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特表2024-507539宿主ファージ反応データを分析するためのコンピュータ実行方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】宿主ファージ反応データを分析するためのコンピュータ実行方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240213BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12M1/34 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550594
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 US2022017430
(87)【国際公開番号】W WO2022182702
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】63/153,039
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
2.TENSORFLOW
(71)【出願人】
【識別番号】517317347
【氏名又は名称】アダプティブ ファージ セラピューティクス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Adaptive Phage Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バレット-サン, ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル, プリイェシュ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA08
4B029BB02
4B029BB13
4B029CC01
4B029DF06
4B029FA02
4B029FA10
4B029GA03
4B063QA06
4B063QQ06
4B063QQ10
4B063QR79
(57)【要約】
宿主ファージ反応データを分析するためのコンピュータ実行方法は、開始時間から終了時間までの時点毎に一連のシグモイド関数を適合することと、時点毎に最良適合を選択することとを含む。時点全てにわたる最良適合が次いで選択され、類似の決定係数を有するが遅滞期の終了を示す最小時点に時間が近い時点のサーチが実施される。最良適合時点の遅滞時間が次いで、適合モデルから取得される。最良適合が閾値テストに失敗すると、データセットは平坦であると考えられ、遅滞時間は終了時間にセットされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主ファージ反応データを分析するためのコンピュータ実行方法であって、
宿主ファージ反応データセットを受け取るかそれにアクセスするステップであって、前記データセットが、ファージの存在下で宿主細菌が増殖する宿主-ファージの組合せについての時系列データセットを含み、関連付けられた前記時系列データセット内の各データポイントが、特定の時間における前記ファージの存在下での前記宿主細菌の前記増殖を示すパラメータの測定値を含む、ステップと、
遅滞時間の推定を取得するステップであって、
初期時点から終了時点までの時間ウィンドウ内の複数の時点にわたって、前記初期時点から現在時点までの適合時間ウィンドウにわたる1つまたは複数の候補関数を適合するステップであって、適合するステップは、少なくとも遅滞時間および適合度パラメータを含む増殖曲線概要パラメータのセットを推定する、ステップ、
前記適合度パラメータに基づいて前記1つまたは複数の適合された候補関数から前記現在時点に最良の適合関数を選択するステップであって、前記1つまたは複数の候補関数がそれぞれ、異なる関数形式を含み、そのうちの少なくとも1つが、シグモイド関数であり、前記適合度推定がどれも閾値適合度を超えない場合、前記時系列データセットを平坦として分類し、前記遅滞時間を前記終了時点にセットする、ステップ、
前記複数の時点における適合度値に基づいて最良時点を前記複数の時点から選択するステップ、
最良時間適合より最小時点に時間が近く前記最小時点より大きい代替最良時点をサーチし、前記代替時点の前記適合度が、前記最良時点の前記適合度の閾値量以内である場合、前記最良時点を前記代替最良時点にアップデートするステップ、
前記最良時点の遅滞時間を推定するステップであって、前記適合度が閾値適合度を超過した場合、前記遅滞時間が前記増殖曲線概要パラメータから取得され、そうでなければ、前記時系列データセットを平坦として分類し、前記遅滞時間を前記終了時点にセットする、ステップ
を含む、遅滞時間の推定を取得するステップと、
少なくとも前記遅滞時間、または対照のための前記遅滞時間が減算された前記推定遅滞時間として計算された待機時間をレポートするステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の候補関数が、候補関数の並べられたセットであり、1つまたは複数の候補関数を適合するステップが、前記並べられたセット内の順序に従って各候補関数を順次適合するステップを含み、前記適合された候補関数の前記適合度が所定の閾値度を超過した場合、前記順次適合が終結され、前記候補関数が、前記最良の適合関数として選択される、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項3】
候補関数の前記並べられたセットが、ゴンペルツ関数、ロジスティック関数、およびリチャーズ関数を含む、請求項2に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項4】
前記ゴンペルツ関数、ロジスティック関数、およびリチャーズ関数のそれぞれの適合が、前記所定の閾値度を超過する適合度を生成できなかった場合、ブラックマンウィンドウ関数を前記時系列データに適用し、前記適合プロセスを繰り返し、前記ゴンペルツ関数、ロジスティック関数、およびリチャーズ関数のそれぞれに対する前記繰り返しの適合が、前記所定の閾値度を超過する適合度を生成できなかった場合、前記時系列データセットを平坦として分類し、前記遅滞時間を前記終了時点にセットする、請求項3に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項5】
適合時間ウィンドウにわたって1つまたは複数の候補関数を適合する前に、前記時系列データセットの最大高さを決定し、前記最大高さが閾値最大高さより低い場合、前記時系列データセットを平坦として分類し、前記遅滞時間を前記終了時点にセットし、前記適合プロセスを終結させる、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項6】
代替最良時点をサーチすることが、
前記最良時点が前記最小時点より小さいかどうかを決定することを含み、前記最良時点が前記最小時点より小さい場合、前記最良時点の前記適合度の閾値差以内の適合度を有する前記最小時点の、またはその後の、最も近い代替時点に基づいて、前記代替時点が選択され、
前記最良時点が前記最小時点より大きい場合、前記最小時点より大きいかそれに等しく、前記最小時点に最も近い代替時点であり、前記最良時点の前記適合度の閾値差以内の適合度を有する、前記代替時点に基づいて、前記代替時点が選択される、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項7】
前記最小時点が5時間であり、前記適合度が決定係数(R)であり、前記閾値差が0.03である、請求項7に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項8】
前記適合度が前記決定係数(R)であり、前記所定の閾値度が0.6である、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項9】
前記終了時点が48時間である、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項10】
前記最小時点が5時間である、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項11】
前記時系列データが平坦として分類された場合、変動基準を推定し、前記変動基準が変動閾値を超過した場合、前記時系列データセットを拒絶し、前記時系列データセットを異常と分類する、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項12】
関連付けられた対照曲線に基づいて前記時系列データセットを正規化するステップをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項13】
前記宿主増殖曲線が、宿主だけの時系列データセットであり、前記時系列データセットを正規化するステップが、前記時系列データセットから前記宿主だけの時系列データセットを減算するステップを含み、前記時系列データセットおよび前記宿主だけの時系列データセットが、同じマルチウェルプレート上の別個のウェルから取得される、請求項12に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項14】
前記マルチウェルプレートが、1つまたは複数の培地対照ウェルをさらに備え、前記コンピュータ実行方法が、少なくとも、異常な培地対照ウェルまたは異常な宿主細胞だけのウェルを識別し、任意の識別された異常な培地対照ウェルまたは異常な宿主細胞ウェルに関連付けられた時系列データセットを除外することを含んだ、品質保証を実施するステップをさらに含む、請求項12に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項15】
前記時系列データセットが、複数の宿主-ファージの組合せ、陽性対照ウェルのセット、培地対照ウェルのセット、宿主細胞対照ウェルのセット、希釈宿主細胞ウェルの第1のセット、および希釈宿主細胞ウェルの第2のセットを含んだ、マルチウェルプレートから取得され、前記コンピュータ実行方法が、前記マルチウェルプレート上の各宿主-ファージの組合せに対して実施され、レポートが、前記マルチウェルプレート上の各宿主-ファージの組合せに対して生成される、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項16】
少なくとも最大高さ、傾き、遅滞時間、および曲線下面積、ならびに前記適合度を含めた前記増殖曲線概要パラメータが、決定係数(R)、誤差項もしくは剰余項に基づくパラメータ、または剰余の要約統計量のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項17】
前記終了時点が、最終時点より前であり、前記方法が、追加のデータポイントを含むアップデートされた宿主反応データセットを受け取り、前記正規化取得およびレポートステップを繰り返すステップをさらに含み、レポートする前記ステップが、前記ファージが有効である確率の推定を含む、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項18】
前記終了時点が、最終時点より前であり、前記終了時点における前記ファージが有効であるかどうかについての前記分類が前記最終時点における前記ファージが有効であるかについての前記分類にマッチするという推定である最終クラス確実性推定を決定するステップをさらに含み、前記ファージが有効である前記確率の前記推定をレポートするステップが、前記終了時点における前記ファージが有効であるという前記推定、および最終クラス確実性推定をレポートするステップをさらに含み、最終クラス確実性推定を決定するステップが、複数の平坦宿主ファージ反応データセットおよび複数の非平坦宿主ファージ反応データセットを有し、開始時間から最終時間へのデータポイントをそれぞれ有する、履歴宿主ファージ反応データセットのセット内の類似の宿主ファージ反応データセットのセットを識別することに基づいて決定され、前記最終クラス確実性推定が、前記終了時点における前記ファージが有効であるかどうかについての前記分類が前記最終時点における前記ファージが有効であるかについての前記分類にマッチする前記類似の宿主ファージ反応データセットに基づいて決定される、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項19】
前記最終クラス確実性推定が、履歴宿主ファージ反応データセットの前記セットで訓練されたランダムフォレストベース分類器を使用して生成される、請求項18に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項20】
ファージが、前記最終時点より前の終了時点における停止閾値を超過する前記最終クラス確実性推定に基づいて選択される、請求項18に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項21】
宿主ファージ反応データを分析するためのコンピュータ実行可能命令を有する非一時的コンピュータプログラム製品であって、前記命令が、
宿主ファージ反応データセットを受け取ることであって、前記データセットが、ファージの存在下で宿主細菌が増殖する宿主-ファージの組合せについての時系列データセットを含み、関連付けられた前記時系列データセット内の各データポイントが、特定の時間における前記ファージの存在下での前記宿主細菌の前記増殖を示すパラメータの測定値を含むことと、
