対立遺伝子又はエピトープミスマッチ、腎臓同種移植病理学のBanff分類、並びに正当対監視又はプロトコル生検。
【0202】
いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の感度が少なくとも50%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の感度が少なくとも60%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の感度が少なくとも70%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の感度が少なくとも80%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の感度が少なくとも85%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の感度が少なくとも90%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の感度が少なくとも95%であり、信頼区間は95%である。
【0203】
いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも50%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも60%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも70%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも75%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも80%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも85%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも90%であり、信頼区間は95%である。いくつかの実施形態において、本方法は、dd-cfDNA量が、血液試料中の全cfDNAの量に従ってスケーリング又は調整されたカットオフ閾値を上回る場合、非急性拒絶反応(non-AR)に対して急性拒絶反応(AR)を同定する際の特異性が少なくとも95%であり、信頼区間は95%である。
【0204】
全無細胞DNAの量を使用して移植拒絶反応又は移植傷害を呼び出すための閾値の調整
本発明のいくつかの実施形態は、移植レシピエントの生体試料におけるドナー由来無細胞DNAの量を定量する方法であって、a)移植レシピエントの生体試料から無細胞DNAを単離することであって、単離された無細胞DNAが、ドナー由来無細胞DNA及びレシピエント由来無細胞DNAを含み、第1のトレーサーDNA組成物が、無細胞DNAの単離の前又は後に添加される、単離することと、b)100個以上の異なるプライマー対を使用して、単一反応体積における100個以上の異なる標的遺伝子座での標的増幅を行うことと、c)高スループット配列決定により増幅産物を配列決定して、配列決定リードを生成することと、d)ドナー由来無細胞DNAの量及び全無細胞DNAの量を定量することとを含み、全無細胞DNAの量は、第1のトレーサーDNA組成物に由来する配列決定リードを使用して定量される方法に関する。
【0205】
いくつかの実施形態は、血漿量当たりのドナーDNAの固定閾値、又は本明細書に記載されるように調整又はスケーリングされたもの等の固定されていないもののいずれかを使用する。これを決定する方法は、トレーニングデータセットを使用してパフォーマンスを最大化するアルゴリズムを構築することに基づいてもよい。また、患者の体重、年齢、又は他の臨床的要因などの他のデータを考慮してもよい。
【0206】
いくつかの実施形態において、本方法は、ドナー由来無細胞DNAの量を使用して、移植拒絶反応又は移植傷害の発生又は発生の可能性を決定することを更に含む。いくつかの実施形態において、ドナー由来無細胞DNAの量をカットオフ閾値と比較して、移植拒絶反応又は移植傷害の発生又は発生の可能性を決定し、カットオフ閾値を全無細胞DNAの量に従って調整又はスケーリングする。いくつかの実施形態において、カットオフ閾値は、ドナー由来無細胞DNAのリード数の関数である。
【0207】