関連付けられた対照曲線に基づいて前記時系列データセットを正規化することと、
遅滞時間の推定を取得することであって、
初期時点から終了時点までの時間ウィンドウ内の複数の時点にわたって、前記初期時点から現在時点までの適合時間ウィンドウにわたる1つまたは複数の候補関数を適合することであって、適合することは、少なくとも遅滞時間および適合度パラメータを含む増殖曲線概要パラメータのセットを推定すること、
前記適合度パラメータに基づいて前記1つまたは複数の適合された候補関数から前記現在時点に最良の適合関数を選択することであって、前記1つまたは複数の候補関数がそれぞれ、異なる関数形式を含み、そのうちの少なくとも1つが、シグモイド関数であり、前記適合度推定がどれも閾値適合度を超えない場合、前記時系列データセットを平坦として分類し、前記遅滞時間を前記終了時点にセットすること、
前記複数の時点における適合度値に基づいて最良時点を前記複数の時点から選択すること、
最良時間適合より最小時点に時間が近く前記最小時点より大きい代替最良時点をサーチし、前記代替時点の前記適合度が、前記最良時点の前記適合度の閾値量以内である場合、前記最良時点を前記代替最良時点にアップデートすること、ならびに
前記最良時点の遅滞時間を推定することであって、前記適合度が閾値適合度を超過した場合、前記遅滞時間が前記増殖曲線概要パラメータから取得され、そうでなければ、前記時系列データセットを平坦として分類し、前記遅滞時間を前記終了時点にセットすること
を含む、遅滞時間の推定を取得することと、
少なくとも前記遅滞時間、または対照のための前記遅滞時間が減算された前記推定遅滞時間として計算された待機時間をレポートすることと
を行うようにコンピュータによって実行可能である、非一時的コンピュータプログラム製品。
【請求項22】
コンピューティング装置であって、
少なくとも1つのメモリと、
少なくとも1つのプロセッサとを備え、前記メモリが、
宿主ファージ反応データセットを受け取ることであって、前記データセットが、ファージの存在下で宿主細菌が増殖する宿主-ファージの組合せについての時系列データセットを含み、関連付けられた前記時系列データセット内の各データポイントが、特定の時間における前記ファージの存在下での前記宿主細菌の前記増殖を示すパラメータの測定値を含むことと、
関連付けられた対照曲線に基づいて前記時系列データセットを正規化することと、
遅滞時間の推定を取得することであって、
初期時点から終了時点までの時間ウィンドウ内の複数の時点にわたって、前記初期時点から現在時点までの適合時間ウィンドウにわたる1つまたは複数の候補関数を適合することであって、適合することは、少なくとも遅滞時間および適合度パラメータを含む増殖曲線概要パラメータのセットを推定すること、
前記適合度パラメータに基づいて前記1つまたは複数の適合された候補関数から前記現在時点に最良の適合関数を選択することであって、前記1つまたは複数の候補関数がそれぞれ、異なる関数形式を含み、そのうちの少なくとも1つが、シグモイド関数であり、前記適合度推定がどれも閾値適合度を超えない場合、前記時系列データセットを平坦として分類し、前記遅滞時間を前記終了時点にセットすること、
前記複数の時点における適合度値に基づいて最良時点を前記複数の時点から選択すること、
最良時間適合より最小時点に時間が近く前記最小時点より大きい代替最良時点をサーチし、前記代替時点の前記適合度が、前記最良時点の前記適合度の閾値量以内である場合、前記最良時点を前記代替最良時点にアップデートすること、ならびに
前記最良時点の遅滞時間を推定することであって、前記適合度が閾値適合度を超過した場合、前記遅滞時間が前記増殖曲線概要パラメータから取得され、そうでなければ、前記時系列データセットを平坦として分類し、前記遅滞時間を前記終了時点にセットすること
を含む、遅滞時間の推定を取得することと、
少なくとも前記遅滞時間、または対照のための前記遅滞時間が減算された前記推定遅滞時間として計算された待機時間をレポートすることと
を行うように前記プロセッサを構成するための命令を有する、コンピューティング装置。
【請求項23】
前記宿主細菌が、浮遊細胞として増殖する、請求項1~20のいずれか一項に記載のコンピュータ実行方法、請求項21に記載の非一時的コンピュータプログラム製品、または請求項22に記載のコンピュータ装置。
【請求項24】
前記宿主細菌が、菌膜として増殖する、請求項1~20のいずれか一項に記載のコンピュータ実行方法、請求項21に記載の非一時的コンピュータプログラム製品、または請求項22に記載のコンピュータ装置。
【請求項25】
ファージ-ファージシナジー、抗生物質-ファージシナジー、または抗生物質-ファージ-ファージシナジーが測定される、請求項1~20のいずれか一項に記載のコンピュータ実行方法、請求項21に記載の非一時的コンピュータプログラム製品、または請求項22に記載のコンピュータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、宿主ファージ反応データを解釈するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
以下の議論では、背景および導入のために、ある特定の記事および方法が説明されることになる。本明細書に含まれるものは、先行技術の「認定」の意味にとられるべきものではない。出願人は、適切な場合には、本明細書で参照される記事および方法が、適用可能な法規定の下で先行技術とみなされないことを示す権利を明確に留保する。
【0003】
多剤耐性(MDR:multiple drug resistant)細菌が驚くべき速さで現れつつある。現在、米国では毎年、少なくとも2百万件の感染症がMDR生物によって引き起こされ、およそ23,000人が死亡していると推定されている。さらに、抗生物質が濫用されて細菌が自然進化すると、より毒性の強い微生物を生み出す可能性が高くなる。遺伝子工学および合成生物学も、さらなる非常に毒性が強い微生物を生み出すことがある。
【0004】
例えば、Staphylococcus aureusは、皮膚軟組織感染症(SSTI)、肺炎、壊死性筋膜炎、および血流感染症を引き起こす可能性のあるグラム陽性菌である。メチシリン耐性S.aureus(「MRSA」)は、MRSAが80,000件を超える侵襲的感染症、12,000件近くの関連死を招き、院内感染の主要な原因であるので、臨床環境では大いに関心のあるMDR生物である。さらに、世界保健機関(WHO)は、MRSAを国際的に懸念される生物として識別している。
【0005】
毒性の強い微生物および抗菌剤耐性を急速に発生および拡散させるという潜在的脅威を考慮して、細菌感染症に対する代替臨床処置が開発されつつある。MDR感染症に対する1つのこのような潜在的処置は、ファージの使用を伴う。バクテリオファージ(「ファージ」)は、特定の細菌宿主(bacterial host)内で増殖し、細菌宿主を殺すことのできるウイルスの多様なセットである。抗菌物質としてファージを利用する可能性は、20世紀初めの、初めてのファージの分離後に調査され、一部の国では抗菌剤として臨床的に使用され、ある程度の成功を収めてきた。それにも関わらず、ファージ療法は、ペニシリンの発見後、米国では大部分が放棄されたが、ごく最近、ファージ治療学への関心が再興している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ファージの治療的使用の成功は、感染症に関連付けられた細菌分離株の増殖を止めることを阻害可能なファージの菌株を投与できるかどうかに依存する。細菌の菌株に対するファージ感受性(すなわち、細菌の増殖の阻害における有効性)を調べるために経験的実験技法が開発されてきた。それでも、これらの技法は、時間がかかり、主観的であり、テストファージの存在下で細菌の菌株を増殖させようとすることを伴う。多くの時間を費やした後、ファージの溶解する(殺す)能力または細菌の増殖を阻害する能力の評価は、手動の目視検査によって推定される(宿主ファージ反応)。
【0007】
1つのこのようなテストは、プラークアッセイであり、プラークアッセイは、テストファージの配置および細菌の感染から生じた菌叢内のクリアゾーンの形成を測定する半固形培地アッセイである。プラークアッセイは簡単であるが、プラーク形態およびサイズは、実験者、培地、および他の条件によって変動する可能性がある。さらに最近では、OmniLog(商標)システム(Biolog, Inc; Henry M, Biswas B, Vincent L, Mokashi V, Schuch R, Bishop-Lilly KA, Sozhamannan S. Development of a high throughput assay for indirectly measuring phage growth using the OmniLogTM system. Bacteriophage. 2012 Jul 1;2(3):159-167. doi: 10.4161/bact.21440. PMID: 23275867; PMCID: PMC3530525.)を使用してファージ増殖を評価するために、自動化された高スループットの間接的液体溶解アッセイシステムが開発されてきた。OmniLog(商標)システムは、酸化還元化学を使用して、細胞呼吸を汎用レポータとして用いる、カメラおよびコンピュータに連結された自動化されたプレートベース培養器システムである。プレート内のウェルはそれぞれ、増殖培地、テトラゾリウム染料、(宿主)細菌の菌株、およびファージを(対照/較正ウェルと共に)含む。細菌の活発な増殖の間、細胞呼吸は、テトラゾリウム染料を減少させ、色変化を引き起こす。ファージ感染が成功し、その後、ファージの宿主細菌内でファージが増殖すると、細菌の増殖および呼吸が減少し、同時に色が薄まる。カメラは、複数の時点の画像を収集し、画像内の各ウェルは、色の基準を生成するために分析される。これは、初期色または基準色と呼ばれることが可能であり、したがって、経時的な色変化の時系列データセットが収集される(すなわち、比色分析アッセイ)。ウェル毎の時系列データセット(すなわち、宿主-ファージの組合せ)はグラフ化され、ユーザは次いで、グラフのそれぞれ(例えば、96個のウェルプレートに関する96個のグラフ)を(主観的に)見直す。増殖曲線の解釈は、生物学的変動があるだけでなく、増殖曲線の解釈に影響し得る培地および染料関連効果などの実験的根源による変動もあり得るので、かなり挑戦的なタスクである。したがって、ユーザは、自分の経験、直観的かつ暗黙的な知識を使用してグラフを解釈し、宿主-ファージ反応を推定しなければならない。これは、解釈が主観的であり、特定の日にグラフを見直すユーザのスキルレベルおよび/または注意深さに依存するので、品質の変動を増加させる。さらに、ほとんどのOmniLog(商標)システムが15分毎に出力データを生成するだけなので、精度が限定的である。
【0008】
したがって、例えば、人間の解釈に基づく変動を減少させるため、または少なくとも、既存の方法に有益な代案を提供するために、宿主ファージ反応データを分析/解釈するための改善された自動化された方法を開発する必要がある。
【0009】
要旨
第1の態様によれば、宿主ファージ反応データを分析するためのコンピュータ実行方法が提供され、方法は、
宿主ファージ反応データセットを受け取るかそれにアクセスすることであって、データセットが、ファージの存在下で宿主細菌が増殖する宿主-ファージの組合せについての時系列データセットを含み、関連付けられた時系列データセット内の各データポイントが、特定の時間におけるファージの存在下での宿主細菌の増殖を示すパラメータの測定値を含むことと、
遅滞時間の推定を取得することであって、
初期時点から終了時点までの時間ウィンドウ内の複数の時点にわたって、初期時点から現在時点までの適合時間ウィンドウにわたる1つまたは複数の候補関数を適合することであって、適合することは、少なくとも遅滞時間および適合度パラメータを含む増殖曲線概要パラメータのセットを推定すること、
適合度パラメータに基づいて1つまたは複数の適合された候補関数から現在時点に最良の適合関数を選択することであって、1つまたは複数の候補関数がそれぞれ、異なる関数形式を含み、そのうちの少なくとも1つが、シグモイド関数であり、適合度推定がどれも閾値適合度を超えない場合、時系列データセットを平坦として分類し(したがって、増殖がないことを示し)、遅滞時間を終了時点にセットすること、
複数の時点における適合度値に基づいて最良時点を複数の時点から選択すること、
最良時間適合より最小時点に時間が近く最小時点より大きい代替最良時点をサーチし、代替時点の適合度が、最良時点の適合度の閾値量以内である場合、最良時点を代替最良時点にアップデートすること、ならびに
最良時点の遅滞時間を推定することであって、適合度が閾値適合度を超過した場合、遅滞時間が増殖曲線概要パラメータから取得され、そうでなければ、時系列データセットを平坦として分類し、遅滞時間を終了時点にセットすること
を含む、遅滞時間の推定を取得することと、
少なくとも遅滞時間、または対照のための遅滞時間が減算された推定遅滞時間として計算された待機時間をレポートすることと
を含む。
【0010】
一形式では、1つまたは複数の候補関数は、候補関数の並べられたセットであり、1つまたは複数の候補関数を適合することは、並べられたセット内の順序に従って各候補関数を順次適合することを含み、適合された候補関数の適合度が所定の閾値度を超過した場合、順次適合が終結され、候補関数が、最良の適合関数として選択される。
【0011】
一形式では、候補関数の並べられたセットは、ゴンペルツ関数、ロジスティック関数、およびリチャーズ関数を含む。
【0012】
一形式では、ゴンペルツ関数、ロジスティック関数、およびリチャーズ関数のそれぞれの適合が、所定の閾値度を超過する適合度を生成できなかった場合、ブラックマンウィンドウ関数を時系列データに適用し、適合プロセスを繰り返し、ゴンペルツ関数、ロジスティック関数、およびリチャーズ関数のそれぞれに対する繰り返しの適合が、所定の閾値度を超過する適合度を生成できなかった場合、時系列データセットを平坦として分類し、遅滞時間を終了時点にセットする。
【0013】
一形式では、適合時間ウィンドウにわたって1つまたは複数の候補関数を適合する前に、時系列データセットの最大高さを決定し、最大高さが閾値最大高さより低い場合、時系列データセットを平坦として分類し、遅滞時間を終了時点にセットし、適合プロセスを終結させる。
【0014】
一形式では、代替最良時点をサーチすることは、
最良時点が最小時点より小さいかどうかを決定することを含み、最良時点が最小時点より小さい場合、最良時点の適合度の閾値差以内の適合度を有する最小時点の、またはその後の、最も近い代替時点に基づいて、代替時点が選択され、
最良時点が最小時点より大きい場合、最小時点より大きいかそれに等しく、最小時点に最も近い代替時点であり、最良時点の適合度の閾値差以内の適合度を有する、代替時点に基づいて、代替時点が選択される。
【0015】
一形式では、最小時点が5時間であり、適合度が決定係数(R)であり、閾値差が0.03である。
【0016】
一形式では、適合度が決定係数(R)であり、所定の閾値度が0.6である。
【0017】
一形式では、終了時点が48時間である。
【0018】
一形式では、最小時点が5時間である。
【0019】
一形式では、時系列データが平坦として分類された場合、変動基準を推定し、変動基準が変動閾値を超過した場合、時系列データセットを拒絶し、時系列データセットを異常と分類する。
【0020】
一形式では、方法は、関連付けられた対照曲線に基づいて時系列データセットを正規化することをさらに含む。さらなる形式では、宿主増殖曲線は、宿主だけの時系列データセットであり、時系列データセットを正規化することは、時系列データセットから宿主だけの時系列データセットを減算することを含み、時系列データセットおよび宿主だけの時系列データセットは、同じマルチウェルプレート上の別個のウェルから取得される。さらなる形式では、マルチウェルプレートは、1つまたは複数の培地対照ウェルをさらに備え、コンピュータ実行方法は、少なくとも、異常な培地対照ウェルまたは異常な宿主細胞ウェルを識別し、任意の識別された異常な培地対照ウェルまたは異常な宿主細胞ウェルに関連付けられた時系列データセットを除外することを含んだ、品質保証を実施することをさらに含む。
【0021】
一形式では、時系列データセットは、複数の宿主-ファージの組合せ、陽性対照ウェルのセット、培地対照ウェルのセット、細胞対照ウェルのセット、希釈宿主細胞ウェルの第1のセット、および希釈宿主細胞ウェルの第2のセットを含んだ、マルチウェルプレートから取得され、コンピュータ実行方法が、マルチウェルプレート上の宿主-ファージの組合せ毎に実施され、レポートが、マルチウェルプレート上の宿主-ファージの組合せ毎に生成される。
【0022】
一形式では、少なくとも最大高さ、傾き、遅滞時間、および曲線下面積、ならびに適合度を含めた増殖曲線概要パラメータは、決定係数(R)、誤差項、剰余項、または剰余の要約統計量のうちの1つまたは複数を含む。
【0023】
一形式では、方法は、追加のデータポイントを含むアップデートされた宿主反応データセットを受け取り、正規化取得およびレポートステップを繰り返すことをさらに含み、レポートすることが、ファージが有効である確率の推定を含む。
【0024】
一形式では、方法は、分類予想値を決定することをさらに含み、ファージが有効である確率の推定をレポートすることは、分類予想値をレポートすることをさらに含み、分類予想値を決定することは、複数の平坦宿主ファージ反応データセットおよび複数の非平坦宿主ファージ反応データセットで訓練されたランダムフォレストベース分類器を使用することと、複数の時点の分類器の正確度を推定することと、現在時点の分類予想値をレポートすることとを含む。
【0025】
上記の方法は、コンピューティング装置で上記の方法のいずれかを実行するための命令を有する非一時的コンピュータプログラム製品で実行されてもよい。上記の方法はまた、少なくとも1つのメモリと、上記の方法を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサとを備える、コンピューティング装置で実行されてもよい。
【0026】
第2の態様によれば、宿主ファージ反応データを分析するためのコンピュータ実行可能命令を有する非一時的コンピュータプログラム製品が提供され、命令は、
宿主ファージ反応データセットを受け取ることであって、データセットが、ファージの存在下で宿主細菌が増殖する宿主-ファージの組合せについての時系列データセットを含み、関連付けられた時系列データセット内の各データポイントが、特定の時間におけるファージの存在下での宿主細菌の増殖を示すパラメータの測定値を含むことと、
関連付けられた対照曲線に基づいて時系列データセットを正規化することと、
遅滞時間の推定を取得することであって、
初期時点から終了時点までの時間ウィンドウ内の複数の時点にわたって、初期時点から現在時点までの適合時間ウィンドウにわたる1つまたは複数の候補関数を適合することであって、適合することは、少なくとも遅滞時間および適合度パラメータを含む増殖曲線概要パラメータのセットを推定すること、
適合度パラメータに基づいて1つまたは複数の適合された候補関数から現在時点に最良の適合関数を選択することであって、1つまたは複数の候補関数がそれぞれ、異なる関数形式を含み、そのうちの少なくとも1つが、シグモイド関数であり、適合度推定がどれも閾値適合度を超えない場合、時系列データセットを平坦として分類し、遅滞時間を終了時点にセットすること、
複数の時点における適合度値に基づいて最良時点を複数の時点から選択すること、
最良時間適合より最小時点に時間が近く最小時点より大きい代替最良時点をサーチし、代替時点の適合度が、最良時点の適合度の閾値量以内である場合、最良時点を代替最良時点にアップデートすること、ならびに
最良時点の遅滞時間を推定することであって、適合度が閾値適合度を超過した場合、遅滞時間が増殖曲線概要パラメータから取得され、そうでなければ、時系列データセットを平坦として分類し、遅滞時間を終了時点にセットすること
を含む、遅滞時間の推定を取得することと、
少なくとも遅滞時間、または対照のための遅滞時間が減算された推定遅滞時間として計算された待機時間をレポートすることと
を行うようにコンピュータによって実行可能である。
【0027】
第3の態様によれば、コンピューティング装置が提供され、コンピューティング装置は、
少なくとも1つのメモリと、
少なくとも1つのプロセッサとを備え、メモリは、
宿主ファージ反応データセットを受け取ることであって、データセットが、ファージの存在下で宿主細菌が増殖する宿主-ファージの組合せについての時系列データセットを含み、関連付けられた時系列データセット内の各データポイントが、特定の時間におけるファージの存在下での宿主細菌の増殖を示すパラメータの測定値を含むことと
関連付けられた対照曲線に基づいて時系列データセットを正規化することと、
遅滞時間の推定を取得することであって、
初期時点から終了時点までの時間ウィンドウ内の複数の時点にわたって、初期時点から現在時点までの適合時間ウィンドウにわたる1つまたは複数の候補関数を適合することであって、適合することは、少なくとも遅滞時間および適合度パラメータを含む増殖曲線概要パラメータのセットを推定すること、
適合度パラメータに基づいて1つまたは複数の適合された候補関数から現在時点に最良の適合関数を選択することであって、1つまたは複数の候補関数がそれぞれ、異なる関数形式を含み、そのうちの少なくとも1つが、シグモイド関数であり、適合度推定がどれも閾値適合度を超えない場合、時系列データセットを平坦として分類し、遅滞時間を終了時点にセットすること、
複数の時点における適合度値に基づいて最良時点を複数の時点から選択すること、
最良時間適合より最小時点に時間が近く最小時点より大きい代替最良時点をサーチし、代替時点の適合度が、最良時点の適合度の閾値量以内である場合、最良時点を代替最良時点にアップデートすること、
最良時点の遅滞時間を推定することであって、適合度が閾値適合度を超過した場合、遅滞時間が増殖曲線概要パラメータから取得され、そうでなければ、時系列データセットを平坦として分類し、遅滞時間を終了時点にセットすること
を含む、遅滞時間の推定を取得することと、
少なくとも遅滞時間、または対照のための遅滞時間が減算された推定遅滞時間として計算された待機時間をレポートすることと
を行うようにプロセッサを構成するための命令を有する。
【0028】
本開示の実施形態は、添付の図面を参照しながら論じられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1-1】図1Aは、実施形態による、宿主ファージ反応データを分析するための方法のフローチャートである。
【0030】
図1-2】図1Bは、実施形態による、宿主ファージ反応データの遅滞時間の推定を取得するためのモデル適合およびパラメータ推定ステップのフローチャートである。
【0031】
図1-3】図1Cは、実施形態による、図1Bに示された最良時点を見つけるステップにおける代替最良時点をサーチするためのステップのフローチャートである。
【0032】
図2-1】図2Aは、実施形態による、複数の宿主ファージ反応データセットを生成するために使用されるマルチウェルプレートのレイアウトの概略プロットである。
【0033】
図2Bは、実施形態による、図2Aのマルチウェルプレート内の各ウェルに対応する宿主ファージ反応データセットの概略プロットである。
【0034】
図2-2】図2Cは、実施形態による、図2Bに示された、正規化された宿主ファージ反応データセットの概略プロットである。
【0035】
図3図3は、実施形態による、コンピューティング装置の概略図である。
【0036】
図4-1】図4Aは、実施形態による、平坦な(すなわち、増殖のない)宿主ファージ反応データセットのプロットである。
【0037】
図4Bは、実施形態による、通常の(すなわち、非平坦なS字形状の)宿主ファージ反応データセットのプロットである。
【0038】
図4-2】図4Cは、実施形態による、0から48時間までの異なる時点における同じ宿主ファージ反応データセットの一連のプロットである。
図4-3】同上。
図4-4】同上。
【0039】
図5-1】図5Aは、3つのシグモイド関数の関数形(等式)を示す。
【0040】
図5Bは、実施形態による、いくつかのシグモイド関数のプロットである。
【0041】
図5-2】図5Cは、実施形態による、いくつかの増殖曲線概要パラメータを示すプロットである。
【0042】
図5-3】図5Dは、実施形態による、ブラックマンウィンドウのプロットである。
【0043】
図5Eは、実施形態による、ブラックマンウィンドウのフーリエ変換のプロットである。
【0044】
図6図6は、実施形態による、各適合のR値を示す0から48時間までの異なる時点における同じ宿主ファージ反応データセットの一連のプロットである。
【0045】
図7-1】図7Aは、実施形態による、異なる適合ウィンドウにわたる同じ宿主ファージ反応データセットの異なる適合を示す一連のプロットである。
【0046】
図7-2】図7Bは、実施形態による、T<5のときの最良時点を見つけるための異なる適合ウィンドウにわたる同じ宿主ファージ反応データセットの異なる適合を示す一連のプロットである。
図7-3】同上。
【0047】
図8-1】図8Aは、実施形態による、短い遅滞時間、中間の遅滞時間、および大きい遅滞時間を示す宿主ファージ反応データセットの一連のプロットである。
【0048】
図8-2】図8Bは、実施形態による、複数のファージおよび同じ宿主についての宿主ファージ反応データセットの推定遅滞時間から計算された待機時間の色分けされた行列プロットである。
【0049】
図8-3】図8Cは、実施形態による、複数のファージおよび複数の宿主についての宿主ファージ反応データセットの推定遅滞時間から計算された待機時間の色分けされた行列プロットである。
【0050】
図9-1】図9Aは、本明細書に記載の方法の実施形態によって推定された待機時間と、人間の推定との間の推定待機時間差のヒストグラムである。
【0051】
図9Bは、本明細書に記載の方法の実施形態によって推定された待機時間と、図9Aを生成するために使用された人間の推定との間の推定待機時間差のテーブルである。
【0052】
図9-2】図9Cは、39個の異なるマルチウェルプレートにわたる695個のデータセットに対する、本明細書に記載の方法の実施形態によって推定された待機時間と、人間の推定との間の推定待機時間差のヒストグラムである。
【0053】
図10-1】図10は、実施形態による、機械学習モデルが宿主ファージ時系列データセットの有効性を正しく分類するのにかかる時間を示すプロットのセットである。
図10-2】同上。
図10-3】同上。
図10-4】同上。
図10-5】同上。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下の説明では、同様の参照文字は、図の全体を通して同様のまたは対応する部分を表す。