いくつかの実施形態において、本方法は、より正確に移植拒絶反応又は移植傷害を評価するために、試料中の全cfDNAの量を考慮したスケーリング又は動的閾値メトリックを適用することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、全無細胞DNAの量が所定の値を上回る場合に、試料にフラグを立てることを更に含む。いくつかの実施形態において、本方法は、全無細胞DNAの量が所定の値未満である場合に、試料にフラグを立てることを更に含む。
【0208】
実施例
実施例1
この非限定的な実施例のワークフローは、Sigdel et al.,J.Clin.Med.8(1):19(2019)に開示されているワークフローに対応する(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。この実施例は例示にすぎず、当業者は、本明細書に開示される発明が様々な他の方法で実施され得ることを理解するであろう。
【0209】
血液試料
男性及び女性の成人又は若年成人の患者が、関連した、若しくは関連していない生体ドナー、又は関連していない死亡したドナーから腎臓を移植された。移植手術後の患者の採血の時点は、同種移植片生検の時点、又はラボプロトコルに基づいて事前に指定された様々な時間間隔であった。典型的には、試料は生検マッチングされ、臨床的機能障害及び生検時、又はプロトコル生検時(この時点では、ほとんどの患者は臨床的機能障害を有していなかった)に採血された。加えて、一部の患者は、移植後に連続血液採取を受けた。試験試料の選択は、(a)適切な血漿が利用可能であること、及び(b)試料が生検情報と関連付けられているかに基づく。完全な300試料コホートのうち、72.3%は、生検の日に採血された。
【0210】
血液試料中のdd-cfDNA測定
無細胞DNAを、QIAamp Circulating Nucleic Acid Kit(Qiagen)を用いて血漿試料から抽出し、LabChip NGS 5kキット(Perkin Elmer、Waltham、MA、USA)で製造業者の指示に従って定量した。無細胞DNAを、Abbosh et al,Nature 545:446-451(2017)に記載されているNateraライブラリプレップキットを使用して、ライブラリ調製に入力した。ライブラリをプラトーにするために、18サイクルのライブラリ増幅の修正を伴った。精製されたライブラリは、Abbosh et al,Nature 545:446-451(2017)に記載されているように、LabChip NGS 5kを使用して定量した。標的の濃縮は、Zimmermann et al.,Prenat.Diagn.32:1233-1241(2012)に記載の修正バージョンを使用して、13,392の一塩基多型(SNP)を標的として、大規模多重化PCR(massively multiplexed-PCR)(mmPCR)を使用して達成した。次いで、試料当たり1000万~1100万リードで、Illumina HiSeq 2500 Rapid Run(登録商標)で50サイクルの単一末端でアンプリコンを配列決定した。
【0211】
dd-cfDNA及びeGFRの統計分析
各試料において、dd-cfDNAを測定し、拒絶状態と相関させ、結果をeGFRと比較した。該当する場合、全ての統計的検定は両側であった。有意性は、p<0.05に設定した。患者におけるdd-cfDNAの分布は、群間で激しく歪んでいたため、データは、Kruskal-Wallis順位和検定、続いてDunn多重比較検定を用いて、Holm補正ありで分析した。eGFR(mg/dLでの血清クレアチニン)は、成人及び小児患者について前述のように計算した。簡単に述べると、eGFR=186×血清クレアチニン-1.154×年齢-0.203×(黒人の場合は1.210)×(女性の場合は0.742)である。
【0212】
拒絶マーカーとしてのdd-cfDNA及びeGFR(mL/分/1.73m)のパフォーマンスを評価するために、試料をAR群及び非拒絶反応群(BL+STA+OI)に分けた。この分類を使用して、以下の所定のカットオフを使用して、試料をARとして分類した:dd-cfDNAについては1%超、eGFRについては60.0未満。
【0213】