【0055】
実施形態の説明
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数形の言及を含む。例えば、用語「細胞」は、その混合を含む複数の細胞を含む。用語「核酸分子」は、複数の核酸分子を含む。「ファージ製剤(phage formulation)」は、少なくとも1つのファージ製剤、および、複数のファージ製剤、すなわち2つ以上のファージ製剤を意味することが可能である。当業者によって理解されているように、用語「ファージ」は、単一のファージまたは2つ以上のファージを指すために使用可能である。
【0056】
本発明は、本発明の構成要素、および本明細書に記載の他の成分または要素「を備える(comprise)」(オープンエンド)または「から本質的になる(consist essentially of)」ことが可能である。本明細書で使用されるように、「備える(comprising)」は、列挙された要素、またはその構造的もしくは機能的同等物、さらに、列挙されていない任意の他の1つまたは複数の要素を意味する。用語「有する(having)」および「含む(including)」も、別途文脈が示唆しない限り、オープンエンドの意味にとられるべきである。本明細書で使用されるように、「から本質的になる」は、特許請求の範囲で列挙されたものに加えて、しかし、特許請求された発明の基本的かつ斬新な特性を追加の成分が実質的に変えない場合のみ、成分を本発明が含み得ることを意味する。
【0057】
本明細書で使用されるように、「対象」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはである。哺乳動物は、ネズミ、サル、ヒト、家畜、スポーツアニマル、およびペットを含むがこれらに限定されない。他の好ましい実施形態では、「対象」は、齧歯類(例えば、テンジクネズミ、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ(例えば、マウス)、イヌ(例えば、犬)、ネコ(例えば、猫)、ウマ(例えば、馬)、霊長類、サル(例えば、猿もしくは類人猿)、猿(例えば、マーモセット、ヒヒ)、または類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)である。他の実施形態では、ヒト以外の哺乳動物、特に、ヒトにおける治療の有効性を示すためのモデルとして従来使用される哺乳動物(例えば、ネズミ、霊長類、ブタ、イヌ、またはウサギ動物)が用いられることもある。好ましくは、「対象」は、細菌感染症、特に、多剤耐性細菌によって引き起こされる感染症を患うことがある任意の生物、例えば、任意の動物またはヒトを包含する。
【0058】
本明細書で理解されるように、「その必要がある対象(subject in need thereof)」は、多剤耐性細菌感染症、病原菌感染症、または複数菌感染症を含むがこれらに限定されない、細菌感染症を患う任意のヒトまたは動物を含む。実際は、本明細書では、方法は、特定の病原性種を標的にするために使用され得ることが意図されるが、方法はまた、多剤耐性細菌性病原体を含むがこれらに限定されない、本質的に全てのヒトおよび/または動物細菌性病原体に対して使用可能である。したがって、特定の実施形態では、本発明の方法を用いることによって、当業者は、多剤耐性(MDR)細菌性病原体を含む、多くの異なる臨床的に関連した細菌性病原体に対する個別のファージ製剤をデザインおよび作成することができる。
【0059】
本明細書で理解されるように、医薬組成物の「有効量」は、対象の治療上有益な反応を引き出して、例えば対象の細菌性病原体を根絶するのに適切な、組成物の量を指す。このような反応は、細菌感染症に関連付けられた1つまたは複数の病理学的状態を、例えば、阻止、緩和、処置、阻害、および/または縮小することを含んでもよい。
【0060】
用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、当業者によって決定されるような特定の値の許容範囲内であることを意味し、許容範囲は、例えば測定システムの限界といった、値がどのように測定または決定されるかに部分的に依存する。例えば、「約」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、およびより好ましくはさらに1%までの範囲を意味することが可能である。代替として、特に、生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、値の1桁以内、好ましくは5倍以内、およびより好ましくは2倍以内を意味することが可能である。別途指定のない限り、用語「約」は、±1~20%、好ましくは±1~10%、およびより好ましくは±1~5%など、特定の値の許容誤差範囲内であることを意味する。さらなる実施形態では、「約」は、+/-5%を意味するものと理解されるべきである。
【0061】
値の範囲が示された場合、この範囲の上限および下限とこの定められた範囲内の任意の他の定められた値または介在値との間の各介在値は、本発明の中に包含されることが理解されている。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さい範囲に含まれ、本発明の中にさらに包含され、定められた範囲内の何らかの具体的に除外された制限を受ける。定められた範囲が限界の一方または両方を含む場合、これらを含む限界の両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0062】
本明細書で列挙される全ての範囲は終点を含み、2つの値の「間の」範囲を列挙するものを含む。「約」、「一般に」、「実質的に」、「およそ」、および同様のものなどの用語は、絶対的ではなく、先行技術では読まないような用語または値を修正する意味にとられるべきである。このような用語は、これらの用語が当業者によって理解されるときに修正する状況および用語によって定義されることになる。これは、少なくとも、値を測定するために使用される所与の技法の、予期される実験誤差、技法誤差、および器械誤差の程度を含む。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、2つもしくはこれより多くの項目のリスト内で使用されるとき、挙げられた特性のうちのいずれか1つが存在する可能性があること、または挙げられた特性のうちの2つもしくはこれより多くのいずれかの組合せが存在する可能性があることを意味する。例えば、組成物が特性A、B、および/またはCを含むものと説明される場合、組成物は、A特徴単独で、B単独で、C単独で、AおよびBを組合せて、AおよびCを組合せて、BおよびCを組合せて、またはA、B、およびCを組合せて含む可能性がある。
【0064】
用語「ファージ感受性がある」または「感受性プロフィール」は、ファージによるおよび/または増殖阻害での感染および/または殺菌に感受性がある細菌の菌株を意味する。すなわち、ファージは、細菌の菌株の増殖の阻害に有効であるか効果的である。
【0065】
用語「ファージ感受性がない」または「ファージ耐性がある」または「ファージ耐性」または「耐性プロフィール」は、ファージおよび/もしくは増殖阻害による感染および/または殺菌に感受性がない、および好ましくは非常に感受性がない細菌の菌株を意味するものと理解されている。すなわち、ファージは、細菌の菌株の増殖の阻害に有効でないか効果的でない。
【0066】
本明細書で使用されるような、「治療ファージ製剤」、「治療に効果的なファージ製剤」、「ファージ製剤」、または同様の用語は、その必要がある対象に投与されるときに細菌感染症の臨床的に有益な処置を提供可能な1つまたは複数のファージを含む組成物を指すものと理解されている。
【0067】
本明細書で使用されるように、用語「組成物」は、1つまたは複数の精製されたファージを含む医薬組成物を含むがこれらに限定されない、本明細書で開示されるような「ファージ製剤」を包含する。「医薬組成物」は、当業者にはなじみのあるものであり、典型的には、様々な従来の薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、および/または希釈剤から選択された非活性成分と組合せて製剤化された医薬品有効成分を含む。用語「薬学的に許容される」は、細胞、細胞培養、組織、もしくは生物など、生体系に影響を及ぼさない非有毒物質(または、少なくとも典型的に使用される量では非有毒)を指すために使用される。薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、および/または希釈剤の例は、当業者にはなじみのあるものであり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (latest edition), Mack Publishing Company, Easton, Pa.で見つけることができる。例えば、薬学的に許容される賦形剤は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質、結合剤、安定剤、防腐剤、充填剤、吸着剤、消毒剤、洗浄剤、糖アルコール、ゲルまたは粘性増強添加剤、香味剤、および色素を含むがこれらに限定されない。薬学的に許容される担体は、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸重合体、アミノ酸コポリマー、トレハロース、脂質集合体(油滴またはリポソームなど)、および不活性ウイルス粒子など、高分子を含む。薬学的に許容される希釈剤は、水、食塩水、およびグリセロールを含むがこれらに限定されない。
【0068】
本明細書で使用されるように、用語「推定すること」は、多種多様な行為を包含する。例えば、「推定すること」は、計算すること、コンピュータ計算すること、処理すること、決定すること、導出すること、調査すること、探索すること(例えば、テーブル、データベース、または別のデータ構造を探索すること)、確かめること、および同様のものを含んでもよい。また、「推定すること」は、受け取ること(例えば、情報を受け取ること)、アクセスすること(例えば、メモリ内のデータにアクセスすること)、および同様のものを含んでもよい。また、「推定すること」は、解決すること、選択すること(selecting)、選択すること(choosing)、確立すること、および同様のものを含んでもよい。
【0069】
さらに、本明細書で使用されるように、テスト細菌は、(例えば、浮遊製剤のように)液体製剤内でウェルに「遊離して」提供されてもよく、または、菌膜として提供されてもよい。菌膜が提供された場合、方法は、単一のファージでテスト可能であり、または、出発物質を単に変更することによって、ファージ/ファージシナジー、ファージ/抗生物質シナジー、およびことによると、ファージ/ファージ/抗生物質シナジーをテストするために使用されることも可能である。好ましい態様では、ファージによる細菌の溶解は、(a)(浮遊細胞としてもしくは菌膜内のいずれかで増殖される)増殖阻害、(b)光学密度、(c)代謝出力、(d)光度測定(例えば、蛍光、吸収、および透過アッセイ)、ならびに/または(e)プラーク形成などであるがこれらに限定されない当技術分野で知られたアッセイを使用して測定可能である。ファージのシナジーを含むファージ活性は、ファージ-ファージシナジーであってもファージ-抗生物質シナジーであっても、当技術分野で知られた、または米国出願第63/153,039号、第63/208,173号、第63/246,601号、第63/291,955号、第63/310,875号、および第63/288,793号に記述された方法を使用して、測定可能であり、これらのそれぞれが、本明細書において全体として参照により組み込まれる。
【0070】
例えば、細菌の菌膜は、例えば、高分子薄膜もしくは平面、または、高分子材料もしくはガラスなどの他の不活性物質を含む粒子もしくはビーズによって提供されるような、固体表面がある場合に適切な細菌(患者サンプルから取得された細菌の菌株でもよい)を培養することによってin vitroで調製されてもよいことを当業者は理解するであろう。一部の実施形態では、テスト細菌は、直径が約1から5mmのガラスビーズ、および好ましくは約4mmのガラスビーズ(これは、例えば、従来の96個のウェルのマルチウェルプレートに適切であり、テスト毎に1つの菌膜コートビーズで十分である場合がある)などの、ビーズの表面に取り付けられた菌膜の形でテストウェルに提供されるのが好ましい。そうでなければ、in vitro培養を通じて作られた菌膜は、例えば、(必要であれば)表面から除去され、当業者には明らかであるはずの任意の方法(例えば、力強い攪拌および/または顕微解剖)によって一貫した大きさのピース(例えば、2mm×2mmの実質的に平面のピース)に加工されてもよい。
【0071】
宿主ファージ反応データセットを分析するためのコンピュータ実行方法およびシステムの実施形態がここから説明される。
【0072】
図1Aは、実施形態による、宿主ファージ反応データを分析するためのコンピュータ実行方法100のフローチャートである。宿主ファージ反応データセットは、コンピューティング装置101によって受け取られるかアクセスされる。これは、データセットを生成した装置(例えば、OmniLog(商標)もしくはBiotec(商標))、または、装置に関連付けられたコンピューティング装置(例えば、制御コンピュータ)によって送られてもよく、あるいは、データは、ストレージデバイスからアクセスされてもよい。データセットは、ファージの存在下で宿主細菌が増殖する宿主-ファージの組合せについての時系列データセットを含む。関連付けられた時系列データセット内の各データポイントは、特定の時間におけるファージの存在下での宿主細菌の増殖を示すパラメータの測定値を含む。