各マーカーの性能パラメータ(感度、特異性、陽性予測値(PPV)、陰性予測値(NPV)及び曲線下面積(AUC))を計算するために、ブートストラップ法を使用して、患者内の反復測定を考慮した。簡単に説明すると、各ブートストラップステップにおいて、各患者から単一の試料を選択した。患者間の独立性を仮定することにより、パフォーマンスパラメータ及びその標準誤差を計算した。これを10,000回繰り返した。最終信頼区間は、標準正規分位のブートストラップ標準誤差の平均を有するパラメータのブートストラップ平均を用いて計算した。感度及び特異性の標準誤差は、二項分布を仮定して計算し、PPV及びNPVについては正規近似を使用し、AUCについてはDeLong法を使用した。パフォーマンスは、プロトコル生検と同時に採取された試料からなるサブコホートを含む、一致した生検を有する全ての試料について計算した。
【0214】
ドナータイプ(生存する関連者、生存する非関連者、及び死亡した非関連者)によるdd-cfDNAレベルの差異もまた評価した。有意性は、上述のように、Kruskal-Wallis順位和検定を用いて決定された。経時的なdd-cfDNAの相互変動及び内部変動を、dd-cfDNA上の対数変換を用いた混合効果モデルを使用して評価し、患者内及び患者間の標準偏差の95%信頼区間(CI)を、尤度プロファイル法を使用して計算した。
【0215】
事後分析は、(a)NPVを最大化するための異なるdd-cfDNA閾値、並びに(b)AR診断のためのPPVを改善し得る経験的拒絶ゾーンを定義するためのdd-cfDNA及びeGFRを組み合わせたものを評価した。全ての分析は、FSA(Dunn検定の場合)、lme4(混合効果モデリングの場合)、及びpROC(AUC計算の場合)パッケージを使用してR 3.3.2を用いて行った。
【0216】
生検試料
任意選択的に、腎生検を、病理学者によって盲検様式で分析し、活性拒絶反応(AR)について2017年のBanff分類によって等級付けし、移植内C4d染色を行って、急性体液性拒絶反応を評価した。活動性尿路感染症(UTI)又は他の感染症の症例では、生検は行わなかった。移植「傷害」は、その以前の定常状態ベースライン値からの血清クレアチニンの20%超の増加、及び活性拒絶(AR)、境界性拒絶(BL)、又は他の傷害(OI)(例えば、薬物毒性、ウイルス感染)のいずれかとして分類される関連する生検として定義された。活性拒絶反応は、最低でも以下の基準によって定義された:(1)間質性炎症(i)スコア>2を伴う尿細管炎(t)スコア>2若しくは血管変化(v)スコア>0のいずれかからなるT細胞媒介性拒絶反応(TCMR)、(2)糸球体炎(g)スコア>0若しくは尿細管周囲毛細血管炎スコア(ptc)>0若しくはv>0を有し、C4d=2の原因不明の急性尿細管壊死/血栓性微小血管障害(ATN/TMA)を伴う、陽性ドナー特異的抗体(DSA)からなるC4d陽性抗体媒介拒絶反応(ABMR)、又は(3)g+ptc≧2かつC4dが0若しくは1のいずれかである原因不明のATN/TMAを伴う陽性DSAからなるC4d陰性ABMR。境界変化(BL)は、説明される原因(例えば、ポリオマウイルス関連腎症(PVAN)/感染性原因/ATN)なしで、t1+i0、又はt1+i1、又はt2+i0によって定義された。BL変化に使用される他の基準は、g>0及び/若しくはptc>0、又はDSAを伴わないv>0、又はC4d若しくは陽性DSA、又は非ゼロg又はptcスコアを伴わない陽性C4dであった。正常(STA)同種移植片は、Banffスキーマによって定義されるような顕著な損傷病理の不在によって定義された。
【0217】
実施例2
この実施例は例示にすぎず、当業者は、本明細書に開示される発明が様々な他の方法で実施され得ることを理解するであろう。実施例1に記載のワークフローは、2020年5月29日に出願された、「Improved Methods for Detection of Donor Derived Cell-Free DNA」と題する米国仮出願第63/031,879号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、無細胞DNAの抽出の前に血漿試料にSNP遺伝子座を各々含有する1つ以上のトレーサーDNAを添加することによって修正される。mmPCR標的濃縮ステップの間、SNP遺伝子座を標的とするプライマー対もまた、トレーサーDNAを増幅する。試料中の全cfDNAの量は、トレーサーDNAの配列リード数(バーコードによって識別可能)、試料DNAの配列リード数、及び血漿試料に添加されたトレーサーDNAの既知の量を使用して推定される。
【0218】
実施例3