【0073】
データは、OmniLog(商標)(または、Biotec(商標)などの類似の宿主反応)装置によってエクスポートされたCSV入力ファイルなどの電子フォーマットで提供されてもよい。図2Aは、実施形態による、複数の宿主ファージ反応データセットを生成するために使用されるマルチウェルプレート(例えば、96個のウェル)のレイアウト200の概略プロットである。図2Bは、実施形態による、図2Aのマルチウェルプレート内の各ウェルに対応する宿主ファージ反応データセットの概略プロットである。これは、2つの良いファージ212および低性能のファージ214を示している。これらは、アッセイウェル210の7×8のグリッド(行AからHおよび列1~12)に配置されており、対照ウェル220のセットは、陽性対照ウェル221、培地対照ウェル222、細胞対照ウェル223、および2つの細胞希釈溶液224、225を備える。列9の培地対照ウェル222は、可能な汚染の検出を可能にするために増殖培地だけを含んでいる。列10の細胞対照ウェルは、ファージがない場合に培地で増殖した細菌を有し、汚染または他の増殖問題を検出するために使用可能である。場合によっては、列毎にファージが異なる1つの行の各ウェルの中で同じ宿主細菌が増殖している。場合によっては、(培地対照とは無関係な)プレートの各ウェル内で同じ宿主細菌が増殖してもよい。場合によっては、ウェル内に細菌とファージとの混合およびマッチがあってもよい(例えば、4つの異なる細菌および9つの異なるファージ)。ウェル毎のファージ情報を含む(csvフォーマットの)マスタファージプレートファイルがさらに提供されてもよい。このファイルは、最終結果の注釈のために使用される。オペレータの名前、プロジェクトID、マスタファージプレートID、および実験日など、実験実行に関する他のメタデータがさらに提供されてもよい。
【0074】
データが受け取られると、正規化および品質制御/品質保証が実施されてもよい102。例えば、図2Bに示されているように、列9の培地対照ウェル222は、経時的に一般線形増加を有する。したがって、1つの実施形態では、関連付けられた対照曲線に基づいて各時系列データセットが正規化される正規化ステップ102が実施される。例えば、1つの行の列1~7の各データセットに対して、同じ行の列9の培地対照曲線221が減算される。図2Cは、図2Bに示された正規化された宿主ファージ反応データセットの概略プロットである。
【0075】
異常な培地対照ウェル222であるか、異常な宿主細胞のみのウェル223であるかを識別するために、他の品質保証チェックがさらに行われてもよい。いずれかの識別された異常な培地対照ウェルまたは異常な細菌の宿主細胞のみのウェルに関連付けられたデータセットは除外されてもよい。例えば、細胞対照ウェル(列10)内の宿主増殖曲線が平坦であるか、非S字状などの普通でない形状を有するか、汚染、または細菌宿主に関する他の増殖問題を示し得る普通でない遅滞時間を伴う場合、行全体が捨てられてもよい。例えば、E.coliは、典型的には、3~5時間の範囲の遅滞時間を有し、したがって、この範囲を超えた遅滞時間は、細菌に関する問題を示すことがある。様々なルールベースまたは閾値ベースの品質保証手順が使用されてもよい。さらに、品質保証を実施するために機械学習方法がさらに使用されてもよい。これは、ラベル付きの対照ウェル220で訓練され、異常な対照ウェルを識別するために使用されてもよい。
【0076】
任意の正規化および品質保証が実施されると、曲線を特徴付ける他のモデルパラメータと共に、例えば、データセット毎の遅滞時間の推定を取得するために103、自動化されたモデル適合およびパラメータ推定が次いで実施されてもよい。典型的な増殖曲線522が図5Cに示されており、遅滞期523、増殖期524、および静止期525から終了時点521までを有する、SまたはS字形のプロフィールを有する。遅滞期523は、遅滞時間526によって特徴付けられることが可能であり、遅滞時間526の間に、細菌の最低限観察可能な増殖がある-すなわち、曲線は実質的に平坦である。増殖期524の間、細菌は、増殖が安定し始めるまで、適度に一定の増殖率で典型的に増殖し、曲線は平坦になって静止(または安定)期525に入り、ここで曲線は、最大高さ529に漸近的に近づく。増殖期528は、隣接した期間の遷移時に端部が転がり落ちる、およそ線形の経路に沿って進むように特徴付けられることが可能であり、線形増殖は、一定の傾き527によって特徴付けられる。曲線528の1次導関数は、期間遷移を正確に描写するために使用されることが可能である。遅滞時間は、開始時間から増殖曲線が増加の徴候を示し始める時点までの時間間隔であると定義可能である。遅滞時間は、統計モデルで定義されてもよく、または、一部の閾値もしくは条件が満足されるか満たされる時点としてセットされてもよい。例えば、遅滞時間は、1%、2%、5%、または10%など、観察された値が最大値のいくつかの百分率に等しい最初の時点でもよい。代替として、遅滞時間は、第1の値が基準変動を超過した(例えば、実験開始以来、2、3、または5個の標準偏差が時間ウィンドウにわたって計算された)など、大偏差に基づいて定義されてもよい。別の実施形態では、遅滞時間は、水平ベースライン開始レベルと、(対数スケール上の)増殖曲線の対数期中の最大増殖率への接線との間の切片でもよい。切片の点を推定するために、例えば、モデルを使用して最良適合ベースライン値および増殖率を推定することによって、遅滞時間を推定するために、ANOVAなどの統計モデルがさらに使用されてもよい。遅滞時間は、対照のための遅滞時間が減算された遅滞時間である待機時間を計算するために使用されてもよく、したがって、標準遅滞時間からの偏差の基準を表す。
【0077】
ファージが宿主細菌の増殖を阻害する場合、増殖曲線は、終了時間に等しい遅滞時間254を有するように特徴付けられることが可能な、実質的に平坦なプロフィールを有することになる(すなわち、S字ではない)。これは、図4Aに示されており、図4Aは、実施形態による、平坦宿主ファージ反応データセット402のプロットである。比較として、図4Bは、実施形態による、通常の(非平坦な)宿主ファージ反応データセット412のプロットである。
【0078】
したがって、予備のステップ109は、時系列データセットの最大高さ529を決定することと、最大高さが閾値最大高さhTHより低い場合、時系列データセットを平坦として分類することと、遅滞時間524を終了時点521にセットすることと、適合プロセスを終結させること(または迂回すること)とを含んでもよい。閾値最大高さhTHは、OmniLog(商標)または類似のプラットフォーム(例えば、Biotec(商標))を使用して取得された履歴増殖曲線の分析から決定されてもよい。閾値hTHは、平坦な増殖曲線を識別するために使用され、対応する細胞対照に注目することによってアルゴリズムによって自動で決定される。hTHは、細胞対照の最大密度の30%と定義される。アッセイウェルが、その細胞対照の30%未満のその最大密度に達した場合、アルゴリズムによって平坦曲線としてマークされる。閾値は、宿主ファージ増殖曲線を生成するために使用される特定の機器に基づいて変動してもよい。
【0079】
モデル適合は、初期時点から終了時点529までの時間ウィンドウ内の複数の時点に対して実施される104。例えば、これは、開始時間(0h)から終了時間(24、36、48時間等)まででもよい。終了時点は、宿主細菌の増殖が安定するのに十分な時点に任意にセットされてもよく、データセットの終わりの前にセットされてもよい。例えば、実験は、50時間実行されてもよいが、終了時点は、48時間に(または24もしくは36時間などこれより早く)セットされてもよい。複数の時点は、周期的間隔(例えば、15分毎)で、またはデータセット全体に一様に、データセット内の全ての時点でもよい。しかし、適合が実施される時点の間の間隔は、一定である必要はない(例えば、データ破損により一部の時点が失われてもよく、または装置は、正確に規則的な間隔でウェルをサンプリングしなくてもよい)。例えば、完全にロードされたOmniLog(商標)マシンは、全てのプレート内の全てのウェルをサンプリングするのに15分くらいかかり、したがって、各ウェルのデータは、およそ15分間隔で収集されてもよい。
【0080】
時点毎に、適合時間ウィンドウにわたって1つまたは複数の候補関数を適合させた105。適合時間ウィンドウは、初期時点(すなわち、アッセイの開始時間)から現在時点まででもよい。適合することは、少なくとも遅滞時間および適合度パラメータを含む増殖曲線概要パラメータのセット(適合されたモデルパラメータ)を推定するために、候補関数のモデルを適合させる。図5Cに示されているように、モデルは、最大高さ529、傾き527、遅滞時間526、および曲線下面積などのパラメータを適合させてもよい。適合度パラメータは、候補関数(または候補関数のモデル)が、観察データセットにどれだけマッチするかを測定し、典型的には、観察された値とモデルからの予想値との間の差を概説するパラメータである。一部の実施形態では、適合度は、決定係数(R)であるが、誤差項もしくは剰余項に基づくパラメータ、または剰余の要約統計量など、他の適合度が使用されてもよい。
【0081】
このプロセスは、図4Cにさらに示されており、図4Cは、0から48時間までの異なる時点(終了時間529)における同じ宿主ファージ反応データセットの一連のプロットである。各プロットは、0から現在時間までのデータポイントを示し、垂直断続線は、(プロットの表題にリスト化された)現在時間を表し、赤一色の線は、開始時間から現在時間までのモデル適合を表す。
【0082】
10時間後のデータには、適合された線が平坦である間にピークのプロフィールがあることが、48時間のプロットで見ることができる。しばしば、宿主ファージ増殖曲線において、静止期525は、培地および染料関連の効果により、特に平坦というわけではなく、静止期中、観察データは、常に増殖の真の基準というわけではない。これは、プロット毎または実験毎にかなりの変動を生み出し、自動化されたモデル適合を挑戦的なものにする。
【0083】
宿主ファージ増殖曲線に固有の変動に対処するために、モデル適合方法の実施形態は、したがって、時点毎に1つまたは複数の候補関数を適合させ、適合度パラメータに基づいて1つまたは複数の適合された候補関数から現在時点に最良の適合関数を選択する105。候補関数のそれぞれは異なる関数形式を有し、そのうちの少なくとも1つがシグモイド関数である(すなわち、S型の形を有する)。シグモイド関数は、ゴンペルツ関数、ロジスティック関数、またはリチャーズ関数でもよく、これらの関数形式500が、図5Aに示されている。関数形式が異なるいくつかのシグモイド関数の比較可能なプロット510が図5Bに示されている。3次または5次多項式フィット、(一般化された線形モデルを含む)線形モデル、非線形回帰モデルなどの他の候補関数が、さらに使用されてもよい。候補関数は、異なる曲線形状を捕らえるための異なる関数形式、ならびに、様々な実験効果(例えば、染料および培地効果)による観察された変動を捕らえるための純粋な増殖曲線からの偏差を有する。適合度推定がどれも閾値適合度を超えない場合(例えば、R<0.6)、時系列データセットを平坦として分類し、遅滞時間を終了時点529にセットし、このデータセットに対するモデル適合をやめる-図2A参照。
【0084】
図2Aは、1つまたは複数の候補関数を適合することが、候補関数の並べられたセット内の順序に従って各候補関数を順次適合することを含む、実施形態のフローチャートを示している。各モデルを適合させた後、適合された候補関数の適合度は、例えば、適合度が所定の閾値度(例えばR>0.6)を超過したかどうかをテストすることによって、モデルが良い適合であるかどうかを決定するために評価され、モデルが、良い適合であると考えられる場合、順次適合は終結され、候補関数は、この時点に最良の適合関数として選択され、モデル増殖曲線パラメータRおよび他のデータは、CSV(コンマ区切り値)ファイルに保存することなどによって、格納される。
【0085】
本実施形態では、順番は、ゴンペルツ関数、その後にロジスティック関数、その後にリチャーズ関数である。これらの関数のいずれも、良い適合を生成しない場合、ブラックマンウィンドウ関数を時系列データに適用し、適合プロセスを繰り返す。図5Dは、ブラックマンウィンドウのプロット530を示しており、このプロットは、ピークポイント関数に最大値を有し、いくつかの範囲の外側にゼロがあり、したがって、時系列データに適用されると、範囲外のデータは、曲線適合における遠い時点の効果を制限するために強制的にゼロにされる。図5Eは、サイドローブの抑止を示す、実施形態によるブラックマンウィンドウのフーリエ変換のプロット540である。一般化されたコサインウィンドウ、ガウス、サイン、Bスプラインなど、他のウィンドウ関数が使用されてもよい。ゴンペルツ、ロジスティック、およびリチャーズ関数のそれぞれに対する繰り返しの適合が、所定の閾値度を超過する適合度を生成できなかった場合、時系列データセットを平坦として分類し、遅滞時間526を終了時点540にセットする。これは、図2Aにおいてブラックマンが既に使用された場合のチェックによって示されている。
【0086】
などの適合度基準と共にデータセット内の時点のそれぞれ(または少なくともデータセット内の複数の時点)に対する曲線適合を取得すると、データは、図6に示されているような、CSVファイル604などのファイルに格納されるか書き込まれてもよく、図6は、各適合のR値を示す0から48時間までの異なる時点における同じ宿主ファージ反応データセットの一連のプロットを示している。