この実施例は例示にすぎず、当業者は、本明細書に開示される発明が様々な他の方法で実施され得ることを理解するであろう。実施例1に記載のワークフローを使用して、同時膵腎移植(pancreas-kidney transplant)(SPK)レシピエント及び順次腎移植後膵移植(pancreas after kidney transplant)(PAK)レシピエントからの血漿試料を処理及び分析する。1% dd-cfDNA又は1.5% dd-cfDNAのカットオフ閾値は、安定した移植片を有する移植レシピエントからの急性拒絶反応を有するSPK移植レシピエントを首尾よく同定した。
【0219】
実施例4
この実施例は例示にすぎず、当業者は、本明細書に開示される発明が様々な他の方法で実施され得ることを理解するであろう。
【0220】
同種移植拒絶反応の早期検出は、移植レシピエントの管理を成功させるために重要である。組織生検は、活性拒絶反応(AR)の診断のための「ゴールドスタンダード」であるが、侵襲性であり、再現性が低い。血清クレアチニンの変化などの従来の非侵襲性バイオマーカーは、ARを検出するために利用可能であるが、感度及び特異性が低いために制限される。したがって、ARを検出するための高い精度を有する新しい非侵襲性マーカーが必要とされている。
【0221】
ドナー由来無細胞DNA分率(dd-cfDNA(%))は、同種移植拒絶反応を検出するための有望な非侵襲性バイオマーカーである。しかしながら、dd-cfDNA(%)は、高レベルの循環cfDNAによって人工的に低下させることができ、これは、肥満である患者、最近手術を受けた患者、医学的合併症を有する患者、又は特定の薬剤を受けている患者で生じ得る。これは、偽陰性の結果につながる可能性がある。
【0222】
最近、2つの研究は、dd-cfDNAの絶対量が、dd-cfDNA(%)よりもARを検出するためのより良い性能を示し得ることを示す予備的な証拠を提供した。本明細書では、dd-cfDNA(%)及びdd-cfDNAの絶対量(コピー/mL)の両方を組み合わせた新しい2閾値アルゴリズムを利用したアッセイからの結果を提示し、特にcfDNAレベルが高い場合における検出の改善を通して、試験感度を増加させることを目的とする。
【0223】
この研究には、同種移植管理を受けている41人の患者が含まれ、日常的な臨床ケアの一部としてdd-cfDNA検査を受けた。18歳未満の患者、妊娠している患者、登録から2週間以内に腎臓以外の臓器移植又は輸血を行った患者は除外した。
【0224】
臨床検査は、13,000を超える一塩基多型を標的とする、大規模多重化PCR(mmPCR)を使用してcfDNAを増幅することによって行った。dd-cfDNA分率は、Altug et al.,Transplantation,103:2657-2665(2019)に従って測定した。dd-cfDNAの絶対濃度を較正して、dd-cfDNAの量(cp/mL)を得た。新しい2閾値アルゴリズムは、以前に検証されたdd-cfDNA分率カットオフ(1%以上は拒絶反応のリスクを示す)と、以前に確立された78cp/mL以上のdd-cfDNA量カットオフとを組み合わせた。いずれかの閾値を超える試料は、ARのリスクが高いとみなした。
【0225】
マッチした生検結果(dd-cfDNA試験の4週間以内に行われた原因生検について)は、16人の患者で利用可能であり、16人中14人は、dd-cfDNA試験の2週間以内に行われた。生検試料は、Banff 2017分類を使用して標準的な慣行に従って、病理学者によって分析及び等級付けされた。生検のない試料は、臨床評価に基づいて、活性拒絶反応を有しないもの(血清クレアチニン及び他の臨床指標に従って安定している)として分類された。ARは、行われた16回中9回の生検(56%)で見出され、5回はT細胞媒介性拒絶反応(TCMR)、1回は抗体媒介性拒絶反応(ABMR)、3回は混合型(ABMR/TCMR)に分類された。
【0226】
試料では、41人の患者について、各アルゴリズムの感度及び特異性を計算した。≧1% dd-cfDNAカットオフに基づいて、元の方法では、感度が7/9(77.8%、95% CI:40.0~97.2%)、及び特異性が29/32(90.6%、95% CI:75.0~98.0%)であった。2閾値アルゴリズムをデータセットに適用すると、感度が9/9(100%、95% CI:66.4~100%)、及び特異性が28/32(87.5%、95% CI:71.0~96.5%)であった。
【0227】
本発明者らの結果は、同種移植の拒絶反応状態を評価するためにdd-cfDNA量及びdd-cfDNA分率の両方を使用すると、dd-cfDNA分率のみを使用するよりも性能を向上させることができることを示唆している。予想と一致して、新しい閾値の導入に応じて呼び出しが変化した3人の患者は、高い全cfDNAレベルを有し、したがって、ドナー分率の低下は、1%ドナー分率カットオフのみを使用する場合、2つの事例で偽陰性の結果につながった。
【0228】
結論として、この研究は、dd-cfDNA閾値の量と以前に検証されたdd-cfDNA(%)閾値との組み合わせが、高い特異性を維持しながら、腎同種移植患者におけるARの検出において改善された感度を生み出すことができることを示唆している。
【0229】
実施例5
この実施例は例示にすぎず、当業者は、本明細書に開示される発明が様々な他の方法で実施され得ることを理解するであろう。
【0230】
背景:ドナー由来無細胞DNA(dd-cfDNA)の分率及び量の両方が、同種移植拒絶反応に関連することが示されている。本研究では、2つの変数の組み合わせに対するこれらの変数の各々の相対予測力を調べ、腎同種移植の生検における活性拒絶反応を検出するために両方の変数を組み込んだアルゴリズムを開発した。
【0231】
方法:マイクロアレイ由来の遺伝子発現及びdd-cfDNAの結果を用いて収集された最初の426の連続指標生検試料を含めた。意図された臨床使用をシミュレートするための除外した後、367試料を分析した。生検は、分子顕微鏡診断システム(MMDx)及び組織学(Banff 2019)を使用して評価した。ロジスティック回帰分析では、dd-cfDNAの分率及び量を組み合わせることで、いずれか一方に予測値を追加するかどうかを調べた。最初の連続した149試料を使用して2閾値アルゴリズムを開発し、次の218試料を使用してアルゴリズムを検証した。
【0232】
結果:回帰において、dd-cfDNAの分率及び量の組み合わせは、いずれかの変数単独よりも有意に予測的であることがわかった(p値0.009及び<0.0001)。試験セットにおいて、2変数システムのAUCは0.88であり、2閾値アルゴリズムの性能は、分子診断については感度83.1%及び特異性81.0%、組織診断については感度73.5%及び特異性80.8%を示した。
【0233】
結論:腎臓移植患者におけるこの前向き生検マッチ多部位dd-cfDNA研究では、dd-cfDNAの分率及び量の組み合わせると、dd-cfDNAの分率又は量のいずれか単独よりも強力であることが見出され、両方の変数を組み込んだ新規の2閾値アルゴリズムを検証した。
【0234】
実施例6
この実施例は例示にすぎず、当業者は、本明細書に開示される発明が様々な他の方法で実施され得ることを理解するであろう。
【0235】
背景:同時膵腎移植(SPKTx)における膵臓移植状態は、現在、非特異的生化学マーカー(典型的には、アミラーゼ及び/又はリパーゼ)によって評価されている。早期膵臓移植拒絶反応を検出するのに優れた感度を有する非侵襲性バイオマーカーを同定することは、SPKTx管理を改善する可能性がある。
【0236】
方法:ここで、本発明者らは、SPKTxレシピエントのコホートにおける膵臓移植の生検で証明された急性拒絶反応を予測する際のドナー由来無細胞DNA(dd-cfDNA)の性能を探索するためのパイロット研究を開発した。本発明者らは、Prospera(商標)試験(Natera,Inc.)を使用して、生検とマッチした少なくとも1つの血漿試料を有する36人のSPKTxレシピエントにおけるdd-cfDNAを測定した。dd-cfDNAは、全cfDNAの分率(分率、%)及びレシピエントの血漿中の濃度(量;コピー/mL)の両方として報告された。
【0237】
結果:膵臓の生検で証明された急性拒絶反応(P-BPAR)がない場合、dd-cfDNAは、SPKTx後の最初の45日以内に採取された試料において、その後測定されたものと比較して、有意に高かった(中央値(%):1.00対0.30、中央値がそれぞれ128.2対53.3(cp/mL)、p=0.001)。45日目以降に得られた試料において、P-BPAR試料は、安定した試料よりも有意に高いdd-cfDNAの分率(0.83対0.30%、p=0.006)及び量(81.3対53.3cp/mL、p=0.001)を示した。dd-cfDNA量をdd-cfDNA分率とともに組み込むこと、dd-cfDNA分率単独を上回り、活性拒絶反応を検出する。特に、70cp/mLのカットオフ量を使用すると、dd-cfDNAは、P-BPARの診断については85.7%の感度及び93.7%の特異性でP-BPARを検出した。これは、現在のバイオマーカーよりも正確であった(dd-cfDNAのAUCは、リパーゼの0.74及びアミラーゼの0.46と比較して、0.89であった)。