【0087】
次いで、複数の時点における適合度値に基づいて最良時点を選択する106。最良時点のサーチについてのフローチャートが図1Cにさらに示されており、図7Aから図7Cにさらに示されており、最良時点のサーチが図1Cにさらに示されており、図7Aから図7Cにさらに示されている。格納された結果(例えば、メモリ内のCSVファイルまたはデータ構造)から最大R値を有する時点を最初にサーチすることによって開始し、この時点Tを最良時点(または少なくとも初期の最良時点)として選択する。確実に最良時間がしっかり選択されるようにするために、最良時間適合より最小時点Tminに時間が近く、最小時点Tminより大きい、代替最良時点の追加のサーチを実施してもよい。このような代替時点が見つかった場合、最良時点を代替最良時点にアップデートする。これは、代替時点の適合度が最良時点の適合度の閾値量以内であることを要求する選択尺度に基づいてもよい。このサーチは、増殖期の周辺の最良適合に向けてサーチを効果的に偏らせようとする。
【0088】
1つの実施形態では、最小時点Tminは、5時間にセットされる。ほとんどの細菌は、ファージがない場合、3時間から5時間の遅滞時間を有し、したがって、最小時間は、遅滞期の終わりのあたりまたはその後の時間を表す。したがって、一部の実施形態では、Tminは、3、3.5、4、4.5、5、5.5、または6時間など、3から6時間までの時間にセットされ、使用される特定の値は、関連した宿主細菌または複数の細菌についての履歴増殖曲線の分析に基づき、いくつかの平均または中央値が選択されてもよい。以下の例示的実施形態では、最小時点Tminは、5時間にセットされる。
【0089】
図7Aに示されているように、非常に低い時点において(すなわち、<5H)、これらが、曲線が主として平坦な領域だったので、多くの適合モデルが、良い適合を表示することができる。例えば、図7Aに示されているように、最初の3つのプロットにおけるモデル(赤)は、適合する時間周期が、1時間702、2.5時間704、および3時間706であり、全て、実際の増殖データ(黒)との高い類似性を示し、したがって、これらのモデル全てが、この領域内で高いRスコアを生み出すことになる。例えば、3時間のケース706の場合、R=0.98である。それでも、これらの時点の選択は、使用された場合、偽陽性モデル適合を示すはずである。これを阻止するために、アルゴリズムは、時間適合周期が5時間を超えるモデルのサーチを強制する。プロット708は、5時間の時点のモデル適合を示しており、(赤の)モデルが、前の3つより良いデータへの適合であることがわかる。
【0090】
図1Cに示されているように、代替時点Tを選択するための選択尺度を定義することができる。これは、代替時点T≧最小時点(Tmin、例えば、5時間)であること、および、代替時点の適合度が、最良時点の適合度の閾値量以内、例えば、
【数1】
であること、および、最小時点または現在時点のいずれかに最も近い代替時点を選択すること、例えば、min(|T-Tmin|)またはmin(|T-T|)を使用することを含んでもよい。最小時点または現在時点のいずれかは、TおよびTminがサーチのための定数であり、両方がTより小さい、例えば、T<Tmin<Tなので、使用可能である。第1の条件は、確実に代替時点が所望の範囲内(すなわち、>5時間)であるようにし、第2の条件は、(所望の範囲内で)最良のRに近いRを有する全ての時点の選択を可能にする。これにより、より早い時点のいくらかの統計的性能をトレードオフすることができる。第3の条件は、複数の可能な代替時点を有する場合、最も早いもの(すなわち、5時間に最も近いもの)を選択することを定義する。このような代替時点を見つけた場合、現在時間の最良の時点を代替時点にアップデートし(T=T)、そうでなければ、現在の最良時点Tを保つ。したがって、増殖期により近い良い適合のサーチを強制する。したがって、1つの実施形態では、最小時点は、増殖期の典型的な(履歴上の)開始または中間点に基づいて選択される。
【0091】
それでも、最良時点が最小時点より大きい場合、最小時点より大きいかそれに等しく、最良時点の適合度の閾値差以内の適合度を有する最小時点に最も近い代替時点である代替時点に基づいて、代替時点が選択される。これは、モデル適合が静止期内の終わり近くの時間に焦点を合わせるのを(または、終わり近くの時間によって偏るのを)回避することになり、静止期では、曲線は平坦であり、増殖期におけるよい適合を犠牲にしてよく適合することがある。図1Cに示されているように、代替時点Tを選択するための選択尺度を定義することができる。これは、代替時点T>最小時点(例えば5時間)であること、代替時点の適合度が最良時点の適合度の閾値量以内、例えば
【数2】
であること、および、最小時点に最も近い代替時点、例えば、min(|T-Tmin|)を選択することを含んでもよい。このような代替時点を見つけた場合、現在時間の最良の時点を代替時点にアップデートし(T=T)、そうでなければ、現在の最良時点Tを保つ。
【0092】
これは、図7Bに示されており、図7Bは、テーブル714のモデル適合パラメータと共に、プロットA~Dにおける6.25、12.25、14.75、および19.5時間の適合時間ウィンドウに対する適合と共に、14時間モデル711の初期の最良適合時点のプロットを示している。このサーチは、6.25時間(プロットA)における代替時点Tを識別する。
【0093】
上記の実施形態では、最小時点が5時間であり、適合度が決定係数(R)であり、閾値差が0.03である。
【0094】
次いで、最良時点の遅滞時間を推定する107。さらに、適合度が閾値適合度を超過するかどうかを決定するために、テストが実施される。一形式では、適合度が決定係数(R)であり、所定の閾値度が0.6である(例えば、R>0.6)。この場合、遅滞時間は、増殖曲線概要パラメータから取得され、そうでなければ、時系列データセットを平坦として分類し、遅滞時間523を終了時点529にセットする。次いで、少なくとも遅滞時間、または対照のための遅滞時間が減算された推定遅滞時間として計算された待機時間をレポートする108。
【0095】
これは、図8Aにさらに示されており、図8Aは、実施形態による、短い遅滞時間(5h)、中間の遅滞時間(14h)、および大きい遅滞時間(48h)を示す、宿主ファージ反応データセットの一連のプロットである。待機時間は、対照ファージ遅滞時間から計算可能である(すなわち、待機時間=ファージ-対照遅滞時間である遅滞時間)。図8Bは、実施形態による、複数のファージおよび同じ宿主についての宿主ファージ反応データセットの推定遅滞時間から計算された待機時間の色分けされた行列プロットである。凡例812は、複数の時間ウィンドウのそれぞれのための色を定義している(<1時間(赤)、1~3時間(オレンジ色)、3~8時間(黄)、8~20時間(緑)、および>20時間(青))。細菌の増殖を阻害するファージ(すなわち、良いファージ)は、大きい待機時間(>20時間)を有し、効果のないファージ(すなわち、良くないファージ)は、短い待機時間(<1時間)を有する。図8Cは、実施形態による、複数のファージ(行)および複数の宿主(列)に関する宿主ファージ反応データセットの推定遅滞時間から計算された待機時間の色分けされた行列820の別のプロットであり、別の凡例822を使用している。このプロットでは、凡例822は、4時間ウィンドウ、つまり、<1時間(赤)、1~4時間(オレンジ色)、5~7時間(緑)、および>8時間(青)を含んでいる。レポート(ウェブサーバによって提供されてもよい)は、患者の処置のためのファージの選択を可能にするために結果をユーザにレポートするための、図8Bおよび図8Cに示されたものなどのプロットを含んでもよい。すなわち、青い細胞のファージが、処置のために選択されてもよい。
【0096】
方法の実施形態は、人間が評価した増殖曲線と比較され、待機時間推定の差が比較された。図9Aは、本明細書に記載の方法の実施形態によって推定された待機時間と、人間の推定との間の推定待機時間差のヒストグラムであり、図9Bは、本明細書に記載の方法の実施形態によって推定された待機時間と、図9Aを生成するために使用された人間の推定との間の推定待機時間差のテーブルである。これらの結果は、コンピュータ実行方法が、同一の結果を生成したが、人間よりかなり速いことを示す。さらに、精度は、1分毎など、15分毎に1回より、頻繁に測定が行われた場合、人間より十分に高くなることが可能である。より迅速なデータが取得されるので、人間は、隣接した時点を区別することができず、その一方で、コンピュータシステムは、各時点を分析可能である。この性能は、図9Cにさらに示されており、図9Cは、39個の異なるマルチウェルプレート全体で695個のデータセットに対する、本明細書に記載の方法の実施形態によって推定された待機時間と、人間の推定との間の推定待機時間差のヒストグラムである。このより大きいデータセットでは、モデルは、ケース(曲線)の81.4%に対して同一の推定、ケースの16.5%に対して1時間以下の差、およびケースの2.3%で2時間以下の差を生み出した。これらの結果は、したがって、コンピュータ実行方法が、しっかりと曲線を適合させ、これらのデータセットの本質的な変動を説明し、専門家の人間と同様の結果を生み出せることを示している。
【0097】
方法は、したがって、平坦な曲線を識別し、増殖曲線をしっかりと適合することができる。閾値最大高さhTHはまた、非S字のように見え、平坦として暫定的に分類した普通でないまたは異常な増殖曲線を有する曲線である、平坦な曲線を特徴付けるまたは分類するために使用されてもよい。それでも、異常な増殖曲線は、典型的には、真の平坦(すなわち、ファージが細菌の増殖を阻害することによるもの)に比べて、実質的な変動を有し、したがって、変動の分析によって区別可能である。これは、線形適合または他の曲線適合からの誤差または剰余の分析を実施することによって決定されてもよい。機械学習分類器はまた、平坦な曲線と異常な曲線とを区別するために訓練されてもよい。
【0098】
低性能のファージをモデルがどれだけ素早く区別可能であるかを検査するために、機械学習モデルがテスト宿主ファージ反応データセットをどれだけ素早く確実に分類できるかを調べるために、in silico実験が実施された。この実験では、宿主ファージ反応毎に完全なデータセットに機械学習モデルが適合され、次いで、一連のテスト適合が次いで、データセットに対して実施され、ここで各適合は、15分間隔を使用して漸進的に増加する時間ウィンドウにわたって実施された。すなわち、テスト適合が時間ウィンドウ(0,t)にわたって実施され、ここで、tは、その後のテスト適合毎に15分毎に増やされ、適合されたパラメータは、次いで、分類を行うために訓練済み機械学習モデルに提供された。上述のように、訓練済み機械学習モデルは、概要パラメータのセットを要求するだけであり、適合されたデータセットの時間ウィンドウは、モデルを訓練するために使用されるものと同一である必要はない。
【0099】
図10は、実施形態による、機械学習モデルが宿主ファージ時系列データセットの有効性を正しく分類するのにかかった時間を示す48個のプロットのセットである。プロットのそれぞれは、テスト適合についての分類が、完全なデータセット上の機械学習モデルから取得された分類に一致するかどうかを示し、ここで、「1」は一致を表し、「0」は、15分間隔のそれぞれにおける不一致を表す。各プロットは、したがって、機械学習アルゴリズムが正しい/安定した推定を生成するのにどれだけかかるかを示す。予想通り、プロットは、最初の数時間で著しく変動するが、10~20時間の間に正しい推定に落ち着く傾向がある。特に、A3、C3、およびH3は、ファージが増殖を阻害するのに効果的なケースであり、これらはそれぞれ、機械学習モデルが信頼できる推定を行うのに20時間くらいかかる(時点1001)。これは、ファージが効果的でないA1、A4、およびC2とは対照的であり、これらは、10時間後(時点1004)、安定した推定を達成する。それでも、B5およびD5などの効果のないファージを伴ういくつかの細胞は、安定させるのにかかる時間が長くなる(時点1005)。
【0100】
これらの結果は、10時間後の良くないファージの素早い予測には機械学習モデルが適度に正確であるが、効果的なファージを識別するのにかかる時間が長くなることを示唆する(この場合、20時間くらい)。これは、時間周期が20時間に及ぶはずであるが、明らかに効果のないファージを選択するためにテストが10時間後に実施されてもよいことを示唆している。最小の望ましい時間周期はそれでも、ある程度、使用される適合関数に依存することになり、その時間ウィンドウ内で適合が実施され(例えば、単一のまたはピース毎の適合)、ウェルのための増殖培地が宿主ファージ反応テストのために使用される。
【0101】