【0238】
結論:単純な非侵襲性血液検査によるdd-cfDNAの測定は、SPKTx患者の移植管理に役立つように臨床診療に組み込むことができる。
【0239】
実施例7
この実施例は例示にすぎず、当業者は、本明細書に開示される発明が様々な他の方法で実施され得ることを理解するであろう。
【0240】
同時膵腎移植(SPKTx)は、1型糖尿病(T1D)及び末期腎疾患(ESRD)を有する患者にとって最良の治療法選択肢と考えられている。糖尿病性腎症は、持続的な高血糖によって引き起こされる微小血管合併症であり、ESRDの主な原因の1つである。SPKTxは、正常血糖を再確立し、したがって、微小血管合併症及び大血管合併症の予測されるリスクの低減につながるため、インスリン依存性糖尿病を有する患者における予後及び健康状態を有意に改善することができる。
【0241】
膵臓移植拒絶反応は、移植不全の主な原因であり、急性拒絶反応の発生率は、最初の12ヶ月で最大21%になる。移植拒絶反応を評価するための現在のツールは、移植片の外分泌機能(例えば、アミラーゼ、リパーゼ)又は内分泌機能(例えば、血糖、HbA1C、C-ペプチド)を評価する臨床検査に依存している。驚くべきことに、これらの検査は、天然の膵臓の外分泌機能がほとんどの患者で保存されているため、非常に非特異的であり、したがって、これらのパラメータのいずれかの上昇も、膵臓移植拒絶反応に関連していない可能性がある。膵臓移植片生検は、急性拒絶反応の診断の判断基準である。しかしながら、生検は、かなりの割合の合併症を有する侵襲的処置であり、しばしば、移植機能不全の存在にもかかわらず、実施することができないか、又は有意な情報が得られない(最大39%の時間)。したがって、最終的にSPKTx移植レシピエントの管理を改善することができる、同種移植の状態を評価し傷害/拒絶反応を監視するための、非侵襲性のドナー特異的な動的バイオマーカーに対する明確なニーズが存在する。
【0242】
いくつかの研究は、固形臓器移植(肺、腎臓、心臓、肝臓)のレシピエントの血液中のドナー由来無細胞DNA(dd-cfDNA)の測定が、同種移植拒絶反応のリスクと非拒絶反応のリスクを区別することができることを実証している。SPKTx移植レシピエントにおける拒絶反応のリスクを評価するためのdd-cfDNAの可能性を評価する研究は限られている。このパイロット研究では、Prospera(商標)試験の性能を評価した。これは、SNPベースのmmPCR法を使用して、dd-cfDNAの割合及び量の両方を測定し、移植片の状態について組織学的にプロファイリングされた36人のSPK移植レシピエントにおける拒絶反応のリスクを評価した。
【0243】
材料及び方法
研究設計及び患者集団。この分析には、膵臓生検と対応付けられた血漿試料(n=41)が含まれた。dd-cfDNAの定量に対するドナー関連及び手術直後の合併症の影響の可能性を説明するために、SPK移植の前及び45日後に別々に採取された試料を検討した。合計41個の移植片生検のうち、18個が移植後45日以内に採取され、23個が移植後45日以降に採取された。
【0244】
患者の試料。膵臓移植片の生検は、プロトコルに従って又は原因に基づいてのいずれかで行われた。センターのプロトコルに従って、原因生検は、患者が膵臓酵素(アミラーゼ及び/又はリパーゼ)において持続的な(48時間以上離れた2回以上の測定)上昇(正常値の2倍以上)を示した場合に適応された。試料は、超音波ガイド経皮ニードルパンチによって得られ、2011 Banff基準に従って分類された。分析目的で、生検は、「拒絶反応なし」又は拒絶反応として更に再分類され、後者は、Banffカテゴリ:不確定、T細胞媒介性拒絶反応(TCMR)、及び抗体媒介性拒絶反応(ABMR)を含む。dd-cfDNAの誤解を招く解釈を避けるため、生検の実施前、膵臓移植片の生検の日に、全血及び血清試料を得た。全血試料を使用してdd-cfDNAレベルを測定し、血清試料を使用してアミラーゼ(U/l)、リパーゼ(U/l)、クレアチニン(mg/dL)、及び抗グルタミン酸脱炭酸酵素抗体(GAD)を測定した。加えて、血清試料を、Lifecodes LifeScreen Deluxeフロービーズアッセイ(Immucor,Stamford,CT,USA)を使用して、HLAクラスI及びIIドナー特異的抗体(DSA)についてスクリーニングした。