したがって、1つの実施形態では、方法は、データが収集されるときに実施され、最良適合モデルが、ファージの有望な有効性を予測するために使用され、次いで、計画通りの最終または停止時間(例えば48時間)の前に実験を停止させるべきかどうかを評価するために使用可能である。したがって、方法は、追加のデータポイントを含むアップデートされた宿主反応データセットを受け取り(すなわち、現在の終了時点がこれより後の終了時点にアップデートされる)、正規化取得およびレポートステップを繰り返すことをさらに含んでもよく、レポートすることは、ファージが有効である確率の推定を含む。これは、単に、追加のデータを考慮した現在時間における有望なクラスの再推定でもよい。1つの実施形態では、方法は、最終クラス確実性(または最終分類予想値)を決定すること、および、最終クラス確実性を、ファージが現在時点において有効である確率の推定としてレポートすることを含む。最終クラス確実性は、ファージが終了時点において有効であるかどうかについての分類(すなわち、現在のクラス推定)が、ファージが最終時点において有効であるかどうかについての分類(すなわち最終クラス推定)にマッチする可能性の推定である。最終クラス確実性はまた、最終分類予想値(すなわち、現在のクラスが最終クラスと同じである予想値もしくは可能性)、または代替として、最終クラス確率(これは、現在時点における現在のクラスの選択時の確実性であるクラス確率とは別個のものであることに留意されたい)を指すことができる。
【0102】
最終クラス確実性は、履歴宿主ファージ反応データセットのセット内の類似の宿主ファージ反応データセットのセットを識別することに基づいて決定されてもよい。最終クラス確実性推定は、現在の終了時点におけるクラスが最終または停止時点(例えば、48時間)における最終クラスにマッチする、類似の宿主ファージ反応データセットに基づいて決定される。類似性評価のために使用される履歴データセットのセットは、開始時点から最終時点に及ぶ全データセットであり、平坦な(非S字の)宿主ファージ反応データセット、および非平坦な(S字の)宿主ファージ反応データセットの両方を含んでもよい。一部の実施形態では、最終クラスおよび時点毎のクラスは既知でもよい。それでも、これらは、利用可能でなくても完全なデータセットから推定し直すことができ、または、クラスが初めに計算されてからの分類方法の変更などにより、現在の分類方法を使用するのが好ましいと決定される。
【0103】
類似のデータセットを識別することは、いくつかの方式で実施可能である。1つの実施形態では、類似の履歴データセットは、現在の終了時点における同じクラス推定を有する履歴データセット内にあるものとして選択される。別の実施形態では、類似の履歴データセットは、現在の終了時点における同じクラス推定を有し、前の時点(例えば75%)の少なくとも閾値数または百分率(例えば、75%)にマッチする、履歴データセット内にあるものとして選択されてもよい。これは、前の時点毎にクラスをチェックすること、およびマッチの数をカウントすることによって、実施可能である。別の実施形態では、テンプレートアダプションまたはシグナルワーピングなどの相関測度またはパターンマッチング方法が、現在の終了時点との2つの時間曲線間の類似性を評価するために使用されてもよい。
【0104】
一部の実施形態では、最終クラス確実性は、(その後レポートされることが可能な)現在の終了時点の最終クラス確実性の推定を生成するために使用されることが可能な、履歴データセットで訓練されたランダムフォレスト分類器などの機械学習方法を使用して決定されてもよい。
【0105】
ランダムフォレスト(RF:random forest)ベース分類器は、両方の曲線タイプ(平坦および非平坦)の増殖曲線パラメータ(最大高さ、傾き、遅滞、AUC)で訓練され得る。モデルをベンチマークするために、増殖曲線のデータセットは、それぞれが、等しい数の平坦および非平坦な増殖曲線からなる、2つの等しいサブセットに分けられた。感度、特異度、および正確度などの様々なパラメータが、MLアルゴリズムの予測力を評価するために推定された。RF分類器をさらにテストするために、1から20時間までの時点毎に分類器の%正確度を推定した。1から20時間までの時点毎に、RF分類器は、訓練およびテストセット内に存在する様々な増殖曲線のこの特定の時点における推定された増殖曲線パラメータでそれぞれ訓練およびテストされた。RF分類器は、新しいデータが取得されると同時に予測を実施するために分析モジュールと統合され、1から20時間までの時間ステップ毎に全ての増殖曲線の確率スコア(0から1までの範囲)を予測する。予測スコアが>=0.50の場合、増殖曲線は、非平坦(悪いファージ)として分類され、確率スコアが<0.50の場合、増殖曲線は、平坦(良いファージ)として分類される。
【0106】
図10Bは、経時的なAcinetobacter baumanniiについてのランダムフォレスト予測器の様々な性能測定のプロット1010であり、図10Cは、感度および特異度を示すプロット2012である。Klebsiella pneumoniaeおよびEscherichia coliなどの他の細菌に対して、類似の性能が観察されている。
【0107】
ブーステッドツリー分類器、ランダムフォレスト分類器、決定木分類器、サポートベクトルマシン(SVM)分類器、ロジスティック分類器など、様々な機械学習分類器が使用されてもよい。一部の実施形態では、分類器は、確率的分類器である。これは、2項分類(例えば、有効であるか否か)を単に発行するのではなく、分類器は、クラス確率を出力する。確率的分類器は、単純ベイズ、2項回帰モデル、離散選択モデル、決定木、およびブースティングベース分類器を含む。一部の実施形態では、機械学習訓練は、完全なデータセットを第1の訓練データセットと第2の検証データセットとに分離することを含む。訓練データセットは、総データセットの60~80%くらいが好ましい。このデータセットは、分類器モデルを作成して有効なファージを正確に識別するために機械学習モデルによって使用される。第2のセットは、検証データセットであり、検証データセットは典型的には、データセットの少なくとも10%、およびより好ましくは20~40%である。このデータセットは、訓練データセットを使用して作成されたモデルの正確度を検証するために使用される。データは、訓練データセットおよび検証データセットにランダムに配分されてもよい。一部の実施形態では、良い/悪いファージの類似の比率が確実にそれぞれに存在するようにするために、訓練データセットおよび検証データセットに対してチェックが実施されてもよい。一部の実施形態では、相互検証が使用される場合、データセットは、3つのデータセット、すなわち訓練データセット、検証データセット、およびホールドアウトまたはテストデータセットに配分されてもよい。第3のホールドアウトまたはテストデータセットは、典型的には、総データセットの10~20%くらいであり、機械学習分類器の訓練または相互検証のために使用されない。このホールドアウトデータセットは、機械学習分類器モデルの正確度の推定を偏らせない。
【0108】
1つの実施形態では、最終クラス確実性推定は、特定のファージ宿主の組合せまたはプレート全体の実験を続けるべきかどうかを決めるために使用されてもよい。例えば、最終クラス確実性が、停止閾値(例えば、67%、75%、90%、95%、または99%)を超過した場合、ユーザは、最終(正しい)クラスが決定されたと確信することができ、この宿主-ファージの組合せに対する実験/アッセイを停止することができる。これにより、通常の発生より早く、新しい宿主-ファージの組合せを使用した別の実験/アッセイを開始できるか、または、最終クラス確実性が高いファージ(もしくはファージ宿主の組合せ)を使用して処置を開始できる場合がある。一部の実施形態では、プレートは、多くのウェル(例えば、96個)を含んでもよく、閾値数(例えば、75%)のウェル、またはウェルの全てが、停止尺度を上回る最終クラス確実性を有するまで、実験を続けることが望ましくないこともある。早く終結し、停止閾値未満の最終クラス確実性推定を有する、ファージ宿主の組合せ/ウェルが、再開されてもよい。一部の実施形態では、中間実験/アッセイの取替えを可能にするために、特殊なプレートが構築されてもよい。例えば、96個のウェルプレートが、12個の取替え可能な8×1列のウェルを有してもよい。
【0109】
1つの実施形態では、適合ステップは、宿主ファージ実験の経過中に繰り返し実施されてもよい。すなわち、実験が進み、さらなるデータが利用可能になると、データセットは、追加のデータポイント(すなわち、追加の時間)でアップデートされ、適合関数が、アップデートされたデータセットで再適合および分類される。これは、新しい適合毎に時間ウィンドウを漸進的増加させることと同等である。別の実施形態では、適合時間ウィンドウの幅は、さらなるデータが利用可能になるときに、適合プロセスがスライド時間ウィンドウを効果的に使用するように固定されてもよい。これらの実施形態では、分類確率を出力するために確率的分類器が使用されてもよい。代替として、新しい時点/適合毎に分類予想値が推定されてもよい。分類予想値は、現在時間における現在の状態にマッチする時点を含む履歴データの分布を使用して決定された現在の状態を、分類結果が正しい条件とする、確率(または可能性)の推定である。すなわち、アッセイにおける所与の時間におけるパラメータのセットを考慮して、所与のファージについての分類の結論の確実性の基準である(すなわち、現在の分類結果 予想結果である)数が生み出されてもよい。例えば、新しいデータが15分毎に取得されてもよく、分類器の判定は、時点毎に保存されてもよい。
【0110】
時点毎の分類予想値を取得するために、現在の状態にマッチする履歴データセットのサブセットを抽出する。第1の実施形態では、これは、現在時点における同じ分類の結論を有するデータセットであることが可能である。このサブセットを取得すると、次いで、分類結果の現在の推定が最終分類結果(例えば、アッセイの完了後の分類)と同じであるサブセットの百分率を決定し、この百分率(または、この百分率に基づく数字)を返す。時間が進むと、これは、最終値で安定すると予想される。すなわち、24時間にわたって実施されたアッセイの場合、4時間における分類結果を確率50%(すなわち、不安定な推定)で得ることができる。12時間までに確率は75%になり(正確である可能性が高い)、20時間までに99%になる(正確である可能性が非常に高い)ことが可能である。別の実施形態では、データセットは、現在時点における同じ分類の結論を有し、増殖基準が現在時間における観察された増殖基準のいくつかの範囲内である、データセットでもよい。これは、増殖値を区分して間隔またはビンのセット(例えば、0から0.1まで、0.1から0.2まで、0.3から0.4まで、等)にすることによって、達成可能である。
【0111】
次いで、観察された増殖基準がどの間隔/ビンに入るかを識別し、同じ現在の分類結果を有する同じ時間における同じ間隔/ビン内の増殖基準を観察したことがある履歴データのサブセットを選択する。このサブセットを取得すると、次いで、現在の分類結果が最終分類結果と同じだった(すなわち、現在の分類結果 予想分類結果である)サブセットの百分率を決定する。代替実施形態では、データセットは、上述のような、増殖基準が現在時間における観察された増殖基準のいくつかの範囲内である、データセットであることが可能である(すなわち、データセットの選択は、現在の分類結果を無視する)。次いで、現在の分類結果にマッチする最終分類結果を有するこのサブセットについての最終分類結果の百分率を返す。分類予想値は、したがって、履歴データセット内の利用可能なより長い時系列(および結論)を活用することによって、現在の分類結果の確実性または安定性の初期基準を提供することができる。
【0112】
上記の実施形態は、宿主細菌に対する1つまたは複数の有効なファージを識別するために使用可能である。複数のファージが同じ宿主細菌に対してテストされる場合、処置または、在庫ステータスなどの他のいくつかの尺度のために、最も効果的なファージ(複数可)の治療ファージ製剤が生成されることが可能である。どのファージまたは複数のファージを含めるべきかについての選択は、有効なファージの多様性の基準を使用して取得されてもよい。1つの実施形態では、多様性の基準は、ファージ間の異なる作用機序を示すものである。多様性のこの基準は、ファージをシークエンシングすること、および、生命情報科学方法またはデータセットを使用して機能的な効果/関係を推定することによって、推定可能であり、これらは、1つまたは複数の作用機序にラベルを割り当てるために使用可能である(これらは、GeneOntologyデータベース、または生物学ネットワークのデータベースなど、制御されたオントロジーから選択可能である)。ファージの組合せは、したがって、作用機序が異なるものに基づいて選択可能であり、または、複数の可能な作用機序のセットにファージが割り当てられる場合、ファージは、最も似ていないセットを有する(すなわち、可能な作用機序の重複が最小の)2つのファージに基づいて選択可能である。作用の方法の重複は、生物学ネットワークもしくは方針、またはGeneOntology(GO)用語(もしくはGO用語の下流)、またはGO-CAMモデルを共有することに基づいて定義可能である。例えば、ファージの各ペアには、両方のリストによって共有されない作用機序の数に基づくスコアが割り当てられてもよい。最大スコアは、最も多様な(重複しない)リストを示すはずである。別の例では、スコアは、重み付きスコアでもよい。例えば、前のスコアは、リストサイズに重みを付けるために、2つのリストサイズの合計で割られてもよい。シーケンスに関連付けられた作用機序の根拠を考慮した重み付けを適用することなど、他の重み付けまたはスコア関数が使用されてもよい。生命情報科学データマイニングまたは生物学ネットワーク/方針分析に基づく、可能な作用機序の多様性を評価する他の方法も使用可能である。このアプローチは、第2のファージの作用機序が異なる場合、第2のファージが相変わらず効果的である可能性が高くなるような、細菌が単一のファージの作用機序に適応することに対する堅牢性をもたらす。
【0113】
本明細書に記載の実施形態は、したがって都合のよいことに、宿主ファージ反応データセット内で観察される固有の変動に対して堅牢であるようにデザインされた宿主ファージ反応データを分析/解釈するための自動化された方法を提供する。方法の実施形態は、開始時間から終了時間までの時点の範囲にわたって関数を適合させ、時点毎に、ゴンペルツ、ロジスティック、およびリチャーズ関数などの(他の関数が使用されてもよいが)、一連のシグモイド関数を使用した順次適合アプローチを使用する。最良適合時点およびモデルパラメータは、したがって、例えば、待機時間をそこから取得可能な遅滞時間を取得するために、適合から取得可能である。方法は、いくつかの異なる適合関数を使用して、方法が、宿主ファージ反応データセット内で観察される実質的な変動および実験効果に適応できるようにすることによって、堅牢性を得る。
【0114】
さらに、初期遅滞期または終わり近くの安定期など、生物学的に関心のない時間周期に適合が焦点を合わせるのを阻止するために、(例えば、類似のRに基づく)類似の品質の、しかし最小遅滞時間により近い、適合をサーチするように調節ステップが実施される。すなわち、いくらかの品質/適合度を犠牲にする可能性と引き換えに、方法は、より中央かつ生物学的に関心のある結果に向けて、最良の時間の推定を行う。
【0115】
完全にロードされたOmniLog(商標)装置は、複数のマルチウェルプレートを含み、装置内の全てのウェルをスキャンするのに約15分かかる。適合プロセスは迅速であり、したがって、各ウェルまたは各プレートが読み込まれた後に実施可能であり、図8bおよび図8Cに示された色分けされた行列プロットなどの結果のレポートが生成される。実験が進むと、可能性の高い分類のさらなる予測が決定されることが可能である。
【0116】
自動化された特性は、かなりの肉体労働と時間を節約し、一組の人間の専門家が、48個のプレートを分析するのに45分くらいかかる。対照的に、方法の実施形態は、10分くらいのうちに48個のプレートを分析可能である。さらに、方法は堅牢であり、結果は、関連付けられた実験のメタデータと共に、データストレージ、ウェブサーバ、または実験室情報管理システムに自動でエクスポート可能である。
【0117】
このアプローチは、細菌感染症および特に多剤耐性感染症を有する患者を処置するためのファージ形成に含めるためのファージを識別するために使用可能である。方法はまた、工業用地の浄化用など、細菌汚染エリアを浄化するために使用可能なファージを識別するために使用可能である。これらのファージ製剤は、上述のような、作用機序が異なる2つまたはこれより多くのファージを含んでもよい。
【0118】
上記の方法に対する変形形態も実施可能である。1つの実施形態では、履歴データセットは、アッセイ中に(すなわち、フルアッセイ時間周期の前のいくつかの時点で)実施されるときの分類を改善するために使用される。本実施形態では、現在の時間周期(例えば、0から6時間)にわたって、1つの適合(または複数の適合)が実施される。次いで、同じ時間周期にわたる適合結果が、取得された履歴データセット内の宿主ファージプロフィール毎に取得され、(現在の時間周期にわたる)現在の宿主-ファージの組合せに対する適合結果に適合結果が類似していることに基づいて履歴データセットのサブセットが選択される。すなわち、この時点まで(または、この時点までのいくらかの時間範囲にわたって)、観察されたファージ-宿主曲線にファージ-宿主曲線が類似している履歴データセットのサブセットを識別する。類似のファージ-宿主曲線の決定は、相関測度(例えば、相互相関測度または類似の類似性測度)を使用して実施可能である。次いで、(適合値だけを超えた)分類器へのさらなる入力として、履歴データセットからの追加のデータを提供する。1つの実施形態では、これは、究極的に有効だった履歴データセットのこのサブセットの百分率でもよい。1つの実施形態では、分類されたランダムフォレストが使用されてもよい。
【0119】
図3は、本明細書に記載のコンピュータ実行方法のうちのいずれか1つを実施するように構成された例示的なコンピューティングシステムを描写している。コンピューティングシステムは、1つまたは複数のメモリに動作接続されたマルチコアCPUおよびグラフィカル処理ユニット(GPU)を含む1つまたは複数のプロセッサを備えてもよく、メモリは、方法の実施形態を実施するようにプロセッサを構成するための命令を格納する。この文脈では、コンピューティングシステムは、例えば、1つまたは複数のプロセッサ(CPU、GPU)、メモリ、ストレージ、および入出力デバイス(例えば、モニタ、キーボード、ディスクドライブ、ネットワークインターフェース、インターネット接続、等)を含んでもよい。それでも、コンピューティングシステムは、プロセスの一部または全ての態様を実行するための回路機器または他の専用ハードウェアを含んでもよい。コンピューティングシステムは、オールインワンコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、タブレットまたはモバイルコンピューティング装置、サーバ、および任意の関連付けられた周辺デバイスなどの、コンピューティング装置でもよい。コンピュータシステムは、サーバベースシステムおよびクラウドベースコンピューティングシステムを含めた、分散型システムでもよい。一部の動作設定では、コンピューティングシステムは、1つまたは複数のユニットを含むシステムとして構成されてもよく、ユニットのそれぞれは、ソフトウェア、ハードウェア、またはそのいくつかの組合せのいずれかで、プロセスのいくつかの態様を実行するように構成される。例えば、ユーザインターフェースは、デスクトップコンピュータまたはタブレットコンピュータ上に提供されてもよいが、適合は、クラウドベースサーバシステムを含めたサーバベースシステム上で実施されてもよく、ユーザインターフェースは、このようなサーバと通信するように構成される。ユーザインターフェースは、ウェブポータルとして提供されて、1つのコンピュータ上のユーザがデータセットをアップロードできるようにしてもよく、データセットは、リモートコンピューティング装置またはシステム(例えば、サーバまたはクラウドシステム)上で処理されてもよく、結果(すなわち、レポート)をユーザに、または他のコンピューティング装置上の他のユーザに返す。
【0120】
図3は、本明細書に記載のプロセスを実施するために使用され得るいくつかの構成要素を有する例示的なコンピューティングシステム(300)を描写している。例えば、入出力(「I/O」)インターフェース330、1つまたは複数の中央処理装置(「CPU」)(340)、およびメモリセクション(350)。I/Oインターフェース(330)は、ディスプレイ(320)、キーボード(310)、ディスクストレージユニット(390)、およびメディアドライブユニット(360)などの、入出力デバイスに接続される。メディアドライブユニット(360)は、コンピュータ可読メディア(370)を読み書きすることができ、コンピュータ可読メディア(370)は、プログラム(380)および/またはデータを含むことができる。I/Oインターフェースは、所定の通信プロトコル(例えば、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、IEEE802.15、IEEE802.11、TCP/IP、UDP、等)を使用して別のデバイスの同等の通信モジュールと通信するためのネットワークインターフェースおよび/または通信モジュールを備えてもよい。
【0121】
コンピュータプログラムは、ユーザインターフェースを提供し、モデル適合を実施し、結果をエクスポートするために、例えば、汎用プログラミング言語(例えば、Pascal、C、C++、Java(登録商標)、Python、JSON、等)、またはいくつかの専用の特定用途向け言語で書かれてもよい。1つの実施形態では、機械学習モデルは、SciKit-Learn、Tensorflow、およびPyTorchなどの機械学習ライブラリ/パッケージを使用して生成されてもよく、使用されてもよい。これらは、典型的には、ブーステッドツリー分類器、ランダムフォレスト分類器、決定木分類器、サポートベクトルマシン(SVM)分類器、ロジスティック分類器など、複数の異なる分類器を実行する。これらはそれぞれテストされることが可能であり、最も良く実施する分類器が選択される。
【0122】
本明細書で開示された実施形態と共に説明される方法またはアルゴリズムのステップは、ハードウェアで直接的に、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで、または2つの組合せで、具体化されてもよい。ハードウェア実行の場合、処理は、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、CPUおよびGPUを含めたプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、本明細書に記載の機能を実施するようにデザインされた他の電子ユニット、またはその組合せの中で実行されてもよい。ソフトウェアモジュールは、コンピュータプログラム、コンピュータコード、または命令としても知られているが、いくつかのソースコードまたはオブジェクトコードのセグメントまたは命令を含んでもよく、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、取外し可能ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ブルーレイディスク、または任意の他の形式のコンピュータ可読メディアなど、任意のコンピュータ可読メディアに常駐してもよい。いくつかの態様では、コンピュータ可読メディアは、非一時的コンピュータ可読メディア(例えば、有形メディア)を含んでもよい。別の態様では、コンピュータ可読メディアは、プロセッサに統合されてもよい。プロセッサおよびコンピュータ可読メディアは、ASICまたは関連デバイスに常駐してもよい。ソフトウェアコードは、メモリユニットに格納されてもよく、プロセッサは、これらを実行するように構成されてもよい。メモリユニットは、プロセッサ内またはプロセッサの外部に設置されてもよく、外部の場合、メモリユニットは、当技術分野で知られているような様々な手段を介してプロセッサに通信連結されることが可能である。
【0123】
本明細書に記載の方法のいずれかを実行するためのコンピュータ実行可能命令を有する非一時的コンピュータプログラム製品またはストレージメディアも生成されることが可能である。非一時的コンピュータ可読メディアは、コンピュータによって上述のプロセスのうちのいずれか1つを実施するための1つまたは複数のコンピュータプログラムを格納する(例えば、現実に具体化する)ために使用可能である。1つまたは複数のプロセッサ、メモリ、および1つまたは複数のプログラムを備えるコンピュータシステムがさらに提供され、1つまたは複数のプログラムはメモリに格納され、1つまたは複数のプロセッサによって実行されるように構成され、1つまたは複数のプログラムは、本明細書に記載の方法のいずれかを実行するための命令を含む。
【0124】
当業者は、情報および信号が、様々な技術および技法のいずれかを使用して表現され得ることを理解するはずである。例えば、上述の全体を通して参照され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、およびチップが、電圧、電流、電磁波、磁場もしくは粒子、光場もしくは粒子、またはその任意の組合せで表現されてもよい。
【0125】
本明細書で開示された実施形態と共に説明される様々な例証的な論理ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェアもしくは命令、または両方の組合せとして実行されてもよいことを、当業者はさらに認識するはずである。ハードウェアとソフトウェアとのこの交換可能性をはっきりと示すために、様々な例証的構成要素、ブロック、モジュール、回路、およびステップが、一般にその機能の観点で、上記で説明されてきた。このような機能がハードウェアとして実行されるかソフトウェアで実行されるかは、全体的なシステムに課された特定の用途および設計制約に依存する。当業者は、特定の用途毎に様々な方式で、説明された機能を実行してもよいが、このような実行判定は、本発明の範囲からの逸脱を引き起こすものと解釈されるべきではない。
【0126】
本明細書およびその後に続く特許請求の範囲の全体を通して、別途文脈が必要としない限り、単語「備える(comprise)」および「含む(include)」、ならびに、「備える(comprising)」および「含む(including)」などの変形形態は、述べられた整数または整数のグループを含むが、他のどの整数または整数のグループも排除しないことを示唆するものと理解されよう。
【0127】
本明細書におけるいずれかの先行技術への言及は、このような先行技術が共通の一般知識の一部を形成するという暗示のどの形式の承認ともとられず、とられるべきではない。
【0128】
本開示は、その使用において、説明された特定の1つまたは複数の用途に制限されないことが当業者によって認識されよう。本開示も、本明細書に記載または描写の特定の要素および/または特徴に関するその好ましい実施形態に制限されない。本開示は、開示の1つまたは複数の実施形態に限定されないが、以下の特許請求の範囲によって説明および定義されるような範囲から逸脱することなく、数多くの再配置、修正、および代用を行う能力があることが理解されよう。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図10-5】
【国際調査報告】