HLA抗体のスクリーニングが陽性である患者において、Lifecodes Single Antigenビーズアッセイ(Immucor,Stamford,CT,USA)を使用して抗体の特異性を決定した。Histocompatibility Laboratory of Catalunyaのプロトコルに従って、平均蛍光強度(MFI)が1500を超えるDSAを陽性とみなした。A/B/DRB1 HLA遺伝子座は、全ての患者においてDSAについて考慮されたが、DQB1/DP1/C HLA遺伝子座は、利用可能な場合にのみDSAについて考慮された。
【0245】
Prospera(商標)試験を使用したdd-cfDNAレベルの評価。全血をPAXgene血液ccfDNA DNAチューブ(QIAGEN(著作権))に採取し、製造業者の指示に従って全血を2回遠心分離することによって血漿試料を得た。次いで、血漿を、試料処理まで-80Cで保管した。大規模多重PCR(mmPCR)を使用して、13,926のSNPを標的として、血漿試料中のcfDNAを増幅し、続いて、Altug et al.,Transplantation,103:2657-2665(2019)に記載されているようにアンプリコンを配列決定した(Prospera(商標),Natera Inc.,Austin,TX)。試料は、4mL未満の血漿を有する試料を除いて(9回の追加のPCRサイクルを有する)、標準的なCLIAプロトコルに従って実行した。dd-cfDNAレベルは、全cfDNAの分率(%、中央値[IQR])として、及びレシピエントの血漿中の濃度(コピー/mL、中央値[IQR])として報告された。
【0246】
統計解析。中央値測定値の比較は、Mann-Whitney U検定を使用して行った。P値<0.05を統計的に有意とみなした。必要に応じて、多重検定用にBenjamini-Hochberg(BH)調整を使用してP値を調整した。ROC曲線を構築し、様々な閾値について感度、特異性、陽性予測値(PPV)及び陰性予測値(NPV)を計算した。統計分析は、SciPy及びstatsmodelsパッケージ(Python Software Foundation,バージョン,(https://www.python.org/psf/)を使用して、Pythonプログラミング言語で行った。連続変数のグラフィカル表現は、中央値及び四分位範囲[IQR]として示される。
【0247】
dd-cfDNA及び膵臓移植拒絶反応。dd-cfDNA分率の中央値は、拒絶反応を有しない患者と比較した場合(0.52%[IQR:0.21~0.78])、生検で証明された膵臓移植片の急性拒絶反応を有する患者(P-BPAR、1.05%[0.81~1.67])で有意に高かった(p=0.0004)。同様に、P-BPARを有する患者では、中央値絶対dd-cfDNA量が、拒絶反応を有しない患者(51.5cp/mL[IQR:22.2~76.7)と比較した場合、有意に高かった(103.70cp/mL[IQR:76.70~189.80])(p=0.0007)。これらのデータは、dd-cfDNA分率と量の両方が、SPKTxレシピエントにおける膵臓移植拒絶反応と非拒絶状態とを区別できることを示唆している。
【0248】
ドナー及び手術関連臓器損傷の潜在的な交絡因子を探索するために、本発明者らは、移植の前及び45日後のdd-cfDNAレベルを比較した。拒絶反応のない患者では、dd-cfDNAの分率及びdd-cfDNAの絶対量は、45日後に生検を行った患者と比較して、手術後早期で有意に高かった(それぞれ中央値%1.00対0.30、p=0.001;それぞれ中央値128.2対35.3cp/mL、p=0.001)。SPKTx後の最初の45日間、非拒絶反応試料とBPARを有する試料との間に、dd-cfDNA量の分率(p=0.120)又はdd-cfDNA量(p=0.290)として、dd-cfDNAレベルに統計的な差はなかった。対照的に、移植後45日以降に採取された生検マッチ血液試料では、dd-cfDNA分率及びdd-cfDNA量の両方が、BPARコホート(0.83%[IQR0.67~1.58]、81.3cp/mL[IQR73.4~152.0])において、非拒絶反応コホート(それぞれ0.30%[IQR0.14~0.52]、p=0.006、及び35.3cp/mL[IQR19.5~55.0]、p=0.001)と比較して有意に高かった。急性拒絶群から不確定生検を除外した場合、dd-cfDNAレベルは、非拒絶反応の事例と比較して、依然として有意に上昇していた(拒絶反応0.81%[0.52~0.83]に対して非拒絶反応0.30%[0.14~0.52]、p=0.031)。これらのデータは、dd-cfDNAの分率と量の両方が、移植後45日以降の移植拒絶反応と非拒絶状態とを区別することができることを示唆している。
【0249】
次に、膵臓移植拒絶反応と非拒絶反応とを正確に区別するであろうdd-cfDNAの最適なカットオフ値を特定することを目的とした。本発明者らは、a)1%のdd-cfDNAのカットオフ、及びb)dd-cfDNA分率カットオフ(1%以上)と78cp/mL以上のdd-cfDNA量カットオフとを組み合わせた2閾値アルゴリズムを適用することによって、腎臓同種移植拒絶反応を検出する際の2つの最近発表された閾値の能力を評価した。dd-cfDNA分率のみを使用した感度は、28.6%(2/7)であった。dd-cfDNA分率とdd-cfDNA量とを組み合わせた2閾値アルゴリズムを使用する場合、感度は、57.1%(4/7)でかなり高かった。特異性は、それぞれ100%及び93.7%で、両方のカットオフについて優れていた。70cp/mLのdd-cfDNA量カットオフ値を使用する場合、PPV85.7%の及び93.7%のNPVとともに、93.7%の高い特異性を維持しながら、感度が85.7%(6/7)に増加した。
【0250】
dd-cfDNA及びDSA。移植後45日以降に採取された生検のうちの1つのみが、抗体媒介性拒絶反応(ABMR)を特徴としたが、3人の患者が循環DSAを有することが見出された。本発明者らは、dd-cfDNA分率が、DSAについて試験で陽性であった試料(0.83%[0.82~2.5])では、試験で陰性であった試料(0.39%[0.18~0.55]、p=0.022)に対して有意に上昇したことを見出した。同様に、dd-cfDNA量が、DSAについて試験で陽性であった試料(94.2cp/mL[84.7~264.1])では、試験で陰性であった試料(48.1cp/mL[21.0~63.0]、p=0.024)に対して有意に上昇したことを見出した。
【0251】
他のバイオマーカーと比較したdd-cfDNAの性能。次に、本発明者らは、dd-cfDNAの性能を、移植片監視の評価に使用されている従来の臨床試験と比較しようとした。本発明者らは、膵臓生検と同時に採取された血液試料中のアミラーゼ及びリパーゼのレベルを測定した。アミラーゼレベルは、拒絶反応群と非拒絶反応群との間で有意に変化しなかったが(p=0.40)、リパーゼは、非拒絶反応群と比較して、拒絶反応群で有意に高かった(p=0.038)。本発明者らは、移植後45日以降の膵臓移植片生検の組織病理学的結果に基づいて、移植拒絶反応と非拒絶反応とを区別する際のアミラーゼ、リパーゼ、及びdd-cfDNA(分率及び量)の診断能力を比較した。膵臓移植拒絶反応と非拒絶反応とを区別する際のこれらのバイオマーカーの計算されたAUCは、以下のとおりであった:(dd-cfDNA量:0.89)、(dd-cfDNA分率:0.84)、(リパーゼ:0.74)、(アミラーゼ:0.46)。これらのデータは、dd-cfDNAが、SPKTxレシピエントにおける膵臓拒絶反応と非拒絶反応とを区別するために伝統的に使用されるマーカーアッセイよりも優れていることを示唆する。dd-cfDNA及びリパーゼを同時に組み合わせる試みがdd-cfDNAの性能を向上させなかったことに言及することは注目に値する。
【0252】
考察:このパイロット研究は、SPKTxレシピエントにおける膵臓移植拒絶反応を診断するためのdd-cfDNAの性能を初めて探索するものである。本発明者らは、安定した患者の間で、dd-cfDNAレベルが、45日以降に行われたものと比較して、移植後最初の45日間に上昇することを見出した。この初期の期間(45日以内)の間、dd-cfDNAは、P-BPARと非拒絶反応とを区別することができなかった。関連して、移植後45日以降に行われた生検では、dd-cfDNA量は、それぞれ85%及び93%の感度及び特異性で、P-BPARを有する生検と急性拒絶反応を有しない生検とを区別することができる。更に、dd-cfDNAは、現在利用可能なバイオマーカーであるアミラーゼ及びリパーゼよりも優れた性能を示した。注目すべきことに、リパーゼとdd-cfDNAとを組み合わせても、dd-cfDNA単独と比較して診断精度は向上しなかった。
【国際調査報告】